ドラゴンクエスト・バトルロワイアル Lv10

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608名前が無い@ただの名無しのようだ
したらばにも書き込みましたがこちらにも一応。
今夜19時に本投下に踏み切ります。
住人さんたち未だいらっしゃるといいのですが。
609 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:00:25 ID:3gY/d/mr0
投下開始します。
610死を賭して1/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:01:12 ID:3gY/d/mr0

「……暗い、な……」
「何も聞こえません、ね」

暗く長い廊下には、勇者達の足音だけが響く。
その足音が余りに遠く響く事実は、ここの広さが計り知れないことを示していた。
彼らは、神殿の構造を把握していない。
故に先程から点在する部屋を地図でも無いかと探る為に、片っ端から探索することにした。
それに、この神殿には確かに内通者─脱出の切り札を忍び込ませた人物がいたことは確かだった。
ハーゴンの関係者との遭遇も、吝かではない。

「鍵はかかっていないようだが」
「!……これは」

先を行くアレフが先程そこで拝借した松明の灯りに、部屋が照らされる。
アリスが見つけたのは、机の上に映し出された見慣れた図。
帰れないと知ったその瞬間からずっと、求め恋いたふるさとだった。

「これはアリアハンの大陸図です……とすると、ここは」
「ええ、監視室でしょう。これが放送に使っていた道具ではないでしょうか」

歯車、発条、放送の合図であろう鐘。
ある程度見知った仕掛けもある。
しかし硝子の球面に浮かぶ赤い光点、喇叭を逆にしたような装置。
彼らの与り知らぬ物も沢山存在していた。

「……なるほど、インカムとやらに意匠が似ている……」
「どんな匠が作ったのかは知らないがな」

アレンとアレフは部屋の壁一面に広がる得体の知れない装置を見上げる。
アレフガルドではお目にかかれぬ代物だろう。

「……だめださっぱり分からん」
「我々の世界には恐らく存在せぬ品、解せぬも道理よ」
「絡繰の類の存在は知ってはいますが……それでもこれらはすごい技術かと」

一行が部屋を探索するも、内部の図は見当たらなかった。
先の見えない暗く長い廊下を、再び探索せざるを得ないだろう。
と、開かれたままの戸に、アリスが振り返った。
611死を賭して2/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:02:00 ID:3gY/d/mr0

「……?何か、臭いますね」
「む、何を感じた?」
「なんだろ、この臭い……えと」
「手がかりも無いし、向かってみましょうか。アリスさんの感覚を信じましょう」

風の流れの先に向かうが、特に部屋らしい部屋も見当たらずに歩き続ける。
人の気配は皆感じていなかった。
しかし、徐々に他の3人も別の何かを感じていた。
感じていたのは、生命の欠片すらも感じられない神殿には異質な何か。

「……油、か?」
「血、いや……鉄の臭いも感じられるな」
「ですよね、やっぱりこれって……」
「っ、下がれ!」

アリスの言葉を遮ったのは、先頭を歩くアレフ。
そして、彼の足元に石畳に突き刺さった何か。
少々大型だが、戦い慣れた彼らにとっては見慣れた物。
それは矢だった。

「えっ?」
「何か来るぞ」

最も夜目の聞くアレンの声が、皆の警戒を更に強めた。
かすかに、金属音が聞こえてくる。
続いて、風切り音を孕んでさらに矢が数本飛来した。
アレフとアリスは盾を翳し、剣を振るい、矢を弾いて後方を守る。
漸く視界に捉えたのは、紅く光る単眼。

「なんだ、あいつは……?」
「人間では無い……!見たことも無い魔物です」
「あれは……」

金属と石畳が擦れる音。
ギラリと薄明かりの中でも鈍く光るその身体。
一行の中で、エイトだけがその正体を知っていた。
612死を賭して3/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:03:06 ID:3gY/d/mr0
「キラーマシン……素早い動きと剣、弓を駆使する強敵です」
「ほう、知っていたのか。ワシも書物でしか目にした事は無かったが……」

アレンが顎に手を当てて、その奇妙な挙動に目を見張る。
徐々に近づいてくるその姿は、先頭を行くアレフ頭一つか二つ上回る体躯だった。

「こちらは剣を交えたことも、何度か。眼には注意してください」
「へ?」

エイトが言うが早いか、暗闇の中で光る単眼が3つに増えたかと思うとそれぞれから集中するように光の線が伸びた。
地面を焼き焦がしながら、一瞬で先頭を行くアレフの正面にまで伸びる。

「どわ!」
「っ、く!」

各々が左右に飛び退いて直撃は免れたものの、一行の中間に一瞬遅れて爆発が起きる。
一行の頬を、熱い風が撫ぜた。

「熱線を放ち、高熱により爆破……ギラ系統とイオ系統の複合呪文にも見えるが魔力は感じられぬ」
「冷静に分析している場合か」

自分の陰で興味深い古代遺産の挙動を確認するアレンに、アレフが嘆息を漏らす。
熱を孕む余波に、その攻撃を放った正体─キラーマシンA、B、Cの三体は怯む様子もなく接近してきた。
一時的に左右に分断された一行は、陣形が崩れたままでの迎撃を余儀なくされる。

「次同じ攻撃が来られたら、盾じゃあ防げんな」
「皆さん陣形を乱さないほうが得策かと…… 敵を視界から外さないように横一列になりましょう」
「ええ、落ち着いて対処すればきっとなんとかなります!」

槍を構え直し立ち上がったエイトが、爆風の向こう側に声を張る。
隣でアリスが、光輝くメタルキングの剣を鞘から抜き放った。
目の前の大きな敵を見上げ、二人は迎撃に入る。

「アリス!」
「アリスさん、作戦を!」
「へっ!?作戦!?」

彼女は戦略眼、判断力にも長け、戦闘の際細やかな『指示』を出してはいる。
だが一言で全員の行動指針を大まかに定める─『作戦』を立てるのは、アリスにとって未経験だった。

「え、えっと……」
「我らの相手は木偶では無い、特に魔力の消耗は避けたい所だ」
「え、えっとそれじゃあ」

アリスの言葉に、咄嗟に頭に浮かんだ作戦。
それは、たったひとつの単純な言葉だった。

「じゅもんつかうな!!」

各々の武器が、鳴った。
613死を賭して4/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:04:19 ID:3gY/d/mr0


「う……」

どれだけの時間が経ったのかは解らない。
暗闇から目覚めても、また別の暗闇にいる。
彼女はそのことを認識し、初めてはっきりと覚醒した。

「……ここは」

マリアは、今まで自分が居た空間とはまた違う空気の臭いを感じた。
わずかに身じろぐと、首から下げたままのルビスの守りが冷たい煉瓦と擦れ、チリリと鳴る。
見えなくともマリアは覚えている。
この広く、暗い空間を。

「……最初に、喚ばれた……」

ここは謁見の間。
ハーゴンから死の宴を開催すると宣告されたその場であった。
あの時の恐怖は、そこに残存している。
肌を撫でる冷たい空気も。
戯れのように首をもがれた、哀れな少女の血の跡も。
部屋中の松明が、不意に灯った。

「賢しいな、亡国の王女よ」
「!!」

その威圧感は、かつて感じたもの。
その声は、かつて聞いたもの。
足音が聞こえる。
近づいてくる気配に、総毛立つ。
しかし……マリアは、その身を構えた。
もう、ただ涙を流す少女では、いられない。

(これは……!一体何が起こったのだ!?誰か、誰かおらぬかっ!)

身体が内側からチリチリと熱い。
マリアの脳裏には燃え盛る故郷と、民の悲鳴が蘇っていた。

(すぐに兵士達を集めよ!)

そして父の記憶、最期の思い出。
内側の熱さとは裏腹に、マリアの全身は冷え切っていた。
冷たい汗が、白い肌を流れていく。
614死を賭して5/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:08:46 ID:3gY/d/mr0
「……!!」

かつての恐怖と今の状況に戦慄するマリアを迎えたのは、拍手だった。
徐々に影の輪郭が顕になり、青白い手、そして顔も灯りの下へ照らされる。

「優勝……おめでとう」
「……!!」

紛れもなく、故郷を、民を、父を奪った憎き仇。
そして仲間までもを奪った宿敵の顔が、そこにあった。


─父に、避難すべく地下へと手を引かれた。
その途中、幾度となく届く断末魔に耳を塞ぎたくなる。
端正な顔は涙でぐちゃぐちゃになった。
大事に育てていた花は焼け、美しく澄んだ池は赤く、そしてどす黒く濁る。

(よいか……マリア、お前はここに隠れているのだっ!)

優しかった父がこんな顔をしたのは、最初で最後だった。
こわばる手に、両肩を掴まれる。

(わしの身に何が起こっても、嘆くでないぞ)
(お、お父さま……!!)

マリアは、群がる魔物に必死に抗う父の背を見ていた。
見ていることしか、できなかった。
魔法使いとして持ち始めた杖も、今では震える身体を支える役にしか立たない。
無力さに、そして傷だらけの父の姿に、涙が溢れた。

(……!!)

そして霞む視界の中に、浮かんだ。
冷たい、青白い笑みが。
ハッとなって声をあげる暇も無く、父の身体は炎に包まれていた。

(ぎょえーーーっっ!!)
(お、お父さまーーーっっ!!)

─それから先の記憶は、あまり無い。
気がついたころには、自分は単なる薄汚れた犬となっていた。
腐った肉を食らい、泥水を啜り。
生き延びることだけで、必死だった。
仲間に救われる、その日まで。
あの日、あの時からの悔やむべき悲劇が、マリアの胸を幾度となく貫く。
目の前の顔は、マリアの全てを確かに刺激した。

(……でも)

憎き大神官の歩みは止まらない。
既に、互いの術者としての間合いに、既に入っている。
しかしマリアの頭に浮かんでいたのは、ひとつの疑念だった。

(奴は……自らを破壊神の贄としたはず……)

両の足は、ついている。
姿は実体影もそこに。
大神官ハーゴンは、そこに在る。
─しかし記憶が語る確たる死人、ならば今この光景、これは果たして現か?
615死を賭して6/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:14:49 ID:3gY/d/mr0

「貴方は……本当に……?」
「……些か、不似合いだな」
「え?」

ハーゴンがパチン、と指を鳴らす。
呆気に取られてしまったが、マリアが瞬間的に違和を感じ取った。
─首周りが、涼しい。

「畜生のように戒めたこと、無礼が過ぎたな。そう『犬ではあるまいし』な……?」
「……っ!」

ハーゴンだ。
マリアは目の前に佇む男が『ハーゴンの記憶を確かに持っている』と認識した。
ねっとりと絡みつくようなこの視線、冥府から響くかのような低い声。
全てを記憶している。
ただ、少し違う。

(……あのときより更に!!)

禍々しい。
持ち合わせていた力は、ここまで常軌を逸した物だっただろうか?
─ハーゴンは、その手に首輪を弄んでいた。

「さて……」

一瞬呆けていたマリアがハーゴンの声に立ち直ったとき、すでにその手から首輪は消え果せていた。
計り知れない。
人が手を付けてはいけない、邪なる力。
ハーゴンの殺し合いを望む言葉から、ずっと行使されていた摩訶不思議な全て。
目の前にすればやはり、悍ましい。
早くもその邪気に呑まれつつあった。

「初めにこの場で説明した通り……だ。覚えていよう?」
(いけない、気圧されては)

そう、何のために自分達はここまで来たのか。
目の前の男に、今一度引導を渡すのだ。
近づくハーゴンの持つ杖が、カッと床を鳴らす。
マリアは杖を握る手に力を込め、隠しておいた聖なるナイフへともう片方の手を滑らせた。

「『最後の一人となったものには褒美を取らせる』とな」
「!!」

マリアの身体が、強張った。
ハーゴンの表情は変わらず、その真意も図れぬまま。
616死を賭して7/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 19:19:11 ID:3gY/d/mr0

(このゲームに勝ち残り最後の一人となったものには私直々に褒美を取らせよう。
 元の世界に戻すのは当然、富も名誉も思いのままだ。そして……死者を甦らせることもな)

「……多くを、喪った……取り戻したいものもあろう」

あの日の父が。
アレン、ランド、そしてリアの笑顔が。
ずっと傍にいてくれた、トロデ王。
ククール、ハッサン、レックス、トルネコ……
バトル・ロワイアルの舞台から突き落とされた多くの人々が。
マリアの脳裏に浮かんでは、消えていく。

「何、『神』の力の前には……人の望みなど全て事足りよう」

ハーゴンの甘言が、マリアにはそれはそれは恐ろしく感じた。
その声は、本当に目の前の男の喉から出ているのだろうか?
もはや何がまやかしで、何が真実か、曖昧になっている。
胸のルビスの加護を握り締め、マリアは必死になって正気を逃すまいと抱え込んだ。

「……私……」

マリアはスッと歩み出る。
その足取りには、もはや迷いはなかった。

「望むわ」

ハーゴンが、手を差し伸べた。
マリアの手は─

「……貴様の命を!!!」

その青白い手に、重ねられることは無く。
いかづちの杖が風を切り裂き、大気を灼いた。

617名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 19:29:50 ID:m8hD8FzQO
支援
618死を賭して8/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:04:34 ID:3gY/d/mr0




杖の先端から放たれた閃光にたじろぐ様子も見せず、佇まいを崩さぬままハーゴンの姿は光に紛れた。
爆炎が、黒煙が、続けて視界の全てを覆い隠す。
だがその気配は、消えてはいない。
マリアは怒りに震える声を、見えぬ怨敵へ投げかけた。

「多くを、喪った……?」

荒ぶる雷閃が呼んだ炎熱が、謁見の間の赤絨毯を炎に包む。
冷え切った空間は、一気に温度を上昇させた。

「奪ったのよ……あなたが……」

続けてマリアは、渾身の魔力を込めてバギを唱えた。
真空の渦は半ば暴走し、石畳を抉り瓦礫を撒き散らしながら憎き仇へと向かう。

「あなたが、全てをっ!!」

荒れ狂う大気の刃が、爆炎を切り裂き煙を晴らす。
風の流れに礫が舞い飛び、弾丸のようにその身に迫る。
現れた大神官の顔は。


「─愚策」


裂けんばかりに口元を綻ばせた。
その笑みは、余りに彼女がかつて見た破壊神のものに似ている。
掲げた邪神の杖が、暗黒の暴風を呼び起こした。
619死を賭して9/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:10:00 ID:3gY/d/mr0
「……妙だ」

未だ土煙の晴れぬ廊下のど真ん中、アレンがぽつりと呟いた。
キラーマシンB(恐らく)の体当たりを盾で防いだアレフと、丁度背中合わせの形となる。

「?なんだ、考え事をしている暇は無いぞ」
「敵が挑んでくる可能性はあったが……こんな木偶にワシらを任せるというのに、な」
「……確かに、放送をしたのは人間……」

アレフは死者を告げる鐘、そして同時に流れる放送を思い出した。
一度目は腕の中のルーシアの死を知ったとき。
二度目は、怒りと失望に燃えるピサロの眼前で。
そのときの声は……

「声は男女別々だった。奴らは複数の人間から成っている、まず間違いなく」
「然様、だが儀式から複数の人間が神殿に乗り込むという事態にこの対応……」

アレフがキラーマシンのサーベルをロトの剣で弾き返す。
アレンは左右に片刃剣を持ち、迎え撃つ。
二人の会話は、剣戟を途切れさせることもなく続いていた。

「……まあ、間違いなく神官が出られない理由があるな。儀式の最中とか」
「他にもいくつか考えられる」

アレンの脳裏に浮かんだのは、書物に秘められた暗号。
内通者の存在。

「……謀反が明らかになって全員拘束された……か?」
「それならばかわいいものよ。我々が最も恐れるべきは─」

アレンの二刀が、剣を抑える。
伝説となった勇者の剣が一閃、機兵の振るう蛮刀を根元から斬り砕いた。

「奴らも既に"神の餌"ということよ」
「……完全なる復活、阻止は手遅れ……確かに最悪だ」

敵の立ちふさがる暗闇のさらに向こう。
既に存在する"神"が万全の状態で待っているとすれば。
それは絶望という言葉以外では形容しきれなかった。

「だがまあ……」

だが、志を挫かれるわけにはいかなかった。
各々が負けられない理由がある。
神をも怖れぬ勇気を胸に、彼らの行進は止まらない。

「勇者、だからな……いつだって最悪の状況と戦ってきた。今回も、同じさ」
「クク、頼もしいことだ」

話を終えたのは、キラーマシンの頭がごろりと落ちたのとほぼ同時だった。
620名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:10:59 ID:67FVnQQY0
支援しましま
621死を賭して9/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:12:02 ID:3gY/d/mr0


「せいっ!」
「だぁっ!」

鋼の王の名を冠す二つの武器が、装甲を貫いた。
甚大なダメージを受け、尚も機械の身体は標的に剣を振り上げる。
が、その剣が振り下ろされぬまま、ガクリと動きを止めた。
二人が剣、槍を抜くと同時に崩れるように倒れる。

「残りは一体!」
「やはり、簡単な命令しか与えられていないのでしょうか。動きが単調です」
「我々の相手には、少々役者不足ですねっ!ちなみにこの場合役不足では誤用ですよ!」

最後の一体が矢を乱射してくるも、流星の速度を得たアリスは造作もなく避ける。
その隙に接近したエイトが疾風のように突き出した槍が、手から剣を弾いた。
しかしカリカリ、と何らかの摩擦音を上げつつ首を向けたキラーマシンは、至近距離のエイトを見据える。
単眼が、ギラリと紅く光った。

「危ないっ!」
「!」

しかしエイトの判断は落ち着いていた、その場を開けるように後ろへ飛び退く。
無論背後に飛び退いただけではその光から逃れることは出来ない、盾をも貫通するであろう。
だが空いた空間を埋めるかの如く、一筋の雷が飛び込んできた。
鉄の身体に電撃を叩き込まれ、キラーマシンはまるで痙攣するかのようにその巨躯を震わせる。
そして、黒い煙を関節から上げ、完全に沈黙した。

「ふうっ」
「アレンさん、アレフ。そちらは大丈夫でしたか?」
「ああ、問題ない……それより、最初からそうすればよかったじゃあないか」

アレフも、一体を仕留めた直後にエイトの救援に向かうつもりでいた。
しかし一手早くに放たれたのはギガデイン。
かつてのアトラスのときの二の轍を踏んだようで、アレフは不平を漏らした。

「視界が悪かったのでな、同士討ちの可能性もあった」
「冷静だこと」

いたって真面目な顔で宿敵にそう言うアレフに、アレンがフ、と鼻を鳴らした。
各々が武器を収める。
ようやく撃退を果たしたものの、彼らを取り巻く状況はさして変わっていない。

「しかし……」
「どうしました」
「我々は既に奴の幻惑に落ちたのかもしれぬな」

アレンが広がる虚空へと視線を向け、眉をひそめる。
エイトとアレフはその言語に、二の句が継げない。

「そう、ですか?何の変哲も無い廊下ですけど……」

そう、広がるのは松明が規則的に並んだ驚異的に長い廊下。
ところどころに扉が見えるが、その先は見えない。
622名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:12:36 ID:67FVnQQY0
 
623死を賭して10/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:13:25 ID:3gY/d/mr0


「あるいは延々と続く廊下の幻影なのかもしれません、僕も似た経験があります」
「無限回廊……とでも言うべきか?」
「終りがない?寒気のする話だな……」

エイトは暗黒魔城都市での出来事を思い出す。
至って普通の街並みが現れたときはぎょっとしたものだ。
そして同じところをぐるぐると廻っているはずが、街が徐々に惨状へと変わり行く。
あの時とまた同じく、趣味の良くない幻影では無いかと思ったのだ。

「だとしたら、俺たちはここから出られないのか?」
「そうとは限りませんが……」
「加護を持つマリアを欠いたが故、影響が出始めたのかもしれぬ……
 此奴等の出所も探って見るべきか、それとも一旦戻るか……」

転がるキラーマシンを示し、アレンが問う。
確かに、これまで進んで、機械兵の姿形は目にしていない。
だが、マリア達が追いついて来ないのも気にかかる。

「そう、だな……」
「まだそれほど時間が経ってはいないと思いますが……
 幻惑の中でその感覚すら鈍っている可能性も、どうすべきでしょう?」
「ここで退くのは、得策では無いと思います」

皆の迷いを、少女の一言はぷつりと途切らせる。
フォズの持つボウガンに使えるかもしれない、と散らばる矢をせっせと拾いあげるアリス。
この状況でも枯れぬ、花のような笑顔で向き直って皆に言った。

「奴らは我々が迷うのを望んでいるのかもしれない、
 思惑通りになるだなんて、シャクじゃないですか。それに……」

勇者心得、ふたつ。
迷いは勇気を鈍らせる、迷うことなかれ。
立ち上がって、握りこぶしを突き上げた。

「彼らは必ず追いつく、と約束しました。信じて、前に進みましょう」
「……そうだな」

一行は、再び歩みを進める。
決して緩める事無く、決して振り返る事無く。
624名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:14:06 ID:67FVnQQY0
 
625死を賭して11/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:16:26 ID:3gY/d/mr0
マリアは自分の眼を疑った。
あるいはこれも、まやかしか。
しかし、自分の胸にはルビスの加護がある。
信じられないが、目の前には現実が広がっているのだ。
何が、起きたか。
ハーゴンが、見たこともない呪文で自分のバギを吹き消した。
まるで、蝋燭の火のように、容易く。
しかし大神官の力の全容など知らぬマリアが驚愕したのはそこではなかった。
飛び散る石片の中でも、巨大な物は吹き飛ばない。
そのままハーゴンの頭上へ振りかかり……

「!?」

マリアの眼が、再び大きく開かれた。
瓦礫が粉々に砕かれた。
しかし、ハーゴンは何一つ唱えてはいない。
砕いたのは─

「な……!!?」

拳、だった。
固めた拳を振り上げる、それはそれは粗野な行動。

「ああ……いかん、な」
「なっ……な、んっ……!!」

マリアは混乱した。
奴は古代呪文メダパニの使い手でもあったと言うのだろうか。
はたまたこれすらお得意のまやかしか。
それとも、本気を出せばあのハッサンに匹敵する武闘家だったとでもいうのか。
動揺は全身の汗腺を開かせ、頭の回転を停止させる。

「やはり仮初……比べてしまえば、脆い」

ぽたり、ぽたり。
流れ落ちる、どす黒い血。
いや、肉は抉れ指は非ぬ方向に曲がり、骨が露出している。
自分の大傷をまるで関わり事では無いことのように、空虚な眼差しのままハーゴンは見つめていた。
ピクリ、とだらし無くぶら下がった人差し指の先端が跳ねた。
メリメリ、と聞き及んだ事もない音が、ハーゴンの肉体を駆け巡っている。
隆起した肉体が、変形する骨格が、ハーゴンの右腕を大いなる異形と成し、そして再び異音と共に圧縮。
そこにはすっかり元の青白い手が存在していた。
マリアは慄くが、漸く合点が行く。

「貴様……既に……ッ!!」
「やはり……」

一歩、一歩。
ハーゴンが、無残に焼き千切れた赤絨毯を踏み越え、迫ってくる。
マリアは知っている、有り得なき破壊の力を。
そして、破壊の裏の力をもその手で操る、禍々しき邪神の記憶を。

「賢しいな?」
(既に『破壊神はここに居る』ッ!!)
626死を賭して12/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:18:33 ID:3gY/d/mr0
マリアは、竦み上がっている。
目の前には怨敵がいるというのに。
気味の悪い笑顔を湛えて、近づいてくるというのに。
その場を、一歩も動けない。
このまま自分は、屠られるのか。

(アリス……!!みんな!私に勇気を!!)
「うあああああぁぁぁァッ!!!」

手を伸ばせば抱き締め合うことも叶いそうな距離。
ハーゴンがそこへと踏み込んだ瞬間、マリアは吠える。
聖なるナイフが、閃いた。




「……何の」
「ぐっ……うっ……!!」

その刃が、血の華を開かせることは無かった。
虚空に阻まれたかのように、止まっている。

「心配も、要らん」

ハーゴンの手が、マリアの腕を確りと掴んでいた。
ピクリと動かすことも、叶わない。
力の抜けた手から、魔を祓い邪を討つ聖銀の短剣はかしゃん、と頼りない音と共に床へ落ちた。

(……この……ちか、らは……っ!)
「……今すぐにひどく傷つけることは、せん」

その細身からは大凡想像もつかないほどに、袖から除く腕は肥大化していた。
杖で床を突く。
倒れない、杖は石畳を貫き直立すていた。
空いた片手で空を握り、そして開く。
その行為だけで、マリアの足は震えた。

(み……んな……)

ハーゴンの節榑立った左の手が、マリアの眼前で開かれる。
眠りの呪文が、意識を深い闇へと誘った。
627死を賭して13/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:19:33 ID:3gY/d/mr0


「ピサロさん、ずいぶん長い廊下ですね」
「ほぼ間違いなく、これはまやかしの中だろう。精霊の加護を欠いてすぐに取り込まれるとはな」
「そんな……ああ、マリアさん……どうか……」

天馬ファルシオンは石畳を蹄で鳴らしていた。
祈る少女と悔やむ魔王の二人乗りは、風を切って走り抜けている。
その走りはピオリムでもかけられたかのように速かったが、それでも先行した勇者達へ追いつくことが叶わない。
それもまた、神殿そのものにかけられた呪いのような物だろう。
部屋や窓など、辺りに一切の目印となるものが無いところを見るに、無限回廊と認識させないつもりらしい。
侵入者のみに反応するのであろう、この姑息と呼ぶべき手段にピサロは舌を鳴らす。

「この時間稼ぎ、予測はしていたが急がねばマリアの身が危険だ」
「え?」
「優勝者として招かれた……奴の言うことが"仮に"正しければマリアの願いが叶えられる」
「けれど……」
「そう、有り得はしない。これが単なる生贄を募る儀式であれば願いを聞くことも優勝者を呼び寄せる細工の必要も無い、
 そんな言葉は反故にして箱庭で用済みの優勝者が死ぬのを待てば良い」
「……けれど、マリアさんは誘われた」
「そう、これが意図的なものだとすれば……優勝者の存在を"奴も求めている"のでは無いかということだ」

ピサロが片腕で器用に手綱を操り、ファルシオンを進める。
今まで闇しか見えなかった廊下の先に、何かが光った。
松明の揺らめく灯火だ。
時間がかかったものの、漸く幻影の廊下を抜け出す兆しが見える。
そこまで来たところでやっと考えるところが思い当たり、フォズははっと目を見開いた。
「肉体……!依代ですね!」
「察しが良いな」

恐るべき事実が判明したものの、フォズははたと気づく。
ハーゴン=シドーならば、これほどの儀式が開ける力をすでに得ている。
それでも尚、完全なる復活と強き器が必要なのかと。
しかしピサロが続けて答える。

「マリアが話した破壊神の末路が正しければ、生贄がハーゴン一人での儀式……恐らく、不完全。
 そしてその時滅ぼされた破壊神の肉体を埋めるには、ハーゴンの肉体……死人では不十分」
「破壊の神自身が、そこまで現世に舞い戻ることを求めていると、いうことですか」
「敗北から学んだ、ということだろう……この儀式は、そのどちらもを求めるに相応しい手段だったということ」
「そ、それでは……」
「どんな『儀式』でも、時間はそれなりに必要だ。ハーゴンか神官ども遺した物かは知らんが、このまやかしで
 我々を足止めしているということがその証拠。勇者達も足止めを喰らっていれば、最悪の場合も考えられる」
「そんな……!」

フォズの悲痛な叫びに応えるかのように、ファルシオンは風のように駆けた。
ほどなくして長かった廊下が、やっとのことで突き当たる。
そこには、ひどく久しぶりに思える扉があった。
ファルシオンから降り、扉を潜るには些か巨体であったのでフォズがザックの中に招き入れる。
開けば、別の細い廊下が伸びていた。

「……気配が近い、そしてこちらの廊下はどうやら正常だ」
「身体が軽くなった気もします……」

進むとはたして、大きな両開きの扉がそこにあった。
ピサロの片腕、フォズが全身を使って二つを開けば、そこに広がっていたのは─

「ここは!」
「……」
628名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:23:34 ID:jjsFe1iJ0
しえん
629死を賭して14/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:23:45 ID:3gY/d/mr0

乱れた飛んだ床石、焼けた絨毯。
様子が変わっていたものの、奥に見える壇上の玉座は忘れはしなかった。
謁見の間。
始まりの場所、であった。

「ここに我々は集められた……」
「で、でもこの争った跡は」

ピサロはここでハーゴンに刃向かい、そして全てを失ったと言っていい。
苦い記憶に眉を顰めながらも、部屋の惨状を中に入って調べる。

「……まだ、新しい」
「えっ……」
「……マリアは、奴に抗った……ようだな」
「そんな!!」

強大な力を持っていると、解っていたはずだった。
だが広がるこの惨状、無事で済まされるわけがない。
フォズの顔が色を失った。

「落ち着け」
「でも……でもっ!」
「我々は馬を使った、足止めもそれほど功を奏していない……儀式をされていたとしても、まだ間に合う」

大広間に残された物は他に無い、と認識しピサロは踵を返す。
珍しく焦る魔王の後を、フォズは慌てて追った。

「そ、そうですよね……!それに、マリアさんもうまく逃げ出してくれた、かも、しれません、し……」
「……そうであればいいが、な」

徐々に勢いを失うフォズの発言に自信はまるで見られない。
彼女も必死でマリアの無事を信じてたかった。
しかし、全ての状況が今、彼女の安否を脅かしているのだった。
と、ピサロの焦る足取りが、廊下の中程で足を止まる。

「ピサロさん?」
「……」

小部屋のようだが、いくつも並ぶ扉のうち一つが、わずかに開いている。
中に入ると質素な個室。
深部にあることからハーゴンにごく近い立場である神官の自室かと思われた。
簡素な本棚、机の上には転がる羽ペン。
皺の寄ったシーツが広がる寝台、その上には─

「……事態は深刻のようだな」

フォズが両手で口を抑え、息を呑む。
ピサロが片腕で示す寝台の上に広がっていたのは。
マリアの持っていたザック、抜き放たれた聖なるナイフ。
そして、着ていた布の服。
それだけが、残っていた。
ピサロが扉を押し退け廊下へ飛び出し、マリアの荷物を抱えたフォズもまた続いた。
630死を賭して15/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:27:57 ID:3gY/d/mr0

***


「――ハーゴン……!!」


 
壇上に立ちはだかる影に向かい、アリスは声を上げた。
ゆらり、と青白い顔が振り向く。
それは皆が求め、憎んだ顔。
充満する邪悪な魔力の中、ハーゴンは表情一つ変えない。
天気の話でも持ちかけるようにあっさりと、口を開いた。

「─貴様らか?私の祈りを邪魔する者は」
「ああ、そうさ」

剣先を突きつけて、アレフが応える。
本当は語り合う言葉など持ちあわせていない。
今すぐにでも挑んでしまいたい。
勇者としての本能は焦燥していたが、戦士としての本能が危険を察知していた。
危険だ、と。

「愚か者め」

ゆっくりと、祭壇を降りる階段へと歩みを進める。
一段、一段降りる姿に、一行は誰も近づくことが出来ない。
纏う気配が、同じ空間に存在する全てを攻撃しているようだった。

「私を、大神官ハーゴンと知っての行いか?」
「っ、ふざけるな!!」

投げかけられたのは、かつてのロンダルキアと同じ言葉。
"ハーゴン"は、同じ台詞を言ってのけた。
知ってか知らずかエイトが似合わぬ激昂を見せる。
そうでもしなければ、先程までの勇気が全て吹き飛ばされてしまいそうだったから。
槍を握る手に、自然と力が入ってしまう。

「……まあ、今は良い。全てを赦そう」
「!?」

思いも寄らない言葉だった。
全員が肩透かしを食らったように、あっけに取られる。
ハーゴンが再び檀上の祭壇へと踵を返し、何か合図をした訳でもないのに、檀上の炎が灯った。
祭壇にはなにやら布が被さっていて、その膨らみは何かが隠されていることを物語っている。
ハーゴンはその端を掴みとった。

「儀式を続ける」

取り払われた下に居たのは─
631名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:30:08 ID:Cp64060J0
しえん
632死を賭して16/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:30:17 ID:3gY/d/mr0




『マリアッ!!!!?』

皆が皆、眼を疑った。
そこにいたのは、自分たちに必ず追いつくはずの人物。
再会を誓い、誰よりハーゴンへ報いることを望んだ強き王女。
しかし彼女は、そこにいた。
お伽話の眠り姫の如く。

「これより"優勝者"の望みを叶える儀式を執り行う!!」
「なんだと!?」

アレフは驚いた。
優勝すればどんな望みも思うがまま─
そんな甘言は儀式を進めるための単なる釣り餌に過ぎないと、考えていた。
しかし、マリアの望みを叶えるとハーゴンは言う。
どういうことかと、思わず剣先が下がる。

「この娘の望みは、本人からはっきりと聞いた。今ここにて─」

ハーゴンが刮目した。
表情、声、そして威圧感。
全てが変化した。
勇者たちを、圧倒するかのように。

「"我が生命"を与えよう」

その言葉の真意を、皆まで理解した訳ではない。
ただ、勇者は憤る。
目の前の男は、大切な仲間を捕らえたのだから。

「訳の分からない事を吐きやがって……」

アレフの言葉にも、やはり返さない。
眠れるマリアの額へと、手を伸ばそうとするだけだった。
そんなハーゴンの身体に"闇"が纏わり付くのを確かに一行は見た。
どこまでも深く、夜の闇よりなお暗い。
目の前に存在するのは、世界に間違いなく破滅と恐怖を呼ぶそれだった。
だが。
それでも。

『……させるかッ!!!』

4人の誰かが指示した訳では無い。
だが、皆が皆、同時に掌に握っていたのは、怒れる炎だった。

『ベギラマ』ァッ!!!

4つの閃熱が、轟炎が渦となり、ハーゴンを直撃する。
彼らは抗う。
それは義によるものではない。
ましてや憎悪によるものでもなかった。
ただ、大切な人のため。
その炎は、許されざる者を焼き尽くすために放たれたのだ。
しかし。

633死を賭して17/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 20:35:27 ID:3gY/d/mr0



「邪魔立て……するか……」

橙の閃光が、周囲の暗闇を照らし出した。
だが再び、青き炎の冷たい輝きが、その場の空間を支配する。
爆炎が散り煙が晴れても、そこには居た。
暗く、どこまでも深い常闇の化身の如く。
『闇の衣』を纏いし邪悪が。

「……ならば」

そして破壊をもたらす、邪神が。


─赦せぬ─


戦いが、始まった。
勇者達は挑む。
皆……死を賭して。





【???/聖杯の間(祭礼の間)/ゲーム終了直後】


【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP健康 MP全快 左足に刺傷(完治) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす 


【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP健康 MP全快 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪 
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン 
    祈りの指輪(あと1.2回で破損) キラーマシンの矢×20
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る


【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP健康 MP全快 首輪なし
[装備]:メタルキングの槍 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム 
     84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意


【竜王@DQ1】
[状態]:HP健康 MP全快 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 さざなみの剣
[道具]:外れた首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪
634名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 20:49:52 ID:jjsFe1iJ0
635死を賭して18/18 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 21:00:30 ID:3gY/d/mr0
【???/ハーゴンの神殿深部/ゲーム終了直後】


【ピサロ@DQ4】
[状態]:HPほぼ全快 MP4/5 右腕使用不能 首輪なし
[装備]:鎖鎌 闇の衣 
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2]
     飛びつきの杖(2) アサシンダガー プラチナソード 奇跡の石
     ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)   
[思考]:ハーゴンへの復讐 体力・精神力の回復 最終決戦の戦略を練る
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
 また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
 完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。 


【フォズ@DQ7】
[状態]:HP健康(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP全快 首輪なし
[装備]:天罰の杖  神秘のビキニ(ローブの下) 
[道具]:支給品一式  アルスのトカゲ(レオン)
     神鳥の杖 祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り 
     あぶないビスチェ 脱いだ下着 ビッグボウガン(矢 0)
     太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡 
     天馬の手綱(ファルシオン)
     マリアの荷物(小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖
     ルビスの守り(紋章完成)引き寄せの杖(2) インテリ眼鏡 風のマント)
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる


【???/聖杯の間(祭礼の間)中央の神殿の祭壇/ゲーム終了直後】


【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP健康 MP微消費 深い眠り?
[装備]:いかずちの杖 いけにえの服 
[道具]:なし
[思考]:???
636 ◆I/xY3somzM :2010/11/24(水) 21:03:12 ID:3gY/d/mr0
投下終了しました。
今回支援に駆けつけてくださった方本当にありがとうございます。
二度もさるさんをくらってしまうという体たらくでしてすいませんでした。
話の方は、前話の作者さんのご好意に甘える形となりました。
ありがとうございました。
さて、短期完結予定だったロワがいよいよ数年の時を経て完結するまであと少し。
今年中あるいは今年度中を目指してがんばります。
応援していただけるとうれしいです。
あ、もちろん自己リレーは避けたいですとも。
他の書き手さん、がんばりましょう!
637名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 23:08:06 ID:/C3Tbf380
【予算】 4万まで
【使用機器】PC PS3→Fiio E5 アンプやDACもいずれは買う予定
【よく聴くジャンル】 ポップス ロック 打ち込みなど
【重視する音域】 中音
【使用場所】 室内
【希望の形状】 開放
【期待すること】 K530を使っていて、音に不満はありませんが蒸れて長時間付けるのは苦です
なのでK530をランクアップしたような蒸れにくい機種をお願いします
638名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/24(水) 23:20:23 ID:/C3Tbf380
すみません…誤爆しました
639名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/25(木) 01:01:13 ID:5dsJnqNwO
感想ひとつもついてなくて可哀想なので

投下乙。FFDQロワイアル無き今頑張ってくれ。
640名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/11/25(木) 03:40:25 ID:cNIgSIY60
いつのまにか新作きてた!
たった一人でハーゴンの前に立つことになっても怯まなかったマリアが
格好良かったです。GJ!

校正
>>614 5/18の下から7行目「既に」が重複しています。
641名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/03(金) 07:35:52 ID:D+OOdv7XO
新作来てたのか超乙
642名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/05(日) 23:49:50 ID:fKkcLl2t0
ほしゅ
643名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/09(木) 00:16:50 ID:bpS9HJxV0
お、新作きてたのか
書き手さん超乙
644名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/14(火) 13:27:35 ID:IfVbmx/dO
保守
645名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/22(水) 01:39:10 ID:tjtFNS0v0
保守
646名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/27(月) 00:37:05 ID:PnjOzZuV0
ホシュ
647名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/31(金) 23:13:28 ID:26C6bBnj0
今年一年お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願いします。
648名前が無い@ただの名無しのようだ:2010/12/31(金) 23:32:12 ID:DqhVMOsS0
やあやあ
こちらこそよろしくお願いします
これからも楽しくやりましょう
649名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 00:03:47 ID:+gdwV8Xz0
あけましておめでとうございます
本年も完結を目指し頑張って行きましょう
650名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 00:04:05 ID:i1GMU77E0
あけましておめでとうございます。
今年中に完結するかな?
651 ◆I/xY3somzM :2011/01/01(土) 00:04:49 ID:LxzEX8mpO
あけましておめでとうございます。
今年こそ完結目指して頑張りましょう。
新年早々予約ですが、1月7日を目指しての予約とします。

まだ完成までかかりそうですが、頑張ります。
ちなみに8日はFFDQロワ語り、9日はDQロワ語りの日となります。
ttp://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/otaku/8882/1268518698/
スレ住民さんこぞって盛り上げてください。
その日までに新作をひっさげたいと思います。
では、今年もよろしくお願いします。
652名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 00:04:51 ID:Y3O6MMRm0
あけましておめでとうございます。
支援しかできませんが楽しみに待ってます!
653名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 00:23:41 ID:wAF2wmSJ0
あけましておめでとうございます。
>>651、したらばの告知だけかと思いきや、予約!
こりゃ盛り上がるしかないな。何か支援用意できればなあ。
654名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 02:02:27 ID:gQoJuw5cO
明けましておめでとうございます。完結するまで、今年も気長に待ってます。
655名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 02:04:14 ID:gQoJuw5cO
sage入れるの忘れてました
656 【だん吉】 :2011/01/01(土) 08:31:14 ID:+gdwV8Xz0
今年のDQロワの運勢
657名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/01(土) 10:34:17 ID:wAF2wmSJ0
だん吉でも吉は吉。
絵板に支援きてたぜひゃっほい。
658名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/05(水) 20:46:16 ID:6GqdyMQK0
あけましておめでとう保守
予約楽しみにしてます
659 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 00:51:58 ID:apxaYlbI0
滞りがなければ21:00に投稿する予定で行きます。
660名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 01:06:47 ID:4f2X7OAt0
wktk
661名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 01:14:38 ID:OFe/BtBW0
支援するぞー
662名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 20:55:35 ID:xq65Yqfr0
スタンバイ!wktk
663 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 20:56:57 ID:apxaYlbI0
5分後に投下に踏み切ります、支援してくれる方いたらよろしくおねがいします。
664名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:01:01 ID:OFe/BtBW0
待ってました!
665不死身の敵に挑む1/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:01:42 ID:apxaYlbI0



黒い風が、掻き集めた勇気を吹き散らす。

拳が、脚が、必死に見つけた希望を打ち砕く。

彼らには邪神官の全ての動きが、絶望を呼ぶ舞踏であるかのように見えた。

「……」
「はぁ……!!はぁッ……!!」

双方の初手は指し終え、ターンを終了。
その結果、ハーゴンに対して挟撃の形を取ることに成功している。
正面にエイト、アレフ。
右後方にアリス、そしてやや離れてアレンが油断無く構えている。
が、彼らは皆が皆確信していた。
『優勢なのはハーゴンのほうだ』と。

「エイト、立てるか」
「ぐっ、く……ええ、大丈夫、です」

全員の力を合わせたベギラマ。
ピサロの一瞬だけ纏う闇は、その膨大な量の炎を全て受け止めたらしい。
だが臆してはいられない。
初めに飛びかかったのはアリス、続いたのがエイトとアレフ。
アレンはその隙に回りこみ、横合いから突きを放つ。
それが各々の初手であった。
対するハーゴン、4つの刃をどう避ける。
その答えは─

「まさか……」

アレフは戦慄した。
自分の予想を二歩、三歩も上回る現実を知ったことで。
666名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:02:54 ID:5r+PLzyU0
667名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:02:59 ID:OFe/BtBW0
 
668不死身の敵に挑む2/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:03:15 ID:apxaYlbI0


アリスのメタルキングの剣は全てを両断すべく鍛えあげられた魔法の金属で製造されている。
その鋭さで断ち切れぬ物は無い、はずだった。
しかし、阻まれた。
『闇』を纏った邪神の杖が、真正面から受け止めたのだ。
抑えこまれたまま、杖から放たれた暗黒の暴風が少女を大きく飛ばす。
だがしかし、後に続く剣、槍が必ずハーゴンの隙を突く、最初はそう考えていた。
否。
ハーゴンは手から杖をぱっ、と放る。
そして剣、槍ともに『打ち払った』。
目を見開いたアレフの視界に続いて飛び込んできたのは、ハーゴンの舞。
いや、舞と見紛うほどに洗練された体術だった。
そのステップは、気でも狂ったかのように素早くそして強く、身体を強かに打ち据える。
隣のアレフが吹き飛んだのに気を取られ、がら空きになったエイトの体勢。
そのまま滑るようにして、邪拳が鳩尾へと叩き込まれた。
なんとか着地に成功したアレフに対し、エイトの身体はゴロゴロと転がっていく……

「………『避けない』で『打ち払う』とはな」
「読み誤りました、戦い方が術師のそれではありません……!」

それから、ようやく二人は体勢を整えて、先程のやりとりを終えたというわけだ。
一行の最初の攻撃順序は実に3/4が失敗に終わっている。
が、まだ全ての攻撃が終わった訳ではない。
余りの早業にまだ落下の兆しすら見せていない杖をハーゴンが再び掴んだ。
そこに一行が振るう最後の刃、残された1/4─
アレンの竜神王の剣が風を切り、貫いた。

「ヌッ!」
「クックッ……」

血色の悪い互いの顔が忌まわしさと愉楽、対照的な歪みを見せる。
アレンが貫いたのは神官の纏う法衣の裾のみだった。
嗤うハーゴンの口から魔力が漏れ出でる。
アレンの身体に瘴気を帯びた息が浴びせかけられる。

「グオッ!!」
「アレンさん!!」
669不死身の敵に挑む3/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:04:13 ID:apxaYlbI0


吐きつけられた妖かしの息に、袖で顔を抑えてアレンは大きく退いた。
激しく咳き込む様子にアリスが駆け寄った。
そんな二人に目もくれず、ハーゴンはエイト、アレンの方へ変わらず表情を向ける。

「う、おおおぉっ!!」
「だぁッ!」

アレフが剣を再び構え、飛び込んだ。
槍を握りなおし、エイトが続く。

(奴の戦術を知るのはマリアだけ、その話では術士だったはず)

アレフから見てハーゴンの肩の向こう、祭壇の上に未だ眠る少女を見ながらアレフは思う。
しかしあの身のこなし、術に加えて体術、恐らく杖術すらも極めている。
加えて闇を身に宿し、妖かしの術技でしか攻撃をしてこない。
その姿はまるで魔物。
アレフはどこか目の前の存在が歪に感じていた。

(奴はハーゴンに化けている何か、なのか?)

王者の剣を水平に構え突進する最中、そんな事を考えていた。
そしてハーゴンはそんな思考すら見透かしているかのように、杖とは逆の掌をアレフに突き出す。

(呪文ッ!)

ハーゴンを見ていると自分の考えを早くも否定したことで満悦の笑顔になっているようにも見えた。
アレフの心が苦々しい思いで満たされる。
火の玉が飛ぶか、氷の刃が舞うか。
そんな思いも虚しく反射的に盾を翳したアレフを襲ったのは。

「……!?」

意識が後ろから殴られたかのように混濁する。
歪む視界、崩れる膝。
剣を握る手の力が抜けかけるところに、エイトの高らかな声が響く。

「キアリク!!」

アレフの意識が頬を張られたときのように瞬時に覚醒する。
エイトの放った呪文のお陰で、アレフは意識をギリギリのところで失わなかった。
そして目の前に飛び込んできた光景は、ラリホーを放ったその時の格好で変わらぬ掌の上に収束する光。
それが今まさに解放されんとしている所だった。
670名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:04:28 ID:5r+PLzyU0
671名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:05:26 ID:OFe/BtBW0
 
672不死身の敵に挑む4/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:05:57 ID:apxaYlbI0


「アレフさんッ、避け……ッ!!」

間に合わなかった。
エイトの助けが遅かったのでは無い。
あまりにアレフとハーゴンとの距離は近すぎた。


「イオナズン」


冥府から響く死刑宣告のように、その言葉は紡がれた。
極限まで圧縮された光球を、ハーゴンはそよ風にそっと乗せるように放る。
アレフの眼前へふわり、と躍り込んだ灼光が激しく光を放って─

「ぅ、ああぁぁぁーーーッ!!!」

膨張し炸裂する魔力の爆発に真正面から呑まれ、アレフの身体が紙くずのように吹き飛ぶ。
爆心からやや離れていたエイトは、必死でその身を地に留める。
ハーゴン越しに見ていた二人ですらも身体を支え合わざるを得なかった。
対して放った本人であるハーゴンはどういう理屈か、涼しい顔だ。
まるで無感情に、『次はお前だ』とでも言いたいのかエイトのほうを見ていた。

「……!!」

ハーゴンから目をそらすことはできない、戦いの本能がそれを許さない。
光の中に呑まれた勇者の喪失を悔やむ声は、言葉にならなかった。
ラリホーをかけられたアレフを見て、咄嗟に呪文で覚醒させることは間に合った。
しかし、ハーゴンは『二度』魔法を使った。
先程の体術もそうだ、奴の挙動はこちらの想像する倍ほど速い。
立ち振る舞い、挙動が特に素早さに溢れているのではない、気づいたときには二度目が繰り出されている。
そう、その戦い方はかつてレーベの村で交えたアトラスの疾さを思い起こさせた。
673名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:06:20 ID:5r+PLzyU0
674名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:06:48 ID:xq65Yqfr0
675不死身の敵に挑む5/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:07:01 ID:apxaYlbI0

「くッ!」

アレフの反応は無い、断末魔すらもこの世からかき消されてしまったのか。
エイトは気を抜けば折れてしまいそうなその両膝を奮わせ、油断無く槍を構えた。
姿は遮られて見えないが、アリス達は無事かと声を上げようとする。
その瞬間、エイトのすっかり襤褸切れになってしまったバンダナが、風に靡いた。
風の出所は、爆心地。
熱せられた空気は周囲を巻き込み上へと登るはず、風の流れが逆だ。
その風はやがて爆煙を晴らし、今も尚その両足で立つ勇者の姿を顕にした。

「ゲホッ、ゲホッ!!」
「!アレフさん!」
「……どうやら、死に損なったな」

その身を焦がされ、マントはほぼ焼失していた。
だが身体のどこを吹き飛ばされることもなく、五体満足で勇者アレフは立っていた。
左手で伝説の盾を翳し、首から下がったアミュレットからはその身を包むように風が放たれている。
盾の後ろから、未だに不敵な笑みを湛えてアレフの眼差しがハーゴンを射抜く。
ハーゴンの顔が、僅かに動いた。
動揺ではない。
楽しげに、笑んだ。

「笑ってる余裕が、お有りですか!?」

アレフが爆風に呑み込まれて、尚も黙っていたアリスの激情混じりの声が轟いた。
非情故では無い、彼女は信じていた。
子孫である勇者の強さを。
信じていたからこそ、この呪文の詠唱も途切れることなく完成させることができた。
魔を討ち、正義と人々を守る光の裁き。
その両手に、魔力と想いが収束した。
完成と共にアリスは高々と跳躍し、天にも舞わんばかりに空へと躍り出る。


「来たれ、正義の雷……ッ!!!『ラァイ、デイィィーーーーーーィン』ッ!!!!!」


空間全てを揺るがさん限りの声が、その場に響き渡る。
その大声にさしものハーゴンもエイトの方から視線をゆるりと動かした。
刹那、左右共々開いて構えられたアリスの量の掌から膨大な光が溢れ、光はやがて雷となる。
雷鳴が轟き、拡散して放たれた雷が瞬時に収束し、ハーゴンへと向かった。

「……愚か」
676名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:07:28 ID:OFe/BtBW0
 
677名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:08:28 ID:OFe/BtBW0
 
678不死身の敵に挑む6/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:08:29 ID:apxaYlbI0
「駄目だ、避けられる……ッ!」

だが、真正面から、宙に跳び上がりオーバーモーション気味に放たれた雷。
ハーゴンが真っ向から受けてくれるわけもない。
勇者の放つ神雷呪文はハーゴンの脇を通り抜ける結果となった。
一瞬その身に纏われた闇を掠めるだけに留まる。
しかし雷の威力は凄まじい。
丸く削られたように闇が欠けている。
その結果に何故か満足したか、アリスを見つめハーゴンの口が歪む。
しかし勇者は微笑み返す。
子孫の不敵なそれと同じく。

「その、愚かさに……身を、焦がされろッ!!!」
「!?」

かわされたライデインの行く先に待ち構えるは、アレン。
瘴気を帯びた妖かしの息も、竜ならではの強靭な肉体にはさして通用していなかったのだ。
さざなみの剣を構え、迫り来る雷と睨み合う。
アレフは気でも違ったか、と止めに入りたかったがすぐにその思考を吹き飛ばすほどの轟音が響く。
アレンが凄まじい速度の勇者の雷と、真っ向から切り結んだ。

「なにっ……!?」
「グ……ウゥオォッ!」

稲光に圧されるが、力任せに斬り返す。
竜王アレンが、啼いた。
雷鳴を響かせ、激しく発光したアリスの雷。
それはアレンの衣の袖を焦がし、腕を、指を焼きつつも、まるで鏡に映されたかのように行く先を変えた。
剣に秘められたマホカンタの魔力を利用して、ライデインを反射させたのだ。
さらに、アレンの振るわれる剣は一つでは無い。
そのまま続くアレンの弐の太刀、それは竜の秘境にのみ伝わる宝剣・竜神王の剣。
そこから、追いかけるように巨大な雷撃が撃ち出された。
アリスの放った蒼雷に、新たに生み出された白雷が絡みつく。
その姿は恰も双竜の如く、雷鳴という名の咆哮を上げ勇者の雷はハーゴンの背を、射抜いた。

「……!」

ハーゴンが初めて、攻撃を食らった。
それは確かに、自分たちの攻撃が通用する確かな証拠。
679名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:08:53 ID:5r+PLzyU0
680不死身の敵に挑む7/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:09:21 ID:apxaYlbI0


「当たった……!」

エイト、アレフは息を呑む。
自分たちの攻撃が通じたことへの驚きだ。
数瞬前まで感じていた絶望を、勇気が上から塗りつぶす。
奴も傷つく、奴を滅ぼすことは不可能ではないと。

「……覚えておけ」

アレンはちら、とエイトと同じくこちらを見ているアレフを見て、続けた。

「冥府では違うだろうが、こちらでは強く生き抜く愚者を……勇者、と。そう呼ぶそうだ」
「心外ですね、強ち間違ってはいませんが」

アレンの言葉を続けたアリスは、身軽に着地する。
双剣を持つ竜は構え、勇者はマントを靡かせ腕を組んだ。

「……」

ハーゴンが杖を取り落とし、初めて直立以外の体勢を取る。
膝を突いたその姿に驚いたのは、他ならぬ傷つけたアリス自身だった。

(最初に集められた時に感じた奴の力、バトル・ロワイアルを企てるほどの際限無き魔力
 ……果たしてたかだか一撃で膝を突くでしょうか?)

アレフ、エイトが二人の攻撃によって跪いたハーゴンの動きを狭めるべく、包囲網を組む。
四方を囲まれたハーゴン、次にどう動く。
兆しだけの希望では、得体の知れなさを振り払うに至らない。





─かわく





そして走った緊張は、すぐさま破られた。
ハーゴンのたった一つの呟きと、異様な変質に。
681不死身の敵に挑む8/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:10:04 ID:apxaYlbI0



(何が、起きた……)

アレフは一瞬意識を失いかけた。
未だ現状を理解し切れていない、だがここでこのまま微睡むようなマネをしていてはいけない。
必死で直前に見た光景を思い出す。
跪くハーゴンの背。
そこで何がしかが蠢いた。

(はね、が……)

鳥、猛禽類、否、もっと……何か。
もっとも、闇に包まれた『それ』は、何と表現すればいいのだろうか。
眩みそうな思考では頭から丁度いい単語が引き出せない。
やっと開いた思考の扉から出てきた言葉で、例えるなら、そう、蝙蝠のような。
そんな、ハネ。

(そうだ、奴、は)

眩んで覚束無い視界を頭を振りはっきりとさせる。
目に飛び込んだのは、四方に吹き飛ばされた一行。
エイトは槍を取り落とし大の字に倒れ、アレンは膝を折り。
最後に目を向けたアリスが、宙に拘束されていたところでアレフの目が見開かれた。

「ッぁ、ア、リス!!!」

咳き込みそうになりながら、ギリギリの声をアレフは搾り出す。
アリスを封じているのは、ハーゴンの腕。
だがそれは、腕と言っていいのかも既に分からない変容を見せていた。
ハーゴンの身体を取り巻く闇は、先程までとは比べ物にならないほど膨れ上がっている。
本人の腕は、空を掴んでいる。
しかし闇から伸びる数多の腕がその腕を模し、アリスの剣を、腕を、細い首を掴み上げ、宙へと縛り付けて

いるのだ。
ほんの少し捻り上げれば、その全てを逆に折り曲げてしまいそうにすら見えた。

「うっぐ、ぉぉォッ!!!」

身体の所々が痛むが気にはしていられない。
傍らの剣を取り、盾がどこへ行ったか探す暇も惜しかったアレフは駆ける。
蠢く腕は、アリスの肌に喰い込みつつあった。
682名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:10:17 ID:5r+PLzyU0
683名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:10:37 ID:OFe/BtBW0
 
684不死身の敵に挑む9/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:11:11 ID:apxaYlbI0


「う、ァ、あァっ!!」


─見よ、ルビス
 そなたの子らが、泣いている


「はァ、な、せ……ッあぐッ!」


─来や、ルビス
 愛し子たちの死を見届けておくれ


ハーゴンは、いや、『死を運ぶ何か』は、謳うように言う。
だがその口は閉じたままだ。
もはやこの存在は、空気を震わせて声を伝えることを必要としていないらしい。
逆に、アレフの口は叫ぶ形を取っているというのに声も出ない。
乾いた叫びがひたすら呼気を排出するのみだ。
声にならない叫びと共に、アレフは王者の剣を叩きつけようとした。


─悔いよ、ルビス
 己と、己が子の弱さを


ハーゴンの生身の手に力が篭ったかと思うと、空を握りつぶす。
さながら鼓動のように闇の伸腕が脈動し、その内にて崩折れるアリスの小さな身体はいとも容易く─







「悔いるのは貴様だ」
685名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:11:27 ID:xq65Yqfr0
686名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:12:13 ID:OFe/BtBW0
 
687不死身の敵に挑む10/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:12:35 ID:apxaYlbI0


その手に浮かぶのは憎悪の炎。
絶望を糧とする魔王、その身体をも焼き尽くす極大火球呪文。

「メラゾーマ」

闇夜に煌く恒星の如く、炎が輝いた。






背後からの獄炎は球体となり、異形と激突した。
ハーゴンの肉体が炎に飲み込まれ、伸びた闇の集合体もまた消されゆく。
灼かれた闇は、まるで灰のようにボロリと崩れ千切れゆく。
悍ましい断末魔を上げたのはハーゴンか、それとも。
ともかくその肉体は激しく燃焼しつつ、祭礼の間の壁まで飛翔するかのように吹き飛ばされた。

「……か、っ!けほ、げほっ……!!」

本体から腕が切り離され、解放されたアリスの身体は地に落ちた。
激しく咳き込むが、身体のどこを捻じ曲げられたわけでもない。
紛れもなく、生きていた。
勇者アリスは、生きていた。

「ぐっ……な、に……」

アリスの激しく咳込む声に反応したか、エイトが頭を振ってどうにか起き上がる。
どこかに打ち付けたか、バンダナに紅の滲みが浮き、顔には血の線がひとつ。
揺れた脳は状況を把握するのに、幾許かの時間を要した。

「みなさん!!……ああっ!!いた!マリアさんっ!」
「……?フォズさん?」
688名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:12:46 ID:5r+PLzyU0
689不死身の敵に挑む11/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:13:48 ID:apxaYlbI0
鈴のように澄んだ少女の声が届く。
ずいぶんと久しぶりに聞いた気がするそれが、エイトの意識を定かとした。
こちらに来てはいけない、と言う間も無くフォズが祭壇を駆け上がる足音が聞こえる。
どうやら目覚めぬ眠り姫を、必死で揺り動かしているようだ。
無論、先程の火球の主はこの可憐な少女では無い。
術者は、同じ扉から現れた。



「……ハーゴン」



フォズのそれとは別、鈴に例えるには余りに低く怒りを孕んだ声。
カツカツ、と冷たい印象を受ける足音と共に、黒衣の男は現れた。

「……いや」

開け放たれた大扉から、周りの何を気にするでもない。
ただ見据えるは、邪悪の根源。

「もはやそう呼ぶ必要もあるまい」

静かな怒りを讃え、闇の血族の頂点に立つものは立っていた。
その身に滾る復讐の炎。
愛する者を奪われた、その元凶へ向ける憎悪。
やっと、矛先に相応しい相手をその目に捉えた。
長かった。
本当に、長かった。
迷い揺らぎ、一刻は身を委ねた。
だが、その選択は愚かだったと、思い知る。
魔王ピサロは感づいた。
自分は一行の中で最も"こいつ"に近い存在。
いや、愚かにも踏み込んでしまった存在だった。
だからこそ、感づいた。
690名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:13:49 ID:OFe/BtBW0
 
691不死身の敵に挑む12/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:15:27 ID:apxaYlbI0


「"死導"……破壊の神よ」
(シドー)


目の前の存在の真名を告げ、魔王は言う。
この下らないゲームの開始当初から願い続けた、一つの覚悟を。

「貴様を滅する」

それは、闇に堕ちてすぐ望んだハーゴンを八つ裂きにしたいという薄汚い欲望とは違う。
そして、かつてのように再び人間達に絶望し全ての命を絶やすという黒き野望ともまた、違う。
好いた女の仇を討つ、男としての矜持。
ただひとつの、愛の為。
神を超える理由は、それだけで十分にすぎた。




「……ピサロォッ!!」

と、ここでアレフが駆けつけた魔王に声を上げる。
アレン、エイトもようやく意識をはっきりとさせたようだ。
エイトがアリスに駆け寄って、回復を試みている。
救われたのは確かだが、一つ納得行かない点があった。

「焼き殺す気かッ!!!」
692名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:15:34 ID:5r+PLzyU0
693名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:15:34 ID:OFe/BtBW0
 
694不死身の敵に挑む13/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:16:42 ID:apxaYlbI0




アリスを助けるべく剣を振りかぶった鼻先を、熱風が掠めて行った。
もう少し踏み込んでいたら、身体の前半分が焼き消されていたかもしれなかったところだ。
手荒い救援にアレフは感謝より先に文句が飛び出る。
きっとすぐ傍でなければ見逃してしまうだろう、それほど微かではあるがピサロの口元が、上がった。

「生きていたのか」
「おい!」

臆面も無く言い放つその姿にアレフは腹が立った。
だがその腹立ちすら、どこかありがたく感じた。
これが、これこそが『本来の自分』だ。
一欠片も出すことが叶わなかった出なかった大声が、出せた。
盾を拾い、剣を構え直すことができた。
邪悪に怯え、混沌たる闇に震える姿を誰が勇者と呼ぶだろうか。
アレフは持ち前の勇気を今再び取り戻した。
そこにアレンが、やや気怠そうに首を鳴らし、現れる。

「……声を張り上げるな、傷に響くだろう」
「!……無事か?」
「お前とは、身体の出来が違う」

誇らしげに剣を再び取り、気高き竜は勇者に意思を見せる。
未だ立ち上がる、ただあの姫に勝利を捧ぐ為だけに、と。
そう、この二人もまた同じ。
戦う理由、命を賭ける理由を、魔王と同じくしていた。

(挫けかけたが……また助けられたな。奴らにも、君にも)

アレフが剣を取る理由。
それもやはり。

(闇に慄く勇者は、格好がつかない……よな?だから、誓おう)

どこかで見ていてくれる愛する人に、そう語りかける。
彼の立つ理由も愛の為。
失われた願いを再び、繋ぐ為。

(必ず、勝つ!!)
695名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:17:24 ID:5r+PLzyU0
696不死身の敵に挑む14/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:17:29 ID:apxaYlbI0

その為ならばアレフは、いくらでも勇者になれた。
勇者アレフは、勇者たりえた。



「ご無事で」
「ああ」

エイトも駆けつける、この中で負傷が色濃い者はいないと見えて安堵の息を漏らしていた。
アリスはというと安堵する間も無く、おろおろと狼狽えている。

「……そうだ、マリア!フォズさん、マリアは……!!」
「今ベホイミを」

東西南北、四方に散らされた一行はピサロ、フォズと同じく祭壇まで集結する。
アリスは階段を、途中に立つピサロには目もくれずに転ぶのではないかという勢いで駆け抜けた。
心配そうにフォズと共にマリアの顔を覗き込んでいる。
ピサロは敵に背を晒すアリスに軽く眉を顰めた。

「勇者アリス、隙を晒すな。敵はまだそこだ」
「……そう言ってフォズも止めなかったじゃあないか、お優しいことで」
「フン……」

まあ、それをフォローするのが俺たち男だしな、とアレフは気楽に言ってのけた。
夜目の利くアレンは、闇と同化するほど炭化したハーゴンの肉体を油断無く警戒する。
今のうちに、とピサロがエイトと協力してベホマの呪文をかけ合った。

「奴は?」
「動いたな」

アレンの双眸が、僅かな身動ぎを捉えた。
近くに佇んでいれば、その度不快な骨の破砕音や筋肉の断裂する音が聞こえただろう。
誰もが思わないだろう、その襤褸屑のような男が世界を揺るがした等と。
もはや単なる焼死体と成り下がったそれは、だが二本の足で確かに立った。
ゆらりとこちらを向く。
足を引きずり、ずるり、ずるりと近づいて来る。
フォズは声を失い口を手で抑えた。
皆が戦慄し、各々武器を構えた。
警戒する理由、それは。
697名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:17:56 ID:OFe/BtBW0
 
698不死身の敵に挑む15/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:18:45 ID:apxaYlbI0

「傷が……」
「どういう理屈だ、あれなら呪文を唱える喉も焼けてるはずだろう……」

誰もが言葉を失うだろう、それほどその姿は悍ましいものだった。
ボロボロと死んだ皮膚が崩れ落ちるが、その肉体を闇が覆っている。
そうすると、折れた骨が音を立てて繋がり、ズタズタの筋肉が蠢き繋がり合うのだ。
回復呪文で行うそれとはまた違う、これは悪魔の所業に近い。

「……凄まじい速度で肉体が修復されています」
「奴の正体が"破壊神"ならば道理だろう」

今まで出会ったどんな異形よりも禍々しい姿にエイトは戦慄する。
いち早くこの状態を何と称するかを感づいたピサロが、そう呟いた。
その顔はもはや闇の集合体と化した物体を、蔑むように顰めている。

「……破壊神、だと?じゃあ、やはりあれは……」
「ハーゴンは肉体を乗っ取られた、のでしょうか」

アレフは最初に感じていた違和感を飲み込めた気がした。
自らの肉体を用いる戦いは、邪神の力。
驚異的な呪文完成の速さは、神官の力。
そう、二つの強さを内包しているからこそ、強く、ちぐはぐに見えたのだと。
対してエイトは、ハーゴンのこの状態がとても過去と似通っていることに感づいていた。
かつての敵ドルマゲス。
暗黒神を封じる杖に魅入られたばかりに、その身を神の器として明け渡すことになってしまった。
今のハーゴンも哀れな"容れ物"としてシドーにその身体を、力を利用されているのでは、と思ったのだ。
しかし両者の考えの微妙な違和は、吹き飛ばされた。
巨大な爆発音によって。

「っ!!」
「う、わっ……!」
699名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:18:51 ID:5r+PLzyU0
700名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:19:00 ID:OFe/BtBW0
 
701不死身の敵に挑む16/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:20:11 ID:apxaYlbI0
一瞬、光が走る。
大地を、踏み止まる身体を、ビリビリと大気の振動が叩いていった。
離れたところ、破壊神の身体を完膚無きまでに爆発が塗りつぶして行く。
先刻アレフを直撃したそれと同じく、破壊の槌が闇を刹那の輝きで満たした。

「攻撃、か……?」
「いえ、奴の攻撃では」

こちらを狙って放たれたわけでは無い。
自爆する前兆すら無かった。
あれはこちらから放たれた。
では、誰が。
その疑問の主は祭壇の上にいた。

「……乗っ取られた、というのは少し違うと思います」

生贄の台座から、すらりと白い足が降りる。
その掌は開かれている。
怨敵の顔面があったであろう方角へとしっかり向けられ、開かれていた。
忌々しきハーゴンに宛がわれた服などは、いつの間にか脱ぎ捨てている。
いつ着替えたのやら、親友アリスの偽りの故郷で得た布の服。
その、長めの裾が揺れていた。

「あれはハーゴンでした。……そして、シドーでもある、のだと……そう、思います」

伝説の証明たる紋章こそ無いものの、似合いの頭巾の紐を結ぶ。
宿敵との二度目の邂逅の戦衣は、やはりこれを選んだ。
フォズが預かっていた装備を再び自分の手で持つ。
誰よりも多くの悲しみ、怒り。
そして優しさを抱えた戦士。
王女マリアは、目覚めた。
702名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:20:31 ID:xq65Yqfr0
703名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:21:17 ID:OFe/BtBW0
 
704不死身の敵に挑む17/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:22:42 ID:apxaYlbI0


「マリアさん!いきなりそんな呪文を……」
「大丈夫、フォズさん……ありがとう」

起き抜けのイオナズンに、起きるまで必死に介抱した少女は心配故の抗議をする。
だが女神の笑みをフォズへ向け、マリアは深い感謝を告げる。

「私もすぐに、行きます」
「えっ……」

言葉を失うフォズに大丈夫、と微笑みかける。
隣のアリスともまた、微笑み合う。
ここまでは可憐な花の如き少女そのもの。
しかし、ここから先は怨敵と戦う一人の戦姫。

「……あなたは、私が守ります」
「……私も貴女を、必ず守るわ」

二人の少女は戦地へと降りる。
戦姫、勇者、共に眼差しは祭壇の下へ控える彼らと同じく、研ぎ澄まされた刃の鋭さ。
フォズが法衣の裾をぎゅっと掴む。
震えの走る吐息を飲み込み、呼びかけた。

「わ、私も!」

少女の大きい決意の声に、マリアとアリスは振り向いた。
恐怖はある、手は微かに震えている。

(その気持ちを忘れない限り、君は俺たちと一緒に戦う戦士だ)

アレフからもらったなけなしの勇気を胸に抱きしめ、足は止めない。
恐れを封じ、二人の後へと続く。

「私も……戦います!!」
「……ありがとう、フォズさん」
「心強いです!」

三者三様の可憐な笑顔が、戦場に花を咲かせた。
だが、少女の時間はここで終わる。
かくして虹の架け橋で闇から逃れた七人の戦士達。
引き裂かれることなく、再び絆を辿り巡り会った。
705名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:22:51 ID:5r+PLzyU0
706不死身の敵に挑む18/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:23:45 ID:apxaYlbI0


「……再会を喜び合う暇は、あまりいただけんようだ」

マリアのイオナズンの威力は怒りを乗せたか凄まじい威力でハーゴンの肉体を粉砕した。
だが粉微塵になったかに見えたハーゴンの肉体が、地を這い結び付き合い、再び形作られようとしている。
例えばスライムを限界まで汚せばああなるのであろうか、ひどく醜い姿となり這いずるその姿が神などと、

誰が思うだろう。
皆その姿に一様に顔を顰めた。

「……マリア、目の前の"あれ"は……ハーゴンなのか?シドーなのか?」
「はっきりしません……いえ、でも……相対してわかりました、あれはハーゴンに間違いない……」
「……ふむ、そうか」

一人合点がいったかアレンが頷いた。
ピサロと同じく人では預かり知れぬ知識に富んだ身、かつてどこかで聞いたアレフガルドの外に伝わる邪神


その情報を思い起こす。
破壊の力、そしてその裏の力。

「ハーゴンの肉体は、シドーとこの空間を繋いだ"門"だった」
「え?」
「マリア、奴をハーゴンと断ずる理由はなんだ」
「……奴はハーゴンがかつて犯した罪を記憶していました。それに……」

マリアは思い出す、あの広間でハーゴンにたった一人立ち向かったことを。
間近に感じた、あの邪気は。

「……あれは奴です、こんな言い方では不信でしょうが……私は、覚えています」
「誰よりも奴を知るお前の言葉なら、疑うべくもなかろうよ」

アレンがあっさりと言ってのけたことに、アレフは可笑しそうに上を向いた。
じろりと見るだけを抗議とし、そのまま続ける。

「ハーゴンの肉体を足場とし再び降臨したシドーは、完全なる復活を遂げる為―
 『破壊の宴』を実行した。血に塗れた魂と、強き肉体をどちらも手に入れる、それが目的で」
 バトル・ロワイアル

立てられた青白い人差し指が、自壊と復元を繰り返し徐々に何かを象りつつある肉体を示した。
よくよく見れば、周りの塵、瓦礫、果ては術の行使により満ちた魔力をも食らっている。
707名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:23:54 ID:5r+PLzyU0
708名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:23:59 ID:x9ZdBhE60
 
709名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:24:44 ID:OFe/BtBW0
 
710名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:24:50 ID:VmmENYGL0
 
711不死身の敵に挑む19/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:25:39 ID:apxaYlbI0
「魂は"餌"、力を行使する為に贄が必要、だが勝者の肉体のほうは我々の反乱により可能性を捨てたか、
 必要ないと踏んだか……あれはハーゴンだった、と言ったな」

蠢く肉体が立ち上がる。
その姿が、元のハーゴンを無くしていく。
少しずつ、少しずつ。
破壊を伴い、質量は徐々に増大していく。

「破壊の神はハーゴンになりすまし信者を動かして儀式を行った。
 何、造作もないことだったろう。なにせ『破壊』は裏返せば『創造』だ」

アレンは言う、破壊神の真実を。
その力は表裏一体、壊さねば創ることもできないのだ。
時空を遡り、異世界へと介入し、狭き籠へ英傑、勇者、魔王等々を封じる。
神でなければ成せない奇跡を、『できない』という事実を『破壊』することで叶えたとでも言おうか。
ともかくシドーは、邪神とは言え神なのだ。
全てを超える強大な『力』を持っていた。

「そのうちに肉体に残った意志の残滓、ハーゴンの最期の思いを破壊の指針とし、
 我々が挑もうとしているのを知りつつ、それもまた佳しとした。
 ……というのは、どうかな」
「もっともらしいが、立証手段はあの様だ。だがその認識で構わない」

アレンのまとめをピサロは肯定する。
その間にも、異形はその形を増大していく。
全ての生者は、これを見れば戦慄するだろう。
相手は破壊神。
全てを壊す。

"概念""常識""法則""理屈"

果ては"勇気"を―

「……つまり、理屈が通じない相手だっていうのはよく解った……だが、な」
712名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:25:45 ID:VmmENYGL0
 
713名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:25:49 ID:5r+PLzyU0
714名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:26:28 ID:OFe/BtBW0
 
715名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:27:10 ID:VmmENYGL0
 
716名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:27:50 ID:VmmENYGL0
 
717名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:27:57 ID:x9ZdBhE60
 
718不死身の敵に挑む20/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:28:43 ID:apxaYlbI0


違う。

そんなはずは、ない。
彼らには譲れぬものがいくらでもある。
変わらぬ思いが、ここにある。

「俺たちのやることは変わらないさ」

破壊神にも、彼の勇気は揺るがせない。
誰かを愛する心は、壊せない。
未来を信じる、希望を滅ぼすことは叶わない。
一握りの心を砕くことは、できない。

「俺たちが砕けるか、奴が滅びるかだ」
「……それでいい」

勇者の決意に、最大の宿敵は大いに賛同した。
彼らのみでは無い、皆がその決意を同じくしていた。

「さあ、さっさと破壊神に本性を現してもらいましょうか!」
「おそらく奴は肉体を移し替えるプロセスを省略する為に、肉体を徐々に
 風化させつつ周囲の存在を取り込み、この空間で顕在できる肉体を
 ハーゴンを核として形成する……この反応は奴のこの空間での存在が
 希薄になればなるほど加速していくだろう」
「……つまりどういうことだ」

状況が状況だが一度にそんなに多くの単語を使われると理解が追いつけない。
言葉の濁流で脳を蹂躙されたように感じ、アレフは混乱した。
教鞭を振るう立場になったような気分がして、ピサロは珍しく粗野に頭を掻く。

「……今の奴は、言わば『第一形態』。シドーの本性、つまり『第二形態』にするには……」

ピサロは少々考えて、告げた。
誰にでも、それこそ子供にも解りやすいように。

「叩きのめす」
719名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:29:09 ID:VmmENYGL0
 
720名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:29:33 ID:OFe/BtBW0
 
721不死身の敵に挑む21/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:29:57 ID:apxaYlbI0


「おお」
「わかりやすいですね!」
「あ、あはは……」

アレフ、アリスが揃って手を叩いた。
やはり血の繋がりと言う奴は、とピサロは溜息を漏らす。
フォズまで苦笑し、二人の勇者は顔を見合わせた。
一同の緊張は、解れたようだ。
その証拠に、まだ、皆が笑い合える。

「……では、皆さん行きましょうか……コホン」

勿体ぶるかのように一つ咳払い。
勇者から、次の作戦が告げられた。

「"ガンガン行きましょう"!!」

一行は、力強く頷いた。




アレフ、アレンが疾風のように駆ける。
そこに、闇が飛んだ。
変形と崩壊を繰り返す破壊神の肉体は、大人しく攻撃を食らいはしないようだ。

「っ!」
「よっ……とぉ!」

暗黒の弾丸をアレンは身体を捻り、アレフは跳躍することで体よく回避。
竜王の持つ宝剣が腰だめに構えられた。

「ぬゥッ!!」

竜の刃が、横に一文字。
続く剣閃の主は、空に居た。

「でやあっ!!!」

王者の刃は、縦に一文字。
十字架のごとく切り裂かれ、分断された肉体が四散する。
じゅう、と音をあげ飛沫が飛び散り、撒き散らされる刺激臭。
肉体が収束、結合していく。
その速度はやはり徐々にではあるが速まっている。

「竜の吐息よ!!」
「この掌に宿れ……!」

させぬ、と二人が詠唱したのは奇しくも同じ呪文。
破壊と構築を繰り返す肉体を、閃熱が灼いた。

『ベギラマ!!』
722名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:30:06 ID:5r+PLzyU0
723名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:30:07 ID:VmmENYGL0
 
724名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:30:47 ID:VmmENYGL0
725不死身の敵に挑む22/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:31:32 ID:apxaYlbI0
放たれた閃光は表と裏から闇に炸裂する。
死体を焼いてもこうはいかないだろう、ひどい臭いが一気に拡散した。

「ぐぇっ、ひどいな……」
「……やはり倒しきることはできんようだな」

だが、恐るべき進化は止まらない。
周囲の全てを食らう力は強まるばかりである。
その毒牙は、ついに神殿の姿を構成する幻影に及びつつあった。
破壊神の周囲の景色だけが、まるで陽炎のように歪んでいる。
空間が途切れる、景色が引き千切られた。
そう、かつて最大規模のイオナズンがこの神殿で放たれた。
悪魔神官の反逆、そのときのように。
途切れた空間の隙間に詰まっていたのは、斑な色が広がる。
神すら手を差し伸べること叶わぬ、異空間であった。
彼らが虹の橋を創ったあの時、崩れ落ちる箱庭を取り囲んでいたのがこれだろう。
その中心で異形が見せるは、まるで世界を食らう化物のような成長。
肉体はさらに膨れ上がる。
大きさがベリアルを越え、アトラスの背丈に及ぶほどであった。
その巨塊の中心。
不意に、白銀が貫く。

「……雷ッ……」

ギリ、ギリと肉体から銀の輝きが伸びていく。
その正体はメタルキングの槍。
近衛兵エイトの渾身の突きは、続いている。

「……光ォ……!!」

肉体がメリメリと音を立てて軋む。
ふ、と音が一瞬収まったその次の瞬間。

「『一閃』突きッ!!!」

会心の一撃は、肉体を破砕しエイトに流星の勢いを与える。
宛ら弾丸のようにエイトの身体は飛び出し、肉体にトンネルを生みだした。
726名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:31:39 ID:OFe/BtBW0
 
727名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:32:00 ID:VmmENYGL0
728不死身の敵に挑む23/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:32:36 ID:apxaYlbI0

激しい声、と言っていいのだろうか、ともかく耳障りな悲鳴染みた音を闇の核から響かせる。
穴をどす黒い血肉が埋め尽くし、触手の如く闇の腕がエイトを取り囲む。

「ーーーーーーーーッ!!」
「くっ、ギラ!!」

周囲を取り囲まれ、エイトは咄嗟にギラの呪文で応戦する。
だが焼け石に水、相手には怯む様子は見られない。
退路を立たれたエイト、そこに後方から拘束の光が飛び込んだ。

「!?」

その光は闇を打ち消し、弾き、そして焼き千切る。
弧を描いて再びエイトの視界から消えたそれは、炎の秘石が輝く炎のブーメラン。
アリスの正確無比なピッチングから放たれた一撃はさながら火の鳥。
ブーメランは投擲者の手元にぴたりと張り付くように戻っていった。

「あなたの相手はこちらです!」
「すみませんアリスさん!!」

その隙を突き、エイトは素早く触腕の攻撃範囲から離脱する。
退路を守るかのように、三本の矢が立て続けに撃ち込まれた。
アリスが先程フォズから譲り受けた、ビッグボウガンの矢だ。
無くなった矢は先程のキラーマシンから回収してある。

「弓術の嗜みはありませんが、なんとかなるものですね!!」

胸を張りまったくその身に似合わぬ巨大なボウガンを掲げた。
本来大の男が全力で弦を引くべき武器なのだが、アリスにとってはなんということもないらしい。
食らった方はと言えば、一度身体をバラバラに分解することで突き刺さった太い矢は抜け落ちる。
その矢すらも取り込む闇が、何かに感づいた。
同じく極上の栄養となる魔力の集中を感じ取っている。
ピサロ、マリアの両名が一行の最後尾に控えていた。
その掌を、重ねて。
その照準は、歪みの中央。
マリアが詠唱する声が聞こえる。

「天の精霊、歌え断罪の聖歌……」
729名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:33:30 ID:5r+PLzyU0
730不死身の敵に挑む24/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:33:44 ID:apxaYlbI0
贄を求め、闇が蠢いた。
アレフが盾を構え、アレンは剣を十字に組み、立ちふさがる。
しかし彼らの眼前で肉体は爆散する。
虚を突かれ二人はすぐさま次の行動に移る間も無い。

「大地の精霊、奏でよ破壊の旋律」

ピサロの淀みない詠唱が響く。
止める気は無いようだ。
周囲に散開した闇の一粒一粒が、マリアとピサロの頭上で結合する。
今の分散でさらに周囲の景色はぼんやりと歪む。
移動した痕跡のように、削り食われた空間の残骸、異空間が広がっていた。
巨体も天井を貫かんばかりの大きさとなっている。
そしてもう一つ、変化があった。

「羽がッ!」

アレフは出来損ないの肉団子に翼が生え、空を飛ぶ光景を見た。
その翼がマリアの眼を見開かせる、心当たりがあるのだろう。
だが考える暇も無く、羽が動きを止めた。
破壊神も、物体が下に落ちるという法則は破壊しなかったようだ。
自由落下を始め、巨大な質量を以て二人の身体を押し潰さんと迫る。
真下の彼らの姿は、そのままだ。
動かずしてその場から、消えた。

「!?」
「「掲げられし王錫の下、王に成り代わり我らは命ず」」

王女と魔王による、合体詠唱。
二つの呪文を重ねることで、その威力は二倍、果ては二乗。
意識が同調すればするほど、際限なく高まっていくという。
闇は消えた詠唱者の居場所をどう探ったか、地面に叩きつけられたような姿勢のまま飛び上がる。
二人は祭壇に居た。
その姿は、まるで大神官の眼前にて祈るかのよう。
―その大神官、フォズには懐かしいダーマが頭をよぎる。
祭壇ごと食らうつもりか、上方から飛びかかる巨大な蝙蝠のような肉塊。
エイトとアリスがようやく駆けつけるがそこは祭壇、手を出すには階段を駆ける時間が足りない。
しかし、間に合った。
詠唱は完成される。

『落ちよ、万物を砕く精霊の槌!!』
「い、今です!!」

マリアから借り受け、ピサロに持たされた『引き寄せの杖』の力。
フォズのサポートがあってこそ、この詠唱は完成した。
二人が見せる、感謝の笑み。
それが大神官フォズの心を、共に戦う戦士たらしめる。
まるで祝福のように、爆光が祭壇に立つ三人をまるで太陽のように照らし出した。


『 イ オ ナ ズ ン !!』


重ねた掌が、輝いた。
731名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:33:48 ID:OFe/BtBW0
 
732名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:34:07 ID:VmmENYGL0
733名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:34:55 ID:VmmENYGL0
734不死身の敵に挑む25/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:34:59 ID:apxaYlbI0



―世界が、爆ぜた。
そこに人々が居たなら、こんな表現を後世に伝えるだろう。
それほど大規模に空間が揺らいだ。

「……なんて威力だ」
「やりおるわ」

アレンとアレフは、祭礼の間の一角だった場所にいた。
後方に入ってきた扉の残骸が、蝶番一つでぶら下がっている。
そして床が、壁が、異空間にふわふわと浮かぶ浮島。
そう表現するしかない場に立っていた。

「……ですが、これは……」
「始まりに、過ぎません」

エイトが、アリスが油断なく吹き飛んだ相手を警戒し見据える。
彼らは、祭壇と繋がる赤絨毯がまだ無事な浮島の床に立っている。
だが、四方どこにも壁が無い。
この空間に投げ出されれば、どうなってしまうのだろう。
及びもつかない恐怖だった。

バサッ。
バサッ、バサッ。

破滅が羽音を立てて、やってくる。

「……来る」
「あの時と……同じ……」
「……」

祭壇の上、ピサロは息を呑む。
マリアは眼を見開き、過去の戦いを回想した。
そしてフォズは、すっかり言葉をなくす。
神に仕える立場であるフォズ。
だが異教の神の恐ろしさに、少女は祈りを一瞬忘れた。
蝙蝠のような、巨大な羽。
その身をギラつかせる、鱗。
どこまで裂けているのか、どこまで深いのか、地割れを思わせる口。
どんな剣でも容易く餌食にできてしまいそうな、鋭い牙。
血を思わせる、深紅の輝きを放つ眼。
世界の断片が散らばる異空間。
彼らを見下す形で、破壊の神はそこに降臨した。

『グギャアアアアァァァァッ!!!』
735名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:35:03 ID:xq65Yqfr0
736名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:35:08 ID:5r+PLzyU0
737名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:36:19 ID:VmmENYGL0
738不死身の敵に挑む26/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:36:26 ID:apxaYlbI0
「……」

交わす言葉は無い。
ハーゴンの面影もまた、無い。
彼らの戦いの前には口上、賛辞、前置きなど何一つ存在しない。
なぜなら、目の前の存在は死を導く者。
死の先には、何も―無い。

「……行こう」

誰が誰とも無く、そう呟いた。
奇しくも虹色と同じ数、七つの力。
破壊神を滅せんと、矛先を一つにする。
彼らは、不死身の敵に挑む。




【???/世界の残骸/ゲーム終了・最終戦闘開始】






【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP9/10 MP微消費 左足に刺傷(完治) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす

【アリス@DQ3勇者】
[状態]:HP8/10 身体に絞跡 MP微消費 首輪なし
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 炎の盾 星降る腕輪 
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン 
    祈りの指輪(あと1.2回で破損) ビッグボウガン キラーマシンの矢×17
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る


【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP8/10 額から出血(治療済) MP微消費 首輪なし
[装備]:メタルキングの槍 布の服 マジックシールド はやてのリング
[道具]:支給品一式 イーグルダガー 無線インカム 
     84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意

【竜王@DQ1】
[状態]:HP8/10 MP微消費 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣 さざなみの剣
[道具]:外れた首輪(竜王) 魔封じの杖 破壊の鉄球
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪
739名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:36:42 ID:5r+PLzyU0
740名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:37:33 ID:VmmENYGL0
741不死身の敵に挑む27/27 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:37:34 ID:apxaYlbI0


【ピサロ@DQ4】
[状態]:HPほぼ全快 MP7/10 右腕使用不能 首輪なし
[装備]:鎖鎌 闇の衣 
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2]
     飛びつきの杖(2) アサシンダガー プラチナソード 奇跡の石
     ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)   
[思考]:破壊神の破壊
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
 また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
 完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。 


【フォズ@DQ7】
[状態]:HP健康(神秘のビキニの効果によって常時回復) MP9/10 首輪なし
[装備]:引き寄せの杖(1) 神秘のビキニ(ローブの下) 
[道具]:支給品一式  アルスのトカゲ(レオン) 天罰の杖
     神鳥の杖 祝福サギの杖[7] ドラゴンの悟り 
     あぶないビスチェ 脱いだ下着 
     太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)錬金釜 ラーの鏡 
     天馬の手綱(ファルシオン)
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる


【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP健康 MP微消費 首輪なし
[装備]:いかずちの杖 布の服 
[道具]:小さなメダル 聖なるナイフ 鉄の杖
    ルビスの守り(紋章完成)インテリ眼鏡 風のマント
[思考]:全てを終わらせる







【破壊神シドー@DQ2】
[状態]:HP??? MP??? 
[思考]:死導
742名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:37:36 ID:OFe/BtBW0
 
743名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:37:44 ID:5r+PLzyU0
744 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:42:33 ID:apxaYlbI0
投下完了いたしました。
再三見直したつもりですが、変な改行が入ってしまったのが数カ所あります。
申し訳ありません…
今年初の投下、支援してくれた方々ありがとうございます。
誤字脱字、また矛盾点などの指摘お待ちしています。
感想もお待ちしております、くれると今年一年頑張れる気がする。
いろいろな要素を詰め込んだ結果ハイスペックハーゴン&シドーになりました。
そのあたりが気になるお方がいらしたらすみません。
まあラスボスですので多少は目をおつぶりくださるとありがたく思います。
では支援してくださった方々、そして読んでくださった皆様ありがとうございました。
745 ◆I/xY3somzM :2011/01/07(金) 21:43:43 ID:apxaYlbI0
>>665
ピサロの一瞬だけ纏う闇は、その膨大な量の炎を全て受け止めたらしい。

ハーゴンが一瞬だけ纏う闇は、その膨大な量の炎を全て受け止めたらしい。
746名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:44:38 ID:x9ZdBhE60
乙乙!
とうとうラストバトルですな。感慨深い…
747名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:45:22 ID:5r+PLzyU0
投下乙でした
これからじっくり読ませていただきます
748名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:45:41 ID:xq65Yqfr0
投下乙!!支援乙!!みんな乙!!!

もう、もう、なんつうか、泣く…どんな運命が待っていても泣くぜ…
このパーティだいすきだああああ
749名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 21:46:30 ID:VmmENYGL0
投下乙!
きた! ついに来た! 最終決戦!
読みたい! もう続きがマジで読みたい!
タラタメて投下乙でした!
750名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/07(金) 22:18:40 ID:OFe/BtBW0
投下お疲れ様でした。

すごい。とにかくすごい。
序盤の絶望的な劣勢から、ピサロ達の合流、各々の闘う理由とその意志を抱え直していく様、
運命を分けあった二人の最強呪文。いろんなものが昇華していった気がする。
いろいろ思い悩み合った「生存者」7人が、一つの「パーティー」になった瞬間が見えた。
ロトの天然ぶりに呆れるピサロの図はもはや様式美で、そういうのも良い。

スローペースになって数年経って、新作が投下される度に、
「ここまできた」「終わりに近づいてきた」と感じてきたけど、今日はそれが一段と深かった。
非常に良かった。GJです。
751名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 07:28:08 ID:odUgkRGq0
今さらだけど、シドー=死導ってなんだかな
破壊の宴と書いてバトル・ロワイアルと読むとか
すげーいい流れだと思うけど、そのあたりの単語でちょっと失笑してしまう
752名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 12:06:06 ID:f81W/7QD0
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1294453193/
上のロワ語りの日程が変わったので間違えて書き込まないように気をつけよう

>>751
マジックバリア臭を感じるかもな、DQ的スメルがしないって意味で
まあ破壊の宴のほうはモンスターバトルロードで出てたの見たよ
753名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 12:31:09 ID:odUgkRGq0
>>752
いやーDQ的かどうかっつーより、当て字が無理やりくさい。シドーはシドーでええやろと。
破壊の宴も、バトル・ロワイアルも別に構わんけど(もともとバトロワだし)
それならそれで破壊の宴は破壊の宴と読みやがれと。
だって、ゾーマを「造魔」(魔物を作り出す者)
デスピサロを「死悲鎖郎」(悲劇に縛られた死を生み出す男)て言うようなもんだろう?
754名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 12:52:46 ID:OUUAiLqC0
そんな個人的な違和感じゃ修正や破棄の要因にはならないよ
別に修正とか求めるわけじゃなくてただ難癖付けたいだけって言うんだったら不毛だからもう黙っとけ
755名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 12:57:19 ID:vu8KOV550
>>753
初めから読めばわかる、元々こういうノリだった
756名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 13:01:40 ID:odUgkRGq0
>>754
いや、別に修正や破棄は求めてない。流れはすごくいいと最初に書いた
感想って、手放しで誉めてGJって言わんとダメってわけでもないだろ?
これくらいは言わせておくれよ
757名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 13:18:26 ID:0pCp3IYR0
チラシの裏にでも書いとけ
批評家気取りウザい
758名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 16:01:04 ID:lETfTiXh0
書いてもらってんのに文句いうやつって•••
759名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 19:12:04 ID:hZ1ogDck0
投下乙です!
749さんと同意見!
続きが気になる!

けど、書き手の方は忙しい中、作品を投下してくれている
だから無理をしない程度に頑張って欲しい

本当に投下乙でした!
760名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 19:35:23 ID:Xtlsmux/0
投下おつかれさま!
761名前が無い@ただの名無しのようだ:2011/01/08(土) 20:32:23 ID:zRSQRbP30
グギャアアアアァァァァッ!!!って確か9でのシドーのセリフだよな、芸が細かいw
762名前が無い@ただの名無しのようだ
新作GJでした!
シドーの描写が不気味で気持ち悪くて、これぞラスボスという感じ
マリアとピサロのイオナズン相乗詠唱(フォズ支援)とか
アリスの蒼雷とアレンの白雷が絡み合ってハーゴンに迫る様とか
絵になって目に浮かぶようで非常に格好良かった!GJ!