もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :
2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0 ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です
・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/ まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html 避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi
>>1 乙です
投下します
拙いですがよろしくお願いします
妙に耳に馴染んだメロディが、頭の奥に響いてくる。 ―名前を、あなたの名前を決めてください。 男とも女ともつかない不思議な声が メロディよりもくっきりと脳を揺らす。 名前?名前なんて自分で決めるもんなの?俺の名前は、 そこで気がついた。ああ、なんだドラクエだ。ドラクエのオープニングだ。 ―冒険の書を作成します。あなたの名前を決めてください。 そういえば昨夜、寝る前に再プレイやろうか迷ったっけ。 だからこんな夢・・・、 ああ、そうか夢か。意識があるまま夢、ってたまに見るもんな。 それにしてもドラクエって。はまりすぎじゃね?俺。ちょっと痛くね?
―冒険の書を作成します。あなたの名前を決めてください。 えーと、そうだな。名前名前。 なんにしよっかな。いっつも悩むんだよなー。 前なんて付けたっけ?ああティムだ。 ティム・ロビンスのティム。思いつき。ダセ。 ましな名前思いつかねーよ。やべー、どうするかな。 あ、パパスの息子だからサンでいっか。サン。 うん、まあ悪くないだろ。ムスコとかよりはいいだろ。多分。 「サンです」 ―サン。あなたの冒険の書が作成されました。 ではお気をつけて、冒険をお楽しみください。 言いながら声が遠くなる。 ドラクエ久し振りだなぁなんて思っていると 次第に頭の中の音楽も遠ざかっていく。 やがて世界が暗転した。
不意に体がぐらりとゆれて、俺は目を開けた。 揺れは続いている。 地震かと思って身を固くしたけれど それとは違うとすぐに気付いた。 波に乗るような緩やかな揺れが リズムを刻むように体を掬っている。 ―――波。 『どうした?まだ寝ぼけているのか?』 重低音の落ち着いた声。聞いた事の無い声。 『少し表の風に当たったらどうだ、長い船旅で疲れたろう』 それが自分に向けられていると気付くまで 僅かに時間が必要だった。 そしてその言葉の意味を理解するのに、もう数秒。
弾かれるように身を起こすと、木の板で出来た壁が目に入った。 視線を巡らす。 木造建築の古いアパートのような、狭い部屋だ。 部屋の隅に同じ木材の小さなテーブルと、椅子。 そしてその椅子に窮屈そうに腰掛けた、がたいの良い男。 使い込んだ跡の目立つ皮製と思しき粗末な着衣を身に着けて 切りっ放したような髪を後ろでひとつに纏めている。 男は、体躯にそぐわないほどのやさしい眼差しで俺を見つめて、言う。 『疲れが取れないようならまだ休んでいてもいいぞ。 船が着いたら起こしてやるから』 一瞬思考が混乱する。 勿論、俺はこんな部屋で眠りについた記憶も 船に乗った記憶さえもない。 それならここはどこか。この男は誰か。 俺はここで一体何をしているのか。 夢うつつで聞いたあのメロディがよみがえる。 名前を決めてください。あの声。 頭を振る。そうだ夢の続きだろう。 ならば早く覚めればいいのに。
額に当てた手の違和感に、俺はまたはっとして自分の掌に目を落とした。 小さい。 体をそろそろと動かして、床に下りる。低い。 見たことのない部屋、だけどそれくらいの感覚は残っているはずだ。 ベッドの縁に座り込んでも、足がつかない。 床に足をつくと、ベッドが腰の高さに 通常なら考えられない高さにある。 おぼつかない足で一歩、二歩と歩を進める。 体が上手く動かせない。 まるで自分の体ではないように。 『やっと目が覚めたのか? そんなところにいないでこっちに座ったらどうだ』 さっきの男が穏やかな口調で語りかける。 座っているはずの男の表情が 顔を上げないと見えない高さにある。 肩にかかる違和感に顔を傾け手を当てると、 紫色のマントと伸びきった黒い髪が自分の頬に触れた。
―――ドラクエ。5だ。幼少期、始まりの船だ。 髪の毛も払わず頬をつねる。 夢か現実かを確かめるために、今、他に方法が思いつかなかった。 じわりとした痛みが頬に広がる。 納得のいく回答を導き出すには今のところ一本の道しかなかった。 理屈では、只ひとつだ。 けれど理屈というなら、それは一番納得のいかない、理解できない答えだった。 『なにをしてる?来ないならこっちから行くぞ?』 のしりとした大きな体をおもむろに動かして、男が俺の元に歩いてくる。 恐ろしいまでに聳え立った男の体から 太い腕が二本、俺の両脇を捉えた。 軽く肩の高さまで持ち上げられる。 普段より更に高い位置の目線。その双眸をくしゃりと崩して、 『父さんな、この旅が終わったら少し、落ち着こうと思ってるんだ。 あそこは小さいが良い村だ。早くお前にも見せてやりたいな』 そう言うと男は、ゆっくりと俺に負担がかからないように床に下ろし 一度だけ俺の頭に手を乗せると のしりとまた椅子に腰を下ろした。
父さん。・・・パパス。 理解と同時にゲームでの悲しい別れが脳裏に浮かび、目が潤む。 額の間が引きつるように痛み 俺は瞬きをして涙腺を押さえ込んだ。 パパス。やっぱりそうだ。ドラクエだ。 じゃあ、やっぱりこれは夢か。 だって現実ではありえない、悪い夢としか説明がつかない。 ゲーム脳ってやつかな。相当やられてるっぽい。 しかしそれならそれで、夢を楽しんじゃえばいいんじゃねーの? こんな夢、見たことないよ、俺。 開き直りに似た気持ちで俺はパパスに声を掛けた。 「パ・・・っと、父さん」 『ん?どうした?』 テーブルの角のため死角になっていたが パパスは読書をしているようだった。 ぱら、とページを繰る小さな音が狭い船室に響く。 「俺、外見てくるよ」 『うん・・・ん?お前 いつからそんな大人びた口をきくようになったんだ?』 穏やかな顔はそのままに 少し意表を突かれた色を瞳に映して、パパスが顔を上げる。 「あ、その辺の本に書いてあったよ?じゃあ僕行ってくるね」 努めて子供らしい口調で言った途端 しまった、幼少期主人公は文字読めないじゃんと気付いて 突っ込まれないうちにと俺は慌てて階段を駆け上がった。
読みにくいですね・・・ 後ほどもう少し続きを
支援
>>16 乙です!
5の主人公は波乱万丈なのですごく楽しみです。
読みにくいのは、「」や『』でくくった会話も段落にしちゃえば解消するかもですね。
>>17 感謝です
>>18 ありがとうございます
段落わけるのは考えたんですが、
自分の文章のテンポとあわなくて苦戦してます
ともかく、できるだけ段落を増やしてみました
と言うわけで
>>15 続き投下
木の扉を開けると外は快晴だった。 明かりが差すとはいえ室内にいた俺の目に 鮮やかな太陽の色が映る。 反射的に目を閉じても、瞼を通して 容赦ない光が眼球を刺すのがわかった。 手を庇代わりに額に当てて目が慣れるまでをやり過ごす。 波は穏やかに船体を揺らし続けている。 『よう、ぼうず。今ごろ起きたのか』 頭の上から降ってきた声に目をやると 丁度逆光に紛れて真っ黒く、舵を掴む男の影が見えた。 男からも見えるように大きく頷く。今度は背後から 『ぼうずのうちは寝るのが仕事だもんな』 がっはっは、と同じような背格好をした男が大きな笑い声を上げる。
船員だ。白いシャツを邪魔臭そうに肩までたくし上げ、 頭には明るいオレンジ色のバンダナを巻いている。 『父さんはまだ部屋かい?ぼうず一人で迷子になるなよ』 からかうように舵の船員が笑う。 そこまでバカじゃねーよ、と 心の中で毒づきながら改めて甲板を見渡すと 船室と同じ大きく組まれた木造の船の向こう側に 透き通るような青い空と、真っ白くそれを反射した波が見えた。 陸地らしきものはまだ見えない。 ただただ広がる青と、輝く白。 現実でだってこんな鮮やかな色の景色は見たことなかったな。 俺は少しだけその景色に見とれた後、くるりと踵を返した。
とことこと小走りに船の上を駆け回る。 急ぐ必要はないのだろうけれど 幼児の歩く速度は実際は既に成人している俺には 気が遠くなるほどまどろっこしいものだった。 しかもすぐに汗が噴出し、息が上がる。 声を掛けてくる船員を適当にかわしながら船倉に潜り込むと、 案の定大きな樽が幾つも整然と並べられ、その奥には宝箱 ・・・というよりはただの荷物箱のように見えたけど・・・ が幾つも並べられてあった。 樽を覗き込むがしっかりと封がしてあって開くことが出来ない。 中はいっぱいに何か詰まっているらしく、 持ち上げて割るなんてことも出来そうになかった。 なんじゃこりゃ、約束が違うじゃねーかよ。 ぶつぶつと文句を言いながら幾つかの樽を覗き込む。 そのうちのひとつ、縄で縛られた隙間に何か挟まっているのが見えた。 破らないように引き抜くと何かのチケットのようだ。 やっと見つけた獲物を大事に腰袋にしまいこみ 更に俺は船倉の探索を進めた。
宝箱は厳重に施錠されてひとつとして開かなかったけれど、 別の樽の隙間から小さな袋に入った お茶の葉のようなものを見つけた。 きっとこれが薬草だろうと思い 甲板にあった樽も入念にチェックし 結果何枚かのチケットと薬草を見つけた。 外の探索が終わって、少し休もうと扉を開けると 元の船室よりわずかに高価そうな装飾が目に飛び込んだ。 手前に小奇麗なテーブルと椅子のセットが置かれ 初老の紳士風の男と中年太りの皺の目立つ男が 親しそうに話し込んでいる。 扉の閉まる音に紳士風の男が顔を上げ、 『やあ、ぼうや。ひとりかい?』 と微笑んだ。 口にくわえたパイプから白く煙が立ち上がる。 ああ、船長だな、と俺は理解した。 明らかに船員とは趣の違った真っ白な制服に 帽子を頭に乗せてゆったりと椅子に腰掛けてこちらを見ている。 『ぼうやはお父さんと旅をしているんだよ。な?』 もう一人のほうに目をやりながら笑顔を崩さずに、船長が続ける。
『この子の父さんには世話になってるんでね、 今回は特別ってことで同乗してもらってるんだ』 ああ、と頷きながらもう一人が俺に笑顔を投げてよこす。 愛想笑いでやり過ごして 俺はテーブルの横をすり抜けて奥へ向かった。 背中から、かわいいねえ、と男がつぶやくのが聞こえた。 奥の本棚にはぎっしりと本が詰め込まれている。 何冊か手に取ってみたが 内容はさっぱり何がなんだかわからなかった。 流石に日本語で書いておいてくれるほど 親切な世界ではないようだ。 喋ってるのは日本語なのに と腑に落ちない感を抱きながらも 改めて自分がこの世界には 不釣合いな存在であるような気がしてくる。
更に奥には間仕切りの置かれたバスルーム。 隙間から中を覗くと、下着一枚で鏡に向かって 鼻歌交じりに髭を剃る船員の後姿が見えた。 こいつは憶えてる。 逆に脅かしてやろうかと忍び足で背後に近付くと 鏡の向こうで男がにやりと笑うのが見えた。あ、やられた。 『がおーーーーーっっ!』 型通りの台詞に思わず表情が固まる。 いまどきがおーはないよなあ。 と込み上げる笑いを俯いて堪えていると 別の意味に取ったらしい男はにやにや笑いを隠さずに、 『おう、泣かなかったじゃねーか。やるな、ぼうず』 言いながらがしがしと俺の頭を撫でる。 堪えきれず噴出すと 一瞬きょとん、とした顔になった後 男はわっはっはと威勢よく笑いだした。 つられて俺も笑い声を上げる。 何事かと言う様に船長ともう一人の男が 入り口から覗き込んでいるのが視界の端に見えた。
『ぼうずももう一人前だなあ』と もう一度頭を撫で回そうとする男を振り切って 俺はまた甲板へ出た。 休むつもりがとんだ大騒ぎだ。 けれど、なんだか気分が良かった。 誰も彼もがおおっぴらに感情を曝して おおっぴらに暮らしている。そう確信できた。 俺の世界では、そんなオープンな人間なんていない。 きっと滅多にいない。 青空と風を感じながら 散歩がてら船長室と反対側の甲板に出ると、 そこにはあからさまに高価そうな装飾の施された扉があり 扉の前にいた警備兵にあんまり近付くなと怒られた。 うろうろしていると甲板にいた船員に 『ぼうずなにしてんだ?』 と訝しげな目で見られたが気にせずやり過ごす。 一通り船の探索を終えたところで 海のずっと向こう側に やっとわずかに陸地の影が見えた。
支援
今日はここまでです 長々ありがとうございます。 またそのうちに。
お。新職人がいる パパスの末路を知っているようなので これからどうなるのか期待してます
>>タカハシさん
まとめありがとうございます。
皆さんと並べるのが
なんかすげー嬉しいです。
>>30 感謝です。
期待に添えるか自信ないですが
自分なりに頑張ってみようかと。
船をちゃっちゃと終わらせます
(十分長いですが)
>>26 続き投下
にわかに船上が慌ただしくなった。 船長が部屋から出て 眩しそうに目を細めて 久し振りの陸地を見つめている。 足元にそっと立つと、 『ぼうや、そろそろ港に着くからお父さんを呼んでおいで』 さっきと変わりない優しい声色で俺に言った。 眼差しの奥に僅かに寂しさが浮かんでいるのを 俺は気付いたけれどそのまま船長の傍を離れた。 船の到着を告げると パパスは感慨深げにひとつ頷いて 二年ぶりだな、とその蓄えた髭の向こうで呟いた。 大きな体を椅子から引き上げ 数少ない荷物の点検に入る。
『お前も忘れ物をするんじゃないぞ。 タンスの中も見ておいてくれ』 言われたとおりに引き出しを確認する。 その中にも薬草と、見覚えのない 小さな木の実の入った小袋があった。 首をかしげた俺に気付いて、 『体を強くする種だ。 それはお前にやるから、必要な時に使いなさい』 そう言い残すとパパスは 荷物袋を抱えて階段へ向かう。 慌てて後を追い外に出ると あんなに小さかった陸地は もうすぐそこまで迫っていた。 青空に映える鮮やかな緑色の草原と、その向こう 青々と連なる低い山の輪郭 でこぼこと陰を落とす岩肌までがはっきりと見て取れる。
やがて船はゆるやかに速度を落とし すべるように船着場に近付き、ぴたりと動きを止めた。 船首から聞こえていた波を分ける音も止み 静かに自然の波に船体を踊らせている。 ほっとしたような、 一息つくような空気が船員の中から立ち込め、 それはパパスがタラップの方へ向かうと同時に 別れを惜しむ空気に取って代わった。 『パパスさん、元気でな』 『ぼうず、男だったらもう泣くんじゃねえぞ』 あちこちから船員の歓声のような声と 小さな拍手さえ聞こえてくる。 その瞳に笑みを湛えたまま、 パパスは船に向かって一礼した。 『船長、世話になったな』 『パパスさん、また乗ってくださいよ。 いつでも、待っていますんで』 『うむ。またいつか、世話になる時は頼む』 名残惜しげに談笑するパパスと船長の並んだ向こう側 タラップの下から、別の大きな声が聞こえた。
『船長、ルドマン様のお着きですよ』 なんだ?という表情で パパスが船着場の方に視線を流す。 その体の隙間から首を伸ばすように下を覗き込むと 品の良い高価そうな衣服を纏った 恰幅の良い紳士が(これぞ紳士、って感じだ) 片手を挙げて船長に合図を送った。 『ルドマン様!お待たせしました! ・・・船の持ち主の方ですよ』 最後の台詞はパパスに向けて言い、頷くパパスの横 深々とお辞儀をした船長の頭の先から 大儀そうに紳士が顔を出す。 『この船に、乗り込むときが一番大変ですなあ』 人当たりの良い笑顔を顔いっぱいに浮かべて 紳士―ルドマンは失礼しますよ、と甲板に足を下ろした。 船員の表情に走る緊張感が 空気を伝って俺にも感じ取れた。
『久し振りの船旅ですわ。 胃がやられなきゃいいけどねえ。 船長、なるべく揺れないように頼むよ』 船長に向かって笑いかけるルドマンの後ろ タラップの最後の一段を踏み越えられずに 父に助けを求めるようにひらひらと舞う小さな手を ひょい、とパパスが抱えあげる。 『ちょっとお嬢さんには難しいようですな』 おやすいません、と振り向いたルドマンの前に、 上等なワンピースを身につけた少女が足を着いた。 青色の鮮やかな細い髪が 潮風になぞられてさらりと揺れる。 『すまんな。大丈夫かい』 問いかけにこくんと頷いて 少女は父の上着に顔をうずめた。
『あ、ありがとう・・・』 顔を上げないまま言ったその声は 俺の耳に辛うじて届く程度だったが パパスはまた穏やかな、愛しそうな笑顔で少女に頷く。 『それでは、私たちはこれで』 小さく片手を挙げて パパスは大きな足でタラップへと踏み出した。 船員の別れの挨拶が あちこちから重なり合って船着場にこだまする。 動かすのがもどかしい小さな体を やっとの思いでタラップの上に下ろし、 振り向かずに真っ直ぐ進むパパスの背中を追う。 最後にそっと振り返ると、動き出す船の上で 不安げに顔を上げた少女のふたつの瞳が 真っ直ぐにこちらを見ていた。
船は以上です。 長くかかってしまいました。 早く戦わせてあげたい・・・ 続きはまた。
新職人さん乙です。 改行入って読みやすくなったと思います。 これからどう展開していくのか、wktk
寝苦しくて目が覚めた。 寝返りを打とうとしても何かに当たって動けない。 目を開けてみたら真っ暗だった。 全く何も見えなくてやばいくらい焦る。 いつもと違う事態に一気に目が覚める。 とにかく起きようとするが狭くてほとんど動けない。 どうも何かに閉じ込められているみたいだ。どうしてこんな状態なのか全く分からない。 確か昨日は・・・大学行って後はずっと2ch見てて・・・1時過ぎには部屋で寝たよなぁ。 俺なんかしたっけ? 「************、****」 考えにふけっていると人の声が聞こえてきた。 咄嗟に助けを求めて叫ぶ。 「******」 「**********」 「********」 俺の声に驚いたのか一気に騒がしくなる。 ガチャガチャと音がした後、目の前にあった天井が開いた。 ようやく起きれると立ち上がって周りを見わたして・・・・自分の脳を疑った。
そこは石造りの大広間だった。周りの人物も日本ではありえなかった。 玉座に座っている王冠被った爺さん、派手な服を何着も着込んでいるおっさん 鎧と槍で完全武装の兵士達、そして俺のすぐそばにいる帯剣した黒髪の少年と3つの棺桶。 その場にいる全員が俺を見て騒いでいるがこっちはそれどころじゃなかった。 いくら昨日『DQ世界の宿屋だったら』スレ見てたからって・・・。俺もう死んだ方がイイのかな。 自分の脳味噌が膿んでしまった事を嘆いてうつむいたら、そこにも棺桶があった。 ああ、そうなんだ。僕は棺桶に入ってたんだね。 「ふっざけんな何で棺桶なんだよ宿屋どころかいきなり死体扱いか!!」 キレて叫びながら棺桶を蹴ったら有無を言わさず少年に取り押さえられた。情けないが全く動けない。 「*******!!」「*****!」「**********!」 おっさんと爺さんが怒鳴り出し、兵士達に何か指示を出しているのを聞いてようやく言葉が分からない事に気付いた。 なんと言っているのか全く聞き取れない、日本語と英語でない事だけは分かるが全く救いにならない。 ショックで固まっていると兵士達に引き渡され、押されるようにして別の場所へと連行された。 連行された場所はどう見ても牢屋だった。牢屋に入るまいと必死に抵抗していると数人がかりで無理やり投げ込まれた。 俺を投げ込み、錠前をかけ牢番と幾らか話した後兵士達は行ってしまった。 何でいきなり投獄されなきゃいかんのだ。せめて事情聴取が先だろうが。 何とかして牢から出してもらうべく無理を承知で牢番に呼びかけ、謝って、事情を話して、謝って、怒鳴って、脅して、罵ったあたりで諦めた。 分かっていたことだけど言葉が通じない時点で説得できるわけが無かった。 やることが無くなったのでしばらく不貞腐れていると、眠くなったころに食事が出た。 ほとんど具の無いスープで味も素っ気も無かった。おまけに量まで無かった。 それでもありがたく完食し、その日は空きっ腹を我慢して牢屋で寝た。 ちなみに牢番は俺の呼びかけに対して完全に無反応を貫いた。驚くべき職業意識だと思う。
翌朝の目覚めは最悪だった。牢番に水をぶっ掛けられて無理やり起こされた。 鼻に少し入ってしまい随分咳き込んだ。 見ると牢番は他の牢にも水をかけて回っている。どうやら囚人を起こす事が目的みたいだ。 空腹のために2度寝もできず、ただ只管に暇だ。 考えれば昨日丸一日と今日もDQ世界?にいることになる。 これからもこの世界にいる事になるかもしれないので今までの事を振り返ってみる。 まず最初の部屋にいた爺さんは王様だろう。ということはこの国は王国になる。 なら爺さんを説得するなりできれば、牢屋から出してもらえるはずだ。 おっさんや兵士達は王様の部下だとしてあの黒髪の少年はどういう立場なんだ? 彼だけは普通の服を着てた。まぁ日本ではまず見ない服装ではあるけどそこは別の世界みたいだし。 それに俺が入っていた棺桶を開けてくれたのはあの少年だ。王の部下という感じではなかったな。 何者なんだろうか。中学生くらいに見えたが・・・。 3つの棺桶も気にはなるが死体を見たいわけではないので見なかったことにする。 するったらする。 それで次は・・・言葉。言語が違うのはもっともな話だけど、でもどうしろっていうんだ。 辞書も無いのに外国語なんか理解できるわけが無い。身振り手振りでどこまで通じるやら。先行き不安だ。 それから牢屋か。ベットらしいでかい木の箱と石畳の床、それから頼もしすぎる鉄格子と牢番。 本当になんだってこんな事になったのか。いきなり牢屋行きはやはり酷過ぎる。 最後は自分の所持品か。これはもう何回見ても2日前寝た時のままだった。 パンツ・ハーフパンツ・Tシャツ・ソックス。ソックスがあるのは最近寒かったからだ。 これが所持品の全て。他には道具も財布もなにも無い。 せめて眼鏡は欲しかった。俺はかなり目が悪い。 眼鏡がないと視界全てがぼやけてろくに見えない。室内ならまだしも屋外だとかなりきつい。 この世界にも眼鏡はあるんだろうか。無かったらどうしよう。
他に考えること・・・ 考えること・・・ 後はこれからの事とかか。 例えば何とかして牢屋から出れたとしてそれからどうするか? 異世界に来たのであればいいが、俺の脳味噌がイカレてしまっただけという可能性もあるので下手な行動は取りたくない。 家族から見てすごく痛い人になっただけならまだしも黄色い救急車や官憲のお世話にはなりたくない。 だから犯罪沙汰になる行為は可能な限り避けたい。具体的には傷害とか窃盗とか殺人とか。家族に迷惑かけるしな。 しかし後ろ盾も無く職も金も無い状態で犯罪に触れずに生きていけるとも思えない。 本当に異世界に来たんだったら特に拘る気も無いが、それでも異世界に来たという確証は得たいし。 もしDQ世界に来たのであれば魔法か薬草辺りで十分だからこれは早いうちに・・・ん。 「************」 見ると牢番がこちらに何か話している。全く分からないが話しかけられたことが嬉しくてつい分かった振りをしてしまう。 するとすぐに俺の牢の前に人がやってきた。
昨日の王様とおっさんに少年、それと昨日の兵士達とは違う色の鎧を着た兵士がやってきた。王の護衛だろうか? 「***********」 王様達はやってくるとすぐに俺に話し始めた。雰囲気から察するにどうも質問しているようだ。 何度も話しかけてくるがやはり全く分からない。韓国語や中国語・スペイン語なら聞いたことはあるがどれとも違うようだ。 おまけに訛っているせいかめちゃくちゃ聞き取りにくい。 「*** *ル* *ルす」 こちらの様子から言葉が通じていないことが分かったのか少年が自分を指差しながら同じ言葉を繰り返す。 きっと名前だ。俺も彼を指差し彼の名前を言う。 『ルス』 「*ルス アルス」『ルス アルス?』 当たったのか少年が嬉しそうな顔をする。 「アルス アルス」『アルス アルス』「アルス」『アルス』 少年が笑顔で握手を求めてくる。握手しながら彼の名前を連呼する。馬鹿みたいだがとにかく嬉しい。 今度は俺が自分を指差しながら繰り返し名前を言ってみる。 『木原 健太』『木原 健太』「*** け**」「キ** ケ**」 アルスも察してくれたらしい。でも発音が難しいみたいだ。なので名前だけにする。 『健太』「ケンら?」『健太』「ケンツ?」『ケン』「ケン」 それでもうまく発音できなかったので名前も短くする。こんなのは通じればいいんだ。 お互いの名前が分かったのが嬉しくて握手しながら呼び続けてたら、おっさんが呆れた顔でこちらを見ている。 それに気付いたのかアルスが途端に大人しくなる。 少し寂しい。
アルスとのやり取りを見ておっさんが王様を指しながら繰り返し喋る。 先ほどと同じやり取りを何度も繰り返すが正直長すぎて殆ど聞き取れない。 おっさんもゆっくり話してくれてるのは分かるので聞き取れた箇所だけでも繰り返す。 さっきの何倍もの時間をかけて少しずつ近い音にしていく。 「*** ア*アハ* **ウ *イ」『アアハ ウィ?』「*** アリアハン *ゥウ *イ」『アリアハン?』 おっさんは俺を見ると溜め息をつき頷いた。どうやら王様の名前はアリアハンで正しいようだが・・・。 アリアハンか。アリアハンといえばDQ3の王国だ。すると此処はDQ3の世界になるのか? DQ3は好きではあったけどクリアしたことないんだよなぁ。途中でセーブ消えるし。最後にやったのは何年前だろ。 「*******ルビス***」『ルビス ルビス』 考えこんでいると王様がこちらに何か話しかけてきた。ルビス神?精霊ルビスだっけ?もう殆ど覚えてない。 とにかく知っている単語が出たので笑顔で繰り返す。 途端に王様が真剣な表情になり牢番に命令した。命令を受けた牢番はすぐに牢の鍵を開け俺を出してくれた。 牢を出るとアルスが握手してきた。もう片方の手で肩を叩き何か話しかけてくる。 展開が理解できないままとにかく笑って手を握り返すと、アルスは手を離し王様に向き直りなにやら話している。 王様とおっさんが真剣な表情で二言三言話すとアルスは何処かへ歩いていく。 俺が呆けているとおっさんが怒ったような顔でアルスを指差し何か話してくる。 アルスを見やると手招きして俺の名前を呼んでいる。彼に付いて行けという事みたいだ。 異世界冒険というのは楽しそうだし、言葉も通じない上暮らす当てもない。 あれこれ理由をつけて頭をよぎる不安を振り払い、アルスを追いかける。
>>all 受信したのでやった。 反省はしていないが後悔はしている。 正直駄文スマソ
>>47 おつです!
このスレ知ってる、言葉通じない、な展開おもしろい
後悔しないで!w
ぜひ続きをお願いします
>>38 ちょっと序章が長いがなかなか読みやすいので次も待ってる
>>47 言葉通じないの面白いな
アルスがうざいのがいいwwwww
タカハシ氏仕事早いねGJ!!
保守
>>39 良かった。ありがとうございます
あんまり道筋からそれない展開になりますが
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
>>50 序章にのみならず
今後もガンガン長くなってしまっています。
すいません・・・
タカハシさん
本当仕事早いですよね
乙です。
>>37 続き投下します
サンタローズ編開始です。
『あっ?パパスさん?パパスさんじゃないかい?』 船がゆっくりと離れていくのを見送りながら、 俺は背中越しに男の声を聞いていた。 『いやあ、無事に帰ってきたんだねえ。 よかったよかった。心配していたんですよ』 振り向くと、ただでさえ丸い顔を更にしわくちゃに丸めて 男がパパスの肩に手を置いていた。 懐かしそうに嬉しそうに パパスが笑うとその手も上下に揺れる。 『わっはっは、痩せても枯れてもこのパパス、おいそれとは死ぬものか』 予想通りの台詞が パパスの笑い声に混ざり合って俺まで嬉しくなる。 こんな台詞普通使わねーよバッカじゃねーのウケルー とか思ってたテレビの前の俺、ちょっと死んでこい。
思い出話に花を咲かせる二人の横をすり抜けようとすると、 パパスが顔を上げて『遠くまで行くんじゃないぞ』と叫ぶ。 片手を挙げて了解の合図を送り 俺はまず樽の調査に取り掛かった。 収穫は殆どなかったが、小さな手が幸いしてか 突っ込んだ樽の隙間から小銭を拾った。 大事にゴールド袋に滑り込ませる。 顔を上げると、風が海のにおいと草原のにおいを運んできて 俺は大きく息を吸った。 排気ガスに汚されていない空気なんて生まれて初めてだ。 こんな風なら少しは救われるかもしれない。この世界に。 俺はこの先を知っている。何もかもを。 忘れていることはあっても 憶えていることはそれより遥かに多いはずだ。 死ぬ人も。生きる人も。 今までデジタルでしかなかった 空想でしかなかった世界が、 初めてはっきりと自分の中に重くのしかかる気がした。
「うん。お父さんと一緒に」 素直な子供を演じて言葉を返すと、おかみさんは、 『そういえばねえ、ずーっと前に ここから旅に出た人がいるのよ。 ぼうやくらいの歳の小さな子と一緒にね。 パパスさんは元気かしら。懐かしいわねえ』 小さなお客に頬をほころばせながら 昔を懐かしむ眼差しで窓の向こうを見やる。 「それ、僕だよ。パパスお父さんと一緒に今船で来たんだ」 無邪気に聞こえるように ゆっくりと言葉を選びながら言うと おかみさんはまあ、と声にならない声をあげて 俺の顔をまじまじと見つめ、一層明るい笑顔を零した。 『ぼうやがあの時の・・・。じゃあパパスさん、 無事に探し物は見つかったんだね。良かったねえ』 つられて微笑むと、優しく俺の頭を撫で おかみさんは俺にこんなものしかないけど、 と言いながら飴玉を握らせてくれた。 その手が暖かくて、俺はさっきの自分の考えを恥じた。
例え夢でも、いや、夢だからこそ 俺の夢の穏やかな日常を、この世界を 壊そうとする奴を俺は許しちゃいけないんじゃないか。 俺は勇者にはなれないかもしれない。 けど、俺がこの世界を救おう。 あまりにもすんなりと、俺は誓いを立てた。 ゲーム脳で良かった、感情移入はお手のものだ。 この時ばかりは俺は自分の単純な脳みそに感謝した。 おかみさんに丁寧すぎるほど丁寧にお礼を言い 俺は改めて表に出た。 相変わらず太陽は眩しく世界を照らしている。 パパスは埠頭で主人と話し込んでいる。 俺は息を整えると、ゆっくりと港の出口へ向かった。 階段を上がる足が覚束ない。初めての戦闘だ。 生まれて初めての、実際の戦闘。 大丈夫。パパスがすぐに駆けつけてくるのはわかっている。 出口でもう一度深く呼吸をして 俺は草原へと踏み出した。
本日一旦ここまでで ありがとうございます
>>54 の次が
一区切り抜けてる・・・
非常に申し訳ないですが補填です
夢だ。夢。
誰が死のうと、殺そうと、全てはどうせ夢なんだから。
頭を振って不安を追いやって、
俺は港の傍らの小さな小屋の扉を開けた。
さっきの男のおかみさんか
小太りの女が忙しなく
小さな部屋の中を動き回っている。
外から見ると粗末な小屋も
中は綺麗に整えられていた。
窓際には、一輪挿しから伸びたピンク色の花が
申し訳なさそうに首を傾げている。
『あら、ぼうや今の船から降りたの?』
俺に気付いておかみさんが笑顔を向ける。
子供相手の、屈託のない笑顔。
応援します。時間がかかっても、必ず書き遂げて下さいね。 今後の展開がとても楽しみです。
GJ! ちょいちょい入る毒吐きがオモシロイ DQ5をやったのは消防だったから読んでるとすげー懐かしい 続き期待
うおおおおお!!!!タカハシも乙!!! これぐらいしか言えないが頑張ってくれ!!!
>>59 ありがとうございます。
長旅になりそうな予感がしますが
大好きなシリーズなのできっと遣り遂げます。
>>60 感謝です
うわ、自分ではツマンネーかなって思ってたので
めっちゃ嬉しいです
自分も初めてやった時は消防でした。
タカハシさん乙です。
ほんとやる気出ます。モチベーション上がります
>>56 続き投下します
青々とした低い草の中 申し訳程度に均された道を辿っていく。 このまま寝転んで一休みしたら気持ちいいだろうけど 周りはモンスターの巣窟のはずだ。 低い草に紛れてどこからスライムが襲ってくるとも知れない。 スライムならまだいいけれど、 他のもう少しでもレベルの高いモンスターに遭遇したら。 今現状を考えれば スライム相手にも致命傷をもらいかねないのだ。 慎重に辺りを見回しながら、 腰に巻きつけてあった木の棒を握り締める。 後ろを振り返るとまだ 港からは数歩の距離しか離れていない。 戻ろうかと思考を巡らせた刹那、 背後から甲高い鳴き声が聞こえた。
動揺し思わずたたらを踏みながら振り向く。 つるんとした質感の、 頭の飛び出た青い物体が、一、二、・・・三つ。 両端に飛び出した目と大きく開かれた笑っているような口で 辛うじて生き物だとわかる。 ―――来た。スライムだ。 ピキキ、と鳥の鳴くような声を発して 右端の一匹が飛び跳ねた。 とっさに身を硬くするが 右膝に鈍い痛みが走る。 ゼリー状だって聞いてたけど、結構硬いじゃねえか奴ら。 頭の片隅で冷静な俺が呟く。 左端の奴がまた飛び跳ねるのを 思い出したように木の棒で叩き落すと、 スライムは地面で一回跳ねて体勢を立て直した。
やはり今の俺には、スライムさえ強敵に違いない。 警戒するように真ん中の奴が少し後ずさる。俺は息を呑む。 『サン!サン!大丈夫か!何やってる!』 後ろから不意に響いた怒号に 俺はやっと安堵の溜息をついた。 地面まで揺らすような足音を立てて パパスが俺の元に駆け寄って来る。 『遠くへ行くなと言ったろう!全く』 俺を守るように立ちはだかるパパスの背中にも 安堵がにじんでいるのを感じて、 俺は思わずごめんなさい、と口にした。 パパスが二匹のスライムを切り伏す間に 難を逃れた別のスライムに一発食らったが、 最後は俺の一撃で三匹目のスライムも動かなくなった。 パパスが振り向き、何か呟くと さっき受けた痛みが嘘みたいに引いていく。 ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。 幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。
『お前にはまだ外は危険だ。 今回はたまたま父さんが気付いたから良かったものの・・・ 気をつけるんだぞ』 諭すように言いながら パパスはスライムの亡骸を簡単に調べ始めた。 つるりと反射する三つの青い死骸から 慎重に何かを抜き取る。 『これはお前にやろう。 初めてモンスターに勝ったごほうびだ。 ・・・良くやったな』 そういって笑顔で手渡されたのは、 キラキラと光る三枚のコインだった。 それを頷いて受け取り、ゴールド袋ではなく 小さなポケットに大事に押し込むと 俺はパパスの背を追って歩き出した。 つかテメー外に出ないと話動かねえじゃねーかよ。 と片隅の俺が思ったけれど、 それは心の奥にしまっておいた。
村はすぐそこだとパパスは言った。 俺には途方もなく遠く長い道のりに思えた。 幼い足は長旅に慣れているらしく すぐに疲労を感じることはなかったが、 それでも村の輪郭が遠く 地平の向こうに見える頃には 足の裏は痛み、ふくらはぎもパンパンに張っていた。 パパスは俺の手を握ったまま 俺のペースに合わせて歩いている。 それは心地好い安心感だった。 けれど戦闘の一瞬、手が慎重に解かれるその瞬間だけは 言いようのない不安が俺を襲った。 痛恨の一撃を食らったらお終いだ。 死ぬことはないと解っているけれど その一瞬の暗闇がどんなものかを想像すると 無意識に膝が震えだす。 村のゲートをくぐるその時まで、 不安は付き纏っていた。
午後の陽は傾き始めていた。 刻々と伸びていく自分の影を追いながら 緑の合間に見え隠れする村の風景が 少しずつ生気を増していく。 入り口のゲート脇の警備兵がこちらに気付き 一瞬の訝しげな表情を崩し、顔を輝かせた。 『パパスさん?パパスさんじゃないですか!戻られたんですね!』 満面の笑みで兵士がパパスに駆け寄る。 今帰った、とパパスが言い終わらないうちに 『そうだ!皆に知らせなきゃ!皆に挨拶しなきゃ!パパスさん!』 とパパスの手を引いて村の中に駆け出す。 パパスと繋いだままの手を強く引かれて 俺は慌てて歩調を合わせようと足を速めた。 『皆さん!みんな!パパスさんのお戻りですよ!』 村全体に響き渡るような大声で、兵士が叫ぶ。 何事かと顔を出した住民達が、パパスの顔を認めると 一斉に顔をほころばせるのが見えた。 老若男女。宿や商店の店員までもが 嬉しそうにパパスの元へ駆け寄り、無事を喜び、 俺の頭を撫でたり 感慨深げに顔を覗き込んだりしていった。 影が傾いていく。
それぞれに挨拶を済ませ 話し足りない風の村人をなんとかそれぞれの持ち場へと戻し パパスはゆっくりと、踏みしめるように村の奥へと向かった。 奥まった場所の、古ぼけた一軒家。 質素だが手入れの行き届いた庭。 その向こう、家の玄関先で 小さなふたつの目いっぱいに涙を溜めて 喜びに歪んだ顔の太った男が深々と頭を下げた。 『旦那様。おかえりなさいませ』 『サンチョ。随分と待たせてすまなかったな』 その大きな右手を男の肩に乗せると 男の両目からぽろぽろと雫が零れ落ちた。 『ええ、ええ。旦那様。 生きて戻られると信じてはおりましたが、 この日をどれほどに待ち侘びたことか・・・』 最後は殆ど言葉にならなかった。 深い皺の向こうに長い苦労と不安が垣間見えた気がして 俺は眉間が痛むのを感じて俯いた。
本日ここまでで ありがとうございます。 ペースを速めたいんですがなかなか 思うように行きません。 だらだらと長くて申し訳ないです。
>>◆u9VgpDS6fg氏 文章の節々から5への気持ちが伝わってきます >ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。 >幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。 不覚にもこの2文に目頭熱くなった 現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情、 この二つがない交ぜになった感じが面白いです あんまり力まないで、出来る範囲で頑張ってください 続き楽しみにしてます
タカハシGJ!!! いつもすばやい対応に感謝です
ご無沙汰すいません…
前スレ
>>652 の続きです…
〜Jacob's Dreame〜 ――――――――――――――――――1―――――――――――――――――――― 夢から唐突に目覚めた朝の現実感の無さは何なのだろうか。 起きているのは分かっているのに未だに夢の中にいるような、ごちゃ混ぜの感覚。 フィリアはその虚ろな時をベッドの中でしばし過ごす。 夢の内容を思い返そうとしていると、逆にどんどんと現実が意識を支配していった。 毎日の習慣がそうさせたのだろうか。 寝床から抜け出し、身だしなみを整える。 当然誰も起きてはいない。 しかしそのような時間に起きるのがフィリアの普通である。 早朝のお祈りをするためだ。 それは小さい頃から欠かした事はない。 場所自体は特に選ばないが、太陽の当たる所が良い。 だから大抵は外に出る事になる。 ふと隣のベッドを見ると、今日も真理奈の寝相が悪いのに気付く。 最近はその寝相を正してやるのも習慣になってきた。 変な体制なのを直そうと体を動かすと、「むー」と眉をひそめるのも何だか楽しい。 真理奈がちゃんとあお向けになったのを確認して、フィリアは部屋を出る。 夜明け前は静かだ。 特に日が昇り、その光が大地や海を照らし始める瞬間は全ての音が消え去ってしまう。 フィリアはその時が何となく好きだった。 その時に神を見出しているのかもしれない。 船首に向かい、適当な所でひざまずき祈る。 目を閉じ、自分の心の奥に向かっていく。 やがて日の光が自分の体を包み込むまで。
その時のフィリアはまさしく僧侶の名にふさわしく、美しささえ覚えるようだ。 真理奈のより若いフィリアの顔立ちは、幼さを残しつつも、整えられている。 髪は背中の真ん中辺りまで伸ばされ、一部の隙もない程ストレートだ。 しかし、真理奈と並べて見てみるとどうしても冷たい印象を受けてしまう。 と言うか、真理奈が明るすぎなのかもしんないけどさ。 ところで何を祈っているんだろう。 フィリアに聞いてみたいんだが、邪魔しては悪いしなぁ。 「お〜フィリアちゃん、めっけ!」 と言ってる側から、突然誰かがフィリアに抱きつく。 その言動からして真理奈しかいないんだけどね。 祈りの邪魔をされたフィリアだったが、動じる事はなかった。 顔を寄せてくるリーダーを若干鬱陶しいとは思っているようだが。 やはりまだ空は暗い。まだ目を開ける時間では無い。 ましてや真理奈が起きてくるなんて事は奇跡に近い。 「んわ〜」とか意味不明な事を口にしているのを見ると凄く眠そうだが、一応起きてはいるようだ。 「早いね」 「ん〜? 何か変な夢見ちゃってさぁ…」 そう言いながらワワワ〜とあくびをする真理奈。 「夢…」 フィリアは今朝の夢の事を思い出す。 やけに生々しく、記憶に残る夢だった。 何だかとても悲しかったような… …… しかしまたしてもフィリアの思考は妨げられる。 そりゃ頭をスリスリと寄せられれば気にもなるというものだ。
「どうして抱きつくの?」 「え〜? だってフィリアちゃんあったかいんだも〜ん。一人は寒いよ」 ならその格好をまずどうにかしろと言いたいところだが… 毛皮のコートを羽織ってはいるが、丈が足りておらず下半身は相変わらずあらわになっている。 「寒かったら抱きついてもいいの?」 「そうだよ〜」 「……」 そんな寝ぼけ眼の人に説得力も何も無いんだけどなぁ… けれどフィリアは抱きつかれてるのに悪い気はしなかった。 その感触が心地よかったから。 「スースー……」 黙り込んだと思ったら、真理奈は抱きついたまま再び夢の中へ行ってしまったようだ。 フィリアはその背中にそっと手を回してみる。 「あったかい」 そして朝日が二人を包む。
その数日前―― それはエジンベアの侵略を止め、さらわれた真理奈が無事に返って来てから数日後の事である。 「プレナさん色々とありがとうございます。船までもらっちゃって…」 「いいのよ。気をつけて行ってらっしゃい」 そうなのだ。ついに一行は船を手に入れたのだ。 しかもポルトガ製の新品で一級品だ。 国単位の購入でないと買えないくらいの値段で、普通はとてもじゃないけど手が出ない。 さすがにそこまでは…と断ったのだが、この町を救ってくれたお礼だと言ってプレナは聞かなかった。 しかしこの船があれば、これからの旅が楽になる事は間違いなかった。 プレナの押しにも勝てそうにもないので、ありがたく受け取る事にしたのだ。 そしていよいよ出発の日。 港口に浮かぶ船の前で真理奈とジュードはプレナと話していた。 フィリアは船内の準備をしているのだが、パトリスの姿はどこにもない。 「あ、そうだ! その代わりって訳じゃないけど……はいコレ!」 真理奈が袋からイエローオーブを取り出し、プレナに差し出す。 「受け取って下さい! プレナさんにとって大事なものだったんでしょ?」 「でも……」 「いいんです! ついでにプレナさんを連合大使に任命しちゃいます!! 私達と一緒にゾーマと戦いましょう!!」 「真理奈ちゃん……」 満面の笑顔で、そしてなお、力強い。 それを見れば勇気付けられるのはなぜだろうか。 そこに一片の迷いも無いからだろうか。 その向こうに未来を見れるからだろうか。 それに背中を押されたのか、プレナは手を差し出しオーブを受け取る。
プレナができた勇者への唯一の恩返しの証。 それが自分の所へと返ってきたのだ。 数日前に見た時は辛かった昔を思い出したが、今は違う。 こうして手にすると、勇者にありがとうと言われている気がした。 イエローオーブの輝きはあの頃とまったく変わらずそこにあったのだから。 思わず涙が溢れてくる。 「おいおい勝手に決めるなよ。プレナさんにだって都合があるんだからよ。 だいたい、ついでってのは失礼だろ?」 「い〜のっ! ね〜プレナさん!」 「えぇ、もちろん。その役立派に果たしてみせましょう!」 「やった!」 涙を拭いながら返事をするプレナ。 嬉しそうな真理奈と、その後ろで「何がいーんだか」と呆れているジュードの対比が可笑しい。 「ええっと、連合はこの世界の平和の為に国同士の連携を図る目的で結成されています。 連合参加にあたっては情報交換や武器・防具・アイテム類の交易、 さらには人材派遣などを通して魔物との戦いを有利に進めていければ、と思います。 あぁ、でもそういうのはプレナさん得意そうだから安心ですね」 「おぉ〜!!」 真理奈が一息付いたところで、ジュードが感嘆の声を上げる。 しかし少し小馬鹿にした感じも含まれている。 「…何よ」 「いや? お前がちゃんと仕事してるから凄いな〜って感心したんだよ」 「ふふ〜ん。まぁね」 「丸暗記だけどな」 「うっ…うるさいなー」 「ふふ。分かりました。この町はもちろん、スーの村の皆も協力は惜しまないでしょう」 「良かった。よろしくお願いしますね」
「……ところでその連合にはエジンベアは参加しているの?」 「まさか。そんな話をするどころじゃありませんでしたよ」 「ならその役目、私に任せてもらってもいいかしら?」 「それは願ってもない事じゃな」 これ以上無いタイミングでパトリスが突然現れる。 狙ってやがったな。 「おじいちゃん! どこ行ってたの?」 「ん、エジンベアじゃ」 「何してたんだよ。朝からいないと思ったら…」 「すまんのう。その代わりニュースを一つ。エジンベア王が生きておったわい」 「え?!」 「一命は取り留めたんじゃが、精神的にまいっているらしい。 まぁやら命の石というアイテムのおかけで助かったようじゃな」 「へぇ〜よく分かんないけど」 持ってて良かった命の石。 とか言う標語は無いけど、レアアイテム収集がそんなところで功を奏すなんてな… (元気になったら絶対ブッ飛ばしに行こっと) とは、真理奈の心情。王様…ある意味可哀相だな。 「あの王はともかく、エジンベアの国力は魅力じゃ。 連合の意向に同調してくれるならそれに越した事はないじゃろ」 「えぇ、良く話合えば分かり合えるでしょう」 「本来なら我々の仕事なんじゃがな……」 「いえ、どちらにせよエジンベアとは手を取り合いたいと願っていたのです。 ましてやそれが世界の為となるのなら喜んで」
「ありがとうございます。 あとの詳しい事はアリアハン、及び諸国と連絡を取っていただければと」 「分かりました。世界の平和、必ず我々の手で」 「おー!!」 「ピー!!」 腕を振り上げ、飛び上がる真理奈。ブルーも真理奈の肩で飛び跳ねる。 …… ブルーの事ずっと忘れてた…… この前の戦闘シーンでまったく出番なかったよね。ゴメンね… 激しい炎でも使えれば活躍出来るんだけどなぁ〜(それはドラクエ5です) しかしこれでエジンベアの事はプレナに任せて、次の目的地へと出発できるね! さっそく新しい船に乗りこもうとする真理奈をプレナが引き止めた。 「はい?」 「真理奈ちゃん、この世界の下にもう一つ世界があるって知ってる?」 「え?! 知りません…地下帝国ですか?」 何の影響ですかそれは。プレナも分からないようで苦笑する。
「かつて魔王ゾーマはその世界から全世界を支配しようとしたのよ。 私も行った訳じゃないから実感なんて無いけど… けど勇者が行ったんだから、違う世界があるっていうのは信じてもいいみたい」 「ほぉ〜凄いですねぇ〜」 「うん。だから真理奈ちゃんの世界もどこかで繋がってるのかもしれないって思ったの。 だとしたら、戻れる可能性はあるんじゃないかって。 一方通行な訳無いと思うし。 それに真理奈ちゃんが出会ったゾーマを名乗ったその人もその世界の人なら、 もしかしたら何か知ってるかもしれないよ」 「お〜なるほど! さすがプレナさん。考えもしませんでしたー。聞いてみますね!」 「うん!」 真理奈の元気な声を聞いて安心するプレナ。もうすっかり大丈夫みたいだ。 しかし聞いてみますってアンタ… 魔王と話し合いをするっていうのも、ちょっと考えると何だかシュールな気がするよね。 「じゃあ行きますね。色々とありがとうございました」 一人ひとりプレナと握手を交わして、一行は出発する。 やはりパーティーというのは良いものだとプレナは改めて思う。 ほんの少しだけあの頃に戻ったような感覚に陥り、勇者と別れた日の事を思い出す。 「勇者……会いたいな。うん、今度会いに行こう」 プレナは船が見えなくなってもしばらく海を眺めていた。
今回はここまで まず長い間行方不明になっていた事をお詫びします… また物語の続きを書いていきます。 そして新人さんたち始めまして! どんな物語になるのか楽しみにしてるのでよろしくです。 あとは避難所にて
うわ…一番最初に入れる文が抜けてた… タカハシさんまとめの際、〜Jacob's Dreame〜の下に↓の文を挿入を よろしくお願いします。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 どんどん自分の中の好きって気持ちが大きくなっていく。 抑えきれなくなりそうなくらいに。 あなたの声を聞くだけで満たされる。 あなたの事を思うだけで眠れなくなる。 あなたの存在を感じるだけで幸せになる。 でもこの恋は許されない恋。 誰からも認められず、誰からも祝福される事はないだろう。 だからこの気持ちは消さなくちゃならない。 他の人にバレないように、自分の心の中だけで止めて、ゼロに戻そう。 そうすれば彼は私より良い人を見つけて、今よりもっと幸せに… そう幸せな日々を送れるはず。 だから私は忘れます。 そして姿を消します。 この妖精の村のように。 あぁ、あなたに会いたい…… 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
以下の前スレからの続き
http://ifstory.ifdef.jp/log/ifyado_log007.html#R822 〜第五部〜
●魔王ゾーマ
不気味に唸る城
それはライフコッドより北に位置し、魔物を押し込めるおぞましい建造物
「ゾーマ様」
サタンジェネラル
魔王の直ぐ側へ仕える魔物
その言葉に、詠唱を止める魔王ゾーマ
広い一室
魔王が"いのちの源"から力を引き出す為に作らせた、特別で無機質な間
魔物達からは"祈りの部屋"と呼ばれ、魔王に許された者しか立ち入ることが出来ない
そして、サタンジェネラルは入室を許された一人
「何用だ」
声をかけた魔物には一瞥もくれず、魔王は返答する
「は… 私が言うことではないと思うのですが…」
サタンジェネラルは戸惑い、言葉を繋げられずにいる
その気配を感じ、魔王が聞く姿勢を見せた
「言ってみろ」 「は…」 床へ片膝を付けたまま、サタンジェネラルは話し始める 「ゾーマ様はもうすでに全てを超えた力を持ったと、私は思います もうそれ以上"いのちの力"は必要ないのでは、と…」 魔王が目を瞑り、高揚したサタンジェネラルは更に続ける 「その力は危険すぎます! "いのちの力"だからでしょうか、その… 力として使うには純粋すぎるのです! ですから─」 「聞け…」 サタンジェネラルの言葉を遮る魔王ゾーマ 遮られた本人は相当の覚悟を決め進言したのだろう 頭を下へ向けたまま上げることが出来ずにいる 「私は… 闇雲に力を取り込んでいるわけでは、ない」 魔王は決して、己の部下である魔物に対し罰を与える事が無かった だが、サタンジェネラルは怯えた それは魔王ゾーマの行動に、異を唱えたからに他ならない 過去に、主の行いを疑問に考える者は皆無だったからだ 「しかし、お前の気遣いに答えようと思う」 これまで行動の理由など、一切を話す事がなかった それは残された側近がサタンジェネラルだけになった事も、あったのだろう 側近アトラス、バトルレックスは既に倒されている
「私は数百年、いやもっと過去であっただろうか… ルビスの遣いと戦った事がある その時も私は究極であった…!」 空気が、変わる 普通の人間なら気を失いかねないほどに強烈な、威圧感 「あったにも拘らず、私は倒され意識だけの存在となり… その後"いのちの源"へ吸収されることもせず、彷徨った… 冷たく、永く、遠い時間を さまよったのだ……」 サタンジェネラルは物言わず、ただただと聞くだけ 「ある時、見つけたのだ この"いのちの源"には輝く力が蓄えられていると… そしてその力を利用する術を!」 「私はいま、そうして我が身へ取り込み、何者も敵わぬ力を手にしている」 「だが─ だが! ルビスの遣いはソレを上回ることが出来る!」 ドンと、魔王の気に押されるサタンジェネラル 「過去、己の力を過信しすぎ私は斃れた」 「その過ちは二度と! …私は力を取り込み続ける」 「神など、もはや敵ではない」 「人間だ 神々の加護を受ける人間なのだ」
サタンジェネラルは思う "なぜ、神の加護を受けたあのタカハシという人間を殺さなかったのか" "確実に、グランバニア南で殺せていたはずだ" わからなかった 自ら恐ろしい敵だとしながら、生き長らえさせる理由を、知りたいと思った 「それはな…」 心を読まれ狼狽するサタンジェネラル 「私は完璧として存在する必要がある あのルビスの遣い… タカハシと言ったか、やつはまだ完全な力を発揮できていない 完全な力を倒さねば、真に完璧とは言えぬのだ…」
サタンジェネラルが去り "祈りの部屋"へ一人、魔王はその天井を見上げ、考えていた 決して見せてはならない、側近へ語ったモノとは違う、本心 やがてここへやってくるであろうルビスの遣い 取り込む力としてだけ生かしたつもりであったが─ "いのちの源"を取り込むほどに、我が身の運命とは… 果たして、変えられぬ物なのか 私は滅ぶべき存在だというのか そのような意識を私に齎らすものは 魔の繁栄を阻む生命の記憶… ならば試さねばならない 私はだが、破れはせぬ 万有の力を、この手に─
今日はここまで。
>>72 ああ、ありがとうございます。すごい嬉しいです。
>現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情
これは結構、自分的にテーマの部分でもあったりするので
伝わってるんだって事がわかって感動しています。
今はまだ勢いがあるんで大きいこと言いますが
自分も楽しみながら、ゆっくり頑張りたいと思います。
>>暇潰しさん
乙です!
真理奈さんかわゆす。(こればっか)
やっぱ会話のテンポ凄いですね。
参考にしたいけど自分の文章じゃ厳しかったり・・・
>>タカハシさん
乙です!
重々しくなる空気がたまりません。
ドキドキしながら読んでます。
続き楽しみです。
自分も頑張ります。気が引き締まります。
>>70 続きです
やっと部屋に落ち着いても サンチョはひとしきり泣いて ひとしきり喜びの言葉を口にしていた。 パパスはひとつひとつに頷いて、 苦労をかけたな、と一言だけ口にした。 子供として掛ける言葉が見つからず ただそれを眺めていると 階上から小さな足音が聞こえた。気がした。 『おじさま、お帰りになられたのね!お帰りなさい』 階段の手すりから顔を覗かせて 綺麗なブロンドを両耳の上で括った少女が 弾けるように笑顔で階段を飛び降りた。 着地でぐらつき、照れたように頬を赤らめる。 姿を見なくても解った。ビアンカだ。
『サンチョ、この子は』 『あたしの娘だよ。パパス、久し振りだねえ』 大きな体を億劫そうに揺らしながら パパスと同年輩の女がゆっくりと階段を下りて来て言う。 『おかみじゃないか、隣町の宿屋の。 じゃあこの子はビアンカちゃんか。いや、大きくなって』 少女とおかみを見比べるようにぱちぱちと目を瞬き パパスが驚きの混じった笑顔を浮かべる。 『じゃあダンカンも来ているのか?』 問いかけにおかみは困り笑顔を浮かべ、 『それがあの人ったら、病気で臥せっちまってね。 ちょいとこっちまで薬を貰いに来たんだよ』 『折角なので寄っていただいたんですよ。 旦那様も私も、お世話になっておりますので』 いつの間にかすっかり涙を拭いて、サンチョが口を割る。
おかみが椅子につくと同時に、 隅でもじもじと足元を見ていたビアンカが俺の腕を小突いた。 『ねえ、上に行かない?大人の話って長くって』 こくんと頷くとビアンカは じゃあ行きましょ、と俺の手を取った。 今の俺と変わりない小さな手。 その温かさになんだか俺は妙にほっとした。 なんとなく、ゲームの中でやっと 気を許せる相手を見つけた気がした。 思考が幼児化しているな、と気付く。 ビアンカ―この幼い少女を 同年代の相手と無意識に認識している。 感情移入もここまで来ると少し危うい気がして 俺はほんの少し気を引き締めた。
本棚とベッドだけの小さな二階の部屋に上がると ビアンカは周りを見回して『ここって何もないのよね』と洩らした。 と、くるりと振り向き俺の両手を取って 『ね、あたしのこと覚えてる? 前にうんとちっちゃい頃、会ってるんだから。 でもあんたはもっとちっちゃいから、覚えてないかな』 にこにこと子供をあやすように語り掛ける。 曖昧に頷くとふん、と溜息をついて 『あたしはあんたよりふたつも、お姉さんなんだからね?』 と両手を腰に当て、 威張れる相手を見つけた幼子の 小さな威厳に満ちた瞳で俺の目を真っ直ぐ見下ろす。 『そうだ、ご本を読んであげるわ。お姉さんだもの』 綺麗に編み込まれたブロンドを揺らして ビアンカは本棚に向き直った。 『どれがいいかな』と口元に指を当てる。 自分より僅かに身長の高い少女の隣について 俺は読めもしない本の中から適当に「これ」と指差した。 ビアンカの瞳が輝く。
『仕方ないわね。じゃあそれにしましょ』 大儀そうに分厚い本を抱えてベッドの上に開き置き うつ伏せに寝転んでぽんぽん、と自分の隣を示す。 やはり高く感じるベッドによじ登ると、 俺は少女に倣って隣にうつ伏せた。 ビアンカは満足そうに頬づえを付いて足を揺らし 鮮やかな挿絵のページを繰っていく。 ビアンカが体を動かすたびに ブロンドの一本一本がくすりと俺の頬を撫でる。 『そら・・・うーんと、そ、ら、に、・・・く、せし・・・難しいわ』 小さな額に皺を寄せてビアンカが整然と並んだ文字を追う。 あまりに一生懸命な少女の姿に 俺は思わず沸いてくる笑みを抑えた。 『ビアンカ、降りてらっしゃい!そろそろ戻りますよ』 押し黙って文字を追う最中 階下から聞こえた声にはっと顔を上げて、 『残念だわ、宿に帰らなきゃ。ご本はまた今度ね』 ほっとしたようにビアンカが笑う。
本を閉じ小さな手を俺の額に重ねて、 『また遊びに来るわ。あんたも字を覚えるといいのに』 もう一度にっこりと笑うと、 少女は本を抱えてベッドを降りていった。 本棚の隙間に分厚い本を押し込み 階下へと降りていくビアンカの背中を見送ってから 俺は体を起こした。 刹那、どすん、と大きな音がして 階下から大人たちの笑い声が響く。 『ごめんなさいね、この子ったらもう』 笑うおかみさんの声を聞きながら階下を覗き込むと 階段の真下、尻餅をついたままの体勢で ビアンカがけらけらと笑っていた。 俺の視線に気付き 照れ臭そうに唇だけでやっちゃった、と言うと ひょい、と身軽に立ち上がる。 挨拶もそこそこに扉をくぐると 宿まで送ろうかと言うパパスの申し出を丁寧に断り 二人は薄暗闇の中手を繋いで帰っていった。
階段の一番上に座り込んで 暫く大人二人の会話に聞き耳を立てる。 今までの旅のいきさつと、サンチョを気遣うパパスの言葉。 特にこれと言って収穫はなく 立ち上がろうかと言うところで 物音を聞きつけてパパスが口を開いた。 『なんだ、サン、まだ起きているのか?』 そっと立ち上がって階下に顔を出すと サンチョが丁度腰を浮かせたところだった。 『ぼっちゃん、お疲れでしょう。今日はもうお休みになられますかな。 旦那様、少しお待ちくださいね』 笑顔で俺を抱き上げ、ゆっくりと気遣いの速度で階段を上がる。 サンチョの腕は温かく パパスのそれとは少し違った力強さだった。 戦いに出る男と、帰る場所を守る男。 その違いだろうかと、心地好く押し寄せる睡魔の中で思った。
本日ここまでで ありがとうございます。 なんだか今週は多忙になりそうです できるだけ書いていきたいんですが・・・
102 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/11/06(月) 19:35:00 ID:4Q9Ure2B0
サンタクロース
>そ、ら、に、・・・く、せし・・・ 未だにこの穴埋めができなくて気になるなぁ
空にそびえる鉄の城のくせして生意気なんだからっ! べ、べべべ別にあんたのこと心配して言ってるわけじゃないんだから、勘違いしないでよねっ!(////) by アフロダイA
>>91 からの続き
●なれはて〜世界
肌色に伸びる螺旋の建物
ルビスはテリーとミレーユのなれはてを、感知していた
「ありがとう テリー…
貴方達は死んだわけではありません
ただ少しの間、眠るだけです 本来の世界が創り直されるまで」
ベッドに横たわるタカハシは
まだ変化を見せてはいない
「タカハシ 早く戻ってきてください
もう、もう時間がありません…
これ以上、魔王が力を持ってしまうと手遅れに……」
答えることなく眠るタカハシ
彼はいま、己を自ら縛りつけ─
"静寂の想い"は静静と─
●混濁 佇む心 身体は微塵も動かせず 動かす意思も無く 「俺が殺したんだ…」 何万回目の同じ言葉か 思考は一つに支配され 両の手で膝を抱えたまま 固く硬い柔らかな空間 突然、異世界へ飛ばされ 見た事も聞いた事も無い世界での毎日 その日常の中ではっきりと"生と死"を感じ 闘いの中へと身を置いて来た 今まで意識もしなかった 見慣れた景色のように 自分の手で生き死にを決定する世界 己の身を守るため 誰かを守るため 慣れない世界で剣の腕を磨き 不可解な理由で旅する事を強要され それでも懸命に歩いてきた それが自分の世界へと戻る唯一の方法であったから─
旅のある日 見知らぬ男と出合った それは混沌の根源、魔王ゾーマ 魔王との闘いのさなか 彼は仲間を斬った まやかしに踊らされ殺した 気付いたときは手遅れで 自らの愚かさで─ 無理も無い事だった 彼は閉じ篭り 感情を表に出す事に怯える なぜ 今の現状はあるのか その理由を求め 二度と戻ることの無い 久遠の旅路へ踏み出そうと していた 知る事のない理由を 知る事が出来ないと知る為に
今回はここまで
XoO/JGcPO6の物語は永遠のアセリアを思い出すなぁ
☆湯
補習
目が覚めたらもとの俺の部屋で コントローラを握ったまま眠っていた――― なんて都合のいい展開を期待していたけれど 目を開けるとそこは昨夜眠りについたままの簡素な寝室だった。 掌は相変わらず小さく、階下からは 食卓の準備をしているのだろう 食器のぶつかるような音が聞こえる。 ほんの少しだけ落胆した後、 俺は起き上がって簡単に身支度を整えた。 階下に下りると既に食事を終えたパパスが のんびりとカップから飲み物を啜っているところだった。 『おはよう、サン。良く眠れたようだな』 笑顔のパパスにおはよう、と小さく挨拶すると、 『随分お疲れだったんですよ。ぼっちゃんはまだ小さいんですから。 すぐに朝食をお出ししますからね。少しお待ちください』 使い終えた食器を片付け、 新しい食器を棚から下ろしながらサンチョが笑う。
最後の一滴を飲み終えるとパパスは 傍らの荷物袋を手にすると一息吐く間もなく立ち上がった。 『サン、父さんはちょっと出かけてくるからな。 いい子にしているんだぞ』 『おや旦那様、もうお出かけですか。 折角ゆっくりなさられるかと思ったのに』 『うむ・・・、もう一仕事終えれば落ち着くからな。 すまないがサンチョ、留守を頼む』 困ったように頷き、サンチョは扉の前までパパスを見送った。 お気をつけて、とその背中に投げかけて、俺を振り返る。 『まったくお忙しいお父上ですな』 にこっと笑う笑顔につられて俺も微笑む。 さあ食事ですぞ、と出された料理は ジャンクフード慣れしていた俺の舌に驚くほど美味かった。 ふた皿分をぺろりと平らげ、 ジュースのような甘い飲み物を飲み干し 一息つくと俺は 「探検に行ってくる」 とサンチョに言い残し家を出た。
今日は少し雲が多いようだった。 太陽が時折雲間から顔を出し 家々をなぞるように照らしていく。 俺はまず基本中の基本 村中の樽の探索から始めることにした。 小さな村とはいえ建物の数はそこそこある。 けれど屋外の樽や壷からは 残念なことにめぼしい収穫はなかった。 気を取り直して入り口側から順に屋内の調査に取り掛かる。 とりあえず一番近場の平屋の扉を開けると キッチンから若い女があらあ、と笑いかけた。 『パパスさんの。ぼうや今日は一人なの?』 作り笑顔で応えると、 女はにこにこと近寄ってきて俺の目の高さまで屈んだ。 『ぼうやも大きくなったわねえ。 ぼうやがお父さんとこの村に来たときは まだこーんな赤ちゃんだったのよ?早いものねえ』 身振りを添えながらゆっくりと話し、俺の頭を撫でる。
正直、やりにくいな、と思った。 ゲームならこっちからコマンドを入れない限り 相手は俺がいないと同じ振る舞いをするのに。 こう話しかけられると簡単にタンスの中なんて漁りにくい。 子供の無邪気さを武器にしたって 勝手に他人の家を荒らせば咎められるに決まっている。 面倒くさいな。 そう思ったところに後ろから老人が語りかけた。 『パパス殿はここに来る以前は 一体何をしておったんじゃろうなあ。 わしが見るに、あれは只者ではない筈じゃよ。 ぼうやは小さすぎて、昔のことは覚えておらんじゃろうがなあ』 『おじいいちゃんてば、 昨日パパスさんが帰ってからあればっかりなの』 くすくすと小声で笑い、 『きっとおじいちゃんはパパスさんに夢を見てるのね。 おじいちゃんも、昔は旅をしていたらしいから』 耳元でささやくと、女はおじいちゃんお薬は?と 老人に向かって立ち上がった。
王様だよ と言ってしまおうかと思ったけれど、まあやめておいた。 突っ込まれても困るし パパスが隠しているんだから言うべきではないだろう。 子供の幻想だと笑い飛ばしてくれる可能性もあったけれど 面倒ごとは起こさないことに今決めた。 老人と女のやり取りを尻目に、 俺は奥の引き出しに目をやる。 めぼしいものは、外から見た限りでは解らなかった。 引き出しを開けてみる度胸もなく 俺は「探検の途中だから」と 目一杯無邪気に言うと、家を後にした。
本日ここまでで ありがとうございます ではまた
>>122 お疲れ様でした。8スレ目では始めて投下するレッドマンです。
今後もよろしくお願いします。
もょ「おはよう。タケ。」 タケ「もょ、起きたのか。昨日はお疲れ様。」 もょ「さすがにきょうはタケにまかせるぞ。かなりつかれた。」 タケ「それは無理もあらへんな。もょにビッグニュースがあるんよ。」 もょ「どうした?」 タケ「俺も呪文が使える様になったんや。」 もょ「ほ、ほんとうなのか!?」 タケ「ああ、さっきゼシカに魔力を引き出してもらったんよ。しかし俺等の場合はどうなるんやろな?」 もょ「う〜ん・・・・おれにじゅもんをうたせてくれないか?」 タケ「ええけど。ただ一発分しか打てへんからな。」 俺達は外に出た。 もょ「しかしいったいどんなじゅもんなんだ?」 タケ「サマルのギラやリアちゃんのヒャド、ムーンのバギに比べたらかなり劣るんやけどな。」 もょ「そうなのか。」 タケ「メラって言う呪文なんだけど取り合えずやってみてれへんか。」 確かゼシカが言うには『呪文を打つ時は集中力を高めて唱える。』って事らしい。 とりあえずもょもとに唱えさせたのだが全く反応が無い。 もょ「あれ!?なんにもでないぞ?」 タケ「じゃあ俺がやってみよか。」 俺が集中力を高めてメラを唱えたが直径30センチくらいの火炎球が出てきたのだ。
タケ「おおっ!!やっぱ使えるで!!」 もょ「じゃあなんでタケだけがつかえるんだ?」 タケ「ゼシカが言うには実戦で呪文に揉まれたから使えるようになったって言っていたで。」 もょ「じゃあおれもつかえるするはずだぞ。」 タケ「もょの場合は生まれつき呪文が使えない体質かもしれへんな。」 もょ「そうなのか・・・・・・・・・」 もょもとも流石にショックを受けたようだ。 タケ「まぁ、気にすんなや。そんなに落ち込む事はないやろ。」 もょ「しかしなぁ・・・・・・・・」 タケ「アホか。お前は呪文を使えない代わりに常人には無い力とスピードがある。人間皆個性があるって言うこっちゃ。」 もょ「な、なるほど。おれはおれらしくすればいいんだな!」 タケ「そやで。判り易く言えばもょはスピードは最低でもククール並み、パワーはヤンガス以上って所やな。ある意味最強の戦士や!」 もょ「ほ、ほめすぎじゃないのか?」 タケ「おう。褒め過ぎやで。」 もょ「まったくタケはひどいやつだなぁ。」 タケ「オマエモナー。実際の話二人と戦って俺なりの判断やけど。まぁ、ええんちゃう?」 しばらく話し込んでいるうちにムーンがやってきた。
ムーン「おはよう!もょもと!」 タケ「おはよ。やたら元気がいいな。」 ムーン「あたりまえじゃない。新しい朝は希望の朝って言うでしょう?」 タケ「それもそうだな。しかしムーンがうかれるって珍しいな。」 ムーン「実は船を提供してくれる人が見つかったの!」 タケ「マジ!?」 ムーン「詳しい事はシャールさんが話してくれるのだわ。」 タケ「わかった。とりあえず旅立つ準備をしようか。サマルとリアちゃんを呼んできてくれ。しかしムーンも手際がいいな。」 ムーン「そんなのあたりまえじゃない!ほらほら!さっさと準備するわよ!」 ムーンは去っていった。 宿屋の玄関で待っていたらシャールがやってきた。 シャール「やぁ。もょもと。おはよう。」 タケ「どうも。おはようございます。」 シャール「君のおかげで何とか上手くいったんだよ。ありがとう。」 タケ「ええッ!?本当ですか!?」 あんな励まし方で上手くいったのかよ・・・・・・? シャール「まぁ大目玉は喰らったんだがな。それはともかく親父が船を貸してくれるんだそうだ。」 タケ「それは助かります。しかし流石に無償って言うわけには行きませんよ。」 シャール「わしも何か対価が必要ではないかと思っていたのだがその点は親父が別に構わないって言ってくれたんだ。」 タケ「本当にありがとうございます。上手くいって良かったですね。」 シャール「その前に親父とマリンに会ってくれないか。どうしてもお礼がしたいらしいんだ。」 タケ「それは構いませんよ。同行させていただきます。」
*「おおっ!!もょもと!シャールが世話になったそうじゃな。父として礼を言わせてもらいますわい。」 タケ「とんでもないですよ。私も命を助けられたんですから。」 マリン「ありがとう。お兄さん。お父さんが戻ってきてすごくうれしかった。」 タケ「親父が無事でよかったな。」 俺はマリンの頭を撫でた。 マリン「えへへ。」 タケ「話は変わりますが本当に無償でよろしいのですか?」 *「ああ。もょもとなら構わんぞ。わしら家族の『絆』を戻してくれたんじゃからな。」 シャール「これからはワシもここで薬剤師として頑張っていくよ。お礼にこれを渡しておこう。」 シャールから上薬草を受け取った。 タケ「何から何までありがとうございます。」 シャール「ラダトームにはここから大体東に向かえば到着するのだがここへ向かうのかい?」 タケ「まずはローレシアに向かいます。ここで仲間達と合流予定ですので。」 シャール「ローレシアにはラダトームより更に東だ。ちょっと時間がかかるぞ。」 タケ「そうなのですか。」 *「では、気をつけて行くんだぞ。後1つ言っておく事がある。」 タケ「どうしたのです?」 シャール「海には荒神がいるらしい。なんでも大昔に船を沈没させたらしいんだ・・・聞いた話しなんだがな。」 タケ「それはまた物騒な話しですね・・・・」 *「何でもこの町の富豪が嵐に巻き込まれたのがその荒神の仕業じゃないかって噂が立っているくらいじゃ。 相当珍しいものに対して強欲だという事も言われているがの。」 荒神=海賊みたいなものか。しかし噂だけじゃ信憑性は無いがとりあえずは頭に叩き込んでおくか。 タケ「そろそろ出発しようと思います。仲間たちを宿屋で待たしていますので。」 *「それならワシらも見送らせてもらいますわい。」
宿屋に戻るとムーン達が待っていた。いつでも出発が出来そうだ。 ムーン「シャールさん。ありがとう。こうして船旅が出来るのは貴方のおかげよ。」 シャール「それ以上に感謝しているのは私達のほうだ。君達の力にいつでもなるよ。」 リア「マリンちゃんも良かったね!!これからお父さん達と一緒に過ごせるんだよ!」 マリン「うん!ありがとうリアお姉ちゃん!!絶対に遊びに来てね!!」 マリンの存在がリアに溜まっていたストレスを解消させたみたいだ。良い表情だなぁ・・・ サマル「ぼーっとしてどうしたんだい?もょ?」 タケ「ああ…すまねえ。それよりゼシカを見なかったか?サマル?」 サマル「ええっ!?ゼシカさんも一緒に来るのかい?」 タケ「そうだけど……何か不都合な点があるのか!?」 サマル「ええっと……その……ぉ、ぉっぱぃが気になるんだ……」 やっぱりこいつもムッツリスケベか。ロト一族はある意味陰湿だなぁ。 タケ「………………………………アーッハッハッハッハッ!!!」 サマル「ど、どうしたんだい!?もょ?」 タケ「いやー君も男なのにそんなつまらん事で気にするなんてさ。これも男のサガだな。思わず笑ってしまったよ。」 サマル「しかし気になっても仕方が無いよ!!」 サマルが必死に弁明した。ある意味戦っている時よりも必死だ。 タケ「まぁ俺も確かにアレは中々見逃せないな。お前の気持ちが分からん事でもないがな。」 サマル「だろ!?僕の気持ちが分かってくれるだろ?」 よしよし。ここはおちょくらないといけないターイムだな。
タケ「ああ。わかったよ。おーい。ムーン。」 ムーン「どうしたの?」 タケ「サマルがゼシカのおっ……」 サマル「わー!わー!わー!!」 ムーン「ど、どうしたの!?サマル?」 タケ「すまんすまん。何でもないよ。」 ムーン「変な二人ねぇ……………………」 ムーンは呆れて離れていった。 サマル「ひどいじゃないか!!もょ!!」 タケ「何で必死に慌てる必要があるんだ?サマル君。ムーンは関係ないだろう?」 サマル「そ、そんな事女の子に言わないでよ!!」 タケ「ごめんごめん。おっ!ゼシカが来たみたいだな。」 タイミング良くゼシカが来てくれた。何とかミッション成功という所か。 ゼシカ「おはよう。もょもと。」 タケ「おぃっす。」 リア「もょもとさん、ゼシカさんも一緒に来るの?」 タケ「ああ。ローレシアまで限定だけどな。」 ムーン「そういえばククール達とローレシアで合流する約束をしていたわね。」 ゼシカ「ええ。少しだけの間だけど皆さんよろしくっス!!」 ゼシカが仁王立ちの構えから頭を下げた。 タケ「おい、サマル。」 サマル「どうしたの?」 タケ「今一瞬だけどゼシカの胸の谷間が見えたぞ。」 サマル「ええっ!!見逃してしまったよ。」 タケ「残念だったな。」 サマル「くすん。」
ムーン「こぉ〜ら二人共何やっているのよ!!朝から変よ。もょもと!サマル!」 サマル「え、えっと…」 タケ「おいおい、何言っているんだ!?」 ムーン「えっ!?」 タケ「今日は女性陣に負担をかけない様に俺達男が頑張ろうなって気合入れていただけだぞ。」 ムーン「そ、そうなの!?」 サマル「そ、そうだよ。なぁ、もょ。」 タケ「ああ。昨日はゼシカもかなり疲れただろうし、リアちゃんも危なかった状態だっただろ。俺達がしっかりしないといけないだろう?」 ムーン「確かにその通りね。変に疑って悪かったわ。」 タケ「気にするな。男同士の決意だからあんまり話したくなかったんだけどな。聞かれたら恥ずかしいじゃねーか。」 何とか上手くごまかせた。―――――――――って俺は母親にエロ本がばれるのに必死に弁明している中学生か!!ちゃうっちゅーねん!! サマル「う、上手くごまかせたね。」 タケ「女の勘はある意味恐ろしい程当たるみたいだからな。気をつけろよ。」 サマル「今後気をつけよう。僕ももっとしっかりしなくっちゃ。」 ゼシカ「しかし間に合ってよかったわ。」 タケ「良く酒場側が止める事を許可してくれたなぁ。結構大揉めしたんじゃないか?」 ゼシカ「それはシャールさんのお父さんが話をつけてくれたの。まぁ私も一肌脱いだんだけどね。」 タケ「マジッすか?」 ゼシカ「それはね…(ここで途切れました。詳細を読むにはハッスルハッスルと書き込んでください)」 サマル「おーい!!もょ。出港するよ!!」 タケ「おう。直に行くよ。親父さん。シャールさん。マリンちゃん。お世話になりました。お元気で!!」 シャール「気をつけな。」 マリン「元気でねー!!バイバーイ!!」
>>122 なんか何処となく切なさを感じて好きだ。
懐かしいというか、不思議な感じ。
楽しみにしてるんで、これからもゆっくりでいいんでよろしく。
規制に引っかかって遅くなったぜ……。
ハッスルハッスル!
>>◆U3ytEr12Kg ハッスルハッスル!! >>◆u9VgpDS6fg 家人の前で堂々とタンスを漁りにくい〜ってところに共感してなんか笑えた。 プレイ初期の頃は他人のタンス漁るなんて常識的に考えて ありえないだろ!と思ってた。冒険進めるにつれてタンス漁りはDQならではの醍醐味だと思うようになったなぁ 他人の家で鍋の蓋やらステテコパンツやら盗んで装備したのはいい思い出w
>>133 >鍋の蓋やらステテコパンツ
一般家庭の日用品まで盗んで行くって考えてみると恐ろしいもんだなw
タカハシ氏GJです
>>レッドマンさん
ハッスルハッスル!!
乙です新人です
こちらこそ宜しくお願いします。
>>131 ありがとうございます。
自分の中でドラクエは、レトロというか
どこか懐かしいイメージがあるので
そういうのが出てるのかも知れないですね。
頑張ります!
>>133 醍醐味、わかります!
でも物語の中でその醍醐味を取り払ってしまったので
今後どうしようかと結構深刻に悩んでいます・・・
>>タカハシさん
いつもまとめ乙です
>>121 続き投下します
さて困ったのは、屋内の探索だった。 念のため宿屋を覗いてみると 階下の酒場ではバーテンが忙しそうに仕込みをしていた。 「探検してるんだ」と言うと バーテンは愉快そうに笑って 『ここにはぼうやの喜びそうなものはないなあ』 と言った。 言ったとおりで、隅の樽の隙間まで調べたが 役に立ちそうなものは見つからなかった。 二階に上がりながら、 まだビアンカ達が滞在していることを思い出す。 手前の部屋は空き部屋だった。引き出しも空っぽだ。 奥の部屋のドアをノックしようとした時 中からおかみの『困ったわ』と言う声が聞こえた。 思わず動きを止めて声に聞き入る。 『どうしようねえビアンカ。親方さん、まだ戻らないみたいよ』 『じゃあ戻るまでここに居ればいいじゃない。 あたしまたサンと遊びたいな』 『そんな訳にも行かないでしょう。お父さんが待ってるんだよ。 誰か探しに行ってくれないかねえ。パパスも留守だったしねえ』
とんとん、と扉をノックすると 『親方さんかしら!』とおかみの声と、軽い足音が聞こえた。 ガチャリと勢い良く開いた扉の向こう ビアンカの顔が輝くのと同時に、その奥で おかみの顔が少しだけ残念そうに曇る。 「こんにちは」 努めて明るく呼びかけると、ビアンカが 『遊びに来てくれたのね!嬉しいわ!』 と本当に嬉しそうに俺の手を引いた。 『そうだわ、今度はあたしのご本を読んであげる』 部屋に入り傍らのベッドに腰掛けると ビアンカは飛び跳ねるようにくるくると室内を行き来 自分の荷物袋から一冊の絵本を探し当てた。 『この村って大人しか居ないんだから。 あたしずっと退屈だったのよ。サンが居て良かったわ』 にこにこと喋りながら、俺の隣にぴったりと座り お互いの足に渡らせて大きな薄っぺらい絵本を開く。
『あたしの住んでるアルカパには男の子が居るけど、 みんな子供っぽくって。 じゃあここからよ。あたしが読んであげるから あんたは絵を見ていればいいわ』 妙にませた口調を使うビアンカに おかみはくすくすと笑いながらまた 不安げに窓の外に目を落とす。 『すてきな、なかよしよにんぐみ。 かしこいボロンゴ、やさしいプックル かわいいチロル、ゆうかんなゲレゲレ。 ・・・聞いてるの?サンってば』 ビアンカの指摘に慌てて本に視線を落とす。 昨日見た本よりも明らかに少ない単純な文字が並び ページを大きく使って賑やかな絵が描かれていた。 『・・・もう。いい?ここよ? みんな、ちっともにていない。 とくいなことも、すきなたべものも、 ぜーんぶちがってる。』
ビアンカの声と文字をなんとなしに追っていく。 この世界の文字はまだ読めないが、 それでもゆっくりとしたビアンカの声にあわせて 文字も理解できるような気がした。 おかみが溜息をつく。 「どうしたんですか?」 悪いとは思いながらもビアンカの声を押しやって 知らない振りで俺はおかみに声を掛けた。 きょとんとした顔のビアンカと、困ったように笑うおかみ。 おかみの顔から目線を外さずに居ると やがておかみはもうひとつ溜息をついた。 『ごめんね、あんたにまで心配かけちゃ悪いね。なんでもないんだよ』 そう言うと俺とビアンカの座るベッドの前に屈み込み 俺の頭を撫でた。 『・・・もうご本はいいみたいね』 面白くなさそうにビアンカが呟いた。
また今度、俺がもう少し文字を覚えたら。 無理矢理の約束を取り付けて、 俺はそそくさと部屋を辞した。 宿屋を出ると、日は随分と高くなっていた。 雲から外れた太陽が俺の足元にも小さな影を作る。 パタパタと駆け出して、俺は小川を渡り村の奥に向かった。 教会の裏を抜けて傾斜を上がると 洞窟のような入り口に 申し訳程度の看板がかかっているのが見えた。 文字はやはり読めない。 そっと扉を開くと、店先のカウンターには誰も居なかった。 頭を突っ込み奥を覗き込むと、若い男が一人 心配そうに忙しなく室内を歩き回っている。 上の空の状態で、声を掛けてもすぐには俺に気付かなかった。
『やあ、ぼうや。悪いけど店はお休みなんだ』 小さな訪問者に気付き慌てて笑顔を作った男の表情から まだ不安の色は消えなかった。 まいったなあ、としきりに口元に手をやって 落ち着きなく体を揺らす。 「親方さんはまだ戻らないんですか?」 尋ねると意外そうな顔で 『ぼうやも知ってるのかい?』 と声を上げる。 『いつもならもう戻ってるはずなんだけど。何かあったのかなあ。 俺が探しに行きたいんだけど、擦れ違ったら厄介だしね』 よく見れば奥のテーブルには 薬草と幾つかの装備品が投げ出されていた。 この男も葛藤してるんだな、と何となく思った。 「じゃあ僕が探しに行くよ」 俺が言うと男は困ったようにその整った顔を崩して 『ぼうや、ありがとう』と言った。 子供のたわ言だと思っている顔だった。
本日ここまで。 ありがとうございます。
>>133 そういえば、他人のステテコパンツはくのも、すごいな。
呪われた音楽が鳴って、かゆくなったりしたらやだな・・・。
>>144 大人(作者)目線でストーリーが進んでいくから、いつもとは違った視点で
眺められて懐かしいと同時に新鮮ですごくおもしろい
十数年ぶりにまじで5をやりたくなってきた
今北産業 まとめの文章に触発され、久々に筆を取ろうと思うww
タカハシ氏GJです
>>149 いいね!
期待ほっしゅ
>147 むしろ一昨日リメイク版買った。 >144 乙です。ゲームと平行して楽しませてもらってます。
ほ
し
ゅ
う
>>145 頑張ります。
>>146 それすげーやだw
>>147 ありがとうございます
ゲームだとプレイヤー目線は当たり前なのに
文字にしてみると自分でも新鮮で面白いです
一緒に楽しんでいただけたら幸いです
>>タカハシさん
乙です
>>149 期待!
>>151 ありがとうございます。頑張ります
では
>>143 続きです。
方向を変え、村はずれまで歩く。 只でさえ森に囲まれた村道は 洞窟近くになるとさらに深く影を落としていた。 洞窟の入り口は目に見えてわかりやすかったが くぐもったその先に足を踏み入れるのは やはり少しだけ躊躇われた。 村までの道のりはパパスがついていたから 不安はかなり小さかった。 今回は頼れるのは自分ひとりだ。 しかもこの奥は記憶が確かなら おおきづちとかが出るはずだ。 痛恨を食らったらどうなるか。あまり想像したくない。 自覚している以上に緊張していたのか 肩を叩かれるまで声に気がつかなかった。 はっと息を飲んで振り返ると 緑に映える鮮やかな赤い鎧を着た男が 心配そうにこちらを覗き込んでいた。
『ぼうや、大丈夫か?どうしたんだ?』 額の汗を手のひらで拭って、俺はひとつ深呼吸をした。 「大丈夫。ちょっと探検に行くんだ」 我ながら固い口調だったが 鎧の男はふんと頷いて、 『この先の洞窟か。 ぼうやには少し、危険じゃないかな』 諭すような声色で言う。 どうしても中が見たい、一人で行きたい、と 子供らしく駄々をこねると、男は 地下には降りないこと 危なくなったら大声を出すこと (反響して入り口にも声が届くから) という二つの約束を俺にさせ 『迷子になるなよ』と笑って送り出してくれた。
入り口から数歩進むだけで 外の明かりは洞窟内にはもう届かなくなった。 どこかに光源があるのか、中はぼんやりと 進むのに支障がない程度に照らされている。 右手から僅かな水音が聞こえるのは 村の中央に流れる小川の水源だろう。 モンスターはまだ姿を現さないが 岩壁の向こう、もしくは背後に 今にも奴らの呼吸が聞こえてきそうで 俺は唯一の武器、木の棒を握り締めながら慎重に進んだ。 手前に分かれ道が見える。 陰から何か飛び出してくるんじゃないかと息を詰めたが 奥を見渡してもまだ モンスターの気配すら見当たらなかった。 左に向かう道に進む。 水音が背後に回る。その音に混じった キキッ、という小さな鳴き声を 俺は聞き逃さなかった。 反射的に振り向く。 向こうは足元の岩陰に隠れたが 鮮やかな青い色を視界の端に捉えた。 スライム。一匹だけか。
足音を殺しながら一歩、踏み出そうとした時 今度は背後から衝撃を受けた。 それに合わせるように 手前のスライムが岩陰から飛び上がる。 もう一匹いた。 囮だったのか。 頭使いやがる。 なんだこいつら。 思考が頭を巡る間に近付いてくる 最初のスライムのつるんとした質感。 俺は咄嗟に右手の木の棒を振り下ろした。 ばちん、と衝撃音がして、スライムが地に転がる。 立て直してくるかと思ったが それはそのまま沈黙した。 もう一匹がピキーッと甲高い声を上げる。 それに向けてもう一度棒を振り下ろすと 避ける間もなくスライムは地面に転がって動かなくなった。 ・・・強くなってる。そう直感した。 パパスの背に隠れて、殆ど戦いに参加する機会はなかったのに。 ちゃんと強くなってる。 不意に緊張が解けるのがわかった。
スライムの死骸から小銭を抜き取ることも忘れずに 俺はさらに奥へ進んだ。 分岐の奥は行き止まりだったが(勿論わかっていた) 奥に打ち捨てられたような、小さな箱が転がっていた。 手に取ると端のほうからぽろぽろと木の屑が落ちる。 壊すようにして蓋を開けると 中から薬草の包みが転がり落ちた。 それを腰袋にしまいこみ、俺は来た道を戻った。 レベルは上がっていく。 それがわかって、俺は少し安心した。 適度に戦闘をこなしながら行けば この洞窟は問題なく最深部まで辿り着けるだろう。 武器が木の棒だけと言うのが不安だったが、 まあなんとかなる。 何度かスライムや 土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)を叩き潰して 俺は突き当たりの分かれ道に差し掛かった。 右からは水音。左側は道が湾曲していて奥は見えない。 俺は迷わず左の道を行き、最初の階段を下りた。
本日ここまで ありがとうございます。 やっと冒険らしくなってきた。 こういうの書いてて楽しいです。
リアルタイム遭遇ktkr! 楽しませていただきました。
>>162 乙〜ニアミスするところだったw
続きwktkですよ〜
さてさて、こっちは新章突入って事で軽くおさらいしておきましょう。
展開を忘れた方はご覧下さい。
学校に向かう途中に突然ドラクエ世界に召喚された能登真理奈さん。
いきなりのモンスターとの戦闘も、仲間の援護に救われ何とか勝利。
その功を称える為の王様との会見で、真理奈はルビスが遣わせた救世主だと思い込まれてしまう。
そこには魔王が復活し、モンスター達が再び活動を始めた事が背景にあったのだ。
以前魔王退治に挑んだのは勇者ロトの少人数パーティーだけだった事を懸念したアリアハンの王は、
今度は世界中の人間が結束して立ち向かうべきだと考え、連合の結成を思いつく。
その大使として真理奈は世界を回る事になったのだ。
真理奈がその役を受けたのは、この世界を救えば元の世界に帰れるというルビスの言葉があったからだ。
武道家・戦士・僧侶・魔法使い、そしてスライムの4人と1匹のパーティーは、
まずロマリアとイシスの王族の結婚話を手伝い、両国を加盟させる事に成功する。
次にエジンベアと商人の町との戦争に巻き込まれるが、犠牲を出さずに治める事に成功した。
その混乱の中で、真理奈は魔王ゾーマを名乗る者に出会う。
アッサラーム・バハラタ・ダーマなどのモンスター襲撃を指揮していた魔王ゾーマとは、
何と真理奈と同じ世界の青年だったのだ。
真理奈は青年に立ち向かうが、レベルの違いなのか、まったく敵わなかった。
しかしその出会いによって、かねてからの悩みだったものの答えを垣間見た真理奈は、
再び連合結成に意欲を燃やす事になったのだ。
そして、かつて勇者ロトの仲間だったという商人プレナのおかげで船を手に入れた真理奈達。
彼女らが次に向かう先は――
とまぁこんな感じですかね。
んじゃあ
>>85 の続きをどうぞ。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「愛しているよ」 それが私の父親の記憶。 「幸せになってね」 それが私の母親の記憶。 けれどその声はとてもあいまいで、男の声なのか女の声なのか分からない。 だからリフレインされるその声が本当に心の底から発せられたものなのかどうか、 私はいつも判断できない。 だから私と私を産んだ者達を繋ぐ唯一の言葉達は私を苦しめる。 愛しているのならどうして私から離れるの? 私の側にいてくれなかったのに幸せを願う権利なんかあるの? 私の思考がそこにたどり着くと、その二つの声は次第に遠ざかって行く。 そして私はこの世界で1人ぼっちになってしまう。 そこで私は、私の光を求めて走る。 走る。 走る。 走る… 走る…… その内、何の為に走っていたのか分からなくなる。 そして私自身の存在意義を疑問に思ったところで、この世界は終わる。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
今日も快晴。 世界は曇る事を知らぬかのように、太陽を遮るものは何も無い。 人が雨の中に絶望を見るのならば、この世界には希望しか存在しないだろう。 そんなくらいに晴れ、という事だ。 そうだよ。 本当にこの世界を支配したいのなら魔王はアレフガルドの様に暗闇で覆うべきなんだ。 さすれば人間達の反抗は影を潜めるだろう。 しかし、この地上には飽きる事無く朝が来る。 いかに人の世が苦しみに満ちていたとしても、その度に光を見るのだ。 また今日が始まるという光を。 また明日もあるという光を。 未来という光…… 「ねーねー、ほんで次はどこに行くの〜?」 「ジパングだろ。ってかそうするって昨日話したろ?」 「えへへ〜聞いてなかったw」 「ったく…」 プレナから貰った新しい船。 真理奈達の、船。 船首が波をかき分けていくにつれて、この船が自分達の物だという感覚が強くなっていく。 嬉しい。 必要な物がようやく手に入ったからだろうか。 誰かの役に立ったという事が、物として現前しているからだろうか。 どちらにせよこの船は、いつ終わるともとも分からないこの旅の支えの一つとなるだろう。 「でもさ〜鉄の爪直さないと私戦えないんだけどー」 「そうじゃなぁ…」 「新しいの買えばいいじゃねーか」 「え〜ダメ! 思い出があるんだからっ!」 「ピ〜…」
その鉄の爪、この世界に来た時からずっと使ってるもんな。 ってか、抱きかかえてるブルーが苦しそうだから力を込めるのは止めた方が… 「それとも、もう直らない…?」 根元からぽっきりと折れた爪の部分。 今はまったく武器としての機能を果たしていない。 「……ロマリアの北にカザーブという村がある。 そこに腕の良い武器職人がおるんじゃ。 頼んでみれば、もしやな」 「行く行く〜!」 「仕方ないの。寄り道じゃな」 「のんびりしてる暇あんのかよ…」 「まぁ一応順調に連合参加国も増えておるしのう。 それに何も大国だけではなく、小さな集落にも呼びかけるのも使節の仕事じゃ」 「カザーブはロマリアがどうにかしてくれてるんじゃねーの?」 「そんなに行きたくなきゃ船で待っておれ」 「……サマンオサに向かった使節の方はどうなったの?」 お、フィリア良く覚えてたな。 連合参加を呼びかける使節として活動しているのは真理奈達だけではない。 アリアハンにいた冒険者の多くはそっちに参加したようだ。 その点、真理奈達のパーティーは残り物と言われてもしょうがないかもしれない…… 4人中3人は若者だし、1人はもう老人だ。 世界を旅するには少々心もとないかもしれない。 まぁ今さらだけどね。 「そうじゃったの。一旦アリアハンに戻って状況を聞かねばいかんかもしれんなぁ」 「もうアリアハンを発ってから大分経ったよな」 「時が経つのはいつの時も早いものよう」
支援
ニアミス支援w
そんな会話を背に、真理奈は改めて鉄の爪を見てみる。 その切り口を見ると、ゾーマの事を思い出す。 まったく普通の青年だった。 プレナの言う通り、彼は何か知っているのだろうか。 私達が、この世界に来た理由を。 この世界とあっちの世界の事を。 (ルビスは何て言ってたんだっけ……?) 携帯が使い物にならなくってルビスと話してない。 もうかなり昔の事に思える。 …… 携帯… 携帯電話の事だ。 モバイルフォンの事だ。(二回言った) (お〜携帯!! アイツも携帯持ってるかな!!) アイツはゾーマの事か。 まぁ、有り得無くは無いわな。 ルビスとの繋がり。 それは真理奈の場合、携帯を通じて行われたものであるが、 それは同時に、この世界とあっちの世界の繋がりでもあるように思えた。 もし、だ。 ゾーマを名乗ったあの青年が携帯を持っていたら。 そしてもし。 その携帯がまだ使える状況にあるのならば…… 帰れるかもしれない。 しかし"魔王に携帯を借りる"って… う〜ん、ますますシュール。
(ん〜…ルビスはこの世界を救えば帰れるって言ってたけど…) どうなんだろうね。 まぁルビスが嘘を付くとは思えないけどな。 (あ〜もう分かんないや。やーめた) 止めんなよ… 物語の核心に迫る大事なトコだろー? そんな心配をよそに真理奈は暇そうにしているフィリアに近づいて行く。 「ね〜ね〜フィリアちゃん。いつもあんなに早く起きてるの?」 「うん」 「凄いね〜」 「理奈は何であんなに遅く起きるの?」 「んん〜……摩訶不思議だね」 眉をしかめて、さも困ったかのように言う真理奈。 ったく、不思議じゃねーよ。 ちゃんと起きなさいよ。 「まか…?」 「そう。七不思議みたいな」 「……分かんない」 「不思議と言えば、呪文って不思議だよね〜」 「何で?」 「ってかこの世界は不思議だらけだよ〜」 「理奈の方が不思議だよ…」 「マジ? じゃあ皆不思議だw」
いまいち理解できないという表情のフィリア。 「不思議なの好きなの?」 「うん! フィリアちゃんは何が好き?」 「……見た事無いものを見る事、かな」 「へぇ〜だから色んなもの真剣に見てるんだね」 「……そう?」 「うん。その時のフィリアちゃん可愛い!」 そう言って楽しそうに笑う真理奈を真剣に見るフィリア。 真理奈の論理がイマイチ分からない。 だからフィリアにとっては真理奈はいつまで経っても不思議の対象だった。 だいたい今だって、何故ブルーを自分の顔にくっつけてくるのかフィリアには理解不可能だ。 でも理由を聞いてもきっと分からないんだろうなと、既に諦めの境地である。 女神なら、真理奈の事も分かるのだろうか。 いつか自分にもその心が分かる日が来るのだろうか。 (やっぱり私も不思議なのが好きなのかも) 「ピ〜」 フィリアはブルーのツノを引っ張って、真理奈と笑い合った。
そんなこんなで商人の町から北東の方角へ進むと、やがてエジンベアが見える。 そこを北に迂回していくと、やがてノアニールという村の付近に着く。 この辺りには港が無い為、海岸ギリギリまで船を寄せて停泊させた。 座礁の危険はあるが、強力なモンスターに船を傷付けられるよりはマシだ。 海底の浅い所には比較的弱いモンスターしかいないのだ。 ここからは小さな船で陸に上がる事になる。 もっともこの船は頑丈に造られている上、モンスターが近づきにくい仕掛けがしてあるらしい。 その秘密は材木にあって、トヘロスがどうとかパトリスが言ってたけど… 詳しくは国家機密らしい。 ま、それ故に世界を回るのに最も適した船だと言われるのだけれど。 「では行くとするか。2人はノアニールで待っておれ」 「え〜? あそこの浜まで皆で行こうよ〜」 「い、や、じゃ! ワシは小船が嫌いなんじゃ」 「ぶーぶー」 頬を膨らませる真理奈をよそに、パトリスはいそいそとルーラを唱えてカザーブへと消えた。 「さてと、俺らはノアニールに行くとするか」 ジュードの問いかけにコクン、とフィリア。 ブルーは真理奈に付いて行ったから、2人きりだね。 上陸して少し歩くと集落が見えてくる。 最北の緯度に位置する村、ノアニールだ。 …… しまった。 今回はパトリスがいないから土地の説明ができないぞ。 …… まぁいいか。 何だか寒いらしいよ?
「散歩してくる」 と、宿屋のベッドに寝転ぶジュードに告げてフィリアは村を出た。 娯楽も特に無い小さな村だ。 酒場があるみたいだったが、フィリアはまだお酒には興味は無い。 フィリアにはたぶん一生縁が無さそうだけどね。 村の周りには森ばかりで見晴らしの良い景色はまったく無かった。 まぁその森のおかげで冷たい風が吹き抜けないので、海上よりは寒さが楽なんだけど。 毛皮のフードを被っているので耳がかじかむ事もないしね。 道端に落ちていた手頃な長さの木の棒を広い、それをフリフリして歩く。 そして森の奥に入り込んで迷う事の無いように、時々地面に印を付けて行く。 けど1人で出歩くなんて無謀だろ……常識的に考えて…… 「危ない!!」 言わんこっちゃ無い。 突然の声とガサガサという草をかき分ける音。 その直後、誰かが背後から飛び掛ってきた。 フィリアはその衝撃に耐えられず、そのまま前へ倒れこんでしまう。 直後、頭上を何かがかすめていくのを感じた。 (モンスター?) 背中に乗っているのが誰だかは知らないが、守ってくれたのだろうと判断し、 フィリアはモンスターの方に気を配る事にした。 素早く立ち上がり上空を索敵する。 「うわっ……!」 後ろの人を振り落としてしまったが、今は気にしていられない。
しかし、茂みや木々のせいでモンスターの姿は見えない。 どこかに隠れているのだろうか。 "目がダメなときは耳を頼れ" これが冒険者の常識らしい。 ちなみに耳の次は"勘"だそうだ。 フィリアは意識を周囲の音に向ける。 獣のうなり声は聞こえない。 枝が風に揺れ、葉が互いにぶつかり合う… 「……! バギ!」 聞こえた! 羽ばたきの音が! 左方上空に呪文を放つ。 一点集中の狙いはつけられなかったが、モンスターの右腕と右翼を切り裂く事に成功する。 グギャアァァァアアー!! 羽を失ったモンスターはバランスを崩し、地面に落下。 残った左翼をバタつかせながら這いつくばり、茂みの奥へと消えていった。 「ふっ……」 戦闘終了の一息をつくフィリア。 あれはバンパイアだったろうか。 いつか本で読んだ事がある。 ヒャドを使うらしいが、直接攻撃に徹してもらえたおかげで助かった。 「アンタ、大丈夫か?」 声をかけてきたのは、フィリアよりも身長の小さい少年だった。
猿くらった\(^o^)/
支援
仕方ない…また後で投下しますね(´・ω・`) あと少しだったんだけどなぁ
(´・ω・`)
>>162 洞窟突入からスライム撃破まですごい臨場感。
初めてのスライム戦と比べたら明らかに強くなってるのがわかって、
自分が主人公育てた時みたいに嬉しくなった。
>>178 続き待ってます!
「あんな風にボケっと歩いてると危ないぞ? 森の中の歩き方知らないのか?」 えらそーな口を利くが、どうみても立派な子供だ。 十代になりたてといったところだろうか。 金に近い茶髪で、少しクセのあるハネっ毛が少年らしくて可愛らしい。 けれど、つり上がった眉と目が少年の自信の強さを表している。 「アンタどこの人? 冒険者らしいけど、1人なのか?」 何も喋らないフィリアをジロジロと見上げる。 「とにかく、さっきの奴が仲間を呼んだらマズイ。 こっち来て!」 少年はフィリアの手を取り、走り出す。 この森の事をよく知っているのだろう。 ノアニールの村の子だろうか。 何度とつまづきそうになるフィリアに対して、森の中での走り方を心得ている。 引っ張られるままに十分程走ると、やがて目の前に小さな広場が現れた。 広場の中央には大人の背丈くらいの高さを持つ岩が埋まっている。 その岩の所まで連れてこられて、ようやく手を放してくれた。 「ふ〜……よし、もう大丈夫だろ。 ったく、オレがいなかったらアンタやられてたぜ? ま、貸しにしといてやるからもう村に戻りな。 ここなら樹に邪魔されないでキメラの翼が使えるからさ」 一方的に喋り続けた少年は、ポケットから羽根を一つ取り出してフィリアに差し出す。 しかしフィリアはすぐには受け取らない。
「一緒に帰らないの?」 冒険者の自分が村に帰って、この少年がここに残るのはおかしい。 いくら慣れているとは言え、どう見たって少年の方が危険にさらされるだろう。 「あ〜…オレはちょっと用事があるからまだ帰らないよ。 あ、キメラの翼ならまだあるから大丈夫だって」 「……」 「いいから帰れってば。仲間も心配してるぞ」 明らかに何かを隠すように慌てている。 しかし出会ったばかりの、そして一応命の恩人でもあるらしい少年の言う事だ。 用事とやらを済ませば、少年は1人でもちゃんと帰れるんだろう。 そう思い、ご好意に甘えようとフィリアは羽根を受け取ろうと手を伸ばした。 「……ソール?」 突然誰かの声がした。 広場には誰もいなかったはず… 「あ……」 その反応で、その声が少年にかけられたものだと気付く。 フィリアが少年の目線の先に顔を向けると、 そこには少年と同じくらいの年頃の少女がいた。 一番最初に目につくのは少女の鮮やかな若緑色をしたストレートの髪。 それが寒風に揺れるのを見ただけで、サラサラなんだろうと分かる。 フィリアは知っている。 これも本で読んだ事がある。 あれはエルフと呼ばれる種族だ、と。
今日はここまで〜
タカハシさん&u9VgpDS6fgさん&
>>180 さんサンクスでした
書き込めてよかったお( ^ω^)
>>162 ,
>>183 お疲れ様です
>>111 からの続きです
●悪夢
「タカハシ! 起きて!」
ん… 誰だ俺を起こそうとするのは…
俺は眠りたいのに……
「今日から一緒に旅するって言ったでしょう! 私よ、メイよ!」
メ…イ?
メイ?!
ガバッと、声のする方へ勢いを付け立ちあがる
「どうしたの? 目は覚めた?」
目の前にいるのは紛れもなく─ メイ
「メイ……!」
「寝坊よ! 待っていたのに寝てるなんて!」
この場所は、見覚えがある
そう確か…… フィッシュベルの宿屋だ
「ここはフィッシュベルの宿屋… か」 「そうよ 扉を叩いてもあなたは出てこないし、部屋の中まで迎えにきたんだから」 「メイ… 生きて………」 時間が戻ったのか 俺がずっと悪い夢をみていたのか 目の前で生き、少し怒った顔のメイに俺は、涙が出そうになる 存在を、確かめようと手を伸ばす─ 「迎えにきたのよ、あなたを相応しい場所へ連れていくために…」 「え、連れていくって…」 な、なんだ これはメイじゃ、ない……? 「私は生きていない、なぜ? だって、フフフフフ… あなたが殺したじゃない フフッ あなたが剣で、私を斬り殺した…!!」 「な………?!」 メイの姿が突如、霧状の魔物へと変化する 景色も一変し、宿屋の一室から赤く黒くウネウネと動く空と、草一本生えていない土の大地になる 一瞬、言葉が頭の中から消滅し、目の前の出来事が色を無くしてしまったかのよう─ 「フフフフ… あなたが、殺した……」 「あ、ああ・…」
ゾーマとの闘い… 俺のこの どろどろとした、心 苦し、い… 現実が、事実がこんなにも苦しい… これ、で、何度目だ 何度、おなじ光景を見てきた わかってるじゃ、ないか もう戻らないなんて、こと しばらくすれば、気を失うんだ そうして、また、繰り返す 到底、許されることは、なく 許すこと、なんて、出来ない─
●触れるもの 「タカハシ!!」 響く声にハッと気を取り戻す 「!?」 霧状の魔物は変化無くニヤリと俺を見ている 声の主は目の前じゃない! 「目の前にあるのはあなたが作り出した幻! 事実とは違うのよ!」 なな、何を言ってるんだ 事実とちがうなんて、違う… 事実なんだ 違うことなんて、何もないんだ! 「違う違う! 私を信じてタカハシ! お願い…!」 信じると言ったって… 「俺は、この声が誰の声なのかを知らないんだ いや─ 知ってる 知ってるけど、それは本当じゃないかもしれない…! いや本当で、あるはずがないんだ!」 だからもう、眠らせてくれ 悪い夢のなかで空っぽな夢を、みさせてくれ…
霧の魔物は動かない ただただ、俺を見下すように、その細く青白い目で刺すだけ 「信じて─」 声の主が言ったその刹那 からだのなかへ何かが入り込んでくる とても暖かくって切なくって ずっとずぅっと、欲心深く欲し続けてきたこの感情 目の前の魔物は空気と混ざり合いながら消え ぎゅうぎゅうに抑え込んでいた感情が、当たり前のように膨れ上がっていく 「こんなこと ほんとに」 景色は一変し暗闇の中 俺の心に触れてくれる確かな声 「メイ… どうして…」
●最善 どうしてメイが… 死んでしまったはずじゃあ 「覚えてる? 静寂の玉を」 ああ、覚えている だけどあの後いったいどうなってしまったのか 俺はわからないんだ ここがどこなのかすらも… 「ここはあなたの心の底 そして私は、ルビス様の手助けであなたの心に触れることが出来たの」 ルビスが? …どういう事なのかわからない なんでこんな事になってしまったのか 「それはすぐにわかるわ」 メイ すまない 俺は取り返しのつかないことをしてしまった この手で、メイを殺してしまった… 「タカハシ あの時の事は誰も悪くないの あれは魔王の見せたまやかしなのよ あなたはそれに騙されてしまっただけ だから─」
ダメなんだ もう、どうしようもなく俺は自分に失望したんだ 結局、守れなかったよ なんにも、この手はちっとも役に立たなかった よりによって大事な人を、殺めてしまったんだ… 「私はあれからたくさんの事を知った… なぜあなたがこの世界にいるのか、なぜ魔王が存在してしまったのか 他にも、いろいろ」 … 「あなたはきっとこう思ってる "きっと許してくれない" "許される事じゃない"」 そうだな その通りだよ 「私は、一度だってあなたに悪い考えを持ったことなんて、ない それどころか、あなたに出会えてよかったって、思ってる」 それは─ そんな事、だって本人を前にして言えないだろう 本心なんて、言えるはずもない 「ふふ… 私は今、あなたの心に触れているのよ? 嘘なんてすぐに伝わってしまうわ ね?」
ん… だけど、でも俺は、自分が許せない こうして話をしてるけど、失くしてしまった事は事実なんだ… 「固い心ね、もう… でもそこまで私の事を考えてくれるのは、正直にうれしいな」 … 目の前には暗闇がどこまでも続く 今、俺は戸惑っている メイが、自分を斬った俺をどう思っているか、はっきりいえば少し不安もあった だけど今はっきりと、その不安は全く無くなった 俺はどうすればいい? 知ったから、どうなるものでもあるまい? やはり俺は、ここで自分の愚かさを悔い続けるべきなのでは─ 「あなたはこの世界を救うため行動の出来るただ一人の人間なの 私は、私の事は考えずに、その使命を全うしてほしい」 使命? どういうことだ? 「そう、使命 これはね、"いのちの源"の意思でもあるのよ」 "いのちの源" それはいったい…
「詳しいことはルビス様に聞いて 私にはうまく説明できない…」 ルビスか なぁ、メイ そうする事が今の俺にとって、一番の償いになるんだろうか そうする事でメイにした事への、償いになりえるんだろうか… 「…私は償ってほしいとか、そういう気持ちは全然ないの ……けれどあなたがそう思い、行動してくれるのなら、きっと」 そうか……… 「私だけじゃない たくさんの人が救われるの あなたも自分の世界へ戻ることが出来る …あなたが自分の為に動くことが、私や世界の為になる…」 ……少し、考えを整理させてくれないか 俺はずっと考えていた どうしてこんな事になったのかを 自分の未熟さを、愚かさを どうすれば償えるのかを… 俺は……
私怨
わかった気がする どうするべきなのかを… 「うれしい… 伝わった、心から伝わってきたわ…」 俺は、できるだけの事をしようと思う 心配かけてすまなかった もし、もしメイが来てくれなかったら俺はずっとこのままだった… ありがとう 「うん! 詳しいことはルビス様に聞いて 気がついた先で待ってるから」 ああ、そうする だけど─ もし魔王を倒せたとしても、メイは戻らないんだよな… 「もういかなくちゃ… タカハシ、あなたならやり遂げられる 私、信じてるから… 自分を取り戻すために、感情をゆっくり開放して…」 ボウと、眼前にメイの姿が薄く 俺は思わず手を伸べるが、それは空しく空を掴むばかり 「……ねぇタカハシ 私は、肉体は失ったけれど心までは失っていないの わかる? あなたが私を想ってくれたら、それだけで側にいる………」 声は長いエコーが掛かったように響き、やがて、空間のチリとなり 俺の意識はスウと、上とも下ともわからない方向へ引かれていった
>>162 GJ!一人旅で痛恨の一撃は即全滅に繋がりかねないからガクブル
>土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)
これ何てモンスターでしたっけ?本気で思い出せない…気になります
>>183 真理奈とフィリアのかけあいが軽快なテンポで楽しいです
キメラの翼を放り投げる時は要注意ですよね
何度勇者達の頭を天上にぶつけたことか…
続きwktk
>>195 主人公タカハシの苦悩がすごく伝わってきます
悪夢の無限ループから抜け出る事ができてよかった…
続き期待!
そしてタカハシ氏まとめ乙です
>>197 せみもぐらかぁ。すっきりしました、dクス
>>163 感謝です。
リアルタイム遭遇ドキドキしますねw
>>暇潰しさん
新章乙です
やっぱ真理奈さんかわゆす。
エルフ登場wktkです
>>180 ありがとうございます
意識して丁寧に書いてみました
強くなった実感、って本当に嬉しいですよね!
>>タカハシさん
抜けましたか!乙です
うっかり三部のラスト読み返してしまいました
ちょっと泣きました。
今後のタカハシに期待です
>>196 >>197 ありがとうございます
そう、せみもぐらです
昨日の今日ですが
>>161 続きです
下り切ったところは、左右に伸びる道の真ん中だった。 どっちだっけ、と僅かな時間考え込む。 宝箱が幾つかあったはずだから 歩き回っても問題ないだろう。 そう考えて俺は、そこから 左に向かう道のほうへ歩き出した。 すぐに右手に分かれる道が見える。 曲がって進むとすぐに突き当たったが 装飾のはがれかけた荷箱の中から小銭袋を拾った。 中身は確認せずそのまま自分のものにする。 少し戻りさらに進むと 僅かに水音が聞こえてくるのがわかった。 視界が開ける。 大きくはない、けれど渡れそうもない洞窟内の湖だった。 上階の水源から染み出してくるのか 壁伝いに幾つか筋が出来て 透明な水が湖に流れ込んでいる。 どこからか同じように水が流れ出しているらしく 湖は一定の深度を保ったまま静かにたゆたっていた。 水面を覗き込むと恐ろしく深い。底は見えない。
奥まったところには中瀬のような陸地が出来て 誰が作ったのか階段が設えてあった。 あの奥にはパパスがいるんだろう。 こっちじゃないな、と俺は思う。 スライムや、昆虫や どらきち(早く仲間にしたい)とかを叩きながら道を戻る。 反対側の道が開けて また左右に分かれる道が出来ていた。 ここは繋がってるはずだからととりあえず右へ曲がると ぐるりと迂回した向こうに 木箱がひとつあるのが見えた。 期待を込めて駆け寄る。中身は――盾だ。 皮をなめして貼り付けただけのような 粗末な盾だったが俺にはありがたかった。 これで随分と楽になるだろう。 意気揚々と進んでいくと、また分かれ道に出た。 盾を手に入れた安心感から 俺は何も考えずに左へ進む。行き止まり。
戻ろうと振り向いた時 今までとは違う低い鳴き声が洞窟に響いた。 反響から一瞬。相手の居所がわからない。 慌てて見回した俺の目の前。 岩陰から不意にそいつは姿を現した。 丸々として、異様な毛を蓄えた外観。 手にした大きなハンマー。 出た。おおきづちだ。 こいつの一撃がやばいのはわかっていた。 慎重に少しずつ後ずさる。 背後に、今後にしたばかりの、壁。 そいつがぐう、と低い鳴き声をあげると 陰からもう二匹のおおきづちが姿を現した。 追い詰められた。やばい。 盾に安心して回復を怠っていたことをはたと思い出す。 左腕の痛みが不安と同じ速度で体を巡っていく。
薬草を取り出そうとした刹那 一匹がハンマーを振り上げた。 つんのめる様に壁沿いに身をかわす。 やつら、やっぱり動きは遅い。これなら避けられる。 もう一匹の攻撃を盾で受け止めると 相手は芯を外したようで跳ね返って転がった。 痛んでいた腕が更にじわりと熱を持つが まだ致命傷には遠い。 右手の棒で一匹の動きを捉え、叩きつける。 ぐう、と一声鳴いてそいつは後ずさったが 相手にも致命傷を与えることは出来なかった。 敵の目に、怒りの色が滲む。 ちっと舌打ちした次の瞬間 背中に重い衝撃を受けて俺はよろめいた。 体を捻ってどうにか尻をつく。 攻撃に気を取られて、背後への注意が疎かになっていた。 肩口がひどく痛む。痛恨だ。くそ。 薬草を取り出そうと腰袋に手を突っ込んだ時 最後の一匹がハンマーを振り上げるのが見えた。 咄嗟に両手を目の前に掲げるが、間に合わなかった。 視界が暗転する。
今回ここまでで。 多分後程また投下しに来ます 最近時間が出来るとPCの前に・・・
『ぼうや。ぼうや、気がついた?』 涼やかな女の声に、俺は目を開けた。 様々な色が眩しく俺の上に降りかかってきて、眉間に皺を寄せる。 『ああ、よかった。気がついたのね。神父様』 女が呼びかけると、隣で何か呟き続けていた男が 声を止めて組んでいた手を解いた。 『洞窟の奥で倒れていたんですって。 少しやんちゃが過ぎるんじゃないかしら』 身を起こすと、女が優しくそれを支えてくれた。 教会の中だとすぐに解った。 ああ俺死んだんだな、と まだぼんやりと霞む頭の中で思う。 なんかの映画で見たのと同じ 色ガラスを組み合わせた天井から光が差し込み 白い床に不思議な模様を描いている。 紺色の修道服姿のシスターと 刺繍が施された真っ白い衣服の男。これが神父様、か。
『彼が見つけて運んできてくださったのよ』 示す方向に目をやると 少し離れた椅子に赤い鎧の男が心配そうに腰掛けていた。 『戻るのが遅いんで、探しにいったんだよ。 まさかあんな所まで降りているとはな』 約束を破ったな、と男は微笑んで見せる。 ぺこりと頭を下げると 男は立ち上がって真新しい 小さな布袋を俺の膝の上に置いた。 中から金属のこすれるような音がする。 中を覗くと何枚かのコインが 色ガラスを反射して虹色に光っていた。 『袋が破れていてな。出来る限り拾ったが・・・ 足りていなくても恨まんでくれ』 『あら、助けていただいて恨むなんて』 少しばつが悪そうな鎧の男に、シスターが笑う。 鎧の男とシスターを見比べながら 俺はありがとう、と口にした。 シスターの頬がほころび、 男が照れ臭そうに兜の上から頭をさする。
『お父様とサンチョ様には内緒にしておいてあげる』 というシスターにもう一度礼を言って 俺は鎧の男と連れ立って教会を後にした。 日はもう傾きかけ 次第に橙色に染まっていく太陽が 点在する家屋を照らしている。 『ぼうや、もう無茶をするんじゃないぞ』 兜の奥の瞳を少しだけ細めて 男は言いながら、腰を落とした。 真っ直ぐに真剣な眼差しが、俺の両目を捉える。 『正直、ぼうやを見くびっていた。ぼうやは勇敢な子だ。 でもな、勇敢なのと、無茶をするのは少し違う。わかるな?』 俺がはい、と頷くと、男は満足げに俺の頭を撫で 『さて仕事に戻るか』と踵を返した。 俺はもう一度頭を下げると 夕暮れ色に染まっていく空気の中 帰るべき我が家へと歩き出した。
今度こそここまでで ありがとうございます。 ではまた。
乙ー まだ早いけど、未来の自分に会うトコ期待w
俺昔あえて未来の自分に話しかけないでシナリオ進めたことが
>>210 あるあ…ねーよwww
>>208 やられた後のゴールド半減仕様は鬼だと思う。
>夕暮れ色に染まっていく空気の中
>帰るべき我が家へと歩き出した。
ってのが切ないなー。
この先サンが向かうのは孤独で暗い時代だって事を感じざるをえない。
乙です
>>210 俺もあるよ
特に何も変わらんかったよね
乙! このスレはいいスレですね
活気が出て来たかな
タカハシ氏乙です
保守
ほす
219 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/11/23(木) 09:37:58 ID:OVvdQ4iyO
保守
保守
>>209 感謝です
結構先になりそうですね
時間かけすぎですかね・・
>>210 >>212 あるあるw
>>211 厳しいですよね
そんな時に限ってセーブしてなかったり
そのまま泣く泣く進めたり
孤独で暗い未来を
自分がどんな風に描けるかが不安ですが
頑張ります
>>タカハシさん
乙です
いつもありがとうございます
>>207 続きを少しだけ
リセットしてえええ と思ったが無理な話だった。 大体にして、この世界で セーブなんてどうしたら良いのか解らない。 教会で『セーブひとつ』『リロードひとつ』と言ったら 聞き入れてもらえるんだろうか。 念のため明日試してみようかな。 首をかしげながら、俺はその日の床についた。 家での動きは昨日と殆ど変わらなかった。 サンチョの腕に抱かれると心地好い睡魔が押し寄せ 目を覚ますとパパスが 『仕事が片付かん』と言いながら出て行く。 見送るサンチョとともに食事をし、俺は 「今日も探検」と言って家を出た。 朝の日差しは眩しかった。 まだ上りかけている太陽が 色鮮やかに緑の木々を染め上げている。 今日の俺は昨日とは違う。 呟きながら俺は迷わず武器屋の方へ向かった。 袋の中の小銭と相談しながら、品揃えを眺める。
武器屋の店主は簡単に それぞれの武器の使い方を教えてくれた。 中から、動物の骨を削っただけと言う 長めのナイフのようなものを選ぶ。 なけなしの小銭をはたくと 奥からおかみさんが顔を出してこちらに笑顔を向けた。 『随分小さいお客様ねえ』 ころころと笑うとちょっと待って、と部屋の中に取って返し、 『ずっとタンスにしまってあったんだけど うちじゃ使わないから。おまけね』 そう言って俺に薬草をひとつくれた。 礼を言って武器屋を出る。 新しい武器を何度か素振りすると なんとなく自分の手に馴染んだような気がした。 洞窟に入る前に教会に寄る。 シスターに改めて昨日の礼を言い 神父の下へ向かった。 「お祈りをしたいんですけど」 俺が言うと神父は穏やかに目を細めて 祈りの言葉を口にする。 セーブ音を期待した。 だが、何も起こらなかった。
洞窟の入り口まで行くと 赤い鎧の男が『また来たのか』と笑った。 買ったばかりの武器を見せ 無茶をしないこと、とだけ約束をして、 俺は二度目の冒険に出た。 昨日よりも明らかに体が軽かった。 受ける衝撃も随分弱く感じる。 寄り道はせず、真っ直ぐに地下へ降り 更に階段を下りようとしたところで、 また三匹のおおきづちに出くわした。 体力は問題ない。先制して新たな武器を振り下ろす。 その衝撃に、芯を捉えた事が自分でも解った。 おおきく体を仰け反らせて、一匹目が動かなくなる。 残りの二匹に動揺が走るのが解った。 足を止めず、攻撃をかわす。 攻撃。回避。防御。 一発痛恨を食らったが、それだけだった。 二匹目、三匹目が倒れ、俺はほっと息をついた。
その時。 不意に頭の中に何語ともつかない声が浮いた。 辺りを見回す。誰も居ない。 話しかけられたような感じもない。 俺の頭に浮いたそれは、すぐに形を失い 今はもう静寂が辺りを包んでいる。 あ、と思って俺はもう一度意識を集中してみた。 回復、回復、ホイミ。 また、何語ともつかない声が脳を支配し、 俺は自分の意思ではなく喉からそれを発していた。 丁度今、おおきづちにやられたばかりの傷みが 空気に溶けるように消えていく。 レベルが上がった。 それは初めての実感だった。 三匹の亡骸を背に、俺は階段を下った。
タイトル入れ忘れたー 短いですが本日ここまでです ありがとうございます 皆様にお伺いしたいんですが 短いのを頻繁に投下するより 半月ペースとかで長く書き込んだほうが 読み易いでしょうか?
職人様の好みでいいと思います
あんま短くても、長くてもなぁ 一区切り投下がいいんじゃないかと 今日のだったらもう少し読みたいよね
>>226 投下について、
>>228 に同意です。一区切り毎の投下が読みやすいと思います。
LVうpとホイミゲトオメです
魔法を会得するくだりがイイ!魔法って摩訶不思議だよなーと改めて思いました。
これで冒険がちょっと楽になるかなw
〜序章〜 『全ての始まりは、常に唐突に』 見始めたことをさっそく後悔させてくれるテレビ番組の占いコーナー。 愚痴るのもなんだが、俺が見るときは決まって結果が同じ気がする。 「さて、今日最も運勢が悪いのは〜」 こういうのって、最初から見てたら11位までで充分だよなぁ。 ま、分かりきってても見ちゃうんだけど。 「ごめんなさ〜い、天秤座のあなたで〜す」 はいはい。そんじゃ今日はどんだけ悪いことが起きるのかな、っと。 すでに一人っきりの誕生日迎えてるってのに。我ながら泣けてくるぜ。 枕元のリモコンを掴んでテレビに向ける。 「あなたは今日、とても大切な決断を迫られるでしょう。ラッキープレイスは近所の公園――」 テレビを途中で消して、俺はリモコンをソファーへと投げつけた。 リモコンは一度だけ弾み、ソファーの隅、ぎりぎりで動きを止めた。 敷きっぱなしの布団に寝転び、顔を埋める。
「はぁ、つまんなー」 誕生日の息子を残して旅行に行った両親を、恨むわけはない。行くのを断ったのは自分自身だ。 懸賞で当たった期間限定の旅行だし、俺の誕生日と被ってしまったのも両親のせいではない。 そもそも高校生にもなって両親と旅行に行くなんてことを、俺はとても気恥ずかしく思ったし。 誕生日を祝ってもらうなんて、よくよく考えれば馬鹿馬鹿しい。というかもはや気持ち悪い。 第一、最初は両親がいない間に普段できないようなことができると、胸を躍らせていたはずだ。 それだってのに。 いざとなったらやりたいことなんてなかった。 「考えてみりゃ、そりゃそーか・・・・・・」 俺にはこれといった願望も欲望も、いわゆる趣味すらないのだから。 しかし、それならせめて誕生日らしく友達とどっか遊びに行けよと、偽物の自分は促してくる。 でも友達に迷惑かけたくないしな、なんて。変に気遣う自分が本物で。
――あ〜あ、本当に俺って何なんだろう? 無意味な人生を歩んでる人なんていないって、ヒットソングは唄うけど、本当にそうか? 今こうしてる俺にも何か意味があるのか? 「――なんてな」 くだらねー、ほんと。 不毛で、そのうえ余りにも飛躍した問い掛けを俺は自嘲して交わす。 俯せから仰向けの状態に転がり、深く息を吐き出して。また吸い込む。 新鮮な空気が、俺の身体を満たしてゆく。 「せめて外にでも出掛けてみるか・・・・・・」 なんでか、そう思った。 言いようのない感情に締め付けられた身体を無理矢理に持ち上げる。 でも、何処へ行こう? 別にしたいことがあるわけじゃないからな。 しばらく考えて、ふとテレビの占いを思い出す。運勢最悪。近所の公園がラッキープレイス。 せっかくだし――久しぶりに行ってみる、か? 俺はゆっくりと布団から起き上がった。
思い立ったが吉日って言葉もあるもんで、俺はさっそく準備を始めた。 パジャマを脱ぎ、部屋のタンスから緑のTシャツと紺色のジーパンを引っ張り出す。 別に洒落た服を着ていく必要はない。ただ気分転換に行くだけだ。 顔を洗って、歯を磨き、寝癖でぶっ飛んだ髪の毛をブラシとスプレーで強引に撫でつける。 鍵と、携帯に財布。全部をポケットに詰めたら、これで準備は完了。 「いってきます」 惚れ惚れするスピードで準備を済ませ、俺はマンションをあとにした。 公園まではマンションから徒歩たった2分。インスタントラーメンもびっくりの超近所だ。 しかもやたら広い。なんか偉そうな肩書きがついた公園で、休日には結構人が集まったりする。 ああ、そういえば一時期そのせいでゴミ問題が騒がれたりもしたっけ。 なんてことを思い出しつつ公園に入ると、案の定いたるところに人の群れが見えた。 中にはレジャーシートを持ってきて、ピクニック気分の家族までいる。
「すげー晴れてんな」 木陰のベンチに腰を降ろして、秋晴れの青空をすーっと見上げる。 雲量が1までなら快晴だったっけか。まぁ間違いなく今日は快晴だ。 あー、ここに来たのも、随分久しぶりだな。 や、正確には通学の通り道にしているから、ほぼ毎日のように通り過ぎちゃいるか・・・・・・。 そのまま呆けていると、アキアカネが視線の上でホバリングを始めた。 すいすいと、泳ぐように空をあちこち飛び回る。 ――ああ! こんな風に空を飛べたらどんなに気持ちいいだろう! なんてこと別段考えたりせず、なんの感慨もなしに俺は見上げていた。 すると、前触れもなく唐突に、アキアカネは地面に落ちた。まったくの不意打ちだった。 着陸というより、むしろ墜落に近い。ほぼ垂直落下だ。 慌ててベンチから離れ、そこにしゃがみ込んで地面に目を見張る。 アキアカネは地面に伏したまま、ぴくりとも動こうとしない。
「おい、なんだ? 死んじまった、のか?」 いや、聞いても意味ねぇよな。不っ思議ー。 「いたいた。ここにも動けるやつがよぉ!」 ただでさえ聞こえるはずないと疑わなかった返事は、加えてさらに俺の思いがけない方向から聞こえてきた。 瞬間、強烈に頭を締め付けられるような感覚が全神経を凍らせる。 続けざま、視界が強制的に引き上げられる。 なんなのか、全く分からなかった。 状況を飲み込むのに、時間がかかった。いや、最後まで、飲み込むことは出来なかった。 は、当たり前だ。こんな光景いったい誰が信じられる? なぁ? 有り得ねぇよな。 ありえないって。 絶対、ありえない。 「あー、どうして人間てのはいつ見ても旨そうなんだろうなあぁ」 鷲掴みにされて持ち上げられた先に表れたのは、顔中毛むくじゃらの、猪みたいな化け物だった――。
「う・・・・・・あ・・・・・・」 なんだよお前!? そう叫んだつもりだったが、声は出なかった。 喉がカラカラに渇いて、砂漠化していく。 「ぐふ」 化け物は鼻を鳴らすと、黄ばんだ前歯をちらつかせながら、べろりと舌なめずりをする。 はは、なんだ。これ。 「食っちまいてぇなぁ。こんだけいるとよぉ」 植え付けられる絶対的な死へのイメージ。 それに伴う、痛覚への道程。 覆いかぶさる恐怖。 撥ね退けられない威圧感。 それが本能かのごとく宙吊りの足ががくがくと大きく震えだす。 「べつに一匹ぐらい。いいよなぁ? なぁ?」 嫌だ。嫌だ。嫌だ。こんなのって、ねぇだろ。 猪は見開いた眼をぎょろつかせ、俺を覗く。 「なんて、な!」 腹部に響く鈍い痛み。爆発しそうな激痛で、意識の火が一気に持ち去られ、掻き消されていく。 「あぐっ・・・・・・あ」 んだよ。俺がいったい何したってんだ・・・・・・。 「調子いいぜ。いーもんが期待できそうだ!」 猪の化け物は、満足そうに、俺を鷲掴みにしている左手へ力を入れる。
マッチの火みたいに意識がちらつく中で、俺は一つだけ気付いた。 誰も動いていない。 公園の家族、散歩に連れてこられた犬。多分、あのアキアカネも。 動いているのは俺と、この化け物だけ。 二度目の襲撃。恐らく命までも掠っていく。 そんなことを思って。 俺は堪らずブラックアウトした――――。
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その暗中の世界で。 化け物の手はぐんぐん伸びてくる。逃げても逃げても、俺を追う。 その先にある、下卑た快感を得るが如く。 やめろ、来るな。誰か、助けてくれ。誰か! 走っても走っても、腕はぴたりとついてくる。まるで俺の身体の一部と化したかのように。 来るな、来るな! ついにその腕が、俺の頭を再び捕らえる。あの時と同じ威圧感が、簡単に俺の身動きを封じる。 あっさりと恐怖の波に飲まれた俺は、もはや足掻くことさえ叶わない。 醜悪な笑みを浮かべて、化け物はその強靭な筋肉へと力を込める。 やめてくれ! 食い込む爪が眼球を、噛み付く牙が頭蓋を。 俺を、粉砕していく。 「うわあぁぁっ!」 跳ね飛ばされたように身体を起こす。伴って、腹部に痛みが走った。 「あっ・・・・・・ツぅ」 「あ、起きた」 見知らぬ声。 それに反応して俺は声の方向へ顔を向ける。 そこにいたのは、漆黒のベールのごとき黒髪を纏った、見知らぬ少女だった。
「大丈夫? 随分と、うなされてたけど?」 うなされて? ああ、そうか。そうだ。 ん? 待て。俺は? 俺は生きてるのか? 汗ばんだ手の平を反射的にTシャツで拭う。 手は、ちゃんとある。目も大丈夫だ。はっきりと見える。足は? 他と変わらず汗でびっしょりしてるけど、問題ない。 夢だった? いや、今のが夢だっただけか。 いまだズクズク刺すように腹が痛む。リアルなそれは疑う余地もない。 しかし、とにかく。それ以外は五体満足だ。目立った外傷は無い。 生きてる。生きてるんだ。 徐々に自分が落ち着いていくのが分かる。頭にあった霧だの靄だのの不鮮明が晴れていく。 同時に浮かび上がってくる数々の疑問達。 化け物は? あれはいったいなんなんだ? 此処は? いったい何処の部屋だ? さっきの公園の近くなのか? 君は誰? 俺を助けてくれたのはあんたか? それとも他の誰か? ――て、このまま黙ってても仕方ないか――。 「あの」 「ちょっと待って。聞きたいことは山ほどあるんだろうけど」 俺が話しかけようとした矢先、彼女は手を突き出してそれを制止した。
wktk( ^ω^)
「まず、こっちから話すから。あなたはとりあえず黙って聞いてて」 黒髪の少女は人差し指をぴんと立てる。 「あ、あぁ・・・・・・」 俺が面喰らって思わず頷くと、彼女も頷く。 そして、微笑む。 「私達がいるのは、私達の世界じゃない」 なんだって? 「あなたは、連れてこられたの。多分、ある程度選別されて」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。話の流れが」 思わず口を挟む。なにを言ってる? 彼女は。 黒髪の少女は、続けて手の平を上に返した。 「つまり、ようこそ異世界へ――ってことよ」
初めまして。それと、今回はここまでです。 支援ありがとうございました。
246 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/11/25(土) 18:08:32 ID:5vJND2XK0
もっと面白いのを書け。
>>196 楽しんでもらえて嬉しいです
天井に頭ぶつけまくったら賢さ下がりそうな気がしますねw
>>名無し一般人さん
初めまして〜よろしくです
しかしいいところでww
続きwktk
ではでは
>>182 の続きだお
だらだら投下します
――――――――――――――――――2―――――――――――――――――――― 「……あ?」 覚醒。 どうやらいつの間にか寝てしまったようだった。 シーツに包まりもせず、ベッドに身を投げるままに眠ったのがいけなかった。 体温の低下が感じられて、少し寒い。 ベッドの淵に腰掛けるようにして起き上がり、ジュードはしばらくボーっとする。 (フィリアは……?) 時間的にもうすぐ夕飯の時間のようだが、まだ帰って来てないようだ。 まぁモンスターに襲われて大ピンチって事は無いだろうとジュードは思う。 ここ最近のフィリアは攻撃呪文の威力が上がっているようだったし。 ただ探しに行くのがめんどくさいだけでは無い。 もちろん仲間としての信頼である。 (まぁメシ食っても帰って来なかったら、探しに行くかな) 一応フィリアが帰って来た時の意思表示の為に、剣をベッドに立てかけてから宿屋を出る。 今はいないが必ず帰る、という意思表示だ。 これで食事中にフィリアが帰って来てすれ違いになっても、逆に探される事にはならないだろう。 外に出ると、昼間に増して寒さが身にしみた。 アリアハンは年中を通して比較的暖かい気候だからなぁ。 小走りして、村の中のメシ屋に入る。 こんな田舎でも飯時となれば、それなりに騒がしいものだ。 ワハハだガハハだと男達のテンションの高さがうかがえる。 ちょうど窓際に一つ席が空いているのを見つけ、店の奴に注文をしてから座る。 円卓ではなく、壁に備え付けられたテーブルなので喧騒を背後に浴びる事になるが、 それもうざったいので意識は窓の外の月に集中させる事にした。 円の形をほとんど残さないような、眉よりも細い二日月が望める。
「はいよ、待たせたな」 ドン、と目の前に大皿と飲み物が置かれた。 結局昼も抜いてしまったので、何とも美味そうだ。 美味いと言えば、いつか真理奈が言っていたカップラーメンというものを食べてみたいなと思う。 お湯入れるだけで食事が出来るなんて、どんな料理なのかいまいち想像出来ないが、美味いらしい。 (そう言えば、久し振りに1人で食べるな) いつもなら真理奈が何だかんだとうるさいが、この状況に比べれば大分マシだなと改める。 「……」 黙々と食事をするのはこんなにもつまらないものだったかとさえ思えてきた。 昔はそうな風に感じた事も無かったはずだが…… 昼間も話したが、いつの間にかこの生活にも慣れてしまったなと実感する。 4人での生活に。 何の因果かは知らないが、この4人で旅をしてるのを不思議なものだと思う。 同じアリアハンにいたのに顔も知らなかった2人と、もう1人は違う世界の人だってんだから。 (あ、もう1匹いたか。スライムが) そんな事言うとブルーが怒るぞ? けどスライムと旅するなんて貴重な体験かもな。 まぁ有意義かどうかは別にして。 「ふぅ……」 一通り食べ終わって、飲み物を口にする。 言いもしないのに、運ばれてきたのは酒だった。
フルーツベースなので甘いのだが、暖かくしてあるので口当たりが良く感じる。 ふぅ、と吐く息が白くなった。 両手でコップを持ち、再び月を見上げる。 人が太陽に希望を見るなら、月には願望を見るのだ。 だが二日月と呼ばれる今宵の月は願望と言うにはあまりにもか細く、 とても望みを聞いてくれそうにない。 (夢か……久し振りに嫌な夢だったなぁ…… 夢にまで喜怒哀楽なくてもいいんじゃないか? どうせ虚構なら楽しませろよ) 剣の鞘を撫でようとして、置いてきた事を思い出す。 触るのはいつものクセだ。 (商人の町で思い出したからか……?) 思い出すきっかけとなった2人の人物。 プレナと兵士長。 2人共自分の信念に基づいて戦った者だ。 1人は最後まで国の為に、1人は最後まで人の為に。 その行き着くところはまったく正反対だったが、強さを持っていた。 そしてジュードはプレナ側に加担した。 兵士長はその強さの使い方を間違えていると感じたからだ。 そう考えれると、プレナも兄貴も同じだったな、と思う。 自分よりも他人を、1人から大勢までを守りたがったものだ。 しかも、プレナは敵味方の枠を超えて守ろうとした。 そんな姿勢は嫌いだったはずなんだけどな…… 「だった、か……」
それは無意識の自覚なのだろうか。 嫌いだった。 少なくともそう思っていたものに、実は影響されていたなんて。 "ありがとう。本当に感謝してるわ。 これからはあなたの守りたいものを守ってあげてね" ふと、商人の町を出航間際にプレナと交わした会話を思い出す。 (俺の守りたいもの、か) 戦士は一番前で戦う者であり、仲間を守る者でもある。 だから本来であれば戦士というだけで、何かを守っているはず。 でもプレナの言う意味は、それとは少し違うような気がする。 しいて言うなら、ジュードが本当に守りたいものを見つけて欲しい。 そんな感じだろうか。 どうしてこの旅に同行する事にしたのか。 どうして戦士を志したのか。 実は最近のジュードはその意味を確かには見出せなくなっていた。 最初はあったのだが、改めて考えるとちっぽけなものに思えてくる。 商人の町での戦闘の後からはそれが顕著に現れた。 たぶん信念を持つ事の真の強さを実感したからだろう。 (真理奈の次は、俺がそれを見つける番かな) その願いは、月まで届くのだろうか…… 二日月は静かにその光を放ち続けていた。
あ…また投稿し忘れた…
すいません…
>>249 のジュードが起きる前に↓の文が入ります…
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「お前の守りたいものは何だ?」
兄貴のその口グセを思い出す度に、その剣の重さに沈んでしまいそうになる。
両足に力を入れ、膝を掴んで踏ん張り、めいいっぱい叫ぶ。
「兄貴がそれを守って何になった!!」
それを聞いた兄貴は、男の俺が見とれてしまう程に、それはもう誇らしげに笑う。
そして手を頭の高さくらいに挙げ、俺にサヨナラの合図を送る。
背後の月の光に向かって歩いて行こうとする兄貴。
そこまで行かなくてはいけない衝動に駆られる。
が、剣が枷となり前に進む事が出来ない。
どんどんと重たくなるそれを捨ててしまおうと柄に手をかけ、
鞘から引き抜くと、キレイな刀身がキラキラと輝きを放っていた。
何と心が癒される光だろうか。
その光の奥に誰かがいる……
顔は分からないが、笑いかけられているようだ。
何…?
何を…
何を伝えたい……
やがて剣の輝きが月光と合わさり、全てを包み込んでこの世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「お、いつ帰って来たんだ? 今探しに行こうかと思ってたんだけど」 「ちょっと前に」 食事を終えたジュードが部屋へ帰ると、ベッドに腰掛けたフィリアが一番最初に目に入った。 「ふ〜ん…メシは?」 コクリとフィリア。 「食ったのかよ。まだかと思って用意したんだけどな」 テーブルに皮の袋が置かれる。 さっきの食堂でお持ち帰りしたのかな。 「……」 フィリアはそれを手にとってみる。 まだ暖かい。 「んで、どこまで散歩行ってたんだ?」 袋からジュードへと目を移す。 着替えの為にその視線には気付かないが。 「……エルフに会ってた」 服の擦れる音と重なり合ったので、聞き間違いかと思う。 でも確かにエルフ、と言った。 フィリアは冗談言わないしなぁ……
「エルフなんてホントにいるのかよ」 「うん」 即答されてしまった。 エルフなんてロト伝説の中でしか聞いた事ないような存在だ。 もしいたとしても、気軽に会えるようなものでもないだろう。 会えるものならジュードだって会ってみたい。 しかしこうもあっさりと言われるとなぁ…… 正直、拍子抜けしてしまう。 「そ、そうか。良かったな」 「うん」 (うんって…嘘言うようなヤツでもないし……) 対処に困ったという感じのジュード。 まぁそりゃそうかもな。 宇宙人に会ったって言うようなもんだからなぁ。 (何でこういう時に真理奈はいねーんだよ) 確かに真理奈だったら喜んで話に飛びつきそうだけどねw 「あ、でも俺も会ってみたいかもな」 「うん…」 「あ〜…明日はどうすんだ?」 「うん……」 「……? 何だ、眠いのか?」 「……」 フィリアは一点を見つめ、そのまぶたは今にも閉じようとしている。
「よし、じゃあ寝るぞ。ほら、横になれよ」 そう言ってジュードはフィリアの手から皮の袋を取り去り、枕へ誘導してやる。 「…じゃあ灯り落とすからな」 「うん……」 フィリアがベッドの定位置に収まったのを見て、ランプの火を吹き消すジュード。 外からの月明かりだけが頼りになる。 「…おやすみなさい…」 「お…お休み」 お休みの挨拶されるとは思っていなかったのでジュードはびっくりしてしまう。 いまだに分からないところがあるが、まだまだ子供だなとも思う。 フィリアにも何か守りたいものがあるのだろうか。 そんな事を考えつつ、ジュードも床に就いた。 ……… …… … 翌日、フィリアはまたエルフに会いに行くと言って出かけた。 ジュードはいよいよ暇を持て余し、武器屋や道具屋を見て回るが特に目ぼしい物は無かった。 結局メシ屋で時間を潰す事になってしまう。 昨日と変わらずにうるさい空間。 一日の苦労を互いにねぎらう大人達。 だがそこで、ジュードはフィリアの言っていた事の一端を理解する事になるのだった。
「よぉニイさん。1人で食事たぁ寂しいねぇ〜あっちのグループにまざらないのかい? 盛り上がってるみたいだぜ」 飯を食べ終わろうかという時に男がいきなり隣に座ってきた。 チラリと声をかけてきた奴と、あっちのグループとやらを確認する。 あっちのグループは酒飲みのチャンプを決めるだとかでガヤガヤやっていた。 「気分じゃないね」 「へへ、ニイさんこんな辺ぴな村で何してんの? ここの人じゃないよな?」 「……あんたこそ」 男は薄笑いを崩さない。 男に言い寄られるのは初めてだな。……まぁ女の方もないけど。 「へへへ、実は儲け話があるんだが、乗らないか?」 まず見ず知らずのヤツにそんな話を持ちかける時点で怪しさ満点だ。 「へへ、そうだよな。実はよ、確実って訳じゃねぇんだ…… おーい、こっちにも飲みモン追加だ〜!」 ジュードの酒が無くなるのを見過ごさない。下っ端として経験を積んだのか、とか考えてみる。 「ただ前金だけでも十分なくらい貰えるんだよ。大抵のヤツはそれだけもらってドロンだ。 しかしな、それも逆に怪しいと思わないか? つまりそれだけの金をだすって事はだな、話の信憑性がグンと上がるって訳よ」 どうやらただのバカじゃないようだ。 けどジュードに話すメリットがいまいち分からない。 そこに2人分の酒が運ばれてくる。 「おっ、すまねぇな。よし、ここはオレのオゴリだ。飲んでくれや」
ソイツはグラスを掴むと、一口で半分飲み干してしまう。 「へへへ、そろそろ素直に話そうか。ニイさん昨日も1人で飲んでたろ? だからニイさんを選んだんだ。腕も悪くなさそうだしなぁ。 正直オレ1人じゃ無事に事を運べるか心配なんだよ」 なるほど。一応人は選んでる訳だ。 それが正解とは限らないけど。 「前金で五千Gだ。成功すれば十万G。 どうだ? 悪くねぇだろ。 失敗してもおとがめ無し。それでも十分お釣りがくるってもんだ」 ……まだ判断するのは早い。 犯罪なら確かめてから捕まえればいいし、くだらないなら辞めればいい。 「依頼人は?」 「あぁそれがな、代理のヤツにしか会えねぇんだ。 オレも顔を見ねぇと信頼できねぇって言ったんだがな…… 案外その代理ってヤツが本物かもしれねぇ。 へへへ、まぁでももう金は貰ってんだ。 成功報酬を2人で分けても五万Gだぜ? 悪くねぇだろ」 ソイツのオゴリだという酒に手をつける。 その行為は、もう手を貸すと言っているようなモンかもな。 「……で、何を?」 「お、いいねぇいいねぇ〜やる気になったか?」 ソイツは少し嬉しそうにグラスの中身を全て胃に流し込んで言った。 「獲物はエルフさ」
今日はここまで またしても失敗してスミマセンでした… いかんなぁ… 反省します
260 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/11/26(日) 13:42:53 ID:OvCxVojk0
あまり俺を怒らせない方がいい
干す?
まずは自分のステータスチェックするだろ。 覚えてる技と。
たまに思うんだが、ここの住人たちはどんなネタとか設定を持ってるんだろう?って
>>362 みたいにチラっとでも書いてみると面白そうな気がするが
保守
保守党
補修
皆さん忙しいのかな・・・。 ヾ"""ツッ ミ・ω・ 彡 ミ ミ """"゙
>>227 了解です
>>228 区切りかたがなかなか難しいですね
まだまだ未熟なので、頑張ります
ありがとうございます
>>229 ありがとうございます
魔法の絡め方はすごく迷いました
(今も書きながら悩んでます)
>>タカハシさん
乙です
>>暇潰しさん
乙です
どんどん物語が動いていきますね
楽しみで仕方ないです
タカハシさんに並んで
多忙につき自分も滞りそうです
ともかく
>>225 続きです
右にそれる道を無視して、真っ直ぐ奥へ進む。 開けた空間の中ほど、大きく散らばった幾つかの岩の傍ら 地面に寝そべるいかつい老人の姿が見えた。親方だ。 物凄く長い道のりだった気がした。 傍によると、親方はぐふう、と息を吐いて寝返りを打つ。 つか本当に寝てんのかよ。緊張感ねーな。 呆れ返りながら俺は、親方の肩を揺さぶった。 うん?と口の中をもごもごさせながら親方が体を起こす。 『おや、ぼうや。こんなところで何をしているんだい』 本格的に緊張感のないのんびりした口調で、親方が言う。 俺はがっくりと肩を落としながら 「助けに来ました」と言った。 おやまあと目を細めて、親方が続ける。 『そうかい、ありがとうよ。 じゃあちょっとこの、岩を押してくれんか。 動きそうで動かんのだよ』 そういって目をやる岩の下に 親方の片足が痛々しく押し潰されていた。 濃い色のズボンを破って 肌から赤黒く乾きかけた血が滲んでいる。
『隙間に引っかかっているようでな。傷は大したことないんだよ』 不安そうな目の色を察してか、親方がゆっくりと言う。 『ただ押しても引いても抜けんもんでな。いや参った』 わかりましたと頷いて 俺は岩を押しやるのを手伝った。 しかし岩は大きく重く、 子供一人の力が加わったところで動きそうもない。 なんでやねん。また約束が違う。 『やれやれ。やっぱりだめか。 ぼうや、誰か大人を呼んできてくれると助かるんだがな』 子供のプライドを気遣ってか 出来る限り優しい口調で親方が言う。 俺は大人のプライドを持っていたので、逆に悔しかった。 辺りを見回す。 ふと思いつき、 散らばった中から適当な大きさの石を拾って 俺は親方の足の傍に置いた。 売り忘れて持っていたかつての武器を手にする。 岩の隙間に片端を差し込み 俺は石を支えに反対端に思い切り体重をかけた。 僅かでも浮けば。僅かでも。
考えを察したのか、親方が 空いた隙間に手を押し込み力を加え 更に自由な方の足を岩の隙間に捻じ込んだ。 木の棒が嫌な音を立ててしなる。 頼む、と俺はさっき祈りをささげた神に祈った。 不意にずるりと、親方の足が抜けた。 かかっていた重力が瞬間的に緩み からりと乾いた音を立てて棒が転がる。 同時に、詰まらせていた二人分の呼吸と笑い声が空間にこだました。 『いや、ぼうや。助かったよ。賢いねえ』 肩で息をしながら親方が微笑む。 照れ笑いを隠して、俺は棒を拾い上げ腰布に差し込んだ。 親方の傷は本当に軽そうだった。 凝り固まった体を解しながら足首を回し、 『うん、大丈夫そうだな』と言うと 意外なほど身軽に立ち上がる。 『ぼうやありがとうな。みんな心配しているだろう。 早く村に戻らねばならんな。行こうかい』 手を引いて歩き出そうとする親方の申し出を断って 俺は洞窟に留まると伝えた。 「もう少し探検してすぐ帰るから」と言うと、親方は 『こんな洞窟でも、ぼうやには大冒険だろうな』 と笑い、こちらを気にしながら一人階段を上がっていった。
簡単に洞窟内の探索を進める。 最深部でも、出てくるモンスターの種類は殆ど変わらず 俺はスライムや昆虫や角の生えたウサギを叩きながら 分かれ道の先を覗いていった。 奥に朽ちた空き箱があり その縁に布切れが引っかかっている。 手に取ると着衣のようだった。 今の俺の服よりは、少しだけ布が厚く縫製もしっかりしている。 その場で着替えるのはなんとなく気が引けて、 俺は軽く埃を落とすと服の上からそれを羽織り ひとつだけボタンを留めた。 反対の奥にはスライムがいた。 咄嗟に武器を構えると、 『叩かないで!僕は悪いスライムじゃないよお!』と 慌てたようにその大きな口から人間語を発した。 話を聞いてやると、 三角だか四角だかよく解らないことを まくし立てるように喋っている。 (こんなところはゲーム通りかよ) それ以上の収穫はなく、俺は 久し振りの人間語を話したがるモンスターに 達者で暮らせよ、とだけ言い残し帰路についた。
洞窟を出ると、赤い鎧の男が笑顔で手を挙げた。 『さっき薬屋の親方が通ったよ。 ぼうや、親方を探しに行ってたんだってなあ』 頷くと、感心したように男は顎に手を当て、 『何も言わずにこんな洞窟の奥にな。恐れ入ったよ。 でも次はおじさんにも相談してくれよ。なんにせよ危険なんだから』 にこにこと勝手に頷きながら、男が俺の頭に手を置く。 言ってもどうせついてこないだろ。 っつか俺を探す前に親方を探せよお前。 思ったが恩があるので黙っておく。 簡単に挨拶を済ませ俺は親方の家へと向かった。 そろりと扉を開け顔を出すと、 店員の若い男が俺に気付いて明るく笑った。 表情の奥にも、もう不安の色は見えなかった。 『ぼうやは昨日の。今日も来てくれたのかい? 親方、さっきやっと戻ったんだよ』 言いながら丁寧な物腰で俺を奥に通す。 『親方、この子昨日も心配して来てくれたんですよ。知り合いなんですか?』 『うん?おお、おお、ぼうやは洞窟で会った』 薬の調合なのか、秤や 見たことのない器具とにらめっこしていた顔をこちらをに向け 忙しなく動かしていた手を止めて、親方が嬉しそうに笑みを零した。
え?と声を上げる若者に、親方は 『洞窟まで探しに来てくれたんだよ。 そうだ、お礼をしようと思っていたんだよ。 丁度良かった。ちょっと待ってくれんかな』 言いながら立ち上がり奥のタンスに向かう。 僅かに引きずった片足に 真新しい白い包帯が見え隠れしていた。 あの時は無理をしていたんだと、その時になって気付く。 『ぼうや本当に親方を探しに行ってくれたのかい?』 驚きを隠さずに若者が言った。 頷くと男は、声にならないと言う表情で俺の顔を見つめる。 「探しに行くっていったろ?」 俺が言うと、若者はあはあ、と笑って 『参ったな。ぼうや強いんだなあ。 俺、実はちょっとあの洞窟が怖くってさ』 頭を掻きながら極まり悪そうに言った。 正直な男なんだな、と思い俺もあわせて笑った。
ほれ、と親方の手から差し出されたのは 網目の粗く薄いケープだった。 派手な色の糸を編み合わせてあって、 ちょっと俺には着れないなあと失礼なことを思った。 『わしの手編みだよ。出来は良くないがな、ここが入っとるんでな』と 胸に親指を当てながらにやり笑う親方にお礼を言い 丁寧にお礼を言われ、俺は親方の家を出た。 宿屋にも顔を出そうか迷ったが 疲れていたし面倒だったから俺はそのまま家に足を向けた。 パパスは戻っていなかった。 まだ陽は高かったが、 早めの夕食をとるとすぐにサンチョが俺を抱きかかえたので 睡魔に身を委ねて俺は目を閉じた。
本日ここまでで ありがとうございます また間が空くかもしれませんが 宜しくお願いします
洞窟編乙。 お化け退治も期待してるよ。
村のみんながいい人でなんかほっとするなあ。その分が後で響くが。 ゲーム通りなスライムとかw 実際意味不明だよな、確かにw 乙でした。
>言ってもどうせついてこないだろ。 >っつか俺を探す前に親方を探せよお前。 >思ったが恩があるので黙っておく。 ゲームだと気にならないが、リアルに描写されると確かにこう思うなw ゲームの隙間を補完してくれる感じでいいですね。乙です。
親方が素敵な大人だ
ゲームの登場人物としては全然印象に残ってなかったけど
>>280 の活字で読むと彼のような脇役の良さがじわりとしみてくるなぁ
タカハシ氏乙です
保守
後々のパパスに降りかかる悲劇を思うと鬱になる。 だけど、それ程すんなり感情移入できる素晴らしい文章に乾杯
289 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/09(土) 23:46:28 ID:qs5Rrdm6O
あげぽ
290 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/10(日) 00:17:17 ID:L9RmzSvAO
ここもどうせ、オルテガスレみたいになるんだろ?
オルテガスレを知らない自分が小ネタを含め、投下行きますよー
…
……
………
「酷い有様だ……」
「再び人が住めるようになるのでしょうか」
「砂漠から水が枯れる事はある?」
「ご加護があります内には…」
「そうだよね」
「……」
「なら僕はそのご加護を全うしようと思う」
「フィリー…」
「失礼します! 王子!! モンスターがっ!!」
「そうか。今行くよ」
「私も」
「プエラ……」
「ダメ、ですか?」
「危険だ」
「その為にホイミを覚えたんです」
「……ありがとう」
「はい」
「行こう。未来の為に」
「はい!」
………
……
…
では
>>258 の続きをどうぞ
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「私は全てを照らす太陽になりたいの」 そう言ったお前の横顔は、優しさや慈悲といったものに溢れていた。 だからこそ、そこに儚さと脆さを感ぜずにはいられなかった。 そんな自分は彼女の側にいる資格は無いのだと客観視する一方で、 ますますお前に惹かれる自分にも気付かされる。 お前は愛だった。 愛そのものだった。 自分はもちろん、この世界の存在するもの全てがその愛に照らされて 生きていられるのだと本気で思った事もある。 だから… だからその愛全てを自分のものにしてしまいたかった。 若かった自分を責める事はいくらでも出来る。 しかし過ぎ去った時間を取り戻す事は出来ない。 懺悔の為に天に手をかざすと、お前に貰った指輪の宝石が光を放ち、 空へと上っていった。 その後には、残ったものが自分の全てになった。 それは暗闇の中で必死に生きようとするマリアの形見の星の光だった。 その光に照らされて、この世界は終わる。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
カザーブ。 その土地にまつわる伝説から、世の格闘家達の修行の拠点になりつつある村だ。 もちろんダーマの方が名が高いのだが、それは多様な知識と触れ合える場所だからだ。 こちらは自分と向き合う事を優先しているような者が集まっている。 とは言え、それでは商業的な発展は見込むべきもない事は確かだ。 まぁそれがまた、この村の落ち着ける理由にもなるんだけど。 「久し振りじゃの」 「ん」 「そっちのは?」 「あぁ、新しい仲間じゃ。孫は置いてきた」 カザーブの武器屋の店主との会話だ。 パトリスの言っていた通りなら、この老人が腕の良い職人なのだろう。。 それで? と言わんばかりに店主がパトリスに目を向ける。 「実はな、この爪を直して欲しくれんかと思ってな」 パトリスの意向を察して、真理奈が鉄の爪を取り出す。 店主は切断された鉄の爪を一瞥し、少々目を開かせる。 「何ぞ腕の良い剣士と決闘でもしたんか」 「いや〜何か呪文でやられちゃったんだよね〜」 会話に加わった真理奈に、老人は驚いた表情を見せる。 「……バギか」 「凄い! よく分かったね!」 「答えはそれしかないわい。 しかしこんなにも綺麗サッパリと切るなんて芸能はそうそう出来るものではない。 よくこんな相手と戦って生きておるな」 「まぁね〜♪」
「褒めとりゃせんよ」 「何でよ……」 「……結論じゃ。新しいのを買った方がえぇ」 「む〜それが嫌だからここに来たのに〜」 「しかしな」 「ワシからも頼む。まぁ無理なら無理と――」 「無理ではない。が、手間はかかる」 「お願いおじーちゃん!」 「それなりの理由があるという事か。しかしワシにお願いされてもな」 「え? どういう事?」 「まずはアンタ次第じゃ」 「??? 分かるように言って?」 店主はふ〜と一息つけ、パトリスをジロリとにらみつける。 「……ちゃんと教育せんか」 「武器はな、ちょいと専門外じゃ」 「むしろ専門じゃて。魔法使いが聞いて呆れるわ」 「ではこの不肖息子にご教授お願い致します」 「授業料、請求するからな」 いかにも渋々といった感じで真理奈に向き直る店主。 そして、よいか? と前置きする。 「この爪は切断されておる」 「見れば分かるよ?」 「そうではない。精神的にも、という意味じゃ」 「せーしん?」 「ちったぁ勉強せい……」 「うっ……」
この世界でも勉強しろと言われるとはねw まぁ学だけが勉強ではないという事ですよ、真理奈さん。 「いいか。武器とは物理的な側面と精神的な側面がある。 その両側面が合わさっていないと真に武器とは言えんのじゃ。 この爪はその両側面で切られている」 「??????????????」 「物を使い続けるという事は、人と物が一つになっていく事。 物側から見れば、人の精神が物に宿るという事じゃ。 そして今、この爪は精神的にも切られている。 つまり爪の部分と本体の部分は物理的にも精神的にも離れている訳じゃ」 「それは元には戻せないって事?」 「お前の心は他人の心になれるか?」 その突然の質問に真理奈はうぅん、と首を横に振る。 そこで店主は初めて鉄の爪に手を伸ばし、何かを確かめるかのように触れる。 「……これは元からお前さんの者ではないな?」 「え? どうだろう…おじいちゃんがくれたよ?」 「確かならば、これはかつての仲間の物じゃな」 「いかにも。真理奈には言ってなかったか?」 「へぇ〜初めて聞いたよ?」 店主は半ば呆れ顔で先を続ける。 「他人が使い古した物を使うという事は、新品を使うのとは訳が違う。 なぜなら他人の精神がそこに宿されているからだ」 「ほうほう」
「……そして状況は更に複雑じゃ。 お前が途中から使い出したが為に、この爪の精神は二つになっている。 精神の重複によって爪はさらに脆くなった。 もちろん物質的に使いこんだという事でもある」 「も〜説明長いよ〜……結局どうしたらいいの?」 「ただ物理的に直すだけでは意味がない。 まずはこの精神を一つにする必要がある」 「どうやって?」 「他人になれるか、と聞いて否と答えたな?」 「うん」 「では他人になれ、という事じゃ。 そうすれば説得も出来よう」 「え〜無理じゃん」 「それが無理なら、無理だという事じゃ。諦めて新しいのを買うんじゃな」 「む〜」 話は終わったというように店主は席を立つ。 「疲れたから今日はもう店じまいじゃ」 「戸締りには気をつけるんじゃぞ」 「うるさいヤツじゃ」 そんな会話の後、パトリスは真理奈を促して店から出た。 陽が傾きかけていた。 「まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えて、決めるんじゃな」 真理奈はじっと両手に乗せた鉄の爪を見たまま、答えなかった。
「武器の精神か〜……ん〜」 珍しく難しい顔をしている真理奈さん。 宿屋に戻ってきたようですね。 ベッドにあぐらをかき、鉄の爪とにらめっこしてます。 真理奈なりに解決しようとしているようで…… 「お〜い、鉄の爪〜……って、鉄の爪じゃおかしいか。 じゃあテッちゃんにしよっか?」 何がだよ。 「テッちゃ〜ん! 真理奈だよ〜握手!」 そう言いながらテッちゃんの甲の部分にタッチする。 もちろん何の反応も無いが。 だいたいそのテツは鉄のテツか、「鉄」と「爪」の頭を取ってテツなのか 非常に突き止めたい訳だが…… 「名前付けてもダメか〜……ん〜難しい」 お困りのようです。 そりゃ物とコミュニケーション取るってのは難しいだろうさ。 「オッス! オラ真理奈! よろしくなっ!!」 し〜ん…… 「おぉ〜よく見れば傷が結構あるなぁ」 それでもめげずに、ジロジロと観察し始める真理奈。 普段手入れとかはするけど、こんなにマジマジと見た事は無い。
そういう意味では、真理奈は今までで最もテッちゃんと向き合ってる事になるかな。 「そう言えばずっと一緒にいたのに、何にも知らないもんなぁ〜」 そんな人を好きになり始めの頃に吐くセリフを口にする真理奈。 まぁ知りたいって気持ちがあるのは良い事ですよ。 「他人になれ、かー。……自を捨て、客となり、己を茄子」 成す、ね。ツッコミ辛いからやめて。 「……」 正座し、目を閉じる。 自を捨てる事が他人になる第一歩という禅の心得ですか。 その先に再び形成される己は、先の自とは違う者である。 まぁ分かりやすく言えばロト紋のアレですよ。 姿勢を正し、呼吸を正し、心を正していく。 (めんどくさいからイヤなんだけどなぁ〜 これもテッちゃんの為、私の為、世界の為ってね) とは言っても最初は色々考えちゃうんだよね。 (あ〜懐かしいな、この感じ。昔はよくやらされたもんだ) 厳密に言えば鍛錬じゃないから今では自己流入ってますけどね、 昔はきちんと練習してたみたいですよ。 そうこうしている内に雑念を制し、意識を制する事に成功する。 無意識とも言えない無の状態になってこそ、自を捨てたと言えるだろう。 そこで初めて他になれるんです。 すっと手を伸ばし、鉄の爪に触れる。
そして無の心が相手に触れる。 それは相手の心がこちらに触れてくる事でもある。 …… …… ――! 「真理奈〜おるか〜?」 「ピィ〜?」 「だぁ〜!!」 扉が開かれる音と共に、ベッドに倒れこむ真理奈。 入って来たパトリスとブルーは何事かとうろたえる。 「も〜やめてよおじいちゃん!! もう少しだったのに〜!!!」 そのままベッドの上でバタバタと暴れる真理奈。 これは……失敗だ。 「おぉ、すまんすまん……もう夕飯じゃぞ〜と言おうと思ってな……」 「うぅ〜……」 「ピィ〜……」 涙ぐんだ目で鉄の爪を見る真理奈。 う〜ん……ドンマイっ!! ブルーが真理奈に擦り寄り、慰めようとする。 「悪かったの……よし、お詫びと言っては何じゃが、ワシとデートしよう!」 「イヤ」 即答。 「まぁそう言わずに……美味しいモンが待っとるぞ〜」 「犬じゃないもん」
「腹減ったじゃろう。そうじゃ、今日はお酒も付けるぞ」 「……未成年だし」 「さらにデザート!」 「よし、行こっ!!」 パッと起き上がり、身支度をする真理奈。 そうか…… 素早さは身代わりの早さでもあったんだよ!!(ナンダッテー!! 「オッケー、じゃあおじいちゃん行こっか」 チッチッ、とパトリス。 もう古いっす。 「せっかくのデートじゃ。パトリスと呼びなさい」 「あはw では参りましょう? パトリスさん」 「ピー!!」 腕を組ませる真理奈。 いいなぁ〜…… と、そんな感じで村中の食堂に向かった2人。 まぁデートと言っても、都会のおしゃれなお店って訳にはいかないよね。 その代わりに食事の内容をいつもよりも豪華にして、それらしく繕ってみる。 「ん〜おいしっ!」 「機嫌は直ったかな?」 「ん〜ん、一生忘れない」 「この食事でも駄目ですかな」 「これはこれ。あれはあれ」 「冷たいのぉ……」 会話の内容の割りには2人共楽しそうに食事を楽しんでいるみたいだ。
ブルーも満腹になったようで、真理奈の太ももでスヤスヤと寝息を立てている。 それより真理奈さん。あなたお酒飲んでもいいんですか? この世界では別に良いとかいう設定は残念ながら無いんですけど。 とか言ってる間にも、真理奈はグラスを空にしてしまった。 「おじ…じゃなくて、パトリスはさっきの話分かった?」 「そりゃあの」 「じゃあ、もう少し分かりやすく話してくれたら許してあげる♪」 満面の笑みでお願いする真理奈。 そうじゃなぁ、と少し思案するパトリス。 「このような食堂のグラスが割れやすいのは何故か知っておるか?」 「ガラスだから?」 「ふむ。それが物理的という意味じゃ。 もう片方で多くの人の手に触れるから、という理由がある」 「手?」 「触れる事で無意識にその内の精神が物に宿るという話じゃった。 じゃからワシの精神が今グラスに注ぎ込まれているんじゃ。 酒を注ぐようにな」 「おぉ〜」 パトリスが真理奈のグラスに酒を注ぐ。 少し納得顔の真理奈は、ありがとと言ってパトリスのグラスにも注ぎ返す。 「得てして壊れやすいのは、ガラスである事とバラバラな意識がそこにあるからじゃ。 故にバラバラになりやすい。 しかし道具は人の手を渡る物だとも言える。 そこに同一の目的意識があれば、まぁそのような事にはなりにくいがの」 「ん〜なるほどね〜同じ目的かぁ。 でもテッちゃんの中にいる人の目的なんて分かんないよぉ…… あ、そうだ。ねぇ、おじいちゃん。おじいちゃんの昔の話聞かせて?」
「お、名前呼び間違えたの。これでは教えられんわい」 「あ〜ん、お願いー」 ふふと笑い、パトリスは真理奈をからかう。 「あれは元々レキウスの武器じゃった」 「れき……?」 思い出せない真理奈を見て、パトリスは愉快だと笑う。 「忘れたか。アリアハンの王様じゃ」 「おぉ〜あの人かぁ」 パトリスはなおもくっくっと笑い続ける。 きっと、王様なのに存在感の無いヤツじゃと心の中で馬鹿にしているんだろう。 「そっか〜だからパトリスあんなに親しげにしてたんだねー。 ね、どんな人か教えて」 「そうじゃのう。たまには昔話もいいかもしれんなぁ」 そう言って、お酒をぐっと飲み干した。 「レキウスがまだ王子じゃった頃、突然旅に出たいと言い始めての。 それで3人で一年限定の旅に出る事になったんじゃ。 当時の王も良い勉強になれば、と楽観視しておったな」 「ほ〜う。あと1人は?」 「お城付きの女性じゃった。僧侶になりたてのな。 レキウスは格闘に興味があったようで武道家を。 ワシは言わずもがな魔法使い。 3人ともレベルは低かったし、チームワークも知らない。 外の歩き方さえ知らない、まったくの初心者じゃった。 いつ振り返っても酷い旅じゃったのう。野宿は当たり前。
傷は絶えず、服もボロボロ。 それでも死ななかったのはルビス様のご加護と僧侶のサポートがあったからじゃろう。 彼女は物覚えが早く、旅に一番早く適応したのも彼女じゃった」 目を細め、楽しそうに話すパトリス。 その様子から当時の雰囲気がありありと伝わってくるかのようだった。 「レキウスは武道家のくせに慎重じゃった。敵のスキを見てから攻撃するタイプ。 反してワシは先制攻撃が大好きでな。 新しい呪文を覚えた日には先頭切って歩いておった」 「え〜信じられない! 今と全然違うじゃーん」 「それだけ年を取ったという事じゃ。 そしてロマリアからカザーブへとたどり着き、 ヤツの誕生日プレゼントと称して鉄の爪を贈ったんじゃ」 「へぇ〜素敵ね」 「最もヤツは武器より防具を買うべきだと主張しておったがな。 しかし嬉しそうじゃった。 そしてその頃には、出発してから既に九ヶ月が過ぎておった。 そこで最北の村ノアニールを最終目的地にして見事到着。 旅はそこで終わりじゃ」 それからパトリスはレキウスについての馬鹿話を次々と真理奈に語った。 戦闘中は慎重なクセして、食事ではよく喉を詰まらせていた事。 賭け事を多少は嗜み、しかし弱かった事。 帰った後は、真面目に王としての役割を果たそうと考えていた事。 鉄の爪の元所持者の過去が、その頃を懐かしむかのように語られた、 「なるほどね〜」 「ま、そんなとこじゃな」 「面白かった〜」
2人の顔はとうに赤く染まっている。 ちょっと飲みすぎー。 「でもそしたらノアニールに寄ってからでも良かったのに〜 どうして行くのを嫌がったの?」 小船に乗らなかった事を言っているのだろう。 旅の最終地点だったノアニールに思い出もあるはず。 「別に行きたくない訳じゃ……」 「え〜でもあれは行きたくないって顔だったもん。 船漕ぎたかったのにさぁー」 「どうせルーラで来るんじゃからどっちも変わらんじゃろ。 それにどうせフィリア達を迎えに行く時に行くしの。 真理奈が気にする事ではない」 「ふ〜ん……」 はわわ〜とあくびをして、腕を枕に真理奈はテーブルに突っ伏す。 パトリスも目は虚ろだ。 「……でもホントは嫌じゃった。 そういう場所って誰にでもあるじゃろ?」 「うん……パトリス……」 むにゃむにゃと何かをつぶやく真理奈。 パトリスは自分の手をじっと見つめて動かない。 「まぁ今さらどうしようも無い事じゃがな」 見つめているのは、指輪だ。
「……しかしお前が残した星は、今も輝いておるよ」 (あら、私は輝いていないの?) 「お前はワシの手の中に」 (いつまでも……) 薬指の指輪が光る。 それは星の瞬きのように。 「……帰ろうか。マリア」 結局2人は閉店まで目を覚まさなかった。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「レキウス。何ぼーっとしてんだ?」 振り返ると2人の男女。 魔法使いと僧侶だ。 格好で分かる。 「もうすぐ着くはずだ。そいつでしっかり頼むぜ」 俺の右腕を指しながら言うので見てみると、鉄の爪を装備していた。 あぁ、これは私のだ。 でもこの2人は誰? 今度は僧侶の方が声をかけてくる。 「頑張ってね」 瞬間、心が揺れた。 女性の微笑みで更に嬉しくなる。 嬉しい?
あぁ、これは恋だ。 この人はあの人が好きなんだ。 その事を自覚すると、心は急反転し、落ちていった。 何? なに? 「パトリスもね」 「マリアもな」 2人が互いに笑みを交わす。 それを見るのが凄く嫌だ。 心が痛い。 その様子は好きな者同士の仕草だ。 そっか〜、2人は付き合ってるのかな? え? パトリス? たまらず私は駆け出した。 2人を追い抜いたところでモンスターが。 俺はいつものように2人からのプレゼントでそれを切り裂いた。 そして2人の仲も切り裂けないかと思案した。 けどそんな自分は嫌いだった。 俺は、どうしようもない人間だな。 私は涙を流す。 その涙を鉄の爪の甲で拭ったところで、世界は終わりを告げた。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「そっか」 起床。 無意識に紡がれた言葉で目を覚ます。 ここのところ、寝坊しなくなった。 変な夢ばかり見る。 いつもはそれでももっと寝ていたいと思うが、今日は違う。
行かなくては。 やらなくては。 今なら出来そうな気がした。 二日酔いの影響も無く、素早く着替えを済ませる。 そして部屋を飛び出し、真理奈は武器屋に向かった。 「おじーちゃ〜ん」 「何じゃうるさいのぉ」 「おじーちゃんおじーちゃん! お願いしまっす!!」 「……そうか」 店主は真理奈の顔を見て、準備が整えられた事を悟った。 「ではやるか」 「うん」 店主は炉を使用可能にする為、薪に火をくべていく。 折れた爪を溶接する為には、まず炉で鉄を熱しなければいけない。 数千度というレベルで鉄と鉄を「くっつける」のだ。 「武器とは何ぞや」 よし、とつぶやいた店主は真理奈に問いかける。 「ん〜前まではただの道具だと思ってた」 「武器は道具じゃ」 「でも心があるよ?」 「その通り。武器の武とは、心の事じゃわ。そして武器の器はうつわ。 武器とは心の器という名の道具」 ごうっ、と炎が溢れ始める。 爪と爪のかけらを炎の中で熱していく。
「その心が一つになれば、一心同体。 ならばその一心、成すがよい」 押さえておれ、と真理奈に指示をする店主。 真理奈はそれに無言で応える。 「やるぞ」 汗がしたたる。 鉄を叩く音が響く。 爪が鍛接されていく。 その作業をじっと見つめる真理奈。 店主の動きを見逃さないように気をつけつつ、 鉄の爪の心に触れる。 (失恋したんだね。 私も泣いちゃったよ? でも恋したのは無駄じゃないよ、きっと。 だってその想いは私に受け継がれたんだもん。 その想い自体を叶えてあげる事は出来ないけど…… 共有する事は出来たよ。 だから…… だから私に力を貸して? 今度は願いが叶った時の喜びを一緒に体験しようよ。ね?) 真理奈の心に呼応するように、鉄の爪は光を放った。
今日はここまで〜 やはり年末という事でスレが滞りそうですな 続きはなるべく早く書きますね エルフ全然出てきてないですし…… ではでは
鉄の爪GJ!
乙。しかし鉄の爪だけでいつまで闘えるのか・・・・・・。
>310のIDが何気にかっこいい件。 武器には心が宿るんですか。 いいですね。 鉄の爪、名実共に真理奈さんのパートナーとなってますます活躍しそうですね。
>>310-312 レスありがとうございます〜
新装備に移行しようか迷ったんですけど、こういう形になってしまいましたね
今では、この先ずっと鉄の爪でもいいんじゃね?とか思ったりw
そういえばこの前スーファミ版の説明書を眺めていたら
アリアハンがかつて世界を統治していた、とか
戦争が起こって小国になった、
とか書かれているのを見て愕然としましたね……
そんな設定があったなんて(´・ω・`)
保守
かつて世界を統治していたが戦争のせいで小国になった、か。元ネタはなんだろう。 真っ先に思い出すのがイギリスだが、じゃあエジンベアって何よってことになるし。
あれま、どうなんでしょうね。 でも、本作の設定に完全にそわなくてもいいですし、戦争は魔王が人間同士にいさかいをおこさせたものだと思えば、魔王軍の思うつぼのならないためにも同盟は意義のあることですよね。
ほしゅーん
318 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/13(水) 20:43:00 ID:NwzI2qCK0
寒いのわかんないの?
冬は寒いのはあたりまえだ
320 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/14(木) 01:19:02 ID:D7sYxrpH0
隙間風氏の再降臨に個人的に期待してる俺がage
レスだけですが、すいません
>>316 さん
どうやら戦争が起こったのはバラモスが現れる前のようです…
んでバラモスが現れたのが、勇者が旅立つ10数年前という設定ですね。
しかしこれはFCの時からある初期設定なのかどうか怪しいと考えてました。
SFCで出すにあたって勝手に付け加えた設定なのでは……?
ドラクエ3が現実の歴史を参考にしているのは有名ですから、
>>315 さんが言う通り元ネタが無いのが気になります。
だいたいそんな設定ゲーム中じゃ一つも出てこないですしねwww
とは言ってみたものの、
ウィキペディア見たらアリアハン大陸はムー大陸が元になっていると…
ホントかよw
しかしムー大陸はロト紋でも出てきたしなぁ
となると信憑性は高いのかなぁ〜
FC版の説明書も、かつてアリアハン国は世界中を治めて〜みたいので 始まったはず。
>>322 即レス感謝です
そうですか〜って事は元ネタはムー大陸なんだな
世界を治めていたアリアハンか。
正直想像できませんがwどこかで活かせればなぁと思いつつ……
>>194 ずいぶんと無沙汰してすみません。
からの続きです。
●始め有るものは必ず終わり有り
音が、耳を伝い聞こえてくる
小さくガサガサコソコソ…
久しぶりだ…
自分以外の音を聞くなんて、どれくらいぶりだろう
夢、じゃない
俺はどうやら、永く眠りすぎたようだ
意識はこれまで感じたことがない程、透き通っている
目を開けばまた、戦い明け暮れる日々
…けれど、俺の出来る精一杯を、するために目を開けよう─
ゆっくりと瞼を開く
明るさが無遠慮に目を刺してきた
初めて目を開いたように恐る恐るぱちぱちと、瞬きを繰り返し目を慣らす
ここは… どこかの部屋のようだ
扁平な天井に固い布が身体を覆う感触
俺は、ベッドに寝かされていた
魔王に頭を掴まれ、その後は思い出せないが…
俺はこんな所に連れてこられていたのか─
「ん」 人の気配をすぐ隣に感じ、ふいと目をやる そこには白い女性が目を瞑り、椅子に座っていた この女が誰なのかは、わかっている ルビスだ… 俺の動きに反応し、静かに目を開き、俺の顔を見つめるルビス 白く透き通るような肌に、絵に書いた姿 その瞳はどこか物憂げで、しかし魅力的でもある 俺の想像を遥かに超え、美しい 「メイを、俺に向けさせたのは、あんたか…」 ルビスの姿に少し、戸惑いのような嬉しさのような、複雑な気持ちを抱きつつ話しかけた 「別に、その事をどうこう言うつもりはない そしてこれからやらなくちゃならない事もわかってる… でも、何もわからないまま戦う事なんてできない …全部、話してもらえるよな?」 俺のわからないこと この世界にきてからずっと、ルビスは肝心な事だけは黙ってきた やるべき事がわかった以上、それらを聞いておかなければならない 何もわからないまま言われるまま、行動だけをするなんて嫌だからだ 「…まず何を話しましょうか」 夢の中で聞いた声そのまま 目の前にいるのは本当に、ルビスなんだな
「まずは、あんたがどうしてこの世界にいるのかを聞きたい」 これはメイがルビスに聞けばわかるといっていた、最初の疑問 なぜ神が魔王の創った世界へいるのか… だがはっきりいってこの事はどうでもよかった 言葉慣らしの意味での、質問だ 「私は、あなたがゾーマに囚われ異世界へ連れ去られていったのを見ていました あなたには重大な使命がある… ですから私は力を失うとわかっていながら人間の姿となり、わざと魔物につかまった─」 そうか 人間になる事もできるのか… なぜ魔王にやられる瞬間、助けてくれなかった事は、もういまさらどうでもいい 神にも手出しできないほどに、それほどに魔王の力は恐ろしいのだろう 「わかった 次は"いのちの源"について教えてくれないか?」 これもメイの言っていた言葉だ 今後の俺の行動は、どうやらその"いのちの源"の意思であるらしいから─ 「"いのちの源"と今回の事は全て繋がり、そして起こりでもあります… 事を終わらせる為、全てをお話しましょう」 外気はわずかな物音だけをサァサァ伝達し 部屋の肌色が強く目を圧迫する 白い女性ルビスは時折、ふと悲哀に満ちた表情を見せ それは悲しいことだけれど同時に、なぜかこの世で一番の美しさに感じた
●いのちの循環いのちの記憶 「"いのちの源"とは─ …全てはそこから始まっているのですよ、タカハシ この話を聞けばあなたの疑問は全て解かれることになるでしょう」 "いのちの源"なんて言葉はメイに聞くまで知らなかった言葉だ そしてルビスはそれが全てだと、言う… そんな大事な事をなんで今まで話してくれなかったのか─ 「…"いのちの源"とはその名の通り、全ての生命の源です 植物、人間、虫、動物、魔物、ありとあらゆる"いのち"を持つものの根源…」 「魔物も、なのか?」 「そうです 肉体を抜け出した人や動物、魔物全ては遠く上空を超え、更に果てしない場所で一緒になり混ざり合います 混ざり合った生命は浄化され、新たな肉体へ宿るときを待っているのです」 じゃあ、死んでいった魔物や人間のいのち… そしてメイの"いのち"も─ 「分け隔てなく善悪も関係なく… タカハシ、命は皆おなじであり平等です」 「平等…だと?」 人を無意味に無差別に殺す魔物達も"平等"なのか いつか、なんらかの生命の元になって平然と生きていくというのか 殺された側からするとたまったもんじゃないな… 「…"いのちの源"、それは"いのちの輪"です 空へ昇った"いのち"は輪になり、そうして互いを輪の中で共有する 未来永劫かぎりなく全ての"いのち"と関わりを持ち、"生きた記憶"を後世へ残してゆく」
難しい、話だ… 童話でも聞いているみたいだが、こんな異世界が存在するほどだ 何を言われても不思議じゃないし、そんなものなんだろう だけど─ 「……それがどうして、俺の疑問が解ける事と関係するんだ?」 少し伸び、俺は身体を起こしベッドから降りる 身体は軽く、不調など全く感じない それどころか体の奥底から力が沸いてくるようだ 軽く身体をひねり、俺がベッドへ座ったのを確認してから、ルビスは話し出した 「まずゾーマについてお話せなければなりませんね…」 「魔王だろう? 知っている」 「そうではありません なぜゾーマが私たち神や勇者を超えることができたのか、という話です」 「どういう事だ?」 少し乱暴に言葉を返したが、 ルビスは気に留めることなく続ける 「ゾーマは"いのちの輪"の繋がりを絶ち、自らの力にする術を知った それにより、三つ目の世界で思念となった自身を、若い肉体へと変化させることが出来た」 「三つ目の世界だって?」 「そうです この剣と魔法の世界はそれぞれが独立して八つあるのです ゾーマは八つあるうちの三つ目の世界で、やはり邪悪な存在でした 私は囚われ石にされ、しかし私の導いた勇者にゾーマは打ち倒されました」 ずいぶんと、因縁の仲らしいな… ついでに聞くが八つの世界は互いに関係するのか?
「はい、同じ"いのちの源"を共有する世界ですから… 独立していても全く別世界とは言えず、一つの世界の続きであったりもします」 「ふうん…… まさか、もしかして、俺の世界とも繋がってるのか? この世界みたいに魔法はないけど…」 "生命の根源"である"いのちの源"は"いのちの輪"となり全て交じり合うと言ったし、 俺の世界の"いのち"もそれは例外じゃないだろう─ しかし、ルビスの答えは俺の予想とは違っていた 「いいえ、関係はありません」
タカハシ乙!! かなり気になる〜!!!!!
332 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/16(土) 17:19:33 ID:5UKGsZCq0
現実を見ろ。 世の中甘いもんじゃないぞ。
333 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/16(土) 17:20:51 ID:5UKGsZCq0
お前達はあまりに情けなさすぎるぞ。 もっと立派になれ。 しっかり働け。
タカハシ氏乙でした。 八つのうちの三つ目の世界って… 来年出来そうな九つ目は?なんてね
>>331 ,334
ありがとう
そういえば時間の流れで言うと、DQ3は三つ目じゃなかったですね。
ここは「繋がったそれぞれの世界は、必ず時間の流れにしたがうものではない」という理解でお願いします…
DQ9についてはノーコメントw
保守
337 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/18(月) 19:38:06 ID:9cJqbe+C0
ぷひゃ
338 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/18(月) 20:38:39 ID:snFetdnD0
保守
一日に3回も保守いるのか?w
ほ
ほ
342 :
◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:18:50 ID:9GmpBdCv0
>>281 感謝です
頑張ります
>>282 ありがとうございます
あんまり暗くなりすぎないようにはしたいですね。
スライム悩んだんですよ、何言わせるか
結局ゲーム通りに・・・w
>>283 感謝です
なにげにゲーム中も気になってましたw
ゲームまんまで詰まらないんじゃないかと思ってましたが
そう言っていただけると嬉しいです
>>284 ゲーム中の親方は相当酷い大人でしたけどね・・・
まんまじゃあんまりなのでアレンジをw
脇役も人間、キャラクターとしてもっと活かしたいです
精進します
>>288 ありがとうございます
やっぱりそれだけ、心に残るシーンなんですよね
上手く描けるか今から少し不安です
ご期待に沿えるよう頑張ります
ぎゃ
sage忘れましたごめんなさ・・・!
>>暇潰しさん
武器の扱いに感動しました
こういう作品を読むと尚更
自分のはアイテムをいかせてない気がしますね
勉強になります
そしてエルフの今後に期待大!
>>タカハシさん
まとめ乙です
続きが気になる終わり方でむずむずしてますw
待ってますよー!
>>279 続きです
目を覚ますとその日は昨日までと様子が違っていた。 階下では複数の人間の話し声が聞こえる。 ストーリーが動き出していることを感じて、俺は体を起こした。 『やっと目を覚ましたのね』 小さな笑い声がして目線を落とす。 くすくすとブロンドを揺らしながらベッドの傍らに肘をついて ビアンカが俺の顔を覗き込んでいた。 『サンってば、結構お寝坊なのね』 おはよう、と咄嗟に口に出すと けらけらと笑いながらビアンカも挨拶を返してくる。 『パパのお薬が出来上がったの。残念だけど今日でさよならだわ。 ママとご挨拶に来たのよ。あたしの家にも遊びに来てちょうだいね』 寂しさを誤魔化すためか早口に少女が言う。 大丈夫まだお別れじゃないよ、と 俺はビアンカに慰めを思った。 声には出さなかったけれど。 身支度を整えてビアンカと共に階下に下りると、パパスが顔を上げた。 『サン、やっと起きたのか。 おかみとビアンカは今日帰ってしまうそうだ』 声に対して、目一杯寂しそうな表情を作ってみせる。 おかみはその表情を微笑ましげに眺めている。
にっ、と髭の奥の口角を上げて、パパスは言った。 『女二人では危険だからな。 父さんはアルカパまで二人を送っていこうと思うんだが、 どうだ?お前も来るか?』 俺が頷くよりも先に、ビアンカが 『本当に?』と嬉しそうな声をあげた。 俺も顔を上げて「いいの?」と子供らしく尋ねる。 満足げに目を細めるとパパスは 『そうと決まれば早速出かけることにしよう。 サン、すぐに準備をして来なさい』 言いながら自分の荷物袋を抱え上げる。 俺は自分の装備を簡単に確認すると「大丈夫」と頷いた。 アルカパまでの道程は驚くほど順調だった。 殆どモンスターと遭遇することもなく 日が天頂を通り過ぎる頃には 町の入り口で警備兵と挨拶を交わすことが出来た。 ごくろうさん、とパパスが声を掛けると兵士は どうぞ、と道を開けパパスの横顔に敬礼した。
アルカパの町は、サンタローズに比べて広々と賑やかだった。 入り口すぐには商店が並び、そこかしこから 買い物をする主婦の声や、 笑いあう子供達の声が聞こえてくる。 きょろきょろと辺りを見回していると ビアンカが『賑やかでしょう?』と楽しそうに言った。 その町を一望する通りの真ん中 一際大きな建物を構えて佇んでいるのが ビアンカの住む宿屋だった。 サンタローズにはない大きな建物にしばし見とれてみる。 大きな正面扉をくぐると 広々としたロビーには隅々まで手入れが行き届いており 趣向をあわせた品の良い装飾品が設えてあった。 天井には嫌味でない程度に豪華な 小ぶりのシャンデリアが柔らかな輝きを放っている。 フロントの右手には小さな扉があり おかみは脇目も振らずに扉の奥へと消えていった。 後を追うビアンカに従ってパパスと俺もその扉をくぐる。
同時に『おかみさん!』という若い声が耳に届いた。 『お帰りなさい、遅かったですね。薬は手に入ったんでしょう?』 きっちりとした制服を着込んだ従業員らしき若い男が 頷くおかみに向かって笑顔を見せた。 『これでこの人も良くなると思うよ。 まったく世話が焼けるったら。手伝ってくれる?』 『はい!だんなさん、お薬ですよ。早く元気になってくださいよ』 応えるように間仕切りの奥のベッドの上で、 青白い顔をした年配の大男がのそりと身を起こした。 弱々しく微笑んだその男がダンカンだろう。 パパスも近付いて『大丈夫か?』と声を掛ける。 医療の知識が皆無な俺にもその様子が あまり穏やかでないことが見て取れた。 手持ち無沙汰に歩き回っていたビアンカに おかみが気付き、俺の顔を見る。 『サンちゃん、良かったらビアンカと遊んでらっしゃいよ』 『久し振りだろうから、散歩でもして来たらいい。ただし外には出るなよ』 パパスも振り向いてそう言う。俺は素直に従うことにした。
ビアンカと連れ立ってロビーへ出ると 正面扉へ向かおうとした俺をビアンカが引きとめた。 『おもしろいお話を聞かせてあげる』 と、悪戯っぽく笑みを含んだ瞳で俺の手を引く。 さっきの寝室の向かい側に、 こちらはそれより少しだけ豪華に彩られたもうひとつの扉があった。 その扉を開くと、手入れされた植物に囲まれた小さな中庭。 蔦の絡んだベンチのひとつに、艶やかなローブを身に纏った 女と見紛う程の美しい顔をした男がゆったりと腰掛けている。 『今日もやっぱりここに居たのね』 ビアンカが話しかけると 病的なまでに白い顔を上げて男が微笑んだ。 『ここが好きなんだ。落ち着くじゃない』 『ねえ、あのお話を聞かせてくれない?』 俺のほうをちらりと見ながら、ビアンカが言う。 男は、おもむろに俺の方に向き直るともう一度にこりと微笑む。 その真っ白な頬に僅かに赤みが差した。 『そうか、ぼうやにはまだ話したことがなかったかな』 ビアンカが笑いを堪えるように口元に手をやる。 男は、ひとつ咳払いをすると 大げさに身を乗り出して俺の目を見据えて、口を開いた。
『この町の少し北に、大きなお城があるのは知ってる?』 俺は知らない振りで首を横に振る。 『レヌール城と言うんだ。 昔、そのお城には逞しい王と、それは美しい王妃が住んでいた。 とても仲の良い夫婦だった。 だけど何故か二人には子供が出来ず、 いつしかその王家も途絶えてしまったんだ』 俺は小さく頷く。男の穏やかな顔が少しだけ真剣になる。 『ところが、ね。今となっては 誰も住んでいないはずのそのレヌール城から、 夜な夜なすすり泣くような、 物悲しい声が聞こえてくると言う・・・』 ぶる、と肩を震わせて、男は体を戻した。 『どうだい、恐ろしいだろう?』 くすくすと、堪えきれない笑いを漏らすビアンカの横で 俺は深刻な顔を作って頷いて見せた。男もそれに応えて頷くと、 『レヌール城には決して近付いてはいけないよ』 と言ってまたベンチに背中を預けた。 ロビーに戻り扉を閉めると ビアンカがけらけらと笑い声を上げた。 『サンってば、真っ青になっちゃって。怖かったんでしょ』 否定も肯定もしないまま俺は正面扉へ向かった。 無言を肯定の意味に取ったらしく、 ビアンカは嬉しそうにまた笑って俺の横に立った。
本日ここまでです ありがとうございます 多少は書き溜めてあるんですが 投下する時間がないのが問題ですね それではまた
>>350 テキストの件ですが、避難所へ返事を書いておきました。
>>350 乙!ついにアルカパか。そういやサンタローズと比べりゃ随分都会だなw
しかし、真相のわかってる怪談とか笑っちゃうなw
354 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/22(金) 23:26:26 ID:X25R5Pia0
おまえらわろすぼーよみ
クリスマスイヴ保守!
356 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/12/24(日) 16:43:55 ID:art2UaxS0
俺に言わせればおまえらはあまりに情けなさすぎる。
>>353 5やったことない俺からするとwktkなんだが
皆さんお疲れです&メリクリー♪
さて聖夜にも関わらず1人で寂しく書いていた暇潰しです…
先日ドラクエ3の設定の話になったので、
今回は自分の作品について少し語ってから投下したいと思います。
ではタイトルの話でもしましょうか。
タイトルは全て聖書の中から取ってきています。
一番初めのAnnuciationというのは受胎告知と訳し、
マリアがキリストを授かる事を天使から告げられるという場面を指します。
物語の中ではルビスが真理奈にドラクエ世界を救って欲しいと告げるところにかかっています。
Four Nightsはそのまま4人の騎士の事を指すのですが、
ブルーの分が足りないので『+1』となっているわけです。
ここは正直タイトルいらなかったかなぁ…
Forbidden Fruitsは禁断の実をイヴが食べてしまうという有名なヤツですね。
ここではピラミッドから持ち出してはならない黄金の爪の事を指している訳です。
Tower of Babelは巨大なバベルの塔を建てて神に近付こうとした人間達を戒める為に
神が人間達の言葉をバラバラにして、二度と大規模な共同作業が出来ないようにしたのです。
つまり言葉がそれぞれ違うから、この世界はまとまりがないんだという話。
ドラクエ世界では言葉は全世界共通なのにもかかわらず、何で戦争を起こしてしまうんだ
という意味を込めましたが、ちょっと無理やりかもしれませんね。
そして今はJacob's Dreamですが、これは簡単に夢見るルビーとかけているだけです。
こうして見ると分かるように大抵は安直に付けられているのが分かるでしょうw
では
>>308 からの続きをどうぞ
「へぇ〜モンスターの大群だなんて怖い…… それで? その後どうしたの?」 「真理奈がグリズリーに鉄の爪で止めを刺したの」 「すげー! オレも武道家になろっかなぁ〜」 森の中の小さな広場。 その中央に位置する岩の上で3人の子供が話をしていた。 3人は肩を互いに合わせて、背中で三角形を作るようにして座っている。 その為それぞれに方々を向き、顔を見て話す事が出来ない。 けれどそれ故に絶えず会話をし、相手の事を感じようと努めているようにも見える。 「フィリアは? どんな呪文が使えるの?」 「ホイミとかバギとか」 「いいなぁ〜オレにも教えてくれよ」 「さっきは武道家になりたいって言ってたじゃない」 「呪文も使える武道家になりたいんだよ…… フォルテはいちいちうるさいなぁ……」 「ソールが子供なだけよ」 フォルテと呼ばれた少女はエルフという種族の者だった。 エルフという言葉に付いてまわる人間の中でのイメージでは大抵、 大人しいだとか、怒る事がないだとか、 まして何かを憎んだりはしないなどという、まさに聖女のように言われてしまう。 少なくともフィリアが本から得た知識ではそのようなものだった。 しかし実際に目の当たりにしてみると、いかにそれが想像であるかが分かった。 それは同時に人間とエルフとの接触が皆無に近い事をも意味しているだろう。 その点フォルテはエルフという枠組を外してしまえば人間の女の子と変わらなかった。 ちなみに本名はフォルティスというらしいが、普段はフォルテで通しているらしい。
「砂の街かぁ……その土地にはエルフがいないのね」 「……どうして分かるの?」 「だって自然の手助けをするのがエルフの役目なんだもの」 「フォルテもしてるのか? 自然の助け」 「うん。だってエルフだもん」 「凄いなぁ〜オレもやってみたいかも」 「もう! ソールったら」 フォルテが口に手を当て、肩を揺らして笑う。 その様子が背中を通じて他の2人に伝わった。 笑われたソールはからかわれた事が分かったのか、つまらなさそうな顔をする。 ソールはノアニールに住む少年で、フィリアを助けたのをきっかけに仲良くなった。 大人のような言い方を時折するが、どうしても背伸びをしているようにしか見えない。 しかしそれは自分が子供である事を十分に知っているが故の行動とも言えるだろう。 成長を待ち望んでいる、そんな思いが垣間見れる男の子だった。 それがフィリアの2人に対する人物評価だった。 「結婚? 結婚って何?」 「それはあれだろ? ずっと一緒にいるって事だろ?」 「男と女が協力して新しい家庭を築く事」 「へぇ〜素敵ね。じゃあ結婚式は??」 「それはあれだろ? お披露目だよ、お披露目」 「ルビス様や親しい人達に結婚を誓う事」 「へぇ〜国同士で開かれる結婚式なんてどれだけ豪華なんだろう!」 「それで? その後どこ行ったんだ」 「まだ早いよーもっと詳しく聞かないと!」 そして2人共フィリアよりも数年幼かったが、フィリアよりよく喋った。 フィリアが世界を旅している事を知った2人は、どんな街があるのか、 そしてフィリアがどのような体験をしたのかを盛んに聞きたがった。
2人が関心して聞くので、フィリアも話す事を内心は楽しんでいるようだ。 ソールとフォルテの会話の途切れを探しては話題を提供していった。 「なるほどね〜1人でぶらついてた時は何してるんだと思ったけど」 「でもフィリアねぇがここに寄ってくれたおかげで色んな話が聞けて良かった」 「私もエルフに会えて嬉しい」 「……ねぇ、結婚するには何が必要なの?」 「何だよ、突然」 「ソールには聞いてないよ。どうせ知らないんだから」 「知ってるさ! 男と女と神父様だろ」 「……合ってる? フィリアねぇ」 不安そうなフォルテの問いにフィリアは少しだけ考え、 それが最低限必要なものだという結論を出し、大丈夫と答えた。 「ほら見ろ」 「……じゃあさ、結婚式しましょ!」 「は?」 フォルテが2人の方に向き直り、決定だと言わんばかりに告げる。 突然の提案にソールとフィリアもフォルテの顔が見れるように体勢を直した。 「男オッケー、女オッケー。 神父様はいないけど、フィリアねぇ僧侶だからそれでいいよね?」 ソールを指し、自分自身を指し、最後は言い含めるようにフィリアの腕を掴む。 「分かってないなぁフォルテ。結婚っていうのは愛し合う男女がするんだぞ」 「あら、ソールは私の事好きなんだからいいじゃない」 「ばっ! いきなり何言ってんだよ!」 「ほら、何も問題なし」 「まだ何も言ってなーい!!」
赤くなりながら弁解するソールをよそに、フォルテは決意を固めてしまったようだ。 嬉しそうな笑顔をして、立ち上がる 「はい決まり! さっそくママに報告しなきゃ! 行こっ!」 そう言いながらフォルテは2人の腕を引き、岩を降りるように促した。 「おい! 引っ張るなって!!」 3人は風のようにして森の中へと消えていった。 「へぇ…スゴ。木がそのまま家になってる……」 ほぉ…とフィリアの口からもため息が漏れる。 フォルテに連れられて森の中を進んで行くにつれて雰囲気が変わっていった。 初めは近寄りたくない気持ちが足をすくめたが、 少し我慢していると何とも清々しい空気に全身が包まれた。 「ようこそ、私達の里へ」 フォルテが駆け足の状態のまま振り返り、 両手を広げてソールとフィリアに歓迎の意を示した。 「ここがフォルテの……」 「おじゃまします」 ソールは感動のままに、そしてフィリアは律儀に挨拶をして里へと入る。 その姿を見た数人のエルフが怯えるように姿を隠そうとした。 フォルテはその様子を少し悲しそうにして見ていたが、 2人にはそれを悟られないようにと、笑顔を絶やさなかった。 「エルフに会った時も感動したけど……これも言葉に出来ないものがあるな」
「綺麗なところ……」 ソールとフィリアは人間の世界とは違う何かを感じて、 何をしに来たのかを忘れる程に目の前の風景に見入っていた。 一本の木だけを見ても、それが瑞々しいのが感じられるのだ。 空気は澄み切っているという表現が最も相応しい。 「こっちよ」 2人の手を引き、ずんずんと進んでいくフォルテ。 と、その歩みが突然止まり、2人はフォルテにぶつかりそうになる。 「どうしたんだ?」 ソールがフォルテの目線の向こうに目をやる。 小さな階段の先、1人の女性が冷たい目でこちらを見ていた。 ――♪―― 「ここまできてあなたは何を言っているのですか?」 静かに、けれどキツイ声がその場を支配する。 「私はソールと結婚すると申し上げたのです」 「そうではありません。そこまで説明しなくてはならないのですか?」 「もちろんその上で、認めていただきたいのです」 エルフの里。 森に囲まれ、自然と共に暮らしているエルフが住んでいる。 妖精と言えば手のひらサイズのものを思い浮かべるかもしれないが、 この世界でのエルフは人間と大して身長は変わらない。
しかしその他のイメージ――例えば美しさなどと言った――は、 個々人の差があるとは言え、概ね当たっていると言えるだろう。 しかし、この世界にそれを確かめる事が出来る人間がどれだけいるのか という問題はまた別に存在している訳だが。 そして、その女王の間。 と言っても、その権威を象徴するようなものは自身が座る椅子だけだ。 そもそもここではそれを象徴するなどという事はほとんど意味を成さない。 エルフ自身に尽くす事よりも、世界に尽くすという事が求められるからだ。 「そんな事をしても、何も生み出しはしませんよ」 「どうしてそんな事が言えるのですか?!」 「この世界がその歴史を知っているからです」 そしてこの里に人間が訪れるなどという事は、非常に珍しい出来事である。 それはエルフの里が通常の手段では近寄り難いように隔離されているからで、 この里に生まれて死んでいったエルフの大半が人間という存在を知らないままであった。 そんな慣例の場所にあるこの里で、フォルテが唐突に決めた結婚を女王が許すはずもなく、 不毛な言い合いが続いていた。 「アンねぇにもそう言ったの?! アンねぇがルビーを持って行ったから?!」 「あの子の事は今は関係ありません」 「じゃあどうして!!」 「あなたが知る必要のないものです」 最初は丁寧な言い方をしていたフォルテだったが、今は大声で叫んでしまっている。 それは結婚が認められない事への憤りもあるが、 女王の心を変えなれない自分の無力さを嘆いているようでもあった。 「私知ってるんだからっ! ママがルビーを使ってる事! どうしていつも過去ばかり見るの?!
私とソールは仲良く出来てるじゃない! これから結婚だってするんだからっ!!」 「それはあなたが何も知らないからです。 もう好きとか嫌いとか、そういう次元ではないのです」 フォルティス……どうして分かってくれないのですか」 「そんなの知らない! だって何も言ってくれないじゃない!」 「そうではないのです。 それは私が知っていればそれでいいのです。 私は…… 私はエルフが――」 「言い訳なんかどうでもいい! エルフの過去も私には関係ない! 大事なのはいつもこれからだよ!!」 フォルテは前かがみになるほど大声で叫ぶ。 そして女王に向かって体当たりし、夢見るルビーを奪い去って走っていった。 「フォルテ!」 ソールがフォルテを追いかけ、外へ飛び出す。 「……どうしてエルフと人間は仲良くできないの?」 「それが、エルフと人間という種族なのです」 「……」 「キャー!!!」 女の子の悲鳴が聞こえてくる。 それに続いて数人が騒いでいるのが分かった。 「フィリア、と言いましたね?」 とっさに入り口に向かおうとしたフィリアを女王が呼び止める形になる。
女王へと向き直るフィリア。 「もう少しこちらに寄りなさい」 こんな時に何を言っているのかと思うが、 そうしなくてはならないと思わせる力をフィリアは感じた。 「……」 「……」 「あなた、ご両親は?」 「今はいない」 「フィリアねぇ! フォルテが連れてかれたっ!!」 必死になって叫びながらソールが女王の間に駆け込んで来る。 ソールに振り返らずに、コクリとフィリアはうなずく。 「ごらんなさい。これで分かるでしょう? いつもいつも…人間達は我々の事など考えてはいないのです」 「自分の娘がさらわれてるのに何言ってんだ!!」 「さらったのはあなたと同じ人間なのですよ?」 「くっ……」 会話に割って入ったソールは、フィリアの所まで走りその袖を掴むが、 どうしたらいいのか分からないといった感じでおろおろとする。 「…フィリア。 あなたにこの私の…… 私達の気持ちが分かりますか」 「分からない」 「……分からないという事が示しているのです。 人間とエルフ、所詮は相容れない存在なのだと言う事を」 「……」
「人間はエルフの事を理解しようとしない。 エルフは人間の事を理解できない。 そこに個人の感情などはやはり関係ないのです」 「……」 「それを知っているのはもう私だけでいい。 エルフである事の悲しみをわざわざ体験しようとする事はないでしょう。 だから人間と一線を画すように言いつけてあるんです」 「……」 「それが、エルフにとっての幸せなのです」 そう言った女王の目は、誰が見ても寂しそうであった。 隠そうとしても隠し切れない、そんな思いが無意識に現れてしまっていた。 今にも泣いてしまいそうな、綺麗な緑色をした瞳…… 「でも」 その瞳をじっと見つめたまま、フィリアは自分の思いを素直な言葉にする。 「でも、だから、知りたいと思ったの」 その言葉に女王は目を閉じた。 フィリアはソールの手を握り、行こうと促す。 ソールは不安を打ち消すかのようにギュッと力を込めた。 「どっち?」 「連れてった男と一緒にいた男が『西の洞窟にフィリアと一緒に来い』って」 「……そう」 「待ちなさい」 2人が同時に振り返ると、女王が音もなく歩いてくるのが見えた。 「私も行きます」
今日はここまで〜 >> ◆u9VgpDS6fgさん ありがとうございます〜 5では重要なアイテムはこれから出てくる訳ですからまだ大丈夫ですよぅ パパスの剣とかねw >>タカハシさん 物語の核心、期待しております! 「ようやく語る事ができるんだ」という思いが文章に出てるようなw
>>368 おつかれさまです。
気持ち見破られてるw
この部分に辿り着くまで長かったー
ここからまた説明書みたいな文いっぱいで長いんですけどね…
面白さはないんですが発端みたいな箇所なので、がんばって書きます。
ここまでまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/
このスレ見ながら寝たら…朝起きたらターニアになっていた、という夢を見た。 ジュディ、ランド、子供テリーとパーティー組んでいざダークドレアムってところで起きた。 まぁそんだけ…
>>370 でもダークドレアムってのがな・・・。
ターニアがいくらレベル上げても勝てなさそう。
落ちた?
ほ
しゅ?
ほ
しばらくは皆、忙しいだろーねぇ。 気長に待ってます。 皆様 寒いので、カゼに気をつけてねー。
年末保守
今年も本当にあとわずか。 物語のほうはあまり進ませることができませんでしたが、来年もよろしくお願いします。 それでは、よいお年を…
それでは僕もご挨拶を… 今年から投下を始め、試行錯誤の9ヶ月が過ぎました。 最初の方で真理奈の成長を見て欲しいとか言った気がしますが、 今思うと成長したのは自分の方ばかりで、 真理奈はずっと真理奈のままであり続けているだけなんですよね。 とは言え、まだまだ課題は多い訳ですがw 一つずつレベルアップしていければなぁと思います。 このスレの住民・職人さん達、そして真理奈達に感謝しつつ、 また来年も書き続けていこうと思います。 それではまた〜♪
あけおめ保守
荒し、イクナイ(・ω・)
>>382 つバシルーラ
今年もイイ(・∀・)!!作品をお願いします。
初保守!
あいつら全然役に立たないな。
ほとんど書き込むことはないけど ねっとりじっくりやらしい目でROMってるので 職人さん方、今年もがんばってください。
保守
ネタは有るけど文才が無い
文才が無くても小説の形式守って書いてみればいいんでないか
>>390 文才は神が与えるものじゃない。磨くものだ。
って誰かが言ってたよ
あけましておめでとうございます。 今年もゆっくり進んでいくので、よろしくお願いします。 ちょろっと忙しいので、投稿はまた次回。
おひさしぶりです
年末年始、ご挨拶に来れなくて申し訳在りません
昨年は純粋な読み手としてとても楽しい時間をいただき
更に書き手としても参加させていただいて
自分の新しい世界を開けた気がします
まだまだ未熟ですが今年も温かく見守っていただければと思います
皆様の良い一年をお祈りしています
>>タカハシさん
まとめいつも乙です
テキストの方、ありがとうございます
>>353 感謝です。やっとアルカパです
ストーリーがわかってても楽しめるものを書きたいですねー
>>暇潰しさん
エルフせつなす・・
自分も盛り上げられるよう頑張ります
では
>>349 続きです
↑トリップ打ち間違えました・・ 失礼しました、◆u9VgpDS6fgです 今度は間違ってないはず
表へ出ると、まだ高い太陽は 相変わらず眩しく世界を照らしていた。 一息ついて樽の探索を始めようと思ったところに ビアンカが『案内してあげるわ』と俺の手を引く。 外の探索さえ、この町ではやりにくいのか。 本当に厄介だ。 ぶらぶらと道を行き あそこが教会、あそこがお店、と その度にビアンカが指をさし示して俺に教えてくれる。 道行く女性に挨拶をしながら「あっちは?」と俺が町外れの建物を指差すと、 『あそこは子供が入っちゃいけないお店』とビアンカに袖を引かれた。 町の中央には広場があり ビアンカや俺と同じくらいの年恰好の子供達が駆け回っていた。 なんの事はないその風景に、ビアンカがぴたりと足を止める。 『あれって、何してるのかしら』 ビアンカに並んで目をやると、子供が二人 小さな生き物を追い回しては歓声を上げていた。 追いやってはその前に立ちはだかり 摘み上げては地面に投げ出す。
不意にビアンカが駆け出した。 『あんたたち、何やってるのよ!』 突然のビアンカの怒鳴り声に、二人の少年が足を止める。 乱暴に手に掴んでいた生き物が地面に転がり 体を震わせながらぐるる、と奇妙な唸り声を上げた。 頭に鮮やかな色の鬣を蓄えた小さな猫・・・ と言うよりは虎のように見える。 『なんだよ。またお前かよ』 背の低い方の少年が面倒くさそうに答える。 背の高い方がビアンカの顔を不服そうに睨んだ。 『やめなさいよ、かわいそうじゃない!』 怒りを含んだ声でビアンカが怒鳴る。 少年達が顔を見合わせて首を竦める。 母親と子供みたいだな、と俺は眺めながら思った。 『こいつ面白いんだぜ。変な声で鳴くんだ。 お前もやってみりゃいいじゃん』 背の低い方がまた言った。 高い方は猫だか虎だかとビアンカを 忙しなく見比べながら所在なさげに唇を尖らせる。 『だからってかわいそうじゃない。その子をあたしに渡しなさい』 少し落ち着いた様子で話すビアンカに 少年達はあからさまに嫌そうな表情を作り 『どうする?』とお互い目配せをした。
小さいほうがまた口を開く。 『まあ、虐めるのも飽きてきたし、別にやってもいいけどさ。 タダでやるのはなんか癪だからな』 『レヌール城は?』とそこで初めて、背の高い方が声を出した。 ああ、と言うように小さいほうが頷き、 『そうだな。レヌール城のお化けをやっつけたら、やってもいいぜ。交換条件だ』 とにやりと言った。背の高い方があわせるように笑う。 『バカじゃないの?そんなのこっちがいいって言うと思ってるの?』 ビアンカは威嚇するようにまた声を荒げたけれど 少年達はにやにやと笑顔を崩さないままで 『それならこいつは渡せないな。諦めろよ』と言った。 苛立たしげにビアンカは息を吐きながら 『わかったわよ!お化けを退治したらその子を渡すんだからね!約束よ!』 半ば吐き捨てるように言い、踵を返した。 広場を出るビアンカを追うと、怒りに満ちたその背中から 『ほんっと子供なんだから!』と呟く声が聞こえる。 『・・・ねえ、サン』 歩きながら呼びかけられ、俺は歩幅を広げてビアンカの隣に追いついた。 苛立ちと不安の織り交ざった表情でビアンカが足を止めずにこちらを見る。 『猫ちゃんを助けたいの。とっても勝手だって思うけど、 サンもお化け退治を手伝ってちょうだい。だめかな?』 申し訳なさそうに、けれど確固とした意思を宿して見つめる瞳に、 気圧される形で俺は頷いた。 ほっとしたようにビアンカの表情に笑顔が戻った。
複雑な面持ちのままのビアンカを促して宿に戻ると パパスが帰り支度を始めるところだった。 待たせてすまないな、とパパスが俺に言う。 『ダンカンの容態も薬で落ち着いたようだ。そろそろ帰るとしよう』 椅子につこうとしたビアンカが一瞬、不安げな表情になった。 俺に向けられたその表情がお化け退治は?と訴える。 流れを知っている俺としては嫌にもどかしい一瞬が流れて 助け舟のようにおかみが口を開いた。 『あらやだ、パパス。今夜は泊まっておいきよ』 額から下ろしたばかりの白い布巾を片手に持ったまま おかみはパパスの元へ歩み寄った。 もう片方の手で手際よく帳簿の確認をする。 従業員の男がおかみから布巾を受け取り、ダンカンのもとへ戻る。 『しかしサンチョを待たせているしな』 パパスは意外そうに、少し渋るように視線を空中に迷わせた。 『一晩くらい大丈夫でしょう。今から戻ったら日も暮れて危険だよ。 空き部屋でよければね、世話になった恩返しをさせてちょうだい』 『・・・うむ、そうか?ではお言葉に甘えるとするかな』 少し考えた後、パパスはやっと首を縦に振った。 おかみの顔と同時に、心配そうだったビアンカの表情も明るくなる。 『ああ良かった。すぐに食事の支度をするからね。 ビアンカ、お部屋までご案内してあげて』。
『はーい、ママ。サン、おじさま、こっちよ!』 おかみの持った宿帳を覗き込み、 ビアンカがぱたぱたと駆けるようにして扉を開いた。 促されるまま階段を上がり、三階のどう見ても一番立派であろう部屋に通される。 『こんな部屋を。もう少し安い部屋でもいいんだがな』 気後れするようにパパスが呟くと、ビアンカが 『いいのよ、どうせ今は暇なんだもの』 と笑った。 食事が出来たら呼ぶね、と言い置いてビアンカは階下へ戻っていく。 荷物を下ろしてパパスは その広い部屋に感心したように頷きながらベッドに腰を下ろした。 『サン、明日は早めに出るぞ。食事を取ったら今夜はすぐに休もう』 こくりと頷くと、パパスは緊張を解くように大きく伸びをしてベッドに横たわった。 宿の食事は華やかで美味かった。 腹を満たして部屋に戻ると、パパスはすぐに横になりいびきを掻き始めた。 俺も柔らかなベッドに横になったが、 すぐには眠りにつくことはできなかった。 ベッドの感触が肌に慣れ、やっとうとうとしてきた所で 俺は小さな声に呼び起こされた。
本日ここまでです ありがとうございます それではまた。
ビアンカの細かい仕草がカワユス 読んでいてふと結婚イベントが頭をよぎった 主人公がどう決断するにしても、レヌール城は重要なイベントだな 本年も楽しみにROMらせて頂きます。ガンガレ
ゲレゲレたんハァハァ
明けましておめでとうございます。
どうぞ今年も真理奈の物語にお付き合いをよろしくお願いします。
さて、前回に引き続き設定の話を少し。
ドラクエ3に元ネタがあるという話がありましたが、
真理奈の物語にも元ネタを少し盛り込んでありますのです。
ロマリアとイシスが舞台の時、フィリーとプエラが結婚しましたが、
あれはクレオパトラがローマのカエサルと結婚した話が元です。
ゲームでは国同士の交流が全然見られないな、という理由で考えた話です。
ちなみにイシスが近親結婚しか認めていないというのは、
エジプトで本当にあった事です。
次のエジンベアと商人の町での出来事ですが、
これはアメリカ独立戦争を元にしています。
まぁそもそもエジンベアは過去にスーの町に行っているようなので、
ことさら言う必要もないかもしれないですけど。
けれど商人の町の方が植民地っぽいかな、と思いました。
そして今回のエルフさん。
彼女らが何故あのような状況になったのか、という事ですが
これもある歴史上の出来事を元ネタにして考えてみました。
けれど今回だけでは全てを語る事は出来なさそうになってしまいました…
おいおいその全貌を明らかにしていこうと思います。
ゲームでは語られていれば、もっと違ったものになったでしょうけどね。
では今回の投下ですが、その前に一つお詫びを……
この下のレスを
>>359 の前に付け足すという形で読み進めて下さい。
つまり順番としては
>>407 →
>>359-367 →
>>408 です。
分かりづらくて申し訳ないです…
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 木々の鳴く音がする。 横殴りの風に、私の心も揺れる。 どうして泣いているの? 言葉にならない不安。 悲しみ。 後悔。 「来ないで」 瞬間、私は否定された。 拒絶。 拒絶… 拒絶…… 「皆と、遊んで、おいでなさい…」 ユラユラと赤が光る。 星のキラキラな瞬きとは違う、優しくないもの。 それが悲劇の色なんだと、その時私は知った。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
薄暗い森の中を駆けていく3人。 世界は既に夕日を迎えており、もう数時間もすると闇に包まれるだろう。 夜に森を進むのはとても危険だ。 等間隔に生えなどしない木々が位置感覚を混乱させていくのに加えて、 視界が利かなくなってしまうとモンスターを視認するのが困難になってしまう。 「……急ぎますよ」 女王は後続の2人に声をかけ、ピオリムを唱えた。 クンッと体が軽くなり、速度が二倍ほどアップする。 「うわっ! ……っと!」 危うく木に衝突しそうになったソールを最後尾のフィリアが軌道修正してやる。 「気をつけて」 「これが……呪文かぁ……」 初めて体験する呪文に感動し、ソールは目を輝かせながら女王の背中を追っていく。 そしてフィリアも女王に羨望の眼差しを向ける。 時たまバリイドドッグやさまよう鎧がウロウロとしているのに鉢合わせするのだが、 モンスターは全て女王にバシルーラで吹き飛ばされていく。 その半分以上が大きな音を立てて木にぶつかり、気絶してしまう。 運よく上空まで放り出されたとしても雲まで届きそうな勢いで、視界から消える。 (凄い……) まさにその一言に尽きた。 おそらくパトリスよりも呪文の力があるだろうとフィリアは推測する。 フィリアやソールも一応の装備はしている。 ソールに与えられたのは、使うとラリホーの効果がある眠りの杖。 フィリアには少々扱いが難しいが、多数の敵を相手にするには適したモーニングスター。
二つとも女王が用意してくれた物だ。 しかしそれらも未だに出番を得る事は出来ないでいた。 女王の独壇場と言っていいだろう。 ここまでレベルが違うならば、むしろ2人は足手まといになってしまうくらいだ。 なのにどうして一緒に行くなどという方法を選んだのだろうか…… 現にフィリアとソールの2人と、女王との距離が少しずつ離れてきている。 その足りない素早さをフィリアは2人だけにピオリムを重ねがけして補った。 「フォルテ…今行くからな……」 黙したまま考え込んでいたフィリアの思考は、ソールの独り言で方向を変える。 すなわち、フォルテは何故連れていかれたのか、という事だ。 エルフが貴重な存在である事は既に知っているが、 誘拐する事の意義がフィリアには分からない。 だいたいエルフの里を簡単に見つける事自体、ほぼ有り得ない事態なのだから。 なぜなら、里に入ろうとした時に感じた違和感。 あれがきっとエルフの里と下界を断絶する効果を持つものなのだろう。 その為にエルフは人間の記憶から忘れられていった、と予想する。 それなのに、フォルテは連れ去られてしまった。 (後を付けられた……?) そしてもう一つの気がかりがある。 ソールに"西の洞窟に来い"と告げた男の事。 フィリアの事を知っていて、なおかつ助言するような人物は誰か。 とは言っても、暇そうなジュードしか考えられないのだが…… しかし彼が誘拐犯の側にいる理由が分からない。 けれど、もしそうだとしてもきっと理由はあるはず…
「見えました」 女王のつぶやきに合わせて走るスピードを緩めると、目の前に洞窟が現れた。 「ここからは今まで以上に危険です。周囲に気をつけるように」 女王はトヘロスを唱え、洞窟内へと進んで行く。 「行こう。フィリアねぇ」 ソールがフィリアの手を握ってくる。 ソールの手は少しだけ震えている。 最初に会った時の威勢の良さはどこにいってしまったのだろうか。 不安を吹き飛ばしてあげようと、フィリアも手を握り返す。 「行こ」 結局疑問は解消されなかったが、この洞窟の底にきっとその答えがあるのだろう。 そう。 分からないならば探しに行けばいいのだ。 それが冒険の醍醐味ではないか。 そしてフォルテを無事に助け出したら、今度は船に乗った時の話をしてあげよう。 そう心に思うフィリアだった。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「もし、また彼女に会えるのなら……」 オレはアイツの事を何とも思っていなかった。 いや、そうじゃないな。 金になるとしか考えてなかった。 今思えば最低な野郎だ。 ただこの村から抜け出したかった。 もっと大きな世界を見たかった。 それだけだった。 けどその為に取った手段は、償わなくてはいけない類のものだった。 どこで魔が差したのかはもう覚えてない。 記憶にあるのは彼女の澄んだ瞳だけ。 男達にどれだけ玩ばれようとも、俺を見る視線に変わりはなかった。 そんな彼女にサヨナラを告げられた時、彼女の心に初めて触れた気がする。 けれど俺はどこまでも愚かだった。 汚れた自分に自身をつける為に、この期に及んでなお彼女を試したのだ。 約束の時より遅れて到着すると、彼女の手には赤い糸。 その宝石に彼女が落とす俺の為に流された涙を見て、ようやく決心した。 もう彼女を離しはしない、と。 この地底湖に誓おう。 俺はそこで初めて彼女にキスをした。 「もし、また彼女に……アンに会えるのなら……」 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
フィリア達が西の洞窟へとたどり着くより少しばかり前、 湿った土や木の根を踏みつけながら2人の男が走っていた。 人を担いで走るのはこんなに辛いとジュードは知らなかった。 エルフの体重が軽いのがせめてもの救いだが。 「へへへ、上手くいったな」 「あぁ…それにしても、手慣れてるな」 ジュードの前を走るのは一時的にジュードの相棒となったアヴァルス。 里に入りエルフを気絶させ、連れ出すまでの彼の手際は鮮やかだった。 決して褒められはしないだろうが。 「へへ、そうか? オレは元々遺跡専門の盗賊だぜ?」 それでも褒め言葉として受け取ったのだろう。 アヴァルスは、謙遜しつつも嬉しさを隠さない。 「まぁここ最近は似たような仕事をやってたからな」 「……人さらいか?」 「いやぁ、あれは少しばかり危険だよ」 (やった事があるのか…?) さも経験があるかのように語るアヴァルスの発言に、嫌悪感を覚える。 都合上ジュードもエルフをさらうことになってしまったが、 当然気持ちの良いものではなく、少々後悔している。 もちろんフィリアの話がなければ違う方法を取っただろう。 そもそもこの怪しい商売を利用してエルフ狩りの連中を捕まえようと考えたのは、 フィリアがエルフと会ったという話があったからであった訳だが。 しかし捕まえるまでは仮の姿とは言え、自身もエルフ狩りを装わなくてはいけない。 それはつまり、ジュードもエルフをさらわなくては怪しまれてしまうという事だ。 いくらなんでも手ぶらでエルフ狩りの依頼主に会う訳にはいかないだろう。
問題はその事に気付いたのがフィリアの後を付けて里に入った時だという点。 行き当たりばったりの行為と言われればそれまでだ。 だいたいエルフを狩ろうとする者が何人いるのかも分からないのだ。 ジュード1人でどうこう出来るレベルの話ではないかもしれない。 何とかフィリアに助けを求めておいたが、どうなる事やら…… 「今はモンスターをさらう仕事をやっている」 「……?」 「ある方面ではエライ人気でな。興味あるか?」 「……」 この後の事を考えていたジュードは一瞬会話についていけない。 そんな事をして金になるのだろうか? モンスターを食べたりするとか……? せいぜい、そんな事を考えられたくらいだ。 「へへへ…やっぱ用心深いんだな。そういうヤツは好きだぜ」 沈黙を勝手に解釈してアヴァルスが話を進める。 そういうお前は間が抜けてるな、とは言わないでおく。 その薄ら笑いから受ける印象は正直あまり良くはない。 「なぁニイさん。このヤマが終わった後も一緒に仕事しねぇか?」 まだ仕事が終わってもいないのに、次の仕事の話をするアヴァルス。 そこまでジュードの事が気に入ったのだろうか。 「……どうして俺を?」 「へへ…目だよ、目」 「目…?」 「目は口ほどにモノを言うって言うだろ? アンタの目には確固たる決意ってのが宿ってなかった」
(ケンカ売ってんのか?) 一瞬本気でそう思う。 少なくとも褒め言葉ではない事は確かだ。 「おっと、怒らないでくれよ? 俺はそれが良いって言ってるんだ。 人間は迷う。だからいざという時に強くなれる。そうだろ? だからオレはそういうヤツとしか組まねぇんだ。 下手に信念持ってるヤツなんかは逆に危なかったりするんだぜ? こんな仕事だと特に、な」 こんな仕事を続ける気は、ジュードにはさらさら無い。 けど、その持論には少しだけ説得力があったような気がした。 「あぁ、依頼主は別だけどよ? 金払うヤツに迷われちゃあこっちが困っちまう」 「はは」 そのギャグには素で笑ってしまった。 (迷ってる、か…) 「まぁ考えといてくれや。着いたぜ」 考え込むジュードを横目に、アヴァルスは声をかける。 森の中にひっそりとたたずむように洞窟が口を開けていた。 洞窟の中はさらに気温が下がり、ひやりとした空気が肌を刺す。 「なぁ、今までどんな所に潜ったんだ?」 「へへ、そうだな…有名所で言うとガルナの塔に東バハラタの洞窟。 ピラミッド、シャンパーニってところか。 今度は西の大陸に渡ろうかと考えてる。 手付かずの塔があるらしくてな」
自分の功績を話したりするのが好きなようだ。 ペラペラと喋り上げる。 しかし、さすがに経験は豊富なようだ。 アヴァルスは薄暗い通路を迷わずに進んで行く。 (遺跡専門って……なるほどな) 「その途中で他の仕事したりしてたんだがな。 久し振りに洞窟潜ってみたくなってよ、へへ。 そこでこの話を聞いたって訳だ」 しかし、こんな場所で依頼される話なんて明らかに怪しい。 アヴァルスにはどこか警戒心が薄いようなところがある。 もしくは変わり者だって事だ。 それからは会話もなく、ただ進んでいった。 荷物を持ったままモンスターの相手をするのが厄介だった。 後ろからどーんと体当たりしてくるのは止めてもらいたいものだ、と思う。 二つほど階段を降りると、さっきまでと空気の違う事に気がついた。 ここがおそらく洞窟の最下層なのだろう。 そのフロアの最奥に、これまでとは一転して明るくて広い部屋があった。 ちょっとした泉になっていて、水底から光が溢れている。 こういうのを地底湖というのだろう。 宝箱が一つ、口を開けたまま横倒しに転がっており、 その側で老人が1人背を曲げ、眼前の杖に体重を預けるようにして立っていた。 「おぉ、早かったですねぇ。それに二つもですか」 挨拶を交わす前から喋り始める。 二つとは、エルフの事だろう。 「あぁ、思いのほかスムーズに里が見つかったんでな。 へへへ、こんな楽な仕事は初めてだったよ」
アヴァルスはニヤニヤと笑いながらソイツに近づいていく。 「はじめまして。私の名はクルエントです」 「そりゃどうも。アヴァルスだ。こっちはジュード。協力してもらった」 「そうですか、それはそれは……さぁ、こちらに渡して下さい」 低くしゃがれ気味で、けれど重みのある声色。 フードを深く被っている為に顔を見る事は出来ないが、相当高齢であるのは分かる。 ジュードは彼の声の中に、隠しきれない高揚感を感じ取っていた。 そして同時に後悔していた。 この老人は、危ない。 そう思わせる何かが確実にあった。 「先に金を見せてもらおうか」 「一匹十万Gじゃったな」 「あぁ」 クルエントは荷物の中からGを取り出し、アヴァルスに手渡した。 その金の半分がジュードの分なのだろう。 アヴァルスが腕に抱きかかえているエルフを老人の足元に放り投げる。 エルフは気絶させられている為、起き上がる気配もない。 「…どうした? アンタの取り分だぜ?」 エルフを渡そうとせず、差し出された金を受け取ろうともしないジュード。 それを不審に思ったアヴァルスとクルエントの視線に少し焦る。 (リレミトでフィリアと入れ違いになったら困るな…) フィリアが来れば何とかなるかもしれない。 商人の町で兵士長と戦った時のように。
「エルフを金で買ってどうするんだ? ペットにでもするつもりか?」 ただの時間稼ぎだ。 取引が終わり、逃げられては元も子もない。 しかし相手の目的を知る事は、彼らを捕まえる理由を作る事にもなるはずだ。 「私にはそんな趣味はないよ」 声を殺しながら笑うクルエントはフード付きのコートを脱ぎ、素顔を晒した。 深く刻まれた顔の年輪。ツヤのない白髪。どこか達観したような眼。 どうしても老衰というものを感じざるをえない。 老人はコートの中からナイフを取り出し、コートを捨てる。 彼が手にしたのは真っ白な柄に細やかな技巧を凝らしてある、聖なるナイフだ。 「エルフの価値。そんなはした金などと釣り合うものではないわ!」 声の調子が一気に変わり、視線が鋭くなる。 ナイフの切っ先を足元のエルフの首筋にあて、その美しい皮膚を裂いていく。 傷口から血が噴き出してくるが、そのエルフはビクリとも動かなかった。 そしてクルエントはうなじに垂れていく血を舌で舐め取り始める。 「お…おい……何してんだよ……」 アヴァルスも二十万Gのはした金を手にしたまま目の前の光景に釘付けになる。 無心に口付けるクルエントの表情は、まさしく愛撫する時のそれだった。 見ていて気持ちのいいものではない。 ピチャピチャと音が鳴る度に、老人に対する恐怖感が強くなる。 「くくっ…美味いのぉ……世界のどんな料理も勝てはせん」 「そんな……馬鹿な……」 クルエントが喉をゴクリと鳴らす度に、彼の体に変化が起こる。
顔のシワが薄くなり、肌にみずみずしさが戻ってくる。 白髪に本来の色が戻ってくる。 そして曲がっていた背骨が正され、体格がしっかりとしたものになっていく。 「若返り…か……?」 「ふふっ…クククッ……」 堪え切れないといった感じの笑いが、血に濡れた唇から漏れる。 その声はさっきとは違い、確かに若い。 「私は間違っていなかった…… これが…これがエルフの正しい使い方よ!!」 老人だった者は立ち上がり、高らかに笑い始める。 「さぁ、そっちの物も渡せ。そしてエルフの住処を教えるのだ!!」 (ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…!) エルフの血を喰らった老人の目線がジュードに突き刺さる。 「くっ!!」 縛られるような力から逃れるように、クルエントから距離を取るジュード。 抱えているエルフがやけに重たく感じた。 「フォルテ!!」 「フォルティス……」 その時、部屋の入り口から悲痛な叫び声が発せられた。 フィリア達がやっと到着したのだ。 「フォルテっ! 大丈夫か?!」
今にも飛び出しそうなソールをフィリアが止める。 「ジュード」 「フィリアか……悪い…」 冷や汗を流すジュードが横目でフィリアに詫びる。 「最初からお前にも話しとけばよかったな… 馬鹿な事したぜ……」 首を横に少しだけ振り、謝罪を否定するフィリア。 「…夕ご飯、ありがとう」 「あ…?」 ジュードは思い出せない。 お礼を言われるような事をした覚えもない。 「あの人が悪い人?」 「お、おう……」 何も責めないフィリアに、ジュードはますます申し訳なくなる。 「これはこれは……飛んで火に入る夏の虫、というヤツですな」 直立不動で傲慢な態度のクルエントの発言で、ジュードは我に返った。 そんなクルエントに女王が冷たい顔で告げる。 「……今すぐフォルティスを返して下さい」 「もう死んでますよ、これは」 その様子を楽しそうに見ながら、彼はつま先で足元に横たわるフォルテを蹴る。
フォルテの頭が女王達の方へと転がる。 顔は既に真っ白で、血の気がまったく感じられない。 そしてカランッと音がなり、フォルテの懐から宝石が転がり落ちる。 「これは…?」 クルエントが赤い宝石を拾い上げ、調べ始める。 フォルテが持っていった夢見るルビーだ。 「エルフさんよ、悪いが逃げよう。アイツはヤバい… ここは俺とフィリアで食い止めるから――」 「私の娘をさらった人間が何を言うのです」 「そうだそうだ! フォルテと一緒じゃなきゃ帰らないぞ!!」 ソールが武器を握りしめながら叫ぶ。 けれどこれ以上エルフが犠牲になるのは一番あってはならない。 「あのエルフはもうダメだ!! それにアンタまで捕まったら……」 「私がエルフを見捨ててどうするのです。仮にも私は女王なのです」 ジュードに聞かせるというよりは、自分自身に言い聞かせるようにつぶやく。 「俺も手伝うよ! 結婚するって決めたんだ! 死なせてたまるかよ!!」 「ジュード」 フィリアがジュードの手を引く。 真っ直ぐジュードの目を見るフィリアの瞳は「お願い」と言ってるようだった。 「ちっ…仕方ねぇな…」 借りがあるフィリアには逆らえず、ジュードは戦うことを決意せざるを得ない。 抱えていたエルフを部屋の入り口に寝かせる。
向こうの手に渡らないように気をつけながら戦わなくてはならない。 (やっぱ最初からフィリアに話しておくんだったぜ… 真理奈とパトリスは…まだカザーブか……) 帰って来ていたとしても、ここに現れる事はないだろう。 スーッと鞘から剣を抜くジュード。 クルエントは手にしていた宝石を自分の懐に入れる。 「ふふ、エルフとはおかしな種族おのぅ。 たった二匹助ける為だけに王が出てくるとはな。 サービス精神旺盛な事じゃ」 「うるせ〜!! その口調、似合ってないぞ!!」 ソールが耐えかねてか、フィリアの制止を振りほどいて突撃してしまう。 「くそっ!!」 ジュードがそれを追いかける。 場は一瞬にして戦闘状態へとなだれ込んだ。 「「ピオリム!」」 「スクルト」 「ルカナン」 女王とフィリアがそれぞれ呪文を唱え、パーティーを強化する。 「イテテテッ! 止めろ! 離せよ!!」 勢いよく突撃したソールの攻撃はあっけなくかわされ、 クルエントはソールの首を掴んで、小さい体を持ち上げた。 続けてジュードがソールを傷つけないように斬りかかる。
「ベギラマ」 炎の壁が自身の前に築かれ、クルエントの姿が見えなくなる。 しかしジュードは走るのを止めない。 「フィリア!」 「バギ!」 ジュードの後ろから追走していたフィリアが壁に穴を開ける。 その呪文はちょうど炎をかき消す程の威力で、ソールを傷つける心配はない。 その道にジュードが飛び込み、壁を切り抜ける。 しかしその先にはクルエントの姿はなかった。 「まだまだじゃ」 死角から現れたクルエントの攻撃を防げず、炎の中に突き飛ばされる。 その攻撃の瞬間をフィリアがモーニングスターで狙う。 動きを止めようと足元に攻撃をしかけるが、武器ごと踏み抜かれてしまった。 クルエントはフィリアの攻撃を見てなどいなかったはずだ。 驚いているフィリアもバシルーラで吹き飛ばされる。 「おっと女王様。あなたの大切なお仲間がどうなってもいいのですか?」 続けて攻撃を仕掛けようとしていた女王の動きが止まる。 聖なるナイフを首に突きつけられているソールの姿に躊躇したのだ。 ソールは刃に恐れ、ゴクリ唾を飲み込む。 その小さな動きでさえ、皮膚に刃が食い込みそうになる。 「……人間など……」 口ではそう言いながらも、行動では人間であるソールの身を案じていた。
「エルフの血というのはやはり若い方が美味しいんですかねぇ? それとも寝かした赤ワインのように歳取った方が味わい深いのかな?」 その嘲笑は女王の感情を逆なでするのに十分だ。 「ふふふ…さぁその体に流れる血を私に!」 「……!! イオラっ!!」 女王は呪文を唱えると同時に走り出す。 「むっ……」 爆発を促すその呪文はクルエントに直接放たれたものではなく、 彼の二メートル手前で地面をえぐった。 巻き上げられた粉塵が炎をかき消し、クルエントの目をくらました。 「ふっ」 その一息で女王はクルエントとの距離を詰める。 ソールを掴む左腕に一閃の真空刃を放ち、ダメージを与えた。 力の緩んだその手からソールを奪うと同時に、バシルーラを腹に叩き込む。 「ごぉっ!!」 クルエントが肺の空気を吐き出す音を聞きながら、フォルテを探した。 残り火から上がる煙と、舞い上がった粉塵のせいで視界が悪い。 「女王様…あ、ありがとう。もう大丈夫だよ」 ソールの礼で彼を抱いていた事を思い出し、降ろしてやった。 ソールは少し恥ずかしそうに頬を赤くしていた。 女王もその素直な礼に、言い得ない気恥ずかしさを覚える。
「くく…エルフが攻撃的なのはイメージに合わないのぅ」 和やかな一場面も、戦闘中では場違いにさえ思えてしまう。 視界が晴れ、その先にクルエントの姿が確認出来た。 クルエントはフォルテの二の腕を掴み、無理矢理立たせている。 「フォルテー!!」 フォルテの服は自身の血で染まってしまっていて痛々しい。 「残念だったねぇ」 対してクルエントはダメージなどないかのように、余裕の表情で笑う。 「へへへ…クルエントさんよぉ」 そこに今まで傍観していたアヴァルスが現れた。 「…アヴァルス、とか言ったかの?」 「あぁ。良い仕事したろ?」 「くくく、そうじゃのぅ」 「オレをもう一回雇わねぇか? 邪魔者はオレに任せてくれよ」 呪文で回復したジュードとフィリアが女王の横に並ぶのを示しながら、 アヴァルスは契約を持ちかける。 今まで傍観しながら金になるのかどうかを算段していたのだろう。 「フィリアねぇ、ありがとう。大丈夫だよ」 心配してくれたフィリアにソールが礼を言う。 どうやらケガはないようだ。 代わりにソールは埃まみれになったフィリアの顔を拭いてやる。
フィリアはくすぐったそうに顔をしかめていた。 しかし小さい子に世話を焼かれている様子は、はたから見れば可愛い。 「あ、ありがとう…」 その横でジュードはボロボロになった自分の姿をしきりに気にしていた。 炎の中に放り込まれたのがよほどこたえたのだろう。 髪の毛が少し焼けてしまっているのが目立つ。 (これ終わったら髪でも切るかな) 髪をさっとかき上げ、気合を入れなおす。 「しかし女王様強いんだな…エルフのイメージ、確かに変わったぜ…」 「そういうアンタは弱すぎ。フィリアねぇは僧侶だからいいけどさ〜」 「ただ敵につかまるような役よりはいいと思うけどな」 「アンタは仮にも戦士だろ? 同じ条件ならオレだってやれるぜ」 「ったく、子供が生意気言うなよ…アイツは強いぜ」 「どうしよう?」 フィリアが作戦の事を言う。 「人数では勝ってるんだから、後はコンビネーションだろ」 「じゃあオレが引き付けて、フィリアねぇは援護。 アンタは突撃で、女王様が追撃で決まりだね」 「フィリアよぉ、武器落としたらダメだろ。攻撃できねぇじゃん」 「うん…ごめん」 「無視するんじゃねーよ!!」 「正面からでは駄目ですね。かく乱でいきましょう」 「よし、オッケー」 レベルの差を見せ付けられてもまだ、士気は下がっていなかった。
「…悪いな、俺のせいでよ」 自分のせいで皆を巻き込んだ、とジュードは反省する。 「私にも責任はあります」 つくづく自分は女王に向いていないな、と女王は自嘲する。 「それより今は助ける方が先だと思う」 妖精をいじめる人間は許せない、とフィリアは憤る。 「そうだぜ、皆で一緒に帰ろう」 この手でフォルテを助けるんだ、とソールは誓う。 「くく…作戦は決まったかね?」 その問いかけによって、再び戦いの火蓋が切って落とされる事になる。
今回はここまで〜 長すぎ!!というツッコミをお待ちしておりますw >>タカハシさん 投下まってますよ〜 >>◆u9VgpDS6fgさん ビアンカたんハァハァ やられました…思わず上目遣いでお願いされるのを妄想w
暇つぶし氏乙です!
>>タカハシさん
まとめどうもです!
>>429 ありがとうです!
さて、大丈夫だとは思いますが一応触れておいた方がいいのかな?
今回の騒動がどこまで本当なのか自分には分かりませんが、万が一の場合は避難所&まとめサイトがメインという事でいいんですよね?
>>430 突然の閉鎖騒動ですね。
毎年恒例みたいですが、相変わらず本当のことがわからないw
万が一の場合は、暇潰しさんの言うように避難所&まとめサイトへ行くしかないですね。
本スレをしたらばあたりに作ればよさそうですが、2chとは違い管理人が必要なんでしたっけ。
どちらにせよまだわからないので、「避難所&まとめサイト」という事になるでしょうね。
>>431 毎年恒例なんですかー知らなかった…
ちょっと焦って書き込んでしまいましたorz
しかし改めて避難所やまとめサイトがある事のありがたさを実感しましたよ
感謝感謝
>>432 恒例、とはいっても今回のはちょっと違うようですね。
ニュースサイトにも扱われているそうですし。
どうなっちゃうんでしょうね、ほんとに。
もし無くなったら… さみしくなるなぁ(´・ω・`)
保守
タカハシ、楽しみにしてるよ〜
結局閉鎖は大丈夫臭いね よかったよかった
投下待ち保守
保守
人いないね…
ちょ…… レッドマン大丈夫か……?
まだまだ先、所用で忙しく、 当分書くことができません。 まとめも更新する余力がないので、 過去の作品を読み返したりして隙間をお埋めくださいw
442 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/01/22(月) 15:46:28 ID:0S7/+Hmb0
>>440 レッドマンはどうやら大きな事故に巻き込まれて書き込めなかったらしい。
本人が避難所で報告していたぞ。
>>441 乙です。焦らずに頑張ってください!
hosu
>>404 ありがとうございます
結婚イベントは今から頭を悩ませていますが
まずは目の前のイベントをひとつひとつ丁寧に書いていこうと思います
ビアンカを如何にかわいく書くかがレヌール編の課題です
>>405 ありがとうございます
ゲレゲレたんを如何にかわいく(略)
てかまだ名前決めてないや
>>暇潰しさん
乙です
ありがとうございます
やっぱ戦闘の緊迫感が凄いですね、羨ましい・・・
クライマックスすっごい楽しみです
てかクルエントきもっ!きもっ!(とりあえず二回言った)
>>タカハシさん
まとめ乙です
一人でまとめ作業はやっぱり大変だと思うので
無理せず適度に頑張ってください
余裕が出来るまで待ってますよー
>>それでは402続きです
『サン。サン、起きて』 目を開けると暗闇に 輝くようなブロンドと白い肌が浮き上がっていた。 一瞬ぎょっとして体をこわばらせた俺に、ビアンカは怒ったように 『やだ、サンってば寝ぼけてるの?お化け退治に行く約束よ!』 言いながら強引に俺をベッドから引きずり出す。 よろよろと起きだすと、ビアンカは もう、しゃきっとしてよ、と俺の背を叩いた。 隣のベッドでは相変わらずパパスがいびきを掻いている。 まだ眠りから覚め切れないでいる頭を軽く振って、 俺はやっと背を伸ばしてビアンカの隣に立った。 部屋の中に据え付けられているタンスを開けてみると 中には見覚えのある小さな種と、 根元に装飾のついた羽根飾りのようなものが見つかった。 これはキメラの翼に間違いないだろう。 道具袋にしまい込み、音を立てないよう慎重に扉を開いて 俺とビアンカは廊下へと滑り出た。 予想以上に大きな音を立てて軋む階段や扉に ヒヤヒヤしながらそろそろと忍び足で正面へ向かい やっとの思いで宿屋を抜け出す。 神経を尖らせてゆっくりと扉を閉めると 背後でビアンカが大きく息を吐いた。 『ああ、緊張した!こっそり抜け出すなんて初めてだわ!ワクワクしちゃう』 けらけら笑いながら言い、俺の顔を見る。
青白く明るい月がその笑顔を照らしていた。 作り物のように滑らかな肌と糸のような細い髪の毛が光を反射して 神秘的なまでに美しく輝いている。 思わずドキッとした。 とかならラブストーリーとしては正解なのかもしれないけれど、 無邪気に紅潮した頬は子供のそれそのもので 子守、なんて言葉が俺の脳裏を過った。 (早く大人になってくれ) 町を出る前にビアンカの装備を確認する。 薄いワンピースの上に羽織った厚手のケープに 小さな果物ナイフと薄い木製の鍋のふた。 『キッチンから持ってきちゃった』とビアンカが言うとおりに、 それはとても装備とは呼べない品々だった。 幾ら弱いモンスター相手とはいえ この装備ではやはり不安がある。 手持ちの小銭を確認するが、現段階では ビアンカの装備を買い揃えるだけの金は、勿論持っていなかった。 仕方なくビアンカに小銭稼ぎを提案するが 『そんなことしてたら夜が明けちゃうわよ』 と一蹴される。 モンスターの危険さとビアンカの身が心配なことを説明し、 何とか理解を求めたが駄目だった。 大きな不安を抱えたまま、急かされるように俺は夜の町を出た。
世界はまさに表情を変えていた。 昼間は気持ち良いほどに青々と茂っていた木々が 夜の青さの中更に暗く影を落とし、 遠くには緩やかな低い山の陰が 夜空をも飲み込みそうに深く黒く浮かび上がっている。 そこらじゅうにモンスターの気配が立ち込め ビアンカも流石に雰囲気に圧されたのか 押し黙ったまま俺の袖を掴んで歩を進める。 やっぱりレベルを上げていった方がいいと言おうと、 振り向いたところでビアンカがほう、と大きく息を吐いた。 『凄いわ。夜に外に出るなんて、本当に初めてだわ。ドキドキしちゃう』 キラキラと瞳を輝かせて、また辺りを見回す。 この子には不安とか緊張とか言うものがないんだろうか。 俺はがっかりしてまた前を向いた。 アルカパ周辺での初めてのモンスターは 二匹のでかい緑の芋虫だった。 なんだっけこいつ。グリーンワーム? モンスターの名前っていまいち覚えてない。 戦闘態勢に入ると、ビアンカがいの一番に駆け出した。 手に持ったナイフで『えいっ』と掛け声も高らかに切りつけるが 芋虫は体を竦めただけで傷ひとつつかない。 『何このナイフ。切れ味が悪いわ』 怒ったようにナイフを振り回すビアンカに 芋虫が体当たりを食らわす。 大きな悲鳴を上げて、ビアンカが地面に転がった。
『いった〜い!何すんのよこの芋虫!あったまきちゃう!』 口だけは達者だなあと、ビアンカを横目に俺も武器を叩きつけるが、 芋虫は一瞬ごろんと丸まるとすぐに体勢を立て直す。 うーん、やっぱり新しい武器が必要かも。面倒くせえなあ。 芋虫の体当たりを盾で防ぎながら俺は どうやってビアンカを説得しようか思案していた。 実際のゲームじゃこんなこと考える必要もないのに。 あーマジ面倒臭え。 何度か攻防のやり取りがあり、芋虫は最終的に俺が仕留めた。 というかビアンカは役に立たなかった。 呪文でも覚えれば違うかもしれないけど 結局呪文ばっか使われてもすぐMP切れで役立たずに戻るのか。 あー、いばらの鞭が欲しい。くそ。 自分の攻撃が効かなかったことが余程不満なのか ビアンカはふてくされるようにその場に座り込んでいた。 手を差し出すと少し間をおいてその手を握る。 『つまんないわ。あたしってそんなに弱いのかしら』 頬を膨らませるビアンカに、俺は再び説得を開始した。 経験をつめば強くなれること。 武器を変えれば攻撃も効くようになること。 そのためにまず町の周囲で モンスターを狩っていれば一石二鳥なこと。 ビアンカは不承不承頷くと、 つまんないつまんないと言いながら俺の前に立って歩き出した。
町の周りを囲む森をぐるぐると歩きながら さっきの芋虫や、角ウサギ (ビアンカは攻撃するのを嫌がったが、 角で突かれたら怒ったようで執拗に叩いていた)、 ドラキーやおおきづちなんかを次々に倒していく。 何匹目かの芋虫を倒したところで 唐突にビアンカが『あっ!』と声を上げた。 『凄いわ。あたしにも呪文の才能があったみたい!』 ビアンカの言葉に思わずえ?と返す。 『パパとママは呪文を使えないから、 あたしもきっと無理だって思ってたのよ』 にこにこと嬉しそうに話すビアンカが 俺の当惑した顔を見てきょとんと瞳を丸くする。 『どうしたの?まさか呪文もまだ知らないの?』 首を振って一応の否定を示しながら 俺はビアンカにおめでとう、と言った。 この世界では呪文なんて、当たり前の概念なんだ。 それを改めて感じて、俺は少しだけ寂しくなった。 少女の感動は、俺の感じたそれとはまるで違うものだ。 俺の世界にはこんなものないのに。 どうかしてる。こんなことで。感傷的に過ぎる。 ビアンカは俺の言葉を聞くと安心したように、 楽しそうに何度かその言葉を呟いていた。
ビアンカもレベルが上がっている。 こういうところはゲーム通りで良かった。 子供の体力のままで冒険を進めるなんて、はっきり言って無理だ。 更に暫く戦闘を重ねていると、ビアンカが唐突に立ち止まり 『ねえ、もう疲れちゃった』 とだるそうに言った。 自分とビアンカの体力と、膨らんだゴールド袋を確認して 俺はじゃあ一度町に戻ろう、と言った。 レヌール城に行く、と言い張られるのを覚悟していたが ビアンカは意外にもあっさりと頷いた。 商店を覗きたかったが、町に戻ると ビアンカは真っ直ぐに宿へと戻った。 しきりに瞼をこすりながら『今日はもう休みましょう』と、 強引に俺を階段へ押しやると自分の寝室へ引っ込んで行った。 俺も仕方なく部屋へ戻り いびきを掻くパパスの隣のベッドへ体を滑り込ます。 疲れていたのか、今度はすぐに睡魔がやってきて 俺は暗闇に目を閉じた。
今回ここまでです ありがとうございます それでは、また
イイヨイイヨ〜(・∀・)
ステータスが欲しい所だが、今更何をって話かなぁ? ビアンカイイ!
454 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/01/25(木) 21:47:29 ID:FRcaeHqX0
____ __ / u \ /´ ヽ 。o O ( たのむッ!イケメンになっててくれぇぇー!) / \ /\ l′ l / し (>) (<)\ | | | ∪ (__人__) J | ヽ / \ u `⌒´ / r`┬r' ノ \ (_) ̄ヽ /´ ヽ( ̄ ̄`〈 | l (´ ̄` ) ____ __ / u \ /´ ヽ チラッ / \ ─\ l′ l / し (>) (●)\ | | | ∪ (__人__) J | ヽ / \ u `⌒´ / r`┬r' ノ \ (_) ̄ヽ /´ ヽ( ̄ ̄`〈 | l (´ ̄` )
非常に乙。
>>449 の感傷がなんか染みた。気持ちがほろりと来る。
ゲームなのに言動が「ゲームじゃない」のがいいな。
なんかどんどん先が楽しみになるな。少しずつでいいので頑張って。
>>451 待ってました!
ビアンカ肝が据わってて頼もしいwww
LVうpして装備揃えればいい戦力になりそうだ
GJ
>>451 乙です
なんか俺も書いてみたくなったな
ほしゅ
保守
保守
星飛雄馬
462 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/01/31(水) 20:23:07 ID:ly2MqLBA0
/ ̄ ̄\ / ̄ ̄ ̄\ γ::::::::::::::::母::::::::::::ヽ、 /ノ( _ノ \ / ─ ─ \ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ | ⌒(●)-(●)/ <○> <○>; \ γ:::::::::人::::人::人::::人::::::::ヽ | (__人__)| (__人__) ; | (:::::::::/ \ / \:::::::) | ` ⌒´ノ \ ` ⌒´ / \:/ (●) (●) \ノ | } ( r | | (__人__) | ヽ } ̄ ̄ ヽ○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\ ` ⌒´ / ヽ ノ \今日の特集はニート問題です・・・/ / / く \ |__| _ ..._.. , ___ \ (__ノ | 父 \ \ \ / |\_____\ | |ヽ、二⌒)、^ | |ヽ、 ノ| 今本当にこんな状態、死ねはねる
起きなさい、私のかわいいアルスや。」 なんだぁ?もう朝か?誰だよアルスって。ドラクエですか? 「おはよう、アルス。もう朝ですよ。今日はとても大切な日。アルスが王様に旅立ちの許しを頂く日だったでしょ。 この日のために、お前を勇敢な男の子に育て上げたつもりです」 「つーか誰だよお前ぇぇ!!」 「さあ、母さんについていらっしゃい」 シカトですか。つうか何この状況。わけわからねんだけど。確かに昨日は俺の部屋で寝たよな。 何この服。民族衣装ですか?マントつけながら寝てたの?俺。 「目が覚めたようじゃな。」 そこには一匹のハエがいた。しかも杖持って服着てるよ。いよいよおかしくなりそうだ俺。 「これ夢ですか?つーかお前何?ハエ仙人?えらくマイナーなの出てきたなまた。 俺じゃなかったら多分忘れられてんぞお前。」 「うるせぇこの駄目人間が!!黙って聞け!!もう気づいてると思うがこれはドラクエ3じゃ。 夢ではないぞ。ちなみにお前ゾーマ倒すまで帰れないから。以上。」 「なんだそりゃぁぁぁ!!理不尽すぎてなんて言っていいかわかんねぇよこのウンコ大好き ジジイ!つーかお前出てくるの6じゃねぇか!!3関係ねぇだろ!!」 「細かいことは気にするなチンカス野郎。実は神様があまりのお前のダメ人間っぷりに 嘆いて試練を与えたんじゃ。この冒険を通じて成長するようにの。まぁせいぜい がんばれや。わし帰ってエロ本読むから。じゃ。」 「その前にてめぇを殺す!死ねや!」 俺の渾身の右ストレートは空しく空を切った。そこのはもうあのくそジジイの姿はなかった。 神様、僕が何かしましたか?ちゃんと仕事してますよ俺。ニートじゃないよ。 前々から思ってたけどお前俺の事嫌いだろ。ふざけんなこの糞ゴットがぁぁぁ!!
「ここからまっすぐ行くと、アリアハンのお城です。王様に、ちゃんとあいさつするのですよ。……さあ、いってらっしゃい」 この腐れババァ。俺が何言ってもシカトじゃねぇか。若年性痴呆症かよ。 はいはい。王様にあいさつね、行けばいいんでしょ行けば。 まぁなんつーかすごいねこの風景。なにがすごいってそりゃあらくれとかいう変体もそうなんだけど 中世ヨーロッパ風っていうの?これ。しばらく慣れそうもないわ。 臭い、臭いわ。城って臭い。マジで。帰りてぇ。なにこのカビ臭い匂い。 「よく来た! 勇敢なるオルテガの息子、アルスよ!」 「あ、どうも。」 「すでに母から聞いておろう(ry」 バラモスですか。あいつハラワタ食うんですよ王様。と言えるはずもなく黙って王様の話を聞いていた。 つーか死んだらちゃんと生き返るんだろうなこれ。 やっと終わったか。どれルイーダ行くか。五十Gと旅人の服一枚、こん棒二本、ひのきの棒一本を持って 俺はルイーダんちに向かった。もちろんはがねのつるぎよこせと王様に言えるわけはなかった。 「あの仲間3人欲しいんすけど。」 「あ?てめぇに選択の余地はねぇよ。この3人やっからとっとと私の前から消えろや、糞が。 死んだ魚みてぇな目しやがって。」 あれ?なんかキャラおかしくない?そうして紹介された3人は 戦士 26歳独身 僧侶 14歳 魔法使い 19歳 男 男 女 性格 のうきん 性格 ちゅうにびょう 性格 ツンデレ 俺は頭が痛くなった。
期待
>>452 (・∀・)d!!
>>453 ありがとうございます!
ステータスは使い方が難しいっス
一応推奨LV+1〜2くらいで考えてます
>>455 感謝です
暗くなるのはさけたいんですがどうも性格が根暗なようでw
でもそんな風に感じてくれて嬉しいです
ゲームそのままにし過ぎると上手く書けなくなってしまうので
程よくドラクエを残しつつ頑張ります!
>>456 感謝です
ビアンカにもそろそろ頑張ってもらわないとなのでw
>>457 書きましょうや!
>>464 ツンデレに期待大です
>>450 続きです
微妙にキリが悪かったのでちょっとだけ
隣のベッドで咳き込む声に、俺は目を覚ました。 パパスが苦しそうに体を折り、 咳をするたびに筋肉が苦しそうに歪む。 傍らにおかみが立って心配そうにそれを覗き込んでいる。 『パパス、その体で戻るのは無理だろう?治るまでここに居なさいよ』 心配そうに盥からタオルを絞ると、汗の浮いたパパスの額を拭う。 眉を寄せたまま『すまない』と言うと パパスはおかみに促されて身を横たえた。 もう一度固く絞ったタオルを、おかみがパパスの額に乗せる。 『あら、サンちゃん。起こしちゃったかね』 俺に気付きおかみがパパスから視線を外す。 パパスは顔だけで俺を見ると、極まり悪そうに微笑んだ。 『どうやらダンカンの風邪を貰ってしまったらしい。情けないな』 大丈夫?と声を掛けるとパパスはまだ苦しそうに頷くと 『明日には治る』と言い切った。おかみが苦笑いを零す。 『幸い薬は余計にあるしね。 長引くことはないと思うけど、明日はどうかね』 食事を用意するよ、と部屋を出るおかみについて俺も部屋を出た。 背中からパパスが『この部屋には戻るなよ』とかすれた声で言う。 部屋も用意しないとね、とおかみがまた笑った。
簡単な朝食をいただきロビーに出ると 大きなソファの上でビアンカが欠伸をしていた。 俺に気付き慌てて口を閉じる。 『おはよう、サン。外に行くの?』 正面扉へ向かう俺にビアンカが声を掛ける。頷くと、 『元気なのね。あたし眠くってたまらないわ』 もういちど、今度は口元を手で覆いながら大きな欠伸をする。 すぐに戻る旨を伝えると 戻ったら一緒にお昼寝しましょ、とビアンカが眠そうに手を振った。 町は今日も賑やかだった。町の樽を調べながら (やっと落ち着いて調べられたけど収穫はなかった。何てこった) 商店のほうへ向かう。
武器屋、防具屋の品揃えをそれぞれ覗き込んで 財布の中身をチェックする。 幸いある程度の装備は整えられそうだった。 ビアンカを連れて来れば良かったと少し後悔した。 確か盾は装備できた気がするんだけど。 うろ覚えだ。いばらの鞭は間違いないんだけどな。 唸りながら真剣にカウンターを覗き込む俺の姿が可笑しかったのか 武器屋の若い店主は俺を見て笑みを零した。 とりあえず使わなくなった木の棒と古い方の服を売り飛ばし いばらの鞭と、防具屋に回ってうろこの盾を購入する。 迷った末に、浮いたお金で木の帽子も買っておいた。 ゴールド袋には残り数枚のコイン。薬草も買えない。 広場を覗くと今日も、子供たちは飽きもせず 猫だか虎だかを追い掛け回していた。
宿に戻ってビアンカと寝室に向かう。 新しく用意された部屋は、 前の部屋よりは手狭だったがよく整えられていた。 並んでひとつのベッドに横になると すぐにビアンカは寝息を立て始めた。 向かい合うように寝ていると ビアンカの顔立ちがすぐ傍に見て取れる。 自分もこんな頃があったんだろうかと、 俺は少しだけ自分の世界に、自分の両親に思いを馳せた。 これは夢なんだろうか。 クリアしたら覚めるんだろうか。 港からの道程で、サンタローズの洞窟で、そして昨夜の戦闘で、 魔物から受けた痛みは哀しいほどに現実だった。 もしかして俺はこの世界に絡め取られたまま、二度と現実には戻れずに。 恐ろしい考えを振り払って、俺は目を閉じ 意識的に暗闇に思考を投げ出した。
今回ここまでで 短いですが・・・ ありがとうございます
おつつー ビアンカと昼寝……(*´д`) いかん…俺は汚れてしまったようだ
(*´Д`)一つのベッドで
>宿に戻ってビアンカと寝室に向かう。 (中略) >並んでひとつのベッドに横になる おっきした(*´Д`)
乙です ビアンカとの昼寝に(*´Д`)しつつ、 >自分の両親に思いを馳せた。 のくだりに。:゚・(つД`)・゚:。
hosh
477 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/02/04(日) 20:26:51 ID:GmbXIDi40
保守
hosyu
hohhos
hoooushuuuwwryyyyyyy
文才があると見たので ◆u9VgpDS6fg に期待してるよ。 >>『パパとママは呪文を使えないから、 あたしもきっと無理だって思ってたのよ』 に:゚・(つД`)・゚:。 この頃は本当の父母だと知らないんだよな。 ・・・で、フローラもなんだが天空人の子孫なんだよな・・・、確か。
>>481 ビアフロって姉妹だったけ?
それって小説だけの話だったけ?
484 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/02/08(木) 11:06:19 ID:zRXKHmWQ0
人を倒しても経験値って得られるのかな? 邪悪主人公を思いついたんだが。
カンダタ・マルチェロ・呪われしゼシカ等々 倒したら経験値がもらえる人はいっぱいおりますがな。
敵になると「匹」扱いなのが切ないよな。…関係ないけど。
DQ4なんか「ミスターハン 1ひき」だからな 武闘大会 「アリーナひめ 1ひき」
個人的な事情により、避難所の鯖を引っ越すこととなりました ブクマ・お気に入りのURLの変更をお願いしますOTL tp://coronatus.sakura.ne.jp/DQyadoya/bbs.cgi
ほす
保守
>>488 取り急ぎ、避難所のURLだけを変更しておきました。
まとめのほうは今しばらく、お待ちください。
あれ・・・・・・ 俺は・・・・・・・・・・・・ 何があったんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・? すごく眠い・・・・・・・・・・・・ このまま寝てしまおう・・・・・・楽になるやろ・・・・・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−目を覚ませ!! マタニゲルノカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・? ほっとけよ・・・・・・・・・俺はもう・・・・・・・・・・
もょ「タケ!!しっかりしろ!!」 タケ「もょ?お、俺は・・・・・・・・?」 もょ「まったく。しんだようにねむっていたんだからしんぱいしたんだぞ!」 タケ「そ、そうだったのか・・・・・・どれぐらい寝ていたんや?」 もょ「ふつかぐらいねむっていたな。とっくにローレシアについたぞ。ムーンたちはさきにいった。」 タケ「そ、そうなんや。さぁ行こうか・・・・」 もょ「タケ、ようすがおかしんだがだいじょうぶか?」 タケ「こんな時もあるよ。心配せんでええ。大した事が無いからさ。早く行こうや。」 俺達はローレシアに入っていった。 ローレシアに入ってから人々がもょもとの周りに集まってきた。 子供や女性達には暖かく歓迎されたんだが兵士達は仕事だから渋々王子の帰りを歓迎している・・・・って感じだった。 ムーン「へぇ、もょもとって子供や女性には人気があるんだわ。」 もょ「そ、そうか・・・・?」 サマル「しかしこの城はサマルトリアと違い、兵士も体格が良い人が多いね。」 もょ「ああ・・・・・・」 ゼシカ「どうしたのもょもと?どうかしたの?」 もょ「ちょっとふなよいしただけだ・・・・・・」 もょもとの様子がおかしすぎる。
タケ「(どないしたんや?生きて故郷に帰って来れたにも拘らず、暗い感じやな。)」 もょ「(タケ、おまえにまかせていいか?)」 タケ「(なーに弱気になってるねん。って・・・・・・・・・・・?)」 その時のもょもとは別の恐怖で怯えていた様だった。何があったんだろうか? タケ「(ええよ。但し、俺の好きなようにやらせてもらう。)」 もょ「(な、なにいっているんだよ。)」 タケ「(お前に昔何があったのかしらへんけどな、今のもょは何か物事から逃げたがっているわ。)」 もょ「(うっ・・・・・・・・・・・・・・・)」 タケ「(悪いようにするつもりはあらへん。けど、黙って今から起きる物事を静観してたらええ。)」 タケ「とっ言いたい所だが、実はククール達が見当たらないから不安なんだ。」 ムーン「それで様子がおかしかったのね。とりあえず私は王様に生還報告をしないといけないのだわ。 ついでククール達の事も聞きましょ。」 リア「もょもとさんのお父さんってどんな人かなぁ?楽しみ☆」 タケ「会ってみてはわかるよ。じゃあ行こうか。」 王の座についた。 ローレシア王(もょもとの父親)は威圧感が感じられる人物だった。 サマルの親父の様な道楽者ではなく抜け目がなさそうな感じがするのであった。
ムーン「始めまして。おじ様。ムーンブルグ王国の皇女、ムーンです。」 もょ父「そなたがムーンか。とにかく無事で何よりだ。お父上が無くなった事がは辛い事だと思うが、 時間をかけて悲しみを乗り越えなければならぬ。頑張るが良い。」 ムーン「は、はい・・・・・・・・・・・」 ムーンが緊張感を漂させた表情をしている。案の定、サマルとリアは表情がこばわっている。 もょ父「そちらの者は?」 王様がゼシカに話しかけた。 ゼシカ「わ、私はゼシカと言います。実はこの国で旅仲間と合流する予定だったので、 もょもと王子に頼み込みさせていただいて同行させていただきました。」 もょ父「ほう、もしかしたら、先程拘束した3人組の男の事かも知れぬな。」 タケ「なんだって!?」 もょ父「貴様はだまっとれ!!」 王様がいきなり吼えた。俺もびっくりしたのだが、それ以上にもょもとから恐怖感が感じられた。 ――――――――――――――――――そういう事か。なるほどね。 ゼシカ「ど、どういう事なんです?」 もょ父「町の者から怪しい者達がいるって通報があってな。 どこから来たのか分からないという事なのでとりあえず拘束したのだ。」 ゼシカ「そんな・・・・・・・・」 タケ「安心しろ、ゼシカ。俺がすぐに釈放させる。」
もょ父「貴様なにほざいている・・・・・!?」 タケ「父上・・・・・いや、ここはあえてローレシア王と呼ばせてもらう。 王が拘束したもの達の身分に関しては私が保証する。」 もょ父「・・・・・・・・・それで?」 タケ「その者達に私は命を助けられている。実際問題、ここにいるサマル、リア、ムーンも同様だ。 責任は王子である私が持つ。その者達の釈放を認めていただけないだろうか?」 もょ父「貴様いつからそんな生意気な口が利けるようになった?この愚息がぁ!!」 タケ「ハハハ!!逆にわらかせてくれるぜ。諸外国は王は、我が国の王の事を馬鹿にするだろうな。」 もょ父「な、なんだと!?」 タケ「『視野の狭く、弱者を受け入れる度量もない裸の王様』ってな。…………こりゃ傑作だ!」 もょ父「貴様は許さん!!牢にでもぶち込んでやるわ!」 ムーン「王様!!やめてください!!」 タケ「いいよ、ムーン。俺が牢に入ったらククール達は釈放。これでいいじゃないか。」 ムーン「で、でも・・・・・・・」 タケ「俺は喜んで入るぜ。命の恩人に対して敬意を表し、借りを返す。それだけだ。」 もょ父「ならば貴様の望みどおり牢に入れてくれるわ!!ひったてい!!」 俺は牢屋へ豪腕の兵士達によってつれて行かれた。 こんなはずじゃなかったんだけどなぁ・・・・・・・・・・・・・・・ どうやら俺は独房に入れられたみたいだ。あれこれ考えても仕方がない。とりあえず時間を過ぎるのを待つか。
しばらく時間が過ぎるともょもとが離しかけてきた。 もょ「タ、タケ・・・・・・・・」 タケ「どしたん?」 もょ「お、おれたちどうなるんだろ・・・・?」 タケ「俺の予測どおりになれば明日でも釈放になるやろ。」 もょ「な、なんでそんなことがわかるんだ?」 タケ「まぁ聞いてくれよ。親っていうのは『子供を愛さない親なんていない』って言う事なんや。」 もょ「しかし・・・・・・・・おれは・・・・・」 タケ「もょの場合お母さんが早く亡くなっている訳やんか。そしたら父親としたら立派に育って欲しいって事やねん。」 もょ「う、うん・・・・・・」 タケ「後悔していると思うで。親戚や友人の前で無様な行動を起こしたんだからさ。」 もょ「け、けど・・・だ、だいじょうぶなのかなぁ・・・・・」 タケ「大丈夫。多分親父はもょにしっかりして欲しいから厳しい態度とっているんよ。」 もょ「そ、そうなのか・・・・・・?」 タケ「ああ。自分の息子が情けなかったら親として不甲斐無いんよ。 だから立ち向かう勇気を持って欲しいと思っているわ。」 もょ「ゆうき・・・・・・・・?」 タケ「そやで。逃げるのは簡単やねん。 けど逃げ続ければ自分に対する負い目が増えるだけなんよ。それを俺は知っている。」
もょ「もしかしてタケも・・・・・・・?」 タケ「ご想像の通り、俺もガキの頃は厳しい父親のもとで育ってな。嫌の事あったら逃げていたんだ。 ある時俺と俺の親父が意見がぶつかってな、対立したんや。」 もょ「それで?」 タケ「普段だったら親父の言いなりになっていいただろ。その時はそう言う訳にはいかなかった。 自分自身にとって大切の物を失ってしまう状況だった。 結果的には自分の意思を通し、失敗したんだが後悔はしなかったわ。逆に爽快感があった。」 もょ「そ、そうなのか。いまだからいえるが、 タケがはむかってくれたことによってなんかすがすがしいきぶんだな。」 タケ「そっか。それなら良かった。俺達は意思を持った人間なんや。 だからこそ、自分の意思や誇りを他人に委ねる訳にはいかへんって事や。 これを理解するのに4年はかかったよ。」 もょ「よ、よねんも!?おまえってばかだなぁ。」 タケ「うっさいわ!単純な問いかけほど答えを出すのは難しいんやで。人によって答えは皆違うからな。」 もょ「なるほど、じゃあタケのいまのいけんはタケなりのことなのか?」 タケ「勿論。他人にこの俺自身の答えを譲歩つもりはない。後はもょ自身が決めることや。」 自分の体験談をもょもとに伝えた。 もょもとは辛くなった時、一人で怯え、苦しみ、悲しみながら生きてきたんだろうな・・・・
隣の独房から声が聞こえてくる・・・・・・・・・・ *「隣の方、どうされたのです?大丈夫でしょうか?」 なんだか心地よい響きだ・・・・・・・けど逆にそれが恐ろしい。 タケ「別に。話しかけてくんな。そんな気分じゃないんで。」 *「まぁいいでしょう・・・・・・それにしても世の中おかしいと思いませんか?」 タケ「ん?」 *「悪人がのうのうと暮らしており、力も無き善人は奴隷のようにして生きなければならない。」 タケ「冗談はよしてくれ。牢屋に入っているあんたが言っても説得力は無いね。」 *「まぁいいでしょう・・・・・貴方と私はまた会う運命でしょう・・・・・・ふふふ。」 気持ちわりぃ。電波ゆんゆんの奴って何するかは分からん。ほっておこう。
翌朝、俺の予測通り釈放された。 牢屋に出たとたん最初にリアとククールが駆け寄ってくる。 リア「もょもとさん!」 タケ「おう、ただいま。シャバの空気はうまいぜ。」 ククール「あんたにはでかい借りが出来てしまったな。」 タケ「気にするな。逆に無様な真似してしまって申し訳ない。」 ヤンガス「もょもとがしっかりしているにも拘らずここの王様は厳しいでがす。」 タケ「身内の責任は俺の責任でもあるんだからな。」 トロデ「しかしもょもとがここの王子だとはの〜以外じゃった。立派な青年じゃわい。」 タケ「そんな、人生経験が浅いガキにそんな事言わないでくださいよ。」 ムーン「無事に済んで終わったわね。」 タケ「ああ……ち、…………じゃなかった親父はどうしてる?」 サマル「伝言を預かっているんだ。『しばらく戻ってくんな。きっちりハーゴンを倒して、必ず生きて帰って来い』ってさ。」 タケ「そっか。」 ゼシカ「なーに後味が悪そうな表情しているのよ。結果的には貴方の主張通りになったんだけど。 王様を説得するのに相当時間がかかったんだから。」 タケ「どういうことだ?」 ゼシカ「サマル君やムーン、リアが必死に貴方のことを庇ってくれていたのよ。」 タケ「でかい借りが出来てしまったな。」 ムーン「いいのいいの。もょもとに助けてもらってばっかりじゃ良い気しないからね。」 サマル「僕ももょもとがいなかったら大変だったし。今後、君がいたら心強いよ。」 リア「それにね、もょもとさんのお父さんって厳しいんだけど優しいそうな感じがしたの。 だからもょもとさんも優しいんだね!」
タケ「まぁ、ありがとう・・・・みんな・・・・・・」 ククール「おいおい。何うろたえているんだ。もょもと?」 ヤンガス「げーすげすげすげす。もょもとは照れているんでがすよ。」 タケ「う、うるさいなあ。もー(///)」 ムーン「これからどうしようかしら?」」 トロデ「そうじゃ!この機会だから皆で食事をしようかの。ワシらが異世界の人間とは言え、 食事ぐらいは一緒に楽しむのも良いもんじゃろ!」 ゼシカ「それはいいわね。」 ヤンガス「おっさんも流石は一国の王様でがす。」 ククール「合流記念って言う事でいう事だな。もょもと達はどうだ?」 タケ「異論は無いぞ。俺達全員参加させてもらう。」 リア「やったぁ!早く食堂に行ってみんなで食べようよ!」 リアの掛け声で食堂へ向かいみんなで食事をした。 飲んで騒いで色々話し合い、楽しい時間を過した。 そして俺達はラダトームへ向かうために、そしてククール達はエイトを探すために別れて旅立つことにした。 もょもと&タケ Lv.16 HP:112/112 MP: 2/ 2 E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 特技 共通技:チェンジ もょもと専用:隼斬り・魔人斬り タケ専用 :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
おお!! レッドマンが復活したか。 最後まで頑張れ。
レッドマンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
復活ッ!レッドマン復活ッッッッ! ( ;∀;)オカエリ
レッドマンさん、ファイトだお
べ、別にあんたの作品の続きなんか読みたくないんだからね! しかし書く以上はしっかりしなさいよ!
俺も書いてみた。 舞台はDQ6です。
「今日はもう寝るかな……」 俺は、あまり意味の無い独り言を呟きながらパソコンの電源を切って、 そのまま、歯も磨かずにベッドにダイブした。 俺はニートだ。 格好良く言えばNEET……いや、大して変わらんな。 まだ17歳だってのに学校にも行かないで、毎日家でダラダラと過ごしている。 部屋から出るのは、ご飯と風呂の時だけ。 外に出るのは、コンビニにジャンプを買いに行くときだけ。 金は親から貰ってる。 働くつもりなんてさらさら無いし、これからもそれは変わらないと思う。 だって汗流して頑張ったって、少しも面白くないし。 (あーあ、もっと面白い世界に生まれたかったなあ) そんな戯言を考えながら、俺はいつの間にか深い眠りについてしまった。
深い眠りから覚めて、俺は大きく伸びをする。 今日もまた、退屈な一日が始まるのか……そう思うと憂鬱だ。 「おはようございます、旅のお方」 「あー、おはよ……ん?」 誰だお前。 目の前のおっさんにそう言おうとして、初めて異変に気が付いた。 「どこだここ?」 俺はキョロキョロと周囲を見る。 まるで洞窟の中みたいに、岩の壁に囲まれている小さな小部屋。 その中に簡素なベッドが二つ置いてある。 「いやですねぇ、宿屋に決まってるじゃあないですか」 おっさんが気味良さそうに笑う。 待て待て。 俺、いつ宿屋になんかに泊まった? 昨日、確かに自分の部屋のベッドで寝たはずなんだが。 心の中でツッコミを入れながら、自分の服装を見てみる。 寝たときの上下ジャージの姿ではなく、滅多に着ないお気に入りの一張羅を着ている。 いつ着替えたっけ? これ何かのドッキリ企画か? 「どうかしましたか?」 ドッキリの看板を探していた俺に、おっさんが話しかけてくる。 「あ……何でもない、です」 とりあえず適当に返事をしておいた。 「ありがとうございました。またおこしください」 一先ず俺は現在地を確かめようと、宿屋から出た。 「えーと……どこだよここ」 外に出ても、ここが何処なんだか、どうして俺がここにいるのかさっぱりわからん。 唯一わかったのは、ここが山で、さっきの宿屋はやはり洞窟の中だったと言うことだけだった。
「夢じゃないみたいだな……」 何度か自分の顔を殴って確認した。 これは夢じゃない、現実だ。 現実だとしたら、何で俺はこんな所にいるんだ? 親がニートな俺に愛想を尽かして山に捨てたか。 ありそうで怖い。 夢遊病患者の様に、ふらふら歩いて来てしまった。 これは無いな。 「まぁ、何でもいいや。どうにかして家に帰るか」 これ以上考えても無駄そうなので、俺は山を降りて家に帰ることにした。 山を降りれば、町か村かがあるだろう。 そこで警察にでも行って、家に帰してもらおう。 そう思いながら、俺は山にあった階段を下りようとして、ピタリと足を止めた。 階段の下のほうに、変な生き物がいたからだ。 マンドラゴラがあらわれた! 続く 名前:俺 職業:ニート HP:13 MP:0 装備:お気に入りの一張羅 現在地:ライフコッド周辺・山肌の道
以上です。 拙い文章ですが、ご容赦を。
6は珍しいな 続きwktk
キタイシテルヨ(・∀・)
>>DQ6 乙。続きが楽しみだ
保守
いいかげんに捕手
ほしゆ 時間が出来たら書きたい
518 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/02/18(日) 22:19:25 ID:J7z+VPOp0
保守
あげちまったスマソ
月曜日に保守
保守
保守
>>426 の続き、投下します。
けどその前に一言。
レッドマンさん、おかえりなさい!
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 フォルテとの初めての出会いは、彼女の歌声から始まった。 友達とかくれんぼしてた時、いつもより遠く逃げ込んだ森の奥。 「〜〜♪」 不意に聞こえてきた楽しそうなメロディ。 彼女の世界に一瞬にして引き込まれてしまった。 ただそれだけで、好きだと思ってしまった。 「キャッ!」 無遠慮に近づオレに気が付くと、彼女は岩影に体を隠した。 怖がらせてしまったと瞬時に後悔したが、 どうすればいいのかも分からなかった。 「あのあの……」 恐る恐るといった感じでひょっこりと頭だけを出す彼女。 その可愛さに顔が赤くなり、心臓が跳ねた。 「歌……どうだった?」 声に出して答えられなくて、何度も必死に頷いた。 フォルテの笑顔がまぶしかった。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「さて、そちらはこの娘を取り戻そうとしているようだが、 こんな提案はどうだろうか。 この娘を返す代わりに女王様、あなたの血を頂けないだろうか。 何も私は戦いたい訳ではないのだよ」 くくっと含み笑いをしながら大げさに手振りを付けて話すクルエント。 喋り方も身体年齢に影響されてか、先程までの老人臭い話し方ではなくなっていた。 しかし負けるなどとは微塵も考えていない、その傲慢さだけは常に変わらない。 提案とは言いながらも実際は選択を迫るような言い方にもそれが見られるだろう。 無抵抗で血を差し出すか、勝てぬ無駄な戦いをするか、選択をしろと言っているのだ。 「あなた達にエルフは渡さない」 クルエントの問いに対して女王より先にフィリアが答える。 その声は簡潔で迷いがなく、決意に満ちていた。 いつものフィリアとは違って、こんなにも感情をあらわにしているのは珍しい。 予期せぬ一言に女王は言い得ぬ安心を覚える。 「その通りです。あなた達は自分の立場が分かっていないようですね。 負けるのはそちら側ですよ」 「そうだそうだ!」 ソールの元気も相まって、女王のパーティーの士気が高まる。 悪いのはどちらなのか明白だった。 だから、必ず勝てる。 「ふふふ、そうですか……では」 会話の終わりを感じたジュード達は武器を構えた。 それを見てからクルエントの側で控えていたアヴァルスも自身のダガーを握りしめる。 対してクルエントはその手に掴んでいるフォルテを目線の高さまで上げるだけだった。 見せ付けられるフォルテの体は力無く、だらりとした四肢に生は感じられない。
しかしクルエントが何故今そのような事をするのだろうか。 その行動の意味を計りかねて攻撃のタイミングを逃す。 するとクルエントは足元に転がっていた宝箱を足だけで起こしてフォルテを閉じ込め、 ゴミを捨てるかのように宝箱を背後の湖に蹴り込んだ。 宝箱は大きな水しぶきを立て、水底へと消えていく。 「フォルテー!!」 その声を合図に全員が動き始める。 ソールはフォルテを助ける為に湖へと全力で走った。 ジュードはアヴァルスに、女王はクルエントに。 それぞれソールの邪魔をされないように、進路を確保する為の動きをとる。 そしてフィリアはマヌーサで敵の攻撃を惑わそうと呪文を唱えた。 マヌーサの効果は視覚障害を引き起こし、強制的に錯覚させるというもの。 クルエントはともかく、アヴァルスは格好から攻撃呪文を使うタイプではないと判断したのだ。 ならば攻撃を封じてしまえばいい。 広範囲を狙う事の出来る武器を使ってこない限りはこちらは有利になる。 「マヌーサ!」 アヴァルスとクルエントの2人を目標に呪文を仕掛ける。 呪文発動後、ジュードはアヴァルスの右側に回りこんだが、アヴァルスはそれに反応しない。 思惑通りにいったようだ。 アヴァルスは手持ちのダガーを突き出すが、ただ空を切るだけに終わる。 きっとアヴァルスの脳内ではジュードを斬りつけようとしたのだろう。 その隙にジュードはガラ空きのわき腹へと蹴りをおみまいする。 防御もままならないアヴァルスはうめきながら土にまみれた。 「マヌーサか、やっかいだな」 女王と呪文の応酬を繰り広げているクルエントがアヴァルスが倒れている方に目を向けて、 それほどやっかいだとも思っていないような口調でつぶやく。
クルエントにはマヌーサは効いていないらしい。 呪文への耐性や、精神的な強さがある敵には補助呪文は効きにくくなる。 クルエントのレベルが相当に高い事の証明でもあろう。 そしてクルエントは女王への攻撃を怠らないまま、アヴァルスに一つの呪文をかける。 「バイキルト!」 痛みに耐えながらもアヴァルスは立ち上がり、口の右端を上げて笑う。 「へへ……すまねぇな」 ニヤリとしたまま彼はズボンに仕込んであるダガーを取り出し、今度は両手に装備する。 しかしマヌーサの効果が切れている訳ではなさそうだ。 アヴァルスは正確にジュードやフィリアの方向に体を向けてはいない。 何の呪文を掛けられたかしっかりと把握しているはずだが、諦めの表情は見られない。 しかしいくら呪文で攻撃力が上がっていたとしても、攻撃が外れるなら意味は無いのだ。 それでもなおダガーによる攻撃を仕掛けてくるアヴァルス。 ジュードやフィリアの近くを攻撃したりするが、当然ダメージは与えられない。 音を頼りに位置を探ろうとしているのか。 それともまぐれ当たりを期待しているのだろうか。 (イケる!!) これなら勝てると判断したジュードは目線だけでフィリアに合図をする。 フィリアの方も、コクリとうなずくだけで了解の意を示した。 声を発してわざわざ居場所を教えてやるまでもない。 汚名を返上しなくてはいけないジュードにとって、このチャンスを見逃す理由は無かった。 フィリアの方もなぜバイキルトなのか、という思考回路は形成されなかった。 ジュードは闇雲に攻撃してくるアヴァルスの背後を取り、背中に斬りかかる。 (もらった!!)
支援
両手の力を柄に込めて放った一撃は、刃と刃が交差する音と共に防がれてしまった。 「な…何……?」 予想していない事態にジュードは焦る。 アヴァルスは右手を肩越しに後ろに回す動きだけで防御したのだ。 前を向いたままなので見えている訳がないのに。 いや、それ以前にマヌーサが効いているはず。 (足音で気付かれたのか?) しかし攻撃の軌道までは分からないはずだ。 その疑問の答えを見つける前に、フィリアのモーニングスターによる攻撃が飛ぶ。 時間的に見れば二つの攻撃はほぼ同時だ。 しかしそれすらもアヴァルスは空いている左手で難なく無効化する。 同じくダガーでモーニングスターのチェーンを絡め取ってしまった。 「へへ……残念」 2人の攻撃を嘲笑ったアヴァルスは、背後のジュードに右足を引っ掛けて体勢を崩させる。 と同時にフィリアの手から武器を取り上げるかのように左手を力の限り引っ張った。 圧倒的な力の前にフィリアは成す術無く、手からモーニングスターをこぼしてしまう。 その目はいつもより見開かれ、驚きを隠せないようだ。 アヴァルスは引っ張る力を利用して左足を軸にその場で反時計回りに回転し、 その遠心力を右足に乗せて、先のお返しとばかりに倒れかけのジュードを蹴り飛ばした。 「がっ……!!」 攻撃力の上がった蹴りの衝撃で、ジュードは面白いように吹き飛んでいった。 そしてちょうど一回転するところで背中に回していた右腕を伸ばして、 野球のフォームで球を投げるようにダガーをフィリアに投げつける。
引っ張られて前のめりになっていたフィリアは着地を考えずに身を投げ出して ダガーを避けるが、それを見越したように二本目のダガーがフィリアを襲った。 「……!!」 フィリアは唯一の防御手段である腕を犠牲にして頭をかばう。 装備している服では守備力が足りずに、ダガーは腕を貫通してしまった。 (抜いて、回復呪文……) 顔をしかめながらも痛みに負けずに脳がはじき出した対処方法に従おうとするが、 ダガーの柄に手を掛けようとしたところで力が入らなくなり、フィリアは地面に突っ伏した。 フィリアの血が土を濡らしていく。 「へへへ……こりゃあ思ったよりも上手くいったなぁ」 「げほっ……フィリア……」 動かそうとしたジュードの右手の甲にもダガーが突き刺さる。 簡単に骨を貫いたその攻撃に、ジュードは剣を落としてしまう。 それは痛みからだったが、ほんの数秒で腕の感覚が無くなってしまった。 「アサシンダガーの味はどうだ?」 余裕の足取りで歩きながら語りかけるアヴァルス。 惑わされていた先程とは違い、進行方向は確実にジュードへと向けられていた。 「マヌーサ…効いてなかったのか」 「いやいや、今でもニイさんの本当の姿は見えてないぜ?」 「じゃあ何故……」 「んまぁ、盗賊の能力を測ろうとしなかったニイさん達が悪いって事だな」 「能力……?」
空間把握能力とアイテム探索能力に長けている盗賊という職業。 彼はマヌーサをかけられた時からある呪文を使っていた。 その呪文の名はレミラーマ。 アイテムの場所を探る効果があり、その場所が光となって知覚されるという。 その光はマヌーサに惑わされずにジュードとフィリアの行動を彼に教えてくれた。 正確には2人の装備している道具がどう移動しているかを把握した、と言うべきか。 しかしジュードにはそんな事に思い至らない。 頭がボーッとして段々と視界が狭まってきた。 どこかで水の音がした気がした。 「へへへ、さぁどうする? 今ならまだ仲間に戻してやるぞ?」 「最初から仲間になんかなった覚えはないぜ……」 「そうか、残念だなぁ…」 心底悲しそうに言う。意外に役者なのだろうか。 しかしニヤニヤ顔が気持ち悪い。 「アンタみたいに迷ってるヤツに道を示すと何故か迷いがなくなるんだよなぁ。 こんな仕事でもよ。 だから引きずり込むのに調度いいんだ。分かるか? 使い捨てが出来るって事だよ」 バカなヤツに教えてやってんだ、と言わんばかりのアヴァルス。 完全に見下されてるのが分かる。 「けどアンタに声をかけたのは失敗だったかな? 下手な潜入捜査のつもりか何だか知らないけどよ。 最後で裏切られちゃあ困っちゃうよなぁ」 結局利用されるだけだったジュードを悔しさが包む。 けれど毒のおかげで、そのこぶしを握る事も出来ない。
「俺がいなきゃ里は見つからなかったんだぞ… それに…裏切ったから仕事が増えて……ふっ…! 大好きな金が貰えるじゃねーか…… やっぱバカなんだな…」 頭が痛い。 喉が渇いて、上手く喋れない。 毒なんか使うなんて卑怯だ… 色んな思いがジュードの中を駆け巡る。 勝てなかった。 守れなかった。 コイツの言う通り、迷いがあるせいなのか… やっぱり分からない。 まだ求めるべき答えの糸口さえも見つからない。 「へへ、確かにまぁそうだな。 じゃあ感謝するよ、ジュードさんよぉ!!」 アヴァルスのアサシンダガーが再び振り下ろされる。 ジュードは動かない体に怒りを覚えながら、最後を覚悟した。 しかし神はまだジュードに終わりを告げはしなかった。 刃物が刺さるより前にポカッと間抜けな音がしたのをジュードは聞いた。 続いて人の倒れる振動が伝わってきた。 「はぁはぁ……ったく、だらしねぇなぁ…」 薄れ行く意識の中で、濡れた眠りの杖と開けられた宝箱を見た。
短いですが、今日はここまで。
>>528 さん支援ありがとうございました。
ではまた。
暇潰し氏乙! 戦いぶり臨場感あるなぁ。
ホッシュッ!!
更新無くても倦まずに保守
自分が更新する側になる日を夢見て保守
みなさんお疲れさま保守
保守は3日に1回ほどでいいんじゃない? 最近この板では10日以上書き込みの無いスレでも落ちて無いし。 保守ばっかりで埋まるのもなんだし。 まあ、このスレ初?の1000を目指してみるのもアリか?(今325KB) でもやっぱり保守
またまたお久し振りです
遅ればせながらお礼を
>>472 >>473 >>474 ……(*´д`)
>>475 感謝です
ちょっと暗すぎやしないかと
最近の展開が心配です
>>481 ありがとうございます
家庭環境(?)については
どうやって書こうかなーって感じで
姉妹にはしないつもりですが
(ゲーム上ではそのへん出てこなかった気が)
>>読んでくださる方
いつもありがとうございます
>>タカハシさん
乙です
>>レッドマンさん
改めておかえりなさい
親子いいなあ、ほろりとしました
続き期待してます!
>>暇潰しさん
クライマックスひっぱるなあw
自分も緊迫感ある戦闘シーンを書きたいです
なんかあっさりしてしまう・・
では
>>470 続きです
目が覚めるともうすっかり夜だった。 ビアンカは先に目を覚まし、既に装備を整えていた。 夕食をとりそこなった事に気づいたが、不思議と腹は減っていなかった。 夢なんだともう一度自分に言い聞かせる。 『起きたのね。今日こそお化け退治に行きましょ』 言いながら、ビアンカが俺の手を取って身を起こさせる。 感傷はまだ残っていたが、俺はビアンカに笑い返してその手に体を預けた。 昼間購入した装備をビアンカに見せる。 ナイフと鍋の蓋はキッチンに戻しておくようビアンカに言い、 真新しい棘の付いた鞭を手渡した。 ビアンカは嬉しそうに『ありがとう』と言い、 初めてのちゃんとした武器を物珍しそうに眺めている。 木の帽子は格好悪いから、と ビアンカが身に付けるのを嫌がったので自分で被り、 うろこの盾をビアンカに渡した。 渋々それを左腕に装備する。 昨日と同じように慎重に注意を払って宿から抜け出すと、 夜の闇は昨日ほど恐ろしいものではなくなっていた。 月明りは煌々と世界を照らし、 草原の緑が濃い波を立てて風に靡いている。 北の城、と確認して俺とビアンカは、 北へ向かう細い道を辿っていった。
戦闘は随分と楽になった。 いばらの鞭を手にしたビアンカは、昨日とは見違えるほど強くなった。 初めは扱いにくそうにしていたが、 何度かの戦闘で慣れてくると一振りで複数のドラキーを仕留め、 嬉しそうににこにこと鞭を撫でている。 『サンの言ったとおりだったわ。強くなるって楽しいのね』 昨日は苦戦した芋虫の死骸を爪先で蹴りながら、 ビアンカは鼻歌さえ口ずさみそうな声色で俺に言った。 小銭を抜き取りながら返事をして、俺は顔を上げて空を仰いだ。 青黒い空の向こう側に、暗く城の輪郭が見える。 立ち上がって声を掛けると、ビアンカは ぴょんと跳ねるようにして俺の後ろに付いた。 一歩ずつ、足を進めるごとに城の姿が大きくなっていく。 現れたモンスターはもう簡単に倒すことが出来たが、 べったりと張り付くようにそびえるレヌール城の影が、 何故だか恐怖さえ覚えるほどに不安を掻き立てていった。 ビアンカは相変わらず、そんな不安には無頓着なように 軽い足取りで草原を進んでいく。 これが子供なのか、と俺は羨ましくさえ思った。
『あら、子猫ちゃんだわ』 開け放たれた城門がすぐそこに見えるまで近付いた時、 ビアンカが唐突に声を出した。視線の先には、 町で子供たちが虐めていたのと同じような姿の動物が一匹、 こちらには気付かない様子で横切っていく。 『なんでこんな所に。あの子達町の外に捨てちゃったのかしら』 歩み寄ろうとするビアンカを制止して、俺はモンスターだよ、と囁いた。 相手はまだこちらには気付かない。このままやり過ごせるだろうか。 『モンスター?あの子が?』 俺に倣うように声を潜めてビアンカが言う。 頷いて、同じだけどあの猫じゃない、と俺は言った。 ビアンカの瞳が少しだけ真剣になる。 『じゃあ、あの子達モンスターの仲間を虐めてたの?』 もう一度頷いて、俺はモンスターに目をやった。 ビアンカは信じられないという面持ちで俺の顔とモンスターを見比べている。 ざわ、と風が抜けた瞬間。 通り過ぎかけていたモンスターがひくりと鼻先を震わし、 警戒するようにこちらを振り向いた。 その視線が俺の視線を捉え、剥き出した牙の隙間から ぐるるる、とこちらにも聞こえるような威嚇の唸り声を上げる。 『猫ちゃん・・・』 呆然とその姿を見つめるビアンカの隣で、俺は武器を抜いて身構えた。 敵の視線が俺とビアンカを見比べ、無防備な少女の前で止まる。
「ビアンカ!」 敵が地面を蹴ると同時に俺は叫んだ。 びくりとビアンカが肩を揺らし、反射的に盾を目の前に掲げる。 敵の牙は盾に弾かれたが、ビアンカは衝撃で後ろに転び尻餅を付いた。 立て直す前の敵の背中に一撃を食らわす。 相手の背中から僅かに液体が飛び散り、武器を汚した。 ぐるる、とまた敵が唸った。 「ビアンカ!」 もう一度呼びかけると、ビアンカは 思い出したように立ち上がり、武器を手に取った。 その手に未だ迷いがあるのが解る。 モンスターはこちらを伺うように唸り声を上げている。 俺のつけた傷が痛むのか、時々僅かに表情をゆがめている。 後一撃あれば、多分倒せるだろう。 止めを刺そうと武器を構えた直後、 ビアンカが何ごとかを発したのが聞こえた。言葉が聞き取れない。 振り向こうとした時、辺りが赤い色に染まった。 眼前を横切って、真っ赤な炎の塊がモンスターに向かって行く。 ビアンカはさっきのままの姿勢でそれを見つめている。 ぼん、という炎のぶつかる音と、モンスターの悲鳴が響き、 余韻も残さずに闇に溶けて世界が沈黙した。 目の前がちかちかする。 目を開けても、ネオンのような緑色の炎の残像が 闇に慣れた眼球を追いかけて視界を濁らす。 何度か瞬きをしながら俺は、ビアンカの傍に歩み寄った。
『あたし、今・・・』 自分の両手を見下ろしながら、ぽつりとビアンカが呟く。 『・・・びっくりしたわ。呪文って凄いのね』 自らの放った炎に呆然としながら、ビアンカが言った。 少女の目に迷いはもうなかった。 見えるのは、純粋な感動と、おそらくは、快感。 まだぼんやりと自分の手を見下ろしているビアンカに、 俺は行こう、とだけ言って城の正門に向かって歩き出した。 何故か胸糞悪かった。 「猫ちゃん」を心配しながら、同じ生き物に手を挙げる。 結局自分もそうなのだ、それは理解しているつもりだけど。 同じ事をする、それを楽しむ、無邪気なビアンカの振る舞いが 今になって何故か哀しかった。 この世界では当たり前だ。 モンスターを殺すことも。自らの強さに酔うことも。 自分だってそうじゃないか。何の疑問も持たずに、異形と判断した生物を。 この世界では。この世界では。 それなら俺の世界はどうだ。 同じことをしていないと、言い切れるのか。 俺はどうだ。 何の迷いもない、それは正しい、本当にそうか。 それなら俺は、この世界では異形のものではないのか。 近付くごとに城が月を遮って、俺は暗闇に足を踏み込んでいく。
本日ここまでで ありがとうございます 投下ペースに書くペースが追いつかず 書き溜めが尽きそうです(笑 またゆっくりになるかも 次回も宜しくお願いします
乙! ビアンカ、可愛いなーと読み進めていたが、後半の展開にやられた。 後々メラゾーマをぶっ放す素質ありありですなw 主人公の自然と魔物使いに進みそうな、心の動きが上手い。
乙。 現実であれば、魔物と動物の境界なんてないも同然。 その動揺が当たり前で、なんか悩ましいな。なんともいえない。
イイヨイイヨ〜(・∀・)
今回も面白かった 主人公達と一緒に◆u9VgpDS6fg 氏の文才もLVうpしてるかんじ 続き期待。
うわー、深いです。 ビアンカちゃん、こんなことでこれからやっていけるのかな・・・とおもったら、この展開。 子どもゆえの、無邪気さゆえの残酷さっていうの、ありますよね。 猫ちゃんをいじめていた子ども達と2人がかりで魔物を殺す主人公達とどう違うのか。 いろいろ考えさせられます。
みなさま、お久しぶりです。 久しぶりにまとめサイトを更新させていただきました。 職人のみなさまお疲れ様です。 タカハシの物語は、続きを書いてあるんですが時間がないため、 直接まとめサイトへ掲載させてもらいました。 まとめのトップからリンクをクリックしてください。 スレへの投下が出来ず、申し訳ありません。 では、また忙しくなるのでそのうちに。
タカハシ氏乙です!
555 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/03/02(金) 20:42:49 ID:i7N9WZTX0
更新日が未来になっとります
>>555 さん
気づきませんでした…
まとめも途中のをアップしてしまってるし、急ぐとロクな事がないですねorz
折りを見て直しておきます。
ちゃんと感想書けないけど楽しく読ませてもらってるよ保守
二日で保守
ほす
守って保つぜ!
◆u9VgpDS6fg さんの作品を読んで、DQ5引っぱり出してきちゃった まとめサイトでも時間を忘れて読みふけってます ゆっくりと練ってから更新してください。期待してます と言うわけで、保守。
>>562 FC版の夜の青色が大好きだったんだ
癒されるw
帆狩
565 :
焼肉屋 :2007/03/15(木) 11:03:49 ID:qf/eOLKpO
あげ
566 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/03/15(木) 14:00:15 ID:aSIdlme20
hssry
568 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/03/15(木) 20:42:00 ID:oIMRaKZH0
tennou-ha sini-masi-ta
569 :
焼肉屋 :2007/03/16(金) 10:30:33 ID:LPYWJ/HlO
あげ
保守
4の人もうこないのかな(´・ω・`)
終章 ピサロがデスパレスに戻って来た時の魔物たちの反応は様々だったが、大半が彼の帰還を喜んでいたのには驚いた。 意外と人望があるのか…いや、魔望…魔にとっての希望なのか。この男が。 玉座まですんなりと昇って行くと、そこには巨体の魔術師がいた。 「エビルプリースト…」 「ピサロ様…いや、ピサロ。今更のこのこと戻ってくるとはな…」 「愚か者め…それは私も同じか。多くは語るまい。それこそ…今更だ」 魔界の剣を抜き放ち、ピサロが構えるのと同時に、ソロ、ソフィア、アリーナが臨戦態勢に入る。 俺もまた剣を抜き、皆より一歩下がった場所で構えた。すぐに術の構成に取り掛かる。 エビルプリーストの身体が変化する――それはデスピサロと同じ変化だった。 腕を飛ばし、頭を潰したあの状態へと変化し、腹に眼が浮かぶ…まるであの戦いを早回しにしたかのような。 「進化のスピードが速まっている…?」 「デスピサロの時と同じ、という事はあの変化がやっぱり進化って事になるのかしら。…私、進化したくないなあ」 最後の決戦が始まる――。 そう、息を呑んだのは良いのだが。 「睡魔(ラリホーマ)」 ソロのラリホーマで一発で寝るエビルプリースト。 ちょ、いいのか!?緊張感たりなくね!? 俺が内心突っ込んでいるとさっさと攻勢力向上(バイキルト)をかけろと言われる。 いいじゃないか…どうせピサロも使えるんだし。 ま、ソフィアに対して使われるとむかつくから俺がやるけどさ!
ピサロが回転しながら宙を移動し(!)ソロ、ソフィア、アリーナが打ちかかる。 俺とミネアは後方待機だ。正直、この面子で負ける気がしない、というのが俺の本音。 特にピサロがなあ…あれ変態だわ。 豊富な魔術に強力な剣技。修正してください。 あっという間にエビルプリーストの形態が変化していく。 最早――敵では無かったのだ。その、最初から。 彼奴が死に物狂いで吐き出した冷たく輝く息でさえも――ミネアのフバーハで威力は著しく軽減され、ソロの極限治癒(ベホマズン)が全てを無かったことにする。 アリーナが会心の一撃をぼこぼこに繰り出すし、ピサロは自分に攻勢力向上を施し魔界の剣を振るう。 そして――ソフィアだ。 あの狭間の世界での戦いは彼女を飛躍的にレベルアップさせたらしく、今や彼女の剣は比類なき冴えを放っていた。 「ば…ばかな……。 ……それとも これも……進化の秘法が…見せる幻影…なのか……」 ざらざらとした風化し、消えてゆく。 最後まで魔族の王を自称した、愚かな末路。 「……バカめ」 ピサロがぽつりと呟いた。 彼にとっては、愛しき者を奪った憎き敵。で、ある筈なのに。 その眼には憐憫の光が宿っているように思う。 そんな彼のマントの端を、離れて見守っていたエルフの娘がそっと握った。 ――そのときだ。 あの、忘れがたい声が響いてきたのは。 声は誘う。 勇者を、天空の城へと。 眩い光が辺りを覆う。ソフィアは、思わず瞳を閉じた…。
外に出ると、馬車もまた消え果ていた。 その場に残されたのは、俺と、ロザリーと、ピサロ。 「私は仮にも魔族を束ねるものだ。天空の城に暢気にはいることなど無い」 そう言い捨てて、魔王は歩き出す。 城を出るまで何かしらに集中しているような素振りを見せていたのは、ソロとソフィアにメッセージを投げていたらしい。 …意外と律儀な男だ。 「何をぼんやりしている。速くついてこい」 「……」 「お前とは話したいこともある。 それに…此処に残りたいのか?」 「まさか。…けど、そうだな」 ニヤリと笑うピサロ。 俺はなんとはなしに背後を振り返り――その幽鬼のような城から避けるように前へと進み始めた。 って前は魔王じゃん!ロザリーの後ろについていこう…。
ロザリーヒルの丘から空を進む気球を眺める。 のどかな気球の旅が何処か懐かしい。 やがて、ピサロが一人、こちらへと歩いてきた。 「もう、いいのか?」 「ああ…」 俺の問いにピサロは短く答え、歩き出す。 ゆっくりと…小さくなっていく気球から、未練を断つように。 俺はキメラの翼を空に放り投げる。 ブランカへ――だが、空に舞った羽はそのまま地に落ちた。 「ダメだな…そっちは?」 「少し待て。行ける所を探す」 ピサロが瞬間転移(ルーラ)の術を紡ぐ。 だが、それも中々発動しない。暫くの時が流れ、ようやく発動したその術で、俺たちは草原のど真ん中へと現れた。 この風景は…見覚えがある。…そうか、ここは…ブランカの東…か…。 俺達は逸る気持ちを抑え、歩き出した。
「今頃、どの辺にいるのかな」 「さてな」 「まずはサントハイムだな! 鳥卵がサントハイムの人達をこっちに帰してくれてる筈だし、今頃アリーナは喜んでるだろうなあ」 飛び跳ねて王に駆け寄る娘。 それをしっかりと受け止める、頼もしき王。 王と兵は姫の帰還を喜び、姫とその忠実なる僕二人は王と兵の帰還を喜ぶだろう。 そして、勇者により世界が救われたことを。 「宴が何日も催されたりして…だけどあんまり長居もできないから、こっそり抜け出してたりしてな」 「あの姫君のことだ。恐らくそう簡単には…そうだな、ソロが残ったかもしれん。アレがいれば暫くは収まるだろう」 「じゃあ次はバトランドだな!ライアンは王宮戦士だから…やっぱり宴とかかなあ」 「あの国は武人の国だ。華美な催しは得手ではあるまい…皆も故郷へ帰りたいと思えば早めに辞しているやもしれん」 「なるほど。…その次はエンドールかな。トルネコさんの奥さんの料理は美味かったなあ…ってそういえば城の中にデスピサロにビビッてるのがいたような…」 「なんだそれは?」 「なんだったかなー剣幕にビビッた思い出。その後はモンバーバラ…かな?」 「…あの小さな村かもしれないな」 「…ああ、そうか。そうかもしれない…」
夜が更け、梟の鳴き声が聞こえる。 ぱちぱちと木の爆ぜる音。 静かな森には虫の声も響き、賑やかなことだった。 尤も。 仲間が皆一緒だった旅とは比べ物にはならなかったが。 「それで…」 長い沈黙を破り、ピサロが口を開く。 放った薪がぱちっと乾いた音を立てて燃え上がった。 「何処まで気付いた」 「……ああ」 何処まで――または、何を。 「マスタードラゴンは進化の秘法を使ったな?」 ほう、とピサロの眼が見開かれる。 彼の眼は、彼の神のそれとは違う。 小さなものを見るような眼ではない。彼は、魔王は今、対等に俺を見ている。 「どうしてそう思う?」 「天空城にあった書とエドガンの手記を読めば誰でも想像がつくさ。 ヤツが元々何であったのかは解らない。だけど、究極の進化とは何か――それをあの姉妹の親父さんは掴んでた。 即ち、神へ至る道、だ。そもそも錬金術っていうものは…そういった術、学問であったから」 「…かつて、エスタークと呼ばれた存在がいた。 彼は…神と同じ道程を辿り究極の進化を遂げ、比類なき力を手に入れようとした。 が…神は一つの世界に神が並び立つことをよしとしなかった」
「だから、封じた。滅ぼさなかったのは…さて、誤算か意図か、どちらでも良いことかな。 神への反逆者を地獄の帝王と断罪し、地の底へと」 「地上にとっては平和な時間の始まりだ。 だが…奴にとってはその平和な時間も…酷く、退屈なものだった」 深い森。ブランカからこの場所までの道に存在する民家はたった一件だけ。 もう少しで…辿り着く、彼女の村であった場所。 「一人の天空人と一人のきこりの間に産まれた運命の子供が育った村を魔王に滅ぼされ…。 導かれし者達と共に魔を打ち倒す物語…」 「そう。それが数十…数百万と繰り返されてきた。もっとも…私の結末は、流転したが…それも大枠を外れることはない」 「そして…」 「……。急ぐぞ。休憩は終わりだ」 俺たち二人は火の始末をし、再び歩き出した。 嘘であれば良い。 だが、嘘では無いだろう。そう…確信していた。 あの眼をしたものならば、やるだろう。そこに躊躇いなど…あろうはずもない。 懐かしい…風景。 彼女と二人で走った森。 先にあるのは、絶望の象徴。 ああ――なんて、酷い。此処はただの更地では無い。更地であれば良かった。 此処には、人の住んでいた痕跡がある。
「私は…後悔はしていない」 ピサロがぽつりと呟く。 ともすれば眼を逸らしたくなる光景を見据え、俺もまた後に続く。 やがて、村であった土地の中央部が見えてくる。 懐かしい…そう、確かあそこには…花畑が――ある訳が無い。 だって、あの土地は焼き尽くされたから。 今尚、爪痕は痛々しく残り、ぼこぼこと不気味な気泡を時折噴き出す浅い沼のようになっている。 そして、その中央に。 「――――――――――」 嘘だと。 言って欲しかった。なのに、ピサロはただその沼地を見詰めている。 俺はふらふらと歩き出した。 ふらふら、ゆらゆらと、夢遊病にかかるとこんな足取りになるのだろうか。 だって、まるで夢心地。 そんなことはあってはならないことだから。なら、それは夢であるべきで。 「……ソフィア」 青白い顔をした少女。 沼地の中央で、まるで眠っているかのよう。 幸せそうに微笑んでいる。きっと、楽しく、嬉しい夢を見ることができたに違いない。 …末期の、夢は。 半分ほど沈み込んでいた少女の身体を引き摺り上げる。 びりびりと、毒素が俺の身体を苛むがそんなことに気を割いている余裕などない。 いや…余裕はあったのかもしれない。 もう…手遅れであったから。
仲間を送り、勇者は独り育った村へと戻る…勇者には、そこしか行き場所が無かったから。 滅んだ村――その中央で。勇者は俯き、背負った盾が地に落ちる。 そのとき、奇跡が起きた。 勇者の周囲、毒の沼地がかつての花畑へと変貌し――喪われた命が一つ、輝きを取り戻す。 再会。そして、勇者の仲間たちが駆け寄る……。 まさに絵に描いたようなハッピーエンド――とてもとても、幸せな…夢。 ピサロが行う完全蘇生(ザオリク)の呪。 彼女の瞼は…開く事は無い。 「魔王、などと呼ばれても…神の呪には、届かない。 情けない話だがな…」 「…………」 声も無い俺を、ピサロは責めることはなかった。 ただ、少しだけ…悼ましそうな眼をして。何かに気がついたかのように、森へと視線を転じる。 「…来たか」 荒い息遣いで現れたのは…ソロだった。 呼吸を整える間すらも惜しんで駆け寄って…そして、知る。最愛の妹の…●を。
うぐ。ぎ。ぐう。 ギイ…がぐううううううう嫌だ嫌だ嫌だ認めない知らない…。 違う。 それじゃダメだ。それじゃあ何一つ…俺は成長していないことになる…。 俺の存在。俺の運命。俺の…為すべきこと、成したいと思うこと。 「ソフィア…こんな…。 本当に、これは…奴の…ピサロ、お前が常々言っていた、神の仕業なのか…」 「…確かめてみるがよかろう。彼の神に、直接、な」 「ピサロ…そう、だな。…そうしよう」 勇者と魔王。 決して並び立つ筈のない存在が今再びその道を同じくする。 そして――。 「……行こう」 二つの影が、三つに増える。 全てを終らせる為に。 全てを、変革する為に。 終らない物語を終らせる…為に。
天の玉座に竜の神。 世界を統べる、絶対たる王。 その王の前に今、三つの矮小な命がある。 勇者も。 魔王も。 彼の存在にとっては、吹けば飛ぶ程度のものでしかない。 それを、まるで魔王は自分と匹敵するかのように…。 勇者が魔王を打ち倒せる唯一の存在であるかのように…。 祭り上げ、おためごかし、意のままに操り。 「デスピサロ…いや、ピサロ、か…。 そなたも懲りぬな…」 「……」 「数十万という途方も無い数を、たった独りで私に挑み、その度に破れ…。 少々、飽いた。今回は中々に楽しめたというに最後がこれでは――」 「マスター…ドラゴン」 「――ほう。ソロか?ソロもいるのか――これは、そうか…」 喜色を浮かべるマスタードラゴン。 それに対し、疑問とも戸惑いとも言える表情でソロは問う。 「貴方が…ソフィアを…」 「ああ、そうだ。あの結末は私が用意した。 悪くはないだろう?帰るべき場所は既に滅ぼされ…待つ人のいない村に独り戻る勇者…。 本来絶望しか無かった者へのせめてもの手向けだ。実際、あの娘はよくやってくれた」
「お、前が……」 「ふむ!それにしても――そうか、魔王と勇者がな…悪くない、実に悪くない。 これも、そのイレギュラーのお陰か…」 竜神は自分の手柄かのように喜んだ。 いや、実際にその通りであったから、かのように、というのは正しくない。 「お前が…俺を喚んだんだな」 「そうだ。私が喚んだ。同じ結末にも飽いていたのでな、別の要素が欲しかったのだが――。 お前は実によく動いてくれた」 最早語るべき言葉はない。 こいつが…ソフィアを殺した。 こいつが…ソフィアにあんな運命を課した。 こいつが…こいつが…!! 「お前が…!」 「――貴様が」 「お前がぁぁぁ!!!!!」 「「「――殺す!!!!」」」 「吠えるな…矮小なるものよ。やれぬことを叫ぶことほど、虚しきものもない」 巨大な竜に立ち向かう三人の男たち。 それぞれに握られる剣――天空の剣。魔界の剣。ドラゴンキラー。 戦いを報せる鈴の音が響くかのように、三本の剣が打ち鳴らされる!
「ふふ…魔王単体よりかは楽しませてくれるのだろうな…」 ドラゴンは動かない。 その玉座から、まるで動く必要が無い、かのように。 俺の補助呪文を受け、ソロが左から斬りかかる。 それに呼応するかのように、ピサロは右へと回り込み魔神のごとき迫力で斬りかかった。 目線すら交わさない、なのに鏡で写したかのようなコンビネーション。 今にも刃がその皮膚を引き裂こうとした瞬間、ドラゴンの両翼が大きく開く。 勇者と魔王。 その圧倒的な力を持つ両者を…まるで、羽虫を払うように…無造作に…弾き散らす。 「――ちぃ」 「どうした、ピサロよ…それでは、何も変わらぬではないか…。 今度こそ…我を動かしてみせろよ?」 「黙れ!!」 ピサロが素早く印を組む。 最上級の爆裂呪文。それを見越し、ソロもまた呪の詠唱に入る。 戦いは続く。 神と魔と人。 そして、そのどれでもないもの。 まるで導かれるかのように集い、滅ぼし合う。 そうだ。それはどの世界でも起きた、起きている、起きるであろう戦争だ。 ときに神が勝ち、ときに魔が勝ち…そしてときに人が勝つ。 どこまでも不公平で、平等に訪れる筈の結末を彼等は奪い合う。
満身創痍の三人とは対象的に…彼の神はせいぜいが身じろぎをした程度、一歩たりとも元の場所から動いていなかった。 荒い吐息が響く中、神はつまらなそうに…言った。 「やはり、この程度か…興が醒めた」 小さい咆哮。 それは扉の外への合図だ。 今の今まで、扉の外で待機していた有翼の戦士たちが、玉座の間に雪崩こみ狼藉者を押さえ込む。 万全の体勢ならばともかく、今の俺たちではそれを跳ね返すこともできず――。 「――なに?」 ざっ。 どっしりとした足取りで、荘厳な天空の城の床を踏みしめ。 ざっ。 一陣の風を纏い目にも留まらぬ速度で勇者に駆け寄り。 ざっ。 その速さゆえに突出しがちな主を支えるべく。 ざっ。 叡智を宿した眼光で辺りを睨みながら。 ざっ。 おっかなびっくりとした足取りで。 ざっ。 傷ついた勇者と魔王と一人の男に治療を施し。 ざっ。 絶望に満ちた空気を払拭するかのように、自信に満ちた笑みで。 「みんな――」 彼ら、彼女らが並び立つ。
「――今回は、あんたを責めないわ」 にやりと口の端に笑みを浮かべながらも、マーニャの頬にはうっすらと汗が見える。 感じているのだ。眼の前の存在の、プレッシャーを。 「そうでしょ?アリーナ」 「うん。その時間すらも、惜しいから」 勇者の隣に立ちながら、その愛らしい耳を飾っていたピアスを外す。 「それに、ソロも――信じていてくれたでしょう?どこかで、期待してくれたでしょう?」 「…ああ。していたよ。来てくれるんじゃないかって。だけど――まさか、全員とは」 「私たちは皆、自分の意志で此処に来たんですよ」 トルネコが正義のそろばんをしゃらりと鳴らす。 「…良いのか。お前には、妻も子も居るのだろう」 「らしくもない。貴方には、ロザリーさんがいる。なのにどうして此処にいるのです?」 「……」 「譲れないのですよ。臆病で、愚鈍な私でも――ね」 「お主は愚鈍でも、ましてや臆病でも無いわい」 つまらなそうに、当たり前のことのように言う老魔道士。 彼の言葉に占い師が頷く。
「あの戦いを潜り抜け、そして尚この場に立つものがどうして臆病なのでしょう」 それは、神官へと向けたものでもある。 彼は震えていた。 好意的に見れば武者震い。だが、残念ながらそれだけではない。 神に仕える彼は…今、自分で自分の半生を否定しようとしているのだ。 「…恐ろしいか…クリフト殿」 「ライアンさん…ええ…否定しても仕様が無い…私は、怖い。怖くて仕方が無いですよ――。 なのに、どうして…私の足は前へと進むのでしょう?」 「それは、貴公が――そう、その言葉は何でも良いのかもしれぬ」 男だから。女だから。戦士だから。勇者だから。仲間だから――。 それら全てを内包した、掛け替えの無い友が今、集う。 それなのに、そこには一つだけ、影が足りない。 「ねえ、貴方――あれ?私、どうして貴方の名前が解らないんだろう……」 アリーナが俺に声をかけてきた。 彼女は必死で何かを思い出そうとしている。 思い出は、ある。 そう、あの夜の帳の降りた船の上で――私は、彼と話をした。そして、彼の名前を呼んで――。 それはマーニャも同じだ。 何故、彼の、青年の、少年の名が思い出せない? 彼は自分の下僕で…弟子で…ほっとけない、弟みたいなヤツで…。 ああ!それなのに!
ミネアが沈痛な面持ちで俯いている。 全てを知った彼女は、ある意味で尤もこの日を恐れていたに違いない。 伺うように俺の顔を見て…そして、少し意外そうな表情へと変化する。 「ソフィアが死んだ」 俺の言葉が彼らに衝撃を生む。 足りない影。彼らの中心。あの少女が――死んだ。 「…完全蘇生(ザオリク)は!?」 「届かなかった。…ザオリクで蘇ることができるのは、導かれし者たちだけ…そこに居る、神に、な。 神が導くことがなくなれば、それはもう導かれし者達ではない…」 「そんな…どうして…」 アリーナの問いに、玉座で薄ら笑いを浮かべていた神が身をよじる。 それは解らない者にたいして教えたい、という欲求。 「簡単なことだ。幻惑(マヌーサ)で毒の沼地に誘い寄せ、睡眠(ラリホー)で眠らせる。 邪魔が入らぬよう瞬間転移(ルーラ)を封じれば…」 たった。たったそれだけで。 勇者が死んでしまった。勇者と言えど――それで、死んでしまうのだ。 それはつまり、勇者ではない彼等はそれ以上に簡単に――死んでしまう、ということ。 「それでも尚、向かってくるか…?今ならば、お前たちだけ救うこともやぶさかではないぞ。 実際、お前たちはよく楽しませてくれた…これは私からのせめてもの、礼だ」
ブライはその慧眼で冷静に観察していた。 その発言の真意は何処にあるのか、を。 此処に居る全員が自分に立ち向かってくることを恐れているのか、を。 しかし残念ながら、神にとってそのような駆け引きはあまりに興味の無いものであったようだ。 彼は死闘を覚悟する。 撤退?ハハハ、この状況でそんなもの――彼女の臣下になったそのときから、考えることはない。 「――ソフィア……私の親友を、よくも……!」 「…姫様」 「止めるの?ブライ?…解ってるわ、私だって…だけど…だけど…!私は…!」 「速度上昇(ピオリム)」 老魔道士の魔力を受けて、アリーナは驚きに目を見開く。 「さあ、背はいつものようにお任せあれ。 サントハイム宮廷魔術師の、そして我が国の誇るべき姫君の教育者の名に恥じぬ働きをいたしましょうぞ」 「うん!」 嬉しそうに微笑む美しい少女。 彼女の笑みは――若き日の己が見た王妃の笑みに、よく似ていて。 老魔道士は不覚にも目頭が熱くなるのを覚える。 「ほら、泣いてないでやるわよ、おじいちゃん」 「ふん…黙れ小娘。遅れを取るでないぞ」 「それはこっちの台詞!」
ぱん!っと鉄の扇が開かれる。 踊り子の象徴とも言うべき華麗なる武器を持ち、彼女は戦いに挑む。 「フォローは任せて、姉さん」 「ミネアさんは…複雑、では無いのですか…?」 恐る恐る訊ねたクリフトに対し、ミネアは迷いの無い凛々しい表情を浮かべている。 「はい。私は、姉さんを信じています。勇者様…ソフィアさん、ソロさん…そして仲間の皆さんを信じています。 私に声をかけてくれたのは、神様よりも…皆さんのほうが、多いですから。 …ですが、一つだけ、私にも訊きたいことがあります。 …ハバリアの町の近くのほこら…あの場にいた女性を消したのは…」 「私だ。そも、地底に封印されていた地獄の帝王がどうして聖なる神の御使いを消すことができる?」 「――そう、ですか」 ミネアが、クリフトが、めいめいの武器を構える。 彼らの前に立つのは、ライアンとトルネコだ。 良き父と、頼もしき戦士はまだ若い彼らの壁になるかのように、神との中間に立ち塞がる。 「トルネコ殿。くれぐれもご無理はなされぬよう」 「ええ、心得ておりますとも。――全員で、帰りましょう」 頼もしき男たちが前線を張る。 果たして、永き時を共にしてきた仲間達の、最後の戦いが始まった。
マーニャは、考えていた。 自分には天賦の才がある。 だが、その才を持ってしても――ピサロの術には適わない。 人間と、魔王。 その器の差は如何ともし難くて。 全く同じ術なのに、彼女の術は魔王のそれに劣る。 ブライには、敵を攻撃する以外にも仲間を補助する術がある。 翻って自分はどうだ。 その魔術の強力さに胡坐をかき、ただひたすら敵を圧倒する術しか学ばなかった。 勿論、それには仇討ちのためという理由もあった。 だが、仇討ちを完遂した後もひたすら敵へと力をぶつける魔術を習得し、補助といえば精々がトラマナぐらい。 その甲斐あって手に入れた極大の爆裂呪文であったのに、それすらもあっさり魔王に奪われ。 自分は間違っていたのだろうか? なんのことはない。 彼の師だなどと言ったって、自分が道を間違えていて誰を導くことができるというのか。 竜神に立ち向かうアリーナ。 彼女は巨大な存在に怯むことなく、打ちかかっていく。 親友を殺された、純なる怒りが彼女を怯えから守り、その拳閃をいつもよりも輝かせる。 嘗ては、アリーナとマーニャはパーティーの要であった。 マーニャにとってアリーナはもう一人の妹であり、いつも前線に出張り危なっかしくも助け甲斐のある少女であった。 なのに――。 「随分と、離されたもんだわ」 知らずのうちに苦笑が漏れる。 そんな彼女に、俺は声をかけた。
「そんなことはない。師匠(マスター)には、師匠の成してきた道がある」 「私の道?」 「そう。火力を追求してきた道。その道をきたからこそ手に入れられたものがある」 マーニャは少し驚いていた。 彼はいつのまに、こんなに大人びた表情をするようになったろう? 天空の城に来るまでは…まだ違う。 そう、この城で彼とソフィアは一時的にパーティーから離脱し…魔界で合流した、その後から…? この少年、この青年、この男――今やどれでも形容できる存在は、果たして何を学んだというのか? 何を知れば、このような表情ができるのか――? 「この世界にとって、彼の神の影響は絶大だ。 だが――この世界のものじゃ、なければ。あったじゃないか、マーニャ。君がプライドを捨ててまで手に入れた、小さな灯火が」 瞬間、マーニャの全身に電撃が走る。 マーニャ自身が辿り着いた最後の、危険を伴う賭け。 命が惜しいわけではない。下手をすれば仲間をも巻き込みかねない、最悪の呪であるから。 「マーニャなら、大丈夫さ」 だというのに、あっさりと。 「…むかつくわ。少しはいい男になったじゃない」 「喜んで欲しかったな」 「――いいわ。見せてあげる。これが、私の、天才魔術師マーニャちゃんの、最終、最奥の秘術…!」
――我は請う。 最古の力。最古の魔。 最古の闇が灯す暗い炎。 「この血肉をもって契約を!」 マーニャの背中から闇が噴き出した。 仲間達が驚いたように振り返るが、彼女自身が感じているのは噴き出す霧ではなく肩にかかる手であった。 憎悪…嫉妬…怨嗟…彼女が思い出したのはバルザック。 父を殺した憎むべき仇。 ヤツの、いやらしい笑み――。 だがそれに身を任せることはない。旅の中、その心を成長させた彼女が闇に囚われることはない! 「異界の魔王の召喚…素晴らしい…」 神がぽつりと呟く。 その驚嘆に対して、マーニャと魔王がニヤリと嗤う。 「今だ!!!」 ソロの号令が響く。 息のあった動きで、全員が動き出す! 補助呪文が仲間の背を押し、魔法と剣戟に神が一瞬無防備な姿を晒す。 「さあ…いくわよ!大魔王の炎(メラゾーマ)!!」
魔王の御名を冠する炎。 それはメラに相応しいとてもとても小さな火の玉。 真っ直ぐに、レーザーのように標的の元へと飛来し、着弾。 巻き上がる渦――焔の渦の中、悶える竜の影が見える。 仲間達から喝采の声があがる。 そして勿論、そこで手を緩めはしない。 ソロが、アリーナが、ライアンが。そして俺もまた、畳み掛けるために疾駆する。 じりっ。 うなじの毛が逆立つ感覚。その感覚を理解したときにはとき既に遅く。 巨大な焔渦を吹き散らし、両の腕でソロとアリーナを吹き飛ばし、冷たく輝く息でライアンを迎撃する。 そして最後の俺には。 既に宙に浮かんでいる俺には何が起こったのかは解らない。 その羽ばたきにすら俺の身体は耐えることができなく宙へと浮かび。 避けられるべくもない尾撃。 ぶつりっと、いやな音がした。 その音は全員の耳に響き、そして否がおうにも現実を直視させる。 男の身体が二つに断たれている。 胴と、足と。 足の方が天空城の床に落ち、胴の方は遠くに弾き飛ばされ、大地へと吸い込まれていく。 「はは…ハハハハハ…よくぞ我を玉座より立ち上がらせたものだ…。 良いだろう!久方ぶりに血沸き肉踊るわ!!」 人々に神と崇められる存在の、愉悦の混じる哄笑が響き渡った。
・ ・ ・ 落ちていく。 空の城より、地上へと。まっさかさまに。 腕が動く感覚はある。足の動く感覚は無い。 ごうごうと唸りをあげる大気もやがて気にならなくなり…そして俺は自分が落ちているのかどうかも解らなくなった。 目を覚ます。 いや、気絶していたのかどうかも解らない。 ただ、それまでどうやら目を閉じていて、そして今、その目を開いた、ということだけは解る。 そこはなにやら真っ白な空間で、辺りには何も無かった。 「ここは……」 辺りを見回すために首を巡らせる。 そこで気がついた。 確かに首を回した感じはしたが、視界が変わらないのだ。 いや…そもそも、180度の視界を持っているのかどうかも…。 周りが白一色であり、そこには空も大地も無い、という事実を知覚しているだけに過ぎなかった。 「――ようやく会えたね」 それでも便宜上表現するとしたら、そう、眼前に。 小さな。小さな、ふくろがあった。 「……そうだな。こうやって話すのは初めてか……」 「ずっと一緒にいたのに」
そういって、笑う。 笑った雰囲気を感じる。 口もたぬふくろが喋る声を認識する。 「しかしそうか…俺は肝心なところで…悪かったな。結局、何も…できなかった…」 「いいや。そんなことはない。 ボクだけではそれこそ、荷物を運ぶことしかできなかった。 君がいたからこそ…ここまで来ることができた」 「そうかな。…結局、ソフィアは死んだ。皆は…皆には勝って欲しいが…」 「ふふ…さっきから君は何を言っているんだろうと思っていたんだ。 さあ、起こすんだ。彼女を」 「……?」 「君が気付かなければ本当に終ってしまう」 「…………あ…………そう、か…………これか…………」 「君の肉体はもう、壊れてしまった。 これを治す術は僕には無い…。だけど…。神ならざる僕にも、用意できる器がある。 人の身体は無理だけれど。道具なら――全ての道具を収める僕になら、可能だ。 君は、何を望むだろう?勿論、君が望むなら――このまま、器をもたないこともできる。それは、異界への回帰か、消滅か…正直な話、解らないのだけど」 「……」 俺の望み。 そんなものは。あのときから、決まっていた。
・ ・ ・ 空が蒼い。 雲は白い。 見慣れた風景。辺り一面の花畑。 ゆっくりと上体を起こす。自分は何故、このような色とりどりの花たちに囲まれているのか。 ぱらぱらと身体から落ちていくものがある。 それはどうやら小さな石や埃…砂のようだった。 (おはよう、ソフィア) 頭の中に響く二つの声。 ずっと傍にいた人たちの声だから、自然と受け入れることができる。 村で育った幼馴染の少女と、村を出てから共に歩いた青年の幻影が空へと消えていく。 手元に転がる壊れた砂時計。 周囲に広がる花畑にも、自身の身体にもかかっている砂。 足元に突き刺さる、細い刀身を持つ剣。
ソフィアは壊れた砂時計を左手に、刺さった剣の柄を右手で握る。 なんの抵抗も無く引き抜かれる剣。 その刀身には、こう刻まれていた。 ――Sword Of Sofia―― 彼女は彼女の、ソフィアの剣を手にする。 (さあ、行こう) 「…どこへ?」 (あの、空へ) 「…どうして?」 (君の、兄と、かけがえの無い友を救うため) 「…どうやって?」 (それは君が一番解っているよ) ・ ・ ・
男が身体を断たれ、地へと落下してから数時間が経ち。 マスタードラゴンの火炎が玉座の間へと降り注ぐ。 ミネアがフバーハでそのダメージを軽減するが、それもこう何度も吹き付けられるとキリがない。 だが、自分たちには彼の神を撃つ手段が無い――。 「…卑怯者!降りてきなさいよ!」 アリーナが地団駄を踏む。 彼女たちは今、完全なる自分の無力を呪っていた。 散発的に飛ぶマーニャたちの攻撃魔法では、決定的なダメージを与えることができない。 マスタードラゴンは凍てつく波動を放たずに、火炎と吹雪を交互に吹き付ける。 ミネアを初めとして仲間たち全員に、火傷と凍傷が少しずつ刻まれていく。 もはや満身創痍となりながら、仲間を癒すクリフト。 だがそれも、心が折れるまでだろう。 「賭けるしか…ないのか…」 だがそれはあまりに分の悪い賭けだ。 それまでの戦闘経験が、未だ機が熟してはいないとソロを押し止める。 だが、このままでは機が熟す前に、全てが終ってしまうだろう。 迷っているのはピサロも同じだ。 あのエビルプリーストの使った進化の秘法。 進化のスピードの速いあの術なら、今この場で使用することもできるだろう。 しかしそれでは…。 「――む?」
気が向くままにブレスを吐いていたマスタードラゴンが訝しげな声をあげる。 なんだ?と思った矢先。 下からの一陣の光がその鱗へとぶつかっていく。 神は絶対的な自信をもっていた。 即ち、我が身の鱗を貫けるものなどこの世には創りあげていない、と。 「なんだとお!?」 なのに、何故だ。 今、我が身より弾け、噴出すものは一体なんだ! 神が身をよじり、地より飛来した何かを見る。 白い翼。自身の眷属として生み出した者たちが持つ、美しき羽。 彼女の持つ剣。それが何なのか一瞬、解らない。 だが神はすぐに理解する。つまり、神が解らないものであるということが、一つの決定的な意味をもつのだから。 異界の物質。異界の剣。即ち、己を殺し得る剣! 天空城から空を眺める者たちは見た。 彼らがその身と心を預けていた少女が、今――。 ソフィア殿!ソフィアさん!ソフィア!! 「ミネア!マーニャ!祝詞を捧げて!彼の残した卵とオーブに向かって!」 そう告げるや否や、ソフィアは背の翼を巧みに操り神へと向かっていく。 その小さな背を追うようにピサロが飛んだ。 竜の尾撃がソフィアに向かって放たれる。その射線上から彼女を突き飛ばし、その勢いを利用し自分もまた逃れる。 「――ヤツはどうした?」 「あの人なら、ここにいるわ」
掲げられる細身の剣。 「……そうか」 ピサロもまたそれ以上は言わず。 二人は神へと挑んでいく。 「祝詞…ミネア、なんのことか解る?」 「いえ、私にも…」 アリーナが辺りに散乱していた彼の遺した道具から、一つの卵と六つのオーブを持ってくる。 だが、祝詞を捧げてくれと言われた二人が困惑していた。 (ミネア…マーニャ…) 「…え?ミネア、今の…!」 「…私にも聞こえたわ、姉さん!」 (今から捧げるべき言霊を伝えるから…繰り返して…) 頭に直接響く声。 それを、二人は復唱していく。 その唱和は、彼が狭間で得た二人の友の、餞別へと届いていく。
「時はきたれり」 「今こそ、目覚めるとき」 (大空は、お前のもの) 「舞い上がれ――」 「――空高く!」 ミネアの真摯な祈りが。 マーニャの捧げる神域の踊りが。 本来、羽ばたく筈の無い翼を蘇らせる――。 炎の直撃を受けるソフィア。 だというのに、まるで怯まず己に突っ込んでくる。 いかな勇者と言えど、おかしい。 心が折れなかったとしても、肉体が傷つけば動きはどう足掻いても鈍くなる。 「…まさか」 神は眼をこらした。 少女を、ではない。少女の持つ、異界の物質を。 上位治癒(ベホイミ)の光。 それだけではない。 神が凍てつく波動を放てば、攻勢力向上(バイキルト)の光が、物理障壁(スカラ)の輝きが、少女を包む。 そういうことか――。だが、それでも。 万が一にも敗れることはない。 竜身を完全治癒(ベホマ)の光輝が包み込む。 少女と魔王、彼女らとはポテンシャルが違いすぎる。 時間をかければ如何様にもできる。それが、神の結論。
「…愚かな娘よ。幸福な夢から望まず目覚めさせられ…戦いを強いられている。その剣のせいで…」 「……」 「沈黙は肯定か?では、そのような剣など捨ててしまえ。我のそなたへの感謝は本物だ。 また、安らかに…眠らせてやろう」 「……それは、道具への感謝よね?」 「そうだ。そなたとて、道具を使い終わったら、道具が使えなくなったら処分するだろう? そうしなければ延々と溜まっていくだけだ」 「ええ。中には捨てるものもある。売るものもある。 …だけど。私は全てをそうしようとは思わない。例え壊れてしまったものでも――」 少女の腰に揺れる壊れた砂時計。 「大切なもの。ずっと、一緒にいたいもの。そういうものが、きっとある。 貴方にとって私たちはそうじゃなかったのかもしれない。 だけど、だからといって――はい、そうですかと破棄されるのなんてごめんだわ」 握る剣に力が篭もる。 少女の意思に応えるように、剣は震える。 「――では、破壊するまでだ。さらばだ、勇者よ!」 神の攻撃が激しくなる。 そんな中、ソフィアはただじっと耐えていた。 たった一度のチャンスを逃さないために。 大魔王の炎(メラゾーマ)が横合いから神を撃つ。 馬鹿な。この高さの我に、どうやって――。
神は見た。 己と同等の存在が。 空を自由に駆ける翼神が――! この世界で、己以外に存在してはならない存在が――!! ブライの放つ巨大な氷柱。ミネアの巻き起こす大気を裂く竜巻。 寸分違わず直撃し、神の動きを拘束する! 翼神の加護を受けた4つの流星が縦横無尽に駆け回り、神の鱗に叩きつけられる。 その一撃一撃が、重い。竜鱗をすら砕く一撃へと変貌していた。 ライアンが、アリーナが、クリフトが、トルネコが、砕き、斬り裂き、貫く! 「――ソロ」 「――ピサロ」 その間、勇者は仲間達の魔力を借りて。 魔王は、己自身の魔力の全てを練り上げて。 辿り着いた神域の魔術を――開放する。 「ミナデイーーーン!!!)」 「マダンテ!!!」 鼓膜を破壊しかねない轟音と、衝撃。 まさに全身全霊。 仲間達の築いたその道に、ソフィアが最後の一撃を放つ。 天使の翼が羽ばたくと、少女の姿は一筋の光と化した。 深々と突き刺さる、ソフィアの剣。 神は叫ぶ。苦痛に悶絶しながらも、治癒の叫びを。
「…眠りましょう、一緒に」 ソフィアは解っていた。 これだけでは、止めにならないことを。 だから、覚悟していた。 そして、ソロもまた。 覚悟をしていた。 魔王は大丈夫。彼にはロザリーがいるから。 神も、勇者もいなくても。 きっと、幸福が沢山できる。 …あれほど魔王を憎んだ自分が、こんな感情を抱くとは。ソロは、小さく笑った。 翼神の背から飛び降りるソロ。 神の背へと降り立ち、妹の元へと駆け寄る。 妹は兄へと笑顔を向けて。 同じ結論に達した兄に、申し訳なさと、嬉しさの混ざった笑みで。 「――ダメェェェェ!!」 アリーナの悲痛な叫び。 二人は、少しだけすまなそうに、仲間達を見て、同時に手袋を外す。
神の身体が完全治癒の光に包まれる。 だが、それよりも速く。 ソフィアの剣が引き裂いた、神の鱗の内部にソロが手を突きいれ。 「ありがとう、皆。――大好きだよ、みんな!」 少女もまた、兄の手に、己の手を添えた。 楽しかった思い出。悲しかった思い出。 故郷を出て、旅をして、様々な人に出会って、色々な土地に赴いて。 一秒一秒が輝いていた。 ありがとう。 だから、これはお礼。 大好きな女の子への、小さな、小さな…。 座標融解現象が巻き起こるその中心で。 最後に大きな泡を生み出し、少女の剣は砕け散った。
空気を裂く音が響く。 大勢の兵士の前で型を披露したライアンに、万雷の拍手が送られる。 武門の誉れ高きこのバトランド王国において、ライアンに勝る戦士は――いない。 「なんと…また、旅に出たいと申すか…」 頭を垂れるライアンに、バトランド王は残念そうに呟いた。 「だが、何故だ?嘗て、そなたは勇者を探す旅に出た。 では、今度は何ゆえに旅出る?」 ライアンは王宮戦士だ。 王宮に仕える戦士が、任務以外でバトランドを離れるなど、本来あってはならないこと。 世界は平和を取り戻した。 最早、彼が旅に出なければならない理由は無い。 王は、この無骨な戦士に、ゆっくりと休んでもらいたかった。 「…私は戦士。戦士は、戦いこそ生業。 幸いなことに、今、この国は平和です。ですが…それでも、この世界には悲しみが満ちている」
「だが、それは――」 魔物が人を喰らうとか、ある意味単純なことではない。 人は、人を傷つける。 そこから生み出す悲しみを打ち消そうとすれば、それは矛盾とやるせなさに焼かれることになる。 戦士の役割では、無い。 「ライアンよ。…悲しみを消すことは…できぬぞ?」 「それでも――減少させることはできると信じます」 「……」 バトランド王は大きく嘆息した。 目の前の大戦士を止められる言葉など、存在しないことを悟ったからだ。 「あい、解った。行け、ライアン。…だが、偶には顔を見せろよ?」 「ハッ!必ず!!」
「あーあ…退屈」 ベッドの上で足をばたつかせる。ぼすぼすと蹴られる枕。 変形してしまったそれは、特に文句を言うことはない。いつものことだし、優しいメイドがまた形を直してくれるから。 「退屈ならばお勉強を」 ブライのツッコミは完全にスルーだ。 馬耳東風とはまさにこのこと。そんな様子をクリフトは苦笑を浮かべて見守る。 「ところで、クリフトにブライが揃って私の部屋に来るなんてなんの用?」 「王が見合いの話を持っていけと仰られましてな」 「帰れ」 「私もなんとかお止めしようとしたのですが…」 「流石クリフト。忠臣ね」 アリーナに褒められ、まんざらでもなさそうなクリフト。 それを見て普段なら青筋を立てて怒るブライが、なにやら神妙な様子だ。 アリーナもクリフトもある程度予想していた事態が起こらなかったために、疑問符を浮かべる。 「実はわしも、もう良いのではないかと思い始めましてな」 意外なぶっちゃけトークに、クリフトの口があんぐりと開く。 対照的にアリーナは小躍りをして喜んでいる。 「ブライ!解ってくれたのね!」
「ええ。このブライ、恋愛沙汰には決して疎くはありませぬ。 どうやらアリーナ姫様には心に思う方がおられる様子。ならば、見合いなどをしても幸せにはなれぬでしょう」 ひげを整えながらしれっと言うブライに、今度はアリーナが慌てふためいた。 クリフトは…開けた口から魂が抜けてしまったのか、呆けてしまっている。 「ちょ、な、何言ってるのよブライ!」 「王を安心させるためにも、彼を探しにいきましょう。旅ですぞ、姫様」 「…まあ、そこまで言うなら…旅は楽しそうだしね…」 婿探しの旅というのはアリーナ的には非常に気になる所だが。 それでも、彼女自身旅は大好きだし、それに…。 「クリフト、いつまで呆けている。 …旅先で色々あって、結局一番身近な人の大切さを知ることもあるかもしれぬぞ」 ブライにぼそっと囁かれ覚醒するクリフト。 彼とて、負けてはいない。いや、負けられない!と、意気込む。 アリーナは二人がなにやらこそこそしてるのに首を傾げていた。
エンドールの小さな武器屋。 その二階で、トルネコは椅子に座りじっと何かを考え込んでいた。 夫のそんな様子は珍しく、ネネは邪魔にならないように、それでもトルネコが自分を呼んだらすぐに返事ができるように、 傍で繕い物をしている。 「…ネネ」 「はい?」 「私は夢を叶えた。世界一の武器屋になるという夢…天空の剣こそ手に入りはしなかったけれど、 武器は元々使い手がもってこそ輝くもの。あの剣の輝きが見れただけでも私は満足だし、今や武器屋の間で私の名前を知らないものはいない」 レイクナバ、田舎の小さな村で店員のバイトをしていた頃から比べれば考えられない出世をした。 富も、名声も得た大商人だったが、それなのにどことなく最近のトルネコは暗い顔をしていることが多かった。 「…すまない、ネネ。私は、また――」 「ええ。用意はできていますよ、あなた」 トルネコが言い終わる前にネネはすっかり整理の終った旅の荷物を机の上に置いた。 眼を白黒させるトルネコに、くすくすと微笑む。
「ただし、条件があります」 「じょ、条件?」 「今度の旅には、私もポポロも一緒に連れて行くこと――前の旅よりも、危険は少ないでしょう?」 この妻には自分は一生敵わないだろう。 そんな予感をトルネコはいつも抱いている。 だからこそ、この展開も、実の所考えてはいたのだ。 そしてそれは――彼にとっても、嬉しいことで。 「解った。行こう、ネネ。だけど、ポポロには此処に友達がいるんじゃないのかい?」 すーすーと眠る息子、ポポロを見る。 「ふふ…もし、またあなたが旅に出るようなら、絶対についていくと言い出したのはこの子ですよ」 「そうか…」 一組の家族の幸せな夜は静かに更けて行く。
ごとごとと揺れる幌の中でマーニャはぱたぱたと鉄扇で風を迎え入れる。 他に見ているものもいないので、中々だらしない格好をしているのだが。 共に旅するミネアはパトリシアの手綱を握っているので、自由なものだ。 「ねーミネア」 「なあに、姉さん」 「コーミズ村で、父さんに報告したら…どうしよっか」 ミネアはマーニャからその言葉が出るのが少し意外だった。 マーニャならばてっきり、あの住み心地の良いモンバーバラで過ごそうとするものだとばかり思っていたから。 「だって、ミネア、あんまり好きじゃないでしょ?」 …何も考えていないようで、時折鋭いことを言う。 マーニャにはひょっとすると自分以上の占い師としての才能があるんじゃないだろうか? 以前そんな話をしたら、マーニャは一笑に付した。 曰く、
「私が解るのは、私が好きな相手限定だもの」 とのことで。 面と向かって好きだと言われて赤面してしまったミネアは、その後マーニャにからかわれることになったのだが。 閑話休題。 「だけど、モンバーバラじゃなければ何処にいくの?」 「んー…ミネアの占い次第ってのはどう?」 「…私には、もうどちらに行くべきかなんて見えないわよ姉さん」 「違う違う。つまり、ミネアちゃんが行きたい方角に行ってみるってこと!根拠なんてなくていいの」 けらけらと笑う姉に、ミネアははあっと嘆息する。 それはもはや放浪に近い。 「父さんの話、覚えてるでしょ。私達の母さん、ジプシーだったって。 …私達は、ジプシーの姉妹。だから、旅が似合うんじゃないかって思ってさ」 「…ジプシー、か。 …そうね、そうしよっか。姉さん」 ひひーん、と、道程は任せろとばかりにパトリシアが嘶いて。 姉妹は朗らかに笑い合う。
ロザリーヒル近くの丘の上で、エルフの少女が歌っている。 花畑の中央に座り、少女の膝を枕に銀色の髪の青年が身体を大地に横たえており。 その綺麗な歌声を堪能している。 「…ピサロ様」 「……」 ピサロは返事をしない。 だが聞いてはいるのだろう。 微かな身じろぎを膝に感じたのでロザリーはそのまま続けた。 「…私…色々なものを、見てみたいです…ピサロ様と一緒に…」
控えめな少女が控えめに伝えた願い。 いずれ、そう言うのではないかと考えていた。 魔王とて、少女を籠の鳥にしたくてあの塔に押し込めた訳ではない。 しかし…。 これからも人は増え続ける。 平和な世で育った人は、きっとそうではない世で育った人よりも――酷い生き物になるのではないか。 そんな、予感めいたものをピサロは感じていた。 「――私は……」 お前が心配だ。 お前を喪いたくない。 そんな言葉を直接発することはない。 それでも、少女には届いていた。 「……行くか」 「……はい!」 青年と少女は以心伝心であり、心がすれ違うことなど二度とありはしないだろう。 少女が行きたいと言うのなら。 叶えてやりたいと思う。その、願いを。
「…ふむ。これは…面白い、な」 ぽつりと呟く緑髪の男。 ソロはとある洞窟の中にいた。 今は失われた技術が眠ると言われる洞窟の中にあった、箱のような乗り物。 その中には、中年の男性が乗っており、延々と同じ線路の上を走らされている。 どういう原理かは解らないが、誰かがスイッチを切り替えてやらなければ止まらないようだ。 男が何か言っているようだが、よく聞き取れない。 「ま、そこで暫く反省してくれ。…なあに、あんたにとっては大して永いと呼べる時間じゃあないだろうさ」 結局ソロは男性を助けず、その洞窟を抜けた。 眩しく差し込む日の光をかざした手で遮る。 「……さて、と」 故郷を喪い、父母を喪い。 まるで運命を暗示しているかのような名前をつけられた青年は、太陽に向かって腕を突き出し、大きく伸びをした。 ――次は、何処へ行こうか。 それが言葉になることはない。彼には、旅の連れ合いはいないのだから。 だが、それでも彼の顔は明るく、希望に満ちていた。 勇者ソロの旅は、まだまだ続いていく。 終りでは、無い。そのことにこそ、喜びを感じているかのように。 孤独な男の右の耳には、スライムのピアス。 そして左の耳には、再会を誓って交換したキラーピアスが輝いていた。
そして――。 岬の上に置かれた墓石。 刻まれる名前は無い。名が無いことこそ、ここに眠る存在の証。 跪く、緑色のふわふわの髪をした少女。 「皆、旅立って行ったよ」 「ライアンもアリーナもクリフトもブライも、トルネコもミネアもマーニャも…ピサロもロザリーも、兄さんも…」 「皆、元気。皆、嬉しそう。一つが終って、これからに向かって、歩いていってる」 「私は」 「私は――……」 「……ぐすっ」 「……私は、もうちょっと時間がかかるかもしれない」 「……ほら、デスパレスもこのままにしておけないから。ピサロはロザリーを幸せにしないといけないから…私が面倒見ないと」
「なんだか、逆になっちゃったね!前は…私が喋れなくて…あなたばかり…喋らせちゃってて…」 「だけど、いつかは…」 「いつか…」 「返事を、してもらいたいから…お話したいから…」 「私も、旅に出る」 「――あなたを、探しに。だから、覚悟しておいてね」 ミニデーモンの小さな影が少女に近づき、デスパレスで魔物たちの喧嘩が始まったことを知らせる。 少女の背の翼が広がり、天空へと羽ばたいて行く――。 彼女の腰で、壊れた砂時計と、刀身の喪われた剣の柄が揺れていた。
――ドラゴンクエスト4 導かれし者たち...if...―― THE END
泣いた
いつものステータスが出せないので投下終了宣言ということで 挨拶やお礼のあとがきみたいな文は用意していなかったので…後日にでも
うおい 感動のあまり呆然としてたぜ リアルタイムで4の人の物語の最後に立ち会えた。・゚・(ノД`)・゚・。 毎日マダカナマダカナしててよかった。・゚・(ノД`)・゚・。 とにかくっ! 4の人今までとってもいっぱいおっぱい乙でしたあああああ。・゚・(ノД`)・゚・。
。・゚・(ノД`)・゚・。 もう4の人にキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━!!できないんだな… 4の人ありがとう本当にありがとう
ついに完結してしまったか。珠玉の物語乙でした!! 読み終わった後、余韻から抜け出せなくて放心してしまった 本当にこの話を書き続けてくれてありがとう!!
忘れないうちに ,j;;;;;j,. ---一、 ` ―--‐、_ l;;;;;; {;;;;;;ゝ T辷iフ i f'辷jァ !i;;;;; ステータス欄の「E パンツ」は ヾ;;;ハ ノ .::!lリ;;r゙ いつか装備から外れる日が来る `Z;i 〈.,_..,. ノ;;;;;;;;> ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',. ,f゙: Y;;f そんなふうに考えていた時期が ~''戈ヽ `二´ r'´:::. `! 俺にもありました
4の人ありがとう。ありがとう。乙でした。
今日久しぶりにリメイク版4の電源入れたんだ。
物語はまだ途中でクリアなんかしてなかったけど、絶対クリアする。
最初から追いかけてきて、本当に良かった。
途中、色々あって投下しにくい時とか、あったと思うけれど、
最後まで仕上げてくれて本当にありがとう。
ごめんな。上手いこと言えねぇや。
そして、
>>626 にワロタ
。・゚・(ノД`)・゚・。おつかれさまです
まさに 感 無 量 2年に渡る超大作、4の人本当にありがとう。おつかれさまでした。
630 :
571 :2007/03/18(日) 02:57:50 ID:lDDu/iTZ0
( Д ) ゚ ゚ 4の人来てるうううう!? 寝る前にもう一回覗きに来て良かった 明日じっくりと読ませて頂きますm(__)m
あぁぁぁ、4の人お疲れ様です あなたがスレに現れた最初からずっと見てました 途中色々あったけど最後まで続けてくれて凄い嬉しい、というかなんというか もう読めなくなるのかと多少ショックもあったり とにかくお疲れ様です! こんな大作を最後まで諦めずに書き終えたあなたは凄い!!
泣いた。ドキドキした。鳥肌たった。 凄いわ。ずっと読み続けて待ち続けて良かった。本当に。 最後の方は凄い展開でもうね。感動した。 マジお疲れ様でした。心からありがとうございました。 彼と彼女に幸せが訪れるよう、祈らずにはいられません。
まとめサイト◆gYINaOL2aEさんの「???」のところ、 一部文章の重複があるよ。
>>634 指摘、ありがとうございます。
修正しました。
いつの間にか4の人来てる――!? 待ち続けたかいがあった・・・(つД`) お疲れ様です。これで最後かと思うと・・・
うおおおおおおおお 涙でモニターが… もうほんと乙です…
ハンドルを使うつもりはなかったのですが、よくこう呼ばれていましたので、感謝の気持ちをこめて。こんばんは、4の人です。 数年にわたるお付き合いありがとうございました。そして長々と申し訳ありませんでした。 色々と悩みながら作りました…拙い話ですが、最後まで読んでいただいて本当にありがとう。としか言えないですね。 最後は、エピローグとしてFF6ワールドで彼が目覚める展開も考えていたのですが、蛇足を恐れてやめました。 続きを匂わせるのも責任が発生しますからねw 後書きめいたこの文章も蛇足といえばそうなりそうですが…けじめということで一つ、大目にみてやってください。 1つのお話はこれで終りましたが、まだまだ進行中のお話は沢山あります。 綴る人は是非完結を目指して、読む人は是非自分にしてくれたように皆を励ましてあげてください。 まとめサイトの管理人さん、避難所の管理人さん、いつもお疲れ様です。 まとめサイトはカッコいいデザインで、見るのが楽しいですし、避難所はこのスレに何かあったときの為にも必要だと思います。 最初に、完結までメル欄でのちょっとした訂正以外喋らないと決めていたので、感想に対してろくに反応もせず申し訳ありませんでした。 本当はコテありコテなし関わらずもっと思い出や、御礼を言いたいのですが、長居もあまりよくないかなと思います。 名残は惜しいですがこの辺りで。 いずれ、また。此処か、または別の場所で再会できたら嬉しいです。 それでは、失礼いたします。 …と、お別れのような台詞を吐きつつも、レスの必要な事態も考えてまだ見てますけどねw ひとまずは、これにて。
4の人お疲れさま。 ただ一言凄いとしか言い様うがないなぁ…
4の人本当に本当にお疲れ様! お金を出して読まないと申し訳ないような素晴らしい作品でした。 初めは笑い、最後の方は緊迫と涙で、本当に心を揺さぶられました。 とにかくお疲れ様と感謝の気持ちでいっぱいです。 もしもし気が向いてまた書きたくなったら、気軽に短編でも何でも投下しにきてください。
4の人、お疲れ様でした。 素敵な物語をありがとう。
>>638 「完結まで喋らないと決めていた」のかあ。なんか (・∀・)カコイイ!!
あとがきは蛇足なんかじゃないと思うよ。
4の人の素の文章が読めて嬉しかったし。
みんなの感想レスもちゃんと読んでてくれてたんだなあと…。
このスレの住人で本当に良かった。
ところで、
>>571 のすぐ後で投下を始めたのは偶然ですか?
前回も確か「4の人マダー」レスの直後に投下された気がしますが(・∀・)ニヤニヤ
4の人よ、これだけは言わせてくれ 貴 方 様 は マ ジ ネ申 今まですげえいい話読ませてもらったわ・・・・ とにかく本当に乙
4の人が頻繁に投下してたときは毎朝このスレをチェックするのが日課でした。 この作品を読むのがいつも楽しみで仕方なかったです。 この作品が始まってすぐにリメイク4をやってしまいました。 特別好きな作品が終わる瞬間というのは、いつも寂しい気持ちになります。 この作品がまさにそれです。 本当に長い間ありがとうございました。
4の人氏お疲れさまです!笑いあり涙ありのすばらしい作品でした。自分は4やったことなかったけど全然楽しめました!気が向かれたらまた投稿してください!本当にお疲れさまでした
4の人、2年間本当にお疲れ様でした。 私が4をプレイした理由は、4の人の作品を見て非常に感動したからでした。 素晴らしいお話だったと思います。 最後まで書いて頂いて本当にありがとうございました。 改めて、今までお疲れ様でした。
最後まで書き続けてくれてありがとうございます。 この作品に出会うことができ、心から幸せに思います。 お疲れ様でした。 しっかしこのスレがこんなに続くとは思わなかった〜。 根気強く保守し続ける住人のみんなと、何より書き手さん達のがんばりのおかげですね。 これからもwktkしながらスレを覗き続けます。
「俺は――俺は、ソフィアの、剣になりたい。決めた。今、決めた!!」 。・゚・(ノД`)・゚・。
誰か映画化してこいよ ほら、ほら!
4の人乙でした 楽しく読ませて頂きました
4の人乙です! 今まで長い間楽しませてくださって本当にありがとうございました、お元気で!
>>648 そこ2回目読むとヤバイよね。
台詞、行動、至るところで最後へつながっていて、本当に初めからつくりこまれてるのが良く分かる。
ピサロやソロ側の、ある程度世界を分かっていた人達の行動なども、読み返すとまた感慨深いものがある。
仮の世界ではあるけど、きちんと4の世界を生かした上で、さらに素晴らしい物語と結末を作りあげた4の人、ネ申!
これからも繰り返し拝読させて下さい。お疲れ様でした!
やばい。まだ余韻から抜け出せない…
とりあえず本日徹夜で頭から読み返し1日中物語が脳内駆け巡ぐった漏れがいる。 足掛け2年間本当にお疲れさまでした。
4の人、GJで、乙で、この作品を書いてくれてありがとうございました。 ところで主人公が『剣』になったということは、 ひょっとして『刀身の喪われた剣の柄』というのはパンt
>>655 _人人人人人人人人人人人人人人_
> な なんだってー!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
_,,.-‐-..,,_ _,,..--v--..,_
/ `''.v'ν Σ´ `、_,.-'""`´""ヽ
i' / ̄""''--i 7 | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ ヽ
. !ヘ /‐- 、u. |' |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、 |
|'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ! iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
. ,`| u ..ゝ! ‖ .j (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\ (二> / ! _`-っ / | 7  ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' / \ '' /〃.ヽ `''⊃ , 'v>、
!、\ \. , ̄ γ/| ̄ 〃 \二-‐' //`
もうあれだよな4の人は神だよな。 そしてほかの作者さん達の話の続きもwktkしてます。
4の人乙でした。毎回わくわくしながら楽しみに読んでたよ。 マスドラとの戦いや、その後トロッコに放置wとか自分の中で公式歴史になりそうだw パンツの彼も勇者が二人同時に存在する事も違和感が湧かない。 現在連載中の作者さん達も応援してます 投下楽しみに待ってるよ!どうか最後まで読ませてください 続きがきになってしょうがねえ!
ェアみんながんばれ
彼がいつも荷物運びさせられてたのは、「ふくろ」だったからなのか… ふくろカコイイ
4の人お疲れ様です
>>4 の人さん
長期間お疲れさまです。鳥肌立ちました!
自分は途中からだったんですが、こんな良作の最後に立ち会えて幸せです。ありがとうございます。
>完結まで喋らない
か、格好いい・・・。自分は喋りすぎですか。そうですか。沈黙は金ですか。
見習って自分も完結まで頑張ろうと思います。
てゆうか、エピローグ案か ぶ っ た(つД`)
続き投下しようと思ったんですが
ものっそ投下し難い雰囲気にビビッてます。
早く投下してくれえええええええええええええええええ
666 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2007/03/23(金) 01:46:46 ID:PH6p2EXF0
>>662 まぁこれだけのネ申作品が完結した後だけに
自分の作品出そうと思っても出したくない、という気持ちは分からんでもないがw
つか俺なら絶対(´・д・`)ヤダw
てか4の人はなんでこんなに文才あるのにここで作品投下してるんだろうかね・・・
これマジ小説本にして売り出せるよ
下げ忘れたスマソ 首吊って
恥や外聞を捨てる事から全ては始まる その時が来たら 私は血も心も捧げます 正気にては大業ならず ネタスレに限らず、創作はシグルイなり
4の人お疲れ様でした。いままでご苦労様です。大変楽しませていただきました。 けどソフィアも幸せにしてあげて欲しかったです。
総長・・・(・ω・`)
俺も総長読みたい
総長という流れをよまず、オリジナル書いてみますた。 一応出来たとこまで書き込みます。 これテストなんで、つまらんくて目に毒っぽいならやめるんで教えてください。 話として続きはどんどん明るく、バカバカしく、口悪く書いてこーかと思いますww
全ては―たった1つのレスから始まった。 『ドラ糞マジつまんね』 …このような心無い書き込みなど2ちゃんでは日常茶飯事だと言うのは重々承知している。 しかし、その日は酒が入っていたせいだろう。 俺はどうしてもそのレスが許せず、ついつい反応してしまった。 『氏ね。ドラクエの面白さが分からんヤシはうんこ』 そいつはすぐにレスを返してくる。 『俺も昔はドラクエ好きだったよ?ただ「ドラクエ課」が「第9開発事業部」に変わってからは糞。 …あと、悪口に「うんこ」しか思い付かないお前は童T(ry』 …俺は怒りのあまり体が震えていたことに気付いた。 許せない。確かにFC、SFC時代の作品は素晴らしいが、7、8だって良い所はあるんだ。 俺はこいつを許さない。ドラクエを糞呼ばわりしたこいつを…俺の童貞を見抜いたこいつを……絶対に許せない。
俺は再びキーボードに指を走らせる。 俺はこいつにドラクエの良い所を知ってもらいたかった。 別にマンセーして欲しいわけではないが「糞」の一文字で片付けられてしまうのは余りに切ない。 さっきはああ言ったが、もう俺の童貞なんてどうでもいい。 だが…酔っぱらっているせいか? うまくキーボードを叩くことができない。 PCの画面が揺らめく。 映しだされた文字が、まるでゲシュタルト崩壊を起こした時のように認識することが出来なくなっていた。 …ヤバイ…気持ちわりぃ…このままじゃ吐き…いや、ぶっ倒れそうだ。 もう意識を保つことで精一杯。 今さっき考えていたことすら思い出すせなくなってしまっていた。 …くそ、俺は18年も生きてて「思い出す」すら覚えていないのか…? だが書き込まなければ……ハッタリでいい。たった一言でいいんだ。……打ち込め!! 『俺は童貞じゃない!!』とッ!!
『…ここ…どこだ?』 何も見えない、聴こえない。 …あぁそうか。俺はカキコする直前に力尽きたのか… だが…何故だろう? さっきまでとは打ってかわって意識がハッキリしている。 それに、落ち着いたからだろうか? さっきまでスレ上でやりあっていたヤシも気にならない。 単なるアンチとスルーできる心の余裕も戻った。 『真っ暗だな…』 ここが夢かどうかは定かでは無いが…1つだけ確定していることがある。それは…… 次に目覚めた時、俺はきっとドラクエの宿屋のベッドの上にいる。と言うことだ。 それは、さっきまでドラクエを擁護していたという完璧なフラグと、このレスがこのスレに書き込まれているという事実から容易に推測できる。 俺は腹をくくった。 ……別に昨日母親にオナヌーを見られたからこんな逃避をしているわけではない。 俺は主人公として全てを受け入れると決めただけなのだ。
しかし…そう意気込んだものの… 『………』 俺は常闇の空間でふと思った。 振り返ると…なんのイベントもない冒頭だったものだな。と… 魔王に敗れ、体を分離させられたわけでもない。 夢で性格診断もされていない。 虚しさを全く感じないと言えば嘘になる。 …しかしこれが現実。 俺の物語はゲロを我慢して気絶したところから始まったのだ。
『納得できるわけねぇ』 そんな冒頭なんて俺、不憫過ぎ。 1つだけ我儘を言わせてください。 せめて性格は『むっつりスケベ』にしてください。 あの能力値の成長度が魅力的なんです。 決して僕はむっつりではありませんが、お願いします。 などと虚空に向かって懇願し続ける俺。これまでに費やした時間は、軽く1時間を越えているだろう。 しかし…中々イベントが始まってくれない。 このままでは冒険に出られないという大惨事が起こってしまう。 恐らくこれは俺がまだレム睡眠だからいけないんだと思う。 深い眠りから醒めればそこはきっと宿屋のはず… 『さて、冒険の書を作るとしますか…』 俺はそう呟き、全身の力を抜いた。 一応…「むっつりスケベ」になる努力はしておこう。 俺は薄れゆく意識の中、チャモロ×ハッサンを妄想しながら、深い眠りを待つことにした。
支援
おはようございます。
総長〜新作という流れを全く読まず
>>546 続き投下します
城門を抜けると、闇は一層濃くなった気がした。 ビアンカが『なんだか不気味ね・・・』と呟く。 低い塀に沿って正面に向かうと、扉の前には 風雨に曝され続けてきたのだろう幾つもの墓石が立ち並んでいた。 ビアンカが嫌そうに顔をしかめる。 『やだ。どうしてお城の入り口にこんなに沢山お墓があるの?』 問いの答えは持ち合わせていなかった。 わからない、と首を振って墓の間を抜けていく。 扉は開かない。 ビアンカが一緒に手をかけるが、幾ら押しても引いても扉は固く閉ざされたままだった。 正面を諦め、城の外壁に沿って裏手へ回る。 途中に転がっていた壷を調べると、薬草とキメラの翼があった。 拾い上げて更に城の裏へ向かう。 月灯りが見えてくるかと思ったが、 僅かの間に空は分厚く黒い雲で覆われていた。 今にも雨が降り出しそうに、空気が湿り気を帯びている。
城には裏口はなく長く高い上階までの螺旋階段があった。 金属で出来ているらしいそれはすっかり錆び付いて、 触れるとざらついた感触が掌に張り付く。 細い手摺意外に支えのない剥き出しの階段をゆっくりと慎重に上っていく。 ビアンカが手摺に当てたのと反対の手で俺の服を掴んだ。 時間をかけて一番上まで辿り着くと、 ぽっかりと口をあけた大きな入り口があった。 真っ暗なその中は、サンタローズの洞窟を彷彿とさせる。 躊躇いながらの口調でビアンカが『ねえ、先に行って?』と呟いた。 その声が微かに震えていて、俺はなんだかほっとした。 ビアンカの手を引いたまま暗闇に踏み出す。 瞬間、空間を震え上がらすような大きな雷の音が響いた。 反射的に耳を覆う間もなく、真後ろで鉄扉がけたたましい音を立てて閉じる。 ビアンカが小さく悲鳴を上げる。 まるで一瞬のうちに全てが起こり、聴力が奪われたかのような沈黙が戻った。 青紫色の雷光が、余韻を落とすかのように室内を一瞬だけ照らした。 小刻みに震えるビアンカの掌を感じて、俺はその小さな手を握り返す。
『ねえ・・・、閉じ込められちゃったの?』 動揺を隠さずにビアンカが泣きそうな声を出す。 雷の音が、応えるように天から唸り声をあげる。 途切れ途切れに照らされる部屋の中央には棺桶が並び、奥に階段が見えた。 階段を示すとビアンカは少し安心したように 『進んでいけば大丈夫よね・・・』と言った。 手は離さないまま棺桶の間を進む。 一つ一つのその箱からは、何者の気配も感じなかった。 試しにひとつ開けてみようとすると、 ビアンカが『やめてよ、サン』と気味悪そうに言った。 諦めて階段まで差し掛かったところで、ゴトン、と背後から、物音が響いた。 恐る恐る振り返る。 ゴトン、ゴトン、と音を立てて、 並べられた棺桶の蓋がひとつずつ床に滑り落ちていた。 なにあれ、とビアンカが悲鳴交じりの声を上げる。 ぬるりと、中から得体の知れない何かが、姿を現す。 不意にまた部屋が闇に包まれた。 ビアンカの悲鳴。 咄嗟に繋いでいた手に力を込めたが、それは否応なしに暗闇に引き剥がされた。 視界が戻る。開け放たれた棺桶。 ビアンカの姿はもうない。
大丈夫、何処に居るかはわかっている。 もしそれを知らなかったら俺は、この孤独な暗闇の中で途方に暮れるしかないだろう。 俺は身を返すと一気に階段を駆け下りた。 広い通路には鎧を纏った戦士の像が立ち並んでいる。 そのうち一体が微かに動いたような気がしたが、 とりあえずそれを無視して俺は奥の扉を開けた。 荒れた広いバルコニーに、小さな墓石がふたつだけ並んでいた。 入り口前にあった物と同じように風雨に削られ朽ちていたが、 崩れかけたそれらに掘り込まれた装飾が他のものと違うことは一目で解った。 黒い雲がまた紫色に光り、雷鳴が響く。 その音に混じって、小さく呻くか細い声が聞こえた。 手前の墓石を調べたが変化はない。 もうひとつに目を遣ると、もう一度少女の声がした。 それを手がかりにもうひとつの墓石を調べる。 動かせないんじゃないかと不安だったが、乗せられた石の蓋は、 俺が力を込めると簡単に台座から滑り落ちた。 同時に少女が大きな棺の中から顔を出す。
『ああ!苦しかったわ!もう、なにしてたのよ!遅いじゃない!』 転がるように暗い穴の中から這い出して、 ビアンカは息苦しそうに大きく息を吐いた。 手を取って立たせると、体に纏わり付いた砂埃をぱたぱたとはたく。 『もう・・・まあいいわ。探してくれてたのよね。早く行きましょ?』 ぎこちないままの笑顔で差し出されたビアンカの手を握って、 俺は少女の前に立って反対の扉に向かった。 中はかび臭い書庫だった。 幾つも並べられた本棚は何者かが掻き回した後のように乱れ、 分厚い本が何冊も床に散乱している。 今くぐった場所のほかには見渡す限り扉はなく、 一歩踏み込むごとに足元に舞い上がる細かなほこりが 大きな窓から瞬くように差し込む青紫色の光に照らし出されていく。 ぴかり、ともう一度雷が瞬いた時に、 ビアンカが小さく悲鳴をあげて俺の手を強く握った。 その瞬間まで気付かなかった。 窓の手前、白く輝く何かが、こちらに背を向けてふわりと佇んでいた。 視界の半分を遮る本棚を迂回して一歩、それに近付くと、 外光を反射した白いそれはゆっくりと、こちらを振り向いた。
ビアンカの手が緩むのを感じた。 暗闇に浮き上がるようにぼんやりと白いその女性の笑顔は、 あまりにも寂しそうで、悲しいほどに美しかった。 言葉が出なかった。 女性はじっと俺とビアンカを見つめると、そっと目を閉じる。 その睫毛の先から、透明な雫が一筋、頬を伝い落ちた気がした。 刹那、弾けるような雷鳴と、何かが床を引きずる嫌な音が背後に響いた。 ビアンカが悲鳴を上げる。 振り向くと、部屋の真ん中を占拠していた大きな本棚が、 何冊もの本をばたばたとこぼしながら床を滑り 壁に衝突して最後うつ伏せに倒れ込んだ。 空気が変わるのを感じてもう一度窓に向き直る。 女性の姿はなく、淀んだ夜空が怒りを表すかのようにびかりと光った。 『あの人、もしかして・・・』 無くなった本棚の下から現れた階下へと続く小さな階段を見下ろしながら、 俺はビアンカの冷たくなった指先をもう一度握りなおした。
階段を下りると、城内は更に傷み、 かびと埃の交じり合った湿っぽい匂いが強く鼻を突いた。 窓から差し込む雷光と出所の知れないぼんやりとした灯りで、 歩き進むことには不自由はなかった。 蝶番の壊れかけた扉の先には毛羽立って変色した絨毯が敷き詰められ、 中ほどには城内で初めての両開きの大きな扉が設えてあった。 この城がまだ幸せに平和に存在していた頃の、 きっと高貴な人間の場所だったんだろうとそれだけで解った。 そっと扉に触れる。 ささくれ立って面影さえ残さない上質な上紙が 俺の掌に抵抗もせずぱりぱりと剥がれ落ちた。 扉を開く。 やはりそこは王と、王妃の部屋だった。 天蓋の付いた大きなベッドが並び 扉の外れた背の高い衣装箱が置き去られたまま佇んでいる。 反対側のソファには、さっき見た女性が静かに俯いていた。 泣いているようにも見えたが、 顔を上げた女性の表情は書庫で見たそれよりもずっと穏やかだった。 その姿からは、不安も、恐怖も感じない。 女性は俺を見、ビアンカを見、少し躊躇うように口を開いた。
『わたしは、このレヌールの王妃、ソフィアと言います』 耳を澄まさないとすぐに薄闇に消えてしまいそうな、か細い声。 俺は歩を進めて、彼女の傍に立った。 『もう十数年も前、この城の者は皆、魔物に襲われ殺されてしまいました。 邪悪な者が世界中で、身分のある子供をさらっているとは聞いておりました。 でも、わたしくとエリック・・・王の間には、子供は居なかったのです。 どうしてあんなことに・・・』 声が震えているのが俺にもわかった。 王妃は気丈に笑顔を保っている。 その睫毛の先に一滴、涙が零れ落ちるのを拒むように震えている。 『今となってはもう、嘆いても仕方のないことです。 せめてわたくし達は静かに眠りたい・・・ですが今、 この城にはゴースト達が住み着き、城の皆を呪われた舞踏会に縛り付けています・・・。 どうか、どうかあのゴースト達を追い出してください・・・』 王妃のぼんやりと透き通った姿が 今にも消え入りそうにまた俯いた。 『王妃さま・・・かわいそう・・・』 部屋を出て扉を閉じると同時に、ビアンカが表情を曇らせて呟いた。 うん、と声に出して頷くと、俯いたままビアンカは小さく 『サン、頑張ろうね。どうせお化け退治に来たんだもの。いいよね』 言って、その小さな左手を胸の前で握り締めた。 がんばろう。そう、口の中だけで呟き返して 俺は廊下の向こう、来たのと反対側の扉を見据えた。
本日ここまでで ありがとうございます。
休暇支援
>>691 タカハシさん乙です。
ありがとうございます。
1つ聞きたいんですが、先程の話でいくつか(てゆーか沢山)コピーをミスってたんですが修正って可能ですか?
あと、こういう質問はこれからはまとめサイトの方でするべきですか?
本当に御迷惑かけてしまって申し訳ありませんorz
>>692 ぼーちんさん
修正は、その箇所を書いていただければ出来ますよ。
修正や変更の依頼はそうですね、まとめサイトからいける「非難所掲示板」の
「避難所、まとめサイトについて」でお願いします。
今後も遠慮なく言って下さい。
>>692 気楽に行こうぜ
修正しちゃいなよ、you
>>693 >>694 てことは修正したやつをまた貼ればいいということですね?
これからなにかあった時は、その「避難所掲示板」の方に質問させて頂きます。
レスの返答ありがとうございましたww
>>675 からの修正です。
『…ここ…どこだ?』
何も見えない、聴こえない。
…あぁそうか。俺はカキコする直前に力尽きたのか…
だが…何故だろう?
さっきまでとは打ってかわって意識がハッキリしている。
それに、落ち着いたからだろうか?
さっきまでスレ上でやりあっていたヤシも気にならない。
単なるアンチとスルーできる心の余裕も戻った。
『真っ暗だな…』
ここが夢かどうかは定かでは無いが…1つだけ確定していることがある。
それは……次に目覚めた時、俺はきっとドラクエの宿屋のベッドの上にいる。と言うことだ。
それは、さっきまでドラクエを擁護していたという完璧なフラグと、このレスがこのスレに書き込まれているという事実から容易に推測できる。
俺は腹をくくった。
……別に昨日母親にオナヌーを見られたからこんな逃避をしているわけではない。
俺は主人公として全てを受け入れると決めただけなのだ。
しかし…そう意気込んだものの…
『………』
俺は常闇の空間でふと思った。
振り返ると…なんのイベントもない冒頭だったものだ。
魔王に敗れ、体を分離させられたわけでもない。 夢で性格診断もされていない。 虚しさを全く感じないと言えば嘘になる。 …しかしこれが現実。 俺の物語はゲロを我慢して気絶したところから始まったのだ。 …しかしそんなの… 『納得できるわけねぇよな…』 …確かに、気絶して気付いた時は見知らぬ場所…ってのはカコイイよ。 でも、問題はそのシチュエーションだろう。
そうだな…例えば…… 好きな女の子をパンツ男に誘拐されてしまう。 そして俺は勇敢にも敵のアジトに乗り込むんだ。 …しかし、やはり相手もさる者。キングヒドラと互角に渡り合っただけはある。 強い…このままじゃ…… その時、変態の斧の一閃がその子へと襲いかかった。 『危ない!!』 『きゃっ!』 頭で考えたことじゃなかった。 気付いた時には体が勝手に動いていた。 この子を助けたい。絶対に…俺の命に代えても― 俺が力の限り突き飛ばしたことで、その子は窮地から脱することができただろう。 しかし……斧が俺の体に―― 『うわあぁぁぁぁッ』
………てな感じが良かったよ。 ううん。そこまで贅沢は言わないよ。だけど… 『ゲロを我慢して気絶』はないだろう!? そんな冒頭なんて俺、不憫過ぎだろ!? …はぁ…はぁ…… いや…落ち着け、落ち着くんだ俺。 過去は変えることができないのは理解している。 だからもう気絶方法はとやかく言わない。 でも…1つだけ我儘を言っても許されるのなら、俺はこれから訪れる未来に祈ろう。 …せめて性格は『むっつりスケベ』にしてほしい。 あの能力値の成長度が魅力的なんです。 俺は決してむっつりではありませんが、どうかお願いします。 などと虚空に向かって懇願し続ける俺。これまでに費やした時間は、軽く1時間を越えているだろう。
しかし…中々イベントが始まってくれない。 このままでは冒険に出られないという大惨事が起こってしまう。 恐らくこれは俺がまだレム睡眠だからいけないんだと思う。 深い眠りから醒めればそこはきっと宿屋のはず… 『…さて、冒険の書を作るとしますか…』 俺はそう呟き、全身の力を抜いた。 一応…「むっつりスケベ」になる努力はしておこう。 俺は薄れゆく意識の中、チャモロ×ハッサンを妄想しながら、深い眠りを待つことにした。
以上、修正です。 タカハシさん。お手数かけてどうもすいませんでしたorz
おつんつん
保
守
age
ゆうべはおたのしみでしたね ひとりで!!
まさに、外道!!
新規参入を考えている者なのですが、質問があります。 今考えている企画が「宿屋で目覚める」という条件から外れてしまいます。 少々無理をすれば、「冒険開始から数日後の宿屋」からスタートし、 ストーリー上の初日(宿屋ではない目覚め)を回想とする形で、 処理することもできないことはない……のですが。 読者様方のご意見としては、やはり宿屋からを希望されますでしょうか?
全く無問題と思われ。
目が覚めたら、裸の女と一緒にベッドで寝てたっていう展開からキボンヌ
厳密に考えれば宿屋スタートなんだろうが、過去作品でもそうじゃないものもあるからね。 「もし目が覚めたらそこがDQ世界だったら」ということでもいいのでは? というかぜひ新作見てみたい。期待してまつ。
個人的には「もしこっち(現実)の世界の人がドラクエの世界に来てしまったら」だと思ってるから全く問題はない
昔はやけにこだわってた気もするが、無理矢理宿屋からスタートして、 ストーリーが破綻するよりは百倍いいな。気にせず投下してくれ。
みんなそう思ってんだったらスレタイの方を変えりゃいいのに、って 前の宿屋スタートか否か問題のときにもそう言われてなかったか。 なんでいつまでもこのスレタイのまんま?
流れじゃない? あえて変える必要もないというか、愛着があるというか
愛着だな、もうこのスレタイで何年もきたんだし今更変えて欲しくない(・ω・`)ってのはある
このスレタイのままに一票
かといって毎回この話題が出るのも何だし、テンプレに補足くらいはいれるべきかもな
お久し振りです( ^ω^) まず4の人こと◆gYINaOL2aEさん本当にお疲れ様でした。 スレが止まってる時に現れては颯爽と去っていく救世主、4の人。 僕の中ではそのような印象があります。 余計な事まで喋っている僕にとってはあなたの姿勢は尊敬に値します。 それでも僕はあなたの話を色々と聞いてみたかったですw 僕も完結まで頑張りたいと思います。 ありがとうございました。 それでは投下しますね。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「あんっ! あぁ! 見ないでっ……!」 私を見る彼女の目が見開かれた。 その瞳を通じて彼女の心が見て取れる。 助けて欲しい。 けれど、見られたくはない。 そんな矛盾した感情。 「あっあっあっ! くっ……ふっ……」 彼女は意思に反して漏れる声を、口を塞ぐ事で聞かせまいとした。 そんな彼女を嫌らしい目で見つめる男… その息遣いが生々しい。 「はぁはぁ…いいぞ……気持ち良いんだろ? もっと締めろ!」 そんな事を言いながら、体を彼女に打ち付ける。 気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い…… 私はその場で胃の中のものを全て吐き出してしまった。 「いくぞ…いくぞ……はっはっ! いくっ!!」 「イヤイヤ! やめて! ん〜っ!!」 彼女が嫌悪の声を上げるが力が入らないようで、男を跳ね除けることができない。 しばらく動きを止めていた男は一息つけると、彼女から体を離した。 彼女はそのままの体制でぐったりとしたまま動けない。 しかし男は私の存在に気付いていたのだろう。 顔をこちらに向け、ニヤリと笑みを見せた。 (嘘……)
そして裸身を隠そうともせず、むしろ見せ付けるようにして歩いてくる。 「次はお前かぁ〜、確かに数は多い方がいいよな。 まだ出し足りなかったところだし」 何を勝手な事を言っているんだ… 私にもソレをしようとしているのか? 本能的に後ずさる。 一歩でも遠く、この醜き者から離れたい。 これが、人間のする事なのか……? 「今気持ちよくしてやるからな。その代わりちゃんと産めよ?」 男の手が私の体に触れようとする。 その汚らわしい手で。 「うわあぁぁぁぁぁぁぁー!!」 私はそこで初めて叫び声を上げた。 無意識の内に、その声に魔法力を込めていた。 男は一瞬にして人の形を失い、私の前から姿を消す。 「はぁはぁ……」 「……うっ…ううぅ……」 荒い息をしていた私は、彼女の嗚咽で我に返る。 私はフラフラと彼女の側に寄っていった。
「ひっ!! やめてっ!!」 怯えた目。 私の事を先程の男だと思ったのだろう。 彼女の体はがくがくと震えていたが、 私が自分と同じエルフだと認識すると、恐怖は消え去ったようだ。 彼女の頬に手を当て、目元の涙を拭ってやる。 すると彼女は、にっこりと笑った。 「……して……」 「……?」 「自分では…出来ないから……」 彼女があごを上げて首元を私に晒し、 私の両手をそこへ添えるようにそっと促した。 それで彼女の望みを理解する。 その時の私にまともな思考などありはしなかった。 ただそうするしかないんだ、と思った。 手で輪を作るようにして、彼女の首にあてがった。 汗でしっとりと濡れた肌を少しずつ圧迫していく。 トクトクと流れる彼女の血液の動きが、私の手の平を力無く押し返した。 その働きのなんと力強いことか。 いっその事、私の手を跳ね除けてくれれば良かったのに。 締められる痛みと、酸素の不足で彼女の顔が歪む。 しかしそれでも彼女は一切抵抗する事はなかった。 目を閉じ、あ・り・が・と・う、と唇を小さく動かして私に伝える。 そして間もなく、彼女は息をしなくなった。 「……」 私は彼女と同じように息を殺して泣いた。 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
彼女は夢を見ていた。 彼女が女王となる前。 人間の尺度で言い換えれば昔も大昔の事だ。 彼女は今とは違う地で平和に暮らしていた。 まぁその頃はまだ魔王も存在しておらず、平和が当たり前だったのだが。 しかし彼女は人間のように毎日の繰り返しに飽きる事もなく、 ただただエルフとしての使命を全うする、一般的なエルフの一員だった。 エルフとして生まれた事をルビス様に感謝し、 この世の全てに希望を見出し、 水の冷たささえ愛していたかもしれない。 けれどある時を境に彼女の生活は一変する。 同じ土地に住んでいた人間とエルフとの関係が急激に悪化したのだ。 その原因は一重に人間の側にあり、 それに柔軟に対応できる程エルフは裏表の無い純粋な生き物なんだというのが、 事後に当時を思い返した彼女の結論である。 もちろん当時の彼女がどこまで事態の推移を把握していたのかと問われれば、 ほんの一部に過ぎないと言わなくてはならない。 しかしその出来事は、彼女に非常に大きな衝撃を与えた。 その後、虚ろに一点を見つめ続けて涙を流しているのを年長のエルフに発見され、 彼女は幼きエルフ達と供に遠い地へと避難する事が決定された。 その判断は迅速ではあったが、同時に事件の規模の大きさを物語っていただろう。 そしてその時の母親達の様子はやはり尋常ではなかったと記憶している。 混乱と、焦りと、不安と。 多くの感情がない交ぜとなったあの表情は忘れられなかった。
移住した遥か遠方の地において、彼女は一族の長の名で呼ばれるようになった。 そこでの年長者は彼女しかいなかったのだから、それは自然な事である。 決して望んだ事ではなかったが。 しかしそれからの彼女は、その名に相応しくあろうと努力するようになった。 彼女は女王として幼き子らの幸せを考えようとする。 女王としての使命。 それは里を守る事だと思った。 里のエルフを守る事だと。 その為に女王は里のエルフ達にあの事件については何も教えず、 人間との関係を絶って、ひっそりと暮らすように里を外界から隔離する事を決めた。 しかし悲劇は何度も繰り返される。 そこでもアンのように何人かのエルフが人間と関わり、やはり不幸になった。 人間と関わったエルフ達は一様に女王である彼女の方針を非難したが、 女王はそれがエルフの幸せに繋がると信じられなかった。 もし彼女達が女王の胸の内を知っていれば、また違う結果を生んだかもしれない。 誰にも言えない思いを抱えた女王はただ沈黙するしかなかった。 彼女は夢を見ている。 脳が勝手に作り出すあの、ちぐはぐでいい加減な内容ではない。 体の中に深く刻まれた、記憶という名の夢。 思い出すよりも鮮明に、この夢はその時を彼女に体験させた。 最も嫌悪する彼女のトラウマの種。 何回も何回も何回も何回も何回も夢に見た夢。 ルビーを使って自らが望んでいつも見る過去の夢ではない。 忘れたくても忘れられないもの。 自然に汗が噴き出してくる。 唾を飲み込もうとするが、喉が潤いを欲しているのを自覚するだけだった。
夢とは通常、寝ている間に見られるものだ。 しかし今彼女が見ているのは、夢と現実の両方。 もちろん片方は現実ではないのだが、 夢を見ているまさにその時のようなリアリティを持って迫ってくる。 夢と現実。 それが同一なものとして認識される。 そして夢を見ている間だけ、女王は"彼女"に戻っていた。 今や夢の中の男に対する嫌悪感は、現実に相対するクルエントへ向けられた。 だから、彼を、殺さなくてはいけない。 その感情の移り行き。 「うわあぁぁぁぁぁぁぁー!!」 もしこの世界に歴史というものがあったとしても、 彼女の物語は決して紡がれる事はないだろう。 語り継がれざる彼女の思いが、言葉の代わりに呪文となって発せられた。 「むぅ…」 思わずうなったのはクルエント。 先の戦闘で女王が見せたいくつかの呪文は質・量共に熟練しており、 彼女のレベルの高さを物語っていた。 が、こと二回目の戦闘においては、 まるで別人を相手にしているかのような変化をクルエントは感じていた。 一般的に、呪文は使用するMPの量で威力が決まると考えられがちであるが、 それは無知による誤解である。 いや中級者に至ってなお、その事に気付かぬ魔法使いもいるのだから、 そのような言い方は適切ではないかもしれない。
呪文に最も必要な要素であり、質を高める事にも繋がるそれは、集中力だ。 意識を集中という事だけではなく、威力を集中させるという意味も持っている。 ただ膨大な量のMPを垂れ流すだけではなく、 いかに目標だけに集中出来るのかが威力を決定する。 それが上級への第一歩だとされている。 しかし今の女王は明らかに集中力を欠いていた。 放たれる呪文に現れる使い手の意思は強烈過ぎたし、 精密だった狙いがだんだんと狂い始めている。 そしてなおかつ呪文一発あたりのMPの量を増やしつつあった。 それは事態を悪い方向へと誘う契機になりかねない。 洗練された技は、方法さえ間違わなければ対処しやすくもあるが、 暴れ狂うホースから噴出する水のように女王の呪文は制御を失っている。 最悪洞窟が崩れるような事も有り得るかもしれない。 「しかしな」 彼にとって洞窟など関心の対象ではない。 もし崩れ去ったとしてもリレミトで簡単に脱出できるのだから。 しかしそのせいで女王が生き埋めになってしまっては困るのだ。 女王とてリレミトぐらい唱えられるだろうが、 今の女王の様子では状況判断が正確に出来そうもない。 ならば女王の呪文の威力を全て封じて、なおかつ女王をモノにしてみせよう。 そんなクルエントの気迫である。 元々血気盛んな男であったのだ。 そして今は若さを取り戻した高揚感もある。 万が一にも失敗など起こりえるはずもない。 ただ若さにかまけた自信ではなく、確固たる自負に基づいた意気込み。
「最盛の力こそ美たりえるのだ」 己の考えに浸っていたクルエントは、 自身の懐が光っている事に気付かなかった。 赤く、赤く、赤く。 誰の意思に応じる訳でもなく、夢見るルビーはその力を発揮していた。 激突する呪文と呪文。 女王が一つ呪文を唱える間に、クルエントは三つ呪文を放つ。 クルエントは呪文のランクを下げつつ、数で対抗する事を選んだ。 女王と同じレベルの呪文を唱えていては押し負けてしまうからだ。 それ程に女王の呪文は威力が高い。 これで先程のように洗練された技術を上乗せされていたら確実に負けていただろう。 そういった部分ではクルエントは負けを認めていた。 しかし完全な敗北ではない。 呪文の連続詠唱は立派な高等技術の一つであり、 クルエントの詠唱スピードは世界でも一二を争うに違いない。 そしてそれは制御の行き届いていない女王の呪文の勢いを止めるのにも一役買っていた。 ややもすると天井や壁に呪文の余波が向かおうとするが、 それを完璧に抑え込んでいる。 いやむしろ、クルエントの方がジリジリと押し込んでいるのだからたちが悪い。 敵としてこんなにも緻密な戦法を取ってくるのはイヤらしいとしか言いようがない。 「終わりにしようか、愚かなクイーンよ」 クルエントは口角を上げてニヤリと笑う。 そして女王の呪文を止めるのには無駄な一発を地面に向けて放った。 衝撃で土石が飛び跳ねる。 それらが女王の気をそらせる事で有効な一手となった。
先に女王が使った戦法と同じだ。 女王が目をつぶり、一瞬顔をそむける。 そこでクルエントは一気に畳み掛けた。 数幾の攻撃に女王は対抗できず、とうとう直撃を食らった。 「見たか!」 勝ち誇った声。 クルエントを包むのは最高級の満足感。 エルフの女王。 彼女の実力は確かだった。 彼女に勝つという事は己の技量の強さを証明する事でもある。 と同時にその力を取り戻してくれたものに彼は全幅の信頼を置いた。 これで衰えなどに気を病む必要はもうない。 この力を保ったまま死ねる事も出来るかもしれない。 いや、もしくはもっと…… 死ぬ事は怖くない。 失う事が怖いのだ。 生ではなく、積み上げてきた、誰にも誇れるこの力が。 「ふふふ、さぁデザートの時間だ」 クルエントは夢の実現の為に、再び歩を進めた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 「ねぇお母さん。妖精さんってどこにいるの〜?」 「急になに?」 「この本にね、出てくるの。 すっごく綺麗なんだって! 会ってみたいな〜」 「そうね。真理奈が良い子にしてたら会えるかもしれないわ」 「ホント?!」 「あぁ。だからピーマン食べなさい?」 「ヤダ! 赤くないんだもん!」 「緑のも赤のも一緒でしょ!」 「違うもん!」 「ったく……そんなんじゃ妖精に会えないよ!」 「え〜? そんなのズルイよ〜」 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「ま、待てっ!」 震えた声。 クルエントは横目でその主を見る。 ソールだ。 「もうやめろよ…何でこんな事するんだよ……」 立ち尽くすソール。 彼はフォルテを湖から引き上げ、アヴァルスを倒したが、 フォルテの息は既になく、フィリアとジュードは毒で弱っていき、 女王が戦い敗れるのをただ見ているしかなかった。 「絶望したか? 少年」 「フォルテはいい子だったんだ。女王様だってきっとそうさ…」 「会いたいならすぐにあの世へ送ってやろうか?」 「殺したのはお前だろ?!」 そのセリフが面白かったのだろうか。 クルエントは声に出して笑った。 「好きだったのにっ……」 悔しい。 握りしめた拳が痛かった。 「とぉーっう!!」 その時、疾風のように全速力で部屋に突入してくる者が一人。 どこかのヒーローよろしく掛け声を発しながら登場するアホっぷりだ。 しかも背後からクルエントに綺麗な跳び蹴りをかますオマケ付き。 そして吹き飛ぶクルエントをよそに着地も完璧にこなす。
漫画なら、シュタッ! と擬音が付けられただろう。 「はっはっはー!! 真理奈ちゃん参上ーっ!!」 さらに背景に斜線で強調線を書き加えなくてはいけないようだ。 ビシッ! と敵に指を突きつけ、ポーズまで決めてしまった。 「助けに来たよ〜♪」 「ピィ〜!」 真理奈の背負うバッグの中からブルーが飛び出し、元気良く跳ねる。 ブルーの口に薬草などの道具が入った皮袋をくわえさせた真理奈は、 ソールに向かってブルーを放り投げた。 「フィリアちゃんとジュードよろしくね!」 ぽかーんとしたままブルーを受け取るソール。 皮袋の中身があればジュード達は大丈夫だろう。 ピィピィと鳴きながらソールに看護するように促すブルー。 訓練された犬のようにキビキビと動くブルーは、飼い主に似ず頭が良いのかもしれない。 「はぁはぁ……元気じゃのう……」 「女王様!」 「女王……」 そこに遅れてパトリスも到着する。 その後ろからはエルフが何人も顔を見せていた。 意識を失い倒れている女王を見るなり、エルフ達は悲痛な表情を見せた。 女王のもとに今にも駆け出しそうなのをパトリスが手で制す。 その視線の先にはクルエントが立ちはだかっていた。 近寄らせない、と言わんばかりに。 デザートがおあずけになったのだから不機嫌なのは仕方ないかもしれない。
「貴様らは何故私の邪魔をする」 「だってどう見てもアンタ悪モンじゃん。 悪モンは正義のヒーローにやっつけられるって決まってるの、知らないの? アンタはそういう運命なの。それに…」 真理奈も女王の姿を見て悲しげに目を細めた。 「私もエルフが好き。それだけ」 「好き? それが何だと言うのだ」 「関係無いのが何さ。だいたい私はこの世界の人間じゃないんだ」 「おかしな事を言う! ならば引っ込んでいろ!!」 「違うから出来る事だって…あるんだっ!!」 「人は同じでなければ分かり合えない」 「だー! もううるさいな〜私はそういうツマラナイ話はキライなんだよぅ! 理屈よりも勝負! どっちが正義か決めようぜ!」 清々しいまでの潔さ。 彼女のペースに誰もが引き込まれてしまう。 それは一種の魅力と言っていいだろう。 ニカッとしたその笑顔の何と純粋な事か。 「くくく。お前が正義ならそれでもいいさ」 クルエントがすぅっと息を整える。 理屈好きこそ単純なものに心を打たれ易い。 もはや彼に真理奈と戦う理由は無いのだが、 真理奈の卑怯な不意打ちも、それまでの戦いの疲れも忘れて、 クルエントは彼女との勝負に臨もうとしていた。 そうさせる力を真理奈は持っていた。 「真理奈」
パトリスが声をかける。 場の状況から敵の力は相当なものだと推測したからだ。 しかし真理奈は助けはいらないとピースで返事をして、敵に向き直る。 そして真理奈はカザーブで元の姿に戻った鉄の爪を取り出した。 いや、元と言うよりは新しく生まれ変わったと言うべきだろうか。 右腕に装備し、指を開いたり閉じたりしてその感触を何度も確かめる。 (う〜ん! イイ感じ!) 初めて鉄の爪に触れた時には不思議と懐かしさを感じた。 そして今鉄の爪を装備した感覚は、それと似ているようで異なっていた。 一度折れてしまった鉄の爪を再び甦らせた真理奈は、 かつて無いほどの一体感を経験していた。 意思疎通が上手くいっているとでも言えばいいのだろうか。 真理奈の要求に確実に答えてくれるだろう。 そして鉄の爪の望みに完璧に応えてやれるだろう。 そんな確信。 「よーし! エルフに代わってオシオキよ!!」 そして誰にも分からないネタをかまして真理奈も準備を終えた。 しかし両者ともすぐには動かず、互いにきっかけを探した。 均衡した状態を作り出せるのは実力伯仲しているからだ。 その場合どんな戦法を取るかも大事だが、タイミングが最重要なのだ。 これを間違えると負ける。 その合図となったのは音もなく舞い落ちる葉や、 不意に吹き抜ける一陣の風ではなく、 静まり返る場に業を煮やしたブルーの鳴き声だった。 「ピピィ〜!!」
同時に仕掛ける。 クルエントは呪文を。 真理奈は直接攻撃を。 飛び道具である以上、呪文の方が先に真理奈に迫り来る。 しかしその威力がどんなに大きくとも、 彼女にとっては真正面からの何の特徴もないストレートパンチのようなものだ。 かわしてくれと言っているのに等しい。 真理奈は左前に避けつつ、脇を通り抜けていくメラゾーマに鉄の爪を突っ込ませる。 三本の爪により、メラゾーマは四分割されて霧散する。 そしてクルエントの二発目が放たれる前に、真理奈は彼の眼前へと迫った。 真理奈の素早さはクルエントの連続詠唱速度を超えた。 「ベギ――」 その後の言葉は続けられなかった。 いとも簡単に懐に入られたクルエントは、驚きの為に目を見開く。 敵を認識しろ、という本能からの訴えかけもあっただろう。 しかし対応は出来ない。 真理奈の掌底が下から突き上げるようにしてみぞおちにヒットし、 クルエントの肺から空気が漏れ、意識が薄れる。 それと共に唱えようとしていた呪文は霧散した。 接近戦で魔法使いが武道家に勝てる可能性はゼロに近いだろう。 クルエントの負けは、距離を詰められた時点で決まってしまう。 メラゾーマの熱を持った鉄の爪が、クルエントの胸部を切り裂く。 無数の赤い飛沫が宙に舞った。 「え?」 その時、違う、という言葉が真理奈の頭に浮かぶ。 血じゃない。 キラキラ光る――赤い色の――宝石だ――
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 あぁ……また会えたのね…… アン……アン……俺はお前に…… いいの……私はもう、幸せを手にしたのですから…… 愛してる……あぁ、この言葉を…想いを伝えたかったんだ…… えぇ、えぇ…! 私も愛しています……永久に…… 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
キラキラ、キラキラ。 宝石のかけらがそれぞれに光を発しながら洞窟の地面へとゆっくり落ちていく。 その光は2人の愛を示すかのように、暖かみのある光だった。 「ぐ……がが……!」 もはや言葉にならない声を上げるクルエント。 その手がルビーのかけらを掴もうと天井に向かって持ち上げられるが、 震える手では何も捕らえる事は出来なかった。 そして一回だけ大きな咳をすると、その体は急速に力を失っていった。 伸ばされた腕がクルエントの本来の姿に戻りながら落ちていく。 いや、腕だけではない。 髪は白に、皮膚にはシワが、そして体格が小さくなっていく。 毛が抜け、歯が落ち、骨が枯れる。 「な…何これ……?」 人が歳を取る様を録画し、早送りで見るとこんな感じになるのだろうか。 三倍速でも足りない程のスピードでクルエントは老いた。 そしてあっという間に元の年齢を通り越し、命の果てにたどり着く。 その先にあるのは死。 かつて魔法界で名を馳せた男の末路は、他の誰とも変わらず衰えによるものだった。
「女王……女王……!」 「レギーナ、大丈夫か?」 パトリスとエルフ達が横たわる女王のもとに集まっていた。 気がついたようで女王の目が静かに一度だけ開けられたが、 パトリスとエルフ達の顔を確認するとまた閉じられる。 「負けたのですね」 不思議とすっきりした意識の中で、彼女は自らの敗北を理解する。 「しっかりしろ。あの人間は倒したぞ。今回復を」 パトリスに促され毒から回復したフィリアが女王の体に手をかざす。 しかし呪文を唱えても女王の傷は少しも癒える事がなかった。 フィリアは混乱した目でパトリスに助けを求めた。 しかしパトリスにはどうする事も出来ない。 女王がフィリアの手を掴み、感謝の意を示す。 「私は人間の事が嫌いです。 でもあなただけは信じてもいいと思ったのです。 なぜでしょうね……」 その言葉にフィリアは涙を流した。 もう別れが近いのだろう。 「レギーナ……里に帰るんじゃろ?」 懇願したいのを堪えるかのように、苦しそうに語りかけるパトリス。 しかし女王はそれには応じなかった。
「パトリス……エルフの血に特別な力などありません。 エルフを誤解しないように――」 「分かった…分かったから……頼む……」 「……最期にお願いがあります」 彼女の手がパトリスの左手の指輪に触れる。 その動作だけでパトリスは彼女の望みを理解した。 他でもない彼女の頼みだ。 言う通りにせねばなるまい。 その指輪がいかに大切だとしても。 観念したパトリスは左手の薬指にある指輪を使い、女王のMPを回復した。 「ありがとう」 あのエルフと同じ言葉で、同じように笑う女王。 「メガザル」 孤独の女王、レギーナ。 その命と引き換えに娘を救ったその姿は、王として立派だった。 ……… …… …
「今日という日がめでたく迎えられました。 それは何と素晴らしい事でしょう。 それも我らが創造主ルビス様のご加護と、勇者ロトの導きによるものです。 そして何より我々の心に先代女王レギーナがいつまでもあるように、 心よりの感謝を祈りと代えて届けるとしましょう」 里近くの森にある小さな広場。 そこにちょっとした式場が用意されていた。 整列したエルフ達を前に式を進行しているのはフィリアだ。 「それではこれより、夫となる者ソールと、 妻になる者フォルティスの婚礼の儀を始めます。 まずは人間の少年ソール。 汝は汝らを縛りつけようとする、ありとあらゆるものに立ち向かい、 エルフの少女フォルティスとの契りを主に誓いますか?」 「ち、誓います!」 少し緊張しているようなソールに、フォルテがクスリと笑ってしまう。 「ではエルフの少女フォルティス。 汝は汝らを縛りつけようとする、ありとあらゆるものに立ち向かい、 人間の少年ソールとの契りを主に誓いますか?」 「はい、誓います」 対してフォルテは緊張の色も見せず、嬉しそうに答えた。 「よいでしょう。ではその誓いの証として、指輪の交換を行って下さい」 フィリアから指輪を渡された二人が向き合う。 夢見るルビーのカケラを飾った、二つで一つの指輪。 それが互いの薬指にはめられた。
フォルテの柔らかい笑顔にソールは思わず赤面してしまった。 その様子を微笑ましく見守るエルフ達。 「種族の壁を越えるという偉業を成し遂げようとする事。 それは同時に苦労の連続でもあります。 だからこそ彼と彼女には助けが必要なのです。 この夫婦の力になる事を参列者の皆様にもまた誓って頂きたいと思います。 賛同して下さる方々は、拍手でもってお応えをお願いします」 「ふふふ、どう? おじーちゃん。孫が立派に努めを果たしてる姿は」 「うるさい。今いいところなんじゃ。話かけるでない」 真理奈達は広場の最後尾で式の様子を見ていた。 パトリスは今にも泣きそうな目でフィリアの事を見ていた。 やはり孫は可愛いものなのだろう。 「ソール、フォルティス。 過ぎ去った苦しみの思い出は喜びに変わり、 あなた達の行く道はきっと明るく、未来へと続いていきます。 これからはいつまでも2人一緒に歩んでください。 では最後に、契約の口付けを……」 そして小さな夫婦が誕生した。 拍手と歓声が沸き起こる。 「素敵ね。女王様にも見せてあげたかったな」 「そうじゃのう」 もし女王が生き残っていたなら、やっぱり結婚は許されなかったんだろうか。 もうそれを確かめる事はできない。
「何て悲しい呪文……命と引き換えに奇跡を起こしたんだね」 「命と引き換え……エルフの血…… そうか……ようやく意味が分かったわい」 「何の?」 「ジュードはエルフの血を吸ってヤツが力を宿したと言っておったが、 女王は血に力はないと……」 「じゃあ、どうして?」 「その力はヤツの命と引き換えに引き出された、 一種の呪文だったのじゃろう」 「え? それって……」 「命と引き換えに回復力を得るのがメガザルという呪文じゃ。 それを応用してかつての力を得たんじゃろう、と思う。 エルフの血には力はない。 ないが…… 強いて言うなら、ヤツの思い込みがエルフの血に力を込めたんじゃ。 狂信者のような思い込みは実際に力を発揮する事もある。 たとえそれが夢のような事でもな」 「それが本当ならヒドイよ…… どうしてそんな夢を見るんだろう…… 私だったらエルフと仲良くする楽しい夢を見るのになぁ」 真理奈がつぶやいた一言は、くしくも女王が望んで見ていた昔の夢だった。 ――Jacob's Dream 完――
今日はここまでです。 終わる物語があれば、始まる物語もある。 という事で新人さんにwktkしつつ…… ではまた。
更新GJ! 久しぶりに主役登場だな。
最初に
自分は
>>709 氏とは別の人間です。
同じ新参書き手として
>>709 氏の作品を楽しみにさせていただきます
ではどうぞ
沈殿していた意識が浮上する。 ――爽やかな風が髪と頬を撫でている、ような気がする。 どうやら今日は目覚ましのお世話にならなかったらしい。俺にしては中々珍しい事だ。 ――優しい木漏れ日が目に届いている、ような気がする。 目を覚ますまでの、このぬるま湯に浸かるような時間は、麻薬に近いものがある。 ――動物たちの声が聞こえている、ような気がする。 二度寝になるかならないか、この無駄な緊張感もこの快感を生み出すのに一役買っているだろう。 ――懐かしい匂いがするような気がする。ような気がする。ような……。 「……」 半ば無視していたこの妙な感覚が気になり、目を開ける。 最初に目に入ったのは眩しいほどの朝日。そして 「も、り……?」 ……森だった。問答無用なまでに森の中だった。これ以上ないってくらい森の中だった。 ひょっとしたら林かもしれないが、この際そんな事はどうでもいい。 俺に何が起こった? もしや酔い潰れてこんな所で寝たとか? 軽く苦笑。 しかし飲みすぎたのだろうか、妙に体に違和感がある。 まあ、とりあえず体をおこs……
――ギシッ。 体全体に鈍い、重い抵抗を感じる。 布団にしては重すぎるその感触に閉口しながら、唯一動くらしい頭で自分の状態を確認し、 「……ははっ。どうしたもんかね」 乾いた笑いと共に、再度目を閉じた。 軽口とは逆に、俺の心は混乱の極み。そして恐怖。 ――ドッドッドッドッドッドッドッドッド。 動悸が速度を増していく、ような気がする。 誘拐? 事件? ……違う。何故かは判らないが、そういうものではない。ありえない。 明らかに異常なこの状態に、自制が聞かない。恐れ、震えが止まらない。 いっそ狂ってしまえれば楽だろうに。 ――誘拐でもなく、事件に巻き込まれたわけでもないのに、知らない場所にいる。それは一体どういう事? ……夢。そうだ、夢に決まってる。 こんな不条理、それこそ夢でなければ説明がつかない。 そうでもなけりゃ、“目が覚めたら体がでっかいブロックみたいな石人形になってて、森の中で蔦に縛られてました”なーんて笑える 状況になる筈が無い。 よし、そうと決まればさっさと寝なおそう。 懐かしさに泣きたくなる程強い草と土の匂い、痛いくらい心地よい朝の空気に包まれながら、急速に覚醒しようとする意識を無理 矢理押さえつける。 幸い、意識が埋没するまでにそう長い時間はかからなかった。先日の疲れがまだ取れていなかったのだろう。 ……果たして今の体に疲れがあるのかは判らないが。 これは夢。起きればあの退屈で楽しい日常が俺を待ってる。バイトにも行かないといけないしな。 しかし数分後、再度深い眠りに落ちる寸前、 (……現実に絶望するのは起きてからでも遅くはないよな。……多分) 俺はそんな事を考えていた。 なんとなく判っていたのだろう。 例えどんなに非現実でも。例え俺がこの状況をどんなに望んでいなくても。 これが紛れも無い「リアル」だという事に……。
ちょwwwゴーレムかよwwww
ほす
709です。たびたびすみません、もう一つ質問です。 実は3ベースでストーリーを考えていたんですが、 3基盤の大型ストーリーが数本ある現状では、 読者様的にもお腹いっぱいなのでは……と思いました。 別ナンバーで企画を練り直した方が良いでしょうか。 (完結まで責任を持ちたいので、最初に慎重になっています。 投下前にグダグダとみっともなくてすみません。)
書きたいものを書いてくれればいいと思いますよ
DQならなんでもおkだお
朝、目が覚めると見知らぬ宿屋にいた。 誘拐とか拉致とか言う話ではない。 ここは私のいた世界とはまったく別の世界なのだ。 私は元の世界に戻るための調査を開始した。 この世界は御伽噺のような魔法が存在する世界。 きっと元に戻る方法があるはずだ。 調査をしているうちに面白いことが分かった。 この世界には私以外にも私のいた世界からつれてこられた人間がいるということだ。 彼らの中には元の世界に戻らずこの世界で暮らすことにしたものもいた。 そして、私はついに元に戻る方法を見つけた。 方法はいたってシンプル。 元の世界にいる人間を自分の代わりにするというものだ。 元の世界の人間には異世界での私たちの様子を見て喜んでいる輩がいるらしい。 そんな奴らを自分の身代わりにすることに私は何の抵抗もない。 問題はそいつらがどこにいるかということだ。私は奴らを探すことにした。 ( ゚д゚) 何処だ? (゚д゚ ) 何処にいるんだ? ( ゚д゚ ) !
ちょwwwこっちみんなwwwwwwwww
>>751 被らないようにする方が難しいんじゃないかなぁ?
読む側としては全然構わないと思う
むしろ今考えてるモノが3以外にしても大丈夫なのかが疑問だけど
茶を噴いたw
>>751 大風呂敷広げすぎて永遠の未完成に終わらないようにがんがってくれ。
>>754 wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
>>754 らめえええええいしぇかいいっひぁううううう
760 :
709 :2007/04/01(日) 01:55:10 ID:bvrIZgUT0
あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ちょwwっwwwwwwwwwwwまっwwwwwwwwwwwwwwww
………………………………………………カブッタ.......orz
>>754 さんとネタかぶりましたぁ!wwwwww
今考えてる企画、ゲームキャラが現実世界のプレイヤーを
身代わりにしようと考えるところからスタートなんですよwwwww
いやーこればっかりは出したモン勝ちですもんね。
すみません、ここはもう潔く棄権します!
お邪魔しました!
うはwwキツイなそれ。 アイディアは先に出した方が元祖になるからなー。
あーでも、754の人は単発ネタだし、 カブッたっても出だしだけのことだろ。 気にしないで投下していいんじゃないか?
いちいち確認とらないで最初から投下しておけばよかったものをw いいから投下せいww
同じ世界観の元なんだから被るのはしょうがない まるっきり一緒ってんじゃないなら気にしなくていいんじゃ
どうやって現実の人間をイケニエにするのか気になるところだな そしてもうすぐ次スレかな? 1000はいかなそうだね
( ゚д゚ )っ
(っ ,r どどどどど・・・・・
. i_ノ┘
⊂( ゚д゚ )
. ヽ ⊂ )
(⌒) |どどどどど・・・・・
三 `J
/ O O \
| Д |
>>709 氏書くの辞めんな!
\ /
私の思いつきの単発ネタのせいで作品がひとつ書かれなくなるのは心苦しいです。
是非とも「754があんなネタさえ書かなければよかったのに」と言わせないでください。
あなたが書かないことにすれば、私も責任を取り今後単発ネタ等を書かないことにします。
棄権するという発言を撤回をすることに抵抗を感じるかもしれませんが大丈夫。
運がいいことに、今日は1年に1度だけ発言に責任を持たなくても許される日ですから。
>>754 こっちみ(ry
ここまでまとめました。
暇潰しさんのジャンルが「オリジナル」になっていたのを「DQ3」へ修正し、
>>754 氏を新規に追加しました。
暇潰しさん、今まで気付かなくてすみません…
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html >>760 気にせず、投下してしまっても良いと思いますよ。
スレ容量がおそらくこのカキコミで470kbになると思います。
が、スレ立て出来ませんでした orz
でかけなきゃならないので後ほど、自治スレか依頼スレでお願いしようと思っています。
ですがもしスレ立てできる方がいましたら、まとめのテンプレでお願いします。
…WebブラウザでみるとこのスレがすでにDAT落ちの表示がでてあせりました。
768 :
709 :2007/04/01(日) 13:22:47 ID:IZfMit+30
まだ書いて大丈夫かな……とても新スレに引っ張れる話じゃないのでここで。 ◆8fpmfOs/7wさんすみません! 自分が浅はかでした。 アイディア横取りしたみたいで失礼にあたるかと思って棄権したんですが 考えてみればその方がよっぽど失礼ですよね。俺バカだ。 お言葉と日付に甘えて、棄権宣言はわたぬきってことで。 新スレ立ったら投下してみます。
>>768 wktkwktk
避難所のURLが変更になってるので、テンプレは注意
ん〜、そろそろウダウダ言いすぎな希ガス ごちゃごちゃ言う前にとりあえず投下しろと
酔いすぎて理性を失う前に、自治スレへスレ立て依頼を出してきました。
桜なんて全く見ませんでした。
>>768 ぜひ、投下してください。
楽しみにしています!
ume
埋めマンは!埋めマンはまだかっ!
思ったんだけど ゲームキャラが現実世界のプレイヤーを 身代わりにしようと考えるところからスタート を >754が現実世界のプレイヤーを 身代わりにしようと考えるところからスタート にすればいいんじゃね?
777 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:23:49 ID:hrZAYtTR0
時は20××年。 私は地球という惑星の、とある国の、とある地域で暮らしている。 いわゆる地球人ってヤツね。 詳しくはプライベートだから秘密なんだけど、 この国は相も変わらず落ち着きがない、とは私のおじいちゃんの弁。 戦争こそないものの、様々な問題は絶えず我々一般人を苦しめ続けている。 つまりはそんな時代だ。 そして私も悩みを抱えて日々を生きるフツーの女の子の一人。 あ、もう『女の子』だなんて言える歳じゃないんだけどね。 そこら辺は目をつむって欲しい。 でも内面は可愛らしいと思うよ、うん。 そんでさ。 そんな私でもね、声を高らかに主張したい事があるのですよ。 何かって言うと―― 「我がゲーム大国万歳!!」 ……呆れた? 呆れたよね。 でもさ。 それだけで『この国に生まれてよかった〜』なんて言えちゃうんだから凄いと思わない? 思わないか…… …… でもさでもさ! 私が言いたいのはイマドキのゲームが凄いっていうんじゃないの。 私はすっごく昔の、ふるーいゲームが大好きなんだ。 こんな事を言うと、大抵の人は良い返事をしないんだけどね。 もっと昔に生まれたかったなぁ…… そしたら皆と同じ意見にだったろうに。
778 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:26:54 ID:hrZAYtTR0
しかーし! この時代に生まれた事を私は感謝するようになるってんだから人生は不思議。 何でかって言うと、新しいプログラムソフトの発売が最大の理由なの。 ソフト名はズバリ! 【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】 何というネーミングセンス。 間違いなくこのソフトは売れない。 と思ったら、世のゲーマー達はこぞって飛びつく事となったのですよ、奥さん。 その名の通り架空の世界に入れるというありふれたソフトなんだけど、 これまでとの決定的な違いは、自分の好きなゲームソフトの世界に行けるってところ。 しかもそれがどんなに古いソフトでもオーケーという代物。 これを製作した方はニーズを分かってらっしゃる。 そしてジャジャジャーン!! ねんがんの そふとを てにいれたぞ!! サンタや彼氏からのプレゼントじゃないのが残念だけど、ワガママは言ってられない。 という事でさっそく私が選ぶソフトは、もちろんコレ。 【ドラゴンクエスト】 RPGというジャンルを確立したと言っても過言ではない。らしい。 断定できないのは、聞いた話だからだ。 話の主はおじいちゃん。 おじいちゃんはこのゲームが大好きで、 おじいちゃん子だった私は多大な影響を受けたのだった。 私がつたない腕でボスを倒そうとするのをニコニコと見守ってくれたのを覚えている。 おじいちゃんは口癖のように言っていたものだ。 「古臭い物ほど味がある」 今ならその意味が良く分かる。 みんな絵がショボイとか、操作性悪すぎとか、ボタン押すとか新鮮(笑)とかとか。 分かってないよね〜お前らは何も分かってない! 今のゲームには無いこの凄さをさ。
期待&支援
780 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:31:08 ID:hrZAYtTR0
【もし(ry】のプログラムを起動し、ドラクエのデータを読み込ませる。 次にクリア条件を決めるのだが、これは自由に決める事が出来る。 私は迷わずに【魔王を倒すまで】と入力した。 すると、『ドラクエ世界へ出発しますか?』の文字が私の目に飛び込んでくる。 ドキドキと胸が高鳴った。 やっぱり最初はレベル1なんだろうなぁ。 装備品は布の服だけなのかしら。 そう言えばパンツとか化粧とか売ってるのか? 間違ってもハダカやすっぴんだけはイヤだ。 恥ずかしいし。 徹夜でレベル上げとかしなくちゃいけないのかな? う〜ん、お肌に悪そうだ。 村人は毎回同じ事を話してくれるのだろうか。 向こうに着いたら壁にぶつかってドゥンドゥンと音を出してみたいものである。 宝箱を開ける瞬間の期待感はたまらないんだろうなぁ。 しかしその前には幾数ものモンスターが待ち受けているのだ! 苦戦しながらもギリギリで勝利! く〜燃えるね〜!! モンスターと言えばスライムはぜひとも触ってみたい。 おっぱいより柔らかそうな感じ。 でも私がモンスターと戦えるのかなぁ? 武器とか扱える自信ないし…… ゲーム補正でなんとかなるのかもしんないけど。 あ、死んじゃったらどうするんだろ? 誰か生き返らせてくれるのかしら。 待って待って。 そもそも魔王を倒すだなんて大事を成し遂げられるの? 向こうで体験する事は実際の出来事と何ら変わらない。 ケガすれば痛いんだ。 ましてや呪文なんて……
781 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:36:38 ID:hrZAYtTR0
「今のはメラゾーマではない。メラだ」 なんて言われた日には、漏らしてしまうかもしれない。 よし、じゃあ条件を甘くしよう。 例えば【一日経過したらクリア】とかとか。 何か一日署長みたいでイイかも? でもそんなちっぽけな志しでどうするんだよぅ。 中途半端に体験したって意味無いんだからさ。 でもでも…… なんて色々考えていたら、結局私は冒険に出る事はできなくなってしまった。 「いただきまーす」 夕食はポテトサラダとパスタにコーンスープ。 もちろん私の手作りではない。 お母さんの料理はやっぱり美味しい。 もしドラクエ世界に行ったら食べられなくなるんだよなぁ。 「ねぇお母さん」 「んー?」 「もし、さ。 もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」 「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを探そうかしら」 そういってお母さんは笑った。 しょせん冗談話だ。 お母さんだって本気では言ってない。 でも私はちょっとだけ涙が出そうになった。 お母さんはそこまで行動力のある人じゃない。 実際にそうなったら、私が帰ってくるのをずっと待つに違いない。 この家で、たった一人で。 やっぱり向こうに行くのは止めよう。
やばい、まだ冒険がはじまっていないのにちょーわくわく。 お母さんもいいお母さんだなぁ。
783 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:40:14 ID:hrZAYtTR0
「いいなぁ〜」 日付が変わる頃、私は黄ばんだページをパラパラとめくっていた。 すっごく久し振りに読む、ドラクエの攻略本だ。 劇中では表現されない武器や道具が絵にしてあったりして、 見ているだけでも全然飽きない。 カッコイイ装飾が施された剣や、 とても戦うために作られたとは思えない素敵なデザインのドレス。 それを装備している自分を創造してニヤニヤする。。 かしこさの種があれば頭が良くなったのにーとか考えるのは私だけじゃないはず。 「ん?」 パサッと何かが落ちる。 ページの間に挟まっていたのだろう紙切れだった。 二つ折りになっていたのを開くと、 やけに達筆な字で書かれた文章がタイムカプセルのように当時のまま残っていた。 この字は、きっとおじいちゃんだ。 『創造する事の喜び。それをドラクエは教えてくれたと思う』 その通りなんだろう。 創造するから楽しいのだ。 きっとゲームの登場人物達は、現実の人と同じように悩みを抱えているに違いない。 創造するだけなら例え一時であったとしても、その悩みを忘れる事ができる。 そしてそれが悩みに立ち向かう勇気にもなるのだ。 明日にでもプログラムソフトは売ってしまおう。 そう思いながら文章の続きを読んでいく。
784 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:45:12 ID:hrZAYtTR0
『けれど。 決して口には出さなかったけれど。 毎晩のように願う事があった。 ずっとずっと、遠い昔から。 それが実現する夢をよく見たものだ。 いつかドラクエ世界に行ってみたい、と』 心臓が跳ねた。 ドラクエ世界に行ってみたい。 その文字を何度も繰り返して読む。 やっぱりおじいちゃんもそうだったんだ。 聡明なおじいちゃんの事だ。 どんな世界で生きるにしても大変な事を分かっていたから、言わなかったのだろう。 けれどその希望は捨て切れなかったんだ。 こんな紙切れに書く事で、諦める事にしたのかもしれない。 その紙を閉じると私はすぐさま【もし目が覚めたら○○の世界だったら】を立ち上げた。 ドラクエのデータは既に読み込んである。 クリア条件を【一日経過したらクリア】から【魔王を倒すまで】に上書きした。 『ドラクエ世界へ出発しますか?』 →はい いいえ いいえを選んでも無限ループにはならないけれど、私は『はい』を選んだ。 これでもう後戻りは出来ない。 お母さんごめんね。 ごめんなさい。 でも…… おじいちゃんと私の夢なの。 分かって。 そして私の冒険は始まった――
785 :
埋め用短編 :2007/04/02(月) 19:50:59 ID:hrZAYtTR0
終了です('A`) 『埋め用』とうたっておきながら全然埋まらなかった件… もっと書けばよかったかなぁ〜 とりあえず全然ドラクエじゃありませんでしたが、 短編という事でお許しを。 ではでは。
乙です。 おじいちゃんの時代にはできなかったゲームの中の世界に入る夢、感動しましたよ。 よい作品をありがとうです。 ドラクエの世界に入った、主人公さんの冒険も機会があったら読んでみたいです。
>>786 支援ありがとうございました。
設定等を深く考えず、ただ勢いに任せて作ったので
続きがあるかどうかは分かりません……
けど暇があれば書いてみたいですね。
しかし一人称は書きやすいですな。
いつもこのスレ楽しませてもらってます。
>>777-784 > 「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを探そうかしら」
ヤバイ、ここだけでしんみり来ちゃった時分は涙腺弱すぎなのかw
DQ3をダブらせたのか分からないんだけど。
もう少し掘り下げると、この“「ゲーム」と「現実」を結ぶソフト”の存在する世界を舞台にした
【もし目が覚めたら〜】っていう展開はとても面白いと思った。面白いというか少し恐いかな。
っていうか時分はこの後の母親の行動を想像してwktkした。
消えた娘を探すうちに祖父(母親にとっては父)の残した手記と、このプログラムの存在を知り
救出のために動こうとするけど「お気の毒ですが〜」とか「呪文が違います!」とか、そんな展開。
それで冒険中の娘と並行してストーリー進んでいったらすげー楽しそうw
ごめん、勝手に妄想し過ぎたけど機会があったらぜひ続き書いてください。楽しみにしてます。
>>788 そこまで想像していただけるとは…書いて良かった!
とすると、母親サイドで未来世界の設定を出し、
娘サイドではソフトの設定枠内でドラクエを書く事になる訳ですな。
やりがいがありそうですなぁ。
しかしヘタに【魔王を倒すまで】とか書いてしまったが為に長編になりそうな予感w
某浦沢さんのようにして書くのは無理なのでホントに機会があったらになりそうです。
代わりに設定考えてもらえませんか?
冗談ですwww
(
>>777-784 に便乗)
私の父を知る人は皆、口を揃えて「とても賢く仕事の良くできる人だった」と言います。
だからでしょうか? 幼い頃、父が家にいる事はあまりありませんでした。
当時はとても仕事が忙しかったのだと母は言っていました。父のことを語る母の顔は誇らしげで、
一方でどこか淋しそうでもありました。
きっと母は、父のことをとても愛していたのだと思います。私は、母ではないから想像でしかありませんし、
直接訊いたところで恥ずかしがり屋の母は多くを語ろうとはしませんでした。
けれど私は、父のことをあまり良く思っていませんでした。
父の姿を思い出そうにも、少ない記憶をかき集めてようやく出て来たのはゲームに興じる背中だけ。
娘の話よりもゲームに夢中だった父が、私はあまり好きではありませんでした。
そして父が夢中になっていたゲームが、私は好きになれませんでした。
人並みに悩みながら成長し、平凡ではあるけれど穏やかな生活を送る中で歳を取り、
ありふれた出会いを経て、娘をもうけたことを告げると、父はとても喜びました。
まるであの頃の罪滅ぼしとでも言うように、父は「愛孫だ」と言って娘を可愛がってよく遊んでくれました。
父が知っている遊びと言えばゲームしかありません。
長い年月を経て、今度は父と娘が並んでゲームを楽しんでいる背中を見る事になりました。
私はその風景の中に嬉しさのような、淋しさのような、もどかしさに似た不思議な思いを抱きました。
それはきっと、年齢が離れていても同じ楽しみを共有できる娘を少し羨ましく思っていたからだったのかも知れません。
こうして娘は、大の“おじいちゃん子”として健やかに成長したのです。
もちろん、おじいちゃん譲りのゲーム好き。……そこだけは少々困った点ではありましたが。
娘とふたり、慎ましくも幸せな日々を送っています。
そんなある日。 いつものように娘と夕飯を食べていたときのこと。娘にこんな事を訊かれました。 「もし、さ。 もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」 その言葉を聞いて脳裏を過ぎったのは、居間で父と並んでゲームをしていた光景でした。 『違う世界』――それがたとえばゲームの世界だったとしたら? ゲームを実際に遊んだことがないので良くは分かりませんが、 父の話によれば、『勇者』は数々の苦難を乗り越えて成長し、最後は『魔王』と戦うのだと言います。 ……途方もない話です。 「そうねぇ……お母さんもその世界に行って、あなたを捜そうかしら」 もちろん、他愛のない会話の1つだと思いました。 ゲームの世界、それは画面の中にだけ存在する架空の世界。 絵本の中の世界に吸い込まれてしまう、どこかのおとぎ話でもあるまいし。 そんなことが起きるはずがない。 ……でも。 もしも仮に、そんなことになってしまったら、私はどうするだろう? いつ戻るか分からない人を、一人で待つというのはとても苦しい事はよく知っている。 大切な人を失う苦しみは、もう二度と味わいたくない。 かといって、どう行動したらいいのかなんて想像もつかない。 しばらくして、いつの間にか真剣に考えていた自分に気付くと思わず苦笑いが出ます。 取り留めもないことを考えるのは止めよう。 こうしていつもと変わらない一日が終わり、夜は更けていきました。
迎えた翌朝。 私はいつものように、いつまで経っても起きてこない娘の部屋に向かいました。 朝寝坊のクセは大きくなっても直りません。 部屋のドアをノックしても、大きな声で名前を呼んでも起きないのもいつものこと。 躊躇わずにドアを開け、もう一度娘の名前を呼びました。 返事がない、もぬけの殻のようだ。 いつも寝ているはずのベッドにも娘の姿はなく、 それどころか部屋のどこを見ても、娘はいませんでした。 カーテンとカギの掛かった窓を開け外を見れば普段と変わらない風景が広がっていました。 開けた窓からは肌に心地の良い風が部屋に吹き込んで来ます。 それからクローゼットを開けたり、机の引出を開けたり、ゴミ箱の中やベッドの下を覗いたり、 鏡の中を見つめたり、鞄まで開けてとにかく部屋中のあらゆる場所を捜してみましたが、娘は見つかりませんでした。 昨日、夕飯を終えたあと娘は自室に戻ってから家の外へは出ていないはずです。 「……そうだ!」 部屋を出て玄関まで来るとドアの取っ手を掴んで思い切り押しましたが開きません。 鍵は閉まったままです。 玄関と脇の靴箱を開けて見てみましたが、無くなっている物は1つもありません。スリッパも含めて、履き物すべてです。 それから私は家中のドアというドア、窓という窓、収納や冷蔵庫、排水口に至るまで、トイレはもちろんお風呂も 台所も居間も、とにかく開けられる場所のぞける場所をくまなく徹底的に捜しましたが、娘の姿を見つけ出す事は できませんでした。
娘は家の外には出ていない、かといって家の中のどこにもいない。 では、娘はどこに? 暑くはないはずなのに、額と手のひらには汗がにじんでいました。 焦りの中、視界の隅に映ったのは電話機でした。 (お、落ち着いて。落ち着いてよく考えて、まだ捜していない場所や見落としている場所があるはずよ) 気が付くと私は、娘の部屋に戻っていました。 いつもと同じ部屋。無くなっている物は何もありません。 ただ、娘だけが忽然と消えた。 事件だとしても不可解な事ばかり。 救いを求めるように、あるいは振り向けば「驚いた?」なんて笑顔を向ける娘がいてくれる事を願いながら、 私は振り返りました。 けれど娘の姿はありませんでした。 視界の中央には、ふだん娘が使っている机が見えました。 そこであることに気が付きます。 電源が入ったままで放置されているモニタと、その横に広げられていた本、それに何かの箱。 まず本を手に取ってみてみれば、タイトルには「攻略本」との文字が記されていました。 (これは……) そう、父が好きだったゲームの攻略本です。 そして、その中に挟まっていた父の手記を初めて目にしました。 『いつかドラクエ世界に行ってみたい、と』 心臓の動きが止まったかと思いました。 その文字に釘付けになって私はしばらく紙切れから目を離せずに、その場に立ち尽くしたまま動く事ができませんでした。 まさかと思いながら、恐る恐る電源が入ったままのモニタに視線を動かします。 真っ青の画面上には、大きくこう表示されていたのです。
『DRAGON QUEST』 表示されているタイトルは、ゲームをしない私にも聞き覚えのある名称でした。 高音が些か耳障りにも感じるメロディは、ゲームをしない私の耳にも馴染みのある行進曲でした。 画面上にはこのタイトル以外に「START」の文字しか表示がなくて、とても殺風景でした。 カーソルは、タイトルすぐ下に表示されている「START」の箇所で点滅を繰り返していました。 このボタンを押せばゲームがスタートする、そのぐらいのことは察しがつきます。 その時ふと、昨夜の会話が脳裏に過ぎりました。 ――「もし、さ。 もし私が違う世界に行っちゃったら、どうする?」 心に浮かんだのはあまりにも突飛で、恐ろしく不吉な予感。 (まさか、まさか……いくらなんでも) そんな予感を、私の理性は否定しようとしました。 しかしその理性を否定するように、目の前の画面はひとりでに動き出しました。 まるで、この画面に気付いてくれる人間が現れるのを待っていたかのように。 (……な、なに?) 画面は暗転し、ひらがな五十音が表示された画面に切り替わりました。 音楽も、先ほどの行進曲よりは耳に馴染みのない大人しい曲調に変わります。 じっと画面を見つめていた私は、そこで更に恐ろしい物を目の当たりにする事になりました。 『なまえを いれてください』 そのメッセージの下には、確かに娘の名前が入力されていたのです。 驚いた私は、机の上にあった箱を手に取りました。 パッケージには【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】との表示。 どうやら娘が購入したらしいソフトの様です。
私は急いで箱から取扱説明書を取り出し、このソフトの正体と、今起きている事態を把握しようと試みました。 説明書には次のように書かれていました。 ・既存のゲームソフトを利用して、そのプログラム内の世界を再構築するソフト。 それが【もし目が覚めたらそこが○○の世界だったら】 (以下、「当ソフト」)。 ・まず当ソフトを起動した人物は、既存のゲームソフトを用いて好みの世界を設定します。 ・次に当ソフトを起動した人物は、【クリア条件】を設定します。 ・最後に表示された選択肢に『はい』と答えれば、プログラムは実行され起動した人物を含めて世界を再構築します。 ・【クリア条件】を満たさない限り、プログラムは終了せず起動者はプログラムから出る事は不可能です(以下、「ループ現象」)ので、 当ソフト起動前には必ず本取扱説明書を熟読の上、自己責任で実行してください。 ・尚、ループ現象回避の手段として、外部からの操作を可能とする機能を実装しています。 但しこの場合、“CONTINUE”は無効となりますので充分ご注意下さい。 ……つまり娘は、このソフトを起動し自らの意志でプログラムを実行した。 そして私は、このゲームの主人公となった娘の行方を見守りながら、彼女をクリアへと導かなければならない。 分からない。 だけどやるしかない。 こうして私の冒険は始まってしまったのです――
788です、まとまりない文章でごめんなさい。
そして改めて
>>785 さん、勝手に借用した挙げ句、変な妄想加えてすみません。
読んで閃いた衝動で書かせてもらいました。今は色々と反省してますですはい。でも後悔はしてませんw
ちなみに。
・「主人公としてドラクエ世界に行った娘」と「プレーヤーとして娘を見守る(時に操作する)母親」のそれぞれの戦い、みたいな。
・「ふっかつの呪文」(これDQ1にありましたっけ?)が結ぶゲームと現実2つの世界。
(実はクリアのヒントが隠されたアナグラムだとかそう言うネタ)
……冷静に考えると母親のパートはちょっとスレの主旨から外れてしまう事に気付きました。
重ね重ね失礼いたしました。そんなわけで埋め。
埋め
生め
残りは埋めるだけなので、少々雑談で使わさせてもらいます。
ですがこの雑談の為に埋めて下さるのを止めるような事はしないようにお願いします。
あくまでも埋めるのが第一目的ですから。
>>797 母親サイド、面白そうな感じですね〜
キャラ作りも何だかよさ気ですし。
少しだけ気になった点を言わせてもらうと、
・プレイヤーはあくまで娘であって、現実世界からの操作は無しなんじゃないか?
なぜなら「ゲームをするのは、その世界に入った張本人」である事があの時代の基本となっていて、
【もし(ry】のソフトが特別なんじゃないという設定なんです。
これは何も設定にこだわっている訳ではなくて、
そういうゲームソフトを買う人が他人に操作されるのを好むだろうか、という疑問があるからです。
もし自分がゲームの世界に入れたとしても、ただの1キャラとして扱われるだけだと面白くないような気が……
だから母親側は傍観者として画面の中で動く娘を見る事しかできない。
けどそれじゃあ面白くないからもう少し考えて、
・現実世界から「読み込ませたゲーム」への干渉はできないけど、【もし(ry】側の設定はイジることができる
とかとか。
画面で娘のピンチを見て助け出さなくてはいけないと思う。
けど母親はゲームとかはよく分からない。
だからどうすれば助けられるのか、その方法を探して翻弄する。
(まぁ解決策の一つとして文字通り母親もゲームに入るってのもアリかもしれない)
みたいな。
ちょっと話が大きいですかね?w
とりあえず母親がクリアを導くとなると、母親がヒッキーになってしまう予感w
同じく埋め作業の一貫として。(1/2)
> ・プレイヤーはあくまで娘であって、現実世界からの操作は無しなんじゃないか?
そうです、そうなんです。
ドラクエというゲームが世に「RPG」を広めたキッカケとなった事と、
技術進歩によりゲームの世界に本当に行ける世の中になった事。
この『埋め用短編』中の現実世界において、もはや「RPG」の概念は崩壊していると言えなくはないか?
それに対する皮肉のような物が今回のお話なんじゃないか?
>>777-784 を拝見したとき、この作品にはそんな意図を含んでいるような気がしたんです。
それがちょうど、指摘されている問題にも繋がるのですが。
> そういうゲームソフトを買う人が他人に操作されるのを好むだろうか
“ロールプレイングゲーム=ゲーム世界中で、ある人物の役割を演じる”のではなく
“自分がその役割(それ自体)になる”事が可能となった世界では、主人公となる娘はもはや
“プレイヤー”ではなくその世界に生きる“人”そのもの(だから原理としては自律行動。外部からの操作は受け付けない)であり、
それを外から見守る母親こそがロールプレイングゲームの“プレイヤー”なのではないか?
(そのこと自体には娘自身も気付いてる:
>>783 下から5行目「きっとゲームの登場人物〜」の件)
そう言うことを書きたかったんですが、なかなか難しいw
つまり主人公としてゲーム世界で自律行動をするのは娘。彼女は既にプレイヤーではなくゲーム世界に生きる一個人。
その娘の役になってゲームを見守る(プレイする)母親は、その行為(ロールプレイング)を通して
好きになれなかったゲームと、あまり好きではなかった父親の事を理解していく。
(2/2) 主人公(娘)のクリア条件は【魔王を倒す】事であり。 母親のクリア条件は【ゲームをクリアする】事そのもの。 同じ“エンディング”に到達するためには、娘・母親がそれぞれの課題をクリアしなければならない。 ってそう言う話の展開だと面白いかなと思ったんです。 ここから先は理屈が良く分からないけど感覚として、ゲーム内で自律行動する娘の役になってプレイ(画面外から 見守る母親)との同調がどれだけ取れるかがクリアの鍵なんじゃないかなと。 竜王からの提案受けた時なんか見てる母親はハラハラするだろうなーとかw May god be always with you!←最後は神じゃなくていい気がしたりして。 …DQ1未プレイ者ですが好き勝手言ってホントすいませんw でももし機会があれば是非書いてください。マターリ待ってます。
私は仕事の手を止め休憩をとることにした。 何も急ぐことはあるまい。 ここでは上司の目を気にする必要もないのだ。 私は沼をさらい、あるものを探し当てた。 ロトの印。 これがあれば私は勇者ロトの子孫と認めてもらえるらしい。 ずいぶんいい加減なものだ。しかし、私には好都合なのだ。 私は自分がロトなる人物の子孫であると証明する手立てがない。 そもそも私にはこの世界に関する知識が一切ないのだ。 ある日、目が覚めたら私はこの世界の宿屋にいた。 この世界での私は青い鎧を着た青年だ。 私はこの国の王により姫を助ける命を受けているようだった。 元の世界へ戻る手段が分からない私は仕方なく姫を探すことにした。 この冒険を終えれば元の世界に戻れるかもしれない。 そんな淡い期待を抱いてのことだった。 しかし、姫を助けても元には戻らなかった。 今度は姫を攫った竜王なる化け物を退治することになった。 姫は私――姿こそ違うが――私を好いているようだった。 うまく立ち回れば姫と結ばれることができるかもしれない。 一国の姫との結婚。本来の私であったら到底できることではないが…… 私はこのままこの青年として生きていくしかないのだろうか。 見ず知らずの人間として――。 ここで私はふと思った。 私の精神がこの青年の中にある今、この青年の精神は何処にあるのだろうか、と。
俺は目の前にいる男は竜王のひ孫だと名乗った。 竜王とは俺が探していた男だ。いや、かつての俺がと言うべきか。 今の俺は昔の俺ではない。どうやら俺は未来の世界に飛ばされたらしい。 この世界での俺はローレシアという国の王子だった。 彼は、今の俺だが、俺と同じ勇者ロトの血を引くものだという。 俺は同じようにロトの血を引く仲間と旅をしている。 王子自ら世界の危機を救おうというのだからたいしたものだ。 竜王のひ孫の情報を頼りに俺達は紋章というものを探すことにした。 この城から船で南に行くと紋章のひとつが眠る大灯台があるらしい。 仲間と船。どちらもかつて旅をしていたとき欲したものだ。 こんな形で手に入るとはなんとも皮肉な話ではあるが。 ――――― 仲間が転職して戦士になった。元が魔法使いなので魔法もつかる戦士だ。 転職を重ねることで仲間達はどんどん強くなっていく。 しかし勇者である自分は転職ができない。 確かに強い仲間が欲しいと思ったこともある。 自分も魔法が使えたらと思ったこともある。 今はそのどちらも手に入れた。自分ではない自分となって。 異世界で違う自分になる。 ひょっとしてこれはハーゴンの見せる幻だろうか。 それならば何とかして打ち破らねばなるまい。 伝説の勇者ロトの子孫として。 きっとご先祖様も見守ってくれているはずだ。
ライアンという男が仲間になり導かれし者たちがそろった。 導かれし者たちとは勇者とその元に集まる運命を背負った者たち。 俺はこの世界でも勇者だった。 以前の俺は勇者という存在の意義が見出せないでいた。 しかし今の俺は勇者として多大な期待を寄せられていた。 仲間達は俺が世界を救う唯一の希望だと言う。 魔物たちは勇者である俺を亡き者にしようと画策する。 勇者であることがこれほど辛いと思ったことはない。 何故こんなことになったのだろう。 俺はふと鏡を覗き込んだ。 鏡には緑色の髪をした妙に強面の青年が映っていた。 ――――― 俺は眠っている子供達の顔を見ていた。 この子供達は俺の息子と娘だという。 いきなり俺は2児の父となったのだ。 この世界の俺は勇者ではなかった。 以前、勇者という重責から逃げ出したいと思ったこともあった。 それがこんな形でかなってしまった。 その結果勇者という運命を他人に背負わせることになった。 いや、他人ではない。それは俺の息子なのだから。 なんと言う運命の皮肉だろう。 自分では分からなくてもこの子たちの親は俺なのだ。 この子達はれがしっかり守っていこう。 かつて俺の父と母がしてくれたように……
兄弟が欲しいと思ったことがあった。 一人っ子というものは寂しいものだ。 だが、今の自分には妹がいる。 自分の息子に勇者という荷が重過ぎると思ったことがあった。 勇者とは世界に1人だけの存在だからだ。 だが、この世の勇者は1人ではない。 違う世界で自分は違う自分になっていた。 まったく理解しがたいことだが。 これは夢だと思った。そして、ここは夢の世界だった。 しかし現実世界も見知らぬところだった。 現実とはいったい何なのだろう。 ――――― 自分が誰か分からなくなったことがあった。 いま、あの時以上に自分が何者か分からなくなっている。 俺は誰だ? かつて自分を失うという運命を呪ったことがある。 しかし不幸なのは自分だけではない。 それが、この世界では身にしみて分かる。 もしかして自分が誰かなんて誰にも分からないのではないか。 しかし自分は自分が誰なのか考えることができる。 重要なのは自分は生きていることだ。
おとなしい幼馴染が欲しいと思った。 そして手に入れた幼馴染は馬だった。 僕は今、呪われた彼女を救おうとしている。 弟分が欲しいと思った。 そして手に入れた弟分は年上の男だった。 この元盗賊の男は僕を兄貴と慕う。 魔物のような王様の命令で道化師を探す旅。 呪いには道化師が関係しているらしい。 この世界での僕はある国の兵士だ。 欲しいものを手に入れるために何かを犠牲にすることがある。 その犠牲が自分自身だったのだろうか…… ――――― 私は手に入れたばかりのロトの印を見つめていた。 元の世界では私は一介の兵士に過ぎない。 そんな自分が姫と結ばれることは許されない。 この世界は自分の望みそのものなのかもしれない。 だが…… 私は私の望んでいたはずの、誰にも干渉されない1人旅を続けるだろう。 気楽だと思っていたが気苦労も多い。 隣の芝は青く見える。私はそんな言葉を思い出した。 この世界は本当に自分の欲しかったものなのだろうか。 それがどうしても思い出せない。 おしまい
やべえwww 1回目は全然分かんなかったが、2回目でようやく分かった これはお疲れと言いたい
埋め用とは言えないほどの、なんか凄い実験作品が投下されまくってるな
短編だが超面白かった
>>803-807 希望の世界
九泊目の方も順調に伸びてるしいい事だ
つかもう492KBだ
1000は無理だったか
希望の世界すごい面白かった! しかも読みやすくていいね
最初何かなと思ったら歴代主人公の意識の交換かー この発想はあるようでなかったな GJ
希望の世界面白かった! 最初は分からなかったが、2回読んで鳥肌が立ったよ。 スレ趣旨とはちょっと違うかもしれないが、梅用には もったいないほどの作品だった!GJ! 最近のここの活性化っぷりはすごいなー。 応援しか出来ませんが、職人さん、まとめ管理人さん、 無理せず頑張ってください。
>>801-802 なるほどなるほど、ようやくすれ違いの原因が分かりました。
自分であぁいう文章書いといて何なんですが、
僕は「ゲームの世界に本当に行ける」という事を肯定的に捉えていたんです。
新しいゲームの可能性の一つとして、です。
だからゲームの中に入ったとしても、その人はプレイヤーとして特別なんだと思ってました。
言い換えればプレイヤーとしてゲームの中に入れる、と。
けれどsqYgJlsf0さんはそうじゃなかった。
「ゲームの世界に入る=その世界に生きる人になる」
言われてみればその通りかもしれませんね。
自分でそういう話を書いておきながら、全然気付かなかった事にショックですw
けどこの対比は凄く面白い話ですよね。
この2人のすれ違いをそのまま話に組み込む事さえ出来るんじゃないか?
そんな風に感じました。
つまり「RPG」の概念が崩壊しているか否か、という問題。
それを示唆するだけにするか、第三者を登場させて語らせるか……
今回の一連の対話、僕には凄く刺激になっています。
やはり一人で考え付く事には限界があるのでしょう。
きっとあのまま続きを書いたとしても大したものにはならなかったと思います。
しかし、おかげさまで凄く続きが書きたくなってしまいましたw
そこまで含めて「ありがとう」です。
神じゃなくていいなら、
May Mother be always with you! (間違ってるかな……
引き続き埋め作業(1/2)
僭越ながらもう少し書かせていただきます。
> 言い換えればプレイヤーとしてゲームの中に入れる
> 「ゲームの世界に入る=その世界に生きる人になる」
そうなんですよ! この差異って面白いですよね。
>>777-784 を読んだとき、「ゲームの世界に行く事を望んで行った」主人公(娘)を、
どう捉えるか(肯定・否定)によってこの物語の様相は大きく変わると思ったんですね。
自分は真っ先に母親側(一種のゲーム否定)に立った為に母親編が思いついた訳ですが、
これはきっと人の数だけ(作中で言えばソフトを手にした人の数だけ)動機や結論があると思います。
・どんなソフトをロードしたのか?(目的地の設定)
・ロードした世界に求めている物(=設定したクリア条件)は何なのか?
(たとえばプレイした物語の結末を変えたいとか、単なる現実逃避とか、空飛ぶ絨毯に乗ってみたいとか。
ゲームの世界へ“望んで行った”人達には大小を問わず“動機”がそれぞれにある筈です)
・自分の行動の先に辿り着く“結論”(クリア条件を満たす)と、その後の行動の選択。
(実際に会ったら思いの外ゾーマが良い奴で一緒に王政廃止のために奮闘するとか、絨毯酔いしたから二度と乗らないとか)
・最終的にはそのゲームを終了(現実へ帰還)するor続ける(現実への不帰)かの選択を迫られる。
それは同時に、ソフトを実行した人を送り出した側(母)にも。
・どうしてそんなソフトをロードしたのか?
・望んで出て行った者をどうしたいのか?(強制的に帰還させるのか、相手の意志を尊重し見守るか、この機会に現実世界から葬り去るか)
・最終的にはそのプログラムを終了(現実へ帰還)させて出迎えるorプログラム続行(現実への不帰)を認めるのか。(葬ry)
という側面があるわけで。
それが“ソフトを手にした人の数”だけ展開されるとすれば、実際は相当な社会現象だと思いますよ。
(まさにDQがそうだった様にw)
新しいゲームの可能性を追求した結果起きた“RPGの進化”と、そこにはらむ問題がこの話(世界)のテーマ。
(その舞台が両方ともDQだったというのが嬉しいかなとw)
母娘という小さな範囲に限った物語だとしても、含んでいる物は大きいんじゃないかな…と。
埋め作業に便乗(2/2) それは > つまり「RPG」の概念が崩壊しているか否か、という問題。 > それを示唆するだけにするか、第三者を登場させて語らせるか…… このスレの主旨「もし目が覚めたら〜」そのものが、RPGという枠を越えた文字通り「もし」の世界なんですよね。 (作品として読む・書く以上はロールプレイですが、物語中の人物にとってはそこが紛れもない現実である事) スレへ投下されるそれぞれの物語には、 書く人の動機と登場人物の思い、があって。 文章によって紡がれ導き出される結論がある。 それを、そのまま物語としたのが『埋め用短編』の世界だったのではないかと(それを暗喩しているのだと)感じたわけです。 …とは言え、あくまでも作品を読んで浮かんだ個人的な考えなので、 他の書き手さんや、諸々の解釈の行き違いがあったら申し訳ないなと同時に思うわけでして。 とにかくテーマとしては非常に魅力的だなと思ったので、それをお伝えすべく筆…じゃないやキーボードを叩いた次第です。 毎度まとまりない長文で申し訳ないです。
- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、 / \ / ヽ / __ 、、 「l} ヽ {_ニ- '´ ̄ ̄ ̄`ヽ、 ヽ 、 / / /7/j/ /\ ヽ | 500ゲット! / /rイ / / ∠/! /\ | ! みんな埋め作業乙 | /l |/ /、 / , -ェ-レ'|/i/ヽ_ | / 次スレでも職人さんたちは頑張ってください! V i レイr、`/ イr、 } l/⌒j レ′ Vヘゞ' ゞ' _,) /_」 、"< "" r┬' \ ヽ、 ‐ /! | ト、|-、 ` _--‐ ´ |i/ヽ| ヽ rく__| | /ト、___ム_ ,.ィ「!__] _ __〉〈 `丶、` - ゝ rく iヘ | 入 ` ´ j > ` ̄ヽ、 / | ヽヘ \ヘ // | /7、 、__,、___ / ヽ ヽヘ ~iヽ/i | /7/| < `ヽ /rァ ,、 \ V! l 十 i | j,7/ ! \, ---、 ト、 マ\゙ ,、 「^! i 十 i | / / | 〈 , - ┴、 | | ノ \ ,、 \ニ>、 i | レ' | V , --f'′ L__! 」__ ヽ ,、 / 丁 ト、 i | | | ヽ , -〈 |ーヘ | ,、 / | | \ | | \