FFDQバトルロワイアル PART3

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《午前8時四十分前後》
「愛する者の命のために。」
まっすぐなエリアの眼差しを正面から受け止めながら、セシルは答えた。彼女の問いに。
その言葉に、エリアの微笑が消え、何か別の表情が取って代わる。
「…そのために命を奪うのですか?沢山の、同じ、命を。」
我知らず手を握りしめながら、エリアは静かに言った。自分を押さえていないと、怒鳴りだしてしまいそうだ。
「僕にとって、命は“等価”じゃない。このゲームに参加してる全ての人間より、僕にとってのローザの命は重い。」
彼自身、冷たいなと驚くほどの声音でセシルが言う。まるで自分に言い聞かせるみたいに。
セシルは、ウソを言ってはいなかった。少なくとも今の時点では。
昔は、ゲームに参加する前は、そうは思っていなかった。全ての命は等価値だと思っていた。
だけど、気づいた。彼女が死んで。
彼女は何よりも大事だ。だから、他の命を奪ってでも彼女を生かす。
決意した時、彼はゾーマの操り人形になる事を決め、己を捨てた。
リディアと出会い、まだ僅かに心に残っていた己に気づき、再びソレを放棄した。
カインと出会って、再確認した。
セシルは今、誰だって殺せる。エッジでもカインでもリディアでも。ましてや知らない他人の命などそれ以前だ。
「…分かります、あなたの思いは…だけど、私にも背負うモノはあります!同じくらい、重いモノが!」
思わずそう叫んで、エリアは携帯していたミスリルナイフを抜いた。
エリアの心の中で焔(ほむら)が唸った。優しき水の心の中で、炎が怒りの産声を上げた。勇気の炎が。
その瞬間、セシルの表情が変わった。顔が強ばる。顔の裏で激情が爆発する!
どぉぅんっ!と、エリアの足下で黒の衝撃が弾け、ばっと雪が散る。周りに生えている木の一本が衝撃で倒れる。
剣の切っ先をこちらに向け、セシルが低く叫んだ。先ほどの黒の爆発も彼の仕業か。
「分かるものか…あなたに…!」
剣の切っ先に黒い光を集め、それをエリアに向ける。
…このまま話していたら、捨てたはずの己が戻ってくる。ソレは駄目だ。
ローザを生き返らせるためには、みんな殺すためには、何よりも、甘い自分自身が不必要なのだから。
1522/4:02/11/29 13:01 ID:???
ナイフを構えながら、エリアは小さく息をのんだ。
目の前にいる騎士は、強い。どうしようもなく強い。
ナイフを抜いて怒鳴ったのは失敗だったか?
否、そもそも彼女に打算など全くない。ただ、思いをぶつけただけ。

…騎士の、セシルの剣の切っ先の、黒い輝きが吠え狂う。
一瞬後には、エリアは黒い爆圧でバラバラになるだろう。避けられそうもない。
エリアはぐっと歯を食いしばった。その爆圧と、訪れる死を耐えるべく。

               だあんっ!

爆圧は、エリアを殺しはしなかった。
「っ…!」
「エリア!無事か!」
「ロックさん!」
間一髪のところで駆けつけたロックのクイック・シルバーが、セシルの腕を撃ったのだ。
残念ながらその一撃は真芯を捕らえず、腕を軽く裂くにとどまったが。
「邪魔をするな…!」
セシルは静かな怒りをたたえ、ロックに向かって剣を向ける。
「ロックさん!これを!」
エリアはザックから吹雪の剣を取り出すと、ロックの方に向かって思いっきり投擲する。
非力な彼女としては長い時間、剣は宙を舞い、ロックの足下に突き刺さる。
「っ…!」
ロックが剣に向かって跳躍する、ロックの立っていた場所を黒が薙ぐ。クイックシルバーの弾丸が空を切る…!
「エリア!下がれ!遠くまでだ!」
剣を握ったロックが短く叫ぶ。エリアはソレを聞いて一瞬迷い…振り向くと、南に向かって走り出した。
自分では足手まといになる…味方がいる。
そして、ここからしばらく南には…あの、小さな水の反応があったはずだった。
1533/4:02/11/29 13:09 ID:???
「く…くう…。」
邪神官エビルプリーストは、弾丸に打ち抜かれた腕を引きずりながら雪原を歩いていた。こちらに走っていったロックを追って。
(あの男め、なかなかやる。)
彼と戦っていたバンダナの男、呪文すら使えないくせをして…。
あの弾丸さえ喰らわなければ、ヤツを捕縛できたのに。一瞬の隙に逃げられてしまった。
腕の治療にベホマを使っているが、どうも効きが悪い。なにか、力を制限されているような…。
ぼふっ!
突然なにかに足を取られて、エビルプリーストはその場に倒れた。
考え事をしていたせいで、足下に気が回らなかった。
「む、むう…。」
腕を引きずりながら立ち上がり、振り向く。何だ?何に足を取られた?
振り向き、足元を見ると答えは知れた。死体だ。死体に足を取られた。
深い雪に埋められ、埋葬されていたのだろう。彼が派手にこけたせいで雪が散り、ソレは顔を露わにしていた。
女性だった。紫色の髪の、美しい女性。
エビルプリーストは一時思案する。
死人に化けるのはリスクが大きい。本人の知り合いに会ってしまえば一発でばれる。
だが、いきなり出会ったら…どうだ?
驚くだろう。死んでいるはずの人物が生きて目の前にいるのだから。
その一瞬の隙さえあれば…呪文をたたき込める。
しかも、この女性は相当な美人だ。武器が無くて困ったフリでもしていれば、お人好しが助けに現れるだろう。ソイツを、仕留めればいい。
エビルプリーストはニヤリと笑い、変化の杖を振りかざした。すぐに彼の身体が女性の…ファリスの姿に変わる。
エビルプリーストはとりあえずおとなしい表情を作って、軽く一回転してみる…完璧だ。
「こんな物かしら…。」
声を出してみる。なるべくしおらしく。
もしもまったく事情を知らないバッツがコレを見たら大笑いするだろう。もしくはファリスは気でも狂ったかと心配するだろうか。
ファリスの姿をしたエビルプリーストは、にやっと嫌な…ファリスが絶対浮かべないような笑みを浮かべて、ファリスの死体を埋め戻した。
1544/4:02/11/29 13:12 ID:???
「む…。」
ファリスの死体を埋め戻そうとしたエビルプリーストの手に、何か堅いモノが触れた。
金属の感触。何か生き物のような形。
雪の中に手を突っ込んでまさぐり、ソレを取り出す。
ペンダント。大空を舞う飛龍を象ったペンダント。
「…もらっておくとするか。」
ファリスの姿をしたエビルプリーストは、ソレをザックの中に放り込んだ。

【セシル 所持武器:暗黒騎士の鎧 ブラッドソード 源氏の兜 リフレクトリング 弓矢(手製) ギガスマッシャー 
 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)  行動方針:皆殺し(ハーゴンorエドガーを最優先ただし遭遇すれば他のキャラでも殺す)】
【ロック 所持武器:クイックシルバー 小型のミスリルシールド 吹雪の剣 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)
 行動方針:エリアを守る】
【エリア 所持武器:小型のミスリルシールド・ミスリルナイフ・加速装置・食料2ヶ月20日強分&毒薬 
 水1,5リットル×2 フィアーの書×7 小型のミスリルシールド 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)から南へ
 行動方針:クリスタルの戦士との合流】
(エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能)
【エビルプリースト(現在の姿はファリス) 所持武器:危ない水着 変化の杖 ファリスのペンダント 現在位置:ロンタルギアの祠南に8マス・ファリスの墓
 行動方針:天空の勇者(ソロ・クーパー)の始末】