■2002年4月21日(日) BSEで消費者に残る牛肉不信 (東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2002/0421/nto0421_8.html 牛肉の信頼回復を目指して国が昨年十月十八日にBSE(牛海綿状脳症、狂牛病
)の新検査を始めてから半年がすぎた。懸案となっていた廃用牛と肉骨粉の処理も
徐々に動きだし、事態は沈静化したようにも見えるが、関係者にとって気掛かりな
のは消費者の動き。食肉の不正表示事件が続いたことも響き、県農協中央会が最近
実施したアンケート結果でも、牛肉を敬遠する意見が全体の半数近くを占めている。
県内三カ所の食肉衛生検査所がBSE検査で扱った牛は、四月第一週までで八千
六十七頭に上る。いずれも感染を示す陽性反応は確認されず、今年に入ってからは
県外の感染事例もない。
県中央会は二月末から県内企業や団体、農協などの協力を得て牛肉消費に関する
アンケートを実施し、合計六百五十人から回答を得た。
その結果、BSE発生前は90%が牛肉を食べていたのに、現在も食べていると回
答した人は54%止まり。残る46%のうち9%が「もともと牛肉は食べない」、7%が
「牛以外の肉を食べる」という人たちで、30%は「安全が確認できれば食べる」と
答えた。
だが、「安全」に対する消費者の要望を満たす解決策は、行政や農業団体、流通
業界にとって難しい課題だ。BSE発生をめぐる国の不手際、農業団体や大手食肉
メーカーが名を連ねた産地詐称・不正表示事件が信頼回復の足かせになっている。
「業界には松阪牛や魚沼産コシヒカリの流通量は生産量より多いもんだというよ
うな『常識』すらあった。こうした姿勢を改めるのは当然としても、百パーセント
の安全性を求める一部の消費者とマスコミの要求を完全に満たすことは次元が違う
問題。時間の流れに任せるしかないという気がする」。流通関係者の一人は、あき
らめにも似た口調で語る。
酪畜農家の経営を圧迫していた廃用牛処理が、四月に入って津軽食肉センター(
田舎館村)で始まり、五月からは三戸食肉センター(三戸町)も受け入れる。行き
場を失っていた牛の肉骨粉は、八戸セメント(八戸市)が近く焼却処理を始める見
込みとなった。
ただし、こうした動きにも足並みの乱れがある。県内最大規模のと畜施設を備え
る十和田地区食肉処理事務組合は四月初め、廃用牛受け入れに関して荷受け側と話
し合ったが「BSEが出ても大手スーパーが入荷を続けてくれるような措置がない
以上、肉用和種でも廃牛処理は時期尚早」との声が強く、受け入れに踏み切れなか
った。
「安全」なはずの牛肉に一抹の不安を捨てきれない消費者、主産地だけにBSE
の影響に神経をとがらせる上北地区の業界−。山口真誉県畜産課長は「食肉のトレ
ーサビリティー(来歴が確認できる仕組み)づくりで信頼確保に努め、酪畜の生産
サイクルを元に戻すため関係者に要望を重ねるしかない」と見る。BSEに対する
県民の不安をぬぐい去るには、さらに時間をかける必要がありそうだ。
(BSE問題取材班)