FFDQバトルロワイアル3rd PART5

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316名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/28(木) 04:07:19 ID:KNVb2Rq+
>>315
最後は3/3ですね。すみません。
317名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/28(木) 13:01:12 ID:ykk7ED4c
>>312のバッツの状態を変更します

バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート
      ローグの支給品(銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか))
 第一行動方針:眠って頭を整理する 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
318名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/28(木) 19:17:49 ID:TRrMBVVF
ブリザガで生み出した氷を核にドーガの魔力で作り出した氷の船。
船というよりは小型のテーブル型氷山だが、役割は十分に果たす。
長いこと封印の洞窟に隔離されていた二人はそれで大急ぎで湖を渡っていた。
湖へ飛び出してすぐ、フィンが問い掛ける。

「ねえ、ドーガさん…あの赤魔道師、ギルダー…だっけ。
 あの人はよく知っている人で、仲間だったんでしょう?」
「…ギルダー、か」
「やっぱり、戦って…やっつけないといけないんですか。
 たとえ仲間とでも、その人が他人を傷つけてしまうなら、やっぱり…」
「うむ。…ギルダーはの。かつて世界を救った光の戦士でな、
 クリスタルの力を得た者じゃ。クリスタルの力は正しく用いられねばならない。
 まさかギルダーが、こんな事があるとは思わなかったが」
「…クリスタルの力で人を殺すから、だから…?」
「…ああ、そうじゃ。だがの…、それは建前という奴じゃな。
 たとえ誰であれ、仲間であれ親友であれ道を、踏み外してしまったならば、止めねばならん。
 人を襲う様子、赤く染まった剣。ギルダーはおそらくすでに幾人か傷つけ殺めていたのだろう。
 そして、あれから、今さえも…どこかで罪を重ねつづけている、じゃろうな」

ギルダー、かつての光の戦士。
だが今は自分を見て驚愕に固まる表情ばかりが思い浮かぶ。
血に汚れたライトブリンガーを振り回す姿。何が彼を変えてしまったのか。
なんにせよ、彼を見つけ出しその真意を質さねばならぬ。
そして…おそらく否定できないのだろうが、
道を踏み外してしまったのであれば自分の手で。
時間はあったのだ、覚悟は十分にできている。
何よりもそれがこの世界への、今のドーガの解答。

他のノアの弟子たちがそれぞれ何事かを画策する中、今もドーガの心中を占めるのは一人の赤魔道師。
人に、転機に遭わなかったが故に実はすでに生命を失った一人の人物に占め続けられている。
319answers 2/5:2005/07/28(木) 19:22:40 ID:TRrMBVVF

それきり、二人とも口を閉ざし、沈黙が場を支配する。


仕方の無いこととはいえかつての仲間でさえ殺さなければならない。
生き残るために誰かが誰かを殺す、それがこの世界のパラダイム。
それはフィンの心の奥の伏流を敏感に刺激する。
マリベル、キーファ、メルビン、アルカート。既に会う事もできない人達。
彼等も誰かに殺されたのだ、一体誰に、どこで、どのように…?

省みれば自分は、何をやってきた?
他にあてもなかったし、流されるまま、なりゆきのまま
ドーガと一緒に来たけれど、誰も救えなかった。
何も知らないまま、できないままに、いつの間にかみんな死んでいた。
もし一人で行動していたら、別の道を行っていたら。
変わらなかったかもしれない。自分が死んでいたかもしれない。
それでも、もしかしたら……
選び取れなかった未来への後悔は無力感と混ざり合い、
心中一片の影となり、闇となってゆく。

まだ生きているはずの仲間たちとの再会の希望、それらがフィンの心を支えている。
でも――こんなことで救うことができるのだろうか?
また、また手の届かないところでみんな失われていってしまうのではないか?

弱い部分から際限なく湧き上がる不安、焦り、怖れ、無力感、絶望感。
この世界へのフィンの解答はまだ、無理矢理にでも希望でそれに蓋をする。
320answers 3/5:2005/07/28(木) 19:24:36 ID:8wMVOGoN
結局、話しかけるか躊躇している間に頭上の人は思いっきり自分を蹴っ飛ばして
跳んでいってしまった。痛かった。あんな脚力の人間がいるのか。
ともかく、そういうわけでやはりブオーンは隠遁に全力を挙げることに決めた。

身動き一つせず息を潜めて、来訪者をやり過ごす。
ずっと、ずっとそうやって来た。
それなりに戦える自信はある。あるけれど、積極的にやろうなんてとんでもない。
誰が死のうと関係ないし、そもそも無意味に傷ついたり死ぬなんてたくさんだ。
このままみんな全滅してくれないかな、なんて思う。
それでも最後の1人とは戦わなくちゃならないかもと考えると憂鬱だ。
それはきっととびっきりの強者だろうから。
まあ、それは…そのとき考えよう。
隠遁、潜伏、消極策。殺伐とした世界の背景に徹する、それがブオーンのこの世界への解答。

今氷の船でやって来たフードの二人組も余裕でやり過ごしてみせる。


だが、この世界での潜伏は今までと決定的に異なる点が一つあった。
湖上の島という形を選んだこと。
爽やかな湖水がすこしずつブオーンの体温を奪い続け、
それは、くしゃみという形で結実しようとしていた。
傍らを通り過ぎていく船の上から視線がこちらへ向けられている。
ここでばれるわけにはいかない。耐えろ、耐えるんだブオーン。

…無理でした。
321answers 4/5:2005/07/28(木) 19:28:55 ID:TRrMBVVF
湖を離れたラムザはアンジェロを連れ徒歩で森を南下していた。
とりあえず当面の移動目標は、地形と町の位置から見て交通の要になりそうな
森の南に広がる平原部。
多くの人が行き交う可能性が高いということは仲間を得るチャンスが多いということだ。
まあ、危険な相手に会う可能性も高いけれど。

道々考えるのは名簿にあった気になる顔。
ウィーグラフとアルガス、結局戦うしかできなかった人達。
因果だろうか、彼らも同じ参加者としてどこかにいる。
彼らを、自分は説得することができるだろうか。仲間として同じ道を歩むことができるのか。
いや、彼らとだって状況が違えば、きっと分かり合えるはずだ。
狂気の世界で、誰だって意味も無く他人を殺したくなんか無いはずだと。
でも…説得を聞き入れてくれないほどに害意のある人物がいるのならば戦うしかない。
それも仕方の無いことだと思う。
なるべく他人を殺したくないという思考の裏で、幾多の戦闘を潜り抜けた彼には覚悟がある。
剣を交えなければならない相手、状況があるということ。それに立ち向かうということへの。

いつかと同じように、ただ僕は正義を、自分の信念を貫き通す。
それがこの世界でのラムザの解答。


不意にアンジェロが足を止め、耳をそばだてる。

「?どうしたんだい、アンジェロ」
「…いえ、なんでもない。ただ、誰かの雄叫びが聞こえたような気がして」
「僕には何も聞こえなかったけど。犬の聴覚は人間の何千倍って言うしなぁ…
 ずいぶん遠くなのかな」
322answers 5/5:2005/07/28(木) 19:30:13 ID:TRrMBVVF

山に囲まれた地形に反響して響き渡るブオーンのくしゃみ。
どこの世界にくしゃみする島があるだろう。
それは隠遁作戦の破綻を意味していた。

既に船は動きを止め、老人は気迫のこもった目で、少年は不思議そうな目で
こちらをじっと見つめている。
急に襲ってくるってことは無い、無いけれども、視線が、雰囲気が痛い。
一応身動きをせず、まだ島のふりをしてみる。
…いや、これ無理、絶対無理だ。…どうしよう、どうすればいい?


ブオーンがこの空気に耐えられなくなるまで時間はかかりそうになかった。

【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:びっくり 基本行動方針:仲間を探す】
【ドーガ(軽傷) 所持品:マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:この偽島の調査 第二行動方針:フィンの仲間とギルダーを探す 
 第三行動方針:ギルダーを止める】
【現在位置:封印の洞窟前の湖上(氷の船の上)】

【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
 第一行動方針:焦燥 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖の真ん中】


【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
 第一行動方針:仲間を集める(テリー、ファリス、アグリアス、リノア優先)
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【中央部森林地帯、その中央あたり】
323名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/28(木) 19:39:40 ID:TRrMBVVF
微修正。
>>318
タイトルが抜けてしまいました。「answers 1/5」です。
>>322
ラムザの現在位置表記が定型を外れていました。
【現在位置:中央部森林地帯、その中央あたり】 ですね。

324エクスカリバー 1/2:2005/07/28(木) 23:56:36 ID:1LQIjY+u
バッツは布団の中で一人そわそわとしていた。
ああは言ったものの、頭の中がごちゃごちゃで、正直眠れるような気分じゃない。
「睡眠魔法でもかけてもらうべきだったかもしれないなあ」
そう一人ごちて、ベッドから起き上がる。
やはり、部屋にはピサロもロックもいなかった。
静かで、耳に入ってくるのは少女の寝息だけだった。
少女の顔を見て、バッツはどきっとした。
心臓を電流が突き抜けるような感覚が襲ったのだ。
「か、かわいい…」
驚くほど美しかった。レナやファリスとはこう言っては悪いが月とスッポンだ。
「もう我慢できない!」
バッツの男の本能が完全に理性を負かした神々しい瞬間だった。
バッツはエリアの布団をはがすと、服をぬがしていく。
「ひっ…」
ターニアは気づかないフリをしようとしていたのだがムリだった。悲鳴が出た。
「見たな?」
バッツは血走った目でターニアをにらむとタイオンハートでその喉をひきさいた。
ターニアは必死で悲鳴をあげようとしたが、のどが切れているので出ない。
「仕方ない、まずはお前からだ」
バッツはターニアの邪魔なパンツをずり下ろすと、天国への入り口に赤黒いエクスカリバーをズニュズニュと押し込んだ。
「なんだ、処女か。つまんね」
ターニアはバッツのエクスカリバーのあまりの大きさにまんこが裂けて死んだようだった。
あまりの血の量にバッツは我に帰る。
「あ、あああ…俺はなんてことを…」
バッツはターニアの不慮の死に泣いた。だがある重大な事に気が付く。
「人を殺してしまった…俺が?」
レナの気持ちが少しだけわかったバッツだった。
325エクスカリバー 2/2:2005/07/28(木) 23:57:07 ID:1LQIjY+u
【エリア(体力を激しく消耗) 所持品:妖精の笛、占い後の花
 第一行動方針:睡眠中】
【バッツ(左足負傷 体力を激しく消耗) 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式 ローグの支給品
 第一行動方針:眠って頭を整理する 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【現在地:ウルの村 宿屋内部】

【ターニア 死亡】
326名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/07/29(金) 00:47:04 ID:KPZPu2QM
>>324-325は無効です
327A=B+C+D 1/11:2005/07/29(金) 20:34:34 ID:goyAOHYh
一旦、僕達だけで先行して、村の様子を偵察する。
それはそれでいいけれど……
「ああ、もう……偵察なら僕一人でいいじゃんかー。重くてたまんないよ〜」
フラフラと低空飛行を続けながら、僕は呟く。
それを聞き咎めたのか、背中に跨ったカインが苛立ったように吐き捨てた。
「朝方、ロクに偵察もこなさずに帰還したのはどこのどいつだ?」
「だからアレは……」
ちゃんと理由があったのだと言い返そうとしたけれど、その途端、カインの心に殺気じみた怒りの色が混ざり始める。
僕は慌てて口を噤み、空を駆けることに集中した。

広い森を抜け、開けた野原の上空を、数分ほど駆けただろうか。
「スミス」
唐突にカインが僕の名を呼び、一角を指し示した。
ちょうどカズスがある方角。そちらから幾つかの人影が歩いて来ている。
僕が提案する前に、カインが釘を刺してきた。
「エッジやリュカの事もある。ここは接触するだけに留めるぞ」

接触するだけ=殺せない。
一瞬落胆したものの、人影の数を確認し、考えを改める。
――絵筆を持った女の子、軽装の男。白いフードを目深にかぶった魔道士。
――盗賊っぽい姿の剣士、中年のオジサン。何だかワケのわからない格好をした人。
全部で六人、かなり大規模なグループだ。
急襲をかければ半分くらいは仕留められるかもしれないが、無傷で勝ち逃げるには、少し厳しいものがあるだろう。
それに一人でも逃がせば、エッジやリュカ達に僕らのことがバレる可能性もある。
それじゃあ流石に面白くない。
『ゲームに乗る気がないモノ同士をいがみ合わせて殺させる』
……カインはあくまで自分の手を汚さないため、その程度にしか考えてないようだが。
僕にとっては貴重な『仕込み』のチャンスだ、数人ごときのために逃す手立てはない。

傷つける必要の無い者を傷つけた。無意味に命を奪った。
自責、後悔、罪悪感。心を苛み、切り刻む刃が生み出す苦痛。
そこに付け入ることこそが、ドラゴンライダーの本領と言っていい。
328A=B+C+Distortion 2/11:2005/07/29(金) 20:38:44 ID:goyAOHYh
罪悪感を抱いたヤツが待ち望むのは、許されるための方法。苦痛から逃れるための手がかりだ。
恋人を目の前で失い、仇に手出しすることもできなかったフリオニール然り。
止める事もできたのに、みすみす仲間を死なせてしまったレナ然り。

僕は真実を教えよう。二人がリュカを殺してから。
『あんたが殺したのはマリアさんの仇じゃない。帰りを待つ子供がいる、何の罪も無い男だ』と。
仇討ちなんて真顔で考える二人のことだから、本当のことを知れば、絶対に後悔するに決まっている。
壊れる寸前まで追い詰めて責めたてて、それからフリオニールの時のように一言囁いてやればいい。
『優勝することができれば、死んだ人を生き返らせてもらえるよ』……とね。
優しい声で告げてやれば、エッジもユフィも、きっと良い駒になってくれるだろう。

――けれど、そこまで上手く事を進めるには、我慢する事も大切だ。

僕は翼をはためかせながら、彼らの前に降り立った。
驚く六人に、僕の背から飛び降りたカインが、武器を収めて話し掛ける。
「驚かせて済まない。見てのとおり、俺たちには戦う意思はない。
 ただ、少し話を聞かせてほしいのだが」
「話だって?」
トサカみたいな髪型の、頭の悪そうなヤツが応じた。どうやらコイツがこのグループのリーダーらしい。
流石に警戒しているらしく、フリオニールやレナみたいに易々と心を覗かせてはくれないが……
殺し合いに乗る気がないこと、みんなと仲良く脱出なんてことを考えるバカだってことは読み取れた。
僕はそれをテレパシーでカインに伝える。
カインは口の端をわずかに吊り上げながら、言葉を続ける。
「ああ。実は、別行動中の仲間とカズスの村で落ち合わせる約束をしていたのだが……
 先ほどカズスの方角で爆発が起こるのが見えたのだ。
 そして、君たちがそちらからやって来たのもな」
カインの言葉に、六人は顔を見合わせる。
そして、魔道士の前に立ちはだかっていた、バンダナを巻いた剣士が答えた。
「あんたの仲間って……言っとくけど、俺が見たの、こいつらとイクサス達ぐらいッスよ?」
「イクサス?」
聞き覚えのない名前に、カインはおうむ返しに呟く。
329A=B+C+Distortion 3/11:2005/07/29(金) 20:43:34 ID:goyAOHYh
「ああ。医者みたいなカッコした子供でさ。
 人のこと、すぐ人殺し呼ばわりして来るような奴で……でも、殺された」
「殺されたとは穏やかではないな。一体誰に?」
目を細めるカインに、トサカ頭が苦々しく口を開く。
「サックス、いや、フルートだ……オレたちの仲間だった。
 あいつがそう思ってたのかは知らねーし、オレももう、あいつを仲間だなんて思っちゃいねーけどな」

NGワードに触れたのかもしれない、と思う暇もないまま。
僕らはしばらく、トサカ頭の愚痴に付き合わされることになった。
それでわかったのは、フルートってヤツがやったコト。
『道案内を買って出たから任せたところ、目的地から離れた森に誘導された。その結果襲撃にあった』
『回復呪文が得意なのは彼女しかいないというのに、瀕死の人間を小一時間も放置した』
『偵察に行くのに何故か軽トラ(馬車のような乗り物らしい)を使うと言い出し、その軽トラをわざと壊した』
『子供一人を二人がかりで追い詰めた上、殺した』
『絵描きのリルム(金髪の子供の事らしい)の右目を潰した』……

――僕に言わせれば、二番目か三番目で気付かない方がマヌケだ。
カインもまた、同じようなことを思ったのだろう。
(ここまで騙されやすいバカがいるのか……フルートとやらも、さぞ楽だったろうな)
そんな心の呟きが聞こえてきたが、当然、表情には一切出していない。
あくまでも真摯に聞き、真剣な顔で問い返している。
「それで、そいつらはどこに?」
「村の奥にある鉱山の中だ。落盤が起きてなきゃ、生きてると思うぜ。
 ……ただ、気をつけろよ。天然ボケを演じちゃいるけど、本性はとんでもねぇぜ」 
ご丁寧に忠告までしてくれた。どこまでいってもシアワセで、脳天気な連中だ。
そういうことは、利用される側の連中に言ってやるんだね。
まぁ……フルートってヤツは僕達と同じ立ち位置にいるみたいだし、生きているなら接触してもいいかもしれない。

「それで、爆発の原因なのだが……まさか、それもフルートとやらがやったのか?」
そんなことを考えている間に、カインは話題を変えていた。
そういえば、当初の目的は爆発の理由を聞き出すことだ。長い話のせいで忘れかけていたが。
ぺろりと舌を出す僕の前で、トサカ頭が魔道士の方を振り向く。
330A=B+Cheating+Distortion 4/11:2005/07/29(金) 20:47:04 ID:goyAOHYh
「いや。ありゃ、赤髪の女がやったんだ。名前は……何だっけか……、ぁー」
「バーバラ、です。ゼル君」
魔道士が、ローブについたフードを被り直しながら喋り出した。
声が妙に甲高くて、少し耳障りだ。
「イクサスと一緒にいた、魔法使いの女の子です。
 詳しい事情は知りませんが、二人で、アーヴァインという男を探していたようでした」
「あ……あ……?」
何故かトサカ頭は眉を潜め、口をぱくぱくさせる。
そんな彼の足を、これまた何故か蹴りながら、金髪の女の子が早口でまくし立てた。
「そういうことなの、そのバーバラってヤツが町を吹っ飛ばしたのよ!
 天使みたいに羽を生やしてふわふわ浮いてたと思ったら、いきなりドカーンって!
 ホント、とんでもないと思わない?」
そこで同意を求められても、リアクションに困る。
はっきり言って『思う思わない』以前の問題だ。態度といい、内容といい、果てしなく嘘臭い。

僕が聞いたバーバラは、もっと無力な存在だ。
生粋の殺人者から武器を盗むなどという無謀な真似をした、愚かな娘。
狂気の殺人者に目を着けられた、哀れな娘。
カインが語った彼女の像は、そう言った、狼に追われるだけの無力な羊に等しいものだった。
そんな女が、いきなり羽を生やして空を飛んで、町一つを吹き飛ばしたなど……
突拍子が無さ過ぎて、下らないガキの夢か、イカれた人間の妄想としか思えない。
カインが訝しげに問い返したのも、こればっかりは演技ではなく、本心からの行動だったろう。
「本当なのか?」
金髪の少女に話し掛ける、その視線が、一瞬だけ僕の方を向いた。
探れということのようだが、言われるまでもなく、僕は彼女の心を覗こうとしている。
だが、ダメだ。こいつも僕達を警戒している、僕に気を許していない。
他の連中――トサカ頭や剣士も似たような感じだ。
辛うじて読み取れたのは、『何かを隠しちゃいるけれど、ウソはついていない』という事だけ……
331A=B+Cheating+Distortion 5/11:2005/07/29(金) 20:52:42 ID:goyAOHYh
(――って、ウソじゃないのかよ!!?)

信じられない……が、心まで偽れる人間がいるはずもない。
驚愕を隠し切れないまま、僕はカインに思念を送る。
同時に、トサカ頭が「間違いないぜ」と頷いた。
それで初めて、カインが動揺の色を浮かべる。
「本当に……本当にあのバーバラが、爆発を?」
「……もしかして、あいつと知り合いだったんッスか?」
剣士の問いに、カインは即座に答える。
「ああ。俺の友人と一緒に行動していたことがあった。
 だが、何の変哲もない、多少魔法が使えるだけの子供にしか見えなかったが」
淀みなく、すらすらと話す様子は、アドリブであることなど微塵も感じさせない。
剣士は疑うこともなく、「そうなんだ」と納得した様子を見せる。
それから、何かが気になったのか、別の事を聞いてきた。

「じゃあさ、アーヴァインって奴のことは?」

――もちろん知らないはずもないのだが、まさか本当の事を喋るわけにはいかない。
カインはまたもや平然とした表情で、顔色一つ変えずに嘘をついた。
「残念だがそちらは知らんな。
 だいたい、バーバラと会ったのは昨日の夜に一度きりだ。
 大方、その後で酷い目に合わされたのだろう。その時には、そんな男の事など話さなかったからな」
「ふーん、そっか」

剣士の問いは、それで終わりだった。
最後にカインはバーバラの生死についても尋ねてみたが、
「倒されたとは思うが、死んではいないかもしれない」という奇妙な答えが帰ってきただけだった。
どうやら、これ以上詳しいことは、危険を押してでも自分達の目で確かめるしかないようだ。
聞きたい事も、連中への興味も無くなった僕達は、定型文のような別れの挨拶を告げてカズスへ飛んだ。
332A=Blunder+Cheating+Distortion 6/11:2005/07/29(金) 20:57:28 ID:goyAOHYh
竜の影が鳥のように小さくなってから、オレはアーヴァインとリルムを睨みつけた。
「何だよ、あの気色悪りぃマネは。つーか、なんでいきなり蹴るんだよ?」
けれど、二人は謝るどころか肩を竦め、冷たい視線をオレに向ける。
「このニブチン。そんなんだからニワトリ頭なんだよ」
リルムの暴言に言い返す間もない。
似合いもしない白いローブをはためかせながら、アーヴァインが詰め寄る。
「忘れないでよね、何で僕がこんな服に着替えたのか」
「あ……」

そういえば――カズスの入り口で、怪我の手当てをしていた時のことだ。
泣き止んで、ようやく落ち着いてきたアーヴァインが、身を震わせながら喋った話。
『僕は……人を殺してしまったんだ。
 思い出せるのは二人だけだけど、多分、五人は殺してる……もしかしたら、もっと多く……』
どこまで本当かもわからない。こいつの話だけならば、精神不安定な男の妄想と断じていただろう。
けれど、ティーダのヤツがいた。
ソロ、イクサス、バーバラ。ティーダが見てきた三人の態度は、どれもアーヴァインの話を裏付けるものだった。

だが、人が死んだと思ってわぁわぁ泣き出すヤツに、殺し合いに乗る度胸があるとも思えない。
大方、サイファーやガルバディア軍の連中みたいに、魔女にコナを掛けられて正気を失っていたのだろうと思う。
思うが――それはあくまでも『オレの見解』だ。
こいつに被害を受けたヤツからすれば、操られてようが自分の意志だろうが、見分けもつかないし大差もない。
そもそも本気で復讐を考えている奴は、言い分すら聞かずに襲ってくるだろう。
だからユウナが、ティーダが持ってきた服に着替えて、顔を隠すことを進めたのだ。
(ティーダはティーダで、イカれたストーカー女に目を着けられているらしい。難儀なこった)
――そんな状況で名前を呼ぶというのは、確かに迂闊過ぎたかもしれない。

反省するオレに追い討ちをかけるように、リルムが冷たく言う。
「ついでに、何でもかんでもペラペラ喋んないでよね。
 あの金髪カッコマン、かなりの食わせ者っぽいよ」
「……食わせ者?」
首を傾げるオレに、背後から納得したような声が届く。
333A=Blunder+Cheating+Distortion 7/11:2005/07/29(金) 21:00:58 ID:goyAOHYh
「あ、やっぱりそういうことだったの?」
「道理でおかしいと思っていたのですよ」
声の主はユウナとプサンだった。二人ともポンと手を叩き、勝手に頷いている。
アーヴァインもその意味がわかってるらしく、すました顔をしている。
どうも、わかってねーのはオレとティーダのヤツだけらしい。
「「????」」
困惑する俺たち――いや、ティーダに、リルムが眉をひそめる。
「知ってて聞いたんじゃないの? バーバラと、そこのモヤシのこと」
「いや、純粋に気になっただけッスよ。
 それにアーヴィンのことは、アーヴィンが聞いてくれって頼んできたから……」
「なーんだ」
リルムは呆れたようにため息をついてから、アーヴァインに向き直った。
「てことは、最初から心当たりがあったわけ?」
珍しく真剣な表情で、アーヴァインは頷く。
「ああ、ヘンリーさんが言ってたんだ。昨日の僕と手を組んでいた男がいたって。
 ……そいつは槍を携えた、金髪の騎士だったってさ」

――金髪に槍。飛竜に乗った男と、特徴が一致している。
アーヴァインはさらに言葉を続けた。
「外見的な要素だけじゃない。あの男は確実に僕のしたことを知っている。
 それなのにすっ呆けて、知らないフリをしてやがった」

すっ呆けている。
そのフレーズに、オレはさっきの会話を思い返す。
そして――ふと、『おかしな点』に気付いた。
「あー……そうか、そういうことか」
「?????」
まだわからないらしく、困惑の色を強めるティーダに、ユウナは苦笑しながら説明する。
334A=Blunder+Cheating+Distortion 8/11:2005/07/29(金) 21:05:33 ID:goyAOHYh
「アーヴァイン君ね、『バーバラって子が探してる』としか話してないんだよ?
 なんで『酷い目に合わされたから』ってわかるの?
 知り合いだから探してるとか、逆恨みで探してるとか、色々考えようはあるのに」
「あっ!」とティーダが声を上げた。ようやくわかったようだ。
その傍らで、リルムが冷静に切って捨てる。
「『知らない』って答えたのもマイナスポイントね。
 フツーは背格好ぐらい聞き返すし、どっちかって言えば『わからない』って答えるもの。
 ――で、そう言って嘘をつくってことは、アイツはこいつとの関係を誤魔化したい立場だってこと」
さらに、リルムの説を補足するようにプサンが言う。
「あの竜からは、魔女の魔力や邪念といったものを感じました。
 恐らく、ですが……主催者が紛れ込ませた手駒だと思います。
 まともな人間なら、そんな存在を引き連れるはずがありません」

「BINGO、だねー」
アーヴァインが言った。
腰に手を当てながら口笛を吹いたりする様子は、まるっきり他人事のようだ。
「って、いいのかよ、そんなヤツ野放しにしてよ?」
その様子に苛立ちでも覚えたのか、ティーダが言った。
魔女の手下と手を組んだ殺人者。そんなヤツを逃したら、この先何人犠牲者が出るかわからない。
捕えておくか、何がしかの手を打つべきだったのではないか? そんな考えが、表情に出ている。
「そりゃ、まーね。並みの相手だったら、とっ捕まえるって手も打てたかもしれないけどさ。
 ボウガンとG.F.装備した僕がまるで相手にならなかったっていうピサロさんと、槍一本で渡り合ったっつーしねぇ。
 あの竜も、アルティミシアの下僕ってことは相当強いんだろうし……戦ってたら、こんな感じになってた気がするよ」
アーヴァインはそう言って、『お手上げ』と両手を上げた。
調子こそふざけてはいたが、目は決して笑っていない。
さらに、ユウナが銀球鉄砲をくるくると回しながら付け加える。
「上空から攻撃されたら、私の銃と、リルムの魔法しか打つ手がないでしょ?
 それに、こっちにはプサンさんも、リルムも、アーヴァイン君もいる。
 下手に戦って犠牲者を出してしまったりしたら、それこそ本末転倒だよ。
 もちろんキミの言いたいことはわかるし……こういうのも、少し、ムカツクけどね」
335A=Blunder+Cheating+Distortion 9/11:2005/07/29(金) 21:11:27 ID:goyAOHYh
アーヴァインはまともに戦えない。
相手の正体に気付いたところで、それを暴いて戦いを挑むなど、出来るはずがなかっただろう。
空に逃げ去った相手を追いかけて、戦闘を仕掛けるというのも無理がありすぎる。
そしてユウナの言うとおり、上空からの襲撃者相手に、誰一人犠牲者を出さずに勝つなど不可能に近い。
騙されたフリをして見送るのは、現状からすれば最良の選択だった。
――もちろん長期的に見れば、ティーダの考えの方が圧倒的に正しいだろうが。

釈然としない表情で俯くティーダに、ユウナが声をかけた。
「ねぇ……カズスに行こうとする人と会ったら、私たちで引き止めてみようよ。
 そうすれば、危険な目に合う人も少しは減ると思うんだ」
その言葉に、アーヴァインがうんうんと頷く。
「そーそー。それでも行くようならジコセキニンってヤツ。僕、しーらない」
「そういう考えは感心できないなぁ……」とユウナは呟いたが、実際、オレ達が打てる手はそれぐらいしかない。

「ま、納得行かないかもしれないけど、この際仕方ねーだろ。
 それにあんなヤツを構うより、この輪っかを外す手でも考えた方が利巧ってもんじゃねーか?」
取り成すつもりで言った言葉に、ティーダはいきなり顔を上げた。

「そうッスよ、首輪! 誰か調べてるヤツいないかと思って、持ってきたんだ」
そう言ってヤツは、自分の袋からソレを取り出した。
見間違いようもない、オレ達の首についているのと同じ首輪。わずかに血がこびりついている。
どうやって手に入れたのかは気になるが、ティーダの表情を見る限り、聞かない方が良さそうだ。
「これさ、機械に詳しいヤツだったら、調べられるんじゃねーかなって」
機械、か。
ガーデン操縦士のニーダ辺りが得意そうな気もするが、ヤツはこの殺し合いには参加させられていない。
「物知りゼルー。実はこの手の解析が得意だとか言ったりしない?」
アーヴァインが茶々を入れるように聞いてきたが、地理や歴史ならまだしも、機械工学は守備範囲外だ。
「できるワケねーだろ」と、首を横に振る。
336A=Blunder+Cheating+Distortion 10/11:2005/07/29(金) 21:15:53 ID:goyAOHYh
その時、黙って話を聞いていたリルムが言った。
「エドガーなら調べられると思うよ。機械に詳しいし、色々弄って変な武器作るのも好きみたいだし」
……改造したり、製作が好きとなると、相当に専門的な知識を持っているのだろう。
リルムの世界の文化レベルにもよるが、そいつは頼りになるかもしれない。

「ティーダ、リュックは?」
今度はユウナが手を上げる。
「シンラ君ほどじゃないけど、リュックもそっち方面には詳しいし。
 三年前と違ってね、マキナ自体の発掘や研究もけっこう進んでるんだよ。
 だから、多分解析できるんじゃないかって思うんだけど」
「マキナ?」
「あ……ええと、機械のこと。機械っていうと抵抗があるからって、マキナって名前で広まったんだ」
……三年間の溝は中々深いらしい。
首を傾げるティーダ(と俺たち)に説明するユウナは、少し寂しそうに見えた。

ともかく、これで話は決まりだ。
第一目標は、エドガーだかリュックだかと合流して、首輪を調べてもらうこと。
そのついでにプサンの探し物――ドラゴンオーブとかいう、本人曰く『大切なお守り』を見つけるのを手伝って、
後は……殺し合いに乗っていない奴で困ってる人がいたら助ける、といったところか。

――で、最大の問題は、そいつらもオーブも探す宛てがないってことだが。
この世にカミサマってのがいるなら、せめて二人の居場所だけでも教えてくれねぇかなぁ……
337Accident=Blunder+Cheating+Distortion 11/11:2005/07/29(金) 21:18:20 ID:goyAOHYh
【カイン(HP5/6程度)  所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手 えふえふ(FF5)  この世界(FF3)の歴史書数冊
 第一行動方針:カズスの村を偵察した後、カズス北西の森の東部に戻ってエッジ達と合流する
 第三行動方針:カズスの村でフリオニールと合流し、罠を張る
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【スミス(変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー) 所持品:無し
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地;カズス北の平原→カズスへ】

【リルム(右目失明) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ】 
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【ユウナ(ジョブ:魔銃士、MP1/2)  所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)
 所持品:竜騎士の靴、自分の服
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、ふきとばしの杖〔3〕、首輪×1、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服
 第一行動方針:機械に詳しい人(エドガー、リュック)を探し、首輪の解析を依頼する
 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける】
【現在地;カズス北の平原→移動】
338運命の交差 1/9:2005/07/31(日) 22:32:35 ID:mhepA88K
『待て! 俺にあんたと戦闘する意思はない!』
口無しの効果によって話すことの出来ないザックスは掌を目の前に突き出し
制止の意を伝えようとするが、殺気を込めて歩いてくる剣士は別の意味に受け取った。
「呪文か! 唱えさせない!」
そう吐き捨てて剣士、テリーはザックスへと肉薄する。
いきなり攻撃を仕掛けてきた上に無言で掌をテリーへ向けたのだ。
彼がそう判断するのも無理はなかった。
テリーの初太刀をバスターソードで弾き返し、ザックスは更に後ろに下がる。
『ぐっ、マズイ!』
今のザックスは口を開くことができないため鼻で呼吸するしかなく、
それは彼の想像以上に体力を奪っていく。
『長々と戦闘を続けられる状態じゃねぇな。
 話して誤解を解くことが出来ない以上、何とか逃げ出すしかない』
そう判断し、踵を返そうとするがそれをテリーは許さない。
「逃すか! 姉さんの敵はここで殺す!」
開いていた間合いを一瞬で詰め、テリーはザックスに連続攻撃を仕掛ける。
上下左右、あらゆる角度から超高速で迫る太刀筋をザックスは全て防ぎきる。
打ち合いながらザックスは戦況を分析していた。
『力は俺が上。速さは向こうが上。技量は互角……いや、向こうが僅かに上か。
 何とか防ぎきれてんのは正直、相手に片腕がないおかげだな。
 時々、バランスを崩すところを見ると失ってからそう時間も経ってない。
 おそらくこのゲームに巻き込まれてからなんだろうがよくやるぜ……!』
ザックスは分析しながら逃走する隙を窺う。
おそらく傍にはあの魔物が潜伏しているはず。
いや、気配が感じられないところを見ると既に逃げ出したのだろうか?
どちらにしろ悠長にしている暇はなかった。
攻撃を受けて急に駆け出したテリーにファリスはようやく追いついたが
その戦闘に手を出せないでいた。
両者の位置が近すぎるため呪文で援護もできないし、あれだけの技量者同士の戦闘に
ナイフ一本で割って入ることなどもできそうになかった。
そして割ってはいる隙を窺いながらテリーとザックスの戦闘を見守っていたファリスだが
不意にあることに気付いた。
339運命の交差 2/9:2005/07/31(日) 22:35:36 ID:mhepA88K
『何だあの戦士? やけに呼吸が荒いな。どんどん顔色も悪くなっている。
 毒にでも犯されているのか……それに、攻撃を全くしない。防御一辺倒だ。
 テリーが何度かバランスを崩し(その度にヒヤッとしたが)たがそこを突こうともしなかった。
 これは……』
確かに攻撃を仕掛けてきたのはあの戦士のほうだった。
しかしその前にあの戦士は何者かと戦っていたはずだ。
その相手はどこにいるのか。もしかして敵を誤認したのではないのか?
でもそれならば戦闘を続ける必要はないはずだ。
そこまで思考に上ってようやくファリスは違和感に気がついた。
『あの戦士、さっきから全く口を開いていない。
 まさか口が利けないのか? あの症状は毒ではなく呼吸困難だとしたら……』
その瞬間、テリーは渾身の一撃をまたも弾かれ、大きくバランスを崩した。
『『殺られる!!』』
ファリスとテリーは同時にそう悟ったが、ザックスはまたも間合いを広げるだけに留めた。
テリーの追撃を警戒してすぐに逃走には入らない。
『もう決定的だ。あの男は敵じゃない』
「余裕のつもりか!? 舐めやがって!!」
情けを掛けられたと誤解したテリーは怒り心頭でザックスに向かって雷鳴の剣を振りかざすが、
それをファリスは押し留めた。
「待てテリー!
 剣を引くんだ! そいつは敵じゃない!」
「姉さん!?」
テリーはその言葉に驚いて動きを止める。
「でもあいつから攻撃を仕掛けてきたんだぜ!
 今殺しておかないと……」
「落ち着くんだテリー。私達は戦闘の気配を追ってここに来た。
 ならその戦闘を行っていたのはアイツの他に誰だ?」
「そ、それは……」
ファリスはテリーを制止し、ザックスの下へ歩いていく。
「あんた、まだ私らと戦う気はあるかい?
 やるんなら今度こそ二人で決着をつけるけど」
ザックスはその言葉に首を横に振り、バスターソードを地面に突き刺す。
340運命の交差 3/9:2005/07/31(日) 22:38:36 ID:mhepA88K
それを見て、ようやくテリーも剣を鞘に収めた。
「チッ、それなら訳を聞かせてもらうぞ」
「いや、どうやら彼は口が利けないみたいだ。
 彼が戦っていた相手がまだいるかも知れないから、とりあえず場所を移動して
 筆談で事情を……」


戦闘が収まりかけたその時、その様子を建物の陰でじっと気配を殺しながら窺い続けている存在があった。
ザックスと戦闘をしていた張本人、ピエールである。
ザックスの意識がテリーに向いた直後から、この場を離れようとしていたのだが
対人レーダーには村の周囲にいくつかの光点を映し出していた。
どうやら先ほどの魔法の玉の爆発で呼び寄せてしまったらしい。
今脱出すれば彼らとの接触は免れまい。
ならば彼らを村の中におびき寄せ、その後で身を隠しながら脱出するべきだろう。
ピエールは戦闘するザックスたちを尻目にボウガンを回収し、その機会を窺っていた。
そしてザックスたちの戦闘が収束を迎えたのに気付く。
外の者たちが村に入るには未だ若干の余裕がある。
彼らが和解すれば、次に探すのはピエールの身柄だろう。
ピエールは自分の放ったようじゅつしの杖がザックスに口無しの効果をもたらしている事に気付いていなかった。
『ならば油断している今のうちに先手を打つべきだ』
そう判断した彼は回収したボウガンを構え、彼らに向けて無情に矢弾を解き放つ。
「危ない姉さん!」
迫る数本の矢の存在に気付いたテリーは咄嗟にファリスを庇い、剣で矢をいくつか叩き落す。
しかし、呼吸を必死に整えていたザックスは反応が遅れて左肩に被弾してしまった。
背負っていたザックの紐が切れて地面に落ちる。
『あの野郎! こっちが戦闘中にも中々姿をみせねえし、気配も感じられなくなってたから
 すでにこの場を離れていたかと思ったが考えが甘すぎたか!』
ザックスは歯噛みし、肩に刺さった矢を抜いて物陰に身を隠した。
テリーは雷鳴の剣を構えなおし、ピエールに向かって突っ込んでいく。
「よくも姉さんに!」
テリーの殺気に臆することもなく、ピエールは冷静に杖を振るって光弾を放つ。
予想外の攻撃にテリーは驚いたが、最小限の動きで身をかわした。
341運命の交差 4/9:2005/07/31(日) 22:41:37 ID:mhepA88K
しかしその光弾はテリーを狙って放たれたわけではなかったのだ。
テリーの背後にいたのは……ファリス。
ファリスはテリーの姿が死角になって、光弾の存在に気付くのが遅れ……
結果回避することができなかった。その効果は――引き寄せ。
テリーは気付かずにそのままピエールに肉薄し、必殺の斬撃を叩き込む。
そのピエールの前には、引き寄せの杖の力で瞬間移動したファリス。
「「え?」」
二人は同時に間の抜けた声を上げる。
そしてテリーの斬撃がファリスの首を跳ね飛ばす。
ファリスはバッツを……レナのことを想う時間さえも与えられず絶命した。
ピエールはその場所から飛びつきの杖を振るって消え去る。
テリーはそのことにも何も反応はせず、ただ呆然と首のないファリスの死体を見つめていた。
どん、と音を立てて今更ファリスの首がテリーの足元に落ちてくる。
『何だ、これは?』
『姉さん? 何で姉さんがここで死んでるんだ』
『俺が……殺した?』
『違う、俺が斬ったのはあの魔物だ』
『そうだ、これは魔物が俺を惑わすために変化した姿だ』
『そう、モシャスという呪文があった』
『全く間抜けな魔物だ。髪の色も違うじゃないか』
『姉さんの髪の色はもっと』
何色だっただろう? 蜂蜜色だった気がする。薄紅色だった気がする。
いや、違う。どちらも偽者の姉さんだ。
よく思い返してみる。

―― テリー ――

そう優しげな声で自分を呼ぶ姉の顔は……真っ黒に塗りつぶされていた。
「ぐぁっ!」
激しい頭痛に襲われ、テリーは頭を押さえてうずくまる。
その場に嘔吐し、激しく咳き込んだ。
しばらくそうしていた後、虚ろな目をして起き上がる。
342運命の交差 5/9:2005/07/31(日) 22:44:38 ID:mhepA88K
テリーはキョロキョロと辺りを見回した。
『本物の姉さんはどこだろう?
 探さなきゃ……早く探して護ってやらなきゃ……』
そして――テリーは当てもなく走り出した。


ザックスはその様子を一部始終見ていたが、動くことが出来なかった。
テリーとの戦闘での消耗が激しく、肩に矢傷を受けたことで
さらに呼吸困難が深刻化していたのだ。
『畜生……何もできずに、俺は……』
顔を紫色に変色させ、ザックスの意識は薄れていった。
目の前に動く物がなくなったことを確認し、ピエールは再び姿を現す。
ザックスが落としたザックとファリスのザックを回収し、ついでにボウガンの矢も拾う。
そしてまた息のあるザックスに止めを刺そうと近づくが、その時背後からの気配に気がついた。
振り返るが姿は未だ見えない。しかしその雄叫びは聞こえてきた。
対人レーダーを見ると東側から迫る光点がある。それこそは――勇者の父、オルテガ。
ピエールは止めを刺す暇はないと判断し、北へ向かって走り出した。


そしてピエールが北の出口に差し掛かったとき、4人組の一団が向かってくるのに気付き建物の中に隠れる。
その4人組はアルスとサイファー達であった。
「! サイファー、今何かがあの建物に身を隠した。見えたか?」
「馬鹿にすんなよ。オイ、イザ、ロザリー、気をつけろよ」
アルスたちは警戒しながら、建物……魔法屋の入り口を取り囲む。
その時、中から光弾が打ち出された。
「危ない!」
咄嗟に身をかわすアルスたちだったが、その光弾は彼らを狙ったにしてはあまりにも外れすぎていた。
光弾は全員に避けられ、北の出口付近に着弾する。
すると、そこにピエールが出現した。飛びつきの杖を使ったのだ。
「何!?」
驚愕する一同。ピエールはそれを尻目に村の出口を抜け、逃走する。
アルスは悟る。間に合わなかったのだ。
343運命の交差 6/9:2005/07/31(日) 22:47:38 ID:mhepA88K
戦闘は既に終了してしまっている。
「くそ、逃がさない!」
アルスは歯を食いしばり、戦闘を引き起こした張本人であろうピエールを追って駆け出す。
「オイ待て!」
サイファーの制止の声もアルスには届かない。
「チッ、俺はあの野郎を連れ戻す!
 イザはロザリーを死ぬ気で護りながら村を調べろ!」
サイファーは一方的にそれだけ言うと、イザが頷くのも待たずに駆け出した。
それを見て、ロザリーは心配げにイザへと顔を向ける。
「イザさん、私達も追ったほうが」
「いや、サイファーの判断は正しいよ。
 今は敵を追うよりも、戦闘で負傷した人たちがいるなら彼らを助けることが先だ。
 それに君を危険な目に合わせるわけにもいかない。
 もっとも……あのアルスって人を説得するなら口の悪いサイファーより
 僕が行ったほうが良かったかもしれないけれど」
そういってイザは肩を竦める。
軽薄そうなイザのその仕草にロザリーは少しムッとするが、
彼の足が震えているのを見て考えを改める。
『私は、いつでも待つことしか出来ないのね……』
気落ちして俯くロザリーだが、イザが歩き始めたのを感じて顔を上げた。
「行こう。僕たちにはやることがある。
 ただ待つだけなんて許されやしないんだ」
そして力強く歩いていくイザの言葉に、何故かロザリーは嬉しくなり
大きく返事をして後を付いて行った。


村を出たテリーは真っすぐ北東に向かって走っていた。
途中、クリムトの姿が視界に映ったが気にも留めずに走り抜ける。
クリムトのほうもテリーに気がついたが、視界を失っているため
相手がテリーだとは気付かず、またこの身では追うこともできないと判断して
当初の予定通りカナーンへと向かっていった。
テリーは純粋に姉を探していたため、邪悪な気を発していなかったこともある。
344運命の交差 7/9:2005/07/31(日) 22:50:39 ID:mhepA88K
そしてテリーは走り続け……何時間が経っただろうか。
既に時刻も午後を迎えて大分経過していた。
テリーは深い森を掻き分けながら姉を探し続けている。
『姉さん、姉さん……ミレーユ姉さん。
 どこにいるの?』
当てもなく、ただ森を無造作に歩き回りながら姉を探す。
思い出せるのは黒く塗りつぶされた姉の顔。
『大丈夫さ、今は少し混乱してるだけだ。
 会えば姉さんの顔も思い出せる。だって姉さんだもの』
そうテリーは信じて疑わない。
そうしないと壊れてしまうから。
そして―――ついにテリーは姉と再会した。
森の木々の間から現れた亜麻色の髪の少女。
その顔が黒く塗りつぶされた姉の顔に上書きされる。
「姉さん! 会いたかったよ、どこに行っていたんだい?」
「は? アンタ何なの?」
突然、話しかけたテリーに少女は訝しげな表情で問い返す。
「何って、僕だよ。弟のテリーさ!
 忘れちゃったの?」
テリーはまるで子供のような口調で不安げに少女へと答える。
その答えを聞いて少女はしばらく考え込んでいた。
そして不意にニヤリと笑うと、今度は優しげな表情でテリーに声をかける。
「ああ、ごめんなさいねテリー。敵に襲われたので少し混乱していたのよ」
そう言って彼女は腕を広げる。
テリーは疑いもせずにその胸に飛び込んでいった。
「ああ、会いたかったよ姉さん。やっぱり敵に襲われていたんだ。
 ごめん、今度はしっかりと護って見せるから。
 この命に代えても護り抜くから……許してくれ、姉さん」
「ええ、今度はちゃんと私を護ってね……私の可愛いテリー
 愛しているわ……」
テリーの頭を撫でながら彼女……アリーナ2はニッコリと微笑んだ。
345運命の交差 8/9:2005/07/31(日) 22:53:40 ID:mhepA88K
【アリーナ2(分身) (HP4/5程度)
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬
 第一行動方針:テリーを手懐けて、護衛にする
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】
【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(八割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(アリーナ2)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【現在位置:サスーン城の南・森の入り口付近】

【ザックス(HP1/4程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:気絶
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:状況の確認と戦いの阻止、場合によっては戦う
 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの村南部】

【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 第一行動方針:カナーンへと向かう
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北出入り口】 
346運命の交差 9/9:2005/07/31(日) 22:54:42 ID:mhepA88K
【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード
 第一行動方針:村を調べる。負傷者がいたら救う
 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】
【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:同上
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【現在地:カナーンの村北部】

【ピエール(HP1/5程度) (MP一桁) (感情封印)
(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
 所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
     毛布 王者のマント 聖なるナイフ
     ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[1]、ようじゅつしの杖[2]
 第一行動方針:この状況を切り抜け、休息
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:アルスを連れ戻す
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アルス(MP4/5程度・疲労)所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
 第一行動方針:ピエールを追う
 第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【現在位置:カナーンの村→北】

【ファリス死亡】
【残り64名】
347運命の交差 訂正:2005/07/31(日) 23:00:11 ID:mhepA88K
ピエールのとびつきの杖の残り回数は[2]です。
348名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/01(月) 00:16:48 ID:7UAcGNdw
「三人の国王」は無効です
349運命の交差 6/9 訂正:2005/08/01(月) 00:32:15 ID:2W2PIN58
戦闘は既に終了してしまっている。
「くそ、逃がさない!」
アルスは歯を食いしばり、戦闘を引き起こした張本人であろうピエールを追って駆け出す。
「オイ待て!」
サイファーの制止の声もアルスには届かない。
「チッ、俺はあの野郎を連れ戻す!
 イザはロザリーを死ぬ気で護りながら村を調べろ!」
サイファーは一方的にそれだけ言うと、イザが頷くのも待たずに駆け出した。
それを見て、ロザリーは心配げにイザへと顔を向ける。
「イザさん、私達も追ったほうが」
「いや、サイファーの判断は正しいよ。
 今は敵を追うよりも、戦闘で負傷した人たちがいるなら彼らを助けることが先だ。
 それに君を危険な目に合わせるわけにもいかない。
 もっとも……あのアルスって人を説得するなら口の悪いサイファーより
 僕が行ったほうが良かったかもしれないけれど」
そういってイザは肩を竦める。
軽薄そうなイザのその仕草にロザリーは少しムッとするが、
彼の足が震えているのを見て考えを改める。
『私は、いつでも待つことしか出来ないのね……』
気落ちして俯くロザリーだが、イザが歩き始めたのを感じて顔を上げた。
「行こう。僕たちにはやることがある。
 ただ待つだけなんて許されやしないんだ」
そして力強く歩いていくイザの言葉に、何故かロザリーは嬉しくなり
大きく返事をして後を付いて行った。


テリーは北に向かって走っていた。
村を出るとき、東の方向にクリムトの姿が視界に映ったが気にも留めずに走り抜ける。
クリムトのほうもテリーに気がついたが、視界を失っているため
相手がテリーだとは気付かず、またこの身では追うこともできないと判断して
当初の予定通りカナーンへと向かっていった。
テリーは純粋に姉を探していたため、邪悪な気を発していなかったこともある。
350運命の交差 8/9 訂正:2005/08/01(月) 00:33:30 ID:2W2PIN58
【アリーナ2(分身) (HP4/5程度)
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬
 第一行動方針:テリーを手懐けて、護衛にする
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】
【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(八割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(アリーナ2)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【現在位置:カナーン北の山岳地帯】

【ザックス(HP1/4程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)
 所持品:バスターソード
 第一行動方針:気絶
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント
 第一行動方針:状況の確認と戦いの阻止、場合によっては戦う
 第二行動方針:アルスを探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:カナーンの村南部】

【クリムト(失明) 所持品:力の杖
 第一行動方針:カナーンへと向かう
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーン北東 村の近く】 
351運命の交差 2/9 訂正:2005/08/01(月) 21:03:06 ID:2W2PIN58
『何だあの戦士? やけに呼吸が荒いな。どんどん顔色も悪くなっている。
 毒にでも犯されているのか……それに、攻撃を全くしない。防御一辺倒だ。
 テリーが何度かバランスを崩したが(その度にヒヤッとしたが)そこを突こうともしなかった。
 これは……』
確かに攻撃を仕掛けてきたのはあの戦士のほうだった。
しかしその前にあの戦士は何者かと戦っていたはずだ。
その相手はどこにいるのか。もしかして敵を誤認したのではないのか?
でもそれならば戦闘を続ける必要はないはずだ。
そこまで思考に上ってようやくファリスは違和感に気がついた。
『あの戦士、さっきから全く口を開いていない。
 まさか口が開けないのか? あの症状は毒ではなく呼吸困難だとしたら……』
その瞬間、テリーは渾身の一撃をまたも弾かれ、大きくバランスを崩した。
『『殺られる!!』』
ファリスとテリーは同時にそう悟ったが、ザックスはまたも間合いを広げるだけに留めた。
テリーの追撃を警戒してすぐに逃走には入らない。
『もう決定的だ。あの男は敵じゃない』
「余裕のつもりか!? 舐めやがって!!」
情けを掛けられたと誤解したテリーは怒り心頭でザックスに向かって雷鳴の剣を振りかざすが、
それをファリスは押し留めた。
「待てテリー!
 剣を引くんだ! そいつは敵じゃない!」
「姉さん!?」
テリーはその言葉に驚いて動きを止める。
「でもあいつから攻撃を仕掛けてきたんだぜ!
 今殺しておかないと……」
「落ち着くんだテリー。俺達は戦闘の気配を追ってここに来た。
 ならその戦闘を行っていたのはアイツの他に誰だ?」
「そ、それは……」
ファリスはテリーを制止し、ザックスの下へ歩いていく。
「あんた、まだ俺達と戦う気はあるかい?
 やるんなら今度こそ二人で決着をつけるけど」
ザックスはその言葉に首を横に振り、バスターソードを地面に突き刺す。
352名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/02(火) 09:20:02 ID:07/ss4Rx
流れにワロタw
353名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/05(金) 23:25:19 ID:PFgsVFiE
sage
354四つの署名 1/6:2005/08/06(土) 16:53:11 ID:xD5GaK7E
ピエールは走りながら必死に次の一手を考えていた。
カナーンからの脱出は成功したものの、黒髪の少年が自分を追っている。
自分は今傷を負った状態だが、一方の相手はどうやら身体への異常はない。
このままではまずいと思い今も逃げているが、やはりこの様な状況では不利だ。
後ろを見ると、黒髪の男との距離は近くなっていた。

決めた。こうなればもう仕方が無い。使用回数がどうのと言っていられる状況ではない。
ピエールは妖術師の杖を構え、一直線に自分へと向かう黒髪の少年に光弾を発射した。


サイファーはアルスを追って走っていた。
アルスの姿は捉えているが、如何せん足が速い。
今は遠めに姿を確認できる程度だ。サイファーは仕方なく彼に止まるよう叫ぼうとしたが、

彼は見た。
不思議な光がアルスを包み込むのを。
そしてアルスがどこかへ消えてしまったのも見た。

「な……何をしやがった!?」
虚空に問うものも、現状は変わらない。
ピエールの姿はもう無く、アルスの姿ももう無く、自分一人が取り残されていた。
しばし呆然としてしまう。だがふと、イザとロザリーの姿が彼の頭を掠める。

サイファーは急いでカナーンへと走った。
アルスが行方不明になってしまったのは仕方が無い。
見たところあれは恐らくワープの類。命をとられたわけではないだろう。
まずは自分は身近にいるあの仲間たちの元へ急がねば。
355四つの署名 2/6:2005/08/06(土) 16:57:59 ID:cQq/iT/B


レオンハルトは森の中にある城を見据え、ゆっくりとそこへ向かっていた。
自分があの狂気に満ちた男に追いかけられ城を脱出してからかなりの時間が経った。
今はもう夕方と呼ばれる時間だと言われても違和感はないだろう。
そして城では何も騒動は起こっていないようだ。城が燃えているわけでも無し、窓が破壊されているわけでも無し。
うんと静かだ。誰もいないかのように、その城は静かにその姿を誇示している。

自分は傷を負っている。回復魔法を幾度か唱えてみたが、それでもまだ足りない。
しかも魔力をただ使い切る結果になってしまいそうになるのを考えると、かなりきついものがある。
ならば城で潜伏したほうが良いだろう。それから自分はフリオニールを追えば良い。

そして城の入り口が森の向こうに見えた時、突然音がした。
人が草の上に落ちてきたような、そんな音。
恐る恐るその音がした方向を見ると、そこには黒髪の少年がいた。

おまけに、眠っていた。


「逃がすか!!」

アルスはカナーンの街からピエールを追っていた。
後ろからサイファーが自分を追っている事は知っているが、それでも止まらない。
止まるわけには行かなかった。自分の追っているあの魔物は確実に何かを知っている。

だが、魔物はこちらを向いたと思うと突然杖を振った。
杖からは光の弾がが発射された。駄目だ、視覚はそれを感知した。だが体が完全に反応できない。喰らった。
意識が遠のいていく。死ぬのではないというのは本能で察した。眠くなっただけだ。
そして自分の体が浮いたかのような……旅の扉にも似た感覚が襲う。成程、これらがあの杖の効果か。ドジを踏んだ。

駄目だ、意識を保てない。終わりなのか、こんな所で僕はまた逃がしてし
356四つの署名 3/6:2005/08/06(土) 17:00:25 ID:cQq/iT/B


レオンハルトは、アルスの体を草むらから普通の地面へと移動させた。
そして顔を軽く叩き、起こそうとする。
反応は無い。もう一度起こそうとする。口が開いた……起きたか?

「むね…やわらか……むにゃ……あ、いい……」

寝言か。しかし「胸、柔らかい」とは何だ。
まさか不埒な夢を見ているんじゃないだろうな?
仕方が無いので体を大きく揺すると、やっとアルスは眼を覚ました。
「柔らかい胸は堪能できたか?」
「は?……お前が助けてくれたのか?」
「そうだ。俺はレオンハルト」
「そうか。僕はアルスだ」
レオンハルトが話しかけると、アルスはきちんと返事を返す。
そして少し寝ぼけていたのだろう。アルスは今更ながら現状に気づいた。

アルスは急いで自分の今までの行動を説明し、今の状況を尋ねた。
だがレオンハルトは、当然アルスの事は先程の姿からしか知らない。
自分が急に現れ、眠っていたということを伝えると、アルスはやっと現状を理解した。
「成程……あの杖の力か」
「まぁとにかく無事ならよかった」
レオンハルトは立ち上がると、また城を見据える。
その姿を見て、アルスはある事に気がついた。
「肩……怪我をしているのか?」

アルスのその言葉を聞き、レオンハルトは思い出したように肩を動かす。
「大丈夫だ、気にするほどではない。それに、俺にはこんなことで魔力を消費する余裕が無いからな」
実際は意外と痛むが、だがここで回復する余裕もない。アルスにはこう言って納得してもらおうとした。
だがアルスは、肩の負傷によって死を招いてしまった仲間を知っていた。
357四つの署名 4/6:2005/08/06(土) 17:01:56 ID:cQq/iT/B

「肩の怪我は一生ものだ……きちんと治した方が良い」

アルスはそう言って、回復呪文を唱えようとした。
だがレオンハルトは「こんな場所で魔力を消費するのは愚行だ」と言ってそれを止めた。
ならば、とアルスは城を指差してある提案をした。
「ならばあそこの城に潜伏して僕がお前を回復させる……それなら大丈夫だろう?」
「成程……丁度俺もそうしようと思っていたところだ。だがアルス、お前は良いのか?」
「正直あの村が心配だが……随分と遠いところに来てしまった。諦めよう」

そう言うと、2人は城へと歩き出した。
太陽はまた少し傾いている。意外に時間を食ってしまったのだろう。

「ところでアルス。フリオニールという男を知らないか?
 銀の髪にバンダナと装飾品をつけ、闘いで剣を使う気持ち褐色の男なんだが……」

アルスは、その言葉を聞いてピタリと足を止めた。
そして怒りを溜めたような、恐ろしい気迫でレオンハルトに尋ねた。

「その男……強力な剣を”右手で持っていた”か……!?」

アルスには自信があった。
確実にその特徴の男と、自分は戦っている。

「知っているのか……?どこで見た!?どこへ行った!?」
「知っているも何も……僕の仲間はそいつに殺された!……そのまま奴は、カズスとやらへと向かった」
「間違いは無いか?」
「間違いは無い」

2人はそのまま、静かに睨み合っていた。
358四つの署名 5/6:2005/08/06(土) 17:03:29 ID:cQq/iT/B
しばらくそれが続いた後。

「そうか、わかった。感謝する……ありがとう」
レオンハルトはそう言って、また城へと歩き出した。
アルスは急いで早足で追いつくと、レオンハルトに言う。
「僕もあの男が気になっていたところだ……丁度いい、手を組む理由が深まった様だな」
レオンハルトは城の扉を目前とし、アルスに言う。
「そうだな……城で何事もなければ、夜にでもカズスに向かおう。だが……」
レオンハルトは足を止めた。そしてアルスへと向き直る。

「お互いが何を目的をし、行動しているかをまだ言っていない」

その言葉に、アルスは「そうだったな」と苦笑する。
レオンハルトも同時に苦笑した。
「僕はこの先、ゲームに乗った人間を殺してでも止める。当然、フリオニールもだ」
「俺もフリオニールを、殺してでも止める。そしてこのゲームを破壊する」
「成程、お互い似ているんだな……面白い。ならば改めて……協力しよう、レオンハルト」
「ああそうだな。こちらこそ宜しく頼む、アルス」


そしてレオンハルトとアルスは扉の向こうへと進んでいった。

その城にはレオンハルトと最早因縁とも呼べるような人間がいるということを、彼らは知らない。
その城にはアルスの探していた仲間と彼が殺すべきだと考えていたある人間の遺体があるという事を、彼らは知らない。

運命は、味方したのか敵対したのか。
それは当然の様に、誰にもわからない。
359四つの署名 6/6:2005/08/06(土) 17:04:42 ID:cQq/iT/B


【ピエール(HP1/5程度) (MP一桁) (感情封印)
(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
 所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
     毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[1]
 第一行動方針:この場から逃亡し、休息
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:カナーンへと戻る
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【現在位置:カナーンの村から北方面】

【レオンハルト(右肩負傷)
 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:サスーン城で潜伏
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】

【アルス(MP4/5程度・疲労)
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
 第一行動方針:サスーン城で潜伏し、後にフリオニールを追う
 第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】

【現在位置:サスーン城内部入り口】
360四つの署名 1/6(修正版):2005/08/06(土) 17:34:39 ID:cQq/iT/B
ピエールは走りながら必死に次の一手を考えていた。
カナーンからの脱出は成功したものの、黒髪の少年が自分を追っている。
自分は今傷を負った状態だが、一方の相手はどうやら身体への異常はない。
このままではまずいと思い今も逃げているが、やはりこの様な状況では不利だ。
後ろを見ると、黒髪の男との距離は近くなっていた。

決めた。こうなればもう仕方が無い。使用回数がどうのと言っていられる状況ではない。
ピエールは妖術師の杖を構え、一直線に自分へと向かう黒髪の少年に光弾を発射した。
それは見事に当たり、相手の動きは鈍くなった。
だがそれでも少年はこちらになおも向かう。恐ろしい執念だ……やられる!
急いでもう一度、妖術師の杖を振った。使い切る事も惜しまずに。
そしてその賭けは……勝ち、らしい。


サイファーはアルスを追って走っていた。
アルスの姿は捉えているが、如何せん足が速い。
今は遠めに姿を確認できる程度だ。サイファーは仕方なく彼に止まるよう叫ぼうとしたが、

彼は見た。彼に光が襲い掛かるのを。
そしてもう一つの不思議な光がアルスを包み込むのを。
そしてアルスがどこかへ消えてしまったのも見た。

「な……何をしやがった!?」
虚空に問うものも、現状は変わらない。
ピエールの姿はもう無く、アルスの姿ももう無く、自分一人が取り残されていた。
しばし呆然としてしまう。だがふと、イザとロザリーの姿が彼の頭を掠める。

サイファーは急いでカナーンへと走った。
アルスが行方不明になってしまったのは仕方が無い。
見たところあれは恐らくワープの類。命をとられたわけではないだろう。
まずは自分は身近にいるあの仲間たちの元へ急がねば。
361四つの署名 2/6(修正版):2005/08/06(土) 17:38:21 ID:cQq/iT/B


レオンハルトは森の中にある城を見据え、ゆっくりとそこへ向かっていた。
自分があの狂気に満ちた男に追いかけられ城を脱出してからかなりの時間が経った。
今はもう夕方と呼ばれる時間だと言われても違和感はないだろう。
そして城では何も騒動は起こっていないようだ。城が燃えているわけでも無し、窓が破壊されているわけでも無し。
うんと静かだ。誰もいないかのように、その城は静かにその姿を誇示している。

自分は傷を負っている。回復魔法を幾度か唱えてみたが、それでもまだ足りない。
しかも魔力をただ使い切る結果になってしまいそうになるのを考えると、かなりきついものがある。
ならば城で潜伏したほうが良いだろう。それから自分はフリオニールを追えば良い。

そして城の入り口が森の向こうに見えた時、突然音がした。
人が草の上に落ちてきたような、そんな音。恐る恐るその音がした方向を見ると、そこには黒髪の少年がいた。

おまけに、眠っていた。


「逃がすか!!」

アルスはカナーンの街からピエールを追っていた。
後ろからサイファーが自分を追っている事は知っているが、それでも止まらない。
止まるわけには行かなかった。自分の追っているあの魔物は確実に何かを知っている。

だが、魔物はこちらを向いたと思うと突然杖を振った。
杖からは光の弾が発射された。駄目だ、視覚はそれを感知した。だが体が完全に反応できない。喰らった。
意識が遠のいていく。死ぬのではないというのは本能で察した。眠くなっただけだ。だがそれでも追う。
しかし鈍った体にまたも光弾が襲いかかった。そして今度は自分の体が浮いたかのような……旅の扉にも似た感覚が襲う。
成程、これらがあの杖の効果か。ドジを踏んだ。2度もあんなものを喰らってしまうとは迂闊過ぎた。

駄目だ、意識を保てない。終わりなのか、こんな所で僕はまた逃がしてし
362四つの署名 6/6(修正版):2005/08/06(土) 17:39:56 ID:cQq/iT/B


【ピエール(HP1/5程度) (MP一桁) (感情封印)
(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
 所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード
     毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]
 第一行動方針:この場から逃亡し、休息
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す

【サイファー(右足軽傷)
 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ
 第一行動方針:カナーンへと戻る
 基本行動方針:ロザリーの手助け
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【現在位置:カナーンの村から北方面】

【レオンハルト(右肩負傷)
 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:サスーン城で潜伏
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】

【アルス(MP4/5程度・疲労)
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
 第一行動方針:サスーン城で潜伏し、後にフリオニールを追う
 第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】

【現在位置:サスーン城内部入り口】
363名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/06(土) 17:57:03 ID:ACxp+F3v
ピエールは朝からずっと戦ってて、とにかく早く決着付けて逃げるなりなんなりしようとしてたから、
夕方はちょっと進みすぎかもしれない。

まあ、そうだとしても、アルスは木の上に飛ばされてそこで寝ていた、にすれば済む話だけどね。
364名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/08/07(日) 06:49:19 ID:9vWpFszx
>>361の続きです

まうのか。
それは駄目だ、何故なら、僕はマーダーを見逃しすぎた。
このままでは…勇者失格だ…。
僕はそ

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365名前が無い@ただの名無しのようだ