たまにはダメージ回復をリアルに。
窓から降り注ぐ月光が、寝台に横たわるアリーナを包み込む。
生命力の残滓が脊髄の中心から沁み出る感覚を得て、
アリーナの唇は密やかな吐息を洩らした。
ぼろ雑巾のように酷使された彼女の筋繊維は互いに引かれあい、
昔日のそれよりもさらに強固でしなやかな姿を取り戻しつつあった。
ドラゴンライダーの操る竜に噛みちぎられた太股の断面からは、
陽光に向かう若木さながらに大腿骨が伸びてきた。
高熱のガスが直撃して炭くれとなった右手の先には、
早くも薄紅色の爪が五つ現れ出ていた。
床にだらしなく垂れていた錆色の腸は瑞々しさと弾力を取り戻し、
腹に開いた傷口を目指してうねうねと寝台を這い上がった。
長剣を深々と突き込まれた眼窩の中に
温かい液体がじんわりと満たされる感触を夢見心地に感じながら、
アリーナの意識は闇の深淵に落ち込んだ。
「おはようございます。ゆうべはよくおやすみでしたね」