1 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
ビビって死んだの?
サラマンダーと喋ってたのは誰?
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 18:45
>1
おいおい忘れたのかい
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 18:47
ゲームお前チャンとやったのか?黒魔道師たちは、時間がくると止まっちゃう〈死ぬ)って言ってたジャン。
あんなよさげなキャラをストーリーに絡めないなんてなあ
だんだんFF9の評価が下がってきてる。
シナリオつぎはぎだよなあ
>2
わかってるけど
子供いたしさ
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 19:27
832にFF9のテーマは生と死って書いてあったからなんとなく予想できたんだけどね。
つーかパッケージの裏の奴絶対仲間になると思ってたのになぁ。
7 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 19:44
悲しいエンディングだな・・・
8 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 19:58
とりあえずジタンと姫がビビのことぶちこわしっしょ。
せめて順番逆にしろ。
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 20:00
結局、クジャはどうなったの?
10 :
>3:2000/07/12(水) 20:03
つまりジタンは不死身なんだな?
ダガーがババァでもジタンはびんびん
11 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 20:04
寿命で氏にました
12 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 20:05
ビビの子供はミコト達が作ったものです。
13 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/12(水) 23:37
放尿もしてたから性器もあるんだろうが
あのガキの子供ができたとしたら
十数年後となるしなぁ。
やっぱ人形を作ってもらったんだろうな。
14 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:01
つーかほんとにサラマンダーと喋ってたのは誰?
15 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:03
だから、エーコをさらった女じゃないか?
ほら、サラマンダーが仲間になる所だよ。
一度は戦闘しただろ?
16 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:14
ああ、あいつか。すっかり忘れトッタ。
さんきゅ>15
17 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:21
何気にあの女も巨乳ででかい武器を使っているところなんて俺好みなのに
なんで全然出番がないんだ。
18 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:48
歌うたって助かっちゃいました。
19 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 00:58
>17
くじゃではなく奴のムービーを見たかった。
ただそれだけ
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 02:15
ビビ死ナナイで
21 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 02:24
俺なら白魔導師を量産するね。
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 02:57
結局ビビが人造なのかどうか言及ないもんなぁ。
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 03:03
ビビは自分の正体が松田聖子と知って、
生きるむなしさを覚えたそうです。ビビビッ。
24 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 03:04
>22
へ? プロトタイプでしょ。
ちゃんと卵の殻があったし。
25 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/07/13(木) 03:05
そりゃ氏にたくなるわな
26 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/05(土) 18:11
やっぱり死んだのかビビ・・・
27 :
エンディングの:2000/08/06(日) 03:33
ジタンのアクションを見る限り、やっぱり彼は普通じゃないな……
28 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/06(日) 03:54
ビビの子供たちもすぐに止まっちゃうんですかね?だとしたら悲しいな・・・
29 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/06(日) 05:11
これにしとけ
|`、 __ ― 'l
. ┤_ゝ―〜、^´ /
/ " ヽヾー /
/ ヽ--く
/ / / / ヽ \
|../ / ./ ノ|./l ./ | ヽ
|/|/ヘ/|/ ̄`|イ | ヽ
/.l.-、 rー、 | | |l |
ノ |上l ト┤ゝ| γヽ|//./
`フ | 、  ̄ / r^/ /
/ ゝ、- 彡 /-' /
彡___| ̄ ̄ ̄`-彡____∠__∠@`
ゝ.-==ニ__ /
/´ ̄ ̄ヽヽr.―――┴ フ--― フ
/〃〃 ノλ´ヽ、__/ヽ、___ノ
ノ〃 /|λ'\__ノ\___ノ
/ / レ'\_ノ レ'\ノ
30 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/06(日) 08:02
あげ
31 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/20(日) 11:10
あげついでに今回のEDのメロディーズオブライフのあとのED恒例の曲ってすごいよかった
32 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/20(日) 11:16
あれ[と全然変らなかったろ。
おれはあの曲だったら[のが一番いいと思ってたから
\もあんな感じで安心したよ
33 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/20(日) 11:18
34 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/20(日) 11:36
>32 いや、8のサントラと比べると9はしんみりって感じで8は迫力がよかった。どっちも好きだけどなんか9の方が聴くと短いけど好き。
35 :
34:2000/08/20(日) 11:37
ちょっと日本語変だけど気にしんでくれ
36 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2000/08/29(火) 01:53
Q
37 :
>773 :2000/08/29(火) 01:55
\のエンディングは最高!
感動だよ。
間違いなく[以上。
38 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2000/08/29(火) 02:02
39 :
名蕪しさん@お腹いっぱい。 :2000/09/03(日) 02:42
>>33 ひさびさに読んだけど、やっぱ好きだなこの小説。
ビビ........(泣
ジタンはどこ行ってたの?
41 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2000/09/11(月) 10:45
.
42 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :2000/09/11(月) 10:59
>>40 黒魔道士の村(目を覚ます)→タンタラスのアジト(バクーに敗北)
→黒魔道士の村(ビビ・クジャ死亡)→タンタラス(今度は勝利)→アレクサンドリア(はぐはぐ)
じゃない?
43 :
名無しさん@LV2 :2000/09/28(木) 20:48
なんで?
44 :
魁!名無しさん :2000/10/01(日) 22:26
>33
いいね〜、この小説。
こういうエピソードをエンディングに付け加えてくれたら、完璧だったのに・・・
『いつか帰るところへ』
久しぶりに逢った仲間は、以前と同じ……というわけにはいかなかった。
「……来てくれたんだね、ジタン」
「ああ、ビビも変わらないな」
「そうかな」
ビビはベットに横たわったまま照れくさそうに笑った。そして起きあがろうと
身体を動かしたが、それは俺が止めた。
「いいって。その方が楽なんだろう?」
「でも……寝たままなんて失礼だし」
「気にすんなって。オレとおまえの仲じゃないか」
「う、うん」
控えめなしゃべり方は相変わらずだった。
だが、俺には何となく判る。こいつの変化を。そうでなければここに訪れるこ
とも無かっただろう。
ビビの帰るべきところ、黒魔道士の村。
数日前、俺のところにモーグリ経由でこいつからの手紙がやってきた。文面を
要約すれば「逢って話がしたい」とのこと。「自分の子供たちにジタンを見せて
おきたい」とのこと。
そして、同封されたもう一枚の手紙――たぶん、俺の居場所を突き止めたであ
ろうミコトのそれが、ビビの残された時間のことを知らせていた。
もう、あとわずかだと。
あの時、俺は諦めていた。
クジャを助けるために暴走を始めたイーファの樹の中に飛び込み、持ち前の身
軽さと反射神経と、わずかの運のおかげでヤツを見つけることが出来た。
石化した葉に横たわっていたクジャに、動けるような体力は残っていないよう
に思えた。ならば、俺がヤツを背負って脱出するまでだ。
みんなに約束したから、なんとしても帰らなければいけない。それに、そうで
ないとここまで来た意味が無くなっちまう。
似合わないほど弱気なヤツを担ぎ上げようとしたとき、俺たちに向かってくる
何本もの触手が見えた。どれもがすさまじいスピードで、確実に俺たちに向かっ
てくる。
俺とクジャは外敵、それともタダの獲物かもしれない。
四方八方、いや見える範囲すべてから緑色の矛先が向かってくる、抱きかかえ
たクジャの身体は予想以上に重い。出来ることと言えば、ヤツの盾になることぐ
らいだった。
一気に間をつめたツタの殺気が、俺の背中にびりびりと伝わってきた。
……ダメか? すまない、みんな!
「……ストップ」
そして、時間が止まった。
俺たちの身体に触れるか触れないかの距離で、触手は動きを止めたのだ。
「クジャ、おまえか?」
「キミは……魔法が扱えないからね」
ヤツはそう言って微笑んで見せた。
「本当なら、ガーランドの手によって……黒魔法も白魔法も、自由に扱える……
魔法戦士として育つハズだったのを……僕が」
その後の言葉は続かない。クジャはせき込んで目を閉じたのだ。
「おい、しっかりしろ!」
「……僕はもう、魔法を使いすぎた。魂の制限を……越えていたんだよ」
「クジャ!」
「だから……お願いだ、ジタンだけは助けてくれないか?」
「おまえ、何を言っているんだ?」
クジャの目は俺を見ていなかった。もう、その時は視力が無かったのかもしれ
ない。だが、どこかの誰かに語りかけているように思えた。
「たのむ……もう、時間が……動き出す前に、彼だけでも……」
“判ったよ”
全く別の声が俺の頭の中に響いた。
次の瞬間……視界から全ての物が消えた。身体が持ち上げられてどこかに放り
投げられる間隔、しかしそれもほんの一瞬で、次に襲ったのは全身が地面に叩き
付けられる衝撃だった。
目の前が明るくなった。
殺気が消え、穏やかな空気を感じる。小鳥の鳴き声、川のせせらぎ、風の音。
今までのそれがウソのような安らかな雰囲気。
仰向けに寝ていた俺の顔を、誰かがのぞき込んだ。良く知っている顔だ。
「……大丈夫かい、ジタン」
黒魔道士……ダリの地下で作られていたあの姿がある。目の前の彼らは、心配
そうに俺を見ていた。
ゆっくりと身体を起こして周りを見た。
黒魔道士たちとは別に、俺と同じ金色の髪の毛にしっぽをはやした姿、ジェノ
ムと呼ばれたテラの末裔たちもいる。そいつらは相変わらずの無表情だった。
事態がようやく飲み込めてきた。あの浮遊感は何度も味わったことがある……
黒魔術師の使うテレポートだ。そしてここが黒魔道士の村だとすれば、俺の頭の
中に響いた声は、彼らの声だったのだろう。
まて、だとしたらヤツは?
探すまでも無かった。俺はクジャの腕をしっかりと握っていたのだ。
「……クジャ、寝るな!」
ヤツはそれに答えず、小さく笑っていた。
「僕は、ジタンだけ助けてくれって言ったはずだ」
その問いかけは、俺の目の前の黒魔道士に向けられた物だった。
「どうして、僕までテレポートしたんだ。ここにいるお前たちで、僕に復讐をす
るためか?」
「そんな事は考えていないよ」
黒魔道士はゆっくりと首を左右に振った。
「ただ、君を一緒にテレポートしないと、ジタンは必ず、君を助けに行くと思っ
たからさ。それでは二度手間だろう?」
「……そうか」
クジャはオレの方をちらりとみた。
「ジタン」
「何だ?」
「……キミの声は、歌劇向きではないな。せっかく寝ていたのに、目が覚めてし
まったよ」
アイツはそう言って笑うと、静かに目を閉じた。
ヤツが息をひきとったのはその日の夜だった。あれから何の言葉を発すること
もなく、とても穏やかな最期だった。
クジャの亡骸は、黒魔道士たち墓地に埋めることとなった。それを提案したの
は、他でもない黒魔道士だった。
ジェノムたちも手伝って穴をほり、ヤツの身体をそこに納めるとまた土を盛る。
墓標にはクジャが身につけていた羽根飾りを添えた。
「……いいのか、本当に」
簡単な葬儀のあと、俺は黒魔道士にそう聞いてみた。なぜ、アイツをここに埋
葬する気になったのかを。
「アイツが言っていた通り、恨みとかないのか?」
「あるのかな、無いのかな……」
彼は首を傾げる。
「でも、ここはクジャにとって、いつか帰るべき場所だったんじゃないかな」
「ここが?」
「テラと呼ばれた場所はもう無いし、ここには彼と同じ種族の人々が居るだろう。
きっとクジャだって、自分が最後に帰る場所は欲しいと思うんだ」
「……そうだな」
次の日、俺は村を後にした。
ビビがこの村に帰ってきたのは、それから二〇日ほど過ぎてからだった。
ビビはみんなの協力で家を建ててもらい(例のとんがり帽子型の家だ)、黒魔
術の技術を活用してクロネコ合成屋でアイテム作りをしているという。
意外とそれが評判良く、通なコレクターが来て村では使い切れないお金を払っ
ていくらしい。
「そういえば、一〇日くらい前に、エーコとクイナが来たんだよ」
ビビは楽しそうに話を続けた。
「モーグリも来てね、いっぱい魚を釣ってきてくれたんだ。それで二人で料理を
作ってくれたんだ」
「そうか……クイナは食いしん坊だけど、料理は上手だもんな」
「うん、ここのみんなも喜んでくれたよ。ミコトたちは初めて食べるみたいで、
ちょっとびっくりしていたけど」
「エーコは料理、失敗しなかったか?」
「大丈夫だったみたい……でも、何回か悲鳴が聞こえていた」
「……そっか」
「エーコ、シドおじさんの子供になったんだって。今度はおじさん連れて来るっ
て言ってた。それまでに『おとうさん』って呼べるように練習しているんだって」
「おっさん、エーコを引き取ったんだな。それじゃあ思いっきり甘やかしそうだ
よな」
「うん、毎日楽しいって言っていたよ」
「そうだろうな」
「……ジタンに逢いたいって言ってた」
ビビはじっと俺の事を見ていた。
「オレに?」
「うん……他のみんなも、フライヤもサラマンダーもスタイナーも、それにおね
えちゃんも」
「エーコがそう言っていたのか?」
「おねえちゃんの事は言っていなかったけど、きっとそうだと思う。ボクだって
逢いたかったから」
「だからさ、こうやって来ているじゃないか」
「それじゃ不公平だよ。みんなに逢ってあげなくちゃ」
「不公平なもんか。ビビは誰よりもがんばったんだ。一番偉いんだぞ」
「そんな事ないよ……本当に、他の人には逢わないの?」
「逢うさ」
「いつ?」
「そのうち」
「そのうちって?」
「それは……」
「じゃあ、約束してよジタン」
ビビの手が、俺の腕に触れた。
「エーコから聞いたんだ。もうすぐアレキサンドリアに劇場船が行くって。あの
『君の小鳥になりたい』を再演するんだって。みんなそこに集まるから、ジタン
も行って」
「……オレが?」
「うん、だってジタンはタンタラスのメンバーなんでしょ。だったら、またあの
お芝居をみんなの前で見せて上げてよ」
「でも、オレは……」
「約束できないの?」
ビビはじっと俺を見ていた。
「判った、約束する」
「ホント?」
「ああ、それに今度は主役をやってやるさ。オレのかっこいい晴れ姿をみんなに
見せつけてやるよ!」
「うん」
「そのかわり、ビビもちゃんと見に来るんだぞ。チケット送るからな」
「ぼ、ボクは……」
今度はビビが言葉を濁していた。
「どうしたんだよ、オレに約束させておいて、ビビは約束出来ないのか?」
「ボクはそれまで、生きていられるのかな?」
「何弱気な事言ってるんだよ。大丈夫に決まってるだろ。ここにはミコトや他の
ジェノムも居るんだぜ。具合が悪くなったら、あいつらがちゃんと診てくれるさ」
「そうだよね……あ、そうだ。お芝居で思い出した」
ビビはとんがり帽子をいじくり出した。そして何やら小さな紙切れを、俺の前
に差し出した。
「これ、ジタンにあげるよ」
「なんだよこれ?」
ビビから受け取ったそれを広げてみると、俺たちが騒動を起こしたあの演劇の
チケットだった。でも、どこか変だな?
「それね、偽物なんだ」
「そうなのか……そう言われてみれば、そうだな」
タイトルが『きみの子猫になりたい』になっている。
「アレキサンドリアに行ってチケットショップのおじさんに『偽物』って言われ
たときは本当にショックだったよ。でもね、それが偽物だったから、パック王子
やみんなに出逢えたと思うんだ。
だから、偽物でよかったと思っているんだよ」
「いいのか、これをもらって? ビビの大切なものじゃないのか?」
「偽物だもん……本物のチケットが手に入るんだから、もういらないよね」
「それもそうか」
ビビと俺は笑った。
「ボクも約束したから、ジタンもちゃんとおねえちゃんに逢ってあげてね」
「……逢ってくれるかな。もうオレはタダの盗賊だぜ?」
「それでも、ジタンはジタンなんでしょ」
「そうだな」
俺は俺、か。
アレキサンドリアは見事に復興した。
バハムートとアレキサンダーの闘いで、城を含めて城下町も大打撃を受け、完
全な復興は無理だろうと近隣諸国から言われたが、元通りではないにせよ、あの
活気ある街並みを復帰したのだ。
クジャを埋葬したあと黒魔道士の村をでて、あてもない旅の途中一度だけ、俺
はアレキサンドリアに立ち寄った事があった。
タンタラスの団長であるバクーが、ルビィの小劇場に訪れていると聞いたから
だ。
「まあお前のこった、ちゃっかり生きていると思ったぜ」
ボスは俺の顔を見ても特に驚くことなく、「元気そうだな」と腹を殴りつけた。
俺たちのいつもの挨拶だ。
「それで、どうした今日は?」
「オレを、タンタラスに戻してくれ」
「そういやあ、ジタン。お前抜けていたんだったな。また入りたいとはどういう
風の吹き回しだ?」
「ようやく落ち着いたから、また団に戻ろうと思っただけだよ」
するとボスは、じっと俺の事を見たまま何も言おうとしない。
「な、なんだよ」
「……とりあえず、掟は掟だ。オレに勝つことが出来れば、いつでもタンタラス
に戻してやるさ」
「ああ、任せとけ」
もちろん、その時は相手が相手だし、ある程度、手を抜いてやるつもりだった。
そう思って腰のタガーを引き抜いたのだが……
信じられなかった。俺の攻撃は一切当たることなく、ボスの一撃は今までのど
んなモンスターよりもきつい痛みを身体に刻み込む。
手を抜くことなんか止めた、空白があっても身体にしみこんだ技は消えるハズ
無い……でも、結果は同じだった。
「……だらしねえなあ、ジタン」
ボスは勝ち誇ることなく、淡々とそう言った。
「もう一回だ、今度こそ……」
「何度やっても、オレには勝てねえよ」
ボスは剣をさやにしまった。
「……くっ、くそ!」
「このアレキサンドリアに来たのは、オレに逢うためだけか?」
「え?」
「違うだろう、そろそろ、あのお姫さまの事が恋しくなってきたんじゃ無いのか?」
「ち、違うさ」
「正直に言え。復興の終わったこの街に帰ってきて、懐かしい姫さまに涙の対面
をしたかったんじゃないのか、白馬の騎士のジタン様がやってきたと」
「そんなわけないだろう!」
「ジタン……今のお前じゃ、あのお姫さんには釣り合わないんだよ」
俺はその言葉に、頭に血が上った。
「あんたがそんな言い方するとは思わなかったよ、盗賊とお姫様じゃ身分が違う
とでもいうのかよ!」
「誰が身分の事をいった? 人としての格の大きさを言っているんだよ!」
「格?」
オレはその言葉に、正直に反応してしまった。そんなオレを見て、ボスはイス
に腰掛けてため息を付いた。
「あのお姫さんはな、お前と同じ歳なのにこのアレキサンドリアを立て直すため
に、夜も寝ずに努力しているってよ。馬鹿で頑固なスタイナーや、女騎士のベア
トリクスも協力しているけど、あの小さくて華奢な身体で孤軍奮闘だ。
それに比べてお前はどうだ? 世界を救ったかもしれないが、それはもう過去
のことだ。今のお前は何なんだ?」
「……オレは」
「あのお姫さんは本物の王女さまになる。それに比べてお前は盗賊崩れだ」
「ああ、オレは盗賊だけど……」
「なあジタンよ……あの闘いが終わって、お姫さんの誘拐が失敗に終わった時、
かかっていた魔法がとけちまったんだよ。その瞬間に、『タガー』は『ガーネッ
ト・ティル・アレキサンドロス一七世』にもどっちまったんだ」
「そんな事はない!」
ボスはテーブルを蹴った。
「オレの前から消えろ、そして二度と姿を見せるな。
間違ってもお姫さんには逢うな! ただの迷惑だからな」
ドアを蹴破って出ていくボス……俺は手の中のタガーを見つめ、うなだれてい
た。
結局、俺は翌日、アレキサンドリアを出ていった。
『それでは王女様、今からわたくしめがあなた様を誘拐させていただきます!』
俺がタガーと冒険をするきっかけになったセリフだ。まだあの頃は「ガーネッ
ト王女」だったし、お姫様らしい言葉遣いだった。
今から考えればタガーにはずいぶんと無理させたような気がする。王室育ちの
女の子が外界でしかも冒険ときている。半分はあの子の要求とはいえ、よく付い
てきたもんだ。
ボスに逢う前に、俺は城のバルコニーに姿を現したタガーの姿を見た。その後
城に忍び込んで、あの子を驚かせてやろうと思ったんだ。
でも、彼女の姿を見たとき、俺は語るべき言葉を失っていた。
丁度、あの時と同じだ。アレキサンドリアの海軍がバハムートの暴走で全滅し
て、タガーが国に帰ったとき、ビビに誘われて城に励ましに行ったものの、純白
のドレスに身をつつんだあの子に俺は声をかけることが出来なかった。
その時考えていた言葉は全てウソだ。俺の言葉ではない。
あの時と同じ無力感を、俺はもう一度味わうことになった。
今のタガーの表情に不安のかけらもない。凛としていてボスの言う「格」の違
いを見せつけられているようだった。
そう、タガーでもガーネット王女でもない。彼女はアレキサンドリア女王だっ
た。
だから、声をかけることもなく、城に忍び込むこともなく、そのままボスの元
に向かったのだ。
アレキサンドリアから出てからは昔のように、あちこちの遺跡を回り、トレジャ
ーハンターまがいの事をした。それが俺らしいと思ったのだが、やっぱりどこか
ふぬけていた。
宝物をくすねたり、まだわずかに残るモンスターと戦ったり……でも、何か違
う。
俺は生き残っただけなのだろうか。
そんな俺は、みんなと逢うことを避けていたのかもしれない。
「ボク、ジタンとおねえちゃんが仲良くしているところ、凄くうらやましかった
んだ」
ビビは疲れを知らないように俺に語りかけ続けた。二、三日はここに居るから、
もっとゆっくり話そうと言っても、俺のことを寝かせてくれない。
「なんだ、ビビもタガーの事が好きだったのか?」
ビビは首を左右にふった。
「そうじゃないよ。ボクには二人みたいな仲良しって居ないから、それがうらや
ましかったんだ」
「ビビにだってオレが付いて居るんだ。そのうち、モテモテにしてやるよ」
「……きっと、おねえちゃんは寂しがっていると思う」
「大丈夫だよ、タガーのそばにはスタイナーだってベアトリクスだって居るんだ。
あのトットって先生も城に詰めているそうだし、クイナだってあのお城でコック
やっているんだろう?」
「そうだけど」
「それにシドのおっさんもエーコも、飛空船ですぐのところに居るんだ。一緒に
居なくても仲間は仲間だよ」
「そうだね」
「ビビは、みんなに逢えなくて寂しいのか?」
そう聞くと、アイツは首を左右に振った。
「そんな事ないよ。この村のみんなとは仲良しだし……それにあの時のみんなも
逢いに来てくれるんだ」
「そうなんだ」
「フライヤも来てくれた。一緒に居た男の人ととても仲が良さそうだったし……
サラマンダーが来たときはボクの家の屋根を直すの、手伝ってくれたんだ」
「アイツ、器用なのかなそういうこと」
「判らないけど……何回かとんかちで自分の指、叩いてた」
やっぱり。
「……ボクは平気だけど、ジタンは寂しくないの?」
「オレか? オレだって一人じゃないしな」
「そうだよね」
みんなビビのところに顔を見せに来ている。みんなは気が付いているのだろう。
アイツは気が付いて居るのだろうか?
ビビの寿命を延ばすことは出来ない。
『彼の魂を引き延ばすことは不可能だわ』
その日の夜中、俺は宿屋を抜け出して、墓地の前にたたずんでいた。クジャの
髪飾りはすっかり色あせてしまったが、風に吹かれて小さく揺れていた。
人工生命に詳しいミコトに言わせると、最初に設定された魂の上限を引き上げ
ることは不可能なのだそうだ。たとえあの『霧』があったとしても、それを使っ
て魂を引き上げたとたん、それはビビの身体であってビビの心ではない、全く別
の物ができあがるという。
『何とか何ないのかよ!』
『無理よ……設備もないし、あったとしてもそれは彼の命を延ばすことにはなら
ないわ』
ダリの村から取り寄せた機械のたぐいを使ってもダメらしい。
怒鳴るだけの俺と違って、ミコトはよくやってくれたと思う。
そしてビビが望んだのが、『自分の子供』だったそうだ。
『子供たちの寿命はどれくらいなんだ?』
『はっきりした事は判らないけど、ガイアの人間くらいはあると思うわ。テラの
設備を使えないから、永遠ってわけにはいかないけど』
『永遠は、ビビも望まないさ』
かたや永遠、かたや数年。
作られた命なのに、この差は何なのだろう?
それに……そのわずかの命を、俺は。
「眠れないのかい?」
気が付くと、俺の後ろに黒魔道士が立っていた。
「ちょっとね……この村は相変わらず静かだけど、ちゃんと生計は立っているの
かい?」
「そうだね……結界は解いたけど、そう頻繁にお客さんが来るわけじゃないし、
仲間がドワーフの村に品物を売りに行くぐらいだから。
あとはビビくんのところへのお客さんかな。
でも、あまり困ってもいないさ。ミコトたちも手伝ってくれるから」
「ミコトか……でも、ジェノムたちに『商売』と言っても、あまり良く伝わらな
いんじゃないか?」
「それはぼくたちだって同じさ。今でも人の真似事をしているような物だから。
たまにビビくんの友達が来てくれるから、ぼくたちのしていることが正しいか
どうか判るけど……でも実際は正しいかどうか、みんなは気にしていないのかも
しれないね」
「ふ〜ん」
この村はこの村で、それなりにうまくいっているのかもしれない。
そして暫く俺たちは何も話さなくなった。虫の鳴き声が大きく聞こえていた。
「……本当は、ぼくの方が先だと思っていたよ」
「え?」
「このお墓の中に横たわるの。ビビくんはずっと後だと思っていた」
「ビビの事、判るのか?」
「何となく。今まで何人も見ているから」
「そうか……」
「プロトタイプはぼくたちより、寿命が長いって聞いたけど……」
「オレのせいなんだ」
黒魔道士は驚いたように俺を見ていた。
「たぶん、寿命は長かったんだろう。でも、オレと冒険して、そして魔法を使い
すぎたんだ」
「魔法を?」
そう、それはクジャも言っていた。魔法を使いすぎた。魂の制限を越えていた、
と。
たぶん、ビビたちの魂は魔法力を圧縮したものだ。ビビはその濃度が高かった
のだろう、そこから『心』が生まれ、誰よりも強力な魔法を扱える事が出来るよ
うになった。
しかし、どんなに濃度が高くても、強力な魔法を使い続ければ早く魔法力は低
下する。それは限られた力だからだ。
ミコトも、俺の考えは間違っていない、そう言っていた。
「ビビはオレに逢わなければ、そんなに魔法を使うことなんか無かったんだ。ア
イツはみんなのために、いや、オレのために誰よりも魔法を使って、そして自分
の寿命を減らしていったんだよ」
俺は黒魔道士に背を向けた。彼の顔を見ることが出来なかったからだ。
「もっと早く気が付くべきだった。そしたら、オレだってアイツにそんな無理は
させなかったんだ。
オレはここに来るのが怖かったんだよ。きっと、自分の寿命の事を気が付いて
いるビビが、どんな目で自分を見るのかが!」
「……ジタンは、ビビくんが君の事を恨んでいる、と思っているの?」
俺は答えられなかった。
「でも、それは違うと思うな」
「なぜ?」
「ビビくんは自分で選んで自分で戦ったんだよ。決してジタンにやらされたわけ
じゃない」
「だけど、オレの自分勝手でアイツを振り回したのかもしれないんだ、クジャが
命を引き替えに、ここのみんなを利用したように!」
「それも違うよ。クジャと一緒に行動したのも、みんなの意志なんだと思う」
「意志?」
「みんなが『壊れること』が『死ぬこと』であり、一度『死んだ』ら、二度と
『直らない』ことだと理解し始めたとき……どうすればいいか判らなかったと思
う。そもそも『生きていること』の意味ですら、よく判っていなかったからね」
生きていることの意味……
「もちろん、今でもそれはよく判っていないと思う。判らないから、さらにどう
していいか判らない。みんな、何かをしたいと思ったんだよ。それで、みんなは
クジャを手伝った、でもぼくは残った」
「……この墓守をするためだろう?」
「本当は、どこに行っても何をしても、同じだと諦めていたのかもしれない。そ
の結果、他の仲間たちより長く生きている。でも、これって……そうだな、『辛
い』んだよ」
「辛い?」
彼は墓標代わりに飾られているとんがり帽子を手に触れた。
「ぼくはあまり魔法を使わなかったから、確かに寿命は長いかもしれない。その
分仲間たちのお葬式を見ていなければいけないんだ。一人また一人と土の中に眠
るたびに、ぼくは君のことを忘れないよ、そう思うんだけど……だんだん人数が
多くなるとね、もう覚えきれなくなるんだよ。
でも、ぼくがちゃんと覚えてあげないといけないから、いつでもここに来てみ
んなのことを思い出すんだ。
その中に……ビビくんの事を加えたくは無かった」
「そうか……」
「ジタン」
背後で俺を呼ぶ声がした。振り向くとそこにミコトが立っていた。
「なんだ、ミコトも眠れないのか?」
「違うわ、ビビの様子が……」
全てを聞く必要は無かった。俺はすぐさま、ビビの家に向かったのだ。
「……ごめん、やっぱり、お芝居は見に行けないよ」
身体を動かすこともままならないらしい。顔だけわずかにこちらに向けて、ビ
ビは切れ切れの声でそうつぶやいていた。
「もうすぐ、ボクの記憶を、空に置きに行かなくちゃいけないんだ」
「何言ってやがる! そんな言い訳が通るわけないだろう!」
「……そうだよね、だから、ごめんね」
「謝るな、謝るくらいなら……」
「ジタン、最後にお願いがあるんだ」
「最後だなんて言うなっ!」
「……ねえ、聞いてくれる?」
あいつの真剣な言葉に、俺は頷くしか出来なかった。
「ボクが動かなくなったら……その、死んじゃったら、ボクの身体はクジャの横
に埋めてもらえる?」
「誰に、そのことを?」
クジャの墓の事は口止めしておいたハズだ。特に、きっとこの村に帰ってくる
ビビには教えないでくれとみんなに頼んだのだ。
「ミコトに教えてもらったんだ……だから、ボクの身体は、クジャの横に」
「なぜだ? おまえはクジャの事を許せなかったんじゃないのか?」
「クジャは、ジタンの仲間なんだよね」
「え?」
ビビは、やっぱり、と言うように微笑んで見せた。
「最後にボクたちを助けてくれたのはクジャなんだよね。だから、ジタンもクジャ
を助けたんだよね」
「……ああ」
「ジタンの仲間なら、ボクの仲間でもあるんだよ……そしてみんなの仲間なんだ
よ。でも、今はクジャはひとりぼっちでしょ……だから、ボクだけでもそばにい
てあげたいんだ」
「いいんだな、それで」
「うん……」
「ビビは偉いんだな」
「偉くなんかないよ……それより、あのお墓にクジャを埋めてくれた、ここのみ
んなの方がよっぽど偉いよ」
「そうだな」
「ねえジタン……どうしておねえちゃんに逢わないの? 本当の理由を教えてよ」
「……もう、俺はタガーに逢う資格なんか無いんだ」
「どうして?」
「そう思うんだよ。タガーは立派な王女さまになったんだ。でも、おれは……」
「ジタンはジタン、おねえちゃんはおねえちゃんじゃないか」
「ビビ」
「……来たんだ、一度だけ」
「え?」
「ボクがこの村に移ってから少しして、お城のみんなに黙っておねえちゃんがボ
クに逢いに来たんだ」
「タガーが、ここに?」
「おねえちゃんは探して居るんだよ。ジタンのことを探しているんだよ。自分は
お城から動けないけど、世界中を探して居るんだよ。
必ず生きているって、信じてるから。
それで見つからなくて、自分の国を立派にすれば、ジタンが安心して帰ってき
てくれるって。ボクに話してくれた。
おねえちゃんだって寂しいんだよ」
俺は声が出なかった。
「ボクの前で泣くのを我慢していたんだ。
ジタンはいつから女の子にそんなに冷たくなったの?」
「おれは……」
「おねえちゃんは、おねえちゃんなんでしょ。おねえちゃんにとっても、ジタン
はジタンなんだよ」
ビビはそう繰り返して言った。
「約束だよ……ジタンのお芝居、必ず、おねえちゃんに見せてあげて」
「……判ったよ」
「うん……」
安心したのだろうか、ビビの身体がベットに沈み込んだ。
「ボクも、ジタンのお芝居、見たかったなぁ」
「……見に来ればいいだろう」
「でも……」
「なあに、空の上に居るのなら、ちょっと周りの目を盗んで降りてこい! 盗賊
の技なら、俺のを見慣れているだろう? それを真似すりゃいい」
「……そうだね」
「それでな、芝居を見に来るときには必ず、クジャのヤツも連れて来るんだぞ」
「クジャも?」
「どうせアイツのこった、俺の芝居なんか見たくないってごねると思うけど、そ
れでもビビが引っ張ってくるんだからな」
「……うん、判った」
ビビは小さく頷いた。
「ねえジタン」
「何だ?」
「よかった……」
俺にはビビが何を言いたいのか、よく判らなかった。
「最後に逢えたのが、ジタンで良かった」
「馬鹿野郎……」
「うん……よかったよ──本当に、ありがとう」
ビビは俺に、しゃべりたいだけしゃべると、クジャの時のように静かに目を閉
じた。
ありがとう、それがアイツの最期の言葉だった。
何となく、黒魔道士の言う意味が判ったような気がした。
ビビの言うとおり、アイツの身体はクジャのそれのすぐ横に埋めた。そしてと
んがり帽子を墓標にした。
目の前に眠る二人の仲間……俺は二人を忘れることは出来ない、でも俺の中に
生まれたこの大きな穴ボコはいったい何なんだ。たとえ仲間と別れたとしても、
いつかまた逢える、そう思えばさほど辛いことでは無かった。
でも、もうビビに逢うことはない。
「あなたらしくないわね」
村のチョコボ小屋でボビィ・コーウェンを眺めていると、そこにミコトが現れ
た。ビビを埋葬したその日の夕方だ。
「オレらしくないってどういう意味だ?」
「迷っているみたいだから」
「オレだって迷ったり考えたりすることはあるさ」
「そう? でもジタンなら答えが出るまで待たなかったでしょう?」
ミコトはボビィを挟んで向かい側の柵に腰掛けた。
「それと、一応謝っておくわ。ごめんなさい」
「何をだ?」
「クジャの事を、ビビに告げたこと」
「……ビビは、怒らなかったか?」
ミコトは静かに首を振った。
「気が付いていたみたい。あなたとクジャがテレポートしたとき、その気配を感
じたって言っていたから」
「そうか……そうかもな、ここの黒魔道士とは仲間だから」
俺は鳴き声を上げるボビィにギサールの野菜を一掴み与えると、ミコトに背を
向け夕日を見ていた。
「ビビが受け入れたのなら、オレがおまえを怒ることなんか無い」
「ひょっとしたら、こだわりがあるの?」
「こだわり?」
「自分が、テラで作られたって存在」
「おいおい、そんなあるように見えるかい? オレはそんな事、気にしないぜ」
「他人に対してはそうだけど、自分に対してはどうなのかしら?」
オレはゆっくりと振り向いた。いつも無表情のハズのミコトが、光の加減か薄
笑いを浮かべて居るかのように見せた。
「あの時、一人でクジャを助けに行ったのはなぜ?」
「だから、あれはオレがそのタイミングだと思ったからだよ」
「ちゃんと助ける自信も、自分が助かる自信も無いのに?」
「あったさ、そうでなければあんな無茶するか!」
「きっと、あなたはあなたの事が一番良く判って居ないのよ」
「オレが?」
「仲間、仲間って言っておきながら、肝心な事は一人で解決しようとする」
「それは、」
「自分の問題だ、だから仲間は巻き込みたくない……」
オレの言葉をつなげるように、ミコトはそう言った。
「わたしはテラに残ろうと思った。わたしの存在意味なんて無いと思った。ガー
ランドが倒れた後、自分で何をしていいかなんて、判らなかった。でも、あなた
は『生きていれば何かが見つかるかもしれない』って言った」
「そうさ、生きていれば何かが見つかるはずだ、だから……」
「クジャも助けた……わたしやクジャや、ジェノムが生きていれば、そこがあな
たの帰る場所になるから。
でも、ここはあなたの帰るべき場所ではないわ」
「ここがオレの帰る場所?」
「そう、どこかでそう思っているのよ」
「そんな事はない!」
「なら、なんで本当に帰るべき場所に行かないの?」
ミコトは小首を傾げた。
「そこに行くことはそんなに難しい事なの?」
「それは、オレの問題だ」
「違うわ。あなたの仲間はみんな望んでいるの。だからビビは、あなたに大切な
お守りを渡したのよ」
「お守り?」
「もらったでしょう、お芝居のチケット」
「ああ、もらったけど、あれは偽物だから、いらないって」
「それをよく見て」
ミコトに言われるままに、俺はポケットから細かく畳まれたそれを取り出して
広げてみた。
だけど、やっぱり偽物のチケットで……まてよ、四隅の空白欄に、何か細かく
文字が書いてある。俺はそれを顔に近づけて見てみた。
読みとれたのは、人の名前だった。
俺の名前もある、仲間の名前も、ここに居る黒魔道士の番号も、ボビィのも。
「ビビは出逢った人の名前をそれに刻み込んだの。自分に友達が出来たのはその
チケットのおかげだから、その全てを忘れまいと名前を書いたの。そしてお守り
にしていた、自分の何よりも大切な物だと……わたしに話してくれたわ」
お守り……これが。
「あなたは一人きりではない、それは自分では判っているつもりかもしれないけ
ど、みんなはそれ以上に一人でいるあなたの姿を見たくないの……
タガーにはわたしも逢ったから判るけど」
「……何か、話したのか?」
「一言、逢いたいって」
「逢いたい……」
「今、彼女に逢うことは怖い? ジタンは自分の価値を気にする人だったかしら?
タガーは自分を『お姫様』として見られることを望んでいたかしら?」
俺は考えた。それを言葉には出来ないだろう。
自分を失いかけたとき、必ず聞こえてきた彼女の言葉。どういう訳か怒られて
ばかりで、心配そうで、笑顔のイメージはそんなにないのに……そのどれもがド
レス姿のお姫様ではなく、必死に言葉を乱そうとして一生懸命な女の子の姿だっ
た。
俺は何も言わずビビのチケットを折り畳んで、ポケットの奥にしまい込んだ。
「あなたがジタン?」
垣根越しに声が聞こえる。ふと、そこに目を向けるとビビと同じ姿をした子供
が六人、俺を見ていた。
「そうだよ……おまえたち、ビビの子供か」
すると六人が同時に頷いた。
「そっくりだな、ビビと」
「とうさんは、土の中に寝てしまったんだよね」
「……ああ、そうだ」
「だから、今日からオレたちが、ジタンの仲間になるよ」
先頭の一人がそう言うと、残りの五人も大きく頷いた。
「仲間?」
「とうさんに言われてたんだ、もし土の中に寝てしまったら、代わりにジタンの
仲間になってくれって!」
「おまえたちは、それでいいのか?」
「うん、とうさんの頼みだモン。それに、ジタンって良いヤツみたいだし」
ビビに比べれば、少し偉そうな言い方に聞こえるが……やっぱりアイツの子供
なんだ。
「判った、オレは今日からお前たちの仲間だ」
「うん!」
「そうだな……今度アレキサンドリアに来いよ、お前たちのとうさんが見た劇を、
今度はお前たちが見るんだ」
六人はお互いに顔を見合わせている。
「大丈夫、チケットはオレが送ってやる」
「判った、見に行く!」
「……決心できたの?」
俺たちの様子を見ていたミコトが声をかけた。
「最初から、決まっていたさ。あの歌を歌ったときからね」
「歌?」
「クジャと二人、もうだめかと思った瞬間……オレの耳にタガーの歌が聞こえて
きたんだ。
空耳だと思うけど、オレはついその歌をつい口ずさんでいた。
そして、思ったんだ。オレは約束を果たさなければいけないってね。
その歌、クジャには馬鹿にされたけどさ」
「そう……」
「それにしても、ミコトもオレの妹らしくなってきたじゃないか」
「え?」
「おまえも見に来いよ、アレクサンドリアに。俺たちの芝居を」
「わ、わたしはいいわ」
「まあ、そう言うなよ。こいつらの引率も頼みたいしさ」
「ミコト、一緒に行こう!」
そばにいたビビの子供たちもそう声をあげた。
「あ、そう……そうね」
子供たちに囲まれて照れくさそうにするミコト。俺はその光景を見て微笑んで
いた。
その夜、村を出てリンドブルムに向かった。
『王女様……あなた様を誘拐するお約束は残念ながらここまでです。
……わたくしめの勝手を、どうかお許し下さいませ』
そうだ、約束は果たさなければいけない。
「まあた懲りずにやってきたか。オレの前には二度と姿を現すなって言っただろ
う!」
リンドブルムのタンタラスのアジトに戻るとすぐ、俺はボスに逢った。ああ言っ
ておきながら、再会を懐かしむメンバーを押しのけ、俺を部屋の奥に引っ張り込
んだのだ。
「で、用件はなんだ、ジタン!」
「決まっている、オレをタンタラスに戻してくれ」
「ほう」
「そして今度のアレキサンドリアの公演に出させてくれ」
ボスは腕組みして俺をにらみつける。また無言だった。
「頼む!」
「ボス、ジタンさんなら戻してもいいんじゃないっすか?」
「そうずら。本人も戻りたいっていってるずら」
「うるせえ、おめえらは黙ってろ!」
ボスの怒鳴り声に、マーカスもシナも口をつぐんでいた。
「……ジタン、掟は判っているだろうな」
「もちろんだ」
俺は腰につり下げたタガーを引き抜いた。俺とボスを取り囲んでいたメンバー
はゆっくりと離れていく。ブランクだけはその場を動かず、じっと見ていた。
ボスは自分の剣に手をかけた。今度は負ける訳にはいかない。
だが……ボスはそのままため息をついたのだ。
「……戻りたきゃ勝手に戻りな」
「え?」
タガーを構えたまま、俺はそんな気のない返事を返していた。
「戻っていいのか? まだ、戦っていないぞ」
「戦えるか、そんな目をしたヤツ相手に。オレだって命は惜しいからな」
「ボス……」
「聞きてえ事がある。何がおまえをそう変えた?」
「オレは変わっていない。オレはオレになっただけさ」
「いい答えじゃねえか」
ボスはそう言って俺に近づくと、いつもみたいに腹にパンチを入れた。いつも
より重いそれに、少しだけ息が苦しくなる。
「だが……いくら顔見知りとはいえ、タンタラスに入ったばかりのおまえは下っ
端だ。劇に出るなんてとんでもねえ。アレキサンドリアには連れてってやるが、
雑用の小間使いだ。それでもいいか!」
「……ああ、構わない」
「そうか……おうみんな、今日からタンタラスに入ったジタンって小僧だ。今日
からアレキサンドリアの公演まで時間がねえ。さんざんこき使って構わねえぞ!」
「おう!」
何にしろ、俺はタンタラスに戻ったのだ。
そして公演の日、久しぶりのアレキサンドリア。
だが、郷愁に浸る時間も待ち見物する時間も、たぶん訪れているであろう仲間
たちの顔を見ることも出来なかった。
それは……
「ジタンさん、大道具からセットを取ってきてほしいっす」
「おう、これだな!」
「ジタン、小道具の剣がねえよ」
「ちょっとまってな、これか?」
「ねえ、ジタン。うちの衣装、どこにあるの?」
「ええと……」
「ジタン、おらのとんかちどこにしまったずら?」
「そこの道具箱の……」
「あ、すいません、楽器ケースを」
「それは、倉庫の二番目の引き出しの、」
「これ、ブロードソードだろう、オレのはショートソードだよ」
「あ、すまん、じゃあ……」
「ジタンさん、ポーリーの装置、動きがへんっす」
「なに、ポーリーがどうしたって?」
「ジタン」、「ジタン」、「ジタンさん」、「おいジタン」!
があっ!
まさか本当に小間使いにされるとは思わなかった。舞台裏が戦場になることは
良く知っているつもりだったが、息つくヒマもないとはこのことだ。
しかも他の連中も容赦ないというのか、とってもお優しく何でも声をかけてく
ださる。幕が上がる頃には、俺の体力はつきかけて街見物どころでは無かった。
劇の最中、空いた時間も展望室に上がる気力もなく、倉庫でぐったりとしてい
ると、
「よう、だいぶばててるな」
ブランクは笑いながら近づいていた。
「どうだい、こたえたか?」
「オレは元々、肉体労働派じゃないんだよ」
「そうか? 頭脳労働向きには見えないぜ?」
「うるせえ」
ブランクは俺の横に腰掛けた。
「もう見たかい、お姫様」
「……いや、まだ」
「ロイヤルシートにいるぜ、展望室でなくてもよく見える」
「ブランクはもう、見たのか?」
「ああ、綺麗だったぜ。あのころよりも、ずっとな」
「そうか……」
俺はその場で大の字になった。
付いて来たはいいが……結局、ビビとの約束は守れなかったか。情けねえ。
「ジタン、帰りに挨拶ぐらいはしないとな」
「……ああ」
舞台のバタ付く音がする。どうやら、幕が下りたのだろう。次はマーカスが舟
に乗るのを諦める場面だ。
さて、忙しくなるな、と腰を上げた時だ。
「たいへんだ〜」
控え室から大きな声が聞こえてきた。俺とブランクは顔を見合わせて、すぐさ
ま部屋を出て控え室に駆け込むと、そこには劇団員が集まって大騒ぎになってい
た。
オレは入り口で青くなっているシナの背中を叩いた。
「どうしたんだ、何の騒ぎだよ?」
「たんへんずら、マーカスが倒れたずら!」
部屋のど真ん中、マーカスは腹を抱えてうずくまっていたのだ。
「おい、マーカス、どうしたんだよ」
「うう、お、お腹がいたいっす、ねじれそうっす!」
「お腹?」
「休憩時間におらの入れたコーヒー飲んだら、急に倒れたずら!」
「コーヒーに当たったっす! う、動けないっす!」
と、そこにリア王役のボスが現れた。
「こらあシナ! あれほど余計な事をするなって言っただろう!」
「お、おいらは関係ないずら!」
「それより、今度の幕はどうするんだよ。マーカス倒れたらやばいじゃないか!」
ブランクの言うとおりだ。なにしろ、マーカスとシナしか出番が無いんだし、
その片方が倒れたら芝居にならない。
すると腕組みしていたボスが、
「……代役を立てるしかねえな」
とつぶやく。その言葉の後、そこに居たみんなはお互いを見回して……なんか、
その視線は最終的に……俺?
「おい、ジタン」
ボスは俺ににじり寄った。
「な、何だよ」
「おまえ、確かマーカスのセリフ、覚えていたな」
「あ、ああ……そりゃ」
「この中で舞台経験があるのって、ジタンだけと違う?」
これはルビィ。
「それに、おいらは役があるから代役はむりずら」
これはシナ。
「じ、ジタンさん……たのむっす」
これはマーカス。
「決まりだな、ジタン。さっさと用意しろ」
ボスはそう言うと部屋から出ていった。
「え、あ、おいって、」
「なんなら、オレが代わりに出てやろうか?」
ブランクはそう言ってにやりと笑った。それに続いてシナもルビィもゼネロも
ベネロも、他の劇団員も、そして、のたうち回っていたはずのマーカスも。
……そういう事かい。
だったら俺も、いつもみたいに受け応えなくちゃ失礼だろう。
「何言ってんだ、オレに任せろ」
「そうと決まればさっさと用意だ、幕はすぐに開くぞ!」
おう、というかけ声と共に、みんなは動き出す。ブランクだけは、相変わらず
俺の横で笑っていた。
「ブランクさ、……ひょっとして、今度の幕は出番無いんじゃないのか?」
「バカいえ、今日の芝居で出番があるのはジタンだけだよ」
「何だって?」
「オレたちはいつ、ジタンが舞台に上がるのか、いらいらして待ってたんだぜ?
女好きのクセにいざって時にこけるんだからよ、お前は」
「……そうか?」
「ここに来る前からみんなで決めていた事さ。まあ、言い出したのはボスだけど
さ」
「ボスが……」
「だから、ガンバレよ。これから先は、おまえの舞台なんだから。せいぜいあの
時みたいに、しっちゃかめっちゃかにしろよ」
ブランクは俺の背中を思いっきり叩いた。
『約束の時間はとうに過ぎたというのに……コーネリアは来ない……』
俺は舞台に上がった。ここから全てが見渡せる。観客席にいるみんな。
エーコ、クイナ、サラマンダー、フライヤ、ビビの子供たち。
ロイヤルシートの、スタイナー、ベアトリクス、そして。
『あのひとは俺がいなければ生きて行けぬと言った……』
タガー。あの時とは違って、じっとこの芝居を見ている。
『東の空が明るくなった……
太陽は我らを祝福してくれなかったか』
ビビ、俺は約束どおりここに来た。みんなに逢うために。
『私たちは、あの鳥のように、自由に翼を広げることすらできないのか……』
俺は誰より、あの子に逢いたかった。一国の王女にあこがれて? いや違う。
『私は裏切られたのか? いいや、コーネリアに限ってそんなことは……』
誘拐を頼まれた依頼者として、それも違う。
『信じるんだ! 信じれば、願いは必ずかなう!』
一緒に戦った仲間として? ……それもあるが本当じゃない。
『太陽が祝福してくれぬのなら、あのふたつの月に語りかけよう!』
俺も、おまえ無しでは耐えられないんだ!
『おお、月の光よ、どうか私の願いを届けてくれ!』
だから、マントをはぎ取って、こう叫ぶのだ!
『会わせてくれ! 愛しのタガーに!!』
元の長さまでのびた髪は、艶があってひんやりしていて、そして柔らかだった。
彼女は何度も何度もその小さな拳で俺の胸を叩いた。でも、そんな痛みはたい
した事ない。目の前の、誰よりも可愛い女の子の、瞳をうるわせてしまった心の
痛みの方がよほどに利いてた。
俺の胸の中に彼女が居る。アレキサンドリアのガーネット王女ではなく、俺の
大切な仲間のタガーが。
劇場船を取り巻く観衆は割れんばかりの拍手を送ってくれる。そんな中、消え
入りそうな声で、彼女はささやいた。
「ねえ、どうして助かったの……?」
「助かったんじゃないさ、生きようとしたんだ」
みんなのために、自分のために。
106 :
名無しさん@LV2 :2000/10/01(日) 23:46
「いつか帰るべきところに帰るために……だからうたったんだ、あのうたを」
「歌?」
「ああ……そうだ! ここでもう一度、歌ってくれないか?」
その申し出に、一瞬彼女はきょとんとしたが、すぐさま笑顔で頷いてくれた。
「……あの歌が、このお芝居のフィナーレになるのね」
「いや、オープニングさ」
「え?」
「俺が書いた芝居の、幕が上がるんだ」
「どんなタイトル?」
俺は天を仰いだ。
そこに感激屋のビビがハンカチを濡らす姿と、田舎芝居など見ちゃいられない
と顔を背けて微笑むクジャの姿が見えた。
俺は二人に聞こえるように、こう言ったのだ。
「いつか帰るところへ」
【Fin】
107 :
魁!名無しさん :2000/10/02(月) 18:52
泣ける・・・あげ
108 :
名無しさん@LV2 :2000/10/02(月) 22:03
URLのコピぺでなく、全文アプした貴方に献杯!!
エンディングまで逝く前にこれ読んじゃったんだよなぁ、俺‥‥。