<蘇る龍>
「兄者、何か、見えますかな?」
「…いや、もう、何も見えない。邪気はない。」
熱気がこみ上げてくる。今も昔も変わらぬ、エンゴウの火山。
…変わってしまったのは人々の心、あれから信仰心は薄れ、ほむら祭を行うことがなくなってしまったかのようになってしまった。
もっとも、あのエンゴウを救ったのは「水」の精霊であるから、変わってしまったのかもしれないのだが。
あれから酔っ払った二人を部屋に連れて寝付こうと思った。
だけど、なかなか寝付けず結局一日中起きていた。
翌日の朝日のまぶしい時間帯。
グランエスタード城のちょうど目の前の海岸。
一艘の船が停泊しているのが見えた。
見ると、アルス達が手を振っている。
「皆、起きてくれ。アルスたちが迎えに来てくれたようだ。」
中々の規模の船。
アルスとキーファが二人で数年かけて廃船だったこの船を改修したらしい。
「今の漁に使う船の一つ前に使っていた船だから大きいのは当然よ。しっかし、どこからこれを調達してきたのやら。」
と、マリベル曰く。
アルスが舵を取りながら船は一路北へ──
エンゴウに向かった。
過去ではあるが一度行ったことのある風景であるから見飽きるのも早い。
…新しく温泉はあったことは大きな収穫ではあったが。
それで火山はどうなっているのだろうと思い桃園三兄弟は足を伸ばした。
そして、今に至る。
火山内は修行中の戦士たちで賑わっていた。
かつてのように火山内は立ち入り禁止、というわけではない。
「汗を流してきたら如何ですかな。」
「いや、十分だ。それにこれをアルスに手渡す必要がある。」
劉備はしばらく汗を流すべく火山内部にて怪物相手に戦っていたとき偶然にも石版を発見した。手にはそれがある。
張飛はおそらく火山の中で怪物相手に大暴れしているのだろう。
尚香はおそらくアルスたちとともにエンゴウにまだいることだろう。
待ちに待ち続けて結局アルスたちが来たのは日が落ちた後であった。
封印された土地に行くのは翌日ということになった。
エンゴウの温泉を満喫するのも悪くはないのかもしれない。
そう、思った。
翌日。
火山内に存在する旅の扉から謎の神殿へ移動し、新たな封印された土地に。
「劉備さん。準備はよろしいですか?」
「うむ。」
アルスが石版をはめる──
新たな土地へ、困っている民を救うため、龍が旅立つ。
見知らぬ土地へ。
北風さん、ぜひ1で。
やはり男なら天下を狙わないと。
>華龍光臨
新しい土地へいってらっさいませ。
次はどこへ行くのか、興味があります。
∧,,∧
ミ,,゚Д゚,,彡 ほしゅだから!
(ミ ミ)
ミ ミ
U''U
小説は挿絵のために存在する
>324
異議あり!(AA省略
『飛べない翼に意味はあるんでしょうか』
遠野の言葉を、不意に思い出す。
(…意味はあるさ)
(それが、空を飛んでいた日々の大切な思い出だからな)
(………)
(そうだろ…みちる…)
_ _
〃┏━━ 、
| ノノソハ))) / ̄ ̄ ̄ ̄
Λ_リリ ;´∀`)リ < うぐぅあげ♪
( ⊂#~ ∞~~#⊃ \____
( つ/_∞__|~
|(__)_)
(__)_)
328 :
北風:02/12/11 15:37 ID:0r11MPp0
「……竜王二世、お前に従うぞ」
一瞬、時が止まったかに思えるほどの沈黙があたりをつつんだ。
その発言はトルファのものだった。トルファはゆっくりと、竜王二世のもとへ歩いていく。
「どういうことですトルファさん!」
「トルファ、なぜそんなことをするのだ!わしらの仲間ではなかったのか!!」
ベホックに「竜王の孫」、その他の者たちが厳しい顔で問い詰める。
「……これが俺の選択だ!ゴーリキ隊長とは違った、な」
そしてトルファと竜王二世は相対した。竜王二世はシュルシュルと元の姿に戻り、トルファに目線を合わせた。
「ふむ、そなただけか。まあよかろう」
竜王二世が左の手のひらを開くと、その上に小さな杯が現れた。その中には黒い液体が入っている。ボコボコと泡立ち、嫌な匂いを出している。
「さあ、これを飲むのだ。さすれば魔族へ仲間入りできる……」
トルファはそれを受け取ったが、その匂いにしばし顔をしかめる。だが意を決して杯をあおり……
「やめるんだ!トルファ!」
「竜王の孫」の声が聞こえたのだが、トルファは杯を空にした。そして竜王二世に向き直る。
「よし、飲んだか。しばらくは痛みが全身を走るが、それを耐えれば……ぬっ!」
ブシュッ!
トルファは口に含んだ液体を霧状にして吐いた。それが目に入り、竜王二世はとっさに両手を顔にあてた。
その隙を逃さず、トルファは右手に構えたままのドラゴンキラーを竜王二世の腹に刺した。刃の先端が少しの手ごたえと共に背中に突き抜ける。
「ぐっ……謀ったな……!!」
329 :
北風:02/12/11 17:24 ID:0r11MPp0
「すまないな。だまし討ちは好きじゃないんだが、あんたを倒す策はこれぐらいしか思いつけなかったんだ」
竜王二世の体が折れ、前方に崩れ落ちた。そしてピクリとも動かなくなる。
トルファはそれを確認すると、みなの方へと振り返った。
「トルファ!裏切ったのではなかったのか!」
「竜王の孫」たちの顔が驚きに満ちた。
「ああ、だます事になったな。心配をかけてすまなかった」
「まったく……俳優だな。すっかりだまされたぞ」
アーサーは文句を言った。しかしその顔は笑っている。
「いやいや、他に誰かが賛同していたら俺も困ってたぞ」
トルファは笑いながらみなを見回し……その顔が凍りついていることに気づいた。その視線につられて後ろを振り返った彼は、信じられないものを見た、という顔になった。
「馬鹿な……確かに急所に届いたぞ。体を貫いたんだ!」
竜王二世は、その腹部からドラゴンキラーを生やしたまま立ち上がってきたのだ。
「余はかりにも竜神、その生命力を侮るでないぞ」
確かに負傷しているのだろう、竜王二世は多量の血を流していた。だがその動作にあやしいところはない。そして竜王二世は自分にべホイミをかけた。
「……こしゃくなことをしてくれたな。だが余はもはや油断をしないぞ。おまえたちを完全に葬り去る!イオナズン!!」
大爆発が起こり、トルファたちは吹き飛ばされた。しかし「竜王の孫」だけはすばやくマホカンタを唱えていたので、竜王二世も爆風を受けてしまう。
だがすぐさまドラゴンへと姿を変えることで安定を取り戻す。そこで再び血を吐くが、再びベホイミを唱える。
その様子を見た「竜王の孫」は舌打ちをしたが、杖を構えなおす。
「もはや魔力も底をつきてきた。これが最後の呪文だ!ドラゴラム!!」
「竜王の孫」は再びドラゴンへと姿を変えた。しかし竜王二世に比べると一回り小さいので頼りなく見えてしまう。
『ふ!余に魔力を奪われたのでそれが精一杯か。一度戦ってかなわなかったものが、大幅に力を減らして勝てる道理はなかろう!』
『わしは人間の姿でかれらと旅をしてて学んだ……人は成長するものだと!』
「竜王の孫」は竜王二世に突進した。竜王二世もまた突進し、二匹のドラゴンは正面からぶつかり合った。しかし体格の差がきき、竜王二世は「竜王の孫」をはじき返してしまった。
330 :
北風:02/12/11 17:25 ID:0r11MPp0
そして右前脚で頭をつかみ、地面に叩きつける。
『不肖の息子よ、地獄で竜王陛下に詫びるがよい!』
竜王二世の口から火が漏れるのを見たトルファは叫んだ。
「いけない!とどめをさされるぞ!」
竜王二世は「竜王の孫」の頭部に至近距離から炎を浴びせた。ドラゴンの鱗は炎への耐性があるが、このまま熱され続ければ焦げ付いてしまうだろう。
そこへベホックがバギマを唱える。体に傷を負った竜王二世は思わず「竜王の孫」をはなしてしまった。
「これで僕の攻撃呪文は打ち止めです!あとは回復呪文に専念させてもらいます」
肩で息をし始めていたベホックが後ろに下がりながら言う。
「ありがとうベホック!後はおれたちに任せてくれ!」
戦士たちも思い思いに切りかかっていた。槍を突き立てようとする者もいれば、斧を力任せにたたきつける者もいる。
トルファはドラゴンキラーを無くしてしまったため自らの剣で切りかかったが、ドラゴンの鱗を裂くことはできない。
彼らの攻撃が有効打を出せないと見切った竜王二世は身震いとともに咆哮した。その大音量は近くにいた者たちを直撃し、彼らの多くが耳をおさえ、胎児のようにうずくまってしまった。なかには失神した者もいる。
『ふっ!その程度のレベルで余に立ち向かうとは100年早い!自らの愚行を悔やむがよい!』
身近でうずくまっている一人を踏み潰すと、竜王二世は翼を羽ばたかせて浮上した。ひとっ飛びでベホックとホークスが下がっているへ降り、そして火を吹く。
ベホックはフバーハを、ホークスはヒャダインを唱えることで炎をやわらげようとした。しかし竜王二世の炎は普通のドラゴンよりも一段と激しく、徐々に押されていく。
「くそっ!こんなところで……!」
ローブが焦げ付いてきたところで、ホークスはベホックを突き飛ばした。その瞬間、彼らが立っていた丘は炎に包まれた。
「ホークスもやられたか……このままでは全滅だ、何か策はないのか!」
331 :
北風:02/12/11 17:25 ID:0r11MPp0
「……アーサー、やつの腹に俺の持ってたドラゴンキラーが刺さったままなのが見えるよな」
「そういえば……」
地面に四本足で立っていたときには隠れていたのだが、確かに竜王二世の腹部にはドラゴンキラーが刺さったままだった。しかも血がこぼれ落ちている。
さきほどは背中まで貫いていたのがドラゴンに変身した時に抜けていったのだろうか、今では刀身の半ばまでがめり込んだ状態だ。
「あれを使おう。おい!まだ戦えるか!」
トルファの言葉の後半は「竜王の孫」へ向けたものだ。ドラゴンに変身したままの「竜王の孫」は首を縦に振り、肯定の意を示した。
「なら、もう一度組み合って、やつが腹をさらすようにしてくれ!」
「竜王の孫」が再び立ち上がったところで地面が震えた。竜王二世が彼らの前に着地したのだ。
『なにやら相談していたようだが、もはや立っているのはお前たちだけだ。
もう無駄な抵抗はやめるのだ。おとなしくしていれば楽に死なせよう』
「冗談じゃない!俺たちはまだあきらめていないぞ!」
最後の力をふりしぼるため、トルファは声を張り上げた。
『ならば!最後まで戦い、戦士として死ぬのだ!』
竜王二世は火を吹いた。しかし「竜王の孫」が自らの体を盾としてトルファとアーサーを守る。
そして火がやむと竜王二世に向け、今度はこちらが火を吹く。
竜王二世は体勢を低くし、それをものともせず、逆に炎の中へ突進して「竜王の孫」を横倒しにした。
そして首を上げたが、二人の姿はどこにも見えなかった。
『……後ろか!』
トルファがすぐ背後に迫っており、竜王二世の脇を切りつけようとした。
しかしトルファの剣は、やはり竜王二世の体を傷つけることができない。反撃を受けたトルファは地面に倒れてしまう。
『もう一人はどこだ!』
竜王二世はアーサーを探した。しかし、急に後ろへと引きずり倒されてしまった。「竜王の孫」が立ち上がり、つかみかかってきたのだ。
『そのまま死んだふりをしていればよいものを』