不思議に思った。戦場の真ん中で、自分の位置を悟られてもおかしくない行動を取るものがいたからだ。
誰かを呼ぶための行為かとも思ったが、それにしても大胆だ。
血に飢えた人という名の獣が、どこに潜んでいるかもしれないのに。
余程腕に自信があるのか、あるいはやむを得ない事情のためか。
光の輝きはまだ続いていた。 気付いたのが私じゃなかったら、とっくに襲われているだろう。
と、今度は光の数が二つに増えた。 あまりの無軌道ぶりに少しイライラする。
ああ、そうか。 私を呼んでいるかもしれない。 救いを求めているのか。
さきほど近くで聞こえた爆音は、今はなりを潜めている。 光と爆発。 どちらも気になる。
私は占ってみた。 精神を集中を妨げる冷たい横風が吹く。 前髪が目にかかって振り子のように揺れた。
いつのまにか落ち着いていた。 頭の中にイメージされたのは人間とは違う二つの存在。はっきりとはわからないが
邪悪さは感じられない。 魔族が参加していることは考えられるが、邪悪ではない、とは
私は光に導かれるように歩いていた。
ひょっとしたら罠でもありえた。 邪悪さがないのは嘘で固めた作り笑いで、すぐに牙を剥き出しにするかもしれない。
この先には死への道があるだけかもしれない。
見事に騙されたらなんて言おうか。 無理に明るく振舞えば少しは気も晴れようか。
――呼ばれて来ました、ええ、なぐり込みでーす
「……」
自分で慌てて口を手で押さえた。
いけない、どうしたんだろう私……
恥ずかしいやら情けないやらで、誰も見ていないのに顔が火照りだす。でも、私は決意した。
アモス、ごめん。どうしても行かなきゃならない気がするの。 大切な人の傍には、あなたがついていてあげて
自分を見守っていた魂が離れていくような気がした。
――必ず後でいくから
私はしっかりと方向を見定めて、走りだした。
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル、妖剣かまいたち、小型ミスリルソード、水筒1.5リットル
現在位置:ロンダルキア祠南平原移動中 行動方針:さらに南へ。光の方向へ】