FFDQバトルロワイアル PART3

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一面の銀世界。先ほどのベクタよりも、空気が薄く、冷たい。
「雪山、か」
慣れていない人間にとっては、厳しい戦場となるだろう。
酸素の不足は戦闘力の低下を招くし、冷たい外気は容赦なく体温を奪う。
最も、高山での奴隷生活を長年強いられてきたヘンリーにとっては、何の苦もないが。

アグリアスは、ヘンリーより少し離れた場所に降り立っていた。
二人ともすぐに互いの姿を見つける――が、少し困惑した表情を浮かべる。
殆ど垂直に近い、険しい斜面で阻まれていたのだ。
大した距離ではないが、飛び降りるには危険が過ぎる。さりとて道具もなしに昇れる角度でもない。
「私がそちらにいく」
辺りを見まわし、先に回り道を見つけたアグリアスが、声をかけた。

その時だ。
およそこんな雪山には似つかわしくない、透き通った歌声が響いたのは。

「おい、先に向こうに行ってるぞ」
ヘンリーはアグリアスの返事を待たずに、声の方向へと向かった。
1342/4:02/11/28 18:30 ID:???
セリスは、切り立った崖の上にいた。
重過ぎる罪の意識と、深い後悔に囚われて。
時と共に増大していく、死への誘惑に誘われて。

「…………」
虚ろな瞳に映ったのは、白銀の世界と、どこまでも広がる空。
それは『彼』と、彼に会った『場所』を思い起こさせた。
……だからだろうか?

――愛しの貴方は遠いところへ 色あせぬ永久の愛誓ったばかりに

気がつけば、あの時の歌が、口をついて出ていた。
そう……初めて『彼』、セッツァーに出会った時の、オペラの歌。

――悲しいときにも辛いときにも 空に降るあの星を貴方と想い

ここが戦場だということも忘れ。
両手を広げ、声量を上げて。美しい歌声を響き渡らせて。
その姿は、オペラの主役、女優マリアそのものだった。
1353/4:02/11/28 18:31 ID:???
人の気配は、とうに察知していた。
それでも彼女は、歌うことを止めなかった。

――ありがとう私の愛する人よ
―― 一度でもこの思い 揺れた私に 静かに優しく答えてくれた

避けようと思えば、避けられただろう。
受け止めようと思えば、雪の上に置いた剣を拾い上げ、止めることもできただろう。

セリスは、どちらもしなかった。
その代わりに、白い雪の上に舞い散った、赤い血を一瞥し。
斧を振り下ろした青年の方に向き直って。

「さようなら、ロック……」

永久に歌われることのないフレーズの代わりに、たった一言を残して。
彼女の足は、トン、と雪を蹴った。

彼女は、幸せだった。
彼女は確かに、『帝国将軍セリス』の枷から解放されていたのだから。
だから――最期の瞬間まで、彼女は微笑を浮かべていた。
1364/4:02/11/28 18:32 ID:???
風になびいた金の髪と、女性の浮かべた微笑が。
かつての妻の面影と、一瞬重なる。

「……マリア!」
思わず差し伸べたその手は、虚空を掴んだ。
神の塔のように、奇跡は起こらない。
投げ出された身体は、どこまでも落ちていくだけ。
彼はその場にしゃがみこみ、遠くなっていく女性の姿を見届けた。

「………」
どれほどそうしていただろうか?
アグリアスの足音が、近くで聞こえた。
ヘンリーはすっくと立ちあがり、女性の荷物を手にする。
「行くぞ。もうこんな場所に用はない」
そう声をかけて、彼は崖を後にした。

【セリス:死亡】
【ヘンリー 所持武器:ミスリルアクス イオの書×3 火炎瓶×1 ロトの剣
現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯 行動方針:皆殺し】
【アグリアス ジョブ:ホーリーナイト スキル:時魔法
 装備武器:スリングショット ダイヤソード なべのふた
 現在位置:ロンダルキアの祠西の山岳地帯 行動方針:ゲームにのる】
137>>133-136:02/11/28 21:57 ID:???
感想スレで『話が破綻している』との意見を戴きましたので、
>>133-136はNG扱いにしてください。

ご迷惑おかけしました。