66 :
保管庫改:
あれからジタンは彼自身のスピードと腕輪の力もあって順調に地下道の中を進んでいた、
かのように思われたが、ここに来て少々事情が変わっていた。
ジタンは息を潜め、柱の影から様子をうかがう、その先にはデスピサロとサマンサの姿があった。
「2度あることは3度あるっていうけど、厳しいな、さてどうする」
時間を考えると後戻りするのは避けたいところだ。
(あの2人…神殿に入ったのかな?)
ふと、ジタンは地下に入る前に出会った二人の男女、ティファとデッシュのことを思い出していた。
結局ティファたちとは、ただ導師からの伝言とフライヤの死、それだけを簡潔に伝えたのみで別れた。
言いたいことが無いわけでもなかったが、あの出来事はフライヤ自身が誰のせいでもなく、
誰が悪いわけでもない、と言い残しているのだ、ならばジタンが言うべき事は事実を伝えるのみだろう。
ジタン自身の心境はともかくとして…。
と、そこで。
「おい、そこで隠れている奴、これで3回目だがまだ懲りぬのか?」
気配を完璧に絶っていたはずなのに…男からかけられたその言葉に流石のジタンも背筋が寒くなるのを覚えた。
これまで2度戦い、2度とも力量の差を見せつけられている。
武器やアイテムが多少増えたところで、さしてその差が覆ることはないだろう。
逃げるか…いや逃げるにはもう遅い、どうする。
だったら、いちかばちかだ。
この話にあいつらが飛びつくかどうか…声をかけてきた以上あいつらも問答無用ってワケじゃなさそうだ。
わずかでも助かる可能性があると分かれば、もしかすると態度が変わるかもしれない。
(そういえば、2回とも仕掛けたのは俺からだっけ?)
ともかく、ジタンは覚悟を決めると、足元に武器を投げ捨て両腕を頭上で組み。
抵抗の意志の無い事を示しながら、ゆっくりと柱の影から彼らの前へと進んでいった。。
「なぁ…俺の話も少しだけ聞いちゃくれないか?」
67 :
保管庫改:03/03/30 10:41 ID:LZBXm8ch
一方そのころ、デスピサロたちがいる通路の厚い壁を隔てた向こう側では、
部屋を飛び出そうとするアリーナをクラウドが制止していた。
「まてよアリーナ、何処へ行こうっていうんだ」
「決まってるじゃない!今やってきた人を助けるのよ!」
クラウドはアリーナの行く手を阻むように立つと、説得を続ける。
「俺は今は動くべきじゃないと思う、声を聞く限りあいつらに戦う意志は無いみたいだし
それで今やってきた奴が戦いを仕掛けて返り討ちにあうのは、自業自得というものだ…
俺達が動くべき問題じゃない」
「じゃあ、このままにしておけというの!」
「俺は俺自身と、そして何より君が生きてこの状況を抜け出すことが第一だと考えている、
それに君は命の恩人だ、危険に晒すわけにはいけない」
この部屋を出て先に進むには、今デスピサロたちがいる場所を絶対に通過しなければならない。
つまりあの2人が動かない限り、彼らも動く事は出来ないのだ。
「とにかくもう少し様子を調べてからにしよう、俺たちがやらなくちゃいけない事は戦うことじゃない
逃れる事だ」
こうして引き続き2人は通風口に耳を近づけて、向こう側の様子をうかがうのであった。
「すげぇ、2人とも正解だ」
それからしばらくして、ジタンは自分の賭けが成功した事にほっと胸を撫で下ろしていた。
脱出の儀式の話を持ちかけたところ、2人は興味津々といった感じで喰いついてきた。
しかしなによりもデスピサロが賛成の意を見せたのが意外だった、これにはサマンサも驚いていたが。
ともかくジタンはハーゴンから託された問題を2人に見せて、解いてもらうよう頼んだ。
「我々の力量を疑うとは…」
これには2人もやや機嫌を損ねたが、一発勝負である以上それも仕方が無いと割りきって
彼らは問題に取り組んでいた、そしてその結果が今、出たのであった。
68 :
保管庫改:03/03/30 10:45 ID:LZBXm8ch
「難問でした、これは単純に強力な魔法の使い手というだけでは解答する事ができない
魔法知識や実際の儀式の運用に長けた者、あるいは元々そういった類の分野に特別なセンスを
発揮できる者でなければ解けないでしょうね」
余裕の表情のデスピサロとは正反対に、正解に胸を撫で下ろすサマンサ。
「とにかく、正解者が見つかって良かったよ」
ジタンもまた胸を撫で下ろす、これでまずは2人、導師が解答出来ていれば3人。
人数としてはこれでも充分かもしれないが、まだ時間がある。
それに唯一の仲間の生き残りであるエーコを探すという、新たな目的もあった。
と、そこでサマンサがやや挑発的な態度でジタンに問いかける。
「そういえば私を倒そうとは思わないのですか?」
挑発には乗らず、ジタンはしれっと答える。
「無事に脱出できたら、改めて考えるさ」
確かにビビの一件は正直、まだ遺恨が残ってはいる。
だがフライヤの件を通して、必ずしもサマンサの行動が悪いと言えるものであったのか、と考えると
ジタンにもサマンサを否定する資格は無いように思えるのだ。
それにマゴットの事での負い目もある。この事は今言うべきだろうか?
いや、この場でもめれば全てが水の泡だ、黙っておくか、放っておいてもいずれ分かるだろう。
その時はその時で考えればいい、折角丸く収まったのだから。
色々あって幾分疑り深くなったとはいえ、基本的にお人よしの彼は2人の協力を疑ってもいなかった。
しかし、当然デスピサロたちには裏があった。
実際、ジタンが問題の答え合わせに手間どっている間に2人の間でそれらのことについて、
話はついていたのである。
それはジタンに悟られぬよう、高位の魔法使いが用いる特殊な言語で行われていた。
これで聞き取られる心配は無かったし、例え聞こえてもジタンには理解不能だっただろう。
69 :
保管庫改:03/03/30 10:51 ID:A164Gprn
以下が会話の概要である。
「しかし、ピサロ卿がこんな眉唾な話に乗るとは意外でしたよ」
「確かに眉唾だ、だがそれでも材料をそろえて煩雑な手はずを整えてくれるというのであれば
それだけでも価値はある」
「と、いいますと?」
「そうだ、儀式を乗っ取る、乗っ取って何を行うかはまだ決めてはおらんが、今言える事は
腕輪を手に入れていない状態で、易々と脱出などさせるわけにも、するわけにもいかん
と、言う事だけだ」
「神殿にはお前1人で行け、私は後で合流する」
「何かお考えでも?」
「私の目的はあくまでも腕輪を探すことだ、もし腕輪が入手できればその時は脱出の儀式に賭けるのも
悪くは無い、それに他の連中の状況を知るいい機会だ」
「私がもしも戻らぬ時は、その時はお前が、お前自身の判断で儀式を動かすが良い
ハーゴンとやらの話に乗るもよし、その他を選ぶもよしといったところだろうかな」
「了解いたしました、それではご無事を」
その後、デスピサロがジタンに同行を求めたとき、明らかにジタンは嫌そうな顔をしたが、
「こんな大事な計画をお前のような無鉄砲な奴だけに任せてはおれん」
そう言われると、思い当たる事がありありなのだろう、バツの悪い表情に変わる。
それにサマンサが先に向かってくれるのなら、その分時間に余裕も出来る。
そういった事情も手伝って、結局渋々ながらも同行を承知したのであった。
こうして3人は、それぞれ必要事項を打ち合わせた後、デスピサロたちはそのまま東へ、
サマンサは西へと向かったのであった。
70 :
保管庫改:03/03/30 10:52 ID:A164Gprn
だが、しばらくすると西に向かったはずのサマンサが、何故か引き返してきた。
サマンサの手にはジタンから受け取った手榴弾が握られている、その数は3つ。
神殿には魔法の効かないロボットが徘徊してる可能性があるという事で受け取ったのだ。
さらに右手には星降る腕輪がはまっている。協力を盾に強引にねだり、
神殿につき次第、本来の持ち主に返すという条件付でgetしたのだった。
サマンサは殺気の篭った視線で、通風口の向こうを睨む。
「先ほどの屈辱は倍にして返えさせて頂きますよ」
この向こうにアリーナとクラウドがいるということはデスピサロから聞いている。
風向きの関係でデスピサロの力を持ってしても向こうの様子までは聞き取れなかったようだが。
恥辱のほかにも理由がある、あのアリーナとか言う娘はピサロの宿敵の1人。
ここで倒す事が出来れば、またとない援護射撃になるはずだ。
視線が通らなければ正確な攻撃は行えないし、大規模魔法を下手に使えばこちらも危険に晒される上、
何より魔法を刎ね返すアイテムを所持している、だがこれならば。
サマンサは手榴弾のピンを抜き、それを通風口の中へと放りこみ、足早にその場を去ったのであった。
71 :
保管庫改:03/03/30 10:52 ID:A164Gprn
そしてその向こう側では。
「さっきから何も聞こえない、ってことはいっちゃったのかな?」
「いや、あともう少しだけ待った方がいいだろうな」
相変わらずクラウドとアリーナが通風口のすぐそばで耳を傾けていた。
あの闖入者が現れてからしばらく経過して、急に彼らの声が聞き取りにくくなった、
どうやら場所を少し変えたらしい、それでもわずかな物音で彼らがまだあの付近にいる事だけは理解できた。
そしてつい数分前、それらの音が全く聞こえなくなったのだ。
と、その時、通風口から突如として音が聞こえだした。
それは話し声とは違い、何かが高速でこちらに向かってくるような音だ、
2人ははっと顔を見合わせるが、すでに遅い。
その時には手榴弾が2つ、彼らの間を分かつように床へと転がり落ちていた。
「!!」
ずぅぅぅぅん。
「さて、先を急ぐとしましょうか」
爆発音を遠く背後で聞きながら、振り向くことなくサマンサは事も無げにそう言い放つ。
相変わらず冷たい笑みを浮かべながら。
72 :
保管庫改:03/03/30 10:53 ID:A164Gprn
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸中央付近) 】
第一行動方針:ソロを止める(倒してでも)
第二行動方針:クラウドをティファに会わせる
最終行動方針:ゲームを抜ける
【クラウド:所持武器:ガンブレード 現在位置:地下通路(大陸中央付近)】
第一行動方針:エアリスorティファを探す。
第二行動方針:アリーナを救う
最終行動方針:不明
【サマンサ:所持アイテム:勲章(重装備可能)星降る腕輪 手榴弾×1
現在位置:地下通路(大陸中央付近から西へ)】
第一行動方針:神殿に向かう
第二行動方針:生き残る
第三行動方針:不明
【デスピサロ:所持アイテム:正義のそろばん・『光の玉』について書かれた本・
現在位置:地下通路(大陸中央付近)から東へ】
第一行動方針:腕輪を探す
第二行動方針:偵察
第三行動方針:不明
【ジタン:所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 グレネード複数
試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計
現在位置:地下通路(大陸中央付近)から東へ】
第1行動方針:魔法使いを探す
第2行動方針:エーコを探す
最終行動方針:ゲームから脱出