やくそうってどんな味?

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29やくそうってどんな味?
 クリフトは悩んでいた。彼の目の前にあるのは、夥しい数の薬草だ。
正確には、彼の主である姫君が、手ずから摘んで調理してくれた特別薬草料理、らしい。
らしい、というのは、それが見た目に生焼けで、火が通っていないことが分かるからだった。
「クリフトが料理始めてみたら、っていうから、ちょっと頑張ってみちゃった。
 クリフトは男の人だから、きっといっぱい食べるよね」
彼の皿の向こうには、この料理を作った張本人、アリーナ姫が座っている。
彼女は笑みを浮かべて屈託のない瞳で彼を見つめながら、彼が料理に口をつけるのを待っている。
きっと彼女は、美味しい!という返事を期待しているのだろう。
 しかし、さっきから漂うドクダミのような異臭。それに混じる、生焼けの葉っぱの青臭い匂い。
普通の人が使うよりずっと多目の油で炒められ、ぬらぬらと光る萎れた葉っぱ。
それらが乱雑に(アリーナはこれを「ワイルドな盛り付け」と呼んでいた)盛り付けられている。
見た目、匂い、盛り付け。その全てが彼に、「この料理はまずい」との予感を与えているのだった。

あきた