ちょっとせつなくなった食事の風景

このエントリーをはてなブックマークに追加
310もぐもぐ名無しさん
小学生の頃、地域の集まりで大きな公園に遠足に行くというイベントがあった。
平日だったこともあって母親のみ同伴の子供の中に、ひと家族だけ父親も
一緒に参加している家族を発見。
その家族の母親は、顔の半分くらいがガーゼで覆われていて、事故にでも
遭ってケガしたのかとその時は思っていた。
普段の付き合いは無かったが、家が近いというだけの面識があった俺は、
その家の子供と一緒に遊ぶことにした。
昼食の時間、子供は子供でグループを作って食事をとることになり、
うちのが一番だ、と言わんばかりに自分の弁当を自慢しあってたわけで。
もちろん、昼食の弁当はそれぞれの母親の手作り。
おかずの交換をしているうちに、その子のおにぎりをひとつ貰うことができた。
少し形がいびつで、食べてみると具である味噌漬けが異常にしょっぱいおにぎり。
「これしょっぺぇよ! しょっぱいしょっぱい!」
からかい半分で騒ぎ立てたため、その子は少し悲しそうな顔をしてこう言った。
「これは僕のお母さんの田舎の味噌漬けなんだよ」
遠足から十数日後、その子の母親が亡くなったと聞かされた。
末期の皮膚ガンだったとかで、顔のガーゼはそのためにつけていたとも教えられ
それを聞いて、自分はとんでもないことをしでかしてしまったと思った。
ずっと病院にいた母親が帰ってきて、家族三人がそろった遠足だったのに
自分はその子の母親が作ったおにぎりをぶん取った挙句、馬鹿にしてしまった、
その子にとって最後の母親の思い出を汚してしまったんだと、子供心にそう思った。
もう一度その子に逢えたなら、地面に顔をこすりつけてでも謝りたい。