40 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:
あげ
あれ?なんで復活してんの?ふわふわ
53 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:05 ID:lp/dCVgD
ころころ…。
微かな音がした。
それは確かにこちら側の音だ。
(あそこには帰れないんだろうか、ぼくは)
訊いてみた。
(わかってるんだね、あそこから来たってことが)
(ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない)
(そう。すごいね)
(つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ)
(でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に)
(そうだね。そんな気がするよ)
(でも遠い昔はさっきなんだよ)
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
違うな…。変わるはずがないんだ。
進んでいるようで、進んでいない。メビウスの輪だ。
あるいは回転木馬。リフレインを続ける世界。
(世界はここまでなんだね…)
ぼくは彼女に言った。
(飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ)
(……そうだね)
ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。
何度も見ている一定の距離感を置いて。
(いや…もう少しここにいるよ)
(そう? そうだね…)
ぼくは体を慣らすように、その光景に身を浸していた。
急ぐ旅でもない。
ずっと、眺めていた。
お前そうとうやることなく暇なんだね。
こんなことしてる暇あったらはやく社会復帰しろよ
でなきゃくたばれよ。ふわふわ
83 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:07 ID:lp/dCVgD
また…悲しい風景だ。
(どうしてぼくは、こんなにも、もの悲しい風景を旅してゆくのだろう)
(あたしにはキレイに見えるだけだけど…でも、それが悲しく見えるのなら、やっぱり悲しい風景なんだろうね)
(ひとが存在しない場所だ)
(そうだね)
(ひとが存在しない場所にどうしてぼくは存在しようとするのだろう。もっと、ひとの賑わう町中や、暖かい家の中に存在すればいいのに)
(さあ…よくわかんないけど。でも、あなたの中の風景ってことは確かなんだよ)
(つまりそれは…ぼくの心を風景に置きかえてみたときの姿なんだろうか)
(だったら、少し悲しすぎる…?)
(わからない)
(でも、こんな世界だからこそ、ぼくは求めたんだろうけどね)
帰れない場所。
もう、そこからはどこにもいけない場所。
すべてを断ち切った、孤立した場所にぼくは、ずっと居続けていたいんだ。
そして、そんななにもない、どこにも繋がらない場所で、ぼくはぼくを好きでいてくれるひとだけの存在を、もっと切実に大切に思うのだ。
きみと一緒にいられること。
それはこの世界との引き替えの試練のようであり、また、それこそがこの世界が存在する理由なのだと思う。
おまえみたいなやつこそ病気で死ぬべきだよな。
悪人と糞コテはしぶといとはよくいったもんだ。ふわふわ
人間としての品性を疑う、マジで
192 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:13 ID:lp/dCVgD
「みさおー」
「お兄ちゃん、また、こんな時間に…」
「また手術するって聞いて、きたんだよ。また、どこか取るのか?」
「ううん…。その手術はしないことになったよ」
「そうか。よかった。どんどんみさおのお腹が取られてゆくようで恐かったんだよ」
「うん。もうしんぱいないよ」
「ほんと、よかったよ」
「うん…」
229 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:15 ID:lp/dCVgD
キッチンまで、ぼりぼりと頭を掻きながら歩いてゆく。
朝食がなかった。
一度だけならまだしも、二日続きで。
流しを見ると、ひとり分の食器だけが、浸け置きしてあった。
それは間違いなく由起子さんのものだった。
彼女は、自分の分の朝食を食べ、そして出かけていったのだ。
もしかしたら、何かの話しの行き違いがあったのかもしれない。
だがここ最近、由起子さんには会っていないし、その日常の繰り返しに変化が起きるほうがおかしい。
浩平(………)
一度、会って話せばいい。
会って話して、どうして朝食を作っておいてくれなくなったのか、聞けばいい。
案外簡単な理由かもしれない。
そろそろ自立しなさい。
由起子さんなら、ありそうな話しだ。
彼女自身が自立した女性であるし、オレにもそろそろ自分のことは自分でしろと。
なら、書き置きのひとつぐらいあってよさそうなものだ…。
………。
250 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:16 ID:lp/dCVgD
自分が急速に消えゆく感覚。
それはまるで、遠い昔に描いた夢のようだった。
ずっと昔。
それは幼い日の戯れだ。
浩平「望んだ世界が生まれていたとして、そうしたら、どうなると思う?」
オレは唐突に話しを切り出した。
長森「望んだ世界…?」
浩平「そう。例えばこうだ」
浩平「小さなときに、お菓子の国のお姫様になりたいと強く思っていた女の子がいたんだ」
長森「あ、わたしがそう。そんなこと思ってたよ」
浩平「時が経って、ほんとうにお菓子の国は、その子の強い願望によって生まれていたんだ」
長森「そんなことあるわけないよ」
浩平「あったとしたら、だよ。想像力を働かせろ」
長森「あ、うん…」
浩平「すると、どうなると思う」
長森「女の子は選ぶんだろうね。その国に移り住むのか、あるいはここに残るのか」
255 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/25 19:17 ID:lp/dCVgD
選択肢なんてあるのだろうか…?
違う…。この物語には第三者が居たはずだ。
浩平「王子様がいるんだ、その国には」
長森「うん」
浩平「盟約を交わしていたんだよ。一緒に暮らすっていう」
長森「うん」
浩平「条件が変わった。すると、どうなると思う」
長森「うーん…そうなると、その国に強制的に連れていかれるんじゃないかな」
浩平「するとオレは…いや、女の子は、この世界ではどうなると思う」
長森「いなくなるんだよ」
オレは刹那、薄ら寒さを覚えた。
すると、なんだ。
オレは今からこの世界から消えてなくなろうとしているのか…?
そんな子供の戯れ言のようなおぼつかない口約束が、現実にオレの存在を危うくしているというのか…?
まさか…。
しかしオレは実際、その過程上にいるじゃないか。
由起子さんに忘れ去られて…長森にだって、オレは記憶を曖昧にされている。
本当に、あの遠い空の向こうへとオレは旅だってしまうのだろうか…。