「俺はユリウス。一騎打ちなどやめておけ。たとえSEEDでも容赦はしない」
長い髪を後ろで束ねた、精悍な顔つきの男が言った。構えてる剣はかなりの長物で、両手で遣うようだ。
「おまえこそ死にたいらしいな」
言うと同時に羽馬を走らせる。馳せ違う。腕が痺れるほどの衝撃が走る。
2、3回と馳せ違った。その度に打ち落とされそうになる。額に汗が流れる。ユリウスと名乗る男も苦しそうに肩で息をしている。
4度目に羽馬を走らせようとしたとき、後ろから援軍、という声が上がった。
「運のいい奴だ。また会おう」
男は言うと、騎馬隊を引き連れすぐに消えてしまった。後ろからは同じSEEDの者が率いる軍が来ている。自分は信用されていなかった。
だからこんなに速く援軍が来たのだろう。出陣するときにはすでに援軍が編成されて居たのかもしれない。
この軍なら任務は遂行できるだろう。しかしもし援軍が来なかったら。一騎打ちには負けたとは思わないが、軍と軍のぶつかり合いでは
完敗だった。スコールは兵をまとめ、援軍の指揮官、SEEDのクラウドに会いに行った。
新羅→神羅
orz
FFTwolf◆HOZlQYR1MY 氏は、
戻って来ないのか………
>>103=
>>63か?
そういうのはあんま書き込むもんじゃない
急かしたって書き手には辛いだけだし
>>ラストダンジョン◆Lv.1/MrrYw
GJ
そのメンバー編成には何か意味が?wktkがとまらない
続きまったり期待
乙!
>>99-101 ユリウス率いる義勇軍(意味合いはこんな感じだと思ったんですが、間違ってたらすみません)と
スコール率いる正規軍の各視点で描かれる行軍の様子が良かったです。
「誰も戦うべき場所じゃないところで〜」とか、セリフが少なくても(というか最初は世界観の説明が
あると思うので仕方ないと思いますが)気にならなかったです。
この世界ではソルジャーへの登竜門がSeeDって感じに読めますが、両者の関係(神羅と学園長)
にも何かからくりがあるのかな?
ユリウスが体制へ反意を持つに至った理由、彼に同調し集う仲間達の背景、現体制からの離脱…
この先、読みどころはたくさんありそうですね、今後の展開期待sage。
長編との事ですが、気負いせずマターリがんばって下さい。
前話:
>>93-98 ----------
エレベーターホールを取り囲む無数の――数えようという気にもなれないような――銃口を向けている
のは、本来ならば訓練に使用されるはずの射撃装置だった。
身構えることも忘れ、ティファは呆気にとられたままエレベーターの奥からその光景を見つめていた。
操作パネルの横に立ち銃を取り出したヴィンセントは、銃口をエレベーターの外には向けなかった。
大剣に手を添えていたクラウドも、そのまま剣先を向けることはしなかった。
エレベーターを包囲した無数の射撃装置も、起動する様子が全くない。
とはいえ、これだけの数の銃口を向けられて良い気分はしないし、いつ銃撃が始まるかは分からない。
仮にそうなれば退路を限定されている彼らにとって不利な状況なのは明らかだった。当然だが一刻も早く
この場から離れたいと考えたヴィンセントは、左手を操作盤へと伸ばす。
「…………」
視線は前方へ向けながら、無言のまま左手で操作盤の開閉ボタンに触れた。しかし開いたままだった
エレベーターの扉は操作を受け付ず、いっこうに閉まる気配を見せない。
現状、彼らにとって唯一の退路が断たれた事になる。
重苦しいほどの膠着状態が、どれほど続いた頃だったか。まるで空気さえも流れを止めてしまったような
空間が、僅かだが動いた事をエレベーター内にいた3人は感じた。ティファは反射的に身構え、クラウドが
彼女を庇うように一歩進み出る。
ヴィンセントは静かに銃口を差し向けたのは、目の前に並んだ射撃装置のはるか後方、闇に沈むフロア
だった。
やがて、3人の耳に聞こえたのは小さく硬質な音。
次第に大きくなってくるその音が、こちらへ向けて歩みを進める靴音だと知るのに時間は掛からなかった。
それからクラウドは一瞬、奇妙な表情を浮かべてから構えを解いた。
「……これはどういう事か」
ほとんど同時に、ヴィンセントも向けていた銃を下ろして静かに問う。ティファはふたりの視線を追うようにして、
闇に目をこらした。徐々に浮かび上がってくる人物の輪郭と重なるようにして、ヴィンセントが呼びかける。
「納得のいく説明をしてもらうぞ、リーブ」
その声で、靴音が止む。
無数の射撃装置に囲まれた中で顔を上げたリーブに、笑顔は無かった。
W.R.Oの局長として人前に出る時と変わらない姿で、彼は3人の前に現れた。
…………。
もともと口数の多い方ではない3人に対し、リーブも黙ってしまっては会話が進まない。射撃装置に包囲
されながらの膠着状態はさらに続き、息苦しささえ感じるほどの時間が過ぎた。
業を煮やしてエレベーターから出ようとしたクラウドをヴィンセントが無言で制したところで、ようやくリーブが
口を開いた。
「……皆様にご足労頂いておいて大変恐縮なのですが、今回の件をご説明しても納得して頂けないものと
思いますので」
相変わらず丁寧というか、どこか事務的な口調で笑顔もなく語ったリーブの姿に、ティファは妙な感覚を
抱いた。顔を合わせた回数こそ少ないが、ティファの知っているリーブとはどこかが違う気がした。もう少し
言えば、目の前のリーブには何かが欠けている。“何か”が何を示すのかと問われると明確な答えは出せ
ないものの、違和感があるのは間違いない。ティファがその答えを探すために考えを巡らせている間にも、
リーブの言葉は続く。
「申し訳ありませんが、お引き取……」
そこまで口にしたリーブに向けて、ヴィンセントは静かに銃口を向けると、ためらいなく引き金を引いた。
直後フロアには重々しい銃声が響き渡り、リーブの言葉が中断される。
銃は真っ直ぐリーブに向けて放たれ、弾道を追えば見事その腹に命中している。僅かに目を開いたリーブは、
膝をついて床に倒れ込んだ。
「ヴィンセント!?」
目の前で展開される光景に、驚き戸惑うティファの心中はそのまま声に現れていた。クラウドも横に立つ
ヴィンセントを問うように見つめた。
仲間達の問いに答えるかわりに、ヴィンセントは銃を下ろさず床に倒れ臥したリーブに言い放つ。
「……相変わらず人形遊びとは趣味が悪いな、リーブ」
しばらくして、俯せに倒れたまま身動き一つしなかったリーブの腕が、ゆっくりと動き出す。
「二番煎じは通用しませんか」と、くぐもった声が返されると、ヴィンセントはため息を吐いた。
「やはり……“本体”ではないな?」
リーブは両腕で体を支え、上半身を起こす。それからわざとらしく首を持ち上げてヴィンセントを見上げた。
「お見事です。……それに相変わらず優しいですね、ヴィンセントさん」
3年前。ディープグラウンドのカーム襲撃中に久々の再会を果たした際、ヴィンセントはリーブを“着込んだ”
ケット・シーに出会っている。今目の前にいる彼がそのことを言っているのだとは分かったが、それにしても
妙だった。
ああ、と思い出したようにリーブは告げる。
「……あの時と違って、今回はケット・シーが中に入っていると言うわけではありませんからね」
立ち上がって服の裾を手ではたくと、気付いたように腹の辺りに撃ち込まれた銃弾を取り出した――W.R.O
局長として人前に出る時に着ているあの服は、恐らく防弾仕様なのだろう――それにしても、その仕草は
まるで解れた糸をちぎるかの様なさり気なさだった。
こうしてよどみなく語るリーブの姿を、ヴィンセントは無言で見つめていた。ティファなどは目の前の状況を
飲み込めず、言葉も出ない様子だった。
再びエレベーターにいた3人に顔を向ける、笑顔を浮かべるわけでもなくリーブは淡々と言葉を続けた。
「改めて……はじめまして皆さん。私は実戦用に配備された“人形”ですよ。見た目がこれですからね、
好きなように呼んで下さって構いません」
元々名前も付けられていませんので、と付け加える。
「リーブ、お前……」
その言葉にヴィンセントが珍しく狼狽えたような声で応じた。
「ヴィンセント?」
クラウドが尋ねるが、答えに窮したような表情のヴィンセントから返答は得られなかった。代わりに答えた
のは、目の前に佇むリーブだった。
「ケット・シーをご存知ですね?」
「ああ」
「とすると、あれを操っていたのは『リーブ』だと言うことも?」
クラウドとティファが申し合わせたように無言で頷くのを見て、さらにリーブは続けた。
「ケット・シーは単なる遠隔操作ロボットではありません。『リーブ』が命を吹き込んだぬいぐるみです」
「確か……『インスパイア』と」
ヴィンセントが呟いた小さな声に、今度はリーブが頷く。そしてこう言った。
「私は、ケット・シーと同じようにして生まれました」
作られ、そこに命を吹き込まれた存在だと。彼は自らのことをそう語った。
その姿も、告げる声も、何もかもがリーブそのものだった。一見すれば両者の違いを見分けることは難しい。
それでも何故か、目の前で語るリーブに違和感を覚えた。だからヴィンセントは引き金を引いた。3年前、
ディープグラウンドソルジャーがそうしたように。
皮肉にも彼らが感じたとおり、目の前で語るリーブは機械仕掛けの人形だったのだ。
「一体なぜだ? 納得のいく説明をしろ、さもなくば……」
リーブに向けて問う声は僅かに震えていたが、銃はしっかりと向けられている。今度は腹ではなく、頭部に
照準を合わせて。
本来なら微笑でも浮かべるような場面でも、リーブは無表情に切り返す。
「では、どうしますか? 私を壊しますか? そんなことをしても無駄ですよ。この身体はもともと作り物ですからね」
――『ほな、どないするんですか? ボクを壊すんですか? そんなんしてもムダですよ。この身体もともとオモチャやから』
6年前、どこかで同じようなセリフを聞いた。クラウドは苦々しい記憶と共に目の前のリーブを睨み付けた。
深夜のゴールドソーサーでスパイである事を明かされたあの時と違うのは、純粋な怒りの他に別のある感情が
沸いたからだ。
「……“本体”は、どこにいる?」
クラウドからの問いに、リーブは答えなかった。
答える代わりに手をあげた。それを見たクラウドはとっさに大剣を構え、エレベーターから飛び出した。
ヴィンセントは依然としてエレベーターの操作盤から左手を離そうとはしなかったが、やはり扉は閉まらな
かった。覚悟を決め、銃口を向ける。
エレベーターホールを取り囲んだ無数の射撃装置が一斉に火を噴いたのは、この直後の事である。
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・DCFF7第1章を見た後、真っ先に浮かんだ想像。ちゃんと作ればこうなるんじゃないかと。
・ようやくタイトルらしい展開になって来たでしょうか? 以降、全員でこのダンジョンを攻略…できたらいいな。
>>ラストダンジョン◆Lv.1/MrrYw
急展開ktkr
まさか彼らが襲ってくるとは。場面を想像すると異様です。
続きまったり期待
メカ局長ワクテカ
かなりぬるぽな感じだが1本投下させて下さい
ネタ的にはFFYのセッツァーとセリスで。
「セッツァー!」
そう声を張り上げた女性は、彼女は繊細なレースが施された
純白のロングドレスをまとい、深緑のサテンのリボンで長い金の髪を
高くひとつに結い上げていた。
今彼女の立っている場所からすると酷く場違いな格好だった。
彼女は今、地上からは遥か上、見渡す限り青く広がる海原を
眼下に見下ろしながらゆっくりと大空を飛空挺で飛んでいた。
瑠璃色の水面は太陽の光を乱反射してキラキラと輝いている。
優しく吹き付ける潮風に髪を遊ばせながら、彼女は再び声を張った。
「セッツァー!聞こえてるの?」
セッツァーと呼ばれた男は、風になびく長い銀髪をうるさそうに
片手でかきあげ、自分の腕の中で眩しそうに前を見据えている
白いドレスの女に自慢げにささやいた。
「なぁセリス、空は最高だろ?俺はこの眺めの…」
セリスは大げさなため息を一つつくと、セッツァーの言葉を遮って
おもむろにセッツァーの右足の脛を靴の踵でけりとばした。
たまらずセッツァーは悲鳴をあげ、豪奢なレースに包まれた
セリスの豊かなふくらみから手を離した。
「ったく、痛ぇな!いきなり何だよ」
気持ちよく演説を始めた所にいきなりハイヒールで蹴りつけられ、
セッツァーは非難の声をあげる。
セリスはくるりと後ろへ向き直ると、きっとセッツァーを睨み付けた。
「飛空挺の操作を教えてくれとは言ったけど、
胸を触ってくれなんて頼んだ覚えはないけど?」
そう言い放つと、セリスはぷいっと飛空挺の舵へと向き直った。
たかが少し胸触ったくらいで蹴り入れやがって…。
予想以上のセリスの気の強さにセッツァーは正直手を焼いていたが、
その思いに反して笑いが顔に浮かぶのをセッツァーは感じていた。
実際気の強い女は嫌いなタイプじゃない。
ただ、“気の強い女”とやらは今まで何人も相手してきたが、
この女のは気の強さの種類が違う。
セリスの場合、男に媚びる気が全くねぇからだろうな、
セッツァーはそうひとりごちた。
セッツァーはセリスと並んで立つと、改めてセリスの横顔を見つめた。
こうして改めてみると、顔立ちが整いすぎていて、ともすると人形の様に
見えなくもない。しかしアイスブルーの瞳にたたえられた強い光が
作り物にはない内面の強い意志を感じさせる。
こういう完璧な美貌を持つ女ほど乱れさせるとそそるんだがな、と
セッツァーがよからぬ考えを抱いていると、
セッツァーの視線に気づいたセリスがセッツァーの方へ顔を向け、
楽しそうにニッと笑みを浮かべた。
「ふふ、私を普通の女だと思わない方が身のためよ。
生憎と私は舞台じゃなくて軍隊あがりなの。何事も鉄拳制裁が基本よ?」
セリスはさらりと恐ろしいことを口にする。
つい先ほど制裁を受けたばかりの右すねをさすりながら、
セッツァーは応じた。
「聞けば、帝国軍の常勝将軍と言えば泣く子も黙るほどの
有名人だったらしいな。そのくせ見かけは極上だって言うんだから
手に負えないぜ。
おかげでまんまと騙された哀れな男が帝国くんだりまで飛んでるってわけだ」
セッツァーはポケットに手をつっこむと肩をすくめた。
表情も口調も冷静さを保ったままだが、セリスも負けじと舌戦に応じる。
「人聞きが悪いわね。さっきのコイントス勝負で負けたのはそっちでしょ?
潔く負けを認めて敗者は大人しく勝者に従ったら?」
「口が減らねぇ女だな……。言っておくが俺がこうやって手取り足取り
飛空挺の操作を教えてやるなんて滅多にねぇぞ。
少しはサービスでもしたらどうだ?」
セッツァーが嫌味を言うと、セリスは長いドレスの裾を指でつまみ、
貴族の令嬢がするように優雅に膝を折って挨拶をしてみせた。
「わざわざこんなひらひらしたドレスのまま来てあげたでしょ。
それもセッツァーのリクエスト通りにね。
これだけで大サービス、でしょう?」
口調はあくまで冷ややかだが、セリスの態度はあからさまに
セッツァーを挑発している。
くそ、その格好のままついてくれば船の舵取りを教えてやるなんて
言うんじゃなかった、そう後悔したのもつかの間、
セッツァーはふと悪巧みを思いつき、目を細めて口元に薄笑いを浮かべた。
(これだから気の強い女はな。自分から負けようって気が全くねぇ。
だが俺も気の強い女専門だからな。ここで挑発に乗るほどバカじゃないぜ?)
つい先刻コイントス勝負で完全にセリスにしてやられた事も忘れ、
心の中でそうつぶやくと、セッツァーは負けを認めたとばかりに
両手を大きくひろげてセリスに一歩歩み寄った。
「わかったわかった。俺の負けだって認めればいいんだろ?
じゃ負けついでにもうひとつこの船の操作方法を教えてやるから
しっかりつかまってろよ?」
(本当は船に負担がかかるからあんまり連発できないけどな)
と語尾を省略して、セッツァーはセリスを後ろから包み込むような態勢
を取り、舵に手をかけた。
「操作ならさっきこれで全部だって言ってなかった?」
急に負けを認めたセッツァーに対して、
セリスの口調にはやや怪しんでいるような色が含まれている。
ここでセリスに怪しまれては元も子もない。
セッツァーは落ち着いた口調になるよう努めつつ、
セリスの耳元に口を寄せた。
「さっきのは基本を教えたんだよ。今からやるのは秘伝ってやつだからな。
セリスには特別に教えてやるんだよ」
と、セリスの髪から甘い香りがふわりと広がり、
セッツァーの鼻先と下心とをくすぐった。
この際だ、どうにでもなれとばかりにセッツァーは舌先で
セリスの耳たぶをぺろりと舐め、ひんやりとした感触のそれを
舌先で転がすようにして口に含んだ。
と、セリスの身体が目に見えるほどびくりとはねる。
耳から瞬く間にさあっと広がり、頬まで真っ赤に染めたセリスは、
セッツァーの不意打ちに急いで振り返ると、口をぱくぱくとさせた。
「なっ…な、な、」
突然のことに二の句が告げられないでいるセリスの腰に
さりげなく左手を回すと、セッツァーは空いている手で舵を一気にきった。
飛空挺は操縦者の突然の針路変更に、船体を軋ませながら大きく船体を
左に傾ける。小さな石ころが甲板の上を滑り、
カラカラと乾いた音を立てながら遥か下の海原へとすいこまれていく。
突然足元が揺らぎ、セリスは短い悲鳴をあげて
咄嗟に目の前の男にしがみついた。
セッツァーが片手で支えているとはいえ、
船体が完全に安定するまで、セリスは震えながらセッツァーの腕の中で
身体を押し付けていた。
小さく震えながらしっかりと抱きついているセリスを見ると、
やりすぎたかと軽い罪悪感を感じる反面、
男としての自尊心が満たされていくのをセッツァーは感じていた。
気の強いわりにやっぱり可愛いところあるじゃねぇか。
まぁ今までこの手で落ちなかった女はいねぇからな…。
そうほくそ笑みながらセッツァーはゆっくりとセリスを上向かせた。
(「悪かったよ、悪ふざけがすぎた。
その代わり最高の気分にさせてやるから、下に下りようぜ」)
そういつものきめ台詞を使おうとした瞬間、
挑みかかるような表情のセリスが目に入った。
怒りのメーターが吹っ飛んだような顔をしている。
セッツァーは本能的にやばい!と察したが、時はすでに遅かった。
次の刹那、脳天まで突き抜ける猛烈な痛みが下半身に走り、
何が起こったのかわからないままセッツァーは床に膝をついた。
全身に冷や汗が噴出し、声を出すことすらままならずに前のめりに
しゃがみこむ。
セリスが自分の急所を蹴り上げたのだ(しかもハイヒールの先で)
と分かったのは、セッツァーがうずくまってから十数分後のことだった。
涙目で弱々しくセッツァーが顔をあげると、
その目線の先には、感情の停止した機械仕掛けの人形のように、
恐ろしく冷酷な目をしたセリスが、無言で見下ろしていた。
くそ、こんな時でも頭にくるぐらいキレイな顔しやがって、
と見当違いな怒りがふっと頭に浮かぶと、その勢いでセッツァーは
なんとかよろよろと身をおこした。
だが、体勢を少し変えるだけで、治まったはずの冷や汗が
どっと背中に噴き出してくる。
しかしセッツァーはここまで来たらもう怖いものなんかねぇとばかりに、
渾身の力でセリスを抱き寄せた。
死ぬほど痛いのにまだ女の事を考えられる俺もなかなかすげぇな、
という考えが悪寒のようなの痛みの中、ちらりと脳裏をかすめる。
そして、セリスを抱き寄せた反動で立っていられずに、
セッツァーは再び床に崩れ落ちた。
残念なことに、その振動がまたセッツァーの痛みを増幅した。
今度こそあまりの痛みにセッツァーは情けない悲鳴をもらした。
さっきまで視線だけで人を殺せそうなほど冷酷な表情を浮かべていた
セリスも、情けないセッツァーの有様に、抱きよせられた格好のまま、
クスクスと笑い出した。
「なんて声だしてるのよ」
「女には一生わからねぇ痛みなんだよ…使えなくなったらどうすんだ」
セッツァーはできるだけ局部に響かないよう低く声を出した。
「急所を蹴られてなおこれだけできれば平気よ」
セリスの態度は完全に軟化している。
クスクスと笑い続けているセリスの表情には、年齢相応の幼さがふっと
去来する。初めて見せる柔らかい笑顔に、セッツァーはほっとしつつも、
セリスの手痛い反撃ぶりにため息をついた。
「少し悪さしただけで一撃必殺かよ。本気で蹴るか?普通。死ぬぞ…。
俺が死んで帝国に行けなくて困るのはセリスのほうだぞ」
「ふふ、私が本気で蹴ったら再起不能になってるわよ。それに、
さっき言ったでしょう?普通の女だって思わないほうがいいって」
セリスはセッツァーの泣き言には取り合わず、
楽しそうにウィンクすらしてみせる。
「でも……本当に感謝はしてるのよ?飛空挺を貸してくれた事」
セリスは照れたように小声で付け足した。
セッツァーはセリスのすべらかな頬を右手でゆっくりと撫で、
唇にはりついた髪をそっと指先で払った。
ここにきてやっとしおらしくなったセリスをじっと見つめたまま、
セッツァーは最後の追い込みをかけた。
「言葉だけじゃ足りねぇな。俺がいないと困るんだろ?セリス」
もはや半分脅迫になりつつあるセッツァーの口説き文句に、
セリスが根負けしたように小さくため息をついた。
「わかったわよ。じゃどうすればいいの」
乳ぐらい揉ませてもバチは当たらねぇだろ、という言葉が反射的に
口をついて出そうになるのをセッツァーはぐっとこらえた。
まぶたの裏に浮かぶセリスの艶かしい肢体の映像を振り払い、
セッツァーは大人然とした声をだした。
「もう一度マリアの格好してくれよ。
そしたらとびっきりの景色を見せてやるよ。二人っきりでな」
「そんなにこの格好が気に入ったの」
気にするのはそこじゃないけどな、と思いつつセッツァーは念を押した。
「約束だぜ?」
「わかったわ。約束する」セリスは半ば呆れたように微笑んだ。
よくよく考えると、女優を攫うどころか偽者をつかまされたあげく、
帝国までの足代わりとして利用されたセッツァーだったが、
不思議と怒りは湧いてこなかった。セリスは気は強いがなかなかの上玉だ。
これからじっくり落とせばいい。
そう、まだこいつとの旅は始まったばかりなのだ。
そう心に決めると、セッツァーはいつ手に入るとも知れない女の肩を
そっと引き寄せた。
めでたしめでたし
ネタのつもりが長文になってしまったようだ…
どもでした。
>>126 _ ∩
( ゚∀゚)彡 ツンデレ!ツンデレ!
⊂彡
てかセッツァーテラバカスwwwww
すらすら読めておもしろかった
GJ!!
FF1or3でハァハァって奴はここでは少数派かね
DS版FF3好きです保守。
>127>128 ありがとうございます。
機会があればまた書かして下さい。じゃっ!
とにかく保守だけ。
保
FF全シリーズの作品を期待ワクテカ
ほ
ぼ
ま
139 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/15(金) 23:45:38 ID:rj7pQ2DA0
アッー!
>>118-125 (またマリアの格好を〜、の件で)
さり気なく3人クリアの伏線が張られていると解釈して勝手にニヤニヤしてました、GJ!
さすがセッツァー、傷の多さは伊達じゃないって事かw
FF3ネタなら、シド夫妻の馴れ初めとか読んでみたい。ネルブの大岩破壊のイベントに
男気とばあさんへの愛を感じたw
そう言えばシリーズのシドって愛妻家や家族思い多いな。…6は似非家族だけど。
前話:
>>109-113 ----------
***
地下に降りた仲間達が衝撃の再会を果たしたのと同じ頃、1階エントランスに残ったバレットとシドは
エレベーター以外でフロアを移動する手段を探しながら、1階部分の探索を開始していた。
エントランス中央にある噴水を中心にして放射状に広がる通路を進みながら、目についた扉を片っ端から
開けていく。自動で開閉するものは問題ないのだが、そうでない扉は非常用手段――つまり手動――で
こじ開けなければならず、これが結構な重労働を強いられる。ふたりとも体力にはそれなりに自信があった
が、さすがに数が多すぎる。
「あークソ! それにしても一体いくつ部屋があるんだぁ?!」
「オレ様に聞くんじゃねぇよ!」
背負った槍が無用の長物と化しているシドが苛立ちをそのまま声に出すものだから、バレットも思わず
反論する。
「聞いてねぇよ!」
「じゃあ黙ってドア開けろドア!」
背後のバレットに向けて怒鳴ったシドが、いくつ目か数える気も失せてから更に数十枚目のドアをこじ開けた。
中は真っ暗で、何もない。美しい景観のエントランスや通路とは対照的に、闇に沈む室内は塗装もされずに
むき出しになった壁材がうっすらと見えた。ここと同じような部屋が他にも数え切れないほど――はなっから
数えるのが面倒なので数えていない為だったが、とにかく沢山――あった。
「まったく、いちいちドア開ける方の身にもなってみろってんだ」
愚痴を吐き捨てると顔を上げ、次に視界に入った扉の前へと移動する。が、扉はびくともしない。どうやら
ここも手動で開けなければならないようだ。
手動開閉装置は扉の横についていて、レバーを回転させることで扉を開閉する事ができる。シドはムキに
なってこれを回しながら、中が覗ける程度の隙間を確保すると開閉装置から手を離し、室内を覗き込んだ。
しかし、ここも真っ暗で中には何も見あたらない。
「にしても、一体何に使うためにこんだけ部屋作ったんだ?」
真っ暗なフロアにシドの声が反響する。自分たち以外には誰もいないはずの施設だから、もちろん返答を
期待しての問いかけではない。意味がない独り言とは分かっていても、小言の一つも言いたくなる。
「いっくら軍事施設だっつったってよ、やり過ぎじゃねぇか?」
「内部を分かりやすい構造にした場合、実際の侵入が容易になってしまいますからね」
「まぁ、確かにそうなんだけどよ。ジェノバやセフィロス、それにディープ……なんだ?」
「ディープグラウンド」
「それだそれ。……もうあいつらもいねぇ訳だしよ、なにもここまで厳重にしなくても良いと思、」
そこで初めてシドは異変に気付いた。自分のこぼした愚痴に対して逐一、それも的確な返答をされるもの
だから、自然に会話が成立していたせいで危うく聞き流すところだった。
もう一度考え直す。ここには自分たち以外、誰もいないはずだった。
「備えあれば憂いなし。先人達は良い言葉を残していますね」
シドが異変と気付くまでに時間がかかったのは、確かにシド自身の油断という理由もあるだろう。しかし
ながら、会話を交わして不自然と感じる相手ではなかった、という要素が一番大きい。
ちょうど顔と同じぐらいの幅が開いた扉の奥に、その声の主は立っていた。背後の闇に溶け込むような
黒髪に口髭、闇に浮かび上がる青い衣はW.R.O局長が身につけている服で。シドがその姿を見紛うはずは
なかった。
「……って……リーブ?!」
その声に勢いよく振り返ったバレットが慌ただしく駆け寄ってくる。
バレットはシドの視線の先に見知った人物の姿を見つけると、安堵する一方で強い疲労感に襲われた。
これだけ巨大な建物の、よりにもよって入り口のある1階のこんな場所にいなくても良いだろう――と、
なにやら説得力に欠ける様な事を口にしながら、それでもバレットはリーブとの再会を素直に喜んだのである。
通路と室内を隔てていた扉は、ひとりでにゆっくりと開き始める。それに従って闇に包まれた室内には徐々に
光が差し込み、リーブの姿が浮かび上がってくる。
「……何してんだよ心配させやがって」
リーブが“本部施設に閉じ込められた”と聞いて、なんだかんだ言いながらも彼の身を案じ、真っ先に仲間達
を招集しようと飛空艇を飛ばしたシドが、溜め息と共に思わず本音を漏らす。
その言葉に、目の前に立っていたリーブは生真面目にこう返した。
「心配して頂けたとは、光栄です」
「ふざっっけんなこの野郎!!!」
生真面目を通り越してどこか他人事のような返答を聞いたシドは、本気――手はもちろんグー――で殴り
かかろうとした。その直後、彼の左肩に手を置いて暴挙を止めたのはバレットだった。
「まあまあ落ち着けよシド」
「おう、オレ様はさっきから充〜分、落ち着いてるぜ? 落ち着いて考えて『一発殴らせろ』って結論が出たんだ。
だからよバレット、その手どけてくれねぇか?」
そう言って口元をつり上げて笑うシドの、どこを見れば落ち着いていると言えるんだ? とバレットは指摘した
かったが、今日二度目になる身の危険を感じて口にしかけた言葉を飲み込んだ。
シドの肩に置いた手は退けないまま、正面に向き直ったバレットは改めて問う。
「それでリーブ、お前こんな所で何やってるんだ?」
言い終わるのと同時にがたんと重たい金属音を立てて、扉が完全に開いた。誰もいないせいかフロアには
長く残響がこだましている。その音が完全に止む前にリーブが口を開いた。
「……見ての通り、W.R.O<世界再生機構>の局長をやってます」
笑顔を浮かべることもなく、やはり生真面目と言うか事務的にリーブは答える。それを聞いたバレットの耳の
奥で、何かがぷちっと音を立てた様な気がしたが、たぶん気のせいだろうと首を振った。
気を取り直して、ここへ至るまでの経緯を簡潔に告げた。
「俺達はよ、お前さんがこの施設に閉じ込められたって聞いたんで飛んできたんだぜ?」
バレットの言うとおり、というより文字通りに彼らは飛空艇に乗って飛んで来たのだ。
それを聞いたリーブは表情を変えずに問い返した。
「リーブがこの施設に閉じ込められている……と?」
「少なくとも俺はそう聞いてここへ来た。だけどよ」
しかし、これはどう見ても“閉じ込められている”という状況とは違う。入り口はすぐそこだし、出ようと思えば
いつだって出られるじゃないか。
「“閉じ込められた”、んじゃなくて“閉じこもってる”の間違いかよ? なんだよ本当に人騒がせだな」
バレットは呆れて大きくため息を吐くと、リーブに背を向けた。それから早速ポケットから携帯を取り出すと、
発信履歴の一番先頭にあった番号を呼び出した。わざわざ手分けして探すまでもなく、こうして再会できた
事を他の仲間達に知らせる為だ。
しかしバレットの背後ではリーブがまだ話を続けている。
「あなた方は、『リーブ』をここから連れ出そうと言うのですか?」
リーブ自身になぜそんなことを聞かれているのか、シドにはさっぱり状況が飲み込めなかった。悪ふざけ
にも程があると、そう口にしようとした。しかし次の言葉を聞いた時、シドは今度こそ訳が分からなくなった。
「我々は『リーブ』がここから連れ出されることを望んでいません。……どうぞお引き取り下さい」
実のところ、さっきから聞いていて気にはなっていた。彼の話しぶりはまるで他人事だったからだ。いま
目の前に立っているのが、リーブ以外の人間であるならその話し方にも納得できるが。
……いや、まさか。
「お前は……誰だ?」
まったく確証は無かった。それでも問うシドの口調や表情には明かな不安の色が浮かぶ。
シドの背後で携帯を片手にバレットは振り返る。耳に当てたスピーカーからはコール音だけが聞こえてきた。
機械的に繰り返されるその音に乗せて、抑揚のないリーブの言葉が聞こえてきた。
「私は、実戦用に配備された“人形”です。……あなた方の言う『リーブ』とは、我々を作った人物です。
我々は、彼の能力によって生命を吹き込まれた存在。つまりケット・シーと同じように、作り物です」
鳴り続けるコール音がやけに大きく聞こえたのは、その言葉を現実として捉えたくないと言うバレットの
願望がそうさせたのかも知れない。
未だに繋がらない電話の持ち主が、この施設内の別の場所で同じ事を尋ねたのだとは知る由もなく、
ふたりは目の前に立つリーブにこう尋ねた。
「お前の言う『リーブ』……“本体”はどこにいる?」
目の前に立つリーブは首を横に振るだけで、何も答えようとはしなかった。
----------
・人を小馬鹿にして楽しむ局長(DCFF7第1章)を表現できていたら良いなと。
・バレットとシドの書き分けが難ry。すんませんです。
>>145 そういえばバレットとシドは話し方そっくりだったな。
シドの一人称が「オレ様」ってこと位しか無印での違いが思い出せない。乙です。
てかリーブ人形またキター!襲って来なくてよかった……
今後の展開はげしくwktk まったり期待してます。
GJ!
前話:
>>141-145 ----------
――誰にも、理解してもらえるとは思っていません。
暗闇に包まれたW.R.O本部施設の一角。彼は一人ここに留まり、全てを見つめていた。
まずはW.R.O<世界再生機構>のネットワークアクセスコードに、神羅カンパニー都市開発部門勤続時代の
社員コードを利用したのは、最初にこの事に気付いてくれる人物をこちらで特定したかったからです。確証
こそありませんが、W.R.Oへの資金提供者の正体もある程度予測できていますからね、私の推測が正しければ、
彼らがW.R.O本部のネットワークにアクセスし情報を覗き見る事は雑作もないはずです。そこで“使途不明金”
の存在を知れば、彼らは必ず動いてくれるでしょう。もっとも、本当に隠しておきたい情報ならば安易に侵入
されるようなパスワードを設定しようなんて考えません。
問題は彼――W.R.Oへの“姿無き出資者”――が、この事態をどう捉えるかでした。どちらかというとそれは
賭でしたが、恐らくこういったゲーム性のある事に興味を示すと私は踏みました。根拠はおよそ6年前に見て
います。当時、セフィロスの暴走に端を発した社長交代の混乱があったとはいえ、父親の跡を継いだ彼が
示した神羅カンパニーの経営路線は、先代のものとはまったく別の方法でしたからね。情報操作と民意統制を
軸とした先代の方針は、言わば堅実路線でした。若さ故のお考えかも知れませんが、私にはどうも彼の打ち
出した経営方針が「ゲーム」のように見えたのです。恐怖での支配などあり得ない――しかし、それが今回の
行動を後押しする材料になりました。
次に、この事態を受けて実際に行動に移してくれる人物の存在です。“姿無き出資者”となった彼は、文字
通り人前に姿を見せるとは思えません。4年前のいたずらの清算もまだ済んでいませんからね。しかしネット
ワークへの侵入を実際に行った彼ら――代理人、と呼ぶことにしていますが――ならば、外部との連絡を
取ることは可能だと考えました。仮に、かつて神羅に属していたヴィンセントが最初に報せを受けたとしても、
自ら行動を起こすとは考えづらかったのですが、その面はユフィの行動力がうまくカバーしてくれるでしょう。
彼女に情報が渡れば、あとは黙っていても飛空艇師団へ事が知れるのは時間の問題です。
そうなれば当然、シドが黙ってはいないはずです。彼に伝わることによって情報だけではなく人が動く事に
なります。これで、かつての仲間達が揃う準備は整いました。あとはこちらに向かってもらうだけです。
ここまでは全て予定通りです。
後は、……最後の詰めです。
私の望みを叶えてもらうためにはどうしても、皆さんの力が必要なのです。
――誰にも、理解してもらえるとは思っていません。ですが、私はその結末を望みました。
ですからどうか皆さん、ここまで無事にたどり着いて下さい。
ここが、我々にとってのラストダンジョンとなるならば。
ここで皆さんを迎えることが、私の望む結末だからです。
----------
・短いですが保守がてら。いろいろ勝手解釈がありますが…すすすすみません。
・説明一辺倒になりましたが、とりあえずここまでの経緯まとめな感じになれば良いなと。
(これを投下したらもう後には引けない、と自分にプレッシャーをかけつつ、今後しばらく歳末マターリ進行で…)
・妙なお話ですが、お付き合い頂きありがとうございます。
>>149 リーブの語りで今後の謎解きまでの展開がもっと楽しみになりました
続きが読みたくて仕方ない
マターリ期待してます
出資者キタ!
152 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 09:08:44 ID:o9g1liCGO
ユウナとリュックは双頭バイブを秘所につっこまれてたいる。
俺はユウナの尻穴をじっくりと観察した。
ユウナ「くっ…」
ユウナは秘所より恥ずかしい箇所をみられ赤面する。。
俺はユウナの尻穴にちんぽを近付ける。
ユウナ「そこは違う!ぎゃー!」
ワッフルワッフル
前話:
>>148-149(場面は
>>54-57)
----------
***
「……おかしいですね」
ここまでの作業は拍子抜けするほど順調だった。後から冷静になって考えてみれば、順調すぎるという
事態にこそ疑いを持つべきだったのだ。ここへ来てその可能性に思い至ったシェルクが、ディスプレイの
前で僅かに表情を変える。
「どうしました?」
その変化を見逃さず、男は尋ねる。問いかけに応じて画面から顔を上げるとシェルクはこう答えた。
「あなたは以前、このネットワークに数回侵入した事がある……そう話しましたね?」
「ええ。……まさか、こちらの侵入が発覚していたと?」
「……いえ、そうではありません」
今回、これまで彼が侵入に利用したバックドアから同じようにシェルクは侵入した。それは意識の低い
管理者の招いた致命的欠陥だと考えていた。しかし、どうしても引っかかる。
「どうも不可解です、まるで……」
「まるで?」
男の声に先を促され、口に出した言葉が最も現実的である事にシェルクは気付く。
「あらかじめ、ここへ侵入されることを見越して作られている……そんな気がします」
もっと正確に言うならば、私達が今まで裏口だと思っていた場所が、実は正面玄関だった。状況から考え
ると、その方が適切なのかも知れない。シェルクは静かに、だがどこか他人事のように語った。
「……あなたの言っていることが仮に事実だとするならば、W.R.Oが我々の侵入を許す事に一体何のメリットが?」
「それは分かりません……。……?」
そう呟いたシェルクの指が止まる。そして、元々血色の良くない顔から一瞬にして血の気が引いていった。
「どうしました?」
男の問いを受けてもしばらくは返答できずにいた。それから突然、シェルクは我に返ったように顔を上げた。
瞬時に両手がキーボードの上を走り出すと、たちまち画面上には様々なデータが呼び出され、画面内では
数種類のプログラムが走り出した。男は固唾をのんでその光景を見守っていた。
やがて耳障りな甲高い警告音が鳴り響くのとほぼ同時に、シェルクが振り返ってこう告げた。
「どうやら、本当に“侵入”されているのはこちらのようです」
思っていた以上に厄介な相手だと唇を噛む一方で、シェルクは考えた。
自分がここへ呼び出された本当の理由と、ここへ来た目的について。足下に置いた荷物をちらりと見た後、
こう切り出した。
「こちらの目的であるデータそのものはほぼコピーが完了できそうです。解析と並行して侵入者特定のために
ここへ潜ります……よろしいですか?」
シェルクの言う“潜る”の持つ意味を理解したうえで男は頷いた。それを確認するとシェルクは席を立つ。
「では席を外していただけますか。人前で肌を晒して喜ぶ趣味は持ち合わせていませんので」
シェルクが念のためにと持参してきた荷を解かなければならない時が、どうやら訪れてしまったようである。
男はその言葉の意味を察して扉の方を向くと、見計らったようなタイミングでドアが開く。姿を現したのは、
男と同じような黒いスーツに身を包んだ凛々しい女性だった。状況を補足するように男は背を向けたまま
告げた。
「念のため、監視は付けさせてもらう」
「構いません」
それから男と入れ違いにして女性が部屋に入った。肩まで届かない長さの、やや色の薄い金色の美しい
髪を持った女性だが、表情は凛として隙がないのは先ほどの男と似ている。彼女の背でドアが閉まるのを
確認してから、女性は言った。
「安心して、この部屋のモニタは切ってあるわ」
ただ先ほどの男と違うのは、彼女には冷たさを感じないという点かも知れない。それは同性という意味での
ものなのか、彼女の持つ個性がそうさせるのかは分からなかったが、とにかくシェルクは足下にあった荷物を
解き始めた。
ここまで着てきた服を脱ぎ、念のためにと用意した荷をほどくと、中に納められていたソルジャースーツを
取り出す。それはディープグラウンドで暮らしていた10年間、ずっと身につけていた物だ。
オメガ戦役以降、シェルクは開放されてから体質改善におよそ1年もの時間を費やした。かつてクラウドが
陥ったような魔晄への急性的中毒症状ではなく、彼女の場合は慢性的な魔晄依存症と言って良い。ディープ
グラウンドでは能力の酷使と相まって、1日1回の魔晄照射を受けなければ身体機能を保持できないほど
重度の依存症だった。あれから能力を使う事それ自体は無くなったが、体質が元に戻るまでには時間が
かかった。決して楽ではないリハビリを支援してくれたのは、W.R.Oをはじめとした“理屈抜きのお人好し”な
人々だった。彼女の場合、身体機能の回復はもとより、心の安定を取り戻すためにも時間が必要だった。
こうして魔晄照射をまったく受けなくなってから2年が経過し、魔晄に頼らなくても日常生活を送る分には
支障ないまで回復していた。
(まさか……今さらになってこれを着る事になるなんて)
そう考えると思わず苦笑が漏れた。
前腕部分をすっぽりと覆うグローブに手を通すと、少し違和感があるように感じた。これを着るのもおよそ
3年ぶりだ。機能を回復したとはいえ、止まっていた成長が再開したわけではない。彼女の成長はディープ
グラウンドで繰り返し施された実験の後遺症で、今も止まったままである。残念ながら彼女の感じた違和感は、
成長による体格の変化から起きるものではない。
シェルクが自ら望んで捨てたはずの能力を、今になって頼ろうとしている矛盾に対する感情が、違和感として
表れたと言える。しかし、そんなことを気にしている場合ではなかった。
(環境も設備も満足に整っていないこの状況で、本格的なSNDを行うことはないと思いますが……)
本音を言えば不安だった。
これまでの2年間、シェルクは魔晄照射に頼らず身体機能を維持できていたのは“能力”を使わなかった
為である。能力を使う事は彼女自身の体力と精神力――ひいては生命エネルギーそのもの――を著しく
消耗する。それを補うための魔晄照射だった。
今回、万が一にでもSNDを強行すれば回復する手段はない。
潜行するにしても時間は限られている。短時間でケリを付けて戻らなければならない。自信が無いわけ
ではないが、保証はない。
(…………)
脱いだ服をしまい、かわりに携帯電話を手に取った。地上に戻ってからというもの、不安になるといつも
それを見つめていた。
3年前の再会の折、気がつけばいつの間にか登録されていたアドレスがあった。教えてと頼んでもいない
のにと言ったが、けっきょく削除することができずにいたアドレス。
返信は来ないと分かっていながらも彼女は3年間、そのアドレスにメッセージを送り続けている。
事実、返信は未だに一度もない。
それでもシェルクにとって唯一、姉に思いを届ける事ができるのはこの携帯電話だった。
「……どうしたの?」
手にした携帯電話をじっと見つめて佇んでいるシェルクに、訝しげに声をかけたのはあの女性だった。
呼ばれて顔を上げると、シェルクは小さく微笑んでこう申し出た。
「メールぐらいは平気ですか?」
「悪いけど……宛先にもよるわ。誰に?」
問われて、少し気まずそうにシェルクは視線を外す。それから俯いてこう言った。
「私の……姉です」
その言葉に女性は一瞬、表情を変える。シェルクは顔を上げ再び向き直ると、平静を取り戻して
こう続けた。
「でも安心してください、こちらが一方的に送るだけのものですから。これは……私の気休めに過ぎません」
「なぜ?」
わざわざ届かないと分かっていてメールを出すなんて。と、口に出さずとも女性の顔に書いてある。きっと
素直な人なんだろうとシェルクはぼんやりと考えていた。
それから問われている事に答えるべく、それを表現するのにもっとも相応しい言葉を探し、笑顔を作った。
「姉は3年前、私を庇って死んでいるからです」
女性は驚いた表情のまましばらくシェルクを見つめていたが、やがて目を閉じてすまなそうに告げた。
「嫌なことを聞いたわね、ごめんなさい」
「事実ですから、なにもあなたが気にする必要はありません。それに3年前、私が姉を拒んだことを今に
なって悔やんでも、どうにもなりません。でも……」
「その気持ち、分からなくもないわ」
彼女は柔らかく微笑んで、まるで何かを懐かしんでいるように呟いた。
ああ、とシェルクは思う。きっと彼女も、自分と同じなのだろうと。
「……良いわ、メールを送信し終わるまで待ってるから」
そう言って彼女はシェルクに背を向けた。そんな彼女に「ありがとう」と呟いて、シェルクは携帯を手に
操作を始めた。慣れた手つきで文字を入力し、送信ボタンを押す。一度も返信のない宛先に向けて
メッセージが発信されたのを確認した後、彼女はスーツのポケットから細いコードを取り出すと、充電用の
端子にそれを繋げた。
傍目から見れば充電中の携帯電話と区別はつかないが、シェルクの端末にはある特殊な処理が施されて
いた。携帯電話にさされたコードを辿ると、ソルジャースーツに繋がっている。
(……準備は整いました)
もういちど携帯端末の文字入力を実行する。
――#VIN
幸いにも、その行動が示す意味を知っている者はここには誰もいない。
シェルクは端末の前に再び腰を下ろすと、コピーしたデータの解析を始めるべく、プログラムを起動させた。
----------
・DCFF7第7章を見ると本当は逆(端末はヴィンセント)ですが、まあ双方とも細工を施したって事でひとつ。
・…監視役さんについては書き手の趣味です本当ごめんなさいすいません。
159 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/20(水) 12:14:20 ID:r1H0ghMUO
>>152 おしりの穴に挿入されるのは痛いんだよ。出し入れされたあと、すーすーして変な感じがする。
ローションとコンドームはわすれずにね
ここは18禁鯖ではないし、妄想スレでもありません
エロ・下品は18歳以上になってから、しかるべき板でどうぞ
>>158 時間軸はW.R.O.と同じ?
DCは未プレイだからシェルクの能力はSNDくらいしかわからないけど、楽しめた。
#VINとは?また謎が増えたなぁ。
それから、
>わざわざ届かないと分かっていてメールを出すなんて。と、口に出さずとも女性の顔に書いてある。きっと
>素直な人なんだろう
ここの描写が好きだと思った。
>>158の描く彼女のキャラクターはイイ
>>161 >時間軸はW.R.O.と同じ? ×
時間軸はW.R.O.サイドと同じ? ○
続きwktkです
>ラストダンジョン
_、_
( ,_ノ` )y━・~~~ GJ!!!!!!!!!!!!!!
>#VIN
DCでのアレですよね。ヴィンの携帯端末を少しいじって、
シェルク『“#VIN”と押せば、私の携帯と直通通信が可能です』(うろ覚え)
っていう。要するに「あなたの携帯に私の番号入れといたからね」的なヤツ(笑)
ワクテカしつつマターリと続きをお待ちしてます。
165 :
162:2006/12/21(木) 00:06:28 ID:3qSRlLfi0
>>163-164 <#VIN>参考にさせてもらいました。dクス。
シェルクって意外と積極的なんですね。
電話がヴィンセントに繋がるってことは、少し過去もしくはほぼ同時刻の出来事?かな?
うはwww妄想がひろがりんぐwww
続きまったり期待してます。
保守
ほ
ぼ
ま
り
あ
ー
ん
ど
175 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/28(木) 08:15:51 ID:YA2wNJl/O
アーシェ「いくー」プシャー!ガクッ!
アーシェはモンスターの触手責めで失禁してしまった。
女ジャッジ「ふっ、元王女といえども、こんなものか。私が昔受けた凌辱はこんな程度ではないわよ」
パシッ!女ジャッジの鞭がアーシェの尻にあたる。
アーシエ「くっ!」
女ジャッジ「さて、パンネロとやらの処女でもいただくか゜」
パンネロ「いやー!」
アーシェ「約束が違う!」
176 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/28(木) 08:22:39 ID:YA2wNJl/O
女ジャッジ「安心しろ。処女といっても後ろの処女だ。」
フラン「なーんだ、それならいいぞ」
アーシェ「意味がわかってるの!」
パンネロ「?」
女ジャッジ「この娘にとっては後ろのほうが苦痛かもしれないがな!」
女ジャッジはペニバンを装着し、パンネロの尻穴にぶちさした。
パンネロ「ぎゃー!」
178 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/28(木) 13:53:20 ID:YA2wNJl/O
>>177 アナルセックスの経験のないおこちゃまは黙ってな!女は尻穴の方が感じるんだぜ!
ワッフルワッフル
180 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/29(金) 07:41:16 ID:h9nWzk7xO
※エロは無しでお願いします。
※sage推奨。
舞台:FF7AC終了直後
参照:
>>13-19。デンゼル編に至る経緯
----------
みんなが集まったあの日。
教会から帰る前に、こっそり抜け出して立ち寄ったあの家。教会からはちょっと歩くんだけど、でも
どうしても寄っておきたかった。ミッドガルに来る事なんて、もうほとんど無くなっちゃったから。
教会から出ると、周囲には『ここは立入規制区域です』と書かれた立て札とロープが張ってあった。
そのロープをくぐって歩き続けた先に、目的の家があった。
どうしてあの立て札があるのかも、もちろん分かってる。だけど、ここを通らないとあの家には行け
ないから。がれきが散乱する道を歩きながら、まるで自分に言い訳でもしているような気分だった。
時折、強い風が吹き抜ける。そのたびに何かが軋むような音を立てるので、立ち止まって見上げると
プレートの底が見えた。私が知っているミッドガルの空と、変わらない風景だった。
おねえちゃんに連れられて、はじめて七番街から出た日のことを思い出す。いっぱい色んなお話を
したよね。おねえちゃんはクラウドのこと、私にたくさん聞いてたよね。
今は一人だからかな? 家までの道がとても長く感じる。
こうしてしばらく歩き続けてたどり着いたのは、おねえちゃんの住んでいた家。大きな屋根、広い玄関、
スラムでは珍しい庭の花壇――だけど今は、大きな屋根は崩れかけていて、広い玄関にはがれきの山、
庭の花壇には枯れた草ばかり。
この家にはもう、誰も住んでいない。
変わり果ててしまった風景から呼び起こす、懐かしい記憶。
「おねえちゃん。……、……ありがとう」
玄関の前に立って、そう言った。ここにはもう、おねえちゃんも、エルミナさんもいない。それは分かって
るんだけど。どうしてももう一度、ここへ来たかったんだ。
門の前で立ち止まっていると、後ろの方からがれきを踏みつぶすような音が聞こえた。それから、頬に
当たる風の方向が変わる。
「……誰!?」
小さな不安と、それ以上の期待を込めて振り返った私の前には、モンスターの巨大な影があった。逃げ
出すことも、叫び声を上げることもできなくて、ただ瞼を閉じた。
――「ここは立入規制区域です」
瞼の裏に映ったのは、張られていたロープとそこに書かれていた文字だった。
それからティファ達に黙ってここへ来た事を、心の中で後悔した。ロープを張ってくれた人にも謝らなくちゃ。
勝手に入っちゃってごめんなさい。危ないよって言ってくれてたんだよね?
どうしよう、私マテリアも持ってない。……マテリアがあっても投げるぐらいしかできないけど。
「……助けて」
呟いた次の瞬間、響き渡った2発の銃声。目の前のモンスターががれきの上に倒れた音がした。
恐る恐る瞼を開き、周囲を見回した。私の目の前で、銃弾が命中したモンスターが倒れてた。それ以外は
がれきが広がるだけだった。
(誰もいない……)
最初は心配したティファ達が来てくれたのかと思ったけど、ティファやクラウドは銃を使わない。父さんの
銃はもっと大きな音がする。そうすると、誰だろう?
そう思っている私の後ろから、声がした。
「……『ここは立入規制区域です』の表示を無視して、こんな場所に女の子が一人で来るなんて。とても
感心できませんね」
ゆっくり落ち着きのあるしゃべり方、聞き覚えのある声。まさかと思って振り返る。玄関の横に、地味な色の
スーツを着た男の人が、厳しい視線を私の方に向けて立っていた。おろした右手には拳銃が握られている。
「ミッドガルは封鎖されて以来、魔物の巣窟です。分かっているはずですよね……マリンちゃん」
「リーブさん?!」
言いながら、懐へ銃をしまうとこっちに向かって歩き出した。きっと怒られるんだと思って、頭を下げようとした。
でも、リーブさんはにっこりと微笑んで「もうダメですよ?」と言って頭を撫でてくれた。
「お送りしましょう。皆さん、まだ教会にいますね?」
「うん!」
そう言って差し出された手を取る。それから、手を繋いで来た道を戻った。エルミナさんと3人で、この家を
出たときのことを思い出す。
歩きながら、リーブさんに聞かれた。
「それにしてもどうして、あんな場所に一人で?」
「……どうなってるかなと思ったんです。クラウドやティファに付き合ってもらうのも悪いなって思って」
「だからといって、一人でここまで?」
「……ごめんなさい」
ロープを張ってくれたのは、やっぱりリーブさん達だったんですね。だけど良かった、謝れた。
……あれ?
「リーブさんこそ、どうして?」
「あ。……私、ですか?」
見上げたリーブさんはしどろもどろになって、視線まで逸らされた。こんな仕草をする時は、何か隠してる
んだ。デンゼルやクラウドもそうだったから、すぐに分かった。
こう言うときはじっと相手の目を見るのよ、ティファがそう教えてくれた。だからリーブさんの顔をずっと
見上げてた。
「……どうなってるかなと思ったんです。その、とても個人的な事ですし……他の方に付き添ってもらうのも
気が引けたものですから」
「だからって、一人で?」
「……すみません」
ロープを張ってくれたのは、リーブさん達だったと思ったんだけどな。
……あれ?
「これじゃあ、どっちが怒られてるのか分かりませんね」
「そうですね」
そう言って笑った。リーブさんが笑うのを見るのは、まだ数えるほどしかなかった。初めて会った頃は、
難しい表情をしてばかりでしたよね、エルミナさんと口げんかばっかりだったし。この家を出るときも「ここは
危ないから」と言って私達の前を歩いてくれた、父さんよりは小さいけれど、大きな背中を覚えてる。
おねえちゃんの事を教えてくれた時も……。
リーブさんの横顔は、いつも苦しそうに見えた。
だから、笑っているリーブさんを見ることは少なかった。ちょっと嬉しい……かな。
来たときと同じ道のはずなのに、帰りはとっても早かった。
最初にロープをくぐった場所が見えると、リーブさんは繋いでいた手をゆっくり離してからこう言った。
「ここからでしたら、マリンちゃん一人でも安全ですね」
「……リーブさんは?」
教会には行かないんですか? そう尋くとリーブさんは笑顔を浮かべたままで何も答えてくれなかった。
「みんなに会わないんですか?」
「教会にはケット・シーがいますから、大丈夫ですよ」
「でも……」
「ありがとう、マリンちゃん」
私の言葉を遮って、「ありがとう」と言った時、笑顔だったリーブさん。
だけど分からなかったんです。
リーブさんともう一度会うときまで、ケット・シーは預かっておきますね。だからその時は、教えてください。
どうして何も言わずに、私達の前から去ってしまったんですか?
―ALERT(マリン編)<終>―
----------
・相変わらず、キーストーンの件ではケット・シーとリーブの共謀による誘拐と(勝手ながら)位置づけてます。
・エルミナとマリンにエアリスの死を告げたのはリーブだったと記憶していますが、間違ってたらすんません。
・FF7ACのラスト、集合写真にリーブの姿が無かった事が淋しかったのでやった。反省はしていない。
・時間経過はマリン編→デンゼル編→前スレ550-552。後出しっぽくて申し訳ないです。(マリン一人称で苦戦しry)
切ない…そこがまたイイ。とにかくGJ!
前話:
>>154-158 ----------
***
ユフィが単身エレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押してからかなり時間が経っているような気が
したが、未だ目的階に到着する様子はなかった。
それによく耳を澄ませばモーター音は聞こえてくるので、エレベーターが何らかのトラブルを起こして停止
していると言うのでも無さそうだ。だから無理やりドアをこじ開けるわけにも行かず、フロア到着を待つ以外に
やることが無かった。
周囲を見回してみても建物の外観同様、簡素というか無機質というか、広々としたエレベーター内には
特に変わったところはなく、それでも何か仕掛けがあるんじゃないか? と思い当たる箇所を探ってみた
ものの、けっきょく成果はゼロだった。
「退屈だなぁ〜。アタシも残っとけば良かったかな?」
今さらになってそんなことを言いながら、手持ち無沙汰にしていたユフィは携帯電話に手を伸ばした。
どうも、じっと待っているのは性に合わないらしい。
待ち受け表示を確認すれば、通信圏内である事を示すアイコンが隅の方に見えた。1Fエントランスで見た
時よりは通信状況が良くないようだが、繋がらないわけでは無さそうだ。
(そう言えば)
考えてみればこの携帯電話から全てが始まった――ユフィはここ最近の慌ただしい動きを振り返る。
事の発端はヴィンセントからの妙な着信だった。普段は電話なんて滅多にどころか全くしてこない人物からの
着信に、ユフィは何事かと応答するが、次に出て来た言葉が。
「リーブはどうしている?」
だった。
てっきり重大な事件でも起きたのかと身構えて出たものだから、ユフィからすれば拍子抜けである。
そんなの本人に直接聞けば良いじゃんと言って、逆にユフィはヴィンセントの近況を聞き返した。あの日――
オメガ戦役集結――からW.R.Oにも顔を出さなくなってずいぶん経っていたこともあり、たまにはみんなで
集まろうよ! と言った具合に、気軽に声をかけたつもりだった。
それに、どうせ誘ってもすぐ話に乗ってくる様なタイプではないと知っていたし、案の定ヴィンセントは黙った
ままで、電話を受けた側のユフィが一方的に話を続けることになった。
自分は相変わらずW.R.Oとウータイを行き来しながら、世界各地を飛び回っていること。
クラウドとティファはあれからエッジに戻って街の再建に取り組んでいること。マリンとデンゼルが、店にも
遊びに来てよと言ってた事もついでに伝えておいた。
バレットは新資源の発掘作業に精を出しているらしい。W.R.Oには時折、発掘の進捗状況の連絡が入ってくる。
その話し声が相変わらずやかましい事。
シドは飛空艇師団の再建と、復興作業中の各地への物資輸送に協力しながら今も空を飛んでいること。
奥さんも元気で、「いつになったら家に来る?」とふたりから催促された事も付け加えた。
ナナキはコスモキャニオンでのんびりしてるそうだ。
シェルクはW.R.Oの施設を利用して1年近くのリハビリを経た後、行方不明の姉を捜すためにここを出て
行った事。
聞かれてもいないことを、けれど聞きたいと思っているに違いないだろうとユフィは賑やかに語って聞かせた。
いつものように黙って、ヴィンセントは話に耳を傾けている。
こうして一通り話し終えた後、ユフィの言葉が唐突に止む。
――「リーブはどうしている?」
ようやく、ヴィンセントが電話をかけてきた用件に自分が答えられないことを知った。
「そう言えば……おっちゃん何やってるんだろうね?!」
ヴィンセントの返答を聞くこともせずに――と言うよりも、そもそも質問したのはヴィンセントだったはずなの
だが――ユフィは「またかける!」と言って慌ただしく電話を切った。
ちなみにユフィが直後にかけた相手が、シドだった。
物資輸送などに関して、ふたりが以前からやり取りをしているのを知っていた。だからシドに聞けばリーブの
近況を教えてくれるのかも知れない。ユフィはそう考えたのだ。
しかし事情は違っていた。
こうして「たまにはみんなで集まろうよ」と気軽に話していた事が、意図せず実現してしまった。仲間の中で
唯一、ケット・シー――リーブが不在のまま、彼らは今ここに集っている。
「……?」
そこまで考えてふと、ユフィはある疑問に思い至って携帯電話の画面をもう一度見つめた。それからボタンを
操作しアドレス帳を呼び出すと、待ち受け画面から切り替わった一覧の中から、リーブの名前を選び出す。
「そう言えば、おっちゃんに直接電話かけてなかったな……」
アタシってばなんて冴えてるんだろう! そんな風に言いながら通話ボタンを押した。呼び出し音が聞こえて
きた。1回、2回、3回……。
「あははは〜。出るワケない、よねえ?」
それでも未練がましく携帯を離せずにいたユフィの耳に、別の音が聞こえた。
エレベーターが目的階に到着し、扉が開かれる。開かれた扉の先には、真っ直ぐに伸びる通路が見えた。
「おろ〜一本道だ」
電話を切るか否か迷った末、一度耳から携帯を離すとエレベーターから出て周囲を見渡した。ユフィの
背後でエレベーターの扉が静かに閉まる以外には何の気配も感じなかったので、聞こえてくるのは相変わらず
コール音ばかりだったが懲りずに携帯を耳に当てながら道を進んだ。
部屋らしいものは見あたらず、通路には照明すらついていない。ただ真っ直ぐに伸びた通路の先は
仄明るかったのでそれを目指して歩を進めた。屋上があるのならそこへ通じているのだろうかとも考えたが、
とにかく行って確かめてみるのが一番だ。
やがて、通路の先にある部屋にたどり着いた。開けっ放しにされたドアの先には照明と、たくさんのモニタに
囲まれた部屋の様子が見えた。通路に漏れていた光の正体が室内の設備だと分かる。
周囲を警戒しながらユフィが室内に足を踏み入れると、部屋の奥の方から声が聞こえてきた。反射的に
ユフィは扉の横に身を隠し、声のする方向に注意を向けた。
「我々W.R.Oは、“星に害をなすあらゆるものと戦う”ための組織である。私はこの組織の設立者として
この理念に従い、通信を経由して飛空艇師団に次の通り正式要請をするものとします。
建造中のW.R.O本部施設の破壊と、現局長の抹殺……。
尚、作戦の実行は今から1時間後。作戦への参加は各隊員の自由意思を尊重するものとします。
……以上、通信を終了します」
ユフィは我が耳を疑った。だけどどう考えたって聞き間違うはずがない、この声は――。
それから、耳に当てていた携帯電話から聞こえてくるコール音が途切れ、ようやく相手と繋がった。
『ユフィさん、話は聞いていましたね? 早く建物から避難してください』
こうしてユフィはもう片方の耳を疑う事になる。
それから、かつんと硬質な音がしたかと思えば。
「わっ!?」
突然、視界が陰ったので顔を上げようとすると青い衣が目に飛び込んできた。驚いた拍子にバランスを崩し、
尻餅をつきながら見上げてみれば、携帯電話を片手にリーブが立っていた。笑顔を浮かべるでもなく、ユフィを
見下ろしながら、もう一度言った。
「ユフィさん、聞いたとおりです。この建物は間もなく破壊されます。早く建物から離れてください」
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>>165を超える妄想を自分が実現(どっちかって言うと表現)できるか分かりませんが、次から
エライ妙な展開になりますので、お手元に石をご用意してお待ち下さい。(でも、できれば投げないでw)
…ここまででも充分妙な展開ですが。
今年もお世話になりました。毎度妙な方向に突っ走ってる拙文ではありますが、お付き合いいただいた方、
レスを下さる方、生暖かく見守ってくださる方、みなさん本当にどうもありがとうございます。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。
GJ!
193 :
【ぴょん吉】 :2007/01/01(月) 21:02:25 ID:EdatnYEaO
今年もいい作品が読めるのを楽しみにしてます。
>>191 ついに本物のリーブキター?
今更だけど
>>191氏の小説は情景が脳内再生しやすくておもしろい
今後の展開と続きマターリ期待してます
まったりワクテカ
前話:
>>187-191(場面は
>>109-113からの続き)
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「ティファ!」
彼女の名は、悲痛な叫び声によって紡がれた。呼ばれたティファの耳は聞き慣れた声を確かに捉え、彼に
自分の名を呼ばれたと言う事も理解している。けれど首を締め上げられている状態では、満足に返事をする
ことも出来ない。
「何してるティファ! 逃げろ!!」
その言い草は、まるで彼女を責めているように聞こえた。事実、クラウドは反撃せずにされるがままでいた
ティファを責めている。エレベーターホールの隅に追い詰められた彼女を助けに行こうにも、際限なく沸いて
出てくる射撃装置に行く手を阻まれ、思うように身動きが取れなかった。この無数の射撃装置は自分たち3人を
引き離すための罠だったと言う事に、今さらながら気付いて唇を噛んだ。
エレベーターホールとはほぼ対称の位置にいたヴィンセントはクラウド同様、無数の機械群を相手にしな
がらも様子を見かねて引き金を引いた。重々しく響き渡る銃声は1発、フロアにひしめき合う射撃装置の
合間を縫ってティファの首を締め上げていた男の手元に命中する。
力がゆるんだ隙に、ティファは男の拘束から逃れると、すぐさま男と距離を置くためにフロア中央に向かって
飛び退いたが、着地に失敗して片膝をついた。そのまま体勢を立て直せずにがっくりと項垂れ、乱れた呼吸を
整えようと肩を大きく上下させた。
クラウドは剣を振りながら後方のティファに言い放つ。
「ティファ、躊躇うな! ……あれは人形だ」
「……わ、分かってる。だけど……!」
呼吸を整えながら、ティファは呼吸以上に乱れた精神を落ち着かせようとした。だが、上手くいかない。
追い打ちをかけるようにヴィンセントの声が飛ぶ。
「それはリーブによって造られた、リーブという人形だ。見た目に惑わされているとこちらが殺られるだけだ!」
ふだんは冷静沈着なヴィンセントにしては、珍しく強い口調だった。恐らく、言っている本人にも心の動揺は
少なからずあったのだろう。
彼らに言われなくたって、そんなこと頭では分かってる。冷静さを欠いた様子で、呼吸が完全に整わない
うちにティファは顔を上げて叫ぶように反論した。
「分かってる……でも、でも! ……できないよ」
整わない呼吸のためか、どうしても語尾が掠れる。そんな自分の声がとても頼りなく聞こえた。
同時に、顔を上げたティファの視界の中央に男の影が映った。彼は何も語らずに、無表情のままでティファを
見下ろしていた。
彼の身のこなしは、ティファ達にも引けを取らない程のスピードを備えていた。だが、ティファが抵抗を示せ
なかったのはその為だけではない。ティファが驚く表情を作る間も与えず、男の手は容赦なく彼女の首に伸びた。
反射的に身を引こうとしたが、回避するにはあまりにも遅すぎる。
こうしてティファは再び呼吸と、身動きを封じられる。
「い、くら……人形でも……」
こんな状況下でもちろん余裕など無かった。にもかかわらずティファは反論の続きを口にしながら、ようやく
差し出した両腕は、しかし残念ながら申し訳程度の抵抗にしかならなかった。再び首を絞められながらも、
ティファは男の顔を見つめてさらに言葉を続けた。
「……彼、には。……命が、あるんで……しょう?」
震える声も、目尻に浮かぶ涙も、その多くはティファが肉体に受けている苦痛への身体反応によるものだった。
だがその中の一部には、彼女自身の動揺――間接的であれ、かつての仲間に自らの命が奪われようとして
いる現状への悲嘆や疑問――がもたらす影響もあった。
「それは……」
文字通り、ティファからの必死の問いかけを受けたヴィンセントは声を詰まらせた。定めていた照準がぶれ、
発射した銃弾は見当違いな方向へと逸れていく。
――インスパイア。
それは“無機物(モノ)”に“生命”を吹き込む異能力。
つまり、ここにいる“彼”には……。
ヴィンセントにはそれを否定することが出来なかった。いや、むしろティファの言う通りなのかも知れない。
だからといってこのままで良いはずはない。横殴りに叩きつける雨のように降り注ぐ銃弾を避けながら、もう
いちどエレベーターホール側に銃口を向ける。
答えが出ないまま、それでも引き金を引かねば逆にティファが殺される。
しかし迷う者が銃を手にしても、照準が定まるはずはなかった。
ティファの首を絞める男は無表情のままだった。
「あな、た……は。……生……きて、……?」
まるでティファの声を遮ろうとするように、男の手に力がこもった。ティファの首を絞めながら、その身体を
持ち上げる。男の手と、自身の体重によって気道をふさがれ声が出なくなってしまう前に、すべて言い終え
ようとしたが、どうやら間に合いそうもない。
ティファは力の入らない腕をなんとか持ち上げて、自分の首を絞めている男の手に添えた。
そうして、彼女は精一杯微笑んだ。声が出せなくなってしまっても、目を逸らさずに伝えようとした。伝わる
と思った。想いを伝えられるのは言葉だけではないと、彼女は今でもそう信じている。
(あなたは……生きてる)
彼女の頬を伝う涙は、身に受けた苦痛による生理現象ではない。
紛れもなくそれは、感情によって流された涙だった。ただ今は、その感情の正体を探すことができない。
もはや限界だった。男の手に添えていた自分の手が重力にさえ逆らえずにだらりと垂れ、目に見える景色は
徐々に色を失い始めていた。苦しさよりも、体中が酷く重たかった。
抵抗する力と術を失ったティファは、まるで人形のようだった。
「ティファーーー!!」
クラウドの叫び声と、ヴィンセントの放った銃声がフロア内に同時に響き渡る。その声と音が、幾重にも反響
していた。
薄れ行く意識の中ティファはそれを聞きながら、目の前の男が「笑った」のを見た。
――あなたは、生きてる。
次の瞬間、男はティファをエレベーター横の壁面に叩きつけた。ティファの目にはまるでスロー再生された
映像のようにゆっくりと景色が流れていく。やがて、全身に走る激痛を最後にティファの視界から全ての色が
失われ、意識は途切れた。
壁を突き破りさらにその奥に広がった闇の中へ投げ出されたティファを救える者は、このフロアには誰も
いなかった。
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・都合で申し訳ないのですが、投下が今まで以上にまちまちになる可能性が大きいです。どうもすみません。
2週〜月1ぐらいでなんとか。(…とは言え話はこんな方向で突っ走りますが)
今年も沢山の作品が読めますように。