ドキュター中松の航空力学質問コーナー

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655大空の名無しさん
過去の記事を読むと以前に少し説明があったようですが
曖昧に終っているようなので
改めて側面飛行について質問します

仮に 機首を充分に上げた上で90°ロールし
風見効果で機首が落ちるのをトップラダーで打ち消して姿勢を維持することで
側面飛行が可能だとします
この状態のまま機体を水平に戻すと
それまで機体側面に掛かっていた重力はなくなる為
逆方向に1Gの加速度が残ります
側面への加速度は向心力ですから
機体は1Gの水平旋回を始める筈です

ここで疑問なのですが
航空機に関しての本やサイトに掲載されている文章を読んでいると
「ラダーは機首を横に振るもので 実際の進行方向は殆ど変えない」
という解説がよく書かれています
この言葉から想像する限り ラダーでそれほどの水平旋回は
出来ないのではないかと思うのです

質問はふたつ
ここまでの考えは正しいか
それが正しいとして 側面で直線飛行が出来る程 航空機のラダーは強いのか

宜しくお願いします
656大空の名無しさん:03/10/04 01:04
>>655

側面飛行中のラダーは 機種下げのモーメントを消しているだけで、
主要揚力をを発生していないんじゃない?

側面飛行での地面に逆らうGのメインとなる収益源って 推力の垂直成分やと思うのだが?
657Dq.ナカマシ:03/10/04 20:52
>>655
まず、通常の場合トップラダーで1Gのサイドフォースを作る、すなわち機体を吊る能力はありません。
ここが前提として、かなり異常というか、あり得ない状況なのです。
>>656
ほぼ正解です。
さらに付け加えれば、胴体側面や垂直尾翼側面に斜め前方下方からあたる、気流によるサイドフォースも重要です。
つまり横から当たる風の風圧と、エンジン推力ベクトルの鉛直成分で機体を浮かせていると言っても良いでしょう。

次に結論を書きますが、「ラダーによって、CGベクトルは十分に偏向します。すなわち進行方向が変わります。」

ラダーを思い切り蹴って、エルロンを逆に当てて強引にウィングレベル(ロールゼロ)でサイドスリップの入れます。
この時、先の垂直バンク同様、胴体と垂直尾翼には、斜め前方から風が当たります。
この気流のサイドフォースによって、CG進行ベクトルに垂直な力の成分が発生します。
高速道路を走る車に横風が当たる状況を想像して下さい。

さらにラダーを蹴りこんでいる事によって、ヨーが発生・継続し、CGベクトルと、HDGとの間にズレ角が生じます。
これも同様に推力ベクトルの向心成分が旋回させる力となります。

この為、たとえウィングレベルを保っていたとしても、機体の運動軌跡は円弧となり、かつ刻々とHDGも変化していきます。
もちろん膨大なドラッグを発生させる為に只事では無い推力が必要ですし、機体および乗員には水平に旋回Gがかかるので、まったく好ましくありません。
が、しかし少なくとも、「進行方向は変えない」という文言からは、かけ離れたしっかりとした旋回を行う事は可能です。

Dq.ナカマシは、以前、この全く同じ事を小型機の業務用SIMで実際に検証した経験があります。
その結果は、フルラダーを蹴り込むと、小型機の巡航スピード程度では、ほぼハーフレイトターンを実現出来ました。
つまり90度旋回するのに1分かかる緩い旋回です。
少なくともこれは120KT程度ではバンク8〜9度の通常旋回に匹敵する旋回です。
その時は、スロットル全開、エルロンも半分程度は切りっぱなし、という異常な操舵です。
まあSIMの再現性にもよりますが。