<自治都市ベルベニアにて>
その日、春風と共に颯爽と彼女は現れた…
『私の名はメリアドール!弟の仇を討たせてもらうわッ!!』
『弟の仇だって?何のことだ?』
どうにも身に覚えがあり過ぎ…いや、身に覚えがなくて誰のことだかわからない。
弟、弟か…。どこの誰だか知らないが、ああ羨ましい(*´Д`)
僕もこんな奇麗で凛々しいお姉さんが欲しかったなあ…。
確かに上に兄達はいるが、どちらも冷たい兄貴達ばかりだもんな…。
できる事なら…、奇麗なお姉さんに甘えてみたかった…。
…などと妄想にふけっていると、メリアドールと名乗る神殿騎士が
シビレを切らして話しかけてきた。
『シラを切るつもり!?
リオファネス城でおまえが殺したイズルードは私の弟ッ!!
フューネラル教皇猊下の命令ではなく、死んでいった弟のために
おまえを討つッ!!』
弟思いのいいお姉さんなんだなぁ…(*´Д`)
くーっ!イズルードめ!羨ましいやつ!僕もアルマにこんな事言われたひッ!
…っと!そんな惚けてる場合じゃなかったッ!
突然の事で僕らが躊躇している間に街のいたる所から敵の伏兵が姿を現し、
僕らを取り囲んだ!
魔道士(女)、ナイト(女)、モンク(女)…やった!女だらけだ!流石婦女子がリーダーをしてるだけはあるッ!
そして屋根の上には戦闘の鉄則通り弓使い(女)が……あ、パンツ見えた(*´Д`)
…いかん、いかん!こんな事考えてる場合じゃなかった!戦闘中なんだぞ!?
しかし、相手が女の子ばかりだとどうにもやり辛い…。
どうにも服の裾が揺れる度に気になr…もとい、騎士として婦女子に手をあげるのはちょっと抵抗が…。
何とかリーダーであるメリアドールの誤解は解けないものか…
『待ってくれ!イズルードを…
彼の命を奪ったのは僕じゃない!
リオファネス城で何があったか…、知っているんだろう?
あれは人間の業ではない!
イズルードはヤツに…
ルカヴィに殺されたんだッ!!』
にわかには信じ難いだろうけど、信じてくれ!
決してアルマを攫ったからだとかの私怨でイズルードを手にかけた訳ではないという事をッ!
『ルカヴィですって?
ルカヴィが現れて弟を殺したというのッ!?』
くっ!やはり信じてもらえないというのか…!
僕は決してシスコンではないというのに…!
『ハハハハ、これは傑作だわ!
どうせなら、もうちょっとマシな嘘を
ついたらどうなの!!』
そ、そ、そ、そんな事はないぞ!嘘は言ってないッ!(汗
アルマで妄想したことなんてこれっぽっちもないんだッ!聖アジョラに誓って!(汗汗
くっ!何だ、この感じ…。
母親に初めてエッチな本を見つかった時のようなショックが僕を襲った。
ええい!こんな事ぐらいに負けてなるものか!ならばッ!
『きみもイズルードと同じだ。真実を知らされていない!
目を覚ませ、メリアドール!
きみはヴォルマルフにだまされている!!』
『そんな話を信じると思うの?
ばかばかしい!
ヴォルマルフは私たちの父よッ!』
『!!!』
な ん だ っ て ー ! ! ?
…この時の僕にとって、
メリアドールがヴォルマルフの娘、だなんて些細な事はどうでも良かった…。
彼女がヴォルマルフの娘だと宣言した時、一陣の春風が吹いたのだ…。
春風、spring storm…、そのいたずらな疾風の前に婦女子のスカートは…
あまりにも無力だった…。
メリアドールのロングスカートもまたしかり。
彼女の…
彼女はゴテゴテした鎧にシスター様の覆うような衣服という露出度ほぼ0の服装に身を包まれていながら
その下には、
貴族のお嬢さんらしい、奇麗なレースの三角地帯が隠されていたのだッ…!!
ああ、神よ…、ありがとうございます!!
異端者として汚名を着せられた僕ですが、この時ばかりはあなたの存在を信じました!
一時たりともあなたを疑った僕をお許し下さい(感涙
僕がひざまづいて神に祈りを捧げていると(注:決して不埒な理由で立てなかった訳ではない)
メリアドールが赤面しつつ言った。
「…弟は本気でこの腐りきった畏国を救おうと考えていた!
たしかに私たちの計画は乱暴かもしれない…。
しかし“変革”には“痛み”が必要だ!
“痛み”なくして真の“変革”などありえないわ!!
自分の背負った宿命すら全うできない、おまえのような“甘ちゃん”にこの世界を変えられるものか!!
いいこと、おぼえておきなさい!
次に会うときこそ、おまえが死ぬときよ!いいわね!』
そして彼女はそう言い終わると、(「バカ」「スケベ」などという罵声も聞こえたが気のせいだろう)
また春風と共に消えてしまった…。
メリアドール…、確かにあなたは正しいかも知れない…。
だが、変革なんて大きなもの、一握りの人間だけで起こそうとして起こせるものじゃない…。
それには大きな時の流れというか、大いなる意志というか、そういうものが必要なのじゃないだろうか?
今、神が僕に見せてくれたような、『白い奇跡』ともいうべきもののように…。
…と、自分でも何やら訳のわからない理屈を言いながら、
僕達は直ぐさま部隊を休ませられるような場所に急ぐのだった。
そう…、まだ記憶が鮮明なうちに、神からの贈り物について詳細を書き記さなければならなかったから…。
『白羊宮4日、メリアドール:レース白、とても上品な感じの刺繍でした(*´Д`)』、と。