投下予定:今夜21時 です。
気づいたお方いらしたら支援をお願いします!
>>26 今更気づいて申し訳ありません……部分修正として、WIKI編集でので対応で良いでしょうか。
待機
暗い。
目の前に広がるのは、暗黒という表現が最も適した空間。
これと比べれば、夜の闇など明るく思えよう。
そこに光の存在は許されない。
一行にはそう思えた。
「……」
誰かの足が、頼りない足場の縁から小さな石塊を押し出す。
破壊神により食い散らかされた世界の、その狭間。
投げ出された小石が音も立てず遥か遥か、目に見えぬところにまで落ちてゆく。
消えたのか、それすらも知り得ることは叶わない。
飲み込まれれば、恐らく光ですらも存在できない。
巨大なる空虚を前に何も出来ずに。
それを人々は闇とは呼ばない。
敢えて表現するとしたら、そう。
混沌、と。
「覚悟……シドー」
彼らが還るのは何処か?
それを決めるために、彼らは剣を取る。
破滅へと誘われつつある、この運命に立ち向かう。
目の前の邪神を破壊する為に。
「行くぞっ!!!」
世界そのものを玉座にでもしたような振る舞いで、邪神は変わらず一同を見下ろしていた。
冥府の底より暗き口腔から、吐息のように暗闇が漏れ出でる。
その闇が纏わりつき、破壊神の身体を包む薄靄はより一層深き闇へと塗りつぶされていった。
*****
「せぁーーッ!!」
闇をも斬り裂くだろう、王者の閃き。
アレフが跳躍し、冴え渡った一撃を破壊神の右上腕に叩き込んだ。
幾多の魔物をたった一人で斬り尽くしたその太刀筋は、誰よりも洗練されている。
それがたとえ神の肉体だとしても、この雄々しき剣閃ならば打ち砕けよう。
その、はずだった。
「ぐッ!?」
誰もが信じる勇者の一撃は、破壊神の肉体に触れることすらできなかった。
王者の剣が、ギラつく鱗を纏う皮膚へ食い込むと思われたその刹那。
突然、闇色の障壁がそこに生じた。
それがアレフの剣を触れる前に弾き返したのだ。
先程の小石のように、その身は虚空へと投げ出される。
「アレフさん!!」
「ぐ……」
このまま落ちてなるものか、と歯を食いしばる。
落ちれば最後、どこまで落ちるのか誰も解らない。
「ギラッ!!」
アレフは閃光呪文を真下に放つ。
炸裂により生じた爆風でどうにか軌道を立て直し、最も大きな足場へと降り立った。
「くそっ!『また』だ…!!」
「なぜ、通用しない?」
先程から、この繰り返しだ。
誰かが挑めば、弾かれる。
何かを放てば、止められる。
邪神は彼らの振るった力を、尽く『破壊』し、無としている。
「一体なんだ、あれは……!」
「イオラッ!!」
「ベギラマ!」
何度目かの呪文を、アリスとエイトが立て続けに放つ。
閃熱と爆風により生じた煙が、破壊神の顔面を視界からかき消した。
どちらも直撃すれば、負傷は避けられないほどの一撃。
「……やはり、か」
だのに、変わらず低い唸り声が一行の耳に届く。
それは破壊神の無事を意味していた。
感情があるのかは解らないが、その顔は歪んだ笑みを崩すことはない。
やがてゆるりと、左の複椀を振り上げた。
隙だらけの動きではあるというのに、誰もが手を出せずにいる。
「避けろッ!!」
支援!
出たのはアレフの、危険を知らせる叫びのみ。
拳の矛先には、今しがたかき消された呪文の主二人がいた。
唸りを上げる拳に今しがた気づき、はっとした様子で身構える。
「ぐ、うわああっ!」
「エイトさん!」
直撃は免れたものの、振るわれた拳は足場を削る。
大部分を邪神の豪拳に砕かれ、崩壊しつつあった。
激しい震動に二人はその身を投げ出されそうになる。
アリス、エイトは力を合わせ立て直し、転げるように隣接する足場へ飛び移った。
追うように視線を動かす破壊神を、真空の渦が掠めて注意はそちらへと向く。
マリアがバギを放ち、エイト達を援護したのだ。
「止まって戦うな、堕とされる!」
ピサロがマリアとフォズから注意を逸らすためか、別の足場へ移りながら叫んだ。
隻腕の身で軽やかに飛び移りつつ、何某か投げつけるような仕草で手を振り真空波を放つ。
マリアのバギに重ねられたそれもやはり、闇の衣に阻まれる。
アリス達はその隙に、広い足場へと移ることに成功した。
だがエイトは繰り出される各々の攻撃が蚊ほども効いていないことに歯噛みする。
これではじり貧だ。
「このままでは……足場を砕かれるのも時間の問題です」
「ええ……そうなる前に!」
練らなければ、打開策を。
奴を地に引きずり降ろす為の考えを。
勇者は焦燥に駆られ、思案した。
アリスは、深く思い出す。
偉大なる勇者である父の言葉を。
(勇者心得みっつ!勇者にとって経験値は過去にあらず、
未来を切り開く剣であれ!そうでしたね……父上、母上)
かつての冒険で相対した、様々な敵を思い返す。
アリスが初めての"強敵"と認識した相手カンダタ。
ジパングで二度、そしてこの舞台で三度相対した異形やまたのおろち。
アリアハンを、アリスの世界を恐怖で震わせた魔王バラモス。
父の憎き仇である、キングヒドラ。
そして最後に思い出す。
彼女の旅路の終幕に控えた存在を。
(ゾーマ……そう、ゾーマ)
彼女がギアガの大穴を通じ来訪した異世界、アレフガルド。
今は、子孫であり心通わせた仲間、アレフたちの故郷。
その地をかつて、闇と絶望で覆った。
恐るべき強さを持った、大魔王。
(これは、あのときと同じ)
先の攻防でハーゴンが一瞬見せた、闇。
そして今しがたシドーが纏う闇。
これは、ひどく似ている。
絶望の魔王、ゾーマがその身に纏った力に。
全ての攻撃を物ともしない、あの─
「闇の衣!!そう……あれはゾーマの闇の衣!間違いありません!!」
「!……そうか、あれが!」
「闇の衣だと?」
闇の衣は、アレフガルドに伝承されし魔王ゾーマの恐るべき力。
ロトの勇気と同じくして、その恐怖の力は語り継がれていた。
アレン、アレフ、マリアもがその脅威の力が目の前にて行使されたと知り、顔色が変わる。
「……なんてこと……私の魔法……皆の剣も、これでは通用しない!」
「クッ!どうすればいい……」
「闇の衣……アリスさん、それは一体?」
ゾーマの力を知らぬエイトが、アリスと共に足場を移りながら問う。
アリスは視線を破壊神から逸らさないまま、悲痛な面持ちで返答する。
「闇の衣は……絶望を無限の力とする大魔王、ゾーマを守る最強の壁……
あらゆる攻撃を物ともしません、端的に言えばなんでも防ぐバリアです」
エイトは合点がいくと共に、それと似た経験を自分がしていたことを思い出す。
自身も暗黒神ラプソーンとの戦いの折、全ての攻撃が通用しない結界を張られたことを。
そしてあれもまた、自分たちの力だけでは為す術も無かったことをも。
そのとき奇跡を呼んだ神鳥の杖はここにある、だが大賢者の魂が注がれることはもう無いだろう。
闇の衣には、綻びも、打開の糸口も存在しないというのだろうか。
「……でも、アリスさんはそのゾーマを」
「倒し、ました……ですが」
苦々しい顔でアリスは俯く。
掌を顔の前で開き弱々しく握る仕草は、強気なアリスでは無い。
「それは、竜の女王より賜った光の玉あってのこと。今の私では、闇の衣をどうすることも……」
「……っ!アリスさん、来ます」
破壊神が全員の攻撃を気にかける様子もなく、こちらに首だけを向け、紅き光を宿す眼を向けた。
身構える二人に放たれたのは、破壊神の『叫び』。
身も凍り付くようなおぞましい雄叫びが、二人の居る足場に嵐のように吹き抜ける。
「ぐうぅっ…!!」
「エイトさん!?」
そのとき、盾のようにエイトがアリスの前に立ちはだかった。
受け止められても、圧されて足場から落とされれば一巻の終わり。
踏ん張ってアリスの分まで耐えるが、この叫びは生命をも削るかのようエイトの力を奪っていく。
「エイトさん、やめて下さい!」
「耐えきります!!回復をお願いできますか!」
「……!……すみません……!!」
エイトの、文字通り身体を張った大防御による盾。
その行為にアリスは感謝すると共に、弱気になり守られる立場となった今の自分を責め立てるのだった。
*****
「フォズさん、フォズさん!どうしたの!?」
「あぁ……ああ、ああ……!!」
ピサロが離脱し、祭壇がある広く頑丈そうな足場。
蹲り頭を抱えるフォズに、マリアは必死に呼びかけている。
大神官である少女の本音であろう、涙で満たされたその顔を見て彼女の胸は痛んでいた。
(シドーが姿を現してから……無理もないわ、私だって恐ろしい)
マリアは思っていた、フォズが恐怖し、絶望して泣き崩れているのだと。
アレフは、彼女もまた戦士である、と認めた。
戦う、と彼女自身もまた、先刻主張した。
だが、シドーの姿を見て彼女は戦意を喪失し、こうしているのでは、と。
自分とて、シドーの姿をかつて見たからこそこうして立ち向かえるのだと思う。
初めて対峙したその巨躯に自分が立ち竦まなかったのは、恐らく両隣に控えた頼もしき二人の存在が大きい。
今、その二人はここに居ないけれど。
(彼女を死なせたりしない、恐怖から救ってみせる)
怯えたりはできない、自分はロトの、親友の血を引く戦士の一人だから。
マリアはいかずちの杖を手に、フォズの前に立った。
エイトと同じく、盾として。
そして破壊神を打ち砕く、矛として。
─だが。
支援
規制だったら代理投下しますよっと
さるさんなら一時間毎に解除されるはず 違ったらわからんが
今きたから支援はするぜ!
すみませんさるさんでした
もうまもなく投下再開します!
了解です
了解 支援
「こ……が… えが…… こ、…え…」
「……?フォズさん」
「きこえる……聞こ、えるんです!!」
フォズの様子がおかしい。
これは破壊神に恐慌しているわけではなかった。
自分には認識できない、何かを破壊神から感じ取っている。
マリアにはそれだけ、認識できた。
「……フォズさん、それは一体……」
「はぁ、はぁっ、ぅ、ぁぁ……」
幸か不幸か、マリアが理解できたのはそれだけ。
暗い、闇の奥底から聞こえるそれぞれの声。
哀しみ、寂しさ、無念。
ただの言葉が、心を凍えさせるほどの冷たさに染まり、飛び交う。
マリアには届かない。
だがフォズにだけ聞こえたのは、そういった声の数々。
(……僕はまだ死ぬわけには……)
(……謝り…なさいよ……)
(なぜ救ってくださらない?……)
フォズはダーマ大神官の職に就いている。
それは決して血や、権力が与えた地位では無い。
彼女の持つ『ひと』の『こころ』を見聞きする力。
その素晴らしき力が彼女を大神官足らしめているのだ。
だがその力は今、彼女自身を苦しめる。
聞こえるのだ
心が、魂が、死してなお破壊神の掌から逃れられず、もがき苦しんでいる彼らの無念。
届かぬ声はこの場所でフォズにだけは届き、フォズだけが悼み、そして涙を流すことができた。
(う、ううっ)
(テリーッ!)
「たくさんの……たくさんの、声がッ!!」
(あなたは……誰にも愛されない)
頭の中が、胸の内が、負の感情で溢れかえる。
フォズは、破壊神が口から霧のように吐き出した『魂』の語りかけに、耳を傾けてしまった。
ひとたび聞き取れてからは、濁流のように残留した思念が流れこんでくる。
それがフォズの心をぎゅうぎゅうと締め付けるのだ。
(……わりィな……アレン……マリア……)
(畜生……俺は、何も……できないで……)
「声が……!!無念を抱えた彼らの、最後の思いが……届くんです!!」
「!!」
(悪い、先逝くわ)
命を落とし、魂を神に囚われたその瞬間から、時の止まった感情は前に歩むことは無い。
死んだその瞬間、一番強く感じた言葉、願った思いがぐるぐると巡るだけだ。
止める人もいなくなった、鳴りっ放しの自鳴琴のように。
悲しい永遠が、そこにあった。
(アリス……ごめん、ね)
「シドーが……!!纏う、あの…闇、は!!」
(……会いた、かっ)
(ネネ……ポポロ……ごめんよ……)
「死者、の魂を、もとに……っ!!破壊の神は力を……得た!!!」
(さらばじゃ……エイト)
(私、は――全てを掴――)
「こんなのって……」
唇をぎゅっと噛んだフォズが顔を上げる。
端正な顔は涙にぐちゃぐちゃになっていた。
「こんなのってない!!」
フォズは絶叫する。
彼女の涙ながらの叫びは、果てなど無い混沌の空間の中皆に響いた。
今、アレフが叩きつけた剣は、アリスの放った呪文は。
失われた『命』を盾に防がれていると。
フォズが告げたのはそういうことだった。
「な、なん……て」
「なんてことだ……!」
「くっ……!!」
悔しかった。
悲しかった。
ひとは、誰かになれるのに。
このひとたちも、きっと誰かになれたはずなのに。
手を差し伸べることすら出来なかった。
過ちを正すことが出来なかった。
人の心に触れること『しか』できず、何が大神官か。
フォズは無力感に苛まれ、すっかり消沈し、虚脱していた。
「!いたっ……!」
項垂れていた彼女の指先に軽い痛みが走った。
顔を上げたフォズの目に飛び込んだのは、緑の小蜥蜴。
「レオン、さん……」
思えば、彼は最初から傍らにいた。
ずっと、ずっと彼女と共に生き延びたこの小蜥蜴。
懐に控え、時に彼女を支え、励ました存在。
ごく小さな命だが、今のフォズには翠玉のように眩しく見えた。
ぶら下がる小蜥蜴から、『生命の強さ』を感じたのだ。
「……私……」
今ここに生きる生命の中で、最も小さく、弱い存在であろうレオン。
破壊神という強大な存在を前に、フォズの衣の中から出てくるだけでも信じ難いことだ。
だが、彼は飛び出したのだ。
その真意を測ることは誰にもできない。
だがフォズはその無表情な、しかしどこか愛嬌のある顔から真意を理解する。
彼は、叱咤しに来てくれたのだ。
心から憧れるアルスがここにいたら、きっとそうしただろうから。
レオンもきっと、そのため彼女に初めて噛み付いたのだ。
「ありがとう、レオンさん」
フォズは、その手で小さな親友を優しく包みこむ。
その顔から恐怖は、そして躊躇いは消えていた。
「私は、私にできることを……!!」
フォズは、ザックから杖を抜き出す。
その瞳には、明らかに違った光が湛えられていた。
* * *
神の所業に怒り、狼狽え、あるいは嫌悪を一行は抱く。
今、破壊神が苦しめているのは剣を取り戦う彼らのみではない。
この舞台で散った多くの人々の魂をも、辱めているのだ。
嗤い、空を舞う神の姿をアリスはどこかぼんやりとした姿勢で眺めていた。
「アリスさん?」
やや離れた所で、彼女の回復で持ち直したエイトが呼びかける。
彼女はこんな呟きで、返した。
「……『血に狂った魂を喰らい糧にし、嘆き苦しんだ魂を浴びその身を清め』……例え話では、なかった」
「それは……」
エイトはどこか聞き覚えのある呟きを耳にし、再度アリスに呼びかけた。
そう、この一節は確か─
支援ぬ
「本に隠されたメッセージです……ゾーマの闇の衣もまた……嘆き……苦しみ……そう『絶望』で出来ていたのですね」
アリスの震える拳が、怒りで握られた。
その眼差しはダークアイをも睨み殺せそうなほどに、怒りで燃え盛る。
「シドーが囚える彼らの魂は今……!!『絶望』しているんです!!この状況にッ!!」
エイトは力強い、そして悲しい叫びに視線を奪われた。
アリスが立ち止まっている。
勇者が、嘆いている。
これはどれほどの絶望だというのだろう。
「絶望に満ちた彼らに!!私は、勇者として……!!何か、出来ることが、無いのでしょうか……ッ!!!」
エイトも、アリスと気持ちは同じだ。
自分の無力感に頭を抱えることは容易い。
しかし、彼はひとつの結論を出した。
「それは……ひとつだけです」
エイトは聞き役であり、彼の仲間のように口が回る質では無い。
だが、彼は示した。
彼なりの答えを、少女の心が受け止められると信じ、投げかけた。
「『勇気』を出すことです」
「……ゆう、き」
エイトは、自らの内に秘めた光を信じていた。
闇に呑まれることのない、灯台のように行く手を照らす光を。
「わかるはずです、アリスさん」
「え?」
「僕はレーベで命の危機に瀕したとき、アレフさんに救われた……
そしてアリアハンで、僕をアリスさん達は助けてくれました」
アリスはつい昨日の出来事である、アリアハンでの戦いを思い出す。
そう、あのとき多くの絶望を既に自分は抱えていた。
しかし、まだ誰かを救えるという希望を信じ、前へと踏み出したのではなかったか。
胸に勇気がわいていたのでは、なかったのか。
「あなた方は勇敢だった、光を、希望をもたらした!!」
「!」
「僕も……あなた方のように輝ける……勇気の光になりたい!!」
それはエイトの望み。
誰かのため、何かのため。
自分以外の為に力を尽くすことが多かった、彼の夢。
父を、大切な人を守るためだけということではない。
彼の追い求めていたのは、勇敢なる魂を持ち、生きる事。
突き詰めれば、ただその一つ。
「だから今……」
すっかり手に馴染んだ槍を水平に構える。
勇者が踏み出せぬ一歩を、踏み出した。
「僕は往きます」
エイトは、走った。
彼はもともとは単なる一介の兵であった。
だが空を、海を、そして大地を駆け、知った。
人は誰かに、なれる。
何にでも、なれる。
チェルスや、メディ、教皇らのように、魔物を打ち滅ぼす力が無かったとしても。
そう、眩き光─彼が心から憧れるような『勇者』にすら。
(……アリス、何をねぼけているのです……!!)
今の今までの自分は、夢の中に居た。
心から、そう思う。
囚われし彼らの嘆きに心を痛め、その痛みに顔を歪め立ち止まる。
それが真の勇者の行いか、と彼女は自らに問う。
(違う!!)
頬が赤みを帯び、口の端から血が滲む。
自分の拳で、自分の頬を殴りつけたのだ。
(勇者よ、目覚めなさい)
アリスはまだまだ、幼気な少女である。
だが不器用で、まっすぐで、そして強く優しい勇者でもあった。
自分の中の繊細な少女の部分を、戦いの最中出したことを勇者は恥じた。
そして、彼女の中にある少女は眠る。
この戦いが、勇者の在るべきところに違いないのだから。
「私も往きます!!エイトさん、援護をッ!!」
勇者は再動する。
力強い歩みは、先を往くエイトにあっという間に並んだ。
* * *
さるさん規制をくらいました……
代理をお願いしたいです
間違って雑談スレに投下してしまってほんとすみません
test
お騒がせしました、なぜかさるさんが解けていました。
投下、再会致します
どんまい
破壊神の顎門が、ばっくりと裂けるように開かれた。
その奥、まるで暗黒の世界が爆ぜるかの如く、紅が輝く。
それを何かと認識する間も無く、破壊神は激しい地獄の業火を吐き出した。
破壊神の放つ業火が、アレフを包み込む。
メラゾーマ急の熱量を孕む炎に巻き込まれ、肺の奥まで炙られるような感覚がした。
ロトの盾があるとはいえ、それだけでは大量の炎を防ぎきれなく、動けずにいるアレフ。
このままでは焼死しかねないと断じ、賭けるように腰から氷の刃を抜いた。
「くッ……うぉおお!!」
ヒャダルコの魔力が乗った、凍てついた風がアレフの傍を吹き抜ける。
その威力はかつてクリフトが、キーファが振るった物を上回っていた。
業火を僅かに抑えた氷風の流れに乗るように、アレフは炎をなんとか潜り抜ける。
細かい火傷は負ったが、五体満足で立ち上がった。
同じ足場にいたマリアとフォズが、心配そうにこちらを見やる。
ベホイミの魔力が、すぐにアレフを包みこんでくれた。
「アレフさん!ご無事で」
「げほ。ああ、キーファと……こいつのおかげ、さ」
アレフは首から下がる翠の守りを持ち上げ、微笑んだ。
風を感じながら、剣を握る手に力を込めてみる。
その風は強く、そして魂のように温かみを帯びていた。
涙を流し、命を燃やし尽くした赤鬼のような。
と、破壊神の低い唸りが二人の耳に届く。
目を向ければ、エイトとアレンの、注意を向けるための猛攻が繰り広げられていた。
さざなみの剣が突き出された破壊の豪拳を斬る、エイトの槍が胴を突く。
「こちらです!!」
アリスの高らかな叫びが破壊神の注意を引く。
向けられた掌から、その顔面に呪文が放たれた。
「イオラァッ!!」
その一声で空気が灼け、爆ぜた。
だが、全ての攻撃は闇の衣の前に水泡と帰す。
爆炎が晴れて現れた表情は、涼しいものだった。
「くっ」
今、破壊神からの攻撃はそう激しくはない。
だがもし、本気を出して動き出したとしたら。
羽虫を払うように、紙屑を散らすように、吹き飛ばされてしまうだろう。
エイトは額を伝う血混じりの汗をぐいっ、と拭った。
「上だッ!!」
「!?」
ピサロの叫びに反応し、エイトが上を向く。
今まで鈍重な動きを続けていた破壊神が突如拳を振り上げた。
異形なる三本指の掌が開かれる。
そのまま平手を真っ直ぐ振り下ろした先には。
「エイトさんッ!」
「よけろ!!」
マリアとアレフも、たまらず声を上げた。
周囲に影が差したのを認識した瞬間、エイトの全身を掌が生んだ風圧が先に撫でていく。
視線いっぱいに広がっていたのは、全てを打ち砕く槌と見紛いそうな破壊神の掌だった。
「エイトさーーーーーんッ!!」
粉塵が散る。
破片が闇へ落ちる。
激しく岩の砕ける音が、辺りに響く。
破壊神が、いとも容易く『破壊』した結果である。
足場を砕き貫通した掌は、さらにその下に浮遊する足場に減り込む形で止まった。
軌道上に居たエイトは、陰も形も見えない。
彼の存在を、絶望が塗り潰してしまったかのように。
「……!!」
「く……!おのれシドー!!」
「!待つんだ」
剣を構え飛び出そうとしたアリスを、駆けつけたアレフは制する。
抗議するような眼を向けられるが、しかしアレフは笑んでいた。
彼の命を信じていた。
「大丈夫」
「しかし!!」
「……エイトは」
ずぶり、と掌の中央から白刃が突き出る。
押し付けられた掌がぶるぶると震えている、いや、震わせているのは破壊神の意に非ず。
「彼は、こんなもんじゃ砕けない」
痛みに声も上げず、動きもしない破壊神を不気味に思いながら、魔王二人は近くの足場に降り立った。
見上げるが、接近した彼らに反応すら見せない。
ピサロはこの行動、そして攻撃が通用したことに深い疑問を覚えた。
「何故……」
「闇の障壁が構築されなかった、か?」
「……ああ……いや、こうしている今も─」
ピサロの疑問は当然だった。
闇の衣の放つ力が、徐々に消滅している。
シドーから感じる魂を絡めとろうとする引力。
それが弱まったわけでは無い。
だが、エイトの槍は確かに身体を引き裂いた。
それは、何故か。
答えを握っているのは、小さな身体に聖なる祈りを宿した少女。
「あいつ……!!」
覆い被せられた闇が徐々に持ち上がり、やがて姿を表した。
傷つきながらも、歯を食いしばりエイトは立ち上がる。
「だアぁああああああっ!!!」
次の瞬間、間欠泉の湧くが如くエイトが跳んだ。
薙いだ槍の閃きは旋風の如く唸り、そして荒れ狂う。
「!!!」
破壊神の掌が弾け、指が2本ばかし千切れ飛ぶ。
その光景を見たアレンが、ピサロが、傷つけた当人であるエイトまでもが眼を見開いた。
血肉の散る中手近な足場に着地し、自らが負わせた傷を見据える。
「効いたぞ!!」
「やった……!!」
アリスとアレフが歓びの声を上げる。
通用した。
破壊神の肉体を僅かながらではあるが、破壊したのだ。
痛みに声も上げず、動きもしない破壊神を不気味に思いながら、魔王二人は近くの足場に降り立った。
見上げるが、接近した彼らに反応すら見せない。
ピサロはこの行動、そして攻撃が通用したことに深い疑問を覚えた。
「何故……」
「闇の障壁が構築されなかった、か?」
「……ああ……いや、こうしている今も─」
ピサロの疑問は当然だった。
闇の衣の放つ力が、徐々に消滅している。
シドーから感じる魂を絡めとろうとする引力。
それが弱まったわけでは無い。
だが、エイトの槍は確かに身体を引き裂いた。
それは、何故か。
答えを握っているのは、小さな身体に聖なる祈りを宿した少女。
「あいつ……!!」
「フォズっ!」
破壊神の影が差す、その足場の中央。
小さな大神官が、杖を手に目を伏せ、祈っている。
掲げた杖は、神鳥の杖。
かつて暗黒神を封じる為、大賢者の魂の器として作られた物であった。
その周囲にぼんやりとした光が、廻っている。
同時に、破壊神の周囲を色濃く隠す常闇が薄れていく。
黒き霞のその奥、青白い光─彷徨える魂が、踊る。
彼らの目には、そう映った。
(神よ、もしこの願いが届くのならば)
フォズは目を伏せ、杖を天に掲げた姿勢のまま強く願う。
破壊神の鎖に繋がれた魂が、解き放たれることを。
(もしも、私の祈りが届くのであれば)
大神官、それは人々を導き未来を指し示す者。
そして差し伸べられるその手は生きる者だけに限ることはない。
死して尚、救いを求める彼らをどうして放っておけようか。
(お救い、下さい。彼らを、皆を)
今、此の場における力無き者であるフォズ。
そんな彼女に、フォズに『できること』はこれだけだった。
「おお、この世の全ての命をつかさどる神よ!!」
フォズの力強い叫びが、高らかに放たれる。
その声に共鳴するかのように、破壊神の傍に廻る光はより一層輝きを増した。
闇に囚われたか細い光は、徐々に輝きを増す。
その内なる光がやがて闇を掻き消し、動き始めた。
まるで、蛍のようにゆらゆらと。
「フォズ、危ないっ!!」
手が一つ使い物にならなくなった破壊神。
その表情は変わらず、残酷な笑みを浮かべたままである。
感情というものが存在するのかは解らない、だがその視線は祈る少女へと注がれた。
「そこから離れてください!」
エイトの叫びが空間に響き渡る。
だが、彼女は動かなかった。
動き出した魂は、フォズを目がけて揺れ動いている。
祈りを中断し、彼らの導が無くなってしまえば、再び囚われてしまうだろう。
それだけは許されない、逃げることはできないとフォズは強く思った。
アレフが、ピサロが駆ける。
フォズの祈りを、守る為。
「エイト、アリス!電撃呪文を!」
「!はいっ」
アレンは叫んだ。
攻撃が通用すると解った以上、破壊神を叩くのは今しか無い。
竜の掌に、熱い魔力が蓄積されていく。
やがてベギラマの白炎が、顕在化した。
「来たれ……」
エイト、アリスは自らが持つ最強の呪文を紡いだ。
その心に、移ろいや迷いはもはや無かった。
仲間を守るために、そして、自分の思いを貫くために。
「正義の雷ッ!!」
「勇気の雷…!」
「放てっ!!!」
「「ギガデイン!!!」」
その手に裁きの力、ギガデインの天雷が舞い降りた。
凝縮された雷が、彼らの肉体を砲口とし放たれる。
アレンもまた、その手から火雷を放った。
三人の呪文は一筋の光となり、破壊神の左翼を根本から焼く。
バランスを崩した破壊神の身体が、初めて傾いだ。
しかし破壊神は片翼を羽ばたかせ自身の身体を宙に保つ。
「落ちよ……」
上空でもたつく破壊神。
マリアは、フォズを守るように進み出た。
その手元には、既に膨大な力を抑えつけるように留めている。
「万物を砕く、精霊の槌!」
周囲に魔力が充足し、マリアの杖が激しく発光した。
忌まわしき邪神に、全身全霊の裁きを下すために。
彼女は、全力を込めたその呪文を紡いだ。
「イオナズン!!!」
周囲の音を掻き消すかのように空間が一瞬、圧縮されたように歪む。
新星の誕生かの如く激しく光り─そして、爆発。
神殿の残骸が浮かぶ世界を、轟音が揺らす。
聖光が、破壊神の肉体を半ばまで飲み込んだ。
(ありがとうございます、みなさん)
目を伏せていても、彼女には聞こえた、届いた。
皆が力を惜しむこと無く振るい、自らを守っている事。
それが少し申し訳なく、そしてとても嬉しかった。
だからこそ、必ず報いる。
破壊神による、魂の虐げという愚行を止めることで。
「囚われし魂たちに……」
イオナズンの光に照らし出され、フォズがカッと目を見開く。
祈りは最高潮にまで高まり、皆はまるでその輝きはフォズ自身から放たれたような錯覚すら覚えた。
「おのれ自身の道を歩ませたまえ!!」
祈りが、響いた。
それは夢か、幻か。
吟遊詩人がそこにいれば、曲がいくつ書けるだろう。
それほどまでに、幻想的な光景が広がった。
闇を貫き現れた、儚き光。
その光は輝きを増し、意思を取り戻したかのように動く姿は、どこか儚くも美しく見えた。
数多くの魂が勢いを増し、流星の如く加速する。
天へ昇る事も叶わない、多くの哀れなる魂。
彼らは今、大神官フォズの慈悲深き祈りを受け、神鳥の杖へと導かれた。
「闇の衣が……消えてゆく」
アリスが感嘆混じりにつぶやいた。
竜の女王からの奇跡、光の玉の助力を借りてやっと為したこと。
あの幼い少女は、その奇跡を天への祈りだけで起こしたのだ。
だが、破壊神を中心に渦巻く、すべての魂がそうなったわけではない。
魂を導くフォズの祈る声に耳を貸さなかった者たちであろう。
どす黒い暗黒に、芯まで染まった魂。
しかし残った魂だけで、闇の衣は構築できそうもない。
破壊神は今、彼らの手の届く位置まで降りたのだ。
「シドーが確かに弱っています」
「このまま、一気に畳み掛けるぞ…!!」
「行きましょう、みなさん!!」
翼を失い、右半身は焼け落ち、剣戟により手や角が断たれている。
だが、破壊神は動きを止めることはない。
それどころか。
「……!!」
笑んだのだ。
情念を感じ取れない、歪んだ笑みのまま彼らと剣を交えた破壊神。
今、初めて表情を変化させた。
それも、『さらに』笑んだのだ。
悍ましい顔は、皆の心に嫌悪の影を落とす。
ややあって、破壊神が動いた。
周囲を旋回する、黒色に変化した魂。
ぎろりと睨めつけ、ばくりと暗黒の広がる口を開いた。
「っ!!」
「う……!!」
闇の衣は完全に消え、残ったのは漆黒の魂。
その魂が、奈落より暗い口腔へと吸い込まれていく。
その時の表情たるや、地獄の鬼や悪しき死神と表現するのすらも生温い。
全てに恐怖を、"死"を連想させるほどの悍ましさだった。
破壊神は闇に染められた霊を愉悦の表情で食み、咀嚼する。
やがて嚥下を終えた口からは、薄黒い吐息が漏れた。
「あれが、破壊神の……」
破壊神の身体が、どす黒く染まっていく。
身体が、さらに脈動を始める。
闇そのものを肉体としたかのような暗き体躯に、二つの光。
それは血よりも紅くそして邪悪な光を宿した瞳だった。
「真の姿だ……!!」
皆の視線は、変容を始める破壊神に注がれる。
今ここに、更なる脅威を顕にした。
されど、勇無き者などもはやここには居ない。
彼らは、戦う。
敢然と立ち向かうのだ。
【???/世界の残骸/ゲーム終了後?時間経過】
【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP8/10 MP7/10 火傷(軽度) 左足に刺傷(完治) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす
【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP8/10 身体に絞跡 MP8/10 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン
祈りの指輪(あと1.2回で破損) ビッグボウガン キラーマシンの矢×17
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP6/10 MP9/10 全身の打撲 首輪なし
[装備]:メタルキングの槍 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム
84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意
【竜王@DQ1】
[状態]:HP8/10 MP8/10 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 さざなみの剣
[道具]:首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪
【ピサロ@DQ4】
[状態]:HPほぼ全快 MP7/10 右腕使用不能 首輪なし
[装備]:鎖鎌 闇の衣
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2]
飛びつきの杖(2) アサシンダガー プラチナソード 奇跡の石
ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)
[思考]:破壊神の破壊
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。
【フォズ@DQ7】
[状態]:HP健康(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP9/10 首輪なし
[装備]:神鳥の杖(死者達の魂) 神秘のビキニ(ローブの下)
[道具]:支給品一式 アルスのトカゲ(レオン) 天罰の杖
祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り
あぶないビスチェ 脱いだ下着 引き寄せの杖(1)
太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡
天馬の手綱(ファルシオン)
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP健康 MP8/10 首輪なし
[装備]:いかずちの杖 布の服
[道具]:小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖
ルビスの守り(紋章完成)インテリ眼鏡 風のマント
[思考]:全てを終わらせる
【破壊神シドー(真)@DQ2】
[状態]:HP??? MP??? 左翼焼失 右半身消失
[思考]:???
投下完了しました。なんだかすっごくご迷惑おかけして申し訳ありません。
14/20の一つはミスです、申し訳ない。
あと前話の矛盾部分は修正予定です。
読んでいてくださる方、WIKI編集していただいている方。
何時もありがとうございます。
決着まであと少しってところです。
お付き合いいただければ、ありがたいです。
あ、指摘ご感想お待ちしております。
投下乙です!
シドーに闇の衣とか絶望感が半端ない……
フォズかわいいよ じゃなかった フォズのおかげで攻撃が通るよ! フォズは最終決戦でもみんなを導けているよ!
アリスに向かって勇気を説くエイトいいな
ロワ内でのエイトの積み重ねを感じる ダブルギガディンからのイオナズンの詠唱の流れが最高ですw
やっと闇の衣がとかれたけれど、いまだ底を見せないシドー……
まだまだ最終決戦は終わらない……!
改めて投下乙でした!
誤字報告を
>>250 >メラゾーマ急の熱量を孕む炎に巻き込まれ
メラゾーマ級 では無いでしょうか?
投下乙です!
燃える!これぞまさにDQロワ!
最後に残ったのがこのメンバーだったということがフルに活かされてく展開だと思います。
フォズかっこいいよフォズ!
今までも要所にちりばめられたDQフレーズが好きだったけど
>(勇者よ、目覚めなさい)
で涙が出た。
投下乙です!本当に乙です!
お疲れです。
14/20は
>>255でなく
>>258が正しい方ってことですね。
死者の魂とか例のキャッチフレーズの使い方が良かったなあ。
自分も少し前の段階で構想してたけど違う方向性だったわ。機会があれば没スレに投下しようと思ってる。
フォズに駆け寄った時ピサロかアレフどっちか逝くんじゃないか、とヒヤヒヤしたけど助かった。
アレン、ナイス判断。チームで闘ってる感じがしていいね。
良い余韻の残る展開でした。
みなさんご指摘ご感想ありがとうございます。
誤字はおっしゃるとおりですので後ほどWIKIの段階で修正させていただきたく思います。
あと前話の矛盾(ピサロの呪文)についてもその際に修正を加えてく思います。
修正内容をここに投下したほうがよいでしょうか?ご意見お待ちしています。
>>283 構想ですか、どんどんそういうのいただきたいです。
没スレだけでなくリレーしてくださるのも大歓迎です!
自己リレーばかりだと申し訳ない気持ちが少しありますし。
ここまで続いているのだし、みなさんがんばりましょう!
投下お疲れ様です!
読みながら燃えましたよッ
みんながんばれ
生き残ってくれ
投下乙!
何をやっても効かないっていうのはまさにラスボスだよなあ
それを神鳥の杖+大神官な合わせ技で解呪するとは!
なのに全然うろたえないシドーまじラスボス
ここからが正念場か……
個人的にはシドーの手をエイトが切り裂き復活したシーンがすげえ好きだ
随分コミカルになったなw
291 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/05/17(火) 20:52:43.60 ID:MoRpzWt5O
浮上
久々に見たらいきなりクライマックス!
次でいよいよ最終回かなぁ
楽しみなような寂しいような
終盤をほとんど1人で続けてきた氏には感謝です!
保守
294 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/06/02(木) 14:22:26.62 ID:NRaWvFnLO
浮上
295 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/06/11(土) 17:22:31.05 ID:BrnPye/zO
保守
296 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/06/20(月) 11:05:27.70 ID:D817ZVgNO
過疎
保守がてら皆さんに質問。
『バトロワを語るならこのストーリーは外せない!!』
という話は何ですか?
保守がてら。
やっぱり愚かなる戦士たちの輪舞は外せない
299 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/07/09(土) 00:11:35.48 ID:MRZTZdGIO
過疎
300 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/07/09(土) 01:03:41.25 ID:Upw39oZ3O
3
0
0
301 :
sage:2011/07/15(金) 12:00:59.82 ID:LB8+UemqO
保守
二年ぶりにきたがまだ完結してなかったのか
あと1ヶ月ほど待ってもらえるなら、新作が書けるような気がする。構想はある
ただ、現実が自分に書いて推敲する時間を与えてくれるかが問題だ・・・
>>303さん
いくらでも待ちます!
ゆっくりでいいので、頑張ってください!!
305 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/07/25(月) 21:38:24.80 ID:D8si2HGX0
保守
306 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/07/26(火) 21:01:29.49 ID:aR7seqRE0
書いて貰えるのなら半年でも一年でも松代
ほしゅ
明日で一ヶ月
ごめんよう、4分の1くらいしか書けてないんだよう
時間ないし、頭も働かない。申し訳ない
もうちょっとがんばってみるけど、他の人の予約を妨げるつもりは微塵もないので
それなら私が!という人がいてくださるなら、どうか遠慮なく
書くのか書かないのか
お久しぶりです。生存報告も兼ねて。
>>303さんがリレーをしてくれるというのならこれほど喜ばしいことはありません。
私も筆を取ってはいますが、完成までもう一歩というところで止まっております。
ですが、このロワイアルは皆さまのリレーから始まった企画。
できれば自分の連続投稿も、控えたいと感じているのも事実。
ですので私も少々様子を見ています。
>>303さんに続きを書いていただき、私がそれに続く。
そういう形が最も好ましいのではないでしょうか。
リレーに徹するべきか?完結を急ぐべきか?
皆様ご意見やお返事いただければ嬉しいです。
312 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/08/23(火) 23:02:11.65 ID:3ezA+nPEO
>>311 いつもお疲れ様です。
個人的には…待つことによりびっくりするような展開があるんじゃないかという期待がありましたが…
>>303が書き込まれてから1ヶ月たちましたし…なかなか書けないのなら完結を急いでしまっていいんじゃないかなぁと思います。
今月いっぱい待って
>>303さんが動きを見せなかったら
>>311さんよろしくお願いします。と私は言いたいです。
313 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/08/23(火) 23:04:21.49 ID:3ezA+nPEO
と思ったら303さんの書き込みらしき書き込みがありましたね。よくみてなかった…
もうみんな待つのも馴れたし新展開に期待して303さんを待つのもあり…かな?
ご無沙汰しております
◆I/xY3somzM氏の尽力のおかげでこの物語もクライマックスへ辿り着きました
この流れの中、空気が読めているのか些か自信はありませんが、ここに至った最終盤
最後にチャンスを戴きたいと思います
エンディングへと向けて私ももう一度歯車の一部として働きたくなったのです
全員を一週間予約、宜しいでしょうか?
おおお、予約ktkr
ぜひともがんばって頂きたい
おー、久しぶりです
支援はいつでもできますよっと
俺の目が間違えてなければ、
>>1氏が帰ってきてくれた!
楽しみに待っとります。
予約キター
楽しみに待ってます
いいいよっしゃあああああ!
待ってました!書き手さん頑張って!
予約来てたのか。
顔を長くして待ってるぜ。
俺は鼻の下長くして待ってます
なるべく間に合わせたいと思っていますが、もしかしたら一日、最悪二日ほど延長申請するかもしれません
その時は改めて連絡します
すみません延長申請します
どうか今少しお待ちください
了解です
支援待機してます
最悪二日ってことは、遅くとも明日か
お待たせしており大変申し訳ありません。
これほどまでに自分の筆力に苛立ったのはいつ以来でしょうか。
こんなものを投下しても良いのかと自問したりもしましたが、
今さらそれでは、それこそ企画に対する冒涜だと考え投下は決行します。
21時頃に投下を開始しようと思います。
ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
宜しければ支援など頂ければ嬉しいです。
おk、待ってます
「ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
闇の衣が払われ、真の姿を現した破壊神シドー。
その邪神の咆哮が勇者たちの肌を、魂を振るわせる。
並の精神力の持ち主ならば恐慌状態に陥っていたであろう、その衝撃。
だが真の姿を現した竜邪神・シドーの前に立つ7人には既にそれに耐えるだけの覚悟があった。
幼いフォズでさえも、懸命に破壊神の圧力に耐えていた。
「哀れなり……」
シドーが緩慢に、低く、くぐもった……それでいて聞く者の深奥にまで突き刺さるような声で呟く。
死線を超え、破壊神を取り囲むアレフたち7人は観た。
今まで闇の衣によって影となっていたシドーの顔を。眼を。
その眼には間違いなく哀惜と慈悲が宿っていた。
「何……だと?」
「お前たちは強い。力も、心も……だからこそ我が生贄として相応しい。
しかしながら些か我の予想を上回っていたようだ……その為にお前たちに希望などと言うものを与えてしまったな」
シドーの言に淀みはない。虚勢も、軽薄さもない。
アレフにはそれが理解できた。
(この野郎は本気で俺たちを憐れんでいる! ここまで奴を追い詰めた俺たちを……まるで家畜のようにッ!)
まるで自分達が喰われる運命は確定しているとでも言うかのように。
いや、事実確信しているのだ。
(半身を失っているくせに……片翼を失っているくせに――!)
屈辱だった。
それでもなお、シドーはアレフたちの死を確定事項として憐れんでいる。
それを否定するかのようにマリアが叫ぶ。
「かつて私たちが渡した引導を忘れたのですかシドー!」
「先に蘇ったときは我は完全ではなかった。
我を召喚する儀式が不完全であった為、我の一部のみが現界にて実体化し、残された半身は闇の世界へと留まった。
敗れたのはその為だ。
だが今度は違う……今こそ我は完全に復活した。もはや貴様らなど塵に等しいのだ――なのに」
シドーは嘆息したかのように見えた。
「愚かしくもあがこうなどと思わせてしまった……我を倒せるなどと思わせてしまった。
――それ故に死こそが真の救済であることを理解できぬ
――それ故にもがき苦しまねばならぬ。
許せ、そして誓おう。お前達を絶望させることを――諦めこそが救いなのだと教えてやろう!
我が神威を持って!!」
宣言と共に残された片翼が大きく開き、シドーは呪文を唱えた。
「ベホマ」
「!? ――そんな!」
焼失していた筈の半身と翼が超速再生され、破壊神は真のシルエットを取り戻す。
そしてその巨体から漆黒の蒸気が溢れ出した。
「また闇の衣が!? いえ、これは――」
アリスがその本質を見抜き警告を発する。
「皆さん、気をつけてください! 猛毒の瘴気です!!」
「ちぃっ!」
舌打ちをして距離を取るアレフたち。
後衛として間合いがあったマリアとフォズは同時に杖を掲げた。
「バギ!」
「杖よ、応えて!」
同時に放たれた風の刃は互いを飲み込み更に巨大な暴風となって瘴気を吹き払わんとする。
だが――
「そんなっ、“重い”!?」
マリアが驚愕に叫んだ。
魔風の渦は瘴気をその場で撹拌するのみで、吹き散らすことができないのだ。
瘴気は一気に拡散し、アレフたち前衛を呑み込む。
「ぐ、うぅっ!」
アレフは咄嗟に盾を持つ腕で口元を覆うものの、わずかに瘴気を吸い込んでしまう。
肺腑から浸み込むように鈍痛が広がっていく。
「キアリー!」
近くに居た即座に解毒を行ってくれて、鈍痛と不快感は払拭される。
アリスも、エイトもキアリーを自己にかけ解毒しているようだ。
が、周囲の瘴気が祓われたわけではない。
戦闘において呼吸は重要なファクターである。封じられれば勝機はない。
「吹き飛ばすことができぬのなら焼き尽くすのみよ――フゥゥウウウウウ」
「アレン!」
竜王アレンのシルエットが肥大化し、巨大なる竜へと姿を変える。
手に持っていた竜神王の剣はエイトの下へと突き立った。
「モウ我ニハ必要ナイ……エイト、貴様ニ返還シヨウ。モトハオ主ノ故郷ニ縁アル剣ユエナ。」
「ア、アレンさん」
エイトを見下ろし、ニヤリと笑うと竜王は大きく息を吸い込んだ。
そして口腔から赤熱の火焔が瘴気漂う空間へと放射される。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
「やった、炎なら瘴気を焼き払える!」
紅炎はアレフの言葉通り瘴気を薙ぎ払い、炎の道を作る。
源泉たる道の先には破壊神の身体が。
「燃エツキヨ!」
闇の衣が取り除かれた今、その炎は確実にシドー自身を焼くはずだった。
「!?」
だがシドーも人形ではない。カウンターのブレスが竜王の火焔を堰き止めた。
アレンとシドーの中間で炎がぶつかり合い、赤熱する紅球が膨れ上がっていく。
刹那の均衡の後、天秤は竜王へと傾いた。
バランスの崩れた灼熱の威力は津波となって竜王を呑み込んでいく。
「グォオオオオオオオオオ――」
「あ、アレンさぁーーん!!」
炎が消えた時、そこには焦煙を纏いし焼け焦げた竜王の姿。
グラリと揺れ、倒れる。
シドーはそれを見降ろし、嘲った。
「これが竜王の名を冠するものの炎か。温過ぎる――」
「おのれ!」「テメェ!!」
アリスが、アレフがそれぞれの剣を振り上げ、邪神の懐へと飛び込んでいく。
「皆さん、総攻撃です! 奴を回復させず、たたみ掛けます!!」
アリスの号令が飛ぶ。
ベホマがある以上取れる作戦は一つだけだった。小さな傷を積み重ねても意味がないのだ。
飽和攻撃で押し切る以外にない。
破邪の矢と化した二人を邪神の2対の巨腕が迎え撃った。
尋常ならざる速度で撃ちだされる左の爪がアレフを襲う。
尋常ならざる速度で疾走する右の拳がアリスを襲う。
それは死そのものであり、2人はそれを受けることは敗北に直結することを悟った。
瘴気を纏った一撃を二人はそれぞれ回避する――が、その隙を縫ってもう1対の腕が死角から振り下ろされる。
「アレフさん!」
「!」
アイコンタクト。
躊躇している時間はなかった。
アリスはアレフと視線を交わすと、自らの肩を踏み台としてアレフを更に上空へと飛ばす。
それによりアレフは窮地を脱し、シドーへと迫るが――
支援
「アリス!」
「しま――」
死がアリスに影を落とす。
シドーの腕は慈悲も躊躇いもなく、アリスを圧砕するべく直進する。
「雷光一閃突き!!」
「マヒャド!!」
飛び込んできたエイトの紫電の槍が右腕の脅威を逸らし、ピサロの氷結呪文が左腕の脅威を鈍らせた。
結果、間一髪でアリスは九死に一生を得る。
「アレフ!」
「アレフさん!」
「行けぇーー」
「シドー、覚悟!!」
仲間の声を背負い、アレフの一撃が繰り出される。
かつて竜王を、そしてアトラスをも倒した必殺の一撃。
それがシドーの心臓部へと突きたった。
ドシュウッ
アレフの手に伝わる確かな手ごたえ。
致命傷を与えたことを確信できる一撃――その筈だった。
だがシドーは己の胸に剣を突き立てるアレフを見下すと、邪悪に口を歪めた。
「アレフ、退け!」
「何――う、わぁああああああああああああああああああ」
ピサロの警告も間に合わない。
シドーの身体から破壊の波動が放射され、アレフはそれを至近距離で喰らってしまう。
「ア、アレフさぁああああん!!」
「まずは一人――」
破壊神の口腔に再び焔の輝きが生まれ、焦熱の奔流となってアレフへと浴びせかけられる。
「ぐ、くそぉおおおお」
ロトの盾を翳し、炎の伝播を遮る。
だが先ほどの波動攻撃が全身にダメージを蓄積しており、堪え切ることができない。
(ここま……で、なのか――?)
支援
アレフが死を目前にした刹那、突然視界が切り換わった。
いや、アレフ自身が移動したのだ。
「アレフさん、無事ですか!」
側にはフォズが居た。
その手に握られているのは引き寄せの杖。杖に残された最後の魔力を使ってアレフを窮地より救ったのだ。
「小癪な――」
「終わりです、シドー!! 落ちよ、万物を砕く精霊の槌―― イオナズン!!」
突如として標的を見失い、シドーの動きが一瞬静止したその時。
マリアの呪文が炸裂した。
閃光と爆音が周囲を満たす。
「やったか?」
「イヤ、恐ラクハ足ルマイ……ダガ好機ダ!」
身を起こしたアレフ、そしてアレンが再び戦闘態勢を取る。
「今です!! 皆さん、全力全開!!」
アリスが号令を発し、呪文を唱え始める。
マリアも同時に詠唱に入っていた。
「貴様らを回復している時はないぞ」
「世知辛いね」
「全クダ」
ピサロの言葉に軽口を叩いてアレフは剣を掲げた。
竜王も再び内なる燃焼を生み出す。
「王者の風よ――」
ロトの剣、その刀身に纏わりつくように気流が生まれ強まって行く。
やがて小さな暴風となり――
「斬り裂けぇえ!!」
破壊の烈風となって撃ちだされた。
「えい!」
フォズの振るう天罰の杖のバギマとあわさり更に膨らむ。
それに併せて竜王の炎が疾走する。
炎は烈風を飲み込み、さらに肥大化――強大な灼熱の津波となる。
「「ジゴスパーク!」」
「ギガデイン!」
「イオナズン!」
それに続いてエイトとピサロが地獄の雷を呼び出し、
アリスが正義の雷を、マリアが精霊の槌を再び振り下ろす。
7つの力が一つとなってシドーを撃ち砕かんとする破壊の剣となった。
視界に光が満ちて――
◆ ◆ ◆
衝撃が、閃光が、爆音が、祭礼の間を満たし大きく揺り動かす。
それが治まった時――アレフたちは全員、地に伏していた。
「な、何――? ゴハッ」
身を起そうとして吐血し、地に手をつく。
(い、一体……何が起こった!?)
破壊神に止めを刺そうとして、攻撃を繰り出した後の記憶がない。
ただ光が視界を満たしたことだけは覚えている。
そして気がつけば地面に倒れていたのだ。
朦朧とする意識を振り絞って辺りを見回す。
そこには破壊しつくされた祭礼の間と、同じように横たわる仲間たちだった。
「み、みんな……」
アリスもかろうじて意識があるようだ。
震えながら上半身を起き上がらせようとしている。
ピサロはフォズを庇ったのだろう装束のマントは四散し、露出した背が焼けただれていた。
その腕の中に居るフォズは完全に昏倒しているのかピクリともしない。
僅かに胸部が動いているのを見るに死んではいないようだ。
エイトは防御しようとしたのか、槍を両手に持ったまま倒れていた。
だが硬度において右に出るものはない筈の銀の槍は半ばから完全にへし折れていた。
マリアはその背後に蹲っている。ここからでは生死の判別は出来なかった。
前衛にいたアレフには反応できなかったが、エイトたちには攻撃の正体が解ったのだろうか?
あの視界を満たした光は自分たちの攻撃によって起こったものでなく破壊神の攻撃によるものだったのか?
(あの光は聖なる輝き……、奴が? 奴は――神、だから?)
いくつもの疑問が脳裏に浮かび、それを振り払って最後のアレンの姿を探す。
そしてアレフは自分が助かった訳を知った。
竜王アレンはいつの間に移動したのか、彼よりも前に存在していた。
その巨躯に十字の焦痕を刻みつけて。
「りゅうお、ッハ……アレン!」
彼はアレフたちを庇うように仁王立ちしていた。
這いずりながらアレフは竜王へと近づいていく。
「おい、大丈夫かよっオイ! ぐ、つッ」
「マサカ、カヨウナ技ヲ持ッテイルトハナ……聖ナル十字ノ光、サスガハ邪悪ナレドモ神トイウコトカ……クク」
ズズゥン
地響きを立てて竜王もまた地へと倒れ伏す。
「アレン!」
「案ズルナ、致命傷デハナイ……ガ、満足ニ動クニハ些カ支障ガアル、カ……」
そう言って自身に回復呪文をかけ始める。
「グランドクロス、マルチェロの使っていたあの術をシドーも使うということですか」
ようやく立ち上がったアリスは自分たちの受けた攻撃の正体を知る。
しかしあのマルチェロのグランドクロスも凄まじい威力を持っていたが、破壊神の放ったものは更に威力が桁違いだ。
あのアレフたち全員の全力攻撃をも相殺していたとすると――
「シドーは、まだ……生きている?」
濛々と土埃に煙る祭壇の方向を見る。
そこには……
「ベホマ」
「!」
再び高速で再生を始めている半壊した邪神の姿。
だが今のアリスたちはそれを止める術がない。
「皆さん、どうか目を覚まして下さい! ベホマズン!!」
アリスが最高峰の回復呪文を唱え、癒しの波動を仲間たちへと送る。
僅かなりとも体力を回復し、目覚めたのはエイトとピサロであった。
「く、そ……槍が……何てことだ」
「おのれぇ……」
折れた槍を口惜しげに捨て去り、エイトは竜神王の剣を抜く。
ピサロは左腕に抱えたフォズを優しく地に寝かせると、憎悪に燃える瞳で振り向いた。
「奴は再生してしまったか」
「ああ、どうする……俺たちにはもう先ほどの攻撃をする余力がないぜ」
「く、せめて私たちの回復呪文も効果さえ戻れば……!」
アリスは歯噛みする。
首輪が外れても未だに回復効果は1/10以下なのだ。
他に要素がない以上、この空間そのものが破壊神以外の回復呪文を押さえつけているとしか考えられない。
それさえ何とかできるなら全員の体力を万全に戻し、再び総攻撃を行うチャンスも巡ってくるかもしれないのだが。
しかし今の状態ではシドーの次の攻撃を防ぎきれるかどうかさえ怪しい。
ズゥン……
破壊神が一歩を踏み出した。
「絶望せよ――」
また一歩
「絶望せよ――」
醜悪な笑みで顔全体を歪め、シドーは進む。
「絶望せよ――そして我が糧となるのだ」
「貴様の喜ぶことを誰がするものかよ」
ピサロが怨嗟の念を呟き、前へと出る。
「ピサロさん!」
「フォズを頼む。我が最大の魔力を持って突破口は作ってやる」
「何ヲスルツモリダ」
「私の全魔力を破壊力へと変換する遺失呪文だ」
「それは、もしや“マダンテ”?」
その術を知っていたエイトが声を上げる。
しえん
「そうだ、今の魔力は全快時の6分といったところだが……
先ほどの私たちの全力攻勢に及ばぬものの、それに近い威力は引き出せよう」
ピサロは真っ直ぐに憎き邪神を見据え、宣言した。
「後は貴様らが止めを刺せ」
そして駆けだす。
誰も止める暇もなかった。
「無謀です!」
「待て、ピサロ!!」
アリスが、アレフが制止しようとするが、その腕を声をすり抜けてピサロは疾走する。
「愚かな……まだ彼我の差を解せぬか」
「もはや関係がない。貴様がいかに強大であろうと、私との差があろうと意味はない」
「何?」
「貴様に抗するは私の矜持! 私の無念! 私の憎悪!
そこに理屈はない、ただ貴様を破壊する渇望あるのみだ!」
「それを愚かというのだ――ピサロよ!!」
破壊の暴風を纏った爪がピサロに向けて撃ち出される。
「その名で私を呼ぶな……我が名はデスピサロ。貴様を冥府へといざなう魔族の王だ!!」
――刹那、愛しいエルフの少女がピサロの網膜に映し出された。
その瞳は悲しみに包まれている。
(ロザリー……)
トルネコの言葉が思い返される。
――そうです。確かにロザリーさんは死んでしまいました。
しかしピサロさん、あなたの心の中からもロザリーさんは消え去ってしまったのですか?
いいえ、そうではないでしょう。あなたの思い出の中にロザリーさんはまだ存在する筈だ!
あなたの心にいる彼女は今笑っていますか!?――
あの時も、そうだった。
支援
支援!
(ロザリー、お前にはいつも哀しい顔をさせてばかりであったな……そして今も笑ってはくれぬ、か……)
「すまぬ」
一言、呟いた。
眼前に死の爪が迫る。
だが詠唱は既に終えていた。
「灰燼と化せ―― マ ダ ン テ ――」
ピサロの全身から赤光が溢れ――
同時に爪がその身体を引き裂いた。
意識が途切れる瞬間、ピサロが幻視したのはフォズの泣き顔だった。
(私は……泣かせてばかりだな)
――私が証拠になります! 私がずっとあなたの傍にいて、それを証明し続けます!!――
「もう、充分だ」
ピサロは笑った。
◆ ◆ ◆
眠るマリアから首飾りが落ちた。
たび重なる衝撃により鎖が緩んだのであろう。
それは――ルビスの守り。
装飾にある宝石には淡い輝きが灯っていたが、それに気付く者は未だ誰もいなかった。
奇跡はまだ――闇の向こうにある。
だが確実に――近づいていた
支援ー
【ピサロ@DQ4 死亡】
【残り6名】
【???/世界の残骸/ゲーム終了後?時間経過】
【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP3/10 MP7/10 全身に中度の火傷 無数の打撲、擦過傷 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす
【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP1/5 身体に絞跡 全身に重度の打撲傷 軽度の火傷 MP8/10 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン
祈りの指輪(あと1.2回で破損) ビッグボウガン キラーマシンの矢×17
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP2/5 MP7/10 全身の打撲 軽度の火傷 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム
84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意
【アレン@DQ1竜王】
[状態]:HP3/10 MP8/10 胸部に重度の傷痕 全身に中度の火傷 竜形態 首輪なし
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪
【フォズ@DQ7】
[状態]:HP2/5(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP9/10 気絶 首輪なし
[装備]:神鳥の杖(死者達の魂) 天罰の杖 神秘のビキニ(ローブの下)
[道具]:支給品一式 アルスのトカゲ(レオン) 引き寄せの杖[0]
祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り あぶないビスチェ 脱いだ下着
太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡
天馬の手綱(ファルシオン)
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる
※神鳥の杖は背負っています。
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP2/5 MP7/10 気絶 全身に軽度の打撲 擦過傷など 首輪なし
[装備]:いかずちの杖 布の服
[道具]:小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖 インテリ眼鏡 風のマント
[思考]:全てを終わらせる
※ルビスの守り(紋章完成)が装備より落ちました。
【破壊神シドー(真)@DQ2】
[状態]:HP??? MP???
[思考]:???
※至近距離からピサロのマダンテが発動しています
ダメージの有無、詳細は次の書き手に任せます
※竜王アレンのザックはこの場の何処かに放置されています。
(さざなみの剣 首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球)
※ピサロのザックは不明です。
終了です。
至らない点もあるかと思いますが、よろしくお願いします。
とにかくバトルオンリーの難しさを痛感した日々でした。
それでは支援して下さった方、どうもありがとうございました。
投下乙です
果たしてピサロのマダンテは突破口になりうるのか…
次はいよいよ決着かな?
投下乙でした。
何か胸がいっぱいになりますね。
今まで様々な思いを積み重ねた彼は誰かになれたのでしょうか。
退場のその瞬間まで全力だった彼にお疲れといいたい。
投下改めてお疲れさまでした。
新作乙です。
本当、胸がいっぱいだ。けど同時にすごい喪失感もあるっていう。
ピサロにこの選択をさせたものってなんなんだろうとか
孤軍奮闘なイメージが強かったけど実はそうじゃなかったんだなとか
言葉少なに逝ってしまったのがらしくもあるけど、やっぱ悲しいな。
355 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/03(土) 04:13:32.42 ID:PUxZJu9j0
悲しいときー!!
悲しいときー!!
ピサロが死んだか
最終決戦だけに、誰が突然死んでもおかしくないから、それはそれとして
そんな「後は任せたぞ」的に身を投げ出して死ぬような奴だっけ?と
ちょっと違和感があったけど、自分だけだろう。投下乙です
投下後の予約って間が空かなさすぎるのはマズいかな
◆jOgmbj5Stk氏のSSを読んですぐに構成が組み立ってしまった
熱と勢いがあるうちに書き切りたい
全員を一週間予約したいのだけれど、早すぎるなら少し様子を見ます
ちなみに上の書き手さん方とは別の者です
躊躇うな
進め
行こうぜ!
そこまで言い切ったなら行っとくべき
勢いに勝る起爆剤はない。これはマジだから
トリップつけます
>>358-359 ありがとう。勇気が湧きました
ここに来て新人が割って入っていいんだろうかと葛藤もあるのですが
書きたいものが腹の底で暴れてます
矛盾なく書けるか自信が無いし、迷惑かけるかもしれませんが、精一杯頑張りますので挑ませてください!
全員を一週間予約します
スレはずっと見てるので何かあればいつでも
何と早くも次の予約が!
これはいよいよ終わりが見えてきたかもしれんね
期待して待ってます
これは……夢のようだな!
新世代と、
>>1とのリレーなんて!
期待しっぱなしで待ちます!
wiki収録してくれた方おつです
改行とか細かいとこ少しいじらせてもらいました
変な所があったらご指摘下さい
そういやシドーってグランドクロス使えるのか?
最近のバトルロードとか9の裏ボスとかのデータ?
うわあ、うわああ
ちょっと遅れちゃったけど投下乙!
ピサロのロザリー回想が切なくて、充分だで救われて
やばい、まじやばい
ヤバイといえばこの死導はほんとやばい
ラスボスのカリスマ抜群だ
能力的にもあっちはベホマで、こっちは回復力低下ってめちゃくちゃガチだよな
>>364 ドラクエモンスターズ系列でジェノシドーっていうシドーの生まれ変わった姿が覚えれたはず
それが元ネタかは分からないけどガキの頃に育てて覚えさせた記憶がある
すみません、執筆にあたっていくつか確認したい情報が出てきました
特に(元・現問わず)書き手の方、お時間あれば避難所の情報確認スレを確認していただけないでしょうか
ログまとめ漁っても把握できない情報が多くて…予備知識が足りず申し訳ないです
最近盛況だし、あとちょっとでここ完結させて、DQ]の発売に合わせて2nd開催とか出来るかも…
とか思ってたんだけど、]ネトゲになるらしいね
仮に2ndやるとしても、]の参加は無しかな
残念だ
オンゲは板違いなんか?
ドラクエキャラだから出してもいいような気がするけどよくわからん
IXはサンディやエルキモスはじめ色々出せそうだな
FFDQでFF11が板違いって言われてるし、そうなんちゃう?
避難所に2nd期待スレがあるから今のうち意見出し合っとけばスムーズかもね
まあ今は最終決戦から目が放せないけれど
ネトゲのFF11が除外される一番の理由はプレイ人口の少なさだろうね。
FF11自体にはロワで活躍できそうなキャラが多数いるけど
そのキャラを知ってる書き手が少なければどうしても進行が滞っちゃうし。
今時ネット接続環境のない人ってそうそういないだろうし
DQ10を低い敷居でプレイできる=登場人物を知ってる人が多いってなるなら
2ndに10のキャラを登場させることは可能なんじゃないかな?
どっちにしろ9と同じく主人公は登場させられないだろうから
サブキャラメインで参加ってことになるだろうけど。
> どっちにしろ9と同じく主人公は登場させられないだろうから
> サブキャラメインで参加ってことになるだろうけど。
意味が解らないんだが
>>369 一人でも遊べるから、FFDQ板が板違いというわけでもない
そもそもオンラインゲーム全般が板違いというのは実際は間違い
374 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/09(金) 08:27:59.56 ID:ZsrfY8sI0
じゃあいれるか
9主人公入れられるだろ
男天使にするか女天使にするかは書き手次第だけど
朝までには書き終えて、一旦避難所の一時投下スレに落とす予定です。
思ったより長文になっているのと、展開が展開なので矛盾が無いか不安なため
一日ほど様子を見ようと思います
加えて夕方から予定が入ってしまったので、
予約期限は日曜の1時ですが半日ほど延長を申請いたします
日曜日の午前11時から投下を始めたいと思います
微妙な時間帯で申し訳ないですが、支援などいただけたらありがたいです
避難所にて一時投下完了しました
遅くなって申し訳ありませんでした
とはいえ、この時間見事に誰もいないみたいですね…
如何せん長くなってしまったので
人がいるかどうかによっては、明日の本投下を夜に延期するかもしれません
自力だけだと、多分さるさん連発ですので…
向こうでのご指摘・ご意見お待ちしております
一旦失礼します
一時投下スレの読んできました
一時投下なので内容には触れないけど特に問題ないかと
あと明日は特に予定ないから本投下時は支援出来ると思います
一時投下スレは拝見致しました。
内容に関して、反対意見はございません。
明日は精一杯支援させていただくつもりです。
>>378-379 ありがとうございます
支援していただけるということなので、色々言いましたが予定通りいきたいと思います
明日の午前11時から投下を開始します
何度もすみません
投下遅れてるみたいだね
何かあったのかな
夜に延期になるのかな
それならそれで構わないけど書き手さん大丈夫か
支援待機してくださってた方、大変申し訳ありません;
体調が崩れて身動きがとれなくなってました
とりあえず持ち直したので、30分後から投下を始めたいと思います
勝手な時間変更で見ていてくださる方がいるかわかりませんが
もし気付いたら支援よろしくお願いします
了解です
身動きとれないって相当だと思うけど
無理しないでくださいね
ふざけるな。
とっさに叫ぼうとしたが言葉にならない。
銀髪が疾る、生を疾り去るその刹那。
アレフの瞬間は永遠のように時を止めていた。
――待て、ピサロ。
その永遠の中でアレフは見た。
彼が一人で闇に対峙するその覚悟は、己の生命を少しもかえりみていない。
否、むしろ自ら投げ出そうとしていることがわかる。そう――あれでは自爆のようなものだ。
彼が横たえた、頼むと言った、幼い少女が視界のすみに映る。
その小さな手を取った瞬間を、届いたと言った言葉を、アレフは目の前でたしかに見、聞き届けた。
それなのに魔族の王である青年は、自らの生命を絶つことになんの迷いもない。
まさか……彼は初めから、その覚悟があったのだろうか?
どこかで、その命を投げ出す時が来ることを想定して…………
「貴様に抗するは私の矜持! 私の無念! 私の憎悪!
そこに理屈はない、ただ貴様を破壊する渇望あるのみだ!」
アレフは自分が勘違いをしていたことに気付かされる。
魔族の王が、この戦場に向けて抱いていた覚悟。
それはアレフたち、未来を希求して闘う若者たちとは明らかにベクトルのちがう意志だ。
ふざけるなと、叫びたかった。
生殺与奪と言ったあの契りを破るのかと、
勝手にもほどがあると、もうあの少女を泣かせるなと、言いたかった。
「マ ダ ン テ ――」
「こんの――――バカ野郎ぉおおおおおおおおおおおおお!!!」
魔力が迸り、閃光と爆音が吹き荒れる中。
無知な己を責め、鈍感な己を呪い、無力な己を嘆いて――
アレフはただ、絶叫した。
.
***
マダンテによる衝撃波は、シドーが放ったグランドクロスのように、
この空間にいる者すべてをなぎ倒したりはしなかった。
シドーのいるその座標、ただ一点に向けて放たれていたからだ。
だから彼らは見ていた。
アリスは、エイトは、アレンは、アレフは、ピサロがその身体から全ての魔力をシドーに向けて解き放ち、
直後にシドーの爪牙に引き裂き貫かれるその様を、確かに目に焼き付けていた。
まばゆい光が闇を切り裂き、ピサロ自身さえ巻き込んで、イオナズンとは比べ物にもならないような大爆発が引き起こされる。
疾かった。誰にも手が出せなかった。
誰もがその瞬間、呆けるように立ち尽くしていた。
爆発が徐々におさまっていっても、未だに彼ら全員が、その現状を受け止めきれていたかさえ怪しい。
だが吹き荒れる粉塵がやがて立ち消え、祭壇の上に墜落したシドーがその輪郭を彼らの前にさらけ出したとき。
彼らの太陽、勇者アリスは駆け出していた。
シドーは祭壇に落とされたまま動かない。
顔面をふせ、うなだれたような状態で、時おりもぞもぞと身じろぐものの、
マダンテの直撃を喰らってから、大きな動きも見せずにただ祭壇のいただきに佇んでいる。
あの猛毒の瘴気は、マダンテによって全て吹き飛ばされてしまったようだ。
羽や背中は焼けただれ、血とも体液ともつかぬものに染まった醜い傷を見せていた。
魔族の王が命と引き換えに放った、全身全霊の復讐の一打である、
さすがにこの絶望の化身と言えども、容易に立ち直ることはできないはずだ。
だが死んだかといえば、その場にいる誰もが「いいえ」と答えるだろう。
闇の鼓動は未だ尽きることなく、おぞましく醜悪に、周囲に響き渡っているのだから。
,
「たあああッ!」
その鼓動を頼りに暗闇の中突進し、足場を飛び越えて祭壇へとアリスは走る。
ピサロが死んだ。
その事実が少女の胸に広がるとともに、もはや思慮も迷いもかなぐり捨てて、ただ衝動に突き動かされた。
傷だらけのはずなのに痛みを感じてもいないのか、否――心の叫びが、彼女に傷があることを忘れさせたのか。
熱い涙が次から次へと溢れてくる。手が、足が、抑え切れない激情にがくがくと震えている。それでもアリスは、駆けた。
「やあぁあああああッ」
めちゃくちゃに振り回した隙だらけの攻撃が、しかし避ける気配を少しも見せないシドーに会心の一撃として放たれた。
無防備に開かれた羽の付け根を深く切り裂き、血かどうかもわからぬ黒々とした体液が噴き出す。
破壊神の身体が、少しだけ揺らいだ気がした。
「アリスさんっ退いてください!」
そのアリスの攻撃に連なって、竜神王の剣を手にシドーの前に滑り込んだのはエイトだ。
彼の攻撃スキルは元々ヤリでの攻撃に特化している。だが剣での攻撃になんの小細工もなしかと言えば、そうではない。
振り上げたその手が雷光を発する。
雷は腕を伝って握られた竜神王の剣を覆い、エイトの手ともども、巨大な光の剣と化した。
「はっ!」
溢れ出すオーラを振り回すように身を躍らせる。
空間を切り裂くように伸びたオーラは、回転しながら動かぬシドーの体に叩き付けられた。
背中に深傷を刻み込んだギガスラッシュの手ごたえに、しかし会心の笑みを浮かべるでもなく、
エイトは更なる連撃に備えて構える。
アリスのように激情をさらけ出してぶつけることはない。だがエイトもまた、仲間を失った動揺で冷静さを欠いていた。
(とにかく今、攻撃しなければ)
もう回復させるわけにはいかないのだ。もう一度ベホマを使わせたら、ピサロの捨て身の大打撃を無為にしてしまう。
だから隙を与えないためには連続攻撃しかない。多少拙い攻撃であっても、繰り返す。
それが今彼らにできる、最善にして唯一の方法だった。
.
携帯から
すみませんちょっと阻まれ中
普段2chに書き込まないため忍法なんたらのレベルが足りないようで、
字数調整しながら落としてるので少し時間かかります
「エイト!!」
背後から掠れた叫びを聞き、エイトはそのまま飛び離れた。
「王者の剣よ、今一度力を貸せ!」
両足で偽りの大地をしっかりと踏みしめ、王者の剣を横に構えてアレフは念じる。
先にもシドーに向けて放ったバギクロスの破壊の突風が、避けることをせぬ敵の巨体を包み込み、切り裂いた。
アリスは目元をぐいと拭いながら、エイトは心を鎮めるように胸元を掴み、アレフは王者の剣を握り締め、
その光景を決死の表情で見ている。
この攻撃が身動き取れぬシドーに決定打を与えられることを、破壊神を葬り去ることに繋がることを、
三人は祈るような思いで見つめていた。
やがて、聖なる風は収まり、シドーの姿が再び彼らの視界に映る。
そこには傷付いて動けぬ破壊神が、致命傷を負い、最早消滅の一途を辿らんとする、敵の姿がある、筈だった。
『少し、五月蝿いな』
シドーはそこに、立っていた。
胸の悪くなるような笑みを浮かべ、深傷に苦渋の声を漏らすこともなく。
三人は言葉を失う。
起き上がって再び晒した正面、及び顔面は、背中側と違って大した傷は見られない。
来るとわかっている打撃に対して、神を名乗るほどの力と知性を持つ“それ”が、防御をしないわけがなかった。
放たれたマダンテに対して咄嗟に祭壇に降り、それでも回避しきれないと判断すると羽で巨大な体躯を覆い、
背中で正面を庇ったのだ。
だから傷を受けても深手にはならず、アリスたちの攻撃に対してもそれほどの痛痒を感じずにいた。
『――だから、愚かと言うのだ……』
打ちのめされる三人はしかし、一つの違和感をも覚えていた。
それは、先ほどまでシドーが何の動きも見せていなかったこと。
ここまで何事も無いように振舞えるのに、なぜ先ほどまでは動けなかったのか。
否――――動けないように見せてあくまで防御に徹し、うずくまったままその場に留まっていたのか。
にたりと笑みを深くする口から、赤黒いものが零れ落ちている。
,
『いくら、希望を託せど……死したからには、我が渇きを潤すだけというのに……』
三人の間をかつてないほどの戦慄が走る。
あってはならない、認めたくも無い、だが認めざるを得ない醜悪なシドーの行動を、徐々に彼らは理解する。
動けなかったのではない。動かなかったのだ。
ただその場に降り立ち、背中を丸め、その地面にあるものを、“貪っていた”。
「まさか……貴様……」
『潤うな……さすがは、仮にも魔族の王だ』
不要とされたのか、見覚えのあるザックだけが、バサリとその口から零れ落ちた。
絶句し、立ち尽くしてしまった彼らの前で、破壊神は呪文を紡ぐ。
――――“ベホマ”
「あ――――!!」
しまったと、誰かが正気に戻って声を上げたがもう遅い。
シドーの傷が、消えていく。
ピサロが命を捨てて刻み付けたものが、アリスたちが必死で繋げたものが。
たった一つの魔法で全て、消え去せていった。
支援
.
すみませんさるさん来ました
解除までどのくらいかかりますかね…
多分16時ちょうどに解除かな?>さるさん
***
もうシドーにベホマを使わせるわけにはいかない。
ピサロが投げ出した生命を、その輝きが繋ぐべき最後の希望を消させるわけにはいかなかった。
動けるものは総攻撃にかかっている。ピサロが、最期に言い残した通りに。
だから今、傷付いたアレンを回復できる者はいない。
戦場に横たわる一匹の竜は、破壊神を見つめている。
マダンテによって祭壇に墜落し倒れた破壊神、そこに斬りかかるアレフたちを。
仲間を失った動揺からか、それらの攻撃はひどく無鉄砲で統率を欠いているように見えた。
距離を離しているために戦闘には今のところ巻き込まれずにいたが、そのうちどうなるかはわからない。
なにより彼自身、いつまでも見ているつもりはない。
自力での回復手段も効力が弱いとは言え持っているし、折を見て前線へ向かうつもりではいた。
だが一つ、そんな彼を思考の渦へと向かわせている疑問がある。
それはどうしてシドーがグランドクロスを使えるのかということだった。
最初はシドーが曲がりなりにも、邪悪であっても神として君臨するからだと、そう思った。だが、本当に?
グランドクロスは祈りを込めて切る十字の力だ。故に本来は聖職者、信仰を神に捧げる者にしか使うことはできない。
かのマルチェロさえかつては神の下に心身を委ねた者であり、自身の思いを祈りに変えるすべを知る一人の人間だ。
祈る資格を持ち、祈りの作法を知り、祈る心を知っている。
アレンはそこまでかの技の知識を持つわけではない。だが漠然と思うのだ。
聖なる祈りとは対極に位置するはずのシドーがグランドクロスを使えることは、何かがおかしい。
――ふと、先ほどの光景が蘇る。
フォズの祈りによって闇の衣から参加者の魂が解き放たれたとき、
少女に導かれることを拒んだ霊たちを口腔に放り込んで咀嚼した、醜悪なその様を。
(……魂を喰って得た力、か)
,
予測した、更なる相手の手の内に、竜はぎりりと牙を噛みしめた。
(終末の時は、近いのかもしれぬ……このままでは)
こちらの癒しは未だ封じ込められ、向こうは最大の回復力を持つ。
それだけでさえ、あまりに酷なハンデであるのに――――
想定したくはないことだが、こちらが犠牲を出すほど敵は力を強める可能性がある。
そうなれば勝ち目は、万に一つも無いだろう。
そのとき。アレンの発達した聴力は、ひとつのか細いうめき声を拾う。
「う……」
首を動かせば、マリアがふらふらと立ち上がっていた。
傷だらけだが意識ははっきりしているようだ。頭をぶんぶんと振って顔を上げ、戸惑いながらも戦場を見渡す。
その視界に動けぬ竜の姿を認め、端正な面差しに驚愕と悲壮を浮かべて駆け寄ろうとした。
しかし足場が悪く、またマリアの乗る足場とアレンの乗る足場には、少女が飛び越えるには距離がありすぎる。
結局傍に行くのは諦め、代わりに声を届けようと、喉をふりしぼった。
「アレン!!」
「マリア……無事ノヨウダナ」
「ええ。でも、あなたはどうして、その傷……! 今、回復を」
「待テ、マズハ自分ダ」
「でも」
「ナニ。致命傷ニハ程遠イモノヨ」
思ったより流暢に答えてくれる竜の姿に、少しだけ安堵する。だがそれだけではマリアの混乱は収まらなかった。
現状が、まるで把握しきれない。
.
「教えて、一体何が起こったの? 確か、奴に一斉攻撃を仕掛けて……そこから……」
「状況ハ一変シタ。最早奴ニ一ツノ隙ヲ与エルコトモデキヌ。……時間ガ無イ、マリア、心ヲ鎮メテ耳ヲ貸セ」
矢継ぎ早に紡がれる竜の言葉に、マリアは眉根を寄せる。
その柔らかな少女の心に染み通るよう、そして突き付けるように、アレンは明瞭な声で告げた。
「ピサロガ死ンダ」
マリアの心臓が矢で射抜かれたかのような衝撃に貫かれる。
「うそ……」
「我ラノ一斉攻撃ハ相殺サレタ。シカモ、奴ハベホマデ傷ヲ回復シタ。
ダカラ突破口ヲ開イタノダ。ピサロハ一人奴ノ懐ニ飛ビ込ミ、全テノ魔力ヲ解キ放チ、同時ニ奴ノ攻撃ニ貫カレタ。
ドウアガイテモ、生キテハイマイ……」
「待って、待って。あの攻撃が相殺されたって、どうやって!」
「破壊神ノ聖ナル祈リニナ。出鱈目ナ話ダガ」
忌々しげに竜が吐息を漏らす。マリアの頬を透明な涙が伝った。
「うそ……ッ!」
「マリア……絶望ハ奴ニ力ヲ与エル。最早猶予ハ無イノダ。ピサロノマダンテハ確カニ奴ノ瘴気ヲ飛バシタ。
酷ナコトシカ言エヌガ、コノ機ヲ逃スワケニハイカヌ」
そう言って竜は、厳しい眼差しで戦場を見つめる。先の攻撃より動きを止めた破壊神を、そこに立ち向かう三人を。
マリアもまた同じものを見る。今もなお戦い続ける、どんな逆境にあっても決して希望を捨てぬ勇者たち。
マリアはベホマで自分の傷を癒しながら、祈るように目を閉じた。
諦めるなと言った、ピサロの言葉を思い出す。
それはつい先刻のことだ。フォズが見守る中で行われた二人の賭け、小さなメダルを以て優勝者を決するその前に、
一人悲壮ともいえる決意を宿したマリアの胸のうちを見透かしてピサロは言った。諦めるな、希望を持ち続けろと。
(――じゃあ、あなたは? 諦めてしまったの?)
同じく復讐という目的を共有しながら、道半ばにして倒れた彼の最期に思いを馳せる。
目を開けても、その亡骸をマリアの位置から確認することはできない。
本当は倒れ臥してるだけではないか、
今にも起き上がってあの皮肉めいた笑みを浮かべてくれるのではないかと、疑う気持ちもあった。
だけどそれはありえない。ピサロの最期は、アレンが確かに見届けている。
未だ一割程度しか力を発揮しない回復力では、ベホマを以てしても完治に至るには程遠い。
だからマリアは自分の回復もそこそこに、足場のぎりぎりで膝をついて身を乗り出し、
細い腕を精一杯アレンの方に伸ばして、再びベホマを唱え始めた。
彼自身のベホイミでは癒しきれなかった傷が、少しずつ塞がっていく。
(諦めた……いいえ、きっと違う)
マリアは思う。ピサロはきっと、求めていたのだと。
自分に相応しい死に場所を。命に代えてでも希望を繋ぐことのできる、その瞬間を。
破壊神への復讐を果たす、その願いを仲間に託すことができる、それは確かに、彼にとっての希望だったはずだ。
(そう、私も……)
今のマリアをなにより焦がれさせるのは、やはり破壊神の命。彼と同じく、復讐という悲願。
――――託すことができるなら。守ることに繋がるなら。
ベホマの光は、尚もアレンの巨体を淡く照らしている。
だが距離が離れているせいか、或いはその巨体のせいなのか、彼に至っては余計に回復効率が悪い。
マリアがそのことに気付き顔をしかめると、アレンはグルォオオ…と短く吼え、頭を振り上げた。
もう行け、という合図だ。
「今治しきるのは無理そうね……」
申し訳なさそうな表情を浮かべて立ち上がるマリアに、竜は溜息にも似た吐息を漏らす。
「案ズルナ……オ前モ回復シキレテイナイダロウ」
「私は平気。先に、行ってるわ」
,
凛然とした眼差しで戦場を見つめるマリアは、一片の迷いも浮かべることなく毅然と立っていた。
「ワシモスグニ向カオウ」
「無理はしないで」
「アア。……マリア、守リハドウシタ?」
アレンの言葉に、え? とマリアは素っ頓狂な声を浮かべた。
一瞬なんのことかと思ったが、守りとはつまり、彼女が首から提げているルビスの守りのことだと気付く。
なんのことはない、当然胸元にあるだろうと、自然な動作で手を置いた。だがそこにある筈のものに、触れない。
「え――!?」
背筋が凍る。見下ろせば、胸元には何も下がっていなかった。
はっとして先ほどまで自分が倒れていた足場を見ると、そこには首から提げていたはずのルビスの守りが落ちている。
「鎖が、切れてしまったのね」
この激戦の中においては仕方ないだろう、むしろこの異空間の中へ消え去りはしてなかったことに安堵した。
息をついて拾い上げようと手を伸ばせば、その紋章はほのかに、意志を持ち自立するかのように、光を放っている。
――意志を持って、離れたのかもしれない。
頭に浮かんですぐ、おかしな妄想だと自嘲した。この期に及んで、自分はなにを考えているのだろうか。
だがやがて、どこか納得したように、マリアは頷いた。
(そうね……私にはもう、相応しい守りではないのかもしれない)
相手を滅ぼすことだけを望む自分と、命を司る紋章の輝き。こうして並べてみると、確かに不似合いだ。だったら。
そっと、拾い上げる。この守りを胸に抱くのに、もっと相応しい存在がいると思った。
マリアが倒れていた場所から、アレンとは反対側の足場で今もなお気絶している、幼い少女。
(フォズさん、どうかあなたは生き延びて)
マリアは足場を飛び越えてフォズの傍に行き、彼女の傍らに守りを置く。
ルビスの加護がこの力なき少女を守るよう、祈りを捧げた。
ピサロはもう、いないから。
***
「許しません」
アリスは怒りに身体を震わせた。
仲間を失うばかりかその亡骸さえ穢されたことに、それをみすみすさせてしまった自分に。
「許しません」
アリスは憤怒の形相を浮かべて立っていた。
地獄の底から湧き上がるような激情に、足のつま先から髪の毛先まで、体中が熱く焦がされていく気がした。
「許しません」
アリスは最早己を焦がす憎しみを抑えようとはしなかった。
目の前の敵を滅ぼすこと、それは勇者としての使命ではなく、アリス自身の望みであり矜持であった。
「お前は――お前だけは!! 絶対に絶対に絶対に許さない!!!」
アリスは果て無き怒りに狂い、吼えた。
シドーに与えた傷はベホマでほぼ塞がれた。
もう一度、先と同じところまでダメージを与えられるかどうかすら、現状では疑わしい。絶望的とさえ言える状況だ。
だが嘆く暇も迷う猶予も無かった。アリスの怒りの炎は最早、鎮まる術も無く燃え盛っている。
「アレフ、エイトさん、援護を!」
「あ、ああっ」
上擦った声を返して前に出るアレフを見送り、アリスはギガデインを唱えるべく集中し始める。
エイトが先陣を切った。繰り出された爪の一撃を、竜神王の剣で見事に受け流す。
『どこまでも哀れな者たちよ……早々に、絶望に身を委ねれば良いものを』
(煩い)
破壊神の哀れむような声を心の中で苛立たしげに一蹴し、アリスは詠唱を紡いだ。
.
「天よ、照覧あれ――」
『強く、賢しき者たちよ……
最早気付いているであろう。今のお前たちの努力が、なんの意味も成さないことを』
(黙りなさい……っ)
集中が乱される。シドーの巨大な、未だ血の滴る口から激しい炎が吐き出された。
アレフとエイトがそれぞれアリスの前で盾を振りかざし、炎になぶられながらも少女を守る。
「全てを滅ぼさん闇を、嘆きを与えし魔を、冥府へといざなえ」
『少し頭を働かせれば、目を向ければ、その事実にはいくらでも思い至るであろう。
本当は、思っているのだろう? 先の、己の仲間の犠牲すら、無意味だったのではないか……とな』
(煩い、煩い……!!)
シドーが一言口にするたび、アリスの心が激しく掻き乱されていく。
理性をどんどん失っていく少女の口から、辛うじて詠唱の続きが発された。
「来たれ、正義の雷!」
爪の攻撃を打ち払ったアレフが、続けて繰り出された羽に直撃して転がった。
エイトが彼の名を呼んで駆け寄り、更なる追撃を切り払って庇う。
パチリと、雷の爆ぜる音が響いた。気付いた二人がシドーから飛び離れる。
かっと開かれたアリスの瞳がきらめいた。
「滅しなさい、破壊神よ!! ギガデインッ!!!」
『――ぬるいわ』
さながら竜のように唸る雷光が迫るとともに、シドーの足下から別の力が這い上がってくる。
吹き荒れる暴風に、真っ先に気付いたのは最も近くにいたエイトだった。
(また相殺!? これは――……!)
「二人とも、ここを離れてください!!」
「!?」
響き渡った怒鳴り声に、呪文を解き放ったまま無防備に立ち尽くしていたアリスを抱えて、
アレフは咄嗟に祭壇を駆け下り、別の足場へと飛んだ。
振り返ればエイトも付いてきていたが、彼は剣をザックにしまい素手の状態で、二人を守るように仁王立ちしている。
先ほどもエイトの『大防御』によって守られたアリスが、はっと我に返り、目を見開いた。
祭壇上では異なる二つの雷光が光を強め、片方は天から、片方は地の底からそれぞれ強烈なエネルギーを生んでいた。
勇者の雷に対抗するそれは、地獄の雷ジゴスパークだ。エイトが誰よりも早く気付いたのは同じ技を習得しているからで、
彼は地に足をつけて構えながらも既視感に眉を潜めた。似たような感覚を、彼はつい昨日にも体験している。
(これは、このジゴスパークは……あの人と同じ……!)
構えをとる手足が震えた。こうも巨大な力が再びぶつかり合えば、規模はどうあれ後ろへの被害は避けられないだろう。
ましてや先ほどからの激しい攻撃で今にも崩れ落ちそうな脆い足場ばかりなのだ、
こちら側への余波の勢いを殺すためには、『大防御』で強固な守備力を誇るエイトが盾として踏ん張るしかない。
「来い……ッ!!」
地の底から現れた黒々とした雷光が渦を巻き、天から放たれた雷撃を退けていく。
祭壇が衝撃に耐えられずひび割れ始めた。
『だから、それが』
破壊神の笑みが深まる。
『愚かだと言っているのだ』
二つの雷が衝突する。
吹き荒れる強風に衣服がはためき、衝撃波が津波のように押し寄せる。
ざり、と、踏ん張る足が少しずつ押し出されていくのがわかり、さっとエイトの背筋が冷えた。
――ダメだ、耐えきれない。
せめて庇っている二人に告げようと、エイトは僅かに首を動かす。
「逃げ……」
次の瞬間、エイトの身体は宙を舞っていた。
「――!」
叫ぶ間も与えなかった。
祭壇は砕け散っていき、闇の中粉塵と化して消えていく。
やがて風は収まるが、吹き飛んだエイトの身体はこのまま果て無き闇の中へ放り出されるかと思われた。
彼が飛ばされていった方の足場へアレフが咄嗟に飛び出し、王者の剣を振るう。
(間に合え!)
みたび巻き起こったバギクロスがエイトの身体を包み込む。綱渡りをするかのような集中で、必死で風を手繰った。
アリスが身を乗り出して両手を広げる。
「エイトさんッ!!」
聖風によって浮き上がり、速度を落として落ちてくるエイトの身体をアリスは全身で受け止めた。
間一髪で、全員が足場の上に身を確保する。咄嗟に限界ギリギリの集中を強いられたアレフが、荒く息をついた。
「けほ、かはっ……す、みません、二人とも」
アリスの腕の中でそう言いながら咳き込むエイトの状態は、致命傷で無いとは言え満身創痍だ。
二人はそれぞれ自責の念に駆られ、顔をゆがめた。
,
「いや、謝るのは俺の方だ。無事か」
「すみません……私が、あんな無茶をしなければ」
ことにアリスは、直前の自分の攻撃が原因にもなったようなもので、
しかもそれが我を忘れて放ったものだったから余計に苦い思いを抱いていた。
立ち上がろうとするエイトを留めてベホマを唱える。彼の勇気に、自分の弱さに、涙が出そうになる。
思いに身を任せるのはいい。だがそれによって仲間を危険に晒すようなことだけは、あってはならないのに。
(何をしているのです、アリス……!)
いくら復讐心に焦がされようとも、正義の心を見失ってはいけない。父の叱咤が聞こえてくるようだった。
だが戦いのときは、アリスに内省を促す時間さえ与えてくれない。
『“ベホマ”』
またも、シドーの傷が消え去った。
それを悟った三人の心がじわじわと絶望に蝕まれていく。
アリスのギガデインがどれほど敵にダメージを与えていたかはわからない。
だがどれだけ与えていたとしても、今のシドーには関係の無い、意味の無いことだった。
ただ呪文を唱える隙さえあれば、いつでも傷は癒せるのだから。
(違う……ダメだ、こんなんじゃ……)
アレフはギリリと歯噛みした。
このままではダメだ。小規模な攻撃では痛手を与えられず、大規模な攻撃を試みれば相殺され、最悪足場を失う。
そして如何なるダメージを与えようとも、少しの隙を与えればすぐに回復されてしまうのだ。
これでは成す術が無い。だが今、アレフはそれ以上に、強く思うことがあった。
(誰かが犠牲になってちゃ、ダメだ……『死』そのものが、奴の、力だ……望みなんだ……)
アレフもまた、エイトと同じく昨日“彼”のジゴスパークを見ている人間だ。
見ている、どころか真っ向から斬り結んだ彼が、その技に気がつかないはずはなかった。
.
術や技は例え同じ名のものでも、行使する術者の魔力や構築方法によって姿を変える。
威力の大きいものは特に、その傾向が見られる。
だが今シドーが放ったものは威力の差を除けば紛れも無く、ピサロが修得していた、そして放ったものと同じ技であった。
アレフの脳裏に先のおぞましい光景が浮かぶ。
背中への攻撃を厭わずに、まるで捕食動物のようにその亡骸に喰らいついた姿。
闇に染まった魂を口にしてその身体が黒々と染まった時と同じ――彼の死が、破壊神に力を与えてしまったとしたら。
重傷を負い、息も絶え絶えの状態であるエイトも、似たような確信を強めていた。
ジゴスパークが恐らく、ピサロの亡骸――或いは死して遺された魂――によって得た力であるならば。
あのグランドクロスもまた、……悲しいことではあるが――
死して尚闇に染まっていたのだろうマルチェロの魂を喰らうことによって、シドーが得た力だろう。
グランドクロスに関しては特に、そうでなければ説明がつかなかった。
闇の究極に位置する破壊神が聖なる十字を切るなどと、最早相手にとっても皮肉でしかない。
敵はなりふり構うことをやめている。
知性ある言葉を、哀れみに満ちた謳い文句を聞かせながらも、ただひたすらに絶望を与えようとするその姿は――――
人の知恵や組み立てた理屈では及びもつかぬほど、純粋で、そして果てしない闇のようだった。
ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………
闇の衣がはらわれたときと同じかそれ以上の衝撃を伴い、邪神の咆哮が響き渡った。
巨大な翼をはためかせ、上空からゆっくりと近付いてくる。アレフたち三人がいる足場に向かって。
(どうする……どうすればいい!? 一体どうしたら……!)
王者の剣を握る手に力を込めて、だけど未だ打つ手も見出せず、アレフは戸惑いの渦中にあった。
エイトはまともに動かせる状態でなく、アリスはその回復で手一杯な上に、彼女自身の負傷も酷い。
今破壊神に対峙できるのは、アレフしかいないというのに。
(ローラ……俺に、力を貸してくれ……!!)
迷いと絶望に押し潰されそうになりながら。
勇者は愛するその人の名を胸のうちに叫び、固く目を閉じた。
その刹那――――
「天の精霊、歌え断罪の聖歌」
アレフの後ろから、鈴のような声が響き渡った。
「掲げられし王錫の下、王に成り代わり我らは命ず」
詠唱は素早く紡がれていく。歩みを止めない彼女はアレフをも抜き去り、破壊神と真っ向から向かい合った。
その小さな背からは、一筋の恐れも感じられない。
「落ちよ、万物を砕く精霊の槌! ――イオナズン!!!」
シドーの片翼の付け根辺りで爆発が起こった。爆風に、風のマントがはためく。
その衝撃にも揺らぐことのない少女の身体は、ゆっくりと、背後の勇者たちを振り返った。
「遅くなってごめんなさい。……ここも、じきに崩れるわ」
「マリア……!」
「後は、任せて」
傷だらけのエイトとそれを癒すアリスに微かに憂いの表情を浮かべ、だがすぐに敵へと視線を転じ……
アレフと、彼が愛した女性の命の連なりの先にある、その少女は。
一人破壊神に対峙する。
「待て、マリア――」
アレフの静止は届かない。
マリアは睨むような眼差しで厳しく、一瞬崩したバランスを持ち直して迫るシドーを見据える。
その背中には見覚えがある。一人で闇に対峙するその覚悟、己の命を顧みることの無いその背中は。
アレフが今しがた、あの永遠のような一瞬の中で、銀髪の男に対して感じたものとよく似ていた。
(やめろ……。やめてくれ……)
うめき声が、闇のとばりに溶けて消える。
,
***
――――あのときは覚悟が、足りなかった。
マリアが、目の前の破壊神に対峙するのはこれで三度目となる。
一度目は頼もしき二人の末裔と共に、二度目は優勝者として一人で立ち向かった。
だが圧倒的な力の前に、少女は一人では、いつも無力だった。
強くなったつもりでいたのだ、いつだって。なのに。
どこかでずっと恐怖に震えていた気がする。迫り来る死が、怖かった気がする。
そう……本当は怖かったのだ。この神殿の入り口で、首輪を外す順を決するときでさえ。
この先自分に未来が残されている可能性など、限りなくゼロに等しいのではないか、と。
そう思ったのは、最後まで彼女を戒めた首輪の存在に、少なからず心を惑わされたというのもあるだろう。
だけど、それ以上に――マリアには、復讐以外、何も残されていない。
懐かしき故郷も、血の繋がりも、自分と同じ伝説の血を継いだ二人の末裔ももう、全ては失われてしまった。
たった一人でハーゴンに挑むことを望ませたその思い……裏を返せばそれは、未来の見えない不安だ。
例え自分がこの先、生きていく場所などどこにも残されてないとしても、
せめて己に残された使命、己とハーゴンとの忌まわしき因縁だけは、必ず清算しようと思ってた。
だが、目の前の敵にはもう、ハーゴンの面影は無い。
マリアは思う。
目の前の破壊神は確かに、ハーゴンの遺志に同化したものだ。
哀れみに満ちた言葉やその口調自体は、マリアの知るハーゴンのそれに通じている。
だが今彼女が向き合っているそれは、最早その遺志を離れた。ただ純粋に、絶望を欲する闇でしかない。
果てしない渇きを潤すために、死した魂を飲み込む姿。
そこには、誰の意志も願いも理由も存在しない。
だからどれだけ憎しみをぶつけても、返ってくる心は何も無い。
これが彼女が求めた運命の答えだ。
末裔たちが滅ぼせなかったもの、それ故に生まれたこのバトル・ロワイヤルの悲劇の根幹。
そこにはただ、深く絶望を求める意志が存在しているだけだった。
.
ピサロに見透かされていると気付いたとき、希望を持てと言われたとき、本当に嬉しかった。
まだ甘えてもいいのだと言ってもらえたようだった。
そう、思えばあのときから、マリアはとうに知っていた気がする――かつての魔王たちが元々持っていた覚悟。
未来を希求する者たちの、踏み台になろうとする覚悟を。
そうしてピサロは“同志”であったマリアにさえも、希望を持つことを示してくれた。
それは紛れも無く、彼の優しさであったけれど……だからと言って、身を委ねてばかりいるのは甘えだ。
もう彼はいない。そして欲しかった答えは出た。
ならばマリアは果たさなければならない。ロトの末裔として、かつて邪神を滅ぼせなかったものとして――――
ケリをつけなければ、ならなかった。
シドーにより近い足場へと移動し、魔力を再び展開させる。
最大限の集中をもって、最短の時間で解き放つ。
爪を構えたシドーが迫り来るが、ピンポイントで狙うのだから外す筈が無い。
マリアの頭は冴え渡っている。
「イオナズン」
「――!!」
再び、シドーの翼が爆ぜる。
先ほど狙ったところとほぼ同じ箇所、片翼の付け根。
詠唱を破棄した分威力は半減しているが、動きを止めるには十分だ。
爆風が少女の頬を撫ぜ、そして衝撃の余波なのか、彼女の立つ足場に唐突にひびが入った。
咄嗟に隣の足場へと飛び移る。先ほど装着しなおした風のマントのおかげで、マリアの身は羽根のように軽い。
だがたった今まで彼女がいたそこは、跡形も無く崩落していった。
安堵の息をつく時間は無い。
閉じかけた魔力のフィールドをみたび展開する。
一歩誤れば彼女自身に牙を剥きかねない、危険な上級魔法の連打。
それでもマリアの高まる意識は、ただひたすらに破壊神へと向けられている。
『……如何なる時も、お前は独りであるな……怨念に囚われし、亡国の犬姫よ』
,
挑発を決然と無視して、マリアは呪文を解き放つ。
マリアにとってはもう――過去の因縁は、彼女を揺るがすものではなかったから。
三発目のイオナズンが、少し外れて腕の付け根に当たった。
高度な魔法を詠唱もなく連続して唱えているためか、頭がガンガンと打ち付けられたように鳴り響くが、
少女は尚も魔力の展開をやめようとはしなかった。
長い髪をまとめていた、先の攻撃ですっかりぼろぼろとなった頭巾を、煩わしさのために取り払う。
戦場に、菫色がふわりと広がった。
もう、一かけらの容赦もしない。
その死を見届けるまで、否、見届けても尚。
地獄の果てに至るまで、彼女はこの魔法を打ち続ける。
『王女よ……今一度、我が依代とはならぬか? ここではお前の持つ苦悩など、蜃気楼に等しい』
「――イオナズンッ!」
妄言を吐き散らすその口を意図して塞ぐかのように、放たれたイオナズンによりシドーの唇が爆ぜた。
マリアの息が荒くなる。頭が割れそうに痛む。
それでも頑なに揺らがぬ細い身体は、五発目のイオナズンに向けて魔力を加速させていく。
だがシドーも、いつまでもその呪文の連打を見逃したりはしない。
次の魔法は発動させまいと、爆発を振り切って素早い動作で爪を振りかざす。
マリアはなんとか身を捩って避けるが、シドーが狙ったのは彼女自身ではなく、その足場。
強烈な二連撃がマリアの立つ地面を抉り、叩き割った。
「ッ――……!」
風のマントの力を頼りに別の足場へ飛ぼうとするが、すんでのところで届かない。
まだだ、まだ死ぬわけにはいかない――――
闇の中、重力に抗い懸命にもがく少女の元に、一陣の風が吹く。
とさりと、落下した衝撃が軽いのはやはり身に着けた外套のおかげだろう。
落下していたはずの身体がいつの間にか上昇しており、上からの大気の抵抗を受ける。
なにか飛んでいるものの上に、自分は乗っかっているようだ。
気付いたマリアががばりと身を起こすと、彼女を乗せた竜が薄く笑んだように見えた。
「アレン……!」
「全ク、無茶ヲスル」
行クゾ、と短く囁いて翼を羽ばたかせ、更に上昇する。
その鱗に包まれた身体は未だ酷く傷付いていたが、飛び立っても支障ないほどには回復したらしい。
足場のある高度まで戻り、改めて眺めてみると、
かつて祭壇のあった場所、今いるシドーの周りの足場はほとんどが崩れていた。
これでは他の皆が近付けないと、内心アレンは眉をひそめる。
だがマリアはシドーを視界に捕らえると、すかさず魔法を展開しだした。その早さにアレンでさえ思わず目を剥く。
魔力のきらめきを込めた瞳が、破壊神に向けられる。
シドーが何かを唱えようとしていたが、それよりも早く。
「――イオナズンッ!!」
『グギャァァァアアアアアアッッ!!!』
五発目が放たれると同時に、胸の悪くなるような絶叫が響き渡る。
先と同じように翼の付け根を狙った爆発により、ついに翼が千切れて闇の中に落ちていった。
バランスを保てなくなったシドーが、その巨体を近くの足場に墜落させる。
上がる粉塵を、その中にいると思われるシドーを油断無く見据えながらも。
背中に乗せた少女が咳き込むのを感じながら、竜は苦しげに顔を歪めた。
(そういう、ことか……)
.
付け根部分を集中的に狙い、先に両翼を落とそうという、彼女の判断は悪くない。
この戦場に用意された足場は元々ひどく脆いものだ。
最も大きかった祭壇でさえ、先の相殺で跡形も無く崩れ去るほどに。
――無論グランドクロスやマダンテなどで、元々弱っていたのもあるだろうが――
どうしても、アレンを除けば地上でしか動けないマリアたちは、翼を持つシドーに比べて遥かに不利だ。
上から狙い撃てる上に、向こうは足場を壊し放題なのである。
だが、肝心の翼が落とされればそれも別。
敵も地上でしか戦えなくなり、そうなれば今までのように、簡単に足場を壊すわけにはいかなくなる。
ベホマで翼まで元通り生え揃ってしまうかはわからないが、使わせなければいい話だ。
勝算はわずかでも増えるだろう。
一方で――問題は翼を落とすまでだ。
生身の人間の足ではもうシドーのいる高みには届かない、だからマリアは風のマントに賭けたのだろう。
そして、敵にベホマを使わせるわけにはいかないこともわかっている。
だから自分に使える最上の威力の魔法を、最短の間隔で唱え続けなければならない。
詠唱を破棄し、魔力の展開を早める。それは明らかに、術者の精神力を削り取っていくであろう荒業だ。
続けていれば彼女の身がもたないのは間違いない。現に、マリアはすでに酷く憔悴しきった様子でいる。
生半可な覚悟ではない。否――自分の命を惜しんでいては、到底成すことのできない所業だ。
アレンはすっと目を閉じる。一匹の竜は、マリアの覚悟を静かに受け容れた。
(最後まで――――おぬしの傍にいようぞ、マリア)
それは、自らもまた、必要とあらばその命を投げ出す覚悟を持つ者の誓いだった。
シドーが地上に降りたというのに、アレフたちが追いついてくる様子は無い。
足場を失い、シドーに近付ける術が無くなったため、三人とも一旦フォズの傍へと後退したようだ。
今シドーがいる足場の周囲にも道らしき道は無いため、無理もなかった。
必ず手の届くところまで墜落させてやろうと誓う。
「っ、ごほっ……」
そのとき、背中で身じろいだマリアの気配に、アレンは羽ばたく速度を落とした。
「マリア、無事カ」
「え、ええ、ごめんなさい。シドーは……」
「ソコダ」
そう言って視線で示す先には、片翼を失って動きを止めているシドー。
起き上がるまでに少しの猶予があると判断したマリアは、頭を振り払って身を起こした。
弱っているであろう身体をいとわずに、先ほどまで破棄し続けていた詠唱を口にする。
「天の精霊、歌え断罪の聖歌……」
だがその詠唱に反応したかのようにシドーは突然起き上がり、そして片翼のみで羽ばたきだした。
『絶望、せヨ……希望を持たヌ者どもよぉぉオおおおおオオオッ!!!』
先ほどまでとは違い余裕の無い喚き声を上げながらも、予想以上の速さで迫ってくるシドーに、
アレンは背中の少女を案じながらも止むを得ず旋回した。
それを追い、二人を丸ごと溶かそうとするように、シドーの口から激しい炎が広範囲に吐き出される。
「サセルカ!!」
浴びせられかけた炎を翼で振り払い、避けきれぬ炎にのみアレン自らが吐き出す炎で相殺する。
まともにぶつけ合っては勝てないことがすでに証明済みだからこその回避策だ。
そしてその攻防に振り回されながらも、マリアの詠唱は続いている。
,
.
「掲げられし王錫の下、王に成り代わり我らは命ず……」
『我の前ニ平伏せ――哀れナる――死ぬが、よイ――死ヌガ、よい――!』
翼を落とされたことで恐慌状態にあるのか、或いは繕っていた知性が崩れ去ろうとしているのか。
闇に轟く叫びは鳴き声とも付かぬ声に混じって、酷く不明瞭に発されている。
容赦なく浴びせられ続ける炎に少しずつなぶられながら、それでもマリアに危害は与えまいと
必死で避け続けるアレンに痺れを切らしたのか、シドーは四本の腕を振り上げ爪をかざして突撃した。
「落ちよ! 万物を砕く精霊の槌!」
『そシテ、絶望の淵に落とサレるがヨい――!!』
アレンは歯噛みした。シドーはこの爪での連続攻撃が異様に早い。
一撃目を余裕を持って避け、二撃目も宙をきる。だがシドーはなおも迫り、アレンに肉薄した。
マリアにだけは近付けさせまいと広げたアレンの翼が、三撃目の爪牙に引き裂かれる。
呻いたアレンにシドーはにたりと笑みを深め、最後となる渾身の一撃を、その首筋に叩き込んだ。
鮮血が、はじける。
だが、アレンは倒れない。迫るシドーの顔に、自らも爪を振るった。
それを避けようとして飛び離れたシドーに向けて、高められた魔力が解き放たれる。
「イ オ ナ ズ ン !!」
シドーの残されたほうの片翼の付け根で、閃光と轟音が撒き散らされる。
醜悪な叫びを残して再び地に落とされるシドーと同時に、
遂に持ち堪えられなくなったアレンが、近くの足場めがけて半ば墜落するようになりながら滑り降りた。
くたりと身を横たえる竜に、魔力の反動でめまいに襲われながらも、マリアは必死で呼びかける。
「アレン! アレン、しっかりして!」
「アア、無事ダ……コンナモノデハ死ナヌ……」
「ごめんなさい、あなたを巻き込んで、こんな……!」
彼から飛び降り、抉られた首筋へ向かおうとするマリアをたしなめるように、
アレンはその鼻を彼女の頭に近付ける。
.
――時間が、無いのだ。今このとき、シドーにベホマを使われれば一貫の終わりなのだ。
だからアレンを癒す時間は無い。そうとわかっていても捨て置くことのできぬ心優しき少女を、
彼もまた優しく押し留める。
瞳を潤ませるマリアは、しかし尚もアレンが身を起こそうとしているのに気付き、
それを制止するように鼻先を抱きしめ、子供のように首を振った。
アレンがこれ以上飛びまわるのは無茶だ。下手すれば、そのまま闇の帳に落ちかねない。
時間が、無い。
マリアが決意に至るのは一瞬のことだった。
少女は竜から身を離す。
白い頬を、一筋だけ涙が伝った。
竜が目を見開いて少女を見つめる。
「……こんなところに置き去りにしてしまいたくないけれど」
「待テ、一人デハ行クナ……!」
「ごめんなさい。……ありがとう――」
か細い涙声は残り香のごとく竜の鼻先を掠めて、そして闇の中に霧散する。
アレンは翼を動かそうとした。だが片翼が持ち上がるだけで、抉られたもう一方には力が入らない。
アレンは身を起こそうとした。だが首の傷から黒々とした血はとめどなく溢れ、アレンの生命力を奪っていく。
それでもアレンはもがいた。なんとしても、かの末裔の少女を追わなければならなかった。
少女の涙を見た瞬間、アレンの体中を電撃のように貫いた、ひとつの確信のために。
死なせてはいけない。その想いだけが無限回廊のように響き続ける。そこには理屈も何も無かった。
彼女をひとり死なせてはいけない。
今更だ、本当に今更なのだ。だがその涙に、アレンは突如として気付かされ、思い知らされる。
マリアが、マリアが本当に望んでいるのはきっと、孤独な死なんかではなくて――――
,
いつだって、一人ではなかった。
自分がどれだけやり場の無い感情を、痛みや嘆きや憎しみや悲しみを抱えて苦しんでいたとしても、
いつも彼女の傍には仲間がいて、幾度ともなく凍てついた心を溶かしてくれていた。
時間が無いとわかっているのに、彼女の目の前に愛する仲間たちの顔が浮かぶ。
この歪んだ世界で誇りを貫き、散っていった命と、生き抜いた命。
その全てを守ることが、破壊神を滅ぼせなかった末裔の宿命であり、悲願だった。
覚悟はとうに決まっている。
なのに、どうしてか――――マリアの片頬を今も尚、涙が伝っている。
『取り繕うことはない――……本当は恐ろしいのだろう?』
どこからか聞こえてきた声に、マリアは静かに笑った。
不適ながらも、どこか自嘲めいた笑みを。
「そうね、本当は……今も少しだけ、怖いのかもしれない。
だけどもういいの。みんなのおかげで、全てを受け容れられたのよ。
それが、私の宿命だって」
『ならば、なぜ、お前は泣いている』
「どうしてかしら。お別れが、寂しいのかもしれない」
少女は、破壊神の前に再び立つ。
シドーが爪を振りかざす。彼女は先のように身を捻って避けようとするが、細い左腕が根元から吹き飛んだ。
同時にシドーの翼が爆ぜる。もう何度放ったかもわからないイオナズンが、
シドーに残された片翼をも、闇の中に葬り去ろうとしていた。
『なぜだ? なぜ、我に畏怖を抱きながら、そうも平然としていられる?』
「あなたを恐ろしいとは思わない。もう、憎しみさえ残っていないの。
……あなたはきっと、私の分身だから」
肩口から吹き出る血を撒き散らしながらも、マリアは呪文を展開する。
消えない炎。焼きついた惨劇。触れた亡骸の冷たさ。
すべての記憶は少女の中から、二度と消えることはないだろう。
その記憶が失われない限り、少女の中には復讐心と言う名の、深い闇が存在し続けるだろう。
少女だけではない。人は生きている限り、多かれ少なかれその心に闇を抱き続ける。
それは、紛れも無く――――彼女が相対する破壊神を成すものと、同じ存在だ。
『分身だと?』
次に発動したイオナズンは、シドーの側頭部を掠める。
迫るシドーの勢いを殺せず、巨大な爪牙がマリアの立つ足場を再び粉々に砕いた。
マリアは必死で片腕を伸ばす。
風のマントの加護もあってか、細い指が浮遊していた欠片に辛うじて引っかかる。
勢いあまったせいかバランスを崩したシドーを見据え、
マリアは、最後の詠唱を始める。
天の精霊――
歌え、断罪の聖歌――
「気付いたの。私にたった一つ残されたこの思いは、最早あなたの存在を成すものと同じだと。
あなたを死に導きたいという、ただそれだけの願い……」
少女は、笑った。真実が、あまりにも皮肉なものだったから。
憎むべき敵だと思っていた相手の根幹と全く同じものを、マリアは自分の中に宿していたのだ。
それは人の知恵や理屈では説明がつかない……純粋で、果てしない、死への希求だった。
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436 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/11(日) 16:57:08.01 ID:6p6UsdsS0
支援
掲げられし王錫の下、
王に成り代わり、我らは命ず――
「だから、決めたの……私もまた、あなたの“死導”となるわ。
そしてハーゴンの遺志を、この世から完全に葬り去る」
それは今は亡き、かつて共に闘った愛する末裔たちへの誓い。
この呪われた遊戯の中で失われた、全ての命への誓い。
そして、光を希求して闘っている勇者たちへと捧げる望み。
落ちよ――
万物を砕く、精霊の槌――
「それが、私から全てを奪ったものへの――――」
平衡を保てないまま、シドーはがむしゃらにマリアへと迫る。
爪を振り上げ、牙をむき出しにし、マリアの存在を消し去ろうとする。
だが、その全てよりも早く。
マリアは目を閉じた。
「最後の復讐よ」
そして。
シドーが、マリアの命のともし火を消すことは無かった。
同時に、最後のイオナズンが発動することもまた、無かった。
シドーが破壊をぶつけた先にもうマリアはいなかった。
既にマリアは、自分を戦場に繋いでいた脆い足場の欠片から手を離していた。
否、離したのではない。――離れたのだ。
度重なる魔法の発動によって限界を迎えたマリアの意識が途絶え、
指先に込められた力が失われたのだ。
まさに呪文を解き放たんとした、その瞬間に。
落ちる。
墜ちる。
自らを死導と言い放った少女が闇の中に墜ちていく。
風のマントが大気の抵抗を受けているせいか、ゆっくりと。
復讐に身を焦がし、そして意識を手放した亡国の王女が、深い闇の中へと消えていく。
その闇を切り裂くように、
一筋の光が走り抜けた。
「うおぉぉりゃああぁあああああああああッ!!!」
天馬が、光の速さで駆けた。
果てしない闇の中に勇者の咆哮が響き渡る。
二人の勇者を乗せた天馬は、落ち続けるマリアを追いかけた。
手綱を取るのは太陽の始祖、アリス。
そしてファルシオンがマリアの直下まで舞い降り、アリスの背に乗るもう一人の勇者は、
天に向かって両腕を広げた。
「マリアッ!!」
とさりと、人一人分の体重を感じさせない重みをもって、アレフの腕にマリアがおさまる。
彼がマリアをしっかり抱きとめたのを確認すると、アリスは手綱を素早く引いた。
目指す先は、傷付いた竜が待つ足場。
アレンはまるで祈るかのように必死に見つめていた深淵の底に彼らの姿を認めると、
未だ傷の塞がりきらない首を懸命に起こして、叫んだ。
,
「マリア!!」
「アレン、マリアは無事だ! まだ息がある!」
「ソウカ……シカシ、酷イナ、コノママデハ」
「マリア、しっかりしてください!
目を覚まして、マリア!」
三人を乗せた天馬がアレンの待つ足場に辿りつき、
すぐさま全員でマリアの安否が確認される。
だが、アレンが口にしたように――少女の状態は酷いものだった。
左腕をまるごと失った肩口からは血がとめどなく溢れ、
精神力を極限まで使い果たしたその身体は最早、露出する皮膚すべてが青白いように見える。
ただ失われていない温もりと僅かながらも上下する胸を頼りに、アリスはすぐにベホマを唱えた。
癒しの魔法に光溢れる中、くたりと垂れ下がった手を掴み、その指を絡ませて懇願する。
二人、仄暗い井戸の底から命を繋ぐことを祈っていた、あの時のように。
「手を……この手を取って、マリア、お願い!」
その大きな目から、大粒の涙が溢れた。
アレンは彼女が成した所業を知っている、そしてそれを一度認めているために、
アリスのように懇願を口にすることはできない。
だが想いは同じ、彼女が目を覚ますことを心から願っていた。
闇の鼓動が、蠢く。
アレンたちの足場からは近からぬ場所で、千切れかけた片翼を頼りに宙を舞うシドーは、
波のように静かにとどろく何かを発し始めていた。
ベホマを唱えられるかと思ったが、どうも様子が違う。
天馬からアリスとマリアを降ろし、アレフは油断無くシドーの様子に気を配りながらも、
足場に降り立ったアリスに視線を向けた。
「アリス、二人を頼む」
「アレフ!」
「俺が、決着をつける!!」
左手で天馬の手綱を掴み、右手で王者の剣を握り。
虚空へ向けて、アレフは一人駆け出していく。
エイトは生死に関わらぬところまで回復を施し、彼自身とフォズを託して残してきた。
ここにいるメンバーでベホマを使えるのはアリスだけだ。
フォズのザックからファルシオンを探し出してマリアを追いかけてきたアリスは頷き、その背を見送る。
傷付いて未だ動けぬアレンも、また。
(もう、死なせない)
力強く見据える先には、不気味なまでの脈動を放ち始めたシドー。
片翼は既になく、もう片方も千切れかけている。それを成したマリアの姿に、ただ胸が痛み、憤りが湧く。
なぜ一人で行こうとした。
なぜ一人で、行かせてしまった。
仲間が死に急ぐことを許せぬ思いが、既に失った仲間への怒りと哀しみが、アレフの剣を握る手に力を込めさせた。
相手がどんな強敵であっても、アレフはそれを認めない。
もう誰も、犠牲にはさせない。
(俺はみんなと、生きてこの戦いに勝つんだ――!!)
決死の眼差しでアレフの背を見送って、そしてアリスは腕の中の少女に、再びベホマを唱えた。
「――ねえ、マリア。
私、ちょっとだけ楽しみにしてるんですよ。
この戦いに勝って、皆が元の世界に戻って、そしたら――いつかどうにかして、マリアの元に行こうって。
そこで、国を復興したマリアと再び出会って、他愛もない話をして……」
目覚める気配の無いマリアに、アリスは微笑みかける。
涙は、留めることができないけれど、でもそこに浮かぶのは……哀愁ではなく、温かい思い。
例え生きる時代が違っても、多くのものを失ったとしても。
戦いが終わったその先を、一人ではない未来を信じる勇者の、強く優しい微笑みだった。
「あなたに、一人で戦わせてしまったことが、どうしようもなく悔しいんです。
辛いことを、なにか深い苦しみを抱えていたなら、ほんの少しでいいから誰かに話してほしかった。
あなたに犠牲になってほしいなんて、これっぽっちも思っていなかった。
私は、マリアと一緒に戦って……そして、一緒に生きていたいんです」
ベホイミで自らの傷を癒しながら、アレンはアリスの囁きを聞いている。
深い、後悔と罪悪の念を、噛み締めながら。
「だから……まだ、間に合いますよね?
私もよく暴走するけど、ついさっきもしたけど、たくさんたくさん間違えるけど……
私が一人で戦ってしまいそうになったら、あなたに引き留めてほしい。
そして、その逆もあっていいでしょう?
仲間って、そういうものじゃないですか……そうでしょう? マリア……」
アリスもまた、旅の中でたくさん間違ってきた。己が犠牲になることが正しいのだと思うときもあった。
その過ちを正してくれた愛しき仲間は、もうどこにもいない。
.
「お願いです……目を開けて、マリア……!
私はもう、誰も――誰も失いたくないんです!!」
失った仲間たちを思い浮かべたせいか、ついにアリスの涙腺が決壊する。
泣き崩れる勇者を見守っていたアレンだったが、やがてふと、もう一人の勇者が飛び立った方へと視線を向けた。
この、力は。
アレンははっと目を見開いた。
遅れてそのアレンの様子に気付いたアリスは、しかしぼろぼろに泣き崩れているせいか、
アレンが何を感じたのかがわからない。
だが、先にアリスの施しによって傷が多少なりとも塞がっているアレンは、アリスに説明する間もなく身を起こした。
名を呼ぶ少女の声に応えず、応える猶予も無く、残された力を振り絞って翼を広げて飛び立つ。
目指す先には、まるでびくりびくりと大きく痙攣しているかのようなシドーの様子に戸惑う、アレフの姿がある。
一体何が起きようと言うのか、アレフは気付けない、アレンが先に気付いた。
巨竜が破壊神とアレフの間に割って入る、同時にシドーの身体から赤い光が漏れ始める――
その見覚えのある光に、アレフがようやく何が起ころうとしているのか勘付いた。
彼の盾となることに迷いの無い、巨竜の背中で。
瞬間が、まるで永遠のように、時の歩みを遅くする。
「――――アレン、」
赤光が質量を増していく――――
破壊神が魔族の王を喰らったことによって得た、全ての魔力を何倍の威力にも高めて放出する呪文、マダンテ。
シドーの果てしない魔力によってそれが放たれれば、ここにいる者全員どころか……
この空間全てが、破壊しつくされない。
(ルビスよ……ルビスの加護よ……
ワシはもうどうなってもいい――勇者たちを、光へと導いてくれ! 頼む――!!)
自らが王だと自負して生きてきた、かつて世界の全てが己の手の中にあると疑わなかった彼は、
生まれて始めて自分ではない誰かに祈りを捧げた。
愛する人の、ために。
,
***
(何が起きているんだ……)
閃光と爆音が遠く響く、遥かなる虚空の戦場を見つめ、エイトは一人歯噛みしていた。
自身はベホマが使えるため、先の傷も完治とまではいかずとも、動ける程度には回復している。
フォズの傷も癒してある。それでも彼がここに留まるのは、ひとえに虚空へと向かう手段が無いからだった。
(くっ……力が残っているのに、戦えないなんて)
彼はつい先日、ナジミの塔でも似たような立場にて、やはり手の出せない戦いを見守っていた。
そのとき剣を交えたもののうち一人は、もうこの世にはいない。
そして魔族の王を救うべく身構えていた少女は今、慕う彼の死を知らず、未だ眠り続けていた。
(フォズさん……)
エイトは近い未来、大切な人の喪失に嘆くのであろう、この少女に思いを馳せて胸を痛めた。
もしかしたら今は目覚めなくていいのかもしれない、とも思う。
ただでさえ絶望の漂うこの空間で、傍にいることを誓った人を失った事実を知るのは、あまりにも残酷な気がした。
その気遣いが正しいのかどうかわからない、だが彼はその思いゆえに、
無理にフォズを起こそうとはしないのであった。しかしそれもまた歯がゆいものだ。
わかっている。何が起こるか知れぬこの戦場で、自分はこの少女を守るためにここに留まった。
それは意味の無いことではない、だけど…………
葛藤に頭を痛めるエイトはふと、フォズに寄り添うようにして置かれた杖に目をやった。
回収したアレンのザックと共に置いてあるそれは、神鳥の杖。
つい先ほど闇の衣にとらわれた魂を導いた奇跡、その媒体に用いられたもの。
そして遠い昔には、エイトの世界を暗黒神が支配しようとしたその時、祈りを捧げた杖でもある。
あの杖を作らせたという神鳥がここにいたら、もう一度その背に乗れたら、自分も戦えるのに――
思うだけではどうにもならないとわかっていても、彼はついかがんでその杖に手を伸ばした。
彼の世界で賢者の子孫の血を吸ってもいるその杖を、つつくように触れ、
そして持ち上げようと顔を上げ……
エイトはぎょっとする。
フォズが、立ち上がっていた。
いつの間に起きたのか、けれども眼差しは未だ夢見るように。
その平らな胸元にルビスの守りをさげ、何故だろう、両の目から涙を零して、
フォズはそこに立っていた。
「あの人が――あの人の声が、聞こえる」
「フォズさん……?」
「怒っている――力を使うなと――こんなことのために、命を投げたのではないと」
「フォズさんッ!」
夢うつつを彷徨うフォズの言葉に、エイトが焦って小さな肩を揺らすが、
フォズは尚も虚空を見つめ、天に小さな腕を伸ばし、涙を流しながら叫んだ。
「聞いて、ください……聞き届けてください……!
この声が聞こえているのなら……お願いします、どうかあの人の力で、全てを滅ぼさせないでください!」
長い銀髪を揺らして、『あの人』はフォズに微笑んでくれた。
あるかなしかの、それこそ注意せねば笑っていると気付けぬようなものだったけれど。
もう永遠に失われてしまった、だがフォズの胸の中で生きるその淡い笑顔を、フォズは失いたくなかった。
だから、叫んだ。
闇の中、夢を見ながら、かつて彼女に語りかけたその存在に。
「――――ルビス様ッ!!」
赤い光が闇の空間にひびを入れる中、二つの強い祈りが、一つの声となって発される。
その狭間で、菫色の髪の少女のまぶたが、ピクリと動いた。
(……ルビス様)
太陽のような始祖の少女が、彼女に向かって必死で呼びかけたその叫びを、胸の中で反芻する。
放棄しようとした加護の名を、思う。
(私の中にも……アリスのような光は、あったのでしょうか……?)
何故だろう、一人闇の中に消えていくはずだったのに。
胸のうちがいつの間にか、暖かなもので満たされていく。
嘘みたいに心地良い。そして永いこと忘れていたように懐かしかった。
(……私は――)
独白を肯定するように、暖かな白光がマリアを包む。
もう一度彼女は望む。憎き闇の神官でなく、自らの命を、望む。
きっと誰もがその身のうちに、闇を抱えて生きている。
それは生きている上で、常に他人の前にあらわにするものではないけれど……
例えば何かが切欠で……例えば、この殺し合いの遊戯がそうであったように……
時に歪みとなって姿を現し、あるいは人々を疑心暗鬼に陥れ、あるいは罪を犯させる。
けれどそれはきっと、彼らが本当に望むものではなかった。
人々が苦悩し、時に闇に堕ちても、もがいていたのは、
本当に欲しいものが、望んでいたものがあったから。
そう、きっと……
闇の中にあっても変わらず、恐らくほとんどの者が求めていたであろうもの、それは……
生きたいと願う、幸せになりたいと願う……
楽しく笑っていたい、全力で闘いたい、身を粉にして働きたい、夢を叶えたい……
誰かのそばにいたい、誰かに受け入れられたい、愛されたい、
誰かを、何かを愛したい……
そんな些細で、けれどなにより大きな、強い祈りを持っている、
いきとしいけるものすべての、 “命” ――――
.
光が、弾けた。
フォズの胸に下がっている守りから、巨大な光の弾が飛び出したのだ。
それは闇を断ち割り、虚空を駆け、今まさに放たれんとしていた、マダンテの赤い輝きに対抗するように……
立ちふさがっていたアレンの身体に宿り、驚愕するアレフの前で、彼は巨大な光の竜と化した。
異なる色の光はぶつかり合い、やがて均衡を崩し――白い光がシドーを押しやる。
そしてその空間にいる者全てをも……否、空間すらも呑み込んで。
聖なる光は太陽のようにぐんぐん輝きを強め、果てのないと思われていた闇を、
その全てを貫いていく――――
最早足場の存在など関係ない。
光溢れる空間に、戦士たちと破壊神は降り立っていた。
困惑する彼らの胸に染みとおるような、凛とした声が、響きわたる。
“ようやく届きました”
何が起きているのか。
必死で把握しようと辺りを見回す彼らの中で、唯一その身を横たえていた少女が。
ふらつきながらもゆっくりと立ち上がり、そしてより強い光の方向を見上げた。
「ルビス様……ルビス様なのですか?」
「マリア――!?」
唐突に起き上がった彼女に、抱きかかえていたアリスは驚きを隠せない。
だが、次の瞬間、みるみるとその目からまた涙が溢れ出した。
感極まって首から抱きついてくるアリスに、はにかむような曖昧な笑みを浮かべて、
マリアはその腕に自らのほっそりとした右手を重ねる。
“愛し子たちよ、今もあなたたちが、人々の命の輝きを信じるなら……
どうか祈りを捧げてください。彼らの最後の願いを……”
その言葉と共にふわりと浮き上がり、彼らの中心に掲げられるのは――
エイトが手にしていた、神鳥の杖。
先にフォズが、参加者たちの命を導き、宿したもの……
アリスは、マリアは、エイトは、フォズは、
ファルシオンを降りたアレフは、そして竜化の解けたアレンは、その杖を見上げる。
そこに宿っているのであろう、かつて彼らが邂逅した、全ての命を想う。
やがて、一人、また一人と両腕を上げ。
全員がその杖に向けて高々と手を掲げて、祈りを捧げた。
理不尽に失われた彼らの願いが、解き放たれるように――――
,
神鳥の杖は、先端から砂と化していき、
ゆっくりと光に溶けて消える。
“アリス”
唐突に聞こえてきた声に、アリスは目を瞠った。
それは閉ざされた世界において、遂に会うことの叶わなかった人の声だった。
“しっかりなさいね――あなたが、リーダーなんだから”
“ん、まああたしは、信じているさね。あんたは必ずやり遂げる、ってさ”
「フィオ……、サマンサ……!」
アリスの両隣を、人影が横切った気がした。
振り返ってみればそれは確かに気のせいで、けれど魂の輝きは確かに、アリスの声を呼んでいたのだ。
彼女たちだけではない、出会い、手を取り合い、時には剣を向け合った、失われたはずの命たちが……
戦士たちに、次々に呼びかける。
“また泣いてたのか、マリア? 相変わらずだなぁ”
“お兄ちゃんのばか! マリアお姉ちゃんはいっしょうけんめい、戦ってくれてたのよ”
“はいはい、わかってるって”
「ふふ……ありがとう、リアちゃん。そうね、私はずっと……私のままだわ……」
それでいいんだ、と。
気さくな少年は明るく笑って、マリアの肩を叩いてくれる。
見えるわけでも、本当に触れているわけでもない。でもマリアにはそれがわかる、確かに伝わっている。
“こりゃ、エイト!!”
“ハイハイおっさん、そこまでな”
“まだ何も言っとらんわ!!”
“大体元はと言えばトロデ王が原因でしょう、そう怒らないの”
飛び出してくるなり怒られて、それをたしなめる仲間の声が聞こえて、
エイトは涙を滲ませながらも思わず笑ってしまった。
怒られた理由はもちろんわかっている。もう、あんな風に情けない姿は晒さないと決めていた。
「……生きて、必ずトロデーンに帰ります。父さん」
――当たり前じゃ、ばかもの。
返ってきた声はもちろん怒っていたが……どこか湿っぽく、そしてとても、暖かかった。
“……ね。届いただろ?”
優しく、どこか得意げな声色で笑っている気がする。何度も夢に見た、もう一度会いたかった人。
フォズの涙が止まらない。
“よく、頑張ったね”
“そうね。今回ばかりはまあ、認めてあげるわよ”
声を出すことも、顔を上げることすら叶わず、ただ聞こえていることを伝えたくて必死に頷く――
その小さな頭を、懐かしい手のひらが撫でていく。
“アレフ様……”
悼みにはもう、揺らがない。
愛する彼女の存在は、アレフの中で今もなお、生き続けているから。
それを伝えたくて、アレフはその魂に向かって、時折鼻をすすりながらも精一杯の笑顔を向けた。
光の姫もまた、その愛を伝えるべく、アレフに向かって最大の笑みを送り届ける……
それは決して気のせいではなく、確かな魂の触れあいが、そこにはあった。
“……ありがとう、竜王”
「馬鹿者め……ワシとの勝負を、投げ出しおってからに……」
ルビスの加護があったとはいえ、あのマダンテとぶつかりあった直後だ。
彼は祈りを捧げた後、立ち続けるのが辛いのか、膝をついていた。
その横に同じく座り込むような気配に顔をしかめ、精一杯の悪態をついてみせる。
それは紛れも無い、ただの強がりだったけれど――或いは心配するなと、言いたかったのかもしれない。
「ふん。何が、ありがとうじゃ。
おぬしのせいで、散々な目に遭わされたわ……この、大馬鹿者が……」
どことなく言葉尻の湿った声に、末裔の少年は困ったような笑みを浮かべ、首を傾げた。
彼らの横を通り過ぎていく命たちはやがて、彼らの足下に集束していく。
同時に、空間全体を満たしていた光が、徐々に薄れていった。
そして戦士たちは、またも目を瞬かせる。
彼らを包んでいた景色、目を向けて真っ先に視界に飛び込んでくるのは、果ての無い夜空だ。
否――夜空、ではない。
その存在を知る者が彼らの中にいたのかどうか、そこは世界を飛び出した、空の先――宇宙。
だが、果ての無いそこにただ放り出されているわけではない。
彼らを取り囲むようにして、幾層にも広がる景色がある。
歪み、連ね、重なっているそれは、それぞれが見覚えのある――――
「アレフガルド!?」
「あれは、ダーマ神殿……」
「トロデーン城もあります……1,2,3……全部で、8つ……?」
そう。
彼らを囲っているのは、歪められ無理やり接点を作られた、時代も次元も異なる8つの世界。
バトル・ロワイヤルの参加者が呼び出される前に、元いた全ての世界だった。
「どういう、ことだ……?」
『愛し子たちよ……。よくここまで、闇を打ち破ってくれました。
闇が、シドーによる呪いが失われるまで、あと少し……
ひとつの世界を束ねる者として、どうかお願いします。
この闇を完全に打ち破り、そして全ての世界を――元通りに――』
ルビスの声が、途絶えていく。
彼らの足元を覆っていた命の輝きは、やがて強固な、ダイアモンドを平らにしたような広い足場と化した。
それぞれが目を瞠る。このフィールドはなんて美しく、なんて、温かいのだろう……
傷だらけだった彼らの身体が、少しずつだが、癒されていく気がした。
それは彼らの祈りによって解き放たれた命たちが、戦士たちと共に戦うことを望んで生まれたもの。
不本意な結果に終わった命がたくさんあった。だけど本当は、そんな命たちも願っていたのだ。
仲間と共に悪へと対峙し、そして共に戦いたかった、と。
今、そんな失われた願いはここに集まり、彼らを守るひとつの大地となったのだ。
理不尽にかき消されてしまった願いが、ここに叶えられたのだ。
その事実に気付き、彼らの魂を闇の衣から導いたフォズが、更に胸を熱くして涙を零す。
そんな少女を、ひんやりと涼しい風が撫ぜた。
鋭利な、でもどこか優しいその風に――――
フォズは、はっと顔を上げる。
“やはり、な”
苦笑したような気配を感じた。
笑顔など、生前でさえほとんど見せなかったのに、フォズの胸には鮮明にそれが描き出される。
声はひどく淡々としていて短かったけれど、確かに少女の耳に届いた。
“……泣くな”
「ピ――!!」
声のした方向を振り向いた。
だが、当然そこには誰もいない、特に何も見つからない。
シドーの中でもがいていた彼の魂もまた、ルビスの加護によって解き放たれたのだろうか。
わからない。だが、フォズは慌てて涙で真っ赤になった目を拭う。
泣いているだけでは、何も出来ない。
己の意思を貫き通すために、戦う。
それは紛れも無く、フォズが傍にいると誓ったあの魔族の王が、彼女に遺した勇気だった。
全ての気配が、失われていく。
ルビスの存在も、揺らめく魂たちも、何もかもが感じ取れなくなっていく。
残されたのは、歪められた世界と、戦士たちと共に闘うフィールドと、気力の充実した戦士たち。
そして。
『ル、ビス……ルビスゥゥウウウウウウ!!!!』
片翼をもがれ、もう片方も千切れかけ。
己を取り囲むもの全てへの憎しみをあらわにする、叫ぶ破壊神の姿だけだった。
だが、こんなに傷付いているのに、こんなにも隙があっただろうに――――
シドーが、ベホマを使わない。
使えないのだ。
たった今、無限とも思えたほどの魔力を全て破壊に変えて、放出してしまったから。
光溢れるフィールドにおいて、闇は先ほどまでの何十分の一にも縮小してしまったように思える。
この数日間、たったの数日間、だけど永遠のようだった数日間で、生きていた全ての命が、求めてやまなかったもの。
生きる希望。明日への光。
それが、すぐそこにある。
確実に、彼らの手の届く場所にまで、近づいている。
「……アリス」
そのときアレンが、掠れた声で呼びかける。
振り返ると、アレンはぐったりとその身をフィールドに横たえていた。
驚く仲間たちに、案ずるな、と笑ってみせる。
「すまぬが、ワシは……先のマダンテを防いだせいか、しばらく動けそうも無い」
「そんな――どこか、怪我を……!?」
「いや、そうじゃない……。このフィールドで少し休めば、また闘えるだろう。
先に行っていてくれ」
「……わかりました。どうか、無理はなさらないで」
未だ心配そうな彼らに不適な笑みを返して、アレンは静かに瞼を閉じる。
それを見届け、やがてアリスが、ぐるりと周囲を見据えた。
彼女を中心に立つ、闘志に燃える仲間たちの目を、一人ひとり見つめていく。
「――エイトさん」
「結局僕は、誰かに奮い立たせてもらってばかりですね。
……こんな僕でも、元の世界で待っていてくれる人がいると、思い出しました」
「――フォズさん」
「泣いてばかりいて、ごめんなさい。もう大丈夫です。わたしも、いっしょに闘えます!」
「――マリア」
「アリス……本当に、ありがとう。心配かけてごめんなさい。
きっといつか、私もあなたに会いに行くわ……必ず、勝ちましょう」
「――アレフ」
「ご先祖……いや、アリス」
かつて世界を救った伝説は、闇の中に失われようとしていた。
だが、彼らの中には確信がある。
人々に希望を与えたあの伝説を、取り戻せる――――そんな確信が、勇者たちの中に生まれていた。
「作戦を」
促すアレフに、返すリーダーは頷き一つ。
ここへ来て、皆に告げるべき最後の作戦はもう、決まっている。
「――――――――『いのちだいじに』!」
誰も死なない、死なせない。
全員が必ず生きて、勝利する。彼らの未来を手にする。
皆は正しくその意図を読み取り、そして各々に笑みを浮かべ、頷いた。
『応!!!!』
掛け声が唱和される。
これから、再び死闘へ向かうというのに。
視線を合わせ、頷き合う5人のどの顔にも、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。
そこには、未来への希望があったから。
誰もが明日を勝ち取ると、最早信じて疑わなかった。
そして、アレフは振り返る。
己の身を犠牲にし、アレフたちの命を守ろうとした、ただ一匹の竜アレンを、アレフは振り返る。
身を横たえているアレンがその気配に気付き、勇者を見返す。その光を湛えたまなざしを、見つめ返す。
アレフは気づけなかった。
元よりピサロが、この戦場を己の墓場と定めていたことに。
そもそも魔に位置するピサロと人間の勇者たるアレフの立場が違いすぎることを、
その死に伴った覚悟などアレフには想像も及ばないであろうことを、彼はおそらく理解できない。
だから憤った。ピサロとマリアが選択したときも、ピサロが一人先に逝ったことも、彼は決して許さなかった。
この先も決して、許すことは無いだろう。
同じく魔に位置し、例え破壊神を倒せたとしても帰る場所のないアレンが、
ピサロと似たような覚悟でこの闘いに臨んでいたこともきっと、理解しえないだろう。
己の未来を見ず、ただ、信じてもいいと思えた若者たちに、全てを託す覚悟など。
愛する仲間が生きること、その未来を、信じている彼だから。
だから、言うのだ。
「この闘いが終わったら、俺の国に来いよ」
「…………何だと?」
アレンは、耳を疑った。
あからさまに顔をしかめた相手に苦笑し、アレフは肩を竦めてみせる。
「つってもそんなもん、まだ無いけどな。帰ったらきっと、また旅に出て、自分の力で立派な国を興してみせるからさ。
だから、そしたら……俺んとこに来いよ」
「ワシに、家臣になれと? 冗談を言っているのか」
「あぁそういうことになるのか……まあ、それはどっちでもいいや。
俺は、本気だよ。絶対に成し遂げてみせる。見てろ」
そして、勇者は身を翻す。勝利を、明日への希望をその手に掴むために。
アレンはその背を――遠ざかる、未来へと向かう若者たちの背を、眩しく見つめていた。
いつまでも、見つめていた。
「アレフの国に、か」
ふっと、馬鹿にしたような笑みが漏れる。
竜の姿は論外、この人型の姿でさえ人間には程遠い自分が、人間の国で暮らしていけるはずないだろうと。
どこまで愚直ならば気が済むのかと、呆れ果てる思いだった。
だが決して――不快な感覚ではない。
視界が霞んでいく。
指先、足先、身体の末端の一つ一つから、熱が失われ、感覚が消えていく。
ルビスの加護を受けたとはいえ、無限とも思えるシドーの魔力が何倍にも高められた、
そのエネルギーとぶつかり合ったのだ。
到底生き延びられるはずがないと、わかっていた。
(アレン……ワシからも、礼を言わせてもらおうか)
目を閉じる。
彼が力を貸した、力を合わせた、力をくれた者たちの顔が浮かぶ。
この世界のはじまりに己に名をくれた者。
人間味に溢れたあたたかな心を持つ武器商人。
恋焦がれた光の姫。
その姫によく似た面影を持つ末裔の娘。
そして、勇者。
魔に生ける者の最大最後の敵であり、唯一無二の恋敵であり、
――そしてかけがえのない仲間であり、ただ一人の友人であった、呆れるほどに愚直な男。
(ワシは人間を、愛している)
孤高であり、孤独であった竜王は、
王の名を捨て、ただ一匹の竜になり、
人と関わり、失い、悩み、苦しみ、
そして孤独を手放して、途方も無い愛を得た。
(愛している……)
―――――――――――――どうか、彼らに勝利を。
それが、ただ一匹の竜が呟いた、生涯二度目の祈りだった。
【竜王(アレン)@DQ1 死亡】
【残り5名】
【???/歪められた世界/ゲーム終了後?時間経過】
【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP3/10 MP7/10 全身に中度の火傷 無数の打撲、擦過傷 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
天馬の手綱(ファルシオン)
[思考]:生きてシドーに勝利する もう誰も死なせない
【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP1/5 MP5/10 身体に絞跡 全身に重度の打撲傷 軽度の火傷 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン
祈りの指輪(あと1.2回で破損) ビッグボウガン キラーマシンの矢×17
[思考]:生きてシドーに勝利する 仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP3/5 MP4/10 全身に重度の打撲 軽度の火傷 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム
84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
さざなみの剣 首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球
[思考]:生きてシドーに勝利する 悲しみを乗り越え、戦う決意
【フォズ@DQ7】
[状態]:HP4/5(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP9/10 首輪なし
[装備]:天罰の杖 神秘のビキニ(ローブの下)
[道具]:支給品一式 アルスのトカゲ(レオン) 引き寄せの杖[0]
祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り あぶないビスチェ 脱いだ下着
太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡
ルビスの守り(紋章完成)
[思考]:生きてシドーに勝利する 泣かない
※神鳥の杖は消え去りました。
.
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP1/5 MP1/10 全身に軽度の打撲 擦過傷など 左腕なし(肩口は止血)
呪文の行使による精神的疲労 首輪なし
[装備]:いかずちの杖 布の服 風のマント
[道具]:小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖 インテリ眼鏡
[思考]:生きてシドーに勝利する
【破壊神シドー(真)@DQ2】
[状態]:HP1/2 MP0 翼は片方のみ(もう片方も千切れそう) 辛うじて飛行可能
[思考]:全てを破壊する
※ピサロのザックは消滅しました。
※フィールドの効果により、人間5人は毎ターンHPが微量回復します。
詳しい回復量についてはお任せします。
※回復呪文の制限(効力1/10)、及び使用禁止呪文については完全には解除されていません。
制限が軽くなったか否か、どの程度軽減されるかなどは、お任せします。
投下終了です
2時間に渡る長丁場となってしまいましたが、
最後まで支援してくださって、本当にありがとうございました
(体調の方は完全に自業自得です。ご心配おかけしてすみません
ご意見ご感想お待ちしております
竜王、竜王、竜王ーーーー!!!
泣かないフォズの代わりに私が泣いてます、いま頭まっ白です
うわああああ!!。・゚・(ノД`)・゚・。
勝ってくれ……あとはもうそれだけです!
職人さん乙、そしてGJです!
感動させられるなあ…魂の声が聞こえてきたあたり、うるっとしてました
うがああ! ぬあああ! うおおおお! うわあああん!
ピサロがフォズの中で微笑んだあたりから泣いた!
魂たちとの会話で泣いた
フィールドの演出はRPG的でいいなー
巨大なシドーと対峙する勇者達を包むように光が溢れて光景が禍々しいものから一変するのを幻視した
そして竜王が、アレンが、ただ一匹じゃなくなった竜があああ
アレンとしての始まりの言葉である あなたは人間を愛した への答えな ワシは人間を、愛している が堪らない
投下乙でした!
うおお、まさに集大成…!
読ませてくれてありがとうとしか言えねえ
目離した間に投下来てたか
支援出来ず申し訳ない
んで見た瞬間、まずボリュームに驚いたw
これを一週間で書き上げたのか…
ピサロのマダンテも効かず、逆に死体喰ったシドーがパワーアップしたときはもうダメかと思った
でも結果的にはそれでシドーの魔力が空になって、勝機が見えてきたと
ピサロの死を無駄にしない素晴らしい展開だ
478 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/11(日) 21:04:08.09 ID:yDrgqLEiO
まじ泣いた泣いた泣けた
職人様大作乙です
読み返してまた泣きます
あああやばいこれ何これ乙!
マリアと竜王の絆が強いよ
マリア…救われて良かったな…もう一度自分の命を望んだってところでジンときた…
顔も上げれずただただ頷くフォズが愛しすぎる
思わず笑顔になったエイトがなんか想像できて笑ってしまった
いのちだいじにがこんな力強い言葉だったとは
アレンの最期については…もうね…心安らかに眠ってくれと言いたい…
丁寧に描かれたとても良い話をありがとう
改めて乙です
いいよなあ、この いのちをだいじに
これまでガンガンいこうぜとかの作戦がここぞという時の号令として使われて来たけど
この話の内容や、それまでのこと、ロワであることも合わせて、すごく響く言葉だ
状態表のフォズの泣かないがいいなあ
序盤の放送で泣かないピサロの代わりに泣くんだって話もあったよね
終盤は泣いてるだけじゃ何にもならないって自分に言い聞かせてさ
良かったよフォズ…ここまでよく頑張ってきたな
482 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/16(金) 12:04:20.44 ID:y9fAJSPr0
気絶してるマリアに悪戯したい
俺のマリアがカタワになってもうた
もうすぐ終わるし、最初から読み返そうかなとか思ったら
まとめサイト全部落ちてるのかw
何というアホな見落としをw
テンプレはきちんと読むべきだな。正直すまんかった。
コミック劇場にイラスト投下してきました。
少しでもスレの支援になれば嬉しいです。
>>486 すまんね、毎回みんな次スレ立てるあたりになると修正あるの忘れてんのよw
支援絵見てきた!絵師さんマジGJ!!
490 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/09/23(金) 20:41:20.13 ID:n7+uaFeZI
で
読み返していて気付いたが、アリスの出てない仲間でデイジーとスピルという名前があったが
デイジーはともかく、スピルは商人だろうか。○○バーグ的な意味で。
493 :
忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/10/06(木) 20:28:13.58 ID:AdzLnQ+eO
はい
はあ
495 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/11(火) 21:20:27.36 ID:sNO/Tx360
楽しい
496 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/13(木) 19:15:26.73 ID:+knVR70U0
しし
497 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/17(月) 19:53:14.47 ID:5iiIKp6p0
か
ミラクルソード!
499 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/23(日) 16:39:07.90 ID:v9USse070
ほし
500 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/23(日) 18:51:06.90 ID:UzNIw5zjO
三都主アレサンドロ
全員予約します。
ここ数ヶ月の投下ラッシュもあり、このロワの終わりも見えてきましたね。
これも書き手の方々のお陰です、ありがたい話です。
最終話になるかもしれませんが、ご容赦を。
予約延長にならないよう頑張って書きます。
予約来たか、って最終話だと?
これは顔を長くして待たざるを得ないなw
うわああ!?
頑張れ、全力で待ってる!!
予約ktkr
頑張って下さい!!
>>502 首?
没ネタスレに投下があったぞーい。
読みながらwktkして待ってる。
>>504このスレでは日常茶飯事よ
毎日スレをチェックしながら今か今かと待っていました
楽しみすぎてヤバいww書き手さん頑張って!
おおお・・・ついにというか、もうというか
あなたは常に私の1歩、いや数歩先を行く。けれどそこに憧れる
よろしくお願いします!
うおお、がんばれ!ちょうがんばれ!
509 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/10/30(日) 15:44:51.24 ID:/XaYmOY70
きたああああああ
予約来たか、楽しみだ
ついに最終話来るか!?
楽しみすぎるw
明日21時に投下を予定します。
手がお空きの方がいらっしゃれば、ご支援のほどお願いいたします。
おそらく最後の戦闘シーン・所謂ラスボスとなるかと思います。
了解です。待ってます
…そういえば予約期間って元々3日だったか…
てっきり週末にくるものだと思って油断してた…
すっかり一週間だと思ってたわw
支援にはちょっと行けそうにないが、こんなに早く読めるなんて嬉しいな
明日が待ち遠しい
515 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/01(火) 18:57:05.45 ID:ZAizsOAhO
期待
期待!
支援待機
ぼちぼち投下いたします。
ご支援、どうかよろしくお願いします。
一歩、一歩。
希望という名の光の大地を踏みしめて。
破壊の神への道を、駆け抜ける。
足元から感じる力は、とても心地良く、あたたかい。
しかし向かう先に控えるのは荒ぶる神。
その道のりは、どんな旅路よりも遠く、険しい。
だが、今。
勇者達は精霊の手を借り、剣を以て血路を開く。
待ち受けるは、狂おしき邪神。
地へ堕ち、血に塗れ、そして狂乱せしその姿。
神の威は確かに、衰えた。
"何故、もがき、生きるのかなどと"
だが、そこに残るのは破壊への渇望。
破壊の化身とも呼べる神が求めるのは、ただ、ひとつ。
最早絶望を与える必要は無い。
"問わぬ"
破壊の運命を拒む愚者の生命。
それを真っ向から否定し、破壊する。
得た我は忘れた。
学んだ感情は擲った。
ただ一つ変わらぬのは、どこか矜持にも似た存在理由。
"唯、総てを死へと導かん"
そう、何もかも壊せ、何もかもを殺せ。
破壊と死を司る神としての本能のまま、終焉を与えよう。
その胸の内。
そこに、もはや理知など微塵もありはしない。
虚ろな闇が広がるだけだった。
そう、ひどく虚ろ。
─かわく
そして、永遠に満たされることは無い。
『ル……ビッ……ッッ……グ……ギャアアアァァッ!!』
五人は剣を、杖を取り立ち向かう。
破壊神は折れた翼に最早頼ろうとしていない。
どす黒さを秘めた紅い双眸の焦点は、既に何処かに消えていた。
底なしの血溜まりのようなその不気味な瞳から、微かに血が溢れている。
狙いも定めぬまま突進する不気味な巨躯に、先陣を切るエイトが剣を構えた。
"運命の狭間に転げだされし竜の子よ"
破壊神の口は醜悪な雄叫びをあげているだけだ。
だというのに、落ち着いた様子の声が彼ら一行の頭に直接響く。
精霊神に殺意を向けていた先ほどまでとは、明らかに様子の違う声だった。
"そなたは禁忌の下に生まれた望まれぬ生命。
そなたを思う者も、既に潰えた。
ならば此処にて希望という夢幻を抱えたまま滅ぼうぞ"
破壊神は囁いている。
自分の居場所は奪い尽くされた。
故に、永久の安穏が待つ『死』を乞えと。
「……本当に僕が望まれない存在だとしたら……
お前が言うとおり僕には死という選択しか無かったのかもしれない」
破壊神がこの声を聞くかどうか定かで無い。
だがエイトは返答と共に竜神王の剣を振りかざした。
蛮刀より尚鋭い破壊神の爪が、宝剣と火花を散らす。
巨大な質量に圧倒されるも、エイトは全力で圧し返した。
「でも僕は、生きている。どうしようもないくらい悔しいけれども、僕はまだ生きているんだ」
体重を載せ、限界まで力をためた脚で、大地を蹴った。
凄まじい跳躍とともに、剣を振り切る。
昇竜の如く剣気は太い豪腕を引き裂き、どす黒い血を撒き散らせた。
続けざま跳躍したエイトの一振りが、鋼をも断つ一閃を破壊神の胸に叩きつける。
破壊神との問答を続けながらも、彼の動きは軽やかだった。
「……僕を、支えてくれた人がいたから。そして……僕を愛してくれた人がいたから」
足元からの温かみは、彼に真の力を取り戻させる。
ククールが、ゼシカが、トロデ王が背中を後押ししてくれているようにすら、感じた。
剣を腰溜めに構え、切っ先を突きつける。
秘められた竜神王の力、天雷が剣の内を駆け巡る。
蒼雷を纏った剣が、まるで自分の身体のように脈動した。
不思議なことに、彼は知らぬはずの父と母の遠い記憶を感じていた。
竜神王の剣を握るほどに、より一層強く。
エイトの鍛えられた脚が、爆発的な加速を生み出す。
光の大地を踏みしめて、を黒い風のように、走る、直走る。
そして勢いのまま跳躍し、破壊神の眼前まで躍り出た。
醜い叫びにかき消されそうな小さな呟きは、なぜか一行の耳に消されることなく届く。
『ガ、グガ……グギャアアアァァアッ!!!』
「そして僕は、僕の愛した人達がいた世界で─」
昂ぶったままのその刃は、左胸目掛けて差し込まれた。
本来槍で放つ必殺の突きを、そのまま得物を剣に転じて放ったのだ。
突きと共に激しい発光と雷鳴を残し、エイトは破壊神の背中側に着地する。
焼け焦げた臭いと薄い煙が散れば、そこに破壊神の腕は無い。
エイトの放った渾身の突きは胸を貫くばかりか、雷の魔力がさらに広範囲を抉り、破壊神の腕を肩ごと吹き飛ばしたのだ。
研ぎ澄まされた一撃、まさに『雷光』。
その名を宿すに相応しい突きだった。
「─生きて、僕は……人を愛したい。約束を、果たすために」
そう、二人の父がそうしたように生きていく。
それが、エイトの望んだ未来だった。
***
『ギッ……!ギャオォォォォオッ!!!』
腕を三本にされた破壊神が頭を振って怒りを顕にする。
背後のエイトに、振り向きざま放たれたのは幾つもの凝縮された破壊の焔。
小さな煉獄を丸めたかのような弾丸の嵐を、エイトは防ごうと身構える。
「なら、その時は……」
風が吹く。
あたたかな、それでいて毅き風。
気づけば炎の多くは風で逸れ、消しとばされている。
潜りぬけ、尚降り注ぐ熱塊ですら、伝説の盾を前に無力と化した。
「目一杯の祝福をさせてくれよ」
戦意を高めた表情のまま、彼は不敵に告げる。
こういうところがまた彼らしい。
逞しい勇者の背中を見ながらエイトは微笑んだ。
「……ありがとうございます」
大凡、邪神を前にして口にするものではない会話を、二人は終えて向き直る。
振り返り様に、その巨体の姿勢を低くして突進を試みてきた。
そんな最中、エイトに向けられた物と同じ囁きがまた、空間を支配する。
"戦いの運命を強いられし、勇者の血を引くものよ。
愛しき姫は、そなたがかつて救った人間の手によって奪われたのだ。
ならば勇者の使命など捨て、怒りと悲しみのまま死を、破壊を望もうぞ"
破壊神は囁いている。
自分は今、誰の為、何の為生きるのかを見失った存在だ。
ならば共に全てを呪うのもいいだろう、と。
「確かにな。俺は今、誰のため、何のために勇者であろうとしているのか……」
それは、その問いに答えているのではないような声。
まるで皆に語りかけているかのように朗らかな声で、アレフは答えを出していく。
「頭の悪そうな神様に説明できるほど、俺は弁が立つほうじゃない」
生命を刈り取らんばかりの突進は、さながら死神の鎌のように見えた。
その場に留まっていては危険と判断して、エイトは身を翻して回避する。
しかしアレフは動かない。
迫る破壊神をじっと見据え、待ち受けていた。
「だが、俺は願われてしまった、望まれてしまった。この世で一番大切な人に……」
輝く太陽に捧げるように、伝説の剣を頭上に掲げる。
不思議と、疲れは感じない。
握ったその手から、まるで脈々と力を注ぎ込まれているような錯覚すら感じる。
「─勇者で居てくれ、と」
手に力が篭り、迫る神の姿を確りと見据えた。
『グギャァアアーーーーーーッ!!』
破壊神の巨体が、アレフと交錯する。
誰もが、彼の身体が轢き潰される想像をするだろう。
だが、此処に立つ皆はそうは思っていない。
彼が勝利するという『確信』があった。
─そう望んだまま逝った、彼女のように。
刹那、風無き世界に、嵐が生まれた。
アレフが力の限り剣を振り下ろすと共に、空気がかき混ぜられ、爆散する。
破壊神の全身を、空気が殴打して押し返していく。
剣に秘められた力を嵐として開放し、衝突させたのだ。
鈍く輝いた鱗は、爆ぜるように弾け散る。
悪魔のような角は、枯れた小枝のように傷つき折れ飛んだ。
やがて皮は千切れ、肉が裂け、血が風に乗って舞い、破壊神の存在を削り取っていく。
『グッ、アギィ、ギャァ……』
巨体は徐々に浮かび、足が大地からわずかに離れる。
嵐は強まり続けて、破壊神の身体の重さをまるで感じさせないように、ふわりと吹き飛ばされた。
それはまるで、この世の総てをそのまま風化させてしまいそうな、破壊の風だった。
ずたずたに引き裂かれた破壊神の巨躯は神々しく光る大地に強く叩きつけられ、ぶるりと震える。
「俺は、その想いに生きて応え続けるだけさ。ずっと、な」
そう、宿敵が、愛する人が望んだように生きる。
それが、アレフの望んだ未来だった。
***
倒れ、天を仰いだ破壊神の呼気が震える。
傷だらけのその身体は、動かす度にどす黒い血液を撒き散らしていく。
落ちゆくそれは、足元の光を穢すことなく、宙に掻き消える。
死を運ぶ神は、極めて気怠げに、重たそうに立ち上がった。
『ゴガァッ……ギャァ……』
荒い息はやがて大きく吸い込まれた。
肺は膨れ上がり、胸部を大きく押し上げる。
吐き出されるのは単なる呼気などに留まらない。
ここにいる全員がそれを確信していた。
邪気に満ちたブレスが、目の前のアレフに吹きつけられる、その瞬間。
「イオナズン!!」
灼光が炸裂し、破壊神の背後が爆発した。
駆けたシルエットが光に照らしだされ、アレフは眼を一瞬見開いた。
服の裾をはためかせ、進みでたの呪文の主はマリア。
片腕を失い、傷を負いながらもその瞳はまっすぐと破壊神を見据えたままだ。
イオナズンの威力は凄まじく、巨体が宙に舞い、再び倒れ伏す結果になる。
千切れかかった翼ももはや焼き潰され、高熱で縮上がっていた。
炭化した肉体を背負い神は藻掻く。
だが声は、届くのだ。
本当にそれは、破壊神の投げかける言の葉なのだろうか。
疑わしいほどに、淀みない声が届く。
"怨憎に囚われし亡国の姫よ。
その感情すら失い、虚ろなる抜殻として生きるのは余りに辛い。
ならば我は今一度、お前に破壊という導を与えてやろうぞ"
破壊神─か、どうかもわからない。
だが、囁いている。
自分は帰る場所も待つべき人もいない、真の孤独の中にいる。
ならば何ひとつ考える必要もない死の世界へと旅立とう、と。
「私も……全てを、喪ったと。そう思った……思って、いたわ」
ゆっくりと起き上がった破壊神がマリアを睨んだ。
すかさず剣を振り上げ、エイトとアレフが跳びかかる。
しかし、破壊の豪腕がそれを防いだ。
血に塗れ皮膚を剥がされ尚、その肉体は堅固に刃を通さないのだ。
吹き飛ばされた二人は、身を翻し着地する。
「でも、私にはあったの」
胸に手を当て、思い出す。
かけがえの無い仲間たちから、得難い親友から、血の絆で繋がった先祖から。
たくさんの思いを貰って彼女は、満たされていたのだ。
ただ、それに気がつくのがほんの少し遅かっただけのこと。
「応えたい思いが……たくさん、あった」
マリアの残り少ない魔力が結集を見せる。
鮮やかな輝きは、片腕に握られたいかずちの杖へとそそがれ、光は強まっていく。
彼女の得意とする、爆発呪文イオナズンとは、また毛色の違った魔力だ。
鮮やかな輝きの内に、何か震えるような物を、その場の全員が感じていた。
そう、破壊神ですら。
「私は、……私は!!空っぽなんかじゃない!!!」
『ギ……ギャ……ガ……』
ありえないことだった。
だが、皆の眼には真実が映っている。
身を起こし襲いかかろうとした破壊神の歩みは、止まっていた。
余りに現実離れした姿に、時間ごと停止してしたかのように思えた。
畏れられるべき神が、まるで恐怖に囚われているように。
ハーゴンの『意思』を食らった代償か、或いは─神自身の抱いていた感情か。
「その思いを抱えたまま、私……彼らの分まで生きてみせるわ」
そう、自分は空っぽなんかじゃないと、生きて証明してみせよう。
それが、マリアの望んだ未来だった。
***
?
『グギ……ギ、ギ……!!グァッ、ギァアアアァァーーーッ!』
感情をかなぐり捨て、逃げ出すように頭を振って、突進が再開された。
翼を完全に失い地を駆けることしか出来ない、破壊神。
威光は、そこに無かった。
残り全ての魔力を集中させ、輝きを増していくマリアへと今だ健在の右腕を伸ばそうと、した。
「つぁあーーーッ!」
飛来したのは雷か、はたまた火の鳥か。
そのどちらも正体と言うには不足が過ぎた。
アリスの膂力によって投擲された炎のブーメランは、さながら光輝く彗星と化す。
伸ばされた破壊神の腕に突き立ち、尚も炎を孕み回転し続ける。
その間削岩作業の如く削られていく破壊神の腕を、黄金の炎が尚も襲う。
皮膚を抉り、肉を焼き斬り、骨を砕き、それでも止まらない。
やがて赤熱化したブーメラン本体のほうが、限界を迎えた。
炎の秘石が一際大きく輝いたかと思うと、自壊を始める。
そしてヒビから光が放たれ、─刹那、爆ぜた。
『ギャグァアアアァァーーーーッ!?』
半ばから断ち切れた腕が爆発と共に弾け飛ぶ。
その勢いで宙を舞った腕は、ほぼ炭化してしまっていた。
もう一本の右腕は片方の爆発の巻き添えを食ったようで、共に吹き飛び単なる肉塊となり果てた。
痛みを、感じているのだろうか。
表情を歪めているような破壊神が、仁王立ちでマリアの前に躍り出たアリスを、確かに見据える。
そして、囁くのだ。
いや、あるいはこの声は。
"運命に縛られし伝説の勇者よ。
人間は、そなたが光に導くまでもなき、醜く愚かな存在。
希望無き未来を守ることに囚われるのは余りに愚かではないか"
その声が届いているようには見えない。
だが、アリスは確かに破壊神へと思いを投げかけた。
残った最後の腕をこちらに伸ばし、迫り来る。
ここを退くわけにはいかなかった。
無二の親友が、後ろに居る。
絶対に、退くわけにはいかない。
「─光へと導かれているのは、人々ではなく……むしろ、私のほうかもしれませんね」
ふわり、と優しい微笑みがアリスから零れた。
多くの生命が遺してくれた、足元があたたかい。
背中に感じるマリアの声が。
剣を取るアレフが、エイトが。
必死に立ち向かおうとするフォズが。
あたたかく、ありがたくて、たまらなかった。
そして目の前に破壊神の掌が、アリスの小さな身体を握り砕かんと迫り─
「だから全ての生命の為に……私はっ……」
少女のようであった笑みが、勇壮な英雄のもつ顔へと変貌する。
その瞳は、真っ直ぐな矢のようにこの世の邪悪を射抜く輝きを放っていた。
力強く天に突き出した手によって剣は高々と掲げられ、そして振り下ろされる。
その剣気は、まるで裂帛のように破壊神の肉体を引き裂いていった。
「戦いっ、続けますッ!!!」
やがてアリスの悩む気持ち諸共、迫る豪腕は断ち割られる。
腕の骨がバキバキと音を立て、真っ二つになった。
やがて地割れのように広がりゆく肉体の裂け目は、やがて肩口に達し、腕がぼとりと落ちる。
上肢を全て奪われた神の表情は苦痛に歪み、大きく仰け反った。
ふ、と一つ大きな息を吐き、アリスは微笑んだ。
今度は少年のように、快活な笑顔で。
「そしてこれからも……世界を見守って生きていきたい。それは勇者として、じゃありません」
そう、一人の人間として、仲間が、友が生きる世界へと未来を託す。
それがアリスの、望んだ未来だった。
***
『グ……グ、ギ…ギギ……ッ』
四本の腕も、翼もすでにもがれた。
上体のバランスを著しく狂わされた破壊神。
立ち上がることすら難としているその姿は、もはや見る影もなかった。
よろけながらも立ち上がり、マリアの傍に寄り添う彼らを見据る。
掠れつつある声を荒げ、健在の両足で疾走した。
「凍てつく鏃よ、降り注げ。ヒャダルコ」
冷気が結晶を生み出した。
それはややあって、大きな氷塊となり進路上の障害へと姿を変える。
『グァッ!?』
破壊神は、躓いて転んだ。
それこそ子供が遊んでいて転ぶときのように、頭から倒れ伏す。
文字通り出足を挫かれたのだ。
寄り添う二つの影の中、小さきもの─大神官フォズによって。
破壊神はそのまま、正面から顔を向ける姿勢で倒れ伏した。
口腔から黒い血を溢れさせ、眼孔からも涙のように血を流すその表情を真っ直ぐ見据える。
心優しき彼女には、それがとても、痛々しく感じられた。
声が、また届く。
いや、届くというのは些か違う。
彼女の心が、震わされた。
"幻想に駆られ、夢に溺れる小さき生命よ。
そなたの導きなど、児戯に過ぎぬと理解しただろう。
ならば我に祈りを捧げ身を委ねることで、そなたに永遠の夢を与えよう"
強制された自問自答が、フォズの胸を揺さぶる。
自身の心の隙間に、匙を突っ込まれて掘り返されるような気分だった。
フォズ自身、無力感を幾度と無く味わってきた。
予てからこの齢で大神官を名乗ることに、引け目を感じなかったことは無い。
だが、この殺戮を強いられる舞台に上げられ、その思いは加速することとなる。
「ええ、私はあまりに幼かった。幼くて……傲慢でした。
私の導きがいかに拙いのか、思い知らされた気がします」
自分の言葉の、なんと軽いことか。
道を違えた者たちの誰一人として、正しき道へ導くことが叶わなかったではないか。
生き残った仲間たちの言葉の、なんと重いことか。
幾度と無く絶望を目の当たりにし、一時は尽きても構わぬと感じたこの生命が─今、とても大切に感じる。
「虚空へ消えた言葉が、闇に阻まれた言葉がたくさんありました。
……でも、言葉ばかりが導きじゃないって、やっと……遅かったけれども、わかったんです」
クリフトや、サマンサや、ピサロといった面々の顔が、フォズの脳裏を過ぎる。
皆、決して弱い人間ではなかった。
ただ、強き信念を持ち闇の中へ飛び込んでいったのだ。
信念の根源。
それは愛。
誰かを、何かを想い続けるという心の強さが彼らに歩を進めさせた。
そして自分の言葉は、それを阻むに及ばない。
フォズの信じる人の強さが、可能性が、フォズの導きを否定する力となった。
そう、その力は─強いのだ。
例えどう導こうと、捻じ曲げることなど、誰にもできはしない。
「私は、生の輝きに導かれて今、ここに生きています。
それも、強い……まるで太陽のような輝きに」
生きたいという願いを持って、立ち上がること。
愛する人を想って、傍で生きること。
幸せになりたいと願い、笑顔を見せること。
その輝かしい生命が生きる様こそが─何よりの導きなのだ。
「本当に人を導くためにできるのは、『強く生きる』ことしかないんです。
強き生を歩むものに、人は憧れを抱き、愛を知り、夢を見て……。そうして、自ら変わろうとするんです」
言葉だけで導いた気になっていた自分は、あまりに浅薄ではないか。
真の導きとは、そう。
人ではなく、自分を変えることにある。
キッ、と睨みつけるように、フォズは破壊神の双眸を見据えた。
「人の行く道を操ることなんてできない……それは、人を創りだした神でさえも」
もぞもぞと、腕を無くした巨体が蠢く。
がぱりと開かれた顎が、フォズの存在ごと喰らい潰そうと迫る。
しかしフォズは恐怖に屈しない。
彼女には信じている存在がいたから。
輝かしき生命が─勇者が、いたから。
「だから、私はもう……幼いままでなんていられない。私も……私もみんなのような」
『ギャッ……!!?』
エイトの剣が、アレフの剣が共に会心の閃きを発した。
すっかり血で汚れてしまってもなお、曇ること無い二人の笑顔が眩しかった。
フォズは愛らしい笑顔で応える。
もう泣かないと決めたから。
「─勇者のような、誇り高き魂でありたい……輝かしい生を歩むため」
根元から破壊神の両足が切り落とされる。
光の大地に転がった肉塊はじわじわと爛れるように縮まっていき、そして灰塵のように消えていった。
牙も角も砕け、四肢を断たれ、藻掻く術すら喪った破壊神。
這いまわり黒き身体を血に染めるその姿は、瀕死の蛇のように思えた。
その姿から目を逸らすことなく、フォズは祈る。
皆の、自らの、そして今此処で潰えつつある邪神の生命へと。
希望を感じさせるその表情ではあったが─隠しきれない哀切が、そこになった。
「生きてさえいれば、きっと導きの光になれるから。人が誰かになれるように、私も誰かになってみせます」
そう、この世の全ての生命が見る夢のため、全ての生命が抱く未来の可能性のために生きる。
それが、彼女の望んだ未来だった。
***
『グギャァ……ァァ……ァ……ッ』
もはや寝返りすら打つこと叶わない。
腹這いの姿勢のままか細い呼吸を漏らすことしか、できなかった。
もう、恐怖を産む存在にはなれない。
破壊をもたらす存在には戻れない。
絶望、死、破壊。
今まで神自身が望んできた全てが、怒濤のように押し寄せてきている。
それらはとても、灼けた背中では背負いきれない。
自らが呼び込んだものに、圧し潰されてしまいそうだった。
血の色をした眼が、見開かれる。
塗り潰されたように深紅に染められた瞳はからは、止めどない血が湧き出る。
流れた血は、足元の光に触れた瞬間に、浄化されるように煙を上げて消えていく。
この世に存在の欠片すら、残すことを許されていないように。
"神に抗う者達よ。
全てを喪ってなお抗う理由が存在するというのか。
何故、なぜ─"
それは、バトルロワイアルの舞台に降り立つまでもなく、感じていた疑問。
この世に生を享けたそのときから、誰しも抱く謎。
"なにゆえ もがき いきるのだ"
破壊神は、彼らに問いかけることはしないと言った。
だからきっと、これは彼ら自身が抱いていた思い。
そして探し求めていた答えを、確かめる瞬間。
すっ、と進みでたマリアの表情は、とても安らかだった。
答えは、まるで、我が子に語りかける母のように、優しい声で告げられる。
「理由なんて、無いの」
皆の手から、マリアに力が送られていく。
最後の魔力を以て構築しているのは、彼女が初めて使う魔法。
「人はね。生きていたいから、生きるのよ」
紡がれる呪文は、勇者の証。
それを人は、勇気の剣と評したり、正義の矛と謳ったり、覇者の牙と呼ぶのだろう。
破壊神の持つ力と、起こす事象は確かに同じかもしれない。
ただ、そこには、幾多もの生命が乗せられている。
「生きていれば、いろいろな事ができるの。
友と取り留めもないような話で笑いあったり。燃えるような恋をしたり。
大切な人のために、力を尽くしたり。まるで夢みたいな大きな理想を胸に抱いたり。
泣いてしまいそうな哀しい別離を経験したり。自分の信じた幸せな未来に、何かを託したり……」
ひとつ、またひとつ。
自分が望む未来を口にする。
いとおしげに抱いていた夢を口にするたびに、哀しみとは違う涙が流れていく。
それは彼らだけでなく、消えた生命が皆抱いていた思いだから。
泣けない彼らの代わりに、泣いていたのかもしれない。
「それら全てを望むから、私たちは生きているの」
マリアの額に、汗が滲む。
頭はロジックで入り乱れ、難解な魔力制御で手先は震える。
自分ひとりでこの大魔法を御することは、できないかもしれない。
強張る両の肩に、手の感触がする。
傍らには、偉大で、そしてかけがえのない友である二人の先祖が居た。
「マリア、私達の力……全部、使ってください」
「君ひとりに背負わせたりしない。行こう、マリア」
そう、もう孤独ではない。
ここには皆がいる。
生きている限り、ひとりきりなんかでは無い。
「信じています。あなたの、僕らの力を」
「さあ、破壊神が導いた運命を─破壊しましょう」
エイトが、フォズが、皆と同じく手を掲げる。
自分は、彼らは、今高している最中も、決してひとりきりなんかでは無い。
足元の光が、それに続くように輝きを増した。
「……みんなっ……!!」
強制された、死という運命に抗うため。
生きて、いたかったという願いのため。
光は、皆に力を注いだ。
それは、魂全ての望んだ未来だったから。
最後の詠唱が、まるで吟詠されるように美しく響く。
─天よ、照覧あれ
集中力を高めていく。
眼を閉じていても、周りの皆の存在が感じられる。
それだけで、彼女の心は安らぎの中にいられた。
"マリア"
「!」
唐突に、ついさっきまで聞いていた声が届いた。
だというのに、何故だろうか。
ひどく、懐かしい。
─我らの力を以て深淵の闇を照らし、我らが意思を以て邪悪なる魔を灼く
どうして彼の声が聞こえるのだろう。
詠唱を続けながらも、そんな疑問が頭をちらと掠めた。
だが、この名を呼ぶ声はそう。
どこか、父にも似ていた。
"また逢える日があれば、我らにあるとすれば……"
─光の、裁きを
"どうかその場所が……人と竜とが手を取り合い笑い合える世界である事を、祈る"
それは、皆には聞こえなかったのだろう。
だが、マリアには届いた、そして悟ってしまった。
(─ええ。私、祈っている。あなたとまた逢えることを)
誇り高き竜、アレン。
彼もまた、先に─
(だから、あなたを)
止まらない涙は拭われることなく、光のなかに消えていく。
哀しみも悼みも、いずれ思い出になるだろう。
大切な人と語らい、忘れられない自分の過去となる。
(探し続けるわ)
だからこそ、決着をつける勝利の合言葉として─彼を、呼んだ。
「来たれ、竜の雷」
それは伝説に記されていた、結集電撃呪文。
マリア達は力を合わせて、ミナデインを唱えた。
決着の光が、轟音を奏でた。
まるで、竜の咆哮のように。
【破壊神シドー(真)@DQ2 死亡】
えー、番号が思い切り足りなくてすみません。手落ちです。
投下終了です。
もう少し長く続くのを手直ししようと考えたので、このあとの展開をさっくり削りました。
と、いうわけでこの話はここで終わりです。
エピローグ的な物をこのあと、考えています。
私の代わりにリレーしたいお方がいたら、競争ですね。
では、支援してくださたみなさま、どうもありがとうございました。
今投下開始時間思い出して慌てて見に来たけどちょうど投下終わったところだったか…
支援出来なくてすいません
とりあえず今から読ませてもらいます
しえん
終わった!
終わった!
終わったあああああああああああ!
最終決戦終幕、投下乙!
まずタイトルに震えた!
順当かつ王道かつ当然かつ当たり前なタイトルなんだけどずるい、やっぱずるい
しかもそれを最後の最後にこう繋げるか!
それぞれの答えにほろりとしつつも
その答えを繋ぐように攻撃や守りに他の仲間達が入ってくれたのがいい
それもあって最後の最後のあの呪文のシーンとかすごく脳内で想像できたぜ!
面白かったです、GJ!
お疲れ様です
最後まで泣きながら読んでいた…
そんなことって本当にあるんだなと思いつつ…
まずタイトルが目に入った瞬間、もう負けたと思った
で一人ずつ破壊神と問答するシーンがさ、
よくゲームとかアニメのクライマックスで敢えて無音になるような演出があるじゃん
あんな感じで再生された
最後の呪文自体はさ、出てきそうな気はしてたけどその詠唱はずるい、ほんっとずるい
あぁなんかまだ涙が出てくるよ…
本当にありがとう
最初、あの名言が出たから、ゾーマが出るのかとビビった
やっと落ち着いてきた!
タイトルとかラスト詠唱とかずるいわーー
最終回感がすごくてたまんなかった……
いままでのSSが蘇ってきてさあw
590 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/01(火) 22:40:34.47 ID:ZAizsOAhO
感動したっ!!
素敵な話をありがとう、本当に今までありがとう、としか言葉がでない
静かな決着って感じだな
一人一人にシドーが問いかけていくとこがよかった
さて、あとはエピローグか…
投下お疲れさまでした!
ああやべぇ、何も言えない……全く落ち着かない。ヤバい。ズルい。
もう何もかもが凄くて感動するしかない。ミナデインとか、竜の雷とかこんなの反則だろう! もう!
最後でした! 素晴らしい! このロワを読んでて良かった! ありがとうございました!
エピローグも楽しみ!
ありがとう
素晴らしかったです
一文一文に魂が震わされていく気がしました
本当におつです
震えた
すごく良かった、ありがとう!ありがとう!
投下乙!
ついに完結かぁ。
やっぱ最後はミナデインだな。
最初から見てたから感慨深い。
もう6年かな?
597 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/02(水) 17:27:13.74 ID:cWSaZunw0
きたあああああいいいいいいい
え、マジで?もう6年も経つの?
正確には5年半だね
振り返ってみると、2006年の4月16日に最初のスレが立ってる
2006年が000「黒の導き」〜111「孤独な剣の行先」
2007年が112「第二回放送」〜131「Fire of Dragon's heart」
2008年が132「死闘の果てに」〜136「鼻先には蜘蛛の糸」
2009年が137「目覚めの時」〜141「繋ぐ絆は胸の内」
2010年が142「その先には「未来」」〜146「死を賭して」
で、今年が147「不死身の敵に挑む」〜151「Dragon Quest」となる
長かったなあ・・・
小学生が中学生になるほどの年月かあ
何でロト編では影も形も無いミナデインを、しかもデイン系の呪文すら知らん2出身のマリアが使ってんだ。
なんて思ったが、バトルロードでローレとサマルでミナデインを使ってた事を思い出した。
トドメにはミナデインだとは思ってたが、でも誰も使えんし存在すらも知らん(フォズは知ってるだろうが)
のばかりで
良くてトドメはエイトアリスアレフによるトリプルギガデインかなとか思ってたんだけどね。
ここでバトルロードからミナデインを引っ張ってくるとはお見逸れしました。
おおお・・・GJ
今までの思い出がにわかによみがえってきますぞ
>>602 最初は俺もそう思った
しかも勇者ではない魔法使い系のマリアだったし
だが俺もバトルロード思い出して納得した
アレフがVカッターやWインパクト使っても問題ない
俺はトドメはエイトのスーパーハイテンションギガスラッシュかなと思ってたが
破壊力的に
でも演出的にはマリアが最高
606 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/05(土) 22:19:29.19 ID:jvQVYSDfO
ひま人
>>602 ミナデインはさりげなく6つの呪文書に書かれていたから存在はみんな知ってるはず。
まぁ確か解読時にマリアは寝てたけど、その後1人で起きてた時に見てたのかと想像した。
デイン系は覚えてないけど勇者の子孫だし
魔法使い系なので新呪文体得に一番の適正があったと思われる。
っていう理屈は抜きにしてマリアがとどめっていう演出が最高だ!
レベルアップして呪文覚えた感じかー
エンディングまで保守
610 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/11/19(土) 19:39:32.76 ID:OmSLvVOD0
///
保守
保守
613 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/12/08(木) 21:52:15.39 ID:YWOlrsp5O
保守
614 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/12/12(月) 20:39:05.06 ID:hVFtCwHFO
動きがないただのしかばねのようだ
スレ落ちたかと思って焦ったぜ
エピローグまだかなー
忙しい時期だしなー
別にここで語ってはいけないってことはないんだぜ?
>>620 ではお言葉に甘えて。
ドラクエのバトロワは文章がよく推敲されていてレベルが高くて、そして一話一話の内容がしっかりしていて、読むのが本当に楽しい。最初は冗談抜きで、公式か?と思ってしまった(笑)
何度号泣して目が腫れたことやら…。
まだ最後まで終わったわけじゃあないけど、書き手さんたちに改めてありがとうと言いたい
エピローグもしっかり読みますからね!ゆったり待ってます
ほしゅ
保守
今年が終わるまでに、間に合わせたいですね。
予約しておきます。
おお予約来た!
エピローグの予約ってことでいいのかな?
ついにこれで完結となるのか
きたああああ
年内予約とか嬉しすぎるが無理しないで!
思えば途中からとは言えずいぶん長い間追っかけてきたロワだったなあ〜・・
リアルタイムで終わりまで見届けられるのはほんと嬉しい。
ファイナルは盛り上がりたいぜ!
頑張って!無理しないでね!
予約嬉しすぎて椅子から引っくり返るかとw
楽しみにしてます!
投下します。
これ言うのも最後ですね。
突発的で申し訳ない。規制に引っかからないよう、ゆっくりと。
光が止む。
音が止む。
そこに、悪しき神の姿は─ない。
「やっ……」
魔法力のほぼ全てを根刮ぎ持っていかれた為か、ひどい虚脱感がアレフを襲った。
気怠げに汗を拭い、大きく息を吐く。
「やっと……か……」
「やり、ました……ねっ……!」
剣にもたれかかるようにして立っているのがやっとのエイト。
だが、彼の表情は安堵に満ちていた。
邪神の消滅。
彼らは、滅びの運命に勝利したのだ。
「マリア、しっかり!」
「……ありが、とう……ねえ、アリス……」
がくりと崩れ落ちたマリアの華奢な肩を、アリスが力強く支えた。
多くの血と魔法力を失い、どっと疲れが彼女の身体に伸し掛かるが、表情は明るかった。
荒い呼吸の中、決着の行方を問う。
大量の汗が目に入って、霞んだ彼女の視界には何も捉えられなかった。
「シドーは……破壊神は、どうなったの……」
「無事でよかった……ええ、破壊神はもう」
神を滅ぼすには余りにも華奢なお互いの身体を支え合い、笑顔を寄せ合った。
未来を手にした喜びで、彼女らの胸は満たされる。
しかし。
「みなさん」
少女フォズは、確かに皆と同じく喜びの表情を浮かべていた。
だが、その両眼からは光る雫が溢れかかる。
「強いられたこの戦いで……私たちはたくさんの……」
口にする度に、一同の頭には浮かびゆく。
掛け替えのない友の。
心から愛した人の。
互いの力を認めた宿敵の。
「……本当に、たくさんの生命が……」
自分を変えてくれたひとの。
数えきれない死があった。
「強いられた、この、場で……奪われ、ま、した……でも」
戦いの中で失われた全ての生命。
悲しき宴も終幕した今、等しく惜しまれる。
無理に笑顔を作ってみても、耳まで赤らめて、少女は涙を─。
「……もう、いいん、ですよね」
流すことは、なかった。
顔を耳まで紅潮させ、肩を震わせて。
両の瞳が潤んでいるというのに。
それでも涙を流すまいと、必死で堪えていた。
アレフは震える肩を優しく支えた。
それでいて温かい掌で、アリスは少女の手を握る。
「さ、行こう。俺たちが……思い描くところへ」
「胸を張って、とは行きませんが……帰りましょう。
偽物なんかじゃない、本当の陽の光を浴びるため」
二人の勇者の心遣いに、フォズは甘えてしまいそうになった。
だが、泣くものかと彼女は─笑った。
「とても……とても長く感じましたね」
「そう……今までの、どんな、戦い……より、も……」
「!マリアッ」
崩折れる華奢な身体を、アリスとその傍らに立っていたエイトが慌てて支える。
片腕を千切られ、幾度と無く打ちのめされて。
加えて、生まれて初めての極大魔法をほぼ独力で構築したのだ。
すでに彼女の疲労は心身ともに頂点に達していた。
放っておけば、衰弱死しかねない。
「のんびり……休んでは、いられないみたいだな」
「魔力がもう尽きて……そうだフォズさん」
「は、はいっ」
エイトは疲れきって働かない頭をどうにか冷静に動かした。
フォズから奇跡の石を預かって、マリアの手に握らせ、閉じさせる。
柔らかな光は、マリアの体を落ち着けさせた。
「……もうこの空間が安定しているという保証もありません」
度重なる飛行により疲弊したファルシオン。
その鼻を撫でながら、アリスはマリアの身を案じていた。
いかな天馬が飛翔できると言えど、世界のはざまを越えられる保証はない。
「急いでここからっ、!?」
舌を噛みそうになったのは、口が回らなかったわけではない。
「空間がっ……!?」
まるで火山が噴火したかのように足元が激しく震動を始める。
夜空のように暗い空間が、蠢き始める。
「まさか……」
世界が、変質していた。
「崩壊……するのかッ!」
否、これは還ろうとしているのだ。
歪を正し、有りの侭の姿に。
全てが、元へと戻ろうとしていた。
─死んでいった生命を除いて。
*******
「おいっ!……おいっ!!」
光の大地が輝きを失い、罅割れていく。
音もなくさらさらと砂が崩れるが如く、消滅を始めていた。
まるで彼らを追い詰めるように、暗闇のなかへ世界の残骸はばら撒かれる。
その中には、『五人』も含まれていた。
「手をっ……伸ばっ、せ……っ!!」
上も下もわからぬ暗闇に投げ出されたアレフ。
虚空へと落ち続ける彼の眼に止まったのは、生涯初めての約束を交わした宿敵。
それが─遠ざかっていく姿。
顔色の悪さは元からだとしても、今の彼には生気は欠片もない。
呼びかけにも、応えない。
その手が動くことも、なかった。
「勝ったんだ!……勝ったんだって!俺たちは、くそったれの神様に勝ったんだよ!!」
最大の宿敵に向かって、届かぬ手を伸ばす。
いつしか、呼びかけは慟哭のようになっていた。
伸ばしっぱなしの手は強張り、やがて震えた後に力を失う。
「勝手に……押し付けたっ! 約束かも、しれない……けれど!!」
ぼろぼろの勇者は、宿敵であり友である男を見つめることができない。
がくりと項垂れたまま、やりきれない叫びが止まらなかった。
「お前を、引きずってでも……国に、連れてく、つもりだったんだ!!」
汗なのか涙なのか、熱いものが宙に大粒の雫となって飛んでいく。
─運命というやつは、またも自分から一つ大切なものを奪うらしい。
残酷なことだと、自嘲気味な虚無感が哀しみと共にアレフを満たしていく。
故に彼は叫ぶ。
叫ばずには、いられないのだ。
「アレフガルドでふんぞり返ってたお前が……腰抜かすほどッ!!世界ってのは広いんだってな!!」
死線を越えた、ほんの少し前のこと。
思い描いていた夢を叫び散らす。
「十年、二十年、もっとかかるかもしれないけれど!!お前のよりもでっかくて、立派な城を建てて……」
その行為が無駄であろうとも。
今すべきことではなかろうと。
止めようのない感情だった。
「『ざまあみろ』って笑ってやるつもり……だったってのに……ッ!!」
震えを始めた声が、弱まっていく。
同じ速さで落ちていた、闇を突き進んでいたはずだった。
二人の距離は、徐々に、広がっていく。
もう手も、声も届かない距離になってしまった。
「何、格好つけて……笑ったまんま……お前は……ッ!!」
まったく魔王という奴はどいつもこいつも。
潔く嘘をつき、勝手な考えで行動して。
─そして勝手に、死んでいきやがる。
伸ばした腕は、哀しみのあまり強く握りこまれる。
またひとり、大切な友を、失ってしまった。
孤独には慣れていたはずだったが、どうにも胸が苦しかった。
「お前も、大馬鹿野郎だ……ッ!!」
*******
底しれぬ暗闇に、ただ静かに沈んでいく感触。
マリアは眼だけを動かして、仲間たちの姿を探す。
だが、何も見えない。
自分以外に視界に入る色彩は、黒に限られている。
彼女は、誰に向ける訳でもなく呟いた。
「……ねえ、『アレン』」
その名は、どちらを呼んだのか。
だが、もうどちらでもいい。
遅れてきた涙が、弔いと餞になればいい。
もう交わってはくれない、勇者血筋と竜とが行く、生と死で分かたれた道。
彼女は、神々が慈悲を以てその先をそれぞれ照らすことを願い─涙した。
「あなたの思い……私が、連れて帰るわ」
もう彼の身体も、魂も。
現世には欠片も残っていない。
掬いとることなど叶わないと、彼女は知っていた。
肉体は監獄と共に消え去り、魂は自分たちのため、力を使い果たしたのだから。
だが。
「必ず……必ず、あなたを、みんなを……」
皆、自分の『記憶』の中に生き続けて欲しい。
ザオリクを唱えるようにはいかないだろう。
でも、死んでいった生命のことを、自分は決して忘れはしない。
もっと頼りない、蜘蛛の糸なんかよりもか細いものだけど─
「一人にはしないから」
弱くてもいい、儚くてもいい。
大切な人の行く道を、私は照らしてあげたい。
暗闇にぽかりと光った、優しい月のように。
─そうして私が、輝いていれば。
いつかまた、運命が交わる時が来るかもしれないでしょう?
「……ついて、きてね」
暗闇に落ちていく。
今の彼女に、為す術はなかった。
足掻き、生に渇望する気力が、残されていない。
だから彼女は、ぼんやりと考え、落ちていくままだ。
─ああ、また出会えるだろうか。
城から眺めた夜も、一人震えた夜でも、仲間たちと過ごした夜にも。
いつも優しく包み込んでくれた、ふるさとの月の光に。
*******
「ファルシオーーーーーンッ!」
仲間たちの名を、懸命に叫ぶ。
「フォズさんっ……エイトさん!!」
彼らの生命を消させはしない、勝利を無意味なものにさせはしない。
その懸命さが、疲労困憊の彼女に叫ぶ気力を齎した。
「アレンさんっ!アレフ!!マリアぁぁぁぁぁッ!!!」
肩を並べた仲間であり、誇るべき子孫達であり。
そして遠き世界の親友である彼らの名も、一際大きな叫びとなって喉から溢れ出る。
「皆っ……応えて!!」
絶望の淵へと落とされていく、というのはこういう事なのだろうか。
全員、必ず生きて帰ることを誓い合った。
明日の朝日を見ず、ここで潰えることなど。
ここで、闇の藻屑となり、消えることなど。
ここで散ることなど─認めない。
認めたくなかった。
諦めて、なるものか。
「帰りましょう……っ!私たち、のっ、……世界へ!!!」
アリスは、光り輝ける勇者でありたいと、常々思っていた。
まだ年端も行かぬころに見た、微かな記憶の中。
旅立つ父の背に見た、あの夜明けの光と重なった輝きを、ずっと追いかけて。
そうして、彼女は勇者になり─そして、伝説になった。
「勇者心得……ひとつ─」
闇の中、握り締める。
支配された異郷の地へと降り立ち、囚われし創造神を救い出した。
そのときに賜った、ひとつの守り。
「勇者はいつなんどきも……諦め、ないッ!!」
まるで太陽のように輝くそれを、胸に抱きしめて願う。
仲間たちに─我らに、未来を、と。
"……たちよ……"
「!?」
鈴の音のような声が、か細くだが、勇者アリスの耳に届く。
"愛し子たちよ……"
「ルビス様……っ!!」
幻聴ではない、確かに声がしていた。
今のアリスには知りえないことではあったが、それらは他の皆にも同じく聞こえている。
どこか、焦りを感じるような声だった。
"破壊神は、滅びの直前に……
恐るべき執念を以て、
自ら生み出した空間の存在そのものを破壊しました"
「破壊……!?」
ルビスから語られるのは、最期の憎悪にて成された所業。
破壊神が、強引に勝利という運命をねじ曲げようとしているのだ。
このまま終わりなき闇に勇者達を閉ざし、自らの敗北したという事実までも破壊するということ。
それは、死よりも恐ろしく、そして虚しい結末を意味している。
"ですが……恐れないでください
あなたたちには必ずわかるはずです、帰還への路が"
「え……?」
何も見えない。
聞こえるのは精霊神の囁きに限られる。
暗黒の中、世界への標など何も─
"耳を、澄ませて"
*******
「レオンさん」
永遠のような時間を落ちて行くフォズは、どこか冷静でいられた。
勇者たちの奮戦により、もっとも身体が充実していたからではない。
絶望に対抗し、祈りを捧げることには慣れていた。
そして信じることの強さを、誰よりも知っていた。
「あなたも……祈っていてくださいね」
長く苦しい戦いに付き合ってくれた子蜥蜴が、喉を軽く鳴らした。
ぎょろりとした眼が少し怖かったあの時を、ほんの少し思い出す。
それは自分の故郷の記憶。
大切な人と出会えた、一番大切な場所の記憶だ。
そこのことだけを思い描き、帰還を祈る。
精霊神の言葉が、正しければ─
「きっと、聞こえてきますから」
その思いを忘れずに願い続ければ、きっと。
目指すべきものが現れる。
聞こえるはずだ。
還るべき世界の標が。
まるで─"歌声"のように。
初めに耳に飛び込んできたのは、聖歌だ。
神官達が歌う、信ずる神に捧ぐ歌。
フォズ自らも学んだ歌だ。
吟遊詩人の歌声も、聞こえてくる。
精霊のように澄んだ声は、生命の息吹を感じさせた。
思い出す。
数々の旅人に、可能性を示していた今までを。
そして最後に、耳に届いてきたのは。
「……あ、れ……」
勇ましい、勇壮な歌声。
少々粗野で、無骨なところがある。
しかしそれでも、背中を力強く押してくれるような。
暖かく、それでいて強い音色。
「……あ……」
これは、船乗りの歌だ。
遠き海に旅立つ船乗りが、友との再会を誓うとき奏でるメロディ。
そうだ。
教えてくれたのは、彼。
少し頼りなく見えるけれど、本当はとても強くてお兄さんで、私は─
「……あり、がとう」
アルスさん、マリベルさん。
輝かしき勇者だった、アリスさん。
何度も命懸けで救ってくれた、アレフさん、エイトさん。
誰よりも苦しみ、そして戦い抜いたマリアさん。
─ピサロさん。
そして、ここに招かれてしまった……みなさん。
短い間でしたが、みなさんと居るのは楽しかったです。
たくさんの人達と触れ合うことができました。
いろいろな人が、いました。
それぞれいろいろな心を持っていました。
人と人との、心の繋がり。
お互い、それを忘れずに……
「……頑張り、ましょう」
震えていたものの、きっと皆に自分の声は届いている。
信じている。
我々にはそれほどの絆が、生まれたと。
「また、お会いできるかも……いえ」
しばしの別離が、来るだろう。
しかしそれはきっと永遠では無い。
「また……きっと、また会いましょう!!」
たくさんの道が、この場所で断ち切られた。
だが、自分たちは未来を切り開いた。
そこには無限の道が、待っているはずだから。
きっと、出会う運命もどこかにある。
そう信じているから、今は─さよならを、力強く言おう。
船出のとき、寂しさを海原に預けるように。
「皆さんも……お元気で!!」
フォズには聞こえなかったかもしれない。
だが皆─力強く、仲間たちとの再会を誓い、そしてさよならを告げていた。
心、一つに。
*******
エイトは、自分の最も古い記憶を辿る。
そこには常に、父の─トロデ王の姿があった。
だが、彼はこの世界にて潰えた。
世界を手繰るのには─消え去った魂に縋ることは許されない。
「ゼシカ。ククール。……とうさん」
遠き友を思う。
偉大なる王の背を、思う。
だが、彼らに告げる。
別離の、言葉を。
「どこかで、見守っててくださいね」
目を伏せ、思い描くのは故郷の景色。
かつての旅路を逆からなぞれば、思い出す顔が幾つもある。
その中の一つ、顔の割には人情味あふれた盗賊を思い出した。
そう、彼との出会いが、長き冒険の始まりを告げたのだった。
─思い出すほどに強く聞こえてきた。
これは、彼の口笛の音色だ。
「……これ、は」
続いて聞こえてきたのは、子供の声。
遠い記憶の中、この歌を聞いた覚えがあった。
そう、これは。
しょっちゅう二人で城を抜けだしていた、自分が自由を知ったときの思い出。
あれを歌っていたのは─
「……姫」
二人で花の冠を、不格好ながら作っていた。
塞ぎがちだった自分を、そばで支えてくれた姫。
いつも花のように可憐な笑顔を振りまいてくれた。
帰りたい。
あのひとの元へ─愛する人の元へ、帰りたい。
強く、強く願った。
「……随分お待たせいたしました」
視界は暗黒から、光に照らされたように白んでいく。
子供の拙い歌声は、聞きなれた声へと変化した。
いつしか鼻孔をくすぐる、甘い花の香り。
何一つ触れることない闇の宙空に投げ出されていた感覚が、消える。
「……」
気づいたときには、ふわりと包まれるように、どこかに横たえられていた。
エイトが気づいたときに頬を撫でていたのは─
*******
蜜を探し、蝶がふわりふわりと舞い踊る。
風がさわさわと木々を揺らし、花弁を舞わせる。
踏まぬよう、静かな足取りで花畑に踏み入った。
この地は、自分にとっても彼にとっても大切な地だった。
花のひとつひとつに思い入れがあった。
「……」
彼と、父が居なくなってからはや数日。
国は上を下への大騒ぎとなった。
頂点たる王の不在。
そして世界と国を救った英雄、近衛隊長エイトも共に行方が知れない。
父と、懇意にしていた幼なじみが突然消えた。
トロデーン王の愛娘ミーティア姫はひどくそれに心を痛め、ふらりと城を抜け出したのだ。
「……お父様」
居なくなった二人を探す為、もちろんかつての仲間たちに使いを出した。
だが、パルミドのヤンガスを除き、連絡は取れずじまい。
謎の失踪がこうも続くものだろうか。
それも、世界を救った一行ばかりを狙ってだ。
若き姫君といえ、流石に理解できる。
尋常ならざる事態に巻き込まれたということは。
現状を憂うことしかできない。
世界中を自分の足で歩き、どこかに彼らがいないか見つけたくてたまらなかった。
自分だって、世界を救う旅にずっとついてきていたのに。
お城の皆は『姫だけでも巻き込まれずによかった』と慰めた。
─そうは思わない。
彼女は、自分だけが置いていかれたような気分だった。
「……」
仲間たちのこと、父のことを考える。
そして、誰よりも大切に思っている彼のことを最後に思い─久しぶりに、歌った。
かつて亡くなった母から教わった、子供の頃に彼に教えたメロディーを口ずさむ。
そうすれば、時間もあの頃のように戻ってくれるような気がして。
「……う……」
うめき声が、聞こえた。
ミーティアは、はっとして立ち上がる。
先客がいたとは思わなかった。
ここは城の外、魔物も現象したとはいえ、危険が無いとは言い切れない。
だが、その心配はあっという間に立ち消える。
花畑に埋もれた人影の、その頭には見覚えのあるバンダナが巻かれていたから。
「エイト……っ!!」
何処に行っていたのか。
どうして、何も告げずにいなくなったのか。
父は一緒ではないのか。
様々な疑問より先に、安堵の涙が頬を濡らした。
花畑を気遣う余裕すら今はなくなり、全速力で駆け寄る。
傷だらけの身体を見て息を呑む。
頬を撫で、懸命に名前を呼んだ。
「……姫、様……」
「エイトっ!!エイト……エイトっ!!」
泣きじゃくり、縋りつくのが姫だと気づく。
思い描いていた景色がそのまま覚醒した自分の視界に飛び込んできたので、混乱していた。
ただ、違うのはひとつ。
思い出の中の彼女と自分は、成長した姿であること。
花畑の中疲れきった腕で、できる限り強く。
エイトは、姫の肩を抱き返した。
「ただいま」
これからこの笑顔を曇らせる事実を、伝えなければならないだろう。
だが、それきりだ。
もう彼女の笑顔は誰にも奪わせない。
(それが……姫と"僕の"父さんから託された、最後の約束だ)
とうさん。
彼女を幸せに─いえ。
僕らは、幸せになります。
*******
ざん、ざんと岸壁を波が叩く音が響く。
風が強くなってきた。
多少海が荒れるかもしれない。
遠き海を往く船乗りたちの無事を祈りながら、はためく法衣の裾を抑えた。
冷たい風に緑色の身体をぷるぷると揺らす彼の鶏冠の部分を、そっと撫でる。
戦友は彼女と視線を合わせ、嬉しそうに頭を揺らした。
「……さまー!どこにおられるのですか!」
いけない、と口を抑える。
日々食事の暇も取れない責務が押し寄せているというのに、彼女はここに佇んでいた。
蒼き海を眺めていると、いろいろな事を思い出すから。
幼き日、神殿の地下に幽閉されたあの牢獄から救い出されたこと。
破壊神に誘われたあの忌々しき舞台のこと。
そして思い出し、その度彼らから学んだことを胸に刻むのだ。
僅かな時のつもりが、随分と長く思いに耽っていたらしい。
ダーマ神殿の最高位である大神官の失踪。
あっという間に、その騒ぎは大陸中に知れ渡った。
吹き溜まりの町のあらくれは一人残らず絞り上げられ、神殿兵達は駆けまわる日々を送っていた。
誰もが取り戻された平和を疑いかけた─ある日。
ひょっこりと、傷だらけの大神官は戻ってきた。
幼い男児ですらこうも汚れまいと言わんばかりに薄汚れた姿に、女官たちは呆然としていた。
すぐに沐浴場にぶち込まれたのは今でも鮮明に、思い出せる。
─それから、彼女は語り継いだ。
闇より蘇った邪神の企み。
異界の勇者との出会い。
たったの数日ではあるが、人の様々な心の移り変わりを眼にした、殺戮の宴のことを。
全面的に信じるもの、幼子の幻想であると一笑に付す者、多くの人間がいた。
だがフォズは、敢えてそれ以上その話を続けることはなかった。
この話で失われた命について真に知る存在といえば、自分と子蜥蜴だけなのだから。
フォズが生きる世界の住人が失ったものは、恩人が異郷の地にて殺められたという事実のみ。
哀しみは生まれど、それが忘れ難き悼みに変わることはないのだ。
─自分の悲哀を伝え聞かせても、誰にも共感などされはしない。
支援
しえん
それからは、かつてのような日常が再び動き出す。
だが、ほんの少しずつではあるが、日々に変化が訪れていた。
大神官は失踪事件があってから眼を見張るほどに成長なされた、と評されたり。
異国の勇者の話が様々な人間に脚色され、多くの英雄譚が流行ったり。
フォズは年齢の割に派手な下着を身につけている、と召し使われている女官の噂になったり。
すくすくと育ったレオンを隠し続けることもできなくなり、こうして神殿を抜け出し森に出向くことが増えたりと
。
様々なことがあって─そして、幾年もの時が流れた。
あれから彼女は、違った生き方を見つけた。
強く、誰よりも強く輝きを放つ命になるために。
いつかまた出会えるその日まで、約束をこれからも守り続ける。
泣いてしまういそうな夜もあるけれど、我慢していく。……なるべく。
それが優しき魔王と、憧れの勇者たちへの、ただひとつの恩返しだ。
「レオンさん!また来ますねっ!!」
フォズの頭の上から、嬉しそうな喉鳴りが聞こえる。
今やすっかり成長した彼女のさらに頭三つ分ほど上の高さから、見下ろすほどの巨体へとレオンは育っていた。
竜は頬を器用に歪ませ、笑みを返して、森へ帰っていく。
フォズは、うれしかった。
アルスの形見も、こうして壮健を貫いていてくれて。
森の中へ消える巨体を安心して見送って、彼女は激務へと再び駆け戻っていくのだった。
奇妙な話だが、帰還を果たした直後の彼女の荷物からひとつ、ある物が消え去っていたらしい。
異形への"転身"をも可能とする『竜の悟り』なる秘宝らしいと専らの噂だ。
掌に乗るような子蜥蜴が竜になる、など誰もが疑うだろう。
だがどのような神にすら、生きとし生ける物の未来を定めることなど出来ないのだ。
フォズが美しく、誇り高き大神官に成長したのも。
小さな蜥蜴が、巨竜へと変貌を遂げたのも。
もしかすれば悲劇や奇跡などが関係したのではなく、成るべくしてなった結果だったのかもしれない。
それを証明できるものは居ない。
居ないからこそ、人は変わろうとするのだから。
─全ての生命の前に、無限の可能性が広がっている限り。
全ての生きとし生ける"ひと"は、"誰かに"なれる。
今日も明日も、フォズはそれを信じ、祈り続ける。
*******
眼を開いて最初に認識したものは、あたたかい木漏れ日だった。
さわさわと葉が擦れ合う心地よい音が、この場を支配している。
他に音と言えば、遠くの小鳥が囀る声が静寂にアクセントを刻むだけだ。
この場所は、確かに記憶にあった。
そう、ここは『彼』と邂逅した場所。
私にとっての、冒険の始まりの地であった。
「………」
いや、それはあり得ないだろう。
確かに似た場所というのは、存在してしかるべきだった。
鏡写しにしたような景色が存在したとして、珍しくないと知っている。
夢のような話だが、そんな旅路を歩んだのだ。
だが、彼らと出会ったあの世界はもう既に─
「ああ」
深き森に、足音が、草をかき分ける音が交わる。
そして最後に青年の声が、届いた。
自分は、例えようもないくらい深く、この声を知っている。
野山を駆け、砂漠を越え、厳しい雪原も耐えぬいた。
果てしない旅路を乗り越え、彼と共に戦い抜いて生きてきたのだ。
忘れようが無い。
「こんな所に居たのか」
そしてその果てに、己の正体を知り、そして取り戻すまでに至ったのだ。
私にとって恩人と呼べる、大切な主と再び会えた。
逆立つ蒼髪を風に揺らし、彼は歩み寄る。
その光景も、あのときとまるで同じに見えた。
「みんな、どこに行ってしまったんだろうな。お前は、知らないか?……!」
鼻先を撫でてくれる感触すら懐かしい。
と、その手が驚きに止まった。
透き通るように白く美しい毛並みに、血の汚れが見受けられたからだ。
「……何か……」
快活な表情が、みるみる不安に染まる。
主もまた、同じ感情を抱いたように感じ、私は鼻を擦り寄せた。
己に名を与えてくれた、心優しき巨漢はもういない。
迷える一行を導いてくれた美しき女性も、辛い旅路を明るく盛り上げた赤毛の少女も、もういない。
主と一度は剣を交えた鋭敏たる剣豪も、彼に馴致する猛き巨竜も、いないのだ。
私と、私の主は、かけがえのないものを、本当にたくさん失ってしまった。
「何かが、あったんだな……?」
天馬と同じ、共に強き眼差しの光を放つ双眸が哀しみを帯びる。
最も誉れ高き姿と力を持った名馬ファルシオンは─どこか悲しげに嘶いた。
そして自らが馬であることを、ほんの僅かに呪うのだ。
ああ、私が鳥であったなら。
ここまで聞こえるほど美しく澄んだ、あんな声で歌えれば。
その歌で、主の心を安らげることができたら。
私が貴方を想う気持ちをその歌で紡げればどれだけいいだろう、と。
*******
グランバニア王、そして王妃と王子の失踪。
世界稀に見る大国の要人が、一夜にして消えた。
ただひとり、王女のみを残して。
騒ぎは大陸全土に及ばず、友好国ラインハットやテルパドールにも及んだ。
直ちに各国からの捜索隊が向けられた、が─
彼らの影も形も、無い。
かつて先代王妃が拐かされた魔界にて、地獄の帝王が目覚めたのではないか。
魔物との友好を深めたがための、謀反によるものではないか。
王妃が息子を連れて逃げ、王はそれを追いかけたのではないか。
実しやかなる噂が次々に流れ、忠臣サンチョや国王代理オジロンは大いに頭を悩ませる。
なぜなら、そのどれもがその行方を掴む手がかりとは程遠いものであったのだ。
そんな騒動の中、サラボナの大豪商ルドマン氏がグランバニアを訪問した。
なんと時を同じくして、彼の愛娘フローラが行方をくらませたというのだ。
両者の関係は友好そのものだったとは言えど、あまりに近しい時期の失踪。
互いが、何かを隠していると疑いを持ち始めるのも時間の問題であった。
取り戻された平和に、ほんの少しの亀裂が入る。
そして。
─8年。
「……」
あれから、タバサの日常はそこまで変わっていない。
大国ラインハットの援助やオジロンとサンチョの努力もあり、グランバニアは亡国とはならずにいる。
だが頭を失った蛇が徐々に死へ向かうのと同じく、国家は衰退の一途を辿るばかりであった。
そして正式の王位継承者である彼女。
だが、その時間はあのときのままだ。
孤独という苦しみを抱え、蹲ったまま前に進めていない。
時折訪れるラインハットのヘンリー国王夫妻やコリンズ王子とも顔を合わせようとしないまま過ごしていた。
何度となく、絶望のあまり身を投げようとして止められている。
いつしか彼女の部屋の窓に、格子が嵌められた。
囚人のように鉄格子越しの月を眺める毎日が続いた、ある日。
眠れない彼女は、またかつての記憶に縋っていた。
脳裏に浮かぶのは、優しき母の子守歌。
眠りへ誘うメロディーを想い描きながら─
本当に、本当に気まぐれにだが。
歌った。
家族との幸せだった時間を、忘れられなくて。
"……タバサ……タバサ!!"
「!」
消えたはずの、彼女の半身たる兄の声がする。
美しく成長した彼女より、思い出の中にある、幼い頃のままの声が。
"……んね……ごめんね、タバサ"
"君と……一緒に、居られなくて……すまない……"
「お父さんっ!?お母さんっ!?」
いなくなったはずの両親の声がする。
この状況下ならば、誰しも幻聴を疑うだろう。
だが、タバサに届いたこの声。
いや、これは声ではない。
魂が告げた、最後の思念。
世界を、長き時を越え─届いたのだ。
彼女が紡いだ、歌声を手繰り寄せ。
"タバサ。もっとあなたと、ずうっと一緒にいたかった"
「お母さん……おかあさんっ!!おかあさん!!どこ!!」
"君を悲しませたくは……なかった……"
「どこなの……どこなのおとうさぁんっ!!」
"ごめんなタバサ。僕ら……もう"
「お兄ちゃんっ!!待ってお兄ちゃん!!!わたし一人なんてやだ!
やだってばぁっ!」
タバサは何年かぶりに、大声を上げて泣いた。
大粒の涙が溢れ、ドレスの裾を踏んで足が縺れ、それでも声の元へ辿り着こうと足をばたつかせる。
まるで─子供のように。
"だいじょうぶ、タバサ。君はこれからも、ひとりなんかじゃないから─"
「……いかないでっ!!おねがい、待ってよぉ!みんなぁーーーっ!!」
"どうか、泣かないで"
─遠い遠い、未来。
人と魔物とが、いつしか心を通わせ、世界は真の平和が訪れる。
そこには、平和に向けて尽力した、一人の女王がいたという。
その女王は、幼い頃に別れた大切な人たちの帰りを、今でも待っている。
多くの国民と、様々な種類の魔物たち、そして全ての世界の人々までもが。
心を通わせて、王達の帰還をいつまでも待っているらしい。
『おかえりなさい』と言うために。
*******
山奥の、静けさを保った小さな村。
美しい花が咲き誇り、森の動物たちがあちらこちらから顔を出す。
自然あふれるこの村にも少しずつ住人が増え、村は再建へと向かっていた。
小鳥の歌声が朝日を彩り、村人たちは今日も畑に向かう。
そんな事件など何一つ無い農村。
そこに、血相変えた宮廷魔導師が駆け込んできたのはつい最近だ。
「アリーナとクリフトが姿を消した」。
剣を鍬へと変えて、穏やかに暮らしていた天空の勇者には寝耳に水の知らせである。
移動魔法ルーラの使い過ぎで息を切らす彼に茶を出して聞いた話によれば、奇妙な話であった。
またも姫が脱走を企てた月夜の晩、それを追いかけていたクリフトとブライ。
やがてアリーナにクリフトが追いついた、と思ったその瞬間。
彼らは息を切らすブライの目の前で、消えてしまったと言うのだ。
まるで、煙のように。
「トルネコ殿ならば二人を匿ってもおかしくないと思い、訪ねましたがな……」
エンドールの店は閉まっていた。
こと商売に関して熱心なトルネコ、これは滅多なことでは無い。
何事かと裏口を叩いてみれば、浮かぬ顔のネネが出てきた。
聞けば、何一つ告げることなく忽然と姿を消してしまったとか。
「奥方によれば、このようなことは過去に無かったそうな……よもや」
「?」
「あの魔王めがまた良からぬことを企んで……」
ブライはピサロと旅路を重ねたとは言え、魔物とは相容れないという歴史を歩んできた人物だ。
故に彼を信用するのに最も長くの時間を必要としたものだ。
そうして、平和になった今。
姿を見せぬかつての魔王に、再び疑いの目を向けてしまいそうになる。
しかし。
「─たぶん、違うよ」
「む?何か知っておられるのですかな!?」
「……今朝、見つけたんだ」
ユーリルは懐から、そっと何かを取り出した。
汚れたそれは、布だろうか。
黒く、そしてボロボロになった布切れ。
汚れは、旅なれた彼らならば見慣れたもの。
「血……ですかな」
「たぶん、ね。ピサロのだ」
魔法使いは、驚きに眼を丸くした。
退魔の使命を背負って勇者にしか知り得ぬ、何かがそこにあったのだろうか。
少々悲しげな瞳をしたまま、勇者は告げる。
何を知っているのか、何も知らないのか。
底しれぬほど澄んだ瞳の深きから、それを窺い知ることは、できない。
勇者は、多くの仲間を失った。
けれどもその事実を知ることなく、これからも生きていくのだろう。
ただ、いつまでも帰りを信じ続けて、待つのだろう。
そして─
「ピサロは、誰かを守り続けてるんだよ」
「あ奴めが……ですか?」
「ああ。きっと、ね」
かつての魔王が、信じる心を以て人を愛したと、そう信じて。
勇者は笑顔で、かつての宿敵を肯定した。
きっと彼がその場に居れば、こう言うことだろう。
ため息混じりに、だが決して不快そうにでは、なく。
"まったく、勇者という奴はどいつもこいつも"
と。
*******
光を取り戻したアレフガルド。
その広野を行く、一人の戦士が居た。
「……」
極限まで鍛えられ、尚も美しさを損なわない肢体。
それを惜しげも無く晒すような軽装な鎧を身に纏う女戦士。
彼女は、大魔王を打ち倒したパーティの一人。
名を、デイジーと言った。
彼女は、世界を救う前から旅をしていた。
故にこうしてゾーマ亡きアレフガルドを、こうして歩いている。
どこかに腰を落ち着ける、という選択もあった。
例えば腕を見込まれて、ラダトームから士官を勧められたこともある。
その美貌から、異性から伴侶となることを求められたことすらある。
だが彼女にとって、どうにもそれは性分に合わない選択だった。
一匹狼の彼女にとって、静かな旅というのは好ましいはずだが。
今は、どうにも静かすぎた。
騒がしい旅に少々慣れすぎてしまったのだろうか。
夜も更けて火を焚き、早めに眠りにつく。
いつものように、そうしようと思っていた。
だが今夜はどうしたことか、どうにも胸がざわついていた。
こんなことは久しぶりで、どうすれば眠れるのかわからない。
素振りをしてみても、酒を呷ってみても、まるで眠れそうになかった。
故に、火をじっと眺めてみることにする。
こうしていると、旅をしていた時のことばかりが頭を駆け巡る。
決して楽しいことばかりではなかったが、とても大切な思い出だった。
思えばあの旅で、初めて心から自分は笑えた気がする。
そう、あれはバラモスを討伐した際のアリアハンへの凱旋祭。
アリス達と手を取り合い、凱旋のファンファーレに聞き入っていた。
懐かしく思えたデイジーは、見かけによらず澄んだ声色で、柄にも無く口ずさむ。
穏やかな気持ちとなり、ぼうっと思いを巡らせているその時。
とても唐突にではあるが─気配が増えた。
「デイジー?」
反射的に剣を取ろうとした手が、強張る。
普段ならばあり得ないことだ。
だがその声がつい今しがた、思い出していた彼女と─余りにも一致していた。
「……デイジー!!ああっ……」
そう、それは。
彼女の、掛け替えのない友。
そして敬愛する、小さき勇者であった。
「デイジー!!デイジーですね!?」
「そうだ、アリス」
「うっ……」
勇者アリスの表情が、ぱっと子供のような笑顔に変わる。
そして、みるみるうちに─泣き顔になり、涙が溢れ落ちた。
「うあぁ……ひぐっ、う、うわあぁぁぁぁぁっ!!」
「アリス、泣くな」
「ううっ……うっ……」
「……久しぶり」
世界の救世主は今、この瞬間に限り単なる少女となり、戦士デイジーの胸を借りる。
そして声が、涙が涸れるまで涙した。
それは、大切な親友達を失った哀しみの涙。
それとその事実を、生きて親友に再開し、伝えることができた─喜びの涙だった。
─残念ながら、この後勇者アリスと戦士デイジーの姿を見た者は誰もいない。
ただ、勇者が死闘から持ち帰った道具のうちの一つに、指輪があった。
戦士へと贈られたその指輪は『戦士の指輪』として後の世に伝えられたという。
そして、伝説は再び─始まった。
*******
「……傷は……痛むかの?」
「いいえ、もう平気。いつまでも床に伏せってなんていられないもの」
ラダトーム城の対岸、かつての竜王が君臨した城の跡地。
かつて毒沼に覆われていた地は花畑となり、春の香りを漂わせていた。
そのすぐ傍らにて、やや古めかしいが洒落た机が置かれていた。
そこで彼らは、美しい装飾のティーカップをふたつ、挟んで語り合っていた。
片腕となった王女は焼け焦げてしまった髪をばさりと切って、印象はやや大人びた風になっている。
母国の再建のみならず、世継ぎを失ったローレシア、サマルトリア両国をも支える使命を背負うことになる。
このか細い肩で支えられるのかという不安は確かにあった。
だが、迷う暇は無い。
シドーと戦った時のような仲間は、もう居ない。
そして、『アレン』の遺志を守るのは今や自分ひとり。
─私が、私がしっかりしなくては。
「……どうしたのじゃ?」
顔が強張っていたのか、心配そうに覗き込んでくる。
幼い子供を彷彿とさせる少々甲高い声で、問いかけられた。
「いえ……なんでもないの」
「マリア、出来ることがあらば何でも言ってくれい。わしらは友達なんじゃからの
……おおそうじゃ、このみやげのケーキも半分やろう」
「ふふ、ありがとう竜王」
ときたま、姉妹国家の代表としてラダトームを訪れる機会がある。
その度、僅かな時間を縫い、こっそりと竜王の曾孫とふたりきり、ささやかな茶会を楽しむことにしている。
アレンの面影を見出しているから、という理由だけではない。
友と呼べる存在を、あまりに一度に失いすぎて─マリアは、やはり寂しいのだ。
「よいよい、無二の友ならば当然のことじゃ。そうじゃ、これからはそなたをマリアちゃんと呼ぼう」
「え、ええっ?」
「わしのこともリュウちゃんと呼んでいいぞよ、かっかっか!」
記憶に新しい彼の曽祖父と比べれば、とても小さく若い彼(彼女?)は性格もまるで一致していない。
だが、よくよく考えてみる。
先祖同士の闘いなどまるで気にかけず、こうして人間に対して友好的な竜王の曾孫を見ていると─
(あなたの遺志はちゃんと継がれていたのね)
"人と竜とが手を取り合い、笑い合える世界" 。
今はこうして、ふたりきりだけど。
徐々に人と竜との間に、境界線なんて引かれない世界を。
私たちで、作っていきたい。
そうすれば、きっと。
(また、あなたに……みんなに、出会える気がするから)
遠い空に思いを馳せながら、微笑んだ。
向かい側からきょとんとした視線を向けられ、そうだ、と一つ思いつく。
「ねえ……聞きたいことがあるの。
「む?なんじゃマリアちゃん」
「……あなたにも、本当の名前があるのよね?」
「おお、そういえば名乗っていなかった!もう何年も名乗ることなぞなかったからのう。
わしの名はな、偉大なるひいじいさまから……」
新たなる仲間を加え、探求の旅は続く。
仲間たちの思いを抱え、いつまでも走り続ける。
遙かなる旅路を越え、果てしなき世界を突き進んでいく。
この道も、我が旅も─終わらない。
*******
─また、一人か。
死地より帰還して、初めに口にするのが、こうも辛気臭い台詞だとは思わなかった。
でも、こうも言いたくなる。
いくら一人に慣れていたって、孤独を望んでなんかいやしない。
帰ってきたアレフを迎えたのは、人も疎らな新天地であった。
アレフガルドを出てここに、自分の力で国を興す。
途方も無い話だが、二人ならなんとかやっていけると思っていた。
─思って、いたのに。
「……私の治める国があるなら……それは、私自身で探したいのです……っか」
柄にもない、滅多に使わぬ一人称で喋ったかと思えば、国王の御前でとんだ大見得を切ったものだ。
どこぞの風来坊に娘と国を譲るとまで言ってくれた好意を、断ったのだ。
なかなか覚悟のいることをあの時はよくもまあ、やって退けた。
さすが勇者だ、あっぱれな奴めと、半ば自嘲気味に笑う。
頭を掻こうと兜を外し─
ああ、今は無いか。
無性におかしくなって笑いが漏れる。
落ち着いたところで、深く息を吸って、吐いた。
ごろりと草原に横たわり、ずいぶんと久しく見ていなかった真の青空を仰ぐ。
ゆっくりと別れを告げる暇もなく、別れてしまった皆の顔を、一人ひとり思い出していく。
幸せに、なってくれよな、エイト。
君はきっと立派に成長してるだろうな、フォズ。
いつか会えたら、ぶっとばしてやるから覚悟しておけよ、ピサロ。
俺は、君に恥じない勇者になってみせるよ。アリス。
……きっと、君に未来を繋ぐ。
その時まで待っていてくれ、マリア。
俺の国に来るって約束、守れなかったな。
でも見てろよ。
必ず良い国にするぞ。
お前の息子だか娘だかが……あいつ、子供いたのかな?ま、いいか。
そいつの居場所だってちゃんと用意してあるような、立派な国にしてみせる。
─じゃあな。
アレン。
……君のうたが、聞こえたよ。
おかげで、帰って来れたんだ。
最後まで世話になりっぱなしで……すまない。
それから……また、会おうな。
しばらく一人で頑張ってみる。
そうだ。
新しい国は、俺のじゃなく君の名を国の名にするよ。
楽しみに待っててくれ。
─愛しているよ、ローラ。
これから先、また邪神のような大いなる災厄が目覚めるかもしれない。
世界を脅かす邪悪な存在は、いつどこにでも現れかねない。
だが、その度に必ず、立ち向かおう。
世界を、いのちを愛する─真の勇者として。
「さてと……!」
勢いをつけて、起き上がった。
風は、自分に吹いている。
─アレフの、新たな旅が始まる。
*******
たくさんの、命があった。
たくさんの、死があった。
全てが、それぞれの思いを、信念を、愛を謳い。
戦い、そして散った。
そうして生き残った、わずかな命。
彼らもまた戦うのだろう─誰かを、何かを、愛する限り。
戦いではなく、愛するものを求め、探すため。
人々は強く、光ある生を歩み続ける。
だから、彼らは今日も生きていく。
それぞれが、それぞれの─
愛の歌を、探して。
DragonQuestBattleRoyale Fin
と、いうわけで今回の投下をエピローグとして、
勝手ながらDQBRを締めさせていただきます。
納得がいかないラストだ、ここはこれだとおかしい、という声もありましょう。
ですが私の力ではこういう締めしか思いつかなくって……すみません。
ともかく長く苦しい彼らの戦いがこれで終わりました。お疲れ様でした参加者のみなさん。
そしてどこからともかく支援に駆けつけてくださった皆様。
今までこのロワを追っかけてくださった皆様。
WIKI編集してくださった皆様、支援作品を作ってくれた方々。
本当にありがとうございます。
そしておつかれさまでした。
長々と語るのもアレですね、すみません。
これにて失礼致します。
※誤字とか修正したいところがあれば指摘遠慮無く。
現に今投下した後で見つけました(後で直したい)
投下……乙でした
長きに渡る戦いが終わり、生き残った者たちはこれから先も生きていく
最後を締めくくるにふさわしいエピローグで↓
そしてこれにて本当にドラゴンクエスト・バトルロワイアルが終わったのだなと思うと感無量です
◆I/xY3somzM氏、書き手の皆さま、本当にお疲れ様でした
感無量って言葉はこういうときに使うんだろうなあ
本当に本当に、お疲れ様でした
この余韻に浸ったまま年始を迎えようと思います
本当に…gjです
このロワに出会えてよかった。バトロワで泣けるなんて、なんだか稀有ですよね(笑)
最後まで泣かせていただきましたよ
投下してくれた書き手さん方に感謝します、本当に乙でした。
投下おつでした。
すばらしい物語を綴ってきてくださった歴代の書き手さまがたへの感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。
ドラクエロワに出会えてよかったです。
今年の締めくくりに相応しいラストだった、本当に投下乙。
年越し〜新年はまとめ語りでもやりたい気分だw
なんか感動するわ・・・
ついに完結か
開始当初から見てた者としては凄い感慨深い
上に同じく。
本当に完結したけど、まだいろいろ語ったりしても良いよな?
692 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/01/01(日) 05:46:45.19 ID:sFXmgico0
おk
ああ、やべー
新年から胸がいっぱいでどうしたらいいのかわからねー
DQロワ完結おめでとう
皆のその後のパートが好きすぎて何度も読み返してる
これ何気に順番が8765…ってなってるんだなw芸細やかだ
そしてこれの投下日がドラクエ25周年のシメの日でもあったんだな〜としみじみ
694 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/01/01(日) 15:13:55.27 ID:At9ZBHi7O
明けまして完結おめでとう!
すっきりサワヤカな気分で新年を迎えられたよ!
エピローグだから当然戦闘描写なんてないもんだと思ってたが、生き残りの皆の戦いはこれからなんだよな
じーんときた
謹賀辰年
さあ次なる冒険へ!!
8
エイトつらいなあ
最後の決意、どことなくイイ男度が上がってる気がする
歌姫ミーティアの存在がエイトにとっての愛のうたなんだなー
7
まさかのレオン竜化にびっくり
マリアやアレフが言っていた人と竜の共存にリンクするものを感じて胸がほっこりした
派手な下着云々のくだり、最終的なお色気担当がまさかこの幼女だったとは誰が予想しただろうか
6
最初誰か分からなくてごめんなさい
ただただ切ない…歌えたらいいのにっていう願いが切ない
仲間ほぼ総倒れな主人公も可哀想だ
5
タバサ…まじ…これは…
フローラ側と諍いが起こってしまったってのも…もう…
DQロワの5勢の不憫さが極まってる…何も言えねえ…
4
ピサロ良かったな。何がとはうまく言えないが
かつての宿敵を肯定した、ってフレーズが良い
この辺りアレフと竜王の関係と似たものを感じてしまった
3
これまで回想でたまに描写されることはあった女戦士だけど
なぜかすごい親近感というか安堵感というか存在感を感じた
アリスに待っててくれた人がいて良かったと心底思う
2
曾孫いいキャラしてるなあ
参加キャラ投票のとき集計違いで落ちてしまった経緯が汲まれてるんだとしたらニヤリとせざるをえない
竜に名乗る習慣が無いっていうゴンさんからの設定が続いてるのもいい
1
独りになってしまったアレフ…その前の竜王との別れが既に悲しい
けど他の皆のことを案じる心はまさに漢であり勇者だ
いつかアレフがローレシアという国を建てて、そこにアレンという名の王子が誕生するのかもしれないと思うと…
遅れたけどざっと感想を3行で書いてみた。
本当に素晴らしかった。お疲れ様でした。
全滅した作品のエピローグの書き方がうまいな
特に6のファルシオン視点という発想はなかったわ
正直言われるまで6主が出てなかった事に気づかなかったw
愛の歌、愛の歌、愛の歌、うああああ!
投下乙です!
もうね、文句なし!
すでに言われてるけど下着とかレオンとかファルシオンとか全滅組とかローレシアとか指輪とか孫竜王とか
細かいとこも拾って、ニヤリとさせて、全部の世界でのその後を、彼らがいた証を、届いた愛のうたを聞けてよかった
いい締めくくりだった、今までありがとう! 他の書き手さん達にもありがとう!
細かいとこにこだわりが見えるいいエンディングだった……本当に乙です
至るところに曲ネタが散りばめられてるのもよかったよ
もっと語りたいな!
完結したことだし全話振り返ってさ
改めて、好きだった話or好きだったキャラ、とかで語らない?
完結したから生存組についても気兼ねなく話せると思うしさ
自分は「明星よ、見よ」が一番印象に残ってる
エイト+アリーナ組が好きで追っかけて見てたけど、切ない以上に、これが凛々しいアリーナにはふさわしい終わり方だと不思議と納得してしまう
アトラスにもあまり恨みが沸かなかったし、何より戦闘描写に興奮させられた
もちろん他にも麗筆な話は沢山あるけど、一番濃く感じたのがこの話かな
こういう語りはok?
ガンガンいこうぜ
フォズの健気な姿が大好きだったわ
ナジミの塔での決戦とアレフ登場シーンに心踊った。
フォズ死亡ルートも没スレに上がってたけど、やっぱ導き手として彼女が残ってくれててよかったと思う。
あとはトロデの父の愛に泣いた。
スレに出会ったのがちょうど「いくつものさよなら」投下後くらいで、すごく印象深い。
回収されなかった伏線ってなんかあるかな? 完結後に野暮だけど…
>>702 いいね
「明星よ、見よ」は確かに印象深い
このロワ追っかけようと思うきっかけになった話だった
>アトラスにもあまり恨みが沸かなかったし
そうそう。熱血戦闘熱血展開の大元はこの話だと思ってる
アトラスもマーダーというよりいいファイターって感じだったよなあ
>>704 ナジミ決戦までの流れはすごかったね
○○戦って単位でいうとナジミ決戦が一番好きだ
書き手さん達のリレーが凄まじかった屈指のエピソードだと思う
たった今最初から読み終わった!
すjごく面白かった。
ロト三世代揃い踏みがアツかったなー。
そして竜王アレンカッコいいよ。死亡時はウルっときた…
この企画にリアルタイムで参加できなかったことだけが残念だわ。
昨日の夜「そういや今年は辰年だったな」とこのスレに影響されて購入した竜王様フィギュアを目にして
3年ぶりくらいに纏めサイトをチェックしたら、完結していたので第三回放送から一気に読んでこの時間だよwww
6年かー長かったなー。途中からリアルで転職とかで忙しくなって途中離脱みたいになって御免なさい。
本スレのアリアハンの激戦あたりから話についていけなくなってSS書けない鬱憤を
死者スレへのネタを投下することで晴らしていた日々が懐かしい!!
もう既にただ1匹じゃない竜としがない戦士コンビも良いけど
やっぱエイト・アリーナ・キーファトリオが大好きだ!!
>>704 回収されなかった伏線?探すのが難しいっつーか
この企画リレー小説で初登場や支給品に関しては打ち合わせ無しのはずなのに
全てはこのエンディングの為に用意されていた!てくらいキレイに揃ってた気がする
それにしてもククールが残したアリアハン城の本って汎用性の高い伏線だったんだなぁって思う
もうね、どの話が一番好きだとか、どのキャラが一番好きかじゃなくて
この作品、書き手さん、このスレの住人さん達も全部ひっくるめて「一番大好き」だ!!
ドラゴンクエスト・バトルロワイヤル最高だ!!ありがとう!!
710 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/01/11(水) 21:14:34.38 ID:ksArLHpK0
保守
アレフが好きだった
ロトシリーズやったことなかった世代だったけど、話追うごとにどんどんかっこよくなってさー
まさに、勇者を背負った男の生きざまだった
エピローグの締めくくりもグッと来る
wikiを読み返してみて、序盤〜中盤であれだけ大暴れしたバーサーカーが殺害数1人ってのが意外だった
今はまだ余韻に浸る時期だろうけど、そのうち2ndも開幕出来ると良いな
今更だけどエピローグのタイトルの「愛のうた、探して」って「ラブソングさがして(DQ2ふっかつのじゅもん)」か!?
715 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/01/21(土) 00:08:32.91 ID:pF0ELsqM0
マリアをレイプしたい
>>715 マリア「イ オ ナ ズ ン」
DGOOOOOON
てなるからやめとけ
命大事に。
ワロタwww
>>714 なるほど、気付かなかった。随所までDQネタですげー。
生存者達が元の世界へ帰還する為のふっかつのじゅもんがラブソングってのも深いなぁ
余韻に水を差す様で申し訳ないのですが、誤字脱字発見したので報告させていただきます。
Wikiで修正しようとも思ったのですが、何しろ久しぶりで間違って消してしまったら大変だと思ったのでw
>>635「もう交わってはくれない、勇者血筋と竜とが行く、生と死で分かたれた道。」→「勇者『の』血筋?」
>>644「魔物も現象したとはいえ」→「魔物も『減少』したとはいえ?」
>>665「それとその事実を、生きて親友に再開し、伝えることができた─喜びの涙だった。」「生きて親友に再会し」?
>>720 丁寧なご指摘ありがとうございます、修正させていただきます。
いろいろと感想残してくださる方がいてくれてうれしいです。
それだけこのロワを呼んでくれてる人がいらっしゃったと思うと感慨深いです。
余談ですが、かつてよく行われていたチャットでも復活させてみようかなと考えています。
DQBRチャット2が立ち上がってることですし。
余韻がだいぶ収束を見せているこんな時期に何を、とおっしゃるかもしれませんが。
書いた本人もいろいろ盛り上がりたいという大人気ない戯言ですはい。
今週の土曜22:00あたりでも。以前は夜10時によく集まったなあ。
お好きな方はどうぞ、そうでない方はスルーよろしく。
携帯まとめ人です。
あけましておめでとうございます。
挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。
そして、完結おめでとうございます。
最終話まで保管いたしました。
この素晴らしい企画にリアルタイムで立ち会えたこと、本当に嬉しく思います。
至らない点は多々あったと思いますが、少しでもお役に立てたのでしたら幸いです。
感動をありがとうございました。
【保管庫@Mobile】
ttp://dqbr.roiex.net/
>>722 まとめさんも今までおつかれ様でした!
そしてまとめをしてくれて本当にありがとう!
>>721 土曜22:00把握!!
>>722 やった!!これでベッドで寝転がりながらDBロワが全部読めるぞー!!
ドラゴンクエスト・バトルロワイアル完結おめでとうございます。
諸事情により祝辞が遅れて申し訳ありません。
思えば私が初代スレを立てたのが2006年4月16日……それから5年半以上、6年近くもの歳月を経ていたのですね。
短気完結を目指します(キリッ、とか今思えば何をいっとるんだという感じですがw。
この企画は私のものではありません。今まで参加された全ての書き手、保管庫、Wiki等の管理人様、
そして読み手の一人一人に至るまで全ての住人の皆さまの企画です。
しかしそれでもあえて言いたい。
この企画に参加してくれて本当にありがとう。本当に、本当にありがとう。
特に終盤にてこの企画を支えてくれた◆I/xY3somzM氏には感謝の念が尽きません。
彼が最終回を書き上げてくださった瞬間、この企画はドラゴンクエスト・バトルロワイアルという「作品」へと昇華されたのだと思います。
その作品の一部になれたことを深く感謝したい。
そして多くの人がこの作品の一部となってくれたこと、そのことにもとても深く感謝したい。
言いたいことは尽きませんが、長々としたレスも見苦しくなるかと思うので最後にもう一度だけ。
DQBR完結おめでとうございます。
この作品に出合えて本当に良かった。
この作品に携われて本当に良かった。
私は幸せ者だ。
願わくばこの作品が皆様の幸せの一端を担うことを。
>>722 形態まとめのデザインも好きでした
最後までありがとうございます
そして昨夜はチャット、お疲れ様でした
むしろ、お楽しみさまでした、とでも言うべきでしょうかw
これで本当に全イベントも完結しちゃったんだなあっとしみじみ
今までありがとうございました! 楽しかったです!
うん楽しかった。5年前にたまたま見つけたこの場所に、こんなに長居することになるなんて思ってなかった。
最初はROMで、こっそり感想書くようになって、そのうち雑談にも参加してみたりして、
お絵かき掲示板に絵を描いてみたり、うっかり捨てトリで投下してみちゃったり、
そのあと速攻でリレーしてもらえちゃったり、そんでそれがまたすげー話だったり。
楽しかった。
こんなに楽しませてくれてありがとう。
もう終わりなんだって思うと寂しいけど、人生の糧だよ。大袈裟じゃなく。
本当に素晴らしい作品と人達に出会えた。ありがとう。
728 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/02/01(水) 15:05:59.65 ID:NvjDNp7J0
マリアを犯したい
キリストも助走つけて殴るレベルの狼藉
チャットやってたんだ
ログ取ってる人が居たら是非読んでみたいな
誰かいない?
完結記念に本編とついでに没スレ読んでたけど没作品も面白いの結構あるなぁ
ログが無いのならまたやればいいじゃない
前回見れなかったから確かにまたやりたいな
見てたけど
4割ここの話で、6割FFDQバトロワという感じだったかな
〜時に一度だけ、みたいのより毎週〜時に〜分間みたいにしたほうが入りやすくない?
問題は時間を設定したところで集まるかどーかだよね
以前はかなり定期的にやってたんだよ
それをしなくなったのは集まりにくくなったからで
だからいつもこの時間じゃなくて、たまにくらいがちょうどよいんじゃないかな
なんか語りたいことあるならここに書けばいいと思うよ?あと260ほど余ってるわけだし
あとやりたい事って言ったら一日一話語りとかかな?
まあ一日じゃ語りきれないような話が多いが
>>736 それ、何度かやってるけど、いつも途中でリタイア状態になるんだよなぁ
一日じゃ語りきれないというか、一日じゃ誰も語ってくれないというか
ほっしゅ
今序盤の話見てるとゲマさんがあっさりすぎて笑った
739 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/03/06(火) 02:25:44.57 ID:Pi3ek92H0
浮上
ソードやモンスターズや9を入れて、2ndとかやって欲しい。
9は主人公以外のキャラの性格とかいまいち掴みづらいけど、大丈夫なのかな。モンスターズはやったことないや
やっぱモンスターズやソードみたいな外伝作品になると既プレイ率がくっと下がるから
ナンバリングだけでやった方が良いと思う
確かに、ナンバリングだけがいいなあ。
トルネコぐらいしかやったことない。
アイテムが外伝から出てるのがちょっと面倒
ストーリーやキャラと違ってアイテムくらいネットで即調べられるし、今まで定番アイテムもあるからそうは思わんな
参戦作品のあたりは確かに揉めそうなとこだ
ナンバリングのみっていうのがDQロワの特色と考えるか、変更すべき点と捉えるかどうかだよな
そもそも書く気あるのか?
最初は書き手多いよ
話が進むにつれて制約が増えてくるからねー
お久しぶりです。
エピローグの余韻も冷めやらぬ時期かと思いますが、そろそろ次を見据える声も高くなってきた気もします。
そこで「ドラゴンクエスト・バトルロワイアル II 」の開催を提案したいと思いますが、いかがでしょうか。
やりたい、まだ早いなど、未だにこの企画に注意を向けてくれている方がおられましたら反応、ご意見をいただきたいです。
実績のある書き手さんが纏め役をやってくださるのであればいいと思います
止める理由はないのでやれるのであれば。
ただ前回見事完結したとはいえ、開始から5年半もかかったこと
前例としてパート2は挫折しやすいこと
その辺をふまえ、再び長い道を歩き始める気力はあるのか
あるいはいっそ開き直って途中で終わってもいいやくらいの気持ちでやるのか
偉そうな言い方で申し訳ないですけどね、大事なことだと思うので
本当に偉そうだね
口振りが完全に他人事だし書く気ないようなのに
そこまで言える資格あるのかね
あえて、今回よりも小規模でやるぐらいの工夫がいるかもね。
>>753 資格はないよ。実際1stの途中で書けなくなったクチだし
だから最後をまとめてくれた書き手さんには本当に頭が下がる思いだけど
また誰かがやってくれるかどうかはわからないし、期待するのも忍びない
ほんと、しんどいから
完結させるの目的で始めるわけでもないしなあ…
いかに自分が楽しむかに重点置いていいんじゃないの
5年半の大半が完結待望ムードだったから言いたいことは分かるけどね
資格はないけど口出します
頭が下がるし期待するのも忍びないけど、ケチつけます
じゃあもう黙ってろよw
自分が書く覚悟は無いのに無責任で申し訳ないけど
初めてくれると読み手としては大変嬉しい
個別のエピソードを読むだけでも楽しいし
完結を待ってる間も、ただ純粋に楽しみにしていて
続きを書かないプロ漫画家に対するような苛立ちは感じたことは無かった
お祭みたいなものなんだから、気楽にやってもいいと思う
私としては完結は絶対にしなくてはならない、というものでもないと思っています。
もちろん完結を目標として話は作っていきますが、途中で頓挫してしまったとしても
それまでを楽しむことが出来たのなら、それはそれでアリだと思うんです。
前回は最初に短気完結を目指すなどと書いていましたが、途中からはそんな気持ちで書いていました。
なので何年も続くことになるのかもしれませんが、絶対に完結させる!という覚悟は持ってません。
そのかわり、なるべく多くの人とお祭りのように楽しく話を作りたいという意思があります。
人数に関しては1〜9までの作品から6名ずつ選出してジョーカー含めて60名前後でやっていきたいと考えています。
このあたりはまだもう少し他の人の意見を伺って詰めていきたいですね。
人数的にはそんなものじゃないかな
1作品七名くらいとってもいい気はするけど
後はマップとキャラの選抜が終わればOPへ行けるかな
応援するよー
無理に全作品同人数にしなくてもいいと思う
やっぱナンバリング以外は無しの方向?
ナンバリングのみにした方がいいと思うよ、絶対
人数については作品別で差はつけない方がいいんじゃないかな
どれだけ差をつけるかで揉めそうだし1からは定番三人の他にモンスターから出せばいい
他にキャラがいない訳でもないしね
このロワを知ったのが終盤で、書き手参加しようにもできずにいたので
2nd開催をほんとうに楽しみにしていました
声をあげてくださってありがとうございます
ナンバリングのみ、各シリーズ6人でいいと思います
7人までいくと参加者60人越えで、ちょっとハードル高く感じます
ナンバリングのみに賛成。
ソードとか、モンスターズやるのもツラい。
9まだやってないから、大急ぎでしないとw
支給品はモンスターズやソードとかの外伝から出すのもあり?
アイテムはありでしょ
初代もトルネコとかから出てたし
効果もすぐに調べられるしね
ただダイ大やロト紋等の漫画出典の
アイテムはどうしよう
無しにした方が無難かな
ダイの剣みたいな専用アイテム無しならいいんじゃないかなあ
専用アイテム無しで、外伝または漫画出展アイテムは
効果と歴史を事細かく記載することでおkじゃ?
そこまでして出す意味があるのか?
ナンバリングタイトルだけでも不足は無いだろうに
鎧の魔槍、鎧のシーザーなどの専用ではないが濃いものはありなの?
別に出しちゃいけない理由はないし、1stでも実在兵器が出てたくらいだけど
カールグスタフががんばってたくらいで結局はゲームに出てくるアイテムを駆使することに落ち着いた
要はそれを出して他の人がうまく活用くれそうな要素があるかだよ。それに尽きる
携帯版DQのアイテム出したらまず調べられなかったりはするw
テンプレも見直した方がいいね
予約延長制度は当初無かったはずだから削除かな?
漫画出典アイテムは無しでいいでしょ。
ドマイナーな作品のむつかしそうなアイテムとか出されたら困る。
漫画出展アイテムは無しに賛成。外伝のはすぐ調べられるからあってもいいと思うけど。
MAPは、今出てる中では6か9かなぁ。8はなんか複雑そう
個人的には、天空シリーズとして6を推したい
昨日はレスできずにすみませんでした。
漫画出典のアイテムは無しにした方がよさそうですね。
MAPの方は土曜日に投票してサクッと決めてしまいましょう。
案があるならそれまでに画像のアップをお願いします。
続いて日曜日の24時間でキャラ投票をしてしまいたいと思いますが性急でしょうか?
スケジュールとしては
24日(土) 0:00〜23:59 MAP投票
25日(日) 0:00〜23:59 キャラ投票
26日〜30日 ルール等細部の詰め&OP案募集
31日(土) 0:00〜23:59 OP投票
4/2(月) 0:00より予約開始
と、このように考えておりますがどうでしょうか。
jと、書き忘れ。
OPに関しては複数集まったなら投票で決定。
一作のみならば(問題がなければ)それで決定。
OP案がゼロだった場合、不肖ながら私がOPを書かせていただきます。
こんな風に考えています。
キャラ投票の形式は前回と同じ?
つまり、1〜9まで各6キャラまで投票して多数決?
そうです。
テンプレ
【DQ1】
【DQ2】
【DQ3】
【DQ4】
【DQ5】
【DQ6】
【DQ7】
【DQ8】
【DQ9】
各6キャラ選択して投票
もちろん全枠埋める必要はありません
投票枠とは別に、Tで活躍された書き手さん限定の書き手枠なんかがあってもいいと思いますけど
えーと、それはどうでしょうね……。
活躍の線引きで揉めそうだし、人数的にこれ以上増やすのもどうか、とは思いますが。
要望が多ければ考えてもいいのかな。
主人公が男女選べる場合、ちゃんと分けて投票するのか最初の書き手任せなのかは決めたほうがいいのでは。
『主人公』 と投票されたり
『主人公男』『主人公女』と投票されたりするお方がいるかもしれません。
形全然ちがくね?w
>>784 3とか9の無名キャラにも同じことが言えそうだね
投票というか集計の際はとりあえず性別関係無しにして、決まってから性別の希望取るか、もしくは書き手任せでいいと思う
じゃないと投票が大変になりそう
あと、上で出ている書き手枠の話は個人的にあまり賛成できない
1stの書き手さんがどうとか言いたいわけでは決してないけど
書きて枠ってどういうこと?
意味がよくわからない。
書いて欲しい書き手さんってこと?
あっ有名書き手さんはキャラ投票の重みが違うってこと?
書き手枠からの投票は二票になるみたいな感じ?
それはいいかも
1stで書いてた頃のトリップ付けて投票したら2票扱いにするとか
投票権について差別化は考えていません。
キャラクターはIと同様、男勇者、女勇者、その他性別が別れている職業などは別で投票して貰います。
仮に男勇者と女勇者が両方枠を取った場合は票数の多い方が当確です。
同票の場合はランダムか決戦投票で決めます。
3,9の無名仲間キャラは当確できるのは3人までです。(3の商人は含めない)
投票の途中でスレが1000いっちゃうかもよ?
一気に加速するだろうし
例えば3勇者を男女どっちも出すってのは駄目かな?
ようはパラレル3世界ってことでどちらも本物
もちろん投票結果でどちらも上位ならだけどさ
めんどくさいから普通でいいよ
規制中で投票できない人もいるだろうし、スマホからだと書き込みする度にIDが変わる機種もあるので
投票自体はしたらばに投票スレを立てて行う予定です。
>>793 仲間や敵、その他知人の認識の齟齬が問題ですね。
非常にややこしくなることが予想されるのでパラレル同時参戦はなしということでお願いします。
3の商人を無名枠に含めないってのは
クリアに不可欠なキャラだから、なまえはないけど無名じゃない、てことだよね
一つ疑問が。
ナンバリングタイトルのみからの選出ですが、これは原作及びリメイクの「ゲーム媒体」に限定でいいんですよね?
小説や7、モンスターズプラスなどナンバリングタイトルの主人公が出る作品からの出展はなしということで
そうです。
明日のマップ投票もしたらばでやるんですか?
もしそうならそろそろ準備しておいた方がいいと思いますが
乙です
さてどれに投票しようかな
投票スレにマップ案を6つほど置いてきた
一部ネタも混じってるがご愛嬌ということで
狭間の世界一推し
・魔王が造り出した閉鎖世界
・ほどよい拠点数
・温泉や牢獄、墓地カジノ等前回にはなかったシチュエーション
かなりの優良マップなのは間違いない
原作狭間は真ん中にそびえる高山と、牢獄方面に湖の底経由でしか移動できないところがややネック
そのへん解消できてる改造マップのほうが、見栄えや展開の融通は効きそうだけど、票は散りそうだねえ
MAP投票開始です。
みなさま、どうか清きご一票を。
今夜0時よりキャラ投票の開始です。
各作品より6キャラを選抜して投票してください。(無理に全枠埋める必要はありません)
キャラクターは男勇者、女勇者、その他性別が別れている職業などは別で投票して貰います。
仮に男勇者と女勇者が両方枠を取った場合は票数の多い方が当確です。
同票の場合はランダムか決戦投票で決めます。
3,9の無名仲間キャラは当確できるのは3人までです。(3の商人は含めない)
あくまでも「ゲーム」のDQが対象なので、ノベライズやコミカライズの外典のキャラクターは含みません。
テンプレ
【DQ1】
【DQ2】
【DQ3】
【DQ4】
【DQ5】
【DQ6】
【DQ7】
【DQ8】
【DQ9】
投票の表記は名前が決まっていないキャラの場合
DQ1→主人公
DQ2→ローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女
DQ3→男○○(職業)、女○○
DQ4→男勇者、女勇者
DQ5→主人公、主人公の息子、主人公の娘、キラーパンサー
DQ6→主人公
DQ7→主人公
DQ8→主人公
DQ9→男主人公、女主人公、男○○、女○○
でいいですか?
>>808 はい、それでお願いします。
あと5は娘、息子で通じると思います。
>>808 すみませんDQ1は主人公よりも勇者の方がいいかと。
【DQ1】 勇者 ローラ姫 竜王
【DQ2】ローレシアの王子 サマルトリアの王子 ムーンブルクの王女
【DQ1】
勇者 ローラ姫 竜王
【DQ2】
ローレシアの王子 サマルトリアの王子 ムーンブルクの王女
どっちの表記ので投票すればいいの?
どっちでもいいですよ
3:男勇者、女勇者
4:男勇者、女勇者
みたいな投票の仕方はありですかね?
え、いや……あり、ですけど
得票数が多くても選ばれるのはどちらか1人だけですよ?
それを承知でなら、おkです。
ありがとうございます、ちょっと気になったもので。
5の子供は王子、王女表記でもOKとします。
これ地形はすごくいいんだけど周りの空間が毒々しすぎて慣れないな…海だったら文句無いんだが
あ、書き忘れてました。
キャラ投票の後、オープニングを募集するわけですがその時に(OP作者が)主催者とジョーカーを決めます。
そして主催やジョーカーになったキャラがキャラ投票で選出されていた場合、それは除外して他のキャラが繰り上げ合格になります。
つまり仮に主催者がピサロに決定し、ジョーカーがエビルプリースト、アンドレアル、ギガデーモン、ヘルバトラーとなった場合
キャラ選出でピサロとエビルプリーストが当確していれば、その二人を除外して、それより下位のキャラが繰り上げとなるわけです。
いちおうそういうことで。
同票による同率六位が出た場合は全体で2,3名程度なら繰り上げ当選で行きたいと思います。
ただ全体で5人以上出た場合は決戦投票を行います。
その時は気の向いた方で結構ですので投票参加よろしくお願いします。
投票終了しました。
集計中。
一応集計してたんで、良ければ結果貼りましょうか?
全34票です。
投票ありがとうございました。
【DQ1】 6
ローラ姫 34
勇者 31
竜王 29
ゴーレム 19
ドラゴン 16
影の騎士 9
-------------------
スライム 7 悪魔の騎士 7
ダースドラゴン 5
ラルス16世 4
大魔道 3
メタルスライム ぱふぱふ娘 鎧の騎士 キメラ ガライ スターキメラ 死神の騎士 光あれの老人
【DQ2】 7
ムーンブルクの王女 31 ローレシアの王子 31 サマルトリアの王子 31
ハーゴン 17
竜王のひ孫 16
アトラス 10 サマルトリア王女 10
----------------------------
バズズ 6
悪魔神官 5
盗賊ラゴス 4 ベリアル 4
マンドリル 2 シドー 2
キラーマシン ドン・モハメ 歌姫アンナ ローレシア王 よろいムカデ
デルコンダル王 ラダトーム王
【DQ3】 6
男勇者 26
バラモス 19
オルテガ 18
女賢者 15
女武闘家 12 男魔法使い 12
------------------------
カンダタ 11
ボストロール 9
男盗賊 7
女商人 7 女遊び人 7
女僧侶 6
イシス女王 5 女戦士 4 女勇者 4
男戦士 3 男賢者 3
やまたのおろち 2 男遊び人 2 男武闘家 2 ラーミア ゾーマ 2 キングヒドラ 2
女盗賊 さまようよろい 勇者祖父 アッサラームの商人 カンダタ子分
勇者の母 卵を見守る巫女 女魔法使い 男僧侶 バラモスブロス バラモスゾンビ
【DQ4】 6
アリーナ 18 ピサロ 18 女勇者 18
マーニャ 17 ミネア 17
シンシア 16
--------------------
男勇者 14
ライアン 13
クリフト 11
ホイミン 8 キングレオ 10
トルネコ 7
エビルプリースト 5 ロザリー 6
ブライ 3 バルザック 4 パノン 3
マネマネ 2 ルーシア 2
盗賊バコタ さまようよろい オーリン ギガデーモン ヘルバトラー
【DQ5】 7
主人公 25
王女 21
デボラ 17 フローラ 17
ビアンカ 15
スライムナイト 14 王子 14
----------------------
パパス 13
キラーパンサー 12
ゲマ 10
ピピン 9
サンチョ 5 キラーマシン 5
マリア 4
スラリン 2 ヘンリー 2 ゴーレム 2
サイモン さまようよろい はぐれメタル アンディ
ヘルバトラー マリアの兄 マーサ グレイトドラゴン
【DQ6】 6
主人公 31
バーバラ 26
ハッサン 25
テリー 19
ミレーユ 17
キラーマジンガ 16
--------------------------
ターニア 15
アモス 14
チャモロ 10
ムドー 8
ダークドレアム 4 ジャミラス 3 ルーキー 2 ランド 2
ミラルゴ グランマーズ デュラン グラコス
【DQ7】 6
主人公 30
マリベル 25
アイラ 22
キーファ 21 ガボ 21
ホンダラ 17
------------------------
メルビン 10
フォズ 9
シャークアイ 7
マチルダ 6
かみさま 5
ライラ 4 リーサ姫 4
ボルカノ 2
ほのおのせいれい ヘルクラウダー ゼッペル サイード カシム オルゴ・デミーラ
スイフー レブレサックの神父(現在) レブレサック村長
【DQ8】 6
ゼシカ 28
主人公 26
ヤンガス 24
ミーティア 19
ドルマゲス 19
ククール 15
-----------------------
チャゴス 14
ゲルダ 11
トロデ 7
サーベルト 5 マルチェロ 5 モリー 5
竜神王 4
魔鳥ウコッケ 3
ラジュ ニノ さまようよろい ジョー
パヴァン王 シセル王妃 ラプソーン ルイネロ メダル王女
魔犬レオパルド キャプテン・クロウ 妖魔ゲモン レティス
【DQ9】 7
女主人公 24
リッカ 21
サンディ 20
エルギオス 19
イザヤール 17
ギュメイ将軍 12 ルイーダ 12
------------------------
ロクサーヌ 7 女レンジャー 7
女パラディン 6
ラヴィエル 5 男主人公 5 女魔法戦士 5
黒騎士レオコーン 4
アギロ 3
暗黒皇帝ガナサダイ 2 ナムジン 2
男パラディン オリガ 女バトルマスター 女僧侶 女旅芸人 男旅芸人 さまようよろい 2
竜王 グレイナル エルシオン学院の食堂のデブ ニード シャルマナ ラテーナ 男バトルマスター
以上です。
>>822 ありがとうございます。
自信ないので検算の意味も含めてお願いできますか?
6/6【DQ1】○勇者/○ローラ姫/○竜王/○ゴーレム/○ドラゴン/○影の騎士
7/7【DQ2】○ローレシア王子/○サマルトリア王子/○ムーンブルク王女/○サマルトリア王女/○竜王の曾孫/○アトラス/○ハーゴン
6/6【DQ3】○男勇者/○女賢者/○女武闘家/○男魔法使い/○オルテガ/○バラモス
6/6【DQ4】○女勇者/○アリーナ/○マーニャ/○ミネア/○シンシア/○ピサロ
7/7【DQ5】○主人公/○デボラ/○フローラ/○ビアンカ/○王子/○王女/○スライムナイト
6/6【DQ6】○主人公/○バーバラ/○ハッサン/○テリー/○ミレーユ/○キラーマジンガ
6/6【DQ7】○主人公/○マリベル/○アイラ/○キーファ/○ガボ/○ホンダラ
6/6【DQ8】○主人公/○ゼシカ/○ヤンガス/○ミーティア/○ドルマゲス/○ククール
7/7【DQ9】○女主人公/○リッカ/○サンディ/○エルギオス/○イザヤール/○ギュメイ将軍/○ルイーダ
57/57+JOKER
以上が参加者となります。
それじゃあ自分の集計と違ってて、結果にも影響与えそうなところだけ挙げます
自分の集計では、
DQ2のサマルトリアの王女が11票、アトラスが10票でサマルトリア王女までで当確
DQ5スライムナイトが14票、息子が13票でスライムナイトまで当確
DQ6キラーマジンガ15票、ターニア15票で同票
でした
私も自信はないので、出来れば他の人にも確認してもらえたらと思います
何度か数え直してみました。
サマルトリアの王女だけ数え間違えていてあとは合っていると思います、が。
やはり他の人に確認して貰いたいところですね。
アトラス 10 サマルトリア王女 11
スライムナイト 14 王子 14
キラーマジンガ 16
--------------------------
ターニア 15
今から30日(金)の23:00までドラゴンクエスト・バトルロワイアルIIのオープニングを募集します。
主催者はDQのラスボスの中から自由に選んでください。
JOKERは主催者の部下、もしくは配下のモンスターの中から選ぶ形になります。
これもオープニングの書き手が設定してしまって構いません。
オープニング募集期間は前回のルールをそのまま使うか、細部を詰める話し合いをしたいと思います。
その他、疑問に思ったことなど気軽に質問してください。
6/6【DQ1】○勇者/○ローラ姫/○竜王/○ゴーレム/○ドラゴン/○影の騎士
6/6【DQ2】○ローレシア王子/○サマルトリア王子/○ムーンブルク王女/○サマルトリア王女/○竜王の曾孫/○ハーゴン
6/6【DQ3】○男勇者/○女賢者/○女武闘家/○男魔法使い/○オルテガ/○バラモス
6/6【DQ4】○女勇者/○アリーナ/○マーニャ/○ミネア/○シンシア/○ピサロ
7/7【DQ5】○主人公/○デボラ/○フローラ/○ビアンカ/○王子/○王女/○スライムナイト
6/6【DQ6】○主人公/○バーバラ/○ハッサン/○テリー/○ミレーユ/○キラーマジンガ
6/6【DQ7】○主人公/○マリベル/○アイラ/○キーファ/○ガボ/○ホンダラ
6/6【DQ8】○主人公/○ゼシカ/○ヤンガス/○ミーティア/○ドルマゲス/○ククール
7/7【DQ9】○女主人公/○リッカ/○サンディ/○エルギオス/○イザヤール/○ギュメイ将軍/○ルイーダ
56/56+JOKER
これが正しい形かな。
ルールに変更の余地があるとしたら、やっぱり放送の回数でしょうか?
前回は12時間おきでしたけど、今回は6時間おきでもいいかもしれません、人も増えましたし
後は細かいところですが、支給品をまとめる「ザック」は今回は「ふくろ」にしたいですね、ドラクエですし
うーん、一票の格差がありますね
9票で当選と15票で落選……
今更ですが全体票から上位54人でも良かったような気がします
まぁ書き手でもなんでもない外野の言うことなんで
聞き流して下さって結構です
放送を変えるなら禁止エリアも多くしたい。
8×8で区切って2時間に1エリアのペースで。はやいかな?
3.6.7.9のキャラの職歴制限や、8、9キャラのスキル制限も決めておきたい
提案としては、3キャラは前職現職併せて最大2職まで。
6キャラは上級職2つとそれに必要な下級職のみ
7キャラは上級職3職、最上級職1つまで(モンスター職含)
8キャラのスキルポイントは大体のクリアレベルよりやや上のLV40〜50くらいに取得されるポイントで賄う分
9キャラは上級職1つとそれに必要な下級職のみ、スキルもその分のポイントで賄う
くらいのバランスでどうでしょうか?
あ、それと一つMAPについて。
改造の折に隠された湖の位置に井戸が来ていますが、
湖と右上の洞窟に繋がる道はありますか?
あと、はざまの世界の左上に位置する岬に相当する部分はなしになるのですかね?
また、周囲は水なのかそうでないのか等。
ご意見下さい。
そういう制限はいらない。書き手任せでいい
地図のことも同じ
いやそこはちゃんと決めといた方がよくないか?
地図に関しては分からんでもないが、スキルと職歴に関しては決めることでもないと思うよ
全職全スキルマスターのチートな強さを持ったキャラなんか出しても、強マーダーとしてなら使える
逆に、対主催で完全無欠の無双キャラ出しても面白くもなんともないだろ?
ちゃんと書き手がバランスとってくれるよ
あんまりガチガチにルールで締め付けずに、もっと気楽に考えようぜ
地図についてはともかく、スキルや職歴は自由でいいだろ。
逸脱しない範囲でバランスを考えるのも書き手の楽しみだ。
全職マスターしてるからって転職システムのない4や5の勇者・主人公より絶対に強いかって言ったらそんなわけない
結局書く人次第だろ
それだと明らかに悪意持って掻き乱そうとする輩や、悪意はないけど絶望的に空気読めない書き手が来た時に困るよ
書き手任せなんて思考停止せずにちゃんと決めるべきだろう
自己紹介乙としかいえん
そんなもん始まってみなきゃわからんよ
>>4の
>※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーはスレでの内容により決定されていきます。
だけでいいよ
まあ始まる前からそういう作品が出ることを考えるのはあまりよくないよな
まずはやって見てから常識的な範囲で各々矛盾を産まない程度に調整してくれると信じよう
オープニングのプロット練り始めている書き手さんはいるのかな
読み手として楽しみだ
オープニングは書かずに本編を書き始めてる奴ならここに……
久々にダイの大冒険読んだんだが、魔法剣ってドラクエに有りそうでないもんなんだな
6の魔法戦士でやっとか?にしても、いなずまぎりがライデインスラッシュと同格かって言うとそうじゃない気もするし
仲間の魔法使いが放った魔法を戦士が剣に纏わせてってのは中々燃えるんだがなー
回りの海域を削ってマップをちょっと拡大するようにしてみるとか?
もしくはその逆に上下に海域を追加して正方形に近づけるとか・・・
乙。なかなかいい感じじゃないか
ところで予約なんかに使うしたらばはいいとして、wikiとかのまとめサイトはどうなるのかな?
昨日今日とレスできずにすみませぬ。
Wikiはスタートする頃に用意してみます。
MAPの分割もやるつもりでいたのですが、任せてしまったようで申し訳ない。
予約スレもOPが決まったら建てますね。
OPを書き上げたとしたら、避難所の投票スレに投下すればよいのでしょうか。
それとも30日になってから?
完成したならここに投下していいと思いますよ
ここに投下すんのはどうかなあ
ここはあくまで1stのスレだし
とするとそろそろ2ndのスレ立てた方がいいんだろうか
それとも埋まるまではここ使う?
したらばの一時投下スレにお願いします。
議案まとめ
【アイテム】外伝ゲーム出典はあり、漫画出典は無しの方向
【放送】12時間おき→6時間おきに?
【マップ】8×8か7×7で決定?
【禁止エリア】2時間に1エリアペースに?
【職歴・スキル】各書き手に任せる方向
【改造マップの詳細】これも書き手次第?(周りが水かは決めた方がいいかも。自分は崖だと思ってた)
【参戦時期】ED後で統一?
他にも何かあれば。規制中の方はしたらばへお願いします
>>856 > 議案まとめ
>
> 【アイテム】外伝ゲーム出典はあり、漫画出典は無しの方向
これで。
> 【放送】12時間おき→6時間おきに?
6時間でやってみましょうか。
> 【マップ】8×8か7×7で決定?
http://brunhild.sakura.ne.jp/up/src/up546600.jpg 8×8のMAPを調整しながら造ってみました。
どうでしょうか?
> 【禁止エリア】2時間に1エリアペースに?
放送ごとに3エリア。1日で12エリア。
全部埋まるまで4日。外海部分を含めなければもっと早い。
これでいいのではないでしょうか。
> 【職歴・スキル】各書き手に任せる方向
これで。ただし
>>842が書いてくれた通り、マナーと空気は読んでいく方向で。
> 【改造マップの詳細】これも書き手次第?(周りが水かは決めた方がいいかも。自分は崖だと思ってた)
外縁部は虚空。内海部分は水ってことでどうでしょうか。
井戸と隠された湖はエリアを隔てて同じ森にあるということで。
> 【参戦時期】ED後で統一?
基本的には統一したいですね。
あくまで基本的になので、例外も場合によっては認める方向で。
意見をお待ちしてます。
したらばにOP来てたね
主催はデスタムーアか
舞台の狭間の世界とも合ってるしいい感じ
この場合ジョーカーは四魔王ってことになるの?
したらばより転載
>>289 > 【アイテム】外伝ゲーム出典あり、漫画出典なしで
>
> 【放送】6時間おき
> 放送はこまめにしておいた方が、知り合いの死を知ったリアクションが取りやすい。
>
> 【マップ】8×8か7×7で決定?
> これはどっちでも。
>
> 【禁止エリア】2時間に1エリアペースだと結構忙しくてバタバタしそうだから3時間に1エリアを提案します。
> 8×8でも7×7でもそうだが、このマップは1エリア封鎖されるだけで移動に大幅に支障が出る構造になっているのが理由です。
> 本スレ
>>857氏の地図を元にして考えると、Dのラインのエリアはどれも、一つ禁止エリアになっただけでキャラの移動における死活問題に繋がります。
> よって、できる限りここが選ばれる可能性を低くするようにしていきたい。もちろん禁止エリアを選ぶ書き手さんは空気を読むでしょうが念のために。
>
> 【職歴・スキル】各書き手に任せる方向
> 各々の書き手で好きに決めた方が、特に無名キャラのネタを考える際に便利だと思います。
>
> 【改造マップの詳細】周りは虚無の空間で入り込むと即死。だと思ってたがそれは禁止エリアと同じことなのでちと厳しいか。
> ここは他の方の意見に従います。
>
> 【参戦時期】ED後で統一?
> ここは書き手に任せてもらいたいです。
> ED後だとどうしても肉体的にも精神的にも成長の余地が少なくなります。
> 仲間との絆もレベルMaxの状態でしょうから、仲間割れもしにくい。
> 何より、ED前でないとできないネタをいくつか考えてる身としては、ED後に統一されると困ったことになる。
> そんなの考えるは面倒だという方は何も考えずにED後に設定してもらうといいかと。
個人的には、一人二人くらいならいいけど、あまりにも参加者達の時期がバラバラになるようなのは避けたいかなと思う
「どうしてもその時期じゃないと無理!」ってネタじゃない限り出来るだけED後で統一って感じで
あんまりピンポイントな時期からの参加って出オチにもなりかねないし
>>830で書いた通りオープニングの〆切は23:00まであと1時間弱となりました。
もし要望があれば1日ほどの延期を認めますが、まだオープニングを書いている方はおられますか?
なければ今夜0時よりオープニング決定投票をしたいと思いますが。
投票ありがとうございました。
14票でBに決定かな?
というわけで完成版名簿です。
主催者:大魔王デスタムーア
管理役:アクバー
【参加/死亡者リスト】
6/6【DQ1】○勇者/○ローラ姫/○竜王/○ゴーレム/○ドラゴン/○影の騎士
6/6【DQ2】○ローレシア王子/○サマルトリア王子/○ムーンブルク王女/○サマルトリア王女/○竜王の曾孫/○ハーゴン
6/6【DQ3】○男勇者/○女賢者/○女武闘家/○男魔法使い/○オルテガ/○バラモス
6/6【DQ4】○女勇者/○アリーナ/○マーニャ/○ミネア/○シンシア/○ピサロ
7/7【DQ5】○主人公/○デボラ/○フローラ/○ビアンカ/○王子/○王女/○スライムナイト
6/6【DQ6】○主人公/○バーバラ/○ハッサン/○テリー/○ミレーユ/○キラーマジンガ
6/6【DQ7】○主人公/○マリベル/○アイラ/○キーファ/○ガボ/○ホンダラ
6/6【DQ8】○主人公/○ゼシカ/○ヤンガス/○ミーティア/○ドルマゲス/○ククール
7/7【DQ9】○女主人公/○リッカ/○サンディ/○エルギオス/○イザヤール/○ギュメイ将軍/○ルイーダ
4/4【 J .】○ムドー/○ジャミラス/○グラコス/○デュラン
60/60
予約開始は4/2の0:00からとします。
予約期間は72時間。最初は延長なしです。
もちろん予約して即投下もOKですが、予約無しはNGとさせていただきます。
明日にでもしたらばに予約スレを立てるので、そこでトリップを付けて予約をお願いします。
ルールも暫定版を明日に投下します。
本当は今からやるべきなのでしょうが、体調がすぐれないので今日はこれで寝ます。
申し訳ないです。
最後の最後まで接戦だった
>>865 乙です
各勇者や職業名の仲間は最初に書いた人が名前決めるということでいいのかな?
勇者は各媒体でいくつか候補あるけど、仲間は目立った固定名はないような
暫定ルールを投下しますので確認をお願いします。
おかしい所があれば指摘のほどよろしくお願いします。
すみません、ちょっと中断
----基本ルール----
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができ、加えて願いを一つ何でも叶えてもらえる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
----放送について----
スタートは朝の6時から。放送は6時間ごとの1日4回行われる。
放送は各エリアに設置された拡声器により島中に伝達される。
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」
「残りの人数」「主催者の気まぐれなお話」等となっています。
----「首輪」と禁止エリアについて----
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
主催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止能力が使えるようにもならない。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
禁止エリアは2時間ごとに1エリアづつ増えていく。
----スタート時の持ち物----
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を配給され、「ふくろ」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「着火器具、携帯ランタン」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「支給品」
「ふくろ」→他の荷物を運ぶための小さい麻袋。内部が四次元構造になっており、
参加者以外ならどんな大きさ、量でも入れることができる。
「地図」 → 舞台となるフィールドの地図。プレイヤーのスタート位置は記されているが禁止エリアは自分で書き込む必要がある。
「コンパス」 → 普通のコンパス。東西南北がわかる。
「着火器具、携帯ランタン」 →灯り。油は切れない。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「食料・飲料水」 → 複数個のパン(丸二日分程度)と1リットルのペットボトル×2(真水)
「写真付き名簿」→全ての参加キャラの写真と名前がのっている。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「支給品」 → 何かのアイテム※ が1〜3つ入っている。内容はランダム。
※「支給品」は作者が「作品中のアイテム」と
「現実の日常品もしくは武器、火器」の中から自由に選んでください。
銃弾や矢玉の残弾は明記するようにしてください。
必ずしもふくろに入るサイズである必要はありません。
また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
ハズレアイテムも多く出しすぎると顰蹙を買います。空気を読んで出しましょう。
----制限について----
身体能力、攻撃能力については基本的にありません。
治癒魔法については通常の1/10以下の効果になっています。蘇生魔法は発動すらしません。
キャラが再生能力を持っている場合でもその能力は1/10程度に制限されます。
しかしステータス異常回復は普通に行えます。
その他、時空間移動能力なども使用不可となっています。(ルーラ・リレミトなど)
MPを消費するということは精神的に消耗するということです。
全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内ということでお願いします。
※消費アイテムならば制限されずに元々の効果で使用することが出来ます。(キメラの翼、世界樹のしずく、など)
ただし消費されない継続アイテムは呪文や特技と同様に威力が制限されます(風の帽子、賢者の石、など)
【本文を書く時は】
名前欄:タイトル(?/?)
本文:内容
本文の最後に・・・
【名前 死亡】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
【残り○○人】※死亡したキャラが出た場合のみいれる。
【座標/場所/時間】
【キャラクター名】
[状態]:キャラクターの肉体的、精神的状態を記入。
[装備]:キャラクターが装備している武器など、すぐに使える(使っている)ものを記入。
[道具]:キャラクターがザックなどにしまっている武器・アイテムなどを記入。
[思考]:キャラクターの目的と、現在具体的に行っていることを記入。(曖昧な思考のみ等は避ける)
以下、人数分。
※特別な意図、演出がない限りは状態表は必ず本文の最後に纏めてください。
【作中での時間表記】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
例
【D-4/井戸の側/2日目早朝(放送直前)】
【デュラン@DQ6 死亡】
【残り42名】
【ローラ@DQ1】
[状態]:HP3/4
[装備]:エッチな下着 ガーターベルト
[道具]:エッチな本 支給品一式
[思考]:勇者を探す ゲームを脱出する
━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活はどんな形でも認めません。
※新参加キャラクターの追加は一切認めません。
※書き込みされる方はスレ内を検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に必ず【○○死亡】【残り○○人】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※具体的な時間表記は書く必要はありません。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細はスレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際はスレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーはスレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は序盤は極力避けるようにしましょう。
以上で終了。
予約スレと6時間放送、禁止エリア、制限について若干の追加が主な変更点です。
指摘などあればお願いします。
Wikiを作成するにあたってお薦めのWikiサービスとかありますかね?
こういうの借りるのは初めてなモノで種類が多くあって戸惑いますな。
ルール纏め乙です
特に問題はないと思います
重箱の隅だけど…
>>874 >[道具]:キャラクターがザックなどに〜
ザック→ふくろ かな
地図は
>>857の修正済マップで決定ですか?
あと、
>>865に予約無しはNGとあるけどこの先もずっとその制度でいくんでしょうか?
>>878 > 重箱の隅だけど…
>
>>874 > >[道具]:キャラクターがザックなどに〜
> ザック→ふくろ かな
そうです。修正します……すみません。
> 地図は
>>857の修正済マップで決定ですか?
異論がなければコレで行きたいですね。
8×8がやっぱりキリのいい数字に思えるので。
> あと、
>>865に予約無しはNGとあるけどこの先もずっとその制度でいくんでしょうか?
最近物騒な話が多くてつい弱気になって追加したルールです。
個人的にはない方がいいのですが、やっぱり予防線的な意味でつけるべきかな、と。
みなさんはどう思いますか?
最初は予約無しでもOKで、とりあえず様子見るのはどう?
荒らしが沸いてきたりして問題ありそうだったらまた議論することにして
予約必須だと登場キャラ伏せたり出来なくなるし
代理投下いきます。
僕は、妻のことを愛してなどいなかった。
一生に一度の大切な儀式、結婚式。
僕――リュカ――は三人の女性から一人を選ぶことを許された。
幼いころから自分を引っ張ってくれた幼馴染、ビアンカ。
すべてを兼ね備えた深窓の令嬢、フローラ。
フローラの姉で、突如参入した第三の女、デボラ。
三人は揃って、魅力的な女性だった。
そんな若く美しい女性から一人を選ぶというのは、本来なら男冥利に尽きるものであろう。
だがしかし、僕にとっては真実の愛を取るか、喉から手が出るほど欲しい宝を取るか、という究極の選択を迫るものであった。
三人は必ずや良き妻となると言っていいだろう。 ……一人怪しいのがいるけど。
だからこそ、迷う。 誰にも落ち度はないが故に、減点方式で選ぶことなどはできない。
タイムリミットは、水のリングを持ち帰ってから、その翌朝の朝までのわずか10数時間。
一世一代の決断をするための時間はそれだけしかなかった。
考えても考えても、答えは出ない。 時間だけが無情に過ぎていく。
町の人は如何にも他人事だという風に、僕が誰を選ぶかを予想し、金まで賭けていた。
……結局、僕はフローラを選んだ。
グランバニアの不在王、偉大なる父デュムパポスの遺志を継ぐために、父の教えに背くことをしたのだ。
父は決して僕を許しはしないだろう。
サンタローズに残された手紙に書いてあったが、父は息子の僕が修羅の巷に追いやられることを決して無理強いはしなかった。
いるか分からないような勇者を探すより、生きてるか分からない母を探すより、慎ましい幸せを手に入れろと言っていたのだ。
そんな父が、遺志を継ぐことを喜びはしても、そのために自分の心に嘘をつくことを喜びはしないだろう。
パパスにとっても、幼き頃にリュカと冒険し、苦楽を共にした幼馴染を選ぶ方を望んでいただろう。
美しい薔薇にはトゲが付き物という。
白薔薇のフローラを選んだ僕の心にトゲが刺さるのは、自業自得としか言いようがなかった。
妻になったフローラはよく尽くしてくれた。
僕の本心などとっくに見抜いていたであろうに、それでも尽くし続けることが貞淑な妻の役目であるかのように。
まったくもって、自分には出来すぎた奥さんだと言わざるを得ない。
それなのに、僕はいつまでも恩の一つさえフローラに返すことができない。
良き夫を演じることはできるし、そうするよう努めていたが実際は仮面夫婦のようなものだ。
愛情もなく、あるのは打算のみ。
それどころか、僕がフローラに対して持っている感情は感謝でも恩でもなく、負い目であった。
僕は、フローラを、ルドマンさんを欺いた。
そうすることが世界を救うために必要だと、卑怯な自分を正当化して天空の防具の内の一つを手に入れた。
僕は、彼女を守らねばならない。
僕の嘘に振り回された結果、世界中を旅し、辛い思いや苦しい思いをたくさんしてきたのだ。
だからせめて、それ以外の全ては、愛することができなかった代わりに、他の全てを彼女に与え、守り続けよう。
デモンズタワーに連れ去られた時もそうだ。
僕の都合に利用された彼女が、こんなところで死ぬことなどあってはならないからだ。
幸せにはできない分、平穏に過ごしてほしいのだ。
そして、ここでも守る最優先対象なのは変わらない。
僕は、彼女を守らねばならない。
どんなことがあっても彼女の危機には駆けつけ、救い出さねばならない。
それこそが、僕の彼女にできる唯一の事なのだから。
◆ ◆ ◆
あの人は、私のことを愛してなどいなかった。
見れば見るほど、不思議な世界だと思う。
昼でも夜でもない、蒼ざめた不気味な空の色。
極彩色の色がまるでオーロラのように空に広がり、随時その色を変えていく。
肌に感じる、濁り切った風と空気が鼻孔にも入ってくる。
人間の中にある本能的な不安と恐怖を呼び起こすかのような、邪悪な者によって用意された舞台
草も土もくすんだ色をしているこの世界は、自分らの知っている世界とは何もかもが違うのだと、嫌でも思い知らされた。
この世界は、到底人が暮らしていけるようなものではない。
こんな場所にいつまでも居続けると、人はいつか心が壊れてしまう。
それが、フローラ・ルドマンことサラボナの大富豪ロベルト・ルドマンの愛娘の第一印象であった。
絶望の町、というらしい。この町は。
あの凶悪な魔物が何故こんなネーミングをしたのかは、フローラにも想像はつく。
その名前に込められた悪辣なメッセージを思うと、探索しながらも胸が痛くなる。
しかし、こんな場所にも人が生活していたことに、フローラは少なからず驚いた。
もちろん、今回のためだけに用意された、という線も考えることはできる。
それならば、一生ここで暮らし続けることも覚悟せざるを得ないということだ。
誰か一人になるまで殺し尽くして、一人元の世界に帰るのが幸せなのか、ここですべてを諦めて、残り少ない時間を平穏に過ごすか。
それは果たしてどっちが幸せなのだろうか?
そこまで考えて、フローラは首を振ってその考えを振り払った。
雰囲気に呑まれかけている。 あの空間での出来事を思い出すと、仕方ないといえば仕方ないか。
心を強く持たねばならない。 絶望に押しつぶされては断じていけない。
鼓動の数を次第に増やしていく心臓を、服の上から押さえつける。
疲れてる訳でもないのに、額に汗がジワリと浮かんでいる。
不安か焦りか、緊張か。 そういった感情が身体によくない影響を与えているのは間違いないだろう。
人の営みが行われていたあろう住居、店を開いていたと思われる建物。
人の息吹が感じられる場所にフローラが飛ばされたのは、ある意味幸せというべきか。
だが、ここに人が住んでいたとすれば、その生活はお世辞にも豊かとは言い難いようである。
あちこちにヒビの入ったタイル、老朽化していまにも倒壊しそうな壁。
修繕する暇も余裕もないのであろうそれらは、この世界に希望がないことを物語っているかのようだった。
見れば、毒の沼まで近くにあるではないか。
毒の沼は大人にはそれほど害はないかもしれないが、子供なら命に関わる事態に陥ることもあり得る。
目の前に広がる死の沼をどうにかする余裕もないほど、困窮していたということだろうか。
きっと、ここで生きていこうにも、限界ギリギリの生活を続けるしかないのだろう。
作物の収穫だって期待はできそうにないし、狩りをしようにも、仕留めるべき獣がいるかどうかも怪しい。
そして、人はいつしか希望を忘れ、絶望のみを味わっていくのだろう。
人の心の弱さを的確に突き、人を絶望に陥れる。
ここはそういう町なのだ。
しかしながら、フローラは目当てのものを見つけた。
こんなところでも……否、こんなところだからこそ、こういう施設はあるのだろう。
迷える子羊の行き着くところ、救いを求める神の子の集う教会堂。
人がいる限り信仰は絶えない。
ならば、この世の果てに位置するこの絶望の町にも、あって然るべきであろう。
かつて神に仕えていた経験のあるフローラは、まずこの教会がないかを探していたのだ。
見つけた建物を遠目に捉えながら、フローラは足を急がせる。
この建物も例に漏れず、老朽化は避けられてないようだ。
雨除けの天井は申し訳程度にあるが、肝心の入り口がない。
いや、正確には言うと入り口、ドア、扉という風に呼称されるものが存在しない。
南側の外壁が完全になく、出入り自由となっているのだ。
南から教会内を見ると、中の構造がばっちり見え、こともあろうに十字架まで見えてしまうではないか。
雨露は凌げても、風に野晒しのこの状態は見ていて痛ましい。
これはもはや教会というような立派な建物ではなく、掘っ建て小屋が教会という形をなんとか取り繕っている、という方が正しい。
ただ申し訳程度に設置された十字架とステンドグラスのみが、ここが教会であると予測できる物的証拠である。
中に入り、十字架に被った塵や埃を手で掃い、少しでも綺麗にしてあげる。
白魚のような手を黒く汚すことも構わずに、フローラはせっせと作業を続ける。
ようやく少しは見栄えもよくなってきた頃に手を止め、フローラは手の汚れを衣服でふき取った。
少し前なら考えられないような行為も平気でこなし、一息ついてから元の目的に戻る。
胸の前で両手を組み、恭しく膝を付き、偉大なる神への敬意を表す。
目を閉じて、胸に想うは贖罪の念と悔恨の言葉。
「主よ――」
厳かな声で、神への告解を始める。
絶望に染まった世界の中で、愛と温もりと、そして世界の広さを教えてくれた人を想う。
そして、こともあろうに、その人の人生に影を落としたのが、他ならぬ自分であることを打ち明ける。
「主よ、お赦しください。
私は貴方の説く、愛を知っています。
貴方の教えに導かれ、貴方の与えてくれる光に焦がれ、思いを馳せました。
けれど、私は……あなたの教えを否定するような罪を犯しました。
私はかつて、還俗した身です。
それは幼き頃より、決められていたことです。
いずれ私は大富豪の父の娘である責務を果たすため、それを継ぐにふさわしき人に嫁ぐこと。
そのために、花嫁修業として修道院で過ごしました。
いつか、私は神の妻になる道を目指すことを止め、人と結ばれる普通の世界に戻ること。それは決まっていました。
けれど私は、主の存在を疑ったことはありません。
貴方の言葉を一つでも多く胸に刻み、貴方の仰る優しく平和な世界に近づけようと、修養を積んでいました。
例え一時の仮宿に過ぎなくても、貴方の教えに心を動かされたことは、紛れもない事実です。
誰かと結婚しても、その教えは私の中で確かに息づいていくのだと、思っていました。
主よ、貴方はこう言います。
他人に優しくあれ、と
主よ、貴方はこう言います。
人を殺してはならない、と。
主よ、貴方はこう言います。
盗みを働いてはいけない、と。
主よ、貴方はこう言います。
結婚は、愛する者同士で行う神聖な儀式である、と。
……けれど」
最後に、声が上擦った。
神の教えを破らないという、誓いを反故にしてしまった罪悪感がフローラの胸中を襲う。
あの人の行く道と、自分の家が持ってる家宝のせいで起こってしまった悲劇。
全ては、弱い自分が原因なのだ。
「私はあの人の手を取ってしまいました……」
白薔薇のフローラ。
いつしか、人からそう呼ばれるようになっていた。
女性特有の丸みを帯びた体つき、どんな海よりも蒼いその髪と瞳、器量の良さは花嫁修業に出された修道院のマザーのお墨付き。
芽吹き始めた新緑の若葉のような、若々しさに満ちた匂い。
姉デボラを自身が強く輝く太陽だとすれば、フローラは光を与えてもらい寄り添う月か。
夜の道を行く人に、たおやかな光を放ち、闇夜を照らして道を示す。
決して前に出ずに、一歩引いたところから優しく見守るのだ。
天より二物も三物も与えられたフローラに、そういう称号がつくのはごく当然のことと言えた。
世界でも有数の資産家の娘、という肩書は羨望と嫉妬を集める。
幼少のみぎりよりその容姿は姉とともに衆目を独占し、修道院での花嫁修行を終えて美しさにさらに磨きをかけ、匂い立つほどに成長を遂げた。
彼女の夫になるということは、目も眩むような金銀財宝を手にすること。
そして、世界中探してもこれより美しい女性を探し当てるのは、広大な砂漠の中から一枚の金貨を探し当てることに等しい。
即ち、彼女を娶るということは、富と栄誉と、この世で最も優れた妻を、ひいてはこの世のすべてを手にするということなのだ。
初老を迎え始めたロベルト・ルドマンが愛娘の婿を大々的に募集すると決めたときは、世界中から多くの男性が集った。
フローラの美しさに惚れ込んだもの、ルドマンの所有する財に目が眩んだもの、単なる興味本位。
人種、国籍、年齢を問わず多くの男性が押し寄せてきた。その中には、後に夫になるリュカの姿もあった。
やがて、父の出した無理難題をこなし、見事リュカは二つの至宝を持ち帰る。
だが、水のリングを持ち帰ったリュカの隣には、つい最近奇跡の邂逅を果たしたという幼馴染がいた。
いや、単なる幼馴染、という言葉では片づけることはできないだろう。
二人の間にはそれ以上の何かを感じたのだから。
勝気な瞳をたたえたその金髪の女性は、ビアンカといった。
理屈では到底説明できないような、何か運命めいたものを二人に感じずにはいられなかった。
運命の赤い糸、というものが本当にあるのなら、この二人は間違いなく繋がれているだろう。
寄り添って歩く二人はそれは絵になるような光景で、嫌が応でも自分の入る余地はないことを思い知らされた。
だから、思い切って言ってみた。リュカはビアンカを、ビアンカはリュカのことが好きではないのかと。
その後、ルドマンの計らいで、一日の猶予がおかれることになった。
選んでくれるとは、もう微塵も思ってなかった。
予定調和でリュカはビアンカを選び、自分は優しく祝福する。
そう思っていたのに、彼は運命の日に白薔薇のフローラを選んだ。
私は守ってもらうことしかできない女だと、ビアンカのような人にはなれないと言ったのに、彼は手を取った。
生き別れの幼馴染のビアンカでもなく、突如乱入した姉のデボラでもなく、フローラを選んだ。
けれど、当時のフローラには分からなかった。
あの時、まだ大人になりきれてない少女には思いもよらぬ展開に心が浮き立つばかりで、リュカの心の中を覗けなかったのだ。
「あの人と旅をするようになってしばらくして、あの人の心が自分にないことに気づきました……」
そして、何故リュカがフローラを選んだのかも、すぐに答えが出た。
ルドマン家に伝わる伝説の至宝、天空の盾。
金でも銀でもない、不思議な光沢を持つその盾は、かつて伝説の勇者が使いし神器の一つ。
天より賜りしその盾は、伝説の勇者亡き後、幾多の人の手を渡り歩き、ルドマンの家に落ち着く。
どんな大金を積まれても売らぬ、とルドマンは常々公言していた。
そんな大商人にして大富豪であるルドマンの心と意見を動かすには、さらに天文学的な数字の大金が必要に違いない。
一介の旅人であるリュカがその伝説の防具を手にするためには、フローラの手を取るより他になかった。
リュカは、結婚した後にすでに彼が見つけていた伝説の武器、天空の剣を見せて語ってくれた。
父の遺志を受け継ぎ、伝説の勇者と母を探す旅をしていること。
一縷の望みにかけて、天空の剣を使おうとしても装備できなかった時の彼の落胆ぶりを。
これまでの彼の壮絶な半生を辿る形で、いかに夫となった人にとって天空の盾が大事なものかも、フローラは知ることになった。
それは苦渋の決断だったのだろう。
父の遺志を継ぐためとはいえ、己の心に嘘を付きフローラかデボラの手を取るか。
自分の心に素直に従って、ビアンカを選び、天空の盾を諦めるのか。
想像を絶するほどの苦悩に対する決断を、たった一日しか考えられる時間を与えられなかったのだ。
そして彼は、ビアンカへの想いを振り切って、偽りの愛を選んだのだ。
傍目には、良き夫婦であっただろう。
しかし、夫の心が自分にないことを、夫の瞳が自分を捉えてないことに、フローラが気付くのに時間はかからなかった。
何故、と問うまでもなくフローラは理由を確信していた。
あの時に、もっとちゃんと考えておかねばならなかったのだ。
ルドマン邸で求婚されたときの、あの時のリュカの表情と感情をもっと分析するべきだったのだ。
あの時の夫の表情は、僕と結婚してくださいと言う前に見せたあの何かを吹っ切るような仕草は、自分と相手を騙すことになる良心の呵責。
そのことに、リュカはフローラに対して酷く負い目を感じていたのだろう。
フローラを見るとき、リュカは決まって複雑な顔をしていた。
言わば、彼にとってはフローラは目的の物を手に入れるためのおまけなのだ。
単なる物品ならばすぐに捨てることもできるであろうが、生憎とそのおまけは生身の人間だ。
彼にとって深窓の令嬢フローラは、自分の都合に付き合わせてしまった哀れな存在。
リュカは、フローラのことを大切にしてくれた。
ありとあらゆる便宜を図り、フローラの望みは何でも叶えようとしてくれた。
旅をして歩いているときも、疲れてはいないか、喉は乾いてないか、馬車の中に入って休みたくはないかと、それこそ何度となく世話を焼こうとしてくれた。
だがしかし、それは愛情からくる行動ではない。
あれはまるで、下手に触れば壊れそうな、精緻なガラス細工を扱うかのような振る舞い。
最高の職人により製作された、最高級の陶磁器を落として割るまいと、最新の注意を払って動かしているかのような、そんな手つき。
心を満たすことができない代わりに、せめて旅の道中で不快な思いをしないようとしての行動だろう。
それはリュカの罪悪感からくる贖罪であり、優しさでもあった。
天空の盾さえ手に入れれば、あとはフローラは用済みだ。
危険な旅の途中で死んだと言えば、誰も文句は言えない。
けれど、そうしなかったのは彼なりの優しさでもあるだろう。
筋骨隆々の馬の魔物に囚われた時も、愛する人だからではなく、返しきれないほどの借りと負い目を作った相手だから助けに来たのだ。
そして、そんなリュカの優しさが苦しかった。
何故、夫がそんなことをしないといけないのかと、悩みもした。
リュカは、幼き頃から多くの物を失ってきた。
目の前で、生きながらに焼かれる父の最期を見せられた時のリュカの心情は、まさに筆舌に尽くしがたいほどの苦しみであっただろう。
そして、幼少期から10年の歳月にわたって、リュカは奴隷として生き、人として扱われずに生きてきたのだ。
朝から晩まで休みなく働かされ、食事も満足に与えられずに、病気にでもなれば薬も与えられない。
奴隷とは、代替の利く消耗品なのだ。 使えないと判断されれば容赦なく処分される。
背中にある、リュカの傷を見たときは、フローラは我知らず涙を流した。
皮膚が破れ、肉が裂けた鞭の跡を、数えるのを諦めるほどに見つけた時、激情が身を震わした。
何故、この人はこんな仕打ちを受けねばならなかったのか。
何故、この人はそんな生き地獄を味わいながら、笑っていられるのか。
何故、自分はこんなにも恵まれて生きてきたのか。
修道院で暮らしていたとはいえ、いざとなればルドマンの手が差し伸べられたであろう環境。
完全な温室育ちのフローラと、子供の頃から不幸のどん底にあったリュカ。
まさに正反対の境遇を歩んできた二人。
フローラは我が身の小ささを思い知った。
修道院で暮らしていたから、普通の人とそれほど変わらない生活を営んできた。
食べ物が少なくてひもじい思いをした時期もあったし、冬の日にはあかぎれで手を痛めることだってあった。
あの修道院での生活で、人並みの幸福も不幸も知っていたつもりだったのだ。
しかし、それは思い上がりに過ぎなかった。
井の中の蛙に過ぎなかったフローラは、リュカに触れることによって大海を知ったのだ。
自分の感じた不幸など、リュカの感じた苦しみとは比べるのも烏滸がましいほどに些細なこと。
そして、そんなリュカがようやくビアンカと再会して幸せを手に入れることができるようになったはずなのに、自分が幸せの芽を摘み取ってしまったのだ。
他の誰かがリュカがフローラを選んだことを責めようとも、フローラだけは責めることはできない。
リュカの人生に触れてしまったフローラは、彼の気持ちを知っているのだから。
「あの人は優しい人です。 優しすぎて、自分が傷ついてることにも気付かない人です。
もうこれ以上あの人に苦しみを背負わせたくはありません。
あの人はもう、一生分の不幸を味わいました。 ……だから、残ったあの人の人生はどうか貴方の祝福に彩られた道を歩ませてください。
どうか……どうかあの人を、良人を解放してください。
お父上が目の前で死に、奴隷として多感な時期を過ごし、望まぬ結婚までしたあの人を、どうか死なせないでください。
罪は……もしも咎が与えられるのなら、どうぞ私のみにお与えください。
この身が奈落に堕ちようとも、永劫の炎で焼かれようとも、私は決して恐れません……」
言葉を出し尽くした後も、フローラはずっと姿勢を維持したまま祈りを続けていた。
長く祈れば祈るほど、想いは通じると信じているかのように。
絶望の世界で生涯の伴侶となった人物の幸せを、ただ願う。
信仰の絶えたこの場所で、神無きこの世界で、ずっと……ずっと。
蒼く染まったこの空に、白薔薇の想いが溶けていく。
◆ ◆ ◆
<一つ、よろしいでしょうか?>
教会内にフローラ以外の声が響く。
ハッとしてフローラが顔を見回して、声の出所を探る。
声は確かに正面から聞こえてきた。 つまり、十字架のある方向である。
敵襲、では決してない。 敵意もなければ、邪な感情も感じられない。
深い母性と慈愛を兼ね備えたその美声はまさに天女そのものだ。
となるとまさか……フローラは思わず口にしていた。
「女神……様……でしょうか?」
まさかこんな場所に神がいるとは思えない。
神に仕えていた時期でさえ、自分はおろか他人も神を目の当たりにすることなどなかったのだ。
神の存在を疑ったことなどないが、その存在や息吹を感じることなどあり得ない。
だが、状況を考えるとそうとしか思えない。
神に祈っていたら、女神の声が響き渡ったのだ。
神か仏か天使か悪魔か、はたまた天上に住まい人間を見守る高次の存在が、今ここに降り立ったのだろうか。
よりにもよって、神などいないと思っていたこの世界に。
<いいえ、私は神などではございません>
もう何かがこの場にいるのは確定だ。
十字架のあたりに、何者かの存在をはっきりと感じられる。
幻聴などで済ませられるレベルは超えていた。
神などではないとは言うものの、それに近しい存在あることに間違いはない。
<先ほどから貴女の言葉は全て聞いておりました。
私がお聞きしたいのは、貴女自身は夫を愛しているのか、ということですわ>
未知なる存在は、そう問いかける。
リュカの心がフローラにないのは、懺悔の内容からも分かる。
しかし、肝心のフローラ本人は夫をどう思っているのか、それを本人の口から聞く。
フローラは微笑む。 迷うまでもなく答えられる質問だ。
太陽が東から昇り、西へと沈むのと同じくらい当たり前であり、覆すことのできない事実だ。
「お慕いしております」
この気持ちだけは、誰にも負けない。
この想いだけは、誰にも否定させない。
静かな空間に、熱を帯びたフローラの声が響く。
リリアンの一件もあり、リュカがルドマンの屋敷を訪れたときは驚いたものだ。
何より、リュカがこのようなことに興味がある、というのが不可解だった。
如何にも旅人といった風体だが、決して見苦しくはない。
粗野な乱暴者、という冒険者のイメージとは正反対の人物であった。
そして、どこか遠くを見つめるあの眼差し。
あれは結婚というような俗事には興味のないような、もっと正確に言うのなら、今は結婚よりも大切な為すべきことがある。そういう瞳だった。
サラボナの町のどの男性とも違う雰囲気を纏ったその男は、フローラの心に強く残った。
結婚するのなら、自分で選んだ人と結ばれたいと願っていたフローラもいつしか『この人となら』と思うようになった。
「信じられませんかもしれませんが、一目惚れだったのです」
勝てるはずがない。
出会ったばかりで、ろくに話もしたことのない自分が、どうしてあの女性に勝てると言うのだ。
何一つリュカのことを知らないフローラが、リュカの過去を知っているビアンカに勝るものなど何一つない。
ルドマン家の持つ財産が、リュカを引き付ける要素にはなり得ない。
そういった目先の金には興味がないようなところが、フローラの惹かれた理由の一つだからだ。
だから、屋敷から出ていこうとしたビアンカに声をかけた。
初めから負けると分かっていれば、心の痛みも浅くすむ。
あの提案も、そんな自分の安いプライドを守るためにしたものだった。
フェアな勝負に見せかけた、そして勝敗のすでに決まった消化試合。
そして、リュカとビアンカが去った日の夜に、一人涙するのだろう。
破れた初恋の痛みに耐えきれずに。
「あの人が自分を選んでくれたとき、その時の嬉しさは今でも忘れられません」
思いもよらぬ大逆転だった。
そして、あまりの衝撃に浮かれていたが故に、あの時のリュカの顔を注意深く見ようとしなかった。
自分を選んでくれたことは、即ちリュカがフローラを愛してくれたという事実に相違ない、と勝手に解釈したのだ。
「そして、あの人は私に世界を見せてくれました」
リュカは世界中を旅していた。
旅人など、明日をもしれない稼業だ。
しかし、これ以上ないほど自由な生き方でもある。
奴隷として自由のない生活を送っていたリュカが、旅から旅をする生活を選んだのは必然のことだったのかもしれない。
今日は東へ明日は西へ、今日の寝床が明日の棺桶。
その覚悟さえあるのなら、この天地に旅人ほど自由で気ままな生活はあるまい。
慣れない旅をしながらも、足に豆を何度も作りながらも、フローラはいつも新しい発見や体験をさせられた。
木もれ日、風にゆれる葉の音、自然が織りなす芸術の美しさ。
訪れる土地によって風は匂いを変え、その地でしか見られない動植物は大いに好奇心を刺激させられた。
夜に交代で見張りの番をしていたときに見上げた、夜空の広さと星の数の多さ。
水平線から昇る朝日の眩しさと美しさ。
人里に立ち寄れば、そこでたくさんの人に出会い、会話をし、別れる。
同じようでどこか違い、違うようで根っこの部分は同じの、色んな土地の人間との触れ合い。
屋敷に籠っているだけでは、修道院で生活をしているだけでは、決して経験することのできない出来事。
それはフローラのかけがえのない想い出だ。
時折襲撃してくる魔物など、それに比べたら微々たる問題だ。
書物や絵画だけでは知ることのできない世界の美しさを、人の営みを、リュカと旅して得てきた。
箱入り娘のまま人生を終わらずに、本当によかったと思う。
蝶よ花よと育てられ生きるのも、また幸せの一つではあろうが、今となってはその道に戻ることができたとしても、決して選ばないだろう。
旅立つ前に用意した値打ちものの服は、すぐにその価値を失った。
生地だけで家が一軒建つような値段の服も、冒険の日々では何の役にも立たない。
すぐに衣服は泥まみれになるか、さもなくば切り刻んで焚き木の火種や雑巾へと早変わりした。
世界の果てにあるような秘境や文化に触れられたのは、どんな色とりどりの宝石よりも値打ちのある経験だった。
「ようやく分かったんです。 あの人が何故笑えるのかを」
あれだけ凄惨な幼少時代を過ごしていれば、二度と笑えなくなったって不思議ではない。
なのに、リュカはいつも笑っていた。
雨の日も風の日も、備蓄してた食料が残り少なくなってきたときも、いつもあの笑顔をみんなにみせてくれた。
魔物でも思わず、邪心を失ってついていきたくなるような、あの優しい笑顔を。
「仲間がいたからなんです」
ヘンリーがいたから、ピエールがいたから、他にも多くの仲間がいるから、笑っていられるのだ。
喜びも悲しみも仲間と分け合える。 悲しみは半分になり、喜びは倍になる。
だから、この広大な世界を旅していける。 悲しみに負けずに、前へ進んでいける。
そう、だからリュカは世界を大切に思える。 守っていこうと歩んでいく。
新しい街に行ったとき、リュカは人見知りせずに誰にでも声をかける。
天空の武具のこと、母に関する手がかりはないか、この土地の名産品は何かなど。
そして、リュカの優しさに誰もが心を開く。
澄んだ瞳で話しかけてくる人に、敵意と警戒心を忘れる。
二度と会えなくてもいいと、リュカはそう言う。
どうせ旅人生活だ。 同じ地を巡ることなど、滅多にない。
だから、二度と会えないことを前提に、話をする。
この一期一会を楽しみ、別れ、また新天地を求める。
二度と会えなくたっていい。 母を救い出すことと、伝説の勇者を見つけることは、今までに出会い、離別してきた人を守ることなのだから。
なんとかなるさと、リュカは言う。
どんな状況でも諦めず、根拠のない言葉を口にする。
けれど、リュカの言葉には思わず信じたくなるような何かがあった。
そんなリュカに、フローラはより一層想いを深めるのだ。
「そんなあの人に出会えたことを、私は感謝しています」
あの人に出逢えた。 ただそれだけで、フローラはこんなにも強くなれる。
ただリュカがいるだけで、ただリュカがそばにいるだけでフローラは幸せなのだ。
淋しくて哀しくて泣いた日も、楽しくて嬉しくて笑う日も、全てはリュカがいるからこそ。
「だから、胸を張って言えます」
愛しい夫と、夫の大切な人を守りたい。
「いつでも――」
フローラはリュカと見た夜明けの水平線を覚えてる。
だから、もう怖くない。
「どこでも――」
大好きなあの人の仕草を、目を瞑るだけで指折り数えることができる。
フローラにとって、リュカは全てを与えてくれた人。
「誰にでも――」
どこか遠いところを見る、リュカが好きだ。
誰にでも気さくに話しかけるリュカが好きだ。
凶悪な魔物にさえ、慈悲の心を見せるリュカが好きだ。
朝早くに、小川でパトリシアの体を洗ってあげていたリュカが好きだ。
船に乗ってて風の吹かない日があったときは、釣りをしようと言ったリュカが好きだ。
「何度でも――言えます」
これを愛と言わずして、何を愛と言うべきか。
たとえ命を失くしても、守りたい人たちがいるから、行く手を阻む嵐にも立ち向かってゆけると誓う。
リュカが世界を守り、世界を守るリュカをフローラが守る。
「私は、良人を愛しています……」
フローラは、父に感謝している。
あの人と自分を引き合わせてくれたことを。
そして、同時に恨んでもいた。
どうして、天空の盾をフローラの夫になる人物ではなく、それを本当に必要とする人に渡さなかったのか。
「愛しています。 けれど、それだけでは駄目なのですね……」
想い続けていれば、いつかは届くと思っていた。
しかし、誠実な言葉も態度も、あの人の前では色褪せてしまう。
時がたつほど膨らみを増す不安を、抱えきれなくなっていく。
フローラがどれだけ言葉を重ねても、フローラがどれだけ尽くしても、リュカは何も言わず手を振りほどく。
フローラは幸せになり続けるのに、リュカは不幸のまま。
失くしたくなかった、あの人と過ごせる日々を。
そしてあの人にも失ってほしくなかった。 これ以上、心を押し殺して好きでもない人と歩き続けることをしてほしくない。
失うことを恐れる日々。 かなうことのないフローラの想い。
すれ違う距離を感じて、儚いまま壊れていく二人。
リュカの声、リュカの顔、リュカの髪、リュカの生き方、全てが好きだ。
そして、そんな想いを引き摺って捨てきれず、未練がましくしがみ付いたまま、今この時までフローラは生き続けてきた。
許せない。 好きだからこそ、あの人の笑顔を奪った自分が許せない。
どんなことがあっても挫けず、前を見続けるリュカの心を曇らせる唯一の障害が自分なのだ。
光の道を歩むリュカの姿に落とされた一点の影、それがフローラ。
「感動しました」
フローラの告白を聞き届けた後、女神がその姿を実体化させた。
宝石をちりばめたティアラ、そして淡いイエローのドレスを着こんだその女性は、まさしく女神か天女の類としか思えない。
整った目鼻に、うっすらルージュのひいた唇はとても綺麗で、フローラは見とれるしかできなかった。
実体化した女神はカモシカのような二本の足でフローラに駆け寄り、その手を取る。
「きっと、想いは届きますわ。 神様はきっと、二人を祝福しています。
ええ、そうですとも。 私にも遠くから想うことしかできないお方がいましたから。
愛を捨てることなんて誰にもできませんわ」
熱弁をふるう女神に、フローラはリアクションを取れない。
ただただ、目を丸くすることしかできない。
「あ、あの……」
「まぁ、私ったら自己紹介もせずにはしたない」
そういう女神は、ようやくフローラの手を放すと、スカートの端をちょんと持ち上げ、優雅に一礼する。
気品のあるその仕草は、彼女が紛れもない高貴な存在であることを証明している。
「私、ローラと申しますの」
女神の正体はラダトーム第一王女、ローラ姫その人であった。
◆ ◆ ◆
「まあ、するとその草を……?」
「ふふふっ、そうなんですの」
フローラが事情を聞くと、消え去り草なる摩訶不思議なアイテムがあるらしい。
煎じて飲むだけで体が透明になるというそれは、身を隠すのに絶好の道具。
複数個支給されていたので、ローラは効果を確認するために一度使ったところ、ちょうどフローラが来た。
ローラもまた、この世界で愛する人の無事を祈るために教会を訪れていたのだ。
そこでフローラを見つけ、フローラの告解を聞いて、この人なら信頼できると判断したのだ。
姿を見せない時から、いつのまにかローラを受け入れていたのだ。
フローラもまた、ローラのことを信用することにした。
何より、ともに愛する人がいてその人の無事を願っている、という共通点が二人の心を結びつけた。
「さあ、行きましょうフローラさん。 同じ志を持った人と力を合わせて、必ずこの悪しき世界から抜け出しましょう」
「あ、あの……ローラ姫」
「ローラで構いませんのよ?」
そう言うローラはどんどんと進んでいく。
戦闘力のないローラの方が、行動力に溢れているというのはなんともおかしな話だった。
フローラはローラの後を追いながら自分の腕につけられた腕輪をさする。
時を戻すことなど、神ならぬこの身には叶わない。
だから、あの日に戻って運命の選択をもう一度することはできない。
人の世に起こる出来事にはすべて意味があるという。
ビアンカと結ばれるのがリュカの運命だったというのなら、天秤を正しい位置に戻せるのは自分だけだ。
そして、この魔法具がフローラに支給されたことに意味があるのだとしたら、これはそういうことなのだろう。
もしも自分にしかできないことがあるのなら、天命というものがあるのなら、フローラは謹んでこの身を捧げよう。
決意が風に切り取られたたずむ。
究極の献身の証、その命と引き換えに奇跡をもたらすメガザルの腕輪を身につけたフローラは、この世界を歩き始める。
愛する人を解放するために。
互いを守ろうとする気持ちは同じ。
しかし、その気持ちがどこからくるのかは全くの逆。
一人は愛してないが故に守ろうとし、一人は愛してるが故に守ろうとする。
すれ違いを続ける二人が会える日は来るのか。
それはもはや神にさえも予測不可能な範疇だ。
あの二人が結ばれることは本来あり得ないことなのだから。
神のいない世界で、神に祝福されることのなかった一組の男女の想いの行き場は天国か地獄か。
誰も知る由もない。
【C-8/平原/朝】
【リュカ@DQ5】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給品×3(本人確認済み)
[思考]:フローラと家族を守る
【G-3/絶望の町 教会/朝】
【ローラ@DQ1】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:消え去り草×2 支給品一式 支給品×2(本人確認済み)
[思考]:DQ1勇者を探す
【フローラ@DQ5】
[状態]:健康
[装備]:メガザルの腕輪
[道具]:支給品一式 支給品×2(本人確認済み)
[思考]:リュカと家族を守る
代理投下終了です。
読み終えた
うおお、初っ端から重厚だな!w
フローラの心情描写が胸を熱くするね
しかし支給品が不穏すぎる…
投下します。
「う〜ん……ダメね」
木々の鬱蒼と生い茂る森の中。
地図の天地を何度も逆転させ、コンパスと見比べている少女がいた。
「わっかんない。大体あたし地図の読み方なんてサッパリだし……
こういうめんどくさいのって、あいつに任せっぱなしだったもの」
彼女が思い浮かべるのは、緑頭巾の幼馴染の顔。
あのとぼけていて見ていると多少いらいらすることもある顔が、今は無性に恋しく思えた。
「……なんであいつの顔なんかが恋しいのよ」
想像の中で幼馴染をしばき倒し、ややナーバスになった気持ちを切り替える。
ろくに理解できなかった地図を取りあえず脇に挟んで、名簿を取り出した。
まずは自分のページを確認する。
「やっぱりあたしってば写真うつりいいわねー」
どうでもいいことを呟きながら、パラパラとページをめくってみる。
どうやらここには自分に関係した人も何人か招かれているらしい。
旅の仲間のガボやアイラ。
それにあの、ダメな叔父さんも来ているらしいではないか。
「あのモンスターたちってばバカね。何が楽しくてあんな人呼ぶのかしら。
盛り下がるだけじゃない」
ぼやきながらその先のページをめくる。
続いてバンダナ姿の男、人相の悪いおっさん、やたら胸のでかい女の子。
前のページも見てみるが、どうやら知り合いはここまでのようだ。
そうして自分のページに再び戻ろうとしたそのとき。
「!!?」
不意に、腕を掴まれた。
そこまで無骨な感じはしない、やや細い手だ。
だが、引っ張られる力はかなり強い。
小柄なマリベルの体は一瞬浮いた。
「誰よっ!あんたっ!ちょっと!!離しなさいよっ!」
ものすごい形相と悪態をぶちまけるような勢いで後ろを振り向く。
そこにいたのは年若く、なんとも名目麗しい銀髪の青年だった。
冷たげな視線は怜悧な印象を与えるが、それを差し引いても美形である。
年のころで言えばマリベルと同じか、あるいは少し下。
さしもの面食いであるマリベルも一瞬たじろいだ。
「……自殺するのがお望みなら、離してやるよ。物好きなヤツだな」
「は?」
呆けたように声を上げたマリベルが、青年が顎で示した先を見やる。
するとそこは切り立ったような崖。
その下には何一つ見えない、無限に闇が広がっていた。
あと一歩踏み出していれば、彼女はその闇の奥底の住人となっていたに違いない。
「ま、待ちなさい!!絶対!ぜぇーったい!!離すんじゃあないわよっ!!」
「とりあえずはお礼を言っておくわ、ありがとね。
あんたラッキーよ、こんな美少女の恩人になれるなんて」
「……」
適当な石を椅子代わりに、二人で向かい合う。
だが青年はマリベルの(とても傲慢な)感謝の言葉に見向きもしない。
目もくれずに自分の荷物を何やらあさっている。
「何やってんの?返事しなさいよ」
「ちょっと黙ってろ。あんたのせいで荷物もロクに確認できてないんだ」
彼はこの地に送られて早々、崖に向かってずんずん突き進むマリベルを発見したらしい。
どうにも止まる様子が見られないため制止したというわけだ。
「何よ、すかしちゃって……感じ悪い」
「ちっ……こんなナマクラなら銅の剣のほうがマシだぜ」
半ばマリベルを無視しながら彼が構えたのは、鈍い光を放つ長剣だ。
だが嫌に軽そうな作りと拵えを見るに、どうやら安価な量産品の一つだろう。
舌打ちしながらも、取りあえず腰のベルトに鞘を固定した。
もう一つ出てきた盾には満足が行ったのか、特に愚痴も零さず装備している。
「ふーん?あんたってば剣士?剣欲しいんだ」
「……そっちには、支給されてないか?」
聞かれて自分のふくろを確認する。
出てきたのは杖で、その他を見ても彼の望む物ではなかった。
「入ってないわね」
「くそっ、早く森を出たほうがいいな」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
急ぎ荷物をまとめて立ち去ろうとする彼を、マリベルは急ぎ追う。
なんとも迷惑そうな表情で、彼は振り向いた。
「どうしてついてくる?」
「あたし一人でこんな森抜けられるわけないじゃない!案内しなさい」
青年は眉を顰め、少し考えたように目を閉じた後に盛大な溜息を漏らす。
何も言わずに、黙ってそのまま行こうとした。
「だから待ちなさいよっ!!」
「嫌だね。あんたにかまってる暇なんてこれっぽっちも無いんだ」
「じゃあ勝手についてくわよっ!!私も忙しいのよ、人探しでっ!!」
こちらを嫌そうに一瞥したかと思うと、同じように歩いていく。
マリベルはそれを了解と勝手に受け取って、同じ方角にずんずんと突き進むのであった。
(待ってなさいよバカ王子。あんたの顔をひっぱたいてやるんだから)
そう、彼女はもう二度と会えないと思っていた親友を名簿に見つけた。
会いたい。
会ってまた、幼馴染三人で、他愛もない話がしたかった。
こんな最悪のシチュエーションなのは残念だが、彼に会うまでマリベルの暴走は止められそうに、ない。
「そうそう、あんた名前は?言わなくてもどうせ名簿で確認しちゃうんだし教えなさい」
「……テリー、だ」
「あたしはマリベル!しっかり道案内しなさい!」
【D-1/森の北端/朝】
【マリベル@DQ7】
[状態]:健康
[装備]:マジカルメイス@DQ8
[道具]:※不明支給品0〜2
[思考]:取りあえず今はテリーについていき仲間たちを探す。
キーファに会って文句を言う。ホンダラは割とどうでもいい。
【テリー@DQ6】
[状態]:健康
[装備]:兵士の剣@DQ8 ホワイトシールド@DQ8
[道具]:※不明支給品0〜1
[思考]:仲間たちを探す。マリベルがうっとうしい。
再び代理終了
マリベルがらしくていいな
テリーは今回はマーダー回避できるかな
トリ出し忘れ。
あの、通りすがりの読み手ですみません
各書き手の方の文章は非常にすばらしいと思うのですが
スタートの話は
>>883なんでしょうか?
今までは禍々しい存在が現れて誰か一人を見せしめに殺したり
首輪を強制的にはめたりとかありましたが
各参加者はいきなりこの世界に飛ばされた感じなんですか?
予約なしです。投下します。
緑の頭巾がうなだれる。
少年アルスは名簿を片手に、深く深くため息をついた。
「なんでこんなことに…」
これまでにも散々不幸な目には遭わされてきたが、今度はとびきりだ。しかもこれまでに戦ってきた魔物たちとはまるで違う。相手の力も、自分の状況も。
「とにかく、みんなを早く見つけて守らなきゃ」
持ち前のお人好しな性格により、方針を決定すると、彼は先までも目を通していた名簿を再び見つめる。
そこにはいくつかの顔見知りの姿がある。まず目に入るのは、大事な幼なじみと仲間たち。
「マリベルは、早く見つけないと怒られるな…。ガボもアイラも強いからきっと心配はいらないけど、何があるかわからないし…」
そして、その後ろ。別離したはずの親友までもが載っているのを見て、アルスは少なからず動揺していた。
「キーファ、ここにいるんだ…。あの野郎、僕が殴りに行くまで死ぬなよ」
はからずも幼なじみと同じ決意を胸に抱き、彼は名簿の更に後ろに目をやる。
「それにしても…」
思わずため息。頭巾が再び垂れた。
「なんでいるの…おじさん…」
少年にこうも頭を抱えさせているのは、これまで幾度と無く迷惑を被ってきた酒癖の悪い親戚の姿だった。
「あんな人でも一応親戚だし、父さんにとっては大事な弟だし…一番、危ないしなぁ…」
どこまでも人のいい少年は、文句を言いながらも結局、叔父の保護を最優先にすることに決めた。叔父ホンダラに戦う力が無いことがわかりきってる以上、誰かが守ってあげなければ、彼がこの世界で生き残ることは難しいだろう。
「まぁ、あの人のことだから案外、僕より強い人にちゃっかり守ってもらってるかもだけど…」
「…すけてぇ〜…」
ひゅうと一陣の風が吹いた。
聞こえるかどうかというくらいのか細い声がかすかに耳に響き、アルスは一瞬固まる。
「…気のせいかな…誰もいないのに声が」
「ちょっとォ!シカトとかありえないんですケド!」
「確かに聞こえる…でも、人の姿なんかどこにも」
「なにをブツブツ言ってるのヨォ!」
声の出所が見えずにアルスが戸惑っていると、突然肩の辺りに軽い衝撃を受けて思わず声をあげた。
「わぁ!?よ、妖精…」
彼の視界に飛び込んできたのは、見たこともない風貌、肌は浅黒く小さな体に羽を生やした少女、文字通り妖精が、パタパタととびまわる姿だった。
「乙女の顔を見てわぁ!とはなにヨ〜!いいからあれ、やっつけちゃって!」
「あ、あれって」
「ヒーッヒッヒッヒッ…」
妖精が指を指す方向にアルスが目線を向けると、そこにはいつの間にやら道化師風の格好をした目付きの悪い男が立っていた。
「悲しいなぁ…甦った僕の前に、人々は殺されてしまうのです…悲しいなぁ…」
(こいつ、いきなり現れるなんて。只者じゃない)
警戒しながら、アルスは目の前の男に話し掛ける。
「殺しなんて…本気で言っているんですか?」
険しい目付きで睨まれ、道化師はにたりと笑みを深めた。
「ええ。私は、私をコケにした人間が憎い。見返してやらねば気が済まない!」
その笑みに浮かぶ深い憎しみに、アルスの背筋を悪寒が走る。その見た目に武器らしいものは見られないが、相手の眼差しに宿るのは、明らかに殺意だ。
(まずい…ふくろの中を確認してなかったから、武器が…!)
戸惑う少年を嘲笑うかのように、道化師の手が振りかざされ、魔法の力が集まり始める。
(くそ、一か八か!)
おろおろと飛び回る妖精を背にかばい、アルスは突進した。
「これで終わりです…ふふ、悲し」
「どっりゃあああああああああ」
「なあああああああああ!?」
肉薄したアルスは、襟首を掴み上げ、小柄な体からは想像もつかない鍛え上げた筋肉を用いて一瞬にして空中に放り投げた。
アルスが放った特技・ともえ投げにより、道化師は空に見事な放物線を描いて、遠くの茂みに音を立て落下する。
どさり。
…相手が動かないことを確認してアルスが息をつくと、妖精が歓声をあげて拍手した。
「やっるゥ〜!!」
「ほら、いいから離れよう」
先とはうってかわって喜色満面ではねまわる妖精を促し、アルスは歩き出す。
「えー。やっつけたんじゃないワケ?」
「良くて気絶だよ。…っていうか君、羽があるんだから、空に逃げれたんじゃ?」
「んー、それがなんか、この世界に来てから羽の調子がおかしいのよネ。
テンチョーもいないし困ってたんだけど、アンタがいてチョー助かっちゃった。これからヨロシクね!」
「ヨロシクって、あの…僕、ちょっと探しびとが」
「そんなのいっしょに探せばいっしょ!あたしサンディ。ほら、いこーいこー!」
「…うん…」
強引な押しにとことん弱いお人好しの少年は、結局まずはこの目の前の妖精を守ることに決めた。
緑の頭巾が、今一度うなだれた。
【C-4/平原/1日目早朝】
【アルス(主人公)@DQ7】
[状態]:HP全快
[装備]:不明
[道具]:不明 支給品一式
[思考]:顔見知りを探す(ホンダラ優先) ゲームには乗らない
【サンディ@DQ9】
[状態]:HP全快
[装備]:不明
[道具]:不明 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない
※羽が不調のためあまり高くは飛べません。飛べて人間の身長程度。
【C-4/茂み/1日目早朝】
【ドルマゲス@DQ8】
[状態]:HP9/10 気絶
[装備]:不明
[道具]:不明 支給品一式
[思考]:ゲームに乗る 人間への復讐
>>904 >>862の2番目
>>907 サンディ移動制限か
速度は元からあまり高速で飛ぶ場面もなかったし人間並みかな
他に飛行可能キャラは竜族と…9の大天使2人がどの形態での登場かによる、ぐらいか?
ドルマゲスの海上移動がどうなるか気になる。禁止か、うまく使われるか、今後に期待
ごめんなさい文章いじくってたらすごい上から目線に…orz
書き手さんたち乙です!!
投下乙。
ドルマゲスさんの中にラプがいるかどうかこの描写はなかなか絶妙。
どっちにしろいいマーダーの素質はあるな
自分もいきなり本編が開始してて???状態になったので
一応避難所から転載しておきます。
912 :
ゲーム開始1:2012/04/02(月) 19:27:29.61 ID:9KPhu1tx0
「これから貴様達には殺し合いをしてもらう」
冷たき声に、眼が覚める。
ふと気づいたときには既に、大勢の人間が広大な空間に並べられていた。
飾り棚に人形を並べるかのように、ほんの僅かなズレすらなく。
整然と並べられ、ぽかんと立ちつくしたままでいた。
「……ここは一体……?」
薄暗く、見渡してもここがどこかははっきりとしない。
判るのは硬い床面に広げられた、絨毯の感触。
空気の流れは芳しくなく、声の反響が大きくとても高い天井。
大きな建物の中に連れてこられたのだと、冷静な者たちは自覚した。
「なんだここは……!?」
男が、女が、或いは人間ですら無い者が。
様々な顔がそこにあった。
一同の頭の中は、すぐさま疑問でいっぱいになった。
そして今、ここに立っている現実に、疑いを持つ。
皆が皆、一様にだ。
それは偶然ではなく、同じ瞬間を辿ってここに来ていた。
そう、彼らは夢を見ていたはず。
「初めに言っておこうか。これは……夢などでは無い」
暗がりから現れたのは、爬虫類のような毒々しい斑点の浮いた皮膚を持つ魔物だ。
まるで王を気取るかのように、外套を身に纏っている。
歴戦の戦士であろうと身震いを誘うような邪気を纏ったその存在は、醜悪な姿を揺らし顔を歪めて笑った。
「甘き夢にやすやすと惑わされた愚かなる人間どもよ」
響き渡る頭上からの声に、どよめきが起こる。
巨大な翼を生やした怪鳥が、羽を散らしながらそこに浮遊していた。
こちらも恐るべき存在感を以て、こちらを威圧するような気迫を放っている。
まるで、餌を見るような眼でこちらを見下ろしながら。
「精々足掻き、我らのよき余興となるが良いわ。ブクルルルルー」
続いて野太い声が、彼らの耳に届く。
さらに奇天烈な姿をした魔物が分厚い唇を歪め、げはげはとこちらを嘲笑っていた。
魚のようでありながら、まるで大男のような顔を持つ言わば半人半魚。
海の色のような碧色の鱗をぬらぬらと光らせ、腕組みをして値踏みをするかのような目線を投げかける。
その姿形からは想像もできない様な力を、きっと隠し持っているのだろう。
「さあ、死力を尽くし……存分に戦うがいい」
最後に物陰から現れたのは、鍛えあげられた肉体を誇るように笑う偉丈夫の姿をした魔族の戦士。
まるで抜き身の剣を見ているかのような危うさと気品を兼ね備えた、武人のような佇まい。
戦いに身を置かぬものにも理解できるであろう迫力に、皆が気圧される。
だが、その威にも屈しない勇気を持つものが、この場にいた。
913 :
ゲーム開始2:2012/04/02(月) 19:28:30.76 ID:9KPhu1tx0
「どうしてお前らがここにいるっ!!」
集団から飛び出したのは、青年だった。
空よりも蒼い髪を逆立てた風貌の彼は澄んだ瞳を怒りに燃やしている。
無手ながらも剣の使い手らしく油断なく構えたまま、眼差しを四体の魔物へと向けた。
「わっはっはっ……久しいな……」
「ムドー……っ!!」
ムドーと呼ばれた魔物は青年の怒りの声に少しも動じず、笑い飛ばす。
どういう事情かは知らないが、青年はこの魔物たちのことを知っているらしい。
「魔族は滅ばぬ。そう言わなかったか?」
「せっかく会えたのだ。ひとつ、この遊戯を楽しんでいくがよい。げははっ」
「お前と再び会えて嬉しいぞ。更に腕を上げたようでなによりだ……」
「そうだとも……今の俺なら、お前たちの企みなんて!!」
青年の握られた拳が、青白い光を帯びる。
光はやがて荒れ狂う稲光と化して、彼が天へと突き出した手を辿り、頭上に放たれた。
「ギガデイン!!」
勇者の証たる電撃呪文。
降り注ぐ雷光が、四体の異形へと向かう─はずであった。
「なんとも儚いな、これが勇者の威光か」
「なにっ!?」
あろうことか、生み出された雷はまるで幻であったかのように霧散してしまった。
驚きに目を見開いて立ちすくむ青年。
「話は最後まで聞け……人間ども、己が首を確かめてみよ」
914 :
ゲーム開始3:2012/04/02(月) 19:30:15.75 ID:9KPhu1tx0
怪鳥の声を聞き、蒼髪の青年が首に触れる。
その行為をきっかけに皆一様に己が首に触れ、周囲の他人の首を見やる。
そこには冷たく無機質に光る、枷のようなものが嵌められていた。
「その環を嵌めている限り、一切の反抗は無力と化す!」
「なおも抗うという愚か者には、死の定めが待っていよう。
お前たちにはもはや、我々に従い戦いを受入れる道しか残されていない」
四方を囲まれ、魔族の笑いだけが広間に響く。
あるものは驚きに、あるものは怒りに、またあるものは絶望に。
それぞれ、様々なる感情を抱え、全員が言葉を失った。
「ふざけるな…っ!誰が、お前たちの言うことなんかっ……!!」
「ほほう。我々に従えぬなら……ゲームの開始を見ずして、今ここで死をくれてやる」
ムドーは、すっと手を伸ばす。
だが、矛先が向いたのは彼ではなかった。
「但し、貴様にではない」
「!?」
彼とよく似た蒼髪の少女。
村娘風の、素朴な衣服を身にまとっていた。
ムドーが伸ばしたその手を合図に、彼女の首輪が耳障りな音を上げる。
(ピッ ピッ ピッ……)
「えっ……っ!?」
「!?ターニアっ!!」
ターニアと呼ばれた少女が小さな悲鳴を上げる。
何やら自分の首元で、枷が音を立てているのだ。
「ムドーっ!何を─」
「心して見るがよい。
殺し合いを拒む愚か者には、残酷なる死を与える!!」
「!」
何が起こるか、察しがついた少女が恐慌状態になりへたり込む。
青年が彼女に駆けよる間もなく、死への秒読みは始まり、止まらない。
「いやっ……!!やだよ!!やだぁっ!!」
「ターニアっ!!ターニアーっ!!」
「助けておにいちゃんっ!!おに…」
いやに軽い爆発音が、周囲に響いた。
首から上を失った華奢な体から、急速に力が失われる。
まるで慣れないダンスでも踊るかのようにぐらりと傾ぎ、そして倒れた。
それっきり、動かなくなる。
915 :
ゲーム開始4:2012/04/02(月) 19:30:48.22 ID:9KPhu1tx0
「たっ……」
青年の顔が、色を失う。
目は見開かれ、伸ばした手は空を掴み。
そのまま声を失い、がくりと項垂れた。
ようやく事態が呑み込めた者の悲鳴やどよめきが巻き起こる。
しかし、ムドーや他の魔族たちの掌が再びこちらに見せつけるように掲げられ、一同は押し黙った。
「この通り、諸君の命は我々の手の内にあるということだ。無駄に命を散らせてくれるなよ」
どことなく気取った調子の新たなる声が、一同の耳に届く。
巨大な蝙蝠のような翼を持つ、まさに悪魔と形容すべき姿の新たなる魔族が現れたのだ。
大きな口に牙をむき出し、広間の階段を一段一段降りながら話を続ける。
「私はアクバー。さるお方に変わりこの場の指揮を執り行っている。
詳しいルールの説明をさせていただこう」
割り込むようで悪いんだけど、採用になったOPはこれじゃなくて2番目の奴じゃなかった?
917 :
911:2012/04/02(月) 19:40:09.53 ID:3GMbzZ8GO
911です。
誘導先を見に行って混乱してしまいDQ6だからこれだと勘違いしてしまいました
貼り付ける文章を間違えていてすみませんでした
しかも連投規制が入りPCから書き込めなくなるという失態…スレ汚しして本当に申し訳ありません
>>911気にするなお前さんはよくやってくれたほうだ
ところで、没OPもwikiができたら収録してあげてくれまいか
没もまた埋もれるのは惜しい名作だったし
じゃあ代わりにOP貼ります
ボンッ……
何かが破裂するような音と、続くどよめきを聞いて彼は目覚めた。
「こ、ここは」
「目覚めたか、サマルトリアの王子よ」
「あなたは、竜王!?」
聞きなれた声に振り向くと、そこにはアレフガルドで出会った竜王の曾孫が居た。
「このような状況でもすやすやと寝入っているとはな、さすがはのんき者と名高いだけはある」
「や、やめて下さいよ……。それより一体なにが……」
彼――サマルトリアの王子は周囲を見渡して、その異常さに動揺する。
辺りは薄暗く、近くに居る竜王の曾孫の顔がうっすらと判別できる程度。
だが周りに居るのは彼だけではなった。
何十人もの姿が暗がりに散らばっている。辺りはごく一般的な城の大広間くらいだろうか。
光源はわずかに壁に掛けられた松明のみ。広間全域を照らすには明らかに不足している。
その時になりようやく王子は自分が床に半身を起した状態でいることに気付き立ちあがった。
改めて周りを見渡すがどう考えても見覚えのない場所だ。
彼の知る城は5つほどあるが、広間の造りはそのどれとも該当しない。
灯りがとぼしいせいで、百人には届かないだろうという人影以外は何も見えない。
天井は存在しない。いや、あるのかも知れないが少なくとも視える範囲では確認できなかった。
ただ暗い闇が頭上を覆っているだけだ。
彼は寒気を感じ、身震いする。
「何処、なんですか? ここは」
「解らん」
竜王に尋ねるも、返ってきたのは簡潔な否定文だった。
「意地悪しないでくださいよ、僕には状況がさっぱり飲み込めません」
その言葉に竜王の曾孫は嘆息する。
「そうではない、本当に儂にも解らんのだ。儂は自分の城に居た筈だ。
そこで本を読んでいたことまでは覚えているが、そこから記憶がない。気がつけばここに居たのだ。
誰かは知らぬが大層な真似をしてくれるものよ――」
「そんな、まさか僕らは――拉致されたんですか?」
「そう考えるより他あるまい」
此処に至ってようやくサマルトリアの王子は事態の深刻さを理解し始めていた。
「もしや、ここに居る人たちは……」
「うむ。人、だけではないが漏れ聞く言の葉の断片を拾うには我らと同じ境遇のようじゃな」
竜王の曾孫は油断なく周囲を観察している。
「じゃあ、誰かと話してみましょう。何かわかるかも……」
「今は止めておけ。儂もそうだが、警戒されておる。この空間に漂う妖気は尋常のものではない。
下手に刺激をすると鬼が飛び出すやも知れぬ。」
言われて彼はは気づいた。
空気に混じった粘りつくような濃厚な闇の気配に。
先ほどからの悪寒の正体はこれだったのだ。
見れば他の人間――だけでなく怪物もいる――たちも肩を押さえて震えていたり、敵意満載の目で周囲を警戒していたりしている。
確かに迂闊な挙動はさけるべきなのかもしれない。
「しかしこのままでは……」
「それにこの首輪のこともある」
「?」
竜王が指し示したのは己の首に嵌る鈍く黒光りする金属の首輪。
「あれ、それ前からしてましたっけ?」
「馬鹿を言うな。それにお前の首にも嵌っておるわ」
咄嗟に首に手をやると指に伝わるヒヤリとした金属の手触り。
「なんだこれ!」
「よせ!!」
思わず力任せに首輪を引きちぎろうとした――が、竜王がその腕を掴んで止める。
「どうして止めるんです?」
「先ほどお前と同じ真似をした輩がいた」
「……どうなったんです?」
「今度から肩までの高さで身長を測る羽目になった。あれだ」
広間の中央あたりに青いコートを着た首なし死体が転がっていた。
首は……その死体から数メートル離れた場所にぽつんと落ちている。
近づくものは誰もいない。
「さっきまで混乱した空気が張り詰めて一気に破裂しそうだったのだが、
彼奴のおかげで冷水が浴びせかけられたように鎮まった。
あと数分も保たぬだろうが、今は誰もが状況を観察することを選択したようだ。
ともかくこの首輪は外そうとすると爆発する。己の首が邪魔だというなら別に止める理由はないが」
「本当……なんですか?」
「残念ながらな」
竜王の表情からは一切の欺瞞を感じられず、どうやら自分は九死に一生を得たらしいと悟って
王子は生唾を飲み込んだ。
「あの、竜の長者たるあなたなら多少の爆発くらいどうにか……」
「実際に爆発を見た儂が断言しよう。おそらく我が曾祖父、真なる竜王でさえも抗えぬであろうな」
「そんな」
その時、いきなり空間に光が射し込んだ。
突然明るくなったかと思うとしゃがれた老人の声が響き渡る。
「やれやれ、どうも先走った輩がいるようじゃの……残念だ。
準備が遅れたのはこちらの落ち度なれど、な」
見上げると空間の中央に一人の老人が浮いていた。
見るからに齢100を超えていそうな禿頭の老人。魔族であることを物語る真紅の肌と長く真っ白に染まった口髭。
王子は目にした瞬間に理解した。
その老人がこれまで相対したどんな怪物よりも強大な力を秘めていることを。
力だけを見ても、もしかすればあの破壊神シドーに匹敵するかもしれなかった。
「何者だ……あいつ」
「どうやらこの悪趣味な宴の主催者さまのようだな」
竜王の顔も険しくなっている。
他の者たちも老人の発する圧倒的な重圧に気圧されたのか動きはない。
だが一人、叫んだ者がいた。
「デスタムーア! 滅んだはずじゃ!?」
「しばらくぶりだなレイドックの王子よ。だがおぬしに構ってるわけにはいかぬのだ。
死にたくないなら少し黙っておれ。」
デスタムーアと呼ばれた老人は、叫んだ青い髪を逆立てた青年を一瞥すると再び空間全体を見渡した。
「ようこそ、我が城へ。我が名は大魔王デスタムーア。
突然の招待に驚かれた者も多いだろうが歓迎しよう。こうして集まってもらったのは他でもない……」
デスタムーアはいったんそこで言葉を止めるとニヤリと哂った。
『 お前たちにはこれより、殺し合いをしてもらう 』
大きなどよめきが沸き起こる。
(ふざけるな!)
王子はそう叫ぼうとしたがデスタムーアの妖気に気圧され、口が開かない。
(僕は……ビビってるのか……あいつの妖気に)
「!!」
ドシュウウウウウウウウ
その時、デスタムーアが突然竜巻につつまれた。
全ての魔を裂断する疾風の呪文。
ムーンブルグの王女が好んで使うバギによく似た、それでいて遥かに凌ぐ威力の術のようだった。
王子は知る由もないがバギ系の最上級呪文バギクロスだ。
「チャモロ!?」
誰かが名を呼び、一同の視線が集まる。
黄色い双角の帽子を被りメガネをかけた少年僧侶。
彼がデスタムーアに攻撃呪文を放ったのだ。
「やった!?」
「いや、マズイな」
王子は一瞬、竜巻の呪文によりデスタムーアが倒れることを期待したが
竜王は即座に無駄を悟っていた。
「チャモロ、退くんだ!!」
「何を言うのです、善なる神のしもべとして彼の存在は許せない!!」
先ほどの青髪の青年がチャモロという少年を制止しようとするが、チャモロは再び呪文を唱え始めた。
「もう一度喰らえ、バギクロス!!」
再び竜巻が巻き起こり――それが一瞬で掻き消えた。
「え?」
見れば宙に浮くデスタムーアは無傷で健在だった。
「我が言葉を中断させるとは……貴様には見せしめになってもらおうか」
「なにを――」
チャモロは最後までいうことができなかった。
ボンッ!
にぶい破裂音と同時にチャモロの首は一瞬にして宙へと舞い上がった。
なにがおこったのか理解できず、王子は目を見開く。
「チャモロォ!!」
力を失い、崩れ落ちる身体を青髪の青年が駆け寄り、抱き支える。
そのすぐ後に、チャモロの首が落ちてきた。
ドサッ、コロコロ……
「う、あ……」
青年の他に何人か仲間と思しき者たちが駆け寄っていたが、全員が息を呑んで動きを止めた。
「私の話を邪魔する者は消えたかな? まだ居るのなら名乗りでよ、速やかに沈黙させてやろう」
その言葉に青年は頭上の老人を睨みつけるが、動こうとはしなかった。
彼だけではない。その場にいる誰もが動けなかった。
「懸命だな。どうやらこの首輪は……奴の切り札ということか」
竜王の曾孫は再び首輪に手を触れる。
この首輪が嵌められている限り、今デスタムーアに逆らうのは死を意味する。
あの爆発を見た者ならばそれが耐えられるものかどうか判断できるだろう。
そしてこの場に居る全員が動かぬということは、抗える者は存在しないということ――
デスタムーアはもう一度周囲を見渡し、敵意はあれど動こうとする者がいないことを確認して
満足そうに頷いた。
「では説明に入ろうか。といってもお前たちに伝えられる情報はそう多くはない。
お前たちにはこれから私が作り上げた擬似世界にいってもらい、そこで殺し合いをしてもらうことになる。
生き残れるのは最後の一人だけ。
その優勝者には私が責任を持って元の世界に戻すと同時にどんな願いもかなえてやろう。
富も名誉も、なんなら死んだ人間の蘇生だって請け負ってもよい」
集められた者たちの中に動揺の気配が広がる。
明らかに心動かされた者が何人かいるようだ。
「信じる、信じないはお前たちの勝手だ。だがそこにいるレイドックの王子ならば私がそれだけの力を持っていると
知っているのではないか?」
「……」
レイドックの王子という青年は怒りを押し殺し沈黙を返す。
それはあの大魔王の問いを肯定したように見えた。
それを満足そうに見やるとデスタムーアはパチンと指を鳴らした。
すると突然サマルトリアの王子の、竜王の曾孫の、いやその場にいる全員の足元に麻袋が出現した。
「それは私がお前たちにおくるプレゼントだよ。食料や地図、その他いろいろ入っておる。
戦うための「武器」や「道具」もな。簡素ではあるがルールブックも中に入れておいた。
向こうに着いたら目を通しておくことだ。ルールを知らぬでは簡単に死が訪れよう、それでは詰まらぬ」
その言葉を聞いた次の瞬間、サマルトリアの王子の体は浮遊感につつまれた。
周囲の景色が白く染まっていく。
「こ…これは?」
「それでは諸君、健闘を祈る。せいぜい我らを楽しませてくれ」
デスタムーアの哄笑を聞きながら彼の意識は薄れていった。
「さあ、ゲームを始めよう」
【マルチェロ@DQ8 死亡】
【チャモロ@DQ6 死亡】
【残り60名】
【ゲームスタート】
※ジョーカーはムドー・ジャミラス・グラコス・デュランの4人。ゲームの管理運営、放送はアクバーが担当します。
終わり
ありがとうございます!
とても見やすいです
「ちょっと、私を無視するなんていい度胸ね?」
彼女がこの地に舞い降りた時、視界に映っていたのは一体のゴーレムだった。
ゴーレムは町の入り口を塞ぐように、ただ佇んでいた。
彼女はゴーレムという魔物を知っている。
知っている、というには少し語弊があるか。ともかく、その存在は人づての話で聞いたことがある。
煉瓦で包まれた巨体に、重量感を伴う素早い動きから力強い一撃を繰り出す魔物。
そして、彼女が知っているのは襲い掛かる魔物としてのゴーレムだけではない。
あの小魚のような顔をした男と共に冒険をした仲間としてのゴーレムも知っている。
誰もが口を開く所を見たことが無いほどの寡黙。そもそも、口を利くことができるのかどうかすらわからないが。
口を開くことが出来なくても、男はゴーレムと意思疎通をすることが出来ていた。
活発に動くわけではなく、落ち着いた動きで敵と戦う。その特性を見抜き、あの男は常に的確な指示をゴーレムに送っていたそうだ。
名前は「ゴレムス」で、その名前を呼ばれると少し嬉しそうな動きを見せていた。
そんな、ゴレムスと瓜二つのゴーレムが今、彼女の目の前にいる。
彼女の問いかけには一切応じず、ただ、町の外を見つめ続けている。
まるで何かを守るように、ただそこに佇んでいる。
「……はぁ、分かったわよ。もうそこにずっと立ってなさい」
彼女、デボラのマシンガンのような問いかけに一切動じないゴーレム。
その様子に流石の彼女も疲れてしまったのか、ゴーレムへの問いかけを中断する。
ここで一つ、デボラの中に違和感が生まれる。
特に外傷もなく、このゴーレムが活動するには何ら問題ないと判断できる。
そして彼にも忌々しい首輪がついていることから、殺し合いを進めるために用意された魔物ではなく、この殺し合いに巻き込まれているのだと推測できる。
もし、殺し合いを進めるための魔物だったとしたら、奴らはゴーレムにすら怯えて保険をかける程度の連中であるというだけ。
もし彼がゴレムスでも、そうでない野生のゴーレムでも、鈍くて反応が遅れていたと考えても、何度目かの問いかけの時点で敵対か友好かのリアクションを起こせるはずだ。
しかし、目の前のゴーレムは違う。こちらに襲いかかることもなく、ずっと町の外を見つめ続けている。
の言葉を借りるなら、このゴーレムには「心」が無いのだ。
まるで、誰かに作られたかのように。
「ま、いいわ」
そこまで考えていく内に「害がないなら良いだろう」と考え、その場を立ち去ろうとしたときだった。
ゴーレムより少し遠くに、もう一匹の魔物が彼女の視界に写り込んだ。
「ククク……只の女がこのような殺し合いにいるとはな」
魔物……いや、魔王バラモスはデボラを視認した後、舌なめずりをしながら彼女に話しかけた。
「そういうアンタこそ、カバみたいな顔してアタシに話しかけるなんていい度胸してるじゃない」
バラモスが魔王である事など知る由も無い彼女は、いつも通りの口調で話しかける。
仮にバラモスが魔王だったと知っていても、彼女の口調は変わらなかっただろう。彼女にとって恐るるに足ることなど、何もないのだから。
そんな彼女のいつも通りを、魔王は強がりと取ったのか、フンッと鼻で笑いながら会話を続ける。
「今の内に強がっておくがいい……地獄の苦しみを味わいながら息絶える事になるのだからな!」
魔王の一言に大きなため息をつき、人差し指と中指で額を押さえながら、やれやれと肩を竦めるデボラ。
申し訳程度に向けられた視線には、憐れみの情さえ感じられる。
「……貴様ァ!!」
怒りに身を任せ、たった一人の女相手に殺意を剥き出しにして飛びかかる魔王。
いつもどおりの挑発を重ねていたデボラは、予想外の素早さに一歩退いてしまう。
デボラがこのまま魔王に襲われ、二度と蘇らないようにはらわたを食い尽くされてしまう。
そこで終わり、彼女の一生は終焉を遂げる。
ハズだったのだが、戦神はほんの少しだけ、ユメを見たかったようだ。
ゴーレムの鉄拳から、高らかに戦いのゴングは鳴り響く。
意識の外から頬を全力で殴られても、後ろに滑りながら踏ん張るところは流石は魔王と言ったところか。
デボラは突然の事態を飲み込めず、瞬きを繰返している。
「おのれ! 邪魔するつもりか!」
大きな石像だと認識していた魔王は、横槍に憤慨しながら石像へ攻撃する。
魔王のカギ爪が、煉瓦と擦れ合い嫌な音を立てる。
それに怯むことなく、ゴーレムは豪腕を振るう。
鈍い音を立てながら、魔王へと拳がめり込んでいく。
物理攻撃では分が悪いと判断したのか、魔王は一歩退いて両手に魔力を込める。
その手から放たれた魔力は閃光となり、ゴーレムへ襲い掛かる。
巻き起こる大爆発、粉塵が町の入り口へと舞う。
その場に呆然と立ち尽くしていたデボラは、鋭い痛みと共に現実に引き戻された。
魔王の腕が自分の体を握り締めている。
骨が軋む嫌な音がする、受けたことの無い激痛が体中を駆け巡り、声を出すことすら叶わない。
「手間をとらせおって……だが、連れていたあの石像もここまでのようだな」
もう少し力を込めてしまえば、簡単に全身の骨が砕けるであろう。
その、ギリギリの線で魔王は力加減をしている。先ほど受けた屈辱を晴らすためだろうか。
町の男たちよりかは力がある自信があった。だが、今はどれだけ力を振り絞ってもこの拘束から逃がれることが出来ない。
魔王からは逃げられない、と言っていたのは誰だったか。彼女の頭にふとその言葉が浮かぶ。
このまま全身の骨を砕かれて死ぬのだ、そう覚悟を決めたとき。
体を大きく揺さぶられ、自身を締め付けていた力が急激に緩んだ。
同時に、バラモスの頬に見覚えのある煉瓦の腕が深々と突き刺さっていた。
バラモスのミスは呪文を使ったことだ。
予想以上の固さゆえに、呪文には弱いだろうと踏んだことが何よりもミスだった。
このゴーレムはデボラの推察どおり人的に生成されたものだ。
かの竜王が、ある城塞都市を滅亡させようと企んだのだが、このゴーレムに阻まれている。
一切の攻撃呪文を弾き、圧倒的な防御力と攻撃力を持つ、まさに「鉄壁の巨人」だった。
竜王軍の襲撃で侵入する魔物から、侵入する全ての生物を襲うようになったのは城塞都市側の考慮していないことが起きた以外は完全に無傷だったのだ。
やがて、一人の勇者の血筋を引き継ぐものによって倒される運命にあるのだが、それが起こるのは彼が連れてこられた時より少し後の話になる。
その勇者の血筋を引くものが全身全霊をかけた最強の呪文ですら、彼は動じることは無いのだ。
もっとも、この場にいる全ての人間がそれを知る由も無いのだが。
勇者のみが扱えるとされる雷すら耐える彼にとって、爆発を耐えることなど簡単なことであった。
粉塵が消え、魔王の姿を目視できれば、もう一度殴りかかることなど容易である。
突然拘束から逃れ、ぶっきらぼうに地面に放り出されたデボラは、ようやく自分の置かれた状況を飲み込むことが出来た。
魔王が手加減をしていたおかげで、まだ体を動かすことは出来る。
このタイミングで逃げることも出来るかもしれない。だが、先ほどのあの素早さを考えればゴーレムを足止めしてから自分を殺しに来ることも可能なはずだ。
あのゴーレムも、魔王を単騎で殺し切ることなどできないだろう。このままの状況が続けばジリ貧になるだけだ。
彼女が無自覚のうちに町側からゴーレムに話しかけたことが幸いして、自分はゴーレムの攻撃対象としては認識されていない。
あの男や、フローラのように長期間冒険を重ね、大魔王の討伐など経験した訳ではない。
だが、自分も親の目を盗み、船を借りてこっそりと冒険の旅に出ていたことはある。
そこで出てくる魔物程度なら倒せるようにもなったし、呪文の扱いも分かって来てはいる。実戦経験が全くのゼロという訳ではない。
このままゴーレムがやられるのを黙って見届け、自分もみすみす殺されるくらいなら。
「そうよ、アンタみたいなカバに好き放題やらせないんだから」
そう呟き、ふくろから出したマントを羽織り、片手に魔神の金槌を携えて。
彼女は、魔王へと飛びかかっていった。
「チィ! まだ動くか!」
呪文が効かない、それに気がつき始めた魔王の顔に若干の焦りが浮かぶ。
しかし、ゴーレムの方も流石に魔王相手に無傷というわけには行かない。
魔王の爪によって、ゴーレムの体にも損傷が目立って来た。
それでも怯むことなく、ゴーレムは腕を振るい続ける。
しかし何度目かの魔王の攻撃で、ついにゴーレムの体勢が傾く。
この好機を逃すわけにはいかない、バラモスは力を込めてゴーレムの足を砕きに行く。
「はァァァァ!!!」
そこに、一陣の風が巻き起こる。
振り下ろされた鉄槌は当たる事は叶わなかったものの、地面を大きく揺るがした。
「小娘……尻尾を巻いて逃げたとばかり思っていたが、わざわざ殺されに来たか」
デボラは不敵に笑う、その笑みが魔王の怒りをさらに蘇らせる。
「わざわざ殺されに来た? 勘違いしないで、ア・タ・シがアンタの相手してあげるのよ。
分かったらアンタがさっさと倒れてくれたらこっちも楽なんだけどねぇ」
「たわ言を!」
「マヌーサ!」
魔王が飛びかかるタイミングで、デボラも呪文を打つ。
魔物と闘う上での基本。真っ向で殴りあうのではなく、多種多様の手を使いながら相手を弱らせること。
そのために彼女がまず打ったのは相手に幻覚を作り出して惑わせる呪文、マヌーサ。魔王バラモスは、この呪文に僅かに耐性が無かった。
只でさえ力の無い小娘に小馬鹿にされ、巨像には殴られている始末の現状で、怒り心頭の魔王が防禦耐性を取ることなど考えもしなかった。
結果、そのわずかな耐性の無さを突かれてしまう。
「小癪な……!」
ゴーレムとデボラの姿が視界に複数映りこむ。
どれが本物なのか、バラモスに確かめる術はない。
状況判断を強いられている最中に、次の攻めてが飛ぶ。
「ベギ……ラゴン!!」
わずかな冒険でも、数を重ねれば大きな経験となる。
彼女が積み重ねた冒険から学んだ、最強の呪文を魔王に向けて放つ。
一般の女性から放たれるベギラゴンとはいえ、魔王の体を確実に焼いてゆく。
魔王は苛立ちながら腕を振るうが、振るう腕は幻影を捕らえて何もない空を切る。
そして意識がデボラに向いているところを、ゴーレムが殴りかかる。
両者の間に打ち合わせや、意思の疎通は全くない。
ただ、状況がそうなっているだけだ。奇跡的に、両者の動きが噛みあっている。
魔王に着実なダメージが蓄積されているのは、目に見えていた。
「小娘ェェェ!!」
魔王の口から激しい炎が吐き出される。
呪文ならゴーレムの影に隠れれば済むが、炎なら全体的に影響を与えることが出来る。
そこからデボラを炙り出し、まずは幻覚の魔法の根元を打ち切る。
そう考えていたのだが、ここでデボラの強運が発揮される。
彼女が身に纏っていたマントは、彼女が良く知る男の身を守る王者のマント。
悪しき魔物からの炎や吹雪さえも、耐えきる逸品だ。
バラモスの吐く炎に対しても、わずかなダメージで抑えることが出来た。
そのことに、バラモスの苛立ちは大きく加速する。
そして、局面は大きく動く。
幻覚で惑わされ続ける魔王に対して好機と判断したのか、ゴーレムはラッシュをかける。
先ほどより速度の上がった拳が、魔王へと確実に突き刺さる。
魔王は、その一発一発を受け止めるのが精一杯だった。
反撃をすれば、その腕は空を切る。その隙にもう一発の拳が飛んでくる。
これ以上、魔王としてもダメージを受けるわけにはいかないのだ。
デボラは、ゴーレムとバラモスが取っ組み合いをしているのを確認し一歩後ろへ下がる。
今、手に持つ魔神の金槌。
話には聞いていたが、当てれば恐るべき破壊力を引き出すことが出来る。
一度振ってみて分かったが、金槌に「振り回される」のだ。
この力を引き出すには、一点の隙をもう一度、正確に突く必要がある。
そして、その隙はたった今生まれようとしている。
息を吐き出し、トン、トンと軽く飛び跳ねて、呼吸を落ち着ける。
「おのれ……小癪な人形と小娘め!」
瞬時に駆ける。目指すは只一つ。
「調子に……」
大きく飛ぶ。ゴーレムを優に飛び越し、あの脳天を目掛けて。
鉄槌を、振り下ろす。
会心の――――一撃!!
「乗るなあアァアアアアアアアア!!」
一撃を叩き込んだ瞬間に、デボラ自身も激痛に苛まれる。
魔王の右腕が彼女の腹部を貫き、左腕はゴーレムの拳をしっかりと握り締めて受け止めていた。
「もう……容赦はせんぞ!!」
先ほどとは一段と違う、覇気を纏った声に恐怖するデボラ。
ゴーレムの腕をいとも容易く引きちぎる。
「只の小娘と石像、簡単に勝てると思っていたのが過ちだったようだな」
次に、デボラの上半身を持ち、突き刺した腕を軸に体を上下に引き裂く。
飛び散る鮮血と共に激痛をデボラが襲う。この世のものとは思えない絶叫が、木霊する。
そのまま、握り締めていたデボラを地面に叩き付ける。
地面に触れる瞬間に、ガラス瓶のように全身が飛び散るデボラ。
死を実感する前に、その意識は途切れることになる。
そのまま、血に塗れた腕でゴーレムへと向かう。
咄嗟に臨戦耐性を取るも、魔王の手により足が砕かれる。
バランスを失い、崩れ去るゴーレム。
地に立つことすら叶わず、そのままもう片方の足も砕かれ、残った腕も砕かれ。
最後に、顔面を渾身の力で踏み砕かれ。ゴーレムも、その機能を完全に停止した。
本気を出したその姿は、魔王と呼ぶに相応しい物だった。
「感謝するぞ、我が心から慢心を取り除いたことをな」
一つの死体と残骸を一瞥し、魔王は体力を回復させながら町の中へと歩みを進める。
この場には、未知の存在が多数いる。
この魔王の力を持ってしても、苦しめられるほどの力を持っている者が多数いる。
嘗て、勇者が来たときも自分の中には若干の慢心があった。
その所為で、無様な敗北を遂げてしまった。
何かの縁で制限つきの命を受けた今、次は失敗することは許されない。
この頭の傷と全身のダメージは、それを学ぶ少し高めの授業料だったといえるだろう。
「ゾーマ様、もう一度貴方様の牙となり、お役にたって見せましょう」
覚醒した魔王は絶望を名乗る町へと、一歩ずつ確実にその足を進めていく。
【ゴーレム@DQ1 死亡】
【デボラ@DQ5 死亡】
【G-3/絶望の町入り口/朝】
【バラモス@DQ3】
[状態]:頭部にダメージ(大)、その他全身的にダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:不明(0〜3)、基本支給品
[思考]:誰が相手であろうと、容赦せずに皆殺しに町内へ。
[備考]:本編死亡後。
※絶望の町の入り口を塞ぐようにゴーレムの残骸があり、デボラの上半身が倒れています。両者の支給品はそのままです。
デボラ:魔神のかなづち@DQ5、王者のマント@DQ5、不明1(彼女が扱える武器の類ではない)
ゴーレム:不明3
代理投下終了です。
ああ、ついに最初の死者が……。
ゴーレムとデボラの冥福を祈ります。
それにしてもバラモス、さすがの魔王の貫録。
これからに期待です。
話を聞かない男、地図の読めない女 の1レス目が抜けてたのでwiki追加しました。
アルスがともえなげ使ってるので、少なくともぶとうか★5は達成済ってことになりますね。
こういうのもwikiに載せてったほうが良さそうですね。
代理投下します
ギュメイ将軍が再び意識を取り戻してはじめに抱いた感情は、戸惑いであった。
ガナン帝国に忠義を尽くした人間としての生涯。
エルギオスによって豹頭の剣士として蘇られされてなお、ガナン帝国への忠義を選んだ魔獣としての生涯。
そのいずれも、悔いも無きものであったはずだ。
自身の生に、既に未練などなく。
唯一の未練であったのは、主君ガナサダイとその父、先代王ガンベクセンの確執であった。
が、それさえも天使の少女たちによって無事に解決を見た。
ガナンの歴史の全てを見届けて、ギュメイは今度こそ天に還ったはずなのだ。
故に不可解であった。
再びこうして受肉したことに、果たして今、何の意味があるのか?
守るべき国は既に無く、従うべき主君は既に亡く。
空虚なギュメイの中に、ただ一つ残されていたのは、剣の道であった。
ゆえにギュメイは立ちあがり、再び剣を取る。
唯一残されし剣の道。そこに提示されたこの死合いの場。
強者との対峙は、好敵手との出会いは、ギュメイとしても望むところではある。
弱者までも斬り捨てることについては抵抗があるものの、帝国再建の前には詮無きこと。
勝利者へと提示された『褒美』をもって、ガナン帝国の再建を願うのも一興か。
この再生に意味があるなら、それは国に殉じることであると、己を納得させながら。
ギュメイが落とされたのは、牢獄の町と呼ばれる施設の地下だった。
捕らえた虜囚たちを、この場に住まわせて生活させていたであろう、生活の跡が散見されている。
およそいいとは言えない環境に眉を顰めていると、一人の青年と出会う。
その身のこなしは戦士として申し分なく、ギュメイは迷うことなく声を張り上げた。
「我が名はギュメイ、ガナン帝国三将の一人! 戦士よ、我と手合わせを願う!」
○
「いいぜ。ちょうどひと暴れしたかったところだ……!」
豹頭の男の出現にも物怖じ一つせず、申し出を二つ返事で了承した青年は、その名をアレルと言う。
勇者となるべくして生を受け、勇者となるべく育てられてきたこの男は、
皆が皆、己が望むがままに動いてくれることをいいことに、結構な乱暴者として育った。
手癖は荒く、旅に出て彼がまず行ったのは民衆からの略奪であった。
腕っ節は強く、従わぬものは、なんであろうと力で従わせた。
だが同時に気に入らぬ悪党も片っ端から捻り潰してきたことで、批難の声は徐々に賞賛へと変わっていく。
人を惹きつける"カリスマ"が、彼には備わっていた。
付き従う仲間の一計により、魔法の腕輪を身につけるなどで若干の性格矯正は行われはしたものの、
その破天荒な生き方そのものは変わることはなく、彼は全ての道を、己が力で切り拓いていった。
どこまでも自由に。
力も、富も、名声も、平和でさえも、彼に手に入れられないものは何も無く。
暴れ馬は、やがて万人が認めるところの勇者として大成した。
英雄として持て囃される生活に、やがて退屈を抱いたアレルは一人、旅に出た。
求めたのは単純に、新たな刺激である。
この地に彼が落とされたのは、そんな矢先であった。
強制的に戦いを強いるというこの場は、望んだ刺激と程遠く、到底受け入れられるものではなかった。
己の望むがままに進むアレルにとって、束縛を意味する首輪などは特に不愉快で。
アレルは憤慨し、苛立ちを隠しもせず牢獄の町を歩いていた。
そんな矢先に挑まれた決闘を、彼が受けない理由はなかったと言えよう。
○
「では、参る!」
牢獄の町に、気合の咆哮が響き渡る。
先制したギュメイの鋭き炎を纏った斬撃を、こともなげにアレルは打ち払った。
すかさず反撃に転じようとするが、ギュメイは重心を取り戻し、既に追撃を構えている。
足元よりバランスを崩さんと振り上げられた斬撃を、アレルはそれでも冷静に後退して回避。
右脚に力を込め、ギュメイを押し潰す勢いでアレルは猛進。
しかし当たるか当たらないかのところでギュメイは脱力し、勢いを殺してから剣を突き出した。
アレルは目だけでそれを追うと、前屈のような形で避けてみせる。
そのまま床に両腕をつけ、それを軸にして倒立し、足を開いて大きく回転。
体術を以ってギュメイを怯ませると、アレルはいきおい立ち上がり今度は上段に剣を構え、跳躍。
ギュメイが受けることを放棄し後退すると、剣の振り下ろされた床面が大きく爆裂した。
飛び散る石材に乗じてギュメイが前進すると、アレルはそれを待っていたとばかり正面から受ける。
そうして、鍔競り合う形で二人は対峙した。
「自己紹介が遅れたな、オレはアレル、覚えておきな」
「どうやら相当な手練の様子。こうして剣を交えられること、礼を言わせてもらおう!」
「こっちも嬉しいぜ。オレに堂々とケンカを売りに来たやつは、久しぶりだからな……!」
その後の二人の剣戟は、熾烈を極めた。
大剣であるバスタードソードを、まるでひのきの棒のように軽々と振り回す豪腕のアレル。
長剣である山賊のサーベルに、持ち味の鋭い剣さばきが加わり、超スピードで立ち回るギュメイ。
互いに戦いを長引かせることは得策ではないと考えながらも、一方でもっと続けたいと滾りあう。
好敵手。互いを認めるのに、そう時間はかからなかった。
だからこそ、アレルは問いかける。
「……お前は何のために今、剣を振るってんだ?」
「忠義の為。失われし我が主と、亡国の再建を望んでいる」
「で、それは誰が叶えるんだ」
「この死合いに勝利することで『褒美』が得られると聞いている。それを為して――」
「本当に叶うと、叶えてくれると思うか」
「!」
剣戟が、止まる。
ギュメイはひとたび距離を取り、思案する。アレルもそれを追おうとはしなかった。
アレルの問いは、ギュメイの心に深く突き刺さった。
蘇生に戸惑いその場しのぎの間に合わせとして考え付いた「帝国の再建」という動機。
だがこれは、『馬鹿正直に魔物たちが願いを叶えてくれる』という前提に基づいたものだ。
疑念にまみれた、ひどく不安定な前提であることは間違いない。
それに。
「だいたい、そんな労せず手に入れたてめえの国に、そんなに価値があると思うのか?」
「……」
「内心、分かってるんじゃあねえのか。そんなことはありえねえし、そもそも違うんだってよ。
そういう迷いが剣に現れてるいまのお前は、ちっとも面白くねえ」
反論の余地がなかった。
ギュメイの知るガナン帝国は、既に失われている。二度と蘇ることなどない。
蘇ったとして、それは仮初のものに過ぎない。偽者だと言ってもいいだろう。
ギュメイの知るガナサダイはもう亡く、三将としてしのぎを削ったゲルニックとゴレオンも倒れた。
無論、ギュメイ自身の魂も。
その全てに納得していたはずだというのに。
目先に釣り下げられた安い餌に食いつこうなど、自身への、そして帝国への愚弄に他ならない。
「しかし、それでは我は、何のために生き返ったと……?」
「知らねえよ、そいつは自分で考えろ。ただ、せっかくもらったその命。
このままこの殺し合いの為に、奴らの思惑通りに使って、それでいいって満足できるか?」
「……否」
「なら、オレと来いよギュメイ。お前の本当の剣を、オレに見せてみろ」
「……だが我は、二君に仕えるつもりは」
「従わせるつもりなんてねえよ、好きなようにしてりゃあいい。
お前が無事に吹っ切れたら、そんときにもう一度、戦ろうぜ」
アレルはニッと笑い、剣ではなく右手を突き出した。
粗暴だが、力あるアレルの言葉に、ギュメイは大きく心を動かされていた。
好敵手足りうるこの男と共に、新たな生きる意味を探すのも良いかもしれないと。
ギュメイは、迷いながらもアレルのその手を取らんと新たな一歩を踏み出そうとして――。
その手を取ることは叶わなかった。
ビシュッ――
「がっ……!?」
突如として放たれた矢が、アレルの首筋を貫いていた。
○
「何奴!?」
突然のことに驚き振り向いたギュメイが眼にしたのは、浮遊する機械兵の姿。
くすんだ鈍色の装甲は傷一つ無い光沢をたたえ、あらゆる攻撃を弾き返す鉄壁の防御を感じさせる。
尾のように伸びた下半身の先にはビッグボウガンが備えられていた。
アレルを射抜いた矢は、恐らくここから放たれたのだろう。
目を惹いたのは、両手で構える星をかたどった戦鎚"星砕き"の存在だ。
その直撃を受ければ命はないことは、想像に難くない。
数々の脅威を従えた機械兵――キラーマジンガのモノアイは、ギュメイとアレルを確かに捉えている。
キラーマジンガは再び弓を引き絞ると、今度はギュメイに向けて撃ち放った。
「ちいっ!」
それを辛くも回避するも、キラーマジンガは既にギュメイに肉薄していた。
胴体部を伸ばし、独楽のように上半身を回転させながらの突進。
高速で振り回される戦鎚にたまらず、ギュメイは大きく吹き飛ばされて壁に激突する。
サーベルで受けたことで負傷は最低限に抑えられたものの、問題はそこではなかった。
「アレル!」
叫んだ時には既に遅く。
キラーマジンガは勢いそのまま、負傷したアレルへと迫っていた。
ギュメイを吹き飛ばすに留めたのは、先に弱ったほうから仕留めるためだった。
「くそ、があああああっ!!」
首に矢が刺さり呼吸もままならぬアレルは、しかしそれでも十分な抗戦を見せていく。
回転する戦鎚の一撃は回避し、今度はボウガンの矢も打ち払って見せた。
が、さすがの勇者であっても、重傷を負った状態で戦うには困難な相手であった。
酸素を失い、残る力の全てを賭けて放った突きは、胸部の装甲を僅かに貫くに留まり――。
完全な無防備となったアレルの頭上に、一切の慈悲無く星砕きが振り下ろされた。
ぐちゃり、どさり――……。命の潰える音が、響く。
持ち主を失ったバスタードソードを体から引き抜くと、キラーマジンガはゆっくりと向き直った。
改めて、次はお前だと言わんばかりに。
モノアイを真っ直ぐに見据えて、ギュメイが吼える。
「よくも、よくも邪魔立てをっ!」
好敵手を屠ったキラーマジンガに怒りをあらわにし、ギュメイは腰を落とし構える。
狙うは必殺の一撃、魔神斬り。
直撃すれば聖騎士すらひとたまりもないその一撃を、全身全霊をもって放つ――。
「――受けてみよっ!!」
魔神の如く斬りかかったその一閃は、確かにキラーマジンガを捕らえていた。
直撃すれば必ずや、装甲が砕け散るはずの威力であった、しかし。
砕け散ったのは、山賊のサーベルだった。
アレルとの剣戟をくぐりぬけ、星砕きの一撃に耐え、既に疲労の蓄積していた長剣。
ギュメイの渾身の一撃と、厚き装甲の激突による衝撃は、限界を超えるに十分なものであった。
刃を失い大きく威力を損ねた魔神斬りは、結局、肩口の装甲に傷を残すだけに終わる。
武器を失ったギュメイに、もはや反撃を避ける術は残されていなかった。
「み、見事……!」
キラーマジンガが、星砕きとバスタードソードを振りかぶる。
ギュメイは同時に体を押し潰され、切り裂かれた。
○
キラーマジンガに輝かしき生まれのルーツも、誇るべき育ちのエピソードも存在しない。
ただ数多の冒険者を血の海に沈めてきたという、都市伝説がまことしやかに囁かれているだけだ。
造られた命に与えられた『任務』は、一つ。
自由に生きた勇者の剣も、忠義に生きた武人の剣も、機械兵にとっては等しくただの獲物に過ぎない。
「もしこの戦いを生き延びたいのなら、この私をたおしてゆくがいい――」
キラーマジンガは牢獄を彷徨い、新たな標的を求めている。
【A-4/牢獄の町 居住区/朝】
【アレル(DQ3男勇者)@DQ3 死亡】
【ギュメイ将軍@DQ9 死亡】
【残り56人】
【キラーマジンガ@DQ6】
[状態]:肩口と胸部に傷(行動に支障なし)
[装備]:星砕き@DQ9 バスタードソード@DQ3 ビッグボウガン(鉄の矢×27)@DQ5
[道具]:基本支給品一式 不明支給品(武器以外×0〜1)
アレルの不明支給品(0〜2) ギュメイ不明支給品(0〜2)
[思考]:命あるものを全て破壊する
※山賊のサーベル(折れている)@DQ9はギュメイの死体の付近に落ちています
代理投下終了です。
うおおマジンガ様やっぱこええええ
投下します。
レベル不足のため、あまりに投下に支障をきたすために代理依頼いたしました。
どなたかお手すきの方どうかよろしくお願いします。
「まっ暗だ」
抑揚のない声が、暗闇に木霊する。
彼の声が示すまま、そこは一面広がる闇だった。
それっきり一言も漏らすことがなく、ただただ沈黙が続く。
そしてしばらくして。
「灯りが、いるな」
ごそごそと、感触を頼りにふくろを漁りだした。
何が何だかわからないまま招かれたこのゲーム。
確かに彼ならば魔王たちの目に留まるのも無理ない存在だ。
何せ、彼は破壊神を仲間と共に討伐したいわば『勇者』である。
お声がかかるのも当然、そして大活躍間違いなしの有望株─と、言ったところだろうか。
だが。
現実は少し違う。
あまりに致命的な弱点が、彼にはあった。
「つかん」
支給品の着火器具、ランタンを取り出したまではいい。
それが、どちらも暗闇を照らすのに必要なところまではわかる。
わかるのだが。
どうやって火をつけるのか。
それにどうやって灯りをともすのか。
彼はそれらを行うのに、致命的に─頭が弱かった。
わからないなりの行動で、ランタンの蓋を開けようと手に力を込める。
だが。
「あっ」
ランタンは、紙屑のようにくしゃりとつぶれてしまった。
不良品だったわけではない。
彼の力が強すぎるのだ。
隣国の王子という仲間を得るまでは、暗闇を勘だけで進まざるを得なかった理由がよく理解できる。
「またやってしまった」
彼は、生まれながらに異常なる力を携えて生まれてきた。
両の足で立つことを覚える前に、逆立ちをしてみせる。
年上の子供と駆けっこをしてみて、あっさりと追い抜いてしまったこともある。
さすがは勇者の血筋、神童だと皆が持て囃した。
だが、やがて彼の底なき力が、更なる頭角を現す。
神童と呼ばれた赤子は、やがて怪童と評されることとなった。
彼の力は決して尋常なものではない。
ようやく、ようやくではあるが皆が異常を感じ始めたのだ。
与えられた玩具は全て変形し、酷いときには握りつぶされた。
乳母が手を引けば、逆に引きずられ怪我を負う。
勉強の時間には羽ペンを何本もへし折って、最終的に何があったか家庭教師の鼻もへし折られた。
父王は、力の有り余る息子に王宮剣術を習わせてみた。
行き過ぎた力も、発散すべきところで振るえば少しは収まるのではないかと、考えたからだ。
だが、現実はうまくいかない。
剣の指南役を完膚なきまでに打ちのめし、二度と剣を握れない体にしてしまった。
いつしか、王子の周りからは誰も居なくなった。
まるで檻から放たれた獣。
いや、それ以上に恐ろしいものを見る眼で、彼を遠巻きから眺めることしかしなくなった。
やがて怪童は─悪魔の子とまで呼ばれた。
ある日彼は、半ば追いやられるように、邪教の神官を倒す旅へと差し向けられた。
姉妹国が陥落したのをいいきっかけとでも言うかのように、剣一本とはした金だけを握らせ。
彼の父は、死出の旅へと息子を追いやったのだ。
いつか、自分の国が息子によって滅ぼされるのではないか、と恐れたために。
いっそ名誉の戦死を遂げることを望み、その背を押したのだ。
だが。
彼は帰ってきた。
ハーゴンはおろか、破壊の神すら捻じ伏せて。
恐るべき膂力で、すべてを破壊して帰ってきたのだ。
国民は世界の平和が取り戻されたことに喜び─我らが王子の無事の帰還に、大いに嘆いた。
破壊神をも破壊した恐るべき存在が、帰ってきてしまったと。
「あのとき父上は、ハーゴンを倒してこいと言った」
彼はこうみえて、父を信頼していた。
心に秘めた善き王になろうという気持ちに、一片の曇りもない。
もっとも嘘がつける頭は持ち合わせていないが。
ともかく彼は、正真正銘の『勇者』たる者で間違いないのだ。
だが、余りに─無知すぎた。
「今、おれは、どうする。どうしたらいい。また、戦えばいいのか。戦って─」
目の前で起きた惨劇に、怒りが湧くこともない。
これから起こるであろう争いを、恐れることもない。
なにせ─
「みんな倒せば、いいのか?」
彼には未だ『命』が理解できないのだから。
自分が奪った幾多もの魔物の命も。
周りで失われていった数々の人間の命も。
自分自身が、今生きているという事実すらも。
倫理とかそういうものを、超越していたところに彼は立っていた。
「ヒヒ……おまえさん……こっちへおいでよ」
「?」
悩める彼を、ひとつの声が導いた。
かすれた声がこちらに届くが、なにせ完全な暗闇では正体がわからない。
持ち前の動物的勘で、声のした方に足を進める。
通常手さぐりでおっかなびっくり進むであろう闇の中を、ずんずんと自信ありげに。
「そうそう、こっち……」
ぼう、と光を見つける。
向かうと曲がり角の先に、ぽつりとランタンが置かれていたのだ。
灯りの主は、いない。
「おまえさん、灯りが欲しいんだろう?見てたよ」
「見えるのか?」
「暗闇にゃ慣れててね……ヒ、ヒヒ」
妙に上擦った笑い声が、か細く彼の耳に届く。
が、やはり姿が見えない。
声の大きさから、そう遠くには居ないはずだというのに。
「壊れちまったランタンの代わりに、俺のをやるよ」
「いいのか?」
「俺にゃ必要ないからねぇ。火を消すくらいはできるだろう?」
既に灯りが灯ったランタンを拾って、再びきょろきょろと見回す。
道は照らせたものの、先行きが暗闇なのは変わりない。
「ありがとう」
長い旅で仲間から教わった、貴重な財産を口にする。
わずかながらも人としての心を、長い旅と仲間との絆から彼は得ていた。
ローレシア王も、ほんの僅かでも息子を信じていれば、きっと気づいただろう。
彼が遂げた、素晴らしき成長に。
「礼はいいさぁ……それより、お兄さん。迷っていたね?『どうすればいい』って……」
「わからないんだ。おれは何をすればいいんだろう」
だが。
自らの願いを実現するために行動する。
なんとも惜しいことに彼には類稀な力を用いるべき指針。
すなわち『夢』や『望み』をまだ、彼は見つけていなかった。
「おやおや。聞いていなかったのかい?」
「え?」
「あのじじいが言ってたろう『 お前たちにはこれより、殺し合いをしてもらう 』 ってね」
暗闇からの声が言うとおり、確かにそう言われてこの地に招かれた。
殺し合い。
(なんだろう)
殺す。
(それはいったい、なんだろう)
その言葉が、彼の心に引っ掛かりを覚える。
彼は─あまりに、素直すぎた。
「殺すって、なんだ?」
「……ヒ、ヒヒ!ヒッヒ!いやぁ、そんな質問されるたぁ思ってなかった」
誰よりも純粋故に、質問を投げかけた。
その答えとばかりに、さも愉快そうに暗闇の中から笑いが届く。
対して彼は、首をかしげることしかできない。
「ヒヒ……ああ悪ぃね、もののついでだ教えてやるさ……そのふくろ、中身を見てみたかい?」
「まだだ」
手を入れて最初に出てきたのは、盾だ。
何とも禍々しく巨大な『オーガシールド』。
彼はそれを、なんとも軽々と掲げてみせた。
「おお、いい、実にいいよそいつは。だが戦いには必要なモンが他にある」
次に取り出したのは腕輪。
満月を模った宝珠が光る『満月の指輪』。
とくに躊躇いもなく、指に嵌めてみる。
「指輪は、戦士のたしなみだ。なんつってな、だがそうじゃねえ。それじゃねえのよ」
そして最後に、彼もその手に懐かしい感触が残る武器が取り出された。
『大金槌』。
破壊力のみを追い求めたシンプルかつ強固な作りの、打撃武器である。
「そう、そういうのだ……簡単さ。
『武器』を『装備』して『戦う』。おまえさんがするのはそれさ」
「そんなことで、いいのか?」
「その体つき見りゃわかるぜ?おまえさんはそれしか能が…おっと、それが得意なんだろう。
なら、ここでも同じことをやってりゃいい。」
なんとも真っ直ぐな目標を目の前に打ち立てられた。
揺れることなど微塵もなく、ただ真っ直ぐに─
「わかった。そうする」
歩み出すしか、なかった。
善悪の分別も。
倫理観も。
彼には不足し過ぎていた。
闇からの上擦った笑いが、抑えきれなくなるようなものに、変わる。
「そーさ、人間だろうが魔物だろうが構うこたねえ。
勝ち残ってお前さんの願いでもなんでも叶えちめえばいいのよ」
「ねがい?」
「無きゃ無いで別にいい。『いいえ』とでも言っておきな。
ともかくお前さんのやるべきことを俺ぁ確かに教えたぜ。がんばりな」
「わかった」
とうとう、顔も見せない闇からの囁きに唯々諾々と彼は従う。
余りに純粋で、無垢で、そして危うき存在は、解き放たれたのだった。
彼は気づかなかった。
名簿というものが、ふくろの中にあることを。
気づけなかった。
この地に招かれた、大切な友の存在に。
破壊神を破壊した男が、暗闇を抜けだし歩き出す。
無限の戦いが待つ、道へと。
「……バカとハサミは……ってね、ヒヒッ」
暗闇に完全に溶け込んだ存在が、カタカタと顎を鳴らして笑いを漏らす。
影の騎士。
アレフガルド侵攻の折に、潜伏能力を大いに活用し主に諜報活動を行っていた魔物だ。
何の因果か招かれたこの戦いで、影の騎士は妙案を思いつく。
「最後の最後まで、闇から闇へと……ヒッヒッヒ」
戦わずして勝つ。
そう、自らの主ですらも出し抜いて、勝者となるべく策を巡らせたのだ。
竜王にすら表だって見せない、その狡猾な本性が今露わとなった。
「さて……あのボンクラは何てぇ名前かな……?」
最初の標的が余りにもすんなり扇動され、彼は笑いが抑えきれなかった。
次はどう騙そうか、どう嘯こうか。
(ヤツの名を殺人者として他の連中に吹き込もうか?
ヤツに仲間がいればそいつも殺人者の仲間ってこった!!)
人を陥れるという事をまるで遊戯のように考え、今や玩具扱いしている。
考えるだけで愉悦に溺れそうであった。
「……?」
笑いがピタリと止まる。
狡賢く、知略を巡らしてこのゲームに臨もうという影の騎士に。
理解しえない最初の壁が立ちはだかったのだ。
「もょ…もと……?」
どう発音しよう。
髑髏の顎が開きっぱなしになった。
【E-8/欲望の町/朝】
【もょもと(ローレシア王子)@DQ2】
[状態]:健康
[装備]:おおかなづち@DQ2 オーガシールド@DQ6 満月のリング@DQ9
[道具]:基本支給品一式
[思考]:『たたかう』
【E-8/欲望の町 炭鉱/朝】
【影の騎士@DQ1】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式(ランタンなし)不明支給品1〜3
[思考]:闇の中から中へと潜み続けて、戦わずして勝ち残る。
争いを加速させるためあらゆる手段で扇動する。
957 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2012/04/05(木) 13:20:48.19 ID:Qjv6fd9s0
始まったか
埋まるまではこっちのスレ使った方がよくない?
容量がもうギリギリなんよ
梅
うめうめ
テス埋め
うめ