663 :
長い:
戦い終わって 日が暮れて
ほんの少しの休息に
勇者は故郷へ帰ってきた
おいしいごはん ほかほかふとん
頭のわっかをとり
勇者はういーっとひとつ伸びをした
力もついた 技もみがいた
呪文もひとつおぼえた
なんて充実した一日だったんだろう
ふとんに入って 見上げた天井
飛べない鳥の形をしたしみ
ランプをふうっと吹き消して
それでは皆さん おやすみなさい
まぶたはあっという間に仲良くなった
ほうほうとふくろうが鳴く
そよそよと夜風が雲をはこぶ
隠れていた月が顔を出し 優しい光をふりまいた
滑り込んだ白い光 勇者はそっと目を覚ます
とてもきれいな月の夜 どこか冷たい月の闇
なぜだか心細くなって 頭からふとんをかぶる
夢の雲にあっという間にはこばれていった
かすんでいく意識の中 勇者はぼんやり考えた
リセットはちゃんと押したかしら
電源を切ってからカセットを抜いたかしら
ふわふわと浮きながら考えた
予感は的中 不安は激中
次の日 勇者はなんもおぼえちゃいなかった
「おきのどくですが ぼうけんのしょはきえてしまいました」