364 :
インタビュー:
FFシリーズの生みの親、
坂口博信氏のインタビュー
このインタビューは、2001年にOfficial
Playstation2 Magazine UKの10月号に掲載されたものです。
−どのようにしてゲーム業界に携わるようになったのですか。
坂口 : 大学生の頃趣味でアップルコンピューターを使っていました。
表計算と同じくらいアドベンチャーやRPGが新しい概念だった頃です。
大学の方は全くと言っていいほどおろそかになり、その代わりにコン
ピューターでほとんどの時間を費やしていました。Wizard Ultimaや
Penguin SoftwareのTransylvaniaというアドベンチャーをこよなく
楽しんでいました。最終的には、プログラムをする方にまわり、
スクウェアが会社を立ち上げた頃アルバイトでそこで働きはじめました。
時給は700円でした。
365 :
インタビュー:2006/07/09(日) 03:07:03 ID:6Y27uXns0
−あなたの仕事に対するご家族のリアクションはどんなものでしたか?
坂口 : 両親は猛反対でした。(笑) 当時はゲームを作るのはアマチュア
のみがすることで、それでプロになっていた人はいませんでしたから。
業界が確立してなかったんですよ。
−それで、テレビゲームの仕事の前にやろうとした仕事、した仕事は他にあったのでしょうか?
坂口 : ミュージシャンになりたかったなあ、キーボードで曲を作曲して・・・
でも、結局は才能がなかったんです。(笑)
−ファイナルファンタジーシリーズの起源を教えてください。
坂口 : ファミコンのソフトですね。PC用の初期のゲームをデザインしている時、
ROMカセットがデータ保存用に使われていたのです。あれは、RPGを保存するには
十分な容量がなくて、結果的にはたくさんのアクションゲームが作られたのです。
自分がやった初期の仕事が好きじゃなかった。全く満足できませんでした。
それで、最後のゲームを作ってこの業界から手を引こう、と思ったのです。
それが、タイトルに"ファイナル"が入っている理由です。
366 :
インタビュー:2006/07/09(日) 03:07:41 ID:6Y27uXns0
−どうしてご自分が作った初期のゲームには満足できなかったのですか?
坂口 : 才能の問題かな。アクションゲームを作るのとRPGを作るのとでは
完全に違います。僕は良質のアクションゲームを作る素養があるとは
今でも思っていません。ストーリー語りの方が好きなんです。
−FFを拡張し、開発し続ける中で、挑戦していらっしゃることは何でしょうか?
坂口 : タイトル毎にその時自分の持っているアイデアを全て使い果たすよう
にしています。次には残さないのです。それは本当に自分の動機づけにして
くれることです。プレイヤーもその度ごとゼロから始めなくてはならないですから、
これはいつでも効果的な方法だと思います。
ストーリーとキャラクターが作品ごとに違うのはラッキーでしょう。前のが
どうだったとか、ストーリーがどうつながってるの、とか考えなくてすみますから。
367 :
インタビュー:2006/07/09(日) 03:08:20 ID:6Y27uXns0
-ゲームプレイについてはどうですか?
坂口 : 似たようなものです。毎回ゼロから始めて、ゲームシステムや
プログラムを以前より上のレベルで開発する、もちろん、前のバージョン
でよかったと思うものは再度使ってます。
−FFがPS2に移って最も誇りに思うことは何ですか?
坂口 : ムービー、バトル、そして、インタラクティブなシーンが、隔たり
なくつながっていますね。FF7からこの効果は続いていますね。セリフに声
が入り、ボイスキャスティングがなされたことも嬉しいと思います。
ディレクターは北瀬に任せましたが、声を演ってくれる人たちが声優
として確立しているとか、有名なアニメの声優であるとかないとかに
こだわりなく選ぶのは僕らの信念でした。
368 :
インタビュー:2006/07/09(日) 03:08:58 ID:6Y27uXns0
−過去のゲームからつながる続編を作ってみようと考えたことはありますか?
坂口 : キャラクターのその後は見たくないんですよ。プレイヤーはキャラ
にどっぷりひたり、それぞれの思い入れを持っています。僕らが(その後)
彼らに何が起こったか、なんてやると、大勢の人ががっかりするんじゃないでしょうか。
−現実社会の出来事で興味引かれるものはありますか?
坂口 : そうですね。文化がとても衰退しているように思います。好ましい
ことじゃないですね。加えて、全てが売らんがための戦略に溢れています。
それらのコンセプトは、示された価値とは大きくかけ離れたものになって
います。僕も悪玉に加えられる要素もしばしば見受けられたかも知れない。
挙げればきりがありませんね。多くの事柄が悪玉を作る材料となりうるのかも知れない。(笑)
369 :
インタビュー最後:2006/07/09(日) 03:16:35 ID:6Y27uXns0
−この業界の経験を経て、この世界で新参者が名を残すのは簡単なことだと思いますか?
坂口 : 若い人たちにとってこの業界に入るのにそんなにトラブルがあった
とは見聞きしていませんね。ゲームは意見の分かれるものであり、大きく
分けて3つの過程を進む事になると思います。1つは、僕のよぶところの、
"ゲームらしいゲーム"。同じプレイ方法の性格を持つものが16ビットの世界
に戻ったもの。2つめは、FF10に似たようなものでドラマチックで、映像が
洗練されているディスプレイ。3つめはオンラインゲーム。新たに業界に
加わる人はいくつかのステップを踏むことになるでしょう。例えばまずは
ゲームらしいゲームの開発から始めると。スタッフも十分なお金もないと
なると、FFゲームを最初から作ることは期待できません。
−FFをかつては最後のゲームになると考えていたわけですよね。でも今日
まで続いています。今日より10年間を見てどうですか?
坂口 : わかりません。僕の思いは映画を作った後でゼロにリセットされました。
−将来どんなエンターティメントのメディアが見てみたいですか?
坂口 : 夢ですが、誰かがホログラフのデバイスを作ってくれないかなと
思います。スターウォーズエピソード4で出たチェスゲームに似たような。
雨の中でキスしそうなカップルを想像してください、あなたはそのカップル
をこずいたり、驚かせたするのです。でも彼らはあなたがやっているとは
気付かない、で、キスをやめてしまって、ストーリーは違う展開になるのです。
そういうゲームが作ってみたいです。