[このスレのしきたり]
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃カップル萌えスレでこれだけは守れ!
┃1.常時sage進行を原則としろ。この板は最下層でも落ちないから安心だ。
┃2.煽り荒らしは当然放置な。特に他カプ萌え派を装い抗争を誘う連中には完全無視を貫け。
┃3.他スレで萌えキャラが貶されていても一切構うなよ。相手にしたら負けだ。
┃4.SS投稿してくれるときはなるたけトリップをつけろ。トリップくらい知っとけ。
┃5.エロいSSや画像のうpは……俺的には大歓迎だが注意書きくらいつけてくれな。
┃ 21禁以上の大人なエロ、それにグロ汚物系は相応の板へ投下しろ。
┃ ,〃彡ミヽ
┃. 〈(((/(~ヾ). / 守らねー奴にはSHTバイキルトミラクルムーンだ。
┗ ヾ巛゚.ー゚ノ" / ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/~'i':=:!゙)つ クックル カヨ
|~ ̄) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ∧ ∧ ∧ ∧ ゼシカ センセイ ノガ ヨカッタナア…
| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| (゚ ) (゚ )
| | | =====⊂ ヽ==⊂ ヽ======
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||──( ノ〜─( ノ〜─||
|| ┏━━━━━━━━┓ ||
うんこ
>>1 乙〜!
本スレもさらに萌えようじゃないか。
>>1さん、ありがとう。
新スレ万歳! ククゼシ万歳!
SS投下準備してたのに、ファイル壊れて、書き直してます。
前スレ埋めるために、そっちに投下した方がいいですかね?
7 :
5:2005/08/23(火) 18:28:14 ID:6QwhRpxO
>>6さん、 前スレ955さん、アドバイスありがとう。
遠慮なく、こちらに投下させてもらいます。
すみません、一つだけ注釈です。
この話でのパーティーの隊列は、先頭 エイト、ヤンガス、ゼシカ、ククール 最後尾 の順になってます。
そこだけ補完してお読みください。
「オレはこんな勝負最初からどうなろうと知ったこっちゃないんだがな・・・。どうやら勝ち目もなさそうだしもうあきらめて帰ろうぜ」
「な〜に勝手なこと言ってんのよ! 私はまだあきらめてないんだから あなたにも来てもらうわよ!」
「わかったよハニー。そんなにオレが必要だって言うならお供させてもらうぜ。」
「・・・もうそれでいいわ。」
海賊の洞窟での、いつものようなやりとり。でも、二人の気持ちには、確かな変化が芽生えつつあった。
ゼシカは、心の中で首をかしげる。
変だわ。
いつもの私だったら、『やる気のない人は、来てくれなくて結構』って思うはずなのに。
どうして、あんなこと言ったのかしら。他人をあてにするような人間になるのはイヤだわ。
でも・・・。
私は、小さな頃から、前だけしか見られないタイプの人間だった。
だから、どんな不気味な迷宮だろうと、いつでも前だけ向いて進んでた。
道を決めるのはエイトだけれど、彼の後ろを付いていく時だって、不安なんて感じたことはない。
それなのに・・・。
最近、ちょっと不思議なんだけど・・・。
道が二つに分かれていたりして、ちょっと立ち止まる時。なぜか、私は後ろを振り返ってしまう。
そうして、辺りを油断無く警戒している蒼い瞳を見て。その瞳が、私の視線を捉えて、少し和らぐのを見て。
別に、言葉を交わしたりするわけじゃないんだけど。
なんだか、安心する自分がいる。また、前だけ見て進める。
だから、彼には一緒に来てくれないと困るの。
どうしちゃったのかしら? 私。
・・・これはこれでいいのよね?
仲間を信頼して頼りにするのは、悪いことじゃないわ。
そうよ。私ちょっと、一人で突っ走りすぎるところがあるから。
これは一つの進歩だわ、きっと。
ククールは、心の中でため息をついた。
あの猪突猛進娘め。
ひとのこと、完全に戦力としてしか見てないな。
まあ、あの媚びないところが魅力の一つでもあるんだが。
それでも、初めの頃の『ネコの手だって借りたい』よばわりだったのから比べれば、渋々でも『あなたの力が必要』って言ってもらえるのは大出世か。
OK。いいぜ、ハニー?
お前に必要なのは『頼れる仲間』だっていうんなら、ご期待に添えるよう努力するさ。
振り向いてはほしいけど、困らせたいわけじゃないんだ。
徹してみせるさ。完璧にな。
まいったな。よりによって、自分になびかない女に本気になっちまうとはね。
オレもヤキが回ったもんだぜ。
いや、案外これが、進歩ってやつなのかもしれないな。
ククールは、ゼシカが振り返って、自分を見ているのに気づく。
微かに微笑み、『どうした?』と問うように首を傾げる。
ゼシカはそれを見て、『何でもない』というように、首を横に振る。
他の誰にも見せないような、安心しきった表情で、再び前を向く。
そして、いつものように迷宮を進んでいく。
確実に『進歩』はしているのに、『進展』するのは難しそうな二人だった。
<終>
ククールはほんと、いつからゼシカに「惚れた」のだろね。
自分的にはオークニスあたりではもう恋の悩みをかかえていそうだと思ったり。
なぜにオークニス?何か特別なイベントあったっけ。
うん、後半頃からほんのりそういう感情が芽生えてると嬉しいよね。
正式に付き合うのはエンディング後だとしても…
あの時連れてきた女達は見なかった事にしとこうorz
15 :
8:2005/08/25(木) 21:15:59 ID:cYn7yS1l
>>11.12
どうもありがとう。また書かせてもらいますので、その時もよろしくです。
>>14 >なぜにオークニス?
理由は特にないけど、あえていうなら願望?(爆)
リブルアーチの呪われしゼシカ戦すぎたあたりで、そーいう感情があったらいーなーとか!
>>1
スレ立て乙です!
>>13 では、具体的に恋の何について悩んでいたか考えてみる。
最初の頃がさんざんアレだったもんだから、果たしてきちんと
人として信用されてるのかどうかとか、己はスネに傷をあまりに沢山持つ身で
くっついたとてそんな自分がゼシカを幸せにしてやれるんだろうかとか…大げさかな?
もまいら、ちょwwwwwwwww絵板ヤバスwwwwwwwwwww
…そういえば夏なのに投稿少なかったな。
>>1 乙です!&スレタイやったー!!
>>8-9 乙です!
ってか、綺麗に縦一列に並んで進む4人って想像するとちょっと笑えたw
で、やっぱりククールは最後尾決定なのね・・・w
自分は後ろから二番目だな、
「ゼシカは俺が守る」的な青春を感じるw
前スレの>1000…
漏れはゼシカのHPがククのを抜かした時、彼を一番後ろにしてゼシカをその前にしてますた。
で、その時の妄想…
「『片時も離れず君を守るよ』なーんて言っておいて、あんたが守られてどーすんのよ。…バカ」
「そりゃないぜ、ゼシカさんよ〜。(←嬉しそう)」
ヘタレてる情けない彼なんて見たくないって方にはスマソ。
>>23 いや、むしろ逆に考えたほうがいいのかもしれんよ。
ゼシ「エイト〜、何で私よりククールの方が後ろにいるわけ?
女だし、魔法使いなんだからどう考えても私が4番目に来るべきでしょ?」
クク「バーカ。分かってないね〜。言っただろ?片時も離れず君を守るって。
オレがハニーの後ろを守ってやるからさ。
これからは守りを気にしないで攻撃に専念できるってわけ。」
ゼシ「・・・。後ろから変なことしたら承知しないわよ。」
クク(バニーガールの衣装つけててそれはないよな・・・。)
ガス(さしずめ あっしは先頭が不動の位置ってことで
人間の盾ってことでがすか・・・。)
隊列気にせずいると、
ドルマゲス戦までは主人公ヤンガスゼシカククールで
リブルアーチ後は主人公ヤンガスククールゼシカになる。
キャラの再加入だから自動なんだろうけど、
そこに深い意味を探らずにはいられない自分がいる。
保守
そろそろ「またお前か」と言われそうな ◆JbyYzEg8Is です。
私の書いたSSのせいで、ヘタレ認定されて、ごめん、ククール orz
という訳で、当方比120%美化で、ククールの名誉挽回を図りたいと思います。
個人的に、皆の背中を預かる男ってツボなんですよね。
しょうがねぇ奴らだよな、まったく。
クソ寒いオークニス地方で、このおせっかいパーティーは今日も楽しく洞窟探検だ。
命の恩人のメディばあさんの頼みだから仕方ねえけどな。
それはいいんだが、ペース配分ての? 覚えろよ、いい加減。
エイトのヤツ、フィールドを歩いてる時は姫様気遣ってか、ちょこちょこ休憩入れるくせに、ダンジョンに潜った途端、道がある限り突き進む奴に変わっちまう。
好きなんだろうな、迷宮が。オレにはまったく理解できねえ。
すぐ前を歩いてるゼシカの足取りが重くなってる。体も前のめりになってきてるし、そろそろ体力が辛いか。
ゼシカはこういうことでは絶対に弱音吐かないからな。無理するといざという時キツくなるのに、しょうがないよな。
「おーい、エイト! どこまで歩くんだよ、もうかったるいぜ。足元滑るし、ツララは危ねえしで、肩凝っちまう、少し休もうぜ!」
先頭を歩くエイトに声をかけると、代わりにヤンガスが呆れた声を出す。
「またでがすか? ククールは少し根性ってやつが足りねえでがすよ」
「うるせぇよ、オレはおまえらみたいな体力バカと違って繊細なんだよ。知的な頭脳派なの。一緒にすんじゃねえよ」
エイトが苦笑しながら、休憩を承諾する。
ゼシカは小さく息を吐いて、手近な岩に腰をおろそうとする。
「ゼシカ、ストップ」
オレはマントを外して、その岩の上にかける。
「どうぞ」
ゼシカは少しいやそうな顔をしてる。
「いらないわよ、ちょっと休むだけなんだから」
「でも、そこ濡れてるぞ。後でスカート凍るかもしれないぜ?」
イメージしたんだろう。ゼシカは少し考えて、素直に腰をおろした。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
お前は偉いよ、ゼシカ。
体力違う男の中に混じって、弱音も吐かずによくやってる。
欲をいうなら、もう少し頼って甘えてくれてもいいと思うけど、そうするとゼシカじゃなくなる気もするから、オレが気をつけるようにする。いつでも、お前を見てるから。
だから、あんまり無理すんなよ、ゼシカに倒れられるのは辛すぎる。
ヤロウ三人でライドンの塔に登った時はキツかった。
華がないのももちろんだけど、ゼシカの魔法がどれだけオレたちを助けてくれてたか、改めて思い知らされた。
……ホント、いろんな意味でキツかったよ。
出発の時間になった。
ゼシカは立ち上がり、大きく伸びをする。
「マント、ありがとう。少し濡れちゃったみたい、ゴメンね」
「いいよ、オレ厚着だから」
マントを装備して、ゼシカを促す。
「お先にどうぞ」
「ねえ、どうしてククールは、いつも一番後ろを歩くの?」
どうしたんだよ、突然。オレの思ってることでもわかったのか? 妙にカンの鋭いところあるからな。
「ゼシカをずっと見ていられるようにだけど?」
試しに、真面目に答えてみる。
ゼシカはまっすぐな瞳でオレの顔を見つめたあと、小さく溜め息をついた。
「バカじゃないの? そういうことばっかり考えてるから、すぐ疲れたとか言うのよ」
……キツいな。
お前のこと気遣ってるんだよ、なんて言ったらムキになって無茶するのは目に見えてるし、オレって報われないよな。ここまでくると笑い話だ。
まあいいさ。報われないのには慣れてる。
今は、ゼシカが元気でいてくれるだけでいい。
ゼシカは自分の信じた通りにやればいい。
いざという時には、オレがついてる。
だから、ゼシカ。……もう二度と、オレの目の届かないところに行ったりしないでくれよな。
<終>
ご苦労
乙です!
超萌えた!
乙です。
34 :
29:2005/09/03(土) 07:52:45 ID:R6pq4+fO
.
>>31-31 ありがとうございます。
ククールのヘタレ返上は成ったでしょうか?
35 :
33:2005/09/03(土) 23:47:59 ID:vJhVuiLB
>29
ククールのちょっとヘタレな所に萌えているのですが、
29さんのククは紳士だは、いじらしいはでステキでした。
イイ(・∀・)!
36 :
29:2005/09/04(日) 21:05:10 ID:An3IvuEE
うわあ、すごく褒めてもらっちゃった。嬉しいです。
ありがとう、
>>33さん。
そうか、冷静に考えると、私が何を書くまでもない。ククールは押しも押されぬヘタレだったね。
某スレでの別名は「タンバリン」だったしね。
・・・うちのタンバリンはヤンガスだもん!
遅まきながらDQ8をプレイしていたらこんなスレが!
まとめサイトも一気に拝見させてもらいました。萌える、煉獄島イベントの余話とかかなり萌えた。
>>29-30 雰囲気が(・∀・)イイ! 主人公とかヤンガスとかゼシカとか何よりククールが
プレイ中の印象とほぼ一緒だったので(特に後ろで見守るって辺りが暗黒魔城都市・回廊での会話印象が強いせいもあって)
ツボでした。
自分がゲームやってると、ククールは専ら賢者の石でしたが…。(ベホマラーより石)
私はククとゼシカにタンバリン持たせて
「ツインタンバリン〜」
とか楽しんだりもする……
あほみたいだけど。
タンバリンてそんなにたくさんゲットできたっけ??
最下層!!!!!!
自分もツインタンバリン派
44 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/06(火) 10:28:27 ID:2215Pq5p
一応age
他にやることないんで
ヤンガスと主人公くっつけて置いときますね
ω´)っ【兄弟仁義】
46 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/07(水) 10:57:37 ID:6PjDIv3J
上げんなよ このくそやろう
上げんなよ このばっきゃろう
ゼシカ復帰後のどっか忘れたが、ククールが突然
「ゼシカのことは何とかなったし・・・」
と言ったのは、ビックリした。いつの間に!
やっぱ復帰した日の夜あたりですか?
>>48 何とかなった=呪いが解けたってことじゃ?
前後のセリフや他のなかまコマンドを確認しないと
なんとも言えないけど、夜云々ってのはちょっと
飛躍しすぎでは?
多分
>>49のいう通りだと思う。
ゴルドでそういう台詞があった。
「今の所30%、ドルマゲス、レオパルドは駄目だった。ゼシカはうまくいった」
うろ覚えだけど、こんな感じ。
遅ればせながら、
>>37さん、ありがとう。
スレに人が増えてくれるのは嬉しいです。一緒に萌えましょう。
またまた投下しにきました。
妄想が止まらないので、つきあってやってください。
ゼシカがいなくなった。
ドルマゲスを倒し、一旦サザンビークの宿屋に戻った翌朝、誰にも何も言わずにゼシカは姿を消した。
「やっぱ、むさい男だけのパーティーがイヤになったとか・・・」
「安心しろ。このオレがいるかぎり、断じてそれはない!」
ヤンガスの言葉を、オレは即座に否定する。
そう、あのゼシカがオレに何も言わずにいなくなるはずがない。
あの約束がある限り・・・。
とりあえずゼシカの故郷に行ってみようと、エイトのルーラでリーザス村へ移動する。
素朴でのどかで、小さな村。ここがゼシカの話していたリーザス村・・・。
「ここがゼシカの出身地? でも残念ながら、ここにはゼシカはいなさそうだぜ」
エイトとヤンガスが、怪訝な顔をしてオレを見てる。
「・・・なんでそんなことがわかるかって?」
まあ、当然の疑問だな。
さて、何て答えるかね。
ねえ、ククールはもう聖堂騎士団には戻らないんでしょう? ドルマゲスを倒した後、どうするの?」
太陽のカガミで闇の遺跡の結界を払い、突入前に各自、装備と持ち物の確認をしていた時だ。ゼシカが突然、訊いてきた。
「オレ? オレは世界中の美女の呼ぶ声に応えるさ。もちろん、君が最優せ・・・」
「真面目に訊いてるのよ」
いつも以上に真剣な眼差しに、オレはつい視線をそらしてしまった。
「そうだな、とりあえず修道院には敵討ちの報告だけはして・・・。その後は念願の自由だ。気楽な一人旅でもしてみるさ」
「もし良かったら、ウチに来ない? 住むところだったら、サーベルト兄さんの部屋が空いてるし」
あれには本気でドキッとしたっけ。
「リーザス村っていう小さな村なんだけどね。村の外壁とかも頑丈じゃなくって、安全面で今一つ心配なのよ。以前はサーベルト兄さんが村を守ってくれてたんだけど・・・」
「それって用心棒ってこと? それならゼシカがいるじゃないか。あの大陸の魔物だったら、片手で楽勝だろう?」
「それがダメなのよ。『アルバート家のお嬢様にそんなこと』って止められるのがオチだわ。お母さんだって、猛反対するだろうし」
「それに、アンタみたいなタイプは誰かが見張ってないと、イカサマポーカーとかばっかりで、ロクなことしないわ、絶対」
ズケズケとキツいお嬢様だよな、ホントに。
「別にずっとってわけじゃないのよ? 少しのんびり過ごして、自分が本当にどうしたいのかゆっくり考えてほしいの。それで生き方が決まったら、いつでも出て行ってくれて構わないから」
オレはゼシカの言葉に揺さぶられている自分を悟られないように必死だった。
「どうして、そこまでオレを?」
「だって、なんだか心配なのよ。ほっておけないっていうか・・・」
その時だ。エイトの奴が、オレにまほうのせいすいを寄越してきやがったのは。ああ、まあ、回復役のオレが大事な決戦でMP切れおこすわけにはいかないからな。もっともな判断だとは思うよ、実際役に立ったし。
だけど、何もあのタイミングで・・・。
この借りはいつか返すぜ、エイト。
「準備完了ね」
立ち上がったゼシカの表情には、油断も甘えもなかった。
「返事は帰ってからでいいわ。ちゃんと考えておいてよ、約束だからね」
そう言って、ゼシカは力強い足取りで、闇の遺跡に踏み込んでいった。
首尾よくドルマゲスを倒し、サザンビークに戻った後、ゼシカの口数は少なくなり、オレも疲れてるんだろうと、特に話しかけることもしなかった。
そしてこの通り、ゼシカは突然いなくなり、オレは当然あの時の返事をしていない。
「・・・勘かな」
このおせっかいどもには言えねぇよな、やっぱり。
口をそろえて『そうしろ』って言ってくるに決まってる。
悪いな、ゼシカ。
せっかくのお誘いだけど、答えは『NO』だ。
お前、やっぱりお嬢様だよ。世間知らずだ。
オレみたいな人間を、自分の家に住まわせようだなんて、無邪気にも程がある。
『仲間』として信頼してくれてるんだろうけど、『男』としてのオレに対しては、結構残酷なこと言ってるって、気づいてないだろ?
でもな、ゼシカ?
オレがあの時、そんなに嬉しかったか、わかるか?
きっと、お前には想像もつかないくらいだと思うぜ。
あの時、ゼシカが言ってたことは大正解だ。
オレは一人だったら、ロクなことしやしない。
オヤジのように・・・いや、もっと投げやりな生き方して、どこかで一人、惨めに野垂れ死にするのがオチだ。
でも、もしこの世界に、自分のことを気にかけて、心配してくれる人間が一人でもいてくれたら・・・。
そうしたら、オレは独りぼっちなんかじゃない。
あの時のゼシカの言葉を思い出すだけで、胸の奥が温かくなる。明るい光が射す。
どこでだって、ちゃんと生きていける。
あのゼシカが、自分から口にした約束を果たさずにいなくなるなんて、ありえない。
何か大変なことに巻き込まれてる。それだけは確かだ。
待っててくれ、ゼシカ。
たとえ、それがどんなに困難なことだろうと。
オレが必ずそこから、お前を救い出してみせるから・・・。
< 終 >
>>51-54 なんて切なくていい話なんだ…・゚・(ノД`)・゚・
しかし、そうなったらゼシカママンの反応が気になるなw
57 :
51:2005/09/08(木) 23:05:12 ID:uLRMnVgU
>>55-56 ありがとうございます。
>>55 ゼシカママ、もちろん大反対でしょうw
普通に恋人として紹介しても反対しそう。っていうか、してほしい。
恋は障害があった方が燃えるから。
>>57 >恋は障害があった方が燃えるから
激しく同意同意同意ーーーーー(;´Д`)!!
あまつさえ、彼が各地で浮名を流しているのをママンの耳にも入ってたりしてたら
(過去にリーザスの女も口説いてたりしてw)そりゃもう大変。
兄を理想としていた由緒正しきリーザス家のあなたとあろう者が
あんな見た目だけのチャラチャラした男に騙されるとは何事ですか!とまくしたてるママンに
私も最初はそう思ってたけど彼は違うの!とまたもや母娘で口論バトル。
ククなんかはどう出るんだろう。
やべぇ萌えが止まらない…
このあたりのエピソードも職人さんに書いて欲すぃ。
>>58 ちょwwwwwwっうぇwっをまwwwwww早まりすぎワロス
障害はママンだけではなく、屋敷の前に立っていたあの青年が怒濤の反撃に出て三つ巴の
戦いになるとか、
その前にあのがきんちょを攻略しないと屋敷には入れてもらえないような気がしてきたり。
無事にモシャスを習得してうっかりゼシカになっちゃった彼女を間違って口説いちゃったり。
「モシャスの次はルーラだ」とかなんとかで、そりゃあもう楽しい展開が……。
……ククールにとっては最難関のダンジョンになり得るんじゃないだろうか、リーザス村。
とりあえずママンの方針としては、ルーラを使わせないために呪文封じor天井のある場所へ避難
などなど、前途多難なんじゃないかと考えてたら楽しくなってきました。
>>51-54 乙です。
リーザスに移動すると実際に聞けるセリフなのでしょうか? 回想(?)と交えて語られるところが
良かったです。
ククのことだからママンも口説いた前科ありとか
>>60 あのがきんちょってポルクとマルクの事?
この2人も色々思い浮かべるものがあるなぁ。
「ゼシカねえちゃんを取ったーーーー(大泣)!!」とククに突っかかり
一生懸命なだめすかす2人。いや、ありえないかな…
エンディングまでには二人は既に一線を越えていた
↓
しかしトロデーンの宴会でククールが別の娘にちょっかいを出して、
喧嘩になり、そのまま別れた
↓
数ヶ月後に再会した時にゼシカはヨリを戻そうとしてたが、
ククールが女連れでガックシ。
↓
しかし直後にククールの連れた女が消えてるので、
やはり二人はヨリを戻したのであった。
それはなかなか面白い。
ゼシカとくっついてからもやっぱ浮気すんのかなー…
浮気癖はそうそう簡単に直らないと言うしちと切ない
65 :
まとめ人:2005/09/10(土) 02:44:51 ID:5FdNDmHP
久々のカキコ・・・(・∀・)
まとめサイト更新しました。
なにかお気づきの点がありましたら教えてくださいねー。ではでは。
◆JbyYzEg8Isさん大量の投下乙&GJでした!
萌えましたよ〜!!
まとめ人さーん!!禿しく乙です!
乙でーす
まとめ人さま、この度は乙でした。◆JbyYzEg8Isです。
まとめサイトに加えていただいて光栄です。
更に「萌えた」というお言葉まで戴き、感激で昇天しそうです。
本当に、自分でも恥ずかしくなるほど大量投下してしまい、大変お手数おかけしました。
萌え会話のまとめが無ければ書けなかった話もあるので、とても感謝してます。
ありがとうございました。
>>60さん、 ありがとうございます。実際に聞けるセリフです。
実際には「・・・なんでそんなことがわかるかって?」と「…勘かな」の間に
「う〜〜〜〜〜ん………………。」が入ります。
↑ があんまり長かったので 「何かあったな」と妄想しましたw
>>58さん、その萌えを書くの、私でもいい?
その後のレスも、みんな面白くて、また妄想に火がつきそうです。
どこまで取り入れられるかわからないけど、挑戦してみます。ゼシカママ、ポルク、マルクは100%出演約束できます。
まとめにんさんおつでーす
そういえば世界のどこかでククゼシフェスティバルがやってるらしいけどマジ?
エーッ!?何それ!世界のどこかって。
どっからの情報?
って……釣られた?私?
73 :
58:2005/09/11(日) 00:42:28 ID:JUYRX5om
>>70 いいとも!(テレフォソショッキソグ風に
ぜひ書いてください!良ければ他の方もドゾ!(;´Д`)
ゼシカママンに2人の仲を知られたら…ってあたり、すごく気になりどころなんで。
>>71 マジだよ。11月くらいまでやってるはず。
ぐぐってみるといいよ。
>71
一部、要和訳ですよ>ククゼシフェスティバル。
これから盛り上がるといいなあ(*´∀`)
>>75 スマン。ぐぐってみたが見つけらんなかった・・・。
もちっと詳しく教えて下され(;´Д`)
>>76 これ以上詳しくだなんて、あちらに迷惑がかかる懸念があるから
無理な話だと思われ。
そうでなくても75さんはギリギリのところまで仰ってるわけだし。
(一応3行目はヒントですよ、と言っておこう)
ククとゼシをフルネームで単品検索したらあ?
>>72 その素の驚きように、ごめん、笑ってしまった。
きっと外国かどこかでククゼシの公共フェスティバルが開催されてるって思ったんだね。
72可愛い奴。
外国にも日本製の2次元にはまる人が増えているらしいけど
カップリング萌えって現象はあるんだろうか。
あるとしたら、北米版が発売されたらアンゼシなんてのが生まれて
外国のどこかで祭り…って話も絵空事ではなくなるなw
ククーススレ落ちた? ショボン
4月 ユリマスレ落下
4月 キラスレ落下
4月 ヤンガススレ落下
5月 ゲルダスレ落下
5月 ゼシカスレ落下(現在復活)
5月 ユッケスレ落下
6月 ミーティアスレ落下
そして……
. ,〃.彡ミヽ ネ ネーゾ!? オレノスレ!!!
〈((((/("!》 ____ ___
ヾ巛;゚Oノ" ||\ \ |◎ |
/~"i!づ!}つ || | ̄ ̄| :|:[]| 9月 ククールスレ 落下
┌ん、」"ソ/ ̄l| / ̄ ̄/ | =|
|└ ヾ |二二二」二二二二二二二」
 ̄]|i二>> | || | ||
/ ̄\ / . || / ||
◎ ◎..[____|| .[__||
ククールスレ復活おめでとう!
またまたSS投下しにきました、◆JbyYzEg8Isです。
以前書くといっていた ククゼシvsリーザス村ですが、最初に謝っておきます。
すんごい長いです。筆が暴走しました。
萌えどころもないかも。ごめんなさい、許してください。
では投下させていただきます。
「愛してる。ずっとゼシカだけ見てた」
ククールがそう言ってくれてから一カ月が経った。
私はリーザス村の入り口で、彼を待っている。
サヴェッラで幸せそうなエイトとミーティア姫を見送ったその日、私たちは初めてお互いの想いを確かめ合った。
ククールは私を困らせないように、ずっと自分の気持ちを押し殺して、仲間であることに徹してくれていたって。
私の方はというと本当に鈍くて、ククールを好きだという自分の気持ちに気がついたのは、ラプソーンを倒し、リーザス村に帰ってきて、しばらく経ってからだった。
いつも近くで見守っててくれた人がいないことが淋しくて。
ううん、それ以前に、ククールがどんなに私のことを大切に守ってくれていたか、全然わかってなかったことに気が付いて、毎日泣きたい気持ちだった。
ミーティア姫を、チャゴス王子との結婚式場であるサヴェッラまで送り届ける為に再会した時も、私はやっぱり素直になれなくて。でもククールはちゃんと察してくれて、自分から先に私に気持ちを打ち明けてくれた。
ずっと一緒に生きていこうって、約束してくれたの。
私はすぐにリーザス村に来てほしかったけど、ククールはその時、神父様のいないドニの町の教会の仕事を手伝っていて、シスターを一人にして突然やめるわけにはいかないから一カ月だけ待ってくれと、またドニの町に戻っていった。
口では軽薄そうなこと言うけど、本当はそういう誠実な人。
気づかなかった初めのうちは、もったいないことしてた気もするけど、今考えるとそれで良かったのかもしれない。この一カ月間、私の頭の中は、寝ても覚めてもククールの事ばかりで、こんな状態でラプソーンと戦ってたら、命が幾つあっても足りなかったわ。
そして、今日が約束の日。
仕事の邪魔をしたくなかったから、この一カ月、会いたくてもずっと我慢してた。
やっと一緒にいられる。もう二度と離れたくない。
「おや、ゼシカお嬢様、ずいぶんとお早いですね」
開店準備をしにきた防具屋さんに声をかけられた。
日の出と一緒に起きだしてきたのは、ちょっと早すぎだったかしら。
「ええ、ちょっと目が覚めちゃったの」
朝が来るのが待ち遠しくて、眠れなかったっていうのが本当のことだけど。
いくら何でも、こんなに早くは来ないってわかってるのに、家でじっとしてなんていられなかった。
木にもたれて、門の上の風車を眺める。
ゆっくりと吹く風は暖かく、戦って勝ち取った平和を祝福してくれているよう。
不意に魔法の気配を感じた。
風と光が渦を巻いてこちらに向かってくる。そう、これはルーラ。
朝日を受けて輝く銀色の髪が、着地の瞬間フワリと舞い上がる。
「ククール!」
私は叫ぶと同時に駆け出していた。
そのまま彼の腕に飛び込みたかったんだけど、ククールは両手に一杯花束を抱えていて、私は慌ててブレーキをかける。
「ずいぶん早起きだな、ゼシカは」
ククールは驚いたように私を見ている。
「待ち遠しくて、眠れなかったの」
私が言い終わらないうちに、唇を重ねられた。
「オレも」
あいかわらず手がはやいわ。素早さでは負けてないはずなんだけど、こういう時には何故か勝てない。もちろんイヤではないんだけど。
「すごい花ね。どうしたの?」
ちょっとテレちゃうので、話題をそらす。
「ゼシカのお母さんに挨拶するのに、手ぶらってわけにはいかないからな」
それで選ぶ手土産が花っていうのが、ククールよね。絵にはなってるんだけど、やっぱりキザだわ。
「とりあえず、これはゼシカに」
レースのリボンで結ばれた、小さなブーケを渡される。
「・・・ありがとう」
くやしいけど、嬉しい。やっぱりククールには敵わないわ。
「こんなに早いなら、朝食まだでしょう? うちで一緒にとらない?」
今から頼めば、一人分くらいはどうにでもなるはず。
「いや、やめとくよ。それより教会に寄りたい」
「教会?」
「そ、挨拶しに」
ここでも教会の仕事を手伝うつもりなのかしら?
教会に着いたククールは、建物の方には見向きもせず、墓地の方へと進んでいく。
足を止めたのは、サーベルト兄さんのお墓の前。
空の色と同じ、青い花を供えてくれる。
あの花は願いの丘にしか咲かない花。
もうずいぶん前に、本当に軽い気持ちで、兄さんのお墓に供えてあげたいと口にしたことがある。言った私でさえ忘れていた言葉をククールは覚えていてくれた。
涙で目の前が霞む。
サーベルト兄さん、私、この人を好きになって良かった。
私自身だけでなく、私が大切に思うものすべてを同じように大切にしてくれる。
こんなに強くて優しくて、心のきれいな人が私を好きだと言ってくれる。こんな幸せなこと他にない。
だけど、たった一つ。一つだけ悲しいのは、兄さんにククールを紹介できなかったこと。兄さんはきっと『良かったな、ゼシカ』って言ってくれたよね。私、兄さんに祝福してもらいたかった。
胸がいっぱいになってしまい、祈りを捧げてくれているククールの背に額を当てる。
「なんだよ、泣くなよ」
ククールが困ったような声を出す。そうよね、悪いことしたわけじゃないのに、泣かれたら困るわよね。
「ありがとう・・・」
でも、これだけ言うのが精一杯だった。
だいぶ陽が高くなり、村の人達も外に出て、それぞれの活動を始める。
私とククールは手を繋いで、私の家へと向かう。
宿屋の前を通り過ぎるあたりで、ククールがうかない声で訊ねてきた。
「なあ、ゼシカはオレのこと、家の人には話したのか?」
「ええ、好きな人がいて、その人が今日挨拶に来るからって」
「それが、『オレ』だっていうのは?」
変なこと訊くのね。
「わかってるわよ。ククールもお母さんとは何回か顔を合わせてるでしょう?」
「一応、ゼシカにも心の準備しておいてほしいんだけど、多分オレ、いい印象もたれてないから認めてもらえないと思う。そうなっても、ケンカしたりしないでくれな」
・・・。
一瞬、何を言われてるのかわからなかった。
「どういうこと?」
「その何回か顔を合わせた時、オレにだけ妙に冷たい視線が向けられてたんだよな。悪い虫がついたと思われてる気がする。定期船のオーナーだから、向こうの大陸の話も耳に入るだろうし、オレってかなり有名だったからな。良くも悪くも」
「まさか・・・だって、お母さん何も言ってなかったわよ。反対するなら、まず私にダメだって言うはずでしょう?」
「ああ、だから一応、その可能性もあるってことだけ覚えておいてくれればいいよ」
ククールったら、笑っちゃうぐらい自意識過剰なところもあるのに、変なところで自分に自信がないんだから。
でも、正しかったのはククールの方だった。
日中はいつも屋敷の中で待機している衛兵さんが、今日は玄関の前に立ちはだかり、私たちが中に入るのを阻んできたのだ。
「大変失礼ですが、そちらの紳士をお通ししてはならないと、奥様からのご命令です」
何なの、これ・・・。
「どういうこと? 私、そんな話きいてないわ! どいてちょうだい、お母さんに説明してもらうから!」
私の剣幕に衛兵さんは怯むものの、ドアの前から動こうとはしない。
「どかないのなら、力づくでどかせるわよ・・・」
掌にメラの炎を発生させた私の腕を、ククールが掴んで止めた。
「だから、そういうことやめてくれって、さっき言っておいただろ」
「何、他人事みたいな顔してるのよ! こんな失礼なやり方されてるんだから、怒りなさいよ!」
やけに落ち着いているククールにまで腹が立ってしまう。
リアルタイム遭遇キターーーーー!!!ワクテカ
その時、内側から扉が開いた。
「何ですか、大声でみっともない。はしたない行為はおやめなさいと、いつも言っているでしょう?」
お母さんが、すました顔で出てきた。
「何がみっともないのよ! こんなやりかたの方がよっぽどひどいじゃない! これじゃあ、まるで騙し討ちだわ!」
「あなたに言ってきかせたところで、聞きやしないでしょう? 私が直接、この方にお話しします」
お母さんはククールに向かって話し出した。
「ククールさん、貴方の評判はよく存じています。修道院で神に仕える身でありながら、酒色と賭け事に溺れる、どうしようもない不良騎士だと」
「お母さん、私だってはじめはそう思ってた。でも、それだけの人じゃないの。そんな評判なんかで彼を判断しないで!」
それでも、お母さんは私を無視して話を続ける。
「更には、祈りを捧げると称して、貴族の家でいかがわしい行いをしていたとか。かつてドニの周辺の領主であった貴方のお父上のことも私はよく存じています。思い出しただけでも腹の立つ。
あの方は妻子ある身でありながら、夫を亡くしたばかりの私に何度も不埒な行為を誘いかけてきました。大層な美男子であったことを鼻にかけていたのでしょう。
あげくの果てに財産を全て食いつぶすような、どうしようもない男・・・。貴方にはそのお父上の面影が強く残っていらっしゃるわ」
昔そんなことがあったなんて、私、全然知らなかった・・・。でも、それはあくまでククールのお父さんの話だわ。
「いい加減にしてよ! そんなのククールには何の責任もないじゃない。これ以上彼を侮辱するようなこと言わないで!」
ようやくお母さんは私の方に顔を向けた。
「ゼシカ、あなたはまだ若いからわからないのよ。美しい外見や、うわべだけの優しさに惑わされてしまう。私はあなたの母親として、この人とのお付き合いは決して認めませんからね」
怒りで体が震える。お母さんなんて、何にも知らないくせに!
私はククールの腕をつかんで、踵を返す。こんなところにいたくないし、ククールをこんなところにいさせたくもなかった。
「待ちなさい、ゼシカ!」
お母さんが呼び止めるが、待つつもりはない。とにかく村を出たかった。いつのまにか村の人達が集まって家の近くで様子を見ていたけど、そんなこともどうでもいい。
こんなのってひどすぎる。あんまりだわ!
「イオラ!!」
道を歩いている時も、塔に昇っている時も、出現する魔物は全て先制のイオラでなぎ払った。頭に血が昇っていて、戦術もMPの消費も考えたくなかった。
その内、魔物も恐れをなしたのか出てこなくなり、リーザス像の前まで来た時も、私たちにはかすり傷一つなかった。
「すげぇな、ゼシカ。オレ手だしするヒマなかったよ」
それまで黙って私に腕を引っ張られていたククールがようやく口を開いた。
「ある程度覚悟はしてたけど、門前払いまでは予測しなかったな。花束無駄になっちまった。リーザス像にでも捧げとくか。クラン・スピネルのお返しってことで」
そう言ってククールは、手にしていた花をリーザス像に供える。
その声の調子や態度がいつもとまったく変わらなくて、私はかえってそれが悲しくて、涙が溢れてきた。
「ごめんなさい、お母さんがあんなひどいこと・・・。私、恥ずかしい・・・」
くやしくて、悲しくて、腹が立った。
お母さんなんて、何も知らないくせに。
あの命懸けの戦いの日々の中で、ククールがどれだけ私を助けて、支えてくれていたか。どんなに私が救われてきたか。知りもしない人に、一言だって彼のことを悪く言われたくない!
「ゼシカ、オレなら平気だよ。言ったろ? 心の準備しといてくれって」
ククールが宥めるように私の頬に手を添える。
「アローザさんはゼシカのこと心配だから、ああしたんだよ。いいお母さんじゃないか。ちゃんと大事にしろよ」
「あれだけひどいこと言われて何言ってるのよ! ククールは誰の味方なの!?」
「もちろん、ゼシカの味方」
「そうじゃない! ちゃんと自分の味方してよ!」
小さい頃から、あんまりひどいこと言われ慣れすぎて、感覚がマヒしちゃってるのかもしれない、この人。
「オレのことはゼシカが味方してくれたから、それでいいさ。さっきは悪かったよ、ゼシカ一人に喋らせてさ。さすがにオレもオヤジの話が出てくるとは予想できなくて、動揺しちまった。ホント、クソ親父、最後の最後までやってくれるよな」
自分のお父さんまで侮辱されてるのに、こうして平気な顔をする。どんな辛い思いを重ねてきたら、ここまで強がるクセがついてしまうんだろう。
「ククール、一つ、ひどいこと訊いてもいい?」
お母さんがもう一つ、言っていた。修道院でも、同じ話を聞いたことがあった。
「いいよ」
こんなこと訊いたら、彼を傷つけるかもしれないけど、知らない顔をしていたくない。
「貴族の家で、寄付金集めのために、ひどいことさせられてたって、本当?」
ククールは驚いたような顔をして私を見、それから優しく微笑んだ。
「ウソだよ。ウソっていうより未遂か。確かにこの美貌だからそういう奴らもいたけど、きっちり返り討ちにした。
オディロ院長はダジャレは気が遠くなる程つまらなかったけど、何の後ろ盾もなしにマイエラの修道院長にまでなった人だぜ? そんなに甘くなかった。
オレにバギとルーラを教えてくれた後、『本当にイヤなことされそうになったら、構わないからぶっとばして逃げてこい』って言ってくれた。その通りにした時も、ちゃんとかばって守ってくれてた。
ああ見えて、本気出したら怖い人だったよ。箱入り貴族がどうこうできる人じゃなかった」
あの、人の良さそうなオディロ院長から『ぶっとばしてこい』なんて言葉が出てたのは意外だったけど、ホッとした。そうよね、そういう方だったから、ククールだって慕ってたのよね。
「ま、信じる、信じないはゼシカ次第だけどな」
「信じるわよ、決まってるじゃない。ちゃんとククールのこと守ってくれた人がいたのが嬉しいだけよ」
顔を上向けられ、唇が重ねられる。今度は深くて長いキス。私はまだ慣れてなくて、どうすればいいのかわからず、ククールに全てを任せるしかできない。
息苦しさを感じる頃、ようやく唇が離される。足に力が入らず、ククールの腕に体を預ける。
「オレの為に、怒ったり泣いたりしてくれるのも嬉しいけど、やっぱりゼシカは笑ってくれてた方がいいな。久しぶりに会って、やっと二人きりになれたんだし」
・・・そうだ。私、嬉しかったり、悲しかったり、怒ったり、自分の感情ばかりだったけど、ククールの気持ちを考えてなかった。
こうなることを予測していたのにリーザス村まで来てくれた、その心に気がつかなかった。
「ごめんね、いやな思いさせて。でも、会いにきてくれて嬉しかった。ありがとう」
私は顔を上げ、笑顔でこたえた。
「で、これからのことなんだけど・・・」
私の頭が冷えたのを見計らったのか、ククールが話題を変えてきた。
「オレ、しばらくベルガラックに行くよ。フォーグとユッケに頼まれてたんだ、あそこの用心棒、少し鍛え直してくれって」
ちょっと待って。展開が早すぎて、頭が付いていかないわ。
「ホントに、こうなるってわかってたのね」
「オレはいつでも、最悪の事態を想定してるからな」
「でも、それなら私もベルガラックに行くわ。あんなわからずやのお母さんのいる家になんか戻るもんですか」
「ダーメ。ゼシカは残るんだ。オレの方も三カ月はかからないだろうから、終わったら改めてリーザス村に行くよ。
ここでゼシカを連れていっちまったら、ますますアローザさんの心象悪くなるだろうし、それは避けたいんだよな。というわけで、そろそろ村に戻ったほうがいいから、リレミトよろしく」
・・・え?
「リレミト。あれ? もしかしてイオラ撃ちすぎて、MP全部使っちまった?」
「いえ、リレミト分くらいはあるけど・・・。平気なの? あんなやりかたされて、ひどいこと言われたところに戻るの」
「全然平気。オレの素行が悪かったのは事実だし、母親だったら反対するのが普通だろ。むしろ反対してくれて安心する。ゼシカ、大事にされてんだなって」
「お母さんなんて、頭が堅いだけよ。ククールがいくら気遣ったって、わかってくれやしないわ。ただのわからずやなのよ」
「そんなこと言うもんじゃないぜ。オレからすれば、あんなふうに心配してくれる母親がいるってのは、羨ましいぐらいなんだからな」
・・・ククールにそう言われると、何も言い返せない。
「オレは変わったからさ、時間はかかってもわかってもらえるって信じてる。
エイトやヤンガス、トロデ王、ミーティア姫、そしてもちろんゼシカ。いろんな人達のおかげでオレは変われた。
もう、何かで自分をごまかして生きるのはやめたんだ。そんなつまらない生き方に、ゼシカを付き合わせるつもりはない」
真剣な目だった。本当にこの人は変わった。初めて会った時の、淋しさや辛さを一時の快楽で紛らわせていた人とは、もう違う。
・・・私一人が、自分の感情で泣きわめいているわけにはいかないわ。
私はククールに言われたとおり、リレミトを唱えた。
リーザス像の塔の外に出ると、ポルクとマルクが、武器を構えて立っていた。
こんなところまで二人で来たのかしら。いつのまにか強くなってたのね。
「ゼシカ姉ちゃん! 良かった、やっぱりここにいた。こいつが姉ちゃんを連れてこっちに歩いてくのが見えたから、追っかけてきたんだ。おい、お前! ゼシカ姉ちゃんをどっかにさらっていこうとしたって、そうはいかないからな!」
「ゼシカ姉ちゃんは、どこにも行かせないぞ」
ポルクとマルクの言葉に、ククールが抗議の声をあげる。
「いや、ちょっと待て。連れてこられたのはどうみてもオレの方だろ、どういう見方したらそうなるんだよ」
「うるさい! お前なんかにゼシカ姉ちゃんを渡すもんか! どうしても姉ちゃんを連れていくつもりなら、オレたちと勝負しろ!」
「勝負しろ!」
ククールはため息をつき、うんざりしたような声を出した。
「なあ、ゼシカ。この『問答無用で実力行使』ってのは、リーザス村の基本方針か何かなのか?」
そんな基本方針はないけど、自分の行いを振り返ると違うと言えないのが悲しい。
「まあ、いいや。挑まれた決闘は受けないとな」
ククールは腰に差していたレイピアを抜いた。
「お、おい、お前、子供相手に剣を抜くのかよ」
ポルクが動揺している。
「そっちは二人掛かりだろ? ちょうどいいじゃないか」
「ちょっと、ククール、やめなさいよ、子供相手に」
さすがに私も黙って見てはいられない。
「そいつは違うぜ、ゼシカ。こいつらはガキでも男だ。剣を抜くってことの意味は知っておいた方がいい。・・・さがっててくれ」
こういう時、ククールは甘くない。
私も、ラプソーンを倒す旅でいろいろなものを見てきたつもりなんだけど、世の中にはまた違う種類の修羅場があるんだろうと想像させられる。それは私が全く知らない世界。
私は言われたとおり、後ろにさがる。
「ほら、かかってこいよ」
ククールが、ポルクとマルクを手まねいた。
私は、まだわかってなかった。
ククールは、本当に子供みたいなところもある人だって。
かれこれ二十分くらい経ってるけど、ククールはまだ一度もレイピアを使っていない。
二人の攻撃を、ひらりひらりとかわすだけ。ポルクとマルクは、もう息があがってる。
「ほら、どうした? こんなんでへばってて、ゼシカ姉ちゃん守れるのか?」
しかも、妙に楽しそう。そういえば以前、ごっこ遊びしたことないって言ってたわね。生まれて初めての剣術ごっこで遊んでるのかも。
大人なんだか、子供なんだか、本当にわからないわ。
マルクが足をもつれさせて転び、そのまま座り込んだ。
それを見て、ククールは初めて、ポルクの剣をレイピアで受ける。
何度も剣を振り下ろして疲れている腕に、その衝撃が耐えられるはずもなく、ポルクは剣を取り落とした。
「勝負ありだな」
ククールは、レイピアを鞘におさめた。
マルクが大声で泣き出し、ポルクは唇を噛み締めて、必死にこらえている。
ククールはしゃがんで、二人の顔をのぞき込んだ。
「あのな、いいか? 人間なんだから、まず話し合うってことを覚えろよ。大丈夫、お前らから大好きなゼシカ姉ちゃん、取ったりしないから」
前半部分、耳が痛いわ。
「でも、お前、ゼシカ姉ちゃんの恋人なんだろ? どこかにゼシカ姉ちゃん、連れていっちまうんだろ?」
「だから、連れてかないって。それにな、もしこの先ゼシカがオレとどっか行っちまうことがあったとしても、ゼシカがお前らのゼシカ姉ちゃんだってことが変わるわけじゃないんだ。
誰もお前らからゼシカ姉ちゃんを取り上げるなんて出来ないんだよ。・・・って、これはガキには難しいか。何言ってんだ、オレ」
「いや、わかるよ」
「うん、わかる」
ポルクとマルクは頷いた。
フォ 連投回避!!ハァハァ(´Д`;)ハァハァ
「勝負に負けたから仕方ない、お前のこと認めてやる。そのかわり、ゼシカ姉ちゃん泣かせたら、その時は許さないからな」
「ゼシカ姉ちゃん、幸せにしろよ」
ククールは嬉しそうな笑顔を見せる。
「そっか、ありがとな。オレ、またしばらくいなくなるんだけど、その間はお前らがゼシカの味方してやってくれよな」
「えっ、行っちゃうのか? ・・・任せろ、その間、姉ちゃんはオレたちが守る」
「うん、男の約束」
「ああ、頼むな」
・・・捨ててなんていけない。
当たり前のようにそこにあったから気づかなかったけど、私は幸せだったんだ。
心配してくれる人、慕ってくれる人。そして帰ることが出来る場所。
私は何もかも持っていた。
ククールは私以上に、私にとって大切なものをわかってくれていた。
私の居場所はやっぱりリーザス村。もしそれが二度と戻れない場所になってしまったら、私はきっと耐えらえない。
帰りたいと願う自分の気持ちに潰されてしまう。
私も変わろう。ただお母さんに反発してるだけで、許してもらえるわけがない。
もっとしっかりして、認めてもらって、信じてもらって、外見やうわべに惑わされてるんじゃないってわかってもらおう。
今の私はまだ未熟で、ククールには釣り合っていないけど、いつまでも守られるだけではいたくない。
今、ククールが私にしてくれているように、彼にとって本当に大事なものが無くなろうとしていたら、私が必ずそれを守ってみせる。もちろん、それがあのマルチェロのことだったとしても。
「ポルク、マルク。私はどこにも行かないから。どこかに行かなきゃいけなくなっても、必ずリーザス村に戻ってくるからね」
私もククールの隣にしゃがんで、二人と目の高さを合わせる。
お母さんと対決する覚悟ができたわ。
「ククール、ルーラお願い」
まずは、これ以上ククールを悪者にしないことだわ。
家に戻って、ちゃんと話し合おう。
あれから一年が経った。
ククールは今、ポルトリンクに間借りして、リーザス村とポルトリンク、そしてリーザス像の守り手となってくれている。
加えて、ポルトリンクの教会もシスター一人できりもりしてるので、その手伝いもして毎日忙しそう。
村や港の人達には完全に受け入れられ、すっかり人気者になってる。
リーザス村の人たちは、こっちに移ってこいと言い、ポルトリンクでは手放したがらないので、困ってるみたい。
ちょっと心配だったけど、浮気してる気配は感じられない。お酒は飲んでるけど、まあ許容範囲。カジノには時々行ってる。
子供は好きじゃないみたいに言ってるくせに、ポルクとマルクに『ククール兄ちゃん』と呼ばれるのは嬉しいらしく、毎日楽しそうに剣を教えている。
二人が一人前になったら、はやぶさの剣をプレゼントするんだって、カジノのコイン二万枚分の引換券を見せてくれた。こういうのって、メロメロっていうのよね。ちょっとだけ妬ける。
初めはあれだけククールのことを嫌っていたお母さんも、半年も経つ頃には少しづつ態度を緩め始めた。
あいかわらず付き合いは許さないとは言いながら、時々、夕食やお茶にククールのことを招くようになった。今では週に二回ぐらいの割合になっている。
それはとっても嬉しいんだけど、一つだけイヤなことがある。
今もククールを招いて、午後のお茶を飲んでるんだけど・・・。
「ゼシカときたら、いくら言ってもはしたない格好するのをやめてくれないのよ。若い娘が、あんなふうに肌をさらして歩くなんて、本当にやめてほしいわ」
「わかります。オレだって外ではあんまり露出しないでほしいって言ってるんですよ。他の男の目には触れさせたくないから」
「まあ、あなたが言ってもダメなの? 本当にしょうがない娘ね」
最近お母さんは、私のことをククールにグチる。そして、ククールはそれに対して、ほとんど反論してくれない。
「本当に、あの娘は誰に似たのかしら。一度思い込んだらテコでも譲らなくて、止めてもきかずにつっぱしるのよ」
「ああ、そうですよね、ゼシカの心配してたら、体が幾つあっても足りませんよね」
・・・こんな意気投合のされかた、何だかイヤだわ。
もう・・・ふたりともいったい、誰の味方なのよ!
<終>
>>90さん
>>97さん、ありがとう。
連投規制どうしようか悩んでたのに、リアルタイムで二人も助けてくれる人がいたなんて感激です。
助かりました。少しでも楽しんでもらえると嬉しいです。
ハゲシクGJ!
お互いの存在によって大人になった2人というところがイイ!
うきゃーーー。
えぇ話でした。
ハッピーエンドなのに涙が出そうになるのは何でだろう。
素敵なお話ありがとう!!
はぁあー職人さんGJです!大人なククールですなぁー…ときめきますた。
大作乙です!いい話だなぁ…。
>>99 一度思い込んだらデコでも譲らなくて、
ミスリードスマソ
お花摘みが伏線になってて秀逸ですた。
106 :
58:2005/09/15(木) 01:16:11 ID:pJLHgH+y
…………・゚・(ノД`)・゚・…………
いや、本当マジでリアルでも涙でてきちゃったよ!ズビビビビ
リクエストしてよかった!!!!!!職人さん本当にありがとう!
にしてもだんだんママンを落とししつつあるクーさん、さすがですなーw
本当に素敵な話でした。大人なククールも大人になろうとするゼシカも。
だけど、ママンにキツク言われるククには、こっちも読んでて悲しくなる
くらいだったから、その後の大円団に、余計感激しちまったよー。
それと「問答無用で実力行使」がリーザス村の基本方針ってのにワラタ
そういえば、ゼシカもアローザもそうだよね。
あんなに長い話を、こんなに多くの人が、すごくちゃんと読んでくれてる・゚・(ノД`)・゚・
>>101-107さん、ありがとう。とても嬉しいです。
前スレのアホ話まで覚えててくれた方までいるとは・・・。感涙。
おまけに 100get! してるよ、私。なぜ昨日気づかない orz
ここ見てほしいな、と思う所にコメントもらえて、嬉しいです。
あらためて、ありがとうございます。
109 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/16(金) 05:56:13 ID:85azndob
ほしゅage
最下層じゃないですか
最下層、万歳!!!!
111 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/16(金) 11:37:58 ID:ZcP9j+kN
ちょっと心配なのであげます。
ごめんなさいね。
どうしてage人がいるの?
この板は書き込みさえあれば、最下層でも落ちないんだってば。
スレ数が600を大きく超えると圧縮されて、書き込みのないスレが落ちる。
ここみたいに毎日1レスでも書き込みあれば大丈夫なの。
おねがいだからそろそろわかってくだされ。
気になる現象があったのでカキコ。
10時過ぎにスレッド一覧を見たら最下層だったんだけど、
この時点での最新レスは
>>110。
でも見ての通りに
>>109がsageていない。
本来109の時点で上げられて然るべきなのに、それが
無かったのは何故なんだろう?
>>113 へぇ〜不思議だねー。
2ちゃんの板の仕組みっていろいろ分からんことが多いよ。
んじゃまぁ、このまままーったりと重力に任せて
板の底に沈むまでsageで行きましょう。
ククゼシフェスティバル、バンザーイ!!
たまに上げてもいいと思うが。
いちいちつっかかるほうがウザ。
ageる人の気持ちも、sage進行したい気持ちも、両方わかる。
最下層だと、新しい人がスレに気づかずに人が増えず、過疎りそう。
ageると、変な人が入ってきて、荒れそう。
臨機応変でいいんじゃないかな。ageちゃう人も、基本はsageだってことは、わかってるみたいだし。
またりいこう
最下層に来たら一旦ageて、また最下層に沈むまでsage進行させて
その繰り返しをカウントしてみるのも面白いんじゃないか?w
んで、ククゼシフェスティバルってどこさ
祭りでぐぐる
教えてチャンうざい
ググってもなぜか出てこないんだよね。
私もククゼシサイト回ってる時にたまたま
リンク見つけて行けた。
9月4日は・・・ってバナー貼ってあるサイトを探してみたら?
まとめサイトのSS全部読んできました。
ククゼシいいね。
この二人なら、ずっと面白おかしくやっていけそう。時には真剣に向き合ったり・・・。
>124
教えてチャンで逆切れチャンかよ。
>>127 いい加減マターリしたいのに、放っときなよ…火に油をそそぐようなもんだ。
厨は放置に限る
ほんと、人をバカ呼ばわりするとは随分とまぁ・・・
>>75近辺のレスで既に答えは出てるのに、ちょい前のレスすら
確認できない&読解力の無さには呆れるばかり。
>>128 スマソ、放置賛成っす。
以後、何事もなかったようにマターリおながいします。
以前誰かが一度書いてた「家政婦は見た!」シリーズを
激しく読んでみたいと言ってみるテスツ。
>131あの方はもう書かれてないんですか?
教えてチャソでスマソ。
新参者なので。
>>132 多分あれ以降は見てないですね、家政婦シリーズ。
というか最近はSS自体減ってきてますからねぇ。
ククゼシファンも減ってきてるんですかねー。。
あの、また教えてチャソで申し訳ないんですがSSで出てた『お花摘み』の裏の意味誰に聞いても、さっぱりなんですけど…
花=女の子!?
トイレだったり!?わ、わからんー
135 :
132:2005/09/19(月) 15:18:02 ID:TNBoOFz6
>133
ありがとうございます。
>>134 だから検索ぐらいしようよって何度言ったら…(疲
もしや新手の荒らしか釣りかね。
試しに「お花摘み」で検索してみたら、すぐ1ページ目に
すぐに意味分かりそうなページが色々出てきたよ。
前スレでついこの間解説したばかりだと思ったんだが…
「お花摘み」作者です。
元はといえば、こんな一般的じゃない言葉を注釈も用いずに使った私の不親切です。
本当にごめんなさい。
『お花摘み』=『トイレ』で正解です。
その心は、どっちもしゃがむから。
前スレでも、その件で色々な方にお世話になってすみませんでした。
本日中に、改めてお詫びにきます。
また後ほど。
>>138 いや、作中でいちいちそんな注釈書いたら、話の流れの持ち味が薄れてしまう。
全部書き終えた後、作品外で解説すれば良いのでは。
確か、ちゃんと後で皆が解説してたでしょう。
そうでなくたっていくらでも検索はできるんだし。
>>124 幸せ検索してまで調べるだけでも、やっぱりこのc/wへの熱意がなきゃできないことだよな
そういうもまいへのヒント
DQTでククゼシ祭で検索してごらんなさい
141 :
138:2005/09/20(火) 00:34:07 ID:llWqoRzw
無念、日付が変わってしまった。本日中とか宣言しておいてカッコ悪い。
お詫びの品に、新作SSを携えてきました。
『お前が書きたかっただけじゃないか?』と突っ込まれても『その通り』と答えるしかないんですが・・・。
しかも笑えるアホ話にしようとしたのに、中途半端な話になってしまいました。
以下、よろしく。
『各自、最低一つはキメラのつばさを持ち歩く』
『リレミト使用者は、いかなる事態でも、その分のMPは確保する』
『万一、パーティーが分断された場合は、速やかに海辺の教会で合流』
日々、何が起こってもおかしくない状況で旅をしているエイト君たち一行にとって、以上のようなマニュアルは必要不可欠です。
今日は、彼らの冒険の中で起こった、ある非常事態のお話。
メディおばあさんから最後のカギを受け取った一行は、レオパルドを追うのをそっちのけで『宝箱を探そう世界の旅』の真っ最中でした。
メディおばあさんも草葉の陰で泣いているかもしれませんが、それはまあ、良しとしましょう。
今までに立ち寄った町の宝箱は全て回収し、後はサザンビーク城の北にある、固く閉ざされていた扉を残すのみとなりました。
切り立ったガケの上にその扉はあるのですが、エイト君たちは道を間違えたらしく、その扉のあるガケの真下に来てしまいました。普通はこんなところまでこられないはずですが、それもまあ、良しとしましょう。
ここ数日、雨が降り続いていたので道はぬかるみ、キラーパンサーの速度も遅く、戻る道も全く見当がつきません。ここまで来たのにルーラで引き返すのも気が進みません。一行は何とかガケをよじ登れないものか挑戦することにしました。
しかし、それが不運の始まりだったのです。
まずは、エイト君が先頭で道を探します。そして、次にヤンガス氏。本当は最も重い彼が、そんなポジションで登ってはいけないのですが、エイトの兄貴の後ろを、誰にも譲る気はないそうです。
次にゼシカ嬢。最後にククールさんです。決して、ゼシカ嬢のスカートの中を覗くためではなく、最も腕力の無いゼシカ嬢が足を踏み外しても、ククールさんがフォローできるようにです。
それでも、ヤンガス氏が落ちてきたら、エイト君以外、全員道連れになるだけなんですけどね。
事件は、最後尾のククールさんがようやく岩棚に足をかけたぐらいの時に起きました。
連日の雨で水かさの増えていた川が、上流の方で氾濫したのでしょう。すぐ脇の滝から、もの凄い勢いで水が流れ落ち、川の流れを暴走させます。
すでに水は、一行のすぐ間近まで迫っています。このままでは、まだ地面からさほど離れていないククールさんとゼシカ嬢は押し寄せる水に飲みこまれてしまいます。
>>136 134です。
私ケータイからで検索できいんです。すいません。
しかも前スレも見れないですし…(汗)
ご迷惑かけてすいません。PC持ってなくてすいません(泣)。
「早く上がれ!」
ククールさんが叫び、ゼシカ嬢の身体を上へと押し上げます。ヤンガス氏がゼシカ嬢の腕を掴み、更に引き上げます。
ギリギリのタイミングでした。
ゼシカ嬢は遅い来る水流から、かろうじて逃れることができましたが、ククールさんは間に合いませんでした。彼はあっというまに水の流れに飲みこまれ、姿が見えなくなってしまいました。
「ククール!!」
ゼシカ嬢は叫び、ククールさんを追って水の中に身を投じようとしましたが、エイト君とヤンガス氏が、彼女の身体を掴んで、決して離しませんでした。ククールさんの行為を無駄にしたくなかったのです。
しばらくして、水の流れは、やや落ち着きを取り戻しました。
一行は、急いでガケを降り、ククールさんの姿を求めて下流へと急ぎました。しかし、彼の姿はどこにも見当たりません。
あれほど人目を引く、真っ赤な服の切れ端すら見つからないのです。
一行の心に、絶望の影が落ちました。ゼシカ嬢は悲しみに耐えられず、顔を覆って泣き出しました。
ククールさんは、一体どうなってしまったのでしょう。
答えは簡単です。
彼は既に、海辺の教会のベッドの中で、気持ちよさそうに眠っていました。
スカラを重ねがけ、バイキルトで筋力増強し、バギマで水流を制御して命からがら水から這い上がったのでした。
そしてマニュアルに従って、ルーラで海辺の教会に辿り着いたのです。
ずぶ濡れで疲れきった様子のククールさんを見て『お仲間が来たら起こして差し上げますから』と申し出てくれたシスターの言葉に従って、風呂を使い、ベッドに入ったのでした。
ククールさんが目を覚ましたのは、陽が落ちる頃でした。かれこれ5時間は経っています。
シスターから、まだ仲間が到着していないと聞いて、ククールさんは驚きました。
ようやく仲間が、まだあの場所で自分を探しているのかもしれないと気づいたククールさんは、教会を飛び出しました。
そして丁度その時、暗くなったために捜索を一時断念したエイト君たちがルーラで到着したのです。
「何だよ、お前ら、マニュアル忘れたのかよ。ホントしょうがねぇ奴らだな。オレ一人でサッサとこっち来ちまって、すげえ薄情者みたいじゃねぇかよ」
ククールさんは、照れ隠しに軽口を叩きます。
「ククール!」
ゼシカ嬢が、ククールさんめがけて駆け出しました。ククールさんも、条件反射で両腕を広げて迎える体制をとります。
まるで芝居のワンシーンのような抱擁がかわされると思ったその時、ゼシカ嬢はくるりと向きを変えました。ククールさんは嫌な予感に襲われました。
そう、ラブリーガール、ゼシカ嬢の得意技、ヒップアタックをお見舞いされたのです。
しかも、ご丁寧に彼女の現時点最強武器、はがねのムチを装備状態で。
ククールさんは、軽く5mは吹っ飛びました。
「何がマニュアルよ! バカ!」
ゼシカ嬢は怒鳴りました。
ククールさんも、さすがにこれには理不尽を感じました。
命がけで守った女性から、この仕打ちはあんまりです。更には、装備してる武器で威力が変わるヒップアタックという技も、あまりに理不尽です。
今は元気になったけれど、本当に一歩間違ったら命を落としてもおかしくない状況でした。もし睡眠をとって、体力が回復していなかったら、今の一撃で死ぬところです。
「ゼシカ! お前なあ! オレが一体何したって・・・」
しかし、ククールさんはそれ以上何も言えませんでした。
ゼシカ嬢が、今度こそ本当に芝居のワンシーンのように、ククールさんに抱き着いてきたからです。
「どれだけ、心配したと思ってるのよ・・・」
もう後は涙声で聞き取れません。
「・・・ごめん・・・」
何も悪いことをしていないのに、ククールさんは謝りました。でも、もうそれを理不尽だとは思いません。ククールさんは、ゼシカ嬢の身体に腕を回して抱きしめました。
普段なら『調子にのらないで!』と怒られるところですが、さすがにそこまで理不尽なことにはなりませんでした。
終わり良ければ全て良し。
ヒドイ目にもあいましたが、ククールさんにとっては良い一日でもあったようです。
メデタシメデタシ。
!!
ごめんなさいー!!SS投稿中にレスしちゃいました。
すいません
消えます
>>146 はやまらんで、戻っておいで。
ごめんね。『お花摘み』も読んでくれてこその疑問だから、嬉しいよ。
これから気をつけて投下するので、許してね。
>>139さんもホント、すみません。
色々フォローしてくれて、ありがとうございます。
ご迷惑かけないように頑張ります。これからもよろしくお願いします。
148 :
146:2005/09/20(火) 01:10:46 ID:OLETj3WB
>>147……戻って参りました。
いいえ!!前スレいなかった私が悪いんですよ。
今少なくなってるSSを投稿してくれてるだけでも、ホントに有り難いんですから!
どうぞ、これからもガンバって下さい。本当に応援してます。
夜中まで起きてて寝る前に覗いてみて良かったーー!!
クスクス笑いながら読んで最後にほわ〜んと
嬉しいような切ないような気持ちになりました。
ついでに
>>134の天然っぷりと作者さんのやり取りにも
同じ様にほわ〜んって気持ちになったよ。
語彙が貧困でうまく言えないんだけど、
しみじみとほのぼのしたよ。
作者さん、ありがとう(゚´∀`゚)ノ
150 :
147:2005/09/21(水) 00:05:54 ID:i/sz2zC4
>>148 おかえり。
>>149 ありがとう。あなたは優しいですね。語彙が貧困なんて、とんでもない。
しみじみほわ〜んとなれる、素敵な言葉を選べる方だと思います。
>151
やっぱドラクエは声ない方がいいなと思った。
ククゼシ萌えの話しようぜ!
例えばゼシカの手作り料理の話とか。
先日クリアしたばかりのDQ8、このスレを見つけてとても嬉しかったです。
何か投下できるネタはないかと考え、ククゼシへの思いの丈を(勝手に)ぶつけてみました。
・ククールは弓に全スキルポイントを振る男。
・戦闘中、選択したコマンドの動機を後付け。
・闇の遺跡〜リブルアーチ
ということで以下、5〜7レスほどお借りします。
弦が奏でる旋律がなくとも、瞼を閉じれば鮮やかによみがえる記憶。
脳裏によぎる過去は彩られた思い出か、それとも美しく描かれた悪夢か。
立ちはだかる現実から逃れたいと願うとき、人は自分の影を見つめる。
闇色を染み込ませた影は、忠実なる僕。
主が望むことならば、全てと引き替えに楽園へと誘ってくれるだろう。
思い出を連れ立って。
呪文を唱える時、ククールは瞼を閉じ闇の中で意識を集中させる。この時
も、何度目になるか分からない回復呪文を唱えようとして瞼を閉じたのだ。
しかし、集中したはずの意識は彼の脳裏にある光景を呼び起こしたのだった。
***
旅の途中、なんの事はない会話だった。
「どうしてククールは弓を?」
尋ねられて足を止める。質問者の方を向いて、はぐらかすように言葉を返す。
「どうしたんだよ? いきなり」
「いや……。騎士団で弓使いってあまり聞いたことがないような気がして」
トロデーンに弓兵はいなかった、と彼は言う。
「そう言えば、出会った頃は弓なんて持ってなかったでがすよね?」
そこへヤンガスも加わったものだから、濁せば終わるという話でもなくなって。
「……あそこでは剣を持たなきゃならなかった。それだけだ」
不機嫌を隠さずにそう答えてやった。事実、聖堂騎士団員は剣しか携えない。
口に出してから、ククールは本当のことをばか正直に話してしまったことを後悔した。
(イヤなことを思い出しちまった)
そうだ、せっかく修道院から解放されたってのに。
「先を急ごうぜ、日が暮れちまう」
そう言ったククールに、笑顔はなかった。
それから街へ到着するまで、ククールは仲間達と言葉を交わすことはなかった。
宿に着いてからも、その日は誰とも口を利きたくないと早々に酒場へ出かけて行った
のである。
修道院を出てからと言うもの、今日ほど酒を浴びるように飲んだ日はない。珍しく
ククール自身がそう思ったのは、足もとがややふらつくことを自覚したからで。
それでも泥酔するほどではなく、意識もはっきりしている。まあるい月が西の空に
傾き始めた頃に、ようやく宿へ帰る道を歩いていた。酔わせてくれない安酒と、酔えない
自分になぜだか無性に腹が立った。
***
脳裏によみがえった光景に邪魔をされ、うまく意識が集中できずにククールは
僅かに苛立った。瞼を開き強い口調で短く詠唱を終えた後、右手を振り上げて不完全な
ままの力を解放した。
覚えたての回復呪文が、これまでに何度も訪れた危機を脱する糸口となり、仲間達の
命を救ってきた。仇であるドルマゲスと対峙した時も、とどめの一撃を与えた訳ではなかった
けれど、仲間の傷を癒してきたのは常にククールだった。
ヤンガスのような力がなくても、ゼシカのように強力な攻撃呪文がなくても、呪いの力を
はね除ける不思議な力を持っていなくても。
それが自分の役割だと、不満を感じることはなかった。
――淡い緑色に輝く光が、自分と、横に立つ2人の仲間達を包み込んだ。
いつもは自分の横に立っているはずの彼女の姿は、ない。
放った魔力は大地の上で心細い光を放った後、回復すべき相手を見いだせぬまま
静かに立ち消えた。
***
宿に入る前、見上げた建物の一角に明かりが灯っているのに気がついた。他の部屋
どころか、町中が眠りの中にあるはずなのに、いったいなぜ?
そう言えば今日だけではない。いつも夜遅くまで明かりが灯っているのは確か――。
些細なことを真剣に考えている自分が、妙におかしかった。
その理由を知るのは、それからすぐ後になってからだった。
ドルマゲスの居場所を突き止めて、闇の遺跡も難なく進めるようになった頃。ちょうど
俺がベホマラーの呪文を習得した直後だったと記憶している。
ドルマゲスと対峙すべく遺跡を進んでいた時の事。後ろを歩くゼシカが小さく呟いた。
「……呪文」
この俺が女の声を聞き逃すはずがない。だけどあんまりにも小さな声だったから、
聞き間違いかと思ってさ。
「どうした?」
「…………」
返事がないから振り返ってみれば、重い足取りでしかも俯いてるもんだから、最初は
てっきり疲れたのかと思ったんだ。で、先を歩いていた2人を止めようとしたら、逆に
制止された。顔を上げたゼシカの表情が、いつもと明らかに違っていることには、すぐに
気づいた。
「違う、ごめん、なんでもない。気にしないで」
ちょっと待て。何が違うんだ? 何がごめんなんだ? なんでもない? どのツラ下げて
そんなこと言うんだか。
「『なんでもない』って顔じゃないだろ?」
呪文が何とか、と言っていた。だから袋から魔法の聖水を取り出して渡そうとしたんだが、
首を横に振るだけで受け取ろうともしない。
「……邪気にでもあてられたか?」
疲労の類でないとすればそれが妥当な線だと思った。確かにこの遺跡はまがまがしい
気に満ちている。ドルマゲスのいる場所に近づけば近づくほど、空気に混じるそれが強く
なっているのを確かに感じたからだ。
「無理すんなよ。休もうぜ」
……無言だった。
まったくコイツは。そうも思ったが、そりゃ仕方ないか。少しは肩の力を抜いた方がいい、
だからわざと茶化すように言ってやった。
「分かった、ゼシカ。緊張してるんだろ?」
「……勝てる気がしない」
相変わらず俯いたままでゼシカはそう呟いた。風のない遺跡内でもゼシカの髪が揺れて
いるように見えたのは、気のせいか。
「驚いたな、ゼシカがそんな弱気になるなんて。安心しな、オレがついて……」
そう言いかけた俺の言葉を遮って、ゼシカは顔を上げた。真っ直ぐに向けられた瞳には、
強い意志が宿っている。
「ドルマゲスは私が倒す」
いつものゼシカだと思ってホッとした。同時に、疑問が浮かぶ。
「倒すって言っても、勝てる気がしないんだろ?」
「ドルマゲスじゃないわよ……」
少しだけ口ごもった、きっと声に出そうか迷っているのだろう。何も言わずに言葉の先を
待った。ここで俺が問い返せば言わざるを得なくなるだろうからな。言いたくなければそのまま
歩き続ければいい。
やがてゼシカの足が止まる。
「兄さんに」
その言葉に、俺も思わず足を止めた。
「兄さん?」
「……サーベルト兄さんは剣も魔法も強かった、兄さんは私に魔法の才能があると
言っていたけれど、私は今でも……兄さんに勝てないと思うの」
ゼシカは遺跡の天井を見上げながら、ほんの僅かな愁いを帯びた声でそう言った。
それから、いきなり視線を戻すと明るい声で告げる。
「あ。でもドルマゲスには勝つわよ、絶対に」
「もしかしてお前……旅の間も呪文書とか読んでるんじゃないのか?」
「魔術師として、そのぐらい当然よ」
「夜中、他の奴らが寝静まった後まで?」
「…………」
一瞬、目を大きくあけて驚いた表情を向けられてこっちが驚いた。ゼシカは
「どうしてそれを?」とでも言いたかったのだろう、目を細め訝しげに見つめている。
両手を広げ、笑顔で言ってやった。
「……ま、ゼシカの事はなんでもお見通し……」
「のぞき見?」
「違う、断じてそれはない。誓って」
ゼシカの顔があまりにも恐かったから……っていうのもあったけど。まあ、なんて
言うの?
「お前の兄貴のことは知らないけど……少なくともゼシカは、立派だと思うぜ?
……オレと違って、な」
「えっ?」
疑問の表情を浮かべるゼシカに、俺は抱えていた弓を持ち上げて見せた。
「こういうこと」
「弓……?」
「そ。俺が弓を使うのには2つの理由がある。そのうちの1つは、ゼシカと同じさ」
自分でもよく分からない、どうして俺はこんな話をしているんだろう? 気持ちとは
裏腹に、口はひとりでに動いている。
「聖堂騎士団に弓使いはいない。ああ、確かに俺は修道院にいた当時は弓なんか
持たなかった。だけどな、……ホラ、いくら才能がある俺でも、努力とかそういうの
嫌いだからさ?」
おお、リアルタイム遭遇か?初めて!(感動
ゼシカはまだ、無言で俺の方を見つめている。なんていうか、今はそんなに見ない
でほしいな。
ゼシカに背を向けて、言葉を続けた。
「剣を持って、俺が兄貴に勝っちゃったらあいつの立場ないだろ? だから」
「…………」
「でもな、オレは一生あいつに剣で勝てないってことなんだよ。情けない話
だと思うだろ? 自分でも呆れるぐらいさ」
「…………」
言い終えてから天を仰ぐ。当然、この場所から空なんて見えない。ゼシカは無言だし、
参ったよ。
自分で切り出した話だったのに、苦手な雰囲気を作っちまったと後悔した。
ゼシカの方を振り返ってから、努めて明るい声で問う。
「だけどな、オレが弓を使うのはもう1つの大きな理由がある。教えてやろうか?」
その声に、ゼシカはためらった後にゆっくりと頷いた。
「オレの異名は『恋の天使』、だからね」
それを聞いてばっかじゃないの、とゼシカは言った。
そうそう、その調子。なんと言われようと俺が見たかったのはその笑顔なんだよ。
***
周囲を取り囲む影、自らの主を守るように彼女を取り巻くたくさんの影に俺達は
鉾を向けてきた。倒しても倒しても、新たな影が現れるばかりで埒が明かない。
呪文を唱えようと瞼を閉じれば、あの日の光景が蘇って意識が集中できなかった。
だから俺は詠唱を諦めた。瞼を開き眼前に立ちはだかる“彼女”を見据えると、弓を
構えた。
「……エイト、回復は任せた」
「ククール!?」
皆、ゼシカに刃を向けることをためらった。当たり前だ、いくら杖に操られているとはいえ、
ゼシカは仲間だ。だからずっと、周囲に現れる影ばかりを倒してきたのだ。
だが、所詮は影だ。本体がなくならない限り消えることはない。
降り注いだ氷の刃が砕け散る。鋭い痛みが体中に走ったが、お陰で決意は固まった。
ああ、それから後で伝えてやろう。ゼシカの魔力はホンモノだ、ってな。
「……いいぜ、マヒャドのお礼にオレの本領を発揮してやるよ。ゼシカ」
――恋の天使、そう言った俺の事を笑ったろ?
「ククール」
「大丈夫だオレに任せろ、……なぁに、死なせやしないさ」
ククールは意識を集中した。目を開き、視界の中央に彼女をとらえたまま、決して
視線をはずすことはなかった。
弓を引き、思いを込めてその一矢を放つ。
それは杖の呪い、悪しきものの呪縛から解き放つかわりに、さらに大きな“呪い”を
かける一矢だ。
「死なせやしない。だが、目覚めたときには――覚悟することだな、ゼシカ」
恋という名の、やっかいな呪い。
ククールの言葉が実現したかどうか、その真相を知るのはゼシカただ1人のみである。
−呪われしゼシカ戦<終>−
----------
お付き合いいただき、ありがとうございます。
ウホ!!いいシリアス!!
お疲れ様でした。恋の天使ステキです。
弓ククールって珍しいなーと思ったら
そういう理由かー。カコイィ!!(・∀・)
最近ステキな作品がたのすぃー(∀`*)
私も弓派です。
仲間がいて嬉しい。
モチロン、この場面はエロスの弓装備ですよねw
>>164です。
最後の1行、「作品が『いっぱいで』たのすぃー」
って打ちたかった○| ̄|_
弓ククールって自分が思うほどマイナーじゃなかったのかも。
自分がやったことないからってマイナー扱いしてゴメンぽ。
>>165 いや、一応ヤツも騎士と言ってる以上は
馬に乗って剣を振り回してたのかなーと思い込んでたもんで。
ククールの呪いの矢を受けたゼシカのその後を想像しながら
逝ってきます・・・・・・お布団に。おやすみなさい。
自分も弓派なので嬉しい限りです。剣スキルを上げていないので、我が家のデータもこうやって脳内保管いたします(つД`)
168 :
165:2005/09/24(土) 23:15:09 ID:ERLOo3ha
>>166 待ってー!!
マイナー扱いされたなんて思ってないからー!!
あてつけに見えたのかな、ゴメン、違う。逝かないでー!!!
ククールは生意気でどうも好きになれないな
いちいち皮肉っぽく言う所がね
?
>>169 なぜここで言う
アンチスレなりククスレなり池
172 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 14:34:03 ID:kUjYyBFX
そうだな
本人そー言ってるから一件落着。
さぁまたカプ話に戻ろう!
174 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 16:19:53 ID:98qoJ1nb
カユい。カユくてたまらない。ククール、ちょっと診て。そう言ってゼシカはケツをつきだした。恥じらう様子もなく両手でケツを拡げ、アナルを露にする。
ゼシカのアナルの菊ヒダ一面がカサブタ状になっている。。なんだ?これは?目をこらすと…!!!! カサブタに見えたのはアナル一面にビッシリ生え揃った虫の卵である。
きたないブツブツではない。あまりに綺麗に、整然と生み付けられたそれは、カズノコを平らにしたような、なめらかな小球体凹凸のアートである。
たまらずかじりつく。固い。しかしカチカチではない。予想以上の弾力があるのだ。ッズブリッ ズリッズリリっ
前歯をつかい、ケツから卵をこそぎ落とす。そしてかみしめる。プチップチプチッッブテッぃブチィッ なんともいえぬ悪臭が口いっぱいに広がる
卵をこそぎおとした部分のゼシカのアナルは凹凹となっている。
スルーでお願いします。
むしろ
>>169のような印象を抱いたゼシカをなびかせるククール、というのは萌えると思う私が来ましたよ。
だってしょうがないじゃん、腹違いとはいえマルチェロの弟だよ?
猪突猛進なゼシカと真っ向勝負して敵う相手なんて、そうそう居るまい。
そこでククールですよ。
それこそ彼の魅力なんですよ。
きっとね、亡きオディロ院長ならこう言うに決まってる。
「く(っ)、クールだ」
177 :
166:2005/09/25(日) 22:25:21 ID:Yk90zzZD
>>165 ただいま〜(´∀`*)
「捕らえようによっては失礼な発言したかもー。
誰か不快にしたかもしれないから先に謝っちゃおう。」
って勝手に謝ったんだけど、かえって気を使わせちゃってゴメン。
>>176 ククールってそういや、ツンデレの見本みたいな人だね。
「王族なんてロクな奴いないんだよ!!」
↓
「トロデ、ショーック!!」
↓
「あっ!いやその、トロデ王は例外だから・・・」
の流れとかさ。
それとマイエラでは誰も院長にツッコミ入れてあげなかったんだろうなーと想像してみる。
マルチェロ「・・・。院長、今日はもうお休みになられた方がよろしいかと・・・。」
>>131 余裕ができたら書きますね。ありがとうございます。
>>153 調理担当のゼシカ。
冷凍保存担当のククール。
「…これで暗黒神討伐の長旅も安心です!」
というのを想像してみた。
名付けて「メラミで3分クッキング」。
どうしよう…ぜんぜん萌えない。
マジレスすると、仲間に加入する順番で料理がうまそう、という印象が。
↑
すみません逆でした。(冷凍保存担当はゼシカ)
181 :
131:2005/09/26(月) 07:30:54 ID:jhaUxIEk
>>178 …嬉しいです!(;´Д`)
>>179-180 確かにククが一番料理上手そうな気がするよね。
ゼシカに色々教えてあげてるといいな。
久しぶりにやってきた
>>121-130あたり
私も
>>75見てぐぐったけど76、124同様見つけられなかった。
他にも色々なワードで検索したけどなかなか見つからなくて
最終的にはネットサーフィン中に見つけたよ。
後から気づいたけど、ググる時、送り仮名いらないんだよね。
>>122は間違い。
煽ってる人はちゃんと自分らでもググったの?
しかも、バカって書き込みだけで「逆切れ」と怒るなんて・・
2ちゃんでは日常茶飯事だと思うんだけど。(むしろまだかわいい方)
ただなんというか、少し見ない間に住人の質落ちたねって悲しかっただけ。
ククールは人気あるなー
エイトも人気あるけど、両者に共通しているのは母性本能を刺激する所だね
またSS投下しに来ましたー!!
今回、前編、後編と表記してますが、一気に投下します。
途中で語り手を交代させるために区切っただけなので、深い意味ないです。
よろしくお願いします。
魔物の群れが現れた。
もう何十回となく繰り返されてきたこと。私たちは、淡々と敵を倒して行く。
最後に残ったブラウニーが、一気にSHT状態になり、私の頭上に槌を振り上げる。
この攻撃をまともにくらうのはマズい。防御するか、回避するか・・・。
攻撃をひらりとかわす。うまくいった。
ブラウニーは大振りして態勢を崩している。あとは、メラ一発で仕留められる。
そう思ったのに、私も足元の小石を踏んでしまいバランスを崩す。
隣でレイピアが煌めき、ブラウニーの身体を切り裂いた。
そうして、私たちは魔物の群れをやっつけた。
とどめを持っていかれてしまった。
別に勝ち星競ってるわけじゃないけど、彼にだけは遅れをとりたくない。
新しい仲間の名前はククール。元聖堂騎士団員。
ドルマゲスに大切な人を殺されて、その敵討ちに旅立ったっていう境遇は私と同じなんだけど、どうも馴染めない。
「お嬢さん、おケガは?」
ほら、こういうこと言われるのがイヤなのよ。私だって一人前に戦えるのに、こういう態度とるのって、失礼だと思うわ。
「おかげさまで、ピンピンしてます」
そっけなく答えてやる。
「ククールは力は今一つでげすが、すばしっこいでがすね」
ヤンガスが武器を収めて話しかけてきた。
「・・・アンタもヤセてみたらどうだ? 軽くなれば、早く動けるかもしれないぜ」
・・・この調子。ケンカ売ってるとしか思えない物言いするのよね。
顔を真っ赤にして飛びかかろうとするヤンガスを、エイトが羽交い締めにして止める。
「離してくだせえ、兄貴! この若造に口のききかたを教えてやるでがす! 人が気にしてることを、よくも!」
・・・気にしてたんだ、ヤンガス。
何とかその場はエイトが宥めて、私たちは先へと進む。
日が暮れかかる頃、川沿いに教会を発見する。今夜はここに泊めてもらうことになった。
普段は10Gの寄付が必要だけど、今夜は特別にタダでいいらしい。
運がいいわ。・・・と思ったのは、皆が寝静まる頃までだった。
左足が痛い。
ベッドに入った頃から変な感じはしていたけど、時間が経つにつれて、どんどん痛くなってくる。
心当たりがあるとすれば、昼間の戦いでブラウニーの攻撃をかわした時。捻ってたのに気がつかなかったんだ。
どうしよう、エイトを起こしてホイミをかけてもらおうかしら。でも戦闘の他に、トロデ王や馬姫様の世話もして、きっと疲れてる。起こすのは悪い。
ああ、でも痛い。一晩中こうだとしたら、ちょっと辛いかも。
何かで気を紛らわそうにも、他のことが全く考えられない。
少しでも楽な姿勢を探そうと、何度も態勢を変える。
「ゼシカ?」
不意に頭の上で声がした。顔を上げると、ベッドのすぐ脇にククールが立っていた。
何!? まさか夜ばい? いえ、エイトもヤンガスも、トロデ王までいるのに、いくら何でもそれはないはず。
「どこか痛むのか?」
囁くような低い声。いつもの軽薄な感じはない。
そういえばこの人、僧侶でもあるのよね。イメージ合わないから忘れてたわ。
「ちょっと、足捻っちゃったみたい」
「ああ、やっぱりそうか」
「やっぱり?」
「昼間、ブラウニーの攻撃よけた時、よろけてただろ? だから訊いたんだ、ケガはないかって」
・・・訊かれたわ、確かに。女だからバカにされてるって、勝手に思い込んだのは私。反省しなくちゃ。
「ここじゃ暗いな。礼拝堂の方へ行こう」
身体の下に腕を差し入れられ、いきなり抱き上げられた。
「えっ、や、ちょ、ま、じ」
ちょっと待って、自分で歩ける。
そう言いたかったんだけど、うろたえちゃって、こんな声しか出ない。
ククールはすました顔をしている。
「教会の中では、お静かに」
確かにその通りなんだけど、このナマグサ僧侶に言われるのは、何だかムカつくわ。
「どうなさいました? どこか御加減でも?」
礼拝堂に行くと、シスターが心配して声をかけてくれた。
「連れが足を捻ったようで。すみませんが、椅子と明かりをお借りできますか?」
こういう姿を見ると、とても酒場でイカサマカードをするようには見えない。ちょっと、とまどっちゃう。
ククールは私を手近な椅子の上に降ろした。
何だか、大袈裟なことになっちゃって恥ずかしい。
「あの、ごめんなさい。私のためにククールまで起こしちゃって・・・」
そう言った私に対するククールの返事は、意外なものだった。
「関係ないよ、初めから起きてた。僧侶っていうのは、たいして眠らなくても平気なように訓練されてるんだ」
「えっ、そうなの?」
「迷える子羊が助けを求めてきた時、寝てるわけにはいかないだろ?」
確かに、神父様もシスターもまだやすんでない。聖職者ってスゴイわ。尊敬しちゃう。
シスターが燭台を持ってきてくれた。
蝋燭の明かりに照らされた私の足は、イヤな色になって腫れ上がっている。
「ホイミ」
ククールの掌から、暖かく柔らかい光があふれ出す。その光りは渦をえがいて、私の足に吸い込まれていった。
腫れは見る間に消えていき、先刻まで私をあれほど苛んでいた痛みが、初めから無かったもののように消えていった。
「ありがとう、楽になったわ」
「また、こういう事があったら、オレのことは起こしていいから。さっき言ったように、たいして眠らなくて平気だし」
心なしか『オレのことは』という言葉が強調されて聞こえた。
この人って大人なんだわ。私がエイトに気を使って起こせなかったことに気づいてる。
「ねえ、どうしてヤンガスにケンカ売るようなこと言うの?」
私たち皆の力を合わせなくちゃ、ドルマゲスは倒せないと思う。ククールとだって、ちゃんと協力したい。
「昼間のアレか? あれはヤンガスのおっさんが先にケンカ売ったんだぜ? 力は今イチとか言いやがって」
「・・・気にしてたの?」
「一応、男なもんで」
前言撤回。この人って、とんでもなく子供だわ。
「回復魔法が得意なお仲間がいらっしゃれば、旅の間も心強いですわね」
ククールの治療ぶりを見ていたシスターが声をかけてくれる。
「ええ、本当に」
今までケガの治療はエイト一人に頼りきりだったけど、ククールがいてくれたら、エイトの負担も随分軽くなるわ。
「夜明けまではまだ時間がある。眠れそうなら眠っておいた方がいい」
そう言ってククールは、外へ出るドアの方へ歩いていってしまう。
「ククールは? 眠らないの?」
「言ったろ? 充分寝たんだ。外の空気を吸ってくる」
何だか急に不機嫌になってない? まあいいわ。今夜は本当に助かったし。
「今日はありがとう、ククール。これからもよろしくね」
ククールはこちらを見もせず、軽く手を上げるだけで出ていってしまった。
やっぱり、何かおかしいわよね? 私、何か気にさわるようなこと言ったかしら?
とりあえず神父様とシスターにお礼を言って、客室に戻る。
トロデ王がベッドの上で起き上がっていた。
目を覚ましたら、私とククールの二人がいないので、興味津々で待っていたらしい。
私がかいつまんで事情を説明すると、露骨につまらなそうな顔をしている。
イヤね。一体どんな想像してたのかしら。
でも、ククールが急に不機嫌になったことを話すと、トロデ王の顔は真面目なものになった。
「ククールとは一度、話をしておいた方がいいようだの」
そう言ってベッドから飛び降りて、いつもの走りで出ていってしまった。
・・・とりあえずは寝よう。寝不足だと明日、皆に迷惑かけちゃう。
ああ、どこも痛くないって幸せ。ククールには感謝しなくちゃ。
でも、ククールって気難しいとこあるわよね。
軽薄かと思ったら、さっきみたいに誠実だったり、大人びてると思ったら、つまらないことでスネてみたり。優しかったと思ったら、急に不機嫌になったり。
・・・別にいいんだけどね、どうだって。
でも、やっぱり気にはなるのよ。私と境遇似てるから。
ううん、私より辛いかも。目の前の大切な人を守ることが出来なかったんだもの。きっとすごく悔しかったわよね。
・・・私は寝なくちゃいけないのよ。考え事してる場合じゃないわ。
ああ、もう何か本当に・・・。
・・・調子狂っちゃうわ。
『回復魔法が得意なお仲間がいらっしゃれば、旅の間も心強いですわね』
『ええ、本当に』
ゼシカの声が、妙にカンに触った。
オレはあいつらの仲間になったつもりはない。
オディロ院長の仇を討つために、同じ目的を持って旅をしてる連中に、少しの間、同行させてもらうだけ。
それが済めばサヨナラだ。
できることなら、マルチェロの奴に言われるまでもなく、とっくに敵討ちに出てたさ。
でも、こんなことを認めるのは口惜しいが、オレ一人の力では、あの道化師ヤロウに勝てる自信が全くない。
胸クソ悪いこと、この上ないぜ、ったく。
オディロ院長が殺された、あの満月の夜から、ありとあらゆることがオレを苛つかせる。
マルチェロ団長や、修道院の辛気臭い空気は言うまでも無く。
気をつかってるんだか知らないが、やたらめったら話しかけてくるエイト。
確かにあいつには感謝してるさ。
知り合って間もない、オレみたいな人間の頼みをきいて、オディロ院長を助けに行ってくれた。その借りだけは返すつもりなのはウソじゃない。
でも、おせっかいな人間ってのは、助けてもらう側には良くても、そいつの周りにいて付き合わされる人間にはたまったもんじゃない。せいぜいオレまで巻き込まれないように祈るだけだ。
ヤンガスのやろうも、オレを戦力として値踏みするのはいいさ。そんなのは当たり前だ。
エイトのやつには、足手まといを切り捨てるなんて、できそうにない。その辺のフォローをしてやる人間は必要だろう。
でも『ククールのやつも苦労してるよう』ってのは大きなお世話なんだよ! オレは誰にも理解されたいなんて思っちゃいない。よけいなトコ見てんじゃねえよ!
それに、あのゼシカだ。
潔癖なお嬢様だか何だか知らないが、『さわられるのもイヤ』って顔してたのに、ちょっと真面目に優しくしたら、コロッと態度変えやがった。
本人、しっかりしてるつもりなんだろうけど、はたから見てると、ものすごく危なっかしいぞ、アレ。
オレみたいな人間が、迷える子羊のために眠らない訓練するわけないだろう? 信じるなよ、あんなウソ。
オレが眠らなくても平気になったのは『修道院では眠れなかった』からだ。
ガキの頃は、修道院の建物や聖像、雰囲気なんかが理由もなく怖かったし、ある程度デカくなってからは、身の危険を感じて眠らないように、眠ってても気配の変化で起きられるように自分に戒めた。
修道院みたいな閉鎖された空間にずっといると、人間は澱む。この容姿と、マルチェロ団長に目の敵にされてることで、明らかにオレは目立ってた。歪んだ感情をぶつけれられるのはゴメンだった。
・・・違う。今はオレのことを考えてたんじゃない。
そう、ゼシカのことだ。あいつ、そのうち絶対ロクでもない男に騙されるって話だ。
だいたい、あの胸! ・・・いや、胸に責任はないな。本人の意思とは関係ないから。
あの服だ! あんな格好で出歩いてたら、誰だって誘ってると思うだろう? 声かけるのが礼儀だと思っちまうぞ。あれで身持ちの堅いお嬢様? ふざけんな! 馬の鼻先に人参ぶらさげてるようにしか見えねえよ。
そう、馬といえばアレだ。
なんで馬が姫様で、緑の化け物が王様なんだ? ホント訳わかんねぇ。
「ククールよ。お前、何やら事情がありそうじゃな」
噂をすればってやつか。トロデのおっさんが起きてきちまった。
「話せば気が楽になることもあるやもしれんぞ? まあ、無理にとは言わんが・・・」
おせっかいの仲間は、やっぱりおせっかいってことか。
・・・ホント、勘弁してほしいね。
街道をはるばる旅してやってきたアスカンタ城は、王妃が亡くなって以来、二年もの間、喪に服し続けている辛気臭い城だった。
何なんだよ、この立て続けの辛気臭さは。どっかでバーゲンセールでもやってんじゃねえのか? オレまでついつられて、トロデ王に辛気臭い話、しちまったし・・・。
おまけに心配していた通り、早速このパーティーのおせっかいに巻き込まれるハメになった。
メイドのキラってコの願いを叶えてやりたいとかで、エイトだけじゃなく、ヤンガスやゼシカ、トロデ王までノリノリだ。
これは逆らっても無駄だな。少しでもテンション高くなる方向に自分を持っていこう。
「パヴァン王と王妃は、よっぽど激しい大恋愛の末に結婚したんだろうな。そして魔法のとけないうちに王妃は天に召された。カンペキだね。うらやましい美談だ」
「どうして、それが美談なの?」
ゼシカに訊かれて、オレは少しとまどった。
どうしてって言われてもなぁ。ああ、でも、ゼシカは恋愛経験無さそうだもんな、わかんないか。
「熱が冷めないうちに、片方が召されてしまえば、思い出の中では美しいままだろう? もっとハッキリ言っちまえば、アラが見えないうちにってとこか」
「私はイヤ・・・」
・・・何か、いやな予感がする。
「綺麗な思い出だけなんて、淋しいじゃない。私はそんなのイヤ。いいことばっかりじゃなくてもいい。ケンカしたことだっていい。私はもっといっぱい覚えていたい。もっとたくさん、思い出、作りたかった・・・」
ゼシカの瞳は潤んでいる。
ちょっと待て。これって泣くほどのことか?
おおかた、サーベルト兄さんとやらを思い出したんだろうけど、家族と恋人は違うってのも、オレさっき言ったよな?
わかった、ゼシカ、昨夜睡眠足りてないだろうから、気が立ってるだろ。
・・・でも、オレか? やっぱりオレが泣かしたのか?
思わずフォローを期待してエイトたちの方を見ると、いつの間にか点にしか見えないほど遠くまで移動していた。
逃げたな。
前言撤回だ。おせっかいヤロウじゃなくて、とんだ薄情野郎どもだぜ。
他人をあてにしようとしたオレが甘かった。
さて、この目の前の事態をどうするかだ。
ゼシカは俯いたまま、スカートのすそを握り締めている。
今までこういう場合は、軽く抱き締めて、キスの一つでもすればOKだったんだが、このコには通用しないだろうな。
それどころか、エラいめに遭わされそうだ。
何で、こんなことで悩まなきゃなんねえんだよ。そもそも女の子にかける言葉に迷うなんて、何年ぶりだ?
・・・だめだ、真っ白だ。何にも浮かばねぇ。
「あ〜、その、ゴメン。悲しいこと思い出させるつもりじゃなかった。頼むから泣かないでくれ」
我ながらストレートだな、おい。でも、これ以上この状態には耐えられん。
「言われなくたって・・・」
ゼシカがガバッと顔を上げた。
「誰が、あんたなんかの前で泣いてやるもんですか。ベ〜〜〜〜だっ!」
大きく舌を出し、馬車の方まで走っていってしまう。
・・・何なんだよ、今のは。
思わず笑いが込み上げてくる。不思議と腹は立たない。
照れ隠しにああいうことしたんだろうけど、ずいぶんガキくさいよな。あれでしっかり者のつもりなんだから、笑うしかない。
さっきまでの辛気臭い気分が、どっか行っちまった。
「何してるの! サッサとキラのおばあさんの家まで行くわよ!」
ゼシカはすっかり、いつもの調子だ。
変な女。
何ていうか、ホントに。
・・・調子狂うよなぁ。
<終>
いつもちまたでみかけるのとは一味違う切り口の小説に、なんだか胸を打たれました。
ククールのひずみ具合がたまらんです。特に後編。
すごいよかったー!ヽ(゚∀゚)ノ
うわぁぁ〜〜〜(’∀’*∩)
いいねぇいいねぇ。初々しいっ。
夜更かししたおかげで寝る前にいいものが見れたよ。
微妙な距離が縮まっていく感じって恋愛の醍醐味って感じで
ドキドキするよ!
書き手さん、GJ!
>>193-194 ありがとうございます。
「ククールは、こんなヤな奴じゃないぞ」って怒られるんじゃないかと思ってたので、受け入れてもらえてホッとしました。
>>185-192 素直なのに素直になれないゼシカも、ささくれだったククールも(・∀・)イイ!
読み終えた後に残る、このじれったさが何とも…。
で、ちゃっかり野次馬トロデが可愛かったですw
イタストではどうなの?ククゼシ。
「キスしてやるよ」ってセリフがあった
ゼシカになりたい…(;´Д`)
でも、そこは拒絶してこそ、ゼシカだと思うw
>>198 えええ?!!
何回もやってるのに見たことない!!
ククからゼシに?他の女の子じゃなくて?
どの場面で言ってたとか覚えてない?
>>197 いたストではククはただの女好きのキザやろうだし、
ゼシカは ∫(`∀´) こんな顔だし、キャラデザインした奴出て来い!!!
と言いたくなる事間違い無しです。
ヤンガスが一番元キャラに忠実かも。
いたストのゼシカの顔って
モロ小池栄子だよな
つか ククゼシ依然に全てのキャラに殺意を覚える件
フローラだけはガチ
スレ違い
206 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/30(金) 23:28:27 ID:+mDLVNCq
お話作ってーーーー。
hosyu
子供作ってーーーー。
209 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/02(日) 00:33:50 ID:0omZBZzO
ヤダーーーーーーーー。
市ね
210 :
154:2005/10/02(日) 02:11:58 ID:iYL0kfkR
性懲りもなくやって参りました。前回の分を補うべく今回はゼシカ視点です。
・ゼシカは杖に全スキルポイントを振る女。
・戦闘中のコマンドAI 「つえにまかせろ」
・ドルマゲス戦〜リブルアーチ、杖in暗黒神がわりと饒舌でごめんなさい。
・DQ8@リブルアーチのサブタイトルはこれでもいけると(わりと本気で)思っt
・なんだかんだ言う割に、ククゼシに至っていない気がします。
ということで以下、7〜9レスほどお借りします。
弦が奏でる旋律がなくとも、瞼を閉じれば鮮やかによみがえる記憶。
脳裏によぎる記憶は美しく彩られた思い出と、それを奪われた日の悪夢。
現実に立ち向かい、歩き続けるその後ろに延びるのは
過去を奪われた者が背負い続ける闇。
歩みを止めた時、人は自分の影を見つめる。
闇色を染み込ませた影は、忠実なる僕。
主が望むことならば、全てと引き替えに楽園へと誘ってくれるだろう。
思い出を連れ立って。
呪文を唱える時、ゼシカは瞼を閉じ闇の中で意識を集中させる。この時も、
何度目になるか分からない攻撃呪文を唱えようとして瞼を閉じた。
しかし、集中したはずの意識は彼女の脳裏にある光景を呼び起こしたのだった。
***
それは旅の途中の、なんの事はない会話だった。
「どうしてククールは弓を?」
尋ねられて足を止める。馬車の隣を歩いていたエイトの方を向いて、ククールは
回答にならない言葉を返す。
「どうしたんだよ? いきなり」
「いや……。騎士団で弓使いってあまり聞いたことがないような気がして」
トロデーンに弓兵はいなかった、と彼は言う。
「そう言えば、出会った頃は弓なんて持ってなかったでがすよね?」
そこへヤンガスも加わったものだから、濁せば終わるという話でもなくなったみたいで。
「……あそこでは剣を持たなきゃならなかった。それだけだ」
不機嫌を隠さずにそう答えた。事実、聖堂騎士団員はみんな――あのイヤミ男だって
――剣しか持っていなかったな、とゼシカは思った。
言い終えてククールは目をそらし、小さく舌打ちした。その姿が、まるで本音を迂闊に
口にしてしまったことを後悔しているように見えて。
(イヤなことでも思い出したのかしら?)
そう言えば、修道院暮らしは窮屈だったと本人は言っていた。それなら、私達悪いことをしたのね。
「先を急ごうぜ、日が暮れちまう」
そう言ったククールに、笑顔はなかった。
それから街へ到着するまで、ククールは仲間達と言葉を交わすことはなかった。宿に着いてからも、
その日は誰とも口を利きたくないとでも言うように、早々に酒場へ出かけて行ったのである。
こうなってしまうと翌朝まで彼は戻ってこない。宿に残った3人は夕食をとりながら、訪れた町で得た
情報を整理したり、遭遇したモンスターについて戦術を立て直したり、あるいは談笑しながら時を過ごした。
やがて夜も更けた頃、ひとり部屋に戻ったゼシカは呪文書を広げていた。リーザスにいた頃からの
習慣ではあったが、彼らの旅に加わってからは呪文書を見る時間が以前にもまして多くなっていた。
しかし呪文書を広げてはみたものの、肝心の中身がなかなか頭の中に入ってこない。
そんな時にふと、こうして彼らと旅路を共にする中で不思議に感じていた事を思い出した。
それが呪文の習得である。
本棚があれば片っ端から手に取る勉強熱心なエイトとは違い、ククールがまじめに呪文習得に
取り組むところを見たことがない。もちろん、呪文は書物を読んでその通りに詠唱すれば使える
というものではないし、どちらかと言えば詠唱者の資質や感覚に頼るところも大きい。しかし、
基本を覚えなければ上級魔法を習得することはできないのも事実だった。
それにしたってわざわざ他人に見せることではないし、彼のような性格なら尚のこと、人に
自分の苦労を見せたがりはしないと思う。だけど、まさか酒場で呪文を覚えて来るわけでも
ないだろうし。
(悔しいけど、……天才なんじゃないかな)
ゼシカは眺めていた呪文書を閉じた。そんなところで人と比べたってどうにもならないんだから、
と。ため息を吐いて窓を見やれば、まあるい月が傾きだしている事に気づいて、ようやくベッドへ
入ろうとした。
横になって目を閉じれば、瞼の奥に広がるのは見慣れた闇だった。読んだところで覚えられない
呪文と、唱えられない自分になぜだか無性に腹が立つ。
その日は、なかなか寝付けなかった。
***
脳裏によみがえった記憶が詠唱の邪魔をする。うまく意識が集中できずにゼシカは
苛立ちを募らせた。瞼を開き強い口調で詠唱を終えた後、全身にみなぎる魔力を解き
放つために両腕を広げた。
くり出された炎が眼前の敵を包み込んだ――人だった頃の名はドルマゲス。それは
兄の仇であり、自分たちが目指してきた最終目的でもある。手加減する理由も、また
その必要もない。だから渾身の力を込めてその呪文を唱えた。
しかしそれも、ドルマゲスに致命傷を負わせるほどの効果はなかった。
おぞましい姿に変貌を遂げたドルマゲスの力は絶大で、否が応でもその差を見せつけ
られた気がした。
「……くっ!」
悔しさと、焦燥感ちからゼシカは唇を噛みしめてドルマゲスを睨み付けるようにして見上げた。
ほんの少し、視界が滲む。それは決して身体に負った傷の痛みからではない。
そのことに思い至って集中が途切れた一瞬、ここへ至る道すがらククールの語った言葉を
思い出す。
――「でもな、オレは一生あいつに剣で勝てないってことなんだよ。
情けない話だと思うだろ? 自分でも呆れるぐらいさ」
ククールは騎士団長である兄マルチェロに、そんな思いを抱いていた。そして彼は、そんな自分の
ことを「私と同じ」だと言った。
そう、私は兄さんに敵わないのだと……。
胸の奥に小さな痛みが走った。傷のせいではないその痛みに、ゼシカの表情が僅かに歪んだ。
「ゼシカ、大丈夫か!?」
不意にククールの声が聞こえてきたと思ったら、身体の痛みだけが和らいだ。
回復呪文をかけてくれたのだと知って、我に返る。
(いけない、集中しなきゃ)
もう一度。そう思って瞼を閉じ、詠唱の準備に入る。
直後、仲間の一撃でドルマゲスは地に伏し、戦いは呆気ないほどの幕切れとなった。
得られたのは達成感よりも、大きな虚しさだった。
***
『杖を手にする者よ……』
ドルマゲスとの戦いが終わって、トロデーンから盗み出された杖を回収して遺跡を出ようとした時に、
確かにその声を聞いた。おぞましいほどの魔力を感じながらも、私はその力に逆らえなかった。
手にした杖に、引きつけられて――飲み込まれそうな力。異変に気づきはじめた私の脳裏に、さらに
語りかけてくる声。
『汝こそが、我が新しき手足』
「……えっ?」
魔術師の家系に生まれながら、ロクに魔法も操れない。
ヤンガスのように敵を粉砕する力もなければ、エイトのような呪いにうち勝つ力もない。かといって、
ククールのように回復を担えるわけでもない。
自分が、とても弱い存在だと思った。
あのとき、殺されたのがサーベルト兄さんではなく私だったら……。私の仇を討つために旅立ったのが
サーベルト兄さんだったなら……。
オディロ院長は命を落とさずに済んだのかも知れない。
こうなってしまう前に、ドルマゲスを止められたのかも知れない。
それとも、殺す価値さえない?
――私に。
『さあ、杖の虜となれ』
聞こえてくる声。
仲間達の声が、姿が、……遠のいていく。
――私にもっと、力があれば。
『仮の宿りとなりて 我に従え……!』
以降、ゼシカは本当の闇を知ることとなる。
***
手にした杖からわき出る魔力は、私の身体を蝕んでいるような気さえする。
杖に乗っ取られているはずの身体と意識、闇に覆われた世界の奥底に、私自身が
立っている。そこから全てを見ることができた――いいえ、きっと「見せられて」いたんだわ。
リブルアーチ、必死に呼びかけている仲間達の声が聞こえる。
そのとき、私は自分の過ちに気づいた。それでも、私ひとりの力で杖の呪縛から逃れる
ことはできなかった。
杖が語りかけて来る声は、まるで楽しんでいるように告げる。
『どうだ? 力を手に入れ自由に操れる心地は良いものだろう』
ふざけないでと、何度も叫んだ。叫んでも叫んでも、声が届くことはなく。また自分の手で
仲間を傷つけるために、そしてこの身を蝕む巨大な魔力を解放しようと、これまで使えなかった
強力な呪文をためらいなく唱えている。
(なんで今さら!?)
『力は、解放される時を待っていた』
(違う!)
『力を望んだのは、汝』
こんな時に、思い出したのは。
(いや、助けて……助けて……兄さん……!!)
『我の中に流れている』
――そう、リーザス像の前で絶命したサーベルトの魂は、この杖に封印されている――確証は
ない、ただそれを感じた。もちろん、認めたいなんて思わない。
(違う!)
――もし、そうなら。兄さんは助けてくれるはず――この深い闇から、ゼシカを救ってくれるはず
だろう? と。そう言って“杖”は笑う。
闇に閉ざされ、呪われた杖の意志に支配されたゼシカの叫びは、誰にも届くことはなく。叫んでも
無駄だと悟ったゼシカは、祈った。祈ることしかできなかった。
ひたすらに。
ただ一心に。
そして、彼女は救いの神の声を聞いた。
「……エイト、回復は任せた」
ククールだ。
彼はゼシカに矢を向けて佇んでいた。
ゼシカの意志とは関係なしに放たれる呪文。降り注ぐ氷の刃にも彼は耐え、負った傷も
そのままに、じっとこちらを見据えて弓を構えている。
「大丈夫だオレに任せろ。……なぁに、死なせやしないさ」
不適な笑み。自信に満ちあふれた彼の表情が懐かしくもあり、頼もしく見えた。
ゼシカはまた祈る。
(……お願い!)
このまま杖に操られるぐらいなら、二度と目覚めなくてもいい、と。
杖の意志はそんな彼女らの姿を嘲笑うようにして魔力をたたえた。
『愚かな。祈ったところで何も叶わぬ』
ゼシカの身体は杖を天高く掲げると、呪文の詠唱をはじめる。自分の声であって自分ではない声。
『たかが人間ごときにこの呪い、破られてたまるものか』
声と共に巨大な炎が杖から発せられた、まさにその時だった。
「死なせやしない。だが、目覚めたときには――覚悟することだな、ゼシカ」
その一矢が放たれゼシカの身体を貫いた時、痛みよりも先に感じたのは安堵だった。杖の支配下に
あった意識が徐々に戻ってくるに従って、激しい痛みに襲われる。
そして杖を手放す最後の瞬間、それは告げたのだった。
この世に存在するもっとも強い力、呪縛に囚われるのは……人間である定めなのだ、と。
ゼシカはまだ、その呪いの正体を知らない。
−杖と闇と仲間と呪われしゼシカ戦<終>−
コマンドAI「つえにまかせろ」にうけたw
乙です!
保守
1主「仲間って、ほんといいよな・・・・・・・。なんか泣けてきたよ。」
いつもはROMですが、保守がてら書き込みます。
作家さん方、いつも素敵な話をありがとうデス!
これからもがんばっていい作品書いてくださいね。楽しみにしてます。
いい作品じゃないかもしれませんが、投下しに来ました◆JbyYzEg8Isです。
今回も深い意味無く、語り手チェンジのため、前後編表示でいかせてもらいます。
悪徳の町パルミドか。・・・嫌な感じだ。
確かに、一見魔物にしか見えないトロデ王の姿に関しては無関心だが、他の事には興味津々らしい。
物陰からのなめるような視線が、まとわりついて鬱陶しい。
出身地だけあってヤンガスだけは溶け込んでるが、オレなんて目立ってしょうがない。容姿だけでなく、こういう所の人間から見ると、身なりも悪くないしな。
でも、何より人目を引いてるのはゼシカだ。
とびきりの美人で、見事なダイナマイトバディで、普通にしてても目立つってのに、これみよがしに胸元を覗かせたドレスを着ている。面倒なことになる前に、忠告しておいた方がいいのかもしれない。
「なあ、ゼシカ。着替えた方がいいんじゃないか? その格好はこの町ではヤバイと思うぞ」
ゼシカは、キョトンとした顔をする。
「どうして?」
オレは今まで、女性ってのは視線に敏感な生き物だと思ってたが、このお嬢さんは例外らしい。自分がどれだけ注目を浴びているか、全く気づいていない。
「どうしてって、見ればわかるだろ。さっきから、若い女性も子供も、一人も出歩いてない。それだけ治安が悪いってことなんだ。そんな格好してたら、襲ってくださいって言ってるようなもんだぞ」
「ククールの言うことは、一理あるでげすよ。確かにゼシカの姉ちゃんは、さっきから注目の的だ。もう少し目立たない格好の方がいいでがすな」
地元民のヤンガスの後押しもあって、ゼシカは渋々ながら着替えることに同意した。
エイトがゼシカに付き合い、新しい服を買うために防具屋へ。オレはヤンガスと一緒に情報屋とやらの所へ行くことになった。トロデ王は、酒場で待っている。
結論から先に言うと、情報屋のところへ行ったのは全くのむだ足。ドルマゲスの情報を手に入れるどころか、情報屋そのものが不在だった。
オレは少々、機嫌が悪くなる。
情報屋のところへ行くのに、この町でも特に貧乏臭い道を通ったんだが、無気力そうに転がってる奴らの、無気力ではない視線が絡み付く。
カモとでも思われてるのか・・・。ヤンガスと一緒にいると、美貌が引き立っちまうからな。まるで美女と野獣の組み合わせだよな。
油断はしない方が良さそうだ。こんな町、サッサとオサラバするに限るぜ。
それなのに、だ。
何を考えてんだ、このお嬢様は。
宿屋の前で合流したゼシカは、おどりこの服なんてモンに着替えてやがった。露出度、三倍増しってとこか。
「エイト! お前がついてて何考えてんだ! さっきオレが言ったことの意味、わかってんのか!?」
エイトが、オレの剣幕にタジタジになっている。わかってる、これは理不尽だ。ゼシカに押し切られただけってのは簡単に想像がつく。止めてもきかない人間相手に、どうしようもなかったんだろう。
だけど、いくら頭に来ても、レディに怒鳴るようなマネはオレの流儀に反する。そうなると、怒りをぶつける対象はエイトしかいない。
「何、エイトに怒鳴ってるのよ。この服、こう見えて防御力高いのよ? 動きやすくて可愛いし」
「買うなとも着るなとも言わないさ。でも頼むから、この町を出てからにしてくれ。面倒には巻き込まれたくないんだ」
「平気よ。私は魔法使いなのよ? 手を出してこようとする人がいたら、メラをお見舞いしてあげるわ」
どうやら、本当に口で言ってもわからないらしい。
オレは、ゼシカの両手首を掴んで、宿屋の壁に押し付ける。身体を密着させて、ケリも出せない状態にする。
「いたっ・・・。ちょっとなにするのよ」
「マホカンタ」
ゼシカが怯んでいるスキに、オレは魔法で光のカベを出現させる。
「で? 手を出してくる奴には、どうするんだって?」
「ひ、卑怯よ、そんなの」
「卑怯ねぇ、正々堂々とした暴漢なんてモンを期待してんのか? ちなみに、これがラリホーやマホトーンだったらどうなってる? どっちも、そう珍しい呪文じゃないぜ」
目の端に、オレを止めようとするエイトと、そのエイトを更に止めているヤンガスの姿が映る。悪いな。見てて気分のいい光景じゃないのは承知してる。もうちょっとだけ、目をつぶっててくれ。
ゼシカはもう完全に竦んでしまって、怯えた目でオレを見上げるだけだ。
大丈夫だよ、ゼシカ。オレはこれ以上酷いマネはしないし、この手もちゃんと離す。最低限の力加減もしてる。でもな、世の中にはそうじゃない奴らもたくさんいる。本当に酷い目には遇ってほしくないんだ、わかってほしい。
「さてと、どうしてほしい? オレとしては、このまま深い関係になってもかまわないんだけどな」
ゼシカは一瞬ビクッと震え、かすれた声を出す。
「おねがい、もう、離して・・・」
「オーケイ」
オレは両手を広げて、ゼシカから離れる。ゼシカはそのまま、壁を背にして座り込んでしまった。
やりすぎたかもしれない。でも後悔はしない。するぐらいなら、初めからこんなこと、やらないさ。
オレは無言でその場を離れる。ゼシカもしばらくはオレの顔は見たくないだろう。
エイトやヤンガスにも声をかけない。かけられなかった。
胃がムカムカする。イヤな汗をかいてる。
ゼシカのあの怯えた目。小さく震えてた身体。かつての自分がああだったのかと想像すると、吐きそうだ。
ごめんな、ゼシカ。自分よりデカくて力の強いヤツにあんなことされるのが、どんなに怖いことか、オレはよくわかってるよ。
あんなこと、まともに心のある人間ができることじゃない。
でも、心ない人間ってのも、この世界に確かに存在する。ああいうことを楽しめる奴ってのもいるんだ。覚えておいてほしいけど、身をもって知るようなことにはなってほしくない。
気がつけば、教会の前だった。
何だよ、懺悔でもする気かよ、オレ。修道院を出たっていうのに、結局、心は何一つ抜け出せてないのか?
でもこの場所は宿屋の日陰になっているから涼しくて、気分が少しマシになる。こんな町でも、木々が風に揺れると快い音を奏でるのは変わらないんだな。
「ククール、大丈夫でがすか?」
ヤンガスがオレの後を追ってきていた。
「大丈夫って何がだ? 心配する相手間違ってるぜ? ゼシカの方を慰めてやれよ」
オレはポーカーフェイスで答える。
「ゼシカの姉ちゃんには、エイトの兄貴が付いてるから大丈夫でげすよ。ククールが落ち着いたら一緒に酒場にくるように、兄貴がアッシに言ったでがす」
いつもなら『よけいなおせっかい』と思うところだが、正直、今日はありがたかった。
どんな顔して戻ればいいか、わからなかったからな。
「悪かったな、イヤなもの見せちまって。あんまり意地っ張りなお嬢様だから、つい意地悪しすぎちまった。気分悪かったろ?」
「アッシはこの町がどういうところか、誰よりも承知してるでげすよ。ククールが本当の意味でゼシカのために、ああしたってことぐらいはわかってる。むしろククールに憎まれ役を押し付けちまって、悪かったと思ってるくらいでがすよ」
やべ。何か、ジーンと来てる。気持ちが弱ってると、こんなコワモテに優しくされるのも嬉しいのかよ。どうしようもねえな。
「じゃあ、戻るとするか。ヤロウに心配されても嬉しくねぇしな」
ああ・・・ゼシカのことは言えないな。意地っ張りなのはオレも一緒だ。
酒場では、トロデ王が何やらぐちぐち言いながら安酒を飲んでた。エイトはそれに突き合わされてる。
わかってくれたのか、ゼシカは肩から足首まで、すっぽり隠れる皮のマントを羽織っていた。
でも、オレの姿を見た途端、エイトの背中に隠れやがった。
無理もないけど、ちょっと傷つく。
一応、謝っておいた方がいいんだろうな。これから先も一緒にドルマゲスを追う以上、こんなことで空気を悪くしておくのは、バカすぎる。
そう思って、ゼシカに声をかけようとした途端、外から馬の嘶きが聞こえた。この声は馬姫様か? ちょっと普通の感じじゃないな。
トロデ王が、外へ飛び出していった。オレたちも後を追う。
そこには、馬姫様の姿も、馬車もなかった。早い話がさらわれたってことだ。
だから言わんこっちゃない。こんな町でダラダラ長居してるから、面倒に巻き込まれるんだぜ。
エイトとトロデ王は、すごい勢いで町へと飛び出した。確かに、まだ遠くへは行ってないだろうから、追跡するなら早い方がいい。
ヤンガスは肩を落としてる。自分が付いててこんなことになったのを、不甲斐なく感じてるんだろう。気の毒に。ホントに油断ならねえ町だぜ。
・・・そう、油断しちゃいけなかったんだ。
馬姫様を捜している途中、気配の変化に気づいて後ろを振り返ると、いつのまにかゼシカの姿がなかった。こっちでも、面倒事か。
エイトたちを呼び止めようと思ったが、馬姫様の方も一刻の猶予もないかもしれない。
仕方ない、ゼシカはオレ一人で捜すか。ホントに世話の焼けるお嬢様だぜ。
まったく、だから、こんな町は早く出たかったんだよ!
馬姫様がさらわれてしまった。
私たちが目を離した、ほんの一瞬のスキだった。
悪徳の町っていうだけあって、ここは本当に怖いところなんだ。
エイトとトロデ王は、すごい勢いで姫様を捜して走り回ってる。
私ももちろん一緒に捜してるんだけど、羽織ってるマントが重くてうまく走れず、皆と少し距離が開いてしまう。元々私用に買ったものじゃないからだけど、仕方ないわ。
ククールに叱られて落ち込んでしまった私を、エイトは優しく慰めてくれた。でも、正しいのはククールの方だとも言われてしまった。
私にもしものことがあったらいけないという、心配してくれる気持ちを、無視するような行動を取ったのが悪いって。止めきれなかった自分にも責任があるから、一緒にククールに謝ろうって言ってくれた。
そして、半強制的にこのマントを羽織らされている。
エイトは優しいけれど、イザという時、有無を言わせないところがある。そういう人だから、リーダーと思って付いていけるんだけど。
「あんたたち、何か捜してるのかい?」
不意に呼び止められた。小さな声だったので、気づいたのは私だけのようだ。
「ええ、奇麗な白馬と馬車なんですけど、見ませんでした?」
私は足を止めて、訊ねてみた。
「ああ、それなら見たよ」
「本当ですか?」
私は、皆を呼び止めようと口を開いた。結構遠くまで行っちゃってる。大声で呼ばないと聞こえないわ。
私を呼び止めた男が、いきなり私の口にビンを押し付け、何かの液体を流し込んできた。
吐き出そうとしたんだけど、髪を掴まれ後ろに引っ張られ、無理やり飲み込まされる。
口の中に、ハーブをデタラメに押し込まれたような味が広がる。
あまりに突然のことでほとんど抵抗できない私を、気が付けば何人もの男たちが囲んでいた。すごい力で腕や肩を掴んで、どこかへ連れていこうとしている。
ようやく口からビンが離れ自由になる。魔法を使って、この状況を何とかしないと。
・・・。
魔法? 私、何の呪文が使えたんだったかしら?
声の出し方もわからない。頭が混乱して、どうすればいいのかわからない。
どうなっちゃってるの、これ。
何の抵抗も出来ないまま、どこかの路地裏に連れ込まれ、乱暴に地面に投げ出された。
衝撃に一瞬息が詰まったけど、完全に身体がマヒしてしまって、声を出すことさえもできない。
「おい、あんまり乱暴に扱うな。傷がついたら値が下がる。これだけの上玉、滅多にお目にかかれねえぞ、丁寧に扱え」
さっき呼び止めてきたた男が、私のマントの襟首をつかんで、ピンク色の液体が半分程入ったビンを顔に近づける。さっき飲まされた物の残りに違いない。
「その薬、何なんだ?」
他の男が訊ねている。
「闇商人のところで買った薬だ。薬草とかをメチャクチャに混ぜ合わせたら、偶然出来たらしい。これを飲んだ奴は、頭が混乱して体が動かなくなったりするらしいぜ」
男が、私の口の中にビンの中身の残りを流し込む。舌も喉もマヒしてしまって、それをうまく飲むこともできず、ムセてしまう。それでもまったく容赦してもらえず、苦しさで目に涙が滲む。
ようやくビンが空になったけれど、ホッとする間もなく、羽織っていたマントを剥ぎ取られた。更に薬が効いてきたのか、視界まで霞んで、耳鳴りがする。
「このマントは500Gは下らねえな。550Gにはなるか」
こわい・・・。
この人たち、私のこと人間だと思ってない。
今取り上げられたマントと同じ。完全に物扱いされてる。
「こっちも脱がせるのか?」
違う男が、おどりこの服に手をかける。
・・・うそ、でしょう?
「ああ、破いたりするなよ。そっちは600G以上になるからな」
いやだ、やめて。
私の上に馬乗りになった男が、私の服を脱がせにかかる。
私は指一本動かせない。何も抵抗できない。こんなのイヤ。
サーベルト兄さん、助けて!
鈍い打撃音と、金属音が聞こえる。身体の自由は戻らないけど、私の上にのしかかっていた体重を感じなくなった。
「死にたくなければ消えろ。ここで退けば、命は取らない」
この声・・・ククール?
幾つもの足音が遠ざかっていく。
視界に見慣れた赤い騎士団の制服姿。その腕にそっと抱き起こされた。さっき剥ぎ取られたマントが、身体に巻かれる。
「大丈夫か? ケガは?」
優しい声。ゆっくりと問いかけてくる。ホイミの光が全身に降り注いだ。
さっきククールに押さえ付けられた時、乱暴で怖くて、ひどいと思った。
でも違った。本当に乱暴されてみて初めてわかった。あの時のククールが、どんなに優しかったか。すごく丁寧に扱ってくれてた。こうならないように忠告してくれたのに、素直にきかなくて、ごめんなさい。
「ゼシカ? もう大丈夫だからな。目を離して悪かった」
返事をしたいけど、まだ身体がマヒしてて、声が出ない。
「なあ、頼むから、何か言ってくれよ。もしかしてさっきのアレ、怒ってるのか? それもゴメン。もう少しマシな言い方あった。あれのせいで動揺して油断したからこんなことになったんだっていうなら、オレのせいだよ。それも全部まとめて謝るから」
・・・もしかして、私が何も言えないくらいショック受けてると思ってる? できれば、キアリクかけてほしいんだけど。
助けてもらっておいて失礼だけど、ちょっとヌケてるところあるわよね。悪いけど、笑っちゃう。
「おい、泣くなよ。そんなにひどいことされてないよな? 見失ってたの、ほんのちょっとの間なんだし」
笑ってしまって身体が震えてるのを、泣いてるのと勘違いしてるみたい。もうダメ、ホントにおかしい。早く薬が切れてほしい。理由を説明したい。
マヒしてるせいで中途半端にしか笑えないし、こんな状態、息が苦しいわ。
姫様はヤンガスの知り合いのゲルダという人に売られたらしい。
私たちは、急いでその人の家に向かった。そして、そこでショックな光景を見た。
姫様、鎖につながれてる・・・。いくら馬の姿だからって、これって辛いわよね。私も同じような目にあってたかもしれないと思うと、体が震える。一刻も早く助けてあげなきゃと思う。
姫様を返してもらう条件は、ある洞窟にある『ビーナスの涙』という宝石を取ってくること。久しぶりにダンジョンに潜ることになる。
私はそれまで羽織っていたマントを外し、ククールに渡す。
「本当はこれククールの為に買ったの。アスカンタではサイズ合うのが無くて、防具全然揃えられなかったでしょう? これなら大丈夫だと思って」
「・・・ゼシカが?」
「エイトがよ」
ククールは、露骨にイヤそうな顔をした。
「何よ、いいじゃない、誰が選んだって」
「良くない。野郎に服選んでもらうなんざ気色悪い」
今ククールは、ちょっと機嫌が悪い。
薬が切れた私が、いきなり大笑いしてしまったせいだと思うんだけど。
だって、私の身体が動かなかった間ずっと、見当違いの謝罪や慰めの言葉が並べられてたんだもの。
初めは結構カッコつけてたのに、最後の方は困りきってたのか、多分本人も何言ってるのか、わかってなかっただろうと思うくらいメチャクチャだった。
「助けてくれて、本当にありがとう。素直に言うこと聞かなくて、ごめんなさい」
改めて、謝罪と感謝の気持ちを伝える。
ククールはレザーマントを装備しながら、こちらを向かずに答えてきた。
「いや、オレも余計なおせっかいだった。今回のことでゼシカを見直したよ」
? 見直されるようなこと、何かあったかしら。
「ああいうことの直後に大爆笑するなんて、オレには絶対無理だ。普通の神経じゃない。ゼシカの方が、数段逞しいよ。オレなんて足元にも及ばない」
・・・褒められてないわよね、これ・・・。やっぱり、この人、腹立つわ。
見てなさいよ、今度は私がククールのピンチを助けて、うんと恩に着せてやるんだから!
<終>
JbyYzEg8Isさん、いつも乙です!
>今度は私がククールのピンチを助けて
いいですねーこれも!
あぁもう!今日はなんていい日なんだ!!
ステキな作品、ありがとう!!
>今度は私がククールのピンチを助けて
といいつつまた呪われて助けられ・・・。
ゼシカがククールのピンチを助ける場面って難しいようなw
相変わらずアホかわいいククールがステキですた。
ククールスレも復活してるのに気づいたし。
寝る前に未練がましく更新してみた甲斐がありました!
>>231-232 ありがとうございます。
しかし、自分で書いたくせに何だけど
>今度は私がククールのピンチを助けて
想像つかないw
ゴメン、ゼシカ。少なくとも私の書く話の中で、君がククールに恩着せられる日は来ないと思う。
そういう話し書ける方、いらっしゃいませんかね?
JbyYzEg8IsさんのSSにシビれました。ヒッ!
>>233 気が付かないうちに感謝されてるゼシカ〜とかなら。
「…恩に着るぜ、ありがとな。ゼシカ」とかいうククールとか
>今度は私がククールのピンチを助けて
SSサイトさんとかでよく見るパターンだと、対マルチェロあたりで
ククールが落ち込んでるのをゼシカが支えてあげて・・・ってやつね。
236 :
233:2005/10/07(金) 23:51:15 ID:MvK1XQYo
>>234 大丈夫ですか? すみません、私のSSのせいで。今助けます。
つ『キアリク』
・・・は冗談にしても、最近、感想やコメントがすごすぎる。言葉選びもステキ。
私のSSより面白いかも・・・。焦る。
>>236 >すみません、私のSSのせいで。今助けます。
なんかパペットマン思い出しますねw
パペットこぞうは「萌える」ストーリーを演じた。
スレの住人のテンションが5上がった!
239 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/10(月) 01:00:15 ID:KZYY0Vp/
下がりそうなのであげとく
>>1 >カップル萌えスレでこれだけは守れ!
>1.常時sage進行を原則としろ。この板は最下層でも落ちないから安心だ。
らしいですよ
>>239さま
もう少しで1周年だね。
242 :
239:2005/10/10(月) 12:49:28 ID:KmOSoCYI
失礼。初心者ですんません
一周年だからといってどうってことがないような。
もう1年か。早いな。
また投下しに来ちゃいました。
多分これからずっと、深い意味なく語り手交代、前後編表示でいくと思います。
(まだまだ書く気、満々なので・・・)
よろしくお願いします。
パルミドの情報屋によると、ドルマゲスは海の上を歩いて、西の大陸に渡ったらしい。
今の私たちに必要なものは、海を渡るための船。次に目指すのは、ドルマゲスによって一晩で廃墟にされてしまったというトロデーン城。
・・・の、はずなんだけど。何故か今、私たちはマイエラ修道院に来ている。
トロデ王が錬金釜を強化してくれ、今度は三つのアイテムを合成できるようになったのがきっかけだった。
それを聞いて、オディロ院長の蔵書の中に錬金術に関するものも多かったと、ククールがポロッと口に出しちゃって。
エイトはもう目をキラキラと輝かせて、調べる気満々になっちゃって。
トロデ王も、自分の直した錬金釜をエイトが最大限に有効活用するつもりなのが嬉しいらしく、寄り道することにに文句を言わなかった。
ククールはいやそうな顔をしてるけど、元々自分が口を滑らせたのが原因なので、諦めたみたい。
でも、やめておけば良かった。
亡くなったオディロ院長の部屋で、まさかあんな言葉を聞くことになるなんて・・・。
「ククールとあの旅人に居所をつきとめさせ、いまいましい奴らをいちどに・・・」
マルチェロのその言葉を聞いた時、背中に冷水を流し込まれたような気持ちになった。
いまいましい奴らって、誰? いちどに、どうするの?
きくまでもなく、それが実の弟の命を狙う言葉だとわかった。でも、受け入れられない。
だって私、マルチェロのこと、本当はいい人なんじゃないかって思ってたから。
オディロ院長が亡くなって、かばってくれる人の誰もいなくなったククールを自由にしてあげるために、修道院から追い出すそぶりを見せたんだって、そう思ってた。
私たちに譲ってくれた世界地図が、せめてもの優しさの印なんだって、そう信じてた。
なのに、どうして?
わからない。血を分けた弟をそこまで憎める気持ちが、私にはわからない。
錬金のレシピを調べる気など無くなってしまった私たちは、その晩はドニの町に泊まることにした。
少しでも、ククールの気持ちが晴れるといいと思って。
私はお酒はあんまり飲まないんだけど、今日はやりきれなくて、ついつい杯を重ねてしまう。エイトとヤンガスも気が重そうだ。
この町では、ククールは大人気で、酒場のテラスで飲んでいるおじいさんも、バニーや踊り子さんたちも、皆が声をかけてくる。
「おや、ククール。ツケはいつでもいいから、今日もたーんと飲んできな!」
「ははっ、サンキュ」
酒場のおばさんとの、軽いやりとり。
「そういや、あんた、修道院にいるっていう、お兄さんとはうまくやってるのかい? 両親のないあんたにゃ、ただ一人の身内だ。仲良くするんだよ」
「・・・ああ。ありがとな、おばちゃん」
その会話を聞いていて、私は急に腹が立った。
「勝手なこと言わないで!」
店中の人が驚いて、私の方を見る。でも止められない。
「何にも知らないくせに、心配してるふりだけするのはやめて! そんなこと言うなら、仲裁ぐらいしてあげてよ!
どうして今まで何にもしてあげなかったの? ククールが今まであそこでどんな思いしてたと思ってるのよ!」
「ちょっと待て、ゼシカ」
ククールが止めに入った。
「ゴメン、おばちゃん、このコ酔っ払ってんだ。聞き流してくれ、ホント、ゴメン」
そのまま、私は裏口から外に連れ出される。
「ゼシカ、勘弁してくれよ。一応ここはオレにとって憩いの場なんだからさ。あんまり変なこと言うなよ、来づらくなるだろ」
「どうして? あんた、今までマルチェロにどんなふうに扱われてたか、話したこと無いの? 憩いの場だっていうなら、辛い時とか誰かに相談したりしなかったの?
気を遣ってるのは、いつだってククールの方じゃない。それで本当に気持ちは安らいだの? 助けてもらいたいって、思ったことはないの?」
「そんなに、まくしたてるなよ」
ククールは、あくまで冷静だった。
「辛気臭い修道院から抜け出してきてたってのに、ここに来てまで辛気臭い話して、どうすんだよ。オレがここに来てたのは、あくまで楽しむためであって、人生相談しながら酒飲む趣味はないんだ」
リアルタイムで初遭遇だっ!!連投回避!!
「・・・辛く、無いの? お兄さんにあんなこと言われて」
「ああ、あれで気が立ってんのか。確かにさっきマルチェロが言ってたこと、ゼシカには刺激が強かったかもしれないな。たいした話じゃないさ、ドルマゲスを見つけても報告しなきゃいいんだ。サッサと倒しちまえば、それでおしまい。簡単だろ?」
・・・ククールが遠く感じる。
「そういう問題じゃないでしょう? 私は詳しいことは知らないけど、あんなふうに憎まれて、命まで狙われるようなこと言われて、どうしてそんなに平気そうな顔していられるの? 無理しないでよ、私たち仲間じゃない。せめて私たちの前でぐらい、やせがまんしないでよ」
ククールは、困ったような顔をしている。
「気持ちはありがたいけど、オレはやせがまんなんてしてない。いいんだよ、別に兄貴のことは。
あいつはオレのことを嫌ってるから、キツくあたって冷たくする。憎んでるから、殺したいと思う。筋は通ってるだろ? どこも矛盾してない。わかりやすくて、むしろ清々しいくらいだ」
目眩がする。自分が立っている世界が、まるで現実のものではないみたい。
わからない、本当に。
マルチェロのように、弟を憎む気持ちも。ククールのように、それを受け流してしまう気持ちも。
「ごめんなさい。もうよけいなこと言わないわ」
私が間違っていた。自分の知っている世界の範疇で、この人のことを理解しようとしていた。理解できるって、思い上がってた。
見てきた世界が違い過ぎるのに・・・。
ククールはきっと、私なんかが想像もつかないほど、いろんな苦しい思いや辛い思いをしてきて、汚いものもたくさん目にしてきていて・・・。それでもちゃんと人に気を遣ったり、思いやる心を忘れずにいてくれてる。
それだけで充分じゃない。頼もしい仲間だわ。これ以上、何かを望むのは贅沢すぎる。
きっと私なんか、一生かかっても、ククールの全ては理解できない。
なんだろう、そのことが今・・・すごく、悲しい。
あー、あせった。
ほんとに、ゼシカといると、一瞬でも気が抜けないな。
あそこでいきなり怒鳴りだすとは思わなかった。
思えば、初めて会った時から、やることがメチャクチャだったよな。
問答無用でバケツの水ぶちまけるわ、屋内でメラぶっぱなそうとするわ、もしあの時止めてなかったら、火事になってたかな? 反射神経のいいオレで良かった。
『ごめんなさい。もうよけいなこと言わないわ』
宿屋まで送っていったゼシカの声は、悲しげだった。今頃は泣いてるかもしれない。
でも、オレじゃあ慰められない。悲しませてるのは、他ならぬオレだからな。
正直、マルチェロの言葉で、あそこまでショック受けられるとは思ってなかった。
オレのために、あんなふうに怒ってくれるってのも、想像つかなかった。
・・・ゼシカの言いたいことが全く理解できないわけじゃない。
領主の息子に生まれて『ぼっちゃん』なんて呼ばれてたって、両親に死なれた時のオレは金も家もない、ただのガキだった。そんなオレに対して、誰ひとり手をさしのべてはくれなかった。
別に恨んじゃいないさ。皆、自分たちが生きていくのに精一杯だ。
オディロ院長みたいな慈善家が近くにいたんだし、野垂れ死にされる心配はないと思ってたんだろう。
・・・それでもそうだな。カッコ悪い話だが、一つだけ時々考えちまうのは、もしもあの日、誰かがオレの手を引いて、修道院まで送り届けてくれていたら、オレはこんなふうにマルチェロに対して、遠慮はしないで済んでたかもしれないってことか。
今ほど凶暴ではなかったけど、魔物が出るかもしれない道をガキが一人で歩くのは、やっぱりおっかなくて。やっと辿り着いた修道院は、辛気臭くて不気味に見えて。温厚な顔をして歩いてる修道士たちには、オレの姿なんか目に入らないみたいで。
だから、きっと、すがっちまったんだろう。初めてさしのべられた、その手に。十年経った今でも、忘れられない呪縛のように。
我ながら運が悪いよな。せめてオディロ院長に先に会えていたなら、また人生違ってただろうに。
・・・こんなこと、今更考えても仕方ねえよな。
『お嬢様』なんて、ついバカにしたみたいに言っちまうけど、ゼシカのように幸せに育ってきた人間は嫌いじゃない。
そういう人間にしか持てない優しさってのがあるのも知ってる。実際、祈りを捧げに行ってた金持ちの家の中には、本当に打算も見返りもかけひきも、何にもなく親切にしてくれた人たちもいた。まあ、金はあっても、心が貧しい連中の方が圧倒的に多かったのは確かなんだけどな。
オレがドニの町で気楽に過ごせるのは、辛気臭い気分を持ち込まずにいられるからだ。誰も後ろ側を見ようとしない。こっちが見せたいと思う部分だけを素直に見てくれる。
別に観察眼や洞察力がないわけじゃなく、その方が楽な付き合いだっていうのを、お互い承知してるからだ。
でも、ゼシカにはそれは嘘の世界に見えるんだろうな。
わかるさ。もし両親に死なれたばかりの頃のオレが、今のゼシカの前に現れたとしたら、絶対放ってはおかないだろうって。親身になって面倒みてくれるだろうってことはな。
でも、それはありえないことだし、ゼシカみたいに全てにまっすぐ立ち向かえるほど強い人間ばかりじゃない。
オレだってそう。弱い人間だ。
兄貴の憎しみを理不尽だと思って、憎しみで返そうと思ったこともあったさ。
でも無理だった。
一番初めに、悪い人間じゃないってのを知ってしまったせいも、もちろんあるけど。
オレにはそれだけのエネルギーが無かった。
修道院の暮らしってのは結構忙しくて、勉強にお祈り、魔法や武術の稽古、生活すること、それと息抜き。それらを全部こなした上で、更に人を憎むなんて疲れるマネ、オレにはできなかった。そういう意味では兄貴はたいしたもんだ。尊敬しそうだ。
酒場に戻ると、エイトとヤンガスの姿が無かった。行き違いにでもなったか。
「ここにいた、バンダナとコワモテは?」
一応、マスターに確認する。
「お酒と料理を持って、町の外で待ってるお連れさんの所へ行くって言ってましたよ。中で飲めばいいのに、おかしなお連れさんですね」
トロデ王と姫様のところか。あいつらもマメだね。
「ククール、あんたずいぶん酒癖の悪いコと一緒に旅してるんだね。あのコだろ? 前にここでバケツの水ぶちまけてたの」
記憶力いいな、おばちゃん。結構前の話なのに。いや、あれはシラフでやってた・・・とは言わない方がいいな。
酒癖か・・・。そういえば、ゼシカにしては、結構飲んでたよな。
大丈夫だろうか・・・急に心配になってきた。
「おばちゃん、今日はホントにゴメン。マスターも。今度来た時は静かに飲むようにするから。おやすみ」
女の子たちが引き止めてきたが、簡単にあしらって宿屋に戻る。
そっと、客室に入る。小さな宿屋だ、大部屋しかなく、四人一緒の部屋に泊まってる。でも、たいていそうか。ゼシカが個室を要求したことなんて、一度もない。
それどころか、野宿に対しても、一切文句は言わない。お嬢様育ちなのに根性がある。
育ちがいいからか寝相も良く、寝乱れた姿なんてのも見せてくれたことがないのが残念なところだが・・・。
ゼシカはもう、寝息をたてていた。泣かれてなくて、ホッとする。
疲れてるんだろうな。いくら優れた魔法使いだからって、体力的にはやっぱり女の子だ。オレたちと一緒にするのは可哀想すぎる。
・・・思えばさっき、なんであんなにはっきりと突き放してしまったんだろう。
いつものように軽口叩いて『体で慰めてくれ』とでも言っておけば、ゼシカも呆れてそれ以上は何も言ってこなかっただろうに。
ゼシカが、あんまりまっすぐぶつかってくるから、オレもついまともに受け止めちまう。
本音を晒すなんて意味のないことだって、わかってるのに。
オレとゼシカの共通点はたった一つ、敵討ちの相手が同じ奴ってことだけだ。ドルマゲスの野郎がいなければ、お互いに知ることもない存在だった。
だから、ヤツを倒したら、そこでお別れだ。その後は会うこともないだろう。
なるべく嫌な部分は見せずに、思い出の中で美化できる程度の関係ってやつが望ましい。
何となくわかる。ゼシカはオレといると、見なくていいものを見てしまって傷つくことになるって。
今日のことがいい例だ。あの程度のことでショック受けてたら、とてもじゃないが神経が持たない。見て見ぬふりできるタイプなら良かったんだが、ゼシカはそうじゃない。
今日は色々失敗しちまった。
ごめんな、ゼシカ。オレなんかのことで、悲しい思いさせちまって。
わかってるさ、棲む世界が違うってこと。それさえ忘れなければ問題ない。
大丈夫・・・明日からはまた元通りだ。
<終>
>>248 支援、ありがとうございます。
ちょっとネガティブな話で、すみません。
こんな二人が、最後はハッピーエンドに、のつもりで書いてるので、許してください。
GJ!
じいいいいぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃんと来ますた!・゚・(ノД`)・゚・
2人の価値観の相違が、まだまだ心配な段階ですが、
最後ハッピーエンドなんですね!?それは楽しみです!
255 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/12(水) 00:25:14 ID:sfjw9lWr
最高=======(*^_^*)
ゼシカたん良い娘だよゼシカたん(つД`)
あ〜 朝になっちまったよ〜
名作ってのはついつい時間を忘れちまいますね
続編期待しております
自分も熟読してたら朝になってました(´Д`)
続編激期待です。職人さん、乙!!
>>254-258 ありがとうございます。
大変、調子にのりやすい性質なので、早速新しいの書いてきちゃいました。
今度はややポジティブです。
呪いによって、一晩で廃墟と化したトロデーン城。
茨に覆われた城の中は、想像していたよりも凄惨な光景だった。
思わず手を合わせ、祈ってしまう。そして、すぐに気づく。これは違うと。
「別に祈ったからって、なんかこいつらが助かるわけでもねえよなあ。オレの気休めさ」
祈りの姿勢をとることで、そこにある現実から目をそむけただけだ。
この城の人間はまだ生きてる。ドルマゲスを倒して呪いを解けば、助けることができるかもしれないんだ。
祈ってるヒマがあったら、一刻でも早く船を手に入れて、あの道化師野郎を追うことだ。
ふと気づくと、ゼシカがオレの事を見ていた。何となく不思議そうな顔をして。
「どうしたんだ?」
「いえ、珍しいもの見ちゃったと思って」
素で失礼だな、この女。
「オレはこれでも僧侶だぜ? 祈る姿が珍しいわけないだろ」
「そもそも僧侶に見えないのよ」
ここまでズケズケ言われると、むしろ小気味良さまで感じる。クセになりそうだ。
「そうだな、オレも自覚してる。こんな見目麗しい僧侶なんて、確かにいないよな」
「勝手に言ってなさいよ」
呆れ声で返された。
ゼシカの良いところは、とりあえず何らかのリアクションはしてくれるとこだよな。完全に無視されるのは、結構寂しいものがあるからな。
「バカに付き合ってたら、日が暮れちゃうわ。サッサと行くわよ」
そう言って、先に進むゼシカだけど、いつもに比べて歩くペースが遅い気がする。妙に足元、気にしてるっていうか・・・。
「ゼシカ。もしかして、茨が怖いのか?」
「ち、違うわよ!」
ムキになって否定された。図星か。
「手でも、ひいてやろうか?」
意地悪半分、親切半分で申し出てみる。
「いりません。だって、別に怖くないもの」
やっぱりな。まあ、それでこそゼシカか。なんて、思ったすぐ後だった。
呪いをかけられた兵士に手を伸ばしたエイトに向かって、ゼシカが放った一言。
「ねえ、気をつけて。イバラには、なるべく触らないように。だって・・・怖いわ」
おい、ちょっと待て! さっき言ったことと、えらく違わねえか? 何が『怖いわ』だ。エイトに対してだけ、しおらしくなりがって!
いっつもそうだ。オレに対しては『バカ』の一言で片付けることも、エイトが相手だと態度が変わる。
ゼシカが裏表のあるタイプなら、まあ気にもならないんだが、表しか無いのにあれだけ差別されると、さすがに傷つくぞ。
そのまま好感度の差ってことになるからな。
いいけどよ、別に。男に免疫の無いお嬢様に本気になられても厄介だ。だから、本気では口説かない。ちょっと仲良くなって、楽しい付き合いができればいいと思ってるだけだ。
泥臭い旅だ。野郎ばかりでムサ苦しいより、華があった方がいいに決まってる。
それが、戦闘では強くて、度胸もあって、目の保養にもなるなら、申し分ない。
今のところ、ゼシカは全部クリアしてる。
だから、女性には辛いだろうなって部分は、できるだけフォローしてやろうと思ってるのに、ああもそっけなくされると、やる気なくす。
やっと図書室に着いたけど、かったるくて、探し物なんてする気おきねえ。
エイトにも、つい八つ当たりしちまう。
「オレはこのへんを探すから、お前は残り全部を担当な。じゃ、そういう事で」
・・・ゼシカがオレを睨んでる。顔が可愛いから、怖くねえよ。
ヤンガスやトロデ王は、顔は可愛くねえけど、まあ、こいつらに睨まれるのも怖くない。
一番怖いのは、実はエイトなんだよな。温厚そうな顔して、容赦ない。
あんまりバカ言うと『剣の稽古』と称して、シメられる。
普通稽古で、かえん斬りとか、ドラゴン斬りとか、してくるか? 時々、本気で殺されると思うことがある。
しょうがねえ。棚の上の方はオレしか届かねえだろうし、知性もあるから本探しは要領いい方だ。手伝ってやるよ。・・・別にシメられるのが怖いわけじゃないからな。
でもまあ、何だかんだいったってエイトはいい奴だしな。ゼシカが好きになるのは、わかる気がする。免疫ないくせに、男を見る目があるよ。
うまくいくといいな、ゼシカ。オレも影ながら、応援してやるからさ。
せいぜい頑張れよ。
ククールったら、どうしてあんなに意地悪なのかしら。
あんなふうに『手でも、ひいてやろうか?』なんて言われて『ええ、お願い』って答えられるとでも思ってるの?
私のこと『意地っ張り』なんて言うけど、そうするしかないように追い込んでるのは誰よ。もう少し普通にしてくれたら、私だって厚意は素直に受けられるのに。
レディには優しく、なんて言ってるけど、私のこと女性扱いしてくれたことなんて、ほとんどないわ。してるのはいつでも子供扱い。
からかって遊んでるのよ。ひどいわ。
あんな頭も勘もいい人が、私が軽薄な口説き文句はキライだって、わからないはずがないもの。それでもやめてくれないっていうのは、もうハッキリ言っていやがらせよ。わざとやってるのよ。本当に腹立つ。
本当は優しい人だってわかってるから、余計に悔しいのよ。
さっきだって、呪いにかけられた人たちに祈る姿なんか見てると、真面目な人なんだって思った。『気休め』なんて言葉で否定しなくたっていいのにって。
まあ、その後は私も失礼なこと言ったと思う。でも、あんまり普段イジメられてるから、つい憎たらしいこと言いたくなったのよ。元はといえば、ククールが悪いんだわ。
それに、あんまりバカなこと言う時もあるから、ギャップに付いていけないことがある。
荒野のど真ん中で、『船やー。返事しろー船ー』とか言い出した時は、頭痛がしそうだったわ。
さっきだって『オレはこのへんを探すから、お前は残り全部を担当』なんて、エイトに子供みたいなこと言って、皆に睨まれてた。もちろん私も含めて。
つかめない人だわ。知れば知るほど、わからなくなってくかもしれない。
強がりの演技のようで、全部が本心のようでもある。
どこまでが本気で、どこまでが冗談なのかわからない。
無理に全てを理解しようとは、もう思わないけど、信頼はしたいのよ。そうでなければ命は預けられないから。
エイトやヤンガスに対しては、こんなこと思わなかったのに。
すぐに仲間だと思えた。だから、素直に言うことだって聞ける。うっかり甘えたこと言っちゃう時だってある。
でも、ククール対して、同じようには思えない。そんな人の手は取れないわ。逆に不安になっちゃう。
船を再び動かすために必要だという月影のハープを探すために、私たちはひとまず、トロデーン城を後にすることになった。
外に出てみると、見事な満月。
オディロ院長がドルマゲスに殺された夜のことを思い出す。
「怖いのか?」
ドキッとした。ククールがすぐ隣にいた。全て見透かしたような顔をして。
ええ、怖いわ。ドルマゲスに勝てないんじゃないかって、そう考えてた。さっきだってそうよ。茨が怖かった。触れたら私たちまで呪われてしまうんじゃないかって。
そんなこと考えてた矢先に『怖いのか?』なんて、訊かないでほしかった。
認めたくなかった、そんなこと。弱音吐くのなんて、一度でも多いくらいよ。
あんまり、鋭く見抜かないでほしい。私は自分で戦って、サーベルト兄さんの仇を討ちたい。誰かに頼りたいわけでも、守ったりしてほしいわけでもない。
「祈ってみるか? 一緒に」
あんまり唐突なこと言われて、私は咄嗟に返事ができなかった。
「少しでも、こいつらの苦しみが軽くなることを」
ククールは祈り始めた。静かな空間が広がる。私もそれに倣ってみる。
どうか、この城の人たちの苦しみが少しでも軽くなりますように・・・。
気持ちが静まっていく。恐怖が少し消えた気がする。
・・・でもわかったわ。さっきククールが『気休め』って言った意味が。
「祈ってる場合じゃないわね」
私は顔を上げた。
「私たちにはできることがある。ドルマゲスを倒して、呪いを解く。まずは船を手にいれるのが先だわ」
ふと気づくと、ククールが私の事を見ていた。少し驚いたような顔をして。
「どうしたの?」
「珍しいもん見たと思って」
「・・・祈ってる姿が?」
「いや、素直なゼシカが」
・・・なによ、意地悪!
でもいい、ククールは意地悪で。普通に優しくされたら、私きっと、甘えっぱなしになってしまう。それはイヤなの。
だけど、信じるわ、誰よりも。・・・この人とだったら、きっとドルマゲスを止めることが出来るって。
<終>
お疲れ様です!
毎回クオリティ高い作品最高です!
素直になりきれない2人ての最高・・**
GJです!!
素直になれないながらもククールを意識してしまうゼシカたん(;´Д`)ハァハァ
ほんと、いつも素晴らしい!JbyYzEg8Isさんのキャラ把握には
偏りが無く、実に本編に忠実で好感度大ですね。
チラホラ本物の台詞が入ってるのもナイスです!
今後の展開が楽しみです〜!!またスレの住人のテンションあげてねw
しっかし『船やー。返事しろー船ー』には本当に笑わせてもらいましたよね。
目を疑いましたよ、最初に画面で見たとき。ククールかわいすぎ・・・
す、すごいです!!
何がすごいって、お話を書くスピードがものすごい早いっす!
しかもお話がどれもシリアスなのにかわいらしくてステキ!最高です・・・(´∀`*)
>ククールは祈り始めた。静かな空間が広がる。
これ、なんかすごい印象的でした。あと、
>・・・でもわかったわ。さっきククールが『気休め』って言った意味が。
これ。なんだかものすごくゼシカらしい・・・と思ってしまった。
ところで、ククタン、ほんとにゼシカとエイトくっつけようとしてたりしないよね・・・?
>>264-266 ありがとうございます。温かい言葉の数々に涙が・・・。・゚・(ノД`)・゚・
一応、単品でも意味は通るように気をつけてるんですが、続き物だってバレバレみたいですねw
スレのお邪魔にならない程度に書かせてもらいますので、これからもよろしくお願いします。
>>267 ああ、ごめんなさい。リロードしてなかった。感想ありがとうございます。
ククールとゼシカのカップルって
エッジとリディアに似てる
「正気…なのか…?」
傍らにあの忌まわしき杖を携え、不敵に笑う影にククールは問う。
『正気とは?…まぁいい。貴様等がここで消える事に変わりは無い』
瞬間、彼から放たれた真空の渦が四人に襲い掛かる
間一髪、身を躍らせてかわした刃は背後に参列し、身動きできない人々に降り注ぐ。
阿鼻叫喚の声とそれを制止させようとする青い服の男達
両者の怒号で、聖地と呼ばれたこの地はさながら地獄を見ているかのようだ。
今この場所に…神は、いない
「…エイト、ヤンガス。参列者の避難を頼めるか?ちいとばっかし場所が悪いぜ
それにコイツは…」
目前の男は祈るように十字を切り、悪魔のような笑みを浮かべ真っ直ぐにククールを見つめた。
「…俺を御指名らしい」
「私も残るわ」ゼシカが叫ぶ
「一人じゃ危険よ…わかるの。こいつ普通じゃない」「こりゃたのもしい、頼りにしてるぜ」
(今彼を助けられるのは私しかいない!)
ゼシカが杖をかざし呪文を唱えると二人は光の衣に包まれた
エイトが右に、ヤンガスが左に走っていく。大神殿の騒ぎはかすかに外に漏れ
外部に集まるやじ馬が興味深そうに見守る中、青い服の男達を吹き飛ばし
参列者を誘導するエイト達。それを眼の端に捕え―――
深呼吸を一つ、眼を閉じ精神を集中する
正面の男の持つ剣が十字を描き光が集まる。それと全く同じ動きをトレースするかのように
ククールの左腕が十字を描き出し光が集中する
(思い出すな……)
「よし、それまで!!」
オディロ院長の声が中庭に響き渡る―――幾重にも穿たれた四肢に激痛が走る。
『初動が遅い、引きが甘い、視線と肩で次の動きがバレバレだ!貴様、何年ここにいる?』
ククールがマイエラ修道院で暮らすようになって早、六年。
時の流れは速く、幼かったククールも今や聖堂騎士団見習いとして
神への奉仕と剣の稽古に追われる日々を過ごしていた。
ククールの腹違いの兄であるマルチェロは聖堂騎士団員としてメキメキと頭角を現していた。
こと剣術、体術においては当時の団長をも凌ぐと皆に噂される程で
後に、儀礼的な兵団であった聖堂騎士団を実戦的に鍛え
自ら団長として君臨し修道院の警護にあたる事となる
今日は定期的に行われる合同演習。マルチェロが新米に稽古をつけている
他にも多くの新人が団長殿の洗礼を受け、呻いている。皆、腕や足、腹、顔をパンパンに腫らしうずくまっていた
その中でククールだけ、顔に傷一つない。
いつからだろうか?ククールが貴族に呼ばれ、多額の「寄附金」を貰うようになってから
ククールは一度も顔を打たれた事がなかった。
『貴様、明日は集金だったな?部屋に戻り傷を冷やせ』
マルチェロはククールの貴族宅への訪問を「集金」と呼ぶ。
そして皮肉タップリに意地悪そうな笑みを浮かべ
『そう言えば、まだ聞いてなかったな?』剣の腹でしこたま打たれた場所を叩かれる
ククールは俯いたまま、苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた
「……まいりました。」
『参りました』
マルチェロはひざまずき頭を垂れる。
それは調度ククールが「集金」から戻って来た直後の事だった。
中庭が何やら騒がしい。
「流石は音に聞こえた聖堂騎士団、なかなかじゃったが―――
まだまだワシには敵わんのう、ホッホッホッ」
『おっしゃる通りで…私もまだまだ未熟者――これからも精進致します』
「ホッホッホッ…今日は気分が良いのう、これ」
近くにいた貴族の従者とおぼしき者が、マルチェロに何かを差し出す
「ホレ、寄附金じゃ。院長にはくれぐれも宜しく頼むぞぇ」
『ハッ、確かに。…貴方様に神の祝福が訪れますよう…』
胸の前で十字を切り、笑顔で貴族を送り出す。その笑顔がいつもの冷たい表情に戻った
『…帰ったか。ちゃんと受け取って来ただろうな?』
「全く…見てらんないぜ。なんださっきのヘッピリ腰は?
あんなんじゃ豚も殺せやしないぜ 」
ククールは懐から取り出した「集金袋」をマルチェロに投げてよこす
『そう言うな。神に仕える我々としては、いついかなる時も平等に神の祝福を与えようではないか。
金さえ持ってくれば、例え人だろうと豚だろうと、な』
笑いながら立ち去るマルチェロから女神像に視線を移し
哀しみをたたえたまま、ククールは胸の前で小さく十字を切った
彼の者とククールからほぼ同時に放たれた「偉大なる十字」は
二人の中央でぶつかり合い、轟音と供に弾け飛んだ。
『ほう…少し見ない間に随分と成長したものだ』
「お褒めに与り、光栄だよ…兄上様」
その刹那、はるか上空から降り注ぐ業火球がマルチェロを呑み込む
「やった!!」ゼシカが声を荒げる。しかし……
次の瞬間、荒ぶる炎柱が真空の波に消し飛ぶ―――
焔の中から現れた男の身体にはかすり傷一つない。わずかに蒼髪と青い礼服をくすませただけだ
『男子、三日遭わずんば刮目して観よ、か…だがその前に…』
男の口から死呪の詞があふれる。黒煙がゼシカを、その影ごと喰らい尽くす
「ゼシカッ!?」
「ククー…ル……」
ゼシカはバタリと糸の切れた人形の様に背後に倒れ込む
あまりに呆気ない事切れに平常心を失ってしまったククールは頭が真っ白になっていた
「エイトッ!!ヤンガス!!」取り乱し仲間に助けを求める
とても蘇生を行える様な精神状態では無かった
『豚が一匹死んだぐらいで、何を取り乱している?』
「テメェ!!!!」
カッ
「キレたぜ…テメェだけは許さねぇ」
一気に精神が高揚し、身体から力が溢れる。こいつはこの場所で俺が止める、止めて見せる
何もかも、ここで終わらせてみせる。
『それが貴様の本気か?…面白い。それでこそ殺し甲斐があると言うものよ』
大きく杖を廻し、邪悪な気が集束する。それは凍てつく波動となってククールに襲い掛かった
「ウォオオオ!!!」
声に為らない叫びを上げてククールは胸に小さく、そしてもう一つ大きく十字を描いた。
今まで見たことも無い強烈な光を放ち、二つの十字は重なり、交じり合いながら一直線に―――
波動を引き裂き彼の元へ―――
『バカなッ!!』
弾け飛ぶ金のロザリオ――それすらも呑み込み、大いなる光の十字架は
その全ての罪を許し、消し去るかの如く輝きを増していった―――
わ、新人さん?まだ続くよね?これ。てことで連投回避〜
「ばっきゃろう…」
呟いたククールの腕の中でゼシカが目を覚ます。
「アレ…あたし―――」
「気がついたか?ふーっ…一時はどうなるかと思ったぜ」
「そうだ!!」ゼシカは勢い良く起き上がった。
「マルチェロは!?」
「あぁ…あいつならそこに――――」
ゴゴゴゴゴゴ……
ただならぬ邪気が急に漂いはじめる。…バカな!?奴は今倒したはず…
『ククク…礼を言うぞ…。随分てこずらされたが、ようやく…
この肉体を自由に操る事ができる…。』
「マルチェロ!!」ゼシカが身構える
「ちがう…アレはマルチェロなんかじゃない」
『この男が、法皇……最後の賢者を亡き者にしてくれた今―――
杖の封印は全て消え失せた』
立ち上がった男の髪は銀に近い白に染まり、蒼白に彩られた表情には見覚えがあった。
リブルアーチで対峙した、呪われし暗黒の魂―――
『そう!!今こそ我が復活の時!』
かつてマルチェロと呼ばれた呪われし魂は、大きな曲線を描いて宙に舞い上がると
大いなる女神を睨めつけた
『…さあ!黄泉反れ!我が肉体よ!!』
その手から杖が躍り女神の心を貫く。間を置かず大地が鳴き―――
蛹を脱ぎ捨て現世に降臨せしめる悪の胎動
―――――悲鳴、轟炎、立ち上る光柱そして―――――
赤銅の大海が世界を覆い尽くした
(フ…フフ…無様だな…私は…)
切り立った崖にしがみつき自嘲する。手足の感覚は無い。力も入らない。
(自業自得か…オディロ院長―――)
幼い頃の記憶が脳裏をよぎる。
厳しくそして優しかった師は正しき時は供に喜び、過ちを犯せば厳しく…
時には自らの手を上げ叱責してくれた
今の自分をどう思うだろう。また昔のように叱ってくれるだろうか?
(神よ…私は―――)
腕が痺れ、力が抜ける。そのままマルチェロは崖の深淵に身を委ねた…
ガシッ
『…なん…のつもり…だ…?放せ…!!』
マルチェロの腕を間一髪掴んだのは―――祈りを捧げた神ではない。
真紅の礼服に身を包んだ神の下僕。
『貴様達…が邪魔を…しな…ければ…暗黒神のチカラ―――
我が手に…出来たのだッ!!』
神の下僕は物言わず、ただ黙ってマルチェロを見据えている
『だが…望みは…潰えた…。全て…終わったのだ―――』
さあ!放せ!!と目の前の男は言う。貴様なぞに助けられて堪るか――と。
「……死なせないさ」
神の下僕は、まるでその荘厳さを感じさせない砕けた口調で静かに語り出した
「虫ケラみたいに嫌ってた弟に情けをかけられ、あんたは生き延びるんだ―――
好き放題やってそのまま死のうなんて、許さない」
そう言って腕に力を込める…。程無くして崖上に引き上げられた男は、乱れた息を整える
地べたに座り込み向かい合う紅と蒼の影―――
『この上…生き恥じを晒せ…だと?―――貴様!!』
立ち上がる紅。その影が夕陽に照らされ一直線に伸びてゆく
「…十年以上、前だよな。身寄りが無くなったオレが初めて修道院に来たあの日―――
最初にまともに話したのが、あんただった…」
うなだれたままの蒼を見つめ、紅は言葉を続けた
「家族も家も無くなって、ひとりっきりで…修道院にも…誰も知り合いがいなくて…。
最初に会ったあんたは―――」
ふと、幼い日の面影が浮かぶ。あの日から十年…
片時も忘れた事など無い、自分に向けられた暖かい眼差し―――
「でも優しかったんだ。はじめのあの時だけ…。」
少し視線を落とし、地面を―――蒼の影を見つめる
「オレが誰かを知ってからは、手の平を返すように冷たくなったけど…。
それでも―――――」
ふと空を見上げる。赤黒い空は凶々しい邪気を孕み、大地を生きる全てを嘲笑うかのよう―――
西の空に沈み行く夕陽は二人の影を色濃く地面に焼き付けた
「それでもオレは、忘れたことはなかったよ……」
荒廃と供に訪れた黄昏―――間もなく黄昏も過ぎ去るだろう
…二人の兄弟とその影を宵闇に包んで。邪気にあてられた風が頬を撫で、世界の終焉を予感させる。
それでもゼシカはただ黙って二人を見つめる事しか出来なかった…。
(……いやッ!!)
瞳から涙がこぼれ落ちる。このまま彼が夕闇に溶けて消えてしまうような気がした
真っ直ぐ彼に駆け寄ろうとしたその時―――
ザッ
地面にひざまずいていた兄が立ち上がる。そしてゆっくりと弟の―――真横を通り過ぎる
自由の利かない四肢を引きずり、その胸に罪と言う名の枷を幾重にも縛り付けて―――
『…いつか…私を助けた…事……後悔…するぞ……』
「好きにすればいいさ。また何か仕出す気なら、何度だって止めてやる」
『………………』
返事は無い。ただ黙々と歩みを進める兄を、弟は瞳を閉じ背中で見つめる
ふと足音が途絶えた
背後の微かな気配に振り返る―――と小さな影が眼前に迫る
弟は反射的にそれを掴み取り……目を見開く
「!!―――これ…あんたの…聖堂騎士団の指輪か…?」
『…貴様にくれてやる。…もう私には無縁の物だ』
そう言うと一瞥もくれず兄は再び歩き出し、二度と立ち止まる事は無かった。
弟はその背中を見つめ、しかし引き止める事はしなかった。
ククールの傍らにゼシカが駆け寄る
「…ねえ、ククール―――」
心ここに有らず、といった表情がゼシカの不安を募らせた。
「ククール!!放っておいていいの!?…あんな酷い怪我してるのに…ねえってば!」
掌の内の指輪を強くにぎりしめ、ククールはただ一人兄の歩み去った方を―――
彼の視界から消え去るまで、目を逸らす事なく見つめ続けていた……
(終)
長編遭遇!?連投回避!
はじめまして!お初にお目にかかります。
まず最初に皆様のお目汚しになったことを深くお詫び申し上げます。なら書き込むな?…はいその通りです…。
遅ればせながら私、先週ドラクエ8クリアーしたんですよ!やっと(笑)
正確に言うとこれから裏ダンジョンなんですが…
で、ドラクエ関連を明後日降りましたら、素敵なまとめサイトが♪
皆様のを読んでいる内にいても立ってもいられなくなりまして…
ドラクエ8の中で一番好きなシーン妄想いっぱい夢イッパイで書きなぐりました。
全然クク×ゼシじゃないですね(笑)スレの主旨から外れてすみませんでした
これからも職人の皆様ガンバって下さい!楽しみにしてますからね♪
では、私は名無しに戻ります。他の名無しの皆も私みたいσ( ̄▽ ̄;)に触発されて何か描いてくれたらいいな〜
参考文献
ドラゴンクエスト公式ガイド 上、下巻
ドラゴンクエスト8の歩きかた
長い詩をお疲れ様でした。
あと2ヶ月は戻って来ないでくださいね。
どうせなら続きをククゼシで書いて欲しいところ・・・
て言うかそういう展開になるんだと思って読んでたのになぁ
ここ、最近変だな。
いつもだろ
なんか微妙にズレた厨くさいのが増えてきたよな。
半年とは言わないからもう少しだけ2ちゃんをROMってくれって感じのが。
>>293 それだ!
夏以降感じてた違和感はそれだったのか。
漏れは2、3スレ目あたりのふいんきが好きだったんだがなー
連投回避した自分…
(´・ω・`)ショボーン
>>288はゲームの中の場面を小説化しただけになってしまってるのが惜しいかな。
自分の頭の中でもっともっと妄想膨らませて、オリジナルを作り上げて
それを話に落としてほしいです。
地の文の運び方とかはきれいで、いい味を感じるから、期待してますよ
>>296 まぁそうしょぼくれるな、茶でも飲め つ且
297さんに同意ですね。
特に最初の方の文章はいい感じだと思いましたね。
あと、このスレのクリエイターの皆さん、楽しみにしてます。
頑張ってください。
自称2ちゃんの達人がいるスレはココですか?
つか2ちゃんのこの手のスレの歴史をそのまま行ってるな。
名スレ生まれる
↓
職人が集まって名作連発
↓
常連(固定ファン)がつく
↓
常連が偉そうに批評を始める
↓
職人がアフォらしくなって消える
↓
糞スレ化
>>300 常連が偉そうに批評を始める
の後に
>>300みたいな荒らしが出てくる
って言うのが抜けてるぞ
良作もこれからに期待作もマターリ見守ろうよ。
職人さんを素直に楽しみに待ってる住民もいるはず。
そしてククゼシに萌えよう(・∀・)
SS投下してくれる職人さんの数が激減してるんだから、チャレンジしてくれる人の存在はありがたいと思うよ。
初めから上手い人なんていないんだし、書きたい人はどんどん書いてほしいよ。
288はそう呼びかけてるんだし、むしろえらいと思う。
SSの技術うんぬんは仕方ないとして、それ以前にもーちょい空気読んで欲しいとオモタ。
チラシの裏的な、いらん事書きすぎ。私信まがいのレスとか。
時々荒れるのは、別にSSが下手だからと言うんじゃなくて
そんな手合いが出てくるからだと思う。
2chの達人なんて問題じゃなくて、どこにでも通ずる根本的な雰囲気読みだと思うんだが。
あまりギスギスするのは好まないが、厨を甘やかすのも良くないと思う。
>>303 他の馴れ合い掲示板なら構わないが、
2ちゃんでやるのは余計なお世話だ。
またこの流れか…2ch全体はそうだがマターリスレもあるし
>>288のコメントはいらんかもしれんが鼻につく程のもんでもない
比率として圧倒的に「職人<<<<その他」なんだから
寡黙な職人だろうがおしゃべりな職人だろうがどっちでもいいよ
ただ作品の感想もなく人格批判するだけの人はいらないよ、嫌なら読まない権利が読み手にはある。
気に入らないなら読むな。お前等がいなくなっても誰も困らないよ
このスレを楽しみにしてる俺としては、職人がいなくなるのは困るが評論家ぶった読者がいなくなるのは構わない
で今の俺も「感想もなく人格批判」しちゃてるのでひとつ新人さんに感想なぞ
映画に例えると、ククゼシのラブロマンスを見に来たらクク主役のアクションがやってた、みたいな感じ。
だから他のお客にはイマイチ受けが悪いが読物として充分おもしろいと思ったよ
マルチェロも良い味出してるしさ。ククに対する愛が感じられました
スレが落ち着いたらまたおいで。カルシウムの足りない住人の事は気にしないでいいからね
307 :
sage:2005/10/16(日) 12:51:58 ID:ZWBiUDGa
最近、ククゼシサイトさんの更新少ない…
せめてこのスレで萌えを補給させて欲しいな.
自分は書けないんで、職人さんに期待.
308 :
307:2005/10/16(日) 12:53:37 ID:ZWBiUDGa
ごめん.あげてしもた… orz
>>306 しきりに「他の奴らはこうだけど自分は〜」なんてのを盛んに強調して酔うなよ。
他所はどうあれ各スレにはスレの雰囲気がある。
あなたが気にせずとも、これだけ反発も出てるって事は鼻についた人も
大勢いるって事じゃないか。ただ一人が騒いでるのならともかく
あまりに多くの人から「空気嫁よ」と言われたなら、その人はひとまず
耳を傾ける必要はあると思う。作品批評とか人格批判とは違うと思うんだがなぁ。
今回>288に対してはちょっと言いすぎかなぁと思ったレスもあるけど、
空気読み下手な人をどんどんなあなあで許してしまう事によって
厨房くさくなったり「ここではどんなノリもカキコも許されるんだ」的な雰囲気になって
結果荒らしのようなのもどんどん乱入してくるんじゃないかと危惧もされたんだろう。
そんな人の気持ちも痛いほど分かるよ。
クソ真面目な体育会系とハイテンション勘違い莫迦はサークルに入れるべからず。
>309
正直お前のレスが一番気に障るんだが。
空気読めよ。
ドラクエ人気も下火だしsage進行してる限り荒らしなんてめったにこないでしょ?
そうでなくとも一般人はスレタイだけでスルー
はっきり言って職人さんのSSがない雑談スレなら興味ありませんし、そんなサークルに入った覚えもありません
脳内サークルはよそでお願いします
付け足し。
個人的には、とにかくSSさえ絶え間なく投下があればどんなノリもありでいいじゃないか!
というよりも、2スレ目〜3スレ目前半あたりの良い雰囲気を守る方向性で
レスの雰囲気に多少うるさ目の方が、結果マターリ具合は守られるんじゃないかと思う。
ただ、それまでの雰囲気が壊れる事を危惧するあまり、ちょっと毛色の違う書き込みが
出てくるやいなや即叩いたりすると、それで雰囲気が悪くなったりもするので
注意の仕方・言い方には気をつけてって事で。
>>288はレスからして、周りをあまり鑑みずガンガンレスをぶち込む方なんだろうな…と思われて
>>297とかみたいに「作品をこういう風にしたらどうかな?」てな事もついでに言われたんじゃないかな?
教えてチャンなどをたしなめる事はあっても、純粋にSSの書き方がまずいというだけで
叩かれる向きなんてこれまでに一つもなかったと思うよ。
あ、タイプしてる内に書き込みが。
>>312 そうでしたか。それは失礼
>>313 SS投下する際のノリに気をつけろと言われてる向きがあるだけで
SSを連続投下すること自体を悪いなんて言ってる人なんていないと思うんですが。
以前に「SS職人と馴れ合いやめろ」という流れがありましたが、主に嫌がられたのは
SS職人さんの近況報告のようなレス&それにまつわるファンのレスであって
同じ人が作品をたくさん連投する事自体が悪いとは誰も言ってない。
誰の作品であれ作品がどんどん投下されるのはスレの活性化に良い事だからね。
>288に反発してる人も、雰囲気を読んで欲しい、と言ってるだけで
SS自体を投下するななんて言ってないよ。
俺に見とれてたのかいハニー?まで読んだ
自己正当化のためだけにためらいもなく平気で長文を書ける厚顔無恥な香具師を見ると中学二年頃の自分を思い出して嫌だな。
みんな前みたいに戻ろうよー。恐いココ。
変なレスはスルー!
ぼちぼちマターリしませんか?
皆288みたいなのに反対なのか擁護したいのかどっちなんだ。なんか分からなくなってきた。
前みたいじゃなくなってきたのは、厨なノリのがが湧いてきてそれを許しちゃうからだと思うんだが。
厨だと思ったとしてもスルーすりゃいいだけの話だろ。
叩きの方が何倍も気分悪いんだけど。
それに何度も長文書き込んでるヤシってなんなの。お前こそ荒しだっつーの。
ただの荒らしと取られるなんて心外だな…。
これぐらいの発言で荒らし認定無視しろー!呼ばわりするとは>288を空気嫁ゴルァ、と
叩いてた人達と変わりないのでは?
最後にこれだけは言うけど、別に>288への叩きを正当化しろなんて一言も言ってないよ。
断じて叩きなんてやった事ないし。
チラシの裏的な書き込みウザイvsそれぐらいいいじゃないかと言っている
両方のに気持ちが分かるような気がしたから、そんなスレの流れをなんとか
中和できないかな、と思って書いてみたんだ。
確かについ冗長になってしまったのはまずかったけどね。
しつこい
じゃーさー、他のネタスレみたいに次から天麩羅に
「SS職人は黙って投下!
初心者なので・・・とか、つまらなかったらスルーよろ、とか
言い訳(・A・)イクナイ!!」
とか追加したらどう?
○○から××を連想して作品作ってみたよーとか
言い訳じゃないならおk、とか。
>>323 アナタの発言の主旨を理解出来る方々は基本的に323氏の発言にあるように自分にとって理解不能なカキコは黙殺していると思う。
雰囲気はあまり気にしなくてもいいのではないですか?
悪い流れはすぐ変わるし。
作家さんの降臨をお待ちしております。
327 :
326:2005/10/16(日) 19:32:37 ID:1n47AKG0
失礼、321氏ですね。
何事もなかったように次の話題ドゾー↓
そして誰もいなくなった。
御請けの紋章虹スレみたい(プゲラ
?
さっぱりわからん
スクエニから出てる4コママンガは皆さん読みました?
あの3冊にはククゼシ的ストーリーもあるの?(買おうか迷い中)
末期だな
職人だってボランティアで作ってくれてるわけで。
自分の作品のに対する感想は気になるはず。それがモチベーションになり
次回作の投下に繋がる
今の雰囲気で投下できるわけないだろ頭を冷やせ
>>331 2と3にビミョーにあるけど、ほんとビミョーなんでククゼシ目当てで買うとがっかりするかも?
>ボランティア [volunteer(義勇兵,志願者)<ラ voluntas(意志)]
>篤志奉仕家.自分の意志によって自発的に奉仕活動をする人.身体障害者,老人,孤児の収容施設や献血運動などの雑役・補助的作業・資金集めなどに無料奉仕する.〈現〉
(infoseek マルチ辞書より)
>>332 そりゃあずいぶんな過大評価だし、心外。
漏れはスレやスレ住民への奉仕活動のつもりでSSやAAを書いたことなど一度もない。
むろん「見る」「読まれる」ことを想定して書いているが、
「見せてあげる」「読ませてあげる」ために書いてるわけじゃない。もっと傲慢なものだ。
萌えを表現する手段、芸術の末席だと思ってもらいたい。
ほいそこまで
以下マターリ汁
腐女子同士いがみあうのを見るのはおもしろいですなぁ
腐女子ってのは「マルクク萌え〜」とか言ってる奴のことでそ。
ククゼシ萌えは腐女子ではなかろw
>>334 今の雰囲気では貴方を含む他の職人さんが作品を投下しづらいのでは?と言っただけのこと
わざわざ意味を載せてもらって恐縮ですが、一般的に言うボランティア(無料奉仕活動)の意味で使ったまで
貴方様の作品をつくるにあたっての姿勢は理解できます。しかし賃金や見返りが発生しない以上、それはボランティアの範疇から逸脱しない
作り手、読み手ともに「結局のところ自己満足」だとお互い理解した上での萌えスレなのだから
以下職人様からのありがたいお言葉↓
│ ≡ ('('('('A` )
│≡ 〜( ( ( ( 〜)
↓ ≡ ノノノノ ノ サッ
諸葛亮いわく、
「おまいら、マターリしる」
つかもうねるぽ
>333
情報サンクス!
そういえば、ここのところ「主姫スレ」と「ククゼシスレ」がお隣さんだ。
両方を行き来している身としてはうれしい。
8小説発行はどうなった?
どこかで12月発売の噂を聞いたような気もしたんだけど、どうやらガセだったのかなー。
いろいろ振り回されたけど、私たちはようやく船を手に入れることができた。
次に目指すのは、ドルマゲスが向かったという西の大陸。
この船の動く仕組みはよくわからないけど、方向を指定するだけで、定期船とは比べ物にならない速度で進んでくれる。
タワーの上で見張りをしていた私のところに、ヤンガスがやってきた。
「交替の時間でがすよ」
「あら? 次はエイトの番じゃなかった?」
「アッシが代わったんでさあ。エイトの兄貴はククールと、剣の稽古をしてるでげす」
・・・ククールの言うところの『シメてる』のかしら。
ククールがあんまり勝手なこと言ったり、したりすると、その後必ずエイトに『かえん斬り』とかされて、本気で命の危険を感じるらしいから。
でもわかってるなら、ククールもやめればいいのにね、アホなこと言うの。
まあ、どっちの気持ちもわかるわ。
船を手に入れた後、私たちは少しだけ寄り道してみることにした。
ドルマゲスの情報があまりにも少なすぎたし、何より、自分たちの船を手に入れたってことで、少し浮かれてたんだと思う。
メダルを集めてる王族が住んでる島では、役に立つアイテムをもらえたりして、まあ、寄り道するのもたまには悪くないって思ったわ。
ただ、やめておけば良かったって思う場所が二か所あったのよね。
まずは法皇様がいらっしゃるサヴェッラ大聖堂。そこであの『二階からイヤミ』改め『どこでもイヤミ男』マルチェロにバッタリ会ってしまい、最大級のイヤミを言われてしまった。
もうククールったら、すっごくむくれちゃって、エイトに対して『ごちゃごちゃ話しかけてくんな』とか『うっとおしい』とか、言いたい放題。さすがのエイトもあれには腹が立ったんじゃないかしら。
それでもまあ気をとりなおして、今度は巨大な女神像がある聖地ゴルドに行ってみたら、そこでもまたあのイヤミ男に会っちゃって、またイヤミ言われて。サヴェッラでは少しは言い返してたククールも、もう言葉も出ないって感じで。
その晩は、二日酔いになるまで飲んでたみたい。仮にも聖堂騎士なんてやってる人が聖地といわれるところでお酒飲むのはどうかと思ったけど、あの時だけは何も言えなかった。
最悪だったわ。本当に。
夕食の支度を始める時間まではまだ間があるし、私はトロデーン城の図書室から借りてきた本を読むことにした。
船を手に入れたおかげで、旅に出てから初めてこういう時間が持てるようになった。
自分の足で歩かなくて済む分、体力的にも大分楽だし。
とてもいい天気なので、船室に籠もるのはもったいない気がした。ひなたぼっこも兼ねて、船尾の方で読書しよう。
そう思って移動したら、先客がいた。ククールだった。無造作に転がって眠っているように見える。
エイトの姿は見えない。剣の稽古はもう終わったのかしら?
・・・ククール、生きてるわよね? エイトのことだから、殺しちゃったりしないとは思うけど、こんな所で横になるなんて、ククールらしくないから不安になる。
でも、確認するのは、ちょっとためらっちゃう。
まだ仲間になったばかりの頃、私、眠ってるククールに近づいて、殺されかけたことがあるから。
野営をしていた時、火から離れたところで、木に背を預けて眠っていたククールに毛布をかけてあげようとしたら、いきなり首筋にレイピアを突き付けられた。
もちろん切られはしなかったし、私だと気づいたククールはすごく真剣に謝ってくれたけど、あの時は本当に怖かった。
『気配の変化で起きられるようにしておくのは騎士のたしなみ』なんて言ってたけど、あの殺気はそんなかわいいもんじゃなかったわ。
・・・やっぱり、修道院にいた時、マルチェロに殺されかけたことがあったのかしら?
あっても不思議じゃないとは思う。油断なんてできない環境で長く過ごしてきたら、他人のことなんて信用できなくなっても、仕方ないのかもしれない。
でも、ちょっと寂しいな。
私は、ククールのこと、仲間として信頼してるのに。
思えば、お母さんも私のこと信頼してくれなかったよね。
私って、そんなに頼りない人間? 努力すれば、いつかは認めてくれる? 私だって、頼りにしてもらいたいのよ? 守られてばかりなんて、そんなのイヤよ。
ククールが眉間にシワを寄せてる。悪い夢でも見てるのかしら。
そっとのぞき込む。あら? よく見るとなんともない。
でも、私が頭をあげると、また眉間にシワが寄る。
・・・手に持ってた本を掲げてみる。そうすると、また普通の顔に戻る。
なんだ、ただ単に日差しが眩しかっただけなのね。こんなところで寝るからよ、ホントにしょうがないんだから。
少し考えて、隅の方にあるタルを転がして持ってくる。角度を計算して、そのタルを椅子がわりに座る。ククールの寝ている場所に影ができるように。
私が日よけになってあげるわよ。以前、安眠を妨害したお詫び。特別大サービスなんだからね。
私は、持っていた本に目を落とした。
持ってきた本は結構面白くて、夢中になって一気に読み終えてしまった。今は失われてしまった魔法『ドラゴラム』や『パルプンテ』とか、そういった呪文を使いこなす勇者たちの物語。最後が完全なハッピーエンドじゃなくって、ちょっとせつないのよね。
余韻を感じながら本を閉じると、いつのまに目を覚ましていたのか、ククールが私のことを見つめていた。
「やだ、いつから起きてたのよ。声かけてくれればいいのに」
「二十分くらい前かな? ゼシカがあんまり夢中になってるから、声かけられなかった。ところで、何でこんなところで読書してたんだ?」
そんなに前から? 百面相してなかったかしら。恥ずかしい。
「ククールがまぶしそうにしてたから、日よけになってあげてたのよ」
その私の言葉に、ククールは心底意外そうな声で返してきた。
「優しいとこ、あったんだな」
「失礼ね! まるで私が普段、全然優しくないみたいじゃないの!」
「ああ、いや、違う、つい、うっかり。じゃなくて、ほら、あれだ、感激しすぎて口がすべった」
慌てて弁解しなくていいわよ。ククールが私のことどう思ってるか、今のでよ〜くわかったわ。
「嬉しいよ、サンキュ」
素直にお礼を言われて、拍子抜けする。何だか、いつものククールより優しい顔してるみたい。何かいいことでも、あったのかしら?
・・・いつでも、こんな感じにしててくれたらいいのに。
油断した。こんなに近くに人がいるのに、気づきもしないで寝てるなんて、オレとしたことが、たるんでる。
でも、なんかスッキリしてるな。これもエイトのおかげか。
あいつに剣の稽古に付き合えって言われたときは、またシメられるのかって思ったんだよな。サヴェッラで暴言吐きすぎたのは自覚してるから。
そもそも、寄り道しようって言い出したのもオレなんだ。自分で墓穴掘っただけなのに、他人に当たる筋合いはなかったんだよな。
でも、今日はいつもとは感じが違った。
無茶な剣技は一切出さずに、ただ普通に撃ち合うだけ。心なしか、力加減もしてくれてた気がする。いつもだったら、あのバカ力と撃ち合った後は手が痺れるんだが、今日は何ともなかった。
マルチェロの奴にイヤミ言われまくったオレを励ますためにってところなのかな。
汗くさいのは好きじゃねえが、適度に体動かして、いい天気で日差しも暖かくて、柄にもなくこんな甲板なんかで熟睡しちまった。
その上、意外なオマケに、目が覚めたらすぐに、絵になる美女の姿がそこにあったと。
悪くなかった。
「てっきり、オレの寝顔に見とれてるのかと思ったら、本に夢中とは、ゼシカは色気がないよな」
なんとなくテレくさくて、つい軽口たたいちまう。
「あんたの寝顔のどこに、見とれる要素があるっていうのよ」
いつ聞いても、ゼシカの反撃には容赦がない。
「おいおいゼシカ、美意識大丈夫か? このオレの美貌は、あのマルチェロでさえ認めてくれてたんだぜ?」
「・・・そうなの?」
「そ、顔とイカサマだけが取り柄ってな」
ああ、くそっ。わざわざ自分からムカつくこと思い出してんじゃねえよ。
「あんたねえ! いい加減にしなさいよ!」
いきなりゼシカに怒鳴られて、オレは面食らった。
「それがほめ言葉じゃないことぐらい、自分でもわかってんでしょう? こっちが反応に困るようなこと言ってんじゃないわよ。それとも何? 慰めてほしいわけ? だったら素直にそう言いなさい!」
・・・見事だな。その通りだ。
「わかった、悪かったよ」
オレが素直に謝るもんだから、今度はゼシカが拍子抜けした顔してる。
確かにみっともねえよな、オレ。トロデーン城でエイトの境遇を聞いてから、特にそう感じるようになった。
あいつも、ガキの頃から食うために仕事しなくちゃいけなくて。回りに大勢の人がいても、それは家族ってのとは少し違ってて。
それでも自分にとって大切な、守るべき存在が、ちゃんといてくれてたっていうのに。
・・・いざという時に、それを守ることが出来なかった。
まあ、エイトの場合は取り返しがつかないわけじゃないにせよ、無力さを感じたことには変わりないはずだ。それでも、あいつはスネたりせずに、いつでも穏やかにしている。孤独や不安なんか感じさせずにまっすぐ立っている。
それに比べると、オレはカッコ悪いよな。少し改めるか。
「仕方ないわね」
ゼシカが溜め息を吐いた。
「あんたの取り柄は、顔やイカサマなんかじゃないと思うわ。明日までに何か探して見つけといてあげる。だから、あんまり自分を傷つけること、言わないでよ。ホントに反応に困っちゃうんだから」
「・・・探すって、何を?」
「だから、あんたの取り柄をよ」
ちょっと、待て。
「私、今日料理当番なの、もう行くわね」
ゼシカは自分の言葉の意味に気づかず、行ってしまった。
おい、探してくれなきゃ、咄嗟に出てこねえのかよ。ある意味、マルチェロよりキツいこと言ってるぞ! 一つでいいから、即答してくれよ、頼むから!
エイトは本当に優しいヤツだよな。
もうすぐ夜が明ける。
見張りに立っていたオレは、起き出してきたエイトの姿を目に止めた。馬姫様に水をやり、ブラシをかけてやっている。馬っていうのは、睡眠時間が短い生き物だ。寂しい思いをさせないように、エイトのヤツもできるだけ早起きして、一緒にいてやるようにしてるんだろう。
「こら、ちゃんと見張ってなさいよ。何よそ見してるの?」
もう交替の時間か。ゼシカが上がってきた。
「何見てたの?」
オレの隣に来て、下をのぞき込んでる。
「エイトと姫様? 二人がどうかしたの?」
「いや、別に? ただ見てただけさ。キレイな光景を見るのは好きなんだ。滅多に見られるもんじゃないからな」
ゼシカはオレの顔をまじまじと見つめて、それから口を開いた。
「それよ、あんたの取り柄」
「はあ?」
オレは訳がわからなかった。
「本当にキレイなものが何か、ちゃんとわかるってこと。ククールって、宝石とか、立派な像とかには興味示さないでしょう? でも、思いやりとか優しさとか信頼とか、そういうものをキレイだと感じることが出来る。それって、とっても素敵なことだと思うわ」
・・・なんでこいつは、こんな恥ずかしくなるようなセリフを、真顔でサラッと言えるんだよ。
ちくしょう、ゼシカの顔がまともに見られない。
ほんとはさっき目が覚めた時、ゼシカの姿に見とれてたのはオレの方だ。
美人だからとか、そういうことじゃなくて。
穏やかな空間っていうか。優しい気持ちがそこにあるって、感じることが出来て。だから眠れたんだ、きっと。何も心配することなく。
頼っていい相手が、そばにいることがわかってて。無意識のうちに安心してたんだ。
ゼシカ、説明もしてないのにオレが何を指してキレイと言ったか、わかったんだろう?
オレに対して取り柄だって言ってくれたものは、ゼシカはとっくの昔に、当たり前に持ってたってことだ。いつでもまっすぐ、相手の目を見て話すってのも、オレには真似できないところだ。とても敵わない。完敗だ。
・・・負けてらんねえよな。いい頃合いだ。オレもここらで自分を変えてみるか。
今のオレにはまだ無理だけど、いつか胸を張って、こいつらのことを『仲間』だと言える日を、迎えることが出来るように。
<終>
初リアル遭遇!!(・∀・)
うわあぁぁぁ(m’∀’)m
お待ちしてましたぁ!!
ほんとにいつもステキな作品をありがとう・・・!!
>いきなり首筋にレイピアを突き付けられた。
でどきどきして
>ちょっと、待て。
でワラタ。
そんで最後はじわーんと感動した。・(゚´∀`゚)・。
353 :
まとめ人:2005/10/17(月) 22:21:51 ID:vtyd6jM+
職人の皆様お疲れ様です!
>◆JbyYzEg8Isさん
語り手交代の為、前後編に分けているということですが、まとめサイトでも分けた方がいいですか?
声を大にして言いたい。
GJ!
GJ!
萌えました!
しかし仕事早いですね、羨ましい。
GJ!
「ドラゴラム」や「パルプンテ」が出てくるせつない話ということは3?
まとめ人様。
いつもあざーっす!
まとめ人様、いつも大変お世話になっております。◆JbyYzEg8Isです。
>まとめサイトでも分けた方が
一つの話ですので、できれば分けずにまとめてくださると、ありがたいです。
お気遣いありがとうございます。
お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。
感想くださった皆さん、ありがとうございます。
すごく細かいところまで読んでくださっていて、とても嬉しいです。
書くのが楽しくなります。
>>355 神鳥つながりで、やっぱり3ですかね?
4,5,6でも良さそうな辺り、ホントDQって完全ハッピーエンド少ないですね。
最近、一般のククゼシサイトさんも定期的に作品を発表しているところが
凄く少なくなってきた気がするので、ここの職人さんに期待です。
萌えを、どうもありがとー。
_ ∩
( ゚∀゚)彡 ククゼシ!ククゼシ!
⊂彡
○月○日
この前あの色ボケ白髪頭がディナーに誘ってきた。
間髪いれずに断ったけどしつこく言ってきたから
その辺に落ちてるチェーンで双竜打ちして黙らせた。
そしたら必死にベホマとスカラを唱えまくってまた近づいてきたので
誘いに応じた振りしてばっくれてやったら
枯れた花を抱えて帰ってきた。バカだなぁと思った。
ギャグですよ。
361 :
まとめ人:2005/10/20(木) 22:00:05 ID:7eYvb3SQ
まとめサイト更新しました。最近遅くて本当に申し訳ないです。
>◆JbyYzEg8Isさん おkです。
まとめ人様
いつもありがとうございます
ゲ ー ム は 「 ロ ー グ ギ ャ ラ ク シ ー 」 で 、 映 画 を 超 え る 。
世 界 最 高 ゲ ー ム 、「 ロ ー グ ギ ャ ラ ク シ ー 」
かつてゲームは、何度も映画というものを目指した。
しかし、それは実際には、映画を真似ただけの「映画以下」のものでしかなかった。
だが、ついにゲームが、映画をも超える時が来たと確信する。
このレベル5の最新作が、そのすべての答えを握っている。
あらゆるエンターテインメントの頂点に、1本ゲームが降り立つのである。
日野烈士筆頭に究極のスタッフによって完成されつつある。
プレイステーション2という現行機でありながら、次世代機のような輝きのあるリアルグラフィック。
フルオーケストラのすばらしい音楽に、心が振るえ、体が熱くなることだろう。
まちがいなくこのゲームは、史上最高のゲーム・・いや、至高のエンターテインメントになるだろう。
SFシネマティックRPGローグギャラクシー
――――――さ ぁ ふ る え る が い い
まとめ人さん、お疲れ様でした。
無理なさらず、ご自分のペースで運営してくださいね。
更新してくださった翌日に投下しにきた私が言うのも、アレなんですが・・・。
ほんと、すいません。
おい、寄り道大好きエイト君よぉ。お前は何だって、こんな人気のないとこまで足を踏み入れようとしやがるんだ。
オレたちは今、ドルマゲスが逃げ込んだ闇の遺跡の結界をどうにかするために、サザンビークに魔法の鏡を取りに行く途中じゃなかったのか?
お前、本気で馬姫様やトロデ王の呪い解く気あんのか? そんなんで、よく近衛兵なんて勤まってたもんだ。
・・・と、さっきまでは、心の中で不満を並べてたんだがな。
まいった、もうエイトの寄り道好きを完全否定は出来ない。
本当に世界は広い。この世に、呪いを解くことのできる泉が存在するなんて、修道院にいたら一生知ることは無かっただろうな。
このふしぎな泉の近くに住んでるじいさんの勧めで泉の水を口にした途端、馬姫様は、あら、びっくり。絵に描いたような美人のお姫様に大変身だ。
でも世の中は、そうそう都合良く、事は運ばない。人間の姿に戻れたのはほんの少しの間だけで、姫様はまた馬の姿に戻っちまった。
可哀想に、ぬか喜びか。ミーティア姫は、すっかり落ち込んでしまってる。
「さあ、出番だぜ、エイト。姫様になぐさめの言葉のひとつでも、かけてやるんだな」
そう言ってエイトの背中を押したことに深い意味は無かった。ただ、その時はそれが一番自然なことだと思ったんだ。
でもオレはそのことをすぐに後悔することになった。すぐ隣にいたゼシカが、小さく呟くのが聞こえたからだ。
「ショック・・・」
ゼシカは姫様を見てそう言った。再び泉の水を飲み、エイトと嬉しそうに話す姿をだ。
そうだ、ゼシカはエイトのことを・・・。
しまったと思った。よっぽど鈍い人間じゃなければ、一目でわかる。姫様はエイトのヤツが好きで、エイトも姫様のことを大事に思ってるってことぐらいな。
「ゼシカ。その、なんだ、まだ決まったわけじゃないんだからさ、そう落ち込むなよ。ゼシカの魅力があれば、まだ勝負はわからないぜ」
ゼシカは、元気のない顔を、オレの方に向けた。
「ククールはどう思うの? 私とミーティア姫と、どっちだと思う?」
言葉に詰まった。軽々しい気休めなんて言うもんじゃないな。自分の首を締めるだけだ。可哀想だけど、エイトとミーティア姫の間には、誰も入り込めない絆ってやつが、もう出来ちまってる。ゼシカの想いは叶わないだろう。
「・・・やっぱりククールも、ミーティア姫の方が美人だと思うんだ」
・・・は?
「ミーティア姫が、あんな美人なお姫様だったなんてショックだわ!」
ちょっと待て。
「でも、スタイルでならミーティア姫に勝つ自信があるわ。私の胸は最強なんだから!」
何だかわからないところで、ゼシカは熱くなっていた。
オレの思考はおいてきぼりになる。
そういう時は迂闊に口を開くもんじゃないんだが、その時のオレはどうかしてた。
「ショックって、失恋のショックじゃないのかよ!?」
ゼシカは心の底から、わけがわからないという顔でオレのことを見た。
「失恋? いったい、何の話をしてるの?」
三分程度でいいから、時間を戻す魔法ってのがあるなら、どんな修行してでも習得するぞ、オレは。言った言葉を取り消す魔法でもいい。
確かめるまでもない。完全なオレの思い込みだ。そういえば最近、オレに対してとエイトに対して、あんまり態度とかに差がなかった気がする。
落ち着け。まだ決定的な言葉は言ってない。何とかごまかせ。ゼシカは信じやすい、どうにでもなるはずだ。
「もしかして、私がエイトのこと好きだと思ってたわけ?」
おい、こら、ゼシカ! こんな時だけ鋭くなってんじゃねえよ!
「あんた・・・女の子のことなら何でもお見通しって顔してるくせに・・・そんなアホな勘違いしてたの・・・」
ゼシカは必死になって笑いをこらえているようだ。一応、姫様とトロデ王に気を使ってるらしい。
ああ、確かにアホな勘違いだったよ。人の恋路を応援してやろうなんて、そんな似合わない考え持ったこと自体が、もうアホな勘違いだ。
慣れないことしようとするから、こういう恥かくハメになる。
余計なことは考えないに限るな。今はドルマゲスを倒すことだ。そうすれば姫様と、ついでにトロデ王の呪いも解ける。全て丸く収まる。
やっぱり、エイトの寄り道グセは何とかしてもらわねえとな。今回のこと全部アイツのせいだぞ。
どうかしてたぜ、まったく。
・・・何でだろうな。・・・ゼシカが絡むと、ホントにどうかしちまうんだよな。
ああ、もうサイアク。
いくら魔法の鏡をもらうためだからって、不正行為に手を貸すようなマネ、本当はしたくないのに。
しかも、護衛しなきゃならないのは、もう本当に、どうしようもないとしかいいようがない、態度だけはデカい王子様。
アルゴンハートなら、もう三つも手に入れたっていうのに『これじゃあ小さい』ってゴネて、結局この王家の谷で野宿することになっちゃった。
自分はロクに戦いもしないくせに、よくあれだけ勝手なこと言えるわね。かよわい女性がいるってこと、考えてくれないのかしら。
必要な場合なら野宿でも文句なんか言わないけど、できればちゃんと屋根のあるところで眠って、疲れはしっかり取りたいのよ。ただの見栄とワガママのために、付き合わされるなんて冗談じゃないわ。
うう、冷える。そろそろ夜明けかしら。真夜中より明け方の方が絶対寒いわよね。頭にきてたせいで、あんまり眠れなかったわ。こんな体調で王子が納得するまでアルゴリザードと戦わなくちゃいけないのかしら。
不意に肩に何か掛けられた。顔を上げてみるとククールだった。自分のマントを私にかけてくれたんだ。
「ごめん、起こしちゃったか? 寒そうにしてたから」
「ううん、元々眠れてなかったの。ありがとう、ちょっと冷えると思ってたところ。ククールは寒くないの?」
「ああ、元々オレの方が厚着だからな」
この人は本当にマメよね。ここまで気を遣ってくれなくてもいいとは思うんだけどね。
・・・気を遣うで思い出しちゃった。ククールのアホな勘違い。私がエイトに切ない片思いしてると思い込んでたなんて、バカみたい。
思わず吹き出してしまう。
「・・・どうしたんだよ、いきなり」
ククールは怪訝な顔をしてる。
「いえ、何でもないの、ちょっと思い出し笑い」
嘘じゃないけど、本当のこと全部も言えない。言ったらスネるに決まってるから。
どうして私がエイトのこと好きだなんて、勘違いしたのか聞いてみたら、私がエイトにだけ素直な態度だったって言われて、私つい、正直に言っちゃったのよね。
エイトに対してだけ素直だったんじゃなくて、ククールにだけ、素直になりたくなかったんだって。ムッとされたわ、やっぱり。
でも一応、私のこと考えてくれてたんだものね。笑ったりするのは悪いわよね。
アルゴリザードの親玉を倒して、ようやく王子の納得する大きさのアルゴンハートを手に入れたっていうのに、チャゴス王子はバザーに来てた商人から、もっと大きなアルゴンハートを買ってしまった。
信じられないわ。私たちの苦労って一体何だったの?
しょうがないから、このモヤモヤも、まとめてドルマゲスにぶつけることにするわ。
クラビウス王は王子のしたことを見抜いていたけど、約束通り魔法の鏡は譲ってもらえることになった。王様はまともな人で良かった、一時はどうなることかと思ったわ。
でも当たり前よね。私たちは苦労してちゃんと役目を果たしたんだから。
「アルゴンハートを渡したときのクラビウス王は、なんとも言いがたい複雑な顔をしていたな・・・。なんつーか、痛々しくて正視にたえなかったぜ、ホント」
宝物庫への階段をのぼっている時に、ククールが呟いた。
・・・そうね。王様はまともな人だけに、ショックは結構大きかったかもね。
そういえばさっき、チャゴス王子の行動に私やヤンガスが怒っている時も、ククールだけはアルゴンハートを売った商人さんの心配をしていたっけ。
この西の大陸に来てから、ククールは優しくなったと思う。
元々が優しい人だっていうのはわかってたけど、それを素直に表すようになったっていうか、斜にかまえた感じが無くなってきたみたい。
もしかして人見知りする人だったのかしら。うちとけてきただけ?
「階段あがる時によそ見するなよ。危ないぞ」
言われて初めて気づいた。ククールのこと考えてたら、いつのまにか本人のこと見てたみたい。
「オレに見とれるのは、わかるけど」
こういうバカなこと言うところは変わってないわね。
「見とれる要素なんて、どこにも無いわよーだ」
「あいかわらず、容赦ねえな。ま、いいさ。ゼシカが落ちてきてもオレが受け止めてやるよ。なんてったってオレはゼシカだけを守る騎士だからな」
「その手にも乗らないわよ」
そう、ちゃんとわかってるわ。ククールは相手が誰だろうと、絶対助けるわよ。私だけ守るなんてことありえないって。
そんな言葉で勘違いしたりしないんだから。
そこまで私もバカじゃありません。おあいにくさま。
<終>
かぁーっ!乙です!
デキてるのかまだそうでないのか、この微妙な感じがたまらんですな!
>>◆JbyYzEg8Is氏
いつも思っていたのですが、前編後編で分けるってかなり画期的に思います。
時系列が複雑なので読み応えがあるというか読み甲斐があるというか…
今回も人間臭いよい話でした!GJ!
時間よ戻れパルプンテー
うわぁぁぁ!
話が繋がって来てニヤニヤしてしまいました。
激しくGJです!!待ってて良かったー。お疲れさまです。
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
>>◆JbyYzEg8Is氏
そして一番の勘違いは「そんな言葉で勘違いしたりしないんだから」でした、と。
うまい!
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
◆JbyYzEg8Isです。
読んでくださって、コメントくださる皆さん、いつも温かいお言葉ありがとうございます。
すごく丁寧な感想をいただけて、とても喜んでます。
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
荒らしはスルーでお願いします
別スレでnameに「ニセ山崎渉」と入れてふしあなさんになった事があるが
これはどうして無事なんだろう?
「山崎」と「渉」の間を半角でも空けると、フシアナにはならないよ。
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
保守
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
つーか、誰よりもこのスレこまめに巡回してるのがすごいね。
____
、-''~:::::::::::::::::::::::"ー-,
;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
|:::/ ̄ ̄ ̄`' ̄ ̄¨ヾ::::|
|:::| ━、_ _.━ |.:.::|
|/ .,-ェュ ,-ェュ |.:.:|_
(゙| ´ ̄ ,/ 、  ̄` |/,. |
| ( 、 ゙、__,-'' 、)ヽ__/
\ `こニニ'´ _..┘ <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
\___ _ , /
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 中山悟
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
男の人って、皆こうなのかしら。
ようやく闇の遺跡の結界を払って、いざ決戦だっていうのに、緊張感が無さすぎるわ。
ククールとヤンガスはさっきから、まるで漫才みたいなことばっかり言ってる。
『ドルマゲスはカミサンと待ち合わせ』とか『この中の誰かが帰らぬ人になっても、アッシは皆を忘れない』とか、バカじゃないの?
エイトだけは違うと思ってたら、宝箱に入ってたちょっと珍しいアイテムが錬金に使えそうだからって、一度馬車に戻ったりするし。
もう、みんな真面目にやってよね!
「もしドルマゲスが土下座して謝ってきたら、どうしやす?」
ヤンガスがまた、変なことを言い出した。
「そっ、それは問題だな」
何が、問題なのよ、ククールまで!
「無抵抗の敵に手を上げるのは、騎士道に反する」
「なにが騎士道よ。バッカじゃないの」
ついカッとなってしまう。
あいつ、ドルマゲスは、無抵抗のサーベルト兄さんやオディロ院長を、笑いながら殺した奴なのよ。今さら何をしたって許せるもんですか。たとえ刺し違えてでも、あいつはここで止める。もうこれ以上犠牲を出すわけにはいかないんだから。
「ゼシカ、こえーよ」
ククールは笑ってる。どうして、そんなに呑気にしてられるの?
「ククールは、オディロ院長の仇を討ちたくないの? ドルマゲスが土下座してきたら、本当に許すつもり?」
ククールは肩をすくめる。
「あの野郎が、そんなことしてくるとは思えねえな。だから仇はしっかり討つさ。そしてオレは自由になる。
ゼシカも、敵討ちが終わった後のことを考えた方がいいぜ。オレは勝てない勝負はしない。ドルマゲスは必ず倒す。全員で生きて帰るとか言ってる口で、相打ち覚悟なんて言うなよ。ホントにそうなっちまうぞ」
「・・・ごめんなさい」
わかってはいるのよ、本当は、みんな真剣だって。
「リラックスしろよ、何度も言ってるだろ?」
そう、確かにククールはさっきから何度もそう言っていた。
そういえば、以前ヤンガスが言っていた。私とエイトは場数を踏んでないって。
だから、二人でバカなことばっかり言ってたのかしら。少しでも私たちの緊張を和らげるために?
私には帰る家がある。エイトもトロデーン城の呪いが解けたら、元の暮らしに戻れる。でも、ククールとヤンガスはそういうものはもう無いはずなのに・・・二人とも強いね。
さっき、ククールを誘ってみた。ドルマゲスを倒した後、リーザス村に来ないかって。
でもククールは相変わらずのポーカーフェイスで、どう思ったのか全然わからなかった。また『よけいなおせっかい』って思われたかもしれないわね。でも、言わずにはいられなかった。
ヤンガスは『エイトの兄貴のそばがアッシの故郷』って言ってるから大丈夫だと思うんだけど、ククールとは、一度別れたら、もう二度と会えなくなりそうな気がして。
自分は誰にも必要とされてないって、そう思い込んでるみたいなんだもの。とてもほっておけない。
それなのに私の身の振り方を心配するなんて、どうかしてるわ。いつだって、周りの人のことばっかり。
だから、余計に心配になる。
心配してる人間が、ここに少なくとも一人はいるんだって、せめてそれだけでも知っておいてほしかった。
・・・今はもう余計なこと考えちゃダメ。ドルマゲスは気を散らしてて勝てる相手じゃないわ。
あいつはもう、すぐそこにいる。
何なのこいつ・・・。やっとの思いで倒したと思ったのに。
ドルマゲスは変わり果てた。翼に尻尾、尖った耳。もう人間とは呼べない。
私はもうあまりMPが残っていない。ククールもエイトも多分そう。この状態で悪魔の化身のようなこいつと、戦って勝たなくちゃならないんだ。
でも、ククールを見ると、彼は不敵な笑みを浮かべていた。その姿は自信に溢れていた。
何か策でもあるの?
・・・まだ、諦めるのは早い。そう思っていいのよね。
そうよ、初めてドルマゲスと遭遇した時、私、怖くて体が動かなかった。
でも今は、ちっとも怖くなんてない。だって、ここに来るまで私たちはたくさんの苦難を乗り越えてきた。みんなの力を合わせれば、どんなことだって出来た。
サーベルト兄さんだって、一人の時じゃなければ決してやられはしなかったはず・・・。
今、私は一人じゃない。だから、こんな奴に負けるわけにはいかないんだわ。
ドルマゲス、強さを増したのは、てめえだけだとは思わねえ方がいいぜ。
確かに感じる。オレの中に芽生えた新しい力を。
でも、その力を使うための肝心のものが不足中だ。
「MPを補給するまで防御に専念しててくれ!」
皆に指示を出し、まほうのせいすいを振り撒く。
回復したMPはベホマに換算すると5発分。ダメだ、まだ足りない。
頭上に小さな影が落ちる。慌ててよけると、中の液体が肩口に降り注いだ。その場所から魔力が沸き立つ。まほうのせいすいだ。更にMPが回復する。
十分な量ではないにせよ、ギリギリどうにかなりそうだ。
ビンが飛んできた方向を見ると、エイトが苦笑いしていた。目測誤ったな、このヤロウ。もうちょっとで頭に当たるところだぜ、後で覚えてろよ。ちゃんと礼はしてやるから、必ず生きて帰ろうぜ。
なんて、気を抜いてる場合じゃなかった。ドルマゲスの攻撃をモロにくらっちまった。続けて、羽根の雨が降り注ぐ。冗談じゃねえぞ、こんな時に倒れてられるか。
「ホイミ!」
ドスの聞いた声と共に、癒しの光が体に染みとおる。ヤンガスか。ニカッと笑いかけてくる。
ヤンガス、お前、ドルマゲスに直接恨みがないことに引け目を感じるって言ってたよな。バカ言ってんじゃねえよ。自分に直接関係ないことなのに、ただエイトのためだけに、こんな戦いに身を投じる。カッコ良すぎるじゃねえか。お前は最高にイイ男だよ。
光の衣が体を覆う。今度はゼシカのフバーハだ。
防御してろって言ったのに、どいつもこいつも、しょうがねえな。
まあ、仕方ねえか、指示だしは本来、エイトの役目だもんな。
羽根の雨で全員傷ついている。新呪文の初披露にはもってこいだぜ。
この土壇場になってこの力を目覚めてさせてくれるとは、神様もたまには粋なことをしてくれる。勝利の女神様もオレにホレたか? ここはしっかりキメてやるか。
「ベホマラー!」
全員を包むことの出来る癒しの光。さっきの羽で受けた傷は全て塞がっていく。
「待たせたな、これから先の回復は全部任せてくれ。新生ククールさんのお披露目だ」
エイトが頷いた。手にした剣を握り直し、ドルマゲスに斬りつける。
ありがとよリーダー、信じてくれて。期待には必ず応えてみせるからな。
不思議だな。この旅に出たばかりの頃、正直、ドルマゲスに勝てる気がしてなかった。なのに今はサッパリ負ける気がしねえ。
どうしてだか、教えてやろうか? ドルマゲスのおじさん。
答えは簡単だ。4対1で負けてたら、みっともねえだろう? どんなに大きな力を手にいれても、お前は結局独りぼっちだった。可哀想にな。同情するぜ。
だけど、オディロ院長を殺したことだけは許せない。そのカタだけはつけさせてもらう。お前はやっぱり、ここで死ぬんだ。
ドルマゲスの攻撃は緩まない。オレは回復に手一杯だ。
本当なら、院長の仇に一撃くらいはくらわしてやりたかったが、まあいい。オレにとっての雪辱は誰も死なせないこと。ここにいる全員の命を守りきってみせることだ。トドメはゼシカにでも譲ってやるか。敵討ちって動機は一緒だしな。
「ゼシカ! 悪いけど回復で手が空かねえ! オレの分まで、キツイの一発、ぶちかましてやってくれ!」
ゼシカはオレの方を向いた。こんな時まで相手の目を見ることを忘れない。おまけに命懸けの戦いの真っ最中だってのに、可愛らしく微笑んで頷いてきた。こんな女、二人といないな。
「任せといて!」
ゼシカはテンションを上げた。
厳しい攻撃が続く。全員、立ってるのがやっとだ。オレも最後のベホマラーを放つ。もうMPは残っていない。
ゼシカがその手に火球を生み出す。見た目には大きくないが、意識の全てを集中した魔力の固まりだ。それがドルマゲスに向けて投げ付けられた。先刻エイトが付けた刀傷に入り込み、炎がその傷口を引き裂く。
そして、ヤツは崩れ落ち、砕けて灰になった。
見事にトドメを刺し、敵討ちを終えたゼシカは、すっかり沈んじまってる。さっきまでのハイテンションはどこへやらだ。
ホントに自分の感情に素直だよな。ちょっと羨ましくもなる。
ドルマゲスを倒したら一人で旅に出て、二度と会うことも無いなんて思ってたけど、たまにいきなり会いに行って、驚かしてみようかなんて思ったりもする。珍しい土産なんか、持っていったりして。
きっとその時も、素直な感情を表すだろうから、反応が楽しみだ。連絡ぐらいしろって、怒鳴られる可能性が一番高そうだけどな。
だけどもし、少しでも嬉しそうにしてくれたなら・・・。
・・・そういうのも、きっと悪くないよな。
<終>
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
おおっ!!新作乙です!!
おおお、新作乙です
◆JbyYzEg8Isさんのククゼシは二人が成長する様子もしっかり書かれていてハァハァです
ククール僧侶の鏡だね(つД`)
自分がゲームやってた時もドルマゲス第二形態の時に
ククールがベホマラー覚えてくれた事を思い出したw
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
>>394-396 ありがとうございます。
しかし、私の話の中では二人とも指一本触れないことが多い・・・。
そろそろ何とかしないとダメですねw
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
ああそうか。
どこかで見たタイトルだと思ってたら、絵板だった。
『その9』きてたね。激しくうれすぃー(・∀・)!
保守〜
触発されてDQ82週目はククール先頭でやってます。
しかし戦闘後に隣りのゼシカをレイピアで斬っている様に見えて
ちょっと嫌(´・ω・`)
その気持ちわかるw
血を払い落としてるんだろうけど、危ないよね。
それでも隣りゼシカなのは変えたくない罠w
ゼシカ二番目かYO!なんちゅー危ないパーティーだw
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
私は二人旅にしてるよ。
>>408 自分もそれやりたいけど、辛そうだなーw
レベルどれぐらい上げればできるんだろう。
上の話を見て思いついた小ネタを一つ。
「キャッ、ちょっと、こっちに血が飛んできたわよ。あー! スカートに着いたじゃない、どうしてくれるのよ!」
戦闘終了後、必ず剣を一振りしてから鞘に収めるククールに、ゼシカが文句を言う。
「あー、ゴメン。お詫びに洗濯するから脱いで。よければ全部」
悪びれもせずにとんでもない発言をするククールに、ゼシカはムチを構える。
「アホなことばっかり言ってんじゃないわよ。だいたいアンタ、血が付いてない時も必ずそうやって剣を振るわよね。危ないからやめてよ、いつもヒヤヒヤもんなのよ」
「さすがにそこまでヘマはしねえけどさ、これもうクセになってんだよ。修道院時代の悲しい習性」
修道院時代のクセと聞くと、ゼシカも少し興味がわく。
「・・・理由によっては許してあげるわ。話してみて」
「ゼシカみたいな、いいとこのお嬢には話したって無駄さ」
バカにするようなククールの声の響きに、ゼシカは益々ムキになる。
「そんなこと決め付けないでよ、いいから聞かせて」
ククールは遠い目をし、ゆっくりと話し始めた。
「チューブ式のハミガキあるだろ?」
「はい?」
「あれ、最後の方になると中々出てこないけど、反対側持って思いっきり振ると出しやすくなって、結構使えるんだよな」
「アンタ、何の話してるの?」
「だから、とにかく振ればいいってクセがついちまって、剣も最後に振っちまうって話」
ゼシカは脱力した。
「セコすぎる。怒る気なくしたわ・・・」
しかし、周囲の仲間はククールの話に感心していた。
「ああ、そうすれば良かったんだ。いつも反対側を切って、こそぎ出してたよ。ククール、あったまいい!」
「うんうん、物を大事にするのは大事なことでがす」
「だよな、修道院って限られた物資で質素に暮らすから、こういうちょっとした智恵って重要なんだぜ。不自由なく育ったゼシカには、わかんねえだろうけどな」
ゼシカは救いを求めるように、一応は王族のトロデ王を振りかえる。
「そうか、鮭缶にかけるマヨネーズもその手を使えばいいんじゃ!」
そうしてゼシカはククールのクセに文句を言えなくなり、戦闘が終わるたびに斬られそうになってビクビクするのであった。。
この世界にチューブ式のものがあるのかというツッコミはご勘弁を。
>>410 GJです!
ビクビクするゼシカを楽しんでそうだなククールw
ところで2人旅って事は他2人は棺桶?
>>410 いやいや、トロデ王の倹約っぷりには領民も頭が下がる思いですなw
GJGJ!
2人旅ということはそれはもう2人きりであんなことやこんなことや(ry
ってうわなんだおまえrやめrくぁwせdrftgyふじこlp;@
オレは武器に対してこだわりは無い。
剣でも弓でも、杖だって構わない。その時点で手に入る最良の物を使う。
ある時は『器用』と褒められ、ある時はその言葉の後ろに『貧乏』と付けられて陰口叩かれてきた。
別に構わなかった。人間なんて、いざとなったら一人だと思ってたから、一つのことしかできないより、何でも一通りこなせる方が有利だと思ったからだ。
でもやっぱり、コンプレックスあったんだろうな。だから、ドルマゲスとの最後の戦いの直前にベホマラーが使えるようになった時、浮かれちまった。
旅の間でも、オレの器用貧乏ぶりは健在だったからだ。
力や体力ではエイトとヤンガスに及ばず、攻撃魔法ではゼシカに完敗。かろうじて得意と言えた回復魔法も、エイトだって大抵のものが使えた。オレにしか出来ないことってのが見当たらなかった。
それがあの土壇場で、最高に役に立つ呪文を習得して、回復全部任せてもらって、キッチリ役目を果たせたもんだから、テンション上がっちまったんだ。
そして、ゼシカのことは放っておいた。
ゼシカには帰る家があって家族も待ってるんだから、大丈夫だろうと勝手に決めつけてたんだ。
オレは薄々、気づいていた。ドルマゲスを倒した後、ゼシカを襲うのは虚しさだろうってことは。
実際そうなってしまったのにも、すぐ気がついた。
でも、何もしてやらなかった。
事前にそれとなく忠告だけはしてきた。敵討ちが終わった後の、身の振り方は考えておけと。
今思うと、言葉が足りてなかったのはわかる。
復讐なんてものを最終目標にすれば、終わった後にガックリ来て、全てが虚しくなっちまうもんだって。だからオレはその後にある自由を目指したんだって。そう教えてやれば良かったんだ。なのに、そうしなかった。
同じ『敵討ち』という目的を持っていたオレだけが出来たことだったのに・・・。
こんなところでまで、オレは中途半端だった。
あの時のオレも不安定だったんだ。
いろんなしがらみを断ち切ったと思う解放感。自分の役割を果たせたという達成感。そして、追いかける相手がいなくなった喪失感と、自由に対しての不安。
でも、そんなこと間違っても口に出したくはなかった。
だから、避けたんだ。ゼシカと話をすることを。
あの瞳に見つめられるのが怖かった。つい、自分をさらけ出してしまいそうになるから。
いつもオレはそうだった。
ゼシカはいつでも、オレに歩み寄ろうとしてくれていたのに。
ゼシカがオレにそっけなかったのは本当に最初だけで、その後はずっと理解しようとしてくれていた。仲間として、信頼もしてくれた。
オレのために怒ったり、悲しんだりして、心配してくれていた。
でも、オレは決してそれを受け入れなかった。
いつでも壁を作って、心の深いところまでは入り込ませないように突き放してきた。
それなのに、気が向いた時だけ、優しさや気遣いを見せたりして、ゼシカを戸惑わせ続けた。
一度だって、本当にゼシカを思いやったことなんてなかった。
『ゼシカもうれしいだろ? どうだ? 兄のカタキを討った感想は?』
ドルマゲスを倒した後、オレが言った言葉。
あれがどれだけゼシカの心を逆なでしたかと思うと、胸が痛む。
嬉しいはずがない。オレだって、ちっとも嬉しくなんてなかった。だからこそ言っちまったんだ、あんな言葉。オレはいつだって、自分の心をごまかすことばかりに一生懸命だったから。
仇を討つという誓いが、いなくなってしまった人との間に残されていた最後の絆だった。
それが無くなってしまったんだ。嬉しい気持ちになんて、なれるはずがない。
ましてやゼシカにとって、兄のサーベルトの存在は幸福の象徴だった。喪失感はオレなんかの比じゃなかったと思う。
心の中に何もなくなって、スキができてしまったのかもしれない。
もしあの時オレが、ゼシカの事をもっと、ちゃんと考えてやっていたら。
何かは変えることが出来たんだろうか。この悪夢の様な現実を、少しでも。
「マホカンタ」
光のカベを出現させる。魔法使いを相手にする時の、戦術の基本だ。
覚悟は決めた。どうあっても、しくじるわけにはいかない。必ずここで止めるんだ。そうでなければ取り返しのつかないことになる。
ゼシカ、もう少しだけ待っててくれ。必ず助けてやるからな。
たとえ、その手段が、こうしてお前と戦うことだったとしても。
ようやく見つけたゼシカは変わり果てていた。
関所を強硬突破し、リブルアーチの町を破壊して、人の命を狙ってる。何が起こってるのか正確なところはわからないが、何かに操られてるんだろう。
今もオレたちを殺して、目的を果たそうとしている。頼みの綱は、ハワードが調合している結界だけ。
オレたちの目的は、ゼシカを倒すことじゃなく止めることだ。
ゼシカがゼシカである限り、主な攻撃手段は魔法のはず。マホカンタを切らさずにいれば、手詰まりにさせられる。そう思った。
甘かった。おかまいなしだ。
マヒャドやベギラゴンが跳ね返されて、自分の身体に火傷や切り傷、凍傷を負っても、ゼシカは魔法を撃ってくるのを止めない。このままじゃあ本当にゼシカは死んじまう。
おまけに、メラゾーマまで撃ってきた。オレが出現させた光のカベに跳ね返され、ゼシカの身体は巨大な火の玉に包まれるが、それでもあいつは笑っている。
汚ねえやり方しやがる。結果的にゼシカを傷つけてるのはオレだとでも言いたげだ。でもな、相手を間違ってるぜ。オレはそんなに優しい人間じゃねえんだ。マホカンタの解除だけは絶対にしない。感傷なんかで、やられてやるわけにはいかねえんだよ。
ゼシカが杖で撃ちかかってきた。油断してると吹っ飛びそうだ。こんな力をゼシカの華奢な体で出し続けたら、骨も筋肉もボロボロになる。
もう結界なんて待ってられねえ。オレのこの手でやるしかない。
オレは堕天使のレイピアを抜いた。エイトとヤンガスが驚いた顔をする。
「ククール! まさかゼシカの姉ちゃん、斬るつもりでがすか!?」
「このままにしておく方が残酷だ! 大丈夫、修道院にいた頃、人の身体の仕組みは勉強した。命は取らずに身体の自由だけ奪う。任せろ!」
悪いな、ゼシカ。かなり痛い思いさせることになる。少しの間、耐えてくれ。
文句なら、後でいくらでも聞いてやるからさ。
ゼシカはずっと眠り続けている。時折うなされるものの、目を覚ます気配はない。
ゼシカが受けた傷は全て治療した。少し前まで熱を出してたけど、それも下がった。
だけど、ゼシカは目覚めない。・・・もう夜が明ける頃か。
肩に手を置かれ、振り返るとエイトが立っていた。眠ってていいって言ったのに、起きてきたのか。
付き添いを代わると言われたが断った。あの戦いで、ほとんど無傷だったのはオレだけだからだ。特にエイトは、オレがゼシカを止めてる間、シャドーの相手をしながら自分自身とヤンガスの回復も引き受けてたんだ。簡単に疲れは取れないだろう。
そう、あの場面で動く体力があったのは、ゼシカの魔法をくらってないオレだけだった。なのに何故動かなかった? ハワードの結界に弾き飛ばされ、地面に落ちてくるゼシカを、オレは抱きとめてやれなかった。体は動いたはずなのに、ただ見ていただけだった。
ゼシカの両足は折れていた。あんな高さから落下したんだ、当たり前だろう。
ふと外の気配がおかしいのに気づく。殺気とまではいかないが、妙にザワついてる。穏やかじゃない。
やっぱりエイトに付き添いを代わってもらうように頼んで、外に出てみた。
宿屋の外では、町の男たちが集まっていた。武器を持っている者もいる。皆、オレの姿を見て後ずさる。
「・・・何の、用だ?」
聞かなくてもわかる。狙いはゼシカか。
思わず剣の柄に手がかかるが、かろうじて抜かずに止める。
コイツらが悪いんじゃない。昼間あれだけのことがあったんだ。恐れをなして当然だ。ゼシカが起き出して、また暴れるんじゃないかと心配なんだろう。だから眠ってるうちに殺してしまおうとする。
無理のないことだ。責められない。
「・・・あんたたちには迷惑かけたと思ってる。だけど、彼女を殺させるわけにはいかない。責任は全てオレが取るから、この場は退いてほしい。頼む」
「責任取るって、どうするんだ?」
武器屋のオヤジが訊いてきた。
「もし彼女の目が覚めて、まだ誰かの命を狙うようなことがあったら、その時はオレのこの手で始末をつける」
この手で、今度こそゼシカを斬る。
「それでも退いてもらえないというなら、今この場で、あんたたちの相手はオレがする」
剣にかかる手に力がこもる。もう、これ以上誰にも、ゼシカを傷つけさせはしない。
町の連中は、引き上げていった。
でも、まだ油断はしない方がいい。オレは入り口近くで見張ることにした。
エイトだけでなく、ヤンガスもトロデ王も起きてきていた。
「どこに行っておったんじゃ、ククール」
「ちょっと外の空気を吸いにな」
とても、本当のことは言えない。
「少し眠っておいた方がいいでげすよ。一晩中起きてたんでがしょう?」
「いいんだよ、夜更かしは得意分野だ」
ゼシカが目を覚ます時には、その場にいなきゃならない。さっきの連中との約束を果たすためにも。
あいつらに対する最後の脅しは、ほとんど八つ当たりだ。悪いことした。
ただ、気づいちまったんだ。オレがゼシカを抱き止められなかった理由。
オレは心のどこかで諦めてたんだ。ゼシカを取り戻すことを。
オレに手足の筋を切られ、動けなくなってもなお、あれだけの膨大な魔力を放とうとするゼシカの姿。
あの姿を見た時、ゼシカはもうダメなんじゃないかって思った。
ドルマゲスのように完全に人ではなくなって、砕けて灰になるしかない存在に変わってしまったんじゃないかと、そう思ったんだ。
根拠なんてなかった。オレの心の問題だ。
いつだって、最悪の事態ばかり想定する。
下手に期待を持たなければ、裏切られることはない。
望む前に諦めてしまえば、叶わなくても傷付かずに済む。
初めから逃げてしまう癖がついてるんだ。
最低だ・・・。
そして、バカだ! 諦めるなんて、出来るのか、本当に?
目を覚ましたゼシカが、また襲いかかってきたとして、本当に殺せるのか?
ああ、やるさ。オレがゼシカの立場だったら、わけのわからない奴に操られて、いいように利用されるぐらいなら殺してほしい。きっとゼシカも同じはずだ。だから出来る。他の誰かにやらせるぐらいなら、このオレの手でやる。
でも、そうしたら終わりだ、何もかも。この世の全てのものに、意味なんて無くなる。
ゼシカ、頼むから目を覚ましてくれ。声を聞かせてほしい。
バカでもアホでも、軽薄野郎でもいい。お前の言葉なら、何でも受け入れる。
今度こそ約束する。必ず守るって。どんなことからも、何者からでも。
全てをかけて誓うから、どうか戻ってきてくれ!
「おお、おお、ようやく気づいたか」
トロデ王の声で、ゼシカが目を覚ましたことに気づく。
「トロデ王・・・。エイトも・・・。私・・・どうしてたの?」
・・・正気、だよな。
一気に体中の力が抜けそうになった。壁によりかかってなかったら、みっともなく引っ繰り返ってたかもしれない。
ゼシカが暗黒神ラプソーンがどうたらって話をしてるが、半分も頭に入ってこない。
かろうじてわかったのは、ゼシカが持ってた杖を回収しないとならないってことと、その杖に触れるのはヤバイってことだ。
まだ本調子じゃないゼシカは宿に残してトロデ王に任せ、オレたちは杖を探しにいくことになった。
エイトとヤンガスが、やけにニヤニヤしてる。二人で、肩とか叩いてきやがる。
ちくしょう、わかったような顔してんじゃねえよ。
「仕方がなかったとはいえ、レディと戦うというのは、オレの美学に反する行動だったな。もっとも、あんなに手強いレディをデートの相手にするのは、ごめんだがね」
オレはいつも以上にスカした調子で軽口を叩く。
エイトは溜め息を吐き、ヤンガスは呆れ声を出した。
「素直じゃねえでがす」
素直じゃねえのは認めるが、今言ったことは本心だぜ。
変な諦めグセのついてる今のオレに、ゼシカをデートに誘う資格はないからな。
ドルマゲスを倒した時に、少しはマシな自分になれたと思ったが、まだまだだった。
弱くて、情けない自分のままだった。諦めのいいフリをして逃げてるだけのオレ。
でも、もうそこで立ち止まりはしない。
諦められないものがあると知ってしまった以上、今のままではいられない。
それを失わずに済ませるためには、強くなるしかない。
ゼシカ、これから先のオレの全てを、お前のために使ってくれてかまわない。
戻ってきてくれたことに、ありったけの感謝を捧げる。
今は言葉にはできないけれど、改めてここに誓う。
オレはお前を守る。お前だけのための騎士になる。
『ゼシカもうれしいだろ? どうだ? 兄のカタキを討った感想は?』
あの時のククールの言葉が、カンにさわったの。
『そのまま夢を見続けていれば良いものを。我が名は暗黒神ラプソーン。我の手足となって働くことを、光栄に思うが良い』
薪の爆ぜる音で目を覚ました。
夢を見ているのか、現実なのか、しばらく頭がハッキリしない。
指を動かして確かめる。大丈夫、自分の意志で動く。私はもう解放されたんだ。
そう、覚えてる。私たちは杖を持った黒犬を追いかけるために、昨日リブルアーチを出発して、そしてここで野営をした。
身体を起こすと、もう空が白んでいた。私の見張り番の時間じゃないの?
「もう起きたのか? まだやすんでていいんだぞ」
ククールが火の番をしていた。
「やすんでていいって、見張り番、私でしょう? どうして起こしてくれなかったの?」
「ゼシカはまだ本調子じゃないだろ。いいから横になってろよ、疲れてるみたいだぞ」
「・・・そんなに私、足手まとい? 邪魔なら邪魔ってハッキリ言ってよ! わかってるわ、ただのお荷物なんだって。私なんて必要じゃないのよ!」
「落ち着け、ゼシカ」
ククールが私のそばまできて、声を落として言った。そうだ、まだ他の皆は眠ってるのに、こんな大声出すなんて、どうかしてる。
「気に障ったんなら悪かった。ごめん、勝手なことして。でもゼシカの身体が心配だったんだ。それだけだ、わかってくれ」
「ごめん、なさい」
わかってる。私を気遣ってくれたってことぐらい。
「いいよ、気にするな。あんなことの後だからな、気も立つさ」
・・・皆が私に優しくしてくれる。
私が操られたのは、杖の由来を知らなかったトロデ王のせいだ、なんて笑い話のように言う。誰も、一言だって、私を責めない。
優しくされればされるほど、罪の意識が大きくなる。どうすればいいのか、わからなくなる。もしかして、私はまだ囚われているんだろうか。
きっとそうだ。そうでなければ、こんな卑怯な自分を許せるはずがないもの。
「ゼシカ。何を抱え込んでるんだ?」
心臓が跳ねた。
ククールは怖い。勘の鋭い人だから。いつもそう、見透かされてる。
「話せば気が楽になることもあるかもしれないぞ? まあ、無理にとはいわないけど」
お願い、それ以上は訊かないで。そうでなければ、私はもうここにはいられなくなってしまう。
「・・・やっぱりダメだな。受け売りは」
ククールが、私の両肩をつかんだ。
「無理でもなんでも、話してみろ。何に苦しんでる? まだ何か不安があるのか?」
・・・逃げ出してしまいたい。でも、彼の真剣な視線から目をそらせない。全てを映し出す湖のような瞳。私の心の醜さを、隠してなんておけないと思い知らせてるんだろうか。
やっぱり許されないんだ。あんなことをしてしまって、元通りになんて、なれるはずがないんだわ。
「・・・私、みんなを殺そうとした」
「それは仕方ないだろ? ゼシカは操られてただけなんだから」
そう、私は確かに操られていた。でも、それ『だけ』じゃない。
「違うの。私、自分の意志で、みんなのことを殺そうとしてた」
暗黒神は、人の心の闇に付け込んで、負の部分を増幅させて宿主に命令をきかせる。でも逆に言うと、宿主の意志に完全に反することには、従わせられないということ。
「あいつ、ラプソーンは初め、サーベルト兄さんの姿で私の心に入り込んだの。そして、七賢者の血筋を全て絶てば、死の呪いが解けて生き返ることが出来るって、そう言った。
私、信じちゃったのよ。兄さんの言葉を疑うなんて、考えられなかった。邪魔する人は許せなかった。だから、みんなとも戦ったの。あれは私の意志でもあったのよ」
「・・・人の弱みにつけこみやがって・・・」
ククールが苦い顔で吐き捨てるように呟いた。私の気持ちを考えてくれてるんだってわかる。私には、そんなふうに思ってもらう資格なんて無いのに。
「・・・だって私、初めから、みんなのことを憎む気持ちがあったから」
これを言ってしまったら、もう終わり。もう元には戻れない。
「エイトやヤンガスに対して、ずっと思ってた。どうして、もっと早くリーザス村に来てくれなかったのって。そうしたら、サーベルト兄さんは殺されずに済んでたかもしれないのにって」
関所が通れなかったんだって知ってる。でも思わずにはいられなかった。ドルマゲスの存在をもっと早く知ることが出来ていたら、兄さんを一人でリーザス像の塔に行かせたりはしなかったのに。
「ククールの事も憎らしかった。敵討ちが終わって自由だって、嬉しそうだったから。私は少しも嬉しくなかったのに・・・。自分だけ楽になってるんだと思ったら、私だけおいてけぼりにされたみたいで悲しかった。どうしようもなく憎くなったの。
その上、兄さんを生き返らせる邪魔なんて、させないって思った。だから戦ったのよ」
最低だ、私! それなのに何食わぬ顔して、また皆の仲間に戻ろうとした。そんな資格あるわけないのに。優しさにつけこんで甘えた。私だって暗黒神と同じなんだ・・・。
「ゼシカは強いな」
ククールからの答えは全く予想外のものだった。
「オレだったら、そんなこと、とても打ち明けられない。ゼシカは立派だよ。正直でまっすぐだ。確かにあの時のオレには気遣いが足りなかった。認めるよ、ごめんな」
・・・皮肉でもイヤミでもない、本心からの言葉だとわかる。軽蔑されると思ったのに、あんまり優しい言葉で返され、体中の力が抜ける。
「お、おい、大丈夫か?」
心配そうな声。支えてくれる腕。これは現実? それとも、まだ夢を見ているの? 自分に都合のいい幻想にすがっているだけ?
皆と戦ってる途中でようやく気がついた。あの優しかった兄さんが、仲間と戦うなんてひどいこと、私にさせるはずがないって。でも、その時にはもう遅かった。
もう完全に身体は支配されていて、指の一本さえ自分の意志ではどうにもならなかった。
何てバカだったの。その時まで、私は気づいてさえいなかった。自分の身体が自分の意志とは関係のないところで動いていたことに。
ずっと兄さんの姿に化けていた暗黒神の話ばかり聞いていて、どうやってリブルアーチまで行ったのかも、何も覚えていなかった。
もっと早くそのことに気づいていたら、抵抗出来ていたかもしれない。自分の身体を取り戻せていたかもしれないのに。
「本性を現したあいつは言ったわ。『そのまま夢を見続ければ良いものを』って。私は現実から逃げて、兄さんの幻想にすがってしまったのよ。
こんな私がどうやって、暗黒神なんてものに勝てるっていうの? 無理に決まってるじゃない。もうイヤなのよ、なにもかも! もう離して! ほっといてよ!」
それでもククールの腕は緩まない。
「ほっとけるわけないだろ。誰だって、そんなにキレイな部分だけで生きてるわけじゃないんだ。人を憎んだりなんて誰でもする。そんなことで悩む必要なんてない」
「何よ、ククールなんて私のこと、仲間とも思ってくれてないくせに! わかってるのよ、信じてくれてないって。それなのに、こんな時だけ優しいフリしないでよ!」
・・・ひどい言葉。私は、心配してくれる人に、こんなことを言える人間だったんだ。
ククールの腕が、私から離れた。
当然よね。あんなこと言われれば、誰だっていやになるわ。
・・・終わったんだ。もう私には何もない。目的も仲間も失ってしまった。リーザス村にだって帰れない。こんな私に兄さんのお墓の前に立つ資格はないもの。
「ゼシカの言う通りだ」
ククールの意外な言葉に、私は思わず顔を上げる。
「わかってる、オレがどれだけゼシカにひどいことしてきたか。本音を隠して、自分の心に壁を作って、ゼシカのことは突き放してきた。それなのに優しいフリだけされるってことが、どんなに寂しいか、考えることもしなかった。本当にすまなかったと思ってる。許してほしい」
優しすぎる言葉に思わず、涙がこぼれた。ダメ、ここで泣くのはズルい。
ククールは手袋を外して、私の前に手を差し出した。
「覚えてないかもしれないけど、リブルアーチでゼシカが受けた傷は、ほとんど全部オレがやった。痛い思いさせてすまなかった、そのことも合わせて償いをさせてほしい。望むことを言ってくれ、どんなことでもする。この手も、身体も、全部そのために使う」
やめて。これ以上優しくされたら、私きっとまた、それにつけこんでしまう。
「お願い、もう、これ以上、優しくしないで。私に構わないで」
「却下。もっと、ちゃんとしてほしいことを言え。言いたいことがあるなら、いくらでも聞く。行きたいところがあるなら連れていく。したいことがあるなら手は貸す。何でもいいんだ、望んでくれ」
望み・・・。そんなものを持つことが許されるの? やらなくちゃいけないことはある。だけど、また逃げ出すかもしれないのよ、私。
でも・・・差し出されているのは左手。ククールの大事な利き腕。いつも武器をとって戦う手。それを私の望むことのために使うと言ってくれている。
伝わってくる。決して中途半端な覚悟で、この手を差し伸べてくれてるんじゃないって。
もしも、この手に何かを望むことが許されるなら、それはたった一つしかない。
少しも揺らがず待っていてくれる手を、私は震える両手で握り締めた。
「・・・私、必ず杖を破壊する。どんなことをしても、ラプソーンは止めてみせる」
堪えきれず、涙が溢れてくる。でも、言わなくちゃ、最後まで。
「・・・でも、私は弱いから・・・一人じゃ怖いの。自信がない。だから・・・どうかお願い。そのために・・・私に力を貸してください・・・」
私の両手に、更にククールの右手が添えられた。
「わかった・・・。やるべきことは決まったんだ。後はそれに向かって進めばいいだけだ。・・・もう、何も心配しなくていいからな」
優しくて、力強い言葉。私に前に進むための力をくれる。大丈夫、私また、戦える。
「・・・ごめんなさい、さっきはひどいこと言って。あんなこと言うつもりなかったの。許して」
ククールは優しく笑いかけてくれる。
「いや、ほんとのことだからな。ゼシカが許してくれるのなら良かった。あんまりさ、真面目に考えすぎるのは、どうかと思うぜ? オレも結構、心の中で他人に悪態つきまくるし、人の弱み見て安心したりもするし、人間なんて多分、そんなもんでしかねえんだからさ」
・・・嘲りの言葉のようだけど、違う。とっても優しい言葉に聞こえる。
そんなものでしかないから、人は許しあうんだって。自分自身のことも許してやれって。そう言ってくれてるのよね、きっと。
「ありがとう、ククール。あなたのおかげで私、救われた。もう大丈夫、逃げたりしない。みんなが起きたら、ちゃんと謝って、お願いするわ。こんな私でも仲間でいさせてくださいって」
ククールは私の手を一瞬だけ強く握って、それから手を緩めた。
私も握り締めていた手をほどいて、涙を拭う。
「その必要ないぜ、ゼシカ。ちょっと待ってな」
手袋をはめ直したククールは、大きく息を吸い込んだ。
「おい、お前ら! いつまでもタヌキ寝入りしてんじゃねえぞ!」
・・・タヌキ寝入り?
エイトとヤンガスがバツが悪そうに起き上がる。ミーティア姫も身体を起こし、トロデ王は馬車から出てきた。
「うそ、みんな起きてたの? ・・・いつから?」
私の問いに答えたのはククールだった。
「少なくともエイトとヤンガスは、ゼシカが最初に怒鳴った時から起きてたぜ。姫様もな。トロデ王も似たようなもんだろ」
じゃあ、全部聞かれてたの? 私が何を思っていたのかも?
うろたえてる私に、ククールが囁いた。
「答えはもう出てる。言ったろ? 何も心配しなくていいって」
エイトが静かに微笑んで頷きかけてくれる。ヤンガスは目を真っ赤にして鼻を鳴らしている。ミーティア姫が、私の顔に頬を擦り寄せてきた。そしてトロデ王が私の手を取る。
「今回のことも、お前の兄のことも、全て杖を管理しきれなかったワシの責任じゃ。いろいろ辛い思いをさせて、すまなかった。許しておくれ」
涙で目の前が霞む。
・・・ああ、私、本当に戻ってこられたんだ。この優しい人たちの中に。
「ありがとう、みんな・・・本当に、ごめんなさい」
「ゼシカ、謝ってなんかやる必要ないぜ。どう思う? ゼシカが泣いてんのに、こいつら全員寝たフリ決め込んでたんだぜ。最低だろ? こんなもんなんだって、人間なんて」
ククールが場の雰囲気をぶち壊すようなことを言って、みんなに睨まれる。
・・・どうしてこの人こうなんだろう。素直じゃないにも程があるわ。
なぜだか、とってもおかしくなって、思わず私は吹き出してしまった。
エイトも、ヤンガスも、トロデ王も、みんなちょっと顔を見合わせて、その後同じように笑い出した。
初めは戸惑った顔していたククールも、最後はやっぱり仕方がないって感じで笑ってくれた。
不思議ね。ついさっきまで、また笑えるようになる時がくるなんて思ってもみなかったのに。そうね、きっと人間なんて、こんなものなのね。
ありがとう、ククール。あなたが差し伸べてくれた手が、思い出させてくれたの。
都合のいい夢なんかより、現実の方がずっと温かいんだってこと。だから私、戦える。
前に進むことを,あの手の温かさに誓う。
そうすればきっと、どんなことにも私は負けない。
<終>
激しくGJです!!
ククールとゼシカの優しさと強さに泣けてきた(⊃Д`)
人間の、そして自分の弱いところを認めて、
そんな所もひっくるめて『自分』なんだという、、
何というか当たり前だけど普段は向き合う事の無い部分ですよね、それって。
何が言いたいのか分からなくなってきたのでこのへんで。
乙です!
素晴しいです。
さっきまでほたるの墓を見ていたんですがやりきれない思いが晴れた気がします。
GJです。
>>427 ほたるの墓・・自分もみてますた w
ククール・・ククールいいやつだよ・・
最後仲間 って感じがして最高だった。
毎度毎度乙です!GJ!!
実際にゲームしてた時このあたりで仲間コマンド使ったら
ゼシカの態度がすごい軽くてケロッとしてたから
ずいぶん違和感感じてたんだけど、
「いや、皆に心配をかけまいとして無理に明るくしてるだけなんだ!」
と無理に納得したのを思い出した。
裏でこういう事があったのなら自然に納得できる。・゜(ノд`゜)゜・。
いつも思うんだけど、JbyYzEg8Isさんが書くククゼシって
見事なまでにククールとゼシカですよね。
あぁ、ククールならこう言いそう、とか、ゼシカならこう考えてそう、とか。
まじめな話の後に軽口叩いてるところなんて、どうみてもククールです。
そういうところにも感動してしまった。
いつも乙!です!ステキな話ありがとです!
ついでにククールがトロデの真似してたとこ、
シリアスな場面だったけどちょっとウケたww
いつも思うのだけど、二人の心情がすごく丁寧に書かれていて、
いろんな行動の原因だとか発言だとかに、うんうんって納得しちゃうよ。
今回はいつもより長い文章だし、お疲れ様です。
設定を考えて、台詞やキャラの立ち位置とか想像して、それで推敲もすると
かなりの時間になるよね。Good Job!なのです。
>>426-431 身に余る程のお褒めの言葉に、何てお礼を言っていいのかわかりません。
今回、かなり重い話を本当に長く書いてしまって申し訳なく思ってたけれど、このスレの皆さんはそれでもきっと読んでくれると思い、甘えちゃいました。
これからも本編の二人のイメージを崩さないように、頑張って書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。ありがとうございました。
遅らばせながら乙です!
じぶんもDQ82回目やりたくなってきたよ…
最下層!!!!!上げないように。
435 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 19:58:25 ID:3u42EgeW
436 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 20:07:06 ID:LFamRSFm
>>432 崩しそうです・・・。
あとゼシカはパンチラがみれる裏技がのってるHPよくみつけます。
437 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 23:14:23 ID:EuNvedKX
何ここ?個人サイトですか?
438 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/05(土) 23:31:31 ID:fF1rsntB
とりあえずあげてみる。
439 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 20:50:56 ID:sPpdBtu9
晒しage
お祭りおわっちゃったー。
なんかさみしーな・・・。
441 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 21:01:28 ID:kjfGX8X5
祭りage
おかしなレスはスルーして、ククゼシに萌えましょう。
443 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/09(水) 07:29:34 ID:gj2R8o8f
おかしなレスはスルーして、ククゼシに萌えましょう。
444 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/09(水) 10:08:54 ID:itf/R/J9
もちage進行でね♪
今日は朝から一度も、ククールとは口をきいていない。
昨夜泊まった雪越しの教会で、私は思いっきり泣き言を言ってしまった。
だって皆、私が離れてる間に、すごく強くなってたんだもの。
力も体力も、元々敵わなかったのに、ますます差をつけられちゃってて。ハワードさんの力を借りて習得した呪文も、今の私の魔力では本来の威力が出せていなくて。
散々迷惑かけた上に、役立たずにまでなってるのかと思うと、どうしていいかわからなくなった。
そんな私をククールは根気よく励ましてくれた。。私は魔法使いなんだから、力や体力で勝とうとしなくていいんだって。私の魔法は、ちゃんとみんなの助けになれてるって、そう言ってくれた。
その言葉で私、思い出したの。リブルアーチで目覚める前に見た、サーベルト兄さんの夢。まだ子供だった頃に聞かせてくれた、ご先祖様の話と兄さんの言葉。
『ご先祖さまの魔法のチカラは、ゼシカ、お前に受け継がれたんではないか』
そう兄さんは言ってくれた。それが本当だったなら、きっと私もみんなの役に立てるようになるはずだと思えて、希望が持てた。
でも、そう話した途端、ククールの声は急に冷たくなった。
『結局兄さんなのかよ、このブラコン』
いきなりそう言われて私、何が何だかわからなくなったわ。
だって、それまでククール、すごく優しかったのよ?
仲間を傷つけた罪の意識や、暗黒神なんてものを止めなくちゃならない不安とか、私の迷いを、まるで懺悔を聞く神父様のように、ずっと聞いてくれていた。さすがに一応は聖職者だっただけあるって思ったのに、何でいきなりあんなこと言うの?
気むずかしいにも程があるわよ、あったまきちゃう。だから、しばらくククールとは口をききたくない。向こうが謝ってくるまで、絶対に許してあげないんだから。
それにしても、寒いわ。
黒犬を追って北に進んでるんだけど、トンネルを抜けると、そこは雪国だった。
少し先も見えなくなるような猛吹雪。油断すると意識が飛びそう。みんなの気も立ってるみたい。ヤンガスと何やら言い合っていたトロデ王はスネちゃって先に行こうとする。
その時だった。地鳴りがし、その方向に顔を向けた途端、大量の雪が私たちに向かって襲いかかってきたのは。
私の視界が赤く染まり、その直後、何もわからなくなった。
・・・身体が動かない。少し息も苦しい。
私、このまま死んじゃうのかしら? 暗黒神と戦って死ぬのならともかく、こんな所で雪崩に巻き込まれて死ぬなんてマヌケすぎる。サーベルト兄さんやチェルスに合わせる顔がないわ。
でも不思議ね、ちっとも寒くない。むしろ暖かいぐらい。それにどうしてこの雪は、こんなに赤い色をしているの?
・・・雪が赤い?
ようやく意識がはっきりする。
雪じゃない。この赤は騎士団の制服の色。身体が動かなくて息苦しいのは、ククールの腕が、私をしっかりと抱え込んでいるから。
・・・私のこと、かばってくれたの?
頭も満足に動かせないからよくわからないけど、シーツや毛布の感触。雪の中からは助け出されたみたい。
「ククール、大丈夫? ねえ、ククールってば、起きて」
出来る限り、もがいてみる。エイトやヤンガスがどうなったかもわからないし、ククールだってケガをしてるかもしれない。何とか起き上がって、状況を把握しないと。
ククールが身じろぎする。腕の力が少し緩んだ。
「ククール、気がついた?」
視線を上げると、ククールと目が合った。
「・・・ゼシカ?」
まだ少しボーッとしてるみたい。目を覚ましたばかりなんだから、無理ないわ。私もそうだったんだし。
「そうよ、大丈夫? ケガとか・・・」
そこまでしか言えなかった。
ククールが私の身体を強く抱き締めてきたから。
頭の中が真っ白になる。息ができない。
でもそれはほんの一瞬のことで、ククールはすぐに跳ね起きた。
「ゼシカ! 大丈夫か? ケガとかしてないか? どこか痛むとこは?」
額から、頬、首、肩へと、ケガを確かめるようにククールの手がなぞっていく。
私は心臓が止まりそうになる。身体が小さく震えてしまう。
だって、真剣な顔と声が近すぎて・・・。
「ま、待って・・・。待って、大丈夫だから・・・」
これだけの声を絞り出すのが、やっとだった。
ククールの動きが止まり、沈黙が流れる。
「ご、ごめん!」
そう言って後ろに飛びのいたククールは・・・。ベッドから落ちた。
「だ、大丈夫?」
私は慌てて覗き込む。そんなに高さはないのでケガするはずもなく、ククールはすぐに起き上がった。
「・・・ここは?」
暖炉に火が燃えている石作りの部屋。隣のベッドでエイトが、その向こうではヤンガスがまだ眠ったままだった。
トロデ王とミーティア姫の姿は見えない。
部屋の外から足音が聞こえる。ククールがテーブルの上に置かれてた剣を掴んだ。私も鞭を取ろうとベッドから出る。
ドアが開いて入ってきたのは、トロデ王よりも大きな体をした犬だった。どうやってドアを開けたのかしら。なんて考えてると、小さな目をパッチリ開いた優しそうなおばあさんが続いて入ってきた。
どう見ても悪い人じゃなさそう。ククールもそう思ったらしく、剣は離さないものの、警戒は解いたみたい。
「目が覚められたようですな。私はこの家に住むメディという者です。あなたがたは雪崩に巻き込まれたんですよ」
落ち着いた声で告げられた。
「えーと、メディさん? あんたがオレたちを助けてくれたのか?」
「私がというより、バフが・・・。ああ、この犬の名前ですがね。バフは雪の中から人を見つけるのが得意なんですよ。上へいらっしゃい。顔が緑色のお連れさんが心配して待っていますよ。身体の温まる薬湯も作ってますから」
顔が緑色って、トロデ王よね。良かった、無事だったんだ。
私はメディさんに付いて部屋を出ようとしたけど、ククールは留まっていた。
「先に行っててくれ。オレはこいつらの様子を見てから行く。これだけ騒いで起きないってのは普通じゃないからな」
・・・ククールったら、ほんとに他人の心配ばっかりなんだから。
私はその言葉通り、先に上へ行くことにした。トロデ王とミーティア姫の無事をこの目で確かめたかったし。
「メディおばあさん、助けていただいて、本当にありがとうございました」
まだお礼を言ってなかったことを思い出した。
「いえいえ、困った時はお互い様ですよ。それより窮屈な思いをさせてしまって、すみませんでしたね」
メディおばあさんが言った言葉の意味が、私は咄嗟にわからなかった。
「あのお兄さん、どうやってもあんたのこと離そうとしませんでね。仕方ないから一緒のベッドに寝かせたんですよ。でも、落ちなさったんでしょう? 上の階まで音が聞こえましたよ」
「・・・すみません、お騒がせしました」
落ちたのは私じゃないけど、何か恥ずかしい。
「大事に思われてるんですね。いいですなあ、若い人は」
顔が赤くなっていくのがわかった。目が覚めてすぐ、自分じゃなくて私のケガの心配をしてくれたククール。どうしてだろう、さっきのことを思い出すと、心臓が痺れるような感じがする。
「・・・そういう人、なんです。今だって他の二人の具合を見てるでしょう? たまたま私が女で一番体力ないから、ああやってかばってくれるだけで、いつだって他の人のことばかり考えてるんです」
わかってはいるのよ。そういう人だって。
初めて会った時は、外見の良さを鼻にかけた軽薄な男だと思ったけど、全然違う。全く逆の人。
今でも時々、頭にくるようなことや、突き放したようなこと言うけど、それって口先だけなのよ、テレ屋さんだから。
昨夜だって自分も疲れてるだろうに、イヤな顔一つせずに私の泣き言を聞いてくれて、励ましてくれた。
いざとなったら、ちゃんと助けてくれる、優しくて強い人。
忘れないようにしないとね。ククールは素直になれないだけの、純粋な人だってこと。
だって私、そんなこと、とっくの前に気づいてた。
そうよ、私、ちゃんと知ってたんだから。
どうしてこう、肝心な時にキメられないんだろうな、オレは。
今度こそ守るって誓ったばかりだってのに、もう少しで雪崩なんかで死なせちまうところだった。
おまけに目を覚ましてすぐ、ベッドから転げ落ちるってオマケ付きだ。みっともねえったら、ありゃしねえ。
女性をベッドで組み敷くなんて、慣れてる行為のはずなのに、オレとしたことが何てザマだ。一瞬、理性がぶっとびそうになった。
ゼシカ、色気ありすぎ。
そもそも、思いっきり寝ぼけちまったのがまずかった。
目が覚めたら腕の中にゼシカがいて、心配そうな顔でオレのことを見上げてて。つい愛おしさが込み上げて、抱き締めちまった。
思えば、よく殴られなかったもんだ。
邪まな気持ちが無かったのはわかってもらえたのかな。何にしても助かった。
ここ数日、ゼシカのことが可愛くて仕方ない。
悩み事を、エイトやヤンガスでもトロデ王でもなく、真っ先にオレに打ち明けてくれるようになって、信頼してくれてるんだっていうのが、はっきり伝わってきた。
だからついうっかり、キレちまったんだ。未だにゼシカの一番の心の支えが『サーベルト兄さん』だってことに。
『ブラコン』呼ばわりはマズかったよなぁ。揺るぎようのない事実だけど。
真実ほど、人を怒らせるもんだ。ゼシカはすっかりスネちまって、その後、口をきいてくれなくなった。なさけないことに、それが結構キツい。
謝るしかねぇんだよな、結局は。・・・こうしてても仕方ない、そろそろ上へ行くか。
一応、エイトとヤンガスの状態は確認する。
二人とも特にケガはしてない、頑丈なヤツらだ。脈も安定してる。目を覚まさないのは体温が下がってるからだな。この部屋は充分に暖かいから、ほっとけば自然に目を覚ますだろう。
階段を上がると、まず目に入ったのはトロデ王の顔だった。結構目に痛い色だよな、緑とオレンジの組み合わせ。目を引くって点ではオレも他人のことは言えないんだが・・・。
ゼシカはその隣に座り、何やら険しい表情でトロデ王に何か言っていた。
「おお、ククール、ちょうど良かった、助けてくれ。ゼシカがひどいんじゃ」
ゼシカがトロデ王を睨みつける。
・・・さわらぬゼシカにメラミなし。ほっとこう。
「ちょうど薬湯が出来たところですよ。どうぞ暖炉の前におかけなさい」
声のした方を振り返ると、メディばあさんが小さな身体で、大きな鍋の中のものをかき回していた。釜戸の前まで行き、ちょっと毒々しい色の液体が入った器を受け取る。
「親切にありがとう、メディさん。あなたに神の祝福があらんことを」
感謝を込めて手の甲にキスを贈る。ちょっとばかり年はくっちゃいるが、レディであることに変わりはないからな。
「あら、いやですよ、こんな年よりからかって」
オレのような美男子にキスされても、この余裕。初めて見た時から感じてはいたが、やっぱりこのばあさん、ただ者じゃあないな。やけに胆がすわってる。さっき剣を抜こうとしてたオレを見ても微動だにしなかった。いったい何者なんだ?
「こりゃあ、ククール! ワシを無視するんじゃない! 誰がこの家に助けを呼びに来てやったと思っとるんじゃ。ワシへの感謝はどうしたんじゃ」
うるせえおっさんだな。
「何だよ、アンタもキスしてほしいのか?」
「誰もそんなこと言っとらんわ」
頼まれても、しねえけどよ。・・・しまった、想像しただけで気色わるい。
もらった薬湯を一口すする。ちょっと辛口で、なかなかイケる。身体もあったまりそうだし、こういう土地にはピッタリだな。
「それにしても、体力自慢の二人よりもお主らの方が早く目が覚めるということは、やはり雪山で遭難した男女は人肌で暖め合うのが一番ということじゃな」
思わず薬湯を吹き出しそうになった。
・・・このおっさん、ほんとに王様なのかね。いや、もう疑っちゃいねえけどよ。はたして呪いを解いて元の姿に戻してやることは、世の中のためになるんだろうか。
「だから、そういうこと言わないでって、さっきから言ってるじゃない。ほんとに覚えたてのベギラゴン、お見舞いしちゃうわよ」
ゼシカがうろたえてる。
「何が悪いんじゃ。ククール、黙って見てないで助けんか。そもそもお前がゼシカのことを離そうとしないから、二人一緒に運ぶハメになったんじゃぞ。どれだけ苦労したと思っとるんじゃ」
「ゼシカ、やる時は一声かけてくれ。ディバインスペルで援護してやるから」
「な、何じゃい、二人して・・・」
トロデ王はスネて、ぶつぶつ言い出した。
「寒くないのか? 火のそばに座ればいいのに」
もうトロデ王は無視して、ゼシカに声をかける。
「いいの、寒くはないから。それにトロデ王が変なこと言うの止めたくて・・・」
なるほど、そういう理由か。オレはゼシカの向かいの椅子に座る。とりあえず口はきいてくれるようになったらしい。
「ごめんなさい、昨夜のこと」
いきなりゼシカの方から謝られ、予想外のことにちょっと驚く。
「私、考えたの。ククールは私の悩み聞いてくれてたのに、兄さんの話を出すなんて良くなかったって、気づいたわ」
気づいたって、何にだ?
「ククールのところは兄弟仲がアレなのに、私と兄さんとの楽しい思い出話なんて聞かされたら、面白くないわよね。本当にごめんなさい」
・・・そう解釈したか。
オレ、すげぇ器の小さい男と思われてるんだな。それどころじゃなかったから、マルチェロのことなんて、ここんとこ思い出しもしなかったってのに。でも、サーベルトにつまらない嫉妬したのがバレるのと、どっちがマシなんだろう。
おまけに、兄弟仲『アレ』ってイヤな言い回しだよな。いっそ、険悪とか、最悪とか言ってくれた方が、まだ救いがある気がする。
「いや、昨日のことはオレが悪かったよ。ゼシカの大切な思い出にケチつけるようなこと言って、ごめんな」
まあいいか。とりあえずは怒りをおさめてくれたんだからな。
「それと、雪崩からかばってくれて、ありがとう。いつも守ってもらうばっかりね」
「いや、かばえなかったってのが正しいだろ。出来たことは、仲良く雪に閉じ込められただけなんだから」
ほんとに情けなくなる。守りたいって気持ちだけ先走って、まだまだ実力が伴ってない。
「そんなことないわよ。もしククールがいてくれなかったら、今頃大ケガしてたかもしれないもの」
「そうじゃぞ、人肌で暖めあってなければ今頃、凍死して・・・」
「マヒャドも付けてほしいようね」
やけに嬉しそうなトロデ王の言葉は、その声だけで凍りつきそうなゼシカの言葉に遮られた。このおっさんも、いいかげん懲りろよな。
「トロデ王って、ほんとにしょうがないわね。そこがカワイイんだけど」
カワイイ? このおっさんが? ゼシカってもしかして、趣味悪いのか?
「なんじゃ、今度はバカにしとるのか?」
「違うわよ、そういうとこ好きだって言いたいの」
ゼシカはほんとにストレートだ。何でも思ったまま口に出す。
「おお、そうか。お前もとうとうワシのプリティさに気づいたか」
それで喜ぶトロデ王も、たいがい素直だよな。オレだったら、どう受け取るだろう。
「ククールのこともね」
「へ?」
心でも読まれたのかと思うタイミングの良さに、思わずマヌケな声を上げてしまった。
「暗黒神を追うのを付き合うって言ってくれたこと、感謝してる。忘れてるわけじゃないのよ、ククールには直接関係ないことだって。だから、ありがとう」
・・・まいった。トロデ王と同列に並べられたってのに、結構嬉しいぞ。オレって自分で思ってるより単純なのかも。
「・・・別に付き合ってるだけってわけじゃないさ。暗黒神のヤロウは、初めから気にいらねえと思ってた。かわいいゼシカを泣かせやがったんだ、その落とし前はつけさせねえとな・・・。レディの敵はオレの敵ってことだ」
「大変でがす! 兄貴が目を覚ましてくれねえでがすよ!」
ああ、うるせえ。ヤンガスがドタバタと階段を駆け上がってきた。脂肪がある分、体温が戻るのが早かったみたいだな。
状況とオレの診断を説明してやると、わりとアッサリ、ヤンガスは落ち着いた。
「それなら一安心だ。あれ? ゼシカのねえちゃんどうしたでげすか? 顔が赤いでがすよ」
ヤンガスに言われて見てみると、確かにゼシカの顔が赤くなってる。
「ほんとだな、どうしたんだ? 熱でも出てきたのか?」
代わりに返事をしてきたのはトロデ王だった。
「何じゃ、ククール、お前も鈍いのう。さっきお前が、かわ、ぃ、ぐむっ・・・」
そこまで言ったところで、ゼシカがトロデ王の口をガッチリ両手で押さえ付けた。
「だからやめてってば! ほんとに次はないからね! 何でもない、本当に何でもないんだから、気にしないで!」
オレが何だって? 何かしたっけ? そんなゼシカをうろたえさせることした覚えは無いんだけどな。『かわ』がどうとかって、川? 革?
・・・ダメだ、サッパリわかんねえや。
<終>
おお、投下したてのホヤホヤですな。
仕事の疲れが一気に吹き飛びますねぇー。乙!
投下乙です
禿萌えた(´Д`*)
>『かわ』がどうとかって、川? 革?
肝心な時だけ鈍感なククモエス!
ホシュ
乙です!!激しくモエス!!
GJ!!
すごい。
文章上手すぎて言葉が出ません。
テラモエス
459 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 07:13:11 ID:bs6Ikw9D
モエスモエスモエス
カップルヲタきんもー☆
乙です!
ゼシカのククへの気持ちが変化しつつあり、
それにククもゼシカを大切にしたい気持ちがたくさんでGJです。
確実に二人の距離は縮まってますね(;´Д`)ハァハァ
ククールの恋敵はサーベルトかもしれないと思った。
わー。何かスゴイいっぱいコメントもらえてるー。
嬉しいな、ありがとうございます。
温かいお言葉の数々を受け、調子に乗りやすい私からお願いがあります。
実は今、DQ8発売一周年めがけてククールの少年時代の話を書いてるんですが、ククゼシ度がゼロではないけど少なめなんです。
で、それをここに投下するのはスレ違いの迷惑になるかどうか迷ってます。
ご迷惑ならククゼシ完全カットして他の小説スレに投下するので、よければ皆さんの意見をお聞かせください。
スレの消費になっちゃう時点でご迷惑とは思いますが、どうかよろしくお願いします。
464 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 21:39:59 ID:bs6Ikw9D
わーわーわー
>>463 どの程度ククゼシ要素があるのかはあなたしか知らないわけだし、自分で判断すれば?
>>463 自己判断で。むしろ無理にククゼシを取り入れるんじゃなくてククゼシで一本サイドストーリ書いた方がこのスレ向き、なんて。
>>463 自己判断して下さい。
>>ご迷惑ならククゼシ完全カットして他の小説スレに投下するので、
ここは皆でククゼシに萌えるスレであって小説スレではないはず。
SSが投下されるのも萌え要素のひとつだけど、このところそれ一辺倒に
なってしまっているから
>>437みたいな事を言われるんですよ。
1年前の今頃は8発売直前でワクテカしてたなぁ。。。
Vジャンプのおかげで
発売前からククゼシに萌えてたぜ(・∀・)!
Vジャンプに何が書いてあったの?
470 :
463:2005/11/11(金) 19:57:35 ID:Fjjwbs4W
ご意見くださった方たち、どうもありがとうございました。
変なお願いして、すみませんでした。
アドバイス参考になりました。自己判断させていただきます。
どうも最近はSS職人さん⇔読者のやりとりスレ、という雰囲気になってしまうね。
SSがたくさん投下される事自体が悪いんじゃないし、
互いに礼を尽くそうという気持ちは分かるけど、
個人サイト宛ての書き込みって感じでちょっと慇懃になりすぎてるかも。
もっと気楽に構えてもいいんじゃないかなぁと思うよ。
ただ、SS以外のネタを振る人も最近少なくなって、結果的に
熱心なSS職人さんの作品だけになってしまってるのもあるよね。
>>469 当時発刊されたVジャンプの増刊に相関図が載ってた。
ククールはもっと深い仲に…と思ってるけど、ゼシカは「キザな優男」と思ってる、って感じ。
自分は発売前後はとんとDQ8に興味なかったので、持ってる友人に見せてもらって、
気に入ったページだけをコピーさせてもらったんだけど
あれ、すごく欲しいんだよなぁ…。(;´Д`)
>>469 >>471さんのいうとおりです。
相関図で「これはもしかして大ツボにはいる予感…」って思ったよ。
見事はまった。
473 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/11(金) 23:41:10 ID:96q84IF2
たかだかゲームのキャラクターに
どうしてそんなに思い入れできるの?
ククもゼシカもキャラたってるし、ヴィジュアルもいいしね!
>471-472
おぉーそうなんだ!サンクス。それ見てみたい。
そんな相関図があったとおもうだけで萌えられる。ハァハァ
>>463 私は、463さんの「ククの幼少話」読んでみたいよ。
それはたとえこのスレでじゃなくてもね。
私はあるカップル萌えサイトの管理者をしているんだけど、実はサイトを開く前、
創作発表の場は2chの該当スレも選択詞の1つだったの。
でも、妄想が大爆発って感じに膨らんで、話の数も増えて、
これをみんな2chにアップしてたら個人サイトみたいになっちゃうかもって思い、
自分のサイトを立ち上げました。
余計なお世話だし、463さんの小説すっごい楽しみにここに通ってるのだけど、
もし余力があるなら、自サイトを作って、そこで発表しても良いんじゃない?
それなら、ククゼシ以外のお話だって、自由に書けるしね。
479 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 00:55:29 ID:qQdOm3+B
腐
480 :
463さん:2005/11/13(日) 02:08:54 ID:/+W8lO/X
私も読みたい!!!上手なんだもん!!!書いて書いて!!!
スレは違ってもいちようククールのスレの一つなんだし、気に品〜イ!!!
>480
それは違うんじゃないか?
あくまでここはククゼシスレでククールが主役はっていればどんなSSでもいいということではないと思うよ。
482 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 18:21:17 ID:qQdOm3+B
厨
484 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 23:37:11 ID:qQdOm3+B
カラシ?
>>485 コメントを貰えたSS職人といえばJbyYzEg8Isさんしかいないと思われ。
いま職人さん、ひとりしか…
や、なんか
>>463さんがいつものJbyさんと雰囲気が違う気がして・・・
スマソ(´・ω・`)
ところでここの住民はフィギュア買った人はいるんだろうか?
JbyYzEg8Isです。
今回はアホな発言して、申し訳ありませんでした。
気を遣ってくださった方々、ありがとうございます。
不快な思いされた方、本当にすみませんでした。
このレスも含めて忘れていただけると、ありがたいです。
では、勝手ですが、以下、何事も無かったように投下させていただきます。
女盗賊ゲルダとの、キャプテン・クロウのお宝探し勝負。
先に海賊の洞くつの最奥まで到着したゲルダだったが、亡霊になってたキャプテン・クロウに伸されちまって、結局宝箱の中身を手にしたのはオレたちの方だった。
そんな勝負は初めからどうでも良かったオレとしては、宝を手に入れたことよりも、ゲルダが一人でサッサと戻っていった事の方が気になった。
「おい、いいのか? ほっといて」
よけいなお世話とは思いながらも、ついヤンガスに訊いちまった。
「ゲルダのやつ、一人で帰しちまって大丈夫なのか? アジトまで送ってってやれば、いいじゃねえかよ」
ヤンガスだけでなく、エイトもゼシカも、変な目でオレを見る。
・・・そりゃあ、柄にもなくおせっかいだとはわかってるけど、揃いも揃ってそんな珍しいもの見るような目をしなくても、いいんじゃねぇの?
「美女の味方のオレとしては、ほっとくわけにはいかないね」
何となくいたたまれなくなって、軽口でごまかす。
・・・そしてオレは、こうやって自分で自分のイメージを固めていくわけだ。
カジノがまだ再開してないのが残念なところだが、最近は旅が一段落ついてゆっくり休みたい時は、ベルガラックに泊まることにしている。
町全体に活気があるし、ホテルの部屋数も多い。ここでならゼシカに一人部屋をとってやれるから、オレとヤンガスも時間を気にせず飲みに行ける。エイトだけは変わらず律義に、姫様とトロデ王の相手だがな。
「お前、よく平気だよな。ちゃんとアジトに帰れたのか、心配にならないのか?」
ホテルの地下のバーで、つい昼間の話を蒸し返しちまった。
「ん? ゲルダのことか?」
最近ヤンガスは、オレと二人でいる時は語尾に『げすがす』付けない。
オレはその方が落ち着くし、ヤンガスの心の兄貴はオレじゃなくエイトだから、何となく自然にこうなった。エイトはよく、こんなおっさんに『兄貴』呼ばわりされて、変な敬語使われて、平気でいられるよな。器がデカいよ、あいつは。
「ククールにしては珍しくおせっかいだったよな。あれか? やっぱりゼシカと関係あんのか?」
「だから、何でお前もエイトも、何でもかんでもゼシカと結び付けようとすんだよ」
図星な分だけ、妙にくやしいぜ。
メディばあさんを殺し、犬の分際で羽を生やして飛び去っていったレオパルド。
暗黒神の復活を阻止するために、あんな化け物を追いかけて、つかまえて、戦って倒さなきゃならない。
それ構わないんだが、あんなものとゼシカが戦わなきゃならないってことが、どうにも腹が立って仕方がない。
「大事に思う女に、魔物と戦うなんて危ないマネしてほしくないって思うのは、おかしいのかね。普通のかよわい女性とは違うんだってのは承知してるけど、目の前でケガなんかされたりすると、もうたまらなくなる。その辺り、お前はどうなのかって気になっちまったんだよ」
「やっぱり、ゼシカのことじゃねえか」
うるせえよ、と言いたいとこだが、ここで否定してても話は先に進まない。
「そうだよ、悪かったな。オレの気持ちは今言った通りだ。お前がどうなのか聞かせてくれよ。今更ゲルダはそんなんじゃないとか言うのはナシだぜ。あいつがやられた時、動揺しまくってたのは見てんだからな」
「・・・ゲルダのことはともかく、ゼシカに危ないことさせたくないってのは、もっともだと思うぜ。男だったら誰でもそう思うはずだ。お前はまともだ、心配すんな」
・・・何か、微妙に話をそらされた気がする。
「ゼシカに言ってやったらどうだ? 心配だから、あんまり無理なことするなって」
簡単に言ってくれるぜ。そんな単純な問題じゃねえよ。
「無理すんな程度じゃ済まねぇんだよ。こんな旅やめて、家に帰れとまで言っちまいそうで困ってんだ」
そうやってゼシカが待っててくれるのなら、相手が暗黒神だろうが何だろうが、必ずオレが倒してやるのに・・・。
「それ、私のこと?」
背後からの声に、一瞬体が固まった。何でゼシカがこんなとこに・・・。
何か言わなくちゃならないのは、わかりきってるのに、気の利いた言葉が何一つ浮かばない。
「違う、今のは・・・」
ようやく振り返って口を開いたオレの声は、ゼシカの言葉に遮られた。
「私、帰らないから。誰が何て言ったって、絶対帰らない。覚えておいて」
それだけ言ってゼシカは踵を返してしまった。そのまま階段を上がっていってしまう。
静かな声と足取りが、却って怖い。
滅多に酒なんて飲まないくせに、何だってこんな時に限ってバーになんて来るんだよ。
よりによって、一番ゼシカに聞かせたくない言葉を聞かれちまった。
「ゼシカのねえちゃん、いつの間に・・・」
ヤンガスのお約束の言葉に、思わずコケそうになった。
こんな時に、何アホなこと・・・。
・・・いや、こんな時だからこそか。
「悪いな、気ィ遣わせて。・・・行ってくる」
いい感じに体の力は抜けた。今、傷ついてるのはゼシカだ、オレが深刻ぶってる場合じゃない。
「ちゃんと話せばわかってくれるさ、しっかりやれ」
ヤンガスの言葉は短いけど、不思議と心を軽くしてくれる。
本当はオレなんかより、こいつの方がよっぽど聖職者に向いてるよな。懺悔とか聞くの、上手そうだ。この外見じゃ教会勤めは無理だろうけど。
借りは早めに返してやるよ。明日、朝一でゲルダのアジトに寄るように、エイトのヤツに言っといてやるからな。ホントは心配なくせに、意地張りやがって。
階段を上りながら考える。
ドルマゲスやレオパルドのように、完全な化け物になってしまわずにゼシカが戻ってきてくれたことは、奇跡のような幸運だったんじゃないかって。
一歩間違ってたら、この手でゼシカを殺さなければならなかったのかもしれないと想像すると、心臓が凍るような思いがする。
それを考えれば、どんなに危険なことだろうと、ゼシカが自分の信じた道を進んでいる今を邪魔するなんて、できるわけがない。
オレが勝手だった。
自分の心を偽らずに、ちゃんとゼシカと向き合おうとし始めた途端、失言の連続だ。
怒らせるようなことや、悲しませるようなことばかり言ってる気がする。
向いてねえのかな、心のままに生きるなんてこと。
・・・でも、もう昔の自分には戻りたくない。ゼシカはちゃんと気づいてた。以前のオレが誰も心の中に入りこませようとはしていなかったことを。そして、そのことで傷ついていた。
信じてもらえないことの寂しさは知っていたはずなのに、自分がゼシカに全く同じ思いをさせてたなんて、最低だ。
そんなオレでも許してくれて、変わらない信頼を与えてくれるゼシカを、二度と突き放すようなマネはしない。
さっき言った言葉は、紛れもない本心だ。だから撤回はしない。
でも、もう一つの本心をわかってもらわなくちゃならない。
わかってはいるんだ。戦うことが今のゼシカの支えになってるってことは。
兄の仇であるはずの暗黒神に、いいように操られて利用された。そんなこと、屈辱以外の何ものでもない。
もしそれが自分だったらと考えると、想像しただけで耐え難い。
なのにゼシカは逃げずに受け止めて、戦って前に進むことを誓って、まっすぐ立ち向かっている。
本当に強いと思う。心から尊敬する。
本懐を遂げさせてやるためなら、どんなことでもしてやりたいと思う。
どこへだって一緒に行くし、どんな手を使ってだって、暗黒神の復活は止める。
そのために邪魔なものは全て排除する。イカサマしたって構いやしない。
それが終わらない限り、本当の意味でゼシカに平穏は訪れないからだ。
いらないものを押し付けられてる余裕なんて、今のゼシカにはない。
『男』としてのオレなんて必要ない。『仲間』であることに徹する。それが今のオレがゼシカにしてやれる最良のこと。
最近、ゼシカが甘えてくれるようになったもんだから、つい考え違いしちまった。ゼシカはオレの『庇護』なんて望んでない。必要としてるのは『力』だ。
寄せてくれる信頼も、オレが一緒に戦うことを約束したことから来てるってのに、戦いから遠ざけようなんて、ずいぶんアホな考え持ったもんだ。
もう少しで忘れるところだった。これはゼシカが望んで進んでる道だってこと。オレはただそれに付いていってるだけ。オレみたいな人間は、自分のために生きたってロクなことにならない。すぐに迷って、何もかも失うだけだ。
そんなオレでも必要としてくれるのなら、黙ってゼシカの意志に従う方がいいに決まってる。それなのに自分の方が守ってるつもりになるなんて傲慢だった。
何度も救われてきたのはオレの方だっていうのに、ホントにバカだ。
・・・だけど、やっぱり大事にしたいし、守ってやりたいって思っちまう。傷つくところは見たくねえんだよな。
我ながら、どうしようもないくらい矛盾してるぜ、ホントに。
ベルガラックの町は好き。
水と緑の多い明るい町並みで、料理の美味しい可愛いカフェもあるし、何よりホテルが安くて綺麗だから。
たったの4Gでバスルーム付きの個室に泊まれるなんて、他所では考えられないもの。
だから、滅多に無いぐらい、気分は良かったのよ。
敗色濃厚だった、昼間のお宝探し勝負にも無事に勝てたし。
個室を取ってもらったおかげで、ゆっくりお風呂を使い、格好も気にせずにベッドに腰掛けて髪を乾かして。すごくリラックスした気分になれた。
そのまま、いい気持ちで眠っちゃえば良かったんだわ。
でも長湯したせいか喉が渇いちゃってて、珍しくお酒なんて飲んでみようと思ったのが間違いだった。
一人でバーになんか行ったこと無かったけど、ホテルの中だから変なお客さんはいないと思ったし、それさえも小さな冒険のような感じがして、ちょっとワクワクした。
ククールとヤンガスもいるだろうなっていうのは見当ついたから、実際は一人で飲むことにはならないだろうとも思ってた。
地下のバーに行ってみたら丁度バニーショーの真っ最中で、ほとんどのお客さんはステージの周りに集まってたけど、ククールとヤンガスだけはカウンターで何か話してるみたいだった。
でも、こんなところで深刻な話をしてるとは思えなかったから、普通に近づいていった。立ち聞きするつもりも、もちろん無かった。
『こんな旅やめて、家に帰れとまで言っちまいそうで困ってんだ』
聞こえてきたのは、これだけ。でも、それが自分のことを言われてるんだっていうのは、すぐにわかった。だって、帰る家があるのは私だけだもの。
ちょっとムキになって『帰らない』とか言っちゃったけど、たいした事じゃなかったわ。
あの程度のこと、旅の初めの頃ヤンガスに散々言われたじゃないの。娘っ子は面倒だから一緒に旅するのはイヤだって。一々気にしてたら、今までやってこられなかった。
平気よ、何ともないわ。
「ゼシカ」
部屋の前まで戻りドアを開けると同時にククールに呼び止められ、一瞬体が固まった。
「さっきのこと、ちゃんと話したいんだ。待ってくれ」
話す必要なんてない。ククールは悪気があって言ったんじゃないって、わかってる。むしろ私が立ち聞きしてしまったようなものだもの。私の方から謝って、なかったことにしてもらうのが一番いいのかもしれない。
でも、今はちょっと声を出せそうにない。
ためらってる間に、ククールに追いつかれてしまった。
「さっきはごめん、傷つけること言った。・・・泣かないでくれると、ありがたいんだけどな」
・・・泣くなって言ったって無理よ。あんたの声聞いた途端に、一気に涙腺緩んじゃったんだから。
そうよ、傷ついたわよ、自分でも驚く位にね。
聞きたくなかった、ククールの口からだけは、あんな言葉。力を貸してくれるって約束してくれた言葉を、私がどれだけ支えにしていたか、気づかされてしまったから。
そんなふうに思う自分のことが、情けなくて悔しくてどうしようもない。
いつの間に私、こんな甘ったれた人間になっちゃったの?
ほんとは、ずっと前からわかってた。自分がそんなに強くないって。優しくされたら、頼りっぱなしになってしまう人間だってこと。
だから気をつけてたつもりなのに、いつの間にかすっかり甘えてしまっていた。
話し声が聞こえる。誰かが階段を上がってくる。他の宿泊客かしら。
「入って」
私は部屋のドアを大きく開け、ククールを促す。
「いや、入れって、それはちょっと・・・」
何してるの? こんなふうに泣いてるところなんて他の人に見られたくないんだから、早く入ってくれないと困るわ。
「早く」
ククールの腕をつかんで中に引き入れ、ドアに鍵を掛ける。
いくつもの気配が廊下を通っていく。バニーショーが終わって戻ってきた人たちなのかもしれない。はっきり聞き取れないけど、酔っ払い特有の大声で何か言っているから。
「しょうがねえな、やっぱりオレ間違ってねえよ。ゼシカは心配だ、目が離せない」
いきなり呆れたような声で言われて、私は何のことかわからない。
「警戒心なさすぎ。オレが紳士だからいいものの、泣いてる女の子にこんなふうに部屋に入れられたら、勘違いするヤツ多いぜ。オレもついうっかり、慰めちまいそうになるとこだった、体でな」
な、何てこと言うのよ、この男! 涙も何もかも、引っ込んじゃったわ。
「でもそれは全部、男の勝手だ。さっきの言葉もそうだよ、男のわがまま。ただ単純に自分がイヤなんだよ、ゼシカがケガしたりするとこ見るの。ヤロウが痛い思いしてるのは気になんねえけど、レディがそんな目にあうのは、どうにも耐え難い。それだけだ」
何よ、いきなり本題に入ったりして。こっちは頭がついていかないわよ。
「・・・それって結局、女をバカにしてるってことじゃないの」
「バカにしてるんじゃない、大事に思ってるんだ」
怖いくらい真剣な声。・・・何だか緊張してる。ククールが変なこと言うから、二人きりだってことまで、変に意識しちゃう。
「・・・お願いだから、家に帰れなんて言わないで。さっき、すごく悲しかった。私が女だから気を遣って面倒なのはわかってる。体力ないから、足手まといだっていうのも自覚してる。でも、どうしても暗黒神の復活はこの手で止めたいの。
そうでなければ、私はどこにも行けない。だから、お願い・・・」
ああダメ、しゃくりあげたような声しか出ない。また泣いちゃいそう。こんなふうに女の武器みたいに涙見せたりして、差別しないでなんて言う権利ないわ。
「・・・ごめん、そのことで誤解を解くのが先だった」
ククールが私の肩に手を置く。
「少なくともオレは、ゼシカのこと足手まといなんて思ったこと一度も無い。ゼシカの魔法抜きで魔物と戦うのがどれだけキツいか、もう充分思い知ってる。
さっきも言ったように、バーでの言葉は、ただのオレのわがままだ。どんなに頑張ったって、オレはゼシカと他の連中を同じようには思えない。そんなふうに見られるのはイヤだって気持ちもわかるけど、無理なもんは無理だ。
きっとこの先も、よけいなこと言ったり、よけいな手出ししたりすると思う。その時は突っぱねてくれても構わないけど、できれば認めて、助けさせてほしい。その方がオレの気持ちは楽なんだ」
・・・ズルいわ。そんなふうに言われて、突っぱねられるわけないじゃない。
それにどうして、守ってくれるって言ってる方が下手に出るような態度なのよ。まるで私がもの凄く、わがまま勝手みたいじゃないの。
・・・ううん、わがまま勝手なんだわ。
昼間の勝負の時だってそう。私ったら当たり前のような顔して、ククールに一緒に来てくれるように言ったわ。それを了承してくれたことに対しても、ろくに感謝もしなかった。
よく考えたら最低じゃないの。力を貸してもらおうとする人間の態度じゃないわ。
「・・・ううん、私の方こそお願い。昼間、言ってくれたわよね。『オレが必要ならお供する』って。その通りよ、私にはあなたが必要だわ。だから助けてほしいとは思ってる。そのことに感謝もしてる。
でも、出来る限りは自分で戦いたい。自分の足で前に進みたいの。勝手なのはわかってるけど、そのことも認めて。その上で一緒に来て、力を貸してほしいの」
もう少しで忘れるところだった。これは私が自分で決めて進んでる道だってこと。暗黒神を止めるのは私がこの手でやらなくちゃいけないこと。
私が連れていってもらうんじゃない。ククールが私の望みに付き合ってくれてるだけだっていうのに、『帰れ』なんて言葉くらいで動揺するなんて、甘えすぎてた。考え違いもいいとこだわ。
こんな中途半端な覚悟で力を貸してもらおうなんて、失礼にも程がある。
「あんまり誘惑すんなよ。ホントに小悪魔だよな、このお嬢様は」
・・・誘惑って何? 今の話のどこをどう聞いたら、そういう単語が出てくるの?
「そんな可愛い顔して、潤んだ瞳で見つめられて『あなたが必要』とか言われたら、拒絶できる男なんていないっての。仰せに従うよ、オレはおとなしく後ろから付いてく。
ゼシカは好きなようにやればいい。だけど、いざとなったらオレも自分の思う通りにするから覚えといてくれ」
・・・何だろう、微妙に話をそらされたようでしっくりこない。でも私の望む通りにするとは言ってくれてるのよね。
「・・・もうそれでいいわ」
結局、昼間と同じ返事をしてしまった。
こんな言い方したいわけじゃないのに、なぜだか私を素直にさせてくれない。
でも疑う気持ちには全くならない。信じられるのよ、なぜか。
どうしてなんだろう・・・本当に不思議な人よね。
<終>
GJ
いつも楽しみにしてます。カンガレ!!
GJ!!GJ!!
二人の信頼とか愛とか志とか目的とか
色々な感情が上手い具合に絡まってて
毎回ドキドキしてます…!
(・ω・)ほんとGJです
いいですねぇ…
仲間としてゼシカと共に目的を遂行したい・
男として彼女を守ってやりたい、この2つのジレンマがたまりませんね。
GJ!
ククールとゼシカについては毎度毎度GJなんだけど、
ククールと二人のときは標準語を話すヤンガスは話の内容も含めて別人みたいだw
とにかくGJ
ぬわーーっ!!
GJです!早くゼシカも気付いて欲すぃ、、
でも『味方』は冒険後ですもんね。
この微妙な関係が(;´Д`)ハァハァでつ。ありがとうございました。
>>499-503 どうもありがとう。温かい言葉が目に染みて前がぼやけます。
だからかな、パパスの幻影が見える・・・w
ちなみにフィギュアは買ってません。出来はいいのかな?
プレイアーツのやつですよね?もう少し安かったらなぁw
キャラクターズギャラリーの小さいやつ、ヤフオクで見かけるけど
ククールとゼシカだけ高価になっちゃうんだよね〜・・・ほすぃ
ついでに?聞いてみる。ククゼシ同人誌は皆さん買ってますか?
1000円のやつ(複数著者の)に興味あるんだけど、買ってないまま。
オススメ!という意見が聞けたら買ってみようかなーと思うんですが。
・・・って、買ってるほうじゃなく著者の方々がいそうですがね、ここw
Jbyさんのなんかも売ったら売れそうだもん。
自分で確認するべし。
内容がいいとか悪いとか、そういうのは人によって感性が違うからどうともいえない。
それに、最初からオクで売ってやろうという気持ちで買われるのって
気分のいいものではないと思うよ。
同人誌の話題はなぁ…。
良いとか悪いとかここで話すのはイクナイような。
リロらないでレスしてしまった。スマソ。
あ、え、そういうもん?そうとは知らず。すんません。
>最初からオクで売ってやろうという気持ちで買われるのって
そんなことはひとことも書いてないのだけど。
オクについてはキャラクターズギャラリーのミニフィギュアの事だけ。
同人誌の話題を出した後すぐに「○○さんのなんかも売ったら売れそう」という
文脈からして、同人誌の事を指してそう言ったと取れてもおかしくないよ、それ。
手段がオクでなくとも、古本屋など他手段であっても同じ事。
しかも個人名(?)まで無神経に晒してるし。
あれ、勘違いしてますね。個人名って何!?と思ったら・・・。
Jbyさん=このスレで投下されている職人◆JbyYzEg8Isさんですよ。
わかりにくかったならすいません。(そう略して呼んでる人他にもいたよね)
で、「○○さんのなんかも売ったら売れそう」の意味は、
◆JbyYzEg8Isさんのもここで投下してるだけじゃ勿体無い、
同人誌にして売ったら人気が出て売れそうな出来ですよ!って意味ですよ。
なんかこれでもヘン?(不安
513 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/16(水) 00:02:40 ID:p/0cfQBA0
そんなことであらそうな。
なんか、ふと思ったけど
他にSS職人さんがいたとしても、投下しづらい雰囲気だよね。ここ。
515 :
511:2005/11/16(水) 01:08:25 ID:rfW+YYTk0
>>512 Jbyさんの件に関してはそれはすまんかった。
だけど、「このスレに書き手が居そうだなw」とか言っておいて
その1000円アンソロの感想を書かせようってのは
作家さんの晒しに近いものがあると思ってしまった。
同人誌の話題なら同人板だってある事だし。
他諸々のスクエニカプみたいに作家個人の晒しが横行するのはイヤだと思ったんだ。
>>511サン
突っ走り過ぎじゃねーでがすかw
505,506さんはふつーに話しを振ってくれただけでしょーに。
オススメある?と訊ねただけで、ホンの良し悪しも言ってねーでがすw
少し肩の力抜いた方がいいでがすよ、アネキ。
楽しみましょーよ。ワンナイトスタンドショーみたいなもんなんだからw
505,506サン、俺には文意は通じました。なんの問題もないw
自分も大体>512氏の文意には取れたけど、でも同人誌の話題は
あんまりここ向きではないともオモタ。
「オススメって声があったら」と聞いてみたところで
気まずさからどうせ悪い答えなんてあんまり返ってこないと思うんだけどね。
>>514 禿同。
特定の職人さんをヨイショしてるとこなんか、もうね。
まあどこぞの官スレみたくきぼんきぼんばっかりなスレよりは、職人を大事にしてるけどね。
大事にしすぎるのも問題。難しい。
書き手の一意見…。
別に特定の職人さんをヨイショしてても投下しにくいとは思わないけどなぁ。
住人から反応のないとこよりか多少マンセー気味の空気がある方がやりやすい。
ただでさえ斜陽なんだから、いちいちつっかかるのはどうかと思うよ。
嫌ならネタ振れ。
でも振れるネタも少ないんだからぐちぐち言っても仕方ないよ。
じゃぁ、Jbyさんが好きなのであまり大事にしないことにする。
今回のお話もククゼシはすごい研究されてる気がしたけど
ヤンガスは違うだろーって感じでした。
がすとかげすとかって別に敬語じゃなくて口癖だったような気がする。
パルミドでヤンガスの子分が
「がすとかげすとか言って笑えるんだよなー」とか言ってたし。
普通にしゃべるヤンガスなんてヤンガスじゃないやい!と思った。
ヤンガスの言葉遣いには私も違和感があったけど
ヤンガスってゲルダが相手だと、「げす」「がす」を使わないんだよねー
Jbyさんのもそれを意識してるんだと思ってた
もしくは、ヤンガス語で書くのが苦手だからそうしたとか、そんなとこ?
>>522 激しく同意。ククゼシが完璧イメージ通りなのでなおさら気になった。凄く惜しく思った。
しかし、Jbyさんはあれだけのモノ書けるのだから凄い。これからも投下待ってます。ガンガレ!!
>>523 そ、そうだったのかーーー!!
全然気づかなかったorz
次プレイするときゲルダとしゃべらせてみよーっと。
Jbyさん、ごめんなさい。
>>523 そりゃ知らなかった。Jbyさんゴメンね。リロードもまめにするw
☆★以下チラシの裏★☆
でもククールと飲んでるときに標準語なんだよね?うーん?酒の肴がゲルダの話題だからつい標準語ってことで落ち着くことにする。
なんか、どっかで、
ヤンガスのげす、がすは彼なりの敬語表現か??
というレビューを見たことがある。
それが頭の片隅にあったので、全然違和感感じなかったよ。私は。
別にJbyさん以外いらねーし
>>527 >ヤンガスのげす、がすは彼なりの敬語表現
そうそう。それ何かの攻略本で確か見たよ。
>語尾に「がす」「げす」をつけるのは彼なりの敬語表現らしく、主人公以外と話すときは、ふつうにしゃべることが多い。
公式ガイドブック 上巻 世界編より
ククールとヤンガス、二人きりの描写がゲーム中に無いので、実際にどうかわからないんですよねw
あくまで、私イメージということで。
ここ変、とか言われるのって、実は誉められるのと同じくらい嬉しいんですよ。マゾじゃないけどw
他の人のキャラクターイメージが、わかって楽しい。
公式ガイドブック上巻ってククゼシの宝庫ですよね。
ゲーム一週目では萌えポイント全部見落としてた私は、この一冊でククゼシにドハマリしました。
今でも御飯三杯いけます。
「〜(で)ございます」みたいなもんかねー
>>530 公式ガイドブックにまで書いてあったとは!
失礼いたしました。
でもやっぱり違和感あるなぁ・・・。
喜んでいただけたなんて、変だといった甲斐がありましたw
>>531 「〜でございます」→
「〜でござーます」→
「〜ざます」
って変化するような感じなのかね。
それともですます語から
「〜です」→「〜でがす」
の方が近い?そういえば、がすとげすは使い分けされてるんだろうか。
なんか気になってきたな。
533 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/17(木) 23:55:18 ID:/EbJQFcxO
あほくさage
なんかチラシの裏だらけだな・・・
自演臭
良いSSが読めるということは高い読解力をもつ住人が複数いるということだ。
当然、住人の文章力も平均的2ちゃんねる住人よりレベルが高いと考えるのが自然だ。
住人は皆、自分よりレベルが上だと思って、己の感性と創造力を発揮して自作自演してくれ。
あと、「チラシのウラ」みたいな使い古した慣用句は、ほぼこのスレでは使われないから気をつけて。
頑張れよ。
出来ればSSで頑張ってほしいけどね。
腐女
ここは小説スレではない、萌えスレだ。
小説のうまいへたでなく、萌えるか否かが最優先事項。
萌えるSS書いてくれるなら何にも言わないが、
しかしヤンガスの口調なんかは、然るべきスレで聞いてほしいものだ。
あと、このスレに来たということは、ククゼシに萌えに来たということ。
仲間になりたいなら歓迎するよ!
w
540 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 23:33:50 ID:yvYmmLhy0
高い読解力をもつ住人
高い読解力をもつ住人
高い読解力をもつ住人
高い読解力をもつ住人
536は
煽りなのかあらしなのか素なのかよくわからんな。
荒らしではないでしょ。
結果的に煽ってしまっただけで。
543 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 22:03:57 ID:jx9IiJLx0
w
544 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/20(日) 17:54:07 ID:3B7Edfvy0
w
ああ、北米版がやりたいよ…英語でもククゼシ堪能してみたいよ…
とつぶやいてみるテスト。(アンジェロだけど
北米版ってククゼシ満載なの?
「君を守るよ」とか
「教えてやろうか?」とか
聞きたいね。
アンジェロの声は低いと評判だけど、自分的には甘いセリフは低い声の方が萌える。
北米板、すごく欲しい・・・。新コスチュームも見たい。
スクエアエニックスさん、お願い!
しかもフルオケだしな。欲しい…。
551 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/21(月) 22:00:06 ID:Iw9BGmVW0
保守
553 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/23(水) 11:47:45 ID:x0FmXymD0
並び順でどククゼシをくっつけたいのとエイトとヤンガスの兄弟仁義も捨てがたい葛藤がおきて
結局ククゼシを危険な目にさらしてしまう自分(´・ω・`)ショボーン
どゆこと?
結局エイトとヤンガスも隣同士にしたいから
ククゼシ萌えな自分はククールとゼシカをそれぞれ先頭と二番手にしてしまい
雰囲気前衛みたいで危険なパーティーにしてしまうて事です。
分かり辛くてスマソ。。
557 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 02:06:43 ID:vPqseoOxO
エイトとヤンガスを先頭と2番手ってのはダメ?
あげてしまった…。
ごめんなさい。
自演乙。
560 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 07:58:27 ID:SJHCw/1W0
>>557 だってククゼシ萌えですものw
一週目はエイトとヤンガス前で普通にプレイしましたが。。
期待を裏切らない方だw
ククールとゼシカってワンピースのサンジとナミに似てない?
別に似てないとオモ
ククとサンジは何となく分かる気ガスw
>563
言われて気づいたけど、似てると思う。
男性側がキザでアタックかけても、報われないところとか。
そういえば、サンジも足技だったよね。ククの格闘と一緒だ。
567 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 21:27:31 ID:fiJ6G0Ob0
唐揚
568 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 21:53:02 ID:oSrV5Vul0
保守
569 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/27(日) 00:05:39 ID:tlNvPsb4O
保守。
ククとゼシは可愛いと思う。
ククゼシの、
ずっこけカプにも、エレガントカプにもなりえる
微妙なとこが好きだ
激しく同意。色々変化自在だよね!
真EDで主が姫を迎えに3階に行くとき、ゼシカに会った後に
姫を迎えに行かず中庭に出てゼシカと話すと、
「何よククールと一緒のあのチャラチャラした女たちは!仲良く出来そうにないわ」
みたいな台詞を言うのですねーーー何度もED見てるけど、昨日初めて知った・・・OTL
ククールの連れは「ククールの行くとこならどこでもついていく!」みたいなこと
言ってるし・・・ありゃあ〜こんな大事なとこ見逃してたのかー、と反省。。。
保守。
ゼシの気を引こうとするクク萌え。
「オレの事が 好きにな〜る 好きにな〜る …ダメ?」
リノアかよww
地雷ヒロインと同レベルか・・・orz
それにしても海外版アンジェロに会いたいなぁ・・・。
海外版のレビューとか見てたんだけど、
叫びだしそうなくらいイイ!(・∀・)よ!!
あの低い声がセクシーすぎますよ。
フランス語をしゃべったりするそうですよ。
ゼシカも「Don't leave me・・・!!」って
リーザス像にすがって泣いてたり(つД`゚)
つやのある、これまたセクシーな声でしたよ。
相変わらず気が強そうな声でもあったけど。
日本でできるようにならないかなぁ・・・。
海外版だと「ククゼシ」じゃなくて「アンゼシ」だねw
すいません、すんごい長い話を投下しに来ました。
いいわけみっともないけど、とりあえず先に謝らせてください。
多分、こういう話は最初で最後です。
一周年記念ということで、大目に見てやってください、お願いします。
ベルガラックのカジノが再開し、オレたちは護衛の報酬にもらったコインで遊ぶことにした。
一番得意なのはポーカーなんだが、残念ながらこのカジノにはカードゲームは無いんで、仕方なくルーレットで勝負する。
ビンゴやスロットは機械任せだから、実力を発揮しようが無い。その点ルーレットは人間のディーラーが相手だから、まだ腹の探り合いをする余地があるからな。
「カードならともかく、ルーレットってイカサマできないわよね。それなのにどうして、こんなに当てられるの?」
ゼシカが無邪気に感心したような声を上げる。いろいろとコツが無いでもないが、勝負の真っ最中にさすがに言うわけにはいかない。
「それは企業秘密さ。まあ、一つだけ覚えておいた方がいいことはある。ここのディーラーみたいに一流どころになると、狙った所に玉を入れてくるからな。ギャンブルなんてのは胴元が勝つようになってるから、大事なのは目をつけられる前にやめることだな」
「そんな真っ赤な服着て、目立たないようにしようってのは、間違ってると思うわ」
「オレの場合、この美貌でもう目立ってるから、服は関係ないんじゃねえの?」
「あいかわらず、自意識過剰ね」
いつもと変わらない軽口の応酬。
「ねえ、今更なんだけど、どうしてククールだけ制服の色が赤いの?」
いきなりのゼシカの質問に、オレは少しとまどった。
「本当に、今更だな」
「自分でもそう思うけど、急に気になったのよ。そうなったらもう、聞かずにはいられないの」
普段ならたいしたことはない質問だが、ギャンブルとイカサマと赤い服。この組み合わせはあまりにも、揃いすぎていた。
「別に深い意味はないさ。敢えて言うなら、青よりも似合ってたから、かな」
「うそ。あんたらしくないわ。普段だったら、オレはどんな色でも似合うんだ、ぐらいは言うじゃない」
こういう時だけ、ゼシカは妙に鋭い。
どうしても秘密にしなきゃならないことではないけど、改めて話すにはちょっとテレくさいんだよな。
もう何年も経ってるっていうのに、オレの中では思い出として語ってしまうには、まだ色鮮やかすぎるんだ・・・。
オレが両親を失い、修道院で暮らし始めたのは八歳の時だった。そして十歳の頃から貴族たちに指名されて自宅へと招かれ、祈りを捧げることを務めとしていた。
あの頃のオレは自分で言うのも何だが、柔順でおとなしい子供だった。そして天使のような愛くるしい容貌。さらには没落した領主の家の息子だったっていう悲劇性が、ゴシップ好きの婦人たちの心をとらえたんだ。
オレにとっても初めのうちは、貴族の家への訪問は楽しいものだった。まだガキだったオレにとって、規律でがんじがらめの修道院の中よりも、華やかな外の世界の方が素晴らしいものに思えたとしても無理はない。
きらびやかな衣装を身に纏う貴婦人。美しい食器に盛られる、珍しい菓子や料理の数々。それらは全て、両親が生きていた頃の何不自由ない暮らしを思い出させた。
人々はみな親切で、誰もがオレに良くしてくれていたように思えた。
同じ修道院で暮らす異母兄のマルチェロは、オレがどんな態度を取ろうと、いつでも変わらない憎しみを向けてきた。時に冷たい態度で憎しみを露にし、時に初めからいないもののように、完全に無視してくれた。
オディロ院長を初め、何人もの人が何とかオレたちの仲を取り持とうとしてくれたが、それはますますマルチェロの心を頑なにするだけだった。初めのうちはオレにしか見せなかった敵意を、他の人間にまで示すようになっていってしまった。
まだ純粋だった頃のオレには、自分が冷たく扱われることよりも、優しかったはずの兄貴が自分のせいで荒んでいくのを目の当たりにする方がキツかった。
だから少しでも、兄貴の目に触れない場所に身を置きたいと思った。そうすれば、互いに傷つけあうことも少なくなるだろうと考えていた。
貴族の家を訪問して、寄付金を集めてくることは、育ててくれたオディロ院長への恩返しにもなるし、一石二鳥だと思えたんだ。
オディロ院長は初めは猛反対したけど、オレはそれを振り切った。止めてくれる理由をわかってなかったんだ。オディロ院長はオレのことを心配してくれてたっていうのに、オレは自分がヘタなことをしたら、修道院の迷惑になるからだと勝手に思い込んでた。
今思うと、心配してくれる気持ちを受け入れられないところは、その頃からだったのか。本当にどうしようもないヤツだよな、オレって。
最初の頃は、貴族の家を訪問する時には騎士団員の護衛がついていたが、二年も経つ頃には護衛は行きだけになり、滞在時間も帰る時間も、オレの判断に任されるようになっていた。
オレはルーラの呪文を習得していて、護衛付きでも魔物の出る道を歩くより、ずっと安全に修道院に帰れたからだ。オディロ院長は、貴族の家への訪問を了承してくれた後も、オレがルーラとバギを習得するまでは絶対に外に出してくれなかった。
聖職者として、人を疑うようなことはしたくなかっただろうに、汚れた貴族の欲望から自分の身を守るための手段を、オレに授けてくれていたんだ。本当に実の子供のように守ろうとしてくれてた。
だけどオレは気づいてなかった。自分がどんどん擦り減っていっていたことに。
修道院の中では『憎むべき疫病神』であり『柔順な金づる』であること。貴族達の家では『姿のきれいなお祈り人形』でしかないこと。
それを、オレの心は無意識のうちに感じ取っていた。自分が人間として扱われていないことに気づいてしまっていたんだ。
そして、オレはドニの町を訪れるようになっていた。
初めのうちは修道院から逃げ出してきたんじゃないかと困惑していた町の人たちも、窮屈な生活の息抜きのためだけに来ているんだと強く示すうちに、オレを歓迎してくれるようになった。
ちょっとばかり汚いやり方だったとは思う。
不幸な境遇の元領主の息子に同情こそしながらも、何の手も差し伸べてこなかったことに負い目を感じてるのはわかってた。だからその『元ぼっちゃん』が屈託なく接することに、安堵していたのも感じてた。要は弱みに付け込んだってことだ。
でもオレには必要だった。昔からの自分を知り、憎みも利用もしない人たちの中で、道具や見世物じゃない『人間』だった頃の自分を感じる時間ってやつが。
その頃のオレはいつも穏やかで、行儀も人当たりも良かったから、修道院の方でも旧知の人たちを訪ねるという、たった一つの規律違反は、多額の寄付金を集めてくる功績に免じて、目をつぶってくれた。
おとなしく柔順にさえしていれば、誰も自分を邪険には扱わないことを学んでいた。ただ一人の例外、マルチェロを除いてだがな。
そして、そんな暮らしの中であの人に出会った。
自称、世界一のギャンブラー。えげつなくてロクでもないことばかり教えてくれた、オレにとって師匠と呼べる人だった。
その日もいつものようにドニの酒場を訪れていたオレは、カードゲームに興じている、見かけたことのない男の姿を目に止めた。
屋内だっていうのにサングラスをかけ、豊かに蓄えられた口ひげと顎髭の間からパイプをくゆらせていたその男は、体格が良く、熊をも絞め殺せそうな太い腕を持っていた。
相手のゴロツキは店の常連で、弱いくせに大の博打好き。いつも宿屋の主人や酒場の客に勝負を挑んでいたが、勝った姿を一度も見たことが無かった。
三大巡礼地の一つ、マイエラ修道院に近いあの町で、見かけぬ男の姿なんて特に珍しいもんじゃなかったし、上品さとは無縁のあの酒場で博打が行われることもよくあることだった。だけどオレは何か違和感を感じて、その光景から目が離せなかった。
そして、見ちまったんだ。器用にカードがすり替えられる瞬間を。イカサマだった。
「あっ・・・」
マヌケだったのは、思わず声を出してしまったことだ。
他の誰も聞き取れない程の小さな声だったはずなのに、髭の男はその声に気づいて視線を向けてきた。
オレは慌てて顔を背けたが、確かに一瞬目が合ってしまった。
「ちょっとだけ待ってろ。すぐに戻る」
ゴロツキにそう声をかけ、髭の男はオレの方へ歩み寄ってきた。
「こんなところで、お前さんみたいなガキが何してるんだ? 坊やは帰ってミルクでも飲んでな。おっと、ここで飲んでるのもミルクか」
男はオレのカップを覗き込み、自分の言った言葉に大笑いしていた。オレもさすがにその年では、まだ酒は覚えてなかった。
でも、そんなことよりもオレは生きた心地がしなかった。
博打にイカサマは付き物だ。だけど、ドニの酒場で行われるイカサマなんで稚拙なもので、大抵バレて、くだらない乱闘になる。
だけどその男の手さばきは、相手のゴロツキも、勝負を見物している客たちも、誰ひとりとしてそれに気がつかなかった程に見事なもんだった。気づいたのはオレだけ。
思わず声を出してしまったことを後悔した。自分がイカサマに気づいたのがバレたら、どんな目に合わされるのかと思うと気が気じゃなかった。
男はオレの隣にドカッと腰を下ろした。身なりは良いのに、男の体はかなり匂った。軽く見積もっても一週間は風呂に入ってなかったと思う。
「お前、見てたのか?」
小声で問われ、背に冷たい汗が流れた。
男は見るからに強そうで、その太い腕にかかれば、当時のオレの華奢な首なんて一瞬でへし折られてしまうに違いないと思った。周りの人間の助けは期待してなかった。
「どうなんだ?」
ドスのきいた声で再度訊ねられ、オレは完全に竦み上がった。
「ん? なんだ、お前、ビビッちまってんのか? 別にとって食いやしねえよ。あー、でもよく言われんだよなあ。お前の顔は怖いから、言葉だけでも優しくしろってよ。そんなに怖くもねえと思うんだがなあ。なあ、お前、どう思う?」
男はサングラスを取って、ニカッと笑いかけてきた。
サングラスに隠されていた目はクリッとして丸く、顔全体の造形はお世辞にも可愛いものではなかったが、不思議な愛嬌を感じさせた。
「それとも、やっぱり怖いか?」
大きな背を丸め、しょんぼりとする男の姿は、怖いという言葉からは程遠いものだった。
何となく気の毒になって、オレは首を横に振った。
「そうかそうか、そいつは良かった。で、話を戻すけどよ、お前、さっきのアレ、見てたのか?」
三度目になる問いに、ようやくオレは小さく頷いた。
「ああ、やっぱりそうか、ちくしょう。おめえみてえなガキに見破られちまうとは、オレもヤキが回ったもんだぜ。ちっとばかり気を抜きすぎたみてえだな。世界一のギャンブラーの名が泣くぜ」
そして男は懐から財布を取り出し、オレの前に札の束を投げ出した。
「これはおめえのもんだ」
いきなりのことに、あの時はかなり面食らったもんだ。
「えっ、だって、どうして・・・」
男は、オレの耳に口を寄せて囁いた。
「イカサマってのは、バレたらそこで負け。見破ったヤツの勝ちになるんだ。だから、あのカモからぶんどった金は、オレのイカサマを見破ったお前のもんだ」
言いたいことだけ言って、男はまたゴロツキの待つテーブルへと戻っていった。
後に残されたのは、千ゴールドもの大金。
オレは完全に混乱してしまっていた。
その場で金を返しちまえば良かったんだが、カードゲームを再開したテーブルに近づく程の度胸はなく、結局その日は、そのまま金を持って修道院に戻った。
そうでなくても眠りの深い方じゃないっていうのに、大金を持つ緊張で、その晩は一睡も出来なかった。
それで次の日、貴族宅への訪問を終えたオレは、金を返す為にドニの町に大男を訪ねた。男は留守にしていたが、宿屋に荷物は残されてたから、まだ引き払われていないのがわかり、少しホッとした。
オレは外で男の帰りを待つことにした。選んだ場所は川のそば。人のいる場所にはいたくなかった。
その頃のオレは、もうドニの町を訪れることでも自分を保つのが難しくなっていた。大事な何かをつなぎ止めていた糸のようなものが少しずつ擦り切れていて、それを完全に失ってしまう寸前だったのかもしれない。
誰とも会いたくないとも思うのに、誰かにそばにいてほしいとも思ってた。
相反する感情、矛盾する思い。それは人間なんてものをやってたら仕方ないことなのに、まだガキだったオレには理解できなかった。
水面には決して目を落とさなかった。自分の姿を目にしたくはなかった。それがあの頃の自分の境遇を作り上げた最たるものだってことを感じて、無自覚に疎んでいた。恵まれた容姿だけが自分の存在価値だなんて、純真な少年だったオレの心にはキツすぎた。
そうしていると、水音に混じって何かかぼそく鳴く声が聞こえてきた。
初めは気のせいかとも思ったが、川面を覗いてみると、一匹の猫が中洲に取り残されていた。犬にでも追われて落ちたんだろうか、おびえきって悲しげな声で鳴き続けていた。
あの時は本当にどうしようかと困り果てたもんだ。あの町の川は低いところを流れていて、そこまで降りていく道はなく、小さいながらも切り立った断崖を降りていくしかない。川の流れそのものは緩やかだが、深さはかなりあった。
更に、オレは泳げなかった。いや、泳いでみようとしたこともなかった。
領主の嫡男に生まれ、豪華な屋敷の中で箱入り生活をした後は、規律の厳しい修道院暮らし。泳がなきゃらない事態に遭遇したことなんてあるわけがない。
それでも目の前の、弱くて儚くて、誰にも気づかれないところで鳴いている小さな命を、見捨てるつもりにはなれなかった。
そしてオレは、転落防止に張り巡らされているロープをくぐった。
「おい! そこのお前! ちょっと待て、早まるな!」
大きな声と共に、地鳴りのような足音。その方向を見上げると、前日酒場でイカサマギャンブルに興じていた大男が、すごい形相で走ってきていた。
「命は一個しかねえんだ、バカなマネすんじゃねえ!」
大男は、その勢いにあっにとられているオレをロープの向こう側から引き戻し、軽々とかつぎ上げた。
「ふう、危ねえとこだったぜ。何があったか知らねえが、おめえみたいなガキが命を粗末にするようなマネすんじゃねえ!」
オレは地面に下ろされるや否や、問答無用の拳骨を頭に浴びせられた。目に星がとぶっていうのは単なる比喩表現じゃないことを、あの時知った。
「何か困ったことがあるなら、話してみろ。オレに良ければ相談に乗ってやる。死ぬなんてのは、いつだって出来るんだ、男ならまずは戦ってみろ」
自分が自殺未遂をしたと勘違いされてることに気づいたオレは、ガンガンいってる頭を横に振った。
「ち、違います・・・」
そう言って川の方を指さすと、男は川面を覗き込んだ。
「・・・お前、あの猫助けようとしてたのか?」
オレが頷くのを見て、男は自分の額をピシャリと叩いた。
「すまねえ、早とちりだ。オレはいっつもそうなんだ。よし、ちょっと待ってろよ」
言うが早いか、男は上着を脱ぎ捨て勢い良く川に飛びこんだ。激しい水しぶきがあがり、目まぐるしい展開にオレの頭はついていかなかった。
ようやく我に返って川を覗いてみると、男は猫を懐にいれ、絶壁の岩壁を軽々とよじ登ってきていた。
「おう! ちょっとすまねえが、何か拭くもの持ってきといてくんねえか? あと、酒とミルクも頼むぜ!」
絶壁をよじ登ることの苦労など、全く感じさせなかった。
オレは言われた通り酒場にタオルと酒とミルクを取りに行き、戻ってきた時にはもう、男は岩壁を昇りきっていた。
オレがタオルを差し出すと、男は自分のことはそっちのけで、ガシガシと乱暴な手つきで猫の体を拭き始めた。
あの時のあの猫は気の毒だったと思う。犬に追いかけられた方がマシだっていう勢いで悲鳴を上げてた。メチャクチャに暴れて、命の恩人の手を引っ掻きまくって、元気に逃げていったけどな。
「あれだけの元気があれば、大丈夫だな」
男は体を拭きもせずに、酒を呷りながら笑っていた。
「せっかくミルクまでやろうと思ったのに逃げられちゃあ仕方ねえ、それはお前が飲め。そんな女みたいな顔してヒョロヒョロしてやがるくせに、こんな岩棚おりようなんざ、勇敢通り越してバカだぜ」
確かに、あの頃のオレは同じ年頃のヤツらと比べてもチビで弱っちかったと思う。でも、そこまで不躾な言い方をされると、さすがにムッときた。
その男に会いに言った理由を思い出し、サッサと用件を済ませてしまおうと思った。
「こんなお金をいただくわけにはいきません。お返しします」
男は札束とオレの顔を交互に見比べ、金を受け取った。
「そうだなあ、あの後、お前みたいなガキにこんな金持たせるのは考えなしだとは思ったぜ。それに酒場なんかにいたから気づかなかったが、お前マイエラ修道院の人間だろ? 清く正しく生きる僧侶様には金は無用のモンだよな」
わりとアッサリと金を返せたことに、オレは少し安堵した。
「だけどお前、よくオレのイカサマを見破れたもんだ。どうしてわかった?」
だから、その男の問いにも、答えてみるつもりになった。
「ずっと見てたからです。どうしてかわからないけど、あの時、全体に何となく違和感があったから・・・」
とは言っても、こういう答えかたしか出来なかったけどな。
「ほう・・・」
男は感心したような声をあげた。
「まあ、確かにお前みたいなガキに金を渡すのはアレだからな。代わりに何かやらねえとなあ。何か欲しいもんはないか?」
いきなりの言葉に、オレは訳がわからなかった。
「イカサマだって、バレるかどうかのリスクを楽しんでやってるんだ。見破られれば、何かを失う。そういうリスクがなけりゃあ、つまらねえ」
本当に付き合ってられないと思った。
「結構です。もう帰らなければならないので、失礼します」
「ああまあ、すぐには思いつかねえよな。ゆっくり考えてこい。オレはまだしばらくこの町にいるからよ」
しばらくが、どのくらいかわからなかったが、その男がいる間はドニには近づかないようにしようと心に決め、オレはルーラの呪文を唱えた。
なのに、その二日後、意外なところで再び男の姿を目にすることになった。
週に一度は訪問していた、当時のオレの一番のお得意様の貴族の屋敷でだった。
オレも相当ビックリしたが、向こうの驚きっぷりは更に上だった。サングラスと髭で表情なんてものは全く読み取れなかったんだが、雰囲気でわかった。
「そうか・・・。元領主の息子ってのは、お前のことだったのか・・・」
そう呟いた男の声が沈みきっていたのは、今でも覚えてる。
「まあ、お知り合いだったんですの?」
その家の夫人がつまらなそうな声を上げた。
彼女は顔の造形としては美人の部類に入ったんだが、何というか品性に欠ける御婦人だった。オレが訪問する時には必ず他の客を屋敷に招いていて、自分が、不幸な境遇の元領主の息子にいかに親切にしているかをアピールするのを、何よりの楽しみにしていた。
多い時には両手の指でも足りない程の人数の前で祈らされることもあり、本当に見世物なんだっていうことを強く意識させられた。
「ええ、親友です」
男はあっけらかんとした声で、とんでもないことを言い出した。
夫人は一瞬あっけにとられ、その後、慌てて取り繕うような笑い声を上げた。
「まあ、そうでしたの。それならご紹介するまでもありませんわね」
オレは本当は紹介してほしかった。身なりからして、その男がそれなりの地位や収入のある人間だっていうのは見当がついてはいたが、ドニの安い宿屋に滞在していたことや、酒場でイカサマカードなんてやってたこと、何よりも粗暴な言動。それらがどう考えても一致しなかった。
でも、そんなことはすぐにどうで良くなった。
その日も、その男の他に三人の客がいて、いつものように綺麗な顔と声で、心の籠もらない口先だけの祈りを捧げていた間、ずっと居心地が悪かったからだ。
明らかに男はその場の空気に不快感を感じていた。
オレにしてみたって、面白くはなかった。知り合いと呼べる程ではなかったにせよ、会うのが三度目にもなる人間に、寄付金目当てに祈る姿を見られるなんて、気分がいいはずがない。
その頃だって、その程度のプライドは、まだギリギリで持ってたんだ。
祈りを捧げ終わり、修道院での生活の苦労話を、ほとんど芝居の台本を読み上げるような気持ちで話して貴族の虚栄心と同情心を満足させてやり、多額の寄付金を受け取って暇を告げたオレに、男は声をかけてきた。
「お前、ルーラ使えるんだよな。悪いけど、ちょっとドニまで送ってってくれ」
それなりに自分の感情を抑え込むことに慣れてなければ、もの凄くイヤな顔をしていたと思う。だけど不快な場所であったとはいえ、お得意様の屋敷の客に無下な態度を取ることも出来ず、渋々ながらも承知するしかなかった。
でもドニの町に着いて、男の発した言葉を聞いた途端、我慢の限界がきた。
「お前、いつもあんなことさせられてんのか? あれじゃあまるで見世物みたいじゃねえかよ。マイエラの修道院長は大層立派な人物だって聞いてたが、お前みたいなガキを寄付金集めに利用するようじゃあ、嘘っぱちだったようだな」
はっきりいって、キレたね。
オディロ院長は忙しい人だったから、そう頻繁に会って話が出来るわけじゃなかったけど、あの頃のオレにとって、唯一尊敬できる人だったんだ。それを悪く言われて黙ってるわけにはいかなかった。
「知りもしないくせに、勝手なこと言わないでください! オディロ院長はそんな方じゃありません、これはボクが自分の意志でやってるんです!」
正直、心臓が破裂しそうだった。悪い人間じゃないのは何となくわかってたけど、ゴツい大男にくってかかるようなマネしたのは初めてだったし、怒鳴り声あげること自体、あんまり体にいいもんじゃないしな。
「・・・そいつはスマンかった、許してくれ。オレはいつでも一言多いんだ。ホントにすまねえ」
アッサリと謝られ、オレはかなり拍子抜けした。そして、続いた言葉に混乱させられた。
「だけど今の言い方じゃあ、お上品すぎるぜ。『うるせえんだよ、てめえに何がわかるってんだ。オレの意志でやってることにゴチャゴチャ口出ししてくんじゃねえよ』とまあ、このぐらいは言わねえとな。相手によってはナメられるだけだ。ほれ、言ってみろ」
ムチャクチャだった。
ドニの酒場で多少はゴロツキの会話を耳にすることはあっても、基本は聖職者と貴族に囲まれて生活してたんだ。礼儀作法は完璧で、汚い言葉なんて使ったことが無かった。
「何だ、言えねえのか。どうもお前は危なっかしいガキだな。実力が伴わねえのに無理なことしようとするしよ。よし、さっきの暴言の詫びに少し鍛えてやる。明日からオレのところに来い。世間の荒波を乗り越える強さってヤツをたたき込んでやるぜ」
誰もそんなことは頼んでないのに、何だか勝手なところで男は盛り上がっていた。
オレはもちろん、そんなことを承諾した覚えはないんだが、その男は一度決めたことは絶対にやり通すタイプの人間だった。
その日、どうやって男に別れを告げて修道院に戻ったのかは、覚えてない。そのくらい動揺させられてた。そして翌朝、オレはその日以降の日程が大きく変化させられていたのに驚いた。
一カ月先までの貴族宅の訪問予定が全てキャンセルされていて、代わりにある家に通い詰めになることが決められていた。
その家では、ある貴族の老婦人が一人で暮らしていた。
家督を継いだ息子に追い出されるように与えられた小さな家で、使用人は料理人とメイドが一人ずつという質素な暮らしを強いられていた。
だから高額の寄付金を積むことができなくて、滅多にその家を訪れることはなかったけど、彼女のことは好きだった。
大抵の貴族のご婦人は、美貌と不幸な境遇なんてものにしか興味を示さなかったけど、彼女だけは下手くそなオレの祈りの言葉に熱心に耳を傾けてくれた。普段は口先だけで祈っていたオレも、不思議とあの家では真剣な気持ちで神様と向き合う気持ちになれた。
まあ何はともあれ、そんな不自然なこと、裏で何かが糸を引いてるに決まってるのに、あの頃のオレは素直にそれを喜んじまった。
だから、老婦人の家で例の大男の姿を見た瞬間、目眩がしたね。
「おう、よく来たなチビスケ。約束どおり鍛えてやるから、気合入れろよ」
本当に、そんなこと頼んだ覚えは一度もないのに、いつの間にか全てが決められていた。
やり方がえげつないよな。おそらくかなりの大金も積んで裏で手を回し、オレが一番悲しませたくないと思ってるご婦人を利用して、逃げられないようにしやがった。
ただ後で気づいたんだが、どう考えてもオディロ院長も一枚かんでたんだよな。そうじゃなかったら、オレが心を許していた貴族なんてのを知ってる人間なんて、他にいなかったんだから。
つまりオレはあの頃、オディロ院長の目にも危なっかしく見えてたってことなんだろうな。
そんなふうにしてオレの、ロクでもないことばかり教えられる日々が始まった。
オレはその人のことは『師匠』と呼ばされてた。男は秘密が無くなると色気が三割落ちるとか、わけのわからないことを行って名前を教えてくれなかったからだ。
あの男のどこにそんなもんがあるのかと思ったもんだが、老婦人にまで口止めしていたらしく、お茶目なところがあった彼女も『師匠さん』なんて呼んで笑ってたっけ。
その師匠自身のことで教えてもらえたのは、ほんのわずかだった。数年前にドニの周辺の土地を手に入れたことと、その土地で事業を興す計画のための下見に来ていたってことぐらいだった。
ああ、あと女性にはさっぱりモテずに独身だったってこともあったか。
だから、オレが自分の外見の良さを逆にコンプレックスに感じてることを知られた時には拳骨くらったっけ。世の中には中身がナイスガイでも、外見の悪さが災いしてモテない男もいるってのに、贅沢なこと言うなってな。
言われてみるとその通りだった。顔だって何だって、悪いより良い方が得に決まってる。せっかく恵まれた容姿に生まれてきたんなら、最大限に活かす方がいいっていうのも、あの時学んだ。
何でも自分でやろうとしないで、頼めることは誰かに頼んで楽をしろっていうのも、師匠に教わったことだ。
勝てない勝負は避けて通れ。勝つためだったらイカサマもあり。抜ける部分では手抜きしろ。騙すヤツより騙される方が悪い。逃げる時は一目散に逃げろ。
全部師匠が教えてくれたことだ。
才能があると妙に見込まれて、カードでのイカサマもたたき込まれた。ケンカする時は殴るよりケリ、更に有効なのは体当たりなんて、暴力に関しても一通り教えてくれた。うまいウソの吐き方とか、相手にダメージ与える物言いなんてのもあった。
真っ当なことといえば、泳ぎくらいなもんだった。
・・・ほんとに、ロクでもないことばかり教えてくれたもんだぜ。あの人にさえ逢わなければ、オレはもっと真っ当な人間でいられた気がする。
だけど不思議と楽しかったし、その教えのほとんどが今でも役に立ってるっていうのが、何とも笑えるところだよな。
だけど別れの時はやってきた。
師匠が持ってた土地は、計画していた事業には向かないと判断されたからだ。
そうと決まった以上、いつまでもドニの町に滞在している理由はない。修道院のガキの面倒を見るなんて酔狂なマネも終わりの時だった。
そのことを告げられた時、寂しさはあったが、かなり安心もしていた。
オレはあまり出来の良くない教え子だったからだ。
教えられたことは理解出来たし、実践出来なくもなかったけど、修道院で暮らしていくのに役に立つことだとは思えず、どうしても身につかなかった。
むしろ、身につけるのはヤバイと思ってた。
要は本気で相手にはしてなかったってことだ。
だから、その後の師匠の申し出には本気で驚いた。
「なあ、お前、オレと一緒に来ないか? 実はよ、昨日マイエラの修道院長と会って話をつけてあるんだよ。お前さえその気なら構わないって、許可ももらってあるんだ」
サングラスと髭で、表情なんてものはほとんど読み取れなかったが、全体に落ち着きがなく、そわそわしていた。テレていたんだと思う。
「修道院で暮らすのが悪いってんじゃねえんだ。ただ、お前には向いてねえと思うんだよ。手先も器用で、このオレのイカサマを見破るような、いい眼を持ってる。
世界一のギャンブラーのオレが保証するんだから間違いねえ、お前には才能があるぜ」
おそらく師匠は自分でも何言ってるのか、わかってなかったと思う。世界一のギャンブラーなんて言ってるだけあってポーカーフェイスは得意だったくせに、顔にびっしり汗をかいてたからな。動揺っぷりが伺えたってもんだ。
「それによ、オレは結構お前のこと気にいってんだよ。泳げもしなかったくせに、猫を助けに川に飛び込もうなんざ、男気ってやつがあるじゃねえか。オレはバカな奴は嫌いじゃねえ。
育ててくれた修道院長の為に、イヤな思いをしても金を稼ごうとする義理堅さも泣かせてくれるぜ」
猫を助けようと思ったのは男気なんてもんじゃなかった。ただ、あの時の猫の姿を自分と重ねてしまって、放っておけなかっただけだ。貴族の家への訪問だって、自分が修道院にいたくなかっただけの部分が大きくて、義理堅さなんかじゃなかった。
でも、外見ばかりを褒められてきたオレには、その言葉は嬉しく感じられて、ほんの一瞬だけど夢を見ちまった。
この男についていくのも悪くないって、そう思った。
おお、リアルで遭遇か?お疲れ!
「実はオレ、結婚は出来なかったんだけど、お前と同じ年頃の子供が二人いるんだよ。血の繋がりが無くても、やっぱり可愛いもんでな。娘なんて、こんな髭面オヤジを『パパ』なんて呼んでくれてな。家族ってのはいいもんだって、つくづく思うぜ。
二人育てるのも三人育てるのも一緒だ。オレみたいなのが父親なんてイヤかもしれねえけどよ、あんまり堅苦しく考えねえで、一緒に暮らしてみねえか?」
だけど、師匠が口にしたある一言が、オレの気持ちにブレーキをかけた。
「・・・ごめんなさい。ボクは行けません・・・」
他に二人子供がいることなんて、気にならなかった。家族ってもんを否定する気もなかった。師匠のことがイヤだったわけでも、もちろんない。
あの時、オレの心を凍らせたのは『父親』って言葉だった。
「だって兄さんは、ボクが生まれたことで父さんに家を追い出されたのに・・・」
それなのに自分がまた新しい父親に引き取られて、新しい兄弟と暮らす。そんなことが許されるなんて思えなかった。
バカな考えなのはわかってたさ。親父が兄貴にした仕打ちの責任がオレにあるなんて考えたことは一瞬だってない。それほどのお人よしじゃなかった。兄貴の憎しみは逆恨みだってことなんてガキでもわかる。
でも、どうしてもダメだった。自分だけ幸せになろうなんて出来なかった。
だから、オレは覚悟を決めた。
「・・・ゴメン、せっかく誘ってくれたのに・・・。でも、さ、平気だよ。オレだって、男なんだから、自分の面倒くらい自分で見れる」
修道院で兄貴の憎しみを受けて生きること。金づるとして、貴族相手に見世物のようなマネをして生きること。それまでは他にどうしようもないことだった。
でも、その時から変わったんだ。避けられなくて仕方なかったことじゃない。そこから救い出そうとしてくれる手を、オレは自分の意志で振り払ったんだから。
強くなるしかなかった。心配してくれる人に、せめてそれ以上の心配をかけないように。
「オレの生き方に、ゴチャゴチャ口出ししてくんじゃねえよ。あんたみたいな髭面男に心配されたって嬉しくなんかねえよ。ここにいれば綺麗に着飾ったご婦人がたに優しくしてもらえるんだ。そんな悪い生き方でもないぜ」
必死に師匠の話し方のマネをしたけど、ほとんど棒読みだったと思う。みっともない話だが、涙が溢れてどうにもならなかった。
おそらく師匠は、オディロ院長からオレの境遇を全て聞いていたんだろう。全てを察したようだった。
「・・・すまねえ、オレは結局お前に何にもしてやれなかった。本当に見てられなかったんだ、お前みたいなガキが自分を押し殺してるのは辛かった。何とかしてやりてえと思ったんだ。でも結局はお前の傷口を広げるようなマネしか出来なかった・・・」
「そんなことない、あんたには感謝してる。ほんとに平気だって。オレ、来月にはもう十二歳だぜ? そうしたら騎士見習いになれる。これでも一応貴族の出身だから、聖堂騎士団に入団出来るんだ。剣や格闘を習って強くなる。
そうして、自分一人の力で生きていけるようになってみせる。だから、大丈夫」
騎士になることを決めたのはその時だった。それまでは正直悩んでたんだ。チビで細かったオレに、剣や格闘の修行についていく自身は無かったし、何より兄貴と同じ騎士団に入るってことは、それだけあいつを刺激することになるのは、わかりきってたから。
でも、少しでも強くなるためなら、それは避けては通れないと覚悟した。
師匠はいきなりオレを抱き締めてきた。相変わらず風呂に入ってなかったみたいで臭かったのと、加減したつもりでも元が馬鹿力だったおかげで、かなり息は苦しかった。
「そんな悲しくなること言うんじゃねえ。お前みたいな寂しがり屋が、一人でなんて生きられるもんか。いいか、今は辛いことがあるかもしれねえ。でもな、ちゃんと自分のことは守ってやれ。お前みたいなガキが、誰かのために自分を犠牲にするなんて十年早いんだよ。
そしてな、そうやっていれば必ず一緒に生きていける奴に逢える日が来る。お前のことを本当にわかってくれて、必要としてくれる人間は絶対いるから、諦めるな。
お前は本物がわかる眼を持ってる。そのせいで面倒な思いすることは多いだろう。でもな、その眼は誰もが持てるもんじゃねえんだ。
本当に信頼できる仲間や友達。目的に信念。必ず見つけられる日がくるから、とりかえしのつかない傷を自分に残すような生き方すんじゃねえぞ」
師匠の気持ちは嬉しかったけど、正直その時は気休めだと思ってた。
だけど今、あの時のあの人の言葉の通りに生きてる自分がいる。
信頼できる仲間と、果たすべき目的。確かに本物に巡り逢うことが出来た。
※ ※
「何よ、さっきから黙り込んじゃって」
ゼシカが怪訝な顔をしてオレのことを見ている。
やっぱり無理だ。いろいろ考えてみたけど、都合の悪い部分は省略して話すなんて出来そうにない。他の人間相手ならともかく、ゼシカが相手だといつの間にか全部話しちまってるなんてハメになりそうだ。
「知ってるか? 男は秘密が無くなると、色気が三割落ちるんだぜ。そんなことになったら世界の損失だから、教えられない」
「そんな話、聞いたこと無いわよ。だいたい、あんたに色気なんて初めから無いんだから、そんなもの落ちようがないじゃないの」
ゼシカの反撃は本当にいつでも容赦がない。
「さてと、それなりにコインも溜まったことだし、ギャンブルは引き際が肝心だ。そろそろ引き上げるか」
チマチマと貯めたコインは四千枚を越えてたんで、それを景品交換所へと運びスパンコールドレスと交換する。
「ここの景品は結構気が利いてる物が多いよな。やっぱりレディにプレゼントできるものが無いと、モチベーションが上がらないってもんだ」
そのドレスをゼシカに差し出す。だけど彼女はそっぽを向いた。
「いらない」
自慢のボディラインを引き立たせ、動きやすくスリットの入っているドレスにゼシカは一目ぼれしてたはずなのに、すっかりスネちまってる。やっぱり物でつってごまかそうとしてもダメってことか。
「じゃあ、これはユッケにでもプレゼントするかな。オーナー就任のお祝いにするか」
ゼシカがピクリと反応する。
「何? やっぱり欲しくなったか?」
あんまり可愛い反応なんで、つい意地悪な響きが声に混ざっちまう。
「いらないったら、いらないのよ。それに、自分が誘えばどんな女の子でも乗ってくるなんて思わない方がいいわよ。ユッケはああ見えて手ごわいわよ。フラれてから泣いたって遅いんだからね」
そう言い放ち、ゼシカは不機嫌さを隠さない足取りで、カモられてるエイトとヤンガスの方へと向かっていった。
手ごわいなんて言葉を、お前が言うか? まあいい。今の内に一人で例のことを確かめておくとするか。
ギャリングの屋敷では、すぐにオーナーとの面会を許された。
実際に業務を取り仕切るのはフォーグで、ユッケはその見張りという役割に落ち着いたらしい。
「キミ、バカじゃないの? あたしは一応あのカジノのオーナーなんだよ。こんなドレス、自分でも持ってるに決まってるじゃない」
スパンコールドレスを差し出されたユッケは、呆れた声を上げる。
まあ、それは初めから計算の内のことだった。
「そうじゃないかとは思ってたんだけどな。手ぶらで訪問ってのも、何となく気が引けたもんでね」
さて、カマをかけたら乗ってくるか?
「単刀直入に言わせてもらう。お前ら、いつからオレのことに気づいてた?」
フォーグとユッケは、顔を見合わせる。だが、その顔には特に何の表情も浮かんではいない。
「何のことを言っているのか、サッパリわからないね。気づくというのは一体、何を指して言っているんだね?」
フォーグが逆に問いかけてきた。
「とぼけんなよ。ユッケ、オレはお前に『兄が一人いる』とは言ったけど、それが『たった一人の肉親だ』なんて言った覚えはないぜ。知ってたんだろ、オレのこと」
ユッケの護衛を引き受け、竜骨の迷宮での会話の中、オレに兄弟はいるのかって話になった時、確かに彼女は口を滑らせた。『たった一人の肉親なんだから、大切にしないとダメだぞ』と。オレはそれを聞き逃しはしなかった。
オレは思わず、壁にかけられている肖像画を見上げる。
たいしたもんだぜ、ギャリング師匠。あんたが育てた子供たちだけあって、見事なポーカーフェイスだ。ギャンブラーとしての基本だもんな。
初めてこの町に来て賢者の像を見た時、あんたに似てるとは思ったんだよ。でも気のせいで片付けちまった。
世界一のギャンブラーといえば、世界一のカジノのオーナーを指すってことぐらい、思いついても良さそうなもんだったのに、賢者様なんて偉い人物を先祖に持ってるってイメージがどうしてもわかなかったんだ。
この部屋に入って、あんたの肖像画を見た時には驚いた。懐かしかったけど、もう二度と会えないんだって思うと寂しかったよ。助けられなくてゴメンな。もっと早くこの街に着いていたら、もしかして力になれたかもしれないのに。
フォーグはユッケを軽く睨む。ユッケの方も、自分の失言を思い出したようだ。軽くため息を吐いて、話し始めた。
「ごめんね、確かにパパからキミの話は聞いてたよ。別に悪気があって黙ってたわけじゃないんだけどさ。あの時は二人の決着をつけるので精一杯で、とても他のことまで考える余裕は無かったんだよ」
「それにキミのことは、女性のようなキレイな顔した、おとなしくて上品なチビスケと聞いていたものでね。少しイメージと違っていたんだよ。まさかこんな言葉の汚い大男になってるとは、想像もつかなかった。
それに父は君の名前すら我々に教えてはくれなかったんだ。変なところで秘密を持つのが好きな人だったからね」
フォーグが後を引き継いだ。『チビスケ』だの『言葉が汚い』だの、ズケズケと物を言う辺りも、ギャリングの教育の賜物だろうな。
言葉遣いは苦労したんだぜ? ギャリングと別れてすぐに、うまい具合に変声期に入って喉の調子がおかしくなったオレは、声が出せないふりをして貴族への訪問をサボタージュした。
その間に隠れて猛特訓さ。師匠に教わった粗暴な言動は、あの頃の自分には全く似合ってなかったのは承知してたから、自分なりに精一杯考えてアレンジした。
そして、まあ何とかサマになるようになって実際に試してみた時は傑作だった。
それまでずっと柔順でおとなしかった子供が、ある日突然に言葉は汚く、態度も悪くなって、すっかりヒネくれちまってたんだから、周囲の人間が驚くのも無理は無かった。
何かの病気だと疑われて、ちょっとした大騒ぎになり、絶対安静を言い渡されて、回復魔法漬けの日々が何日か続いたぐらいだった。
その騒ぎの中でも兄貴の態度が全く変わらなかったのには、ある意味感動したね。でも、だいぶ気楽になった。おとなしくして気を遣っても憎まれるなら、好き勝手なことして憎まれた方が理不尽さを感じなくて済む分、まだマシってもんだった。
それと、不思議とオディロ院長もアッサリと受け入れてくれた。いや、むしろ面白がってたみたいだった。そのことには、素直に感動した。尊敬の念が一層増したよ。
「だけどその服は、確かにこのギャリング家に伝わる特別な布地だからね。父がそれをマイエラ修道院のキミ宛てに贈ったのは知っていたから、それでわかったんだ」
フォーグのその言葉は、オレの長年の疑問の答えを示してくれた。
オレの十五歳の誕生日は、同時に正式な聖堂騎士団員となった日だった。
院長の館に呼ばれたオレは、オディロから真紅の布地と、黒の布地を見せられた。
「これはある人から先日送られてきたものだ。お前の誕生祝いと一人前になった祝いの品だそうだ。本当は仕立てた状態で届けたかったようだが、遠方にお住まいの上に忙しい方でな。
お前がどれだけ大きくなったかを確かめることが出来なかったと、残念に思っておられる旨の手紙が添えられていたよ」
一目見て、それがかなり高価で特別な品だってことはわかった。だから、当然送り主を訊ねたけど、オディロ院長はそれには答えてくれず、代わりにこう提案してくれた。
「もし良ければ、お前の騎士団の制服はこれで仕立ててみてはどうだ?」
その頃にはすっかり問題児の称号を得ていたオレも、かなり驚いた。聖堂騎士団の制服と言えば青だっていうのは、オレだって破るつもりもおきない程の常識だったんだから。
「お前は他の者と違って外に出る機会が多く、魔物と遭遇する危険もあるだろう。この布地にはお前の身を案じる気持ちが込められている。きっとその心が、いろいろなことからお前を守ってくれることだろう」
確かに、炎や冷気を防ぐとかいう特殊な効果は無かったけど、特別な製法で織られていたのか、強度は普通の布地とは比べ物にならなかった。更にオレの制服のように黒の布の方を裏地につかえば、動きは全く制限されないのに、皮のよろいなんかよりも遥かに防御力は高かった。
でも聖堂騎士団の制服に、こんな真っ赤な布を使う許しを出すなんて、オディロ院長はさすがだと思ったよ。聖職者のくせにお笑い好きなんて、結構な破戒僧だっただけある。まあ、オレはあの人のそういうところが好きだったんだけどな。
でも、そうか。やっぱりこれは師匠からの贈り物だったんだな。薄々そうじゃないかとは思ってたけど、オディロ院長は結局最後まで教えてくれなかったから、確かめようがなかった。。
何しろ、オレは不良な騎士見習いになってからというもの、背も伸びて、声も低くなって、ワイルドな魅力ってやつまで身についちまったから、それまでの悲劇の美少年のファンとはまた別の層のご婦人方に人気が出ちまってた。
それでわりとプレゼント責めになってたから、今一つ自信が持てなかったんだよな。
「まあ、だからどうってわけじゃねえんだ。ただ、お前らがオレのことを知ってるのかどうか確かめたかっただけだ。気づいちまったことを、そのままにしておくのは、どうにも落ち着かない気分だったからな。
まあ、ギャリングには世話になったことがあるのは確かだから、この先困ったことがあったら、いつでも呼んでくれ。力は貸せると思う」
もし、あの時オレがつまらない考えにとらわれずにギャリングに引き取られていたら、こいつらとは兄弟だったかもしれないんだよな。
・・・断って良かったぜ。危うくつまらない遺産相続なんかに巻き込まれるところだった。
でも、ようやくいろんなことに合点がいった。
師匠が手に入れた土地っていうのは、オヤジがここのカジノで作った借金のカタに没収された領地のことだったんだな。
だから、オレがその領主の忘れ形見だって知った時、あんた、あんなに辛そうにしてたんだろう?
そりゃあ、後味悪いよなあ。その忘れ形見が若いみそらで修道院暮らししてて、不幸だってオーラを垂れ流してるところなんて見せられちゃあ。
自分は悪くないのはわかってても、罪の意識で何とかしてやりたくなるのも無理はない。
だけどさ、あんたがそれとは別のところで、本当にオレを気に行ってくれてたことを疑う程のひねくれたバカにならずに済んだのは、やっぱりあんたのおかげだよ。
この何年かの間に、結構イヤな思いはしてきたけど、自分を守っていいんだっていう、あんたの言葉はオレを救ってくれていた。とりかえしのつかない傷なんてものは、受けずに済んでこられた。
一人で生きていける強さを求めはしたけど、その一方で、こうして自分を心配してくれる気持ちの証しを身に纏って生きている。いつだって、オレは一人じゃなかった。
あんたの命を救えなかったことは、やっぱり残念だけど、代わりにあんたの大事な子供たちに力を貸すことは出来た。ほんの少しでも恩を返せたなら、嬉しいんだけどな。あんたが導いてくれたんだって、そう思っていいのかな?
でも、ドニの土地にカジノを建てようとした商魂の逞しさはどうかと思うぜ? 修道院のお膝下で、そんなもの造る許可なんて下りるわけねえだろ。何考えてたんだよ、まったく。
正直、オレの存在が新しい揉め事のタネになるんじゃないかと心配したんだが、フォーグもユッケも、実にアッサリとした調子でオレのことを受け入れてくれた。
「今回のことでキミには世話になったことだし、ここを自分の家だと思って、いつでも遊びに来てくれたまえ。それと、カジノではお手柔らかに頼むよ。ギャンブルの才能はかなりのものだと聞いてるからね。
まあ、キミみたいな人間を警戒して、うちのカジノにはカードゲームは無いんだがね」
「もう一人のパパの息子って、どんなコか気になってたけど、思ってたよりカッコ良くて嬉しいよ。もし呼んでほしいなら、お兄ちゃんて呼んであげてもいいよ」
・・・ほんとに、死んじまった後でさえ、あんたはオレにいろんなものをくれるんだな。
心から思うよ、あの時あんたに逢えて良かったって。やっぱり、もう一度、生きてるあんたに会いたかったよ。そして会ってほしかった。あの後で、オレが出会うことが出来た大切な人たちと。
そんなに長居したつもりは無かったのに、ギャリング邸を出ると、もう日が暮れかけていて、夕陽が辺りの風景を紅く染め上げていた。
その中でピョコピョコと落ち着きなく動き回っている赤毛のツインテールが眼に入った。
迎えに来てくれたと思っていいのかな? 機嫌を直してくれてるといいんだけど。
「こんなところで何やってんだよ。オレがいないと寂しいのか?」
声をかけたオレをゼシカは睨みがちに見上げる。まだ機嫌は直ってないらしい。
「違うわよ、ユッケにフラれた姿を、笑ってやろうと思ってきたの」
・・・何でフラれるって決めつけてんだよ。
ギャリングが言ってくれた言葉がもう一つある。
『お前はオレと違って見た目もいいんだからよ。ちゃんと結婚して家族ってやつをつくるんだぜ。お前だけの、たった一人のひとを見つけるんだ。だけど忘れるなよ、ちゃんと外見に惑わされずに中身で選んでくれる女を選べ』
・・・オレにとっては確かにたった一人だし、外見に惑わされない相手ってのはピッタリなんだが、困ったことに、さっぱりなびいてくれやしない。ましてや『オレだけのひと』なんて笑い話にしかならない。
こういう時はどうすりゃいいんだよ。どうせなら、そこまで教えておいてほしかったぜ。
まあ、それが出来たら、あんたも結婚できてたんだろうけどな。
601 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/28(月) 02:07:21 ID:ivnAeJonO
リアルで遭遇いえあ!
「まだそのドレス持ってるってことはフラれたんでしょう? だから言ったのよ、ユッケは手ごわいって」
ゼシカの声は妙に嬉しそうだ。ほんとに、いい気味だと思ってんだろうか。
「あのね、そのドレスなんだけど、エイトが錬金の材料に欲しいって言ってるのよ。だから、譲ってあげてくれない?」
ここまでデリカシーの無い発言が続くと、さすがにオレの我慢も限界になる。
「何が悲しくて、ヤロウにドレスなんてくれてやらなきゃならないんだよ! そんなに欲しけりゃ自分で稼げってんだ。やってられるか!」
ゼシカが一瞬、身をすくめた。
・・・やっちまった。
女の子にとって、男の怒鳴り声っていうのは、それだけで怖いもんなのはわかってるのに、ついカッとなっちまった。
「何よ、ケチ! 意地悪! バカ! 大ッキライ!」
目に涙を浮かべながらオレを罵ったあげく、ゼシカが歩きさろうとする。
こうなるともう、平謝りして許してもらうしかない。女性の扱いは得意なはずなのに、ゼシカが相手だと本当に何もかもうまくやれない。
「ゼシカ、ごめん、悪かった。ちょっと待ってくれ・・・」
ゼシカの後を追いながらそう言った時、突風が吹いた。
その風は噴水の水を小さな竜巻のように巻き上げ、狙ったようにオレの頭から浴びせてくれた。おまけに、何かが後頭部直撃したぞ、目に星がとんだ。
・・・ありえねぇよ、こんなの。
ゼシカはずぶ濡れになったオレの姿を見て、思いっきり指さして笑ってくれた。
「な、何、今の。絶対自然の力じゃないわよ、それ。天罰よ、天罰。ああ、いい気味」
ほんと、結構イイ性格してるよな、この女。
オレは天罰なんて信じちゃいない。・・・でも。
オディロ院長の使うバギ系の魔法はちょっと変わってて、普通の切り裂く風と違って、今みたいに巻き上げたり、押し出したりするような風の使い方をしていた。
それに頭への衝撃は、ギャリングの拳骨の感触によく似てた。ふと見上げると賢者の像がいかつい目でオレを見下ろしてるように見える。
もしかして、大事な女の子を泣かすなって説教くらった?
なんて、そんなことあるわけない。
・・・けど、もしそうなら…反省する。
ちゃんと大事にしないとな。
親に心配かけるような恥ずかしいマネ、いつまでもしてるわけにいかないもんな。
<終>
乙ですっ
ククゼシに飢えてたので、リアル遭遇はすごく嬉しかったです。(笑
素敵な小説ありがとうございます。
>>592 >>601 支援助かりました、ありがとうございます。
長いのを書きこむ時は必ず誰かが助けてくれて、感激です。
それにしても、本当に長い・・・。
最後まで読んでくださった方、お疲れ様でした。お茶でもどうぞ。
つ旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
>>604 お茶ありがたくいただきました。
まったりしてますなー
ククールに対する見識が自分の中で何歩か深くなりました(笑)
すげー。師匠カッコイイ。
GJ!GJ!
(・∀・)お茶ウマー
乙!乙!ここまでしっかりした長編を作られたのはさすが。
なぜ彼の服だけ赤いのかというのは結構多くの人の間で語り草になってますが
これはステキですねー。
これはプリントアウトでもしてぜひ何度でも読なまくては!
>>604 すっごく良かったです。良いなんで言葉じゃ言い表せないくらい。
ククールの過去話は悲しい話が多いので苦手なんだけど、JbyYzEg8Isさんの設定は彼を
安易にペドフィリアの被害者にしてないし、人格形成や口調などの態度を含めて、
本当に深く考察されていて、もう脱帽ものです。マジで見習いたいです。
特にそこここに散りばめられた、ゲーム中のエピソードの使い方がまた素晴らしい。
例えばギャリングはお風呂に入らないけど、子猫を助ける優しい男って会話とかね。
小説って、ネタを考えて、文章を書くだけじゃなくて、いろいろ調べる必要があるし、
何度も推敲したりしなきゃでしょ。
本当にお疲れ様。それでこんな素敵なお話をアップしてくれて有難う。
すごいもん見ちまった・・・。
師匠の肖像画もいまごろウインクしてますぜ。
『たった一人の肉親なんだから』って、ユッケ確かに言ってたねぇ。
そう言われると不自然だ・・・でもここまでの話に広げるってのはすごい。
師匠の修行、なんかヨーダがルークにジェダイの修行をしてるのを思い浮かべたw
長編お疲れ様でした。次も楽しみにしてまつ!
あんまりグッジョブグッジョブ言うとまた荒れるかもしれんが
感動しまくった!ありがとうと言わずにおれません!!
もう、自分の中でククだけ赤い服の謎はこれでファイナルアンサーという気がしてきたよ。
そういえばククールの父親がカジノで全財産使い切った、って噂とかあったような気がする!
ほんっとにここまで創作できるってすごすぎる・・・。
だって、ホントに見てきたみたいというか、
こういうシーンがほんとにゲームの中にあったような気すらしてくる・・・。
今、2回目読み終わったところなんだけど、
何回読んでも感動する!!「勝手な事言わないでください!」ってキレて
「そうじゃなくて、うるせぇんだよ!って言え」と逆に説教される場面が特に好きだ。
ただの男色家や妖艶なマダムの餌食になるって話じゃなくて凝った設定に
ノックアウトです。いつもいつも楽しませてくれてありがとう!
自分で読み返してみると、今回、変換ミスや誤字脱字多いorz
長い上に、脳内変換を強いてしまって、すみません。
それなのに、読んでくださってありがとうございます。
お褒めの言葉がすごすぎて、正直動揺してますw
ちょっとチラシの裏ですが、今回最大のククゼシポイントは、ああいう考えのククールの相手が、父親は故人のゼシカだっていうことで、安心して二人をハッピーエンドに導けることです。
父一人子一人設定の多いドラクエで、母のみ存命ってかなり珍しいと思ったもんで・・・。
やっぱり、ククゼシはナイスカップルですね。
>>612 すまんが、後の段落の最初二行が意味分かりづらい…
どういう事なんだろ。
614 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 23:45:27 ID:PUlUDqpF0
age
>613
612ではないが・・・師匠が申し出てくれた「父親」という存在を、
父親というものを知らないマルチェロのためにあえて蹴ったククール。
というわけだから、ゼシカにも父親がいないのでうしろめたさもない。
とか、そんな感じだと思われる。
ハッピーエンドに導く続きを楽しみにしてるよー!
>>615 ごめん。言ってる事がよくわからないです。
>>612 ぐっ、いい話じゃないか……!!!!おつかれ!!
>>616 612でも615でもないが・・・。
ククールはマルチェロを差し置いて自分だけ幸せになる事に
すごい引け目を感じてて、特に自分に父親ができる事に
かなり抵抗がある。なぜなら、マルチェロにとって父親というのは
理不尽に奪われて、望んでも手に入れる事ができなかった存在だから。
なので、ギャリング師匠から養子縁組を申し込まれた時も
実父ではなく養父とはいえ、自分に父親ができる事から
マルチェロに気兼ねして受ける事ができなかった。
今後ククールが結婚する事によって普通に行けば義父ができる訳だけど、
ゼシカの父親は死んでていないから、その点ではククールにとって障害にならないだろう。
という事ではないかと。かえってダラダラ分かりにくい文章だったらすんまそん。
いや、良くわかりますよ。
ただ、義父はいないけど義母はできる訳で。
あのママンとうまくやれるかな?w
621 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 11:11:47 ID:8A0YYLJ50
hosh
612だけど、615さんと618さんが完璧に解説してくれたので、何も書くことがない・・・。
お邪魔しましたー!
623 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 01:06:26 ID:jSDX9rTX0
(´∇`)ケッサク
624 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/02(金) 00:06:43 ID:jSDX9rTX0
☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ
625 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 12:40:31 ID:wlEe3xwP0
静かになったね。ここ。
なんだか知らないけど、意味のない一行レスや何やらでageないで欲すぃ…
627 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 21:49:59 ID:32Nku02z0
原則には例外があるからねw
上げとくよー。
628 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 23:23:56 ID:wlEe3xwP0
これはsageても落ちないからずっとsage進行だろ。
ageるなよ。
630 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 10:45:21 ID:R7sO00rb0
>>626 そういう言い方は(・A ・) イクナイ!
だからageるなって…荒らしは本当にやめてくれ。
632 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 17:21:50 ID:R7sO00rb0
>>631 ageても荒らされないじゃん。このスレ。プゲラ
唐突な話題だけど…
料理は苦手なゼシカ設定がイイ。
もちろん得意なのはククールで。
旅の途中で何度か手料理披露するんだけど、
「薬膳料理でゲスか…?」なんて言われたり。
逆にククールはかなりの腕前で称賛をあびちゃったりして。
そこでしぶしぶゼシカも、苦虫かみつぶしながら
料理を教えてもらうんだけど…
ゼ「ほんっと手先が器用なのね」
ク「まあ…ね。修道院にいたころから、色々と叩込まれましたから」
ゼ「色々と…」
ク「そ。色々と…。…指先の魔術師、との称号を、いただいたくらいね」
ク「試して…みる?」魅惑の瞳でゼシカをみつめるククール。
わずかに蒸気するゼシカの頬。
そして。
「すごいじゃない!ぜひ見たいわ!!このキャベツ、その技で千切りしてみてよ!」
興奮してキャベツを取り出すゼシカ。
ク(つ…通じてねえ…!!)
天然小悪魔ぶりを発揮するゼシカに翻弄されるククール…。
あれ?あんまり料理の話題関係なくなっちゃった。一人モエすまん
>>633 あるある!メンバーが料理するところって。楽しそうだよねー。
なんせ彼女の家ではコックさんがいたよね。だから当然出来ない。
彼がゼシカに料理を教えてあげたりとかね。
で、教える際にはこの上なく優し〜く教えてあげてイチャイチャなのか、それとも
互いに軽口たたきながらちょこっとケンカ風味で作るのか…
このあたりの話をまたどなたか職人さんがSS化しないかとつぶやいてみるテスト。
んで新婚となったら当然裸エってうわなんだおまえrやめrくぁwせdrftgyふじこlp;@
635 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 23:14:48 ID:PelThSm+O
>>634 落ち着けww
でもわかる、ゼシのはだ(ry
ぎゃ、上げちまった…
ごめんなさい。
637 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 23:16:12 ID:R7sO00rb0
>634
何を!目玉焼きを作って驚かそうとんこっそり早起きして孤軍奮闘する
ゼシカは裸にただククールのワイシャ;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
639 :
633:2005/12/05(月) 00:27:20 ID:+M3AIFmX0
>>637 上気!!そうだ!ご指摘ありがとう。反省。
小皿で味見するゼシカ。
その後同じ皿で「かしてみ」とククール。
間接キスに動揺するゼシカ。
その態度に事態を察しゼシカの初な反応にきゅんきゅんなククール。
…て、妄想が厨ですな…。
かなり設定違うけど料理苦手ゼシでSS書こうと思ってたのに
先こされちゃったorz
>>641 料理苦手なゼシカって結構皆が考えてる設定だとオモ
他の職人さんのSSも読んでみたいのでガンガレ
>>642 >>643 アリガト!(´▽`)
SS初挑戦なんでなんとか最後までかけるよう頑張ってみま。
料理ネタじゃないけど、書いちゃったんで投下していきます。
>>644 楽しみにしてるので、頑張ってください。
神鳥レティスの願いを受けて、人質にされてる卵を救うために神鳥の巣がある山を登っていた私たちは、魔物の不意打ちをくらった。
態勢を整える間もなくヤンガスは集中攻撃を浴びてしまい、深手を負ってしまう。
何とか魔物は蹴散らしたけれど、ベホマの呪文すら全く効果が見られない程にヤンガスの受けたダメージは大きく、ククールとエイトが二人掛かりでザオラルを唱えている。
ザオラルは死者を蘇らせる呪文だなんて言われてるけど、そんな都合のいい魔法なんてものが、この世にあるわけがない。ホイミ系の呪文は本来人間が持っている治癒力を、爆発的に引き上げて傷を塞ぐ魔法。
でも、それすら効かなくなる程に弱ってしまった体に、生命力を吹き込むことが出来る呪文がザオラル。それだって成功するとは限らない、難しい魔法。
こんな時、自分がもどかしくて、どうしようもない。。
私だって役割は決まっている。せいすいを使って魔物を近寄らせないようにし、治療の邪魔をされないようにこの場を守る。今、この状況で戦えるのは私だけ。
だけど、どうして私は回復魔法が使えないの?
こんなふうに仲間が弱っていく姿を、ただ黙って見ているしかない。
ザオラルを使わなくちゃならない状況は今までにも何度かあったけど、こんなものに慣れることは出来ない。
ヤンガスがこんなことで負けたりしないって、わかってる。ククールとエイトが必ず助けてくれるってことも信じてる。
だけど、やっぱり不安にはなるのよ。
まして、今日はいつもより治療に時間がかかってるみたいなんだもの。
エイトのザオラルが効果を発揮し、ヤンガスの顔に生気が戻る。
続けてベホマがかけられると、ヤンガスはすぐに目を覚まして口を開いた。
「血が足りねえ、メシと酒・・・」
・・・こんなこと言えるんなら、もう大丈夫ね。心配して損したわ。
レティスには悪いけど、卵を取り戻すのは一日待ってもらうことにして、この闇の世界のレティシアで体力とMPを回復させてもらうことにした。
いつもはミーティア姫とトロデ王のお世話をするエイトだけど、今日は私が代わることにした。今日くらいはヤンガスに付き添ってあげたいってエイトが言うから。
なんだかんだ言っても、やっぱりエイトは優しいわよね。
ますますヤンガスの『兄貴ラブ』が白熱しそうだわ。
「ゼシカは心配性じゃな。昔から美人薄命と言うじゃろう。その言葉に従うと、ヤンガスのやつは殺しても死にゃあせんわい。心配して損したのう」
トロデ王に,神鳥の巣でヤンガスが死にかけたことを話したら、こんなことを言って笑ってる。
素直じゃないわ。その場にいたら一番心配するの、きっとトロデ王なのにね。
「ワシらのことはいいから、お前も休んだ方がいい。明日もまた山登りじゃろう? 疲れを残すと後が辛いぞ」
私はお言葉に甘えて、そうさせてもらうことにした。せいすいを念入りに馬車の周辺に振り撒いて、魔物が近づけないようにしてから村に戻る。
水場の近くを通ると、私と同じように色の着いてる人が、この村の娘さんと何やらお話ししていた。
視線を感じたのか二人は私の方を振り返る。村の女性の方は、慌てたように立ち去ってしまった。
何よ。ククールは怖くなくて、私は怖いわけ? 失礼しちゃうわ。
「あの人『光の世界の人なんて信用できない』って言ってた人よね。そのわりには随分親しげに話してたじゃないの」
つい、トゲのある言い方をしてしまう。
「親しげでもないさ。洗濯道具借りてただけだよ。ヤンガスの服、血まみれであんまりだと思ったから洗ってやってたんだ」
・・・確かにククールの手には、濡れたヤンガスの服がある。
「言ってくれれば私が洗ったのに。何度もザオラル使ったから疲れてるでしょう?」
「ゼシカはトロデ王と姫様の世話してただろ? その上洗濯までさせられないさ」
ククールはどんな時も、私をあてにしてはくれない。出来ることは全部、自分でやってしまう。そして、大抵のことは一人で出来ちゃう。
リアルタイム北!
「ククールはすごいね」
思わずこぼしてしまう。
「覚えてる呪文の数は私と同じなのに、攻撃も補助も回復も全部揃ってて、バランス良くて。おまけにMP無くなったら役立たずになる私と違って、ちゃんと武器でも戦えるんだもの。
出来ることが多くて羨ましい。私だってせめて回復魔法だけでも覚えられたら、みんなを守れるのにね」
ククールは一瞬だけ私の顔をジッと見て、それからいきなり笑い出した。
「何よ、何がおかしいのよ! 私は真剣に言ってるんだからね!」
ククールが、ひとのコンプレックスを笑うような人とは思わなかったわ。
「悪い悪い。ゼシカのオレに対する評価が意外と高かったのに、驚いちまった。まさか羨ましがられてるとは、夢にも思わなかった。
この上ゼシカに回復魔法まで覚えられたら、オレの立場が無くなるっつーの。贅沢なこと言ってんじゃねえよ」
ククールはまだ笑いが収まらないようで、私はますますムキになってしまう。
「あんたみたいに一人で何でも出来る人に、私の気持ちなんてわかんないわよ。
私なんて、攻撃魔法しか取り柄がないのよ。もう一つくらい出来ること増やしたいと思って何が悪いの?」
「わかってねえのはゼシカの方さ。一人旅するならともかく、パーティー組む上で何でも一通り出来るヤツなんて、大して重要じゃない。
何か一つ得意なものがある人間の方が、ずっと役に立つんだ。それに回復魔法は皆を守る呪文なんかじゃない。全く逆で、守れなかった結果だ」
ククールの声が厳しいものに変わる。
「回復しなきゃならないってことは、誰かが傷ついたってことだ。大事なのは攻撃をくらう前に敵を全部倒しちまうこと。
ゼシカはいつでも、真っ先に魔法を放って敵の頭数を減らしたり、体力を削ってくれてるだろ? そのことでケガさせられる確立が激減する。
一番理想的な形でオレたちを守ってくれてるんだ。回復魔法なんて、使わずに済むなら、その方がいいに決まってるさ」
・・・最近、少しわかってきた。ククールは優しい人ではあるけど、決して甘くはないって。
慰めたり励ましたりはしてくれるけど、気休めの嘘は言ってくれない。本当に必要な時は必ず助けてくれるけど、半端な気持ちでやっていることに手を貸してはくれない。
だから、その言葉も行動も信じていいんだって。
「それに、エイトの奴がベホマズン覚えてくれやがったから、オレは回復役としても二番手に降格だぜ? それを羨ましいとか言われたら、笑うしかねぇだろ。
そんなことより早く戻ろうぜ。昼も夜もわからないなら、サッサと寝ちまった方がいい。起きたらまた、あのキッツイ山登りが待ってんだからな」
そう言って、村長さんの家に向かって歩きだしたククールの後ろ姿。
何だか突然、その姿が消えてしまいそうな気がした。
「ククール!」
私は思わずククールの腕にしがみついてしまう。
「何だ、どうした?」
ククールは驚いたように振り返る。蒼い瞳が私の顔を覗き込んでいる。
「・・・何だか、ククールがいなくなっちゃうような気がしたの・・・」
そう思ったら、急に怖くなった。足元が崩れてしまうような気持ちになった。
「何だよ、それ。疲れてるんじゃないのか? 今日はヤンガスが死にかけたり、色々あったからな」
・・・そうね。きっとヤンガスのことがあったから、不安な気持ちになったのかもしれない。
「それと、あれか。美人薄命っていうからな。オレのことは儚く見えても仕方ないよな」
そのククールの言葉に、私は吹き出してしまった。
「やだ、さっきトロデ王も同じこと言ってたのよ、美人薄命って」
変な所で発想が似てるのよね、この二人って。
「あのおっさんと同レベルかよ・・・」
ククールは肩を落としてしまった。
男のくせに自分を美人だなんて言うアホな人の、どこが儚いのよ。消えちゃったりするはずないじゃない。私ったら、バカみたい。
さっきのはきっとアレだわ。この黒一色の世界で、こんな真っ赤な格好してる人、浮いて見えて当たり前よ。感覚がおかしくなってただけよ。
・・・でももしククールに何かあった時、私は守れるのかしら。
いつも助けてもらうのは私ばかりで、泣き言言って励ましてもらうのも私の方。だって、ククールには基本的にスキがないから、私にはしてあげられることがないんだもの。
守られるばかりはイヤ。私だってククールのこと守りたいのよ。
確かに回復魔法を覚えたいなんていうのは、ないものねだりだと思うけど、強くなりたいって思うことは間違ってないわよね?
いい加減、自分の無力さがイヤになる。
オディロ院長をむざむざ目の前で殺され、ギャリングもチェルスもメディばあさんも救えなかった。
そして今度は神鳥の卵だ。ゲモンの奴は倒せたっていうのに、ツメが甘かったせいで卵は砕かれてしまった。
最悪だ。
苦行のような山登りをさせられて疲れてはいるのに、いろいろ考えちまって目が冴えてしまった。それに比べて隣で寝ているエイトはというと、幸せそうな笑みを浮かべている。
錬金とダンジョンと寄り道をこよなく愛するコイツにとって、空を飛べるようになったってことは、その三点がもれなくオマケで付いてきたってことだ。
レオパルドを追うのをそっちのけで、あちこちの山やら高台やらを飛び回り、アイテム集めに夢中になってた。
まあ、エイトのそういう所はキライじゃねえけどな。おかげで、店では手に入らないような強力な武器や防具が揃えられるし、結果的にはより安全に戦えてるから、無駄なこととは言い切れない。
何より、何の楽しみも持たずに生きてる人間なんかと一緒にいたら、こっちの息が詰まっちまう。時々、いい加減にしろとは言いたくなるが、ある程度は付き合ってやるさ。
珍しくサザンビークになんて泊まってるのもエイトの希望だ。朝一でバザーを回って、錬金の材料を揃えたいらしい。もう好きにしてくれって感じだ。
そんなことを考えてたら、部屋の外を聞き慣れた足音が通り過ぎていった。その足音が階段を降りていく気配に、オレは部屋を飛び出した。
「ゼシカ!」
階段の踊り場で、赤いツインテールが驚いたように振り返った。
「どこに行くんだ?」
オレは階段を駆け降りて、ゼシカの腕をつかんだ。
ゼシカは大きな目を見開いて、オレを見上げている。
「ああ、ビックリした。どうしたの? そんなに慌てるなんて珍しい。ヤンガスのイビキがすごくて眠れないから、ちょっと外の空気を吸おうと思っただけよ」
ゼシカの様子に、普段と変わったところは無かった。言葉通りの理由と行動なんだろう。
「・・・驚かせてゴメン。だけど、こんな夜中にレディが一人で外に出るもんじゃないぜ。着替えてくるから、ちょっと待っててくれ。オレも付き合うよ」
気がつけば部屋着のままだった。レディの前にこんな姿で飛び出すなんて、ほんとにどうかしてるぜ。
バザーのおかげで、この町は夜中でも出歩いている人間が多い。
商人たちを相手に酒や食べ物を売る夜店のようなものが出ていた。そこでホットワインを買い、空いてるベンチでそれを啜る。酒を飲む気分じゃなかったけど、夜は冷えるんで身体を温めるためだ。
「あの杖をもってサザンビークを出てから、関所を通過するまでのことは、あまりよく覚えていないのよね」
ゼシカが唐突に切り出した。
「さっき宿屋のご主人に言われたのよ。『大きな声が聞こえたけど、またケンカでもしたんですか』って。それで思い出したわ。私って杖に支配された時、ここからいなくなったのよね。それでさっきあんなに慌ててたんでしょう? ごめんね、心配かけて」
・・・実はそうなんだ。
「オレの方こそゴメン。いい加減あんなこと忘れたいだろうに、思い出させるような行動取っちまった。ま、この件は錬金マニアのエイトが全部悪いってことにしとこうぜ。アイツのわがままでサザンビークに泊まることになったんだしな」
「何よ、それ。都合の悪いことは全部エイトのせいにしようとするんだから」
こんなふうに笑ってるってことは、この町自体はゼシカにとって嫌なことを思い出させる場所ではないらしい。となると、気にしてるのはオレだけか。我ながら繊細だな。
「でも、そうやって心配してくれる割には、私にヤンガスとの同室を押し付けるのはヒドくない? このままじゃ寝不足になっちゃうわよ、何とかしてよ」
・・・いや、その件は全く逆で、ヤンガスにゼシカを押し付けてるってのが正しいんだよな。
サザンビークの宿屋は基本的に二人部屋ばかりで、大部屋に四人一緒に泊まる分には平気なオレもエイトも、ゼシカと二人きりで同じ部屋で眠れる自信は全く無い。
誇っていいぜ、ゼシカ。基本的に不自由してないオレと、あの朴念仁のエイトに『襲わない自信が無い』なんて言わしめるのは、お前ぐらいだ。ヤンガスはおっさんで、ゼシカは年齢的に対象外らしいから、こういう部屋割にするしかねえんだよ。
・・・とは、とても言えないんだけどな。
「まあいいわ。その分ベルガラックでは個室を取ってもらったりしてるんだものね。ククールたちも、たまにはイビキに悩まされずに寝たいんでしょう?」
オレが返事に困っている間に、自分なりに納得する答えを出してくれたらしい。
ゼシカは公平で、こういう時は助かる。
不意にゼシカが立ち上がり、オレの背後に回り込んだ。何するつもりなのかと思ってたら、意外すぎる言葉がゼシカの口から発せられた。
「ククールって、髪キレイよね」
オレの耳がおかしくなったんだろうか。
「・・・今、何て言った?」
「えっ、髪キレイねって。・・・そんなおかしなこと言った?」
「おかしくはないけど、そりゃあ驚くさ。ゼシカに外見褒められたの初めてだ」
いつも、見とれる要素は無いだの、色気なんて初めから無いだの、言いたい放題言われてるんだからな。
「うそ、そうだった? ククールの外見がいいのは認めてるのよ? ただいつも自分で自慢してるから、ちょっと釘をさしたくなるのよ。人間、大事なのは中身なんだから」
ミーティア姫と美人度張り合ったり、胸のボリューム世界一を自負してる人間が、何言ってんだか・・・。
「闇の世界にいる間、色の着いてるものが恋しくなってたっていうのもあるわね。ちょっと触っていい?」
「ああ、もちろんいいけど・・・」
基本的にゼシカに触られて困る部分はどこにもない。むしろ大歓迎なんだけど、何か落ち着かない。突然すぎて妙な気分だ。
「うわあ、すっごいサラサラ。絹糸みたいな手触り」
いろいろイジられて、結構くすぐったい。やっぱり変だ、ゼシカらしくないぞ。
横目でゼシカが置いたワインのカップを見ると、いつのまにか全て干されていた。甘すぎて飲みにくいせいもあるけど、オレなんてまだ半分以上残してるっていうのに・・・。つまり、今のゼシカはただの酔っ払いってことか。おかしな話だが、かえって安心した。
「このところ砂漠とかレティシアの辺りとか、日差しが強い場所を歩いたから、私の髪は結構傷んじゃったのに、ククールは枝毛とか全然ないわよね。これって、不公平じゃない?」
ゼシカが何やらボヤいている。
「私なんて猫っ毛だから毎朝大変なのよ。どんなに念入りにブラッシングしてもハネるし、もつれるしで苦労してるっていうのに、何で男のくせに私より髪質いいのよ。ちょっと許せないわ」
段々、声に本気の怒りが混じってきている。
「ゼシカ、落ち着け。何か憎しみこもってるぞ。頼むからメラとかやめてくれよ。頭燃やされたら、オレ死ぬからな」
ゼシカの動きが止まる。もしかして今、危ないところだったんだろうか。結構冗談じゃ済まないところあるからな。
ゼシカはまた、オレの隣に戻ってきた。ちょっと乱暴な動きでベンチに腰をおろす。
「何ともないみたいで良かった」
そのゼシカの言葉には、安心したような響きがあった。
「昼間ゲモンが自爆した時、盾になってくれたでしょう? 髪とか焦げてないか気になってたの。遅くなっちゃったけど、ありがとう、かばってくれて」
・・・痛いとこ突かれた。
その件は本日最大の判断ミスだってのに、礼なんか言われるのはキツい。
あの程度の爆風だったら、ゼシカの盾になんてなる必要は無かったんだ。
オレが取るべきだった行動は、自爆なんかされる前にゲモンにトドメを刺すか、卵の方をかばうかだ。
優先順位を間違えた。
おまけに、真っ先にゼシカに謝らせちまった。
ああいう時にキレてもおかしくない相手に声をかけるってことは、攻撃の対象にしてくれと言ってるのと同じだ。
守るつもりが、ゼシカを最悪の危険に晒した。
レティスが暴れださなかったからいいものの、力試しであれだけ苦労させられたんだ。本気出されたら守るも何もあったもんじゃない。言い訳する間もなく皆殺しにされてただろう。そう考えると、レティスの誇り高さに感謝するしかない。
肩に重みを感じ、視線を向けるとゼシカがもたれてきていた。どうやら夢の世界の住人になったようだ。この様子だと、ちょっとやそっとじゃ目を覚まさないだろう。
宿に戻ろうと抱き上げたゼシカの身体はやっぱり華奢で、あんな山登りの後で眠れずにいたのは可哀想だったと思う。
本人に自覚はなかったようだが、オレが感じてる苛立ちや焦りが伝染していたんだろう。そうでなかったら、ヤンガスのイビキぐらいで眠れなくなるようなヤワなお嬢様じゃないからな。
負のイメージっていうのは、周りの人間にも影響を与えやすい。
救えなかった命や、自分の中の不安材料に気をとられていたら、肝心な時に判断を誤る。
気をつけないとな。目先のことにとらわれずに、一歩引いたところから全体を見る。それが猪突猛進ばかりのメンバーの中でのオレの役割だ。
ゼシカがこんなふうに、無防備な姿を晒してくれるようになったんだ。意外な高評価の期待を裏切るわけにはいかない。ちゃんと守れるようにならないとな。
まあとりあえず今は、風邪をひかれる前にサッサと宿屋に戻るとするか。
<終>
いつも乙です!
ククールの髪をいじるゼシカにモエ(´д`)
656 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 19:35:00 ID:h1go/XQ/O
乙ですっ。萌えの嵐ですね…(´Д`*)ハァハァ
ククゼシ大好きだけど…
朴念仁が「襲わない自信がない」なんて話したエピにモエスモエスしますた…!!
ゼシカたんすげぇよ!
職人さま、いつも萌えをありがとう。
乙!
ククゼシ中心だけどほかのキャラの性格もさりげなく書かれていてよいね。
659 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 23:28:34 ID:hxrtWKMW0
(´Д`*)ハァハァ
個人的にククゼシはドラクエ中ベスト3に入るくらいいいカップルなんだよね。
俺の設定だとツンデレ(めっったにデレしないけど)で
ククを認めてはいるんだけど素直になれないゼシと
初めて心まで欲しいと思った女性に奮闘するククって感じ。
>>660 すごくわかる!ほんといいバランスだよね…
その設定だけでどんぶり3杯いけるよガツガツ
今まで出会ったことがないタイプのゼシカに、(はじめて本当に惹かれた女に)どうやって接すればいいかしだいにとまどうクク…!
いつもならサラリと触れる髪や指も、ゼシカだとまごつく。
軽い口先もゼシカにまっすぐ見つめられると制止されてしまう。…などなど
ささささらに!純粋なゼシカを守りたい自分と、女としてめちゃめちゃに愛したい自分にふらふらな毎日。
「なんてザマだっ…」頬を染めて悶々とするククール。
朝から濃い萌えできもいよ〜自分。でもきもちいいよ〜
キモイ。
ククゼシいいわー
SS職人さま、おつかれです。
最初、タイトルの「不安」はゼシカサイドだけのものかと思ってたんですが、
ククの方も己の無力やゼシ再失踪?の不安を抱えていたのですね。
でもいつでも第三者的な視点で、旅の仲間における自分の立ち居地を把握
してるククがGood。成長して精神的にも良い男になってきたって感じですよ。
萌えてくださった方も、深く読んでくださった方もありがとうございます。
本当に、このスレで書くのは楽しいです。
この話ももう後半に入ってるので、もう少しの間、お付き合いください。
もう後半ですか(´・ω・`)サミシイ!!
これからも楽しみにしてます。Jbyさんいつも乙です!
667 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 07:40:12 ID:YBvxfCJy0
キモイ。
足音に驚いて廊下に飛び出すククール、萌え・・・(*´Д`)
ステキな話をたくさん書いてくれてJbyさんには
ものすごーく感謝!!いつもいつも的確にツボをついてくる
シチュエーションにただただ関心ですよ。
でも、いっぱい読めるってことはそれだけいっぱい終りに近づいてるんだよね・・・。
(´;ω;)ちょっとサミシス。
ククールかっこえぇ・・・。自分の中ではククールの半分はアホ成分でできてるので
アホ成分抜きのククールも大人っぽくていいなぁ、と思うのです。
ククがパーティー全体に心配りしてるから、あんなデコボコなパーティーが
うまくいってるんじゃないか、という気もします。
どこから萌えればいいのか分からないくらい萌えました!
絵板が・・・消え・・・
>669
どうした?
>>669 今見たらちゃんとあったぞ。
あそこは60日音沙汰が無いと落ちるんだったっけかな?
669のカキコ時間あたりは別の絵板も繋がらなかったから
絵板側の問題だったんでない?
そうか。
ゼシカ板とムーン板は見れたのに、見れなかったから落ちたとオモタ。
お騒がせスマソ!
674 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 23:03:59 ID:9or7FAPv0
675 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/10(土) 00:14:48 ID:HrpzZBGL0
age
北米版って、EDでククールがマイエラ修道院で子供たちの面倒を見てるみたいね
ゼシカが女主人になって、マイエラに勤めてる夫の帰りを待つ…
なんてありえそうもない光景を浮かべてしまいますたw
ゼシカが資金集め、資金援助などのサポートをこっそりしてくれたりね。
そういう面でもいいパートナーになりそう。
>676
いや、修道院を出たのは確かでは?
その上で子供達の面倒をみていると。
…その金はどこから(ry
>678
>…その金はどこから(ry
思うんだが、ラプソーン倒して世界を救ったメンツには、何かしらのご褒美が
どっかからあって当然なんではないか。少なくともトロちゃんはくれるよね。
4人それぞれに、それなりの報酬があったんじゃないかな、と。
アンジェロのは孤児院作るってほどのもんじゃなく、その資金で出来る程度の
「孤児ハウス」的なものを作ってるんじゃないか、と勝手な妄想・・・
北米版EDでもゼシカはバニー達のことを「仲良く出来そうにないわ」とか言ってるのかな。
>>679 でも、全世界的に祝ってくれそうなムードはなかったよな。
(知名度に関する仲間会話がサザンビーク周辺で聞けたような…)
80%ぐらいトロデ出資で孤児院設立か、
モンスター倒すor不要になった武器を売ればある程度資金繰りには困らないかなと。
個人的には孤児達と住む、みたいな小さな物(川沿いの教会とかみたいに)
こぢんまりとした物なんじゃないかなと予想。
その後、どこぞの国王に呼ばれて
「子ども達に笑顔を取り戻してやりたくはないか?」とか誘われたりしてね。
…この流れだとゼシカが教会バトルしそうだw
すいません妄想が過ぎました。
681 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/11(日) 00:31:15 ID:19T6iZIa0
(〃▽〃)キャー♪
ククールとゼシカがくっつくわけないし
キミたちってアホ?ww
>>680 イイ(・∀・)ではないか!
SS職人諸氏に書いていただきたいネタがまたも!(;´Д`)
>680
トロデが孤児院ぽいものを作るってのは確かにありそう
エイトも孤児だったのを拾って育てたらああして国を救うほどの立派に育った訳だし
孤児の未来の可能性を守ってやりたいと思う気持ちは強いんじゃないかな
685 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/12(月) 00:53:23 ID:Xtf/UQOd0
作家も評論家も似たような人間だが、何の生産性も持たないという点で評論家ははるかに作家に劣る。
あれ?ED後孤児たちの面倒を見てるってのは
マイエラに戻ったんじゃなかったのか。
まぁ騎士団を抜けたってんだからそりゃそうか。
場所はゴルドがいいな。支配されちゃってたとはいえ○チェロが壊してしまった街だから
なんか責任とか感じてそうだし。
んでもって子供達に美男子とはなんぞ、とか女の子を口説きかたは、とか教えてゼシカに
メラ、とかね。
でもちゃんと子供達の将来を見据えてたりして・・・
>>688 それ、将来の自分の子供(ができたら)にもやってそうだなw
でも案外彼は冗談も交えつつ子供のしつけはしっかりやりそう。
>688
ゴルド再建、いいねぇ!!マルチェロが消えた場所を開拓し直して孤児ハウス作って。
しかし自分の経験から、母親という存在があったほうがいいって強く思ってるはず。
そこで子供好きなゼシカの出番ですよw。
691 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/12(月) 17:26:13 ID:aIGS7PMxO
アホ晒しあげw
>ED後孤児達の面倒を見てる
そんな場面あったっけ?(゜_。)?
>>692 海外版の話らしいよ。
ククールはサヴェッラかどっかで女の子が鳩の鳴きまねしてたのに
コメントしてたよね。あれ見てこのひとは子どもとおんなじ目線なんだなと思った。
ゼシカは子どもに人気あるし、この二人が組んだら集められた子どもたちは
楽しいだろうな。
>>690 >そこで子供好きなゼシカの出番ですよw。
萌えシチュキタ━(゚∀゚)━!!!
>>693 彼も、苦手とか言いながら案外子供の扱い上手そうだよね。
695 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 01:13:29 ID:Mq4Igi2K0
キモイ。
文体と語法とテンション同じで以前のスレから自作自演してるよね。
697 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 09:39:10 ID:Mq4Igi2K0
kwsk
>>697 地球上に人間は二桁くらいしかいないと思ってる人なんだよ、きっと。
700 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 21:28:36 ID:2+uBSbDKO
まあキモくたっていいじゃないの、このスレぐらいでなら。
妄想カプならドリー夢入ってるのは百も承知、カプスレはどこも似たようなもん。
他所で嗜好を押し付けてる訳じゃないんだから
このスレでぐらい自由に空想で萌えたっていいじゃないか。
他人を攻撃しなければね。排他的な書き込みは前からほとんどこの人一人だから。
703 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/14(水) 07:41:00 ID:oDSOIKUL0
どのひと???
排他的なかきこみって?
あらしってだけなら二人はいるような…
さ、もうスルーしちゃおう。
最近ガン○ム運命を家族が見ててケミ○トリーのOPがククゼシソングに
聞こえてしょうがない。
悶えてしまう・・・
>>705 激しく気になる…悶えるほどいいのかー。
歌詞をそのままこういう所に書くのってまずいだろうし、CD屋に入ったら絶対探してみます…!
触り程度でもしりたい…ククゼシソング…
このスレのククゼシラバーたちはみんな大人だからスキ
結局このスレもヲタ女の馴れ合い溜まり場的な独特な空気だな。
ヲタ女のたまり場にいるヲタ女はまったく問題ないが、
ヲタ女のたまり場にいるヲチ男はただひたすらキモい。
710 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/15(木) 00:28:55 ID:GpZjOF2t0
めくそはなくそ
ククゼシソング話に便乗。
自分でもどうかしていると思うのだが、サンボ増すターの2ndアルバムに
激しくククゼシソングに聞こえる曲がある。
「あ/な/た/が/人/を/裏/切/る/な/ら/僕/は/誰/か/を/殺/し/て/し/ま/っ/た/さ」
「マ/フ/ラ/ー/の/揺/れ/る/間/に」
自分のよこしまさを自覚しながらも人として美しくなりたいと思う歌と、
相手は本気だと信じてくれないかも知れないけど、それでも傷ついた相手の心を
癒そうと愛を捧げる歌なのですよ。
ボーカルの外見はアレですがwww(でも好き)
>>705です。
歌詞だけならググると無料で見れるサイトがいくつかあるよ〜
ちなみにククゼシフィルターイヤホンで聞くとククール視点で
挫けず夢をみる→復讐やらラプソーンを倒そうとすること
空はとべないけど〜のくだり→自分ひとりでは望みはかなえてあげられない
けどその望みをかなえるために孤独になるのではなく自分はその手段になろう
ってな感じ
どんな悲観論者も恋をしてかわる→ククールも恋をして変わってたのねって感じ
一番しか聴いたことなかったんでこんな感じで悶えてます。
終わってるよ自分、と思いつつ妄想が止まらないのよ・・・
早速
>>712さんの歌詞をチェックに逝ってきます。
714 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/17(土) 00:45:41 ID:hbW5yqve0
どうやればそんなに妄想がふくらむのじゃ。
715 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/18(日) 10:38:03 ID:4yJTG4Qn0
保守保守
716 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/19(月) 08:00:45 ID:vMpNCgrq0
ここは土日は静かなんですね。
『チェルス・・・。その名前を聞くと胸が痛むわ・・・』
ゼシカが悲しげに呟いた言葉が、頭から離れない。
空を飛べるようになって、訪れることができるようになった三角谷。
まさかここで、あのチェルスの名前を聞くことになるとは思わなかった。
ゼシカがチェルスの死に、責任を感じてるのは知っている。
だけど何も言ってやれない。
事が起こったばかりの時ならともかく、過ぎてしまったことを気に病んでる人間に『気にするな』という程マヌケな慰め方もないしな。
こんな所からは早く離れた方がいいのに、自由に歩けることにトロデ王が大喜びしちまってるもんだから、ここに一晩泊まるハメになっちまった。
デリカシーの無い奴が揃ってるぜ、まったく。
姫様の相手をするのにゼシカも一緒に連れていってくれるようにエイトに頼み、オレは一人でエルフのラジュさんの所へ向かった。
チェルスの最期の様子を報告するためにだ。
最期を看取ったのがオレたちだと話しただけで、その後は宝物庫を開けてもらうのが先になって、詳しい話は何も出来なかった。
ゼシカのことだ。後で事情を話しに来るに違いない。自分が殺したも同然のように言うかもしれない。
ラジュさんも、あのギガンテスも、そのことでゼシカを責めるようには見えないが、犬に杖で刺し殺されたなんて悲惨な最期を聞いたら、動揺はするだろう。そんな姿を見ることになったら、ゼシカの傷はますます深くなる。
オレが先に話をして、予備知識を持っておいてもらった方がいい。
さすがに何百年も生きてきただけあって、ラジュさんもギガンテスも精神力は強かった。
チェルスの最期の様子を悲しむよりも、そのチェルスが最後まで慕っていたハワードが無事だったこと、チェルスの心がちゃんと通じたことを喜んでくれた。
ゼシカが杖に操られてチェルスの命を狙ったのは不可抗力だってことも、もちろんわかってくれた。
でも、やっぱり悲しみの気配は消しようもなくて、あの時その場にいながら、何もできなかったことが改めて悔やまれる。
ギガンテスがしつこく勧めてくるんで、洞穴の奥の伝承画を見ていくことにした。
かつて暗黒神を封印したという、七賢者について記されている。
随分バリエーションに富んだ面子だったらしい。
それにしても、魔法剣士や呪術師はわかるとして、予言者や学者がどうやって暗黒神なんかと戦ったんだ? その辺りの戦術や暗黒神の弱点なんかも記してくれりゃあいいのに、やることが不親切だよな。
まあどういう戦法を取ったしにろ、七人掛かりで封印するのが精一杯だった暗黒神。それに対して、オレたちは四人で戦ってる。
確かに今の段階で何とかしないと、手に負えなくなるのは間違いない。
だけど、イヤな予感が消えてくれない。
昔からそうだった。期待は裏切られ続けるのに、不吉な予感だけはイヤになる程当たりやがる。特に口に出してしまうと、まるでその瞬間に確定事項になったみたいに外れてくれない。
おかげで、あのマルチェロ以外にも、結構疫病神呼ばわりされたんだよな。明らかにオレがその悪い事態を引き起こしたわけじゃないって、わかる場合でも。
悪い予感が当たるなんて、何の得にもならないことがわかったから、そういうものはなるべく口に出さないようにしてきた。言葉ってやつには、何か現実を引き寄せるような力があるのかもしれないしな。
だけど、この伝承画を見ていると、何かが頭の中で警鐘を鳴らす。
この先起こるロクでもない何かのヒントが、ここにある気がする。
ゼシカの先祖のシャマル=クランバートルやギャリングのように、現在まではっきりと由来が伝わって、結構な名士をやってるところもあれば、長く一緒にいたオレも賢者の末裔だなんて聞いたこともなかった、貧しい粉屋のオディロ院長の血筋。
力だけ他人に渡して、封印はそのままだったクーパスの血統。結局その行為は裏目に出たわけだ。ラプソーンは力じゃなく、封印の方を嗅ぎ付けるんだから、素直に自分の方に力を残しておけば、チェルスは自分の身を守れていたかもしれない。
そして、シャマルが姿を変わらせたという、暗黒神を封じた岩。
・・・ダメだ。どうにも頭に雑音が鳴り響いて、うまく考えがまとまらない。
何かに別の次元から糸を引かれているようで、苛立ちがつのるだけだ。
・・・とりあえず戻るか。エイトにゼシカを引き留めさせてることだしな。
そう思って洞穴を出た途端、ゼシカとばったり会ってしまった。
・・・。
エイトのヤツ、こんな少しの時間も引き留めておけないのかよ! あいつに頼んだオレがバカだったのか? 意外と姫様に頼んでおいた方が良かったのかもしれない。多分、身体を張ってでも止めてくれただろうし、ゼシカもそれを振り払ったりはしないだろうしな。
こんなふうに余計な気を回して、先回りした行動を見られるほどみっともないことはない。こういうのはあくまで、隠れてやるところに意味があるんだ。
「エイトから全部聞いたわよ」
オレが心の中でエイトに悪態ついてる間に、ゼシカが口を開いた。
「気が利いてるようでマヌケなんだから。トロデ王がバーに入り浸りでせっかくエイトとミーティア姫、二人きりなのよ? そんなところでお邪魔虫になんてなりたくないわよ。だからエイトに問い詰めたら白状したわ。『ククールに頼まれたんだ』ってね」
あのヤロウ、当てにならないだけじゃなくて、口まで軽いのかよ。後で覚えてろよ。
「ありがとう、いろいろ気にかけてくれて。でも私、もう大丈夫よ」
ゼシカの真っすぐな視線にドキッとした。
「確かにチェルスの事を考えると胸が痛むわ。私がもっと慎重に行動してれば、彼を死なさずに済んだのかもって・・・胸が痛むの。でも、大丈夫。ただ気に病むだけじゃ、自己満足でしかないもの。
私がやるべきことはレオパルドを倒して杖を封印すること。そうしたからってチェルスの命が戻ってくるわけじゃないけど、それがせめてもの罪滅ぼしだもの、必ずやり遂げてみせる。だからもう心配してくれなくても平気なのよ」
ゼシカの揺るがなさに、オレの方が揺さぶられる。
「だから、せっかく気を遣ってくれたのに悪いんだけど、ラジュさんたちには私の口からちゃんと話したいの。行ってくるわね」
洞穴の中に入っていくゼシカの後ろ姿を、オレは黙って見送るしかできなかった。
・・・まいった。ゼシカが強いってのは知ってたつもりなのに、つもりだけで何にもわかってなかった。どこかで甘く見てたのかもしれない。
多分、エイトたちの方がゼシカの強さを信じてたんだろう。だから慌てて三角谷を出ようとしなかったのかもしれないな。オレは一人で空回りしてただけか。
ほんとに、どうしてこう何もかもうまくやれないんだろうな。カッコ悪いったら、ありゃしねえや。
だけど、忘れちゃいけないことがあるのは知ってる。
「・・・何で、まだいるの?」
しばらくして洞穴から出てきたゼシカは、オレの姿を見て驚いた顔をする。
「誰も待っててなんて、頼んでないわよ」
虚勢を張ろうとしてるのが、却って痛々しい。一生懸命いつも通りにしようとしてるんだろうけど、声が震えてる。
「おいおい、心外だな。オレがレディを置いて一人で戻るような男に見えるのか?」
ゼシカがスカートのすそを握り締める。泣くのを我慢してる時のクセだ。
オレが近づいて肩に手を置くと、それが引き金になったように、大きな目からポロポロと涙をこぼし始めた。
一応これもオレが泣かせたことになるのかな? 最近、泣かしてばっかりだな。
「気を利かせるつもりなら、一人にしてよ。そのくらいわかってるくせに・・・」
「わかってるから、一人にはしない」
ゼシカの心が強いのは、よくわかった。それには改めて驚かされたけど、だからって大事なことは忘れやしない。
どんなに強くたって傷つくことはあるし、傷つきゃ痛いんだってことはな。
「何よ、バカ。私、ほんとはこんな泣き虫じゃないのに」
「知ってるよ」
ゼシカの額がオレの胸に当たる。その可愛い仕草に思わず抱き締めたくなるけど、そうしたら離したくなくなりそうだ。軽く身体に腕を回すだけで我慢しておく。自分が自制が効く人間で、つくづく良かったと思う。
「ラジュさんたちに、ひどいこと言われたわけじゃないのよ。優しくされちゃったから、かえって辛いのよ」
「ああ、わかってる」
泣いてる姿を可哀想だと思う一方で、たまらなく可愛くて、愛おしくなる。辛いことなんて、全部忘れさせてやれたらいいのに。
「ククールの前でだけよ、こんなふうになっちゃうの。どうしてくれるのよ」
「・・・ゴメン」
今のは殺し文句だよな。結構グラッときた。
「あんたの軽そうな顔と声は、気が抜けるのよ」
「・・・ああ、そうですか」
・・・こうやって容赦なくトドメを刺してくれるところが、最高にステキだな・・・。
ゼシカに言われて初めて気づいたけど、エイトと姫様は二人きりになる最後のチャンスかもしれなかったんだよな。オレとしたことが、無粋な頼み事しちまったもんだぜ。
ゼシカが宿で眠りについた後、お詫びの印に二人で不思議な泉まで行ってこいと提案しに行った。
エイトがゴチャゴチャ言いやがったんで、ルーラで強制連行して、マホトーンかけてキメラのつばさも取り上げて、オレは一人で三角谷に戻ってきた。
絶対、後でシメられるな。まあいいさ、馬なんかにされても健気に頑張ってる姫様のためだ。
吊り橋の所に馬車は置いていったんで、一応見張っておこうと思ったんだが、バーサーカーが代わりに見ててくれるっていうから、お言葉に甘えることにした。
いい所だよな、ここは。人間の中にもロクでもない奴がいるように、魔物の中にだってイイ奴はいる。大して話をしたわけでもないけど、こういう所で育ったチェルスはやっぱり良い人間だったんだと思う。
何とか助けてやれりゃあ、良かったんだけどな。
明日から本格的に黒犬の追跡に入る。身体を休めておかなきゃならないのはわかってるけど、頭に雑音が鳴り響いて、すぐには眠れそうにない。
何となく歩いている内に、教会の前にきてしまった。何げなく空を見上げるとそこには満月。
この組み合わせはイヤなことを思い出させる。オディロ院長がドルマゲスに殺された夜。
かなり時間は経ったっていうのに、過去のこととは割り切れない。
そうだ。あの時もオレは自分の中の異変にとまどってた。それまで持ってなかった力の意味するものがわからなくて、もしかしたら与えられていたのかもしれないチャンスをつかめなかった。
今オレの中にある、この不可解な現象も、何かのために使える時が来るのか?
それともまた、同じ失敗を繰り返すだけなんだろうか・・・。
「ククール」
いつの間にか、ゼシカがすぐ後ろに立っていた。特に気配を殺して近づいたわけではなさそうだ。それなのに声をかけられなきゃ気づかないなんて、普通の状態ならありえない。やっぱり感覚が鈍くなってる。
・・・それとも自分で思ってる以上に、初めから鈍かったのかもしれない。
次にゼシカが口にした言葉に、オレは本気で驚かされたからだ。
「悩んでることがあるのなら、私に話して」
本当に、ゼシカを甘く見すぎてたんだと思った。
ここまで心底驚いたような顔しなくても、いいと思うの。
『悩んでることがあるのなら、私に話して』
これって、そんなに珍しい言葉じゃないわよね。ククールがどれだけ私のことを子供だと思ってるか、改めて思い知らされるわ。
でも引き下がらないわよ。仲間が何かに悩んでるって気づいたのに、知らないフリなんて絶対にしないんだから。
本当に自分が恥ずかしいわ。
暗黒神に操られてからずっと、私一人が辛いような顔をしてた。
ククールは私にずっと優しくしてくれてた。
泣き言も全部聞いてくれて、体調も気遣ってくれて、いろんなことから庇ってくれた。
今日だって先回りして、ラジュさんたちにチェルスの死の理由を説明してくれた。私がそのことで辛い思いをしないようにって。
私のこと、ずっと守ってくれてた。
そして私はそのことに甘え続けてきた。
だから気づかなかったのよ、私がこの頃感じていた不安の理由。
ククールがどこかに消えて、いなくなってしまうんじゃないかって怖かった。
だけどそれは自分の心が弱いからだと思い込んでた。ククールに頼りすぎてるから、彼がいなくなってしまうことを恐れてるだけだって。だからチェルスのことからも逃げずに、しっかりしようと思った。
自分のことしか考えてなかったんだわ。
今だって、ククールを心配して探しに来たんじゃない。目を覚ましたらククールの姿が見えなくて、おまけにアークデーモンに見張られてるみたいで私が心細くなったから、こうして起き出してきちゃったのよ。
そしてここでククールの姿を見つけて、その様子を見ていてやっと気づけた。彼が何かに悩んでイライラしてるってことに。
だから私までつられて不安になってたんだって。
ククールが私をあてにしてくれない事を不満に思うのは間違ってた。
子供扱いされて当たり前よ。悩みなんて打ち明けられるわけないじゃない。こんな自分のことで精一杯の私なんかに。
ククールは考え込んじゃって、何も言ってくれない。
いつだってポーカーフェイスで、自分で見せてもいいと思ってる部分しか見せてくれない人だから。
文句が多いようで、本当に辛いことは口に出してくれない。自分の中で処理してしまおうとする。
そりゃあ私は頼りにならないかもしれないけど、信じてもらえてないのかと思うと、寂しくて悲しくなる。
「・・・自分でも、どう解釈すればいいかわかってねえし、かなり回りくどい話し方になると思うけど・・・短気おこさずに聞いてくれるか?」
ククールのその口調から、何だか大変そうな話だってことは伝わる。だけど私に話してくれるのよね? でも私ってそんなに短気に見えるの?
まあいいわ、今は話を聞くのが先よ。私は無言で頷いた。
「オレ、蘇生呪文習得したかもしれない」
・・・蘇生呪文って、ザオラル? そんなのずっと前から使えてたわよね? でも今更、意味もなくそんなこと言うとは思えない。・・・ということは、違う呪文?
「まさか、ザオリク?」
自分で口に出しておいて、バカなこと言ったと思った。
だってザオリクって完全死者蘇生呪文よ? 何百年も前、それこそ賢者の時代には使える人もいたって書いてある本はあるけど、半分おとぎ話のようなもので、そんな呪文が本当にあったなんて信じてる人、多分いないわ。
死んでしまった人が生き返ったりするはずないじゃない。そんな魔法が本当にあるなら、誰も大切な人を失って悲しい思いすることも無いのに・・・。
「さすがゼシカ、知ってたか。話が早くて助かった」
なのに、ククールはあっさりと私の言葉を肯定した。
私は今の話をどう受け取っていいのか、わからない。
「・・・やっぱり、信じられないか?」
困ったような、寂しそうなククールの声。
私は慌てて首を横に振る。
「信じるわよ、決まってるじゃない」
ククールは涼しい顔して嘘つくし、軽口ばっかり叩いてるけど、こんなことで嘘や冗談は言わない。
命が失われる痛みは、誰よりもよく知っている人だから。
だったら、どんなに信じられない話でも、信じるしかないわ。
不意に手をとられた。あんまりスムーズな動きなんで、何をするつもりなのか疑問に思う
間もなく、顔の位置まで上げられる。
そしてククールの唇が、私の手の甲へと当てられた。
一気にその部分に全神経が集中する。身体が固まってしまう。
「ありがとな、ゼシカ」
その声も瞳も穏やかで、下心なんて微塵も感じさせない。
ククールは、ただ感謝の意を示しただけなのよね。やり方がキザってだけで。
暗くて良かった。きっと私、赤くなっちゃってると思う。この程度のことで動揺してるのには気づかれたくないわ。
「で、ここからが困ったとこなんだけど、どうやら、その呪文は使えないらしい。唱えられないんだ」
話が続いてるんだけど、手をとられたままなことが気になって集中して聞けない。
こんなことじゃダメだわ。自分から話してって言っておいて失礼よ。
「唱えられないって、使ってみたことないの?」
確かに新しい呪文が使えるようになった時って感覚でわかるけど、大抵の場合は覚えた魔法は使ってみて、威力や効果を確かめてみる。
ああ、でも死者蘇生呪文ともなると、そう簡単に試してみるなんて出来ないわよね。他の呪文なら実験台になってあげてもいいけど、ザオリクの場合は死なないといけないから、ちょっと無理だわ。
ククールを信じないわけじゃないけど、ザオリクが伝えられてるような完全な蘇生呪文じゃなかったら困るもの。
「もちろん使ってみようとしたさ。でも出来なかった。さっき唱えられないって言ったけど、そういうレベルじゃないんだ。その言葉自体、口に出せない。呪文として唱えようとせずに普通に言おうとしても、喉にひっかかって声にならないんだ」
・・・言葉の意味がわからない。
私だって当然ザオリクなんて使えないけど、声に出すくらいは出来る。
「それさえ無ければ、自分の願望から、ありもしない呪文を覚えたような思い込みに囚われたんだって解釈で済むんだが、声にも出せないなんて不可解すぎるんだよな。そんな話、聞いたことないしな」
私も聞いたことないわ。魔法に関する本はそれなりに読んできたつもりだけど、似た話すら見たことがない。
「そのくせ、何か魔法を使おうとすると、頭の中でその言葉が鳴り響きやがる。オレの使う呪文は博打性の強いのが多いから、呪文を唱える時に集中できないのは迷惑以外の何ものでもない。
初めは何か耳鳴りがする位にしか思ってなかったけど、段々頭の中の声がでかくなってきやがった。特にザオラル使う時なんて最低だな。ついうっかりザオ・・・」
ククールが顔をしかめる。さっき言ってたように言葉が喉につかえたみたい。
「・・・一応は、あてにならない呪文に頼って、使えない魔法を覚えたと思い込むほど落ちぶれちゃいないつもりだから、何かあるとは思うんだが、それが何かはわからない。ホント、ムカつくんだよな」
軽い調子で話してるけど、明らかにイライラしてるのがわかる。
それなのに私、つい思ったことを口に出してしまった。
「ククールって、賢者みたいよね」
ククールは面食らった顔して私を見る。
どうして私って、こうなんだろう。思った次の瞬間には、もう言葉にしてるのよ。
「だって普通、僧侶がルーラやマホカンタ覚えたりしないじゃない。その上、ザオリクでしょう? だから、ちょっとそう思っちゃったのよ」
慌てて言い訳めいたことを言ってしまう。
「確かに修道院でもルーラ使いは変わり種とは言われてたけど、オディロ院長だって使えてたぜ? 僧侶だからって絶対使えないってもんじゃねえんだろ」
「だって、オディロ院長は賢者の末裔じゃないの」
・・・何だろう、今の言葉。自分で言ったことなのに、何かとても重要なことのような気がする。ククールも同じように感じたみたい。黙り込んで何か考えている。
でもククールはその考えを振り払うように頭を振って、いつもの調子に戻った。
「まあ、あれだ。オレが言いたかったのは、その言葉のせいで呪文を唱える時の集中力が落ちてるってことだ。だから回復のタイミングが遅れたりして、皆を危険に晒すかもしれない。
一応真面目にやってはいるんだが、そのことを踏まえてオレのことはあんまり当てにしないでほしい。
ほんとはもっと早く話しておくべきだったんだろうけど、例の言葉を使わずにどうやって説明するか考えてて遅くなった。悪かったよ。ゼシカが博識で助かった。エイトたちに話す時にも補足してくれると助かる」
・・・ククールは本当に強い・・・。もっと早く話すべきだったって言葉は、それなりの時間、一人で抱え込んでたって意味になる。なのに全然気づかせてくれなかった。気づけなかった私が未熟だっただけかもしれないんだけど・・・。
それに、私なんてついさっきまで、ククールが私をあてにしてくれないことにスネてたのに、こんなにあっさりと『自分をあてにするな』なんて言い切っちゃう。誰に何と思われても揺るがない自分を持ってる人なんだ。
「私に、何か出来ることある?」
ククールが私にしてくれたようには出来ないかもしれない。でも、どんな小さなことでもいい。力になりたい。
再び手を持ち上げられて口づけられた。今度は指先。またまた私は硬直してしまう。
どうしてこの人、こんなこと恥ずかしげもなく出来るの? それとも意識しちゃう私がおかしいの?
「そうだな、ゼシカには楽しいこと考えててほしい」
ククールの言葉は意外すぎて、咄嗟に意味がわからなかった。
「身近な人間がイライラしてると、つられて不安になったりするだろ? オレの苛立ちがゼシカを巻き込んでたことは何となく気づいてた。
だから今度はゼシカが楽しい気分をオレに分けてほしい。杖を封印した後、何をするかとかがいいかな。キツい戦いの後の楽しみは必要だろ?」
・・・ドルマゲスとの戦いの前、ククールは私に何度も言ってくれていた。敵討ちが終わった後のことを考えろって。あの時はその言葉の意味を考えなかった。だからドルマゲスを倒しても虚しさしか残らなくて。そして、そこを暗黒神に付け込まれた。
「うん、考えてみる」
また同じことを繰り返すわけにはいかない。せっかくの忠告、今度こそ無駄にしないわ。
「・・・今日は有意義だったな。何事も考えてないで実行してみるもんだ」
ククールの声から苛立った感じが消えている。話してみたことで、少しでも気が楽になってくれてると嬉しいんだけど。
「真面目な顔さえしてれば、ゼシカは結構ガードがユルいこともわかったし」
・・・?
「さすがに二度目は『調子に乗るな!』って怒鳴られると思ったのに、振り払おうともしないんだもんな」
そして、三度目のキスが手の甲に贈られた。
私はやっと、からかわれてたんだって気づいた。深刻な話の最中に随分な余裕じゃないの!
「離してよ、バカ!」
私はククールの手を振り払う。ククールはいかにも可笑しそうに笑ってる。
まったく! どこまで本気で、どこまで冗談なのかサッパリわかんないわ。
・・・でもいい、このくらいなら。真剣な話の後ほど、こうやって軽口でごまかそうとするんだって、知ってるんだから。いつまでも、その手にはのらないわよ。
それにちょっと考えたの。戦いが終わった後の楽しいこと。
いろんな所を旅してきたけど、戦うことに精一杯で、ゆっくり町を歩いたり、キレイな景色を眺めたりなんて、ほとんど出来なかった。
だから皆でゆっくりと世界を回りたい。
船に乗って地図にない島を探したりするの。そう思うと本当に楽しい気持ちになってきた。
・・・さっきのことは許してあげるから、その時にはククールも一緒に来てね。
そうしたら、どんな辛い戦いでも、私きっと勝てる気がする。
<終>
727 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 23:04:18 ID:v914ZFy/0
「チェルス」までがんばって読んだよ!!
更新キター(゚∀゚)ー!!!!!!!!
ところで、短編をわざわざ前後編にわけてるのってなんでですか?
分けないほうがいいのにね(^_^)
間空けるならともかく…
>>717-726 毎度乙です!
今回は髄までベタ甘かと思っていましたが、最後はいつもの感じのようで
はらはらしながらもちょっと安心したりなんかしてw
733 :
名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/12/21(水) 11:03:48 ID:dxuCnlJ70
ゼシカ視点とククール視点で分けるためじゃないのかな?
間もいいけど、こういうふうな区切り方もいいと思うよ。
>>728 更新って一体何のことだよ?まとめサイト見に行っちまったジャマイカ
>>731 アホかw
書き手の勝手だろ!
またお前かよw
ゴメンよく読まないで書いちゃった
またお前かよwとかいわれてもはじめて書き込んだからわかんないw
どうしようもねえ馬鹿女だな
チュープリーズ
イヤヨ
,'^yー--、' ヽ , -ー 、
))!,ノレ八ヾ!リ /ヾ'ヾヽl
(:(ヾ(!,,゚д゚ノ!) l(゚ー゚,,レノ,
/ヽ、)ノ)!二lつ (σ、::l=:l::ヽゝ
/_ノ曰ニ〈 l`='ヾし'ゝ
しヽ;;;;;;;;;ヽ i::::l::::::!___
ir、;;;;;;;;;;;;;ノ ヾ::ヾ:::I___ヽ)
 ̄ ̄  ̄ ̄ `'
エー O
,'^yー--、' ヽ , -ー、 (((大
ツーン ))!,ノ八ルヾ!リ /ヾ'ヾヽl
(:(ヾ(д-,,!ノ!) l(゚ε゚,,レノ,
/ヽ、)ノ)) (σ、::l=:l::ヽゝ
/_ノ曰ニ〈`) l`='ヾし'ゝ
しヽ;;;;;;;;;ヽ i::::l::::::!___
ir、;;;;;;;;;;;;;ノ ヾ::ヾ:::I___ヽ)
 ̄ ̄  ̄ ̄ `'
オジョウサン
オチャシナイ?
エー?
O O
,'^yー--、' ヽ チラ 大 大
))!,ノ八ルヾ!リ ///
(:(ヾ(-д゚,,!ノ!) //
/ヽ、)ノ)) /
/_ノ曰ニ〈`)
しヽ;;;;;;;;;ヽ ヽ l /
ir、;;;;;;;;;;;;;ノ ー -
 ̄ ̄
' .
;. ,'^yー--、' ヽ
';,, ))!,ノ八#ヾ!リ ……
, -ー 、て ;',.,(:(ヾ(ー;;;;;!ノ!)
/ヾ'ヾヽl ( ;, とl_(ヽ(ヽノヽ
(ニ二) l(゚∀゚liレノ、 >二@ノ
(ノソノ从) とヾ::l=:::::{つ /;;;;;;;;;;;;;!
ノノ li )i!ノ く::l`='ヾ:!´`' ノ;;;;;;;;;;;;;;;!
('ヾレノ;;;;) lー!ー! て;;;;;;;;;;;;;;;!
 ̄ ̄ ̄ 完。
いつも乙です。
相変わらず心理描写が上手い!
jbyさん、乙です。いつも楽しみにしてます。勝手な希望ですが、ラストまで頑張ってください。ロムってましたが、今朝はお礼ということで。
>>741 ククの隣に居るのは何??
でも可愛い〜カワユス。
746 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/22(木) 09:17:47 ID:ZWCDcghc0
ククのナンパしたおねいちゃんジャマイカ?
それにしても(*´Д`)カワユス
外の空気が冷たい分だけ、人の温かさが心に沁みる・・・。
労いのお言葉ありがとうございます。
それにいつも「どういう意味?」とか「どうして?」等の質問に代わりに(しかも完璧に)答えてくださる方がいるのは本当にありがたいです。
いつもお世話かけてます。できればこれからもよろしくです。
749 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/23(金) 13:37:21 ID:wKmCgfwb0
age
まだモンスターズがあるさ
幼少ゼシカのDQMは楽しそうだな。お兄ちゃんも出てくるとなおよし。
ククールも出してほしいが話が暗いのにしかならないから
向かないかな、やっぱり。
クリスマスSSは何か投下ないのかなと言ってみるテスツ
絵板も何かないかなぁと思ってみるダブルテスツ
754 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/23(金) 23:31:42 ID:wKmCgfwb0
てすつ
クリスマスイヴなのに、全然クリスマスに関係ないSSを投下するテスツ。
煉獄島イベントなので、甘さほとんど無しです。
でもとりあえず、メリークリスマス!
絶対許さない、あのイヤミ男!
いいえ、イヤミなんてかわいいもんじゃないわ。あいつ最低よ! ようやくレオパルドを倒して杖を回収できると思ったのに、人に濡れ衣きせて、こんな所に押し込むなんてひどすぎる。
肝心な場面で間に合わなかったくせに、恥知らずもいいとこだわ。ここから出たら、絶対ただでは済まさないんだから!
今思い出すと、あの騎士団員たちもムカつくわ。いくらレオパルドとの戦いで消耗してたからって、私たちを捕縛できるだけの実力があるのなら、黒犬相手にも、もっと気合入れて戦えっていうのよ。必ずここから脱出して、お返ししてやるわ。
・・・脱出、できるのかしら・・・。
私たち、これからどうなっちゃうの?
こんなところにいると、世界がどうなってるのか、全くわからない。
でも看守の交替は規則正しく行われてるみたいだから、暗黒神はまだ復活してはいないんだと思う。それだけが救いだわ。
この煉獄島に閉じ込められてから、もう一カ月になるけど、その間ククールとはほとんど口をきいていない。
エイトもヤンガスも、そっとしておいてやれって言うから。そのくせ二人は、いろいろ話しかけたりしてるのよ。ズルいじゃないの。
『ククールも男で、そういうお年頃だから』なんて、意味のわからないことを言われる。
そして『あいつは見えっ張りだから』とも言われた。後の方は何となくわかるわ。要は女の私に同情されるのはプライドが傷つくってことよね。
同情なんかじゃない。ただ心配なだけなのに・・・。
私たちに法皇様暗殺未遂の濡れ衣をきせ、この煉獄島に送り込んだのは、ククールのたった一人のお兄さん、聖堂騎士団長のマルチェロ。
だからククールは、きっとずっと責任を感じて、自分を責め続けている。
その気持ちを思うと、涙が出そうになる。
でも私がククールにしてあげられる一番のことは、自分自身を気遣って元気でいることだとエイトに忠告された。
私が悲しそうにしていたり、体調を崩すようなことがあったら、ククールがますます辛い思いをするだけだからって。
確かにその通りだとは思う。いつだって自分は後回しで、他の人のことばかり気にかけている人だから。
でもやっぱり辛い。自分の無力さが悲しくなる。
そして、最悪の報がもたらされた。
法皇様はもう一カ月も前に亡くなられていたこと。
それは丁度、私たちがこの煉獄島に収監された頃。
私、また守れなかった・・・。
騎士団員たちに囲まれた時、私は何も出来なかった。
力も体力も無い私のたった一つの取り柄は、誰よりも早く魔法が放てることだったのに動揺してる間にマホトーンをかけられてしまい、どうしようもなかった。
魔法が使えない私が、騎士団員たちに敵うはずもない。足手まといにしかならなかった。
油断しすぎだわ。マルチェロがイヤな奴だっていうのは、わかってたのに。
だけどまさか、ここまでひどいことするなんて思わなかったのよ。
マイエラ修道院でも濡れ衣は着せられたけど、誤解が解けたら、一応は謝ってくれた。お詫びの印だって、世界地図までくれた。
だからどこかで甘く考えちゃってたんだわ。
どんなことをしても抵抗するべきだった。あの杖がどんなに恐ろしいものかは、暗黒神に呪われて支配された私が、誰よりも一番良く知っているはずなのに。
「わしに構うな! お前たちは、早く地上をめざせ!」
ニノ大司教が自分の身を犠牲にして私たちを逃がしてくれ、昇降機を動かすレバーを操作してくれた。看守にあまりひどい目に合わされなければいいんだけど・・・。
地上に近づくにつれ、不思議な感覚がする。
今、あの杖を持っているのはマルチェロだと確信できる。理屈じゃなくわかる。
もしかしたら私はまだどこかで、あの杖と繋がっているのかもしれない。
ククールも同じことを感じてるみたい。それは血の繋がりでわかるものなのかしら?
でも不気味な静かさも感じる。これから起こる恐ろしいことのために、強い何かが力を溜めているような・・・。
どうか、間に合って。こんなところで無駄にした一カ月を、これ以上苦いものにはしたくないのよ。
昇降機が地上に到達した。
ヤンガスが先に飛び降りて、鉄格子をこじ開け始めた。エイトもそれに続く。
そしてククールが降りて、私の方を振り返った。
「ごめん、ゼシカ。この一カ月、全然気遣えなくて・・・」
申し訳なさそうな顔で、腕を差し出してくれた。
・・・バカな人。一番辛いのは自分のくせに、こんな時まで他人を気遣おうとする。
強がる姿が痛々しくて悲しくなるけど、その一方で、ククールがそれだけの余裕を取り戻してくれたことが嬉しい気持ちもあって、私はその手に自分の手を重ねる。
「気遣いじゃないなら、この手は何なの?」
久しぶりに触れる手の感触に気が緩みそうになって、私の方から軽口叩いてしまう。ククールはちょっと考え込んでしまった。
「・・・お詫び?」
自分の言葉に疑問符を付けながら、もう片方の手も差し伸べてくれる。
「バカね。普段が気を遣いすぎなのよ」
そして私はククールに手を引いてもらって、昇降機を降りる。
【ありがとう】
二人の声が重なった。
・・・どうして、ククールがお礼言うの?
きっといつもだったら、顔を見合わせて笑ってしまうところなんだろうけど、今はとても笑えない。ククールの顔を見ることも出来ずに、目を背けてしまった。
今ククールの顔を見たら、私きっと泣いてしまうから。
「行きましょう」
それだけ言って、エイトとヤンガスの方へ向かう。
ごめんなさい、ククール。
私、マルチェロとは本気で戦う。私の時は、あんなに手加減してもらってたのにね。
レオパルドを倒すのもやっとだったんだもの。最後の賢者の命を吸収した杖を持つマルチェロに手加減して勝てるなんて、とても思えない。
どんなにひどいことされても、あなたがお兄さんを憎めずにいるってわかってる。でもやるしかないんだもの。
私がもっと強かったら、絶対に死なせずに杖だけ取り上げるって約束できたのに。口に出して誓うには、私の力は小さすぎる。
でも、どんなに小さくても、完全な無力ではないと思いたい。この手にだって、一つくらい大切なものをつなぎ止められると信じてる。
だから決して死なせはしないわ、マルチェロ。
勘違いしないでよね、あんたの為じゃないわ。私はもうこれ以上、ククールに辛い思いをしてほしくないのよ。
だから必ず、助けてあげる。・・・感謝ならククールにしなさいよ。
また空回りしちまったな。
オレが手を引くまでもなく、ゼシカは実に軽やかに、ふわりと昇降機から舞い降りてくれた。
そりゃそうだよな。足場の悪い野山や迷宮を駆け回って、魔物と戦ってるんだ。この程度のところからなんて、一人で降りられるに決まってる。
だけど、それでも振り払わずにこの手をとってくれたことに、自分でも驚く程に救われたような気持ちになった。
この煉獄島に入れられたばかりの頃は、最低だった。
明らかに、オレとマルチェロとの確執に皆を巻き込んじまったからだ。
申し訳なさと不甲斐なさで、頭がおかしくなりそうだった。
何よりも腹が立ったのは、マルチェロの行為に少なからずショックを受けた自分に対してだ。
あいつがオレを嫌って憎んでるのは知ってたのに、どこかで甘く考えてた。
何だかんだ言ったって十年も同じ修道院で暮らしたっていうのに、寝首をかかれることなく生きてこられたってことに油断してた。
レオパルドを倒して、あいつが部屋に入ってきた時、オレは剣を鞘に収めてしまった。少なくとも、法皇様の命を守るって件では利害は一致してると思ってたからだ。そしてそれが命取りになった。
おまけにオレは弱気なことに、杖の回収よりも仲間の回復を優先させてしまった。マホトーンをかけられる前に、かろうじて放つことが出来たベホマラー。
感謝はされたさ。大きな傷を残した状態でこんな不衛生なところに入れられたら命の保証は出来ないからな。
でもオレはそんなことを考えたんじゃない。ためらったんだ、騎士団員たちに剣を向けることを。そしてその迷いが皆に伝染した。
こんなお人よし揃いの連中に、オレのかつての仲間を攻撃するなんて出来るわけない。オレが率先してやるべきだったんだ。
杖を封印するためならどんなことでもすると誓ったのに、オレは肝心な時に及び腰になった。あの場にいた人間、全員斬り殺してでも杖は回収しなきゃならなかったのに、出来なかった。本当に口先だけの自分がいやになった。
今回のことで、自分が相変わらず中途半端な人間のままだってことと、仲間の強さとありがたさが身に染みた。
特に、なるべくゼシカのそばを離れないようにしていてくれたエイトには感謝してる。
エイトだって残してきた姫様やトロデ王のことが心配で、いてもたってもいられなかっただろうに、不安な気持ちは全く感じさせずに、全員に目を配ってた。
オレが誰かを気遣えるのは自分に余裕がある時だけで、いざという時には自分のことで精一杯だっていうのに気づかされて情けなくなった。
ヤンガスは明晰とは言い難い頭でずっと脱出の算段を考えていて、一生ここから出られないかもしれないなんて、カケラも思ってないのがわかった。
あいつのそんな様子を見てると、こんなところでウジウジ悩んでる自分の方がアホに思えた。
そしてゼシカ。
女性の身でこんなところに入れられて辛かっただろうに、オレは何もしてやれなかった。
それどころか、ずっとオレのことを気にかけてくれていた。言葉を交わすことこそほとんど無かったけど、いつでも感じてた。心配そうに見つめてくる瞳を。そして今も、まっすぐに背を伸ばして、前だけを見ている。
引っ張ってもらってるのは、いつだってオレの方なんだよな。
さっきゼシカの手に触れた時、その手にあの日のマルチェロの手が重なって見えた。
初めて修道院でアイツに会った日、すぐに引っ込められてしまったけれど、確かに一度は差し伸べてくれた手だ。
・・・長い間、オレを支配し続けていた呪縛が解けた気がする。
オレはもう、誰かが手を差し出してくれるのを待ってる子供じゃない。こんな情けない手でも、信じて支えにしてくれる人がいる。そしてオレは、そのことでこんなにも救い上げられている。
そんな簡単なことにやっと気づくことが出来た。
随分回り道しちまった。本当にバカだよな。
思えばあの頃のマルチェロはまだ子供で、背丈も手の大きさも、今のゼシカと同じくらいだった。
でもアイツはその小さな手を、他者に差し伸べる側でいようとしていたんだと思う。
それに比べて、今でもオレは支えられる側にいる。
図体ばかりデカくなっても、あの頃から全く成長してないオレと比べたら、マルチェロの方がよっぽどまともな人間だったんだって気がついた。
ごめんな、兄貴。
あんたがオレを憎むのは逆恨みの筋違いだって、実はずっと思ってた。
あんたがオレを無視してたんじゃない。オレの方があんたを突き放して、無視し続けてきたんだ。
怖かったんだよ、憎しみをまともに受け止めることが。オレはそんなに強い人間じゃなかったから。
だけど修道院にいた頃は、あんた、そんなにひどい人間じゃなかったよな。少なくとも公正な人間ではあった気がする。それなのに修道院を追い出された後、あんたは会う度に歪んでいってた。
原因はわかってる。オディロ院長がいなくなってしまったからだ。
ドルマゲスが襲って来た夜、あれほど嫌ってたオレに一番大切な人を託そうとしてくれたのに、オレはそれに応えられなかった。
オレが憎まれる理由は充分だったんだ。
忘れたことは無かったよ。初めて会った時のあんたが優しかったこと。
そしてこの仲間と一緒にいられるのは、あの日あんたがオレを修道院から追い出してくれたからだってこともな。
だから、その借りは返す。
奪ってやるよ。今あんたが手に入れようとしてる全てを。それは破滅の力だ。決して許すわけにはいかないものだ。
オレのせいじゃないとは、もう言わない。ちゃんと自分の意志で奪う。
そして心置きなく憎めばいい、オレのことを。今度はちゃんと受け止めてやる。
ずっとそばで示し続けてくれた人がいるんだ。教えられてきた。どんなことでも逃げずにまっすぐ受け止めることを。
もうオレには差し伸べてくれる手は必要ない。
今のオレを支えてくれてるのは、オレが差し出した手をとってくれる人だから。
こんなこと言ったら嫌がるだろうけど、やっぱりオレたち兄弟だ。どうしようもない所がよく似てる。
守らせてくれる誰かが居てくれることで、初めて自分を支えられるダメな人間だ。
それを失ってしまったから、あんた、トチ狂っちまったんだよな。
そしてオレだけが巡り会えた。全てをかけても守りたいと思わせてくれる人に。
申し訳なく思ってる。オレだけがいつも全てを手に入れてきたこと。
だから、せめて約束するよ。・・・決してあんたを死なせはしないと。命だけは必ず、この手でつなぎ止めてみせることをな。
<終>
いつも乙です。
甘さはあまりなかったけどククール話としてはGJ!精神が強くなりしたね。
763 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/25(日) 00:42:16 ID:yFZCpab10
なりしたね?
>今のオレを支えてくれてるのは、オレが差し出した手をとってくれる人だから。
>そしてオレだけが巡り会えた。全てをかけても守りたいと思わせてくれる人に。
・゚・(ノД`)・゚・
ありがとういいプレゼントだったよ。
>756
いつもありがとです。そこはかとなく支えあうククゼシ萌えです。
ところで前回の話の賢者云々&ザオリクの伏線が気になってますよ。
設定が生かされるのはマルチェロ戦かな、ラプソーン戦かな?
ククはザオリクを誰にかけるんだろ。ゼシカだと嬉しいと思ったり。
むかーし好きだったシリーズ物のマンガや小説が
発売される日を今か今かと待ちわびてた時のわくわくする気分を
このスレで十何年かぶりに味わったよ。
Jbyさんのレスがあるとやるべきことを全部終わらせて
誰にも邪魔されない環境を作ってから読む事にしてるくらい。
これからいよいよマルチェロ戦ですね。
私がプレイした時はバトル始まってから3回くらい
ククしか攻撃されなかったんだよね。(ノД`゚)
そこまでククが憎いのかとすこーしショックを受けた記憶が・・・。
早く読みたい反面終りが近づくのが哀しい。
あたたかい言葉ときれいな涙。
ステキなプレゼントをいただいて、良いクリスマスになりました。いつもありがとうございます。
続きを楽しみにしてくださってる方がいるのは、すごい嬉しいプレッシャーを感じてます。
でも・・・。
ここの読み手さんは鋭そうなので、今後の展開を読まれないように、どんなレスにもしらばっくれたかったけど、一つだけ。
ごめんなさい! マルチェロ戦は書きません。ゼシカが入りこむ余地が無いもので・・・。
もしかして期待されてた方、すみません。
とりあえず、書き逃げします。すんませんしたーっ!
769 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 01:29:27 ID:ELNfeEOW0
770 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 01:42:27 ID:eAjJw1KgO
屁 ξ
明日の某祭典ではいい本があるといいな。
…ところで次は正月か。
ク「何お願いしたんだ?」
ゼ「…秘密。」
…しまった、あっちの世界は教会だっけ。
772 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/28(水) 10:57:38 ID:mmQ0rbpG0
w
773 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/28(水) 18:37:27 ID:1JhYly8N0
ほんとうにショックでした。
まさかDQYのミレーユが処女ではなかったなんて。
王様の性奴隷として毎日セックスをされていたと思うと
とてもペニスが勃起します。
774 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/29(木) 01:49:39 ID:S1wSsZpG0
ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!
775 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/30(金) 16:07:53 ID:Wi/8EflQ0
工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
776 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/31(土) 11:32:49 ID:tA93bMG20
大晦日ですね。
777 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/01(日) 00:00:47 ID:Tx9einRk0
おめっとさん。
778 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/02(月) 13:40:31 ID:klGzBZPY0
あけましておめでとうございます。
779 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/02(月) 13:42:51 ID:UYNszwwzO
W
「今年も2人が仲良しでいられますように♪」
「…ククールは他に何かお願いしたの?」
「(それはもう…あんなことやそんなことやゴニョゴニョ…)」
「…顔がにやけてるけど?」
「べっ、別になんでもねーよ」
┏━━━ / |━━━━━┓
┗┳┳━ |_| ━━━┳┳┛
┃┃ / ヽ ┃┃
┏┻┻ |======| ━━┻┻┓
┗┳┳ ヽ__ ¶_ ノ ━━┳┳┛
凸┃┃ (/) ┃┃凸
Ш┃┃ (/) ┃┃Ш
.|| ┃┃ (/) ┃┃.||
,'^y'⌒⌒ヾヽ(/) 〃⌒ミヽ
))! .八~゙リ))(/) (∬~)/)) 〉
.(.(ヾ(!^ヮ゚ノ!) (/) 从゚∀゚.リノ
゙ /ヽ、)ノ)づ(/)__ /i':=:゙i~ヽ
////D,,,,,ヽ /////|
//////////// |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| 奉 納 |
…某所から拝借したんですが作っちゃいました。
今年もみんなで萌えましょう。
781 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/03(火) 11:42:25 ID:2hDXcP5d0
w
あけまして保守
聖地ゴルドが崩壊した。結局オレたちは暗黒神の復活を止めることが出来なかったってわけだ。
まあ、起こってしまったことは仕方ない。まだ世界が滅びてしまったわけじゃない。出来ることがある限り、それに全力を注ぐだけだ。
空を飛ぶ手段は持ってるから、ラプソーンの城に攻め込むこと自体には苦労は無かった。これは不幸中の幸いと言ってしまって、いいんだろうか。
変なところでばかり事がスムーズに運んでる気がして、気に入らない気持ちの方が強いんだがな。
「こんな所に住んでるやつと戦うことになるとは、オレの人生もろくなもんじゃないな」
おもわずボヤいちまった。
「・・・弱気? めずらしいね」
ゼシカが不安げにオレの顔を覗き込んでくる。しまった、またやっちまった。オレの精神が不安定だと、ゼシカまで巻き込んで不安にさせるってのはわかってたのに。
それにしても、本当に随分オレに対する評価は上がったもんだ。弱気が珍しいとは、結構頼りがいがある男に思われてるらしい。
「ここまで来たら、つべこべ言っても仕方ないでがす」
でもヤンガスに諭されるのは、何かイヤだ。やっぱりグチなんてこぼすもんじゃないな。
「暗黒神を復活させたのは、それほどの失敗じゃなかったと思うでげすよ。復活した暗黒神を倒さなければ、いつまで経っても暗黒神の脅威から世界を救えないと思うんでげす」
続けてヤンガスが口にした言葉は、近ごろ感じていた苛立ちの答えを唐突にオレに突き付けてくれた。
・・・そういうことかよ。
このところ、ずっと感じてた。誰かの掌で良いように操られている自分ってやつを。どうやらそれは気のせいじゃないらしい。
おかしいとは思ってたんだ。血筋を絶やしちゃいけないはずの賢者の家系が、今の代になってほとんど子孫を残してないってことはな。
サーベルトやチェルスは若かったから仕方ないとしても、血の繋がった子供を残してるのはメディばあさんだけ。オディロ院長や法皇様に至っては聖職者なんて道を選んで、子孫なんて残せるはずもない。
初めから封印は続かないようになってたんだ。
暗黒神が復活してしまうことは、止められないように仕組まれてたとしか思えない。
こう見えても、人生の半分は修道院で暮らしてきたんだ。神様だって、それなりには信じてた。信心深かった人ほど俺に良くしてくれたからっていうのが、理由としてはデカかった。そういう人たちが信じてるものなら、オレも信じてみようって気持ちにはなった。
だけど、あの夜から神様なんてものは信じられなくなった。
『神の御心ならばいつでも死のう。だが神の御心に反することならば私は死なぬ。神の御加護が守るであろう』
そう言い切った人の命を神様は守ってなんてくれなかった。神に全てを捧げているという、あの人の言葉には嘘なんかなかったのに。
本当に神様なんてものがいるのなら、オディロ院長のことを助けてくれても良かったんじゃないかとしか思えなかった。それなのに院長はあんな殺され方をした。あの光景を見せられて、神なんて信じる気にはとてもなれなかった。
でも今は強烈に感じる。神っていうものの存在を。あの夜のオディロ院長の言葉の通りだった。あの人が殺されたのは、神の御心ってヤツだったってことだ。
この旅に出る前から、全ては始まってたんだ。
オレは元々、霊感の強い方じゃない。多少は魔物の気配を感じることは出来ても、それは訓練された僧侶としては平均的なものだ。
それなのに、エイトたちと出会ったあの一時期だけ、オレの邪悪な気配に対する感覚は異様に鋭くなってた。
修行したわけでも何でもない。突然に降って沸いたような感じだった。
だけど、そんな力は便利なようで不便なもんだ。
それまでは気にならなかった、あの辺りの魔物たちがどうしようもなく凶悪な存在に感じて、ちょっと道を歩くのにもピリピリしてた。
そのことで苛立ってたから、確かにそれまで以上に素行が悪くなってた。オレのことは無視したがっていたマルチェロでさえ、呼び付けて謹慎を言い渡さなきゃならない程にな。
そしてオレだけが気づくことが出来た。ドルマゲスの、いや、今にして思えば杖の放つ、とてつもなく邪悪な気配に。
なのに、オレのその感覚は全く役には立たなかった。日頃の行いが悪すぎて、誰もオレの訴えに耳を貸してはくれなかったからだ。おまけに謹慎なんか言い渡されてたもんだから、修道院の周りに見張りまで立てられて、外に出ることさえ出来なかった。
それでもあの夜、何とか院長の館にたどり着くことは出来たのに、ドルマゲスの野郎に指一本触れることが出来ずにぶっとばされて、オディロ院長を守れなかった。
与えられていたチャンスを活かせなかったんだと思って、自分が情けなくなった。
それならせめて敵討ちのために、ドルマゲスを見つける役に立てばと気持ちを入れ替えたのに、邪悪な気配を感じる力は日を追うごとに弱くなり、船を手に入れる頃には完全に元の自分に戻ってしまっていた。
せめてゼシカが杖を手にしてしまって呪われた時まで保っていられたら、気づいてやることが出来てたかもしれない。そうしたら、あんなひどい目に合わせずに済んでたのかもしれないのに・・・。
だけど、今なら確信できる。そうなったらマズかったんだ。
全ては仕組まれていた。オレたちは暗黒神の復活を止めるためじゃなく、復活した暗黒神を倒すために選ばれて、集められて、こうしてここにいる。
オレが出会って間もないエイトたちに、頼み事をしなきゃならなかったことも、こいつらがマルチェロに濡れ衣着せられてるのを、オレが助けなきゃならなかったことも、全部そのために必要なことだった。
そうでなければ、お互いに、こんなふうに一緒に戦うような気持ちにはならなかっただろうからな。自己紹介代わりに利用されたんだ。
道理でドルマゲスのことも最後まで憎みきれなかったわけだ。それどころか気の毒とまで思っちまったからな。あいつもオレたちと同じ、暗黒神を完全に滅ぼすために選ばれて利用された駒だったわけだ。
まあ、トロデーン城で杖を強奪しようとした時点で、同情の余地は無いんだろうけどな。
・・・もしそうなら、やり方があんまりなんじゃないか?
オレは賢者の末裔全員に会ったことがあるわけじゃない。でも、あんな風に杖で刺し殺されるなんて死に方しなきゃならなかったヤツなんて、一人もいないと思うぜ?
オレみたいな凡人には、大いなる神の御意志なんてものは理解できなくて当然なのかもしれないけど、少なくとも二度と神に祈る気持ちになんかはなれねえな。
「ねえ、ククール?」
ゼシカの呼ぶ声で現実に引き戻された。こんな敵の親玉の居城で考え事なんて、我ながら胆が座ってるもんだ。
「もしかして、怒ってる?」
「・・・どうして、そう思う?」
「怖い顔してたわよ」
・・・マズいな。ポーカーフェイスが自慢のはずだったのに、最近ゼシカには悉く見破られてる。
「ごめんなさい・・・」
続くゼシカの言葉の意味するものが、オレにはさっぱりわからなかった。
「どうしてゼシカが謝るんだ?」
「だって・・・。マルチェロのことで、もうよけいなこと言わないって約束したのに、つい口出ししちゃったから」
・・・そう言えば大分前になるけど、その話で結構手ひどく突き放しちまったことがあったっけな。
「そのことで怒ってるわけないだろ。気持ちはありがたいと思ってるよ、ほんとに」
ダメだな。自分の口から出てる言葉なのに、とても心がこもってるようには聞こえない。
「マルチェロのやつもバカだよなぁ。オレだったら、こんなナイスバディの美人が心配してくれてるってわかったら、悪いことなんてする気なくなるのにな」
「何、言ってんのよ、バカ・・・もういいわ。今度こそ、よけいなこと言わないわね」
結局またこうなる。どうしてなんだろう。オレとしては、ちゃんと本心だけ言ってるつもりなのにな。
マルチェロの話なんか出たせいだろうか。やたらとガキの頃のことが頭に浮かんでくる。
自分が小さかったせいか、やたら威圧感を感じた修道院の建物や聖像。初めて手にした時の剣の重さ。新しい呪文を覚えられて嬉しかった時のこと。そしてマルチェロに手ひどく突っぱねられたオレの頭を撫でてくれた、初めて会った時のオディロ院長の温かい手・・・。
また考えこんじまってたオレは、今度はエイトの呼ぶ声で我に返った。本当にどうかしてるな。ここまでくると、余裕通り越して現実逃避に近い。
「暗黒神の邪気にあてられたのか知らないが、やたらとガキの頃のことを思いだすんだ。今さら・・・本当に今さらだ。思いだしたって意味ねーのに」
「アッシ、そういう話を聞いたことがあるでがすよ」
オレの言葉に対して、ヤンガスが意外なことを言い出すもんだから、全員がヤンガスに注目した。
「人間には、それまでの人生を走馬灯のように振り返る時があると聞いたことがあるでがす。それにしても走馬灯って何でがすか?」
意味わかってねえんだろうけど、ものすごくイヤなことをサラッと言ってくれやがったな、このヤロウ。
一発殴ってやろうかと思ったが、それより早くゼシカのマジカルメイスがヤンガスの脳天に振り下ろされた。
「縁起でもないこと言ってんじゃないわよ、このバカ!」
今のは見事な一撃だったな。兜の上からでもかなりのダメージがあったらしい。ヤンガスは頭をおさえて、うずくまった。
エイトが心配そうにヤンガスの頭を覗き込むが、本当に気になってるのは、どうやら錬釜釜で作った猛牛ヘルムらしい。さりげなくひどいヤツ。うしのふんなんかを材料にした兜を弟分にかぶらせる辺りも相当なもんだ。
思わず笑っちまう。本当にこいつらといると、辛気臭い気分を保たせてはもらえないみたいだな。
「お前がさっき言った人生を振り返る時ってのは、死ぬ時だ。勝手にオレのこと殺そうとしてんじゃねぇよ、バーカ」
「えっ・・・。そいつはすまねえ。知らなかったでがすよ」
「だからって、言っていいことと悪いことがあるのよ! ククール、ヤンガスの言うことなんて気にしちゃダメよ。全部完全に無視するのよ。いいわね」
何もそこまで言わなくても・・・。気の毒にヤンガスは落ち込んじまった。
「ゼシカのねえちゃん、あんまりでがす・・・」
「あのな、ゼシカ。お前にそうやって気にされると、オレまで何か本当に死にそうな気がしてイヤなんだけど」
「やめてよ、そんな死にそうとか言うの! ほんとになったらどうするのよ」
ほんとに、ずいぶん今日はムキになるな。
「そん時は、ゼシカがキスの一つもしてくれれば問題解決さ。おとぎ話とかでよくあるだろ? 美貌の騎士は、美しいレディのキスで永い眠りから覚めましたってな」
「そんな話、聞いたことないわよ。普通、永い眠りについてるのはお姫様・・・って、どさくさに紛れて何言ってるのよ! 心配して損したわ。こんなアホ、殺したって死なないわよ。だからキスなんて絶対にしないんだからね!」
ゼシカは本当に期待を裏切らない。完璧、予測通りの答えだ。・・・つまんねえの。
「さあ帰るぞ! こんな所さっさとおさらばだ!」
何なんだ? この胸騒ぎは。
ラプソーンは倒したっていうのに、イヤな予感がまるで消えてくれない。
ヤバいのは、この城だ。早く脱出しないと、良くないことが起こるっていうのがわかる。
それなのに、何なんだよ、この城は。
建物が崩れてきて、一刻も早く外に出たいっていうのに次から次へと敵に襲われて、中々先に進めない。
それにさっきから、例の言葉が頭の中でひっきりなしに鳴り響きやがる。
完全死者蘇生呪文『ザオリク』
そんなものを使わなきゃならない状況が、この後に待ってるっていうのか?
冗談じゃない、そんな使えるかどうかもわからない呪文なんて、誰があてにするもんか。
そんなことになる前に回避する。それが本当に守るってことだ。何かあってから動いたって遅いんだよ。
ようやく空が見えるところに出られたってのに、えらく不細工な鋼鉄で出来た魔人が現れやがった。
元々壊れかけてるような外見なんだから、サッサと完全に壊れちまえ!
・・・なんて思ったのが悪かったのかもしれない。
機能を停止した鋼鉄の魔人は、その巨大な身体を崩れさせ、オレたちの頭上に降り注いできた。鉄格子に塞がれて、城の中には逃げ込めない。
バラバラになったからって、元が巨大だから破片もデカい。このままじゃあ、全員押し潰されて死んじまう。バギクロスで巻き上げようにも、数が多すぎる。
「みんな、ふせて!」
ゼシカが叫んで、素早く魔力を集中させていく。
「イオナズン!」
襲いかかる鋼鉄の破片に、爆発の呪文が叩きつけられた。
目も眩むような閃光と、耳をつんざくような爆音。そして鋼鉄は小石ほどの大きさまで砕け散り、パラパラと落ちてきた。
・・・すげえな。
人類最強の称号を、謹んで捧げとくとするか。オレが守る必要なんて、どこにもないかもしれない。思わず苦笑いしちまう。
でも、それはつかの間のことだった。
『どこまでも忌まわしき、クランバートルの末裔よ』
とてつもなく邪悪な声が、頭に直接鳴り響いた。
おぞましい邪悪な声が頭に鳴り響くと同時に、私の足に何かが絡み付いた。
見下ろすと、トロデーンの城を覆っていたのと同じ茨が巻き付いている。
どうして、こんなものが・・・。
何一つできないままに、次々に茨が巻き付き、私の身体は宙高く吊り上げられてしまった。
耳鳴りがする。頭に雑音が鳴り響いて気持ちが悪い。
バギやギラ、しんくうはが下から放たれているのはわかる。仲間が私を救おうとしてくれている。でも、何も見えない。何も聞こえてこない。
私に見えるのは、ただ闇だけ。聞こえてくるのは頭に直接響いてくる声。
忘れることなんて出来ない。かつて私を支配した、おぞましい暗黒神の声。
『我が肉体を、あのような汚らわしい像に封じた憎きシャマルの血を引きし者よ。完全な目覚めの時は近いようだな。再びその身体、我が貰い受けよう。我が肉体を封印し賢者の末裔が、我が新しき肉体となる。その皮肉に悲しむシャマルの姿が目に浮かぶようだ』
闇か、私の中に入り込んでこようとする。また同じことを繰り返すの? ご先祖様への当てつけで私の身体を利用しようとするなんて、そんなのひどすぎる。
・・・いいえ、そんなことにはならない。
私はもう、あの時とは違う。
兄さんの仇を討つことだけ考えて、ドルマゲスへの憎しみで心を満たしていたから、そこを暗黒神に付け込まれた。仲間すら憎んで殺そうとしてしまった。
今は違う。仇を討ちたい気持ちはもちろんある。でも私が今戦う理由は、これ以上の悲しみを生み出したくないから。こんな『悲しい』が口癖のようなヤツの言いなりには、二度となるもんですか。
何度も同じ失敗を繰り返すのは、ただのバカよ。私はもう、決して闇には飲まれない。
目を閉じると、仲間の放つ魔法の気配を感じる。みんな優しいね。私まで傷つけないように、力加減してくれてるのがわかる。遠慮なんてしなくていいのよ、思いきりやっちゃって。私、そのぐらい何ともないから。
だけどとりあえず、今は自分で何とかするわ。もう一発ぐらい暗黒神を殴ってやりたい気持ちはあったのよね。
耳鳴りのせいで、うまく呪文に集中できない。でもそんなこと言ってる場合じゃないわ。
「ベギラゴン!」
絡み付いていた茨が激しく燃え上がり、次々に燃え落ちていく。
だけど、後少しで戒めから完全に解かれ自由になれると思った矢先、私の身体は振り上げられ、遠くの壁に向かって力任せに投げ付けられた。
うそ・・・!
いくら何でも、こんな早さで壁に叩きつけられたら死んじゃうわよ。
バイキルト! は意味なさそう。スカラ! はダメ、私使えない。
どうしてこういう時ってスローモーションに感じるのに、何もいい考えが浮かばないの?
もうダメ、絶対死んじゃうー!!
まるで意味ないのはわかってるけど、目をつぶって歯をくいしばった。
息が詰まるような衝撃。脳が揺らされてクラクラする。
でも、覚悟していた程の痛みはない。想像していたほど、ここの壁も固くない。
・・・そんなわけないじゃない。この感触を私はよく知っている。今まで何度も私を助けてくれた腕。ずっとずっと、守ってきてくれた人。
ようやく顔を上げた私の目に映ったのは、頭から血を流し、苦痛に歪んだククールの顔。私が壁に叩きつけられる直前に、自分の身体を入れて庇ってくれたんだ。
「・・・そんな顔するなよ。前に言ったろ? ゼシカが落ちてきた時はオレが受け止めるって。スカラを重ねがけてあるから大したことない、大丈夫だ」
決して軽いキズじゃないのは、すぐわかる。でも私を見る目も、かけてくれる声も、たとえようもないほど穏やかで優しい。
・・・言いたいことはたくさんあるのに、唇が震えて言葉にできない。胸が一杯で何かが溢れそうなのに、どう表現していいのかわからない。
ただ指を伸ばして、額から流れ落ちてきたククールの血をそっと拭った。
『どこまでも目障りな奴・・・。また貴様が邪魔をするのか!』
血まで凍りつきそうな憎悪に満ちた声に、私の身体は固まった。目の前の空間に、邪悪に光る目だけが浮かび上がる。
『往生際の悪い人間よ。賢者の力を受け継ぎし者共・・・。貴様らだけは許さん。まとめてこの場で死ぬがいい。未来永劫苦しみ続ける、死の呪いを受けよ!』
悪意と憎悪の固まりが、呪いとなって牙を剥く。決して抗えない、圧倒的な力が襲いかかってきた。
「ゼシカ!」
この傷ついた身体のどこにそんな力が残ってたんだろう。私の身体はククールに突き飛ばされ、床に投げ出された。
そして、呪いに捕らえられたククールの身体が死に蝕まれ、全てを失って崩れ落ちるのが見えた。
それから、この不思議な泉に来るまでのことは混乱していて、よく覚えていない。
頭に残っているのは、再び私を襲った呪いを、駆けつけたエイトが跳ね返してくれたことと、闇の世界から現れた魔物に襲われたのを、レティスが救ってくれたことだけ。
エイトが何十回目になるかわからないザオラルを、ククールに向かって唱えている。
ラプソーンはあの時、確かに『死の呪い』と言った。だから、この泉の水でその呪いが解けるかもしれないという一縷の望みをかけたのだけど、水を口に含ませても、ククールはそれを飲んではくれない。
MPの尽きたエイトが、泉の水を飲んで自分を回復する。さっきから、もう何度もその繰り返し。でも、いくらMPを回復させても、ザオラルなんていう高度な呪文を使い続ければ、身体も精神も消耗する。エイトの顔は土気色になっている。
「もうやめて、エイト・・・」
ククールの身体に手をかざしザオラルを唱えようとするエイトの腕を、おさえて止めた。
「そう、でしょう? ククール?」
自分のために無茶してエイトが倒れたりしたら、嬉しくないよね。あなたがそういう人だってこと、私、ちゃんとわかってるよ。
でも、ククールは私のこと、わかってくれなかったね。私だって嬉しくない。こんなふうに守ってもらったって嬉しくないのに!
「ククール・・・」
血が乾いてこびりついている頬にふれる。さっきはあんなに温かかったのに、冷たく固くなってしまった頬。全ての表情を失って、もう二度とは動かない。
「ククール!」
どんなに呼んでも、もうククールは私を見てくれない。
私の呼ぶ声に応えてはくれない。
私の名前も呼んではくれない。
どうしてこんなことになっちゃったの? 私のことなんて放っておけば良かったのに! 私が死んだら生き返らせてくれれば良かったじゃない。蘇生呪文覚えたって言ってた人が死んじゃってどうするのよ!
『ザオリク』
言葉が唐突に、私の中を電流のように駆け抜けた。
・・・ザオリク? 以前ククールが話してくれた。初めのうちは耳鳴りと雑音だったと。呪文の集中の妨げになっていた蘇生呪文。
私の中にもそれが宿っているの?
「・・・っリ、ク・・・」
言葉が喉につかえる。どうしても声にできない。
どうして? 蘇生呪文なんてものがあるとするなら、必要なのは今なのに。こんなふうに使えない呪文なら、どうして存在したりするの?
お願い、誰か教えて! どうすればいいの? どうすれば助けられるの?
「ククールっ・・・!」
私を置いて行かないで! 戻ってきてよ!
『ゼシカがキスの一つもしてくれれば問題解決さ』
つい数時間前の言葉が不意に頭の中に蘇る。でも軽口の思い出じゃない。何かを私に伝えようとしてる。
ククールの顔を見ると、閉じられている唇の奥で何かが光っているように見える。そして、私の喉の奥から突き上げてくる、何か。
『美貌の騎士は、美しいレディのキスで永い眠りから覚めましたってな』
おとぎ話でもかまわない。今なら、どんなことでも出来る。
私は何かに引き寄せられるように、ククールの唇に自分の唇を重ねた。
何かが私に流れ込んでくる。今まで感じたことのない程の強いエネルギー。迸るような魔法の力。ほどけていた二本の糸が一つに紡がれ、生み出される言葉。それは奇跡の呪文。
「ザオリク」
その言葉を口にすると同時に、私の意識は遠のいた。
何もない空間。でも闇の中ではない。ずっと遠くまで見渡せる。寒さも感じない。痛みもない。でも私はひとりぼっち。何て空虚な世界。
どうして私はこんなところにいるの? ここは死の世界? それとも本当は私、ずっと夢を見続けていただけ? いつから? どこから? もしかしたら、自分が生まれて生きていたことすら、全てが夢だったの?
「ゼシカ」
・・・背後から、耳に心地よく響く声。ずっとずっと、もう一度聞きたいと願い続けてきた声。振り向いたその先にいた人は・・・。
「サーベルト兄さん・・・」
「そうだよ、ゼシカ」
明るい薄茶色の髪。まっすぐ伸びた背筋。強い意志を宿した瞳。間違いない、本当にサーベルト兄さんだ。
「兄さん!」
私は思わず兄さんにすがりついた。
「兄さん! 兄さん、お願い助けて・・・」
声と一緒に涙が溢れた。心がどうしようもなく痛んで引き裂かれそうだった。
「ククールを死なせないで。お願いだから、ククールを連れていってしまわないで!」
「ゼシカ、大丈夫。彼はもう戻った。彼には強い護りが付いている。心配しなくていい」
兄さんが優しく抱き締めてくれる。・・・強い、護り?
「私たち賢者の封印を継ぐ者は、こうなる時が来るのを知っていた。だからそれぞれ、自分が最も信頼できる人間に『力』だけを託してきたのだ。彼は『神の子』と呼ばれた奇跡の予言者の末裔より、その力の全てを授けられている。こんなことで死んでしまったりはしないよ」
・・・それは、オディロ院長?
「そして私の持てるものの全ては、もちろんゼシカ、お前に託してある。今はまだ完全に目覚めてはいないが、何も恐れずに自分の道を進むだけの力を、お前は持っているんだ」
「兄さん・・・」
兄さんの指が、私の頬を流れる涙を拭ってくれる。
「今度こそお別れだ、ゼシカ。もう大丈夫だね? お前にはもう私は必要ない。お前を守ってくれる人は、もうちゃんとそばにいるのだから」
兄さんの姿がぼやけてくる。いいえ、私の姿が薄くなっているんだ。
「いつでもお前の幸せを願っているよ」
待って、まだ話したいことがいっぱいあるのに・・・。
「にい、さん・・・」
見慣れた天井が目に映る。ここはベルガラックのホテル。
今のは夢? でも頬には、涙を拭ってくれる指の感触。
「おいおい、この期に及んでまだ『兄さん』かよ。今日ぐらいオレの名前を呼んでくれても、バチはあたらねーんじゃねぇの?」
・・・これは夢? でも、この声。この話し方。ちょっとイタズラっぽく笑う顔。月の光のような銀の髪と、澄んだ湖のような静かな蒼い瞳。
「ククール・・・」
私はゆっくりと身体を起こす。少し目眩がした。
「なんてな。冗談だよ。ゼシカが何度もオレを読んでくれるのが聞こえてた。だからオレは、こうして戻ってこられたんだ」
「ククール!」
気持ちが抑えられなくなって、私はククールに抱き着いた。
「ゼシカ、ちょっ、待てっ、って・・・」
ククールが慌てふためいた声を上げ、次の瞬間にはバランスを崩し、二人で床に引っ繰り返ってしまった。
「ああ、ちくしょう、みっともねえ」
ククールがくやしそうに呟くけど、私は何が起きたのか、よくわからない。
「オレも結構弱ってるみたいでさ、実は立ってるのがやっとだったんだよ。一度死んだせいか、ザオリクで消耗したせいなのかは、わかんねえけど。でもレディ一人抱きとめられないのは情けねえな」
「ごめんね、知らなかったから。痛かったでしょう?」
・・・ちょっと待って。
「今、ザオリクって・・・」
・・・私も言えた。
「ああ、言えるようになった。多分あれは、一回こっきりで使い切っちまう呪文だったんだな。自分の中から消えてしまったのがわかる」
うん、私の中にももうない。あれはたった一度だけの奇跡。それも、二人でやっと一回だけの魔法だったんだ。
「すごい音がしたけど、どうしたでげすか?」
ヤンガスが扉を開けて入ってきた。
「・・・お邪魔したでがす」
だけど、すぐに扉を閉めて出ていってしまう。
・・・もしかして、この体勢、誤解された?
「ちが〜う! 待って、これは誤解よ。そうじゃなくて!」
「いいじゃねえかよ、別に。減るもんじゃなし」
ククールは全然動じてない。
「減るわよ、何かは!」
まして、これだと私の方が襲ってるみたいじゃないの!
「何かって、何だよ」
おかしそうに笑い出すククール。もう二度と聞けないと思ってた声。そう思ったら、また急に涙が出てきてしまった。ククールの指が再びそれを拭ってくれる。
「・・・さっきもずっと『兄さん』って言いながら泣いてたけど、悲しい夢でも見てたのか?」
・・・兄さん? そう、夢の中で私、兄さんと会った。そして大切な話・・・。
「どうしてくれるのよ! せっかく兄さんの夢見てたのに、忘れちゃったじゃないの!」
「おい! それ、オレのせいかよ!?」
「そうよ!」
・・・思わず顔を見合わせて笑ってしまう。でも不意に頭をよぎった不安。自らの居城を取り込んで、完全に復活してしまったラプソーン。まだ終わらない戦い。
「大丈夫だ、ゼシカ」
全てを察したようなククールの言葉。
「はっきりわかる。次で最後だ。ラプソーンはもう逃がさない。心配しなくていいぜ」
「・・・うん」
ククールがそう言うなら間違いない。だっていつもそう。まるで未来が見えるように、私たちに助言してくれていた。次で最後・・・。そして勝つのは私たちだと。
<終>
キテター(゚∀゚)
新年早々乙です!
マジで半泣きしますた…・゚・(ノД`)・゚・
乙です!今年も期待していいですね?
いい話や・・・。
でもこの勢いだと後1,2回で完結か・・・。
とりあえずがんばってください。
毎度のことながら超絶GJ…!!
話に引き込まれる。
なんとなくやっていたゲームの一場面が、一気に重みを増す。
くぁー、ほんとGJです!!
ラストが近づいてきているけれど、ドキドキしながら待ってます。
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
うるうるしてしまったよ、GJ!GJ!
続きが楽しみな反面、終わるのが寂しくもあります
800 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/06(金) 20:12:47 ID:xmzZzfyB0
ww
新年早々、お付き合いいただきまして、ありがとうございます。
そして妄想が止まらず、また書いてきてしまいました。
続きといえば続きですが、本編じゃなく、ちょっとアレな話です。
シリアスばかりだと疲れるので、ガス抜きのようなものと受けとっていただけると幸いです。
今年もよろしくお願いします。
暗黒魔城都市での戦いで一度死んでしまったククールさんは、ゼシカ嬢との共同作業のザオリクのおかげで、無事に生き返ることが出来ました。
だけどそのダメージは大きく、せっかくゼシカ嬢が抱き着いてきてくれたのに、それを支え切れず、彼女共々引っ繰り返ってしまいました。
死者蘇生呪文ザオリクを使ったゼシカ嬢も消耗が激しく、中々起き上がれません。
隣の部屋にはザオラルの使い過ぎでダウンしたエイト君と、一人だけ元気なヤンガス氏がいるのですが、彼らはククールさんとゼシカ嬢の二人きりの時間の邪魔をするほどの野暮ではありませんでした。
助けは期待できないので、二人は何とか自力で立ち上がって、ソファにたどり着きます。
「こりゃあ、すぐにラプソーンをぶちのめすってわけにはいかねえな」
ククールさんはいつになく、元気のない声で呟きました。
「・・・トロデ王が言うにはオレは完全に死んでたらしいな。・・・だけど、どうしてだかゼシカが何度も呼ぶ声だけは聞こえてきた。そうしたら『死にたくない』と思った。本当に心の底から・・・。そしてオレは戻ってこられた」
そう話す表情は、何か苦いものでも飲んだようでした。
「もしも他の時に、同じだけの真剣さがあったら・・・。誰か一人ぐらいは助けられてたかもしれないのに」
ククールさんは、一度限りの死者蘇生呪文を、自分のために使ってしまったことに引け目を感じてしまっているようです。
普段は軽口ばかり叩いていても、やる時は真面目にやってるククールさんだということは誰よりも理解しているゼシカ嬢。その姿が痛々しくて胸が締め付けられるようでした。
ククールさんの首に腕を回し、ギュッと抱き締めます。
「何言ってるのよ。助けてくれたじゃない、私のこと」
言った後で、気休めにすらなってないんじゃないかと不安になるゼシカ嬢でしたが、ククールさんにとって、それは一番嬉しい言葉でした。少し心が軽くなったようです。
「・・・そっか。それなら上出来かな」
ゼシカ嬢の身体に腕を回し、そっと抱き返しました。
静かな時間が流れます。
しかし、それが不運の始まりだったのです。
ククールさんが、何やら落ちつかなげな様子を見せ始めました。
「ゼシカ、そろそろ横になった方がいいぜ? 風邪ひくぞ」
ゼシカ嬢もククールさんも、薄手の部屋着姿です。時刻は真夜中。その状況でゼシカ嬢のようなダイナマイトバディの美女に密着されていたら、ククールさんのように健全な男子は不健全な気分になるのも無理ありません。
でもゼシカ嬢、全くわかってません。
「眠くないし、寒くないわよ」
「いや、そういう問題じゃなくてだな・・・」
ゼシカ嬢に遠回しに物を言っても時間の無駄だと判断したククールさん。はっきり言うことにしました。
「これ以上は理性を保つ自信がない」
怒られるのは覚悟の上でした。しかしゼシカ嬢、ククールさんが何だかんだ言っても紳士だと信じていました。後にそれは、かいかぶりだと知ることになるのですが・・・。
「・・・もうちょっと」
ククールさんの首に回す腕に更に力を込めます。
しっかりしているようで、ゼシカ嬢はお嬢様育ちの兄さんっ子。根底の部分が甘えっこなのです。
それにこうして触れ合っていないと、今この瞬間が夢ではないということに自信が持てず、不安だったのです。
「襲うぞ、コラ」
ククールさんが脅しても、平気な顔してます。
「でもククール、体、動かないのよね?」
見事な小悪魔ぶりです。
ちょっと頭にきたククールさん、ゼシカ嬢を抱く腕に力を込めます。
「そうか、動けるならいいってことだな」
その声の響きにゼシカ嬢、身の危険を感じました。慌てて離れようとしますが、ビクともしません。確かにククールさんも弱っていますが、自分も負けずに弱っていることを計算に入れていなかったのです。
「腕はそれなりに動くって気づいてたか? アツ〜いキスで目を覚まさせてくれた礼だ。今夜は寝かさないからな」
「・・・っ。何で、そのことっ!」
ククールさんが全くキスの件に触れないので、知られていないと思っていたゼシカ嬢。慌てふためきます。
「トロデ王が見てたんだぜ? あのおっさんがそれを話さずにいられると思うか?」
ゼシカ嬢、その話をするトロデ王の嬉しそうな顔が目に浮かぶようでした。
「男を甘く見るなって、今まで何度も忠告してきたよな? どうやらお仕置きが必要みたいだな。・・・覚悟しろよ」
耳にかかる声と息に、ゼシカ嬢、身を竦ませました。
「ねえ、もうやめて。私が悪かったから・・・」
目に涙を浮かべ、苦しい息の下からゼシカ嬢は懇願します。しかしククールさん、全く聞き入れるつもりはありません。
「お願い、許してっ・・・。これ以上は頭がおかしくなっちゃう」
ゼシカ嬢、身を捩ってククールさんの腕から逃れようとしますが、身体に力が入りません。ククールさんの攻撃が再開されます。
「『ドニで遊ぶのはほどほどに』『海竜の舌が赤い理由』」
「もうやめてーっ! いたたた、おなか痛い。明日絶対、腹筋筋肉痛だわ」
ゼシカ嬢、目に涙を浮かべて大爆笑です。
もちろん、オディロ院長作の駄洒落がおかしいんじゃありません。
この頭がおかしくなりそうな程くだらない駄洒落を耳元で、まるで愛の言葉でも囁くように甘く低い声で並べ立てるククールさんがおかしくて、ツボにはまってしまったのです。
「『毒針を今度配ります』『バンダナをした彼の出番だな』・・・こんなつまらない駄洒落でよくそんなに笑えるな。オディロ院長が生きてたなら、喜んだだろうに」
そういうククールさん。オディロ院長が存命の頃、つまらない駄洒落でも笑ってあげようとしてはいたのですが、冷たい笑みにならないようにするので精一杯だったそうです。
「ち、違うわ。あんまりくだらなすぎて・・・。それにそれを真顔で言うククールが・・・ああ、もうダメ」
笑いすぎで苦しいゼシカ嬢ですが、これが夢じゃないことは確信できて気持ちは安らかでした。
こんなくだらない駄洒落。それを真顔で囁くククールさん。たとえ夢の中だろうと、ゼシカ嬢には到底考えつくことではないからです。紛れもない現実だとしか思えません。
天国からその様子を見ていたサーベルト兄さんとオディロ院長は深いため息を吐きます。
「ククールめ。私の駄洒落百連発をお仕置きと称するとは何事だ。・・・私の駄洒落は、そんなにくだらないかのう?」
「ゼシカときたら、せっかく夢の中まで訪ねていって大事なことを教えてやったのに、すっかり忘れて『ククール、ククール』って。まあ兄妹なんて、結局こんなものなのかも」
・・・えーっと。まあ、あれです。とりあえず今は、生きてる二人が楽しそうならそれでいいということで。・・・かなり強引だけど。
メデタシメデタシ。
萌え尽きたぜ…真っ白にな
メシデタメシデタ。
……www
オチが最高です。そう来ましたか…上手い。
最後のサーベルト兄さんが哀愁漂っててナイス&チョトカワイソスw
…でもちょっとそっち系の展開を期待しちまったじゃねぇかコノヤロw
808 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/07(土) 13:00:34 ID:xJuK3hSl0
萌え萌え〜www
>>783 「呼ぶ声」
ククール自身がザオリクの恩恵を受けることになるとは想像してなかったー。
しかもゼシカとのキス付きなんて、嬉しい予想外れです。
それとオディロ院長の臨終の言葉も、ずっと疑問に思ってたんです。
で得た結論が、Jbyさんと同じように、あれも神の意思だったってことで。
なんか一緒の考えになって嬉しいなあ。あれ?もしかしてみんなそう思ってる?
ところで、ククの賢者設定。ククはオディロ院長の孫なのでしょうか?
>>802 「お仕置き」
かわいい二人だー。エロエロトークになってると思いきや、
駄洒落で場を収めるとは。ククール、よく耐えたねえ。
でも、基本的に二人はぴったりとくっついているわけで。ラブラブだ。
連載が終わってしまっても、こういうコネタでJbyさんのお話読みたいですよ。
>>802-804 悶絶しますたハァハァ(´Д`;)ハァハァハァハァ(´Д`;)ハァハァ
お互い大変ですねえ、といった感じの院長と兄さんもいい感じです。
>809
孫じゃなくて賢者の力をククに譲ったということだお
813 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/08(日) 10:12:40 ID:ZmlnPSEG0
メシデタメシデタ
ゼシカ並みにツボに来たwww
◆JbyYzEg8Isさんに次期オディロの称号を与えます
2ちゃんにSS書きは多くいるだろうけど、私ほど幸せな書き手はいない・・・(つД`)
みんな、大スキだーっ!!!
さて、引っ張ったわりに大した設定じゃない、ククール賢者。
ただ単に『けんじゃのローブ』をゼシカが装備できないのにククールが出来るので、こじつけました。
サーベルトがドルにあっさり殺(自主規制) な理由も欲しいと思ってたので、オディロもサーベルトも、チェルスの先祖がハワードの先祖に力を譲ったのと同じことをしたと、これまたこじつけました。
つまり、賢者の末裔は殺される時は只の人になってて、抵抗できなくても仕方なかった、と。
私の書く話の90%はこじつけで出来てます。
それで良ければ、もう少しの間、お付き合いください。
816 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/09(月) 14:13:32 ID:AuUG3m3j0
メシデタ?
817 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/11(水) 00:49:36 ID:COFKIkeA0
818 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/01/12(木) 10:29:22 ID:gSxqcen60
age
随分、時間を無駄にしてしまったわ。
ラプソーンが自らの城を取り込み、完全な復活を果たしてしまったっていうのに、ヤンガス以外の全員が、まともに歩くことさえ出来ないダメージを負ってしまい、戦える状態に戻るまで一週間も費やしてしまった。
レティスに指示された七つのオーブを集め終わり、これからレティシアに向かおうという時、エイトはミーティア姫と話をすることを望んだ。
私は別れの挨拶のようなことは好きじゃないんだけど、これは違うとわかる。
エイトは必ず勝つためにそうするんだって。エイトが戦う理由は、世界を救うためだけじゃなく、ミーティア姫を元の姿に戻してあげるため。その気持ちをもう一度力に変えるために、彼女に会いたいんだって。
でも最近、移動する時は空を飛ぶか、ルーラを使うかしてたもんだから、ミーティア姫は人の姿に戻れるほどの量の水を飲めなかった。
それでどうしてるかっていうと、エイトとミーティア姫は一生懸命、泉の周りを走って喉を乾かそうとしている。
ダイエットを兼ねたヤンガスもそれに付き合ってるんだけど、私は辞退させてもらった。
もちろん魔物が襲ってくるようなことがあったらすぐに加勢するつもりだけど、今のところそういう様子はない。
私は泉から少し離れた場所に座って、空を見上げた。
暗黒神、ラプソーンが待つ空。
追いかけて、追い詰めて、今度こそと何度も思ったのに、あいつはそれをあざ笑うかのように、次々と犠牲を増やしていった。
もう許さない。もう次はない。ラプソーンは必ず、この私の手で倒してみせる。
不意に視界が遮られた。
「そちらの美しいお嬢さん。私めに貴女のそばに座る栄誉をいただけますか?」
ククールがすました顔して、私の顔を覗き込んでいた。折角ひとが気合入れてたっていうのに、拍子抜けしちゃうじゃないの。
「勝手にどうぞ」
今は彼の軽口に付き合う気分じゃない。
「それでは、お言葉に甘えて」
そう言ったククールは、わざわざ私の真後ろに回り込んで腰をおろした。
何してるんだろうと思うと同時にククールは、いきなり私に全体重を預けてきた。
完全に油断していた私は、手の指が足のつま先についてしまうほどの、完全な屈伸を強いられる。
「いたたたたたっ! いたっ、おもっ、ちょっと重い! 痛いってば!」
パッと見、細く感じるけど、鍛えてる上に背も高いから結構重いのよ、この男。
「へえ、途中で胸がつかえるかと思ってたのに、ゼシカは身体やわらかいんだな」
妙に感心したような声をあげられた。
「このっ・・・ドアホーッ!!!」
渾身の力を込めて押し返す。何とか元の体勢まで戻すことは出来た。
「おおーっ。すごいすごい」
拍手までされてしまった。何なのよ、このバカ。
付き合ってられないとは思うけど、ククールの力加減は絶妙で、立ち上がって逃げるまでは出来ない。
「あんまり上ばっかり見てると疲れるぜ? 足元が疎かにもなるしな」
・・・何よ、その見透かしたような言い方。
いつもそうよ。自分は何もかも全部わかってるっていうような顔をして、私のことは子供扱いする。
この一週間で、やっぱりククールは私には理解しきれない人なんだっていうことがわかった。
立つのもやっとっていう時は、辛い気持ちやオディロ院長との思い出なんかを、本当にちょっとだけなんだけど話してくれたりして、少し距離が縮まったような気がしてたのよ。
だけど少し回復すると、ククールはマルチェロから渡された指輪を見つめて考え事することが多くなって。そして私はそれを、お兄さんを心配してるんだと受け止めてた。
マルチェロときたら死にそうなケガしてたのに、治療もしないでゴルドから歩き去ってしまったから。あの姿を見送る時も、本当に回復魔法が使えない自分が歯痒かったわ。
だけど、それは私の思い込みだった。
普通に歩けるようになるとすぐ、ククールは一人でサヴェッラに行くと言い出した。
私もエイトも、やっぱり歩けるようになったばかりの時で、どうせ戦えないんだし、ルーラを使うからすぐに戻るって。
もちろん私たち、止めたわよ。何をするつもりなのかわからないけど、行くなら全員で行こうって。
だけど、同行を許されたのはエイトだけ。私とヤンガスは置いてけぼり。
キメラのつばさを使って後を追うことも考えたけど、絶対についてくるなってクギを刺されて、出来なかった。本気で怒らせると、ククールは結構怖いから。
その夜、二人が戻ってきた時もククールは何も話そうとはしてくれなくて、何があったのかを教えてくれたのは結局エイトの方だった。
ククールはサヴェッラ大聖堂のお偉方のところに行って、『行方不明の新法皇様から即位式の直前に、煉獄島の囚人たちを新法皇誕生の恩赦による減刑で出獄させるよう、命令を受けていた』なんて涼しい顔して大嘘ついて。
マルチェロからもらった騎士団長の指輪を証拠の品だって見せて、ニノ大司教たちを助け出す手筈を整えてしまったんだって。
それと崩壊してしまったゴルドへの救援も一緒に要請したらしい。
もちろん、嘘ついたのが悪いなんて言うつもりはないわよ。
煉獄島みたいなひどい所、助けられるなら一日だって早く出してあげた方がいいと思う。崩壊してしまったゴルドにも、回復魔法の専門家の聖職者たちを送り込むのは何よりの助けになると思う。
でも、どうして一人でやろうとするの? 聞くまでもなく、理由はわかってるわよ。もし嘘がバレた時でも、自分一人が捕まれば済むなんて思ってるんだわ。だけどそういうところが本当に腹立つのよ。
・・・でも多分私が一番ショックを受けてるのは、マルチェロに貰った指輪を見ながらククールが考えていたことが、マルチェロの行方じゃなくて、その使い道だったっていうことの方なのかも。
ククールがマルチェロのことを全く心配してないとは思わないわ。でも私だったらきっと、あんな形でお兄さんに渡されたものを、何かに使おうだなんて思いつきもしない。
そして、いくら人助けのためだからってそれを使って公の場でサラッと嘘ついて、その帰りにベルガラックのカジノに寄るなんて絶対無理よ。
そばで見ていたエイトにも教えなかったらしいんだけど、多分とんでもないイカサマをして、わずか数時間の間にコインを40万枚も稼ぎ、大量の剣やら鎧やらをお土産にすました顔して帰ってきた。
私にもグリンガムのムチなんていう最高級の武器をプレゼントしてくれたもんだから、いろいろ言ってやりたいことがあったのに、何も言えなくなってしまった。
本当にわからない。繊細で傷つきやすい人なのかとも思うのに、変なところで人並み外れて図太いんだもの。
そういうところ、半分くらい分けてほしいもんだわ。
「最後の戦いの前に、ゼシカに話しておきたいことがあったんだ」
自分の考えにふけっていた私は、背中越しにつたわるククールの声の響きに、ちょっとドキッとした。
「やめてよ。戦いの前にどうとかって、私、そういうの好きじゃないのよ。話なら帰ってきてから聞くわ」
「今じゃないと、意味ないんだ」
いつになく真剣な声に、それ以上は拒絶できない。
「・・・わかったわ、どうぞ」
「オレがこのパーティーに加わる時、ゼシカに言った言葉、覚えてるか?」
何よ、何言うつもり?」
「・・・覚えてるわよ。私だけを守る騎士になるとか何とかでしょう?」
「そう、それ。あれ、無かったことにしてくれ」
頭をウォーハンマーで殴られたような衝撃がきた。
「あの頃のオレは何も考えてなかった。ひと一人守るってことがどれだけ難しいことか、わかってなかったから簡単にそういうことを口にできた。本当にバカだったと思う」
ひどい・・・。
ククールのバカバカバカ! 何よ。どうしてそういうことを、今言うの?
守ってくれてたじゃない、ずっと。私がどれだけ支えられてきたか、わからないの?
これから決戦だっていうのに、いきなりそんなこと言って突き放すなんて、ひどすぎる。一気にテンション下がっちゃったじゃないの。
・・・本当に、私ずっと頼りっぱなしだったんだ。ククールのこんな一言でショック受けるほど。
もしかしてククールは、もういやになったのかしら。この間だって私のために危うく命を落とすところだったんだし。
そう考えると、これ以上甘えちゃいけないんだと思う。
そうよ、初めは私一人で兄さんの仇を討つつもりだったじゃない。
私だけを守るなんていうククールの言葉も、言われた時は全く信用してなかった。
それなのにククールは、私を何度も助けてくれて、守ってくれた。
これ以上望むのは間違ってる。次が最後の、それも一番大きな戦いなんだもの。こんなことで落ち込んでるようじゃあ、暗黒神なんてものに勝てるわけないわ。
「それにゼシカつえーしな。ドラゴンキラーやもろはのつるぎなんて片手で振り回してるのを見た時には、うかうかしてたら剣でも負けると思ったもんだ」
でも何か、こういう言われ方されるのはムカつく。
確かに身体が回復してからというもの、今までは重くて上手く扱えなかった剣が嘘のように軽く感じるようになった。
力が特別強くなったわけではないんだけど、私にも少しは魔法剣士だったご先祖様のチカラが受け継がれてたっていうことなのかしら。
でも、だからって剣でククールより強くなれるなんて思ってないわよ。ククールだって、きっと本気では思ってない。
こういう時でも、私をからかうのは忘れないのね。
「それにゼシカだけ守ったって、そんなものに意味なんてないんだよな。大事なものが何もない世界に一人だけ取り残されても寂しいだけだ。ケチなこと言わずに、守れるものは全部守る」
ちょっと泣きそうだったんだけど、続くククールの言葉に、そんな気分は吹き飛んだ。
「オレ一人じゃキツいけど、ゼシカと一緒だったらこの世界全部だって守れる気がする。・・・頼りにしてるんだぜ、これでも。ラプソーンとの戦いでも、よろしくな」
・・・どうしよう、目眩がする。
「ゼシカ?」
私が返事をしないもんだから、ククールがこっちの様子を伺おうとしてる。
ダメ! こっち見ちゃダメ。
「・・・まかせといて」
それだけ言うので精一杯だった。でも、ククールの動きは止まったので一安心。
見られたくないの。私きっと今、すごく変な顔してるから。嬉しすぎて、頭がおかしくなりそうなんだもの。
ずっと聞きたかったの、その言葉。『頼りにしてる』って、そう言ってほしかった。嘘や慰めじゃないよね? ククール、そんなに甘くないものね。
言葉は何も思い浮かばなくて、でも何かは伝えたくて、私もククールの背に体重をかけた。広くて温かくて、力強い背中。命も何もかも、全て預けられる。
うん、私も頼りにしてる。あなたを信じてる。一緒に守ろうね、私たちがこれから生きていく世界を。
さあ、首を洗って待ってなさいよ、ラプソーン。今の私には怖いものなんて、もう何もないんだから!
本当にゼシカは自分の感情に素直だな。
気負ったり、怒ったり、落ち込んだり、張り切ったり。全部背中越しに伝わってくる。
この素直さは、人生のどの辺りでなのか覚えてないけど、オレが置き忘れてきてしまったものだ。今さら取り戻したいとは思わないけど、羨ましいと思う気持ちは少しある。
だけど、やっぱりゼシカは変わってる。
普通の女の子だったら、『君を守る騎士になる』で喜んで『強いから頼りにしてる』なんて言ったら怒りそうなもんなのに、全く逆だ。
機嫌が悪くなるとスパンコールドレスは突っぱねるくせに、どんなに怒っててもグリンガムのムチは受け取る。
まあ、スパンコールドレスはエイトの錬金用にくれてやることになり、今はプリンセスローブになって着てもらえてるからいいけど。
・・・修道院にいた頃はこうやって誰かに背中を預けられる日がくるなんて、思ってもみなかった。ましてその相手が、か弱いはずの女の子だなんてな。
思えばオレの壁によりかかるクセ。あれは誰かに背後に立たれるのが嫌だっていう、自己防衛の気持ちがあったのかもしれない。
誰も本当には信じようとしないで、感情を表に表すことは、弱みを見せることと同じだと思い込んで、自分で自分を檻の中に閉じ込めてた。
でも、それはもう過去の話だ。
「悪かったよ。サヴェッラへ行くのに、置いてけぼりくらわして。だけど仮にも聖堂騎士団員として行くのに、女連れってのはマズいと思ったんだ。ヤンガスみたいな悪人ヅラの強面と一緒なのもな」
その一件以来、ゼシカはずっと機嫌が悪かった。でも文句の一つも言ってくれれば、こっちだって弁解できるのに、何も言わないもんだから、ついそのままになってた。ついでにスッキリさせとくか。
「・・・それはいいのよ。人助けのために必要なことだったんだから。でも今度から、ああいう時は目的を教えてよ。そうしてくれれば、こっちだってよけいな心配しなくて済むんだから。約束して」
オレはバカだ。
すれば良かったんだ、約束。滅多にあることじゃないんだし、口先だけで簡単に。でもしなかった。
オレは基本的に嘘つきだけど、本音でぶつかってくるゼシカに嘘はつきたくなかった。
「それは約束できない。だいたいあの件は、基本的にゼシカには関係なかったことだしな」
結果は予想通りだ。ゼシカは過去最高レベルにスネちまった。
自分が間違ってるとは思わない。
他のことならともかく、煉獄島のことも、ゴルドの崩壊も、オレの兄貴がやらかしてくれたことだ。
そして、その発端はオレへの憎しみだ。だからオレには責任がある。
特に煉獄島に送られた囚人たちは、暗黒神とは無関係のところで起こってることだ。何とかしたいと思うのは、オレの個人的感情でしかない。
だから万一、嘘がバレて罰せられることになったとしても、それはオレ一人でいい。他のヤツまで巻き込むことはない。
知らずにいてくれれば、それで良かったんだ。知ってて、知らないフリをするなんて芸当、初めから期待してないからな。
やっぱり、エイトも置いてけば良かったんだ。あのヤロウ、案外口の軽いところがありやがるから。
でも一人では行かせないっていう、心配してくれる仲間の気持ちはありがたいと思ったから、つい情にほだされたのが間違いだった。
・・・中途半端に考えが甘くなってたのが悪かった。
以前のオレなら、皆が起き出す前に黙ってサヴェッラまで行って、一人でサッサと用件済まして、帰ってから問い詰められても適当にごまかして終わらせてたはずだ。
だけど、黙っていなくなって心配させるのは悪いなんて思ったりするから、面倒なことになる。
マルチェロの指輪を利用して、サヴェッラで一芝居打ったことに関しても、オレは何もおかしなことしたとは思ってない。
でもゼシカは帰ってきたオレに、心の底から意外そうに訊いてきた。
『指輪を見つめて考えてたのって、このことだったの?』
ゼシカが一番ひっかかったのは、どうやらそのことらしい。そしてこう続けた。
『私、ククールはマルチェロの心配してるんだと思ってた』
ああ、全く心配してないってことはないさ。でもあいつはいい年した一人前の男で、回復呪文だって使えるんだ。少なくとも生きてはいるだろうから、今は気持ちを切り替えて、自分にできることをしようと考えただけだ。
そのために、あいつから『奪った』んじゃなく、初めて『貰った』物を少しでもまともなことに使って、ちょっとでも罪滅ぼしになってくれればいいって思うことが、そんなにおかしいか?
それなのに、あんな別世界のものでも見るような目で見られると、やっぱり結構傷つくんだぞ。根っからの正直者だから仕方ないとは思うけど。
・・・それとも、やっぱりオレはおかしいんだろうか?
姫様と心ゆくまで話したエイトは、今度は呑気に世界一周を始めた。
パルミドやゲルダの家、寂れたままのトロデーンにリーザス村。それにご丁寧にマイエラ修道院にまで寄ってくれた。
こんなふうに世界を回ったって、何もいいことなんてない。
結構しんどい思いして、命懸けで戦ってるっていうのに、チヤホヤしてもらえるわけでもなく、知名度は限りなくゼロに近い。
パルミドは相変わらず貧乏臭いし、ゲルダとヤンガスの仲は進展しないし、トロデーンは悲惨な光景だし、ゼシカのお袋さんには意味もなく睨まれるし、修道院では自分が品行方正だったと錯覚おこしちまう様な乱痴気騒ぎが繰り広げられてる。
呑気にしてる連中にイラついて意地の悪い気持ちになったりもするし、サッサと空に行ってラプソーンなんて倒しちまいたいのに、エイトの奴が相変わらずの寄り道好きと錬金マニアぶりを発揮してくれるもんだから、そうもいかない。
きりがないから、そろそろ一発殴って、引きずってでもレティスのところへ行くとするか。
『四人全員が祈れた時、賢者の魂はひとつ・・・またひとつとオーブに宿りゆき救いの手を差し伸べるでしょう』
レティスがそう言うのを聞いた時、オレの人生はほんとに皮肉で構成されてると思ったね。
七賢者の命を守ってくれなかった神様に腹立てて、もう二度と祈らないって思った矢先に、七回も祈れだ? 何の嫌がらせだよ。
『暗黒神のもとへ急ぎましょう。すぐに行けますか?』
しかもレティス、気ィはえーし。
盾や兜なんて、四六時中身につけてるわけじゃない。少し時間をもらって装備を整え、エルフの飲み薬やまんげつそうなんかの道具も確認する。
何げなくゼシカの方を見ると、杖を手に深刻な顔をしていた。
鳥だから仕方ないのかもしれないけど、レティスもデリカシーが無い。
ゼシカにとってこの杖は、暗黒神に乗っ取られた時のことを思い出させる最悪のものだっていうのに、そんなものに向かって祈れっていうのは、ずいぶん酷な話だ。
「ゼシカ、大丈夫か?」
今はオレに心配されても嬉しくないだろうとは思うけど、つい訊いちまった。
「え? 何? ごめん、ちょっと考え事してたから、聞いてなかった」
「・・・いや、いい。何でもない」
心配したところで、他の手段を思いつくわけじゃないんだ。これはオレの自己満足でしかない。
「ねえ、この杖でラプソーンを殴っちゃダメかしら?」
「・・・は?」
あまりにも突拍子もないことを言われて、オレはマヌケな声をあげる。
「ほら、あいつって、自分を封じた岩を女神像に変えたご先祖様への当てつけで、私の身体を乗っ取ろうとしたじゃない?
そういうイヤミなことする奴には、こっちもそのぐらいのイヤミで返してもいいんじゃないかと思って。この杖で殴られたら、あいつきっと凄く悔しがるわよ」
「・・・いや、ダメだろ、それ。宿ってる七賢者が気の毒だ」
「あ、そっか・・・じゃあ諦めるしかないわね、残念」
・・・心配して損した。
オレだったらこんな杖、触るのもイヤだと思うだろうに、本当にゼシカは逞しい。そういうところ、半分とまでは言わない。1/10でいいから分けてほしいもんだぜ。
「ねえ、ククール。マルチェロから貰った指輪は?」
また唐突もないことを言われる。
「・・・持ってるよ」
「持ってるのはわかってるわよ。ちょっと出して」
何となく拒否するのも面倒で、オレは言われた通りに騎士団長の指輪を懐から取り出す。
「やっぱり、そういう無造作な持ち方してたのね。落としたりしたらどうするのよ」
「そんなヘマしねえよ。仕方ねえだろ。あいつ手ェごついし、おまけにそれ、手袋の上から嵌めてたんだぜ? ブカブカで、オレの繊細な指に嵌めたらそれこそ絶対落とす」
もうその件に関しては放っといてほしい。マルチェロの話題が出るたびに、ゼシカとの関係は気まずくなるだけだ。いい加減に懲りた。
「そう思って、これ、買っておいたの」
そう言ったゼシカの手には、細い銀の鎖。ゼシカはオレの手から指輪を取り、鎖に通してペンダントにしてくれた。
「こうして首にかけておけば、簡単には無くならないでしょう? はい、どうぞ」
差し出されたペンダントに、オレは手を伸ばさなかった。
「・・・もしかして気にいらなかった? 余計なことだっていうのは承知してるわよ。でもやっぱり口出ししないなんて私には無理。
だって気になるし、心配だし、放っておけないんだもの。この鎖も本当はプラチナとかにしたかったけど、あんまり高いのは手が出なくて・・・」
「いや、こういうのが欲しいと思ってた」
慌てたように弁解するゼシカに、ようやくかける言葉が見つけられた。
リアル遭遇キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!
「ゼシカにかけてほしいな」
「は?」
今度はゼシカがマヌケな声をあげる番だった。
「何甘えてるのよ、子供じゃあるまいし」
やっぱりな。さすがにそこまではしてくれないか。
「ほら、頭さげて」
「へ?」
「まったくククールときたら、中身がコレなのに背ばっかり高いんだから。届かないのよ、早く」
「あ、ああ」
言われた通りに頭を低くすると、ゼシカが背伸びをして、ペンダントをかけてくれた。
「・・・ありがとう」
何かいいよな、こういうの。
誰かが自分を気にかけてくれて、ささやかな優しさをくれる。世界中探したって、これ以上のものなんて、きっとどこにもない。
「何よ、しまりのない顔して」
かけてくれる言葉には優しさはないけどな。
「いや、この体勢だと、抱き締めてキスしたくなるなぁと」
覚悟はしてたけど、やっぱり殴られた。しかも顔の両側から挟むようなビンタ。痛い上に、見た目にも結構マヌケだ。
「あのねえ、そういう話は帰ってきてからにしてって言ってるでしょう? 何度も言わせないでよ」
・・・。
帰ってきてからなら・・・いいのか?
「用意できたのなら、サッサと行くわよ。今度こそ本当に終わりにするんだから」
ゼシカはもう戦闘モードに入ってる。いったいどういうつもりで、あんなふうに言ったのか、聞ける雰囲気じゃない。
・・・とにかくラプソーンを倒してからだ。
思えば杖に宿ってるのは人間だ。神にはごめんだが、かつて頑張った人間になら祈ることに抵抗なんてない。七回でも十回でも祈ってやるさ。
よし、テンション上がってきた!
『ゼシカだけを守る騎士』じゃなく、『一人の男として、ゼシカの大事なもの全てを守る』って、さっきは言いそびれちまったからな。
チャッチャとラプソーンはぶちのめして、泉での話の続きと、『そういう話』の続きをするぜ!
<終>
もう駄目だ、萌え死ぬ。助けて(;´Д`)
相変わらず乙でございます!!
背中越しトーク萌えーーーーーーーーーーー!!!!
いやあ盛りだくさんですね今回。しかし終わりが近付いてるのが寂しい。
『そういう話』もちゃんと書いてくれるんです、よね?よね?
ほんとJbyさんのはゲーム本編に忠実で、余計な脳内背景設定がなくていいなぁ。
ご自分でサイト作る気ないんですよね?どっか一箇所にまとめて読みたい。
(スレのまとめサイトさんではなく、Jbyさんだけの。)
2箇所、笑いました。
>>820 オディロ院長との思い出
これってこないだの囁きダジャレのことですかねw
>>826 レティスほんとに気ィはえーんだよ!あれあせったよ!