女勇者(戦勇商僧)
男僧侶 「せっかく私たちが縁結びしたのに、全く進展が無いですね」
男戦士 「相変らず楽しそうに稽古をつけてやってるだけだな。未だに手が触れただけで頬を赤らめる始末だぜ」
女商人 「二人ともシャイなのね。わかるわかる」
男戦士 「俺とお前は告白から肉体関係まで数時間だったよな」
女商人 「きゃーっ! 二人きりの会話じゃないのよ!」
男僧侶 「かなり前からお互いが気になっていたように見えましたが……」
男戦士 「ふむ、最初はからかい甲斐のある妹のように思ってたな。けど、だんだん違うと思えてきたんだ」
女商人 「え……それって何時頃から?」
男戦士 「何時だったかなあ。身体に引かれたわけじゃない事は確かだぜ。身体なら某不健全設定の女戦士みたいなのが好みだ」
男僧侶 「でも、今は好みが変わったんですよね?」
男戦士 「別に小さい胸や尻が好きになったわけじゃないぞ。俺は、コイツそのものが好きになったんだ」
女商人 「……うふっ♪」
男僧侶 「おやおや、オアツイ事で……」
女勇者 「二人が行方不明?」
男僧侶 「そうなんですよ。二人で特殊な鋼の材料を探しに行ったんですが、帰ってこないんです」
兵長 「お二人で捜索しにいくのですね? おい、お前」
新兵 「はっ! なんでしょうか」
兵長 「ローラ先生だけでは前衛に不安がある。お前も付いていくのだ」
女勇者 「えっ……でも」
兵長 「心配はご無用。死を賭してもお役に立ちましょうぞ」
新兵 「はいっ! 必ずやローラ先生のお役に立ってみせます!」
女勇者 「あんまり張り切られても……困るなあ」
男僧侶 「死なない程度に頑張って下さいね。兵士さん」
女勇者 「……大丈夫? 回復呪文かける?」
新兵 「いえ、先生。私に構わず、MPを保存してください」
女勇者 「正直、僧侶までいなくなるとは思わなかったわね」
新兵 「先生の技を実戦で見る事ができて、私は幸せです」
女勇者 「ありがとう。でも、剣や魔法で褒められても嬉しくないんだ」
新兵 「え……」
女勇者 「ボクの身の上話……興味ある?」
男僧侶 「私は、a地点ではぐれたフリ、、戦士はb地点で行き倒れのフリ、僧侶はc地点で泣いてる迷子のフリ……なるほど」
男戦士 「今は勇者の様子を窺ってるが、終わったら先回りしてそれぞれの役割に戻るんだぞ」
女商人 「泣いてる迷子のフリ……アンタ、またアタシをいじる癖がでてきたわね」
男戦士 「今夜も徹底的にいじってやるから、ガマンしろ」
女商人 「だから、シモネタは二人きりの時だけにしてってば」
女勇者 「……というわけ。父さんを尊敬してるし、血筋に求められる役割も分かるけど、自ら望んだわけではないんだ」
新兵 「そうだったのですか……それで一人称や言葉遣いが……
女勇者 「男の子みたいでしょう? でも、女の子らしい言葉遣いをしようとするとぎこちなくなるからね。直すのあきらめた」
新兵 「先生、もしかして先生は、自分に女性としての魅力が無いと考えておられるのですか」
女勇者 「……うん」
新兵 「そんな事は決してありません! 失礼します!」
女勇者 「え? ……あ、ちょっと……んっ……」
新兵 「いきなり、唇を奪い、失礼いたしました! 気分を害されたならば、私をお斬り捨て下さい!」
女勇者 「……びっくりした。 でも、どうして?」
新兵 「私のいきなりの行為に対して、瞳に浮かんだ戸惑いと驚きの色! 抱き寄せれば男とは明確に違う細く
壊れそうな身体! 熱く、そして儚げな吐息! 夢にまで見た濡れた小さくやわらかい唇!
私にとっては、この世の全ての女性の中で、一番魅力的な人です!」
女勇者 「え…………」
新兵 「一目見たときから、私の胸は高鳴り、その剣の腕の冴え、美しい声で淀みなく唱えられる高等呪文の数々、
そして、しなやかな身のこなしと、さわやかな汗! 先生の魅力を高めこそあれ、何一つ、マイナスになどなっていません! 」
女勇者 「ん…………クスン」
新兵 「はっ!? 先生、泣いておられるのですか! 生意気な事を言ってすみません! 今、自決してお詫びに変えたく・・・・!!」
女勇者 「……自決!? ま、まって! 違うの、違うのよ!」
新兵 「いきなり先生の唇を奪ったばかりか、先生のお気持ちを考えずに思いのたけをぶちまけました!なんとお詫びしてよろしいか!」
女勇者 「そうじゃないの! ボクを女と見てくれて嬉しいのっ!」
新兵 「え?」
女勇者 「ありがとう……」
新兵 「わっ、先生に抱きつかれた……ドキドキ」
女勇者 「もう少し、このままでいさせて……」
新兵 「わ、わかりました! しかし、心臓が今にも爆発しそうであります!」
女勇者 「本当だ……ドキドキしてる」
男戦士 「キスだけで次に進みそうも無いが……一応は大成功かな?」
女商人 「こっちまで身もだえするほど恥ずかしいわ! きゃーっ!」
男僧侶 「いいですねえ。思わず私も還俗を考えるほどでしたよ」
男戦士 「さて、バレないうちに、所定の位置にそれぞれ向かおうぜ……あっ」
男僧侶 「戦士がガラクタを蹴飛ばしたせいで、洞窟内で大音響が鳴り響いてしまいました」
女商人 「もう、このバカは……」
女勇者 「だ、誰っ!? ……って、みんな!? どうしてこんな近くにいるの!?」
男僧侶 「いやー、これには色々と……」
新兵 「さっきの、恥ずかしい会話……全て聞かれてしまった……とか?」
男戦士 「そりゃもう、最初から最後までバッチリさ……あ、勇者?」
男僧侶 「勇者がうつむいて肩を震わせてますよ……泣いてるわけではないようですが……」
女商人 「あいかわらず、バカ……」
女勇者 「わーん! みんな嫌いだーっ!!!!!」