242 :
保管庫:
暗い森の中とは相当に場違いだが、透き通った青髪の美しい少女がいた。
当然ながら、それは水の巫女エリアに他ならない。
あの騒動のあと急いで祠の方に向かったのはいいのだが、
運の悪いことに風の反応の主は北へと動き出した。
しかし、頼れるのはその会ったこともない彼しかいないのである。追うしかなった。
それにしても、今になって考えるのも愚かなことだが、まったく馬鹿なことをしたものである。
何故、あの青年に自分は向かっていったのだろうか?
運良く生き延びることができたが、あれは勇気ではない。単なる無謀である。
もしかすると、ファリスの炎を継承する人物を捜すための試練だったのであろうか?だとすれば、落第であろう。
もっとも、炎とは対極に位置する水の巫女に勇気の炎を、というのも些か滑稽な話ではある。
さて、橋を渡ればあとは一本道なのにも関わらず、祠のようなものはまったく見かけることがなく、彼女は自分の位置を疑った。
しかし地図を見る限りでは、そこは祠の近くに間違いなかった。
もっとも、本当に地図が正しければの話だが、今さら嘘の地図を参加者に渡すことになんの意味があるのだろうか。
地図の真偽に対し猜疑的になるのは恐らく的はずれのことだ。
少し探し歩いたあと疲弊していた彼女はそれ以上考えることはなく、そのまま短い砂漠を渡り森へと入った。
そして祠のあたりを歩いている間に、彼女を捜し求めていたミレーユはその存在に気づくことなく南の橋を渡ってしまった。
偶然というのはこうまで重なるのかと、事情を知れば溜息をもらしたことだろう。
バッツに走って追いつくには幾分距離が遠すぎる。
もとより体力のない彼女は走らずに、通常よりも少し速い程度のスピードで歩いた。時間はかかるが、いずれ追いつく。
243 :
保管庫:02/12/22 11:04 ID:4+CiTvGN
そしてやや北西よりの北の森のあたりである。あの予期せぬ放送がなったのは。
この時間に死亡者通知がされたのは、彼女にとって大いな誤算であった。
ファリスが逝去し、そしてその妹のレナという人物も生死が怪しまれる中、
なんとしても放送の前に風の戦士、バッツにその旨を伝えたかったのだ。
これでまだレナが生きていたならば、救いようもあったのだが…。
通知の中にアモスの名があったことも、彼女に並ならぬ衝撃を与えた。
だがなによりも彼女は、それを聞いて涙ひとつ流すことのなく、そのうえ存外に自分の心が落ち着いていることに驚いた。
アモスの死に実感が湧かなかったこともあったかもしれない。
しかし、だからといってここまで平静を装えるものなのだろうか?
短い間ではあったが、共に過ごした仲間ではなかったのか?
ほとんど無意識のうちに呟いた。
「死ぬって…なんなんだろう」
忘れかけていたが、彼女は思いだした。自分が、元いた世界では既に死んでいることを。
しかし、今自分は間違いなくこの冷たい大地のうえにたっている。
果たしてこの世界は現実なのか?雪の中の肌寒さ、風に靡く木々はその通りだと返答しているようであったが、
自然の力のそれさえも彼女には嘘臭いものが感じられる。
疑問は尽きない。
ふと、エリアは顔をあげた。
こんなことを考えてなんになるのか、と。
暗闇を照らす一筋の光は、きっとある。
風の反応まで、もう少しではないか、今はただ、進もう。
そこまで考え、またはっとした。これはこのゲームの最初にも考えたことだということにきづいたのだ。
結論のでないまま、結局、とにかく行動しようという結論。
同じような疑問に頭を擡げ、そしてまた同じような結論に達すると?
いや、進展はある。少なくとも、同じクリスタルの元に導かれた者がいる。
そして恐らく、あの四人の少年の一人もいる。
244 :
保管庫:02/12/22 16:55 ID:BW2VCLI/
エリアは大きく息をついて、再び歩き出した。
それは先のスピードよりも数段速かった。
無念無想の境地に入れば、様々なことがわかるのだろうが…。
とにかく、アモスは死んだ。恐らく、あのまま自分たちを逃がすために。
その意志を無駄にしてはいけない。
ロックは生きているようだが、自分の後ろからはまったく気配は感じなかった。
現在どのような状況にあるのかは検討もつかない。
でもきっと、生きている…そう信じたい。いや、信じなくはならない。
レナは死亡していた。ならば、今ある小さな水の反応は?クリスタルの継承?
まさか、ありえない…。ならいったい…
風の反応は今動きが止まっている。彼は今どうなっているのか?
一刻も早く追いつかなくてはならない。
土の反応も、ここのところ動きが少ない。
そして、そろそろ真剣に考えねばなるまい。
死んだ筈の自分がここにいる理由を。
このゲームのことを。
風が少し強く吹き、森はざわめき、エリアの青い髪は鮮やかに靡いた。
その姿は、形容する言葉の見つからないほどに美しかった。
【エリア 所持武器:小型のミスリルシールド・ミスリルナイフ・加速装置・食料2ヶ月20日強分&毒薬
水1,5リットル×2 フィアーの書×7 小型のミスリルシールド 現在位置:ロンタルギア北の森(やや北西より、つまり北北西?(w)から風の反応へ
行動方針:クリスタルの戦士との合流】
(エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能)