62 :
ドラクエバカ:
age
涙を拭いて鏡の前で笑顔の練習をして、機織場に向かう。
出会う村の人たちに、元気に挨拶をするわ。
「おはようございます!」
「おはよう、ターニアちゃん」
そう、私は今日も元気。
そう自分に暗示をかけて、いつもの角を曲がったところで、突然腕を引っ張られた。
「ランド……」
もう一度笑顔を作り直して、朝の挨拶。
「おはよう、ランド」
だけど、彼は真剣な顔で言ったわ。
「ターニア。ちょっと時間くれないか」
「でも、私、機織場にいかなきゃ」
「おばばには話をつけておいた。とにかく来い」
雪割草の咲くがけの淵で、ランドは言った。
「なあ、ターニア。大丈夫か?」
いきなりの質問に私は戸惑ったわ。
「大丈夫って、何が」
「ほら、あいつ村を出て行ったじゃないか。さびしいんだろ?」
「そんなにさびしくはないよ。元に戻っただけだし。一人暮らしには慣れてる……」
「強がるんなよ。他の奴の目はごまかせても、俺の目はごまかされないぜ。伊達に
お前を見ているわけじゃない」
私の心臓がとくんと鳴った。
「なあ、俺じゃどうしてもあいつの代わりになれないのか?」
「……ごめんね……私、機織場に行く」
そう言って私はきびすを返す。
ごめんね。
私、いやな娘だね、ランド。
65 :
ドラクエバカ:03/09/24 01:16 ID:qy2lFzp8
>>63 久し振りの投稿ありがとう。
嬉しいなあ。
最近ずっと投稿がなかったので、このままではマズイなあと思っていました。
本当にありがとう。
あせらずに頑張って下さい。
やば、久し振りのカキコなので、ageてしまった。
67 :
64:03/09/26 01:29 ID:vBj/BuWx
誰かと間違えられてるのかな…
久しぶりも何もはじめて書き込むのですが。
新しいSSでも投稿しようか。
>67
ごめんそういう意味じゃなくて
最近誰もカキコしてくれていなかったので。
言っただけですから。
それに勘違いもしてませんから。
是非とも続きを書いてくれたら嬉しいです。
気持ちが落ち着かないまま機織場に向かうと、白壁のドアの前でおばちゃんが待っていた。
「ターニア、来たかい」
「うん、ごめんね。ちょっとおくれて」
ターニアは足が汚れていないか下を向いて確認すると
「何かあったのかい」
おばちゃんが聞いてきた。
「ううん、ただ目覚めが悪かっただけ。別になんでもないから」
「そう、それならいいんだけど。あんたも頑張りすぎて体を壊さないようにね」
「え……誰か病気なの?」
ターニアは顔を曇らせた。おばちゃんは腰をおさえて笑っていた。
「そう、腰が病めてしょうがないんだよ。痛くて痛くて。歳だねぇ、あたしも」
おばちゃんはそう言ってうつむき加減に室内へ入っていった。
自分の持ち場について軽く糸を摘む練習を始めると、急に朝の眠気が舞い戻ってきた。
「ふああ……」
あくびが出そうになって慌てて口を押さえる。周りに見られなかったかしらと横目でうかがうと、
皆真剣な顔して仕事に取り組んでいた。
(あ、しっかりしなきゃ)
ターニアは思い直して、口元を引きしめた。でもすぐに緩やかな次の誘いが頭の中を浸していく
ついさっきまでランドのことであんなに思いつめていたのに、もう気が逸れて緊張感を失くすなんて
自分は薄情なのかも、とターニアは重いまぶたをこじ開けて悩みだした。
あれェ〜、続きないの?
>>72 (・3・) エェー 長文は苦手ですYO!
今日もまた朝日が昇る。
もう少しで村で一番早起きのジョージおじいさんが畑を耕しだして、それからしばらくして
すずめがちゅんちゅんさえずりだすんだわ。
それから卵を焼いても、お兄ちゃんは朝寝坊さんだから間に合う。
だからもうちょっとだけお兄ちゃんの寝顔を見ていよう。
…私が眠らなくなって、もう3ヶ月になる。
夜になっても全然眠くならないの。
初めのうちはみんな心配してくれた。
お兄ちゃんはらりほーとかいう眠りの呪文をかけてくれた。
ランドは眠り薬をさがしてきてくれたし、ジュディはよく眠れるお香をくれたわ。
私も何とか眠ろうとして、眠くなくてもベッドに入って目を閉じてた。
でも、このごろは慣れちゃって、気にしなくなっている。悩んだって仕方がないもの。
夜はお兄ちゃんの寝顔の観察をしたり、モコモン(あ、私の飼っているファーラットの
名前ね)と一緒に星を見たりしてる。
眠れないのは不自然だけど、その不自然さもなんとなく日常に溶け込んだ日々。
そんな普通の日が今日も続くんだと思っていたんだけど。
第一章
とんとん。
お兄ちゃんを畑に送り出して、朝ご飯の後片付けをしていると、扉を叩く音がした。
はーい、と答えながら首をひねった。
うちを訪れる人はほとんど決まってる。
ランドか、ジュディか、村長さんか、隣のジェシカおばさんくらい。
だから、ドアの叩き方だけで誰が来たかわかるんだけど、今の音は全然心当たりがない。
ちょっと用心してドアを開ける。
「こんにちは。お久しぶりね、ターニアちゃん」
「えっ?」
私は初め信じられなかった。
低い背を補うように、頭の上で束ねられたにんじん色の髪と、くりくりした杏色の瞳。
たしかに知っているけれど……
「どうしたの、ターニアちゃん。そんなことして。あたしのこと忘れちゃった訳じゃないよね?」
「ううん。バーバラさん……でしょ。でも」
「でも?」
「バーバラさん、この世界を直しているんだって、お兄ちゃんから」
そう、魔法都市カルベローナの末裔である彼女は、魔王に傷つけられたこの世界を
ゼニスっていう神様と一緒に修繕しているはずなのよ。
そんな人が何故ここに?
「うん、そうなんだけど、ちょっとお休みもらってきたんだ。魔王はいなくなってるし、もう
あたしがいなくても事前に回復するくらいになってるしね」
「そうなんですか。あ、でもお兄ちゃんは畑に出てて。呼んできますね」
ところが、私が行こうとすると、バーバラさんは私の手をつかんで、引き止めた。
「ううん、いいの。今日は彼じゃなくあなたに用事があって来たんだから」
「私に?」
(続)
いかん、本題に入る前に時間切れ…
アフターストーリーキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!
なんかようやくこのスレも活気が出てきたなあ。(まだ早いか)
一時はどうなるかと思ったけど、皆さんのおかげです。
これからも宜しくお願いします。
保守するか
ほ
第二章
私はバーバラさんを家の中に入れると、お茶を出した。
「粗茶ですが」
「ありがと」
「あの、それで、私に話って何ですか?」
私がそう聞くとバーバラさんは急に険しい顔つきになった。
「ねえ、ターニアちゃん。どうして眠らないの?」
「え?」
「知ってるわよ。このごろずっと起きてるのは。隠したって無駄よ?」
「別に隠しているつもりじゃ……でも、確かにこのごろ眠れないけど……」
「眠れない?違うわ。あなた、眠りたくないだけでしょ。意気地なし。ひとりぼっちになるの
が怖いから、逃げてるのよ」
バーバラさんの語調が強くなっていく。
……眠りたくない?
……意気地なし?
……独りぼっち?
…
…
……胸がちくっと痛む……
?
私は何がなんだか訳がわからなくて、バーバラさんに問うた。
「あの、話が見えないんですけど……」
「ふーん、そうなの。まあいいわ。ちょっと付き合って。しっかり認めさせてあげるから」
第三章
バーバラさんは、私の手を引いて外に出ると、なにやら呟いた。
と、バーバラさんと私の身体が宙に浮く。
え?と思うまもなく目の前の景色が変わり、気が付くと私達は城の前に立っていた。
「……ここは?」
「レイドック城。見覚えあるでしょ?」
え…と、ある……ううん、気のせいだ。来たことないもの。
それをバーバラさんに告げると、ため息をつかれてしまった。
「あなたも強情ね。なるほど、山の女は情が強いわ。なんか違う気がするけど」
門の脇にいた兵士さんが私達の方を見る。
若い兵士さんが槍を構えて道をふさごうとしたけれど、年寄りの兵士さんに何か耳打ち
をされて、また道を開けてくれた。
お城は何度来てもドキドキしちゃう。
あれ?
「どう、思い出した?」
「何を?」
「……まあいいわ」
バーバラさんは私の手を引いて、ずんずん城の奥へ進んでいく。
「おや、バーバラさん」
野太い声のした方を見ると、兵士長さんがいた。
「こんにちは。お久しぶりね、ソルディさん」
挨拶するバーバラさんに私はあれっと思った。
「ソルディ?この人はトム兵士長さんでしょ?」
「だんだん思い出してきたみたいじゃない?じゃあ、王妃様にお会いしましょうか」
王妃様?
頭の中にその顔が浮かんでくる。
それは……
「嫌!」
私は耐え切れなくなって叫んだ。
「お願い。もう許して!何も見たくない、聞きたくない!」
でも、その願いは叶えられなかった。
「随分と嫌われたものね、私も」
聞こえてしまった、凛とした声。
シェーラ様。
お兄ちゃんと同じ色の瞳。
お兄ちゃんと同じ凛々しい鼻筋。
お兄ちゃんの、本当のお母さん。
第四章
お兄ちゃんは、本当はレイドックの王子様。
出会ったのは三年前。
血まみれで倒れていて、何とか息を吹き返したけれどしばらくの間記憶喪失で。
その間だけ、彼は私のお兄ちゃんで。
だけど、もう一人の彼が村に来て、記憶を取り戻して。
ひとりぼっちには慣れてるよ、前に戻っただけだから平気。
今はさびしいけれど、いつか忘れられるから。
そう強がって、私は彼を見送った。
だけど……だめだった。忘れられなかった。
だって、夢の中では彼はお兄ちゃんのままだもん。
いつも一緒にいられるもん。
目覚めたときの寂しさが怖くて、私は目を覚ますのをやめた。
そして、本当のことを忘れたの。
それなのに。