おお、フカーツ!
サンタを信じてるアグ、いいな。
318 :
カエル:02/12/15 22:47 ID:jhjoAOM4
削除屋さんが適宜対応してくださってるようで、ありがたいことです。
依頼出されてる方にも感謝、です。
またまた続きを出させてもらいます。
アグリアスは稲妻のような速さで飛び起き衣服の乱れを直した。
だが次の瞬間オヴェリアの背後に迫る黒い陰に気付き、思わず叫んだ。
「危ない!オヴェリア様!」
倒したスケルトンが復活しオヴェリアに襲い掛かる。
振り返ったオヴェリアはアグリアスが斬りつけるより先にバッグから出した薬の小壜を投げつけた。
「えい!」
壜の中身を浴びたスケルトンは断末魔の叫びを上げて崩れ落ちた。
「な?・・・(完全復活したのに薬で即死だと?)ま、まさかそれ・・・エリクサー?!」
「ああこれ?アンナがうちで調合したの。売るほどあるわよ」
「・・・・そんなにあるなら先に言ってください・・・」
(アレイズにエリクサー・・・命懸けで戦ってた私って一体?・・・・・はぁ)
「お姉さん達!強いねぇ。散歩してたら何やら騒がしかったんで、やばかったら助太刀しようかと思ったけど」
アグリアスは振り返った。少し離れた岩の上に立っていたのは長髪を後で縛り銃を片手にへらへらと笑う若者。
「!お前は・・・ムスタディオ?!」
ムスタディオが岩を飛び降りて駆け寄る。
「本物のアグリアスだぁ〜・・・遠くから見てもしかしたらって思ってたんだよ!」
二人はがっちりと肩を掴み合う。
「会いたかったよおぉぉ・・・」
ムスタディオはアグリアスの胸に頬を擦り寄せる。
「こ、こら!調子に乗るな!このバカ者!」
アグリアスの膝蹴りがもろに腹に決まり、ムスタディオはもんどりうって倒れる。
「あうぅ・・・本気で蹴るなんて・・・やっぱり本物だぁ」
そんなムスタディオを見てアグリアスはぷっと吹き出した。
「相変わらず元気そうだな・・・」
「いててて・・・アグリアスも元気そうじゃないか。それに見かけだけは随分女っぽくなったし」
「ば、馬鹿・・・・ん?“見かけだけ”とはなんだ!」
「はははは・・・言葉どおりさ。ところで後ろの人は・・・・・・あ、あんた!・・・」
「お久しぶりですね、陽気な機工士さん」
ムスタディオは後で二人の様子をニコニコしながら見ていた女性が誰なのかに気付き唖然とした。
「オ、オヴェリア様?!ご無礼を!」
慌てて控えるムスタディオに優しくオヴェリアは話しかける。
「いいのいいの、それはやめて頂だい。私のことは『マルガリータ』と呼んでね」
「訳あって今は身分をお隠しになられているのだ。察してくれ」
「ふーん・・・わかった。じゃ、改めてよろしく、マルガリータさん」
ムスタディオはオヴェリアの手を取りくちづけをしようとした。
「馴れ馴れしいぞ無礼者!!」
すかさず横からアグリアスの蹴りが入り、ムスタディオは飛んでゆく。
「ひでぇ!」
「面白いわ、あなたたち」
オヴェリアはけらけら笑っている。
「もうその位にしてあげなさいな。アグリアスも少しお淑やかにね。その格好で足を使うのはお止めなさい」
オヴェリアに指摘されたアグリアスははっとした。ついかっとなってスカートを穿いていたことを忘れていた。
今更ながら両手でスカートを押さえ、そしてきっ、とムスタディオを睨み付けた。
「き、貴様、まさか覗いていないだろうな!」
「おーいて・・・蹴りが速過ぎんだよ!・・・フッ、だが、あいにく俺は目がいい。さっきのはちょっと遠目だ
ったが・・・・いいもん見せてもらったぜ」
ムスタディオは遥か東方の異教徒の真似をしてアグリアスに向かって手を合わせた。
「さっきのって・・・『あれ』を見てたのか?・・・」
「うん、じっくりと」
アグリアスの上気した顔から見る見る血の気が引いて行く。
「〜〜っ!み、見られたからには生かしては置けん!!斬るッ!」
アグリアスは腰のセイブザクイーンに手を掛けた。
「おやめなさいったら!」
オヴェリアが間に入り本気で斬りかねないアグリアスを制する。
ムスタディオはオヴェリアの陰に隠れて言い返した。
「そうだよ、この暴力女騎士!ラムザに言いつけるぞ!」
剣に手を掛けたままアグリアスが固まった。
「な・・・・・に?お前、ラムザの居場所、知ってるのか?」
「知ってるのかって・・・・何だ、知ってて来たんじゃないの?」
「何処だ?どこにいる?早く教えろ!」
鬼気迫る形相でムスタディオに詰め寄るアグリアス。
ムスタディオはそんなアグリアスを軽くいなす。
「ふーん、ま、教えてあげてもいいけどさー・・・あーいてて・・・」
ムスタディオはわざとらしく腹と首筋を撫でアグリアスを見遣る。
「・・・・済まなかった・・・」
「ん〜?何だか誠意が感じられないな〜」
「・・・・ごめんなさい・・・・もうしません」
ムスタディオの前ではかつて見せたことのないしおらしさで謝るアグリアス。
「(子供の悪戯かっつーの!)いや、もっとさー何かあるだろ?本気で悪いって思ってんならさー」
「何だ?私にどうしろというのだ?・・・まさか金を出せと言うのか?自慢じゃないが金ならないぞ」
精一杯心をこめて謝ったつもりなのに納得しないムスタディオにアグリアスは開き直って言った。
「まさか!俺はそんな野暮じゃないぜ。・・・・んーそうだなー・・・例えば・・・胸、触らせてくれる?
あ、スカートの中ももっかい見たいなー」
ムスタディオはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら金よりもよほど下衆な要求をした。
「き、貴様!私を侮辱するとは・・・どうやら長生きしたくないようだな?」
アグリアスは引きつり笑いと共に剣に手を掛ける。
(やば・・・ちっと調子に乗りすぎたか?・・・いや、漢だったらここは本能の赴くまま、だぜ!)
ムスタディオは精一杯虚勢を張った笑いを浮かべながらはったりを掛ける。
「あれえ?いいのぉ?俺が死んだらラムザの居場所、判らなくなるよ?町の人はさぁ、知らないんだよね〜」
(くっ、人の足許を見おって・・・しかしこんなお調子者のスケベ野郎の言いなりになるなど騎士として・・・・)
アグリアスは散々悩み抜いた挙句、ぼそりと言った。
「・・・・し、下着・・・覗くだけ、1秒だ」
「さてと、仕事に戻るか・・・」
「ま、待て!・・・・3秒」
「10秒プラス『ドンアクトでもみもみ30秒』だ。これ以上は譲れねえ」
「な?・・・・見るだけで何とか・・・・・お願い・・します・・・・」
「イヤなら無理しなくていいんだよ〜」
「・・・・・・・・・」
「ラムザには黙っててやるからさ、な?」
小声で耳打ちされたその狡猾な一言に肩を押されるようにアグリアスは諦めたように口を開いた。
「絶対に・・・・内緒だからな・・・・」
「俺も男だ、約束は守るぜ」
ムスタディオに覗き込まれていた顔を真っ赤に染めて背け、スカートをおずおずと捲り上げかける。
「・・・・・早く済ませろ(後で絶対殺してやる絶対に殺してやる絶対絶対絶対・・・・・)」
ムスタディオは素早くしゃがみこんだ。
「よっしゃあ!おお〜!黒いパンツもイケてるぜアグリアス!おっと、リボンは外しといてよ!」
絡み付くようなその視線にアグリアスは悪寒を覚えた。
(ラムザ・・・・これもお前に会うためなんだ。もしもこのことを知ってもどうか私を責めないで・・・・)
元はと言えば安易に暴力を振るった自分のせいでもあるのだが、なぜか悲劇のヒロイン気分のアグリアス。
たまらなく屈辱的な現実からアグリアスは逃避するかのようにラムザのことを思い浮かべる。
実際もしラムザが知ったところで恐らく一笑に付す程度だろう。
だがアグリアスの心の中のラムザは激しく彼女を責める。
『僕がいながら、ひどいですよ!アグリアスさん!』
それは彼に嫉妬するほど愛して欲しいと思うアグリアスの切ない願望。
それまで二人のやり取りを面白がって見ていたオヴェリアが笑い出した。
「ぷっ、あはははは!・・・あなた達ってほんとに面白いわねぇ。ところでムスタディオさん?」
オヴェリアは優雅ににこにこ笑って問い掛ける。
「何ですかええと・・・マルガリータ様(これからって時に!)」
「アルマはラムザ殿と一緒なのかしら?」
ムスタディオは振り向きもせず答える。
「ああそうだよ。ふたりでふ、ぐっ?・・・く苦し・・・な、何を・・・」
突然後から襟を掴まれ首を締められたムスタディオが苦しそうに呻き声をあげる。
「どこなの?早く教えなさい。じゃないと・・・・」
オヴェリアはバッグからまたもやアサシンダガーを取り出しムスタディオの喉元に突きつけた。
「サクッといくわよ・・・・」
「ひぃいい〜・・・」
(このままではムスタディオがブタの二の舞に!・・・まあそれもいいか・・・ってこれは洒落にならん!)
「オ、オヴェリアさまーっ!“それ”はおやめくださいっ!」
アグリアスは慌てて止めに入った。
「冗談よじょ・う・だ・ん。もう、アグリアスったらそんな怖い顔しないの」
オヴェリアは笑いながらそう答えた。が、アサシンダガーでムスタディオの頬をピタピタと叩いている。
(さっきの事もあるし・・・冗談とは思えんのだが・・・)
「言います言いますっ!・・・げほっ・・・こっからまっすぐ北に行った赤い屋根の一軒家に・・・」
「案内して下さる?ムスタディオさん」
「は、はいぃ〜・・・・」
「ありがとう。優しいのねムスタディオさんて」
(・・・それは違うと思う)
大いなる下品な野望を阻止されたムスタディオ。さっきまでの威勢が嘘のように縮こまって歩き出す。
オヴェリアとアグリアスはチョコボを引き連れ後に続いた。
アグリアスはそんなムスタディオの背中を見、自分の胸元を見下ろしながらふと思った。
(もしかしてオヴェリア様、助けてくれたのかな?・・・・でもさっきの“あれ”は・・・・)
アグリアスは先を歩くムスタディオに肩を並べ、耳元へ小声で話し掛けた。
「助けてやったんだ、さっきのは帳消しだぞ。それから、もう分かったと思うが、オヴェリア様の御気に障る
ようなことは絶対に言うんじゃないぞ・・・」
未だ恐怖の覚めやらぬムスタディオは無言で首を激しく縦に振る。
「さっきの“あれ”は冗談ではないぞ・・・・普段は温厚な方なのだがな、何かをきっかけにああなると・・・」
アグリアスは真剣な顔で続けた。
「私もついさっき意味が分かったけど、一部の不埒な民の間では、例の一件の後オヴェリア様のことを無礼にも
『トンベリプリンセス』にゃんへ・・・・ふぁっ?!ほふぇひははは(オヴェリアさま)!」
いつの間にか背後にぴったり付いていたオヴェリアが、アグリアスのほっぺたをぎゅ〜っと引っ張っていた。
「いやねえ。アグリアスったら、ムスタディオさんが誤解してしまうでしょ?この口?ねえ?悪いのはこの口?この口がが変なこと言うのかしら?この口が?」
「ほふぇひははは、ほゆふひほ!(オヴェリアさま、お許しを!)」
「あらあら、何を言ってるのか全然解らないわ。どうせ解らないならこの舌、切り落としてしまいましょうか?」
「ひ、ひやれふ〜(い、いやですぅ)」
抵抗することも出来ず哀願するアグリアスにオヴェリアは冷ややかな笑みを浮かべて言う。
「それともこの綺麗な髪をばっさり切って、尼になってもらおうかしらね?ふふふ、一生独身だわねぇ」
「ひゃめへ〜(やめて〜)・・・・」
(ひぃいいい!やばい、こりゃあマジでやばいぜ!何とかしなくちゃ・・・何とか・・・・・・)
「あっ!そうそうオヴェリア様、実はアルマさんがね、うちで働いてるんすよ!」
ムスタディオは取敢えず話題を逸らしてみた。
「まあ、アルマが?」
「そうなんす。うちの親父、親方なもんで若いもんの食事の支度やら洗濯やら手伝って頂いてまして・・・ヘェ」
ムスタディオは目一杯卑屈な態度でオヴェリアに取り入る。
「そうなの。アルマも頑張ってるのね・・・」
オヴェリアはようやく手を離した。アグリアスは向こうを向いて肩を震わせている。
ムスタディオにはアグリアスが声を殺して泣いているように見えた。
(分かるぜアグリアス。俺は絶対お前のこと笑ったりしねえ・・・)
「それで、ラムザ殿は何を?」
「ああ、ラムザね・・・ラムザは今ちょっと怪我してまして・・・」
「何っ?!怪我だと?どうして?」
突然アグリアスが身を乗り出してきた。
「あ、ああ・・・もう着くから話は本人から聞いてくれよ(何だよ、立ち直りの早い奴だな・・・)」
つづく
トンベリプリンセス…ワラタ
ムスタディオ(・∀・)イイ!!
恥辱プレイが未遂に終わって残念だが、トンベリプリンセスハァハァ
この先アグ一行とラムザと、そして ア ル マ との邂逅が気になる(藁
トンベリプリンセスとアルテマ妹の最強タッグだからなあ。
ラムザとアグじゃ勝ち目ないよな(w
329 :
カエル:02/12/16 23:04 ID:C5C5RQ2A
「トンベリプリンセス」は何処だったか忘れたけど別スレ(かな?)
で出てきたのを拝借しました。
330 :
HC:02/12/17 01:32 ID:Z+vjAdio
アニオタの俺は、TVの赤チャの曲が浮んだ。
「トンベリプリーンセス♪」(元はマジカルプリンセス)
「トンベリプリーンセス♪」
…暫く首吊って逝ってきます。
>>330 あの絵柄で包丁持ってぴっこぴっこ踊ってるオヴェリア(と
アルマとラムザ)のED映像が浮かびますた。
包丁とアホ毛と聖石ヴァルゴの力で聖騎士アグリアス24歳処女へと
ホーリーアップするのだ。
>>331 言葉の意味はよく分からんが、熱いハートは伝わってくる
アデランスの中野さんが感じたのはこの感覚だったのか
こんばんは、SS保管サイト「FFDQ千一夜」の新管理人です。
このスレのPart2から17本のSSを新たに保管しましたので、お知らせに来ました。
サイトへは こちらからどうぞ p://www3.to/ffdqss
それから、顔無し黒魔導師さんのハンドルネームが笑わない黒魔導師さんになっていたりするのですが
これは統一した方がよろしいですか?(違う方ではないですよね)
また、私のつけたタイトルが気に入らないとか、このタイトルの方がいいだろうとか、そういったご意見も
忌憚なく千一夜スレにお願いします。
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1021132657/l50
顔無し氏は保管除外を申し出てたはずだが・・・
>>333 お疲れさまです。一気にアグSSの勢力が増えたな千一夜(w
このスレはファリススレと並んでSSが多いので収集も大変かと思いますが、
頑張ってくださいませ。
顔無しさんは名前が定着しているので「顔無し」で統一していいんじゃないかと
思いますが、それ以前に「黒魔導師」ではなく「黒魔道師」です。
タイトルは、いいんじゃないでしょうか。管理人のセンスの見せ所だと思いまつ。
336 :
335:02/12/19 11:30 ID:AMU7JPCl
>>334 情報ありがとうございます。過去ログを確認しました。私の見落としです。申し訳ありません。
ティンカーリップと温泉発見の話が除外希望でしたね、外しました(´・ω・`)ショボーン
ティンカーリップの話がすごく好きなのでとても残念でしたが。
その他の話に関してはこのまま掲載で良いようなので、載せておきます。
>>335 黒魔道師という表記は、ご本人がそのように名乗っておられたのでそのままなのですが……。
タイトルが腕の見せ所……がんばります。
タイトルの無い作品の方が多いので、すぐに智恵が尽きそうでビクビクしてますが。
おお、こうしてみるとたくさんあるものなんだね>SS
ネタが溢れ返っていてイイ事だ。
さてお前ら!
そろそろサンタ姿のアグたんが巨大な靴下に入ってぴょんぴょん跳ねてオヴェたんやラムザの部屋に
乱入する季節になったわけだが。
もちろんその前に、もしか自分が入るくらいのおっきな靴下を吊しては
いないかとオヴェたんやラムザの部屋をコソーリのぞいてガカーリしたり
しているわけだが。
裸リボンアグたんを思い出しますた。
なりきりスレだかで、オヴェリア様に「ラムザをベッドまで運んでって
押し倒せ」とアドバイスされてたからな。これからのアグたんは
攻めに出るのだ。
たまにはギャグパロも読みたかったり。
時代劇きぼんぬ(w
343 :
HC:02/12/20 20:31 ID:bBVNFtaz
ラムザの部屋に突入というより、トンプリ@オヴェリアの策略で巨大な靴下に詰め込まれてラムザの部屋に届けられて一騒動ではないかと考える俺(w
他に考えられる話としては、俺の脳内でラムザは寝ているときに抱き癖があるので、ラムザが寝ている隙にアグ@イン・ソックスを投入、次の日にドカーン・・・
ネタ提供ありがとう、妄想が広がる(爆)
344 :
カエル:02/12/21 23:41 ID:wWakJECj
クリスマスネタでも時代劇でもないですが・・・
続きです。
「ほらここだよ。ここ前はうちの職人が住んでたんだ」
ムスタディオは目の前の小さな家を指差しアグリアスを先に行かそうとした。
「い、いや・・・お前が先に行け」
その場に立ち止まるアグリアス。
「何だよ今更、怖気づいたのか?」
アグリアスはじりじりとオヴェリアの後にまで下がっている。
「そ、そんなことはない!私は常にオヴェリア様の後ろと決まっているではないか」
「あら、私の後ろにいたのは買い物の時だけじゃなかったかしら?」
「う・・・」
オヴェリアに追求されたアグリアス言葉に詰まる。
「ま、いいか・・・あのさ、今のうちに言っとくけど」
ムスタディオは言った。
「見ての通り狭い家だからドア開けたらすぐラムザがいるからな。心の準備はいいかい?聖騎士さん」
「そ、そんな必要はない!」
「アグリアス、手を離して頂だい」
「え?あっ!・・・いえ、これはですね・・・・」
アグリアスは無意識のうちに引っ張っていたオヴェリアの袖から慌てて手を離した。
「プ、ククク・・・それじゃ感動のご対面と行こうか」
ムスタディオの後にオヴェリアが続いて玄関のドアに立った。かなり遅れてアグリアス。足が進まない。
「おーい、ラムザー、お邪魔するぜー」
ムスタディオはノックもせずにドアを開けた。続いてオヴェリアも中に入る。
その後からアグリアスは恐る恐るドアの陰から顔だけひょっこり出して中を覗きこんだ。
「はい、兄さん、あーん・・・」
そこで彼らが目にしたのはベッドで上体を起こしているラムザとそこへ寄り添うように座るアルマ。
仲睦まじく皮を剥いたリンゴをあーんと口を明けたラムザに食べさせるアルマの姿・・・
「おいおい・・・何やってんだ?」
「あ、あら?やだ!ムスタディオ!いたの?あら?・・・まあ!兄さん!嘘みたい!オヴェリア様が!」
アルマは目を疑いラムザの肩を叩いた。ムスタディオの後ろ、満面に笑みをたたえて立っているその人。
少女だった頃、眠れぬ夜に一緒のベッドで夢や恋を語り合った懐かしい思い出が甦る。
「アルマ!アルマ!・・・会いたかった!」
アルマが立ち上がると同時にオヴェリアが駆け寄る。
「私も!オヴェリア様!会いたかったの!でも・・・・・・・」
オヴェリアは溢れる涙が頬をつたうのも気にせずアルマと抱き合った。
「もう!突然お葬式なんて・・・するから・・・もう・・・ひくっ、ア、アル、ひくっ・・・ばかぁ・・・」
しゃくりあげて泣くオヴェリアに抱き付いてアルマも声を上げて泣きじゃくる。
「ご、ごめんなさ・・・私、生きてるんだよって、オヴェリア様に伝えたかったの・・・でも・・・ひくっ
会いに、行けなくって・・・・うわぁああん・・・」
(オヴェリア様・・・・・良かった・・・)
ドアの外からこっそり覗きこんでいたアグリアスも思わず目頭が熱くなる。
ひとしきり泣いた二人は照れくさそうに見詰め合って微笑んだ。
オヴェリアは泣き腫らした目を恥ずかしそうに押さえながら、ベッドの脇へ歩み寄る。
「挨拶が遅れました、ごめんなさいね。ラムザ殿も痛々しいけれど・・・・生きていて何よりです」
そう言ってラムザの手を優しく取った。脚を怪我して起ち上がれないラムザは非礼を詫びた。
「このような格好で見えます無礼をどうかご容赦下さい、オヴェリア様」
「そのようなことは気にしないで。貴方が力を尽してくれたこと、私は今でも心から感謝していますよ・・・」
オヴェリアは首を振り、両手でラムザの手を握り締める。
「そんな・・・僕は・・・」
ラムザは照れくさそうに手を引いた。
「あの葬式の件は、実は僕らも全く知らなかったことなんです。恐らく親戚連中が示し合わせたのでしょう」
「やはりそうなのね・・・もしあなたが望むなら手を貸してあげられるのだけど・・・」
「それは遠慮させて頂きます」
ラムザは答えた。その声には強い意志を秘めているのがオヴェリアにも良く分かった。アルマも黙って頷く。
「もうあの家に戻る気はありませんから、却って好都合でした。今は母方のルグリアの姓を名乗っています」
「そうですか・・・分かりました。決心は固いのですね・・・・あら?そう言えば・・・・」
アグリアスがいないことに気付きオヴェリアはドアの外へ声を掛けた。
「アグリアス!そんなところで何してるの?」
完全に中に入る機会を逸していたアグリアスは戸口の陰からようやくおずおずと姿を現した。
アグリアスはさえない登場が我ながら情けなく、もう何を言って良いのか分からなくなってしまった。
再会の時をあれほど心に思い描いていたのに・・・
ラムザの顔をまともに見ることすら出来ない。
「ア、アグリアスさん?!」
ラムザが驚いて目を見張る。アルマも思わず声を上げた。
「わあ!アグリアスさんだ!素敵な服!アグリアスさん“も”そういう服着るのね!」
カチン・・・・(“も”って何だ?)
「さ、さっきは・・・ず、随分と仲が良さそうだったな?・・・まるで、まるで・・・・・」
兄妹じゃなくて新婚夫婦みたいだ、と言いかけたアグリアスの肩がプルプルと震えている。
(違う、私が言いたいのはこんなことじゃなくて・・・・・・・)
「いやあの、あははは・・・・ここへ来る時にちょっと脚を骨折しちゃいまして・・・面目ないです」
「それでアルマ殿に甘えていたと言うわけか。ふん、情けない」
本心とは裏腹に冷たい言葉を吐いてしまう自分が歯がゆい。
本当は飛びついて抱きしめたいほど嬉しいのに・・・・その胸で泣きたいくらい恋しいのに・・・・・
だが今のアグリアスにオヴェリア達が見ている前でそんな真似ができるはずもない。
「いや〜ホント情けなかったぜ。町外れの崖下でさ、ゴブリン一匹相手にじたばたしてるんだもん」
「あれはムスタディオが来る前に4匹倒してたんだってば!その後崖から落ちちゃって・・・・」
指を差して笑うムスタディオにラムザは口を尖らせて反論した。
「たかがゴブリンごときにそこまで苦戦するとはな。随分と」
「違うわ!兄さんは私をかばって崖から落ちたの!兄さんは弱くなんかないもの!」
アルマはラムザをかばうように抱きつき、アグリアスの言葉を遮った。
「う・・・・」
(なぜそうやって抱きつく?いくら妹だからって、いや、妹のくせにだ!ちょっとベタベタし過ぎじゃないか?
それに・・・それにこれじゃあまるで私が悪役じゃないか)
「アグリアス、口が過ぎますよ。ラムザ殿に失礼です」
(オヴェリア様まで・・・これじゃますます悪役に・・・)
事の発端は自分の憎まれ口のせいなのだが、アグリアスはぷいと顔を叛け部屋の隅の椅子に座り込んだ。
「ごめんなさいね・・・アグリアスったら照れてるの。照れ隠しに冷たく当るなんて子供みたいね」
オヴェリアはクスッと笑った。
「わ、私は別に!」
アグリアスは声を荒げて否定する。が、顔が赤い。
「照れるなんて水臭いですね。一緒に戦った“仲間”なのに」
(仲間?・・・・それだけ?)
自分は会えて嬉しいの一言も言えないのに、アグリアスはラムザの言葉尻にさえ不満を覚える。
オヴェリア達はベッドの脇に置かれたテーブルでアルマが淹れたお茶を囲んだ。
ラムザがオヴェリアに尋ねた。
「それにしてもアグリアスさんとオヴェリア様が一緒だなんてびっくりしました。一体どう言うことです?
世間ではオヴェリア様は城内に幽閉されてるって・・・・」
「表向きはね。実は野心家の夫とちょっとした取り引きをしたの。今は名前を隠してウォージリスで気まま
な放蕩生活。そしたらつい4日前、突然アグリアスが訪ねてきたの。『すっごく汚いなり』でね。何と一人で
鴎国から来たんですって」
(そんなに強調しなくたっていいじゃないですか・・・・)
「そうだったんですか。僕達は気付いたらオーボンヌの近くにいたんです。それですぐここへ向かいました。アグリアスさんはそんな遠くに・・・一人で大変だったでしょう?」
アグリアスは自分への問いかけの言葉に口を開こうとしたが、ムスタディオが邪魔をした。
「俺なんか海を漂流してたんだぜ。海岸が近かったから何とか泳いだけど、もう少し沖だったら死んでたよ」
(こ、この〜!お前は海の藻屑になれば良かったんだ!)
「それでね、アグリアスが離れ離れになった仲間を探したいって泣きながら頼むの。ゴーグに行けば手掛か
りがある筈だからって・・・綺麗な服も欲しいんですぅって」
「へえ、アグリアスさんも可愛いとこあるのねえ」
(違―う!!オヴェリア様脚色してる!・・・・ううぅ)
会話に入れず隅でいじけながらも話だけはしっかり聞いているアグリアスだった。
オヴェリアの話にムスタディオが思い出したように口を挟んだ。
「あっ!なーんだ、アグリアス、俺に会いたかったのかー?素直じゃねーなーもう。だったら何もあんな
回りくどい真似ひっ!・・・何でもないっす・・・」
(しゃべったら・・・・確実にお前を殺す)
無言だが殺気全開のアグリアスにびびってムスタディオは口を噤んだ。
「え?なぁに?何のお話?」
アルマが興味深そうに聞き直した。がたん、と音を立ててアグリアスが立ち上がる。
「アルマ殿!お茶をもう一杯頂けますか?(余計なことを詮索するな小娘ー!)」
「あ、はいはい、お茶ね」
アルマはアグリアスのカップにお茶を注いでそそくさとテーブルに戻る。
「ひそひそ・・・オヴェリア様、なんだかアグリアスさん、怖いよ。何かあったの?」
「ひそひそ・・・私の口からはちょっと・・・しゃべったら多分ムスタディオさんに明日は来ないわね」
「?・・・何それ?」
アルマは不思議そうにムスタディオの顔を見た。
ムスタディオは部屋の隅から彼に向かって発せられる暗黒のオーラに威圧され沈黙している。
(俺の寿命、今日一日で確実に縮まったぜ・・・・)
「それにしても離れ離れでディリータが恋しくなりませんか?」
ラムザは複雑な4人の雰囲気などまるで意に介さずオヴェリアに尋ねた。
「やだ、恋しいだなんて・・・んー・・・まあ、あんな事もあったしね・・・あの時の私は彼に裏切られた
気持ちでいっぱいだったの・・・私って大馬鹿ね。あんな真似をして、ようやく彼が私のことを心から大事
に想ってくれているって分かったわ・・・でも・・・今はお互い距離を置く時なのでしょうね・・・・」
オヴェリアは遠くを見つめるような目でそう言った。
「じゃあいつかは彼の許に戻るのですね。良かった・・・・」
ラムザは微笑んだ。
「ええ。でもまだ暫らくはこのままで居たいわ。少し離れた方がお互いの気持ちが解る事もあるのよ」
オヴェリアは訴えるようにじっとラムザの瞳を見つめ、それから振り返って言った。
「折角だから城の外もよく見ておきたいし・・・そうね、この堅物のアグリアスが結婚したら戻ろうかしら?」
「い?(・・・私が?結婚?)」
すかさずアルマが茶々を入れる。
「それじゃあオヴェリア様、当分戻れなくなっちゃう。きゃはははは!」
(こ、この小娘〜!いちいち私を馬鹿にして!)
「あははは!そうかも知れないわね」
「こら!アルマ、アグリアスさんに失礼じゃないか!お前より『ずっと年上』なんだぞ」
(ぐ・・・・私、まだ若いつもりなんだけど・・・・・・ええい、負けるものか!)
アグリアスはアルマに対して勝手に抱いていた対抗心から無理に言い返した。
「ふふん、私だってそろそろ結婚くらい」
「ええ?アグリアスさん結婚するんですか?・・・おめでとうございます!」
軽卒な一言に返された屈託のないラムザの笑顔。それは楔のようにアグリアスの胸に刺さる。
(お、おめでとうって、そんな、ラムザ・・・どうしてそんな明るい顔で・・・・)
「い、いや・・・あの、それは・・・つまりその・・・・・・」
アグリアスは居た堪れない気分のまま見つからない言葉を探す。
「それじゃあ僕達の話もし易いね、アルマ」
「うん」
「?・・・・・」
見つめ合いにっこり笑って頷く二人。そして二人は手を取り合ってオヴェリア達の方に向き直り言った。
「実は僕達、結婚しちゃいました!」「ましたぁ!」
ピキ――――――――――――――ン・・・・・・・・・ ・・・ ・・ ・
「えええええ?!《オヴェ》」(おいおい・・・《ムスタ》)
「やだ、ちょっと本当なのそれ?兄妹なのに?」
「あははは、冗談ですよ。ご近所に僕達兄妹の身の上をいちいち説明するのは難しいんで夫婦って事に」
「そうそ、兄貴は異端者だし、おまけに二人とも死んだことになってるし。そんなの人に言えないからな。
どうせなら兄妹より夫婦ってことにしといた方がそんなに詮索されないしさ、っておい、聞いてんのかよ?
?・・・?なんかアグリアスが固まってるぞ」
アグリアスは椅子に座ったまま焦点の定まらない虚ろな目で呆けている。
「どうやら今の爆弾発言で魂が何処かへ飛んでいってしまったようね・・・」
「相変わらずアグリアスさんって冗談通じないんだね」
長いけど つづく
くそう、漏れも一瞬本気にしてしまった・・・>結婚
(・∀・)イイね。アルマ、生き生きしてるなあw
アグの熱の入りようからして再会した途端に話が終わるんじゃないかと
思っていたが、なるほどこう来たか。素直になれないアグ萌え。
しかし、いい加減いじるのを止めてアグを幸せにしてあげて欲しい気も少し。
……念のため訊くが、アグはラストで幸せになるんだよね?
延々いじられ倒して、泣きの遠吠えでオーラスとかいうこたないよね?
>……念のため訊くが、アグはラストで幸せになるんだよね?
お前はカエルたんのアグへの愛を感じないのか?(藁
もうね、いじられいぢられてアグたんはラストの大団円でほにゃあとなるに決まってるじゃないか。
ここはあえて深読みをせず、いじられるアグたんを楽しもうじゃないか。
>>354 >いじられいぢられてアグたんはラストの大団円でほにゃあとなる
この言葉に何か神髄を見た気分だ(w
スマンカッタ、最後まで大人しく鑑賞することにするよ。
このまま一人淋しく去っていくアグたんにも萌える。
>>353 >しかし、いい加減いじるのを止めてアグを幸せにしてあげて欲しい気も少し。
これには胴衣。ちょっと引っ張りすぎのような感も・・・(´・ω・`)モニョモニョ
>>358 オヴェリア「・・・悲しい話はだめっ!やめてっ!」
アグリアス「分かりました。ではこんな話があります。
昔々ある所に斬首刑で首を落とすのに3振りも必要とするほどの剣の腕の拙い執行人が居ました・・・」
オヴェリア「痛いのもだめっ!」
アグリアス「ではどのようなお話をお望みですか?」
オヴェリア「楽しいお話がいいわ。以前聞いたチョコボ車の話が聞きたいな」
アグリアス「分かりました。楽しい車と書いて轢く・・・何か楽しそうですね」
オヴェリア「いやああぁぁっ!!」
360 :
カエル:02/12/23 00:28 ID:CChF3fgH
分かっています。分かっていますとも。
それもこれも私の才のなさ・・・
>>359さんのように短く纏めることも出来ず・・・
あと2話分でようやくこのお話は終わりです。
散々引っ張ってごめんなさい。
>360カエルタン
キニスルナー まったり楽しませて貰ってます。続き期待してます。
>「じゃあいつかは彼の許に戻るのですね。良かった・・・・」
>ラムザは微笑んだ。
ディリータを心配してるラムザたんハァハァ・・・ではなくイイね。
しかし
>「ええ?アグリアスさん結婚するんですか?・・・おめでとうございます!」
>軽卒な一言に返された屈託のないラムザの笑顔。それは楔のようにアグリアスの胸に刺さる。
>(お、おめでとうって、そんな、ラムザ・・・どうしてそんな明るい顔で・・・・)
はひどいと思います!>ラムザたん
好きな人におめでとうと告げられるアグたん。
日の沈む西に告げると書いて酷い・・・何か物悲しいわね(つД`)
カエル氏、謝ることはない。
なんだかんだいってあんたに楽しましてもらってるわけだからNA!
>>359 (・∀・)イイ!
剣の技量に漢字とアグリアスらしい嫌がらせがイイ
本人は純粋に楽しい話をしようとしてそうな所もナイス(w
クリスマスイブSSでつ。普通にクリスマスがあったり、明らかに無理のある時間軸に
オヴェリア様がいてたりしますが色々無視したパラレル世界と思っていただければ。
♪はしれ橇よ 風のように
雪の中を かるく速く……
「笑い声を、雪にまけば……む、こほん」
街に流れる歌につられて、つい口ずさんでいる自分に気づき、アグリアスはきまり悪げに
咳払いをした。
吐く息の白さも鮮やかな冬のさなかに、街は寒さを感じさせない。陽気なざわめきが通りを
満たし、明日の祭への期待と、この聖なる夜を言祝ぐ喜びで空気がきらめいているかの
ようだった。
「なかなか、無いものだな……」
そんな明るさの中に立ちまじる自分に、いささかの違和感を覚えながら、さんざめく人混みを
肩でかき分けてアグリアスは歩く。時折、そちこちの店先をのぞいては、首を振ってまた歩き
出す。そんなことをしている自分に、またいっそう違和感を覚えたりもする。
「イブの夜が明けて、からっぽの靴下が残っていたら、その中には幸せが入っているんだよ」
ことの始まりは、ラムザがそんなことを言い出したことにある。
「って、母が言ってたんだけどね。だから、何も入ってなくても、靴下は吊しておくといいんだよって」
「ラムザのお母さんって、確か?」
「平民出。一時期かなり貧乏したらしいから、プレゼントなんかない時に、そう言われて
育ったんだろうね」
「でも、いい話よね。悪い子だからサンタが来なかった、なんて言われるよりずっといいわ」
「そりゃそうかもしれないが、ラムザ」ムスタディオがからかうようにラムザの頭へ肘をつき、
「だからって、その歳になって枕元に靴下ぶら下げてる理由にはならないと思うぜ」
「いいだろー、習慣になってるんだよ」
「子供みたい」
「そうかなあ」
などという賑々しいやりとりを、いつものように一歩離れて聞き流しつつ。
(ラムザは今でもイブの夜に靴下を吊しているのか……)
と、ぼんやりと思ったところで、
(それならば、プレゼントを入れてやろうか)
咄嗟に思いついたのは、アグリアスにしては上出来といえた。
が、
「確か、鎧の肩当てがだいぶ古くなっていたな」
「予備の剣がもう一本あってもいいな」
「兵法書は好みもあるからな、どういうのがいいか」
アグリアスの考え及ぶプレゼントといったらそんなところである。
そんなものは靴下に入らない、というかそもそもクリスマスに人に贈るようなものではない、
と悟るのに半日。クリスマスにふさわしい(らしい)可愛らしいアクセサリ類にターゲットを
変更したものの、この手のアイテムには素人以下の彼女の目にはどれがいいやら悪いのやら
見当もつかず、いたずらに徘徊して時を費やすイブの夕暮れなのだった。
「アグリアス?」
今もまた道ばたの露店で首をひねっているアグリアスに、ふいにかけられた声。振り向くと、
永遠の忠誠を捧げた高貴な少女が、すっかり板についた街娘の姿で大きな袋をかかえていた。
「オヴェリア様!」
「アグリアスも、クリスマスのお買い物? 珍しいわね、去年まではそんなこと興味なさそう
だったのに」
「あ、いや、これは、その……」
とりあえず荷物をこちらへ引き取ってから、アグリアスは口ごもる。別に恥ずかしいことでは
ないはずだが、何とはなし言いにくい。
「そういえば、ラムザって今でもイブの夜に靴下を吊しているんですって。ふふ、子供みたいね」
「!」
一瞬だが顔色を変えたアグリアスを、オヴェリアは無論見逃したりしなかった。
「あなた……もしかして、ラムザにプレゼント?」
「え……」
こうなってしまっては、アグリアスに勝ち目はない。洗いざらい白状させられるのに、大して
時間もかからなかった。
「……それで、できるだけ小さくて可愛らしいものをと探していたのですが、どうもこういう
ものには不慣れで……」
「バカね、アグリアス!」聞くなり、一刀両断にするオヴェリア。「大切なのはラムザに喜ばれて、
気持ちを伝えられるプレゼントでしょう? 靴下なんて、それが入るサイズのものを後から
こしらえればいいのよ。入れ物の大きさにとらわれて選ぶなんて、本末転倒もいいところだわ」
アグリアスは言葉もなく、自分より頭一つ以上低いこの少女を見上げる思いで見つめた。
やはり人の上に立つ方は、自分などとは発想のスケールが違う。
「ちょっとお待ちなさい」
きびすを返しかけたアグリアスの襟首をひっつかみ、「そんな色気のないものをプレゼントに
するのは許しません。私が選んであげます」
「えええ!?」
仰天するアグリアスを有無を言わせず引きずって、オヴェリアはそのまま宿に戻ってきた。
さらに有無を言わせず荷馬車の中へ連れ込み、しばし荷物を引っかき回していたと思うと、
「はい、とりあえずこれ持って」
「は、はい」
石化銃を渡されたアグリアスがつぎに意識を取り戻したのは、あたりがすっかり暗くなってからの
ことだった。
急に視界が暗くなり、目の前にいたはずのオヴェリアが横にいる。ニコニコしながら手に
持っている銃を見て、自分が今まで石化銃の力で石になっていたのだと、アグリアスは数瞬で
理解した。
「オヴェリア様? これは……」
向き直ろうとして、体が自由に動かないことに気づいた。全身が何か、袋のようなものに
すっぽり覆われている。首元にも違和感があって、月明かりにすかして見るとどうも蝶結びにした
リボンらしかった。
「似合っててよ、アグリアス。石のあなたを靴下に入れるのは大変だったんだから」
クリスマスプレゼント(・∀・)キター!!!!!!!!!
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/::::::::::::::::::::::::::::::ヽ つい最近このAAの元ネタを知った
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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( (  ̄ノ `ー-'′\
 ̄  ̄ \
「大変って、一体どういうおつもりでこのような………………靴下?」
漠たる不安を覚え、己の姿をあらためてゆっくり見回してみる。アグリアスの長身が収められた
それはどこであつらえたのか、確かにカラフルで巨大な毛糸の靴下だった。首元には綺麗な
リボン、ご丁寧に頭には赤いサンタ帽子まで乗せられている。
「あの………これは…………」
脳裏に導き出された結論が何かの勘違いであることを祈って、ふるえる声を発する。オヴェリアは
しごく涼しげな笑顔で、
「あなたがラムザへのプレゼントよ、アグリアス」
「じょ、冗談では!」
「不変不動」
もがくアグリアスを一言で鎮圧すると、「せっかくの機会なんだから、ラムザがとびっきり
喜ぶものをプレゼントすべきよ。私もラムザには助けてもらった恩があるし、手は抜きたくないわ。
アグリアスだって、異存はないでしょう?」
「むーっ!むー!むーー!」
「サイレス」
「……!………………!」
「ストップ」
「………」
いつの間にそんなに多彩な魔法を覚えたのかこの方は。疑問を感じる間もなく、アグリアスの
意識は再びふっつりと途切れた。
静止していた時間が動き始めた時、アグリアスの鼻の先数センチもないところにラムザの
寝顔があった。
「!!!!?」
叫んで飛びのこうとするが、どちらも不可能だった。不変不動とサイレスはまだ効いているらしい。
(らっらららむラムラムザというかラムザ!?いやラムザ!?)
この場合、動けないのがかえって幸いだった。本当に飛びのいていたらラムザが目を覚まし、
よけい面倒なことになったに違いない。落ち着いて考えれば、どちらの状態異常も短時間で
治るのだから、しばらく待ってゆっくり脱出することもできるのだが、そこはオヴェリアの
作戦勝ちである。いきなり超至近距離に寝顔を突きつけられたショックで視界はおろか
頭の中までラムザでいっぱいになり、落ち着いてものを考える余裕など消し飛んでいた。
(おおおオヴェリア様のバカ――――――――っ!)
心臓だけヘイストをかけられたように早鐘を打ち鳴らし、ごうごうと駆けめぐる血潮で顔中
真っ赤になったアグリアスに、さらに追い打ちをかけるようにラムザが動く。
「んー………」
ラムザの腕が首のあたりに回されたと思うと、ぐいとばかり胸元に引き寄せられた。
「!!!!!」
アグリアスは知らないことだが、熟睡中のラムザには「抱き癖」がある。手に触れたものを
何でも引き寄せ、しがみついてしまうのだ。ここしばらくは戦の緊張もあってなりを潜めて
いたのだが、アグリアス入り靴下という手頃な大きさの物体を得て再発したらしい。
無論そんなことは知る由もなく、
(まっ、まっ、まさか、起きているのか!? わわ私をどうかするつもりなのかラムザ!?)
際限なく心臓のボルテージを上げていくアグリアス。初陣でミノタウロスに潰されかけた
時だって、ここまで緊張はしなかった。動悸を静めようと深呼吸をすれば意外に男らしい
ラムザの肌の匂いをいっぱいに吸い込んでしまったりして、よけいに緊張の度は増していく。
のさっ、と腰のあたりに重みがかかる。ラムザが脚を回したのである。完全に抱き枕か
何かに抱きついている格好で、身体の隅から隅までラムザに絡めとられて密着してしまった。
アグリアスは憤死寸前である。
「……ラムザっ……貴公、こっ、こここ、これ以上、ふらッ、不埒な真似をしたらッ……」
緊張が限界をこえ、とうとう爆発しそうになったところで、
ガシャ――――――――ン……
階下に盛大な破壊音が響き、アグリアスは我に返った。
どっとばかりの笑い声があとに続き、また陽気なざわめきに戻る。さっきから聞こえていた
はずだが、ちっとも気づかなかった。
(そうか、今夜だからな………)
皆、下の酒場ではめを外しているのだろう。大方ムスタディオかマラークあたりが、テーブルを
ひっくり返しでもしたのか。明日の片づけが大変そうだ。
そして酒の呑めないこの男は、いつものように二口三口つきあっただけで早々に引き上げ、
宴の盛り上がりも知らぬげに、ここでこうして呑気に寝こけているのだ。ふと、可笑しさが
こみ上げた。
「お前という男は……」
あらためて、おでこのあたりにあるラムザの寝顔を見上げる。落ち着いて見るのは初めてだ。
もとから童顔のラムザだが、あどけなく眠っている顔はまた一段と子供のようである。吐息が
まぶたにかかってくすぐったい。
「……ラムザ」
そっと、名を口にしてみる。
それで初めて、サイレスの効果が切れていることに気づいた。そろそろと手足を動かして
みると、こちらもちゃんと動く。これなら脱出もできそうだ。注意深く、ラムザから離れようと
身を浮かすと、
「ア……グリアス……さん」
心臓が潰れるかと思った。
もしや名を呼んだせいで目を覚ましたのか、と脂汗を流しながら固まっていると、しばらく
たっても寝息しか聞こえてこない。
(……寝言か…………)
ホォッと息をついた瞬間、今度は頭を抱き寄せられ、ラムザのほっぺたがすりすりと髪をこする。
「さらさらで……いーにおい…………です……ねー……」
「…………!!!」
一度は落ち着いたはずの血液がまた一気に昇ってきて、顔が破裂するかと思うほど
いっぱいに紅潮する。そのまま、さらに長いこと固まっていると、やがて頭をつかまえた
手の力がようやく抜けた。細心の注意を払って、少しだけ頭を離す。本格的に深い眠りに
入ったらしく、今度こそラムザはぴくりとも動かない。
しかし、アグリアスはそれ以上動かなかった。へたに刺激してまた何かされたら大変だと
いうのもあったがそれ以上に、急になんだかこの状態がもったいないように思えてきたのだ。
すぐ目の前にある、ラムザの寝顔。子供のようなこの顔が、ひとたび戦場に立てば誰よりも
雄々しく戦い、誰よりも鋭く考え、誰よりも深く悩むことをアグリアスは知っている。自分や
ラッドらは言うに及ばず、オルランドゥ伯のような歴戦の英雄の命さえも預かるに足る男だと
知っている。
そのくせ、酒は呑めないでミルクが好きだったり、くせっ毛がどうしても直らなかったり、イブの
夜に今でも靴下を吊していたり、見た目どおりに子供っぽいところもあることを知っている。
日差しの中のやわらかい笑顔を、夕暮れを眺めながら草笛を吹く横顔を知っている。
めりーあぐります〜
ホーリーナイトに乾杯☆
靴下あぐタソ(;´Д`)ハァハァ
コメディタッチで最後まで行くのかと思いきや…
も、萌えぇ(;´Д`)
「私は……お前のことを、どう思っているのだろうな……」
まっすぐで不器用な心には、自分の気持ちさえ簡単にはつかめない。まして、
(お前は……私のことを、どう思っているのだ…………?)
「……私が………」
つい、言葉が口をついて出た。
「本当に、私がお前へのプレゼントだったら……お前は、もらってくれるだろうか……?」
目の前にはラムザの顔。ほんのわずかに首をかたむければ、ふれあうほど近い顔。かすかに
開いて、かるい寝息をもらす唇に、アグリアスの眼は吸い寄せられて離れない。
時が消えたような静寂の中。かすかに、かすかにアグリアスの頭が動いた時、
「るァーーーーームザーーー! お前さァ、も少し付き合えってばよーーーーーーー!」
ノブのいかれた(注:主観)ドアを蹴り破って乱入したムスタディオは、ベッドの上に目標の
人物以外にもう一つ、何ものかが乗っかっていることに気がついた。
「んーーー? なんだこれ……」
何やら人間ほどの大きさの、そのカラフルな物体はラムザに寄り添い、わなわなと震えている
ように見えた。何事かつぶやいているらしい声も聞こえて、ムスタディオは耳を近づけてよく
聞いてみた。
「……なき……の光よ……」
「ああ?」
「…………まみれし不浄を照らし出せぇッ! ホーリーーーッ!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!?」
突然の閃光と爆音に驚いた皆が上がってきてみると、そこには壊れたドアと瀕死の
ムスタディオ、そして半壊したベッドと、その上にサンタ帽を頭にちょこんと乗っけて
寝ぼけた顔で立ちつくすラムザの姿があった。
「いや、ゆうべ酔ってたのは認めるけどさあ、ほんとにいたんだって! お前の横に、なんか
どぎつい色のでっかいヘビみたいのが!」
誰がでっかいヘビか、と怒鳴りつけたくても口を出すことなどできず、ただ黙々と朝食を
たいらげるアグリアス。オヴェリアが面白そうにクスクス笑う。その横ではムスタディオが、
ラムザ相手に熱弁をふるっている。
「アグリアスさんも二階にいただろ!? 怪しいやつとか見なかった!?」
「知らんな。大方、酔って火遁の玉でも暴発させたのではないのか」
「違うってば、そいつがホーリー使ったの! 俺、詠唱聞いたもん! なんで信じてくれないん
だよー!!」
ムスタディオが泥酔していて心底よかったと思う。皆、酒の上の武勇伝を聞くように笑いながら
聞き流している。ちょっと気の毒な気もするが、あの時のアグリアスの怒りを思えば自業自得と
いうにもまだ足りないくらいである。
「ラムザ、真面目に聞けよ! もしルカヴィとかだったらお前が………お前、何さっきから
ニコニコしてんだ」
「え? あ、いや」
まさしくさっきからニコニコしていたラムザは、いじくり回していたサンタ帽子をわきに置き、
「ゆうべはなんだか、すごく夢見がよくてさ」
「夢ー!? 何を脳天気な……どんな夢だよ」
「うーん……」ラムザはちら、とアグリアスに目をやった。心臓がひとつ跳ね上がり、あわてて
不自然でない程度に深呼吸をして息を整えるアグリアス。オヴェリアがまた、意味ありげに笑いを
こらえてみせる。
「靴下いっぱいの幸せをもらう夢だよ」
「何だ、そりゃあ。お前そんな緊張感のないこと言ってるからなー……」
降誕祭の朝は、いつもと変わることもなく。雪の最初のひとひらが、音もなく窓辺に落ちて溶けた。
End
ネタ提供:HC氏
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━━(゚∀゚)━━!!!!!
このSSは、カエルたんからのクリスマスプレゼントだNE!
ニコニコラムザ(・∀・)イイ!
381は昼寝士
萌え…死……ぬ…
…萌え…!!
ゴフッ(幸せそうな顔で昇天
SS書いたのは昼寝士たんでファイナルアンサー?
ありがd。今日はいい夢見られるといいな〜w
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/::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 聖騎士はクリスマスプレゼント貰っちゃだめですか?
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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l/l/ \l\l\:::::::ノ))
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|::l`ー-, -‐ |:::|ヽ、))
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( (  ̄ノ `ー-'′\
 ̄  ̄ \
>>384 ○⌒ヽ ゲンキダセ
(二二) 〆
( ・∀・)つ囚
作者表示のつもりでトリップ入れてたんだけど、あまり意味なかったですか・・・
>>379のSSは私です。萌えてくれたなら何より。
>>384 きっとアグもいつかラムザから素敵なプレゼントを貰うのです。ラムザ・イン・ソックスとか。
__
../⌒ ヽ
( ヽ アーヒャヒャ
ヽ ノ ヽ
ゞ、 丶 アーヒャヒャ
ヽ ノ \ _ _, ─' ─ ─ ,、 _
|\_ ノ\ , '´ ( ) ( ) `‐、
/⌒\ 丶 / / ヽ-、___ ,-r' ヽ.
│ \ 人 |/⌒ヽ | ! ヽ | ..|
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( \ ヽ / / | ! ! . ! ..|
( | / ) | ! ! ...|
ヽ \ ヾ 丿(( ̄)/ 'i `'ー--‐‐'´ ノ
\ ヾ丿 ヽソ `''ヽ ヽ. ─''
ヽ ノ _ __/ ヽ __ノ:: 人__
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../⌒ ヽ
( ヽ アーヒャヒャ
ヽ ノ ヽ
ゞ、 丶 アーヒャヒャ
ヽ ノ \ _ _, ─' ─ ─ ,、 _
|\_ ノ\ , '´ ( ) ( ) `‐、
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│ \ 人 |/⌒ヽ | ! ヽ | ..|
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\ ヾ丿 ヽソ `''ヽ ヽ. ─''
ヽ ノ _ __/ ヽ __ノ:: 人__
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389 :
HC:02/12/26 10:35 ID:jly5DI+P
俺のぽつりネタをここまで萌えなSSにしてしまうとは・・・萌えさせていただきましたっ!
390 :
ママ先生:02/12/26 19:27 ID:pI7iW2YM
391 :
ママ先生:02/12/26 19:35 ID:lVSCQ7l3
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/::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 聖夜と書いて horry night
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 聖騎士と書いて horry knight
l:::::::/\:::::::::::::::::::::::::::l 何か似ていますね・・・
l/l/ \l\l\:::::::ノ))
|::l |:::|6))) ・・・言うタイミングを2日もはずしてしまいました鬱だ氏脳
|::l`ー-, -‐ |:::|ヽ、))
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 ̄  ̄ \
393 :
カエル:02/12/26 23:02 ID:qq4JeuQK
昼寝士さんに間違えられるなんて恐縮・・・・
私には即興でSSを書く才能はないんで、ちまちま書き溜めておいた
ストックを小出ししてるに過ぎません。
では、残り少ない続編です。
再会を喜び合い一頻り歓談する4人。
(・・・ったく!冗談にも程がある。よりにもよって結婚しただなんて・・・人の気も知らないで・・・・バカ)
部屋の隅でぶすっとしている一人を除いて。
「ねえねえ兄さん、あのね、今日ムスタディオのおうちにお泊まりに行ってもいい?」
オヴェリアと二人でひそひそと話していたアルマがラムザに問い掛けた。
「ん?どうして?・・・」
「オヴェリア様がね、ムスタディオのおうちに泊まるんですって!ほらあそこ広いから」
「それはいいけど・・・困ったな・・・今の僕は一人じゃ食事も作れないよ」
「だーいじょうぶ!うふっ、あのねぇ、アグリアスさんが付きっきりでお世話してくれるから!きゃ!」
「え?わ、私?・・・・私が?!」
部屋の隅にいたアグリアスが目を丸くする。
「そうよ。ねっ?オヴェリア様?」
「アグリアスはね、私の騎士なの。ラムザ殿、何なりと申し付けて下さいね。“何なりと”ね、ふふふ・・・」
(そんな!こ、困ります、オヴェリア様!)
含み笑いのオヴェリアにアグリアスは困惑の表情で訴える。
(感謝なさい、アグリアス。ここが正念場よ・・・見つめ合う二人、揺れる蝋燭の炎、怪我で抵抗できない
ラムザに伸し掛かり・・・ああ、何て大胆なのアグリアス!明日の朝にはもう『女』になっているのね・・・
何だか私、複雑な気持ちよ・・・)
オヴェリアは勝手な想像を膨らませている。
「ではアグリアス、ラムザ殿のことをよろしく頼みましたよ」
「はあ・・・・」
「食事はさっき作っておいたのを暖めればすぐ食べれるからねっ。あ、アグリアスさん、私のエプロンとか
何でも好きに使って下さいねっ」
「アグリアス〜、ラムザをいじめるなよ〜」
「う、うるさい!」
三人はいそいそと出て行った。
騒がしい連中が去り、静かになった部屋の中に取り残された二人。
アグリアスは外からの声が聞こえなくなるのを確認するとあくまでもさりげなくベッドの脇、さっきまでアルマ
が座っていた椅子に腰を下ろした。
「・・・まあ、その・・・あれだ・・・元気そうじゃないか」
予期せぬ二人きりの状況に、本当は嬉しくて堪らないくせにあらぬ方向を見て話すアグリアス。
「僕、怪我してるんですけど・・・」
「あ、ああ、そうだった・・・・で、動けないのか?」
「もう今は杖を使えば少しくらいは・・・外を歩くにはもう少しかな」
改めて見ると添え木でがっちりと固定された片足が痛々しい。
「そうか・・・でも・・・お前もアルマ殿も生きていて良かった・・・」
そう言ったら、何だか胸のつかえが取れたように少し楽になった。
ラムザはにっこり笑う。キュン、とアグリアスの胸が締め付けられ、思わずまた目を逸らしてしまう。
「・・・アグリアスさんも相変わらずお元気そうで良かった・・・それに・・・・」
「何だ?」
「すごく綺麗になりましたね・・・あっ、前からとっても綺麗ですけど・・・前よりもっと素敵です」
「な、何を馬鹿なことを・・・・」
アグリアスは桜色に染まる頬を押さえた。
「いえ、お世辞じゃなく。何だか感じが柔らかくなったって言うか・・・それに、服もすごく素敵ですね。
スカート穿いてるとこは初めて見ましたけど・・・」
アグリアスはラムザがふと視線を落とした先――露わになった自分の膝をぎゅっと両の拳で隠した。
「ばか、見るな・・・・・・・恥ずかしいんだ・・・」
ラムザに見られている、そう思うだけでカッと顔が熱くなる。
「でもとても似合ってますよ。それに、アグリアスさんは怒るかも知れないけど、そんな綺麗な脚を見せら
れたら自然に目が行っちゃいます・・・」
確かにムスタディオに言われたなら絶対怒る。でも今は紛れもなく嬉しい。ラムザが自分を女として見て
くれることが。アグリアスは自分を誉め称えるラムザの言葉に舞い上がり、つい口走った。
「お前も・・・その・・・スカートの中を覗きたいとか・・・む、胸を触りたいとか、思うのか?」
「は?・・・・・・お前も、って?」
「あ、い、いや!・・・例えばの話だ」
「そうですね・・・そりゃあ、僕だって男ですからね・・・・あ、でも相手は誰でもって訳じゃないですよ」
「え?・・・・・」
意味深だが曖昧なラムザの言葉。アグリアスは懸命にラムザの真意を探ろうと思いを巡らせる。
ラムザ、ほんとは私のことをどう思っている?
ラムザの言葉も表情も私に対して好意的なんだと思う。そう思いたい。
でも本当の気持ちは分からない。
分からないから情けないけれど今の私には『その言葉』を口にする勇気が出ない。
いや、そんなのおかしい。相手の気持ちが分かってたら告白なんて意味がないじゃないか!でも・・・・・・
もしも、ほんの少しでもラムザの気持ちが私に向いているのなら・・・・
そう信じることが出来れば、きっと言えるのに・・・・・・・
アグリアスは汗ばむ手でスカートの裾をぎゅっと握り締める。
「あ、あの・・・私が・・・・・・・・」
(だめだ、言えない・・・・)
「アグリアスさん、お腹空きませんか?」
何か言いかけたまま黙り込むアグリアスにラムザが問い掛けた。
「え?ああ、そう言えばそろそろ・・・」
「じゃ、お願いできますか?」
「任せておけ!(暖めるだけだけど)・・・これ借りるぞ」
アグリアスは何かを振っ切るように勢いよく立ち、上着を脱いで置いてあった白いエプロンを身に着ける。
「わあ、アグリアスさんのエプロン姿!まるで“誰かの”奥さんみたいですね、あははは」
「!・・・・・」
屈託なく笑うラムザ。だがアグリアスは何も答えず逃げるように台所へ消えてゆく。
『誰かの』奥さん・・・『僕の』とは言ってくれないのか・・・当たり前か・・・・・でも・・・・
ラムザ、お前がそう言ってくれたら私は今すぐにでもお前に嫁いだっていい、本気でそう思ってるのに・・・
それともさっきは冗談だって言ってたが『僕の奥さん』はやっぱり・・・・
馬鹿な!兄妹だぞ・・・・でも、さっきの様子、兄妹にしては少し・・・・・・
それに何だか肝心な所でうまく話をはぐらかされている気もする・・・・
もやもやしたものが頭から離れないアグリアス。お陰でただ火を通すだけの料理も焦がしてしまった。
アグリアスは失敗作を手にラムザの元に戻った。
「すまん、ちょっと焦がしてしまった・・・・」
表情が暗いのは料理が失敗したせいだけではなかったのだが、ラムザは明るく慰めの言葉をかける。
「ちょっとくらい平気ですよ。“アルマだって”よく失敗してますから」
ぴく・・・
勝手に仕立て上げた恋敵に過剰に反応し、アグリアスはベッドの脇に置いたテーブルに無言で器を並べた。
「じゃ頂きます。アグリアスさんも冷めないうちにどうぞ」
「ああ・・・」
「うん、ちょっと焦げてるけど美味しい」
「・・・・・・・・・」
「・・・ん?アグリアスさん?“アルマの”味付け、お口に合わなかったですか?」
ぴくぴく・・・(アルマアルマって!)
「ラムザ!」
アグリアスはラムザをきっ、と睨み付けた。
「は、はい?何でしょう?」
ラムザはアグリアスのきつい口調と表情に驚いて手を止めた。
「さ、さっきの話、本当に冗談なのか?・・・本当はお前、ア、アルマ殿と・・・・」
「ぷっ!いきなり何を言い出すのかと思えば・・・いやだな、僕達兄妹ですよ」
「しかし・・・」
「アグリアスさんは変なこと気にするんですね」
アグリアスは返答に困ってしどろもどろに答えた。
「えっ?・・・い、いや、その・・・あれだ・・・こ、この先どうするのかな?と思って・・・」
「この先、ですか・・・・うーん、そうですねぇ・・・・」
(取敢えずごまかせた・・・・って、私は馬鹿か?ごまかしちゃダメじゃないか・・・)
「脚が治ったら、皆を探しに行こうと思ってたんですが・・・」
「でも、ただ闇雲に探すよりここにいる方が確実だと思うぞ。皆もお前や私のように考えるだろう」
確かにそう思った。だがそれ以上にオヴェリアの許を離れる訳にはいかず、一緒に旅することなど出来ない
アグリアスは、ラムザが旅に出ることには賛成しかねる気持ちが勝っていた。
「それもそうですね。みんな無事だといいんですが・・・」
ラムザの同意にひとまず安心するアグリアス。
「そうだな・・・」
皆には無事でいて欲しいし、すぐにでも会いたい。でもラムザに何処かへ行って欲しくない・・・・
何と利己的で嫌な女!アグリアスは自らを侮蔑する。
だが、いくら理性や道徳心で戒めたところでそれが、それこそが嘘偽りのない私の本心なのだ・・・
日も暮れて暗くなってきた部屋で二人は食事を済ませ、ラムザはベッドの上でくつろいでいる。
(しかし、このままでは埒が明かん!・・・暗くなっていい感じになってきたし、こ、告白を・・・・・)
アグリアスは改まってラムザに向き直り、遂に思い切って口を開いた。
「ああああのな、ラムザ・・・お前が・・・す、す、・・・・・好き(あうぅ)・・・な果物は?」
「はぁ?」
(くっ、何を言ってるんだ私は・・・告白も出来ないとは情けない!・・・ん?)
つい口走った言葉から連想して、アグリアスの脳裏に昼間のラムザとアルマの仲睦まじい光景が甦る。
(そうだ!さっきのアルマ殿の真似をやる又とないチャンスじゃないか!・・・そしてそのまま寄り添って、
手なんか握ったりしてそれから・・・・それから・・・・)
「ほ、ほらリンゴとか、あるだろう?リンゴとか」
アグリアスは身を乗り出し、まるでラムザを脅迫するかのような勢いで問い詰める。
「そうですねえ・・・・ブドウかな?そう言えば今日アルマが買って来たって言ってたっけ」
「リンゴじゃなくてブドウなのか・・・」
(何だブドウか・・・・ブドウじゃアレをやるのはいまいち不自然・・・はっ!・・・・く、口移し?!
そ、そんな、大胆過ぎる!私にはまだそこまで心の準備が・・・)
「よし分かった、ブドウだな?」
アグリアスはそそくさと食器を片付けて台所に向かった。
(歯を磨いて・・・口紅はバッグに入れたはず・・・・いやいや落ちつけ!・・・まずは食器でも洗って落
ちつくんだ!・・・・洗って・・・・・・・・・・)
――およそ十分後――
さりげなく薄桃色の口紅まで引いたアグリアスがブドウを皿に載せて戻って来た。
心なしか目が潤んでいる。
「ラムザほら、ブドウ持って来たぞ。恥ずかしいけど私が食べさせてあげ・・・・寝てる・・・・」
――同じ頃、暗い夜道をひたひたとラムザ邸を目指す黒装束の3人組の姿があった。
「どうしてラムザの器にスリプル草なんか塗りつけたんだよ?」
ムスタディオが歩きながらアルマに尋ねた。
「だってほら、今の兄さん、身体の自由が利かないから自分からアグリアスさんに迫ったりしないと思うの。
だからって“あの”アグリアスさんが正気の兄さんに伸しかかるとはちょっとねぇ」
「だからアグリアスのためにお膳立てしたってわけね?」
アルマは頷く。
「そう、兄さんが寝てる間ならいくら晩生なアグリアスさんだってきっと悪戯しちゃおうとか思うはずよ。
もしそこで兄さんが目を覚ましても、それはそれで二人とも後には引けないわよねえ。ウフフフ・・・」
「アルマ・・・悪い子・・・・さ、急ぎますよ」
二人を置いて行かんばかりの早足で歩くオヴェリア。
「おいおい、何であのお姫様はあんなに脚が速いんだ?」
やがて3人は明かりの漏れる窓にへばり付いた。
「あれ?二人とも寝てる・・・なんで?どうして??」
そこにはベッドで気持ち良さそうに眠るラムザと、すぐ傍の床に崩れるように眠っているアグリアス。
「そんなとこで何してるのアグリアス!起きなさい!私とアルマの厚意を無駄にする気なの?」
拳を振り上げ割らんばかりに窓を叩こうとするオヴェリアをアルマが必死に制する。
「あーあ、帰って飲むか・・・」
「そうね、積もる話もあることだし、今夜は3人で飲み明かしましょう!」
さっさと帰路につく二人の後をアルマは納得のいかない表情で首を傾げながら付いて行った。
(それにしても変ねえ、スリプル草を塗りつけたのは兄さんの器だけなのに・・・・器に『ラムザ用』って
書いてあるからアグリアスさんだって間違えるはずないのに・・・???)
次はやっと最終回
泣きそう、アグリアス様のけなげさ
402 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:02/12/27 15:44 ID:IK9E7Q4o
いまさらですが昼寝師サマ最高!
どうしたらあんなにも萌え力が溜まるのでつか?
眠り込んだラムザのナニをいたづらするアグリアス・・・・イイカモ
ttp://ikinari.pinky.ne.jp/ のいきなり次回予告より
「あの最後の葉が落ちたら、私の命も終るの……」
そんな心弱い事を呟く病気のラムザを励ますために、嵐の中、耐水性絵の具を握り締めて旅立ったアグリアス。
しかしそこに、多分同じ事を考えたと思われる、もみじ饅頭の着ぐるみを着たアルマが立ちはだかる!
ラムザの心を救えるのはどっちだ!? 今、絵描きアグリアスと着ぐるみアルマの決戦が始まる……。
アグリアスがアルマの部屋の前を通り過ぎようとした時…
「ちょ…痛っ」
オベリアの声? アグリアスがドア越しに聞き耳を立ててみると。
アルマ「んな力入れんなって…ヤりにくいだろが」
オベリア「うぅ…気持ちいぃ」
アグリアスがまさかと思いつつドアに手を掛けた。
次回「マッサージかよ!ややこしい!!」
アグリアスおまえは何だと思ったんだ…
>>406 ラムザ:意志の強さがキュッと唇に現れている。
アグリアス:セクシーで静寂な唇にただ憧れるだけ。
アルマ:自然な赤みで彩られた唇は、まさに宗教画のエンジェル。
「色」「つや」「柔らかさ」。すべてそろった唇に恋をする。
ティンカーリップw
ラムザもアグリアスも禁断の愛とわかってても抑えられない。
そんな2人の仲を引き裂こうとアルマの魔の手が襲いかかる。
感動の最終回「許されぬ愛に下された罰」お楽しみに!
ガ━━━━━━(゚Д゚;;)━━━━━━ン!!!!
一発でこんなの出たんですが…
アグリアス「ラムザ……」
ラムザ「えっっ、ちょっ、ちょっと待って!」
ラムザの唇を奪うアグリアス。
次回「わたしのこと、わすれてません?戸惑う労働八号!!」です。
弐発目で出ますた……。
>>410 前半ももちろんいいんだけど
> 次回「わたしのこと、わすれてません?戸惑う労働八号!!」です。
これがツボですたw
しかし、他の予告も面白いね。ランダム作成の筈なのに、恐ろしい事ですw
全てを失い途方にくれるラムザ。
救いの手を差しのべたガフガリオンの心中にはある重大な秘密が隠されていた!
急げアグリアス、真の救世主となるべきは君だ!
次回必見!「ガフガリオンの甘いワナ」に乞うご期待!
これ面白いな(w
ニュースです
許昌で大規模な誘拐事件が発生しました!
犯人のアグリアスはムスタディオを要求。
警察では直ちにムスタディオに化粧で変装したラムザを差し出しましたが、これがばれた模様。
解決は遠いようです
コーヒー吹いちゃった(w
次回予告でると絶対こうゆう流れになるね。
>>406-
>>413も、大きな流れの中に居る事に気づいていない...そう、気づいていないのだ。
>>414はその流れに逆らおうとしている、それだけだ。
>>415、生きていたらまた会おう。
東の空が白み始める頃、ラムザは目覚めた。
「ふぁ〜〜・・・(いつの間にか眠っちゃったんだ・・・アグリアスさんはアルマの部屋か・・・・)」
まだ薄暗い中、普段アルマが寝ている部屋を見遣る。恐らくアグリアスは部屋の中で寝ているのだろう。
ラムザは顔を洗おうと起き上がり、杖を片手にベッドから降り立った。
むぎゅ・・・何故か足の裏に柔らかい感触。
「うわっ?」
片足で立とうとしていたラムザは大きくバランスを崩し、床の上で眠るアグリアスの上に倒れこんだ。
「げほっ!・・・な、何?・・・・ラムザ?」
「〜〜〜!!」
ラムザは骨折した脚をぶつけた激痛で声を出せずにいた。
目を覚ましたアグリアスのぼんやりかすむ視野に迫るラムザの顔、しかも自分に伸し掛かっている。
(一体何がどうなってる?・・・いつの間にか朝になってるし・・・それにしても、いくら私が無防備に
寝てたからって・・・・・・・)
「ラムザ、そんな・・いきなりなんて・・・困る・・・けど・・・」
恥ずかしさでいっぱいのアグリアスは顔を背けてつぶやいた。
「すみませんアグリアスさん!」
「・・・・へ?」
「・・・まさかこんな所で寝てるとは思わなかったんで。痛かったですか?・・・」
(何と言うか・・・・一瞬期待してしまった自分が恥ずかしい・・・・・)
床に手をついて身体を起こそうとするラムザにアグリアスは肩を貸して起き上がった。
顔を洗い、再びベッドに戻るまでずっとラムザに肩を貸していたアグリアスは決心した。
入れ替わりでアグリアスは顔を洗いながら鏡を覗きこむ。
夕べそのまま床に寝てしまったせいで髪はくたびれ、肌の艶も悪い気がする。
でも、そんなこと言ってられない。もう二人だけでいられる時間は残り少ない・・・・・
アグリアスは部屋へ戻った。ラムザがシャツを脱いで身体を拭いていた。
ラムザからタオルを奪うように取り、靴を脱いでベッドに上がった。ただ無言で背中を拭くアグリアス。
「すみません・・・」
ふとアグリアスの手が止まる。
「・・・・私は・・・・私はお前が・・・好き・・・だ」
面と向かって言うのは恥ずかしいから、ラムザの背中越しにそれだけ言うのが精一杯だった。
ひどく上気した顔がラムザには見えないのがせめてもの救いだ。
ラムザの肩が少し緊張したように固くなった。肩に掛けた手が震える。
「僕の話を聞いてくれますか?」
「?・・・・・」
「僕は・・・・ずっと悩んでいました」
ラムザは言葉を選ぶようにゆっくりとした口調で話した。
「あの頃・・・・オヴェリア様のこと、アルマのこと、何一つ解決できないくせに僕は、いつからかずっと
頭から離れないことがあって・・・」
ラムザは振り返らずに穏やかに語り続ける。
「あの時、もう生きて帰れないかも知れないからって思ったけど、皆の事を考えたら僕は何も言えなかった・・・・
こうして戻って来た今も足は折ってしまったし、それにアルマのことを一人にする訳には行かなくて・・・・・・・」
(良く分からんがアルマ殿のことで頭がいっぱいってことか?そんな遠回しに言い訳しなくたって・・・・)
「もういい。悪かった、変な事言って・・・」
アグリアスは諦めの口調で話を遮ろうとした。だがラムザは話し続けた。
「文字通り身動きが取れない僕は、もう信じてもいなかった神にすがる思いで毎日毎日祈りました・・・・・」
「だから!・・・・・」
言いかけた時、不意にラムザが向き直った。
「生きていて欲しい、どうか会わせて欲しい、ずっと前から好きだった、青い服を着た美しい髪の聖騎士に」
「!!」
呆然とするアグリアスにラムザはにっこり微笑んだ。
「祈りが通じました」
アグリアスは何も言えなくて俯いた。頬を伝って落ちるものがシーツにぱたぱたと落ち、吸い込まれてゆく。
ラムザの手がそっとアグリアスの頬に触れ、顔を上げさせる。
「気付いてはいたんです、アグリアスさんの気持ち・・・・すみませんでした、ずっと黙ってて」
アグリアスはかぶりを振り、ラムザに抱き付く。そして泣いた、初めて思いきり。
朝日が射し込む部屋の中、やがて二人は引かれ合うように見詰め合い、目を閉じ、唇を重ねた。
初めての、愛する人と唇が触れあう柔らかい心地良さに身を委ねるアグリアス。
いつの日かと夢見ていた今この時が永遠に続けばいいのにと思う。
唇を離そうとするラムザに名残惜しむように抱きついて唇を求めていることに気付いたアグリアスは慌てて
体を離した。ベッドに並んで座る二人。真っ赤になって俯くアグリアスにラムザは言った。
「あの・・・こんな明るい時に何ですけど、この先二人きりでいられる時間はもうないと思うんで・・・」
アグリアスはラムザが何を求めているのか瞬時に察した。そして黙ってこくりと頷く。
今更拒むつもりなどない。
アグリアスはラムザの足を慮り、ベッドに横たわらせた。そして立ち上がって言った。
「向こうを向いててくれないか・・・・」
恋焦がれていたとは言え、人一倍恥ずかしがりのアグリアスである。さすがにこの明るい中で脱ぐところは
見られたくなかった。
アグリアスはベッドに背を向けて立ち、ブラウスのボタンを外しながらふと思う。
私、黒い下着なんか着けてどんな風に見えるんだろう・・・・変かな?
止そう。今は何も考えないで、ただ肌を合わせられればそれでいい・・・
アグリアスはスカートのボタンに手を掛けた。
「おっはよー!!兄さん!アグ・・・あ―――――っ!!」
突然ドアが開け放たれアルマが飛びこんできた。その後からオヴェリア。固まるアグリアス。
(な、・・・・終わった・・・・と言うか何で鍵掛けてなかったんだ?・・・)
「や、やあ・・・・早いねアルマ」
「に、兄さん・・・・・・・・したの?」
「あらあら、アグリアス、この状況はおめでとうと言うべきかしら?」
アルマとオヴェリアはその場――上半身裸のラムザと服を着かけている(と思った)アグリアス――
を見て、てっきり事が済んだ後だと思った。
「な、何もしてません!ラムザの身体を拭いてあげてたんですっ!」
床に置かれた水桶を指差すアグリアス。
「嘘おっしゃい。ブラウスがはだけてるわよ」
言い返すオヴェリアはアグリアスの胸元を指差した。
「こ、これは・・・えーと、私も身体拭こうかな〜、なんて」
(見え透いた嘘を・・・あなた女の私の前でさえ脱ぐのを恥ずかしがるじゃないの・・・それにしても・・・・)
「はぁ〜・・・飲みに帰ったのは失敗、あ!いえいえ・・・」
「は?何です?」
「独り言よ。気にしないで。うふふ・・・」
一方ベッドの上ではアルマが顔を近づけてじ〜っとラムザを見つめている。
「兄さん、私の目を見て正直に答えて」
「ほんとに何もしてないよ(キスしたけど)。アグリアスさんの言う通りさ。それよりお前、酒臭いぞ」
「ふ〜ん、二人ともあくまで白を切るつもりね。分かったわ」
ちう・・・
いきなりアルマはラムザの唇を奪った。
「ぎゃ―――――っ!!ア、ア、アルマ殿!!何と言う真似を!」
カエルたんリアルタイムキタ―――――――――――――――!!!!!!!!!
「こ、こらアルマ!悪ふざけにも程があるぞ!」
(とか言ってる割には鼻の下伸ばしてるじゃないか!)
「ん〜・・・アグリアスさんの取り乱し方からすると、どうやらホントみたいね〜」
怒りにわなわなと震えるアグリアスを見てアルマはけろっとして言った。
「アグリアス、ちょっと・・・・」
オヴェリアが激しく嫉妬心を燃やしているアグリアスを外へ呼んだ。
「うちへ帰りますよ」
「えええー?も、もう帰るのですか?どうしてそんな急に・・・」
「言ってなかったけど明後日に使いの者が来るの。私が留守には出来ないわ」
「ダメです! 」
「ダメって・・・あなた私に逆らうつもり?」
アグリアスは一瞬ひるんだが思い切って訳を話した。
「だって・・・・だってあんな真似をするアルマ殿を放っておいたら、この先一体何するか・・・」
オヴェリアは笑い出した。
「あははは!アルマが?馬鹿ねえ。あの子はあなたを応援してるのよ。夕べだって二人を残してムスタディオの
家に泊まろうって言い出したのはアルマよ。あなたに『据え膳』まで用意してくれたのに」
「据え膳?」
「ラムザの器にスリプル草のエキスを塗ったの。なぜかあなたも一緒に眠ってしまったようだけど」
(な、何で私が眠ったこと知っている?まさか!覗いてたのか?・・・いや、充分有り得る・・・)
「ねえ、どうしてあなたまで眠ってしまったのかしら?夕べキスでもした?」
オヴェリアはまるでアグリアスの胸の内を見透かすように下から見上げる。
その問いにアグリアスはプルプルと首を横に振る。(さっきしたけど・・・・)
「そうよねえ。エキスが混ざるほどのキスなんてアグリアスにはまだ無理よねえ、ふふっ」
(露骨な・・・・・ん?そうか!それで急に眠く・・・・これは言えない・・・・絶対言えない!)
「ま、とにかく出発前に言わなかったのは悪かったけど、情報を得るどころか当の本人に会えたのだから、
それだけでも予想外の大収穫でしょ?ところで告白くらいしたんでしょうね?」
「は、はあ・・・・まあ」
「やったじゃない!で、いい返事はもらえた?」
オヴェリアはまるで自分のことのように喜んだ。
「え、ええ・・・まあ」
本当は天にも昇る気持ちなのだが、アグリアスは素っ気無く答えた。
「まあ!じゃあ尚更問題ないじゃない。別にもう会えないって訳じゃないんだし」
「ですが・・・・・・」
「なあに?何故そんなに未練があるの?・・・・・あっ!・・・そうか、分かった!!勘違いしてたわ!」
オヴェリアは突然閃いて手を叩いた。
「これから致すところだったのね?そっか、それで未練があると。そりゃそうね〜、それにしても・・・
うふふ・・・・こんな朝早くからお盛んねえ」
アグリアスを指で突つきながらニヤニヤといやらしく笑みを浮かべるオヴェリア。
「ち!ちが・・・(わない・・・)」
「あらあら、私達ちょっと早く来過ぎちゃったのね〜。ごめんなさい。じゃ、続きさせてあげるから」
オヴェリアはアグリアスの背中を押して家の中へ戻ろうとする。
「だ、だだダメです!そんなこと、出来ません!」
アグリアスは必死にその場に踏み止まろうとする。
「そう、出来ないの。出来ないのならこのままうちに帰るのですね?よろしいのですねアグリアス?」
オヴェリアはいきなり王女然とした口調でアグリアスを威圧する。
「ううぅ・・・」
「はっきりしなさい!したいんでしょ?アルマのことが心配だから、身体で引き留めておきたいんでしょ?」
「そ、そんな!・・・・(そうだけど、この状況で出来るか!)」
お互いの気持ちを打ち明け、心は一つだと信じているけれど、アルマのことも不安が拭いきれない。
だからもっと確かなものが欲しい。
私には経験がないけれど、体も一つになれればもっと分かり合える・・・そう信じたい。でも・・・
アグリアスはオヴェリアを押し退けるようにして家の中に駆け込んだ。
(まあ!アグリアスったら!恋すると女って変わるのねえ・・・)
アルマは朝食の準備をしているらしく、ラムザは一人、ベッドに座っていた。
「ラ、ラムザ、は、話がある・・・」
「はい?」
「わ、わ、私・・・・・私と・・・将来を見据えて行動を共にしないか?」
(何それ?)・・・こけるオヴェリア。台所からもドテッと物音が。
「はあ?行動を共に?・・・・ずっと前からそうして来たじゃないですか?」
ラムザはきょとんとした顔で答えた。
「いや、そうではなくて・・・・前より、もっと・・・真剣に・・・」
(あーあ、こりゃダメだわ・・・)
「どうも話が要領を得ませんねえ・・・」
(しかしアグリアスさんもアレだけど、兄さんもほんっと鈍いわね・・・)
「・・・と、とにかく!脚が治ったらウォージリスまで来い!話はそれからだ」
「ええ、それはもちろん。必ず行きますよ。アルマと一緒に」
(いや、出来れば一人で来て欲しいのだが・・・・)
「そうか、じゃ来る時は手紙をくれ。宿を用意しておくから」
「あら、うちに泊まればいいじゃない?」
アグリアスは振り返ってキッ、とものすごい形相でオヴェリアを睨み付けた。
(怖〜い!分かったわよ・・・・ま、二人っきりにしてあげないと進展しそうもないしねえ・・・)
アルマの用意した朝食を食べている間、アグリアスは先ほどからのアルマの様子がどうもおかしいことに
気付いた。そのうちにアルマはオヴェリアにひそひそと耳打ちし、今度は二人ともアグリアスを見ては
意味ありげな笑みを浮かべるのだった。
二人の様子を見ていて夕べのことを思い出したアグリアスは愕然とした。
(しまったーっ!・・・食器、あのままだった・・・・・くっ、迂闊だった・・・・)
そそくさと食事を済ませ、逃げるようにアグリアスはチョコボに荷物を載せに飛び出した。
やがて別れの時。
手を振るラムザ達に別れを告げ町外れまで来た時のことである。
それまでは別れの余韻に浸っていたのか無言だったオヴェリアが口を開いた。
「さっきのはプロポーズのつもりだったのでしょう?ラムザ殿には伝わらなかったようだけど」
チョコボを並べて進んでいたアグリアスは黙って頷く。
「まあ歳も歳だから焦るのは分かるけど・・・ねえ?もう少し気長にやってもいいんじゃなくて?
ほら、私もまだ戻りたくないから、もうちょっと楽しませて頂だいね」
「はぁ・・・(ちょっと引っ掛かるが・・・)」
「ところでアグリアス、いくら誰も見てないからって、あんまり大人気ない真似はよしなさいね・・・・
ひとのお皿舐めるなんてある意味変態ぷ、うくく・・・ダメ!苦し、あーっはははは!!・・・」
(・・・一生の不覚・・・・ううぅ)
チョコボの上で笑い死にしそうな程のた打ち回るオヴェリアに涙するアグリアスだった。
そして二人が去った後のラムザ邸――
(生殺しだよ・・・・)
おしまい
425 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:02/12/30 00:12 ID:asgEx50x
まさか今続きが読めるなんて・・・。涙。
萌えまくりですた!
カエルさん、感謝です!
426 :
カエル:02/12/30 00:15 ID:CdaBwQjv
と言うわけでこのSSはここで一応のピリオドです。
長い間お付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
続編のようなものは今のところ考えてません。
(と言うか自分の考えるこの先はどうしてもアダルトな内容になってしまうんで・・・)
>>409の次回予告ネタにはちょっと惹かれましたw
カエルたん乙!
またよろしこ!面白かったよーーーー!
428 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:02/12/30 00:29 ID:LwFQ+040
アダルトみた… ゲフォッ
いや、楽しませていただきました。
ありがとうございましたん
カエルさん、お疲れさまでした。大変萌えさせていただきました。
それにしてもラムザ、超鈍感のくせにずいぶん凝った告白セリフを……
それにしてもラムたんひどい…。
アグたんの気持ちに気付いているのに
「ええ?アグリアスさん結婚するんですか?・・・おめでとうございます!」
「実は僕達、結婚しちゃいました!」
「はあ?行動を共に?・・・・ずっと前からそうして来たじゃないですか?」
などなど!ひどすぎるよ!!!
アグたんの気持ち全然わかってない!
「あの・・・こんな明るい時に何ですけど、この先二人きりでいられる時間はもうないと思うんで・・・」
これもちょっとひどい言い方だと思う。
まぁハッピーエンドと言えばそうだけど、
オヴェリアもアルマもムスタディオもひどすぎるよ。
こんな人達を助けるためにこんな仲間達と戦っていたなんて、アグたんが可哀想。
みんなに弄られるアグたん、好きだけど、これは苛めの域に達しているような。
楽しめるところも沢山あったけど、なんだか読んでて切なかったよ…。
アグたーーーん!元気出せ!大好きだよ!!!
>カエルたん
幸せな感動とちょっぴりのハァハァと楽しい笑いをありがトン!
萌えますた
アグリアスの親父様ってどんな人なんだろうな。
1.武系
厳格で立派な騎士
アグリアスを鍛えた人。師であり、憧憬でもあったが
父としての振る舞いを見せる事はなかった。
2.文系
オークス家に婿入り、長引く戦争の中、争いごとを避け商売に手を染める事で
オークス家を切り盛りする。
アグリアスからすると、好きだが尊敬できない父への葛藤とか
せっかくだから俺は3.遊び人系を選ぶぜ
アグ「もうすぐ今年も終わるな」
ラム「そうですね」
アグ「ラムザは今年1年間振り返ってみてどうだ?」
ラム「そうですね…至らない部分も沢山ありましたが…。
でも(アグリアスさんと一緒にいられることが多かったから)いい年でしたよ」
アグ「そうか、それは良かった」
ラム「アグリアスさんはどうでしたか?
アグ「私はだな、私も実力不足を実感することの多い1年だったが
(恋愛面において特に…)しかし、なかなか充実していたぞ」
ラム「あっ、除夜の鐘が終わりましたよ」
アグ「明けましておめでとう、ラムザ」
ラム「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
―――――――――――――――二礼二拍手一礼―――――――――――――――
アグ「(今年はラムザに思いを伝えられますように…)」
ラム「(今年はアグリアスさんが僕の気持ちに気付いてくれますように)」
アグ「何をお願いしたのだ、ラムザ」
ラム「内緒ですよ」
あぐましておめでとう!
あぐましておめでとう。
>>435 みかん脇に積んでこたつ入ってなごんでるラムとアグ(着物)が想像できて
萌えー
でも去年は最低三回(メイドアグ、アグエロ、カエルタン)結ばれてるんだが
まだ不満かアグたん(w
皆さん、あぐおめです
あぐ(・∀・)おめ!!
あぐおめ…
いつのまにアグがおめでたにっ!
できちゃった結婚でつか、ラムザタン(゚д゚)y-~~~
あぐあぐあぎゅう〜〜っ(抱
未と書いてひつじと読む。
ひつじといえば子羊。
子羊といえばラム。
・・・とてもおいしそうね。
by アグリアス
ティンたん元気かな、ハァハァ(;´Д`)。たまにはメッセたちあげぃ。
あ、多分このスレ見てくれてると思って書き込んでます。他の人ごめんね。
こないだ、千一夜サイト用にPart3のSSをまとめたんですけども。
顔無しさんの保管除外SSって、Part3にもありましたっけ?
>>446 個人的にそのflash、テンポや間が悪すぎて(演出とか、間奏部分とか)あんまり好きになれんかった。
元歌が大好きだっただけに、自分の間が出来上がってて余計にそう思ったのかも。
新年早々、オヴェリア様から「お年玉」と称する一抱えもある包みが届いたアグ。
不審に思いつつ開けてみると、出てきたのは巨大なラムザぬいぐるみ(アホ毛付き・ふかふか)。
アグ「バっ、バカにしている! この私にぬいぐるみなど……
ら、ラムザのぬいぐるみなど…………
………」
ぎゅー
そして、とりあえずアホ毛を
撫でたりひっぱったり扱いたり
してみるアグたんであった。
やはりそのぬいぐるみはアグたん専用の抱きまくらになるのであろうか。ぎゅー
>>445 > こないだ、千一夜サイト用にPart3のSSをまとめたんですけども。
昼寝士さん、まとめありがとうございました。次回更新の時に使わせていただきます。
今度FFTのテンプレも作っておきますね。すみませんでしたm(._.)m
> 顔無しさんの保管除外SSって、Part3にもありましたっけ?
いえ、ありません。Part2の2本だけでした。
あ、新年最初の書き込みなので、遅ればせながら。
あぐましておめでとうございます!
今年も皆さんとハアハアするようなアグに出逢いたいと思っています。
職人の皆様に期待……。
あぎゅりえす
ムスアグSS書きたいんですが、ここにうpしていいでしょうか?
>453
うpしてよし!(・∀・)b!
超 期 待
456 :
453:03/01/08 17:34 ID:Ng+MlQxB
結構長いので、少しずつうpします。
拙文お許しください…。
最初はただただ無礼な男だと思ってた。
無礼で、軽薄で、お調子者。
でも、戦闘においてはなくてはならない重要な戦力で、
パーティにおいてもなくてはならないムードメーカーで、
いまでは私にとって―――
ある日の酒場でのこと。
「やっぱりー、男の人はぁ、抱擁力があってー、知的でー、強くてー、横顔がかっこ良くってー」
「おいおい、その辺にしとけよラヴィアン。一生嫁に行けねーぞ?」
「うるっさいわね、ムスタディオ!言っとくけど、あんたなんか論外よ論外」
「何言ってんだよ、お前の理想に適いそうな男なんてこのイヴァリース中探したって、俺ぐらいのもんだぜ。
いいの?この俺にそんなこと言っちゃって」
「…あんたってほんっっとイヴァリースで一番の幸せ者だわ…。
ねぇ、何とか言ってやってくださいよ、アグリアスさん」
ラヴィアンに話を振られたアグリアスは、
「あぁ、聞いていなかった。何だ?」
と言いながら上着を羽織った。
席を立とうとするアグリアスに、ラムザは声を掛けた。
「アグリアスさん、もう宿に戻るんですか?」
「飲み過ぎたようだ。早めに休むよ」
そう言って店を出るアグリアスの後ろ姿を、ムスタディオは見つめていた。
「アグリアスさん、そんなに飲んでたっけ?」
アリシアが首を傾げる。
「珍しいですね、あのアグリアスさんが飲み過ぎるだなんて…。なぁ、ムスタディオ」
「そうかぁ?ま、取りあえず飲め!お前もミルクばっか飲んでんじゃねぇよ!」
ラムザの問いに対し特に何も思ってないかの様な素振を取ったムスタディオだったが、
本当は彼には思うところがあった。
アグリアスは実際大して飲んでいた訳ではなかったのだが、この日は悪酔いしてしまっていた。
酒で気持ち悪くなることなどあまりないアグリアスなのだが、
ムスタディオが他の女性メンバーと楽しそうに話していることにさえ嫉妬する自分に自己嫌悪を感じたことが原因していた。
恋愛経験の乏しいアグリアスだが、ムスタディオに対する自分の気持ちが何なのかは気付き始めていた。
しかし、なるべくならこのままこの思いがフェードアウトすれば良いのに、と思っていた。
とにかく絶対に「好き」だなんて告白できない。
こんな堅くてつまらない、女らしさのない女に振り向いてくれる男などいるはずがない。
実際、ムスタディオとはあまり仲が良くないし、他の女性メンバーとの方がずっと親しそうだ。
思いが叶う日は来ない…そう思っていた。
だから最近、アグリアスは戦闘以外でムスタディオと共に時間を過ごすのを避けていたのであった。
しばらく接触しないようにすれば、忘れられるかも知れない。
今日だって、具合が悪くならなくても、途中で帰るつもりだった。
部屋のドアをノックする音がした。
「誰だ?」
「えっと…俺です。ムスタディオです」
え…えぇ?!
アグリアスの胸は一気に高鳴り始めた。
平静を装わなければ…。
深呼吸をして、アグリアスはドアを開けた。
「何か用か?」
「休んでるところ、邪魔だったかも知れないけど、ちょっと様子が気になったんで。
気分はどうだい?酔いは抜けてきた?」
アグリアスは目を合わせないようにして答えた。
「あぁ。横になっていたら大分良くなった」
「そうか、そりゃ良かった。でもこれ、一応薬持ってきたから飲みなよ。あと水も」
アグリアスは薬の包みと水筒を受け取った。
優しくされると、嬉しいけど、何だか切なくて、いてもたってもいられなかった。
「ありがとう。水筒は明日返す。ではまた明日…」
「待った!!」
アグリアスが閉じようとしたドアにムスタディオが手を掛けた。
「最近、なんか俺のこと避けてない?」
「そ、そんなことはない…」
「こっち見て話してくれよ」
アグリアスはその言葉に一瞬ビクッとしたが、やはり視線は逸らしたままで続けた。
「本当に何でもない、避けてなど…」
「こっち見ろってば」
ムスタディオの手がアグリアスの頬に触れた。
ようやくアグリアスは視線を合わせたが、わずか数秒で彼女はバッと後ろを向いてしまった。
顔が凄い勢いで紅潮していったのがわかったからである。
酒のせいで、頬は既に赤かったから、アグリアス本人にしか気付かない変化であったが。
「…わかったよ。それじゃまた明日」
ムスタディオは諦めたように部屋を出て行った。
アグリアスは、部屋の床にへなへなと座り込んでしまった。
「そうだ、薬…」
アグリアスは貰った薬を飲み、水筒の水をガブ飲みした。
「はぁ…」
あまり一緒にいないようにしてからも、アグリアスの気持ちにはさほど変化は訪れておらず、
むしろ顔を見ていない分余計気になっていたくらいだった。
「どうしたら…上手に忘れられるのだろう…」
ベッドに入り、布団を被ったが、頭の中がもやもやして、なかなか寝付けなかった。
466 :
453:03/01/08 17:53 ID:Ng+MlQxB
とりあえずここまで。
読んでくださった方ありがとうございます。
ヽ( ゚д゚)ノ ウマァァァン
(*´Д`)真面目アグモエー
真面目で照れ屋なアグ萌えー
しかしラムアグ一筋な俺としてはこのSSが萌えなのが非常に悔しい(w
とりあえず続き希望。
俺もラムアグ萌えだけど、文章うまいからイイ!
けど、最近顔だけアグたんがいなくなったな・・・。
あのコメントには笑わしてもらってたんだが。
再登場希望!!
あったなあ。俺は「まことですか母上ッ!?」のびっくりアグたんが
好きだった。
一人の人がやってたのかな?
472 :
453:03/01/08 23:22 ID:Ng+MlQxB
感想ありがとうございます。
私も基本的にはラムアグ萌えです。
では続きです。
翌日の夜。
夕食を食べ終え、部屋に戻ろうとしたアグリアスは、ムスタディオに水筒を返さなければいけないのを思い出した。
アグリアスは、やはりムスタディオの方を見ないようにして話しかけた。
「ムスタディオ、昨日はありがとう…。水筒、返したいのだが、部屋まで持って行っていいか?」
「あ、俺いまからちょっと出掛けるんで、帰ってきたらアグリアスさんの部屋まで取りに行くよ」
「あ、あぁ、では、後でな」
アグリアスは部屋に戻り、ドキドキしながらムスタディオを待っていた。
なかなか来ない。こんな緊張した状態からは早く抜け出したいのに…。
待ちくたびれた頃、ようやくドアをノックする音がした。
「アグリアスさ〜ん」
ドアを開けると、顔を真っ赤にして足下はフラフラのムスタディオがいた。
「ど、どうしたんだ…ちょっと、すごく酒臭いし…」
「やー、今日は俺が飲み過ぎちゃったみたいで〜〜」
「と、とりあえず、入れ!座れ!」
アグリアスはムスタディオを部屋に入れると、
「ちょっと待ってろ」
と言い、水筒を持って流し場へと駆けて行った。
アグリアスが部屋に戻ると、ムスタディオはソファにひっくり返っていた。
「大丈夫か?ほら、飲め」
ムスタディオは差し出された水を飲み干した。
「あ、ありがと〜〜アグリアスさん」
「どう見ても飲み過ぎだぞ!どうしたんだ」
「いや…ちょっとね…気付のつもりだったんだけど」
「気付?何の気付だ」
「いやぁ…おー、頭がいてぇ」
「全く…立てるか?」
アグリアスは手を差し延べた。
その時のアグリアスの顔は、ムスタディオに負けないくらい赤かった。
「ありがとーございます」
と言ってムスタディオはアグリアスの手を掴んだ。
ところがムスタディオは立ち上がろうとしたのではなくて、アグリアスの手を自分の方にグイと引っ張ったのだ。
「?!う、うわぁ!!」
アグリアスはバランスを崩して、ムスタディオの上に倒れ込んだ。
目を丸くして言葉を失うアグリアスの背中を、ムスタディオの腕は抱き締めた。
「ちょっちょちょちょっ…ちょっと!な、なに…?!」
戸惑うアグリアスを無視するかのように、ムスタディオの手に力が入る。
「ごめん…俺、ずっとこうしたくて…」
ムスタディオとアグリアスの目線が合った。ムスタディオの目は真剣だった。
10秒くらい、そのままの状態が続いた。
ムスタディオは一瞬目を伏せると、パッと手を放し、
「い、いやー、ごめんごめん!ごめん、俺、酔ってるわぁ。いまの、忘れて!」
と言い、呆気に取られているアグリアスに背中を向けて、フラフラと部屋を出て行った。
「あ…な…な、なんだったんだ…」
アグリアスは、頭の中を整理できなかった。整理どころか、沸騰寸前だった。
その日、アグリアスは全く眠れなかった。
翌日の朝。
「ふあぁ…」
「アグリアスさん、眠いんですか?」
ラムザが声を掛けてきた。
「あぁ、ちょっと、寝付けなくてな」
「大丈夫ですか?アグリアスさんが欠伸なんて、珍しい…あっ、ムスタディオおはよう」
アグリアスが振り返ると、ムスタディオがいた。
「ラムザ、アグリアスさん。おはよう」
ムスタディオはいつもと変わらない調子だった。
「あ…」
アグリアスが言葉を考えているうちに、ムスタディオはさっさと馬車に乗り込んでしまった。
「……」
昨日のは、一体どういうつもりだったのか。ただ酔っていただけだったのか。それとも…。
「アグリアスさん、どうかしたんですか?」
ラムザが不思議そうな顔でそう尋ねた。
「あ…あぁ、何でもない。そろそろ出発だな」
朝の日差しは寝不足の頭には眩しすぎて、アグリアスは少しクラクラした。
「よーし!今日のラファの下着の色を当ててみせよう!むむむ…」
「むむむじゃねーぞコラ!俺の妹に変な妄想してんじゃねぇ!」
今日も朝から騒がしい。
昨日のアレは、もしかしたら夢だったのかも知れない…。
ムスタディオとマラークのやりとりを見ながら、アグリアスはそう思った。
480 :
453:03/01/08 23:38 ID:Ng+MlQxB
今日はここまでです。
まだここまでしか書いていません。
読んでくださった方ありがとうございます。
このスレを見て、俺的総括したメンバーの性格
ラムザ
ゲームでは弱いがなぜかこのスレでは強い。むちゃくちゃもてる。
純真無垢。恋には鈍感。料理、音楽などもうまい。下戸である。
同姓からも尊敬される。
アグリアス
強いがなぜかラムザよりは弱い。しかしなんといっても美人。
身長はラムザよりほんの少し低い程度。ラムザに惚れてる。
料理は意外とうまいのでは?しかし、見栄えや繊細な味つけがうまいのではなく
戦場での野営経験から培った戦料理しか作れない。作り方も豪快そのもの。
恋愛に関しては小学生なみ。赤面症。駆け引きは大の苦手。
趣味は剣の素振り
482 :
481:03/01/09 00:28 ID:912IcoMZ
続き
ムスタディオ
部隊の盛り上げ役、しかし引き立て役になる事も多い。
本能に忠実。ラムアグの関係を面白がっている反面フォローもできる。
酒は強い方。
メリアドール
このスレを見て一番印象が変わった人物
性格はいたって普通。女性らしさもちゃんと持ち合わせている。
ラムアグの微妙な関係に何かとフォローするが、
自分も密かにラムザに好意を抱いている。
しかしそれはラムザを死んだ弟に重ね合わしているからだと思い込んでいる。
だまされやすい性格で痛い目に会う事もしばしば。
一度恋をすると豹変したように一途になる。
...-‐――--.. 、
/::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ラヴィアン、アリシア、聞いてくれ。
l:::::::/\:::::::::::::::::::::::::::l そこで私はオヴェリアさまに言ってやったわけだ。
l/l/ \l\l\:::::::ノ)) 「オヴェリアさまが悪いのではありません。
|::l ○ ○ |:::|6))) オヴェリアさまを利用しようとする奴らが悪いのです」
|::l`ー- -‐ |:::| )) もうね、ずびしっと決まったね。ずびしっと。
|::! l:::l
l/. ;/
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...-‐――--..!、
/::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ・・・オチ、ラムザに取られたよ。
l:::::::/\:::::::::::::::::::::::::::l
l/l/ \l\l\:::::::ノ)) ・・・・・・草笛・・・・・か・・・・・・
|::l |:::|6))) ・・・・・・・・・・・・練習しよっかなぁ
|::l`ー-, -‐ |:::|ヽ、))
|::! / _ l:::l l
l/./  ̄`Y´ ヾ;/ |
______,| | |´ ハ
| | |-‐'i′l
|__ | _| 7'′
( (  ̄ノ `ー-'′\
 ̄  ̄ \
485 :
HC:03/01/09 11:42 ID:D065azy9
遅れながら…あぐましておめっとさんです>住人の皆さん
…イヴァリースとはかけ離れてるにも関わらず、FFTメンバーズの初詣を想像開始…
例によって、アグタソは慣れてないから転びそうになってラムザが支える!(基本)
・・・こっそり願い(恋愛成就)を書いた絵馬をムスタに見つかり、慌てるアグタソを思いついてしまった…
もしくは、おみくじをどきどきしながら見る面子というのも…
以上、妄想屋の変Cがお送りしました。
それから約2週間後の夜。
ラムザ達一行は、野営の準備をしていた。
「き、きゃあッ!ちょっと何コレ!!」
ラファの悲鳴にみんなが駆け寄った。
「どうしたんだ、ラファ!」
「これ、エッチな本!荷物整理してたら出てきたのー!誰のよ!」
「あっそっそれは…」
ムスタディオの顔が青くなった。
「あっ、[ムスタディオ専用]って書いてあるわ!ちょっと!ムスタディオ!」