(いきなり)僕はドラクエで人生を学んだといっても過言じゃないんです!
今日は本当に楽しみにしてきたんです!
まず、お聞きしたいんですが、今回も300万本をすでに出荷し、
20〜30代では僕のようにドラクエで人生を教わったという人間も多いんです。
こういうファンに会うとどう思われますか?
「気恥ずかしいですね。どうリアクションしていいかわかんないんですよ、ははは(笑)。
あんまり誉められると照れくさいですしね。かといって文句言われるのも気分よくないですけど(笑)」
ではちょっと落ちついてインタビューさせていただきます…。
ドラクエは毎回テーマを決めてから作るそうですが、8も決めていたんですか?
「今回は『どこまでも歩いて行ける世界』っていうのがテーマなんです。
ゲームのなかでホントに旅をしてる感じが、ついに出せたんじゃないかと思ってます。
プレーヤーの思った通りに歩け、画面で見えるところには全部行けますからね」
ネットの掲示板ではさっそくプレーヤーの感想が書き込まれてますよ。
かなり好評だと思いますが…。
「僕、けっこう見ちゃうんですよ。たまに痛いとこ突かれててね、
見なきゃいいんだけど、喜んだりちょっとムカっとしたりしてね(笑)」
今回ある意味で話題の的になっているのが、主人公と旅する女性キャラ「ゼシカ」だ。
ドラクエ史上初(?)の巨乳キャラなのである。戦闘シーンともなれば、お色気大爆発(笑)なのだ。
『ドラクエ8』で「ここを見てほしい」というところはどこですか?
ファンには「ゼシカ」が話題ですが(笑)
「今回、画面が3Dになったんで見せ場だらけなんですが、特に戦闘シーンなんか、
モンスターも主人公も画面上ですごく動くんですよ。興奮するデキなんです。
ゼシカについて言うとね、ホントにレベルファイブ(開発を担当したソフト会社)が
頑張ってくれちゃって、ここまで作んなくてもいいのにっていうくらいセクシーに作ってくれて…。
製作中には動きがちょっとキワドイからもうちょっと抑えてよ、みたいなやり取りも結構ありました(笑)」
8のテーマだという「どこまでも歩いて行ける世界」。
7までと比べ飛躍的にゲーム内での自由度も高まっているのだが、
ドラクエ暦19年の写写丸(ライター?)もビックリしたのが、8での新システム「錬金釜」だ。
ゲーム内のアイテムを、別のアイテムと「錬金釜」で合体させることにより
未知の新アイテムを生み出せるこのシステムは、従来のドラクエでは考えられなかったもの。
本当にワクワクする反面、これまで常套手段だった「不要になったアイテムを売ってお金を作り、強力なアイテムを買う」
というやり方が通用せず、8はドラクエ史上でもっともお金で苦労するゲームともいわれている。
いつか錬金で使うかも…、と思うとアイテムを売れなくて困ります(笑)
「ホントは逆に錬金でお金稼ぎをしてもらおうと思ってたんですよ。
安いアイテムを組み合わせて高いアイテムを作れるようにして、それを売ってお金儲けをする、みたいな。
そのかわり、倒したモンスターから手に入るお金を少なくしたんんです。
でも錬金のおかげで、みんなかえってアイテムを売らなくなって、かなりお金がきつくなっちゃってね(苦笑)。
開発の終盤、ゲームバランスを調整するときに、『これはキツすぎる』と思って、
多少はモンスターの落とすお金を増やしてはいるんですけど、それでもキツイみたいですね。
でも、錬金をやらなくてもクリアはできるようになってるんです。
自分の好き勝手にプレーしてクリアできないということは絶対ないので安心してください!」
『ドラクエ3』以後、シリーズの大きな特徴になっていたのが「転職」システムだ。
キャラクターが「職業」を変えることで、それまでは使えなかった特技や魔法を覚えられるシステムだったが、
その転職を行う場所が「ダーマの神殿」というドラクエファンにはお馴染みの場所だった。
ところが、8ではダーマの神殿がなくなった。
個人的には8でダーマの神殿がなくなったのは残念なんですが…。
「前作の7だとパーティのキャラクター全員を『勇者』っていう最強の職業にできたんですよ。
そうすると結局みんな自分のキャラを『勇者』にしちゃうんで、誰がやっても同じになっちゃうんですね。→
だから8ではプレーヤーの育て方でキャラクターの個性が大きく変わるようにしたかったんです。
友達が育てたゼシカや主人公はこうだけど、僕の育てたゼシカや主人公はこうだみたいな。
レベルを上げまくっても、すべてのスキル(職業ごとの特技)を修得できないようになってるんで、
絶対に人と違いが出てくるはずです」
主人公は今回の8でも画面で一言もしゃべりませんね。
画面で言葉が出てくるのは「はい」「いいえ」の選択場面くらいです。
個人的には「高倉健か、お前は」なんて画面上の主人公にツッコんだりしてるんですが…。
「やっぱり主人公はプレーヤーの身代わり、プレーヤー自身である、というのがドラクエなんです。
だからゲームのなかで主人公をどう動かすか、今回は悩んだんですよね。
最初にレベルファイブが作ったイベントシーンでは、主人公が過剰に演技しちゃってたんです。
そうすると、キャラクターが乖離しちゃうんですよ、プレーヤー自身と。
例えば、主人公が何かで驚いて思いっきり腰を抜かすシーンとか出てきたら、
それを見たプレーヤーは『なんだこいつ、こんなの俺じゃない!』って思っちゃうんですよね。
だから、微妙なところでそういう演出をカットしてもらったりもしました。
キャラがプレーヤーの感情と遊離しないようにして一体感を持ってほしいと思ったんです。
その分、周りのキャラには結構演技させてるんですけどね。
とにかく主人公になりきってドラクエの世界を自由に歩き回ってほしいんです、8は」
最近のRPGでは、ゲーム中のキャラクターが実際に声を出してしゃべるというものが一般的になってきたんですが、
今後、ドラクエでキャラクターが実際の声でしゃべるようになる可能性はあるんでしょうか?
「じつは声も悩みどころなんですよ。
例えば『ファイナルファンタジー10』なら、キャラクターが声を出して話すことが、
すごくいい効果になっているんです。ただドラゴンクエストっていうのは、
物語が仲間内だけじゃなくて、町の人間と会話することで進んでいくんです。
そうすると、重要なことを教えてくれる町の人Aは声でしゃべって
そうじゃない町の人Bには声が入ってないっていうのはなんかいやだなって思ったんです。→
じゃあ登場する人間全員に声を入れればいいかというと、逆にプレー時間が長くなっちゃう。
文字なら一瞬で2秒もあれば読めるセリフが、しゃべると20秒かかるとか…。難しいところですよね」
ゲームの構想を練るときはどこから決めていくんですか?
「作品ごとに違うんですよ。
8に関して言うと、最後の敵は何をしようとしてるヤツなんだろうというところから考えはじめたんです。
それに『世界を自由に歩き回れる』ことでプレーヤーの自由度が増して、逆に何でもできてしまうんで、
ストーリー自体はわりとわかりやすいほうがいいなと思ったんです。
最初からある程度目的がしっかりわかっていれば、逆に寄り道しやすいし、8の世界を堪能できるだろうと。
でないと、世界はだだっ広いわ、目的もわからないわじゃ、途方に暮れちゃいますからね。
それで、誰かを追うという明確な目的を作ったんです。
でも、その目的から外れるのもプレーヤーの自由。
わざと外れていろんなとこに行ってみる人も多いと思うんです」
堀井さんが一番好きなモンスターというのはあるんでしょうか?
「そうですね、今回はプリズニャンがかわいいですけどね(笑)」
僕も小学6年生でドラクエ1に会って以来、ずっとやりつづけてきました。
「正直に正しく生きていれば必ず報われる」、
そんな人生訓をドラクエで学んでここまで生きてきたんですが(笑)、
そういう清く正しくみたいなドラクエ的価値観は堀井さんのなかにあるものなんですか?
「いやぁ、結果的にそうなってるだけですよ(笑)。
1を作るときにとにかく『王道』のゲーム作りでいこうと思ったんですよ。
キワモノに走ることは簡単なんだけれでも、それはやめようと。
やっぱり(ゲームも)気持ちよく終わりたいじゃないですか」