―――彼女は眠り続けていた。
自我は容易にかき消されてしまうくらいに希薄ではあったが、
確かにソコに存在していた。
まったく意識が無いわけではない。
時々、短い時間ではあるが半覚醒の状態が訪れる事があった。
―――彼女は深い暗闇の海に浮かんでいた。
凶暴な、そして冷酷な暗闇。見えるものは何も無かった。
自分が何故ココにいるのか。自分が何なのかもわからなかった。
暗闇は圧倒的な冷たさと重圧を持って、彼女をかき消そうとする。
しかし、彼女は消えなかった。
何故、自分は消えてしまわないのか?
そこで初めて、彼女は自分が何かを抱えている事に気がついた。
圧倒的な暗闇に対抗する力強い光。
刃のような冷気に対する暖かい炎。
重圧に対するやわらかい力。
一枚の虹色の羽だけが、彼女を護っていた。
この羽は、自分に生きろと言っている。
彼女は悔しさと、はっきりとしたもどかしさと、絶望を感じた。
どうしたらココから抜け出せるのかわからない。
感情だけは、完全に覚醒していた。
しかし、それも次第に闇に落ちていく。
彼女は自分の抱えている炎を意識しながら、再び眠りについた。
【リュック :所持武器:なし 現在位置:エビマジの研究室 行動方針:なし 】