ドラクエの小説スレッドパート1

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続きを震えながら楽しみにしています
517諸葛亮スラリソ ◆5VrxCs/8kA :03/05/23 20:20 ID:ySy5ECVi
「ならば。」
自分の中の時が一瞬止まる。
「とどめは俺にやらせてくれ。」

「え?」
自分が何を言ったか一瞬理解できなかった。
「…何を言っているのですか。」
「俺が代わりにやるといっている。」
彼女にはわかっている。
たとえどれほど憎んでいようとも。
たとえどれほど傷つけても。
血を分けた親を殺めるのは…
「…わかってしまうものなのですね。」
「まあ、な。ここまででも相当な覚悟が必要だっただろうからな。」
剣だけが震えているわけではない。体全体が震えている。
彼女には…無理だ。

俺はわかっていたはずだった。
…俺の目的はすでに、ルプガナに着いた時から決まっていたのだから。

「稲妻の剣、借りるぜ。」
「はい。」
ゆっくりと剣を受け取る。
国王がにらみつけたような気がしたが。
それは俺にではなく、スイに向けられているのだろう。
そして俺は無心で剣を──
振り下ろす。
肉を斬り、骨を絶つ感覚。これからも慣れる事のない感覚。

この瞬間、俺の一生の中で忘れられない時となった。
518諸葛亮スラリソ ◆5VrxCs/8kA :03/05/23 20:25 ID:ySy5ECVi
…見ない花だな。
ふと教会の横のそれが目に入る。それは鮮やかな赤色だった。
ええ。かつて、ロトの子孫たちが上の世界から伝えたとされる花です。
花?変なものを伝えたもんだな。

その華の紅がまるでそのまま視界に広がるようで。

…はぁ?なんか嫌な名前だな。
呼称の一つですよ。「死人華」は。「彼岸花」とも「曼珠沙華」とも呼ばれます。
難しい呼び方をするんだな。
上の世界の…多少変わった風習を持つ国家にあったそうです。
それは血に染めたの如く紅い花。
この花は手折ってはいけないのです。

眼前に広がる鮮血。
辺りを包む炎の赤よりさらに紅く。
自分の服をさらに紅く染めて。

………

……

今 ふと弟切草を思い出した
小説楽しみにしてます!
520諸葛亮スラリソ ◆5VrxCs/8kA :03/05/24 00:10 ID:E9qSYadA
赤々と燃える王宮。
あれから好き放題に稲妻の剣の力を行使した。
様々な思いを込めて一撃一撃を放った。
それは過去との決別か。
もしくはたった今、すべてが始まったのだろうか。
俺には…知る術はない。
「これで、ムーンペタ王朝は滅びますね…」
「そうか?」
「各国が間違いなく攻撃を仕掛けてくるでしょう。…裏で攻撃機会を狙っていたようですから。」
「それだけ、恨みを買っていたとのことか。」
「ええ。」
語尾には一抹の寂しさ。
ここはムーンペタ南の橋。
迫り来る追っ手から逃れてここまで来た。
橋から見える王宮は紅く燃えて、夜空を朱に染めていた。
「…これから…どうするつもりですか?」
「ん。さあな。あてはないよ。」
とりあえず、顔を見られたかはわからないがしばらくはここには来れまい。
まあ、次来る機会はないのかもしれないが。
「とりあえず、当分はここにはこれませんですね。」
「そうだな。ほとぼりが冷めるまで…いつになるかはわからんが離れるべきだな。」
「私は南西に抜けていきたいと思います。」
町へのつながる通路を見る。
騎士らしき影が見える。
暗闇でよく見えないが、追っ手のようだ。
「…速いですね。」
「もう少し感傷に浸りたかったが、そう簡単には逃がさないわけか。」
「急ぎましょうか。」
トルファは少し考え込む。
521諸葛亮スラリソ ◆5VrxCs/8kA :03/05/24 00:11 ID:E9qSYadA
「いや。俺はここでやつらを食い止める。」
「え?」
「二人で逃げるよりばらばらになって逃げたほうがいいと思うしな。」
騎士がこちらに向かってくる。
「俺には逃げる算段があるといっただろう?」
「…そうですね。」
「今のスイに戦わせるワケにはいかないんだ。だから早く逃げろ。」
自分のことは自分が知っていることだろう。
スイの稲妻の剣は力を行使しすぎたためか少し光が鈍っている。
それに、彼女自身。
いろいろとあったから少し彼女は休むべきだと感じている。
「申し訳ありません。」
「さあ、早く。」
スイが一歩踏み出す。
「トルファさん。どうか、お気をつけて。」
「ああ。無事に逃げ切ってみせる。」
そういえば、初めてこの時、名前を呼んでくれた気がする。
「スイも気をつけてな。」
「はい。生きて、どこかで。出会えることを。」
だから自分も名前を呼んだ。
「ああ。」
振り返らない。もう、互いに迷いはない。
暗闇に目の覚めるようなドレスが溶けていくように消えて行った。
「さあ、しばらく俺と付き合ってもらうぜ。」
橋の上で向き直り両手剣を構える。
相手は、三人。
とはいえ、実際に実戦経験があるかは怪しい。
恐らく今のトルファの足元にも及ばないだろう。
「遠くに逃げてくれよ。」
そう呟いた。