FFDQバトルロワイアル3rd PART11

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1名前が無い@ただの名無しのようだ
━━━━━説明━━━━━
こちらはDQ・FF世界でバトルロワイアルが開催されたら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。

参加資格は全員、
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

作品に対する物言い、感想は感想スレで行ってください。
sage進行でお願いします。
詳しい説明は>>2-10…ぐらい。

感想スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1140452583/
過去スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1099057287/ PART1
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101461772/ PART2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1105260916/ PART3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1113148481/ PART4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1119462370/ PART5
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1123321744/ PART6
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128065596/ PART7
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1130874480/ PART8
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142829053/ PART9
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1143513429/ PART10
2名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:42:17 ID:56ktx3600
現在使用中の感想スレはこちら
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1156558388/

+基本ルール+
・参加者全員に、最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。
・参加者全員には、<ザック><地図・方位磁針><食料・水><着火器具・携帯ランタン><参加者名簿>が支給される。
 また、ランダムで選ばれた<武器>が1つから3つ、渡される。
 <ザック>は特殊なモノで、人間以外ならどんな大きなものでも入れることが出来る。(FFUのポシェポケみたいなもの)
・生存者が一名になった時点で、主催者が待っている場所への旅の扉が現れる。この旅の扉には時間制限はない。
・日没&日の出の一日二回に、それまでの死亡者が発表される。

+首輪関連+
・参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
 この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
 または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
・24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
・放送時に発表される『禁止技』を使ってしまうと、爆発する。
・日の出放送時に現れる『旅の扉』を二時間以内に通らなかった場合も、爆発する。
・無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
・なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
・たとえ首輪を外しても会場からは脱出できないし、禁止魔法が使えるようにもならない。

+魔法・技に関して+
・MPを消費する=疲れる。
・全体魔法の攻撃範囲は、術者の視野内にいる敵と判断された人物。
・回復魔法は効力が半減します。召喚魔法は魔石やマテリアがないと使用不可。
・初期で禁止されている魔法・特技は「ラナルータ」
・それ以外の魔法威力や効果時間、キャラの習得魔法などは書き手の判断と意図に任せます。
3名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:43:17 ID:56ktx3600
+ジョブチェンジについて+
・ジョブチェンジは精神統一と一定の時間が必要。
 X-2のキャラのみ戦闘中でもジョブチェンジ可能。
 ただし、X-2のスペシャルドレスは、対応するスフィアがない限り使用不可。
 その他の使用可能ジョブの範囲は書き手の判断と意図に任せます。

+戦場となる舞台について+
・このバトルロワイヤルの舞台は日毎に変更される。
・毎日日の出時になると、参加者を新たなる舞台へと移動させるための『旅の扉』が現れる。
・旅の扉は複数現れ、その出現場所はランダムになっている。
・旅の扉が出現してから2時間以内に次の舞台へと移らないと、首輪が爆発して死に至る。

現在の舞台は浮遊大陸(FF3)
ttp://www.thefinalfantasy.com/games/ff3/images/firstmap.jpg

━━━━━お願い━━━━━
※一旦死亡確認表示のなされた死者の復活は認めません。
※新参加者の追加は一切認めません。
※書き込みされる方はCTRL+F(Macならコマンド+F)などで検索し話の前後で混乱がないように配慮してください。
※参加者の死亡があればレス末に、【死亡確認】の表示を行ってください。
※又、武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
※人物死亡等の場合アイテムは、基本的にその場に放置となります。
※本スレはレス数500KBを超えると書き込みできなります故。注意してください。
※その他詳細は、雑談スレでの判定で決定されていきます。
※放送を行う際は、雑談スレで宣言してから行うよう、お願いします。
※最低限のマナーは守るようお願いします。マナーは雑談スレでの内容により決定されていきます。
※主催者側がゲームに直接手を出すような話は極力避けるようにしましょう。
4名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:44:49 ID:56ktx3600
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。
 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであれば保管庫にうpしてください。
・自信がなかったら先に保管庫にうpしてください。
 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない保管庫の作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
・巧い文章ではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 できれば自分で弁解なり無効宣言して欲しいです。
5名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:45:37 ID:56ktx3600
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・ …を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・極力ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
6名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:46:40 ID:56ktx3600
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
 (今までの話を平均すると、回復魔法使用+半日費やして6〜8割といったところです)
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、雑談スレには色々な情報があります。
 本スレだけでなく雑談スレにも目を通してね。
・『展開のための展開』はイクナイ(・A・)!
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。


+修正に関して+
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NGや修正を申し立てられるのは、
 「明らかな矛盾がある」「設定が違う」「時間の進み方が異常」「明らかに荒らす意図の元に書かれている」
 「雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)」
 以上の要件のうち、一つ以上を満たしている場合のみです。
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
7名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:47:46 ID:56ktx3600
■参加者リスト
FF1 4名:ビッケ、ジオ(スーパーモンク)、ガーランド、アルカート(白魔道士)
FF2 6名:フリオニール、マティウス(皇帝)、レオンハルト、マリア、リチャード、ミンウ
FF3 8名:サックス(ナイト)、ギルダー(赤魔道士)、デッシュ、ドーガ、ハイン、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 7名:ゴルベーザ、カイン、ギルバート、リディア、セシル、ローザ、エッジ
FF5 7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、クルル、リヴァイアサンに瞬殺された奴、ギード、ファリス
FF6 12名:ジークフリート、ゴゴ、レオ、リルム、マッシュ、ティナ、エドガー、セリス、ロック、ケフカ、シャドウ、トンベリ
FF7 10名:クラウド、宝条、ケット・シー、ザックス、エアリス、ティファ、セフィロス、バレット、ユフィ、シド
FF8 6名:ゼル、スコール、アーヴァイン、サイファー、リノア、ラグナ
FF9 8名:クジャ、ジタン、ビビ、ベアトリクス、フライヤ、ガーネット、サラマンダー、エーコ
FF10 3名:ティーダ、キノック老師、アーロン
FF10-2 3名:ユウナ、パイン、リュック
FFT 4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ、アグリアス

DQ1 3名:アレフ(勇者)、ローラ、竜王
DQ2 3名:ロラン(ローレシア王子)、パウロ(サマルトリア王子)、ムース(ムーンブルク王女)
DQ3 6名:オルテガ、アルス(男勇者)、セージ(男賢者)、フルート(女僧侶)、ローグ(男盗賊)、カンダタ
DQ4 9名:ソロ(男勇者)、ブライ、ピサロ、アリーナ、シンシア、ミネア、ライアン、トルネコ、ロザリー
DQ5 15名:ヘンリー、ピピン、リュカ(主人公)、パパス、サンチョ、ブオーン、デール、レックス(王子)、タバサ(王女)、
        ビアンカ、はぐりん、ピエール、マリア、ゲマ、プサン
DQ6 11名:テリー、ミレーユ、イザ(主人公)、サリィ、クリムト、デュラン、ハッサン、バーバラ、ターニア、アモス、ランド
DQ7 5名:主人公フィン、マリベル、アイラ、キーファ、メルビン
DQM 5名:わたぼう、ルカ、イル、テリー、わるぼう
DQCH 4名:イクサス、スミス、マチュア、ドルバ
8名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:48:32 ID:56ktx3600
生存者リスト

FF1 0/4名:(全滅)
FF2 2/6名:フリオニール、マティウス
FF3 4/8名:サックス、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 1/7名:カイン
FF5 4/7名:ギルガメッシュ、バッツ、レナ、ギード
FF6 5/12名:リルム、マッシュ、エドガー、ロック、ケフカ
FF7 3/10名:ザックス、セフィロス、ユフィ
FF8 3/6名:スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:アルガス、ウィーグラフ、ラムザ

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 3/6名:オルテガ、アルス、セージ
DQ4 5/9:ソロ、ピサロ、アリーナ(2は死亡)、ライアン、ロザリー
DQ5 7/15名:ヘンリー、リュカ、パパス、ブオーン、タバサ、ピエール、プサン
DQ6 4/11名:イザ、クリムト、ハッサン、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 3/5名:わたぼう、ルカ、テリー
DQCH 1/4名:スミス

FF 31/78名 DQ 24/61名
計 55/139名
9名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:50:12 ID:56ktx3600
■現在までの死亡者状況
ゲーム開始前(1人)
「マリア(FF2)」

アリアハン朝〜日没(31人)
「ブライ」「カンダタ」「アモス」「ローラ」「イル」
「クルル」「キノック老師」「ビッケ」「ガーネット」「ピピン」
「トルネコ」「ゲマ」「バレット」「ミンウ」「アーロン」
「竜王」「宝条」「ローザ」「サンチョ」「ジークフリート」
「ムース」「シャドウ」「リヴァイアサンに瞬殺された奴」「リチャード」「ティナ」
「ガーランド」「セシル」「マチュア」「ジオ」「エアリス」「マリベル」

アリアハン夜〜夜明け(20人)
「アレフ」「ゴルベーザ」「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
「ラグナ」「エーコ」「マリア(DQ5)」「ギルバート」「パイン」
「ハイン」「セリス」「クラウド」「レックス」「キーファ」
「パウロ」「アルカート」「ケット・シー」「リディア」「ミネア」

アリアハン朝〜終了(6人)
「アイラ」「デッシュ」「ランド」「サリィ」「わるぼう」「ベアトリクス」

浮遊大陸朝〜 (21人)
「フライヤ」「レオ」「ティファ」「ドルバ」「ビアンカ」「ギルダー」
「はぐりん」「クジャ」「イクサス」「リノア」「アグリアス」
「ロラン」「バーバラ」「シンシア」「ローグ」「シド」「ファリス」
「エッジ」「フルート」「ドーガ」「デール」

浮遊大陸夜〜夜明け(5+1人)
「テリー(DQ6)」「トンベリ」 「ゼル」「レオンハルト」「ゴゴ」
「アリーナ2」
10遅れつつ支援:2006/09/09(土) 22:50:28 ID:ifAbYCvX0
■GF継承に関する暫定ルール
「1つの絶対的なルールを設定してそれ以外は認めない」ってより
「いくつかある条件のどれかに当てはまって、それなりに説得力があればいいんじゃね」
って感じである程度アバウト。
例:
・遺品を回収するとくっついてくるかもしれないね
・ある程度の時間、遺体の傍にいるといつの間にか移ってることもあるかもね
・GF所持者を殺害すると、ゲットできるかもしれないね
・GF所持者が即死でなくて、近親者とか守りたい人が近くにいれば、その人に移ることもあるかもね
・GFの知識があり、かつ魔力的なカンを持つ人物なら、自発的に発見&回収できるかもしれないね
・FF8キャラは無条件で発見&回収できるよ
11名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:51:04 ID:56ktx3600
■GF継承に関する暫定ルール
「1つの絶対的なルールを設定してそれ以外は認めない」ってより
「いくつかある条件のどれかに当てはまって、それなりに説得力があればいいんじゃね」
って感じである程度アバウト。
例:
・遺品を回収するとくっついてくるかもしれないね
・ある程度の時間、遺体の傍にいるといつの間にか移ってることもあるかもね
・GF所持者を殺害すると、ゲットできるかもしれないね
・GF所持者が即死でなくて、近親者とか守りたい人が近くにいれば、その人に移ることもあるかもね
・GFの知識があり、かつ魔力的なカンを持つ人物なら、自発的に発見&回収できるかもしれないね
・FF8キャラは無条件で発見&回収できるよ
12名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:51:54 ID:56ktx3600
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://exa.to/ffdqbr/
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/game/22429/
あなたは しにました(FFDQロワ3rd死者の雑談ネタスレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/22429/1134189443/
ロワらじ
http://jbbs.livedoor.jp/game/22796/
お絵かき掲示板
http://dog.oekakist.com/FDBR/

現在の舞台は浮遊大陸(FF3)
ttp://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/up/source5/No_0069.jpg
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/152-153(参考にどうぞ)

>10
かぶってごめん
13名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 22:52:12 ID:ifAbYCvX0
■その他
FFDQバトルロワイアル3rd 編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/
FFDQバトルロワイアル3rd 旧まとめサイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3rd/index.html
1stまとめサイト
http://exa.to/ffdqbr/
1st&2ndまとめサイト
http://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/
番外編まとめサイト
http://ffdqbr.fc2web.com/
保管庫
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/game/22429/
あなたは しにました(FFDQロワ3rd死者の雑談ネタスレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/22429/1134189443/
ロワらじ
http://jbbs.livedoor.jp/game/22796/
お絵かき掲示板
http://dog.oekakist.com/FDBR/

現在の舞台は浮遊大陸(FF3)
ttp://ffdqbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/up/source5/No_0069.jpg
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/2736/1057165790/152-153(参考にどうぞ)
14夜空に星を 1/9:2006/09/09(土) 22:54:27 ID:56ktx3600
昨日に続いてその晩も、ラインハットは騒がしかった。
一夜のうちに失踪した王と、その兄夫婦を探し、兵士達が国中を駆け回っているためだ。
けれども、彼らの働きを嘲笑うかのように、一向に手掛かりは見つからず。
皇太后がいくら怒鳴ろうとも、三人の足取りは掴めずにいる。
「ええい、誰も彼も怠けおって!
 よいか! 王が見つかるまで兵には休息も睡眠も取らせるな!
 これは我が国の存亡が掛かった一大事! 身を投げ打ち、死ぬ気で探せと伝えるのじゃ!」

無茶苦茶な命令にも、反論できる者はいなかった。
実際問題として、一国の王と、王位継承者が居なくなっているのだ。
デール王とヘンリー夫妻が見つからなければ、ラインハットを継ぐ者は幼いコリンズただ一人。
彼を王の座に立てるとすれば、皇太后が実権を握る形になるだろう。
だが、皇太后は……
魔物に誑かされたといえ、ヘンリーを葬ろうとし、長年の悪政を敷いた元凶ともいうべき人物だ。
民衆の支持も薄い彼女が権力を握ればどうなるか。
王室に仕える者達は皆、口を揃えて『考えたくない』と言うだろう。

皇太后との謁見を終えた後、大臣は自室に戻り、椅子に腰掛けた。
顔色が悪いのは、身体的な疲れよりも心労のせいだ。
「このまま王とヘンリー様が戻らなければ……王家の血も途絶えるかもしれぬな」
悲しげに俯きながら、彼は日記帳の入った引出しを開ける。
すると、視界に、緑色の物体が飛び込んできた。

ぴょい〜ん。ぴょーん。ぴょいんぴょい〜〜ん。
ケロケロケーロ。ゲコゲーコ。ケロケロケロロー、ケロケロロー。

「ッ何じゃこりゃあーーッ!!」
引出しから飛び出したカエルの群れ。その姿に驚いた大臣が大声で叫ぶ。
カエル達は、机の上をみるみるうちに占領し、コンサート会場と変えてしまった。
15夜空に星を 2/9:2006/09/09(土) 22:55:50 ID:56ktx3600
ケロケロー、ゲコゲコー、ケローケローケロケロー。
かーえーるーのーうーたーがー、きーこーえーてーくーるーよー……

呆然とする大臣を他所に、カエル達は楽しく歌っている。
誰の仕業かなど、問うまでもない。
こんな悪戯をするのは二十年前のヘンリーと、コリンズ以外にはいないのだから。
「本当に……ラインハットも終わるな……」
カエルの気持ちがたっぷりつまった大合唱を聞きながら、哀れな大臣はがっくりと項垂れた。


「コリンズ王子! こんな所に居られたのですか」
城の外。水面を見つめるコリンズに、兵士が優しい声をかける。
「太后様も心配されておりますし、夜風に当たっていてはお体に触ります。
 今宵はもう、寝室にお戻りになってお休みください」
「うるさいぞ、トム。
 カエルも触れないお前に、命令される筋合いなんかないからな」
コリンズはふんと鼻を鳴らし、そして、膝を抱えて俯いた。
「どうしてもって言うなら、母上か叔父上を連れてこいよ。 
 そうしたら、部屋に戻ってやってもいいぞ」
「……」
トムと呼ばれた兵士は、哀れみの混ざった視線を落としながら、黙ってコリンズの隣に座った。
そして、幼い王子と同じように堀を見つめた。
鏡のような水面は、夜空を映し、きらきらと輝いている。

「トム。お前には星が見えるか?」
コリンズが言った。
それがあまりに唐突だったものだから、トムは困惑してしまう。
何も答えられずにいる兵士を見やり、コリンズは嘲るような笑みを浮かべた。
16夜空に星を 3/9:2006/09/09(土) 22:58:53 ID:56ktx3600
「父上が言っていたんだ。
 夜空の星は、希望と同じ数だけ輝いて見えるんだって。
 星が見えないってことは、お前には希望も何もないってことだな」
「なんですか、それ?!」
口を尖らせ、慌てて空を見上げるトムを他所に、コリンズは立ち上がる。
ひとしきり衣服の汚れをはたいてから、城内へ戻る扉に手をかけた。

「父上……明日は、星、見れるかな」
少年のか細い呟きは、誰にも届かずに、空気に溶けていった。



「……くそったれ……」
痛みは、身体よりも精神を苛む。
零れ落ちる血は薄紅の水面に溶け、濡れた衣服は無情なほどに体温を奪う。
水深自体は浅かったが、今の状況では慰めにもならない。
意志に反して、意識はどんどん曖昧にぼやけていく。
それでもヘンリーは、星が瞬く空を見上げ、壁面に背を預けながら身を起こした。

気配と足音は、既に感じない。
サラマンダーは遠くへ逃げ、そして、ウルに居るはずの誰もがここで起きた戦闘に気付いていないのだ。
ヘンリー自身も、カーバンクルも、傷を塞ぐ力は持っていない。
助けを呼ばなければ――呼べなければ、待っているのはたった一つの結末のみ。

「っ、はぁ……はぁっ、ぁ……」
揺れる汲み桶、その彼方で輝く小さな星を見つめる。
セントベレスの頂で、助けも希望も、星空を見る自由もないまま、十年の歳月を過ごした時代――
あの時に比べれば、この程度の状況が何だというのだ。
どうしようもなくてもどうにかなる。
どうにかならないなら、どうにかすればいい。
簡単に死んでは、二度も三度も守ってくれたG.F、カーバンクルに。
そして妻に、弟に、志半ばで死んでいった者達全員に、申し訳がつかない。
17夜空に星を 4/9:2006/09/09(土) 23:00:11 ID:56ktx3600
星を見る。
頭上で瞬く輝きは、『生きる』という希望。
どこかで生きている親友と、恩人に会うために。
帰りを待っている、愛すべき生意気な息子と会うために。
生き延びる。絶対に――

敵に気付かれるかもしれない、という思考はどこか遠くへ消え去っていた。
手を翳す。
出し切れない声の分まで、ありったけの魔力を込める。
狙うは、滑車の上で揺れる枝の影。
ロープが切れないことを、誰かが気付いてくれる事を祈りながら、今まで何度も唱えてきた呪文を放つ。

「イオ!」

光と爆音が空を切り裂き、解き放たれた熱波が木々を打つ。
緑の瞳が己の打ち上げた花火を映し――そして、とうとうヘンリーは気を失った。



「はんちょー達、どこ行ったんやろな〜。
 遊びに行くなら、声かけてくれたっていいのに。
 そしたら、花火とか海水浴とか、はりきって計画立てるのに〜」

ベッドの上に寝転がりながら、セルフィがぼやく。
他人の部屋で、よくもまぁこんなにくつろいでいられるものだと感心しながら、キスティスは椅子を軋ませた。
「そのことなんだけど……
 本当に、遊びに出かけただけなのかしら?」
「ん〜? どゆこと〜?」
脳天気な声が返ってくる。
もふもふと枕を抱えているセルフィに向き直り、キスティスは、ずっと抱えていた不安を口にした。
「誘拐とか、拉致されたとか、そういう状況に陥ってるとしたら……ってことよ。
 だってそうでしょ? 連絡もないし、あの五人が揃って姿を眩ますなんて、普通じゃないわ」
18夜空に星を 5/9:2006/09/09(土) 23:03:02 ID:56ktx3600
「誘拐〜? スコールやサイファーが〜?」
セルフィは首を傾げ、それからすぐに声を立てて笑った。
「まぁ、アービンやゼルなら、騙して連れ込めるかもしれんけどなー。
 スコールなんて、力づくでも絡め手でも引っ掛かりそうにないやん。
 それに誘拐やったら、今ごろ悪の組織が身代金の電話掛けてきてるって。
 エスタ大統領の子息でガーデン司令官だもん、100万ギルぐらい余裕で請求できるよー」
だが、キスティスの表情は影が落ちたままだ。
「それはそうなんだけどね……」
椅子を回転させ、机上の端末に視線を移す。
モニターには幾つかの文章が映し出されていた。

『・先日紛失が発覚した、囚人用特殊拘束具G-22号試作設計図の捜索を行う。
  協力者として、サイファー・アルマシー及び、Seed五名の派遣を要請する。
 依頼者:フューリー・カーウェイ』
『・時間圧縮世界にて観測された時空間跳躍ゲートの開発研究を行うため、
  大海のよどみにてオダイン博士の護衛を依頼する。
 依頼者:エスタ科学局』
『・旧魔女討伐班員を派遣してほしい。重大要件のため、概要は口頭で説明。
 依頼者:キロス・シーゲル』

「……何かが、私たちの知らない所で動いてる。そんな気がするの」
白い指先がキーボードを弾き、キスティスは呟く。
スコール達の失踪、急に舞い込んできた幾つもの依頼。
サイファーがガルバディア軍を掌握していた頃に紛失したとされる、試作品爆弾首輪の設計図。
そして、キロスが伝えてきた、エスタ大統領・ラグナの蒸発。
もしかしたらだ。
もしかしたら、これらの事実は全て、一つの絵を作り上げるためのピースなのかもしれない――
その推測に理由や根拠があるわけではない。
単純に、女の勘という奴だ。
それでもキスティスは暗い想像を拭えずにいるし、一方でセルフィは心配しすぎだと笑い飛ばす。
19夜空に星を 6/9:2006/09/09(土) 23:05:11 ID:56ktx3600
「考えすぎだってばー。
 そんなに心配してるとハゲちゃうよ〜? ツルツルに〜」
ベッドの上を転がりながら、セルフィはからかい半分に言う。
すっかりくしゃくしゃになったシーツを見やり、キスティスは小さくため息をついた。
「いいわね、あなたは気楽で……」

これくらい気楽な性格の方が、幸せに生きていけるのかもしれない。
キスティスの、呆れ混じりの憧憬を知ってか知らずか、セルフィは窓から夜空を見上げる。
青緑の瞳には、満天の星々が映り込んでいた。



あと五分遅かったら、誰にも気付かれなかったのだろう。
だが、気付いた者がいたことが幸運だったとも言い切れまい。

「何だぁ?」
先を走っていたマッシュが、訝しげに林を見やる。
攻撃というには静かな爆発音と、花火というには弱々しい光。
無数のライトアップといい、地面から伝わる振動といい、遠くで聞こえる獣の雄叫びといい、
一体この村で何が起きているというのか。
じっくり考える暇など、どこにも有りはしない。
スコールは剣の束を握り締めながら、仲間に声をかけることもせず、木立に足を踏み入れる。

捜し求めている男は、木々が生い茂る山中で四人の人間を葬った。
この世界でも同じように、木陰に紛れての奇襲攻撃を繰り返しているのかもしれない。
だとすれば……止めなくてはならない。何としても。
スコールはそう思っている。
そして、彼の気持ちを知っているから、マッシュも黙って後を追う。
20夜空に星を 7/9:2006/09/09(土) 23:11:12 ID:56ktx3600
数十秒ほど走ったところで、ぽっかりと開けた空間が現れた。
その中央に鎮座するものに、スコールは鋭い眼差しを注ぐ。
「今時、ポンプのない井戸か……
 住んでる城といい、相変わらずあの魔女はアンティークが好きだな」
そう一人ごちりながら、彼は煉瓦の端についた血に気付き、指先で拭き取った。
ある程度時間が経過していたのだろう。それは固まりかけた糊のように、皮膚にへばりつく。
スコールはしばらく辺りを見回し、それから、井戸の中を覗きこんだ。
「……?」
不意に、暗闇の中で何かが光った……ような気がする。
目の錯覚か、それとも本当に『何か』があるのか。

「マッシュ、ランプを貸してくれ」
視線を固定したまま、スコールは後ろに来ているマッシュに手を差し出す。
「ランプ?」
マッシュは首を傾げつつ、左手に携えていた明かりを渡した。
スコールは無言で、ぽっかりと口を開けた穴の中にランプを投げ込む。
悪ふざけではない。反応の有無を探るのと、闇の奥を照らして確かめるためだ。
マッシュから借りたのは、自分の物を無くすのが嫌だったから、という極めて自己中心的な理由であり
レオ将軍が持っていた物があるから構わないだろう、という言い訳があったからだが。
「あーっ! な、何してんだよ!?」
怒鳴る仲間の声を他所に、スコールはじっと地の底を見つめる。
一瞬だけ照らされた影。それは――

「おい、人の話聞けよ!
 一体何をする……だぁーーーッ!!?」

マッシュが素っ頓狂な声を上げる。
それもそのはず。スコールがいきなり井戸の中に飛び込んだのだから。
呆然とするマッシュの前で、からからと滑車が回る。
ロープを掴んで降りたのだろう、着水音は思っていたよりも小さかった……
……が、マッシュがそのことに気付く余裕はなかった。
21名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 23:15:34 ID:m5WGvXHf0
支援
22夜空に星を 8/9:2006/09/09(土) 23:15:41 ID:56ktx3600
それは突然ではなかったが、予期せぬ出来事だった。
咆哮が大気を震わせ、稲光が天空を切り裂く。
遠くの建物や木々が松明のように燃え上がる。
村の中央で巨大な魔物が暴れているなど、マッシュにわかるはずもない。
想像だにしない破壊、理解を超えた事態を前に、思考が一時停止する。
村に居るはずの兄。井戸の中に飛び込んだスコール。
自分は誰を助け、どう動くべきなのか。
混乱した頭は、答えを導き出してはくれない……


その一方で、スコールもまた、動けなくなっていた。
井戸の中にいた男は、腹から血を流し、気を失っている。
放っておけば死ぬだろうが、ティナの力を借りれば傷を塞げる。
それだけなら、何も躊躇う事はなかった。
問題は二つ。彼が『緑色の髪』と、手に拳銃を持っていたことだ。

――緑色の髪の男に遠くから射撃された――

参加者リストを見た限り、緑色の髪を持つ人物は三人。
緑のバンダナを巻いた金髪の男を入れれば、容疑者は四人。
即ち、この男が恋人の敵である確立は1/4でしかない。
銃だって、決して珍しい武器ではない。
しかし、彼こそが、リノアを殺した張本人であったとしたら……?

スコールは拳を握り締める。
助けるべきか、見捨てるべきか?
見捨てるには覚悟がいる。助けるには、覚悟とは別の何かがいる。

あまりに厳しい選択を迫られ、スコールは助けを求めるように天上を仰いだ。
村と森とを焦がす炎のせいだろうか。
――星は、何処にも見えなかった。
23夜空に星を 9/9:2006/09/09(土) 23:17:27 ID:56ktx3600
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:スコールを助けるか、村に行くか思案中
 第二行動方針:エドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在地:ウルの村 南東の井戸のそば】

【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
 第一行動方針:ヘンリーを助けるかどうか思案中
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男を探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【ヘンリー(手に軽症、腹部重傷、HP1/2、気絶)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP1/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 第一行動方針:井戸からの脱出
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームに乗る奴は倒す)】
【現在地:ウルの村 南東の井戸の底】
24名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/09(土) 23:18:37 ID:ifAbYCvX0
という訳で、>>1乙かつ新作乙

こちらこそかぶってしまいごめんなさい
25名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/10(日) 11:08:32 ID:w23AM48qO
念のため保守っときますよ
26名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/11(月) 15:11:18 ID:u8Ji2583O
27名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/12(火) 16:56:09 ID:yc9tOld8O
ホシュダー!
28若虎鳥谷党:2006/09/12(火) 19:46:32 ID:29A7Nio30
ここに移住してもええ?
29若虎鳥谷党:2006/09/12(火) 20:17:16 ID:29A7Nio30
みんな正義の味方阪神を応援してや。
30名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/13(水) 11:23:19 ID:jQRIoI820
ほしゅ。

ドラファンだから、応援できない。ごめん。
31名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/13(水) 14:25:55 ID:POqWB1Cm0
   ___________________
   ||★★荒らしは放置が一番キライ!★★
   ||●重複スレ、板違いスレには誘導リンクを貼って放置!
   || ウザイと思ったらそのまま放置!
   |||▲放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います!
   || ノセられてレスしたらその時点であなたの負け!
   ||■反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです
   || 荒らしにエサを与えないで下さい
   ||☆枯死するまで孤独に暴れさせておいて
   || ゴミが溜まったら削除が一番です|
   ||              ∧ ∧   。
   ||          ( ,,゚Д゚)/
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ノ  つ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                /  ̄ ̄ ̄ ./| lヽ________________
                | ̄ ̄ ̄ ̄| | |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|____|/|
                        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      \ は〜〜〜〜い           /
    ∧ ∧    ∧,,∧   ∧ ∧
    (・,, ∧▲  ミ  ∧ ∧ (  ∧ ∧
  〜(_(  ∧ ∧_( ∧ ∧_ミ・д・∧ ∧
    @(_(,,・∀・)@ (   *)〜ミ_ (   ,,)
      @(___ノ 〜(___ノ    〜(___ノ
      /  は〜〜〜い            \
32名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/14(木) 21:13:36 ID:8GgIYB560
ほしゅ
33やさしさの結実:そこに残るもの 1/10:2006/09/15(金) 05:22:31 ID:Oxoz1hzk0

結局のところ、手にしているエクスカリバーは役に立っていない。
理由は単純に戦術面、わたぼうとのユニットにおいてでは
(威力は出ないとはいえ)白・黒魔法が使える自分がサポートに回るべきだということ。
そのわたぼう、頼りにする相棒は予想以上に頼もしい存在であった。
夜の黒と照らす火の赤が入り混じるレナの頭上をバトルステージにして
ふわふわもこもこは素晴らしいスピードを駆り巨獣を翻弄していた。
先程送り届けたブリンク、プロテスはきっと役に立ってくれるはず。
二匹の対比はノミとクマ程ではあったが、それでもノミは良くクマを抑えているよう見えた。
問題があるとすれば――
天より降る炎と熱がひとしきり辺りを包み、とっさに呼吸器をかばったレナの肌を炙っていく。
そう、問題があるとすれば、明らかに出会い頭とは「使い方」を変えてきた炎。
小範囲を焼き尽くすのではなく広範囲に放射される集団を逃がさない炎熱の吐息。
あの怪物の荒れ様では何かの戦略まで考えているはずもないだろうが、
体力差と回復魔法の減衰により今の消耗戦を続けていては自分達も危険だし、それどころか村はますますめちゃくちゃになっていくだろう。
それでは勝ち目もみんなを、エリア達を守る目的達成も見えない。
分散しているだけ威力の落ちている炎を振り払い、逃がさないぞと言わんばかりに地面を槌打つ拳をかわし、
口中で編み続けたケアルガを頼れる相棒へ送り放つ。
何かどうにかしなければならない打開の一手が必要なのはわかっていたから、次に準備したのはサポートの白ではなく、黒魔法。


34やさしさの結実:そこに残るもの 2/10:2006/09/15(金) 05:24:20 ID:Oxoz1hzk0

相手のそびえる巨大な体自体を足場に使い小うるさく三次元の空中を跳ね回るわたぼう。
全身の筋力を用い遺憾なくそのパワーを振るう巨獣を翻弄できるスピードは星降る腕輪のおかげだろう。
大きく虚空を薙いだ豪腕は魔法効果による虚像をかき消し、わたぼうに足場を提供する。

ところで。
モンスターというのは確かに危険な存在で――でも、それはとっても純粋の裏返しなのだ。
それだからこそ、容易に邪悪な雰囲気や負の感情に染まってしまう。
逆に親しみの心をもって接すれば仲良くなる事だってできる。
だからといって村一つ炎上させた相手に対してこの期に及んでまだそういう思考ができるのは精霊としての立場ゆえか、性格か?
あるいは魔女の悪意に満ちたこの世界に影響されるモンスターという存在への憐憫か。
あるいは嗅覚に訴えかける彼の深い傷に対して構わずにいられない優しさか。
ともかくこのときわたぼうが描いていた考えは文にしてみると短い。
つまりは……「コミュニケーションできない、かな?」

と言う間にも相手だって行動しているわけで。
スピードでかわすことのできない、上のわたぼうから下のレナまで空間を埋めるように吐き散らされる炎にツッこまれ、地面へ。
久々の地面にふたんと着地、炎の熱さは以外に近くから届いた癒しの光に解かれた。

35やさしさの結実:そこに残るもの 3/10:2006/09/15(金) 05:25:36 ID:Oxoz1hzk0

突破すべき、対峙すべき方向に背を向けて狙いは仰角45度、夜空へ向けて左手をかざす。
解き放たれたフレアは小さな光を空間に数粒撒き散らした後で爆裂。
あたりをただの火炎と性質を異にする光、そして音が埋め尽くす。
それに対して期待した通りのものと予想の外からのもの、時間差を置いて二つの反応があった。
期待通りなのは注目と取れる様子を見せた見上げる巨獣だ。
余韻を残して散っていくフレアの残骸から紅く重い視線はこちらへ移ってくる。
そう、それでいい。あなたが戦うべき、いや追うべき相手は私。
怒りか興奮か、真っ直ぐに自分を狙い打ち下ろされる一撃が地面に刺さるのを背にしてレナは駆け出す。
予想の外からやって来たのはいつの間にかのすぐ傍からの声。

「ねえ、レナ」

勝手に局面を動かした事について追認を求めねばならないこと、
もっと直言すれば自分の覚悟に巻き込んだことに後ろめたさを感じながら振り向いた方向には追走してくる相棒の姿があった。
予想外だったのはその目の光。
問いかけのための茶目っ気をまといながらその実、奥に強い意志を湛えた光。
『協力してくれないかな?』でシンクロした気持ちは不謹慎ながらどこか心地よかった。

「村から引き離すんだよね?」
「ええ。でも……巻き込んじゃって」
「いいよ、ボクももう少し頑張ってお話してみたいから」
「お話?」
「うん。あのね、モンスターってのは本来はとっても純粋で――ぇええっと!」

語尾は驚きに変調してはねる。
既に開始された誘導作戦。会話を打ち切らせたのは当然そこにある追いくる巨大な気配だ。
まず最初に追いついたのは空中から降るいなずまで、レナは身を投げ出して伏せる。
わたぼうは――驚くことにまるで自分が電撃を引き受けるかのように跳躍していた。
降りしきるいなずまを耐え、平気で着地するわたぼうの右手がひらひらと振られる。
36やさしさの結実:そこに残るもの 4/10:2006/09/15(金) 05:26:57 ID:Oxoz1hzk0
「大丈夫だよ、はげしいほのおの方はこうはいかないけど」
「…本当に、大丈夫?」
「うん! でさ、あの子のすごい怪我…気付いた?」
「火傷。ずいぶんひどいみたい」
「あれはきっとすっごく痛いよ」

最初の対面から異臭のことにははっきりと気がついていた。
光量も情報も足りないせいで詳細までは分からないが、それが尋常な怪我ではないことも。

「それであんなに凶暴だっていう予想は…できるかもしれない」
「暴れまわるのは良くないけどさ、火傷して苦しそうでカワイそう。
 できれば何とか戦わずに仲良くなれたらさ、いいよネっ」

無邪気な笑顔がそれを言う。可能性の低さに躊躇わない笑顔が。
それはとても愚かなこと、でも何かを切り捨てた心にはとても綺麗で清らかなもの。

「説得する気なの?」
「あはは、そーだね。まず叩いちゃった事は謝らないといけないかなぁ」
「…そんなこと本当にできると思って――本気?」
「もちろん。あのね、モンスターだって結構ちゃんと考えて生きてるんだよ?
 心を通わせて一緒に戦う人だってホントにたくさんいるんだ。
 それに――」
「それに?」
「この世界には…なんていうのかな、モンスターにわるーい影響を与えちゃう邪気がないんだよね。
 魔女はあんなに悪そう、ううん、わるーいのに」
「影響する邪気?」
「そう、モンスターって純粋だからすぐそういうのに影響されて暴れだしちゃうんだ。
 でも、ヘンだけどこの世界はそうじゃないから。きっとあの子にも何か理由があるんだよ」
「理由……か」
37やさしさの結実:そこに残るもの 5/10:2006/09/15(金) 05:29:16 ID:Oxoz1hzk0
自分達とモンスター達の対置、戦う理由なんてそんなに深刻に考えたことはなかった。
ただ、大事な目的の前に立ちはだかるから戦わなければならない。そう割り切ってきた。
だって天秤にかけられるような物ではなかったから。
けれどもゲームの参加者として対等の立場に置かれ、モンスターは純粋なんて意見を聞かされ、状況に選べる枷を取り去られ、
優しさと理性はこの深刻な問いに改めて興味を示す。

「だからお話しするんだ。えと、協力して…くれる?」
「……優しいのね、わたぼうは」
「そうかな? 照れるな〜」
「いいわ、もちろん協力させてもらう。あなたを信じる。
 無理矢理連れてこられたゲームの被害者なのはみんな一緒…ですもの」
「ありがとう! レナだって優しいよ。きっといいモンスターマスターになれるよ!」
「?? ありがとう」
「よーし、それじゃあ、がんばるぞっ」

稲妻に遅れて近づいてくる巨体に気付き、わたぼうは軽やかにびしりと親指を立てた手を突き出した。
ほんの一時、一人と一匹、状況とは不釣合いなほどに心地よく笑いあう。
それを無くしていいものなのかどうかは分からないけれども
重なり響きあった心のうちに迷いや気がかり、ためらいは消えていた。


38やさしさの結実:そこに残るもの 6/10:2006/09/15(金) 05:31:07 ID:Oxoz1hzk0

常軌を逸する暴力を誇る巨獣相手にいかに強くとも人間一人とちっぽけなモンスター1匹の1対2。
それでも回復魔法減衰の制限がなければもっとまともな戦いも選択出来たろう。
執拗に襲い来る炎は確実に体力を削り取り、一人と一匹を死の入り口へと押し込みつつあった。
それでも。
わたぼうの翻弄、レナのサポート、南西方面への後退。
豪腕と炎、いかずちの舞う苛烈な戦闘は挫けぬ心に支えられて続く。

挫けぬものは胸のうちに二つ。
一つは、希望。
無論、根拠さえない――けれど、信じるに足る精神が彼らのうちにはある。
私達が宿屋へたどり着くことはできないけれど、彼らはきっと代わりにやってくれる。
私は、そのための時間を支えきればいい。あとはバッツ、ソロ、リュック達に任せよう、信じよう。
だから、立ち続けられる。
一つは、信頼。
ともに戦ってくれる仲間――死地に付き合ってくれる仲間がいる。
モンスターは純粋なんて言っちゃう純粋なモンスター。
手にした武器じゃなくて言葉で、気持ちで立ち向かうことを選んじゃうような子。
彼が諦めないうちは私だって一緒。
だから、立ち続けられる。

39やさしさの結実:そこに残るもの 7/10:2006/09/15(金) 05:35:20 ID:Oxoz1hzk0
真正面で物理攻撃を引き受けるわたぼうはすでに、戦闘の領域には立っていない。
炎に焼かれ時に打撃を被弾しながら、モンスター同士のコミュニケーション、いわゆるまじゅう語を用いて語りかけ続ける。
『ねえ! ねえってば! 返事してほしいな〜』
耳が反応している。だから、聞こえていないことはない。
スライムから死体から無機物まで可能なことだ。意思の疎通が図れないとは思えない。
『君は…えーと、なんて種族? ぼくはわたぼう、タイジュの国の精霊なんだ!
 さっきは叩いちゃってゴメンね?』
息が漏れるのに付き従って鳴った小さなうなりは返事ではないだろう。
どちらかといえば、何かを紛らわすような。
『傷…火傷が痛いんだね。でもそれならさ、なおさら暴れてちゃダメだよ。休まないと』



耳に届く優しげな語り口は、彼のうちに苛立ちと拒絶のさざ波を立てる。
おしゃべりには嫌な記憶しかなかったから。

「う゛る゛さ゛い゛っ゛!!」

乱れた音、けれど人にも理解できる言葉でそう、言った。
顕れた変化にレナは確認するように巨体を見上げ、
わたぼうは何がその言葉に秘められているかを知らぬままに返答を無邪気に喜んでいた。

「やっと喋ってくれた! ねえ、君の名前は?」
「キ゛エ゛ロ゛ォ゛ォ゛!!」
「ぼくわたぼう! そんなに怒鳴らないで。モンスター同士お腹を割っていこ?
 君だってあの魔女には腹が立ってるんじゃない?」
「ブォオオオオッッ!」

すべての破壊は、力あるものの究極の逃げ道だ。
湖より進撃を開始してよりブオーンは流れ星、光、敵と平穏でない刺激を破壊する反応を続けてきた。
そんな彼は今、目の前の小うるさい奴へ深く鋭い殺意が浮上するのを強く自覚する。
ただ、おしゃべりには嫌な記憶しかなかったから。
40やさしさの結実:そこに残るもの 8/10:2006/09/15(金) 05:39:38 ID:Oxoz1hzk0



怒り紛れに激しく振り下ろされる腕が虫でも潰すようにわたぼうを襲う。
その一撃は確率上の偶発か、運命の必然か。
これまでのどれよりも速く、どれよりも強く、どれよりも感情の乗せられたそれが小さな相手を叩き落とす。
その先、結末は一方的であった。
繕われてきたバランスはそこからたやすく崩壊する。

鈍い震動が空気と地面のセットで伝わり、レナは唱えかけていたケアルガを静かにキャンセルする。
一箇所へ向けて狂ったように叩きつけられる腕の下――もはや生命は残っていないだろう。
尽くせるだけの時間を「戦い抜いた」幾許かの満足と充足の裏で心のどこかの支えが断ち切れた事を実感した。
いや、まだ命あるこの身、右手の剣、まだもう少しやれる。
全身全霊をかけてわずかでも縫い止めて時を稼ぐ――決めかけた最終作戦。
けれどいつか止んだ音に気付いて小山のように佇む影を眺めた時に思い至る。

この子が、遥か前に感じられる今朝方、前の世界で見たあの「動く山」だったとは途中で気付いていた。
怯えていたエリア、唖然とした自分を思い出して、彼に心を馳せる。
いかにも怪物然とした姿の彼が過ごした今日はどんな一日だっただろう。
まるで悪役を運命付けられたかのように怖がられて、追われて、戦って?
その結果あんな――片目をつぶされ、身体を焼かれ、彼に残されたのは暴れるという行為だけ。
わたぼうが言う「純真な」獣の心は身体と同様に傷つき、当然に不信と狂気に染まっていったのだ。
彼だって立場は同じだったって言うのに。

極限の先に残った優しさが、踏み出す自分の足を縫いとめる。

41やさしさの結実:そこに残るもの 9/10:2006/09/15(金) 05:48:55 ID:Oxoz1hzk0


拳に残る感触と何かのカス、それに消えた声が終わりを証明している。
破壊の充足は、荒れ狂う心の海にほんのわずかな静面を与えた。
わめき散らされた小うるさい声がそこにかすかにこだまする。
狂乱に浮かんだ戸惑いと不安はしばし波に漂って辺りを平静へ作り変えたが、
すぐに澱となって渦を巻き水底へと沈んでいった。

けれどブオーンの心は挫けない。
生き延びる、かつての生ではただ身を守るために戦えば願えた事。
しかしこの世界では他を殺し、勝利せねば願えぬ事。
その答えは正しいのだとくり返し繰り返しくり返し唱える。
心の嵐の目は通り過ぎ、再び獣性と暴力の嵐は吹き荒れる。
憐憫に囚われて足を止めてしまった王女の優しさは紅蓮の火と吠え猛る腕にかき消えた。


相手に同情の余地もなければ結果は違っていたか。
あるいは身を賭すほどの責任感を負っていなければどうだった。
人を先、自分は後の自己犠牲的精神がかけらも無ければそもそもここに落ち込みもしないか。
なんにせよ結末は、たった一つ。
優しさは、
勝利から目を閉ざさせ、
戦いから目を曇らせ、
自分の命から目を逸らさせた。

残ったものは、変わらぬ巨獣一匹とウルの村に与えられたいくらかの時間。
優しさは、今は彼の心の底にわずかな澱を残すのみ。
42やさしさの結実:そこに残るもの 10/10:2006/09/15(金) 05:50:42 ID:Oxoz1hzk0

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:暴れる
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【現在位置:ウルの村 南西の村外】

【わたぼう 死亡】
【レナ 死亡】
【残り 53名】
43名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/16(土) 19:27:19 ID:KeQiixse0
ほしゅ
44彼の選択 彼女の選択 1/11:2006/09/17(日) 03:14:36 ID:OIHLJrKY0
カズスとウルを行き来するには、その間の森を通るしかないわけだ。
それなりに人が通った痕跡があるとはいえ、やっぱり森は森。整備された街道とは違う。
道なんかまっすぐに通っているはずもない。
普通の人間なら難なくこの森を越せるだろう。
けれど、ここで問題にするのはハッサン。木にぶつかれば、即ドカン。試してはないけれど、きっとドカン。
瞑想の特技でも覚えていれば爆発しながら傷を塞いで進むなんていう荒業もできるのかもしれないが、残念ながらそんな特技は覚えていない。
そんなわけで、木々の合間を縫って進んでいくしかないわけだが、ルカの雲は直線的にしか進めない。
一度止めない限り、なにかにぶつかっても横にそれるなんてことはない。
で、木にぶつかれば即ドカン。ああこまったことだ。

「さっきから、あんまり進んでねえなあ…」
「森の中なんだから、仕方ないよ。爆発はなるべくしないほうがいいでしょ?」
《慣れてるわね…》
どうしても愚痴らずにはいられないハッサンと、軽く流すルカ。
わがままとか怠け者とか狡猾とか、とにかくいろんな性格のモンスターと旅をしてきたのだ、こういうのには慣れてる。

「そりゃ分かってんだけどよ…」
どうも話を続けにくい。さっきのいざこざがまだ後を引いているのか。
もう一度アリーナを捕まえて問い詰めてみれば分かるだろうか、といったところで考えるのは打ち切ったが。
とにかく、あまりゆっくりしてると後ろからカインたちが追いかけてくるかもしれない。
何もやれることがないので、鷹の目で近くを探ってみるが、特に誰も見えない。
まあこの特技は鳥目だし、森の中にいる人間はほとんど見えないのだけれど。
とりあえず速く進めるような方法を考えてみる。
追い風、火炎の息、フローミ、レミラーマetc…
あまり使えそうなものがない。ちなみにフローミによれば、ウル南部の森らしい。それがどうした。
45彼の選択 彼女の選択 2/11:2006/09/17(日) 03:16:31 ID:OIHLJrKY0
特技といえば、ルカの能力。貝を出し、雲を出し、岩を壊せる。
どんな職業に就いたんだ、と聞けば、ずっとモンスターマスターをやっているとの答えが返ってきた。
じゃあ、モンスターマスターに転職すれば習得できるのかと考えていたりするが、それ。
「そうだ、岩とか壊せるんだろ? それで目の前の木を壊して進むとかできないのか?」
「それは無理だよ。木だって生きてるんだから」
そもそも木を倒して進むだなんて、一体何本倒せばいいのやら。

「ん〜、いいアイテムがありゃあ、…そういえばお前、カズスでなんか拾ってなかったか?」
「え? どうして?」
どうして分かったの、なのかどうしてそんなこと言うの、なのかは分からないが、ハッサンは前者の意味で解釈したようだ。
「寝てるだけってのもどうかと思ってよ、ちょっとまわりを探ってたんだよ。
 盗賊やってたころに身についた勘、つうか特技だがよ、何かあるんじゃないかと思ってな。
 拾ってるんなら見せてみろよ。商人も経験したことがあるから、鑑定は得意だぜ」
『盗賊も商人も経験したことがあって、本業は大工っていったい何者かしら』
「ほんとだねえ」
「ほら、わんこも言ってるぞ」
(言ってるって、何をだよう…)

まあこっちは隠すつもりもない。ザックから草袋を取り出す。
「残ってるのは満月草に…なんだこりゃ? 他は見たこともねえ草や種だな…」
46彼の選択 彼女の選択 3/11:2006/09/17(日) 03:20:57 ID:OIHLJrKY0
(そういえばひそひ草、もう話はできるのかな?)
ハッサンが草袋に気を取られてる間、ルカはポケットに手を突っ込み、草の感触を確かめる。
「なあ、今何か言ったか?」
「え? 俺は何も」
ハッサンって心でも読めるのだろうか、タイタニスじゃあるまいし、とか思う。

「アンジェロは何か聞こえた?」
振り向くと、何故かアンジェロがルカを見つめている。
「アンジェロ? 俺になんか付いてるの?」
『あなたのほうから何か聞こえるわ』
「あ、それって…」

ひそひ草だ。多分誰かに拾われて、向こうがコンタクトを取ろうと呼びかけているんだろう。
なら、早く応対しないと向こうが通話を切ってしまう。
「ええと、もしもし?」

「ブオオオオオオオオオオオオンッ!!!
 ピシャアアアアアン!!!!!
 きゃあああああ!!!」

「うわあっ!!」
「どうしたっ!?」

ひそひ草からの第一声が何かの声+雷+悲鳴みたいな音だとは思わなかった。
不審に思ってる二人に、ルカは慌ててひそひ草のことを説明する。
47彼の選択 彼女の選択 4/11:2006/09/17(日) 03:22:38 ID:OIHLJrKY0
半壊したウルの宿屋、そこに横たわるのは三人。
「ぁ… エリアさんっ!!」
「大きな声は出しちゃダメ。気付かれてしまいます」
ちらりと目をやるが、モンスターはまだ気付いてはいないようだ。
というより、何か別のことに気をとられているらしい。
ターニアはあらためてまわりを見回す。
ちろちろと燃えている火。無事ではあるが、まだ目を覚まさないビビ。外に見えるのは苔生した大きな背中。
そして、崩れた家屋に下半身を挟まれたエリア。
壁が崩れてきたとき、とっさにターニアをかばった、その結果。
大きな怪我をしているわけではないが、この状況で移動ができないのは致命的。

「大丈夫、きっとレナさんたちもすぐに来てくれますから」
エリアはそういうが、みんながどこにいるのかは分からない。
モンスターの大きな体に阻まれて、向こうがどうなっているのかも分からない。
果たして、火が燃え移る前にみんなここに来れるのかが分からない。
いつモンスターがこちらに気付くか分からない。
外で騒ぎを起こしていた何者かが来ないとも限らない。
何がどう動くか分からない、なのに大丈夫だなんて思えない。
ここにいる全員のザックを探ってみたものの、エリアを助け出すのに使えそうなアイテムは見つからなかった。
もしかしたら何かできるかも、と思って振ってみた杖も不発。

途方にくれるターニアに向かって、エリアはにっこりと微笑んで言う。
「ターニアちゃん、ビビちゃんを連れてここから逃げられる?」
48彼の選択 彼女の選択 5/11:2006/09/17(日) 03:24:29 ID:OIHLJrKY0
「え?」
聞き間違いだと思った。
今ここから逃げる、それはつまり、エリアを見捨てるということではないのか。

「今なら、モンスターも私たちに気付いていないから、きっと逃げられます」
聞き間違いじゃない。彼女は自分を見捨てて逃げろと言っている。
ビビは助けたい。ゲームが始まって、長い間一緒にいた。何度も助けられた。
でも、エリアを見捨てることもできない。
昨晩、炎に包まれた宿屋から自分を連れ出してくれたのはエリアだと、そう聞いた。
「エリアさんを置いていくなんて…」
こころなしか、先ほどより火が大きくなっている気がする。
ここでじっとしていてもいつかは火が回ってくる。
ここにとどまってエリアを助けるか、ビビを連れて逃げるか。
命のやり取りとは無縁の世界に住んでいた彼女に突きつけられた、あまりに重い選択。
「イザ兄ちゃん、どうすればいいの…?」
49彼の選択 彼女の選択 6/11:2006/09/17(日) 03:25:47 ID:OIHLJrKY0
ひそひ草から聞こえてきた稲妻の音と魔物の咆哮、ちょうどウル方面からも同じ音が聞こえてきたという。
つまり、ひそひ草がウルにあり、そこで何かが起こっていると考えるのが妥当である。
「あー、あー、誰か聞こえますかー? …ダメ、通じないよ。あんなところに落ちてたし、もしかして壊れてるのかな?」
向こうの音もはっきり聞こえてくるわけではないが、分かるのは、
村が襲われていること、女性三人が助けを求めていること、二人が動けないこと、
そして、そのうちの一人がターニアであるということだ。
けれども、気付いていないのか、それとも壊れているのか、ハッサンが自慢の声で呼びかけても反応がない。

「くそ、ラチがあかねえ! 俺たちも行くぞ、ルカ!」
痺れを切らしたハッサンが飛び出そうとする!
『「ハッサン、爆発!!」』
ルカの制止でかろうじて爆発寸前で踏みとどまったが。

「くそ、せめて爆発さえしなければ…」
右手の指輪を恨めしそうに見る。
結局この指輪がある限り、動くことすらままならないのだ。
そういえば、昨日の夜もこんなことがあった。
助けを呼んでいる人がいて、なのにすぐに向かうことができなかった。
結果的には助かったらしいが、今回もそうとは限らない。
まして今回、助けを求めている相手は目と鼻の先にいるではないか。
行かないなどという選択肢は、彼には選べなかった。

アリーナと戦ったときに分かった。
手を切り落とせば、呪いの指輪も一緒に外れる。
そうしなかったのは、ルカやケフカに甘えていたか、危機感が欠如していたか、自分の体を傷つけたくなかったからか。
ここで縮こまっていては、ミネアさんは一体何のために自分に二度も命を与えてくれたのか。

「ハッさん、何をする気なんだよ?」
「どうせこの指輪がある限り、人を助けるなんてできはしねえ。
 だったら、はずしてやろうと思ってな」
50彼の選択 彼女の選択 7/11:2006/09/17(日) 03:28:18 ID:OIHLJrKY0
目を見ればその人がどんな人なのかは分かる。でもそれだけじゃない。
嬉しさも悲しさも、覚悟も決意も、そしてその大きさも、全部分かる。
モンスターマスターだから、じゃない。命であるからこそ分かること。
ハッサンは指輪を危険な手段で無理やりはずして、ターニアさんのところへ行く気なのだろう。
たとえ、どんなに制止の言葉を投げかけたところで止めることはできないのだろう。

でも、ハッサンの体力は度重なる爆発によってほとんど失われてしまっている。
しかも、腹部に負った大きな刺し傷、全身の擦り傷。
いくらハッサンが頑強だからといっても、いや、頑強であるからこそ今まで生き延びてきたのだ。
これ以上傷つけるとどうなるかは分からない。
彼が今手を失ったとして、治療する手段はないのだ。

「ハッさんが死んじゃうよ。
 どうしても今すぐ行かないといけないの?」
「ああ、ターニアちゃんは俺の親友の妹なんだ。
 ここで俺が行かなくてどうする。
 何かあったらイザの野郎にも、それにミネアさんにも向ける顔がねえよ」
「でも、ハッさん動くと爆発するんでしょ?
 どうやって助けるのさ?」
「どうにでもしてやるさ。いざとなったら、モンスターを道連れにしてでも守り通すつもりだ」

ルカはため息をついて、草袋から種を取り出す。
「だったら、体力を上げる種が残ってるから、少しでも回復させてよ。
 スタミナの種っていうんだって。ないよりマシでしょ」
「力の種みたいなもんか? ま、ありがたくもらっておくか」
ハッサンに渡すと、彼はそれをすぐに口に放り込んだ。
51彼の選択 彼女の選択 8/11:2006/09/17(日) 03:31:21 ID:OIHLJrKY0
結局ハッサンが助けに向かうことはなかった。
助けに向かうことができなくなったというべきか。
ハッサンは種を放り込んだときの体勢のまま、動かない。
「ごめん。でも、こうでもしないと止められないと思ったから」
スタミナの種はまだ袋の中。飲ませたのはかなしばりの種。飲んだものを動けなくしてしまう種。
これでハッサンは何か刺激が加わるまで動けない。

「アンジェロ。ターニアさんたちのことをスコールさんたちに伝えてくれないかな。
 俺はハッさんと一緒に行かないといけないから、もう少し時間がかかるんだ。
 一緒に行くって言ったのに、ごめんね。でも、必ず追うから」
少しでも身が軽くなるように風のローブをまとわせ、ひそひ草を持たせる。
多少考えるようなそぶりを見せたものの、短く返事をし、アンジェロは去り行く。

「俺さ、もう誰にも死んでほしくないんだよ。
 ハッさんにも、ターニアさんたちにも、それにモンスターにも」
ひそひ草や森の向こうからときおり聞こえるモンスターの声。
何が起こったのかはわからない。でも、心を開けばモンスターとも分かり合える。
彼らを導いてやるのがモンスターマスターの役割。その心こそがモンスターマスターの強さ。
そして、モンスターと心を通わせようとした精霊がどのような運命を辿るのかを、彼はまだ知らない。
52彼の選択 彼女の選択 9/11:2006/09/17(日) 03:33:41 ID:OIHLJrKY0
エリアはふと、ポケットに花びらが一枚だけ残った花があることに気付く。
それは花占いに使った花。
ここに降り立って最初にしたことが花占い。最初の結果は会えないと出た。
(やっぱり、サックスには会えないのかな…)
それとも助けに来てくれるのだろうか。どっちだろう。
(最初の占いは……当たらない。って、一枚だけの花占いなんて、反則ね)

こんな状況の割にのんきなことを考えるものだと思う。
一度は死んだ身である自分のために、危険な目に遭ってほしくはない。
けれども、本当はまだ生きていたい。助かりたい。改めて自覚する。
早く逃げてといっている一方で、ここに残って助けてくれることを期待している自分がいることに気付いた。
(今、どこにいるのだろう…)


青年は走る。彼を追いつめているのは、正義という断罪。
絶望に果てぬように。安らぎを求めて。その足は自然と生まれ育った故郷のほうへと向く。
かつての仲間に出会ったとき、彼が何を思うだろうか、それは誰にも分からない。
彼が今考えるのは、彼女にもらった命を絶やさないことだけ。
53彼の選択 彼女の選択 10/11:2006/09/17(日) 03:34:59 ID:OIHLJrKY0
【ルカ
 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) シルバートレイ 
 満月草 山彦草 雑草 スタミナの種 説明書(草類はあるとしてもあと三種類)
 第一行動方針:ウルの村へ行き、魔物を導く
 第二行動方針:ハッサンに無茶をさせない
 最終行動方針:仲間と合流】
【ハッサン(HP1/10程度、危機感知中、かなしばり)
 所持品:E:爆発の指輪(呪) ねこの手ラケット チョコボの怒り 拡声器
 第一行動方針:かなしばり
 第二行動方針:オリジナルアリーナと、自分やルカの仲間を探す/呪いを解く
 最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【アンジェロ
 所持品:ひそひ草 風のローブ
 第一行動方針:ターニアたちのことをスコールたちに伝える
 最終行動方針:スコールに会う】
【現在地:ウル南部の森】
54彼の選択 彼女の選択 11/11:2006/09/17(日) 03:35:53 ID:OIHLJrKY0
【エリア(体力消耗 身動きできない 下半身に)
 所持品:妖精の笛
 第一行動方針:ターニア、ビビを逃がすor助けを待つ
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ(気絶中)
 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:???
 基本行動方針:イザを探す】
【現在地:ウル宿屋(半壊、まだ本格的な火災は免れている)】

【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷、心理的疲労)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)
 第一行動方針:ウル方面へ
 最終行動方針:出来ればこの現実を無かった事にしたい】
【現在地:カズスの村北部の草原】
55保守:2006/09/18(月) 03:46:28 ID:De/n6kjQ0
122 名前: 名無しロワイアル 投稿日: 2006/09/08(金) 04:13:35 ID:KanNOUwwn
『すまない。もう俺の欲望は止められないんだ!』
『な…何を言ってるの!?やめてギルダーさん!大声を出すわよ!』
『それでもかまわない!…貴女のその甘美な声が聞けるなら……幸せだ』
そしてギルダーは恐怖の表情を浮かべる彼女の服に、獣の如く手をかけ―――

(省略されました。全てを読むにはワッフルワッフルと書き込んでください)


123 名前: 名無しロワイアル 投稿日: 2006/09/08(金) 04:23:29 ID:YuSyALOTo
ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル
ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル


124 名前: 名無しロワイアル 投稿日: 2006/09/08(金) 05:25:12 ID:saGEkenJa
凄い必死だねぇ。
凄い必死だねぇ。


125 名前: 名無しロワイアル 投稿日: 2006/09/08(金) 05:43:44 ID:leoNHaLT.
二重人格者の男性強姦だのペドフィリアだのよりは比較的まとも。
二重人格者の男性強姦だのペドフィリアだのよりは比較的まとも。


126 名前: 名無しロワイアル 投稿日: 2006/09/08(金) 05:47:18 ID:HUrio.nir
全冊読んだのか兄弟。
全冊読んだのか兄弟。


ワッフルワッフルのガイドラインrigel4
ttp://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1156766227/l50
>>54
【エリア(体力消耗 身動きできない 下半身を圧迫されている)
 所持品:妖精の笛
 第一行動方針:ターニア、ビビを逃がすor助けを待つ
 基本行動方針:レナのそばにいる】
57名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/19(火) 02:24:14 ID:TLl8Q0PqO
相変わらずつまらんスレだな
58名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/20(水) 22:13:22 ID:2u4w7M240
ageるのは良くない。
59名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/21(木) 22:24:06 ID:aMLa9JeW0
保守
60ユフィの足の爪:2006/09/22(金) 22:31:37 ID:v9uqYCtnO
ユフィはその怒りを露にしながら進んだ。
その顔は怒りに満ちている。
「あいつはアタシが殺す!」
アルスは悲しくなった。父さんはこんな事じゃめげなかったんだ!
僕はまた一ついいものを知った。知ったかじゃなくて本当に知った。
「あいつって誰だ?」
「あいつは?えぇ?誰だっけ?」
人間は嫌な事はわせれるキャラなのだ。ユフィはわせれる。
「よし!そいつを殺せば思い出すよ!」
「一人ずつ殺せばそのうち当たるからいいよね。」
そしてユフィは最初はアルスを殺すことにした。
「エッジの固き!」
グワッ!!ユフィの新羅万棒がアルスをおそう
アルスはよけた。しかし、よけた先にはもうユフィがいた。ユフィは早い。
「しね」
アルスはギガデインで反撃した。
「キャーー」
そしてアルスはしんだ。
「ユフィちゃんはこれからエッジの固きを殺します。見ててね!エッジ」
ユフィはエッチをした。
「うらやましい〜〜」見られた!

【ユフィ 行動方針:皆殺し】
【アルス オルテガ ラムザ 死亡】
61名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/22(金) 23:15:41 ID:7yTxObNi0
>>60は無効ですッ
62不幸の火種 1/26:2006/09/23(土) 01:20:13 ID:EcUbdRXq0
「チッ、燃えてやがる」
独り敵を追い、結局その標的は闇の中。逃したも同然だ。
しかし、彼に考える時間など与えられはしなかった。
森が赤みを帯びてきている。不吉な灰色が、空へとのびていく。
「何があった…!」
ヒーロー。それは弱き者、襲われている者を助ける。
サラマンダーに逃げられ、落ち込んでいた彼に再度決意の炎が燃え広がった。
いや、燃え広がったという表現は妥当ではない。
いつもの彼であれば燃え広がっていたであろう。だが今回は燻っていた。
この殺し合いに放り込まれ早2日、色々な出来事が起きすぎた。
心を疑心暗鬼にさせ、精神を挫くには十分な時間だ。
もっとも彼はまだ挫けてはいない。だから炎の村へと向かう。
もっとも彼はまだ挫けてはいない。だから炎の森を脱出する。
この二つの条件が、彼―――サイファーを南へ向かわす。
だが疑心暗鬼の心は溶けていない。先刻ので少々集中力も散漫気味だ。

そんな時に、彼の近くに何かが…いた。サイファーは歩を遅らせ、身を隠す。
草の揺れる音、相手はまったく警戒していない。声からして相手は二人。
もしかして悪い奴かも知れない。だが、そうとも限らない。
(どっちだ…?)
サイファーの心は揺れ動き、それに呼応して心拍数を増す。全身の血液の流れを感じるのはこういう事か、と一人納得する。
相手はまだ気付いていない。もし相手がさっきみたいな悪であれば、二人だとしたら急襲をかけなければヤバいかも知れない。
幾らスマートじゃないとは言え、仕方のないことだ。
一方それがこの殺し合いに抗う者であれば、もちろん協力を申し出ればいいこと。
(どうする、どうするッ、どうするッッ、どうするんだ俺ッ!)
最早頼れるのは自分の勘と弾き出される判断のみ。焦りが迷いを招く。
そして、この迷いが彼の思考力を鈍くし、結果、彼の不幸を招くことになる。
63不幸の火種 2/26:2006/09/23(土) 01:21:14 ID:EcUbdRXq0
サイファーの見つけた二人はソロとバッツ。彼らもまた異変に気付き村へ急いでいる者達である。
もちろん森が燃えているからでもあるが、彼らもまた走り急いでいる為思考力は散漫だ。
そんな中、またも人の気配。その人と同じように、彼らもまたサラマンダーというゲームに乗った者に会っている。
ソロは考える。
動いている方角からして村の方向…とすれば考えられるのは『情報』の為の現場検証か『仲間』の為の現場検証かどちらか。
この森の火事の中、更に虎穴に入るということはおそらく実力者。
信じていいものだろうか…。味方であれば、かなりの助太刀を望めるはずだ。
しかし敵であれば…この忙しい時に戦わなければいけない。おまけに生死を賭した消耗戦で。
自分は先程決意を固めたばかりだ。まだ雨は止んでも地は固まっていない。
こんな不安定な時にそんな事をしたら自分だってどうなってしまうかわからない。
最悪の場合は、自我を失うかも知れない。今の自分からではそうないだろうが、万が一の場合は。

と、突如とした変化。
(…速度が落ちた?)
これでは、相手は十中八九自分達に気付いていると見ていいだろう。
この分だと向こうも村には向かいながら、接触の機会を待っているように見える。
どうする…とソロは隣の一時的な相棒を見やる。
どうやら考えている事は同じらしい。
限りなく小声で、バッツが呟いてくる。
「手荒であんまりしたくないけど…この状況下じゃカマかけてみるしかない」
ソロも気が進みこそはしないものの、否定するわけではない。寧ろバッツの言う通り、この状況下では賛成せざるを得ない。
これが一番手っ取り早い方法―――敵であればすぐ片付くし、味方であってもこうなっていれば説得は手早い―――だった。
「一気に行く…俺が合図をしたらその隙に相手を捕まえてくれ」

しかし、この状況下でこそ、その選択が誤りだとは…誰も気付かなかった。
否、気付けなかった。この燃え盛る紅蓮の中では。


64不幸の火種 3/26:2006/09/23(土) 01:22:04 ID:EcUbdRXq0

「ヘンリーさん、もしかしてさっきの人にやられちゃったんじゃ…」
とか呟ける余裕はもうない。
今まで何度呟いたか知れないセリフを、今度は恋しくさえ思う。
何せ彼女――リュックがいるのは今燃え盛る樹林の中。ここにじっとしていればあと1分と経たずに囲まれてしまうだろう。
ヘンリーの安否は確かに不安だ。だが、今の彼女には村の様子の方が気になっていた。
「あそこには、確かレナさんとわたぼうちゃん…」
その二人はまだいい。戦えるだけの力は持ち合わせている。
だが、心配なのは平和を望み、争いを忌む非力な人達のこと。
きっとあの二人じゃ…今頃…大丈夫かな…。
その思いが彼女の古い目的を追いやり、新しい目的を与える。
そしてその時既に、リュックは自分の持てる最高速で走っていた。流れる木など目に入らない。
眼中にあるのは、被災地の中心ただ一つ。
化け物は木に邪魔されて全体は見えないけれど、さっきからずっと見えてる。
あの暴れよう、おそらくレナとわたぼうが戦ってるんじゃないだろうか…。
そう思うと、彼女の周りの風は一段と大きい悲鳴をあげた。
走って、走って、走って。みんなを守るために。
自分にはこれがあるから…と、スフィアと武器のナイフを強く握って彼女は走り行く。



一閃―――!
そして散る火花。
金属の擦れ合う音、弾きあう音。
どうしてこんな事になったのか。それもこれもすべてこの状況下による判断力の低下の為だ。
65不幸の火種 4/26:2006/09/23(土) 01:23:49 ID:EcUbdRXq0
「くそっ!お前もかっ…!」
一方的に攻めるサイファー。受けるソロ。
「さっきの不意打ちは詫びる!だけど今はこんな事をしている場合じゃないだろう!」
聞く耳を持たないサイファーに対し、ソロは攻撃を受け流した後左手でみぞうちを狙う。
だがそれは逆効果。相手も相手。実力は伯仲。体調不良も上々。
紙一重で避けたサイファーは舌打ちをしながらソロへと肉薄する。
「許さねぇっ…!」

何故こうなったのか。話は少し遡る。
手早く済ませる為の方法…それは囮がバッツ、ソロが捕縛役。
二人はいきなり足を止め、バッツが魔法詠唱の準備をする。
もともと世界は違うとは言え、世界観が近いサイファーはすぐに危険を察知する。
隠れていたのがばれている…混乱。
仕方ない、相手は二人だから不意打ちは効かない…話してみるか。
そう思ったサイファーは急に陰から飛び出し、バッツに話しかけようとする。
もちろん武器には手を伸ばせる状態で…と、バッツを見た時、彼は気付いた。
もう一人はどこへいった…焦り。
もう一回バッツを見直すと魔法詠唱の構えを解いている。
という事はもう終わりやがったのか…?などと思う暇はない。
すぐさま自分が動けないことに気付いた。何かが突きつけられている。
これは剣の類、そうか、こいつらもか…思考の罠。
「悪いけど君、こ」
ソロは最後まで言う事はできなかった。サイファーは振り向きざまに剣を振る。
「悪いが俺はヒーローだからな。こんなところでロ〜マンティックじゃねえ奴らにに負ける訳にはいかねえんだ!」
(あの茶髪野郎は動く気配がない…ハッタリか?)
その瞬間、例の茶髪野郎は肉薄し、サイファーの体を拘束しようとする。
剣を振ると避けられる…となると素手!剣を避けて拘束の準備にかかったバッツを拳で叩き伏せる。
「ぐっ」
「バッツ、大丈夫か!」
66不幸の火種 5/26:2006/09/23(土) 01:24:37 ID:EcUbdRXq0
ソロが声をかけるも、すぐさま自分の近くの風を切る音に気付く。
上体を逸らして一振りを回避しながら、ソロは説得を試みる。
さっきの発言でこの人物はゲームに乗ってる奴じゃないのは想像できる。
だとすれば説得だが、それが最も難しい。ましてやこの混乱時に。
相手は本気だ。しかも剣を持っている。
これを相手にいつまでも避けるばかりではいつか致命傷を食らってしまう。
ソロは相手の剣戟を受ける。そしてすぐさま跳ね飛ばす。
それでも相手は向かってくる。相当のスピードで。
こうして、激しく燃える森をバックに、剣による激しい戦闘が始まったのだった。

先程から何回こうしてるのだろうか。許さねぇと言ったその言葉。
彼はきっと何か誤解している。そう判断したソロは、バッツに向かって叫ぶ。
「バッツ、悪いがこいつは僕に説得させてくれないか!
君は先に村の方の援護を頼む!」
「…まかせとけ!」
一息おいてからバッツは返事を返す。そして身を翻して―――その前をコートが視界を遮った。
「待てよ…お前らみたいな奴らを悪事に加担させるわけにはいかせないぜ」
サイファーが立ち塞がる。場の空気が緊迫する。
先に口を開いたのはソロだった。
「そこの…いや…名前は?」
「あんたに教える名前は…いや、なんでもない。サイファーだ。」
本来ならこのまま続きを言ってただろうが、流石にそんな場ではない事に気付く。
「君の相手はこの僕だ。頼むから、そいつは行かせてやってくれないか」
なんとなくサイファーも近況を理解してきた。
だが完全に疑惑を晴らせた訳ではない。だとすると…
「仕方ねえ、こいつは行かせてやる。だがあんたにはどういう事か聞かせてもらおうか」
そう言って再度ソロに狙いを定める。ただ、今度は睨み合ったまま動かない。
「悪い!」
そう言ってその横をバッツが通り抜ける。
二人の間には、炎の音が聞こえている。背景が如く、一触即発。
67不幸の火種 6/26:2006/09/23(土) 01:26:23 ID:EcUbdRXq0
バッツは村の中心部へ向かう。だが今ので大幅なタイムロス。
更に左足の負傷。何もない者と比べればこれまたタイムロス。
普通はA=90度の直角三角形ABCにおいてバッツの場所をA、リュックの場所をBとすると、当然Cにはバッツの方が早く着く。
だが度重なるタイムロス、それがウサギとカメ現象を引き起こしていた。
急ぐバッツ。だが、時は待ってくれはしない…。



マッシュは迷っていた。火事と仲間と。
向こうに見える火事で、被害が出ているのは確実だ。
だが、この井戸に入ったままの仲間を捨て置く事もできない。
自分はどうするべきか。悩んでいても答えは永遠に出ない。

そんな時、マッシュの脳裏にふと蘇ったのは自分の生まれ育った城、フィガロ城の危機。
城は地面に埋まったまま動けず、中の人たちは無酸素状態で動けなかった。
地面の底なので、誰かが助けに来ないと、当然、気付かれぬまま放置され死に至っていただろう。
だからとて、知っている者でなければ誰かが見つけるということもほぼ有り得ない。
そのような状況で、自分達は自分の城の人達を助け出したのだ。
自分達でないと、城の人達は助けることができなかった。
あの時も、やや遠くでケフカの破壊は引き起こされていた。
だがもし、あのまま城を放ってケフカを食い止めに行っていたら…。
それこそほんの少しケフカの破壊は抑えられたかも知れないが、結局城の人達も死んでしまっていただろう。

最初マッシュは何故こんな事を思い出すのかと悩んだ。
だが、よくよく考えてみれば今の状況も同じじゃないか。
少しだが遠くの炎の村の援護に行って、そうするとこの井戸の中の仲間はどうなるのか。
もしかしたら何かが起こって溺れてしまっているかも知れない。そうするともう取り返しはつかない。
そう考えると、自ずと答案は出てくる。
二兎を追う者一兎も得ず。
そう、頭を冷やして冷静になって。今は遠くのことより近くの仲間だ。
すっかり鬱憤を晴らしたマッシュは、井戸の底へと叫んだ。
「おーい、スコール大丈夫かー!?」
68不幸の火種 7/26:2006/09/23(土) 01:27:34 ID:EcUbdRXq0
リュックは見た。その惨状の限りを。
むんとした熱気と、何かが焦げている臭いが体中をつつく。
「もしかして…」
嫌な予感は的中した。『レナだったもの』と、もう何がなんだかわからないものが散らばっている。
かろうじてある毛から、わたぼうとは容易に推測がつく。
リュックは見上げた。目前で暴れている魔物を。
リュックは睨みつけた。魔物がこっちへと気付くのを。
リュックは力を込めた。ナイフを、しっかりと握って。

「よくも…レナさんと…わたぼ…ちゃ…を…!」
最後のほうは枯れて声にならない。
泣いているからか、はたまた周りの熱で喉が渇いたからか。
どちらにしろ、リュックの決意は変わらない。
こっちを見ているあの魔物を、倒す。この二人の敵を討つ。
しかしそれは無謀な戦いであった。更にもう一つの不幸が、リュックにとり憑いていた。



森の中を走る犬。そろそろ森を抜けるという時、燃える村と巨大な魔物を確認した。
もう走っているのは森ではない。平原だ。平原は走りやすい。どんどん速度があがっていく。
69不幸の火種 8/26:2006/09/23(土) 01:28:20 ID:EcUbdRXq0
犬、いや、アンジェロはスコールのことを心配していた。
彼は無事だろうか。無事であれば、きっと自分の手助けはしてくれる。
だがもし、このゲームに乗っていたら…
それとも、もう既に瀕死の状態だったら…
これらの状態であれば、自分にはどうしようもない。
寧ろ殺されてしまう危険だってある。
だが、犬…いや、彼女は何故か確信に近いものを持っていた。
何かは知らない。でも、スコールはきっと無事。彼女の勘が、それを伝えていた。
しかし彼女は不運だった。何故なら、彼女はスコールの事ばかり考えていたから。
スコールの姿ばかり探していたから。スコールの事しか気にしていなかったから。

そして最大の不運は『考えていたから』。
猛スピードのままあまりに考え事に熱中しすぎていたものだから、彼女は小さく聞こえた叫び声―――マッシュのを聞き逃してしまっていた。
結果、求めているスコールは近づくを通り越してだんだんと南東へと離れていく。
それをアンジェロが気付く由もない。気付くきっかけもない。
それだけが彼女の不運。そしてそれは彼女の最大の不運。
何故ならこのまま彼女が目指している北は言わばまだ火の消えぬ爆心地なのだから。



リュックは違和感を感じていた。
確かに自分の戦い方は間違っていない。現にブオーンに確実に傷をつけている。
降ってくる拳を余裕を持ってかわす。そうでもないと拳圧で潰れてしまいそうだからだ。
時より吐かれる炎はブオーンの下から背後へ回ってかわす。
そして高く跳躍し、背中を斬りつける。振り向くと同時にまた背後へ回る。
これが一番確実だ。安全ではある。だがいかんせん、傷が浅い。
そこでリュックは考える。動きをなんとか止められれば…と。
気付けばリュックの真上に拳が現れる。即座に横とびに跳ね、その拳をなんなくかわす。
70不幸の火種 9/26:2006/09/23(土) 01:29:25 ID:EcUbdRXq0
お次は炎の襲来。リュックの前を炎が遮る。だんだん自分の方へと近づいてくる。
だが微動だにしない。降りかかった火の粉は払うだけ。まるで誘っている。
再びブオーンが巨大な拳を地面へとたたきつける。
その振動を受けないようにきちんと空中に回避しておく。
そして拳が上がった次の瞬間、その拳の直撃点、つまり炎のもみ消された所に着地し、すばやく足の間を潜り、背後にまわる。
だが今度は背中を標的にはしない。狙うは尻尾。
ブオーンがまた振り向く前に…ナイフで尻尾を抉り取る。
「ゴガアアアアアアア!」
凄まじい吼え声…いや、この場合は悲鳴とでもいうだろうか。
それを感じた刹那…リュックにまた違和感が蘇った。
手から伝わる体の震え。しかしリュックは深くは気に留めずにナイフを引き抜いた。
そして暴れるブオーンの前にジャンプし…深く縦に一閃。
ナイフだからやはり傷はそれ程深くはないものの、今度こそは確実にダメージを与えた。
あれ程攻撃の手を休めなかったこの魔物が痛みで吼え叫んでいる。
「レナさん、わたぼうちゃん、もうすぐ仇がとれるよ」
リュックは、勝利を確信した。
だが。

「…あれ?」
体の震えはとまらない。何故かはわからない。
さっきの違和感がより強く表れている。なにか怖い。恐い恐い恐いコワイコワイ…!
彼女は突然恐怖感に襲われた。今すぐここから逃げ出したい気分に駆られた。
病は気から。そしてその病がひどくなれば気にも異常を来す。
彼女はその悪循環にはまってしまったのだ。自分の中で、どんどん恐怖が膨れていくのがわかる。
71不幸の火種 10/26:2006/09/23(土) 01:30:14 ID:EcUbdRXq0
「なんで…あたし、間違ってないよね…」
リュックはそれを何かの罰と考えた。しかし彼女は何もしていない。
そして、実際にも違った。彼女の持っているナイフ、それはバリアントナイフではなくチキンナイフ。
完全な彼女のミス。それも明らかに決定的な。
彼女はそれに気付かない。暗闇の中で急いでいたから確認もしていない。
とりあえず重いものを持っていてはスピードが落ちるので、軽いものを、と武器を探した。
その結果見つかったのがこのチキンナイフ。
彼女はこれをバリアントナイフと思い込んでいた。それが彼女の大失敗。そして不運。

彼女―――リュックは恐怖していた。怯えていた。
だから、ブオーンが攻撃を再開したのにも気付かなかった。
そして初めて大きな音がリュックの耳に届いた時には、彼女はもう駆け出していた。
何故駆け出していたか―――それは逃げるため。
怖いから。今当たっているこの現状から逃げ出したいから。
チキンナイフ、それは装備した者を臆病にするナイフ。
リュックは一目散に逃げ出した。何も聞こえない、何も見えない、何もわからない…。
「怖い…早く逃げたいよ…!」
それが彼女の意思だった。それは間も無くして潰える事になる。
逃げるリュックの後ろを巨大な拳が追う。影がだんだん近づいていく。
しかしリュックは気付かない。だから…自分が潰されたのにも気付かなかった。

リュックは夢の中で目覚めた。それは、彼女が見れる最後の夢。
名を走馬灯と言う。それは辛いながらも仲間といた幸せな夢。
一緒に敵に立ち向かった仲間の笑顔。それだけが流れていく。
(またみんなでカモメ団で…もう、できないのかな…)
彼女の夢は、儚かった。

72不幸の火種 11/26:2006/09/23(土) 01:32:04 ID:EcUbdRXq0
バッツが辿り着いた時は既に時遅し。
戦場の悲惨さは更に極まっていた。
巨大な魔物は暴れ狂っている。この村をすべて破壊すべく。
建物の陰にいるバッツには未だ気付いていないが。
「くそっ…レナ…わたぼう…!」
確かレナとわたぼうもこっちの方にいたはずだ。
そう思ってあたりを見渡してみる…と。
(あいつは…)
リュックだったか…、この村の宿屋で話した時にいた。
殆ど潰されていて原型を修復するのはかなわない。
だがその髪の色と独特の装飾、果ては散らばった道具から、この人物がリュックだということがわかる。

バッツを、不快感が貫いた。
いや、不快なのではない。怒りと、悲しみと。
そして、バッツはまた自分が仲間を守れなかった事を自覚する。
「うああああああああ…!」
リュックがそれほど弱くはなかったことは知っている。
他の世界で、俺らみたいに悪を倒したって。
だから、そんなリュックでもこんな風にされるなんてこの魔物の強さは知れない。
ヘンリーからもこの魔物の強さは聞いている。おまけに弱点がないとも。

…そんな事は知ったことじゃない。

バッツの奥底に炎が灯る。相手は魔物だ。
もしかしたら…考えたくもないがレナやわたぼうもやられているかもしれない。
それでももう、仲間一人の命が失われてしまった。

復讐だけではない。このままアイツを野放しにしたら、こんな目に遭う奴が増えてしまう。
バッツは袋から自分の武器を取り出し…慣れた武器、アイスブランドを手に握る。
と、バッツの心の波が消える。そのまま静かであること約1分。
「よっし!」
73不幸の火種 12/26:2006/09/23(土) 01:32:47 ID:EcUbdRXq0
周りが少しずつ焼けているのにこの集中力とはなんたることか。
それは、バッツにとってはそんなこと慣れっこだからである。
自分達はどんな状況でもジョブチェンジを難なくこなせるようにしてきた。
経験もまた、いい武器である。

心の波は消えて頭の血は覚めても、心の炎は未だ消えず。
緑色の双眼に映るは巨大な魔物。今、それを沈めようと勇者が一人。
地面を蹴る音。それは一瞬。
その一瞬で、バッツの姿は宙に浮く。
左足を怪我している様子など微塵も見せない。
だがそれよりも驚くべきことは、恐ろしいほど軽く、疾(はや)いこと。
バッツのジョブはナイト。アビリティはもちろん両手持ち。
そのジョブは、もう守るべき人を失いたくないという心の表れか。
しかしそれではこの身軽さが証明できない。
バッツの世界ではアビリティは特殊な場合を除き、2つまでつける事ができる。
つまり、一つをりょうてもち、もう一つを…

「オールド!」

時空魔法。それはあらゆる面で味方を補助し、そして攻撃もできる魔法。
その最高レベル、レベル6の魔法をバッツは旅で身につけてきた。
そうすると、さっきかかっていたのは『身軽さのレビテト』と『疾さのヘイスト』。
どれも戦いにおいて、確実に自分を有利にする魔法である。
ただ、魔法なだけあり、精神を落ち着かせ、詠唱をしないとうまく効果を発揮しないことが殆どだ。
74不幸の火種 13/26:2006/09/23(土) 01:33:22 ID:EcUbdRXq0
さて、オールドをかけられたブオーン。
効いてか効かぬか、それさえ見極められないうちにバッツの方を振り返る。
三つの眼が、茶髪の男を捕らえた。
だが所詮巨大すぎる魔物。あまりに速く動かれては、眼や攻撃で追えても体の移動では追えない。
バッツが中央広場へとかけでたところに拳が降る。
横跳び…バッツの下には足の影が大きくなっている。
今度は反復。そのまま右足で地面を蹴る。ブオーンの胴あたりまで上がったバッツは、縦に傷が入っているのを認める。
そのまま傷に向けてアイスブランドを二倍の攻撃力で突き刺した。
すぐさまそのバッツと高さを同じくして拳が横薙ぎに迫ってくる。
バッツはアイスブランドに力を込め、ブオーンの体を蹴り、その二つの反動で更に上昇。
ブオーンから跳び離れてゆくように弧を描き、下の少し後ろで凄まじい風圧を感じた。
もちろんこのまま行くとせっかく上ったのに地面に降りてしまうが、ただ降りるだけではない。
アイスブランドの一撃のおまけつきだ。
「ブオオオオ!」
咆哮に後ろを振り向くと、いつの間にかすぐそこまで炎が迫ってきていた。
(しまったな…)
空中では身動きをとることは叶わない。だがバッツは慌てない。
とりあえずアイスだけに炎に弱い剣を腰に差して自分は堂々と炎に向き合う。
ここで発生させるのがナイトについているアビリティ『まもる』。
両手を顔の前でクロスさせ、身を守る。
「くうっ…」
流石に炎の威力は凄まじく、本来打撃から身を守るためのこの技では火傷を負ってしまう。
だが押されているうちに、運の良い事に炎の軌道からはずれ、落下する。
着地体制をとるバッツ。しかし空中で強制的に『まもる』を発生させたため、着地のバランスが崩れよろけてしまう。
そこに炎の第二弾。だが今度は当たらない。下から後ろへ潜り込み、魔法の詠唱を始める。
ふと横目に映るはこれまた巨大な尻尾。僅かだが左右に動いている。
(しまった…!)
これは完全に予想外だった。もしこれが襲ってくれば自分は詠唱をやめなければならない。
尻尾と言えど、叩きつけられたら絶命の可能性も出てくる。
(俺の詠唱完成が早いか、尻尾が俺を襲うのが早いか…)
…いつまで経っても尻尾は襲ってこない。それどころか、ブオーンは後ろとびをしてバッツと向き合う始末。
75不幸の火種 14/26:2006/09/23(土) 01:34:12 ID:EcUbdRXq0
実は先程のリュックが戦った時の尻尾への一撃が、ブオーンにとって大きな痛手であった。
確かに動かせば倒すことはできる…が、動かせない。
流石の破壊神も、強烈な痛みに逆らうことはできなかった。
そうこうしている間に、バッツが魔法の詠唱を終えた。

「グラビガ!」

ブオーンに向けて漆黒の球を放つ。バッツはその瞬間、拳の一撃を、左に転がり避ける。
連撃―――左と右の両の拳が地面を何回も殴りつける。
バッツも負けじと避けるが、さっきの火傷はやはり軽くはなかった。
少し痛みを感じながらも、それを押さえて再びアイスブランドを取り出し、ブオーンの懐に潜り込む。
漆黒の球が当たったのを見届けてから、大きく避けた拳を内側から横に薙いでバックステップ。
「グオオオオオ、ガアアア、ギャオオオアアアッ…!」
「効いてる、か…それにしては…」
グラビガは本来HPを4分の1に削る魔法。それなのに、くらってこそはいるが大幅に減っている様子は見られない。
最初に放ったオールドさえ効いている気配は見られない。
となると、考えられるのは一つ。
「魔法耐性もかなりあるな…これは長期戦になればきついな…!」
バッツはそのまま真上に飛び上がりあの縦一閃の傷に再度一閃。
降る拳にも同じ方向へ縦一閃。拳の速度にも大分慣れてきていた。
「だいたいこのぐらいか…」
呟くバッツ。
「消耗が激しいから使いたくなかったんだけどな…賭けるか」

それが彼にとっての不幸だとは、まだ気付かない。
76不幸の火種 15/26:2006/09/23(土) 01:36:18 ID:EcUbdRXq0
「ふう…やっと森を抜けたけど…村もすごい有様だ…」
ふう、とソロのため息。
「チッ…俺らが無駄な争いしてる間にこれかよ」
隣にいるのはサイファー。
二人ともに、お互い争う気はもうないらしい。
そんな気など微塵も感じ取れない。
元はと言えば、すべての元凶はこの大火事であり、その締めもまた大火事である。

あの時―――一触即発の空気は、すぐに切り崩された。
先にしかけたのはサイファー。低姿勢から剣を振るう。
間一髪で頭上に避けるソロ。だがそのまま剣を返し二撃目がソロを襲う。
体を半回転、剣を重力に従って振り下ろし、サイファーの剣にぶつける。
そのまま空中で姿勢を取り直し難なく着地、サイファーの突撃を待つ。
待っているよりも早く来る突きを、なんとかの反応で受け流す。
サイファーの右腕から、炎に負けぬ緋の色が少し噴き出した。
だが構いはしないサイファー、そのまま横薙ぎに振り、それを受けた反動で倒れたソロに追い討ちをかける。
「っ…」
ソロも素早く反応したからまだ右手の甲に一筋で良かったものの、はずしていたら致命傷だった。
お互い実力は一歩も譲らず。
その中でもソロは、なんとか解決の糸口を手繰っていた。
「くそっ、あちいな…」
それを聞き、ソロはもう既に殆どの木に火が移っているのを確認する。
あと1分でも経てば手遅れだろう。となると…
「勝手ですが、森を出るまで一時休戦としませんか?このままでは共倒れです」
「…仕方ねえな…」

森を脱出する際に、最初は無口だった二人。
しかしソロが一度話しかけて以来、少しは落ち着きを取り戻したのか、説得は面白いほど簡単に進んだ。
77名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/23(土) 01:37:54 ID:lMqdQt730
sien
78不幸の火種 16/26:2006/09/23(土) 01:38:14 ID:EcUbdRXq0
こうして、仮とは言え二人は結束した。
この炎の村から逃げ遅れた人を救い、恐らくあの魔物と戦っているだろうバッツを援護する。
実際ソロは気が進まなかった。魔物とは言え、あれ程暴れるのは何か理由があるに違いないと。
そして、この燃えた村で逃げ送れた人を探すことも不可能に近い。
それでも、可能性がある限り。二人は大声をあげて仲間を探した。
そして見つける。半壊した宿屋と話し声を。


近くの燃えている残骸に身を隠し眼を閉じる。1秒

心を落ち着ける。ブオーンがバッツを探し出す。2秒

呪文詠唱開始。ブオーンが家々の破壊を始める。3秒

詠唱が中盤にさしかかる。ブオーンが迫ってくる。4秒

そろそろ詠唱完了。更に心を落ち着かせる。5秒

眼を開き、呪文を唱えようとして気付く。木の残骸に潰されるようにして倒れているもの。
それは、心を落ち着かせた今だから気付いたもの。
…あれは?
バッツの眼を引く。それが、彼の最後の一線を踏み切るきっかけとなった。
…あれは、なんだ?
バッツが近づく。ブオーンに見つかるのを、気にも留めずに。
…あれは、なんなんだよ?
薄々気付いていた。
もう原型は留めていなくとも、バッツにはわかった。
彼の勘が…いや本能が、いや彼のすべてがそうだと言っている。
その『何か』は、見間違うことなくレナだった。
焼けている中でもそこに在る桃色の優しい髪。
体が潰れていようがそこに在るレナの顔。
79不幸の火種 17/26:2006/09/23(土) 01:38:57 ID:EcUbdRXq0
あいつは…あいつは…本当に…


そ し て
     崩    壊



「うわァーーー!!!!」
もう自我なんてない。もう何も知らない。バッツの心の支えは根本から崩壊した。
今はもう、以前のように彼を止められる人などいない。
「守って…やるって…決めたのに…レナアアァァーーーーーー!」


なんかあのでかいやつがほのおをはいてる。
いなづまがおちてきた。
…そんなこと、しるか。
あいつのでかいこぶしがおりてくる。
ふうあつでふっとばされる。
…そんなこと、しるか!!


「メテオ!」
先程まで溜めていた魔力を一気に開放する。
多数の隕石がブオーンの体を直撃する。
しかもそのメテオは、普通の魔法とは一味も二味も違っていた。
バッツの魔法エネルギーを過剰に怒りにより上乗せした結果。
80不幸の火種 18/26:2006/09/23(土) 01:39:54 ID:EcUbdRXq0
「ブオオオオオッ?!」
なんだ、あいつ…?
叫んで向かってくる…うざったい!
うざったいニンゲンなんぞ…消えろ!
炎をくらえ!いなづまにあたって焦げてしまえ!

……な!?
まったくくらってない?
なんでだ、俺様の攻撃を…
…!?
なんだこの魔法は!?
隕石が…いや、これはただの魔法じゃない…
俺様も…流石に効いてくる…くそっ、右腕が…クソッ…こんなところで…!
こんなところでこんなところでこんなところでくたばってたまるか!
俺様は生きるんだ!他のゴミを殺して殺して殺して殺して、俺様だけがッ…くぉの、人間になんてッ…!


ありえない力のメテオがブオーンを崩していく。
右腕を抉り飛ばし、腹に直撃したものはそのまま吹き飛ばし、ブオーンを容赦なく痛みつける。
「あ、あ、あ、あ、ああああああアァァァァァァー!」
滅茶苦茶にアイスブランドを振り回すバッツ。
相手は倒れていて既に殆ど虫の息だがそんな事バッツには通じない。
ブオーンを切り刻んで、切り刻んで、切り刻んで切り刻んで切り刻んで
バッツはこの状況から目を逸らすために、何かに熱中しなければならなかった。
まずは、ブオーンを。

「くそがァッ!小賢しい人間がッ!この俺様がアアアァァァァァ!」
それがブオーンの最後の抵抗。もう怯え、逃げ回っていたブオーンには戻らない。
ありったけの炎を浴びせ、体をがむしゃらに振り回す。
何発かがバッツにあたる。だが、バッツはもう気にしなかった。
例え我が身が滅びようとも、決して動じることはなかった。
81不幸の火種 19/26:2006/09/23(土) 01:40:50 ID:EcUbdRXq0
そして

バッツのアイスブランドは
ブオーンの首を切断し
そして自らも折れ、砕け散った。

敵討ちでも復讐でもなんでもない。
それは、ただの一方的な虐殺。
バッツは、それにさえ気付かない。
ただただ、この燃え上がった地で、乾いた笑いを浮かべていた。



話は少し遡る

ソロとサイファーが着いた時、そこはもう殆ど崩れ落ちていいといったほどの形だけの建物。
「声…したよな?」
ソロが無言で頷く。それを合図に、二人は一斉に中へ進入した。
「ターニアさん、エリアさん、ビビさん!」
「あいつらは襲ってこねえか…って見てわかるか」
二人が見た光景は、もう既に炎に囲まれた中に少女が2人、気絶した少年が1人。
ビビの気絶は見て取れる。他にも、動かないターニア。
一番の元凶…エリアの上に倒れこんでいる家の壁であったもの。
声は周りの炎とブオーンの咆哮でよく聞こえない。
相手にもどうやら聞こえていないらしい。
「ニフラム!」
ソロがそう叫んで手をかざすと、火を白い光が柔らかく包み込む。
…それだけだった。
82不幸の火種 20/26:2006/09/23(土) 01:42:03 ID:EcUbdRXq0
「やっぱり生き物じゃないし無理でしたか…。
そういや、サイファーさん…でしたっけ?
火を消せる魔法かなにか使えませんか?」
「いや…生憎だが俺は自分の力じゃ魔法は使えねえな」
「道具はどうですか?私の方は火を消せる類のものはありませんでしたよ」
「俺もだ、困ったなこりゃ」
「周りは火に囲まれていて、相手には聞こえない、どうしましょう…」
ふと、あれ程うるさかった咆哮を更に越す騒音が襲った。
「なっ、なんなんだよ!?」
そう思い外に目を向けたサイファーが見たものは凄まじい隕石の数々。
それは確かに自分の世界で知っているメテオそのものだったが、そんなものの比ではない。
あれはメテオというより、エネルギー体に近い。言いようのない悪寒に駆られたサイファー。同じく、メテオこそ知らないもののソロもそうだった。
サイファーは踵を返し、ソロに向かって言い放つ。
「悪い、そっちも大事だが…とりあえず任せたぜ!
俺じゃ幾ら悩んでても答えが出そうにないしな。
俺はバッツとやらの方を見てくるぜ。必ず助け出せよ!」

一人の少女は、地べたに伏している少女の下で涙を流して嘆く。
「エリアさん…もうダメだよ、火に囲まれちゃった…」
「だから私の事なんて捨てて逃げてって言ったのに…」
そう自虐する瞳は優しげで。
「ごめんなさい、でも私、エリアさんを見捨てることもできないよ」
そう言う彼女の瞳も優しげで。
二人の優しさとその意志は、レナの二の舞となってしまうかに思われた。
そこに、ドドンという大音響。その振動がここまで伝わってくる。
「もう…崩れちゃうのかな…」
「せめて、ビビちゃんだけでもどうにかならないかしら…」
だが、そんなエリアの落胆の表情は一瞬にして消えてしまう。
それに気付き、ターニアもゆっくりと後ろを振り向いた。
83不幸の火種 21/26:2006/09/23(土) 01:42:52 ID:EcUbdRXq0
人影。火の中を、勇敢とも無謀とも言える行動。
「ソロさん!」
「大丈夫ですかみなさん!」
火の中を進むなど、もちろん彼にも考えはあったが賭けに近かった。
サイファーが去った後に自分の頭の中に浮かんだ考え。
火を消すのではない。火を防ぐのだ。そこで天空の盾。
多少の火傷こそするものの、基本的に炎を防いでくれる。
「でも…ソロさん、その盾じゃ一人ぐらいが限度じゃ…」
「いえ、大丈夫です。
すみませんがターニアさん、ビビ君を近くまで運んできてくれませんか?」
「はい、わかりました!」
女子の力とは言え、ビビはすぐに持ち上がった。
そして無事すぐ傍まで運ばれたのを認めてから、ソロは唱えた。
「イオラ!」
天井に向けて空爆呪文を放つ。あっという間に周りは吹き飛ぶ。
それを利用して外に出る手もあったが、それではまた囲まれてしまうので意味がない。
そこでソロが弾き出した案はこれだ。
「ルーラ!ウルの村へ!」
不可思議な色が4人を包み込み、完全に消える。
そしてその場からは、何もなくなった。



アンジェロは、爆心地であるかのような場所に辿り着いた。
先程まで暴れていた巨大な魔物は、すぐそこに倒れている。
いったい何があったというのだろう。この魔物と戦っていた者はどこへ行ったのだろう。
84不幸の火種 22/26:2006/09/23(土) 01:43:34 ID:EcUbdRXq0
(スコールはどこかしら…)
あちこちに戦火の残り火があがっている。
それに臭いがする…死体が焼ける臭いだ。アンジェロの嗅覚は正しくそれを嗅ぎ取る。
嗅げなければそれに越した事はない臭いだが。
とりあえず確認の為に臭いのする方へ歩んでいく。
(…誰かいる?)
彼女の両眼は、うずくまっている男をキャッチした。
臭いのする方と、男のいる方向は一致する。
アンジェロは警戒心を忘れずに、ゆっくりと近づいていく。
男からは決して目を離さず、一歩、一歩と…不意に歩いている感触がなくなる。
(…?)
体に鋭い衝撃が走って、やっと自分は吹っ飛ばされて地面に叩きつけられたと気付いた。
何故。警戒は怠っていなかったはずだ。
周りをよく見てみると、何かの折れた剣のようなものが転がっている。
そうか、自分は飛ばされたこれに当たったのか。
そう気付いた時にはもう、数歩先に男―――バッツが立っていた。
目は虚ろで、とても正気とは思えない。
話しかけてみようと試みるが、言葉一つさえ通じる気配がない。
まだサルの方が賢いと言ってもいいほど、この時のバッツは錯乱していた。
「お前も…レナを、狙いにきたのか…?」
かすれた声で。笑った声で。
それはこの上なく恐ろしかった。スコールでも見た事がないだろう修羅。
気付いた時には、アンジェロは逃げ出していた。
しかしまわりこまれてしまい―――アンジェロは頭部に強い衝撃を覚えた。
(リノ…ア…私、もう駄目みたい…ごめん、ね…)
そしてその犬は、もう二度と起き上がる事はなかった。

バッツは、未だ擦れた笑いを続けて。村の中央部へと、亀の歩みで進んでいった。

85不幸の火種 23/26:2006/09/23(土) 01:44:24 ID:EcUbdRXq0
サイファーは来る途中、一人の少女を見つけた。
潰されたといっていいほど凄惨な死に方だった。
「ロマンティックには程遠い…よくやれるもんだぜ、くそっ!」
彼は少女リュックの死亡を確認した後、黙祷をささげ、散らばっている道具を集める。
その中のひとつにチキンナイフがあったのを、彼は知らない。
一礼した後、再び走り出す。不気味なほどに静かになった決戦場を。

そして彼は見つける。
抜け殻となった、バッツを。
「…どうしちまったんだよ」
話しかけても答えはない。
「おい、なんとか言え…、…ッ!?」
「うあああああっ!」
いきなりの出来事だった。バッツが突っ込んでくる。
まさに猪突猛進。サイファーが武器をもっていようが関係ない。
反応の遅れるサイファー。ストレートをまともにくらい吹っ飛ぶ。
その時の衝撃でチキンナイフが落ちたのを、バッツは見逃さない。
すかさず拾ってサイファーに斬りつける。即座に破邪の剣で応戦するものの、攻撃で手が痺れる。
ただの小さいナイフなのに、破邪の剣を圧倒的に凌ぐ力を持っている事が読んで取れた。
(おいおい、そのナイフってこんなに強かったのかよ?)
流石のサイファーも焦る。
(説得以前に、俺が死んじまうかも知れねえな。
もっともそんな事は御免だけどよ。…だがどうする?)
そんなサイファーの思考などお構いなし、的確な攻撃でサイファーを追い詰めるバッツ。
本当にただの小さなナイフなのに、一発一発が鉛の様に重く、風切刃より鋭い。
チキンナイフは確かに小さなナイフで、もともとの攻撃力は弱い。
そして、装備する者を恐怖に落としいれ臆病にさせるという短所を持っている。
しかしその反面、恐怖や怯えによって攻撃力は飛躍的にあがる。おそらく最高状態でなら、エクスカリバーやラグナロク、果てはロトの剣や天空の剣などの武器すら凌ぐ程に。
今のバッツは、現実から目を背けて逃げている。現実に恐怖し、怯えている。
認めまいと、自身の臆病な殻に篭って他人を寄せ付けまいとしている。
皮肉にも、それが更に攻撃力をあげる要因なのだが。
86不幸の火種 24/26:2006/09/23(土) 01:45:05 ID:EcUbdRXq0
休む事のないバッツの攻撃。
バッツはナイフを横に振る。それを上半身をかがめて避けると、今度は縦に切りつけてくる。
サイファーはサイドステップをするが、そこに今度はナイフの突きが迫る。
「がはっ!」
ナイフはいとも容易くコートを破り、左胸の肉を切り裂いて数センチで止まっていた。
血を吐きながらバッツを見れば、バッツも満身創痍だ。
どこからこんな力が出てくるのだろうか。
バッツは自分を破壊し続けて、サイファーを襲う。
一気にナイフを引き抜くと、それにつられてサイファーから鮮やかな緋色が大量に失われる。
紙一重で避けて多少の反撃。しかし、状況はどんどん悪化の一方。
サイファーに避け切れなかった、又は受け切れなかった攻撃の傷が増えてきている。
バッツの突撃に合わせ、ナイフを受け流して横から切りかかる。
だが流石は軽量のナイフ、素早く横腹でガード。
今度はそのままの体勢で連撃。サイファーは、自分が明らかに目でさえ追えていない事を自覚する。
「流石にムリ…だな。気は進まねえがあれを使うしかねえか」
サイファーに飛び掛るバッツ。サイファーは精神力を高めていく!
そして、突如 爆 発 !
「雑魚散らし!」
掛け声と共に、今まで優勢だったバッツがいきなり弾き飛ばされる。
そして今度は逆にサイファーの連撃の応酬。それはバッツの手数とは比べ物にならない。
感覚が麻痺しているバッツも、流石に何回も斬られてはかなわない。
「うああああ…レナァァァァ…!レナ…っ」
彼は何かを叫びながら、村の外へと走り出していった。
チキンナイフをきつく握ったままで。
現実から目を逸らすため。

「どうしちまったんだよ…」
サイファーは追わない。
バッツが村のむこうに消えても。
87不幸の火種 25/26:2006/09/23(土) 01:45:54 ID:EcUbdRXq0

村の残り火が、橙の色を発する。
月は、異常な橙に染まっていた。

撒かれた火種は、未だ消えない。


【サイファー(右足軽傷 右胸重傷 至る所に刀傷 HP1/5程度 疲労)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ 
バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣  ドレスフィア(パラディン) 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:現状判断
 第二行動方針:ソロと合流
 第三行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先) 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在置:ウルの村 南西の村外】

【ソロ(MP0 体力消耗 全身の軽い火傷 疲労)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング  ラミアスの剣(天空の剣)  ジ・アベンジャー(爪) 
 第一行動方針:エリア・ビビ・ターニアと行動/サイファーと合流
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す】※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり。
【エリア(体力消耗)
 所持品:妖精の笛
 第一行動方針:ビビ・ターニアを守る
 第二行動方針:ソロ組で行動
 基本行動方針:レナのそばにいる(レナの死はまだ知らない)】
88不幸の火種 26/26:2006/09/23(土) 01:47:51 ID:EcUbdRXq0
【ビビ(気絶中)
 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草(不具合?)
 第一行動方針:ソロとエリアについていく
 基本行動方針:イザを探す】
【現在置:ウルの村のどこか(ルーラで移動)】

【マッシュ 
所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:スコールを助ける
 第二行動方針:エドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在地:ウルの村 南東の井戸のそば】

【バッツ(左足負傷 全身を火傷 何本か骨折 至る所に刀傷 混乱 自我喪失 MP一桁 HP1/10程度)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 チキンナイフ ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:レナの死を信じない
 第二行動方針:???
 基本行動方針:レナの死を信じない】
【現在置:ウルの村 南の村外を南に逃走中】

【リュック 死亡】
【ブオーン 死亡】
【残り 51人】
89名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/23(土) 01:47:52 ID:mnZcdny/0
 
90不幸の火種:2006/09/23(土) 01:48:46 ID:EcUbdRXq0
※ ルーラでウルのどこに飛ぶかは次の書き手さんに任せます
※ ウルの村とその北部の森は全焼しました。まだあちこちに残り火があります。
※ アンジェロは死亡しましたが消滅はしません。
※ バッツは混乱が解けても何かきっかけがない限り正気には戻りません。
※ レナのエクスカリバーはそのまま放置されています。
91不幸の火種 修正版 12/27:2006/09/23(土) 14:32:40 ID:EcUbdRXq0
周りが少しずつ焼けているのにこの集中力とはなんたることか。
それは、バッツにとってはそんなこと慣れっこだからである。
自分達はどんな状況でもジョブチェンジを難なくこなせるようにしてきた。
経験もまた、いい武器である。

心の波は消えて頭の血は覚めても、心の炎は未だ消えず。
緑色の双眼に映るは巨大な魔物。今、それを沈めようと勇者が一人。
地面を蹴る音。それは一瞬。
その一瞬で、バッツの姿は宙に浮く。
左足を怪我している様子など微塵も見せない。
だがそれよりも驚くべきことは、恐ろしいほど軽く、疾(はや)いこと。
バッツのジョブはナイト。
そのジョブは、もう守るべき人を失いたくないという心の表れか。
しかしそれではこの身軽さが証明できない。
バッツの世界ではアビリティは特殊な場合を除き、もう1つつける事ができる。
つまり、そのもう一つが…

「オールド!」

時空魔法。それはあらゆる面で味方を補助し、そして攻撃もできる魔法。
その最高レベル、レベル6の魔法をバッツは旅で身につけてきた。
そうすると、さっきかかっていたのは『身軽さのレビテト』と『疾さのヘイスト』。
どれも戦いにおいて、確実に自分を有利にする魔法である。
ただ、魔法なだけあり、精神を落ち着かせ、詠唱をしないとうまく効果を発揮しないことが殆どだ。
92不幸の火種 修正版 13/27:2006/09/23(土) 14:33:12 ID:EcUbdRXq0
さて、オールドをかけられたブオーン。
効いてか効かぬか、それさえ見極められないうちにバッツの方を振り返る。
三つの眼が、茶髪の男を捕らえた。
だが所詮巨大すぎる魔物。あまりに速く動かれては、眼や攻撃で追えても体の移動では追えない。
バッツが中央広場へとかけでたところに拳が降る。
横跳び…バッツの下には足の影が大きくなっている。
今度は反復。そのまま右足で地面を蹴る。ブオーンの胴あたりまで上がったバッツは、縦に傷が入っているのを認める。
そのまま傷に向けてアイスブランドを渾身の力で突き刺した。
すぐさまそのバッツと高さを同じくして拳が横薙ぎに迫ってくる。
バッツはアイスブランドに力を込め、ブオーンの体を蹴り、その二つの反動で更に上昇。
ブオーンから跳び離れてゆくように弧を描き、下の少し後ろで凄まじい風圧を感じた。
もちろんこのまま行くとせっかく上ったのに地面に降りてしまうが、ただ降りるだけではない。
アイスブランドの一撃のおまけつきだ。
「ブオオオオ!」
咆哮に後ろを振り向くと、いつの間にかすぐそこまで炎が迫ってきていた。
(しまったな…)
空中では身動きをとることは叶わない。だがバッツは慌てない。
とりあえずアイスだけに炎に弱い剣を腰に差して自分は堂々と炎に向き合う。
ここで発生させるのがナイトについているアビリティ『まもる』。
両手を顔の前でクロスさせ、身を守る。
「くうっ…」
流石に炎の威力は凄まじく、本来打撃から身を守るためのこの技では火傷を負ってしまう。
だが押されているうちに、運の良い事に炎の軌道からはずれ、落下する。
着地体制をとるバッツ。しかし空中で強制的に『まもる』を発生させたため、着地のバランスが崩れよろけてしまう。
そこに炎の第二弾。だが今度は当たらない。下から後ろへ潜り込み、魔法の詠唱を始める。
ふと横目に映るはこれまた巨大な尻尾。僅かだが左右に動いている。
(しまった…!)
これは完全に予想外だった。もしこれが襲ってくれば自分は詠唱をやめなければならない。
尻尾と言えど、叩きつけられたら絶命の可能性も出てくる。
(俺の詠唱完成が早いか、尻尾が俺を襲うのが早いか…)
…いつまで経っても尻尾は襲ってこない。それどころか、ブオーンは後ろとびをしてバッツと向き合う始末。
93不幸の火種 修正版(追加) 23/27:2006/09/23(土) 14:34:23 ID:EcUbdRXq0
「それにしても…ソロさん、ルーラってテレポ…いや、移動呪文みたいなものですよね?」
無事に到着したエリアが問う。
確かに移動呪文を唱えれば、簡単に遠くまで移動できる。
だが、この世界ではどうか。
遠くの村から町へ、城から村へ、そんなことはあの魔女にとっても面白いものではないはず。
こんな殺し合いのことは考えたくないが、『ゲームバランスが崩れる』のは確かだ。
「確かに移動呪文ですよ。僕も最初はできるのか、って疑問に思ってました。
でも情けないことにそれをするだけの勇気が出てきませんでした。
もしかして、この首輪が爆発しちゃうんじゃないかって」
更にソロは続ける。
「でも、あなた達と会ってその考えが変わったんです。
守らなきゃいけないって。自分の命を失うことに怯えるだなんて、どれだけ愚かかだって
だから試してみたんですよ。僕が見回りに行っていた時に一人で」
ソロは結果を言う。
「飛ぶところはここウルにしておいたんですけど…少しおかしいことがおこったんです。
『ルーラ』っていう魔法は、町や城、村へと飛んだ時、その入り口に到着するんです。
でも僕はこの村の決して入り口とは言えない、武器屋の近くに飛んできました。
その後は…ちょっと賭けでしたけど、他の村も選んでみたんです。
ですが結局、ここウルの防具やについてしまったんです」
「「…?」」
二人の少女はまだ意図を解せない。
そして、ソロは推測をする。
「つまり、この魔法はすごく狭い範囲を、しかもランダムにしか移動できないという制限をつけられた上で使用可能になっているんじゃないでしょうか。
ですからリレミトとか…テレポでしたっけ?
それらの、洞窟を脱出するとか広範囲を移動する魔法は効き目がないと思われますよ」
二人の少女はやっと真意を掴む。
そして再びこの少年に驚かされる。それと同時に、足を引っ張ってるという罪悪感を感じる。
「すみませんソロさん…私達なんて…」
少年は、振り向いた。そして振り向きざまに笑っていった。
「いえいえ、あなた達が無事であればそれが一番いいんですよ。
今は危ないですから、僕から離れないで下さいね」
94不幸の火種 修正版:2006/09/23(土) 14:38:47 ID:EcUbdRXq0
指摘をいただいたので修正しました。

それに追加し、ルーラについて勝手ですが少しいじらせてもらいました。
一応禁止というわけではないので、使用は可能ということでいいですよね?

追加した部分は元22/26と23/26の間です。
追加したので26は27に増え、更に元23/26以降の話はひとつずつずらして下さい。


ちなみに、『ゲームバランスが崩れる』のゲームは、テレビゲームなどではなく
主催者がこの殺し合いを称したものを皮肉を込めて言ったものですからあしからず。


指摘があったらよろしくおねがいします
95不幸の火種 こちらも修正します14/26:2006/09/23(土) 14:49:23 ID:EcUbdRXq0
実は先程のリュックが戦った時の尻尾への一撃が、ブオーンにとって大きな痛手であった。
確かに動かせば倒すことはできる…が、動かせない。
流石の破壊神も、強烈な痛みに逆らうことはできなかった。
そうこうしている間に、バッツが魔法の詠唱を終えた。

「グラビガ!」

ブオーンに向けて漆黒の球を放つ。バッツはその瞬間、拳の一撃を、左に転がり避ける。
連撃―――左と右の両の拳が地面を何回も殴りつける。
バッツも負けじと避けるが、さっきの火傷はやはり軽くはなかった。
少し痛みを感じながらも、それを押さえて再びアイスブランドを取り出し、ブオーンの懐に潜り込む。
漆黒の球が当たったのを見届けてから、大きく避けた拳を内側から横に薙いでバックステップ。
「グオオオオオ、ガアアア、ギャオオオアアアッ…!」
「効いてる、か…それにしては…」
グラビガは本来敵の生命力を大幅に削る魔法。それなのに、魔法をくらってこそはいるが、それほど生命力が奪われたいる様子は見られない。
最初に放ったオールドさえ効いている気配は見られない。
となると、考えられるのは一つ。
「魔法耐性もかなりあるな…これは長期戦になればきつい…!」
バッツはそのまま真上に飛び上がりあの縦一閃の傷に再度一閃。
降る拳にも同じ方向へ縦一閃。拳の速度にも大分慣れてきていた。
「だいたいこのぐらいか…」
呟くバッツ。
「消耗が激しいから使いたくなかったんだけどな…賭けるか」

それが彼にとっての不幸だとは、まだ気付かない。
96不幸の火種:2006/09/23(土) 14:53:43 ID:EcUbdRXq0
>>95は14/27です。
何回も何回も失礼します…
97不幸の火種 修正版 8/27:2006/09/23(土) 23:50:25 ID:k5ZXOKg30
犬、いや、アンジェロはスコールのことを心配していた。
彼は無事だろうか。無事であれば、きっと自分の手助けはしてくれる。
だがもし、このゲームに乗っていたら…
それとも、もう既に瀕死の状態だったら…
これらの状態であれば、自分にはどうしようもない。
寧ろ殺されてしまう危険だってある。
だが、犬…いや、彼女は何故か確信に近いものを持っていた。
何かは知らない。でも、スコールはきっと無事。彼女の勘が、それを伝えていた。
しかし彼女は不運だった。何故なら、彼女はスコールの事ばかり考えていたから。
スコールの姿ばかり探していたから。スコールの事しか気にしていなかったから。
スコールのにおいはウルの先へ続いていたから。そして、においは水によって消されていたから。

そして最大の不運は『考えていたから』。
猛スピードのままあまりに考え事に熱中しすぎていたものだから、彼女は小さく聞こえた叫び声―――マッシュのを聞き逃してしまっていた。
そして、においの元の確定も漠然としたものでしかなかった。ウルの村へ行けば、きっとスコールに会えると。
結果、そればかりに意識が行き、場所の確定を怠ったため、求めているスコールは近づくを通り越してだんだんと南東へと離れていく。
それをアンジェロが気付く由もない。気付くきっかけもない。
それだけが彼女の不運。そしてそれは彼女の最大の不運。
何故ならこのまま彼女が目指している北は言わばまだ火の消えぬ爆心地なのだから。



リュックは違和感を感じていた。
確かに自分の戦い方は間違っていない。現にブオーンに確実に傷をつけている。
降ってくる拳を余裕を持ってかわす。そうでもないと拳圧で潰れてしまいそうだからだ。
時より吐かれる炎はブオーンの下から背後へ回ってかわす。
そして高く跳躍し、背中を斬りつける。振り向くと同時にまた背後へ回る。
これが一番確実だ。安全ではある。だがいかんせん、傷が浅い。
そこでリュックは考える。動きをなんとか止められれば…と。
気付けばリュックの真上に拳が現れる。即座に横とびに跳ね、その拳をなんなくかわす。
98不幸の火種 修正版 23/27:2006/09/24(日) 00:21:12 ID:jvRiTjHq0
「それにしても…ソロさん、ルーラってテレポ…いや、移動呪文みたいなものですよね?」
無事に到着したエリアが問う。
確かに移動呪文を唱えれば、簡単に遠くまで移動できる。
だが、この世界ではどうか。
遠くの村から町へ、城から村へ、そんなことはあの魔女にとっても面白いものではないはず。
こんな殺し合いのことは考えたくないが、『ゲームバランスが崩れる』のは確かだ。
「確かに移動呪文ですよ。僕も最初はできるのか、って疑問に思ってました。
でも情けないことにそれをするだけの勇気が出てきませんでした。
もしかして、この首輪が爆発しちゃうんじゃないかって」
更にソロは続ける。
「でも、あなた達と会ってその考えが変わったんです。
守らなきゃいけないって。自分の命を失うことに怯えるだなんて、どれだけ愚かかだって
だから試してみたんですよ。僕が見回りに行っていた時に一人で」
ソロは結果を言う。
「飛ぶところはここウルにしておいたんですけど…少しおかしいことがおこったんです。
『ルーラ』っていう魔法は、町や城、村へと飛んだ時、その入り口に到着するんです。
でも僕はこの村の決して入り口とは言えない、武器屋の近くに飛んできました。
その後は…もう一つ疑問があって、今度は指定をせずに唱えてみたんです。
普通は不発に終わる筈でしたが、何故かまたここウルの村の防具屋に飛んだんです」
「「…?」」
二人の少女はまだ意図を解せない。
そして、ソロは推測をする。
「つまり、この魔法はすごく狭い範囲を、しかもランダムにしか移動できないという制限をつけられた上で使用可能になっているんじゃないでしょうか。
ですからリレミトとか…テレポでしたっけ?
それらの、洞窟を脱出するとか広範囲を移動する魔法は効き目がないと思われますよ」
二人の少女はやっと真意を掴む。
そして再びこの少年に驚かされる。それと同時に、足を引っ張ってるという罪悪感を感じる。
「すみませんソロさん…私達なんて…」
少年は、振り向いた。そして振り向きざまに笑っていった。
「いえいえ、あなた達が無事であればそれが一番いいんですよ。
今は危ないですから、僕から離れないで下さいね」
99名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/25(月) 19:47:50 ID:qyVrX5Xs0
保守を
100不幸の火種の作者:2006/09/26(火) 19:06:41 ID:iovoOKww0
色々と感想スレで議論した結果、作品『不幸の火種』全部を一旦破棄します。
お騒がせしました
101EYES ON ME 1/5:2006/09/26(火) 20:08:47 ID:HnAGiZLW0
暗い井戸の底、ひとりの男が、目の前の瀕死の緑髪の男を見て苦悩していた。


「・・・緑色の髪の男に遠くから射撃された・・・・・・
 ・・・・・・リノアとかいう連れがいたそうだが、彼女は助からなかったらしい・・・・・・」


数時間前に、カインから聞いた言葉が呼び起こされる。
目の前にいる男が、リノアを殺したのか?そうであれば、この男を許すことはできない。
男が手に持っている銃、これがリノアを殺した凶器なのかもしれない。

だが、もしこの男がリノアの死と何の関係もないとしたら?
彼の傷の具合からして、早急な治療がなければ、そのまま帰らぬ人となるだろう。
そして今、彼を助けられるのは自分たちしかいない。


スコールは苦悩していた。自分が選ぶべき選択肢に。
102EYES ON ME 2/5:2006/09/26(火) 20:11:32 ID:HnAGiZLW0
上の方から、自分の名前を呼ぶ、マッシュの声が聞こえる。
ふと上空を見ると、赤い光が目に入る。村を包んでいる炎による光に違いない。
この井戸のまわりまで炎が及んでくるのに、そう時間はかからないだろう。
時間はない。目の前の男にも、自分たちにも。


目の前の男が、リノアの死に関しては無関係だとしても、多くの人を殺めた殺人鬼だとしたらどうする?
自分たちが助けることで、さらに多くの悲劇を生むかもしれない。
日々の常識が狂ったこの世界、人の命を救うことに何の意味があるのだろう?
このゲームのルールでは、たとえ一時の命を助けたとしても、
この男は遅かれ早かれ、死ぬ可能性が高いのだ。もちろん、自分も。
そう、SEEDは傭兵集団。常に冷静な状況判断と、最適な決断をしなければならない。
炎が迫っている今、あまりに長くこの場にいることは、自分たちの身をも危うくする。
自分が苦悩し、この男を助ける義務はない。
自分と男は他人なのだ。この男の死によって、自分が背負う物は何もない。
男がリノアを殺した者だとしたら、自分自身が手を下さないことに心残りはあるが。


スコールは無理矢理、問題を結論づけた。
それは無意識であるだろうが、自分が何もしないことで、全ての責任から逃げようとしていたのだ。


「マッシュ―――――」

上に引き上げてくれ、と言おうとした。井戸の底の男はすでに死んでいた、と。
103EYES ON ME 3/5:2006/09/26(火) 20:14:00 ID:HnAGiZLW0
その時。


声が、聞こえた。

自分が、最も大切にしていた人の。

今は亡き、愛する人の。

昔、よくかけられていた、怒ったような声が。


「・・・・・・助けろ、というのか? リノア・・・・・・」

つぶやいても、返事が返ってくるはずはない。だが確かに感じた懐かしい声。


「おい!どうした、スコール!?」

マッシュの大きな声が聞こえる。


スコールは自嘲気味に笑った。
彼女が生きていると信じていた時、彼女の声は聞こえなかったのに。
もう彼女がこの世にいないこと、
もう彼女のぬくもりを感じることができないことを知った今、
愛しい声が聞こえてくるとは。


ああ、やはりオレは・・・・・・アンタがいないと、どうしようもなく弱い人間だ。
だけど・・・・・・強くなるから。いつかまたアンタに会った時、恥ずかしくないように。
104EYES ON ME 4/5:2006/09/26(火) 20:17:10 ID:HnAGiZLW0
「・・・・・・・マッシュ、ティナの力が必要だ。魔石を渡してくれ」

だから、またアンタのワガママに付き合ってやろう。おそらく、アンタの最後のワガママに。


マッシュから落とされた、緑色の淡い光を放つ魔法の石を受け取った。
スコールはそれを握り締め、目を閉じ、強く念じた。

「オレは・・・・・・オレはこの男を助けたい。ティナ、力を貸してくれ」

魔石から光があふれる。暗い井戸の底を淡く、美しく照らす。
美しい幻獣が緑髪の男のキズを癒す。幻獣の出す光は、スコールの心も、優しく包み込む。
暖かい緑色の光の中、スコールは再び、大切な人の思いを感じた。


「ああ・・・・・・オレも・・・愛している・・・・・・」


スコールの頬を、一筋の涙が流れていった。
105EYES ON ME 5/5:2006/09/26(火) 20:18:01 ID:HnAGiZLW0
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:緑髪の男(ヘンリー)を井戸から出し、安全な場所へ運ぶ
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】

【ヘンリー(気絶)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP1/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームに乗る奴は倒す)】

【現在地:ウルの村 南東の井戸】
106ギルガメッシュ・ナイト 1/13:2006/09/27(水) 18:53:45 ID:gbLf1jOF0
ちくしょう。
フリオニールの奴、一体全体どこにいやがるんだ!
だいたい一人でこんな広い森探しきれるわけねーだろうが!
早く出て来いってんだ!
風も冷たいし、くそっ。足もいい加減痛くなってきやがったぜ…
おまけに、眩暈までしてきやがった。
これもそれも全部フリオニールのせいだ。せいだったらせいなんだ。
あのフラフラしてた銀髪野郎、恩義も人の情も知らないクソッタレの裏切り者。
襲撃を手伝ったはずの奴らも気になるが、それよりもあいつが先決だ。
あいつだけは絶対に倒さなきゃならねぇ! 我が友サリィとわるぼうのためにも!
なのに……さっきから何なんだ?
立ち止まってるわけにはいかないってのに、この調子の悪さは。
頭に血が行っていないのがわかるし、腹が焼け付きそうだ。
クラクラして、思考や集中力が散漫になっていく。
これは、まさか……


……モグモグムシャムシャ…ゴクゴクゴクン!
パクパクガツガツ、ハフッハフハムハム……


あー、生き返ったぁ!
何か忘れてるって思ってたんだよなー。メシだよメシ。
こんなに腹が減ってるとは思わなかった。最後に食ったのいつだ?
記憶にあるのが朝だから、12時間。
…アホか。そりゃ空くわ。
銃の試し撃ちや、持ち物確認したした時に喰っておきゃ良かったな。
まー、空腹を感じるのにも周期があるし、あの時は色々と考えたり何だったりしてたからなぁ。

モグモグ。あのガキには悪いことをしたような気もするが、ザック奪っといたのは正解だったな。
俺の食料だけじゃ、明日の飯抜きが決定だ。
ゴクゴク。……ぷはー。
107ギルガメッシュ・ナイト 2/13:2006/09/27(水) 18:56:30 ID:gbLf1jOF0
それにしても、こんな不味いパン支給しなくてもいいのにな。
空腹というスパイスを持ってしても微妙だぜ。
それだけ不味い。恐ろしい話だ。
エクスデス城にいた頃だって、もうちっとマシなもん食ってた記憶があるのにな。
ああ、我が相棒エンキドゥと過ごしたエクスデス城での日々が微妙に懐かしいぜ。
あいつだけは無駄に良い奴だった。エクスデスや他の連中は威張りくさってた奴が多かったんだが。
そういや、中でも一番態度がでかかった――名前が思い出せん――奴も、この世界にいたな。
性格捻じ曲がった奴ではあったが、「リヴァイアサンに瞬殺された奴」で呼ばれてたのは哀れだったな。
しかも放送でもその呼び名ってのはどうだろう。
だいたいなんで『リヴァイアサン』で『瞬殺された』なんだ?
……魔女の野郎が考えることはわからん。
まあ、あんな奴はどうでもいいんだが。
今はフリオニールだ。銀髪でターバンの憎いあんちきしょう。
あいつを倒さなきゃ、サリィとわるぼう、フライヤに顔向けできないぜ。
腹も膨れた事だし、もう一度冷静に考えてみよう。
一人であいつを仕留めるにはどうすりゃいいかを。

そもそも、一口に森と言っても、俺だけで調べ尽くせるような広さじゃないのは身に染みた。
それに奴も状況に応じて場所を移動するはずだ。
一番有効な方法は、他人に色々聞き込んでみることだが……
話し掛けた相手が善人で、素直に教えてくれるとは限らない。
偽の情報で陥れられたり、背後から襲われたりしたら洒落にならねえよな。

やはりここは、もう少し範囲を絞り込んで自力で頑張るべきだろう。
常識的に考えれば、待ち伏せするなら人通りの多い場所だ。
ここらで拠点になりそうなのは、サスーンとかいう城と、北にあるらしい洞窟。
けれども、湖の向こうにある洞窟にわざわざ行く物好きもいないだろう。
対してサスーンは、城だ。
道具や衣服、食料に暖房。人が欲しがるような物は一通り置いてあるはず。
おまけに、サスーンへ行ったり、サスーンから他の場所へ移動する場合、限られたルートを通るしかない。
あいつはそこを狙うはずだ。多分。
108ギルガメッシュ・ナイト 3/13:2006/09/27(水) 18:57:40 ID:gbLf1jOF0
そうと決まればいつまでも休んでいる場合ではない。
待っているがいい! すぐに見つけ出してその首討ち取ってやる!
そしてあの世でサリィ達にわび続けろ、フリオニールーーッ!


フリオニール、フリオニール、どこにいーるフリオニール……
………

……全然見つからんな。それにここはどこだ?
西に歩いてきたつもりだが、サスーン城らしきものはまだ見えん。
最初に東の方に行ってグルグル捜し歩いていたから……と言っても、現在位置がわからんことは変わらん。
つまり。俗に言うま・い・ご……

オ、オーケー、了承。落ち着け俺。
まずは地図と方位磁針で居場所を確かめて――

「つーかれたぁ! 足がイターイ、もう歩けナーイ!」
「黙って歩け」

!?
やべぇ……誰かこっちに来やがる。
遠くに見える銀髪――銀髪? まさか!

「ぼくはお前らと違ってデリケートにできてるんだ!
 ああ、靴に泥が……休ませてくれないならはたけ!」
「「……楽しいか?」」
「むきー! 被ってるのは髪型だけで十分なんだよこの銀髪ロンゲども!
 それともお前ら腹違いの双子ですか? ああ、きっとそうに違いない決定だ!」

残念、別人だった。
銀髪は銀髪だけど長い。二人とも。しかも片方は角付きで変な服を着ている。
しかし何なんだ? あの…ひい、ふう、みい…四人組は。
109ギルガメッシュ・ナイト 4/13:2006/09/27(水) 19:00:22 ID:gbLf1jOF0
「人間風情と一緒にするな。
 これ以上戯言を弄するならば、その口永遠に閉ざしてくれるぞ」
「きゃーコワイコワーイ。こーんな奴と付き合ってたなんてロックも物好きだねぇ。
 ちょっと同情しちゃうかなー。するわけないけど」
「ファファファ、それ以前に腹が違ったら双子にならんぞ」
「ザンデも冗談に本気で応じるな。滑稽だ」
「どいつもこいつも小難しい言い回しばっかり、ぼくちんそういうのダイッキラーイなんだよねえ。
 素直に『ネタにマジレスカコワルイ!』って言えよな」
「ねたにまじれすかこわるい、これで満足か?
 満足したら早く歩け。私と…ピサロの用が済ませられなくなるからな」
「……」

……本当に何なんだ。
新手の漫才グループみたいにふざけちゃいるが、どいつもこいつも只者じゃない。
俺も武人の端くれ、相手の力量ぐらいは一目で測れるつもりだ。
奴らは格が違う。
一番弱い奴でも俺と同等。残りは下手すりゃエクスデスに並ぶと見た。
だが、そんな『悪の魔王三人と手下Aですが何か?』みたいな連中が
顔をつき合わせてやっていることは漫才だ。
まぁ、戦っていても困るんだが。
あんな連中の戦いに巻き込まれたら命がいくつ有っても足りないぜ。

……あ、こっち来る。ヤバイこっち来る。
こっち来んなこっち来んなこっち見んな。

おいそこ。人の気も知らずにヘタレとか言うな。
アレは明らかに物理的に勝てん相手で、四人もいるんだぞ。
それにあんな、モロ悪人な連中が、他人を見逃してくれると思うか?
フリオニールを倒す前に、自決か特攻のDead or Aliveなんて冗談じゃねえ。
どっちも最終的に死ぬじゃねぇか。
俺はフリオニールを倒すまで死ぬわけにはいかないんだ。
俺のそばに近寄るなああーーーッ、とか叫びたくなるのが人情ってもんだろ!
110ギルガメッシュ・ナイト 5/13:2006/09/27(水) 19:01:55 ID:gbLf1jOF0
「……っと、いつまでもおしゃべりしてる場合じゃ〜ないようですねえ」
「ほう。貴様ごときでも気付くか」

!!

「ファファファ……交戦の意思がないというならば姿を見せい。
 さもなければ、我々も相応の手段を取る」

―――ッ!!
やばい。完全に気付かれてやがる。
どうする? 先手必勝で斬りかかるか?
エンキドゥが言っていた本物のラグナロクや、サリィが鍛えたラグナロク。
あるいは魔女殺しの剣ガンブレード、伝説の王者の剣といった、次元の狭間で耳にした名刀達。
それらが得物なら、どうにか戦えたかもしれない。
だが、俺が持っているのはただの鋼の剣……本当に、こいつで行くしかないのか……?
ええいもうこうなりゃやぶれかぶれだぁッ――

「――隠れようというつもりはなかったのですがな。
 探しましたぞ、ケフカ殿」

――っとぉ!?

「えっ!? ア、……
 ココココ、コレはコレハ、パパスさんではないですか!
 旅の扉で別れて以来ですねえ、ご無事そうで何よりですよ」

なんという予想外の展開……
俺と反対の方向に、もう一人隠れてる奴がいたとは。
おまけにふざけて騒いでいた金髪が、出てきた壮年の男を見るなり、まともな態度を取り繕い始めた。
あの猫かぶりは間違いなく何か不味い事を隠そうとしている!
111名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/27(水) 19:03:47 ID:hStH9B3S0
支援
112ギルガメッシュ・ナイト 6/13:2006/09/27(水) 19:03:52 ID:gbLf1jOF0
「……うむ。そちらこそ、元気を取り戻したようで何よりです。
 あの時の悲しみ様、私もオルテガ殿も少々気がかりになっておりましてな」
「アヒャ、ヒャヒャ、大丈夫ですよぉ。ほら、私は、このとおり道化師でもありますのでね。
 悲しんでいるより、笑ったり笑わせたりする方が性に合うんです、ハイ」
「なるほど、貴方はお強いのですな。
 それで……そちらの方々は一体?」

パパスと呼ばれた男は、鋭い視線を三人に注ぐ。
明らかに警戒しているようだ。……まあ、当然だわな。
どっからどう見ても善人じゃねえし。怪しいし。
厳つい親父に至ってはどっかで見たような笑い方してやがるし。

「我が名はザンデ。この二人はマティウスとピサロだ。
 故あって、魔道に長けた者を募っておる。
 ケフカには事情を説明した上で同行を頼み、承諾して貰った」
「故……とは、どのようなものですかな」
「この世界は魔女の掌にあると同然、容易く口には出来ん。
 今言えるのはそれだけよ。後は察するが良い」

回りくどいな。
魔女に聞かれてるとヤバイ事って意味なのか?
全員で魔女を倒そうとしてるとか、そういうことなのか?
うーん。
確かに、見た感じ、他人の命令聞くのを嫌いそうな連中ばっかりではあるが……

「………」
「ファファファ、やはり、そう簡単には信用できぬか」
「無礼を承知で申せば」
「・…貴様が我々を信じようが信じまいがどうでもいい。
 そこの男を捜していたとは、どういうことだ?」
113ギルガメッシュ・ナイト 7/13:2006/09/27(水) 19:05:02 ID:gbLf1jOF0
「ここに来る途中、ユフィという少女と行き会いましてな。
 ケフカ殿とラムザ殿、二人とはぐれたというので探しに参ったのです」
「ユフィ?」
「ああ……あの騒がしい小娘か。人の話を聞かん」
「ファファファ。なるほど、『悪のパーティ』に襲われかけたとでも聞いたか。
 そのような先入観を抱いておれば、容易く気を許せぬのが道理というものよな」
「『悪の総帥と参謀、それに部下の三人組』と聞き及びましたのでな」

総帥と参謀、ってのはその通りだな。
だが、部下って誰なんだ?
ローブを着てる方も、変な服来たツノ男も、どっちも参謀かそれ以上に見えるぞ?

「ザンデ総帥殿にピサロ参謀殿、ロックとやらが部下扱いか。
 中々に上手い表現だ」
「感心するな、マティウス」

ロ……ロックだって!?
あいつ、こいつらと一緒に居たのか……?
それにマティウスって、確かレオンハルトが言ってた悪の皇帝とかいう奴じゃ……

「で、当のユフィはどこにいるのだ」
「私の仲間と共に、カズスへ向かいました」
「フン。結局カインの元に舞い戻ったのか。
 幸せな小娘だ。命を奪われる前に過ちに気付けばよいがな」

カイン? カインだって?
どういうこった……命を奪われる?

「……話は変わりますが、一つ尋ねさせて頂きたい。
 貴君らはフリオニールという男をご存知ですかな?」

!! ――フリオニール!!
114ギルガメッシュ・ナイト 8/13:2006/09/27(水) 19:06:20 ID:gbLf1jOF0
「フリオニール? これはまた懐かしい名だな。
 パンデモニウム……いや、最初の広間以来、とんと目にしていないが」
「そう言えば小娘が何か騒いでいたな。
 ロック達が助け、しばらく一緒にいたという以外、何も聞いておらんが」
「……何も?」
「ああー、そういえばユフィが言ってましたねえ!
 仲間が殺されて嘘を言われてどうとか!
 色々忙しかった所為で、説明するのをすっかり忘れていましたよ!」

……お前、わざと言わなかったんじゃねえのか?
他の連中はともかく、この金髪は怪しすぎるぞ。
こいつの言う事は鵜呑みにしない方がいいな。

「本当に忘れていたかどうかはさておき、多忙であったのは事実。
 フリオニールの行方を尋ねられても我々の知る所では無い」
「ふむ。その口ぶりと態度では、ユフィが推察したような策略というわけでは無いようですな」
「我々がフリオニールと手を組み、濡れ衣を着せているとでも?
 小娘らしい浅知恵だな。そんな謀略に掛ける時間より、人間どもを皆殺しにする方が速いわ」

嫌な意味で説得力あるなぁ、あの黒ローブ。

「もう少し表現を選んだらどうだ。
 つまらんことで要らぬ誤解を招きたくは無いぞ」
「そうですよぉ。それでなくたってそこにライブラ狂いがいるんだから」
「む。そういえばまだ唱えてなかったな」
「ライブラ?」
「分析の魔法だ。この男の習癖らしい。
 特にダメージや異常を与えるものではないが、確かに誤解は招き易いな」
「………」

うわ、本当にライブラ唱えてやがる。
…・…で、フリオニールはどうなったんだよ?
115名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/27(水) 19:07:27 ID:hStH9B3S0
し、え、ん
116ギルガメッシュ・ナイト 9/13:2006/09/27(水) 19:07:58 ID:gbLf1jOF0
「まぁ、とにかく僕はこの人達と同行させてもらいますよ。
 ユフィにはカワイソーな話になりますけどねぇ。
 長い目で見れば、彼らに協力することが彼女の為になるとも思いますからねえ」
「うむ。この男、信用していい性質の人間ではない。
 ユフィという娘の性格を鑑みるに、彼女の身を案じるならば同行させるべきではないな」
「ななな、何言ってるんですかマティウス!
 冗談にしたって酷すぎますよ! お前だって信用できるかどうかわからないのに!」

…なんだかなぁ。
『悪の皇帝』が一番まともに見えるぞ。
それとも『悪の皇帝』自体がレオンハルトの嘘だってオチか?

「承服致した。ユフィには私から話す事にしましょう。
 ですがケフカ殿、ラムザ殿が居らぬようですが、そちらともはぐれられたのですか」
「……パパスといったか。事細かに説明すると長くなる。
 我々も急ぐ身、割ける時間はそこまで多くない。
 だが、あの男が言っていた通り、貴様は多少は信じるに足る人間らしい。
 故に、伝えるべき事は伝えておく」

黒ローブの男、ピサロが進み出た。
指を立てながら、感情の篭らない声で告げていく。

「一つ。ラムザはウィーグラフという男を追っていった。
 二つ。ヘンリーという男がウルにいる。貴様に会いたがっていた。
 負傷して村に留まっているが、命に別状は無い。夕刻前の話だがな。
 三つ。リュカという魔物使いが、娘と一緒にサスーン城内にいる。
 四つ。リュカの下僕である魔物が参加者を殺して歩いている。
 不確かな情報だが、リュカの指令で動いている可能性がある」

パパスの顔に動揺が走った。ヘンリー、リュカという奴が知人か何かなのだろう。
ヘンリーといえば、ロックがそんな名前を言っていた記憶がある。
だが、この調子だと、フリオニールの話題は出そうにないな……
117ギルガメッシュ・ナイト10/13:2006/09/27(水) 19:09:16 ID:gbLf1jOF0
「これ以上のことが知りたければ、ここから西に進め。
 山中にて怪我人どもが野営を張っている。ケフカ以外の名を出せば警戒を解くだろう。
 身内を案じるならば、直接サスーンに向かうという手もあるがな。
 確か、城に何人か残っているのだったな?」
「ああ。ピエールに殺されていなければ、セージという男がタバサ達親子と一緒に居るはずだ」

南西に怪我人のキャンプ……サスーンにセージ……か。
『タバサ達親子』ってのは、親のリュカに、娘のタバサってことなのか?
ピエールって奴が人を殺して回ってる魔物なんだろうな。
まぁ、そろそろ話も終わりそうだし、見つかる前にトンズラした方が良さそうだ。

「……感謝致します」

頭を下げる壮年の剣士。
その声を背後に、俺は抜け足差し足忍び足〜〜〜で連中から離れたのだった。

――――。

……ふう。これぐらい離れれば大丈夫だろう。
さて、色々手に入った情報を整理し直すとするか。
誰を信じて誰を疑えばいいのかわからなくなりそうだ。
だが、こういう時こそ冷静にならねば。

まず、あの四人組だ。
おっかねーからあまり近寄りたくないが、殺し合いに乗っているわけではないらしい。
だが、真実を話していると思い込むのは危険だな……特に金髪は。
次に、マティウス。
世界征服を企んだ男って話だったが、あまりそう見えなかった。
レオンハルトが嘘をついたんだとすれば、フリオニールと共謀したのはレオンハルトか……?
118ギルガメッシュ・ナイト11/13:2006/09/27(水) 19:11:36 ID:gbLf1jOF0
カイン。
四人組が敵視していることは間違いない。
だが、奴もフライヤを失っているんだしなぁ……
あんな連中だし、そもそもカインもレオンハルトの話を聞いてたんだ。
勘違いで戦いを挑み、恨みを買ってしまったって考えるのが妥当だろうな。

ロック。
あの場にはいなかったはずだが、フリオニールを連れてきた張本人だ。
疑わしいっちゃ疑わしいが、敵と決めるだけの要素もない。
で、奴らと一緒にいたけど、今はいないってことは、どっかに置いてかれたってことで……
山中のキャンプ。
怪我人が集まってる。流れ的に、ロックもそこにいるんだろう。
場所が場所だし、フリオニールの被害者達が揃ってるかもしれん。
だが、怪我した奴らが纏まっているからと言って、信用できる連中だとは限らないよなぁ。

ユフィ。
フリオニールの被害者と見て間違いないだろう。
誰かと一緒に、カインに会う為にカズスに向かったらしい。
カインと一緒にカズスに向かっていたけれど、フリオニールに襲われて、はぐれたってことかもしれない。
パパス。
ユフィの頼みを聞いている。殺し合いに乗っている素振りもない。
ピサロが言っていた通り、多少は信用できる相手かもしれないが……

とりあえず、今のところ考えつく手は四つだ。
1:一人で、カズスへ行く道がある方面を重点的に探してみる。
2:カズスへ行き、ユフィかカインに会って話を聞く。
3:パパスを追いかけ、フリオニールの事を尋ねてみる。
4:イチかバチかキャンプとやらに行ってみる

……うーん。
やっぱり、どれも微妙なんだよなぁ。
119ギルガメッシュ・ナイト12/13:2006/09/27(水) 19:13:04 ID:gbLf1jOF0
4番は明らかにリスクが高いし、手掛かりがあるかどうかすら怪しい。
1番は…当てずっぽう過ぎるんだよな。
2番は時間が掛かる。即ちフリオニールに逃げられる可能性が上がる。
3番は、仮にパパスが殺し合いに乗っていなくとも、誤解を受けて戦闘になる可能性がある。
ユフィが考えたように、フリオニールが他人の噂を流して濡れ衣を着せているとしたら?
それがカインでなく、俺だったりしたら?
奴は卑劣な男だ。それぐらいの策謀は使っているかもしれない。
まあ、いざとなったら変化の杖で他人に化けるって手があるが……

ちくしょう。
フリオニール、一体貴様はどこに居やがるんだ!
貴様を倒す、いやその前に見つけ出すには……どうすりゃいいんだぁ〜!!


【ギルガメッシュ(HP1/2程度・人間不信気味)
 所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3 
 変化の杖、りゅうのうろこ
 第一行動方針:フリオニールを見つけ出す。それに当たり、どう動くべきか悩み中
 基本行動方針:フリオニールを倒す】
【現在位置:サスーン南東の森、山脈付近】

【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:サスーン城かキャンプ地点のどちらかに向かい、リュカに纏わる事態を把握する
 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:サスーン南東の森、山脈付近→移動】
120ギルガメッシュ・ナイト13/13:2006/09/27(水) 19:13:42 ID:gbLf1jOF0
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ
 第一行動方針:カナーンに向かい、ゴゴの仇(アリーナ2)を討つ
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度)
 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー、再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について)
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:カナーンへ向かいアリーナを探す。可能ならば首輪を奪う。
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロザリーとイザを探す
 第二行動方針:カナーンでアリーナを探す。ザンデ・ケフカを監視しつつ同行】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣  アリーナ2の首輪
 第一行動方針:ザンデ達と同行
 第二行動方針:観察を続けながらザンデに取引を持ちかけるタイミングを待つ
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【現在位置:サスーン南東の森、山脈付近→カナーンへ】
121辿りついた先で1/2:2006/09/28(木) 01:29:07 ID:HDgK3VTg0
散乱した枝切れと茂る雑草、暗闇で足場の悪い森の中をザックスは急ぎ足で進んでいた。
ザックス自身考えようとしないが、必要以上に急ぐ理由はない。
ただ、立ち止まればすぐにそこに死んだトモダチ達が現われ、自分はその最期を看取ろうとするのだ。
足を次から次へと踏み出すことで、何もかも足の裏の感触に紛れていく。
神経質なほどに汗を拭う。だが思考は止まらない。
もし歩いていく先に誰かに会うとしたら、誰に会いたいのだろうか。
守れなかったこと。
うかつにも、自分の想像力の乏しさがイザと別れた時吹っ切ったハズのそれを引き起こした。
ふと暗闇の中に、一番会いたい人間が浮かぶ。そして会いたくない。
シンシアはどうしたと聞けば、その先に彼は何と言うだろう?

(エドガー)

お前が居なかったからだ、と罵るだろうか。


森を抜け、しばらく南に歩いたところで一定だった歩調のペースがつと、落ちる。止まりはしないが緩やかに。
ふわり、と何かが焦げたような臭いが漂う。
それが鼻孔を刺激した瞬間、ザックスは奇妙な胸騒ぎを感じた。
更に数分歩いたところでザックスは1人、目的地であるカズスの村の前に立った。
122辿りついた先で2/2:2006/09/28(木) 01:30:23 ID:HDgK3VTg0
まず、あまりにこげ臭いのでおかしいと思った。
臭い自体は先ほどからの臭気で鼻が慣れてきたところだが
なお気になるほどの臭いなのだから、尋常のものではない。

(………?)

場所を間違えたのでは、というある種の希望もすぐに打ち砕かれた。
ザックスは闇を透かして周囲を見回した。すでに目は暗さに慣れている。
あちらこちらに転がった瓦礫や建物の残骸、地面を抉ったクレーターのような痕跡。
ここがカズスの村だったのは、疑いようがない。

ザックスは直感的にエドガーはここにはいないと悟った。
一つの村がこれだけ瓦礫の山になるほどの惨状だ。
恐らく大規模な戦闘がこの村で行われていたのだろう。
そんなところにエドガー程の切れ者が留まっているとは考えにくかった。

(いや、それよりもむしろ・・・)

――犯人は現場に戻ってくる――
ザックスの頭の中にそんなフレーズが浮かんだ。

この村でエドガーを探すのかそれとも出て行くのか。果たして、ザックスは――


【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスタードソード
 第一行動方針:葛藤
基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在地:カズスの村】
123名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/09/29(金) 04:46:53 ID:EZMMXBCe0
ほしゅ
124“UNLOVE” 1/11:2006/09/29(金) 16:54:04 ID:sf9Pfw960
リルムが人質誘拐事件に巻き込まれた、という件の詳しい話を聞いたのは、ピサロ一行が去った後だ。
その時の状況、経緯、ラムザとウィーグラフの関係など、ギードやロックが知ってる限りの話は判った。
しかし、だからといって、災難だねー、と簡単に納得できるものではない。
いわゆる決闘、のようなものらしいが、人質を巻き込んだ時点で当人ら二人だけの問題ではなくなった。
と、エドガーは思う。
だからこうして、エドガーはちょっかいを出すため、指定の場所へと向かっている訳だ。
エドガーはウィーグラフに会ったことがない。ゆえに顔も知られていない。
ましてやギード達と繋がりがある事も、知っている訳がない。
だから、事情を知らないふりで偶然の通りすがりを装う事は、充分可能だ。
元々の仲間であるリルムを自然な理由で引き取って、あとはもう決闘でも敵討ちでも勝手に繰り広げてくれ。
この状況下で、とち狂った私情に介入するほど、エドガーはお人好しでもお節介でもない。
とにかく無関係の人間に迷惑かけないでくれ。酷い言い方だが、これが苦渋の選択だ。
と、心を鬼にしてここまでを計画したが、ラムザが余計な事を口走って、導火線に火をつける可能性もある。
そうやって面倒な事にならなければいいけれど、それはもう運任せだ。
まったくもって、運に頼るしかない。
こうやってただ移動しているだけで、てんで無関係のマーダーに会って、闘いが勃発する可能性もある。
ラムザを誘い出すだけのダシであるリルムは、とっくに殺されている可能性もある。
そもそもこの下らない殺戮劇に巻き込まれた時点で運には見放されているとは思う。
だが、とにかく、いてもたってもいられなかったのが現状なのだから、仕方ない。
で、エドガーは、自分一人だけで行くつもりだったのだが。
「……難儀だな」
エドガーは呟き、せわしなく動かす足は止めないまま、後ろから付いて来る人物をちらと振り返った。
風になびいてゆらゆらと揺れる青と白のロングパレオが、さながら海と波のようだ、と思う。
「なにがですか?」
まるでわからない、という表情をすると、やや露出の高い軽装の女は、主語を尋ねた。
汚れ一つない、替えたばかりのそのドレスは、射撃に特化した能力を持つ、らしい。
125“UNLOVE” 2/11:2006/09/29(金) 16:54:56 ID:sf9Pfw960
エドガーは木にぶつからないよう、前を向きなおして、口を開く。
手の中にある対人レーダーには、この二つ以外の反応はないので、多少のおしゃべりも平気だ。
「ユウナ」
「はい?」
「妬かせるためだけに来るなら、正直、今すぐ帰ったほうがいいぞ」
一瞬、きょとん、とした顔を見せたが、ユウナはすぐに、微笑んだ。
「なに言ってるんですか」
穏やかな笑みだが、多少なりとも、今のエドガー発言に呆れた、という様子を含ませる。
「だけ、なんて。そんなこと、ちょっとしか思ってませんよ」
ちょっとあるんかい。
エドガーが呆れ返しているあいだにも、ユウナはくすくすと笑っていた。
サスーン城を出たあたりの場面でしきりに自分と話していたのは、やはり、妬かせるためだった。
という事実が導き出されて、エドガーは、むすり、と鼻を鳴らした。
エドガーが指定の場所へ行くと言い出して、ユウナが、私もいきます、と申し出るのも自然な流れ、かもしれない。
だから、そう言うユウナに対して、自然な流れで、ティーダが、じゃあ俺も、となる。
だったのだが、ユウナは、ティーダのことを、頑として拒否した。
誰かがここを守らないと。
キミが思ってるよりは、けっこうやるんだよ、私。
などと、様々な理由で言いくるめて、ティーダは残った。
というより、残された。
「さっきも言いましたけど、片手のエドガーさんだけじゃ心配なので、同行するんです」
意外と、森の中を走って会話する、という芸当はできるものだった。
「ああ、そんな事も言ってたな……おざなり程度に」
最後の方は、聞こえないように、ぼそぼそと呟いた。
ティーダが残ることに頷いた決定打は、アーヴァインだ。
もしアーヴァイン君が目覚めたら、キミがそばにいないと、きっと不安だよ。と、ユウナ。
126“UNLOVE” 3/11:2006/09/29(金) 16:55:43 ID:sf9Pfw960
その言葉が決定打になったことに、言った方が、一瞬だけ気を沈ませた。
という場面を、目ざといエドガーは、もちろん見逃していなかった。
闘いに赴く恋仲の私、より、眠ってる友達のアーヴァイン、という結果に、少々落ち込むところもあるのだろう。
ユウナが心配だから、絶対に俺も行く。もしくは、ユウナが心配だから、ユウナは絶対に残れ。
と、言葉だけでも、そんな事を言ってほしかったはずだ。
だが、色々続いて精神的には万全じゃないティーダに、そういう事を望む方が、野暮ったい。
ましてや、恋仲のユウナに、あれだけ尤もな事を言われれば、そりゃ、頷くしかなくなるだろうよ。
というのは、全てエドガーの勝手な解釈だ。
「はっきり言って、動けるのがあいつ一人じゃ、心許ないぞ?
 こちらより、怪我人を多数抱えているあいつを、当然、優先すべきだな」
「んー……」
ユウナは唸りながら言葉を探したあと、足を止めた。
その背後の様子に気付き、エドガーも止まると、振り返る。
「帰るか? そうした方がいいと思うぞ」
「エドガーさんって、彼のこと、なにか聞いてます?」
唐突に質問してくるユウナと正面に向き合う。
そんな事を尋ねられても、漠然としすぎて答えようがない。
「あいつの、何のことだ?」
「夢」
一言だけ、ユウナはそう言うと、手を後ろに回して、腰のあたりで結んだ。
何度か見た姿だ。癖なのだろう。
こうやって悠長に立ち止まってる暇なんて、本当は無いのだが、二〜三分くらいは妥協する事にした。
なので、エドガーは答える。
「なんのことやら、さっぱりだな。どっちだ?」
将来の夢、寝ている時の夢、そのどちらなのかと尋ねたが、ユウナはやんわりと首を横に振った。
「彼の存在が、夢なんです」
127“UNLOVE” 4/11:2006/09/29(金) 16:56:43 ID:sf9Pfw960
とん、とん、と地を踏みしめながら、ユウナは、ゆっくりと、足を動かし始めた。
「意味がわからん」
エドガーは反射的に答えたあと、もう一度よく考えるが、やはり意味がわからない。
不思議ちゃん、という言葉は知っている。こういう人を呼べばいいのだろうか、と考えが反れる。
「祈りによって存在していた、夢の世界があったんです。彼は、その夢の世界の人なんです」
「……突拍子のない」
「ですよね。ともかく彼は、極端な話、普通の人とは違うんです」
ユウナは、どこに向かうでもなく、エドガーの周囲をさくさくと歩いていた。
「詳しく話せば、それはもう長いんですけどね。
 ……夢を見ていたものは、倒すべき相手で、最後には、私たちの手で倒しました。
 だからその時、夢の世界は、夢の世界の全部が、消えちゃったんです」
エドガーは眉根を寄せた。
「ティーダもか?」
「そです」
エドガーの背後で、ぴたりと足音が止まる。
振り返れば、虚ろな目で闇夜のどこか遠くを見つめているユウナが立っていた。
「彼、自分が消えるの、知ってたみたいです。
 そのこと、最後の戦いの直前、私たちに言いました。そのときの彼に、迷いなんてなかった。
 ……じゃない。それまで、迷ったり、悩んだり、してたかもしれない。
 けど時間のない私たちは……私には、彼のために何かをする暇なんてなかった」
愛しい人、大切な人を失う気持ちは、わからないでもない。
しかし、だから、なんだ。今は、大大大好きなティーダは、いるじゃないか。
「だから、彼が消えるのを、ただ見ているしかなかった」
どうしてそんな、思いつめた表情をする必要があるのか、エドガーには理解できなかった。
「……あの時は、そうだったんです」
128“UNLOVE” 5/11:2006/09/29(金) 16:57:28 ID:sf9Pfw960



ランタンに明かりは灯していないし、焚火も燃やしていない。
光を見たマーダーに来訪されては大変困るからで、全員一致の意見だ。
明かりが無くとも、仲間がいる範囲には目が届くので、問題は特にない。
「ギードって、そんな手なのに、器用だよね」
「それは、褒めておるのか?」
「うん」
盗聴の事は聞いている。
なのでテリーは、そんな手なのによく首輪を調べられるね、とは言わなかった。
機械的構造ではなく魔法的構造を調べているので、明かりは無いくらいで、ちょうど良い。
よほど面白いのか、ただ単に暇なだけなのか、テリーはギードのやることを凝視していた。
そしてロックは、そんな二人を遠目に見ていたが、特に面白くもないので、視線を移した。
「……ずいぶんと、あっさり引き下がったな。尻にでもひかれてるのか?」
薄闇の中に浮かぶ別の姿に対して、呆れたように言う。
「……俺のこと?」
アーヴァインを看ていたティーダは、視線を上げて、尋ねた。
誰が、とは言われていないが、ロックの言う内容を考慮して。
案の定、そうだ、と返ってくる。
「ユウナ、本当は行かせたくなかったんだろ?」
一緒に行きたそうなティーダだったが、ユウナに色々と正論で拒否されて、折れた。
引くの早いだろ。と、ロックは思わず心の中で突っ込んだもんだが。
「尻になんかひかれてねっつーの」
むっすりと、とりあえず目先のことを否定し、ティーダは思案顔を見せる。
「……ユウナ、変わったんだ。もちろん、良い意味で、つーの?」
「って唐突だな」
129“UNLOVE” 6/11:2006/09/29(金) 16:58:10 ID:sf9Pfw960
ロックは、ユウナがどんな人物だったか、そんな事は知ったこっちゃない。
けれど、アリアハンの朝、ティーダから聞いたイメージと、ここで実際に会ったイメージは、どうも一致しない。
だから、少なからずともユウナが変わったというのは、本当なのだろう。
ティーダが良い意味でと言うのだから、やはり、良い意味で。
「俺さ、前は、ユウナを守る立場だったんだ。けど今は、ユウナは、守られることは望んでない気がする。
 だから、そういうユウナの気持ち、優先するべきなのかな……って、思った」
「ふーん」
「それに、ユウナが言うように、ここを守るのも大事だし、ユウナの強さも信じなきゃいけないし、
 エドガー一人じゃ色々と不便そうだし」
自分に言い聞かせるように、ティーダは一気に捲くし立てた。
「アーヴィンも心配。けどユウナも心配。
 どっちらかしか選べないなら、ユウナも心配してるし、アーヴィンについてよう、って思ったわけッス」
ロックは、やれやれ、と肩をすくめる。
「あれは絶対、カマかけてたぞ。ちょっとくらい、気付いてやれって」
「え、カマ? なにが? あれって?」
本気で微塵も気付いていないようなので、ロックは心の底から呆れた。
俺が解説するのも、なんかのろけを手伝ってるみたいで、ばかばかしい。
「なんでもない。自分で考えろ」
「なんッスか、教えてくれよ、けち!」



「……ふむ」
エドガーは腰に手を当て、やや崩し気味の体勢で口を開く。
「ティーダの存在が夢。いつのことかは知らないが、あの時消えた。そしてあいつは戻ってきた。
 それを、私に知っていてほしかったのか?」
130“UNLOVE” 7/11:2006/09/29(金) 16:58:56 ID:sf9Pfw960
そろそろタイムリミットだ。
もう出発をしないと、と流石のエドガーも、にわかに焦りを覚える。
「今は、リルムの安否が気になる。申し訳ないが、立ち話は、ここで打ち切りだ」
「そですね、すみません……」
ユウナは詫びると、自分達がやってきた方向へ、さくりさくりと砂を鳴らしながら、歩みを進めた。
数歩で立ち止まり、身体ごとエドガーを振り返る。
「私、彼のところに戻ります。エドガーさんは、行ってください」
「ああ、わかった。また後で」
頷き、左手を軽く挙げ、ひらりとマントをなびかせて背を向けると、エドガーは動き出そうとした。
「異界へと」
ユウナの声が破裂音のせいで聞き取りにくかったのと、しびれるような感覚が走ったのは、同時だ。
闇夜のせいで判らないが、胸から噴き出している生温かい液体は、赤いんだろうな、とエドガーは妙に冷静だった。
いやまだいけるだろ、という思いに反して、自分の身体は崩れ落ちてしまう。
そういえば撃ち抜かれているのは左側だ。これは参った。
稼動中の対人レーダが、するりと、すべり落ちた。
ユウナに撃たれた、という事実は理解できたが、あまりにも突飛すぎて、受け入れはできない。
地に伏したままの、横を向いてる視界にユウナのブーツが割り込んできた。
それから、とん、と背中に感じた圧力を理解するだけの感覚は残っているようだった。
地面に押さえ付けられ、いよいよ身動きも難しくなった。
「……レディは、人を、踏むもんじゃ、ない」
息苦しいが、まだ喋れる。エドガーは、しぼり出すように声を発した。
「いつから、だ?」
「さっき……かな。みんなが会議してる時から、ずっと、考えてた」
ユウナは表情の無い顔で、エドガーを見下ろした。
「彼は、どうしてここにいるのか、なんのためにここにいるのか。
 魔女の力によって、ここにいる。存在することが、できている。
 マティウスさんから、魔女討伐の話を聞いて、遠く、漠然としていただけのものが、急に形を見せてきた。
 だから、私は、ちゃんと自分で道を決めるのは今しかない……って、思った」
131“UNLOVE” 8/11:2006/09/29(金) 16:59:45 ID:sf9Pfw960
エドガーに聞かせているようでもあるが自分に聞かせているようでもある。
死んだ事がないので判らないが、こういう状況の時は、意地と気合いでどうにかできるものだと、エドガーは想像していた。
実際は、意外と足掻けないもので、運の阿呆が、と不明瞭なものに悪態つくしかない。
「あの時、彼は消えた。じゃあ、魔女を倒したときは?
 そのことを、考えないようにして、回りに流されてるふり、してた」
「知る、か」
視界が霞んできた。早過ぎるだろ、と思うが、初体験だから比較しようがない。
「彼は、自分が消えるのを知っていながら、魔女を倒そうって、思ってる。
 私は、彼が消えるかもしれない事を、知っている。なにかする時間だってある。
 今回も、彼が消えるのを見ているしかできないのは、いやなんです」
不意に、エドガーの背中を押さえつけていたものがなくなる。
起き上がれるだろうか、そう思って手を動かそうとするが、ぴくり、としかしない。
「あなたなら、首輪を外して、魔女に対抗できる状況を作ることができる。
 それは、絶対に、防がなくちゃいけない」
だから、殺す。理由か判れば、計画的だったという事も、判る。
ティーダを来させないようにしたのも、二人きりになったことも、射撃用のドレスに着替えたことも、なるほど、納得。
個人的な理由で殺すのは百歩譲って構わないが、首輪の事は言うな。今まで黙っていたのが、全部パァだ。
エドガーは遂に瞼を閉じる。
演劇のように、鮮やかに反撃したいのが本音だが。無理だ。
「早まり、やが、て……」
どうして、悪い方、悪い方へと、物事を決め付ける。消えると決まったわけではあるまいに。
自分が死んでも、いずれ誰かが首輪を解除する。旅の扉のジャックを計画している者だっている。
たかが自分一人死んだところで、未来は、そんなには変わらないものだ。
魔女は倒されるし、ティーダだって消えないかもしれない。
人を殺した、という罪を背負うだけで、殺し損だ。
そんな女を、手放しで愛せるほど、あいつも阿呆ではないだろうに。
132“UNLOVE” 9/11:2006/09/29(金) 17:00:26 ID:sf9Pfw960
隠し通すつもりだろうが、必ず、嘘は見破られるぞ。
考えるなら今、といったが、考えなおすのも今、しかない。
わかるだろう、それでは何の解決にもなっていない。未来から逃げているだけだ。
魔女を倒さないなら、明日、明後日、どうするつもりだ。
他の皆が死んで、ふたりきりになって、タイムリミットで仲良くボカン、か。
おあついねぇ……。
言い聞かせたい事はたくさんあるが、どれも言えない。喉に力が入らない。
心臓というものは風穴が開くと、この程度でくたばるものなのか、それともここまで持てばいい方なのか、エドガーには、判らない。
心残りは、研究の結果を自分の手で導き出すことが出来なかったこと、くらいだろうか。
それと、指定の場所へ行けなかったことも。
「ちゃんと、理由は、知っておいてもらうべきだと思って、話しました」
そんな冥土の土産はいらん。言い訳がましいことを並べ立てるな。
時間にすればたった一瞬のことなのに、色々なことが頭を過ぎる。
不思議と、死への恐怖は、感じなかった。
言いたいことは、最後に、ひとつだけ。
「…………君、のは」
しぼり出すように、声が出た。これが火事場のなんとか、だろうか。
声は潰れていて、聞きづらいだろうが、しかしユウナの耳には、はっきりと届いた。
「愛とは、違う」



それから、どうしたのか、ユウナは、正確に覚えている。
返り血を浴びないように、少し離れてからエドガーの頭蓋骨を狙い、とどめをさした。
エドガーのザックを奪い、対人レーダーを拾って、自分のザックへと押し込み、考える。
133“UNLOVE” 10/11:2006/09/29(金) 17:01:13 ID:sf9Pfw960
エドガーは誰だか判らない人に狙撃された。
私は逃げるように言われ、思わず逃げてしまった。
エドガーがどうなったのか、知らないけど、死んだかもしれない。
支給品も、どうなったかは判らない。
誰だか判らない人に、あの後、奪われたのかもしれない。
……そういうことで、いい。今は、これで、いい。それで、彼に疑われない。
人を殺した事に、不安や、恐怖を、感じないわけではない。
けれど、ティーダが消えてしまうこと以上の絶望など、ない。
ユウナはエドガーを一瞥すると、木々の隙間から覗く月を見上げた。
思わず逃げ出した私は、はたして、どうするんだろうか。
リルム救出を一人で続行するのだろうか。
思い直して、誰だか判らない人を追うのだろうか。
ただただ人恋しくて、キミのもとへと帰るのだろうか。
……ああ、この状況なら、キミは、友達じゃなくて、私のことを最優先してくれるかもしれない。


【ユウナ(ガンナー、MP1/3)(ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊、
 対人レーダー、天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、ライトブリンガー
 第一行動方針:思案中
 基本行動方針:脱出の可能性を密かに潰す】
【現在位置:カズス北西の森(キャンプ〜指定の場所、の間)】
134“UNLOVE” 11/11:2006/09/29(金) 17:02:53 ID:sf9Pfw960
【ロック (軽傷、左足負傷)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート(ピサロが一時的に所持中) 皆伝の証
 第一行動方針:待機
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:フラタニティ、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:待機
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 (おおよそ安定した睡眠状態)(軽症、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:動けるようになるまで寝てる】
【ギード(重傷、残MP微量、疲労) 所持品:首輪
 第一行動方針:首輪の研究
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
【テリー(DQM)(軽傷、右肩負傷(7割回復))
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:ギードの研究を見て暇潰し
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

【エドガー 死亡】
【残り 52名】
135“UNLOVE”加筆修正:2006/09/29(金) 22:39:53 ID:sf9Pfw960
5/11

よほど面白いのか、ただ単に暇なだけなのか、テリーはギードのやることを凝視していた。
そしてロックは、そんな二人を遠目に見ていたが、特に面白くもないので、視線を移した。
「……ずいぶんと、あっさり引き下がったな。尻にでもひかれてるのか?」
薄闇の中に浮かぶ別の姿に対して、呆れたように言う。
「……俺のこと?」



よほど面白いのか、ただ単に暇なだけなのか、テリーはギードのやることを凝視していた。
そしてロックは、助けてもらった恩返しにと、自らが回復を買って出たギードの様子が、
首輪の研究に勤しめる程度には安定していることに、安堵していた。魔石様様、だ。
そうやって、しばらくは一匹と一人を遠目に観察していたが、特に悪い変化も見られず、
心配ではあるけれど、別に取り立てて面白いわけでもないので、視線を移した。
この距離なのだし、何かあれば、すぐに対応できる。
そう判断し、ロックは、視線を移した先の、薄闇の中に浮かぶ別の姿に、呆れたように声を投げた。
「ずいぶんと、あっさり引き下がったな。尻にでもひかれてるのか?」
「……俺のこと?」
136“UNLOVE”加筆修正:2006/09/29(金) 22:41:41 ID:sf9Pfw960
11/11

【ロック (軽傷、左足負傷、MP1/2)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:待機
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】

【ギード(HP1/4、残MP微量、疲労) 所持品:首輪
 第一行動方針:首輪の研究
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
137EYES ON ME 1/5 <修正>:2006/10/01(日) 08:14:39 ID:mACLT+eU0
暗い井戸の底、ひとりの男が、目の前の瀕死の緑髪の男を見て苦悩していた。


「…緑色の髪の男に遠くから射撃された……
 ……リノアとかいう連れがいたそうだが、彼女は助からなかったらしい…」


数時間前に、カインから聞いた言葉が呼び起こされる。
目の前にいる男が、リノアを殺したのか?そうであれば、この男を許すことはできない。
男が手に持っている銃、これがリノアを殺した凶器なのかもしれない。

だが、もしこの男がリノアの死と何の関係もないとしたら?
彼の傷の具合からして、早急な治療がなければ、そのまま帰らぬ人となるだろう。
そして今、彼を助けられるのは自分たちしかいない。


スコールは苦悩していた。自分が選ぶべき選択肢に。

138EYES ON ME 3/5 <修正>:2006/10/01(日) 08:17:54 ID:mACLT+eU0
その時。


声が、聞こえた。

自分が、最も大切にしていた人の。

今は亡き、愛する人の。

昔、よくかけられていた、怒ったような声が。


「…助けろ、というのか? リノア・・・・・・」

つぶやいても、返事が返ってくるはずはない。だが確かに感じた懐かしい声。


「おい!どうした、スコール!?」

マッシュの大きな声が聞こえる。


スコールは自嘲気味に笑った。
彼女が生きていると信じていた時、彼女の声は聞こえなかったのに。
もう彼女がこの世にいないこと、
もう彼女のぬくもりを感じることができないことを知った今、
愛しい声が聞こえてくるとは。


ああ…やっぱりオレは・・・おまえがいないと、どうしようもなく弱い人間だ。
だけど、強くなるから。いつかまたおまえに会った時、恥ずかしくないように。
139EYES ON ME 4/5 <修正>:2006/10/01(日) 08:20:01 ID:mACLT+eU0
「…マッシュ、ティナの力が必要だ。魔石を渡してくれ」

だから、またおまえのワガママに付き合ってやろう。おそらく、おまえの最後のワガママに。


マッシュから落とされた、緑色の淡い光を放つ魔法の石を受け取った。
スコールはそれを握り締め、目を閉じ、強く念じた。

「オレは…オレはこの男を助けたい。ティナ、あんたの力を貸してくれ」

魔石から光があふれる。暗い井戸の底を淡く、美しく照らす。
美しい幻獣が緑髪の男のキズを癒す。幻獣の出す光は、スコールの心も、優しく包み込む。
暖かい緑色の光の中、スコールは再び、大切な人の思いを感じた。


「ああ…オレも…愛している……」


スコールの頬を、一筋の涙が流れていった。
140EYES ON ME 3/5 <修正の修正>:2006/10/01(日) 10:19:16 ID:mACLT+eU0
その時。


声が、聞こえた。

自分が、最も大切にしていた人の。

今は亡き、愛する人の。

昔、よくかけられていた、怒ったような声が。


「…助けろ、というのか? リノア……」

つぶやいても、返事が返ってくるはずはない。だが確かに感じた懐かしい声。


「おい!どうした、スコール!?」

マッシュの大きな声が聞こえる。


スコールは自嘲気味に笑った。
彼女が生きていると信じていた時、彼女の声は聞こえなかったのに。
もう彼女がこの世にいないこと、
もう彼女のぬくもりを感じることができないことを知った今、
愛しい声が聞こえてくるとは。


ああ…やっぱりオレは…おまえがいないと、どうしようもなく弱い人間だ。
だけど、強くなるから。いつかまたおまえに会った時、恥ずかしくないように。
141MOON FANTASY 1/12:2006/10/01(日) 14:32:42 ID:MUYGxiXj0
体が疲れていると反比例するように思考がぐるぐると回るようだ。
誰を信じればいいのか。
何を信じるべきなのか。
本当にアルガスを信用するべきなのか。
さっきから、同じ事ばかりが浮かんでは消えていく。

後ろを歩くロザリーは何を考えているのだろう。
まさか、アリーナを助けない選択をした自分を恨んではいないだろうか。


カナーンの街を出てから真っ直ぐ北へと歩いてきた。
ロザリーは一度、どこへ向かうつもりなのかと訪ねたきり、口を開かなかった。
自分は「とりあえず安全と思えるところまで」と答えた。
口調が突き放したようだったかもしれない。

信頼できる人を見つけなければ。
早くこんな現実から脱出しないと、壊れてしまいそうだ。
142MOON FANTASY 2/12:2006/10/01(日) 14:33:23 ID:MUYGxiXj0
ターニアはどこにいるのだろう。
ハッサンは? テリーは? そしてサイファーは?

ああ、テリーは死んだだっけ。アルガスが言っていた。

―― しかしひどい有様だったぜ、テリーだったものはよ。
――腕も足も。…頭もぐちゃぐちゃさ。

本当にテリーだったのかな。
死体を……見たほうがよかったのかな。

頭も腕もぐちゃぐちゃの、死体を。

ブルーのターバンを思い出した。
その下にあるはずの銀色の髪。整った顔、強い眼差し。
それらが、赤黒い血にまみれる。
片目はえぐられたようにぽっかりと穴が開き、
鼻は元からそこになかったかのようにつぶれ、ピンクの肉が覗く。
くちびると呼べるものもなくなり歯と歯茎もむき出で頭蓋骨に穴が開き中身が飛び出しているテリーの顔。
手足はきちんとそこにあったのだろうか。
あったとしても骨は粉々に砕けるか、あらぬ方向に曲がり飛び出しているかもしれない。
腹にも向こうが見渡せるような穴が開き内臓がこぼれ
、衣服でしか識別が出来ないような死体。


それが、テリー……?
143MOON FANTASY  3/12:2006/10/01(日) 14:34:05 ID:MUYGxiXj0
うっ、と小さく呟いて、イザは足を止めた。
考えなければよかった。
くさった死体の方が何万倍もマシだ。
どうしてこんな想像をしてしまったのだろう。
胸が熱い。呼吸が苦しい。額に嫌な汗が流れてきた。
ロザリーの軽い足音が止まる。荒く小さな呼吸を整える気配。
しまった、早く歩きすぎた?


「ロザリーさん、すみません、大丈夫ですか?」
「ええ、足が遅くてすみません。……イザさんこそ、大丈夫ですか?
 なんだかお顔の色がよくないですわ」
「大丈夫、ですよ?」
「月明かりのせいでしょうか」
ロザリーがぐるりと空をみわたす。
月も、星も、うつくしく輝いている。
月夜の散歩なんて、言っている状況じゃない。
早く、なんとかしなくては。
144MOON FANTASY  4/12:2006/10/01(日) 14:34:37 ID:MUYGxiXj0
前を歩くピサロの足が急に止まった。
一歩先に歩いていたザンデも足を止め、ピサロを振り返る。
そんな自分達など気にも留めず、ピサロは前方を見つめる。
そんなピサロの様子に、ケフカでさえも首をかしげた。

ピサロの視線の先を追う。
森を出たのはしばらく前のこと。
山脈の谷間を抜け、低くはない山をぐるりと回ったら少々の平原が目の前に広がった。
このまま進めば程なくしてカナーンに到着するだろう。
その平原の中央にぽつんと影が見える。岩…ちがう、人だ。
ちょうど雲が月を隠し、薄明かりに慣れた視界を曇らせた。


マティウスは目を凝らしながら身構える。ザンデも同じ。ただ、ピサロだけが臨戦態勢をとらない。


人影は、動く気配がない。


145MOON FANTASY  5/12:2006/10/01(日) 14:35:28 ID:MUYGxiXj0
「とりあえず、身を潜められるところへ行きましょう。
 こんな見通しのよすぎる場所は危険です」
「はい」
「カナーンに行こうと思います。村は危険ですが、情報があるかもしれない」
「そうですね……サイファーさんのことも探さないと。さぁ、行きましょう」
ロザリーが明るい声でイザに微笑みかける。
月明かりが彼女のうつくしい笑顔を一層うつくしく照らし上げる。

(やっぱりロザリーさんってものすごく美人だ)
改めてイザは思う。
彼女はまるで、童話の中のお姫さまのようだ。
いやいっそ、絵画や彫刻などの美術品かもしれない。


早く、ピサロを探して、ロザリーを安心させたい。このうつくしい笑顔を守りたい。
そのためにも早く、サイファーを探さなくては。
自分だけではロザリーを守りきれない。

心が少し、落ち着いた。

イザも微笑みを返した。
「さぁ、行きましょう」

雲が月を覆う。
歩くのがまたすこし困難になった。
しかし明るいうちに一度歩いた道だ。大丈夫、行ける。
とりあえず、前に進もう。
顔を上げて前を向く。先ほどまでは見えなかった黒いかたまりが前方に見えた。


146MOON FANTASY  6/12:2006/10/01(日) 14:37:36 ID:MUYGxiXj0

「……だれか、おるようじゃな」
「ああ。向こうもこちらに気付いているな」
「アヒャヒャヒャ! たいしたことナーイ人たちのようですよ!
 向かってくるなら殺しちゃいまショー!」
「黙れ道化」
「ムキー! さっきからお前たち、ぼくちんに対する態度がなってないですネ!
 ぼくちんが本気になれば、お前たちなんかあっという間にゴミですよ! ゴミ!」
「ファファア…その本気は取っておいてもらえんかの……
 さてあまり大声はよくなかろう。少し黙っておれ」
「ピサロよ、」
どうした、とマティウスが声をかける前に、視界から彼が消えた。
ピサロが走り出したのだ。



147MOON FANTASY  7/12:2006/10/01(日) 14:41:02 ID:MUYGxiXj0
あれは何だ、とイザは目を細めた。
かすかに声がする。人か? 複数人いるようだ。
さてどうしようか、などと考えているうちに、影がひとつ動き出す。
どうやらこちらに向かっているようだ。
雲が風に流れて月から退いた。視界が少し開ける。


「あっ」


ロザリーが小さく悲鳴をあげる。
どうする?
ロザリーを守らねば。
イザはザックからすばやく剣を取り出し身構えた。
「ロザリーさん、僕が足止めをします。逃げてください」
男からものすごいプレッシャーを感じる。空気が震えている。

強い……すごく。

ぶるりと身体が震えた。
男の身体が見えない。ただ、長い髪だけが月光を反射してキラキラと銀色に光っていた。

……金…いや、銀髪?
――銀髪は全員ヤバイと思っておけ
アルガスの声が反響する。
銀髪だ……!
148MOON FANTASY  8/12:2006/10/01(日) 14:44:33 ID:MUYGxiXj0
「ロザリーさん! 早く逃げて!!!」
ロザリーをちらりと見やる。逃げ出す気配がない。
「ロザリーさん!!」
もう一度怒鳴る。
ロザリーの身体が反応した。そうだ、それでいい。後ろを向いて、走ってくれ。
しかしロザリーは、あろうことか、男の方へと駆け出した。
「ロッ…!」
声にならない悲鳴。構えを解き、ロザリーの細い手首をつかむ。しかし彼女は信じられない力でイザを振りほどこうとする。

だめだ、この手を離すわけにはいかない。

「イザさん! 離してください!」
「ダメです! 危険です! 早く逃げてください!!」
「あの、大丈夫ですから、お願い! 離して!」

どうする?

ロザリーは酷く興奮している。叫ぶように離して、と繰り返す。
このままでは、あの男の第一打を受けられない。
しかし手を離せばロザリーは走り出してしまうだろう。

男を見やった。もう間近だ。呪文の詠唱も間に合わない。あと数秒しか時間はない。

その男の後方に、もう一人、長髪の男を見た。
そちらの男も身体が見えない。髪だけが、キラキラと銀色に輝いている。

――セフィロス!?

イザはロザリーの腕を強く引き、銀色の男たちから庇うように彼女を抱きしめた。
第一打だけを甘んじれば、魔法が間に合うかもしれない。小声で詠唱を始める。
149MOON FANTASY  9/12:2006/10/01(日) 14:46:08 ID:MUYGxiXj0
「ピサロ!」
後ろでマティウスが叫んでいる。
説明は後でいい。いるのだ。目の前に。走れば手の届く距離に。
薄明かりを反射してはちみつ色に輝く髪。白い頬。優雅なドレス。

ロザリー!

早く、その顔をしっかりと確かめたい。
その春のようとも星空のようとも思える笑顔を見たい。
やわらかで陽だまりのような声を聞きたい。
ピサロは走り続けた。


「…ですから、お願い!」
声が聞こえる。
たった2日だというのに、何と懐かしい声だろうか。しかしその響きはとても悲壮だ。
「離してください!」
男が、彼女の腕をつかんでいるようだ。もめている様が判る。
ピサロは走りながらザックから刀を取り出した。
「ピサロ、どうした」
マティウスが追いかけてきているようだ。
今はそれどころではない。
男が、彼女の細い身体に腕を回し動きを封じた。
右手に握った剣を握りなおしたようだ。


あの男……!!

男が、剣を握った右手を振り上げたかのように見えた。
150MOON FANTASY  10/12:2006/10/01(日) 14:47:11 ID:MUYGxiXj0
「ピサロさま!」
腕の中のロザリーが叫ぶ。
え? と腕を緩めたと同時に、背中に衝撃を受けた。
振り返ろうとしたのに体中の力が抜けて、ロザリーに寄りかかる。
「イザ…さん?」
大丈夫ですか? とイザは言葉をつむいだはずだった。
言葉は声にならず、目の前に雑草が広がった。


ロザリーの悲鳴がひびきわたった。


「ピサロ様……どうして……」

ピサロ? ああ、こいつがロザリーさんの探していた人だったんだ。
ロザリーさんは気が付いていたんだ。あんなに暗かったのに。
だったら言ってくれたらよかったのに。
それにしても背中が熱い。どうしてこんなに息苦しいんだろう。


頬に、ロザリーの暖かい手が触れた。
赤い結晶が、イザの虚ろなひとみにぽろぽろとこぼれ映った。


151MOON FANTASY  11/12:2006/10/01(日) 14:49:45 ID:MUYGxiXj0
「イザさん、しっかりしてください! いま、結界を……!」
手が震える。ザックから守りのルビーを取り出そうとするが、上手くいかない。
手の先がとてもつめたい。でもさっき触れたイザの頬はもっとつめたかった。
その手に、ピサロの手が重なる。銀色の瞳が光っている。
「ピサロさま、イザさんを助けて……」
ロザリーの懇願に、しかしピサロは首を横に振った。
「ピサロさま!」
「お前を殺そうとした男だ」
「違います! ずっと私を守って下さいました!」
「ずっと、お前を殺す機会を伺っていただけかもしれん」
「違います!!」
「聞け、ロザリー。私にはこの男がその刀を振り上げたように見えた」
「そんなはず……!」
「ないとどうして言い切れる?
 お前はこの2日間誰の死にも立ちあわなかったのか? 混沌に呑まれ、自我をなくした人間を誰も知らぬというのか?」
ロザリーは押し黙った。
反論の言葉が見つからないからではない。ピサロを、怖いと思ったからだ。


ロザリーヒルにいたあのころ、ピサロはよく血のにおいをさせてやってきた。
なにをころしたのか、などとは聞けなかった。
果たして殺したのは人だったのか魔物だったのか。
それは今でも判らない。
でももうどうでもよかった。終わったことのはずだった。

今のピサロの瞳はあの頃と同じ光を持っていた。


イザの背中からは、どくどくと血があふれ出している。

血のにおいは、エルフの心を弱らせる。
152MOON FANTASY  12/12:2006/10/01(日) 14:50:28 ID:MUYGxiXj0
「なにか、あったようじゃな。さて、ワシらもいくぞ」
ザンデが促したが、ケフカは動こうとしない。
表情の読めない道化の表情が愉快そうに歪んだ。
「アヒャ…アナタを見込んで、お話があるのですけどネェ……聞いていただけますか?」


【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロザリーの誤解を解く
 第二行動方針:カナーンでアリーナを探す。ザンデ・ケフカを監視しつつ同行】
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ
 第一行動方針:状況把握
 第二行動方針:カナーンに向かい、ゴゴの仇(アリーナ2)を討つ
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度)
 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー、再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について)
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:カナーンへ向かいアリーナを探す。可能ならば首輪を奪う。
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣  アリーナ2の首輪
 第一行動方針:ザンデに取引を持ちかける
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ロザリー(混乱) 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:? 
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーン北の平原】

【イザ 死亡】
【残り 51名】
153幸福論(忠臣篇) 1/5:2006/10/01(日) 18:08:50 ID:eStfcQ3W0

南側にはいくらか距離を置いて立つ城壁、北側には傾斜と高さを増していく急峻な山。
安全には望ましく、混乱には望まざる位置。
誰かとの不意の出会いなどほとんど心配がない、期待できない、森が北西に果てた先。
横では二度の失敗にもめげず、タバサがホイミのための大仰な集中に入っている。
主君のため、他全員の命を捧げる決意がある忠臣はなんらの感情を浮かべることなくその施しを受けていた。
向こうから届く暖かな視線は、ピエールが微かに彼女の隙だらけの首筋へ向けた冷たい意識に気が付いているか。


忠臣は自問する。
(主は、己の命を投げてでも愛娘を守り抜くおつもり。私はどうだ?)
感情の揺れのない頭脳が少しの間沈黙し、答えを出す。
(私は非情の臣よ。主のそのお気持ちに沿えない。……いまさら悔いることでもない)
自問する。
(再確認せよ。我が目的は何か? リュカ様の生存において他無し。
 リュカ様がゲーム最後の生存者となることでそれは完遂される)
自問する。
(目的のため、最大の障害は誰か? 答えはタバサ様、愛すべき主の残る愛児に他なし)
救うべき命、葬るべき命、引いてある線を確かめる。
自問する。
(危うきなり。タバサ様が死した場合、主はどうなる?)
あまりに残酷な問いをただ冷徹に計算する。
(絶望が過ぎれば自ら命を御断ちになるやもしれぬ。危険は否定できない。
 だが、だが主はお優しいお方。自らを頼みとする者が生きている限りは命をお捨てにはならぬはず。
 その場合、今以上に御自身のことをお考えにならなくなる……だろうが)
自問する。
(タバサ様殺害実行のために必要なものを述べよ。……深い闇。好機。策。
 だが今ここには深い闇なく、好機なく。策なく――)
154幸福論(忠臣篇) 2/5:2006/10/01(日) 18:10:34 ID:eStfcQ3W0

さらに二度の失敗を重ねてタバサは父に「回復呪文の気持ち」について尋ねている。
恐らくは天性で呪文を扱ってきた娘の成長を喜び、リュカは久方ぶりに心から和やかであるように見えた。
もっとも教唆を受けたタバサがチャレンジを再開すべく父の側を離れた後、その明るさが消える様は感情なきピエールの心さえ突いた。

(ああ、早くこの苦しみのゲームより主をお救いせねばならぬ。
 そのためにはどのような行為であろうと。どのような行為であろうと肯定される。
 私は既に一線を越えてしまっていたのだから)
策を、と願いピエールは今まで目を向けていなかった部分へと思考を開いた。
そうして彼は一つの閃きを得、それを改めて冷静に吟味することで彼はこうした感想に至った。
たった一人を生き残らせるために他のすべてを殺すことは自分の中では間違いなく忠義だった。
では、主のお気持ちに背くことはどうか?
たとえ悲しませようとも、憎悪されようとも、私の忠義は揺るがない。決意したことだ。
ならば。
ならば、主に背くことはどうなのだ。
主の前でタバサ様の殺害を強行することを考えた時点で私は線を越えていた。
いやもっと前かも知れぬ。けして命じられるはずのない行為を実行した時には既にか。
私は薄汚くも監視の目が無いことをいい事に主に背き続けてきたのだ。
けれどそれは全て主のため、我が忠義のため。最後に主が生き残ることに私の忠義の勝利がある。
主の心を傷つけてしまうのは憚られる。
けれど傷つけぬよう巧みに偽り、欺き、我が策にて導くこと程度ならば
今現在の心中に殺意を秘めながら随行する態度と何の差があろう。いや。
(ただ主に従い、主を守ることだけを考えるのが忠臣であろうか。
 否……主の危機に応じて全てを投げ打つ覚悟を持つものこそ忠臣である。
 それが我が身命であろうとも、寵愛であろうとも、信頼であろうとも!)
155幸福論(忠臣篇) 3/5:2006/10/01(日) 18:12:58 ID:eStfcQ3W0

呪文の感覚と感触を探るように再度タバサはピエールの傍で試行錯誤している。
動くならば彼女が眠ってしまう前がいいとピエールは望み、
その身にかけられたマホトーンの効力が尽きるのをじっと待った。
良く知っているそれはもとより長時間効力を保つことができる魔法ではない。
数度目かの失敗を超えてようやくホイミを成功させたタバサが明るさをふりまいて雰囲気を和らげている。
ピエールが動いたのはそんな時であった。

「リュカ様、お暇を頂きたく存じます」
「ピエール。…………どうして――」
微笑みあっていた二人の目が同時にこちらを向く。
問い質そうとしたリュカに対して滅多に見せない強い口調で遮るように、圧するように言葉を続ける。
「リュカ様! まだこのゲームには無数の悪逆の徒が生きながらえております。
 アリーナと呼ばれる酷薄な女、ウィーグラフと名乗る騎士然とした男。テリーという銀髪の狂人。
 不肖ピエール、リュカ様の剣となってこれら無道の輩を絶たねばなりませぬ」
策動の入り口に立っていたとはいえこれは本心からの言葉であった。
リュカの表情が曇ったのは彼らのことをどこからか耳に入れられたからであろうか、と判断する。
その危険認識が共有できるなら話は早い。そして、もう一押し。
「命にかえて、リュカ様・タバサ様の危険を取り除くこそ我が役目です。
 ……ビアンカ様、レックス様、デール様の痛みを思えば私は足を止めることはできませぬ。
 どうか我が忠義、忠心を想い……」
目を閉じて一拍、呼吸を置く。
「お許しいただきたい!」
言い終わりと同時に片腕をタバサへと、いや正確には護身用に彼女の手にあった鞭へ伸ばし身体を躍動させる。
小さな悲鳴が上がる。
ピエールは二拍分だけ反応して腕を伸ばし出発を阻もうとした主の手にわずかに触れてすり抜けた。
タバサは事態を飲み込めていないのか、竦んでいるのか。動きは無い。
156幸福論(忠臣篇) 4/5:2006/10/01(日) 18:14:50 ID:eStfcQ3W0
大事なのはこの後だ。
リュカが次の判断を決めかねて足を止めている間にピエールは一度だけ体勢を大きく崩して見せた。
実際はモンスターの肉体はかなり無理が利く。これは無理をしている――と見せる演技。
それから再び起き上がり、東へ、森のほうへ向けて距離を空けていく。
月明かり、人間の視力を計算に入れた上でさらにもう一度ぐらついて見せる。
今度は身体を引きずるようにして、ゆっくりと前進する。
少しずつ広がる距離と後背の気配を冷静に測りながら。


産み出された謀臣としての面はピエールに少し広い視点を与えることにも一役を買っていた。
リュカがピエールを追おうと追うまいと、ピエールは次の行動を予定できている。
追ってくるならば誘導するように森へと引き込み、しかる後に機を見て分断の策を講じればいい。
追って来ないならばそれもまたよい。
このまま距離が開くならどうせ打つつもりの一手であるが、
「私は必ず朝までに戻ります。お二方はそこで身体をお休めください!」
という大意を叫べばリュカを留め置くため約束の楔を打ち込むことができるはず。
城の北という位置の安全性は理解できる。
先程は嘆いたとおりわざわざここに来る者は考えられず襲撃の危険性は皆無と見てよい。
自分は回りこんで城内に篭る者達、城を目指していたはずのアリーナとウィーグラフを殺す。
それから約束通りに戻ればよい。問題は無い。


封印した感情はどこにも後ろめたさや弱みを浮かび上がらせることはない。
真に全てを投げ打たんとする忠臣は策動を抱いて緩やかに主との距離を広げていった。
157幸福論(忠臣篇) 5/5:2006/10/01(日) 18:16:09 ID:eStfcQ3W0
【リュカ(MP1/4 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)、ビアンカのリボン、ブラッドソード、
 スネークソード、王者のマント、魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:ピエールを追う?
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着
 第一行動方針:リュカについていく
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】

【ピエール(HP1/3、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート
 第一行動方針:策に従って次の展開に備える
 第二行動方針:リュカに気づかれない様にタバサを抹殺する
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
(*ピエールはタバサの抹殺の機会を失った場合、リュカの目の前ででもタバサを抹殺するかもしれません)

【現在位置:サスーン城の北】
158名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/01(日) 22:40:11 ID:AnrNXXu3O
うぉぉぉッ!!




ぶぼーん
159MOON FANTASY 修正1:2006/10/01(日) 22:54:03 ID:cneMqVsp0
>>141-152を下記のように修正いたします。

MOON FANTASY  5/12

「カナーンに行こうと思います。村は危険ですが、情報があるかもしれない」

「カズスに行こうと思います。村は危険ですが、情報があるかもしれない」


MOON FANTASY  6/12

「……だれか、おるようじゃな」

「……だれか、おるな」


「ファファア…その本気は取っておいてもらえんかの……
 さてあまり大声はよくなかろう。少し黙っておれ」

「ファファファ…その本気は後に回せ……
 さてあまり大声はよくなかろう。少し黙っておれ」

160MOON FANTASY 修正2:2006/10/01(日) 22:54:49 ID:cneMqVsp0
MOON FANTASY  9/12
薄明かりを反射してはちみつ色に輝く髪。白い頬。優雅なドレス。

薄明かりを反射して淡く輝く髪。白い頬。優雅なドレス。


MOON FANTASY  12/12
「なにか、あったようじゃな。さて、ワシらもいくぞ」

「なにかあったようだな。私たちも向かうぞ」
161名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/03(火) 17:16:27 ID:OxqFFAq7O
ユウナとエドガーが発ってから一時間。
山中には、いつしか静寂が満ちていた。
それを破るとすれば、遥か遠くで、道無き道を往かんとする一つの足音。
あるいは、眼をこする青年の声。

「ふわぁ〜……いいよな、みんな先に寝ちゃってさ」

魔法で傷は癒せても、疲労までは取れない。
ましてギードは老体。テリーは子供。ロックはウルでの騒動と長旅、加えて精神的な疲れ。
気がつけば、三人が三人とも眠りについていて、見張りのティーダだけが取り残された。
ギードと違って、首輪の研究をするような技量も持っていない。
やることもなく、ぼんやりと風景を見つめながら、あくびを噛み殺す。
やがて睡魔も限界に達し、うとうとと舟を漕ぎはじめる……

「……ティーダ?」
「うわっ!!」
「あはは。今寝てただろ〜」
「あ……アーヴィン!? 良かった、気が付いたんだな!」
「おかげさまでね」

周囲に光はなく、月も雲の間に隠れていた。
闇の中、皆の眠りを醒ますには小さく、敵から隠れるには大きすぎる程度の声が響く。

「よいしょっt……〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
「バ、バカ! 右腕! 大丈夫ッスか!?」
「ななななんとかガマンできるような気がしなくもない程度に
 大丈夫だと思ったり思わなかったりしたけど平気でもやっぱ無理かもしんない」
「どっちだよ! ほら、起こしてやるから」

――『せーの』、『よいしょっと』
「サンキューっ、と……いててて。
 ずん胴女め、どんだけボロボロにしてくれたんだよ〜」
「本当だよな。正直、もうダメかと思ったんだぞ?
 腕折れてるし、頭や耳からダラダラ血ィ出てたし」
「右の方だろ。アイツに思いっきり抉られてさ。今もあまり聞こえてないんだよね〜」
「……ごめん」
「あんたが謝ってどうするのさ。アイツの身内じゃないのに」

――ささやかな笑い声が上がる。

「でも良かった。二人が生きてて。
 愛するユウナが死んだり悲しんだりしたら僕も辛いもん!」
「は? アイスルユウナって……
 あんたもか? あんたも奴らと同類だったのか!?」
「あのさ、冗談なんだけど」
「どーせそう言ってユウナにちょっかい出し続けるんだろ、エドガーみたく」
「彼氏持ちに手を出すほど落ちぶれちゃいないってば〜」
「それもエドガーが言ってたッス」

――しばしの沈黙。

「そういやさ。さっき、ゼルの夢見たんだよ」
「え?」
「『お前は早く帰れ』って追い出されちゃった。
 そのくせ自分は、ラグナとか変な赤い服の人とかと、すっごい楽しそうに話しててさ。
 あ、そうそう。リノアもちょっとだけ見かけたんだよ〜」
「え? ……な、あ、アーヴィン?」
「それで、少しだけ意識戻ってさ。
 あんたとユウナとマティウスが、色々喋ってたの、聞いたんだ。
 あはは、大丈夫だよ。夢の意味も、本当のことも、全部わかってるから」
「アー、ヴィン……」
「ゼルはバカだよ。そんで、そんなことに気付かなかった僕が一番バカ。
 けど、何もしないであんた達が死んでたら、その方がずっと許せなかった。
 僕もそうだし、きっとゼルだって悔やんでない」
「何、言ってんだよ……」
「僕らは傭兵になることを選んだ。
 誰かの為に戦って、いつかは誰かの為に死ぬ道を選んだ。
 僕はその道を見失ってしまったけど、ゼルは、ちゃんと全うしたんだ。
 ……ティーダ。本当に、あんた達が生きてて良かった」
「ふざけんな……何が良かっただよ!」

――木の幹が揺れる。

「アーヴィン! 俺ら、もっと早くこっちに戻ってこれたんだぞ!
 俺がエロ小説巡ってユウナに怒られたり、『オンギャース』とか気絶してなけりゃさ。
 ちゃんと真面目に探索してれば、もっと早く城を出て来れたし、ゼルだって……!」
「え? え? ……ティーダ?」
「ゼルだって好きな奴とかトモダチとか一杯いたんだろ!?
 ユウナはともかく、俺なんていつ消えるかわかんないんだぞ!?
 俺、ただの夢なんだぞ。死んだ奴らが見てて、目が覚めて一回消えた夢なんだぞ!
 どうしてここにいるのかも、この先消えずにいられるのかもわからないんだ!
 そんな俺のせいで、生きてるゼルが死んでいいわけない!!」

――『う〜ん……』と、誰かの唸り声。
――ひそひそと、囁き声に変わる会話。

「あ〜、ちょっと話が見えないんだけど。
 エロ小説とかオンギャースとかもすごい気になるけど、そっちは一先ず置いといて。
 こうして僕と喋ってるあんたが『夢』だっての?
 それってどこから来た電波? UFO? アデルセメタリー?」
「電波じゃねっつーの。本当に祈り子の夢なんだっつーの。
 俺も、俺が住んでたザナルカンドも、全部さあ!」
「いや……イノリゴって何よ?」
「人の魂を閉じ込めた像だよ。
 ずーっと夢を見てて、召喚士はそこから召喚獣を呼び出してた。
 俺のザナルカンドもそうだった。そこに住んでた、俺も……」
「ん〜〜。さっぱり理解できないけど、あんたは召喚獣の親戚なワケ?」
「まあ、そうなるッスね、多分」
「じゃあ、消えちゃったとしても、ユウナに召喚してもらえばいいんじゃないの?
 スピラを救った大召喚士だって胸張って言ってたじゃん」
「無理だっつーの。祈り子、使えなくなったんだから。
 ユウナも、ユウナの話じゃドナだってイサールだって、もう召喚士じゃないんだ」
「使える祈り子ってのを作りゃあい〜じゃん?」
「それが出来る奴は俺らで異界送りしちゃったっつーの。
 だいたい誰が祈り子になってくれるってんだよ。殆ど死ぬのと一緒なんだぞ?」
「当てがないなら立候補してもいいよ」

――数秒の、微妙な間。

「ふざけんな。ちっとも嬉しくないっての」
「そりゃ〜残念。じゃあ、アプローチを変えて考えてみようか」
「アプローチ?」
「あんたは自分の意志や精神を持ってる。ロボットとかゴーレムじゃない。
 これは間違いないよね」
「……俺は俺ッスよ。心まで作り物だったらこんな風に悩んでない」
「良かった。
 で、夢なのに実体化しているってことは、どういう理論?」
「さあ? 死人や魔物とかと一緒で、幻光虫ってのが集まってるらしいけど」
「げ、ゲンコーチュウ? 虫? 謎の虫の集合体?
 それ、グロ映画か何かのネタだよね? ネタだと言ってよティーダ!」
「嫌な言い方するなよ。引くなよ。
 虫って言ってるけど、本当はふわふわしてる変な光だよ。
 なんつーか、人の思いに反応して輝くエネルギーなんだろうな」
「あ、そういうことね」
――『よかったー』『あのなぁ、人を何だと』……
「要するに、あんたは実体化した自律エネルギー体なわけだ」
「……そう、なるのか?」
「そうなる。自律エネルギー体ってことは、すなわちあんたはG.F.と同類!
 つまり、どっかで実体化が解けてエネルギーの塊状態になっちゃったとしても!
 僕がジャンクションしてひたすら召喚しまくれば、もうバッチリ万事解決っ!」
「するワケねーだろ!」

――木の枝で引っぱたく真似をする。

「あんた、GF使ってると記憶障害になるとか言ってただろ!
 若年性痴呆や記憶喪失通り越して廃人になったらどーすんだ?!
 結局約一名犠牲になることには変わんねーし!」
「別にいいじゃん。どうせ僕の人生、ある意味終わってるんだしさ〜」
「何でだよ?」
「ラグナ殺したのは僕だってイクサスが言ってたからさ。
 覚えてなくても、よりによって一国の大統領を殺害してたわけだ。
 エスタ警察に捕まったら、フツーに死刑か終身刑だね」
「いや、急に、そんなメチャクチャ現実的な話をされても……
 アレだ、洗脳されて強制されましたでどうにかならないんスか?
 サイファーって奴だって、魔女に操られてたけどそれで通ったって言ってたじゃんか」
「他の人ってゆーか、スコールが口添えしない限り、証明してくれる人いないじゃん。
 僕自身が操られてたって言っても無駄。印象悪くなるだけ。
 そんで、裏切って父親殺した犯人を助けるほど、うちの班長お人よしじゃないし」
「そんなこと……」
「ああもう、僕のことはどうでもいいよ。結局自業自得なんだから。
 ティーダ。あんたが『夢』だっていうなら、『現実』になる方法、探そうって。
 ここにはいろんな世界の人がいるんだ。きっと誰かしら知ってるさ。
 そんでアルティミシアを倒して、ユウナと一緒に帰ればオールオッケ〜!」

――ため息。

「なんつーかさぁ……元気なのな」
「え?」
「俺、ユウナに言われてここに残ってたんだぞ。
 俺がいなかったら、あんた、きっと不安がったり心配したりするだろうからって。
 それなのに、思ってたよりずっと元気でさ」
「・……あ。そういやユウナいないね。どしたの?」
「ああ。リルムがウィーグラフとかいうオッサンに誘拐されてさ。
 エドガーが一人で取り返しに行くって言ったんだけど、危ないからってユウナが着いてった」
「ゆ・う・か・い?」
「――あれ。そこは聞いてないッスか?」
「あ、当たり前だよ! ナニソレ!? 誘拐!?
 何それ、何それ……リルム大丈夫なの? もしものことがあったら、僕、僕……」
「ちょ、静かにしろ! みんな起こしちまうっつーの!
 それに大丈夫だから! ラムザって奴も向かってるし、エドガー達も……」
「それってユウナ達にもしもの事があったらどうするんだよ?!
 そうなったら、うっく、全部、僕のせい……僕のせいだぁ〜〜……」
「お、落ち着けアーヴィン!
 ユウナは俺よりずっと強いから大丈夫だっての!」
「そんな理屈が通用するならリノアだってゼルだって死んでない〜〜!
 何でだよ、リルムが誘拐ってどうしてだよ?
 僕が逃がさなかったから? ……うっく、えぐっ、うう、うわぁあああん……」
「大丈夫だって!
 さらった奴、ラムザと決闘する為にリルムを連れてったって話だから。
 わざわざ殺したりしないって! そんなことしたらラムザだって逃げるだろうし」
「うっく……じゃあ、何でユウナまで行くんだよ?
 どうして引き止めなかったのさ? 本当に何かあったら……ぐすっ、ぐすっ……」
「エドガー、右手吹っ飛ばされて使えないんだ。
 せっかく色々調べられる人なのに、変な奴に殺されたら困るだろ?」
「じゃあ、何でティーダは一緒に行かなかったんだよ〜?
 僕がいるから? ……やっぱり僕のぜいじゃん〜〜〜……」
「違うって! ロックもギードもテリーも、みんな怪我してるんだよ。
 ほら、こんだけ騒いでるってのに、誰も目ぇ覚まさないんだぞ!?
 それぐらい疲れてるんだよ、みんな! 置いてくなんて有り得ないだろ!」
「えぐっ、うう………だけど、だけど……」
「ユウナだって、リルムやみんなの事を考えて、俺に残れって言ったんだ。
 何かあったとしても、それはアーヴィンのせいじゃないから。
 誰も、あんたを責めたり怒ったりしないから、な?」
「………うっく、えぐっ……」

――すすり泣きが響く。

「……うぐっ、ティーダ……」
「どうした?」
「ホントに、ユウナが、言ったの? ……僕のために残れって……」
「あ? あ、ああ。そうッスよ。だから心配しなくていいって……」
「……うう、ティーダ。
 それ、多分……ユウナ、怒ってる……」
「え?」
「僕も一回ケーケンあるけど……
 女の子って、自分が一番じゃないと、拗ねて怒るんだよ……」
「は?」
「ティーダ、エアリスって人の事も、女の子絡みで色々酷い目にあったこともさ。
 僕には話してくれたけど、ユウナにはぜんぜん話してなかったじゃん……」
「え? それは、エアリスとかターニアとかミレーユさんのこと話したら
 ユウナがやきもち焼くと思って……」
「けど、エアリスって人と、茶髪の僕と、何となく重ねちゃってるんだなーとか。
 女の子とトラブルばっかり続いて、ニガテになってるんだなーとか。
 ちゃんと話せば、ユウナだってそう解釈して納得してくれたかもしれないのに……
 ティーダ、僕やゼルとばっか話して、ユウナのこと放りっぱなしで……」
「え、だって、そりゃあんたが心配だったからだぞ?
 ユウナのこと放っておいたのは悪いけど、それはさっき謝ったしさ。
 まあ……エアリスやアリーナのこと、引っ掛かってない、とは言えないけど……」
「僕が心配だとか、謝ったとか、ティーダはそう思っててもさ。
 ユウナがそれで納得してくれないと、意味無いんだよ……」
「う"っ……」
「助けたっていっても、襲われた原因も僕だしさ……
 傍から見れば、ただの行きずりの相手に理不尽なほど入れ込んでるだけ……
 恋人なのに延々放置プレイで、それについても説明らしい説明がない……」
「うぐっ……」
「おまけにエロ小説とか言ってるし、そりゃあ愛情試されて当然だってのに……
 ユウナ、絶対、自分を選んで欲しくて、わざと聞いただろーに……
 どうしてそこで本当に僕を取るかなあ……ぶっちゃけ有り得ない……」
「あ……ロックが言ってたの、そういうことッスか?
 うわああああああ! 気付いてたなら教えてくれよ!」
「……気付かないあんたがダメすぎるんだよ」

――大きなため息がこぼれた。

「もうダメ。爆弾マークついた。……刺されても文句言えない」
「さ、刺されるって、ユウナに限って……」
「ガーデンにも、そんな風に甘く考えて彼女を放っておいた奴がいました。
 ある日、何故か訓練中に、そいつと友達の銃が揃って暴発……
 本人は全治二ヶ月……友達の方は、寮に花瓶が飾られ……」
「ヒィイイイイ! お、俺はどーしたらいいんスか?!」
「……ユウナが戻ってきたら、僕、ここ出てく。後はあんたが探しに来なければいいだけ」
「はぁ!?」
「僕がユウナからあんたを取ってる形になってるワケだしさ。
 僕がいなくなれば、二人の仲も自動修復するよ、きっと……」
「だ、ダメダメ、ダメだって!
 今のあんた一人にしたらフツーに死ぬっつーか殺すのと同じだろ!
 仲直りする為に死人出すなんて有り得ないっつーの!」
「そうやってあんたが僕を庇うから、ユウナは寂しくなるんじゃん。
 そんなことやってたら、僕もあんたも、どんどんユウナに嫌われるじゃん……」
「ユ、ユウナはそんな奴じゃないって!
 ユウナはな、自分が死ぬってわかってて、シンを倒すために旅してた奴なんだ。
 自分の気持ちのために、アーヴィンを見捨てるとか死んでいいとか思うかよ!
 そんな我侭女だったら、俺だって好きになるわけないっつーの!」
「うーん……ティーダがそう言うなら、そうなのかな……」
「そうだっての。
 そりゃ、色々寂しい思いさせたけど……それは俺が悪いけど。
 でも、アーヴィンがどうこうって話じゃないのはユウナだってわかってるって」
「そうかな……」
「ああ、そうさ。ユウナはそこまで自分勝手じゃない。
 いつだって、自分のことは、最後まで我慢してた」

――また、しばらく静寂の帳が落ちる。

「……ティーダ」
「ん?」
「さっき、冗談だよって言ったじゃん……ユウナのこと。
 あれ……半分嘘で、半分本当……なんだ」
「え……え?」
「ユウナの声、どこかで聞いたことある気がした……
 そしたら急に、ひどく懐かしく思えてきて……胸が締め付けられる感じが止まらない」
「……それって」
「わからない……すごく辛くて苦しいんだ。
 でも、好きなんだ。多分、ユウナのことが……」
「な、あ、アーヴィン?」
「あはは。何言ってるんだろうね、僕。
 ……ごめん。今の全部忘れて。
 安心して。彼氏持ちに手ぇ出す気がないってのは本当だから。
 そんなことしたらユウナにもあんたにも嫌われるし、そんなの嫌だ」
「アーヴィン……」
「あはは……でも、何でこんなに懐かしく感じるんだろうね。
 小さい頃、ユウナみたいな声の人と、どこかで会ってたのかな。
 あの、太陽みたいに元気で、眩しい……声……
 ……眩し、すぎて………遠、くて……とど、かな…い……」
「アー……ヴィン?」
「あ……」
――ごしごしと、拭う音。

「あ……あはは……あは、はははは。
 さっきから、僕、何言ってるんだろうね。
 おかしい、な……迷惑、かける気、なかったのに」
「別に掛けたって構わないっつーの。
 ……俺、倍の迷惑掛けてるんだから」
「その迷惑の元は、僕、じゃんか」
「だったら、お互い様ってことでいいじゃないッスか。
 変な風に背負い込まないでさ。友達同士、どっちもどっちで」
「トモ……ダチ?」
「なんだよ。アーヴィン、俺のことそういう風に思ってないのかよ」
「だってさ……いいの、かな」
「いいって。俺がいいって言ってるんだから」
「でも、僕は……いつ記憶が戻るかわかんないよ」
「そうなったら俺が止めてやる。あんたも、他の奴も、絶対に死なせない。
 ……だいたい、そんな体で、どうやったら人殺しなんかできるんだっつーの。
 銃も撃てなきゃ、剣だってすっぽ抜けるくせして」
「あ……あははは、そうだね。
 確かに、何も、できないね」

――くすくすと笑う声。

「なあ、ティーダ」
「ん?」
「僕、探すよ。あんたが『夢』でなくなる方法、見つけてみせる。
 ずっと、ユウナと一緒に暮らせるようにさ」
「……サンキュー。
 けど、一つだけ、頼みがあるんだ」
「頼み……?」
「俺のこと、ユウナには黙ってて欲しいんだ。
 きっと、知ったら心配する。
 それに……例え俺が消える事になっても、こんなこと仕組んだ『ヤツ』だけは、絶対に倒したい。
 その時、ユウナに迷って欲しくない」
「ティーダ……」
「ゼルとかアーロンとかエアリスとか、皆の仇、討たなきゃならないしさ。
 それにアーヴィン、『ヤツ』はあんた達の世界を狙ってたんだろ?
 ゼルの好きだった子とか、あんたの友達とか、見捨てるわけにいかないもんな」
「うん……そうだね」
「だから、約束だぞ。絶対ユウナには言うなよ」
「わかったよ、ティーダ。
 ……でも、あんたが消えることなんて、絶対無いから。
 受けた任務は必ず達成するのが、SeeDだからね」
「あれ……? あんたはSeeDじゃないって、ゼル、言ってなかったっけ?」
「心はSeeDだよ。給料だって貰ったりしてたよ、代理だったけど。
 だいたいゼルでさえSeeDなのに僕がSeeDになれないわけないだろ?
 ぶっちゃけ居るガーデンの問題なんだってば。オーケー?」
「お、オーケー……」
「じゃ、そーゆーことで、ティーダは早く寝なよ」
「え?」
「あんただって寝れないと困るだろ。あくびしてたし。
 それとも、僕は精神不安定過ぎて任せられっこない?」
「あ、いや、それは……」
「大丈夫だよ。仕事とか命令だって思えば、スイッチ入る。
 そうじゃなきゃ傭兵だの狙撃手だのなんてやってられないよ。
 それに悪いけど、ニブチンのあんたよりは僕の方が見張り役に向いてるね」
「鈍感って……人の心に疎いのは認めるけど、あんま関係なくね?」
「んー。じゃあ、あっちの方ウロウロしてる人の事、気付いてる?」
「え……?」
「まだ、距離がありそうだけど。
 僕達の声、聞き付けてきたのかな」
――風が吹いた。
――どこかで、草叢が揺れる。

「……どこに、何人ぐらいいるッスか?」
「わかんないや。片耳使えないからなぁ。
 なんとなーく物音がしてるとか、人の気配を感じるってだけ」
「良くわかるッスね……」
「そりゃ、授業で一週間に一度は野戦の訓練やってたからね。
 で、どうする? みんな叩き起こす?」
「いや、下手に騒いで全員見つかっても仕方ないッスよ。
 ここは俺が出て行って……」
「とか言ってる間にどんどん近づいてきてる。
 とりあえず武器持ちなよ、武器」
「あ、ああ……」


二人は口を噤む。
そして、片方だけが立ち上がり、木々と岩の向こうに浮かぶ一つの影を見る。
道無き道を進んできた壮年の剣士は、やがて彼の姿に気付くだろう。
そして彼ともう一人の口から、己が息子に関わる疑惑の顛末を聞き出すのだろう。
あるいは、苦悩に満ちた青年の頼みを思い出すのかもしれない。
あるいは、分身を追いかける少女のことを話すのかもしれない。

けれど剣士は一人の女性の過ちを知らず。
故に二人も、愛する者の過ちを知ることはなく。
思いはただ、すれ違うばかり。
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:リュカに関わる事態を聞き出し、把握する
 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】

【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:フラタニティ、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:現れた人物(パパス)と応対
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け/アルティミシアを倒す】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、軽症、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:様子見
 第二行動方針:ティーダが消えない方法を探す/ゲームの破壊】

【ロック (軽傷、左足負傷、MP1/2、睡眠)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:お休み中
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(HP1/4、残MP微量、睡眠) 所持品:首輪
 第一行動方針:お休み中/首輪の研究
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
【テリー(DQM)(軽傷、右肩負傷(7割回復)、睡眠)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:お休み中
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
 
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
175バカヤvsユフィ:2006/10/05(木) 19:29:59 ID:/FISms/h0
「しんらばんしょう!」
ユフィはリミットを放ったが高谷はしななかった
「おもしれえっ!」
高谷は笑い続けた
ユフィのこうげきはきいてない!
「しんらばんしょう・イボルブ!」
ユフィはしんでしまった
高谷はユフィをけっとばした・

【死亡:このスレと議論スレの住民】
176名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/06(金) 00:02:29 ID:pujd0ISM0
>>175は無効です
177名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/07(土) 01:44:25 ID:ZHMSy3N0O
ほっしゅほっしゅ
178名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/08(日) 19:18:48 ID:nyWu5A8f0
ほし
179名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/09(月) 00:49:14 ID:RXsiX0/3O
ひゅうま
180人を騙したりするのはいけないことです 1/13:2006/10/10(火) 07:26:53 ID:d0gi5hO70
「さて、この町にいる4人の参加者を仕留めるということだが、誰から始末するのだ?
 俺はライアンとアリーナについては多少は知っているが、他の二人はまったく知らん。
 これから戦う相手の情報くらいは知っていても損はないだろう」
「…確かに、その通りだな。
 ウネの婆さんは主に風の魔法を使うと言っていたな。
 あと、夢の中で呼べば連絡を取ることができるとか言ってたぜ。
 まあ、こっちは眉唾もんだが」
「風の魔法に通信の能力か…」
風の魔法は攻撃だけでなく防御にも使える。実に厄介なものだ。
回復が望めないこの状況で、ミールストームなどを使われたらたまったものではない。
少なくともバルバリシア程度の実力があると見積もっておくべきか。
通信能力のほうはよく分からない。夢で通信など可能なものなのか? こっちは保留だ。
「続けてくれ」

「クリムトは目が見えないが、回復魔法とバシルーラとかいう魔法を使っていた。
 相手を別の場所にワープさせる魔法だそうだ」
盲目の賢者、か。こういうやつは不意打ちでも普通に襲ってもあまり変わりはなさそうだな。
ただ、強制ワープさせられるのは痛い。アルスやピサロといった連中の目の前に飛ばされるのは致命的だ。
それに、計画も失敗する。最初のターゲットとしては不向きか。
181人を騙したりするのはいけないことです 2/13:2006/10/10(火) 07:31:16 ID:d0gi5hO70
他の二人の整理もしよう。

ライアン。今朝旅の扉の前で出会った戦士。正面から直接戦っているわけではないので、実力は不明。
今朝の間抜けな感じからすれば十分勝てる相手だろうが。
俺が殺人者だということに気付いているかどうかが分からないが、早めに消しておいて損はない。

アリーナ。ここに降り立ってからしばらくして見つけた、殺人者であろう女。
見つけたときもあれだけ派手に返り血を浴びていたのだ、まず間違いはないだろう。
アルガスは賢者連中やライアンとつるんでいると言ったが、ということはまだ本性を見せていないということだろうか。
それ以前に怪我人なのだ、誘い出すのは論外だ。
むしろ、目が覚めたら勝手に暴れてくれるかもしれない。
自滅してくれるなら、それほど楽なことはない。
対集団戦に臨むにあたって、仲間割れを引き起こさせるのは非常に効果的。
となると最初のターゲットは一人だな。

「どうだ? 決まったか?」
「まずはライアンだな。やつなら簡単に不意を付けるだろうし、こちらとしても早く消しておきたい」
「よし、決まりだな」
182人を騙したりするのはいけないことです 3/13:2006/10/10(火) 07:32:03 ID:d0gi5hO70
ここはカナーンで最も大きな屋敷だ。
怪我をしたアリーナを休ませるなら、ここがいいだろうということで、ウネの婆さんが運び込んだわけだ。
にしても、どこの金持ちだ? このでかさはベオルブ家の屋敷にも匹敵するんじゃないか?

ライアンに事情(もちろん嘘の事情だが)を話し、屋敷に入る。
「お前ら、何か武器になるようなものは持ってないか」
「アルガス殿、いきなりそれはありませんぞ」
俺に遅れて、ライアンが入り込んでくる。
いいんだよ、どうせお前が説明してくれるんだろう?

「彼が今しがた、城壁の外に人影を見つけたそうでして、接触してみようということになったのです」
ライアンがアリーナをちらりと見る。俺も見る。
アリーナはすーすーと眠ってやがる。命には別状はないらしいな。
まあ、これから殺そうってときになって、実は死んでましたってのもムカつくが。

「ですが、万が一のときに備えて使える武器が欲しいと言い出しましてな」
カイン曰く、なるべく戦力を削っておけとのことだ。本当の目的はこれだが、理由付けは今ので十分だろう。
183人を騙したりするのはいけないことです 4/13:2006/10/10(火) 07:33:28 ID:d0gi5hO70
だが、それを聞いて、ウネの婆さんは怪訝な顔をする。
「おや? あんた、確か剣は持っていたとアリーナから聞いたが、どういうことだい?」
ち、そういえばアリーナのヤツ、俺がアイテムを広げてたのを見てたな…。面倒なこった。

「一つはライアンの武器が使えなくなったんで、貸した。もう一つはヤバそうな代物だから、あまり使いたくねえんだ」
これは本音。この剣を振り回してたヤツを見ていたが、最初はまあ普通っちゃあ普通だった。すぐにパーティー組んでたしな。
だが、この剣を装備したとたんに仲間の目の前で凶暴になったわけだ。
そういうあからさまにヤバそうなものは使わずに封印しておくべきなんだよ。

「言葉じゃ伝わらねえか。実物見れば分かるだろ」
現物を見せたとたんにライアンの顔が険しくなる。知ってるみたいだ。やっぱりやばい代物か。
「これは…皆殺しの剣でござるか。
 確かにこれを使うのは得策とは言えませんな」
名前からして説得力がありやがる。
ウネ婆さんは持っていた杖を見せる。
「アタシの持ち物はこの杖だけさ、回復用だから護身には使えないね」
その状態じゃあ回復用攻撃用以前に振り回すと折れるな。
大体俺は棒術なんて習ってないしな。

「クリムトの支給品もただの杖らしいね」
まあ目の見えない爺さんの杖なんて目の前を確かめるだけのためのものだ。問題ないだろう。
だが、収穫は無しか。アリーナの支給品には分裂の壷とかいうものしか入ってなかったらしいし…。
184人を騙したりするのはいけないことです 5/13:2006/10/10(火) 07:35:38 ID:d0gi5hO70
「あ、そういやあんた賢者とか言ってたな?
 こいつの付けてるものの効果が何か、分かるか?」
そうだよ、これがまだ残っていた。アリーナの指と腕にはめられた装飾品。
指輪はともかく、腕輪は何かいい効果を持ってるかもしれない。

「…アンタ、まさか持っていく気じゃないだろうね?」
ああ、その通りだよ。だが、やっぱり警戒されてるか。
この婆さん、山頂で俺と会ったときからずっと警戒してやがるよな?
ザックを6つも持ってたせいか?
ライアンも、俺の護衛だと思ってたし、本人もそう思ってたんだろうが、あの婆さんにとっては見張りの意味もあったんだろうよ。
食えねえ婆さんだよ、全く。

「状況が状況だ。ここにいるのは年寄りに怪我人に障害者だぞ?
 アイテムを使うのをケチって、そのせいで俺たちがやられたら攻め込まれるかもしれないんだ。
 それよりは万全の状態で出迎えるべきだろう。
 この際、これは誰のものとかそういう常識は綺麗さっぱり捨て去ったほうがいいと思うぞ」

何度も言うように、これは口実。実際の目的は俺のアイテムの補充と戦力低下。
それに、アリーナは本物と偽者を見分けるにはこの腕輪を見ろと言っていた。
ここで腕輪を奪ってしまえば、俺たちから上手く逃げ出したとしても、このアリーナは偽者と認定される。
こいつは情報を提供した相手に襲われるというわけだ。むしろこっちのほうがいい気味だな。
一度は信頼した相手に襲われるんだから。
手袋は、外そうと思えばすぐ外せるもんだ。大体、格闘で戦うんなら手袋はすぐ血まみれになるんじゃねえのか?
常識的に考えれば、偽者のアリーナのほうも普段手袋は外してるだろうよ。
185人を騙したりするのはいけないことです 6/13:2006/10/10(火) 07:40:44 ID:d0gi5hO70
「まるで今から会う相手が殺人者だって分かってるような口ぶりだねえ」
「ふむ…。ですが確かにアルガス殿の言うことにも一理あるでござるな。
 相手がどんな者なのかも分からない以上、何が起きても対応は出来るように万全の装備で迎えるべきでござる」
「それもそうだね。クリムトも強力な気配を感じるとか言ってたし、警戒して損はない」
婆さんに突っ込まれたときはヒヤッとしたが、強力な気配? カインのやつはそんなに強いのか?
確かにライアン相手に簡単に不意を付けるとか言いやがるし。一応警戒はしたほうがいいな。
「そういや、クリムトの爺さんはどこに行ったんだ?」
「屋敷の奥を調べてるよ。にしても、危なくなったら逃げると言っていたのに、随分変わったね」
「ふん、ライアンに何度も説教されたからな。
 動けるものが弱いやつを守るのは当然だとか力を合わせろだとか心正しき者は必ず勝つとか、そんなことをな」
ライアンのヤツはこんなこと本気で思ってるのかねえ。口に出すのも恥ずかしいぞ。

「腕輪のほうは、物理防御魔法がかかってるね。
 指輪にかかってる魔法は何なのかは分からないけれど、この感じは…ライブラ、分析の魔法に近い気がするね」
「分析の魔法ね…」
腕輪のほうは役に立つな。プロテスってやつだったか?
指輪は…。正直聞いても分からん。とりあえずはめてみるが、特に何も変わった様子はない。
やっぱり使い方が分からないものはただのゴミか。いや……分かる!
アイテムに関する知識が流れ込んでくる! 使い方も、その詳細も分かる。
指輪を付けたほうの手でアイテムに触れると知識が流れ込んでくるんだろう。
アリーナは利き腕でないほうに付けて、アイテムに触らなかったから効果が分からなかったってワケだ。
まさか一度は手放したアイテムがこんなに使えるものだとは思わなかった。

おっと、そろそろ行かないとカインが痺れを切らしちまう。
「ライアン、そろそろ行くぞ」
「ではウネ殿、失礼致す。アリーナ殿とクリムト殿にもくれぐれも警戒は怠らぬように伝えてくだされ」
「ああ、分かったよ。気ィ付けてな」
186人を騙したりするのはいけないことです 7/13:2006/10/10(火) 07:43:16 ID:d0gi5hO70
案外ライアンもウネの婆さんもチョロいもんだ。だが、もう一つ不安要素がある。
作戦中にイザのアマちゃんが乱入してきたら困る。動かないように釘を刺しておくべきだろう。
そういうわけで魔法屋に立ち寄ったわけだが…。

「ちっ、あいつらどこに行きやがった…」
魔法屋はもぬけのカラじゃねえか。
「せめて伝えてくだされば…」
「まあ、あいつらにもあいつらなりの事情があるんだよ。
 もしかしたら、テリーってやつの墓参りでもしてるのかもしれないぞ」
そんなはずはないだろうな。あのときのイザの様子からして、アリーナと同じ町にはいられない、ってところだろうよ。
もし本当にのんきに墓参りをしてたんなら、アマちゃんの中のアマちゃんとして尊敬してやるがな。
「ところでアルガス殿、人影を見たというのはどのあたりでござるか?」
「もうすぐだ。この先の城壁の上で風に当たっていたら、遠くに誰か来るのが見えたんだ。ほら、そこだ」

一足先に着いたライアンが辺りを見回す。
「誰も、見えませんぞ」
そりゃあ誰もいないんだから見えるわけないだろうが。
「おかしいな。まあ、いないならそれに越したことはないが」
「む? ひょっとして、アレのことでござるか?」
ライアンが指差した先には岩のようなもの。
正確に言えば、竜の死体らしい。カインから確認済みだ。
「ああ、それを見間違えたのかもしれない。悪かったな、付き合わせてよ」
「まったく、しっかりして下されよ、アルガス殿」


屋敷から城壁までの間、ライアンを監視していたわけだが…。
何者かがいる、というような情報で誘い出されたのだろう、初めは強く警戒していた。
だが、それが誤報だったと分かった後も警戒をほとんど緩めないのだ。
警戒を解いた瞬間が最も無防備になるときなのだが、この男にはそれがない。
サックスのときのようなことになるのは避けたいが…。まあ今回は策も用意してある。強気で行けばいい。
187人を騙したりするのはいけないことです 8/13:2006/10/10(火) 07:46:29 ID:d0gi5hO70
ライアンは何か違和感を感じる。空気の流れがおかしい。
上空に風だけでは起こりえない振動を感じたのだ。
刹那、兵士の剣を振り当て、頭上から降ってきた槍の力の方向を逸らすと同時に、飛びのく。

「フッ、よく気付いたものだ。お前ならこれで十分だと思っていたのだがな」
「おぬしは…。なるほど、あのときの一件、お主も絡んでいたのでござるな?」
「そういうことだ。お前もすぐにやつらのもとへと送ってやる」
二人は静かに武器を構え直すと、次の瞬間激突する。


キィン! キィン! キィン!
夜のカナーンに剣と槍の撃ち合う音が響きわたる。
カインはライアンの心臓を狙って突きを繰り出すが、ライアンは最小の動きでかわす。
お返しにとばかりにライアンが前方をなぎ払うが、カインは跳躍し、ライアンの後ろへと回り込む。
両者はほぼ互角。そのまま二撃、三撃と攻撃を続けるが、あるものは受け止められ、あるものは打ち払われる。
このまま接近戦を続けても、埒があかない。両者とも、そう思い始める。

ライアンは撃ち合いながらも横目でアルガスを見る。
確かに剣士としての素質はあるが、まだまだ未熟。この男には勝てない。
なら、早く逃がさなければならない。また、屋敷にいるウネやアリーナにも伝えなければならない。
「アルガス殿! 皆にこの男のことを知らせるでござる!」

それを聞くと、アルガスはすぐに後ろを向いて走り出す。
「逃がすものか!」
「行かせるわけにはいかないでござる!」
カインがアルガスを追おうとするが、ライアンが立ちふさがる。二人は数度撃ち合う。
するとカインはいったん大きく後退し、ザックから手が掴んだものを投げつける。
分厚い本が二冊ライアンへ向かって高速で飛び、思わぬ投擲がライアンを怯ませる。
その隙にカインはライアンに突進、ライアンは槍の攻撃だけは弾くことができたが、突破されてしまう。
急いで追おうとするが、さらにもう一冊の投擲。完全に出遅れた。
188人を騙したりするのはいけないことです 9/13:2006/10/10(火) 07:48:46 ID:d0gi5hO70
だが、ライアンは思った以上に早くカインに追いついた。
ライアンが速かったのではない。カインがじっと待っていたのだ。
その周りにはいくつもの支給品袋。あれは間違いなくアルガスのものだ。
だが、当のアルガス本人の姿はない。
「アルガス殿はどうしたのでござるか!」

カインは答えない。代わりに、地面に流れた赤い液体、真っ赤に染まった水路、そこに浮いている上着。
「次は貴様の番だな」
何より、赤い液体が滴っている武器がすべてを物語っていた。

カナーンの町で戦いがまたも始まろうとしている。
一人は勝ち残るために、一人は悪を切り捨てるために。
己の正義を信じて、今一度、二人の猛者が激突する。


バタンと扉を閉じ、アルガスとライアンが屋敷の外へ出て行った。
それから少し経って、屋敷の奥の隠し扉からクリムトが姿を現す。
「おお、クリムトか。どうだった、地下の様子は?」
「うむ、誰かが潜んでいるような気配はない。
 それに不快な環境ではなかった。
 おそらくは何かの貯蔵庫だったのだろうが」
「それはよかった。あたしには人間の快適な環境ってのがよく分からんもんでねえ。
 ところで、さっきアルガスたちが誰かを見たって言ってたが、やっぱり感じるのかい?」
「町の外、かなり離れてはいるようだが、強大な気配がする。善か悪かまでは分からぬのだが」
「善か悪か分からない強大な気配か。微妙なところだけど、やはりアリーナは避難させておくべきだね」
ウネはアリーナを背負い、クリムトと地下へと降りていく。
アルガスとライアンは、あれだけ警戒しているのだ、大丈夫だろう。

隠し部屋はかなり深く、広い。しかし、ここだけなら相手の勘が良ければ見つかってしまうだろう。
幸い、奥にもう一つ隠し部屋があると分かり、そちらにアリーナを運び込んだ。
目を覚ましたときにアリーナが混乱しないよう、クリムトはそばにいることになった。
「さて、アタシもちょっくら外に出てくるよ。じゃあ、アリーナは頼んだよ」
189人を騙したりするのはいけないことです 10/13:2006/10/10(火) 07:54:09 ID:d0gi5hO70
ライアンとカインが激突している場所から少し離れた場所でその戦いを見つめている者がいた。
アルガス。彼にはどこにも傷が見当たらない。それどころか、いたって健康だ。

ライアンが血だと思っていたのはパオームのインク。
滲むこともないうえ、臭いもほとんどない最高級のインクだ。
夜闇の中、赤いインクと血の色の違いまで判別するのは難しいだろう。
そもそも刺されたと思っているのに、誰があの液体はインクだと考えようか。
剣先に塗ってあったのもやはりインクだ。これは血で上書きをすればバレはしない。

ライアンはアルガスが逃げられるようにと時間を稼いでいたが、
これはアルガスの仕込みの時間にも直結していた。
そしてカインと使えそうな物を交換し、アルガスは上着を一着脱ぎ捨て、
支給品のひとつの真っ黒な衣装を纏って別の場所へと身を潜めたのだ。
これでアルガスは、少なくとも放送までは影として動けるわけだ。

「さて、どう動くかな…」
190人を騙したりするのはいけないことです 11/12:2006/10/10(火) 07:56:19 ID:d0gi5hO70
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:状況の確認
 基本行動方針:ザンデを探し、ゲームを脱出する
【現在位置:カナーンの町・シドの屋敷】

【アリーナ (左肩・右腕・右足怪我、腹部重傷、昏睡) 
 所持品:無し
 第一行動方針:不明
 基本二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:アリーナの回復
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・シドの屋敷の隠し部屋の奥】

【ライアン 所持品:兵士の剣(かなり傷んでいる)、折れたレイピア、命のリング
 第一行動方針:カインを倒す
 第二行動方針:カインのことをウネたちに知らせる】
【カイン(HP2/3程度、少々疲労)
 所持品:ランスオブカイン、光の剣、ミスリルの小手
 第一行動方針:ライアンを倒す
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:カナーンの町東部の水路脇】
191人を騙したりするのはいけないことです 12/12:2006/10/10(火) 07:57:37 ID:d0gi5hO70
【アルガス
 所持品:インパスの指輪 タークスの制服
 第一行動方針:伏兵として動き、カインとの作戦を成功させる
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る】
【現在地:カナーンの街】

*アルガス、カインの支給品のうち、これらは交換している可能性があります。
『アルガスの持ち物:カヌー(縮小中)皆殺しの剣 高級腕時計 プロテクトリング
 妖精の羽ペン ももんじゃのしっぽ 聖者の灰 マシンガン用予備弾倉×5 エクスカリパー』
『カインの持ち物:加速装置 草薙の剣 ドラゴンオーブ』
*ただし、ザックはカインがいくつも持っています。ザックだけ。中身もあるかもしれません。
*歴史書三冊は町中に放置
192名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/12(木) 21:50:25 ID:KTafgQEn0
ほっしゅ
193不幸の火種:2006/10/13(金) 20:24:01 ID:yp6blc8l0
おまえらしねよ
194名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/13(金) 22:44:28 ID:yN17IAJw0
>>193は無効です。
195走る風 巡る炎 1/9:2006/10/13(金) 22:57:08 ID:mRa2dZMq0
村北部の森を抜けたところで、2人は少しの間、呆然と立ち尽くしていた。
目前で村を燃やす炎を吐く者のあまりの大きさに圧倒されたのである。

「こ…こんなモンスターも参加してるのか…」
「…バッツさん…まずは宿屋を…」

互いに、元いた世界で同じくらいの大きさの敵も相手にしてきた。
だがこの世界に来てから、モンスターではなく、人間ばかりを相手にしてきた2人にとって、
村で咆哮を上げているブオーンの姿はあまりに非現実的だった。
そもそもこの世界自体が、非現実の元に成り立つものなのだが。

バッツとソロの2人は、村の北の森で行方不明となったヘンリーを探していた。
そこで村の中央部の異変に気づいた。凄まじい地響きが伝わり、モンスターの咆哮が聞こえたのだ。
2人は、宿屋に残っているエリアたちの危機を感じ、村へ戻ることを決めた。
ヘンリーのことはもちろん心配だが、彼は戦闘技能を持っており、武器も所持している。
それに対して、宿屋の3人はあまりに無防備だ。
場所も分かっているし、彼らを助けるのが先決だろう…それが2人の結論だった。

幸いなことに、ブオーンは、2人には気づいていないようだ。
彼らのほうには背を向けて、西の森に向かって炎を吹いている。それが宿屋の方向でもないことに2人は少し安堵した。
ソロとバッツは村の広場へと続く道を急いだ。まわりの木々には燃え移っている場所もあり、熱い大気に皮膚が焼けるような感覚を覚える。
炎のライトアップで、宿屋の様子が見えてきた。炎は上がってないようだが、すでに半壊状態のようだ。
2人共、同じように焦りの表情を見せていた。
196走る風 巡る炎 2/9:2006/10/13(金) 22:58:15 ID:mRa2dZMq0
2人は宿屋の北隣の建物までやって来た。
だが、ここから宿屋までまだ少し距離がある。敵に気づかれぬよう、一気に走り去らないといけない。
建物の陰に隠れて、ソロが敵の様子を見た。今、怪物はこの建物の方を向いている。
急ぎたいが、奴が背を向けるまで待とう、とバッツに言った。この建物を破壊されないことを祈って。

「レナやリュックはどうしてるだろう…」
森からここまで全力疾走して来たために荒くなった息を整えながら、バッツが言った。
「わかりません…火事に巻き込まれていなければいいですが…」
彼女たちは戦闘能力があるから大丈夫…さっきまではそう思っていた。
しかし、あの怪物相手を相手にして、彼女たちが無事でいられるだろうか?
エリアさんたちを助けなければならないのは当然のことだが、彼女たちやヘンリーさんはどうする?炎に囲まれる前に合流できるか?
誰かを見捨てなければならない…そんな考えが頭に浮かんできて、ソロは自分が嫌になった。
だがこの状況、全員と合流することは…せめて後で合流しようということだけでも伝えられたら…。

「おい、もう大丈夫じゃないか?」
急かすようなバッツの声で、ソロは巡る思考を止めた。怪物は今、宿屋とは逆の方向を向いていた。
「よし、行きましょう」
ソロは宿屋に向けて駆け出した。まずはエリアさんたちを助けることだ、後のことはそれから考えよう。ソロは無理矢理、自分の頭の中に浮かんでくる様々な考えを排除した。

2人は建物と宿屋の丁度中間あたりまで到達した。ブオーンは依然として彼らに背を向けている。
絶対にこっちを向くな…ソロは横目で怪物を確認しながら全力で駆けていた。
その時、ブオーンが一際大きな咆哮を上げた。
轟音に大気が振動し、ソロはたまらず立ち止まり耳を塞いだ。バッツも同じように立ち止まったようだ。

「っ……!バッツさん、行きましょう!」
ソロは再び走り出そうとした。だがバッツは動かない。巨大なモンスターの方を、呆けたように口をあけて見つめている。

「バッツさん!バッツさん!?」
197走る風 巡る炎 3/9:2006/10/13(金) 23:02:10 ID:mRa2dZMq0
バッツは宿屋に向かっていながらも、まず考えていたのはレナの安否だった。
精神不安定な状態は抜けたが、レナは武器を持っていなかったはず。
魔法があるとはいえ、あの巨大な怪物に襲われたら、無傷では済まないだろう。
だが、ソロが言うように、エリアたちが危機にあるのも事実。
レナの無事を祈りながら、エリアたちの救出を最優先にしていた。


ブオーンが轟音を上げた瞬間、バッツは思わず耳を塞ぎ、立ち止まってブオーンの方を見た。
そこで初めて、それまでは夢中で走っていたから、怪物の方は見てなかった自分に気づいた。
怪物の足元に見覚えのある剣が刺さっていた。炎による赤い光を浴びて輝く剣。
あれはエクスカリバーだ、なぜあんなところに?誰かあいつと戦ったのか?
そして、紅蓮のライトアップの中、バッツは見てしまった。
偉大な騎士剣の側に横たわる桃色の髪を。血で染まる仲間の姿を。

「レ…ナ……?」

呆然と立ち尽くす男を、赤い狂気の目が捉えた。

絶望の炎が、2人の男を包んでいった。
198走る風 巡る炎 4/9:2006/10/13(金) 23:03:33 ID:mRa2dZMq0
ウルの村の南方、開けた草原にスコールとヘンリーをかついだマッシュは来ていた。
「…このあたりでいいだろう、人に見つかりやすいが、森は延焼の危険があるからな」
スコールがそう言って、そばの岩に腰掛けた。マッシュはヘンリーを草原に寝かせた。
「さて、これからどうするんだ?あの村をこのまま放っておくわけにはいかないだろ?」
マッシュが尋ねた。赤い炎が村を襲っているのがここからでも見える。時折、獣の咆哮のようなものも聞こえる。
マッシュとしては、あの村にエドガーがいる可能性だってあるのだ。村の状況が気になるのは当然である。
しかし、とスコールは横たわる緑髪の男を見る。
スコールとしては、この緑髪の男を放っておくわけにもいかない。救出したとはいえ、この男がリノアを殺めた者である可能性もあるのだ。

「…マッシュ、おまえ一人で見に行ってもらえるか?」
スコールは少し考えて、こう言った。今の状況では、これしか選択肢がないように思えた。
「…まぁ、そうなるよな。よし、ちょっと様子見てくるわ」
マッシュも状況を理解できる能力は持っている。特に質問もなく、スコールの問いに答えた。

「気をつけろよ。おそらくモンスターがいるだろうからな」
「わかった。必ず戻ってくるからな、そこ動くなよ」
その言葉を聞いて、スコールは心の中で苦笑した。
必ず戻ってくる、なんてこの世界でどれほど頼りのない約束だろうか。
だが、この男が言うと、何故か信用できるものになるような気がする。

「…ああ、だが不測の事態の時は互いに臨機応変に動こう。おまえがいなくても俺はやっていけるからな」
「あたりめーだ、恋人同士じゃねえんだぞ」
マッシュはニヤッと笑った。それに応えて、スコールも口はつむったままだが笑みを浮かべた。
「じゃあな、また後でな」
「ああ」
マッシュが風を切るように駆け出した。それを見てスコールは、マッシュが今まで自分に合わせて、全速力で走ってはいなかったことに気づいた。
足の速さじゃ、格闘家には勝てないな…そんなことを考えながら、スコールはマッシュの後ろ姿を見送った。
199走る風 巡る炎 4/9:2006/10/13(金) 23:06:35 ID:mRa2dZMq0
一人になり(隣に気絶している男はいるのだが) スコールはぼんやりと空を見上げた。
マッシュと同じ格闘家のゼルはどうしてるだろう?あいつが死ぬような状況を思い浮かべない。
きっと、いつものテンションのままで危機を抜けているのだろう。
……この世界に来て、いろんなことがあった。
マッシュたちと出会い、そしてアーヴァインと最悪な場面で会ってしまった。
アーヴァインは今どうしてるのだろう、まだ殺人を続けているのだろうか。
そしてこの緑髪の男。武器は取り上げておいたので、目覚めてすぐに暴れるとかいうことはないだろう。
この男は、リノアの死に関わっているのだろうか。

…リノアの死。
それにティナの死、マリベルの死、エーコの死、アイラの死、そしてラグナ…親父の死。
信じられないほどの死があった。今でも信じたくない、全ては夢ではないのか。目が覚めれば、いつもの俺の部屋じゃないのか。
だが、これは現実。非現実的な真実。
そしてこの悪夢を生み出した元凶が魔女アルティミシア。
あの魔女の目的はわからない。だが、奴だけは絶対に許せない。この手で必ず倒してみせる。
しかし、この世界から脱出する方法はあるのだろうか。そう考えながら、脱出を阻む最初の関門を手で触ってみる。冷たい金属の感触が伝わる。
マッシュの兄、エドガーならばこの首輪を外せるのだろうか。
自分もSeeDとして、初歩の機械工学は学んでいるが、この首輪に関してはほとんどわからない。おそらく盗聴器がついているのだろう、というところか。

(…そう言えば、マッシュと離れるのは初めてなのか)
この悪夢の始まりからずっと一緒にいたので、1日半以上行動を共にしていたことになる。
まるで恋人同士じゃないか…そう考えてスコールは先ほどのマッシュと発想が同じであることに気づき苦笑した。
一緒にいると、考え方まで似てくるのだろうか。

その時、スコールは南方から何かが近づいてくることに気づいた。素早く身構え、暗闇に目を向ける。

(速い…だが小さい…子供…?いや…)
そこまで考えると、接近してくる者の姿がハッキリと見えた。
見慣れた4本足。ある意味、自分の最大の嫉妬相手だった者。

「アンジェロ……」
200名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/13(金) 23:07:27 ID:mRa2dZMq0
>>199は5/9です、申し訳ありません。
201走る風 巡る炎 1/9:2006/10/13(金) 23:09:45 ID:mRa2dZMq0
村中央部の異変に気づいた時、リュックはヘンリーを探して、村北東の森の方に入っていた。
中央部でのモンスターの咆哮、そしてまもなく上がった赤い炎。

(ビビたちがあぶない!!)
リュックは急いで中央部へ向かった。その瞬間、ヘンリーのことは彼女の頭からすっかり忘れ去られていた。

リュックは東側から村に戻ってきた。
中央部に近づくにしたがって周囲の空気の気温は上がり、汗がじっとりと出てきた。
前方に見える巨大なモンスター。どう見てもヤツがこの火事の原因である。

「はーっ、こんなデッカイのがいたんだー」
巨大なブオーンを前にしても、どこか気楽なリュック。
ブオーンはリュックの方を向いているが、少し距離があるせいか、まだリュックには気づいていない。
一方、リュックは巨大なモンスターの前の2つの物体に気づいた。
それは魔力の淡い光を放つソロとバッツの鋼鉄の像。先ほど炎に包まれる瞬間、ソロが唱えた究極の防御魔法アストロンによるものであった。
だが、彼女は当然そんな魔法のことは知らず―――

「ソロ!!バッツ!!」
彼女にとっては彼らは敵の攻撃で石化したようにしか見えない。
リュックの大きな声によって、ブオーンは彼女の存在に気づいた。灼熱の炎が彼女を襲う。
リュックは持ち前のスピードで素早くそれを避け、2人の像の元に向かう。やはり動かない彼らを見て、リュックは怒りの表情を浮かべて、ブオーンをにらんだ。

「よくもソロとバッツを!!絶対に許さない!!」
リュックは最強の剣、メタルキングの剣をブオーンに向けて激昂する。

「アンタみたいな図体だけデカイやつなんてね―――」
「―――リュ…さ…ん」
「この伝説のガードのアタシがギッタギタの―――」
「―――リュックさん」
「メッタメタにやっつけてやるんだからね!!」
「リュックさん!!」
「へっ?」
202名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/13(金) 23:10:38 ID:mRa2dZMq0
>>201は6/9です、度々申し訳ないorz
203走る風 巡る炎 7/9:2006/10/13(金) 23:12:14 ID:mRa2dZMq0
自分を呼ぶ声にようやく気づき、後ろを振り向くリュック。その無防備なリュックの上空を狙って、ブオーンの放った稲妻が落ちてくる。
間一髪、ソロが彼女を抱えて飛び込む。凄まじい轟音と光が炸裂した。

「ソ、ソロ!元に戻ったの?」
「僕は大丈夫です!リュックさんは宿屋のエリアさん達を!!」
「え、でも…」
「はやく!!時間がない!!」

ソロの言葉に圧倒されて、リュックは宿屋に向けて駆け出した。
だが、逃がしはしないとブオーンが彼女を狙って右腕を振り上げる。

「イオラ!!」
ブオーンの右腕を狙い、ソロが爆発の魔法を唱える。空気を振動させる大きな爆発音が起こる。ブオーンは右腕をつかんで倒れこんだ。
自分の背後での出来事に驚きながらも、宿屋へ走るリュック。そして、ソロは急いでバッツの方へ向かう。
「バッツさん!バッツさん!」
ソロがバッツの両肩をつかんで激しく揺らす。
「レナが…レナ…」
だが、相変わらず一点を見つめて動かないバッツ。その2人を狙って、起き上がったブオーンの左腕が狙う。
たまらず、ソロはバッツと共に建物の陰へ転がり込んだ。

「バッツさん!しっかりしてください!!バッツさん!!」
バッツさんはさきほどからレナさんの名前を呼んでいる。
現在、その方向は怪物がいるため確認できないが、怪物についた無数のダメージの跡を考えるに、レナさんはここでこの怪物と戦闘したのだろう。
そしてバッツさんが見たのはおそらく…。
だが、今は悲しんでいる時間はない。事態は一刻の猶予を争うのだ。

「バッツさん!しっかり!しっかりしてください!!」
「…レナが…死んだ…?」
依然、虚ろな目をしたままのバッツ。
「くっ…!!バッツさん、すいません!!」
そう言うと、ソロは右の拳を握り、バッツの頬を殴った。衝撃にバッツの体がふっとぶ。
それと同時に、建物が崩壊する音も聞こえる。あの怪物がこちらに進んできているようだ。
204走る風 巡る炎 8/9:2006/10/13(金) 23:14:14 ID:mRa2dZMq0
「バッツさん!苦しいけど、今は急がなきゃいけない!!」
「……」
「レナさんがいなくなったことが辛いのはわかる!だけど、ここでバッツさんが死んでしまってはいけない!
 自分の命と、他の仲間の命を守ること!それが、生きている僕たちの役目です!僕たちにしかできないことなんだ!!」
バッツはまだボーッとした顔をしている。だが殴られたことで、少しずつ目に生気が戻ってきたように見える。
ソロは一気にまくしたてたことで、少し息が上がっていた。怪物は依然進行を続けている。
もうこれ以上ここに留まっているだけの時間は―――

「…すまない、ソロ」
バッツが言った。目はどこか遠くを見て、だがはっきりとした口調で。
「…レナが死んだなんて…信じられなくてさ…だけど…俺がこんなんじゃレナに怒られちまうな…」
「バッツさん…」
「俺はまだ死なない、そしてもう誰も死なせない。その為に俺はどう動けばいい?」
「2人であのモンスターを倒しましょう。最悪でも、宿屋から離して、みんなの安全を確保しましょう」
「わかった。行こう、ソロ」

その瞬間、2人がブオーンから隠れていた建物が完全に崩壊した。2人がいた場所に瓦礫が崩れ落ちる。
だが、2人はすでに動き出していた。
ソロはラミアスの剣と天空の盾を構えて、バッツはアイスブランドを右手で強く握り、ブオーンと対峙する。

「ったく、こんなに強く殴ることねえのに」
ソロから殴られたせいで口から流出する血を左手でぬぐって、バッツは不平を述べる。その目は先ほどとは違い、生気に満ちている。
「あなたがあんな情けない顔してるからです」
冷静に言葉を返すソロ。熱き眼差しは倒すべき悪へ。
ブオーンは大地を震わせる咆哮を放つ。その目に映るのは破壊対象のみか。

決意を固めた風の戦士。
心強き天空の勇者。
そして狂気の巨獣。

3者の熱き戦いが始まった。
205走る風 巡る炎 9/10:2006/10/13(金) 23:24:34 ID:mRa2dZMq0
【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング  ラミアスの剣(天空の剣)  ジ・アベンジャー(爪) 
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒すor宿屋から遠ざける。
 第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。
 第三行動方針:ヘンリーを助ける。
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒すor宿屋から遠ざける。
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】
【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:潰す
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:宿屋へ行ってエリア・ビビ・ターニアを助ける
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:ウルの村中央】
206走る風 巡る炎 10/10:2006/10/13(金) 23:25:24 ID:mRa2dZMq0
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、ヘンリーの武器(キラーボウ、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ)
 アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)
 第一行動方針:アンジェロに対応
 第二行動方針:気絶中の緑髪の男(ヘンリー)の見張り。
 第三行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第四行動方針:ゲームを止める】
【ヘンリー(気絶)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP1/4) G.F.パンデモニウム(召喚不能)
  アラームピアス(対人) リフレクトリング
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームに乗る奴は倒す)】
【現在位置:ウル南方の草原地帯】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改、バーバラの首輪、
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:ウルの村の様子を見に行く
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:ウル南方の草原地帯→ウルの村】
207名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/13(金) 23:28:06 ID:mRa2dZMq0
最後の状態欄が予想に反して、1レスでは収まりませんでした…orz
ですので>>195-204までの作品は全て、○/10というように訂正します。
多くの不備、本当に申し訳ありません。
208名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/15(日) 19:23:06 ID:XKPDG/Ss0
保守
209不幸の火種:2006/10/15(日) 21:24:12 ID:pZ2eB0w+0
おまえらしねよ
210名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/15(日) 21:29:13 ID:REHy+C4w0
>>209は無効です。
211名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/17(火) 19:42:22 ID:I3LqK0Ra0
保守
212名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/18(水) 16:43:44 ID:Vju7NeFdO
保守
213名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/20(金) 01:07:35 ID:W6xHvppq0
保守
214名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/21(土) 00:45:22 ID:mWH5sEOYO
こんな糞スレはdat落ちすればいい
215名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/21(土) 01:48:41 ID:vR1eTmiYO
誠に恐縮ではございますが、>>214は無効とさせていただきます
216名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/22(日) 09:28:56 ID:a6zf0Qx40
ほしゅほしゅほしゅ
217名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/24(火) 00:17:15 ID:W2R4ukpM0
保守ッ
218名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/25(水) 13:38:30 ID:9hHCqH4G0
だが保守る!
219名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/25(水) 17:01:47 ID:k/r/jXQ10
>>195〜216GJ
ついでにこの銃を登場させてくれませんか?
つ試製35式対人狙撃銃
イノセント・ヴィーナスでレニーが使用していたハイテクスナイパーライフルです。
220名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/25(水) 18:21:36 ID:mckiQp9p0
保守ついでに
>>219
雑談スレ池。
221名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/27(金) 00:18:56 ID:tJIvUG300
ho
222名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/27(金) 09:03:50 ID:ttF/bBts0
shi
223名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/28(土) 15:57:56 ID:yyKexwGq0
hyuma
224名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/28(土) 19:35:34 ID:eX+rf9N+O
hana
225名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:01:27 ID:FLVwOEu30
保守を
226名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 23:59:44 ID:9ZevO8Ch0
するのが
227名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 15:08:22 ID:R0ZfhUEZ0
我々の使命
228名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 17:29:37 ID:Lpzwd1BQ0
だと人は言うけれど
229名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 19:26:50 ID:d4GbP7q00
それって
230名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 19:56:49 ID:uv6SQttMO
ボクの愛なの
231名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 20:45:21 ID:YI87s4yEO
Byエキセントリック少年ボウイ
232名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 21:04:34 ID:ZRy5vASLO
何このカオス
233保守1/2:2006/10/31(火) 01:06:24 ID:VOCfDCrs0
もしもマティウスとゴゴが決闘者(デュエリスト)だったら


ゴゴ「これでお前のモンスターは全て攻撃終了。
   ”スーパーボンバーマン”の効果でお前のライフはゼロだ。
   ハッハッハ、やったな。俺の勝ちだ」
マティウス「何を勘違いしているのだ?」
ゴゴ「は?」
マティ「まだ私のバトルフェイズは終了してはいない」
ゴゴ「何言っているんだ。もうお前のモンスターは全部攻撃を終了したじゃないか」

マティ「速攻魔法発動! ”バーサーカー・ソウル”!」

ゴゴ「ばーさーかー・そうる?」
マティ「手札を全て捨て、効果発動!
   こいつはモンスター以外のカードが出るまで何枚でもカードをドローし、墓地に捨てるカード。
   そしてその数だけ、攻撃力1500以下のモンスターは追加攻撃できる!」
ゴゴ「攻撃力1500以下……? はっ!? あの時―――」


マティ『攻撃を発動した後は魔力カウンターは無くなる。
   ”ピエール”の攻撃力も300ポイントダウンするが……』


ゴゴ「―――マティウスはそこまで考えて……」
マティ「さぁ、行くぞ! まず1枚目! ドロー!
   モンスターカード”サラマンダー”を墓地に捨て、”スライムナイト・ピエール”追加攻撃!」
ゴゴ「うぐああっ!」
マティ「2枚目ドロー! モンスターカード!」
ゴゴ「あ……あああ……うあああああ!」
マティ「3枚目……モンスターカード!!」
ゴゴ「ぎゃあああああ!!」
234保守2/2:2006/10/31(火) 01:08:07 ID:VOCfDCrs0

マティ「ドロー! モンスターカード!!」

ゴゴ「ぐぉあああああ!!」

マティ「ドロー! モンスターカード!!」

ゴゴ「ぐはああああああ!!」

マティ「ドロー! モンスターカード!!
   ドロー! モンスターカード!!」

ゴゴ「うぎゃああああああ……」

マティ「ドロー!モンスターカ……」
アグリアス「もうやめろッ! マティウスーッ!」
マティ「ぐっ……放せぇ!!」
アグ「とっくにゴゴのライフはゼロだッ! もう勝負はついたのだッ!!」
マティ「はぁっ……はぁっ……」


元ネタ
ttp://www.youtube.com/watch?v=ZMeGnPJnqFA
235名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/01(水) 18:54:59 ID:KBdmgG3V0
…チェきんところで紹介されてたな(ボソ
保守
それとそういうネタは雑談で
や ら な い か
236名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/01(水) 21:56:05 ID:fkNxXQjj0
>>235
その話、詳しく。
そして保守。
237名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/03(金) 00:38:10 ID:aM8M5JnoO
238名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/03(金) 08:20:19 ID:I8WlggLX0
保守
239名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/03(金) 10:18:08 ID:mQ9LYwCf0
捕手
240名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/04(土) 03:13:55 ID:oDsOJ0O40
穂主
241名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/05(日) 09:32:56 ID:GapB2bmo0
ほしゅりますよ
242名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/06(月) 16:20:17 ID:YnZJ62CW0
新作こないね…書き手さんファイトです。
ホシュ
243名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/07(火) 02:57:24 ID:0FQkeBXH0
ほしゅ
244名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/08(水) 00:53:38 ID:hcjiz8Rn0
アッー!
245名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/08(水) 03:43:23 ID:iAHc8ZBJ0
アッー!
246名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/08(水) 13:52:57 ID:26zy6UnT0
アッー!
247名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/08(水) 14:39:27 ID:MOzVzX+xO
とっても大好き TDえもN
248名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/09(木) 01:24:32 ID:KpW40Fba0
>>247
ちょっとwwwwwww誰が上手いこと言えと(略)
249名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/10(金) 21:25:33 ID:q0v0Uw6e0
保守
250名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/11(土) 20:32:00 ID:EexV6jeF0
そう、保守である。
251名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/12(日) 20:38:30 ID:pWePvgjd0
哲学である。
252保守:2006/11/12(日) 21:42:04 ID:ZboseD/I0
次回、驚きの展開が!!
253名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/13(月) 22:45:30 ID:Ggthfg0n0
254名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/14(火) 09:55:21 ID:zgJA+soFO
保守あげ
255名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/16(木) 09:12:47 ID:B2OSIiPY0
そろそろ新作来るかな? ほしゅ
256保守:2006/11/16(木) 15:00:36 ID:k3fntXo50
17 名前: 名も無き参加者 [sage] 投稿日: 2005/05/14(土) 20:53:26 ID:oyabun.0
昨日仲の良かった弟に会いました。
城で可愛がっていた異母兄弟です。
殺し合いに参加していたので
俺の話は聞いてくれなかったようです。。。

18 名前: ぷよぷよろい ◆PUyOpuYoPl [sage] 投稿日: 2005/05/15(日) 17:44:10 ID:PLyoroiO
>>17
もう少しくやしく。

19 名前: 名も無き参加者 投稿日: 2005/05/15(日) 18:22:26 ID:oyabun.0
昨日レーベの村で弟に会いました。
城で可愛がっていた異母兄弟です。
やっと自分の身内に会えてホッとしたと思ったら、
どうやら殺し合いに乗ってしまっていたようです!!(# ゚Д゚) ムッキー
( `Д´)フォオオオオオオオオオ!



もう少しくやしく。のガイドライン 16やしく。
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1158981200/l50
257沸騰と冷却の間 1/4:2006/11/16(木) 19:49:15 ID:MZvZVLHy0
「そこアンタっ! まだなんかする気!?」

サラマンダーがそこにいたのは、はっきりいって偶然だ。
と、思いたかったのは、他でもないサラマンダー自身だった。

「言っとくけど、ジャマするんならアタシ容赦しないよ!」

何を思ってここに来たのか。そもそもどこへと向かうつもりでいたのか。
今となっては、彼方へと素っ飛んだ感情なので判りやしない。
追求する気もさらさら無い。
けれど目の前の存在が怒鳴り散らしてる内容を考慮すれば、自分が何をしようとしていたのか、推測できてしまうのが、つらい。

「宿屋へは行かせないんだからね!!」

できることならば、げんなりしたかった。もちろん自分に対して。
生き残ってゲームに勝利する、と決めたというのに、実際には今、正反対の行動をしようとしていたではないか。

倉庫の屋根からモンスターの襲来の一部始終を見ていたサラマンダーは、当然、荒らされる村の様子も見ていた。
壊される家々の中に、ボロい帽子が見えた、かもしれない、遠い上に暗い中で、しかも一瞬だけ。
と、そこまではしっかりと覚えている。
そしてふと気付いたら自分は走っていて、今、女特有ののキャンキャンした声に呼び止められた。

さて、自分はあのボロい帽子を見つけて、どうしてそこを目指すように走っていたのか。
難問だ。しかし答えは出ている。けれど答えたくない。
258沸騰と冷却の間 2/4:2006/11/16(木) 19:50:55 ID:MZvZVLHy0
鍛錬の中で手に入れた目の良さを、これほど恨めしいと思った事は、いまだかつてなかった。
もう少しでも視力が低かったら、あんな米粒みたいなものは見えなかったはずだ。
見なければよかった、というか見えなければよかった。
次第に気持ちはふつふつと苛立ちで煮え滾る。

「……宿屋に行かれたら、まずい事でもあるのか。良い事を聞いたな」
「へっ!?」

サラマンダーの低いで発せられた質問に、キャンキャンした女、もといリュックは目を丸くさせた。
数回、瞬きながら思案顔を見せ、最終的にはひくひくと引きつった笑いを浮かべた。

「タンマ、今のナシ、聞かなかった事にして。じゃ、アタシ急いでるから〜……」

さっきの威勢の良さはどこへやら、固い愛想笑いでやりすごそうとする。
が、売られた喧嘩を買わずに回収されるほど、サラマンダーの心境は和やかではなかった。
状態の不利を差し引いても大幅に余るくらいには苛立っている。

しばらくの行動を全て忘れるくらいには暴れたい。
まさか自分が無意識にビビを助けに行こうとしていただなんて、そんなことを忘れるくらいには。

 * * *

「そこアンタっ! まだなんかする気!?
 言っとくけど、ジャマするんならアタシ容赦しないよ!」
259沸騰と冷却の間 3/4:2006/11/16(木) 19:51:41 ID:MZvZVLHy0
ソロとバッツのいる場所を後にして、宿屋に駆けるリュックが発見したのは見覚えある男の姿だった。
思わず喧嘩腰で呼び止めたのは、感情直情型のなせる技である。

「宿屋へは行かせないんだからね!!」

進行方向からして宿屋に向かっていると判断し、無防備な宿屋を狙うつもりだな!という結論に結びついた。
そして、その行動を阻止すべく再び叫んでいた。
これも感情直情型のなせる技である。

やっぱアタシってまだまだだなぁ、とリュックが思うのは、あまり考えずに行動してしまう事だ。
鋼鉄のソロとバッツを見てモンスターに挑もうとしていた事は、物凄く記憶に新しい。

「……宿屋に行かれたら、まずい事でもあるのか。良い事を聞いたな」
「へっ!?」

ただ、きっかけさえあれば、熱く燃えていたハートを一気に冷ませられるところは、
やっぱ流石だねぇアタシ、である。

なになに? つまるところ、アイツは宿屋に誰かがいるとか知らなかったってコト?
な・る・ほ・ど〜。
つまりアタシは(また)余計な事を口走っちゃったってワケですかい……。
とりあえず……笑って誤魔化してみよっか。

「タンマ、今のナシ、聞かなかった事にして。じゃ、アタシ急いでるから〜……」
260沸騰と冷却の間 4/4:2006/11/16(木) 19:54:59 ID:MZvZVLHy0
なけなしの愛想笑いも、特に効果が無い事は相手の様子を見ればまるわかりだ。

ホント今急いでるのに。こんな場面で足止めくらうの勘弁してよ。いやアタシが撒いた種だけどさ。
などと思いながら、メタルキングの剣を持つ手は、しっかりと握り締めている。

上手いコトいなして、さっさと突破せよ! (ユ・)リ(・パ) レディ ミッションスタート!
そんな声がリュックの頭の中を過ぎった。


【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5)
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:リュックを撃つ
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【リュック(パラディン)
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)
 バリアントナイフ チキンナイフ マジカルスカート 薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:サラマンダーを突破/宿屋組の救出
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:ウルの村・南部周辺】
261天使の微笑み  1/5:2006/11/17(金) 13:35:01 ID:IO+RWLcT0
夜空に浮かぶライブラは、正義を計る天秤であると、いつか見た本に書いてあった。
水平に吊された左右の器の、どちらに正義が乗っているのか、わからない。
あるいは両方とも正義で、あるいは両方とも罪なのかもしれない。
わかることは、右を選べば左が、左を選べば右が、奈落の底へと落ちてしまうこと。
どちらも、両手で抱えてやっと持てるかどうか、それくらいに重い。
とても重い。
だから、両方とも選びたいのに、手にすることができない。
もたもたしていると、やがて奈落の淀みは広がり、全てを飲み込んでしまう。
早く、どちらかを手にして、この場を離れなければならない。
なのに私は、天秤を前にして立ちすくんでいる。
選ぶのが、こわい。
どちらを選んでも、きっと私は後悔をし続ける気がする。
いっそ、このまま私も一緒に、奈落に飲み込まれてしまおうか。
そうすれば、誰も私を責めることなんてできない。

なのに。
私は、自らを絶つ勇気すらも持ち合わせていない。
惨めな自分が悔しいし、選択を突き付けてくる世界が少し恨めしい。

ねぇ、私はどうしたらいいのか……教えてよ、イザ兄ちゃん。
262天使の微笑み  2/5:2006/11/17(金) 13:36:23 ID:IO+RWLcT0
熱くて頭がどうかしそうなのに、身体は凍えているかのようにぶるぶると震えている。
それは、迫られた選択の先にある結果を見たくないからだ。
心が、拒否している。

けぶる空気で苦しむ呼吸が、タイムリミットが近い事を警告していた。
額に雫を浮かべる動けない少女と、毒に苦しみながら眠り続ける子供。
夕焼けのような橙色の、ゆらゆらとゆらめく明かりが、二人の姿を照らしている。

二人とも、どちらも助けたい。
けれど、それを行えるだけの力も時間もない。

白いドレスを汚す緋色の跡、絹糸のような金の髪。
床に伏した彼女は、まるで翼をもがれて傷ついた天使のようだと、こんな状況なのに思った。

天使は残酷なことを言う。
自分を置いて逃げろ、と。
置いて行った事で罪悪感を与える事を知りながら、行けと言った。
罪の意識で縛り付けることが天使の役目ならば、私は天使なんて信じない。
なにより、彼女は天使のようだけど天使じゃない。

優しさの先には安らぎが待っているとは限らない。
そんな残酷な優しさはいらない。
けれどもし彼女と私の立場が逆だったならば、私は彼女と同じ事を言っただろう。
そしてやはり彼女も、私を残して逃げることもできず、助けたいけれど助けられず、悩むだろう。
263天使の微笑み  3/5:2006/11/17(金) 13:37:49 ID:IO+RWLcT0
違う。

そうじゃない。悩んでほしいんだ、私は。
勝手に思って、悩み続ける自分を正当化したいんだ。

どんなに頑張ったって、今の置かれた立場が変わることなんてありえない。
どうにかできるのも、どうにかしなくちゃいけないのも、私しかいない。

決して、何もできないわけじゃない。
できることが少なくて、少ない中に望むものがないだけだ。
だったら何もしなくていい、なんてことは許されない。
お兄ちゃんは許さない。そして、きっと私が私を許さないはず。

できることは全部やる。イザ兄ちゃんは、そう言ってた。
だから私も、できる事は全部やらなくちゃいけない。

天秤じゃない。どちらか、なんてことはない。
可能性は限りあるけれども、たった二つだけなんてことはない。

可能性は作るもの。イザ兄ちゃんは、そう言ってた。
だから私も、可能性を作り出すために歩まなくちゃいけない。

「……エリアさん。必ず、助けに来ます」

まだ少し震えてるかもしれない。
お腹に力を込めて、じっとりと汗が滲む手を強く握りしめた。
今は大丈夫だ。さっきよりは、こわくない。
264天使の微笑み  4/5:2006/11/17(金) 13:39:08 ID:IO+RWLcT0
「助けることを諦めません。
 だから……待っていて下さい。お願いします」

穏やかな眼差しが私を捕らえた。
ただ何も言わず、にこりと微笑むだけだ。

ひとつでも多くの命が助かることが嬉しい、とか。
道を選んで歩き出してくれたことが嬉しい、とか。
もし立場が逆だったらの話で、私はそんなことを思って微笑むのだろうか。
実際に彼女が何を思っているかはわからない。
けれど、背中を強く押してくれたような気にさせてくれた。
まるで天使みたいな微笑みだった。

「気をつけて……ね」

幼い身体を背負い、立ち上がった私に、彼女はそう言った。

そういえば。
足元に三人分の荷物が置かれたままだったけれど、この体勢から拾えるほど器用じゃない。
あとでまた来る。だから今は、執着する必要なんてない。

「いってきます」

ただいまへ繋げるために言ったけれど、いってらっしゃいの言葉は返ってこなかった。
絶対に。あとで、おかえりって言ってもらうんだ。
265天使の微笑み  5/5:2006/11/17(金) 13:39:51 ID:IO+RWLcT0
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:なし
 第一行動方針:宿屋を離れてビビの安全を確保
 第二行動方針:エリアの救出
 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ(気絶中 ターニアにおんぶされている)
 所持品:なし
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:仲間を探す】

【エリア(体力消耗 身動きできない 下半身を圧迫されている)
 所持品:妖精の笛
 第一行動方針:助けを待つ
 基本行動方針:レナのそばにいる】

【現在地:ウル宿屋(半壊、火災はボヤ程度)】

※ビビの支給品袋(毒蛾のナイフ 賢者の杖)と
 ターニアの支給品袋(微笑みの杖 スパス ひそひ草)は
 エリアの支給品と一緒に置いてあります
266天使の微笑み  訂正:2006/11/17(金) 13:45:37 ID:IO+RWLcT0
3/5

お兄ちゃんは許さない。そして、きっと私が私を許さないはず。

イザ兄ちゃんは許さない。そして、きっと私が私を許さないはず。
267保守:2006/11/19(日) 22:27:10 ID:VMcgBKp60
●一般に幅広く知られてる超人気キャラ
 ・サラマンダー(←こいつだけ別格)

●戦闘力の高さで人気・知名度ともにあるキャラ
 ・アルス ・ソロ ・リュカ

●造形やエピソードで人気・知名度ともにあるキャラ(ネタキャラ)
 ・ギルダー ・カイン ・ウィーグラフ
--------メジャーとマイナーの壁(↓ここから一般人はついていけない)------
●リアル世代が好きそうな強くてかっこいい人気キャラ
 ・マティウス ・アグリアス ・セージ 

●とにかく強くて印象に残るキャラ
 ・アリーナ2 ・デール ・ブオーン

●知名度はあるけど地味すぎるキャラ
 ・ローザ ・ギルガメッシュ ・ガーネット

●最初の方や最終回に出て知名度はそこそこだけど人気が微妙なキャラ
 ・アルティミシア ・マリア(←こいつはせいぜいここ止まり)

●造形の素晴らしさで隠れ人気のあるキャラ
 ・ローグ ・ターニア ・アルガス

●写真見たら「あー、あー、こんなのいたね。でも名前分かんない」とか言われそうなキャラ
 ・ミンウ ・イザ ・ゲマ

●通ぶりたいヤツが好きだとかいいそうなキャラ
 ・デュラン ・メルビン

メジャーとマイナーの壁のガイドライン3
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1158358401/
268クジケヌココロ 1/7:2006/11/20(月) 02:27:44 ID:oZKMjGPz0
「こっちだ、デカブツ!」
 わざと注意を引くように声を上げ、ダーツの矢を投げつける。
 まずは戦場を宿屋を巻き込まない距離まで遠ざける事が先決だ。
 それに、すぐ側で横たわる彼女の体をこれ以上傷つけたくはない。
 放たれたダーツは山のように巨大な的に突き刺さる。
 分厚い皮膚の前では毛ほどのダメージも無いだろうが、コチラに注意は引けた。
 相手の意識がコチラに向いたと同時に走り始める。
 コチラの思惑通り、巨大なモンスターはその後を追ってきた。
 迫り来るモンスターの動きは遅い。だが歩幅の大きさが違う。
 総合的に進む早さは同じだ、油断すれば追いつかれてしまうだろう。
「ぐっ……!」
 だが、走る途中左足の火傷が痛んだ。
 その影響で速度が落ち、互いの距離が僅かに詰まる。
 俺の姿を間合い捕えたモンスターは大きく息を吸い、吐き出す息の代わりに激しい炎を吐き出した。
 背面に迫る激しい炎は走りながらでは回避は不可能。
 避けられない。
 そう思われた激しい炎は白銀の盾で受けられ撒布した。
「こっちだ、ついて来い!」
 横から身を割り込ませてきたソロがそう叫び、後を引き継ぐように駆け出した。
 魔物は声に導かれるように、標的をソロへと変えその後を追う。
 コチラもすぐさま後を追おうとするが、左足に走るの痛みがそれを引き留める。
 だが、この傷が原因で戦えないなんて事はあってはならない。
 そうだ、彼女に付けられた傷など痛くない。
「くそ! 痛くねぇぞ。こんな傷……!」
 そう吐き捨て、左足を無視して後を追った。
269クジケヌココロ 2/7:2006/11/20(月) 02:29:58 ID:oZKMjGPz0
 そしてしばらく走り、ウルを南に抜けた場所でソロの足が止まった。
 ここなら辺りを巻き込まず戦えると判断したのだろう。
 ソロはその場でクルリと身を翻し、正面から魔物へと向かい一撃を放った。
 後から二人を追いかけていた、それに合わせるように背後から一撃を放つ
 前後両方からの攻撃に対処しきれないのか、斬撃は魔物に直撃した。
「くっ、硬えッ」
 だが、その感触は強固。まるで鉄だ。
「恐らく、防御呪文だと思います。何とか、解いてみます」
 そう言ってソロは天空の剣を敵めがけ振りかざした。
 天空の剣を振りかざされたものは敵の魔法効果を打ち消される。
 だが、
「出ない……! やっぱりこの剣は……」
 全てを打ち消す凍てつく波動は放たれなかった。
 その事実にソロは僅かに戸惑う。
 つまり、この剣は天空の剣であって天空の剣でないということ。
 だが、それもこの魔物には関係がない話。
 構わず魔物は攻撃に転じる。
「ブオオオォォォン!!」
 地を震わす獣の雄たけび。
 それを合図に、天からいかずちが降り注ぐ。
「マジかよ……ッ!」
 炎だけでなく雷まで操れるとは。
 ゴロゴロと転がり、雨霰と降り注ぐ雷鳴から身をかわす。
 だが数が半端ではない。
 避けきることのできない幾本のいかずちが体に落ちた。
「ぐあっ!」
「バッツさん!」
 ソロがコチラに駆け寄りる。
「大丈夫ですか!?」
 回復のためにソロがかざした腕を制す。
「回復はいい。魔力はもう残ってないんだろ。それは攻撃に使え」
270クジケヌココロ 3/7:2006/11/20(月) 02:32:47 ID:oZKMjGPz0
 白銀の盾の恩恵か、同じくいかずちの雨をくぐりぬけたソロに目立った傷はない。
「よし、ソロ。俺が囮になる、その隙にデカいの一発叩きこんでくれ」
「……なっ! そんな。無茶です! 囮ならこの盾がある僕が!」
「駄目だ。お前にはその盾があるようにその剣がある。
 それに俺より傷も少ない。お前の方がまともな一撃を撃てるはずだ」
 強い決意を持ってそう伝える。
 その言葉にソロは言葉を詰まらせる。
「頼んだぜ、残った魔力全部ぶち込んでやれ!」
 そう言って、ソロの返事を待たず銃剣を片手に敵に迫った。
 降り注ぐいかずちの間を縫って、その間合いを潰す。
 敵の左目は潰れている。
 だからこそ、囮である自分は相手の右手から攻める。
 モンスターは領域に侵入した害虫を排除するため右腕を振り上げた
 叩き潰すために振り下ろされたその腕を、何とか紙一重でかわしきる。
 弾き飛ばされた地面と風を受けながら、地に叩き付けられたその腕を掛け上がった。
「ウオオオォォオ!!」
 雄たけびを上げ、肩口まで掛け上がる。
 そして、魔物の首筋に銃剣を突き立てる。
 同時に、銃剣の引き金を引いた。
 爆音を上げ魔物の首筋が爆発した。
「へっ。ざまぁみろ」
 挑発するようにそう言って笑う。
 体は爆発の反動にバランスを崩し、魔物の肩口から落下した。
 魔物は落下するその身を恨めしげに睨み、もう一方の巨大な腕でその体を薙ぎ払った。
 ゴミ屑のように容易く体は吹き飛ぶ。
 吹き飛ばされながら、最後の力で彼に叫んだ。

「…………今だ、やれソロ!」
271クジケヌココロ 4/7:2006/11/20(月) 02:35:09 ID:oZKMjGPz0
 その声に応えるようにソロは天を突き刺すように、白銀の剣を天に掲げた。
「天空を切り裂き、来たれ――――雷よ」
 勇者の呼び声に答え、闇を切り裂き雷が落ちる。
 魔物が操る落雷とは明らかに質の違う、聖なる雷。
 雷鳴が落ちるは、天に掲げた白銀の剣。
 天空の名を貸す剣は雷神の力を纏う。
 雷を纏った白銀の剣は火花を踊らせ輝きを増した。
 火花を散らしながら、魔王を目掛け、勇者が駆ける。
 一瞬で懐に入ると同時に、走る勢いを殺さず剣を振り上げる。
 それは、雷を操りし魔法の力と、剣を極めし戦士の技を持つ、真の勇者のみが扱える絶技。
 放つ一撃、その技の名は――――

「――――ギガソード!」

 叫びと共に天空の剣が振りぬかれた。
 剣の軌跡は雷鳴となり肩口へと伸びる。
 鋭い雷電は身を引き裂き、傷口より侵入し身を焦がす。
 切り裂かれた傷口から黒煙と血が噴出した。
 地が揺れる程の轟音と、砂埃をあげながら、山のような巨体がゆっくりと地に倒れた。

「ははっ、凄げぇ」
 その一撃の凄まじさに思わず口から笑いが零れた。
 地に伏せる巨体を横目に、ソロはこちらへと向き直る。
「……バッツさん! 大丈夫ですか?」
「あぁ。何とか生きてるよ。一歩も動けそうもないけどな」
 地面に叩き付けられた体は指一本動かせそうにない。
 返事が帰ってきた事にソロが安堵の息を漏らした。
 その様子は先ほどの一撃を放った人物と同一人物とはとても思えない。
 本当に不思議な男だ。

「……とりあえず、みんなのもとへ――――!?」
272クジケヌココロ 5/7:2006/11/20(月) 02:37:16 ID:oZKMjGPz0
 唐突に、後方から伸びた巨大な腕がソロを捕えた。
 握りつぶす圧力を受けながら、ソロは何とか首を動かし元凶を見つめた。
 そこにいたのは確かな絶望。
 最大級の絶技をその身に受けても、その魔物は生きていた。
 それはなんと言う生命力か。
 否。それよりも恐ろしいのはその執念。
 その目を潰されようとも。
 その肌を焼かれようとも。
 その身を裂かれようとも。
 その心は挫けない。
 その執念はくじけぬこころの魔力、否。呪いの力がなせる技か。
「ソロッ!」
 助けようと身を動かそうとするが、体は思うように動かない。
「グッ……ガ……ッ!」
 ソロが赤い血を、吐いた。
 万力と例えるのも生ぬるい程の圧力。
 メキメキと胸骨が歪む音が聞こえる。
 左手に握り締めた天空の盾が、何とかその圧力に抵抗しているが、それも気休め。
 このままでは圧死するのは時間の問題。
 そして、トドメとばかりに魔物の指に力が込められた。

「――――爆裂拳!」

 握りつぶすその直前、横合いから現れた男がその手の平を弾き飛ばした。
 その勢いのまま弾き出されたソロの体を空中で受け止める。
「ソロ!」
「大丈夫だ。生きてる。気を失ってるだけだ」
 そう言って男はその場にそっとソロを下ろした。
「…………アンタは?」
「……とりあえず、そいつをつれて下がってろ」
 男は質問には答えず、ただ魔物へと一歩踏みよった。
273クジケヌココロ 6/7:2006/11/20(月) 02:39:33 ID:oZKMjGPz0
 そして、男――マッシュは巨大な魔物を見上げる。
 思わず飛び出したものの、状況はまったく持ってよろしくない。
 マッシュがウルの様子を見にいき、初めに目に付いたのは巨大なモンスター。
 村の騒ぎの元凶であるのは一目瞭然であった。
 このデカさだ、目にするなというほうが無理があるだろう。
 そして、それが戦闘中である事がわかり、すぐさま自分は駆けだした。
 そして魔物のもと駆けつけた時に、目に入った握り潰されようとしている少年。
 考えるでものなく体は動いていた。
 だが、冷静になって見ると状況は一向によろしくない。
 目の前の巨大な魔物はハッキリ言って規格外だ。
 それに、戦っていたこの少年達がマーダーである可能性もある。
 しかも、少年は緑髪。その可能性はいっそう高いだろう。
 迷いを断ち切るように首を振る。
 とりあえずの迷いは置いておこう。
 まずは目の前のモンスターを倒すことに集中しなければ。
 迷いあって勝てる相手ではないだろう。
 そして、手負いの獣に油断は禁物。
 そのことは充分に理解している。

「ここから先は格闘家マッシュ・ルネ・フィガロがお相手する」

 そう言ってゆっくりと構えを取り、目の前の敵を睨みつける。
 丹田に力を込め、腹から息を吐き出し気合を入れなおす。
 気持ちと精神を切り替え、精神を統一。
 そしてただ一言、開始を告げる声を放つ。

「――――来い」
274クジケヌココロ 7/7:2006/11/20(月) 02:41:09 ID:oZKMjGPz0
【ソロ(HP1/3 魔力0 気絶 体力消耗)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。
 第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。
 第三行動方針:ヘンリーを助ける。
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【バッツ(HP1/10 左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) ティナの魔石 神羅甲型防具改 バーバラの首輪
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:目の前の魔物(ブオーン)を倒す
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】

【ブオーン(HP1/5 左目失明、重度の全身火傷 重度の裂傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:潰す
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】

【現在位置:ウルの村南草原】
275名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/20(月) 21:03:35 ID:mlBM2WFl0
>>268->>274は無効です。
276種咲案内人 6/1:2006/11/21(火) 20:35:00 ID:persfoBH0
「アンジェロ!!」
いや、アンジェロがこんなところにいるわけないだろ。
思わず大声で名前を呼んだ後で気付く。
しかし犬はスコールの声に反応して止まると、黒い眼差しでスコールの姿を捕らえ、一直線に駆け寄って来た。
あのフォームには見覚えがある。
(……アンジェロラッシュ!?)
ぎょ。としながらも、スコールはワンステップでひらりと犬の軌道線から逃れた。
スコールの立っていた空間を体当たりで切り裂いた犬は、くるりと器用に回転しながら着地する。
さすが。このしなやかな動きは、どこからどう見てもアンジェロそのものだ。
「まさか本当に、アンジェロ……なのか?」
くうん、と喉で鳴くと、犬はスコールの足元をぐるりと一周した。
動く犬をよくよく見てみると、案の定、尻尾がない。
確定だ。この犬はアンジェロだ。
「なんでお前がここに……いや、そんなことはどうでもいいか」
目線を合わせるためにしゃがみ、頭を撫でてやる。
「ん?」
ふとスコールは、アンジェロが何かを口にしていることに気付いた。
譲り渡すようにアンジェロは物を挟んでいた口を開く。
「草? なんだ?」
スコールは、受け取った草とアンジェロとを、交互に見やった。
たべると何か能力でもアップするのだろうか。そんな気分ではないが。
傍らで寝ている男から勝手に奪ってジャンクションしたカーバンクルの能力で見てみるが、精製は不可。
というか、もともとスコールが育てていたG.F.なのだから、正しくは奪ったではなく返してもらった、だ。
そんなことより問題は草だ。
「俺に一体、どうしろっていうんだ」
何かを望むような瞳でアンジェロは見てくるが、判りっこない。
言わなきゃ判らないこともあるだとか、口に出さなくても判ることはあるだとか、そういうレベルではない。
277種咲案内人 2/6:2006/11/21(火) 20:35:48 ID:persfoBH0
草で思い出すのは、学習パネルで見た新着図書のタイトル、食べられる草花。
(……なんでこんなどうでもいいことを覚えているんだ、俺は)
徐々に徐々に深くなる眉間の皺を空いている手の指で押し揉むと、思わず溜め息が出た。
「お前と話せたら楽なのにな。そんなことは無理か」
はぁ、と同じくアンジェロも溜め息を吐いたように見えたのは気のせいだろうか。
まったく仕方ないなスコールは、みたいな。
勝手にそう解釈して、スコールは少し腑に落ちない表情を浮かべた。
すると唐突に。アンジェロは何のきっかけも前触れもなく、スコールに向かって、けたたましく吠え始めた。
擬音にすればワンワン、もしくはバウワウ。
スコールは突然の事に驚いて、思わず立ち上がった。
「どうしたんだ!? やめろ、アンジェロ!」
振り払うような仕種でスコールが強く言っても、まったく止める気配はない。
鳴き声を聞いて、面倒事に駆け付けられたら厄介なことこの上ないというのに。
自分の声の方が大きいんじゃなかろうかという矛盾には特に気付かず、スコールは更に口調を強めた。
「アンジェロ!!」


(さっき見たモンスター、ずいぶん大きかったけど、なに食べて過ごしてるんだろ)
どこかで火が燻っているのか、空気が霞んでいる。
目に映ったザックの一つを、エリアは手を伸ばして引き寄せた。
その端の布をつまんで、口と鼻を覆うように塞ぐ。
こうすれば、多少なりとも煙を吸い込む量を減らせるはずだ。
(そういえば、ヘンリーさん、見つかったかな)
生れ変わったかのような、強い瞳を持ったターニアの言葉を信じたかった。
だから諦めないで、待つことを決めた。
諦めているよりは、諦めない方が、チャンスも惹かれて来るかもしれない。
278種咲案内人 3/6:2006/11/21(火) 20:36:28 ID:persfoBH0
昨日だって昼間だって、色々あったけどこうして生きている。
だから、たとえどんな状況でも、なんとかなるものだと信じる。
そう思わせてくれたのはターニアだ。
(右の足首、さっきから痛いな……もしかして捻っちゃったのかも)
諦めないで信じていることくらいしか、やれる事がないといえば、それまでなのだが。
こうして動けずに待っているだけだと、色々と考えてしまう。
大事なことだったり、どうでもいいことだったり。
不思議と思考は悪い方へと行かないので、それだけはありがたいことだった。
どこかから聞こえるだれかの声を聞きながら、様々な事を考える。
「え……声!?」
エリアは顔を上げると、周囲を見回した。
近いような遠いような、よくわからないが、確かに聞こえる。
耳を澄ませて声の発信源を探ると、なぜか、怪しく思われるのは手にしている袋。
エリアは不安めいた表情を浮かべながらも、そっと袋の口を開いた。すると。
けたたましい鳴き声と、何かを怒鳴る声が、やけにはっきりと聞こえた。


『もしかして……これかな』
いきなり自分の右手の中から聞こえてきた声に、スコールは目を見開いた。
(なんだ? 草から声が)
手に持った草をまじまじと見つめる。ありえないが、確かにそこから聞こえた。
どこにも小型スピーカーなんて付いていないにも関わらず。
忙しなく吠えていたアンジェロも、ぱったりと静かになった。
『あれ? 聞こえなくなった』
女の声だ。まさかアンジェロは、これを望んでいたのだろうか。
スコールは、不安半分で草に話し掛ける。
279種咲案内人 4/6:2006/11/21(火) 20:37:05 ID:persfoBH0
「そこに誰かいるのか?」
『わっ』
驚いた声が返ってきた。
『あの、すみません。この草はいったい……』
「知るか」
投げ遣りに返すと、アンジェロが一声吠えた。コラ!と怒られた……ような気がする。
『そ、そうですよね』
しゅん。と怖気づいたかのような女の声に、スコールはやれやれと肩を落とした。
「悪かった。おそらく通信機器……機器じゃないな、離れた場所にいても会話ができる草だ、きっと。
 お互い同じような草を持ってるってことは、そういうことだ。
 あんたは誰で、どこにいるのか、それが聞きたい」
『あ、えっと。名前はエリアです。ウルの村にいます』
(そこにいるのか?)
咆哮が聞こえたり燃えたりしているウルだ。
大惨事が起きていても不思議ではないが、エリアの声は妙に落ち着いている。
「あんたは無事なのか?」
『え』
「俺もウルにいる」
正確にはウルの近くだが、細かな間違いはどうでもいい。
サスーンやカナーンに比べれば、ウルの中にいるも同然だ。
『実は、ちょっと危ないかもしれませ……けほっ』
(咳込んでるのか?)
スコールは眉根を寄せた。
「状況を教えてくれ」
『その、宿屋にいるんですけど、モンスターに壁や屋根を少し崩されまして。
 火が燃え移りそうなんですけど、身動きができないので、誰かの助けを待ってるところです』
(どこが「ちょっと」なんだ)
だいぶ危ない、の間違いだろうと思ったのはスコールだけではなくアンジェロも同じ。
280種咲案内人 5/6:2006/11/21(火) 20:37:51 ID:persfoBH0
「そういうことは先に言え!」
スコールはきつく怒鳴ると駆け出そうとしていたが、理性をなんとかコントロールし、留まる。
『す、すみません……』
「いや、悪かった」
ウルにいるということは、足元で眠っている男の事を知っているかもしれない。
「話変わるが、緑髪で長髪で30歳くらいの男は知ってるか?」
『それって……ヘンリーさんですか!? 知ってるんですか!?』
「そいつとは、どういう関係だ?」
スコールは、そうだとも違うとも言わず、質問を続けた。
嘘は言わないが本当の事も言わない、それが駆け引きの基本だ。
駆け引きとかそういう状況でもないけれど。
『昨日から一緒に行動してました。けど今は行方知れずで……こほっ』
「俺の横にいる。意識ないけどな」
『え、ほ、本当ですか!? 無事なんですか!?』
驚いたような、呆気に取られたような、安心したような、そんなエリアの声が聞こえる。
「一応な」
この男は違う気がする。リノアの件はシロだ。暫定で、だが。
なんとなく曖昧ではあるが、スコールはそう思った。
「アンジェロ。ここでそいつと待っててくれないか?」
言葉が通じているのかどうか判らないけれど、アンジェロに言う。
アンジェロはいそいそと歩を進めると、ヘンリーと呼ばれた男の横に、ちょこんと腰を落とした。
「ありがとう。頼んだからな」
そっとアンジェロの頭を撫でる。
ついでにヘンリーからパンデモニウムも返してもらうと、スコールはウルへと向かった。
「言い忘れてたが、俺はスコールだ」
走りながら、手の中の草に話し掛ける。
「今からそこに行く。宿屋はどこだ?」
281種咲案内人 6/6:2006/11/21(火) 20:39:50 ID:persfoBH0
【スコール
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚○、コマンドアビリティ×、HP1/4)、G.F.パンデモニウム(召喚×)
 吹雪の剣、ガイアの剣、エアナイフ、ビームライフル、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、ひそひ草
 ヘンリーの武器(キラーボウ、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ)
 アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)
 第一行動方針:エリアの救出
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 基本行動方針:ゲームを止める】
【現在位置:ウル南方の草原地帯→ウルの宿屋】

【ヘンリー(気絶)
 所持品:アラームピアス(対人)、リフレクトリング
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】
【アンジェロ
 所持品:風のローブ
 第一行動方針:スコールを待つ】
【現在位置:ウル南方の草原地帯】

【エリア
 (体力消耗 身動き不可 下半身を圧迫されている 右足首に鈍痛)
 所持品:妖精の笛、ひそひ草
 ターニアの支給品袋(微笑みの杖、スパス)、ビビの支給品袋(毒蛾のナイフ、賢者の杖)
 第一行動方針:助けを待つ
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在地:ウル宿屋(半壊、火災はボヤ程度)】
282名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/22(水) 22:23:54 ID:HPPH5BOIO
チンチン
283ユフィの天使:2006/11/22(水) 23:42:45 ID:q+jMclAh0
ユフィは怒りが心頭で、アルス達を置き一人で暴走した。これは前にもあったような。
その頃ラムザ、「お〜〜いユフィ〜〜」言ったしかし…ドグン!!ラムザは胸が痛んだと思ったら、ラムザは何故か死んでしまった・何故?
その答えは説明しよう。後から・
ユフィは破壊を抑えて走った・・・「殺さなくちゃ・・・固きをとらなくちゃ」
体が狂気につつまれるユフィは、殺さなくちゃという思いで、狂気をまとった
ユフィがカズスに行ったら、フリオニールはもう死んだ
「死んでる・・・」そういったら、ユフィから

ドワーーーーッツ!!!!

と、日狩りが溢れて、「まぶしい!」「ぬうう!!」アルスとオルテガは駆けつけたが、目を逸らした。
「森羅万像が止まらないよぉ〜!!」ユフィ!!!そうユフィは止まらなくなってしまったのだ。
何と言う事だ大変な事になってしまった。かわいそうに
アルスは剣をとったが、翼生やしたユフィにかなうのか・・・?
「美しいな」
しかし敵である。

【ユフィ (暴走。天使化) 行動方針:たおす 】
【アルス 行動方針:戦う!】
【オルテガ 気絶している】

【ラムザ死亡。死因は次回に任せます。】
【フリオニール死亡。】
284名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/22(水) 23:46:48 ID:XRZltGSZ0
>>283は無効です
285クジケヌココロ 1/7:2006/11/23(木) 02:37:26 ID:vTSkGyY70
「こっちだ、デカブツ!」
 わざと注意を引くように声を上げ、ダーツを投げつける。
 ダーツの矢は一直線に巨大な的に突き刺さった。
 分厚い皮膚の前ではダメージは毛ほども無いだろう。
 だが、コチラに注意を引くことはできた。
 魔物の瞳に捕えられると同時に、敵に背を向け走り始める。
 魔物は地響きを響かせながら、目の前の獲物を逃すまいとその後を追ってくる。
 ここまではコチラの思惑通り。
 まずは敵を誘導して、戦場をこの場から遠ざける。
 宿屋を巻き込まない為、という理由もあるが。
 何より、すぐ側で横たわる彼女の体をこれ以上傷つけたくなかった。
 敵の間合いギリギリ外、付かず離れずの距離を保ちながら敵を誘導する。
 地を揺らしながら進む魔物の動きは、巨体に見合って遅い。
 だが、歩幅の大きさがコチラとは違いすぎる。
 総じて進む早さに大差はない。
 全力で走らなければ、すぐに追いつかれるだろう。
「ぐっ……!」
 地を蹴る左足の火傷が痛んだ。
 ガクンと走る速度が落ち、互いの距離が縮まる。
 後方から大きく息を吸う音が聞こえた。
 敵の間合いに入ってしまったと、気付いた時にはもう遅い。
 モンスターの口から激しい炎が吐き出された。
 背面から、避けられないタイミングで迫る激しい炎。
 その赤い炎は白銀の盾に遮られ、空中に撒布した。
「こっちだ、ついて来い!」
 横から身を割り込ませてきたソロが声を上げ、後を引き継ぐように駆け出した。
 魔物は声に導かれるように、標的を変えその後を追う。
 コチラも体勢を立て直し後を追おうとするが、左足の痛みがそれを引き留める。
「くそ……ッ! 痛くねぇぞ。こんな傷……!」
 そう吐き捨て、痛みを無視して大地を蹴る。
 この傷が原因で戦えないなんて事はあってはならない。
 そうだ、彼女に付けられた傷など痛くはないのだ。
286クジケヌココロ 2/7:2006/11/23(木) 02:39:40 ID:vTSkGyY70
 ウルを抜けた先の草原で、ソロの足が止まった。
 ここなら辺りを巻き込まず戦えると判断したのだろう。
 ソロはその場でクルリと身を翻し、正面から魔物へと向かい斬撃を放った。
 後から追いついた俺も、タイミングを合わせ魔物の背後から一撃を放つ。
 前後同時攻撃に対処しきれないのか、斬撃は魔物に直撃した。
 だが、その感触は強固。まるで鉄だ。
「……恐らく、防御呪文だと思います。何とか、解いてみます」
 そう言ってソロは天空の剣を敵めがけ振りかざした。
 剣先から、全てを打ち消す凍てつく波動が迸る。
 防御呪文の効果が打ち消された事を確信し、今度こそはと敵へと駆けた。
「ブオオオォォォン!!」
 地を震わす獣の雄たけびを合図に、天からいかずちが降り注ぐ。
「って。マジかよ……ッ!」
 走り出した勢いに急ブレーキをかけ、雷鳴から身をかわすためその場をゴロゴロと転がる。
 雨霰と降り注ぐいかずちは半端な数ではない上に、正確にコチラを打ちぬいてくる。
「グッ…………!!」
 全てを避ける事は叶わず、幾本のいかずちを身に受けた。
 いかずちをまともに受けた姿を見て、ソロが慌ててコチラに駆け寄ってくる。
 見れば、白銀の盾の恩恵か、同じくいかずちの雨をくぐりぬけたソロに目立った傷はない。
「バッツさん! 大丈夫ですか!? 今治療を…………」
「……いや。回復はいい」
 ソロが回復のためにかざした腕を制す。
「ソロ。俺が囮になる。だから、残った魔力は攻撃に使ってくれ」
「……なっ」
「長期戦じゃ多分負ける。だから、勝つ為には、デカいの一発叩きこむしかない、だろ?」
「そんな。無茶です! 囮なら盾がある僕が、」
「駄目だ。攻撃はまともに動けるお前がやるべきだ。
 それに一撃で決めれるのは、その剣があるお前しかいない」
 強い決意を持ってそう伝える。
 その言葉にソロは言葉を詰まらせる。
「頼んだぜ、ソロ。残った魔力全部ぶち込んでやれ!」
 そう言って、返事を待たずに動き始めた。
287クジケヌココロ 3/7:2006/11/23(木) 02:42:15 ID:vTSkGyY70
 降り注ぐいかずちの間を縫いながら、銃剣を片手に敵へと突撃する。
 敵の左目は潰れている。
 だからこそ、囮である自分は相手の右手から攻める。
 モンスターは領域に侵入した害虫を排除するため、右腕を高く振り上げた
 単純に叩き潰すために振り下したその腕を、紙一重で何とか避ける。
 弾き飛ばされた大地と暴風を身に受けながら、地に叩き付けられたその腕を掛け上がった。
「ウオオオォォオ!!」
 雄たけびを上げ、一気に肩口まで掛け上がる。
 そして、魔物の首筋に銃剣を突き立て、同時に銃剣の引き金を引いた。
 ボンと篭った爆音を上げ、魔物の首筋が爆発した。
 体はその反動にバランスを崩し、魔物の肩口から落下した。
「……へっ。ざまぁみろ」
 落下しながら、挑発するようにそう言って笑う。
 魔物は恨めしげにコチラを睨み、もう一方の巨大な腕でこの体を薙ぎ払った。
 ゴミ屑のように容易く吹き飛び宙を舞う。
 吹き飛ばされながら、最後の力で彼に叫んだ。

「…………今だ、やれソロ!」

 その声に応え、ソロは天を突き刺すように白銀の剣を掲げた。
「天空を切り裂き、来たれ――――雷よ」
 勇者の呼び声に答え、夜を切り裂き雷が落ちる。
 魔物が操る落雷とは質の違う、聖なる雷。
 雷鳴が落ちるは、天に掲げた白銀の剣。
 天空の名を貸す剣は雷神の力を纏う。
 雷を纏った白銀の剣は火花を踊らせ輝きを増した。
 火花を散らしながら、魔王を目掛け、勇者が駆ける。
 それは、雷を操りし魔法の力と、剣を極めし戦士の技を持つ、真の勇者のみが扱える絶技。
 放つ一撃、その技の名は――――

「――――ギガソード!」
288クジケヌココロ 4/7:2006/11/23(木) 02:44:31 ID:vTSkGyY70
 振り上げられた剣の軌跡は、雷鳴となり肩口へと伸びた。
 鋭い雷電は身を引き裂き、傷口より侵入し身を焦がす。
 切り裂かれた傷口から黒煙と血が噴出した。
 地が揺れる程の轟音と砂埃をあげながら、山のような巨体がゆっくりと地に倒れた。

「……ははっ、凄げぇ」
 その一撃の凄まじさに、思わず口から笑いが零れた。
 地に伏せる巨体を横目に、ソロはこちらへと向き直る。
「バッツさん! 大丈夫ですか?」
「あぁ。何とか生きてるよ。一歩も動けそうもないけどな」
 受身も取れず地面に叩き付けられた体は、指一本動かせそうにない。
 だが、返事が帰ってきた事に、ソロは安堵の息を漏らしている。
 その様子は先ほどの一撃を放った人物と同一人物とはとても思えない。
 本当に、不思議な男だ。

「……とりあえず、みんなのもとへ――――!?」

 唐突に、後方から伸びた巨大な腕がソロを捕えた。
 握りつぶす圧力を受けながら、ソロは何とか首を動かし元凶を見つめた。
 そこにいたのは確かな絶望。
 最大級の絶技をその身に受けても、その魔物は生きていた。
 それはなんと言う生命力か。
 否。それよりも恐ろしいのはその執念。
 その目を潰されようとも。
 その肌を焼かれようとも。
 その身を裂かれようとも。
 その心は挫けない。
 その執念はくじけぬこころの魔力、否。呪いの力がなせる技か。
289クジケヌココロ 5/7:2006/11/23(木) 02:47:18 ID:vTSkGyY70
「くっ……ソロッ!」
 助けるために身を起こそうとするが体が動かない。
「グッ……ガハ……ッ!」
 ソロが赤い血を、吐いた。
 万力と例えるのも生ぬるい程の圧力。
 ミシミシと胸骨が歪む音が聞こえる。
 左手に握り締められた天空の盾が、何とかその圧力に抵抗しているが、それも気休め。
 ソロの意識が霞む、このままでは圧死するのは時間の問題だ。
 そして、トドメとばかりに魔物の指に力が込められた。

「――――爆裂拳!」

 握りつぶすその直前、横合いから現れた男が魔物の腕を弾き飛ばした。
 拘束を解かれたソロの体は、その勢いのまま空中に弾き出された。
「ソロ!」
 投げ出され、地に叩き付けられるはずの体は、現れた男に空中で受け止められた。
 そして軽い音を立て、男は俺のすぐ横に華麗に着地した。
「大丈夫だ。生きてるよ。気を失ってるだけだ」
 男はそう言ってそっとソロを地面に下ろす。
「…………アンタは?」
「……とりあえず、そいつと一緒に下がってろ」
 背を向けた男は質問には答えず。
 ただ一歩、魔物へと踏みよった。
290クジケヌココロ 6/7:2006/11/23(木) 02:49:50 ID:vTSkGyY70
 そして、男――マッシュは巨大な魔物を見上げた。
 思わず飛び出したものの、状況はまったく持ってよろしくない。
 ウルの様子を見にいき、まず目に入ったのは巨大なモンスターだった。
 と言うか、このデカさだ。目にするなと言うほうが無理がある。
 それが、村の騒ぎの元凶であるのは一目瞭然だった。
 それが今も戦闘中である事がわかったため、すぐさま自分は駆けだした。
 魔物のもとたどり着き、目に飛び込んできたのは今にも握り潰されようとしている少年だ。
 考えるでもなく、体は動いていた。
 だが、冷静になって見ると、状況は一向によろしくない。
 目の前の巨大な魔物はハッキリ言って規格外だ。
 緊急時ゆえ助けたが、この少年がマーダーである可能性もある。
 しかも、少年は緑髪。可能性は高い。

 今は、とりあえずの迷いは置いておこう。
 まずは目の前のモンスターに集中しなければ。
 迷いを断ち切るように首を振る。
 敵は重傷だが、手負いの獣に油断は禁物。
 そのことはコルツ山での生活で充分に理解している。
 迷いあって敵う相手ではないだろう。
 気合を入れなおして、目の前の敵を睨みつける。
 丹田に力を込め、腹から深く息を吐き出す。
 精神を統一し、精神を切り替える。
 ここから先は、ただのマッシュでも、フィガロ王国第二王子マシアス・レネ・フィガロでもない。
 ――――ダンカン・ハーコートの弟子、格闘家マッシュだ。

 ゆっくりと構えを取り、ただ一言、開始を告げる。


「――――来い」
291クジケヌココロ 7/7:2006/11/23(木) 02:52:16 ID:vTSkGyY70
【ソロ(HP1/3 魔力0 気絶 体力消耗)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。
 第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。
 第三行動方針:ヘンリーを助ける。
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【バッツ(HP1/10 左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉
 第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) ティナの魔石 神羅甲型防具改 バーバラの首輪
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:目の前の魔物(ブオーン)を倒す
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】

【ブオーン(HP1/5 左目失明、重度の全身火傷 重度の裂傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:潰す
 基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】

【現在位置:ウルの村西の草原】
292保守:2006/11/24(金) 01:12:54 ID:WNhLICwj0
アルティミシアの○日目の放送より抜粋


私は、超不思議に思うことがある。それは、女子がゲームに乗らないこと。
私は魔女だし、よく時間を圧縮する。だけど、ゲームにのると、なんだか楽しい気分になる・ストレスかいしょうにもなる。
女子にとって殺人ゲームは楽しくないの?別に一般人でもEじゃん。楽しくなればVery Good☆

女子の人乗って下さい。男子だけ乗ってもはくりょくでんから、殺して下さい!
やる気はあるんですか?ちゃんとやっている人まで、まきぞいにしないで下さい。本ト(ム)(カ)(ツ)(キ)ます。
 ↑
 不良ぶってんのかしらんけど。

ちゃんところしてけっこうマジメなときもあるけど、、、、フザケてて、ころせてない時もあるし・・・
フィールド変更もうすぐ数時間後で、もうすぐなのに、だいじょうぶなのかな?

こらー!!女子乗れよ!!もう主催者側はイカってます。みんな参加者のロワイアルを楽しみにしてるのに。
大きな武器で思いっきり殺すと気持ちいいんだから。

主催者側のほとんどの子が思ってることを書きます。女子乗りなよ!乗らないより、乗ってる方がカッコEよ


男子もちゃんと歌ってくださいのガイドライン 2
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1134544888/l50
293名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/27(月) 05:58:18 ID:Jdm55OyS0
ho
294名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/27(月) 16:01:33 ID:lJjU7fGW0
補修
295名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/27(月) 17:16:10 ID:52MxRly0O
【だがこの保守には何のタクティカルアドバンテージもない】
296保守:2006/11/28(火) 03:48:09 ID:jfsl7DSLO
ツンデレレッド・ギルダー!
ロリコンブルー・セージ!
仇討ちホワイト・アルカート!
ムッツリブラック・アルス!
地味過ぎグリーン・フィン!

五人揃って!
無名戦隊ロワレンジャー!!
297名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 09:58:04 ID:R/6QarI80
>>296は無効です
298保守:2006/11/29(水) 02:33:14 ID:8VYQ+jt90
[ガーネット] 攻撃:93 素早さ:81 防御:81 命中:39 運:50 HP:171
[セフィロス] 攻撃:100 素早さ:44 防御:53 命中:65 運:20 HP:178

ガーネット vs セフィロス 戦闘開始!!
[ガーネット]の攻撃 HIT [セフィロス]は108のダメージを受けた。
[セフィロス]の攻撃 HIT [ガーネット]は95のダメージを受けた。
[ガーネット]の攻撃 HIT [セフィロス]は117のダメージを受けた。
[ガーネット]が[セフィロス]を倒しました(ラウンド数:2)。


[マリア(FF2)] 攻撃:81 素早さ:95 防御:79 命中:61 運:84 HP:231
[クジャ] 攻撃:81 素早さ:20 防御:92 命中:28 運:33 HP:149

マリア(FF2) vs クジャ 戦闘開始!!
[マリア(FF2)]の攻撃 HIT [クジャ]は54のダメージを受けた。
[クジャ]の攻撃 MISS [マリア(FF2)]は攻撃を回避した。
[マリア(FF2)]の攻撃 HIT [クジャ]は43のダメージを受けた。
[クジャ]の攻撃 HIT [マリア(FF2)]は73のダメージを受けた。
[マリア(FF2)]の攻撃 HIT [クジャ]は55のダメージを受けた。
[マリア(FF2)]が[クジャ]を倒しました(ラウンド数:3)。


魔法のMD5 - MD5バトル
ttp://www.newspace21.com/mix/btl.php
299名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/01(金) 21:20:31 ID:iYl55GB00
保守
300名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 13:05:59 ID:tbwrpxdx0
捕手
301名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/04(月) 06:41:56 ID:SwDRsgdn0
穂主
302名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 00:31:15 ID:OAlmdp3g0
火種
303名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 20:57:50 ID:rexKlMqfO
かっこう
304名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 22:28:25 ID:OAlmdp3g0
うぐいす
305名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 00:11:22 ID:fPp3o9JT0
うぐこす
306名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 00:44:55 ID:i5KsM1F70
もっこす
307名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 01:39:33 ID:L8ivhHcCO
ぐらこすっ!
308名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 01:41:43 ID:owPvyUXrO
ぐらこすの貴重な産卵シーン
309保守:2006/12/06(水) 02:38:34 ID:nvo+yd8t0
<がんばれ3rdのマーダーたち>
【ピエール】
  参加者撲滅のエースで今まで輝かしい戦績を誇ってきた。殺害方法、強さ、実績とも文句なし。
【セフィロス】
  ピエールと比較し出番のムラは多いが、大量虐殺にも一役買うお得なマルチマーダー。
【スミス】
  強力装備である飛行速度の低下は進んでしまったが、精神不安定な相手には相変わらずの強みを見せる。
【フリオニール】
  本能のままに喧嘩を売りパーティの死別を堅実にアシストする縁の下の力持ち。
【カイン】
  持ち前の機動力でフリオニールが漏らした参加者や重要フラグ群から放り出された参加者に止めをさす。
  神算・鬼謀系キャラではないものの作戦が鮮やかに決まった際、その威力は脅威的。
【ユウナ】
  ティーダへの愛で首輪の解析に断固立ち向かう頼れる存在。
【サラマンダー】
  致命傷を与える力はないが、体力の削れた参加者のトス役を地道にこなす仕事屋。
【ブオーン】
  目立ちすぎる体を鋼鉄の強度でカバーするクールガイ。どっしり佇み参加者を討つ。


がんばれ街の仲間たちのガイドライン
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1124352525/l50
310名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 08:53:47 ID:Vl28MfYmO
まあどんなに頑張っても殺されちゃうだけどねwww
311不幸の火種:2006/12/06(水) 12:49:42 ID:UUkEgC2F0
やあああ ´)・`・(ω

ようこそバーボンハウスバーボンハウス
ンハウスへこそようこそよう

テキララーラこのはサーサービスビスだからららららららら、まず飲んでで落ち着いていて欲しい欲しい。

うんん、「たま」だんな。済まないまないまないす。
仏の顔もって言うしねしねしねしね、あまやっててしるゆもらおもらもらおうとも思ていないい。

ででもも、このスレタイレタスイタイレスを見たときときとき、キミはははは、きっと言葉では言い表せない
「きめときとめとけとおとめきと」みたいななののもを感じてくれたと思うおもうもお。
殺殺殺殺殺とした世の中でででで、そういうそううい気持ちもきちきをををを忘れないで欲しいい、そそそそう思っててもお
このスレスレスレススを立てたんだだんててんだん。


じゃあ、注文を死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
312不幸の火種:2006/12/06(水) 12:56:29 ID:UUkEgC2F0
やあああ ´)・`・(ω

ようこそバーボンハウスバーボンハウス
ンハウスへこそようこそよう

テキララーラこのはサーサービスビスだからららららららら、まず飲んでで落ち着いていて欲しい欲しい。

うんん、「たま」だんな。済まないまないまないす。
仏の顔もって言うしねしねしねしね、あまやっててしるゆもらおもらもらおうとも思ていないい。

ででもも、このスレタイレタスイタイレスを見たときときとき、キミはははは、きっと言葉では言い表せない
「きめときとめとけとおとめきと」みたいななののもを感じてくれたと思うおもうもお。
殺殺殺殺殺とした世の中でででで、そういうそううい気持ちもきちきをををを忘れないで欲しいい、そそそそう思っててもお
このスレスレスレススを立てたんだだんててんだん。


じゃあ、注文を死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
313名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 21:55:45 ID:DPHm+rAy0
これは次の舞台はムーンサイドにしとろいうお告げ?
314名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/08(金) 23:27:17 ID:h+8aupYG0
保守
315名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/09(土) 22:49:21 ID:qx1qJY78O
ほしゅッス
316名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 16:02:17 ID:rucfgJzdO
保守!
317ユフィの決意:2006/12/10(日) 20:47:04 ID:JaupeM/CO
アルスとオルテガは必死だな。だがユフィは冷静に考えてた。こう言った。
「私!生き残る。
 生き残らなきゃ、エッジに悪いもん。
 エッジは命をかけて私を守ってくれた。
 男が私を助けるのは当然だから。
 エッジは男だった。
 だから私生き残る!」
そうユフィは5話前くらいから決意してたのだ。
密かだったから他の男はきずかなかった
今は築かれてない実行する時!
そしてユフィが決意を言い終わったら、アルスとオルテガは死んだ。
ユフィの決意は聞いた人が神経が止まって死ぬくらい
固くて大きいかったと言う事から闇の力が強い。

アルスとオルテガは油断したから死ぬことになった
このゲームでは油断は大敵なのだ…
アルスは思ったがもう死んだから遅かった

【ユフィ 行動方針:生き残る】
【アルス死亡オルテガ死亡】
318名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 21:04:36 ID:MhJgmATM0
>>317は無効です。
319保守:2006/12/11(月) 17:54:45 ID:Dj+Ujtfv0
暗闇に消えていく青い髪が、彼女を守れなかったことが忘れられなかった。
敵に追い詰められていたそいつを助けたのは、そのせいだったのかもしれない。
記憶を失い、物憂げな表情を浮かべる姿に、守れなかった人の姿が重なった。
利害とか、駆け引きとかじゃなく、俺はそいつを助けてやりたいと思った。

やがて、俺は愛する人を見つけた。
彼女のことも守ってやりたいと思っていた。
なのに気付けば、お互いの心はすれ違って、ぎこちない関係になっていた。
そして今、彼女は俺よりずっと頼りになりそうな金髪の男と一緒に行動し、俺は仲間と共にいる。

わかっている。彼女が悪いんじゃない。
避けていたのは俺の方だ。

…彼女が戻ってきた時、俺は素直になれるだろうか?






(ロワ内のティーダ)

誤解を招く紹介文を書くスレ
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1156595323/
320名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 23:55:25 ID:4LyZ3NQx0
>>319は無効です。
321名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/12(火) 16:47:37 ID:bbhXTaiKO
スコール「壁にでも話してろよ」
アルティミシア「そんなひどい……ぐふっ」
【アルティミシア死亡確認】
322名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 01:27:09 ID:qXIfEjP40
第一次DQ9祭りで落ちないように保守
323名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 18:06:24 ID:85xQcFdT0
保守
324男と少女のデジャヴュ 1/5:2006/12/13(水) 22:43:10 ID:mnXfMUqy0
いつかどこかで見たような気がするのは、長い髪だろうか。
何かから必死で逃げてきて、助けを求めるように仰いだ、その表情だろうか。


南から放たれた炎は、一瞬のうちにサイファーの進路を塞いだ。
大抵の人間なら、自らの身を守る為、北へ逃げることを選ぶだろう。
だが、彼はそうしなかった。
彼が云う所のロマンティックな夢――ヒーローとしての哲学が、逃げるという選択肢を拒んだからだ。
サラマンダーと名乗った男。夜空に聳える巨大な影。
殺人者という点でセフィロスと同等の位置に存在する脅威を見過ごすわけにはいかない。

襲い掛かる火の手から逃れ、かつウルに向かうため、東へと回り込む。
炎上する枝を打ち払い、燃えながら舞う木の葉を避けて走り出す。
ストック中の擬似魔法――殆どはイザの承諾を得てドローした雷撃や回復の魔法――に、炎を消せるようなものはない。
熱された空気が肺を焼く。
炭化した木が、自らの重みに耐え切れず倒れる。
嘲笑うように燃え広がる火を恨めしく思いながら、サイファーは残された道を探す。

数時間にも思える数十分間。
痛む右足を庇いながら、走り、迂回し、道無き道を切り開いた末に、彼はようやく村への道を見つけた。
そして、焼け落ちた建物の影から現れた、少女の姿を見た。

サイファーの姿に気付いたのか、少女は怯えた表情を浮かべた。
それでも、背負った幼子を隠すように、真正面を見据えたまま後ずさる。

一日と半分連れ歩いた彼女とは対照的な。
甘いと思う一方で、仲間として認められる程度には強い正義感を持った男に良く似た。
彼のいた世界において、自然には存在し得ないはずの色に染まった、長い髪が揺れる。
325男と少女のデジャヴュ 2/5:2006/12/13(水) 22:45:19 ID:mnXfMUqy0
(襲われて、逃げてきたってとこか……)

武器もザックも持っていない。加えて、今の態度。
彼女が殺人者でないことは明白だ。
それに髪の色で思い出したことがある。
サイファーの知る限り、青い髪の人間はイザ一人しかいない。
そして彼は、確か妹を探していた――

「チッ……
 そこのお前。死にたくなけりゃ着いてこい」

剣を収め、顎をしゃくる。
しかし、少女は呆然としたまま動かない。
サイファーの言葉を理解していないか、理解しても受け入れられていないか、どちらかだろう。
仕方なく、サイファーは棒立ちになった少女に近づき、その手を取る。
身を硬くし、声を上げる少女を無視して、火の手が弱い南東に向かって走り出す。

イザの妹ならば死なせるわけにはいかない。
だが、仮に彼女とイザが無関係だったとしても、やはりサイファーは少女を助けていただろう。
理由は一つ。
"助けてもいいと思ったから"、それだけの話だ。
326男と少女のデジャヴュ 3/5:2006/12/13(水) 22:54:19 ID:mnXfMUqy0
いつかどこかで見たような気がするのは、何かに苛立っているような表情だろうか。
闇の中から現れた、鋭く冷たい眼差しだろうか。

焦げた戸口から外へ出た時、燻る煙の向こうにリュックの姿を見つけた。
彼女に駆け寄らなかったのは、相対する男の姿に気付いたからだ。
ビビを傷つけた襲撃者の特徴は、ソロ達から聞いていた。
赤いドレッドヘアー――視界の中央にいる人物と同じ。

ターニアは考える。
リュックはエリアが宿屋にいることを知っている。
あんな場所で相手を牽制している以上、宿屋の状況にも気付いているだろう。
危険を冒して闇雲に助けを求めるより、動けないビビを安全な所に移動させ、他の人達を呼ぶ。
正しいかどうかわからない。けれど、それが一番いい方法に思えた。

男に気付かれない事を祈りながら、急いで宿屋の裏手に回りこむ。
そのまま、断続的に響く雄叫びとは反対の方角――北東へ走る。
雪のように降りしきる火の粉を払い、煙に咳き込みながら、必死で足を動かす。

どれほど走っただろう。
家並みが途切れ、煙が薄れ始める。
顔を上げると森が見えた。
その向こうに――見知らぬ、金髪の男の姿があった。

男は抜き身の剣を携えていた。
男は、ボロボロに切り裂かれ、どす黒い赤茶色に汚れたコートを纏っていた。
鉄錆に良く似た臭いがしたのも、決して気のせいではないだろう。

男は値踏みするようにターニアを見つめた。
剃刀のような視線と、乾いた血に、背中を向けて逃げ出したい衝動が心の奥から沸き起こる。
だが、ターニアは今、ビビを背負っているのだ。
後ろを向けば、ビビが相手の前に晒されることになる。
それは、ダメだ。
327男と少女のデジャヴュ 4/5:2006/12/13(水) 23:00:12 ID:mnXfMUqy0
恐怖はあった。
それでも、守りたいという気持ちが僅かに上回った。
真正面を見据えたまま、一歩、後ろに下がる。
それを見て、男が眉をぴくりと動かす。

これからどうすればいいのか、ターニアにはわからない。
イザや、ターニアが今まで出会ってきた人達なら、何か上手な方法や良い案を知っていたのだろう。
けれど、そんな頼れる人はいない。

ちょっと先のことを想像するだけで足が震えてしまう。
コートの染みが、だんだん鮮やかさを取り戻していくような錯覚に陥る。
血への恐怖が、覚悟を消し去ろうとしたその時、男が小さく舌を打った。

「チッ……
 そこのお前。死にたくなけりゃ着いてこい」

――何を言われたのか、全く理解できなかった。
剣を収めた男は、やがて苛立ったようにターニアに近寄る。
逃げなければと思っても、竦んでしまった体は動いてくれない。
乱暴に腕を捕まれ、引っ張られる。
どこへ連れて行かれるのか考えるよりも、男の歩みの方がずっと早かった。
村が遠ざかっていく。
宿屋が遠ざかっていく。
助けを待っているエリアが遠ざかっていく。

「ま、待って! まだ、人が……人が!」

ありったけの勇気と覚悟をかき集めて叫んでも、男は止まらなかった。
一体、自分はどうなるのだろうか?
いや、その前に、これ以上離れる前にエリアのことを伝えないといけない。
それがわかっているのに、声が思うように出てくれない。
どうすればいいのか、わからない――
328男と少女のデジャヴュ 5/5:2006/12/13(水) 23:01:02 ID:mnXfMUqy0
【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:ターニア達を安全な場所へ連れて行く
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先) 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:なし
 第一行動方針:予想外の自体に混乱中/宿屋を離れてビビの安全を確保
 第二行動方針:エリアの救出
 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ(気絶中 ターニアにおんぶされている)
 所持品:なし
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:ウルの村・東の外れ】
329名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/15(金) 21:04:08 ID:Qj9SVM480
「命ささえるレスよ、我らを庇護したまえ
 止めおけ! 保守!
330名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/15(金) 22:29:06 ID:dAWTomnD0
>>329は無効です。
331名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 02:44:06 ID:BTX/U46k0
ちょwwwwww保守は通してやれよwwwwwwwwwww
332名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 04:18:11 ID:PAI7QApCO
>>331は無効
333名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 23:30:41 ID:MskQK48H0
アッー!
334名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/17(日) 01:29:19 ID:khHDmnXo0
>>333は無効でございます。
335名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 01:02:04 ID:oE/hl8eVO
ボッシュ
336名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 01:08:49 ID:eIn/WvGP0
>>335はボッシュです。
337名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/20(水) 21:46:03 ID:MjA+fEpQ0
保守。
>>338が作品で無いなら、それは無効です。
338名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/21(木) 04:18:48 ID:l8VA3mfw0
>>337は無効です。
339Raise 1/8:2006/12/21(木) 08:38:06 ID:nCncd69s0

周囲は人々の歩む音と怨嗟の声が混じった低い音、振り返れば夜を焦がす赤い光…
葬列のような人の流れ、少年もまたその一部として歩く。
どうして、戦火は自分たちを焼くのか?
なぜ、自分達の側には力が無いのか?
自分達の生活を破壊した狼藉者どもを殴り飛ばす事もできない拳を握り締め、どうしようもない無力を噛み締めて少年はただ歩きつづけた。
少し前を行く母親も隣を歩く妹も一言も発することはない。
地を這うように人々は黙々と進んでいく。
寄り添い歩く老夫婦の背中、我が子を背負った母の背中、持たざる者たちの背中―――
油の流れのように、無力な人々は歩いていく。




足元からの土と木を蹴る音が孤独に森を進んでいた。
少女を背負い約束の場所へと向かう男、ウィーグラフ。
ふと浮かび上がった少年時代の思い出を道連れに、ただ歩きつづけた。


340Raise 2/8:2006/12/21(木) 08:39:32 ID:nCncd69s0

森と山、それらに挟まれたほんの小さな開けた場所。
ラムザのために置いてきた地図に記した場所へはあとほんのわずか北上するだけの位置。
壮年の戦士と別れて以来一言も発することなく歩き通してきたウィーグラフは最後の準備を兼ね休憩を取る事にした。
ラムザに見せ付けるように誘拐してきた少女を静かに降ろし樹へと持たれかけさせる。
ウィーグラフはここまでの道中で彼女に関するわずかな記憶もまた思い出していた。
昼間、カズスの村近辺で六人のグループの一員であった少女。
宵の入り、その六人の一人であった白魔道士がピエールに追われていたことからおそらくグループごとあの時の襲撃に巻き込まれたのだろう。
その後の経緯は分からないが誘拐の直前には既に彼女のいた集団は半壊していた。
そして今はついに一人ぼっちだ。

カンテラの光に照らされたその身体は小さく、頼りない。
顔の右側、右目を覆い隠すように巻かれた包帯はその下の傷を推測させる。
地面に引かれるまま、力の入っていない手足はその無力さを強調して見せている。
そして参加者全てを戒める首輪が――子供につけられているだけより一層――哀れさを演出していた。
ウィーグラフは自分の首にある同じ物をそっと撫でる。
指先に触れた冷たい金属の触感に、自分達はゲームの駒である、という現実を再認識させられる。
無力な子供の姿に、そんなゲームの中でさえ立場の弱い人間がいる事実を再認識させられる。
力を持たぬ者は何をやっても夢を実現化することはできない。
いつか自分が口にした言葉を呼び起こしながら、ウィーグラフは今更“持たざる者”の現実を直視させられる皮肉をあざ笑った。
同時にこのような舞台を作り上げた魔女の残酷さを思い浮かべて嫌悪を感じた自分に気付き、いや、と頭を振る。
――上から見下す目線の残酷さについて自分に語る資格があるだろうか。
自身もまた目的のために利用できるものを駒として扱っているのだ、
だから闘争に夢中になっている人間には見えない視点を思い出したというべきであろう――
自分を納得させるように心中のモノローグを進めながら、ウィーグラフはもう一度無力な姿に目を落とした。
「力を持たぬ者は何をやっても夢を実現化することはできん」
諭すように、声に出してみる。目覚める様子はまだない。
341Raise 3/8:2006/12/21(木) 08:45:17 ID:nCncd69s0


ウィーグラフの前には複数のザックが並べられている。
先ほどから男の手はそれらの中身を取り出しては選り分ける作業を繰り返していた。
鞭に銃器、タンバリンにカードの束、奇妙な力を感じる黒い石。
取り出しては選り分ける、その繰り返しを機械のようにこなす手が、折りたたまれた紙をつかんで動きを止めた。
手にした紙の内容をもう一度、確かめるように眺める。
それからぶ厚い本のあるページを探してしおりのようにその紙を挟みこみ、ザックの一つへと放りこんだ。

『やはり、おまえはわかっていない。我々が剣を棄てない理由を!』
過去の記憶が浮かび上がったせいか。
作業の合間合間に、ウィーグラフはそんなことを思い出していた。
…骸騎士団は義勇軍として、戦禍の被害者として戦乱を鎮め平和を取り戻すために立ち上がった。
…骸旅団は革命軍として、使い捨てられた者の怒りを示すため反貴族を掲げて活動した。
…生き残ったその団長は神殿騎士として、単独の力の限界を悟り力ある組織の一員として動いた。
…そして今は、復讐に逸る剣が残るのみ。
まるで人事のような自己分析は次のように締めくくられた。
「結局は夢も理想も…いや波紋一つさえ残せていない。小さな男だ、骸旅団の団長とやらは」
少女のザックからたった4つぽっちのアイテムをつかみ出しつつ、嘲笑含みに吐き出す。
「何の夢であっても最後まで醒めずにいられたら幸せだったかも知れんな。
 ………今更意味のない話か」
盾を奪い銅製のナイフを懐に収め、何事も無かったかのように二つのザックの口を閉じる。
それからウィーグラフは再び少女を背負い北へ――約束の場所へとこの場を後にした。

342Raise 4/8:2006/12/21(木) 09:01:29 ID:nCncd69s0
湖畔。
身じろぎを見て取り、ウィーグラフは人質の目覚めを知る。
「「んー…………誰? ここどこ?」
寝起きの探る視線はウィーグラフ、そして辺りの風景と順に移り、月光を淡く照り返す湖面で止まった。
「……天国って結構地味なんだー。…結局あたしあのズンドー暴力女に殺されちゃったってコト?
 みんなはどうなっちゃったんだろう………ねーねー、もしかしておっさんも殺……」
くるりと振り返った小さな身体の目の前、一振りの間合いより近い程度の距離にさくりと剣を突き立てた。
「天国ではない」
言いながら、自分の首に手をやってカチンッ、と硬質の音を鳴らして見せる。
確認するように少女の手も己の首に伸びた。空いた手も、肉の実感を確かめるように身体に触れる。
「え、首輪………〜〜〜?〜〜〜〜生きてる、じゃあここはどこ? なんでこー…!?」
にわかに混乱している少女を上から見下したまま、ウィーグラフはできるだけ威圧的に告げた。
「簡潔に、私は誘拐者でおまえは人質だ。なに、抵抗せねば危害を」
言葉途中で少女が飛び退り、武器でも探るのかこなれた動きでザックの中へと手を伸ばす。
その速さは予想外ではあったものの、行動自体はウィーグラフの想定範囲内。突き立てていた剣を振り上げる。
「リルム様を…ってあれ? ちょっと、待って、」
彼女が行動を為すよりも早く、そのわずか左側を下からの衝撃が突き上げた。
威嚇の狙い通り直接当ててはいないものの、バランスを崩した少女はしりもちをついて転ぶ。
遅れて帽子がふわりと地面にたどり着いた。
「鬼神の居りて乱るる心、されば人、かくも小さな者なり…。
 立場の上下を理解したら無駄な抵抗は止せ。原因がなければ危害は加えないと約束する」
「………勝手なことゆーな、この犯罪者! あんたなんか、似顔絵描くぞ!」
ウィーグラフには似顔絵、が何のつもりかは分からなかったが、戦力差を理解して口撃にシフトしたことはわかった。
それにしてもほとんどひるんだ様子の無いその態度、なんとも肝の据わっている――
などと場違いな感心さえしながら、聞き流す。
と、突然悪口が止み、さらにはトーンダウン。
「う…ぐすっ…リルム、こんなところで一人寂しく死んでいくんだ…
 リルムなーんにも悪いことしてないのにぃ…えーん、えーん……」
343Raise 5/8:2006/12/21(木) 09:02:38 ID:nCncd69s0

ウィーグラフの中につい本気で泣かせてしまったかという戸惑いがわずかに浮かぶ。
が、根底の冷静さまでがそれに惑わされることはない。
「いつまでも泣いていてくれて構わないが、一つ忠告する。
 こういった局面でそのような態度は相手の逆上を招くこともあることを覚えておくといい」
「うー……」
どうやら偽装だったらしい。
「あとでぜーったい似顔絵描いてやるからな! このー、覚えてろ!」
一瞬でも泣かせてしまったか、などと考えた男は苦笑するしかない。
本当に状況を理解してるのか疑うくらい、敬服に値する程の精神的なタフさ。
その強さ、タフさの向こうに子供の無知と世間知らずを垣間見て、ウィーグラフに生じる小さな苛立ち。
本当のところはただ無力では終わらないと夢見ていたいつかの少年を垣間見たからかも知れない。
ともかくそれが、ウィーグラフに質問をさせた。
「……お前はこの世界、この遊戯、この状況下においてもまだ生きる…
 いや、抵抗する気があるとでもいうのか?」
「あったりまえでしょ! みんなでケバケバおばさんをぶっとばして帰るんだよ!
 リルムがいないと寂しくて参っちゃうジジイをほっとけないし!
 あと、お前じゃなくてリ・ル・ムだからね」
「なるほどな。しかしたとえ独りになっても同じことが言えるか?」
「ひとり……?」
「そうだ。
 求めたものは得られず、仲間を失い、自分の限界を突きつけられてなお、そんな強気でいられるか?」
想像を促すように、圧力をかけるように見下ろしてやりながら言葉を続ける。
「そうなれば、夢も理想も何も実現できない。あとは無惨なものだ!
 恐怖に怯えて一人だけ生き残れるという甘言に擦り寄るか。
 希望を矮小化してせめて生き残ることを正当化していく路を選ぶか!
 それとも、感情を糧に大事な仲間の仇を追い続ける復讐鬼を選ぶかッ!
「うるさーいッ! ひとの仲間を勝手に殺すんじゃねー!
 そんな最悪なことばっか考えてるから犯罪者なんかになるんだ、このネクラ!
 やってみる前からあきらめちゃってどーするんだよ!」
344Raise 6/8:2006/12/21(木) 09:04:01 ID:nCncd69s0
思わず失笑してしまうほどにどうしようもなく青く、幼い考え方だと思った。
神殿騎士だった頃ならそれこそ反射的に罵倒していただろう。
けれどあの頃の少年やミルウーダだったら、きっと少なからず共感を覚えていただろう、とも思う。
では、今は――――?
返答を探るように見上げる視線に気付き、我に返る。

固くなった空気をぶち破るように。
ウィーグラフは楽しさをみじんも感じない居丈高な笑いを浴びせかけてやった。
「ハッハッハ、そう思うならやるだけやってみるがいい。
 さんざ罵ってくれた礼だ、私からも骸旅団団長の汚名を贈ってやろう」
「団長? ムクロリョ団?」
「その骸は戦火に焼かれた骸、一度ならず地を這いずった者達の集う旗……だった。
 だが本質は叶いもしない夢の笛の音に踊らされていただけだッ!
 ふふふ、愚か者にはぴったりだと思わんか」
「難しい言葉並べればコドモにはわからねーだろとか考えてるな!
 要は悪口でしょ! いらないッ!」
「いらないとは我侭な。悪名をえり好みできるなどとは聞いたことも無いが――
 好きにすればいいさ、リルム団長。
 さて無駄話もこれまで。どうやら――時間だ」
視線をそのままに、男は後背にざわめいた気配に注意を向けた。
ゆっくりと二人の間の地面に剣で線を引き、いくらか温んでいた雰囲気をがらりと変えて鋭く冷たく警告した。
「もう一度言っておくが、邪魔立てせねば一切危害は加えない。
 逆に干渉する気なら遠慮なく戦闘に巻き込む。いいな」


345Raise 7/8:2006/12/21(木) 09:06:04 ID:nCncd69s0
持ち上げた剣を、威嚇に見せつけた一撃の鋭さを想起するようにすらりと下ろしてみせ、
それから既に目で判断できる範囲内に入っていた宿敵の方へと向き直る。
「来たぞ、ウィーグラフッ! 僕らの因縁にその子は関係ない!
 まずはその子を解放しろッ!!」
あたりに、どうしようもなく男の敵意を呼び起こす声が届いた。
この不思議な復活の生における決着の時がまさに来ようとしているのだ。
一瞬にして燃え盛った闘志が不倶戴天の相手との対決に一歩を踏み出させる前に、
けれど思い出すようにウィーグラフは振り返った。
懐を探り、おもむろにリルムへ向けて取り出した小ビンを放り投げる。
「それは餞別に差し上げよう、団長。
 それから、少しでもあがくつもりならエドガー=ロニ=フィガロという人物を探しだすがいい」
言い終わるやいなや、ウィーグラフは振り切るように地を蹴る。
後ろでリルムが何か叫んだようだが、もはや雑音でしかない。
宿敵へと近づいていく一歩一歩ごとに、激情が溢れ出してくる。
いつかのように整った舞台の上で、ウィーグラフはその気持ちをぶちまけるように叫んだ。
「“持たざる者”の気持ち、境遇ッ、少しは肌で理解したかッ、実感したかッ!
 思えば今我々は初めて対等な関係にあるのだッ!
 さあ、決着をつけよう! あの娘を返して欲しくば私を倒してからにするがいいッ!!
 いくぞッ! ラムザ=ベオルブッッ!!」
346Raise 8/8:2006/12/21(木) 09:07:18 ID:nCncd69s0

【ウィーグラフ(HP2/3)
 所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭、暗闇の弓矢 
 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 エリクサー×4 首輪 英雄の盾、ブロンズナイフ
 第一行動方針:ラムザを討つ
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】

【リルム(HP1/2、右目失明、魔力消費)
 所持品:絵筆、祈りの指輪、不思議なタンバリン、エリクサー 
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪 研究メモ
 第一行動方針:戦闘を止める? 】

【ラムザ(ジョブ・アビリティ不明)(HP4/5、MP3/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフからリルムを取り戻し、決着をつける
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:湖南岸部の東端】
347名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/23(土) 06:47:43 ID:dyLmtQCY0
「小さき者、弱き者、死に急ぐ者
 身を守る術を思い出せ… 保守!
348名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/24(日) 00:39:39 ID:yKLdybj40
ほあしゆゆ
349名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/24(日) 23:15:49 ID:iLTfpayL0
ほしのあき
350名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/26(火) 00:15:21 ID:iguHTQYHO
新作期待保守
351名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/27(水) 14:18:26 ID:H0G45Gxk0
保守
352煙が出たなら火種が散らばる 1/12:2006/12/29(金) 00:12:14 ID:Byw2lQCT0
「貴様のような悪人を生かしておくわけにはいかんでござる!」
ライアンが怒りを込めた一撃を繰り出す。

「ほう? 俺はただ、生きるために必要なことをしているだけだが?」
カインは槍で軽くさばき、お返しにとばかりに神速の突きを繰り出す。

「己のために、他人を犠牲にするようなことが許されるはずがないでござるよ!」
ライアンは足を後ろに一歩下げてかわし、そのまま一回転してカインを横に薙ぎ払う。

「今朝の裏切りのことか? あれは騙されるほうが悪いのだろうが」
カインは上に飛び上がり、剣閃の範囲内から逃れると同時に、槍を下に構えてそのままライアン目掛けて飛び降りる。

「貴様……!!」
ライアンが横に飛んで攻撃をかわすが、カインはそこは予想済み。着地したと同時に槍で連続して突きを繰り出す。
世界によってはさみだれ突きを思い浮かべるような、一撃の威力よりも手数を重視した攻撃。
だが一撃一撃が異常に重い。つい先ほどまではライアンにこんな感覚はなかった。
彼は知る由もないが、これを引き起こしたのはルカナンの魔法。正確に言えば草薙の剣による守備力減退の魔法。
アルガスが物陰から密かにかけ続けていたものだ。
一回一回の効果はバイキルトには及ばないものの、重ねがけができるというのが大きな違い。
何度も受ければそれなりの効果は出る。
353煙が出たなら火種が散らばる 2/12:2006/12/29(金) 00:12:58 ID:Byw2lQCT0
「どうした? 攻撃の手が緩んでいるぞ? 逃げる準備でもし始めたのか?」
ルカニ系は要するに物理攻撃に対する抵抗力を弱める魔法だ。
攻撃を受け止める際の衝撃が大きくなり、そのために隙も大きくなりやすい。
そして、この状況で隙を見せてしまえば、即座にカインの槍によって貫かれてしまうだろう。
命のリングによる自然回復が無ければ、もう力尽きているかもしれない。

「貴様こそ、戦いの最中でも逃げることばかりを考えている臆病者ではござらぬか!」
カインは技量もさることながら、ランスオブカインという強力な武器を持ち、
ライアンの攻撃が当たらない距離を保ってちくちくと攻撃を仕掛ける。
攻撃が当たっても、何かに守られているのかほとんど傷が付かない。
間合いを詰めても、カインは卓越したジャンプ力で上空へ一旦退避し、距離をとって着地する。

「フッ、戦いでは間合いが重要なのだよ」
ライアンの使用武器は兵士の剣。レイピアは打ち合いには向かないし、それ以前に折れていて使えない。
兵士の剣のほうも、レイピアよりマシだが耐久力の面でも威力の面でもカインの武器と比べれば大幅に劣っている。
さらに、盾も篭手もないので、相手の攻撃はかわすか剣で受け止めるしかない。
相手と打ち合うたびに武器が悲鳴を上げる。
ライアンも退くことを考えざるを得なくなっている。
少なくとも、今の状態で正面からやりあうことは無理があるのだ。
だが退くにしても、なるべくカインを拠点の屋敷から遠ざける必要がある。
戦いに気付いた者が安全な場所に避難していることを願う。
相手の一撃を大きく弾き、そのまま南に向かって駆け出す。

「ほう、かなわないと分かって逃げるか」
カインはライアンを追う。支給品はまあアルガスがまた回収するだろうと考えて放置。
今すぐ使うものはすでに自分のザックに詰めてある。戦闘の際に荷物の持ちすぎは邪魔になるだけだ。
加速装置のスイッチを入れて、駆け出す。
354煙が出たなら火種が散らばる 3/12:2006/12/29(金) 00:13:30 ID:Byw2lQCT0
「サイトロ……うん、どうも見えにくいねえ」
普段はパルメニ盆地内くらいなら見渡せるのだが、この魔法には制限がかかっているらしい。
簡単に仲間と合流されても困るので、当然といえば当然なのだが。
屋敷の中からでも一応使えるのは運がよかったといえる。
クリムトの言ったあたりを探ると、4人ほどの集団が見える。
場所は視界範囲ギリギリ、ネルブの谷より少々南といったところ、暗くてぼやけているので容姿ははっきりしない。
強大な気配とやらはその中か。クリムトから人数を聞きだしてはいなかったが、4人もの大集団ならひとまず大丈夫だ。

殺人者が4人も集まってパーティを組むことはまずないだろう。
カインなどのように、裏切り者が潜んでいる可能性もあるが、そういう人間が行動を起こすならタイミングが重要。
例えばメンバーの一人がはぐれたとき、旅の扉が現れたとき、ゲームに乗った参加者に襲われたとき…。
殺人者が潜んでいるとして、今すぐ行動する可能性は低いわけだ。
まあ、そういう人間がいた場合怪我をして寝込んでいるアリーナに何をするか分からないし、
全員が反主催者であっても偽者のアリーナに間違えられるかもしれないので、アリーナの避難は正解であろう。
問題は、アルガスは不審な影を見たというが、あの位置がこの町から見えるのはありえない。

別の方向に意識を集中させると、見つけた。
おそらくクリムトは向こうの四人組に気を取られて感知できなかったのだろう、まったく反対の位置にいたようだ。
現在ライアンと戦っている。アルガスの姿は見えないが、どこかで隠れているのだろう。
355煙が出たなら火種が散らばる 4/12:2006/12/29(金) 00:14:56 ID:Byw2lQCT0
アルガスはこれからどう動くかを決めかねていた。
本当はカインをサポートするつもりだったし、そのために魔法屋を漁ったりもしていた。
戦闘が始まってしばらくは建物の影から草薙の剣(皆殺しの剣ではさすがに危険だろう)を振って守備力を下げるなどはいたが、必要性が感じられない。
武器は強力な槍、防具はミスリルシールドにミスリルの篭手、装飾品はプロテクトリング、サポートアイテムに加速装置。装備だけ見れば白兵戦で負けるはずがない。
さらに言えばミスリル装備には魔法に耐性があるので、魔術師相手でも善戦できる。
さらにカインは竜騎士だ。カナーンは建物や水路が多いが、そういった地形は無視できる。
全く危なげがないどころか、むしろ余裕。この分なら、すぐに決着は付くのはあきらか。
もうあっちはあっちで任せておいて、今のうちに別の計画に着手しようかと考えていたとき、予想外の事態が起きた。
誘導する前にウネが屋敷から出て行ってしまったのだ。まっすぐライアンとカインが戦っているところへと向かう。
今は空のザックが残されているはずだが、ウネは、散らばったザックの一つを拾い上げる。
「何か入っているのか? まあいい、入っていたとしても大したものはないはずだ」

それよりも、ウネが出て行ったということは屋敷に居るのはクリムトとアリーナのみ。これは彼にとって好都合。
あの屋敷の周りはあまり手入れがなされていないせいか、野草が生え放題だ。
こっちには、拾った6人分のランプがある、これだけあれば油も結構な量になるだろう。
ついでに魔法屋で見つけた薄い布とか屋敷のふかふかのベッドなんかはよく燃えることだろう。
部屋の間取りも把握済みなので、寝室の窓あたりから火をつけて投げ込んでやればあっという間にベッドに燃え広がる。
あとはどうなってしまうのかは容易に想像できるが、想像はしない。やりにくくなってしまう。
武器屋から何か拝借して直接始末するべきかとも思ったが、アルガスには直接人を殺すということができそうにない。
間接的に、相手の死に立ち会わない方法で殺すしかないのだ。そして、このことは絶対にカインに知られてはいけないことでもある。
「あばよ、お姫様」
アルガスは木の棒にくくり付けた布に油をしみ込ませ、それに火をつけた。
356煙が出たなら火種が散らばる 5/12:2006/12/29(金) 00:16:10 ID:Byw2lQCT0
ライアンは通路をジグザグに曲がって加速装置の効果を弱めようとするが、結局追いつかれてしまう。
それでも町の南門あたりまで誘導することはできた。
「時間稼ぎというわけか? 老人二人と重傷者を残していてはそれはそれは心配だろうな?」
「何故それを知っているのでござるか!?」
「フッ、俺の隠密能力がお前より優れている、それだけのことだ」
「く…、拙者の仲間にはもう指一本触れさせないでござるよ!」
ライアンが渾身の力を以ってカインを薙ぎ払う。カインはミスリルシールドを使って受け止める。
ついに兵士の剣は衝撃に耐え切れずに根元から折れ、川の中に弾き飛ばされる。
「拙者の仲間、か」
ライアンは急いで武器をレイピアに持ち替えるが、すぐにカインが反撃する。
「まったく、おめでたいやつもいたものだな!」
ライアンの体ではなく、武器を狙った攻撃。レイピアもすぐに弾き飛ばされ、
奇しくも兵士の剣と同じ軌道を描いて川の中に落ちていった。
ルカナンで守りを奪われたライアンも、剣を弾き飛ばすほどの衝撃に耐えることができず、地面に倒れた。

「そろそろ年貢の納め時だろう。お前は仲間とやらの真実を知らずに死ねるのだ、むしろありがたく思うんだな」
「貴様、それは一体…」
ライアンの問いが終わる前に、カインが足に力を込める。退避のためのジャンプではなく、攻撃のためのジャンプ。
外面的にはさほど変わらないが、意識を変えることで人の身体は自然とはたらきを変えるものだ。
逃げようと思えばそれに適した身体に、攻撃をしようと思えばそれに適した身体になるのだ。
一旦上空へ飛び上がってからの急降下。

「さあ、楽にしてやろう!」
一筋の流星のごとき一撃がライアンに降り注ぐ。
「エアロガ!」
「何だと!」
それは下から吹き上げる突風によって押し戻される。
357煙が出たなら火種が散らばる 6/12:2006/12/29(金) 00:17:24 ID:Byw2lQCT0
威力を落とすかわりに広範囲にエアロガの魔法をかけ、確実にカインに命中するようにしたのだ。
元々対空用に開発された魔法である。多少威力が低くても空中にいる相手には効果抜群というわけだ。
下から吹き上げる風の板に乗って、カインは上空へと吹き飛ばされる。

「ウネ殿! 何故ここに!?」
「あはは、何故ここに!?はないだろう。戦いの音がしたから来てみれば、間に合って良かったよ。
 さて、細かいことは後回しだ。今はあの男を倒すことを考えるよ。とりあえず受け取っておきな」
ウネが天空の剣にも匹敵するかのような、非常に立派な騎士剣をライアンに渡す。
ついで、ライアンにかけられた魔法を打ち消すべく、ウネが詠唱を始める。

「させるものか!」
ミスリル装備で身を守ったため、カインにダメージはあまりなかった。
無事着地して、ウネに攻撃しようとするが、その前に詠唱は完了、ライアンの体からオーラのようなものが抜けていく。
エスナの魔法でライアンの守備力を元に戻したのだ。
「貴様の相手は拙者でござる!」
武器の強さも状態も同等。これならしっかりと攻撃を受け止められる。
ライアンがカインの攻撃を上手く防ぎ、その間にウネはさらに詠唱を続ける。
ヘイストの魔法。これでライアンは相手の素早さに付いていけるようになる。
続いてプロテスの魔法。光のオーラで包み込み、攻撃の衝撃を和らげる魔法だ。

カインはライアンにはめられた指輪が、温かい光を放っているのに気付く。
スミスはライアンを攻撃したとき、確かに手ごたえがあったと言っていた。
事実、彼はその後ぴくりとも動いていなかったし、あれだけの衝撃を受けたなら即死と言わずともそのまま力尽きてしまうはず。
だから、フライヤが放送で呼ばれたのにもかかわらず、ライアンが呼ばれなかったのは不思議だったのだ。
回復呪文をかけても、そんなにすぐに回復するとは思えないのに、今会ったライアンはピンピンしていた。
今も、あちらこちらの傷が固まりかけている。その指のリングのおかげなのだろう。
カインもライアンも強力な補助呪文やアイテムに守られている、このままでは埒があかない。一撃で勝負をつけるしかない。
358煙が出たなら火種が散らばる 7/12:2006/12/29(金) 00:18:59 ID:Byw2lQCT0
――集中――


「うおおお!!」
カインが槍を両手に持ち、加速装置で凄まじい勢いを付けて突進する。
「これで決めるでござる!」
ライアンはカウンター気味にカインの心臓の位置を狙って剣を振るう。

(手ごたえあり! 決まったでござる!)
ライアンの剣がカインの無防備な心臓を切り裂き、相手の身体機能をすべて停止させる。はずなのだが
「いかん、ライアン、避けな!」
ウネの声を聞いて反射的にその場を動こうとするが、そのときにはライアンの体には大きな傷が刻まれていた。


「俺の演技力もなかなかだろう?」
カインには傷一つ付いていない。
止めを刺したと確信し、だからこそなおあり得ない事態に遭遇して頭が付いていかない。
エクスカリパー。エクスカリバーと同等の威力を誇る剣。
唯一違っているのは、この剣の力によって与えたダメージはすべて極小化されてしまうということ。
たとえ幼児に向かって剣を振るっても、殺すことは不可能な剣なのだ。
カインはウネが渡した剣がそれだと知り、わざと焦っているふりをし、そして斬られた。隙を作り出すために。

「やはりプロテスが面倒だな。まあいい」
ライアンの傷は致命傷というほどではない。
だが、突然彼は武器をむちゃくちゃに振り回して走り回り、挙句の果てには転んでしまっている。
ランスオブカインにも説明書は付いていた。これで相手を傷つけると理性を破壊することがある、と。
ピサロのときは何故か状況が悪化してしまったのだが、今回はうまくいったというわけだ。
実際は倒しやすいほう、つまりライアンを倒すべきなのだろうが、またエスナで回復されるのも面倒。
ウネがすでに詠唱を始めている。加速装置を用いてウネの元に駆け寄り、刺し貫こうとする。
だが、ウネは一撃を見事にかわして柄をつかみ、光が放たれたかと思うと、二人の姿は消えうせてしまった。
359煙が出たなら火種が散らばる 8/12:2006/12/29(金) 00:21:41 ID:Byw2lQCT0
「くそ、時間がかかったな…」
ただ火を付けて、投げ入れるだけ。だが、それでこんなに時間がかかるとは思わなかった。
ここに来る前は何の戸惑いもなく殺せていたというのに、今はこのザマだ。
アリーナのいる寝室にも近づけず、仕方ないので結局別の部屋に火を付けることになってしまった。
冷や汗がだらだら出ている。初めて人を殺したときもこんな感じだったか。
やはり人を殺すことに強い嫌悪感を抱いているということなのだろう。
やたら時間を食った割には中の二人に気付かれなかったのが幸いだ。
盲目と重症の怪我人では気付いても何もできないのか?
逃げられている可能性もあるが、さすがに確かめに行く気にはなれない。
「カインは……まさかヘマして倒されているなんてことはないと思うが」
さきほど戦闘場所のあたりから飛んでいった二つの光も気になる。
山の上に行ったようだが…山登りはごめんだ。
焦ってもいいことはないし、ここはひとまず様子を見るべきだろう。
360煙が出たなら火種が散らばる 9/12:2006/12/29(金) 00:25:10 ID:Byw2lQCT0
先ほどまで町の門前で戦っていたのに、いつのまにか町から離れてしまっている。
「なるほどな、ライアンやら他の仲間やらを助けるために俺を道連れにして遠くに飛んだ、ということか。
 しかし厄介な場所に飛ばしてくれたな…」
町ははるか下方だ。今二人がいるのはジェノラ山の斜面。北側なので登山道などというものはない。
テレポの魔法。デジョンの元となった魔法で、主に縦軸寄りの移動に使う。
険しいジェノラ山の麓だったから、地面がある場所にワープできたのだ。
詠唱時間さえ稼げればよかったのだが、カインの接近によって細かい操作は無視せざるをえなくなった。

「アンタが近づいてこなかったら、アタシは飛ばなくて済んだかもしれないけどねえ」
テレポ自体が白魔法では低級ということもあり、詠唱時間がかからないが他人への成功率、命中率が低い。
それでも自分にはほぼ確実に成功させられるため、カインごと道連れにしたというわけだ。
「さて、仲間とはぐれちまった。アンタみたいな危険なのを見逃すわけにもいかんし、せっかくだからお相手してあげようかね」
「フッ、それはこっちのセリフだ」
ウネが掌に魔力を集める。他の参加者はおらず、いるのはウネとカインだけ。これなら他人を巻き込むこともない。
ウネは奇襲、裏切りを得意とするような相手は倒せるときに倒しておくのがよいと考え、
カインはまた装備や地の利がある今なら有利に戦えると考え、戦いを挑む。

町のほうが明るい。屋敷が燃えているようだ。
こっそりと町に入って裏切り者と組み、偽の殺人劇を仕込み、パーティを分断し、相手方をパニックに陥れ、相手の拠点を火に包む。
どこか既視感を覚えながらも、カインは武器を構える。
一方ウネは仲間とははぐれたものの、彼らなら多少のことでは動じまいと考え、戦いに臨む。
ライアンについては、混乱は一時的なものですぐに解ける、指輪の効果もあるので冷静になれば殺されることはない、
そして火をつけた犯人がいても、先ほどの4人組がやってくるので下手に手は出せないと考える。
ウネはこう考えているが、ランスオブカインの効果による魔法的な混乱がかかっているのは知らない。
361煙が出たなら火種が散らばる 10/12:2006/12/29(金) 00:26:29 ID:Byw2lQCT0
刺された瞬間から記憶が飛んでいる。
ウネとカインはどこへ行ったのか。何故屋敷は燃えているのか。何故生きているのか。

燃えているのは拠点にしていた屋敷。中に居るのはアリーナとクリムト。ウネは殺されたか? いや、死体はない。
……考えてみればおかしい。

この町に来て二手に分かれようと言い出したのはアルガスだが、そこは問題ではない。
問題は二手に分かれたあと、ウネ達のほうには、何が起こったのかということだ。
思考がまとまらないが、確かテリーが突然暴れだし、その後クリムトは気絶。
クリムトが目を覚ましたときにはテリーは死に、アリーナは重症、サイファーがウネと対峙していたと聞く。
本当にアリーナはテリーとの戦いだけで傷ついたのか。
サイファーのウネへの敵対は、本当に誤解から来たものだったのか。
アルガスはサイファーのことを気に入ってはいないと言っていたが、むやみに人を傷つけることも無いと言っていたのだ。

それとは別に、カインは裏切り者で、自分はカインの飛竜のスミスに奇襲され、そのうえで気絶した。
そのあとにウネがやってきて、自分を助けたという。
ウネとアリーナを二人きりにした結果、戦いが起こり、最初から最後までを知るものはウネ一人。怪我がなかったのもウネ一人。
そのあと、屋敷の外の警備を任されていたが、その間クリムトの姿を見ていない。
また、ピンチのときになってこの剣を貰ったが、魔法でもかかっているのか、全く相手を傷つけられない剣だった。
ウネが屋敷を出てしばらくすると、屋敷から火が上がった。
さらにカインのセリフ。仲間の真実とは?
362煙が出たなら火種が散らばる 11/12:2006/12/29(金) 00:27:59 ID:Byw2lQCT0
何故か思考がまとまらないが、怪しいことこの上ない。
ウネとカインは実は手を組んでいるのではないのか、という疑惑を拭いきれない。
殺人者が怪我人を連れていくのは一見おかしいが、裏切り者のカインと手を組んでいるなら。
すなわち、怪我人を連れて、自分は無害だ、善人だということを周囲にアピールして仲間に入り込み、
機を見計らって奇襲、戦力を分断し、殺害するという計画だったなら?
現にアルガスは殺され、アリーナとクリムトは火の中に取り残された。いや、もうすでに殺されているのかもしれない。

手負いの自分が行っても助け出すどころか、逆に自分が死んでしまうのだろう。
そこまで考えて、ライアンは頭をぶんぶんと振る。
「いつから拙者はこんなに疑り深くて臆病な性格になったのでござるか!」
少し前の自分なら、今の状況でも燃え盛る屋敷へと飛び込んで行ったのではないのか。
しかし、一度生まれた不信感を拭いきれない。
一日目はマティウスに接触することを避け、ウィーグラフを止める事ができず、裏切り者に謀られて大勢の者を犠牲にさせてしまった。
二日目は午前中は何もできずに、出会った仲間を失い、敵を止める事もできずに終わった。

いつから自分は変わってしまったのか。こんな臆病なことでどうする。
生きている可能性がある限り、自分は戦わなければならないのだ。
ライアンは走る。クリムトとアリーナを助けるために。
だが、カナーンからどんどん離れていっていることに彼は気付いているだろうか?
意識はカナーンに向かっていても、体が逆の方向に向かっていることに彼は気付いているだろうか?
無意識のうちに忌まわしき場所から離れて行っていることに彼は気付いているだろうか?
363煙が出たなら火種が散らばる 12/12:2006/12/29(金) 00:29:00 ID:Byw2lQCT0
【ウネ(HP 3/4程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)  マシンガン用予備弾倉×5
 第一行動方針:カインを倒す
 基本行動方針:ザンデを探し、ゲームを脱出する
【カイン(HP1/2程度、少々疲労)
 所持品:ランスオブカイン、光の剣、ミスリルの篭手 プロテクトリング 加速装置 レオの顔写真の紙切れ ミスリルシールド
     ドラゴンオーブ
 第一行動方針:ウネを倒す
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:ジェノラ山の北部中腹】

【アルガス
 所持品:インパスの指輪 タークスの制服 草薙の剣 ももんじゃのしっぽ 聖者の灰 カヌー(縮小中)皆殺しの剣 高級腕時計
     妖精の羽ペン
 第一行動方針:様子を見る
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る】
【現在地:カナーンの街】

【ライアン(HP1/3程度、混乱、プロテス、ヘイスト) 所持品:折れたレイピア、命のリング エクスカリパー
 第一行動方針:カナーンからはなれる】
 ライアンは混乱しており、体が上手く動きません。
【現在位置:カナーン北西へ】

カナーンのシドの屋敷は燃えています。地下には何の問題もありません。
364名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/30(土) 17:31:33 ID:4enFZf970
「身の盾なるはスレの盾とならざるなり!
 油断大敵! 強甲破点保守!
365名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/01(月) 01:04:40 ID:O9Z9fiasO
新年一発目の保守!
366名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/01(月) 10:41:09 ID:qygfa5q9O
保守
367名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/02(火) 15:20:42 ID:U2MtBWMb0
ほしゅう
368名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/04(木) 00:40:01 ID:KK75UbTfO
保守あげ
369名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/06(土) 13:22:18 ID:OrAQ7kz0O
保守を兼ねてお知らせ
携帯向けログ保管庫を作成いたしました。

【FFDQバトルロワイアル 保管庫@モバイル】
ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/

◆CGIでデータベース化しており、簡単な検索機能がご利用になれます。
ただし機種によっては動作しないこともあり、情報を集めております。
動作結果を当サイトの掲示板までお知らせいただけると助かります。
◆保管が途中になっております。
引き続き作業を続けておりますので、もうしばらくお待ちください。
370名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/08(月) 16:26:45 ID:GonUusfgO
保守
371名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/11(木) 03:43:22 ID:Byp5IwwE0
二日にいっぺんは保守したい
372名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/12(金) 15:28:27 ID:F3+m7HlP0
ほsy
373名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/14(日) 08:00:11 ID:v5JT3jUyO
保守!
374名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/16(火) 16:15:19 ID:QEBcj9Ko0
保守
375名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/18(木) 06:03:55 ID:5hr48EFC0
>>363
【ライアン(HP1/3程度、混乱、プロテス、ヘイスト) 所持品:折れたレイピア、命のリング エクスカリパー
 第一行動方針:カナーンからはなれる】
 ライアンは混乱しており、体が上手く動きません。
【現在位置:カナーン北西へ】

【ライアン(HP1/3程度、混乱、プロテス、ヘイスト) 所持品:命のリング エクスカリパー
 第一行動方針:カナーンからはなれる】
 ライアンは混乱しており、体が上手く動きません。
【現在位置:カナーン北西へ】

こう修正します。
気付くのが遅くて申し訳ありません。
376名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/20(土) 09:38:41 ID:k1vOhw3X0
新作できるまでほしゅ
377名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/21(日) 13:31:51 ID:e8gfDP5ZO
書き上がらないからせめて保守
378名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/23(火) 13:04:02 ID:CjISCNpZ0
保守
379名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 15:13:59 ID:k3WdGhK60
ダレモイナイ・・・ ホッシュスルナライマノウチ・・・

ホッシュ!!ホッシュ!!
380名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 16:53:10 ID:q5UpEl8HO
1ヶ月間保守の続くスレは削除対象になるらしいね
コワイヨー
381名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 22:22:33 ID:uFeAd0XX0
【ヘラクレス(HPほぼ満タン 魔力0 空腹 )
 所持品:こんぼう+14 トドの盾 にんじん じゃがいも サンマ
 第一行動方針:お金を貯めてヘパイトスを買う。
 第二行動方針:料理がしたい?
 第三行動方針:天界は二の次
 基本行動方針:こんぼうを+99まで鍛えるために無差別殺人
382名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/25(木) 22:34:04 ID:+9Rgl0/TO
>>381はどう見ても保守ではないので後一ヵ月は保守が続いても安心です
しかし>>381は無効です
383名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/27(土) 23:20:19 ID:XBI8UOZcO
保守
384名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/28(日) 01:35:27 ID:6V2LiAfX0
そう、保守である。
385名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/29(月) 23:52:15 ID:rTQL/rUeO
捕手
386名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/01/30(火) 02:44:53 ID:j2fkx+mw0
そう、捕手である。
387It's a small world 1/3:2007/01/31(水) 23:57:48 ID:nCpYD2T40
『本当は気付いているだろ?』
気配は感じないのに、存在を主張する誰かは、おもむろに語りだした。
『マリアを取り戻すだとか、そんな目標は、生きる為の理由を作っているだけ。
 もう自分で気付いているんだろう?』
聞いた事があるような、けれどどこか違和感のある、そして朧げな声だった。
『だけどそれを認めたら、ここに居る理由が無くなってしまう。
 生きていて良い理由が無くなってしまう。だから、気付いていないふりをしている。
 違うか? フリオニール』
名前を呼ばれ、フリオニールは仰向けになったまま、目線だけを動かした。
『……いや、ここは“俺”と呼ぶべきか?』
自分と同じ姿かたちをした人物が、そこにいる。
だからといって、別段、フリオニールは驚いたりはしなかった。
これは幻想で、言わば自分の影だと、どこかで曖昧に認識していた。
いや、影なのはむしろ自身かもしれない。
『それとも“おまえ”とか“あんた”とか?』
呼び方なんて、どうだっていい。どうせ自分自身なのだし。
口を動かす事も億劫に思え、フリオニール──現実のフリオニールは何も答えなかった。
『どうだっていいか。俺らしいな』
思っている事は、自分自身に伝わるようだった。
幻想のフリオニールは足音など立てずに移動すると、瓦礫の残骸へと腰掛けた。
何をしに現れたんだ。
そう問えば、希望通りに返事が来る。
『自分自身と向き合う必要があると思った。それだけだ』
自分がそう言うのなら、自分もそれを望んでいたのだろう。
と、現実のフリオニールはその言葉を受け入れた。
『俺は今、生きる事に悩んでいる』
そうなんだろうな。
『けれど、そんな事に悩む必要は無い』
そんな事、なのだろうか。
『そうだ』
388It's a small world 2/3:2007/02/01(木) 00:01:14 ID:nCpYD2T40
幻想のフリオニールは空を仰ぎ、降り注ぐ星屑を求めるかのように片手を掲げた。
『生きる事に、理由なんて要らないんだ』
握り締めた掌には、何も掴まらなかった。
『全ての生きとし生ける物は、他の生き物を犠牲にして生きる。
 俺達は、植物を殺し、動物を殺し、生きる為に食べる。
 すみかを作る為に木を切り倒し、観賞する為に花を毟り取り、耳障りな蝿を叩き潰し、庭を荒らす鼠を始末する。
 地位だ、名誉だ、財産だ、自らが作り出した強者の証明、くだらない称号を得たいが為に人同士は争う』
幻想のフリオニールは立ち上がり、横たわる現実のフリオニールの周囲を闊歩しながら、続けた。
『立派な理由があろうとなかろうと、俺達は弱者を犠牲にする。それが俺達の弱肉強食だ』
立ち止まり、現実のフリオニールを見下ろす。
『弱肉強食、とは?』
弱者が強者の餌食となり、弱者の犠牲の上に強者が栄える事。
それが弱肉強食。
『そう。全ての生き物は、各々の弱肉強食の下に生きている。世界は弱肉強食で成り立っている。
 元々、世界そのものが、殺し殺される殺戮劇の舞台なんだ。ゆえに……』
幻想のフリオニールは、切れ長の瞳を更に細めた。
『今、こうして殺し合う俺達は、単なる世界の縮図だ』
そして再び天を仰ぎ、両手を広げる。
『果てしなく思える世界でも、果てはある。
 終わりの判らない長い長い時間にも、終わりはある。
 数の計り知れない生き物でも、いつの日か来る最後の時には、ゼロになる。
 生きる為に弱者を犠牲にし、ただ純粋に生きる……ここは小さな世界だ』
果ての見える舞台と、制限された時間と、定めたれた数。
だから、小さな世界、なのか。
『生きる事に、理由は必要ない。生きているから、生きる。それだけだ』
幻想のフリオニールは、現実のフリオニールへと視線を戻す。
389It's a small world 3/3:2007/02/01(木) 00:06:51 ID:nCpYD2T40
『全ての生き物の価値は同じで、そもそも価値なんて物は無い。
 生きるもの、犠牲になるもの、どちらになろうとも、それは当然の事で、気に留める事じゃない。
 生きる事は、犠牲にする事。生きる事は、殺す事。それが生き物の常識。世界の姿だ』
幻想のフリオニールは微笑を浮かべ、現実のフリオニールの手を取った。
『さあ、生きよう、純粋に。ここで──』
強い力に引かれ、フリオニールは立ち上がった。
「──ああ。小さな世界の上で」
今、フリオニールは一つしか存在しなかった。
幻想の自分は、はたして幻想だったのだろうか。
現実の自分は、はたして現実だったのだろうか。
そしてここに存在しているのは、現実か、幻想か、はたしてどちらの自分なのだろうか。
フリオニール自身にも判らないが、そんな事は、どうだって良かった。
これからは、純粋に、生きて、生きる為に、殺すだけだ。
それだけ、だ。

【フリオニール(HP1/4 MP3/5)
 所持品:なし 第一行動方針:? 基本行動方針:生きる=殺す】
【現在位置:カズスの村 廃墟の奥】
390殺意の欠片と眠れない夜 1/11:2007/02/01(木) 23:39:56 ID:d9MSZjbk0
息を吸い込んで、胸に手を当てる。
冷静になれと自分に命じ、感覚を研ぎ澄ますことに集中する。
逃げる、戦う、交渉する。全てに共通して重要なのは、先手を打つこと。
そのために、存在を感じ、相手を捉え、動向を読み、思考を見透かす。
武器も魔法も扱えない以上、僕にできることはそれだけなんだ。

「近づくな」
立ち上がるティーダと、闇の向こうに立つ人影に声をかけた。
一見したところ、大型銃器の類は持っていない。
けど、油断は禁物だ。
こんな道を外れた山の中に、好き好んでやってくる人間がどれほどいる?
大抵は戦闘を見かけたお人よしか、クソッタレの殺人者か。
今の状況で前者は有り得ない。
緑のぷよぷよピエールや、ストーカー女アリーナの襲撃から時間経ち過ぎてる……と思われるし。
だいたい、今の状況で単独行動を行ってる時点で十分疑うに値する。
とりあえず、ここは武器を足元に置いて両手を上げろとでも言って出方を……
……って、あれ。
武器、投げ捨てた?

「驚かせてすまない。私の名はパパス。
 伺いたいことがある故、君たちの元を尋ねさせてもらった」

ど、どーしよ〜〜…
ホントに武器捨てて両手上げちゃったよ。
どういうことなんだろう。考えられる可能性としては…

1.元より戦う気がない
2.実は素手の方が強いかスゴイ魔法使い
3.あのオジサンはエスパー
391殺意の欠片と眠れない夜 2/11:2007/02/01(木) 23:43:59 ID:d9MSZjbk0
……3はねーよって感じだし、2かなあ。
もちろん本当は1であってほしいけど、だからって警戒を緩めていいわけがない。
油断しちゃダメだと、ティーダに目配せする。
意を汲んでくれたティーダは、剣を構えたまま、パパスと名乗ったオジサンに目をやった。

「その言い方だと、俺たちがいること、知ってたみたいだけど」

あ。ティーダにしては珍しく鋭い着眼点。
でも、確かにそうだよ。尋ねたいことがあるからやってきたって、
僕らがその事を知っててここにいるってこと、知らなきゃ言えないよ。
誰に聞いたんだろう。まさか、あの殺人緑ぷよやストーカー女や誘拐魔ってこたないだろーな……

「ピサロ、マティウス、ザンデ、ケフカといったか。
 彼らから、私の息子が事件に巻き込まれていると聞いた。
 わかる範囲でいい。事の顛末をもう少し詳しく知りたい」

…あの人達が? ピサロとかそんな親切なキャラだっけ?
ああ、でも約一名はツンデレだしな〜。
ていうか息子って誰だ。テリーじゃないだろうし。

「そうなんっスか。えっと、俺は」
あ、あわわわわ!
ティーダ。納得するのはいいけど……
「名乗っちゃダメだ!」

「……?」
あわわ……まずい、つい大声出しちゃった。
だけど、ティーダが名乗って僕が名乗らないのおかしいし、敵以外の人に下手に偽名使うのもねえ……
ねえ。名乗って『仲間の仇じゃー』って襲い掛かられたら困るしねえ。
さりとて、偽名で通して後でバレたら、無駄に疑いの材料増やしちゃうし。
相手が悪党なら『あいつが嘘つきなだけ、以上』で通せるけど。
392殺意の欠片と眠れない夜 3/11:2007/02/01(木) 23:45:29 ID:d9MSZjbk0
「あ、あんなセンスが世間一般からずれてる悪役丸出しの存在そのものがネタみたいなオジサン達だぜ?
 たまたま見かけて適当にフカシてるだけかもしれないじゃねーか。
 名前なんて名簿で調べりゃいいだろ。
 本当に知り合いかなんてわかりゃしないぜ」
ああ、声が上ずってる、喋り方も変になってるぅ〜。
ティーダ達の視線が痛いよう。
「こちとら、イカレストーカー女だの、無責任な紙切れだの、言い掛かりだのさ。
 流言飛語ってヤツ? とにかく、くっだんないことに散々振り回されてきてるんだ。
 これ以上、面倒事に巻き込まれたくないぜ。
 他人のことなら幾らでも喋ってやるから、俺らにはこれ以上関わんなよな」
ホント、どこのチンピラですか僕は。自分で言ってるわけだけど。
こんな喋り方する奴が目の前にいたら、口の聞き方強制矯正してるところだよ。自分だけど。
そんな僕の思いとは裏腹に、オジサンは怒った様子もなく、落ち着いた態度で応じる。
「うむ、元よりそのつもりだ」

なんていうかね。近年まれに見る大人らしい大人って感じだよ。
圧倒されるっていうのかなあ。立ち居振舞いからして、格の違いを見せ付けられる感じ。
けど、マティウスやピサロみたいな、トゲトゲした近寄りがたい雰囲気は微塵も無い。
こういうオジサンなら、実はどっかの偉い人でしたって名乗られても納得するな。
ラグナがエスタ大統領とか、ヘンリーさんが王子様ってのよりさ。

「すまないッス…で、息子さんってのは?」
ティーダが頭を下げながら聞いた。僕の真意を理解してるかどうかは不明だ。
まあ、名前さえ隠してくれれば、わかってなくてもわかってても構いやしないけど。

「うむ。リュカというのだが…」
リュカねえ。どっかで聞いたような名前だなぁ……って、ああああ!?
「「リュカ!?」」
なぜかティーダと声が揃った。
ティーダ、ヘンリーさんとも、テリーとも、話す機会なんてあったっけか…
まあいいや。
393殺意の欠片と眠れない夜 4/11:2007/02/01(木) 23:47:43 ID:d9MSZjbk0
「リュカっていったら、テリーが世話になった、ヘンリーさんの親友のことだろ?
 話には聞いたけど、居場所なんて知らねーよ」
僕はわざと左手で頬杖をつき、つっけんどんな態度で答える。
オジサンには悪いけど、知らないものは知らないから、長話してもお互い無駄な時間を過ごすだけだ。
それに、そろそろ話し込むのが辛くなってきたしね。体力的な意味で。
そんなわけで、『ハイサヨウナラ』って言いたかったんだけど……
次の瞬間、ティーダが叫んだ言葉のせいで、そんな気持ちはすっ飛んでしまった。

「違うッスよアーヴィン!
 リュカってあのセージやエドガーと一緒にいたっていう親子の親の方で……
 ほら! サスーンにいる、ピエールの親分ッス!」
「な、なんだってーー!?」
いや本当なんだって、だよ。
ピエールっていったらアイツだろ? 緑の。ぷよぷよに乗っかった。
色々後悔まみれの僕でも殺したい奴ランキングNO1に燦然と輝く、クソッタレのモンスター!

「ピエールというのか。人を殺して回っているという、部下の魔物は」
パパスが呟く。
今ばかりは、その落ち着きっぷりが腹立たしい。
ゼルとテリーとリルムと僕と、どんだけ苦しい思いしたのか、わかってんのかって。
腕が満足に動かせていたなら、絶対に掴みかかってやるのに。

「あんた、どうするつもりでここに来たんだ」
冷静さを保て、と必死に言い聞かせながら、問い掛ける。
パパスは僕達を真っ直ぐに見つめ、堂々と答えた。
「真実を見極めたい。
 息子のためというよりも、新たな犠牲者を生み出さぬために」

どうしてそんなに平静でいられるんだろう。
イライラが募って、ドス黒い何かがわだかまっていく。
膨れ上がる感情と、それを押さえようとする理性が、ぐちゃぐちゃになって心をかき乱す。
そんな僕の心中を他所に、パパスとティーダが喋り出す。
394殺意の欠片と眠れない夜 5/11:2007/02/01(木) 23:50:15 ID:d9MSZjbk0
「親分、と言ったな。
 やはり、リュカが魔物を操っているという話は本当なのか?」
「いや……俺じゃなくてフィンが、リュカがピエールを操ってるって話を聞いたんだってさ。
 それに、リュカの娘と奥さんが……あ、いや、なんでもない。
 とにかく、本当かって聞かれたら、"怪しいけど証拠はない"ってことになるッス」
「…そのフィンという少年に話した人物とは誰なのかね?」
「その辺はよくわかんないッスよ。
 フィン、湖で溺れかけたとかで、風邪引いちゃってたしさ。
 多分、溺れた時に助けた人がいて、その人が教えたんじゃないかって思うんだけど」

「なんだよ、それ」

反射的に、声が出た。
そのまま、思考が全部、口から溢れ出す。
「テリーの友だちの遺体を墓から暴いて剣ぶっさして放り捨ててって?
 ストーカー女と一緒になってこんなちっさいテリー襲った挙句、ゼルのこと殺しやがって?
 その黒幕は、テリーの友達のお父さんで、ヘンリーさんのお友達の、リノアと一緒にいた男?」
止めようとしても止まらない。
自分の言葉を、左耳が再認識し、脳に伝わって映像を浮かび上がらせる。
森の中で倒れていた血まみれのリノアと、闇に消えていったゼルの後ろ姿。
泣きじゃくっていたテリーと、会った事のない哀れな子供の遺体。
そして、リノアとテリーに慕われているリュカの姿と、
子供やゼルの血を浴びたまま、リュカに跪くピエールの姿……

「リノアもテリーも、みんなあんたの息子とやらに騙されてたのか?
 だからリノア、あんな簡単に死ぬわけないのに、死んだんだな?
 ゼルが死んだのも、そいつのせいなのか?
 そうなんだな……そうに決まってる!」

あれほど、取り戻すことを恐れていた感情が、後から後から沸いて出てくる。
身体を蝕んでいた錆のような感覚が、薄れていく気がする。
ソロ達への義理とかティーダとの約束とか、大事なはずのものが全部どうでもよくなっていく。
395殺意の欠片と眠れない夜 6/11:2007/02/01(木) 23:51:18 ID:d9MSZjbk0
「アーヴィン! そうって決まったわけじゃないって!
 セージやオッサンは違うと思うって言ってるしさ!
 リノアを殺したのは別の、リュカの知り合いだって、オッサンが…」
ティーダが叫ぶ。多分、パパスに気を使ったからだろう。
でも、どうでもよかった。
「そのリュカが手引きしたんだろ。
 仲間も、助けた相手も殺して、これからも殺してくんだ。
 アイツら、きっと殺すんだ、みんなを……」

だから、仇を討てと、右の耳元で誰かが囁く。
それは多分、奴らのせいで永遠に失われてしまったはずの音。
死んでいった人達の嘆き。
テリーや、リルムや、ティーダや、僕の知らない誰かを見守って生きて、奴らに殺された人達の無念。
小さな墓に眠るトンベリがつれてきた、みんなの恨み――

「――殺してやる」

そう呟いた瞬間、全てが、切り替わった気がした。
木の根元に、偽者の僕が使い、アリーナに蹴り飛ばされた拳銃が、隠れるように落ちている。
今まで思い出せなかったけど、それは火傷を負った女が持っていた銃だ。
誰かを殺して、スコールを殺すはずだった銃だ。
僕は躊躇うことなく、その拳銃を拾い上げ、走り出す。
倦怠感はもうない。痛みも、どこかに吹っ飛んでしまった。
疲れたどころか、気分が高揚して、力がどんどん湧いてくる。
今なら、殺せる。
あいつらを殺せる。
この手で、ゼルとリノアの仇を、殺してやる……!



396殺意の欠片と眠れない夜 7/11:2007/02/01(木) 23:52:53 ID:d9MSZjbk0
「アーヴィン!!」

すぐ近くで、誰かが怒鳴った。
肩が押さえつけられ、真後ろへ引き寄せられる。
バランスが崩れ、銃を取り落とし、視界が急転する。
「うわっぷ!!」
そして、どすん、と地面に熱烈なキスをかますハメになった僕は、振り向いて逆に怒鳴り返した。
「何するんだよ!」

でも、それ以上のことは、言えなかった。
ティーダの顔を見て、思い出してしまったから。
パパスがやってくるほんの数分前に、ティーダが約束してくれたことを。

「あんたはもう人殺しじゃないだろ」

その台詞に、僕はようやく我に返る。
異常なまでの万能感は淡雪のように消え去り、薄れていた痛覚が蘇る。
興奮と入れ違いに戻ってきた疲労は、倍になってのしかかった。
腕が、足が、鉛のように重い。
おまけに、身体が勝手に震えだす。
忘れかけていた罪悪感と、殺人者へ戻る事への恐怖が、殺意を塗り潰して僕の精神を支配する。
起き上がろうとしても、力が上手く入らない。
折れたままの右腕が激痛を伝え、早鐘を打つ心臓が呼吸を乱れさせる。

「う……あ、う……」
言葉が出てこない。
右耳は、もう何も聞こえない。
ただ、ティーダの声だけが、左耳を通じて響いてくる。
「アーヴィン。やっぱりあんた、もう少し寝てろって。
 ……あんだけ色々あったら、疲れるの当然だからさ。
 気ぃ使わなくていいから、休めって」
397殺意の欠片と眠れない夜 8/11:2007/02/01(木) 23:56:10 ID:d9MSZjbk0
ティーダは僕を抱え起こすと、近くの木に寄りかからせた。
そしてパパスに向き直り、口を開く。

「リュカもピエールも、数時間前には間違いなくサスーンにいたッス。
 んで、リュカは娘さんのタバサって子と一緒にいてさ。
 これは俺の考えでしかないけど……
 リュカが黒幕でも、ピエールの独断でも、今一番命の危険に晒されてるのはその子だと思う」
「……娘、か」
「ああ。んで、城の二階に隠し扉があって、その奥にセージとプサンってオッサン、あとフィンがいるはずッス。
 セージ、変人だけど悪い奴じゃないから、話せば協力してくれると思う。
 あとジタンって名前の尻尾生えた奴も」

サスーンで何があったのか、僕は知らない。
だから、こんな状態じゃなかったとしても、話に加われるはずがない。
あまり太くない幹に身体を預け、ぼんやりと空を見上げる。

「……アーヴィンが言ったことは、あまり気にしないでいいッスよ。
 本当、リュカって人については、証拠も何もないんだしさ。
 ピエールって奴は許せないけど……心を入れ替えるなら、命まで奪う必要はないって思う」
「そこにいる彼のように、か」
「え?」
首を傾げるティーダを置いて、パパスが僕に近寄ってくる。
どういう意味で、その言葉を言ったのか。
ぽかんと口を開けているティーダを見て、すぐに悟ることができた。
僕を身勝手だと罵るか。それとも、大馬鹿者だと殴りつけるか。
僕は身を固くし、その時を待つ。
だが、与えられたのは罵声でも、拳でもなかった。
398殺意の欠片と眠れない夜 9/11:2007/02/01(木) 23:58:10 ID:d9MSZjbk0
「君は、良い友を持ったな」

大きな手が、頭の上に覆い被さった。
僕は、拍子抜けして、パパスを見た。
彼は何も言わず、ただ、優しげな瞳を向けていた。
そして僕から手を離すと、地面に置いていた剣を拾い、闇の彼方へ歩き出した。

「あ……ちょ、ちょっと」
ティーダが慌てて呼び止める。
「ど、どうするつもりなんスか?」
僕が思っていたことと同じ。でも、聞くべきじゃない質問を投げかける。
パパスの答えは、数秒後に戻ってきた。

「君と同じだ。まずは話し、悔やむならば許そう。
 そうでなければけじめをつけよう。私の手で」


それで、終わりだった。
彼の後姿は、ゼルと同じように夜闇に消えた。
残された僕達は、お互いの顔を見合わせる。
やがてティーダが僕の真横に座り、「大丈夫か?」と聞いてきた。
僕は、首を縦に振ったけど、ティーダは信用してないようだった。

「本当に、今日は寝てていいから。
 ……眠れないなら歌でも歌うッスよ」
歌、って。子守唄かよ。
僕は眉を寄せて言う。
「女の子じゃなきゃ、ヤダ」
「バカ」
ティーダは苦笑しながら軽く小突いてきた。
ちょっと痛かったけど、本当に大丈夫だって思わせたかったから、僕はさらに言ってやった。
399殺意の欠片と眠れない夜 10/11:2007/02/01(木) 23:59:36 ID:d9MSZjbk0
「あったかい膝枕の上がいいな。
 そんで子守唄聞きながら眠る……これぞ男のロマンだよ」
「・……あ、あははは。
 あったかいのはあんたの頭じゃないッスか?」
「いーや、お前の頭もだ」

あれ、今の台詞は誰? と思う間もなかった。
突如現れた見覚えのある人影が、ティーダの頭を鷲づかみにする。

「人が寝てる傍でどんだけ騒げば気が済むんだ……お前らはよ!」
「ぎゃーーー! ロ、ロック?!」

そう、そこにいたのはロック。
全身に怒りと寝不足のオーラをまといながら、ティーダの髪を掴んで引っ張っている。
はっきり言って……メチャクチャ怖い。

「いつの間にかアーヴァインの野郎まで起きてやがるし……
 もう謝ったって許さないからな……ティナのことも今のことも……!」
「ちょ……それ、同列に扱う話題じゃな……」
「うるさい!
 ただでさえライブラ狂だのケフカだのに付き合って疲れてんのに眠りを邪魔された怒りと恨み、思い知れ!」
「「ぎゃーーー!!」」


……その後、僕達がどうなったかは、語りたくも思い出したくもない。
400殺意の欠片と眠れない夜 11/11:2007/02/02(金) 00:00:29 ID:d9MSZjbk0
【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:サスーンに向かい、リュカとピエールを説得する(改心しなければ殺害も止む無し)
 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→サスーンへ】

【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:フラタニティ、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:見張り?
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け/アルティミシアを倒す】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、軽症、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪 、コルトガバメント(予備弾倉×3)
 第一行動方針:寝る?
 第二行動方針:ティーダが消えない方法を探す/ゲームの破壊】
【ロック (軽傷、左足負傷、MP1/2)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:ティーダ達をしばいた後、寝直す
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(HP1/4、残MP微量、睡眠) 所持品:首輪
 第一行動方針:熟睡中/首輪の研究
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
【テリー(DQM)(軽傷、右肩負傷(7割回復)、睡眠)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:熟睡中
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】
401殺意の欠片と眠れない夜:2007/02/02(金) 11:52:55 ID:KkDI7NkJ0
以下の通り修正します
>>395 
「アーヴィン! そうって決まったわけじゃないって!
 エドガーやオッサンは違うと思うって言ってるしさ!
 リノアを殺したのは別の、リュカの知り合いだって、二人とも…」


>>397
ティーダは僕を抱え起こすと、近くの木に寄りかからせた。
そしてパパスに向き直り、口を開く。

「リュカもピエールも、数時間前には間違いなくサスーンにいた……はずッス。
 んで、リュカは娘さんのタバサって子と一緒にいるって話でさ。
 これは今、俺が考えたことでしかないけど……
 リュカが黒幕でも、ピエールの独断でも、今一番命の危険に晒されてるのはその子だと思う」
「……娘、か」
「ああ。んで、城の二階に隠し扉があって、その奥にプサンってオッサンとフィンがいるはずッス。
 それと、青髪でメガホン持ってるセージと、金髪で尻尾生えてるジタン。
 リュカ達のいる、東塔にいるはずだけど……こんだけ時間が空くとなぁ。
 まあ、変な奴らだけど、どっちも悪い奴じゃなさそうだったから、話せば協力してくれると思うッスよ」
402名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/04(日) 08:13:23 ID:QFTudcgJO
SAVE
403名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/05(月) 20:43:21 ID:0gOAwZBt0
PROTECT
404名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 01:09:29 ID:vOsGEpsR0
GUARD
405名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/07(水) 18:10:03 ID:ONjD4hw7O
RELIEVE
406名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/08(木) 08:53:55 ID:P4rwAMMCO
KEEP
407名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/09(金) 01:15:59 ID:dsHxpHNY0
PRESERVE
408名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/09(金) 21:54:02 ID:VOFJFqst0
DEFEND
409名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/10(土) 02:24:39 ID:aVR07ivGO
PREVENT
410名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/10(土) 12:57:32 ID:tcOHQAvxO
嵐も歓迎きなよ

http://mbsp.jp/seventhheaven/
411Double dealer 1/11:2007/02/11(日) 04:18:54 ID:SAF0UbQ60
前方で何か異変が起こっている。
追いつくべく駆け出そうとした直前に話しかけられ、ザンデは怪訝な顔で振り向いた。
「話だと、このような時にか?」
「いやいやいや、あの二人にかなう相手なんてそーはいないですよ。
 少しぐらいほっといたってモンダイナーイ!」
確かに、ピサロとマティウスの二人が戦闘で敗北する事態など考えにくい。
「それよりボクちんの話を聞いてくださいよ。聞かないと大損ですヨ?」
密談の意図をにおわせた物言いに気付き、手を顎へとやる。
確認するように先行した二人の方向へ一度だけ目を配り、道化へと視線を戻した。
「ふむ……聞いてやろう。簡潔に話してみよ」
「アヒャヒャ、ボクちん、タダ働きはダーイキライなんです!
 あなたの『実験』を手伝うのだってただじゃあ願い下げでしてねえ…」
「ほう」
歪んだ笑みの張り付いた顔をじっと見る。
表情を変えぬ鉄面皮に臆することなくケフカは小さく笑って話を続けた。
「ボクちん、協力の報酬に欲しいものがあるんですよねえ」
そういっていそいそと名簿を取り出し、いくつかの顔写真を指差して見せる。
ロック、リルム、未だ消されていない名前が示されていく。
「こいつらの命がねえ、欲しいんデスヨ。あなたの力なら余裕ですよねえ。
 あとはこいつ、最後に……こいつ、っと」
「む……」
412Double dealer 2/11:2007/02/11(日) 04:20:52 ID:SAF0UbQ60
指された四人のうちにエドガーの名を認め、ザンデの胸中には小さな揺らぎが生じていた。
単体の価値で評価すれば余程の能力を有する人間でないとケフカとは比べるまでもない。
率直に言ってしまえば挙げられた他の三人は選び取られない。
けれど山中のキャンプで出会った男、エドガーは違う。
世界からの脱出と両輪を為す要素である首輪の解除を目指す価値ある有用な人間だ。
研究成果として手渡されたメモは、暗に協力体制を成立させているともいえなくはない。
「……どうかなされましたか? なんだか不愉快そうですねえ。
 手を汚すことを厭うあなたではないはずですけれど?」
生じた揺らぎを見越したかのように嫌な笑みのままのケフカが覗き込むように表情を窺ってきた。
いや、かのようにではない。見越して、囁く。
「ああ、そういえばあなたはしばらくの間ロックの奴と一緒に行動していたんでしたねえ。
 エドガーの奴とも何か話し込んでいたような?
 奴らとも何かお約束がおありですかあ? アヒャヒャヒャ」
こちらを覗きこむ吊りあがった目が細くなり、口の端がますます歪んでいく。
見定められているという不快感の後、男が孕む危険性を感じ取った。
自分の手を汚すことなく状況を利用して敵対者の排除を為そうとしている。
暗い炎を燃やすねじくれた策士、それがこの道化の素顔なのだろうか。
「……貴様の要求は理解した」
「ありがたいですねえ」
「委細は後で聞こう。流石に向こうが気になる」
「それはもう、期待してますよ! さぁて、向こうはどんな面白いことになったかねえ、アッヒャッヒャ!」
印象に残る特徴ある笑い声を上げて踊るように駆け出していくケフカ。
生じた不快感を鉄面皮の下で噛み潰し、ザンデはその踊る背を追った。

413Double dealer 3/11:2007/02/11(日) 04:24:24 ID:SAF0UbQ60
その先に、異変は確かにあった。
生命ある二人と、そうでない一人。珍しく感情の乗ったピサロの怒声。血の香り。
「ふむ? ……マティウス、説明を頼む」
情報を求め、事態の中心から離れて立っているマティウスに並んでそう問いかけた。
同時にわずかな遅れをどう見るかを読み取ろうとしたが、異界の皇帝に対してのそれは徒労に終わる。
落ち着いた表情のまま小さく頷いて、マティウスは淡々と状況を説明し始めた。
「相手を発見してピサロが飛び出してから一瞬のできごとだった。
 死んでいるのはあの女、ロザリーと同行していた男。手を下したのはもちろんピサロだ。
 凶事の原因がロザリーとやらにあることは間違いは無いが、
 その動機は――誤解、行き違い、嫉妬、疑惑…なんにせよ当事者でない私にはわからないこと。
 だがああも容易く仲間を殺されてはいかに恋人といえど納得はできないのだろう。
 それであとは痴話喧嘩だ」
「恋人か。ふうむ…」
あの娘は間違いなくピサロの弱みである。すると、冷静を欠いて見えるピサロはそれを露出している焦りのためか。
いつもように顎を撫でながら、微妙な空気の二人を分析していた、その時。
耳につく例の笑い声を辺りに響かせつつ二人に近づいていくケフカがいた。
耳障りな声の主を鋭く射抜くピサロの視線をものともせず、躍り出るように、挑み出るように道化師は男女の前へと飛び出す。
「コンバンワー、おじょーさん。付き合いにくい恋人を持つとタイヘンだね、アヒャヒャ!」
「何をしに来たケフカ! 下がれ!」
事態の急変は瞬く間であった。
向けられた剣幕に大げさに驚いた顔を作ってみせ、ケフカはわざわざロザリーのほうへ飛び込んでみせる。
その行動に不吉なものを感じて制止の声を挙げようとするより展開はなお速い。
「あーコワイコワイ! ボクちんは仲裁に来ただけなんですがねえ」
「要らぬ世話だ! 私は下がれと言っている。さっさとロザリーから離れ――――
 何のつもりだ、ケフカ!!」
414Double dealer 4/11:2007/02/11(日) 04:26:36 ID:SAF0UbQ60
一段と声量を増し、荒だってピサロが叫ぶ。
その理由は少し離れた位置にいるこちらにも見て取ることができる。
ケフカの手がいつの間にかロザリーの首、いや首輪に触れていたのだ。
「自分の力ばかり過信するお偉方サマはこーれだから困る!
 『オレサマの力でなんでもできるんだー』なーんて考えてるのかな?
 でもねえ、ほら右手をご覧くださーい! 
 大切な相手の危険の一つも除去できないなんてたいした力だこと! ヒャッヒャッヒャ!
 できたのは余計なヒトゴロシだけー!」
一歩を踏み出したピサロの足が衝動と抑制相半ばした重みを持って止まった。
張り詰めた緊張感、事態を見つめる三人それぞれが動くタイミングを待つ中でそれでも道化は己のペースを崩さない。
「おや、お怒りですかあ? ムカつくならボクちんも殺しちゃえばいいじゃナーイ!
 そこで転がってる奴みたいにね……
 でもボクちんは正しい事を言っただけ、なーんにも悪いことしてないのに。
 ああ、ピエロは損な仕事…………ヒャヒャヒャ、ねえ?」
そこで首輪に触っていた手が高く掲げられ、ひらひらと振られる。
そのままケフカはぴょんっ、と半歩ほど離れ、ロザリーのほうへと向き直った。
同時に、それぞれの思惑が地を蹴る。
「止まれ、ピサロよ!!」
冷静さを欠いている恐れがあるピサロの動きから目を離さず、
制止の一声と同時に戦闘開始を物理的に阻止すべくケフカの背後へと氷柱を出現させる。
同時に――事態を気にすることなくロザリーへとおどけてみせているケフカ、
その何気なく手にしている杖に意外なほどの力が込められるのを確かに感知した。
「ナーンチャッテー! ビックリさせちゃいましたねえ。
 でもボクちんはホントに平和主義者ですからダイジョーぶべらッ!」
交錯の一瞬。
氷柱ごと斬り込んだピサロとぶつかってその力が破裂するのを感じた。
直後、弾かれるように地面を転がっていくケフカ。短くロザリーが悲鳴を上げる。
415Double dealer 5/11:2007/02/11(日) 04:29:52 ID:SAF0UbQ60

衝突に一歩遅れてケフカとピサロの中間になる位置へ疾風の如くマティウスが飛び込んだ。
自分もまた、ピサロを挟んでマティウスと対称の位置へと着地する。
包囲する二人に対してピサロはロザリーを引き寄せようと腕を伸ばし。
二度目の短い悲鳴と怯えと哀しみの色に染まった相貌に気付いてその動きを止める。
「ロザリー?」
「………」
三方からの注視の中で小さくか弱いエルフは一歩あとずさる。
「また…ピサロさまっ………どうしてっ……」
か細い声を発したその哀しみの表情から一粒、赤い光が零れ落ち。
恋人から逃げ出すように、ロザリーは走り出す。


ピサロとケフカの中間でなお警戒を崩さないマティウスの脇をすりぬけ、ロザリーは道化に駆け寄っていく。
その小さく頼りない背を見遣るピサロは外見は平静を取り戻したように見えた。
少なくとも呆然とは取られない程度の凄み、重みはまだ残っている。
「あの程度の安い挑発に乗せられるとは、貴様はそれほど愚かではないと思っていたが」
「………」
「仮にも私の協力者へ剣を振るうとは孤立する覚悟、私を敵に回す覚悟があると?
 ピサロよ、貴様は愛姫と運命を共にできればそれでいいという程度の目的しか持たぬか?」
ポッとザンデの掌の上に小さな火が現れ、握りつぶされて小さな粒となって風の中に消えていく。
「貴様にも『見えた』だろうが、確かにあの道化めも食えぬ奴よ。傍に置いておきたい男ではない。
 だが、今の私にはどちらかが欠けても害にしかならん」
足元にはケフカが振り回していた杖の欠片と氷片が散乱している。
衝突の一瞬――そう、ピサロの剣がケフカを捉える一瞬。
杖を核にして瞬間的に膨れ上がった魔法力それ自体をインスタントの盾のように扱い、本人は勢いを受けわざと吹き飛んでこの場を脱したわけだ。
取引の際に見せていた歪んだ笑みを思い出し、
ケフカへの評価――自分の手を汚すことなく状況を利用して敵対者を排除する策士――の正しさを確信した。
そしてねじくれた策士の今の行動の思惑を読む。
416Double dealer 6/11:2007/02/11(日) 04:33:06 ID:SAF0UbQ60
ここでは間違いなく利用する状況はロザリー、排除したい敵対者はピサロであろう。
今回はまずその第一歩として道化として彼女を篭絡しておこうという意図か。
「貴様がそうであるように、あの道化も貴様を快く思ってはいない。
 あの男、貴様へのカードとしてロザリーに近づいていることは明らか。
 だがケフカにまとわりつかれるのは貴様も承服しまい。私としても更なる衝突は迷惑千万。
 そこでだ、ロザリーは私が保護することを約束する。よもや異存はなかろう」
絶対的な自信を持ったものの倣岸さが顕れた言葉、だがザンデはそれがもたらす効果を考えない。
敵意、いや殺意さえ篭った視線が返答とともに放たれる。
「異存だと? 白々しい。
 ザンデよ、そういう貴様も同じ穴のムジナではないのか?
 ロザリーを利用しようというのではないのか!」
(利用する、だと? 疑うか、ピサロ!)
込められた感情を受けながら目の前で展開しかけた衝突の事態を吟味する。
状況や結果を理解していても価値の天秤が傾けば誰でも容易に戦いあう。
自分のように、周りにいる者も簡単にそれに巻き込まれていく。
力があればあるだけそうなった時にもたらされる被害は大きくなる。
その繰り返しでむざむざと数を減らしてきたのがこのゲームに集められた者の実情なのだ。
「愚かな」
口から漏れた呟きはピサロにも聞こえただろう。それでも鋭い視線は動かない。
長身から負けじと強い視線で見下ろしながら言い切る。
「ファファファ、否定しても信じる気がなかろう?
 今の貴様に何を言っても無駄だが、心中に何を抱えようと利用できる限り私は関知せぬ。
 もとより我らは友愛ではなく利害で繋がった関係。違うか?
 そこの所をよく考えて正しい選択をせよ。ファファファ!」
笑い捨てて踵を返した背後から怒りの言葉が聞こえたような気がした。
信頼、という面ではピサロとの関係は崩壊したが、それがどうしたというのか。
理屈を解さぬなら力ずくでも利害を理解させればよいのだ。
(疑いの目で見るのならピサロよ、貴様はそのまま「利用されて」おればよい。
 知恵でも力でも、必ず我が目的は達して見せようぞ!)

417Double dealer 7/11:2007/02/11(日) 04:35:15 ID:SAF0UbQ60



(チクショー、ギンパツめ! 覚えてやがれ!
 にしても待ちくたびれた、なにやってんだ! さっさとボクちんを助けろ!)

などと毒づいていたケフカは近づいてくる軽い足音に気付き、心中ほくそえむ。
それからタイミングを見計らって目を開け、予想通り近づいてきた人物、ロザリーに弱々しく手を振って見せた。
ビックリした気配が伝わり足音が止まる。
「アヒャヒャ、またおどかしちゃいましたねえ。
 まったくホントにピエロは損な商売ですよ。ひどいものですよ」
「あ、あの……ケフカ、さん? ご無事なのですか?」
「オヤオヤ、種明かしがほしいですか!
 聞くも涙、語るも涙、ボクちんが振り回していた杖は何を隠そう魔法の杖、その名も『身代わりの杖』!
 ……持ち主を守ってくれるその杖はケナゲにも真っ二つ!
 あー、すぐに暴力に訴える奴なんてダーイキライ! アッヒャッヒャッヒャ……」
ぴょこりと飛び起き、感触を確かめるように傷のついた手のひらを何度か開閉する。
「きゃっ……手のひら、血が…! あの、ごめんなさい」
「どーしてあなたが謝るんですか? にしてもイッターイ! キー、チクショー!」
空間に向かって八つ当たりのそぶりを見せつつ、治癒呪文を唱えて裂傷を塞いだ。
「それは、その………私のせいですから」
「まあそうだろうなあ! しばらくあいつとも一緒にいるけれど、気に入らないのは前からだ!
 それでもあーんなに凶暴じゃあなかった。オカシイのはさっきから。
 あんなヤツ、一緒にいて迷惑してなーい?」
「そんなことないですっ。普段のピサロさまはとても素敵な方なんです。
 ……………でも、時々、あんな目をして、血の香をまとって…」
「ほらね、貴女だって嫌なんでしょう?
 ピエロのボクちんが言うのもなんですけどね、貴女はいつだって流されるまま、違うかな?
 嫌なことには抵抗して見せないとダメデスヨ?」
418Double dealer 8/11:2007/02/11(日) 04:38:30 ID:SAF0UbQ60
二、三度指を振って見せ、それからくるりと一回転。
両手はがっちり胸の前、両膝ついて潤んだ瞳、目線は仰角45度。
「『人殺しを止めてくれないと、私キライになっちゃうからっ。』
 なーんて言ってやったらどうですかねえ、ヒャヒャ!」
「え…あの……その」
どこか毒のあるニヤつきをロザリーへ向けながら、両手を腰に当てて甲高く笑う。
「アーッヒャッヒャ、ジョーダンジョーダン!
 ともかくこの二日は生き抜いてきたんだし、もっと自信を持ってもダイジョーブですよ。
 困ったらいつでも声かけてくださいな、ボクちんは貴女の味方ですから!」
「あ、はい……ありがとうございます」
彼女の善良さと純真さ。生じているだろう戸惑いと安心感を見越して、
その心中に「一風変わったピエロさん」としての席を確保したことを確信する。
これで、この2日間仲間にしてきたような信頼を自分にも向けてくれるだろう。
あのモヒカンやガキのように!
(こーんなオイシイ駒を利用しない奴なんていない、いるわけない!
 そうだよなあ、ザンデ?
 さてさて…オマエらはどこまで利用してあげようかねえ……)
同一の視界に入った対照的な二人。
ロザリーの肩越しに、こちらへ歩いてくるザンデを見ていた。
声を出さずに表情だけを歪め、ピエロの顔の下でケフカはすべてをあざ笑っていた。

419Double dealer 9/11:2007/02/11(日) 04:45:43 ID:SAF0UbQ60



腕組みをして状況を観察しているのであろうマティウスを一瞥してザンデはその脇を通り抜けた。
目前には、いつの間にやら起き上がって歓談している道化がいる。
「元気そうだな? ケフカ」
「おかげさまでねえ。きっと手加減してくれたんでしょうよ、アーヒャッヒャッヒャ!」
見下ろす視線には詮索と不信を含めてやったが、この道化は気にもかけない。
「まあこんな所で死んでもらっても困る。さて…ロザリーとやら」
男二人と異なり、目を向けただけで彼女は威圧され、小さく身を竦めていた。
やっとのことでか細くハイ、と返事が来る。
その様子をあざけようとした道化を目で制して、続ける。
「私はザンデ。貴様はその意思に関わらず我らに同行してもらう。
 もちろん私の害にならなければ安全は保証しよう。
 意見があれば聞いておく。何かあるか?」
言葉を理解するまでの静止があり、それから小さく口を開く。
「あの、ピサロさまは……」
「ピサロもケフカも私の協力者だ、無碍には扱わん。
 今までどおり私に同行してもらう。
 これ以上こちらから責めるつもりは無い」
「………よかった」
緊張しきっていた彼女に安堵の色が浮かび、感謝の言葉が口にされた。
二者と対照的な素直さに幾許かの好感を抱く。
少し萎縮が解けたのか、ロザリーは次いで倒れた死体について懇願する。
「一つだけお願いがあります。向こうで倒れているイザさん。イザさんを、どうかせめてお墓に」
言い終えるより前に強い声をかぶせる。
「残念ながらそれはできぬな。我らは既に多くの時間を無駄にしている。
 灰にするだけならば魔法一つ、できぬこともないが…そうするか?」
再び曇った表情に戻った彼女はほんの暫しだけ考え、悲しげにふるふると首を横に振った。
420Double dealer 10/11:2007/02/11(日) 04:47:27 ID:SAF0UbQ60

「時間は常に惜しいものだ。我らの事情を理解してくれてありがたい。
 それではすぐに発つと……
 いや待て。貴様はエルフなのか? ああ、答えぬとも良い、自力で――」
魔法の枠に捕らえられ、ロザリーから驚きの声が上がる。
得られた知識を味わうように脳内で一度だけ見直し、それから一転して指示を出した。
「ふむ、分析した。
 では出発だ。ケフカよ、マティウスにピサロを伴って来るように伝えろ。
 ロザリー、貴様は少し目をつぶれ」
戸惑いつつも、いわれるままに目をつぶった彼女に対してある呪文を詠唱する。
「へえ、面白い魔法ですねえ」
「ほう、知らぬのか? それほど難しい魔法ではないはずだが」
言いながらロザリーを摘み上げた手のひらから目を開けた彼女の小さな小さな悲鳴がした。
「貴様の足では我々については来れん。
 しばらくポケットでおとなしくしていてもらう」
自分の状況を理解できないまま、ポケットに放りこまれる小さなエルフ。
それから、地面に転がっていたイザ、と呼ばれた男の形見である剣を拾いザックへと収めた。
彼の埋葬を願ったロザリーへのせめての気持ち――などとその行動に言い訳をつけ、
(懐柔? 小癪になったものだ、私も)
そんな自分を自嘲した。


変わらず冷静なマティウス、あからさまに不快な表情のピサロを順に見やり、
目的のこと、ロザリーの扱い、ピサロとケフカへの注意と警告などを簡潔に伝える。
それから失われた時を追いかけるように四つの影は再びカナーンへと走り出していった。
421Double dealer 11/11:2007/02/11(日) 04:49:07 ID:SAF0UbQ60
【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ
 第一行動方針:ロザリーの扱いに目を配る
 第二行動方針:カナーンでアリーナを探す。ザンデ・ケフカを強く警戒しつつ同行】
【マティウス(MP 1/3程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ
 第一行動方針:カナーンに向かい、ゴゴの仇(アリーナ2)を討つ
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ザンデ(HP 4/5程度)
 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー、ルビスの剣、
 再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について)
 第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける
 第二行動方針:ケフカとピサロの衝突を抑える
 第二行動方針:カナーンへ向かいアリーナを探す。可能ならば首輪を奪う。
 基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】
【ケフカ(MP2/5程度)
 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 魔法の法衣  アリーナ2の首輪
 第一行動方針:「こいつらをできるだけ上手く利用する方法」を考える
 第二行動方針:「こいつらをできるだけ楽に殺す方法」を考える
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【ロザリー(小人、混乱) 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ
 第一行動方針:?
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:カナーン北の平原】

※イザの死体は荷物(+マサムネブレード)といっしょに放置。ごめんなさい。
422名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/14(水) 01:16:22 ID:98c8D0YL0
保つ
423名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/14(水) 17:58:51 ID:jzaSDp0pO
ロッケンロール
424名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/16(金) 11:19:10 ID:++fPTfLy0
ロックんろーる
425出会いが二人を別つまで 1/7:2007/02/18(日) 03:32:06 ID:UsWiBFam0

どれだけ熱くなろうともどこか心に冷たい部分が残っている。
何も考えずに暴れたかったという願いを打ち消すほどの自分の中にある職業上の性質を恨めしく思いつつ、俺はその音に反応した。
気を取られた分だけ鋭さを失った攻撃の間合いから悠々と女が抜け出す。
「急いでるって言ったじゃない!」
迷惑気に、けれど手馴れた構えで反転し、迎撃の構えが向けられる。
特別に鍛錬された聴覚を持たない人間に今の音を聞き分けることはできなかったのだろう。
炎に包まれた村にあってそれが目的の建物のものかどうかは分からない、分からないが確かに炎に苛まれる木材の悲鳴が聞こえたのだ。

熱くなる感情は打ち消すことができても、浮かんだビビのことは打ち消すことができない。
一度ならず二度まで小さな黒魔道士のことを気にかけた事実がそれを証明している。
いや、ビビの声を聞いたときに気付くべきであった。
俺は、なんと甘い。
その瞬間、ここまで一度たりと満足できる勝利を得られなかった理由がわかった、気がした。
まず断つべきは、乗り越えるべきはその甘さではないのか?
孤独なる暗殺者、死線のチャンピオン、そこへ立ち戻るにはまず鎖を断ち切らねばならないのではないか?
ああ、まったくそうだ――その通りだろうさ。

目はこちらの動きを離さず、けれど名前も知らない女はそろりそろりと後ろ歩きで離れていく。
「………」
冷静に、さきほど得られた情報をまとめあげる。
こいつらの拠点となっていた建物が宿屋であり、毒を受けたはずのビビがそこで休んでいたという推測は十分成り立つ。
そうして女が向かおうとしている方向の建物は今まさに屋根から火を噴き出した。
本当にそんな事をするつもりか?
自問に対して大きく息を吸い込んで応える。
ああ、俺が決めたことだ。
迷いは消え失せた。
拳を堅く握り締めた俺は全力で地を蹴って女へと突進し、
その勢いを受け止めようと身をすくめたそいつをすり抜けて宿屋へと走った。
426出会いが二人を別つまで 2/7:2007/02/18(日) 03:37:00 ID:UsWiBFam0

「どうするつもりなのよ!? アンタ、何考えてんのっ!?」
背後から疑問と非難に満ちた声が追いついたとき、拳は既に壁の弱い箇所を打ち抜いたところだった。
投げかけられた声に対して振り返ることも無く、開いた裂け目から焦げ臭い建物の奥へと踏み込む。
上半身、すでに一度炎で焼かれた部位が今また熱に炙られちりちりと痛みを訴えた。
「アンタだって焼けちゃうじゃない! ささっと帰ったほうがいいって!」
まだ火の回っていないほの明かりの空間で後ろから来た女に追いつかれた。
炎が生み出している空気の流れを切り裂いて剣先が向けられる。
けれど、今の自分に迷いはないのだ。進まねば、道は開かれない。
無事な扉を蹴り開け、一室へと飛び込んでいく。
「…敵でしょ、アンタはッ!」
当然のようについてきた女、けれどそのトーンは少し弱くなった気がする。
外で投げつけられた言葉よりは随分と疑問寄りになっているらしい。
今度は剣は向けられない。
突然にずしんと轟音と衝撃が身体に響いた。例のモンスターが暴れているのだろう。
それは建物もろとも内側が焼け落ちるタイムリミットの存在を強く印象付けた。
戸口にいる女のそばをすり抜け、次の扉へと向かう。妨害はない。
「さっきはソロと戦っててさ…わかんない、……わかんないんだけど、その、助けるつもりで、来たの?」
火傷した部位がさらに盛大に痛みを訴える。
かけられる言葉を完全に黙殺しつつ、面識もない相手に背をさらしたままただひたすらに道を拓く作業に神経を使う。
炎の中、たどり着くことができないなら俺はそれだけの存在だったということだ。
ようやく見出したこの壁を乗り越えねば俺は一歩も進むことはできない。
そんな心境だった。

ごとん、と派手な音を立てて火のついた木片が落下してくる。
刻々と、そして加速度的に、宿屋が炎に呑まれているのだ。
「………いいよ、ちょっと休戦」
背後で勝手な納得がされる。
そうして、女は横へやってきて崩れ行く建物に道を拓く、その作業に加わった。
「アタシはリュック。いっとくけど全然信用したわけじゃないから。
 けど、今は……信じてみるよ、アンタを」
427出会いが二人を別つまで 3/7:2007/02/18(日) 03:40:33 ID:UsWiBFam0

‐‐‐‐‐‐‐‐

何の音だか分からない微かな気配が時折あるほかは森の中は至って静かだった。
真ん中に光点が1つだけのレーダーの画面を眺めてほう、と息を吐き出す。

闇に沈む森の底から見れば木の葉の間の夜空は確かに輝いて見えた。
さっきと何も変わらないような風景の中をゆるゆると彼女は歩いていた。
変わっているのはそばに死体がないというだけだ。


きちっとした方向とか道筋とか、そういうのはもう分からなくなっていた。
といって、森の中をさまよい歩いているわけじゃない。
あの時、進んでいく方向は確かに決めたし、それから外れたつもりはないから。
思案の中にも真ん中に想い人がいてくれるから揺らがない。
けれど…
その思考の星空にきっとどこかで頑張っている彼女の顔を思い浮かべると足が止まる。

彼女は間違いなく――魔女に抵抗しようと頑張っているんだろう。
そうしたら、最終的に彼女を撃てるのだろうか。
綺麗な波紋が広がっている水面に別の水滴を落とされたように、それだけではっきりした決意が乱れていく、気がする。
会いたくない。


そう念じて思考制止することが、波打つ気持ちを止める最善の手だった。
あいかわらず真ん中に光点が1つだけのレーダーの画面を眺めてもう一度息を吐き出す。
何の音だか分からない微かな気配が時折あるほかは森の中は至って静かだった。
再び彼女は歩き出す。今のところ決意は静かに乱れない。
428出会いが二人を別つまで 4/7:2007/02/18(日) 03:42:31 ID:UsWiBFam0

‐‐‐‐‐‐‐‐

音も無く、張り出した樹木の根を飛び越えて柔らかな地面に降り立つ。
追って来る気配など存在しない。

(………賢明な判断です。危険を冒す必要などないのです)
空気の流れ以外に乱すもののない森の静寂に佇み、異形の騎士はそこにいない主を褒め称えそれから、自分の行動が与えたであろう心痛を思った。
(必ず、必ずや命をもって償いますゆえ今はお許しください)
封印した感情が湧いて出ぬよう、冷徹に自分への言い訳に努める。
しかしその努力もほんの束の間のことだ。
再び孤独なる戦場へと舞い戻った騎士は幾多の命を奪い去った冷たさを取り戻すと、すぐに目的達成のため次にやらねばならぬ事へと思案をめぐらせる。
慣らすようにファイアビュートを試し振りすると空気が勢い良く燃える薪が発するような音を立てた。
今宵深夜の戦場は、サスーン城。標的はいわずもがなすべての参加者。
少なくなった武器道具、ピークに達しつつある疲労と消耗。
されども確固たる殺戮の意思は強靭な精神力をもって身体に動くことを強要し、またモンスターの身体もそれに応えてくれる。


その先に、時代を違えて同じ人間との縁で繋がっている男が待っていることをまだ騎士は知らない。
父親と臣下、一つの起点から全く異なる方向を指した二つの思いが交差する出会いは近い。

429出会いが二人を別つまで 5/7:2007/02/18(日) 03:45:12 ID:UsWiBFam0
‐‐‐‐‐‐‐‐

「エリア!」
眼前には分かたれた仲間の感動の再開シーンがあり、俺の目的もここで果されるはずだった。
けれど、
「ねえ、ワカル? リュックだよ! それにターニアとビビはどこ!?」
そうだ。そこには崩れた建材に下半身を捕らえられて動けない女がただ一人だけ。
俺を炎の中に走らせた動機そして目的、かつての戦友である小さな黒魔道士の姿はない。
火の赤に照らされている小さく歪められたスペースを焦燥とともに見渡す。
どれ程目を凝らそうとも残されているのは女一人と三人分のザックだけ。
最悪の予想が頭をよぎりかけたところで、聞いたことのないかすれ声を聞いた。
「だい……じょうぶ………二人は、…」
「え、なに? 聞こえないよ、エリア!」
行動するには十分だった。このエリアという女はまさに事態を知る当事者なのだから!
きんきんとわめくリュックの傍らへと移動し、すいと伸ばした腕に力を込めてエリアを捕まえていた重さを持ち上げる。
息を合わせたようにリュックがエリアの身体を引き出した。
「無理しちゃダメだけど…二人のことなんだね!? エリア、もう一度お願い」
「ふた……二人は、先に……行った、から、………だい…じょう……」
か細い声から事態を察したのと同時、分厚い炎の壁を越えて轟音と振動が全身を打った。
あの巨獣が呼び寄せている落雷、それが再び宿屋を襲っているのだ。
もはやここに留まれる時間は無い。
同じ判断なのだろう、迅速にエリアを背負い上げたリュックがぱちりと俺の腕を張る。
振り返ることも無く、炎の間からこじ開けてきた退路へと飛び込んだ。
430出会いが二人を別つまで 6/7:2007/02/18(日) 03:47:48 ID:UsWiBFam0

全体へと火が回りまさに薪の山と化しつつある宿屋から弾丸のように飛び出す。
ひやりとした空気の感触に気が回ったところでようやく後ろを返り見た。
ほうほうの態ながら同じく火中より飛び出してきた鎧の女がいる。
その背には既に気を失ってしまっている別の女がいて、その腕には一つだけザックが絡み付いている。
一つだけとはいえ、良くつかんで放さなかったものだ。
「! エリア!? ……良かった〜、助けられた〜……」
そろりと背負ってきた女を降ろしてリュックはひとしきり仲間の無事を喜び、
「んー、と。ありがとう、ね。アンタがいないとエリアは助けらんなかった。
 ホント、ありがと」
笑顔をこちらへ向けた。
何かを成し遂げた者どうしに通じる連帯感のようなもの。
そのときに自分のうちにわずかに生じた高揚はそう結論付けた。それが傭兵としての心得だ。
ああ、理由さえ得れば俺は今すぐにでもこの女と戦うこともできる。できるのだ。
心中で繰り返しつつほとぼりを醒ますようにできる限り愛想なく、ぶっきらぼうに横を向いてやった。
とにかく次はビビがどこに行ったか見つけねばならない。
今にも駆け出そうか、それともエリアが目覚めるまで待つべきだろうか?

決別を。
「俺は戦い抜き、勝利する道を選ぶ」。
思い描いた仲間との決別を、修羅の宣言を、もう一度心で唱える。
中途半端で、どこか断ち切り難かった絆を手放すことでやっと完全な決意を固められる。
だから、俺はとにかくビビに会わねばならない。



その異名と同じ色の光の中で風に吹かれ、サラマンダーは時を待つ。
出会いが二人を別つ時を。
431出会いが二人を別つまで 7/7:2007/02/18(日) 03:49:24 ID:UsWiBFam0
【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5)
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:ビビと会い、決別する
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)】
【リュック(パラディン)
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)
 バリアントナイフ チキンナイフ マジカルスカート 薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:仲間との合流
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【エリア(体力消耗、気絶)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:助けを待つ
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在位置:ウルの村・宿屋外】

※宿屋は炎上中。ビビの支給品袋(毒蛾のナイフ 賢者の杖)とエリアの支給品(妖精の笛)はその中に。

【ユウナ(ガンナー、MP1/3)(ティーダ依存症)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊、
 対人レーダー、天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、ライトブリンガー
 第一行動方針:思案中
 基本行動方針:脱出の可能性を密かに潰す】
【現在位置:カズス北西の森(キャンプ〜指定の場所、の間)】

【ピエール(HP1/3、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート
 第一行動方針:サスーン城襲撃
 第二行動方針:リュカに気づかれない様にタバサを抹殺する
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
(*ピエールはタバサの抹殺の機会を失った場合、リュカの目の前ででもタバサを抹殺するかもしれません)
【現在位置:サスーン城の東の森】
432出会いが二人を別つまで :修正:2007/02/18(日) 03:53:15 ID:UsWiBFam0
エリアのパラメータを以下に修正いたします。

【エリア(体力消耗、気絶)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:−(仲間との合流)
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在位置:ウルの村・宿屋外】
433名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/21(水) 16:04:36 ID:NGxq6ssT0
そろそろ保守
434名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/22(木) 23:35:17 ID:xRF0dvbo0
まだまだ保守
435名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/02/24(土) 10:08:04 ID:dfIfWDnx0
マジで保守
436カーネイジ(NO FUTURE) 1/7:2007/02/26(月) 07:43:50 ID:7llYV/Ib0

咆哮と稲妻。
それがマッシュとブオーンの開戦の合図。

手負いの獣、そんなありふれた表現がぴたりとはまる相手。
降り注ぐ雷の第一波を覚悟を決めて弾丸のように突き抜け、巨体へと肉迫しながら格闘家の目は冷静に相手のダメージを見定める。
ヤツの左眼は見えていない。全身はあちらこちらが火傷、そうでなければ裂傷、あるいはその両方。
とりわけ右肩には深い傷がある。
重傷を負っている巨体には似つかわしくない反応速度で叩きつけられる右腕を紙一重にすり抜け飛び上がる。
スピードと体重を乗せた拳は遠慮なくモンスターの顎を下から叩いた。
鋼鉄の感触と相反する弾力。
分厚い肉が可能とする防御力に臆することなく続けざまに数発の打撃を打ち込んで地面に降りる。
こんな化け物をよくここまで追い詰めたもんだ、と感心するマッシュの目の前で緩慢に口が開かれ、赤い光が見えた。
「遅いぜ!」
薙ぎ払う炎に言葉だけを残してマッシュの肉体は跳躍する。
眼下を赤い波が過ぎていく。かわした、さあ反撃だと思った刹那、衣服からぱちりと静電気の囁き。
暗がりの向こう、カッと見開かれた鈍い光と目が合った瞬間、マッシュの視界が白く塗りつぶされる。
437カーネイジ(NO FUTURE) 2/7:2007/02/26(月) 07:46:12 ID:7llYV/Ib0
墜落、地面に打ち付けられる直前で身体のコントロールを取り戻し、何とか受身を取る。
片膝ついた低い視点から見上げる巨体はまるで負っているダメージを感じさせず、難攻不落の要塞のようだった。
「なんてやつだ……」
豪腕。被弾すれば大ダメージは免れ得ない。
火炎。あたりを火の海に変える受けることのできない吐息。
稲妻。避けがたく射程も広い破壊の光。
手負い? 追い詰めた? いや、この化け物はただただ凶暴性を増してきただけじゃないのか?
村の惨状、モンスターの傷、「誰か」の存在をぞくりと実感する。
兄貴のことだとか、緑髪だとか金髪だとかを超えて寒い想像が脳裡を這い回る。
だが、嘆く暇も悲しむ暇も迷う暇もない。眼前で再びモンスターの大顎が緩慢に開かれていく。
「ッの野郎ッ!!」
さっきのように跳んでしまえばここは開けた草原、稲妻の良い的にされるだけだ。
だからマッシュは今度は横の動きで吹き付けられる炎をかわす。
続けて大気が軋むような音を立て、それを呼び水に稲妻が雨の如く降り始めた。
だがそこにはもう誰の影もない。
放たれた矢のような目にも留まらぬ速さで格闘家の鉄拳は巨敵へとめりこむ。
「爆裂拳!」
力任せの破壊ではなく堅い防御を貫いて内部を破壊する技。
ならばこそ、モンスターの口から怒りとも苦悶とも取れる呻きが漏れた。
間髪入れず大岩の如き腕がマッシュめがけて振り下ろされてくる。
「来い!!」
自らを鼓舞するように一喝、頭上で両手を十字に組む。
襲い来る隕石衝突のようなインパクト、けれど鍛えられた肉体、力、精神は一歩も引かない。
鈍い音が掻き消え、衝撃が散り去る。一瞬、すべてが静止、そして。
「うおおおーーーッッ!!」
気合の叫びを後押しにして腕に込められた力が、爆裂するように大岩を弾き返した。
438カーネイジ(NO FUTURE) 3/7:2007/02/26(月) 07:47:58 ID:7llYV/Ib0
予想外どころかこのモンスターにとっては生まれて初めての経験かもしれない。
ともかく、自分の意思に反する力を腕に加えられ、巨体がそのバランスを崩す。
それを見逃さない。
ロック・クライマーが挑む壁のような身体自体を足場に使い、上へ上へと駆け上がる。
肩越しに見える夜空に浮かんで無防備を曝しているモンスターの顔がある。
この一撃、慈悲なく容赦なく叩き込む。
そう意を決して練り上げた気を両腕に集めていく。
見上げる暗がりに見開かれた鈍く光る一点を標的に上昇、そして淡く輝く腕を構えて。
「オーラキャノン!」
極太のレーザーのように、爆裂の魔法のように、まとめ上げた気をその光へと撃ち込む。
聞いたことのない苦痛と悲痛に塗れた獣の絶叫を上げ、巨体がのたうった。

439カーネイジ(NO FUTURE) 4/7:2007/02/26(月) 07:48:55 ID:7llYV/Ib0



見上げた空から、白く綺麗な光が降ってくる。
その光はやがて視界すべてを覆いつくし、そしてブオーンから光を奪った。
もはや肉体的な苦痛など感じなくなっていたはずのブオーンを、忘れていた痛みが襲う。
「グフォオオオオォォーーッッ!!」
空気を振るわせる絶叫、けれど彼の眼には一片の光も戻ってはきやしない。
失った何かを探すように、ただ闇雲に、手足をバタつかせる。
傷付いた身体を自ら掻き毟り、鉄槌のように腕を脚を地面へ叩きつける。
そうして触れる確かな地面と振り回す肉の重さにようやく己の生存を確信し、ブオーンは静止した。
取り付いた執念が考えことを促す。
どんな逆境にあってもくじけてはいけない。絶望するな、必ず道はある。だから出来ることをやれ。
諦めるな、くじけるな、信じろ!
内なる声がそう諭す。
だからブオーンは、さらに狂気と凶暴を深めていくのだ。
何としても生き残る、そのためには、この暗闇の世界すべてを破壊しつくすしかない。
………ぜったいに、くじけない。



440カーネイジ(NO FUTURE) 5/7:2007/02/26(月) 07:50:13 ID:7llYV/Ib0
のたうちまわる巨獣にわずかばかり憐憫の情を抱きながら、マッシュはそれが動かなくなるまで睨みつけていた。
ねじが切れるように巨体がすべての動きを停止してもただじっと見つめ続ける。
まだ終わりじゃない。
現実に相手は動きを止めているが、確証はなくとも確信がある。
久方ぶりの静寂、途切れない緊張、引き延ばされた時間。
濃密な領域に割って入ったのは、背後に出現した気配だった。
惑わされることなく気迫ある視線を構え続けていたマッシュも声が届くに至り、ついにそれを崩した。
振り返ればそこには信じられないという表情の茶髪の男が立っている。
「……本当に、やったのか……?」
驚きを込めて呟いた男は付け加えるようにバッツ、と自己紹介した。
俺はマッシュ、シンプルにそれだけを返してから、語気を荒げる。
「何故来た? 下がってろって言っただろ!?
 お前は巻き込まれないように緑髪の男を連れてできるだけ離れるんだ!
 まだ……終わっちゃいない!」
「まだ!?」
小山のような巨体をじっと眺めるバッツの眼には疑いと納得が、納得優勢で混在して浮かんでいた。
その納得が体験に基くものであろうことを察して薄ら寒い想像が甦る。
「……ともかく、とりあえずでも今は動きを止めてるんだ。
 なあマッシュ、俺たちと一緒に来てくれないか? 今ならみんなと合流できる」
「みんな?」
「…………みんなさ。リュックはきっと上手くやってくれてるし、ヘンリーもきっと無事だ」
暗くなったトーン、「きっと」などという言い回し。
真剣な眼を伴った確証を得て、薄ら寒い想像はマッシュの中で現実化した。
燃え盛る村の中に取り残されている「誰か」がいる。
ティナ、ラグナ、エーコ、イクサス、アイラ、ティファ、バーバラ……
守れなかった顔がまばたいたまぶたの裏を通り過ぎる。
本来なら迷いなく駆け出すところ、それでも後ろ髪を引いたのは横たわる巨体に息づく確信。
判断に惑った数秒の間に、その確信もまた現実に姿を現すのだ。
441カーネイジ(NO FUTURE) 6/7:2007/02/26(月) 07:58:26 ID:7llYV/Ib0
突如白い閃光と、空気を切り裂く破裂音が耳目へと飛び込んでくる。
同時にその音の方向を振り返った二人の目の前でさらに三筋の稲妻が落ちる。
「こいつは!」
驚きに思考が続くより、事態の変化のほうが速い。
堰を切ったように今までにない規模でいくつもの稲妻が降り注ぎ始め、その一波がマッシュたちへ襲い掛かった。
ショックに耐える二つの呻きが重なる。
降りだした稲妻には方向性も正確な狙いもないようだったが、森の木に、焼け跡の地面に、燃え盛る建物に、
村周辺を丸ごと包むほどのかつてない範囲を巻き込み無差別に獲物を求めて襲い掛かっていく。
「ああっ、ソロ!」
目の前でバッツが誰かの名前を口にする。
その視線の方向…二人を襲った雷が続けて向かった方向で、マッシュはその名前が緑髪の男のものだと悟った。
気を失っている男が何かの抵抗などできるはずもない。白光の向こうに跳ね飛ばされる影を見た気がした。
改めてぼろぼろのバッツの姿を見、同じくぼろぼろだったソロの姿を思い出す。
緑髪だとか人殺しだとか、そういう疑惑はバッツの眼の輝きが打ち消していた。
気付けば突き動かされるようにバッツの手へと澄んだ輝きを湛えた石を押し込んでいた。
「マッシュ?」
「行け、バッツ! あいつは引き受けた! お前はソロや……『みんな』を助けるんだ。
 その石には治癒の力がある。きっと手を貸してくれるはずだ!」
「一人でなんて無茶だ!」
「そっちが言うなって。そんなボロボロのお前に頑張られてもこっちが責任持てん!
 こいつは元気に動ける俺にしかできない仕事だろ? 任せろ!」
「しかし!」
「ははっ、心配か? 安心しろ、まぁだ切り札の一つくらいはある!
 だから、そっちは『みんな』助けるんだぜ?」
降り続ける稲妻が無数の破裂音を奏で、地面を光と火で埋めていく。
その光に照らされて、バッツは大きく頷いた。
「……わかった。死ぬな、マッシュ!」
「当たり前よ! たとえ、裂けた大地に挟まれようとも、俺の力でこじ開ける!
 その石……ティナが守ってくれる、信じろ!」
無言で再びバッツが頷く。
握り締めた拳をこつんとぶつけ合った。
442カーネイジ(NO FUTURE) 7/7:2007/02/26(月) 08:00:55 ID:7llYV/Ib0


もはや振り返ることなく、稲妻の雨の中を駆けていくバッツを見送り、
マッシュは不気味なほどに不動を保つ巨体を再び仰ぎ見た。
天より不意に伸びた一条の稲妻に打たれるが、動じず相手を見据えて呼吸を整える。精神を集中する。
脳裡に描くは、奥義『夢幻闘舞』―――

「待たせたか? さあ―――決着の第二ラウンドといくか!」

【ソロ(HP1/3 魔力0 気絶 体力消耗)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング
 第一行動方針:?
 第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。
 第三行動方針:ヘンリーを助ける。
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【バッツ(HP1/10 左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉 ティナの魔石
 第一行動方針:『みんな』助ける
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) 神羅甲型防具改 バーバラの首輪
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:目の前の魔物(ブオーン)を倒す
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】
【ブオーン(HP1/6 両目失明、重度の全身火傷 重度の裂傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:すべて破壊する
 基本行動方針:生き延びるために、すべて破壊する】

【現在位置:ウルの村西の草原】
4437/7 修正版:2007/02/27(火) 22:23:39 ID:fjGdjHKo0

もはや振り返ることなく、稲妻の雨に臆することなく駆け出したバッツを見送り、
マッシュは不気味なほどに不動を保つ巨体を再び仰ぎ見た。
天より不意に伸びた一条の稲妻に打たれるが、動じず相手を見据えて呼吸を整える。精神を集中する。
燃え上がる魂の鼓動が、全身全霊を震わす力がマッシュに漲っていく。

「待たせたか? さあ―――決着の第二ラウンドといくか!」

【ソロ(HP1/4 魔力0 気絶 体力消耗)
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング
 第一行動方針:?
 第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。
 第三行動方針:ヘンリーを助ける。
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】
【バッツ(HP1/10 左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉 ティナの魔石
 第一行動方針:『みんな』助ける
 基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】

【マッシュ(HP3/4) 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) 神羅甲型防具改 バーバラの首輪
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6 )】
 第一行動方針:目の前の魔物(ブオーン)を倒す
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す
 第三行動方針:ゲームを止める】

【ブオーン(HP1/6 両目失明、重度の全身火傷 重度の裂傷)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:すべて破壊する
 基本行動方針:生き延びるために、すべて破壊する】

【現在位置:ウルの村西の草原】
444名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/01(木) 12:23:07 ID:HJwodaxS0
保守
445名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/01(木) 18:08:16 ID:eqyhemx80
保守を兼ねてお知らせ
携帯向けログ保管庫を現在運営しております。
CGIでデータベース化しており、検索システムがご利用になれますが、
これまでにAUにおいて不具合が報告されておりました。
プログラムの一部を改造してみましたので、動作確認のご協力をお願いいたします。
※1st、2nd、3rdともに、少しずつ違うプログラムを試していますので、
 それぞれで動作確認をお願いいたします。

【FFDQバトルロワイアル 保管庫@モバイル】
1st ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/list_1st/list.cgi
2nd ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/list_2nd/list.cgi
3rd ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/list_3rd/list.cgi

1.まずはページが見れるかどうかの確認
 タイトル一覧のページが出ればOK!
2.上にある「検索」が使えるかどうかの確認
 「検索結果○件」など出ればOK!
3.一番下の方にあるページ移動が使えるかどうかの確認
 「ページ1」
 「ページ2」 →移動 できますか?
 ・・・・・
※3番がダメな場合、ページを選ぶボタン自体が表示されず、
「それどこにあるの?」という状態になってるかもしれません。

結果報告はこちらのBBSまでお願いいたします。
必ず機種名を添えてください。
報告BBS ttp://dq.first-create.com/ffdqbr/bbs/bi.cgi

皆様のご協力をお願いいたします。
446名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/03(土) 12:32:17 ID:FOIjuJDbO
保守
447名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/05(月) 15:52:56 ID:xQ1D4B/i0
保守しないか
448名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/07(水) 01:32:44 ID:OMS0mIhu0
保守だよ保守
449名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/08(木) 23:11:31 ID:tfKmhkTlO
保守をするのに理由がいるかい?
450名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/10(土) 01:42:09 ID:xfA15KJ1O
大丈夫だなんて思わないで…
保守していると むなしさがいっぱいやってくるの…
451名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/12(月) 02:33:46 ID:jRaVLBOGO
保守し続けることの辛さより
スレが落ちることが怖いのじゃ…
452名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/14(水) 01:58:35 ID:8aJLz+e0O
エドガー「いいか、私が帰ってくるまでこのキャンプを動くんじゃないぞ」

イザ「僕の仲間を殺した犯罪者かもしれないのに一緒に居られるか!僕は他の村に行くぞ!」

THE 死亡フラグのガイドライン
453名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/16(金) 02:03:26 ID:sakFwc/qO
454あらくれ仮面・SPIRIT 1/17:2007/03/17(土) 13:39:40 ID:HX2a0Vst0

でも、やっぱり許せないって!

天使のような脳内ユフィちゃんに反論しながら、投擲のモーションで残っている手を素振りする。
というのもカイン黒幕説に触れて、怒りの矛先がそっちに向くにつれてほんの少しだけフリオニールに同情が湧いたから。
アルスにこてんぱんにやられたらしい、というのも感情を鈍らせる。
悪いのはカインなのに、問答無用でフリオニールをぶち殺せる?
なんて天使ちゃんの問いかけに即答できない。
許せないって曖昧に逃げることはできる。
けど、黒幕カインに騙されて利用されてた可能性があるのに問答無用に殺しちゃえってのには流石に抵抗がある。
エッジの仇なんだし、だから許すことなんてできないのは間違いないんだけど。
ボロボロになってるとこにトドメ刺さなきゃとまでは……どうなんだろう?

後ろをちらりと振り返る。
ついさっき、オルテガの仲間っていうザックスって人が増えて後続は三人になっている。
今は、オルテガとアルスがそのザックスに事情を説明しているところ。
ザックスは喋れなくて、だから地面での筆談を交えながらひたすら二人が解説してる。

彼は、フリオニールに対してどういう答えを出すのだろう。
あたしと同じ立場のアルスは迷った結果殺さなかった……だっけ。
オルテガは多分会ってから判断するつもりなんだろうな。
ここは多数決に従って、やっぱりあたしも、問答無用ってのは無しかも。
それで反省の色ナシ、だったらもう情状の余地なんてみんな無いだろうしさ。
455あらくれ仮面・SPIRIT 2/17:2007/03/17(土) 13:41:38 ID:HX2a0Vst0
なんとなくもやもやが晴れた気がして、なんとなく冷静になれた気がして、
説明ラッシュを終えて立ち上がったザックスに明るく声を掛けた。
大剣を得物としている彼はなんとなくクラウドと重なって見える。

「よろしくね、ザックス。一緒に頑張ろう!」

無言だけど力強い頷きが返ってきた。
オルテガが豪快に笑い、少し沈んでいたアルスの顔にも釣られて少し明るさが戻る。
こういうの、仲間っていいものだなー、って実感できるなあ。



そんなワケで、あたし含めて4人に増えた一行はカズスの村を行く。
もう何十年も廃墟だったみたいに変わっちゃった村の姿にはちょっと寒気がする。
そういえば、あの大爆発は一体なんだったんだろう?
オルテガもアルスも、ケフカもラムザもその話については詳しく知らなかった。
誰が何をやったのか。
いろいろ大変で忘れていたけれども結構重要なことじゃない、コレ?
―――なんて余計なことはここまで。

「皆、戦闘体制をとれ。向こうからおでましだ」
456あらくれ仮面・SPIRIT 3/17:2007/03/17(土) 13:44:43 ID:HX2a0Vst0
覆面の奥から低く響くオルテガの声が警戒を呼びかける。
それを合図に一気に全員の緊張感が高まった。
斧と大剣が臨戦態勢で跳ね上げられ、あたしも風魔手裏剣を手にしっかりと握る。
少しだけタイミングが遅れてラグナロクを構えたアルスの顔は真剣すぎて見てらんなかった。

「捕まえるんだよね?」
「抵抗するなら力で制圧することになるだろう。その時はそうだ。
 だが、まずは自分自身の安全を第一に考えるべきだな。特にユフィ、単身で戦うな」
「了解っ、あらくれ隊長! コンディション完璧なら負ける気しないけど仕方ないか」
「あらくれ隊長……? ほほう、なかなかの響きだな。
 ではあらくれ隊長こと私が先頭に立つ。アルス、ザックス、ユフィ、支援を頼むぞ!
 誰かが独りにならぬようしっかり相互でサポートするのだ」
「おー!」
「はい、父さん」

覆面の奥からの信頼の視線がみんなを見回す。ザックスも無言で頷く。
それから、オルテガの向いた先へとあたしもみんなも目を向けた。
寒々しい廃墟が広がり、遠くで暗闇に溶けている。
正直、こんな暗いのに良く見えるなって思う。あたしには何も見えない。
けれどオルテガの言葉を信用し、息を詰めたままじっと凝視。
やがて不意に、しかし確かに満ちていた緊張感がいくらか弛緩した。

「あれ……逃げた?」

肩透かしを食ったあたしの間抜けな声にかぶって、
びしりと効果音がしそうな勢いでムキムキの腕が真横に突き出され、後ろに停止を促す。
457あらくれ仮面・SPIRIT 4/17:2007/03/17(土) 13:47:56 ID:HX2a0Vst0
「一人とは限らんし、罠の可能性もある。
 誘いに乗ることなくパーティの利点を生かして動くぞ。
 アルス、最後尾を頼んだ。ユフィは左、ザックスは右を守れ。
 確認するが私より前には出るんじゃないぞ。いいな!」

二つの返事と一つのアクションがその言葉に続いた。
静かにそれを確認し、先頭を切ってオルテガが動き出す。
それぞれが、担当する方位に注意を配りながらゆっくり灼けた地面を踏んでいく。

雰囲気がぴりぴりしてるのは重厚な声質で気を引き締められたのと、
相手を追っているというシチュエーションのせいだ。
それでもなんだか安心感があるのはオルテガが大きな大きな精神的支柱になっているから。
マントが砂塵混じりの夜風に翻る背中を追ってると、それが感覚で理解できるんだ。
なんていうか、一緒に戦ってる人に勇気と自信を与えてくれるっていうの?
うちの親父にも見習って欲しいくらいだなー。

なんていう間にぽつぽつ残っている建物を抜け、広くぽっかり開けた場所へたどり着く。
ステージバックに岩山を従えた、ひどく荒れ果てた広場。
ここが爆心地なんだって、感覚が告げる。
その荒涼とした広がりの真ん中に安置されて、二人がいた。
一人はそう、彼女。うつ伏せの小柄な身体、結い上げられた赤い髪、細い手足。
一人はそう、彼。仰向けの大柄の身体、遠目に分かる大きな損傷、力ない太い手足。
少しずつ近づくにつれて目に入ってくる情報が二人の死体を彩っていく。
物としての気配しかまとっていないそれらは明確に、死んでいた。
後ろから、風に乗って小さく歯軋りが聞こえた。
458あらくれ仮面・SPIRIT 5/17:2007/03/17(土) 13:49:20 ID:HX2a0Vst0
「どうやら向こうはやる気らしいなあ。全員要警戒だぞ。
 狩られているのはこっち、とまでは言わぬが嫌な雰囲気……待て、アルスッ!?」

さくっと軽い音を立てて砂を蹴り、あたしとザックスの間を抜けてアルスがオルテガの前へ出る。
どうして、オルテガの指示に従わなかったのか。
何がアルスを突き動かしたのか。人の心の事なんて分からない。
ただひどく怒っていることだけはわかったけれど、その時あたしにはもう時間がなかったんだ。

「いかんッ!!」

ひときわ強い風が背後から吹き抜けていった。
それに気付いたオルテガが鋭く振り向いたのと。
それに気付いたあたしが反射的に防御姿勢をとろうとしたのと。
砂の下から魚のように飛び出したそいつ――フリオニールが魔法を呟くのと。
同時だった。
「フレアー16」、そんなふうに聞こえたような後、熱さと痛みがあたしの全身を抉っていく。

あー、こんなヤツ一瞬でも同情するんじゃなかった。
こんなんで、終わりって……

重力から解放されたような一瞬があって、それから地獄に墜落みたいな衝撃が響く。
何を見てるんだか分からない視覚も何が聞こえているんだか分からない聴覚も、みんな一緒に途切れた。




459名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 13:52:06 ID:9Gr1GmdO0
支援
460あらくれ仮面・SPIRIT 6/17:2007/03/17(土) 13:53:38 ID:HX2a0Vst0
話に聞いた爆心地は一様に吹き飛ばされた砂と石の世界。
明らかな意図をもって横たえられた二つの死体、自分の指示に反したアルスの行動、
砂の上を一際強く吹きぬけていった一陣の風。
結果として生まれたわずかな遅れ。

不覚、の二字が頭の中を駆け巡る。
下は石混じりの砂地。
だから罠の1つとして、地中からの襲撃も警戒して当然のことだったというのに。
だったというのに、現実ではなんら対策を取れなかった。
それでも、歴戦の経験と神経は全身に動き出すよう指令を飛ばす。
死体のように砂中で息を潜めていた恐るべき襲撃者を打つべく反応する。

「アルス! ザックス! 討つぞ!」

雄叫びのような指示を率先して実行すべく大地も断ち割らんとばかりに斧を振り下ろす。
その脅威をすり抜け、吹き飛んだユフィの支給品を手にすべく伸ばしたフリオニールの腕は、
手のひらの半ばほどでザックスの剣によって切り飛ばされた。

音としてはガ行に属する事は間違いない怪鳥か獣を思わせる叫びがあがる。
挟み撃ちの形、私は逃がさんとばかりにその根源へと殺戮の旋風たる斧を差し向けた。
だが敵もさる者、腕の痛みを抱えながらも横飛びに死地を逃れ去る。
傷跡から生温かい飛沫が跳ね、露出した腕に触れた。
刃を並べた私とザックスと、無手の男とが正対する。
461あらくれ仮面・SPIRIT 7/17:2007/03/17(土) 13:55:14 ID:HX2a0Vst0
思い返すは冒険の日々、唯一人で魔王打倒のため世界を旅した日々。
ある者は無謀だと言うが、多くの人が英雄だと褒め称える一人旅。
どうしてそんなことをしたのか?
それは、自分が仲間の命に責任を持てぬことに耐えることができなかったからだ。
信頼に値する仲間を危険に曝すことに我慢がならなかったからだ。
冷静に、かつ悪し様に分析すれば他人の能力に対する信頼が欠けていたに他ならない。
やがて私は唯一人自分を危険に立ち向かわせるようになり、
人々も単身戦う私をものすごい勇者であると称えるようになっていったわけである。
だが、誰がどれほど称賛しようと忘れてはいけない。
単に私は傲慢で勝手で命知らずなヒーローなのだ。

いざ、目の前で仲間が吹き飛ばされるのを見て思い返した自分のありかた。
魔法の使用を許さぬように私の斧とザックスの剣がフリオニールを追い詰める間、
不思議とそんなことを考えつづけていた。
だが猛省せねばなるまい、
我ら二人の刃に追われつつも巧みに逃げつづける男に対しては甘いというものだ。
隙に誘われひときわ力強く打ち込んだ斧は砂地に食い込む。
私の身体を壁とするようにザックスの追撃を封じ、男にとって待望の距離が空く。
生き残っている手に魔力を集めフリオニールが妖しげな身振りを見せはじめた瞬間、
にわかに空中に緊張が満ち魔力が渦巻いた。
構わんとばかりにフリオニールが唱えた術を真っ向から打ち消すように、恐ろしいほどに厳粛な声が呪文を紡ぐ。

「ギガデイン」
背後からのその声は記憶にある息子の声のいずれとも一致しない。

462あらくれ仮面・SPIRIT 8/17:2007/03/17(土) 13:57:45 ID:HX2a0Vst0
たちまちに空には白い稲妻が夜空を引き裂き、天罰としてフリオニールを撃ち抜く。
負けじと大地から噴き上げるように炎が巻き上がり、こちらを襲う。
光とシンクロした雷鳴がカズスに何度も何度も轟く。
炎の呪文に対して防御姿勢をとった目の前には、空を裂く剛剣と共に躍り出た我が息子の姿があった。
舞い上げられた砂と石の雨が降り、埃の雲が晴れていく。
荒涼たるカズスの砂漠の上に倒れたフリオニールと真っ直ぐにそれを見下ろすアルス。
その背中がこう言った。
僕が決着をつけます、と。


責任と決意に満ちた宣言。
そこに見出すのは自分と似通った孤高、そして自己を危険に投げ出す意志。
ともかく私も、ザックスも、アルスが背負っている決意の重さに割って入ることができない。

一跳びに間合いを詰めたアルスの一撃を死体のように倒れていたフリオニールが転がって回避する。
そこから、灼けた砂の上での一見地味にも思える二人の攻防が始まった。
展開自体は先ほど我ら二人を相手にした時とほとんど変わらない。
ひたすらに刃から逃げつづけるフリオニール、それを許さじと追いつづけるアルス。
異なるのは、一筋、また一筋と男をかすめ傷を増やしていくアルスの剣。

単純に、アルスの剣の冴えが男を追い詰めているのだとはどうしても思えなかった。
自分の斧が触れもしなかった相手に息子は傷を付けて見せている、
そんな優劣を認めたくないためにそんなことを言っているのはない。
拭いがたい違和感があるからだ。
これは、攻めているように見えてその実は様子を見られ続けられているのだ。
何か、奥の手のタイミングを待つように時を稼がれている。
アルスはそれに感づいているだろうか?
463あらくれ仮面・SPIRIT 9/17:2007/03/17(土) 14:01:25 ID:HX2a0Vst0
声をかけるべきか、迷いを抱えながらの目前で戦いは大きく展開する。
有効打をつかみ切れないもどかしさに先にアルスが動いてしまった。
気合の雄叫びが天に手をかざしたアルスから発せられ空気に緊張が満ちていく。
ギガデイン、叫びとともに召し寄せられた雷が再びフリオニールを罰する。
だが電光に呑まれる前、一瞬照らしだされた男の表情は不気味に笑っていたのだ。

巨体を走らせ、私は手を挙げたままのアルスへと駆け寄った。
激しい雷撃の嵐の余韻としてもうもうと辺りに砂塵が巻き上がっている。
その奥から異質な魔力をまとった「腕」が飛び掛る蛇のようにアルスを狙い伸びるのを確かに見た。
速度と腕力に任せ無我夢中でアルスを吹き飛ばし、その延長線へと割って入る。
実体無き魔力の腕は私にまといつき、その指で締め上げてくる。
正体不明の痛み、原因不明の疲労と虚脱が一斉に私を襲った。
苦悶の呻きが漏れ出すのを歯で食い止める。

だが、迷いも悔いもあろうはずがない!




464あらくれ仮面・SPIRIT 10/17:2007/03/17(土) 14:04:00 ID:HX2a0Vst0
精気に満ちた大きな生命力と魔力が全身に流れ込んでくる。
その心地よい感触に歓喜しながら全身を戦慄かせ、俺は立ち上がった。
1対4、1人吹っ飛ばして1対3の絶対不利な状況。
体力を削られ続ける俺が捕食者たるべく本能的に選んだ切り札こそ生命転移魔法:チェンジ。
その魔手は見事に獲物を捕らえたのだ。
さあ、生きるためには次に何を為すべきか? そう! 牙を突き立てるのだ。

喰い取った活力を全身に漲らせ、受けたダメージを嘘のように撥ね退ける。
少しずつ薄くなる煙幕が消える前に、獣の速度で飛び出していく。
その視界には動きを止めた覆面、砂の上で呆然としている少年、こちらへ駆けて来る大剣持ち。
誰が弱っているのかを瞬時に判断してさらに加速する。
さんざん苦しめられた斧や大剣が自分に届くよりも早く指の欠けた手が覆面の腹に触れる。
フレアー16、徒手空拳の自分が持つ最大の牙を解き放つ。
心地よい爆裂のリズムが腕を伝ってくる。


それで戦いは終わる、そうなるはずであった。
だが、さらに生きるために身を翻そうとした俺は伸びてきた万力のような力に片腕を捕らえられる。
全くの予想外に生じた虚を衝いて弱っているはずのその両腕は捻るように俺の体を投げ倒した。
地面に倒され、低い位置から見上げた俺の顔に垂れ落ちてくる生温かい液体。
その血腥さが生きよ、と呼びかける。
身体への命令権を取り戻して全身のバネを使い掴んだ手を引き剥がそうとするが、
大樹のように、朽ちかけてもなお威容を崩さない大樹のように戒めは解けない。
465あらくれ仮面・SPIRIT 11/17:2007/03/17(土) 14:06:53 ID:HX2a0Vst0
「――――、構うな!」

覆面が搾り出したような大声でそう叫んだ。
どこに向けられた声かはわかっていた。分かっていたが、戒めが俺に避ける術を与えない。
ならば、反撃して生きるしかない!
死命の刹那にそう閃いて自由な方の腕を殺意が来る方向へと構え――られない。
どうしてこれだけ動けるのか不思議なほどの力で、覆い被さられるように覆面に抱きすくめられる。

「放せーーーーーーッッッ!!」

見開いた目で闇に煌きながら近づいてくる大きな刃を睨み、俺は叫んでいた。
体重を乗せた剣先が近づき、そして胴へと食い込んでいく。
熱い感触がそこから体中へと拡散し、背の一点から噴き出していく。
背後から万力のように締める腕がその力を強め、全身がきしむ。
何かが弾けるような音が体内を反響していく。



何秒、いや何分、そのままだったろうか。
痛みと疲労、虚脱が渾然とした感覚が全身を満たし、
ようやく剣と万力から解き放たれた俺の身体は糸の切れた人形のように砂の上へ崩れ落ちた。
―――もう、生きていられないのか?
問いかけを顔の前に限られた砂へとぶつけてみる。
墓場のような地面の冷たさと、小さく続く鼓動が答えだった。




466名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/17(土) 14:09:41 ID:pMwxIkpz0
 
467あらくれ仮面・SPIRIT 12/17:2007/03/17(土) 14:10:20 ID:HX2a0Vst0
こんな勇者がいるだろうか? どれだけ自分は無力なのか?

フリオニールと父さんの死戦、二つの絶叫、そしてザックスの剣が二人を貫く間。
僕は後悔まみれの暗澹たる気持ちで立ち尽くしていた。
時間が止まっているというわけでもないのに、一歩も動けない。
声をかける、だとか回復呪文を、だとか出来た筈なのに、何も出来なかった。
わずか――けれど、何十倍にも感じられた――十秒程度の時間の後、決着がつく。

放り捨てられた影と、立ちつづける影。その上下が端的に勝敗を示している。
勝ち残った影……勇者オルテガはゆっくりと一歩、砂を踏みしめてこちらを向く。
それから覆面が外される。その暗闇の向こうに僕を見つめる優しい瞳を確かに感じた。
爆発と剣の残像、鼻をつく血の臭い。何を言えばいいのか分からない。
そんな僕に優しく、何事もないかのように父さんが語りかけてくる。

「はっはっは……オルテガ、一生に二度目の不覚……!
 …………そんな顔をするなアルス。もう子供じゃないだろう?」
「父さん、……大丈夫ですかっ!?」

自分でも、間の抜けた言葉だと思っていた。
大丈夫でなんかあるはずがないのだ。

「なんだ……自分のせいだとでも言いたげな顔をして……
 まったく、一人で動くは、一人で挑むは、一人で背負うは……
 ふふふ、お前も……私に似て……傲慢で勝手、この上、ないな。
 さすが、……私、の………息子、だ。…………安心したぞ」

ひたすらに、溢れそうになる涙を押さえつけていた。
途切れ途切れの野太い声、合間合間に聞こえる絶望的な息の音。
468あらくれ仮面・SPIRIT 13/17:2007/03/17(土) 14:11:14 ID:HX2a0Vst0
「勇者というものは……行為の後に続く、称号に過ぎん。
 だが命を救う、悪を討つ……必要なのは……名前でも、名目でもない。
 大事なのは……意志、だ。
 私の不覚は、な。お前を犠牲にしての勝利など考えられなかった、傲慢勝手な意志、
 そのせいだ。ははっ………お前の…自責と同じ、……だろう?
 まあ、ユフィに聞かれたら……怒鳴られ、そう、だがな……
 だから私…いや、人の意志を、責めるな。……そうして。……思うままに未来を、正せばいい。
 ………はは、まったく。……今更私、がいないと……不安、か?
 ……そうだな、不安、ならば……こいつ、でも……持っていけ」

ふわりと父さんの腕を離れた覆面がゆっくりと宙を舞い、僕の前に降りる。
震える手でそれを拾い上げた僕は一思いにそれを被って見せた。

「わっはっは……ぐほっ……さすが私の息子、よく似合う……ぞ。
 心配……するな。お前はどう、歩い…ても……悪になぞ、なりきれん………
 我が道を行け、あらく…れ、仮面……」

それきりで、すべては風の音の中にフェードアウトしてゆく。
僕は多分何かを絶叫したのだけれど、自分でもそいつをはっきり聞き取る事が出来なかった。

469あらくれ仮面・SPIRIT 14/17:2007/03/17(土) 14:13:45 ID:HX2a0Vst0
慣れない覆面に顔を隠されたのをいいことに僕はそのとき、静かに泣いていた。
だから、ザックスが砂を蹴って動いた理由を瞬時には理解できなかった。
慌てて涙を拭い、状況を見定める僕の目にはあの光、
父さんを絡め取っていったフリオニールが使う虚ろな光が飛び込んでくる。
大きく開かれたその魔手は一気に僕を掴もうと迫る。

フリオニールを殺すチャンスは確かにあった。
では僕は、そのときにそうしなかった事を悔やむべきなのか?
ああ、そうだ。
さんざん人を手にかけることをためらった末が、この時間切れじゃないか。
戦い生きることを貫き通しているフリオニールに最後に負けるのも当然じゃないか!
出来もしないことを迷っていた僕の愚かさを責めるべきなんだ!

自らを責め、敗北を受け入れかけた眼前で、
しかし僕を捕らえかけた虚ろな光は不意に掻き消えた。
驚きとともに改めて夜に目を凝らす。
大剣を油断なく構えたまま前方を睨みつけるザックスがいる。
さらにその先には、もつれて砂の上を転がる二人分の影があった。




470あらくれ仮面・SPIRIT 15/17:2007/03/17(土) 14:16:23 ID:HX2a0Vst0
目覚めてみれば腕も動かないし、体中痛い、ヨロイもボロボロ。
繋がった五感は絶賛赤信号。
だからあのまま寝てればよかったなー、とも思う。
でもさあ、オルテガのあんな言葉を聞いてさ、
ぜんっぜん空気読まないヤツが余計なことしようとしてんのに気がついてさあ。
しかもそいつがフリオニールと来た。
これで見てるだけなんてできると思う?
とにかく、あたしは無理やりに身体を動かして、乾坤一擲あいつに向けて飛び掛ったわけ。

すごく不気味な光の腕?がフリオニールから伸びていくのを見ながら。
腕は動かないから口にシュリケンをくわえてロケットみたいに急加速。
後ろにぜんっぜん気を付けてないあいつの首に鎧袖一触、刃を突き立ててやった。
あえなくバランスを崩してあたしとあいつはもつれあうように転倒する。

怒りに満ちた視線が至近距離からこっちを見つめる。
ざまーみろといわんばかりに見つめ返してあげる。
呪いでも悪口でも吐き出そうとしたあいつの喉からはもう風の音しかしない。
どうにもできない怒りに歪んでいくフリオニールの表情を見て、あたしは精一杯ニヤついてやった。
そのフリオニールの手のひらに魔力が集まっていくのが分かる。
音の出ない口がふ、れ、あの形を作ったのもわかった。
お前だけは確実に殺す、怨念の篭った目でそう言っていることさえわかってしまった。
それから二度と体験したくなかった爆発が相討ち上等の至近距離で炸裂し、
またまたあたしは重力から解放される。

471あらくれ仮面・SPIRIT 16/17:2007/03/17(土) 14:18:03 ID:HX2a0Vst0
それでまたまた地獄に墜落……じゃなくて、今度は何かに受け止められた。
はっと見上げた先にはヘンな覆面君。じゃなくて知ってるよ、アルス。

「あはは………アルスってばへんなかっこ……なにそれ〜」

あれ、反応がないや。
そういえば左腕の感触も無いし、なんだか体が軽くて寒いな?
多分、ひどい顔してるんだろうな。
……うん、わかってるよ。
耳はもう聞こえないみたいだし、癪だけどあたしはここまでみたい。
ギリギリ残った分の意識も、感覚も、どんどん鈍ってく。
ほんとのほんとで時間はもうない、みたい。

「こんなぼろぼろまで……がんばる、とかさ、
 ……そんなはずじゃ……なかったんだけどなー……
 ま、いまさら………しょーがない、か。
 じゃ……………あとは、任せたっ、あらくれ仮面っ」

あー、うん。喋ったら疲れた。眠い、なあ……





それきりで、眠るように目を閉じた彼女はすべての動きを止めた。
かすかにユフィの体を覆っていた淡く輝く魔力のベールが消える。
それが、オルテガに続き彼女の命もまた失われた瞬間だった。

夜風は残酷にも変わることなく廃墟と化したカズスの砂の上を吹き抜けてゆく。
死せる者も生き残った者も一音たりとて発することなく、その場に佇んでいた。
472あらくれ仮面・SPIRIT 17/17:2007/03/17(土) 14:19:25 ID:HX2a0Vst0
【アルス(MP微量、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク ロングソード 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10) E:覆面&マント
 第一行動方針:ただ、悲しむ
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を…?
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスタードソード
 第一行動方針:哀悼する
 基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】


【オルテガ 死亡】
【フリオニール 死亡】
【ユフィ 死亡】
【残り 48人】

※フォースアーマーは大破。
473名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/20(火) 11:25:27 ID:8kbHI2dH0
hosyu
474名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/23(金) 01:20:29 ID:F/1R0ebVO
(・∀・)
475名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/26(月) 00:19:36 ID:VLc7LRl60
捕手
476名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/27(火) 15:59:59 ID:TQynP6iBO
☆ゅ
477名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/03/30(金) 22:13:55 ID:GKxsTWFiO
保守
478君に出会ったことが間違いと言うのなら 1/9:2007/04/01(日) 22:10:43 ID:ZhCRhCHp0
倒すべき者の姿を求め、どれほど走り続けただろうか。
道無き道、生い茂る木々の彼方からやってきたのは、壮年の剣士だった。
どことなくリュカ様に似ているとも思いはしたが、そのようなことは大した問題ではない。
私の姿を認めた男が、剣を抜き放ちながら我が名を言い当てたことも、大した問題ではない。
あまつさえ主君の名を呼び捨てにし、息子だと嘯いたことすら、どうでもいい。
誰とどのような関わりを持ち、どのような思考に基づいて行動していようが、
リュカ様以外は全て倒すべき敵でしかないのだ。
だが、それでもあえて男に告げることがあるとすれば、二つ。

「これは全て、私の意志と独断で行っていること。
 故に、……何者であろうと、例えリュカ様自身であろうと、私の道を阻ませはしない!」

そう言い放ち、私は鞭を振り下ろした。
虚空を切り裂いて躍り掛かる炎の刃を、しかし男は驚くべき事に、手にした剣で弾き飛ばす。
何たる鋭い太刀筋か。しなる鞭で刀身を絡めとることすら許さない。
ただ一撃で、格の違いを感じるほどの実力。
そしてその剣。グランバニア城内に飾られた肖像画と、支給されたリストでしか知らぬ顔。
"偽者か魔女の傀儡として蘇った死人"、そんな認識を抱いていた自らの愚かさを恥じる。

そう、認めねばなるまい。
この男は、紛れもなくリュカ様の父君たるグランバニア先代王。
サンチョ様をして"リュカ様以上に強い"と言わしめた、ただ1人の人間。
魔力や体力の温存は、この際考えるべきではない。
全力を尽くしてなお、勝てる見込みは一割あるかどうか。
私は、その一割を掴み取らねばならぬのだ。
479君に出会ったことが間違いと言うのなら 2/9:2007/04/01(日) 22:12:17 ID:ZhCRhCHp0
一秒に満たぬ思考を終え、私は呪文を紡ぐ。
相手は神速と豪腕を併せ持つ剣士。恐らく接近戦を挑もうとするだろう。
だからこそ、まずは距離を稼がねばなるまい。
見越したとおりに間合いを詰めてくる剣士に向かい、イオラを放つ。
この程度で怯むとは思っていないが、視界を遮られれば、とりあえず前方に攻撃しようとするだろう。
私は一旦右手の方へ跳び、そして素早く後ずさる。
武器は構えたまま、本体を動かして、ザックから二本の杖を取り出す。
そして、舞う砂ぼこりの向こうで大した傷もなく剣を構える男を、今一度睨みつけた。

牽制しながら隙を探すこと、数秒か数分か。
不意に、男が動いた。
私も、本体の弾力を利用して中空に飛び上がる。
スライムナイトが得意とするジャンプ攻撃――
そのように見せかけながら、私は唱えていた呪文を完成させる。
再びの爆発。
その光が止まぬうちに、素早く杖の片方を投げつける。
攻撃ではない。これもフェイントだ。
真の攻撃はこの後に続く、鞭の一閃。
そのはずだった。
だが、おかしなことが起きた。
投げつけた杖が、突然光を放ったのだ。

光は男の身体を包み、そして、周囲に紫色の霧が立ち込める。
闇夜でも淡く光る独特の色彩は、紛れもなくマヌーサの霧だ。
投げつけただけで幻惑呪文を発動する、妖術師の杖にはこんな効果があったのだろうか。
疑問に思いはしたが、この好機は逃せない。
私は鞭を振るい、動揺して隙を見せた男の剣を弾き飛ばす。
そして主が父親の形見として振るっていたはずの剣を、手中に収めた。
480君に出会ったことが間違いと言うのなら 3/9:2007/04/01(日) 22:13:15 ID:ZhCRhCHp0
後は男の命を絶つのみ。
態勢を立て直される前にと、私は男に突進する。
男の名を冠した剣で、その心臓を貫くべく。
しかし、その時。
私の本体は、地面から伝わる振動を捉えた。
足音。何者かがこちらに向かってきている。
それを証明するように、木立が大きく揺れる。

私はとっさにもう一本の杖を振った。
引き寄せの杖。
その力は乱入者の身体を絡めとり、私の元へ運んでくるだろう。
私は即座に剣を構える。
それだけだ。待つ必要すらない。
猛スピードで引き寄せられた不幸な乱入者は、避ける間もなく自ら串刺しになる。

そして、私が空想した光景と同じように。
"彼"の身体は、怜悧な刃に吸い込まれるかのごとく、その中心を貫かれた。
481君に出会ったことが間違いと言うのなら 4/9:2007/04/01(日) 22:16:49 ID:ZhCRhCHp0
ピエールが走り去っていってから、私とお父さんはどれほど立ち尽くしていたでしょうか。
1人で行ってしまったピエールを心配する気持ちと、お父さんと離れ離れになりたくない気持ち。
釣り合った、相反する思いを傾けたのは、お父さんの言葉でした。

「タバサ」
お父さんは私の名前を呼び、泣きそうな表情で私を見つめました。
「急いでピエールを連れ戻してくる。
 いい子だから、ここで待っていてくれ」
その言葉に、私はびっくりして、お父さんを見上げました。
そして、右腕にぎゅっとしがみついて叫びました。
「嫌! お父さんが行くなら、私も一緒に行く!」
わかってはいました。そんな我侭を言っても、お父さんは聞き入れてくれないと。
私の予想通り、お父さんは首を横に振って、聞き入れてくれませんでした。
「僕は、タバサもピエールも、危ない目に合わせたくないんだよ」
お父さんは悲しげに顔を伏せました。
「タバサのことは大事だ。だから、"あの女"が向かっている先に連れて行くなんてできない。
 でも、セージもジタンもピエールを疑っている。
 僕達の姿がなければ、ピエールが僕達を殺したと決め付けて、殺そうとしてしまうかもしれない」

あの女――アリーナ。
お母さんを殺した、凶悪で、最低の殺人鬼。
あいつのような悪者を倒そうと、ピエールは1人で行ってしまったのです。
ピエールのことも、セージお兄さんたちのことも……お父さんの気持ちは痛いほどよくわかります。
私も同じ気持ちで、だから、私はお父さんと一緒にいたくて。

「行かないで、お父さん!」
私はお父さんを引きとめようとしました。
けれど、お父さんの心を動かす事はできませんでした。
「僕はもう、誰も失いたくないんだよ」
お父さんは辛そうな顔で、私の頭を撫でました
「必ず戻ってくるから……ごめんね」
482君に出会ったことが間違いと言うのなら 5/9:2007/04/01(日) 22:17:34 ID:ZhCRhCHp0
私は顔を上げました。
お父さんは、もう、背中を向けていました。
ピエールが渡してくれたマントは、あっという間に闇に溶けて、見えなくなっていきました。

私は悪い子です。
お父さんの言いつけを守れない、悪い子です。
でも、私はお父さんと離れたくなかった。
お兄さんと勉強した呪文で、お父さんとピエールを助けたかった。
だから、私はお父さんの後を追いかけました。
月が雲の中に隠れる度、森は真っ暗になります。
木の根や石につまづいて、二度ほど転んでしまったけれど、私はお父さん達に追いつこうと走りました。

どれほど走ったことでしょう。
突然、離れた場所で爆発が起きました。
私はすぐに、イオラの呪文だと気付きました。
きっとピエールが、アリーナか、殺し合いに乗った人と戦っているんだ。
そう思った私は、急いで、爆発があった方に走りました。

数十メートルほど走ったところで、再び、爆発が起こりました。
熱風に伴って生まれた光は、ピエールと、誰かの姿を映し出しました。
ピエールと戦っていたのは、アリーナではなく、男の人でした。
どこかで見たことのある剣を握り、男の人は、ピエールに切りかかろうとしていました。
私はピエールが殺されてしまうと思いました。
だから、男の人に気付かれないように小さな声で、急いで呪文を唱えました。
巻き込まれてもピエールが傷ついたりしないように、いつも使っていた得意な呪文を。

(マヌーサ!)
私が小さく叫ぶと同時に、紫色の霧が立ち込めました。
雲から出てきた月の光を受けて、霧はピエールの幻を映し出しました。
男の人は狼狽して立ち止まり、そして、ピエールの握っていた鞭がしなりました。
鞭は男の人が持っていた剣に当たり、宙へと弾き飛ばしました。
くるくると舞った剣は、ジャンプしたピエールの掌に、見事に収まりました。
483君に出会ったことが間違いと言うのなら 6/9:2007/04/01(日) 22:19:24 ID:ZhCRhCHp0
これで勝負がついた。
私は、そう思いました。
でも、ピエールは……
ピエールが剣を構えたとき、私は自分の目を疑いました。
だって、男の人が持っていた武器は、その剣だけだったから。
"殺す気がないのなら"、それ以上攻撃する必要なんてなかった。
なのに、ピエールは、剣を構えて男の人に突進したのです。
多分、止めを刺すために。……殺すために。

愕然とする私の身体を、誰かが突き飛ばしました。
お父さんだ、と気付くには、時間がかかりました。
私は知らなかったのです。
ここが、サスーン城より東に進んだ森の中だということ。
お父さんは、ピエールがサスーンに戻っていないか確かめようと、お城の方へ向かっていたこと。
だから、私とお父さんが爆発に気付いた時、私の方が少しだけピエール達の近くにいたことを。

月は、もう、隠れていました。
闇の中には紫色の霧が立ち込めていました。
だから。ピエールも、気付かなかった。

光が闇を切り裂いて。
お父さんの姿が、消えて。
嫌な音が、響いて。

「リュカ、様……?」

ピエールの声が、ひどく空しく聞こえて。
気紛れで残酷な月明かりが、木々の切れ間から差し込みました。
484君に出会ったことが間違いと言うのなら 7/9:2007/04/01(日) 22:22:15 ID:ZhCRhCHp0
いつかはこうなると思っていた。
親友の弟と再会した、あの時から。
けれど、どうせこうなるなら、もっと速く訪れてくれれば良かったのだ。
胸を貫いた剣と、ピエールの瞳の奥底で揺れる感情に気付いた今は、ただそう思う。

何が魔物使いだ、エルヘブンの血だ。
僕が一番、ピエールのことをわかっていなかった。
自分の力に自惚れて、わかっているつもりになっていただけなんだ。

タバサが僕の元に駆け寄ってくる。
そして、紫色の霧を超えて、人影が歩み寄ってくる。
忘れるはずもない懐かしい姿に、僕は思わず口を開いた。
「……父さん」
言いたいことは一杯あったのに、たった一言で限界がやってくる。
涙を流して座り込むタバサにも、何一つ言ってやれなかった。
せめてもと、声の代わりに、ジタンが渡してくれた石を握らせる。
本当にタバサを心配している人達と、もう一度出会えるようにと祈って。

「リュカ! しっかりしろ、リュカ!」
父さんが僕を抱きかかえ、僕の名前を呼ぶ。
でも、押し寄せる闇は、止まらない。

もしもあの時、リノアと一緒に死ねていたなら、きっとここまで悔しくはなかっただろう。
ピエール。
僕がいなければ、良かったんだろうか。
それとも、君がいなければ良かったんだろうか。
今更になって、もう少しだけタバサの傍にいたかったと思うのは、傲慢なんだろうか。
父さんとちゃんと話がしたかった、そう思うことは身勝手なのか。
だけど、僕だって……僕だって、父親で、息子なんだ。

ああ。僕と出会わなければ、君も、ここまで道を誤ることはなかったのに。
どうして、僕達は……出会って、しまったんだろう……ね……
485君に出会ったことが間違いと言うのなら 8/9:2007/04/01(日) 22:25:04 ID:ZhCRhCHp0
その時の私は、キャンプで出会った青年と同じ目をしていたのだろう。
気がつけば、私は息子の身体から剣を引き抜き、憎き魔物に切りかかっていた。
術者の集中が解けたのだろう、紫色の霧も我が目を惑わす幻影を映しはしなかった。
スライムナイトの弱点たる足元のスライムを一刀の元に両断する。
幾多の命を奪った魔物は、抵抗一つせず、崩れ落ちた。
私には魔物の言葉はわからない。
だが、緑色の体液を撒き散らすスライムの瞳は、諦めと絶望を湛えていたように思えた。

魔物の死を見届けた後、私はビアンカに良く似た少女に――息子の娘に向き直る。
娘、タバサは、しかし私を怯えた目で見つめた。

「来ないで!」

恐怖に顔を歪ませながら、タバサは森の奥へと駆け出す。
私は、その手を掴んで繋ぎとめようとした。
息子の分まで、彼女の身を守ってやりたかったのだ。
だが、……魔物の、最後の呪いだろうか。
私の足は、鉛の枷を嵌めたかのごとく、遅々として進まず。
幼い後姿は、みるみるうちに遠ざかって消えてゆく。

私は、リュカの荷物と、見覚えのあるリボンを手に取った。
リュカにはとうとう、父親らしいことを何一つしてやれなかった。
本来ならば、せめて私の手で弔ってやるべきなのだろう。
だが、その時間と余裕は、最早無い。
私がすべきこと、そしてリュカが真に願うことは、タバサを守ることであるはずだからだ。

「許せ、リュカ」
私は呟き、歩き出す。
一人残された孫娘を守る事こそ、私の責務であると信じて。
486君に出会ったことが間違いと言うのなら 9/9:2007/04/01(日) 22:25:57 ID:ZhCRhCHp0
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、
     悟りの書、服数着 、魔石ミドガルズオルム(召喚不可)
 基本行動方針:???】
【現在位置:サスーン城東の森→移動(行き先は不明)】

【パパス(鈍足状態、軽傷)
 所持品:パパスの剣、ルビーの腕輪、ビアンカのリボン
 リュカのザック(お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)、ブラッドソード、スネークソード)
 第一行動方針:タバサを追いかけ、守ってやる
 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:サスーン城東の森→低速で移動】

*毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[0]、レッドキャップ、ファイアビュート
 王者のマント、以上のアイテムはリュカとピエールの遺体の近くにあります。

【リュカ 死亡】
【ピエール 死亡】
【残り 46人】
487名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/02(月) 20:03:20 ID:s4Kn6zpw0
保守だぜ!
488弔い方 1/10:2007/04/03(火) 02:01:36 ID:5x+5rRu80
思った以上に魔法の絨毯のスピードは速い。
飛行速度の何倍ものスピードで平地を飛び抜けていける。
今はブオーンが通った跡をたどっているが、わずらわしい倒木もスイスイ飛び越えていける。
目立ちすぎるかと思ったが、よくよく考えたら夜中に絨毯が目立つも何もないだろう。
あのギンパツのせいで大怪我を負ったんだから、今はできるだけ身を休めるべきだ。
そんなわけで、移動しながら休むことができ、食事することだって可能なこの絨毯はとても役立つ。
もっとも、ブオーンのザックに入っていたパンは濡れて不味くなっているが、これはこの際仕方がない。体力の回復のほうが重要だ。
ブオーンは途中でウルの方向へ向かったようだ。今ごろウル方面は大惨事になっていることだろう。
もうほとんど森を抜けられそうな場所だったので、このままカズスへと向かうことにした。

リュカやエドガーはどうなったのか、カズスに来たとして、カインはうまく仕留められたのか。
エッジをぶつける気だったんだろうけど、名簿にバツが付いてるし、今どうやって相手してるのか?
僕らがカズスに招待したやつで、今生きてるのはエドガーにリュカにユフィに、あの6人組…は誘ってなかったか。
カズスにいた剣士が死んでないってことは仲間に引き込んだのか。
それならフリオニールとあの剣士とカインで共闘という形になる。
帰る頃には決着が付いてるかも知れない。

途中、なにかの魔法で森の一部が焼け焦げたような場所が何箇所もある。
この一日の間、森でどれほど激しい戦闘が起こったのかは手に取るように分かる。
戦いに巻き込まれ、広大な森の地形は変わり、絨毯が使える場所も多い。
489弔い方 2/10:2007/04/03(火) 02:03:24 ID:5x+5rRu80
カズスには思った以上に早く着きそうだ。大幅に遅刻したのは否定できないが…。


パパスを追うよりは、ユフィに会って話を聞くほうが確実だ。
パパスに話を聞いたとしても、ユフィの伝え聞きにすぎないし、フリオニールが移動してしまっていては意味がない。
キャンプの連中は情報を持っていない可能性すらあるのだから、これはもう論外だ。
もっとも、ユフィがどこでフリオニールに襲われたか、というのも分からんのだが、他よりはずっと有益な情報を得られると信じる。
それに、フリオニールがいなくても、カインがいる。仇を取りたいという思考はやつも同じはずなのだ。
そう考え、カズスに向かうことにした。
今は岩山に沿って走っているのだが、意外と砂地というものは走りにくい。
カズスに到達するにはいましばらく時間がかかるだろう。
「いいのか? 仲間を探すんだろう?」
ザックスはピエールによって仲間を何人も殺害され、生き残った仲間であるエドガーをひどく気にかけていたという。
今もそれは変わっておらず、今すぐにでも探しに行きたい筈だ。
だが、彼は気にするなとでも言うかのように手を振って問いに答え、犠牲者の弔いを続ける。
だから、僕は彼に言う。ありがとう、と。


申し訳ないという気持ちがあった。
確かにフリオニールを倒すためとはいえ、オルテガを殺害したのは自分だ。
490弔い方 3/10:2007/04/03(火) 02:06:02 ID:5x+5rRu80
アルスにとっての実の親を、そして自分にとっての命の恩人を殺害したというのに、何もせずにここを離れていいはずがないのだ。
死者への追悼だけではない。自分へのけじめも含まれる。
無意味だという人もいるかもしれない。が、自分にとってはとても大切なことなのだ。
ここに来る途中で見た、竜のことが思い出される。
自分は今まで出会った仲間を弔うことができなかった。だが、今は弔う時間がある。だから、やるのだ。

この体になってからは、この程度の暗さなんか障害にならない。闇に気配を紛れ込ませることも容易。
セフィロスのときのアレは、転身した直後で上手く体を使いこなせなかったということと、
相手が気配を感じるのに長けていたという不幸な要因が重なったことによる不幸な出来事。例外中の例外なんだ。
今なら目の前の二人が何をしているかってのもちゃんと見ることが出来る。
カズスの地面に空いた浅いすり鉢状の穴。そこにいるのは全部で7人、そのうち5人は死んでいる。
死体の中にはあのフリオニールやユフィ、レオンハルトの姿もある。
多分、今生き残っている二人はレオンハルトに連れられ、カズスへの誘引策を聞きつけてやってきたやつなんだろう。
もっとも、カインの仲間ということもあるが、その可能性は期待しないでおく。
ユフィと半裸の男が、策に引っかかって死んだのか、それともレオンハルトと一緒に来たのかも不明だが、それはどうでもいい。
フリオニールは彼らのどちらかに殺されたんだろう。剣士が持っている大剣も、覆面が持っている剣、ラグナロクも血に濡れている。
カインとサックスとかいう剣士はうまく逃げたか。

覆面マントをつけた怪しい男と、黒髪の剣士。二人は死体を移動させているようだ。墓にでも入れるつもりなんだろう。
491弔い方 4/10:2007/04/03(火) 02:08:04 ID:5x+5rRu80
覆面マントの男は顔でも隠しているのだろうか。黒髪の剣士もどことなく様子がおかしい。
なんでそう感じるのかと思えば、黒髪の剣士、さきほどから喋っていない。たまに地面にしゃがみ込むのは、筆談を行っているから?

レオンハルトと接触し、カインやフリオニールと交戦しているとなれば、このまま自分が接触しても面倒が起こるだけ。
戦闘するにしても、実力者二人を相手にする自信はさすがにない。
相手に見つかる前に離れてしまうのが最良だろう。

時間があまりあるわけではない。碌な道具もなく五人も埋葬していては、朝どころか昼になってしまうかもしれない。
埋葬は最も一般的な弔いだが、それしか方法がないというわけではない。

五人の死者の身なりを整え、目を閉じさせて水で顔に付いた血と泥を洗い流す。
レオンハルトは硬直してきており、あまり強引に行うのもよくないので、身を整えるだけにする。
レーベの民家で食用にと入手していた塩を撒き、彼らの、特にフリオニールの身を清める。
ジパングでの葬儀の儀式の一環にあるものらしい。
ただ、フリオニールの恨みとも憎しみとも取れる形相は、どうしても消えなかったが。
オルテガとレオンハルト、彼らが生前に使っていた武器、ロングソードとミスリルアクスを墓標として冷たい腕に抱かせる。
死後の世界でも、弱きを守り続ける戦士であるように。
ユフィはプリンセスリングで着飾らせ、風魔手裏剣を一枚握らせ、手を胸の上に置く。
昨日出会った魔法使いであろう少女には、波動の杖を握らせる。
そして二人の少女を番傘で被い、汚れにくく整えてやる。
最後に、崩壊した宿屋から、完全に焼け焦げてはいない布を見つけ、全員の顔を覆う。
簡易なものだが、これでも十分に弔うことは出来ているといえるだろう。

「ユフィ、レオンハルト、そして父さん。あなたたちの意思は僕が必ず継ぐ」
492弔い方 5/10:2007/04/03(火) 02:09:35 ID:5x+5rRu80
十数秒の黙祷。
そうして、二人はカズスに背を向け、歩き出した。


憎悪を生み出し、様々な人々の命を飲み込んでいったカズスの村には、こうして誰もいなくなった。


「ギルガメッシュじゃないか!」
村のほうに見覚えのない影。浮いてる絨毯に乗った真っ黒な竜。だが、自分の名前を知っている。誰だ?
「ほら、ぼくだよ、スミスだよ!!」
スミスと言っても、記憶にあるスミスとは全く似つかない。
もっと青かったはず。もっと短かったはず。共通点は竜ということだけ。
だが、俺の勘からすると、やっぱりこいつはスミスな気がする。なんとなく雰囲気が似ている。
スミスは今朝の出来事を体験し、仲間を失っている。俺と近い境遇にある。他のやつよりはずっと信用できる。

「お前…、随分見た目が変わっちまってるな。そいつが正体なのかよ?」
「え? ええ、まあそんなものだよ。色々あったからさ」
自分だって変身すれば今の姿とは大分かけ離れてるんだから人のことは言えないが。
それより、スミスは今朝の裏切りの真っ只中にいた人物。こいつなら何が起こったか知っているんじゃないか?

「俺は今、ユフィ…いや、フリオニールを追ってるんだ。サリィとわるぼう、それからフライヤの仇を取るためにな。
 だがよ、フリオニール一人で残ったやつを全員相手にして、それでわるぼうやフライヤを殺せるはずがねえ。
 協力者がいるとにらんでるんだが……。教えてくれ。俺が転送された後、一体何が起こったんだ?」
サリィを殺したのはフリオニール。こいつは当然許せねえ。
だが、フリオニールと組んでわるぼうを殺したやつも同罪だ。
こいつらを全員殺してはじめて二人の仇が取れるってもんだ。
あいつらが喜ぶのかどうかは分からねえが、これが今の俺に唯一できる弔いだ。
493弔い方 6/10:2007/04/03(火) 02:10:27 ID:5x+5rRu80
元々はカズスに行かせないつもりだった。
あの覆面マントや剣士と接触すれば、僕やカインがゲームに乗ってるとバレてしまうからだ。
だが、ギルガメッシュはフリオニールの仇を取るために動いているそうだ。
そして、フリオニールには協力者がいると思っているが、その中にどうやら僕とカインが入っていないらしい。

「ごめん、僕も知らないんだ。あの後フリオニールはすぐに逃げて、僕とカインは急いであいつを追っていった。
 だから、残った4人が一体どうなったかは分からない。
 ただ、君の言うようにフリオニールが誰かと組んでいたとすれば、
 フリオニールと同じ世界から来て、しばらくあいつと一緒にいたレオンハルトしかありえないと思う。
 もっとも、彼と扉の前で話し込んでいたライアンもグルだっていう可能性はあるけどね」
「やっぱりそうか……。くそっ、あのヤロウ……!」

ギルガメッシュの心に、ふつふつと怒りが湧いているのが分かる。
レオンハルトへの怒りもあるが、それ以上にレオンハルトを助けてしまった自分への怒りが大きいか。
エッジのときと同じだ。仲間の仇を取ろうとしているような純心な男。
もし何の罪もない人間を殺してしまえば、自身がフリオニールと同じことをしてしまったと知れば。
きっと後悔することだろう。壊れる寸前まで追い詰めて責めたてて、それからフリオニールの時のように一言囁いてやればいい。
『優勝することができれば、死んだ人を生き返らせてもらえるよ』……とね。
でも、こういうのは焦りすぎても良いことは無い。自分で勝手に疑って、勝手に罪を犯すからこそ効果がある。
僕が『レオンハルトに襲われました』なんて言った場合、裏切りの真相を知っている人間と出会った際の処置が面倒でもある。
だから僕のやることは、個人の正義のベクトルの方向を少しばかり変えてやるだけ。
494弔い方 7/10:2007/04/03(火) 02:11:59 ID:5x+5rRu80
「ところで、ユフィを追っているってことは、僕らを探すのも兼ねてたってこと?」
「いや、それもあるがよ、フリオニールに仲間を殺されたって聞いたからな。それで追いかけていた」
 カズスでカインと待ち合わせしているらしいしな。そうだ、カインはどうした?」

ユフィがフリオニールに仲間を殺された?
だが、カズスでカインと一緒にエッジを殺したのなら、フリオニールの名前だけが出るのはおかしい。
ということは、カズスに来る前に休んでた二人を襲ったってことになるのだろうか?
まあカインのことだから、今も上手くやってるし、これからも上手くやってくれるだろう。
ヘタに嘘を付いて見破られても面倒だ。嘘ではないことを話すのが一番いいだろう。

「それが色々ややこしいんだよ。とりあえず順番通りに話すから、落ち着いて聞いてね。
 まず、ユフィと出会ったのは正午過ぎ、北の森で、だったかな。そのときには仲間と二人で行動してた。
 それで、カズスで落ち合う約束をしたんだけど、カズスで殺人者が罠を張るってことを知ってね、一旦偵察することにしたんだ。
 そのときにはカズスには一人しか人間はいなかったから、カインに任せて、僕は周辺の偵察をしてたわけさ。
 でも、途中で緑髪の男とブオーンってやつにやられて大怪我を負って、帰りにまた銀髪の男に……」
「銀髪だと? もしかして、フリオニールか!?」
「違う、違うって! 話は最後まで聞いてよ。セフィロスとかいう、フリオニールとは別の銀髪の男にやられてこの通りさ。
 それでカズスに戻ってきて、今まで様子見してたんだ。仲間もいないのに一人で突っ込むのも無謀だしね」
「そうか、フリオニールじゃないのか……」

そっちが勝手に勘違いしたんじゃないかと思いながら、ギルガメッシュがかなりギリギリの状態にあることを再確認。
495弔い方 8/10:2007/04/03(火) 02:13:36 ID:5x+5rRu80
あとはここで見た状況をどう説明するか。
覆面マントの男と黒髪の剣士。ユフィやフリオニール、レオンハルトの死体。
フリオニールもレオンハルトも死んでしまっていることを伝えては、ギルガメッシュが腑抜けてしまう可能性もある。
そうなればまあ、一人楽に殺せるやつが増えるのだが、せっかくこんなに復讐心を抱いてくれているんだ、利用しないと勿体無い。
幸い、あの男たちは死体の埋葬をしているはず。上手く立ち回れば発見されることはないだろう。
もちろん、埋葬の途中に出くわしたら上手く戦わせられないかもしれないので、こちらも上手く立ち回る必要があるが。

「カズスには生き残りはほとんどいなかったよ。見なかっただけかもしれないけどね。
 いたのは覆面マントの男と、大剣を背負った無口な男だけさ。
 いくつかの死体が散らばってて、ユフィとその仲間らしい男の死体があった。他にもあったかもしれないけど、暗くて見えなかったよ。
 それで、生きてる二人だけど、どうもレオンハルトを仲間だと言ってたんだよね。
 そして、経緯は知らないけれど、覆面の男がラグナロクを持っていた」
「レオンハルトの仲間がラグナロクを持っていただと? どういうことだ!? もしかして、フリオニールのやつも近くに?」
496弔い方 9/10:2007/04/03(火) 02:17:51 ID:5x+5rRu80
「それは分かんないけど、あの剣が血で濡れていたように見えた。
 もしかしたら、あれで何人も殺したのは間違いないと思う」
「!!」

サリィの形見の剣ってのはやっぱり効果が絶大だ。
この復讐に燃え、かつ自分の正義を信じて疑わない目。カズスにいたやつらにぶつけてやればあとは勝手に殺しあってくれるだろう。

「その二人の元に行くのは危険かもよ? 二人ともかなりの実力者だと思うし、サリィの形見の剣を持ってるんでしょ?」
「おいおい、何をビビッてるんだよ。そいつらのところに行くに決まってらあ!
 サリィの剣を人殺しになんか使わせてたまるかよ!」
「そこまで言うなら、分かったよ。でも正面から突っ込むのは勘弁だからね。
 それから、くれぐれもあいつらの話に惑わされないようにしてよ。
 あいつらは、レオンハルトの仲間なんだからさ……」
497弔い方 10/10:2007/04/03(火) 02:20:31 ID:5x+5rRu80
【ギルガメッシュ(HP3/5程度・人間不信気味)
 所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3 
 変化の杖、りゅうのうろこ
 第一行動方針:レオンハルトの仲間らしき男の元へ行く
 第二行動方針:ラグナロクを取り戻す
 基本行動方針:レオンハルト、フリオニールを倒す】
【スミス(HP1/6 左翼負傷、全身打撲、洗脳状態、闇のドラゴン)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:ギルガメッシュをアルスたちにぶつける
 第ニ行動方針:カインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在位置:カズス西の砂漠】

【アルス(MP少量、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10) E:覆面&マント
 基本行動方針:自分の思った道を行き、未来を正す
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を…?
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【ザックス(HP2/5程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスタードソード 風魔手裏剣(17) ドリル 波動の杖 フランベルジェ
 基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在位置:カズス→北の峡谷方向へ移動中】
498弔い方 修正 1/9:2007/04/04(水) 00:23:20 ID:3qYMWTnZ0
思った以上に魔法の絨毯のスピードは速い。
飛行速度の何倍ものスピードで平地を飛び抜けていける。
今はブオーンが通った跡をたどっているが、わずらわしい倒木もスイスイ飛び越えていける。
目立ちすぎるかと思ったが、よくよく考えたら夜中に絨毯が目立つも何もないだろう。
あのギンパツのせいで大怪我を負ったんだから、今はできるだけ身を休めるべきだ。
そんなわけで、移動しながら休むことができ、食事することだって可能なこの絨毯はとても役立つ。
もっとも、ブオーンのザックに入っていたパンは濡れて不味くなっているが、これはこの際仕方がない。体力の回復のほうが重要だ。
ブオーンは途中でウルの方向へ向かったようだ。今ごろウル方面は大惨事になっていることだろう。
もうほとんど森を抜けられそうな場所だったので、このままカズスへと向かうことにした。

リュカやエドガーはどうなったのか、カズスに来たとして、カインはうまく仕留められたのか。
エッジをぶつける気だったんだろうけど、名簿にバツが付いてるし、今どうやって相手してるのか?
僕らがカズスに招待したやつで、今生きてるのはエドガーにリュカにユフィに、あの6人組…は誘ってなかったか。
カズスにいた剣士が死んでないってことは仲間に引き込んだのか。
それならフリオニールとあの剣士とカインで共闘という形になる。
帰る頃には決着が付いてるかも知れない。

途中、なにかの魔法で森の一部が焼け焦げたような場所が何箇所もある。
この一日の間、森でどれほど激しい戦闘が起こったのかは手に取るように分かる。
戦いに巻き込まれ、広大な森の地形は変わり、絨毯が使える場所も多い。
カズスには思った以上に早く着きそうだ。大幅に遅刻したのは否定できないが…。
499弔い方 修正 2/9:2007/04/04(水) 00:24:57 ID:3qYMWTnZ0
パパスを追うよりは、ユフィに会って話を聞くほうが確実だ。
パパスに話を聞いたとしても、ユフィの伝え聞きにすぎないし、フリオニールが移動してしまっていては意味がない。
キャンプの連中は情報を持っていない可能性すらあるのだから、これはもう論外だ。
もっとも、ユフィがどこでフリオニールに襲われたか、というのも分からんのだが、他よりはずっと有益な情報を得られると信じる。
それに、フリオニールがいなくても、カインがいる。仇を取りたいという思考はやつも同じはずなのだ。
そう考え、カズスに向かうことにした。
今は岩山に沿って走っているのだが、意外と砂地というものは走りにくい。
カズスに到達するにはいましばらく時間がかかるだろう。


「いいのか? 仲間を探すんだろう?」
ザックスはピエールによって仲間を何人も殺害され、生き残った仲間であるエドガーをひどく気にかけていたという。
今もそれは変わっておらず、今すぐにでも探しに行きたい筈だ。
だが、彼は気にするなとでも言うかのように手を振って問いに答え、犠牲者の弔いを続ける。
だから、僕は彼に言う。ありがとう、と。


申し訳ないという気持ちがあった。
確かにフリオニールを倒すためとはいえ、オルテガを殺害したのは自分だ。
アルスにとっての実の親を、そして自分にとっての命の恩人を殺害したというのに、何もせずにここを離れていいはずがないのだ。
死者への追悼だけではない。自分へのけじめも含まれる。
無意味だという人もいるかもしれない。が、自分にとってはとても大切なことなのだ。
ここに来る途中で見た、竜のことが思い出される。
自分は今まで出会った仲間を弔うことができなかった。だが、今は弔う時間がある。だから、やるのだ。
500弔い方 修正 3/9:2007/04/04(水) 00:26:59 ID:3qYMWTnZ0
この体になってからは、この程度の暗さなんか障害にならない。闇に気配を紛れ込ませることも容易。
セフィロスのときのアレは、転身した直後で上手く体を使いこなせなかったということと、
相手が気配を感じるのに長けていたという不幸な要因が重なったことによる不幸な出来事。例外中の例外なんだ。
今なら目の前の二人が何をしているかってのもちゃんと見ることが出来る。
カズスの地面に空いた浅いすり鉢状の穴。そこにいるのは全部で7人、そのうち5人は死んでいる。
死体の中にはあのフリオニールやユフィ、レオンハルトの姿もある。
多分、今生き残っている二人はレオンハルトに連れられ、カズスへの誘引策を聞きつけてやってきたやつなんだろう。
もっとも、カインの仲間ということもあるが、その可能性は期待しないでおく。
ユフィと半裸の男が、策に引っかかって死んだのか、それともレオンハルトと一緒に来たのかも不明だが、それはどうでもいい。
フリオニールは彼らのどちらかに殺されたんだろう。剣士が持っている大剣も、覆面が持っている剣、ラグナロクも血に濡れている。
カインとサックスとかいう剣士はうまく逃げたか。

覆面マントをつけた怪しい男と、黒髪の剣士。二人は死体を移動させているようだ。墓にでも入れるつもりなんだろう。
覆面マントの男は顔でも隠しているのだろうか。黒髪の剣士もどことなく様子がおかしい。
なんでそう感じるのかと思えば、黒髪の剣士、さきほどから喋っていない。たまに地面にしゃがみ込むのは、筆談を行っているから?

レオンハルトと接触し、カインやフリオニールと交戦しているとなれば、このまま自分が接触しても面倒が起こるだけ。
戦闘するにしても、実力者二人を相手にする自信はさすがにない。
相手に見つかる前に離れてしまうのが最良だろう。
501弔い方 修正 4/9:2007/04/04(水) 00:29:01 ID:3qYMWTnZ0
時間があまりあるわけではない。碌な道具もなく五人も埋葬していては、朝どころか昼になってしまうかもしれない。
埋葬は最も一般的な弔いだが、それしか方法がないというわけではない。

五人の死者の身なりを整え、目を閉じさせて水で顔に付いた血と泥を洗い流す。
レオンハルトは硬直してきており、あまり強引に行うのもよくないので、身を整えるだけにする。
レーベの民家で食用にと入手していた塩を撒き、彼らの、特にフリオニールの身を清める。
ジパングでの葬儀の儀式の一環にあるものらしい。
ただ、フリオニールの恨みとも憎しみとも取れる形相は、どうしても消えなかったが。
オルテガとレオンハルト、彼らが生前に使っていた武器、ロングソードとミスリルアクスを墓標として冷たい腕に抱かせる。
死後の世界でも、弱きを守り続ける戦士であるように。
ユフィはプリンセスリングで着飾らせ、風魔手裏剣を一枚握らせ、手を胸の上に置く。
昨日出会った魔法使いであろう少女には、波動の杖を握らせる。
そして二人の少女を番傘で被い、汚れにくく整えてやる。
最後に、崩壊した宿屋から、完全に焼け焦げてはいない布を見つけ、全員の顔を覆う。
簡易なものだが、これでも十分に弔うことは出来ているといえるだろう。

「ユフィ、レオンハルト、そして父さん。あなたたちの意思は僕が必ず継ぐ」
十数秒の黙祷。
そうして、二人はカズスに背を向け、歩き出した。


憎悪を生み出し、様々な人々の命を飲み込んでいったカズスの村には、こうして誰もいなくなった。
502弔い方 修正 5/9:2007/04/04(水) 00:30:31 ID:3qYMWTnZ0
「ギルガメッシュじゃないか!」
村のほうに見覚えのない影。浮いてる絨毯に乗った真っ黒な竜。だが、自分の名前を知っている。誰だ?
「ほら、ぼくだよ、スミスだよ!!」
スミスと言っても、記憶にあるスミスとは全く似つかない。
もっと青かったはず。もっと短かったはず。共通点は竜ということだけ。
だが、俺の勘からすると、やっぱりこいつはスミスな気がする。なんとなく雰囲気が似ている。
スミスは今朝の出来事を体験し、仲間を失っている。俺と近い境遇にある。他のやつよりはずっと信用できる。

「お前…、随分見た目が変わっちまってるな。そいつが正体なのかよ?」
「え? ええ、まあそんなものだよ。色々あったからさ」
自分だって変身すれば今の姿とは大分かけ離れてるんだから人のことは言えないが。
それより、スミスは今朝の裏切りの真っ只中にいた人物。こいつなら何が起こったか知っているんじゃないか?

「俺は今、ユフィ…いや、フリオニールを追ってるんだ。サリィとわるぼう、それからフライヤの仇を取るためにな。
 だがよ、フリオニール一人で残ったやつを全員相手にして、それでわるぼうやフライヤを殺せるはずがねえ。
 協力者がいるとにらんでるんだが……。教えてくれ。俺が転送された後、一体何が起こったんだ?」
サリィを殺したのはフリオニール。こいつは当然許せねえ。
だが、フリオニールと組んでわるぼうを殺したやつも同罪だ。
こいつらを全員殺してはじめて二人の仇が取れるってもんだ。
あいつらが喜ぶのかどうかは分からねえが、これが今の俺に唯一できる弔いだ。
503弔い方 修正 6/9:2007/04/04(水) 00:31:46 ID:3qYMWTnZ0
々はカズスに行かせないつもりだった。
あの覆面マントや剣士と接触すれば、僕やカインがゲームに乗ってるとバレてしまうからだ。
だが、ギルガメッシュはフリオニールの仇を取るために動いているそうだ。
そして、フリオニールには協力者がいると思っているが、その中にどうやら僕とカインが入っていないらしい。

「ごめん、僕も知らないんだ。あの後フリオニールはすぐに逃げて、僕とカインは急いであいつを追っていった。
 だから、残った4人が一体どうなったかは分からない。
 ただ、君の言うようにフリオニールが誰かと組んでいたとすれば、
 フリオニールと同じ世界から来て、しばらくあいつと一緒にいたレオンハルトしかありえないと思う。
 もっとも、彼と扉の前で話し込んでいたライアンもグルだっていう可能性はあるけどね」
「やっぱりそうか……。くそっ、あのヤロウ……!」

ギルガメッシュの心に、ふつふつと怒りが湧いているのが分かる。
レオンハルトへの怒りもあるが、それ以上にレオンハルトを助けてしまった自分への怒りが大きいか。
エッジのときと同じだ。仲間の仇を取ろうとしているような純心な男。
もし何の罪もない人間を殺してしまえば、自身がフリオニールと同じことをしてしまったと知れば。
きっと後悔することだろう。壊れる寸前まで追い詰めて責めたてて、それからフリオニールの時のように一言囁いてやればいい。
『優勝することができれば、死んだ人を生き返らせてもらえるよ』……とね。
でも、こういうのは焦りすぎても良いことは無い。自分で勝手に疑って、勝手に罪を犯すからこそ効果がある。
僕が『レオンハルトに襲われました』なんて言った場合、裏切りの真相を知っている人間と出会った際の処置が面倒でもある。
だから僕のやることは、個人の正義のベクトルの方向を少しばかり変えてやるだけ。
504弔い方 修正 7/9:2007/04/04(水) 00:34:59 ID:3qYMWTnZ0
「ところで、ユフィを追っているってことは、僕らを探すのも兼ねてたってこと?」
「いや、それもあるがよ、フリオニールに仲間を殺されたって聞いたからな。それで追いかけていた。
 カズスでカインと待ち合わせしているらしいしな。そうだ、カインはどうした?」

ユフィがフリオニールに仲間を殺された?
だが、カズスでカインと一緒にエッジを殺したのなら、フリオニールの名前だけが出るのはおかしい。
ということは、カズスに来る前に休んでた二人を襲ったってことになるのだろうか?
まあカインのことだから、今も上手くやってるし、これからも上手くやってくれるだろう。
ヘタに嘘を付いて見破られても面倒だ。嘘ではないことを話すのが一番いいだろう。

「それが色々ややこしいんだよ。とりあえず順番通りに話すから、落ち着いて聞いてね。
 まず、ユフィと出会ったのは正午過ぎ、北の森で、だったかな。そのときには仲間と二人で行動してた。
 それで、カズスで落ち合う約束をしたんだけど、カズスで殺人者が罠を張るってことを知ってね、一旦偵察することにしたんだ。
 そのときにはカズスには一人しか人間はいなかったから、カインに任せて、僕は周辺の偵察をしてたわけさ。
 でも、途中で緑髪の男とブオーンってやつにやられて大怪我を負って、帰りにまた銀髪の男に……」
「銀髪だと? もしかして、フリオニールか!?」
「違う、違うって! 話は最後まで聞いてよ。セフィロスとかいう、フリオニールとは別の銀髪の男にやられてこの通りさ。
 それでカズスに戻ってきて、今まで様子見してたんだ。仲間もいないのに一人で突っ込むのも無謀だしね」
「そうか、フリオニールじゃないのか……」
505弔い方 修正 8/9:2007/04/04(水) 00:36:35 ID:3qYMWTnZ0
そっちが勝手に勘違いしたんじゃないかと思いながら、ギルガメッシュがかなりギリギリの状態にあることを再確認。
あとはここで見た状況をどう説明するか。
覆面マントの男と黒髪の剣士。ユフィやフリオニール、レオンハルトの死体。
フリオニールもレオンハルトも死んでしまっていることを伝えては、ギルガメッシュが腑抜けてしまう可能性もある。
そうなればまあ、一人楽に殺せるやつが増えるのだが、せっかくこんなに復讐心を抱いてくれているんだ、利用しないと勿体無い。
幸い、あの男たちは死体の埋葬をしているはず。上手く立ち回れば、ギルガメッシュに死体を発見されることはないだろう。
もちろん、埋葬の途中に出くわしたら上手く戦わせられないかもしれないので、この点でも上手く立ち回る必要がある。

「カズスには生き残りはほとんどいなかったよ。見なかっただけかもしれないけどね。
 いたのは覆面マントの男と、大剣を背負った無口な男だけさ。
 いくつかの死体が散らばってて、ユフィとその仲間らしい男の死体があった。他にもあったかもしれないけど、暗くて見えなかったよ。
 それで、生きてる二人だけど、どうもレオンハルトを仲間だと言ってたんだよね。
 そして、経緯は知らないけれど、覆面の男がラグナロクを持っていた」
「レオンハルトの仲間がラグナロクを持っていただと? どういうことだ!? もしかして、フリオニールのやつも近くに?」
「それは分かんないけど、あの剣が血で濡れていたように見えた。
 もしかしたら、あれで何人も殺したのは間違いないと思う」
「!!」

サリィの形見の剣ってのはやっぱり効果が絶大だ。
この復讐に燃え、かつ自分の正義を信じて疑わない目。カズスにいたやつらにぶつけてやればあとは勝手に殺しあってくれるだろう。

「その二人の元に行くのは危険かもよ? 二人ともかなりの実力者だと思うし、サリィの形見の剣を持ってるんでしょ?」
「おいおい、何をビビッてるんだよ。そいつらのところに行くに決まってらあ!
 サリィの剣を人殺しになんか使わせてたまるかよ!」
「そこまで言うなら、分かったよ。でも正面から突っ込むのは勘弁だからね。
 それから、くれぐれもあいつらの話に惑わされないようにしてよ。
 あいつらは、レオンハルトの仲間なんだからさ……」
506弔い方 修正 9/9:2007/04/04(水) 00:37:34 ID:3qYMWTnZ0
【ギルガメッシュ(HP3/5程度・人間不信気味)
 所持品:厚底サンダル、種子島銃、銅の剣、デジタルカメラ、デジタルカメラ用予備電池×3 
 変化の杖、りゅうのうろこ
 第一行動方針:レオンハルトの仲間らしき男の元へ行く
 第二行動方針:ラグナロクを取り戻す
 基本行動方針:レオンハルト、フリオニールを倒す】
【スミス(HP1/6 左翼負傷、全身打撲、洗脳状態、闇のドラゴン)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:ギルガメッシュをアルスたちにぶつける
 第ニ行動方針:カインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在位置:カズス西の砂漠】

【アルス(MP少量、左腕軽症)
 所持品:ドラゴンテイル ラグナロク 官能小説一冊 三脚付大型マシンガン(残弾4/10) E:覆面&マント
 基本行動方針:自分の思った道を行き、未来を正す
 第二行動方針:倒すべき悪(アーヴァイン、スコール、マッシュ、カイン、サックス、スミス)を…?
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【ザックス(HP2/5程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスタードソード 風魔手裏剣(17) ドリル 波動の杖 フランベルジェ
 基本行動方針:エドガーを探す
 最終行動方針:ゲームを潰す】
【現在位置:カズス→北の峡谷方向へ移動中】
507名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 19:18:25 ID:+LH4Q5ECO
まとめサイトってありませんか?
(´・ω・`)
508名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/05(木) 19:56:10 ID:XDbdBc1p0
FFDQバトルロワイアル3rd編集サイト
http://www.geocities.jp/ffdqbr3log/

FFDQバトルロワイアル保管庫@モバイル
http://dq.first-create.com/ffdqbr/
509名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/07(土) 17:10:09 ID:Rpj5eIeoO
510名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/08(日) 22:58:24 ID:fEDuKW580
511名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/08(日) 23:17:44 ID:It1BtKbVO
512名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/09(月) 01:07:34 ID:n8Hkug5FO
シロガネーゼッ!
513名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 08:09:57 ID:ikIXeucQO
514名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 17:36:52 ID:1LVkJXcM0

515名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/10(火) 23:26:24 ID:VVxI2v8/O
516名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/11(水) 11:00:14 ID:L3umnjuLO
シェルブリット
517名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/15(日) 01:13:55 ID:8LUgq1z90
518心の不思議に気をつけて 1/8:2007/04/16(月) 20:55:13 ID:a6FSZ8Ef0
「なんで止めやがった!勝手な事するんじゃねえ!」
怒るのも無理はないと思うし、金縛りが解除された途端に怒られるだろうと覚悟もしていた。
けれど、ルカにだって言いたい事はある。
黙って聞きに徹するほど、どうでもいい主張ではないのだ。
「だって、ああでもして止めないと、ハッさん絶対に行こうとするでしょ」
「行くぜ! 俺は今からでも行くからな!」
青筋が浮かぶハッサンの顔を、ルカは真剣な表情で見つめた。
「行ったって、どうせ何もできないよ、きっと」
「なんだとう!?」
今にも身を乗り出さんとするハッサンだが、そこは爆発の指輪を意識しているのか、踏みとどまる。
その代わりに、ルカを睨みつける眼光は凄まじいものだった。
「だって、そうでしょ」
睨まれた程度でルカは臆さない。
「そもそもさ、その指輪が外せないんだから、ハッさんは一人じゃどこにも行けないよ」
「決め付けんじゃねえ! 方法はある!」
「……あっそう」
蓄積される苛立ちを抑えるように、ルカも眉目を寄せた。
「まさか指輪ごと切り捨てて行くとか、言わないよね」
「いいや、言ってやる! 俺はこの手を切り捨ててでも助けに行くからな!」
「……ミネアさんに貰った身体を傷つけてまで?」
ミネアの名前を聞いて、ハッサンは何か言いかけていた口を思わず閉ざした。
ルカは、ミネアがどういった人物なのか、直接は知らない。
けれどハッサンの話を聞くだけでも、彼女に対する思い入れが果てしなく深い事はよく知っていた。
「ハッさん言ったよね。アリーナって人に殺されかけたけど、ミネアさんが命を懸けて救ってくれたって」
519心の不思議に気をつけて 2/8:2007/04/16(月) 20:56:01 ID:a6FSZ8Ef0
ルカの口は止まらない。
「こうも言ってた。ミネアさんに貰った命で、たくさんの人を救いたいって。
 だから一回外れたその指輪を付けてまで、銀髪の強い人と戦ったんでしょ。違う?」
言葉を飲み込むハッサンを見て、ルカは続ける。
「自爆覚悟だったけど、結果としては死ななかった。だからハッさんは生きようと頑張ってる。
 だからおれもハッさんが生きることに協力してるんだ。
 ……こうやって、雲に乗せて! 連れ歩いて! カズスも離れて!」
自分で言っておいて、変だとルカは思った。
別に、こんな事を言いたかった訳ではない。なのに、なぜか口は止まってくれなかった。
「おれがハッさんを生かしてあげてるんだ! 自分勝手に死ぬなんて許さないからな!」
言ってはいけない事を言った気がする。けれど仕方ないのだ。
言いた事も言いたくない事も、言葉が溢れ出てきて、どうしようもなかった。
感情が上手く操作できなくて、さらに苛立ちが募る。
「……自分勝手だと?」
ハッサンの冷たい声に、ルカは身を硬くした。握った掌に力が入る。
「調子に乗るなよ……俺の命は俺だけの物だ! 誰にも指図させねえ! 自分のこた自分で判ってる!
 おまえの自分勝手な考えを俺に押し付けてんじゃねえっ!!」
「じゃあ勝手にしろ!」
ルカは被っていた帽子を乱雑に地面へ叩き付けた。
帽子の落ちた軽い音とは逆に、ルカの声は今までにない程に激しく荒々しかった。
「もう知らないからな! 好きにすればいいさ! ハッさんなんか助けなきゃ良かったよ! バカっ!!」
一気に捲くし立て、ルカはハッサンに背を向けて走り出した。
ハッサンの乗る雲は色を薄め、遂には消えて無くなる。
体勢を保ちながら地面に腰を落とし、ハッサンは強く息を吐き捨てた。
520心の不思議に気をつけて 3/8:2007/04/16(月) 20:56:37 ID:a6FSZ8Ef0




近くを通り掛かったのは、偶然としか言いようがない。森は広くて、道などないのだから。
移動の速度を考えれば、遭遇に対しての不思議は感じなかった。
口論しているのだという事は、ぼんやりしていても判る程に、声が大きい。
周囲に危険な人がいると思わないのか、思えないほどに激怒しているのか。
それはサックスの知った事ではなかった。ただ静かに、ハッサンとルカの成り行きを見つめる。
そうやっているとルカが捨て台詞を吐いてどこかへ行ってしまったので、取り残されたハッサンを熟視した。
しばらく行動しないでいても、ハッサンが何か喋る様子も、動き出す気配もなかった。
喋る相手がいないし、動く事ができない、という表現が正しいのだろうか。

衝動というのは、こういう事なのだろうとサックスは思った。いや、思ったのはずっと後になってからだ。
感じた事の無い何かが、じわじわと湧き上がり、駆け巡る。
例えるならば黒。黒い感情が、熱を上げる。得物を握る手に、自然と力が篭った。
沸き上がるのは、憎悪だ。
体中に染み渡って、心が侵される。
521心の不思議に気をつけて 4/8:2007/04/16(月) 20:57:58 ID:a6FSZ8Ef0
サックスはゆっくりと足を進めた。地面に居座るハッサンの姿を目指す。
足音は殺さない。息も潜めない。ごく自然に、歩いて行く。
徐々に接近して、気付いたハッサンに顔を向けられても、サックスが焦ることはなかった。
「……なんで、おまえがココにいやがる」
苛立ったようなハッサンの声に、サックスは答えた。
「声が聞こえました。それで気になって」
「そうかい、そういう意味じゃねえんだが……とにかくだ。俺は今、すこぶる機嫌が悪い」
「判ります、なんとなく。ケンカしていましたね」
はん、とハッサンは荒く息を吐いた。
「聞いてやがったのか」
「声が聞こえたって言ったじゃないですか」
「なら話は早えな。八つ当たりされる前に、どっか行きやがれ」
そう言ってから、ハッサンはサックスが手にしている槍に気が付いた。
それをまじまじと見つめる。
「おまえ、そんなん持ってたか?」
「ちょろまかしてやりました、フリオニールから。あの人、殺し合いに乗っていましたよ」
訝しげな視線が、槍からサックスの表情へと移された。
「あなた方に置き去りにされた時はどうしようかと思いましたが、必死で逃げて来ました」
「……そうか」
申し訳なく思っているのだろうか。それとも何とも思っていないのだろうか。
サックスとの会話には、あまり乗り気ではないようだった。
警戒心の無さもどうかと思うが、ルカに罵倒されて落ち込んでいるのかもしれない。
「……そうだ。一つだけ良いか? 頼みがあるんだがよ」
唐突にそんな事を切り出すハッサンに、今度はサックスが訝しげな表情を向けた。
522心の不思議に気をつけて 5/8:2007/04/16(月) 20:58:45 ID:a6FSZ8Ef0
「なんですか」
「その槍で、コイツを切り落としてくれねえか?」
ハッサンは指輪が嵌められた自らの手を見下ろした。地面に掌をついて、しっかりと固定されている。
「動くたびに爆発する指輪、ですか」
「ああ、そうだ。スパッとやってくれ」
話は聞いていた。手を切り捨ててでも行くとか何とか。おそらく、そのせいでルカとケンカをしていたはずだ。
サックスが考え込む様を見て、ハッサンは付け加えた。
「身体から切り離せりゃ、爆発はしねえ。そうすりゃ動けるんだ」
別にサックスは理由について考えていたわけではない。
切断するとかしないとか言い合っていたにも関わらず、したい本人は手段を持っていないのだ。
通り掛かりの見捨てた男に頼むくらいなのだから、そうなのだろう。
この人は馬鹿だな、とサックスは思った。
「……はぁ」
とサックスはおもむろに短い溜め息を吐いた。
「気まずい事頼んで、悪ぃけどよ、やってくれねえか?」
「気にしないで下さい」
サックスは手にした槍を旋回させて、慣れない構えを取った。
「一突きで終わらせますからね」
ひゅ、と槍は風を切り裂く。宣言した通り、一突きで終わった。
突き出した刃先は、ハッサンの胸に穴を開ける。くぐもった呻きが漏れた。
不意打ちを食らい、状況を理解できないといった表情を見ながら、抉る。
体勢を崩させると、槍の先端で爆発が起きた。
サックスは、フリオニールが与えてくれた得物が剣ではなく槍であった事に、初めて感謝した。
523心の不思議に気をつけて 6/8:2007/04/16(月) 21:02:14 ID:a6FSZ8Ef0




森は暗い。月は限りなく明るい夜だったけれども、今は群雲が光を遮っている。
勢いに任せてひたすら走り続け、ルカは木の根に足を取られて転んだ。
地面に伏したまま、呼吸を整える。
どのくらい進んだのか、景色の変わらないこの森では、全く把握できなかった。
そもそもどちらの方向に進んでいたのかも、よく判らなかった。
「……何やってんだろ」
こんなつもりではなかった。もっと別の事を言いたかったはずなのだ。
下手に手を切り落とせば血が止められなくて途中で死ぬだとか、もっともらしい事を言うはずだったのだ。
そうやって落ち着いて説得して、納得できなくても了承はしてもらう形で、着実にウルを目指すつもりだったのだ。
感情に任せてしまうと、ろくな事がない。昼間のトンヌラとスライムナイトの時もそうだった。
結局はこうやって、一人ぼっちで後悔するばかり。
「おれの方だよ。バカなのは……」
ハッサンの気持ちも、判らなくもないのだ。
もし助けを求めていたのがイルやテリーだったならば、きっとルカも駆け出していただろう。
しかし、そうはいかないのだ。ハッサンは重症で、瀕死ぎりぎりの状態なのだから。
けれどこうやって離れてしまったのだから、結果は同じ。
ハッサンは自身の思う通りの、自身の望む通りの行動を起こすだろう。
ルカは身を起こして、膝を抱えた。
手や膝を少しばかり擦ったけれど、ハッサンの状態を考えればなんとも思わなかった。
痛いのは、心の方だ。
「酷いやつだな、おれって……」
生かしてあげているのだとか、助けなければ良かったとか、そんな事は思ってもいなかった。
心は不思議だ。どうして予想もしていない方向へと暴走してしまうのだろうか。
「自分の事なのにさ、ほんと」
524心の不思議に気をつけて 7/8:2007/04/16(月) 21:03:09 ID:a6FSZ8Ef0
今ごろ、ハッサンはどうしているだろうかと考える。言った通りに手を切り落として移動しているのだろうか。
けれど、ハッサンは手を切り落とせそうな物は持っていなかったはずだ。
ルカの持つ鉄砲をあてにしていたのならば、今も一人で動けずに待っているのだろう。
それともルカがまだ知らない特殊な技でもあるのだろうか。
どっちにしろ、あのままではいずれ死んでしまう事は、ルカがよく一番知っている。
「……早く、戻らなきゃ」
白か黒か判らないサックスを見捨てる事はできても、ハッサンを見捨てるまで非情にはなりきれなかった。
彼の心の内を知っているだけに、なおさら。
それに自己満足かもしれないが、謝りたいのだ。
ルカは立ち上がり、手足の砂埃をはたいた。なんとも思わないと言ったが、実際には結構ひりひりして痛かった。
「たぶん、戻れるよね」
無我夢中で走って来たので、ハッサンがどの辺りにいるのかさっぱり判らない。
当て勘で戻れたとしても、ハッサンがまだ残っているとも限らない。
やや滅入りかけたルカだったが、突如として響いた音を聞いて、嫌な予感が芽生える。
「ハッさん……!」
耳に慣れた爆発音が聞こえた方向を見れば、藍色の空へと伸びる一筋の煙。
見つめる瞳には、不安だけが渦巻いていた。




最初は、どうするつもりのなかったのだ。だけど心は勝手に動いて、止まってくれなかった。
これは、単なる腹いせだ。自分を見捨てた事への、恨みを晴らしたかっただけなのだ。
自分の中に、そういう復讐心があった事に驚きを隠せない。
心は不思議だ。どうして予想もしていない方向へと暴走してしまうのだろうか。
けれど、サックスは後悔していなかった。思った以上に心が晴れ渡って、すっきりしている。
しかしまだ、完全に満足できた訳ではない。復讐したい相手は、まだ一人残っているのだから。
サックスは、亡骸に突き刺さったままの槍を引き抜き、焦げ付いた身体を蹴り付けた。
生命の尽きたその身体がどんなに動いても、指輪が爆発する事は二度となかった。
525心の不思議に気をつけて 8/8:2007/04/16(月) 21:05:16 ID:a6FSZ8Ef0
【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾 スノーマフラー ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)
 ねこの手ラケット チョコボの怒り 拡声器
 第一行動方針:ルカに復讐したい
 第二行動方針:ウルの村へ行く
 最終行動方針:優勝して、現実を無かった事にする】
【現在地:ウル南部の森】

【ルカ
 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) シルバートレイ
 満月草 山彦草 雑草 スタミナの種 説明書(草類はあるとしてもあと三種類)
 第一行動方針:ハッサンの元へ戻る
 第二行動方針:ウルの村へ行く
 最終行動方針:仲間と合流】
【現在地:ウル南部の森】

【ハッサン 死亡】
【残り 45人】
526何故か痛烈なクエスチョン 1/10:2007/04/17(火) 19:57:45 ID:FZywYgTi0

無関係な相手を助けたこと。
敵と認めた相手と一時とはいえ休戦したこと。
宿屋周りでの一連の行為に何か言い訳を考えていた自分を戒めたのは、閃光と轟音。
思い出すように見上げた煙混じりの空を覆う敵意に満ちた空気に気付かされる。
禍々しさが村の運命はさらに悪いほうへ傾いているらしいことを知らせている。
ほどよくミックスされた懸念と焦燥が心に渦巻いた。

捜し求める相手の代わりに救い出した女がビビの行方を知っている確証はない。
たとえ情報を持っているとしても、いつ目覚めるかさえわからないのでは役に立たない。
代替として迅速な行動と慎重な思考の両立を求められ、サラマンダーは二つの方向をじっと見定める。
宿屋を脱出しさらにこの炎から脱出する道を探すとして、
怪物が立ちふさがる西側とすでに森すべてが燃え盛り炎の壁と化している北側は選択肢に入らない。
ビビの魔法を使えば炎の壁も強行突破できるかもしれないがそれは八方追い詰められた者の手段だ。
残りの方向で村を離れるには最終的に小屋へ繋がる北東の道か、例の井戸へ抜ける南東の道のどちらか。
二つのうち、現在の炎の様子からより安全そうなのは――

――南東か。

緑髪の男と交戦した森の中ぽっかり開けた空間を思い描く。
腹を抉った感触を思い出し、おそらくはまだ生死の境にいるだろう井戸に落ちた男の姿を思い出す。
ともかく、自分から動いて探すほかはあるまい。
そう決断した以上、行動は早い。
まだ火の回りきっていない井戸への小道へと走り、飛び込む。
背後でリュックが何か言うのが聞こえたが、反応する義理は無い。



527何故か痛烈なクエスチョン 2/10:2007/04/17(火) 19:58:49 ID:FZywYgTi0

突然に身体を投げ出されて、目を開ける。
目覚めの合図は草の匂いとつんざく雷の音。
目覚めの情景は燃え始めた木と暗い森と根の這う硬い地面。
わけのわからないまま、誰かの力で抱え上げられる。

「わあっ!?」

悲鳴に反応してビビを持ち上げた腕がぴたりと止まる。
恐る恐る見上げたビビはその腕の持ち主のとてもとても鋭い眼光に射すくめられた。
一体何が起こっているんだろう。
僕はどうなっているんだろう。そうだ、みんなは?

「とりあえずあの開けたとこまで走るぜ! ついて来な!」

ビビには見えない位置にいる誰かに鋭い眼の人が声をかけ、
走り出した鋭い目の人に荷物みたいに抱えられたビビは思い切り揺さぶられる。
びっくりして思わず漏れた声はもう無視されるだけだった。
じたばたともがいてもどうすることもできず、そのうちにちょっと手荒に地面に下ろされた。

528何故か痛烈なクエスチョン 3/10:2007/04/17(火) 20:00:15 ID:FZywYgTi0
「この雷はあのバケモンのしわざか? ふざけやがって、無差別に焼き尽くす気か!」
「……っ、あ、あのっ……」
「あのじゃねえ。俺の名はサイファーだ。
 おまえ、イザの妹だろ? あいつから見かけたら助けてくれって頼まれててな。名前は……」
「ターニアです。あの、お兄ちゃんのお友達、ですか?」
「友達だぁ!? …………チッ…………一緒に行動していただけだ!
 ちっとやらかして今は………だけどよ」
「そうですか……」

井戸が見える。
赤く染まった空が見える。吹き上がる煙が見える。星は少しだけ見える。
鋭い目をした人とターニアが交わしている会話が聞こえる。
明らかに自然と異なるペースで続く雷の音が聞こえる。
次第にみんな大変な危機に巻き込まれていることを悟っていく。
ちょっとの間止んだ二人の会話に割り込むようにねえ、と呼びかけたビビは
思わず怯んでしまう鋭い目線にめげずに言葉を継ぐ。

「ねえ、みんなは!?
 みんなはどうなってるの? ヘンリーは? エリアは?」
「ああっ!」

動揺をそのまんま音にしたようなターニアの甲高い声が響く。
問いかけておいてそんな反応をさっぱり予想していなかったビビも一緒にたじろぐ。
529何故か痛烈なクエスチョン 4/10:2007/04/17(火) 20:00:54 ID:FZywYgTi0
「お願いします、まだ燃えてる建物にエリアさんがいるんです!
 それで、その、私にはどうすることもできないから……
 サイファーさん、どうかエリアさんを救い出してくれませんか?」
「えっ!!?」

みんなも大変な目に遭っていることは予想していたが、
具体的にエリアの状況を知らされてビビは覚悟以上の驚愕と衝撃を受ける。
慌てるように改めて赤く染まった方角を見上げ、目の前がすぅっと暗くなった。
真夜中の夕焼けのようなありえない色合いが全く希望を抱かせてくれない。
多少の違いはあれ二人も似たような絶望感があるのだろう、沈黙が通り過ぎる。
どれくらいそのままだったろうか、雷の音だけが回数を増やしていく。
ターニアはうつむいてしまい、それでも時折すがるような目をサイファーに向けている。
一方のサイファーはビビに背を向けて村の方角を凝視している。
不意にその背中が一歩分遠くなった。
その行為が示す決断を知り、ビビは自分の迷いが恥ずかしくなる。
燃える炎に対して冷気の魔法で対抗できないことはない、と思いついてはいた。
それなのに、自信がない、勇気がないと迷い、尻ごんでいたのだ。
夜風をはらむ白いコートの背中がビビの勇気と行動力を奮い立たせる。
やにわに飛びつくように駆け出し、叫んだ。

「ボクも行くよ! ボクも、エリアを助けに行く!」



530何故か痛烈なクエスチョン 5/10:2007/04/17(火) 20:01:40 ID:FZywYgTi0

炎と煙と闇に彩られた方向をじっと凝視する。
少女に、絶望的な状況に取り残された女性の救出を懇願される。
そんな風に英雄として求められることがサイファーにとってのロマンでなくてなんだろう。
炎を消せるような魔法は無かったと確認したことを思い出した気がしたが、この際問題にもならない。
やるのだという気持ちが圧倒的に上回っているからだ。
逸る気持ちを落ち着けるように重厚さを意識して数歩踏み出し。
格好よく決めようと振り返った瞬間――

「ボクも行くよ! ボクも、エリアを助けに行く!」

駆け寄ってくる小さな影の、予想外の凛然とした声に眼を見開く。
ついさっきまで気絶して女に背負われて逃げてきた姿との落差に驚いた。
記憶が金髪の誰かさんの姿を思い出して重ねてしまい、柄でもないと打ち消す。
それから、突風にも似た怒号で突き返してやる。

「ガキが無茶言うんじゃねえ!
 いいか、行き先は炎の中だ! ピクニックじゃねえんだぞ!
 それにな、あのばかでかいモンスターに鉢合わせする危険もある。
 とにかく危ねぇんだ、ガキなんか連れて行けねえよ!
 わかったら大人しくしてろ、こいつは俺の役目だ」
「で、でもっ、ボクの魔法だったら火を消せるし……
 ボクだって戦えるんだ! だからっボクも……」
「火を消せる魔法だと!? おまえが使い手だってのか?」
「あ、うん、ブリザドとかならきっと上手くいく……わあっ!?」

突然青い光に身体を覆われて、何をされているのか分からないビビが仰天する。
まといついていた光はすぐに身体を離れ、サイファーへと収束していく。
やがて掌に吸い込むように光を収めたサイファーはこの思いつきの成果を確かめ、ニヤリと口の端を歪めた。
ビビの言葉通り、彼から冷気の魔法をドローできたのだ。
531何故か痛烈なクエスチョン 6/10:2007/04/17(火) 20:04:16 ID:FZywYgTi0
「な、なにしたの?」
「なるほどな……こいつはラッキーだ!」

疑問には答えられることなく、さらに同じ行為が二度繰り返される。
特に身体がどうにかなる気はしないけれど、何か取られているみたいで良い気はしない。
勝手に振舞ったサイファーはよし、と気合を入れてグッと拳を握ったあと、ビビの肩をがっしと掴む。

「戦える、ったな?」
「う、うん……」
「信じてやる。いいか、よーく聞け。
 敵はあのデカブツだけじゃねえ、他にも怪しい奴がうろついてやがる。
 だから、ターニアはお前が守ってやれ。村へは俺が一人で向かう。
 いいか? 信じて任せるんだからな。でもとか言うなよ?
 わかったな!!」
「で……でも」
「言うなつったろーが!
 心配すんな、ヒーローってな必ず最後には格好良く帰ってくるもんだ!」

不敵な笑みでパチリとウインクして見せ、汚れた白いコートを翻して颯爽とサイファーは踵を返す。
その眼は使命感と幾許かの陶酔に燃え上がっていた。
それから、雷の音とうなる炎の中を朱に染まっている北西の方角へと真っ直ぐに走った。
機は我にあり、世界はまさに自分の活躍を求めているのだと、自分に酔う。
残してきた二人の安全には心配があるが、自分が迅速に救出を果せば問題はないのであって、
サイファーの意気は大いに上がっていた。
落雷の影響で燃え始めた樹を避けて道を定め、疾風になったつもりで森を駆け抜けていく。
その前進が突如鈍った。
532何故か痛烈なクエスチョン 7/10:2007/04/17(火) 20:05:12 ID:FZywYgTi0

茂みの向こうに何者かの気配がある。
村の周辺で出会った怪しげな男、サラマンダーの姿をあてはめる。
向こう側はこちら側に気付かずガサガサと近づき、ついに茂みから現われたのは何かを背負ったシルエット。

「うわっ! ちょ、……やばっ!!」

シルエットは若い女の声で叫び、茂みに後退しようとして背中を気にして踏みとどまり、
わたわたと窮屈そうにナイフを抜き放つ。
名乗りをあげようとしてタイミングを逃したサイファーは代わりに一連の動きを観察する機会を得、
それが誰かを背負って村のほうから逃げてきた誰かであるという結論を得た。
それだけの状況証拠から閃いた一つの予想を念頭に話しかける。

「待て、落ち着けよ。村から逃げてきたんだな? ターニアの仲間か?」
「あれ、ターニアちゃんの知り合い? そだけど。であんたは……」
「後ろは誰だ? エリア、か?」
「そうだよ、背中のコはエリア……それよかあんたはだーれ? 答えなさいっ」

予測的中、だが全く嬉しくない。
救出を頼まれたエリアが今目の前で背負われているということは、
ついさっき生まれたヒーローとしての使命感も陶酔も目的も一発で終了である。
舌打ちを一つ、やるせなく正宗を降ろし、それからきまり悪そうに名乗った。

「サイファー=アルマシーだ。
 ターニアとビビは俺が保護しといた。ちょい先の井戸んとこで待機させてんぜ」
「ホント!? よかったあ〜……。で、サイファー君はこんなとこで怖い顔して何してるわけ?
 女の子と子供をほっぽってさあ」
「っせーな…………たんだよ」
「なに〜? 聞こえないよお」
533何故か痛烈なクエスチョン 8/10:2007/04/17(火) 20:09:11 ID:FZywYgTi0
人が気落ちしてるところに妙になれなれしい態度がさらにカンに障る。
結果的に救出は果されているわけで、よかったね、で済む話。
なのだが目的をポキリと摘まれて水を浴びせかけられた心の炎のくすぶりは収まらない。
あれだけ格好よく決めておいて助けられてたよかったね、で何もせずUターンでは格好がつかない。
描いたドラマと活躍ゼロの現実、落差はどうやって埋めればいいか。
プライドを守る解決策は雷光が白くあたりを照らし出した瞬間にひらめいた。

「俺はな、あのでかいバケモンをぶっ倒しに行こうと急いでたところだ。
 そこを邪魔されたわけだがよ」

一つトラブルが解決したならより困難な敵に斬り込めばいいのだ。
心の炎もくすぶりから再び熱く燃え上がり始める。
聞いて女の目つきも期待を込めた真剣なものに変わった。
そう、正義は理解されるものだ。

「お願いっ! 今ソロとバッツが必死であいつとやり合って足止めしてる。
 でもあんな化物に二人だけじゃ勝ち目なんてないよ!
 だから、サイファー」
「任せとけ!」
「あ、ちょっとっ! あたしもすぐ駆けつけるからっ! アンタも無理しちゃダメだからねっ!!」

威勢良く叫び、闇に白いコートをはためかせて燃える村へと茂みを飛び越えた。
窮地に現われ、怪物を切り伏せる。これが英雄的でなくて何という?
サイファーの眼は再び、いや今まで以上に使命感と陶酔に燃え上がる。



534何故か痛烈なクエスチョン 9/10:2007/04/17(火) 20:10:02 ID:FZywYgTi0

井戸がある空間、サラマンダーはそこへ木々の影から刺すような熱い視線を向けていた。
距離の関係上黒ずんだ像としか見えないものの、背格好から大体の判断はつく。
すぐにそれと判別がつく黒魔道士の特徴的なシルエット。
金属のぎらつきを伴った、恐らくサイファーと名乗った男の長身のシルエット。
正体不明の小柄なシルエット。

サラマンダーの眼前で正体不明の青い光が黒魔道士から長身の影へ伸び、
それが三度繰り返された後で長身の影が二人から離れる。
その目的は簡単に推測できた。村に救援に向かったのだ。
井戸に寄り添うように佇む二つ残されたシルエットをしばらく監視し、
長身の影が十分に離れたくらいの時間を見計らってサラマンダーは姿を現した。

「サラマンダー……?」

懐かしい、捜し求めていた相手の声に名前を呼ばれた。
答えることなく無言で近づく。
怯える小柄な少女を守るように勇敢で小さな黒魔道士は前に出、もう一度同じ名前を呼んだ。
サラマンダーは無言を保ったままで2メートルほどの距離まで接近し、ようやく口を開いた。

「久しぶりだな。ビビ」

わずかな距離を残して向かい合う二人。その間を夜風が抜ける。
黒魔道士の真摯な目は逸らされることなく見上げられ続ける。
その心中では仲間としての信頼と生じた疑念がせめぎあっているのだろう。
そして遂に、希望にすがるような一つの問いが投げかけられる。

「サラマンダーは……誰も殺したりしてないよね?」
535何故か痛烈なクエスチョン 10/10:2007/04/17(火) 20:12:16 ID:FZywYgTi0

【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5)
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、各種解毒剤
 第一行動方針:ビビと、決別する
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:なし
 第一行動方針:みんなの無事を祈る
 第二行動方針:サラマンダーを警戒する
 基本行動方針:イザを探す】
【ビビ  所持品:なし
 第一行動方針:サラマンダーへの疑念を晴らす
 第二行動方針:ターニアを守る
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:ウルの村・東南の井戸】
536何故か痛烈なクエスチョン 10/10+1:2007/04/17(火) 20:12:54 ID:FZywYgTi0
【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:ヒロイックに怪物(ブオーン)を倒す
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリー・イザと合流
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先)
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在位置:ウルの村・東南の外れ→村へ】

【リュック(パラディン)
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)
 バリアントナイフ チキンナイフ マジカルスカート 薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:ターニア・ビビとの合流/エリアの安全を確保し、ソロ・バッツに合流する
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【エリア(体力消耗、気絶)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:−(仲間との合流)
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【現在位置:ウルの村・東南の外れ→井戸へ】
537名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/21(土) 22:30:19 ID:eRXMZAkc0
生存者リスト

FF1 0/4名:(全滅)
FF2 1/6名:マティウス
FF3 4/8名:サックス、エリア、ウネ、ザンデ
FF4 1/7名:カイン
FF5 3/7名:バッツ、ギルガメッシュ、ギード
FF6 4/12名:ロック、マッシュ、リルム、ケフカ
FF7 2/10名:ザックス、セフィロス
FF8 3/6名:スコール、アーヴァイン、サイファー
FF9 3/8名:ジタン、ビビ、サラマンダー
FF10 1/3名:ティーダ
FF10-2 2/3名:ユウナ、リュック
FFT 3/4名:ラムザ、アルガス、ウィーグラフ

DQ1 0/3名:(全滅)
DQ2 0/3名:(全滅)
DQ3 2/6名:アルス、セージ
DQ4 5/9名:ソロ、アリーナ、ライアン、ロザリー、ピサロ
DQ5 5/15名:タバサ、パパス、ヘンリー、プサン、ブオーン
DQ6 2/11名:クリムト、ターニア
DQ7 1/5名:フィン
DQM 2/5名:テリー、ルカ
DQCH 1/4名:スミス

FF 27/78名 DQ 18/61名
計 45/139名
538名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/25(水) 22:34:30 ID:TWEIQp3z0
DQの生存者はだいぶ偏ってるね保守
539名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/04/29(日) 22:53:26 ID:4WBUQlw/0
ho
540名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/01(火) 00:12:14 ID:uCpOrJemO
shu
541名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/05(土) 10:35:00 ID:1Kfzjorn0
干す
542名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/09(水) 16:38:32 ID:DkApkPfAO
543名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/13(日) 03:34:42 ID:OF7vhytfO
544名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 18:39:04 ID:WuMavc4E0
545名前が無い@ただの名無しのようだ:2007/05/14(月) 23:27:14 ID:o+0lduLyO
546償い方2 1/8

背を向けて、ジタンが壁際に引き下がっていく。
プサンは寝息を立てているフィンの様子を少し眺めて、改めて部屋の真ん中のほうへと向き直った。
視界のそれぞれの端にジタンの背中とセージの顔が映る。
少しの間、室内に沈黙が漂う。
プサンは監視対象に意識を向け、その気配が城の北で停止したままであることを確認した。
「やっぱり強引にでも攻めた方がいい、そう思うぜ」
ぴくりと尻尾を揺らし、振り向いたジタンが叫んだ。
「だから作戦を考えるほうが先だって、ジタン。僕の話聞いてる?」
うんざりした表情で、セージが言い返す。
二人の作戦会議は、上手い方法を見つけられないまま停滞。
ついにはジタンが城の北キャンプへの強襲を主張し始めて今に至っていた。
「正面からじゃダメなんだ。僕らが姿を見せたら事態は悪化するだけ。
 君は焦っているんじゃないのかな?」
表面には出さないものの、プサンは心中で同意する。
城の北を選んだリュカは動くことは望んでいない、まだ考える時間はある。
何より彼らを直接知るプサンは、あのピエールがリュカへの忠誠を自ら覆してみせるなどということに疑いをもっていた。
リュカがいればピエールは押さえつけていられるのではないか。
それは魔物使いと仲間との間に存在する関係への信頼と言い換えてよかった。
おかげで排除を前提とする二人と異なり、プサンはピエールの説得を第一の手段として考えていた。
必要なのは条件であり、首輪のこと、脱出を目指す仲間との連帯のこと、ドラゴンオーブのことだ。
可能性が大きくなるほど希望のもつ求心力は強くなるのだから。
「動き出す前に叩かなけりゃ意味はない、そうだろ?
 向こうに行動のチャンスを与えず、こっちが一方的に動く。作戦だって……考えた」
強い口調でジタンがそう言い、プサンの思考は中断する。
依然、監視対象に変化はない。