ソロは自分を見つめていた。 そこにいた自分の姿を見ていたのだ。
とても醜悪で人間の形をしているとは思えない。なのに何故かこれは自分だと思ってしまう。
僕はこんな姿はしていない! ソロは目を背けようとしたが視線が固定されて動けなかった。
手足が自分の意思から切り離され、クラゲのように宙を漂っている感じがする。
遠くから声がする。 非難する声、罵倒する声、どれもこれもが自分に向けられていた。
やめてくれ、やめてくれ。ソロは泣き出しそうになって必死でもがいた――
突然、凄烈に瞬く星々がソロの知覚を刺激した。 おぼろげだが感覚が身体に戻ってくる。
多分僕は寝ていたんだ、と自覚するのに数秒とかからなかった。
完全に目が覚めると自分が闇の中にいることに気付いた。 冷たい風が体をなで払う。
夢を見ていたのか……。 寝ていただって!?
今まで何をしていたのか、いつの間に日が沈んだというのか。
一体このザマは何だ。
吹きすさぶ風の音、背中に伝わるざらざらとした土の感触。ここが屋外であることは容易に知れた。
こんなところで無防備で寝転がっていた自分をとてつもなくバカバカしく感じた。
体を起こそうとするが、胸が咽て満足に呼吸ができなかった。
しまった、肺をやられたか。 ソロは胸を左手で数回叩いた。
肺の中は空気で一杯のようでありながら、息を吐くことがうまくできない。
何とももどかしく、そして苦しくて、痛い。 冷気が確実に体の機能を低下させているとわかる。
だがここでいつまでも往生しているわけにはいかない。
ソロは立ち上がろうとして、剣を掴んだ。 気力を奮い起こそうと勢いよく体を起こし直立する。
だが途端に咳き込んで、前屈みの姿勢にならざるを得なかった。
「くっ……、痛えっ…」
眠りに落ちる前の記憶がおぼろげで思い出せない。それにこの暗さ、月も出ていないのか。
「うう……くそっ……」
悪態を付きながらも必死で動こうとする。 闇は深くどこまでも続いているような気がした。
手探りで辺りを把握しようとするが、ソロの手は暗闇の空をかき混ぜただけだった。
――じきに目は慣れるはずだ。
そう思うと気分が多少楽になり、どっかりとその場に座りこんだ。
――しばらく待つか。 ソロは膝を抱えて体を丸めるようにした。 これ以上体を冷やさないように。
ここがどこなのか、何をしていたのか、時間だけは有りそうなのでいろいろ思案してみた。
仲間たちの顔ぶれが思い浮かんでは消えていく。 誰かに裏切られたとか、誰かをこの手で傷つけたとか
恐ろしげな記憶の断片が甦ってくる。ソロは頭を抱えた。全てが曖昧ではっきりとしない。
最後に見たのは雷光だった、これは間違いない。 雷光、そういえばミネアは――
ソロは次第に焦りを感じていった。 目が暗闇に慣れる気配はない。 まさか、
手の甲で目を拭ってみた。数回、瞬きをする。 そしてギュッと目を瞑り、恐る恐るまぶたを開けてみる。
深淵より来たものに目の前を覆いつくされたような気分。 闇はより深く、底なしでソロを出迎えた。
自分が置かれている状況を予想し背筋が凍りつく。 身体の震えが止まらない。
「助けて!」
思わず叫んだ。 助けてくれる者などいるはずがない。ソロのとってきた行動からすれば
むしろ彼を憎む者の方が多いぐらいだ。
それでも叫ばずにはいられない。 発見されることすなわち死、である可能性など頭の片隅にもなかった。
「何も見えないんだ、誰かあ」
叫び声が虚しく響く。山おろしの強い風がソロの声を掻き消しながら過ぎ去っていった。
【ソロ(暗闇もしくは失明) 所持武器:エンハンスソード、イリーナの会員証、スーツケース核爆弾
現在位置:ロンダルキア南の平原(フライヤ、ピエールより東)
行動方針:助けを求める
最終行動方針:デスピサロ打倒(現在もその気があるかは不明)