もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら17泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
スレ乱立荒らしによって前スレが落ちてしまったので
依頼して立て直していただきました。
>>1さんありがとうございました!
一応保守
スクリプト荒らし、酷いですね・・・><
>>1さん、ありがとう^−^
7 :
(1/4):2011/01/17(月) 05:01:18 ID:T/3rsNVP0
「はー、疲れた」
夜23時。やっと一日の激務から解放された俺は、財布からおもむろに鍵を取り出し、
今日も健気に我が家を守ってくれていたドアノブちゃんの穴へと挿入した。
いやーんご主人様、そこはだめでございますううう。へっへっへここか、ここがええのんか。
…何やってるんだろう俺。
ご近所さんの迷惑にならないようにドアを静かに閉める。まったくアパート暮らしも楽じゃない。
羽振りの良い大手会社に就職してあわよくば可愛い奥さんもらって一戸建てを買いたいところだが、
時代は不景気の真っ最中の上に就職氷河期。
今年の就活生は半分くらいしか就職できていないって話だ。しかも来年にはもっと厳しくなると専らの噂。
来年度から就活が始まる予定の俺は今から既にお先真っ暗だ。バイトやサークル活動に励んでいれば就職なんて楽勝!な時代は終わってしまったらしい。
平凡な大学生である俺が大手に就職するなんて、夢のまた夢。
そもそも奥さんどころか彼女ができるかすら危ういしな!あっはっは!……はぁ。
「うーっす、ただいまー」
スニーカーを脱ぎながらそう告げたが、返事はない。どうやらまだ帰ってきていないようだ。
部屋の電気を点けてカレンダーで今日の日付を見ると、「太一→バイト 勇→バイト」と書かれていた。そうだ、あいつもバイトの日だったっけ。
俺こと太一は大学一年の弟、勇と二人暮らしをしている。俺は大学二年だから、年子ってやつだ。
親から仕送りはしてもらっているがこんな時代だ。
すべてをまかなえるほどの金額が望めるはずもなく、俺たち兄弟はコンビニや飲食店のバイトで生活費を稼いでいる。
中には仕送りすらしてもらえず奨学金とバイトの合わせ技で何とかしている奴もいるのだから、俺たちはまだ恵まれている方だと言えよう。
夕食はどうしようかと思ったが、確か弟のアルバイト先は賄いが出たはずだ。俺一人分だけ用意すればいいだろう。
疲れていたのでその日はカップ麺で済ませ、シャワーを浴び歯磨きをしてさっさと寝た。
明後日提出のレポートがあったことに布団に入ってから気づいたが、
一度寝る態勢に入ってしまってはもう動く気にはなれなかった。
幸い明日は休みだ。ゆっくり寝て、それから片づけるとしよう……ぐう。
8 :
(2/4):2011/01/17(月) 05:02:00 ID:T/3rsNVP0
「グガオーンッ!」
翌日、俺はとんでもないいびきによって叩き起こされた。
グガオーンって何だよグガオーンって。まるで大地を揺るがすような凄まじい音だ。
勇の奴、いつからこんないびきをかくようになったんだ?
歯ぎしりはすれど、いびきはあまりかかない奴だったと思うんだが。
そういえば本当かどうか知らないが、普段からいびきをかかない奴でも
ひどく疲れているといびきをかいてしまうことがあると聞いたことがある。
バイトがよほど忙しかったんだろうか。となればしかたがない、寝かせてやるか。
なーに兄としては当然さ。弟のいびきのひとつやふたつ、我慢することなど造作もない。
俺マジイケメンじゃね?これモテ期来ちゃうんじゃね?
ひとつ寝返りをうち、いびきに背中を向けて俺は頭から布団を被った。
これであの轟音も少しは軽減され――――
「ねーよ…」
何だか目も冴えてきてしまった。こうなればもう起きるしかない。
あーあ、今日は心ゆくまで寝てたかったのになぁ。しょうがね、さっさと起きて飯食って、レポート片づけるか。
俺は暖かな布団から名残惜しくも身を起こし、大きなあくびをして両手を挙げて体を伸ばした。
あくびによって出てきた涙を拭い、布団から出ようと足を出す。
が、しかし。
「ぐふっ!?」
次の瞬間、何故か俺は床に落ちていた。まともに打ち付けてしまったせいで地味に胸が苦しい。
顔もめちゃくちゃ痛い。これ鼻絶対取れた。これ絶対鼻取れたぞおい。
布団から出ようとしたら落ちるとかいったいどうなってんだ、布団が宙に浮いてんのか!?いったいどこのイリュージョンだよ!
待てよ。
確か勇の奴、奇術研究サークルに友達がいるって言ってたな。
とするとこれはあいつの仕組んだ壮大なイタズラか。
あの野郎、兄の優しさを無下にしやがって。今すぐその不快ないびきを息の根ごと止めてやる!
俺は痛みも忘れてがばっと起き上がり、未だ地獄のコーラスを奏でる兄不孝者の弟をびしりと指差し、
堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりに怒鳴りつけた。
「勇!てめえ手の込んだイタズラしやがっ、て…?」
「どわっ!?」
しかし俺の怒りの声は尻すぼみになってしまった。
何故ならば、目の前に眠っていたのは上半身裸、身につけている物と言えばブーメランパンツと
いかついマスクを被った筋肉ムキムキの兄ちゃんだったからである。
しかも枕を足蹴にしている。寝相が最悪なのか枕を足に敷いて寝る習慣があるのか、一体どちらなのかは俺には図れない。
兄ちゃんは俺の怒鳴り声に驚き飛び起きたが、きょろきょろと辺りを見回した後
「あちゃーっ、また反対だぜ」とだけ言うとまた眠ってしまった。
ほどなく、グガオーンッ!というあの凄まじいいびきがまた鳴り始めた。
どうやら寝相が悪いだけらしいが、直す気もないらしい。というか俺、シカトされた?
そこで今更、俺は気づいた。ここは俺たち兄弟の部屋ではなかった。
目の前にはベッドが三つ並んでおり、壁際のベッドにはマスクの兄ちゃんが気持ちよくお眠りになられている。
その隣は……恐らく俺がさっきまで惰眠を貪っていたベッドだろう。
なるほど、敷き布団だと思っていたのがベッドだったのだから、布団だと思って出ればそりゃ床に落ちるわけだ。
三つ目のベッドは空だった。シーツもかけ布団もぴんと張られている。ベッドメイクは完璧だ。
9 :
(3/4):2011/01/17(月) 05:02:49 ID:T/3rsNVP0
向こうには、丸いテーブルと木製の椅子が二つ。
更には壁に掛けられている絵のようなものを思案顔で眺めている外国人のおっさんが一人。
恐らく三つ目のベッドはこの人が使う予定なのだろう。
部屋は基本的に木造であり、ベッドがあるエリア以外には絨毯が敷かれていた。
更に奥にはカウンターらしきものが見えることから、どうやらここはホテルらしかった。
一年の夏休みに、サークルのみんなと行ったキャンプで泊まったログハウスみたいだ。カウンターはなかったけど。
ああ、あの時にもっと積極的になれてたら、今頃あの子と付き合えてたのかな……。
いやそんなことはどうでもいい。いやどうでもよくないけど、今は俺のほろ苦い失恋なんて関係ないんだ。
確認のためにもう一度言うぞ。ここは俺たち兄弟の部屋じゃない!
なんで俺はこんなところにいるんだ。俺は必死で考え始める。
昨日はしっかり自分の部屋で寝たはずだ。
大学の授業を終えてバイトをこなし、空きっ腹を抱えながらも安アパートの我が家に帰った。
酒は一滴も飲まなかったから、酔っぱらってそのままどこかのホテルに入ったということはありえない。
となると、誘拐か?そういえば昨日帰ってきてから鍵を閉めるのを忘れていた。
そこを俺を狙う犯人に侵入されてそのまま……それもないなとかぶりを振る。
誘拐が目的ならば、こんな人の目につきやすいホテルに連れてくるはずがない。
(とにかく情報だ、情報を集めよう)
そこにいるおっさんから、ここがどこかくらいは聞けるはずだ。しかし何人だろうこの人。
英語が通じるといいんだが。ま、いざとなれば身振り手振りでどうにかなるだろう。
「えっと…エクスキューズミー?」
あまり得意ではない英語で意を決して話しかけたが、おっさんの反応はなかった。
聞こえなかったかと思い少し大きめの声で話しかけてみたが結果は同じ。
おかしいな、と俺は首を捻る。もしや耳が遠いんだろうか。
それにしては補聴器も何もつけてないようだが…しかたない。
「エ・ク・ス・キュー・ズ・ミー!!?」
「ん?……空耳かな」
「ファアアアアアアァァァット!!!??」
「おや、また。おかしいな…?」
腹に力を込めて精一杯の声で叫ぶと、なんとこんな答えが返ってきた。
日本語話せるのかよ!っていうか聞こえたのに空耳ってどういうことだよ!
さっきのマスクの兄ちゃんに続いてシカト?シカトですか?俺泣いちゃうよ?
ええいこうなりゃ実力行使だ、さすがに肩を掴んで振り向かせれば俺に構うほかなくなるまい。
違うよ寂しいんじゃないよ。あくまで情報収集のためだよ本当だよ。
そうと決まればとさっそく手を伸ばしたが、おっさんに触れる数cm手前で俺は動きを止めた。
「なんだよ、これ……」
指が、手が、腕が、透けている。腕越しに格子模様の青緑色の絨毯が見える。
腕だけじゃない。足も、胸も、腹も、……恐らく顔も。
――――俺のすべてが透けていた。
10 :
(4/4):2011/01/17(月) 05:04:27 ID:T/3rsNVP0
(俺、夢見てるのか?)
こんなはっきりした夢があっていいのかよ。たちが悪い。
陳腐だと思いつつも俺はそっと自分の頬に手をやり、思いっきりつねった。
痛い。夢じゃない。しかも体温があることから、恐らく死んだというわけではなさそうだった。
それだけが救いだ。
「うーむ、どうしたものかな……」
おっさんが額縁に飾られた絵を眺めながらぽつりとつぶやく。
俺もおっさんにつられて、額縁の絵を見上げた。
俺は愕然とした。
それは正確に言うならば確かに絵だったが、ただの絵ではなかった。
地図だ。日本も、アメリカも、ロシアも、オーストラリアも無い世界地図だ。
どこだよ、ここ。
(何が"それだけが救いだ"、だ)
俺は理解した。
漫画やゲームでよくあるパターンだ。俺は異世界に来てしまったのだ。
しかもこれまた漫画やゲームによくある、中世ヨーロッパのような雰囲気を漂わせる世界に。
(いったいどうしたら)
俺は思い出した。
昔やった異世界物のゲームでは、主人公は魔王を倒して元の世界に帰っていった。
もしそれがこの世界にも通用するならば、
「魔王ムドーさえいなければ世界を回って商売できるんだがなぁ…」
おっさんがぼやいた。
ああ、やはり。この世界にも魔王はいるのだ。しかも人々を苦しめている。
魔王がいるということは、恐らく魔物と呼ばれるような化け物もうじゃうじゃいるのだろう。
(全部、俺が倒すのか?)
俺は絶望した。
剣道も武道もやったことがない俺が?運動神経も人並みしかない俺が?
そんなこと、できるわけがない。
「誰か助けてくれ……。勇。父さん。母さん――――」
俺は膝から崩れ落ちた。
タイチ
レベル:1
HP:20
MP:0
装備:ぬののふく
保守代わりのネタでした。
続くかも?
DQ6をモチーフにした作品は初めてかな?
初めてじゃないにしてもあまり例がないような気がする。
これは良い物語がやって来そうな予感。
確実に覗きイベントが入るなw
乙でした
これは続き期待
>>7の続き
俺は村の真ん中にさらさらと流れる川(すげえ水きれい)のほとりに座り込んでいた。
あの後、マスクの兄ちゃんが起きた隙を狙ってもう一眠りしてみたのだが、状況はまったく変わらなかった。
もしや本当に夢ではないかという一縷の望みにかけてみたのだが、それは徒労に終わってしまった。
むしろ、ここはまごうことなき現実なのだということを、これ以上なく突き付けられただけ。
俺は溜め息をついた。これからどうしたらいいのかまったく見当がつかない。
武器も防具も無いから魔王どころか魔物とすら戦えない。
装備を調えようにも姿が見えないから買い物もできない。
いや、このすけすけな体を活かして店から盗むことも考えたには考えたのだが、
さすがにそれはまずいだろうと思い止まったのだ。万引きは立派な犯罪です。
しかしこうしてぼうっと体育座りをしていると、
傍目にはリストラされたことを家族に言えず近くの公園で有り余った時間を
潰しているサラリーマンのように見えるのではないだろうか。
……って俺、今誰にも見えてないんだった。
もう俺ってば、ドジっ子なんだからぁ!あっははははは……はぁ。
(ん?待てよ?)
今の俺の姿は誰にも見えない。
それは魔物や魔王にも適用されるのではないだろうか。
もしそうならば、誰にも気取られることなく魔王の居城に乗り込み、悠々と魔王を討ち取ることができる。
魔王の茶に毒を盛ることだってお茶の子さいさいだ。毒効くのか知らんけど。
(つまり今の俺、最強?)
最強。それは男なら誰もが一度は抱いた夢。主に中学生の時とか。
それのみならず、柔道や空手などの武道に身を置いている者なら
男女老若問わず目指しているはずだ。
それが今、俺の手の中にある!
どん底から一転、希望が見えてきた俺はすっくと立ち上がった。
まずは魔王の居場所から突き止めなければ。しかし透明人間と化してしまった今の俺では、
人々に尋ね回るなどの方法で情報を集めることは難しいだろう。
となれば、心苦しいが盗み聞きを敢行するしかない。
ホテルに飾られていた世界地図を写せば何とか旅もできるだろう。
大丈夫、地理には昔から強いんだ。俺ならいける!
さて、それではどの家から情報を集めるべきか。
きょろきょろと辺りを見回すと、他の家よりも一際大きく立派な家が目に入った。
村長の家だろうか。とにかく村の実力者には違いない。より多い情報が集まっているはずだ。
俺はまるで獲物を定めた泥棒のように手を擦り合わせると、
意気揚々と扉の横に位置されている窓を覗き込んだ。まずは様子見だ。
十字の窓枠に遮られたガラスの向こうにまず見えたのは、
テーブルに向かって分厚い本を熟読している眼鏡の男だった。いかにも理系って感じだ。
その奥では奥さんらしき女性がいそいそと台所で作業をしている。
夕食の下ごしらえか何かだろうか。ああそうだ、今日から飯とかどうしよう…。
ガラスに耳をあててみると、滝の音でよく聞こえないものの
微かに子供がはしゃいでるような声がひとつ聞こえた。
なるほど、子供がひとりいるらしい。喜べロリコン諸君。声からすると幼女のようだぞ。
夫婦はお互いのやりたいことやるべきことに集中しているのか、特に会話は無いようだった。
さて、どうするか。俺はいったん窓から離れ、腕を組んだ。
察するに男はかなりの読書家のようだ。
ということは、この家には多くの本が納められている可能性が非常に高く、
その中に魔王について詳しく書かれた本がある可能性もなきにしもあらず。
本がすべて小説とかエッセイという可能性も否定できないが、この際それは無視だ。
しかし首尾良く忍び込んで本棚を発見できたとしても、問題はどうやって本を読むかだ。
俺自体は透明だが、俺が触れたものは透明にはならない。
つまり俺が本をこっそり読んでいる時、傍目から見れば本はぷかぷかと宙に浮いていることになるのだ。
家にいるのがあの夫婦だけならどうにかなったが、子供がいるなら話は別だ。
まったく、子供なら外で遊びなさい外で。
まあ女の子だからお人形遊びとかの方が好きなのかもしれないが。
とにかく、このままじゃ目ざとく発見されてしまう可能性が高い。
この家に隠れられるような場所を探さなければ。
俺は家の裏手に回り窓を見つけると、さっそく覗き込んだ。
右手の方にタンスと大きめのクローゼットがあり、部屋の向こうでは
一人遊び真っ最中の、亜麻色の髪を二つにくくっている女の子の姿が見えた。
俺は思わずガッツポーズを決めた。
いいぞ、あのクローゼットの中に隠れれば堂々と本を読むことができる!
明かり…はまあちょっと隙間を開けとけば何とかなるだろう。
……ん?若い姉ちゃんが家の中に入ってきた。あの子もここの家族なんだろうか。
「ただいまー。ねえ、お風呂入ってもいい?」
「おかえり。いいわよ、もう水張ってあるから好きな時に入りなさい」
「ありがとう!じゃあさっそく入っちゃお〜っと!」
「おねえちゃんおかえり!おふろはいるの?じゃあいっしょにはいろうよ!」
「えー?もう、しかたないわねえ」
「やったぁ!」
若い姉ちゃんは奥さんや女の子と何かしらの会話をした後、
はしゃぐ女の子と一緒にこちらの部屋に入ってきた。
思わず頭を引っ込めたが、そうだ今の俺には誰にも見えていないんだ。
頭ではわかっていても、思わず体が反応してしまうっていうのはこういうことを言うんだろうか。
若い姉ちゃんはクローゼットの前に立つと、長い髪をまとめていた白いリボンを解いた。
そして次には、その身にまとっている赤い上着の留め具に手を――――
(ちょ、ちょ、ちょっと待て。まさか!)
言い忘れていたが、クローゼットと反対方向には浴槽がある。
二人なら余裕で入れるくらいの大きさだ。
まさか今からこの二人は風呂に入るつもりなのか?そうなのか?
普通風呂っていうのは寝る前に入るもんじゃないのか?
こんな真っ昼間から風呂とかどこのしずかちゃんだよ!
……などなど突っ込みたいことは色々あるが、
俺の目は既に若い姉ちゃんに釘付けになっていた。
既に上着は脱ぎ去られ、後には白いブラウスと青いワンピースのみ。
まだ二枚ほど残っているにも関わらず、胸のふくらみはしっかりと自己主張している。
あれはC…いやDはあるな。
突然異世界に飛ばされただけでなく透明人間になっちまう
クソッタレな状況に絶望してたが、まさかこんな幸運に巡り会えるとは。
いやいや、まったく世の中捨てたものじゃないな。
そうだよな、透明人間は不便なことばかりだと思ってたが、
こんなラッキースケベをも招き寄せることができるんだ。
恐らくこのまま家に入って間近で見たとしても誰にもばれないだろう。
男にとってこんな幸せなことがあるだろうか。
いやむしろ、そこらを歩く村娘のおっぱいを公衆の面前で、こう……おっといけねえ、よだれが。げっへっへ。
そんな下衆な妄想に耽っている間にも、若い姉ちゃんの白く細い指は
ワンピースの胸に縫いつけられたボタンをひとつひとつ外していく。
(あれを脱げばブラウスと……うへへへへ)
と、ボタンがあと一つとなったその時。
同じく脱衣中であった女の子が姉ちゃんに向かって何やら騒ぎ出した。
ガラスに耳を当ててみる。
「おねえちゃーん、ふくがぬげないよぉ」
「あらあら、しかたないわね」
姉ちゃんはボタンを外す手を止め、女の子の黄色いワンピースを
脱ぐ手伝いにかかり始めてしまった。
幼いために指が器用に動かせず、自分ではまだボタンが外せないらしい。
ああ俺は思ったね、心の中で叫んだね。さあ皆さんご一緒に。
FUUUUUUUUUUUU○K!!!
ええいフoッキ○幼女め、なんてことをしでかしてくれたんだ。
もう少しで俺は桃源郷へと導かれるはずだったのに。今ならば血の涙も流せそうな気がするぞ。
エレクチオンしていた愚息も既に萎え萎えだ。
いや待てよ、中断されただけであって決して中止されたわけじゃないんだ。
焦らされてると考えればなかなか悪いもんじゃないかもしれない。
そうだ、時間はある。じっくり待てばいい。俺にはロリコン趣味はないが、
若い姉ちゃんと幼女の裸が両方楽しめると考えればこれくらい安いもんだ。
お、どうやら幼女のボタンが全部外れたようだな。
ようしいいぞ、これでいよいよ邪魔する者はなくなった。
……ん?あれ?なんでこっち見るんですか?なんでこっち来るんですか?
すみません切るとこ間違えました。
>>17修正。
突然異世界に飛ばされただけでなく透明人間になっちまう
クソッタレな状況に絶望してたが、まさかこんな幸運に巡り会えるとは。
いやいや、まったく世の中捨てたものじゃないな。
そうだよな、透明人間は不便なことばかりだと思ってたが、
こんなラッキースケベをも招き寄せることができるんだ。
恐らくこのまま家に入って間近で見たとしても誰にもばれないだろう。
男にとってこんな幸せなことがあるだろうか。
いやむしろ、そこらを歩く村娘のおっぱいを公衆の面前で、こう……おっといけねえ、よだれが。げっへっへ。
そんな下衆な妄想に耽っている間にも、若い姉ちゃんの白く細い指は
ワンピースの胸に縫いつけられたボタンをひとつひとつ外していく。
(あれを脱げばブラウスと……うへへへへ)
と、ボタンがあと一つとなったその時。
同じく脱衣中であった女の子が姉ちゃんに向かって何やら騒ぎ出した。
ガラスに耳を当ててみる。
「おねえちゃーん、ふくがぬげないよぉ」
「あらあら、しかたないわね」
姉ちゃんはボタンを外す手を止め、女の子の黄色いワンピースを
脱ぐ手伝いにかかり始めてしまった。
幼いために指が器用に動かせず、自分ではまだボタンが外せないらしい。
ああ俺は思ったね、心の中で叫んだね。さあ皆さんご一緒に。
FUUUUUUUUUUUU○K!!!
ええいフoッキ○幼女め、なんてことをしでかしてくれたんだ。
もう少しで俺は桃源郷へと導かれるはずだったのに。今ならば血の涙も流せそうな気がするぞ。
エレクチオンしていた愚息も既に萎え萎えだ。
いや待てよ、中断されただけであって決して中止されたわけじゃないんだ。
焦らされてると考えればなかなか悪いもんじゃないかもしれない。
そうだ、時間はある。じっくり待てばいい。俺にはロリコン趣味はないが、
若い姉ちゃんと幼女の裸が両方楽しめると考えればこれくらい安いもんだ。
お、どうやら幼女のボタンが全部外れたようだな。
ようしいいぞ、これでいよいよ邪魔する者はなくなった。
……ん?あれ?なんでこっち見るんですか?なんでこっち来るんですか?
まさか姿が見えてるとか……は、ははは。
いや違う!見ているのは俺じゃない。俺を通した外を見ているようだ。
姉ちゃんは窓越しに外を窺うと、何かしらつぶやいて(おかしいわね、と言ったように思えた)
怪訝な顔で窓の両端に手をやり、何かを思いきり引っ張った。
シャッ!という音とともに、視界がベージュ色に塗り潰された。
――――カーテンを引かれたのだ!
なんてことだ。
恐らく凝視しすぎて、あの姉ちゃんもさすがに視線を感じたのだろう。
覗きは初めてだったとは言え、こんな失態を犯すなんて……ちくしょう!
俺は膝から崩れ落ちた。
「おい」
い、いや、まだだ。まだチャンスは残されている。今の俺は透明人間だ。
こっそり家の中に入ったって誰にもばれやしない。
あの夫婦はお互いの作業に夢中になっているし、
ドアがちょっと開いたくらいでは気にもとめないだろう。
「おい」
万が一気づかれたとしても、「あらドアの金具が弱くなってるのかしら」程度で済むはずだ。
よし、いける。いけるぞ。ああそうだ、ついでに本棚も漁っておくとしよう。
最初の目的から変わっている気がしなくもないが、何、気にすることはない。
そうと決まれば特攻だ!
「おいったら!聞いてるのか?」
「あぎゃああああぁぁあああああああ!?」
立ち上がろうとしたところを後ろから肩を叩かれて、
俺は驚きのあまり奇声を発してしまった。
だってそうだろう?今の俺の姿は誰にも見えていないはず。
声をかけられるどころか、肩を叩かれるなんて思いもしていなかったのだ。
実はさっきから呼びかける男の声は聞こえていたけれど、
どうせ俺に向けたものではないと高をくくって無視を決め込んでいた。
それがどうだ。あの声はしっかり俺に向けられていたものだったのだ。
俺は振り返らずに考える。
声をかけてきた男は、いったいいつから俺の後ろにいたのか。
窓を覗いて鼻息を荒くしている時か?カーテンを閉められて絶望している時か?
もし前者ならば、しょっぴかれることは間違いない。
だってそうだろう?
うら若き男が窓の前で顔を紅潮させて鼻息荒くさせていたならば、
「あ、こいつ覗きしてる」と思うだろう?
誰だってそうだ。俺だってそうだ。
「お前、こんなところで何をして……」
ひィっ!やっぱり見られてたのか!?
この世界では覗きはどれくらい重い罪なんだろう。
も、もし、一生牢屋で余生を過ごすなんてことになったら……
つぅっと冷や汗が頬を伝っていく。
「おおおお俺は悪くねえぞ!そうだ、
>>13がやれって言ったんだ!俺は悪くヌェー!」
俺は沸き上がる焦りに体を震わせ、言い訳を走らせながら後ろを振り返った。
そこにいたのは――――
// ,ィ
ト、 ./ /-‐'´ .|
| V .⊥,.ィ /'7
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| // | / // /
_>-‐|/l/‐-く/ヽ、
, '´ `ヽ
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/ ヽ
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│ 〈
|/ノ二__‐──ァ ヽニニ二二二ヾ } ,'⌒ヽ
/⌒!| =彳o。ト ̄ヽ '´ !o_シ`ヾ | i/ ヽ ! ウホッ! いい男…
! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
| | /ヽ! | |ヽ i !
ヽ { | ! |ノ /
ヽ | _ ,、 ! , ′
\ ! '-゙ ‐ ゙ レ'
`! /
ヽ ゙  ̄  ̄ ` / |
|\ ー ─‐ , ′ !
| \ / |
_ -‐┤ ゙、 \ / ! l |`ーr─- _
_ -‐ '" / | ゙、 ヽ ____ '´ '│ ! | ゙''‐- 、,_
そこにいたのは、宿屋でいびきをかいていたマスクの兄ちゃんよりも
逞しい体をした紫のモヒカン男。腕、胸、足のほとんどを露出しており、
ほとんど裸といっても過言ではないくらいだった。
ああ、俺は思ったね。「掘られる」って。
「おいおい、こいつ何言ってやがんだ。なあ」
「自分の姿を見られる奴がいるとは思ってなかったんだろう。きっと混乱してるんだよ」
モヒカン男の隣にいた、背中に剣を背負っている少年が爽やかに笑う。
こいつの髪型もこれまた変わっていた。
青いツンツン頭って、おいおいどうなってんだそれ。
髪の一房一房すべてが重力に逆らってるじゃねえか。
セットするには何個のワックスが必要になるやら。
「そうね。あなたたちも私に話しかけられた時、ひどく驚いていたもの」
声がしたかと思うと、ツンツン頭の後ろから、すっと女性が姿を現した。
絹のように滑らかな金髪、優しげな色をたたえた緑の瞳、すっきりと通った鼻に桜色の唇。
伏し目がちな目が色気を醸し出しているが、無駄な露出を抑えた服装が
それを神秘的な雰囲気へと昇華させ、彼女を包んでいた。胸は控えめのようだがグッド!悪くない。
たまりません。
いやもう、バッチリタイプです、はい。外人モノとか大好きですから。
散々ボルテージを抑圧されていた俺が、これ以上耐えきれるはずもなく。
「生まれる前から好きでしたああああああああああああッ!!!」
「きゃああああああああああッ!!?」
タイチ
レベル:1
HP:20
MP:0
装備:ぬののふく
特技:とびかかり
続けることにしたのでトリつけました。よろしくお願いします。
規制のせいか、職人減っちゃって寂しいですね。
>>12 ありがとうございます!
ネタかぶりを恐れて保管庫でチェックしたんですが、
DQ6はあんまりなかったですねー。
>>13 ネタ提供ありがとうございます!使わせていただきました。
>>14 ありがとうございます。何とか続きました。
>>22 続き来てたのか乙
他人のレス
>>13を本文中に含めるのは新しいアイディアだね。
保管庫に残すときにどうやるのか大変そうだけどw
DQ6は長い話なんでうまく端折るといいかも。
最近は職人さん来なくて寂しいねー。
13だが元々は考えてなかったのかよw
でも面白いんで続き頼むわ
職人待ちほす
「すんませんでしたあぁぁッ!!」
前回、辛抱たまらなくなって金髪の彼女に飛び掛かった俺だったが
繰り出された強烈なビンタをまともに喰らって吹っ飛び、地面に叩き付けられてしまった。
お前ら知ってるか?本気のビンタって結構痛いんだぜ。
地面に叩き付けられた時にも体のあちこちを打ったね。
まあその痛みにより俺も正気に戻り、彼女の貞操は残念ながrいやいや、間一髪のところで阻止されたのである。
そして何とか起き上がった俺は、あちこち痛む体でジャパニーズ土下座をかましていたのだった。
どうだいこの芸人並の体の張りっぷり。こりゃ吉本から直々にスカウトが来てもおかしくないね、うん。
さっきの俺の吹っ飛び方なんて、カメラが回ってなかったのが惜しいくらいだぜ。
「ほんっとすんませんでした!俺どうかしてました!」
「あ、ああ。急に話し掛けられて混乱しちゃったんだよな。大丈夫、俺たちは全然気にしてないよ」
「お、おう。こいつもちょっとびっくりしたくらいで怒ってないって。なあ?」
「え、ええ…。こちらこそごめんなさい、いくらなんでも張り飛ばしてしまうなんて……さあ、顔を上げて」
「あざぁぁっす!!!」
ああ優しさが痛い。しかし察するに、俺が覗きをしていたことは知らないようだ。
恐らく俺を見つけたのは、カーテンを閉められた直後だったのだろう。安堵に息が漏れる。
さすがに彼らでも、覗きを笑って許すような心の広さなんて持ち合わせていないだろう。
特に金髪の女性はそういったものは許容できないはずだ。
少々良心が痛むが、覗きをしていたことは黙っておこう。
知り合いが一人もいないこんな世界で白い目に晒されるなんてごめんだからな。
……あ、でもさっきの姉ちゃんやこの人に冷たい目で見られるのは悪くないかも……腰に提げられたあの鞭で叩かれてみたい。
なんて馬鹿げたことを考えながら、俺は言われた通り顔を上げた。
目の前にはガチムチのモヒカン兄貴、青いツンツン頭、そしてその真ん中に金髪の女性が並んでいる。
「いやあ悪かったなぁ、いきなり声かけたりしてよ」
モヒカン兄貴が申し訳なさそうに後ろ頭を掻いてそう言ってくれた。
とんでもない、と俺はかぶりを振る。
「あの……なんで俺の姿が見えるんですか?」
すっかり落ち着きを取り戻した俺は三人に問い掛けた。
三人は顔を見合わせて神妙に頷き、ツンツン頭が未だ正座したままの俺に手を差し伸べた。
おいこいつ近くで見ると結構イケメンじゃねえか死ねイケメンこじらせて死ね。
そんなことを思いつつ、俺はツンツン頭の手を取って立ち上がる。
「その前に場所を移そう。ここだとちょっと……その、人の目につきすぎる」
苦笑いしてそう言うツンツン頭。
何事かと辺りを見回すと、なるほど老若男女の村人たちがじろじろとこちらを見つめていた。
なぁあんた、絹を裂くような叫び声が聞こえたと思ったら女が虚空をビンタし、
あまつさえ三人揃って何もないところに話し掛けていたらどうするよ。
怪しく思って様子を伺うだろ?
大丈夫だ。誰だってそうする、俺だってそうする。
さあ行こう、とツンツン頭が歩きだす。
モヒカン兄貴はさすがに気まずいのかぽりぽりと頭を掻き、金髪の女性もばつが悪そうに俯いた。
俺は三人以外には姿が見えないにも関わらず、居心地の悪さを感じながら彼らの後に続くのだった。
というわけで、三人と俺は村のはずれまでやってきた。ここまで来ると滝の音もあまり聞こえない。
立ち話もなんだから、とそれぞれ適当に草むらに座り込み、
いびつな四角形の輪が出来上がった。裸足に草むらの感触が気持ちいい。
「さて、まずは自己紹介からだな。俺はボッツ」
「ハッサンだ。よろしくな」
「ミレーユよ。私たち、ちょっとした訳があって三人で旅をしているの」
ツンツン頭がボッツ、モヒカン兄貴がハッサン、そして女性がミレーユ、ね。
顔に違わず外国人っぽい名前だ。
「俺は……太一です。よろしくお願いします」
そう挨拶して頭を下げる。
苗字は名乗るべきか迷ったが、もしかしたら苗字という文化が
ない世界かもしれないことを考え名乗らなかった。
ボッツたちも名乗らなかったしな。
「へえ、タイチか。変わった名前だな。ええっと、まずさっきの質問についてだけど」
ボッツたちの話によれば、上から下の世界に落ちて(意味わからん)透明になってしまった人は
同じように透明になった人の姿が見えるようになるのだという。
つまりボッツたちも、今の俺のように透明になったことがある、ということだ。
そういえばさっきミレーユが「あなたたちも私に話しかけられた時は…」とか言ってたな。なるほどそういうことか。
そしてもちろん、彼らの体は透明じゃない。元に戻る方法があるってことだ。
ボッツは腰に提げていた革の袋をごそごそと探ると、手のひらサイズのガラス瓶を取り出した。
中には白濁色の液体が揺れている。おいおいおい、まさか片栗粉Xじゃないだろうな。
「これは夢見のしずく。これを使えば、元に戻ることができるんだ」
「え!」
俺はまじまじとボッツの手の中にあるガラス瓶を見つめた。
どう見てもアレにしか見えないが、これは透明人間化を解除する薬らしい。
夢見のしずくとはずいぶんおしゃれな名前だ。
「ミレーユ、使ってもいいよな?」
「ええ、もちろんよ。おばあちゃんもそのために持たせてくれたんだもの」
「よし、それじゃさっそく」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくれ!」
意気揚々と瓶のコルクを抜こうとしたボッツを俺は思わず引き留めた。
戻されるなんて冗談じゃない!この姿は、戦いなんてできない俺が魔王を倒せる唯一の手段なんだ。
戻してくれようとする好意は嬉しいが、今ここで戻されたら元の世界に戻る手だてがなくなってしまう。
慌てて止めようとする俺を、三人はぽかんとして見つめてきた。
ああ、そりゃそういう顔されるよな……。
「おいおい、どうしてだよ。そのままじゃ不便だろ?……あ、わかった。さては怖いんだろう」
「ハッサン!……大丈夫よ、痛いとか苦しいとかそういうのはないわ。一瞬で済むから」
「い、いや、そうじゃないんだ」
「?じゃあ、どうして?」
元の世界に戻るため魔王を倒さなきゃいけないから、なんて言ったらどう思われるだろうか。
俺だったら多分電波ちゃん認定するな、うん。
だからといって他に良い言い訳も思いつかない。
覗きができるから、なんて言ったら、今度はハッサンにぶん殴られるんだろうなぁ。
あのぶっとい腕で殴られるのは正直勘弁してほしい。
いや、実際下心もなくはないけどな!
それに、万が一見限られたとしても俺のやることは変わらない。
今は自分のやれることをやるしかないのだ。
事情を話していくうちに、彼らの顔は様々な色に変化していった。
まずは驚き、次に疑心、そして同情。ああ、やっぱり頭が暖かい人に思われてしまったんだろうか。
彼らは最後には考え込むように俯いてしまった。そうだよな、突然言われて信じてもらえるわけがない。
俺だって、未だに夢じゃないかと思ってるくらいなんだから。
……いや、夢であってほしいと願ってるの間違いだな。
「……タイチ、事情はわかったわ。さすがに信じがたいけれど……」
最初に口を開いたのはミレーユだった。彼女は顔を上げ、曇りのない澄んだ目で俺をまっすぐに射抜く。
「元の世界に帰るため、魔王を倒さなければいけない……というのも、なんとなくわかったわ。
きっとそれがあなたの役目なのでしょう。
それを成し遂げたいのならば、尚更あなたは夢見のしずくを使った方がいい」
「え!?な、なんで?」
「それは……あなたの姿は人々には見えないけれど、魔物たちにはしっかりと見えているからよ」
え?
「多分、君の姿はムドーにも見えると思うよ。あいつらは匂いや気配には敏感だから」
ええ?
「それでなくとも俺たちとは作りが違うしな。…ま、世の中そう甘くないってこった」
えええええ!?
_人
( 0w0) ウゾダ…
Π l7l7 _Π_ / //
.| .\ |_,―‐,. | 〔/ /
.|_|\| ,ノ ノ /
_ . ̄ l7l7 / ,ィ .::::::::::::::::::::/ミ / / |__| 〈 ヽ | |
l二 ̄| ヽゝ /'7 7_//:::::::::;;;;;;;;;;;;/ ヽ/__/ノ .| ヽ 7 レ
.┌┘ | ∠ノ /:::::::;;;;;;;;;;/lニ\ / | // l
 ̄ ̄ _ l7l7 /::::::;;;;;;;;;;l二].__ \\ | //.__ |
Π l7l7 /,二, / /::;;lヽ、;;;;;l/  ̄ \ヽ ヘ//;;;ヽ
| .\ ./, 二 / {;;;;| ノ;;;/ ,,.:::::::::::,,....ヽ,◎./;;;;;;;;;;;l
|_|\| .~ /_/  ̄フ.|;;;ヽ:::::::::::::::::::::::::ノ''ー'|;;;;;;;;:;;;l
/>;;;;;\:::::::::::::::/"ー"ヽ、;;;;;ノ
Π Π l7l7 >;;;;;;;;;;;;;;;;ノ ̄ノフ"` \/ ヽ l7
l | | .\ \;;;;;;;;;;/ //ト l\|ヽ/i |/ノ
|_l |_|\| トー-┬\ \ | \/ヽ_///
| ̄''=/ニヽ\ \l____ ノヽ、//
l二l ,-, l二l ,-, i .゙'-」|,, "─,,___/
∠ノ ∠ノ {
. n. n. n l
|! |! |! l
o o o ,へ l
「まあそういうことだから……。その姿でいてもいいことは―――まあ無くはないけど、不都合なことの方が多いだろ?」
「はい、そうですね…」
燃え尽きて真っ白になった矢吹丈のようになっている俺が
投げやりにそう返すと、ボッツは再びコルクに手をやった。
それを止める者はもはやおらず、きゅぽん、と軽快な音が響き渡る。
……それが合図になったかは知らないが、急に十数分前のことが思い起こされた。
(最強。それは男なら一度は抱いた夢)
いやああああぁぁあああああああぁぁぁあああぁ!!!
俺超恥ずかしい!めっちゃ恥ずかしい!!でら恥ずかしい!!!この歳になって黒歴史とかありえねえ!
さっき自信満々に、
「この姿を利用して魔王を倒そうと思ってるんです(キリッ」
とか言った俺死ねえええ今すぐ死ねぇええええ!!うおおおおおおぉぉぉ!!!
俺はすべてがどうでもよくなり、草むらに大の字になって倒れ込んだ。青臭い匂いが飛び込んでくる。
「ちくしょう!もうどうにでもしろ!夢見のしずくでも片栗粉Xでも、何でも飲んでやるよォ!」
「いや、飲まねえよ」
「え?」
「え?」
「はは、そうそう。じっとしててくれると助かるな」
ボッツはこれまた爽やかに笑うと、俺の傍らに片膝を立てて座り、
そして夢見のしずくを額に当てて目を閉じた。
さっきまでの好青年はどこへやら、まるで坊さんのように厳粛な雰囲気だ。
いったい何が始まるんです?
おちゃらける間もなく、変化は起きた。
ガラス瓶の中の夢見のしずくが、ほんのりと光を発し始めたのだ。
もう片栗粉Xとは似ても似つかない。光はどんどん強くなる。
やがて眩しさに目を細めようとしたその瞬間、ボッツがカッと目を見開き
そのまま何かを薙ぎ払うかのように腕を振った。
――――つまり一言で言えば、俺に夢見のしずくをぶっかけたのである。
「つめてっ!」
胸のあたりにかかった冷たい感触に身をすくめたが、
すぐそれどころではないことに気がついた。
思わずがばりと起き上がり、自分の両手を見る。
まるで先程の夢見のしずくの光が伝染してしまったかのように、俺の体がきらきらと光っていたのだ!
すわ透明人間の次は発光人間か、とふざけたことを考えていると、光はすぐに収まってしまった。
そして――――俺の体は色を取り戻していた。思わず、感嘆の声が小さく漏れた。
「気分はどう?」
顔を上げると、ボッツとハッサン、そしてミレーユが俺の顔を覗き込んでいた。
俺は立ち上がり、久方ぶりの笑顔で答える。
「最高。ボッツ、ハッサン、ミレーユ。ありがとう」
まだ黒歴史の気恥ずかしさが残っているものの、悪い気分じゃない。
そんな俺にハッサンが笑いかけ、丸太みたいにぶっとい腕を肩に回してきた。
その衝撃でハッサンの肩に頭をぶつけたが、彼は微動だにせず笑っている。
俺もサークルで多少鍛えてるってのに……自信なくすなぁおい。
「礼なんていいって!何だかケツがむず痒くなっちまらぁ!ま、良かったなタの字。これで一安心だ」
「何だよタの字って、俺の名前は太一だって。なぁ―――」
同意を求めてボッツに目をやると、彼は手で口を押さえてそっぽを向いていた。
怪訝に思い今度はハッサンを見ると、こいつもまた同じような様子だった。
二人とも肩が震えてるし、呼び掛けても首を振るだけでこっちを見ようとしない。
……既におわかりの通り、どうも笑いを堪えているらしい。
なんだ、俺の顔がそんなにおかしいか!?
「おーおー、確かに俺はそんなイケメンじゃないよ!
でも笑うほどか?笑うほどおかしい顔してるか!?
これでも一応彼女くらいいたことあるんだよ!現役大学生ナメんなあぁぁ!!」
「あ、あの、タイチ……」
おずおずとミレーユが俺を呼ぶ。何故か彼女はまたばつの悪そうな顔をしていた。
「これで見てみるといいわ」
そう言って差し出されたのは手鏡。ほほうこの世界にも鏡はあるのか。いやそりゃあるか。
え?何?これで己のブサっぷりを再確認しろって言ってるの?
俺もしかしていじめられてる?
被害妄想をぐるぐると回しながら、俺はミレーユから受け取った手鏡を覗き込んだ。
――――とたん、俺の疑問は氷解した。
「その……ごめんなさい」
鏡に映っていたのは間違いなく俺だ。ただ違いがあるとすれば、左頬。
そこに見事な紅葉が浮かび上がっていた。
堪えきれなくなったのか、それまで静かだったボッツとハッサンの口から大きな笑いが漏れ始めた。
「いや、いいよ……」
自業自得だしな、と俺は胸中でつぶやいた。
……しかしボッツにハッサン。人の周りで盛大で大爆笑しているお前らは絶対に許さん。
絶対にだ!
タイチ
レベル:1
HP:20
MP:0
装備:ぬののふく
特技:とびかかり
連投になってしまって申し訳ない。っていうか誰か書こうぜ!
一発ネタでも何でもいいからさ!
>>23 保管庫では、
>>13にカーソルをあてるとレスのみが出るようになってます。
スクショか2chに似せたテーブルをポップアップさせたかったんだけど
タグが何か反映されなかったので断念しました。無念。
とりあえずサブっぽいのはあっさり目にして、重要な話とか
印象的な話(雪の女王とか)は丁寧に?やりたいなーと考えてます。
前みたいにもっと賑わってほしいですね…。
>>24 ありがとうございます!ご期待に添えるよう頑張ります!
>>25 ありがとうございます!
本当は村娘のおっぱいを揉もうとしたところを取り押さえられる予定でした。
それだと第一印象最悪で挽回するのが大変そうだなーと思い、
作中にネタも含められるなということで変更させていただきましたw
連続投稿ひっかかったので、P2で失礼しました。
続きに期待
そして今回も面白かった
文章が読みやすいですね
連投失礼。
>>32への質問というか疑問点です。
一発ネタでもよいなら書いてもよいのですが
ここはどうしても長編SS(既にshort storyでなくlong storyになっているものも多数上梓)が
多いわけですから
一発ネタは非常に投稿しにくいわけです。
>>33-34 ありがとうございます!
旧保管庫見てもらうとわかると思うんですが、
前は結構一発ネタ多かったですよ。
長編が多いからといって気にする必要はないと思いますw
保守・・・いたしますの
…………。
ああ…ようやく思い出した…。
私は日本に住む女子高生『清井水穂』なんかじゃあなかった……。
あれは…ホイミスライムの『ホイミン』が見ていた長い長い夢だったんだ………。
【 変 身 】
ああ、どうしよう…。どうせ夢から覚めたんだから、
人間だった夢の記憶なんか忘れてしまっていれば良かったのに。
困ったもんだよ全く。バッチリ、クッキリ、ハッキリ覚えています。
これでは朝起きたら何故か巨大な芋虫になっていましたとか言う
某不条理小説みたいじゃないか。どうすんのこれ。
いや、ホイミスライムとしての意識と記憶ももちろんあるよ?
でもさ、ホイミスライムの思考回路なんてめっちゃ単純だから。
『食う・寝る・遊ぶ・ホイミする』基本この四つだから。
フクザツな人間の女の子の意識が勝っちゃうのは当然かもしれない。
確かに『人間になってみたいなあ』なんてずっと思ってたけどさ。
例え夢の中でも願いがかなった訳だから嬉しいっちゃ嬉しいけどさ。
楽しい思い出はいつまでも忘れたく無いものだけどさ。
でもこれは困る。『体はスライム。頭脳は人間』ってすごく困る。
ニューハーフの人達の気持ちが今ならすごく良く分かるね!
………はぁ、ほんとどうしよう。
どうするって今まで通りホイミスライムとして生きてくしかないんだけど。
……でもさ……、もしかしたらもしかしたら何かあるんじゃない?
ここでも人間の女の子として生きてく方法があるかもしれないじゃない?
なにせここは…神と精霊と魔法の世界なんだから………。
保守替わりに投下。何かネタがあれば続くかも知んないけど
基本お気楽な軽い感じの小ネタでしょうね。
ホイミスライム→人間じゃなくて
人間→ホイミスライムでも面白いかなと。
ホイミンスレで時々ホイミン女の子ネタ書いるくらい
ホイミンが女の子だったら萌えるのになと思ってるから女の子にしました。
4と5と6をごちゃまぜにしてみました。
果たしてホイミンは現実世界(ここではドラクエワールド)
でも人間になれるのでしょうか?がんばれホイミン。
っていうか実際ホイミンはどうやって人間になれたんだよ。
劇中説明なしってオイ。進化の秘法の実験台にでもなったんだろうか?
ところで…ここは一体どこだっけか?
まだ色々と頭ん中がゴチャゴチャしている。
…う〜ん。なんかどっかの洞窟の中みたいだけど……。
キョロキョロと辺りを見回していると、向こうから誰か来た。
あれはたしか…ガーゴイルだ!ちょうど良かった。
「こんにちは〜」
「よお、どうした坊主。ホイミなら今いらねーぜ?」
「(女の子だよ!)ここ…どこですか?」
「………ったくよぉ。これだからホイミスライムは……」
「ごめんなさい…。ボク、忘れっぽくて……」
「…お前らはみんなそーだろが。ここはロンタルギアへ続く洞窟だよ」
(げえっ……!!!なんちゅー恐ろしい所にいたんだ自分!!
完全に頭がホイミスライムの時は全然感じなかったけど……
今思うとゾッとするわ!!いかに何も考えてなかったか……。
ここ完全に場違いだよ……。なんでこんなとこ来たんだろ…)
「あ、そうだった!エヘヘ…あの、ちょっと外に行きたくて……」
「そうか、じゃあオレが連れてってやるよ。今ちょうど暇だし」
「あ、道さえ教えてもらえれば一人で行けます」
「バーカ!アホのホイミスライムがここの道分かるわけねーだろ」
「ですよねー……。すみません。お願いします」
……という訳で親切なガーゴイルの兄ちゃんのおかけで
無事に洞窟の外に出ることができました。よかったよかった。
これから人間になる方法を探す旅に出よう。がんばれホイミン。
ゲーム中、非力なホイミスライムが何故かおっそろしい
ロンダルキアへの洞窟にいるのが面白くてネタにしました。
ほんとに場違いだよ。迷いこんできたのだろうか?
発想は面白いと思う。
女の子だったという設定を活かせるかはわからんが
個人的には期待してる
新ジャンル、ホイミスライム萌え
43 :
変身】レベル3:2011/02/17(木) 15:34:51 ID:X0wpT7RyP
とりあえず近くに川があったので、それに沿って下っていくことにした。
これなら干からびる心配もないし、川沿いは人間の住んでる確率が高い。
途中に生えてる野生の薬草やら毒消し草、満月草を見つけては食べる。
別に普通の草でも花でもいいんだけどやっぱりこっちの方がおいしい。
そういや夢の中で人間だった時も葉っぱ系の野菜が好きだったっけ。
ハーブティーもよく飲んでたな。やはり本能的な部分はホイミスライムか。
食べてたり水浴びしてたり眠かったりしてる時はつい人間の感覚が薄れる。
…危ない危ない。何か考え事でもしてないとホイミスライムに戻っちゃうかも。
そうだ。そもそもなんで私は夢のなかで女の子だったんだろう?
スライムは雌雄同体だ。交尾の際に何とな〜くオス役とメス役が決まる。
性別の感覚なんかない。……う〜ん。よく思い出せ。なんかあるはずだ。
………!あ、アレだ!きっとあの時のアレが原因だ!!
そもそも私が人間に憧れるきっかけになったあの日の出来事……。
まだ小さかった私はママから『人間に近づいちゃダメ』って言われてた。
まあ他のホイミスライムの子供もみんなそうだったけどね。
でもある日、森の中の小さな泉で人間が水浴びしてるのを見ちゃった。
とっさに木陰に隠れたけど、本当は私、人間に興味しんしんだった。
だって人間なんかそれまであんな近くで見たことなかったんだもん。
見つからないかドキドキしながらそぉーっと様子を見てみることに。
人間は二人いて、見分けがつかないくらいよく似てた。
今思い出してみるとあれはきっと双子だったんだろう。
でも当時は人間の区別なんか全然つかなかったから。
どの人間もみんな同じに見えた。ま、それは向こうも同じだと思うけどね
ま、とにかく、その二人の人間は荷物を下して、服を脱ぐと水浴びを始めた。
………いやあ、あれには超びっくりしたよね。
だって人間だとばかり思ってたらなんとスライムだったんだもん。
思わず嬉しくなって泉の方に近づいて行っちゃった。
二匹はそれまで私が一度も見たことないスライム族だった。
きっとスライムナイトに近い種族なんだろうと思って声をかけたら、
めっちゃ驚かれた。一匹はキャー!とか言って岩陰に逃げるし、
もう一匹はなんとメラを唱えて火の玉を作り出してきた!
それにはこっちが驚いた。
『ちょっと!ボクもキミらと同じスライム族ですよ!
匂いで分かるでしょ!匂いで!少し落ち着いて!』
とか言おうとしたけど、もうびっくりしすぎて声が出ない。
で…泣いちゃった…。ホイミスライムは基本臆病だから……。
そしたらそんな私の様子を見た二匹は警戒を解いたのか
私に近づいてきた。ようやく敵じゃないって分かってくれたらしい。
それにこっちも安心して改めて挨拶しようとしたら…なんかおかしい。
二匹からスライム族特有の匂いがしない。………あれ?あれれ?
そんな混乱して固まっている私の頭を優しく撫でてくる二匹。
その手はとても優しくて、ちょっと気分が落ち着いてきた。
そして二匹をよ〜く観察してみることに………。
そう…幼い私がてっきりスライムだと思ってたアレは……。
今の私ならよく分かる。アレは……………。
「どう見てもおっぱいです。本当にありがとうございました」
女の子ホイミンのおっぱいはきっとスライムみたいに
ハリがあってみずみずしくてぷにぷにしてるに違いない!
それを言いたかっただけの回です。
_ ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
⊂彡
ホイミン♀の私的イメージはイカ娘17才。スライムおっぱい萌え。
マーニャとミネアですねわかります
とにかく最初に接した人間がおっぱ…いや、女の子だったので
私は人間はあーいうものだと思い込んでしまったわけだ。
それにしてもあのおっぱいにはびっくりした。
だってほんとにスライムに見えたんだもん。
私は二匹がやっぱり人間だと理解しても親近感が湧いてしまい、
怖い気持ちは無くなっていた。それよりもおっぱいが気になった。
触手でつんつんとつついてみると、ぷにぷにのぽよぽよでやっぱり
スライムそっくりだった。私の行動に人間は一瞬不思議そうな顔をした後、
大笑いをして私を抱きしめた。二つのスライムおっぱいに挟まれて、
少し苦しかったが、それはほのかに温かく不思議と気持ちが落ち着いた。
それから私と人間は一緒に水浴びをして遊んだんだっけ。
人間の言葉はさっぱり分かんなかったけど、すんごい楽しかったなー。
夕方になると人間は泉のそばで焚き火を始めた。
どうやら今夜はここで野宿するらしい。
私はもう少しこの人間達と一緒にいたくてじっとその様子を見ていた。
すると人間が袋から何かを取り出し、ナイフで切ると私に寄こしてきた。
甘い匂いのするそれは何かの果物で、今までに私が食べたことの
無いものだった。めずらしくておいしくてうれしくて思わずクルクル回ると、
人間はまた笑って私の頭を撫でてくれた。
そして一人の人間が立ち上がると何やら体をクネクネし始めた。
その時はわからなかったが今思い返すとあれは踊っていたのだ。
焚き火に照らされたその姿はとても美しく、私はすっかり見とれてしまった。
少しして、もう一人の人間は何やら棒のようなものを口にあてた。
すると夜空に私が今まで聞いた事のないような美しい音が響いてきた。
私はその日初めて人が踊る姿を見て、音楽というものを聞いたのだ。
あー、あれはほんっとに感動したなー。今思い出してもうっとりするよ。
あの時の二人がどうしても忘れられなくて人間に憧れたんだっけ。
それから大きくなって一人で森の外に出られるようになると、
夜、人間の住む小さな村まで行ってこっそり家の中を覗いたりしたっけ。
そんでだんだん自分も人間になりたいって…。
………しかし思い返すとあの二人のおっぱいはかなり大きかったなー。
人間の自分のおっぱいもあれくらいあればよかったのに……はぁ……。
なんかおっぱいのことしか書いてないような気がします。
ところでこのお話は既存の固有名詞やキャラクターを借りてるだけで
そのものではありません。
うちゅうのほうそくがみだれている! とでも思って下さい。
あと私は国語が苦手なので文章が無茶苦茶です。ご了承ください。
ホイミンのおっぱいの良さだけ伝わってくれれば大成功です。
ホイミンもいいが、おっぱい双子ちゃんもいいな・・・。
双子ちゃんと再開できるといいな・・・。
51 :
【変身】レベル7:2011/02/19(土) 23:34:10.82 ID:Cx4sOlJ5P
つらつらとおっぱいの……いや、昔の事を思い返していたら辺りが暗くなってきた。
ホイミスライムは基本夜行性だけど、あんまり本能に従っていると人間としての意識が
だんだん無くなってきそうなのでなるべく夜寝て、昼間に行動するようにしている。
どこかに風除けになりそうないい寝床がないかとうろうろしていたらスライムに出くわした。
「よう兄弟!晩飯の薬草でも探してんのか?あっちのほうにたくさん生えてるぜ」
「こんばんわ。いい月夜だね。いや、ご飯はもう食べたよ。今寝るとこ探してんの」
「もう寝んのかよwホイミスライムなのに変わってんなお前w」
「あはは……よく言われるw今、旅の途中なの。どっかにいい寝床ないかなあ?」
「旅ぃ?ますますヘンな奴wよし、この先の森にオレのネグラがあるから泊めてやんよ」
「マジで?助かるわー。あーざーっす!」
……というわけで出会ったばかりのスライムにホイホイついていく私。テラビッチw
人間のお父さん、お母さんごめんなさい。大人になるって悲しいことなの。
しかし今夜は風が強いからホント助かったわー。
別に寒くても風邪なんかひかないけどどっかに飛ばされちゃうから。
親切なスライムのねぐらは川から少し離れた森の中にある木のウロだった。
二人で入っても少し余裕がある。温かくて少しじめっとしていて中々快適だ。
旅に出てから一週間、途中おおなめくじやグリーンワームなんかは見かけたが、
スライム族に会ったのは初めてなので自然とテンションが上がる。
久々のスライムトーク楽しすぎワロタwそこでなんと有力な情報をゲット!
なんとこの森を抜けた少し先に人間の住む村があるとか!!
ヒャッハー!!人間に会えるよ!!やったねホイミン!
いきあたりばったりで書いてるのではてさてこの先どうなることやら。
誰か教えてください。
ちょ、誰か教えてくださいってwwww
それは作者さんが考えることなので、元々の筋書きに影響を与えてはいけないので、参考程度に・・・。
でも、予想を上回る超展開もいいかも^^
既知の情報
・ホイミスライムちゃんの最終目的は人間になること
・とりあえずの目標は人間の住む村にいくこと
(根底には双子ちゃんへのあこがれがある)
・気を抜くと人間としての意識がだんだんなくなってしまう
予想される展開
・寝床を貸してくれたスライムとアッーー!
でも、人間の意思が強くて拒絶して変わり者扱いされる?
あるいはそのまま交接しちゃってスライムの意識のほうが強くなっちゃう?(滝汗
・翌日人間の村へいく
双子ちゃんみたいにスライムに理解を示してくれる人間ばかりじゃないから追いかけられたり、討伐されそうになるかも?
それからは理解を示してくれる人以外には慎重に接するようになる。
・双子ちゃんを求めて旅旅
双子ちゃんの消息を追いながら(はじめてあったのはどのくらい前なのでしょうねぇ・・・)旅を続ける。
人間と交流しないまま長く旅をしてるとスライムの意識の方が強くなりそうですね。ホイミンだからライアンさんに会うのかな・・・?
4ルート
ライアンの仲間になる→ライアンをかばって死ぬ→マスタードラゴンの力で人間に?
5ルート
マーサor5主or娘の仲間になる→エルヘブンの力で人間に?
ルート3
6主の仲間になる→ダーマで転職して人間に?
その他DQMの主人公の仲間になるルートも考えられるかも?
誰とも出会えず人間に倒されて終わるバッドエンドもありえなくはないのか…
実はおっさんでひたすらおっぱいルート
56 :
【変身】レベル8:2011/02/20(日) 23:30:35.82 ID:UrMsuZINP
翌朝、一夜を共にしたスライムにお礼を言って人間の村へいざ出発!
ドキドキワクワク。自然と鼻歌も出るってもの。早く人間に会いた〜い!
…………しかし…会ってどうしよう……。
なんせ人畜無害なホイミスライムと言っても所詮は魔物。
イキナリ斬りつけられる可能性大。
いや、捕まってホイミ奴隷として売り飛ばされるかも……。
……なんかガクブルしてきた………。ちょっと落ち着こうかホイミン。
急いては事を仕損じる。急がば回れ。二兎追うものは一兎も得ず。
……最後はちょっと違うか。とにかく焦りは禁物だ。慎重に行こう。
とりあえず落ち着くためにスライム体操してたらどこからか悲鳴が聞こえてきた。
あれは………人間の声………!?
ともかく悲鳴のする方へBダッシュ!そこでホイミンが見た光景とは!?
………人間の男の子がドラキーといっかくうさぎに追い掛け回されてました。
あ〜あ〜…きっと遊びでパチンコ玉でも当てたんだろな。それとも水鉄砲か?
こんな森に子供が一人で来るわきゃないし、きっと近くに親がいるだろうから
ほっとこうと思ったけど(魔物の恐ろしさを知るいい機会だぞ坊主)
転んで擦りむいたのか膝小僧に血が滲んでる。
傷ついた者を見たらホイミしたくなるのがホイミスライムの本能なんです。はい。
とりあえずドラキーとうさぎを説得することに。
57 :
【変身】レベル9:2011/02/20(日) 23:31:25.87 ID:UrMsuZINP
「あ〜もしもし…お二人さん。その人間の子供、許しあげてくんないかな?かな?」
「あん?誰だてめーは!邪魔だすっこんでろ!!」
「うるせーよ!このホイミバカ!てめーも殺されてーのか?あん?」
(どこの世界にもDQNっているもんだね……)
「助けてくれたら面白いスライムギャグ教えてあげるよ」
「………う〜ん、一応聞いとくか。言っとくけどつまんなかったらぶっ飛ばすぞ」
「おっけー!じゃあ行くよ〜。バブルスライムとかけましてぇ〜」
「ほう、バブルスライムとかけまして?」
「じんめんちょうと解きます」
「その心は?」
・ ・ ・
「どちらも ど く が やっかいでしょう」
「………………」
「おい、じんめんちょうは毒もってねーぞ………」
「あれ?そうだっけ?」
「つまんねー…なんかしらけちまった…。もう帰るわ……」
【魔物の群れは去っていった!】
「う〜ん、ま、いっか。よし、ぼく、もう大丈夫だよ。ケガ見せてごらん」
「…………うっ…ひっく……※%○●#※……%○●#※%○●#?」
ちょっと何言ってんのか分かんないです。……つーか全然分かんない…。
え?もしかして言葉通じない?夢の中でずっと人間やってたのに?
えええ〜!その辺はサービスでなんとかしていただきたかった!
あ〜もう、魔物同士は種族が違っても精神感応とやらで話が通じるのにぃ。
これはやっかいだぞ…。早くも旅に暗雲がたちこめてきました!ハハハ……。
……はぁ、とりあえずこの子にホイミしてあげるのが先だな。
……………ホイミっと…!よし、これでもう痛くないぞ。
「村に帰るんだな。坊やにも家族がいるだろう」
なんつってもわかんないか…はぁ。とにかくこの子の親はどこだろう?
ま、待ってればそのうち探しに来るだろうな。所詮子どもの足よ。
そんな遠くには離れてないはず。それまで少し一緒にいてやるか。
……よしよし、泣き止んだな。偉いぞ坊や。男の子は強くないとね。
触手で坊やの頭をナデナデしてやったらちょっと笑った。かわいい。
5、6才くらいかなあ〜。なかなか凛々しい顔立ちしてるよ。
将来男前になりそうだ。頭に巻いてる紫のターバンがよくお似合いよ。
毒蛾(どくが)じゃないんだよねじんめんちょう!
いかにも毒もってそうだけど。偏見(・A・)イクナイ!
この先どうすっか困ったけど5が一番好きでよく覚えてるんで
とりあえず5の主人公に出てもらいました。
つーかディープなドラクエ知識何も知らない私。
1〜6しかやってないし。6にいたっては一回しかやってない。
ダイの大冒険は大好きだけど。とりあえずこの先もどうしよう。
ホイミンスレで書いてるやつみたくシリアスさはゼロなのは間違いないけど。
そうきたか〜。いい方向に予想を裏切られました^^
人間の世界にはいっていくだけじゃなくて、魔物とのかけあいもしていくのですね。
それにしても、人面蝶、毒なかったんですね。覚えた。
人面蝶≠毒
人面蝶=マヌーサ
スト2ガイルの「国に帰るんだな…」はなんであんなにネタになったんだろう。
普通にいい台詞だと思うが。でもなんか家族いそうにないキャラが多いが。嫌味か?
ドラクエ5は家族全員連れてけるから好き。仲間モンスターも家族みたいに思える。
ファミリー向けワゴン車のCMで使ったらいいと思う。
ZZZ……ZZZ……………はっ!?いけない寝てた!!今何時!?
まいったな〜。この子につられてつい眠っちゃったよ……。
おーい!そろそろ起きろー!つんつん…。ダメだ。熟睡してる……。
逃げまわってて疲れちゃったんだな。…っていうかいい加減触手離して。
ん〜…お迎えこないなあ。親が探し回ってるはずなんだけどなあ……。
声も聞こえないし。もしかして勝手に森に来ちゃったのかなこの子。
まだお昼くらいだと思うけどちょっと天気が悪い。雨でも降ったら大変。
仕方ないな〜。村に送ってってやるか。
子供が一人で来るくらいだし、ここからそんなに遠くないはずだ。
夕べのスライムもゆっくり行っても半日かからないって言ってたし。
「………ん?……むにゃむにゃ…………※%○●#※……?」
お、起きたか坊主。そろそろお家に帰るよ〜。
大丈夫、一緒に行ってあげるから。言葉は通じなくても何となく分かって
くれたのか私の触手をぎゅっと握りながら付いて来る。かわいいなあもう。
夕べのスライムが教えてくれた目印を頼りに進んで行く。
途中出会ったせみもぐらやおおがらすに道を聞けたのも助かった。
2時間も歩いていると人間の匂いが濃くなってきた。村が近い証拠だ。
そしてついに森を抜けた。やったー!あそこに見えるは確かに人間の村!
坊や、ここから先は一人で帰れるね。寂しいけど私はここでバイバイよ。
付いて行ってあげたいけど、人間の大人に何されるか分かんないからなあ。
しばらく様子を見ないといけない。いきなり村には入れないの。ごめんね。
……って、ちょっと坊ちゃん引っ張んないで!走んないで!!きゃー!!!
あれよあれよと言う間に子供に村の入口まで猛ダッシュで引っ張ってかれた。
うわぁ……なんとそこで人間の大人がたくさんお出迎え……。
どうやら村人総出で男の子を探していたらしい。やっぱり迷子になってたか。
男の子は口ひげを生やした逞しい体つきの男に抱き抱えられた。父親だろう。
その傍で母親と思われるしとやかそうなきれいな女の人が頭を撫でている。
よかったね坊ちゃん。いやあ、家族ってほんとにいいものですね〜。
………そして私は……村の警備の人らしき数人のゴツイ兵士に囲まれてます。
「な、なんなんですか?ここ、どこですか?なんで私、睨まれてるんですか……?」
もう例のAA状態でガクブルしてるとそれに気づいた男の子が私を抱きしめてきた。
なんか一生懸命両親や、他の村人に話をしている。それはいいが苦しい。離して。
じっと様子を伺っていたら、今度は男の子の父親が兵士や村人に話を始めた。
母親もこの村の村長だか長老みたいなおじーさんと話をしている。
そして少しすると彼らは皆納得したような表情でぞろぞろと帰っていった。
どうやらこの子のお父さんとお母さん、村で結構顔が効くらしい。
帰り際にさっきまで私を怖い顔で見てた兵士が私の頭を撫でて行った。
そして私はまた男の子に触手を引っ張られ、みんなでお家に帰りましたとさ。
ネタバレ。この子のパパとママは死にません。
さあて、この先どうなるか誰か知ってたら教えてください。
時は流れて男の子16才。ラインハットのお城に挨拶に行ってから
魔王を倒す旅に出るのでそのお供をするの?
それともある日勇者の家庭教師というゲマ先生がやってくるの?
っていうかその前に男の子の名前がわかりません。
もしそのお母さんがエルヘブンのマーサ様なら、たぶん魔物の言葉もわかるし
改心して修行をつんだスライムを人間にすることもできるはずですよ
久々に来たが、なんか面白い作品きてんな。
スレ民と相談しつつ展開を考えるっていいかも。
ところで
>>31の続きマダー?
マーサさんそのものだったらホイミンの旅・完!なんだけどねw
まあせいぜい魔物に優しくて魔物から好かれる程度のマーサさんです。
ホイミンにはもっと苦労してもらいます。
しかしほんとこの先どうすっかな。この村はサンタローズぽい村だけど、
あそこの洞窟が不思議なダンジョンで最深部に人間になれる秘宝が!
『ホイミンの不思議なダンジョン』でもいいか。
でも私ダンジョンシリーズやったこと無いよ。早くもボツ!
はーい、現場のホイミンでーす!今日はなんと人間のお宅にお邪魔しております!
こちらのご家庭はご主人と奥様、それに小さな息子さんの三人家族です!
そしてなんと!今日はここにホイミスライムが一匹加わることになりました!
無事ご両親の説得に成功したらしい息子さんは笑顔で私に薬草をあげています!
ちょっと失礼して頂いてみます!もぐもぐ……これは美味しい!優しい味ですねー!
おおっと!ここでご主人がどこからか美しいガラスのツボを持って来られました!
大きさといい、デザインといい、口の広さといい、大変素晴らしいツボですね!
そしてようやく奥様登場!ツボにきれいな水をたっぷりと注いでおります!!
どうやらこのツボが私の水飲み場兼、寝床兼、お風呂になる模様です!!
という訳で本日はここで休ませていただきます。皆様ごきげんよう。ホイミンでした!
ホイミンさん、おやすみなさい^^
ツボ、快適そうですね^^
ちょwwwwまたしても、この先教えてくださいってwwww
ご両親が死なないってことはパパスさんじゃないのですね。
しかし、人間の言葉は教えてもらわないと、「ぶるぶる、ぼく悪いスライムじゃないよ」とも言えないですね。
スライムの声帯(?)が人間の言葉をしゃべれる構造なのかわかりませんが・・・(笑
逆に、魔物語(精神感応ですか?)を教えてあげるのもおもしろいかも^^
女子高生に戻れたら(元々夢だったのかな・・・現実とリンクしてる気もするけど)男の子と恋愛要素ありですか?
スライムのまま恋愛でもいいけど18禁になってしまう・・・触手もあるし・・・(謎
男の子と旅をする間に双子ちゃんと再会もいいですね^^
パパスもパラレルドラクエワールドのパパスなので死にません。
魔物やスライムの声帯がどうなってんのか知りませんが、
どうやら人間の言葉を勉強したらしゃべれるようになるそうです。
昔なんかのガイドブックに載ってました。さすがファンタジー。
まあゲーム中のしゃべる魔物はきっと『かしこさ』が結構高いのでしょう。
せっかく女の子にしたのだからスイーツwな恋愛要素も絡めたいけど、
人間になったら話は終わりなのでスライムのまま恋をすることになるねw
人間の男も好きになるけどカッコイイスライムも好きになるかもね?w
はぐれメタルなんかに恋したらここりゃ大変だw
前略、夢の中の人間のお父さん、お母さんお元気ですか?
私がこちらの世界に戻り、人間の村に来てはや半年が経ちました。
今お世話になっているご家族は私のことをとても可愛がって下さいます。
毎日井戸からきれいな水を汲んでもらい、美味しい薬草も頂いています。
坊ちゃんはいつも私を連れて遊びに出かけます。私達はとても仲良しです。
中には最初の頃、私のことを訝しげな目で見てくる村の人もいましたが、
この村で信頼の厚い(と私は思います)ご主人と奥様のおかけで、
最近はそんなことも無くなりました。私を見ると野菜をくれる人もいます。
ありがたい事です。私もご一家や村の人達の何かお役に立ちたいと思い、
得意のホイミを組みこんだ指圧(触手圧)を毎日のお仕事でお疲れの
ご主人や奥様はもちろん、時には村のご老人や体の具合の悪い方に
させて頂いております。お礼の言葉を頂いたりすると恐縮ですが、
ホイミスライムとして大変誇らしく思います。
そうそう、人間の言葉も少しづつですが分かるようになってきました。
どうやらご主人のお名前は「パパス」さん。奥様のお名前は「マーサ」さん
とおっしゃるようです。そして坊ちゃんは「リュウ」くんというお名前らしいです。
リュウくんが毎日学校に私を連れて行ってくれるのも勉強になっています。
ありがたいことに学校の先生が教室の隅に私の為に水瓶を置いてくださって、
私はそこで大人しく子供たちの授業を聞いています。
こちらの世界の基本的な言葉や文字を覚えるのに大変役に立っています。
長い間夢の中で人間として暮らしていましたが、こちらの人間社会のことは
ほとんどなにも知らない私です。毎日が勉強の日々です。
私自身が人間の言葉をしゃべれるようになるにはもう少し時間がかかりそう
ですが、一生懸命頑張ります。早く坊ちゃんとお話がしてみたいです。
という訳で水穂はホイミンとして元気で暮らしております。ご安心ください。
お父さんとお母さんもくれぐれもお体にお気を付けお過ごしください。草々。
追伸・どうやら坊ちゃんは私に『ブラックアイズ・ブルー・ドラゴン』
略して『ブラド』という名前を付けてくれたみたいです。
どう見ても私はスライムですが大きくなったらドラゴンになると
坊ちゃんは思っているようです。なんかもう色々とキツイので
早くしゃべれるようになって『ホイミン』だと名乗りたいです。
坊ちゃんなんという厨二病www
頑張ってドラゴラムを修得orドラゴンの杖をゲットして、坊ちゃんの望みを
叶えてあげられる日が来るといいですね
書いてるうちに坊ちゃんが可愛くなってきました。
しかしこの先どうしよう。何も考えてない。
○月×日
今日は坊ちゃんと近所のお友達の家に遊びに行った。
最近男の子の間でモンスターバトルごっこが流行ってる。
もちろん本物の魔物ではない。魔物のフィギュアを使うのだ。
もちろん坊ちゃんもいくつか持っている。
ドラゴンキッズ、ダースドラゴン、グレイトドラゴン、ドラゴンゾンビ…
坊ちゃんはドラゴンが大好きだ。まあ男の子はみんなそうかもね。
今日もバトルを楽しんでいたが、そのうち飽きてきたのか、
お友達が飼っている猫を部屋に連れてきた。
「行けっ、キラーパンサー!いなづまをよべっ…!」
お宅のトラ猫はキラーパンサーですか。そしたら坊ちゃんが、
「むかえうてブラドッ…!ブルー・インパクト(青のしょうげき)!!」
…って言われましてもね……。どんな技なの?どうすりゃいいの?
とりあえずクルクル回転してからパンチを入れるような感じで
猫…いや、キラーパンサーにホイミの光を当ててみた。ぱぁって。
………そしたらもうエライことに。
魔法にびっくりした猫が私に飛び掛って引っ掻いてきた!きゃー!
私もびっくりして逃げまわる逃げまわる。猫追いかける。追いかける。
本棚にぶつかって倒すは、棚の上の置物は落とすは大惨事に。
結局二人は友達のお母さんとマーサさんにこっぴどく怒られた。
以後リアルモンスターバトルごっこは外でやるようにとのこと。
私(と猫)はもちろんお咎めなしだが自分で自分にホイミしたのって
何ヶ月ぶりだろう…。もうバトルごっこはこりごり。今日は疲れた…。
この二人、冒険に行ける気がしない……。
外でならモンスターバトルやってもいいのね^^
ホイミンさん、お大事に〜
♬月※日
毎日の密かな発声練習の結果ようやく人間の言葉がしゃべれるようになってきた。
まだ難しい言葉は理解出来ないし、しゃべれないが小さな子供レベルの会話は
なんとかできそうだ。今日は突然皆の前でしゃべってみて驚かそうと思った訳です。
朝、みんなが朝食のテーブルについた時に頃合いを見計らってご挨拶してみた。
「おはよう!ボク、ホイミン!」
よし!よく言えました!いやあ、たぶんカタコトで子供みたいな喋り方だと思うが
とにかく言えた!良かった!感動した!よし、みんな驚いてる驚いてるwwww
「ほほう…。わしも昔旅の途中でしゃべるスライムを何匹か見たことがあるが、
まさかうちのがな…。長い事人間と暮らしているとこういうこともあるのだな……」
「毎日リュウと一緒に学校に行っているものねぇ…それで賢くなったのかしら?」
「ブラドがしゃべった!すごいすごい!ぼくのスライムは『超レア』モンスターだ!」
坊ちゃん、私の名前聞いてました?『ブラド』じゃないって!私は『ホ・イ・ミ・ン』!!
……とにかくしばらくは念仏のように「ボク、ホイミン」とだけ唱えることにしよう。
会う人会う人に自分の名前をアピールしていけばいずれ坊ちゃんも諦めよう…。
△月◆日
今日はパパスさんにくっついて坊ちゃんとラインハットのお城へ出かけた。
私達が住んでるサンタローズの村があるこの地方はラインハット領だ。
お城まで馬車で約5時間。ゆっくり歩いて行っても1日くらいだ。
キメラの翼を使えばひとっ飛びだが、あれは1枚700ゴールドもするのよ。
(ちなみに1ゴールドは今の日本の感覚で言うと100円くらいみたいだね)
しかも1人につき1枚いる。とてもじゃないが緊急の用事以外使えない。
旅の扉はこの世界のいたる所にあって、世界中を便利に繋いでるけど、
高度な魔法技師が常に管理する必要があるのでお城や大きな街、
旅の中継地点、通称『旅の祠』にしかない。小さな村には当然無いね。
村から一番近い旅の祠は4時間も歩いた場所にあるけど、
ラインハットと真逆の方向だし、通行料として1人1回100ゴールドかかる。
それなら坊ちゃんの旅の練習も兼ねてお城まで歩いたほうがいいよね。
ここは忙しい日本ではないのだ。時間はたっぷりとあるしね。
今よりずっと魔力に満ちてた昔はルーラという移動呪文を使える魔法使いが
たくさんいたらしいが今はかなり高レベルの魔法使いしかこの呪文は使えない。
実は村にはこのルーラを操れる魔法使いが1人だけいるんだけど、
もうヨボヨボのおじいさんで最近では少しボケも入ってきている。
うかつに頼んだらどこへ飛ばされるか分かったもんじゃない。怖い怖い。
そんなこんなで今日は野営の練習。川のほとりでキャンプだ!わーい!
パパスさんが道具を用意する間、坊ちゃんと近くの林で薪を拾いに行く。
なんだか食べれそうなキノコが生えていたのでパパスさんに見てもらおう。
「ホイミン、ぼくブーメランうまくなったよ。あそこの木に当てるから見てて!」
「ぼっちゃん、はやくたきぎをひろってもどらないとくらくなっちゃうよ……」
ようやく(しぶしぶだが)私を『ホイミン』と呼んでくれるようになった坊ちゃん。
私と話ができるのが嬉しいのかまるでオウムか九官鳥でも飼ってるみたいに
私に言葉を教えてくれた。ときどき本を呼んで聞かせてくれることもあったが、
最近では私のほうが坊ちゃんにお話をしてあげることが多いw
今では坊ちゃんが持ってる子供向けの本や、学校から借りてくる本はあらかた
読んでしまったので夢の中の世界で読んだお話を聞かせてあげている。
『桃太郎』や『トムソーヤの冒険』などの昔話や童話を面白そうに聞いてくれるが
近頃はネタが尽きてしまい、仕方ないので『ドラゴンボール』の話を始めた。
これが坊ちゃんに大ヒット。悟空が初めてスーパーサイヤ人になるくだりを
何回やらされたか……。最終回になっても続きをせがむので大変困ってる。
遊びたがる坊ちゃん急かしてパパスさんの所に戻るとテントが張られていた。
暖かい季節なら焚き火をして毛布にくるまって寝ればいいがもう冬が近い。
坊ちゃんが楽しそうにテントに潜り込んだ。
「こら、食事の用意をするほうが先だ。遊んでないでお前は火を起こせ。
ホイミンは野菜を切ってくれ。さっき捕ったウサギを鍋にするぞ」
「は〜い!」
パパスさんがふくろから鍋やら食器やら簡易テーブルを取り出す。
この『ふくろ』は魔法が込められた特殊な生地で出来ていて、
なんとリュック位の大きさの袋に押入れ一つ分くらいの荷物が入る。
旅の商人が使う特別製のものはコンテナ1個分は入りお値段約3万ゴールド。
パパスさんの持ってる普通のタイプのふくろも3000ゴールドはする。
とても高価なものだが旅の必需品だ。どんな魔法の原理か知らないが
中に荷物を入れると袋の大きさに合わせたミニチュアサイズになるのだ。
取り出すと元の大きさに戻る。ちなみに生きものは入れても小さくならない。
旅の扉といい、不思議なふくろといい、昔はこんなこと全然知らなかったなあ…。
この世界が元から住んでた場所だっていうのにまるで異世界に来たみたいだ。
まあこの世界の人から見れば夢の中の日本の方がよっぽとファンタジーだねw
適当なオリジナル設定でお送りしてます。
しかしこのスレ昔は賑わってたみたいだね。
保守替わりに投下してるけど職人さん達が増えますように。
このスレもまた賑わう時も来る・・といいなと思います^^
でも、保守代わりどころか、毎日の楽しみになってます。
ふくろ、とても高価ですが便利そうですね。
また、こちらの世界の大ヒット作品はぼっちゃんにとってもお気に入りで、どちらの世界でも子供というのは変わりないのですね^^
まさかの、ホイミン作家(この世界では語り部とか吟遊詩人みたいな感じでしょうか)デビューというのもありかもw
読んでくれてる人がいて嬉しいです。
私の文章は自分で読み返しても滅茶苦茶なのですが
そこら辺はホイミンと坊ちゃんの可愛さに免じて許してください。
ラインハットのお城に行くことになりましたが、
何の用事で行くのかあまり考えてませんでした。
ラインハットの王様とパパスさんが友達で遊びに行くの?
パパスさんが鍛冶屋さんで造った剣を納めに行くとか?
とりあえず大好きなピエールを出したいです。
描写が細かくて面白い!
キメラの翼やふくろの設定も興味深いね
★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚ ★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★
は〜い!わたしホイミン!今日はラインハットのお城に来てるの☆彡
実は〜パパスさんわぁ、とぉっても腕のいい鍛冶屋さんでぇ〜、
お城に武器や防具を納めてるんだヨ♬もちろん世界中のレベルの高い
冒険者サン達からもぉ〜、たぁくさん注文がきてるんだよ★
サンタローズの村の近くの洞窟ではぁ〜♪強〜い魔力の篭った鉱石が
採れてぇ、ドラゴンキラーとかぁ、ゾンビキラーとかぁつよーい武器とかが
造れるんだヨ!そんでパパスさんもぉ〜昔は有名な戦士だったのダ★彡
「これはパパスさん。わざわざご足労様です!」
「ピエール君、先程演習を見せてもらったよ、また腕を上げたようだな」
「とんでもない!パパスさん今度私に稽古を付けて下さい。お願いします!」
「うむ、引き受けた。しかしわしも冒険を引退して長い…。騎士団長を務める
君の相手が出来るかわからんがな。ところですまんが2、3時間こいつらの
相手をしてやってくれんか?わしはヘンリー王に挨拶に行ってくる。頼んだぞ」
「はっ…!お引き受けしました!」
「わーい!ジークフリードさん!じゃあぼくにも剣のけいこをつけてよ!」
「リュウ君。何度も言うが俺の名前はピエールだ……いい加減覚えてくれ……」
「ピエールさんこんにちは!あいかわらずつよいですね!かっこいいですね!」
「お、ホイミンはまた言葉が上手くなったな!お世辞まで言えるようになって…」
エヘッ…!この人はぁ…ラインハット王国騎士団長のピエールさんでぇ〜す!
わずか23歳のスーパーエリートなのだ★もうめっちゃくっちゃ強いんだよ?
剣の腕は超一流だし!イオラなんて凄い魔法も使えちゃう!剣士なのに!
そんでもって、な、なんとキアリー、キアリク、ホイミ、ベホイミ、ベホマまで
得意なんてどういう事デスカ!?若くて美形で聖騎士なんてカッコ良すぎです!
ああ…ピエール様、貴方程麗しい男の人は夢の中でも見たことありません!
整った顔立ち、長く美しい銀髪、スラリとした長身に鍛えあげられた筋肉…。
例えて言うなら、FFのセシルとカインを足してセフィロスをかけたくらい☆彡
ああ、ホイミンは早く人間の姿になりとうございます……ピエール様あぁぁぁ!
でもでもでも!なんと残酷な運命でしょう!ピエールさんにはすでに恋人が!
恋人っていうか婚約者が!・゚・(ノД`)・゚・。それも超美人の!ちっくしょぉぉ…!
そんで性格も優しくて超いいの!しかもその女の人ホイミンよく知ってるのぉ!
サンタローズから西に4時間程歩いた例の旅の祠の近くの町に住んでるの!
アルカパっていう宿場町の宿屋の娘さん!この辺一番の美人のビアンカさん!
★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚ ★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★.。.:*・゚★
ピエールはスライムナイトのままで充分かっこいいんだけどね。
でもそうすっとホイミン人間に戻りたくなくなっちゃうから。
ホイミスライムとスライムナイトで結ばれるのかどうかしらんけど。
乙!
このホイミンのキャラクターは新鮮だw
ホイミンは夢の世界が恋しくならないのかな?と、
自分で書いてて疑問に思ったけど、基本気楽に生きてる
ホイミスライムだから割り切ってるんだろうな。
ちなみに夢の中の日本にはFFはあってもドラクエはありません。
しかしホイミンはなぜあーいう夢を見てたのかとか、
6が元ネタなんだけどそのストーリーほとんど覚えてなくてさ。
誰か上手い設定考えてくれませんか?
いや、別にそんなのなくてもいいんだけどさ。
いい加減なお話だし。
「ジークフリードさん、必殺技見せて!ギガストラッシュ!!」
「ピエールさん、あくしゅして!だっこして!ナデナデして!」
「お前らな………………」
・
・
・
『秋の楽しかった思い出』 サンタローズ村・ホイミン
わたしはパパスさんと、坊ちゃんとラインハットのお城へ行きました。
大好きなピエールさんにたくさん遊んでもらえてとても良かったです。
坊ちゃんはピエールさんとバトルごっこをしていました。
坊ちゃんの考えたオリジナルの必殺技はなんだかよくわかりません。
「エターナル・フォース・ブリザード!」って叫ばれた時のピエールさんの
困ったような顔にめっちゃくっちゃ萌えました。困った顔もステキです。
その後みんなで城下町へお買い物へ行きました。
わたしはピエールさんの頭の上に乗せてもらえてとてもうれしかったです。
坊ちゃんは新しいブーメランを買ってもらいました。
かっこいいドラゴンの彫り物がしてあって坊ちゃんは大喜びでした。
わたしは小さなオルゴールを買ってもらいました。一生の宝物にします。
その日の夜はお城に泊めてもらえることになりました。
王様に会えたり、お城へ泊まれたり、パパスさんは本当に凄い人です。
夕食は王様と王妃のマリア様と王女のコリン姫と男前のピエールさんと
一緒に頂きました。わたしはとれたての美味しい薬草をもらいました。
コリン姫は16歳でとても可愛いお姫様なのですが、ちょっと変わった人で、
自分は赤ちゃんの頃、コリン星から流れ星に乗って来たと言っています。
初めてコリン姫にお会いした時、私はコリン星の生き物だと言われました。
コリン姫にはデール様という5つ年上の婚約者がいらっしゃいます。
優秀な学者さんで今はエルヘブンという遠い国の大学へ留学しています。
貴族なのに気さくないい人で将来はとても立派な王様になると思います。
夕食後、坊ちゃんとコリン姫と私はお城の中でかくれんばをして遊びました。
コリン姫はもう大きいのに、台所の壺の中に隠れたりしてびっくりしました。
坊ちゃんはお城の隠し通路や隠し扉を内緒で教えてもらって興奮してました。
その後来客用のゴージャスなお部屋で休みました。とても楽しい一日でした。
あ、タイトル入れるの忘れた。【変身】レベル21 ね。
遊んでばかりで全然冒険に行かなくて困ってます。
お前らおばけ退治くらい行け!
ちょwwwwコリン姫wwww
コリン星、いつ爆発するのかなwktk
夢の世界は恋しいだろうけど、戻れないから割りきってるのかもしれないねぇ・・・。
6のストーリーおぼえてなくても、作者さんのオリジナルでいいとおもいます♪
6が元ネタと言いつつほとんど5じゃないかww
だがこれもいいぞ このままいっちまえwww
翌朝、宮廷魔道士のルーラで村まで送って下さるという王様の申し出を
「これも息子の旅の練習です」と丁重にお断りをしたパパスさん。
お土産に珍しいお菓子や、きれいな布をたくさん頂いて帰路についた。
「魔物め、いるなら出てこい!ぼくが相手だ!必殺・幻魔滅竜閃!」
「ぼっちゃん、あぶないよう…そんなブンブンふりまわさないで!」
新しいブーメランが嬉しくてテンション上がりっぱなしの坊ちゃん。
森の中で見つけたおばけねずみにいきなり先制攻撃をしたはいいが、
怒ったねずみがすぐに2匹も仲間を呼んで来て大変なことに。
「全く……いくら魔物とはいえ向こうに襲ってくる気がないのなら
そっとしておくべきだ。そのねずみはただ寝ていただけなんだぞ」
そんなお父上のありがたい教えも逃げるのに必死な坊ちゃんには
聞こえていないが、とうとう走り疲れて応戦する覚悟を決めたようだ。
銅の剣を抜く。構えだけは様になっている。さすがパパスさんの子。
坊ちゃんが必死におばけねずみと戦っている間、
私は先程あさっての方向に飛んでいったブーメランを拾いに行く。
パパスさんは冷静に坊ちゃんに指示を出している。ダディクール!
10分後、ボロボロになりながらもなんとかねずみを全部倒した坊ちゃん
にホイミをかける。頑張ったね坊ちゃん。いい顔だ。男の顔だぜ!
一応迷惑をかけたおばけねずみにもホイミをしておいた。ごめんね。
夢の世界では別の人ってとこだけだね6ネタは。
一応バトルの様子も書いてみようかと思ったけど、
筆力が全く無いので描写が出来ませんでした。
みなさんその辺は適当に想像しといてください。
あと良かったらホイミンスレで書いてるやつも読んでください。
おおねずみが去った後、地面を見ると飴玉くらいの大きさで
キラキラと光る宝石のようなものが落ちているのを見つけた。
拾って坊ちゃんに渡してみる。これは魔物の魔力の結晶体だ。
森や洞窟や廃墟など魔物が湧きやすい場所によく落ちている。
魔物が大きなエネルギーを使ったり、死んだりするとその際
排出された魔力が周りの瘴気と融合して結晶化することがある。
これはそのまま放っておくとそのうち大気に溶けて消えてしまうが、
特殊な魔法がかけられた袋や箱などに入れておけばしばらく持つ。
これを清めると様々な魔法薬や魔法具などを造る材料になるのだ。
どんな小さな村でもこの結晶体を取引するシステムが存在する。
スライムやおばけねずみなどの大した魔力がない魔物が湧く
ような場所に落ちてる結晶体はエネルギーが弱いので安い。
今拾ったのはせいぜい10ゴールドぐらいにしかならないだろう。
逆に強い魔物が湧くような場所に落ちてる結晶体はエネルギー
が強いものが多く、これが強ければ強いほど高値で取引される。
早い話、危険な場所で強い魔物を殺せば良い金になるという訳だ。
魔物と戦いながら旅をする冒険者は基本的にこの結晶体を拾い、
換金して生活の糧としている。強い魔物が湧く瘴気の濃い
危険な場所に行けば行くほど実入りは良くなるが当然命がけだ。
坊ちゃんが大事そうに、おそらくおばけねずみとの死闘の際に
出来たと思われる結晶を例の保存袋にしまっている。
「ホイミン、村に帰ったらホイミンにこれで何か買ってあげる」
「ありがとうぼっちゃん。じゃあリボンをかってくれるとうれしいな」
「リボン?リボンなんかホイミンどこに付けるの?」
「いいの。ホイミンのたからものにするの」
「変なやつ…まあいいや、ぼく、ホイミンにリボンをあげるよ。約束する」
坊ちゃん、私がもし人間になれたら……その時そのリボンを付けるよ。
でもその時は坊ちゃんとお別れの時なのかもね……。
ビアンカがチロルにリボンをあげる話が好きだからネタにしたけど、
これって何かの伏線になのかな?って書いてる人が聞いてどうする…。
相変わらずこの話が一体どこへ行き着くのかわかりません。
頭にはつけられそうにないから、触手の一本にでも結んでおくといいと思います
触手は柔らかくて弱そう…とか思ったけど悪魔の爪とかメタルキングの剣
も装備できんだよねホイミン。一体どこにそんな力がっ…!
レベルが高いホイミスライムはあの触手でごうけつぐまとか絞め殺せるんだろうか…。
久々に来たら新しい話始まってるやっほう!応援してます!
間があいてしまって申し訳ない。これから投稿します。
今回結構長いので、P2駆使しつつ投稿しますがご容赦を。
>>27の続き
きしゃー!
「タの字、そっち行ったぞ!」
「だから俺は太一だっtあぎゃあああああああああ!!!?」
言いながら振り向くと、いかにも悪魔といった外見をした魔物が
こっちに向かって突進してくるところだった。
手に持っている槍のフォークのような形状をした刃先がぎらりと光る。
「おわあああああこっちくんなあああああああああ!!」
おいおいおい、あんなもんが腹に刺さりでもしたら!
避けようにも足はがくがくと笑ってやがる。腹を決めて、俺は手の中のブロンズナイフをぐっと握り直した。
三人は他の魔物にかかりっきりになっている。自分で何とかするしかない!
……なんでいきなりこんなことになってるんだって?
よしわかった、説明しよう。あれは今から36万…いや1万4千年前だったか。……まあいい。
私にとってはつい昨日の出来事だが、君たちにとっては……って、このネタは微妙に賞味期限切れか?
◆
俺は左頬をさすりながら、町の人たちから情報を集め歩くボッツたちの後ろを歩いていた。
さっきまではまさに紅葉のように赤く腫れていたのだが、
今ではその面影さえも無い。ミレーユが治してくれたのだ。
「動かないで」
と言って優しく頬に手を添えられた次の瞬間、その手から暖かい光が溢れ、消えた。
そしてその時には、俺の体からすべての痛みが消えていたのである。
ミレーユの話では、今のは治癒呪文の一種で、ホイミというのだそうだ。
基本的な呪文の一つであり、呪文の素質がある人間ならば
大体一番最初にこの呪文を覚えるのだという。Oh、ファンタジー……。
初めて呪文を見て絶句してしまった俺に、
「本当に違う世界から来たんだな」とボッツが物珍しそうに言った。
つまりそれくらい、この世界では呪文なんてあって当たり前なのだ。
こちらの世界ではゲームや漫画の中でしか存在していないというのに。
まったく便利な呪文だ。こんな呪文が俺の世界にもあれば、と思ったが、
そうなると外科医はみんな首を吊らなければいけなくなると気づき、すぐに考えを改めた。
っていうか、いきなり頬に手を添えられたもんだから
反射的にちゅーされるのかと思ったじゃねえか!謝れ、俺の純情に謝れ!
その後、俺は彼らからこの世界について簡単に教えてもらった。
どうやらここは魔法と剣で魔王と戦うようなファンタジー世界ではあるけれど、そう単純ではないらしい。
まずこの世界には、上と下に別々の世界が存在している、ということ。
今俺と彼らがいるのは幻の大地と呼ばれている下の世界で、
上の世界とほとんど同じでありつつも、細部が違っているとか。
なるほどパラレルワールドのようなものかと考えていたのだが、どうも違うようだ。
ミレーユが言うには、上の世界はすべて夢で、ここ幻の大地こそが現実なのだという。
上の世界は下の世界の人々が見ている夢そのもの。
だから町並みは同じでも、そこに暮らしている人々やその関係は微妙に違っている……らしい。
そして上の世界に開いている大穴や、不思議な光が溢れている井戸などから
二つの世界は自由に行き来できるんだとか。だが――――
「上の世界から来た人は、夢見のしずくを使わない限り下の世界の人に姿が見えることはないの」
「夢は寝ている時にしか見られないだろ?ま、そういうことだ」
あー、だから"夢見"のしずくか。
しかし俺はあることに気づいて慌てふためいた。
この世界に来た時俺の体は透けていた、つまり俺は夢の世界の住人扱いされてるってことだ。
今はボッツたちのおかげで肉体を取り戻したが、幻の大地にとっては夢であることに変わりない。
ということは、俺や同じく透けていたらしいボッツたちは
いつか消えてしまうということにならないだろうか?覚めない夢なんて無いのだ!
そう訴えると、ミレーユは静かに微笑んだ。
「大丈夫よ、そんなことにはならない」
「な、なんでわかるんだ?」
「ごめんなさい、今は言えないわ。でも、時が来ればきっとわかる……」
はぐらかすような彼女の答えに戸惑った俺は助けを求めるようにボッツとハッサンを見たが、
二人は肩を竦めたり、首を横に振るばかりだった。
どうやら二人もそのあたりについてはよく知らないらしい。
というか、同じような質問をぶつけたことがあるんだろうな。
そして未だにわからないまま今に至る……と。
もしかしたら一緒に旅をしてから、そう日は浅くないのかもしれない。
それからもうひとつ、彼らは魔王ムドーを倒そうと旅をしているらしい。
更に、そのために必要な"ラーの鏡"というものを探して旅をしているとのことだった。
つまり俺と目的は同じ、というわけだ。
いやまあ、魔王を倒せば元の世界に帰れるなんて保障はないけど。
「なあ、タイチはこれからどうするんだ?」
「……どうしよう」
正直言って手詰まりだったりする。
スケスケな体を活かして、「ドキドキ☆魔王様暗殺計画!」は水泡に帰してしまった。
ボッツたちは強そうだから任せておけば魔王を倒してくれるかもしれないが、
他人任せで元の世界に帰れるとも思えない。
かといって、魔物と戦う技量なんて無いから町から出られないし、
そもそも装備を調達するにも無一文だ。
サークルで多少鍛えているから、やろうと思えば素手で出来なくはないかもしれないけど。
「じゃあさ、俺たちと来ないか?」
「え!?い、いいのか!?」
「目的は一緒なんだ。タイチさえ良ければ一緒に行かない理由はないよ。なあ二人とも、いいよな?」
ボッツが振り返ってハッサンとミレーユに言うと、二人は躊躇なく頷いた。
じんと目頭が熱くなる。
思わず俺は俯き、日本人特有の卑屈っぷりを発揮してしまう。
「で、でも俺、戦いの経験は……魔法も全然使えないし」
「最初はみんなそうだよ。俺も村から出た時はひよっこだったし」
「大丈夫、女の私でも戦えるんですもの。あなたにできないわけがないわ」
「そうそう、これからみっちり鍛えてやるぜ。改めて、これからよろしくな!」
「…ああ!ありがとう!」
ボッツ、ハッサン、ミレーユがなかまになった!
……というわけで、幸運にも俺はボッツたちと行動を共にすることになった。
せめて邪魔にならないようにしないとな、ということで、こうして後ろを歩いているのだ。
マジ良い人たちだよなぁ。ボッツたちと会えて本当に良かった。
ちなみにあの大きな家を訪れる時には、俺は外で待たせてもらった。
え?なんでかって?そりゃあ……お前……。
さて、この町(村にしか見えないが)はアモールという名前らしい。
上流の洞窟から流れてくる綺麗な川が名物で、この水目当てに訪れる人も少なくないとか。
魔王がこんな綺麗な川を放っておくわけがないと怯えるおばさんがいたが、
魔王っていうのはたかが水を好んだり疎んだりするものなのだろうか。
「さあ……わからないわ。ただの綺麗な水なら興味は持たないでしょうけど、
もしここの水が何かしらの力を持っているのならば、放ってはおかないでしょうね」
ミレーユが言うにはこうらしい。なるほど。
うーん、しかしアモールか……。
なんか聞いたことあるんだけど、なんて意味だったっけ。
「よし、これでだいたいは回ったな」
夫の趣味でバニーガールの格好をさせられている奥さんと
それを喜ぶ子供の家を出ると、ボッツはそう切り出した。
しっかしあの子供、しっかり夫の遺伝子を受け継いでるな。
なーにが「僕のママはうさぎさん。ねっ、かわいいでしょ!」だ。羨まいやけしからん。
人妻趣味は無いんだが、ああいうのもなかなか悪くな……おっと、今はそれどころじゃないんだった。
俺たちはまたいびつな四角形を作り、今まで集めた情報を整理した。
町には「カガミのカギ持て、しからば月鏡の塔開かん」という古い言い伝えがあること。
上流の洞窟の奥にはそのカガミのカギが眠っているが、
20年程前の地震で洞窟が崩れてしまい奥には行けなくなってしまったこと。
「この情報は重要だな。月鏡の塔っていうのは、ここに来る前に立ち寄ったあの塔のことだろうし」
「ええ。ラーの鏡と深い関わりがあると思うわ」
「でも鍵があるっていう洞窟は崩れちゃって奥には行けないんだろ?」
「うーん、どうにかして掘り出せねえもんかな」
ずいぶん昔にその宝を狙って二人組の盗賊が洞窟へ入っていったが、
帰ってきたのはひとり――――ジーナという女性だけだったということ。
それからひっそりと町に住み着いたジーナは教会で下働きをしており、
宝を追い求めている旅人が町を訪れると、相手が誰だろうと叱りつけるということ。
そして、いったいどんな悪夢を見ているのか、毎晩うなされているということ。
最後の情報は特に困りものだった。宿屋がいっぱいで、今夜の宿がないらしいことだ。
旅慣れている風の三人も、これにはさすがに戸惑いを隠せないようだった。
「さて、今夜の宿だが……どうする?別に俺は野宿でもいいんだが……」
そういうわけにもいかないだろ、とハッサンはミレーユと俺を見た。
それに応えるように、ミレーユは柔らかく微笑む。
「旅の辛さは十分にわかっているつもりよ。野宿くらい、何てことないわ」
ミレーユさんマジ女神。俺も平気だと横に首を振った。
確かに旅慣れてはいないが、野宿できないほどやわじゃない。
そうか、悪かったなとハッサンはばつが悪そうに後頭部を掻いた。
「なあ、ちょっと教会に行ってみないか?神父様なら何とかしてくれるかもしれない」
ボッツが川を挟んで向こう側にある建物を指差した。
三角屋根の頂点に立つ十字架は、まさしくそこが教会だということを示している。
へー、ああいう信仰を表す象徴も同じなんだな。
こっちだとキリスト教やらイスラム教やら仏教やら色々あるけど。
「泊めてもらえるかしら?」
「頼むだけ頼んでみよう。やらないよりマシさ」
「確かに。男は度胸、何でも試してみるもんだ。よし、行ってみようぜ!」
どこかで聞いたことのあるような台詞を言って、ハッサンは意気揚々と教会に向かって歩き出した。
俺とボッツ、そしてミレーユがその後に続く。
しかしハッサンの後ろ姿はあんまり見ていたいものじゃないな…。
まあだるだるなソレよりかはマシなんだが……うん、引き締まっているのも何かさ…。
極力視界に入れないように歩いているうちに、教会へとたどり着いた。
近くで見るとますます大きい。
屋根や壁に塗られた塗料は見たところ剥げているところはなく、
また教会の周りに植えられている色とりどりの花が美しく咲き誇っていることから、
こまめに手入れしている人間の存在が伺えた。
(ジーナさんって人かな)
いや、話から察するにもういい歳になっているはずだ。
花はともかく、壁やら屋根やらの手入れは難しいだろう。
「おーいタの字、行くぞー!」
「あ、ああ!ごめん!」
はっと我に返ると、ハッサンが教会ならではの大きな扉を開けようとしているところだった。
置いていかれまいと慌てて駆け寄る。っていうか俺はタイチだってばよ!
「ずいぶん熱心に見てたようだったけど、もしかして花を見るのは初めてなのか?」
「別にそういうわけじゃ……ただ、きれいだな〜と思って」
「おいおい、ちょうちょ追い掛けてはぐれたりしないでくれよ」
「しねえよ!ガキか俺は!」
「うふふ。ほら、行きましょう」
教会の扉をくぐりながら、俺は自分がこの三人にすっかり気を許していることに内心驚いていた。
あまり人見知りする方ではないが、初めて会ってから半日も経っていないのに
この打ち解けようは少々図々しいくらいだ。
それは恐らく、三人の人柄がそうさせてくれるのではないかと思う。
普通ならば、自分は異世界から来たのだと言い張る怪しい男とは関わり合いになりたくないと思うだろう。
少なくとも現代社会では皆腫れ物に触れるような扱いをするに違いない。
だというのに彼らは俺を遠ざけず、成り行きとはいえ共に行動することを許してくれた。
さっきのように野宿の心配もしてくれる。なんて気持ちの良い奴らなんだろう。
一刻も早く戦えるようになって、少しでも役に立てるようにならないとな。自信ないけど!
と、腰に提げたブロンズナイフの柄を握りしめてそう思う。その他にも鎖帷子、毛皮のフードを見繕ってもらった。
ブロンズナイフと鎖帷子はお下がりだが、他は新品だ。
あ、あと靴も!俺この世界に来た時パジャマ姿だったから、裸足だったんだよなぁ、ははは。
それから丈夫そうな服を防具屋から格安で譲ってもらった。
いやあ、お世話になりっぱなしで本当に申し訳ない。
その分頑張らせていただきますってタイチはタイチはこの場を借りて決意表明してみたり!
って、俺がやっても気持ち悪いだけだな……ごめん。
初めて足を踏み入れる教会は、思ったよりも殺風景なところだった。
入ってすぐ目に入ったのはいくつかの扉で、他には上に続く梯子があるのみ。
人一人分くらいしかないその梯子を昇って、ようやく教会らしい光景が広がるといった感じだった。
まず目に入ったのは壁に掲げられている大きな十字架。
その左右には、大小四つのステンドグラスが陽の光を受けてきらきらと輝いている。
梯子を登り切って少し進むと、赤い絨毯の柔らかい感触が返ってきた。
その絨毯も決して大きいものではない。せいぜい縦120cm、横60cmといったところか。
「タイチ、どうしたの?」
「いや、想像してたのと結構違うなあ、と…」
まあこれも綺麗っちゃ綺麗なんだが、
テレビでよく見るでっかい教会みたいなものを想像していたんだ。
こう言うのも何だけど、正直拍子抜けというか期待はずれというか。
まあ世界が違うんだから期待したものと違うのは当然なんだけどさ。
でもステンドグラスとか結構一緒なんだよな……。
「あら、そう?でもそうね、こういった作りの教会は珍しいかもしれないわ」
囁くようにそう言って、ミレーユはゆっくりと教会を見回した。
ということは、俺の期待するような教会がこの先あるかもしれないということか!
うーん、それは楽しみだ。こういう歴史を感じられる建物、結構好きなんだよなあ。
修学旅行で行った京都の寺とか神社とかめちゃくちゃ楽しかった。
特に伏見稲荷大社、あそこ良いよな!ああ、また行きてえなぁ……。
「ここは神に導かれし迷える子羊の訪れる場所。我が教会にどんな御用でしょう?」
ぱたん、と分厚い本が閉じられるような音がした後、
透き通るような声が耳朶を優しく叩いた。静かな教会によく響き渡る声だ。
思わず振り返ると、まさしく女神のような微笑みを浮かべた女性が
腰ほどの高さの祭壇の向こうに立っていた。
頭をすっぽりと包み込むベールに、首から足首まで全てを覆い隠すような長いワンピース。
全体的に青と白とを基調としたその服を身に纏っている彼女は、誰がどう見てもシスターだった。
おいおい、十字架といい、いくらなんでも俺の世界のと酷似しすぎじゃないか?
実際に魔法を体験してなかったらドッキリじゃないかと疑いたくなるくらいだ。
まあ中世ヨーロッパと思えばいいのか。案外、ファンタジー方面に進化したパラレルワールドなのかもしれないな。
ボッツたちは、恐らく聖書である厚い本を細腕に抱えたシスターに恭しく一礼した。
俺もワンテンポ遅れてそれに続く。
ほどなく頭を上げた後、口を開いたのはボッツだった。
「シスター様、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
私たちはしがない旅人でございます。実は宿屋がいっぱいで今晩泊まるところがなく……」
「まあ、それは大変!少々お待ちください。神父様を呼んで参りますわ」
ボッツが話し終えるのを待たず、シスターは俺たちの前を通り抜けると
隣の部屋に引っ込んでしまった。
ずいぶんせっかちなシスターさんだな。新人なのかな?
「?どうしたんだよタイチ、変な顔して」
「いや、敬語使えるんだなーと思って」
「おいおい、ひどいな!」
「いやあ、だってさ……」
俺は変な顔のまま、目の前のツンツン頭をじろじろと眺めてやった。悪かったな変な顔で。
昔やったゲームの影響か、俺の中ではゲームだの漫画だのの主人公は
目上の人にもタメ口を使うようなイメージがこびりついている。
そしてボッツはいかにもゲームの主人公といった感じの外見だ。
そういうわけなもんだから、ボッツが丁寧な敬語を使えることにちょっと驚いてしまったのだ。
誠に勝手な言い分であることは自覚しているので突っ込まないでくれると僕嬉しいな。
と、そこでハッサンがにやりと笑い、ボッツの脇腹をつんつんと肘でつついた。
その動き若干古くね?
「そうだなあ。まるで王子様―――みたいだったぜ?」
「お、おいハッサン!」
「ふふ、そうね。お辞儀も様になってたわよ、ボッツ」
「ミレーユまで……ああもう、勘弁してくれよ」
「??」
「お待たせいたしました。神父様、この方たちですわ」
三人のやりとりに首を傾げていると、
さっき引っ込んだばかりのシスターが誰か(神父だけど)を伴って戻ってきた。
神父もこれまた、誰がどう見ても神父といった感じの服装をしている。
顔やら手やらのしわから見るに、年齢は俺より三、四回りくらい上だろう。
シスターに連れられてきた神父は俺たちを見ると、にっこりと微笑んだ。
しわだらけの顔がますますしわくちゃになる。
「ようこそいらっしゃいました。シスターからお話は聞かせて頂きました。
何でも今晩泊まるところがないとか。それはそれはお困りでしょう」
俺たちが揃って首肯すると、神父は顎に手を当てて
少々思案する素振りを見せたが、すぐに「よろしい」と深く頷いた。
「困っている人を助けるのが教会のつとめ。
下の一番左の部屋にいるジーナ婆さんに頼んでみなさい。きっと何とかしてくれますよ」
「やったぜ!ありがとうございます、神父様!」
「ありがとうございます。助かりましたわ」
「いいえ、聖職者として当然のことをしたまでですよ。神もそれをお望みでしょうから」
それでは、と神父は一礼して、隣の部屋に戻っていった。
ボッツたちやシスターも一礼を返して見送る。
俺はまたもやワンテンポ遅れて、彼らに倣って同じようにした。
あいにく無宗教なんだよなー。こういうノリはなかなか慣れないぜ。
まあ、お辞儀されたらそれを返すっていうのは当然の作法だけどさ。
再び祭壇についたシスターにも一礼し、俺たちはさっそく梯子を下りた。
ミレーユがスカートじゃないのが非常に残念だ。
ええっと、ジーナばあさんは一番左の部屋にいるって言ってたよな。
ノックをして扉を開けると、臙脂色のワンピースを着た婆さんが木の椅子に腰掛けていた。
すっかり髪も白く、腰が曲がってしまっているその婆さんは
胸元から伸びる鎖(ペンダントか?)を手にとってぼうっとしていたが、
来客に気づいたとたん眉を吊り上げ、杖に頼りつつも勢いよく立ち上がった。
「なんじゃい?お前さんたちは?」
「こんにちは、ジーナさんですよね?あの、俺たち」
「わしはここんところイヤな夢ばかり見ててイライラしてるんだよ!
用がないのならさっさと出ていっておくれ!」
……これだよ。まあお約束と言えばお約束っぽいけど。
思わず「更年期障害ですか?」と返しかけた俺を押し留めて、
ボッツがずいと前に進み出た。
「突然押しかけてすみません。
実は今夜の宿が無く、神父様のご厚意でこちらに泊まらせていただくことになったんです」
「そ、そうそう。ジーナ婆さんに部屋を用意してもらえって。なあ!」
「え、ええ」
正確には「ジーナ婆さんに頼んでみなさい」としか言われていないのだが、
あれは「泊まっていってもいいですよ」と言われたも同義だろう。
ちょっと拡大解釈が過ぎるかもしれないが、
教会の主である神父が「よろしい」と深〜く頷いてくれたんだ。
大丈夫だ、問題ない!……はずだ、うん。
取り繕うように頷き合う俺たちをジーナ婆さんは疑わしそうに見つめていたが、
やがて大きく長い溜め息を吐くと、不機嫌そうに杖の先を床に打ち付けた。
その動きで婆さんのペンダントが揺れ、床からは鈍いとも鋭いとも言い難い音が響き渡る。
「ああわかったよ!泊めてあげるよ。
隣の部屋が空いてるから好きに使いな。まったく神父さんも……」
「あ、ありがとうございます」
「ふん。わかったらさっさと出て行きな!わしは機嫌がすこぶる悪いんだ!」
半ば追い出されるようにして部屋を出て、隣の部屋で俺たちはようやく一息ついた。
ベッドが並び、テーブルと椅子が置いてあるだけの素朴な部屋だったが、野宿するよりは何倍もマシだ。
ベッドもちょうど四人分ある。これも神の思し召しというやつだろうか。
俺は部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んだ。
(はー、疲れた……)
まったく今日は色々起こりすぎだ。
突然異世界に飛ばされて、透明人間になったと思ったら元に戻って、
魔王を倒すために旅をすることになって……ふう。
それにしても、こういう部屋が用意してあるってことは、
俺たちみたいに宿屋からあぶれた奴らがちょくちょく訪れるのだろうか。
この町は川の水目当ての観光客が多いみたいだし……。
あ、いけね。考え事してたら、何か眠くなってきた。
「んで、どうするよボッツ。噂の真偽を確かめようにも、洞窟は埋まっちまってるぜ」
「そうなんだよなぁ……イオとかが使えれば掘り進んでいけそうなんだけど」
ああ、ボッツたちが話し合ってる。俺も参加した方がいいよな。イオって何だ?
ああでも、眠くて体が、もう…うごかn……、……………。
「うーん、どうしたもんか。なあタイチ、何か良いアイディ……あれ?タイチ?」
「……眠ってしまったみたいね。無理もないわ。色々あって疲れたでしょうし」
「ま、今は眠らせてやるか。たぶん洞窟には魔物が巣くってるだろうし、今のうちに体を休めておいた方がいい」
「そうだな。よし、起きたら存分にこき使ってやろう。それで話の続きだけど――――」
そして 夜があけた!
……あれ、俺寝てたのか。
やっべえ、明日提出のレポート全然できてないぞ。
あれで成績決まるようなもんだし、早く片づけちまわないと。
でもあと五分、あともう少しだけ……。
「おいタイチ!起きろ!」
んん〜…?誰だよ…って勇しかいないか。お前はまた兄を呼び捨てにしやがって。
お兄ちゃんそれが嫌なら兄貴と呼びなさいと言ってるのに、
まったく年子だからっていつもいつも……。
「あん?ユウ?何言ってんだ。ほら、寝ぼけてないで起きろ!」
いやあああああああああああああお布団剥がすのだけはやめてええええぇぇぇえええ!!!
わかった起きる!起きますからあああああああ!!
急に外気に晒されて体を縮こませる俺の目に飛び込んできたのは、
たった今俺から剥いだ布団をごつい手に持ったムキムキの肉体にふんどしを締めたモヒカン男だった。
思いもしていなかった光景と身の危険に思わず叫びそうになったが、寸前で何とか飲み込むことに成功した。
モヒカン男――――ハッサンが怪訝そうに眉根を寄せたが、かぶりを振って何とか誤魔化す。
そうだそうだ、ファンタジーな世界に飛ばされちゃったんだっけ俺。すっかり寝ぼけてたぜ。
「まーったく、やっと起きやがったか」
「一番先に寝て一番後に起きるなんて、いくらなんでもちょっとだらしないぞ」
「ふふ。おはよう、タイチ」
ハッサンが布団を畳みながらぼやき、ツンツン頭を揺らしてボッツが笑った。
その隣ではミレーユが静かに微笑んでいる。既に身支度は済んでいるようだ。
俺はごめんごめんと照れ臭さに後ろ頭を掻いた。
この様子からすると、ずいぶん寝坊してしまったらしい。
くそっ、ミレーユの寝間着姿と寝顔を見損ねるとはなんたる不覚!次こそは!
「……んで、何かあったのか?」
不純な決意を胸に秘めたところで、俺は開口一番そう言った。
布団を剥がすなんて、いくら俺が起きなかったからと言ってもずいぶん乱暴な起こし方だ。
早く起こさなければならない用事があったのではないか、と容易に推測できる。
それにボッツたちは笑っていたが、その笑顔が心からのものではないことはなんとなくわかった。
……いや、単に俺が全然起きないから強硬手段に出ただけで、
内心俺の怠惰っぷりに怒ってるだけかもしれないけどな!
何にせよ、幸いにも俺の推測は当たったらしい。笑顔から一変、神妙な顔でボッツたちは頷いた。
「どうやら、ここは上の世界みたいなんだ」
「は?」
上の世界――――つまり、ボッツたちが元々暮らしていたっていう夢の世界?
おいおいおいおい、なんだそりゃ。
寝てる間に下から上にワープしたってことか?どんなイリュージョンだよ。
引田天功やミスターマリックもびっくりだ。
だけどここは魔法や魔物が存在するファンタジー世界。
何かあるたびに驚いてちゃきりがない。どっしり構えてなくちゃな。
「ここにはシスターの方もジーナさんもいないわ。ただ、神父様と下働きの男性が一人」
「その神父様も昨日のとは別人だけどな。あと……」
ボッツたちに連れられて、俺は教会の外に出た。やけに町が騒がしい。
それなりに賑やかな町ではあったが、川のせせらぎを打ち消すまで人々の声は大きくなかったはずだ。
ああでも、ここは夢の世界だから下とは違っても当然なのか?
けれど外を歩いたり知り合いと話す人々は皆不安そうな顔をしていて、
町を包む声も賑やかというか、どよめきに近いものだった。
いったい何が、とボッツの肩に手を伸ばそうとして、微かに鼻をつく臭いに俺は動きを止めた。
生臭いような、鉄を口に含んだような――――
「う、あ……」
そしてようやく、俺はそれに気づいた。
上流から流れ、町のそこかしこを流れる美しく、透き通るようだった川。
その水が鮮烈な赤に染まっているじゃないか!
体中を戦慄が駆け回り、肌がぷつぷつと粟立つ感覚に襲われた。
なんだこれなんだこれなんだこれ。何の悪い冗談だよ!?
さっき「何があってもどっしり構えてよう」なんて決めたけど……こんなのに驚かないでいられるかよ!
「は、はは……なんだよこれ…。誰かがペンキでも流したのか?」
茶化しながらも声を震わせる俺に、ボッツは左右に首を振った。
ああ、そんなのありえないことぐらいわかってる。
さっき鼻をついた生臭い臭い。
あれは間違いなく、俺の体に流れているものと同じ。
血だ。
「ごめんなさい、一言言えばよかったわね。一目見た方が早いと思って……」
ミレーユが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
きっと真っ青なんだろうな。ああ格好悪ぃ。
込み上げた吐き気を振り払おうと、俺はかぶりを振った。
さすがにこの光景は、血もろくに見たこともない現代っ子にはちょっとばかしキツいものがある。
俺に気を遣ってくれたのか、彼らもさすがにあまり外にいたくないのか、
俺たちはいったん部屋に戻ることになった。これからどうするべきなのか、話し合わなければならない。
「まず異変に気づいたのはボッツだったの」
「ああ。顔を洗おうと思って、外に出たんだ。そうしたら上流の滝の方から……」
そこまで言って、ボッツは苦虫を噛み潰したような顔をして口をつぐんだ。
ああ、大丈夫だ。その先は想像がつく。
「で、慌てて部屋の俺たちを呼びに来て……ってことだ。何かあったとすれば、多分上流にあった洞窟だろうな」
「ああ。原因を突き止めれば、自ずと川も元通りになるはずだ」
「そうね。もしかしたら、こちらの世界の洞窟はまだ崩れていないかもしれないわ」
「ってことは、奥にはカガミのカギが……よし、行くか!」
三人は頷き合い荷物を手に取ったが、次には気遣わしげに俺を見た。
恐らく、洞窟には魔物と呼ばれる化け物が襲ってくるだろう。戦い慣れていない俺は足手まとい。
魔物を前にして、さっきみたいにびびってしまったら命の危険もある。
危険に曝されるのは俺だけじゃない。ボッツたちは良い奴だから、俺をかばって……なんてこともありうるわけだ。
「タイチ、あなたは……どうする?」
どうするよ、俺。
自分を、みんなを危険に曝すくらいならここに残って帰りを待っていた方がいいかもしれない。
武器なんて持ったのは人生で今日が初めてだ。
ボッツやハッサンに少しずつ教えてもらいながら戦いに慣れていった方がきっと良い。
いきなり実戦なんて、俺には絶対無理だ。
けど。
かつて母さんに、「あんたは逃げ癖があるのよねえ」と嫌味のように指摘されたことがある。
ここで逃げたら、俺はこれからも何かと理由をつけてずるずる逃げていくに違いない。
まだ不安だから、まだ俺は未熟だから、きっとそんな理由で。
「……俺も行くよ。連れていってくれ」
タイチ
レベル:1
HP:20
MP:0
装備:ブロンズナイフ
くさりかたびら
けがわのフード
特技:とびかかり
最後の最後でさるさん規制にひっかかってしまった。
そっか、ホストだからP2とか関係ないよな…。
太一のレベルが上がりませんが、多分次回で上がるはずです。
アモールの村思い出した!そうだ血のやつだ!
いきなりハードなグロイベントきついねタイチくん。
私がサンタローズの坊ちゃんの家に来てそろそろ4年になる。
出会った時は6歳だった坊ちゃんももう10歳だ。
もうすっすかり人間の言葉にも慣れて会話も不自由しなくなった。
ここまで来るのに結構大変だったな〜。
以前は…。
「リュウ!おねしょしたのなら早く言いなさい!」
「ぼくじゃないよ!ブラドが夜中にいっしょにねたいってきたから……」
「……!?ピキー!ピキー!」 訳(坊っちゃんの嘘つき!)
またある時は…。
「おい、棚の上の花瓶が割れてるぞ!」
「ブラドがその花びんの中に入ろうとして……」
「ピキキー!」 訳(家の中でボール遊びしてたの坊っちゃんでしょ!)
こんな時も…。
「洞窟の中に勝手に入ってきてはいかんと何度言ったら……!」
「ブラドを追いかけて行ったんだよ!スライムはどうくつが好きだから…」
「ピキキキー……!?」 訳(追いかけて行ったのは私だよ!)
それが今では……。
「ホイミン、リュウがちゃんと宿題してるか見張っててちょうだい」
「は〜い!ぼっちゃん、しゅくだいがおわったらあそびにいこうね」
「ホイミンの裏切り者〜。ベトレイヤーホイミスライム!」
「さあさあ、おへやにいこうね〜。ぼっちゃん!」
………あ〜なんか、最近私ドラえもんみたくなってない?
青ネコロボットならぬ、青ホイミスライム……。
まあ何でも夢をかなえてくれるどころかホイミしかできないんだけど…。
……夢かあ…。一体いつになったら人間になれる(戻れる)んだろ私。
この村で坊ちゃんやパパスさんやマーサさんと暮らすのは楽しいけれど、
そろそろ人間になる方法を探しにまた旅にでなくちゃいけないのかも。
私も出来る限り情報収集をしてみたけどやっぱり魔物が人間になるなんて
事はこの不思議な魔法の世界でもそうそうあることではないらしい。
でもホイミスライムが一匹で世界中を旅して回るなんてやっばりむずかしい。
パパスさんみたいなしっかりした人間の庇護下になければ私みたいな
ちっぱけな魔物はすぐに人間に殺されるか捕まってしまうだろう。
いくら人間の言葉が分かるからっていってもやっぱり魔物は魔物なのだ。
それにすっかり人間の匂いが染み付いた私は魔物にとっても危険な存在だ。
人間達が飼い慣らしたスパイかと思われて殺されてしまうかもしれない。
はあ〜…どうしよう。まあここで坊ちゃん達と一緒にいれば安全なんだけど、
やっばり人間になりたい。戻りたい。ちなみにまだその事は誰にも話してない。
長い夢の中でずっと人間の女の子やっててこっちでも人間になりたいとか…。
ずっと私をただの(しゃべる)ホイミスライムだと思って接してくれてる人達に、
実は私は元人間でしたなんて言ったら、なんかこれまで築いてきた関係が
崩れてしまうんじゃないかと思って言い出せない
まあ夢の中の話なんか信じてくれないと思うけどさ。
それほどまでに今の暮らしが心地良いということなのかもしれないが……。
「………………ミン」
「………………ん?」
「ホイミン!」
「……!?ぼっちゃん!」
「どうしたのホイミン!宿題おわったよ!遊びに行こうよ!」
(しまった…考え事しててぼーっとしてた!)
「あ…うん!ぼっちゃん、きょうはなにしてあそぶ?むしとり?」
「今日は森で冒険ごっこをしようよ!」
「う〜ん、いいけどドズルおじさんのこやがあるばしょまでだよ?
それいじょうふかくはいったらパパとママにまたおこられるよ?」
「わかってるって!もうぼく迷子になんかならないよ!」
「やくそくやぶったらもりへいくのきんしになっちゃうからね?」
「うん。ぼく大きくなったら世界を旅して回りたいから約束守るよ。
森でいっぱい冒険のくんれんしないといけないからね!」
「ぼっちゃんはしょうらいぼうけんしゃになりたいの?」
「ううん。ぼくは将来はお父さんみたいなかじやさんになる!
でもお父さんだって若いころは冒険の旅に出てたんだって!
危険な洞くつを探検したり…。おそろしい魔物とたたかったり…
だからぼくも旅に出ていろいろな場所を見てまわりたいんだ」
「それがぼっちゃんの『ゆめ』かあ…。そっか、がんばってね」
「ホイミンも一緒に行くんだよ?」
「………へ?ホイミンも?」
「あったり前だろう!ホイミンはぼくのあいぼうなんだから!」
(私が……相棒……)
「ホイミンはぼくの旅の仲間第一号だよ。ずっとまえからそう決めてた。
ほかにも強い仲間やモンスターをあつめて…世界中のなぞをとくんだ!」
「あはは……それはたのしそうだね」
「きっとホイミスライムがドラゴンになれる方法もみつかるよ!」
(坊ちゃん……まだあきらめてなかったのか……)
「だからホイミン、ぼくが大きくなるまでずっといっしょだよ?
あ、ホイミンが大きなドラゴンになってもずっとずっといっしょだからね!」
「…………うん」
今はまだ小さくても子供はあっという間に大きくなる。
きっと坊ちゃんもパパスさんのような強い戦士になれるだろう。
もしかしたら坊ちゃんと旅に出れば私の夢も叶うかもしれないな……。
/⌒ヽ、 タイチくんももとのせかいにもどりたいよね。
ヽ(;; ^ー^)ノ ここはこわ〜いまものがいっぱいいるからね。
ノリリ从ルヽ まあぼくみたいなかわいいまものもいるけどね!
何もできてないし
せめて保守だけでも
あまりに唐突すぎる。
夢。そう。きっと夢だ。
俺はなぜか今、浜辺にいる。
波の音だけが静かに聴こえる、真っ黒闇の海の方に向きながら波打際に座っていた。
三角座りをして。しかしただ意味も無く黄昏れているわけでは無いようだ。
隣には柑橘系の色をした頭巾を被っている女がいる。
肩まで伸びたごわごわした天然パーマの栗色髪が潮風にいちいち揺れている。
なんとも言い難いババ臭ぇ格好をしたその女は、なぜかとてもとても偉ぶっていた。
「ふーん。そうなんだ?じゃあどうしても教えられないって言うのねっ!?」
腕組みをして、鼻をツンと上に向けて俺を見下す様にして、さっきから何かを聞き出そうとしている。
しかしこの夢はあまりに唐突すぎだ。いきなり問いただされても何のことを言っているのか分かる筈がない。
女は俺がシラを切っていると思い込んでいるのかご立腹のようである。
俺は適当に「ああ」と答えることにした。知らんもんは知らんし。つーかなんだこの夢は。
そう答えるや女はババッと立ち上がり、まさに俺を上から見下すと人差し指をビシッと向けた。
「だったらもう聞かないわ!でもあたしは諦めないよ!」
「そうかよ」
と冷静を保った返事をしてみたが、内心少しビビった。
リアクションがいちいち大袈裟っつーか少々ヒステリックになるようだこの女。
「あんた達が何をしようとしているかきっと暴いてやるからっ!」
いや、俺も知らんし。つーか自分のこと「あたし」って呼ぶのな。別にいいけど…。
「あっいけない!明日は年に一度のアミット漁の日だったわ!」
怒っているのかと思えば急に何かを思いだしたのか女は、海に背を向けて歩きだした。
「じゃあねリノ。また明日ねっ!」
「え?お、おう」
律儀に別れの挨拶を交わすと女は暗闇の中へと消えていった。
………なんだろう、この置いてけぼりの夢は。
なんつってたっけ?網と漁?年に一度?訳分からん夢だ。でもまあ夢ならそんなもんか。
俺も戻ることにしよう。戻るつっても適当にさ迷ようだけだが。
いずれ夢から覚めるだろうと思うし。
しっかしさっきの女、夢の中にしちゃ酷い女だったな。性格も容姿も問題外じゃねえか。
夢の中だったらそう、もっと俺の理想の女の子を登場させるべきじゃねえの?
可愛くてさ。優しくてさ。髪も黒髪ロングで。大体「あたし」って何だよ。「私」だろ。
ったく何で俺の脳ミソ様はあんなババアを登場させやがったんだよ。
これじゃ夢s(ryもしねえっつーんだよ。
防波堤まで歩いてくると、すぐ近くに一つ民家があったので中に入ってみた。
リアルならこんな夜遅くに知らない家にズケズケ入り込む真似なんて絶対しねーけど。
中には見知らぬ中年の女と男が眠っていた。夢の中でも就寝している時間か。なんだか俺も眠気を感じてきた。
このまま寝ちまえば夢から覚めるかな?
と2階に上がり込むと空いているベッドがあったので、俺はそのまま布団の中に滑り込み瞳を閉じた。
「リノ!そろそろ起きなさい!もうとっくに夜は明けてるよ!」
俺はその声で目を覚ました。
しかし、夢から覚めたわけではなかった。
どうやら俺が勝手に入り込んで眠りに就いた場所は、夢の中での俺自身の家だったようだ。
母親らしき女が俺を叩き起こしベッドから引きずり落とした。
「いてて…」と、打ち付けた尻を手でさする。
痛みがあるというのに夢の続きが始まってしまった。
「そらそら!今年は年に一度のアミット漁の日でしょ」
ああ?ああそういや昨日の女もそんなこと言っていたな。
しかし「そらそら!」とか急かす強引な母親の姿は、実の母に少し似ていると思った。
「父さんはもうとっくにアミットさんの港へ出かけていったよ。リノも早く起きて支度しなさい」
「へいへい」と、いつもの様に返事をして起き上がり学校へ行くための支度を…。
じゃなかった。これは夢だ。ええと、漁?港?船に乗るのか?
適当にタンスを漁ると、皮の帽子が出て来たので俺はそれを身につけた。
心なしか守備力が若干上がった気がする…。ってドラクエじゃねっての。なんだこの夢。
「支度は出来たかい。漁師の息子が寝坊したんじゃ話にならないからね。」
「へえ…」
俺は漁師の息子のようだ。興味無ぇけど。
「早くアミットさんの港へ行って父さんを手伝っておやり」
「えー」
と、やる気なさそうに返事をしようが母親はお構い無しだ。
テキパキと台所に立って動き回る母親は、横目で俺にもテキパキ動けと、そう促しているように見えた。
しゃーない。港に行ってみるか。
「ちょっとお待ち。父さんにこれを届けてやっておくれ」
と、父親が好きだというアンチョビサンドを俺に手渡した。
何だよこれ。アンチョビサンドって。そんなハイカラなもん俺食ったことねえし。まあいいや。
「じゃあ行ってくる」
いつもの様にして母親に挨拶をして俺は家を出た。
目の前には広大は海原が広がっている。どこまでも続く青い海と空。
海から運ばれてくる潮の匂いも。波の音も。夢にしちゃ出来すぎていた。完璧ですらある。
しばらく眺めて感傷に浸るのも悪くない。そんな海岸だ。
それでも俺はこれは夢の中なんだと、疑いすらせずに歩き始めた。考えてもわけわからんし。
港に着くと一隻のデカイ船と出港の見送りの人々でちょっとした騒ぎになっていた。
そういや年に一度の漁とか言っていたもんな。
なんでたった一年に一回しか漁をしねえのか謎すぎるけど。
つかそれで漁師とかほざくとは笑わせてくれる夢だな。さすが夢。
俺は堤防に群がる人々を掻き分けて船に乗り込んだ。
なにやら漁師共が話し込んでいた。別に聞く気なんかねえ。親父にアンチョビサンドを渡すのが俺の任務。
「ん?おや。リノじゃないか。父さんの手伝いに来たんだな」
と一人の漁師かなんかが俺に気づいた。「ども」と軽く返事を返す。
すると奥から威勢のいい声が轟いた。
「遅いじゃねえか!まったく毎日遊び歩いていやがって!」
親父だ。いかにも海の親父した親父だ。よくわかんねえけど。頑固親父か。それは違うな。
「母さんのサンドウィッチは持ってきたんだろうな!」
「当たりめえだろ!俺を誰だと思ってやがる!」
俺も海の親父のテンションで言葉を返してみた。しかしやはり性に合わなかった…。やめよ。
俺は丁寧に親父にアンチョビサンドを手渡した。
親父はそれを漁師たるゴツゴツとした手で鷲掴みにし、中身の物体が溢れ出し床にこぼれているのも気にせずに
口の中へ一気に放り込んだ。さすが海の親父だけあって豪快だ。さすが頑固親父。それは違うか。
しかしムシャラムシャラと美味そうに食いやがる。なんか俺も腹減ってきた。あれ?そういや俺の分は?
「…なにしてんだリノ。ぼーっと見てねえで船室の掃除でもやってこい!」
さすが海の親父。息子のこきの使い方は熟知しているようだ。
反抗して海に投げ落とされたるのもヤダし、俺は逃げるように船室へと入っていった。
貨物室かなんかの部屋。今の俺の任務は掃除。
しかし掃除嫌いの俺が夢の中で掃除なんかするわけもなく。
俺の背丈の半分以上もあるタルが何十個も並んだ部屋でサボることにした。誰もいねえし隠れるには絶好場所。
隅っこの方でしゃがんで腰を着いた。煙草がありゃ丁度いいんだがな。ああでも木造の船じゃ厳禁かな。
つか腹減ったなーと思いつつ。辺りを見渡す。食い物ねえかなと。タル何入ってんだろうなと。
…ん?あれは。どっかで見たようなババァ臭ぇ色の頭巾が見えた。天パの髪。もしや昨日の女か?
「おい。こんなと…」
「シーッ!」
俺の声に気づくや唇に人差し指を当てて、黙れの合図を送ってきた。
「大きな声で話しかけないでよっ。あたしがここにいることバレちゃうじゃないっ!」
やはり昨日の女だった。一人称あたし使い。生意気言葉。スイーツ。それは違うか。
慌てたのかドキツイ性格のせいなのかそれともアホの子なのか、その声は俺の声をはるか上回るボリュームだった。
果たしてどちらの声で気づいたのか。隣の部屋からコックが姿を現した。
「やや!マリベルお嬢さん!またそんなところに隠れたりして」
やはり見つかった。マリベルは俺を睨みつけた後に、某ぐぬぬ画像に匹敵する表情を見せ立ち上がった。
つかこの女の名前マリベルっつーのな。
「もう……。いいじゃないの。あたしが漁について行ったって!」
マリベルは開き直ったのか、両手を腰につけ胸を張った。うむ。大した貧乳である。
「ね。見逃してよコック長!あなたの作るシチューって最高よ!ウフフ…。」
驚いた。こいつ相手の機嫌を取り繕うことを考えられる奴なのか。尊敬するぜ貧乳ぐぬぬ頭巾女。
「…わしにおせじを言っても無駄ですぞ。さあお父上に叱られない内に船をおりなされ。」
コック長はいつものことなのか、笑いながらマリベルを簡単にあしらうと厨房の方へと引っ込んでいった。
ぐぬぬ女マリベルは再度ぐぬぬしながら俺へと振り返ると、両拳を横に振り下ろし溜めたものを吐き捨てた。
「きい〜っっ!なによリノのバカっ!あんたとキーファ王子の秘密の場所ばらしちゃうんだからっ!」
フンっ!とそっぽを向いてそのまま甲板へと出ていってしまった。
対して俺は面を喰らってしまいしばらくそのまま動けずにいた。
八つ当たりって奴か。喜怒哀楽ハッキリさせることは良いことだが八つ当たりはよくないぞ。うん。
ところでキーファオージって誰だ。秘密って何だ。なぜ当の本人の俺が秘密を知らないんだよ。
その後、俺も親父と一緒に船を出るのかとおもいきや、まだまだ未熟者らしく港に残されたのである。
わけわかんねー夢はまだまだ続く。
前スレで書いてみようかなって言ってた奴です
未熟者だけど適当に書いてく。よろしく
>>124 乙です
7の話は今まであまりなかったので続き楽しみにしてます
>>124 おつおつ
7好きだから嬉しいなぁ
無理せずゆっくり長く読ませてくださいな
>>120-123の続き
「ああこちらでしたかリノどの。王様がなんとしてもリノどのと話したいと申されて…。」
俺は続く夢の中で、一人の兵士に呼び止められていた。
その兵士は金属製の兜、胸当てを身につけていて腰には西洋系の剣を鞘に納めていた。
軽装備ながらもカシャンカシャンと金属の擦れ合う音を立てて威圧感がある。まるで中世の騎士みたいだ。
聞くに王様の使いらしい。こりゃまた突拍子のない夢見てんだな俺。
今いる場所は港、自分家の近く。
親父の乗った船を米粒大程になるまで見送った後、これからどうしよう?と考えていた所へ今の兵士が現れた。
「………王様が俺に話?」
なんだよそりゃ。何者なんだよ俺は。ドラクエの勇者か?さては魔王を倒して参れとか言われんのか?
「いつも通り海岸沿いの道を歩いて北西のお城までご足労願えますまいか?」
兵士は16のガキの俺に向かって尊敬語をまくし立てていた。
「うん。まあいいけど」と返す。なんか偉そうだな俺。
「お願いしましたぞ!ではっ! 」
兵士は一礼をするとくるりと回れ右をして去っていった。
さてどうしよかなぁ。
城かあ。まあ少し行ってみたい気はするし、そろそろ面倒だから夢から覚めちゃいたい気もするし。
あぁでもそういや城の場所しらねえぞ。北西ってどっちだ?
つーか腹減ってんだよ俺。朝から何も食ってねーんだ。とりあえず家に戻って何か食いもんでも…。
と立ちあぐんでいた所、後方から「フフフ……」と不気味な笑い声がした。
げっ…。
振り向くと、マリベルだった。先ほど俺を怒鳴り付けた感情はどこへ行ったのか、機嫌は直っている様子。
相変わらず蜜柑の匂いがしてきそうな頭巾を被っていて、同系色の服で身を包み込み見た目はババアである。
腕を組んで偉そうに立ち、その手にはなぜかリンゴが握られていた。コイツが持ってると毒リンゴに見える。
おおっ。今リンゴかじりやがった。しかも皮ごと丸かじり。大胆な奴だ。シャリシャリ食ってやがる。
「んぐんぐ…。んいあわおリノ。あたおいろへシャリッ。おわえたのえ?もぐもぐ…」
「ああ?何?」もぐもぐじゃねえだろ。物飲み込んでから話せよおい。
「…んぐ。またお城へ呼ばれたのね?」
また?またってことは結構お城に呼ばれちゃう系なのか俺は。
「ああ。そうだ」と答える。
「あたしも一緒に行くわ!いいわよね?」
そう聞いてきたマリベルは乗り気満々といった様子で、俺についてこようとしているのが感じ取れた。
そんなマリベルに悪いのだが、はっきり言おう。
ちょっとあんた恐いからいいです。と、林檎丸かじりする人はちょっとご遠慮願います。と言おう。
「いや、その、俺一人で行ってくる。」
そう答えるや、マリベルは眉間にシワを寄せツカツカと俺に歩み寄ってくる。
「な、なんだよ」
と、たじろぐ俺の胸の辺りを人差し指で痛いくらいに何度も突っつきながら
「さっきはあんたのせいで船から出されちゃったのよ!このくらい諦めなさいよ。さあ行くわよ!」
と言い放ち、初めから選択権は無かったのかおそらく城の方角へとマリベルは勝手に歩きだした。
なんだろうこの子…、俺とコイツは一体どんな関係なんだ。正直おっかねえんだけど俺…。
「なあ、おい…」
「なによ?さっさと村を出てお城に行くわよ!」
マリベルはもはや聞く耳持たんとプイッと振り返り、リンゴをまたかじるとさっさと歩いていく。
なあなあ、俺いらなくね?一緒に行っても得にはならんだろ。
と、ここで我慢の限界がきたのか俺のお腹がぐぎゅるるると壮大な音を立てた。
「何?もしかしてあんた朝ご飯まだなの?」
「ああ」と力無く答える。しかしマリベルは
「言っておくけど待たないわよ。ほら何してるの。さっさと行くわよ」
と、冷たく吐き捨てていく。
鬼だこいつ。鬼のマリベル。略して鬼ベル。鬼頭巾。貧乳毒林檎鬼婆頭巾だ。なるほど。分かったぞ。
あの頭巾の中には2本の尖った物が生えているに違いない。きっと隠していやがるんだ。恐ろしや。
そんなことを考えていると、不意にポンと俺に向かって丸い物が投げられた。リンゴだ。
しかもマリベルがかじりついていた食いかけのリンゴ。
「仕方ないからあげるわ。あたしダイエット中だから。」
「え…。ああ…」呆気に取られる俺。
「何よその顔。嫌なら返しなさい!」
「いや!食うよ!食う食う!」
そう言いながらリンゴにかじりついた。無我夢中にかぶりつく。
それを見て「…フン」と鼻を鳴らしてマリベルは振り返り先を歩いていく。ふうぅ。
とりあえず食べるしかないだろう。本当はアンチョビサンドとか食いたかったけどここで嫌だとか言えねえわ。
マリベルがかじった奴だから少なからず毒リンゴではないことは確かだし。
背に腹はって奴か。違うか。でもまいいやもうこれで。
俺はリンゴに歯を立ててかじりつきながらマリベルの後ろを追っていった。
ナイスツンデレ!
「おいおいなんだこのだだっ広い草原は…」
村を出た俺は唖然と目の前に広がる光景をポカンと口を半開きにして眺めていた。
平原。森。高原。山。海。村を背にしたら人工的なものなど無いに等しい自然の世界だった。
城へと続いてるであろう登山道のような粗末な道。それだけだ。
「お城まで近いようで意外と遠いのよね。一人だとなかなか出かける気にならなくて。」
マリベルはどこまでも続くかの様な平原を悠々と歩いていく。
当たり前の様に。慣れ親しんだこの世界の住人の様に。
俺はただマリベルの後をついていく。
本当にここは夢の中なのだろうか?
若干不安になる。でも今はまだ深く考えていない。考えたら余計不安になるだけだし。
「そういえばお城にはキーファ王子じゃなくて王様に呼ばれたんだよね。珍しいわね。王様がリノに何の用かしら」
「さあ?」と適当に答える。真面目に知らんし。
前にも聞いたがどうやらキーファって言う王子と知り合いらしいな俺。
王子ってことは会った時に畏まんなきゃなのか?どう接すりゃいいんだよ。
20〜30分くらい歩いたろうか。城へ続く城下街へとたどり着いた。
へえー。結構綺麗な街だ。レンガ造りの家々。街の中心地には広場があり、大きな噴水が沸き立っている。
建ち並ぶ建物の隙間から遠くにそびえ立つ城が見え、さっき会った兵士もそうだが周り全てが中世の雰囲気だ。
「やっと着いたみたいね!じゃああたしはここで。」
「え?なに?」
街に到着するなりマリベルは独りでさっさと街の中へと消えて行こうとしていた。
「おい。帰りどうするんだよ」そういや携帯も無えし、この夢の中の世界。
「え?帰り?うーんと…そうね。いいわ、帰りは帰りでなんとかなると思うから。じゃあねリノありがとね。」
はしゃいだ子供みたいに掛けていった。
えらく勝手な野郎だ。「ありがとね」なんつわれてもお前が勝手に強引についてきたくせにな。
まあいいや。解放されたと喜ぶべきか。独りで城に行こう。ついて来られても喧しいだけだし。
軽く街を眺めながらそのまま抜けていくと城の門へと辿り着いた。
威風堂々といった主立ちで間近で見るとそりゃ立派な城がそびえ立っていた。名はグランエスタード城。
門番に話しかけるまでもなく「お待ちかねですぞ」と言われた。顔パスか。こりゃ楽に王様に会えそうだな。
俺は無駄にデカイ門をくぐり抜け城内へと入っていく。
城の中広っ!天井高っ!柱太っ!花壇があるぞ花壇っ!赤じゅうたん赤っ!
といちいち驚きながら奥へと進み、無駄に幅広い階段を上っていった。階段幅広っ!ってもういいか。
きっとこの先の大広間の部屋に、王様は無駄に豪華な椅子に偉そうに踏ん反り返って座っていることだろう。
そう思っていた。しかし。
リンゴは皮付きで食べるのが世界の標準だぞww
とくにフィッシュベルに農薬があるとは思えないし
虫がいても胃酸で死ぬし
階段を上りきった所に怒声を上げている王様らしき姿があった。
「キーファ!キーファ王子はまだ見つからんのかっ!?」
周囲にいる兵士に向かって怒鳴り散らしている。
「むむむっ!あの大バカものめ!今度という今度は許さんぞ!!」虫けら共!!と言いそうなブチ切れモード。
それを大臣らしき人が必死に宥めている。それでも王様は収まらない。
しばらくそれを階段の途中で眺めていたのだが、ようやく王様は俺に気がついた。
「待ち兼ねておったぞリノ!はあはあ…」と幾分気持ちを落ち着かせて王の間へ俺は連れていかれた。
「リノよ。ズバリ聞くぞ!このわしに何か隠しておろう!」
いきなり問いただされた。一国の王に。俺的には初めて会った王に。しかもさすが王様だけにすんげえ迫力。
はい。と答えるべきか、いいえ。と答えるべきか。どうする。迷ってる暇はない。
「いいえ」と答えた。本心だ。俺は知らん。
「とぼけても無駄じゃ。わしの目は節穴ではない」
いやいやいやいやいや…。
「近頃のキーファはまるで何かに取り付かれた様に落ちかぬ様子であったが
今日はとうとうあの大バカモノは妃の形見の指輪を持ち出しおった。」
そんなこと言われてもですね。まずキーファって王子を俺は知らんのですよ王様。
その後もキーファのことをあーだこーだ愚痴を聞かされ、おかげキーファってのがどんな野郎か分かった。
とりあえず次期国王には向いてないのは分かった。何してるのかわからんがいっつも遊び歩いてるらしい。
ともかくなんとかしてくれ。と王に頼まれた。こっちがなんとかしてくれって感じ。
でもまあ、王の頼みでもあるしキーファって野郎を探してみるか。一応検討はついているし。
マリベルの言ってた「俺とキーファの秘密の場所」だろ。多分。そこがどこだか知らんけど。
「秘密の場所ばらしてやるんだから!」とか言ってたからマリベルは知ってるだろ。多分。
ええと、つまりあれか?城下街にいるマリベル探さねえといけねえのか。
めんどくせえな。どこだよ。ったく。なんで携帯持ってねんだよお前ら。不便過ぎるわ。
俺はその後、城下街でマリベルを探し回ったがどこにも見当たらないので諦めて帰ることにした。
グランエスタード城からまた30分程かけて俺は港へと戻ってきた。
しかし独りでの帰り道は空しいことこの上なかったな。
一体俺は夢の中で何やってんだろうって…。
マリベルは帰ってきているだろうか。マリベルの住む屋敷へと向かう。
マリベルはこの港における網元の娘らしく大層裕福な家庭で育ったようだ。
この港で暮らしている人々はきっとその網元であるマリベル家には頭が上がらないんだろう。
そんな環境で育てば自由奔放に、わがままに育ってしまうわけだ。
「あたしは網元の娘。あんたは漁師の息子。立場を分かってる?」
と先程の城へ一緒に向かう途中に、俺は散々マリベルにそう小突かれた。
お前が偉いんじゃねぇのにな。困ったお嬢様だ。
えーと、でかい家でかい家……あれか。
探すまでもなくここは小さな漁村。どの家がマリベルの家か一目で分かった。
「あらリノ。あたしがちゃんと帰れたか心配して来てくれたのかしら?」
マリベル家を訪ねるなりマリベルは姿を現し、早速言うことを欠いてきやがった。
「そんなんじゃねえけど…。」と答える。俺はお前に聞きてぇことがあって来たんだよ。
「ふーん。でもご心配なく。オルカの奴が頼みもしないのに家まで送ってくれたから」
聞いてねえっての。オルカって誰だ。
「それよりさっきまたキーファ王子がこの辺りをウロウロしていたわよ」
「おっ、そうなのか。」どこにいるんだろうな。例の秘密の場所へ向かったのか?
「あんた達また何か企んでいるんじゃないの?あたしに内緒でコソコソ出歩いてさ」
そう疑いの目をかけてくるマリベル。腰に両手をつけ相変わらず偉そうな態度だ。
「そんなんじゃ…ねえけど…」曖昧に答える。
「いったいキーファと何をやっているのよっ!」
そう、俺はそれが知りたいんだよ。何やってんだよ俺とキーファ。
俺より背が低いくせにマリベルは上から目線でずいっと迫り寄ってきた。
「ふーん。まだ黙ってるつもり?あぁそう。あんたはあたしに、いーっぱい借りがあるはずよね?」
借りがあるのは漁師やってる俺の親と網元をしているお前の親にだろ?でもまあいいやそういう流れで。
「だ・か・らぁ。あたしも一緒に行くわ。いいでしょリノ?」
そう言いながら鼻先10cmまで顔を近づけてくるマリベル。近過ぎだろおい。こええよマジで。
俺は仕方なく頷いてやると、マリベルは満面の笑みを浮かべて手を合わせ大いに喜んだ。
つーわけでマリベルと共に秘密の場所へと向かうこととなった。
今日はここまで
読んでくれてる人いて嬉しいわ
つか常識が足りねえな俺。すまん
乙です!
マリベルの存在が濃厚で笑いを誘われるww
マリベルって最近になって評価が高いね。
ツンデレが世間に浸透してきたから?
7はマリベルいないとなんか辛いお話だね。
このおはなしはマリベル大活躍するといいな。
関係ないけど自分はリンゴは皮ごと食べると
歯の間に挟まって気持ち悪いから必ず剥く。
乙!
秘密の場所にはどうやって行くのかな
他の作品も楽しみに待ってます
自分はリンゴ皮付きがデフォ
投下乙です
乙です〜
いやぁ、でも日本のリンゴはワックスがべたべただから皮剥くよね
DQの世界ではもちろん無農薬だろうから丸かじり安心だね
>>137 前歯の間にはさまる。しかも痛いorz
マリベルの食べかけリンゴ、俺も喰いたい。むしろマリベルを・・・
いいかげんスレ違いだが、リンゴの表面のつるつるワックスかけてるんじゃないぞ
完熟した時にでるリンゴ自身のロウ物質だから安心して豪快に皮ごと食べてくれ
※無農薬ってわけじゃないから一応洗ってくれ
自然の歯ブラシと言うくらいだから、歯につまるのは歯並びが悪いのかもな
俺もだw
142 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/03/24(木) 05:27:37.58 ID:2mMO/7QLO
ほ
>>128-134の続き
鼻歌混じりのマリベルは俺の先頭を切って歩いていた。
村から出て既に30分以上は歩き、だだっ広い野を超え今は深い樹海の真っ只中である。
俺の知らない、俺と王子の秘密の場所へと向かって、マリベルは森の中を迷うことなく突き進んでいく。
ところで、今まで内緒にされ仲間外れにされていたマリベルが、何故秘密の場所を知っているんだろうか。
「ふふん。バカね。あたしに隠しごとなんてして隠し通せると思ってたの?」
肩を浮かせながら歩くご機嫌のマリベルはそう答えた。いや、答えになっていないんだがな。
でもまぁ、いっつも不機嫌そうなコイツが機嫌良さ気なのはいいことだ。
内緒にされていた怒りよりも、今こうして仲間に加わり秘密の場所へ行ける喜びのほうが大きいんだろう。
マリベルは時折、森の中で綺麗に咲き誇っている草花を見つけては、眺めて蜜の匂いを嗅いでみたり
木々に止まる色鮮やかな鳥を見て、可愛らしくその鳴き声を真似てみたり。
その様は実に女の子らしい女の子だった。
鬼頭巾鬼ベルという(俺の中で勝手につけた)あだ名が嘘の様である。
それは置いといて、まぁマリベルのあの性格なら秘密の場所を知っていてもおかしくねえなぁ、とも思う。
男にも劣らなく強情で、船に一人隠れて勝手に乗り込もうとするような行動力。
何にでも首を突っ込みたくなる性分なんだろう。
きっと隠れてコソコソついてきていたに決まっている。そう考えると知らない筈がない。
もっとも、それは俺がこの夢の中へ入り込む以前の出来事だからよくは知らんが。
「なにぶつぶつ言っているのよリノ?」
「おわっ!」
突如眼前いっぱいにマリベルの顔が映し出され、俺は驚いてのけ反り勢い余ってドテッと尻餅をついた。
と同時に尻の骨にリアルな痛みが走る。
大したことはないようだが、痛みがあるってことはやっぱ夢じゃねえんじゃねーのかコレ…。
「な、なんでもねえよ」と尻に着いた砂利を払いながら起き上がった。
「へんなリノね。目的地に着いたんだからシャキッとしなさいよね!置いて行くわよ!」
。
「え?」
俺は顔を上げマリベルが足早に駆けていく先の方を見た。
森の抜けた先に、存在をひっそりと隠すように霧を纏った遺跡の様な建物がそこに見えた。
あれが、秘密の場所か。
「なっ!?マリベルか!?なぜお前がここにいるんだ!?」
薄い霧の中、ひび割れた石壁の向こうで驚きに満ちた男の声が響いた。きっとキーファ王子のものと思われる。
マリベルに遅れて入った遺跡を、俺はその声のする方へと壁づたいに歩いていた。
が、石壁は迷路の様にあちらこちら分かれていて、そちらに行こうにもなかなか辿り着くことが出来ない。
「あたしをのけ者にしようったってそうはいかないのよこのバカっ!」
向こう側でまたなんか聞こえた。マリベルの恐ろしい声だ。さっきまでにこやかだった筈なのにまたコレだ。
どうやら二人で言い合っているようだが明らかにマリベルの方が声がでかい。
男の方の声は気圧されたのかみるみる小さくなっていく。一方的だ。どうしたんだキーファ王子とやら。
言い合ってくれるおかげで方向は分かるんだからな、今行くから頑張って言い争いを続けてくれ。
しかし結構デカイ遺跡のようだ。見通しの悪い霧と頭上を遥かに越す壁によってその全貌は計り知れない。
なんなんだろうここは?ここには一体何が眠っているんだろう?。
そんな失われた文明を探るような探究心、とは違うか。単純に少年の抱く冒険心を俺はくすぐられた。
好奇心の強いマリベルが浮かれるのも頷ける。
崩れ落ちた壁を乗り越えた先に小さな小部屋があり、そこにマリベルとその男はいた。
キーファ王子。そいつは金髪の男だった。
俺よりも背が高く気品溢れる服に赤いマントを纏い、王子たる雰囲気を漂わせている。
体型もがっしりとしていてヤワな現代人とは程遠い。顔付きも逞しいものを感じる。
あの王様がこの王子の一体どこに不満があるというのか?と疑問にすら思えてくる。
忌ま忌ましいほどに顔も整い過ぎだしな。
しかしそんな強くて逞しそうな男が、吹っ飛んでいる。宙を舞っている。滞空時間およそ2秒…って、えっ?
「おおイテテ…。おっ!リノか。聞いたぞ?秘密をばらしてくれたんだって?」
「えっ?ああ。ゴメン。…って、えっ?」俺は戸惑った。
キーファは何事も無かったように立ち上がり、マリベルは腕を組んでそっぽを向いている。
「まあいいさ。いずれこうなるだろうとは思ってたからな。」
えっ?何が?えっ!?お前が吹っ飛んだことが!?
つか吹っ飛んだぞお前!5mは飛ばされたぞ!?死んでるよ!?何涼しい顔してんだ!?
「そうだリノ!これこれ!これを見てくれよ!」
そう言ってキーファは古ぼかしい分厚い本を取り出し、俺にとあるページを開き俺に差し出してきた。
キーファが言うには城の宝物庫に眠っていた王家の古文書だそうだ。ってか大丈夫なのお前?
マリベルも腕を組んだまま覗きこんでくる。…聞かずとも分かるが吹っ飛ばしたのお前なんだよな?
両者の顔を交互にみやるがいたって普通で、さっきのは幻覚だったろうか?と思えてくる。
俺は古文書へと視線を落とした。
そこにはたたずむ一人の賢者の絵が記されていた。
賢者の持つ杖の先には輝く太陽の光が描かれている。
「どうだリノ!そこに描かれた賢者の絵はそこにある像にそっくりだろ!?」
そう言われて見て気づいた。
確かにこの部屋の中央には本に描かれている賢者の絵と全く同じ像が、朽ちかけているものの起立していた。
「俺の勘が正しいければ…ずばりこの像に何かをすれば何かが起こる!ってことだぜ!」
マジかよ。何が起きるんだよ。話しがぶっ飛び過ぎだろ?いや、お前は確かに吹っ飛んだけど。
「あの建物の扉が開く仕掛けがきっとこの像にあるに違いないんだ」と、キーファは確信じみた表情をみせる。
扉?なんだそりゃ。開かず扉があんのか?そりゃ気になるが。
「その絵を見る限りキーワードは太陽だ。そこでコイツの出番ってわけさ。」
キーファはおもむろに何かをポケットから取り出した。指輪だ。王様が言ってた奴だ。
「じゃーん。これこそ我が王家に伝わる宝珠、太陽石の指輪!」
言うなり、キーファは取り出した指輪を、目の前に立っている像の手に掲げられた杖の先に引っ掛けた。
何かの仕掛けならば何らかの反応がある筈。と自信満々のキーファだったが別段変わった様子は無い。
「うーん…何も起こらないみたいだな。太陽が関係していることは間違いないはずなんだがなあ。」
残念そうに言うキーファは訝し気に眉をひそめた。
ファンタジーな世界じゃあるまいし。と俺は考えるも今の俺は現実の世界とは掛け離れた所にいるのも確かだ。
もしかしたら、という期待も無きにしもあらず。
必死に悩んでいるキーファに感化され、半分半分の気持ちで俺も古文書を手に取り考えてみる。
うーん…。考えてもサッパリだな。第一馬鹿だし俺。
何かスイッチの様な仕掛けが無いかと賢者の石像をいじくり回し、さらによじ登ってみる。
が、何の変哲も無いただの石像、としか感じとれない。
キーファは自分の頭を抱えてなすすべ無しって感じで俺を見上げていて
マリベルの方を見ると、げげっ…。何やら眉をピクつかせて俺を睨んでいた。
「何やってんのよリノ!さっさと降りなさいよ!バカじゃないの?」
マリベルが急になんか怒っている。おー怖い怖いと石像から飛び降りた。
「仮にも賢者様の像なんでしょコレ!?アンタにバチが当たっても知らないわよ!」
おーそんなことで怒られていたのか。「悪い」と俺は石像に謝った。
「さっきから黙ってみていれば全く。誠意が足りないのよアンタ達」
いやあ、誠意って言われてもさ。何の誠意だよ。
「何か考えがあるのか?」とキーファが宥める様に言葉を返す。
ふふんっ。とマリベルは偉そうに賢者の像の正面まで歩き、胸の前で静かに手を合わせた。何すんだろ。
「祈るの。賢者様にお願いするのよ」
何を言い出すかと思えば……。何だそりゃ。願ったくらいでどうにかなるわけねーだろ。ただの石像だぞ?
つーかなんでまた急に乙女チックになってんだよ。
若干アホ臭えよな?とキーファを見ると意外や意外。
「そうか!その線は考えてもみなかったぜ!」
とマリベルの隣に並び立ち像に向かって両手を掲げていた。
「どうか!俺達に道を指し示したまえ!!」とか叫んでいる。
本気だこいつ。いや、こいつら。真面目に祈ればどうにかなると思ってのか。
「おいリノ。お前も祈るんだ。こういうのは皆で心に一つにして祈らないとだめだぞ」
「そうよリノ。ボケッとしてないでさっさと祈りなさい。ぶっ飛ばすわよ?」
「なっ、分かったよっ」と、慌てて駆け寄る。
ぶっ飛ばされたらマジ敵わん。先程の光景が脳裏に焼き付いている。あれが俺だったら悶絶必死。多分死んでる。
ガクブルしながらマリベルの隣に並んで手を合わせて願ってみる。普段はあまり信心とかしねーんだけど。
「どうかぶっ飛ばされませんように。どうかぶっ飛ばされませんように……」
「そんなにぶっ飛ばされたいのアンタ!何願ってんのよ!」
「ぎゃぁっ!」と俺は情けない悲鳴を上げて真横に転がり込んだ。すぐ隣から怒鳴り声がぶっ飛んできたのだ。
その鼓動を止めてしまいそうなほど脅え奮えている心臓に手を当てすう…はあ…と気持ちを落ち着かせる。
くそう。不覚にも願い事を口に出してしまっていたようだ。
マリベルは指をパキポキ鳴らしながら俺に迫ってきたが、キーファがなんとか宥めてくれた。助かったぜ。
しばらくして場が落ち着いたところで俺達3人は、賢者の石像を前に本気で願った。
まぁ、こんな夢の様な中なら不思議なことの一つや二つ起こってもおかしくはないしな、と。
ならばいっそ楽しんでやる。俺はそんな境地になった。
やってやる。この遺跡の秘密を暴いてやる。ってな。
その熱意が伝わったのだろうか。
ゴゴゴゴゴゴゴ……。と、重い石同士の擦れる低い音がした。
目をつぶっていた俺はハッとして石像を見上げる。
マ、マジかよ!?石像が…!回転してんじゃねえか!
キーファもマリベルも驚いて言葉を失いながら石像の動向を伺っている。
丁度180度向きを変えピタリと止まると、そしてその先に向かって一筋の光が射し出された。
「すごいぞ!扉の方向だ!行ってみようぜリノ!マリベル!」
「お、おう!」
キーファに続いて俺は飛び跳ねる様に光の射すへ走り出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!っていうか私のおかげなんだから感謝しなさいよね二人共!」
そう喚き散らしながら追っかけてくるマリベル。
「待ちなさいよバカ!」とか言っているがその表情は驚きと喜びに満ちた笑顔だったので、俺は待ってやった。
今度は先に行ったキーファが感嘆な声を上げ飛び上がった。
「く〜〜っ!!見ろよリノ!ついにやったんだぜ俺達!!どうやっても開かなかった扉が!!」
遅れて俺とマリベルも辿り着いた。
先には巨大な石造りの建築物がポッカリと口を開けているのが見えた。
堅く閉ざされていたであろう分厚い扉は後方へと開け放たれ、封印が解かれたその入口は恐ろしさを漂わせている。
この時俺は初めて、これが夢ならまだ覚めないでくれ。
そう願った。
続く
乙です!
マリベルとの漫才が面白いなぁw
つうか主人公かなりの天然かw
続きにwktkしてます
>>143-148の続き
“遺跡がひらかれた時、伝説はふたたび語られん”
遺跡の内部へと入った俺達は早速入口付近で、床に刻まれていた古代文字の様なものを発見していた。
俺はその文字をなぜか読み取ることが出来て口に出していた。
「ちょっとリノ!なんでアンタこの文字読めるわけ!?どういうことなのよ!」
隣でマリベルがさぞ驚いた様子で喚いてくる。
「俺に聞かれてもな…。読めたもんは読めたんだ。仕方ないだろ」
「何よそれ!アンタのことでしょうが!」
納得のいかない様子のマリベルはさらにぐいっと詰め寄ってくる。
おいおいまたかよ、いちいち突っ掛かってくるなよ…と思う。
ってかな、お前みたいな丸顔で魅力皆無の胸ペッタンコ女に詰め寄ってこられてもただ怖ぇだけなんだって。
シッシッ。離れなさい早く。
「いいじゃないか。読めるんなら、それで」とキーファが俺とマリベルの間に入ってきた。
こんな入り口のとこで揉めてねーでさっさと奥へと行きたいんだ、と言いたげだ。
それを見てマリベルは「フン。絶対許さないんだから」と鼻を鳴らして顔を背けた。
何を許さねーんだかなまったく…。
奥に進むに連れて、俺達は驚いた。とにかく広い。
迷いそうになるくらい複雑で内部は地下深くへと続いていた。
しかも仕掛けやらなんやら仕組まれていて。
いかにも隠された秘密を知りたくば謎を解いてみよ!と言った面構えで侵入者約3名を待ち受けていた。
キーファとマリベルが、俺がアタシがと我先に謎を解こうと、知恵をしぼり、体を張って挑んみ。
俺も謎を解こうと考える、が……
「リノ。それはちょっと違うと思うぜ」
「リノ。アンタはバカなんだから少し黙ってなさいよ」
と両者が俺に冷たいお言葉をおかけになりやがった。
おいおい酷いなお前ら。そりゃねーだろおい。いや俺バカだから別にいいんだけどさ…。
それから俺達3人(と言いたい)は知恵を振り絞り試行錯誤を続け、ついに最深部へとたどり着くことが出来た。
そこは複数の台座が置かれただけの部屋だった。
台座の上にはパズルの様に石版がはめられているが、所々抜け落ちて辺りの床に破片が散らばっていた。
「これは簡単な仕掛けだな」
落ちている石版を拾いあげて台座に次々とはめ込んでいく。
「次は何が起こるんだろうな〜」
「ここまでやったんだから宝の1つや2つ出てこなかったらアンタ達を恨むわね」
そして1つの台座に全てのピースを揃えてパズルを完成させた時だった。
薄暗かった部屋が一瞬の内にまばゆい光が包み込み、視界さえも真っ白に遮られ意味不明な状態に陥った。
「えっ!?ちょっとななんなのよ!この光は!?え?え?え?きゃ〜〜〜〜〜っ!!」
「うわ〜〜〜〜!!!」
声だけは聴こえた。二人のパニックになった声。
それに対して俺はというと、冷静だった。むしろガッカリしていた。
あぁ…これで夢から覚めちまうんだな、と。オチ無しかよこの野郎、と愚痴る余裕すらあった。
しかし…。
「あいたたたた……。」
傍からうめき声が聞こえて俺は目を開いた。
そこには草むらの上で腰を押さえて立っているキーファの姿があった。
奥の方にマリベルも横になって倒れている。
どうやらまだ夢は終わっていなかったようだ。しかしどういうことだ?
俺は起き上がり辺りを見回した。
草だ。一面に草が生い茂って木々が辺りを囲んでいる。森の中か?
さっきまでいた筈の遺跡の建物は全く見当たらない。どうなってんだこりゃ。
「大丈夫か?リノ。マリベル」
「ああ」と答える前にマリベルがわめき立てる。
「大丈夫なわけないでしょ!なんだったのよ今のはっ!?」
「さあな…」と、俺もキーファも肩を竦めて両手を挙げる。分かるわけがない。
「そういえば…見たことない場所だな。島にこんな所があったのか?」
「何言ってんのよ。あったに決まってるじゃない。現にこうしてあるんだし……」
不安そうに辺りを見渡すキーファとマリベル。
俺はまぁ初めからどこだか分からん場所にいたから、もうどうなろうが別にどうってことはないがな。
「…にしてもどうしてここってこんなに空が暗いのよっ!?」
「そういやそうだ。もう夜になったのか?」
「それでなくても気分が悪いのに。もうホントにサイテーな気分だわ」
「………。」
そうですね、とか答えりゃいいのか?何か言ったらぶっ飛ばされそうだ。
「……さてと、じゃあアタシは家に帰るからね。リノ。キーファ」
そう言いつつ背を向けるマリベル。
いやいや帰れんのかよ。ここがどこだか分かるのかよ?森の中だぞ?
と問おうと思ったが次の一言でどうでも良くなった。
「遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね」
そう吐き捨てた。確かにそう吐き捨ててマリベルは去っていった。
俺は驚きのあまり「え?」と口をポカーンと開いたまま呆然とただ立ち尽くしていた。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。
感謝の後の暴言。
聞き返すことも返す言葉も出来なかった。
ただ去っていく後ろ姿を目で追いながら、頭の中で必死に葛藤しているもう一人の俺が現れた。
今あの女、何かおかしなことを言ったな。確かに言った。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。と言った。
………………なんだそりゃ。
ありがとうって言ったのにつまらないとか言うか普通。
大体楽しそうについてきたくせに。さっきまで誰よりもノリノリで謎解きやってたくせに。
俺達以上に少年の心をときめかせていたのは一体誰なんだよ。
意味わかんねー。
マジで意味わかんねーなあの女。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね……だと!?
んぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!!
な、なんだこの感覚は。新感覚だ。まるで俺の頭の中で新たな神経細胞が繋がれようとしている。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。じゃねーって!!
神経細胞どうしが必死に手を結ぼうとしているのだがあと一歩の所で繋がらない。そんな感じだ。
何だそりゃ。自分で何言ってんのかわかんなくなってきた。落ち着け。
あいつはありがとうって言った。でもその後つまらなかったわと言った。でもでも最後にじゃあねとも言った。
繋げると、遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。となる。
ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!!
いや、とりあえず落ち着こう。そうだ。あいつは貧乳だ。胸を張っているがいつもペッタンコだ。ペッタンコ。
いや何を言っているんだ俺は。それは今は関係無いだろ。落ち着け。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。今思ったんだがなんなんだこの文字列は。
古代文字は読めてもこれは解読出来ねーぞ。全くの意味不明だ。説明しろ。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。たったそれだけの筈だ。
なのに、なんかイラつく!悔しい!歯がゆい!でも!でも!
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。なぜか怒りがぶつけられない。
頭から離れない!なんだこりゃ!ヤバいヤバすぎる!
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。うるせえよさっきから!
遊んでくれてありがとう。だからうるせえって!
つまらなかったわ。うるせえうるせえうるせえ!!
じゃあね。うるぅせえええつってんだろううがああぁ!!!
なんなんだあの女!!あの女!!あのおんなあぁぁ!!うおおおああぁぁぁぁぁ!!!!
ふざけんじゃねーぞ!!どうとらえればいいんだ!!こんちくしょうぅがぁぁ!あああああんもう!!
あの貧乳!!洗濯板のくせに!!どうなってんだあの胸!!無い胸で威張りやがって!!
ようし!!こうなったらその胸どうなってんだって聞いてやる!!なんでそんな貧乳なんだ!って聞いてやる!
聞いてバカにしてあの生意気面をぜってー泣かせてやる!!もう勘弁ならん!!
ゴメンねって言うまでぜーってー許さねえんだからなあ!!
はあはあ………。
俺は脳内で一人葛藤し黙ってそれをなんとか深いため息へと必死に変換していた。
あの女のやることだ。気にしたってしょうがねえな、と心をどうにか落ち着かせる。
俺とキーファはしばらく沈黙し、互いに目を合わせあった俺らは
「は、ははは…」とどちらからともなく乾いた笑いを発した後に、何事もなかったように帰ることを決めた。
その直後。
「キャ〜〜〜〜ッ!!!」
悲鳴が森の中を駆け巡る。間違いなくあいつの声だ。
遊んでくれてありがとう。つまらなかったわ。じゃあね。と言い放ったあいつの声だ。
今度は何だよ?マジで疲れるぞあいつといると。
とは言えず俺とキーファは叫びの聞こえた方へ走り出した。
距離は近い。すぐにマリベルを見つけることが出来た。
「どうしたんだ!」と問い掛けるも傍まで駆け寄った所で俺の足がピタリと止まった。
え!?なんだ!?なんでこいつらが!?
現実では一度として実体は見たことはなかった物が今俺の目の前で、マリベルを取り囲んでいた。しかも3匹。
それは青くてゼリー状でちっちゃくてよく跳ねて不気味に笑ってる某RPGの超有名なモンスターだ。
その物体が「ピキーッ!」と牙を剥けてマリベル目掛けて真っすぐ飛び掛かっていく。
「な、なんなの〜〜っ!?」
逃げ惑うマリベルの悲鳴で俺の止まっていた足が再び動きだした。
マリベルの足元に噛み付こうとしたそいつを俺は寸でのところで蹴り飛ばす。
先程のモヤモヤした感情を吹き飛ばすように渾身の力を詰め込んだ。
「この貧乳野郎がああぁ!!!」
パアンッ!と弾け飛ばされたその物体は形無くグチャリと崩れていく。おお。どうやら倒せたようだ。
しかしもう一匹が俺の顔面目掛けて体当たりを仕掛けてきていた。
「……がっ!」
弾ける衝撃。俺は顔を手で拭った。
いってー…。やっぱ夢じゃねーじゃ…ってもう考えるのやめだ。夢の中とかもうどうでもいい。
こいつらがいるということは人間を襲うということだ。やらなきゃやられる。
「なっ…なんなんだ!?このヘンな生き物はあ!」
「そいつは人間を襲うぞ!逃げろマリベル!」
お前ら国民的モンスターのスライムを知らねーのか!と問い詰めたいがそんな暇はない。
残る2匹のスライムの位置を見定めマリベルの前に俺は立ちはだかった。
「リ、リノ!ア、アンタ鼻血でてるじゃないのよ!」
「げ。マジかよっ」格好わりぃな俺。でもな。
俺は男。お前は言うても女。こういう時は守ってやるのが男の道義。あれ?俺って意外と漢気あんなーと感心。
しかし「どきなさいリノ!」と背後から戦慄の一声。キーファと初めて会った時のあの光景がよぎった。
マリベルだ。俺を突き飛ばすとスライムを前にして怒声を散らす。
「よくもやってくれたわね!!鼻血なんかよりもっとイタい目に合わせてやるんだから!このっ!このっ!」
と向かってきたスライムを返り討ちにして何度も踏み潰し始めるマリベル。
既に原形もないほど踏ん付けているがその足は止むことはない。
残る1匹はキーファへと標的を変えるが、俺より数段ガタイの良い男に体当たり食らわせようがどこ吹く風。
片手でスライムを掴み上げるやもう一方の握りこぶしによって一撃で散らしていた。
とりあえずの勝利か。俺達は無事に戦闘を切り抜けた。
「…っていつまで踏ん付けてんだよマリベル」
跡形もなくなってしまったゼリーのかけら一粒一粒をマリベルはまだ一心不乱に踏み潰していた。
「おいマリベル!」
再度声をかけてようやくその足は止まり俺へと顔を向ける。
「な、なによ…」
「なによ、ってもう死んでるだろそいつ。大丈夫だ」
「そ、そうね。」
と返事はするものの顔は固まっている。あれ?
「お前泣いてるのか?」
「え?な!?な、泣いてないわよ!何言ってるのよリノのバカ!」
必死にごまかそうとするもののどうみても目に涙をお浮かべていた。
怖かったんだろうか。こんな粉々になるほどに踏み潰しておきながら。
「それよりもアンタ!さっき何か言ったわよね?」
と表情を一変させるマリベル。
「何が?」
「な、何がじゃないわよ!あの変な奴蹴っ飛ばした時に、さ、叫んでた言葉よ!」
「全く思い出せん。無我夢中だったから…っていやまて。どうしたんだ一体?」
急に頬を赤らめたかと思うと膨れっ面になり思い切り俺にガンを飛ばしてきた。
その面はモンスターよりも凶悪である。
「うるさい!アンタも踏み潰してあげるわ!」
「ちょいお前!待て!いてぇっ!何するんだ!いてぇって!」
「この…」と思わず言いかけて俺は思い出した。この貧乳野郎!っと言ったことを。
あれは不本意なんだ。等と弁明しようがもうどうにもならなかった。
俺はスライムのようにぶちのめされた。
ってなわけで一個めの石版の世界突入まで。
やっとドラクエらしく出来るかな、と。
読んでくれて有難う。レス感謝
投下乙です
リノワロスwww口走るなwwww
あとマリベルかわいいな
てす
おお!!書き込めた!!
皆さんお久しぶりです、オルテガの人です。
いろいろと、本当にいろいろとありまして投稿が滞っておりました。
申し訳ありませんでした。
最初から読み直し、所々修正してまた一から投稿したいと思っております。
少しずつ、長くかかるやも知れませんがお付き合いいただけたら幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
〜序章〜
頭が痛い、割れそうだ。
「この年になって二日酔いか・・・、私もまだまだだな」
40も半ばに差し掛かり、酒の飲み方は充分心得たつもりだったが昨夜は違った。
「久しぶりに羽目を外し過ぎたか、伊代の結婚式だったからな・・・」
大切な一人娘の嫁入り、嬉しくも寂しい日だ、酒も進む。
「今何時だ?会社に行かなくては、いや、まずシャワーを浴びよう・・・」
近くの棚の上に置いてある眼鏡を取りかける。
「・・・・・・?ここは・・・どこだ?」
六畳ほどの部屋だろうか、小さなベッドと小さな棚が一つ
部屋の中央にはこれまた小さな丸いテーブルと背もたれの無い椅子が一つ
テーブルの上にはすっかり短くなってしまった蝋燭が弱々しい灯をともしていた。
「私の・・・部屋では無いな、一体ここは何処だ?」
まだ夢でも見ているのだろうか?思えば昨日どう帰ったのかすら思い出せない。
だが二日酔いの頭痛だけは妙にリアルだ、まるで脳が体に起きろ!
と警鐘をならすように頭だけでなく体全体に響いている。
「むう・・・、水を・・・」
「あら、目が覚めた?」
驚いて声のする方向に向き直す、勢い良く振り返ったせいか頭が揺さぶられまた頭痛が・・・。
「いたたたたた・・・」
「ダメよ、無理しちゃ。まだジッとしてないと」
「あの、貴女はどなたですか?ここは・・・」
『打ち所が悪かったのかしら?』
「大丈夫?何も覚えてないの?」
「すみません、まず水を一杯いただけませんか?」
「どうぞ」
差し出された水を一気に煽る、うまい。
ぬるいただの水がやけにうまく感じた、身体中を染み渡る。
「ありがとうございます、ごちそうさまです」
「お粗末様、少しは気分良くなった?」
「はい、お陰さまで」
確かに気分は良くなった、だが見覚えの無い場所にいる自分、どうやって来た
かもわからない自分、日本語が通じるあたり国内なんだろうが・・・。
良く見るとこの女性少なくとも日本人には見えない。
雪のように白い肌、色むらの無い金髪はポニーテールにしているが胸くらいまではあるだろう。
少しタレ目気味な目尻にホクロが一つ、優しそうな表情を際立たせている。
何よりも瞳、透き通る青一色が日本人では無い事を物語っているように見える。
うむ、美人だ。
「私の顔に何か付いてる?」
「いやいや、すみません。美しい方だと見いってしまって」
「まあ!おべっかばっかり!でも嬉しいわ、ありがとう」
照れた姿に可愛らしさすら漂う、絵に描いた美人とはまさにこの事か。
「ところで・・・。あっ!私、龍三寺薫と申します。」
「はいはいカオルさん、何でしょう?」
「ここは何処なんですか?そして貴女は?」
「はぁ〜・・・、やっぱり強すぎたかしら?」
「はい?」
肩を落としてため息をつく、一瞬チラッとこちらを見た後申し訳なさそうに彼女は語りだした。
「私はルイーダ、ここは私の店ルイーダの酒場よ、それで今いる場所は二階の客間」
「はい」
「カオルさんが今ここにいる理由はね・・・」
「何でしょう?」
「私が昨日の夜街のゴロツキと間違えてフライパンでぶっ飛ばしちゃったせいよ」
「なんと!」
「ごめんなさい!だって暗くて良く見えなかったし目だけがギラギラ光ってたし・・・」
目だけが光ってたとは眼鏡の事だろう、昨日は泥酔していたしフラフラして
それはそれは不審な姿に映っただろうな・・・。
「それで介抱していただいていると」
「本当にごめんなさい!宿代は良いから完全に治るまでいくらでも休んでいって!」
とりあえずここで寝ていた理由はわかった、二日酔いの上に頭も殴られてちゃ頭痛が酷いわけだ。
「あの、ルイーダさん?」
「まだ何かある?カオルさん」
「それでここの地名はなんですか?」
「んっ?あぁ〜・・・、もしかして記憶も飛んじゃったのかしら」
『そんなに強く?』
「ここはストロス・ル・アリアハン五世様の治めるアリアハンの城下町よ」
「アリアハン・・・、聞いた事あるような無いような・・・・・・!」
いや、聞いた事はある、京子に呆れられながら何度もやっていた大好きなゲームだ!
「ちょっ!どうしたの?急に起き上がっちゃキャッ!」
私は突然起き上がり、頭の痛さも体のダルさも忘れて窓に走る。
『まさか!そんなバカな!!』
あり得ない、だがどうしても引っ掛かる。
『ルイーダ・・・、アリアハン・・・、そしてこの部屋・・・』
どうしても信じられない、だが窓を開けた先の光景が疑惑を打ち払ってくれる。
窓に雪崩れ込むように開け、恐る恐る顔を上げる・・・。
「なんてこった・・・」
「ちょっと!カオルさん!?」
あまりのショックに気を失った私が見た物は
いかにも中世的な町並みと夕日に映えるアリアハン城だった・・・。
カオル
職業:サラリーマン
Lv:1
HP:25
MP:0
所持品
ヨレヨレのスーツ 名刺
ネクタイ 携帯 タバコ
ライター
所持金
0G(日本円では5000円)
特技
家事全般(戦闘特技は無し)
今日はこの辺にて。
私は頭の悪い人間ですから推敲したにも関わらず誤字や脱字、日本語のおかしい部分が目立つかもしれません。
どうか生暖かい目で見守っていただけたらと思っています。
改めまして、よろしくお願いいたします。
乙!
イイねぇくたびれ40過ぎの主人公w
今後に期待だ
保守
ほす
>>103の続き
アモールの町から川沿いに北へ徒歩約五分。
そんな最寄のコンビニくらい行きやすい場所に洞窟はあるらしい。
かなりびくびくしながら歩いたけど、結局一度も魔物は出なかった。
多分ボッツが何やら歩きながら撒いていた水のおかげだろう。
初めて出た町の外は、果てなんか無いんじゃないかと思うくらい地平線が続いていた。
こんな光景、都会っ子な俺には今までとんと縁が無かったわけで。
ハッサンに声をかけられるまで、ぽかんと口を開けたまま、俺は動けずにいた。
視界に広がる完全天然の大地は呼吸を忘れるほど美しかったが、
川は変わらず真っ赤に染まっていた。もう気持ち悪くてしかたがない。
ここが夢の世界ってことは、誰かがこんな夢を見てるってことだ。
下に戻ったら誰がこんな気味悪い夢見てたのか調べあげてやらないとな!
「タイチったら。きっとその人にとってもこれは悪夢のはずよ。
どんな夢を見るのか、私たちに選ぶことはできないのだから」
「いやいやミレーユさん、明晰夢っていうのがあってですね」
「なーに言ってんだお前は」
「いてっ!」
「ははは。多分、夢を見ているのはジーナ婆さんだよ」
ハッサンに小突かれた頭をさすりながらも、俺はボッツの言葉に目を瞬いた。
ジーナ婆さん?どうしてあの人だってわかるんだ?
「みんなを起こす前に町の人たちに聞いてみたんだけどな。
ジーナとイリヤという二人組の盗賊が宝を探しに洞窟に出かけて、昨日から戻ってないらしいんだ」
「ふうん、ジーナとイリヤねえ……ジ、ジーナだって!?」
ハッサンが目を皿のようにして大声を上げた。飛び上がらん勢いだ。俺も驚きを隠せない。
確か昨日の聞き込みでは、ジーナ婆さんは元は宝を求めて町を訪れた二人組の盗賊の片割れだったが、
洞窟から一人で戻ってきてそのまま住み着いたって話だったはず。
途中までボッツが聞いたという話と合致している。偶然にしてはあまりに出来過ぎだ。
あれ、ちょっと待てよ?ってことはつまり、
「俺たち、まさか過去に来たのか?」
「いいえ、ここは夢の世界よ。
ボッツの言う通り、これはジーナさんの夢が元になっているんだわ。覚えてる?ほら―――」
―――わしはここんところイヤな夢ばかり見ててイライラしてるんだよ!
「……あ」
「こりゃあますます行かねえわけにはいかなくなってきたな」
「ああ。…見えてきたぞ」
見ると、確かに山がぽっかりと大きな口を開けて赤い水を垂れ流しにしていた。
これまた気味の悪い光景だ。ぶひひん、とパトリシアが鼻を鳴らした。
あ、パトリシアっていうのは馬車をひいている馬のことね。
ボッツとハッサンはレイドックって国の兵隊らしく、初仕事としてはずれの森に住み着いていた暴れ馬、
つまりパトリシアを馬車馬にしようと連れてきた……らしい。
その結果、立派すぎる馬車を持て余していたじいさんには感激され、
王様にも褒められてこの馬車を与えられたとか何とか。
よく暴れ馬が大人しく馬車馬なんてやってるもんだが、何でも散々逃げ回っていたくせに
挟み撃ちにして捕まえた時にはボッツにすっかり懐いていたらしい。
……こいつ、ドMなんじゃね?
ボッツは今まで引いていた手綱をそのへんの木に結びはじめた。
どうやら馬車はここに置いていくようだ。馬車も馬もろくに見たことないけど、
確かにこうして見ると装飾とかすごいし、パトリシアもかなり立派な馬だよなぁ。
荷物だけじゃなく、馬車に何人か乗せても全然平気なんじゃないだろうか。
って、そうじゃないと馬車馬なんて務まらないか。
「これでよし。パトリシア、ちょっと待っててくれよ」
ボッツが馬車の周りにまたもや謎の水を撒き、優しくパトリシアの首を撫でる。
すると彼(彼女?)は目を輝かせ、任せてくれ、と言わんばかりに一声鳴いた。
町の外にも繋がれていたし、待つのも仕事なんだろう。
スーパーやコンビニの店先に繋がれてる犬みたいだ。……っていうのはこいつに失礼か?
「それじゃ行こう。とりあえず中から魔物の気配はしないけど、一応用心して……、?」
先導して洞窟へ踏み込もうとしたところで、ボッツは足を止めた。
同じく異変に気づいた俺たちも思わず顔を見合わせた。
――――洞窟の奥から、水が流れる音に紛れて啜り泣きが聞こえてくる。
ぞわわわ、と背筋が凍るような感覚が走った。今朝の赤い川騒動とはまた別の種類の戦慄だ。
おいおいおいおい、幽霊とかマジ勘弁なんですけど。
幽霊なんて存在しませんよ……ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから。
って、ここファンタジーな世界だったあああああああ!!!助けて花京院んんんん!!
「ねえ、見て!」
ミレーユが囁き声で叫んだ。
見て?何を?何だよ何見つけちゃったわけ?いやだああああ見たくねぇぇえええええ!!
けれど俺は見てしまった。ミレーユの細い指の先、洞窟から流れていく水源。
村では川を赤く染めんばかりだったそれがここでは緩やかな帯となっていた。
曲線を描く帯は流れるごとに薄まり消えるどころか、ますます太くなっているようだった。
色も変わらないとかどんだけ濃いんだよ。っていうか明らかに物理法則無視してるだろこれ!
いやいやだからここはファンタジー世界なんだって、と自分に言い聞かせながら、
俺はおもむろに闇が蠢く洞窟の向こうを見た。啜り泣きは未だ止む気配はない。
……やっぱり幽霊の仕業なんだろうか。まいったな、お経なんて唱えられないぞ俺。
「なるほどな」
ふん、と鼻息荒くハッサンが言った。
腕を組んで仁王立ちするその様は本当に勇ましい。
「ビンゴだぜ。犯人は洞窟の中だ。人間か魔物か知らねえが、とにかくやめさせなきゃな。行こうぜ!」
「ああ」
促されて、じっと赤い帯を見つめていたボッツも立ち上がる。
いつもの人の良さそうな顔は険しくなっていた。
「足下が滑りやすくなってるな。みんな、転ばないよう気をつけて」
松明で足下を照らしながらボッツが言った。
試しに足で地面を軽く擦ってみると、つるつるとした感触が返ってきた。
なるほど、いくら水場だからとはいえ、これは危ない。それにかなり涼しい。
当然のことだが、奥へ進むたび暗闇が濃くなっていき、
それによって否応にでも警戒心を高めさせられた。
近づいてきた証拠か、啜り泣きはさっきよりもはっきり聞こえてきている。
……血の臭いも濃い。
また、泣き声に紛れて何か言っているのも聞こえた。
呪詛か何かだろうか。マジ怖ぇ。
ようやく暗闇に目が慣れ始めてきた頃、
俺たちがいるところより先のところ……だいたい100mくらいだろうか。
そこに橙色の光のようなものがぼうと現れた。
すわ人魂かと身構えたが、光に照らされて何かの輪郭が
ぼんやりと浮かび上がっているのがわかって、俺は目を凝らした。あれはまさか、人?
「…ちない……ない……。この……が、いくら…………いよ……」
うわあ、よく聞き取れないけどやっぱり何か言ってる!
三人の後に続いて15mくらいの距離まで近づいてきたけど、
正直近寄りたくないというのが本音である。
だってそうだろ?こんな暗い洞窟の中、泣きながら一人でぶつぶつ言ってるんだぜ?
さて、この人はどうやら女性で、橙色の光はこの女性が岩に立てかけていた松明の明かりだったらしい。
その松明が微妙に遠いせいで、女性の姿が中途半端に照らされているのが何とも不気味だ。
ここからでは彼女の髪型がベリーショートということくらいしかわからない。あと金髪だ。
「あの人か……?」
そう呟いて、ボッツはその女性にずかずかと近づいていった。
うおおおおおお度胸あるなぁお前!
確かにその人が今回の事件の原因っぽいけども、関わるなやめとけやめとけ!呪われるぞ!
って、あああ!ハッサンとミレーユもボッツに続いちまった!
お前らの辞書に"怖い"とか"躊躇"って文字はないのか!?あ、この世界辞書とかなさそうだもんな……。
「あの、すみません」
ボッツがそっと女性の傍らで片膝をついた。
松明の炎が揺れて、一部しかわからなかった女性の全貌が明らかになる。
整った顔立ち、傷だらけの鎧。そしてゆっくりと上下している左腕。
目についたのだろう、その先に目をやって、彼ははっと口をつぐんだ。
「落ちない……落ちない……」
彼女の右手によって川の中に半分ほど沈められた剣。
それは布で擦られるたびに鮮烈な赤を吐き出し、
ためらうことなく清らかな川を汚し、たゆたっていた。
何度擦ろうとも、どんなに強く擦ろうとも、ならばと優しく擦ろうとも、赤は途絶える気配はない。
ただただ赤と、鉄臭い臭いを吐き出し、辺り構わず汚していくのみ。
「この剣についた血が、いくら洗っても落ちないよ……」
川の水は冷えるだろうに、彼女は凍えるのも構わずに左腕を動かしていた。
その顔は白く、唇も紫色に近づきつつある。
ああ、もう寒さも感じないのかもしれない。
もはや彼女そのものが冷気を発しそうな雰囲気すらあった。
「……何が、あったんです?」
恐る恐るといった風で、ミレーユが女性に尋ねた。
ああ、度胸あるよ本当に。俺なんて震えを抑えるので精一杯なのに。
さすが魔物と戦い慣れてることはある。
ミレーユの声に彼女はようやく剣を擦る手を止め、こちらを振り返った。
頬には涙の跡がいくつも残り、青い瞳からは生気が感じられず、
更に充血して真っ赤になってしまっている。美人が台無しだ。
……なんて言ってる場合じゃない。多分、この人は――――
「すべては終わったのよ……。この先には宝なんかない。あるのは私の愛しい人、イリアの死体だけ……」
ああ、やっぱり。
「そうよ。私が彼を殺したの」
この剣でね、と彼女――――ジーナは川から剣を引き上げ、俺たちに見せつけるようにした。
刀身はまるでペンキの中に突っ込んだかのように、
まるでついさっき誰かを斬ったかのように、鮮やかすぎる赤色に染まっていた。
あれだけ水の中で擦られていたってのに。
だから、とジーナは続け、剣を川の中へと引き戻しまたもや左手を動かし始めた。
その青く赤い目はただ一点のみ、恋人の血で染まった剣のみを見つめている。
「落ちない……落ちない……。この剣についた血が、いくら洗っても落ちないよ……」
ボッツたちがゆっくりとジーナから離れ、俺の方へと戻ってきた。
あ、俺今ものすごい情けない顔してるかも。自分で顔がひきつってるのがわかる。
正直言うと、今朝からグロいこと起きすぎて今にも吐きそうだったりするんだな、これが。
堪えてる俺すごい!褒めて誰か!もう怖すぎて倒れそう!
「あれ、ジーナ婆さん……だよな?」
「多分……。なあ、イリアってジーナ婆さんの相方だったって人だろ?それを、こ、殺したって」
「どうやらこれが悪夢の原因みたいね。ずっと苦しんできたんだわ。お婆さんになっても……」
ミレーユが気の毒そうな表情でジーナを振り返る。
それにつられて、俺も再び彼女に目をやった。
さっきと変わらぬ様子で、涙を流しながら剣を洗い続けている……。
今日何度目かの悪寒が体を走り抜けた。まさに悪夢だ。
けれどあれをやめさせたところで、ジーナ婆さんが悪夢から解放されることはないだろう。
川は元通りになるかもしれないが、ジーナ婆さんがまた悪夢に苛まれれば同じことが繰り返されるだけだ。
「奥へ行ってみよう。もしかしたら、まだイリアさんは生きてるかもしれない」
ボッツの意見に、俺たちは揃って首肯した。
斬った本人が殺したと言ってるんだから生きてるかは怪しいと思うんだが、万が一ということもある。
今頃生死の境をさまよっている可能性もなくはない。
俺たちは泣き続けるジーナの後ろをそっと通り過ぎて、奥にあった地下への階段を下りた。
なんでこんなところに人工的な階段が作られてるのかが不思議でならない。
洞窟の奥にカガミのカギを隠した誰かさんの仕業だろうか?
だったら洞窟に明かりをつけてくれてもよさそうだけどなぁ。変なところで不親切だ。
地下へ下りた途端、俺の体はぶるっと震えた。うー、寒ぃ。
当たり前だけど、やっぱり地下に来ると寒くなるなぁ。地下鉄のホームの寒さを思い出すぜ。
……ん、あれ?
「なんだ?明るいな」
まるで第二の太陽があるよう……とはいかないが、
電球が切れかけている電灯くらいには明るい。
松明がないとほとんど何も見えなかった上とは雲泥の差だ。
光が目に刺さるようで、少し痛い。
「ああ、石が光ってるんだな。よくあるタイプの洞窟だ」
「光る?石が!?」
ハッサンの言葉に俺は仰天した。
光を受けて輝くならわかるが、自分で光る石なんて聞いたことがない!
確かに床や壁、そのへんの岩をよくよく見るとほのかな光を放っていた。
なるほど、小さな光でも集まれば大きな光になる的なアレか。
うーん、蛍光塗料でも塗ってあるんだろうか。っていうか上は真っ暗だったじゃないか!
あっちの石は光らないのにこっちの石は光るのか??
「なあに、ちょっと掘れば違う性質の石が出てくるなんてよくあることさ」
「そ、そういうもんか…?」
そういうもんなのかもしれない。
俺も考古学とか鉱石とかそういった物には詳しくないし、
これ以上突っ込まないでおこう、うん。いやでも、何か納得いかないような……。
「タイチ、それよりも」
「んぁ、ああ、うん?」
考え事をしていた時に急に肩を叩かれたもんだから、間抜けな声が出てしまった。
そんな俺とは対照的に、ボッツは厳しい顔つきだ。どんな顔しててもイケメンだなお前。
ハッサンとミレーユがからかってたけど、マジで王子なんじゃねえの?
……って、茶化す雰囲気でもなさそうだ。
「気をつけろ。ここからは魔物が出る」
「え。な、なんでわかるんだ?」
「匂い、殺気……まあ色々ね」
殺気てwww漫画じゃねえんだからwwwww
……そういえば、ここに降りた途端急に寒くなったけど、もしかして……。
「とにかく、魔物が出た時は後ろに下がってて」
「そうだな。戦い方がなんとなくわかったら参加してみてくれ。その時は俺たちが全力でカバーするぜ」
「お、おう!」
勇ましく返事したものの、内心はめちゃくちゃ不安だった。
もし俺が農家の息子で鶏やら豚やらを捌いた経験があったならば、
ここまで不安にならなかったに違いない。
……いや、捌くのとはまた違う。これからしなければならないのは命の奪い合いだ。
ああ、やばいなぁ俺。生きて帰れるかなぁ。
最初のうちは言われた通り、ボッツたちの後ろで戦いを見てた。
魔物は実にバリエーションに富んでたね。
ぷにぷにした大きな生物を乗りこなす甲冑に、
頭から大きな花が咲いている木みたいな肌をしたじいさんに、
紫の毛皮に黄色いトサカというペンギンみたいな奴に……。
え?平気なのかって?
いや〜意外とすんなりと受け入れることができたんだよな。
普段ゲームとかで見慣れてるからかな。これぞゲーム脳。ちょっと違うか?
それより俺が怖いと思ったのは戦いそのものだ。
いつでも本気でかかってくる魔物もだけど、もうみんなやばいの。
剣を振るうわ拳を振るうわ鞭を振るうわ。
魔物の攻撃で怪我するけど、そんなのお構いなしに戦うからね。
汗が飛ぶ血が飛ぶ四肢が飛ぶ首が飛ぶ。(あ、後半は魔物のだな)
まあそれもホイミやら薬草やらですぐ治るからかもしれないけど、もうね、生き残るのに必死。
戦いが終わるとあたりはカラフルな体液まみれ。
もちろん、ボッツたちもそこかしこに返り血みたいなものを付着させていた。
くせえし不安だったし正直気持ち悪くて吐きそうだったけど、
これも生きるためなんだと自分に言い聞かせて何とか吐き気を押し戻した。
不安定な丸太に乗って向こう岸に渡るという
インディージョーンズなみのアクションを何とかこなし、
更に地下に進んで少しした後、そいつらは現れた。
いかにも悪魔って奴らが1、2、3……4匹!
しかも素手ならまだしも、奴らはフォークのような槍を手にしていた。
「タイチ!武器を抜いて!」
「えっ、で、でも」
思わずどもってしまった。情けねえ。
「大丈夫、落ち着いて。私たちの手が空くまでの間、何とか耐えてちょうだい」
「無理に倒そうとするなよ。無茶は禁物だ」
――――というわけで、俺は今魔物と対峙しているわけだ。
いや〜長いモノローグだった。
って、そんなのんきなことを考えてる場合じゃないんだけどな。
やばいやばいやばいめっちゃ迫ってきてる迫ってきてる。
うわ!よく見たらあの槍、刃先に返しがついてるじゃねえか!
よ、よし、俺だってボッツたちの戦いを見てたんだ。どうしようもなく震える足を奮い立たせる。
このブロンズナイフで迎え撃、迎え撃って……こうなりゃやけくそじゃあああああ!!
「う、うおおおおおおぉぉぉ!!」
漫画の熱血主人公よろしく、俺は咆哮しつつ駆け出した。
魔物もスピードを緩めずこちらへ向かってくる。
多分恐らくきっと十中八九怪我するだろうけど大丈夫!
ミレーユがホイミで治してくれるさああぁぁぁ!!
ずるっ
「―――ぉぉぉぉおぉっ!?」
にっくき魔物まで後30pというところで、視界が急転した。
驚く間もなく体が何かに叩きつけられる鈍い衝撃が俺を襲う。超痛え。
とっさに手をついたからかろうじて頭は無事だったが、
体、特にケツとか背中の痛みがハンパないんですけどこれ!
どうやら踏み込んだ足がつるりと滑り、すっ転んでしまったらしい。
どこまで情けないんだ俺は……。
どこからかきいきいという鳴き声が聞こえてくることから、魔物を倒すこともできていないようだ。
せめて転んだ拍子に会心の一撃を喰らわせるとかできればネタキャラとして際立っただろうに。
いやいやそれよりも!敵の前で無防備な姿を晒すとかやばすぎる。
俺は痛む体に鞭打ち、できるだけ素早く立ち上が……ろうとした。
俺の頭のすぐ上。
魔物が岩壁に両足を着き、耳障りな鳴き声を発しながら
細っこい腕で槍の柄をぐいぐいと引っ張っている。
俺には魔物の言葉はわからないが、状況は火を見るより明らかだ。
賢明な君たちならもうお気づきだろう。
そう!こいつは壁に刺さって抜けなくなった槍を一生懸命引っ張っているのだ!
あ〜あ、そんな返しとかついてる槍使うから……。
呆れながらも、俺は舞い降りた幸運に頬を緩ませた。隙だらけのこいつなら俺でも倒せ―――
「……あ、あれ?」
武器を握り直そうとした右手が空を切る。
まさかと思いつつ目をやると、しっかり握っていたはずのブロンズナイフが忽然と姿を消していた。
慌てて周囲を見渡す。幸い、お目当てのものはすぐに見つけられた。
さっさと回収したいところだが、あいにくなことに手を伸ばしても届かない距離だ。
俺はそうっと岩壁と格闘し続ける魔物の下から這い出した。
気づかれないためにこのままゆっくり行くのもいいが、戦いはスピード勝負だ(多分)。
ぱっと立ち上がってぱっと走ってぱっと武器を回収した方がいいに決まってる!
善は急げと言うことだし、と俺は片膝を起こし、爪先に力を込めた。
「ききー!」
一際高い鳴き声と、何かがぱらぱらと地面に落ちる音とが耳に届く。
まさかと思いつつも嫌な予感を抱きながら、俺はおもむろに後ろを振り返った。
果たしてそこには見事岩壁から得物を救い出し、
歓喜に小さな翼をぱたぱたと上下させる魔物の姿があった。
そう離れていない距離には丸腰な上に背中を晒した人間。
予想外のハプニングに散々フラストレーションを叩き込まれた奴が、それを見逃すわけもなく。
「きー!ききぃーい!」
俺\(^o^)/オワタ
「ヒャド!!」
その時、何かが魔物の顔を横殴り、どちらともが俺の視界から消えた。
やや遅れて、苦痛に叫ぶ悲鳴と何かが壁に打ち付けられる音が響く。
反射的にそちらを向くと、岩壁から地面にずり落ちた魔物がもんどり打っているところだった。
その痛々しさに思わず顔をしかめた。
魔物の顔―――頬に当たる部分が凍り付いている。やべえ、グロい。
「タイチ!大丈夫?」
見慣れぬ凄惨な光景に込み上げる吐き気をぐっと堪えている俺に、
ミレーユが駆け寄ってきた。さっきのはミレーユが?
「ええ、初歩の攻撃呪文よ。間に合ってよかった」
「ありがとう…マジで死ぬかと思った。命の恩人だな」
「まあ、大袈裟ね。気にしないで。仲間なんだから当然よ」
痛むところはない?と聞かれたので、
さっき転んでからジンジン痛む背中にホイミをかけてもらった。
暖かい感触に体だけじゃなく心も癒される気分だ。
治療が終わると、いつの間にか他の魔物を倒したらしいボッツとハッサンが近づいてきた。
「タイチ、これ」
「あ……俺のナイフ。ありがとう」
「まだ生きてる。止めを刺してくれ」
は?
思考が停止する。
ボッツは今、なんて言った?……トドメ?止めだって?
「……お前の世界は平和なんだな。羨ましいこった」
溜め息混じりにハッサンがつぶやく。俺は考えるのに精一杯で動けない。
止め?なんで?もう決着はついたじゃないか。
確かに魔物は凍れる痛みにもがき、身動きが取れないながらも、
まだかろうじて生きているようだった。けど、俺たちを襲う力は残っているようには見えない。
なのに殺せって?俺に?
「いいか、タイチ。手負いが一番危ねえんだ。
ここで見逃したところで礼を言われるわけでもねえ。いずれ報復しに来るぜ」
「で、でも」
「見ろ。こいつはまだ武器を離してない」
ハッサンの逞しい顎が、弱っている魔物、正確には魔物の手を指し示した。
一見ひ弱そうに見えるその小さな両手はしっかりと槍を握っている。
そして、俺たちを睨み上げる目からは憎しみがはっきりと感じ取れた。
きっと二人は正しい。
殺したいほど憎い敵に瀕死にされた挙句見逃されたとあっては、
こいつはますます俺たち人間を憎むようになるだろう。
その結果仲間を引き連れてこの洞窟を出て、近くの町や村を襲うようになるかもしれない。
そうなれば多くの人が死ぬ。
俺が中途半端な情けをかけたせいで、人が死ぬ。町が滅ぶ。
元の世界に戻るために魔王を倒す?
ああ、口で言うだけなら簡単だ。
そのために俺は、相手が魔物といえどもいくつもの命を奪わなきゃいけない。
覚悟を決めろ、萩野太一。
震える両手でナイフを握り、深呼吸をひとつ。
おもむろに立ち上がり、瀕死の魔物に近寄り、そして。
「ぎぃいいいいいいいいぃぃぃぃぃいいっ!!!!」
肉を裂く感触が、耳を裂く断末魔が、全身を駆け巡った。
タイチ
レベル:5
HP:32
MP:13
装備:ブロンズナイフ
くさりかたびら
けがわのフード
特技:とびかかり
お久しぶりです。
色々ごたごたありまして遅れてしまいました。
お待たせして申し訳ないです。
太一のHPMPの上がり方、必要経験値などは主人公のを参考にしました。
ミレーユってメラ使えないんですね。
書いてから念のために調べたら覚えるのはヒャドで、
多少不自然ですが描写を書き換えざるを得ませんでした。
これからも書いていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします。
6の天馬はファルシオン…
>>176 うわ、素で間違えてました。すみません。
ご指摘ありがとうございます。保管庫の方で修正しておきます。
乙乙
タイチこれから強くなってくのかなぁ。
弱いままの主人公も楽しみっすw
ほしゅほしゅ
GWほす
t
前回
前スレ
>>43-51 【暗黒の希望】
ガーデンブルグ最大の大魔導師イレイノンは、奇妙な夢に悩まされていた。
くすんだ紫の霧の間に垣間見えるのは、無気味な青の海原に、一面鉛色の空。
それは、霧の向こうの不思議な海原であった。
己の立つその場所は、鈍く光る不気味な銀色の床に見えた。
確証が持てないのは、彼の体が、わずかに頭を振ることしかできなかったためだ。
彼は人形であった。
床と海を分かつ縁には、不気味な曲線で形作られ
退廃的な雰囲気を漂わせる、銀色の柵らしきものが見えていた。
それは、人間の常識を超越するものを感じさせた。
ここは、船のような乗り物か?・・・・・しかし揺れは感じない。
ならば今は停泊中なのだろうか。
そして彼は、はたと気がついた。ここが無音の世界だということを。
己の心に、由来の知れない嫌悪感が広がりつつあることを。
やがて頭を締め付け始めた不安と、こみ上げる吐き気・・・・・・
そして彼は、数十年ぶりに不快な寝覚めから飛び起きた。
彼の長いひげは、不快な睡眠のために喉に巻きついていた。
この日を境に彼は、この奇妙な夢を度々観るようになった。
イレイノンは夢を、心の抑圧や欲求が別次元で具現化したものと考えていたので、
この夢も、内容を体系的に評価して無意識下に存在する要因の明確化を試みた。
しかし、己の頭にある古今東西の名書・珍書の知識と、深い思索を用いても、
夢の中の嫌悪感とその無気味な情景について解析することはできなかった。
しかし彼は気づいていた。
海原を眺めさせられている時間が、次第に長くなっていることを。
恐れ、不安、すべての負の感覚が、初期よりも遥かに増加していることを。
彼の体は、日を追うごとに疲弊していった。
ある日。
イレイノンは、もはやうんざりとした夢の旅に出た。
紫の霧。海原。鉛色の空。銀色の船。広がる感情。しかしその日は続きがあった。
膨大な感情、強烈な臭いのような圧迫感が、海深くから浮かび上がる。
己の表皮全面が、何か得体の痴れない邪悪な瘴気(しょうき)に浸食されてゆく。
弄(もてあそ)ばれているような、感覚・・・・・・
音なき世界独特の、見えるものに対する恐怖。
何かが突如目の前に降り立ち、救いようのない精神の崩壊を与えるのでは・・・・
そして海面に、薄緑の影が見えた。
その瞬間、彼の理性は限界を超えた。
絞り出される強烈な叫び声。しかし、音の無い世界では無意味なことだった。
それに彼はただの人形だったので、目を逸らそうとする意志も無駄になった。
海面が盛り上がる。波が作った泡が弾ける。
邪悪なる瘴気の主。
ボゴボゴ・・・・ボゴ・・・・ボゴゴ・・・・・・荒立つ海面・・・
そして、ぬめぬめとした薄緑の体質が、今・・・・・・・
そしてイレイノンは飛び起きた。
それから数日、彼は寝ることを拒んだ。
魔道を歩む彼にとってそれは苦痛ではない。それにその間は、
徳高き彼の理性が失われることもない。しかしやがて彼は、
考えうる最高の魔法陣を部屋に何重にも施し、恐る恐る床に入った。
・・・・・・・その日彼は、夢を観なかった。
長いこと人嫌いだったイレイノンは、多少頭に残る程度の魔導師たちを訪ねた。
半ば伝説と化した魔導師の訪問を受けた皆は、その行動に驚きつつ歓迎した。
己に羨望の眼差しを向ける彼らの弟子たちに、イレイノンはうんざりしたが、
その労苦に見合う有益な情報を得た。
彼らの一部も同様の夢を観ていた。そして夢の質感の高さや情景の長さ、
つまり夢の成熟度は、各人の魔力と比例するとの結論が導かれた。
しかし、イレイノンさえも畏れおののいた夢の情景、
浮き上がる海面や瘴気振りまく物体を見た者は、ついに現れなかった。
これを機にイレイノンは、静かに見下していた皆と文通を再開した。
――――――――サントハイム王国――――――――
先生に休まる日はない。
今日も、何か高名な機関の最高責任者の一行が表敬訪問に来ている。
こちらから出向くときも同じ。国を跨(また)ぎ、たくさんの人と会うのだ。
合間に教会で行う演説は誰でも聞け、身分によらず、誰でも先生と話せる。
遠出の時には旅の扉という、世界に点在する瞬間移動装置を使うこともある。
使うと誰もが、床に吸い込まれるような感覚に辟易(へきえき)とする。
この『失われた古代技術』を解明する僕の試みは、ことごとく止められた。
古代の知的財産や天上の存在に対して、皆、畏敬の念を共有しているようだ。
つい先頃、僕らが設計した原動機がレオ王国で稼働を始めた。
名誉なことに初代国王、獅子王アミル生誕の地に設置されたのだ。
『多忙な』ペトロさんはそれを見ることは叶わないが・・・・・。
これらの装置の性能は、台数を経て全体的に改善しているが、
利用価値は魔法に比べてまだ低い。それに、これ以上を望むために必要な技術、
特に加工技術の解決に時間が要る。苦心の末作った設計図は、当分使わないだろう。
その設計図も、今ではおいそれとは持ち出せなくなってしまった。
慣れとは恐ろしいもので、自分が絵本や小説の中にいるような感覚は
最近ではほとんどなくなってきた。
・・・・・エンドールの新王、フレアネス十一世の使節が帰国の途につき暫く経つ。
理性的で野心家という評価は、よくない噂を生んでおり、
病弱だった先王の急死には彼が噛んでいるという噂も、そのひとつだ。
そういう話を聞くと僕は、自分が根付いているこの地上に、
政治的な謀略漂う王政主義の様相を改めて感じるのだ。
――――――――レオ王国 キングレオ城 王の部屋―――――――――
王は頭を抱えていた。
ソレッタ、サントハイム、リバーサイドヴィレッジが面する、世界の中心の海。
天空への塔や聖地ゴッドサイドがある小島を中心に据えるこの海は、
懐深い海、『オールドワン』と呼ばれている。
世界の創生はこの海から始まったとされているのだ。
主要な海の貿易は、今もスタンシアラ王国の力が強い。だから、
交易全体の活性化という名目の元、幾度も国益を吟味してきた彼らに
同じ鐵(てつ)を踏ませることは、並大抵のことではないのだ。
かつて、一匹の魔物がファン・モール学園への入学を申し出たとき、
時の王は世論の動向を注視し、この重大な決定を次代に託した。
当時はまだ、ピサロによる地上侵略の受難世代が健在であったのだ。
どうやら我々は、時期を間違えたようだった。
相変わらず強気のスタンシアラ。しかし最近、
極めて憂慮すべき行為の前兆を捉(とら)えたという関係者も出てきた。
もし何かあれば、国の生命線である極北の航路、通称『サザンクロス』を
スタンシアラに依存するガーデンブルグとバトランドは、
こちらに味方しないだろう。やはり、先代は偉大だったのだ。
―――――――――スタンシアラ王国 某所―――――――――
臣下「お褒めのお言葉、身に余る光栄にございます。
完成品の試験も滞りなく完了致しておりますので、
ご命令があれば、すぐにでも」
うねる洞穴の深部にぽっかりと空いた、広大な天然の空間。
それは、巌窟王の巨大な城。その入り江は水深深くにて、外界とつながっている。
壁の至るところに掛けられた無数の薄灯り。縦横無尽に張られた木や鉄の足場。
忙しなく動き回る働き者たちの声は、金属音や
何か大がかりな仕掛けを作動させる駆動音の響く中に。
ここはまさに不夜城。2年以上を費やしたこの作業の目的は、極めて効率的に
作業員の士気を鼓舞し続けたことで、予定より早く果たされそうだ。
この作業の本当の目的を、彼らはこれまでも、これからも知ることはない。
最後に彼らには、『確実』で『残酷』な処分が下される手筈になっているのだ。
何も持たぬ者たち。彼らを気に掛ける人間は、限りなく少ない。
岩肌の小さな洞穴から、国王が今も見下ろしていることも、彼らは知らない・・・・。
この後スタンシアラ王は、海軍の老将、『不沈の』アリアロス提督に密使を送った。
・・・・・・そしてスタンシアラ王国からレオ王国に、
領海不可侵条約の破棄を伝える文書が届けられた。
アーシュ
HP 17/17
MP 5/5
<どうぐ>携帯(F900i) E:旅人の服 ゾロフの靴
<呪文> ホイミ メラ
おお、なんだかミステリアスな内容になってますね。
イレイノンの夢とやらが気になります。
おお、修士さんから社会人になってますね。
ご就職おめでとうございます^^
夢は何かの波動なのかもしれませんね。
そして受け取る素養が魔力に比例するという。
アーシュさんも原動機を設計したり設置したり、大活躍しているようですね。
しかし、相変わらず最大HPとMPが・・・。戦闘を経験していないからしかたないのかな。
188 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/05/14(土) 19:25:20.51 ID:smSMddER0
保守!
190 :
1/3:2011/05/21(土) 20:13:32.59 ID:NqSTL7QI0
「だからEDのあれは幻だって」
「いや、本物だろ!」
「一人しかいないとか不自然だろー」
「みんな空気読んで隠れてるだけだ!」
「うはwじゃあ幻じゃないって証明できるのかよw」
「できるしww」
今思えば大口を叩きすぎた。
だが反省はしていない。
「やっぱり無理でした」なんて言ったらm9(^д^)プギャーされるに決まっている。
こうなったら意地だ。絶対ぎゃふんと言わせてやる!
・・・と言っても、やはり情報が足りない。
とりあえず一からゲームをやり直してみよう。
そう思って電源を入れたのだが。
つかない。
思わずカセットを引き抜いてフーフーしてみる。
すると、今度は無事についた。
だが―
デロデロデロデロデンデレン
*「お気の毒ですが あなたの冒険の書は消えてしまいました」
ちょwwふざけんなwww
191 :
2/3:2011/05/21(土) 20:21:28.05 ID:NqSTL7QI0
*「新しく作り直しますか?」
くっ・・・逆に考えるんだ。やり直すから古いデータはいらないと!
*「名前を入力してください」
名前・・・じゃあ地獄の帝王で。
*「その名前はすでに使われています(笑)」
UZEEEEE!! しかも笑いやがった!何このAI!
*「名前を入力してください」
黄昏の騎士!これならどうだ。
*「4文字以内におさめてください(笑)」
最初に言えよ!これは恥ずかしい・・・orz
*「名前を入力してください」
あーもう うるせーな!この***野郎!!」
ほとんど逆ギレ状態で暴言を吐いた瞬間―
*「さっさと行け!この馬鹿者!!」
そんな声と共に雷が落ちてきたw
192 :
3/3:2011/05/21(土) 20:33:45.15 ID:NqSTL7QI0
いやー、今日は変な夢を見たな。
ただのAIにバカにされたあげく、雷に打たれるとかw
「お客さんも大変でしたねぇ」
うん。なんだかまだピリピリしてる気がする。
「あの子達が見つけてなかったら危なかったですな。ははは」
感電ってヤバイよね。
「おおみみずのエサにされる寸前だったとか」
そうそう。おおみみずに・・・おおみみず?
今まで普通に会話してたが、ようやく異変に気づく。
ちょwここどこですかww
「お客さん、まだ寝ぼけてますね?まあ、無理も無いか」
勝手に納得するおっさん。
「ああ!目が覚めたら教えてってあの子達に言われてたんでした」
今度はバタバタと出て行くおっさん。忙しい奴だな・・・・
ややあって、おっさんが誰かを連れてきた。
緑色の髪の子と、耳がツンツンしたカワイ子ちゃんだ。
「目が覚めたのね!よかった!」
カワイ子ちゃんにぎゅうっと手を握られる。
―あれ?なんかデジャヴが・・・
「え?どこかで会ったことないかって?」
なんか君との出会いには運命を感じ(ry
「もう!いきなり口説くなんてヘンな人!」
カワイ子ちゃんがそう言った瞬間、意識が吹っ飛んだ。
ざんねん!わたしのぼうけんはここでおわってしまった!
読み切りかな?
投下乙!
主人公は しんのゆうしゃ だな!w(最後の一文的にどうしてもw)
乙です。
目を開けると、そこは自分の部屋ではなかった。
状況が飲み込めずにキョロキョロしていると、目の前のドアが開いて人が2人入ってきた。
どこかのおっさんと、耳がツンツンした女の子だ。
おお、これは好みのタイプ。
「目、目が覚めたのね!よかった!」
耳がツンツンした子が少々どもりながら話しかけてきた。
気のせいか顔が引きつっているようにも見えるが・・・
「いやぁ、無事で何よりですよお客さん」
おっさんが笑いながら背中をポンポンと叩く。
「しかし、シンシアのおてんばには困ったものだなぁ。まさかいきなり―」
「おじさん!」
何か言いかけたおっさんを女の子がさえぎる。
「・・・・おおみみず」
は?おおみみず?
「あなたはおおみみずに襲われて、頭にひどいケガを負っていたの」
手をぎゅうっと握られて力説される。
・・・ああ、それで頭が割れるようにガンガンするんだな。
「とにかく、無事でよかった!わたしはシンシア。あなたは?」
名前を答えようとして口を開いたのだが・・・
あれ?自分の名前って何だっけ。
地獄の帝王・・・違うな。そもそも帝王って何よ。
地獄にいるのは閻魔様だろ常識的に考えて。
黄昏の騎士・・・m9(^д^)プギャー 中二病w
センス無さすぎwなんでたそがれちゃうのw
―いや、待てよ?これって昔ネトゲでつけた名前だったような・・・
ボーっとしていた頭が一瞬だけ覚醒する。
うわああああああぁぁぁぁああ
黒歴史じゃないかああああああぁぁぁ
「ねぇ・・・話、聞いてる?」
シンシアが腰に手を当て、あきれたように聞いてきた。
いや、聞こえません。何も言ってません。
あああもう、穴があったら入りたい・・・
「あもうって言うのね。よろしく、あもう!」
え。いつからそんな話に。
「え?違うの?」
・・・いや、もうそれでいいです orz
「勇者もあなたのことすごーく心配してたのよ」
ユーシャ?誰それ。
「勇者っていうのはね・・・」
「シンシア!」
今度はおっさんの方がさえぎった。
心なしかあせっているようだ。
「どこの誰かもわからない人に教えてはダメだろう!」
「ううん。大丈夫よ。だって夢で見たんだもの」
そう言ってこっちをチラッと見た。
『夢で見た』なんてメンヘル・・・いや、メルヘンチックな。
「それに・・・弱そうだもの!」
ひどいww
「まあ、シンシアがそう言うなら大丈夫だろう。疑ってすみませんでしたお客さん」
・・・いえいえ。
「そろそろ勇者の訓練も終わるころだから、一緒に行きましょ!」
見かけによらず結構強引な子だ。
こうしてほぼ引きずられるようにして外に連れ出されたのだった。
乙!
新作ktkr!!
どうやら、今までいた場所は宿屋らしかった。
とりあえずあたりを見渡してみる。
民家がポツン、ポツンと建っていて、畑の方が多いようだ。
「小さな村でしょう?でも、のどかで平和なところよ」
うーん。どことなくふるさとを思い出すような・・・
「そういえば、あもうはどこから来たの?」
あらためて聞かれると、返答に困る。
目が覚めたらここの宿屋だったわけで。
それ以外は記憶がはっきりしない。
「もしかして・・・記憶喪失?」
どこから来たのかわからないから、そういうことになるかな。
「う・・・ごめんなさい」
いや〜シンシアが謝ることじゃないさ HAHAHA。
「その原因、わたしかも」
えっ。
「だっていきなり口説いたりするから・・・」
えっ?
「つい、反射的に殴っちゃって・・・」
な・・・なんだってー
シンシアの話によると、さっきのは2回目の目覚めだったらしい。
ただ、おおみみずとやらに襲われていたのは事実だそうで。
助けたあとに様子を見にきたらいきなり口説かれて・・・
驚いてつい、殴ってしまったとか。
そんな ひどい・・・
「だから、あもうの記憶が戻るまで、わたしがついててあげるからね!」
うむ。いい笑顔だ。・・・・強引だけど。
「何か言った?」
いいえ。何も。
そんな話をしながら歩いていると、前方にたたずむ人影を見つけた。
だが逆光でよく見えない。
「あ!勇者だわ!訓練が終わったみたいね」
そう言ってシンシアが駆け出した。
とりあえずそれに続いてみる。
一体どんなガチムチが現れるかと思いきや。
そこにいたのは、緑の髪が特徴的な人懐っこそうな若者だった。
「おつかれさま!今日は遅かったのね。でも無理しちゃダメよ?
・・・そう?じゃあ期待してる!」
なんだか二人の世界に行ってしまっているようだ。
手持ち無沙汰なのもアレなので、軽く咳払いしてみる。
「あ!・・・あもうのこと忘れてたわけじゃないのよ?」
悲しくなるので中途半端なフォローはしないでください orz
「と・・・とにかく!あもうも勇者も仲良くね!」
紹介が適当すぎやしませんか。
・・・あ、どうもどうもご親切に。あもうです。
『よろしく』と言って頭をさげたユーシャを見ていると、なんだか無性に野菜が食べたくなった。
軸足がずれないように地面を踏みしめて。
一点に集中して上段に構える。
そして、そのまま振り下ろす!
「すごいわ!あもうにこんな特技があったなんて!」
シンシアが感嘆の声をあげる。
ユーシャに至っては、目をキラキラさせながら尊敬のまなざしで見ている。
「おお!これはすごい!」
「これは俺も負けていられないな!」
「人は見かけによらないですなぁ」
「やり方を教えてくれ、頼む!」
いつの間にか集まってきた村人たちも、皆一様に感心している。
・・・宿屋のおっさんだけ空気読めてないけど。
でも、ほめられると悪い気はしない。
この村でお世話になって早3日。
自分にできることと言えばこれぐらいしかない。
それで喜んでもらえるなら本望だ。
「それじゃ、次はこっちの畑を耕してくれ」
はいはい。お安いご用ですよ〜。
この村で畑仕事しながら暮らすのも悪くないかも。
そんなことを思い始めた春の昼下がりだった。
剣道かと思ったらそっちかいwww
投下乙!
みみず・・・土の中に住み、微生物や有機物を食べる。
つり用のエサとして利用されることもある。
普通、みみずと言えば手のひらサイズくらいだと思う。
しかし、目の前にいる生物は2mをゆうに超えていた。
「おおみみずが出たぞー!!」
そんなことを叫びながら大慌てで走ってきたのは、ユーシャの親父さんだ。
いつもつりをしてるくせにみみずが怖いとかw m9(^д^)
「わ・・・笑いごとじゃないぞ!早く逃げるんだ!」
いやいや。みみずくらい、ちょっとつまんで捨てればいいだろ。
大体、みみずは畑を元気にしてくれるんだぞ。
それを怖がるなんて・・・謝れ!みみずに謝れ!
「そこまで言うならあもうに任せよう。私は皆を呼んで来る。それまで頼んだぞ!」
ふっ。任せておけ!
数分前のやり取りが懐かしくなる。
ははは。誰だよ、『みみずを怖がるな』なんて言った奴は。
こんなにでかいなんて聞いてな(ry
「キシャアアアアアア!!」
あばばばばこわいこわいむりむりむり
このままでは自分の方がエサにされてしまう。
でも逃げだせば村が、畑があぶない。
なるべく刺激しないようになだめるしかない!
→なだめる
おおみみずはいきりたった!
→説得する
しかし、効果がなかった。
→土下座する
おおみみずは様子を見ている・・・
土下座が珍しいのか、おおみみずの動きが止まった。
不思議そうに首(と言っていいんだろうか)をかしげている。
行動をおこすなら今しかない!
一度深呼吸して、ぎゅっと目をつぶる。
そして一気に立ち上がり、思いっきりタックルした。
ぐにゅ、とか ぶにゅ、とか 嫌な感触がする。
勢いあまって顔面から突っ込んでしまったようだ。
みみずにキスしてしまった・・・死にたい orz
しかし、不意打ちのタックルは相当効いたようで、
頭を左右に揺らしたあと、ゆっくりと倒れた。
おおみみずをたおした!
思わずその場にへたりこむ。
「あもうー!大丈夫!?ケガはない?」
騒ぎを聞いてシンシアたちが駆けつけてきた。
・・・傷だらけです。主に心が。
「丸腰で立ち向かったって聞いたから、心配したのよ」
うんうん、と頷くユーシャ。
いや、ホントに人生終わるかと思ったけどね。
無事に切り抜けられてよかっ・・・
た。と言おうとしたが、ユーシャの表情を見てつぐむ。
まさか。
ゆっくり後ろを振り返ると。
おおみみずが起き上がっていた。
乙!
おおみみずはご勘弁w
てす
第二章 出会い
私が失神した日から2週間がたった、今のところルイーダさんの酒場でお世話になっている。
現在私は殴られた原因での記憶喪失を装っている、ルイーダさんには申し訳ないがこの方が色々と都合が良いだろう。
彼女はいくらでもいて良いと言ってくれている、しかし何もしないわけにはいかないので雑用をやらせてもらっている。
単身赴任が多かったのもあり家事は得意だ、掃除・洗濯・炊事なんでもそつなくこなせる。
夜の酒場ではツマミを作り、昼はランチを作る。彼女は大喜びだ。
「カオルさ〜ん今日のお昼はなぁに〜?」
「今日はクリームパスタとシーフードサラダですよ」
「キャー!また初めての料理ね!楽しみだわ〜」
私がいた世界とこの世界では食文化が違うようで私の知っている料理はこの世界で未知の物のようだ。
例えば小麦、私達の世界では様々な物に姿を変えて食べられているがこちらではパンくらいしか無いらしい。
「ハイ、出来ましたよ」
「良い匂いね〜・・・、う〜ん美味しい!最高!!」
「どういたしまして」
「あの時カオルさんをぶっ飛ばしてある意味正解だったわ、毎日こんなに美味しい料理が食べられるなんて!」
「そんな物騒な事言わないで下さいよ!最近やっとコブが引いたんですから」
「や〜ね、冗談よ!でも料理が美味しいのは本当よ、お世辞じゃ無いわ」
彼女の一番の喜びは食べる事、これだ。しかし自分は全く料理ができないらしく
本人曰く「料理ができなくったって困る事は無いわ」だそうで・・・。
店でもランチ時には近所の奥さんに手伝ってもらい、夜は乾き物のみを出していたらしい。
それでも言い寄ってくる男は多い、彼女ほどの美貌の持ち主なら料理ができないくらい対したハンデにはならないだろう。
それにしても毎日驚くほど沢山食べているのに素晴らしいスタイルだ、本人曰く「美容の秘訣は自分に素直な事よ」だそうだ。
平和だ、この世界は全てがゆっくりと進んでいる。
人々は皆優しいし暖かい、空気も澄んでいてとても穏やかな気持ちになれる。
もちろん街の外にはモンスターがいる、アリアハンの回りはたかが知れているが
私としては自社製品に対するクレーマーの方がよっぽどモンスターだ。
正直私はワクワクしていた、確かに家族と別れて寂しい気持ちもある、だからと言ってメソメソしていても仕方ない。
何れは帰る方法を探す為に旅に出なくてはならないだろう、旅に出るとするとあの伝説の勇者と大冒険に出るのだ!!
少年時代の夢追う頃に戻ったようだ、家族を背負い、仕事に追われた自分とはまったく違う人生を体験できるのだ!
伝説の勇者と旅に出る、と言うのは残念ながら叶わない事だったのだが・・・。
「おっ?うまそうな物食ってるじゃねーか!」
「あら?おかえりなさい、お勤めご苦労様」
そう!私が一番驚いた人物がこの街にはいたのだ!
「おかえりなさいませ、お疲れ様です」
「おう、また食いに来たぜカオルちゃん」
フルフェイスの鉄仮面と無数の細かな傷が付いた鉄の鎧を脱ぎ、2メートルはあろうかと言う分厚い特注品のバスタードソードを
壁に立て掛け、楯の変わりにと鉄板を幾重にも重ねたガントレットを無造作に放り投げ巨体を椅子に預ける。
あの伝説の勇者の父、オルテガだ。ちなみにパンツマスクではない。
最初私は誰かわからなかった、なぜならパンツマスクではないのだ!
オルテガと言えばパンツマスク、カンダタなど目じゃないほど宇宙一パンツマスクの似合う男オルテガ。
第一オルテガの素顔を見たことのある人間がいるのか?ドットではない顔だ!!
例えるなら某狂戦士を少し穏やかな表情にした感じだろうか?普通にダンディーでカッコいい。
それがなんであんな姿に・・・。
はじめてオルテガと出会った時、私は思わず訪ねてしまった。
「あの・・・パンツマスク姿では無いのですか?」
「はぁ?何言ってんだ?俺はデスストーカーじゃねえぞ?」
「そうですよね、失礼致しました」
「あいつらなんであんな恥ずかしい格好で外歩けるんだろうな?俺にはぜってーできねえよ」
「ですよね〜」
謎は深まるばかりです・・・。
アリアハンは世界でもっとも弱いモンスターが出現する地域である、それは何故か?
二百年も前は世界最強の軍事国家であり強大な騎士団を有していた、アリアハン王国は世界を支配していたらしい。
世界制覇を成し遂げた後、初代アリアハン王は自国のモンスターを完全に駆逐しようとしたのだ。
当時のアリアハン大陸は今とは比べ物にならないほど強力なモンスターがいたらしく相当数の騎士達を投入して
なんとか駆逐したようだった。しかしモンスター討伐にと多くの騎士が出払っていた隙に革命を起こされ
あっさりと成功、騎士団は自衛ができる程度の物に一気に縮小され、軍事国家としての力も規模も小さくなってしまった。
今現在のモンスター討伐はオルテガが一手に引き受けている。
たった一人で大陸中を歩き回り、他の大陸からきた手強いモンスターや突然変異などを退治して回っているらしい。
最近では元来からいたスライム・ドラキーなどはオルテガを見掛けると逃げ出してしまうようで
行商人や巡礼神父の付き添いもしているとの事。
「モンスターも恐れる男」「世界最強の男」「不死身のオルテガ」など数々の異名を持つ。
他にも「本気を出すと天地が狂う」「地球のへそはオルテガが開けた」「光輝くオルテガが南の空へ飛んでいった」
など眉唾物な逸話にも事欠かない。
しかしおおらかな性格もあってか国中の人々から愛されており国民的な英雄として慕われている。
他国でも有名なオルテガ、それがなんであんな姿に・・・。
「どうした?カオルちゃん、変な顔してよ」
「あっ、いえ、なんでもありません」
「そういえばオルテガさん、アンナの調子はどう?あんまり心配させちゃダメよ?」
「言うなって、俺はそう簡単に死なねーよ」
「そういう問題じゃないでしょ〜、この時期くらいそばにいてあげなさいよ!」
「わかってるよ、でも生まれてくる子供の為にも頑張らねぇとな」
どうやら私がいるこの世界と私が知っているこの世界は若干時代がズレているようでまだ勇者は生まれていないようなのだ。
するとしばらくの後にオルテガは旅に出るのだろう、そしてあの壮絶な運命を向かえる事になる。
「ゴホン」
酒場の入り口から気付けとばかりにわざとらしい咳払いが聞こえた。
「オルテガ、帰ってきたならまずはワシの所にだな」
「おう!ストロス!すまん、忘れてた」
「今日は遅かったわね、王様」
「ようこそおいで下さいました陛下、さあ、こちらに」
「うむ、今日も美味そうじゃ」
服装こそ質素な物だが気品ある立ち振舞い、柔らかでいて威厳ある物腰、国王ストロス・ル・アリアハン五世である。
「陛下、本日のメニューは・・・」
「カオル、ここへ来た時は陛下と呼ぶな、前にもそう申したじゃろう?」
「はっ、失礼致しましたストロス様」
「まあ良い、いただくとしようか」
彼もまた私の料理のファンなのだ、こうして良くお忍びで食べにくる。
しかし来る時は必ずオルテガがいる時だけ、普段はオルテガが城へ報告にいった後二人で来る。
たまにオルテガが城に行く前に店に来てしまうのでその場合は町民に扮した近衛兵を引き連れて来る。
店はそのつど貸し切り状態、今も私・ルイーダ・オルテガ・王しかいない。
確かに世界最強の男がいれば衛兵は必要ない。
いくら平和な国だとしても一国の主が一人で外を歩く事はできない、それは王自身もよくわかっているようだ。
「ふむ、美味い。特に気持ち薄味なのが良いな、最近味の濃いものはどうもな」
「何を言ってんだストロス、モウロクするにはまだ早いぜ!」
「お前の口は相変わらずじゃな」
世界広しと言えど国王に対して対等に、しかも呼び捨てで話せる男はオルテガくらいだろう。
話しによると昔からの親友なのだそうだ、しかしこんな口振りでもオルテガの王に対する忠誠心は高い。
王とオルテガは二回り以上年が離れているがまるで幼なじみのように笑いあい、私とルイーダも楽しく談笑していた。
リイィィィィィィン・・・
突然耳鳴りにも似た音が響いた、音は小さいが確かに鳴っている。
「なんだ?ストロス!」
音が次第に大きくなるにつれ、店の奥の方に一筋の光が降り注ぐ。
オルテガは壁に立て掛けてあった剣を取り構える、私も何と無く菜箸を構える。
二人してルイーダと王の前に、二人を庇いつつジリジリと店の出口へと後退する。
『モンスターか?いや、バカな』
オルテガは考える
『ここいらのモンスターは雑魚ばかりだ、スライムやドラキーどもにこんな芸当はできる訳がない』
『出口まで後数歩まで迫った、ここまで来ればたとえ爆裂系呪文を使われても充分逃げ出せる』
『何をされても三人は守りきれる、鎧兜を脱いじまってるが俺も一撃で死にやしないだろう』
一筋の光は徐々に太くなり、明るくなる。
異変に気付いた外の近衛兵達が店の中に雪崩れ込み、自らを楯にせんとオルテガと私達の間に割って入る。
光が集束しはじめ、何かを型どろうとした瞬間オルテガが躍り出た!
「先手必勝!喰らえオラァ!!」
相手に向かって斜め上に飛び、壁を蹴って何かを襲う。
斬撃は水平に近い撫で斬り、2メートルはある分厚いバスタードソードから繰り出される斬撃は並の剣ならそれごと両断してしまうだろう。
相手は避けるしかない、しかし・・・。
斬撃は相手を両断したかに見えた、だが剣がその体をすり抜けたのだ。
「うぉッッ!」
勢い余ったオルテガはそのまま後ろのカウンターに激突、しかしすぐに体制を立て直し距離をおく。
剣が効かないと見るやすぐに呪文の詠唱に入る、オルテガの左手が赤く光り放とうとした瞬間・・・!!
「待てオルテガ!待つのじゃ!!」
「ぬおぉ!!!」
ドオォォォン!!!!
無理やり方向を変えられた呪文は店の壁を破りすぐ隣の城壁を派手に吹き飛ばした。
「バカ者!こんな部屋の中でメラゾーマを唱える者がおるか!」
「なんだってんだよストロス!何故止めるッッ!!」
気が付くとあの耳鳴りのような音は消え、光があった場所には一人の女性が立っていた。
「お久しゅう御座います、相変わらずお美しい」
「久しぶりですねストロス、変わりはありませんか?」
「はい、あれから30年、約束は違えておりません」
王がひざまずき、畏まる。
私も含め、その場にいた全ての者が事態を飲み込めずにいた。
「ストロス!どうしたんだ?なんだこの女は?」
「畏れ多いぞオルテガ、ルビス様だ」
ルビス
この世界の全てを造った創造神ルビス、本来の名は“精霊”ルビスだがこの世界の人々は神として崇めている。
「オルテガ、驚かせてしまったことを許してください」
「あっ?あぁ〜・・・、こっちこそいきなり斬りかかってその・・・、すまなかったな」
「オルテガ!口の聞き方をわきまえろ!!」
「良いのですよ、ストロス」
「はっ、失礼致しました」
「他の者達も許してください」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事か、一体何が起こったと言うのか?
オルテガの凄まじい攻撃と魔法に驚いていた矢先にあのルビスが現れた、しかもなんと美しい事か。
スラリとした細長い手足、目の冴えるような深緑の髪は床に届く程の長さでいてまるで羽根のように揺らいでいる。
目・鼻・眉・耳・口、顔を作る全ての部位がまるで神の御技のように人間が想像しうる究極の美を型どっている。
ルイーダも確かに美しいがルビスはそれとはまるで別次元だ、人間が触れてはいけない神々しさがある。
「カオル」
「はっ、はひっ!」
「武装を解除していただけませんか?」
私はハッとして両手に握っていた菜箸を床に落とした。
ん?なんで私の名前を知っているんだ?
「して、ルビス様本日は如何なる御用で?」
「ストロス、まずは楽にしてください」
「はっ」
「それと兵を下げていただけませんか?」
「かしこまりました、お前達、出よ」
王の言葉に我に変える近衛兵達、顔が若干紅潮しているのが見える。
無理もない、私だってただただ見とれてしまっていた。
グイッッ!
「いたたたたた・・・」
「カオルさんてば何よ、鼻の下延ばしちゃって・・・」
ルイーダさんに耳をつねられた、ムッとしているのか口を尖らせている。
「ほら、お茶持ってきてよ!」
「わ、わかりました少々お待ちを」
「俺ビール」
「オルテガ!」
「わーてるって、冗談だっつの」
一応人数分用意しようか、精霊はお茶なんて飲むのだろうか?
「これは何ですか?」
「ミルクティーです、美味しいですよ」
コクン
アツッ!
ルビス様猫舌!
「ルビス様、今日は?」
「今日来たのは他ではありません、闇の魔王が復活しつつあるのです」
「なんと!それは誠ですか?」
「なんだ闇の魔王ってのは?」
「もしかしてあのおとぎ話の魔王の事?」
「あれはおとぎ話ではありません、全て事実なのです」
「おとぎ話とは何ですか?」
「お主は記憶喪失だったな、良かろう、話してやろう」
「ありがとうございます、お願いします」
「その前に・・・、茶をもう一杯くれんか?」
「私もお願いします砂糖を二個で」
うぉッッ!ルビス様甘党!!
改めて湯を沸かしに台所へ、カウンターはオルテガが突っ込んだせいでメチャクチャだったが竈は無事だった。
『しばらく酒場は休業かな?』
ポットごと持って席に戻り全員に注いで回る、全員に注ぎ終わったころ王が語りだした。
「おとぎ話とは言っても古い言い伝えのようなものでな、正直ワシもルビス様が仰るまで作り話だと思っておった」
内容はこうだ
気の遠くなるほど遠い昔、ルビスは世界を造った。まずは大地と水を、次に生命を造った。植物、動物、そして人。
しかし光ある所に闇があるように心清き者と悪しき者と、全ての生命は二つに別れてしまった。
全ての摂理であり法則ゆえいかにルビスであっても抗いようのない物であった。
その摂理はルビスとて例外ではなかった、ルビスが世界を造ったと同時に、ルビスと対等な力を持つ悪しき者も生まれてしまった。
本来心清き者の中にも悪しき心が、悪しき者の中にも清き心が存在するものなのだが。
絶対的な善であるルビスの半身は絶対的な悪であった。
ルビスは持てる力の大半を使ったが滅する事はどうしてもできず、半身を地下世界に封印したのだ。
「その半身ってのが闇の魔王っつんだな」
「うむ・・・そうじゃ、カオル、茶を」
「私もお願いします」
ルビス様三杯目!
支援
なるほど、私はあまり詳しく無いですが私の世界で言う聖書の中の話みたいな物なんですかね。
「お茶どうぞ」
王の話しに真剣に耳を傾ける私とルイーダ、黙して語らずのルビス、飽きてきてアクビをしているオルテガ。
だが次の一言でオルテガは跳ね起きる事になる。
「あなたが倒しに行くのですよ、オルテガ」
「はぁ?んだそりゃあ!?」
「ル、ルビス様?」
「今日ここに来た理由の一つがこれを伝える為です」
「オルテガさんどうすんの?」
「・・・、別に良いよ」
「誠か!オルテガ!!」
「だってよ、魔王が復活したら世界は滅びるんだろ?」
「はい」
「んじゃあ行くしかねぇな」
「オルテガ、もっと悩む物では無いのか?魔王を討伐しに行くんじゃぞ?」
「だから悩んだって」
「ものの数秒じゃろうが!アリアハンでモンスターを間引くのとは訳が違うのじゃぞ!!」
「俺はよ、もうじきガキが生まれんだよ、そのガキが生まれた時魔王に支配された世界なんて悲惨すぎんだろ」
「な、なんと・・・」
「何もしないで死ぬんだったら一匹でも多くモンスターをぶち殺して死んでやる!」
「オルテガさん・・・」
「ま、俺はそう簡単に死なねぇけどな」
「素晴らしいぞオルテガ!流石は我が友じゃ!!」
「オルテガさんカッコいい!」
「応援しますよオルテガさん!」
「早速他国にも知らせねば!お前だけに辛い思いはさせぬ!!」
「それはいけません」
「「「「はっ?」」」」( ゚д゚ )
「闇の魔王の存在は今ここにいる者以外に知らせてはなりません」
「ぬぁぁぁぁぁぁぁぜですかルビス様!何故知らしめてはならんのですか!?」
「闇の魔王は生物の絶望を糧として力を得ます、世界にはあなた方のように勇敢な人間だけでは無いのです」
「しかしルビス様」
「魔王の名には呪いがかかっています、その名を聞くだけで恐怖と絶望に飲み込まれてしまうのです」
「それに魔王は恐ろしい力を持ち、おぞましい姿をしています。良く訓練された兵でも平常心を保てるかどうか・・・」
「ですが・・・」
いや、ルビス様の考えもわかる、絶望を糧にするのが本当ならこの世界の人口はどれくらい
なのかわからないがわざわざ全世界に公表して悪戯に絶望する人間を増やす意味もない。
「希望が魔王の力を弱める、と言うのは無いのですか?」
「残念ながらありません・・・」
お約束が外れてしまったが仕方ない・・・、オルテガさんには酷かも知れないが極秘に行くしかない・・・。
ゲームでもバラモスの存在を知っていたのは極僅かな人間だけだったし、ゾーマの事など王すら知らなかった。
「マジかよ〜・・・、モンスターって何匹いるんだ?すげぇ疲れそう」
「オルテガ、そんな気楽な問題では無いぞ・・・」
「俺が一人でやるんだから別にどう考えたっていいじゃん」
「一人ではありませんよ、カオルも行きます二人で行きなさい」
「「「「えっ?」」」」( ゚д゚ )
ちょっと待って、何故私が?しかもたった二人で?
「カオルちゃんよぅ、おめぇ戦えんのかよ?」
「えっ?あの・・・、え〜と・・・」
「今闇の魔王は急速に力を増しています、私の力でももう抑えきれません」
「勝手に話し進めんなよルビスさんよ〜」
「時間にして後一ヶ月程で復活を遂げるでしょう」
「一ヶ月ですと?これはまた急な・・・」
「急いでやらねぇと完全復活なんてめんどくせー事になりそうだな」
私が・・・?オルテガさんと二人で?確かに帰る為の冒険は覚悟していたがゲームみたいに四人で行くもんだと・・・。
第一オルテガさんの旅は史跡くらいしか残ってないし全くわからない。
しかもあの最期、元の世界に帰る前に死んでしまうのではないか?
「カオルちゃんそんな真剣に考えんなって、俺がみっちり鍛えてやっから」
「とにかく時間がありません、ストロス、オルテガ、カオル、貴方達は今すぐにでも旅に向けて備えなさい」
「俺のしごきはキツいぞ?カオルちゃん、頑張れよ」
「魔王の存在を隠し尚且つ各国の王に助力を得る方法を探さねばならぬな・・・」
「京子、伊代、父さんはもうダメかもしれん・・・」
「ルビス様、私は何をすれば良いのですか?」
「ルイーダ、貴女はオルテガ・カオルの二人が旅立つまで手助けしてあげなさい」
「それだけですか?」
「とても重要な事なのです特にカオルは記憶喪失の身、貴女が支えてあげなさい、それと同時に帰る場所になってあげるのです」
「支えですか〜・・・」
「旅に出たからと言って魔王を倒すまで帰ってこないとは限りません、それに待っている人がいれば人はより強くなれるものではないですか?」
「なるほど〜・・・、わかりました!私頑張ります!!」
ええい!私も男だ、覚悟を決めよう!!どのみち元の世界に帰る為には行くしかないのだ!
「わかりました、私もお供させていただきます」
「よし!決まりだな!」
「頑張って!カオルさん!!」
「最後にルビス様、せめて我等四人にだけその魔王の名前を教えていただけないでしょうか?」
「ストロス・・・、わかりました、おしえましょう。闇の魔王、その名もバラモス」
『えっ?』
「なんと禍々しい名じゃ」
「血と骨、か」
「嫌な名前ね」
「この名を聞いて平静でいられる所を見るとあなた達を選んだのは間違いではないようですね」
「・・・・・・」
「どうした?カオルちゃん、怖じ気づいたか?」
「あっ!いえ、違います」
「ならいいが」
「何故血と骨なんですか?」
「古くから伝わる今常用ではほとんど使われていない言葉があってじゃな、バラは血、モスは骨を意味するんじゃ」
「古代語ですか」
「そうじゃ、我々の使う魔法の名もその一つじゃな」
ルビス様は嘘を付いている、大魔王はゾーマだ、バラモスは配下に過ぎない。
でもバラモスの名しか明かさないという事は・・・、もしかしたらオルテガさんの運命も知っている?。
「そういやよ、そのバラモスはどこにいるんだ?」
「そういえばそうじゃ、目的地がわからねば旅に出ようがないのう」
「どこにいるのかしらね?」
「それがわからないのです」
「「「「えー」」」」( ゚д゚ )
「復活した時でないとどこに現れるのかわからないのです」
『おかしい、地下世界に通じる穴はギアガの大穴だけだ、ならばネクロゴンド山脈しかないのに・・・』
「じゃあ復活するまで待つしかねーのかよ、一ヶ月も準備するのか?」
「ごめんなさい」
「仕方ないではないか、ルビス様でもわからぬのだ」
「でもよー、復活するまで一ヶ月もカオルちゃんしごいてたら多分死んじまうぜ?」
「準備するにこした事はなかろう」
「お、お手柔らかに・・・」
「魔王が復活を遂げた時はすぐに知らせにきます、その時までに充分な準備をお願いします」
「まあしゃあねえな、のんびりってわけにはいかねーが適当にやっか」
「長いようで短い期間じゃ、しかしできる事は沢山ありそうじゃの」
「そして最後に・・・、カオル、貴方だけに話があります」
「は、はい」
「皆は席を外してもらえますか?」
「カオルだけ、ですか?」
「ええ、とても大切な話なのです、お願いします」
「わかりましたルビス様、さ、オルテガ・ルイーダ、出よう」
『やはり・・・』
ルビス様の言葉に他の三人は素直に従い店を出る、ルイーダさんは少し心配そうな顔を見せたがオルテガさんに肩を叩かれ出ていった。
私とルビス様だけになった、ルビス様のカップにお茶を注ぎ入れた所でルビス様がとても悲しげな表情をしている事に気が付いた。
「カオル、どうか私を許してください」
「私をこの世界に呼び寄せた事ですか?」
ルビス様は一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたがすぐにまた悲しげな顔に戻った。
ルビス様が現れた時点で薄々気付いていた、どんな理由があるにせよ私をこの世界に呼び寄せたのはこの方なのだろうな、と。
「気付いていたのですか」
「私のような異世界の人間を呼び出すなど魔法の発達したこの世界でも人間にはそう簡単にできないでしょう」
「貴方はこの世界の事を良くご存知ですね?」
「はい、細かな所は欠けていますが大体は覚えています、結末まで」
「貴方にはお願いがあるのです」
これも何となく予想がついた。
「自分が異世界から来たのを隠す事、オルテガの運命を誰にも言わない事、ですか?」
「はい・・・」
「前者は良いとして、後者は何故ですか?」
「申し訳ありませんが今はお教えできません」
「そうですか・・・」
「本当にごめんなさい」
やはり全て知っているようだ、私がどういった人間なのかも知っているらしい。
「私も、貴女に質問があるのですが良いですか?」
「可能な限りお答えします」
「私を呼び寄せた理由はなんですか?」
「今はお答えできません」「貴女は全て知っているのですか?」
「お答えできません」
「彼は成し遂げると思いますか?」
「お答えできません」
やはり間違いない。
「何故彼を見殺しにするのですか?」
「・・・お答えできません」
「・・・ふぅ、では最後の質問です、私は帰れますか?」
「必ず帰れます」
「貴女は勝手な方ですね・・・」
「どうか許してください」
私は自分のカップに残ったミルクティーを一気に飲み干した。
「とりあえず貴女の願いは聞き入れます、今は答えられないと言われた質問もいつか必ず教えてください」
「ありがとうございます」
その言葉を発すると同時にルビス様は立ち上がった、その顔は初めて見た時の優しい表情に戻っていた。
「貴方にはこれを授けましょう」
リイィィィィィン
またあの音が聞こえる、テーブルの上に一筋の光が差し込み、現れたのは一振りの刀だった。
「これは・・・」
「これはジパングの名工が打った無銘の刀、貴方にはこちらの方が扱いやすいでしょう」
「なんでもお見通しですか・・・」
「それでは私はこれで、旅立ちの時、またお会いしましょう」
「お茶、とても美味しかったですよ」
女神のような微笑みを残し、ルビス様は光の中へ消えていった。
私は店を出て外で待っている三人を呼びに言った。
「行ってしまわれたか、ルビス様はなんと?」
「申し訳ありませんストロス様、お答えできません」
「そうか、まあ無理に聞く事はせん」
「所でカオルちゃん、そりゃなんだ?」
「これはルビス様から授かった物です」
「ちょっと見せてくれ」
やはり興味があるのか半ば強引に取られてしまった、オルテガさんは鞘から抜き縦に眺めたり軽く振ってみたりしていた。
「うむ、良い刀だ、お前等ちょっと離れてろ」
オルテガは刀を鞘に納め腰を深く落とし居合いのような構えをとった。
およそ5メートルほど離れた木に狙いをすまし一閃。
「ぬん!」
ひゅっ
風を切る音とともに発生したつむじ風、風は次第に集まり一つの刃に変わる。
カッッ!
真横に両断された木、そのまますぐ後ろの岩に深い切れ込みを入れ風の刃は消えた。
「カオルちゃん、この刀の名は?」
「無銘だそうです、ジパングの名工が打ったとか」
「ジパング、なるほどな」
「ジパングの刀剣技術は失われたのではなかったか?」
ストロスの問いかけに刀を鞘に納めながら答えるオルテガ。
「失われたのは百年ほど前だ、保存状態が良ければ良い物は今でも残ってるよ」
鞘に納めた刀を眺めつつ、オルテガは続ける。
「現在確認されている物はわずか数本と聞くがルビスなら持っていても不思議はねーさ、ありがとよカオルちゃん」
ひょいと投げて返すオルテガさん、受け取ったものの全く重さを感じない。
なんと軽い刀なのだろうか・・・。
「カオルちゃん、構えな」
「はい?」
「何をするオルテガ?」
「ルビスが刀を授けたってんなら使い方を知ってんだろ?」
「ちょっとオルテガさん!何言ってんのよ!!」
「刀ってのは扱いが難しいんだ、俺だって使いこなせねぇ」
「さっき風の刃を放ったじゃないですか」
「あれはただ思いっきり振っただけだ、俺が適当に振っただけであれなら達人は山も切れる」
確かに私は刀を扱った事がある、剣道も昔やっていた。
でも居合いは叔父さんに基本だけ教えてもらっただけだし剣道だって二十歳までだ、もう四半世紀竹刀には触ってない。
「早くしろ、なんならこっちから行くぞ?」
「オルテガ!」
「オルテガさん!」
「外野は黙ってろ!行くぞ、カオル!」
言うが早いかオルテガは自慢の愛剣を片手に突っ込んできた、さっきまでとは違い目はマジだ。
瞬く間に私の目の前まで距離を詰め、上段から剛剣が襲い掛かる!!
『オイオイオイオイ、こんなもの食らったら確実に死ぬって!受ける?いや、刀ごと両断されるに決まってる!反らせ、なんとか反らすんだ!!』
とっさに刀を抜き左側面を庇うように斜めに構える、
後ろに引いて遠心力のプラスされた一撃を受けるより前に出て支点に近い方で受けた方が僅かながら軽減できるはずだ!
オルテガの左側面に向かって右足を踏み込む、剣の軌道から体を反らす事ができた!
後は刀がもってくれるのを祈るのみ!!
「ぬうん!」
ギャギャギャギャ!ドンッッ!!
「ぬぁッッ!」
なんとか反らす事ができた、オルテガの剣はそのまま地面を切り裂くかの如く深く突き刺さる。
なんという重い一撃だ、手が痺れて・・・。
オルテガは外れたやいなや腰を捻り時計回りに一回転、ハンマー投げの要領でこんどは右から真横に払う。
『避けられない!受けるしかない!!』
痺れた両手をなんとか動かし右側面をガードする、刀の背に肩を当て思いっきり踏ん張る。
「ぬぅりゃ!」
ガキィィィィン!!!!
・・・・・・・・・。
「カ・・・」
「ん?」
「カ・・・ルさ・・・」
「なんだ、京子か小遣い月5000円はさすがに辛いよ・・・」
「カオルさん!」
気が付くと私はルイーダさんの膝枕に横たわっていた。
「気が付いた?どこか痛いところは無い?」
「私は・・・?」
「すまねぇ、ちとやりすぎた」
オルテガが申し訳なさそうな顔をして鼻を掻く。
話を聞くと私はあの横払いを受けきれず3メートルほど宙を飛んで気絶してしまったらしい。
「当たり前よオルテガさん!模造刀ならまだしも真剣で・・・、カオルさんが死んじゃったらどうすんのよ!!」
ルイーダさんの瞳には涙が浮かんでいた、無理もない、私だって死んだと思った。
「だから本当にすまねぇって」
「謝れば済むってわけじゃないわよ!バカ!!」
「まあまあ、ルイーダさん、無事だったし良いじゃないですか」
「でもカオルさん・・・」
「ところでストロス様は?どちらに?」
「ストロスは帰ったよ、色々やらなきゃならねぇ事もあるみたいでな」
私とオルテガの立ち会いの後、オルテガに対して烈火の如く怒っていたそうだ。
一通り説教を終えた後城壁の修理の手配や諸王の件は早急にと城に戻ったらしい。
「ストロスから言付けも頼まれてる、明日謁見せよだとさ」
「わかりました」
「それにしてもカオルちゃん、中々良いスジしてんな」
「昔取った杵柄ですよ20年以上も前のものですが」
「いや、俺の斬撃に対して前に出るなんて驚いたぜ」
「ああしないと死んでしまうと無我夢中でしたからね、たまたまですよ」
「色々と足りない部分もあるが、鍛えりゃ中々のものになりそうだ」
「それに刀も良い物だ業物だな、俺の一撃に刃こぼれ一つねぇ」
オルテガが刀をまじまじと見つめる、刀は淡く光っているようだった。
「あの、一つ良いですか?」
「あん?」
「もし私が死んだらどうされてましたか?」
「そんときゃ教会だな、死後1日以内なら生き返るしな」
「さようですか・・・」
気になったので聞いてみたらこの世界では死人の蘇生は当たり前のようだった。
ただし色々条件があるらしく、病死・寿命・呪いによる死・死体の損壊が激しい場合などは蘇生できないとの事。
それ以外にも多々条件があるらしいが実際に蘇生を試みてみないとわからない事もあるそうだ。
てかあのバカでかい剣で両断されたら死体の損壊が激しい場合ってのに該当するんじゃないか?
そう思うといまさら恐怖が込み上げてきた。
「まあ今日は休め、腕の骨折はベホマで治したが特訓はとりあえず明日からで良いだろう」
「えっ?骨折してたんですか?」
「ああ、あの曲がりかたは傑作だったな」
「あなたがやったんでしょ!」
「治ってるのなら良いですよ」
あの一撃を受けて骨折だけで済んだのならある意味幸運だったのかもしれない。
「今日の夕食は私が作るわ、カオルさんはゆっくり休んでて」
「ルイーダさん料理できないって・・・」
「が、頑張ります!」
「王の所に行かなきゃならんしルイーダちゃんの店も直さなきゃならんしな、アンナに無事な姿も見せてぇし」
「とにかくゆっくり休んで、ね?」
「わかりました、ではお言葉に甘えて・・・」
立ち上がろうとしたがフラフラとへたりこんでしまった、体に力が入らない。
「無理しないでカオルさん、あんなゴリラにぶっ飛ばされたんですから」
「ほれ、掴まれ、部屋まで運んでやる」
「すみません、ありがとうございます」
オルテガに肩を貸してもらって二階の部屋へ、ベッドに入ると急激な睡魔に襲われた。
『今日は本当にいろんな事があった、明日から鍛練もしなきゃならないし王に謁見もしなければ』
「じゃあ明日ストロスのところに行った後俺の家に来い」
「夕食ができたら持ってくるからそれまで休んでてね」
「ありがとうございます」
『京子と伊代は元気にしてるだろうか?あっ、干し肉を取り込まなくては、明日の朝食は何に・・・しよう・・・か・・・』
睡魔に勝てず私は眠ってしまった・・・。
カオル
職業:サラリーマン
Lv:1
HP:2
MP:0
所持品
E.
E.ヨレヨレのスーツ
E.ネクタイ
携帯 タバコ 名刺 ライター
所持金
100G(ルイーダからのお小遣い)
(5000円札は大事にしまってある)
特技
家事全般(戦闘特技は無し)
乙でした!
やっぱりカオルさんが日本刀を持つとワクワクするw
いよいよ旅立ちも楽しみだ
思わず体をひねって横に転がる。
自分としては奇跡的な反応だったと思う。
だが―
「何してるの?あもう」
何って、攻撃を避けたんだけど。
「誰も攻撃したりしないわよ?」
え。だっておおみみずが。
おおみみずが起き上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている!
お・・・おおみみずが・・・
「仲間になりたそうにこちらを見ているわね」
・・・・・。
「仲間にしてあげないの?」
もう、このまま天に召されたいです。
「あもうがおおみみずを?」
「・・・しかし、魔物は魔物だ」
「村の近くにも魔物がでるようになったか・・・」
「やはりあの噂は・・・」
「急がなくては・・・」
その夜、連れ帰った(というか勝手についてきた)おおみみずをめぐり、
村で緊急会議が開かれた。
だが、意見が真っ二つに割れ、なかなか決着がつかない。
「皆、静粛に」
村長の一言であたりがシン、と静まり返る。
「それぞれ言い分もあるだろうが、掟は掟。かわいそうだが・・・」
「だめ!殺さないで!」
村長をさえぎったのはシンシアだ。
「シンシア!」
「気持ちはわかるが・・・村を危険にさらすわけにはいかない」
そうそう。また、いつ襲ってくるかわからんし。
「でも・・・でも・・・」
うつむくシンシア。
ユーシャが『なんとかできないかな』とつぶやいた。
これは大人の事情というやつだから仕方ない。
ねぇ・・・ユーシャ。おとなになるって かなしいことなの・・・
だから、その期待のこもった眼で見ないでえええぇぇ
あ・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おおみみずを追い出そうと思ったらいつの間にかかばっていた』
な・・・何を言ってるのか わからねーと思うが(ry
恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・
「あもう!正気で言っておるのか!?」
いいえ、気の迷いです。
「あもう・・・ありがとう。やさしいのね」
良心の呵責にさいなまれて・・・とか絶対言えない。
「ふむ・・・確かにこのおおみみずはあもうになついておる。
あもうになら任せられるかもしれんのう・・・」
なつかれるならスライムとかの方がよかったです・・・
複雑な思いで悶々としていると、宿屋のおっさんが声をあげた。
「皆さん。ここは私に一任していただけませんか?」
おっさん。寝言は寝てから言え。
「私は以前、魔物たちが平和に暮らす村を訪れたことがあります。
そこに このおおみみずを連れて行くのはどうでしょうか」
なんかサラッとすごいこと言ったぞ。
おっさん・・・実は何者?
「その村の名前はロザリーヒル。人間、魔物の区別なく皆が仲良く暮らす不思議な村です」
おおっと
「そんな村があるなんて、なんだかステキね!」
本当にそんな村があるんだろうか。
あのおっさんが言うことだし・・・ただの妄想だったりして。
「あもう、知らないの?」
何をですか。
「宿屋のおじさんは、世界をまたにかけた伝説の旅人だったのよ!」
おっさん マジ ぱねぇw
まあ、色々あったが、とりあえずおおみみずの件は解決しそうだ。
よかったな。おおみみず。
「キシャアアアアア!」
人間語でおk。
「きゅううううう・・・」
「ねぇ、あもう。この子に名前をつけてあげるのはどう?」
しばらくおおみみずを見つめていたシンシアが、おもむろに口を開いた。
別に、今のままでもいいと思うけど。
「だめよ!呼ぶときに困るでしょう?」
呼ぶつもりもないんだが・・・
「そうね・・・おおみみずだから・・・」
あのー。話、聞いてますか?
「チャーミングなんてどうかしら!」
シンシア、センスNEEEEE
「おおみみずといえばチャーミング。常識よ。ねぇ、勇者」
ちょ・・・うそだと言ってよユーシャ!
そんな願いもむなしく、『当然!』という顔をしている。
「『恋する乙女はばくだんいわ』っていう詩集、知らないの?」
何それこわい。
「詩人マローニの代表作よ!その中に出てくるおおみみずがチャーミングなの」
そのマロニーとか言う奴は一回シメられるべきだと思った。
「もしもし。私、ばくだんいわ。あなたの家の前にいるの」
―え・・・ちょ、勘弁してください。
「もしもし。私、ばくだんいわ。あなたの部屋の前にいるの」
―ま・・・待て。話せばわかる。だから・・・
「もしもし。私、ばくだんいわ。あなたの後ろにいるの」
―やばい やばい やばい!
―あいつ、ガチで殺る気だ!
「あお〜い、そ〜らと〜、流れる〜くも〜たち〜ラララ」
―そこの音痴な詩人さん!助けてください!
「失礼ですね。私はマローニです」
―そんなことはどうでもいいから!ばくだんいわに追われてるんです!
「おや、ばくだんいわというのは・・・」
こんな顔でしたか?
「おはよう、あもう!・・・どうしたの?眼が真っ赤よ」
・・・寝覚めが最悪です・・・
「夜更かししたのね?もう、子供なんだから!」
これが夜更かしの産物ならかわいいものですって・・・
「随分うなされてましたからねぇ。はっはっは」
気づいてたんなら起こせよ。
思わず殴りたくなるが、グッとこらえる。
ロザリーヒルという村に行くにはおっさんの協力が必要だ。
でも、そんな村にどうやって行くんだろうか。
「私の記憶をたどれば飛べるはずです。―シンシア」
「はーい。ルーラを使えばいいのね?」
記憶をたどれば飛べるって・・・そんなばかな。
「しっかりつかまっててね!」
次の瞬間、体が宙に浮いていた。
目的の村にはすぐ着いた。
世の中には便利なチート呪文があるものだ。
・・・ちょっとご教授願えませんか、シンシアさん。
「えっ。あもうには無理よ」
そんな即答しなくてもいいじゃない。 orz
「そ、そういう意味で言ったんじゃないのよ。呪文には得手、不得手があるから」
へぇ〜、そうなんだ。
じゃあ、どんな呪文なら使えるかな。
「・・・・・」
・・・この間はなんですか。
「あっ!あそこに人がいるわ!話を聞いてみましょう!」
絶妙なタイミングでごまかされた・・・
まあ いいけどさっ。
気を取り直してあとを追う。
このあたりは花畑になっているようで、色とりどりの花が咲いている。
その中央あたりに座り込んでいる人が見える。
女の人、だろうか。
近づいたシンシアがその後姿に声をかける。
「すみません、少しお聞きしたいことが・・・」
「はい。なんでしょうか」
そう言って立ち上がった女の人は、シンシアに瓜二つだった。
「ううん、まるで鏡を見ているみたい・・・」
「ええ。私も驚きました」
じつは双子なんじゃないかと疑いたくなるほどそっくりだ。
よく観察すれば微妙に違うのだけれど。
ほら、シンシアのほうがまな板・・・・いてっ!
思いっきり足を踏まれた。
顔がそっくりな二人は気も合うようだった。
長年の友人のように笑いあっている。
べ、べつに仲間はずれがさみしいわけじゃないんだから!
・・・そこらへん散歩にでも行くか、チャーミング。
「きゅううう」
宿屋、教会、道具屋に武器屋・・・小さな村の割には充実している。
そして豊富な品揃え!コレクター魂に火がつくね。
実用、観賞用、保存用に最低3つは欲しい。
・・・ってユーシャがいたら盛り上がったんだけどなぁ。
そう。本当はユーシャも来るはずだったのだ。
しかし、宿屋のおっさんに阻止された。
首を縦に振るまで延々と同じ事を言われるという、ほとんど拷問のような状態で。
ユーシャ涙目。
まぁ、来れたとしても何も買えないんだけどね・・・
手持ちの8Gでは薬草ぐらいしか買えない。
貧乏ってつらい・・・どこかに金目のもの落ちてたりしないかな。
・・・などと思いつつ、目星はつけてある。
村の中央あたりにある怪しい塔。
いかにもお宝がありそうじゃないか。
お宝のニオイ・・・このあもうの鼻はごまかせないぜ。
ここだぁっ!!
10ゴールド 拾った!
って違うわぁっ! ううっ・・・こんなはずでは・・・
「しゅるしゅる・・・」
チャーミングにまで同情されるなんて・・・orz
くそっ 大体なんだよ、この塔は。
入り口が見つからないじゃないか!
思わず塔に蹴りを入れる。
そのとき、視界の隅に何かがうつった。
子供?いや、違うな。
子供ぐらいの背丈の、ヒゲ面のおっさんだ。
そいつがこちらの様子を探るように見ていた。
はっ!まさか、この10Gの持ち主か!?
・・・いやいや、落し物だからノーカンだよな!?
うん、そうに違いない!
怪しまれないように平静を装うことにする。
あくまでもフレンドリーに、さわやかに笑いかけてみた。
すると、おっさんの顔色がみるみる変わり―
「うわああああ!人間だああああ!!」
・・・叫ばれた。
あたりは騒然となり、村の住人が集まってくる。
しかも、皆殺気立っている。
えっ。何この雰囲気・・・
人間と魔物が仲良く暮らす村じゃなかったのかー!?
>>154の続き
この世界がもし本当にドラクエの世界ならば俺は強くなれるだろか?
人並外れた強さを手に入れ魔王を討ち倒したりしてしまえるんだろうか?
ならば、ファンタジーな世界に行ってみたいと夢描いていた俺は、この事実を受け入れ歓喜するべきではないのか?
先程、俺はこの手でスライムを倒した。
今もまだ生々しい感触が気持ち悪いくらいに残っている。
モンスターであれ生物を殺した事実。
敵意を剥き出しにして襲い掛かってきた恐怖を真に受けて、心臓がいまだに収まらずにバクバク鳴り響いている。
恐かった。恐ろしくて俺は思わず現実世界へと現実逃避しかけた。
でも、倒せた。
スライムを、仮にもモンスターの一匹を倒すことができたんだ。
やがて、この騒ぐ鼓動の半分以上は好奇心からくるものだと、口の端を歪めてニヤついていたことで気がづいた。
おもしろいじゃないか。
剣で、魔法で、モンスターがいて、そして魔王がいるんだろう。
糞つまらない現実とは俺はおさらば出来たんだ。
そうだ。強くなる。強くなれるぞ俺は!
どうせなら誰よりも強くなって最強の勇者になって名を馳せてやろうじゃないか!
フフフ……。フゥワッハッハッハッハ!!!!
「うるさいわよアンタ!!!」
「いってええ!」
怒鳴り声と共にマリベルの拳骨が飛んできた。
多分、俺のHPは今5ポイントは減ったことだろう。
「何いきなり笑ってんのよ」
「ごめんなさい」
謝っておこう。相変わらずマリベルさんは恐い顔をしていらっしゃる。
「今の声を聞き付けてモンスターが襲ってきたらどうするつもりよ!」
「ごもっともです」
マリベルがマジギレするのも無理はない。
周囲は森。時刻は夜。
見通しが利かない中でいつまたモンスターが襲ってくるかもわからないところを俺達は、さ迷っている。
ともかくフィッシュベルの村へ帰ることにした俺達は、警戒しながら慎重に森の中を進んでいたのだった。
「でも、さっきみたいにまたやっつけちまえばいいだろ?」
キーファだ。こいつもまた、モンスターとの戦闘にスリルと喜びを得たのだろう。
なんとも楽しそうな顔をしていやがる。
「冗談じゃないわ!服だって汚れちゃうし、もしアタシの体に傷でもついたらどう責任取るつもりよ!」
「だそうだぜリノ」
「いや、俺に振るなよ」
「って言うかアンタ達さっきからどうしてそんなに嬉しそうな顔をしているのよ?」
「ん?そうか?いや、だってモンスターだぜモンスター!なあリノ?男の中の血が騒ぐってもんだろ!」
「ああ。さっきから脳汁がヤバすぎる」
きっと今夜は興奮しすぎて眠れないだろう。修学旅行前夜なんかより遥かにヤバい。
「何言ってんのよバカ共!し…死んじゃったらどうするのよ!!」
「大丈夫だろ。ここら辺は多分弱いモンスターしかいない」
「そんな根拠の無いこと言われたって納得出来ないわよ!」
まあそりゃそうか。RPGのお約束って言っても通じねえだろうな。
初っ端現れたのがスライムだったからまず間違いないと思うが。
「とにかくアンタ!ちゃんと責任持ってアタシを無事に家まで送り届けるのよ!」
何の責任だ何の。考えても思いつかんぞ。
「わかったわね!?」
マリベルは人差し指を突き刺して念を押してきやがった。
「わかったよ!」
こう返事をするしかない。無駄にHPを削られたくはないからな。
しばらくして森を抜けた。
幸いマリベルの体に傷はついてはいない。
つーかモンスターとも出会わなかった。
くそう。どうなってんだ。
俺とキーファは悔しがり、それを見たマリベルが俺達を怒鳴りつけた。
俺達は謝った。平謝りだ。しかしそれでマリベルの怒りは収まるのだ。
その代わりに俺のHPがまた1ポイント減ったけどな。
もう少しHPが減ったらアイツの目の前で薬草を使ってみようと思う。
直後にまたHPを削られるかもわからんけど。
「何あれ?」
「墓があるな」
「人がいるぞ」
森を抜けた先、小高い丘の上に立てられた数個の粗雑な墓の前にしゃがみ込む女性の姿が見えた。
「あななたたちは……だれ?」
俺達に気付いた女性は墓の前から立ち上がり近づいてきた。
とても綺麗な女性だ。
背中まで伸びるブロンドの髪に鎧や兜を身につけた騎士の様な格好で、まさにファンタジーに生きる登場人物の様だ。
キーファがその女性に向かって臆することなくペラペラと自己紹介を始めている。
一国の王子とか言えちゃうんだから何て羨ましい肩書きだろう。
「……エスタード?まさか…」
なんだろう?妙な反応をする女性だ。
いやしかしこの女性の歳はいくつだろうか?
マリベルみたいな丸顔じゃなくて背も高いしスタイルも良くてモデルみたいだ。
大人っぽくて何より女性剣士ってだけで格好いいし惹かれるものがある。
「………」
おっとヤバい。
これ以上目の前に立つ女性とマリベルとをあんまり見比べていると、またHPが減ってしまうところだ。
「……何よ?」
ジロリと睨んでくるマリベル。くそう。気づかれた。
「何でもないです。ええ。」
「…ふん」
ふう。こわいこわい。
キーファはそのまま調子に乗って俺とマリベルのことも紹介してくれた。
「申し遅れました。私の名前はマチルダです」
「マチルダさん?マチルダさんはこんな暗い所で草むしりでもしていたの?」
マリベルはマチルダの手に握られた雑草と思わしき物を見て質問を投げかけた。
「いえ…この草はそこにある墓に供えようと摘んでいたものです」
「…って、ねえ、それって雑草じゃない?」
俺もそう思ったのだが、口に出さずにいたものをマリベルは全くの遠慮もなく聞き返した。
墓に供えると言った物をそれ雑草じゃね?と躊躇せずに聞けるとはやはりこの女は大した女だ。
「…この辺りには花が咲かないのです。なので、せめて雑草でもと思って……。」
マチルダはとても悲しそうな目で大切そうに握りしめた雑草を見ながらそう答えた。
切ねえな…。言葉も出ねえよ俺は…。マリベル。責任もてよお前。
「あ!そうだ!花ならあるわよ!……って種だけど」
「花の…種…?」
「グランエスタードの森で拾ったの。家の回りにでも蒔こうかと思って」
マリベルはポケットからごそごそと形の違う幾つもの種類の種を取り出した。
そういえばマリベルの奴、遺跡に向かう途中にはしゃぎ回りながら草や花を眺めて喜んでいたっけな。
なにげに種を集めていやがったのか。
「へえ〜」
「さっきからなによリノ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよね」
「いや、なんつーか、意外に可愛いところがあるんだなと」
「よしわかったわ。アンタ後で覚えておきなさいよ!」
「ごめんなさい」
くそう。ハッキリ言ってやったのになんて女なんだ。
「すみません。もしよければその種を少し分けて頂けませんか」
「もちろん!全部あげるよ!」
マリベルは哀しむマチルダを元気づけるかのように、俺達には見せたことの無いような笑顔で花の種を手渡した。
「ありがとうございます!では早速この種をお墓の側に蒔いてみますわ!」
マリベルに感謝するマチルダの表情は僅かながら和らいだように俺は見えた。
それから俺達も手分けをして種を植えるのを手伝った。
周囲に花が一輪も咲いていない環境で、果たしてこの植えた種が育つかどうかは分からない。
もしかしたら種が育つ筈もなくて、ただの余計なお世話だったか。等とも思ってしまったが
「これで、死んだ者の魂も少しは癒されますでしょう」
マチルダのその言葉に俺は胸を撫で下ろした。
それから俺達は、すぐそこだと言うのでマチルダの案内のする村へと向かっていた。
マリベルは家に帰りたいと言ったのだが、マチルダはそれは無理だと答えた。
初めは言っていることがよく分からなかったが、3人共にだんだんと気がつきはじめていた。
今いるこの場所は俺のいた現実世界でもなく、マリベルやキーファが暮らすエスタード島でもないということだ。
「なんだかよっぽどおかしな所にまぎれこんじゃったみたいね。
これもアンタ達が神殿につまらないイタズラしたせいよ。ちょっとは反省しなさいよね」
反省?何を反省することがある?俺とキーファは顔を見合わせた。
ほらみろ。俺達はこんなにも互いに目をときめかせているというのに。
キーファなんかはさっきから両方の拳を胸の前に付き合わせて、今か今かとモンスターの出現を待ち侘びている。
俺もそうだ。
どうせ現実世界に戻れたとしても学校だの塾だの糞つまらない日々を送らなきゃいけないんだ。
そんなもんからせっかく隔絶されたのだから、今のこの状況を俺は純粋に楽しんでやろうと思っている。
どうして?なんで俺が?とか考えんの止めだ。
強くなれるんだったらモンスターぶっ倒して強くなりてーし。
マチルダの様な剣士の格好したいし剣も握ってみたい。魔法も使いたい。
んでもって魔王を倒して勇者になるのも悪くねえ。
それからでもいいや。現実に戻る方法探すのは。
親には悪いけど。
「おっ。村が見えたぜ。」
「やっぱり見覚えは無いわね…。アタシ達一体どこに来ちゃったのかしら?」
「考えてもしょうがねぇだろ?とりあえず村行って休もうぜ。なあリノ?」
「ああ。あと何か武器とか売ってたら欲しいな。銅の剣とか。」
「お!いいなそれ!俺も買うぜ!」
「まったくアンタ達ねえ。どうしてそんな楽観的なのかしらね…。」
呆れ顔をするマリベル。お前にはわからないだろうが武器は男のロマンだ。
「なあマチルダさん。あの村に武器屋はあるか……てあれ?マチルダさんは?」
キーファがキョロキョロと見渡す。が先程まで一緒にいた筈のマチルダの姿が消えていた。
「この村の人なんでしょ?何か用事があって家に戻ったんじゃない?さあ行くわよ」
一言も挨拶もなしに?
などと不思議に思いつつも俺達は村へと入った。
もしかしてリアルタイムで書きながら投下している?
そういう悪質なことはやめた方が……。
>>DQ7
GJ!
今回も面白かったなぁ。
3人のやりとりが目に浮かぶようだ。
実機でもスライム出るまで時間かかったから
めっちゃワクワクしたのを覚えてるなぁ。
つづきが楽しみだ。
おお久しぶりに7きてたのか
乙乙!
今回もマリベルが可愛くて面白かった
続き楽しみにしてます
>>239 無償で私たちを楽しませてくれる職人さんに些細なことで文句をつけるほうが悪質です
すぐに続きが読めないのがイライラするなら、F5連打するのではなく半日くらい待ってから
また来るといいですよ
リアルタイム投下はどう考えてもマナー違反だろ。
職人だからと何をやっても許される訳じゃないんだから、
そうやって甘やかすのはやめた方がいいぞ。
ぐるりと周りを取り囲まれる。
といっても、皆背が小さいのであまり怖くはないが。
ほう。これが小人というやつか・・・っと危ない!
小石が頬を掠める。
おいおい。穏やかじゃないな。
「出て行け!」
「欲張りな人間め!」
「またロザリーちゃんをいじめにきたんだろう!」
「最低!」
「生理的に受けつけない」
「うちのツボを割りやがって!」
ひどい言われようだ・・・
なんか身に覚えのない罪状まで増やされてるし。
10Gネコババしたことは認めるけどさぁ。
いじめるよりいじめられる方が好きです!
あ!うまのふんを投げるのはやめて!
小石やらうまのふんやらを必死にかわす。
誤解です!と叫んでみても効果がない。
頭に血が上っているようだ。集団心理って怖くね?
とりあえずひたすらかわし続ける。
危機(主にうまのふん)を感じると能力が開花するって本当だな!
などと感心していると、前方から何かが走ってくるのが見えた。
白い・・・毛玉?
「うおおおおおぉぉん!!」
うわっ!?か・・・体が動かない!?
白い毛玉があげたおたけびに体がすくんだ。
まずい・・・このままでは・・・!
「ロザリーをいじめるやつはゆるさないぞー!!」
白い毛玉の猛烈なタックルを喰らい、骨がきしむような音が聞こえた・・・
世界を救った勇者だけが報われないなんて
勇者を命がけで守った人たちが救われないなんて
そんなのひどいじゃないか
だから・・・
「あもう!しっかりして!」
・・・ん?シンシア?
「ああ、目が覚めたのですね。安心しました」
目を開けると、同じ顔が二つ。
おのれ!マネマネめ!正体をあらわせ!
「もう!いつまで寝ぼけてるの?わたしたちは本物よ!」
ん・・・?そういえばそうだったような。
変な夢を見たから混乱したのかも。
たしか・・・
「何か思い出したの?」
ええと・・・あれ?起きたら忘れた。
「記憶が戻るまでの道のりは長そうね・・・」
はぁ。とシンシアがため息をついた。
「ごめん。あもうは悪い人間じゃなかったんだな」
小人と毛玉が申し訳なさそうに謝罪しにきた。
君たち、『人の話はよく聞きましょう』って言われたことあるだろ。
「ど、どうしてそれを!」
図星かよ。
オロオロする住人たち。
ちょっと抜けたところはあるが、根はいいやつらのようだ。
人も魔物も仲良く・・・か。
天国なんてのがあったら、きっとこんな感じなんだろうと思った。
「うおーん、うおーん。かわいそうなあもう。
もしロザリーが助けなきゃ、きっと魔物にいじめ殺されてたよ」
・・・・。
前言撤回。やっぱり地獄だ。
「村の外にいる魔物さんたちは気の荒い子が多くて・・・。
すみません。忠告が遅れてしまいましたね」
本当に申し訳なさそうなロザリー。
いや、こちらこそ助けてもらってすみません。
我ながら情けない。PT組んだら速攻で除名されるタイプだ・・・orz
・・・いいもん。どうせ役立たずだもん。
座り込んで の の字を書く。
そんな様子を見かねたのか、シンシアが話題を変えた。
「でもロザリーさん、マヌーサが使えるのね。驚いちゃった!」
「ええ。目くらまし程度の力しかないのですが」
「わたしもいずれ覚えたいな・・・あの子のために」
「シンシアさんなら、きっとすぐに覚えられますよ」
「うん・・・。ありがとう。お互いがんばりましょうね!」
「はい!」
そう言って抱き合う二人は 怖いぐらいに美しく見えた。
「それでは、チャーミングさんは責任を持ってお預かりしますね」
はい。よろしくお願いします。
元気でな、チャーミング。・・・うぇっ 巻きつくな!
「ふふふ。チャーミングさんも女の子ですから」
えっ!?こいつメスだったの!?
「ロザリーさ〜ん!また、一緒にお話しましょうね!」
「はい!また会えるのを楽しみにしています」
え、ちょっと待っt(ry
「ルーラ!」
最後にどうでもいい事実を知って、ロザリーヒルを後にしたのだった。
「ずいぶん悩んだであろうが、両方と結婚するわけにはいかんからな。
では約束通り結婚相手を選んでもらおう」
―ええ、悩みましたよ。まさか土壇場で3人に増えるとは思いませんでしたから。
「本当に好きな方にプロポーズするのだ」
―でも、もう迷わない。本当に好きなのはあなたです!
「なんと この私が好きと申すか!?」
―なーんてね。冗談ですよ冗談。
「感謝するぞ!そう言ってくれるのを待っていたのだ!」
―は・・・はいぃ!?
「ではさっそく式の準備だ!」
―待て待て!今のは冗談だって!
「お待ちください、お父さま!」
「パパ!本気なの?」
―ほらほら、お嬢さん方からも言ってあげてくださいよ!
「私もお手伝いしますわ」
「私は興味ないから手伝いなんてしないけど」
―ちょ、娘公認!?
―こうなりゃ最後の砦、幼馴染さーん!
「おめでとう!幸せになってね」
―Oh! My God!
「シルクのヴェールもすでに用意してある。あとは式をあげるのみだな!」
―助けて!誰か助けてえええ!!
・・・という悪夢を見たんだ。
「あはははは!真顔で何を言うかと思ったら!」
笑い転げるシンシア。
こっちにとっては笑い事じゃなかったんだけど。
ユーシャも、『この場合、花嫁はどっち?』とか聞かないの!ツッコむところ違うから!
もう、大ハマリかと思ったぜ・・・
「あはは。だって、普通はそんな状況でふざけたりしないじゃない」
ひとしきり笑ったシンシアがようやく口を開いた。
・・・うん。正論だね。
「お嫁さん候補じゃなくて、そのおじさんを選んでしまったのならしょうがないわよね」
返す言葉がないです・・・ってそれはそれで置いといて!
「あら。じゃあどういうこと?」
あの宿屋って呪われてるんじゃないかと思って。
かなり真剣に言ったはずなのに沈黙された。
こ、言葉が足りなかったか。
えーと。頻繁に悪夢を見るから、宿屋に原因があるんじゃないかと思って。
「・・・ふ」
え?なに?
「ふふ・・・あはははは!そんなわけないじゃない!偶然よ偶然」
また笑われた。今度はユーシャまで!?
・・・なんか あとには引けなくなった。
直接おっさんに確認しにいくぞ!
「えっ!?それで関係なかったらどうするの?」
そのときは指輪でもピアスでも何でも買ってやるさ!
「その言葉、忘れないでよね!」
そう言ってシンシアはにっこりと微笑んだ。
「え?うちに泊まると悪夢を見るですって?ご冗談を」
カラカラ、と笑うおっさん。
「ね、やっぱりただの勘違いよ」
むむむ・・・でもここで引き下がるわけにはいかない。
何か秘密があるはずだ!さっさと吐け!
「ちょっと!それじゃ脅迫よ!」
こういうときはあきらめたら負けなんだー!
「あもうったら!・・・おじさん、ごめんなさいね」
『ごめんなさい』とユーシャまで頭を下げている。
これじゃあどっちが子供だかわからない。
・・・少し冷静になろう。
そんなドタバタを黙って見ていたおっさんが、声をひそめて切り出した。
「お客さんには負けましたよ。この宿の秘密、特別にお教えしましょう」
やっぱり秘密があったか。でも長くなりそうだから3行で。
「少し長くなりますが、古い伝説からはじめましょう」
スルーですね。わかります。
「なんだかドキドキしてきちゃったね、勇者!」
ユーシャとシンシアは興味津々だ。
若いっていいなぁ などと思っているうちにおっさんの話がはじまった。
古来より、宿屋で異世界人が目覚めるという事例はいくつか報告されていました。
世界を救った者、忽然と消息を絶った者、恋に生きた者・・・
性別も年齢もバラバラな人々が、確かに存在したのです。
しかし、この事を知る人間はそう多くはない。
――彼らの冒険が歴史書に書かれることがなかったからです。
それを悲しんだかつての仲間たちが、各地の宿屋の主人に この話を伝えました。
また異世界人があらわれたとき、優しく見守り、力になってあげてほしいと願って――
「不思議だけど、ステキなお話・・・」
シンシアがうっとりとした表情でつぶやいた。
ユーシャもしんみりとしている。
「これは宿屋の主人のみが知る秘密なんです。口外しないでくださいね?」
そう言って おっさんは笑った。
「ね、あもう。感動的なお話だったね」
え?あーそうだね。
「目が泳いでる・・・」
ギクッ。
「おじさんの話、ちゃんと聞いてた・・・?」
寝てましたサーセンw
「あもうのおバカ!」
頬に赤いもみじが咲いた。
夜 安眠できないからちょっとウトウトしてただけだって!許して!
「今日という今日は許さないわ!止めないで勇者!」
ヒー。ナイスだユーシャ!そのまま抑えといて。
「はっはっは。仲が良いですなぁ」
おっさんも笑ってないでシンシアを止めてくれよ!
必死の説得(という名の土下座)でやっとその場はおさまった。
ふぅ・・・。人生終わるかと思った。
「宿屋が原因じゃないのなら、なぜ悪夢を見るのかしら?」
「ふむ・・・誰かの強い想いが夢としてあらわれた可能性がありますね」
つまり毒電波ですか?わかりません。
「今現在、困っている人が助けを求めているのかもしれませんよ」
それで人の眠りを妨げるとか、迷惑すぎるだろ!
「わたしたちで力になってあげることはできないかな・・・」
おいおい。夢の中の人物に接触なんてできるわけないだろ〜。
「できますよ」
は?あっさり肯定すんな おっさん。
「この宿は別名『夢見の宿』ですから」
何それ。初耳なんだけど!
「いや、そうだといいなぁと思って自称してます」
だめだこのおっさん・・・なんか頭痛くなってきた。
「それじゃあ、わたしたちもここで眠れば夢を見られる!?」
「ええ。たぶん。さっそく試してみますか?」
「そうね・・・。まだお昼だけど、やってみましょう!」
夜 眠れなくなるぞ・・・ああ、でも頭痛いから少し横になろうかな。
そんなことを思いつつ、目を閉じた。
夢見の井戸ならぬ夢見の宿(自称)か…
6や5の要素も絡んできて、おらワクワクしてきたぞ!
253 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/06/19(日) 20:39:39.94 ID:dMaH06E60
乙!
保守
保守〜
■NEW ALBUM「C'mon」2011年7月27日リリース決定!!
通算18枚目のオリジナル・アルバム「C'mon」のリリースが決定しました!!
B'z初のTVCM出演でも話題を集めたペプシネックスCMソング「さよなら傷だらけの日々よ」、
アニメ『名探偵コナン』劇場版主題歌&TVオープニングテーマ「Don't Wanna Lie」の2作のヒットシングルに加え、
今夏開催の世界水泳上海2011テーマソングとして新たにレコーディングを行なった「ultra soul 2011」、
TBS系テレビ『NEWS23クロス』エンディングテーマの「Homebound」、そして、7月からオンエアとなる
本人出演のペプシネックス夏篇CMソングに決定した新曲「C'mon」など、充実の全13曲を収録!!
★NEW ALBUM「C’mon」
【収録曲】
01. C’mon
02. さよなら傷だらけの日々よ
03. ひとしずくのアナタ
04. Homebound
05. Don’t Wanna Lie
06. DAREKA
07. ボス
08. Too Young
09. ピルグリム
10. ザ・マイスター
11. デッドエンド
12. 命名
13. ultra soul 2011
で、それがDQ世界の宿屋とどのような関係があるのかね。
・投稿者は、話題と無関係な広告の投稿に関して、相応の費用を支払うことを承諾します
相応の費用を支払うことを承諾したうえでの書き込みかね?
ほす
保守らいでか!
「輝く〜みか〜づき〜きらめく〜星〜ぼし〜ラララ」
―ま た お 前 か
「やぁ!またお会いしましたね!」
―マロニーだっけ?相変わらず音痴だな。
「私の名前はマ・ロ・ー・ニです!」
―こまけぇこたぁいいんだよ。
「そんなひどい・・・しくしく」
―もう帰る。
「ああっ 待ってください!かわいそうな私のお願いを聞いてくれませんか?」
―自分でかわいそうとか言う奴はロクなもんじゃねぇ。
「なんなんですかあなたは!?私がこんなにも頼んでいるのに!」
―いや、逆ギレするなよ・・・
「今のは少し大人気なかったですね。すみません」
―めんどくさい奴だなー。話だけなら聞いてやる。
「本当ですか!?実はかくかくしかじかでして・・・」
―ふーん。それでさえずりの蜜っていうのを探してるって?
「そうなんですよ!それがあれば美声になって・・・フフフ」
―音痴は治らないんじゃ・・・
「整った顔立ち!流れる金の髪!そして美声!女性がメロメロになる要素がばっちり揃います!」
―本音はそれか。
「あっ!いや、ノドを痛めているのは本当ですよ。ゴホッゴホッ」
―リア充爆発しろ。
「そ・・・その呪文は!」
―夢の中ならイオナズンだって使えちゃうんだぜ?
「助け・・・あーれー!!」
マローニをたおした!
目を開けると、外はすっかり夜になっていた。
軽くあくびをしてベッドからおりる。
ユーシャとシンシアはまだ眠っているみたいだ。
「お客さん、どうでしたか?夢のほうは」
おっさんがにこにこしながら歩み寄ってきた。
うん。悪くない。久しぶりに清々しい気分になったぜ!
「そうでしょう?悪夢なんてただの思い込みですよ」
おっさんが言っても全然説得力ないけどな!
「それは手厳しいですなあ。・・・おや、あの子達も起きたようですね」
あっ。本当だ。ユーシャはまだ眠そうだけど。
「ねぇ!わたし すごい夢を見ちゃった!」
開口一番、シンシアが興奮気味にまくしたてた。
とりあえず落ち着け。
「夢の中に息も絶え絶えな詩人さんが出てきてね、自分はマローニだ って名乗ったの!」
あいつ生きてたのか。しぶとい奴だ・・・
「恐ろしい魔王にかけられた呪いを解くために、さえずりの蜜というのを探してるんですって!」
おい。音痴を魔王のせいにすんな。
「それで、一緒に探してくれる仲間を募集中だからモンバーバラという街まで来てほしいって」
「ふむ・・・モンバーバラですか・・・」
街の名前を聞いて、おっさんが何かを考えはじめた。
・・・が、放っておくことにする。
「マローニのお願いだもの、聞いてあげたいわ!」
いや、あんな捏造野郎は放置でおk。
そんなことより、もう夜だからお開きにしようぜ!
同意を求めるようにおっさんを見ると、懐かしそうな顔でつぶやいた。
「そういえばモンバーバラは歓楽街として有名でしたねぇ・・・」
何しみじみしてんだ。空気読め。
「若いころは劇場に入り浸って、美しい踊り子さんを眺めたものです」
・・・何?その話 詳しく。
「座長と仲良くなって かぶりつき なんてのも・・・」
マジか!ちょっとマローニの頼み聞いてくる!
「もう!さっきと全然態度が違うじゃない!」
シンシアが口をとがらせた。
「まあまあ、落ち着いてください。こんな時間に外に出るのは危険ですよ」
む・・・それもそうか。不審者とか出たら困るしな。
「でも、村長さんの許可をもらわないとダメじゃないかしら」
前回はまだしも、今回は本当に私用だからなぁ。許可されないこともあり得るな。
「はっはっは。黙ってればわかりませんよ!」
おっさんがあっさりと言ってのけた。
・・・実は大物なのかもしれない。
「村の人たちは私がごまかしておきますので、ご安心を」
「おじさん・・・」
シンシア、感激してるところを悪いけど。絶対裏があるぞ。
「さすがですね、お客さん」
おっさんがニヤリと笑った。
――次の日、宿屋の裏でおっさんの説明がはじまった。
「コーミズ村のエドガンさんに、このふくろを渡せばいいのね?」
「ええ。コーミズ村はモンバーバラを少し北に行ったところにあります。
彼は腕利きの錬金術師ですから、さえずりの蜜のことも知っているかもしれません」
「そんなすごい人とお友達だなんて、やっぱりおじさんはスゴイわ!」
「はっはっは。それほどでも・・・あるんですけどね!」
自画自賛 乙。
これ以上構うと調子に乗るから早く行こう。
「それじゃあ行ってくるけど、いい子でお留守番してるのよ?」
シンシアがユーシャの頭をなでながら言い聞かせている。
2人ともそんなに変わらないように見えるんだけどなぁ。
「わたしはオトナだもん!」
すぐにムキになるところとか、子供じゃんw
「そういうあもうだってお子さまでしょ。お菓子をつまみ食いしたの、知ってるんだから!」
くっ・・・なんでばれたし。
「クリームついてる」
何っ!?キレイにふき取ったはずなのに!
「・・・ふうん。やっぱりあもうがハンニンだったのね」
シンシアには敵わない・・・そう思った瞬間だった。
モンバーバラは歌と踊りの街というだけあって、想像以上に人が多い。
着いて早々にうっかりシンシアとはぐれてしまった。
もしかしたら劇場にいるかもしれないので行ってみることにする。・・・フヒヒw
「ヒューヒュー!マーニャちゃん、色っぽいよー!」
「スーザン!僕だー!結婚してくれー!」
「いいぞー!脱げー!」
「( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!」
観客は各々、好きなことを叫んでいる。
・・・駄目だな。皆 何もわかっちゃいない。
「ああ。まったくだ」
脱いだほうがいいとか、理解に苦しむね。
「君はまだ若いのになかなか見どころがあるな!」
いえ!話がわかる人に会えてこちらもうれしいです!
「今度、是非――」
「姿が見えないと思ったら、やっぱり劇場にいたのね!」
盛り上がりかけたところで、有無を言わせず引っ張り出された。
いいところだったのに!
「反論があるならどうぞ?」
うう・・・。笑ってるけど目が笑ってない。
抵抗すると後が怖いので、黙っておこう・・・
「それにしても、マローニは一体どこにいるのかしら・・・」
シンシアがふぅ、とため息を吐いた。
呼び出しといて探させるとか、なめてるな。
この街は結構広いし、探すのは骨が折れそうだ。
とりあえずあたりを見回してみる。
歓楽街というだけあって、ちょっとガラの悪い人も多い。
さっきからこっちをチラチラ見てるピンク鎧の人とか、マジあぶない。
まず、センスがありえない。ピンクとかw
「ねぇ、あもう。あのピンクの鎧の人・・・」
しーっ。見ちゃいけません。ああいうのが子供誘拐とかするんだぜ。
なるべく刺激しないように通り過ぎて・・・
「おぬし等!待たれよ!」
うへぇ。やっぱり不審者だったか。
「このような街にそのような軽装で・・・護衛はどうしたのだ?」
護衛がいないか確認するとは・・・こいつ、プロだな。
「はぐれたのであれば、私が連れて行って・・・」
逃げるぞ!シンシア!
「え!?う、うん!」
ピンク鎧の隙をつき、人ごみにまぎれる。
はぁ。しかし、都会は恐ろしいところだ。
『ピンク鎧を見たら全力で逃げろ』ってユーシャにも言い聞かせておこう。
やめて!ライアンが導かれなかった者になっちゃう!!ww
執筆&投下乙です^^
劇場で意気投合した相手、気になりますね〜^^
ピンク鎧、わろたw
乙!
そういやマローニって居たなあw
ピンク鎧www
ほっす
ほす
ほし
ほs
272 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/08/14(日) 21:51:48.11 ID:7BaF6DTr0
朝起きて俺はすぐに寝ようと思った。理由は二つ。
・そこが俺の知らない家で、夢だと確信したから
・眠いから
目を閉じたがすぐに起こされた。
「起きなさいトモ。今日はあなたの16歳の誕生日」
何度も聞いたことがあるセリフだ・・・DQ3か。
となると夢から覚めるのは全滅したときか?だったらやだな。
なんてことを考えていたら俺が勝手に動きだした。プレイヤーに操作されてるようだ。
おお、復活した
275 :
272:2011/08/23(火) 00:08:59.29 ID:3cRnLvy+0
この後王様にあって、勇戦僧魔のパーティをつくって、レベルを2つくらいあげたら宿に戻るだろう。
そこで寝ればたぶん現実にもどれるだろう。
スライムにボコられたり徹夜で歩きつづける羽目になりそうだが・・・・イヤ、ここは我慢だ。
この世界をいろいろ見ていきたいとも思うけが、この操られている感じが気持ち悪くてたまらない。
というか寝ても戻れなかったら俺は炎に焼かれたり角で刺されたりするのか
そもそもスライムの攻撃はどれほどのものなのだろうか
勇者のHPは25くらいだからで、2ダメージ食らったら・・・生命の1/12を削られるのか
そんな威力のたいあたりを受け止められるわけないじゃん
この世界を生きるのは無理だろう。目が覚めることを祈る
276 :
272:2011/08/23(火) 22:37:46.93 ID:3cRnLvy+0
訂正
目が覚めることを祈る→現実世界で目が覚めることを祈る
保守
278 :
272:2011/08/28(日) 12:58:03.33 ID:MEJn/cpY0
駄目だこのプレイヤー早く何とかしないと・・・
ーさかのぼること五分前(現実世界の時間で)ー
こいつ探索を全くしないで家をでやがったな。アイテム禁止の縛りプレイか?
運が悪いな俺。まぁ手慣れたプレイヤーなら…ってオイ、そっちは城じゃねぇ!外だ!
頼むからそーゆーのやめれ。なに橋わたってんだよ。どこまでいくんだよ。
敵でたらやばいって死んじゃチャララララララー♪
あ、死ぬ。…イヤまだ希望はある。スライム*1とかならいける!
魔物のむれがあらわれた!
イヤァァアアアアアーー!!!おおありくい*2いっかくうさぎ*4とかむりだろ!
ばかおまえ[たたかう]じゃねーだろがぁぁあああ!!!
そして今俺はバカでかいありくいに泣きながら切りかかっている
おおありくいに7のダメージ!もろに反撃を食らい倒れる俺。
ぬけかけた魂を何とかとりもどし立ち上がるとウサギ四匹が一斉に飛びかかってくる
ドドドドン!吹っ飛ばされて岩に体を打ちつけた。頭の上で数字が回っているのに気がついた。オレンジ色で[4]と書かれていた
岩の上にいつの間にかありくいがいた。舌が降りおろされる。頭上の数字が0になった。
279 :
272:2011/08/28(日) 13:44:48.30 ID:MEJn/cpY0
ん……?ここは・・・俺の家か?何か違うような・・・あっ、あいつはもしかして!
そこにいるのは間違いなく幼い頃の俺だった。後ろには3つ上の兄がいて、なんだかイライラしているようだった
俺「何だよこのゲーム、意味わかんないよ!」
兄「意味わかんないのはお前だろ、まず王様に会いに行けよ。
RPGの基本は人の話を聞くことだ。」
ああ、プレイしてたの俺だったのか。
兄「全滅したから交代。」
安全プレイキターーーーーーーー!
兄はリセットをおしてコントローラーをもち、ゲームを始めた。
その瞬間深い眠りにおそわれた。目が覚めるとそこは勇者の家だった
280 :
272:2011/08/28(日) 13:49:29.25 ID:MEJn/cpY0
ここまで書いてみましたが、続けていいですか?
282 :
272:2011/08/29(月) 23:52:12.46 ID:ZlE4e0cI0
さすが慎重派の兄!
話しかけられる人全てに話しかけ、アイテム収集も怠らない。
弟とはおおちがいだ・・・って俺かorz
ルイーダの店ではまず武道家を選び、素早さの種を使った。
素早さが2上がった
その瞬間、某シャダイのように時間が巻き戻った。
目の前にいるのはアリアハン王。・・・・・リセット?なんで?………まさか・・・
いやな予感は的中した。
全ての種で上昇値が3になり、さらにセクシーギャルになれるまでリセットが繰り返されている。
武道家の作業が終わった時点で既に二時間が経過。しかし休むことなく廃人作業を続ける兄。
駄目だ意識が薄れていく…。つうか何で座れないんだ。その割に頭の上の数字はいつまでも25のままだし。
1時間経過
にしてもこいつ小学生のくせにニート顔負けの廃人っぷりだな、きっと後ろでみてる俺もドン引きだろう。
2時間経過
ずいぶん時間に余裕があるんだな。夏休みか?お前の計画表にはゲーム 5時間とでも書いてあるのか?
3時間経過
ホントもうマジで勘弁してください。ポケ●ンとは違うからさぁ(泣)
すると祈りが通じたのか(飽きただけだろうが)魔法使いだけはすぐに切り上げた。
283 :
272 ♯やどや:2011/08/30(火) 23:45:51.94 ID:rh8lEEYr0
初トリです。失敗してたらすいません。
やっと廃人作業を終えた兄はついにフィールドに向かうようだ。
ここまで慎重なプレイなら死ぬこともないだろう。
必要以上に時間をかけそうだが無鉄砲に突き進まれるよりはマシだ。
さあDQの始まりだ!
と思った矢先に気づいた。
全 員 の 装 備 が 布 の 服 の み だ
オイ兄忘れてるぞ。ゲームのグラだからわかんねぇだろうけど、こいつら木の棒すらもってねぇぞ。
早くきづけってまずいって。
チャララララララー♪おおがらす*4があらわれた!
ほら敵でたー。ありくいやらうさぎがでなくてよかったな。
1ターン目
まずは武道家が殴り俺が続いて切りつける。からすAを倒した。
僧侶の攻撃はほとんど効いてないようだ。まぁ魔法職だから仕方がない。
オイ魔法使いなんで素手で殴りかかってやがる。しかもいつの間にかHP3しかなくなってるぞ。
魔法使いはからす3匹に集中攻撃を食らったようだ。やはり布では限界がある。
2ターン目
俺と武道家でさっきと同じようにからすBをたおした。
さぁ僧侶、ホイミを唱えろ!
僧侶のこうげき!………は?
その後魔法使いが棺桶になったのはいうまでもない。
#は半角にしないとだめですよー
285 :
272 ◆ym3OqFXpTzTx :2011/08/30(火) 23:56:52.86 ID:rh8lEEYr0
286 :
三吉里美 ◆iCDEFyqk1s :2011/08/31(水) 00:04:35.59 ID:Y2qJnVfHO
テスト
287 :
272 ◆eFr/n75R1Q :2011/08/31(水) 00:08:01.79 ID:Y2qJnVfHO
どや
操作していたのが幼いころの自分じゃ、文句もいえないですね(汗
しかし、おに〜さんも装備とかいいかげんで大変そう
死んでも戻れないってことは、クリアするまで戻れないのでしょうか
主人公も大変です
289 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/01(木) 23:02:01.25 ID:L5YyrFC/0
何なんだいったいお前は。「慎重な兄」じゃなかったのかよ。
イヤ、まてよ。こいつはもしかして・・・俺か!
全滅で交代と言われたが、それどころか外に出ることすらしない兄に痺れを切らした俺がコントローラーを奪ったんだ。
魔法使いの種の選択が適当になったのはきっとそのせいだろう。
優しい兄は仕方がないなと後ろからプレイを見ていたが、弟の雑なプレイにイライラしていなくなった。
そして俺は何もわからないまま旅に出た。
そんなとこだろう。
レーベまでは何とかなりそうだが、この先すぐに全滅してしまうだろう。と、最後のからすを切りながら不安に思う。
レーベ到着。………棺桶2つか。こいつ教会行ってくれるんだろうか。「しに」と書いてあるから、やばいってことはわかってそうだが。
休みたいという意志に反して俺の体は動き出した。このシステムマジ何とかしてほしい。あぁ、宿屋が遠のいていく…
プレイ・弟(4)
俺Lv2 HP6/29
武Lv2 HP7/25
僧Lv1 HP0/16
魔Lv1 HP0/13
290 :
272 ◆ym3OqFXpTzTx :2011/09/01(木) 23:09:13.18 ID:L5YyrFC/0
291 :
井戸魔神F ◆Tny1JrNujM :2011/09/02(金) 22:44:20.31 ID:icqKdYmq0
鍛えまくる!
292 :
272 ◆ym3OqFXpTzTx :2011/09/03(土) 00:11:29.48 ID:sv5G4CiV0
信じられないことが起こっている。
あの弟が人々と話し、タンスを物色しているではないか!
しかも今向かっている先は…教・会!
神父が詠唱を終わると死んだ二人がゾンビのように棺桶から出てきた。怖い。
村での弟の行動は完璧だった。きっと面倒見のいい兄はレクチャーしながらプレイしたのだろう。
兄GJ! しかしこうなると外に出る前に交代してしまったことが悔やまれる。
そもそも何で取説をよんでくれないのだろうか…って4歳だからか。
なんて考えてるうちに宿についた。3日ぶりの休みだ。(この世界は5分ほどで一日)
もしかしたら目がさめたら夢オチパターンかもしれない。
とにかく疲れた。寝よう。
プレイヤー 弟(4)
俺Lv2 HP29/29
武Lv2 HP25/25
僧Lv1 HP16/16
魔Lv1 HP13/13
293 :
祝福 ◆eFr/n75R1Q :2011/09/04(日) 12:44:06.02 ID:GwA8o12KO
あ
保守
ほしゅ
保守ー!
297 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/24(土) 18:18:53.96 ID:Y+h6LBfc0
vfghvfgkjl
298 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/24(土) 19:41:05.79 ID:lbdoQIsxO
女戦士たんに求婚する
299 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/24(土) 21:35:16.09 ID:YMvDkfp5O
なんかモンスターだらけの村で目覚めたんだが
村の外が洞窟になってて、しかも敵が糞強くて出られん
しかも宿屋のナメクジぼったくりだしよぉ…
保守
301 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/04(火) 21:03:23.57 ID:1wKuw3diO
アリーナをレイープ
クリフトのザキ連発で301死亡。
303 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/05(水) 11:39:50.92 ID:6h+fpuYDO
アリーナと和姦
ブライのヒャド連発で303死亡。
アリーナのパンティー盗む
ゼシカを探しに行くが、起きた世界が5の世界だったら結構つらい。
毎日悲しくて泣いちゃう。
307 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/07(金) 23:16:32.20 ID:IAwrp/VAO
変化の杖でアリーナに化けて街を徘徊する
全裸で
え?
ええ?
ここどこ?
続く
しかし布団から目覚めて起きる「夢」は実際良く見る
布団が置かれている場所がスーパーの駐車場だったり、海辺の浜だったりするのが変だが。
その後丁寧に布団をたたんでw町の様子を見に行くというのがいつものパターン。
>>310 夢の中とはいえ凄い場所で寝てるんだな
街の様子を見に行くというのは、自分の知っている(住んでいる)街なのか
それとも全く知らない街だから見に行くのか
アリアハン周辺でスライムを倒してLvをあげて銅の剣、皮の鎧、皮の盾、皮の帽子を買う。
313 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/14(金) 18:25:12.71 ID:+lN3gGZ50
なく
賢者たんか僧侶たんと結婚するお
315 :
311:2011/10/15(土) 22:03:14.87 ID:mD6SzKnD0
>>311 亀レスですまん
全く知らない街だけど、いつも外国。マカオみたいなところ(海辺に中国人の店やレストランがある)か
スイスみたいなところ(スーパーがなぜか結構高い山の中腹の小さい町にある)の夢が多いんだけど。
探索してると割と町の人は平気でこちらに話しかけてくるけど知らない人。
探索した後、いつも布団が気になって最初の場所に戻るw
それで現実世界で目覚めるw
何の布団なんだwww
DQ世界でないのが残念。
こんやもお楽しみでしたね
>>315 マカオとかスイスだったらじゅうぶんDQ世界に似ていると思えるけどな
きみの夢に入ってみたいww
じゃあみんなでオフ会しようぜ
今晩
>>315の夢の中に集合な
320 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/16(日) 23:25:47.05 ID:LTQT4o740
見た夢を語るスレ
森の中でうさぎと会話
ほしゅ
保守点検
324 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/30(日) 12:59:21.15 ID:goW23+2nO
ルラフェンの地酒を飲んでみたいわ
325 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/30(日) 23:16:27.72 ID:1HxfzSVHO
パフパフ
326 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/31(月) 00:04:25.10 ID:4XWnmxgB0
泣いておうさまに「もとの世界に帰してくれ」と頼む
327 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/31(月) 00:08:14.00 ID:HQaDMoWJ0
温泉のぞき
328 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/01(火) 18:27:41.94 ID:v+7tnDkr0
ねる
329 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/02(水) 17:29:30.76 ID:cWSaZunw0
おおお
街を散策
331 :
井戸魔神F ◆Tny1JrNujM :2011/11/06(日) 08:58:48.83 ID:vj/b/JU/0
ステータスチェック
昨日は女戦士の、むちむちとした体を堪能した
もう一泊して今度はツルペタ商人を可愛がってやろう
くくく…
鍛え抜かれた屈強な女戦士の体が脂肪でむちむちなはずがない
銅の剣を買う。
335 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/10(木) 21:34:18.95 ID:ucrOS5d40
.....
素手でスライムと戦う。
337 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/13(日) 16:15:32.37 ID:WaLL9ihIO
>>333 女戦士「私、筋肉つきにくい体質なのよね」
薬草なしで、町を出る。
339 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/13(日) 17:51:43.14 ID:fVe9yqNeO
毒消し草なしで毒沼散歩
340 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/13(日) 19:51:05.58 ID:t7r3ADP5O
王様になって女はエッチな下着しか装備してはいけないという法律をつくる
>>337 あんた戦士に向いてないよ転職しな
>>340 美人でスタイルのいい女なんてほんの一握りだぞ?
残りは恐ろしい外見になるぞ
きっと、下着を急いで買いにいくだろうなぁ.....
お絵描き掲示板に妙な虫が湧いておりますぜ
駆除してくだせぇ
344 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/18(金) 18:38:59.15 ID:6cvEVoSi0
おきる
>>343 報告ありがとうございます。
コメNo59-67までの謎コメントを削除しました。
>>345 うお。タカハシ氏お久しゅう。
最近は投稿がなくて寂しい限りですなあ。
おれが聞いた情報によると、もうじき中国はバブルがはじけて昔の貧乏な中国に戻るらしい
もう経済は破綻してて、取り戻すのは無理なんだそうだ
その世界では有名な政府関係者筋から聞いた確かな情報だよ
まあお前ら頭の良い連中には、今さらなくらいのネタだね、
お前らからすればもう常識的なくらいの知識だろ?
干し
ほ
ほっしゅ
>>167の続き
前略 母上様
俺がこのワンダーランドに迷い込んで、一日が経ちました。
恐らくそちらではまだ騒ぎにはなっていないのでしょうね。
それとも、同居している弟が異変に気づいて慌て始めている頃でしょうか。
最初こそ戸惑いましたが、この世界にも少しずつ慣れてきています。
そう、中世風の町並みにも、何故か言葉が通じる外国人にも、
「この洞窟、ずいぶん入り組んでやがるな。まるで迷路だ」
到底ありえない魔物の存在にも、
「!ハッサン、危ない!」
「ぬわっ!こいつ!」
体液や贓物が飛び散るグロテスクでバイオレンスな戦いにも、
「どりゃあ!!……ったく、油断も隙もありゃしねえ」
「仲間は……いないみたいだな」
「一撃で倒すなんて驚いたわ。さすがね、ハッサン」
「へへっ、会心の一撃ってやつか?うまい具合に入ったみてえだ」
少しずつ慣れつつ、慣れ……
慣れるかあああああああああああ!!!!
どうなってやがんだ!とんだワンダーランドだよここは!
俺はふらふらとした足取りで彼らの後に続く。
あれから俺は荷物持ちを申し出、始めと同じように戦いは離れたところから見るだけに留めさせてもらうことにした。
何故ならば、あの魔物に止めを刺した直後、非日常とプレッシャーの連続に耐えられなくなった俺は
胃の中で消化中であった朝食を全て吐き出してしまったからだ。嘔吐した後も吐き気は収まらず、胃液まで吐いた。
そんな情けない俺を、ボッツたちは非難するどころか、優しく背中をさすってくれた。気遣ってくれた。
どこまで優しいんだよこいつら。涙がちょちょ切れそうだ。
ゲロ臭を撒き散らしながら進むのは魔物たちに居場所を示しているようなものらしいので、
口などを川の水で丹念に綺麗にしてから探索を開始した。ゲロだまりが気になったが、あれはあれで役に立つらしい。
何でも、人の臭いより強いから囮に使えるのだとか何とか。
畑に髪の毛を撒いておくと、人の臭いがするから動物が寄ってこないとか何とか聞いたことがある。あれの逆バージョンってわけか。
なるほど、そういえばあれから魔物に出くわす頻度が減った気がする。
かえって助かったとハッサンは笑ってくれたが、同性の前でならまだいいとしても、
ミレーユのような美人がいるところでリバースなんてショックもショック、大ショックだ。
まあこれくらいで人を嫌うほど器が小さい女性には見えないが、俺にも俺なりに男のプライドというものがだな……。
その時ボッツが足を止め、まっすぐに前方を指差した。
「人だ!」
「イリア?誰だいそりゃ?そんなことより、大変なことになってるぜ!
宝をいただこうとここへ来たら、あの男が倒れていたのさ。
かなりの傷を負ってるところに魔物がまた襲ってきたんだ!」
両手をばたつかせながら、角つき覆面を被っている男は声を震わせた。
その向こうで獣とも人ともつかない者の咆哮が上がる。
ひぃっ、と細い悲鳴を上げて男は頭を抱え、体を小さくさせた。がたがたと震えている。
「あのままじゃやられちまうぜ!何とかならないのかよ!」
そのムキムキの筋肉は何のためにあるんだよ!と非難したくなるのをぐっと堪える。
俺が言えたことじゃない。何はともあれ、この人はイリアさんじゃないみたいだ。ということは……。
「お、おい!ボッツ!?」
俺は届かない手を伸ばす。
ボッツが背中の剣を抜いて魔物のいる方へと走っていってしまったからだ。
ハッサンとミレーユが慌ててその背中を追い掛けたので、俺も思わずそれに続いてしまう。
果たしてそこには、でかい魔物を前にして地面に片膝をつく血まみれの男がいた。
青い鎧はところどころ砕け、どこも真っ赤に染まっている。剣を地面に突き立てて体を支えているが今にも倒れそうだ。
そんな男の様子を見て魔物は不気味に微笑んだ。
見る者全てを竦み上がらせるような、そんな笑みだ。
丸太のような腕がぐわっと振り上げられる。
傷つき、凍りついてしまった男にはもはやそれを避ける術はない。
「待てッ!!」
間一髪、ボッツの剣が魔物を横から薙ぎ払った。
しっかりと男の首に狙いを定めていたはずの長く鋭利な爪は無念にも鼻先を掠めていく。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」
そこへ高く跳び上がったハッサンが、旅で鍛え上げられたのであろうぶっとい足を魔物の顔面にめり込ませた。
いわゆる飛び膝蹴り、というやつだ。プロレスとかで見たことはあるけど、生で見るのは初めてだ!すっげえ迫力!
ハッサンは崩れ落ちた魔物から素早く距離を取り、ふうっと息を吐き出した。
軽やかなステップとは裏腹に表情は険しい。
……もしかして、まだ終わってない……とか?
「大丈夫ですか?さあ、こちらへ!」
「…ぅ……」
いつの間にかミレーユが男に肩を貸し、こちら……つまり俺の方へと誘導させていた。
うわあやばい超血まみれじゃんあれやばい本当やばいって死んじゃうって!
「タイチ、この人をお願い」
お願いと言われましても
「私は二人に加勢しないと。今あなたに背負ってもらってる荷物の中に薬草があるわ。
それでこの人の傷も少しは治せるはず…」
えっ、でも
その時、背後で耳をつんざくような叫び声が轟いた。
叫んだのは言うまでもない、あの魔物だ。
あいつ、あんなクリーンヒットをもらっといてまだ生きてたのか!
びびる俺をよそに、ミレーユは手早く、しかし丁寧に男を横たわらせた。
「大丈夫、タイチならきっとできるわ。それじゃあお願いね!」
いや、そんないい笑顔で言われても―――ちょ、ミレーユさああああああん!!?
……行ってしまわれた。ああ、なんて頼もしい背中。
つうか待ってくれよ!怪我人託されても困るよ!
応急措置とか高校の保体で教えられたっきりだよ!
薬草だけでいいの?包帯とか消毒薬は!?
「うっ、う…………ナ……ジ……」
横たえられた男が、苦しそうに呻く。なじ?ネジか?
まるで熱に浮かされているようだと思って額を触ってみると、
およそ平熱とは思えない熱さが返ってきた。
「……マジかよ」
鼻をつく血の臭いが、このままでは男の命がやばいことを告げていた。
死ぬのか、この人。
そう思うと同時、俺は背中のでかいふくろを下ろしていた。薬草!どこだ!?
ミレーユはきっと、俺なら助けられると信じてこの人を託したんだ。
その信頼を裏切るわけにはいかない。
それに俺がためらったせいで人が死ぬくらいなら、やれるだけやった方がいいに決まってる。
ふくろを漁っていると、束になった草がいくつか見つかった。確かこれが薬草だったはずだ。
薬草は傷口に当てるようにして使ってたけど、これだけの大怪我にも効くんだろうか?
ひっかき傷とかだったら問題なく治ってたみたいだったけど……。
ああ、ファンタジーに慣れつつある自分が怖い。
「とにかくやってみるしかないよな……」
傷もだけど、まず出血がひどい。もたもたしてる時間はなさそうだ。
ええっと、まずは……血を洗い流せばいいのか?うん、そうだな。傷口がどこかわかりにくいし。
薬草と一緒に見つけた、細かい模様が刻まれた瓶を握る。
中に水が入っていて、血を洗い流すにはちょうどよさそうだったのだ。
よし……。俺は蓋を開けて、右肩の傷口らしきところに向けて恐る恐る瓶を傾けた。
「ヒッ!」
水が傷口にかかったその瞬間、男がびくんと跳ねたもんだから、思わず情けない声が出てしまった。
そ、そうだよな、水なんかかけたら傷に滲みる。そりゃ痛いよな、動くよな。
でもこういうのって少しずつかけた方が……いいのか?
よくわからないままに続行していると、ふと険しかった男の顔が幾分か和らいでいることに気づいた。
苦しそうだった呼吸も整ってきている。試しに額に手をあててみると、熱が下がっているように思えた。
おいおい。傷口がきれいになっただけでそんな変わるもんか?
怪訝に思いながら傷口に目を戻したが、またおかしいことが起きた。
男の右肩から傷口がなくなってやがるのだ。
見失った、ということはない。
だってその部分の鎧は壊れているし、破れている服には血が染みている。断じて俺の見間違いではない……はずだ。
ここで俺に電流走る―――!
もしかして、この水にも薬草と同じように傷を癒す効果があるんじゃないか?
なるほど、町のおばちゃんが魔王に襲われる心配をするわけだ。
こんな便利な水、敵側に置いておきたいわけないもんな。
とにかく、俺は胸を撫で下ろした。何とかこの人を助けることができそうだ。本当に良かった!
傷口に水をかけたり薬草を充てているうちに、男の体はみるみる治っていく。
これ、普通だったら全治二ヶ月くらいの怪我じゃないか……?全身縫いまくりだよ。
もはや消えゆく命を助けられたという感動は俺の中に無く、この不可思議な世界観に首を傾げるばかりだった。
完治まであと薬草二つ分、というところで、男が目を覚ました。
ぼんやりと瞬きを繰り返している。
かと思えば勢いよく起き上がり、腰に携えていた剣に手をやったもんだから、
次にはうずくまる羽目になった。
「いてててて……ちくしょう」
「だ、大丈夫ですか?無理しない方が……」
「おう、すまねえ……。あの魔物は……まだ倒せてねえみてえだな」
自分の顔がさっと青ざめるのがわかった。
そうだ!手当てにいっぱいいっぱいで全然気が回らなかった。ボッツたちは大丈夫なのか?
それに気づいた瞬間、呪文を唱える声や魔物の咆哮が耳に流れ込んできた。
なんで今更!己の体の鈍感さを憎らしく思いながら後ろを振り返る。
すると、すぐ近くに見覚えのあるツンツン頭が立っていた。
ボッツだ!
あちこちに怪我をしてるが、見る限りそんなに深い傷じゃないみたいだ。
それにしたって、いったいどうしたんだろう。
ボッツに遮られてよく見えないが、物音からすると、まだ魔物との死闘は続いている。
一緒に行動するようになって日は浅いけど、ボッツは戦っている仲間を見捨てて逃げるような奴じゃない……はずだ。
あ、もしかして、手持ちの薬草がなくなったのか?
なるほど、それでふくろを背負ってる俺のところに来たわけね。
「オッケー、薬草だな?ちょっと待ってろよ……」
ふくろに手を突っ込み、まさぐってみる。
うーん、手当てに結構使っちゃったからな。まだ残ってるといいんだけど。
と思ってるうちに、葉っぱ特有の感触が見つかった。いやいや良かった、使い切ってたらどうしようかと思ったぜ。
ま、それで人ひとり助けられたんだからいいけどな。俺は薬草(仮)を引っ掴み、さっそく目の前の仲間に渡すべく、顔を上げた。
「ほらよ、ボッツ」
しかし次の瞬間、視界が揺らいだ。間もなく体が岩壁に叩き付けられる。痛え。
何だ?何が起こった?いやわかってる。多分あの男に突き飛ばされたんだ。
意味わかんねえ!俺はただ、仲間に薬草を渡そうとしてただけだっていうのに。
痛む体を起こし、いっちょ怒鳴ってやろうと口を開いたが、声は出ず、あろうことか開いた口が塞がらなくなってしまった。
ボッツが剣を手にしていたのだ。
いや、それは別におかしくない。今は戦闘の真っ最中。剣を抜かないでどうすんだって話だ。
言い直そう。ボッツは剣を振り下ろしていたのだ。
――――ついさっきまで、俺のいた場所に。
タイチ
レベル:5
HP:30/32
MP:0/0
装備:ブロンズナイフ
くさりかたびら
けがわのフード
特技:とびかかり
お久しぶりです。実に八ヶ月ぶりです。
アモールがなかなか終わりません。
前回でMP13になったのに、ミスで0に戻ってしまいました。太一ごめん。
>>355 投稿お疲れ様です。
太一、元気だったんだな。安心したよ。
>>タイチの人
投稿おつ。
久しぶりに続きが読めて嬉しいよ。
アモールは結構好きなイベントだから俺得だw
「ボッ、ツ……?」
ゆらり。剣を振り下ろした態勢からボッツが立ち上がる。
なんだこれ、どうなってんだ。
岩壁に背をつけたまま、俺は愕然としていた。
ボッツが、俺に、剣を向けた。
なんでだよ。俺何かしたか?
殺したくなるほど足手まといだっていうのか?
ああそうだよ、確かに俺は役立たずさ。みんなの足を引っ張ってばっかりだ。
だけど、だからって、だからって殺そうとすることないだろ! そんなに俺が邪魔かよチクショウ!
悔しさに拳を握り締める。薬草が潰れたのか、汁が手を濡らした。
ああもう、思考回路はショート寸前だ!
「おい! おい兄ちゃん!」
ボッツを挟んだ向こう側で、男が手を振った。
何をのんきな、と怒鳴りたくなったが、彼がいなきゃ今頃俺は真っ二つにされてただろう。
ぐっと堪えて「何だよ!」と捨て鉢に応える。
「あんたも冒険者ならわかってるだろうが、こいつぁ混乱させられてるだけだ!
一発殴ってやりゃあ正気を取り戻すはずだぜ!」
……へ?
「何呆けた顔してんだ。
魔物の中には敵を混乱させて仲間割れを誘う奴がいるんだよ。
……まさか、知らねえのか?」
し――――ししししし、知ってたし! そんなのマジ常識だし!!
いやー知ってたわー二年くらい前から知りまくってたわーあまりにも当たり前のこと言われたからびっくりしちゃったわー!
よーしパパあいつを正気に戻しちゃうぞー!
もう見てらんない、とばかりに男は手で顔を覆うのが見えたけど、そんなの知るもんかい。
ネガティブモードはここまでだ。ハッサンとミレーユは魔物の相手に手一杯。
つまり、この俺がやるしかない!
すっくと立ち上がり、虚ろな目のボッツにずかずかと近づく。
怖くないのかって? 正直言うとめちゃくちゃ怖いです。
また切り掛かられたら避けられる自信ないし。でもやるしかない!
ボッツはおろおろと、何をしたらいいのかわからないといった風に辺りを見回していた。
よ、よし! これなら俺でも!
ああ、ビンタの神様。どうか俺に力をお貸し下さい!
いーち!
にーい!
さーん!
「ダアアァァァァァァァァァッ!!」
「ありがとうございますっ!」
よし、闘魂注入完了。
ふっふっふ。我ながら見事なビンタだったぜ。
「あ、あれ……?」
尻餅をついたまま、ボッツが辺りを見回した。目に光が戻っている。
「ボッツ! よかった、元に戻ったな」
「元に……? 確か、あの魔物に妙なダンスを見せられて……」
そこで痛みに気づいたのか、ボッツはハッと右頬に手をやった。
あ、やべ。赤くなってるじゃねえか。
仕方なかったとはいえ、今更罪悪感が沸いてきた。
あ、そうだ! こんな時こそ薬草の出番じゃないか。
ボッツ、これ使ってくれ。さっき握り締めたから、
成分とかそういうの、ちょっと薄くなってるかもしれないけど。
「はは、ありがとう。何から何まで悪いな!」
ボッツは爽やかな笑顔で薬草を受け取り、それをくわえると戦場に戻っていった。
何あのイケメン。憎らしい。
ポッキーのCM出れるんじゃねえの。
それから数分もしないうちに、あの恐ろしい魔物は倒された。
とどめはボッツのメラ(火の魔法だった)で怯ませてからのハッサンの飛び膝蹴りだ。
魔物が崩れ落ちた瞬間、ファンファーレが聞こえたような気がしたくらい見事な連携だったぜ。
三人はハイタッチして(なんとミレーユも!)勝利を喜び合った後、こちらに駆け寄ってきた。
ああ、当たり前だけど、みんな傷だらけだ。
「ありがとうよ。おかげで助かったよ」
男が足をふらつかせながら立ち上がろうとしたので、思わず肩を貸した。
すまねえなぁ、と申し訳なさそうに笑う彼に、さっき助けてもらったし、気にするなと首を振る。
薬草や水は、傷はきれいに治してくれるくせに、疲労や体力までは回復してくれないらしい。
そこまで万能じゃないってわけか。ファンタジーにも限界があるんだな……。
「俺ははやてのイリア。へへ、俺としたことがとんだドジをふんじまったぜ」
ってことは、この人がジーナの恋人か。
恋人が殺し合うなんてドラマや映画ならよくあるけど、現実じゃ見たことない。
痴情の縺れじゃなさそうだし、いったい何があったんだ?
俺たちが聞くまでもなく、イリアは事情を話してくれるつもりらしい。
奥に恭しく奉られている宝箱を指してから、彼は俯きながらも言った。
「そこの宝箱を開けたとたん、中にいた魔物に取り付かれちまってよ。
気がついたらジーナに切り掛かっていて、それでジーナが俺を……」
そこまで話して、イリアは弾かれたように顔を上げた。
「ジーナ!」
焦りを含んだ声が洞窟内に反響していく。
ちょっ、キョロキョロするのはいいけど、あんまり暴れないでくれよ。バランス崩しそうだ。
もちろん、今も上で剣を洗い続けているだろうジーナに声が届くわけはなく、返事は無い。
「あのバカ! もしかしたらオレが死んだと思って……!
悪い! 助けついでだと思って、オレを上まで連れていってくれねえか?」
断る理由なんてあるわけない。
もともとそのために来たようなもんだしな。
俺たちが揃って頷くと、イリアは顔をくしゃくしゃにして、歯を見せて笑った。
印象的な笑顔だ。
「へへ、悪いな!」
「いいえ。それじゃあ行きましょう。リレミト!」
ミレーユが声高々に唱える。
おお、また魔法か。いいなぁ、俺も使ってみたいなぁ。
って……何も起きないぞ……?
「変ね……もう一度。リレミト!」
が、これまた何も起きない。
三度目の正直だとばかりにもう一度唱えたが、結果は同じだった。
ミレーユたちはいよいよ首を傾げる。
「どうなってるんだ?」
「魔法が使えない場所……ってぇわけじゃねえしなぁ」
「仕方ないわ。歩いて戻りましょう」
よくわからないが、三人の話から推測するに、
リレミトはこういう場所から脱出する魔法らしい。
いいなぁそれ。俺もリレミト使って大学やバイト先から脱出したいぜ。
そしたら家までひとっ飛びだもんな。
「ダイガク……っていうのが何だかわかんねえけど、それだったらルーラだな」
ガッハッハとハッサンが笑う。瞬間移動はルーラなのか。よくわからん。
ホイミヒャドメラリレミト。この世界にはあといくつ魔法があるんだ?
とりあえず、ジーナのところに着くまでは、イリアは引き続き俺が肩を貸すことにした。
ボッツたちはさっきの戦いでボロボロ……とまではいかないけど、
結構体力を消費したみたいだしな。
多分帰り道にも魔物は出る。ゲロだまりの囮もそろそろ限界だろう。
魔法や道具で傷を治して、さあ行こうと足を踏み出した時、あのツノ覆面男と目が合った。
「あんたら強いな! あんたらが来なかったら、イリアって旦那は確実にやられてたよ」
お前もう帰れ。
休憩を挟みつつも、俺たちは上に戻ってくることができた。
っていっても、実は道中一匹も魔物は出なかったんだよな。
運が良かったのか、それともあの魔物がここの主だったからなのか。
「ジ、ジーナ!」
ジーナの姿を見たとたん、戦いの疲れなんて吹っ飛んでしまったのか、
イリアは彼女のところへすっ飛んでいった。
剣を洗い続けるジーナの動きが止まり、ゆっくりと振り返る。
目が腫れぼったくなっていて、相変わらず頬は涙で濡れていた。
「イリア!」
剣が彼女の手から滑り落ち、かしゃん、と鳴る。
弾かれたように立ち上がったジーナとイリアはどちらともなく駆け寄り、抱擁を交わした。
そのままキスまでしてしまいそうな勢いだ。
「あ、あんた生きてたんだね! あたし、てっきりあんたを殺してしまったと思って……」
「おめえは相変わらずせっかちだな。このオレ様がそうカンタンにくたばるかってんだっ!」
「よかった、本当によかった…」
「バカヤロー。泣く奴があるか」
「だって……。だって本当に」
何だかファンタジー映画でも見てる気分だ。
洞窟の薄暗い闇はこの場に似つかわしくないと判断した――のかはわからないが、
ボッツがそっとランプに火を点けた。
闇がほどけ、向かい合う二人の姿がより濃く浮かび上がる。
普段ならハンカチ噛んで嫉妬するところだけど、今は何だか見守りたいという気持ちが強い。
いや、羨ましくないって言ったら嘘になるけど。
ここで「リア充爆発しろ!」なんて考えるほど、俺も無粋じゃないさ。
先程までとは違う、暖かい涙を流すジーナはすごくきれいだった。
照れたのか目を逸らし、ぽりぽりと頬をかくイリアが妙に可笑しい。
「まあいいや。それより例のものはちゃんと取ってきたんだろうな?」
「カガミのカギよね。ほらここに」
ジーナがどこからか小さなカギを取り出した。
何かの装飾が施されているように見える。
……ん? あれ?
「どうしたの?」
「いや、あのカギ……どこかで見覚えがあるような……気のせいかな」
この世界に来てから、まだ一日しか経ってない。
ちゃんといちから辿れば思い出せるはずだ。
どこかの女性が身につけてた気がするんだよな。えーっと……。
あの姉妹は違うな。人妻バニーでもない。教会のシスター……も違う。
くそ、喉まで出かかってるんだけどなぁ。あーもどかしい。
そこで太い歓声が鼓膜を叩き、俺の思考はかき消された。
「さすがジーナだ! オレが死んだと思ってもちゃんと取るものは取ってらあ」
「もしもの場合はあんたの形見にしようと思ってさ」
「よせやい。エンギでもねえ」
笑い合う二人の声が響く。
さあ軽口はここまでだ、そろそろ行こうといった時になって、
イリアが俺たちの方を振り返った。
「世話になったな。おかげで目的のカギも手に入ったし。なにかお礼をしなくちゃな」
「そんな。気にしないでください」
「いいじゃねえか。もらえるもんはもらっとこうぜ」
「そうそう、人の好意には大人しく甘えとくもんだぜ。
といっても、何がいいかな。えーと……そうだ! これをあんたたちにあげるよ」
イリアはこっちに駆け寄ってくると、指にはめていた指輪を外し、ボッツに握らせた。
おいおい、それペアリングとかじゃないだろうな。ジーナまた泣くぞ。
「そいつは“はやてのリング”。きっと役に立ってくれるはずだぜ」
「ありがとうございます!」
「やめてくれよ、礼を言うのはオレの方さ」
イリアがそこで、俺の肩にぽん、と手を置いた。
え、何その生暖かい目。
「頑張れよ……」
んなっ! い、言われなくても頑張るっつーの!
現代っ子なめんなよ!
「わははっ! そりゃ悪かった!
じゃあな。縁があったらまた会おうぜっ!」
また顔をくしゃりとさせて笑って、イリアはジーナのところへ戻っていった。
ちくしょう、マジ余計なお世話だ。
まだ冒険始めて一日目だぜ? 俺の快進撃はこれからだっつーの。
頑張って強くなって、魔王なんてケチョンケチョンにしてやんよ!
魔物根絶やしだコラァ!
「さて次はいよいよ月鏡の塔だぜ。塔の扉をそのカギで開けて、」
「伝説のお宝、ラーの鏡が手に入るってわけだね」
イリアの言葉にジーナが力強く頷いた。
爛々と目を輝かせて、不敵な笑顔を浮かべている。
さっきまで恋人を想ってしおらしく泣いていたのが嘘のようだ。
きっとあれがいつもの顔なんだろうな。
「行くぜ、ジーナ!」
「待ってよおまえさん!」
硬い足音を鳴らしながらイリアとジーナは出口へと駆けていく。
外の光に向かっていくその姿は、二人の未来を暗示しているようでもあった。
きっと、いずれは結婚して、幸せな家庭を築くんだろう。
それをきっかけに盗賊稼業から足を洗ったりするかもしれない。
とにかくあれだな、幸せになってほしい。それだけだ。
……って、あれ?
カガミのカギってボッツたちも探してるんじゃなかったっけ。
きれいにまとめちゃったけど、行かせてよかったのか?
あ、待てよ。あの二人が月鏡の塔に行くことで、現実世界の塔の扉も開いたりするんじゃないか?
普通なら、夢が現実に影響を及ぼすなんてとても思えないけど、
この世界ならあり得なくはないかもしれない。
イイハナシダッタナー(;∀; )的な会話を交わしながら、ジーナたちに続いて洞窟を出る。
外はまだ明るく、入った時と変わらず雲一つない晴天だった。
目が、目がああああああああああ!!
あー、ラピュタ見たい。
「あ……! 見て!」
一刻も早く光に慣れようと目をしぱしぱさせていると、出し抜けにミレーユが声を上げた。
なんだなんだと全員で駆け寄り、視線を追いかけてみる。
―――ついぞ鮮烈な赤に染まっていたはずの川が、日の光を受けてきらきらと輝いていた。
川底が見えるほど透き通り、何事もなかったかのようにさらさらと歌っている。
元に戻ったんだ!
「ま、当然といえば当然だわな。原因が無くなったんだからよ」
ハッサンが水を差すようなことを言うもんだから、
俺は思わず睨むようにしてしまった。
逆に怒られるかな、なんて思ったが、なんとボッツも同じようにしている。
一人ならともかく、二人に睨まれるのは流石にばつが悪いのか、
ハッサンは降参をするように両手を挙げた。
「くすっ。ほら、早く戻りましょう。ファルシオンがお待ちかねだわ」
振り返ると、ミレーユが木に結んである手綱をほどいてやっているところだった。切り替え早くね?
ファルシオンはぶひひんと鼻を鳴らし、焦れているのか、左前足のひづめを地面を叩くように動かしている。
無傷なところを見ると、幸いにも魔物には襲われなかったみたいだ。
ボッツが撒いてた水の効果……だよな、多分。この世界の水は色々とすごいな。
「よしよし……ごめんな、ファルシオン」
ボッツがファルシオンの……なんつうの? 首から背中にかけての部分? を撫でてやると、
ファルシオンは嬉しそうにボッツの顔に鼻を擦りつけた。
あーあー、あのままじゃ鼻水まみれになってイケメンが台無しだな! いいぞもっとやれ!
と、胸中で密かに応援していたにも関わらず、
ボッツは鼻水攻撃からいとも簡単に抜け出してしまった。チッ。
――――ま、冗談はともかくとしてだな。
「戻りましょう。
多分、またあのベッドで眠れば、下の世界に戻れるはずよ」
ミレーユがそう言いながら手綱をボッツに手渡す。
すると、早く行きましょうよ、と言わんばかりに、ファルシオンのいななきが響き渡った。
タイチ
レベル:5
HP:30/32
MP:13/13
装備:ブロンズナイフ
くさりかたびら
けがわのフード
特技:とびかかり
アモールは次で終わりです。多分。
>>356-357 レスありがとうございます!
やっぱり感想頂けるのってすごく活力になります。
これからもがんばりますん。
太一「色々ありすぎて死にそうだけど、俺は今日も元気です」