ほっしゅ
ワクワクほしゅ
360 :
華龍光臨:03/01/08 18:17 ID:JfomK1XY
完全な闇が支配するその中。
うとうとしているときにぼやけた視界の隅で何か、光った。
焚き火のそれではない。
いうなれば蛍のような光であった。
目を擦り、光へと近寄る。
「おお…」
光の発生源は石となった村人。あの老人は自分を恨んでいるのではないかといっていたがこの輝きは全く別のもの。そう思えた。
光を失ったこの村に光を取り戻さんという思いが伝わってくる。
意を決して石像に手を触れてみる──
流れ込んでくる記憶。
その人の今までの生きてきた記憶が頭の中に流れ込んでくる。
頭の中が破裂しそうな、そう思えた。
気づいたときには石像の光は弱々しくなって、ついには消えてしまった。
…石像となった村人の最後の力であったのだろうか。
頭がガンガンする。意識が朦朧とする。だが、この村の者たちの記憶をすべて…すべて受け止めることができたなら、できたならこの村も救われることだろう。
わかっていてもその足取りは重い。
この時を逃せばもう、二度とこの村が生き返らないような。そんな気がした。
ふと、前方に目をやる。人影が…
アルスだ。この異変に気づいたか…
目が合う。無言ですれ違う。
…お互いに余裕はないようだ。アルスも誰かの記憶を受け止めたか。頭を抱えていた。
後で話し合おうということを目で伝えて次の記憶へと向かって言った。
少しだけ明るくなる。朝だろうか。
そのころになってやっと全員の記憶を見ることができた。
痛む頭を水で冷やしながら、休みながらであったが。
だが、その甲斐はあったのか…
未来への鍵。それを見つけたような。そんな顔をしていた。
巨大な石柱の元で二人は大の字になって眠っていた。
他のみんなが起きてそんな二人を見たのはもう少し後のことである。
361 :
華龍光臨:03/01/11 07:06 ID:Wbmpw38p
ここは教会。劉備が筆をとる。
「兄者、それで何か手がかりになりそうな記憶はありましたか。」
「雲長、待ってくれ。今、書き出している。」
口に出すのは色々な記憶がごちゃ混ぜになって難しい。だから、一旦その記憶を書き出そう、としたのである。
白紙の巻物に筆を動かす。
素直に受け止めたことを書き込む。
退屈そうに張飛があくびをする。
さらに数時間。
巻物三つ分に書き込んだ村の者たちの記憶。
流れてきた記憶はその者の生涯のほんの一部分であるのだけれども。
「終わった?」
「ああ。私の見た記憶はこれだけだ。他の村人の記憶はアルスが見た。…おそらくそろそろやってくることだろう。」
関羽が巻物を手に取る。目に付いたものがあるようだ。
「兄者。…これが気になりますな。」
大きく劉備が背伸びしながら関羽を見やる。
バーテンの記憶。小さな男の子が何かそのバーテンに話しかけている。
傍らには父親らしきものがいる。
かつてはここは戦場であるということで地下に何かあるらしきことを話していた。
そのような記録であった。細かいことも詳しく書かれている。
「地下に何かがあるということね。」
「…!なるほど!」
「兄者、わかりましたか。」
劉備が立ち上がる。
「今までこの村の中を隅々まで歩いたが…」
うんうんと孫尚香が頷く。
362 :
華龍光臨:03/01/11 07:07 ID:Wbmpw38p
「子供の石像は一つ、それも幼い女の石像しかなかった。」
「そうですな。」
孫尚香は鳩が豆鉄砲を食らった感じの顔をしていたが思い起こしてみると確かにそうだった。
「村のいずこかにまだ見つかっていない石像があるはずだ。」
「その残っている石像はおそらく我らの目の届かぬ場所。…かつてここが戦場だったころの名残にあるのだと思われます。」
「うむ。今まで風雨に晒された石像が無事なのだ。風雨に晒されない場所にあるだろう石像は無事に違いない。」
拳を上に突き上げる。
「翼徳、起きろ。為すべき事は決まったぞ。」
「起きてるぜ。…早く探しに行こうぜ!」
さっきまで鼾を掻いていたが、よっこらせと言う声とともに張飛が立ち上がる。
「うむ。」
教会から出てきたところにアルスたちと出会う。
「アルスか。どうやら何か掴めた様だな。」
「はい。」
アルスから記憶をまとめた巻物を受け取る。ざっと目を通す。
「これを見てくれよ、劉備さん。」
そしてキーファから切れ端を受け取る。
切れ端と巻物、それを見比べる。
巻物には劉備の予想通り、無事であろう子供がいることを確認できた。
「…違いない!まだ、この村は死んではいない。」
顔を上げた劉備の目に一瞬、龍の幻が見えた。
まだ、目覚めるべき龍は眠っているのだろう。
永遠の眠りでない限り、眠りはいつかは覚めるもの。
予想が確信に変わるとき。
…龍が再び、蘇る。
363 :
華龍光臨:03/01/13 02:48 ID:/n42OQir
ザッ、ザッ。
ザッ、ザッ…
「兄者、この辺にはないようだぜ。」
ザッ、ザッ。
ザッ、ザッ…
「ここでもありませんな。」
ザッ、ザッ。
ザッ、コツッ…
「ありました!劉備さん。」
「おおっ!ついに見つかったか!」
村の西、枯れ木が立っている辺り。
よくよく見ると壁に「目印」と書いている。
今考えてみると、すべての鍵はこれにあったんだろう…
土を払う。足元に鉄製の扉が。
「これを持ち上げりゃあ、いいんだな。」
張飛が扉を持ち上げる。大きな音を立てて扉が取り除かれる。
「これを小さな子供が持ち上げたというのかしら?」
それは子供があけるには到底無理な扉。
大人であっても簡単には持ち上がらないだろう。
「ここに板があったようですね。」
扉横に木の板が。そしてその下には空洞が。小さい子供なら入れるだろう。
「なるほど、扉ではなく、この空洞から出入りしていたということか。」
「行こうぜ、兄者!」
階段の奥からすでに降りて言った張飛の声が聞こえる。
「ああ。」
イイ!!(・∀・)
365 :
華龍光臨:03/01/14 07:28 ID:aqG7iBPZ
カンテラに火を点す。
カンテラからの光が辺りを包む。
そこは思った以上に広く、しっかりとしていた。
何気なく壁を見やる。
そこには子供が書いたと思われる字で…
「『ひみつきち その2』と書いてありますね。」
「ということはその1があるわけだな。」
アルスが読む。そしてキーファがそれについての観想を言う。
「他にも地下室があるというわけね。」
通路を歩く。ここは相当大事な拠点だったのだろうか。
通路の脇にはボロボロでその役割を果たせない装備が山積みになっていた。
折れた銅の剣、先端が欠け、突き刺さらなくなった槍、ズタズタにされ鎧の役割を果たさなくなった皮の鎧…
絶望に近い、そんな戦況だったのだろうか。
それでも信じる何かのために戦ったのだろう。
「この手記を見ると、兵たちの士気は高かったようだな…」
部屋の隅の引き出しにあった手記を眺めながらそう呟いた。
「兄者、石像は見当たりませんぞ。」
「ここではなく、もう一つの地下室にある可能性があるからな。とりあえず、ここを色々調べてみよう。」
劉備はいつでも石化を治療できるようにその手に天使の涙を携えていた。
…奥への通路に目をやる。
あの梯子は何処へと通じているというのか。
吸い寄せられるようにその梯子を上っていく。
そろそろ、出口だな。
366 :
華龍光臨:03/01/14 07:35 ID:aqG7iBPZ
劉備を迎えたのは海沿いの町特有の潮風。
町中心のあの石柱。その上に劉備は立っていた。
この穴は人の手が加えられた跡はない。おそらくは自然に開いたものだろう。
自然の力にはほとほと驚かされる…
「風が強いな。」
辺りを見回す。島を一望できる。
戦時にはここに見張りを立てていたのだろうか。
空には真っ黒な、何物も通さない思い雲。
邪悪な何者かの意思が具現化したような雲。
人の絶望を喰らいそれは広がっていったのだろうか。
そして眼下には生気をなくした町が広がる。
…否、龍が眠っている大地。劉備は確信していた。
龍が目覚めれば、必ずやこの地に希望を取り戻してくれる。
どのような形かはわからないが、それだけは確信していた。
また、潮風が吹きつける。先ほどより強い…
劉備の手に握られていた天使の涙がその潮風にさらわれる。
しっかり握っていたはずなのになぜか風にさらわれた。
まるで、意思を持っていたのかのように…
風に乗って、それはダイアラック中に。
煌くそれは眠りし龍の目を覚まさん…
念の為ほす
保
このスレのリレー小説は、
>>336 で止まってますよ〜
と、告知しつつ 保守
ヒョイ , ,,,,.,.,,,.
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このスレッドは大角あらくれが保守中です。
やる気はありませんが、なんら問題はありません。
タリー
タリー タリー
(~~Y ̄ ̄\ タリー
\ _) ▼ | タリー
\ 皿 (~\_/ ̄ ̄\__/~)(~~\_/ ̄ ̄\_/~~) タリー
/ つ \_|▼ ▼ |_/ \_|▼ ▼ |_/ヽ、
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だれかこのスレにザオリクを
保守
374 :
華龍光臨:03/02/10 05:29 ID:bvZhrxi7
潮風に乗ってそれは珠のように。
潮風に乗ってそれは華のように。
潮風に乗ってそれは、まさに風のように。
潮風に乗ってそれは、「龍」のように。
天使の涙が宙を舞う。
煌くそれは風に乗って、町の東へ。
目でそれを追う劉備。
そして煌きはある場所にて消えた。
それと同時に煌く空。
そう、空は…いつの間にか晴れていた。
まぶしいばかりに輝く太陽。
突如晴れた空に目が慣れない。
脳裏を走る龍の姿。
確かに見た。「水龍」の姿を。水の精霊とも名乗っていたが。
「…錯覚ではない、な。」
目が慣れてきた。そうして辺りを見回す──
石像の穴から顔を出したのは孫尚香。
「あれ?いつの間に晴れたの?…って、劉備何処行くのよ!」
その声は石柱から飛び降りた劉備に向けられる。
だけど孫尚香の呼ぶ声も今の劉備の耳に入らない。
昨日寝泊りした教会の裏辺りで何か動く影を見たのだ。
そのことに気づいた孫尚香も後に続く。
そして、関羽、張飛、アルスたちと続く。
375 :
華龍光臨:03/02/10 05:30 ID:bvZhrxi7
間違いない。
龍は奇跡を起こした。
そこに石化から治った子供がいる。それが何よりの証拠だ。
近くに先ほどまでいたと思われる地下室がある。
あそこに隠れていたため風雨の害を免れたのだろう。
子供はまだ周りの様子がつかめないでいることだろう。
自分の周りに起こったことが信じられないことだろう。
…だけど、それは事実。焦らなくとも、その事実を受け止めていくことになろう。
「やりましたな。」
「…御老人。」
いつの間にか劉備の傍らにあの老人がいた。
「…あれからどのくらいの年月が過ぎただろうか。その間の空白の時間を取り戻せそうな気がしますな。」
老人が子供の下へと駆け寄る。
「ありがとうございます。今日はささやかながら宴会を開くことにしましょうか。」
子供の名はヨゼフ、説明をするにつれ、彼もこの事実を受け止めてきた。
かなりの年月が経ったこと、この町の住民はもう治らないこと、そして──自分だけが助かったこと。
その日は老人がいた焚き火のそばで宴会をやった。
老人もヨゼフも、そして劉備たちもこの町の奇跡を喜び、祝った。
376 :
華龍光臨:03/02/12 01:35 ID:kxZ2rcBj
照りつける太陽。
昨日まで天幕のような雲が覆っていたとはとはとても思えない。
雲ひとつない空。
どこまでも青く、蒼く──
「行かれるのですか。」
翌朝。皆は村の入り口に集まっていた。
ヨゼフは幼馴染の女の子の石像の元にいる。
…事実は知った。だが、やはりつらいものがあることだろう。
その女の子の顔をしっかり焼き付けるかのようにじっと見つめていた。
「うむ。この町の在りし日の思い出はたとえこの村がなくなってもあり続けるものです。…あなた方にもわかりましょうか。」
「ええ。」
ふと、彼の地を思う。
「兄者。」
「わかっている。雲長。」
もう、戻ることはない地。
だけど、彼の地は心の中で在り続ける。
…未来永劫。
いつか彼の地のことを書物にまとめておきたいものだ。
ふと、そう思った。
377 :
華龍光臨:03/02/12 01:35 ID:kxZ2rcBj
「この地に起きた出来事を、各地に伝えていきたいと思います。この灰色の雨、各地に伝えることによって原因を突き止めれるやも…知れません。」
「…お気をつけて。」
「貴方たちの旅にご加護があることを祈っていますぞ。…ヨゼフ!寂しいじゃろうが、そろそろ行くぞ。」
「うん…」
ヨゼフが老人の元に駆け寄る。
「色々と世話になりましたな。では、我々はこれで。」
ここは小さな孤島。
彼にはいくあてがあるのだろうか。…もちろんないだろう。
だけど、心配する必要はない。
なぜなら彼らには龍の加護がある。
そう思えるのだ。
島の隅から一艘の小舟が出て行った。
老人が「外界との接点を持つ唯一の手段」といっていたあの小舟。
あの小舟は二度と、戻ることはないだろう。
そして主なきこの村は滅ぶことになろう。
…だけど、記憶の中の村はけして滅びることはない。
いつまでも、いつまでも。
毎度有難うございます。
面白く読ませてもらっています。
379 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/02/17 23:34 ID:TFrBMJ2M
しばらくこれませんでしたけどちゃんと進んでいたんですね。
嬉しいです、『華龍光臨』のスラリソさん。
386 :
華龍光臨:03/02/20 08:19 ID:U0Jjrm1d
何処までも空は蒼く──
何処までも海は藍い…
ここがあの地、ダイアラック、…とは思えない。
肥えた土地、豊かな緑。海に広がるは珊瑚礁。
あの地とは思えないほどここは豊かになっていた。
それでもここがダイアラックだとわかるのはあの石柱が今も変わらず在り続けたのであったためである。
この石柱は町の終わりを見届けた。
そして今、新たな始まりをも見届けようとしている──
「おお、人がいたか。…見たところ旅人のようじゃの。」
ダイアラック跡地。そこには一人の老人と数人の若者が集まっていた。
「あなたは?」
「…わしはシムといっての。ここに町を作ろうと思っているんじゃ。いま、そのための打ち合わせをしているところじゃ。」
「ここに町、ですか。」
「左様。ここにはかつていくつもの町が興された。」
シムと名乗った老人は遠い目で空を眺めた。
「ここにはひきつける何かがある。そう信じてここにやってきた。その答えはすぐそばにあったじゃがの。」
シムは石柱に手をやる。ここから少し離れた浜辺には彼のものと思われる船が停留していた。
その船から色々な資材が小舟を使われ運ばれていく。
聞くと、あれは彼の全資産を投げ売って買ったものであると。
すべてを捨て、再出発をここで図ると。
退屈な日常を捨て、危険な冒険に身を躍らせるということを。
387 :
華龍光臨:03/02/20 08:19 ID:U0Jjrm1d
「ところで、おぬしらは旅人じゃの?」
「ええ。そうですが。」
多少呆けていた劉備に代わってアルスが答える。
「うむ。わしたちはこれよりここで町を興す。じゃが、わしらだけではどうしても人手は足りない。」
「人手がほしいって訳ね。それとこの話に乗ってくれそうな有力者もいれば言うことなしね。」
「お嬢ちゃんはよくわかってるじゃのう。…で、お嬢ちゃんは何かいい案があるというのかの?」
「このマリベル様に任せておいて。最悪でも人手の協力のほうは何とかして見せるわ。アルス!行くわよ!」
「俺も行こうか。親父への話をつけてくるぜ。」
こういうことはこちらの世界の住民であるアルスたちに任せるべきだろう。劉備はそう判断した。
あれから二日。
二日でこれほどのことができるとは思いもしなかった。
自分たちはここで狩りや釣りをしつつ気長にアルスたちを待つつもりであった。
すでにグランエスタード城下町ではこの開拓村へ行かんとする勇士を募っているようだ。
キーファが持ってきた書状。
そしてフィッシュベルよりやってくるアミット船。
なにもかも予想以上であった。
「シム爺さん。これが親父からの書状だ。」
バーンズ王からの書状を手渡す。
「おお。王子自ら…」
「よせやい、柄じゃないぜ。」
書状の内容については、この島はグランエスタード国の支配下に置く。とのこと。
王自身こういうことはなれていないようだ。
まあ、仕方がないのだろう。何せついこの間まで、グランエスタード島しかなかったのだから。
書状には後々バーンズ王自らこの地へやってくるとも書いてあった。
シムとその連れはこれには驚きを隠せない様子だ。
388 :
華龍光臨:03/02/20 08:19 ID:U0Jjrm1d
「そろそろパパの船が見えるはずよ。」
フィッシュベル一番の金持ちアミット家の所有する船が徐々に見えてくる。
舵を執るはボルカノ。アルスの父親。グランエスタード島に知らないものはいない凄腕の漁師。
張飛曰く。もし戦い方を知り経験を積めば一騎当千の猛者になりうる資質を持つ、と。
近くの浜辺にアミット船が着く。
個人所有の船のためそれほどの数の荷物は載せることはできないが少なくともこれからの必要最小限の物資を持ってきたようだ。
そしてシムと何かを話す。
しばらくの間、この船が必要な物資を人手を運搬するということだけを聞くことができた。
これからの急務は簡素でもいいから港の整備ということになりそうである。
この村は必ずや大きな町となるだろう。
劉備はなんとなくだが、確信があった。
…なぜなら、ここには「龍」がいる。
「龍」がいる限りこの村は外敵の恐怖にさらされることはないだろう。
あの人たちは無事に…生きたのだろうか──
今はもう亡くなっているはずの、過去で出会った二人を空に思い描いていた。
ヒョイ , ,,,,.,.,,,.
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藤原カムイ作のDQ7漫画を勧められて読んでみました。
すごく面白かったです。
同時に、華龍光臨を思いました。
どちらも物語の背後に歴史の大河があるのだってことが
きちんと描かれていて、だから面白いのかなあと思いました。
リレー小説もあわせ、楽しみにしています……。
391 :
華龍光臨:03/03/01 13:52 ID:48aXMlI5
<聖獣>
「なるほど、そういうことがあったのですな。」
「ええ。こちらの世界に着てから毎日が驚きと発見の連続でして…」
フィッシュベル。アルスの家。
あれから物資の運搬をしているうちに夜が更けてしまった。
さあ、グランエスタード城の宿に戻ろう。としたところ、もう夜が更けているのでうちに泊まっていってください。とアルスが申し出た。
「最初アルスが連れてきたときはどこかの王様かと思ったぞ。」
「はは、そうですか。」
間違いではない。蜀漢を建て、実際に皇帝と名乗ったのだから。
「では、もう一杯。」
「ありがとうございます。」
ボルカノが劉備のグラスに酒を注ぐ。
今、ここにいるのは二人のみ。
張飛も関羽も孫尚香もすでに寝ている。
寝付けなく物思いにふけているところを酒に誘われたのだ。
「明日にはもう行くのか?」
「ええ。まだまだたくさんの石版があるようです。この石版の謎を追っていけば何かつかめるはずです。」
机の上に石版を出す。ボルカノはまじまじとそれを見つめる。
「…息子をよろしく頼みます。」
「わかりました。貴方も確か明日には漁に出られるとか。…お気をつけて。」
劉備が席を立つ。二階ではなく外へ足を向ける。
「…散歩か?」
「ええ。今日は、どうやら寝付けそうもありませんから。」
「夜風に当たりすぎないようにな。」
「わかりました。」
そういって、外へと出る。
夜風は少し、冷たかった。
392 :
華龍光臨:03/03/05 04:05 ID:/I3xQvhU
見慣れた星空とは違う空がそこにある。
…不安はある。
果たしてやっていけるのだろうか。
空に煌く星も違うような場所で右も左もわからず、ただ導かれるままに進んでいく。
だけど。
「願わくば、この世界のあらゆる民に希望の光があらんことを。」
…迷ったりする。転んだりする。時には逆走したりもする。
だけど、目指すことは何時、何処にいようと同じ。
民の平和、平穏。
まだ、封印されている台地には魔物の圧力の中で苦しんでいるに違いない。
そう。あの死道の悲劇を繰り返さないのだ。
死道の手、この地にも及んでいるのはすでに確証は得ている。
あのまがまがしい炎。忘れるはずもない。
必ずや死道の野望を止めて見せる。
剣を掲げ、自分の意思を確かめた。
…目的さえ見えていれば、いつかたどり着けるはず。
そう、信じて。
393 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/03/06 08:18 ID:6pizl4Gu
ここまで読んだ。
394 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/03/09 22:00 ID:mf00/VEy
面白いです。
しかし、劉備はこのままでいいのでしょうかね(w
395 :
華龍光臨:03/03/10 12:20 ID:zLtpaaJn
翌朝。
身を起こし窓の外を眺める。
窓から差し込む朝日が…
げしっ。
日差しが痛い、わけがない。
視界が斜めに移る。
目覚めの一撃にしてはあまりにも痛い。
いわずと知れた弓腰姫様の回し蹴りである。
「起きるの遅い!」
「…すまない。」
一番起きるのが遅かったようだ。
下では慌しいようだ。マリベルの声が聞こえる。
どうやら皆来ているらしい。
「準備はできてるの?」
「昨日のうちに済ませておいた。」
そう言って荷物を手に取る。もっとも簡素な道具袋に携帯食、僅かな路銀、そして雌雄一対の剣しかないためこじんまりとしたものであった。
「雲長たちはもう下にいるのか。」
「そうよ。もっとも、準備に追われているけど。」
396 :
華龍光臨:03/03/10 12:39 ID:zLtpaaJn
劉備が梯子を降りたとき、ちょうど張飛の準備が終えたところであった。
「おせぇぞ!兄者!」
「お目覚めになりましたか。」
二人は椅子に腰掛けていた。
ボルカノの姿はない。開拓村への物資の輸送のため忙しいとのこと。
「ああ。遅くなってすまない。私の準備はできている。」
台所にはマーレ、そしてアルスの姿が見える。
「あとはキーファが来るだけね。」
「弁当を作っているからもう少し待ってて下さい。」
台所からアルスの声がする。マーレとともに弁当を作っているようだ。
「申し訳ない。色々と世話してもらって…」
「いやいや、アルスが世話になってるんですよ。このくらいはお安い御用ですよ。」
てきぱきとサンドイッチを作っていく。
こちらの世界に来てから食事も慣れないものが多い。
…張飛は相変わらずではあるが。
だけど、どこか懐かしい感じがする。そう思ってもいた。
味とかそういうものではない、根本的な何かがそう告げている。
「アルスをよろしく頼みますね。…アルスも足手まといになるんじゃないよ。」
マーレは大きめのバスケットを用意している。
それに入る弁当の半分は張飛の腹に納まるだろう。
「…にしても、キーファ、遅いわね。」
キーファがやってきたのはそれから一時間後のことだった。
続きはまだ?
ほっしゅっしゅ〜
399 :
華龍光臨:03/03/16 15:10 ID:fyw3NHEz
「準備はいいか?」
「はい。準備はできてます。」
ここは謎の神殿。劉備が暇さえあればやってくる場所。
誰がここにそんな神殿を立てたか、何故立てたか、謎に包まれている神殿。
まだ、ここにはたくさんの石板の台座がある。
この数だけ歴史から葬られた過去がある。
この数だけ魔物の恐怖におびえる民がいる。
「いざ参らん!」
かちりと石版をはめる音が静かな神殿内部に広がる。
光の渦が新たな土地へといざなう。
空を見上げる。
空は漆黒。ウッドパルナやダイアラックを思い起こさせる。
ここの民は魔物からどのような苦痛を受けているのだろうか。
「ねぇ、劉備。何か臭わない?」
孫尚香の声にはっとして辺りの臭いを嗅ぐ。確かに臭う。
周りを見回すも臭いそうなものはない。ここは平地。そのようなものはない。
「兄者!あっちのほうから臭ってくるぜ。」
張飛の指差した先には…かすかにだが町の姿が見える。
…これからの起こる出来事に誰となく溜息が漏れた。
「…何よこれ。動物だらけじゃない!」
マリベルが鼻をつまみながら叫ぶ。
町に近づくほどその異臭はひどくなっていく。
そして町にたどり着くとそれは頂点へと。
思わず鼻をつまみたくなるほどの異臭。
肥溜めに突き落とされたというか。
とにかく鼻を押さえずには…
「劉備、平気そうね。」
三兄弟は平然としていた。
400 :
キリ番getterARK:03/03/17 20:12 ID:P4u0c83Q
面白いー。
続きガンガレ。
リレー小説もそろそろ誰か書かないかなぁ……。
402 :
華龍光臨:03/03/19 22:31 ID:e3FDCvE9
「ん?ああ。放浪していたときがあるからな。」
「確か、翼徳が路銀をすべて酒に注ぎ込んだときのことでしたな。」
「まだ覚えていたんですか?兄者。」
張飛がげっとした顔で二人を見る。
「一度や二度じゃないだろう。その結果無断で家畜小屋で寝ることもあったな。」
「外で寝るよりはよかったですな。少なくとも寒さを凌げる分には。」
「うむ。それで翌日になって追い回されたりもしたな。」
「挙句の果てに町の衛兵を張り倒したときもございましたな。」
「仕方ねぇだろ。あの時は役人をぶっ飛ばしちまったからな。」
「…ホント、あなたたちは驚かされるわね。…いろんな意味で。」
盛大に孫尚香が溜息をつく。
「…妙ですね。」
アルスか緊張した面持ちで空気を変える一言を放った。
「…アルス。気づいていたか。」
アルスが頷き辺りを見渡す。
「人影がありません。何処もかしこも動物ばかりです。」
「まさか、ここの民は全員連れ去られてしまったのか?」
劉備の顔に焦りの色が見える。
「…二手に分かれよう。誰か見かけたら呼んでくれ。」
一同は散開する。
辺りは何処もかしこも動物だらけ。
劉備たちは道具屋、宿屋にならもしくは…と思って入ってみたが。
「まさか鶏が店番をしているとはな。」
店の中も動物だらけであった。
「…最初からここは動物だけしかいなかったのか?」
思わずそんな言葉が飛び出るほどであった。
店を切り盛りしている鶏は言葉こそ喋れないがしっかりと接客に応じる。
まるで人間が切り盛りしているが如く。
(まるで、人間のように…か)
どこか、それが頭のどこかに引っかかる劉備であった。
アルスたちがここに残っている住民を見つけるのはそれからしばらく後のことであった。
404 :
華龍光臨:03/03/21 15:45 ID:IEaloJAj
アルスが生存者を見つけたのはそう時間がかかったことではなかった。
が、その生存者は問題を抱えていた。
…会話が全く成立しないのであった。
こっちを見据えていて何かを伝えようとしている。
が、出てくる言葉はまさに言葉にならない呻き声。
「…兄者。筆談ならなんとかなるんじゃねぇか?」
と張飛の言葉によって筆をとらせてみるも文字すら書けない状況であった。
「いい案だと思ったんだがなぁ。」
「うむ。…アルス。他に生存者はいたのか?」
孫尚香がその間にもあれやこれやとその人から何かを聞きだそうとしてもうまくいってないようだ。
「いたのですが…」
「まさか、みんなこんな感じなの?」
ええ。と溜息をつくアルスにつられて溜息が出る。
「弱ったな。まさか今まで言葉を使わずに生活してきたわけでもあるまい…?」
ふと、劉備の何かが頭の中で引っかかる感覚に襲われた。
「どしたの?」
「…兄者。妙ですな。」
「雲長も何か感づいているんだな。」
「まだ、はっきりとはわかりませぬ。ですが、あと少しでわかりそうな気がするのです。」
「…そうか。」
辺りを見回す。辺りは動物だらけ。
両手で数えれる程度の数の人間。
…どこか、引っかかる。
そう感じずに入られなかった。
405 :
華龍光臨:03/03/21 15:50 ID:IEaloJAj
町の全員の生存者と接触を試みるもやはり言葉が通じることはなかった。
途方にくれる一行の目にとまったのは町の奥。
…奥に見えるは周りの家とは一回り大きい屋敷。
「あれはこの町の長の屋敷だろうな。」
「ええ、今キーファたちが行ってる筈なんですけど。」
「ふむ、行ってみるか。」
屋敷の中は町の長であろう物とすれば質素なものであった。
少なからずマリベルの家とは比べれるものではない。
「だめ、この人も話が通じない。」
家の中には一人女性がベッドに腰掛けていた。
孫尚香が彼女に話を聞こうとしたが全く話が通じなかった。
女性だったので孫尚香ならあるいは…と思ったのだが。
「仕方ない。何か他の手がかりを探そう。」
「そうね。もし私たちがこの子達と話ができたなら話が早いのだけど…」
子猫を孫尚香が抱き上げて、そう呟く。
「そうだな。」
色々と思索し始めようと椅子に腰掛けようとする。
「劉備さん!大変です!」
椅子に腰掛けた直後にいきなりアルスが入ってきたものだから思いっきり椅子から落ちてしまった劉備であった。
コケる劉備ワロタ(w
すごい長編になってますな。ガンガレー!
407 :
名前が無い@ただの名無しのようだ:03/03/22 20:32 ID:LP+dYz3f
ほす