ファイアとメラはどっちが熱いですか?

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31ANOTHER STORY
刹那、それがどれだけの時間に感じられただろうか。
黒の騎士セシル=ハーヴィは、佇立してエリアを見つめていた。
その瞳は思わず恍惚としてしまう程に麗しい。
しかし、そのもの言わぬ筈の瞳は彼の心を紛擾させた。
それに耐えられずセシルは目を逸らすと、葛藤していた二つの理性のうち片方が他方を喝破したのか、ひとつの結論に達した。
この寒さの中で額に滲んだ汗を拭い、静かに言った。

「駄目です」

その瞬間セシルの中に後悔と慚愧の念がどっと押し寄せた。
それは先の相克に破れた理性が招いたに相違ない。
胸の中に熱くなるものを感じながら、彼は俯いた。
一方エリアは、その様子を見ながらもいっこうに動じる気配はない。
恐らくこの返答は予想していたものの範疇だったのであろう。
彼女は透き通った美しい声で語り掛けた。

「それでは、このまま私のことを殺すのですか?」
「……」

できなかった。
殺してしまえば、自分の中で何かが壊れてしまいそうで。
でも、話してしまったら、きっと抑えがたい呵責に見舞われる。そして、悔恨するだろう。
そのとき、果たして自分はこのままゲームに乗っていられるのか――

―――どうしてこの子は、こんなに落ち着いてるんだ?

再び汗が流れ始める。胸の鼓動が大きくなる。
声が震える。手先ががくがくと震えているのがわかる。

―――なぜ、こんなことを考える?今まで、なかった、こんなことは、なかった…
32ANOTHER STORY:02/11/29 23:22 ID:???
常住坐臥、彼はローザのことを考えていた。
ローザが生きるためなら、どんなことだってすると誓った。
このゲームに慷慨したところで、どうしようもないことなのだから。

「そうだ…ローザを救うためには、これしかないんだ…こうするしか…」
呪文を唱えるように呟く。
その一言を聞けば、聡明なこの少女は大方のことを理解できた。
当然、運営側に加担するのを約束したことは知るべくもなかったが、
それでもこの青年の殺戮の動機は十分にわかる。
エリアは優しい目をセシルに向けた。
だがそれは、セシルにとってはぞっとするような恐ろしい目であった。

「やめてくれ…その目を、今すぐやめるんだ!」

強い調子で言った。しかし、エリアは怖じ気づくどころか微笑すら浮かべている。
さらに、それは彼への憐憫さえ読みとれた。

「あなたは、本当に弱い人です。とても、とても。優しさを持っているからこそ、本当に弱い人。
 でも、わかってるのではないですか?今のあなたの優しさは、偽りの優しさです。だって…」
「やめろ!」

今度は、無理矢理遮った。
カインと対峙した場面が彷彿される。

あのときカインに言った。ローザのために戦っているのだ、と。
だが同時にこうも言った。ただローザが生きていてくれればそれでいい、と。
戦う理由が二律背反、明らかに撞着している。
ローザはこんなことを望んではいないだろうから。
そして恐らく自分の本心は後者だ。ならば、戦っているのは誰のためでもない、自分のためだ。

―――認めるのか?違う。認めたら、いけない。僕は…ローザの、ローザのために…
33ANOTHER STORY:02/11/29 23:22 ID:???
懊悩するセシルをよそに、再びエリアは口を開いた。
「暗黒の騎士…あなたは、心までを闇に瓦解させるのですか?」

光と闇は、お互いが釣り合っていなければならない。
どちらが強く過ぎても駄目なのだ。
少なくともエリアには、まだこの青年が完全に光を消していないように思えた。
闇の底から一気に転生を図れるような、凄まじい光の素質を持っているとさえ考えられる。
この堕ちた青年から、闇に隠れた光を感じ得たのは水の巫女の賜だろうか…。

「ふざけるないでくれ…!僕はもう、戻れないんだ!」

そう叫ぶと、セシルは南へと走りだした。振り返らない。雪に付いた足跡は、とても大きかった。
エリアは、追いかけようとはせずに、精神を集中させた。
自分を庇って南に囮となったロックは、果たして今どうしているだろうかと。
クリスタルの戦士ではない彼を察知することはできないだろうが、それでもせずにはいられなかった。

しかし、彼女の予想に反して反応があった。
そしてそれは、絶対に有り得ないはずの反応、火の反応である。
反応の位置は、間違いなくファリスが命を落とした場所だ。
先に水の反応の例がなければ、思わず絶叫していたかもしれない。
さらにその反応もまた、以前のように明瞭ではなく、
とても弱々しく、いや、水の反応のそれよりも弱い。
普段ならまったく気づかないであろう。
今は感覚が鋭敏になっているから感じられるのだろうか。
34ANOTHER STORY:02/11/29 23:23 ID:???
「これは、いったい?」

呟いても、返答がくるはずはなかった。
エリアはどうするべきかわからず、とにかく風の戦士に会おうと北へ向かった。
終わることのないように思えた地平線の先にも、果たして川と橋が見えてきた。


降り積もった雪は、太陽の光に反射して眩惑せんばかりの光を放っている。
その雪の先には、鮮やかな赤色の雪があった。
そこには女性が一人横たわっている。
そう、あの火のクリスタルに導かれし戦士、ファリスであった。
ロックが雪の中に埋めて埋葬しようとするのを、エリアが止めたのだ。
この勇敢な火の戦士を、冷たい雪の中に入れたくないと。
それに…その情景はあまりに幻想的で、美しかった。
どんな美辞麗句を連ねても表現することのできない、晦渋の美しさだ。
こういっては不謹慎だが、芸術的な死である。

その美しさをさらに助長しているのは、彼女にかけられている燦然と輝くペンダントであった。
いったい何時からそうなったのかは誰が知るべくもなかったが、
見た者は思わずそれを手にとってしまうことであろう。
それが例え一つの完成された芸術を冒涜する行為だとしても、なんの躊躇もなくそうするに違いない。
それだけの魅力を、そのペンダントは放っていたのだ。

ここにもうすぐ幾人かの人がくる。
ペンダントの所為かどうかは定かではないけれど、
これを見た者は、誘惑にうち勝つことができるだろうか。
誘惑に負けた者は、どうなってしまうのだろうか。
そして、気づくだろうか。
ペンダントの光が、まるで失われた羈絆を探し求めるかのように西へと向けられていることに。


35一応これも:02/11/29 23:24 ID:???
【セシル 所持武器:暗黒騎士の鎧 ブラッドソード 源氏の兜 リフレクトリング 弓矢(手製) ギガスマッシャー 
 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)から南へ  行動方針:皆殺し…だが(ハーゴンorエドガーを最優先ただし遭遇すれば他のキャラでも殺す)】
【エリア 所持武器:小型のミスリルシールド・ミスリルナイフ・加速装置・食料2ヶ月20日強分&毒薬 
 水1,5リットル×2 フィアーの書×7 小型のミスリルシールド 現在位置:ロンタルギア東の森(狭い方)から北へ
 行動方針:クリスタルの戦士との合流】


ってわけで読んでくれた人サンクスコ
おかしいところとかいってくれたら今後の参考になるのでマジうれしいです。