もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。
・DQ世界であれば宿屋でなくても、すでに書かれているDQシリーズでも、大歓迎です。
・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります。
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/ まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html 避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi
代行依頼あったので立てますたぜ
3 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 03:00:57 ID:QD9Hpnu00
4 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 03:01:28 ID:QD9Hpnu00
>>1 乙
つまんないかもしれんがSSを初めて書いてみようかと思う
〜なんだか心地よい声が聞こえてきた。まるで聖母がぼくに語りかけてきているようだった。
まあ、怪物になったりしたけれど、人をなるべく殺さずぼくは村を後にした。夢であろうが、ぼくは無血主義、言いかえれば喧嘩なんかとは無縁の男なのだ。
ああ、目が覚める。夢が覚める感覚がする。また平和な現実が待っているんだ。
女「おはようゆきひろ。今日から旅が始まるのね…。わたしのかわいいゆきひろ、さあ起きて」
ぼく「ゆきひろ?」
女「さあ、王様が待っているわよ。ごはんをたべて顔を洗ったら、出かけるのよ、ゆきひろ」
ぼく「う、うん…」
ぼくはまだ夢の中にいるらしい。ためしに自分の顔を殴ってみたのだけど、空間にみょうな文章がでた。
『ゆきひろは1のダメージをうけた。』
痛い…。もしかして夢ではないのかもしれない。
ぼくは、目を覚ました。つまりいままでが長い眠りの中だったのだろうか…。
まあいい、とにかくベッドから起きなきゃはじまらない。
窓を見ると朝日がまぶしく、やさしく祝福してくれたような光だった。
ぼくは目玉焼きにかりかりに焼いたパンという、天空の城ラピュタのパズーが食べていたような朝食を食べて城にいくことにした。もうラピュタも見れないのだろうか。そういえばデスノートの映画の後編をまだみていない…。気になっていた。
まさかこんな世界にこようとはだれが思っただろう。
街の誰もがぼくが勇者であると力一杯話しかけてくる。
ところで、ぼくの名前はゆきひろだったのだろうか。もう前の日に見た夢を忘れてしまうように、大切なものがすこしずつ失われていく。…まだ忘れてはいない、ぼくの本当の名前は、うん覚えている。
そして王の前にぼくはきた。
しけた金を手に入れ、なにやら強そうな得体のしれない怪物を倒せなどとほざいている。
これだけの兵力をもつおまえが倒しにいけという話ではないか。
この世界は平和で、争いとは無縁にみえたのに、なにがあるのだろう。
すこし、好奇心がかきたてられてきた。よしルイーダの酒場とやらにいってみるか!
>>5さん
新規参入めでたや! 続き楽しみです。
わたくしも今回から新規参入で、同じくDQ3がベースです。
お互いに完結を目指して頑張っていきましょう!
>>6 タカハシ様及び諸事情ご存じのみなさま
前スレではいろいろお騒がせしました。
それでは投下させていただきます。
【Stage.1 エスケープ】
----------------- Side-T -----------------
そりゃ確かに、現実を忘れたいって気持ちがあったことは認めるよ。
もう何年前になるのか、ドラクエなんかにハマってた幼少時は、僕も平和な毎日を送っていた。
あの頃が急に懐かしくなって、衝動的に本体ごと押し入れから引っ張り出して、裏ボス直前の
冒険の書を再開したのが昨日の夜中。
夜更かしなんて滅多にしないんだけど、人間たまには精神的に「避難」したい時ってあるでしょ。
でもあくまでゲームってのは、一時的な心の休憩時間に過ぎないものだと、僕は思う。
それで活力を養って、また明日から厳しい現実に立ち向かっていくわけですよ。
よく「異世界に行ければ」なんてアホな夢語るヤツがいるけど、別に僕はそういうの
あんまり興味ない。
なんというか、人選ミスだと思います。
僕みたいに、それなりに生活こなしてる人間じゃなくてさ。こういうのは、もっとこう、
救いようのないヒッキーなヲタとかが適任だと思うわけ。
【ダメダメな主人公が異世界で困難に立ち向かい、成長する感動物語!】
ほら、その方がサマになるって、絶対。
――なんてことをダラダラ考えながら寝てるフリを続ける僕を、こちらの世界の
お母さんは、優しく優しーく揺すって起こそうとしている。
「まったく、こんな大切な日だっていうのに寝起きが悪いのは、あの人に似たのね」
むしろ嬉しそうな声。「頼もしい」という解釈なんだね。ポジティブな親だ。
今日は僕の16歳の誕生日。
勇者オルテガの息子である僕が、魔王バラモス討伐のために旅立つ、大切な日。
FC版はないけど、SFC版は4回もクリアしてますから、よーく存じ上あげている流れだ。
そうか、最初からなのか。神竜まで行ってたのになんてこった。
っていうかこれでDQ3何本目だ? そろそろ読者様もお腹いっぱいなんじゃないのか?
ここで無視ブッちぎって投下するこの作者はもうアホかと、バカかと、小一時間問い詰め(ry
「――おはよう、母さん」
腹をくくって身体を起こす。こうなったら仕方ない、やることやってさっさと戻ろう。
切り替えの早いヤツが生き残るもんだって、死んだ曾祖父の口癖だったし。リアル戦争
体験者の言葉には重みがある。
「ようやくお目覚めね、私のかわいい勇者さん」
DQ版お母さんは(美人だ。しかも若い)ふんわり笑って、僕の頭をクシャッとなぜた。
「さ、早く支度してちょうだい。王様にご挨拶、しないとね」
笑顔が少し切ない。そりゃそうだろうな。一人息子で、愛する夫の忘れ形見を、死地に
送り出すんだから。
初プレイ当時、マセガキだった僕はこの時点でそういう裏事情を想像して、実はかなり
根の暗いゲームなんじゃないか?とか思ってたっけ。
嫌な裏付け取れちゃったな。
まだ寝ぼけている演技で、勝手のわからない「支度」を手伝ってもらう。
それなりに整ったところで、パンと野菜ジュース(ナゼ青汁?習慣?)で軽い朝食を取り、僕と
DQ版お母さんは城に向かった。
ゲームでは一人で王に謁見するはずだったが、ここはDQ版お母さんがついてきた。
案内がなければ一発で迷いそうな立派な城だったけど、そこにおわします王様はなかなか
気さくな人で、僕やDQ版お母さんとも親しげに話してくれた。
ゲームでは出てこない雑談をカットすると、ここも記憶にあるシナリオとそう違いはない。
激励を受け、いくらかのお金とアイテムをもらい、ルイーダの酒場で仲間を連れて行くよう
助言を与えられて、退室。
途中、知り合いらしい兵士に「例のアレ、頼みますね」とかなんとか言われてヒヤッとした。
どう見ても年下の僕に敬語だから、友人未満の間柄と推測。曖昧な返事でやり過ごす。
城の前でDQ版お母さんと別れた。
別れ際にギュウっと抱きしめられてドギマギした。母親に抱きしめられるなんて、もう何年も
無い経験だ。こっちのお母さんはずいぶん感情表現がストレートだな。ちょっと羨ましいかも。
さて……そろそろかかってくる頃か。
一人になった僕は、近くの建物の裏側に回り、周囲に人がいないことを確かめてから、
ポケットから携帯を取り出した。
ベッドの中にいた時から、ずっと隠し持っていたものだ。
案の定、取り出した途端、マナーモードにしていた携帯が震えた。
『どうだ、俺のおふくろ。なかなかイイ女だろう?』
開口一番それですか。まさか勇者がマザコンとは思わなかったよ。
僕はため息をこらえつつ、昨日の対話の内容を確認した。
「で? ナビはしてくれるって約束だよね」
僕の言葉に、彼は「まあなー」と面倒そうに答える。
『でもこっちもドッキドキの異世界生活だしぃ? んなヒマねえかも』
「ふざけるな。だいたい僕は本気で承知したわけじゃないんだぞっ」
思わず怒鳴った僕に、彼は――勇者アルスは、くっくと嫌な笑いをもらした。
『でもお前、言ったじゃねえか。“代われるものなら代わりたい”――ってさ。
だから俺は、お前の願いをかなえてやったんだぜ?」
「悪魔か君は……」
初めて会話したときは、そりゃもう立派な勇者様って感じで、僕も思わず彼の話に
引き込まれてしまったものだけど。
だからつい、こんなアホな話に乗ってしまったんだけども。
ダーマ神殿にはきっと「詐欺師」という裏職業が存在するんだ。そうに違いない。
支援しましょう
「君がサポートについてくれなきゃ、とてもじゃないけどクリアなんて不可能だよ?」
『大丈夫大丈夫。パラレルじゃ「じょしこーせー」だって元気に冒険してるし』
「やめーい!」
投下寸前で3&ケータイが偉大な先輩様と被ってたと思い出したけどそのまま投下したなんて言えません。
『4回もクリアしてんだからナビなんざいらねえんじゃねえの?』
「あのね、自分の母親の名前すら知らないのに、どうしろっていうんだよ」
多少の知識はインストールされるかと期待してたのに、僕は本当に僕のままだった。
さっきの兵士だって、もしかしたら過去にアルスの命を救った恩人かもしれないが、僕には
さっぱりだ。
人間関係の話だけじゃない。
ブーツひとつ履くのにも苦労した。麻製の布地は少しゴワゴワしてて、これも慣れるまで
かかりそうだ。
四次元ポケットみたいな「ふくろ」は、とりあえず入れるだけでいいみたいなんで、王様から
もらったアイテムを担いで歩く必要はなくて助かったけど。
たとえば、いずれ数万単位で持ち運ぶことになるはずのゴールドとか、どうやって管理するんだ?
どんな体感ゲームでも味わえないリアリティ。
うわっつらのシナリオを知ってるだけでどうにかなるほど、この世界は安っぽい作りじゃない。
目覚めから数時間たっただけで、僕はそれを痛感している。
『大丈夫大丈夫。中には言葉も通じなくて困ってるのもいたじゃん。お前恵まれてる方』
「やめーい!」
だから他の先輩様の作品を引き合いに出すなますます被ってる印象になるじゃないか。
「じゃなくて。とにかくナビ。ゲームと実際に携わるのとじゃ、勝手が違いすぎる」
僕が辛抱強く繰り返すと、彼は電話の向こうで『へいへい』と投げやりに返事をした。
>>6 がんばって書くので続きもぜひ読んでください
>>7 しかし大変な作業ですなあ
お互いがんばろう
夕方また投下予定
>>1 スレ立て乙です
色々と新作が投下されてますね
ぜひ最後まで書き続けてほしいです
『わーったよ。んで、これからルイーダか?』
「そうだよ、君のオススメは?」
ゲーム上では数値しか見えない相手だったけど、これから生死をともにする仲間だ。
実際の選択基準には、もっと細かい要素があって当然だろう。
『そーだなー。宿屋の娘でエリスってのが、魔法使い登録してるはずだ』
「人の話は聞こうよ。友達とかは避けて欲しいんだって言ってるだろ」
僕は君の交友関係を知らないんだってば。
舌打ちしそうになったのをなんとかこらえた僕に、バカ勇者は追い打ちをかけた。
『安心しろ。友達じゃなくて元カノだ。こないだ捨てたんだよな。
でも魔法の才能はホンモノだから、連れてって損はねーぞ、うん』
うおおおおい、そんなの押しつけるなー!
『というわけで、今日のヒントはここまでー。じゃあ頑張ってね。ばいばい』
「ええ? 切るなよオイっ……って……ちょっと……」
――ただいまおかけになった番号は、
電波の届かないところにおられるか、電源が――
あのバカ電源まで切りやがった!
その後なんどリダイアルしても、あの無情な音声案内が流れるのみで。
失敗した。あそこでうかつに「はい」なんて選ばなきゃ良かった。
どう考えてもあの人、僕を身代わりにする気マンマンだ。
これは、あれだな。
ゲームキャラの現実逃避に、プレイヤーが付き合わされた――ってことですかね。
----------------- Side-A -----------------
うるさくなりそうなんで、俺はさっさと通話を打ち切り、携帯の電源をオフにした。
どうせヤツのことだ、たとえクリア経験が無かったとしても、それなりにこなせるだろう。
よっぽどヤバイときはナビしてやるが、基本的にはほっとくつもりでいる。
いい加減、あの世界とはしばらく関わりたくない。
「ようやく“こっち”に来れたんだし……さ」
ゴチャゴチャした狭い部屋。
窓の外を眺めれば、この部屋以上にゴチャついた街並みが、どこまでも広がっている。
いつもいつも、夢で見ていた通りだ。
魔王も魔物もいない平和な世界。勇者なんか、まったくもって不要。
それどころか魔法も必要ない。あんな疲れるもんなくったって、100円ライターで
火は着くし、金さえあれば電車だのバスだの飛行機だの、夢みたいな乗り物でどこまで
だっていける。
ホント、死ぬ気でラーミア蘇らせてんの、バカみてー。
そもそも、無理に移動する必要もほとんどない。
狭い一地域で、狭い人間関係の中で、毎日決まり切ったことをテキトーにこなしてれば
いいだけなんて、ここはパラダイスですか。
室内に目を戻す。付けっぱなしのテレビの画面では、ヤツが丁度ルイーダの酒場に入る
ところだった。ドット絵の二頭身キャラクターが、恐る恐るといった感じで歩いている。
さっき試してみたが、こちらからのコントロールは一切受け付けない。そういう設定なのか、
「俺」だからなのかはわからないが、手を出せないというのはつまらん。
しかも、今はまだお互いに移行が完了していないから、もしデータがブッ飛んだり、ヤツが
あっちで死んだりすると、俺も一緒に消えるらしい。
そうでなければ、とっくの昔に本体ごと叩き壊しているところだ。
「ま、せいぜい頑張って、お前も神竜を倒すことだな」
そして俺と同じ願いを叶えてもらうこと。
【もし目が覚めたら そこが現実世界の一室だったら】
血を吐くような思いで神竜に願った瞬間。
渡されたのは、小さな精密機械。
遠く離れた個人と個人を一瞬でつないでしまう、魔法のような道具。
開いた途端にコールが始まり、出た相手は、夢の中のあの少年で――。
「初めまして、タツミ君。キミ、勇者をやってみる気はないかい?」
考えるより先に、言葉が出ていた。
「さてと――まずは“コンビニ”でも行ってみるか」
口慣れない単語をわざと声に出してみる。それだけでちょっと楽しい。
ヤツも言っていたが、確かに、夢で見ているのと実際に携わるとではだいぶ違う。
こっちは少し、空気が悪いかな。
さーて、あんまりのんびりしてもいられない。
ヤツが戻ってくるまでに、なんとか完全に入れ替わる方法を見つけないとな――。
部屋を出る。
剣も魔法もない奇跡のような世界での、記念の第一歩だ。
本日はここまでです。
ヤバイ、マジで面白い・・・。
お願いですので最後まで読まさせてください。
と、大絶賛したものの触発されて書きたくなってきたのでちょっと考えてみます。
>>20 すごいおもしろいです。新しい発想ですね!
緊張しますがよろしくお願いします。
〜序章〜
昨日は散々しごかれたな・・・。
あのくそ女容赦なく切りつけてきやがって!模擬刀っつったって重量あるんだからいてーし変な所に食ったら死ぬっつーの!
?「お・・・さ・・・。」
だいたい師範代だかなんだか知らねーが偉そうにご託並べやがって・・・。
?「おきゃ・・ま・。」
クソッ!いつかボコボコに負かして犯してやる!
?「お客様、起きてください」
・・・うるせえ、誰だ?
?「お客様、もうチェックアウトの時間ですよ」
人が気持ちよく寝てんのに誰だ?意味わかんねー事言いやがって、ここは俺の家だろ?
?「いい加減起きてくださいよ!何時だと思ってるんですか?」
俺「うるせえーーーーーー!!」
安眠を阻害され半分キレながら飛び起きる。
?「うひぃぃぃぃーーーーーー!」
俺「??・・・お前・・・、誰だ?」
目の前には真ん丸の体に真ん丸の顔、その顔を引きつらせながら転がるボールみたいなおっさんがいた。
店主「あービックリした、誰だ?じゃないですよここの店主です。もうチェックアウトの時間ですよ?とっとと出ていってください」
俺「あ?何わけわかんねー事言ってんだ?ここは俺の家だろ、オメーが出ていけよ」
店主「あなたこそ何を意味がわからない事を・・・。ここは私の宿です、さあ!さっさと出ていってください!早くしないと憲兵を呼びますよ?」
俺「憲兵だぁ?なんだそりゃ?警察みたいなもんか?」
店主「さあ!早く!さあ!さあ!!」
俺「わかった、わかった」
真ん丸親父の勢いに押され何も理解できないままとりあえず部屋から出る、振り向くと親父は俺の事を睨みつけながら後ろを歩いてついてきてカウンターらしき場所に入っていく・・・。
『いっぱいいっぱいだな、ちったー痩せろよ。』
親父は台帳に何かを書き込み、俺の顔を見て咳払いを一つ。
店主「ゴホン、おはようございます旅の人、昨夜は良く眠れましたか?」
俺「目覚めは最悪だったがな」
店主「そんな事は聞いてません。では、マタイラシテクダサイ」
唸るほどの棒読みだ、清々しくもある・・・。
しかし一体どういう事なのだろうか?夢でも見てんのか?それともアヘンでも吸っちまったか?
『昨日はあのくそ女にボコボコにされて、気絶して・・・。』
沸々と怒りがこみあげてきた。
『クソッ!まあいい、で、恐らくは兄弟子が部屋まで運んでくれたはずだ』
そう、俺は自分の部屋で寝ていたはずだ!だが目が覚めて現れたのは真ん丸親父・・・。
『あのくそ女の新しい亭主か?奴はデブ専だからな。だがあのおっさんは自分の宿と言っていたな・・・。』
やはり考えれば考えるほど事態が飲み込めない。『とにかくここから出よう、まずはそこからだ!』
なんとなく振り返ると真ん丸親父が満面の作り笑いでこちらに向かって手を振っていた。
叩き斬ってやろうかと思ったが、いきなり人を斬るなんて俺の武士道に反する。こみあげる怒りを抑え、眼前の薄汚い扉を開けた。
「・・・、参ったなこりゃ・・・。」
前回までのあらすじ
>>5 ルイーダの酒場にきた。
どうも場違いな気がしてきたが、ここをおとずれないことには冒険などはじまらないだろう。
説明好きな老人に話しかけられ、職業のことやこの酒場のことを教わった。
バラモスというモンスターによりこの世界は闇におおわれてしまうことも。
数百、数千、数万、数千万のモンスターを従える魔王バラモス。
その魔力は絶大。ふきかける息すら恐ろしい武器になる、ということだ。
はっきりいって勝てそうにはない。あの王様はたかが50Gでどうしろというんだ。
とにかく仲間が3人集まったので、冒険に出ることにする。
母にしばしの別れをつげて。
男勇者 ゆきひろ レベル1
女武闘家 エリー レベル1
男戦士 サイモン レベル1
女僧侶 ナナ レベル1
前回までのあらすじ
>>5>>27 ぼく「次の街か村はどっちだろう」
アリアハンをでて早くも問題が発生していた。
男戦士「おれに聞かれてもな。いや、酒飲んでばかりで旅なんてしたことがねえからな。まいった…」
女武闘家「…あきれた。ふつうは情報収集してから慎重に慎重をかさねて冒険していくものよ」
ぼく「しょうがないアリアハンで聞いてこよう」
女武闘家「北にレーベという村があるわ」
男戦士「知ってたのか。まあいい、日が暮れないうちにさっさといこうぜ」
僧侶はというと、ぼんやりとぼくらを見ていた。おっとりした性格の持ち主らしい。
戦士はいまのところよく分からないが、武闘家はしっかり者といった性格だろう。
ぼく「じゃあ、あんまり離れずゆっくりと村に向かおう。後ろからモンスターに襲われないように気をつけてね」
女武闘家「そうね。じゃあ、いきましょう」
男戦士「了解、勇者様」
女僧侶「勇者様とわれらに神のご加護を」
ぼく「ぼくらはパーティーだ。最後まで戦いぬこう。世界の平和のために!」
そういえば新学期が始まるのは今日からだった…。
なんか新人職人がいっぱい来てていい感じなんだな
「みんながんばれ」
前回までのあらすじ
>>5>>27-28 ぼくは前の世界ではふつうの高校生だったはずだった。
それが運悪く、理由もわからずにいつものように起きたらこんな世界にきていたのだ。
一昔前のマンガじゃあるまいしあってはならないことだ。
いまは勇者になったんだ。戦いもしらないぼくが…。
広いフィールドがおそろしかった。
なんどかモンスターに襲われた。村まではまだかかるというのに、みんな疲労しきっていた。ぼくは剣もふるえずただたっていた。
女武闘家「ちょっと、勇者なんでしょ!?戦いなさいよ!」
モンスターの群れにでくわした。…もう…駄目だ。
男戦士「ナナ回復してくれ」
女僧侶「魔法力がもう…ないんです…」
もう終わりなのだろうか。
まだ会ったばかりで何もしらない母だけど、またアリアハンに帰りたい。あの人の姿が目にうかんだ。実の母のようにあたたかかった笑顔にあいたい。
戦士のサイモンが、僧侶のナナをかばって深手をおった。
武闘家のエリーだってもう戦えるHPなんか残ってやしない。
この3人が戦うのは、なんのためなんだ。…そうだ仲間のため、みんなのために明日のために、戦うんだ!
ぼく「モンスターたちよ来い!勇者が相手になってやる」
戦えるんだ!体だって動いている!
女武闘家「は、はやい」
ぼく「はあああああっ!」
一撃二撃。のこりあと2匹倒せば戦いが終わる。
これで最後だ!
男戦士「すげえ…、すげえじゃんか、ゆきひろ!」
ぼく「サイモン、大丈夫か」
女僧侶「ごめんなさい…私…足手まといになって…」
ちがう…。弱いのはぼくだ。
女武闘家「あんたはタフそうだから大丈夫よね」
男戦士「ちぇ。あ、ナナ大丈夫だから心配するなよ。…ほら。あれ、あそこ村か?」
レーベの村がみえた。
質問
ここって1レス何文字まで書きこむことが出来ますか?
32行
なので推敲が必要
ありがとうノシ
35 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/03(火) 12:49:47 ID:r2qgeq7d0
>>32 行数以外にも制約があるから気をつけて。
1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
1回の書き込み行数上限:32行
1行の最大文字数 :255文字
(名前欄の文字数上限24文字)
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31 レーベはおだやかな村だった。
アリアハンとくらべるならちょっと田舎な村といえるかもしれない。だいぶ日が暮れてきていた。
男戦士「じゃあゆきひろ、宿屋とってくるからな」
ぼく「ああ、それよりサイモン、体は大丈夫?」
男戦士「さっきの胸の一撃なら大丈夫さ。この鎧のしたにくさりかたびらを装備しててな。はは」
さっさといってしまった。つき合いやすいヤツなんだ。
エリーは池のほとりで休んでいる。ナナはというと神父となにやら話している。お互い干渉しあわない性格がそろったパーティーなのかもしれない。初期のパーティーってこんなものなのかな。
あたりが暗くなって、村の人々も家へと帰っていく。
そういえばまだ冒険1日目だった…。なんて長い1日だろう…。
もといた世界に帰れるほしょうなんかどこにもないにもかかわらず、魔王バラモスを倒せればなんとか戻れるような気もうっすらしている。
男戦士「宿屋いこうぜ。あと2人もつれてきな」
ぼく「ああ、わかったよ」
冒険の初日は終わった。明日から本格的な旅がはじまるんだ。
まっていろ、魔王、バラモス!
けど、なんでこんなにいやな雲行きなんだろう…。
>>30 がんば、まとめという大役を果たしながらの投下は大変だと思うが、がんば。
ギャグとシリアスの配分って難しいよね
自分は5:5くらいがちょうどいいと思ってるけど
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31>>36 ぼくたちはというと、嵐のために村から出れない状況にあった。冒険2日目の朝。
宿屋の店主「この時期にはよくあることなんだが、なんだかいつもより激しいみたいだね。なにもできないがゆっくりしていってくれ」
ぼく「はい」
宿泊費もばかにできない。かといってすることもない。なるようにしかならない。
男戦士「この嵐がなきゃおれたちも故郷に帰れたんだがな。ナナとは幼なじみでね。船での旅の途中にアリアハンによったんだ。
数日間滞在していたがこの嵐で、のってきた船が沈んじまったのさ。もう一年にもなる。すっかりくさっていたが、あんたと旅ができることになるとはわからないもんだな…」
ぼく「へえ…」
男戦士「昔語りをするにはこういう日しかない、嵐ってのはふあんにもなるが不思議とおちつくんだ。おれはな」
すこし年上のサイモンがひどく大人にみえた。
ぼくはオルテガの息子、世界の希望…。違うんだ、本当はただの高校生にすぎない。でもいえない。いまはまだ…。
男戦士「別室の女たちはなにやってんだろうねぇ。ちょっとみにいくか?」
ぼく「ああ、そうだね」
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31>>36>>39 ぼく「いま、だいじょうぶ?」
ドアをノックしたら、エリーがどうぞと声をかけてきた。
男戦士「おいおい、ひまそうだな。ナナは聖書、おまえはなにをやってたんだ?」
女武闘家「べつになにも。こんな日になにをしろっていうのかしら」
そういわれれば、もっともだ。
男戦士「腕立てふせでもやってりゃあいいじゃないか。腕をなまらせるのは関心できんな」
ぼく「こっちもひまだから何か話さないかなと思ってきたんだ」
ぼくらの後ろから宿屋の店主がきた。朝ごはんの用意ができたらしい。
しかし会話があまりないな。
食事の時間がこんなにしずかでいいのだろうか。
ぼく「エリーってアリアハン出身なの?」
女武闘家「ええそうよ、あなたと同じよね」
いっておくが、エリーとは昨日今日の面識しかない。
女武闘家「いつか世界のために役立ちたいと思ってこの武闘家の道をえらんだの。オルテガ様についていきたくても幼かったから無理で、でも修業を続けてきたわ。あなたとはあまり話せなかったわね、同じ街で生まれたのに」
エリーとぼくは同い年くらいだから、17歳くらいだろう。
男戦士「どうして、ゆきひろと話さなかったんだ?興味なかったか」
女武闘家「話したいとは思ってたけれど、勇者になることを決められてた人よ。でもこうして今は話してるんだからいいじゃない」
ぼく「ぼくはふつうだよ。ふつうに接してくれてよかったんだ」
女武闘家「そう…ね」
オルテガという人は偉大だったんだ。
どんな人だったんだろうか。
2日間の嵐だったがさり、いよいよ冒険の再開となる。
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40 岬の洞窟からナジミの塔へきた。レーベの村に来てから一週間ほどたっている。
レベルもそこそこ上がってきているだろう。モンスターの強さからなかなか上にすすめずにいたので装備品なども買いそろえ、やくそうの準備もバッチリだ。
男戦士「まったくいやになるな。女性方はだいじょうぶなのか」
女武闘家「なめないでね、あんたよりは体力、しっかりしてるつもり」
女僧侶「ちょっとやすみたいですね」
ぼく「もうすこしのぼってみないか?休めるところがあるかもしれないし、さ」
自分の言葉どおり、階段をのぼっていくうちに休める宿屋があった。
ぼく「塔に宿屋があるなんてかわってるな…」
塔の宿屋の店主「ひさしぶりの客だよ!高いけど泊まっていくかい?」
男戦士「ありがたいね。そうするよ」
女武闘家「一部屋だけね、えっちなことかんがえないでよね」
ぼく「はいはい」
男戦士「おまえのぺったんこの胸なんかみない」
女武闘家「あんたみたの?」
女僧侶「だいじょうぶですよ、泊まりましょう」
シャワーもなしか…。エリーとナナにはつらいだろう。
男戦士「さっさと休んでさきにいこうぜ。バラモスはまってはくれないんだ。こうしてる間にもモンスターたちの各地への侵略はすすんでんだぜ。なっ、勇者ゆきひろ」
ぼく「そうだね…。すぐに休んで進もう」
ひさしぶりのベッド。たまる疲労。すぐにみんな寝てしまった。アリアハンの母は元気だろうか。
前回
>>8-19 【Stage.2 ラムと偽牛乳】
----------------- Game-Side -----------------
勇者アルスのナビが当てにできないので、僕はさっさとこの世界に慣れることに決めた。
まずは素直にルイーダの酒場に行ってみる。いつか映画で見たような中世ヨーロッパ風
の薄暗い店内で、3人の男がジョッキを片手に騒いでいる。その男達の他に客の姿はない。
なんだかガラの悪い連中で、あまり近づきたくない雰囲気だ。仕事が無いのか、夜からの
仕事なのか、どちらにしても昼間から飲んだくれてる人間にまともなヤツはいなさそうだ。
どっちの世界も一緒だな。
奥のカウンターで、ハデな化粧のお姉さんがこっちを見てニヤニヤしていた。
優雅にキセルをふかしている様は、なかなか堂に入ったものだ。そんじょそこらのアラ
クレじゃあ太刀打ちできないしたたかさがにじみ出ている。彼女がルイーダさんかな?
「いらっしゃいよ。話は聞いてるわ」
チョイチョイと人差し指を手前に倒す。一応僕が噂の勇者様だから遠慮したみたいだが、
そうでなければ、きっと最後に「坊や」とか入っていただろう。
彼女のセリフで僕の存在に気付いた飲んだくれ達が、人を小馬鹿にするような笑みを浮
かべた。僕がカウンターに着くなり、3人の酔っぱらいは当然のように僕を取りかこむ。
そのうちの1人が馴れ馴れしく肩に腕を回してきて、酒臭い息を吹きかけた。
「勇者様ぁ、今日が旅立ちでしたっけぇ? こちらにはお仲間を探しにぃ?」
わかりきってることをわざと聞いている感じだ。
「でもせっかく酒場に来たんだし、勇者様も景気付けに一杯飲んでいかねえかい?」
「もちろんここは、勇者様のおごりでな!」
3人目の言葉と同時に、全員が爆笑。
勇者だからって、誰もが諸手を挙げて万歳三唱ってわけでもないんだな。
まさかいきなりカラまれるとは思わなかった。
出だしから騒動を起こすのもなんだし、ここはヘタに逆らわない方がいいかな……。
「バカ言ってんじゃないよ。勇者様にタカったなんて知れたら、しょっぴかれるわよ」
ルイーダさんが僕と肩を組んでいた(というかもはや羽交い締め状態だった)男の腕を、
キセルでパンっと叩いた。中の粉が飛んで、2、3度咳こんでしまう。
それを見て、またもやみんな爆笑。
「いやいや勇者様、もちろんおごれってのは冗談ッスよ?」
「緊張してるみたいだからほぐしてやろうと思っただけだって。なぁ?」
ふーむ。こんなのに構ってるヒマないんだけどなぁ。
「だっけど勇者様もよぉ、酒場に来たんなら礼儀として、一杯くらいは飲んでいかな……」
ガシャン!
いきなり大きな音が店内に響いた。やいのやいの騒いでいた男達がピタリと黙る。
カウンターにはゴールドの山。王様からもらったお金を、僕が全額ぶちまけたのだ。
「いいよ、飲もう。でもこれじゃ足りないと思うから、ここは飲み比べといかない?」
「ちょっと、無茶すんじゃないよ、坊や!」
ルイーダさんの顔がこわばった。意外といい人だったり? いや、勇者に悪さをしたら
捕まるぞ、みたいなこと言ってたから、そっちが心配なのか。
もう遅いけど。
「ここは酒場でしょ、ルイーダさん。お客に酒を出せないの?」
「うおっしゃ、よく言った勇者様!」
「大丈夫大丈夫、これくらいありゃあ、多少アシが出るくらいだぜ!」
「この剣とかも売れば釣りが来るしな!」
男達が再び大騒ぎしだしたのを横目に、僕は最初の一杯を注文した。
「……マジかよ、強すぎだろ……」
最後の1人が口元を押さえて表に飛び出していったのを、先にダウンした男が見送りつ
つ、呆然とつぶやいた。
そいつの足下には、もう1人の男がいびきをかいて寝ている。
しんと静まりかえった店内に、僕がくるくると揺らしているグラスの、カランと氷が
ぶつかる音だけが響く。
「いやぁ、おじさんたちが先にだいぶ飲んでたからだよ」
僕は残りのロックを一気にあおった。
「あ、あんた、大丈夫なの?」
ルイーダさんがカウンター越しに手を伸ばして、僕の頬に触れる。
その手をやんわりと遠ざけて、代わりに空になったグラスを手渡した。
「もちろん大丈夫じゃないよ。さすがに、ちょっと酔ったかも」
ラムなんて強いお酒で勝負しちゃったしね。
「っぷ……くくくく……アハハハハハ!」
と、ルイーダさんは突然ゲラゲラ笑い出した。さっきまでの妙にシナを作った笑い方じゃ
なくて、ちょっと中年オバサンが入ってる品のない笑い方だ。
「参ったねぇ。お高く止まった優等生だとばっかり思ってたけど」
「へえ、そんな風に思われてたんだ」
アルスってば、こっちでも性格悪いって思われてるのかよ。ダメじゃんあの勇者。
「意地悪してごめんよ。仲間を探すんだろ? こっから選んでちょうだい」
ルイーダさんはボンっと厚い冊子を投げてよこした。
開いてみると、1人1ページずつ、似顔絵付きで人物紹介がされている。
これが例の名簿か。
「うわー……」
こっちの世界の文字が普通の日本語として認識できるのはありがたいんだけど。
パラパラとめくってみて、僕はガックリきた。
どこまでいっても「Lv.1」ばかりだ。
いやゲームではそうなんだけど、実際問題、こんな履歴書で本気で雇われたいと思っ
てんのか。ナメてないか?
「――そう言えば、あの人は12だったな」
城で声をかけてきた「例のアレ頼みますね」の兵士のことを思い出す。
あの時はろくに話もしなかったけど、彼の胸には城の外門の紋章と同じ形をしたプレー
トが付けられていて、それには「Lv.12」と書いてあったんだよね。
う〜、いるところにはいるんだよな。連れ出せるなら、あの人がいいんだけど。
まあだけど、載ってないのも当たり前か。
とりあえず最後まで目を通した僕は、使い物にならない名簿をカウンターに投げ出した。
「いい加減にしてよルイーダさん、これ全部じゃないでしょ? 何で隠すのさ」
少し間があった。――それからニヤリと笑うルイーダさん。
「ふふん、勇者の方から言ってきたなら、違反にゃならないからねぇ」
とか言いながら、奥の階段から2階に上がっていく。
すぐに戻ってきた彼女は、僕が今持っているのと同じ冊子を持ってきた。
ただし、こちらの表紙には大きく「特選」と書いてある。
「本当はこっちも見せるべきなんだけど、王様に止められててさ」
開いてみると、なるほど、特選と銘打ってるだけあってトップページから「Lv.10」だ。
「勇者の指名は断れない、って決まりを先に出しちまったもんだからさ。優秀な人材を引っ
張って行かれるとマズイから、こっちの名簿は見せるなって言われてたんだよ」
ルイーダさんはあっけらかんと真相を語る。
おいおい王様、人の良さそうな顔して、それはひどくないか?
特選の名簿には、あの兵士さんも載っていた。サミエルさん。うそ! 22歳? 意外と
若かったんだなー。てっきり30代半ばくらいかと思ってた。
「ああ、サミエルね。ずいぶんあんたについて行きたがってたわよ?」
ルイーダさんが思い出したように笑顔をこぼす。登録時は相当意気込んでいたようだ。
ということは「例のアレ」ってのは、旅仲間に指名してくれってことだったのかな。
その2ページ後で、僕はようやく、目当ての彼女を見つけることができた。
<エリス/魔法使い/女/16歳 「Lv.14」>
アルスの言っていた魔法使いの女の子。
さっきの名簿に彼女が載っていなかったからこそ、別冊があると思ったんだ。嫌がらせで
元カノを勧めてきたのに、その子が架空の人間というのもおかしいからね。
それにしてもLv.14とは。
「じゃあまず、このエリスさんを指名するね」
「あら、別れたんじゃなかったの?」
ルイーダさんが訝しげに尋ねる。さすが酒場のママ、他人の色恋話には詳しいようだ。
「うん、ヨリを戻したくなって」
面倒だから適当に答えておく。僕の淡白な対応に、ルイーダさんも簡単に流してくれた。
「あとはコレを持って本人を迎えに行ってね」と3人分の契約書を渡される。
「Lv.10」以上ともなると、別の場所で働いている人も多いから、雇い主が迎えに行く
のが習慣らしい。ようやく酒場を出られるな。
「全員お城勤めだから楽でいいわよ。じゃあ頑張ってね♪」
ルイーダさんは、すっかり僕に気を許した風だ。
だから僕は最後に、気になっていたことを聞いてみた。
「ねえルイーダさん。もし僕が特選名簿のことに気付かなかったら――
Lv.1のヒヨッコどもを押しつけて、世界を救えと言うつもりだったの?」
今度は、少しの間もなく。彼女は笑顔のまま答えた。
「当然でしょ。どうせあんた、ルビス様の加護がついてんだから簡単に生き返るし」
――――了解。
わざわざ入り口まで見送りに来てくれた彼女を、僕は二度と振り返らなかった。
店を出ると、外はすでに日が傾いていた。うわ、けっこう長くいたんだなー。
でも携帯の時計の方は、まだ正午を少し過ぎたあたりだ。ゲーム内の時間と現実時間の
相対比率を考えて、僕は少し気持ちが楽になった。
始めからレベルの高い仲間を得ることに成功したし、この分なら、探せばまだまだ
ショートカットできるところはありそうだ。うん、思ったより早く戻れるかもしれない。
さて。
城に向かう前に、僕は裏路地の井戸に立ち寄った。運良く誰も使ってなかったので、桶に
水を汲んで、路に沿って掘られている側溝まで持って行く。
側溝にかかっている踏み板を外して、僕はその場に膝をついた。
「ゲホッ…うぇっ……ゲホゴホ!」
さすがに限界だった。いくらなんでも飲み過ぎだ。量で勝負の安酒なんて、悪酔いするに
決まってる。
でも気分は悪くなかった。
あの根性のねじくれた大人達が、呆気に取られている様子は見ものだった。
まったく――16歳の少年に、いい大人が揃いも揃ってとんでもない大儀を押しつけといて、
よくも「お高くとまった優等生」なんて言えたもんだ。ふざけんな。
だからアルスだって嫌になるんだよ。
でも……現実も、同じようなもんなんだけどね。
手酌で口の中をゆすぎながら、携帯越しに聞いた彼のはしゃいだ声を思い出して、僕は少し、
心が苦しくなった。
----------------- Real-Side -----------------
上着をはおって部屋を出ると、リビングのテーブルにヤツの母親が伏せっていた。
「……いまごろ起きてきたの?」
顔も上げず、かすれ気味の声で非難してくる。
そういう自分も昼寝してたんじゃねえのかよ?と突っ込みたかったが、まあ初日はおと
なしくしておこう。
「ちょっと出かけてくるよ」
普通に声をかけておく。彼女がなにか言っていたが、俺は無視して靴を履き玄関を出た。
マンションの廊下に出て、エレベーターで1階へ。こういう仕掛けは向こうにもあった
から、大した珍しくもない。
だが一歩外に出ると、俺は視界一面にあふれている意味不明な記号群に圧倒された。
「止まれ」とか言葉が書かれているものはわかるんだが、絵だけの表札はハッキリ言っ
てさっぱりわからん。あの青い親子連れはなんだ。人さらい注意?
もっとも、徒歩の場合は自動車にさえ注意すれば、移動はそれほど難しくないはずだ。
信号はわかる。何度か夢に見た。赤はNG、青はOK、インパスと一緒だな。
住宅街の一角に、目の前の住人の日照権を完全に無視した形で立っているデッカイ茶色
の建物がヤツの住居だ。入り口を出てすぐ裏側に回る。こっち側からはマンションのベラ
ンダが見えて、4階の一番右端に今出てきた部屋がある。
迷子にならないように、この景観を頭にたたき込む。通学路だから、ヤツを通してしょっ
ちゅう見ていた景色なんだが、やっぱり現実に目にすると感覚が違う。
ここで暮らすからには、こうやって一つ一つ確実に自分の物にしていかないとな。
ここからコンビニまではそんなに遠くない。マンションの裏手にある小さな公園を横切り、
狭い路地裏を200メートル(単位は俺の世界と同じ。アレフガルドは違ってたけど)も歩く
と、青い看板が見えてきた。
ところで、このコンビニの看板はなぜミルクタンクのマークなんだろう。
気になるじゃないか。
実は俺、牛乳が大好きだ。
だがイイ女ほど冷たいのと一緒で、あの白磁色の甘い液体は、俺の腹に入った瞬間に
暴れ出す。飲んだ端からすーぐゴロゴロきちまうんだよな。
だから俺の朝食はいつでも野菜ジュースだ。おふくろは蜂蜜を入れたり、あれこれ
工夫して飲みやすくしてくれてはいたが、やはり牛乳の魅力には敵わない。
さて、こっちではどうだろう。
俺はワクワクしながら、縁起の良いマークのコンビニに入った。
それにしてもスゲエ品揃えだ。こんな狭い敷地内に、いったい何千点のアイテムがあ
るんだか。アリアハンで年に一度開かれる大百貨市でも、店の規模はともかく、これほ
どの種類は集まらないだろう。
さっそく愛しの牛乳ちゃんが並んでいる場所を目指す。
もちろんこんな大事な部分はちゃんと予習済みだ。こっちの牛乳は、紙の箱に入って
冷やされてるんだよな? 壁際の方から冷気が漂ってくるから、あっちかね。
そう言えばレーベの発明ジジイが、低温の食料貯蔵庫を作るとかってはりきってたな。
エサをやることを条件にスライムつむりにヒャドらせてたら、気がついたら食料みん
な食い逃げされたとか。こっちの「冷蔵庫」を見せたら、どう思うだろ。
「あったあった♪ えーと、メグ…ミル…?」
赤いパッケージのは他のと比べてちょっと高い。せっかくだからこれにしよう。
ただ、さすがに1リットルのを買っても飲みきれないから、俺は同じデザインの一番
小さい紙箱、じゃない紙パック(だっけか?)を手に取った。
と――同じ段の左側に並んでいる、緑色の細長い紙パックが目に入った。
「まめちち?」
“乳”とつくからには、これも牛乳の仲間だろうか。しかし、「まめちち」って。
エリスに言ったら泣くだろうなー。いや、俺は大きさも大事だが形も大事だと思……コホン。
「違うな。TO…NYU……とうにゅう、か」
とうにゅう。とうにゅう。不思議な響きだ。
俺はついでにソレも買うことにした。勇者たる者、つねにチャレンジ精神を忘れてはな
らない。他にも数点、ツルツルした袋に入った軽い食い物を選ぶ。スナックとかいうやつ。
持ちきれなくなってきたので、俺は精算することにした。金はレジで、だよな?
青いシマシマ服を着た姉ちゃんが、カウンターの向こうで、しきりにこっちを気にして
いた。俺は別に変な行動は取ってないはず。他に客もいないからヒマしてるのか、
「それとも――顔がいいからかな〜?」
一応ゲームキャラですから。まあ美少年と呼んで差し支えはないでしょう。
とはいえ、俺のプレイヤーが俺にそっくりだっつーのは、ちょっとシャクに障るが。
そんなことより問題はあれだ。どうやって牛乳を飲めばいいか。これ開け方わかんねーぞ。
商品を店員の前に並べつつ、俺はさらに頭を回転させた。
よし! ここは――
「すみません。それ飲んで帰りたいんで、そういう風にしてもらえます?」
つらっと頼んでみる。店員は怪しむこともなく、牛乳の箱の横に張り付いていた小さな棒を、
箱の上部にプツッと突き刺した。あ、なーる。そうやるのね。
「638円になります。会員カードはお持ちですか?」
カイーンカード。わからん単語は飛ばすに限る。「ありません」。こまかい貨幣計算はまだ
不慣れなので、俺はヤツの財布から紙幣を一枚抜き出し、渡して様子を見た。足りたようだ。
「ところでお客様」
釣りを受け取って立ち去りかけた瞬間、姉ちゃんが声をかけてきた。
「そのぉ……」言いにくそうな姉ちゃんは、「ズボンのファスナーが……」と視線をそらす。
「あ、どうも」
そうか、ここが開いていたのか。確か、こっちでは恥ずかしいことなんだよなー。あはは。
……って向こうでも恥ですから! うわー、これで歩いてたのかよ俺!!
やっぱ緊張してんのかな。
買い物を終え、俺は店から少し離れたところで立ち止まった。
コンビニの袋を片手に、もう一方の手には言わずもがな、牛乳のパックを持っている。
これがビン入りだったら腰に手を当て、斜め45度に向かって仁王立ちで飲みたいとこ
ろだが、そこまで望むのは贅沢というものだろう。いよいよ念願の現実牛乳だ。
いざ、リアルミルクターイム!
チュウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーー………………ぷはぁ!
「…………」
「……………………」
「……………………………………マズイ?」
なんだろう。妙に水っぽくないか? いやこんなもんだっけか? 向こうでも久しく
飲んでないから、味を忘れてるんだろうか。でもなんか違うような気がする。あれ〜?
しかも腹のあたりで嫌〜な感触がしている。まだ大丈夫だがこれ以上はヤバイ、という
警告らしきものが、胃の腑のあたりで沸々している。
こんな微妙なもんで腹を壊すのも嫌だ。ちょっともったいない気もしたが、俺は残りを
適当な排水溝に捨てて、空の紙パックをコンビニの袋に入れた。
「楽しみが一つ減っちまったなぁ……」
まあ仕方ない。牛乳だけが人生じゃないさ。
「いいもん。牛乳だけが人生じゃないもん 。・゚・(ノД`)・゚・。」
俺は公園のベンチに座り、しばらくシクシク泣いていた。本当はめっさショックでした。
しかし勇者は決して希望を捨てないものだ。俺はコンビニの袋をあさり、謎の「まめちち」
を取り出す。俺はこいつに賭けるぜ!
「でも一応、成分表を見てからだな。……うむ。牛乳は入ってないのか」
乳が入ってないのに乳とはこれいかに。
店員がやっていたように、俺はパックの横についていた細い筒を頂部に突き刺した。
どれどれ……?
----------------- Game-Side -----------------
アリアハン城で3人分の仲間の契約を終えた頃には、すっかり夜も遅くなっていた。
僕が指名した3人の仲間は、宮仕えの中ではレベルこそまだ中の下くらいらしいが、
どの人も将来を有望視されているエリートで、王様には散々嫌味を言われた。
だーから、世界を救う勇者に人材の出し惜しみをするなっつーの。
「疲れた〜」
夜中に帰ってきたにもかかわらず、DQ版お母さんは優しく迎え入れてくれた上に、
夕食も用意すると言ってくれて、すごく嬉しかったんだけど。
とてもご飯なんか食べる気力もなくて、僕は二階の自室に戻るなり、ろくに着替えも
しないで、そのままベッドに倒れ込んだ。
明日からはいよいよ本格的に冒険が始まるのだが、そんな興奮も押し寄せる眠気の前
には消し飛んで……
プルルルルルル! プルルルルルル!
「うはぁ!」
いきなり鳴り響いた甲高い電子音に、僕は心臓が止まりそうになった。
反射的に携帯を手にとって確かめると「ARS」と出ている。
え……アルス? 向こうからかけてくるなんて、もしかしてなんかあったのか?
「どうしたのアルス!? まさか事故にでも遭っ――」
『聞けよタツミー! すげえぞコレ! ウマイってもんじゃねえの! まめちち最高!』
ぎぃやああ!! ふ、二日酔いの頭にガンガン響くぅぅ!
「はぁ? な、なんだってぇ?」
『だから、まめちち? いやトウニュウ? これマジウマー!』
こらこらこらこら、ちょっと待て。
「うるさいよ! なんだよもー! 何時だと思ってんだよ!」
『あん? 午後3時22分だが、どうかしたか』
「こっちはもう夜中だ! 時差を考えろ!」
『時差ぁ? 知るかよ。それより、まめちち!』
「ワケわかんないっつーの!」
『いいから聞いてくれよ〜! でなきゃこの感動を、俺は誰に伝えればいいんだ!
だって牛乳じゃないんだぞ? 腹ゴロゴロいわねーんだぞ? なのにマッタリとして
コクがあって、それでいて動物性タンパク質にある独特の脂っぽさが無いこの上品な
テイスト! 作ったヤツはもはや ネ申 だぜ! なあ!?』
……なんだか知らんが、すっかり現実世界を謳歌していらっしゃるらしい勇者様。
この様子なら当分はなにも心配なさそうですね。
『しかも、このハバネロってのがまた辛いけどサックリ感が――ッピ』
通話を切って、今度はこっちから電源をオフにする。
さらに輪をかけてグッタリ疲れた僕は、
「カンベンシテヨモウ……zzz」
次の瞬間には、意識を失っていた。
本日はここまでです。
区切りがわかりづらいので
----- Side-T ----- → ----- Game-Side -----
----- Side-A ----- → ----- Real-Side -----
に変更しました。
>>26から続き
見渡す限りの緑が目に痛い。
『参ったな、全く見覚えが無い場所だ・・・。』
思わずその場にへたりこむ、頭を抱えパニックになりそうな頭を懸命に整理しようとする。
『ここはどこだ?全く想像つかんな・・・、そもそも俺は城の稽古場で剣術の修練をしていたはずだ・・・。』
何をどう考えてもこの場所にいると言う事実を説明出来ない、男はまた考えだした。
『もう一度最初から思い出そう、城の稽古場であのくそ女と模擬刀で打ち合っていた・・・。で、あの馬鹿力で叩きのめされて・・・。』
男の脳裏に不吉な考えが浮かび上がる・・・。
『ま、まさか・・・、俺は死んだのか?奴に殺されたのか??なんてこった・・・。』
『いや、俺がそんなやわな男である筈がない。きっと夢か何かだろう。』
『とりあえず腹が減ったな、それに酒も飲みたい』
男は立ち上がり先程の宿屋に入っていった。
俺「親父!酒だ!あとなにか肴も持ってこい!!」
店主「貴方は何を考えているのですか?ここは宿屋であって酒場ではありませんよ!」
俺「酒と食い物くらいあるだろ、なんか持ってこい」
店主「ここにはお客様に出す食事しかありません、貴方が泊まると言うなら食事くらい出しますが・・・。」
俺「いや、眠くはないから泊まる気は無い」
店主「でしょうねぇ・・・。ならば町に行ってみてはどうですか?」
俺「何!町があるのか!?」
店主「この宿から東に半日ほど進んだ所にかなり賑わった町がありますよ」
俺「そうか!そこに行けば美味い酒と食い物もありそうだな!うむ、親父!世話になった!」
店主「気を付けてくださいね」
意気洋々と店を飛び出した男、彼の足ならば半日とかからないだろう。
途中獣の気配を感じたが特に出くわす事もなく、半日とかからずに町に到着した・・・。
〜アリアハン〜
『ずいぶんデカイ町だな、城下町か・・・。』
入口すぐ左手に酒場を発見、「ルイーダの酒場」
『ルイーダの酒場ねぇ・・・。まあ酒だ酒!』
ルイーダ「ハーイ、いらっしゃい」
俺「おう、ねえちゃん酒だ酒をくれ。」
ルイーダ「お酒を出すのもいいけどさ、あんた先に登録書を出すもんじゃ無いかい?」
俺「登録書?なんだそりゃ?」
ルイーダ「あんた大丈夫かい?冒険者の登録書だよ。何年も前から世界中でやってんのに」
俺「聞いたこともないな、ここでできんのか?」
ルイーダ「あんた本当に大丈夫かい?相当な田舎者なんだね。このご時世にここまで何にも知らない男がいたとはね・・・。」
俺「なんでもいいからとっとと登録ってやつをしてくれ!」
ルイーダ「はいはい、わかってるわよ。で、あんた名前は?」
俺「カイエンだ」
ルイーダ「カ・イ・エ・ンっと、珍しい名前だね。で、職業はなんだい?」
カイエン「侍だ」
ルイーダ「侍?なんだいそりゃ、どんな事をやるんだい?」
カイエン「侍とは、弱きを助け、悪を斬る者だ。行動ももちろんそうだが志もたk」
ルイーダ「騎士みたいなもんだね、はいはい・・・。」
カイエン「騎士とはなんだ?俺は侍だ!」
ルイーダ「あーはいはい・・・。ハイッ登録終了よ。」
カイエン「むぅ・・・。」ルイーダ「これが、登録書よ。」
カイエン「うむ・・・。」
ルイーダ「それにしてもあんたずいぶん変わった剣を持っているのねぇ・・・。ちょっと見せてごらんよ」
カイエン「やめろ馬鹿女!武士の魂に気安く触るな!!」
ルイーダ「馬鹿女ですって!そんな事言うならお酒も食べ物も出さないし登録も抹消するわよ!?」
カイエン「ぬう・・・。食べ物をくれないのは困る、ここに来てから何も食ってないのだ・・・。だが刀は触らせん!これだけはダメだ!!」
ルイーダ「そう・・・、まあいいわ。ちょっと待ってなさい今何か持ってきてあげる。」
カイエン「すまんな」
そう言ってルイーダはカウンターの奥に入って行った。
『しかし・・・、ずいぶん変だな、夕方の酒場なのに誰もいない。それに壁一面似顔絵にわけのわからん説明文』
おもむろに一枚剥がしとってみる。
『なになに?エリス17歳ピチピチの魔法使いで〜す(はぁと)レベルは1だから魔法はまだまだだけど、恋の魔法はレベル99よん(はぁと)・・・、なんだこりゃ?』
ルイーダ「お待たせ、ってダメよ勝手にとっちゃ〜。」
カイエン「ねえちゃん、こりゃなんだ?」
ルイーダ「ル・イー・ダよ!それはね、勇者様に対する冒険付き添いの嘆願書よ」
カイエン「勇者?嘆願書?」
ルイーダ「あきれた、あんた本当になんにも知らないのね。テドンにでも住んでたのかしら?」
カイエン「??」
ルイーダ「はぁ・・・、説明してあげるわ。」
カイエン「頼む。」
ルイーダ「最近この世界に自ら魔王と名乗る奴が現れたのよ、で、その魔王討伐の為に各国の王様達が共同で作ったのが世界勇者連盟なの。」
カイエン「ほうほう。」
ルイーダ「各国の王様に勇者と認定された人達はこの酒場みたいに冒険者登録所で仲間を募って旅に出る。その付き添い嘆願書がそこに貼ってあるのよ。」
カイエン「ほー、でもさっきのエリスとやらは使い物になるとは思えんな、それに文章の書き方も間違ってる、はっきり言ってアホだ。」
ルイーダ「それが悩みの種なのよー!勇者様と一緒に旅をするってのは大変な事なのよ?魔王に対抗するって事は世界中の魔物に喧嘩を売るようなもんよ。」
カイエン「そりゃそうだ。」
ルイーダ「それだけ大変な旅をするんだから見返りも凄いのよ、金品の受け渡しは原則禁じられてるんだけど世界中どこへでも顔パスで行けるしどこへ行っても超VIP待遇だしね。認定された勇者の中にも表向きだけ魔王討伐を装って裏でいろいろやってるのも多いのよ。」
カイエン「ふーん」
ルイーダ「付き添い志望の中にもそんな甘い汁を吸いたいって輩が出てくるってわけ。」
カイエン「なるほどねぇ・・・。」
ルイーダ「そうそう、あんたも嘆願書作る?」
カイエン「カ・イ・エ・ンだ、俺は別に興味ない。」
ルイーダ「いいじゃない、作るだけでも・・・、ねっ?」
カイエン「なんか気持悪いな、まあいいだろう。」
ルイーダ「うふっ、じゃあまずはレベルからね・・・。ちょっと目を瞑って。」
カイエン「む?こうか?」
ルイーダ「そう、それで何も考えないで心を開いて・・・。」
カイエン「・・・。」
ルイーダ「いくわよ?・・・。」
ルイーダは紙とペンを手元に置き、カイエンの頭に手をかざし何か呪文らしきものを唱えはじめた・・・。
ルイーダ「我、識別の神ディルナと経験の神ソロンの名において汝の全てをここに記す・・・。」
カイエン『おおっ!なんか暖かい・・・。』
ルイーダ「・・・ふう。」
カイエン「終わったのか?」
ルイーダ「ええ、もう終りよ。」
カイエン「で、どうなんだ?」
ルイーダ「どれどれ・・・えっ!!」
カイエン「なんだ、どうした?」
ルイーダ「レベル78・・・あんたムチャクチャね。」
カイエン「それは凄いのか?」
ルイーダ「凄いも何も、レベルだけならあんた世界一よ。」
カイエン「何?」
ルイーダ「他のステータスも信じられない程高いわ、HP8000とか・・・、あんた人間?」
カイエン「失礼な事言うな!」
ルイーダ「あんた一人でも魔王を倒せそうね。」
カイエン「そうか、そんなに俺は強かったのか・・・。」
『ピンポンパンポーン』
カイエン「なんだ?」
ルイーダ「来た・・・あの女だ・・・!って事はあんたまさか!!」
ルイーダと二人で酒場を飛び出す、街の住人皆が空を眺めている方を見ると空に女性が映し出されていた。
?『はぁ〜い、皆元気してるぅ〜?皆のアイドルルビスちゃんでぇ〜す!』
カイエン「なんだこの頭の悪そうな女は・・・。」
ルイーダ「創造主ルビス、神よ。」
カイエン「神だと!?」
ルビス『今日はねぇ〜、新しい異世界人が来たから皆に紹介するねぇ〜。』
ルビス『カイエンちゃんって言ってぇ〜なんとレベルが78もあるのよぉ〜!すっご〜い。』
カイエン「ちょっと待て、異世界人ってなんだーーーーー!!」
ルビス『カイエンちゃんはぁ〜、えふえふって世界から来てもらったの。だからこの世界とは強さの桁がぜんぜん違うの。』
ルビス『カイエンちゃんがその気になると魔王ちゃんなんて一撃なんだよぉ〜。』
ルビス『でもねでもね、それだと魔王ちゃんが可哀想だしぃ〜、だ・か・ら、カイエンちゃんはルビスの魔法で弱くしちゃうの、えいっ!』
空に映し出された女がそう言った瞬間!
カイエンの体を光が包みこんだ!
カイエン「うぉぉぉぉぉーーーー!」
ルビス『いきなりレベル1にしちゃうのも可哀想だから2にてあげたわ、キャ〜ルビスちゃんったらやっさし〜い!』
ルイーダ「ルビス!あんたあたしの体を元に戻しなさいよ!」
ルビス『その声はルイーダちゃんね、なんのことぉ〜?』
ルイーダ「とぼけるんじゃないよこのアホ女!『ルイーダちゃんってばおっぱい重くて疲れちゃうでしょ?ルビスが軽くしてあげる(はぁと)』なんて気まぐれであたしを貧乳にしやがってぇぇぇ!」
ルビス『アホ女だなんてひっど〜い!ルビスはルイーダちゃんの事を思ってやってあげたのに〜。』
ルイーダ「誰が頼んだ馬鹿女!」
ルビス『アホ女の次は馬鹿女ですって!酷いよルイーダちゃ〜ん・・・。』
ルビス『もう知らないっ!』
ルイーダ「あっ、待て!逃げるな!!」
空に映し出された女性は消えた・・・。
カイエン「おい、俺は本当に弱くなったのか?」
ルイーダ「そうね、本当にレベル2だってんならそこら辺のスライムにも苦戦するくらい弱くなったわ。」
カイエン「スライムとはなんだ?強いのか?」
ルイーダ「世界最弱の魔物よ。」
カイエン「なッッ!!」
ルイーダ「同情するわ・・・。」
カイエン「俺が異世界人ってのは本当か?」
ルイーダ「あのアホ女は神なのにアホなのよ、前にも数回あったけど気まぐれで召喚されたのね・・・。」
カイエン「なんてこった・・・。」
ルイーダ「自分は魔王に幽閉されてるのに一体何を考えているのかしら?頭がおかしいとしか思えないわね。」
カイエン「あのアホ女にもう一度会えば俺を元に戻してくれるのか?」
ルイーダ「さあね、でも殺せば元に戻るんじゃない?」
カイエン「そうか・・・。よし、殺そう!」
ルイーダ「あたしも付いていくよ、もう我慢の限界だわ。」
カイエン「そうと決まればすぐ出発だ!」
ルイーダ「待って、勇者も連れていった方が何かと便利よ。えーっと・・・、おい、そこの見習い勇者!名前は?」
勇者「(ビクッ!)はい!アレンと言います!」
ルイーダ「アレンね、いい事?たった今から私とアレンとカイエンがパーティよ?おわかり?」
アレン「はっはい!!」
ルイーダ「わかったらさっさと私の酒場で嘆願書にサインしてきなさい。」
アレン「ひっ!」
ルイーダ「早く!」
アレン「ヒイィーー!!」
カイエン「おい、あんなガキで大丈夫なのか?」
ルイーダ「勇者として認定されている人間ってのは素質を見込まれているのよ、だからあんな子供でも鍛えればそれ相応にはなるわ。」
カイエン「ほぅ、相応ねぇ・・・。」
ルイーダ「どれ程になるのか?まではわからないけどね。」
カイエン「頼りねえな。」
ルイーダ「今のあんたよりは強いわよ?」
カイエン「本当にショックなんだ、それは言わないでくれ・・・。」
ルイーダ「ふぅ・・・。まあまずは訓練もかねてナジミの塔へ行くわよ?あんたも一から鍛えなおさなきゃならないしね。」
カイエン「クソッッ!ぜってぇ許さねえぞアホルビス!」
序章end
とりあえずここまででまた少しロムります。
稚拙な文書ですが、これからも頑張っていきますので何卒ご容赦を・・・。
あとカイエン達のステータスを書き忘れたのでここに書いていきます。
ではでは。
カイエン
Lv78→2
Hp8000→28
Mp600→8
装備
無銘の刀・着物
ルイーダ
Lv12
Hp76
Mp28
装備
皮の鞭・木綿のメイド服・シルバートレイ
アレン
Lv5
Hp36
Mp14
装備
ひのきのぼう・布の服・お鍋の蓋
>>よし、殺そう!
wwwwwwwwwwwwwww
新スレ&書き手さん達乙です。
少しだけ告知をさせてください。
今回で9泊目。
次スレで10泊目となりますが、
その記念として合同作品を作れないだろうか、と企画しています。
作品構成としては、
執筆者の人数分登場人物を用意して最終的に一つの物語に仕上げていく。
つまり複数の人がドラクエ世界に来たというような設定で、
ドラクエ4のようにそれぞれの物語を書いた上で最後をまとめるという形を考えました。
ですがあくまで案なので、最終的には話し合いで決めたいと思っています。
そこで合作の参加者募集をしたいと思います。
担当は執筆・ネタ出し・編集・その他なんでも結構です。
参加して頂く方の負担はなるべく少ない方がいいかと思うので、
物語の長さは短編か中編くらいと考えています。
実際の作品発表は次スレとなります。
何か書いてみたいという方、使ってみたいネタがある方、
赤ペン先生の方、ぜひ参加をお待ちしています。
避難所のほうにスレを立てておきますので、
詳しくはそちらまでよろしくお願いします。。
では失礼しました。
>>42ー54
ゲームと現実の同時進行とはおもしろいですね!
豆乳に感激するアルスかわいいw
プレイヤーのタツミの方がしっかりしてるっていうのも珍しいかも?
今後が楽しみです。wktkしてます。
ここで唐突に、書き手さん達に話題提起
荒らしでも煽りでもない、しかし忌避の無い意見って欲しいものなのかな?
避難所に書くのが好ましいかと・・・。
71 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 08:50:27 ID:riu2JSWm0
>42-54
豆乳に感動するアルスに和んだ。
ヤバイ。めっちゃ面白いこれ。
完結させれば4の人に並ぶ良作になる予感。
それにしても感動してるのが豆乳ってことを除けば現実世界における
普通少年と悪友のやり取りだな。
>69
俺は書き手じゃないけど、あったら良いと思う。
どこが悪いか明確に分かればクオリティ向上に繋がるし
逆に言えば、ナァナァな意見ばかりだと悪い部分に気付かない
ままになってしまうから。
匿名掲示板ってのは読者の感情がストレートに出てくるもの。
そこに投稿するってことは指摘や酷評を受ける覚悟が
出来てるってことだろうからそういう意見はあった方がいいんじゃ
ないかな。
DQ6でネタ考えた
でも、Dat落ちが早くなるかも知れないから載せないほうが良い?
帰ってきておやレスがこんなに伸びてるなっと思ったらなんですかこの大量投下は?
スレにこんなに活気が出てくるなんてすげぇ。
新入りさんもおもしろい。
一回ここで書こうと考えたけどいい文章が思いつかなくてエターなった。
合作とは面白い案だけど、リスク高そうだな。
ちょっと投下してみます
ゆとりが書いたので酷い文章です
酷く疲れた
今日は初めて髪が黒以外の色になった
なんでもこの学校の寮生には避けて通れないものらしい
青色の髪、アニメかゲームキャラのようだ
青にしたと言われ鏡を見た時、昔遊んだDQ6を思い出した
「(ターニアみたい…かな)」
言い忘れたが私は女だ
DQ6やりたいな〜だとか、明日は休みだから中古屋を回ろうだとか思っているうちに私の体は重くなり、眠りについてしまった
そして不思議な夢を見た
どんどん体が沈んでいく、それがベットを突き抜け、空を突き抜け、落ちていく、落ちていく、落ちていく…そして地面に…
叩きつけられる寸前で目を覚ました
かなりファンタジーな夢を見たものだと小さく笑ったが…
「ここ…どこ?」
どう見ても寮じゃないですどうもありg(ry
それはさておき、小洒落たペンションのような部屋に、窓からは子供の遊ぶ声と暖かい陽射しが注がれていた
服装は特に変わっておらず、お気に入りのタートルネックにジーパンそれと
「持ってたけど着てなかったような…」
それと黒のカシミヤのコート
ポケットの中には財布がちゃんと入っていた
とりあえず外に出よう…
受付には宿の主人が暇そうな顔をしてぼーっとしていた
「あの〜…」
主人は聞く耳を持っていないようだ
シカトですか、いい度胸だコノヤロウ
主人の前に進み出て言う
「す み ま せ ん !」
「はひぃっ?!」
だいぶ驚いたようだ、ザマァミロ
主人はきょろきょろし辺りを見る
私は目の前にいると言うのに
「空耳かぁ〜」
…こいつ殴っていいですか?
もうどうでもいいや、そんな時主人の後ろに鏡がかけられていた
高級感の漂う銀の装飾が施されているようで、ほこりはついていなかった
井戸のまわりで遊ぶ子供や緑に萌える木々が煌めきながら映し出されていたが──覗き込んだ私の姿は映っていなかった
本当の投下はとりあえずこれで終了します
それからちょっと吊ってくる
>>75 「合作をやる」という事がなにぶん初めてなので、
どうしてリスクが高いと思ったのか聞かせてもらえませんか?
参考にしたいと思います。
今のところ考えている問題点は、
「複数の書き手がいる状況で、うまく話をまとめられるのか」
という事を一番危惧しています。
まぁそこは試行錯誤という形になってしまうと思いますが……
一応物語のスタートとゴール地点を最初に決めておいて、
それぞれが担当するパートはある程度自由にしてもらう。
という形にしたい思っています。
>>79 お疲れ様です。
青にしなくちゃいけない寮とかwww
75じゃないけど。
┼―――┼―――┼―――┼―――┼→エンディング
1 2 3 4 5
っていう風に1〜2の人、2〜3の人…という具合に時間軸で分けてしまうと
どうしても書き手の負担は後半になってくるに連れて増えて行ってしまう。
(DQ4みたいなオムニバス形式でも、1章、2章…と結果的に5章への伏線があるので
時間軸で区切った場合と似てる様な気がする)
その分、クライマックスに近づくにつれて物語の盛り上がり部分を書けるのも
後半の人って事になるだろうけれど、同時に最初の方に張られた伏線も
きっちり回収しなければならない。また、書き手が違えば考え方も違うから
最初の伏線が思わぬ障害になったり(逆で言えば読者の予期しない展開に
なって面白味を増す要素にもなるけど)する。最初に書いた人は後半の人に
うまくバトンを渡さないといけないから、これも地味だけど楽じゃない。
盛り上げ部分の配分とかも、作品全体で調整しなきゃいけないだろうから
各書き手さんたちの綿密な打ち合わせが必要だろうなとも。
もう1つはテーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か。
もう一つ懸念要素は実生活との兼ね合い(もしくはスランプとか)で書き手が継続困難になって
そのパートに穴が空くこと。こうなってしまうと合作どころか話そのものが崩れかねない。
その場合の対処方法も予め決めておいた方が良いと思う。機械じゃないんだから手が止まる事もあるだろうし。
他にも土台にするDQがどのシリーズかとか、この辺も作者の好みが出るだろうし。
そう言った理由から考えて、1つの物語を時間軸で区切ったパートごとに分けて
別々の人達が書いていくのは難しいんじゃないかな?
なんか後ろ向きな事ばかり思いつくだけ書いてみたけど、すごく面白そうだとは思う。参加できるならやってみたいかもw
同じく
>>75じゃないけど
やっぱりそのまんま合作というアイディアじゃ
>>81さんがあげたような問題があるし、
だったらいっそ共同テーマ、共通ワードをいれた短編作品を書いてみるという方法は?
悪例な気がするけど10スレ記念ということだから、
「お祝い」と「10」というワードをどんな形にせよ盛り込んだ短編を皆で書くとか
>>81 意見ありがとうございます。
今のところ僕個人の考え方ですが返答させていただきます。
(1)皆で1本物語を書く
合作として作品を作る際に、まず最初に思い浮かんだのがこれです。
ですが、おっしゃる通りかなり綿密にやならければならない。
書く人によって文体も違うので難しそうな感じ。
なのでこれは無理だろうと思いました。
つまり時間軸で分けて書いていく事はしない、という事ですね。
(2)同じ設定で執筆者それぞれに物語を書く
次に浮かんだのはこの形です。
これだと設定だけ決めて、
後は各々で書けばいいだけなので(1)よりは楽だろう、と。
そこで、そこから1歩進んで↓
(3)執筆者の人数分、登場人物を用意して、最終的に一つの物語に仕上げていく
つまりそれぞれの書き手が書くのは担当する登場人物の物語だけで、
登場人物が5人なら5人とも時間軸は同じ(場所は別々)と考えています。
最後のまとめ(DQ4で言うなら5章)はどうするかまだ決まってませんが、
最低でも全員が集合するところまでは書いてみたい…と思っています。
設定をどう出していくか、そして伏線をどう回収するかは、
最初に決めてしまってから書く事で幾らか回避できるだろうと考えていますが、
どうでしょうか。
伏線は書き手同士で前もって確認して把握しておくのがベストでしょう。
そして書いたものは他の人も目を通しておくと、より良いかもしれませんね。
>>テーマに対するアプローチの仕方と、結論の相違を認めるか否か
書き手が違いますから、それは当然出てくるでしょう。
むしろそれをまとめるのが最後の章になるんじゃないか、
とぼんやりと考えています。
登場人物全員が同じ結論だと面白くないでしょうし。
うまく出来るかどうかは別問題ですが……
そして実生活との兼ね合いですが、確かに難しいですね…
スランプの場合は他の執筆者が協力する。
仕事等で書けなくなったという場合は、代わりが書く。
としか現時点では言えません…
これはきちんと話し合って決めようと思います。
どちらにせよ、
参加者同士で互いの作品をかなりオープンに見せ合いたい、
と僕は考えています。
そうする事で何かの問題にも対処しやすくなるのではないでしょうか。
>>82 いいですね。
それも一つの形として全然アリだと思います。
最終的には参加者の話し合いで決めたいと思っているので、
候補に挙げておこうと思います。
きちんと返答できたか少々不安ですが、
また何か疑問等々ありましたら書き込んでください。
避難所の方でもお待ちしております。
合作は色々と難しいでしょうが、やってみる価値はある、と思います。
こんばんは
珍しくこんな時間にお邪魔します
>>タカハシさん
まとめお疲れさまです
いつも感謝です
>>暇潰しさん
真理奈さんキターーー!!
せつなすぎて涙です。も、ぞくぞくします。鳥肌です。
やっぱすごい好きです。告白です。
>>新人さん方
まとめてしまってすみません
なんだか急激に盛り上がっていてドキドキですが
自分もまだまだ新人なので宜しくお願いします
では前スレ
>>667続きです
更に階段を降りると、フロアは今までに無い暗闇に支配されていた。
明らかに今までの城内とは異なった空気がフロア全体を支配している。
気味の悪い気配がそこかしこを行き来しているような、
異様な雰囲気を感じて俺は立ち止まった。
不意に雷光が窓を貫く。
轟音と共に照らし出された踊り場には
浮遊する得体の知れない何か(人魂、ってきっとこんな感じだろうな)が
幾つも連なって漂っていた。
窓から時折差し込む灯りを頼りに、人魂を避けて慎重に一歩ずつ進む。
人魂のような何かは、こちらに何かしてくるでもなく、
ただそこにふわふわと浮いていた。
降り積もった砂埃が足元でじゃり、と音を立てる度に
その何かが振り向いて襲い掛かってくるんじゃないかと
ありえない(だって俺は知っているのに)想像が脳を過り背筋が凍る。
やっと辿り着いた反対側の階段を駆け下りると、
そこはまたほのかに明かりが差す小さな部屋だった。
ふう、と緊張を解くように息をついてビアンカが
『あれ、なんだったのかしら。別に何かしてくる訳じゃないのね』
と可笑しそうに言った。
部屋を見回そうと振り返ったとき、不意に空気が揺れるのを感じた。
あ、と思わず声を上げる。
それに気付いたビアンカが俺の見るほうに顔を向け、笑顔を消した。
階段から少し離れた場所。
上品な、王の身なりをした男が、王妃と同じ
悲しいような穏やかな表情をこちらに向けていた。
その体はやはりうっすらと半透明に景色を通し、白く淡い光を纏っている。
声を掛けようと一歩近付こうとした時、
王はするりと地面をすべり片隅にある小さな扉の向こうへ消えていった。
ついて来なさい、とその背中が言っていたように感じた。
扉へ向かおうとする俺に、ビアンカは
『もう、今のってきっと王様よね?
王様も王妃様も、どうしてすぐに何か言わずに消えちゃうのかしら』
言って、少し困ったようにまたくすくすと笑った。
扉を開けると、大広間を見下ろす渡り廊下。
薄闇の中には音楽が鳴り響き、至る場所で至る姿の人間が手をとり踊っていた。
たった一枚の扉越しにも聞こえてこなかったその舞踏会は、
とても華やかとも楽しげとも言えない物だった。
音楽に合わせて聞こえるのはすすり泣く声と
それを囃し立てるしゃがれた不気味な声。
そろそろと足を踏みはずさないよう、気をつけて進みながら広間を見下ろす。
豪奢な装飾はどれも光を失い、悲しげにくるくると回る人々の影を微かに映している。
薄くどんよりとした空気が部屋中に漂っているようで、俺は息苦しさを感じた。
渡り廊下を抜け扉を開くと、奥の階段の向こう、
小さな扉を抜けていく王の後姿が見えた。
言葉の通り、扉を開閉することもなく
薄く透き通った体は薄い板を通り抜けて扉の向こうに消えていく。
追いかけて扉を開け放つと、城の外壁を回る細い通路だった。
俄かに強い風が吹きつけ、合わせるように雷鳴が唸り声を上げる。
角を曲がり覗き込んだ先、崩れ落ちた通路の手前に王は立ち止まりこちらを見ている。
『おお、ここまで来る勇気のあるものが居ったとは』
王様らしく蓄えた髭の奥で、目を細めながら王はか細い声で言う。
時折鳴り響く雷に掻き消えてしまうのではないかと、
俺は一歩距離を詰めて耳を澄ました。
『もう気付いて居ろうが、何年か前からこの城にゴースト達が住み着いてしまった。
私も妻も、城の皆も、穏やかに眠る事さえ叶わぬ・・・。
どうか願いじゃ。ゴースト達のボスを追い出してはくれぬか?』
>いいえ
を選びたい衝動に駆られたが、思案する一瞬の沈黙の隙にビアンカが
『もちろんよ!ねえ、サン!』と叫んだ。
勝手なことしてくれてんじゃねえよ。
思ったが相手はガキだと自分に言い聞かせ、なんとか拳を収めて俺は「はい」と頷いた。
『そうか、やってくれるか。そなた達はまことに勇気のある者達じゃ。』
王は満足げに双眸を崩し、深く頷く。
『ゴーストのボスは4階の玉座の間に居る。暗闇に閉ざされた階があったじゃろう?
扉の向こうの奥の階段を上がればすぐに辿り着けるじゃろう』
『サン、行きましょう!』
真後ろから急に裾を引かれて、俺はたたらを踏みながら
駆け出すビアンカを追って走り出した。
『ちょっと待ちなさい。まったく若者はせっかちでいかん』
奥の階段に差しかかろうとした刹那、先回りしていたのか王が俺達の前に立ちはだかった。
『そのまま行っても真っ暗で何も見えんだろう。
大広間を抜けて地下に降りれば台所に松明があったはずじゃ。それを使いなさい』
王は言うとゆっくりと俺達の背後の、下り階段を指さした。
『さあ、あっちじゃ。錆び付いていたドアも開くようにしておいたから、頼んだぞ』
王が言うと、ふうっ、と暖かな風が流れて、掻き消えるように王の姿が闇に溶けて消えた。
『王様も一応手伝ってくれるのね。行きましょ』
くるりと振り返って言うと、ビアンカは今度は俺の手を取って歩き出した。
広間を抜けて地下に降りる。
閉ざされた扉に手をかけると、一瞬暖かな空気が流れ
かちり、と微かな音を立てて扉が開いた。王の気配を感じたが、姿は見えない。
広間の奥、ロビーの隅の小さな階段を降りて、
俺達は何事も無く地下のフロアに足を下ろした。
気配を感じてキッチンを覗き込む。
透き通った体のコックが一人、中央の大きなテーブルに置かれた
テーブルからはみ出すほどに大きな皿に料理を盛り付けていた。
『松明はどこにあるのかしら・・・』
ビアンカが囁く。
そろりと一歩ずつキッチンに足を踏み入れるが、
コックはこちらには気付かない様子で忙しなく皿の周りを行き来しながら
色鮮やかに皿を料理で埋め続けていた。
時折『もうやめてください』とか『わかってます、わかってますよ』とか
『助けて・・・』とか、姿の見えぬ何かに向かって呟き続けている。
コックの後ろを抜けて奥の物置き場を探る。
手を分けて木箱や壷の中を探していると
壷の底にぽつんと置かれた小さな松明を見つけた。
木の棒に何か模様が織り込まれた布が巻きつけられ、
銀の取っ手と火種らしい金具が設えられている。
『これで暗い部屋も大丈夫ね、良かったわ』
物珍しそうに松明を手にとってビアンカが言った。
音を立てないようにまたこっそりとコックの背後を階段まで戻り、
広間へ続く階段を駆け上がる。
『ねえ、早く行きましょうよ』
そう言って袖を引くビアンカに頷いて、俺達はまた来た道を戻った。
大広間では相変わらず悲しげなダンスが繰り広げられている。
囃し立てるゴースト達を振り落とそうかと思ったが
フロアの中腹辺り、俺の体では手の届かない位置に浮遊している。
諦めて通路に戻ろうとしたとき、俺達が今までいたその場所に、
その瞬間まで居なかった、白い蝋燭がぽつんと佇んでいた。
丁度俺達の目の高さ。
ちらつくように揺れる点いたままの炎があたりをほんのりと照らしている。
驚いて立ちすくむ俺達の目の前でそれはゆっくりと向きを変えた。
そして大きく開いた口でにたりと笑うと、聞き取れない声で何かを発した。
ごう、と空気を裂いて赤い小さな塊が俺の視界を塞いだ。咄嗟に両手を掲げる。
『サン!』
轟音、熱と耳鳴り。
その向こうから微かにビアンカの声が聞こえた。
呪文を食らったんだとやっと気付く。肌の表面がびりびりと痛む。熱い。
『なにすんのよ!こいつ!』
叫びながらビアンカが鞭を振るうのが、下ろしかけた両腕の隙間から見えた。
敵は床に叩きつけられると、またよろよろと立ち上がり
くすぶった頭上の炎を気にするようにふらりと視線を上げた。
裂けた口の隙間からだらりと赤い舌が覗いている。
痛みを堪えて俺は、鞭を引き寄せるビアンカの脇をすり抜け
まだふらつく敵の顔面に武器を振り下ろした。
不意を突かれた敵はギャア、と叫び声を上げて床に転がり、
ごろりと半回転して動かなくなった。
『サン、大丈夫!?』
思わず尻をついた俺に駆け寄って、ビアンカが心配そうにしゃがみ込む。
両腕はまだひりひりしたが、熱と衝撃で受けた鋭い痛みはゆっくりと引いていた。
「大丈夫」と答えるとまだ不安そうにビアンカが俺の腕を覗き込む。
薄暗く良く見えないが、おそらく真っ赤に腫れているだろう事は判った。
支援いたしましょう
『どうしよう、冷やさなきゃ。
それかどこかで少し休みましょ?お城だって寝室くらいはあるでしょ』
ビアンカの言葉でふと思い出す。
確かここには宿屋があった。
場外に投げ出されるのは少し面倒だったが、宿に泊まれば傷は回復するだろうし
魔力の回復もしておきたかった。
幸い足にダメージは無かった。
立ち上がると俺は「あっちに部屋が」とだけ言って今来たロビーへと歩き出した。
出来ればもう敵には会いたくない。
祈るような気持ちで俺はゆっくりとロビーのドアを開ける。
祈りは届かなかった。
ロビーの中央、丁度俺達の目の高さに、赤茶色い
絵に書いたような“お化け”の形をしたモンスターが、ゆらゆらと浮遊していた。
それは俺達の姿を確認すると、にたりと舌を出して両腕を振り上げた。
『なんなのよ!もう!』
怒ったようにビアンカが鞭を振るう。
追い討ちをかけて俺が武器を振ると、あっさりとモンスターは沈黙した。
半透明に横たわる死骸を跨いで俺達はロビーに足を踏み込む。
案の定、階段の脇にさっきは気がつかなかった扉があった。
開いて中に入ると、カウンターが据え付けてあり
その向こうには炎のような人魂のようなものが揺れている。
カウンター越しに覗き込むと?人魂は『なんだい客かい?』と面倒くさそうに言い、
『奥のベッドが空いてるから、勝手に休みな』と吐き捨てるように言った。
言葉に従って奥を覗き込むと、意外にも
真新しげな白いシーツの掛けられたベッドが二台、並んで置いてある。
『なんだか気持ち悪いけど、いいわ。サン、少しでも休まなきゃ』
聞き終わらないうちに俺は手前のベッドに倒れ込んだ。
ビアンカの心配そうな気配が通気を伝って俺にも感じられたが、答える余裕もなかった。。
呪文のダメージは、思ったよりも深かった。
本当は体力は、まだそれなりに動けるだけを体に残してはいた。
けれど呪文を放たれた時の空気の粘つくような嫌な感じと
目の前に迫ってくる真っ赤な炎の塊の残像が、俺の精神的な
なにか軸のようなものまで焦がしていったような気がした。
恐怖。
それが俺の心に芽生えたのは決してこれが初めてではなかったが。
得も知れない理解の届かない「呪文」というものの恐ろしさを
初めて身に染みて理解したような気がした。
こんなものが当たり前の世界。こんなものが。
息を止めて目を閉じて、俺は只暗闇に逃げ込もうとしていた。
目を閉じて耳を塞いで、自分の中に潜ることが、この世界で唯一の逃げ道になっていた。
ビアンカは心配そうに暫くベッドの周りを歩き回っていたが、
やがて諦めたようにもう一つのベッドに潜り込む音だけが聞こえた。
>>92 支援感謝です
本日ここまでで
ありがとうございます
ではおやすみなさーい
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41 ナジミの塔をさらに、さらにのぼっていった。人がすむ部屋があるフロアまできた。その部屋にはおじいさんが1人いた。
じいさん「ほう、おまえらは誰じゃ」
自己紹介をすませると、また塔からしたの景色をみはじめた。
どうやら下界をみるのが日課であるようだ。
じいさん「ここまで来たんじゃ、そこの宝箱にある物でももっていっていいぞ」
男戦士「じいさんはなにやってんだ。こんなところに1人でいて気がへんにならないのか」
じいさん「暗雲がひろがっておるな、なにかよくないことが起きる前触れじゃろう…。ときにそこの青年よ」
誰のことだ。…ぼくらしい。
ぼく「はい」
じいさん「そなたの目は澄んでおる。強き者がもちうる目じゃ…。にたような目をみたことがあるぞ…何年前じゃろうか…」
会話がへんなほうこうにいってしまう。
男戦士「お!宝箱のなかは何かのカギだぜ!」
女武闘家「おじいさんはここでなにしてるの?」
じいさん「忘れてしまった、どうしてじゃろうか。わしはいつまでいてもらってもよいが、急がれる旅じゃろう。ここでそなたたちの無事を祈っておるよ」
女僧侶「わかりました…。おじい様のこと、わたしたちもお祈りいたしましょう」
じいさん「ありがとう」
そしてナジミの塔をあとにした。レーベの村までいくのにまた時間がかかると思っていたが、そうでもなかった。
男勇者 ゆきひろ レベル7
女武闘家 エリー レベル6
男戦士 サイモン レベル8
女僧侶 ナナ レベル6
乙です
おやすみなさい
前回までのあらすじ
>>5>>27-28>>31>>36>>39>>40>>41>>96 この世界に来てから10日以上がすぎた。順調というよりは、悪戦苦闘のことばがピッタリくる。
レーベの村で魔法の玉というアイテムを手に入れ、今はいざないの洞窟にきていた。
この前もらった盗賊のカギがなければここまでこれなかったろう。どうやらこの先からあたらしい地に行けるようだ。
男戦士「いやいや、なんだか感慨深いね。さらばアリアハンというわけだ」
女武闘家「どんな土地につくのかしら?わくわくするわ」
女僧侶「ちょっとだけこわい気もしますけど…あたらしい出会いもありますね」
ぼく「なるようになる、さあ行こうみんな!」
男戦士「おっしゃ!」
女武闘家「ええ!」
女僧侶「はい」
さあ、あたらしい地へ!
母さん、いってくる!
…学校だいじょうぶかな。
いつもいつもまとめご苦労さまです
本当にありがたいことで
4月7日 晴れ
今私は理解できない状況下に置かれている。
昨日新入社員の田中を研修後飲みに連れて行った。典型的な使えない若者である
田中を今後鍛えていかなければならないためのコミュニケーションの一環としてだ。
田中は私の奢りであるのをいい事に信じられないほど飲んだ挙句
このあとキャバクラ行きましょうよ!キャバ!と言って強引に私を引っ張って行き
高そうな店に入った。そこで女の子に流され私もつい飲みすぎてしまった。
記憶があるのはそこまでである。
今私は見知らぬ家のベッドの上にいる。田中は床で寝ている。
調度品や窓の外の景色を眺めるにここは日本では無いようだ。
おそらくあのキャバクラはどこかのマフィアの経営で私達は金銭を取られた上拉致されたに
違いない。もう生きて帰る事はできないかもしれないので私の人生の証として
出切る限りこの手帳に記録していきたいと思う。
願わくばいつか愛する妻と娘にこの手帳が届きますように。
田中はまだ寝ている。
田中ワロスwww
続き気になる
田中wwwww
可哀相な上司(妻子持ち)の名前が気になるwww
>>105 タイトルから察するに、鈴木と思われる。
前回までのあらすじ
>>28>>31>>36>>39>>40>>41>>96>>98 新しい地に来た。
いざないの洞窟をでたものの、これからどこに行くかなんて決まってはいなかった。
これまで高校生だったけど、ある日起きたら勇者になっていた。普通ならびっくりしてしまうだろうが、ぼくはあるがままをうけいれ、深く考えないことにした。
今がぼくにはすべて、そう思うことにした。
そういえば、この地に来てからモンスターが強くなってきている。!また、モンスターだ…。
『さまようヨロイがあらわれた。』
鋼のヨロイを着たモンスター。
武闘家のエリーが先制攻撃をする。かなり苦戦をしたがなんとか倒せた。
剣の刃がかけてしまった、新しいモンスターの強さに武器も防具もついていけてなかった…。
女武闘家「拳が痛い、もう、ダメねあたし…」
ぼく「素手じゃ無理ないよ。ナナ、回復してあげて」
女僧侶「え、ええ」
モンスター1匹にこのざま、モンスターに襲われる回数も増えて、何度か逃げたこともあった。
勇者一行としてなさけない。
この時にも命を失う人達がいる…、バラモスを許せない。
男戦士「ゆきひろ、あそこに国があるぜ。行ってみないか」
ぼく「うん。行こう」
男「ロマリアへようこそ!」
アリアハンよりもにぎやかな国だ。
ぼく「宿屋に行こう」
男戦士「なんだい、街を見に行かないのか」
女僧侶「わたしも休みたい…」
女武闘家「体力だけのバカはいいわね、疲れも知らないのかしら?」
こうなるとサイモンが気の毒なので、ぼくとサイモンは街を見に行くことにし、エリーとナナは宿屋で一足早く休んでもらうことにした。
前回までのあらすじ
>>31>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107 男戦士「へっへっへ、ゆきひろ、まずは酒場に行こうぜ!」
ぼく「そうだなぁ…。誰かに場所を聞いてみようよ。あっ、すみませ〜ん」
というわけで酒場に来た。未成年なんだけど、男同士のつき合いということで仕方なかった。まぁ、酒は飲まないけども。
酒場のマスター「おいおい、そこの人はダメだな、ジュースにするからね」
席につき、そのうち果実をしぼったジュースがきた。なかなか美味しい。
ぼく「これからどうしようか、サイモン…」
男戦士「あとは装備品でも買いに行こうぜ。今の装備品を高く売るのにも、安く買うにもテクニックが必要なんだ。その交渉術ってのを、見せてやる」
ぼく「バラモスはどうすればいいかな、今のままじゃ勝てないだろうし…。正直、迷ってる」
男戦士「強くなれば勝てるさ。各地のモンスター達を倒していって、バラモスにたどり着ければいい」
そうだ、それだけのことなんだ。強くなること、侵略を止めていくこと、あとは情報か。
男戦士「エリーはどうだ?けっこうカワイイと思うけどさ」
ぼく「まぁカワイイよな…うん…」
男戦士「…それだけかよ。おまえは奥手っぽいから心配だ、俺は、ははは…」
サイモンは幼なじみのナナが好きなのだろうか?
ぼくにも、もといた世界で好きな女の子がいる…はずなのに少し記憶がぼんやりしている。帰れるかどうかも分かりはしない。
今のぼくは、心以外、体が、違う人になっていた。
オルテガの息子の心は、もといた世界の、ぼくの体に宿っている…。
きっと、入れ替わっているはずだ…。
今のぼくは勇者を演じ続けなければいけない責任からこうしている。
ごめん、サイモン…みんな…。
ぼく「うう…あっ…」
男戦士「泣いてんのか!?どうしたんだ…」
誰かぼくを助けてくれ。誰か…誰か…。
それから数時間、ぼくとサイモンはこの酒場にいた。
>>108 お疲れ様です。
ゆきひろ、泣いちゃった( ´Д⊂ ガンバレ
最新レスしか見てなかった orz
>>102 お疲れ様です。
"私"と田中、どうなるのかなー
4月8日 晴れ
私達が寝ていた家は親切にも道端で倒れていた私達を運んでくれた人の家らしい。
とりあえずマフィアではない事が分かってよかった。
ここは王政の小さな国らしく王様に会えば何とかなるかもしれないとの事。
この奥さんが日本を知らないという事に驚いたがきっと日本とはまったく交流の無い国なのだろう。
日本語が通じるのが唯一の救いだ。明日は王様に会って日本の大使館に連絡してもらおうと思う。
どうやら帰れそうなので仕事にそんなに支障をきたす事は無さそうだ。
本日は奥さんのご好意に甘えもう一泊お世話になろうと思う。
追記:田中にもいい機会なので日記を書かせ自分という人間を見つめ直さそうと思う。
俺様日記
4月8日
なんかよくわかんねーけど鈴木さんに日記かけっていわれた。
めんどくせーけどあの人顔真っ赤にしてチョー怒るから書く。
多分俺がキャバクラでハメはずしたから怒ってんだろなー
つーかせっかくアドレス聞きだしたのにここ圏外だし連絡できねーじゃん!
ヒロミちゃーん…はやく帰りてーよ!
テレビも電話も電柱すらねーってどういうことだよ!どこだよここ!
GJ!鈴木ガンガレ
いやー、これは参ったね。
何が参ったって今の俺のこの状況。
もうね、どうなってるのか分からんよ。
気がついたら俺ね、宿屋に泊まっていたわけよ。
それがどうしたって?
どうもしないよね。普通なら。
だけどね、これがまったくどうかしてんだわ。
変なんだよ。だってさ、俺宿に泊まった覚えないもの。
なんか支離滅裂で分からないかな。
でも、俺も訳わかんないわけよ。
どう説明したらいいんだろうね。
はじめから説明するのがいいかな、やっぱり。
そもそも俺普通に生活してたの。で、次の日には見知らぬ土地。
俺思わず「これドッキリ?」とか呟いちゃったよ。
やっぱり説明になってないな。
でも仕方ない。気がつけば未知の世界、何かね異世界なの。
だって、魔物がいるんよ。魔物。モンスターね。
まあ、それでもまだ少しはドッキリかもって思ってたんだけどさ。
だけど魔法使うのよ。魔法。マジック。いや、手品じゃないよ。
これもう絶対ドッキリじゃないでしょ。
そもそも俺芸能人じゃないし。
でさ、訳がわかんないまま王様に呼ばれたのよ。
キング。ほんと、トランプのキングみたいなのに。
いや呼びにきたのは家来よ。だってキングだもん。
それで王様こういうわけよ。
「勇者ロトの子孫よ。待っておったぞ!」って。
ちょっと違うかも知んないけど、こんなことをさ。
でもさ俺の先祖にロトなんていないのよ。
いや、いたかも知んないけどさ。
だけどこのキングが俺の家系知ってるはずないでしょ。
キングが言うには姫を助けて欲しいって。
攫われちゃったんだって。いかにも姫っぽいね。
そんなの警察に頼めっての。ないだろうけど。
でも、キングよ。俺1人になにができるのさ。
俺ね、姫捜索部隊の指揮官じゃなく全部1人やるみたい。
オールセルフサービス。
なんと俺、引き受けちゃった。姫救出。
まあ、本物のロトの子孫が来るまでの辛抱だと思ってさ。
キングの頼み断ると後々面倒そうだし。
で、俺の冒険が始まったのよ。
町で情報集めて、モンスター叩いての日々。
慣れない生活の始まり始まり。
はじめ勇者ロトの墓に行ったわけ。
そこに子孫宛のメッセージ。でも、お墓の前では泣かなかった。
他人だから。
その後は町や村を巡った。徒歩で。交通機関なんてないの。
ガライは地味。マイラは最高。リムルダールは鍵買った。
その鍵使ってガライの墓行った。ロトといい墓ばかり。エジプトか。
調子に乗って姫助けまでしちゃった。宿屋に泊まってお楽しみ。
お楽しみと言っても、あんなこと想像するなよこのスケベ。
いや、何を想像したか知らんけど。
そのあと姫拉致監禁犯人の竜王倒すことになった。
いや、はじめから倒すことになってたんだっけ?
そういや本物のロトの子孫はまだ来ないんだけど。
それからドムドーラやメルキドに行った。
ドムドーラ今はモンスターの町。メルキドはゴーレム邪魔。
そのあと雨雲の杖や太陽の石、ロトのしるしで虹の雫ゲット。
俺ついに竜王と対峙。そしてこのまま退治。ラッパーか。
そう思ってたら竜王から世界の半分で手を組もうってお誘い。
思わずイエス。俺世界の半分の闇の世界ゲット。
気がついたら俺ね、宿屋に泊まっていたわけよ。
変なんだよ。だってさ、俺宿に泊まった覚えないもの。
やっぱさ、これってドッキリなんじゃないの?
無限ループワロス
ちょwwwww世界の半分もらっちゃったのかよwwwwwwwwww
4月9日 晴れ
今日は精神的に非常に疲れた一日だった。
国王の話によるとこの国に日本の大使館はないらしくそもそも国連にも加盟していない国だったのだ。
いやむしろ国王は国連の存在を知らなかった。ここは世界でも物凄く隔離された国なのだろう。
アメリカや中国の事も知らないとなるとこれは本当に由々しき事態である。
おそらく太古の昔から他の文明と関わらずに独自の文化を築いてきたに違いない。
とにかくどこか飛行機かフェリーに乗れる所までは自分の足で行かなければいけない。
また明日国王の所へ行き詳しく今後の予定をたてようと思う。
来月の娘の誕生日までには帰れたらよいのだが…
俺様日記
4月9日 あったけえ
マジありえねーっつの!鈴木さん今日城に行くとか言って俺置いていきやがった!
本気ありえねーっすよ!田中が来るとややこしくなるとか!
俺も行きてーよ城!だって王様だぜ王様(笑)チョーうけるどこのド田舎だよ(笑)
明日は絶対ついていくぜチクショウ
リーマンwktk
田中がいい感じにDQNだなww
真面目にwktk
4月10日
おかしい。ここの奥さんとも国王とも話がまったく噛み合わない。
ここはアマゾンの秘境にあるまだ人類が足を踏み入れた事のない土地なのか。
謎は深まるばかりだ。田中は相変わらずヘラヘラしている。
今日も酒ないっスか酒!一日家いると暇なんスよー仕事してるよりはマシですけどね!
とか言っていた。仕事も何も田中おまえちょっと研修うけただけでまともに働いた事ないだろ…
本気でこいつの扱いには頭が痛い。
いつまでもここにお世話になるわけにもいかない。
そろそろ何かしらの行動に移さなくては。
俺様日記
4がつじゅうにち
きょうもおいてきぼりだった。
しかも鈴木さんは帰ってきてから一言も口聞いてくれず難しい顔して部屋こもりっぱなし。
なんかちょっと機嫌悪いし。ひでーよもうなんもやるきがおきねー
ヒロミちゃーんすぐ帰るから俺のこと忘れないでねー
せめてケータイだけでもつながればいいのに
鈴木さんガンガレ
田中www
4月11日 晴れ
まさかここは…。いやまさかそんな事が現実に…。
俺様日記
4月11日 あったけえ
鈴木さんがマジやべえ。これぜってー5月病だよ。ちょっと早いけどあの人もう歳だから
ズレてんだよ。ヤバイくらい元気無いし。ますますしょぼくれてるよ。
しゃーねー俺が元気になるイベントでも考えてやるか!フッフッフ
またまた失礼します。
合作についてですが、
タカハシさんに避難所とは別に話し合いをする場を用意して頂きました。
これはネタバレを防ぐためなので、興味のある方以外は見ないようにして下さい。
見たい方は避難所の合作スレにURLが載っていますので、そちらでどうぞ。
以前に避難所に合作スレを立てましたが、そこを見てもネタバレする事はないので、
避難所は通常通り利用してください。
合作の話し合いが徐々に始まってますが、途中からの参加でもおおいに歓迎します。
定期的に話し合いの内容をまとめた物をテキスト等でアップしていこうと思うので、
これから参加しようと思われる方はそちらをご覧下さい。
参加と言っても、通常どおり名無しでの書き込みでも構いません。
「猫耳キャラ出して」
なーんて一言でもオッケーです。
タチコマ曰く、
「異文化との交流を描くのはいつの時代にもエンターテインメントの基本なんだねぇ」
らしいです。
このスレのテーマもそれに当てはまりますよね。
そして基本は王道とも言えるでしょう。
合作としての王道エンターテインメントを成功させる為にも、参加をお待ちしています。
鈴木さんショック受けてる。ガンガレ鈴木!
そして田中、ノーテンキもいいところwwww
前回
>>42-53 【Stage.3 リサーチ】
----------------- Real-Side -----------------
「ハバネロもいいが、かっぱえびせんってのもまた……あれ? もしもし? おーい!」
なんだよタツミの野郎。話の途中で携帯ブチ切りしやがって。
……しかも繋がんねえし。まめちち発見記念に、大サービスでいろいろナビってやろう
と思ったのにさ。
「まあ俺もヒマじゃねえから、いいんだけどよ」
俺はメシ代わりにスナックを平らげ、まとめてコンビニの袋に突っ込んだ。えーと、
こういった不要物の処理システムは、かなり整備されていたはず。
狭い公園内を見渡すと、隅の方に白いカゴが2つ並んで設置されていた。緑に白字で
「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」と書かれたプレートが取り付けられている。一応「燃
えるゴミ」の方に袋を放り込む。
「あれ、タツミ? なにやってんの?」
「ハイィッ!?」
――おっとぉ。
なまじ「俺はタツミだ」としつこいくらい自分に言い聞かせてきたから、タツミという
単語に過剰反応してしまったな。
声をかけてきたのは若い女だった。ショートカットの小柄な少女で、ポカンとしている。
「あ、ごめん。びっくりさせたかな」
「いや、俺の方こそ悪かった。……カタオカ、ユリコ?」
頭の中からヤツと関係する人間のリストを引っ張り出す。夢の中で断片的に拾った記憶
のつなぎ合わせだから心許ないが、確か同じ学校に通う人間で、家も近所だったはずだ。
っていうか「片岡百合子」って、ヤツのガールフレンドじゃなかったか!?
嘘だろー……。確か今は「春休み」とかいう長期休暇期間で、知人に会う確立が低い時
期だから安心してたんだが。
俺もヤツと同じで、こっちの人間関係をきっちり把握してるわけじゃない。休みの間に
電話などで間接的に確認し直しておく予定だったんだが、いきなりこんな濃い間柄の人間
と出くわすとはな。
エリス似のカワイイ子だから引き継ぐのは構わないんだが、さぁて、どうしたものか。
「休みは滅多に外に出ないのに、珍しいね」
俺が思考を巡らせる間に、彼女は疑いもせず寄ってきた。それからふと首をかしげる。
「さっき“オレ”って言った?」
ヤツの一人称は「僕」だっけか。いいや、のちのち面倒だからここで変えちまえ。
「ちょっとイメチェン。おかしいか?」
「う…ん、正直、違和感はあるけど。まあ、その方が取っ付き易いからいいんじゃない」
なんだか歯切れの悪い言い方だ。彼女的には「僕」の方が好みなんだろう。
「それよりもさ! ヒマしてんなら付き合ってくんない?」
ユリコは話題を切り替えるようにパンっと手を合わせた。さっそくデートktkr!
この際うまく誘導して、あちこち案内させるのも手か。
「いいよ。どこに?」
「ガッコ。昨日の補習ん時に、教室に携帯忘れちゃって」
やっぱ落ち着かないのよねえ、と苦笑する。なんだ、デートじゃねえんかよぉ。
でも学校なら本や資料も豊富だろうし、この世界のことを調べるには丁度いいか。
そこに行けば例の、なんだっけ、調べ物するのに便利な……「インターネット」!
あれも使えるだろうし。
そう、タツミの家にはインターネットがない。俺の夢研究が正しければ、16歳の少年
が住む家には、当たり前にある設備のはずだが。
改めて考えると、タツミんちって、ちょっと変わった家なのかもなぁ。
なんて思って、俺はもう一度マンションを振り返った。
「ん?」
4階の自分の家のベランダに、ヤツの母親が立っている。じっとこちらを見下ろしてい
たが、俺と目が合うと、ふいっと中に引っ込んでしまった。
どうしたんだろ。用があんなら声をかけてくれりゃいいのに。
なんか感じの悪い親だよなぁ。ぶっちゃけうちのおふくろの方が若くて美人だし。
ま、あんな親父にいつまでも入れあげてるバカ親よりゃ、よっぽどマシだからぁ?
贅沢は言わねえけどさ。
近くのバス停から、がらがらに空いたバスに乗り込む。
道順はけっこう単純だ。10分ほど揺られていると、学校の名前がそのままついた停留所
が出てきたので、そこで降りる。次は一人でも迷うことはなさそうだ。
初めてのバスだったから、「次停まります」のボタンが押せなくて悔しかったり(俺も
ピンポーンって鳴らしたかったぁ!)「定期券」がわかんなくて、ユリコにうまーく言っ
て財布から出してもらったりと、いろいろあったがひとまず無事に到着。
ヤツの通う学校はなかなか立派な門構えで、他の建物と比べると歴史を感じさせるよう
な古びた風情があった。
門の横に掲示板があり「合格者」と墨字で書かれた下に3桁の数字が羅列されている。
こっちにも「試験」ってあるんだもんな。しかもなんか、やったらペーパーに偏った査
定方法だったはず。向こうでは常にトップ張ってた俺だが、剣術や呪文なんかの実技の方
が得意だったし、こっちじゃどうなるかな。
本物のタツミに合わせて、勉強もスポーツも真ん中くらいにしといた方が、無難っちゃ
無難なんだろうが……。
「ちょっと、置いてくよ?」
「あ、待てよユリコ!」
置いてかれたら自分の教室わかんねーっての。
ユリコは携帯を取ってくるなりスゴイ勢いでボタンを操作し始めた。たまっていた友達
からのメールに返信しているらしい。かけた方が早いんじゃないか。
ちなみに、俺が今持っている携帯は通話機能しかない。
カメラもなければインターネットにも未対応なのでメールも当然ムリ。折りたたみ式の
ツルッとした黒いボディで、内側のモノクロ画面に表示できるのは文字のみだ。
しかも裏側に、色あせてほとんど白くなってるロトのマークのシールとか貼ってるし。
タツミの私物だが、はっきり言ってダセぇ。「着うたフル」とか楽しみだったのに。
「お待たせ。えーと、図書室だっけ?」
「いや、先にインターネット」
俺が最初に調べたいことは、学校の図書には載ってなさそうだからな。
「じゃあ職員室でコンピュータールームの鍵借りないとね」
ユリコはさっさと前を歩きだした。俺が命令するまでジーッと待ってるエリスと違って
自発的に行動してくれる子で助かる。
んで、新しく出てきた単語「職員室」。鍵の管理をしているなら、たぶん講師や管理側
の人間の詰め所のことだろう、と予想したら正解だった。イエーイ。
向こうにいた間も、「夢」に出てきた知らない単語は、そのあとの展開と照らし合わせ
ながら意味を覚えてきた。「情報」を集めて「推測」するってのは、冒険中は当たり前の
ことだったから慣れたもんだ。
まったく、旅の間はずっと脳みそフル回転だったからな。
そこらのガキが歌ってた「お日様ボタン〜♪」とかのふざけた歌詞が、古代文明の大い
なる遺産にして伝説の巨大迷宮ピラミッドの謎を解くヒントだなんて――
普通は絶っ対わかりませんからぁ!
俺がちょっと判断をミスれば、仲間の命を危険にさらすことになるし。ああ俺バカじゃ
なくて良かった……なんて、グタグタに疲れながら思ったもんだ。
でもこっちはそんなキバんなくても平気なんだよな。ビバ現実世界!
「――さっきから難しい顔したり、ニタニタしたり、どうしたの」
「気にすんな。それより、これどーやって使うんだっけ?」
俺はユリコに案内されたコンピュータールームの一席で、ついに「パソコン」と対峙し
ていた。はい、使い方はサッパリです。
「忘れたの? 珍しい。まあ家にパソコン無いからね……貸してみて」
彼女は俺の隣に立って、手元にあった線が付いた丸いヤツを動かした。画面の中の矢印
が一緒に動く。あとデコボコがついた板状のものをカタカタやったら文字が出てきた。
指示をするのは丸いの、何か記入するときはこっちの板だな。よし覚えた。
「パスワードっと……繋がったよ。何を観たいの?」
そりゃ「無修正」とか「動画」とか「18歳未満は閲覧禁止」とか!☆
なんて女の子にゃ頼めないしなぁ。っち。
――いやまあ、それは今度として。
「ドラゴンクエスト3ってゲームについてなんだけど」
「ゲームぅ? ああ、ドラクエ3だけは好きだって言ってたっけ。攻略方法?」
「いや、内容は嫌っつーほど知ってるから、いい。なんつうのかな、位置づけというか、
ゲームそのものの情報というか、たとえば、実際に作った人間のこととか」
俺が「1ゲームの登場人物に過ぎない」という残酷な事実を、認識するために。
「じゃあウィキがいいかな。『ドラゴンクエスト3』っと……。はい出たよ」
「ありがと。悪い、ちょっと集中していいか? すぐ終わるから」
「ん…じゃ、あっちのパソで私もなんか観てるよ。終わったら声かけて」
彼女が離れてから、俺はひとつ深呼吸して「ドラゴンクエスト3」という項目のページ
を読み始めた。知らない用語が多すぎていまいち理解しきれないが、「システム」「作品」
なんて単語を目にすると、本当に俺の世界は作り物なんだな、と思い知らされる。
初期型の売上本数、国内だけで380万本。リメイクを含めるとそれ以上。
そんな星の数ほどの「勇者」の中で……俺の存在に、どれだけの意味があるんだろう。
----------------- Game-Side -----------------
翌日。
夜中にアルスの電話で叩き起こされて少々寝不足だったが、僕は予定通り家を出た。
街の入り口に行くと、昨日契約を交わした仲間たちが待っていた。
現在の僕の仲間は3人。戦士、僧侶、魔法使いと、ごく基本的な構成だ。
戦士は前述でも登場しているサミエル。
22歳でアリアハン第二近衛隊の副隊長を勤めるエリートさんだ。剣術もなかなかの腕前
だそうで、「新入りの指南役がいなくなるなぁ」と彼の上司は残念そうにしていた。
もう一人の仲間は宮廷司祭見習いの32歳、ロダム。
司祭職……つまり僧侶は年功序列の職業なので、この年齢の彼もまだ見習いだそうだが、
実力は「Lv.16」と、パーティーの中で一番高い。
そして問題の魔法使い……エリス。
アルスの元カノで、「こないだ捨てた」なんて不穏なことを聞いていたから、初見の時
はドキドキしたもんだけど。
彼女はアルスに対して、まったく怒っていなかった。それどころかすこぶる低姿勢で、
別れた原因も自分が悪いからと、会うなりいきなり謝られた。
しまいには「こんな私を旅に加えてくださるなんて!」などと号泣する始末。
他人の色恋沙汰に首を突っ込む趣味はないけどさ、なんとういうか……やっぱりこれは、
アルスが悪かったんじゃないのかなー。
素直だし、僕の幼なじみとちょっと似ていてカワイイ子だし、一瞬マジに付き合っちゃ
おうかな、とかとか、頭をかすめたんだけども。
なんだか友達の彼女とこっそり浮気しているような、妙に後ろめたい気持ちがしたので、
「ここは友人からリスタート」ということで話をまとめておいた。
そんなこんなで僕もいよいよ冒険の旅へ。
もちろん目指すは、かつて誰も為し得たことのない、超最速クリアだ。
で、最初の目的地はロマリア。
【レーべ > 岬の洞窟 > ナジミの塔(盗賊の鍵)> レーべ(魔法の玉)> いざないの洞窟】
などという序盤のまどろっこしい順当ルートは、さっそく無視させていただきましたw
実はエリスちゃん、つい半年ほど前までロマリアに留学していたそうで。
「もちろん私のルーラで行けますわ。お任せ下さい勇者様」
とのこと。ショートカット第二弾。まだ二日酔いは抜け切ってないんだけど、頑張った
甲斐があったなぁ。
「では勇者様、私から離れませんようお気を付けくださいませ」
頭にバカがつくほど丁寧に言いつつ、エリスがルーラの詠唱に入った。
彼女を中心に、地面に複雑な文様の光の円が浮かび上がる。
初めて呪文を目の当たりにした僕は、内心かなり感動した。やっぱりここはドラクエの
世界なんだな、と再認識する。
軽い酩酊感を覚えたあと、目を開けると世界は一変していた。
僕らは森の中にいた。アリアハンとはまるで違う種類の植物が茂っていて、湿度が低い。
カラッと晴れ渡る青空と、爽やかな風。
木立の向こうに、巨大な建造物がどーんと構えていた。白い頑強な城壁が左右に長く続
き、二つの高い塔が天空に高く突き出していて、その先端には、ここからでも視認できる
くらい大きな旗が翻っている。
赤地に黄金の獅子の紋章を掲げる、王都ロマリア。
現在、世界の中心はここと言ってもいいような、大きな都市だ。
3階建ビルに匹敵する巨大な門の前に、二人の兵士が直立不動で番をしていた。ヨロイ
も上等とわかる凝った意匠で、彼らは僕たちが近づくと、長い槍を素早く交差させた。
ロダムが先頭に出て、柔和な笑顔を向ける。
「我々はアリアハンより参りました。魔王討伐のために旅立った勇者アルスの名は、こち
らにも届いておられるかと存じますが?」
「おお、アルス様ご一行でございましたか!」
厳めしい顔をしていた兵士の表情が、アルスの名を聞いた途端に明るく崩れた。最敬礼
でサッと道を開け、高々と「開門」を告げる。
勇者アルスの名前って実はすごいんだな。本物はアレだってのにさー。
「さっそく王様にお会いください」と案内をされかけたのを、僕は「失礼になるので旅の
汚れを落としてから」とやんわり断った。
それは建前で、真っ直ぐ「ある」場所に向かう。訝しげな顔をしている仲間たちを連れ
て、街の南西にある大きな建物へ。
武器・防具屋と道具屋のテナントが並んでいる向かい側から、賑々しい音楽が響いてく
る。その先の大きな階段を降りていくと、そこがかの有名な「カジノ」。
モンスター同士を戦わせ、その勝敗を予想する賭博場だ。
「ほぉ、こんなところに……。よくご存じでしたね、勇者様」
サミエルが感心したように僕を見る。そりゃ予習してるからね。プレイ経験があるって
だけじゃなく、実際、アリアハンを出る前に城内の図書館に寄って、ロマリアについて調
べてきているし。
奥の「受付」と書かれたコーナーの前に人だかりができていた。大きな黒板が立てられ
ていて、男の人が二人がかりでモンスター名とそのオッズを、ひっきりなしに書いたり消
したりしている。
その隣には一回り小さな黒板があり、本日の結果の一覧が出ていた。
よーし、これがあれば何とかなる。結果一覧をザッと見て、受付カウンターへGO。
現在の所持金は、仲間から預かった分も合わせると約300ゴールド。
僕は次の試合の2番目に高いオッズのアルミラージに、所持金の全額を賭けた。
「えっ!? ちょ、ちょっと勇者様!!??」
仲間たちが目を白黒させるが、まあまあと手を振りつつ賭札を購入してしまう。
――2時間後。
資金を20倍ほどに増やした僕たちは、カジノ内のバーの一角を陣取っていた。
もはや声も出ない仲間たちに、テーブルに積んだゴールドの山から4分の3ほど取り分
けてあげる。
「さすが勇者様ですわ……」
エリスなんか目をキラキラさせているが、種明かしをすれば、モンスターの強さや特性
を「数値」としてよく知った上で、実際の戦績表から統計を取ったら、ほとんど外すこと
もないってワケ。大したことじゃない。
それよりも、大事なのはこのお金の使い方だ。
「ちょっとみんなに頼みがあるんだ。国王様には僕が一人で会ってくるから、その間に、
みんなには『金の冠』というものを取ってきてほしい。このお金で腕の立つ傭兵を雇える
だけ雇って、とにかく最短でね」
どうせ「Lv.1」の僕がついていったって、足手まといになるだけだもんね。
僕はロマリアから目的地までの地図を、羊皮紙に描いてサミエルに渡した。
ルーラで来たので世界地図を取り損なっているんだけど、頭に入ってるから問題ない。
北上してカザーブに行き、そこから西に向かうとカンダタが根城にしている「シャン
パーニの塔」がある。
「この最上階のカンダタ一味を倒せばOK。たださっきも言ったけど、絶対に殺さないこと。
うるさく命乞いしてくるはずだから、見逃してやってね」
カンダタとその子分の特技についても説明しつつ、そこは何度も念を押す。
あとからまた出てくるキャラだから、殺してしまったりするとストーリーが大きく崩れ
てしまう。そうなると、僕が知っているシナリオからも逸脱し、その後のショートカット
が使えなくなる可能性があるから、ここは慎重に。
「あと、こっちはシャンパーニの塔。出入口や階段が見つかりにくいから気をつけて」
塔の内部図まで書き出した僕に、さすがにサミエルやロダムは「こいつはなんでそんな
ことを知ってるんだ?」という顔をしていたけど、
「昨日の夜、ルビス様からお告げがあったんだよ」
とか言っておいたら、なんだか納得したみたいだった。ルビス様バンザイ。
半端な加護で迷惑こうむってる女神様だし、これくらいは利用させてもらおう。
3人を送り出してから、僕は一人でロマリア城に向かった。
正門の番兵にはすでに話が通っていたようで、僕はすぐに入城を許可された。
そして入った瞬間に、思わず引きそうになった。目に痛い真っ赤な毛氈が、入り口から
遙か先の階段まで一直線に続いているその両サイドに、きれいなドレス姿の女性たちがズ
ラーッと並んでいたのだ。僕が歩くのに合わせてお辞儀をしていく。
歓迎の意……というよりは、権力を見せつけたいんだろうね。気後れしたら負けだ。
階段を上がると、そこが謁見の間だった。王の前まで進んで膝を折る。サミエルに事前
に教えてもらっていた「騎士の礼」というやつだ。
ロマリア王は思ったよりガタイのいいオジサンで、豊かなヒゲをなぜながら、僕を上か
ら下まで一通り眺めた。
「勇者オルテガのご子息、アルス殿。よくぞ我がロマリアに参られた」
王の声が広間に響いた。大勢の人がいるのに、他に物音ひとつしない。教育が行き届い
ているというか、この王様も一筋縄ではいかない御仁のようですね。
うっしゃ、こちらも気合い入れてご挨拶させていただきましょう。僕のターン。
「わたくしも特別のご歓待を賜り、身に余る光栄に存じます。陛下のご聖采はかねがねう
かがっておりましたが、聞きしに優る素晴らしい都ですね。まさに明君の賢政隅々までゆ
き渡りし様、ただただ感嘆の声を漏らすばかりです」
必殺褒め殺し! さらにとっておきの営業スマイル発動! ここでターンエンド。
支援
王座の左右に控える大臣たちが「ほぉ」と小さく声を上げた。
「……ふむ。勇者殿に誉められると、儂も鼻が高いのぉ。ゆるりとしていかれよ」
王様もまんざらでもないようだ。偉そうにふんぞり返っている相手は、とにかくヨイ
ショしとけば間違いない。
そのあとは予想通り、派手な歓迎パーティーに突入した。
僕はあんまり騒がしいのは好きじゃないので、仕事でしたくもない接待に付き合わされ
てるのと同じことなんだけど、今頃モンスターを相手にしている仲間たちには、ちょっと
申し訳ない。
王様の機嫌がいいときを見計らい、僕は仲間たちが事情があってロマリアを離れている
ことと、戻ってきたら改めて紹介したい旨を伝えた。王様は二つ返事で承諾。
その時には、金の冠奪還の記念に、さらに盛大なパーティーが開かれることだろう。
そのついでのように、僕は本来の用件を切り出した。
「ところで陛下、あとで書庫を拝見せていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
「書庫とな?」
ワインを片手に鼻歌交じりだった王様が、怪訝な顔をする。
「ええ、古い歴史を持つ由緒正しきお国ですから、その蔵書もさぞかし素晴らしいので
しょう。ぜひ一度、この目で見てみたいと思っておりました」
「さすが勇者殿は篤学でおられるの。好きに見ていかれよ、あとで案内させよう」
良かった。だってアリアハンのお城にはロクな本が無かったんだもん。
アルスと「神竜の間」で最初に話し合ったときには、お互いに携帯を通して丁寧なフォ
ロー、つまり「ナビ」をすると約束していたんだけど――。
向こうにその気がないのもあるけど、結局いちいち聞いてる方が面倒なんだよね。自分
で学んでしまった方が早い。ドラクエは書籍に関する表現が多い世界だから、そういった
意味では知識を得るのが楽なゲームだ。
アルスからのコールがほとんどないのも、きっと彼も同じ結論を出したからだろう。
ところで、本は量より質が大事。ただ小難しいことが書いてあればいいってもんでもな
く、読み手のレベルと目的に合った本こそが、その人にとっての「良書」だ。
パーティーがお開きになってから、僕はすぐに書庫に案内してもらった。
ロマリアの王様が遊び人、って事前知識があったから目をつけていたんだけど。いやー
あるわあるわ、今の僕にとってのお役立ち本の数々♪ よだれ出そう。
「まずは『宮廷マナー入門(全2巻)』『公文書の書き方(全5巻)』『正しい帝王学の
ススメ(全12巻)』と。これもいいな『今日からあなたもカリスマ国王(全3巻)』『常
勝必至の兵法150選(全22巻)』。あ、全部あっちのテーブルに運んじゃってください」
案内役のお兄さんが手伝いを申し出てくれたので、僕は遠慮なく彼の手にどんどん本を
積み重ねていった。
「あの、勇者様……これ全部、今から読まれるんですか?」
「もちろん。大丈夫、眠くなる前に片付けるから」
めぼしい本はこのくらいかな。テーブルに移動する。
さっそく1冊目を手に取り、右手の親指の腹でパラララっとぺージをしごくこと数回、
「次の本…と」
「えーっ!? 今のでもう読み終わったんですか!!??」
うん、これでだいたい頭に入っちゃうんだよね、僕。
ラビッド・リーディング――「速読」ってやつ。
ちなみに「直感像記憶力」という、目で見た情報を細部にいたるまで写真のように記憶
できる能力もあったりする。
勇者専用の呪文に「思い出す」というのがあったけど、つまりはコレのことなんじゃな
いのかな? 他の人にはきっと、魔法のように思えたんだろうね。
だからアルスが僕の代わりをすること自体は、無謀ではないのだけれど。
「でもあの人には、あんな『現実』なんて、合わないと思うんだよなー」
まったく、あっちの世界の何を見て「羨ましい」なんて思ったんだろう。
こっちの方がずっとラクだろうに。
本日はここまでです。
それにしても10レス以上が平均になりそうなんですが、
「バイバイさるさん」の規制はきついですね……orz
>>142 投下する前の日に「何時頃投下する」って予告してもらえれば
ある程度支援できる…かも
乙
あと一つ一つのレス間隔が短すぎると思う
規制されないように2分はあけた方がいいかもね
鈴木日記
4月12日 雨
正直まだ信じられない。だが今までの情報を整理するとこれ以上の結論を導きようがない。
ここは、本当に信じ難いのだが、元々いた世界ではないようだ。
きっかけは想像もつかないが何かの拍子に飛ばされたに違いない。
出来れば夢であって欲しい。しかしこれは紛れもない現実なのだ。
我が人生53年目にして今初めてどうしようもないくらい途方に暮れている。
妻よ。娘よ。父さんはもうおまえたちに会えないかも知れない…。
田中日記
4月12日 あめ
よっしゃとりあえずしょぼくれた鈴木さんを元気付けるためにパーティを開く事にした!
問題は金が無い事だ。ここの奥さん(よくみるとかなり美人)にこれ以上負担かけるわけにも
いかねーししゃーねーだりーけどバイトでもすっか。
まあ今日は雨降ってるし今いち気分乗らないから明日晴れたら仕事探そう。
明日から本気出すわ。
田中日記
4月13日 くもり
今日から本気出そうと思ったけど太陽が今いちやる気なかったんで俺もやる気でなかった。
鈴木さんは本格的に引き篭もってしまった。やべー俺らマジニートじゃん(笑)
て笑ってる場合じゃねーよ大の男二人の食費も馬鹿んなんねーだろうしこれ以上
ネネさんに迷惑かけれねーいい加減バイト探さなきゃな。
明日から本気の本気で本気出すわ!
wktk
タカハシさんまとめに追加ありがとうございます!
俺様日記だとわかりにくいので今度から鈴木日記田中日記で更新していきたいと思います。
お手数ですが時間のあるときにでもまとめの方も先頭に加えてくれたらありがたいです。
みなさんめちゃくちゃwktkする面白い大作ばかりなのでこの二人の日記は
肩の力抜いて楽に流し読みできるような軽い感じでできるだけ毎日更新していきたいです。
あと補足でネネさんは某武器商の奥さんとは別人です。
鈴木日記田中日記めちゃくちゃ面白い!
続き期待してます
>タカハシ様
お疲れ様です。アプローダーいいですね!
どんどん便利になっていきますね〜。
いつも本当にありがとうございます。
まとめ作業時に1カ所だけ誤字の訂正をお願いしたいのですが、
>>141の「ラビッド・リーディング」は「ラピッド・リーディング」
の間違いです。お手数ですがよろしくお願いいたします。
田中早く本気出せよwww
>>143様
>>144様
ごめんなさい読み飛ばしてました!
支援のお申し出やアドバイス、ありがとうございます。
今度はもう少し間隔をあけて投稿してみます。
それでも難しかったら、ご支援をお願いします
>>129-142 タツミすげえwwどうりで異世界でも落ち着いてるワケだ
アルスもすごいが、こっちの方が大変そうだな
お互いの彼女の扱いが正反対w
最近このスレかなり盛り上がってきてるな
正直どのSSも続きが楽しみで仕方ない
4の人完結効果かね
田中典型的なニートww
田中日記
4月14日 くもり
今日ネネさんに働こうと思うという事を言ってみた。
そしたらアテがあるから紹介してくれるらしい。マジいい人!
しかもそこ酒場だってさ。なんかよくわかんないけど色んな人が集まる所らしい。
やべー超かわいい子とかと知り合ったらどうしよう。
すげーテンション上がるし!ネネさん超いい人!
それに比べて田中さんはダメだないつまで寝てんだよ…
まあいいやとりあえず今日は心の準備があるから明日そこ行ってみよう。
明日は本気と書いてマジの本気出すわ。
>>150 ええと今の鈴木の日記の所の上に「鈴木日記」と入れてもらって
「俺様日記」の所を「田中日記」と差し替えて欲しいです。
あと二人分はまとめて一日分でOKです。
お手数かけてすいません!
前回
>>76-78参照
「嘘…」
自分の姿は見えていても映っていないのだ。
事実に耐えられなくなった私は、扉を乱暴に開け、飛び出していった。
後ろから主人が驚いた声を出していたような気がしたが、そんなのにかまわず夢中になって走った。
凄い形相だった。
自分でわかる、でも町人達は気付かない。
そんな私の目の前に、ひとつの立札があった。
つる草に飲み込まれかけている文字を見ると私の顔から血の気が引いた。
──トルッカ
それは小さい頃プレイしたドラゴンクエストVIの世界にある町だった。
頬をつねっても痛かった。
どうやらこの世界は現実らしい。
まぁ、ドラクエVIの設定からいくと、ここは現実世界で…何妥協しているんだ。
とりあえず今の状況を確認しよう…
Eぬののふく
Eコート
という感じか(コートはたぶん装飾品あつかいだろう)
しかし…武器がない。
かなり重要な問題だ、たしか下の世界のスライムはかなり強敵だったはず。
某マンガみたく力が強くなっていたり視力がよくなっていないし。
──とりあえず両手を広げて走るだけじゃ倒せないよな
そんな事が結論として出たが…何を考えているんだ、私。
とりあえず北にある夢見る井戸へ行こう。
考えてどうなるかって問題じゃない。
幸いにも攻撃呪文を使う敵はいなかったはずだ。
そう思い、姿を見えないのをいいことに薬草をいくつかパクッていった。
こうして私は夢見る井戸に向けて出発した。
森に囲まれていたがそれもすぐに出れた。
しばらくの間平原が続き、順調なものだった。
そんな平原のしげみから青色のプルンとしたものが飛び出してきた。
スライムだ。
なぜか私がわかるらしく、私に向かって体当たりをするが柔らかいボールが当たったぐらいにしか感じなかった。
とりあえず、たいしたことないのでシカトする事にした。
それでも彼(彼女?)は攻撃の手を休ませる事はない。
欝陶しいと感じた私は青色を掴み、投げた。
いとも簡単に空を舞うスライム、少し罪悪感を覚えた。
彼(彼女?)が落ちた場所に行ってみると瀕死になったゼリーがいた。
そこで道具屋でパクッた薬草を使う。
半信半疑だったが、これは凄い、元気になった。
馬鹿みたいな話だがスライムに薬草を渡し、人間をこれからは襲うな、と言い聞かせた。
スライムは柔らかい体を曲げ、わかったと言っているかのように頷いた。
こうして私が立ち去ろうとすると何やらスライムがwktkした目で私を見る。
世に言う仲間フラグだろうか?
「来るか?」
その一言を待っていたかのように私の肩に飛び乗った。
ここに来てから初めて出来た仲間──
スライムにサスケと名付け、夢見る井戸へ向かった。
途中魔物に襲われたがサスケの説得により戦闘は避ける事が出来た。
そして古びた小屋に着いた。
木造のほったて小屋、その中に入る。
土で出来た床を進んで行くと井戸があった。
本当に不思議…と言うよりも神秘的な色の光が井戸から溢れ出していた。
「サスケ…見てごらん」
1人と1匹は井戸の底をそっと覗く。
光が溢れ出ているのにもかかわらず、まったく底が見えないのだ。
上の世界に繋がっている入口──
落ちてきたのに、また井戸の中に落ちる事で上の世界へ行く事が少し不思議に思えた。
「サスケ、今から私はこの井戸の中に入ろうと思っているんだ」
私の肩にいたものが一瞬、ビクっと震えた。
「怖いんだったら、ついてこなくてもいいんだよ?」
そう言った私も怖かった。
だが、サスケには選ぶ権利がある。
今なら間に合う、そして私の肩から降りる。
そうだろう、当然の選択だ、それなのに涙が出そうになる。
「ピキー!」
ところが彼は井戸の縁にいたのだ。
ピョンピョンと跳ねると井戸の中に消えていった。
私も後を追って飛び込む。
井戸の中で味わった事のない感覚の中、私は思った
──サスケ、お前でよかった、と──
今日はここまでです…
>>暇つぶしさん
ええ、青に染められるんです
ちなみに兄貴はスーパーサイヤ人にされました
>>タカハシさん
まとめ御苦労様です
こんな駄文でもありがとうございます
支援
( ゚д゚ )……
( ゚д゚ )「乙」
サスケ可愛い
声は聞こえるということは、レムオルか消え去り草状態ということなのだろうか。
続き、楽しみにしてますね。
サスケたん、はぁはぁ
170 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/16(月) 12:09:20 ID:UKFanQj20
あげとく
鈴木さんと田中君のその後が気になる
大きくて力強い腕が俺を抱き上げた。
そしてそのままその腕の持ち主の頭よりも高く掲げる。
俺は泣いていた。
悲しい訳でも、嬉しい訳でもなかった。
ただその誰もがそうであるように、
この世界に生まれ落ちた証を刻むように大きく呼吸をしていた。
大きな腕の持ち主は大きな声で何か言うと、
暖かくて柔らかいものの上に俺をそっと横たえる。
それを確かめるように今度は、細くて暖かい指先が俺の頬をなでた。
同じように細い指先の持ち主も俺に何か語りかける。
言葉は聞き取れたが、その意味は分からなかった。
ただ、それが愛するものへの慈しみを含んでいる事だけは分かった。
俺は泣いていた。
泣く事しかできなかった。
大きな腕の持ち主と、細い指の持ち主は幾つかの言葉を交わし、
俺は泣きながらただそれを聞いていた。
暖かい布に包まれて世界がゆっくりと揺れだした。
体中に響くような、落ち着かせるような定期的な揺れと
右側から聞こえる定期的に刻まれる音…心音が、
次第に俺の意識を奪い、白く靄ける景色は少しずつ遠ざかって行く。
まだだ。
まだあの場所にいたい。
必死で伸ばそうとした手を嗜めるように、細い指先が
俺の信じられない程小さな手を握った。
視界が白い明かりに包まれて、やがてのぼせて意識を失う時のように、
光が散り散りになって暗闇に吸い込まれて行く。
そして世界は暗転する。
今回これだけ投下しに来ました
ありがとうございます
田中日記
4月15日 あったけえ!
やべーマジやべえ!ネネさんに紹介されたバイトマジ最高!
やべーよバニーのきれいなねーちゃんいっぱい!乳でか!谷間最高!
そして店のママが美人!大人の魅力!やべーよここ天国じゃん!
こんな事ならもっと早く本気出しておけばよかったぜ。
まったくどういう店なんだかわかんないんだがおそらくキャバクラみたいなもんだろう。
ムッキムキの兄貴やらヨボヨボのじーさんやら客層は幅広い。
まあ俺の仕事は掃除に食器洗いだしどんな客がいようが関係無い。
いいなー一生ここで働きたい。もう日本帰りたくねーな…なんちゃって(笑)
鈴木日記
4月16日 晴れ
もうおそらく日本には帰れないだろう。妻にも娘にも会えないだろう。
正直自ら命を絶とうとまで考えた。だがそれは間違いだと気付いた。
私はこの世界で精一杯生き抜いてこそ愛する重子と沙織に示しがつくのではなかろうか。
重子、沙織、父さんはこの訳の分からない世界で頑張ってみるよ。
父さんはこっちで頑張るからきみたちは日本で精一杯頑張ってくれ。
そしてどうか幸せに暮らして下さい。父さんからの願いです。
田中日記
4月16日 あったけえ
うっひょーまったく毎日が楽しくてしょうがないぜ。
今日はバニーのロシーヌちゃんに電話番号聞いてみた。そしたら電話持ってないんだとよ(笑)
やっぱここすげード田舎(笑)
それとママに客に出す料理を教えてもらった。
そうそうここではみんなママとは呼ばないらしい。俺のいたとこではそう呼ぶんだぜって
教えてやったらみんな笑ってた。楽しい職場だぜ(笑)
…あれ俺なんでバイト始めたんだっけ…?
田中wwwww
このテンションの差が面白いw
バイトまで始める田中の順応性は異常wwww
鈴木さんが少し前向きになって良かった。
>>179 今すぐスレ内をu9VgpDS6fgで検索するんだ
4月17日 晴れ
いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。
田中日記
4月17日 あったかい
ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ
4月17日 晴れ
いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。
田中日記
4月17日 あったかい
ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ
4月17日 晴れ
いつまでも寝ているわけにはいかない。この世界で生きていくと決心した以上
衣食住を欠かすわけにはいかない。住む所は追々探していくとして何よりもまず
仕事を探さなくてはいけない。しかしまさかこの年齢になって就職活動に励む事になるとは。
奥さんがそれならばまた国王の所へ行けば紹介してくれるのではと言う。
確かに右も左もわからない世界で一から仕事を探すのは無謀だ。
明日国王の所へ行こうと思う。
しかし田中の奴いつの間にか奥さんの事をネネちゃんなんて呼んでいる。
仮にも今はいないとは言え旦那も子供もいる女性に向かってちゃん付けなどとは。
つくづく常識に欠ける男だ。しかしこの常識に欠ける男でもここがもはや
私達がいた世界とは違う世界でもう帰る事と知ったらどうなるだろうか。
いつかは伝えなければいけない。その事を考えると非常に気が重くなる…。
田中日記
4月17日 あったかい
ママの好みは強くて頼れる男の人だってよ。ロシーヌちゃんも厚い胸板ってステキ!
なんていっちゃってるもん…
うおおおおおおおおおおおお今日から筋トレしまくるぜええええええ
夏にはガッチガチのマッチョになって…でへへ
うわああああああマジごめんなさいorz
書き込んでも反映できないなあなんて思って何回か試してたら
俺の専ブラがおかしくなってただけだった…
スレ汚しごめんなさいorz
おk
wktk
鈴木日記
4月18日 晴れ
今日国王の所へ行き仕事を探している件を話した。明日までにいくつか探しておくから
気に入った所で働くといいと言われた。なんて親身な国王だろうか。
この国は平和だ。残りの人生できるだけこの国の人の役にたって生きていきたい。
見知らぬ土地に投げ出されたからなのかそんな事すら考えるようになった。
ところで田中である。こいつはもう仕事を見つけ既にしっかり働き出している。
逞しいというか鈍いというか。いやはやどっちにしてもこの行動力は私とて
見習うべきではないだろうか。むしろこういう不慮の事態こそこういう
単純で行動力のある人間の方が強いのではないだろうか。
少し田中の事を見直した。
田中日記
4月18日 あったかい
気持ちわりーよ!鈴木さんちょっと元気なったと思ったら急に
俺の事褒めだしやがった!何言ってるか全然わかんねーけど
田中は逞しいだの意外と根性があるだの…こんなの鈴木さんじゃねえ…オェ…
きっと何かのウィルスの頭をやられたに違いない。ここ病院あるのかな?
もしもの時は速攻連れていくわマジで…
やべーおもすれー
田中そろそろ異変に気付け
実は田中、鈴木さんの事割と好きだろw
実は結構イイヤツだよね、田中って。
――目が覚めると、そこは不思議の世界でした。
そんなフレーズが頭の中をグルグルとまわる。
昨夜は確かに安アパートの俺の部屋で寝たはずなのに、今いるところは……どこだ。
上半身を起こし、ぐるりと周囲を見回す。ベッド、タンス、窓、ドア。なにもかもが俺の部屋と違う。
なにより天井に蛍光灯がない。俺の田舎だって電球くらいあるぞ。
起き上がりボーッとしていると、突然ノックも無しに部屋のドアが開き人が現れた。
俺が起きていると思っていなかったのだろう。
その人は目があった途端ハッと驚いた表情をしてその場に立ち止まった。
「……ああよかった、目を覚ましたんですね」
「え」
女性だ。青い服、いわゆる修道服だろうか。そして綺麗な淡い金髪をしている。
ルビーみたいな赤い瞳が青い服と妙にマッチしていて印象的だ。
「あ、ああ……どうも」
頭が回らない。混乱でもしているのか。
「体の具合はどうです? あなたは5日ほど眠り続けていたんですよ」
「5日……」
5日なんて、そんなに長い間眠っていた感じはしない。第一、俺は昨日寝たばかりだ。
彼女は手に持っていた桶をベッド傍の台に置いた。そのまま俺の近くに落ちているタオルを拾い桶の中に入れ絞る。
タオルから滴り落ちる雫に太陽の光が反射してキラキラ眩しい。
本当に俺が5日眠っていたとしたら、この人はその間俺を看病してくれていたのか?
「あ、ありがとうございます」
主語のないお礼を言うと、彼女は「お気になさらず」と笑顔で言ってきた。
「そうだ! ここはどこです? 俺、なんでここにいるんですか?」
ボーッとしている場合じゃない。
俺の部屋で寝たはずなのに起きたのが俺の部屋じゃないなんて、これは異常事態なんだ。
急いで状況確認をしなければ。
「ここは海辺の修道院です。あなたはこの近くの浜に倒れていたんですよ」
「浜に、倒れて……?」
ってことはこの近くには海があるのか? 俺は海から流れてきたのか? 日本沈没?
それよりも、修道院って……ああ、頭の中がゴチャゴチャする。
「まだ目覚めたばかりですから、あまり無理しないで下さいね」
頭を抱えうんうんと唸っていた俺を見てか、彼女は俺の心配をしてくれた。
「……そういえば、あなたは……?」
「あ、申し遅れました。私の名前はマリア。この修道院で修行をしている修道士です」
修道士のマリアさんか、可愛い名前だな。俺も自己紹介し返さなきゃいけないな。
……あれ、俺の名前……
「……俺の名前、なんだろう……思い出せない」
名前の部分だけ記憶がすっぽりと抜けている。
「まあ……一時的な記憶喪失かしら。しばらくしたら思い出せるかもしれないから……気を落とさないでね」
彼女はそう言って俺を見つめながら手を握ってくれた。
……世に産まれ出てから16年、女性にこんなことをされたのは母以外初めてです、ハイ。
あの後、マリアさんは他の修道士たちに俺が起きたことを知らせてくると言い、部屋を出て行った。
「そうそう、ご飯も用意してくるわ。何日も飲まず食わずで、お腹が空いたでしょう?」
いやー、いい人だなあ。修道院の人たちはみんな、こんなに優しい女性ばかりなのかなぁ。うへへ。
「はいどうぞ。手の凝った料理はものじゃないけど、その分味の方は保証するわ」
目の前に出されたのはバターロールみたいなパンと野菜のスープ、イモの蒸したものだ。
見た感じヨーロッパの家庭料理だ。……いやヨーロッパの家庭料理なんて見たこと無いけどさ、きっとこんなのだろうよ。
「じゃあ、いただきます」
スープを一口飲む。タマネギスープっぽい味がして、なかなか美味しい。表面に浮いている葉っぱがピリリと効く。
イモはほんのりバター味で、田舎の母さんが作った粉吹き芋を思い出す。母さん元気かな。
……ここって、どこだろう。日本ではないことは確かだけど、フランスあたりかな。
「マリアさん、ここはなんていう国ですか?」
「ブランカよ。他に比べたら小さな国だけど、自然がたくさんあって農業が盛んなの」
「ブランカ……」
そんな国名聞いたことがない。小さな国ってぐらいだから世界地図に載らないくらい小さな国なのか?
「ええと……」
マリアさんはわざわざ地図を探して持ってきてくれた。日に焼けていて随分年期のはいった地図だ。
「あった、ほら、これがブランカよ。西へ行くと砂漠があって、ここからテルパドール領になるの」
所々擦り切れた古書のような匂いのする地図をのぞき込み、マリアさんの指し示す場所を目で追う。
……知らない。こんな地図は知らない。日本がない。アメリカがない。ユーラシア大陸がない。
見覚えのない国名、大陸、世界。――ここは、俺のいた世界じゃない。
「あなたの国はどこ? 海を挟んでだから……グランバニアかしら?」
「……」
「あ……もしかして、住んでいたところも覚えていないの?」
いっそ全て記憶喪失であったらよかった。
申し訳なかったが、今はひとりにさせて欲しい、そう言ってマリアさんには部屋から出て行ってもらった。
しばらくベッドの中で考え事をしていた。
俺の世界のこと、この世界のこと、いままでのこと、これからのこと。
考えれば考えるほど頭が混乱する。
信じられない。突飛過ぎる。何でこうなった。誰の仕業だ。
俺はなにもしていない。朝起きて学校通ってご飯食べて遊んで部活して寝て、ごく普通の生活を送っていた。
こんなとこに来て、俺は元に戻ることができるのだろうか。不安だ。
枕に顔を埋め、泣いた。みっともないとは思ったが、涙が止まらなかった。
それから何時間経っただろうか。俺は落ち着きを取り戻していた。悩むなんて俺のキャラじゃない。
くよくよしていちゃなにも始まらない、進んでみなきゃ始まらない。レッツポジティブシンキング!
まずは今後のことについて。俺は元の世界に戻りたい。どうやったら戻れるか世界をまわって調べてみようと思う。
そうだ、明日マリアさんに相談しよう。色々お世話になっているけど、俺がこの世界で知っている人は彼女しかいない。
そこまで考えたが、疲れてしまったので寝ることにする。頭を使いすぎた。ではおやすみ。
次の日、満足に歩けるほど体力が回復していなかったので、マリアさんに部屋に来てもらって相談をすることにした。
コンコンとドアがノックされ、少しの間をおいてマリアさんが入ってきた。そのままベッド近くの椅子に腰掛け、こちらを向く。
記憶喪失だとわかった俺のことを、マリアさんは自分のことのように悲しんでくれていた。本当に、優しい人だ。
……俺の言うこと、信じてくれるかな。
「あっ、あの、マリアさん、えーと……驚かないで、聞いてもらえますか?」
「ええ、いいけれど、なにかしら?」
深く深呼吸をする。緊張するな。俺は落ち着いてゆっくり言葉を出した。
「……実は、俺、この世界の人間じゃないんです」
マリアさんは信じられないような顔をしている。そりゃそうだ、いきなりそんなこと言われたら普通驚く。
「あ、ごめんなさい。驚かないって言ったのに……」
「いえ、急にこんなこと話した俺が悪いんです」
「でも本当なの? この、世界の……人間じゃない、って」
「はい……」
うう、段々悲しくなってきた。あ、目から水が……引っ込め水! こんなところで泣くな俺! 負けるな俺!
「そう、なの……で、これからどうするの?」
「とりあえず、元世界に帰る方法を探します……って、マリアさん! 俺の言ったこと信じてくれるんですか!?」
「ええ。……あなたの目、嘘をついている目じゃないから」
俺は驚いた。信じてもらいたかったはずなのに、いざ信じてもらっちゃうと……。
嬉しいな!
「……という訳で、旅に出ようかと思うんです」
「ちょっと待って。旅に出るのはいいけど、外にはモンスターがうようよしているのよ」
「モンスター?」
つまり、怪物? そんな生物がいるなんてキイテナイヨ。
マリアさんがうーん、と手を顎に当て考え事をしている。どうしたのだろうか。俺の馬鹿さに頭を痛めたのか。
するとマリアさん、いきなりポンと手を打ち笑顔で話した。
「じゃあ、私と一緒に旅をしない? ひとりよりは心強いでしょう? ね?」
「はい?」
それはあれか。長い旅路を若い女の人と二人っきりでtqあwせdrftgyふじこlp;@
思春期まっしぐら多感な16歳にとってこの展開はやばすぎる。
ん? マリアさんって何歳だろう。
「突然ですがマリアさん、何歳ですか?」
「え? 私の年齢?」
って、なに尋ねてるんだ馬鹿俺!
女性に年齢を聞くことは太古よりタブーとされていることなんだぞ!
「あーあーあ、言いにくかったら別に流してくれても構いませんよ……はは」
「今年で18になるわ」
「へー18歳ですかー俺より2つも年上なんですねーはははー、って女性がそう簡単に年齢言っちゃ駄目ですよ!」
「そうなの?」
そうですよ。そっか、マリアさんてば18歳なんだ。落ち着いていて大人な人だなとは思ってたけど以外と若いな。
いやいやいや、だからって老けて見えるとかそういう訳じゃなくて、年齢のわりには老成している……違う違う違う!
落ち着け俺! 優しくて綺麗で可愛い年上の女性にお誘いを受けたからって浮かれるな俺!
「で、返事はどうなの?」
「えっ?」
「だから、私と一緒に旅ましょう、って」
「あっ、それは……その……」
嫌なわけではないのだが、どうもこんな状況になるのははじめてなもんでして。どうすればいいか戸惑ってしまう。
フラフラと目線が泳ぐ。するとマリアさんは、しびれを切らしたのか今までよりも勢い強く喋った。
「はい!? いいえ!?」
「はい!」
ああっ! マリアさんの勢いに飲まれて反射的に答えてしまった。
マリアさんの方を見ると、目の前でニコニコと満足そうに笑顔を浮かべていた。
「じゃあ決定ね。出発は……どうする?」
「ええと……まだ身体が本調子じゃないので……もうしばらく待っていてくれれば嬉しいんですけど」
「構わないわよ。ちょうどこの修道院は宿屋も兼ねてるの。お代はもちろん、無料でね」
ポーズを決めてウィンクを送ってくるマリアさん。修道士のくせに小悪魔かこの人。
なんかもう精神的に疲れたし、さっさと身体を回復させるため俺はもう寝ることにする。
あ、そういえばなんでマリアさんが旅したいのか聞くの忘れてた。
……ま、いいや。眠たくなってきたし、続きは明日でいいよね。
いい夢が見られますように。
はじめまして。今回初投下させていただきました。
舞台はオリジナル、天空シリーズをベースにして進めていきたいと思っております。
まだまだ精進が必要な拙い文章ですが、これからよろしくお願いいたします。
>>197氏
投下乙です!5で修道院から目覚めるのは歴代でも初のアイディアかな?
しかし16歳で田舎から出ててアパート暮らしの学生とは、なかなかタフですな。
その精神力もポイントになったりして。いずれにせよ、期待してます。
>>197 その発想はなかった!
続き期待するぜ。
修道院でのめざめ、これから待っているマリアさんとの冒険。
わくわくする展開ですね。
#修道院は自給自足が基本ですから、自家製のパンと野菜スープ、じゃがいも料理で大正解だと思います。
客人のことは、キリスト様とおもって誠心誠意おもてなしするので、もしかしたら彼女達が食べているものよりも、いいものを出してくれたのかもしれませんね。
鈴木日記
4月19日 晴れ
今日は国王が用意してくれたいくつかの資料に目を通した。
しかし殆どが「兵士募集」といったいわゆる警備業務ばかりだ。この齢で肉体労働はいささか厳しい。
とは言うものの雇ってもらう側として贅沢は言えたものではない。
明日面接に向かう事にしよう。
田中日記
4月19日 あったかい
痛てえ…体中が痛てえ…調子のって筋トレし過ぎたぜ…
もう動けない…
新たな展開にwktk
田中www
ほっほ
205 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/22(日) 15:19:30 ID:Ove36WlJ0
おまえらまだやってたのか。
本当に阿呆ばかりだな。
>>205 誰に対してなんの感想かわからない。
この板全体に対してなら、あまりに感想つかなくて他の板に流れた職人の一人が、
結局向こうでも気に入らない展開になって八つ当たりに来たのかと思ったが。
構うな
目を開けると前方に光が見えた……大きな、まぶしい光が。
前へと歩いても光に近づいていく気がしない。ずっと同じ距離のままだ。
『ようこそ……我が世界へ』
しばらく歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。
聞こえてくる、というよりも頭の中に響くという方が正しいかもしれない。
俺はどこから聞こえてくるのかわからない声に警戒し、あたりを見回す。白の空間と光しか見えない。
「誰だ!?」
『私は竜の女王……世界の創造主です』
創造主……つまり、神様か? もしかして、こいつが俺をあの世界に連れてきたのか?
「神様が俺になんの用だ!」
声の主の位置が掴めない。俺はとりあえず光に向かって叫んだ。
「俺を元の世界に帰せ! あんたが俺をこっちに連れてきたんなら、帰すことだってできるだろう!?」
『できません』
「どうしてだ!?」
ふざけるな。俺は元の世界に帰りたいんだ。
俺の叫びも空しく、神様は淡々とした声で話を先へと進める。
『あなたは導き手。あなたに力を授けましょう』
「……導き、手?」
意味がわからない。俺がこの世界に連れてこられた理由がそれなのか? 力を授けるって一体……?
「おい、神さ……っ!」
問いかけようとしたその時、光が強さを増し俺の体を包んだ。
眩しい、目を開けていられないくらい眩しい。
『あなたに授ける力は一つの呪文。私の力の一部です』
”なにか”が俺の中に入っていく感覚がある。その”なにか”は俺の中に入ると染み渡るように全身に広がっていく。
じわりと体が温かくなっていく。不思議な感覚だ。
「あんたは、俺に、なにをさせたいんだ?」
『導きなさい。勇者を、そしてその仲間たちを』
導く? 勇者? ああもう、なにがなんだかわからない。
「とりあえず俺はその勇者様とやらを導けばいいんだな? ……導いたあと、元の世界に帰れるんだろうな!?」
『……約束しましょう』
帰れる。元の世界に帰ることができる。暗かった道に希望の光が見えた。
「で、勇者をどこへ導けばいいんだ?」
『天空へ』
「天空?」
変なことを言う。こんな飛行機もなさそうな世界で、どうやって天空に導けと。
っていうか勇者って誰だ。名前は何だ。どんな姿をしてるんだ。どこに行けば会えるんだ。
『……時間が来ました……導き手、あなたに授けた呪文、それは――』
「おい! 神様! 神様っ!」
神様が言い終わる前に、光が一層強くなりあたりは光に包まれた。
眩しくて反射的に目を閉じた。まぶたを閉じていても強い光を感じる。
すうっと意識が落ちる感覚。消えそうな意識の中で、神様の声が聞こえた。
――ドラゴラム、と。
「っ!」
ガバッと布団をはね飛ばし目を覚ます。一筋の汗がこめかみを伝い、首まで流れ落ちた。
……不思議な夢だった。竜の女王、勇者、導き手、呪文……鮮明に覚えている。
なぜか心臓がドキドキしている。息苦しい。落ち着こうと、胸に手を乗せてみる。
大切なものが芽生えているような、そんな温かさを感じた。
「ごめんね、今用意しているからもう少し待ってて」
マリアさんはそう言って部屋の中へと戻っていった。暇なのでしばらく教会内を散策してこよう。
ちなみに先程マリアさんが言っていた用意とは、旅支度のことだ。
あの夢を見た後、不思議なことに体力が元に戻っていたのだ。神様の力だろうか。
そのため、急遽旅立つことになってしまった。俺は明日でいいのに。「善は急げ!」らしい。
俺は大広間にある絵を見ていた。広大な海に数隻の船と鳥。全体的に青っぽい絵だ。
うーん、綺麗だとは思うがいまいち芸術というものがわからない。
そういえば家の本の中にムンクとかモナリザとかの絵があったな。モナリザは確か、ダヴィンチが描いたんだったか。
……旅に出ようと決めた次の日に目標ができるなんて、よくできてるなあ俺の運命。
やっぱり神様が操作でもしているのかな、人の運命は。創造主だもんな。
元の世界にいたときなんて、神様なんかテストの時ぐらいしか信じていなかったけど、ここには神様は存在するんだ。
不思議だなあ。本当に不思議だ。この間まで毎日学校に通って勉強してバイトして……そんな毎日だったのに。
そんな俺が、剣と魔法のファンタジーな世界に来るなんて。どこの漫画の話だよ。
絵の前でふらふらしていると、小さな女の子が俺に声をかけてきた。
ちょこんと俺の前にやってきてお辞儀をする。俺もつられてお辞儀をする。
「お兄ちゃん、元気になったんだね!」
「うん、心配してくれたんだね。ありがとう」
茶色の髪に大きな赤いリボンをつけている。小学校低学年くらいの子供だろうか。
そういえばこれくらいの妹がいたなと思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。
妹? そうだ、俺には妹がいる。でも、名前はなんだっただろうか。あれ? 思い出せない……
「……あれ、お兄ちゃん、どうしたの? まだ痛いの?」
「あ、ああ、いや、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだから」
どうやら難しい顔になっていたらしい。小さい子は人の感情に敏感だっていうよな。
心配そうにのぞき込む女の子にへらりと笑顔を見せる。女の子も笑顔になった。
「よかった!」
妹の名前を思い出せないのが少し引っかかるが、ただの記憶喪失だろ。そう思うことにしておいた。
しばらく女の子と会話していると、用意を終えたマリアさんが階段から下りてきた。
マリアさんの服装はあの青い修道服ではなく、白いローブに赤いずきんをしている。まるで赤ずきんちゃんみたいだ。
ちなみに俺は水色っぽい服。しかしスカートっぽいひらひらが。まあズボンははいているからそこは安心だ。
この服装はこの世界での一般的な旅装束らしい。マリアさんが用意してくれたものだ。
俺は持ち物として食糧といくつかの薬草、木の棒を受け取った。
薬草とは傷を瞬時に治す優れものの薬で、木の棒はひのきの棒という武器とのこと。ぶっちゃけおもちゃにしか見えません。
外に出たらモンスターがうようよしている、自分の身を守るのは自分しかいないと言われた。
……これは遊びじゃない、ゲームじゃないんだ。
俺は頬をパァンと叩き気合いを入れた。強く叩きすぎて痛い。
この教会で一番偉いマザーだかいう人にお礼を言い、俺たちは教会を出た。
あの女の子が窓から手を振ってくれている。俺は大きく手を振り返した。
「まずはここから一番近い町、リムルダールに向かいましょう。そこで大体の装備を調えなくっちゃ」
世界地図を広げマリアさんは言う。部屋の中で見た地図だ。
リムルダールはここから南西の草原地帯にある町。一番近い町といっても3日はかかるらしい。それ全然近くない。
途中大きな森があって、その森は周辺の住人から迷いの森と呼ばれているという。
入ったっきり出てこられなくなって行方不明になった旅人もいるというのだ。覚悟していかねば。
あと、この町は湖の上につくられており、内陸でありながら水資源が豊富なのだという。
町を更に西に行くと砂漠があるため、砂漠を渡る人たちにとって水の豊富なこの町はいい拠点となる。
俺たちはまだ冒険歴が浅いので砂漠の向こうへ行くようなことはしないが、いつか行くことになるだろう。
「あ、ねえ、あなたの名前……どうする?」
手に持っていた地図をしまいながら俺に尋ねる。
すっかり頭から抜けていた。今俺は記憶喪失なんだった。
「あー……やっぱ名前が無いと不便ですよね。なんて名前にしようかな……うーん……」
頭を捻って考える。自分の名前を考えるというのも変な感じだが、まあそれは仕方がないだろう。
名前名前名前……。
「……そうだわ、私があなたの名前を考えてげましょうか?」
「本当ですか?」
それはありがたい。正直サトチーやらゆきのふやら変な名前しか思い浮かばなかったところだ。
是非お願いしますと言うと、マリアさんはしばらく考え込み、こう言った。
「トンヌラはどう?」
「全力で拒否させていただきます」
俺とレベルが変わらないくらいの酷さだ。トンヌラ……なんて間抜けな響きなんだ。
とてつもない人生を送ることになりそうな名前だ。なんとなく。
「そう? じゃあ、もょもと」
「勘弁して下さい」
今どうやって発音しましたかマリアさん。
もよもと、もゅよもと、ももと……言えねえ。
「うーん……なら、アレフはどう?」
「あ、その名前いい!」
アレフ! 勇者っぽくて格好いい、っていうか今までのより遙かにいい名前だ。
「決まりね。……アレフって名前はね、私の国では聖なる名前なの」
聖なる名前って……んなご大層な名前俺がもらっちゃっていいんですか。
「これからよろしくね、アレフ」
「よろしくお願いします、マリアさん」
俺たちはどちらともなく手を差し出し、握手を交わした。
あ、またマリアさんの旅の理由を聞くの忘れてた。まあいいや、歩いている途中にでも聞こう。
支援
リムルダールへ向かう間、マリアさんはこの世界について話してくれた。
簡単に纏めると、この世界には竜王という魔王が存在している。けど竜王の住処は誰にもわからない。
昔人間と一緒に暮らしていたモンスターが凶悪化したのは、この竜王が出す悪の波動の所為らしい。
闇の波動は年々強力になってきていて、それを見かねた神様が竜王を倒す運命を持った勇者を誕生させた。
それが今から16年前。ってことは勇者は俺と同い年なのか。
ていうか、神様……って、この間の夢に出てきた竜の女王のことだよな。竜王と竜の女王か。
「そして、その勇者が誕生したとお告げがあった後に――」
竜王は自分を脅かす勇者を、力のない子供のうちに潰してしまおうと考えた。
そして、その年に産まれた子供たちを配下のモンスターを使い、無差別に捕らえて殺していった。
「……っ」
「……私の弟も、その年に産まれたの」
「弟がいるんですか」
「ええ……実はね、私の旅の目的は弟を探すことなんだ」
いままでこちらを向いていた顔を前方に向け、淡々とした口調で続ける。
視線は遠くを見つめており、どこか寂しげな雰囲気を出している。
マリアさんの話を要約すると、幼い頃に彼女の家族が住んでた国はモンスターに滅ぼされてしまった。
モンスターたちは国中の子供を次々に捕らえていった。その中、マリアさんたちは両親に逃がしてもらう。
その間に弟さんと色々あってはぐれ、マリアさんはあの修道院に迷い込んだ。
弟を探しに行こうとしたけどマザーに止められ、力をつけるためにあそこで修行をすることになった。
で、そろそろ旅に出ようかというときに俺が現れた。
ひとり旅よりふたり旅の方が危険は少ないから、俺を誘ったと言う訳だ。
でも俺なんか誘っても……全然戦力にはならないのに。
話し終えた後、マリアさんの顔に影が落ちる。辛い話なのに、俺に話してくれて……
「……すみません」
「? ああ、いいのよ。気にしないで。この世界ではそう珍しいことではないし。
……あなたには全部話しておかなきゃって思って。なんでそう思ったかはわからないけど」
俺のいた日本で起きることなんか話にならないくらい、酷い人生を送ってきたマリアさん。
マリアさんはよく笑う。いつも笑顔だし些細なことでもよく笑う。俺だったらあんな生活送ってきたら笑顔じゃいられない。
この人は俺よりずっとずっと強い人だ。
俺も強くならなきゃ。マリアさんがこれからも笑顔でいられるように。マリアさんを守れるように。
……って、うわ、俺シリアス! 俺超シリアス! かゆくなった!
話題を変えて、呪文について話すことにした。
呪文というものは、魔力を使い様々な現象を起こす能力。魔法とも呼ばれている。
マリアさんも呪文が使えるという。呪文には正の力と負の力があって……うんたらかんたら。
まあ、攻撃呪文と補助呪文と回復呪文と特殊呪文に分けられるらしい。
で、マリアさんの得意なのは攻撃呪文。
「修道院にいたら、普通は回復や補助呪文が得意になるはずなのにね……どうも私には合わないみたい」
との談。ふむ。呪文の習得は、人により得手不得手があるってことか。
ん? 呪文……そういえば夢の中で神様に呪文をもらったな。あれは俺に使えるんだろうか。
「マリアさん、呪文って俺にでも使えます?」
「魔力と努力があれば誰にでも使えるわよ。あなたには微かだけど魔力があるから、修行すればきっと身につくわ」
「俺にも呪文が使えるのかぁ……」
目線を自分の両手に落とす。大きな苦労をしてきたことのない綺麗な手。
まあ実家の畑仕事の手伝いおかげで多少ごつくなってはいるが。
今までそんな能力とは無関係な世界で生きてきた俺だけど、そんな俺にも呪文が使えるかもしれない。
……俺、なんだかワクワクしてきたぞ!
「そうだわ、呪文がどういうものか少し見せてあげる」
マリアさんはそう言って近くに落ちていた小枝を拾ってきた。なにをする気だろうか。
「この枝と杖を見ててね」
そう言うとマリアさんは杖を構えた。すると杖を握る手から赤い光が見えた。
光はそのまま杖を伝い、杖の先の大きな赤い石に。石の中で光がスパークしている。
そしてその石からからバチリと雷のように反対の手へと流れた光は、人差し指に集まる。
「メラ!」
なにやら変な言葉を唱えた途端、その指先から火の玉が飛び出す。
そして指のさし示す先にあった小枝に命中し、小枝は勢いよく燃えた。
ほんの一瞬の出来事だったが、俺の意識は完璧にその火の玉に持って行かれた。
「すっげー!」
「ふふっ、これはメラといって呪文の中では基本中の基本なのよ」
「あの、質問なんですけど、その杖の役割ってなんです? 先っぽの赤いのからボワーって光が! 赤いのボワーって!」
興奮の所為か大げさなボディランゲージ付きで話す俺に苦笑し、マリアさんはその杖を手渡してくれた。
思ったより軽くて、手によく馴染む。ぶんぶんと振ってみるとひのきの棒より振りやすい。
「これは装備者の魔力を増幅させる杖で、その石は魔力が込められている特殊な鉱物なのよ」
「へえええ……」
そう言われ先っぽの石をよく見てみると、石の中心にキラキラした光が見えた。これが魔力か。
ワクワクドキドキ、俺の中の好奇心がうずく。俺は宙に向かい杖を振り、先程のマリアさんを真似て呪文を唱えてみた。
「……メラァ!」
アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
俺の叫びは空に消えていった。隣ではマリアさんがクスクス笑っている。ああ、恥ずかしい!
「魔力があるからっていきなり使えるものじゃないわよ。毎日の精神集中、そして呪文理論について勉強しなくちゃ」
呪文は一日にしてならずですね。でも大丈夫です。こう見えても俺、勉強好きってわけじゃないけど、嫌いじゃないですから。
しばらく落ち込んでいたら、マリアさんに励まされた。で、呪文を教わることになった。わーい。
当面の目標は魔力を増やすこと。魔力がなければ呪文は唱えられないからだ。
魔力の量は元々の才能もあるけど、努力次第で幾らでも増やせるそうだ。よし、頑張ろう。
とりあえず元気に前へ進んでみましょうかね。
神様、竜の女王様。俺たちの旅にどうか祝福を。
第三話投下終了しました。
規制に引っかかり途中で止まってしまいました。
>>214さん、支援ありがとうございました。
乙です。
前向きな主人公に好感!
序盤から気になる伏線も出てきて、
続きが楽しみです。
今4の人◆gYINaOL2aEの作品を読み返してるんだが
何度読み返しても涙が止まらなくなる程感動してしまう件について
完結した職人への感想とか完全にチラ裏だろ。自演乙と言われても仕方ないくらいにな
頭の中がぼーっする。
なんだか色々ありすぎた気がするから。
なんで私、こんな所にいるんだっけ?
寮の自室で眠りについた、あぁ、眠った時もなんだかあやふやだったっけ。
とにかく疲れたな、寝るか…いや寝ているのか?
とりあえず…1匹2匹3…
「ピキー!」
「うん…3ピキ〜…」
ん?ピキー!っtqあwせdrftgyふじこlp;@
「ピキー?」
「あぁ、ごめんごめん、サスケ」
ここは(絶対に)DQ6の世界だったんだ…やっぱり夢ではないらしい。
私達は石畳の上に転がっていた、まわりは霧がたっていて、へたに動けばサスケの姿も見えなくなりそうだった。
「サスケ、ちょっとおいで」
見慣れた場所だが、未開の土地だ。
離れたらもう会えないかもしれないと思えたので、とりあえず固まって移動する事にした。
そしてふと思った。この言葉の通じない異国のスライムに何度助けられたのだろう。
この肩の重みに、温もりに、本当に最弱の生き物なのだろうか?そんな疑問がうかんだ。
霧の切れ目から陽射しが差し込む。出口が近い事を私は確信した。
青空が顔を覗かせた。
なかなか清々しい空気だ、さすが車が通っていないだけある。
私の記憶が正しければ南に行って突き当たったら左…また南…うん、とりあえず歩け、私。
少年は荒野を行く。
すまん、聖剣伝説だった。
馬鹿な事を考えつつ、南下を続ける、すると一カ所、雰囲気の違う場所があった。
私は近付くと大地にぽっかりと穴が開いていたのだ。
なかなかの圧巻だった。
そこを覗くと、下にはトルッカの街が見え、その上には雲がゆったりと泳いでいた。
「すごい…サスケ、街が下に見えるよ」
こんなのはなかなか見れないんじゃないの?カメラでも持ってこればよかったと思っていた。
のんきに景色を楽しんでいると、男の人の叫び声がした。
「助けてくれェーーー!」
幻聴ではない、という事はまた私達はあの大地に滑り落ちるんじゃ…
「助けてくれェーーー!」
この野郎、私に感謝しやがれ、私は声のする方へ走った。
「誰かー!」
「今行きますよー!」
当たってくだけろ、くだけちゃいかんが。
注意をしながら大地の穴の周りを見る。
「ここだ、ここだ〜!」
叫ぶな、まったく。
「すまんが引っ張り上げてくれんかのぅ」
はいはい。
「それは木の枝じゃ!」
サーセンwwwww
私の力が強かったのか、無事におじさんを助ける事が出来た。
御礼としてシェーナの街まで送ってくれると言って、馬車の荷台に乗せて貰った。
痩せた馬だったが、倒れたりする事なく、夕暮れにはシェーナの街にたどり着いてくれた。
おじさんは御飯を御馳走すると言って、私を招きいれてくれた、結構いい奴じゃないか。
市場に近い緑の屋根の家の扉を開けると、娘さんらしい赤毛の女性がおっさんに抱き付く。
よっぽど心配していたんだな、と思った。
娘さんは私を見るとこういった。
「貴方ね、ライフコッドから来た青い髪の人って!」
なんですと?
娘さん…メイサさんの話によると、ライフコッドから頼りなさそうな青い髪の人間がくると連絡があったらしい。
おっさんも「女なのに関心な奴だ!」とガハガハ笑った、けなされていると見ていいのだろうか。
何はともあれ、冠職人の家で晩餐をする事になった。
見た事のない料理だったが、これがなかなか美味しい。
材料は私達の食べるものとそう変わらないようで、調味料だけが違うようだった。
塩や胡椒はあったものの、醤油はなく、かわりに「ひとしこの実」というのがあった。
なんだか危険な調味料のように見えたが、高級な香辛料らしい。
夜になったら部屋を貸してくれた。
なんていい家族なんだろう…1日くらいしかたっていないのに、なんだか久しぶりにシャワーを浴びた気がした。
明日、ライフコッドへ向けて歩こう、一応冠を届けなくてはいけない…その前に武器も欲しいなぁ…そんな事を考えながらベットの中に体を滑らせた。
そんな今日はヒツジを数える事なく私と1匹は眠りについた。
乙です
職人方の書くスライムは可愛いなぁ
スライムたん、かわいいです♪
ほしゅ
鈴木はどうなった
鈴木日記
4月20日
今日は屈強な兵士の方と面接をした。
平和だと思っていたこの世界だがその実「魔王」と呼ばれる人物によって危機にさらされているようだ。
よくわからないがどこかの国の独裁者が世界中に戦争を仕掛けたという事だろう。
どの世界でも人はどうしてこう争いだがるのだろうか。
まあそれは置いといて慢性的に兵士が不足しているらしくなんとこんな私でも正式に採用されてしまった。
と言っても前線に立つのではなく城や町の簡単な警備なので問題は無いだろうとの事。
不安は大きいが明日からこの国の平和のために頑張ろうと思う。
田中日記
4つき20にち
いたい
いたいよ
しごとやすみたいよ
鈴木日記
4月21日
私に与えられた仕事は町の見回りだ。さっそく地図を頭に叩き込んでいざ町へ…
だが現実はそんなに甘くなかった。重い。甲冑が非常に重いのである。
もちろん剣も重い。こう見えて私は剣道三段だ。高校大学と剣道部で汗を流したものだ。
だからといって甘く見ていた。それはそうであろう。真剣を振り回した経験など当然無い。
とにかく一番軽装な甲冑を貸してもらい先ずはこの格好で動き回る事から始めなければ。
重子、沙織、お父さん頑張るよ。元戸中商事営業部部長の名にかけて!
田中日記
4月22日 いたい
恐い…ママが凄く恐い…今日さすがに動けなくて仕事休もうと思ったらいきなり押しかけてきた…
目が全然笑ってねーでやんの…俺は思ったね。ママほど「極道の妻」というフレーズが似合う女はそういない!
あとロシーヌちゃんが筋肉痛の腹筋をつついてくる。痛い。凄く痛い。
しかし男田中こんな事でヘコたれるわけにはいかない!
夏にはムキムキになって奇麗なおねーちゃん達と海にいくのだ!
鈴木日記
4月22日 晴れ
見かねた兵士長が剣の振り方を教えてくれた。なかなかどうして難しいものである。
早く仕事を始めなければいけないのに多数の人に迷惑をかけて非常に申し訳ない。
体を鍛えて技を磨くのも兵士の仕事のうちだと慰めてもらったがいつまでもこのままではいけないだろう。
しかし腰にくるなこの仕事は…
田中日記
4月22日 あったかいむしろあつい
ちょっと筋肉痛にも慣れてきた。心なしか腹筋が割れてきた気が…
やべ今の俺超かっこいいかも!
鈴木日記
4月23日 晴れ
今日は町の地理に慣れる為に町を散策した。改めてこの世界の人たちを見て回ったわけだが
古きよき時代の田舎といった所だろうか。道行く人が気さくに声を掛けてくれて非常に心地よかった。
それはそうと今更だが初めて田中の働いてる現場を見た。昼食を田中の働いている店でとったわけだが
破廉恥な格好をした若い女の子にちょっかいかけたり奇麗な店主にデレデレしたり本当に不真面目な奴である…
店主の話によると店の空気が明るくなるし雑用はしっかりこなしているからこれでいいとの事だが
上司としてなんともやるせない気持ちになった。
追伸:田中の手料理とやらを初めてて食べた。これは人前に出すべきでは無い。断じて。
田中日記
4月23日 あったかい
今日鈴木さんが店に来た。ママが自分の実力を試すいいチャンスだと言って俺に飯を作らせた。
鈴木さん感動して固まってやんの(笑)そりゃそうだなかわいい部下がうまい飯作ってくれたんだから(笑)
こんどネネちゃんにも作ってやるか!
支援
じゃあ俺も支援w
田中ww
>>237 いつもありがとうございます!すいません今日ここまでですorz
GW中に追いつく予定で…
>>240 さん
おつかれさまです。
気負いしすぎず、ご自分のペースでがんばってください!
職人さんから個別に指定頂いたまとめ方は、反映しています。
もし、考えていたまとめられかたと違う場合は気軽に言ってください。
まとめサイトはここまでまとめました。
また、避難所で要望のあった絵板を設置しています。
アプロダとあわせて、自由に使ってください。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html *余談
ファイル数も250を超え、容量もテキストだけなのに過去ログを省いて約4MB…
書いていただいている書き手さん、読んでくれている読み手さん、感謝です。
242 :
R:2007/04/29(日) 00:14:30 ID:6E2YpHveO
まとめお疲れさまです!
田中は今日何してるんだろな
まとめ人さん乙です。
今日某神書き手さんの作品をプリントアウトしたんだが、えらい紙の量になったw
改めて書き手さん方やまとめ人さんの苦労に乙と言いたい。
こんだけマメなまとめ様がいらっしゃって、ありがたいです。
多謝!
お疲れ様です。
>>242-245 ありがとうございます。
書いてくれる人と読んでくれる人がいないとまとめは成り立ちません。
今後ともよろしく…
絵板、いい絵を描いてくれた人がいますね〜
萌えというヤツですか!
保守
保守!
俺たちは迷い森の中へ入った。さっきまでの平野と違って随分歩きづらい。
森の中は光が入りにくいらしく薄暗い。霧が発生しているようで、視界も絶不調。
更に同じような木ばかり生えていてさっきまでいた位置と今の位置の区別がつき辛い。迷うわけだ。
しかも土や木の根がところどころ盛り上がっていて足が取られる。さっきなんてつまずいて転んでしまった。
幼い頃から裏山の中を駆けずりまわっていた俺だけど、流石にこれは辛い。段々と体力が削られる。
一方マリアさんはザクザク先へと進んでいく。この世界の人はみんなああも道ならぬ道を歩くのに慣れているのか?
置いて行かれないよう、俺は震える足を前へ前へと踏み出していった。
突然ガサリと背後の草むらから音がした。
マリアさんはすぐさま振り向き身構えた。遅れて俺もひのきの棒を取り出し身構える。
バサバサッという音とともに草むらから出てきたのは、空飛ぶ黒い塊と青いタマネギみたいな生き物が1匹ずつ。
「スライムとドラキーよ! アレフ、気をつけて!」
どっちがスライムでどっちがドラキーだ! 軽く混乱していると、タマネギが俺に襲いかかってきた。
タマネギのタックルが俺の腹に直撃。一瞬息が詰まり衝撃で後方に吹っ飛ぶ。マリアさんが俺の名前を叫んだ。
体当たりされた腹と、地面に打った背中が痛い。起き上がるとタマネギが降ってきた。
俺は反射的に手に持っていたひのきの棒を振った。するとうまくヒットし、タマネギを吹っ飛ばした。
「このっ、タマネギ!」
吹き飛んだ方向に向かい、思い切り踏みつけた。ぐにょっとした感触が気色悪い。俺は何度も踏みつけた。
マリアさんの方を見やると、黒い塊をメラで火だるまにしているところだった。よかった、無事だ。
もう一度タマネギの方を見る。タマネギはもがいていたがしばらくすると動かなくなり、光になって消えていった。
消えた後に残っていたのは小さな石。宝石みたいにキラキラしている。何だろう。とりあえず拾っておいた。
出発前にマリアさんにもらっていた薬草をかじる。苦い。じいちゃんに無理矢理飲まされた青汁よりまずい。
しかし腹と背中の痛みがスッと消えていった。おお、凄い効果だ。
マリアさんが言うには、さっきのモンスターはタマネギがスライムで黒いのがドラキーというらしい。
どちらも下等なモンスターで、そんなに手強い相手ではない。最初に出会ったのがこいつらでよかった。
さっき拾った石をマリアさんに見せた。これは”いのちの結晶”というものらしい。
この世界に存在する生物、人間もモンスターも、このいのちの結晶を身に宿している。核みたいなものだ。
結晶は本体の種族や能力により色や形が違う。本体が強ければ強いほど結晶の質も上がる。
それを利用しての報奨金制度というものがこの世界にはあるという。
町に設置されている施設に結晶を持っていくと、倒したモンスター本体の種類や強さに応じてお金が貰えるのだ。
……なんだか、凄い世界だな。
草をかき分け歩いていると、またモンスターが出てきた。今度はドラキーが3匹。
キィキィ鳴いて俺たちの周りを飛び回る。動きが素早い、目で追いかけるのがやっとだ。
ドラキーの笑っているような口が俺を馬鹿にしてるみたいに見えて胸くそ悪い。
ひのきの棒を握る手に汗がにじむ。落ち着け俺。集中するんだ俺。
「メラ!」
隣にいたマリアさんが呪文を唱えた。指先から火の玉が出て1匹を炎に包む。
するとギィギィと耳障りな声をあげて地面へと落下していった。
そちらの方に気を取られていたら、もう1匹のドラキーがこちらへ向かってきた。
……さっきの戦いの後、マリアさんはアドバイスをしてくれた。
ドラキーは動きが速く飛び回るけど、攻撃は体当たりだけ。しかも一直線にしか向かってこない、と。
向かってくるドラキーにタイミングを合わせ、ひのきの棒を野球バットのようにスウィングする。
会心の一撃! ひのきの棒にあたったドラキーは向かいの木に衝突し、消滅した。
「やったわね!」
マリアさんが駆けつけてくる。その顔には笑顔が浮かんでいた。
緊張が解けた俺は、糸の切れた操り人形のようにその場にへたりと座り込んだ。
しかもただドラキーを避けて棒をひと降りしただけなのに肩で息をする始末。情けない。
でも二人とも怪我がなくてよかった。
「モンスターの動きを見極めて攻撃……一度の助言で実行できるなんて、すごいわ」
ありがとうマリアさん。実は無我夢中でした。きっとまぐれです。
幾ら歩いても出口が見えない。日も傾いてきたし、俺たちはこの近くで野宿をすることにした。
女性と二人きりの野宿。……ドキドキワクワクってレベルじゃねーぞ!
さっきのところから少し進むと、草が生えていないそこそこ広い場所があった。
周りが確認しやすくちょうどいい。俺たちはそこで休むことにした。
野営に火は付きもの。ということで小枝をいくつか集めてきて焚き火をする。
着火はマリアさんのメラで一発。なんて便利なんだ呪文。俺も早く使いてー。
ホウホウとフクロウが鳴く声が聞こえる。この世界にもフクロウがいるのか。
するとマリアさんが、あれはフクロウではなくてアウルベアーというモンスターだと教えてくれた。
フクロウみたいな顔をしているけど、体は熊のように大きく腕力も相当なもの。
夜行性で、まれに寝込みを襲われることがあるから、旅人にとって結構恐れられているモンスターなんだそうだ。
ガクブル、俺たちのところに来ませんように。
でも、もしアウルベアーが襲ってきたら俺は戦えるのかな。
マリアさんみたいに呪文を使える訳でもないし、こんな木の棒で熊に勝負を挑むなんて死にに急ぐようなものだ。
と、いうわけで早速マリアさんに呪文を教えてもらうことになった。
「必要なのはイメージよ。全身に分散している魔力をを指先に集めるように、そして唱えたい呪文をイメージするの」
「イメージ……」
「メラを唱えるなら火の玉をイメージするといいわ」
火の玉火の玉……駄目です先生、イメージすればするほどお化けの鬼火しか思いつきません。赤じゃなくて青い炎になります!
「最初は目を閉じててもいいからゆっくり落ち着いて、深呼吸して心を静かに……」
言われる通りに俺は目を閉じる。深く息を吸ってゆっくりと吐き、深呼吸。頭の中に火の玉を浮かべる。
ああ、なにか掴める感じがするぞ。メラメラ燃えるメラの炎……
「メラ!」
アレフはメラを唱えた! しかし呪文は発動しない!
「……駄目でした」
「毎日続けていたらできるようになるわ、絶対」
うなだれる俺の肩に手を置いて励ましてくれるマリアさん。そうですよね、すぐできたら修行なんていりませんよね。
とりあえずしばらくの間はイメージと集中を重点的にすることにした。
「そろそろ夕食にしましょうか」
修行を中断し夕食にすることにした。夕食といっても固焼きパンとジャムに少しの木の実だけだ。
なんだかひもじい気もするが、この先なにがあるかわからない。少しでも食料を節約しなくては。
「マリアさん、この木の実ってなんですか?」
俺はこの不思議な形をした木の実が気になった。紫色で、貝殻が合わさったような形をしている。
「これは賢さの種といって、能力が上がる効果が稀にある木の実よ」
「へぇ……でもこれって貴重なものじゃないですか?」
「まあ、簡単に人の目には触れるものではないわね。
昔マザーがどこからか持ってきた苗を育てたらこの実が生った、ということらしいけど。詳しいことはわからないわ」
「そうなんですか……」
そんなもん栽培してるなんて、マザー何者だ。
その後マリアさんとの会話もそこそこに、食事を終える。満腹とは言い難いけど、空腹は治まったからいいか。
森が闇に包まれる。俺たちは炎に照らされていて明るいが、火から離れると深く飲み込まれてしまいそうな闇が続く。
「まず私が番をするわ。アレフは寝てていいわよ。なにかあったら起こすから」
「あ、はい」
番は交代制。マリアさんが眠くなったら俺が起きて番をする。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
地べたにそのまま寝るのは汚いけど、寝袋なんて物はこの世界にはない。
俺は薄い毛布にくるまり、アウルベアーの鳴き声を子守歌に眠りに落ちた。
「マリアさん、朝です。起きてください」
相変わらず薄暗い森の中だけど、木の葉の間から光が差し込んできている。朝だ。
あれからマリアさんと交代し、俺はずっと起きていた。夜更かし早起きは得意だから、そんなに疲れはない。
今回の野宿は危なげなく終わった。毎回こうだったらいいのに。そう呟きながら俺は朝食のパンを頬張る。
食事も終え支度をし、俺たちはここを出発した。もちろん火の始末も完璧に。
「西は……こっちね」
コンパスを片手にマリアさんは方向を指し示す。うっそうと草が茂っており、獣道すらない。
だが旅に道のあるないは関係ない。さくさく進むことにした。
腰程まである草をかき分けて進んでいく。足を取られたりしてうっとうしいのこの上ない。
頭の上からゲアゲアとカラスの鳴き声が聞こえる。まるで俺たちを馬鹿にしているように聞こえる。気味が悪い。
突然前を歩いていたマリアさんが歩みを止めた。
「マリアさん、どうしました?」
「……私たち、迷ったみたいね」
マリアさんが見つめる先を見て、俺は驚いた。俺たちは野宿したところに戻ってきてしまっていたのだ。
俺が砂をかけて消した焚き火の後。間違いなかった。
「これって……」
「流石迷いの森と呼ばれるだけあるわね」
やれやれとため息を吐くマリアさん。まあ、ある意味振り出しに戻ったのだから仕方がない。
「まあいいわ、とにかく進みましょう」
携帯から自分で支援(・∀・)
コンパスを見て進むも、なぜか最初の場所に戻ってしまう。何度も何度も西へ行っても戻ってきてしまう。
3周目の時点でドッと疲れが襲ってきた。
そしてグルグル回って5周目、肉体的にも精神的にも流石に疲れたので休憩を取ることにした。
「……駄目。全然先へ進めないわ」
疲れ切った声でマリアさんが言う。
俺たちが休んでいるところはあの寝泊まりした場所。この焚き火の後をもう何回見ただろう。
長い道を歩いていくより同じところを何度も歩く方が疲れる。
そう、同じところを何度も。
「……」
同じところ……同じ道が駄目なら、違う……そう、逆の道とか。
「……そうだ!」
大声を出すと同時にいきなり立ち上がった俺を、マリアさんは怪訝な目で見つめる。
俺は立ったままマリアさんに向き直り、声高に話した。
「マリアさん、逆に考えるんだ。押して駄目なら引いてみればいいんだ!」
「引いてみる?」
「はい。西に行くとここに戻ってしまう。なら、反対方向の道……東に行けば!」
「なるほどね……いい考えだわ。このまま回っているのも時間の無駄だし、東に向かってみましょう」
また規制。流しすみません。
支援
さるさんのおかげで、しばらく投下できません。
時間をおいてからチャレンジしてみます。半端ですみません。
>>257>>258 ありがとうございました。(つ∀`)
東に向かってしばらくすると、開けた空間が見えてきた。
そこは石がいくつも積み重ねられ表面は苔生している、祭壇のような場所だった。
傍に立つ柱は元の形を保っているもの、崩れ落ちているものと、様々だ。
「……なにかの遺跡かしら。だとしても、そうとう古いわね」
「遺跡かあー」
俺は興味津々に遺跡を見て回る。こういう歴史あるものを見るのは好きなのだ。
ピラミッドのように何十にも積み重ねられた石たち。中央には頂上へと続く階段がある。
それの傍には小さな社が左右に一つずつ……片方は崩れていて見る影もないが、たぶんそうだろう。
俺は崩れていない方の社へ向かった。マリアさんと離れてしまったが、そんなことは気に止めなかった。
危険の心配よりも好奇心の方が勝ってしまったのだ。
壁を見ていると、表面に変な模様があることに気がついた。文字だろうか……読めないな。
よく見ようと表面をこすっていると、突然大きな影が俺に被さった。
「よう、そこの坊や。……なにかお探しかい?」
声に驚き振り向くと、そこには狼の顔をした人間の姿があった。
祝・規制解除。
以上で今回の投下終了です。
しまった、いいとこで終わっちゃってる!
続き期待していますよ〜
GW投下、お疲れ様でした!
本当さる規制ウザイですよね。
SS系などの連投がデフォルトのスレはみんな不満みたいです。
モンスター退治とゴールドの関係の処理がうまいですね〜! 違和感ない。
初投下から毎回楽しみです。続きwktkです。
次の日メイサさんにシェーナの街を案内してもらった。
なんでもライフコッドで祭があるのは今から3日もあるらしい。
「でもバザーは今日でおしまい、商人達は皆必死よ、きっと良いお買い物ができるわ」
そういったメイサさんの笑った横顔は少し寂しげだった。
バザーが終われば、ここにいるほとんどの人がいなくなるのだろう。
少し複雑な感じだった。
プレイ中にこんな事を考えるなんてなかったから。
「今日は何を買うつもりなの?」
「へ、あ、と…武器とか、薬草を調達しようかな〜…っと」
考えている最中に話かけないでもらいたかったなぁ、なんて思いながら歩いていると辺りから商人の声が飛び交う。
「さぁ安いよ!安いよ!薬草が安いよ!薬草6こと聖水1つ!あわせて50Gだよ!」
「革の鎧が230Gのところ200Gだぁ!さぁ買った買った!」
「革の盾が115Gだ!」
とりあえず
「メイサさん」
「何かしら?」
「つかぬ事をお聞きしますが…どれがどのお金に相当するのでしょうか?」
私はこの世界の通貨をよくわからないのだ、財布の中に入っているお金が使えなかったら…とりあえず財布の中身をメイサさんに見せる。
100円玉と10円玉ばかりが入った恥ずかしい財布だったが、その100円玉と10円玉が両替の対象になるとは意外だった。
「案外お金持ってたじゃない!」
「それはどうも…アハハ…」
占めて1250G
とんでもねぇ…ありがとう愛と信頼のゴールド銀行。
お札に至っては「何?この紙きれ」と一蹴されてしまった、が、まぁそれは元の世界に…
「戻れるのかなぁ…」
「え?」
ふと放った一言。
それと共に涙が流れた。
メイサさんが私を落ち着かせようと懸命に話かけるが、その内容はまともに聞こえていなかった。
…
……
………
…………
……………
「…落ち着いた?」
「うん…」
心配そうに私の顔を見る1人と1匹。
私はたまらなくなって話したのだ。
起きたらトルッカの宿にいたこと、自分の姿が他の人に見えてなかったこと、サスケに出会ったこと、夢見る井戸に飛び込んだことも、冠職人のおじさんを助けたことも、全部、全て。
「頑張ったんだね」
馬鹿、そんな事言わないでよ、私の緩んだ涙腺からさらに涙が分泌されるじゃないか。
涙でまた顔がぐしゃぐしゃになる。
「…じゃあこれからどうするの…?」
そうだ、泣いていても元の世界に戻れる事はないだろう。
「とにかくライフコッドへ行きます…もしかしたらヒントがあるかもしれない…」
「そう…頑張ってね…!」
「はい!」
そのあと薬草セット6セット分と大きめのリュックサック、水と日持ちのよさそうな食糧を購入した、武器はめぼしいものが見つからなかった。
地図はメイサさんからせんべつとして買ってもらった。
その日、疲れた私は食事をとる事なく眠りについた。
そして次の朝、朝食中、私はライフコッドに向かうとメイサさんと冠職人のおっさんに言った。
朝食を済ませると貸してもらっている部屋に戻る。
昨日買った薬草セットの1つをコートのポケットに入れ、財布と残りの薬草セット、地図と食糧はリュックの中に詰め込んだ。
これに私の命がかかっていると言っても過言ではない、それから靴の紐を解けないようおもいっきりかたく締める、まるで自分自身に言い聞かせるように。
「入るわよ」
どうぞ、と私が言うと青色のワンピースのような服と一降りのナイフを持ったメイサさんが入ってきた。
「ちょっとしたものだけど…役に立つと思ったから持ってきたわ」
「ありがとう、メイサさん」
なんでもこの世界での旅人の基本的な装束らしい。
元着ていた服はメイサさんの家に置いていく事にした。
宿代には不十分だとは思うがこれが精一杯だった。
青色の服に袖を通すと、麻が入っているのか、少しチクチクとした。
私の旅が始まるんだ、不安より期待の方が大きすぎるような気がした。
モンスターの知識もあるのだからと言うのが要因だろうか、私は着替えを済ませると後ろから視線が。
人
(゚д゚)
「こっち見んなw」
旅に乙女心はいらないとわかった。
服にはソードベルトなるものがついていたのでナイフはそこにいれる事にする。
リュックを背負い、サスケを肩に乗せる、ついにお別れだ。
メイサさんには気をつけてねとか忘れないでとか、辛くなったら来てとか言われた。
おっさんも、また来いと行った、その時に髭面の間から涙が見えていたのがわかった。
歩き出した時、後ろからメイサさんの声が聞こえる
「行く前に、名前、教えて」
私の名前…
「星良[セイラ]!星に良いって書いて星良!」
「また会おうね!セーラ!」
こうして私の長い旅が始まった。
本日の投下はこれにて終了です
ありがとうございました
サスケwwwww乙ww
面白い!
ゲームでいえばまだ序盤なのに大冒険になりそうな予感
自分に自信の無い主人公てのはつい感情移入しちゃいますね
続き期待してます!
ちょwwサスケwwこっち見んなwww
× 祭があるのは今から3日もあるらしい。
○ 祭があるのは今から3日後らしい。
まとめる時に修正出来たらお願いします…
さすがゆとりって言われる前に吊ってきます
ほっしゅ
ほしゅーー
277 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 09:31:03 ID:/xPwAdXfO
ぴるりりゅん!
ぴるりりゅん!
278 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/10(木) 11:14:34 ID:7LPR8Gbt0
もょもと
とんぬら
ゆきのふ
鈴木さーん、田中ー、生きてるかー?
皆さんお疲れ様です。
このスレに入って初の投下行っきまーす
〜The Sacrifice of Isaac〜
――――――――――――――――――1――――――――――――――――――――
「はい、あ〜ん」
「……」
困惑した表情を浮かべる少女。
「どうしたの? あ〜んして?」
しかし催促には勝てず、おずおずと唇を動かすと果物がその小さな口に運ばれた。
果実の甘さが舌を満たしていく。
「ふふ、おいしーね」
問いかけられた少女はどうしたもんかと思いながらも、
自分を抱きしめている人の機嫌を損ねないように小さく頷くのが精一杯だった。
けれど、怖いからそうしているのかと言われると、ちょっと違う気がした。
手を引かれ、木の下まで連れていかれた時は何をされるか不安だったけど、
今のところ、後ろから抱きすくめられながら、果物を食べさせてもらっているだけだから。
これが「お前をたべちゃうぞー!!」とかそういう目的だったなら怖いけど、
このお姉さんは優しいし、髪を撫でてくれるし、可愛いねって言ってくれたから、
何となくそうじゃない、と少女は思う。
お姉さんのそういう行為、それはそれで恥ずかしいのだけれど、
イヤじゃなかった。
けれどこの一連の行為が何の為にあるのか分からない少女だから、
とりあえず逆らわないように事態の流れに身を任せているのだ。
とは言えどう対応したらいいのかも分からないので、
少女は口をぱくぱくさせて、困ったアピールをするのだった。
「ん? もっと欲しいの? はいどうぞ。あ〜ん」
「……何やってんだよ」
「お〜ジュード。もう出発?」
「そうだけどよ」
「ちぇ〜もう何泊かくらいしてってもいいじゃーん」
「あのなぁ、だいたい爪を修理しに来たのだって寄り道だったんだ。
余裕はないの。
アヴァルスだって犯罪者として連合に引き渡す予定なんだし」
「じゃあ1回アリアハンに帰るの?」
「そうなるだろうな」
少女は自分とは関係のない話が始まってしまったのを感じた。
一緒にいるのにその輪に入れないのは何となく居心地が悪いものだ。
何だか一人ぼっちになってしまったような気がした。
けれどそう感じるという事はやっぱり構ってもらいたいのだろうか。
そうかと思うと少女は複雑な気分なのである。
答えを出せない少女はいつも微妙な立ち位置にあった。
「で?」
「あ、この子? 可愛いでしょ〜?」
頬をスリスリしながら、少女はギュッと強めに抱きしめられる。
こんな風に他人に甘えられた事がないエルフの少女は、
真理奈の行動にいちいちドギマギしてしまう。
「ねぇ、この子一緒に連れてってもいい?」
(え?!)
やっぱり誘拐とかされちゃうんだ!
女王様が言ってた通り、人間は怖いんだ(((( ;゚Д゚)))
と少女はガクガクブルブルしてしまう。
「ダメ」
「え〜? ファンタジーな冒険にはエルフは付き物なのにぃ!」
「知らねぇよ。なんだそりゃ」
「ジュードのケチっ!」
「この子は行きたくないってよ」
「そんな事ないよ〜。ね〜? 一緒に行きたいよね〜?」
同意、というよりは強要に近いように聞こえたのか、
ぁぅぁぅと助けを求めるようにジュードを見上げる少女。
少し涙目になりつつあるのが何とも可哀相だ。
仕方なくジュードが助け舟を出す。
「分かった分かった。
じゃあ後で【いつでもエルフに会いに行ける券】やるからそれでいいだろ?
キメラの翼一年分付きだぞ」
「お〜それいただきだ〜!」
ぐおーと腕を振り上げる真理奈。
よっぽどエルフの事が好きなんだろう。
「ったく、小さい子をあんまり困らせるなよ。
お前が変な事言うから泣きそうじゃねーか」
「あ〜ゴメンゴメン! もうしないから! ね?」
チュッと頬にキスをし、頭をナデナデする真理奈。
ちょっと必死な真理奈が可笑しかったのか、
少女は片目をつぶりながらも、安心したように笑顔を見せた。
「よしよし、んじゃあ行きますかね!」
真理奈はヒョイっと立ち上がり、少女をようやく解放した。
そして少女と手を繋いでエルフの里への道を歩き出す。
「ジュードも手、繋ぐ?」
「いらん!」
馬鹿話をしながら真理奈は少女を家まで送っていった。
エルフの少女は手を振って真理奈を見送った。
不思議な人だけど、また会いたいなと思いながら。
エルフの誘拐事件が起こってから3日と経たぬ内に
真理奈一行は出発する事を決めた。
女王の葬式とソールとフォルテの結婚式で1日強滞在したが、
それでも長い休暇だったかもしれない。
「フィリアねぇ、もう行っちゃうの?」
「そうだよ、もう少しゆっくりしていってよ」
フィリアは繋いでいた手を解き、ソールとフォルテの頭に乗せた。
フィリアも別れたくはなかったが、やるべき事があるので仕方がない。
もちろん一生会えないという事はないんだけれど。
それでも寂しいものは寂しいのだ。
「また来るね」
「約束だよ」
「ゆびきりしよ?」
そんな子供らしい光景をパトリスは微笑みながら見ていた。
やはり無垢なものは見ていて心が洗われる。
この子らのようにいつまでも純粋にいる事が出来たなら、
きっとエルフが人間から逃げ隠れるような事態は起こりえなかったはずだ。
それが逃れる事の出来ない運命だったとしても、
再びあのような事件を目にすれば悔しいと感じてしまうパトリスだった。
どんな呪文を覚えようとも、運命を変える事はできないのだから。
「お待たせ〜」
「やっと来たか。何をしておったんじゃ」
「へへへ、ちょっとね〜」
「ちょっと何じゃ?」
「考え事〜♪」
そんないい訳にもならない事を言うと真理奈はフィリア達の方へ歩いていった。
後ろから来たジュードがパトリスに告げ口する。
「アイツ何かエルフを連れて行こうとしてたぜ」
「なっ…!!」
唖然としたパトリスは慌てて真理奈を追いかける。
が、真理奈さんのすばやさには追いつけない…!
「よ〜し!
「ソール君とフォルテちゃんに今日はお姉さんからプレゼントをあげよう!」
「え? 何なに?」
「こらソール、はしたないでしょ?」
「いいのいいの。貰ってくれないと私が困っちゃうんだから」
「ほらみろ。遠慮すんなって。何くれるの?」
「ジャジャーン!」
真理奈はバッグから深緑に光るオーブを取り出して、2人に手渡した。
「お〜キレイだな」
「ホントね…」
「グリーンオーブって言うんだよ〜」
「……」
パトリスは真理奈ののんきな声に体を震わせ、
怒りが爆発しそうなのを静かに堪えた。
「……真理奈さん? ちょっとよろしいかの?」
「え? 今いいとこなんだけど」
「どういう事か説明してもらえるとありがたいのじゃが」
「いや〜エルフって言ったら何か緑ってイメージがあるからさ〜」
「そうではない! オーブをそんな軽々と――」
「軽々じゃないよ。ちゃんと考えたもんねーだ!」
パトリスの声を遮った真理奈は腰を手に当て、皆の注目を自分に集める。
「おほん!
え〜こうして巡り合ったのも何かの縁!
という事でエルフの皆にも今日から連合に参加してもらいます!
さらにエルフは超保護対象とするように
連合を通じて世界中に通達していきましょ〜!
これでエルフの皆も安心して暮らせるね♪」
「……」
「あれ? どうしたの?」
一同唖然。
ソール・フォルテは何の事か分からずポカーンと真理奈を見、
ジュードとパトリスは判断しかねて考え込み、
フィリアだけはうんうんと小さく頷いていた。
「なぁじいさん。これっていいのか?」
「……」
「そういえば俺らってどこと連合結ぶかって全部決めてないよな?」
「……そうじゃったかのう」
「……どうする?」
「ふ〜む……ここはエルフさんに決めてもらおうかの!」
「あ、逃げやがったな」
さすがに真理奈の言葉だけでは説明不足なのでパトリスが補足する。
魔王に対抗する為、世界中で協力しようとしている事。
そして世界中の人々の架け橋となるべく旅をしている事。
「確かに連合がしっかりと機能すればエルフ保護も出来るかもしれんな」
「でしょ?! どう? どう?」
「そうですね。
私の一存では決められないですけど、お願いしたいです」
「俺も賛成!」
「けどさ、『保護』じゃあ立場が対等じゃないだろ。
協力するんだからもっと違う言葉じゃねぇか?」
「そうじゃのう。擁護…愛護…庇護…」
「そんな難しいのなんてダメだよ〜」
「……友達、がいいと思う」
「お〜さすがフィリアちゃん! それ採用!!」
有無を言わさず決定という感じでビシっと親指を立てる真理奈。
「じゃあ友達記念って事で、イエーイ!」
「イエーイ!」
何のノリか知らないが真理奈はフォルテとソールとハイタッチを交わす。
その時不意に、パトリスの心に懐かしい言葉が甦ってきた。
"過ぎ去った苦しみの思い出は、喜びに変わるのよ"
(確かにそうかもしれない。だから生きていける、か)
昔の記憶につられたのかパトリスも少しだけ若さを取り戻した気になり、
真理奈たちがはしゃぐ輪の中に入っていった。
妖精と人間の未来がありますように、と願いながら。
短いですが、今日はここまで。
ではまた( ^ω^)
乙です!
初リアルタイム遭遇でかなり嬉しい。
乙でした〜。
凝り固まったオトナのジョーシキなんか軽々とぶっ飛ばす真理奈ちゃんは
本当に見ていて清々しいですね。
これからの冒険も応援します。
前回
>>129-141 【Stage.4 ミイラ男と星空と(前編)】
----------------- Game-Side -----------------
「エリス、この手紙をポルトガ王に届けるよう頼んできて。あとこっちはイシス女王へ。
で、こっちがエジンベア王宛てね」
各手紙の隅に、ロマリア国王直筆の書簡であることを表す判を押して、すっかり秘書役
になっているエリスに手渡す。
ポルトガ王には「死ぬほど黒コショウ贈ってやるからノルドに道を開けさせろ」。
イシス女王には「勇者に魔法の鍵を貸してあげて。まだピラミッド内から発掘されてい
ないのであれば、ピラミッド関連の資料を勇者に渡してほしい」というお願い。
エジンベア王には「いずれ勇者が訪ねるから、番兵一人にいたるまでしっかり伝えてお
くように!」。差別主義のアホな門番一人のために、何度も海を越えてられるかっての。
エリスは各手紙をくるくる巻いて紐でくくると、遠慮がちに声をかけてきた。
「ところでゆう……じゃなくて新国王様。なにかお召し上がりになりませんか?」
言われて時計を見ると、正午を回っていた。そういや朝からろくに食べていない。
「じゃあ厨房にサンドイッチでも作らせてくれる? あ、ピクルスは入れないでね」
「わかりました。あまりご無理をなさないでくださいね」
ふわりと笑って退室するエリス。優しくてよく気がつくコだ。
ホント、仲間には恵まれたなぁ。
サミエルたち3人がカンダタから金の冠を取り返して来たのは、実に明け方すぐだった。
最短でという僕の要望に、期待以上に応えてくれた3人には超感謝!
「ロマリアで雇った傭兵の中に、カザーブ出身者がいましてね」
その人にまずキメラの翼でカザーブまで連れて行ってもらって、今度は地元の猟師から
シャンパーニの塔への近道を教えてもらい、普通は丸1日かかるところを半日で到着した
のだ、とサミエルが得意気に説明する。
「それに、カンダタも賢い男で助かりましたよ、ははは」
話を引き継いだロダムが思い出したように笑った。手下より大勢の傭兵部隊に囲まれて、
カンダタ一味は剣も抜くことなくさっさと降伏したとのこと。ビビったんだろうなw
そんなこんなで僕は今、ロマリアの新国王(仮)をやっている。
朝イチで王様に金の冠を届け、さっそく祝いの宴じゃ!と騒ぐ王様をなだめすかして、
さっさとカジノに追い出した。
仲間の労をねぎらってやりたい気持ちは山々だったんだけど、
「別に城の公式パーティならいいッスよ」
肩をすくめるサミエル他、全員が「堅苦しいのはパス」になったので、仲間が泊まって
いる宿にごちそうを運ばせるだけにしておいた。
それからずっと執務室のデスクに張り付いている。王様権限を駆使して、今の内に打て
る手は打っておかないとね。
ポルトガへの関所は、真っ先に国王命令で鍵を開けるよう通達を出した。
なので直接バハラタに向かって黒コショウを手に入れ、ポルトガで船をゲット。
エジンベアで渇きのつぼを取って、すぐ浅瀬の祠に向かい、最後の鍵を入手してから、
旅の扉を使って世界を回るのが手っ取り早いはずだ。
ただ鍵関係のイベントは大切だから、イシスには行かないとダメかもしれない。できれ
ばあの罰当たりな墓荒らしイベントは飛ばしたいんだけど。
あ、よくわからない方は攻略本や攻略サイトをごらんください。
「あとは、あれがこうなってそうなるから、あれは飛ばせるはず。でもあそこをハショる
とヤバイかなぁ。だけど時間無いし……痛ぅ」
目の奥がズキッとして、僕は両手の親指でこめかみのあたりを抑えた。ドラクエ世界に
飛ばされて、眼精疲労で頭痛を訴える主人公なんて僕くらいだろうな。
結局きのうもほとんど寝てないし、ダメだ、頭が回らなくなってきた。
少しだけ仮眠を取るか――。
と、急にドアが開いた。
入ってきたのは前国王だった。城の塔の最上階に隠居している、放楽息子に頭を悩ませ
ているロマリア国王の父君その人である。
僕は慌てて立ち上がり、彼の前に膝をついた。彼は「まあまあ」と言って僕の腕をつか
んで立ち上がらせると、ソファに腰をおろして僕にも座るよう促した。
「いやはや、正直ワシは参っておるよ。うちの息子よりよっぽど評判ではないか」
言葉とは裏腹に、父君はなにやら上機嫌だ。
評判もなにも、こんだけ女官さんを抱えてるんだ。若い男の子が一日署長、じゃない、
一日王様やってれば、城中がキャーキャー騒がしくもなるわいな。
「どうじゃ、いっそ本当に継いでみんか?」
彼はフォフォと笑った。一見すると王族というより、田舎の旅籠のご隠居さんという感
じの、冗談好きのただのおじいちゃんだ。
でも目が笑ってない。本気らしい。「勇者アルス」のネームバリューの高さを考えれば
傀儡として飼っておきたいと思うのは当然か。
王様…か。確かに向こうで普通のリーマンやってるよりは楽しいかもなー……。
いかんいかん。ここで誘惑に負けたらいけない。ヘタに「はい」なんて選んだ日には、
またとんでもないことになるに決まってる。
「申し訳ありません。このような重責は、わたくしごときには耐えかねます」
「そうかのう。頭も良し、見目も良し、しかもあのオルテガ殿のご子息とあれば、ワシは
申し分ないが。ほれ、うちの姫も年頃じゃし」
いやいやそんな、まあ頭脳と容姿は少し自信ありますけどぉ……って、はいぃ!?
姫なんかいたっけか? 僕は急いで昨日の謁見の模様を脳内再生した。ビデオのように
はっきりと情景が浮かび、偉そうな王様の隣にフォーカスをずらすと――うわ、いた。
確かに年増の地味な、もとい、熟女の魅力を放つ慎ましやかな姫君が、鎮座ましまして
いらっしゃるぅ! 濃ゆい王様の存在感に負けて、そっちまで意識が行ってなかったよ。
もちろん、丁重にお断りさせていただきマス。
だいたい大国ロマリアの姫君ともなれば、引く手あまたのはず。なのに今まで独り身な
のは、あの国王が見かけによらず親バカってことじゃないの?
ヘタすれば僕の首がハネられる。冗談じゃない。
前国王はとても残念そうだったけれど、僕に再三断られると、しぶしぶ退室していった。
ヤ、ヤバかったぁ。ほんと下手な選択肢は選べないゲームだな。
これ以上長居すると、さらに余計なトラブルに巻き込まれそうだ。
王様がまだ陽の高い内に帰ってきてくれたのを幸いに、僕はすぐ王位を返還し、その日
の内にロマリアを出発することにした。
「みんな、慌ただしくてゴメンね」
次の目的地バハラタまでの旅程を確認してから、チェックアウトしてもらう。
「気にしなくていいッスよ。それにしても、ようやく勇者様と旅ができますね」
サミエルがにかっと笑った。いよいよ冒険らしくなるとウキウキしているようだ。
僕はこの時点ですでにウツ気味だけどネ。
はぁああああ。とうとうこの時が来ちゃったよ。
「もう少しでロマリアの警戒域を抜けます。ここからはモンスターが出ますから、お気を
つけてくださいね、勇者様」
エリスが心配そうに僕を振り返る。
前にも言ったけど僕は「Lv.1」で「経験値ゼロ」。無論、僕のレベルが低いことは最初
の契約時に確認してることだから、戦闘に慣れるまでは後方支援に徹する、という打ち合
せは済ませている。
なんだけど、本当に問題なのは、たぶんそこじゃない。
「って、言ってるそばからなんかいっぱいキター!」
獲物だ、とばかり茂みの中から4つの塊が飛び出してきた。ついに宿スレ定番の初戦闘
シーンだ! ちょっといまさら感もあるけど、そこはほら、初スライムまで平均5時間と
いう噂のDQ7もあることだし。
敵は紫色の一角ウサギが2匹と、緑色のイモムシが1匹、それに頭から黒いフードをスッ
ポリ被った怪しい人型のが1匹。アルミラージ、キャタピラー、まほうつかいだ。
ロマリアのモンスター格闘場で遠目には見たけど、間近だとホント迫力ある。
「これまた出ましたねぇ。下がっていてください勇者様」
「はーい、お任せしまーす」
最後部に回って「ぼうぎょ」に入る僕。って言ってもどうしていいかわからないから、
とりあえず逃げることを優先に構えてるって感じ?
うはww情けなーwww
反面、この地点での目標レベルを軽く越えている3人は、余裕の笑みさえ浮かべている。
「精霊界の偉大なる女王ルビスの名において汝らを召還す、ジン、イフリート、サラマン
ドラよ、我のもとに集いて我を守る盾となり、敵を貫く剣となれ……ベギラマ!」
エリスが高らかに詠唱する。彼女の手の平から目もくらむ閃光が放たれ、ウサギ2匹が
巻き込まれた。
あっけなく炎上したアルミラージのそばをすり抜け、サミエルがカザーブで買ったとい
うチェーンクロスを巧みに操って、イモムシを薙ぎ払う。
その間にロダムがまほうつかいにマホトーンをかけて呪文を封じ、オロオロしているソ
イツを、駆けつけたサミエルがすかさず斬り捨てた。
なんとも鮮やかな連係プレー。初戦闘は、呆気ないほど簡単に終わってしまった。
だが、問題はここからだ。
僕の様子を見たロダムが慌てて駆け寄ってきた。
サミエルも走ってきてくれたが、その彼の背中には、モンスターの体液がベッタリ付着
したチェーンクロスが背負われている。ほっぺたにも紫色の返り血が飛んでたり。
「ちょ、ごめ、やっぱダメ!」
僕は急いでその場を離れ、適当な木の陰に回りこんで幹にすがりついた。
「うっ…うぇぇっ……ケホ、ゴホッ……」
ああもう、僕吐いてばっかりいないか? 後世に「吐瀉王伝」などと伝わるのは激しく
抵抗があるんだが。
でもねー。ここで行われたのは、あくまで「殺害行為」なワケだし。
アルミラージは火だるまになって、しばらくのたうち回ってから動かなくなった。獣の
体毛と肉の焼ける臭いって、ほんと形容しがたいようなキツさがある。
サミエルがキャタピラーを斬った時はグチャッと音がしたし、飛び散った体液と内臓器
官は全部ドス黒い紫で、それもしばらくピクピク動いていた(一部まだ動いてる)。
まほうつかいなんて最悪、本当にモンスターかと疑いたくなるような、まるで人間みた
いな声で悲鳴を上げるんだもん。最期の瞬間、僕の方を見てなにか叫んでたけど、それが
「命乞いだ」と容易に察しがついた時点で、もう限界。
「……どうぞ」
エリスが遠慮がちに近づいてきて、水筒を差し出してくれた。小さく礼を言って受け取
り、胃酸くさい口内を洗い流す。それからなんとなくバツが悪くて、汚した場所にブーツ
の先で土をかけた。
「大丈夫ッスかー? なーに、最初は誰でもそうですよ」
サミエルは予想通りといった様子で、カラカラ笑う。
「そうですよ。勇者様は実技の成績もとても優秀でいらしたんですから、場慣れさえすれ
ば、すぐに我々に追いつきますよ」
ロダムも優しくほほえんでいる。今ちょっと気になるコトを言ってたが(あのバカがな
んだって?)、僕は問い返す気力もなく、素直にうなずいた。
落ち着いたところで行軍再開。
3人はまるで何事もなかったように、また談笑している。タフだなぁ。
僕は彼らの少し後ろを歩きながら、腰のベルトに差してある「聖なるナイフ」の柄に、
そっと触れてみた。銅の剣なんて重量武器は、どう考えたって僕に使えるわけがないので
さっさと売り払ったし、鉄の槍や鎖鎌も同じ理由で却下。とりあえず扱えそうな武器とし
てロマリアで買っておいたのが、このナイフだ。
次にモンスターが現れたときは、僕もこいつで戦うことになるのか――。
「ま、考えても仕方ないよな」
殺せというなら殺すさ。たとえどんな手段を使っても、絶対にクリアしなきゃ。
だって僕が戻れなかったら、アルスも帰ることができないから。
あのおっちょこちょいのバカ勇者様は、逃げる先を完全に間違えてる。まだ物見遊山で
済んでいるうちにこちらへの退路を確保してあげないと、きっともっと傷つくことになる。
いろいろ考えたけど、やっぱりね。
あの人に、あんな現実を押しつけるわけにはいかない。
----------------- Real-Side -----------------
「へ…っくしゅ!」
うぃー。冷えてきたかな。もう陽も沈みかけているし。
俺はちょっと迷ったが、ユリコを呼んでパソコンの後始末の仕方を教わった。このイン
ターネットってやつでだいたいのことは調べたし、図書室は次の機会にしよう。
「そんじゃ付き合ってくれてありがとね」
ユリコが校門の前で手を振り、そのまま別の方角へ歩いていった。バスの中で、今日は
「ジュク」があるとかで、帰りは学校前で別れることを話していたのだ。
「ところでさーっ」
少し離れてから、ユリコが振り返って叫んだ。同時にバスがやってくる。
「なんでまた名前で呼ぶことにしたの?」
「は?」
バスのドアが開く。
「カノジョでもないのに名前で呼ぶのは変だからって、あんたが言い出したのに」
「え?」
「乗らないんですか?」バスの運転手が言うから「いや、乗ります!」思わず乗り込む。
「嬉しいけど……私はやっぱり『片岡』に戻してくれた方が――」
ドアが締まって彼女の声が途切れ。
走り出したバスが、片岡百合子を追い越していく。彼女はうつむいて歩いていて、顔は
見えなかった。
……カノジョじゃないって?
「おっかしーなー…」
別に「甘酸っぱい青春な毎日!」を期待してこっち来たんじゃねえから(いや多少の憧
れはあるが)、ヤツの女関係なんざどうでもいい。
しかし「間違う」ってのはどういうことだ? 「知らない」ことはあったとしても、こ
の俺が自発的に覚えようとしたことを記憶違いをすることは絶対ない。
いっぺんイチから情報を洗い直さなきゃダメか? タツミ本人に聞くのが手っ取り早い
が、ここぞとばかり、あることないこと吹き込まれそうだし。
「三津原ぁ?」
いっそ頭でも打って、記憶喪失になったフリでもするか。でも下手に大怪我したら治せ
ないで死ぬしな。
「おい、三津原ってば」
アホみたいな難病も治せるくせに、死んだらそれまでってのは中途半端な話だ。いや、
ベホマだのザオリクだの、究極の回復呪文が存在する向こうが極端なのか――。
「ミツハラタツミー」
「うお!?」
いきなりポンと肩を叩かれて俺は飛び上がった。振り返ると、黒髪を短く刈り込んだ、
俺より10センチくらい背の高い少年が、俺の大げさな反応に苦笑している。
肩にでかいバッグをひっかけて、青赤の派手な色合いの服を着ている。黒のごついヒモ
靴は泥だらけ。なんかのスポーツ系の、動きやすそうな格好だ。
戸田和弘。こいつもヤツの同級生で友人……のはずだが、合ってるかはもはや疑問だ。
「三津原の私服見たの久々だな。お前でも休みに出歩くことあるんだ」
また言われたよ。うちのプレイヤーはヒキコモリかと、俺はちょっとガックリきた。
「ユ……片岡に付き合わされてさ。携帯、教室に忘れたとかで」
「片岡が。あいつも健気だね。マジお前さ、なんで断ったのよ。付き合ってやれば?」
なんとヤツの方がフッたのか!? 生意気な! って俺も人のこと言えねえか。
俺の複雑な心情をよそに、カズヒロが屈託の無い笑顔を見せる。
「まあ三津原にとっちゃ、俺も片岡も子供っぽく見えんのかもしんねえけど。若いもんが
変に達観しててもつまんねえぞ? うん?」
こいつは「夢」の通りにイイ友達らしい。俺は内心ホッとした。
「ほっとけよ。んでそっちは? あーと…『部活』?」
「ん、試合の帰りだけど。昨日言わなかったっけ?」
こういう食い違いはこれからいくらでも出てくる。サラッと流すに限る。
「だっけか。すまん、最近どうも記憶力に自信なくてさぁ」
「え、マジで? ヤバイだろ、それ」
途端に真面目な顔になるカズヒロ。俺そこまで変なこと言ったか?
「まあ三津原なら問題ねえだろうけど……なんか困ってたら言えよ?」
なんだかわからんが、騙してる手前、心配かけるのは悪い気がする。「大丈夫」と首を
振ったら、相手は一瞬だけ斜め下に視線を流した。
「じゃあ俺にも付き合えよ」
言いながら「次、停まります」のボタンを押す。
「試合負けちまってさ。気晴らしにゲーセンでも行こうぜ」
ゲーセン? 気晴らしというならカジノみたいな娯楽施設の一種か。
それもよくわからんが、さっきからどうもモヤモヤした状態だからな。スッキリできる
場所なら大歓迎だ。俺は一も二もなく賛成して、カズヒロに続いてバスを降りた。
「なるほど、『Game Center』の略でゲーセンか……」
カズヒロが案内した施設は、向こうのカジノとはまるっきり違っていた。
雇われ楽士が奏でる景気の良い音楽の代わりに、所狭しと置かれた機械の一個一個が、
好き勝手に甲高い音を垂れ流している。大勢の人間がいるのに、ほとんど「人の声」がし
ない。多少騒いだところで機械の音が掻き消してしまっている。
うるさいのに静かな、なんか不思議な場所だ。
「なにやる?」
カズヒロに聞かれて俺は困った。そうだな。
「モンスターとか派手にやっつけるようなの、ないか?」
「へえ、意外。じゃあこれなんかいいよ」
引っ張っていかれたのは、おどろおどろしい装飾がされたデッカイ画面の前だった。
前に小さな操作台があって、その横にヒモに繋がれた、赤い「へ」の字型のものが2つ
ひっかけてある。
カズヒロは慣れた手つきで操作台の穴にコインを投入した。画面に「プレイ人数」だの
「難易度」だのといった文字が浮かび、操作台のボタンで設定していく。
「まずは初心者向けにしとくな。一緒にやろうぜ。ほれ」
への字型の1つを渡される。あ、前にヤツが観てたテレビに出てたのと形が似てる。
「これ、銃だよな。どーやんの?」
「普通に握りゃいいよ。んで、敵が出たら狙って撃つ!」
「おお!? おおお!!」
いきなり画面に腐った死体みたいなのが出てきたと思ったら、そいつがバンと弾けて飛
び散った。カズヒロがかっこつけて、銃の先端にフッと息を吹きかけてみせる。
「すげえっ。えーと、狙ってここを引くと……」
腐った死体をやっつけた!
「おもしれー! うわ、なんかたくさん出てきたぞ。あれみんな敵か?」
「そうだ。左下に弾数が出てるだろ? 無くなったら銃を下に向けると補充されるぞ」
「え? あー撃てなくなった! んで下に向けると、うん増えた」
ルールは単純だが、あれだけ苦労したゾンビ系モンスターが、こんなもんをカチッとや
るだけで吹っ飛んでいくのは爽快だ。
「っく〜、気ぃ持ちいい〜! なあなあ、これもっといっぱい出てこないか?」
「うまいじゃねえかオイw じゃあ難易度、思いっきり上げてやるよ」
画面が薄暗くなって止まり、さっきEASYに設定した項目がVERY HARDに変わる。
「足引っ張んなよ、三津原?」
カズヒロがちょっと意地悪く笑った。
ふん、挑戦されたら受けて立つのが勇者だぜ。やったろうじゃん!
――なんて意気込んで臨んだのだが。
「おいカズぅ、お前また撃ち漏らしたぞ?」
「いや三津原がおかしいから! お前こそ本当に初めてかぁ!?」
だって簡単なんだもん。前方向しか来ないのに全部の敵に出現予告あるし、弱点とか
見え見えだし。ちょっとのミスで死ぬような向こうのバトルと比べたら、なあ?
「んじゃそっちのも貸して」
俺はカズヒロからもう1個の銃を取り上げた。画面をほとんど埋め尽くしている敵が、
俺の銃撃で次々と倒されていく。弾数の補充はいちいち腕を下げるより、輪っかの部分
に指を引っかけて銃をクルッと一回転させる方が楽だな。
あーあ、向こうでもこんな風にやっつけられたら、俺も楽だったのに。
「マジかよ……全国レベルじゃん、このスコア」
カズヒロが傍らでぼやいている。
なんとなーく白けた空気が流れた。その時だ。
プルルルルルル! プルルルルルル!
携帯? なんだよこんなときに。
察したカズヒロが俺から銃を取り上げて、目だけで「出てこいよ」と促す。俺は店の入
り口まで移動した。携帯を開けた。みると表示は「TATSUMI」。
へぇ、向こうからかかってくるとは珍しいこともあるもんだ。
「うーっす。話の途中でブチ切りするような相手に、なにかご用ですかぁ?」
『あの時はごめん。君も、時差のこと知らなかっただけだよね』
およ? なんか素直じゃないか。まあ俺も時差のことは知っててかけたけどな。
『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
聞き取りづらい小さな声で、ヤツは言った。
『その――ゾンビ系のモンスターの楽な倒し方って、ある?』
「ップハ!」
やべえ、なにこのタイミングw 思わず吹き出した俺に、タツミが『なんだよ』とムッ
としたような声を出す。
「悪い、こっちのことだ。リビングデッド系の楽な倒し方だよな? 簡単だぜ」
『ホント? どんな!?』
「まずな、弾切れする前にリロードすること」(だはははは!)
『え、リロード?』
「あとはよーく弱点を狙って撃つことかな。参考になりましたでしょうか?w」
『…………』
タツミは電話の向こうで黙ってしまった。ありゃ、反応無し?
ああ、元ネタがわかんねえのか。ヒキコモリ(らしい)コイツが、外にある店のゲーム
を知らないのも仕方ない。
いやもちろん俺もそこまで性格悪くねえし、ちゃんとナビってやるけどさ。
「なんてな、教えてやるからありがたく思え。有効なのは火炎系魔法だが、もうひとつ、
武器にあらかじめ聖水をかけておくと……」
『もういい!!』
いきなり怒鳴られて、俺はその場で固まってしまった。
「タ、タツミ?」
『自分でやるよ! 二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!』
同時にブツッと切られて「ツー、ツー」と数回鳴った後に、静かになる。
「もしかして……マジでヤバいのかな」
なんかちょっと、泣きそうだった、ような。
って、しかもお前、ゾンビ系の攻略法を聞いてきたってことは、
「嘘だろ、今ピラミッドかよ!!??」
俺はてっきり、今頃はアリアハンを脱出したあたりかと踏んでいた。時差があるとしても
早すぎる。いったいヤツはどういうルートをとってんだ。
「すまん、急用ができたから帰るわ!」
俺はカズヒロに向かって叫び、すぐ店外に走り出した。気のいい友人が追いかけてきてる
かどうかも、気にする余裕はなかった。
ヘタをしたら俺もヤツもここで「死ぬ」。
冒険を肩代わりさせるにあたり「ここはナビが必要だ」というポイントがいくつかある。
ピラミッドもそのひとつだ。
たぶん現実側からプレイしてる限りわからないだろうが、実はあそこ、とんでもない数の
トラップが仕掛けられている。回避策さえ知っていればなんともないんだが、普通は絶対に
わからないだろう。かなり複雑な謎解きだから誘導してやるにしても、俺もいったん家に戻っ
て、あっちの現状をモニタリングしながらでないと難しい。
しかもあそこの地下は……頼むから落ちてくれるなよ、普通の神経じゃまず保たねえ。
「ったく、でつながんねえんだよっ」
何度もリダイアルしたが「電波の届かないところにおられるか……」の繰り返しだ。
ゲーム内の時間の進み方は現実と比べると恐ろしく早いが、通話している間だけは同期す
るらしい(でなきゃ普通に会話できん)。つながってさえくれりゃ、こっちも同じ時間の流
れで動けるが、このままだと俺が家に帰る前にすべて終わってしまうかもしれない。
さっきのバス亭に戻り、時刻表を確認する。
「10分後か」
家はここからそんな遠くない。次の便を待つより走った方が早いか? 判断に迷う。
「待てよ三津原」
その瞬間、グイっと乱暴に肩をつかまれた。
「だから急用だって……っと!」
カズヒロじゃない、と思うと同時に、咄嗟に避けた耳元を相手の拳がかすめていった。背
後からいきなり殴りかかられたのだ。
「へえ、タッちゃんやるぅ」
そいつの後ろで手を叩いているのが2人。どいつも見たことのない顔だ。
俺と同い年くらいの3人組で、揃いの紺色の服を着ている。向こうじゃ王族が着るような
良質の生地だろうに、着こなしがだらしないせいで、ひどく俗っぽい印象を受ける。
「ビックリさしてごめんな? なんせ久々だったからさ〜」
ニヤついた顔に見て取れるのは明らかな敵意。
「…………」
「ま、待てっつってんだろ!?」
無言できびすを返した俺の前に、他の2人が回り込む。なに慌ててんだよ。
ああああああめんどくせええ!!
なんなのよコイツら! いや不良さんにカラまれちゃったみたいテヘ♪ってのはすぐ理解
したんだけどね、なんで今ここで湧くんだよ!
時間ねえっつーのに、どうすっかな。黙らせるのは簡単だが、初日から騒ぎを起こすのも
どうよ。俺、静かで平穏な生活を望んでこっちに来たんですけど。
それにしてもうちのプレイヤー、おとなしそうに見えて、実はロクに出歩けないほど敵が
多いのか? どうなってんだいったい。
本日はここまでです。
なんか「名前が長すぎる」というエラーが出たので、タイトルはステージ番号にしました。
書いてみて初めてわかりましたが、いろんな規制があるんですね。
エリスのベギラマの詠唱、わかる人にはわかる懐かしネタです(ニヤリ)
>>お二方
乙であります!
くそ、更新されてたら読まねぇわけにはいかんわな
詳しい感想書けなくてすまんが今回も面白かった〜
疲れが吹っ飛んだわ
次回もwktk
「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」
「う……う〜ん……あと5分……」
「急がないと8時になっちゃうよ」
「キスしてくれたら起きる」
「……ホントに起きてよ?」
アホな一人遊びをやめて俺は目を開けた。
俺には血の繋がらない義妹どころか妹そのものがいねえ。
「おはよう、マイサン」
しっかりと目が覚めているムスコに呼びかける。股間に話しかける画もかなりシュールに違いない。
だが許して欲しい。
ムスコへの呼びかけは精通して以来の日課のようなものだ。
息子とムスコの違いがわからない奴はぐぐれ。
「9時過ぎか」
枕元に置いてあった携帯に手を伸ばして時間を確認。
朝食にはちょっと遅いがホテル内のレストランにでも行くとしよう。
顔を洗おうとベッドから下りても、ムスコは重力に身を委ねるのを由とせず、地面と平行の姿勢を保っている。
いつか釘も打てるんじゃないだろうか。
「やらないけどな!」
洗顔道具を取り出そうとしたが、あるべき場所に鞄がない。
確かベッド横に置いといたはずなんだが。
つーか――
「何もなくね?」
――騒がしい俺の様子を見に来た宿屋の親父によって、ここがラダトームの宿屋だということを知ることになったのは30分後のことだ。
追記
さすがにムスコも萎えました。
「なるほど。事情はわかった」
「はあ」
自分がラダトーム城下町の宿屋にいることを理解してから1時間後、俺はラダトーム城内にいた。
宿屋の親父に事情を話すとすぐにラダトーム城に連れて行かれ、あれよあれよという間にラダトーム王と対面していた。
信用するかしないかは別として、俺は全てを打ち明けた。
とはいえ、寝て起きたら宿屋にいたとしか言えないのだが。
自分でも何を言っているのかわからんというのに、ラダトーム王は何やら納得した様子でいる。
「かつてアレフガルドを救った勇者ロトも天から現れたという」
「それが俺と何の関係が?」
うげ、何やら嫌な予感。
「そなたもまた、ルビス様が遣わした救世主なのかもしれんな」
「……竜王を斃して光の玉を取り返せと?」
「竜王を知っておるのか?」
「あー……まあ、一応」
自分で言うのもなんだが、俺はゲームは勿論のこと、漫画小説ドラマCDサントラカードゲーム、果ては同人ゲームにすら手を染めているほどだ。
DQのストーリーを知らないわけがない。
俺の精通は水の羽衣を着たムーンブルクの王女で始まったといっても過言じゃない。
その後アブない水着賢者、踊り娘の服マーニャ、エッチな下着ビアンカ、エッチな下着バーバラ、アイラを経てゼシカに至る。
魔法のビキニ賢者や神秘のビキニ盗賊、天使のレオタードマーニャでも捨てがたい。
7のポリゴンアイラで抜いた時の俺は神が降りていたとしか思えない。
……いや違う。そういうことじゃない。
狂信者ってレベルじゃねえぞ!ということだ。
「ならば話が早い。竜王を倒し、その手から光の玉を取り戻してくれ!」
ほーら、やっぱりきたよ。
イヤな予感ってのはどうしてこうも当たるんだ。
「仮に竜王を斃したとして、俺は元の世界に戻れるのか?」
「それはわからんが……他に戻る方法はあるまい」
「……確かに」
戻れる可能性は五分五分。
ゲーム中、異世界の話は一切出てきていない。
EDで勇者とローラは旅に出る。
ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの三国を建国したのは2で語られるが、その後の勇者の行方は誰にもわからない。
ローラ姫を抱えて門をくぐったということくらいだったはずだ。――戻れる可能性があるとするならED後しかない。
ロト編で異世界に移動できるのはルビス、ラーミア=レティス、ハーゴン、マガルギ……後は旅の扉か。
ギアガの大穴は閉じているはずだし、マサールクリムトコンビは6だ。
リメ3での神竜はこの時代に生きてるのかどうかも怪しい。
ハーゴン、マガルギに至ってはこの時代よりも後。
オルゴも神も7だし……頼みの綱はルビスのみか。
「……わかった」
王の言いなりになるのは癪だが、それしか方法はなさそうだ。
竜王よりもルビス目的だがわざわざ言うほど馬鹿でもない。
「おお! まことか! ではわしからの贈り物じゃ! そなたの横にある宝の箱を取るが良い!
そしてこの部屋にいる兵士に聞けば旅の知識を教えてくれよう」
現金な奴め。
渋々宝箱の中から120Gと鍵と松明を取り出した。
もう少し景気よく出せよドケチ野郎とは口に出さない。
「ローラ姫は取り戻さなくていいんだな?」
王の返事を待つ前に、俺は階段を下りてラダトーム城を出て行った。
さて、120Gでどんな装備を整えるとするかな。
悩みに悩んで結局買ったのは竹竿。
棍棒を持たせてもらったが重たくてダメだった。
もうちょっと力をつけないことには持って歩くだけで疲れる。
そう考えるとレベル1で剣を扱えるDQ勇者すげえ。
120Gで揃えた竹竿、薬草×3。残金は38Gだ。
で、俺が持ってた物はパジャマ代わりに着ていたジャージ。あ、トランクスとTシャツもか。
ドラクエができるからという理由で3年も買い換えてない携帯(N900i)。
旅のお供のニンテンドーDSライト(ブラック)。
ホテルに着く前に買っておいた100円ライター×1、タバコ×10。
着替えや洗面道具を詰めこんだ鞄はなくなっていた。
どうやらベッドの上に置いてあった物だけがこっちの世界に着たらしい。
ベッドじゃなくて床で寝ていればこんなことにならなかったんじゃね?
「そうだ!携帯で!」
……繋がらない。
俺「もしかして圏外ですかーッ!?」
携帯「YES! YES! YES!」
俺「OH MY GOD」
……一人ジョジョごっこに興じる俺は、DSLの画面に文字が現れたことを気付いていなかった。
レベル:1
最大HP:13
最大MP:4
攻撃力:6
すばやさ:8
武器:竹竿
鎧:なし
盾:なし
何の予告もなく投下させてもらいました。
続きは明日以降になると思います。
>>311は鳥忘れです。
wktk
DQ(初代)のストーリーを知ったうえで、うまく立ち回る主人公にわくわく。
なんかここ最近新しい趣向の作品が増えてwktkがとまらないぜ・・・っ
これは期待
きのうはおたのしみでしたねを目指そうぜw
まとめ乙です。
DQをゲームとして客観的に知ってる上で冒険するパターンと、
まったく知らず「スライム、はぁ?」から始まるパターンに分かれるよな。
合作話も出てるし、各主人公の座談会とか読んでみたいなw
こんにちは、俺です。
わけもわからぬままアレフガルドに来て2回目の朝です。
戦いにもちょっとだけ慣れてきました。
ドラキーに多少てこずるものの、スライム、スライムベスはもう敵じゃありません。
「ピキーッ!」
竹竿を買ってから、スライムを数匹斃したところでドラキーが登場。
「ピキーッ!」
宙を飛び交うトリッキーな攻撃に危うく死にそうになりました。
「ピキーッ!」
念のためにと買っておいた薬草のおかげで何とk
「ピキーッ! ピキーッ!」
「だあああああ! うるせえええええええ! スライムごときが邪魔すんじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」
「ピ、ピキーッ!」
「(´・ω・`)ぶち殺すぞ」
「……ぴきー……」
大人しくなったスライムを海に蹴り飛ばした俺は防具を買いにラダトーム城下町に向かった。
目的は一つ、竹竿から棍棒へのレベルアップ。――と、その前に便所だ。
ラダトーム――DQ世界にはトイレというものが存在しない。これ豆知識な。
住人は草むらや林の中でしている。
小便をしようと草むらに向かったら下半身丸出しで用を足している女に出会った俺が言うんだ、間違いない。
俺には気付いていない様子だったので、そのまま田代。別の意味でスッキリさせてもらいました。
小便をし、棍棒をいくつか見せてもらった俺は、一番手に馴染んだ棍棒を購入した。
できればもっと攻撃力のある武器がいいんだが、銅の剣を買えるほど金はない。
棍棒に釘を刺して攻撃力増強を、とも思ったのだが、この棍棒には初めから釘が打ち付けられてある。
釘の打ち付けられていない棍棒は3からのはずだ。
「まずは……ガライだな」
ガライには鍵が必要な場所があったな……鍵、か。
というわけでラダトーム城に到着。
ガライに行く前に色々と準備が必要なのよ。
ラダトーム城には鍵屋が存在する。
しかし城前の池が遮っているため、城内の鍵屋に行くにはリムルダールで鍵を買わなければならない。
ゲームではそんな二度手間三度手間はイベントの一つかもしれないが、実際問題そんなことはやってられない。
池を泳いで渡る?
池を泳いで渡るのは正解に近い。最も限りなく正解に近い。
でも溺れる可能性もあるので油断は禁物でーす♪
というわけでボッシュート。
⌒ ⌒ ⌒
_⌒ ⌒ ⌒__
/:::::Λ_Λ:::::::::::::::/
/::::::(∩;´Д`)∩ :::::/
/:::::::( /::::/ チャラッチャラッチャーン
「城の裏から行けばいいんだよね」
工エエェェ(´д`)ェェエエ工といった顔の兵士は放置。
若人よ! 柔軟な発想を持て!
「どんな扉でも開けてしまう魔法の鍵はいらんかな? 一つ85Gでどうじゃ?」
「よし! 買った!」
「ほれ、鍵を一つ渡そ――」
「その前に。壊れたら返品ができるんだよな」
「いや、これは一度きりじゃ」
「ああ? 一回しか使えない鍵が85Gだと? ジジイ、何でそれをもっと早く言わねえんだよ!」
「か、鍵が一度で壊れるのは常識じゃろう」
「それはジジイの常識だろうが。普通の鍵は壊れねえんだよ。舐めてんのか(゚Д゚)ゴルァ!」
「い、いや、別に舐めてるわけでは――」
「“ムカつき”が止まんねーよ……」
「ままま待て待て!」
「教えてやるよ? “ジジ”ィ……ナゼ俺のパールホワイトの“FX”が“最強外道”のカンバンなのかよ……?」
以上、俺の交渉術でした! よい子もよい大人も悪い子も悪い人もマネしちゃダメだぞ!
一つ8Gまで負けてくれたんで10個も買っちゃったよ。
いや〜、いい買い物したなあ。
危うくジジイは“不運” (ハードラック )と“踊”(ダンス )っちまうところだったんだぜ……?
予定通り浮いた金でラダトーム城下町で皮の服と皮の盾を購入。
皮の服ってよりは皮の鎧って感じだな。
「ならば! 『ジャージ』プラス『皮の服』――二刀流!!」
思わずジョジョ立ちしてしまう俺。これがジョジョならゴゴゴゴゴと文字が出てるくらいだ。
「二刀流じゃないじゃん」
「せっかくノッてるんだから言うなよ――って誰?」
思わず振り向くと、女がクスクスと笑っていた。
む、乳がデカい。乳スカウター発動!
87……88……89……90……バカな、まだ上昇していくだと!
「あなた、昨夜草むらで覗いてたでしょ?」
/(^o^)\ナンテコッタイ
というわけで、3日目の朝を迎えました。
何が起きたかポケモン風に表現だけしておこう。
つきのひかり
てんしのキッス
あまえる
くすぐる
メロメロ
かたくなる
したでなめる
がまん
あくまのキッス
どくどく
たくわえる
のみこむ
はきだす
ちいさくなる
てだすけ
メガホーン
のしかかり
つのでつく
からみつく
みだれづき
しめつける
こらえる
はなびらのまい
だくりゅう
しおふき
アンコール
ねむる
あさのひざし
ご 馳 走 様 で し た 。
「どおりゃああああああああああああああああああ!!」
俺は今、ラダトーム→ガライ間を爆走している。
鬼気迫る顔をしているのか、モンスターも寄ってこない。
途中で何匹かスライムを轢いた気がするが、気のせいだ。
ダンジョン練習場として配置されたであろうロトの洞窟はすでにスルー。
「ダメだ……」
運動不足が祟ったのか、それとも昨夜の運動が祟ったのか、体が休憩を求めている。
少し休むか……いや、ダメだ。
何としても今日中に――少しでも早くガライの町に着かなくては。
ただでさえ昨日一日を無駄に費やしてしまったんだ。ここで取り返さなくてどうする。
萎えつつある俺の気力を取り戻すべく、目をつぶって思い出す。
――竜王の呪いで変わり果ててしまったモモたん。
――良きパートナーであったモモたんを殺さなくてはならなかった剣神勇者の悲しみを。
こみあげてくる深い悲しみと怒り……
「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!! ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
人間、やればできるもので。
ラダトーム城下町を出ておよそ40分でガライの町に着きました。
レベル:6
HP:21/21
MP:17/17
攻撃:18
防御:14
すばやさ:6
E:棍棒
E:ジャージ+皮の服
E:皮の盾
といったところで今日の分はこれまでです。
>>1に書いてあるようにレス安価忘れたのは勘弁してください。
次回以降は気をつけます。
次回は早くて明日、明後日前後だと思います。
>>317 まとめお疲れ様です。
そして掲載ありがとうございます。
更新作業大変でしょうがご自分のペースで頑張って下さい。
町娘たんとお楽しみしたのか!
ローラ様に祟られるぞ…
>>310 城の兵士を大量に動員して、ローラー作戦で、ローラ姫を捜索すべし。
>>327 【審議中】
∧,,∧ ∧,,∧
∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` ) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u'. `u-u'
剣と魔法の世界。
ファンタジーの王道であり、その筋の人間なら誰もが一度は夢見る事だろう。
伝説の剣を手に取り、可憐なヒロインや勇敢な仲間と共に魔王を討ち果たす。
で、最後はヒロインとハッピーエンド。お決まりだよな。
俺もそんな事を夢に見なかった、といえば当然嘘になる。
でも実際行ってみようとはまで思わない。
いや、年を重ねるにつれ思わなくなった、と言うべきだろう。
現代の便利な生活が骨まで染みた身に、きっと中世レベルの世界は耐えられないからだ。
水洗トイレが無い生活。ネットが無い生活。車が無い生活。
正直考えも付かない。
更に付き纏う死の危険。
もうやばすぎだろ、常識的に考えて。
ん? 前振りが長い? 何が言いたいのかって?
それはだな……。
『結局は住み慣れた場所が一番って事。
世の中そんなに甘くないよな』
「はあ? いきなり何言ってんの!?」
『いや、なんで俺がこんな状況に陥ってるのか今一度自分に問いかけt』
女性A(仮名)と俺の声が、甲高い金属音にかき消される。
そして俺の体に軽く衝撃が二度響く。体感震度3って所か。
さて、ここで何が起こったのか説明せねばなるまい。
女性A(仮名)が敵(なんか中身が空のピンク色の鎧)の鋭い斬撃を受け止め、はじき返したのだ。俺で。
そしてそのまま女性A(仮名)は攻撃を弾かれ体勢が崩れた相手に縦一閃。俺で。
哀れ一撃で真っ二つになった鎧はそのまま崩れ落ち、光に還った。
『しかし、とても女の力には見えないよな。腕も細いし』
「ああもう戦闘中にうっさい! へし折るわよ!」
『はいはい』
女性A(仮名)のお叱りの言葉を戴いた俺は、気の抜けた返事を返す。
彼女の言葉通り、まだ3体の鎧と箒に乗った婆さんが俺たちを取り囲んでいる。
死を覚悟とまではいかなくとも、それぞれが弱くは無い連中だ。
ああ、なんでそんな相手に俺はこんなに落ち着いてるんだろう。慣れか、慣れなのか。
『酷いや皆! 僕はこんな命の遣り取りなんか慣れたくなかったのに!』
「だから! 煩いって! 言ってるでしょっ!」
人が折角悲劇の主人公を演じてみたというのに、女性A(仮名)はお気に召さなかったらしい。
婆さんが連続で放つ呪文を、蝶の如くヒラリと避けながらまた怒声。
「……ちぃっ」
三度目の呪文をアクロバティックな挙動で回避した先、およそ女性らしさとは無縁な舌打ちをかます女(ry
舌打ちの理由は至って簡潔。
呪文を回避し終えた瞬間、三方から鎧が突っ込んできた為である。
中身は無くともその技量と殺意は間違いなく本物。
それに対し、女(ryは正面から迫る鎧に俺を投擲。
当然余裕で弾かれるが、それこそ女(ryの狙い。
弾かれ宙を舞う俺を疾駆、跳躍しながらキャッチ。そして鎧を飛び越える。
再び俺を構える頃には鎧の包囲の外。相変わらず見事な手並みである。
『そして流石は俺だ。手荒に扱われてもなんともないぜ!
ていうか、ここまで自分を客観的に見れるようになるって結構悲しい事だと思うんだけどどうよ』
「…………」
さて、ここに来ていよいよ目と殺気が本気と書いてマジになった女(ry。
こうなったらもう俺の話なんて聞いちゃくれない。
仕方ないので俺は故郷を偲ぶという名の現実逃避に入るとしよう。
――拝啓 親父様、お袋様、お元気でしょうか。
「スカラ! ピオリム! スカラ! バイキルト! ピオリム!」
――そちらでは俺が蒸発してしまい、大変な事になっている事でしょう。
「ボミオス! ボミオス! ボミオス!」
――ご迷惑をおかけしてしまい、まことに申し訳ありません。
「ルカナン! ルカナン! ルカナン!」
――ですがご安心を。不肖の息子は異世界で元気に生きております。……剣として。
「ずっと私のターン!」
『どう見ても格下相手をレイプです。本当にありがとうございました』
追伸
俺のHDDは中身を見る前に物理的手段をもって破壊していただきたい所存であります。
なんかへんだな?と思っていたが、そういうオチだったか。
第一話、ということは続くのかな?
元の世界に戻れるのだろうか?
せめて元の姿に戻れるのだろうか。wktk
期待ほす
保守
保守
レッドマンは元気だろうか…
保守
1週間ほど来なかったら新作の嵐だったとは!
どれもこれも面白い!皆さんGJです!
今度はこまめによって感想書きます
>>338 書き手の一人ですが、嬉しいお言葉です。
一言でもご感想をいただけるとウラン並の執筆燃料になります!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
保守
携帯で見れるのは嬉しいだろうから俺はwktk
お疲れ様です。
>>341 携帯まとめサイト、良いと思います。
正直、いつか「携帯のまとめマダー」と書かれるんじゃないかとヒヤヒヤしてましたからw
PC版は時間があかない限り更新はしないのですが、よろしくお願いします。
書き忘れ。
まだPC版は最新へ更新されていません、ごめんなさい。
また後日。
>>346さんGJです
携帯からも見れるなんて嬉しい限りです
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!」
どう見ても基地外です、本当にどうもありがとうございました、と言われるほど私は爆走しています。
「たまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖いたまねぎ怖い」
オニオーン
シェーナ周辺に出没するたまねぎ型の魔物…ゲーム内では序盤ザコとして登場、単体であれば初期装備で叩けるが…
「まだ追ってくるー!」
集団で出てこられるとかなり厄介なのはゲームでも、ここでも同じようだ。
サスケの知り合いがここにはいないため、説得して平和的な方法が実行出来なかった。
私の腰にはメイサさんに渡されたナイフ(たぶんブロンズナイフだろう)が出番を待っているが、攻撃力があっても勇気がないため、攻撃をためらってしまった。
相手は姿形は人や見知った動物でなくても生き物だ、いざ攻撃となると胸が痛くなる。
「ピキーッ!」
あれこれ思案しているそばからサスケの悲鳴が聞こえた。
囲まれた、完璧に。
逃げ道はなさそうだ、ついに最終手段実行だと思った。
ベルトに収まっていた刃物に手をかける。
もう、ためらっては駄目だ。
すっとその刃が姿を表す。
曇りのない刃、私は恐る恐る右手に構える。
傍から見ればへっぴり腰で顔もひきつっていて、見るからに弱そうなのは私でもわかる。
初めて構えた命を奪う物はとても重い気がした。
「さぁ来い!」
勇気を持って叫ぶ、自分で言うの何だと思うが、かなり声が震えていた。
その言葉を待っていたと言わんばかりにオニオーン達が私に飛び掛かる。
複数の敵に取り囲まれた私は戦うと言うよりも、相手を振り払うような形になった。
たまねぎの魔物どもは攻撃の手を休めない、休めているのだろうが、数が多過ぎる。
戦闘に集中しているがゆえに仲間へのミスが出る。
「ピーッ!」
「サスケ!」
サスケはオニオーンの角(と言うよりも茎?)によって跳ね飛ばされてしまった。
どうしよう、助けたい、助けられない。
仲間のピンチなのに、このたまねぎめ、うら若き乙女を囲むとは、もう許せない。
「──っ!ぎゃっ!」
サスケを突き飛ばしたオニオーンの中心にナイフが突き刺さる。
会心の一撃だろうか、オニオーンはそのまま動かなくなった。
その様子を見た他のオニオーン達は我れ先に、とでも言わんばかりに退却していった。
倒した、オニオーンはもう動かない。
私の中には安心と小さな罪悪感が渦巻いていた。
倒したと言う事は相手の生を奪った事。
危なかったとは言え、殺してしまった。
「ピキーッ」
涙目になったサスケが私に飛び付く。
敵の命を奪う事で私は仲間を助けた。
自己中心的な考え方だが、サスケが死んでいない、私はサスケを助けた、それでよいじゃないか。
自分を正当化させなければきっとこの世界ではやっていけれないんだ。
「ピキー!」
サスケが倒れたオニオーンの方に誘導する、そうだナイフを回収しなくちゃ。
とっさに投げたナイフが当たってよかった。
ナイフの持ち手に力をかけて引き抜く、生々しい音とともに刃が顔だす、そしてその先には宝石のようなものがくっついている。
「なんだろう」
まさかとは思ったが、どうやらこの世界の魔物は宝石モンスターに属するらしい。
「アベル伝説かよ」
小さくつっこむ私だった。
今日はこれで終了です
>>271-273 感想ありがとうございます
感情移入等をしてくださるなんて感激です
>>携帯まとめ様
自分も携帯厨なのでうれしい限りです
ありがとうございました
>>タカハシ様
まとめでの訂正、ありがとうございました
御迷惑をお掛けしてすみませんでした
おつんつん!
乙女ぃぃょ乙女
「……誰だ」
「それはこっちの台詞だぜ坊や。あンたこそ誰だい? ここでなにしてるンだ?」
その狼男は大きな口から舌をだらりと出しこちらを見つめている。
――嫌な予感がする。
俺はゆっくりと壁から離れた。狼男はそれに気づいたのか、じりじりと間合いを詰めてきた。
手に汗がにじみ、心臓もドキドキと大きな音がする。
「アレフー! どこいったのー!」
マリアさんの声が聞こえた。なんだか迷子の子供を呼んでいる見たいに聞こえる。
それを合図に俺は声のした方向へとダッシュする。すると狼男も俺の後をついてきた。
「待て!」
「っ、マリアさん!」
角を曲がるとすぐにマリアさんが見えた。
こちらを向き困り顔を見せたが、俺の後ろの狼男を見てすぐさま顔を引き締めた。
「モンスターね!?」
「……もう一人いたのか」
狼男が忌々しげに呟く。俺はそのままマリアさんのところへと思いっきり走った。
「アレフ、伏せて! メラ!」
ボウッという音とともにマリアさんの指から火の玉が飛び出す。俺は慌てて前へと倒れ込んだ。
間一髪火の玉は俺の頭上すれすれを通過。後ろから炎が燃え移ったような音がした。
狼男に当たった音かと思い振り返る。するとそこには短めの剣を手にした狼男が無傷で立っていた。
「な、メラを弾くなんて……」
「お嬢ちゃン、魔法使いか」
狼男の眼帯をしている方とは反対の目がギラリと輝く。金色をした、鋭い目付きをしている。
どうやらこの狼男はマリアさんのメラを弾き飛ばしたらしい。なんて奴だ。
「俺にメラは効かねえ、ぜ」
ぶんと剣を振って威嚇してくる。怖い。俺は立ち上がり、急いでマリアさんの方へ走った。
……この光景は漫画でもゲームのシーンじゃない。本当にすぐそこで起きていることなんだ。
「っ! それなら、ヒャドッ!」
マリアさんが杖を狼男へと向けると、杖の先からキラキラしたものが飛び出した。
そのキラキラは狼男目掛けて飛んでいく。狼男は直ぐさま避けたが、完璧に避けられず左肩へと命中した。
すると左肩からみるみるうちに氷が広がり、狼男の左腕は氷漬けになってしまった。
「くっ、ヒャドも使えるのか」
悔しそうに呟きながらその氷を忌々しそうに見やる。力を込めているようだが、左手はぴくりとも動かない。
「……おい、お嬢ちゃンたち。悪いことは言わねえ、早くここから立ち去りな」
「なんですって?」
突然狼男は氷に向けていた目線をこちらに移し、俺たちに逃げろと言った。
「私たちを襲ったモンスターの言葉を信じるわけがないでしょう?」
マリアさんが構えを解かないまま威圧感たっぷりの声音で話す。
俺もマリアさんと考えることは同じだ。向こうから先に襲ってきたのに、逃げろって言うのはどうも信じられない。
俺たちが逃げようと後ろを向いた瞬間、攻撃でもするつもりなんだろうか?
「モンスター、ね。まあ、信じないのは当然だよなあ。でもさっさと逃げてくれねえと、俺が困るンだよ」
狼男は頭をボリボリと掻きながらそう言う。
「あなたの事情なんて関係ないわ」
スッとマリアさんは杖を構える。戦闘態勢だ。
狼男がこちらへ向ける目を一瞬細めた気がした。
「今度はこれをくらいなさ……」
「グレッグ」
マリアさんが呪文を唱えようとした瞬間、狼男の後ろからしわがれた声が聞こえた。
狼男はそれに驚いたのか目を見開き、ゆっくりとその声の主の方へ向いた。
「グレッグ……どうした、そんな大声を出して」
「……ボス」
のしのしと俺たちに近づいてきたそいつは、緑色をしたしわくちゃの肉の塊でとても気色が悪い姿をしている。
この緑肉は狼男をグレッグと呼んでいる。だとしたらこの狼男の名前はグレッグというのだろう。
グレッグは俺たちの方に目線を向けた後、耳を掻いて下を向いた。
「ん? グレッグ、こいつらは旅人か?」
緑肉は俺たちに気づき、そのたぷんとした肉に囲まれた目玉をギョロリと動かす。死んだ魚のような濁った目玉だ。
「そうか、お前たちが迷い込んだ旅人だな? フェフェフェ、そちらから出向くとは……実に好都合。手間が省けたわ」
なんて耳障りな笑い声だ。
顔をしかめていると、マリアさんが緑肉を睨んで言った。
「もしかしてあなたたち、迷い込んだ人たちを……?」
「フェッ、お前たちのような旅人はなかなか良い魔力を持っているのでな……よい栄養になるわ」
「っ!」
こいつら、旅人を食べて……! なんてやつらだ!
「……なら、ここであなたたちを始末しておかなきゃ、犠牲者は次々と出るって訳ね」
マリアさんが一歩踏み出す。その声音は淡々としているが、怒気が含まれており威圧感がある。
それを馬鹿にしたようにふふんと緑肉は鼻息を噴き、手に持っていた杖を振る。
一方グレッグは動かず、このやりとりを見つめているだけだ。俺も見つめているだけだが。
「お前に我らが殺せるか? 小娘」
「もちろんよ! ギラ!」
先制攻撃! マリアさんの両手から発された炎は帯状になり緑肉へと向かっていく。
俺は戦闘の邪魔にならないよう脇に離れる。戦力にならなくてすみませんね! ふんだ!
「ギラか……甘いわ!」
緑肉はしたり顔(肉で表情はよく読めないが多分)でマリアさんを見つめ、杖を振った。
すると炎は風に巻かれたように一瞬でかき消された。
嘘だろ、呪文が消されるなんて!
「なっ!?」
マリアさんも今の光景が信じられないという表情をしている。
すると緑肉は俺の方を見てからグレッグの方を見やり、手を振ってなにか合図をした。
その合図を受けたグレッグは、指を口に当て口笛を吹いた。ピィーというその口笛独特の音は森の中に響いていった。
「これでいいですかい、ボス」
「……なにをしたの?」
「なあに、ちょっとした余興よ」
余裕といった表情(多分)で俺たちを見つめる緑肉。くそ、馬鹿にしやがって。
「よくわからないけど、まあいいわ……くらいなさい! ヒャド!」
杖から出たキラキラが緑肉の方へと向かう。緑肉はその場から動く気配がない。やった、命中する!
しかしキラキラは緑肉との間に突然飛び込んできた影に当たった。
そいつはグレッグによく似た狼男だった。その狼男は両腕が氷に包まれたまま緑肉の横に立った。
「おお、来たか」
緑肉は手にしていた杖をカツンと地面に一打した。
するとマリアさんの周囲に狼男たちが出現した。数はグレッグを入れて6匹。
マリアさんのところへ行こうと足を出した時、背後から羽交い締めにされてしまった。
「アレフ!」
しまったと思ってももう遅く、俺はグレッグに捕らわれてしまった。
凄い力だ、片手で押さえられているのに苦しい。潰れてしまいそうだ。
「くっ、卑怯者!」
「フェッ、なんとでも言うがいい……食料よ」
噛みつくように声をあげるマリアさん。しかし緑肉は勝ち誇ったように高笑いをあげる。
マリアさんの周りには5匹の狼男がいる。危ない!
グレッグの手を引き剥がそうともがくが、手応えがない。逆に力を入れられて押さえつけられる。
「大人しくしてな、坊や」
おまっ、坊やって呼ぶな! そう言おうとしても声が出ない。
「……だから、早く逃げなって言ったのによ」
グレッグはそう小さな声でボソリと俺の耳元で呟いた。……グレッグ?
ふと狼の鳴き声が聞こえてきた。俺はハッと顔を上げ、声のした方へ意識をやった。
狼男たちが剣を抜き、マリアさんに近寄っていく。緑肉は祭壇の上の方で高みの見物を決め込んでいるようだ。
「っ……ギラ!」
マリアさんはギラを放つ。炎は大きくうねり狼男たちを包み込んだ。
しかし火力が弱かったのか、炎は狼男たちの服を一部焼くだけだった。
俺はグレッグの脇腹にエルボーを喰らわした。何度も打ったが、角度が悪いらしく力を込めて打つことができない。
野郎! このままじゃマリアさんが、マリアさんが! くそッ! 放せッ! 放せよッ!
「この……っ、は!」
もう一度呪文を唱えようとマリアさんが杖を構えた瞬間、背後からの剣撃が降り注いだ。
そしてそのまま崩れるように地面へと倒れていく。その光景がまるでスローモーションのように感じる。
背中から流れ出る血が白いローブを真っ赤に染め上げた。
――ドクン
その光景を目にした刹那、俺の中で”なにか”が動き出した。
投下は終了です。
今回はさるの邪魔が無くてよかったです。
>>344 まとめ乙です!
いつもまとめサイトには色々とお世話になってます。
>>346 携帯まとめ乙です!GJ!
>>353 サスケ可愛いよサスケ(*´∀`*)
(´・ω・`) n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(
>>360さん乙!いいところで区切りやがって(笑)wktkで待っている
保守
久しぶりに来たが、4の人の完結してたんだな…本当に遅ればせながら面白いSSをありがとう、そしてお疲れ様です。
あれ、最後に主人公はどうなったんだ?死んじゃったのか?
前回までのあらすじ
>>319-323 「あああああああああ! そうだよ、銅の剣はスーファミじゃねえか!」
そんなわけでこんにちは。俺です。
俺は今、ガライの町に来ています。
いきなりで申し訳ありませんが、とんでもない勘違いをしていました。
ガライの町にある鍵を使って入る建物内。そこに宝箱が三つあるのは皆さんご存知のことと思います。
約600G、銅の剣、たいまつが入ってると思って来たわけですが…… S F C 版 と 勘 違 い 。
中には10G、薬草、たいまつの3つ。……鍵一個と引き換えと考えるとどう考えても損だよなあ。
仕方ないのでさっさと建物を出る。
唖然としている宝箱の持ち主らしき親父はスルー。
私の宝箱が……と呟いてるのは気のせい気のせい。
この建物内に入る=ガライの墓で銀の竪琴を取りに行く、なんだけど今の俺は無理。
棍棒と皮の服装備の俺に過度な期待はしないように。
ともあれ、目的の一つは果たした。
残る目的はある剣士の捜索。
「……って簡単に見つかったよ」
武器屋の隣に、目的の剣士はいた。
にしても、何と声をかけたらいいのか。
すいません、ちょっとお時間よろしいですか。……これじゃキャッチだな。
こんにちは! 竜王を斃しに行く途中なんですけど、どうやって斃せばいいのか教えてくださいm(_ _)m
……どこの厨だ。
調べたけどわかりませんでした。
「俺に何か用か?」
「うぉう! 脅かすな!!」
どう声をかけるべきか俺が迷っていたら剣士から声をかけてくれました。
「ええと……人違いだったら申し訳ない、みやおうさん?」
「いかにも。俺はみやおうだが――」
ファミコン神拳110番創成期の一人、ミヤ王。
平成生まれのお子様達にはわからないだろう。詳しくはググれ。
「ワケあってあんたを探してた」
「俺を? 何のためにだ?」
「竜王を斃すために、あんたら――ゆうてい、みやおう、キムこうの力を貸して欲しい」
「なにい?」
「俺の仲間になってくれ」
ファミコン神拳110番のメンバーである堀井雄二、宮岡寛はドラクエの製作に関わっていた。
彼らがドラクエに自己を投影させたのかはわからない。
十中八九お遊びだろうが。
ともあれ、ドラクエ製作陣が仲間に加えておいて損はない。たとえ別物であってもだ。
「冗談ではないようだな。……話を聞かせてもらおうか」
・俺が異世界から来たこと。
・竜王を斃すことしか俺が元の世界に戻る可能性がないこと。
・俺の世界ではこの世界は創作物であること。
ミヤ王に語ったことを今北産業用にまとめておく。
創作物と表現したのはこの世界ではゲーム云々で説明するよりも手っ取り早いと判断してのことだ。
ゲームとはなんだと聞かれても困るしな。
「嘘ではないようだな」
黙って俺の話を聞き終えたミヤ王は、じっくりと考え込んでから口を開いた。
『私は異世界から来た人間です、元の世界に帰るには金正日を斃すしか方法はありません。一緒に北朝鮮を攻めましょう』
なんて言われたら正気を疑うだろ?
誰だってそーなる。俺もそーなる。
しかし、ミヤ王は信じてくれたようだ。
流石はファミコン神拳110番。
「ゆうていとキムこうの居場所も知っていると言ったな」
「ああ。ゆうていはマイラ、キムこうはリムルダールにいる」
「間違いはないな?」
真面目な顔で聞くミヤ王に頷いてみせる。
ミヤ王がガライの町にいたように他の2人もそれぞれの町にいるはずだ。……確証はないけど。
「竜王を斃す斃さないは俺一人では決められん。二人と合流してからになるが……」
「……ま、リムルダールまでの仲間ってことでもいいさ」
ここにいる「みやおう」とファミコン神拳の「ミヤ王」は別人。
だが、現実のミヤ王をモチーフとしている以上、決して見捨てるはずがない。
3人揃った時は竜王打倒に力を貸してくれるはずだ。
「こっちは実戦慣れしてないんで色々と迷惑かけると思うがよろしく頼む」
そう言うと、ミヤ王は男らしい笑みを浮かべて、気にするなと言ってくれた。
いい奴だ。
ミヤ王になら掘られてもいい。
実際にそうなったら全力で貞操を守るが。
「マイラにゆうていがいるんだったな」
「ああ。明日、マイラを目指そう」
「今からでもかまわないぞ」
「俺がかまうんだよ。ラダトームから全力疾走はしんどいわ」
ともあれ、こうしてミヤ王が仲間になった。
ミヤ王のステータス
攻撃力:あたたたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたたっ
支援します
投下終了ですが…あああ、どうしてこうミスが多いんだ。
もう自分が嫌になる。
俺なんてハッサンに掘られちゃえばいいんだ。
というわけで訂正です
>>365-366 二つで一つのレスとして読んでください。
>>366-367 ×特攻の俺
○俺王
>>344-345 お世話になってます。
今回も本当すいません。
>>346 乙であります。
出先で読めるのはありがたいです。
乙
オサーンの俺にはググルらなくとも全てが手に取るように分かるw
ファミコン神拳的パラメータ表示吹いたw
分からない俺は間違いなくゆとり。ともあれ乙
乙です
メタルサーガ鋼の季節をプレイして
ミヤ王は過去の人なんだなぁと寂しく思った…
まともサイト読み返したら、隙間風氏の続きが気になって仕方ない
あのぶっ飛びっぷりがたまらんW
hossyu
スレ違いな話しになっちゃうけど
>>341 のバトロア面白いね!個人的にはドラクエ5の子ども達とバッツの絡みが良かった!
あれはリレー?このスレもリレーの話し出てましたが職人さん頑張って!
田中と鈴木はどうなった!?
ほ
「うあああああああ!!」
アレフは突然大きな叫び声をあげた。天をつんざく程の大きな叫び。
その叫びは今まで己を捕らえていたグレッグの腕をほどき、マリアににじり寄る狼男たちの歩みを止めた。
「何事だグレッグ!」
緑肉――幻術師は慌てた様子で部下の名を呼ぶ。
その方向には部下とその場にうずくまる少年の姿があった。
両肩を抱き、震え、その目はどこか虚を見つめている。
(……俺は、俺は……マリアさんを守れなかった……マリアさんが倒れたのは、俺が弱いからだ!)
アレフは心の中で己に叱咤を浴びせかける。
(さっきの俺はただ逃げ回ってただけじゃないか! マリアさんを守ろうって! 強くなろうって! そう誓ったじゃないか!)
肩を抱く腕に力が入る。爪が肌を圧迫し、血が滲んでくる。
(神様だって、俺に力をくれた!)
一瞬思考が止まる。
アレフは気づいた。自分にはまだマリアを守れる力があるということに。
(……力……そうだ、俺には、あるんだ……あの呪文が……)
肩から手を放し、ゆっくり立ち上がる。
数度瞬きをする。すると先程まで虚を見つめていたその目は元の生気ある輝きを取り戻した。
幻術師は先程とは打って変わった様子のアレフを怪しんだ。
「グレーッグ!」
幻術師が叫ぶ。その声により正気を取り戻したグレッグは、アレフをもう一度捕らえるため腕を伸ばした。
「チッ!」
アレフは向かってくるグレッグの方へとその体を向け、真っ直ぐ彼を見つめた。口を引き締める。
(……神様が俺にくれた力、それは――)
「ドラゴラム!」
グレッグの腕がアレフを捕らえた瞬間、彼から放たれる光によってグレッグは弾き飛ばされた。
光、そして大気はそのままアレフの周りを囲むように渦巻く。
ごうと渦巻くそれは、まるで昇竜のように天高くへと向かっているように見えた。
「ぐっ!」
「な、なにが起きた!?」
幻術師は言い知れぬ恐怖にその肉に包まれた顔を引きつらせた。
狼男たちもアレフから感じる威圧感に身を強張らせ、その場を動けないでいる。
(……ア、レフ……)
マリアは薄れゆく意識の中、アレフを見た。
そこには以前の力ない少年の姿ではなく、強大な竜の姿があった。
「なんだこいつはッ! お前たち、かかれ、かかれッ!」
突然目の前に現れたドラゴンに肝を潰し、幻術師は慌てて部下に攻撃するよう命令した。
しかし狼男たちは飛びかからない。ドラゴンの持つ力に本能から怯えているからだ。
緑色の身体と金の瞳を持ったドラゴン――アレフは、マリアの元へと向かった。
ズシン、と一歩進む度に大気が揺れる。
『これがドラゴラム……竜に変身する呪文なのか……』
アレフは力に飲まれることもなく、はっきりとした意識を持っていた。
「グォォオオオオオ!!」
天に向かってアレフは雄叫びをあげた。己に活を入れるよう、勇気を出すように。
すると狼男たちは我を取り戻したのか、一目散に森の方へと逃げ出していく。
だがアレフはそれを逃がさない。
ズンと一歩踏み出し大きく息を吸い込む。周囲の空気が震えている。
そして狼男たちに狙いを定め、勢いよく炎を吐いた。その炎は大きな波となり狼男たちに襲いかかる。
「うわああああ!!」
「熱い! 熱いィッ!」
「助けてくれぇえ!」
ごうごうと音とともに狼男たちは炎にまかれ、その熱さと痛みにのたうち回った。
肉の焼ける臭いがする。狼男たちの身体がジュウと焼け、ただれていく。
『マリアさんを傷つけたお前たちを、絶対に許さない!』
アレフはもう一度炎を吐いた。先程の炎よりも火力を上げた、灼熱の炎を。
空を燃やすほどの炎。それはもがき苦しむ狼男たちを飲み込み、黒い炭へと変えた。
「ヒィッ!」
一部始終を見ていた妖術師は、そのあまりにも圧倒的な力の差におののき逃げ腰になる。
『……っ』
消し炭にした狼男たちの残骸を見ると、ちくりと胸が痛くなる。
モンスターなんだ、モンスターだから。そう己に言い聞かし、アレフは標的を変えた。
マリアを守るよう背にし、妖術師へとその巨体を向ける。金色に変化した瞳には既に妖術師しか映ってない。
「くっ、おのれ……おのれぇええッ!!」
逃げたいと思う本能と逃げてたまるかというプライドの間で揺らぐ。
足下の小石を蹴り上げ地団駄を踏む。その顔は今までよりも更に醜悪に歪んでいた。
「マヌーサァ!」
惑わしの霧が杖の先から発生しアレフを包むが、アレフが大きく首を振ると霧はたちまちに散開した。
その間もアレフの目は妖術師から離れない。金の視線は妖術師を貫く。
アレフは後ろ足で立ち上がり、ブゥンと尻尾を降って妖術師の乗っている祭壇に衝撃を与えた。
そのあまりもの揺れに、幻術師はその場を動くことができなかった。
幾度目かには大きな亀裂が入り、轟音とともに祭壇は大小様々な破片となって崩れていった。
「なっ、ぎゃぁぁあああ!!」
足場を亡くした妖術師は重力に逆らえるべくもなく地面へと落下していった。
ズン、ドグチァ。落ちた上から祭壇の破片が降り注ぎ、妖術師は破片の下敷きになった。
重なった石の間から緑色の体液が流れ出ていく。妖術師はそのまま息絶えた。
「グルルルル……」
地に倒れ伏しているマリアの前で、アレフは呪文も解かずに為す術もなく立ちつくしている。
いや、”解かず”ではなく”解けない”の方が正しいだろう。力が不安定らしく、変身を解くことができないのだ。
敵を倒したのはいいが、アレフは回復呪文を持っていない。
道具袋の中にあった薬草を使っても治療が追いつかない。
今はまだマリアに息があるからいいが、このままでは死んでしまう。
『どうしよう、マリアさんが……このままじゃ……!』
マリアの前で半泣きになっていると、近づいてくる影がひとつやってきた。
その気配に気づきアレフはそちらへ目を向ける。するとそこにはグレッグの姿があった。
腕の氷は既に溶けており、自由に動いている。
『グレッグ! 生きてたのか』
アレフは身構えた。いつでも攻撃に転じることができるよう、呼吸を整える。
しかし当のグレッグには攻撃する気はないらしい。両手を挙げ降参のポーズで近づいてきたのだ。
「もうおたくらに危害を加える気はねーよ、安心しな」
出会ったときと変わらない軽い口調で語りかける。だがアレフは気を許さない。
こいつはマリアさんを襲った狼男たちと同じ種族なのだ。モンスターなのだ。
「この嬢ちゃン、微かに生きてはいるが、このままじゃあちとアブねえな。血が流れすぎてる」
倒れるマリアの前にひざまずき、状態を確認する。腕を掴み脈をとると、とてもゆっくりとしたリズムだった。
アレフはとたんに狼狽えだした。どうしようどうしようどうしよう。顔を左右に揺らし落ち着きが無くなる。
「……坊や。この嬢ちゃンを助けて欲しいか?」
アレンの目が驚きに見開かれる。「本当に?」そう言っているような目だ。
縋るような思いでアレンは頷く。もう敵であることは関係ない。マリアを助けてくれるのなら。
「グルル……」
「了解。ちょっと待ってろ」
グレッグはマリアの手のひらを天に向け、なにやら呪文を唱えだした。
するとぽつぽつと水滴が地面へと落ちてきた。雨だ。グレッグによって雨が召喚されたのだ。
不思議な雨だ。身体に当たっても濡れることがない。まるで幻の雨に当たっているようだ。
その雨の雫はマリアの背の傷に染み込んでゆき、みるみるうちに傷が塞がっていった。
意識までは戻らないが、マリアの顔に赤みが増えていく。
『っ、マリアさん……ッ!』
アレフはその長い鼻先をマリアに近づけ、擦り寄った。助かってよかったという想いを込めて。
「ふう……これで大丈夫だ。坊や、おたくはどう……」
治療を終えたグレッグはアレフの方へ顔をやった。
しかし当のアレフはいつの間にか元の姿に戻っており、その場で気絶していたのだ。
安心して気が抜けてしまったのだろう。その顔には安堵の表情を浮かべていた。
「……ここまで無防備でいいのかねぇ」
その光景を見て、グレッグは呆れたように耳を掻き苦笑する。
静かになった森にアレフとマリア、ふたりの寝息が響いた。
投下終了です。
今回はアレフの一人称じゃなくて神視点で話を書きました。
っていうか、途中「アレフ」じゃなくて「アレン」になってる場所があります。
アレンじゃあ2の主人公の名前だよ……
まとめ様、保管庫に入れるときは直してください。すみません。orz
投下乙です。
グレッグ、なんかいいですね。
早く逃げないと・・・っていうセリフも幻術師が出てくる前に逃がしてあげるつもりだったんでしょうね。
考えてみれば、グレッグさんの言い分も聞かずにこちらから一方的に攻撃してしまったような。
それとドラゴラム、圧倒的ですね。
読んでてもすごい迫力でした。
ルビスが出た辺りからふってわいたいやな予感・・・
厨房好みの展開んになってきましたよっと。普通切り札のはずだろ登場早えなオイ。
どうせこれから勇者呪文とか無節操に覚えンだろ。職の概念ないVが下敷きなのはそのためか。
なんでこうホイホイ力をテキトウに力をもらって手軽に強くなるんだろ。レベル幾つなんだよ頭の。
他力本願だな独力でなんとかしようとはおもわんのか、思いつかんのか、おもしろいか。
挙句にわけのわからんオリキャラにオリ呪文かよアホか?
これがゲーム脳かね?わけわかんね。
というか一人で勝手に続きを予想してそれにケチつけるなんてスゲーな
投下されたものに対する意見だけならまだ許せるけど
みんな落ち着くんだ!
>>387はきっと朝早すぎて寝ぼけながらレスしたに違いない
ゲーム脳の恐怖・・・・。
Oh!、Noぉぉぉぉぉ〜〜〜〜っ!!!
実は意外と、読み流しおざなり感想じゃなさげな濃さに思うが。
いや、そうでもないか。
さて、またまったり新作投下を待つとしよう。
ドリーム少s…いや何でもない
395 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/06/01(金) 23:58:58 ID:oYnUYcuwO
(=ω=.)
?
お疲れ様です。
携帯まとめサイトをPCまとめサイトからリンクさせていただきました。
まとめ作業の方はまだ出来ていません。
しばらくお待ちください。
お久し振りです、おはようございます
かなり間が開いてしまいましたが
>>173の続きです
目を開けると俺は城の外に立っていた。
予想通りだったので動揺はしなかったが、ビアンカは
不可思議そうに辺りを見回して『あら?』と呟いた。
入るときには気付かなかった、城門の内側すぐの小さな観賞用の池のほとりに、
皺だらけで頭の禿げ上がった老人が一人佇み、
俺達はその老人が焚いている小さな焚き火のそばにいた。
『おや、目が覚めたかね』
老人が俺の視線に気付き、しわがれた声で言う。
傷んだはずの腕の痛みは、すっかりと消えてなくなっていた。
触れてみるとすべすべときれいな子供の肌。
疲労していた体も、心も。驚くほどきれいに元に戻っている。
恐怖さえ、僅かな休憩でなかった物のように俺の中から消えている。
そのほとんど気分のいい感覚に、逆に俺は少し気味悪さを覚えた。
寝てる間に変な薬でも飲まされてるんじゃないか。
そんな薬がこの世界にあるのかも判らないけれど。
老人は伺うように俺とビアンカを交互に見、
『この城には幽霊が出るそうじゃから、気をつけなされよ』
言ってほっほっほ、と笑った。
『自分のほうが幽霊みたいよね』
とビアンカが俺の耳元で囁いて、俺は思わず笑いそうになった。
ここを後数歩離れた時の、ビアンカの反応が楽しみだ。
期待通りのビアンカの反応をひとしきり(勿論心の中で)笑った後、
俺達はもう一度城に足を踏み入れた。今度は簡単だった。
王の力か、あれだけ固く閉ざされていた正面扉は、驚くほどあっさりとその両の手を解いた。
広間を抜けて真っ直ぐに、俺達は玉座の間を目指した。
出くわすモンスターは敵ではなかった。
呪文を唱える隙も与えず叩き落す。
例え呪文を食らったとしても、覚悟をしていればそれはもう恐ろしいものではなかった。
取り乱すこともなかった。
あの僅かな眠りの中で。何が自分を変えたのか、自分にも測りかねていた。
暗闇に松明の明かりを放って、とうとう俺とビアンカは玉座の間に立っていた。
真っ赤な絨毯と黄金色に装飾された玉座の中央に、
ゴーストの親玉はゆったりと深く腰掛け、こちらを見て微笑んだ。
『ほう・・・、ここまで来るとは。大した餓鬼共だ』
ちらちらと揺れる松明の炎が、浅黒いボスの表情をより不気味に演出している気がした。
つり上がった細い両の目を更に細め、舐めるようにこちらの表情を伺っているのが判る。
時折、暗い色のローブからはみ出した湿った枯れ枝のような細い指で、
持て余すように金の肘掛をかちりと鳴らす。
耳元まで避けた口をまた開き、愉快そうにボスはヒヒヒ、と笑い声を上げた。
『ここまで来た褒美に、美味い料理を振舞ってやろうじゃないか。
さあ、こっちに来なさい』
ビアンカは黙りこくり、視線をボスに釘付けたまま首を横に振る。
親玉は目を見開き、威圧を込めた声色で『まさか俺様が怖いのかな?』と言った。
『あんたなんかに従わないわ』
ビアンカがはっきりした声で言う。
ボスはまたヒィヒヒ、と嫌な笑い声を立てると、馬鹿な餓鬼だ、と呟いた。
刹那、世界がぐらりと傾いた。
覚悟はしていた筈なのに、咄嗟の出来事に一瞬、事態の理解が遅れる。
床が抜けたのだと、ボスの足元を通過しながらやっと気付く。
『貴様らに食わせる料理なぞないわ。貴様らは材料―――』
語尾が遠のき、今まで立っていた高さが頭上に消えていく。そして音楽。
物の数秒で大広間を通過し、俺は仄暗い小部屋に尻から着地した。
直後に何かが潰れるような衝撃音と、ビアンカの
キャアとヒャアの間のような悲鳴が耳に届く。
左手に何か柔らかいものがべっとりと張り付いて、俺は手元を見下ろした。
半分腐った果物や、野菜や肉が足元に敷き詰められていて、
それが落下の衝撃を多少和らげてくれたのだろう、
俺の体の下で可哀相なほど無残に潰れ、飛び散っている。
その下には良く割れなかったものだ、白い陶器のような床が見え隠れする。
『そ、そんな・・・』
すぐ横で男の声がして俺は振り向いた。
『子供を料理するなんて・・・!私にはできない・・・』
泣き顔のコックが俺の方を見て首を振っていた。
直後、ばちん、と何かが弾ける音がして、コックがひいい、と悲鳴を上げる。
『サン、今のうちに行きましょうよ!』
物語の流れを待っていた俺にビアンカが囁いた。
思わずえ?と間抜けな言葉を返す。
『お化けの親分を倒さなきゃ!なにぐずぐずしてるの?』
ビアンカはもう片足を皿の縁にかけ、今にも飛び降りんという姿勢で俺の腕を引く。
というか、物語を外れるという発想を今まで考えなかったことに、今更ながらに気付いた。
それよりも物語の中のキャラクターであるビアンカが、そんな提案をしていいんだろうか。
呆気に取られている俺に
ビアンカはじれったそうに『なにしてるの?』と声を荒げた。
ああ、うん、と曖昧な返事を返し、どうしようかと思案した刹那
がくん、と足元が揺れた。バランスを崩しかけたビアンカが
悲鳴を上げながら俺の腕にしがみつく。
ぎしぎしと金属が擦れあう音を立てながら、足元の皿が、
正確には皿を載せたゴンドラのようなものが、
ゆっくりとテーブルを離れて持ち上がっていく。
『もう、間に合わなかったじゃない。どうするのよ』
苛立ちを隠さずにビアンカが言った。
ある意味物語の通りなんだけど。俺はちょっと失敗したなあと思っていた。
物語を外れたらどうなるのか。そんなこと考えても見なかった。
外れるといっても、お化け退治には違いないからほんの僅かな相違だけれど、それでも。
もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。
ゆっくりと下に流れていくキッチンの壁を見ながら、
俺は言い知れぬ期待が胸に湧き上がるのを感じていた。
頭の中はこの先のストーリーで一杯だった。
浮ついた気持ちのまま三匹の蝋燭を叩き伏せる。
呪文で食らったダメージを薬草で癒し、俺達は再び玉座のフロアへ向かった。
暗闇で松明に火を点しながら、ボス戦に向けて息を整える。
思えば、初めてのボス戦だ。
初めての戦闘・・・三匹のスライムの時に比べれば
多少は経験も積んだし、不安も少ない。
先への期待で揺らぐ集中力を必死で諌めながら、俺は最後のフロアに足を踏み入れた。
先ほどボスが鎮座していた玉座に、今はもう誰もいなかった。
きい、と蝶番が軋む音を立てて、玉座と反対側にある小さな扉が閉まった。
『サン・・・あっち』
ビアンカが声を震わせる。
俺の手を握った指先が震えているのが伝わってくる。
耳の奥で心臓が拍を早め、鼓動が神経を伝い脳まで脈打つようだ。
小さな扉を開けると、冷たい風と雷光が俺を出迎えた。
ごごう、と大きな音を立てて天が震える。
ボスは小狭いテラスにもたれ掛かるようにして振り向くと、
『おやあ、奴らはお前達を食い損なったようだな』
待ち構えていたように俺達を見て言った。
風が唸り、松明の明かりが不意に掻き消える。
『ふん、仕方ない・・・俺様が直々に料理してくれるか』
にやあ、と開いた口元から真っ赤な舌が覗いている。
俺はビアンカにちらりと目配せすると、自分の武器を腰紐から引き抜いた。
ざらりと音を立てて、ボスの引きずるほどに長いローブが揺らいだ。
覆い被さるように高く掲げられた両の手から閃光が走る。
ヒィヒヒヒ、とボスの高笑いが響いた刹那、目の前を炎が走った。
ビアンカが悲鳴を上げる。
『人間の餓鬼共が!俺様に勝てると思うなァ』
ボスが吼えるのに呼応するように、天上か雷鳴が降り注ぐ。
ビアンカは怯まなかった。
きっ、と意志の強い瞳でボスを睨み付けると、『なめんじゃないわよっ』と鞭を翻す。
負けじと俺も手にした武器を叩き付けた。鈍い音がしてボスの体がよろめく。
『ヒィヒヒ、やってくれる』
再度呪文の詠唱に入るボスより僅かに早く、ビアンカが叫んだ。
炎の塊が空を切り、ボスの顔面に吸い込まれる。
ギャア、と嫌な悲鳴が雷鳴に掻き消える。ボスはまだ倒れない。
ローブの奥まで切り裂くように俺は力を込めて武器を振り下ろすが、
致命傷を与える前にその腕に振り払われた。
間髪いれず追ってくる一撃を避けきれず、俺は固いタイル張りの床に叩きつけられる。
『この餓鬼共がァ!やってくれるじゃねえか!』
ボスがもう一度何か唱えた。
今度はテラス一面を覆うような大きな炎が、俺達を包む。
がくん、と、膝が落ちるのが自分でもわかった。
辺りには埃の焦げたようなすすけた匂いが立ち込めている。
俺より少し前方に、一瞬尻を着いたビアンカが身を起こしまた駆け出すのが見えた。
反射的に俺は呪文を唱える。
ビアンカが振り返り『ありがと』と言った。
攻撃呪文のように目に見える効果がわからないから心配だったが、
回復呪文はちゃんとその効果を発揮したようだ。
ビアンカの持つ鞭が天に大きく翻る。
振り下ろされるボスの鋭い爪先をひらりとかわすビアンカの姿を確認しながら、
俺はもう一度呪文を唱えた。
体の痛みがすう、と引き、俺は武器を取り立ち上がる。
支援です
投下乙です!
いよいよ初のボス戦、クライマックス直前!
続きめっさwktkです。
>>399-405 > もしかしたらゲームとは違う、俺だけのストーリーを描けるんだろうか。
今後のことを考えるともの凄いwktkです。なんか今から緊張してきたw
続き期待してます。
重婚展開wktk
期待ほしゅ
投下待ち保守
保守
ほっしゅ
前回のあらすじ
>>365-368 こんにちはこんばんは、俺です。
昨日はミヤ王を仲間にした後、宿屋で泥のように眠りました。
平日は日がな一日パソコンとにらめっこしてるような事務職、休日は2ちゃんやゲームが大好きなインドア派。
全身筋肉痛なのは実に当たり前。……元の世界に戻れたらジムに通おうかなあ。
そんなわけで俺は今、ミヤ王と一緒にマイラの村に向かっている。
今のところ出てきたモンスターはスライム、ドラキー、ゴーストといった雑魚のみ。
ミヤ王のおかげで楽勝www楽しちゃってサーセンwwwwwwwwwwwwwww
「お前は戦いは不慣れなのか?」
そう訊いてきたのはラダトーム平野とマイラの森を結ぶ橋を渡ってからのことだ。
「やっぱわかるもんなのか?」
「ああ。実戦慣れもしてないが、モンスターの死に対してすら慣れてないようだからな」
「…………」
「図星か」
そう、俺はまだ殺すことに慣れていない。
今まで戦ってきた敵は『倒して』終わり。
完全に『斃して』はいない。
ミヤ王がドラキーを『斃した』時、無様にも吐き出した。
滑らかな切り口とすら言える断面から覗く内臓は、健康な人間のそれと同じ色。
限りなく黒に近い紫色の血。いや、ありゃ体液か?
鋭利に切断された白いものは骨だろう。
地面に落ちたショックで飛び出た眼球は白い糸を引いていた。
鳴き声を発しながら二度三度と痙攣して動かなくなる様を直視することができなかった。
これが『死』なんだ。
新聞を見ればどこかの国でテロや戦争で死者が出たと載っている。
テレビをつければ他県の殺人事件の特集を組んでいる。
だが、俺にとっては『どこかの国』であり、『他県』でしかなかった。
自分とは無縁の世界の出来事なんだと無意識に思っていた。
新聞を折り畳めばテロや戦争の記事は目に入らない、テレビを消せば殺人事件の続報は入ってこない。
決して忙しいとは言えない日常の中で忘れられていくだけの出来事。
俺にとって『死』とは身近なものではあったが、現実とは遠いところにあった。
以前、ディルレヴァンガーと名乗る気違いが猫を殺した事件があった。
ネット上に上げられた殺害の過程の画像は俺も見た。
すぐに画像を閉じ、なんてことをしやがると憤ったこともある。
だが、画像を開いたのは俺の意思だ。
騙したわけでも騙されたわけでもない。
ディルレヴァンガーが逮捕された時、ニュー速+のスレに誰かがリンクを貼った。ただそれだけだ。
俺は自分の意思でそれを見たのだ。
子供の頃、蟻の巣に水をぶちまけたことはある。
大人になってからも蚊を叩き潰したり、殺虫剤を使ったこともある。
車に轢かれた猫の死骸を見たこともある。
だが、それでも俺は自分とは関係ない世界の出来事なんだと思っていた。
俺にとって、 『殺す』とは無縁の世界だった。
「襲ってくる魔物はためらわずに殺すことだ。そうしないと自分が殺されかねない」
「……ああ」
それは俺もわかっている。
この世界では俺のいた世界の常識は通用しない。
覚悟を決めなきゃ生きていけない。
動物を殺すのは可哀相と言うのは簡単だ。
何しろ、自分の命がかかっていないから。
自分の安全が保障されている世界では真っ当な話だ。
しかしここでは自分の安全は保障されていない。己の身を守るのは己しかいない。
ここでは人の命も魔物の命も全てが平等なのだから。
「今ここで実戦経験を積むのもいいが、ゆうていと合流してからの方が安全だ」
「なして?」
「ゆうていはホイミが使えるからな」
「みやおうは使えないのか?」
「自慢にならんが魔法の才能はゼロだ。魔力そのものがないらしい」
「魔力の有無なんてわかるもんなのか。俺はどうよ?」
「ある程度魔力を持っていればわかるらしいんだが、俺は全くないからお前が魔法を使えるかどうかはわからんがな」
「ダメじゃん」
「そう言うな。キムこうならわかる」
「キムこうは呪文使えるのか?」
「ああ。ゆうていはそこそこの魔法しか使えないが、キムこうはかなりの使い手だ」
みやおう=戦士、ゆうてい=魔法戦士、キムこう=賢者。
この認識でいいのだろうか。
だとしたらバランスの取れたパーティーだ。
不安要素は……俺、だよな。
うん、頑張ろう。
「実戦に勝る修行なしってことだな」
「お前の世界ではそんな言葉があるのか?」
「by躯」
「?」
「……スルーしてくれ」
ま、要は『飛影はそんなこと言わない』ってことだ。
わかる奴だけニヤリとして欲しい。
「マイラに向かいながら実戦慣れでもしていくか?」
「何もしないよりはマシかもな。危なくなったらフォロー頼む」
「任せておけ。――タイミングよく大さそりが現れたぞ」
ゲームと違って結構グロい上にデカくね?
つうか、怖えーよ!
「だああ!」
地面を素早く移動する大さそりを叩き潰す。
棍棒を通じて殴った衝撃が俺の手に伝わる。大さそりというモンスターの生を奪う感触。
しかし怯んではいられない。
「浅い!」
ミヤ王の言葉通り、一撃を食らった大さそりは持ち前の堅さで持ちこたえていた。
俺の攻撃を屁とも思わぬ動きで砂塵を巻き上げ、視界から消えた。
「しまっ……」
背後を取られた俺めがけ、尾が伸びた瞬間――
ミヤ王の一閃。
大さそりはきれいに半分になっていた。
「サンキュ、助かった」
「気をつけろ。大さそりの外殻はスライムやドラキーの比じゃないからな」
「棍棒じゃ無理か?」
「鍛えればそのうち素手でも貫ける」
「いやいやもっと無理だから」
そこで見ていろ、との言葉とともに俺に剣を預け、また新たに現れた大さそりと戦闘に入る。
先の大さそりが斃されたことに腹を立てているのか、大さそりから攻撃を仕掛けてきた。
ハサミの攻撃を難なくかわし、大股で大さそりに近づくミヤ王。
「ふっ――」
軽い呼気をもらしただけで、ミヤ王の五指は大さそりを貫いていた。
あんぐり、の表現はこういう時のためにある。
まさしく俺はあんぐりと口を開けてミヤ王を呆然と見ていた。
「意外に簡単だろ? さ、やってみろ」
「できるかボケ!」
みやおう=バトルマスター。
こうですか!わかりません><
マイラの森に棲む魔物が、素手で大さそりを貫いたミヤ王に恐れをなしたのかどうかはわからない。
だが、あれから魔物とは一匹も出会わずにマイラの村に到着した。
途中、野宿したり大さそり相手に苦戦したりゴーストの帽子を取ってハゲなのを確認して大笑いしたり
スライムを蹴り飛ばしたりミヤ王が百円ライターに感激したりしたが、大して重要なことではないので割愛させていただく。
普通に歩いてガライから丸一日以上かかった。
地図で見ると近いが実際は遠いもんだ。ラダトーム→ガライ間をおよそ40分で爆走したのが信じられん。
「ここがマイラか……」
ラダトームやガライでも思ったが、ゲーム上で見るのと実際に見るのとでは全然違う。
ゲームではただの緑が多い村でしかないマイラの村は、実に自然豊かな村だ。
風がそよぐと草花の揺れる音、仄かに香る木々の香り。
日本では失われているもの――自然との共生がここにはある。……っと、マイラの村に圧倒されている場合じゃないな。
「ゆうていは中央の広場近くだ」
「広場近く……」
「もしかしてあそこにいる戦士じゃね?」
「ゆうてい!」
俺が指差すよりも早くミヤ王が走り出した。
「……みやおう?」
戦士は、みやおうの声に驚いた表情を浮かべている。
どちらかといえば軽装のミヤ王に対し、防具で身を包んだ戦士。
もし仮にミヤ王がいなくても、彼がゆう帝だということはすぐにわかった。
やや薄めの頭がその決め手――と言ったら現実世界の堀井雄二は怒るだろうか。
間違いない、彼がファミコン神拳の一人、ゆう帝だ。
ゆう帝のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたたっ
素早さ:あたたたっ
髪の毛:あっ……ごめん。――ハゲは病気じゃないよ!悩み無用!!
ここで投下終了です。
>>408 お疲れ様です。
まとまっている自分の分を見てニヤニヤさせてもらっています。
乙!ステータスに噴いたw
前回のあらすじ
>>415-419 こんばんは、俺です。
ついさっきの話ですが、ゆう帝が仲間になりました。
包み隠さずに全てを打ち明けた俺に対し、ゆう帝は快く協力してくれると言ってくれました。
さすがはドラゴンクエストの生みの親。心が広い。
. -―- .
/ ヽ
// ', 俺の言葉を
| { _____ | 平然と信じてくれるッ!
(⌒ヽ7´ ``ヒニ¨ヽ
ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′ そこにシビれる!
/´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {. ヽ _ _ あこがれるゥ!
`r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ ) ( , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY { \
ヾ| ^'^ ′-、 ,ノr')リ ,ゝ、ー`――-'- ∠,_ ノ
| 「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
, ヘー‐- 、 l | /^''⌒| | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
-‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ !‐}__,..ノ || /-‐ヽ| -イ,__,.>‐ ハ }
''"//ヽー、 ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿! , -===- 、 }くー- ..._
//^\ ヾ-、 :| ハ  ̄ / ノ |. { {ハ. V'二'二ソ ノ| | `ヽ
,ノ ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<. / |. ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/ <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ \ `丶、 |、 \\'ー--‐''"//
\___,/| ! ::::::l、 \ \| \ \ヽ / ノ
そんなこんなで今は二人と別行動。
積もる話もあるだろうし、俺に対する話もしてるはず。
んで、今の俺は何をしているかと言いますと。
THE・入浴。
マイラの村といえば温泉ですよ温泉。
もっと言うなら混浴ですよ混浴!!ヒャッホーイ!!1!11!
わたくし思うに、風呂に水着を着て入るといった行為は許されないことなのですよ。
肌着ですか?あれもダメ。風呂を温泉を混浴を、いや、それ以上に色々と期待する男達を裏切る行為じゃありませんか!
もしあなたが女で、水着を着て混浴に入ったとしましょう。
オンドゥルルラギッタンディスカー!!と叫ばれること間違いありません。誰も叫ばなくてもこの俺が叫ぶ!
とまれ、混浴に対する冒涜行為を減らすため、こうしてマイラ温泉(たった今命名)に浸かっているわけです。
べ、別に女の裸が見たいからじゃないんだからねっ!
茹でダコのように真っ赤になった俺が温泉から上がったのは2時間後のことである。
いや、わかっちゃいたんだけどね。
わかっちゃいるけどやめられなねぇって植木等さんだって言ってるじゃないか。
はあ……現実は厳しいよ。
『キャー! のび太さんのエッチ!』
みたいなイベントがあったっていいじゃない。そのくらい夢見たっていいじゃない。
あのメガネにはあって俺にはない。
あれか、俺の机の引き出しがタイムマシンの入り口じゃないからなのか?
現実は厳しいねえ、厳しいよ。
……取り乱しすぎた。
ここ数日、風呂にさえ入ってなかったことを考えると、久々の入浴ができたと思えばそれでいい。
うん、それでいいのさ。
うん……。
ションボリと宿屋に戻った俺を迎えたのは、実戦慣れのためにしばらくマイラに逗留しようと言ってきたミヤ王とゆう帝だった。
てことは、もしかしてまだ温泉に入れるってことでFA?
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
「やってやるぜ!」
矢尾一樹ばりの声でガッツポーズまで決めた俺。
ドン引きされてるのは仕方がない。
明日からの混浴――もとい、修行を考えると身が引き締まる思いだ。うん、ホントに。
翌日。ミヤ王、ゆう帝の宣言通りにマイラ周辺で魔物相手に実戦を始めていた。
この周辺の魔物はスライム、スライムベス、ドラキー、ゴーストに加えて大さそり、魔法使い、メイジドラキー、骸骨である。
「注意するのは魔法使いのギラと骸骨だな」
「ギラ自体は大したダメージにはならないし、ギラを浴びてもすぐにホイミをかけるから安心してください」
できるか。俺は超人じゃねえんだ。
そもそも、俺とお前らとのレベル差を考慮しろ。
ある程度は戦えるといってもスライムやドラキーを相手にした場合だぞ。
「だから、ここいらの敵に苦戦しない程度まで強くなるんでしょう」
「ギラ程度のダメージを恐れるようではこれから先厳しいことになるぞ」
それを言われると困る。
俺が戦う相手の竜王はベギラマや火炎の息を平然と吐いてくるような化物だしな。
ダースドラゴンやスターキメラ、死神の騎士の攻撃なんかは今までよりもずっと痛いんだろう。
「こうなったら腹括るか。本当にすぐに回復頼むぞ?」
「任せてください。ギラ程度のダメージは簡単に治してみせますよ」
すぐに回復しろよ、すぐに回復するんだぞ、と何度も確認しておきたいがやめておいた。
俺はダチョウ倶楽部じゃないんだ、ネタ振りと勘違いして回復されなかったら大変だ。
――などとバカなことを考えていると魔法使いが現れていた。
くそ、本当に出てくるんじゃねえ。
「うらあ!」
魔法使いがギラ放つ前に先制攻撃。
一撃入魂の棍棒を振りかぶって、そのまま魔法使いの頭上へ――!
棍棒が根元から折れたと理解したのは、魔法使いが死の間際に放ったギラを無防備な体で浴びてからのことだ。
棍棒蛾物故割れたwwwwwwwwwwww
なんて草生やしてる場合じゃねえな。
「……マジ?」
半ば呆然と口にしたのはミヤ王が魔法使いをぶった切ってからのことだ。
手元には剣で言う柄の部分しかなく、釘が生えている棍棒は足元に転がっている。
こうなってしまっては、棍棒もただの釘の生えた塊でしかない。
焚き木くらいには使えるだろうが武器としては無理だよなあ。
「棍棒ってこんなに簡単に壊れるもんなの?」
「メタルスライムを叩いても壊れないくらい頑丈にできてるはずですが……」
「じゃあこれはどういうこと?」
「元々壊れてたとか……」
「買って5日目なのに?」
「……武器屋に行くか」
マイラに置いてある武器は銅の剣か鉄の斧……だったな。
ゲームなら攻撃力の面で鉄の斧一択なんだが、実際はそうはいかないらしい。
「戦いのスタイルは武器によって変わるといっても過言じゃない」
とのことだ。
殴ることを主体とした棍棒と斬ることを主体とした剣では確かに戦闘スタイルが違う。
だが、鋳型に青銅を流し込んだだけの銅の剣よりは鉄の斧の方が……。
「剣ならあることはありますよ」
武器屋に向かう最中、ゆう帝が言った。
「マジで?」
「ええ」
「なんだよー、最初から渡してくれよー」
「ですがね……扱いにくいんですよ」
「ああ、アレか」
躊躇うゆう帝に、何か知っているかのようなミヤ王。
まさか破壊の剣ってオチはねえだろうな。
「この剣だ」
ゆう帝が宿屋から持ってきた剣は変わった形をしていた。
変わったと言っても、剣の先がバイブになってるわけでもミサイルが出てくるわけでもない。
濃いオレンジ色の刀身は、燃え盛る炎の形を象っていた。
「炎の剣……か?」
「知ってるのか?」
「いや……」
公式ガイドブックで見ただけだがそんなこと言えるはずもなく曖昧に言葉を濁す。
「以前メルキドの旅商人から買ったんだが、どうも扱いにくい剣でな」
「私達向きの剣ではないから売ろうかどうか迷ってたんですよ」
「試してみるか?」
手渡された炎の剣は見た目よりは軽かった。
喩えるなら……すまん、思いつかない。そもそも何を喩えようとしたのかもわかんね。
気を取り直し、炎の剣を構えて振ってみる。
――軽い。
金属を使ってるはずなのに棍棒と同じくらいの重さでしかない。
もしかしてミヤ王の装備している鋼鉄の剣より軽いんじゃないだろうか。
「随分軽々と……」
「扱ってますね……」
ミヤ王とゆう帝には悪いが、どこが扱いにくい剣なのかわからない。
剣なんてのは小学生の頃に傘でアバンストラッシュした程度だが、これは扱いやすいってことくらいわかる。
もしかしてこれが装備できる奴とできない奴の違いってことか?
「ついでに試し切りもしてみては?」
二人の間では炎の剣は俺が使うことになったようだ。
異論はないし、返せといったところで返す気もないがね!
故人曰く――『お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの』
ビバ!ジャイアニズム!!
結論から言おう。炎の剣は使いやすい。
試しに魔法使いや骸骨と戦ってみたが、面白いほどサクサク斬れた。
ちなみにギラは多少食らったが想像していたほどのダメージではない。痛いし熱いけど我慢すれば何とかなる。
俺のレベルが上がったからかもしれない。
もしかしたら竜王斃せるんじゃね?
みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwwwwwwwwwwww
「落ち着け。今竜王に挑んでも死ぬだけだ」
「ですね。強いのは炎の剣のおかげですし」
盛
り
上
が
っ
て
参
り
ま
し
た
俺涙目wwwwwwwwwwwwwwwwww
大人しく魔法使いや骸骨相手に実戦経験でも積むとしよう。
LV:9
HP:30/34
MP:20/20
攻撃力:54 防御力:23 素早さ:11
E:炎の剣 E:ジャージ+皮の服 E:皮の盾
といったところで投下終了です。
次回はマイラで一イベント終わらせてからリムルダールに行く予定です。
投下乙!
主人公の俺TUEEEEEEEワロスw
>傘でアバンストラッシュ
あるあるwww
俺はモップでブラッディスクライドだっちゃ。
◆IFDQ/RcGKI氏の続きも気になる。
うは、投下しにきたらすごいタイミングだww
>>432さん
ご期待いただいて光栄です。お待たせしてすみません。
ところで、
「ゲームサイドの携帯の充電はどうしてるのか?」
というご質問が来ましたので、当事者たちに聞いてみました。
アルス「あ、当事者って俺らか」
タツミ「実は僕も気になってたんだよね、携帯の充電。これどうなってんの?」
アルス「んなもん決まってんだろ、お前どこに飛ばされたと思ってんだよ」
タツミ「じゃあ、この電池残量のマークに重なってついてる『M』ってのは……」
アルス「当然『MP』だろ。使う人間の」
タツミ「なるほどー。って、僕にMPなんてあったの!?」
アルス「知らん。お前のステータス見てねえからわかんねえや」
タツミ「遊び歩いてないでちゃんとモニタリングしてくれよ。
こっちからは客観的な数値がわかんないんだから」
アルス「うるせえ命令すんな。だいたい俺、お前にクリアさせる気ねえし」
タツミ「それ以前に僕が死んだら君もくたばるってこと忘れてない?」
アルス「ほぉ、死ねるモンなら死んでみろ」
タツミ「実際そうなりかけたら大慌てのくせにねぇ」
アルス「なんだと」
タツミ「なにさ」
……なんか脱線してきたので本編に参ります。
前回
>>293-305 【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】
----------------- Game-Side -----------------
「もう二度と頼らないから、そっちも勝手にすればいい!」
怒鳴り散らして通話を切り、直後、僕は壁に背をつけてずり落ちるように座り込んだ。
バカなことをしたのはわかってる。電波状況が最悪のこのダンジョンで奇跡的につな
がった瞬間だったってのに、なんで切っちゃってるんだよ僕。
まあ今のこの状況で、電話越しのナビがどの程度役に立つかは疑問だけど――。
すぐに「圏外」表示に戻ってしまった携帯をぼんやり眺めた。ここは、そこら中に散ら
ばる白骨死体がぼんやりした燐光を発している以外、いっさい光の差さない闇の回廊。小
さなモニターから漏れるわずかな明かりさえ、まるで太陽みたいにまぶしく目に映る。
「……ゆ、勇者様……?」
エリスが身を起こして、不安そうに僕を見上げた。携帯を閉じる。
「ああ、ごめんね。なんでもないよ」
腕を伸ばし、その頬に手を当てながら「大丈夫だよ。大丈夫だから」と何度も繰り返し
て言ってあげると、彼女は微笑んで、また目を閉じた。
冷たい石畳に僕のマントをひいて、エリスはぐったりと横たわっている。
さっき火炎ムカデにやられた彼女の右足は焼けただれ、真っ赤に腫れ上がっている。手
持ちの薬草で簡単な応急処置はしたが、早くロダムに回復してもらわないとまずい。
ロダム、サミエルの2人とはぐれて、どれくらい経つのか。現実の時刻を示すだけの携
帯じゃよくわからない。このダンジョンに入った時間を考えれば、もうじき外は日暮れ頃
だろう。昼間でも肌寒かった気温はますます下がってる。これからもっと冷え込むんだろ
うか。
まったく。16歳の健全男子が可愛い女の子と暗闇で二人っきりだっていうのに、まるで
色っぽい思考に走れないって、なんなんだろうね。
生き残ることしか頭にないって――そんな状況って、なんなんだよ。
◇
ロマリアから使者が馬を飛ばして追ってきたのは、僕たちがアッサラームまでまだ3分
の1も来ていない森の中で、早々に野営準備を始めた頃だった。
二つに斬られて のたうつ魔物〜♪ 飛び散る内臓や 跳ねる血しぶき〜♪
呪文でバラバラ 見る影もなく〜♪ 勇者がまたもや うしろで吐いた〜♪
近道しようと公道をそれたせいか、あの後、何度もモンスターと戦うことになった。
慣れる間もなく次々に惨殺シーンを見せつけられ、かといって戦闘を任せきりにしてい
る仲間に申し訳なくて目をそらすこともできず、吐く物もなくなって完全にグヘ〜となっ
てしまった僕を心配し、まだ早いけど今日はここでキャンプをしましょう――という運び
になったのである。なんとも情けない。
「どうかお気になさらずに。まだ1日目なんですから、当たり前です」
「ありがとう。本当にごめん、必ず近いうちになんとかするから」
正直なところ僕「血」はダメなんだよ。ホラー映画もサイコ系は平気だけど、スプラッ
タは気分が悪くなって観られない。いざとなればなんとかなるかなーと思ってたんだけど、
なんともならなかった。人間、簡単には変われないもんだね。
そこへ息を荒くした人馬が走り込んできたのだ。
「ゆ、勇者様でいらっしゃいますね!?」
「そうだけど……」
「良かった、間に合った!」
国に使わされたのではなく、ある人からの個人的な使者だというその青年は、封蝋もさ
れていない書状を僕に押しつけるように手渡してきた。
この場で読んでくれ、と急かされて、目を通した僕は思わず舌打ちした。
「どうなさったんです?」
声を低めるロダムに、黙って書状を回す。
「なになに……魔法の鍵を壊した? 勇者様が!? どういうことですか!?」
「罪をなすりつけられたんだよ。ま、きっかけを招いたのは僕だけど」
ポルトガとの重要な陸路であるはずの関所が、何年も閉鎖されているのは不思議だった
が、なんのことはない。
ロマリアの現国王が、イシス女王から親善の証として贈られた「魔法の鍵の複製」をダ
メにしちゃって開けられなくなっていたのだ。当然、んなアホな失態を表沙汰にはできな
いから、適当な理由をつけて閉鎖していたらしい。
ところが僕が開門命令を出したので、ポルトガとの交易を望む商人を始め、国民は大喜
びした。王様が戻ってすぐに撤回されたが、そりゃ不満の声も出てくるだろう。
今まで閉鎖理由を心底では納得していなかった国民は事実を疑い始め、困った王様は、
「勇者が国王代理を務めている間に勝手に持ち出して壊しおったのだぁ!」
と思いっきりデタラメこいてくれたのだった。小学生かおまいは。
「んで僕たち、お尋ね者になっちゃったワケだ」
「もちろん勇者様に咎はございません。真実をご存じの前国王様も、まずは勇者様に事の
次第をお伝えし、ご助力差し上げよと私を派遣なさったのです」
助けたい、ねぇ。
「でもこの手紙の内容だと、結局僕たちが責任を取るんじゃないの?」
“追っ手は差し止めておくから、その間にピラミッドから『本物の』鍵を取ってくれば万
事解決だよ” ってアンタ、アドバイスにかこつけた命令じゃないか。
僕がジトーッと横目で睨むと、使者の青年は済まなそうに目を伏せた。
「行くことないッスよ! 真実を話して本人に責任を取らせればいい」
サミエルがそう息巻くのももっともだ。エリスもロダムも難しい顔をしている。
だが僕はその時、もう少し別の観点から物事を考えていた。
――たぶん僕が懸念していた通り、このイベントはカットできないのだろう。
だから本来のシナリオに対し、本当に飛ばしても構わないノアニールの話はその片鱗も
出てこないし、魔法の鍵にいたってはやや強引とも思える選択肢がここに用意された。
「はい」と「いいえ」。僕の中なにか予感めいたものが「断るな」と告げている。
ここで無理に断れば、物語が破綻して身動きが取れなくなってしまうような……。
「わかりました。お引き受けしましょう」
「勇者様!」
そろって抗議の声をあげる3人に、僕は苦笑を返した。
「仕方ないよ。どちらにしても鍵は必要なんだから、僕たちが責任を取ってなんとかする
のが一番すっきり治まる。一度そう発表されてしまった話を二転三転させても、ロマリア
国民の不安を煽るだけだしね」
それから小声で、
「ヘタに言い訳したって話がややこしくなるだけだしさ。鍵さえ手に入れば、今度はこっ
ちから王様に『いろいろ』お願いできるかも?」
とたんに3人の目がキラーンと光る。
薄ら笑いを浮かべ合う僕たちには気付かず、使者の青年はブワッと涙を溢れさせた。
「すばらしい、さすが勇者様です! 感動です! あの、これ!」
ふくろからゴソゴソと引っ張り出してきたのは、キレイな装飾の腕輪だった。
「前国王より預かって参りました、『星降る腕輪』というものです。不思議な力が込めら
れているそうで、きっと勇者様の冒険をお助けしてくれるだろうと」
ほお、ここで手に入っちゃうんだ。話が話だけにイシス女王に挨拶には行けないから、
さっき引き受けた時点でコレは諦めていたんだが。
「そしてこれがですね……」
使者の青年はさらになにか取り出して、満面の笑みで差し出した。
今度はなんだろう。前国王ってばなかなか気前いいじゃん。
「ピラミッドの場所を記憶させた特別なキメラの翼です。追っ手をとどめるにも限界がご
ざいますし、すぐにも向かった方がよろしいかと」
ちょ、待てコラそっこう行けってかww
そうこう言ってる間に、遠くにロマリアの旗を掲げた一団が現れた。本当に追っ手を差
し止めていたのか? なんて考えるだけムダだ。王族なんてもう信用ならない。
僕たちは慌てて、渡されたばかりのキメラの翼でピラミッドに飛んだ。
◇
乾燥したきった空気と照りつける日差しの強さは、想定していたから驚きはしなかった。
砂漠とはこんなものなんだろう、と認識するに留まる。問題はピラミッドだ。
「結構……きれいなんだね」
本物は観たことないが、現実側のそれはしょっちゅうテレビで紹介されている。今その
通りの光景が目の前にあり、それがかえって僕に奇妙な感想を抱かせた。
観光名所として手入れの行き届いているエジプトの王墓ならともかく、こちらはもっと
自然のままに、砂に埋もれたり崩れたりしているもんじゃないのかな。
「きっとイシスの人間が、定期的に清掃を行っているのかもしれませんね」
王墓なのだからあり得そうだが、そう言うエリスも腑に落ちない顔をしている。国が管
理している遺跡に、他国の冒険者が土足でズカズカ入り込むことを黙認するだろうか?
「あ、そうだ」
僕はロマリアでくすねてきた紙の巻物を取り出した。この世界は羊皮紙が一般的だが、
普通の「紙」の方がインクのノリも良いし薄くて軽い。でも高くてなかなか手に入りにく
いから、ここぞとばかりクスねてきたのだ。
巻物には、これから向かうことになるダンジョンのマップが描かれている。ロマリアに
泊まった夜に、僕が事前に描いておいたのだ。
最初の方にピラミッド内部の簡易図もある。念のため描いておいたけど、まさかこんな
に早く使うことになるとは思わなかった。
そこをビリッと破ってロダムに渡す。僕は頭に入っているから、実質2枚の内部図を分
けて持つことになる。
「これもルビス様のお告げですか? どれが人食い箱かもわかるのですね」
ロダムが苦笑する。
まあ自分でもちょっと異常な気はするけど、そこは気にしない気にしない。
その他、簡単に打合せを済ませて、いよいよピラミッドへ突入だ!
と、勇んで踏み込んだは良かったが……。
さるさる回避
中に入った瞬間だった。いきなり僕たちのうしろで「ズゥゥン!!!」と大きな音がした。
「うそ、閉じこめられた!?」
こんな演出、ゲームにはなかったはず。
わずかな明かり取りの窓から入る光だけとなり、視界の明度が一気に落ちる。サミエル
が手早くたいまつに火を灯すと、それが合図だったように、暗がりから大量のモンスター
が襲いかかってきた。
それでも普通に戦闘をこなすだけならば、出発時よりさらにレベルが上がっているエリ
スたちの敵ではない。
中も存外に広い造りで、人が3人余裕で並んで歩けるくらいの通路が真っ直ぐに続いて
いる。天井も高く、これくらい広さがあれば互いにカバーしながら戦える。余裕のはずだ。
「持つよ、気をつけて」
僕がサミエルからたいまつを受け取ると、彼はニカッといつものいい笑顔を見せて、前
に出た。
だが、切り込みを買って出たサミエルが、何歩か進んだそのとき――。「うあ!」と叫
んで剣を取り落とし、彼はその場に倒れ込んでしまった。
エリスが慌ててベギラマを唱え、倒れた戦士に群がるミイラたちを牽制する。
駆け寄ってたいまつをかざすと、サミエルの脇腹に数本の矢が刺さっていた。
「トラップ……?」
全身から血の気が引いた。
「みんな伏せてぇ!!」
エリスとロダムが弾かれたように身を伏せる。瞬間、風を切る音がいくつも聞こえ、近
くまで寄っていた蛙型のモンスターが真っ二つになって吹っ飛んでいった。今度は矢では
なく、巨大な刃物のようなものが横切っていったのだ。
入り口からたいした進んでもいないのに、ここまでのわずかな距離に、一撃で命に関わ
るような罠がいくつも仕掛けられているのだ。
なにこれ。話が違いすぎだろ?
支援
本日はいったんここまでとなります。
あんまり間が空きすぎるので、
今回から小分けして投下してみることにしました。
7/12-12/12は数日後に。
新作GJ
ピラミッドのトラップ怖いな。
窮地に追い込まれたタツミが、これからどう行動するのか気になるw
続きwktkしながら待ってますねw
うはww
新作の投下超ナイスタイミング。
なにはともあれGJです。
苦しい!息ができない!身動きがとれない!右も左も上も下もあったもんじゃない!
光はどっち?
もがけばもがくだけ、絡 ま っ て …
ふっ、と浮き上がるように目が覚めた。
妙に胸が騒ぐ。焦躁。幻想?
額に手を当てると酷く冷たく濡れていた。
気をやれば、全身が汗でびっちょりなことに気付く。
――夢か。
ビビった!いやまじで。死ぬかと。もう死ぬかと。
いや、でもありえないよね、いきなり海で溺れるとかさ。
海なんてもう5年は行ってないんだぜ。ありえないんだぜ。
と、安心しようとする私を、打ち落とす事実。
嫌でも鼻につく磯の香に、波の音。そしてこの見知らぬ部屋の窓から、望むこのオーシャン…ビュー……
「やってらんないんだぜ!」
夢だと思い込もうにもこのハイクオリティ!
いくら私が想像力(妄想力)豊かな花の16歳とはいっても!
色々考えた末に私はもう一度ベッドに潜った。
都合の悪い事からは目を逸らす。無かった事にする。これがゆとりクオリティ。
……。
……………。
お腹、減った。
結局人間欲には勝てないのだ。
睡眠欲は満たされてしまっているから、次は食欲。
ああー良い匂いがする。
匂いに誘われて私は階段を下りた。
「あらあらあら!ようやく起きたみたいだね」
階下には、なんというか、肝っ玉母ちゃんを絵で描いたような女性がいた。
母ちゃんはこうも続けた。
「あんたが海に打ち上げられてるの見た時は驚いたよ!無事でよかった」
……。網に。ふぅん。
……。
「夢じゃなかったんかい。」
呆然として呟くと同時にグーキュルルルル、とお腹がなった。
「お腹が空くなら大丈夫だね」
にっこり笑った女性は忙しく食事の用意を始めた。
魚を3枚に卸して刺身。余った身と骨、内臓を叩いて丸めて揚げた団子とたっぷりの野菜を煮込んであったスープ。それに作り置いてあった小魚の佃煮に茶碗いっぱいに盛られた白ご飯がテーブルに並べられた。
「さあ、ぼーっと立って無いで、食べな!」
支援
肝っ玉母ちゃん――マーレさんのご飯は死ぬほど美味しかった。
お腹が空いてるってだけじゃない。きっと食材が新鮮なのも、単にマーレさんの料理の腕が良いのもあるだろう。
とにかく、いままで食べたご飯の中で一番美味しかった。
「ご馳走さまでした!」
マーレさんはにこにこ、お粗末様でした、とお皿を下げる。そして、さて、と話を始めた。
まず、私の名前から始まり、何故海岸に打ち上げられていたのか、そもそもどこから来たのか。
私も出来るだけ正確に、分かるだけの範囲で答えた。
私の名前はユウキで、何故海岸に打ち上げられていたのかは、私も分からない。ここに来る前は日本という所でギリギリながらも女子高生をしていました。
私の答えにマーレは目をぱちくりさせた後に訝しげに細くなった。
「…ニホン?」
「ニッポンともジャパンともジパングとも言うけど」
「…グランエスタードでも、フィッシュベルでもないのね」
「ええと、そうみたい」
何か言い辛そうに、マーレさんが口を開いた。
「世界にはこのグランエスタード島以外に人が住んでる島なんて、ないんだよ」
な、なんだってー!!
私はそのビックリ情報に目を見開いた。
「あ、アメリカ大陸も?」
マーレさんは無言で首を横に振った。
「ユーラシア大陸も!?」
「聞いたこともないねえ」
「オーストラリアは?アフリカは?え?インドネシアも?パプアニューギニアも?ガラパゴスも?」
マーレさんが頷く事はなかった。大陸も、島も、ここ一つ………?
「そ、そんなっ……」
ありえない!そんな、今まで考えたくなくて避けて来たけど、やっぱりここは、まるで、異世界、じゃないか。
行き着くべき結論に至って、私は絶句した。
夢ではない、でも私の現実ではありえない、この事実。
「何かショックな事があって記憶を落としてきちゃったのかねぇ」
マーレさん――なんて呑気な――
私は意識を保つのに精一杯だった。\(^O^)/オワタ!とかおどけて見せるので。
その時、扉が開いた。
マーレさんが優しい笑顔で「おかえり」と言う。
振り向くとそこには緑色の服を着た少年がいた。
\(^O^)/……
↑の状態の私を見て多少引きつっているが、なかなかに感じのよい笑顔だ。
少年は、アルスといって、マーレさんの息子だった。
マーレさんは息子さんに私の紹介をし、簡単に事情の説明をしてくれた。
「で、アルス。この子に見覚えはないかい?」
「ええと、ユウキ…さん?」
「は、はい」
「見覚え…ないなぁ。」
そりゃそうでしょうとも。私は声にならない言葉で返事すると、ため息をついた。
そのため息を落胆の意味と捉えたのか、アルスは慌てて慰めるような口調で
「じゃ、じゃあ…グランエスタードに、行って見る?」
と、言った。
新作乙!
7の世界だね。応援しているよ
新作乙。
アルスさんと恋の予感・・・。
乙おつー!
7キタワァ^^
ツンデレマリベルに期待wwwww
うわお
こんな面白いのが投下されてたのにdion軍の超長規制のせいで
何にも書けんかった〜
作家さん達皆さん乙!
続きwktkしてます
保守
7の世界大好きだからwktkwww
しかも女の子主人公ww
次回を楽しみにまってます!
457 :
Stage.5-2 [hjmn] ◆IFDQ/RcGKI :2007/06/19(火) 10:28:18 ID:h6mFqMtJ0
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。続編投下にきましたっ。けどその前に……」
アルス「まずはサンクスコール!」
アルス「改めて
>>439様、そして
>>441様、規制回避支援サンキュです!」
タツミ「
>>443様、wktk言われてつい張り切っちゃいましたよ。ご期待に添えられたかなぁ」
アルス「
>>445様、やっぱGJは嬉しいぜ。今回のタイミングはどうでしたでしょーかw」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
前回
>>434-440 【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】
Game-Side 続編
【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
どこからともなく低くくぐもった声が響いてくる。これって確か、上の階の宝物庫にあ
る宝箱を開けたときのセリフだったっけ? 内容が少し違う気もするが、それなりにゲー
ムを継承しているわけだ。
こんなえげつない罠が仕掛けられている時点で、すでにドラクエとは言えないけどさ!
「く……油断したッス……」
「大丈夫サミエル!?」
苦しそうにうめくサミエルの脇腹に、みるみる血がにじんでいく。人間の、まして仲間
のケガだ。心臓が跳ね上がった。でもここで、血はダメだなんて言ってられない。
「立てる? 早くロダムに回復を――」
瞬間、目の前にユラリと黒い影が現れた。そいつの腕が首に巻き付いてきて、一気に締
め上げられる。見た目と裏腹にとんでもない力だ。
「!……!…!!」
声が出ない。く、首の骨が折れる〜!
「青き女王の御子ら氷の精霊たちよ古き盟約に従い我が戦陣に馳せ汝が力を示せヒャド!」
エリスがものすごい早口で詠唱を完了させた。青く煌めく氷の刃が、僕をシメあげてい
たモンスターに突き刺さった。
グギャア、とおぞましい悲鳴をあげて飛びすさる影。
その場に投げ出された僕は、肺に無理やり新しい空気を送り込むのと、転がってるたい
まつを手に持つのと、反対の手でサミエルを引きずって後ろに下がるのとを同時にやって
のけた。おお、すごいぞ「星降る腕輪」効果。
「……の精霊の名においてかの者たちに癒しの光を――ホイミ、ベホイミ!」
先に詠唱を開始していたロダムが、這い戻ってきた僕とサミエルにタイミング良く回復
呪文をかけた。喉の痛みがすうっと引いていく。サミエルの脇腹から折れた鏃(ヤジリ)が自
然に押し出されて出血も止まった。
瞬間的に負傷度合いを測り、呪文を使い分ける年配僧侶に感心しつつ、僕は通路の奥に
向き直った。
さて、仕切り直しだ。
【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】
「うるさいなぁ。エリス、なるべく中央に向けてベギラマお願い」
「はい勇者様っ」
彼女の閃光呪文が、追いすがってきたモンスターを散らすついでに、通路の奥の方まで
明るく照らし出した。
両サイドの壁にはいかにもエジプトっぽい絵が延々と描かれている。
そして床。
僕たちが待機している場所は真っ平らだが、やや先の方から、床に1メートル平方の大
きな石がタイル状に敷き詰められているのがわかった。タイル1枚1枚にエジプトの象形
文字のような(あるいはそのものか)レリーフが刻まれている。
そのうち数枚が、周りと比べてやや下に引っ込んでいた。1枚はちょうどサミエルが踏
み出したあたりではないだろうか。「蛇」の形をしたマークの文字だ。
一番手前に目をやる。たいまつの光に浮かび上がるのは「鳥」をかたどった文字のタイ
ル。さっき戻ってきたときに、間違いなく僕はこれを踏んでいるが、なにかが動いた気配
はなかった。暫定的に「鳥」は安全ルートと決定。もう少し検証したいところだが、そん
な余裕はない。
エジプト神話における「蛇」の象徴は多々あるが、ここは有名な悪い蛇の神様「アポピ
ス」と見立てていいだろうか。「墓守の蛇の女神」といういかにもな神様もいるけど、壁
画はその女神とは無関係の神話のものだし。だとすると……アレかな。
――ここまでの思考を数秒でまとめる。
えい、読みが外れたらそれまでだ。僕は腹を据えた。
「この中で一番身軽なのは、今のところ僕だよね」
「それはどういう意味ですか」
トラップ地帯をすり抜けて迫ってきたあやしい影を真空呪文で吹き飛ばしつつ、ロダム
が訝しげに問う。
「なにかわかったんスか!?」
逆にサミエルが期待に満ちた声を上げる。剣を構えて前方を睨みつけているが、接近戦
が得意の彼としては、思い切り戦えないこの状況が歯がゆいだろう。
「うん、任せて」
その彼に僕は持っていたたいまつを返した。星降る腕輪が「途中」で外れないようグッ
と上に押し上げて、それから片膝を立てて前傾姿勢で両手を床につける。
こういうのは勢いが大事。クラウチング・スタートの体勢から重心を前に移動し――、
「まさか、勇者様?」
「援護ヨロシク!」
タイルの模様と位置は、さっきベギラマで見えたときに、すべて頭に叩き込んだ。
通路は薄暗いが、敵のモンスターがどこにいるかくらいは視認できる。トラップ障害の
条件は敵方も同じ。まごついているモンスターたちの足下をすり抜け、飛び石を渡るよう
に「鳥」のタイルを踏みながら、目的の場所へ!
【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ……】
「だからうるさいっつーの!」
襲いかかってきたミイラ男のすぐ前にあった「蛇」マークを思いっきり踏んづけて、横
の「鳥」に転がる。ドカカッ!と矢だらけになってひっくり返ったそいつを飛び越えたと
ころで、物理トラップ無効のあやしい影が、サッと前に回り込んできた。
「ヤバ……」
仲間の援護を信じて、とっさにその場に伏せる。
「「バギ・ベギラマ!!」」
同時に、灼熱を伴った真空波が実体のない魔物をぶち抜いていった。その狙いの精度と、
仲間に向かって迷い無く呪文を放てる思い切りの良さは、大したものだ。
チラッと壁に目をやる。延々と続く壁画は、数あるエジプト神話の中でも最も有名なス
トーリーを描いたものだ。僕が目指しているのはそこにいるべき、ある神様。
ヘリオポリス九柱神の一人であり、厄災の蛇神「アポピス」の天敵とされる、地下世界の
王「セト」。「蛇」を鎮めるなら、そのお方しかいないでしょう!
……たぶん。
ノーヒントじゃこれが限界です。これで読み違えてたら諦めるしかありません。
携帯で自力回避
モンスターたちは目標を僕に絞ったらしい。例のセリフを繰り返しつつ、トラップにも
ガンガン引っかかりながら、とにかく追っかけてくる。
「これだけの殉死者を道連れって、ここの王様も最悪だな。――おりゃ!」
再び「蛇」を踏んで「鳥」に待避。天井から円盤形の刃物が降りてきてミイラが胴体か
ら半分になって転がった。これが自分だったらと思うとゾッとするけど、今は考えない。
「勇者様、大丈夫ですか!」
「今のところはね。えーとオシリスが暗殺されてイシスが逃げて……」
エジプト神話なんて、小学生のときに軽く流し読みしただけだからなぁ〜。
しかも暗くてよく見えないから、ところどころ天井の隙間から漏れてくる光で見える場
所から、前後を推測しなきゃならない。
「イシスがホルスを産んで、セトと一騎打ちになって……っていたぁ!」
セトちゃん発見! 動物のかぶり物しててちょっと愛嬌のある絵だけど!
壁、壁、なんかスイッチとかないか!?
あれ……なんにもない?
うーわー、まさかやっぱり読み違えたんじゃ――。
「勇者様危ないですぅ!」
立ち止まったせいでミイラ共がわらわら集まってきてしまった。気がついたらすっかり
取り囲まれている状態だ。
【【【我ラガ王ノ眠リヲ妨ゲル者ハ誰ダァ〜!】】】
「ごめんアルス、僕死んだかもww」
ミイラが一斉にたかってきて、僕は反射的にその場にしゃがみ込んだ。
――と、目の前にいかにも「押してください」といわんばかりの丸いボタンが、床から
出っ張っている……。
あったじゃん。
ポチっとな。
リアルタイムキタコレ支援
ガコン!
――という大きな音が、通路全体に響き渡った。
今にも僕を袋だたきにしようとしていたミイラたちが、一瞬、動きを止める。
同時に、
「勇者様になにさらすんじゃワレァ!!!」
戦士らしからぬ素晴らしいスピードで走ってきたサミエルが、一振りで3体まとめて薙
ぎ飛ばした。エリス・ロダムの呪文組が一気にとどめを刺し、ハイ、終・了。
「……普通に戦えればホント強いよね、うちのパーティ」
「いやはや、いきなり飛び出して行かれるから、びっくりしましたよ」
「さすが勇者様、ちょこまかと素晴らしい動きでしたね!」
サミエル、それ微妙に褒めてない。
「なにをのんきなことを! もう、一人でご無理はなさらないでください!」
泣きそうになってるエリスに、僕は手を合わせた。
「ごめんごめん。また誰かが罠にかかったら、って思ったら、嫌だったから」
「勇者様……」
それになんとなく、こういうドラクエらしくない部分は、僕が担当のような気がする。
「しかし、こんなものよく見つけましたね」
ロダムが足下のボタンを指して感心する。そこは影になっていて、確かに言われなきゃ
気付かないような場所だ。
だから、そのボタンの上に文字が彫りつけられているのも、今気がついた。
「ふむ、『礼節を知る者、客として歓迎する』という意味ですな」
「読めるの? さすが宮廷司祭殿」
そうか……神の前ではひざまずくもの、だよな。
「そう言えば、魔物の気配が消えましたね」
エリスがあたりを見回した。さっきまであれだけいたモンスターが消えていた。
「じゃあ俺たち、ここのお客様になったんスかね」
うーん、だといいんだけど。
あとは普通のダンジョンであることを祈って、僕たちは先に進むことにした。
ガコン!
――という大きな音が、通路全体に響き渡った。
なんだこの前レスと同じ文章は。作者のミスか?
とか思ったら、なんか、急に、フワッと身体が、軽くなった、ような……。
「落とし穴忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「きゃあああ勇者様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
僕とエリスが落ちたとたん、頭上で穴が再び閉じ始めた。
慌てて追ってこようとするサミエルたちに気付いた僕は、とっさに叫んでいた。
、、、、 、、、、、
「構うな! 鍵を探せ!」
◇
あとのことは、正直あまり語りたくない。
魔法が使えないピラミッドの地下で、この組み分けが最悪だってのは説明不要だよね。
上と違って肌寒いくらいのジメジメした地下室を、逃げ回って逃げ回って、なんとか身
を隠せる場所を見つけ出して、今はつかの間の休息を取っている状態だ。
いつ敵が襲ってくるかわからない緊張感でほとんど休まる気はしないが、エリスの様子
があまりに痛々しくて、これ以上動かすのは可哀想だった。
ここでようやく、このパートの「1」に続くってワケ。
さーて、次はどうしたもんかな。
寒さ、飢え、疲労。さすがに考えがまとまらなくなってきた。
上でちょっと張り切りすぎたか。
――でも、考えなきゃ。どちらか一人でも、ここから生きて出るための方法を。
乙ー!
タツミの潜在能力はどうなってんだwww
それとも勇者の「おぼえる」能力が影響してるのか。
なんにせよGJ!
エリスタン・・・
本日はここまでです。
次はリアルサイド、アルス君の出番です。
乙乙乙!
書き手=主人公
このスレの小説の主人公達がデブスやキモオタだと思うと鬱になる
グランエスタードとやらにはお城があって、それに付き物の王様や王女様、王子様なんかもいちゃったりして、城下町も栄えてるらしい!
お、王子様!なんて良い響きだろう。
別にシンデレラにも白雪姫にも憧れる歳ではないけど、その言葉だけでなんとなくドキッとする。
いやぁ、元の世界にも王子様とか皇太子様とかいたけどさ!
グランエスタードについての簡単な説明をしてくれるアルスにマーレさんが、そうだこれを持って行きな、と大口の瓶を渡した。
中身はというと、さっき私もお腹に納めた小魚の佃煮だった。
……道中のお弁当にしなさいってこと?
んまあ、今ご飯食べたのに、マーレさんってば気の早い。
さて、では出発しますか、とドアを開いた。
後ろでアルスが慌てて何か言った気がしないでもないけどキニシナイ!!(゚ε゚)
で、ドアを開くと一番に私の目に飛び込んできたのは、鬼――の形相をした女の子と振り上げられた拳。
ごごご、ごめんなすわぁぁぁぁぁい!!!!!!!
思わず負け犬根性丸出しで謝ってしまいそうなマイチキンハート。
「うわぁ!!!」
「きゃあ!!?」
寸での所で拳を交わした私の情けない声とまさか交わされると思っていなかったんだろう女の子が空振ってクルンと回って悲鳴をあげた。
「何で避けるのよ!」
「避けるわ!」
ここでやっと私を見たらしい女の子がキョトーンとして、私とアルスに視線を行き来させて一言。
「あんた誰!」
「先に謝らんかい!」
これが、私とマリベルの出会いだ。第一印象最悪。
そんなわけで私たち三人はtoグランエスタードの道中にいる。
そんなわけっていうのは、単にアルスとマリベルは、
一緒にグランエスタードに行く約束をしていたってことなんだけど。
ちなみに私が殴られそうになったのは、`いつまで私を待たせる気!?'なマリベルの怒りが込められていたらしい。
ちなみにちなみに!結局私謝られてません!!
HAHAHAHAHA!!
今私達はアルスを挟んでそっぽ向いて歩いている。
…痛い。ああ、いけない。また、アルスに心配かけちゃう。
顔を上げて、大丈夫だって、笑わなきゃ。
そう考えるのに、体はそう動いてくれない。
……痛い、痛い!!もうやだ、何でこんなことしてんの、私!
いきなりこんなわけわかんない所に来て、いきなり殴られそうになって、挙句にこんな、いたい目に、あって。
泣き出したいのを肩を震わせてやり過ごそうとした。うまく行かない。
ずるずる、鼻をすする私の目に飛び込んで来たのは鮮やかな緑色の葉っぱだった。
「もう、はやく使いなさいよ!」
続いてマリベルの声。私はわけがわからないままその葉っぱを受け取る。
「べ、別にあんたの為じゃないんだからね!あんたの怪我のせいでグランエスタードに着くのが遅くなって困るのは私なんだから!!」
そう怒ったように、怒鳴るようにマリベルの顔は真っ赤だ。アルスが私に耳打ちをする。
「さっきのこと、本当は謝りたいんだよ、マリベル。」
素直じゃないんだから。
そう囁くアルスの声は優しくって、嘘のない声だった。だから、私も素直に言えたんだと思う。
「ありがと、マリベル」
「ところで」
「何よ、まだなにかあるの?」
「この葉っぱの使用法が分からない件」
「……。」
「……。」
私は正座をしてこの葉っぱ――薬草の使用法を教授して頂くことになった。
……足、痛いです、マリベル先生。
474 :
気紛れ ◆kyK/MpMz4o :2007/06/20(水) 21:23:39 ID:8vCQuhLbO
>>473の前に入れてください、すいません…
……。
……………。
…………………気まずい。非常に気まずい。
元来私はふるえるこの胸チキンハートの持ち主で、他人と喧嘩なんて小学生以来だ。
…兄貴とは頻繁に喧嘩するけど。
まあ、そんなのは関係なくって、とにかく、私はこの女子の喧嘩特有の冷戦状態が苦手でしかたがないのだ。
…ああ!早く着かないかな、グランエスタード!!
―――話は変わりますが、グランエスタードに向かう道、舗装されてないんです。
デコボコ道ってレベルじゃねーぞ!
体力はない方ではないと思うんだけど、軽く酸欠。酸素くれ。
フラフラと歩く私をアルスが心配そうに見ている。
「大丈夫?」
と声を掛けられた。
マリベルも意外にヒョイヒョイ歩いてるし、私だけ、情けない…
そう思うと見栄を張りたくなる。そりゃあもう、精一杯。
大 丈 夫 ! !
とびきりの笑顔で顔を上げた私からその3文字の声が上がることはなかった。
「おひゃん!!」
情けない、悲鳴ともつかない叫び声をあげて私は地面に突っ伏した。
……足元の石ころに歩をとられて。
ツンデレktkr
>>458-465 今度はタイミング合いませんでしたがGJ!!
タツミ頭よすぎww
エジプト神話とか遊戯王しか知らない
>>471-474 GJっす!
いい感じにツンデレきてますねww
>>458-465 乙っした!
>>457の二人を見てるとなぜか懐かしの某オリラジを思い出してしまうw
エジプト神話って同じ神話でもいろいろパターンあるから、使うの難しいんだよな。
次回リアルサイド、wktk待機!
>>471-474 マリベル原作に忠実なツンデレで良い感じだ。
女の子主人公に期待大!
アルス・タツミ『デンデンデンデ デンデデンデンデン♪』
タツミ「ドラクエサンラジオです!」
アルス「お願いします!」
タツミ「アル君いつものやったげて♪」
アルス「オウ! 聞きたいか 俺の武勇伝!」
タツミ「そのスゴイ武勇伝をゆったげて♪」
アルス「俺の伝説ベストテン!」
タツミ「レツゴー!」
アルス「むっつりスケベに認定される」
タツミ「スゴイ! 今では神龍マブダチに」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」
アルス「ポルトガ王を黒ゴマでだます」
タツミ「スゴイ! セサミンパワーで長寿大国」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」
アルス「ラスボスがなんと多段変身」
タツミ「スゴイ! 道に迷って相手はピサロ」
アルス・タツミ『武勇伝 武勇伝 ぶゆうデンデンデデンデン♪』
タツミ「レツゴー!」
アルス・タツミ『意味は無いけれど ムシャクシャしたから〜♪ ラーミア青く染めてみた〜♪』
アルス・タツミ『デンデンデンデデン♪』
アルス「ハイ! レイアムランドのそっくり巫女に モスラのテーマを歌わせる」
タツミ「ペケポン!」
アルス「―――― orz」
タツミ「―――― orz」
タツミ「もう早く本編スタートさせちゃおう。怒られそうだ」
アルス「できん」
タツミ「………………はい?」
アルス「俺の方、まだ本編の収録終わってない」
タツミ「はぃぃぃい!!!??? じゃあなにか? 今回オリラジネタだけか!?」
アルス「朝に477様のレス読んで、思いついたから昼休みに書いたらしい >作者」
タツミ「仕事先からなにやってんのこの人! 合作間近の大事な時期に余計なレス消費して!」
アルス「さっき353KBだったな。この書き込みでもう少し増えてるかも」
タツミ「ああああ!!!!!!」
アルス「次の本編投下は明日の予定です。お邪魔しやした〜」
マジゴメンナサイ。
タツミとアルス武勇伝ワロタwwこういうネタもいいな。乙です!
最近まとめサイトを読んできたけど、こんなネタもやってたとはwww
◆IFDQ/RcGKI 氏、乙! 明日の本編も楽しみにしてます!
477だが、まさかオリラジ披露してくれるとは思わなかったww
電車の中で吹きそうになったよ。ありがとう。
『餓鬼共が!餓鬼共がァ!』
ボスの余裕が徐々に失われていくのが、手に取るように解った。
ゴーストのボスは決して強い敵ではなかった。
その表情に不安が過り、次第に攻撃も精彩を欠いていく。
ビアンカの放った炎がもう一度ボスの体にぶつかり、
とうとう尻をついたボスの眼前に俺は
止めを刺そうと自分の武器を振り上げた。
『ヒイィィ!わかった!もうやめてくれェ!』
武器を振り上げた姿勢のまま、俺は動きを止めた。
ビアンカが『なにしてるのよ!』と背後から叫ぶ。
顔の前に両手を掲げ、顔を伏せたままボスは
『もうこの城からは出て行く!だから助けてくれェ』と
まるで情けない声で懇願の悲鳴を上げている。
顔周りが焼け落ち、ところどころ切り裂かれたローブが痛々しげにボスの体を覆っていた。
俺は掲げていた武器を下ろす。
『サン、目的を忘れたの?そんなやつ、やっちゃいなさいよ』
ビアンカが明らかに怒った声で言った。ボスが再びヒィ、と泣いた。
『頼むから見逃してくれよ・・・。約束する、もう俺達ァこの城からは出て行くからよォ』
ぼろぼろのローブからはみ出た両腕を必死で振りながら、
ボスは俺とビアンカに交互に泣きついた。
ビアンカはそれを半ば呆れたような目で見下ろしている。
『あんた、自分のしたことがわかってるの?今更そんな事言われたって許せないわよ!』
武器を振おうとするビアンカにボスは悪かったよ!と叫んだ。
『俺達ァ楽しく暮らしたかっただけなんだ。
魔界の仲間にも、幽霊の仲間にも疎ましがられちまってよォ』
当然だわ、と冷たく言うビアンカにボスは情けない声で『この城は誰も寄ってこないしよ、
王様気分でちょっと楽しみたかっただけなんだ』と言った。
『頼むよ、もう悪さはしねえ。ここから出て行けばそれでいいだろう?』
『どうする?サン』
顔を上げたビアンカに、俺は逃がしてやろう、と言った。
『本気なの?信じられないわ!サンってお人好しよね』
今度は俺に向かって呆れた表情を作り、
仕方なさげにビアンカは腰に手を当てると、ボスの方に向き直った。
『行きなさいよ』
渋々と言った声色に、ボスはへっへっへ、と笑い
『ありがとうよ。あんた立派な大人になるぜ』言いながら立ち上がると、
長いローブをばさりと翻した。
瞬きする間もなく、ボスの姿は消えていた。
始めからこうやって逃げればよかったのに。
と思ったけれど、ゲームの世界のルールなんだろうなとぼんやりと俺は納得した。
いつの間にかあれだけ煩く鳴き続けていた雷は止んでいた。
城を包んでいた重く息苦しい空気が和らいで、月明りが切れ切れの雲間から世界を照らし始めていた。
ゆらりとあの暖かい空気が俺達の周りを包んでいた。
王の気配を感じ見上げると、薄い雲を払って顔を出した月と、
穏やかに微笑む王と王妃の姿が見えた。
二人はゆっくりと空を歩き、それぞれに俺とビアンカの手を取った。
浮遊。
世界の理に囚われないその二人の影響か
俺達の足は地面を離れ、ふわりと空中に浮いていた。
手を引かれ、王と王妃の眠るべきバルコニーへと誘われる。
墓石の前に足を着くと、王は俺の手を離し『よくやってくれた。礼を言う』と微笑んだ。
『本当に、感謝します。これで穏やかに眠れそうです』
王妃も王と良く似た笑顔を浮かべ、俺とビアンカの瞳を目を細めて見詰めている。
『城内の者達も、眠りについたようだ。さあ、おまえ。我々も行こうか』
『ええ、あなた』
淡く輝いていた二人の体が、一瞬、更に暖かな輝きを放った。
王が王妃の肩を抱き、王妃は寄り添うようにその腕に体を預ける。
『そなた達のことはきっと忘れまい。本当にありがとう』
嬉しそうに微笑む王妃の笑顔と、王の声が、白い光に包まれていく。
そして少しの余韻を残して、夜の闇に消えた。
最後に墓石が惜しむようにこつり、と音を立てた気がした。
『これで二人は幸せに眠れるのね』
ぼんやりと、今見た光景を刻み付けるように目を閉じて、ビアンカが言った。
ことりと、もう一度墓石が鳴いた。
『・・・何かしら。なにかあるわ』
目を開けたビアンカが墓石を見下ろす。
子供の掌よりも大きな、月光に金色に輝く大きな宝玉が、
王の墓の前に供えるように置かれていた。
ビアンカがそれを手に取り『お礼かしら』と笑った。
手を繋いで夜の道を戻る。
城内にあれだけいた幽霊や魔物は、すっかりとその姿を消していた。
城門をくぐり草原へ出る。
ざわりと風に靡く草花は、入る前のそれと同じ筈なのに、何故か何処か違うもののように思えた。
魔物の気配ももうしない。モンスターも寝るのかしら、とビアンカが言う。
不意にビアンカが俺の手を離し立ち止まった。歩を止め振り向くと、草原の真ん中。
城門の見える位置でビアンカがしゃがみ込んでいる。
『あたし、今日沢山モンスターを殺したわ』
一歩、少女の下へ踏み出しかけた俺に、ビアンカは呟いた。
少女の見下ろす地面に、つい数時間前戦った、小さなモンスターの爪あとがくっきりと残されていた。
『猫ちゃん・・・』
その両の手を顔の前で組み、ビアンカは目を閉じた。
その整った顔立ちの向こうに、快感や優越はもう、見えなかった。
俺は今後にしたばかりの大きな城を見上げた。
暗闇の象徴のように感じたその城は今は、月明りの中、
世界を見守るように、静かに穏やかに佇んでいる。
今回ここまでで。
ありがとうございます。
>>478-480 武勇伝ナツカシスww なんてサービス精神旺盛な主人公ズだ。
ところでリアルサイドのアルスってどんなカッコしてるんでしょう?
>>485-488 GJ! ついにボス倒したサン&ビアンカ、乙!
最後のビアンカが女の子らしくていい感じだなぁ。
うわ、GJです。
王様と王妃様の情景が目に浮かぶようでじ〜〜んとしました。
これから先、生き残っていくにはモンスターたちをいっぱいやっつけないといけないからビアンカさんがちょっと心配です。
もっとも、嬉々としてモンスターを虐殺しまくるヒロインもいやですけどね(wwww
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。って、やっぱりこの挨拶で定着か……」
アルス「だな。投下の前に、恒例のサンクスコール」
アルス「
>>481様、ウケて良かった〜。シラけられたら目も当てられねえw」
タツミ「
>>482様、本編はどっちかというとシリアスなんで、番外はハメはずし気味ですね」
アルス「あれでシリアスかぁ?
>>483(477)様、楽しいネタ振りありがと!」
タツミ「
>>490様、当社は読者様への徹底したサービスを心掛けております♪」
アルス「しかし、俺の今の格好か。えーと、ちょっと丈の短い黒いのと……」
タツミ「はいはい。こんな感じだね」
【アルス(元勇者):装備】
上着:リブスタンドブルゾン(ブラック)
上:2ボタンのカットソー(レッド)
下:ストレートデニム(ダークグレイ)
靴:スニーカー(ダークレッド)
タツミ「僕、本当は白系の服の方が多いんだけど、黒でまとめたね」
アルス「とりあえず濃い色のを適当に選んだ。それより(元勇者)ってイヤミかよ」
タツミ「事実でしょうが。――さて、そろそろ行数も押してきましたし」
アルス「なんか久々の出番だな」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
【Stage.5 ミイラ男と星空と(中編)】
続編 リアルサイド
Prev
>>458-465 (Rial-Side Prev
>>299-305)
----------------- Rial-Side -----------------
久しぶり、と言われた相手をまったく覚えていないというのは、普通は失礼な話だ。
ヤツの日常を「夢」という形で見ていた俺は、曖昧だったり、抜け落ちている情報も多
分にある。あまりしたてに出るのは得意じゃないが、最初のうちは「すまん、ど忘れした」
と頭を下げなきゃならん場面もたくさんあるだろう、と覚悟はしていた。
が、こいつらにその必要はないと思われる。
「さっき見てたけど、お前ゲームもすげえのな。さすが天才?」
「俺らもれんしゅーしてえんだけど、先立つモノっつーのがちょっと無くてさ」
「なあタッちゃん、また貸してくんねーかな〜? 2、3万でいいからさー」
お決まりの要求パターンだ。ったく、五体満足で衣食住にも恵まれてそうなのに、こい
つらはなんでこんな、場末でやさぐれてるゴロツキみたいなマネをするんだ?
「おい三津原、聞いてんのかよ」
「無きゃそこのコンビニで降ろしてくりゃいいし。な、俺らの仲だろ?」
ねとねとした口調がひどく勘に障る。しかも今の話だと、
「アイツ、以前からこんな連中にカモにされてた、ってことか……」
「へ?」
最初に殴りかかってきた少年が一番近かったから、そいつにした。
相手を見ることもなく逆手で襟元をひっつかみ、そのまま振りかぶって、
「な……」
丁度そこにいたお仲間のひとりに適当にブン投げる。一回転して背中から激突し、巻き
込まれたガキ共々、そいつは数メートル先までフッ飛んでいった。
「そんな、片手で投げた……!?」
残ったひとりが引きつった声を出す。
右腕を回すとコキッと音がした。思ったより重さを感じたな。
「やっぱちょっと肩にくるな。向こうの半分ってとこか」
元の世界じゃボストロールにヘッドロックかまして遊んでたからな。
さすがに「現実」だと制限がかかるようだが、今の自分のステータスが把握できてない
から、かえって加減の取り方がわからん。
かなり力を抜いたつもりだが、やりすぎたかね。
「悪い。いちおう教会、じゃねえ病院? 連れてった方がいいかもよ。んじゃ」
お前らみたいなのに構ってるヒマはねえんだよ。
と――。
「ふ、ふざけんなぁ!!」
甲高い叫びが上がった。投げ飛ばしたガキが立ち上がる。そいつの手元でチャキっと音
がして、なにかが小さく光った。
「おい……」
どうやらナイフらしい。待て待て、向こうならともかく、こっちの世界でそんな簡単に
刃物を持ち出していいのか。
「お前、それはまずいんじゃないか? ケーサツとか大丈夫なのかよ」
「黙れ!」
相手は完全に激昂していて、俺の言うことなんかまるで聞く気なしだ。周囲から悲鳴や
制止の声があがる。
「やべえって栄治、ほんとに捕まるって……うわ!」
エージと呼ばれたそいつは、止めに入った仲間にまで斬りかかった。
「落ち着いてくれよ栄治!」
「うるせえ! タツミてめえ! 俺にそんな、く、口きいていいと……!」
「なんだよこいつは――」
わざと力の差を見せつけてやったのに、まるで前後がわかってない。こっちの若者はキ
レんの早すぎだ。
ラリホーでも使えれば一発で片がつくんだが、「しかしなにも起こらなかった!」って
地文にテロップが流れるだけだろうしな。
しゃあねえ、殴って気絶させるか。「当てる」となると手加減が難しいんだが――。
「三津原やめろ!」
今度は俺の方が止められた。聞き覚えのある声に振り返ると、戸田和弘が必死の形相で
俺の腕を押さえている。
「ダメだろ、手ぇ出したら! 今度こそ取り消されるって言ってたじゃねえか」
「取り消される……? なんだよそりゃ」
「なんとかって奨学金、出なくなるんだろ? 学校これなくなるって」
は? そんなの知らねーぞ!?
「とにかく逃げるぞ」
軽くメダパニっている俺は、カズヒロに引っ張られるままその場を離れた。
「待ちやがれ、このクソヤロウ! 死ね!」
エージ少年は、ザキが発動しそうなくらい憎しみのこもった叫びをあげながら追いかけ
て来る。もしやタツミの方があのガキになにかしたのか?
あんなザコ相手に逃げなきゃならんってのもめっちゃストレスだし、ホントどうなって
んだよ、ったく――!
◇
俺たちはひとまず、どこかの路地裏に入って相手をやりすごした。
これだけ建物が密集していると追っ手をまくのも容易だ……が、俺はすでにここがどこ
だかわからなくなっていた。こっちの街って、ホント似たような景色ばかりなのな。
「よりによって一條たちに出くわすとは。ゲーセンに誘ったの、悪かったよ」
「いいけどさ。しかし、アイツらはなんなんだ」
神妙な顔で謝る友人に、俺はつい、自分が関係者であることを忘れてぼやいた。
「まさか心当たり無いとか言わないだろ? お前って肝心なことはなにも言ってくれねえ
し……。なあ三津原、本当は一條となにかあったんじゃないのか?」
逆に問われる。そんなの俺が聞きてーよ。
正直、1分1秒でも惜しいところだが、俺は思い切ってカズヒロに聞いてみた。
「あのさカズ、いきなり変なこと、聞くけどさ」
「お、おう。なんだ?」
「俺は……『三津原辰巳』ってヤツは――そんなに特徴的な人間か?」
「そりゃそーじゃねえ? 本読むのメチャクチャ早えーとか、見た物ぜんぶ写真みたいに
覚えられるとか。言っちゃ悪いがちょっと普通とは違うと思う」
やっぱりか!
ユリコが言ってた「忘れるなんて珍しい」って言葉も、アイツらが天才呼ばわりしてた
ことも、これで納得がいった。俺とは少し方向性が違うようだが、ヤツも「思い出す」に
類する特技を持っているらしい。
「うちみたいな進学校で、満点以外取ったことねえヤツが他にいるかよ」
しかも遠慮なくフルで能力発揮しまくりかよ。
となると、さっきの「しょーがくきん」ってやつも、たぶんアレだろ。
「それで国とかそういう上の方から、特別な援助金が出てたりするのか」
「俺はよく知らねえよ。お前んち、一度も学費払ったことないって聞いてるけど」
マジかーッ。これじゃうちと一緒じゃねえかよ!
嫌なことを思い出す――。
勇者オルテガの名前のせいで、うちはやたらと国王から厚遇されていた。親父が死んで
からさらに、高額の生活補助金まで支払われるようになった。
でも魔王討伐に「失敗」した勇者の家だぜ? そんなのやっかまれるに決まってる。
「……この家はどうも、風の突き当たりになっているみたいねぇ」
直しても直しても割られる窓ガラスを、おふくろは困ったように見つめていた。じじい
は出歩かなくなったし、俺の友達は全員「敵」か「他人」でしかなくなった。
俺が周囲を、実力で黙らせるしかなかったんだ。
逆に俺が「夢」で知っている「三津原辰巳」は、学業も運動も人並みで、一般的な家の
生まれという設定だった。おとなしくて目立たない少年だが、人当たりはいいのでいじめ
に遭っていることもない。
特に問題は無いが、強いて言えば父親が単身赴任とかって遠方勤務で留守がちの上、母
親が子供に無関心で少し寂しい家庭だ、とかそんな程度。
ごく平凡なそこらの学生、のはずだった。
なのに「夢」と「現実」がズレてる。俺がなにか大きな勘違いをしているのか――?
「あ、俺バカだ!」
カズヒロがいきなり叫んだ。内側に向いていた意識が引き戻される。
「完全に振り切ったら、アイツらお前の家の前で待ち伏せするに決まってるよな?」
うへー? あのキチ(ピー!)君、タツミんちも知ってるのか。
カズヒロは眉根を寄せて考え込むと、すぐに「よし」とうなずいた。
「俺が引きつけとくから、お前先に帰っとけ」
「え、ちょっと――」
「いいか、お前は顔を出すなよ。大事になるから警察とかにも捕まらないように!」
止める間もなく行ってしまう。追いかけていいのかどうか迷ってるうちに、カズヒロは
雑踏の中に紛れてしまい、俺はぽつんと一人、薄暗い路地裏に取り残された。
「おーい……こっからどうやって帰れと」
拝啓、母上様。
アルスはただいま、異世界で迷子になりました。
◇
とにかく帰ろう。住所はわかってるから、誰かに聞くのが早いよな。
路地から表を観察し、エージ少年らがいないことを確かめてから出ていった。
最初に近くを通りかかったオッサンを捕まえる。
「あの、すみません」
「ん?」
頭のてっぺんが横にシマシマになっているオッサンは、あからさまに迷惑そうな顔を向
けて来た。
「道に迷ったんですけど、教えてもらえないかと――」
「忙しいんで他の人に聞いてくれる?」
足を止めることさえなく、スタスタと行ってしまう。
ずいぶん淡泊な反応だ。そんなに忙しそうに見えなかったが。
まあ人口の密集度はすさまじい世界だ。すぐに別な人間に声をかける。
今度はまじめそうな雰囲気の、年配の女性だ。
「すみません、道を――」
が、その女なんか目も合わせようとしない。いきなり歩調が早くなって逃げるように離
れていく。
なにそれ。俺そんな不審人物? 慣れない反応に戸惑うが、とにかく時間がない。合間に
携帯のリダイアルを続けているが一向につながる気配がないし。
「ちょっと! 道をですねっ」
次にもう少し若い女を捕まえた。今度は俺のウケの良さそうな20代くらいのお姉さんで、
案の定、彼女は変な顔もせず微笑んでくれた。
「どうしたの?」
「はい、あの、道を尋ねたくて」
住所を告げる。彼女は首をかしげて「ごめん、わからない」と言った。
「交番に聞いた方が早いんじゃないかな。すぐ近くだし、案内するよ」
コーバンって、ケーサツの詰め所のことだっけ?
「いやあの、ケーサツはまずいっていうか……」
途端に相手の顔が険しくなる。
「ああ、やっぱり。もしかしてと思ったけど、あんた家出してるのね」
「はぁ?」
「近頃のガキはホントどうしようもないわ。さっさと帰りなさい、かまってられない」
厳しい口調で言い捨てて、やたらかかとの細い靴をカッカッと鳴らしながら去っていく。
だから、その家に帰れなくて困ってるんだってば!
「なんだかなー……」
そりゃ向こうでも、話しかけても冷たい反応を返されることはあった。だがたいがいの
街人は、きちんとこちらを向いて丁寧に情報提供してくれたものだ。
それに比べてこっちの人間は、冷淡すぎやしないか。
他人のことなんか、本当にどうでもいいみたいな……。
ふるっと震えがきた。この時間にもなると一気に冷え込むようで、肩にひっかけていた
だけの上着の前を合わせる。
日の暮れた街は、たいまつやランプとはまるで違う白く冴えた光で溢れかえっていて、
なにもかもが作り物めいて見えた。
作り物は、向こうの世界のはずなのに。
「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」
「あはははは!」
いきなり後ろから笑い声が聞こえた。
驚いて振り向くと、一人の細身の少年が立っていた。
俺と同い年か、少し上くらいだろうか。ダフッとした黄色のシャツを着て、首回りや両
腕に幾重にも派手なアクセサリを巻きつけている。
「いや失礼。ここは場所が悪いんですよ。さっきみたいに家出少年か、キャッチだと思わ
れちゃうんですよね。もう1本先の表通りに出れば、また反応も違いますよ」
少し長めの茶色の髪をかき上げる。チャラチャラした格好だが、エージたちよりはずっ
とまともそうだ。
「さっきの立ち回りを見て、もしやと思って追いかけてきたんですが……。良ければ僕が
家までお送りしますよ?」
「それは助かるが……あんた誰だ」
タツミの記憶にはないし、相手も知り合いというわけではなさそうだ。
「そうですね――今は詳しいことは秘密にしておきますよ」
唇に人差し指を立てて、彼は人好きのしそうな笑みを浮かべた。
「あなたも移行が完了しないうちは、簡単に素性を明かさない方が賢明でしょう」
移行……? って、まさか!
「お前も『向こう』の人間なのか!?」
「ええ。僕もまだ1ヶ月くらいですけどね」
彼の左耳で、小さなピアスがきらりと光った。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」
本日はここまでです。
おおお…投下乙!新キャラ向こう側の人間かよ
俄然面白くなってきたwwww期待w
乙です!
ピアスの新キャラってもしかして・・・続きめっちゃ気になる
素晴らしい!◆IFDQ/RcGKIさま乙
ゲーム世界篇が面白くて正直次はリアル篇かよ〜と思っていたら
何かもっと面白そう!
おもいだすの特技がリアルでは天才と評価される切り口は新鮮ですね
次も期待しています
それから◆u9VgpDS6fg さま、遅まきながら乙です
続き待ってました
レヌーる城篇クライマックス、良かったです。
ビアンカも乗り越えるべき葛藤があって成長物語らしくなってきましたね
次のベビーパンサーとのからみ期待してます!
わー、タツミ君もアルス君も人知れず苦労してたんですね・・・。
新キャラ、なんかあまり信用しないほうがいい予感?
乙!
リアルサイドでは「不慣れな日常生活」ってだけでもつのかなぁ?
などと思っていたのですが…
全くの邪推でしたね!こんな展開に持っていくとは!!
そこにシビ(ry
長髪にピアスといえば4勇者か…?
>>303 『それで…さ、今回だけ、ナビ頼めないかな』
>>499 「なんでつながんないんだよ、タツミの野郎……」
なんだかんだで相手を頼ってるのなw
◆u9VgpDS6fg氏GJです。
続きまってました!背景や心理の描写うますぎ!
続きwktk
まさか武勇伝くるとは!!◆IFDQ/RcGKI氏!
てか,新キャラですね!でも最初マルチかなんかの勧誘かと思ったww
眠れずの保守
鈴木さんと田中は今頃なにしてるんだろう
>>510 たぶん・・・。バイト先の酒場でえっちなこと。
居候先のおかみさんとえっちなこと。
アルス「なんでもいいから雑談しろってよ」
タツミ「どう見ても間をつないでるだけです。本当にあり(ry」
アルス「ところで、お前の本名の『三津原辰巳』ってさ」
タツミ「うん」
アルス「辰って竜と同じような意味の字だろ。つまりDQ3? 単純じゃね?」
タツミ「悪かったね。単純なのは作者の命名センスだろ」
アルス「っつーか、それはお前もだろ。なんで俺デフォルト名なのよ」
タツミ「もしかして僕が『アルス』ってつけたから、君その名前なの?」
アルス「そうだって。4周もしてたのに全部同じにしてるし」
タツミ「うん、考えるの面倒だったから」
アルス「ありえねー、なにその思い入れの無さ!」
タツミ「こら、『アルス』って名前を気に入ってプレイしてる人もいるかもしれないだろ」
アルス「お前は今、考えるの面倒だったからって言ったじゃねえか」
タツミ「じゃあ『ジョニー』とか?」
アルス「このSSの印象変わりそうだな」
タツミ「それなら『ゲパルト』とか」
アルス「てめえワザとだろ」
タツミ「わがままだなぁ。もう『ヘニョ』にしていい?」
アルス「なんだそりゃ!」
タツミ「いいじゃないか。ヘニョに決定」
ヘニョ「決定するニャ! うニャ、名前まで変わってるニョ!?」
タツミ「語尾も変わってるw」
ヘニョ「ニョwwwwwwやめwwwwwwww助けてマリニャン様ぁ!」
ちょwwwwwwマリニャンて誰だよ?
あ 今気付いた
命名神マリナンか
ドイツ連邦軍の対空戦車吹いた
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。それではさっそく、サンクスコールいっきまーす」
アルス「
>>501様、謎の新キャラ登場です。これからもっと面白くなる……かはわかんないけど」
タツミ「しなきゃダメでしょうが。
>>502様は誰だと予想しましたか? 特に伏せようとしてる
わけじゃないんですが、ピアスはひっかけになるかもしれません」
アルス「
>>503様、今までリアルサイドはのんびりしてたからなぁ。俺もこいつが『おもいだす』の
特技を持ってるとは思わなかったぜ」
タツミ「
>>504様、しかしもっとも苦労してるのは、誰かさんのせいでゲーム世界に飛ばされた
今現在なんですけどね(ノ∀`)」
アルス「
>>505様、地味に大変なんすけどね。俺いまだにあの青い親子連れの看板がわからん」
タツミ「
>>506様、4って長髪にピアスなんだ。僕DQ3以外やったことないからなぁ。どうなの?」
アルス「俺に聞くな、他シリーズのことなんか知るか。そして
>>507様、それは大・勘違い!です」
タツミ「僕はけっこう頼りにしてたんだけどねぇ……まるっきり役立たずだけど」
アルス「タイミング悪いんだよお前は! 意外にキレ易いし」
タツミ「人が命懸けで冒険してんのにふざけるからでしょうが。
こんなのほっといて、
>>508様、確かにあの登場の仕方はマルチっぽいかもw」
アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「
>>513様、はい、命名神マリナン様です。ダーマまで進んだらぜひアルスを『ヘニョ』に」
アルス「するなぁ!
>>515様、そんなごっついシロモノの名前だったんすね。つけられなくて良かった」
アルス「以上かな? たくさんの応援メッセージありがとうございました!」
タツミ「なんだかんだで物語もStage.6となりまして――」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
リアルサイド 続編
Rial-Side Prev
>>493-499 ----------------- Rial-Side -----------------
「別に急ぐ必要なんかないですよ。所詮ゲームです、本当に死にやしませんから」
早く帰ろうと焦る俺に、ショウはあっさりそう言い切った。
「でも相手が死んだら俺も消えるって……」
「確かに消えはしますけど、主人公は自動で生き返りますし。相手が蘇生すればこっちも
元に戻ります。誰かの前でいきなり消えたり出たりしたらちょっとまずいかな、というて
いどの問題なんですよ」
「マジで? うわー心配して損した!」
なんだよ、タツミのヤツも復活するのか。神竜も紛らわしい言い方しやがって、死んだ
らそれまでって意味だと思い込んでいたから、気が気じゃなかったっつーのに。
「――ただ僕たちにも、一応『生き返らない条件』ってあったじゃないですか」
ショウが続けた言葉に、俺はつい顔をしかめた。あまり触れたくない話だ。
「あったな。心から絶望して自殺したら生き返らない、とか」
もっとも主人公の自殺判定はかなりシビアで、ほとんどは戦略上の理由として片付けら
れて自動蘇生の対象となる。成功することは滅多にない。
正義の主人公というのは、そう簡単には死なせてもらえないものだ。
「一応そこは気をつけた方がいいでしょうね」
まあうちのあのプレイヤーに限っちゃ、まずあり得ねーな。
「ちょっと待ってください。コーラでいいですか?」
表通りに向かう途中の自販機の前で、ショウが立ち止まった。コインを入れ、一斉に点
灯した購入ボタンのうちのひとつを2度押して、先に出てきた缶を手渡してきた。
「えっと……」
どうすれば、と思うと同時に、相手が自分の缶を目の前に持ってきた。
「ここに指を引っかけて、こうやって開けるんですよ」
プシュッといい音がして、缶の上に水滴型の穴が空く。うまくできてるもんだ。
「あんがと。そういう細かいとこが、ところどころわかんないんだよなぁ」
「僕も苦労しました。こっちじゃ常識だから、聞くに聞けないし」
「わかるわかるw」
プレイヤーの生死に神経質になる必要はないとわかったし、事情が同じヤツと話してい
るのもあって、俺はすごく気が楽になった。
やがて大きな通りに出ると、ショウは片手を上げて一台の車を止めた。屋根に変な形の
ランプがついている。
「住所がわかってるなら、こうやってタクシーを拾った方が早いですよ」
なるほど、勉強になります。
自動的にドアが開いて、ショウが先に乗り込もうとする。
「待てよ、これに乗ってけば帰れるんだろ? わざわざついて来なくてもいいんだぜ」
さすがに俺も遠慮したんだが、彼は首を振った。
「落ち着かないんで、きちんと家まで送りたいんです。嫌じゃなければ、ですけど」
嫌なわけはない。本音ではありがたい申し出だ。やっぱこっちの人間と違って、向こう
のヤツはみんな親切だよなーっ。
人工の光に溢れかえる街中を、車がゆっくりと走り出す。
さて、いい機会だし、あとはなにを聞いておこうかな――。
「ところで、さっき『心配した』って言ってましたよね?」
俺が口を開く前に、少し低いトーンでショウが聞いてきた。
「言ったけど、どうかしたか?」
ふと、彼の顔から笑みが消えた。
「プレイヤーに同情は禁物ですよ」
一瞬、返す言葉に詰まる。相手は「ふぅ」と溜息をついた。
「右も左もわからない異世界で、お互いに自分の正体を知っているのは立場を交換した相
手だけ。情が湧くのも当たり前ですけどね。でも、地位も名誉も、家族も仲間もすべて捨
てて――よっぽどの覚悟を決めて、こっちに来たんでしょう?」
「そりゃ……まあ」
「プレイヤーに同情してクリアまで手伝ってたら、すべてフイになりますよ」
こいつは、本当はそれが言いたくてタクシーに乗り込んだんだなと、俺は悟った。
冷たく突き放したような内容だが、言ってる本人も少ししぶい顔をしている。
「僕も最初はずいぶん悩みましたよ。プレイヤーも『帰りたい』って泣きましたし。でも
考えてもみてください。相手は、つかの間でも現実の生活を忘れたくて『ゲーム』を楽し
んでたんです。慣れれば必ず向こうを選びます。現に僕のプレイヤーなんて、一週間で永
住を決めましたよ」
「帰りたくない、って?」
「もちろん、そうなるように僕も誘導しましたけど。――今は僕たちが『プレイヤー』な
んですから、うまく相手を動かさないとね」
小さく肩をすくめて、彼は俺を見た。
「あとは好きに生きればいい。いつまでも相手のフリをする必要もありません。僕たちが
こっちで生活するために利用してるだけで、どうせ親兄弟も赤の他人なんだし」
その通りだった。
俺が感じていた不安や疑問をすべて的確に晴らしてくれる答えだ。
ただ――なぜか俺はそこで、すぐに返事ができなかった。
黙り込んだ俺に、ショウはフッと笑った。
「よけいなお世話、でしたか?」
「いや……そうだな。お前が正しいよ」
救うべき世界をプレイヤーに押しつけて逃げ出してきた罪悪感と。
命懸けで守ろうとした世界が作り物だと知ってしまった虚無感と。
全部振り切って、ここで生きていこうと決めたのだ。いまさら引き返せない。
車が停まった。いつの間にかタツミのマンションの前まで来ていたのだ。
「そう言えば、あなたはこちらでは、なんて?」
「タツミ。三津原辰巳」
「いい名前じゃないですか。……じゃあまた、頑張ってくださいね、タツミ君」
俺を降ろしたタクシーは、少し行った先で角を曲がり、すぐに見えなくなった。
----------------- Rial-Side Another -----------------
――1台のタクシーが夜の住宅街をすべるように進んでいく。
とあるマンションの前でいったん停車し、黒髪の少年を一人降ろして再び走り出す。
その車は、近くの十字路を折れてマンションからの死角に入ると、もう一度停まった。
「ここまででいいです」
後部席に乗っていた黄色シャツの少年が運転手に告げた。財布から紙幣を数枚出して、
座席の間のカウンターに置く。運転手は紙幣を数えると、メーターの示す金額を引いた釣
り銭を代わりにカウンターに置いた。
「ところで、さっきのはゲームの話だよね?」
運転手が聞いてくる。少年は釣り銭を財布に戻しながら「ええ」とうなずいた。
「いまどきのゲームって凄いよねえ。自分みたいなオジサンにはついていけないよ」
「やってみたらそんなに難しくもないですよ。特にドラクエとかは」
少年は愛想良く答え、車を降りた。
そして、走り去っていくタクシーのテールランプに向かって、少年は呟いた。
「近いうちに、嫌でもかかわることになるけどね――」
さきほど別れたもう一人の少年が帰っていったマンションを注意深く眺める。4階の右
端の部屋に明かりが灯ったのを確かめると、携帯電話を取り出した。
「……僕です。やっぱりゲームサイドの人間でしたね。でも、あんまり期待できないと思
いますよ。なんか人の良さそうな子だし。……いや、それはないと思いますけど」
通話口の向こうで懸念を示す相手に、彼は静かに言った。
「もう少し様子を見ましょう。それでもしもの時は……僕がちゃんと、処理しますから」
彼はもう2、3言交わしたあと、通話を切って歩き出した。
街灯と街灯の合間にある影の溜まりに踏み込んだところで、ふと立ち止まる。
次の瞬間、そこから光の柱が立ち上がり、空を貫いていった。
あとには誰の姿もなかった。
SIENQUEST
本日はここまでです。
謎キャラが本格的に絡んでくるのはもう少しあとになります。
次はゲームサイドの予定です。
なんか本格的な感じになってきたな
もっとこう、軽めの話なのかと思ってたんだが
だが、それがいい
乙
GJ!!
ピアス男何者?!
とりあえず味方ではなさそうですね。
続きwktk
乙!
自分も
>>523と同じくマターリな感じの作品かと思ってたんだが(特にリアルサイド)。
実は結構シリアスなストーリーだったりするのかな?
そういえば俺が好きだったあの人の作品も、最初はギャグ一辺倒だったなぁ。
こんなサービス旺盛なサンクスコールは全く無かったがw
まぁあれだ。ヘニョガンガレ!!
やはり新キャラ、あやしいですね・・・。
ゲームサイドからこちらの世界をのっとろうとしている悪の組織の手先チック
わくわく・・・。
保守…
528 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/05(木) 23:30:17 ID:/fPogsIv0
同人キモオタ小説スレ晒しage
sine
読み返してみるとやっぱり4の人のが一番面白いね
終わってしまって残念
>>530 そういう感想は避難所に書けよ。
なんで現行で頑張ってる書き手さんのモチベーションが
下がるようなことをわざわざここで言うんだ。
少しは気を遣え。
4の人のが素晴らしかったのは事実だし。
読み手が感想を書きたくなるような
面白いものを書くよう努力するさ。
>>532 すまん、かえって余計なこと言った。
マターリ待機してるよ。
前回のあらすじ
>>422-427 ……ああどうも、俺です。
皆さんはマイラの村にいるぱふぱふしてくれる女の子が未成年だって知っていましたか?
俺は知りませんでした。
たとえ合意の上でも立派な淫行に当たることをご存知ですか?
俺は知っていました。
\
::::: \ 俺の両腕に冷たい鉄の輪がはめられた。
\::::: \
\::::: _ヽ __ _ 外界との連絡を断ち切る契約の印だ。
ヽ/, /_ ヽ/、 ヽ_
// /< __) l -,|__) > 「刑事さん・・・、俺、どうして・・・
|| | < __)_ゝJ_)_> こんなこと・・・しちゃったのかな?」
\ ||.| < ___)_(_)_ >
\| | <____ノ_(_)_ ) とめどなく大粒の涙がこぼれ落ち
ヾヽニニ/ー--'/ 震える俺の掌を濡らした。
|_|_t_|_♀__|
9 ∂ 「その答えを見つけるのは、お前自身だ。」
6 ∂
(9_∂ 俺は声をあげて泣いた。
−完−
ご愛読ありがとうございました。
◆yeTK1cdmjoの次回作にご期待ください。
「未成年とは知らなかった。10ゴールドを支払……ってちょっと待て!」
「?」
「ここは条例ないんだよな!?」
「条例? 何の条例?」
アレフガルドは日本じゃない! てか、地球じゃない!
つまり! 淫行条例適・用・外!
素晴らしき哉! 人生!!
「うおおおおお! セフセフ! いいいやっほおおおおおおお!!」
「な、なんかわからないけど落ち着いてよ!」
「素数を数える必要がないほどに落ち着いてるじゃないか! ひゃっほーーーーーーい!」
「落ち着け!」
「ぐふっ」
……見事なアッパーだ……。
燃えたよ……まっ白に……燃えつきた……まっ白な灰に……。
「お、いたいた」
「みやおうか。どした?」
「悶絶してるところ悪いが、そろそろ宿に戻らないと明日が辛いぞ」
「そういや明日はリムルダールだったな」
実戦経験の乏しい俺の特訓のためにマイラに逗留すること数日。
ゆう帝曰く、「そこそこ実戦慣れしてきましたね」とのことで俺達三人はようやくリムルダールに向かうことにした。
「ほんじゃ、プリンセス・ハオの夢を見るくらいに寝るとするか」
「プリンセス……何?」
「気にすんな」
「あ、10ゴールドもらってない!」
(∩゚д゚)アーアーきこえなーい
そんなわけで、リムルダール島を結ぶ洞窟に向かう俺ら。
「って、毒の沼じゃねえか!」
「何か問題でもありました?」
「いやいやいや、『何か問題でもありました?』じゃねえよ。どうやって行くんだ?」
「歩いていくに決まってるだろう」
「さ、行きましょう」
ゆう帝はちゃっかりと魔法の鎧を着ているからいいものの、俺とミヤ王はどうすんだ?
「気をしっかり持てばこの程度大したことはない」
筋肉馬鹿め。
ゲームの毒の沼と実際に見る毒の沼は全然違う。
ゲーム上では黒のダメージマップだけど、現実はもっと毒々しい。黒に赤紫を混ぜた色してやがる。
それに臭い。
スピードワゴンじゃないが、ゲロ以下の臭いがプンプンする。
臭いなのか何なのかわからないが目も痛い。
タバコや排気ガスなんか可愛いもんだ。
まだ足を踏み入れてないのにこのヤバさ。
5分もいたら死ぬ。マジで死ぬ。この場所にいるだけで死ぬ。ヤバい。超ヤバい。
「ってもう行ってんじゃねえよ!」
「急ぎましょう」
「早めに洞窟を抜けきりたい。急げよ」
言いたい放題言いやがって。
――よし、行ってやるよ!
Bダッシュで行ってやろうじゃねえか!
「うおおおお! 痛え! 痛え!」
バリッとした痛みが伝わってくる。もしかして靴溶けてんじゃね?
Bダッシュとか無理! マリオすげえ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
沼地の洞窟に頭から飛び込んだのは俺くらいだろうね。
「最短距離で行くからはぐれないようにしっかり捕まっとけよー」
「松明ありますよ?」
「松明なんざいらん。右手を向かって右側の壁に当てろ」
真っ暗で二人の顔は見えないが半信半疑といったところだろう。
いくら真っ暗で自分の足元くらいしか見えなくてもこの洞窟は難しくない。
RPGの基本は左手の法則だが、このダンジョンは右手を使う。
右手をピッタリと壁に当ててそのまま歩いていけば松明がなくとも攻略できる。
ローラ姫は……いつか来るであろう勇者に任せておこう。
姫は攫われてるうちが華ってもんだ。
「いいか、何があっても真っ直ぐ進めよ」
「わかった」
「モンスターが出てきた場合は?」
「踏め」
暗闇に目が慣れるまではゆっくりと、慣れてからは普通の速度で洞窟内を真っ直ぐ進む。
ゲームなら下に向かってるはずだ。
魔法使いらしき奴には「どこに目ェつけとんじゃボケェ!」と恫喝し、メーダらしきものは踏んで難を逃れた。
これぞ男塾名物直進行軍。たとえ飛行帽の家でも真っ直ぐ進んでやるぜ!
平坦な洞窟かと思っていたが微妙に坂になっているようだ。
テレビの前でコントローラーを握っているだけではわかるはずもなかったドラクエ世界。
子供の頃、自分も冒険してみたいと誰もが夢見たことだろう。
何の因果か知らんがドラクエ世界に飛ばされて、実際に冒険している俺はラッキーと言え――るわけねえよな。
パソコンが無いし電波は届かないしコンビニも無いし捻るだけで水が出る蛇口も無い。そう考えると日本すげー。
元の世界に戻ったら色々やりてえなあ。
2ちゃんの溜まってるログ読んで、乗り遅れた祭りに参加して……そういやあのスレ落ちてないだろな。
この経験生かして「もし目が覚めたら〜」に投下してみるのもありだな。
待てよ、即レスを求めるならVIPもあり――って、どれだけ2ちゃんに依存してんだよ俺('A`)
「まさか本当にいけるとは……」
「言った通りだったろ?」
松明一つも消費せずに沼地の洞窟、難なく攻略。
沼地の洞窟程度、俺にしてみりゃ超楽勝。
下押すだけのゲームと実際に歩くリアルドラクエとの違いはあるけど。
「リムルダールまでもう少しだな」
「モンスターも強くなってるでしょうから気をつけてください」
「強いモンスターってのは、今みやおうにボコボコにされてるアレのことか?」
=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
∧_∧ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡∧_∧≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
( ・ω・)=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ))д´)≡つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
(っ ≡つ=つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ (っ ⊂)≡つ =つ≡つ =つ≡つ
/ ) =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡| x |≡つつ =つ≡つ =つ≡つ
( / ̄∪ ババババ ババババ ババババ ババババ ∪ ̄ ∪ ババババ ババババ
=つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ =つ≡つ つ =つ≡つ =つ≡つ ≡つ =つ≡つ
強すぎだろ。
何だよあのラッシュ。どこの聖闘士だよ。
もうやめて! リカントのライフは0よ!!
などと考えてるうちに哀れリカントは海に転落。南無。
ミヤ王だけで竜王フルボッコにできるんじゃね?
「待たせてすまん。少々てこずった」
「さ、行きましょうか」
「……」
今更だが、俺はとんでもない連中と旅をしてるんじゃなかろうか。
リムルダールに向かう途中、リカントだの魔道士だの鉄のさそりだの出てきたが全部ミヤ王とゆう帝が一掃。
早くキム皇と合流したいそうです。
ま、俺は足手まといになるだろうし、楽なのはいいんだけどさあ。
怖いよ。
文字通りフルボッコにするミヤ王もだが、急所を的確に狙って一撃で殺すゆう帝には流石の俺もドン引き。
キム皇はまともな奴でありますように。
……望みは薄そうだけどさ。
「キムこうは確かこっちに……。あそこで佇んでる奴、ではないよなあ……」
俺の視線の先にはなぜか体育座りをして何か口ずさんでる男の姿が。
こういう嫌な予感はよく当たるんだよなあ。
「おい、キムこう!」
ほーら当たった。
「もしかしてゆうていとみやおうだすか? あて……あて、寂しかっただすよ〜」
仲間同士の再会ってのは別に悪くはない。
むしろ感動するシーンだとは思う。
勉三を彷彿とさせる謎の方言じゃなければの話だが。
「ところで、この人はどちらさんっすか?」
「話すと長くなるのでひとまず宿屋へ向かいましょうか」
「でも、あて……」
「?」
「1ゴールドも持ってないだす……」
だからあんなところで佇んでやがったのか。
キム皇のステータス
攻撃力:あたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたっ
方言力:うわぁ…勉三さんの中…あったかいナリ…
空気を読まず投下終了です。
>>537 むしゃくしゃしてやった。
今は反省していない。
腹筋割れたwww
GJ
オモシレ〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ステータス方言力てwwwwww
まるで読めないキャラ設定と展開、GJ!
あ〜もう続きが読み手〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
>>541 超乙
夜中に一人で大爆笑しちまったい。
寂しくなんかないんだからっ。
DQ1のぱふぱふ娘はリムルダールだった気がするんだが、リメイク版は違うんだっけ?
あ、調べたらやっぱし変更されてた。
つーかFC版は「ぱふぱふしてほしいなら50G〜」と出るだけで、出来ない。
エイコたん待ち保守
エイコなら、オレの隣で満ち足りた顔をして、かわいい寝息をたててるよ。
549 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/11(水) 14:15:25 ID:+qwtutd4O
対象は
未成年 ×
満18才以下 〇
高校卒業したての18才は余裕でセフセフ
神様、私はどうも過大な期待を寄せていたようです。
や、でも。だって。現代社会に生まれた夢見る乙女だったら誰でも思うじゃない?
王子様=完璧超人ってさ。
でも、そうでもないらしい。
ここグランエスタードの王子様は、そらもうやんちゃ盛りで、朝から晩まで、いや朝から朝まで城を抜けて遊ぶなんてざららしい。
でも、街の声によると王子様は悪い人間ってわけでもなさそうだ。
案外気さくだったりするらしいし、やんちゃっていってもトンでもないゴシップなんかは聞こえてこない。酒も飲まない。
そういう点に置いて駄目なのは意外や意外、アルスの叔父さんだった。
酒クサい部屋に転がる瓶。中身は多分お酒だったんだろう、口から零れてそれが更に発酵しているみたいで、異様な臭いがした。
よーくみると小バエが無数にたかっていて鳥肌がたつ。
そんな中、床に寝転んでいるのが、アルスの叔父さん――ホンダラさんだった。
ホンダラさんはアリスを見つけるなり、なんとかストーンという石っころを自慢した。
ほら、触ってみろ、あったかいだろ?俺が見つけたんだ、羨ましいか?やらねーよ、金、出すなら話は別だけどな。
酒クサい息を吐き散らしながらアルスに絡む。
あーあ、どこにでもいるもんなんだなぁ、酔っ払い。
私の知る限りのそれらは見境がない。この場合次に絡まれるのはもう決まっている。
ん?なんだこの姉ちゃん。浮気か?アルス、マリベル以外の女と一緒とはな。フン、マリベルより体の凹凸ははっきりしてるが…地味な顔してるな
私を爪先から頭のてっぺんまで見渡してホンダラが言う。
「んなっ……!」
頭に血が昇った。頭の中ぐるぐる言葉が巡るけど出てこない。言葉が喉に詰まる。
こんな時人はどんな風な行動をとるか。
グッと我慢してやり過ごす
怒りを物理的に表現する。
わ〜い支援
グッと我慢してやり過ごす
ニア 怒りを物理的に表現する < ピッ
私は無言のまま腕を振り上げ、そのままホンダラに振り下ろした。
――…はず、だった。
「うわっ」
私の拳は空を切った。
見るとホンダラさんは床に昏倒していた。
「な、何で?え?」
私まだ殴ってないのに…
足元のホンダラさんから視線を上げると、真犯人がにっこり笑った。
…酒瓶を逆手に持って。
「ごめんね、うちの叔父が。」
「…アルス…?」
「大丈夫。死なない!」
「……そう?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
何か確信を持ったアルスの物言いに、内心ガクブルしながら私は納得しようとした。
まあ、アルスが殴ってなきゃ、私が殴ってたわけだし、結果は同じか。
………同じか?
床のホンダラさんは白目剥いて倒れてる。
靴の先でツンツンと突っ突いて見る。
返事がない ただの酔っ払いのようだ …多分
私はそっとホンダラさんに、放り出されていたタオルケットを掛け、目を逸らした。
一応顔は広いらしかったホンダラさんが頼りにならないので
(頼りにならないというか、ならなくしたというか…)
私とアルスは町中を歩いて回った。
当たり前だけど、私を知る人はいない。
途中、グランエスタードに着くなり別行動をとったマリベルが買い物をしているのを見た。
どこの世界でも女の子は買い物好きってのは共通事項らしい。
「うーん。見つからないね」
「ごめんね…」
見つかるはずがないのだ。
アルスと一緒に歩き回ってるうちに嫌でも実感させられる。
異 世 界
この3文字。私の世界の常識は通用しない。私の世界には傷を一瞬にして直してしまう『薬草』なんてない。
ここは、私の住む世界ではない。
「謝ることないよ」
アルスは優しく言うけれど、多分こうやって探すことに意味なんてないんだ。
……もう、帰れないんだろうか
「お城に行こう!」
沈む私の肩を叩いてアルスが言った。
彼はきっと、私の家族が、私の帰る場所がここに、この世界にあることを信じて疑わないんだろう。
いや、別世界なんて考えもしないんだと思う。…当たり前よね。
「お城…そうね、うん行って見よう」
行こう。
私の世界に帰る方法が見つかるか、見つからないか。
どちらにせよ私は決めなきゃならない時なんだ。
帰れない時、私はこの世界で暮らしていくことになる。もしかすると、生涯を。
乙。
アルス意外といい性格してんなw
いよいよ次は王子登場か。
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。……なんかさ、この頃シナリオちょっと暗くない? 今回もそうだし」
アルス「いきなり内容に触れるなよ。だから今回いっきに投下する予定になってる。
それより、まずはサンクスコール!」
タツミ「はーい」
アルス「
>>523様、乙ありがと。タツミも言ってたけど、本格的っつーか、
たま〜にジメっとした話にはなるかもなー」
タツミ「まあこのメンバーなんで、バカやってる方が多いと思いますけどね。
>>534様、あのピアス男やっぱ怪しいよねー? アルスに変なこと吹き込まないで欲しいな」
アルス「えー? 意外とイイヤツかもしれないだろ。
そして
>>525様……って、ヘニョはやめてー! 定着するー!
スレトップの【キーワード】にヘニョって入ったらどうすんだよー!!」
タツミ「うはw連呼したら入りそうだなww ヘニョヘニョヘニョ……痛! わかった叩くなって!
でもほら、
>>526様も『悪の組織の手先チック』だと言ってるし、あんまり信用するなよ」
アルス「お前にはマイナスっぽいヤツだしな。まあそれなりに対処しておきますよ」
タツミ「いつもご感想いただいて感謝!」
アルス「ほんと、これがあるから徹夜で書ける」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
【Stage.6 ミイラ男と星空と(後編)】
続編 ゲームサイド&リアルサイド
Prev
>>517-520 (Game-Side Prev
>>458-465)
----------------- Game-Side -----------------
「少し、いいかな」
僕は周囲を警戒しつつ、エリスに小声で話しかけた。
「……はい」
暗闇の中から、エリスのか細い声が返ってくる。
「死んだ時、生き返ることが "不可能" な条件って、なに?」
この世界じゃあまりに常識だからか、かえって本なんかには載っていなかった。こんな
時に話したい内容ではないが、こんな時だからこそ早めに確認しておくべきだろう。
「そうですね。自ら命を絶った者は生き返らないケースがあります」
彼女がゆっくりと答える。知らなかった、自殺は蘇生対象外なのか。
「それから、魂を呼び戻すための器である肉体が必要です。半分もあればいいそうですが」
「つまり、バラバラになったら半分くらいはかき集めろってこと?」
「ですね」
ふー。ますます「血はダメだ」とか言っていられなくなってきたな。
ってかおかしいよこのドラクエ。堀井先生もそこまで生々しい世界を想定して作ってた
とは思えないんだけど。
「あ〜、それで遺体を運ぶときって、やっぱりアレに入れて引きずるの?」
「折りたたみ式の車輪の付いた棺桶が人気があるそうです」
さいでっか。
「うち棺桶なんか用意してないけど、ふくろに詰め込んでもいいのかな……」
「それだと、教会に渡すとき、うっかりパーツを取り出し忘れたりしそうですね」
エリスがフフっと笑う。うわー、ありそうだ。
「あとからアイテム出そうとしたら、干涸らびた腕とか出てきたりね」
「それでサミエルなんて『記念にとっておく』って言い出すんですよ」
「やーめれー。なんの記念だよ〜w」
しっかし僕らも不謹慎な話をしてるよなぁ。まあエリスも笑ってくれたし、少しは気が
軽くなったかな。
あとは脱出をどうするかだけど……。
「勇者様」
不意に彼女が動く気配がした。やわらかい重さが僕の全身に被さってくる。
首に回される細い腕。耳元でささやく、優しい声。
「私は、いいんですよ……?」
エ、エリス!? びっくりして混乱しかかった僕に、彼女はちょっと笑った。
「落ち着いてください、勇者様。あなたは頭のいい人ですから、本当はずいぶん前から、
決断されていたのではないですか?」
この状況で、どうするのがベストなのか――。
「それでいいんです。冒険には、よくあることですもの」
………………頭の芯が、すうっと冷えていくのが自分でわかった。
「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」
気がつくと、僕は彼女にこう言い渡していた。
エリスはどこかほっとしたような、諦めたような、そんな笑顔でコクリとうなずいた。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
「もちろん」
即答した僕に、彼女は少し迷ってから、そっと唇を重ねた。
全面的な肯定を態度で示してくれたのだろう。本当に優しい子だなぁ、と思う。
そして僕はエリスと別れ、一人で通路を歩き出した。
まずは現在位置をはっきりさせよう。頭の中にピラミッドの地下室のマップを引っ張り
出し、落下した位置と逃げてきた方向を照らし合わせる。たぶん、このあたりは出口に近
い方の区画のはず。例の隠し階段もこの辺だ。
上に置いてきた二人だが、戦闘面はお任せのサミエルに、お堅い職業の割には機転の利
くロダムがついていればまず心配ない。事前の打合せ通りに他の宝箱をすべて無視し、地
図に従って進んでいれば、もう魔法の鍵を取って脱出してもいい頃だ。
『構うな、鍵を探せ』
あれは一応、そこまで計算した上での指示だ。
もう一つ。地下室に散らばっている死体をいろいろ観察しているが、さすがピラミッド
パワーが効いているのか、どれも意外と保存状態がいい。きれいに片付いている地上と違っ
て、地下には死体を食い荒らすようなモンスターもいないようだ。
以上より、結論はこうなる。
【さっさと脱出して、3人で彼女を「回収」しに戻った方が早い】
しばらく進んだところで、後ろからエリスの叫び声が聞こえた。助けを求めるものでは
なく「さっさとこっちに来なさいよ!」とか「やれるものならやってごらん!」なんて、
彼女らしくない威勢の良い啖呵を切っている。
そこかしこでざわめいていた魔物の気配が、そちらへと流れていくのを感じる。
僕はただ、敵との遭遇を避けることに専念しつつ、出口を目指して進む。
本当は、地下に落とされた瞬間にここまでのシナリオはできていた気がする。先刻の
「死」についての談義も、僕はきっと、彼女が自発的に囮役を引き受けるよう促していた
んだろう。……結局、僕は昔からなに一つ変わってないらしい。
◇
途中で何度かミイラに襲われたが、ここでも星降る腕輪が効力を発揮して助かった。
とはいえ、なんとか地上までたどり着いた時点でほとんど立っていられない状態で、僕
はその場に突っ伏したまま動けなくなった。
「勇者様! ご無事でしたか!」
その途端にロダムの声が聞こえた。いやはや、僕の計算も大したもんだね。
「エリスがまだ中にいるんだ。案内するから、急いで僕を回復してくれる?」
可能性は低いけど、まだ間に合うかもしれないし。
……が、サミエルとロダムはなにやら戸惑ってて、顔を見合わせたりしている。
ちょっと、そっちも疲れてるかもしれないけど、早くしないとエリスが可哀想だから。
「それともロダム、MPない? 薬草でもいいよ」
僕の方は使い切っちゃったけど、ロマリアで買い込んできたからそれは残ってるはずだ。
だが、彼らの道具袋に手を伸ばそうとしたところで、ロダムに止められた。
「お待ちください勇者様。もうよろしいですから」
「は? なに言ってるんだ、エリスがまだ中にいるんだよ?」
思わず声が荒くなる。年配の僧侶は、まるで諭すように穏やかに続ける。
「彼女は我々が迎えに行きます。こちらの地図に印をつけてくださればけっこうです」
「俺らの方は全然OKッスから。勇者様のお陰でホントにお客さん扱いで、あのあとまっ
たく敵も出なくて……」
「僕が案内した方が早いって言ってんの。いいからさっさと回復して!」
さらに言いつのる僕に、ロダムとサミエルはますます困ったような顔をする。
「では言い方を変えましょう。地下に置いてきたということは、彼女を助けに行くので
はなくて、遺体の回収に向かうということなんですよね?」
「そうだね。はっきり言ってしまえば」
「でしたらそこまで急ぐ必要もないでしょう。それに正直なところ、疲弊しているあな
たを連れて行くより、我々だけで向かう方が楽なんです」
あーなるほど。僕を連れて行くメリットとデメリットを考えると、デメリットの方が
大きいということか。戦闘じゃまだまだお荷物にしかならないもんなw
「了解。確かに二人に任せた方が効率的だね。いいよ、地図貸して」
差し出された地図に印をつける。回復呪文を受けてる間に、地下での注意点を簡単に
説明して、僕はすぐに二人を送り出した。
「さすが最年長、冷静で助かるね」
二人とも妙な顔で僕を見てたのは気になるけど、エリスの件はこれで片付くだろう。
預けられた『魔法の鍵』を見てみる。それは小さくて煤けてて、想像よりずっとみす
ぼらしいシロモノだった。伝説のアイテムといってもこんなもんなんだろうか。
さてと、みんなが戻ってくる前に、一応あの人にも報告しておこうか。心配してるか
もしれないし……っていうか、イヤミのひとつも言っておかないと気が済まない。
なーにが「リロードは早めに」だ、バカ勇者。
----------------- Rial-Side -----------------
家に戻ってみると、部屋の中は明かりもなく静まりかえっていた。
玄関にあった女物の靴が無くなっているから、どうやらヤツの母親はでかけたらしい。
もう夜も8時を回っているんだが、こんな遅くにどこに行ったんだろうか。
そういや俺も連絡すら入れてなかったな。放任主義という情報は正しいようだ。
タツミの自室に入る。テレビは出かける前に消していたから、ここも暗かった。
明かりはつけずに、ベッドが寄せてある壁側の窓にカーテンをひく。窓に背を向けてベッ
ドに腰掛けると、ちょうど正面にテレビが来る。
手元にあったリモコンで――どうにも気が向かなかったが――スイッチを入れた。
黒光りする鏡でしかなかったモニターが、命を吹き返したように光を放つ。
が、思ったほどの光量でもない。画面の向こうも夜らしい。
「やっぱピラミッドか……」
砂漠の真ん中にぽつんと配置されている△の前に、勇者が一人でたたずんでいた。
あいつ仲間はどうしたんだ。まさか一人旅ってことはないよな。今までろくに連絡を取っ
てないから、まるっきり状況がわからん。
今なら携帯も繋がるだろう。向こうが電源を切ってなければだが――。
プルルルルルル! プルルルルルル!
かけようとした途端、向こうからコールがきてちょっとビビった。
「……よう」
『やほーアルス! 今どこ?』
なんだ、いきなりテンション高いな。
「お前の部屋だ。画面で見てるが、まさか本当にピラミッドまで来てるとはな」
『ふっふっふ、早いだろ。ダテに4周してませんから』
「鍵はもう手に入ったのか?」
『まあね。取ってきたのは僕じゃないんだけど、その辺の報告しとこうかと思ってさー』
奇妙に軽いノリでしゃべるヤツは、そのまま『実はねー』と続けた。
『ごめんアルス! 君の元カノ、見殺しにして逃げて来ちゃってさ。今サミエルとロダム
が回収しに……って、そうそう、この三人が仲間なんだけど知ってる?』
「ああ、1回目の冒険の最終パーティーだった連中だ」
『え、そうなの? 僕はそんな名前のキャラ作ってないんだけどな』
そのあたりのズレは俺にもよくわからないが。
それよりお前――その声。
『なんだっけ。そうだエリスちゃん。いやホントごめん、助けたかったのは山々だったん
だけどさ。力及ばずというか、ぶっちゃけそこらの高校生には荷が重いっていうかw』
「……タツミ」
『だいたいピラミッド最悪だよ、なにあの罠。ありえないって。本当にここはドラクエか
と小一時間問い詰めたい! でもスクエニ本社に問い合わせても意味ないしねー』
「タツミ、落ち着け」
『っていうかアルスが一番ひどいって。こっちは必死だってのに、なにふざけて……』
「タツミ!」
『……………』
遮られて、急に機嫌が悪くなったみたいに黙り込む。
参ったな。相手の心情がわかりすぎるだけに、対処に困るというか。
「とりあえず、ちょっと上見てみ。その様子じゃ気づいてないだろ」
普通は気がつかない方がおかしいってもんだが、俺もあの時は顔を上げる気力もなくて、
しばらくわかんなかったからな。
『は? 上ぇ? なんでさ』
「いいから、騙されたと思って」
『上ってなにが――』
次の瞬間、携帯の向こうで、はっと息を呑むのが聞こえた。
『…………すごい……星が、降ってる……!?』
「そこな、世界的な流星群の観測地帯なんだそうだ。俺も初めて見たときは、言葉をなく
したよ」
今でも鮮明に思い出せる。
遮る物のない砂漠の空いっぱいに広がる星の海と、そこから雨のように降ってくる大量
の流れ星と。信じられないくらいきれいで、思わずぽかーんと見上げてたっけ。
「でさ、先にカミングアウトしちまうとな。俺、最初の時そこでかなり泣いた」
『え、泣いた……?』
タツミがびっくりしたみたいに聞き返してくる。
「泣いた泣いたw だってピラミッドなんて暗いし死体だらけだし、マジこえーじゃん」
1周目はまだ冒険の進め方もよくわからなくて、序盤の難関のピラミッドでは当然のよ
うに全滅寸前になって。
古ぼけた小さな鍵を握りしめて、たった一人、命からがら逃げ出して。
「もうやってられっか!って叫んで上見たら、そんなのが一面だもんなぁ。なんか急に切
なくなって、ずいぶん長いこと一人でわんわん泣いてた」
『そんなこと、あったんだ』
「だからさ、お前も我慢すんな。――エリスが死んだのは、お前のせいじゃない」
しばらく返事はなかった。
待っていると、やがて少しかすれた声が、途切れ途切れに漏れてきた。
『……でも、僕のミスだし』
しゃくりあげそうなのを必死にこらえている感じだ。
『こうなること、わかってたのに……僕は、仲間より鍵を優先して』
「まあ指揮官なんだから、目的を優先するのは当然だな」
『でも……女の子を見捨てて、逃げ出しただけで……』
「戦場で男も女も関係ねえよ。その方がいいと判断したことなんだろ?」
『だけど……こんな……僕……勇者なのに……!』
「相手は天下の魔王様だぜ? キレイゴトだけじゃ戦えねっつーの」
『……でも………うぅ……うわぁぁぁぁぁああああ!!!』
はいはい、それでいいんです。
リーダー張ってるからには、仲間の前じゃなかなか見せられないが。一人になったとき
くらい素直に泣けるようにしとかねえと、この先保たねえぞ。これも冒険のコツだぜ。
ふと、あいつの言葉がよぎる。
(プレイヤーに同情は禁物ですよ)
しかしなぁ。後輩クンが昔の俺と同じところで悩んでたら、つい励ましたくなるのが人
情ってもので。
いや、偽善もいいとこだってのも、わかってるけどさ……。
俺は画面から目を離して、そのままベッドに寝ころんだ。
横になったまま、カーテンの端をつまんで隙間から空を眺めてみる。こっちは地上の光
が強すぎて、ただ灰がかった闇がよどんでいるだけだ。
あの星空も、俺が捨ててきた物のひとつなんだろうな。
堰が切れたように泣きじゃくるタツミの声を聞きながら、俺はそんなことを考えていた。
----------------- Game-Side Another -----------------
「いや〜、あんなつらそうな顔してんのに、自分でわかってないんだもんなぁ」
地下へ続く狭い階段を下りながら、サミエルは深々と溜息をついた。
「本当はかなりムリしてるんスかね?」
「なんというか……あの子は頭が良すぎるんでしょうな。冷静な考えが先行してしまって、
感情が置き去りにされてしまうというのか」
ここ数日の付き合いではあったが、ロダムも時折、同じ不安を抱いていた。
モンスターとの戦闘でも、「血はダメなんだよねぇw」などとヘラヘラ笑っていたが、
その目の奥に押さえつけられている恐怖は本物だった。
だが、それを表に出したところで意味がないと、理性が先に判断したのだろう。握り込
んだ手が小刻みに震えていたことも、はやり気づいていないようだった。
今回も、せめて一人にしてあげようと地上に残してきたが、あの少年は一人になったと
ころでそのままのような気がする。なにか切っ掛けがあれば別かもしれないが――。
「えーと、本名なんて言いましたっけ? 珍しい名前でしたよね」
「タツミ=ミツハラですよ」
「だったっけ。呼んじゃいけないとなると、つい忘れるッスよ」
彼らを迎えにアリアハン城にやってきたその少年は、3人を別室に集めるなり、とんで
もないことを切り出した。
「この世界に、勇者アルスはもういません。僕はその人の代理としてここに遣わされた、
まったく別の世界の人間です」
いったいなんの話だ? そうロダムが思うと同時に、エリスが立ち上がった。
「ではあなたはアルス様ではないのですか? アルス様はどうなされたのですか!?」
「わかりません。しかし彼は『勇者』ですから、魔王が関わっている可能性は高い。真実
を知るには、やはり魔王を倒す以外に方法はないでしょうね」
全身から力が抜けたようにガクリと椅子に座り込むエリス。少年はあくまで冷静に、先
を続ける。
自力回避
しかし さるには きかなかった!
規制解除待ち
「ですので、あなた方は偽りの勇者を掲げて旅をすることになります。注意事項は二つ」
あとで教えるが、本名では呼ばないこと。アルスの名でも呼ばないこと。
「特にこだわるわけではありませんが、咄嗟の時に対応が遅れる可能性があります。対外
的にはアルスとして通してもらいますが、普段は肩書きで呼んでください」
「勇者様、ですか?」
エリスがぼんやりと問い返すと、少年はにっこり笑った。
「結構です。ところで、あなたはアルスの恋人だったそうですね? 僕をここに導いたル
ビス様が、あなただけは必ず仲間にしなさいと言っていました」
「え、私を……?」
「アルスには、なくてはならない存在なんだそうです。一緒に来ていただけますか?」
目に見えて元気になった彼女が、大きくうなずく。そこですかさず、彼はテーブルに3
枚の契約書を広げた。
「ではここにサインをお願いします。あなたがたはどうなされます?」
実に手際がいい。サミエルがおそるおそる手を挙げた。
「んで、その……あんたは、魔王を倒せるのか?」
お前は勇者たるに相応しい人物なのか。戦士の質問に対し、少年はやはり顔色ひとつ変
えずに、さらりと言ってのけたのだった。
「倒しますよ。――最短でね」
「俺はハッキリ言って、どっちでも良かったんスよね。オルテガさんに憧れて魔王退治に
出たいだけだったッスから」
言いながら戦士が剣を抜く。
新たな獲物を見つけたミイラたちがじりじりと寄ってきていた。
「でも、今は『ほっとけない』って感じッスかねぇ」
「私もですよ」
あの少年が何者かはわからない。だが彼は確かに、命懸けでこの世界を救おうとしてく
れている。そこにどんな事情があるにせよ。
子供たちにばかり、苦労させるわけにはいかない。
二人は全力で武器を振るいながら、仲間の少女の元へと急いだ。
本日はここまでです。
>>563はStage.6-3 [10] の間違いでした。
最後は携帯にメールで飛ばして書き込みました。
さるさんは厳しいなぁ。
乙であります!
なんと仲間達は勇者=タツミだって知ってたのか!
端から見たら戦闘は他の3人に押し付けてる風だったけど…
なるほど。納得してそれぞれ働いてるんだね。
今回は本編でアルスとタツミが久々に長めに絡んだけど、和んだって言うか
なんか二人の友情的なものを感じて泣けるでぇ〜。
あとエリス萌え。
乙でした!
エリスや仲間達の気持ちとか、アルスとの会話とか、タツミの抱えてるものとか、
なんか説明できないんだけどぐっとくる。頭よすぎるのも考えもんだな…。
ピラミッドは夕日のイメージが強かったけど、星降るつながりで来ましたか。
続きめちゃくちゃ気になります、頑張ってください!
俺はロダム燃え。
エリスさん、いいですね。
生き返れるとはいえ、できれば無事でいてほしいですね。
サミエルさんもロダムさんも、「いい奴」ですね。
ベストパーティーで、無事冒険の目的を達成できるといいですね。
しかし、現実サイドで暗躍するゲームサイド人・・・。
一波乱ありそうですね。
いやーめちゃめちゃ乙
かなりじっくりと読ませていただきました
個人的にいろんなスレでいろんなSSを読んでいるんだけど、
今は◆IFDQ/RcGKI氏のが一番楽しみ
4の人のようにじっくりと続けて欲しいです
○ラダトーム○
ラダトーム・・・・・・・・ここはもょもと達の祖先、アレフが竜王を倒し、ローラ姫と共に
旅立ったという縁の地でもある。
アレフが旅立ち、あれから150年・・・・・町は王国制度というのが廃止され、今は共和国になった国である。
俺の世界で言ったら大統領や総理大臣に当たるものだ。
但し不思議なルールがある。ラルス16世が亡くなった後、ラルスの血を継ぐローラ姫が
アレフと旅立ってしまったため、王家の血がラダトームから途絶えてしまった。
そこで当時の大臣や有権者達は国民の中から王を選び、3年を任期に継続または交代するという
システムを作り上げた。まぁ共和国なので誰でも国の代表者になれるチャンスがあるらしい。
もちろん前任者は国民投票によって継続するか退任するかを決めているみたいなのだが。
って何で俺がこんなこと言っているかというともょもと達が町に入ってしばらくしたら
人が集まってきたのだ。
何でも、もょもとがアレフにそっくりなので人々が集まり、俺達はラダトームの博物館に案内された。
そこにはアレフの使った武器、防具、道具なのが展示されているのだがレヴァティンに関しては
書物より全くなかった。
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」
この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。
竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。
サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」
根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。
>>576はあぼんしてくださいorz
タケ「(手がかりは無しか)」
もょ「(まいったな。)」
ムーン「ねえ、みんな。竜王の城に行かない?」
サマル「どうしたんだい?急に。」
ムーン「今は廃墟らしいけどもしかしたらすっごい財宝があるかもよ?」
リア「わあ!楽しみだね。早く行こうよ。」
ムーン「もょもとはどうする?」
もょ「えっ!?ああ‥いこうか。」
この時もょもとは嫌な予感でもしたのだろうか?とりあえず向かう事にした。
竜王の城‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
現在は城壁が崩れ、地下に下りる階段がむき出しで出ている。多少のモンスターがいるみたいだが
そんなに凶暴な奴はいなく、素通りすら出来る状態だ。
サマル「へぇ、結構古い建物なんだね。」
リア「ふふふ、あそこに寝ているネコさんかわいい〜」
ムーン「あれはサーベルウルフよ。寝ているときに起されたら襲い掛かるから気をつけてね。」
もょ「しかしおたからがまったくないぞ。」
ムーン「まーまー焦らないで。奥に行けばあるわよ。」
根拠が無い意見で納得がいかないのだがとりあえず進む事にした。
それにしても廃墟とは言え、進めば進むほど綺麗な雰囲気になっていっている。
誰かが最奥にいるんじゃないのだろうか?
タケ「(気がついたか?)」
もょ「(ああ。)」
タケ「(奥に誰かがおるって事や。まさか竜王か?)」
もょ「(それはないだろう。ごせんぞさまがたおしたはずだぞ。)」
タケ「(しかしムーンブルグやドラゴンの角みたいに邪悪な雰囲気は無いんだけどな。逆に引っかかるわ。)」
もょ「(わかった。タケのいういけんにもいちりがある。きをつけるよ。」
どーやら最下層についたみたいだ。
そこは地下とは言えない美しい場所だった。
例えると綺麗な庭園みたいな感じで心地よい場所だ。
しかもしっかり手入れがされてある。
リア「きれい・・・・・・」
ムーン「これは凄いわね。地下でこんな物が見れるなんて・・・・・・・・」
サマル「それにしてもどうやって作ったんだろう・・・・?」
感心していると誰かがやってきた。初老の人間だ。
老人「何か用かな?」
リア「あ、あの・・・」
ムーン「綺麗な場所だなって思いまして。」
老人「久々に人間が来たもんだからちょっと嬉しゅうてのぉ。ホッホッホ。」
サマル「人間じゃないの?」
老人「ワシ等は竜人族じゃ。見た目は人間と変わらんがの。」
もょ「う〜ん、なるほどなぁ・・・・」
このじーさんにこやかに話して来るんだがどーしても引っかかる・・・・・・・・・・
老人「ちなみに君達は何しに来たんじゃ?」
サマル「あ、ざいほ・・・・」
ムーンがとっさに口を塞いだ。
ムーン「竜王の城がどんなっているのか見学しに来たんです。
まさかこんなに綺麗な庭園があるとは思いませんでしたわ」
老人「なるほどなるほど・・・・・・・・・ってあの世に行く準備は出来ましたかの?」
リア「えっ!?」
じーさんが態度を変えた。
老人「ふん。忌々しいアレフの子孫共め!我が一族の積年の恨みを晴らしてくれる!!」
もょ「どういうことだ!」
老人「貴様はアレフにそっくりだ!ほっかむりをかぶった女はローラに似ている・・・・」
サマル「ま、まさか・・・・」
老人「ワシは竜人族最後の生き残りのギィン。貴様等に復讐するチャンスが訪れたのだ。嬉しいことは無いわ。」
リア「ど、どうしよう・・・・」
ムーン「バカ!逃げるわよ!」
ギィン「逃がすか!」
ギィンが紐みたいな物を引っ張ると壁に囲まれた・・・・・・逃げられない!
ギィン「生を掴みたかったらワシを殺すんだな!かかって来るがいい!そして絶望の底に落としてやる・・・」
もょもと&タケ
Lv.16
HP:112/112
MP: 2/ 2
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り
タケ専用 :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
レッドマン氏キター(゜∀゜)ーーー!!
お帰りなさいませ。具合は良くなりましたか?
待ってましたレッドマンさん!
久し振りの続編面白!
またいいところで終っちゃってるなぁ
竜王の城が名所扱いになってるのがワロ
レッドマンが久々の投下か………
( ;∀;)おかえり
レッドマン乙!そしてお帰り!!
竜王の曾孫敵なんだ!もょ達で相手になるのか…?
最近新人さんたちが頑張ってるけど、
レッドマン
タカハシ
暇つぶし この三人は数スレ前から続いてる書き手だから、最後まで応援してる。
総長はまた失踪しちゃったし(´・ω・`)
>>◆IFDQ/RcGKI氏
GJ!泣いた。
エリス萌え。そしてアルスや仲間達が格好良かった。
>>レッドマン氏
GJ!そしてお帰り!じいさんの変貌ぶりが笑えた。
確かに。真理奈(漢字間違ってたらスマソ)が恋しい。
保守
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。あ〜あ、前回は情けないトコ見せちゃったなぁ。
僕、物心ついた頃から人前で泣いたこと一度もなかったのに」
アルス「マジかよ! 俺もたいがい強情なガキだったが、そこまでひどくなかったぞ」
タツミ「ほっとけw 気を取り直して、サンクスコールいってみよー!」
タツミ「
>>571様、はい実は仲間3人、僕がタツミだというのは知っていました。
慣れない異世界生活の様々な面でサポートしてくれて、本当に助かってます」
アルス「
>>572様、ピラミッドは夕日もきれいだぜ。バラモス討伐後は安全度もあがって、
観光名所になってたからな。ちなみに中の罠は、実は外から切ることもできたりして」
タツミ「うう、アルスが最初から素直に教えてくれてればもっと楽に……まあ過ぎたことだけど。
でもほんと、
>>573様のおっしゃるとおり、すごくいい仲間です。
エリスは……やっぱり間に合わなかったんですが、蘇生後も笑って許してくれました」
アルス「
>>574様、良質なSSがいっぱいある中で一番だなんて、嬉しいこと言ってくれるぜ!
タツミなんて、こんなワケのわからん主人公なのにな」
タツミ「君も主人公の1人だろうが。
>>585様、GJありがとう!
良かったねアルス、格好良かったって。でもエリちゃん人気あるね〜?w」
アルス「別に? エリスが人気あるのはいいんじゃね? 俺はなんっっっにも思わないけどな」
タツミ「はいはいw」
アルス「なんだよ、なにか言いたいのか。え?」
タツミ「なーにーも。ほら、行数も押してるから、そろそろ始めないと」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part1- 】
リアルサイド
Prev
>>558-569 ----------------- Rial-Side -----------------
ヴヴヴヴヴ.......! ヴヴヴヴヴ.......!
頭のすぐ横で妙な音がしている。まくらを通して細かい振動が伝わってきて、ほっぺた
がくすぐったい。
「んあ……なんら?」
それがマナーモードにした携帯が震えているんだと、俺はようやく気づいた。そう言え
ば昨日、夜間は着信音が出ないように設定しておけとタツミに言われて、そうしたような
覚えがある。
その後の記憶は曖昧だ。俺はいつの間にか寝てしまったらしい。
「うに……もしもし、タツミかぁ……?」
『ちょっとタツミはあんたでしょ? なに寝ぼけてんのよ』
「おぁああ!!??」
予想外に高いキーで返答されて、寝ぼけ半分だった俺の脳ミソはいっきに覚醒した。
「エ、エリス?」
『……ちょっと、エリスって誰?』
違った、まだ寝ぼけてんな。えーとこの子は、
「片岡百合子?」
『そうですよ。ってかなんでフルネームで呼ぶかな』
苗字と名前のどっちで呼ぶかまだ決めかねてるからだが。
『まあいいや、おはよう。まったくいつまで寝てるんですか、天才クン』
ユリコが呆れたように言う。俺、そんなに寝過ごしたんだろうか。
「――ってまだ朝の5時じゃねえか!!」
時計を見て俺は思わず怒鳴った。電話の向こうでユリコが笑う。
『あはは、起こしてごめんね。とりあえず、出かける支度して降りてきてよ』
「出かけるだぁ? こんな早くにどこ行くんだ」
『いくら平日でも、このくらいの時間に出ないとイイ場所取られちゃうもん』
なにを言われてるんだかサッパリな俺に、彼女はやはりわからない単語を、実に嬉しそ
うに投げてよこした。
『この季節はやっぱりお花見でしょ! ね?』
オハナミってなんだ。しかもこいつ「降りてこい」って言わなかったか?
「もしかして下にいるのか」
『玄関の前で待ってる。お弁当も敷物も用意してるから手ぶらでいいよ』
おk、レジャー関連のお誘いですね。
どうすっかな、そういうのは嫌いじゃないが、ゲームの方も気になるし。でも俺の分の
メシまで作って来てるんじゃ、断るのも悪いしな……。
『もしかして今日に限ってなにか用事がある、とか?』
急に心配そうな声を出すユリコに、俺は「いやいや」と否定した。
「そうじゃないんだ、少し待っててくれ。すぐ折り返す」
俺はいったん携帯を切って、タツミを呼び出した。
『はいはい、どしたのアルス?』
タツミの方はワンコールですぐに繋がった。お互いかけても繋がらないってパターンが
多かったから、なんか新鮮だ。
「おう。どうだ、あれから落ち着いたか?」
『え……? そうか、そっちは朝になったばっかりだもんね。おとといはどーも』
相方が苦笑する。言われて俺も時差のことを思い出した。ピラミッドの夜のことは、向
こうではもう2日前の話になるのか。
俺が寝る前に消したらしいテレビの電源を入れると、優雅な音楽とともに海原を進む白
い帆船が映った。全体がオレンジ色がかっているから、あっちは夕方のようだ。
「もう船を手に入れたのか。……ってポルトガとバハラタを2日で往復したのか!?」
とんでもない強行スケジュールだぞ。またこのバカは――。
俺がムッとすると、気配が伝わったのかタツミは慌てて説明した。
『無理はしてないよ。僕の場合、システム外のショートカットが使えるから。魔法の鍵を
餌に、ロマリア国王からバハラタ座標の入ったキメラの翼をもらって、直行できたんだ』
そこで、なにか思い出したのか深〜いため息をつく。
『でもそのせいでひずみが出てるのか、なんかストーリーがおかしいんだよねぇ』
「なにがあったんだ」
『……バハラタに黒胡椒をもらいに行ったら、タニアさんの代わりに僕がさらわれた』
「お前がさらわれたんかよ!」
うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシナリオの斜め上を行くんだ。
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
「いやその前に、なぜ勇者がカンダタに拉致られたのか聞きたいんだが――」
『そんなことはどうでもいいんだけど。で、どうしたの?』
ループしやがった。あまり話したくないことらしい。
まあ俺も人を待たせてるし、そのうち番外で語ってもらおう。
前回は場合が場合だったから、けっきょくユリコのことも、奨学金やあの不良少年エー
ジとの関係についても、なにも聞けなかったんだよなぁ。
その辺の確認も、また後回しだな。
「今ユリコから、オハナミに行こうって誘われててさ」
俺が本題を切り出すと、タツミは急に静かになった。1秒、2秒、3秒。
『あっそう。ユリコがね。うん、いいんじゃない?』
おや〜、ちょっと引っかかるような言い方だな。しかも普通に名前で呼んでるしぃw
「本・当・にいいのか?」
『なんだよその言い方。いいよ、せっかく現実にいるんだから、楽しんできなよ』
タッちゃんやーさしー。ではお言葉に甘えさせていただきます。
「んじゃ行ってくるわ。お前もなんかあったらすぐ電話しろよ」
『了解。あ! その前に僕のステータスだけ教えてくれる?』
そうだった、お互いにそのことを思い出した瞬間に向こうのメンバーが戻って来て、そ
れも後回しになったのだ。
「よし、ステータスウィンドウ出せ」
『えーと? コマンドを思い浮かべればいいのかな』
ピッという軽い音とともに、画面上に黒いウィンドウが展開される。
――その瞬間、俺は言葉を失った。
『どうしたの』
「あー……詳細ステータスの方を出せるか?」
『やってみる。コマンド>つよさ>ゆうしゃ、かな』
あいつの言葉に合わせて、画面上で自動的にカーソルが動き、勇者タツミの詳細ステー
タスが表示される。
なんだこりゃ。こんなステータスってありか?
『ねえどうしたの。そっちからピッピッて聞こえるから、表示は出てるんでしょ?』
タツミの不安そうな声に、俺はなるべく冷静に事実を告げた。
「実はその――レベルと経験値が『??』でな、最大HPは64だからまあ普通なんだが、
最大MPが999なんだよ。素早さ170は……星降る腕輪の効果か。それでも高い方だな。
賢さが245ってのはどうなんだろう」
『…………なにそのバランスの悪さ。レベル??ってどゆこと。MP999ってなに』
「俺にもわからん。現在のMPは975なんだが、お前、今日なにか呪文使った?」
『まだひとつも使えないよ、呪文の練習なんてしてるヒマないし』
「あ、しかも減った! 今974になったぞ、オイ」
『はぁ? 僕はなにも……あ』
俺も同時に気がついた。
もしかしなくても、携帯、だよな?
『えーー!!?? 番外の “携帯の電池がMP” って、あれ冗談じゃなかったの?』
「それに宿屋とかに泊まったあとで最大MPに戻ってないってことは、減った分は増えな
いってことじゃないのか」
『僕のMPはプリペイド式かよ! しかも呪文と電話代の合算請求?』
「ということになるな」
『っもう信じらんない! 電話代もったいないから切るね! 行ってらっしゃい!』
「あ、待てって……」
ツー ツー
切られてしまった。しっかし、今後はうかつに長電話できないのか。
うちのプレイヤーはどうしてこう、本来のシステムの斜め上を行くんだ。
プルルルルルル! プルルルルルル!
途端に電話がかかってきた。表示は「YURIKO」になっている。
『遅いからかけたんだけど……やっぱりダメかな?』
こっちはこっちで最初の元気はドコへやら、ふみ〜んと沈んだ声になってるし。
「大丈夫だ。今行くからもう少し待ってろ」
『良かった! 待ってる』
ありゃま、ずいぶん嬉しそうだなぁ。
そういやこの子、タツミに惚れてるんだっけ。
「あのさぁ、やっぱりユリコって呼んでいいか?」
ちょっと聞いてみる。ぶっちゃけ「カタオカ」って言いにくいし。それに、タツミ君も
本当はそう呼びたいみたいですしね♪
『え? ……うん、あんたがそう言うなら、いいよ』
ふはは、もじもじしてるのが見ないでもわかるww かわいーじゃんw
エリスもそういうとこあったなぁ、なんてニヤニヤしつつ、俺は簡単に身支度を整えた。
出がけに別室をそっと覗くと、いつの間に帰ってきていたのか、ヤツの母親が眠ってい
た。こんな時間に起こすのも悪いから、声はかけないでおこう。
リビングのテーブルにメモを残して、玄関を出る。
というわけで、現実生活2日目は友達とレジャーでGO!
昨日はいろいろあったが、俺の異世界ライフ、まあまあ順調じゃねえ?
……向こうはワヤクチャみたいだが、まあ頑張ってくれたまえタツミ君。
◇
アルス「はいこれ、宿スレ定番のステータス。だけどお前の場合、意味あるのかねぇ?」
タツミ「知らないよ! なんだよこれぇ……」
【タツミ】
レベル:??
HP:58/64
MP:974/999(プリペイド式)
装備:E聖なるナイフ、E旅人の服、E星降る腕輪
力:12
すばやさ:170
体力:19
賢さ:255
運の良さ:118
攻撃力:22
守備力:18
Ex:??
本日はここまでです。
ここからしばらくはリアルサイドとなります。
タツミ君のステータスが出るのは、たぶん最初で最後な気がします。
しかもさっそく間違えました。賢さは本文でアルスが言ってる「245」が正しいです。
255が最大値だから、まだあと10上がる余地が…
IFDQ/RcGKIさんのSSが楽しみでならない今日この頃。
ちょww
二人とも本編で「番外」とか言ってるしw
そういえばリアルサイドはまだまだ明かされてない事多いねぇ。
ともあれGJ!
MPプリペイド式ってwww
今後のこと考えると笑い事じゃないんだが、祈りの指輪や魔法の聖水も効かないのかな。
更新ktkr
乙でございます。
エリスさん、無事復活よかった。
すごい呪文が使えるのかとおもったら、まさかこんな罠があろうとは・・・。
リアルサイド、楽しくすすむのかと思えば、なにやら、前回の不良集団や、暗躍するゲームサイド人や波乱の予感。
600 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/07/24(火) 15:28:15 ID:4amYMSqk0
4の人の続編をお願いしますm(_ _"m)
俺もその後のストーリーに興味はあるけど、
きれいに完結したものを無理に続けて欲しくはないなぁ。
これで、仮に続編がなんかの理由で完結しなかったら、
あの神作品がまるごと「未完」扱いになっちまうだろ。
それよか新作で心機一転、頑張ってもらいたいと思う。
おっと、これ以上は避難所かな。
保守
アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
アルス「しかし劇中は春休みですので、俺は今日はお花見に行ってたりします」
タツミ「さくらいろ〜のじだいをわすれなーい〜♪ さて、本日のサンクスコール!」
タツミ「
>>595様、まだ上がる余地はあるみたいですが、いまいちピンと来ませんね。
あと10賢くなるって、どういう感覚なんだろう?」
アルス「
>>596様、そんなこと言われちゃったらいろいろサービスするしか!
夏休みスペシャルでも企画するかぁ」
タツミ「
>>597様、リアルサイドの謎って、アルスが変にカッコつけて僕にちゃんと聞かないから、
おざなりになってるってだけなんですけどね」
アルス「お前がなんか大変そうだったから遠慮してやったんだろうがっ。
>>598様、こんなプリペイド勇者、心配する必要ないから思い切り笑ってやってくれ」
タツミ「MP節約しないとなぁ。
>>599様、エリちゃんを気にかけていただいてありがとうございます。
僕のフリをしているアルスには、ぜひ大人しくしてて欲しいんですが……無理でしょうね。はぁ」
アルス・タツミ『それでは、本編スタートです!』
【Stage.7 SAKURA MEMORY -Part2- 】
リアルサイド 続編
Prev
>>588-593 ----------------- Rial-Side -----------------
朝日に照らされた街並みが、のんびりと後方に過ぎていく。窓のすぐ外を等間隔でふっ
飛んでいく柱を見るに、けっこうなスピードなんだろうな――とは思うんだが、初めて乗
る電車は意外と退屈だった。
風を肌で感じられるラーミアの方が「移動してる」って気はするな……。
悪い癖がつきかけてる。
俺は軽く頭を振って、黄金の鳥の幻影を追い出した。ことあるごとに向こうと比較して
懐かしがってたら、この先やっていけない。
「なんか三津原も眠そうだな。俺も倒れそうだよ……ふぁ〜」
向かいの席で、戸田和弘が大きくあくびをした。
この長身のスポーツ少年も、片岡百合子に朝早くから駆り出されたとのこと。マンショ
ンの下で再会した俺たちは、「では出発ー!」と腕を振り上げるユリコを挟んで、お互い
に苦笑したのだった。
朝から元気いっぱいな彼女を少し「ウゼえw」と思わないでもなかったんだが、パステ
ルブルーのワンピースでキメちゃってるユリコちゃんは、ちょっとホンキでかわいいので
俺は許す。カズヒロもそうなんだろう。男って単純よねぇ。
「しかし、あの不良どもをよく振り切れたな」
俺が聞くと、カズヒロはまたあくびをした。
「あいつら頭悪いからなぁ。こういう言い方はなんだが、所詮、三流高校の連中っつうか」
そういやあの三人が着てた服、タツミが学校で着てるのとは違ってたっけ。こっちの学
生って、他校の生徒とはほとんど交流が無いものと認識していたが。なんか複雑な背景が
ありそうだ。面倒は避けたいんだがねー。
カズヒロがちょんと足の先で俺をつついた。
「前にも言ったけど、困ってたら遠慮しないで頼れよ? うちの親父ってほら、市会議員
とかやってっから、あいつらもあんまり俺には手ぇ出してこねえしさ」
「ん、わかった」
カズヒロの親父さんはエライ人なのか。覚えとこ。
「お待ちどう。はいどうぞ」
そこにユリコが戻ってきた。俺とカズヒロに冷たい缶をくれて、となりに座る。
「探したんだけど、豆乳は売ってなかった。お茶で良かった?」
「そうか。いやいいんだ」
牛乳が体質的に飲めないだけで好き嫌いはねえから、独特の渋みがある「緑茶」も平気。
「お腹空いたでしょう。待ってね」
ユリコは足下に置いてあったバスケットを膝に抱え上げて、中から半透明の箱を取り出
した。サンドイッチとサラダが、彩り良く収まっている。
「これ朝の分だから、全部食べちゃっていいからね」
「おー、うまそうじゃん」
「いただきまーす」
あ、うめえ。昨日は結局ロクなモン食ってねえからな。旅してると丸一日食えないなん
てザラだったから苦痛じゃないが、さすがに腹減ってたから幸せだ。
「しっかし片岡も上手になったよなー」
すぐに二つ目のサンドイッチに手を伸ばしながら、カズヒロが思い出したように笑う。
「俺と片岡、中1ん時に同じクラスだったんだけどさ、家庭科の実習で片岡が作ったマド
レーヌ食って、ハライタ起こしたやつがいたんだぜ」
「マジで?w」
「戸田! もうあんた食べるなッ」
サッとカズヒロの手からサンドイッチを奪い取るユリコ。すかさず新しいのを取ろうと
した彼から、俺も素早く箱ごと遠ざける。
「だっ、お前ら、なにその連携プレー」
「自分は女の子とご飯の味方っす」
「可哀想に、儚い友情ねぇ」
一拍おいて、三人で同時に吹き出した。
◇
それから俺たちは二駅目の「サクラ坂台」ってところで降りた。謎の単語「オハナミ」
が出がけに引いた辞書で「花見/桜の花をながめ、遊び楽しむこと。」だとわかったので、
目的通りの地名だ。
駅の正面から真っ直ぐゆるい坂が続いていて、その先に、所々淡いピンクに染まった山
があった。
「小学校の何年生だったか、遠足で来たっきりだな」
カズヒロが懐かしそうに山を見遣る。ユリコが相づちを打った。
「あたしもそうだよ。タツミはその前に引っ越したから、来るの初めてだよね」
らしいな。ヤツの生まれはこの街だが、幼い頃に遠くに引っ越して、今の高校に入るた
めにまた戻って来たと記憶している。ユリコもヤツの幼なじみではあるが、せいぜいここ
一年の付き合いなのだ。ありもしない「想い出話」に付き合う必要がないから、その辺は
気楽でいい。
「このあたりでいいか。三津原、そっち引っ張って」
20分くらい坂をのぼったところで、カズヒロが敷物を取り出した。俺が手伝ってる間に、
ユリコが風で飛ばないように重石(オモシ)を持ってきて四隅に置いた。
「貴重品だけ持てば大丈夫だろ。この上に広場あったよな。フリスビー持ってきた」
「確かあそこから海も見えたよね」
荷物を置いてさっそく歩き出した二人の後に、俺もついて行く。
それにしても、どの木も満開で見事なものだ。
アリアハン城にもジパングから輸入された木が一本だけあって、エリスと夜中にこっそ
り忍び込んで見に行ったことがあった。月夜の桜もきれいだったな。懐かしい。
「タツミ行ったよー!」
薄い青空をオレンジの円盤が飛んでくる。背面キャッチ! おーっと歓声を上げる二人
に(かなり力を抜いて)投げ返してやる。
いいねいいねー。こういう普通のガキっぽい遊び方、憧れだったんだよ。旅の間はどこ
行ってもモンスターの影がちらついて、のんびりできなかったし。
「あ、ごめーん!」
「こーら、どこ投げてんだw」
その方向は、先が急な坂になっていて、そこを超えると取りに行くのが面倒になる。本
気を出せば取れないことはないけど、ここは追いつけないのが普通かな。
見当違いな方向に飛んでいったフリスビーは、たまたまそこにいた男の手に収まった。
坂の手前の大きな桜の木に寄りかかって、男はフリスビーをしげしげと眺めている。
黒いサングラスに、上下は黒いレザー、かな? そんなのを着ている。風雅な桜の下に、
全体的にタイトなその格好はあんまり似合わない気がした。
「すんませーん」
投げ返してくれ、の意味で声をかけたが、男は逆に俺に手招きした。まさか「ちゃんと
ここに来て謝れ」ってんじゃねえだろうな。
「すいません。わざとじゃないよ」
言いながら近づいていくと、男はサングラスを外して胸のポケットに納めた。
「ここ、いい場所だな」
男の背景には、住宅街が見下ろせて、その遠くにうっすらと青い水平線が見える。
「あっちの二人は友達か?」
こっちを見て、彼はフッと笑顔を浮かべた。まだ若い、20代前半くらいか。
「ですけど……あの、それ返してくれませんか」
「ああ――」
男は円盤を持った手をスッと後ろに引いた。そして……思いっきり海の方に投げた。
唖然とした俺だったが、男がまだニヤニヤしているのを見て、ついカッときた。
「なにすんだよ!」
そいつの胸ぐらをつかみかけた、その瞬間。
俺は逆に腕を取られ、坂に投げ出された。
◇
「とっとっとととととと、とあー!」
前転で着地成功! こんくらいの奇襲で無様に転がる勇者様じゃないぜ。
って、奇襲されたのか俺?
ザン! と土を蹴る音がする。反射的に横に避けると、一瞬前まで俺がいた場所に、男
のごっついブーツがめり込んでいた。
「てめ……!」
「あんなくだらないお遊びより、こっちの方が楽しいだろう?」
男は笑顔のまま、太ももに縛り付けていたホルダーから、刃渡り30センチはあるブレー
ドナイフを取り出した。
マジかよ。
「タツミ、大丈夫か!?」
カズヒロとユリコが坂の上で叫んだ。降りてこようとする二人を手で制し、
「来るな!」
怒鳴り返してから、俺は身を翻した。
場所を変える。そろそろ増えてきた桜の見物人や、あいつらを巻き込まないためもある
が、なにより俺が思い切り動けねえ。
桜並木が続く歩道をそれて林道に飛び込むと、男も後を追ってきた。山林の奥まで行け
ば、簡単には第三者の介入もないだろう。
「足も速いな。防御力はどうかな?」
再び地を蹴る音がする。柔らかい腐葉土の上で音がするって、どんだけの脚力だよ。
林道のサイドには、散策者が迷い込まないようにか黄色のロープが渡されている。俺は
ロープを通している鉄製の杭を一本引き抜いて、振り向き様、横に払った。
金属がぶつかる甲高い音が響き渡る。受けた力を手前に逃して、邪魔なロープを相手の
ナイフで切り落とす(いや、わざとやってくれたか)。
バックステップで距離を取った。
「あっちのヤツ……だよな? 降りかかるメラはギガデインで返すのが俺の流儀だぜ」
「でもこっちじゃ呪文が使えないだろう」
「まあな。名前と理由を述べる気はあるか」
一応尋ねてみたが、相手は肩をすくめるだけだ。
あーそう、じゃあもう聞かんよ。――言い訳もな。
「ったく、せっかくの『祝・青春』を3レスで台無しにしやがって、覚悟しろよ」
「覚悟なんてマジメに構えることでもないだろ。これは……お遊びだ」
左肩をやや下げて、右肘をしぼるように引いてナイフを構える。
俺と同じ型?
そう認識したと同時に、相手は一気に間合いを詰めてきた。
本日はここまでです。
次はホントに夏休みスペシャルでもやろうかな、と。
あれ、でもお盆過ぎたら夏休み終わってますか?
それまでにあがらないかも……ダメじゃんw
乙でした!
着実にホームシックにかかりつつあるアルス少年16歳にニヤニヤしてたら
また波乱の展開キター-(゜∀゜)!!
同じ型ですか、勇者対勇者とかだと燃えますね。
女勇者も出してほしいです
名前はアリスとかで
おおお、更新されてるッ!!!
乙です。
黒服ビンテージ男、怖ぇぇぇ・・・。
いくら勇者VS勇者でも武器がないのはきついですね。アルスがんがれーーー。
リアルサイドでは死んだら生き返らないぞー。
(と無責任に応援をする)
エリス→エリちゃんですか。仲良くなって親しみがこもってる感じでいいですよね。
惚れたな?(w
GJです!
まさかの勇者対決!!
続きが楽しみで夜も眠れません。
ゆりこ萌え。
ゆりこたんもかわいいけど、やっぱり俺はエリちゃん萌えだな。
>>613はビンテージとボンテージ(皮革)を間違えてると思うんだ…
アルスとタツミだけじゃなく、書き手もレベル上がってる感じだなぁ。
マターリとシリアスのバランスが絶妙。
>>振りかかるメラはギガデインで返す
向こう(ゲームサイド)のことわざ?w
>>617 ギガデイン使えるのは勇者だけだもの
アルスが自分で考えた格言じゃね?
小説途中でほっぽってた
ずいぶんスレ進んでんだな
前回までのあらすじ
>>36>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108 巨大都市、ロマリアはそんな言葉がよくにあうのである。
体調もよくなりカラッカラによく晴れている。買い物日和といえるのではないだろうか。
ぼくらの装備品はもう寿命をこえてぼろぼろになっている。
所持金といえば一万ほどあるのだから、贅沢はできないにしても、一通り装備品をそろえるには十分ある。
サイモンはきのう久々に酒を飲んだせいか、まだ酒がぬけてないみたいだった。
男戦士サイモン「おう、ヒーロー、今日は天地がグルグルまわってんなぁ…」
ヒーロー…ぼくのことらしい。
エリーとナナは一日休んで実に晴れやかな表情をしている。
女武闘家エリー「武闘家といえば、つめの武器なのよ? 素手じゃさまようヨロイにまた苦戦するわよ、…もう」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「防具を新調するだけでだいぶ変わると思うよ」
女武闘家エリー「そうかしら……、うん、そうね…。次の街はあるわよね、きっと」
女僧侶ナナ「新しいバンテージにかえましょうエリー、ね」
女武闘家エリー「切らしてたかな?あ、もうない…あぶなかった」
そんなこんなで楽しい久々の装備新調も終わり、ぶらぶらと買い物をしていた。
ある占い師がぼくらを呼び止めた。
謎の占い師「運命に逆らいし、選ばれしもの達…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「? どなたですか?」
男戦士サイモン「ふうん、なんかみえるのかい?」
謎の占い師「おまえたちはこの旅の末にかけがいのないものを失うぞ。バラモス…いや…。もっと巨大な悪によって…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「旅をやめろと? そういうんですか」
謎の占い師「…この道具を持っておくがいい、運命をかえられるかもしれん」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「これはなんですか?」
謎の占い師「虹のペンダント」
風が吹き荒れるといつのまにか、占い師は消えてしまった。
>>622 GJ!かけがえのないものを失う…気になるな。
前回までのあらすじ
>>39>>40>>41>>96>>98>>107>>108>>622 ロマリアの占い師…。虹のペンダント……。
これがなんだというのだろう。
男戦士サイモン「すてちまえよ。そんなもん」
女僧侶ナナ「いえ、不思議な波長の魔法力が凝縮されていますよ…強い力と意志力を感じます」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「じゃあ、もっておくよ」
道具ぶくろに入れておくことにした。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ん?」
二人の兵士がぼくらの前に駆け足できた。
女武闘家エリー「なんなの。あんたたちは!?」
ロマリア城の兵士A「あっ、あなたたちが、勇者御一行でありますか!」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「…はい、そうですが」
男戦士サイモン「なんなんだい」
ロマリア城の兵士B「わが国王があなたたちにご相談したいことがあるとの事です! とにかく城に来て下さい、お願いします! 緊急をようします!!」
さっさといってしまった。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「何でこの国に来てるって知っているんだろう?」
女武闘家エリー「あなたね…、ルイーダの酒場で登録した冒険者カード持ってるでしょう。それは本人の位置と健康状態を世界中に知らしてるのよ」
なんという恐ろしいカードだ。
魔王にも知られてたりして、………そんなわけないか。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「なんかあったら、助けにきてくれたりするのかな」
男戦士サイモン「戦闘でたおれたりしたら、体がカードに収納されるんだ。全滅したら最寄りの教会にルーラで飛んでいくんだぜ」
ハイテクだ。
なくさないようにしよう。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「よし。それじゃあ買い物は終わったし、城に行こう」
男戦士サイモン「たしかこの国の王サマは遊び人で有名だったぜぇ。…めんどくさいことにならなきゃいいがなぁ」
次スレの容量になりましたので立てたいと思います。
テンプレを出す前に告知をさせてください。
10スレ目を迎えるにあたり、「10スレを記念して合作を作ろう」企画が進行しています。
誰でも参加可能で、現在話し合いが以下の掲示板にて進行しています。
10スレ記念共同作品 制作進行専用掲示板
ttp://bb2.atbb.jp/ifdqstory/index.php 提案や書いてみたい方など募集中ですのでぜひ参加をお待ちしています。
スレのテンプレですが、お絵かき掲示板とファイルアップローダーも追加しました。
次レスへ書きます。
−前編−
まだまだボケる年ではない。
そう思っていたけれど、その考えは改めなくてはならないかもしれないわ。
自分がどこにいるのか、まったく思い出せないのだから。
確かに私は旅行へ出ようとしていた。しかし、飛行機に乗り遅れた。
だからここは旅行先ではない……はずよね。
部屋の中はどこかの地味なホテルの一室のようだった。
窓の外を見ると、どこか外国の田舎の風景のようね。
はっきり言ってまったく知らない場所だわ。つじつまが合わない。
私は家に帰って寝たはずだわ。これは夢なのかしら?
それとも飛行機に乗り遅れたのが夢で本当は旅行に来ていたのかしらね。
「あら、目を覚めましたのね!」
部屋に若い娘が入って来てそう言った。
外国人のようにも見えるけど日本語が達者ね。
このホテルの従業員だろう。もうチェックアウトの時間なのかしら?
そういえばここの宿泊料金はどうなっているのかしら。
ここが旅行先ならお金はツアー会社に払い込んである。だが、そうでないとしたら大変だ。
私は自分の手持ちはいくらくらいあったかしらと考えていた。
ホテル従業員の話では、私はこの町の外に倒れていたらしい。
それを助けてここまで運んでくれたという。お金のことは心配しなくていいとまで言ってくれた。
この世知辛い世の中、奇特な人もいたものだわ。
しかし、どうして倒れていたのか思い出せない。きっとどこかで頭を打ったに違いない。
記憶があいまいなこと以外自覚症状はないが早めに病院に行ったほうがいいわね。
その前に、自分がどこにいるのか確かめなくては。私は従業員に尋ねた。
「すみません。最寄の警察署はどこかしら?」
私の言葉に従業員はきょとんとした顔をしている。
よもやここは日本国内ではないのかしら。私は従業員にここはどこなのかと尋ねた。
「ここはリリザの町ですよ。」
リリザ。聞いたこともない地名だわ。私は町の中を歩いてみることにした。
私のいたところはホテルというより宿屋とでも呼んだほうが似合いそうだった。
分からないことだらけだが、私なりに考えてみた。
そして、ひとつの結論に達した。
ここは映画村のようなところなんだわ。
外国風の町並みはドラマや映画を撮るためのものでしょうね。
リリザというのもひょっとしたら『リリ座』という劇団の名前なのかもしれない。
気がつくと私は町の外れに来ていた。
町から出れば都会の町並みが見られると思ったがそうでもなかった。
なんだかすべてが非現実的な気がするわ。
そんなことを考えていたせいか、もっと非現実的なものを見てしまった。
落ち武者だ。
武将というよりは西洋の兵士のような服装だが落ち武者という言葉がぴったり。
その落ち武者はゆっくり私の方に近づくと持っていた槍を構えた。
冗談はやめてほしい。これじゃホラー映画じゃないのよ。
落ち武者はその槍を振り下ろした。
落ち武者の槍は私の後ろにいた大きなねずみに刺さっていた。
こんなねずみ見たことない。保護動物になっていたりしないのかしら。
むやみに珍しい動物を殺したら怒られるだけではすまないかもしれないわ。
そんなことを考えていると落ち武者が叫んだ。
「ムーンブルクの城が陥落した! こんなところにいては危険だぞ!」
どうも映画村という私の考えも間違いだったようだわ。
この落ち武者の人の怪我も特殊メイクには見えない。
そもそも私以外に観光客がいないというのもおかしな話だったのだ。
それよりも落ち武者の人の怪我を治療しなくてはならない。
私は彼を無理やりリリザの宿屋に連れて行くことにした。
宿屋の人に迷惑をかけてしまうが我慢してもらおう。
「私は一刻も早くローレシアのお城に……」
などと言っているが、そんなことを気にしている場合ではないわ。
私と宿屋の娘の必死の看病の甲斐もあり、落ち武者君はずいぶん回復した。
しかし、彼はまるで喜んでいなかった。
「私は命に代えてもローレシアの城に行かなければならなかったのに……」
などと泣きそうな顔で言っている。
「私だけが生き残ってしまった……」
この青年は自分の仕事に命をかけているようだわ。
「あなたは仕事熱心なのね。それなら仕事を全うしなくちゃいけないわね。」
男ってみんなこういう考え方をするのかしら。
「いまからでもローレなんとかに行きましょう。それがあなたの仕事なんでしょ?」
女の私にはどうにも理解できないことだ。
「なぜあなたが遅れたのか、私が一緒に言って説明するわ」
理解はできないが、励ますことはできる。
こんなところで腐っているより何かしているほうがいい。
元落ち武者の彼は一緒に来なくていいと言ってきた。
「その代わりサマルトリアへ行ってくれませんか。」
などと頼んできくる。私はよくわからないまま承諾した。
「それで、そこへ行くバスか電車はどこに行けば乗れるのかしら?」
……まさか歩いていくことになろうとは。
サマルトリアというのはお城で王様までいるという。ここは日本じゃなかったのね。
とにもかくにも王様にお近づきになれるのはチャンスだわ。
何とか王様に取り計らって日本に帰らなくては。
旅行に行っていることになっている私を誰も探してはくれまい。
私は『せいすい』と呼ばれるものを振りまきながら歩いていた。
こうするとモンスターが近寄ってこないという。
何でもこの辺りでは害獣や害虫をそう呼ぶらしい。
半日ほどかけてサマルトリアのお城らしいところに着いた。
後はあの落ち武者の兵士から預かった手紙を渡せばいい。
さすがに疲れたわ。日ごろからもう少し運動をしておけばよかった。
日本に帰ったら何か運動を始めようと思った。でも、結局しないのよね。
城下町ではよくない噂が広まっていた。それは噂ではなく事実なのだが。
どうやらムーンブルクのお城のほうから煙が上がっているのが見えたらしい。
城に何があったか、わざわざ私が伝えに来ることもなかったかもしれない。
私が煙が見えたなら消防に通報しなさいよと言ったら変な目で見られた。
さすがに単なる旅行者がこんなに簡単に王様に会えるとは思わなかった。
ムーンブルクからの使者だと思われているのかしら。
「せいすい」を使えるなら大丈夫だろうって、どんな基準なのよ。
この国はセキュリティーなんて気にならないほど平和なのかしらね。
私は王様に手紙を渡した。これで私の役目は終わりだわ。
王様は手紙の内容、ムーンブルク陥落に驚いていたようだが覚悟していたようでもあった。
きっとこの国はムーンブルクの同盟国で戦いに協力しなければならないのでしょうね。
平和そうなこの国が戦争に巻き込まれていくのかしら。
なんだかやるせない気持ちになったが私にはどうしようもない。
私は自分のことで手一杯なのよ。私は自国へ帰れるように王様に願い出てみた。
しかし、王様は日本を知らなかった。日本の知名度は思っていたより低いのかもしれない。
「お主は違う世界から来たのかも知れぬな。伝説の勇者ロトも異世界より来たと言う。」
この国では伝説や神話が事実とされているのかしら。
「もしそうならば、わが願いを聞いてくれ。息子の旅を手助けしてほしいのじゃ。」
王様の話によれば王家の人間は伝説の勇者であるロトの子孫なのだという。
そして世界に危機が訪れたとき悪を討つことになっているそうだ。
なんとも荒唐無稽な話だ。この人は本気でそんなことを言っているのかしら。
王様は息子を紹介してきた。……まだ子供じゃないの。
私は幼い王子様に旅に出ることに不安はないか聞いてみた。
「伝説の勇者ロトも言っています。『勇者だって暗いのは怖い』って。」
どんなご先祖様よ。とにかく怖いことは怖いらしいわね。さらに王子様は続ける。
「この国を作ったご先祖様の言葉です。『ドッキリだと思えば何でもできる』と。」
……もうちょっとマシな言葉は残せなかったのかしらね。
私は断ろうと思ったが無駄だった。拒否すると『そんな酷い』と訴えかけてくる。
有無を言わせぬ強制力。きっとこれが勇者ロトの力なのね。
結局彼がローレシアの王子と合流するまで旅のお供をすることになった。
……私とこの王子様が2人でいたら周りからどんな関係だと思われるだろうか。
親子というにはちょっと無理があるわよね。
「よろしくお願いします。ええと……」
「私の名前はメグミよ。よろしくね。」
「お世話になりますメグミおばさん。あ、おばさんって呼ぶのは失礼かなぁ。」
そんなことを本人に聞いてどうするのよ。
確かにこのちょっとずれている王子様を一人旅に出すのは不安だわね……
後編に続く
新作(?)キター。
メグミお姉さま、乙でございます。
落ち武者さんも助かってよかった。
それにしても、メグミさんはいくつくらいなんだろう・・。
本来の勇者+落ち武者さん+メグミさんでにぎやかになる予感。
ちなみに、このスレは容量制限で、もうすぐ書きこめなくなるようです。
次スレは>
>>629です。
まだ26KBあるからいけないこともない希ガス
自分も埋め用短編を書いているんですが、ちょっと長くなってきました。
1行40文字折り返しで12レスがビッチリくらいだと、足りなくなりますかね……。
>>637 投稿してみて足りなければ続きは新スレに書けばいいじゃない
タツミ「なんか今回は『埋め用』の番外編やれって」
アルス「あれ、俺はなんも台本もらってないぞ?」
タツミ「そうなの? 僕の方はさっき渡されたよ。まだ中身は見てないけど」
アルス「お前だけってことは、タツミの知られざる過去とか、そんなんじゃねえのか」
タツミ「そういえば今回はリアルサイドで撮影って言われたな。ひとまず指定スタジオに移動するね」
アルス「おう、行ってらっしゃーい」
アルス「でもなんで俺の出番ないんだろ?」
……バタバタバタ!!
???「きゃーん☆ 遅刻しちゃったお〜。タツミくんと一緒に行く予定だったのにぃ。
すみませんそこのお兄さん、りあるさいどのすたじおって、ドコですかぁ?」
アルス「へ? ああ、えーと……あっち、だけど」
???「りょーかーい! 急がなくっちゃネ♪」
……バタバタバタ!!
アルス「い――いまの格好って……もしや……?」
◇
タツミ「すみません遅くなりましたー。着替え室ってどこですか?
ってガクラン? 僕、中学も高校もブレザーのはずなんですけど……え、パラレル……?
いや実は、どうせすぐ頭に入っちゃうから、まだ台本読んでなくて―――(パラララ.....)
ちょ………………………………はい?…………………………………………なにコレ」
【第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん!】
そりゃ確かに現実は厳しいものですし、「誰かゲームに出てくるようなスゴイ人物が、
都合良く味方になってくれないかなぁ」なんて気持ちもあったことは認めますよ。
でもあくまでゲームはゲームのままであるからこそ、心から楽しめるものだと僕は思う
わけです。よく「異世界の英雄に会ってみたい」なんてアホな夢語るヤツがいますけど、
別に僕はそういうのには、あまり興味はなかったんです。
なかったん……ですけども!
「やほー、タ・ツ・ミ・く・ん♪ もう朝なんだよ☆ 起きないと遅刻しちゃうよーん♪」
クリンクリンの可愛らしい声とともに、「彼女」が僕の布団をひっぱろうとします。
ですが僕は16歳(花のシックスティーン)の健全な男の子でありまして、いかに普段は
品行方正で通っている高校生でも、眠って起きたあとの身体に生じるごく自然な生理的現
象にまで意識的に紳士な態度を貫くことは困難なのであります。
「ダメダメダメー! アリスちゃん! 今はお布団引っ張っちゃらめぇぇえ!!」
僕は必死で(そりゃもう必死で)抵抗したのですが、なにせLv.99で「ちから」もMAX
値255を余裕で誇っているアリスちゃんは、いともあっさり僕の秘密のベールを剥ぎ取っ
てしまったのでした。
「っもう、タツミくんのお寝坊さん☆ ほらほら、丸くなってないで起きた起きた〜♪」
「ダメだよやめてよアリスちゃん! ああ、首根っこをつかまないで!」
握力も255(Kg)なんじゃないかというアリスちゃんが、布団の上でうずくまり、前の方
(主に中心部)を懸命に隠している僕の後ろ首をむんずとつかんで、無理やり引き起こそ
うとします。
「ぐ、ごが…や゛め゛…ア゛リ゛ズちゃ゛………!」
その瞬間、僕の延髄が「ベキェベキャベキャ」と潰れていくのが自分の耳にしっかり聞
こえました。鼻と口からダラダラ血を流しながらガクリとのけぞった僕に、アリスちゃん
は「きゃあ、大変ッ」とまるで「いやーんクッキー焦がしちゃったぁッ」みたいなノリで
悲鳴を上げました。
リアルタイム遭遇ktkr
「ゴメンねぇ、タツミくん! ベ・ホ・マ〜☆」
ティロリロリロ♪
おなじみの呪文とともにどこで鳴っているのか謎な効果音が響き渡り、プロレスラーが
デモンストレーションで潰した空缶のようにひしゃげていた僕の延髄が、みるみる元に戻
ります。
「おっはよ〜だよン、タツミくん♪ サワヤカなお目覚めだネ☆」
「全然サワヤカじゃないよアリスちゃん! 今キレイな川の向こうに死んだおじいちゃん
が見えたよ!」
ある意味サワヤカかもしれないと思いつつ抗議する僕でしたが、アリスちゃんはニコニ
コしたまま、空中にいくつか浮き上がった小さなフキダシには「?」が一個ずつ書いてあ
るだけです。
「と、に、か、く、ボクのスペシャ〜ルな朝ごはんも用意できて……」
ふとアリスちゃんが言葉を途切れさせました。大きな愛らしい瞳がパチパチと2、3度
まばたいて、僕の腹部からやや下の方に視線を向けて固まっています。
あ。
「い……いやぁぁぁあ!!!」
アリスちゃんは今度こそ掛け値なしの悲鳴をあげて、背中の「王者の剣」をジャキンと
抜き放ちぃぃぃぃぃぃ!!!
「ぃぃぃ落ち着いてアリスちゃん! 朝なんだから仕方なqあwせdrfgtyありす!!!」
ズゴバァ! と王者の剣が僕の胴体を真一文字に薙いでいきます。僕の上半身と下半身
はそれぞれの方向にキリモミ状態で吹っ飛んでいき、押し入れのフスマに頭から突っ込ん
だ僕は再びキレイな川のほとりに立っていました。
ティロリロリロ♪
彼女の回復呪文で、ズルズルズルっと下半身がくっつきます。僕はぜぇはぁ言いながら
フスマから這い出しました。
「またやっちゃったぁ。ゴメンねタツミくん。テヘ☆」
茶目っ気たっぷりに舌を出すアリスちゃん。
「もう、アリスちゃん王者の剣はやめてって……」
そこで僕は、なにかブニュっとした生モノめいた感触を足の裏に感じました。見ると、
つい先日デパートの精肉コーナーの隅で見かけたカタマリの、もう少し血色のいいモノが
転がっているではありませんか。
「ぎゃあぁぁあ!!! アリスちゃん、なんかしまい忘れてるよぉ!!」
途端にゴプッと吐血した僕は、三たびキレイな川のほとりへといざなわれたのでした。
◇
僕こと三津原辰巳は、南龍探高校1年生。ちょっとIQが200近かったりジャニーズ系の
カッコカワイイ容姿だったりスポーツもそれなりにーみたいなところはありますが、ごく
普通の男の子です。
ところが昨日、なにかのきっかけでフッと昔のゲームがやりたくなり、幼少にハマって
いたドラクエ3を始めたときでした。なんと「アリス」と名付けていた最高レベルの女勇
者さんが、突如まばゆい光とともにテレビの画面から飛び出してきたのです!
「ピコピコピコ〜ン☆ ボクはアリス♪ キミを守るためにゲームの世界からやって来た、
正・真・正・銘の、勇者ちゃんだヨーン!」
そのとき僕は、具現化した彼女の強烈なボディータックルをまともに胸に受け、折れた
肋骨が肺に刺さってのたうち回っていたので、彼女の口上の半分も聞いてあげることがで
きませんでした。
「ああ! ごめんなさい! ベホマ〜☆」
ティロリロリロ♪
彼女が指を空中でクルリンと回すと、僕の胸腔で肋骨が所定の位置に戻っていきます。
「な、な、なんだぁぁああ!!!???」
僕は循環器系が正常に働き出したと同時に手足をめちゃくちゃに動かし、とにかく彼女
から距離を置こうと部屋の隅まで後退しました。
目の前には、それはもう愛くるしい笑顔の少女が僕を見つめて小首をかしげています。
ショートの黒髪には青い宝石が埋め込まれたサークレット。首周りから背中を紫のマン
トが覆い、その下には水色のチューブトップスと同色のミニスカート、足は黄色のスパッ
ツで、土足ブッちぎりの革ブーツといういでたちです。
ロリロリキュートな表情に似合わず、しっかりばっちり発育しているカラダ。しかも彼
女がズイっとさらに近づいてきたので、トップスの上からタプンと揺れる渓谷がしっかり
見おろせてしまいます。なんという絶景かな。僕はゴクリと唾を飲み込みました。
「実はキミは、大魔王ちゃんに狙われてしまったんだよネ」
キャロリン♪とサウンドエフェクトがつきそうな可愛い声で彼女が言います。
「大魔王ってゾーマ? なんでゾーマが僕を……」
「でもノープロブレム!なんだヨ♪」
僕の質問はサクッと無視してガッツポーズをキメるアリスちゃん。
「ボクが絶対にキミを守ってあ・げ・る・か・ら☆」
もはや宿スレの定義など完璧にドコ吹くです。
それが僕とアリスちゃんとの、スイートでブラッディなファーストメモリーでした。
◇
朝っぱらから三度も瀕死にされての起床でしたが、遅刻もなにも今日は日曜日です。
アリスちゃんは週七日サイクルの生活を知らなかったので、いつも通り学校があると思っ
たみたいでした。
「なぁんだ、今日はお休みの日だったんだネ! ……じゃあボクもお休みなさーい☆」
「ええ? 寝ちゃうのアリスちゃん!?」
彼女はモゾモゾと僕の布団に潜り込むと(昨日は押し入れで寝たのですが戻るのが面倒
になったようです)、「スピルル〜…ムニャ」と幸せそうな寝息を立て始めました。
僕は深々とため息をつきました。僕は二度寝ができないタイプです(人生の大きな損失
だと自分でも思います)。とりあえず顔を洗って朝ご飯を食べることにしました。
リビングに行くと、アリスちゃんが言っていたスペシャ〜ルな朝ご飯が用意されていま
した。平たくて四角くて真っ黒な物体がお皿の上でおとなしく僕を待っています。デイン
系呪文で一撃された食パンのようです。
僕はこの炭水化物のなれの果てをリビングの隅にある「燃えるゴミ」に放り込みました。
ふたたび燃やされる運命の食パン君が少々哀れな気もしましたが、僕は七輪ではないので
ほぼ練炭と化した彼を食べてあげることはできません。
他になにかないかと冷蔵庫をあさってみましたが、見事なまでに空っぽでした。昨晩ま
ではいろいろ入っていたはずですが、どうやらアリスちゃんが朝ご飯の支度中につまみ食
いしてしまったようです。
「仕方ない……コンビニでなんか買ってくるか」
僕はそう独りごちていったん自室に戻り、眠っているアリスちゃんを起こさないように
そーっと着替えをしました。
それからなにか書き置きしていこうかとメモ用紙とペンを探しかけたのですが、アリス
ちゃんは起きる様子はないし、こんなワケのわからない女の子がイキナリ同居を申し出て
も「好きにしてちょうだい」の一言で片付ける、放任主義を通り越して無責任きわまりな
い僕の保護者に気を遣う必要もないので、やめました。
「行ってきまーす」
小さな声で言ってマンションを出ます。
マンションの裏にまわり、住宅街を200メートルほど歩くと青い看板のコンビニがあり
ます。僕はそこに向かいました。
と、いつも横切っている小さな児童公園に入ったときです。敷地のちょうど真ん中あた
りに造られている砂場から、突然ボシュ!と光の柱が吹き上がりました。
「なんだ……?」
昨日から不可思議なことが起こりっぱなしでしたので、僕もさすがにこの程度でパニッ
クになったりはしません。
「メラゾーマなんですぅぅ!!!」
いきなり高いキーの声が響いた瞬間、光の柱から巨大な火球が打ち出されました!
「うわわわわウッキャ〜〜!!!!!!!」
僕は0.2秒で大パニックに陥り、どうしていいかわからなくてその場にガバッと伏せま
した。火の玉は僕の上を素通りし、道路に停めてあった自動車にあたり、車は無惨に爆発
炎上してしまいます。
「あなたがタツミくんですかぁ?」
顔を上げると、光の柱がシュウっと細くなって消えていき、中から小柄な少女が一人現
れました。
「き、君は……!?」
大変です、この女の子もアリスちゃんに負けず劣らずのプリティフェイスです!
ゆるいカールがかかっている焦げ茶色の髪。ピンクの襟付きマント姿で、緑のゆったり
したローブを着込んでいます。服の上からでもその至福のふっくら感がわかる胸の真ん中
に、大きなペンダントが揺れています。
「あなたがタツミくんで、間違いないですかぁ?」
僕が言葉につまっていると、彼女は急に瞳をウルウルと潤ませました。今にも泣き出し
そうです。僕は慌てて立ち上がり、彼女に近づいてそのフワフワした髪の毛をポンと軽く
叩きました。
「大丈夫だよ、僕がタツミで間違ってないよ」
ニッコリ笑いかけます。もちろん斜めから差し込んでいる朝日に白い歯がキラーンと輝
くよう、角度を計算するのを忘れません。
彼女はフワンと笑顔になりました。見ているこちらまで幸せにな気持ちになるような、
心が洗われる笑顔です。
「良かったですぅ。違う人にメラゾーマしてたら、困っちゃうところでしたぁ」
困るどころの騒ぎじゃNEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!
彼女のあまりの可愛らしさに、僕は背後でモクモクと黒煙を吹き上げている自動車の存
在をすっかり忘れていました。
しかも今の話だと、彼女は明確に「僕」に対して攻撃を仕掛けてきたワケです。
「もしかして、キミは魔王の仲間なのかい!?」
僕が聞くと、彼女はエッヘンと咳払いして両手を腰にあて、プルンと胸を張りました。
「そうですぅ。私は大魔王様の右腕にして上の世界の支配者、魔王バラモス――」
「マヌーサかゴルァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
僕のコンピュータ並の頭脳は一瞬ですべてを悟りました。
騙されました騙されました騙しやがったなコノヤロウ。僕の怒りは大空に駆け上る竜神
の如く、1ターンでスーパーハイテンションです!
「貴様カバかぁ! あのモツ好きのカバ親父なのかぁああ!」
えり首をつかまれてガックンガックン揺すられ、またもや涙目になった相手は必死に首
を振って否定しました。
「ちち違いますぅ! 私は娘のバラミですぅ!」
「へ?」
バラミと名乗った少女は、僕が手を放すとその場にペタンと座り込んでしまいました。
「ふえ〜ん、タツミくんヒドイですぅぅ」
「あらら、ゴメンねバラミちゃん。ほんとゴメン」
なんだ娘さんだったのかぁ。こりゃ勘違い。
「いやでも! あの物体からどうしてこんな美少女が!?」
どう遺伝子改良をほどこしても、あのカバから美少女を造るのは不可能です(断言)。
仮に100%母親似とすると、この子のお母さんもかなりの美女ということになります。カ
バにはあまりに贅沢です、宇宙の摂理が許しても僕が許しません。
「お父様をカバカバ言わないでくださいですぅ。お父様はちょっと個性的なだけですぅ」
「ああ、悪かったよ、個性的なカバなんだね?」
「違いますぅぅ!」
バラミちゃんはよろよろ立ち上がると、僕を見上げて必死に訴えます。
「大好きなお父様だったのに……アリスちゃんに倒されちゃったんですぅ。でもタツミく
んならお父様を助けられるって聞いたんですぅ!」
「僕が?」
どうも事情があるようです。
◇
バラミちゃんの話によると、アリスちゃんたち勇者一行に倒された魔王は、しかし完全
に死んでしまうわけでなく、世界のどこかに封じられるだけなのだそうです。
そしてその封印を解く鍵を持っているのが、この僕、三津原辰巳だというのでした。
「でもねバラミちゃん。悪いけど僕、そんな方法さっぱりわからないよ」
困惑する僕に、バラミちゃんはますます瞳をウルウルさせます。
「そ、そんなぁ……どうしてイジワルするですかぁ? 教えてくださいですぅ!」
「いやイジワルじゃなくて、本当に知らないんだよ」
女の子に泣いて頼まれれば、僕だってなんとかしてあげたいと思います。ちょっと殺さ
れかけた過去なんて、もうどうでも良いことです。
しかし一介の高校生である僕が、異世界の魔王の復活方法を知るはずがありません。
「ふぇ……ふぇえええん……」
うつむいて華奢な肩を震わせるバラミちゃんに、僕も胸がキューンとなりました。どう
したらいいんでしょう。
「こうなったら……」
バラミちゃんが低い声で呟きました。彼女の全身からゾワワワっとドス黒いオーラが立
ちのぼり、僕は威圧感に我知らず後ずさりしました。
クワッと顔を上げたバラミちゃん、目が真っ赤に光っています。まさに魔王の娘!
「拷問してでも吐かしてやりますぅ!!!」
「だから知らないんだってぇ!」
「い・い・か・ら、素直に吐くですぅぅう!!!」
バラミちゃんが両手を高く掲げます。高圧のエネルギーが凝縮され、宙に巨大な火球が
膨らんでいきます。
「待って! 待ってよバラミちゃん! ってかなんで誰も来ないんだよ!!??」
これだけ大騒ぎしているのに、公園には他に誰一人やってきません。
「ここは私の結界が張ってあるから、外からは普通の景色に見えるんですぅ!」
意外と用意周到です。このままでは殺されてしまう! 僕は焦りましたが、星の誕生を
思わせる発動寸前の極大呪文を前に、身体がすくんでしまいました。
もうダメだ……!
「ラ・イ・デ・イ・ンーーーーーー!!!!!!!!!!」
高らかな詠唱と同時に、鋭い落雷がバラミちゃんを頭上の火球ごと貫きました!
ピッシャァァァァアアアアン!!!
すさまじい電力が僕の身体をもバリバリバリっと焼いていきます。ついで破裂した火球
の爆風に吹き飛ばされ、幼稚園児が好きそうな可愛いワンちゃんの背もたれがついたシー
ソーに背中から突っ込みました。
ズギャリ、と形容しがたい音がしました。仰向けに倒れている僕の腹から、熱で半分溶
けかかってバリイドドッグのようになったワンちゃんが飛び出ています。
「大丈夫タツミくん! 無事!!??」
珍しく焦ったような声を出してアリスちゃんが駆け寄ってきます。
「き、君が…来るまでは……ね(ガクッ)」
「バラミちゃんってば、なんてヒドイことを……」
アリスちゃんが僕を抱き起こしました(バリイドドッグがズボっと抜けました)。
「エイッ、ベホマ〜☆」
ティロリロリロ♪
「あ、待っておじいちゃん……!」
意識を失いかけていた僕は、ハッと目を開けました。
とっても優しかったおじいちゃん。大好きだったおじいちゃん。おじいちゃんは別れ際
に暖かい微笑みを浮かべ、「頑張るんだよ辰巳」と力強く励ましてくれました。
「うう……おじいちゃん」
この状況でなにをどう頑張れば良いのでしょうか。
「タツミくんをこんなヒドイ目に遭わせて〜。謝ってよバラミちゃん!」
「やったのはアリスちゃんですぅ!」
僕の前で、彼女たちはバチバチと火花を散らしてにらみ合っています。火花はまだライ
デインの残滓が残っているだけかもしれませんが、真剣な表情はどちらもホンモノです。
二人の美少女が僕を巡って争うという夢のようなシチュエーションですが、なぜかちっ
とも嬉しくありません。
バラミちゃんは体中あちこち焦げています。髪の毛のカールもチリチリです。
やがてバラミちゃんはアリスちゃんから視線をはずして僕の方を見ました。ちょっとだ
け悲しそうな顔をしてから、またキッとアリスちゃんをにらみます。
「仕方ないですぅ。今日は大人しく引き上げますぅ。でも次は必ず!」
バサッとマントの前を閉じると、バラミちゃんの足下にパァ!と光の魔法陣が浮かび上
がりました。彼女が地面に飲み込まれるように消えていきます。
同時に、空から「パリン」とガラスが割れるような音が聞こえました。それまで気付か
なかったことですが、完全にシャットアウトされていた「世界のざわめき」のようなもの
が、ふっと戻ってきたのを感じました。
バラミちゃんが張っていた結界が解けたのでしょう。
「……何度でも来ていいヨ。そのたびにボクが、返り討ちにしてあげるから」
バラミちゃんが消えていったあたりを見つめ、アリスちゃんがグッと拳を握ります。そ
の横顔は、可愛いけれど、どこか凛々しくて、僕はつい見とれてしまいました。
やはりアリスちゃんは魔王を討ち倒した、伝説の勇者なんでしょう――。
「お、お、俺の車が〜!!!」
「きゃあ、なにこの公園!!?? え、火事? 火事でもあったの?」
しまったぁ! バラミちゃんの結界が解けて、一般ピープルの方々が公園の異変に気付
いたようです。
「に、逃げるよアリスちゃん」
「うに〜? なんで?」
「いいから!」
僕はアリスちゃんの手を引いて、騒ぎのどさくさに紛れてマンションに逃げ帰りました。
◇
この日の事件について、あとから警察に事情聴取をされたりはしましたが、さいわい僕
たちが原因だと気付いた人はいなかったようでした。
しかし、アリスちゃんが来てたった二日目でこのざまです。
この先のことを考えると、僕は暗澹たる気持ちになりました。
ああ、僕はこれからどうなるのでしょうか。
第一話 斬殺勇者だよ!アリスちゃん! (完)
タツミ「誰かぁ! 誰か止めてくださいぃ! 誰かこの作者を止めてくださいぃぃ!!」
アルス「世界の中心で愛を叫ぶ以上に切なく叫んでるな」
タツミ「冗談じゃないってば! アリスちゃん可愛いけど、これじゃ命がいくつあっても足りないって!」
アルス「こらこらユリコちゃんに言いつけるぞ〜w」
アリス「やほ〜☆ タツミくぅん♪」
タツミ「出たぁぁああ!」
アリス「ダメだよタツミくん、いつ大魔王ちゃんの手下が襲ってくるかわかんないんだから☆
ちゃんとボクのそばにいないと危険なんだヨ! 死んじゃうかもしれないんだヨ!」
タツミ「君のそばがこの世で一番デンジャーだよ! 僕すでにありえないくらい死にかけたよ!」
アルス「うはww楽しそうでいーねーwww 俺もパラレル番外一本持ちたいなぁ」
タツミ「もう他人事だと思ってぇ〜!」
アリス「以上! 埋め用番外編『斬殺勇者アリスちゃん!』♪
ここでいったん終了でぇすッ。次回も、お・た・の・し・み・に・ネ☆!」
※本作品は知る人ぞ知る、某ライトノベル「撲殺○使ド○ロちゃん」のパロディです。
※この物語はパラレルです。本編に登場する人物、 団体名とは一切関係ありません。
※次回は、次の次のスレが立ったときに、次のスレの埋め用に書く予定でおります。
それでは次スレも盛り上がって参りましょう。
See You Again in Next Sled!!
| \
| ('A`) タ・ツ・ミ・ク・ン♪
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ モウアサナンダヨ☆/
| !? \
| (゚A゚) グ、ゴガ…
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ ヤ゛メ゛…/
| ・・・? \
| (;'A`) ゴメンネェ、タツミクン!
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ ベ・ホ・マ〜☆/
アリス(レベル99)ちゃん、いいですね。
しかし、何度も殺されそうになるのはなんとも(wwwww
でもやっぱりうらやましいかも。
埋めようか
そして 夜が明けた
パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン
,, -──- 、._
-"´ \
/ ヽ
/ ヽ わーい
| /\ /\ | どようびだお〜
l |
` 、 /// (__人__) ///.
,―――`ー 、_ /ー 、
l´ `'' ‐''´ `l
` ̄ ̄ ̄ヽ / ̄ ̄ ̄´
| |
i `/ ̄`l /
\ / ./
\__//
/ /
何を勘違いしているんだ?
まだ金曜日は終わってないぜ!
,, -──- 、._
-"´ \
/ ヽ
/ ヽ わーい
| /\ /\ | つきようびだお〜
l |
` 、 /// (__人__) ///.
,―――`ー 、_ /ー 、
l´ `'' ‐''´ `l
` ̄ ̄ ̄ヽ / ̄ ̄ ̄´
| |
i `/ ̄`l /
\ / ./
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パ〜ラ〜リ〜ラ〜ペッポンパ〜ン
- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、
/ \
/ ヽ
/ __ 、、 「l} ヽ
{_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、 ヽ 、
/ / /7/j/ /\ ヽ | 500ゲット!
/ /rイ / / ∠/! /\ | ! 次スレはいよいよ大台10スレ目!
| /l |/ /、 / , -ェ-レ'|/i/ヽ_ | / みんなで盛り上げていきましょう!
V i レイr、`/ イr、 } l/⌒j レ′
Vヘゞ' ゞ' _,) /_」
、"< "" r┬' \
ヽ、 ‐ /! | ト、|-、
` _--‐ ´ |i/ヽ| ヽ
rく__| | /ト、___ム_
,.ィ「!__] _ __〉〈 `丶、` - ゝ
rく iヘ | 入 ` ´ j > ` ̄ヽ、
/ | ヽヘ \ヘ // | /7、
、__,、___ / ヽ ヽヘ 〜iヽ/i | /7/|
< `ヽ /rァ ,、 \ V! l 十 i | j,7/ !
\, ---、 ト、 マ\゙ ,、 「^! i 十 i | / / |
〈 , - ┴、 | | ノ \ ,、 \ニ>、 i | レ' |
V , --f'′ L__! 」__ ヽ ,、 / 丁 ト、 i | | |
ヽ , -〈 |ーヘ | ,、 / | | \ | | \