175 :
1/5:
ライアン、ルーキー、とんぬら、アイラの4人は森の中を歩いていた。
魔法の球はかなり広範囲に配置されているらしく、現に今も同じところを回っているようである。
ルーキーは白い息を吐きながら呟いた。
「なんだか、ぜんぜん進まないねぇ」
「仕方ないでござるよ。とにかく、今は一刻も早く森を出ることでござる」
そのとき、とんぬらがある方向に指をさした。
「今度こそ、抜けたみたいだよ」
森から抜けた先には、山道があった。
白く染まった道を見て、ルーキーはため息をつく。
「今度は山に登るの?」
「仕方ないでござるよ。あの森の中にいたのではいつまで経っても進めないでござる」
もちろん、それはわかる。だが、森の中は木々のおかげで風は届かないという利点もある。
この寒さだ、防寒具を着ているとんぬらやゾンビ状態のアイラはとにかく、自分はつらい。
ルーキーはライアンの方から飛び跳ねると、とんぬらの肩に移った。
「ねぇ、とんぬらさん、とんぬらさんのマントの中に入れてよ。もう、寒くて寒くて」
「これ、多少涼しい程度でござらぬか。あまりわがまま言うものではないぞ、ルーキー殿」
大真面目な顔でいうライアンに、とんぬらは苦笑した。
「まあまあ。僕はかまいませんから。いいよ、マントの中にお入り」
「やったぁ!ありがとうとんぬらさん!」
言うが早く、襟からマントの中に潜り込むルーキー。
そんなルーキーを、アイラはうらやましそうに見ている。
「やれやれ、モテモテでござるなぁ」
肩をすくめるライアン。とんぬらはあいまいな笑みを浮かべた。
山道は、険しい山脈の狭間に伸びていた。
こんなところで敵に会ったら、堪らない(でござる)な。
戦いに慣れた二人はそんなことを思いながら、先に進む。
この山を抜けて、とにかく見通しのよい場所に出る。
そこには勿論危険もあるだろうが、探し人がいる可能性もあるのだ。
176 :
2/5:02/11/30 18:26 ID:???
(クーパー、アニー。今、どこにいるんだ…?)
とんぬらは、まだ幼い自分たちの子供のことを思った。
仲間たちのことも。ピエール、ピピン。そして……
そして、再開の時は来た。
お互いが、何の気構えもできなかった。正真正銘の突然。
「ヘンリー」
「とんぬら」
山間を、風が抜ける。
二人の連れは、それぞれの表情で二人を見比べた。
大きく息を吸って、そしてヘンリーは笑う。
「よう。相変わらず変なのに好かれてるみたいだな」
「まあね、どうやら性分らしい。ヘンリーも……」
「放送聞いたよ。フローラさん、残念だったな」
「…マリアさんも」
ヘンリーの連れ、アグリアスの眉が微かに動く。マリア、その名前はつい先ほど聞いたものだった。
「ああ。……また、お互い、大切な人を失ってしまったな」
ヘンリーはゆっくりと、とんぬらたちに近づいてくる。
「む、とんぬら殿、知り合いでござるか?」
そんなの見りゃわかるじゃん、とマントの中のルーキーは思ったが、
まあ大方本当に今気付いたのだろうから、何も言わなかった。
「ならばよいのでござる。ヘンリー殿、であったか。拙者は……」
「ライアンさん」
とんぬらは底冷えのする声でライアンの言葉を遮った。
ヘンリーは相変わらず笑ったままだ。
「やっぱり、お前にはわかってしまうか」
「何年親友やってると思っているんだ、ヘンリー」
「そうだったな…でも、さすがにこれはわからないだろう、相棒!」
177 :
3/5:02/11/30 18:27 ID:???
ビンが投げつけられる。
次の瞬間、とんぬらはさざなみの剣を掲げ、ヘンリーは呪文を唱えた!
「イオ!」
「ヌ、おおっ!?」
「これは…っ!」
小規模な爆発。それ自体は、剣の力で跳ね返している。
だが、爆発はビンを巻き込み、ビンの中に入っていた薬品が引火して、とんぬら、ライアン、アイラに降り注ぐ!
火を纏った液体をかわせず、三人は火ダルマになった!
ライアンはごろごろと地面に転がり、とんぬらはフードと防寒具を脱ぎ捨てようと手をかける。
アイラは……相変わらず平然とした姿でライアンが落とした大地のハンマーを拾い上げると、
無造作に、地面を叩き付けた。
ドゥン!!
遥か彼方まで届きそうな重い音が響き渡り、雪が舞って白い柱が生まれる。
ライアン、とんぬら、アイラはその柱の中に巻き込まれ、吹き飛ばされた。
雪にまみれながら地面に落ちたころには、火は消えている。
「いたた…手荒すぎるでござるよ、アイラ殿」
雪を撥ね退け、身を起こすライアン。
アイラはやはり無造作に大地のハンマーをライアンに押し付ける。
とんぬらは二人からやや離れたところで、頭を振りながら身を起こした。
とんぬらがいる場所は、ライアンたちよりヘンリーたちに近い。
刹那、とんぬらをアグリアスの剣が襲う。
とんぬらは二度三度アグリアスの剣撃を受け流すと、バギの呪文を唱えた。
「くっ…」
巻き起こった真空の渦に攻撃の手が止まる。
その隙を見逃さず、今度はとんぬらが攻撃に転じる。
「とんぬら殿!」
ライアンは大地のハンマーを手に取った。アイラはすでにとんぬらの元に駆け出している。
178 :
4/5:02/11/30 18:28 ID:???
そのときだった。
ゴゴゴ……
「む…何の音だ?」
「まさか…」
大地のハンマー。それは名前の通り、大地の力を秘めたもの。
その力は…大地をも揺るがす。
『雪崩!?』
全員(アイラを除く)が叫んだときには、白い激流が全員を押し流していた。
…
……
………どれくらい、気を失っていたのか。
とんぬらはちょうど森から山道に入るあたりで、我に返った。周囲を見回す。誰も、いない。
あわててマントの中を見ると、目を回して気絶しているルーキーがいた。
179 :
5/5:02/11/30 18:29 ID:???
【とんぬら(DQ5主人公) 所持品:さざなみの剣
現在位置:台地北の森と祠西の山岳地帯の境目 行動方針:王子と王女を助ける、パパスに会う】
【ルーキー 所持武器:スナイパーアイ ブーメラン
現在位置:台地北の森と祠西の山岳地帯の境目 行動方針:気絶中】
【ライアン 所持武器:大地のハンマー
現在位置:祠西の山岳地帯で雪崩に巻き込まれました 行動方針:仲間を探す】
【アイラ(ゾンビ) 所持武器:死者の指輪 マンイーター
現在位置:祠西の山岳地帯で雪崩に巻き込まれました
行動方針:ゾンビ状態中はとんぬらについていく。死者の指輪が外れたら???】
【ヘンリー 所持武器:ミスリルアクス イオの書×3
現在位置:祠西の山岳地帯で雪崩に巻き込まれました 行動方針:皆殺し】
【アグリアス ジョブ:ホーリーナイト スキル:時魔法
装備武器:スリングショット ダイヤソード なべのふた
現在位置:祠西の山岳地帯で雪崩に巻き込まれました 行動方針:ゲームにのる】