エニクス「ドラゴンクエストへの道」コミックス

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〜今後は『トルネコ』のようなタイトルをエニックスからも〜

渡辺
『ドラクエ』に関していうと、外部スタッフがみんなビッグになってしまった。やりにくくなっていきませんか?

千田
 今やみんな大先生ですからね(笑)。だから、1年分の打ち合わせ時間を、通しで押さえてしまっています(笑)。
でも、『ドラクエ』については皆さん、ライフワークとして、特別なものとして見ていただいていますから、
他の仕事に対しても優先していただいているようなんですよ。

渡辺
中村光一氏は『ドラクエ』チームから抜けましたね。そして自社ブランド(チュンソフト)から『トルネコの大冒険』をリリースされました。

千田
 エニックスは『ドラクエ』のおかげでここまでくることができたわけですし、また中村クンは
長く『ドラクエ』をやってきてくれた功労者ですから、それについての感謝として応援しようという意向でした。
 『ドラクエ』関連のゲームソフトに関しては『トルネコの大冒険』だけではなく、いろんなものを作っていきたいと思います。
 今後は自社で出したいと思っていますけど(笑)。
 エニックスとしてはコントロールタワーとして書籍とかグッズのビジネスもやってきて、一つのメディアといっていいほど、
『ドラクエ』をとりまく世界はかなり広がってきていると思います。
 しかし、一作一作の間隔はもっと狭めたいんです。2年に1本というのはあまりにも間が空きすぎていると思うんです。
ただ、今の制作スタッフの豪華な顔触れを見ていると、本編については時間がかかっても仕方ないように感じますね。
とくに堀井さんは、納得しないかぎり筆を進めないタイプなんですよ。
渡辺
というと、2年に1本程度出る本編の『ドラクエ』シリーズと並行して、外伝のようなものを今後どんどんリリースされると!?

千田
さあ、どうでしょうね(笑)。でも、いいアイデアかもしれませんね。

(インタビュー終わり)

渡辺
 もはやゲーム業界の屋台骨となってしまった『ドラゴンクエスト』シリーズ。今後もハードの進化につれ、
時代につれ進化していくのだろう。しかし筆者は個人的には、「容量の制限のせいで苦しんできたが、
逆にそのおかげでシンプルさが維持された」という話がいちばん印象に残った。
 実は筆者は、このインタビューの直後に堀井雄二さんと別件で会った。そのとき、次々とリリースされる予定の
マルチメディア・ニューハードについて彼に聞いてみたら「CD-ROMの大容量で実にディテールまで絵を描き込むことは出来る。
でもそうなると、例えば同じ姿かたちの人間がいると不自然になってしまうでしょう。どこをリアルにしていくか、
どこをデフォルメしていくかということが重要なんですよ」というようなことを話してくれたのだ。
次世代のハード時代の鍵を握っているのも、やはり『ドラクエ』なのだ(わかるかな?)。

1993年11月8日 インタビュー・文 渡辺浩弐