フローラですが 何かご質問は?

このエントリーをはてなブックマークに追加
839ビアンカ ◆TJ9qoWuqvA
 >>830 [返答 No.237]

 メラの魔法の原理は、前述した通り、火の下位精霊との契約によるものよ。
 貴方も大気中に魔素の充満した私達の世界に来て、魔道学を修め、契約を結べば
 使えるようになるかも知れないわ。

 ところで以下宗教的な話になるので、苦手な人は飛ばしてかまわないけど、
 私達の使う 『魔法』 とは、呼称こそ同じだけれど、
 エジェウス教 (キリスト教) の言う 『魔法』 とは異なる存在なの。

 そもそもキリスト教は、超能力や魔法の実在について否定はしないけれども、
 人間にそれを可能とする、秘められた潜在能力があるとは一切認めていない。
 人間は悉皆超自然の力など持たず、聖書中に書かれる奇蹟や超自然の現象の殆どは、
 神側または悪魔側に祈る事によって、目に見えざるそれらの存在に力を貸して頂き、
 彼らによって “齎されたもの” であるというスタンスを保っている。

 つまり神の加護や悪魔の助力が無い限り、預言者であれ魔道師であれ所詮はただの人、というわけ。

 また神側は、預言者の個人的な願望や欲求を満たすためには決して力を貸さない。
 神にとって預言者はあくまで自分の手駒にしか過ぎず、
 神の命によって動いている事を証明したり、与えられた役目を果たす為にどうしても必要な時以外には、
 どんなに祈ろうが奇跡を起こして貰える事は無いのよ。
  (また、神側にもその義務は無いのだからね)

 一般信徒の神に対する祈りに対しても同様で、神側は聞きはしても力を貸す事はない。
 現世の問題は現世にいる自分たちで解決しなさい、というわけ。
 だいいち奇跡、験力、法力などと呼ばれる超自然の力など、現世で暮らす者たちには必要ない。
 現世で生きる為に必要なものは、人ははじめから全部与えられているのだから。
840ビアンカ ◆TJ9qoWuqvA :2005/04/22(金) 01:31:22 ID:0IZ9NdhP
 対する『魔法』とは、その名の通り 『悪魔の掟』 を指す忌まわしき存在。
 神を裏切るという最悪の罪を犯し、魔に魂を売って、背徳の契約を結ぶ事により貸与される法力だわ。

 神の奇蹟と違って魔法は、スプーンを曲げるとか人を殺すとか、そうした下らない目的の為に恣意的に使う事ができる。
 死の病を癒す事もできるし、手を使わずに物を動かしたり、発火したり、天使や聖母の幻影を見せる事もできる。
 ──そこだけを見れば、非常に便利で有用な力のようにも見える。

 けれど無償の存在なんてありはしない。魔法には、目に見えない “代償” を支払わなくてならない。
 MP (マジックパワー) なんて曖昧で、回復可能な便利な概念ではない。魂の事よ。
 悪魔に縋り、あるいは利用している心算でその力を借りて、おのれの願望を満たせば満たすほど、
 現世での命だけでなく、死後の世界におけるそれをも魔に奪われる事となるの。

 魔法とは、一般にメルヘンチックで素晴らしいものというイメージがあるけれど、
 キリスト教的にもユダヤ教的にもイスラーム教的にも仏教的にも、実際は全くの逆。
 聖書を読めば解る通り、悪魔と契約を交わした者、悪魔と結んで奇跡を起こした者、魔術を使う者は、
 『悪の縄目に縛られたる者』『重罪人』と看做され、神に許されること無く、死後永遠に地獄の炎で焼かれる事となる。
 魔術とは、それほど罪深いものなのよ。
 (女の子が軽い気持ちで日常的に行う 「おまじない [漢字で書けば“呪い”]」 も、広義では魔術の一種といえるわね)

 悪名高き中世の 『魔女狩り』 も、実態は言いがかりをつけて女性をレイプしたり拷問したりするためのものだっとしても、
 キリスト教組織にとっては当時猖獗を極めた魔術という迷妄、神への背徳行為を取り締まるための、
 ごく当然のものだったらしいわね。
 もっとも、その苛烈な弾圧が教会組織への反発を招き、水面下でさらなる魔術の信徒を生んだのだけれど。
841ビアンカ ◆TJ9qoWuqvA :2005/04/22(金) 01:39:00 ID:0IZ9NdhP
 ところで、『魔法』は、自称 『魔術師』たちの言によれば、
 自称 『天使』 や 『精霊』 と呼ばれる目に見えない在と契約を結び、人の幸せを願い、
 神聖なる儀式に則って行われるような『白魔術』と、
 人を呪う事や殺す事、死者を蘇生させる事を目的に、悪魔に祈り、生贄を捧げ、羶血を飲み干し、
 藁人形に釘を打ち、淫乱なサバトを行うイメージのある 『黒魔術』 とに大別されている。
 一般に、前者は清潔で善なる行為、後者は頽廃的で呪われた悪魔の所業と看做されている。
 (FFなどでも回復・補助系魔法は『白魔法』、破壊的な間法は『黒魔法』に分類されているわね)

 そのため、現実世界で実際に行われる魔術は圧倒的多数で白魔術が占めている。

 けれど、それは魔術師が自己正当化するたるの方便に過ぎず、
 実際には神の目から見れば両者とも全く同じもの。呪われた所業に変わりはないのよ。

 なぜなら彼らが契約を結び、啓示を与え、奇蹟を引き起こす存在──
  『精霊』 『守護霊』 『天使』 『聖母マリア』 『悪霊』 『騒霊』 『エンティティ』 『宇宙神霊』 『高次元の存在』 ──
 言ってしまえば全て同じ存在であり、その正体は古くから『悪魔』と通称される、肉体なき霊人たちの事だからよ。 
 聖書にも、悪魔と呼ばれる者たちは、『サタンでさえ、光の天使を装うのです』 (コリント人への手紙より) と
 名言されているようにね。
842ビアンカ ◆TJ9qoWuqvA :2005/04/22(金) 01:48:40 ID:0IZ9NdhP
 エジェウス教 (キリスト教) をはじめ、世界四大宗教において、伝統的に神は人に対して厳正かつ冷酷で、
 悪魔は優しく甘い。 
 神は調停者・監視者であり、人や現世には滅多に干渉しないが、悪魔は好んで干渉し、個人的な願いを叶えてやる。
 神は聖典の中で何万という人々を直接殺害し、焼き殺し、蒸発させ、幾つもの都市や国家を滅亡させており、
 預言書においても天災や御使いによって全人類に壊滅的な被害を与え、人間社会の秩序を覆しているけれど、
 悪魔が直接的に人を殺す描写はない。
 また悪魔は、神に対抗し得る力を持った反対勢力でも何でもなく、神側にしてみれば虫けらのような
 無力な存在に過ぎない。
 本人はその心算はなく、神に逆らい欲望に満ちた者たちを迷妄で惑わして、殺人や邪淫を助長し、
 背徳の道へと落としているだけなのだけれど、結局は神の掌の上で踊らされ、
 人を善きものと悪しきものに分けるために使役されるだけの “道具” に過ぎない。
 
 ──ファンタジー小説やRPGで、物語を構成するための便利な役者として歪められて伝えられる
 神と悪魔、及び魔法の誤ったイメージは捨て去って、実際にそれらが古代宗教ではどう捉えられ、
 どう伝えられているのか、その辺りはよく踏まえておいて欲しいわね。 
 
 なんだかオカルト臭い話になってしまったけれど、ファンタジーRPGで 『魔法』を語るには外せない話だわ。
 大目に見てね。