心の底で別人であって欲しいと思っていた、だがその期待は今脆く崩れ去る。
目の前に居るのはレイドック王の実子であるバルザック。だが同時にレイドックの兵を幾人も惨殺した侵略者なのである。
その辛い現実をファルチェは受け入れるしかなかった。
バルザックも過去は捨てたのであろう、返答の躊躇の無さがそれを示していた。
バルザック「どうした?最後の質問は」
絶句しているファルチェにバルザックが問いかける。
我に戻ったファルチェ、冷静を取り繕い最後に問うた。
ファルチェ「ではこの度の侵略行為は魔界全体の意志か!それとも貴殿の個人的意志から来るものか!」
バルザック「・・・」
バルザックは答えなかった、その代わり天に向かい笑い声を上げた、何時果てることもない笑い声
ファルチェ「何がおかしい!」
バルザック「それを知ってどうするのだ、レイドックの剣士ファルチェよ」
ファルチェ「私は貴殿に敵の総大将としての大義を問うている!その笑いが返答かっ!」
バルザック「では教えてやろう、レイドック侵略は世界征服の目的に過ぎない。軍を動かしたのは魔界の意志だ、
最初の拠点をレイドックに選んだのは私の意志だ!」
ファルチェ「なっ・・・・魔族が世界を征服?そんな事が・・」
バルザック「全ては我が魔王様の覇業の為よ!」
ファルチェ「貴様人間であろうが!魔族の手先となり恥ずかしく無いのか!」
バルザック「質問は終わった。武器を構えろ剣士ファルチェよ、勇者ラミスよ。」
ニヤリと笑うバルザック、斧を構え上段に振り上げる、瞳が怪しき光を纏う、それは人間のものではなかった。
ラミス「こいつなんで俺の名前知ってんだ?」
ラミスが怪訝そうに呟く
更なる問いかけで食い下がろうとしたファルチェだが何もかも諦めたように言った
ファルチェ「10年前何があったのか、なぜ貴殿は今生きて我が国を攻めて来たのか私は聞かない。
レイドックを守る剣士として、貴様を魔王軍のバルザックとして、ここで迎え撃つだけだ!」
バルザック「そうか、二人同時にかかって来い」
ラミス「言われなくてもやってやるわ!」
ファルチェ「最後に軍を引き、司令官自ら剣で迎えてくれた事に礼を言うぞ!」
もうファルチェに迷いはなかった、蟠りは消えた、あとは1人の剣士として存分に戦うだけだ。
再びバルザックとラミス、そしてファルチェを加えた戦いが始まった
この戦が始まる少し前の天空界…
リャン「姫様。お待ち下さい。」
ユウカ「姫じゃないんだってえ!ユウカのパパもママも普通の人なんだから!」
リャン「ですが貴方様は天空の勇者。すなわち天界王の血を引き継いでおります。」
ユウカ「わかった!わかったからついて来ないで。」
リャン「ですが今日の稽古がまだ終わっておりませんし…」
ユウカ「もー!トイレ!」
リャン「またはしたない言葉を…済みましたらすぐに稽古室にいらして下さいね。」
ユウカ「やっと一人になれたぁ。作法やら舞術の稽古ばかり…私がしたいのは剣術の稽古なのに…」
ユウカは文句を言いながら天空城から抜け出た。辿り着いたのは雲の切れ目。落ちないようにと用心し遥か彼方に広がる地上を覗き込む。
この一ヶ月と言うもの、ユウカは毎日のように人間界への、仲間達への想いをはせていた。
ユウカ「ファルチェさん元気かな…ラミス…会いたいな。」
その後は決まって剣術をアバン師匠に習う流れになっていた。しかし今日はアバンが待っても来ない。
ユウカ「遅いなぁ。せんせーまた遅刻だよ…あれ!あの馬…確かエド(兄)?」
ユウカは見つけた知り合いを嬉しそうに追い掛けた。
のもつかの間、驚くべき光景を目にすることになる。
>>790エド兄「あのやろー」
エド兄はいらついた仕草で携帯を切る。ただならぬ空気にユウカが身を潜めていると再度携帯を手にするエド兄。
>>818相手はエド弟のようだ。だが話の途中で携帯を切り投げ捨てた。
エド兄「M・エド様に取り次げだ?バカ弟め…兄弟のよしみで助けてやろうと思ったがやめだ。前から気にいらなかったんだよ。」
ユウカ「???」
エド兄「誰もオレを認めようとしない…一ヶ月前の戦いもそう。ラミスは弟ばかりを頼りにして…オレの方が優れているのに!」
ユウカ(馬も色々大変なんだ…)
エド兄「皆にオレを認めさせてやる!唯一認めてくれた進化の秘法を使いし魔王様の元で!」
ユウカ「魔王?!」
エド兄「誰だ!…貴方は勇者ユウカ。どうしたんですこんな所で。リャンが心配しますよ。」
ユウカ「今の話…どういう事?魔王って?」
エド兄「…とぼけても無駄と言う事か。聞いていた通りオレは魔王様の元に行く。もうすぐこの天空界も戦場となる。貴方も早く逃げた方がいいですよ?」
ユウカ「今の話が本当なら…行かせる訳にはいかない!」
エド兄「勇者とはいえ丸腰の貴方にオレが止められるか?」
ユウカ「止めるぜ・・・・!!!!」
エド兄「無駄だぁ・・・・!!!」タタタタッタタタタタタタタタタ!!!!!
二人で走り続け!!!!!!!!!一瞬!!!!!ユウカが猛スピードで間合いを詰めた!!!
ユウカ「捉えた!!!!!!!!!!!!!!」
ユウカの右ストレートがエド兄に!!!!!!!!当たらない!!!!!!!
ユウカ「何!!!!!!!!!?????????????」
エド兄「フン!!!!!!!!」エド兄はパンチを受け流し蹴りをユウカに繰り出した!!!!
ユウカ「くっ!!!!!!!!!」ドスーーーーーーーーーーン!!!
ユウカ「なんなんだ今のは・・まるでやなぎを相手にしているみてえに攻撃を返されちまう!!!!!」
リャン「あれは・・烈蹴拳!!!」
ユウカ「烈蹴拳だあ・・?」
リャン「あらゆる武術を極めなければ学ぶ事を
許されないとされる烈蹴拳は、肉弾系格闘技の中では最強に位置している・・。」
おいおい、エド兄が簡単に裏切りかよ、大丈夫か?
バルザック「魔人斬り!!!!
ラミス「ギャーーーーーーーーーー!!!
ファルチェ「ラミス!!!!!
ファルチェ「大丈夫か!」
ラミス「これくらいなんて事は無いさ、もう左手は使い物にならないけどな」
バルザック「ふはははっ!右手だけで戦うのかw」
バルザック(しかし下せん。我が主オルゴ様はこんな小僧が魔界の王になる器だと言うのか。まだ私のほうが……いや考えまい、私は指令を真っ当するだけだ)
「全う」だったww
バルザック「どうやらここまでのようだな、余興は終りだ。」
ファルチェ「?!」
ラミス「ふざけるなっ!まだ右手で戦える!これからだ!」
バルザック「勇者ラミスよ、魔界で我が主オルゴが貴様を待っている、一緒に来てもらうぞ。」
ラミス「オルゴ?誰だそれ?」
ファルチェ「なんだと?ラミスをどうする気だ!」
バルザック「さあな、私はただラミスの魔界招聘という指令を完遂するだけ」
ラミス「俺を魔界に?」
ファルチェ「何を言い出すかと思えば。私が居て勇者を見す見す敵に渡すと思うか!」
バルザック「ラミスは既に戦闘不能、貴様だけで何が出来ると言うのだ」
ラミス「くそぅ・・・」
ファルチェ「やってみなくては分からん!勇者には指一本触れさせない!」
ラミス「ファルチェ・・・」
バルザック「剣士ファルチェよ、私は貴様を殺したくは無い、このまま引け」
ファルチェ「だまれ!ラミスが欲しいなら私を倒してからにしろ!」
必ず勇者を守る。その強く熱い責任感。と、ファルチェはもう一つ…
ラミスを彼女の目の前から奪おうとするバルザックに、
髪の毛がちりりと逆立つ感覚を覚えた。
男に負けず、男に興味等抱かず、生きようとしてきたファルチェ。
今はまだ、彼女はその気持ちの正体に気が付かないでいた、が、
ファルチェ「何故だろう…今は負けそうな気がしない!ラミス、魔法で援護を頼む!」
バルザック「よせ、おまえをここで死なせたらタナロット殿に申し訳が立たぬ。あの方には恩義がある」
ファルチェ...(やはり私を知っていたのか)「情けで私を侮辱するか!この戦いは父上は関係ない!」
バルザック「ふん、レイゴットの将軍が戦いに無縁なわけあるまい」
ファルチェ「父はとっくに退役した、戦争には係わりをもってない!」
バルザック「なに?」
バルザックの顔色が変わる
バルザック「ファルチェ!今のレイドックの総司令は誰だ!」
ファルチェ「それを敵のおまえに言う必要があるのか」
バルザック「まさか、ゲバンではあるまいな?」
ファルチェ「?・・・・だったらどうだと言うんだ」
バルザック「なっ・・・・馬鹿者!なぜあのような文官に戦争を任すのだ!」
ファルチェ「なんだ?貴様のようなもはや敵に堕ちた者にそこまで言われる筋合いはないわ!」
バルザック「愚か者めが!レイドックはもう魔界のチャモロの手に落ちたわ!」
ファルチェ「ふん、戯言を!貴様らの軍は全て掌握してある、そのような虚言が通用すると思ったか!」
バルザック「ええい、分からず屋め。魔界は2つに分裂しているのだぞ。我が魔王と敵対する勢力が既にダークゲートからレイドックに進軍しておるわ」
ファルチェ「なに?!」
ラミス「ばーか、そうだとしてもそんなに簡単に難攻不落のレイドック城が落ちるかよ」
バルザック「ゲバンが既にチャモロの内通者だったらどうする!そのままチャモロの軍を導きいれ無血開城、労せずレイドックは落ちるわ!」
ファルチェ「嘘だ!民の信望も厚い大臣がそんな事をするわけ・・・」
ラミス「さっきから、嘘ばっかりつきやがってこのペテン氏、ファルチェは本城には分隊を丸々置いて来てんだぞ、そいつらや本城の兵が黙って魔物を受け入れるわけねえだろ」
バルザック「ゲバンに軍を動かす権限を与えて、そのように都合よく防衛兵を働かせるものか。」
ラミス「なんだと?」
ファルチェ「ええい、いい加減にしろ!私はレイドックの兵だ!ゲバン様を信じている、貴様を信じる謂れは無い」
バルザック「愚かな、ゲバンのそのような見せ掛けの人望は全て今日の為に作られて来たというのに」
ファルチェ「その減らず口を黙らせてやる!」
ファルチェはバルザックに斬りかかった
しかしバルザックは立ち尽くしたまま身構えない
バルザック「10年前私はゲバンの刺客に襲われ、母上は毒殺されたのだぞ・・・・」
ファルチェ「まさか・・・」
衝撃の事実に突如放心するかようにファルチェは歩みを止めた
バルザック「その時の怪我で片足を失った私は、復讐の為に魔族に身を売ったのだ・・・」
大粒の涙が大男から流れ落ちる
ファルチェ「先程の話を信じたわけではない、貴殿が王子である証拠があるのなら示してみよ!」
バルザック「これでは証拠にならないか」
ファルチェ「それは・・・」
それは紛う方なき純銀で出来た王家のライフゴット王家のエンブレムだった。
ファルチェ.。o(やはりこの方はライフゴット王の血を引くバルザック王子・・・)
バルザック「城を追われて10年、これだけが私の拠り所だった」
ファルチェ「あなたが王子なら、月日を隔てようともレイドックの王として向かえ入れただろう
ですが、あなたはレイドックの兵を殺しすぎた、今のあなたは王子ではなく、国に仇なす大罪人になってしまった・・」
バルザック「わかっておる、私は魔王オルゴ・デミーラ様の片腕として、レイドック軍を殲滅しに来ただけ」
ファルチェ「なんて事を!30余年レイドックを守り続けたレイドック王に、仮にも御子息が何を言われます!」
ファルチェは無念の表情を隠しきれない
バルザック「もう私の体は人のものではないのだ。もう直ぐ人の心も無くすだろう、
いや既に私は復讐に生きる魔物だ、ゲバンの首をあげればそれでいい」
ファルチェ「・・・なぜ10年前体を引き摺ってでも無事を知らせなかったのです。本城まで来る必要は無い、
レイドック周辺に無数にある砦に行けば、あなたの顔を知らない兵など居ないはずでした」
バルザック「私は刺客に追い詰められ、アモールの滝から身を投げた、その時に片足を失い記憶を7年程失っていた。
自分がレイドックの王子と知ったとき、既に王権は交代し、レイドックにおけるゲバンの地位は磐石なものとなっていた」
ファルチェ「なぜ病死の后様が暗殺されたなどと・・・」
バルザック「滝に追い詰めた時に、暗殺を確信した刺客が漏らしたのだ、母上に私の後を追わすと・・・」
ファルチェ「そんな、、、それに記憶を無くす直前の事を覚えているのですか」
バルザック「記憶が戻った時に全てが鮮明に蘇ったのだ」
ファルチェ「どのような切っ掛けで記憶を?」
バルザック「今私が仕える魔王オルゴ様の力だ、身体の自由と記憶を失い毎日を鬱々と毎日を暮らす私に、
今までの記憶と強靭な体を与えて下さった、魔界に行く事を条件にな」
ファルチェ「馬鹿な!あなたは、それらと引き換えに利用されたのですよ!」
バルザック「私がレイドックの王子とは知らない時に出された条件だ、どうにもなるまい。
その時は自分が何者であるのか知りたくて必死だった。寧ろオルゴ様に感謝している」
ファルチェ「ああ、なんという事だ・・・」
ラミス「ん?なんだあれ?赤い煙が切れ切れに・・・・」
最初に気付いたのがラミスだった、次に気付いたのがバルザック
バルザック「遅かったか・・・」
それを聞き、ファルチェが不安を持って振り向く
ファルチェ「こんな、事が・・・・嘘だ、私は信じない」
それっきり絶句し崩れ落ちる
それはレイドック本城の方角、金色の空に上がる戦いの終りを知らせる狼煙だった、
無規則な塊のように見える煙の塊は暗号文字で、レイドック兵だけに読み取れる
「ワガシロ、カンラク、ヘイハ、コウフクセヨ」
ファルチェとラミスが死守した砦の背後でレイドック城が陥落
味方が放った最後の狼煙は、無情にもレイドック軍の全面降伏だった
バルザック「チャモロの策だ。ゲバンを使い、魔界の兵を導き居れたのだ」
ラミス「このおっさんの言った事が本当になっちまった・・」
バルザック「ゲバンは総司令の権限を利用して、軍を全て我が隊の攻めるルート差し向けたのだろう
そして城が空になった隙に、チャモロ軍を迎え入れた。策の裏を突かれ攻め込まれた形にしてな」
ファルチェ「我がレイドック軍が魔物などに克服などするものか!外に待機した兵は万を超える、逆に攻め滅ぼしてくれるわ!」
バルザック「正気か?今の王を囲っているゲバンが降伏したのだぞ、攻めればお前達が逆賊になる」
ファルチェ「そんな・・・城が魔物達に統治されてしまうのか・・・」
バルザック「いいか、チャモロの軍は事を荒げたく無い為に、数万からなる全ての兵を変化の杖で人間の姿に変えておる」
ファルチェ「どうしてそんな・・・?」
バルザック「事を荒げたくないからだ、落とした軍隊の兵が魔物と人とでは心証が違う
正規レイドック軍の残党が逃亡しゲリラ化しない為の予防策でもある」
ファルチェ「いったい私はこれから何を信じたらいいんだ・・・」
絶望のあまり空を見つめるファルチェ
ユウカ「リャン!どうしてここに?」
リャン「すみません。前から都合をつけてはここに通っているのを知っていたので様子を見に来たのですが…」
ユウカ「…知っていたのか。」
リャン「エド兄…貴方の行動を大目にみていたつもりがこんなトラブルを持ち込むとは。」
エド兄「はっ!天界の犬が!一人増えた所で何も変わらないぜ。」
リャン「馬に言われたくありませんよ。」
ユウカ「烈蹴拳…最強の肉弾系格闘武術…」
エド兄「どうだ?お前にオレは止められない!」
ユウカは足下に落ちていたきのぼうを拾い装備した。
ユウカ「いや…止めてやるよ!正義の心で悪を討つ!!」
エド兄「そんな棒きれで何が出来る!こちらからいくぞ!」
ユウカは右手にきのぼうを逆手に持ち身体を捻らせ後ろに回す。自然と左手を前に構える格好になる。
リャン「あの構えは!!!」
ユウカ「師匠から受け継ぎしこの奥義は武器をいとわない…ゆくぞ!!」
構えたきのぼうに気が集まり人目にも見える程光を帯びていた。
二人は一気に駆け出した。リャンは感じていた、この一撃で勝負が決まるだろうと。
エド兄「烈蹴拳!!!」
ユウカ「アバンストラッシュ!!!」
二人の影が重なる時、閃光とともに爆音、のちに爆風が舞った。
嵐の後の静けさ、立っていたのはユウカだけであった。
ユウカ「…リャン、この下はどこだ?」
リャン「へ?地上です。レイドックの防衛砦の近くですね。ではエド兄は…?」
ユウカ「逃してしまった、この切れ目からな。だが追っている暇はない。エド兄の言う事が本当なら天空界に戦が起こる。
天空の勇者として見過ごす訳にはいかない。地上は仲間達に任せて先に天空界を守る!ゆくぞリャン!」
リャン「はっはい!」
この後天空界に身を潜めていた反・現魔王派の暴動や暴走した天界人達を抑えたユウカは地上へ向かう準備をしていた。
リャン「荷物はこれだけですか?」
ユウカ「うん。身につける物だけで十分。じゃ行ってきます。」
ユウカは一時の別れを惜しむ素振りも見せず地上へ向かって行った。
アバン「嵐のような子だ。師として見守る事にします。頑張るんですよユウカ。」
リャン「…勇者ユウカに天空の加護があらんことを。
この時と時を同じくしてレイドック城陥落。
勇者側には絶望的な状況ながらも、勇者と魔王が人間界と言う舞台に揃ったのである。
バルザック「・・・チャモロが城に入った以上、私は軍を引くしかないな、魔族同士の戦いはしないように、
オルゴ様にきつく言い渡されておる。だが勇者ラミスは貰っていくぞ!」
ラミス「なっ!!」
寛いでいたが咄嗟に立ち上がるラミス、だがバルザックとの戦いでの全身の傷が痛む
ファルチェ「今更なにを?!先程話して分かった、あなたは人間だ!勇者を浚うなど出来るはずがない!」
少しはバルザックに気を許していたファルチェだが、バルザックの豹変に跳ね起きる
バルザック「何を馬鹿な、私はもう魔界の人間だ。貴様の知っているバルザック王子ではない」
そこには先程過去を思い落涙していた男の姿はなく、非道な魔界の戦士に変わっていた
3人を囲んでいた魔物の輪が小さくなる。
再び動き始めた魔物達は獰猛な泣き声を上げ今にもラミスやファルチェに飛び掛りそうだ。
咄嗟に危機を感じるファルチェ
ファルチェ「貴様!」
魔法剣士が持つ独特の細長いサーベルを構えバルザックに対峙した
ファルチェ「ラミス!無事か!」
正面のバルザックに警戒心を持ち視線を逸らさぬまま、背後に居るラミスに大声で話しかける
ラミス「大丈夫だ!俺の事は心配するな!」
ファルチェ「よし、私がこの群を切り崩すぞ、強行突破する!ついて来い!」
ラミス「わ、わかった!」
バルザック「無駄だ、この包囲からは逃げられん」
ファルチェは咄嗟にバルザックに斬りかかった。
殺せるとは思わない、司令官の出鼻を挫いた上で、反転する、
そして統制の取れない魔物を火炎斬り切り崩して道を開くつもりである。
風を切ってサーベルはバルザックの顔面を捕らえた、踏み込みも充分、
避ける方向に2太刀目を入れるつもりだった、しかしなぜかバルザックは動かない
そしてサーベルは空を切った。
ファルチェ「しまった・・・幻!これは!!」
ラミス「ファルチェ!後ろだ!マヌーサだ!」
ラミスの大声が聞こえる。だが、時既に遅い
バルザック「愚か者、貴様は既に我が術中にあったのだ」
背後に現れたバルザックが、ファルチェの後頭部に焼け付く息を吐き出した
振り向きざまに攻撃しようとする体制のまま倒れた。
ファルチェは麻痺してしまった。
薄れ行く意識の中、ラミスが魔物達に拘束される声が聞こえる
ラミス「離せ!離せ!」
バルザック「貴様には魔界まで眠っててもらう」
バルザックはラリホーを唱えたようだ、ラミスの声が聞こえなくなった
ファルチェ.。o(貴様!ラミスを、、ラミスを、、、どうする気だ!)
しかし、声にならない、それっきり意識が途絶えた。
先程まで居た数万というバルザック軍の魔物達は潮が引くように地平の彼方に消えた、そして世は更けた
戦場だった荒野に透徹とした静けさが満ちる、そこには戦い散ったレイドック兵の死体が転がるのみ
誇り高き女兵士はそこに居た、だがまだ目覚めない。
麻痺が説かれた時、バルザックにより全てを知ってしまった女剣士の苦悩が始まるのである。
*「…さん…ファ…さん…!」
遠くから声が聞こえる。なつかしい声だ。透ったやや高音な声に交感神経が覚醒する。
ファルチェ「ここ…は…」
ネネ「あんた達!お嬢ちゃんが目を覚ましたよ!」
ゆっくりと身を起こし自分を覗き込む人影を見渡す。ファルチェが目覚めたのはエド弟が働いていたトルネコの家。
ファルチェ「ラミス…そうだ!ラミスは?バルザックがラミスを!」
エド弟「落ち着いて下さい!ここは戦場じゃありません!」
ファルチェ「私はまだ戦えるんだ!ラミスを連れて行かせは…」
*「ファルチェさん!」
ファルチェ「っ…!」
ファルチェ「お前…ユウカ…?どうして…」
ユウカ「大丈夫ですか?しっかりして下さい。一体何があったんですか?」
ユウカは地上に降りてまずレイドックを目指した。そこで第3砦の門前で兵士達の亡骸の中に横たわるファルチェを見つけたのである。
レイドックの近くでエド弟と運よく合流し、魔王軍の徘徊する街中を避けてトルネコの家へと匿われたのであった。
アサミ「ラミスさんとはぐれて一日経つけど、城下町まで来ちゃった。賑やかなとこだなあ」
道具屋「お嬢ちゃん、薬草買っていかね?いいのが入ったんだよHP20くらい回復するよっ」
アサミ「ごめん、また今度ね」
道具屋「そんな事言わずにさあ」
アサミ「あ、おじちゃん。レイドックって昨日滅ぼされちゃったんだよね?」
道具屋「そうだけどね、でも王様やゲバン大臣はそのままだし、兵隊さんが増えただけで、何も変わらないよ」
アサミ「へぇ、そうなんだ。魔王軍じゃなかったの?」
道具屋「それはね、南の防衛砦まで迫ってたんだけど、新しい兵隊さんが増えたら撤退しちゃったんだってさ」
アサミ「あーそうだったんだ。」
道具屋「お陰で安心して商売ができるよ、どこかの国の軍らしいんだけど平和になるなら商人は大歓迎さ。ねえ買ってよ、安くするからさ」
アサミ「ん〜ごめんね、またね」
走っていくアサミ
道具屋「ちぇっ、だけどいい娘だな。どこに住んでるか聞いとけばよかったな」
エド弟「今城に入っている魔王軍は全員人間の形をした魔物です、僕は馬だからよくわかる。表向き平和だけど、人の格好して国民を監視してるんですよ」
ファルチェは思った
(そうか、私はあの状況で生かされたのか。父上の名のお陰なのだろうか、敵に情けを受けるとは不覚だ。)
(だが間違いない、バルザックは魔族に身を落とそうとも魔王への義理で動いているだけで)
(人の心は失っておらん。浚った目的は知らぬがラミスを殺しはしないだろう)
ファルチェ「すまない。私がついていながらラミスを…」
ユウカ「大丈夫!ラミスならきっと元気だよ!ラミスを助ける為にも今の状況を整理しよう!」
ファルチェはバルザックの事を話す。
エド弟「バルザックが従っているのが進化の秘法を使う魔王オルゴですね。」
ユウカ「進化の秘法!?」
ファルチェ「どうかしたか?ユウカ」
ユウカ「ユウカ、天空界でエド兄に会ったの。その時に…」
ユウカはエド兄が進化の秘法を使う魔王と繋がっていた事を話す。
エド弟「やっぱり兄さんはオルゴの元に…」
ファルチェ「一緒に戦った仲間が敵に寝返るなんて…(バルザックも元は同じ人間…)」
エド弟「僕らはいつも比べられて育ちました。そのうち兄は他人の評価に敏感になってしまって…」
ユウカ「エド兄も話せばわかってくれると思う!」
ユウカ「たくさん問題があるけど、まずはどうしようか?」
→ @魔界にラミスを助けに行く(VS反魔王派ルート)
「今度は私がラミスを助ける番だね!」
→ A人間界で大臣ゲバンを倒す(VS現魔王派ルート)
「まずはレイドックに平和を取り戻そう!」
→ B仲間を集める
「しずかさんって今何処にいるの?」
→ Cその他
バルザックは気づかなかった。一匹、ホイミスライムが増えている事に。
ホイミン「ラミス・・・わしが命に代えても助けてやるからな」
そう、魔物の姿に戻ったホイミンである。ラミスを助ける為、魔物の群れに紛れて追っていたのだ。
943 :
雑談:2007/04/20(金) 23:51:40 ID:k35J6p1VO
このまま行けば次スレいるよな?誰が立てる?どのくらいで立てるんだ?
一応決めとこうぜ。後テンプレで今までのまとめもはるとかも。
944 :
雑談スレ:2007/04/21(土) 01:30:35 ID:M/mEEs+g0
950頼む。テンプレはみんなで作ろうよw
エド弟「僕は、まず世界に散らばってる仲間を集めたいけど、みんなはどう思ってるのかな」
946 :
雑談:2007/04/21(土) 03:46:43 ID:hYnt7b0h0
>>941 ゆうかとしては@でしょうな、ただ「勇者救出」という意味で世界樹の戦いとパターンが似てるのでマンネリに陥りやすいかも
ファルチェとしては勿論Aなんだろうけど、ゲバンが裏切り者であるという事を仲間に話すなら団体行動でレイドック攻めになるだろう
ファルチェ1人で抱え込んで解決しようと思うなら単独行動で、ラミス救出に行くゆうかと別々の行動になっちゃうんだろうな
つうかエド(兄)の行き先が気になる、こいつはいったい何を考えてるんだ。
ラミス「あーよく寝た。なんだまだ夜かよ、起きて損した、また寝るか…ってどこだここ?!!!!!!!
949 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/21(土) 10:01:01 ID:YFOzgdFH0
ホイミン「しっ!まだくたばってるふりしとけ」
その頃レイドック城は崩壊寸前だった
ゲバン「酷いよう…僕のお城が…酷いよう。ぐすんぐすん」
ゲバンは死んだ
ミネア「お姉さん、あそこに居るのはエド兄じゃないかしら」
マーニャ「あらそうね、久しぶりね」
エド(兄)「逃げては来たものの、地上に知り合いいないしな。弟を頼るか」
プルルップルルッ
エド(弟)「ん?誰からだろ、非通知だけど」
ピッ
エド(弟)「はいもしもし」
エド(兄)「おお、いたか。俺だよ俺」
エド(弟)「(ちっ)すみません、どなた様ですか?」
エド(兄)「またまた、いつも面白い冗談言うな、兄さんだよ兄さん」
エド(弟)「ああ、そうなんですか、その兄さんが何か?」
エド(兄)「今さ、俺地上にいるんだけど」
エド(弟)「それで?」
エド(兄)「いや、それでって・・・久しぶりだから会わないか?」
エド(弟)「なぜ?」
エド(兄)「ちょ・・・腹減ってんだよ、ごはん奢ってくれよ〜」
エド(弟)「嫌です」
エド(兄)「なんでだよ!たった一人の兄貴じゃないか」
エド(弟)「あなたが嫌いだというのは理由になりませんか?」
ブッ
ユウカ「誰?」
エド(弟)「間違い電話ですよ、頭のおかしい人みたいでした」
ユウカ「ああ、そういうの最近多いもんね、知り合い以外着信拒否しとけばいいのに」
エド(弟)「そうですね、非通知も含めて設定しときす」
>>233 ヘルニアなめたらあかん、無理して出てたら歩けなくなるぞ
ラミスは誤爆してしまった
958 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/21(土) 15:05:13 ID:OWjCtBn7O
鳥肌 実が現れた。
どうしようもねえズラか?
先が気になる〜