|・ω・`)誰も居ない…ネタを貼るなら今の内…。
シドシエラ持って来ますたー。
紙吹雪と、霙が、ビルの谷間に混じり合う。
勇壮な軍楽が、石英質の窓を震わせ、行進して行く。
「ったく、礼装なんざぁやってらんねえ。」
オープンカーに乗った武官の1人が、葉巻を取り出した。
「俺も貰おう。悪く無い匂いがするな。」
「ん?おお、特殊部隊の元帥さんの頼みなら、喜んで。」
帽子にゴーグルを付け、コートを肩に乗せたシドが、ライターに手を翳し
セフィロスの葉巻に火を付ける。
「…戦争は疾うに終わった。愚かしい記念式典だ。」
ゆっくりと白い息を吐きながら、シドが頷く。
「もう空軍には戻らないのか。お前も地望ある将官だろうに。」
「宇宙に行くんでぃ。
手前で命令して高みの見物だの、作戦失敗で味方を死なせる。
なんてなぁ、性に合わねぇよ。」
街灯の合間を、白金の氷が乱舞する。
吹き抜ける風が、地下スラムへと吸い込まれて行った。
柔らかな日溜まりの廊下を、少女が走る。
ぶかぶかの白衣と大き過ぎる眼鏡。其の手から書類が滑り落ちる。
風に煽られ、廊下中に書類が散った。
「んぁ?なーにやってんでぃ、お前。ほれ。」
「…あ!シドさんすいません!うちゅ、う、宇宙飛行士さん、ですよね?」
手際良く艇長が集めた書類を抱え、少女は脱兎の如く逃げて行った。
「妙に可愛らしい、ちんまいのが居んなぁ。誰だ?」
「飛び級で入った、シエラって博士ですよ。」
「は、博士?!見学かと思ったぜ!」
シエラの、艇長に触れた手が──仄かに暖まってゆく。
途轍もない時間、途方も無い予算を懸けたロケットが、発射中止となった。
「クソッタレ!」
「幾ら本社の命令でも…点検時間が短過ぎですよ、艇長。」
「んな事ァ分ってんだよ!おう!主任さんよう、シエラぁどこでぃ!」
荷物をスーツケースに押し込んだシエラが、タクシー会社に電話する。
その受話器を乱暴に切り、シドの手がシエラの手を掴む。
「痛…っ!」
「おい。村から出て行くつもりか?」
「わ、私の点検が遅過ぎて…発射中止だなんて…
とても、此処には居られまッ…!」
シエラの涙声が、シドの舌に塞がれる。
「────!」
粗暴な舌が、博士の歯列を滑り、唇をなぞる間
艇長の爪が、背筋を逆しまに嘗め上げる。
「馬鹿野郎!逃がさねぇぞ!」
艇長が吠え、唇が離れた隙に。シエラの手が、シドの頬を打った。
「………。酷いです…艇長。もう、此処には居られません…!」
シエラの足が、震えながらドアを目指す。
しかし──
再び博士は捉えられ、一気に指を銜えられた。
そして軽く吸い上げられ、甘く噛まれ、舌が絡み付く。
「………ッ!」
唾液と共に引き抜かれた、その白い指に。明るい金の指輪が煌めく。
「え…?」
「責任取りやがれ。シエラ。
俺と一緒に暮らそうって云ってんだよ!」
多分、否、間違い無く村中に響く声で、艇長は叫んだ。
シエラは小さく頷き、優しく微笑む。
…そうして村は、勇者の到着を待つ事となる。END