219 :
1/3:
バッツとクーパーが祠を出てから、もう二時間がたとうとしていた。
辺りは木が鬱蒼と生い茂っており、雪原のように雪が白く輝くこともない。
ただただ肌寒く、昼だというのに森の中はひどく暗かった。
それが関係しているのかはわからないが、
この間彼らに会話がなされることはほとんどなかった。
といって、二人の仲が拗れたわけではない。
短い時間とはいえこの異常な状態の中で共に暮らしていた二人は、既に沈黙なが苦になるような間柄ではなかった。
もっとも、時が経つに連れてバッツの顔が少しずつ険しくなっていくものだから、クーパーとしても話し掛けづらかったのかもしれない。
しかし北の森の中央部のあたりで、バッツは急に立ち止まったかと思うと空を仰いで言った。
「なあクーパー、俺、思うんだ」
なんの脈絡もない話にクーパーは目をぱちくりとさせたが、構わずに続けた。
「実は全部悪い夢なんじゃないかって」
バッツはクーパーの方へと向き直った。
「ほんとは、俺は今頃森の中で野宿してるんだ。
タイクーンにいって、レナやファリスたちと会うために。
そしてさ、着いたら、みんなと笑って最近のことを話すんだ。
クルルは相変わらずガキで。レナはしっかりしてるけど、でもどこか抜けてて。
ファリスは全然王女って柄じゃなくて、それを俺がからかうと怒るんだよ。
そのくせ、王女なんて嫌だっていうんだよな。
うん、それで、田舎には幼馴染みのあいつらがいて、暖かく俺のことを迎えてくれる。
おやじたちの墓参りをしたあと、ボコと、またどこか旅にいく…」
そこまで一気に話すと、バッツは俯いて、
それを見やりながら、クーパーも口を開いた。
名前を聞いても誰かはわからなかったが、それがバッツにとってどういう存在なのかはわかる。
「僕も、同じようなこと考えたよ。でも…」
クーパーは須臾躊躇ったが、はっきりといった。
「これはやっぱり、夢じゃないよ」
220 :
2/3:02/12/14 23:55 ID:aHyrUvLj
その声はやや絶望的な色を帯びていたものの、同時に現実から逃げることのない力強さも感じられる。
バッツは溜息をつきながらクーパーを見やると、クーパーはなにか思い出しているように見えた。
元の世界のことを思い出していたのか、それともいつかの夢のことを思い出していたのか、それとも…
―――ああ、そうだったな。クーパーはもう、大事な人を、一人失ってるんだ。
バッツは再び空を見た。
視界のほとんどは木で埋まってしまっけれど、辛うじて一部の青を見ることができる。
腰にささっている剣は最初ほどではないにせよ燦然と輝くなどということはなく、
そして今の自分ではこれ以上の光は欣求したところで得ることはできないだろうと諦観していた。
現段階では恐らく、クーパーの方が持ち主としては相応しいであろう。
バッツはそんな自分に対して苛立ちを僅かに感じていた。
こんな気持ちになったのは、彼らの気の持ちようの違いからきたのかもしれない。
自身が生き延びることよりもあの姉妹の命のほうが、天秤にかけるまでもなくバッツにとっては重かった。
ゲームを脱出することだって、彼女らを助けるという前提条件によるものである。
もっとも、現在のところ肝心の脱出手段が暗中模索の状態ではあるのだが…。
なんにせよ、彼にとって己の命に対する興味はさほどなかったといってよい。
そしてそれは、最初に懊悩したように自分の死を悲しむ人がいないと思いこんだ故に他ならないのだが、
今にしてみると、少なくともこの少年やパパス、祠においてきた皆がいる間は、
いかなることがあろうとも生きていたいという気持ちも少しずつではあるが彼の中にも生じてきた。
後はそれを決定づける「何か」が必要なのである。
無論、レナやファリスに会えば心情的な打開の道は開けただろうが、もはやそれも叶わぬことだ。
彼らが知る由もないが、既に二人とも逝去している残酷な訃音がもうすぐに伝えられる。
そのときが彼、バッツ自身にとって一つ目の山場となるに相違ない。
「レナとファリスの生存」という彼にとって不変の真理にも近かったそれが否定されるのだ。
221 :
3/3:02/12/14 23:59 ID:aHyrUvLj
さらにやはりこの大地の神というのは相当に意地が悪いらしく、
先のミレーユとの遭遇の件もそうであったように、彼らが祠を南ではなく北へといったのもまた運命の擦れ違いである。
もしも南へと進んでいたならば、悲劇を知らされるまでに今もっとも会うべき人物に会うことができたであろう。
しかしながら、どのような運命にあっても彼はそれに抗しなければならない。
それこそがクリスタルに導かれたる戦士の所以なのだから。
しかしながら、どのような運命にあっても彼はそれに抗しなければならない。
それこそがクリスタルに導かれたる戦士の所以なのだから。
刹那、バッツはクーパーを見ると、視線を森の奥へ戻していった。
「放送までにはまだ時間があるはずだ。このまま、南の城へ行こう」
現実には、放送までの時間などほんのわずかなのだが、放送回数が増えたことなどを知るべくもなかった。
ただバッツたちが南へと向かうのは、性悪の神もようやくにして悪戯心をおこしたからだろうか?
そこには少なからず運命的な出会いがあるかもしれない。
もっとも、この冷ややかな地の主が最後まで気が変わることがなければ、だが…。
しかし、この鮮やかな雪原こそ不変のように見える中、それはきっと杞憂であろう、恐らく、多分。
【バッツ(魔法剣士 時魔法)/クーパー
所持武器:ブレイブブレイド/天空の盾 現在位置:ロンタルギアの北西の森から南へ(中央の砂漠を通る)
行動方針:アリーナ(アニー)、レナ、ファリス、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す。最終的にはゲームを抜ける】
ゾーマの城。
相も変わらず外には稲妻が轟いている。
稲光で見える影は他ではないゾーマそのもの。
悠然と構えるゾーマは何を考えるだろうか。
傍らにはバラモスゾンビの影はない。どこかにいるだろうか。
バラモスゾンビの姿はない。どこかにいるだろうか。
「頃合だな。」
ゾーマは立ち上がり、水晶玉に念をこめる。
「参加者の諸君。如何過ごしているか…?
中々に頑張っているではないか。
今現在ちょうど正午、だな。…まだ日も長い、精々凍えぬようにな。
闇の中におちた参加者の名を読み上げる。
「アモス」「ホイミン」「イリーナ」「レナ」「ファリス」「アーサー」「ビビ」
以上である。
次に、禁止呪文、魔法を読み上げる。
「アストロン」「メテオ」「コメテオ」「コメット」「クエイク」
以上である。
我が名はゾーマ。
我こそすべてを滅ぼす者…」
(時刻が正午を過ぎました。)
放送直後のこと。
静かな雪原。
静寂が辺りを包む。
ボコッ…!
突如何もない雪原から手が現れる。
ゆっくりとその身を現わす。
旗から見ればゾンビと思えなくはない。
…いや、実際ゾンビなんだけど。
とんぬらの姿はない。近くにもいない。真っ白の雪原には足跡はないからだ。
かなりの雪崩だったがどうやらあまり流されてはいない。
彼女はそんなことを気に留めることなくとんぬらを求めるようにふらふらと歩き出した。
懐にしまってあったマンイーターはあの雪崩でどこかに流れてしまった。
…今の彼女にとってさほど大きな問題ではないのだけど。
「…待て。」
アイラは振り返る。
アグリアスも埋もれた雪の下から姿を現した。
遠くなりそうな意識をオヴェリアへの忠誠心のみで繋ぎ止めここに現る。
相手は一人、先ほどの奇襲はあの女のために失敗した。
悪い作戦ではなかった。確かに裏をかいたのだから。
アグリアスはダイヤソードを構える。
相手は丸腰、だが油断はしない。
「大気乱す力震え…」
仕掛けようと行動を先に起こしたのはアグリアス。ダイヤソードに氣を込める。間合いは十分。
氣を放出するその瞬間、彼女は何気なく目を瞑る。次の瞬間。
「うっ!?」
顔面に雪玉が直撃する。アイラの石つぶてならぬ雪つぶて。放出されるべき氣が散開する。
雪で足がもつれる。アグリアスが雪を払ったそのときにはすでにアイラは一気に間合いを詰めていた。
ムーンサルトで迫る。アグリアスの剣は完全に引かれていた。剣を構えるも…すでに遅い。
胸部に食らって派手に吹っ飛ぶ。
再び深い雪に身を沈める。
急いで身を起こすもすでにアグリアスの敗北は確定していた。
手に感触がない。ダイアソードが宙を舞う。
それは剣がアグリアスを拒絶したのか。
たとえ、その身が呪いで蝕まれていたとしても、たとえ、守るべき主君がすでに亡くとも…
守ること、救うことを忘れない者を剣は選ぶというのか。
ダイアソードはアイラの手に渡った。
すぐさまアイラは剣の舞を繰り出す。
アグリアスに刃が届かんとした刹那。アグリアスは詠唱を完了していた。
ヘイスト。
間合いを取り一気に背を向ける。
「…情けないっ!」
それは自分の何に対しての言葉か。アグリアスは逃げ出した。たとえなんであろうとも生きなければならなかったからだ。
静かに見送るアイラ。アイラは追撃の意思はなかった。…と、言うか、今はとんぬらに会うことが彼女にとっての最優先事項であったからだ。
アイラはアグリアスとは全くの反対方向、山を下っていった。
【アイラ(ゾンビ) 所持武器:ダイアソード 死者の指輪 現在位置:祠西の山脈中腹付近→山を下る
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらを探していく。死者の指輪が外れたら???】
(マンイーターはどこかに流れていった。見つけるのは至難の業。)
【アグリアス(ヘイスト) ジョブ:ホーリーナイト スキル:時魔法 装備武器:スリングショット なべのふた
現在位置:祠西の山岳地帯中腹→山を登る 行動方針:ゲームにのる】
「……ざっと、片付いたか。」
「どういう意味だよ?」
「わしの部下も、宿敵も、皆逝ってしまった。それだけの事だ。」
うん?どうした?二人供何を妙な顔をしておる?
「………」
「部下の方はこのゲームの前に壊滅しておる、だいたいわしは部下の為に貴様に協力した訳ではない。」
「じゃあ何であんたみたいな悪党がこんな真似をしてるんだ?」
失礼な奴だな。
「第一に、わしの世界ではこんなゲームの話は聞いた事が無い、つまり奴等のいう事は信用できない。
第二に、わしは唯々諾々とこんなゲームの駒になれる程腑抜けではない。」
奴等にわしの真意を知られる訳にはいかん、この程度の方便は使わせて貰うぞ。
「………で、どうするんだ?」
「今日は呪文を使い過ぎた、神殿に引き返して明日に備える。」
「そんなチンタラやってたらっ!」
「失敗は許されんのだっ!慎重に振舞って何が悪い!」
大体だな、貴様があんな所で凍ってなければメラミやメラを使わずに済んだのだぞ?
「……それに神殿まで戻れば上手くすれば1人分ぐらいは確保できるあてがある、今は黙って付いて来い。」
若干の装備の交換を行った後、我々は神殿に移動を開始した。
【ジタン: 所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 現在位置:小島隠し通路
行動方針:ゲームから脱出】
【ハーゴン(あと二日で呪文使用不能、左手喪失)
武器:グレネード複数、裁きの杖、ムーンの首、グレーテの首、首輪×3
現在位置:隠し通路 行動方針:授業 ゲームの破壊】
【マゴット(MP減少) 武器:死神の鎌 現在位置:隠し通路 行動方針:ゲームから脱出、仲間と合流】
《午前11時40分前後の話》
どぅんっ!どどどどぅんっ!
遠慮のない、耳障りな音がロックの鼓膜を打ち付けた。
身体を隠す大木の幹に、小さな穴が大量に生まれる。
(くそ…もう何時間こうしてるんだ…。)
大木をかりそめの盾としていたロックが、小さく舌打ちして木の陰から飛んだ。
木の陰から木の陰へ飛ぶ一瞬の間に、大量の弾丸と黒の爆圧が彼を追いかける。
クイックシルバーに残った弾丸を全て…正真正銘、全て敵に向かって吐き出させながらソレを回避し、隠れる。
ぜぇぜぇと息を荒らげながら、ロックはクイックシルバーを投げ捨てた。
もう一発も入っていない。弾の入っていない銃など、ただの鉄の塊に過ぎない。
「ちくしょう……。」
もう一度、うめく。今度は声に出して。
コレまでずっと、隠れながらの弾丸の交換を繰り返していた。
ロックのクイックシルバーと敵…黒衣の騎士セシルのギガスマッシャーと暗黒波はお互いを殺そうと幾度も牙を剥き…
結局、ここまで一度もソレをなしえなかった。
ロックがここまで生きていられた…それも、無傷で生きていられたのは、彼の実力とソレに数倍する運のたまものだろう。
だが、彼が闘っている暗黒騎士…セシルの場合、その比率は逆転する。つまり、彼の運とそれに数倍する実力。
「何とか逃げ切らないと…。」
身体を庇う木が、無数の弾丸の洗礼にさらされているのを感じながら、ロックは逃げ切るための思考を始めた。
右手に掴んだ巨大な銃が、何の遠慮もなく怒声を発し、そして怒声は弾丸となって敵が隠れた木の幹をえぐり取る。
ただひたすらに敵を殺すべく、暗黒騎士セシルは弾丸を撃ち続けていた。
今戦っている…と言うにはやや一方的だが…バンダナの男、ロックはよく頑張っていると言えた。
もう三時間近く、危険な賭けに出る事もなくただひたすらに隙をうかがい続ける。並みの人間に出来る事ではない。
だが、それももう終わりだ。
ロックが、弾を撃ち尽くしたクイックシルバーを捨てるのをセシルは見た。
敵には銃がない。おまけに魔法を使える様子もない。だがこちらには銃と…暗黒の力がある。
「もらった…!」
セシルはもう一度、ギガスマッシャーに弾丸の怒声をあげさせるべく指に力を込めた。
…それから数分が過ぎて…ロックが、動いた。
再び別の木の陰へ飛び出し、隠れようとする。
だが、それを見逃すほどセシルはうかつではないし、寛容でもない。
「終わりだ!」
叫び、引き金を引く。
撃ち放たれた弾丸がロックの身体を浅く引き裂くのが見えた。
そして、ロックがこちらに何かを投げつけるのが見えた。
そして、セシルの視界はいきなり白に閉ざされた。ものすごい重量と共に。
うまくいった!
身体を鉄の飛礫に引き裂かれた痛みを強引に無視して、ロックは歓声を上げた。
ついさっきまでセシルが立っていた位置には、こんもりとした雪の山が出来ている。
その足下には、アモスのミスリルシールド。その後ろには、雪化粧を落としてスッキリした巨木が一本。
ロックの投げたシールドはセシルの後ろの巨木に命中し、その衝撃で落ちてきた雪が彼の身体を覆い隠したのだ。
ロックはそれを確認すると、振り返りもせず賭けだした。
エリアの走っていった方に向かって。
「くそ…。」
セシルは小さく毒づきながら雪の山から這い出した。
まんまとしてやられた。まさかこんな事をするなんて思っても見なかった…甘かった。
セシルは完全に雪山から這い出ると、その場にどっかりと座り込んだ。
暗黒波の撃ちすぎで、体力が消耗していた。
【セシル(やや体力を消耗) 所持武器:暗黒騎士の鎧 ブラッドソード 源氏の兜 リフレクトリング 弓矢(手製) ギガスマッシャー
現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方) 行動方針:皆殺し(ハーゴンorエドガーを最優先ただし遭遇すれば他のキャラでも殺す)】
【ロック(全身に浅い傷) 所持武器:吹雪の剣 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)から北へ
行動方針:エリアを守る】
(弾切れのクイックシルバーとミスリルシールドは森に放置されています)
あぼーん
《午後0時》
「参加者の諸君。如何過ごしているか…?」
突然ロンタルギアの大地に声が響いた。よく知っている声。背筋が冷たくなり、産毛がそそけ立つような…。
「ゾーマ…?」
バッツは、意外そうに言って、立ち止まった。
後ろからついてきているクーパーもそれに習う。
(どうして…)
そんな言葉が、二人の脳裏に同時に過ぎる。
放送のはまだだいぶ先のハズだが…正午?放送の回数が増えたのだろうか?
クーパーはぽかんと空を見上げ、バッツは麻痺しかけた頭を再回転させる。
だが、ソレは…バッツの頭の再回転は…一瞬後に、凍結した。
「闇の中におちた参加者の名を読み上げる。
アモス、ホイミン、イリーナ、レナ、ファリス…」
……空を見上げていたクーパーの身体が、びくりと痙攣した。驚きに。
レナと、ファリス。さっき、バッツが話していた名前…。
まさか。探しに行こうと言う所だったのに。もう、死んでいる?
…放送が終わった。寒々とした声は途切れ、静寂が戻る。
クーパーは、バッツを見た。見ただけで、声をかける事が出来なかった。
バッツの背中が見えた。顔は、表情は見えなかった。
ただ、分かった。彼の周りの空気が一瞬変わったのが。
ゾーマとは違う方向の恐怖を感じる。魔の覇王と相対した時の威圧感ではなく、凶悪な魔物と出会ってしまった時の絶望感。
だが、ソレはすぐにさっと引いていき…戻った、いつものバッツに。いつものバッツを取り巻く空気に。
恐る恐る、声をかけてみる。何となく…まだ、怖い。バッツが。
「……大丈夫だ。」
バッツは答えた。力強く、だがどこか震えた声で。
バッツがこちらを振り向いた。そして、笑った。いつもの、ただ少しだけ力のない笑顔で。
「泣いたり怒ったりしてるヒマなんて…無いからな。」
「でも……だって…。」
「子供(ガキ)が余計な気を遣うなよ…大丈夫だ…俺は。」
クーパーの頭に、バッツの手がぽんと置かれた。
その表面は冷気で冷え切っていたが、芯からぼんやりとした暖かさが伝わってくる。
だけど、その手は震えていた。ブルブルと小刻みに。恐怖ではなく…怒りに。
「これ以上誰かが死ぬ前に…ってことだ。行くぞ。」
「…うん。」
クーパーは頷いた。頷く事しかできなかった。
それ以外の言葉を今のバッツにかけてしまったら…バッツがどうなってしまうか、分からないから。
今回のゾーマの宣告は…バッツにとって間違いなく最悪の知らせだった。
二人が死んだ?死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ…殺された。
(誰が殺した?)
バッツがバッツ自身に問いかける。答えが分かるはずもないが、それでも問いかける。
そのとたん、バッツの思考は血の赤と闇の黒に向かっていきなり急降下していった。
凄惨な殺戮が脳内で瞬時に展開される。
あの、ゾーマの城にいた全ての顔が、その殺戮の海の中にいた。
広い雪の大地の中央に、綺麗な顔のレナとファリスの身体。もう動かない二人の身体。
その周りに、もはやほとんど原型をとどめぬ死体の山。
死体の誰かが、二人を殺した。死体の全ては、バッツが“壊した”。
(みんな殺してしまえ。)
ゾーマの声が…ゾーマの声色をしたバッツ自身が、バッツにそっと囁いた。
(みんな殺してしまえばいい。その内の誰かは確実に二人を殺した。)
バッツが死体の山を見た。知った顔が…クーパーの、アニーの、このゲームで知った全ての顔があった。
(殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ…)
(止めろ!)
バッツが絶叫する。喉はすでに用をなさなかったが、それでも心の中で絶叫する。
そのとたん、凄惨な地獄の風景の空想は消え失せ、現実の地獄が目の前に広がった。
どうかなってしまいそうだった。右手が動く。剣を手に取ろうと…。
「バッツ…兄ちゃん…?」
クーパーの不安そうな声が後ろから響き、そのとたん、動こうとした体が止まる。
(そうだよ…クーパーがこんなにしっかりしてるのに、俺がコレじゃ…。)
まだ、やらなければならない事がある。そうだ、やらなけらればならない事が。
「……大丈夫だ。泣いたり怒ったりしてるヒマなんて…無いからな。」
そう返事をしてやる。クーパーを安心させるように、笑顔を作って。
「でも……だって…。」
「子供(ガキ)が余計な気を遣うなよ…大丈夫だ…俺は。」
なるべく平静を装って、バッツは言った。ついでにクーパーの頭を撫でてやる。
「これ以上誰かが死ぬ前に…ってことだ。行くぞ。」
「…うん。」
バッツの言葉にクーパーが応える。
ソレを確認してから、バッツは再び雪原を歩き出した。
体の中で風が唸る。全てを切り裂き、血祭りに上げろと叫ぶ。
だが、その“殺意”は、一つの対象に向けられようとしていた。
…人がナイフで刺されて殺されても、ナイフの罪を糾弾する人間などいない。
罪は、ナイフを振った人間にある。
このゲームにおいて全ての参加者はナイフであり、同時に刺される被害者を兼ねる。
ナイフを振う人間の役割を担うのは、ただ一人。
(待っていろ、ゾーマ。)
バッツは、空に向かって心の中で叫んだ。
(ゲームからみんなを逃がしたら…真っ先にお前の目の前に現れてやる。お前を滅ぼしてやる…!)
【バッツ(魔法剣士 時魔法)/クーパー
所持武器:ブレイブブレイド/天空の盾 現在位置:ロンタルギアの北西の森から南へ(中央の砂漠を通る)
行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す。最終的にはゲームを抜け、ゾーマを倒す】
234 :
保管庫:02/12/17 22:07 ID:OlPEsXcK
「ふう。やっと抜けたでござるな」
「ガウ!」
予定していたコースから大きく外れたのか、目の前には
地図に描いてある湖の真ん中の突き出た砂地がある。
「ずいぶん西にそれちゃったみたいですね」
「しょうがない。ここまで入り組んだ地形だとはおもわなかったからな」
メルビンとガウに続いて、アーロンとモニカが森から出てくる。
「まあ、抜けれただけでもよかったでござるよ」
当初は山沿いに南下して、湖の湖岸からココまで来る予定だったのだが、
崖やら谷やらのせいで山沿いから離れてしまったのだ。
「・・・もうすぐ昼になるな。どうする?このまま祠まで向かうか?」
「小島にも森があるようでござるし、一度休憩した方が良さそうでござるな」
「そうか。モニカ、水を汲んでくる。手伝ってくれないか?」
「はい!」
モニカは、やっとアーロンの手助けをできるのが嬉しいのか、
顔を輝かせて湖にむかうアーロンの後をついていった。
235 :
保管庫:02/12/17 22:08 ID:OlPEsXcK
「・・・ガウ殿。『奴』の気配はまだ無いんでござるか?」
二人の姿をほほえましげに眺めていたメルビンは、
急に表情を険しくしてガウに問い掛けた。
『うん、森の中では感じなかった。近くにはいないみたい』
「そうでござるか。・・・当面は二人の保護をするでござる。いいでござるな?」
『メルビンがそう言うなら』
「できればあの二人を巻き込みたくないでござる。
二人の知り合いに会って、彼等を預けたいんでござるけどな」
「アーロンさん、ケガ、どうですか?」
森の入り口から湖まで少し距離がある。なんとなくモニカは口を開いた。
「心配するな。このくらいで傷が開いたりはしない」
心配そうにたずねるモニカに、アーロンは簡潔に答えた。
「・・・ごめんなさい。森を出るまでずっと抱えてもらって」
「祠にもっといい靴が置いてあるといいな」
落ちこんでいたモニカの表情が少しだけ緩む。
彼なりに気を使ってくれたのだとわかってるからだ。
236 :
保管庫:02/12/17 22:09 ID:OlPEsXcK
「・・・この水、飲めるんですか?」
水袋に湖の水を入れながらモニカは聞いた。
もちろん見た目は透き通った綺麗な水なのだが、彼女は生まれてからいままで
こういう水を飲んだ事はない。このゲームが始まる前は、清潔な部屋の中で
用意された物しか飲んだ事は無いし、始まってからも支給された水袋に入っていた
物しかのんでいない。不安になるのもしょうがないだろう。
「大丈夫だろう。あのじいさんなら水をキレイにする呪文くらい知っていそうだがな」
自分の徳利に水を入れながらアーロンは言った。とりあえず、持ってきた物には
全て水を入れた。メルビンとホフマンの持っていた二つの水袋と、徳利に。
(他の三人の持っていた物は紛失してしまっていたのだ)
「・・・メルビンさん。そのキノコなんですか?」
水を汲んできた二人を出迎えたのは、みた事も無い珍色奇形キノコのバーベキューだった。
「さっきソコで採ってきたんでござる。食料も少なくなってきたでござるしな」
悪びれもせずメルビンは答えた。
焚火の向こうでは、ガウがよだれをたらして焼けるのを待っている。
「食料の事はわかるが、食べられるのか?ソレ」
平静を装って出した言葉は、力が少し欠けていた。
「さあ。さっきかじってみたんでござるけど、何とも無いでござるよ」
説得力に欠けるじいさんの言葉。モニカは涙をのんで言った。
「私、キノコアレルギーなんで、パンをください」、と。
そして、この窮地から、モニカだけが脱出したのだった。大切な人を見捨てて。
逃げられなくなったアーロンは、しぶしぶ焼けたキノコを口に運ぶ。
毒は無かった。しかし、強烈な味がアーロンの体を蝕んだのだった。
「・・・すごくまずかったみたいですね。ソレ」
「むう、どれも味が違うみたいでござるな。ハズレだったんでござろう」
「ガウ!」
口にキノコを挟んだまま白目をむいて気絶しているアーロンを眺めながら、
メルビンはまた一つキノコを口にする。今度のも当たりだったようだ。
二人ともいくつもキノコを食べているが、ハズレはまだ出ていないようだ。
というか、ハズレキノコはアーロンの食べた最初の一本だけだったようだ。
二人の味覚が狂っていないのであれば。ガウが残りの三本を美味しそうに租借する。
「しかし、一本しかないハズレキノコに、最初の一本であたるとは・・・」
アーロンは微かな意識の底で、仲間達に、
「ラッキースフィアは別にいい」と言った事を猛烈に後悔していた。
そんな微かな意識が、耳障りな声で急速に覚醒した。
間違い無く、主催者側の提示放送だった。
【モニカ/アーロン:所持武器:エドガーのメモ(ボロ)/鋼の剣(中古) 現在位置: 台地最北東 行動方針:南の祠に 仲間を探す】
【メルビン/ガウ 現在位置:台地最北東 所持武器: 虎殺しの槍 /なし 行動方針 南の祠に 仲間を探す ホフマンの仇をうつ】
「くそっ!」
まさか、雪崩を引き起こしたとは。
あの女、かなり冷静だな。
やっとの思いで雪の中から這い出したヘンリーは悪態を着いた。
…ここは、どこだ?
現在位置の感覚が麻痺してしまっている。
体も冷え切ってしまっている。体を温めないといけない。
辺りを見回してみる。真っ白なゲレンデに二種類の足跡が。
アイラとアグリアスとの戦闘の跡であるがそれは彼の知る所ではない。
誰かが戦った跡だというのは容易に想像できるが。
「…まだ、新しいな。これを辿っていけば誰かがいる。」
そう呟いたヘンリーは片方の足跡をたどっていった。
【ヘンリー 所持武器:ミスリルアクス イオの書×3
現在位置:祠西の山岳地帯 行動方針:皆殺し アイラかアグリアスの足跡をたどっています】
――――ここはどこだろう?
ズキズキする頭で考える。
崖下へと落ちて行ったセリスは、奇跡的にも生きのびていた。
崖の斜面に、深く、深く降り積もった雪が、転がり落ちていくスピードを押さえると共にクッションの役割を果たしたのだろう。
しかし流石に無傷というわけにはいかず、金色の髪の間からは一筋の赤が流れていた。
セリスは、まず自分の現在おかれている状況を確認する。
周りはどこを向いても白白白…いや、遥か高みを仰げば天空の青が覗いて見える。
「あそこから落ちてきたのね…」
斜面に残る、自分が滑り落ちてきた軌跡の痕跡を見て呟く。
とりあえず、自分が今からすべき行動は決まった。
こんな所にいつまでもいても仕方がない、早く上へと登ろう。
と、一歩踏み出した所で足元がふらつき、慌てて倒れないようにセリスは自身の体を支える。
足元の雪が、頭から落ちた一滴の血で鮮やかに染まっていくのを視界に入れる。
「ケアル」
左手を翳し、治癒の魔法を唱える。
そう、私は魔法が使える――――ガストラ帝国の常勝将軍としての自分があったのも、この力に依るものだった。
そこで唐突に、自らの思考の流れに疑問点を覚え、その部分をそのまま口に出してみる。
「ガストラ帝国の常勝将軍?」
なんだろう、それは?
というよりも……私は一体誰なのだろうか?
自分の名前がわからない。
何をしていたのか、何をこれからしようとしていたのか――――
結論に至って愕然とする、どうやら自分は記憶喪失になってしまったらしい。
何か自分に関することがわかるものは無いかと、持ち物を点検してみる。
剣が一本と……
いや、それだけのようだ。
もしかしたら他にもあったのかもしれないが、きっと――――
まだまだ下へと続いている崖の斜面を見下ろす。底は見えない。
食料すら保持していないのでは、このまま飢え死にしてしまうか、そうでなくても凍死してしまうか……いずれにしても状況は絶望的だった。
「とにかく、誰か居ないか探してみないと」
セリスは、不安のためか少し早足になりながら、純白の大地に足跡を刻み始めていった。
歩きながら、記憶の糸を手繰り寄せようとしてみる。
まずこの剣。
鳥(?)を模した意匠の柄作りに、燦然と輝く黄金色の刀身。
一目でかなりの業物とはわかるが、自分の手には微妙に馴染まない。
馴染みはしないが――――振り回しているうちにわかってくる、自分の手には剣を扱う術が備わっていることを。
そうだ、自分には魔導の資質だけでなく、戦士としての才覚もある!
そして……
ダメだ、やはり自分の名前は思い出せない。
しかしそれ以上に、何かもっと大切なことを忘れているような気がしてならない。
それが一体なんのことなのか、誰のことなのか……
セリスは能動的思考とは裏腹に、無意識の内では思い出すことを拒絶していた。
血で染め上げた自らの罪、その負い目、そして――――ロックのことを。
崖の転落で頭を打ったのはきっかけに過ぎなかったのかもしれない。
しかしそれは、今の彼女にとってある意味望んでいた展開なのかもしれなかった。
覚えていなければ。
思い出さなければ。
苦しみ――――愛する人を求めてやまない、そして同時に、求めてはいけないとする二律背反の心――――から解放される。
セリスの足は、生きる為に前へ前へと歩を進めていく。
しかし心は、死んだままでいたいと立ち止まったままだった。
セリスが正午の放送を聞いたのは、そんな想いに囚われながらかなりの距離を登りきった時だった。
【「セリス」:記憶喪失
所持武器:ロトの剣
現在位置:祠西の山岳地帯中腹
行動方針:人を探す】
242 :
保管庫:02/12/22 11:03 ID:4+CiTvGN
暗い森の中とは相当に場違いだが、透き通った青髪の美しい少女がいた。
当然ながら、それは水の巫女エリアに他ならない。
あの騒動のあと急いで祠の方に向かったのはいいのだが、
運の悪いことに風の反応の主は北へと動き出した。
しかし、頼れるのはその会ったこともない彼しかいないのである。追うしかなった。
それにしても、今になって考えるのも愚かなことだが、まったく馬鹿なことをしたものである。
何故、あの青年に自分は向かっていったのだろうか?
運良く生き延びることができたが、あれは勇気ではない。単なる無謀である。
もしかすると、ファリスの炎を継承する人物を捜すための試練だったのであろうか?だとすれば、落第であろう。
もっとも、炎とは対極に位置する水の巫女に勇気の炎を、というのも些か滑稽な話ではある。
さて、橋を渡ればあとは一本道なのにも関わらず、祠のようなものはまったく見かけることがなく、彼女は自分の位置を疑った。
しかし地図を見る限りでは、そこは祠の近くに間違いなかった。
もっとも、本当に地図が正しければの話だが、今さら嘘の地図を参加者に渡すことになんの意味があるのだろうか。
地図の真偽に対し猜疑的になるのは恐らく的はずれのことだ。
少し探し歩いたあと疲弊していた彼女はそれ以上考えることはなく、そのまま短い砂漠を渡り森へと入った。
そして祠のあたりを歩いている間に、彼女を捜し求めていたミレーユはその存在に気づくことなく南の橋を渡ってしまった。
偶然というのはこうまで重なるのかと、事情を知れば溜息をもらしたことだろう。
バッツに走って追いつくには幾分距離が遠すぎる。
もとより体力のない彼女は走らずに、通常よりも少し速い程度のスピードで歩いた。時間はかかるが、いずれ追いつく。
243 :
保管庫:02/12/22 11:04 ID:4+CiTvGN
そしてやや北西よりの北の森のあたりである。あの予期せぬ放送がなったのは。
この時間に死亡者通知がされたのは、彼女にとって大いな誤算であった。
ファリスが逝去し、そしてその妹のレナという人物も生死が怪しまれる中、
なんとしても放送の前に風の戦士、バッツにその旨を伝えたかったのだ。
これでまだレナが生きていたならば、救いようもあったのだが…。
通知の中にアモスの名があったことも、彼女に並ならぬ衝撃を与えた。
だがなによりも彼女は、それを聞いて涙ひとつ流すことのなく、そのうえ存外に自分の心が落ち着いていることに驚いた。
アモスの死に実感が湧かなかったこともあったかもしれない。
しかし、だからといってここまで平静を装えるものなのだろうか?
短い間ではあったが、共に過ごした仲間ではなかったのか?
ほとんど無意識のうちに呟いた。
「死ぬって…なんなんだろう」
忘れかけていたが、彼女は思いだした。自分が、元いた世界では既に死んでいることを。
しかし、今自分は間違いなくこの冷たい大地のうえにたっている。
果たしてこの世界は現実なのか?雪の中の肌寒さ、風に靡く木々はその通りだと返答しているようであったが、
自然の力のそれさえも彼女には嘘臭いものが感じられる。
疑問は尽きない。
ふと、エリアは顔をあげた。
こんなことを考えてなんになるのか、と。
暗闇を照らす一筋の光は、きっとある。
風の反応まで、もう少しではないか、今はただ、進もう。
そこまで考え、またはっとした。これはこのゲームの最初にも考えたことだということにきづいたのだ。
結論のでないまま、結局、とにかく行動しようという結論。
同じような疑問に頭を擡げ、そしてまた同じような結論に達すると?
いや、進展はある。少なくとも、同じクリスタルの元に導かれた者がいる。
そして恐らく、あの四人の少年の一人もいる。
244 :
保管庫:02/12/22 16:55 ID:BW2VCLI/
エリアは大きく息をついて、再び歩き出した。
それは先のスピードよりも数段速かった。
無念無想の境地に入れば、様々なことがわかるのだろうが…。
とにかく、アモスは死んだ。恐らく、あのまま自分たちを逃がすために。
その意志を無駄にしてはいけない。
ロックは生きているようだが、自分の後ろからはまったく気配は感じなかった。
現在どのような状況にあるのかは検討もつかない。
でもきっと、生きている…そう信じたい。いや、信じなくはならない。
レナは死亡していた。ならば、今ある小さな水の反応は?クリスタルの継承?
まさか、ありえない…。ならいったい…
風の反応は今動きが止まっている。彼は今どうなっているのか?
一刻も早く追いつかなくてはならない。
土の反応も、ここのところ動きが少ない。
そして、そろそろ真剣に考えねばなるまい。
死んだ筈の自分がここにいる理由を。
このゲームのことを。
風が少し強く吹き、森はざわめき、エリアの青い髪は鮮やかに靡いた。
その姿は、形容する言葉の見つからないほどに美しかった。
【エリア 所持武器:小型のミスリルシールド・ミスリルナイフ・加速装置・食料2ヶ月20日強分&毒薬
水1,5リットル×2 フィアーの書×7 小型のミスリルシールド 現在位置:ロンタルギア北の森(やや北西より、つまり北北西?(w)から風の反応へ
行動方針:クリスタルの戦士との合流】
(エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能)
ゾーマの城。
相も変わらず外には稲妻が轟いている。
稲光で見える影は他ではないゾーマそのもの。
悠然と構えるゾーマは何を考えるだろうか。
傍らにはバラモスゾンビの影はない。どこかにいるだろうか。
バラモスゾンビの姿はない。どこかにいるだろうか。
「頃合だな。」
ゾーマは立ち上がり、水晶玉に念をこめる。
「参加者の諸君。如何過ごしているか…?
中々に頑張っているではないか。
今現在ちょうど正午、だな。…まだ日も長い、精々凍えぬようにな。
闇の中におちた参加者の名を読み上げる。
「アモス」「ホイミン」「イリーナ」「レナ」「ファリス」「アーサー」「ビビ」
以上である。
次に、禁止呪文、魔法を読み上げる。
「アストロン」「メテオ」「コメテオ」「コメット」「クエイク」
以上である。
我が名はゾーマ。
我こそすべてを滅ぼす者…」
(時刻が正午を過ぎました。)
あぼーん
しかし、これまたとんだ糞スレだな。
ここに投稿してるやつらにはボンクラばっか
普通につまらないよ
あぼーん
良かったのは最初だけ。
書き手レベル低すぎ。
あぼーん
>>182は、
先に
>>174で「物陰に隠れている人物」を特定されてしまっているため、
申し訳ありませんが無効とさせていただきます。
あぼーん
あぼーん
あぼーん
255 :
保管庫:02/12/25 23:08 ID:0t8k5aCO
《午後0時半前後》
しゃこんっ…しゃこんっ…。
金属と金属が軋み合う音、そして、シリンダーが伸び縮みする嫌な音がセーラの耳に届いた。
(また来たのかしら…しつこいですわね…)
簡素な村娘の服を身に纏った女…セーラは、そう心の中で愚痴った。
愚痴りついでに、そこらの物陰に身を隠しておく。
……軋みの音が、セーラの隠れた物陰の前を通り過ぎて向こうの方へ歩いていく。
物陰からそっと覗いてみると、丸い金属の背中が見えた。
「…なんであんなモノが彷徨いているのかしら。」
心の中の愚痴を口の端から思わずこぼしながら、セーラは物陰から這い出した。
ついてに、腹立ち紛れに近くの石像を小さく蹴っ飛ばす。
見るも禍々しい破壊神の石像は、そんなセーラの無礼な行動を気にも止めず、悠然と佇んでいる。
…セーラの今いる場所は、かつて…今でもかも知れないが…ハーゴンの神殿と呼ばれていた。
256 :
保管庫:02/12/25 23:09 ID:0t8k5aCO
「ここは何処なのかしら…。」
セーラは唯一信頼できる存在であるブレイズガンを握りしめ、再び神殿の散策を開始した。
この神殿に転移してきて数時間、あの不気味な鉄の塊のせいで、すっかり道に迷ってしまった。
唯一の幸運は、この神殿の中ではまだ誰にも会っていない事か…否、彼女にとってそれは“幸運”ではなかった。
何しろ、“か弱い”彼女は誰かに助けてもらわねば、すぐ死んでしまうだろう。こんなゲームの中では。
だから、会う。あの黒い騎士に。そして、二人で生き残るのだ。二人で。
…その甘美な空想に、セーラの表情がほどけていく。顔が上気し、どこか恍惚とした顔へと変わっていく。
思わず、頬を掌で押さえる。暖かい頬が冷たくなった彼女の手を僅かに暖めた。
その感触にもう一つの快感を思い出して、セーラはさらに恍惚とした表情を深めた。
頬に当てたはずの手に、クッションの…その下にあるフローラの手の感触が蘇る。
もがく身体。クッションの下の荒い呼吸。肌を通して伝わる恐怖と絶望。人として犯される最大の背約行為。
その光景を思い出すだけで、彼女の体は甘く溶けていってしまいそうだった。
黒い騎士と自分が、深く深く愛し合う空想と同じくらいに、ソレは大きな快感を彼女にもたらす。
「騎士様…貴方のために、このセーラ、誠心誠意を持って戦わせていただきます。」
ふぅ…ふぅと、僅かに荒い吐息を漏らしながら、セーラは小さく呟いた。
【セーラ 所持武器:ブレイズガン 現在位置:神殿内(詳しい現在位置不明) 行動方針:騎士様を探す&皆殺し】
257 :
保管庫2:02/12/26 00:05 ID:bF53PIFo
雪崩に巻き込まれた後、とんぬらとルーキーは山沿いに南へ移動した。
ライアンとアイラを探したいのは山々だったが、雪崩が起きたばかりの山に入るのも躊躇われた。
それで、こうして山の入り口付近を巡回して、二人がやってくるのを待っている。
勿論、ヘンリーともう一人、アグリアスがやってくる可能性もあったが、
(ヘンリーは止める。殺してでも)
腰に佩いた剣を撫でる。その目に迷いはない。
ヘンリーは親友だ。それは今でも変わらない。だが、今の自分には子供がいる。
子供のためならば、何でも出来る。それが親というものだ。
(そうだよね、父さん…)
一方、ルーキーは不安げだった。
ライアンとアイラの戦闘力が優れている事はわかっているが、
アイラはともかく、ライアンは非常にお人よし…悪く言えばオメデタイなところがある。
とにかく、策略とか駆け引きが似合わない人だ。それ故に、こんな状況では不安だった。
そうこうしているうちに、二人は湖の辺に出た。
南、湖の向こうにはなだらかな平原。東には湖を横断するように伸びた陸地と、橋が見える。
「なんだか、すんなり移動できちゃったね」
ルーキーは何となく納得できない口調で呟く。
それもそうだろう、森の各所に設置された魔術装置、あれだけ悩まされて山登りまでする事にしたのに、今はまったく迷わなかったのだ。
「そうだね。今は装置が働いていないみたいだ」
「でも、なんでだろ…誰かが止めた、って事はないよね。あれは単体でも起動するみたいだから」
「…迷った時は四人で、今は二人だから…」
「?」
「あるいは、僕と君以外、つまりはライアンさんかアイラが迷わせていたか。
色々原因は考えられるけど、とりあえず迷わされることはないってことだけは確かだね…」
それだけ言うと、とんぬらは腰から剣を抜いた。
258 :
保管庫2:02/12/26 00:33 ID:6FOhHtf3
「とんぬらさん…?」
「出てきたらどうだい?…って前にもこんな事いった気がするけどね。
出てこないなら、こちらから行かせて貰う」
けして荒げているわけではない、だが有無を言わせぬ力強さでとんぬらは言う。
ルーキーは、とんぬらが見ている木陰に何者かの気配があることに、ようやく気付いた。
急いでブーメランを取り出し、構える。緊迫した空気が周囲を満たした…気がした。
「…?あれ?」
最初は小さく、次第に大きく。木陰の向こうでなにやら言い争う声が聞こえてくる。
動きも段々激しくなっていく。木陰の向こうから、ちらちらと人影が見えるようになった。
「あの、なんか揉めてない?」
「みたいだね…どうやら敵ではないようだけど」
そして遂に、木陰から人の姿が完全に出た。
紫の髪の女の子。おかっぱに黄色いマント。
それを追って出てきたのは亜麻色の髪の妙齢の女性。ただし服装はマントの下にレオタードのみ。
「こら!危ないからでてっちゃダメだってば!」
「ヤダヤダヤダヤダやだぁっ!!離して、離してってばぁ!」
じたばた暴れる女の子を、何とか押えようとする女性。
とんぬらは、震える唇で呟いた。
「………アニー…?」
二人の女性が、とんぬらを見る。見る見るうちに女の子の瞳に涙が溜まる。
女の子は女性の手をすり抜けると、そのままとんぬらの首元に飛びついた。
「お父さん、お父さん、お父さん、お父さん、お父さん、お父さん!!!
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーん!!!」
大声で泣きじゃくる少女、やや戸惑いながらも抱きとめる父親、唖然とする傍観者二人。
こうして、離れ離れになった父と娘は再開する事が出来たのだった。
259 :
保管庫2:02/12/26 00:48 ID:Be+ZQKqF
「でも、とんぬらさんに子供がいたって本当だったんだねぇ」
ルーキーはしみじみという。とんぬらは苦笑しながら、自分のマントの端を握ってベソをかいている娘の髪を、優しく撫でた。
「まぁ…ともあれ、めでたしめでたし、かしら?」
アリーナは、複雑な気分になっていた。傍目同世代の彼が、アニーの父なのである。
自分は恋愛だとか、そう言ったことに興味なかったし、まだ早いと思っていた。
だが、すでにこうして、子供がいる同世代もいるのだ。どうしても意識してしまう。
そんなわけで、同世代の男の娘が10歳であることの疑問点にはとりあえず気付かなかった。
それから、お互い意見の交換を行った。
ルーキーはゲーム開始当初からライアンと共に行動していたこと、
最初、アニーとクーパーは一緒にいて、パパスに守られていたこと、
パパスと逸れたこと。色々あって、クーパーとも離れ離れになったこと。
つい先程雪崩に巻き込まれ、ライアンの行方が知れないこと。
一通りの意見の交換を終えた後、とんぬらは静かに目を閉じ、口の中で呟く。
「そうか…父さんが、アニーとクーパーを………」
一方、アリーナはパン、と拳を合わせた。そして、湖の向こうを見る。
「ライアンと合流できなかったのは残念だけど、仕方ないか」
そして、踵を返す。
「アリーナさん?」
「アニー、あなたはお父さんと一緒にいなさい。私は行くから」
「一人で?」
「止めなきゃいけない奴がいてね。そう、倒してでも絶対に止めてみせるわ」
ソロ。緑の髪の勇者。自分のもっとも頼れる仲間、だった…
瞼を閉じればまだ思い出せる。ムシケラのように、人を殺してケロリとしているあの顔。
人を殺めながら自分は悪くないとあっさり言ってのける甘ったれた顔。
拳を握り締める。そして唇を強くかんだ。
「そういうことだから。私、行くわ」
260 :
保管庫2:02/12/26 00:50 ID:Be+ZQKqF
アニーは父を見上げた。困惑した娘の顔に、とんぬらは一つ息をつく。
「わかりました。これまで娘を守っていただき、ありがとうございます」
「どういたしまして。それとこれは忠告だけど、ソロって奴にあっても、けして信用しちゃダメよ。外見は緑色の髪で私と同じ年頃だから、すぐわかると思う」
「では、僕からも。ヘンリーという男に注意してください。緑色の髪で、年頃は僕より一回り上ぐらいです」
アニーが息を飲んで自分を見ている。それを感じながら、言葉を続ける。
「そいつは、完全にゲームに乗っています。話し合いだとか、そんな馬鹿な事は考えないで下さい」
「…OK。おぼえておくわ」
「それから」
「まだなにかあるの?」
とんぬらはアリーナの姿をさらりと眺めてから、いった。
「風邪ひきますよ、その格好だと」
「………」
アリーナは以前娘に話した事をそっくりそのまま父親に話すことにした。
そんなにこの格好は寒そうに見えるのだろうか、と少し疑問を感じながら。
ともあれ、アリーナは一人、雪を蹴って駆け始めた。森の向こうに消えていく彼女の姿を見送る三人。
「お父さん…」
「大丈夫、また会えるよ」
「……はい」
「僕たちも行こう。クーパーを探さないと」
「はいっ!」
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:祠の西の森、南の平原へ 行動方針:ソロを止める(倒してでも)】
【とんぬら(DQ5主人公)/ルーキー/王女アニー
所持品:さざなみの剣/スナイパーアイ ブーメラン/マインゴーシュ
現在位置:台地北の森と祠西の山岳地帯の境目あたりの湖畔
行動方針:王子を助ける、パパスに会う/ライアンと合流/クーパーを探す】
あぼーん
あぼーん
あぼーん
「確かにサマンサと名乗ったのだな?」
「ピサロって奴はそう呼んでた、けどそれがどうしたんだ?」
ここは神殿の信者用の浴場、マゴットは外で水晶を使って神殿の監視をしている。
マゴットの入浴?我々の前に終わっておる。
「サマンサはマゴットの仲間だったそうだ。」
「じゃああんな奴を仲間にするってのかよ!」
「ゲームに乗っているなら話は別だ、ただ」
「乗ってるに決まってるだろ!」
「装備も命も奪われておらぬ、乗ってるとしたら随分間抜けな連中だな。」
もしわしがサマンサの立場だったら看病をするふりをしてジタンの命を狙うだろう。
「それにだ、ピサロが現れた時貴様は既に抜刀していたのだろう?」
「それは……そうだけどよ。」
感情的に納得がいかぬ様だな、ビビが生きておれば話も違ったのであろうが。
大体サマンサも何でそんな中途半端な真似をしたのだ?
「とはいえ、この環境で一度敵対した相手と和解するのは非常に難しい、復讐自体を止めろとは言わぬ。」
「……条件は?」
「復讐したければ、サマンサよりも強力な信頼関係を貴様とマゴットの間に築く必要がある、
手段は任せるが、壊すなよ。」
【ジタン: 所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 現在位置:神殿
行動方針:ゲームから脱出、サマンサとピサロの殺害】
【ハーゴン(あと二日で呪文使用不能、左手喪失)
武器:グレネード複数、裁きの杖、ムーンの首、グレーテの首、首輪×3
現在位置:神殿 行動方針:授業 ゲームの破壊】
【マゴット(MP減少) 武器:死神の鎌 現在位置:神殿 行動方針:ゲームから脱出、仲間と合流】
hihihihihi
266 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/03 03:16 ID:7t0VgI2y
保守あげ
267 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/03 13:06 ID:ny1L8KlO
もうこのまま眠らせてやってくれ。
gugu
269 :
うう:03/01/03 13:56 ID:uBkgT1R8
実は僕たん、おるごでみーらたん萌えなのらぁ〜 ハアハア… (´∀`)
あぼーん
ワインの味を堪能していたゾーマはゾーマは立ち上がった。
「もう終わりでいいや・・・」
ゲームの参加者達の首輪が爆発した。
お し ま い
FFDQバトルロワイアル─完
激しく保守マリム
273 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/11 02:30 ID:2L1IQnzv
終了??
このまま終わらないでくれー。
激しく復活をキボンヌ。
物凄い勢いでほしゅまりむ
あぼーん
278 :
保管庫:03/01/14 01:34 ID:x4S795Es
放送の後も森の中を絶え間なく歩き続けたエリアが、ふと歩みをとめた。
忽然と近くに気配を感じたのだ。
その現れ方はあまりに突然であったし、人の気配ではなく何かしらの魔力であるように思えた。
すなわち、気配といういいかたは適当ではないかもしれぬが、肌に伝わるその感覚的なものは気配といって逕庭ない。
時間は惜しいが、普通ではないその存在を突き止めずに進むというのもまた不安だった。
エリアは魔力の源に近づいた。そこには、紋様の刻まれた球体があった。
そっと手に取ると、そこからは何かしらの魔力は感じられても、具体的にどういった作用があるのかは皆目見当がつかなかった。
その様は、もはや役割を終えたかのようだ。
暫くの間思案していると、今度はやや東からも同じような魔力を感じた。
そこは自分が通った道であった。
この球体はなにか幻影のようなものを見せるもの、とエリアは考えていた。
そしてこの魔力の大きさから、範囲は四方50〜100メートルに及ぶであろう。
つまり、彼女はここまでにこの球体の魔力の範疇に入ったことになる。
いくつもあったであろう幻影の魔力を悉皆無視してきたのだ。
なんの意識もせずに。彼女だけではなく、前方にいるバッツも然りである。
そのようなことが果たしてあるのだろうか?
この装置が故障している可能性をまず考慮した。
だが、これだけの魔力が何の意味もなさないことなど到底考えられない――そこまで考え、ふと気がついた。
そう、今まさに自分はこの魔力の中にいるのである。
それにも関わらず、身の回りに変化らしい変化はまったく何一つないのであった。
考えられることのひとつは、この魔力には対象者の条件があるということだ。
その条件というのはわかるはずもない。だが、何か目的あっての装置らしい。
たいていこういった類の装置は、よそ者の侵入を妨げることが目的だ。
城から祠へ行くことができないようにしているということが考えられる。
それならばバッツを含めて彼女は森を渡ったが最後、祠には戻れないことになるが…。
また、地図を見る限りこの大地には城と祠くらいしかめぼしい建物はないことから、
城と祠をつなぐ森によって人の移動を遮断することが目的ということも考え得る。
279 :
保管庫:03/01/14 01:36 ID:x4S795Es
その際に気になるのは、移動を妨げられる対象はどのように決まるかだが。
「…対象は死人、なんてね」
自分のことを思いながら、やや皮肉をこめてエリアは呟いた。
なんにせよ、ミレーユやとんぬらたちのことから前者である確率はないのだが、そのことをエリアが知っているはずもない。
また、彼女の何気ない独り言もあながち間違いとも言いきれないであろう。
共通して疑問に残るのは、何故今頃になってこの装置に気がついたかである。
それに関しては彼女は答えを出すことができず、代わりにあまり信憑性のない仮説をたてた。
至って単純なもので、ある者の意志によって魔力がより具現化され、掻い摘んで言うと強力になったのではないかということだ。
それが何か理由あって直接増大させたのか、それとも放送の時間あたりを契機に間接的に増大させたのかまではわからない。
また、その主という者も曖昧模糊としている。
根拠は稀薄であるし、馬鹿馬鹿しい空理空論であるかもしれなかったが、それ以外のことは彼女には思い浮かばなかった。
なんにせよ、今の自分には直接の危害を加えるものではないというのが彼女の結論だった。
エリアは青い髪をかき上げると、再び森の中を歩みだした。
暗鬱な森の脆弱な光は、漸次強くなっていった。
【エリア 所持武器:小型のミスリルシールド・ミスリルナイフ・加速装置・食料2ヶ月20日強分&毒薬
水1,5リットル×2 フィアーの書×7 小型のミスリルシールド 現在位置:ロンタルギア北の森(やや北西より、つまり北北西?(w)から風の反応へ
第一行動方針:森を抜け、風の反応に追いつく
第二行動方針:クリスタルの戦士との合流】
(エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能)
如意棒・・・
作戦:
・マターリ逝こうぜ
・死ぬ気でがんばれ
・他人にまかせろ
・薬つかうな
・命をだいじに
>・発狂させろ
PS2、GCの2大ハードで発売するのが一番上手く行くのにねぇ
たぶん200も行かないうちに飽きて終わると思うよ。
FFはPS以降が駄目ってことか
ワロタwただのってw
286 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/01/15 00:50 ID:zFJYnyGR
漏れはスレを間違えたのだろうか…。
保守
ロンダルキア洞窟、無限回廊
リノアは闇の中で1人震えていた。
「スコール・・・早く帰ってきてよ」
洞窟の中で、転倒してしまったリノア、しかも場所が悪かった、彼女の転倒した場所は
ちょうど無限回廊のフロアとフロアの境目だったのだ。
そのためわずかに先行していたスコールとはぐれた彼女は、スコールが迎えに来るのをひたすら待ち続けていた。
洞窟の片隅でうずくまっているうちにリノアに睡魔が忍び寄ってきた。
一面静寂と闇の中では、それに抗う事は難しい・・・・リノアは床にころんと寝転ぶとそのまま寝息を立て始めた。
「すっかり迷ってしまったぜ・・ってうわっ!」
そしてそのころ、同じように無限回廊の中をさまよっていたザックスは、不意に足元に現れた障害物に
思いっきりつんのめってしまう、普段のザックスならば、こういったことにも対処できるのだが、
洞窟に掛けられた魔法が、微妙にその感覚を狂わせていた。
「おい・・・そこで何しているんだ、あぶねぇな!」
苛立ちまぎれにザックスは足元のそれを蹴りつけようとして、その障害物がもそもそと動いたのに気がつく
「って、人かよ!オイ、大丈夫か!」
闇に目を凝らすと正体が見える、それはまさにザックス好みの美少女だった。
「俺はザックス、君みたいなキレイな女のコが1人でいちゃ危ないぜ!」
ザックスはまさに電光石火の早業で少女に近づき、声をかける。
少女は怯えたような声を上げて奥の方へと後ずさっていく、
「俺は何もしないって!信じてくれよ、俺は女のコには優しいって評判なんだぜ!
なぁ・・ほら武器も捨てるから・・・」
ザックスは少女を安心させるため、あえて剣を地面に投げ捨てた、この状況でそれがいかに危険かを
充分に理解した上で。
と、その時だった、少女の緊張した顔がやや緩んだと思った瞬間、ザックスは背後から現れた何者かに
思いきり殴りつけられていた。
「何しやがる!テメェ・・・おっと君は安心していいよ、俺があんな奴には指1本触れさせやしないぜ・・・
って、そんなのアリかよ!」
そう、少女はザックスを完全に無視して、闇から現れた男・・・スコールの元へと走ったのだった。
「そうか・・・そういうことだったのか、色々悪かったな・・・・またな」
気まずそうに鼻の頭を掻きながら頭を下げるザックスだったが、スコールはさらにザックスへと殴りかかる。
「オイ、謝っただろ!もういいじゃねぇか!しつこいぞ!」
掴みかかるスコールを振りほどこうとしたとき、ザックスは見てしまった、スコールの瞳を・・・
はっ!と気がついたようにザックスはスコールへと向き直る。
「テメェ!乗ってやがるな・・・しかももう何人か殺っているな・・あのコも殺すのか!許さねェ」
スコールはザックスの言葉に氷のような視線で応じる、ザックスもまた、スコールを振りほどき拳を構える。
またそして正午の放送が鳴り響くと同時に2人は・・・・
【ザックス 武器:無し(バスタードソードは地面に落ちたままです)
現在位置:ロンダルキアの洞窟5F 行動方針:とりあえずスコールを何とかする→エアリス・ティファの捜索】
【スコール(負傷) 所持武器:なし 現在位置:ロンダルキアの洞窟5F
行動方針:ザックスを殺す→人形状態ではあるがリノア以外は殺す】
【リノア 所持武器:妖精のロッド・月の扇/アルテマ×1 現在位置:ロンダルキアの洞窟5F
行動方針:スコールと行動する】
290 :
保管庫:03/01/24 03:22 ID:QfQtv7Ge
そしてそれとほぼ同時刻、ロンダルキアの洞窟の出口
放送が終わると同時にギルガメッシュの口から、凄まじい絶叫があがる。
その悲嘆は、共に行動していたティーダとエアリスにも充分理解できた。
彼は事あるごとに、彼らクリスタルの勇者たちを称え、彼らとの再会を心の支えとしていたのだ。
「レナ!ファリス!・・・何故だ!何故俺が生きていて、お前らが先に死ぬ!
お前ら勇者だろ!世界を救うんだろ!ちくしょうッ!!」
一方、彼らの背後では、ラグナが止めるのも聞かず、マリベルが必死に瓦礫を掘り返している、
「おい、もう止せ、無駄だ」
「アーサーが死んだなんて絶対に嘘よ!このどこかに埋まっていて、きっと助けを待っているのよ・・・
助けなきゃ・・・助けなきゃ」
自分に言い聞かせるように呟きながら瓦礫を掘る、マリベルのその手は自らの血に塗れていた、
それを見たラグナはもう止めようとはしなかった、ただ悲しげに見守るだけだ。
そんな彼らの様子を見ながら、ティーダは申し訳無さ気な表情をしてエアリスに話しかける。
「俺・・・・リュックやアーロンが死んでなくって、少しだけ安心してしまったッス
でも・・・その陰で誰かが死んで、悲しむ人がいて・・・・それでも安心できる俺って一体・・・」
ギルガメッシュたちの悲しみの表情を見ながらうなだれるティーダの肩に手をやりエアリスは優しく言い聞かせる。
「いいのよ・・・私だって皆には悪いけど、クラウドたちが死んでなくって・・・・うれしいもの
こんな時だから、素直に喜べるときは喜んだ方がいいと思う、自分の命の他に今はそれしか
希望はないもの・・・・」
291 :
保管庫:03/01/24 03:24 ID:QfQtv7Ge
と、その時
「やはりセフィロスは倒さないといけねぇようだな、このゲームを抜けるなり潰すにしても」
その唐突な一言に一同は一斉にギルガメッシュの方を向く。
「俺の考える限り、タイマンで奴に勝てるような奴は想像もできねぇ、これから先、
人数が減ればますます奴が有利になる、仕掛けるなら今だ」
その言葉を聞いたラグナがうんうんと頷く。
「6人、いや攻撃に5人、守りに2人で7人は欲しいな・・・それでも」
ここでギルガメッシュは言葉を切って一同を見つめる。
「奴を倒せるとは限らんし、例え倒せたとしても・・・・生き残れるのは1人か2人、だから強制はしない、
俺だって本心は死にたかないしな」
「今から俺が100数える、その間に答えを決めて・・・嫌ならこの場から去ってくれないか」
と、かなりムリヤリな、まるで自分がこのメンバーを仕切っているような言葉を残し、
ギルガメッシュはそのまま背中を向け、大声で一つ、二つと数を数えだしていく。
不思議な雰囲気が漂う最中、数え終わったギルガメッシュが振り向いたとき、
そこにはマリベルもエアリスもティーダも残っていた、そして両足を失ったラグナさえも
自分の存在を誇示するように、両手を挙げて微笑んでいる。
予想外の結果に、ギルガメッシュはうろたえながらも声を出す。
「いいのかよ、お前らも会いたい奴もいれば、やらなきゃいけねぇ事もあるだろうが・・・死ぬぜ」
292 :
保管庫:03/01/24 03:28 ID:iAKGlvfP
「だからこそ、そのセフィロスって奴は止めなくっちゃいけないッス!」
「やられっぱなしじゃ、納得できないわよ!それにもしエドガーって人が死んだら元も子もなくなっちゃうし」
「守り手が必要よね、ギルガメッシュさんはドジだから」
「俺でよければ俺なりにって所かな、足がありゃ任せろって言えるんだがな」
もちろん、彼らも好き好んで戦うわけではない、その内心は死への恐怖で溢れている。
だが・・・それでも自分がセフィロスを倒す事で、守りたい誰かが、希望を託したい誰かが生き残れるのなら
可能性がわずかでも増えるのなら・・・この命、惜しくは無い。
彼らの表情はそう物語っていた。
「よし!あと3人、腕の立つ戦士を2人と、それから回復魔法の使い手を探すぞ!」
「それに武器も探さないとな」
「武器もいいけど、カンキリも忘れちゃだめッスよ!」
「もう!ティーダ君のいぢわる!」
なんてことを口にしながら雪原を進む彼らの顔に何時の間にか笑顔が戻って来ていた。
だが、それは死地に赴く覚悟を決めた戦士たちの死出の笑いでもあった。
293 :
保管庫:03/01/24 03:36 ID:iAKGlvfP
【マリベル/ラグナ(両足欠損)/エアリス/ティーダ/ギルガメッシュ 現在位置:ロンダルキア洞窟近くの雪原
所持武器:エルフィンボウ・いかづちの杖・エドガーのメモ/参加者リスト/ 癒しの杖/無し/無し/
行動方針:打倒セフィロス→このゲームから抜ける】
294 :
保管庫改:03/01/24 03:44 ID:iAKGlvfP
〈台地中央砂漠北の山地 12:05〉
「・・・!!!! 聞いた?今の!!」
「ええ・・・。リュックさんの名前が無かった・・・」
「一体・・・・・・どういうこと・・・」
突如流れた、ゾーマの放送。いつもの通りにこれまでの死者の名が呼ばれた。
しかし、ソコに彼らが手にかけたリュックの名前がのっていなかったのだ。
「・・・むこうのミスってわけじゃなさそうですね」
「でも、彼女は確かに私達が・・・殺した・・・はずよ。最後まで・・・見たし・・・」
ティナの言葉には力が入っていなかった。
「アレはリュックさんじゃなかったのかも・・・」
「いえ、多分本人だったと思います。一度、人間に戻っていましたから・・・」
「バーバラはどう思う?」
ティナは後ろにいるはずのバーバラに問い掛けた。
しかしバーバラの返事は無かった。こちらの話を聞いていないようだった。
彼女は顔を真っ青にして、両腕を抱えて震えていた。
(アモスも・・・アモスも死んじゃったなんて・・・
あんなに強かったのに・・・なんで・・・なんで・・・・・・!!!)
「バーバラ、バーバラ!!」
アルスに両肩を掴まれ激しく揺さぶられたバーバラはようやく我を取り戻した。
「どうしたんだ?顔が真っ青じゃないか」
「え?・・・うん、大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけだから・・・」
顔の筋肉を無理に動かして笑う。迷惑をかける訳にはいかない、そう思ったからだ。
「無理しない方がいいわ。少し休憩しましょうか」
「もうすぐ森にでるはず。それまでがんばれるわ。気にしないで」
バーバラはそう言って歩き出した。少しも大丈夫そうに見えなかったが。
二人は気がついた。
おそらく、バーバラの仲間の名がさっきの放送で呼ばれてしまったのだろうという事に。
だからこそ今は彼女に何も言わない方がいい、という事を二人は無言で了解した。
295 :
保管庫改:03/01/24 03:45 ID:iAKGlvfP
「リュックの事は今バーバラに伝えない方がいいわ。今伝えても、たぶん辛いだけだから」
危険だから、という事で二人はバーバラを後列に下げた。山道を歩きながら
ティナは隣を歩いているアルスに、バーバラに聞こえないように話し掛けた。
「はい。・・・でも、リュックさんの名前が呼ばれなかった、という事は・・・」
すなわち、リュックは生きている。いや、リュックだった怪物と言ったほうが正しいか。
音の無い言葉が、2人の耳に強く響いた。
「でも、あの状況でどうやって・・・転移魔法は使えないはずなのに」
ティナの疑問に答えられる者はここには誰もいなかった。
ただ重い空気だけが青空にそぐわない重圧を加えていた。
三人の歩みは目に見えて遅くなっていた。
アルスは先頭に立って歩けるコースを探し、ティナは杖に意識を集中して策敵している。
ただでさえ魔力の枯渇しているバーバラは、ついて行くだけで必死だった。
山間部の道は険しく、薄い空気が体を蝕む。だが、それ以上に先程の事実は重かった。
296 :
保管庫改:03/01/24 03:49 ID:pqygJUqX
「・・・え?うそっ!?」
アルスは少し訝しげに後ろを振り向いた。
ティナの声には、ハッキリと歓喜の色がこめられていたからだ。
「反応があったわ。ここから西に、私の仲間がいるの!」
「そうなのか。一人なのか?名前は?」
アルスの顔にも笑みが浮かんだ。
ティナの仲間ならこっちの味方になってくれるにちがいない。
「反応は二人、一人はエドガー、私の仲間よ。もう一人はテリ―という人よ」
「テリ―が向こうにいるの?」
疲れた表情をしていたバーバラも、その言葉を聞いて少しだが元気を取り戻したようだ。
「テリ―はあたしの仲間よ。良かった、無事だったのね・・・」
「二人の知り合いなら、早く合流したいな。方向はこのままでいいんですね?」
「ええ、このまま真っ直ぐ西よ。森の境くらいに、動きはないわ」
「ちょっと杖を貸してください」
ティナから杖を受け取ったアルスは、それに意識を集中してみる。
頭の中に自分を中心とする円が広がり、ちょうど自分の向いている方、
中心から西の方角、円の端に光点が二つ浮かんでいた。
円の中心には自分の他に二つの光点、バーバラとティナの点が浮かんでいる。
「・・・あれ? なんで名前がわかるんですか?」
アルスは不思議そうな顔をしてティナの顔を見た。
「光点の下に名前がでているはずだけど・・・。出てないの?」
アルスは無言で首を縦に振る。
「使う人の魔力によって差があるのかしら」
しかし、ティナの言葉は少し投げやりだった。心ここにあらず、という感じだ。
探していた仲間にやっと会えるという事が、彼女はとても嬉しいのだろう。
ここから西に仲間がいる。その事実が少しだが三人の足取りを軽くしたのだった。
297 :
保管庫改:03/01/24 03:50 ID:pqygJUqX
【アルス/ティナ: 所持武器:対人レミラーマの杖・天空の剣・黄金の腕輪/プラチナソード
現在位置:ロンダルキア中央西よりの山地
行動方針:仲間を探す→エドガーと合流】
【バーバラ:所持武器:果物ナイフ・ホイミンの核・ペンダント・メイジマッシャー
現在位置:ロンダルキア中央西よりの山地 行動方針:仲間をさがす→テリーと合流】
放送直前、ロンダルキア南東の森の中でサマンサは目を覚した。
昨夜からの激戦の疲れか、ピサロの腕に抱かれたまま眠ってしまったようだ。
その温かい腕の中を回想すると、サマンサの白い肌がほんのりと桜色に染まる。
(こ、この感情はなんだ・・・ありえない!)
未知の感情に戸惑い、ぶんぶんと頭を振ってそれを追い払った、サマンサの背後から
唐突にデスピサロが声をかける。
「気がついたか、やはり人は脆弱よな」
はっ、とサマンサは振り向くが、何故か無意識にデスピサロの顔から視線を逸らしてしまった。
そこに湖からの風が頬に触れる、未だに熱を持ったままの顔に心地よい。
風が幾分、火照った頭も冷やしてくれたようだ。今度はちゃんとデスピサロの顔を見据えて
サマンサは問いかける。
「ピサロ卿、もしよろしければまたあの島に渡りたいのですが、よろしいでしょうか?」
その言葉を聞き、デスピサロは意地悪く笑う。
「ほう・・・やはり気になるか?あの少年たちが」
「・・・・・お戯れを」
「まぁいい、私もあの島は気になっていたのだ。掴まれ」
そう言うなり、デスピサロはまたサマンサを強引に抱きかかえ、再び薄い氷の上を跳躍し
島へと向かう。
その腕の中ではぁはぁと息を荒くしているサマンサには気がつかないままで・・・・。
(どうやら命拾いをしたようですね、ですがどうやって?)
上陸後、ビビとジタンが無残な姿を晒していた周辺で佇むサマンサ、だがその瞳はどこか虚ろだった。
彼女の本来の仲間、アルスにしろマゴットにしろ、実力は彼女より上だったかもしれないが、
その能力以上の感情、すなわち友情なり愛情なりといったものをサマンサは持つ事は無かった、
だが・・・ピサロに関しては・・・・。
まして彼は魔族、しっかりしろ・・・彼が私を利用するのではない、私が彼を利用するのだ」
そう自分に言い聞かせるサマンサだったが、その言葉に力は無かった。
一方のデスピサロは島の中心部で色々と調べ物をしている。
そこには古ぼけた社と祭壇、それから禍禍しい神を彫った石像が安置されている。
「なるほど・・・・ここはなにやら神事を行うための島のようだな」
だが、腑に落ちぬ点もある。
この島の海岸線は岩場ばかりで、船では上陸できない、この島が彼の睨んだとおり
祭事を行う場所ならば、信者たちはどうやってここまでやってくるのだ。
と、そこにサマンサの声が聞こえる。
「ピサロ卿、これを」
サマンサの示した場所には、いかにも不自然な岩盤が砂地に露出していた。
「そういう仕掛けか」
2人は岩の前で色々と呪文を試していたようだが、通常の魔法で開かないと見るや
今度は祭壇の石像に刻まれていた語句を岩の前で暗唱していく、と
かちりっ、と、乾いた音と同時に2人の目前で岩が開き、その下に通路が現れる。
「ふん・・・なるほどな」
トンネルの中は一本道ではなく、いくつか分岐があるようだ、どうやらこのトンネルは
ロンダルキアの地下全体に網の目のように張り巡らされているらしい。
「サマンサよ、どうする・・行くか」
「ピサロ卿の望むままに」
デスピサロの言葉に、出来るだけ平然と事務的な口調で応じるサマンサ
その冷たい瞳の奥底には、少しだけ温もりのような光が宿っているかのように見えた。
【デスピサロ/サマンサ:所持アイテム:正義のそろばん『光の玉』について書かれた本/ 勲章(重装備可能)
現在位置:ロンダルキア南の湖の小島→トンネルへ 行動方針:腕輪を探す→勝利者となる
/腕輪を探す→生き残る】
魔物の騎士とネズミの竜騎士は、同じ景色の続く荒野を歩いていた。寂寥感が募る寒々とした大地。
見るものもなく乾いてしまいそうな心に突然やってきた魔の時刻。 放送だ。
ゾーマの放送は呪いの言葉と呼ぶにふさわしかった。 ビビが死んだ。どこで最期を迎えたのかもわからない。
ただ事実だけが告げられて二人は呆然とした。
「また大事な仲間が一人……」
フライヤがつぶやくと、ピエールは堰を切ったかのように泣き崩れた。
騎士の目から溢れる涙が足下まで伝い、スライムの緑の肌を濡らす。
常に緩んだ口元に笑みを絶やさなかったスライムも、まるで怒っているかのように顔を膨れ上がらせていた。
二人を包む空気はずっしりと重い。
フライヤはピエールにかける言葉が見つからず、しばらく何も言えなかった。
(泣きたいのは私も同じだ……)
何しろあのビビだ。可愛らしいほんの子供としか思えなかったビビがだ。死の予兆など
まるで感じられなかった。
自分の命に限りあることを知ったあの黒魔道士は、来たるべき時を迎えるまで懸命に生きようとしていたのだ。
それをこんな形で、こうも簡単に。 ビビへの想いが張り裂けそうなほどに募ってくる。
フライヤは懸命に、激しく暴れ回る感情を抑えつけた。
(二人揃って大泣きして何になる)
ぐっと歯を食いしばり、流れ出そうになる涙を堪えた。
「ピエール、つらいじゃろうが立ってくれぬか。 ビビに手向けたい」
ピエールはうずくまったまま動かない。 傍らのスライムが震えながら瞳を大きく見開いている。
まってくれ、とでも言いたげな目だ。 フライヤは待ち続けた。
数分、しかしピエールは立ち上がろうとはしなかった。
「わかった……」
フライヤは、動かないピエールを横目にエストックを取り出すと、天に高く掲げた。
(ビビ、何もできなかった。すまぬ……)
エストックが太陽を浴びて、荒野に一条の光を導き出す。 それは遠くどこまでも続く。
きっと、ビビは輝いていた。 手に握る剣が指し示した光のように。
フライヤは目を閉じ、嘆息した。
【フライヤ・ピエール 武器:エストック・珊瑚の剣 行動方針:ゾーマ打倒 現在位置:ロンダルキア南平原】
不思議に思った。戦場の真ん中で、自分の位置を悟られてもおかしくない行動を取るものがいたからだ。
誰かを呼ぶための行為かとも思ったが、それにしても大胆だ。
血に飢えた人という名の獣が、どこに潜んでいるかもしれないのに。
余程腕に自信があるのか、あるいはやむを得ない事情のためか。
光の輝きはまだ続いていた。 気付いたのが私じゃなかったら、とっくに襲われているだろう。
と、今度は光の数が二つに増えた。 あまりの無軌道ぶりに少しイライラする。
ああ、そうか。 私を呼んでいるかもしれない。 救いを求めているのか。
さきほど近くで聞こえた爆音は、今はなりを潜めている。 光と爆発。 どちらも気になる。
私は占ってみた。 精神を集中を妨げる冷たい横風が吹く。 前髪が目にかかって振り子のように揺れた。
いつのまにか落ち着いていた。 頭の中にイメージされたのは人間とは違う二つの存在。はっきりとはわからないが
邪悪さは感じられない。 魔族が参加していることは考えられるが、邪悪ではない、とは
私は光に導かれるように歩いていた。
ひょっとしたら罠でもありえた。 邪悪さがないのは嘘で固めた作り笑いで、すぐに牙を剥き出しにするかもしれない。
この先には死への道があるだけかもしれない。
見事に騙されたらなんて言おうか。 無理に明るく振舞えば少しは気も晴れようか。
――呼ばれて来ました、ええ、なぐり込みでーす
「……」
自分で慌てて口を手で押さえた。
いけない、どうしたんだろう私……
恥ずかしいやら情けないやらで、誰も見ていないのに顔が火照りだす。でも、私は決意した。
アモス、ごめん。どうしても行かなきゃならない気がするの。 大切な人の傍には、あなたがついていてあげて
自分を見守っていた魂が離れていくような気がした。
――必ず後でいくから
私はしっかりと方向を見定めて、走りだした。
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル、妖剣かまいたち、小型ミスリルソード、水筒1.5リットル
現在位置:ロンダルキア祠南平原移動中 行動方針:さらに南へ。光の方向へ】
「もうここに居てもつまんねーや・・・・」
ゾーマは指を鳴らした。
ボンッ!
参加者たちの首輪が全て爆発した。
FFDQバトルロワイアル─完
再開保守
305 :
保管庫:03/01/30 02:14 ID:8u7CGF7g
放送後暫くし、決意も新たにしたバッツだったが、これからの行動に関して少し考えなければならなかった。
祠をでるときに「次の放送がなったら戻ってくる」といったが、まさかこんなにはやく放送がくるとは思わなかった。
レナとファリスはもういないが、それでもここまできて戻るのは些か残念である。
ただ、ひとつ問題なのは、放送の時点ではあまりに衝撃が大きすぎて気づかなかったが、
先の訃によればビビという者も名を呼ばれており、それはたしかエーコの仲間であった。
となれば、祠にいる者たちも動揺しているだろうし、それで放送後自分たちがなかなか帰らぬようならばいらぬ心配をかけることになろう。
ここは戻った方がよいかもしれない。
しかし、やはり戻るのは惜しい。
バッツは溜息をつくと、クーパーに休憩しようとよびかけた。
クーパーは少し戸惑った。さっきの今で、歩き始めてからもまだ幾ばくと経っていないからである。
「変な顔すんなって。放送があったんだ、祠に戻るかこのまま行くか、考えなきゃならないだろ?」
クーパーはそう言われて初めて気が付いたかのような顔をした。
彼にとっても、先の放送はショックだったのだ。
「飯、食おうぜ」
「うん」
支給された簡素なパンを、久方ぶりに口に入れる。
「パン、無くなってきたね」
もさもさとしていて味気もなく、ただでさえ足りないのに、あと3,4食もしたらなくなりそうな現状を、
幼いながらにクーパーは心配していた。
「ああ。もしかしたら、もう無くなってる奴もいるかもな」
バッツは素っ気なく答えた。
「水も減ってきたよ」
「水は泉なんかから補給できるしな。食料は、民家からしか無理だろうが…
少なくともこの舞台では無理だ。次のステージでもしそういったものが得られなかったら、ちょっとまずいことになる…
せめて虫とかがいたら、それを捕まえて食べられるんだが…」
それを聞くと、クーパーは口の中のパンをぶっとふきだして叫んだ。
306 :
保管庫:03/01/30 02:15 ID:8u7CGF7g
「む、虫!?虫を食べるの!?」
「騒ぐなよ。近くに人がいるかもしれないんだぞ」
クーパーは慌てて口を押さえて、あたりをきょろきょろと見渡し誰もいないことを確認すると、必要以上の小声でもう一度同じことを言った。
「む、虫を食べるの?」
「最終手段だよ。でもとかげとかはけっこういけるぜ?あー、鳥はたいていいいけど、チョコボだけは駄目だな、うん」
「と、と、とかげ…」
どこか別の星の生物の言語を聞いたかのように呆然としているクーパーを見て、バッツは少し笑った。
(そういえば、あいつらと旅してるときに飯がなくなったときにも、レナとクルルは同じような反応をしてたっけな)
ほんの暫くの間だったが、バッツは少し楽しかった。
数分して、この簡単な食事は終わった。
休憩といっても、外気の低さからじっとしていると次第に寒くなってくる。
あまり時間もかけられない。バッツは祠に戻る是非をクーパーに問い掛けた。
しばらく考えたあと、小さな声で「バッツ兄ちゃんに任せるよ」と言った。
クーパーには判断しかねたのだろう。結局、バッツに全権が委ねられることになった。
バッツはぼさぼさの頭をくしゃくしゃと掻き混ぜ、少しして「あ〜」と低く唸ったあと、
「じゃ、行こうか」といって、歩き出した。
ぼーっと雪の中の足跡を見ていたクーパーは、はっとしてバッツの後を追いかけていった。
【バッツ(魔法剣士 時魔法)/クーパー
所持武器:ブレイブブレイド/天空の盾 現在位置:ロンタルギアの北西の森から南へ(中央の砂漠を通る)
第一行動方針:(戻るかそのまま南へ行くかは次の人に託します)
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
ソロは自分を見つめていた。 そこにいた自分の姿を見ていたのだ。
とても醜悪で人間の形をしているとは思えない。なのに何故かこれは自分だと思ってしまう。
僕はこんな姿はしていない! ソロは目を背けようとしたが視線が固定されて動けなかった。
手足が自分の意思から切り離され、クラゲのように宙を漂っている感じがする。
遠くから声がする。 非難する声、罵倒する声、どれもこれもが自分に向けられていた。
やめてくれ、やめてくれ。ソロは泣き出しそうになって必死でもがいた――
突然、凄烈に瞬く星々がソロの知覚を刺激した。 おぼろげだが感覚が身体に戻ってくる。
多分僕は寝ていたんだ、と自覚するのに数秒とかからなかった。
完全に目が覚めると自分が闇の中にいることに気付いた。 冷たい風が体をなで払う。
夢を見ていたのか……。 寝ていただって!?
今まで何をしていたのか、いつの間に日が沈んだというのか。
一体このザマは何だ。
吹きすさぶ風の音、背中に伝わるざらざらとした土の感触。ここが屋外であることは容易に知れた。
こんなところで無防備で寝転がっていた自分をとてつもなくバカバカしく感じた。
体を起こそうとするが、胸が咽て満足に呼吸ができなかった。
しまった、肺をやられたか。 ソロは胸を左手で数回叩いた。
肺の中は空気で一杯のようでありながら、息を吐くことがうまくできない。
何とももどかしく、そして苦しくて、痛い。 冷気が確実に体の機能を低下させているとわかる。
だがここでいつまでも往生しているわけにはいかない。
ソロは立ち上がろうとして、剣を掴んだ。 気力を奮い起こそうと勢いよく体を起こし直立する。
だが途端に咳き込んで、前屈みの姿勢にならざるを得なかった。
「くっ……、痛えっ…」
眠りに落ちる前の記憶がおぼろげで思い出せない。それにこの暗さ、月も出ていないのか。
「うう……くそっ……」
悪態を付きながらも必死で動こうとする。 闇は深くどこまでも続いているような気がした。
手探りで辺りを把握しようとするが、ソロの手は暗闇の空をかき混ぜただけだった。
――じきに目は慣れるはずだ。
そう思うと気分が多少楽になり、どっかりとその場に座りこんだ。
――しばらく待つか。 ソロは膝を抱えて体を丸めるようにした。 これ以上体を冷やさないように。
ここがどこなのか、何をしていたのか、時間だけは有りそうなのでいろいろ思案してみた。
仲間たちの顔ぶれが思い浮かんでは消えていく。 誰かに裏切られたとか、誰かをこの手で傷つけたとか
恐ろしげな記憶の断片が甦ってくる。ソロは頭を抱えた。全てが曖昧ではっきりとしない。
最後に見たのは雷光だった、これは間違いない。 雷光、そういえばミネアは――
ソロは次第に焦りを感じていった。 目が暗闇に慣れる気配はない。 まさか、
手の甲で目を拭ってみた。数回、瞬きをする。 そしてギュッと目を瞑り、恐る恐るまぶたを開けてみる。
深淵より来たものに目の前を覆いつくされたような気分。 闇はより深く、底なしでソロを出迎えた。
自分が置かれている状況を予想し背筋が凍りつく。 身体の震えが止まらない。
「助けて!」
思わず叫んだ。 助けてくれる者などいるはずがない。ソロのとってきた行動からすれば
むしろ彼を憎む者の方が多いぐらいだ。
それでも叫ばずにはいられない。 発見されることすなわち死、である可能性など頭の片隅にもなかった。
「何も見えないんだ、誰かあ」
叫び声が虚しく響く。山おろしの強い風がソロの声を掻き消しながら過ぎ去っていった。
【ソロ(暗闇もしくは失明) 所持武器:エンハンスソード、イリーナの会員証、スーツケース核爆弾
現在位置:ロンダルキア南の平原(フライヤ、ピエールより東)
行動方針:助けを求める
最終行動方針:デスピサロ打倒(現在もその気があるかは不明)
309 :
保管庫:03/02/04 00:03 ID:R/5UkFE+
「行き止まり...か」
人が2人収まるかどうかの、先細りになった通路の先端で、クラウドはぽつりと呟く。
クラウドとエッジは地底の中、トンネルをひたすらさ迷い歩いていたのだ。
つい数時間前、自分たちの行く手で大規模な戦いの気配を感じ、そちらに向かう途中地面が陥没し
この地下通路に閉じ込められてしまってからずっと。
「おい出口はこの上じゃねぇのか、見ろよあれ」
先ほどから周囲の様子を色々と調べていたエッジが天井付近の壁を指差す。
そこには天井へと伸びる梯子がかかっていた。
2人は梯子を上り、さらに天井を調べていたが、梯子の中途になにやら文字が書かれているのを発見する。
その文字はエッジにもクラウドにも見覚えが無い、異世界のものであったが、なぜかその文字の発音だけは
理解することが出来た、どうやらその類の魔法がかかっているらしい。
「合言葉かな?」
「だろうな.....よしいっちよ唱えて見るか」
アリーナのお腹がきゅ〜っと音を立てる。
そういえばアニーと別れてから何も食べていなかった。
南に行くのをやめてそのまま西の山脈へと向かったのは判断ミスだったかもしれない。
手近な岩に腰掛けて、昼食を摂るアリーナだが、その表情は暗い。
「ソロを....止めないと、でも私1人でどうやって」
雨の中対峙したときのソロの瞳はもうすでに常軌を逸しているように思えた。
言葉が届かない以上、実力行使しかない、だが
自分とソロが正面から戦えば、まず勝機はないだろう。
自分の拳はスピードはあってもティファのそれとは違い一撃必殺の力に欠ける、
だがソロには魔法もあるし一撃を決めるだけの剣術の腕もある。
それにティファから聞いた爆弾の件もある。どうしてこう色々と降りかかってくるだろうか?
思わず頭を抱えてしまったその時、いきなり自分の座っていた岩が地面へと口を開く、
アリーナはとっさに飛びのこうとしたが、あぐらをかいた状態での跳躍は容易なことではない。
成す統べもなくアリーナは奈落へと落ちていった。
310 :
保管庫:03/02/04 00:06 ID:R/5UkFE+
「おっ、開いたなんか降って...おわわわっ」
アリーナが座っていた真下にいたエッジとクラウド、出口を開いたのは良かったが
その出口の上に人が立っていたとは予測もつかなかったようだ、クラウドとエッジ、そしてアリーナ
3人はもみくちゃになって、なんとか脱出しようともがいていた。
しかしエッジはアリーナの薄いのレオタードの胸の谷間に挟まれ身動きが取れない
もともと2人入るのがやっとの行き止まりに、さらにもう一人降ってきたのだ。
さらにクラウドは完全にアリーナの下敷きになり、その顔はアリーナの股間にうずまってしまっている。
「ちょっと....だ、だめ、下の人..うごいちゃ」
「ひひひゃひひひゃい」(息が出来ない)
「ああん....そこだめぇ!」
「変な声だすんじゃねぇ!俺まで妙な気分になるじゃねぇか!」
「だからぁ...ああもう!動かないでよう」
「動かなきゃ出れないだろうが」
「ひひ...ひひひゃ」(息が...息が...)
------------------------------------------------------------------
「なぁ.....いいかげん気分直してくれよ」
エッジの声にアリーナはそっぽを向く。
「参ったなぁ、おいクラウドお前もなんか言えよ、お前もいいおも、いや迷惑かけたんだしよ」
「クラウド?」
アリーナはエッジの視線の先に居る金髪の青年の姿を見る、
そういえば特徴的なとんがりヘアをしているって聞いたっけ?確かに青年の頭はツンツンと鋭角に尖っている。
「ふ〜ん、あなたがクラウドなんだぁ」
アリーナはクラウドの顔と体をじろじろと値踏みするように見ていたが、やがてその瞳がきら〜ん☆と輝く。
「合格、ティファさんの彼氏として申し分無いわね」
年頃の少女のご多分に漏れず、アリーナもこういう話が大好きだった
事実、1時期はミネアとクリフトをなんとかしてくっつけようと色々と画策していたこともあるくらいだ。
もちろんクリフトの本当の想い人が誰なのか全く知らぬままに。
それにソロのことを忘れていたいと思うある種の逃避的な気分も手伝い、
アリーナは普段よりもテンションが高くなっていった。
311 :
保管庫:03/02/04 00:08 ID:R/5UkFE+
「とーぜん、ティファさんが好きなのよね、クラウドさんは」
「おいおい何言ってやがる、クラウドが好きなのはエアリスなんだぜ、なっ!クラウド」
2人は困った表情のクラウドそっちのけで口論を始める。
「エアリスだかなんだか知らないけど、絶対ティファさんの方がいいって!おっぱいも大きいし」
「全ての男がそうじゃねぇ!俺なんか.....」
そこまで言いかけてエッジは、はっ!と口を塞ぐ、なんとなく続きを言ってはならないような気がしたのだ。
「ま...まぁとにかくだ、女の価値は胸じゃねぇ」
「よし!じゃあクラウド、こんな女放っといてエアリスを探しに行くか」
エッジはクラウドの同意をえないままその右手を掴み、その場から立ち去ろうとする。
「違うわ、ティファさんを探すのよね、クラウド」
今度はアリーナがクラウドの左手をもってエッジとは逆方向に引っ張る。
「そっちこそ離しやがれっ!」
2人はさらに力をこめてクラウドを引っ張る。
「いいかげんにしろっ!人が誰を好きになろうといいじゃないか!」
ついに堪忍袋の緒が切れた、クラウドの一喝に2人は慌てて手を離す。
が、そのまま立ち去るのかと思いきやクラウドもその場に座りこんだまま動こうとはしなかった。
なんだかんだ言っても、クラウドも1人に戻るのが心細かったのだ。
それからしばらく妙な空気がまた場を支配していく。
「ご不浄だ.....すぐ戻る」
そんな空気に耐えられなかったのかそう言い残し、エッジは茂みの奥へと消えていった。
ちょうどその時、彼らの姿を醒めた瞳で遠くから発見した者がいる。
たとえ茂みに身を隠していたとしても、銀世界の中でピンクのレオタードは目立って仕方が無い。
湖に厚い氷が張ってたので大分距離を稼ぐ事ができた、このまま接近し斬り込むか....
いや、この距離で察知されずに接近することは難しい....ならば。
セシルはギガスマッシャーに付属のスコープを装着し、狙撃の準備を始めていた。
312 :
保管庫:03/02/04 00:09 ID:R/5UkFE+
どこまでいったのかエッジはなかなか戻ってこない。
アリーナが再び口を開こうとしたとき、わずかだが周囲の大気が乱れるのを感じる。
10時の方向から弾丸!
だが、ここで何事も無く回避しては面白くない。
アリーナはギリギリまで引きつけ、格好よく見得を切って回避しよう、そうすれば少しは場の空気も変わるだろう
そう思っただけだ、悪気があったわけじゃないのだ......しかし。
「危ないっ!」
アリーナが満を持して回避に入ろうとした瞬間、機先を制しクラウドがアリーナを突き飛ばす。
むろんクラウドもこのタイミングならアリーナを助けて自分も充分避けられる、そう考えての事だった。
しかし、その時クラウドの足が氷に乗り上げわずかだが滑る。
そしてバランスを崩したクラウドの腹へと弾丸は命中したのだ。
着弾の衝撃でその身体を錐揉みさせながら、地面へと叩きつけられるクラウド
その様子をアリーナはただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「ひっ!」
自分の目の前での出来事に怯えたまま何も出来ないアリーナへと凶弾は次々と迫る。
しかし狙いが甘いのかその全てはアリーナに当たる事は無かった、しかしこのまま立ち尽くしていたら
いずれは時間の問題だろう。
そしてアリーナが我に帰り、セシルが狙撃の要領を掴んだ時、いきなりその周囲を黒い煙が包みこんだ。
「何ぼさっとしてやがる!逃げるぞ」
煙が晴れたときセシルの視界から標的の姿は消えていた。
しかしセシルは煙が上がる瞬間、見覚えのある派手な忍者装束をしっかりとその目に捉えていた。
「流石だね...エッジ、でも逃がしはしない、僕は決めたんだ」
セシルは銃を構えたまま、小走りに煙の下へと向かっていった
313 :
保管庫:03/02/04 00:11 ID:R/5UkFE+
その頃、何とかトンネルの中へと逃げ込めたエッジ達だったが、クラウドの傷の状態を確認し、
エッジが渋い声で呟く。
「だめだ...手持ちの薬草じゃこの傷はどうしようもねぇ、それ以前に腹の中の弾を抜かないと
お前、魔法は使えるか?」
アリーナが力無く首を振ると、エッジは少し考えていたようだがすぐに立ちあがり地上へと向かう。
「俺が囮になる、こういう事は忍者の専門だぜ、任せろ」
エッジはアリ−ナに書きとめていたトンネルの地図を渡す。
「30分しても戻らなければ、その時は....クラウドを頼んだぜ、それからもしリディアって娘に会えたら
今から言う言葉を伝えてくれねぇか」
エッジはすこしうつむき加減で、小声でアリーナへと何言かを伝え、アリーナが頷くのも待たず。
エッジは外へと飛び出していった。
そして残されたアリーナは、
(どうしよう....リディアちゃんのこと、まだ話して無かったわ、それにしてもどうして
こんなに色々と振りかかってくるのよ!)
トンネルの中で膝枕にクラウドを載せて、心の中で泣き言をいうアリーナだった。
そして地上では
「エッジ、悪いけど君の手はすべてお見通しさ」
茂みから派手な音を立てて飛び出したエッジの姿を見てもセシルは動じることはなかった。
「とりあえず君から倒す事にしたよ、君自身はともかく君の術は色々厄介だし」
自分の姿はまだ発見されてないようだ、エッジの性格は知っている、もし発見されていれば目の前に飛び出してくるはず。
正面から戦えば厄介な相手だが、その単純な性格を衝きさえすれば......
ともかくセシルは慎重に先に進みながら、策を実行に移すタイミングを計っていた。
314 :
保管庫:03/02/04 00:13 ID:R/5UkFE+
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸北部山脈、西の湖側) 】
第一行動方針:エッジの帰りを待つ
第二行動方針:ソロを止める(倒してでも)
最終行動方針:ゲームを抜ける
【セシル 所持武器:暗黒騎士の鎧 ブラッドソード 源氏の兜 リフレクトリング 弓矢(手製)
ギガスマッシャー 現在位置:大陸北部山脈、西の湖側 】
第一行動方針:エッジを殺す
第二行動方針:その他の参加者を殺す(エドガーorハ−ゴンを優先)
最終行動方針:勝利する
【クラウド(瀕死):所持武器:ガンブレード 現在位置:地下トンネル】
第一行動方針:エアリスorティファを探す。
第二行動方針:不明
最終行動方針:不明
【エッジ:所持武器:忍者ロング現在位置:大陸北部山脈、西の湖側】
第一行動方針:追っ手を捲く。
第二行動方針:クラウドをエアリスに会わせる
最終行動方針:リディアを見つけだし、このゲームから脱出する
(日没(放送直前)までに処置しなければクラウドは死亡)
森の中をチョコボに乗って悠々と進む影二つ。
雰囲気からして歴戦の勇者。今はお互い話をしているが、全く隙がない。
手綱を執るはオルテガ。アリアハンの勇者。勇者ロトの父親。
同行者はリバスト。かつて、天空の鎧を纏って怪物たちを戦った勇者。
「なるほど、温泉町か。さぞやいい場所だろうな。」
「ああ。私の世界に来ることがあれば寄られてみては如何か。」
「そうだな。家族連れて行きたいものだな。ところで温泉の後はいい酒が飲みたくなる。酒といえばカザーフ地方の酒はなかなかのものだぞ。特に西部よりの地域のものは格別だ。」
「確かに。酒はほしくなる。その酒を一度は味わってみたいものだ。」
お互いの世界のことは知らない。未知なる物だ。
だが、たとえ知らなくとも想像力がそれを補ってくれる。
ふと、オルテガがチョコボの足を止める。
「どうした。何かあるのか?」
「…そこに祠があるだろう。」
オルテガの指差した先…普通に森が広がっているように見えた。
目を凝らしてみるがどうにも不審な点は見つからない。
「…いや、何も…見えないが。」
リバストはオルテガには祠が見えているのだろうとわかった。どういうわけかは知らないがオルテガには見えている。自分には見えていない。
なぜならそれはロトの血を引くものしか見ることのできないもの、すなわち勇者ロト、アルスの父親であるオルテガには「それ」が見えて当然なのである。
チョコボから降りてリバストが注意しつつ「それ」に近寄る。
「なるほど。何か呪文のようなものがかかっているようだ。」
何もないように見える空間をリバストが触れる。なるほど、これはすごい呪文だ。
「なぜ、私に見えるのかはわからないがまあ、よしとしよう。」
「如何する?オルテガ殿。」
「先客はいると考えるのが自然だと思うが。それが敵なのか、味方なのか。おそらく複数いると思うが…」
祠がはっきり見えるオルテガにはある程度中の様子がわかるようだ。
「息子さんじゃないのか?」
「…アルスはここにはいない。わかる。」
「親の勘というものか。」
「そうかもしれん。」
「息子さんの知り合いかもしれないということか。」
「息子の交友関係は知らないが、仲間はいるはずだ。」
「思案のしどころですな。入るか、否か。」
「うむ。」
ロンダルキアの祠前。二人の勇者が思案する。
【オルテガ 所持武器:水鉄砲 グレートソード 覆面 現在位置:ロンダルキアの祠前 行動方針:思案中】
【リバスト 所持武器:まどろみの剣 現在位置:同上 行動方針:思案中】
チョコボが一匹ともにいます。
317 :
1/3:03/02/10 23:25 ID:r5pQtUng
(大体15分くらい経ったかな?そろそろ動くか)
森の中、全ての準備を整えたセシル、時間もちょうどいい頃合だ。
セシルはすうっと息を吸いこむと、大声で森の奥へと叫ぶ。
「エッジ!エッジだろ?、僕だよ!セシルだよ!」
こだまが森の中へと響き渡り、それが聞こえなくなってしばらく経ったころ
不意にセシルの頭上の木々ががさがさと揺れたかと思うと
「セシル!ああ良かった!お前に会えるなんて」
ようやく頼れる仲間にめぐり合えた、その喜びを隠しもせず、エッジはセシルの目の前へと舞い降りる。
「エッジ!僕も君に会えて本当に良かったよ!心細かったんだ、それより」
ここからが本題だ、無駄話をしていれば感づかれないとも限らない。
「そうだエッジ、さっき誰かに襲われて、ここまで追ってきたんだけど見失ってしまったんだ」
「俺の仲間を襲ったのもきっとそいつだな、気をつけろ奴は銃を持っているぜ」
今だ。
一瞬、自分からエッジが視線を逸らしてのを見て、セシルは左足に括りつけたロープを操作する。
と、雪の中に埋めたロープを伝い、左手の茂みの奥深くに設置したギガスマッシャーの撃鉄が落ちる。
「あぶねェ!」
エッジはセシルを突き飛ばし、辛くも弾丸を回避させる。
計算通り!次だ。
セシルはさらに雪の中に隠したロープを引く、と今度はセシルの背後で弓矢の弦音が聞こえる。
「もう1人いやがったか!ちくしょう!」
何の疑いも無くセシルの背中へと飛ぶ弓矢を手刀で叩き落すエッジ、その時であった。
ズブリ
自分の身に何が起こったのか、エッジがまずそれを理解するのには数秒の時間が必要だった。
(おかしいな……なんで俺の胸から剣が生えてやがるんだ、俺の後ろにはセシルしかいねぇし
まさか…….そんな……はず、いや、そんな)
318 :
2/3:03/02/10 23:27 ID:r5pQtUng
そして胸から生えた切っ先がくるりと回転し、同時に大量の血潮がエッジの視界を赤く染める。
(そうか……セシル、お前だったんだな、クラウドを射ったのも、今、俺を後ろから刺したのも)
ようやく現実を受け入れたエッジ、だがそれでも納得の行かないことがある。それを聞かないと
死んでも死にきれない。
「手の込んだ真似しやがって、なぁ……理由聞かせてくれねぇか?」
「こうでもしないと君は楽には倒せないと思ったから、1歩間違えれば僕の方が死んでいたかもね」
ギガスマッシャーと弓矢、どれも狙いは罠を仕掛けたセシル本人に向けられていた。
もしエッジがセシルの考えるよりも未熟な忍者なら、セシルは自分の仕掛けた罠で死んでいただろう。
すでに血の気の引いたかさつく唇を振るわせ、エッジは再度セシルに問う。
「んなこたぁ……いいから..よ、はやくワケを言え、俺が……生きてる間によ」
「ローザの為なんだ、僕が最後まで生き残れば彼女は甦るんだ」
それを聞いてエッジは納得したかのように目を閉じる。
「そうか……ローザのためか………ならよ、しかたねぇ……な」
「けどよ……もしできるなら……リディアだけは……」
そこで言葉を止めると、どこにまだそんな力が残っていたのだろうか?エッジは渾身の力で
自分の身を剣から引きぬき、ふらふらとセシルから離れていく、セシルも追おうとはしない。
エッジの傷が致命傷であることを承知しているからだ。
「へへ……忍者の最後は、これと……相場が決まっているからな、派手に……行くぜ!」
仁王立ちしたエッジは忍者装束をはだける、と、ベルトから無数の導火線が生えているのが見える。
本来単発の煙玉の導火線を震える指で一つにまとめると、そのまま火種を導火線へと導く。
(本当はよ、お前もろとも吹っ飛ぶつもりだったけどよ、ローザのためなら仕方ねぇよな
カインの奴はきっと泣いて怒るだろうが、俺にはお前の気持ち……わかるぜ)
導火線が火花を散らしていく、何故だか妙に遅く感じる。
(ああ、ティファって娘にも会いたかったなァ、胸が大きいんだっけ、そういやあの
レオタード娘、名前聞いてなかったな、エアリス、約束守れなくってすまねぇな、
クラウド、エアリスを泣かせるんじゃねぇぞ、それから最後にリディア...俺の)
319 :
3/3:03/02/10 23:56 ID:r5pQtUng
どばぁん!!
彼の最後の回想は最後まで達成されることなく、エッジの五体は粉みじんに吹き飛び。
大量の黒煙が空へと舞いあがる。
その黒煙はトンネルの出口から顔を覗かせるアリーナにもはっきりと見て取れた。
そして彼女は悟った、もうあの男は2度とここには戻る事がないと。
アリーナの瞳から涙が溢れ出す。
「何よ……名前だってちゃんとまだ聞いてないのに!あたしの行為で死ぬこと無いじゃない!
リディアちゃんのことやギルバートさんのこと、伝えなきゃいけないことがたくさんあったのに!」
泣くのはこれで何度目だろう?
トンネルの壁をばむばむと叩きながら、アリーナはただ泣きつづけていた。
そして、火薬の匂いが立ちこめる中、焼け焦げた地面を眺めながら、ぽつりとセシルは呟く。
「エッジ、最期まで君は忍者らしくない忍者だったね、本当に単純でお人よしで……でも…
それでも君は僕の大切な……」
そこから先は言葉にならなかった、しばし立ち尽くすセシルの頬にもまた、何時の間にか涙が流れていた。
【エッジ:死亡(残り57人)】
【アリーナ 所持武器:イオの書×4 リフレクトリング ピンクのレオタード
現在位置:地下通路(大陸北部山脈、西の湖側) 】
第一行動方針:クラウドを救う
第二行動方針:ソロを止める(倒してでも)
最終行動方針:ゲームを抜ける
【セシル 所持武器:暗黒騎士の鎧 ブラッドソード 源氏の兜 リフレクトリング 弓矢(手製)
ギガスマッシャー 現在位置:大陸北部山脈、西の湖側 】
第一行動方針:参加者を殺す(エドガーorハ−ゴンを優先)
第二行動方針:不明
最終行動方針:勝利する
320 :
1/2:03/02/10 23:59 ID:BjFZ7InV
ピサロとサマンサは湿っぽい洞窟の中をただひたすら進んでいた。
幾度にも渡り、分岐路があったが、ピサロは直感で道を選んでいるのか、迷う素振りを見せずにひたすら早足で歩いて行く。
足元は滑りやすく、後をついてゆくサマンサは彼の歩調に合わせるのが精一杯だった。
ピサロの腕で目が覚めて以来、心に少々動揺を感じていたサマンサはピサロの背中を何度かじっと見つめる。
―いや、そんな筈は無い!私は誰にも心は開かない!―
自分でもよくわからない想いがせめぎあっていたが、少し油断をしてしまったようだ。
「きゃっ!」
ついに足をとられ転んでしまった。
なんという屈辱。冷静な自分がだんだん消えてゆくのが手にとるように分かる。
「何をしておる…」
ピサロは振り返り、サマンサに手を延べた。
その手はサマンサにとって嬉しいものであった。が、サマンサは彼の手を取らずに自分で立ちあがった。
「失態を見せて申し訳ありませんでした。でも助けは無用です」
恥ずかしさで顔を赤らめながら、サマンサはピサロの前に出て歩き始める。
「…素直ではないな。ロザリーとは大違いだ」
ぴた。
サマンサの歩みが止まった。
ロザリーとは誰の事であろうか。
胸の奥がずきん、と痛くなる。
差し出した手を引っ込め、ピサロは苦笑を浮かべている。
「あれが…このゲームに参加していなくて良かった…」
聞こえるか聞こえないか分からない大きさの声でつぶやいた。
「いや、つまらぬ事を思い出してしまったな。行くぞ」
気をとりなおし、ピサロは固まっているサマンサの横を抜け、再び歩き出した。
慌ててサマンサが追いかける。
胸の痛みはおさまるどころか、どんどん悪化していた。
そして、始めて、ピサロに対してよく分からない憎しみを感じ、戸惑う。
321 :
2/2:03/02/11 00:00 ID:3k/5IqKS
どれほどの時が経ったのか、暗がりでわからなかったが、やがて洞窟の出口らしきものが見えた。
簡素な作りの梯子を昇り、天井の蓋を開けると、半分崩れかかった建物の中に出る。
「ピサロ卿…ここは…」
サマンサは気配を隠しながら辺りを見まわした。
見た事のない像が並んでいる。
「どうやら何らかの神殿のようだな」
一方、水晶を覗いていたマゴットは神殿にかつての仲間が映っているのに驚く。
「………!!」
慌ててハーゴンに知らせようと駆けだそうとしたが…。
かつて、共に戦った仲間でもある。
できるならば穏便に事を済ませたい。
マゴットの中で過酷な選択が強いられた。
しばらく考えた後…マゴットは意を決して走り出した。
※マゴットがどんな決意をしたのかはお任せします。
【デスピサロ/サマンサ:所持アイテム:正義のそろばん・『光の玉』について書かれた本・勲章(重装備可能)
現在位置:神殿】
第一行動方針:神殿内を調べる
第二行動方針:腕輪を探す
第三行動方針:勝利者となる(ピサロ)生き残る(サマンサ)
【マゴット(MP減少)武器:死神の鎌:現在位置:神殿】
第一行動方針:デスピとサマンサ関係で何らかの対処をする
第二行動方針:ハーゴンから儀式について教わる
第三行動方針:ゲームから脱出、仲間と合流
…………。」
「何だとっ?」
「どうしたんだ?」
最悪だ……まさかこんなに簡単にサマンサと接触する破目になろうとは。
これでは『マゴット懐柔計画』が完全に潰れてしまうではないかッ!
わしが後どれだけ生きられるかさっぱり判らんのだぞッ!
その後のお前のガードはこの若僧に託すしか無いのだぞッ!
だからこそあんな策を吹き込んだというのに……。
「何て言ってるんだ、おっさん?」
「あ〜その、な、」
「……サマンサだな。」
「なっ……」
「おっさんが俺相手に口篭る事なんてそれしかねーだろ?」
ジャキッ
「…!!!」
「何のつもりだ?」
「こうでもしねーと教えてくれねーだろ?あいつ等は何処にいる?」
銃を渡すのがちと早過ぎたか…。
「……マゴット。」
「………」
「悪いなおっさん、俺が戻らなくてもエーコ達の事頼むぜ。」
「判った。」
ふん、誰がそんな真似をするか。
「じゃあな。」
「………。」
駆け出すジタン、追おうとするマゴット。
「行くな!」
「行くな!」
「………?」
「貴様は疲れている、授業も中途半端だ、そ」
「………!」
「別に問題は無い、ジタンはサマンサ達と戦って敗れている、銃があった所で勝敗が変化するとは思えん。」
これがわしの結論だ、早急に新しい仲間を探す必要があるが、新しい魂が手に入るだけ良しとしよう、銃は高い授業料ではあるが仕方があるまい。
「………!」
は?あの小僧を助ける?
「一寸待て、奴はサマンサを殺す気だぞ?」
「…………………」
「聞いていたのか。」
「……!」
「あ、あれはだな、その。」
「………………………」
「本気か?それはつまり、仲間を殺す事になるのだぞ?」
「…………」
「それは奴がそう言っているだけの話だ、証拠はまだ無い。」
「…………」
信じる、か。確かに相手を信じずに信頼関係を築こうなどと虫の良い話ではあるな。
いや違う、利害で絡め取るのがわしのやり方だった筈だ。
「ふむ、ならばとっとと小僧に追い着かねばならんな、その間に何か考えてみる事にしよう。」
ここでお前を失っては元も子も無い、とはいえわしは何を答えておるのだ?こんな場合は眠らせてでも阻止するのが常道だろ?
奇妙な違和感を抱いたまま、わしはマゴットと共に走りはじめた。
【ジタン: 所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 現在位置:神殿
第1行動方針:サマンサとピサロの殺害
第2行動方針:不明
第3行動方針:仲間と合流、ゲームから脱出】
【ハーゴン(あと二日で呪文使用不能、左手喪失)
武器:グレネード複数、裁きの杖、ムーンの首、グレーテの首、首輪×3現在位置:神殿
第1行動方針:マゴットとジタン止める
第2行動方針:授業
第3行動方針:ゲームの破壊】
【マゴット(MP減少) 武器:死神の鎌 現在位置:神殿
第1行動方針:ジタンを助ける
第2行動方針:ハーゴンに呪法について習う
第3行動方針:ゲームから脱出、仲間と合流】
325 :
保管庫:03/02/12 22:26 ID:0Awudtl7
「情けない、何という様だ」
またしても遅れを取ってしまった、せめてもの慰めは相手が普通ではなかったということくらいか
だが、はあはあと息を白くするアグリアスだったが、自分の背後の影にようやく気がつく
(しまった!)
いつの間にか接近を許してしまっていた、その影の形からいって相手はヘンリーだろう。
そして予想に違わず、ヘンリーが木陰からぬっと姿を現す。
こちらは丸腰、相手は斧を構えている、ヘイストを詠唱する時間も無い....ここまでか、
(ここまでか....)
無念の表情で瞳を閉じるアグリアス、だがその時はいつまで経っても訪れなかった。
「?」
戸惑うアグリアスにヘンリーは雪の中で回収した、マンイーターを投げてよこす。
「何のつもりだ?」
「俺は1人より2人、少なくとも切り抜けられる可能性の高い選択肢を選んだだけだ」
「ほう....思った以上に賢明だな、だが」
アグリアスはマンイーターを引きぬくと、それをヘンリーに向ける。
「私が恩をアダで返す可能性もあるぞ」
326 :
保管庫:03/02/12 22:27 ID:0Awudtl7
しかしヘンリーは動じず、平然と言い返す。、
「お前も俺を殺すのと、俺を生かしておくのと、少なくとも今はどちらが得かは分かるだろう?」
ヘンリーの言葉にアグリアスは笑って剣を鞘に収める。
「さて、どうする?この場はお前に従うが?」
アグリアスの問いにヘンリーは言うまでも無いといった感じで答える。
「再び行くぞ....あいつらもそう遠くまでは行ってないだろう、受けた屈辱は晴らす
お前が言っていたように」
受けた屈辱.....その言葉にアグリアスの表情が変わる。
「そ、そうだ....忘れてはならん、あの屈辱....ぐわあああっ!」
アグリアスはなんとティファにつけられた額の傷を再び今度は自らの手で深々とえぐっていた、
白い顔がみるみるうちに赤く染まり、またその瞳に異様な光が宿っていく。
「これだ。この痛みだ、これこそが今の私の現実.....くくっ、ふふふふっ」
痛みが忘れかけていた憎悪を呼び覚ましてくれる、今のアグリアスの瞳には2度と消せぬ敗者の烙印を刻んだ
あの少女の姿しか映っていない。
「生きていろ....私に殺されるその時までな...ふふふ、ははははははっ」
白銀の世界に女騎士の狂ったような笑い声が暫し響き渡った。
そしてそれを見つめるヘンリーの表情には、わずかながら後悔の色が浮かんでいた。
327 :
保管庫:03/02/12 22:28 ID:0Awudtl7
【ヘンリー 所持武器:ミスリルアクス イオの書×3 現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯】
第一行動方針:とんぬら達を追う(遭遇すれば他のキャラも倒す)
第二行動方針:皆殺し
最終行動方針:全てが終わった後、マリアの元へ逝く
【アグリアス ジョブ:ホーリーナイト スキル:時魔法 装備武器:スリングショット
なべのふた マンイーター 現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯】
第一行動方針:とんぬら達を追う(遭遇すれば他のキャラも倒す)
第二行動方針:ティファを何処までも追い詰め、嬲り殺す
最終行動方針:元の世界に帰還する
荒野を駆けていたミレーユが、急に足を動きを緩めて歩き出す。追い始めてまもなく、
光の筋は細切れとなり消えてしまった。
再び光が見えることを期待したが、そうはならない。
もちろん光が見えなくても位置はわかる。このまま真っ直ぐ進めばよい。
だが光の主が移動を始めたとしたら……。アモスの想いを蹴ってまで自分の意思を貫こうとしたのだ。
今更誰もいないところに一人で出向いて、置いてけぼりでした、なんて言えやしない。
そう思うと、自然と足は以前にも増して、その前進運動を早めることになった。
ミレーユは肩で荒い息をしながらひたすら駆けた。
全てが同じだと思っていただだっ広い景色も、少しずつ移り変わっていく。
前方にごつごつとしている岩場が広がっていて、その先に小高い丘が見える。
ミレーユは勢いに乗って、そのまま丘を駆け上がろうとした。 と、
突然ミレーユの足がぴたりと止まる。
行く手を遮るようにして、岩の影からのそりと現われる影。
蠢いていた。咄嗟の思いつきで出た表現だが、案外的確だったかもしれない。
目に飛び込んでくる鮮やかな緑の髪、黒ずんで染みができているいる布の服。顔には言いようの無い
汚物めいたものが張り付いている。 そして手と足をふらつかせてうわ言を呟いていた。
少年である、人である。だが心はどこかに置き忘れた人形のよう。
「ううう……」
少年が呻き声を上げた。どこか焦点の合っていないグリーンの瞳がミレーユの心をかき乱す。
「あ……」
呼びかけようとしたが、声が上ずってしまいそうで、出掛けた言葉を慌てて引っ込める。
ソロはびくっと体を震わせた。 体をすぼめて怯えの表情を見せる。
「だ、誰? そこに誰かいるのか?」
ミレーユの顔に困惑の色が浮かぶ。
「助けて、お願いだ……」
少年は右手を差し伸べて懇願したが、それは明後日の方を向いていた。
ミレーユはようやく事情が飲み込めた。 少年は光を失っているのだと。
初めの印象こそ強烈だったが、よく見れば本当にまだあどけない顔立ちをしている。
歳はテリーと同じくらいだろうか。背は高めだが、弟よりも幼さく見える。
優しげで、そして脆そうで、不思議な雰囲気が少年にはあった。 選ばれし者?
テリーから刺刺しさを取り除けばこんな感じになるのだろうか。
……またか
何でも弟と比較してしまう悪い癖がまた出たのかと苦笑した。
少年は土下座するかのように両手を地につけて
「僕の名前はソロだ。 勇者なんて慕われていたのは昔さ。今は、いまはもうただの……」
その目から涙がこぼれ落ちた。 ミレーユが涙に惹かれて歩みよる。
何が見えるだろうと、ミレーユは占いの要領で精神を高めた。 意識が高みに上るのを感じる。
少年は羽を折られて天空から落ちた鷹。
だが地の底にまで堕ち果てることはなく、危うく踏みとどまっている。
最初はアモスの意思を受け継ごうと懸命だった。それが光を求める心に突き動かされ、
そして今また進む道が変わろうとしている。 これも運命なのだろうか。
ミレーユはもう現実だけを見ようとした。ここにいるのは救いを求める哀れな人間。
私に求めているのならば、助けなければ。
ミレーユはソロの手を取ると、そっと語りだした。
「あなたの回りを取り巻く光が見える。私はそれに導かれたのかもしれない。
あなたのこと、話してもらうわよ」
汚物で汚れている服に一瞬躊躇った。だが思い直すと、震えているソロの肩にもう片方の手を置いた。
「でも、今は何も言わなくていい……」
【ミレーユ 所持武器:ドラゴンテイル、妖剣かまいたち、小型ミスリルソード、水筒1.5リットル
行動方針:ソロを救う
ソロ 所持武器:イリーナの会員証(エンハンスソード、スーツケース核爆弾はやや離れたところに放置)
現在位置:ロンダルキア南(倒れていた場所から少し北へ移動)
行動方針:ミレーユに任せる
最終行動方針:デスピサロ打倒】
ガッ!
ピサロとジタン、二人の武器が火花を散らす、戦局は銃を織り交ぜて使うジタンにやや有利に
進んでいるものの表情はピサロの方が余裕がある。
(誰も居ないようですね。)
それまで周囲の警戒をしていたサマンサだったがおもむろに呪文の詠唱を始める、
ジタンが銃を持っていた事、助かる筈の無い状況から復帰した事から仲間の存在を警戒していたのだ。
「モシャ」
「マホトーン!」
その瞬間、通路の角から姿を表したマゴットの呪文がサマンサの呪文を封じ込める。
予想外の人物の出現と有り得ないタイミングで呪文を封じられたショックで固まるサマンサ。
しかしマゴットは再び通路の角に隠れてしまう。
(とんだ伏兵ですわね、しかし…)
一瞬だけ動きを止めたサマンサだったがあっさりと余裕を取り戻す、ジタン対ピサロは次第にピサロが優勢になっていたからだ。
一度は戦った相手である為ある程度手の内は判っている、結果として互いに致命傷を与えられないが持久力ではピサロに部があった。
メラ!」
ガッッ!
キンッッ!
「メラ!」
ゴッ!
「どうした、こんなものか?」
「舐めるなあッ!」
…………
(これで勝負ありですね。)
あれから20分程度たっただろうか、既にジタンは殆ど防戦一方になりつつある、
序盤は時々火球を飛ばしていたマゴットも暫らく前から出てこなくなった。
(マゴットは呪文切れ、あの少年はスタミナ切れ、後は…)
「これで終わりだ。」
「くぅっ!」
ピサロが放った渾身の一撃に対しジタンが半ばヤケクソの一撃を放った時、マゴットが再び姿を表す。
「ピオリム!」
(ククク、ククククククッ)
ピサロ達のミスは作戦を考えていたのがハーゴンであった事、
その為にこの邪悪な男は最後まで姿を表さずサマンサの判断を誤らせる事に成功した。
「へっ?」
ハーゴンのミスはジタンがピオリムの呪文を知らなかった事、その為ジタンは辛うじてピサロの攻撃をかわす事に成功したものの、
自分の想像以上に素早く繰り出した攻撃はピサロの腹部を浅く切り裂いたのみであった。
次の瞬間、ピサロの形相が憎悪に染まる。
「人間風情がぁッ!」
凄まじい蹴りがジタンを襲う、更に壁の一部を破壊してその破片をマゴットに投げつける。
「グッ!」
「!!!!」
ジタンはマゴットの側まで吹き飛ばされ、マゴットは顔を押えて倒れる、その瞼の下からは血が溢れ出ていた。
止めを刺すべく疾るピサロ、マゴットを抱えて角に逃げるジタン。
(高く、ついたな。)
ピサロが角に到達する直前、グレネードと首輪の爆音の複合爆発がハーゴンが直前まで潜んでいた通路を完全に破壊した。
【ジタン:(軽傷) 所持アイテム:仕込み杖、グロック17、ギザールの笛 現在位置:神殿
第1行動方針:逃走
第2行動方針:サマンサとピサロの殺害
第3行動方針:仲間と合流、ゲームから脱出】
【ハーゴン(あと二日で呪文使用不能、左手喪失)
武器:グレネード複数、裁きの杖、ムーンの首、グレーテの首、首輪×2現在位置:神殿
第1行動方針:逃走
第2行動方針:授業 、マゴットの治療
第3行動方針:ゲームの破壊】
【マゴット(MP残り僅か、左目負傷) 武器:死神の鎌 現在位置:神殿
第1行動方針:逃走
第2行動方針:ハーゴンに呪法について習う
第3行動方針:ゲームから脱出、仲間と合流】
【デスピサロ(軽傷)/サマンサ:所持アイテム:正義のそろばん・『光の玉』について書かれた本・勲章(重装備可能)
現在位置:神殿】
第一行動方針:神殿内を調べる
第二行動方針:腕輪を探す
第三行動方針:勝利者となる(ピサロ)生き残る(サマンサ)
334 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/02/13 00:58 ID:JhCNSrfU
おもしろあげ
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336 :
1/3:03/02/13 01:35 ID:iAyPpHSU
通路を塞いで、とりあえず一息と行きたかったハーゴンたちだったが、
しかし状況は予断を許さない事態が続いていた。
「おっさん!今のは何なんだよバランス崩しちまったじゃないか!」
「打ち合わせもせずに勝手に討って出るからだ、見ろ」
ハーゴンがあごで示した先にジタンは視線を移す、
瓦礫の山がガラガラと少しずつではあるが崩れつつある、さらに
『逃がさんぞ!』
『ピサロ卿、こういう時こそ冷静になってください!でもこういうのも悪くないですね』
などと声が聞こえてくる。
「怒りに火を注いでしまったではないか、全く」
「やむを得んな」
出きる事ならこの段階で使いたくなかったが、命には変えられない。
(マゴットは気絶しているし、このガキは当てにならんし、ワシも今こんなところで、
魔力を消費するわけにはいかん)
「いいか、お前は速さには自信があるのだろう?、合図をしたらワシとマゴットを抱えて、
全速力で地上階へと逃げてくれんか」
ハーゴンはジタンの返事を待たず、今潜んでいる小部屋の奥へと入っていくと、そこに安置してある、
巨大な水晶を渾身の力で蹴り飛ばす、と、頑丈そうに見えた水晶はガラスのように粉々に砕け、
それから数秒遅れでゴゴゴと天井が崩れ出す。
「今じゃ!」
手はず通りハーゴンとマゴットを抱えて、ジタンは地上へと階段を駆けあがる。
背後で凄まじい大破壊の音が聞こえるが振り向く余裕も無い、ジタンが地上の廊下に足を踏み入れると
同時に地下へと続く唯一の階段が、がらがらと奈落の底へと消えていった。