ff6 - 09 narche
「あの…」
「…大丈夫だ」
男は息を吐いた。何かを決めたように、ティナを見据える。
「俺が守る。記憶がなくても、必ず守る。見捨てたりしない」
ティナを安心させようとしているというよりは、寧ろ自分に言い聞かせるような口振りだった。
それでも、ティナはそこに真実を感じて、頷く。
ティナの反応に、男は満足そうに笑った。
「俺はロック。トレジャーハンターだ」
「…トレジャーハンター?」
「そう。」
トレジャーハンターって言うんだ、とロックは繰り返す。
彼は、ティナよりもずっと年上なのだろうが、全く威圧感を感じない。役人や軍人特有のにおいがしないからだろうか。
落ち着いて周りをよく見ると、洞窟の中らしい。夜だと思ったが、外からの明かりは見えない。
今は一体何時なんだろう。何度も目覚めたせいで、時間の感覚が曖昧だ。
「ここは?」
「坑道。ティナは多分、ここに繋がる穴に落ちたんだ」
よく怪我をせずに済んだ、と頭上を見上げた。そこには無音の闇しかない。どれほどの高さだったのだろう。
「ティナ、連れて行きたいとこがある」
ロックは正面からティナを見ている。意志の強そうな眼だと思った。
「どこへ?」
「フィガロ」
ロックは、まるで内緒のおまじないを口にする子供のような笑みを、色の薄い唇に乗せた。