デスピサロは同情の余地なき悪党 第六章

このエントリーをはてなブックマークに追加
87名前が無い@ただの名無しのようだ
プレイヤーキャラは1人だが主人公は勇者とピサロの2人。
成し遂げようとした事の根底にはよく似た感情があった。
勇者が焼け野原となった村を見たときに感じた言いようのない虚しさと悲しさ、そして、平和と、愛する人を奪った者たちに対する怒り……。
きっと彼は、ロザリーを失ったピサロの行いに、自分と同じものを少なからず感じていたはず。
有無なく勇者として運命付けられた主人公と有無なく魔界を束ねるものとして生まれたピサロ……境遇もよく似ている。
どちらかが生まれていなければ、どちらかもまた、生まれる、いや「創り出される」ことはなかったはず。
つまり、
『勇者』という存在を大きなものにしたのがピサロ自身の行いであったのと同じように『デスピサロ』という存在を創りだしたのは勇者となった主人公自身の行いだった。
ピサロが村を滅ぼさなければ『勇者』として旅をすることを決意しなかった。
同じように『勇者』という存在がなければ村が滅ぼされる事はなかったかもしれないし、さらにその存在が強大なものにならなければ、ピサロがエビルプリーストにけしかけられ、真の『デスピサロ』となる事も、回避できた。
たとえ2人の戦いが不可避であっても、自我を失い制御不能となったデスピサロと相対してしまうという最悪の事態は免れて、戦いの果てに少しでも相互理解が生まれたかもしれないのに……と思うと切なくなる。
冒険が終わり『勇者』としての任務を終えた主人公がなぜ天空人になることなく、ひとり、滅びた村へ帰ろうと思ったのか。
それはきっと『勇者』という存在が犯した罪の重さを彼自身がよく分かっていたから……勇者の名を捨て一個人として、あの村で悲しみを背負って「生きつづける」ことが、自らの罪滅ぼしだと思っていたからではないだろうか。