FFDQバトルロワイアル PART3

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《午前9時10分前後》
ズズズズズ……。
何か、大きなモノが崩れ去る音がバッツの耳に届き、その拍子に彼は顔を上げた。
祠の外…だいぶ離れた所で響いた音。ソレは雪崩の音だったのだが、バッツは気づく事はなかった。
なにしろ、雪を見るのも初めてだったので。
「………。」
今までは顔を伏せ、努めて何も考えないようにしていたが…顔を上げ、みんなの姿が視界に入ってきたとたん、思考が回転を始めた。
(もう三日目…人数は半分近くにまで減った。もう行かなきゃ、間に合わない…?)
外に駆け出したい。今すぐ駆けだしてレナとファリスを探したい。
だけど、今の彼の周りには子供が3人と、怪我が治りかけたとは言えまだ動くのに不自由するのが一人。自分一人動くのは無責任ではないか?
だが、ここにいれば見つかる可能性は限りなく低いのだし、クーパーは戦う力があって…。
バッツの中で、二つの思考がせめぎ合った。
悩む。ひたすらに悩む。今まで、こんなに悩んだ事はなかった。
しかし、永久に悩み続けるわけには行かない。しばらくして、答えは出た。

バッツが唐突に立ち上がったのを見て、ピピンの脚を治療していたクーパーはきょとんとした顔をした。
ここで、このロンタルギアの祠でしばらく休もうと言い出したのはバッツ自身なのに。
まるで、どこかへ行こうとするみたいに、バッツは立ち上がった。
「バッツ兄…。」
「クーパー、ちょっと出てくる。」
クーパーの言葉を遮って、バッツが言った。
まるで、ちょっと買い物に行ってくるとでも言うような調子で。
1862/4:02/12/01 12:00 ID:???
「……え?」
呆けた声が、クーパーの口から漏れた。
「ごめんな。俺…もう我慢できない…限界だ。」
まるきりいつもの口調。いつものバッツの口調。ソレなのに、どこか…重かった。
「レナとファリスを探す。アニーとパパスさんと…エーコの仲間も。」
「ちっ、ちょちょちょちょっ!ちょっと待ってよ!」
淡々と言葉を紡ぐバッツを、エーコの声が止める。
「外には…あの怖いヤツとかいるし……危ないし…。」
「…だからさ。だから…行かなきゃ。」
バッツはそう呟いて…まるで独り言のようにそう呟くと、くるりと方向転換して扉の方へと歩いていく。
バッツは扉のノブに手をかけて…くるりと振り向いた。
「ここに隠れてれば…多分見つからないと思う。何もなくても次の放送が合ったら帰ってくるよ。」
バッツはそう言って笑い、ドアを開けて外に出ていった。

「………。」
クーパーは、バッツがたった今出ていった扉をじっと見つめた。
置いていかれた。自分は置いていかれた。
(……どうしてかは、分かるけどさ。)
危険だからだろう。死の危険があるから、ここに置いていった方が安全だとふんだからだろう。
だが、悔しかった。とても、とてもとてもとても悔しかった。
自分だって…バッツに見劣りしない力は持っているつもりだった。
アニーと父を捜したかった。パパスに会いたかった。バッツと一緒に戦いたかった。
みんなに……認めて欲しいと思った。父に一人前と、パパスに子供じゃないと、バッツと肩を並べて戦えると。
ぐ…と、クーパーが両手を握りしめた。
1873/4:02/12/01 12:01 ID:???
クーパーは小さくこくんと頷くと、さっと振り返ってピピンに向き直った。
「ピピン…。」
「何ですか?クーパー様。」
クーパーが何というか半ば予想しながら、ピピンはクーパーに問いかけた。
一瞬の迷い。一瞬の葛藤。クーパーはちらりと横目でリディアを見て…どうやら、決意したようだ。
「コレ…ピピンにあげる。」
クーパーはそう言って、ピピンにロングソードを差し出した。
ピピンはソレを受け取り、型通りの会釈…王族に対する会釈を行った。
「僕…バッツ兄ちゃん追っかけるから…リディアとエーコを……。」
「承知いたしました。クーパー様。このピピン、命に代えてもこの二人のお姫様をお守りいたしましょう。」
ピピンは深々とお辞儀をしてそう言ってから…ふと顔を上げてウインクした。
「さあ、早く行かないと追いつけませんよ?」
「…ありがとう!」
クーパーは顔いっぱいに眩しい笑顔を浮かべ、振り向くやいなや走り出した。
半開き状態だった扉を思いっきり手でついて、外に飛び出す。
クーパーは振り向き扉を閉めようとして…視界にリディアの顔を納めた。
「リディア、すぐ帰ってくるからね!」
リディアは、ソレを聞いて顔を明るくし、うんと頷いた。
ソレを確認すると、クーパーはバッツを追って走っていった。まっすぐに。

「…リディアだけで、エーコには一言もナシ?」
「クーパー様はリディアちゃんがお気に入りみたいだから…。」
「失礼しちゃうわ。全くもう…。」
ロンタルギアの祠で、そんな平和な会話が交わされた。
1884/4:02/12/01 12:01 ID:???
さくさくと地面に積もる雪を踏みしめながら、バッツは森の中を歩いていた。
祠から西にある橋。ソレを通って北に向かうつもりだった。特に理由があるわけでもないが。
(やる事がいっぱいあるからな。急ごう。)
と、バッツが決意を新たにした時、彼の背中の方で声がした。聞き覚えのある、少年の声が。
「…あんのバカ…。」
こっちに走ってくるクーパーの姿を確認したバッツは、頭を押さえてうめいた。
「まあ、しょうがないか…?」
顔を上げて一人ごちる。クーパーが自分で決めたなら、しょうがないだろうと思いながら。

【バッツ(魔法剣士 時魔法)/クーパー
 所持武器:ブレイブブレイド/天空の盾
 現在位置:ロンタルギアの祠から北へ
 行動方針:アリーナ(アニー)、レナ、ファリス、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す。最終的にはゲームを抜ける】
【リディア/エーコ/ピピン
 所持武器:なし/なし/ロングソード
 現在位置:ロンタルギアの祠
 行動方針:セシルを探す?・祠で待つ/仲間を捜す・祠で待つ/リディアとエーコを守る。】