ほっしゅ
ワクワクほしゅ
360 :
華龍光臨:03/01/08 18:17 ID:JfomK1XY
完全な闇が支配するその中。
うとうとしているときにぼやけた視界の隅で何か、光った。
焚き火のそれではない。
いうなれば蛍のような光であった。
目を擦り、光へと近寄る。
「おお…」
光の発生源は石となった村人。あの老人は自分を恨んでいるのではないかといっていたがこの輝きは全く別のもの。そう思えた。
光を失ったこの村に光を取り戻さんという思いが伝わってくる。
意を決して石像に手を触れてみる──
流れ込んでくる記憶。
その人の今までの生きてきた記憶が頭の中に流れ込んでくる。
頭の中が破裂しそうな、そう思えた。
気づいたときには石像の光は弱々しくなって、ついには消えてしまった。
…石像となった村人の最後の力であったのだろうか。
頭がガンガンする。意識が朦朧とする。だが、この村の者たちの記憶をすべて…すべて受け止めることができたなら、できたならこの村も救われることだろう。
わかっていてもその足取りは重い。
この時を逃せばもう、二度とこの村が生き返らないような。そんな気がした。
ふと、前方に目をやる。人影が…
アルスだ。この異変に気づいたか…
目が合う。無言ですれ違う。
…お互いに余裕はないようだ。アルスも誰かの記憶を受け止めたか。頭を抱えていた。
後で話し合おうということを目で伝えて次の記憶へと向かって言った。
少しだけ明るくなる。朝だろうか。
そのころになってやっと全員の記憶を見ることができた。
痛む頭を水で冷やしながら、休みながらであったが。
だが、その甲斐はあったのか…
未来への鍵。それを見つけたような。そんな顔をしていた。
巨大な石柱の元で二人は大の字になって眠っていた。
他のみんなが起きてそんな二人を見たのはもう少し後のことである。
361 :
華龍光臨:03/01/11 07:06 ID:Wbmpw38p
ここは教会。劉備が筆をとる。
「兄者、それで何か手がかりになりそうな記憶はありましたか。」
「雲長、待ってくれ。今、書き出している。」
口に出すのは色々な記憶がごちゃ混ぜになって難しい。だから、一旦その記憶を書き出そう、としたのである。
白紙の巻物に筆を動かす。
素直に受け止めたことを書き込む。
退屈そうに張飛があくびをする。
さらに数時間。
巻物三つ分に書き込んだ村の者たちの記憶。
流れてきた記憶はその者の生涯のほんの一部分であるのだけれども。
「終わった?」
「ああ。私の見た記憶はこれだけだ。他の村人の記憶はアルスが見た。…おそらくそろそろやってくることだろう。」
関羽が巻物を手に取る。目に付いたものがあるようだ。
「兄者。…これが気になりますな。」
大きく劉備が背伸びしながら関羽を見やる。
バーテンの記憶。小さな男の子が何かそのバーテンに話しかけている。
傍らには父親らしきものがいる。
かつてはここは戦場であるということで地下に何かあるらしきことを話していた。
そのような記録であった。細かいことも詳しく書かれている。
「地下に何かがあるということね。」
「…!なるほど!」
「兄者、わかりましたか。」
劉備が立ち上がる。
「今までこの村の中を隅々まで歩いたが…」
うんうんと孫尚香が頷く。
362 :
華龍光臨:03/01/11 07:07 ID:Wbmpw38p
「子供の石像は一つ、それも幼い女の石像しかなかった。」
「そうですな。」
孫尚香は鳩が豆鉄砲を食らった感じの顔をしていたが思い起こしてみると確かにそうだった。
「村のいずこかにまだ見つかっていない石像があるはずだ。」
「その残っている石像はおそらく我らの目の届かぬ場所。…かつてここが戦場だったころの名残にあるのだと思われます。」
「うむ。今まで風雨に晒された石像が無事なのだ。風雨に晒されない場所にあるだろう石像は無事に違いない。」
拳を上に突き上げる。
「翼徳、起きろ。為すべき事は決まったぞ。」
「起きてるぜ。…早く探しに行こうぜ!」
さっきまで鼾を掻いていたが、よっこらせと言う声とともに張飛が立ち上がる。
「うむ。」
教会から出てきたところにアルスたちと出会う。
「アルスか。どうやら何か掴めた様だな。」
「はい。」
アルスから記憶をまとめた巻物を受け取る。ざっと目を通す。
「これを見てくれよ、劉備さん。」
そしてキーファから切れ端を受け取る。
切れ端と巻物、それを見比べる。
巻物には劉備の予想通り、無事であろう子供がいることを確認できた。
「…違いない!まだ、この村は死んではいない。」
顔を上げた劉備の目に一瞬、龍の幻が見えた。
まだ、目覚めるべき龍は眠っているのだろう。
永遠の眠りでない限り、眠りはいつかは覚めるもの。
予想が確信に変わるとき。
…龍が再び、蘇る。
363 :
華龍光臨:03/01/13 02:48 ID:/n42OQir
ザッ、ザッ。
ザッ、ザッ…
「兄者、この辺にはないようだぜ。」
ザッ、ザッ。
ザッ、ザッ…
「ここでもありませんな。」
ザッ、ザッ。
ザッ、コツッ…
「ありました!劉備さん。」
「おおっ!ついに見つかったか!」
村の西、枯れ木が立っている辺り。
よくよく見ると壁に「目印」と書いている。
今考えてみると、すべての鍵はこれにあったんだろう…
土を払う。足元に鉄製の扉が。
「これを持ち上げりゃあ、いいんだな。」
張飛が扉を持ち上げる。大きな音を立てて扉が取り除かれる。
「これを小さな子供が持ち上げたというのかしら?」
それは子供があけるには到底無理な扉。
大人であっても簡単には持ち上がらないだろう。
「ここに板があったようですね。」
扉横に木の板が。そしてその下には空洞が。小さい子供なら入れるだろう。
「なるほど、扉ではなく、この空洞から出入りしていたということか。」
「行こうぜ、兄者!」
階段の奥からすでに降りて言った張飛の声が聞こえる。
「ああ。」
イイ!!(・∀・)
365 :
華龍光臨:03/01/14 07:28 ID:aqG7iBPZ
カンテラに火を点す。
カンテラからの光が辺りを包む。
そこは思った以上に広く、しっかりとしていた。
何気なく壁を見やる。
そこには子供が書いたと思われる字で…
「『ひみつきち その2』と書いてありますね。」
「ということはその1があるわけだな。」
アルスが読む。そしてキーファがそれについての観想を言う。
「他にも地下室があるというわけね。」
通路を歩く。ここは相当大事な拠点だったのだろうか。
通路の脇にはボロボロでその役割を果たせない装備が山積みになっていた。
折れた銅の剣、先端が欠け、突き刺さらなくなった槍、ズタズタにされ鎧の役割を果たさなくなった皮の鎧…
絶望に近い、そんな戦況だったのだろうか。
それでも信じる何かのために戦ったのだろう。
「この手記を見ると、兵たちの士気は高かったようだな…」
部屋の隅の引き出しにあった手記を眺めながらそう呟いた。
「兄者、石像は見当たりませんぞ。」
「ここではなく、もう一つの地下室にある可能性があるからな。とりあえず、ここを色々調べてみよう。」
劉備はいつでも石化を治療できるようにその手に天使の涙を携えていた。
…奥への通路に目をやる。
あの梯子は何処へと通じているというのか。
吸い寄せられるようにその梯子を上っていく。
そろそろ、出口だな。
366 :
華龍光臨:03/01/14 07:35 ID:aqG7iBPZ
劉備を迎えたのは海沿いの町特有の潮風。
町中心のあの石柱。その上に劉備は立っていた。
この穴は人の手が加えられた跡はない。おそらくは自然に開いたものだろう。
自然の力にはほとほと驚かされる…
「風が強いな。」
辺りを見回す。島を一望できる。
戦時にはここに見張りを立てていたのだろうか。
空には真っ黒な、何物も通さない思い雲。
邪悪な何者かの意思が具現化したような雲。
人の絶望を喰らいそれは広がっていったのだろうか。
そして眼下には生気をなくした町が広がる。
…否、龍が眠っている大地。劉備は確信していた。
龍が目覚めれば、必ずやこの地に希望を取り戻してくれる。
どのような形かはわからないが、それだけは確信していた。
また、潮風が吹きつける。先ほどより強い…
劉備の手に握られていた天使の涙がその潮風にさらわれる。
しっかり握っていたはずなのになぜか風にさらわれた。
まるで、意思を持っていたのかのように…
風に乗って、それはダイアラック中に。
煌くそれは眠りし龍の目を覚まさん…
念の為ほす
保
このスレのリレー小説は、
>>336 で止まってますよ〜
と、告知しつつ 保守
ヒョイ , ,,,,.,.,,,.
(_&ミ・д・ミ ミ ___
⊂|___,.つつ て/ ) クルリ
彡 ⊂ .ノ
ミ ミ ,,,,.,.,,,. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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&/ ,つ \_______
〜、 ノつ スタッ !
.(/
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やる気はありませんが、なんら問題はありません。
タリー
タリー タリー
(~~Y ̄ ̄\ タリー
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/ つ \_|▼ ▼ |_/ \_|▼ ▼ |_/ヽ、
(_(__つ ⊂\皿⊂⌒`つ \ 皿 /_人__)
だれかこのスレにザオリクを
保守
374 :
華龍光臨:03/02/10 05:29 ID:bvZhrxi7
潮風に乗ってそれは珠のように。
潮風に乗ってそれは華のように。
潮風に乗ってそれは、まさに風のように。
潮風に乗ってそれは、「龍」のように。
天使の涙が宙を舞う。
煌くそれは風に乗って、町の東へ。
目でそれを追う劉備。
そして煌きはある場所にて消えた。
それと同時に煌く空。
そう、空は…いつの間にか晴れていた。
まぶしいばかりに輝く太陽。
突如晴れた空に目が慣れない。
脳裏を走る龍の姿。
確かに見た。「水龍」の姿を。水の精霊とも名乗っていたが。
「…錯覚ではない、な。」
目が慣れてきた。そうして辺りを見回す──
石像の穴から顔を出したのは孫尚香。
「あれ?いつの間に晴れたの?…って、劉備何処行くのよ!」
その声は石柱から飛び降りた劉備に向けられる。
だけど孫尚香の呼ぶ声も今の劉備の耳に入らない。
昨日寝泊りした教会の裏辺りで何か動く影を見たのだ。
そのことに気づいた孫尚香も後に続く。
そして、関羽、張飛、アルスたちと続く。
375 :
華龍光臨:03/02/10 05:30 ID:bvZhrxi7
間違いない。
龍は奇跡を起こした。
そこに石化から治った子供がいる。それが何よりの証拠だ。
近くに先ほどまでいたと思われる地下室がある。
あそこに隠れていたため風雨の害を免れたのだろう。
子供はまだ周りの様子がつかめないでいることだろう。
自分の周りに起こったことが信じられないことだろう。
…だけど、それは事実。焦らなくとも、その事実を受け止めていくことになろう。
「やりましたな。」
「…御老人。」
いつの間にか劉備の傍らにあの老人がいた。
「…あれからどのくらいの年月が過ぎただろうか。その間の空白の時間を取り戻せそうな気がしますな。」
老人が子供の下へと駆け寄る。
「ありがとうございます。今日はささやかながら宴会を開くことにしましょうか。」
子供の名はヨゼフ、説明をするにつれ、彼もこの事実を受け止めてきた。
かなりの年月が経ったこと、この町の住民はもう治らないこと、そして──自分だけが助かったこと。
その日は老人がいた焚き火のそばで宴会をやった。
老人もヨゼフも、そして劉備たちもこの町の奇跡を喜び、祝った。
376 :
華龍光臨:03/02/12 01:35 ID:kxZ2rcBj
照りつける太陽。
昨日まで天幕のような雲が覆っていたとはとはとても思えない。
雲ひとつない空。
どこまでも青く、蒼く──
「行かれるのですか。」
翌朝。皆は村の入り口に集まっていた。
ヨゼフは幼馴染の女の子の石像の元にいる。
…事実は知った。だが、やはりつらいものがあることだろう。
その女の子の顔をしっかり焼き付けるかのようにじっと見つめていた。
「うむ。この町の在りし日の思い出はたとえこの村がなくなってもあり続けるものです。…あなた方にもわかりましょうか。」
「ええ。」
ふと、彼の地を思う。
「兄者。」
「わかっている。雲長。」
もう、戻ることはない地。
だけど、彼の地は心の中で在り続ける。
…未来永劫。
いつか彼の地のことを書物にまとめておきたいものだ。
ふと、そう思った。
377 :
華龍光臨:03/02/12 01:35 ID:kxZ2rcBj
「この地に起きた出来事を、各地に伝えていきたいと思います。この灰色の雨、各地に伝えることによって原因を突き止めれるやも…知れません。」
「…お気をつけて。」
「貴方たちの旅にご加護があることを祈っていますぞ。…ヨゼフ!寂しいじゃろうが、そろそろ行くぞ。」
「うん…」
ヨゼフが老人の元に駆け寄る。
「色々と世話になりましたな。では、我々はこれで。」
ここは小さな孤島。
彼にはいくあてがあるのだろうか。…もちろんないだろう。
だけど、心配する必要はない。
なぜなら彼らには龍の加護がある。
そう思えるのだ。
島の隅から一艘の小舟が出て行った。
老人が「外界との接点を持つ唯一の手段」といっていたあの小舟。
あの小舟は二度と、戻ることはないだろう。
そして主なきこの村は滅ぶことになろう。
…だけど、記憶の中の村はけして滅びることはない。
いつまでも、いつまでも。