ターニアちゃんの純愛小説

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62ドラクエバカ
age
63勝手に28の続き:03/09/24 00:38 ID:O/XZ4XUW
涙を拭いて鏡の前で笑顔の練習をして、機織場に向かう。
出会う村の人たちに、元気に挨拶をするわ。
「おはようございます!」
「おはよう、ターニアちゃん」
そう、私は今日も元気。
そう自分に暗示をかけて、いつもの角を曲がったところで、突然腕を引っ張られた。
「ランド……」
もう一度笑顔を作り直して、朝の挨拶。
「おはよう、ランド」
だけど、彼は真剣な顔で言ったわ。
「ターニア。ちょっと時間くれないか」
「でも、私、機織場にいかなきゃ」
「おばばには話をつけておいた。とにかく来い」
64勝手に28の続き:03/09/24 00:55 ID:O/XZ4XUW
雪割草の咲くがけの淵で、ランドは言った。
「なあ、ターニア。大丈夫か?」
いきなりの質問に私は戸惑ったわ。
「大丈夫って、何が」
「ほら、あいつ村を出て行ったじゃないか。さびしいんだろ?」
「そんなにさびしくはないよ。元に戻っただけだし。一人暮らしには慣れてる……」
「強がるんなよ。他の奴の目はごまかせても、俺の目はごまかされないぜ。伊達に
お前を見ているわけじゃない」
私の心臓がとくんと鳴った。
「なあ、俺じゃどうしてもあいつの代わりになれないのか?」
「……ごめんね……私、機織場に行く」
そう言って私はきびすを返す。
ごめんね。
私、いやな娘だね、ランド。
65ドラクエバカ:03/09/24 01:16 ID:qy2lFzp8
>>63
久し振りの投稿ありがとう。
嬉しいなあ。
最近ずっと投稿がなかったので、このままではマズイなあと思っていました。
本当にありがとう。
あせらずに頑張って下さい。
66ドラクエバカ:03/09/24 01:20 ID:qy2lFzp8
やば、久し振りのカキコなので、ageてしまった。
6764:03/09/26 01:29 ID:vBj/BuWx
誰かと間違えられてるのかな…
久しぶりも何もはじめて書き込むのですが。







新しいSSでも投稿しようか。
68ドラクエバカ:03/09/26 02:48 ID:slTcDYW6
>67
ごめんそういう意味じゃなくて
最近誰もカキコしてくれていなかったので。
言っただけですから。
69ドラクエバカ:03/09/26 02:54 ID:slTcDYW6
それに勘違いもしてませんから。
是非とも続きを書いてくれたら嬉しいです。
70ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/09/26 16:58 ID:UZqaNDZF
気持ちが落ち着かないまま機織場に向かうと、白壁のドアの前でおばちゃんが待っていた。
「ターニア、来たかい」
「うん、ごめんね。ちょっとおくれて」
ターニアは足が汚れていないか下を向いて確認すると
「何かあったのかい」
おばちゃんが聞いてきた。
「ううん、ただ目覚めが悪かっただけ。別になんでもないから」
「そう、それならいいんだけど。あんたも頑張りすぎて体を壊さないようにね」
「え……誰か病気なの?」
ターニアは顔を曇らせた。おばちゃんは腰をおさえて笑っていた。
「そう、腰が病めてしょうがないんだよ。痛くて痛くて。歳だねぇ、あたしも」
おばちゃんはそう言ってうつむき加減に室内へ入っていった。


自分の持ち場について軽く糸を摘む練習を始めると、急に朝の眠気が舞い戻ってきた。
「ふああ……」
あくびが出そうになって慌てて口を押さえる。周りに見られなかったかしらと横目でうかがうと、
皆真剣な顔して仕事に取り組んでいた。
(あ、しっかりしなきゃ)
ターニアは思い直して、口元を引きしめた。でもすぐに緩やかな次の誘いが頭の中を浸していく
ついさっきまでランドのことであんなに思いつめていたのに、もう気が逸れて緊張感を失くすなんて
自分は薄情なのかも、とターニアは重いまぶたをこじ開けて悩みだした。
71ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/09/26 17:01 ID:UZqaNDZF
ごめん、>>67読んでなかった
あれェ〜、続きないの?
73ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/09/26 18:00 ID:UZqaNDZF
>>72
(・3・) エェー  長文は苦手ですYO!
74蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/09/27 22:08 ID:9Ki1j3zG
今日もまた朝日が昇る。
もう少しで村で一番早起きのジョージおじいさんが畑を耕しだして、それからしばらくして
すずめがちゅんちゅんさえずりだすんだわ。
それから卵を焼いても、お兄ちゃんは朝寝坊さんだから間に合う。
だからもうちょっとだけお兄ちゃんの寝顔を見ていよう。

…私が眠らなくなって、もう3ヶ月になる。
夜になっても全然眠くならないの。
初めのうちはみんな心配してくれた。
お兄ちゃんはらりほーとかいう眠りの呪文をかけてくれた。
ランドは眠り薬をさがしてきてくれたし、ジュディはよく眠れるお香をくれたわ。
私も何とか眠ろうとして、眠くなくてもベッドに入って目を閉じてた。
でも、このごろは慣れちゃって、気にしなくなっている。悩んだって仕方がないもの。
夜はお兄ちゃんの寝顔の観察をしたり、モコモン(あ、私の飼っているファーラットの
名前ね)と一緒に星を見たりしてる。

眠れないのは不自然だけど、その不自然さもなんとなく日常に溶け込んだ日々。
そんな普通の日が今日も続くんだと思っていたんだけど。
75蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/09/27 22:10 ID:9Ki1j3zG
第一章

とんとん。
お兄ちゃんを畑に送り出して、朝ご飯の後片付けをしていると、扉を叩く音がした。
はーい、と答えながら首をひねった。
うちを訪れる人はほとんど決まってる。
ランドか、ジュディか、村長さんか、隣のジェシカおばさんくらい。
だから、ドアの叩き方だけで誰が来たかわかるんだけど、今の音は全然心当たりがない。
ちょっと用心してドアを開ける。
「こんにちは。お久しぶりね、ターニアちゃん」
「えっ?」
私は初め信じられなかった。
低い背を補うように、頭の上で束ねられたにんじん色の髪と、くりくりした杏色の瞳。
たしかに知っているけれど……
「どうしたの、ターニアちゃん。そんなことして。あたしのこと忘れちゃった訳じゃないよね?」
「ううん。バーバラさん……でしょ。でも」
「でも?」
「バーバラさん、この世界を直しているんだって、お兄ちゃんから」
そう、魔法都市カルベローナの末裔である彼女は、魔王に傷つけられたこの世界を
ゼニスっていう神様と一緒に修繕しているはずなのよ。
そんな人が何故ここに?
「うん、そうなんだけど、ちょっとお休みもらってきたんだ。魔王はいなくなってるし、もう
あたしがいなくても事前に回復するくらいになってるしね」
「そうなんですか。あ、でもお兄ちゃんは畑に出てて。呼んできますね」
ところが、私が行こうとすると、バーバラさんは私の手をつかんで、引き止めた。
「ううん、いいの。今日は彼じゃなくあなたに用事があって来たんだから」
「私に?」
(続)
76蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/09/27 22:11 ID:9Ki1j3zG
いかん、本題に入る前に時間切れ…
アフターストーリーキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!
78ドラクエバカ:03/09/28 00:53 ID:arniybWf
なんかようやくこのスレも活気が出てきたなあ。(まだ早いか)
一時はどうなるかと思ったけど、皆さんのおかげです。
これからも宜しくお願いします。
保守するか
81蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/10/14 00:05 ID:ia+mjisE
第二章

私はバーバラさんを家の中に入れると、お茶を出した。
「粗茶ですが」
「ありがと」
「あの、それで、私に話って何ですか?」
私がそう聞くとバーバラさんは急に険しい顔つきになった。
「ねえ、ターニアちゃん。どうして眠らないの?」
「え?」
「知ってるわよ。このごろずっと起きてるのは。隠したって無駄よ?」
「別に隠しているつもりじゃ……でも、確かにこのごろ眠れないけど……」
「眠れない?違うわ。あなた、眠りたくないだけでしょ。意気地なし。ひとりぼっちになるの
が怖いから、逃げてるのよ」
バーバラさんの語調が強くなっていく。
……眠りたくない?
……意気地なし?
……独りぼっち?


……胸がちくっと痛む……

私は何がなんだか訳がわからなくて、バーバラさんに問うた。
「あの、話が見えないんですけど……」
「ふーん、そうなの。まあいいわ。ちょっと付き合って。しっかり認めさせてあげるから」
82蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/10/14 00:07 ID:ia+mjisE
第三章

バーバラさんは、私の手を引いて外に出ると、なにやら呟いた。
と、バーバラさんと私の身体が宙に浮く。
え?と思うまもなく目の前の景色が変わり、気が付くと私達は城の前に立っていた。
「……ここは?」
「レイドック城。見覚えあるでしょ?」
え…と、ある……ううん、気のせいだ。来たことないもの。
それをバーバラさんに告げると、ため息をつかれてしまった。
「あなたも強情ね。なるほど、山の女は情が強いわ。なんか違う気がするけど」
門の脇にいた兵士さんが私達の方を見る。
若い兵士さんが槍を構えて道をふさごうとしたけれど、年寄りの兵士さんに何か耳打ち
をされて、また道を開けてくれた。
83蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/10/14 00:09 ID:ia+mjisE
お城は何度来てもドキドキしちゃう。
あれ?
「どう、思い出した?」
「何を?」
「……まあいいわ」
バーバラさんは私の手を引いて、ずんずん城の奥へ進んでいく。
「おや、バーバラさん」
野太い声のした方を見ると、兵士長さんがいた。
「こんにちは。お久しぶりね、ソルディさん」
挨拶するバーバラさんに私はあれっと思った。
「ソルディ?この人はトム兵士長さんでしょ?」
「だんだん思い出してきたみたいじゃない?じゃあ、王妃様にお会いしましょうか」
王妃様?
頭の中にその顔が浮かんでくる。
それは……
「嫌!」
私は耐え切れなくなって叫んだ。
「お願い。もう許して!何も見たくない、聞きたくない!」
でも、その願いは叶えられなかった。
「随分と嫌われたものね、私も」
聞こえてしまった、凛とした声。
シェーラ様。
お兄ちゃんと同じ色の瞳。
お兄ちゃんと同じ凛々しい鼻筋。
お兄ちゃんの、本当のお母さん。
84蛍石 ◆tzCaF2EULM :03/10/14 00:10 ID:ia+mjisE
第四章

お兄ちゃんは、本当はレイドックの王子様。
出会ったのは三年前。
血まみれで倒れていて、何とか息を吹き返したけれどしばらくの間記憶喪失で。
その間だけ、彼は私のお兄ちゃんで。
だけど、もう一人の彼が村に来て、記憶を取り戻して。
ひとりぼっちには慣れてるよ、前に戻っただけだから平気。
今はさびしいけれど、いつか忘れられるから。
そう強がって、私は彼を見送った。
だけど……だめだった。忘れられなかった。
だって、夢の中では彼はお兄ちゃんのままだもん。
いつも一緒にいられるもん。
目覚めたときの寂しさが怖くて、私は目を覚ますのをやめた。
そして、本当のことを忘れたの。
それなのに。