「…どうやら現在地は地図によると中心から北東の森でござるな」
メルビンは太陽の光と、周囲の地形から判断した。
目の前には鬱蒼と茂る森。背後には壁のようにそびえる山脈が連なっていた。
今いる場所は、そのちょうど中間のほんの少しひらけた平地だった。
「…南の小島に祠があるな。まずそこに向かうとしようか」
「それならまず湖岸に出た方がいいでござるな。この森、いやなカンジがするでござる」
「…寒いですわね」
「…雪国だからな。そんな靴では歩けないだろう」
モニカのはいているハイヒールを指してアーロンは言った。
「大丈夫ですよ。…キャア」
アーロンは軽くモニカを持ち上げ、抱える。
「無理するな。雪はお前が思っているほど甘くはない」
「…アーロンさんこそ。…ケガがまだ治りきっていないんでしょう?」
「…祠についたら続きをやってもらう。オレも一秒でもはやく祠に着きたいからな」
軽口をたたくアーロンに、モニカはそっと首に手を回した。
「わかりました。…ダメですね、私。皆さんに迷惑かけてばかり……」
「おまえにしか出来ない事が何かあるはずだ。そう悲観するな」
(私にしかできないコト。かぁ)
アーロンの言葉に、モニカは深く頭を悩ますのだった。
「…この山脈を辿って南に歩く。森の中には入らない方がいいようだ」
「そうでござるな。それでは行くでござる」
「ガウ!」
「…あの、メルビンさん。」
「なんでござるか?」
「もしかして、体を温める魔法ってしっていますか?」
そこまで言って、モニカは後悔した。なにバカなコトを聞いているんだろう私は。
アーロンもたぶんあきれた顔をしているだろう。
「ああ、知っているでござるよ。その服じゃさすがに寒いでござるな」
平然と言い放つメルビンを、二人は不思議生物でも見るかのような目で見た。
そんな二人の視線に気付いていないのか、メルビンは袋の中をまさぐる。
「…あった。ウールガード〜」
メルビンが取り出したのは、純白の羊毛のモコモコした服だった。
「心配しなくてもいいでござるよ。とりあえず四人分あるでござるし。」
二人のなんとも言えない表情を、メルビンはそう解釈したのだった。
「…あっ。これあったかい。アーロンさん、似合ってますか?」
手渡された服を着たモニカはクルリとターンする。
「…ああ。よく似合っているぞ」
「アーロン殿は着ないんでござるか?」
ガウに服を着せ終わったメルビンは、手に服を持ったまま硬直しているアーロンに問い掛けた。
前に大怪我した時、着ていた赤のコートが台無しになったので今は黒のアンダーシャツしか着ていない。
「…オレは、いい。」
アーロンは手に持ったもこもこをメルビンにつき返した。
「あー。もしかしてアーロンさん、はずかしいんですか?」
モニカが下からアーロンを覗き込む。アーロンは顔を赤らめて視線をそらした。
「ははーん。モニカ殿、コレには……(ごにょごにょ)」
「アーロンさん。ちょっとソコに立ってください」
「…何をする気だ?…なに!」
モニカは羊毛の塊をアーロンに投げつけた。羊毛の塊が瞬時にほどかれ、アーロンを包む!
「はい。私が着せたんですから脱いじゃだめですよ」
アーロンは純白のモコモコに身を包み、顔を赤くしてフルフル震えていた。
「無理しちゃだめですよ、アーロンさん。雪国の寒さは甘くないんですから」
「…誰のマネだ?」
「アーロンさんのです。…似てませんか?」
返事の代わりにアーロンはモニカを持ち上げる。今度なモニカも何も言わない。
「すまなかったな。コイツが我侭を言って」
「いやいや。それでは出発するでござる」
【モニカ/アーロン:所持武器:エドガーのメモ(ボロ)/鋼の剣(中古) 現在位置:台地最北東 行動方針:南の祠に 仲間を探す】
【メルビン/ガウ 現在位置:台地最北東 所持武器: 虎殺しの槍 /なし 行動方針 南の祠に 仲間を探す ホフマンの仇をうつ】
モ「そういえばこの剣、折れちゃったんですよね」
メ「壁おばけの時でござるな。」
ア「ああ。しかし無いよりマシだろう?」