【筋肉馬鹿】ローレシア王子を語る【もょもと】

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234名前が無い@ただの名無しのようだ
おれは今、二つの棺桶を引きずって歩いている。人々は顔をしかめ、
おれを避けて通る。あの血に餓えたモンスター達ですら、近寄って
こない。だが、それも当然だ。鼻がもげそうなほど凄まじい腐臭が
おれの周りをただよっている。実際、おれも慣れるまでにずいぶん
と嘔吐したものだ。

サマルとムーンが戦いの中で死んでから、2ヶ月はたったと思う。
正確には解らない。もう、日にちを数えるのは止めてしまった。
二人の肉体はすでに完全に腐り果てていて、蘇生は不可能だろう。
無理矢理生き返らせたとしても、くさったしたいのような己の体
に二人は絶望し、嘆き、おれを憎むだろう。おれには、そんな
非道な真似はできない。

本当は、すぐさま生き返らせたかった。だが、おれには彼らを生き
返らせるような金はなかった。しかも、おれにはサマルのような
蘇生呪文は使えない。とんだロトの子孫だ。魔力のない子孫など。

親父が、おれを疎ましがっていたのは知っている。ロトの子孫に
本来あるべき魔力がないから、王妃の不貞の子と国中で噂されて
いるのも知っている。ハーゴン討伐は体のいい厄介払いだったのだ。

道中で朽ち果てれば、国の為に命を捨てた悲劇の王子と語り継がれ、
もし万が一ハーゴン討伐が成功すれば、世界を救った王子をこの世
に送り出したローレシアは、世界一強大な国になることだろう。
どちらにしろ、親父にとっては都合が良いわけだ。
235名前が無い@ただの名無しのようだ:04/11/30 00:51:33 ID:cQZrBS4l
だが、それももうどうでもいいことだ。サマルとムーンは死んだ。
二人の肉体は腐り果てて、復活はもうできない。このまま、おれが
帰還すれば、二人の死の責任を負わされる事になる。サマルトリア
の王位後継者とムーンブルグ王家の唯一の生き残りを死なせてしま
ったわけだ。謀反者として処刑されるだろう。親父の歪んだ嘲笑が
目に浮かぶ。

おれは、今ロンダルキアの洞窟に向かっている。二人が死んでから、
おれはずいぶん強くなった。皮肉なものだ。あの時のおれに今の
強さがあれば、二人を死なせることもなかった。

伝説によると、ロトは魔王を倒した後、消息を絶ったという。
肉親を残し、姿を消したのだ。おれもハーゴンを殺せば、親父の
呪縛から逃れられるのか。その希望が、たったひとつ、今のおれを
突き動かしている。





目の前にロンダルキアの暗闇が広がっている。

向こう側に、光はあるのだろうか。