【回遊魚達が】三崎港・花暮岸壁2【回遊しない】

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274名無し三平
◇◇「ベレンコ中尉22年目の証言」その1.墜落の恐怖・・・「函館だ」◇◇

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私は失敗を恐れない。人生は自分になにが起こるかを待っているのではなく
自分が何をするかだ。
−ビクトル・イワノビッチ・ベレンコ−

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空はどこまでも青く晴れ渡っていた。
眼下のタイガ(針葉樹林帯)は赤や金色の紅葉が始まっていた。
1978年9月6日午後零時50分。ベレンコ(29歳)は、ソ連空軍の誇る最新鋭
戦闘機ミグ25でウラジオストクの北東190キロ、チェグエフカにある513空軍
基地を離陸した。
275名無し三平:2008/03/09(日) 09:14:43 0
5分後、高度7、200メートルに到達。訓練空域には、数機の友軍機がいた。
「今ならまだ引き返せる」との思いが頭をよぎったが、地上のレーダーに感づかれな
いようにゆっくりと高度を5、800メートルに下げ、次の瞬間操縦かんを思い切り
前に倒し、急降下した。
地表がぐんぐん迫る。高度30メートルの超低空飛行で2分後、日本海に出た。この
間「操縦不能」の緊急信号を40秒間出し続けた。次に無線のスイッチを切った。
「これで基地は墜落したと思って大騒ぎだ」

超低空のまま南東に向かう。目指すは千歳基地だ。
頭の中ですばやく燃料の残量を計算する。
多分到着出来るはずだ。多分...

高々度迎撃機のミグ25は、重量22トンの機体に15トンもの燃料を積む。
が、超低空飛行のため、巨大な2基のエンジンは猛烈な勢いで燃料を消費し続けた。
ついてないことに、北海道上空は灰色の雲が垂れ込めていた。燃料節約の為高度を上
げる。もう日本の領空だ。
「航空自衛隊のファントムがスクランブルをかけてくれば誘導してもらえる」
276名無し三平:2008/03/09(日) 09:15:45 0
だが、北海道西部を横切って噴火湾に出てもファントムは現れない。燃料切れを知ら
せる警告が鳴った。「着陸地点が見つからなければ、墜落だ」
機体を旋回させ、高度を下げて雲の下に出た。
整然と並んだ函館の街並みが見えた。
「函館だ!」ロシアの荒々しい自然とあまりにも対照的な美しさ。

滑走路を懸命に探す。「あった!」が、短い。
しかも民間機が離陸しようとしていた。迂回すると燃料が持たない。
墜落の恐怖が過ぎる。民間機をやり過ごし、滑走路に突っ込んだ。
「ミグよ、壊れないでくれ!これはアメリカ亡命への手土産なんだ!」

ブレーキが悲鳴をあげ、煙が上がる。すさまじい振動。
250メートルもオーバーランし、ようやく機体が止まった。
離陸してから1時間が過ぎていた。
277名無し三平:2008/03/09(日) 09:16:24 0
◇◇「ベレンコ中尉22年目の証言」その2.体制の真実告げた一冊◇◇

いくら刑期が終わっても、腐れ縁は切れないものだ。
そう思うと時には息苦しくなることもある。
ああ神様、自分の足で自由に歩けるようになりますか?
−ソルジェニーツィン「イワン・デニービッチの一日」−

ミグの残量燃料が30秒分、紙一重で墜落を免れた。
時計の針は午後2時近くを指していた。
「不思議と感動は無かった。
とにかく亡命の意志を伝えるのにアメリカ人を探そうと
思った」
278名無し三平:2008/03/09(日) 09:17:07 0
ベレンコは酸素マスクを外し、地上に降りた。
近づいてきた日本人の男性がカメラを向けた。
米国への手土産である最新鋭戦闘機の
重大機密が漏れる−とも思いが頭を過ぎる。
腰からピストルを抜き空似向けて1発撃った。
男性が自ら抜き取ったフィルムを受け取った。

続いて白旗を掲げた日本人数人がやってきた。
年配の男性がロシア語でピストルをよ
こせというので、サバイバルナイフと一緒に手渡した。
連れて行かれた空港ターミナルで、ロシア語を流暢に話す日本人から
「迷子になった のか?」と聞かれた。
「いや、自分の意志で飛んできた。亡命したい。
すぐに戦闘機を隠して欲しい」
米国亡命を求める英文のメモを託した。