「ん…」
ファリスの唇が小さく動き声が漏れた。おれは、思わず飛び退いて壁に背をあてた。
もう一度近寄って、そぉっと頬に触れる。
すべすべしてて…柔らかい。
「あ…?…どしたんだ、バッツ…」
「お前なぁ、窓、開けっ放しだったぞ」
「ん…そうだったっけ…」
…まだ、寝ぼけてるな…
「それに、寝相が悪いからほとんど服がまとわりついた程度になってたし…直しといたぞ」
「む…胸とかも……出てた?」
心なし赤い顔でファリスが問う。声もほんのちょっと震えている。
こういうファリスって、ついいじめたくなるんだよなぁ。
「そんな色っぽくなかった。腹がいかにも冷やして下さいと言わんばかりにどーんっと」
「なんだよっ、それ!色っぽくなくて悪かったな!」
ばちぃっ、と叩かれる。
「いってぇ。……全く、こんな乱暴だから…」
呟くと、凍えるような殺気が背を突く。……このへんでやめとかないと命がない。
「ところで、お前俺の部屋で何やってんだよ…」
「い…いや、その……だな…」
じろり。…とにらまれる。
「なにをしに来たか…早く言えよ」
「………1週間ぐらいご無沙汰だから…欲しいなあなんて…ダメ?」
ファリスの目に怯えつつ、真意を語る…に、逃げようかな。
「な・に・を?」
「………愛しい愛しいファリスちゃんが…」
不敵に微笑むファリス。怯えつつ、てへっと笑いかける。
「…なんだって?」
寝起きで少々機嫌が悪いらしい。
………いっそのこと、予定(?)通り押し倒すか。このままだと危ないし。
「ご無沙汰で、いい加減我慢できないって言ってるんだよ」
ベッドの上に座ったままだったファリスを押し倒す。
「やっ!?ちょっとぉ…!!?」
抵抗し、早口に呪文を完成させようとする。
「おいたはいけないな」
意地悪く囁いて、唇を塞いで呪文を途絶えさせる。
「んむぅっ!?」
息苦しい…。
肩を拳で叩き、訴える。
「…………する気になった?」
熱っぽい声が耳元をくすぐる。
「やぁん…ばか…ぁ…」
ファリスの体は熱をおびていた。
「久々だもんな。ファリスも欲しいんだろ?」
甘い声で囁かれて、もう抵抗はできなくなった。
「…………」
潤んだ瞳で見つめ、小さくこくんと頷いた。
「手加減はできないぞ…ずっとしてないんだからな」
耳元に舌を這わす。
「はぁ…んなこといったって……」
ぴくんっ。
ぎゅっとバッツの袖を掴む。
「俺が誘うと、いつも呪文ぶっ放してくれたもんなぁ。そうでもなきゃこんな、夜這いする必要なかったのになあ…」
袖を掴んだ手をやや強引に引き剥がす。
「んっ…。なん…?」
引き剥がされた手とバッツの顔を見る。
「あんまり優しくできそうに無いなあ」
あっさりと服を剥いで、放る。
「い、痛くするなよぉ…っ?」
身をかたくしてよじる。
「どうしようかな……」
胸の、ほんのちょっと膨らんだ白い肌に、歯をあてる。
「んやぁ…」
口元に手を当てる。
少しづつ、敏感な方に噛みつくところを変えていく。
「バッツ……っ」
そこで、ふと起きあがる。
「…………バッツ?」
か細い声が、離れようとしたバッツにかけられる。ベッドの下からなにやら紙袋を拾い上げる。
「…何だよ…?それ…」