298 :
名無し三平:
相変わらず、ココも荒れているようじゃな。
どれ、儂がひとつ御伽話でも話してしんぜよう。
むかしむかし、丹後の国に小利という釣り舟があったそうな。その船では客は皆、鉛を鋳溶かした「治具」なるものを
使って魚を釣っていたそうな。
ある日、その船に良く乗る「常連」とよばれる者共の中に当時ではめずらしい「有海」という金属を使った大きな「治具」
を持ちこんで釣りをはじめた者たちが居たそうな。
その者共は当時一世を風靡していた「栗間」なる魔術師の名前をもじって「檀神具・毬躯」と命名しておった。
しかし、それを見つけた船頭は激怒し、「そんなものでは魚は釣れん!お前等出入り禁止じゃあ!」とその者共を追い
はらったそうな。しかし、その眼にどす黒い光が宿っていた事は誰も気づかなかったそうじゃ。
それから暫くして・・・・・。その船である「治具」が発売され始めたそうじゃ。
大きな「有海」を使った「治具」で名前を「檀神具・馬路躯」といったそうじゃ。その「治具」は瓦版屋の目に留まり、大々的に
宣伝され、各地に在家信者や出家信者を生むことになったそうじゃ。
しかし、船頭はその後も個人が趣味で造った「有海治具」を持ちこんで釣りをする者を厳しく糾弾し出入り禁止にしたそうじゃ。
そして、あろう事か「お上に自らが発明した治具であると証明してもらう」と公言したそうな。
その証明書は未だに日の目を見てはおらんと訊く。
・・・・・これで儂の話しは終わりじゃ。
信ずる信ぜぬは個人の自由じゃが、こういった話しの何処かに小さく、しかし光り輝く信実が隠されていると儂は思っておる。