FFDQバトルロワイアル PART3

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130アルス組
「冷たっ!!」
降り積もる雪に顔からダイビングしてしまい、アルスは思わず声を上げる。
荒い息のまま、アルスは立ち上がって首に手をあてた。
どうやら時間には間に合ったらしい。安堵感がこみ上げてくる。
(あぁ、精霊ルビス様ありがとうございます。
 さっきは暴言吐いちゃってすみませんでした。
 これからも毎日お祈りします)
本当に時間ギリギリだった。
時間切れで死亡、なんて情けない死に方は死んでもごめんだ。
いや、情けなくない死に方ならいいってわけでもないんだけど。
自分でツッコミを入れつつ、アルスはティナの方に顔を向ける。
ティナは息を整えつつ、その場にしゃがみこんで雪を掬い上げていた。
手の上で雪がゆっくり溶けていくのをじっと見つめている。
神秘的な姿に一瞬見惚れてしまったが、すぐに頭を振って気を取り直した。
「ティナは、雪を見るのは初めて?」
「ううん、私達が元いた世界には、年中雪に覆われた炭鉱都市があるの。
 とても・・・思い出深い所」
あの地―――炭鉱都市ナルシェは、ティナ=ブランフォードという
人間にとって第二の始まりの地といえる。
ナルシェで氷付けの幻獣に出会ったこと。
あの瞬間から全てが始まったのだ。
もういちどナルシェに行きたい。今も炭鉱に住むモグに会って、抱きしめたい。
ささやかな願いではあったが、それだけに本心からの想いであった。
「そっか。もう一度行けるよ、きっと」
「そうだと・・・いいね」
弱々しく微笑むティナ。
131アルス組:02/11/28 06:37 ID:???
話題が途切れる。痛々しい沈黙。
(ど、どうしよう。雰囲気が重くなっちゃった。なにか話題は〜っと・・・)
「あ、あのさ、これからのことなんだけど・・・」
さんざん知恵を絞った挙げ句出てきたのは、
ヒネリもウィットも効いていない、あまりに現実的過ぎるセリフだった。
世界を救う勇者だなんだと言われても、ここらへんはまだまだ16歳の子供である。
「あ、ごめんなさい。そうよね、私達にはやることがあるものね」
微妙に情けない気分になりつつも、
アルスはティナの隣に腰を下ろし、考えをまとめる。
「やっぱり、仲間を探すことから始めようと思うんだ。
 またティーダ達と会えればベストだね」
「そうね。あのゾーマっていう魔王を倒すにしても、
 このゲームを抜け出すにしても、私達だけじゃ力不足だし」
アルスは周りを見渡した。
周囲は360度完全に険しい山脈で閉ざされている。
その頂は深い雲に覆われ、どれほどの高さなのか見当もつかない。
「あの山は丸1日かかっても越えられない。
 きっと参加者は山に囲まれたこの土地の中に全員飛ばされてるんだ。
 だとすれば、ここはさっきまでいた帝国領よりだいぶ狭いから、
 誰かを探すだけならそう難しくないと思う。この杖もあることだし」
対人用のレミラーマの杖。
今までに試してみたが、感知できる範囲は半径100メートルといったところだ。
杖を手に取って念じなければ効果が現れないという欠点はあるが、
これさえあれば少なくとも不意の遭遇は免れることができる。
「問題は、『誰に会えるか』ね」
ゲームが始まってから2日以上が経過している。
この期に及んで単独行動をしているのは、ゲームに乗った人間である可能性が高い。
しかし、パーティを組んでいても全面的に信じることはできない
(デスピサロとサマンサという、アルスにとって信じたくない実例がある)。
安全度が高いのは3人以上のパーティだろうか。
とはいってもそういうパーティが都合よく見つかるかどうかは未知数だ。
132アルス組:02/11/28 06:40 ID:???
(結局、絶対確実なんてありえないんだな)
胸中でつぶやく。
単独行動をしているいい人だっている。
悪人同士が手を組む事だってある。
最終的には自分達の目で相手を見通すしかないのだ。

風が吹き抜けていった。寒さがじわじわと体に染み込んでくる。
砂漠を全力疾走してかいた汗が、こちらの世界の
寒冷な気候によって冷やされているのだ。
隣を見ると、ティナも寒そうに体を縮こまらせている。
「とりあえず動こう。じっとしてたら寒いし。
 動き回った方が他の人を見つけやすいだろうから」
言いながらマントを外し、ティナにかぶせる。
「あ、これ・・・」
「使って。その格好じゃ寒いよ」
「ありがとう・・・アルスは、優しいね」
柔らかい笑顔を向けられて、アルスは思わず下を向いた。
心臓がドキドキいっている。
(変な気分だ。どうしたんだろう・・・)
あまり深く考えると泥沼にはまってしまいそうな気がする。
緊張しているからだと自分に言い聞かせて、アルスは立ち上がった。
「じゃ、じゃあ行こうか。とりあえずこっちの方向でいいかな?」
「? ええ」
慌てたように言って歩き出すアルスをきょとんとして見つめていたティナだったが、
すぐに後を追って歩き出した。


【アルス/ティナ:
 所持武器:対人レミラーマの杖・天空の剣/プラチナソード 
 現在位置:ロンダルキア中央やや南西の平原を北へ(平原と砂漠の境目には結界) 
 行動方針:仲間を探す/謎の少年(テリー)の手にかかって殺される】